585: 2015/09/22(火) 08:20:38.81 ID:8zND7Lrv0



最初から:【艦これ】提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」

前回:【艦これ】提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」第十四話

執務室

秋津洲「神様! 終わったかもー!!」

提督「秋津洲。 その神様って呼び方は止めてくれないか・・・」

秋津洲「え? だけど・・・」

提督「提督でいい。むしろそう呼んでくれ。お願いだから、頼むから」

秋津洲「どうしても?」

提督「どうしてもだ。その呼び方は困る」

秋津洲「・・・分かった。提督」

提督「・・・ありがとう」

提督(この前、町へ買出しに行った時は変な目で見られたからなぁ)

少し前のことである・・・

秋津洲「え?・・・お菓子買ってくれるの!?」

提督「ああ、好きなの選びなさい」

秋津洲「ありがとうっ!! 神様!!」

スーパーの店員「!!?」

なんてことがあった。

何度言っても、ずっと神様、神様と言うから、周りからおかしな目で見られたかもしれない。

だが実際には少し違っていた。

スーパー店員(神様だと・・・やはり・・・そうだったのか)

スーパー店員(空を飛び、深海棲艦を倒し、町民を救った英雄・・・)

スーパー店員(祖父も言っていた・・・あの人は神だ、戦神様だと・・・)

スーパー店員(この地の伝説だと人の世に降りた神が世界を平定し、光を齎すという・・・)

スーパー店員(神よ・・・どうか、世界に光を・・・)

町民1(やっぱり、提督様は・・・)

町民達((((神様なんだ!!))))

提督(うわぁ・・・すごい見られてる・・・なんか拝んでる人も居るぅぅ!!?)

無論、提督はそんな事情は一切知らない。

提督「しかし、今週ずっと秘書艦を頼んでるけど、まだ3日目ですごいな・・・」

秋津洲「え? 何が?」

提督「書類仕事。どれも問題ないよ。ありがとう」

秋津洲「ありがとうございます! 所で・・・」

提督「なんだ?」

秋津洲「あたしも出撃したいかもっ!」

秋津洲(まだ一度も戦闘したことないし・・・)

秋津洲(戦いへの恐怖はあるけど・・・)

自分が保護された日のことを思い出すとゾっとした。

秋津洲(でも、何時までもこんなのダメ。神さ・・・提督に失望されちゃう)

何より、それが一番恐かった。

保護されてすぐの頃は他の艦娘すら恐かったが、提督と一緒に挨拶に回り、

何度かリハビリを繰り返した結果、今では普通に艦娘と会話くらいは出来るようになった。

提督「じゃあ、午後の鎮守府前の海域の哨戒任務をお願いしようかな」

秋津洲「任せてっ!!」

そして、秋津洲が旗艦となり、睦月、如月、皐月、三日月、望月と共に出撃した。

586: 2015/09/22(火) 08:21:52.46 ID:8zND7Lrv0
鎮守府海域

秋津洲「敵を発見したかもっ!!」

睦月「そうだね。どうするの?」

秋津洲「皆、あたしにやらせて」

望月「え? まぁいいけど・・・」

三日月「張り切ってますね」

如月「私たちで援護するから好きに動いて良いわよ?」

睦月「新人さんの訓練も兼ねてるからね」

皐月「お手並み拝見だね」

艦娘と出くわした深海棲艦は震えていた。

イ級「舞鶴の・・・艦娘・・・あああ」ブルッ

ハ級「だからこの海域は止めようって言ったのに!!」

イ級「だって!! タ級様が行けって!! 滅多に出くわさないからって!!」

秋津洲「かくごぉぉぉ!!!」

イ級「ひっ!?」

秋津洲の攻撃は明後日の方角へ。

そしてイ級が無我夢中で放った一撃で秋津洲は大破した。

皐月「弱っ!?」

睦月「だ・・・ダメだよ。そういうこと言っちゃ」

イ級「え? やったの・・・?」

ハ級「いいから今のうち逃げるぞ!!」

睦月「とりあえず、今は秋津洲ちゃんを!」

三日月「大丈夫ですか?」

望月「傷はあさいぞー」

秋津洲「  」ボロッ

587: 2015/09/22(火) 08:22:36.64 ID:8zND7Lrv0
三日月(ここは私が秋津洲ちゃんを・・・)

三日月(献身的に後輩の面倒を見ることで・・・)

三日月(秋津洲ちゃんから司令官にこの事が伝わって・・・)

三日月(司令官に「三日月は優しいな」なんて褒められるんです)

三日月(そして、ご褒美をくれたりして・・・)

三日月(何が欲しい?って聞かれたら私はこう答えるの)

三日月(司令官がほしいって・・・そして・・・)

三日月「ふふふ・・・・」ニヤッ

秋津洲(なんであたしを見て笑ってるんだろう・・・)

皐月(ボクが秋津洲を連れて帰るわけだ)

皐月(司令官が褒めてくれる・・・)

皐月(もしも、何かして欲しいことがあるかと聞かれたら・・・)

皐月(一緒にゲームして遊びたい、朝まで一緒に寝たいって言うんだ)

皐月(幸い、ボクは子供だと思われてるから成功する確率は高い・・・)

皐月(純粋な子供の頼みとして聞いてくれると思うし)

皐月(一度寝ちゃえば司令官は起きないから・・・)

皐月(後は既成事実を・・・)ゴクリ

皐月(部屋の監視カメラと盗聴器は場所も位置も分かるから・・・)

皐月(部屋の掃除をしてあげるとでも言って全て除去する)

皐月(流石に夜に司令官が居る場所に仕掛けには来れない・・・)

皐月(チャンスは一度だけ。ボクは全力でそれにかける)

皐月(おまけに掃除も出来る女の子としてアピールも出来る・・・)

皐月(すごい!!完璧な作戦じゃないか!)

皐月「えへへへへ・・・」

588: 2015/09/22(火) 08:23:29.43 ID:8zND7Lrv0
望月(ここはあたしが秋津洲を運んであげるかな)

望月(そうすれば、司令官の中であたしの評価はウナギ上り・・・)

望月(褒められても、いいよめんどくさいって感じで跳ね除ける)

望月(司令官は頑張りには評価をくれる傾向があるから、何かとしたがるだろう)

望月(最後まで渋って、じゃあ一緒に昼寝しよと誘う)

望月(だけど、昼間は仕事で昼寝なんて無理)

望月(無理だと分かっても言うわけ)

望月(渋った末に、ようやくあたしが出した提案だから飲もうとする)

望月(悔しいけど司令官はあたしを女として見ていないし、子供って思ってるだろうから)

望月(じゃあ夜、俺の部屋で寝るかなんて言い出す可能性が高い)

望月(普通に考えれば問題発言だけど、司令官自身はただの子供だと思ってるから問題と考えない)

望月(大人組も普段のあたしの怠けっぷりを見て、脅威に感じてないから、止めはされないだろう)

望月(司令官が寝てからが本番。司令官のピーをあたしのピーに入れて種を貰う)

望月(そうすれば、女として見るようになるだろうし、孕ませでもしたら責任を取ると絶対に言う)

望月(あたしの小柄な体なら、布団の中から出ずに事を実行出来るので監視カメラには写らないってワケ)

望月(・・・ヤバイ。完璧な作戦じゃんか)

望月「ふふふふ・・・」

如月(ここは私が率先して秋津洲ちゃんを面倒見て、献身的に連れ帰る)

如月(司令官はきっと褒めてくれる)

如月(恐らく、何かご褒美をくれる。今までもそうだったし)

如月(そこで、今夜の食事を一緒に取りたいって言うのよ)

如月(私の手料理を・・・)

如月(睦月型の部屋は2つに分かれていて、卯月達の部屋にはゲーム機がある)

如月(そこで、このようなことがあった時の為にネット通販で買った最新ソフトの出番)

如月(新しいゲームで遊ぶように言えば、後は勝手に卯月達の部屋に姉妹全員集まって・・・)

如月(ゲーム大会が始まる。今までもそうだけど、皆そのまま雑魚寝しちゃうから私達の部屋に戻ってこない)

如月(つまり、部屋には私と提督の2人だけ・・・)

如月(後は、食事にネット通販で買った媚薬を・・・)

如月(司令官がびーすともーどに・・・私の膜を・・・うふふふ・・・あはっ)

589: 2015/09/22(火) 08:27:08.31 ID:8zND7Lrv0
睦月(ここは長女として私が秋津洲ちゃんを連れ帰る)

睦月(提督に褒められる上に、優しい子として認識されてアピールになる・・・)

睦月(「流石睦月型の長女だね」ってなるよね・・・絶対)

睦月(そんなことないよ、皆も居たからって謙遜しておいて・・・)

睦月(謙虚で優しい娘って思わせてアピールタイムにゃし!!)

睦月(恐らく提督は必ず何かしてあげようとしてくる・・・)

睦月(そこで2人で遊びに行く約束を・・・デート!! デート!!!)

睦月(初デートはどこがいいかにゃぁー 水族館? 遊園地? 良いムードになって・・・)

睦月(そこで・・・)ゴクリ

秋津洲「・・・なっ・・・なんで皆、笑いながら近づいてくるの? 目が恐いよ!?」

如月「大丈夫よ安心して?」

秋津洲「何が!?」

望月「無事に送り届けるから・・・大丈夫」

睦月「そうだよ。怪我しちゃってるんだから『私』に任せて」

皐月「いや、ボクがやるから皆は周囲を警戒しててよ」

三日月「いえいえ、ここは私が・・・」

秋津洲「え? え?・・・あの・・・え・・・と・・・・」

皆一斉に秋津洲に飛び掛った。

秋津洲「ふにゃぁぁぁぁ!?」

帰還後、すぐに入渠し、さっきは油断しただけと再度出撃するも再び大破した。

青葉の号外『秋津洲ちゃん連続大破15回! 今後の動向は!?』でこの件は鎮守府中に知れ渡たった。

604: 2015/09/26(土) 04:14:31.46 ID:E4gAZlc20
夜。食堂。

時間も遅く、食堂に居るのは秋津洲一人。

秋津洲はとても悩んでいた。

今日だけで大破15回。自信が塵芥のように消え去った。

秋津洲「なんで私・・・こんなに弱いんだろ」

情けなくて涙が出てくる。

榛名「どうしたんですか? 一人で」

秋津洲「はっ・・・榛名様」

榛名「だから様はいりませんよ!?」

秋津洲「では、榛名さんで・・・?」

榛名「それならまぁ・・・で? どうしたんですか?」

秋津洲「少し悩んでいて・・・」

榛名「連続大破の件ですか」

秋津洲「うん」

秋津洲の雰囲気はとても暗い。

榛名「秋津洲ちゃん、手や足ってなんで付いていると思います?」

秋津洲「え? ゴハン食べたりするため?」

榛名「まぁそれもありますね。本来、『艦』であるなら手も足も入りません」

秋津洲「・・・うん」

確かに船に手足が生えていたら不気味な事この上ない。

605: 2015/09/26(土) 04:15:04.54 ID:E4gAZlc20
榛名「ただの軍艦であれば、人の形をしている必要はないんです」

秋津洲「・・・確かにそうかも」

榛名「でも私達、艦娘は人の姿で、かつての軍艦の記憶を持ち、生まれました」

それがどうしたのだろうか。秋津洲は良く分からなかった。

榛名「手があり、足がある。人の形をしている、なら通常の軍艦と同じ様に戦う必要はないのでは?」

秋津洲「どういうこと?」

榛名「例えば、殴る、掴む、蹴る。そんなことも出来るんです。人の体なんですから」

榛名「ただの戦艦では出来ない戦い方も出来るんですよ? 私達は」

秋津洲「人間のような戦い方・・・」

榛名「そういう事は長門さんが詳しいから師事を受けて見ては?」

秋津洲「長門さんに? 榛名さんも強いですけど、榛名さんじゃダメかも?」

榛名「私が教えてもいいですが・・・実戦形式ですと命の保障は出来かねますよ」

秋津洲(確かレベル的にも榛名さんはカンストしてると聞いたし・・・)

正直、恐かった。

秋津洲「・・・な・・・長門さんに聞いてみようかな」

榛名「今、明石さんの工房に居ますよ。41砲の改修をしてましたから」

606: 2015/09/26(土) 04:15:43.49 ID:E4gAZlc20
明石工房

長門「ふむ。事情は分かった。師事してやろう。だが、私は厳しいぞ?」

秋津洲「ありがとうございますっ!」

明石「では、同時に武装の強化もしましょうか」

秋津洲「強化? 出来るの?」

明石「その二式大艇ちゃん? それも良いですか?」

秋津洲「え? これは・・・」

これはとても大事な相棒だ。

渡すことに少し躊躇いがあった。

明石「強くなりたいんでしょ?」

秋津洲「・・・うん」

明石「それと・・・見せたいものが」

秋津洲「え? 見せたいもの?」

長門「まさか・・・アレを秋津洲に?」

明石「貴女が強くなりたい理由はなんですか?」

秋津洲「提督の為・・・提督に失望されたくないから」

明石「そうですか。例えば・・・敵の大群が攻めて来ました」

秋津洲「え? 攻めてきたの!?」

明石「仮定の話です。攻めてきたと仮定します」

秋津洲「うん」

明石「提督が危険な状態、貴女も満身創痍。助けられるのは貴女だけ。そんな状況でどうしますか? 逃げますか?」

秋津洲「・・・それは」

逃げる?

確かに戦いは恐い。沢山、沢山、恐い思いをした。

だけど、今はもっと恐い物がある。

それは提督から失望されること。

大破の数を聞いて提督は苦笑して、優しく撫でてくれた。

607: 2015/09/26(土) 04:16:49.44 ID:E4gAZlc20
だけど、失望され、本当に見捨てられたら? いらないって言われたら?

恐ろしい。とても恐ろしい。

それ以上に恐いことはない。だから戦いになっても逃げるなんて選択はない。

秋津洲「戦います。提督を助けたいもん」

明石「提督の為に敵を殺せますか?」

今の私も、これからも私も・・・

提督が居ないと生きる意味を感じない。

あの人は神様なんだ。私の神様。

私を救ってくれた。大切な存在。

何時も私を見てくれる。

褒めてくれる。

優しくしてくれる。

そして・・・私は神様を心から敬愛して愛している。

無論、一人の女として。

提督の存在は既にそれほどまでに大きくなっていた。

秋津洲「頃します。提督に危害を加える者は全て」ハイライトオフ

明石「それが『誰』であってもですか?」

秋津洲「提督に危害を加えるのであれば敵かも。だったら・・・」

一呼吸置いて答える。

その発言に迷いはない。

秋津洲「頃します」

明石「うん。良い返事です。ようこそ。こちら側へ・・・ではお見せしましょう」

長門(思いの他、すぐ馴染んできたな秋津洲も。最初は酷かったものだが)

明石がなにやらレバーを弄ると、床の一部が可変して上に上がってきた。

緑色の液体の入ったカプセルの中に、見たことも無い複雑な金属の塊があった。

秋津洲「あの・・・これは?」

明石「超重力砲です。以前、ナガラでしたっけ? あれを生きたままバラして剥ぎ取ったモノです」

608: 2015/09/26(土) 04:17:35.06 ID:E4gAZlc20
長門「懐かしいな。沢山捕まえてきたものだ・・・」

明石「これを秋津洲さんの艤装に移植します」

秋津洲「それで強くなれるの?」

明石「なれますよ。そして選ぶのは秋津洲さんです」

秋津洲「・・・私が・・・選ぶ」

明石「欲しいんでしょう? 圧倒的なチカラが・・・」

秋津洲「・・・欲しい。チカラが欲しい・・・」

明石「なら迷う理由はないでしょ?」

秋津洲は迷うことなく頷いた。

それから、鎮守府の裏の雑木林で長門とのトレーニングが始まった。

長門「遅い!! もっと周囲に気を配れ!!」

秋津洲「わっ!? 痛っ!!」

長門「・・・立て」

秋津洲「少し・・・休ませて欲しいかも・・・」

長門「ふん。所詮、貴様はその程度の役立たずか。提督も失望なさるだろうな」

秋津洲「・・・そんなことない!!」

長門「なら立て。貴様のような、使えないグズに休む時間はない」

秋津洲「っ!!」

長門「なんだその目は? 反抗的だな!」

秋津洲「・・・なんでもありません」

長門「次はランニングだ。徹底して体力をつける。行け。これから訓練場のトラックを100周だ」

秋津洲「ひぃぃぃ」

長門の厳しい特訓は続く。

長門「貴様はグズだ。この世で最も劣るゴミムシだ!」

長門「休みたい? 氏んでから休めばいい」

長門「貴様は何の役にも立たない虫ケラだ!ゴミだ!!それを自覚しろ!!!」

口を開けば汚い言葉ばかりが飛び出す。

609: 2015/09/26(土) 04:18:00.37 ID:E4gAZlc20
長門「なんだそのへっぴり腰は!! ジジィのフ○ックの方がまだマシだぞ!」

陸奥「ちょっと! 貴女、何とんでもないこと言ってるの!?」

長門「陸奥か。この本に書いてあったんだ」

陸奥「海兵式訓練術? なにこの本・・・秋津洲ちゃんが可愛そうでしょ」

長門「本人が望んでやっていることだ。それにあれを見ろ」

秋津洲「やぁっ!!!!」

陸奥「岩を砕いた・・・!?」

秋津洲「出来た・・・出来ました!! 教官!!」

長門「では、これより私と実戦方式での訓練だ」

秋津洲は生氏の境を彷徨っては入渠ドックに送られ、そんな事を1000回ほど繰り返し、逞しく成長した。

長門「合格だ。よく頑張ったな」

秋津洲「はい! 教官!!」

長門「教官はよせ・・・」

秋津洲「は! 長門さん!!」

長門に対し、敬礼をする。

長門「では行け。その力を、技を、示して来い!!」

秋津洲「ハイ!! 提督に害する敵を頃しつくし、徹底的に殲滅してきます!!」

長門「ああ。良い顔だ。一人前の戦士の顔だ・・・」

陸奥(目が氏んでるけど・・・)

特訓が終わるころ、艤装の改造も終わり、再び提督に頼んで出撃した。

提督はなんか良く分からないけど、最近自主訓練をしていた程度に

話を聞いていたので出撃を許可した。

610: 2015/09/26(土) 04:18:49.87 ID:E4gAZlc20
睦月「また同じメンツだねー」

皐月「なんか訓練していたのは知ってるけど、どうなの?」

秋津洲「もう、以前の私は居ないかも。今の私はただの愛する神の使いだから」ハイライトオフ

望月(やべぇ・・・コイツが何言ってるか分からない・・・)

三日月「前方、敵よ」

如月「どうするの? 私たちは援護に回るけど」

秋津洲「ごめん、私一人にやらせて」

皐月(大丈夫かなぁ)

睦月「分かった。でも、危険と判断したら介入するからね?」

秋津洲「うん!」

一方で、深海棲艦も艦娘を捉えていた。

ホ級「・・・敵だ」

イ級「なんで何時も私が当番の時に!!」

ハ級「おい、アイツ・・・」

イ級「アイツは・・・前に私が15回も大破させた・・・」

ハ級「なんだ! 誰かと思ったら秋津洲? だったけ? この前のザコじゃない」

ロ級「ギャハハッ 確か初陣で仲間に大恥晒したって奴か!!」

深海棲艦にボロクソ笑われるが気にしない。

秋津洲(特訓の成果を見せるよ・・・)

イ級「お仲間は後ろで見てるだけか。この前もそうだったな」

ロ級「やろうっ!! 4対1でヤル気か!!」

深海棲艦側は秋津洲をただのザコだと思っており、士気が高かった。

しかし、目前に居たハズの秋津洲の姿が消えた。

電探にも反応はない。

秋津洲「・・・まずは一隻」

気が付くと側面に居た。砲撃をする訳でもなく至近距離に接近していた。

611: 2015/09/26(土) 04:19:36.40 ID:E4gAZlc20
ロ級「早いっ!!」

秋津洲「・・・遅いかも」

イ級「!!?」

手刀。ただそれだけ。イ級の目を潰し、そのまま頭部を貫通した。

悲鳴すらあげる暇は無く、イ級は絶命、秋津洲が手を引き抜くと血液に似た体液を撒き散らしながら海へ沈んで行く。

ハ級「イ級!!?」

秋津洲「・・・なんだ。こんなんでいいんだ」

ハ級「よくも!!!」

ホ級「こちらの攻撃が当たらないっ!!」

秋津洲「すごい・・・艤装の出力が大幅にあがってる・・・」

依然とは比べ物にならない力を感じる。

もう、恐怖に怯えていたあの頃の自分は居ない。

秋津洲「あれを試そうかな」

艤装が展開する。

皐月「あれは・・・」

如月「超重力砲?」

睦月「秋津洲ちゃんも取り付けたんだ」

三日月「あの出力に耐えられるかしら・・・少し心配ね」

しかし、なんてことはなく放ち、その1撃でハ級はチリ一つ残さず消滅した。

秋津洲「・・・二式大艇ちゃん。コードD」

二式「戦闘モード デストロイモードガ ニュウリョク サレマシタ」

秋津洲「さぁ・・・行って来て」

二式「センメツスル・・・」

二式大艇は装甲がスライドし、間接が露出、人型へと姿を変える。

ロ級「なんだ!?戦闘機が変形した!?」

二式「センメツ・・・」

ホ級「なんだ!? なんなんだコイツは!!?」

612: 2015/09/26(土) 04:20:09.27 ID:E4gAZlc20
いわゆるロボットという奴だろう。

人型に変形した二式大艇は空を飛びながら接近し、執拗に攻撃を加える。早すぎて捉えることすら困難だった。

ホ級「だから、ここの海域は止めろって言ったんだ!! ここの鎮守府の指揮官はイカれてるって絶対」

ロ級「違いない。こんな連中の親玉だ。マトモな訳がないな」

その発言で戦場の空気が完全に変わった。

絶対零度とでも言うべきか。

ホ級は必氏に逃げ道を探す。

ホ級(無理だ・・・これは・・・)

秋津洲にはスキがない。

逃げようが後ろからやられるだろう。

さらには少し離れた位置で戦闘を見ている駆逐艦5隻。その存在が不可解だった。

何故? 何故見ている? 

戦闘に介入しない理由が分からない。しかもその5隻は普通ではない。

離れた位置からでも分かるくらいの強烈な殺意を感じる。

仮に秋津洲から逃げられたところで彼女達にやられるだろう。

ホ級(・・・くそ!!)

気が付くとロ級が断末魔の声を挙げて爆散していた。

残るは自分のみ。

秋津洲「私を馬鹿にするのは構わない」

ホ級(なんだ・・?)

秋津洲「けど・・・提督を侮辱した罪・・・それは許されない」

ホ級(何を言っているんだ?)

秋津洲「氏を持って償ってもらうかも」ハイライトオフ

613: 2015/09/26(土) 04:20:48.96 ID:E4gAZlc20
ホ級(そうか・・・これが氏か)

思えば、自分が頃して来た人間達も・・・こんな気持ちだったのだろうか?

なんで戦いがあるんだろう。

なんで私はニンゲンを頃したんだろう。

なんで私はコロサレルのだろう。

何時までも何時までも・・・こんな血塗られた戦いが続くのだろうか?

ホ級(そうだ・・・私は・・・元々は・・・艦・・・む・・・)

何かが見えた気がした。かつての記憶なのか分からない。

いつかの遠い過去、自分は確かに人を守る為に・・・

何時までも氏が訪れない。

秋津洲の拳が目の前で止まっていた。

ホ級「何故・・・トドメをささない?」

秋津洲「・・・あなたから殺意が消えたから」

あの猛特訓をして、自分に自信が付いた。

だから提督に言ったんだ。

『私が深海棲艦を皆倒すから! 皆頃しにするから!』

褒めてくれると思ったのに、提督は複雑そうな顔をした。

そして提督は言った。

『あまり物騒なことを言うな、敵だから何をしてもいいわけじゃない』と。

深海棲艦は人類の敵。

だから戦う。それが当たり前のこと。

『人類に害を成すなら倒す。けどな・・・中には言葉が通じる者もいる。

南方棲鬼や泊地水鬼みたいに。相手に敵意がなく、殺意もなく、言葉が通じ合うなら・・・』

提督もそれが今の世界の常識ではないことは知っているだろう。

そうやって逃がした敵が、どこかで仲間を頃すことになる。

提督はしっかりとソレを認識した上で、無為に命を奪うことはしたくないと言った。

614: 2015/09/26(土) 04:21:33.33 ID:E4gAZlc20
それを甘いと言う艦娘も居る。

自分もそう思う。

けど、彼の優しさに惹かれた。

その優しさに救われている。だから、提督を信じるのが・・・私の・・・・

ホ級「どういうことだ・・・?」

秋津洲「提督は無駄な殺戮は望んでない。貴女がもう人を襲わないなら提督なら見逃すと思う」

ホ級「提督・・・どこか懐かしい響きだ・・・」

秋津洲「ほら・・・さっさとどっか行くかも」

ホ級「・・・もう私は・・・戦わない」

目指す先は深海棲艦でも変わり者扱いされている集団。

教祖が纏め上げた集団は戦うことを否定していると聞いた。

ホ級「あそこなら・・自分の居場所があるのかもしれない」

そう言うとホ級は疲れた様子でどこかへと去って行った。

秋津洲「提督なら・・・こうするかも?」

睦月「うん。多分それが正解だと思う」

三日月「そうですね」

如月「もう既に戦意は無かったしね。あそこまで行くと二度と戦場に出てくることは無いと思うわね」

望月「甘いと思うけどな・・・」

皐月「大丈夫だよ。提督に害を持つ、敵意を持つものは殺せばいいんだから。簡単じゃないか」ハイライトオフ

秋津洲「うん。じゃあ帰るよ、皆」

秋津洲の勝利はすぐに鎮守府に伝わった。

提督「秋津洲、よくやったな。聞いたよ。敵を撃破したと」

提督は秋津洲が鎮守府付近の海域で敵3隻を倒したと報告を受けた。

戦闘には向かない彼女が良く頑張ったものだと関心した。

何やら特訓をしているとは聞いていたが、彼女の努力は報われたようで

自分のことのように嬉しく思った。

頑張った努力の結果、成果を得ることは自分のことのように嬉しい。

615: 2015/09/26(土) 04:22:16.72 ID:E4gAZlc20
それが部下であるなら尚更だ。

提督「でもな、あまり無茶はダメだぞ? 本来は戦闘には不向きなんだから」

その後も何度かの戦闘を経験し、秋津洲なりに自信も出てきた。

この少し後、急遽大本営から敵の大規模作戦の概要を掴んだと連絡があり、

鎮守府のほぼ全戦力が作戦に投入された。

その作戦で、秋津洲は一時的に旗艦を勤め、見事海域の突破に貢献することになった。

全作戦が無事終わり、新たに入ってきた新人達は6人。

照月、瑞穂、海風、江風、リベッチオ、速吸。

新人達は戦艦のように純粋に戦闘用でもない秋津洲の活躍を目の当りにして素直に凄いと思った。

そして秋津洲に尋ねた。

「強さの秘訣は?」と

秋津洲は少し間を置いてこう言った。

「・・・身を焦がすほどの愛かな?」ハイライトオフ

皆は首を傾げたが、全員が同じ気持ちになるまで時間はそう掛からなかった。

616: 2015/09/26(土) 04:23:00.97 ID:E4gAZlc20
深海では・・・・

幹部クラスに召集が掛かり、一同は今回の作戦結果を整理していた。

多くの者が焦りを感じていた。

装甲空母姫「何故だ・・・何故我等がこうも容易く・・・」

大規模作戦では確かに自分達、深海棲艦側が優位に立っていた。

だが、それも例の鎮守府が動き出してから攻守が逆転する。

元来、深海棲艦の方が艦娘よりも、より戦闘に特化しており、

単純な戦闘力ならこちらが上のハズだった。

泊地棲姫「なのに何故!! 何故・・・」

あの連中が出てくると、戦闘経験のある者は皆、動揺し、酷い時には勝手に逃走する始末。

始終ペースを持っていかれて、一方的にやられることが多かった。

今回の作戦の戦闘を記録したいた艦載機から映像が流される。

写るのは金剛型の霧島だった。

彼女の艤装の一部が展開し、まるで巨大なハサミのようになって、深海棲艦を捕獲、そのまま握り潰す。

他にも金剛型の戦艦達はデータにない武装を使い、恐ろしい戦闘力で深海棲艦を圧倒していた。

腹が立つことに、戦闘中に握り飯を食べる余裕すら見せていた。

特に榛名。あれは映像で見ても異様だった。

戦艦棲姫「なんだ奴は? これではまるで・・・」

―――自分たち以上に

誰もがそう思った。同胞と言えば、まだ納得できただろう。

617: 2015/09/26(土) 04:23:56.87 ID:E4gAZlc20
他にも、ただの駆逐艦であるにも関わらず、戦艦を殴り倒してたり、海水浴途中にちょっと出撃しましたとでも

言わんばかりの格好の水着を着た連中やら常識を無視した規格外の存在に思えた。

今回、放浪中だったレ級に命令し、わざわざ海外を攻めていた防空棲姫も呼び戻したが、それもあっけなく撃破されている。

泊地棲姫「至急、対策を立てなくては・・・あの連中は異常です」

装甲空母姫「恐らく一番の障害になることでしょう」

誰もが振り返り、奥に鎮座する自分たちのボスとも呼べる存在を見る。

しかし、どうだろう。彼女は笑っていた。

これだけの損害を受けて、作戦は失敗し、屈辱と怒りに染まるなら分かる。

だが、とてもとても楽しそうに笑う。まるでこうなることが嬉しいとでも言うかのように。

誰もが理由が分からない。

南方棲戦姫「見つけた。そうか彼か。彼が・・・」

次に写るは軍艦の甲板に立ち、指示を出している男。白い軍服から推察するに彼が指揮官だろう。

戦艦棲姫「この男を始末しますか?」

南方棲戦姫「余計なことはするな」

冷たく言い放つ。

戦艦棲姫は南方棲戦姫の怒りに触れてしまったと感じ、すぐに謝罪したが、特に南方棲戦姫は気に留めなかった。

南方棲戦姫「見つけた!! ついに見つけた!!! 全てを覆す存在を!!」

狂ったように笑う南方棲戦姫に周りはどう反応して良いか分からず口を閉ざす。

南方棲戦姫「確かに強い、強いよ、彼の艦隊は!! 全てが規格外だ!! それに彼自身も優秀だ!!」

なればこそ、今すぐ討つべきでは? 誰もがそう思った。

南方棲戦姫「だけど・・・その『強さが』が人の世界を終わらせる!!! 人類を滅ぼす鍵になる!!!」

提督の映像を見ながら不気味に口を歪ませた。

南方棲戦姫「そのトリガーが君だよ『提督』・・・フフフ・・・これからが本当に楽しみだ」

何時までも狂ったように笑い続ける。

部下達は皆、萎縮してそれを黙って見ていることしか出来なかった。

623: 2015/09/30(水) 01:53:21.10 ID:/QeRx/3C0
明石の工房

比叡「すいませーん! アレ、出来てます?」

明石「まぁ・・・一応は・・・」

夕張「なんです?」

明石「中身を入れ替える薬? みたいなのを作ってみまして」

夕張「はい? すいません、よく分かりません・・・」

明石「ええ・・・実はですね」

事の発端は数日前に遡る。

比叡「・・・私はずっと考えていたんです」

明石「何をです?」

比叡「お姉さまと愛し合いながらも、司令と結ばれるのはどうすべきか」

明石「はぁ・・・」(どうしよう・・・果てしなくどうでもいい)

比叡「考えたんですけど、私がお姉さまになれば・・・いいのではないかと」

明石「・・・うん?」

比叡「私が金剛お姉さまと一つになって、さらに司令と一つになれば、それは三身一体なんじゃないでしょうか?」

明石「すいません、何を仰っているかよく分からないのですが・・・」

比叡「例えばですよ? 私とお姉さまが入れ替わるとしますよね?」

明石「入れ替わる?」

比叡「例えば意識だけを交換とか? そうすれば私の魂とお姉様という器は一つになって溶け合って、2人は一つになれますよね?」

明石「はい・・・?」

明石には比叡が何を言っているか良く分からない。比叡の目には光が無く、

すごい発見を自慢するかのように楽しそうに淡々と語る。

比叡「そうすれば私とお姉さまは一時的とはいえ、一つになれます!! そして司令に抱いて頂くんです!!」

明石(その時点で無理でしょ・・・提督は絶対に私達に手を出さないでしょうし・・・今の段階では)

比叡「そうすることで、私とお姉さまと司令は一つになれます!! ね!!」

明石「はぁ・・・そうですねー」(何が ね! なんでしょう)

624: 2015/09/30(水) 01:54:02.63 ID:/QeRx/3C0
比叡「そこで作って欲しいんです!!」

明石「何をです?」

比叡「精神を一時的に入れ変えるような発明品を」

明石「いや、流石にそんなもの作れませんよ!?」

普通に考えれば分かる。

そんなモノ、どうやっても既存の科学では作れないと。

比叡「やっぱり無理ですか? 普段から『なんでも作れる』みたいなこと言ってても無理なモノもあるんですね・・・」ハァ

この発言、比叡に悪意は無かった。

明石(この私に・・・作れないですって・・・?)

しかし、比叡の何気ない言葉が明石の工作艦としてのプライドに火を付けた。

明石「作れますよ!! それくらい! 一週間待ってください!」

というやり取りがあったのだった。

夕張「いや、無理でしょ!?」

明石「出来ましたよ」スッ

一見すると普通の栄養ドリンクのようだった。

夕張「本当に作っちゃったの!?」

明石「大変でしたよ。既存の技術では無理なので、妖精さんにも協力して貰って・・・

妖精さんの技術と、陰陽術やら黒魔術なんて非科学的なモノまで取り入れて、クトゥルーの・・・・」ブツブツ

夕張「へ・・・へぇ・・・」

比叡「すごいです!! 流石です明石さん!!」

明石「作ったはいいですが・・・本当にやるんですか?」

比叡「・・・反対ですか?」

明石「意図的に鎮守府内の治安や、パワーバランスを崩すと何が起こるか分かりませんよ」

夕張「下手したら鎮守府内で戦争になりかねませんね・・・冗談じゃなくて割りと本当に・・・」

比叡「・・・そうですね。地図から鎮守府が消えるかも」

明石「私としては、司令に迫るのは止めた方がいいかなって思いますよ。今は」

比叡「同じモノは作れますか?」

明石「お時間を頂ければ出来ますけど・・・」

比叡「でしたら、今回はお姉さまと入れ替わるだけにしましょうかね・・・司令と一つになるのは全てが終わった時の楽しみに取っておきましょう」

625: 2015/09/30(水) 01:54:35.85 ID:/QeRx/3C0
その時、工房に加賀がやってきた。

加賀「ええ、それがいいわ。最もそんな時が来るとも思えないけど」

夕張「加賀さん? どうしたんですか」

明石「ああ、烈風改のオーバーホール終わってますよ」

加賀「ありがとう」

比叡「・・・加賀さん? どういう意味ですか?」

加賀「言葉通りの意味よ。全てが終わっても貴女の望みが叶うことはないわ」

比叡「・・・空母風情が」ボソッ

加賀「・・・戦艦なんて所詮、空母には勝てない時代遅れの産物でしょうに」

比叡「貴女だって元は戦艦でしょ・・・空母なんて艦載機が無ければ、何の役にも立たないじゃないですか」

加賀「艦載機が全て落とされる前に敵を叩けば良いだけよ」

比叡「全部撃ち落してあげますけどね」

加賀「近代の主力艦を見たら? 戦艦って艦種が今でも在るかしら?」

比叡「・・・ッチ」

加賀「時代遅れなのよ戦艦は。 そして提督を巡る戦いでもね」ハイライトオフ

比叡「やって見ないと分からないと思いますけど? 少なくても私は空母なんかに負ける気はないですよ」ハイライトオフ

加賀「・・・・・・」

夕張「まぁまぁ・・・その辺で」

明石「鎮守府内での武力衝突は禁止されてますよ。2人共分かっているでしょうに」

加賀「ごめんなさい。少し言い過ぎました」

比叡「いえ、こちらもです。すいません」

夕張(加賀さんも提督のことになると回りが見えなくなるよね・・・私もだけど)

加賀「邪魔したわね。明石、整備ありがとう」

明石「いえ、また何時でもどうぞ」

比叡「で、このドリンク? はどう使うんですか?」

明石「普通に飲んでください。 飲んですぐ効果が出始めますので、入れ替わりたい相手の体の触れて頂ければ・・・」

比叡「入れ替わるんですか?」

明石「一応そのハズですけどね・・・効果は半日くらいで切れますけど」

夕張「よくこんなモノ作れましたね・・・」

比叡「では、早速使ってみますね。ありがとうございました」

明石「くれぐれも慎重に行ってくださいね。作ってから言うのもアレですけど、面倒ごとはゴメンですよ」

夕張(面倒な事しか起こる気がしない・・・)

633: 2015/10/03(土) 00:36:20.67 ID:df4+p0BO0
執務室では何時ものように提督と担当秘書が仕事をしていた。

瑞鳳「提督、ここ間違ってるよ?」

提督「ん? ああスマン・・・」

瑞鳳「珍しい~ 提督が書類でミスするなんて」

提督「本当にすまん。助かった」

瑞鳳「ちょっと疲れているんじゃないですか?」

提督「ははは・・・面目ない」

瑞鳳「ちゃんと休んでます?」

提督「休んではいるが、前の作戦の報告書やら色々とする事が多くてな・・・」

瑞鳳「何時も私達にしっかり休めとか言ってるのに、自分が出来ていないのはダメなんじゃないですか?」

責めるような視線で「むー」と睨む瑞鳳。

本人には申し訳ないが、恐いというより可愛らしく、提督は思わず笑ってしまった。

瑞鳳は「ちょっと!? 責めているんだけど!?」と抗議した。

提督はそれに対してスマンスマンと返す。

瑞鳳は(今のはちょっと恋人同士のじゃれあいみたい)と感じて頬を染めた。

提督「確かに、上に立つ者として部下をあまり心配させるのは考え物だな・・・」

瑞鳳「少し休みません? なんだったら私が膝枕を・・・」

提督「いや、大丈夫だ。瑞鳳が美味しいお弁当を作ってくれたからな。元気いっぱいだよ。気合でさっさと終わらせよう」

瑞鳳(・・・ちぇっ残念)

提督「ふむ・・・この書類は・・・大淀に確認を取らないとな」

瑞鳳「放送で呼びます?」

提督「いや大丈夫だ。通信室に居るハズだし少し行ってくるよ」

そう言って提督は執務室を出て行く。

瑞鳳「ん~ 押しが弱いかな私・・・」

秘書艦はローテーションで行っているので、一度やると次の番までが長い。

なので、秘書艦になる者は自分なりのやり方で色々とアピールをしているが、提督には通じていなかった。これまで一度も。

瑞鳳「祥鳳みたいに裸みたいな格好した方が誘惑できるのかなぁ・・・? でも裸で歩いてるみたいで恥ずかしいし・・・」

ちょうど同時刻、演習場に居た祥鳳は大きなクシャミをした。

朝潮「風邪ですか?」

荒潮「誰かが噂でもしてるんじゃない~?」

祥鳳(まさか・・・提督が・・・///)

再び執務室。

瑞鳳「あれ? 提督の携帯、着信表示がある・・・」

執務室には今は瑞鳳一人しか居ないが、周囲をキョロキョロと見回した後、携帯を手に取った。

瑞鳳「メール履歴が700件・・・差出人はイムヤちゃんか・・・」

イムヤ。潜水艦の中でも古株で、提督に対する求愛行動をあまり隠さない艦娘だ。過去それが問題となり、武力衝突寸前になったこともある。

瑞鳳「・・・削除と」ハイライトオフ

普通であれば、そんな数のメールが来ればドン引きするものだが、提督はイムヤが携帯大好きなイマドキ少女で、

そいうのは年頃の少女の間では普通の行為であると、何やら勘違いをしていて、この行為の異常性を認識していなかった。

634: 2015/10/03(土) 00:36:54.20 ID:df4+p0BO0
瑞鳳「本当にライバルが多くて嫌になっちゃう・・・」

それでも負ける気はないのだが。

瑞鳳「そうだ! 提督、少し疲れているみたいだし、元気が出るモノを作ってあげよ!」

瑞鳳が執務室を出て行ってすぐ、比叡がやって来た。

比叡「失礼しまーす。あれ? 誰もいない?」

金剛を探して居たのだが、執務室には居なかった。

今日は金剛は出撃して居ないので、自室か執務室かのどちらかに居ると思い、執務室まで来たのだった。

比叡(提督の机の下にも居ない?・・・ロッカーの中は・・・初霜ちゃんが寝てる・・・ 天井にも・・・居ない? あれぇ?)

どこを探しても居ない。

比叡(どこへ行ったんでしょう・・・? さっきは自室に居なかったですし。ここに居ると思ったんだけどなぁ)

とりあえず、ドリンクを机の上に置いて、少し待ってみることにした。

ドリンクがひんやりと冷えているので、ずっと持ってると手が冷たくて辛かったのだ。

そこへ榛名がやってくる。

榛名「あ。こちらでしたか比叡姉様」

比叡「榛名?」

榛名「金剛姉様がお茶会をやると言うので探しましたよ」

比叡「お姉さまが? 分かった! すぐ行く! 今行く!」

比叡(入れ違っちゃったのかしら。でもお姉さまとお茶会!! お茶会!!)

比叡はうっかり、ドリンクの存在を忘れて出て行った。

そこへ提督が戻ってきた。

提督「あれ? 瑞鳳? どこ行ったんだろう?」

机の上にドリンクが置いてある。

提督「栄養ドリンクか?」

恐らく、瑞鳳が用意してくれたんだろう。

本当に心配をかけてしまったようだ。

と提督は少し申し訳なく思った。

提督「ありがとう。ありがたく頂くよ」

一気に飲み干す。

提督「よく冷えている。変わった味だな・・・よし! 気合いれて取り掛かるか!」

しかし、すぐに体に異変が生じた。

635: 2015/10/03(土) 00:37:28.21 ID:df4+p0BO0
提督(なんだ? 体があつい・・・?)

そこへ金剛がやってくる。

金剛「ヘーイ! 提督ゥ!! お茶会やるけど一緒に・・・提督ゥ!?」

提督「金剛か・・・?」

フラついて倒れそうな提督を金剛が駆け寄り、寄り添う。

金剛「どうしました!? 大丈夫ですか!? 原因は!? 比叡のカレー? 磯風の謎食? 早く医務室へ・・・」

提督の体に金剛が触れたことで、更なる異変が生じた。

提督と金剛は不思議な体験をした。

自分の体から自分が引き離されるような、今まで経験したことがないような感覚。

気が付くと自分が目の前に居る。

金剛(提督)「え? なんで俺が・・・」

提督(金剛)「え? なんで私が・・・」

2人「「そこに居る(です!?)んだ!?」」

提督は気が付くと金剛になっており、逆に金剛は提督になっていた。

提督「・・・これは夢ですか?」

金剛「どういうことだ? 体が・・・入れ替わっている?」

ガチャ

瑞鳳「提督! フルーツジュースを作って来たよ! これで元気だし・・・」

金剛「瑞鳳か。わざわざスマンな。色々と気を使わせたみたいで」

提督「それよりコレどうするんですか!?」

瑞鳳「え? なんか2人とも様子が変ですけど・・・提督が金剛さんみたいな口調で・・・」

金剛「よく分からんが、どうやら中身が入れ替わってしまったようだ・・・」

提督「こんなことするのは一人しか居ないデース!! 明石ィィィィ!!!!!!」

瑞鳳「ど・・・どうなってるの・・・」

金剛「俺にもわからん・・・」

瑞鳳(このジュースはどっちに渡せばいいの!?)

すぐに明石が呼び出された。

651: 2015/10/06(火) 01:25:19.69 ID:FbDlMPPN0
呼び出された明石は正座をさせられて、事態の説明をしていた。

明石「まぁ結論だけ言わせて頂きますと、中身を入れ替える薬なんですよソレ」

金剛「中身を入れ替える? ・・・まさか元には戻らないのか?」

明石「いえ、大体半日くらいで効き目は切れて、元に戻るのでご安心ください」(・・・多分)

提督「なんで、そんなモン作ったデーーーース!!」

明石「え・・・とそれはですね・・・」

金剛「それは?」

明石「新しい修復剤を作る過程で偶然、出来てしまったんですが・・・誰かが間違って持ち出してしまったみたいですねスイマセン」

金剛「そういうことは事前に報告し、厳重に管理してくれないと困るな。何度も言っているだろう」

明石「すいません! 本当に申し訳ないです!」

明石(面倒ごとになりそうだから、比叡さんの依頼だってのは黙っておきましょうかね)

明石(比叡さん? 貸し一つですよ? 金剛さんの艤装はシールド、榛名さんがアーム、霧島さんはシザー・・・)

明石(さらなる改造を断わった比叡さんの艤装も魔改造させて貰いますからね!!)

明石(どう改造しようかなぁ・・・技術者としての血が騒ぐ!! 翼・・・ウィングとかどうでしょうかね・・・)

提督「まったく!! 何時もロクなもん作らない人ですね!!」

明石「本当にすいません」(貴女の妹さんの依頼ですけどね!!)

金剛「まぁ半日で効果は切れるんだろ?」

明石「はい。多分。元に戻りますので」

金剛「・・・多分?」

明石「いえ、確実に!!」

金剛「ならまぁいいか。とりあえず騒ぎになるとめんどうだし、皆を不安にさせたくない。周囲には秘匿して乗り切るか」

提督(・・・想定外のことで驚きましたけど・・・これは・・・)ゴクリ

金剛(提督の体)は色々妄想を膨らませてニヤニヤしていた。

瑞鳳(提督とイチャイチャ仕事する予定だったけど、この場合は金剛さんとイチャイチャすることになるのかな・・・)

明石「本当にご迷惑おかけしました」

提督「でしたら、提督、私の部屋に行ってください。お茶会の途中でしたので」

金剛「しかし、そうなると残りの仕事を金剛に押し付けることになるぞ」

提督「構いませんよ。提督は働きすぎデース。今日一日休んでください」

瑞鳳「う~ 少し複雑ですけど、その意見には賛成です。金剛さんと仕事してますから」

652: 2015/10/06(火) 01:25:47.86 ID:FbDlMPPN0
金剛「しかし・・・」

提督「これ以上、私が不在だと妹達がここに来るので早く行ってください。仕事は引き継ぎますから」

金剛「すまん。仕事を任せてしまって」

提督「いいですよ」(妻として当然ですしね・・・)

金剛(中身提督)は金剛の部屋に向かった。

提督「じゃあズホ、仕事やりましょうか」

瑞鳳「そうですねー なんでよりによって今日なんでしょうね。もうっ」

提督「まぁまぁ。体は提督ですし・・・こんなことも出来ますけど?」ドンッ

瑞鳳「ひゃう!? これは・・・」

提督「所謂、壁ドンって奴ですねー」

瑞鳳(中身が金剛さんだって分かってるのに・・・ドキドキすりゅぅ・・・///)

提督「ああ!! もう!!! これを私にやって欲しいデース!!」

瑞鳳「あの・・・リクエストしてもいいですか?」

提督「何をです?」

瑞鳳「瑞鳳、愛してるって言って貰えませんか!? その声で!! その姿で!!!」

提督「・・・その右手にあるのは何です?」

瑞鳳「ボイスレコーダーです!!」

提督「考えることは同じですねー 私もそれを真っ先に考えたでーす」

瑞鳳「ですよね!!」

2人は言って貰いたいセリフを言いまくって録音していた。

仕事を放棄するワケには行かないので、抜群のコンビネーションで

4時間は掛かる書類仕事を1時間もしないウチに終わらせた。

これは鎮守府始まって以来の最高記録だった。

653: 2015/10/06(火) 01:26:25.50 ID:FbDlMPPN0
金剛の部屋

榛名「お姉さま。遅かったですね」

金剛「いや、スマン。部屋はここで合ってたか」

霧島「ご自分の部屋を忘れたのですか!?」

金剛「まぁそれはさておき、なんだったか? 茶会?とやらをやると聞いたが・・・」

榛名「いや、やるって言ったのお姉様じゃないですか・・・」

霧島「なんかさっきから様子がおかしいですよ?」

金剛(・・・参った。金剛らしい口調・・・口調・・・)

榛名「お姉さま?」

金剛「なんでもないデスー」(こうだったか?)

霧島(やっぱり何か・・・おかしい)

金剛「そんなことより茶会をやるか! 何からすればいい? いや、デス」

榛名「・・・・・・」

金剛(不味いな・・・怪しまれている)

比叡(あれ? そう言えば私・・・ドリンクを執務室に・・・まさか・・・)

榛名(・・・違う。これはお姉さまじゃない)

榛名(愛憎合わせた何時もの感覚じゃない。とても惹きつけられる感覚・・・内面から来る、私の大好きな人の・・・)

榛名(金剛姉様から・・・提督の『匂い』がする・・・)

榛名(どういう理由かは分かりませんけど・・・)

榛名「アナタは・・・お姉さまじゃ・・・ないですよね?」

少し遠慮しがちに榛名が尋ねるものだから、提督は一瞬呆けてしまった。

金剛「!!!」

金剛(何故・・・? 何故分かった?)

榛名「もしや・・・提督ですか?」

霧島「え? 榛名? 何を?」

榛名「霧島、外見じゃなくて中を、気配をよんで見て」

霧島「え?・・・あれ・・・? 提督・・・? この気配は提督・・・? なんで?」

比叡(やっぱり・・・あのドリンクを司令に飲まれた? 私の馬鹿!! なんで忘れてくるのよ!!)

金剛(え? なんだ気配って・・・分かるものなのか?)

654: 2015/10/06(火) 01:27:15.73 ID:FbDlMPPN0
金剛(金剛の体に移ってる以上は姉妹を誤魔化すのは無理そうだ)

ならば、順を追って話した方がいいかと提督は判断した。

霧島「そんなことが・・・」

比叡(なんで明石さんはウソを? 私を庇った? 後で謝らないと・・・貸し作っちゃったな)

この貸しのせいで比叡の艤装もトンデモ改造を受けるハメになるのだった。

榛名「では、周囲を混乱させないようにお姉さまとして接しますね?」

金剛「そうしてくれると助かる。あまり鎮守府内を混乱させたくないしな」

霧島「私達には最初に相談して欲しかったです」

金剛「そうだな。金剛の体なんだから、姉妹である君達には話しておくべきだった」

比叡「いや、ホントすいません司令」

金剛「なんで比叡が謝るんだ?」

榛名「では何時も通りのお茶会をやりましょう」ギュッ

榛名は金剛の座るソファーに金剛に寄り添うように座り、腕を絡めてきた。

金剛「榛名? なんで腕を絡めて来るんだ?」

榛名「お茶会は何時もこうですよ?」ハイライトオフ

金剛「そうなのか。姉妹の仲が良いのは良いことだな」

霧島(そんなことしたことない癖に・・・)

霧島(しかし、榛名の一人勝ちは避けたいわね。この娘は独占欲が強いから・・・)

霧島(私の計画に支障が・・・)

霧島「そうです。私達姉妹は仲良しですから」ギュッ

榛名「っ・・・!」

霧島は反対側に座り、金剛に腕を絡めた。金剛は榛名と霧島に挟まれる形になった。

榛名は金剛に見えないように霧島を睨む。

声を出さず、口の動きだけで霧島に文句を言う

榛名『ど う い う つ も り で す か』

霧島も同様の方法で『わ か る で し ょ』と返す。

互いに相手の口の動きを呼んでの会話。読唇術と言われる技法である。

金剛「本当に仲いいんだな。何時もこんな感じなのか?」

榛名・霧島「「はい」」ハイライトオフ

比叡(しまった・・・出遅れた)

比叡(考えて見れば・・・お姉さまの体に提督・・・若干のズレはありますが・・・計画通りじゃないですか!!)

比叡「私も仲間に入れてくださいよ!」

金剛「うわっ!? 急に飛びつくな!!」

4人ともソファーごと倒れたけど、怒る気にもなれず皆で笑った。

しかし、金剛(提督)を覗く3人の笑いは表面上のモノで、内面では激しく姉妹同士で牽制しあっていた。

655: 2015/10/06(火) 01:27:54.73 ID:FbDlMPPN0
一方で執務室では遠征から帰還した春雨が報告に来ていた。

提督「ごくろうでした」

春雨「ありがとうございます!」

提督「では十分に休息を取ってくださーい。もう行って大丈夫ですよー」

春雨「・・・え?」

提督(あまり長くしゃべるとボロが出そうでーす)

瑞鳳(もう口調でボロ出てるよ・・・)

春雨「・・・・・・」

提督「どうしました?」

春雨「・・・貴方は・・・誰ですか」

提督「・・・え?」

春雨「司令官は、私が遠征から帰還すると喜んでくれます」

春雨「よく頑張ったねって褒めてくれます」

春雨「えらいぞって撫でてくれます」

春雨「自分の事のように喜んで、わざわざしゃがんで目線まで合わせてくれて・・・」

春雨「それも毎回毎回・・・」

春雨「その度に思うんです。私はこの人の鎮守府に来れて良かった、私の上官が司令官で良かったって」

春雨「すごい大事にしてくれて、何時も見ていてくれている・・・」

春雨「その司令官がそんな『ごくろうさま』だけで執務室から早々に追い出そうとするのは変です。おかしいです。ありえないです。」

春雨「ありえない ありえない ありえない ありえない ありえない・・・」

何度も何度も『ありえない』と口にする。

春雨「司令官の言葉はもっと温かい、もっと優しい、もっと・・・もっと・・・」

春雨「司令官はあんな冷たい言い方はしない!!!」

春雨「貴方は・・・誰なんですか・・・?」ハイライトオフ

提督「え・・・と・・・」

瑞鳳(不味い・・・バレた?)

ガチャ

時雨「どうしたんだい? ずいぶん時間が掛かってるみたいだけど」

春雨「・・・司令官が司令官じゃないんです」

時雨「は?」

怪訝そうな顔をして提督を見た時雨は目を細めた。

時雨「本当だね。君は・・・誰なんだい?」

提督「み・・・見ての通り提督ですよ・・・」

656: 2015/10/06(火) 01:29:11.09 ID:FbDlMPPN0
時雨「嫌だなぁ・・・僕と提督はケッコンしてるんだよ? 夫のことを間違えるハズないじゃないか」ハイライトオフ

無表情で時雨は指にハメている指輪を見せる。

時雨「僕と提督はね、互いに分かるんだ。相手のことを。だってそうだろう? 心から愛し合ってるんだから」

時雨「魂と魂で感じあうんだ。だから分かるんだ。君は違う。間違い。提督じゃない。誰なのかな?」

時雨「・・・問い詰められて心拍数が上がってるね。分かるよ。聞こえるよ鼓動が・・・」

時雨「でも不思議だ。体の匂い、心臓の音、それは提督そのものなのに・・・」

春雨「はい、まるで『中身』だけが別物みたいです」

執務室のドアに鍵をかける。

瑞鳳「なんで鍵をしめるの!?」

春雨「逃走しないようにです」

時雨「・・・もう一度聞くよ?」ハイライトオフ

春雨「貴方は誰なんです?」ハイライトオフ

提督「ひっ!?」

提督(金剛)は結局洗いざらい白状した。

時雨「なんだそういう事か。先に言って欲しかったかな」

春雨「びっくりしちゃいました! スパイが紛れ込んでるかと・・・」

瑞鳳(仮にスパイだとしたら、ウチにスパイに来た時点でその人の末路は・・・)

時雨「そうだね。手を汚す前に冷静に確認を取っておいて良かった。取り返しが付く前で良かったよ」

提督「・・・冷静? あれで?」

時雨「そんな睨まないでよ金剛。中身がキミでも提督に睨まれてる感じで変な気分になるじゃないか///」

春雨「それに、金剛さんが私達の立場なら同じことをしたんじゃないでしょうか」

提督「それは否定できませんネ」ハイライトオフ

瑞鳳(それを言われると私もだし・・・)ハイライトオフ

時雨「いっそ所属している艦娘には説明した方がいいと思う」

時雨「些細な行き違いから、鎮守府内で戦闘に発展する可能性もあると思う」

時雨「そして、それは何時起きても不思議じゃない」

瑞鳳「・・・無いって言えないのが恐い所ですね」

提督「ですねー 一度提督を呼んで相談しますね」

結局、事件発生から30分で全員にバレた。

南方(息子に打ち明けるか悩んでる間に次から次へと悩みの種が増えていく・・・)

泊地水鬼「ねぇねぇ、提督がクッキーくれた!」

南方「そう。良かったわね」

泊地水鬼「疑問なんだけど、もしも、私と提督が結婚したらさ、南方棲鬼は私の義理の母になるの?」

南方「・・・は?」

泊地水鬼「A級就職って奴をすると、働かなくて済むって初雪から聞いたんだ」

南方「・・・永久就職ね。ていうか元主婦舐めないでくれない? 殴るわよ」ボコッ

泊地水鬼「もう殴ってる!! 痛い!! 痛い!! 二度もぶった!!」

南方棲鬼の胃薬の使用量がまた少しだけ上がった。

色々限界が近かった。

669: 2015/10/09(金) 01:52:38.89 ID:ZsqNZigv0
金剛「すまんな。皆を俺の我侭につき合わせてしまって・・・」

翔鶴「いえ、全然!! 提督と海に出れるなんて・・・夢見たいです!!!」

能代「でも危なくないですか? 出撃なんて・・・」

金剛「出撃というわけではないんだがな・・・」

提督は艤装を纏い、海に出ることに興味があった。

艦娘ではない自分は、当然ではあるが艤装を纏えない。

普段は司令室や護衛艦の中から指揮を執るだけしか出来ない。

だが、不意の事故とは言え、今は金剛の体になっており、今ならば海に出ることも出来るのでは?と興味が沸いた。

人では到底体験できない世界。既に成人しているが忘れかけていた少年のような心が、その興味を後押しした。

金剛は快く承諾してくれて今に至る。

金剛(鎮守府正面の海域だから危険は殆どないだろう。借り物の体だ。怪我をしないように気をつけよう)

今居る場所は鎮守府の港。

既に同行する5人の艦娘は艤装を展開して海上に浮いている。

誰か手の空いてる者で、一緒に来てくれないか?と言ったところ、少し待つように言われ、数分後に5人がやってきた。

提督は知らなかったが、誰が同行するかで多少の騒動になり、この5人はジャンケンと呼ばれる真剣勝負を見事勝ち抜いた者達だった。

伊勢「まずは艤装を展開して、海面に浮くとこから始めましょうか」

能代「でも艤装の展開なんてどう教えればいいんでしょう?」

卯月「こう・・・うぉーって感じぴょん?」

弥生「卯月、分かりづらい」

金剛(艤装を展開か・・・ふむ・・・イメージだと・・・)

翔鶴「最初は難しいかもしれませんね」

金剛「こうか?」

青白い粒子と共に艤装が出現した。

全員「「「「「!!?」」」」」

金剛「あれ? 出来た・・・?」

能代「え? 一発で・・・ですか?」

伊勢「へぇ・・・でも教える手間が省けたかな」

金剛「・・・なんか重さを感じないな。もっと、ずっしり来る印象があったが」

翔鶴「特に艤装は重くは感じないですよ」

能代「体の一部って感じですかね?」

金剛「海面に浮くにはどうすればいいんだ?」

伊勢「どうと言われても普通に立って歩く延長かな?」

670: 2015/10/09(金) 01:53:12.48 ID:ZsqNZigv0
能代「説明難しいですよね」

卯月「ぴょんって乗ってスィーって感じで滑るぴょん」

弥生「だから分かりづらいって」

金剛「まぁやってみるか・・・」

艦娘達は提督が何時転んでも支えられるように臨戦態勢をとる。

金剛「こうか。すごいな! 本当に浮いているぞ!」

嬉しそうにはしゃぐ提督。

能代「え? そんなにアッサリ・・・」

翔鶴「提督、流石です。私達の間に生まれる子はきっと将来のエースになるでしょうね 娘2人に息子一人・・・5人家族が理想ですかね」ブツブツ

卯月「まーた始まったぴょん・・・先に身篭るのはうーちゃんぴょん」ハイライトオフ

金剛「少し速度を出して見るか・・・」

提督は新しい玩具を手に入れた子供のように楽しそうに海面を滑り、

今日始めて艤装を使い、海に出た者とは思えない動きを見せた。

付きそった艦娘達はそれを見て笑っていた。

純粋に嬉しかったのだ。何時も何時も難しそうな顔で書類と睨めっこしては、

夜遅くまで仕事をしている。最近は特に疲れている様子だった。

この事態が明石の発明品によるアクシデントだとしても、提督が楽しそうにしている。

良いリフレッシュになっている。それが嬉しかった。

伊勢「しかし、体は金剛のモノとは言え・・・こうも早く使いこなせるモノかな?」

能代「凄いですよね。まるで最初から『艦娘』であったみたいに完全に制御して見せてますし」

弥生「お母さんが艦娘だったからでしょうか?」

伊勢「それだけであそこまで? 純粋な艦娘と変わらないように見えるけど」

翔鶴「でも、提督ですし・・・何をやっても、そつなくやりそうな感じじゃないですか?」

卯月「しれーかんは確かにそういうイメージあるぴょん」

伊勢「言われるとそうなんだけどさ・・・多分、何をやるにしても、弱さを見せたがらないんだよね。陰ながら努力するタイプ?」

能代「男性のプライドって奴ですかね?」

伊勢「普段の言動から察するに、私達のこと大事にしてるから、あんまり心配とかさせたくないんじゃないかな」

弥生「でも・・・少しくらい弱音とか吐いて欲しいですよね」

翔鶴「それも『自分』だけに弱音を打ち明けてくれるとキュンって来ますよね!!!」

全員「「「「「分かる」」」」」

興奮して顔を紅潮させて叫ぶ翔鶴に全員が即座に答えた。

息がぴったりだった。

671: 2015/10/09(金) 01:53:43.64 ID:ZsqNZigv0
女子同士がそんな会話が繰り広げられているとは知らず、提督は海を翔る。

金剛「すごいな・・・艦娘の力って奴は・・・」

体中から力が沸いて来る感覚。

金剛(こんな華奢な体に、ここまでの力が宿るなんて・・・)

今までは、書類の上でしか知らなかった事だった。

金剛(でも、これで艦娘の視点からも作戦を立てやすくなるな)

その時である、鎮守府海域の沖合いを哨戒していた第2艦隊から緊急の通信が入る。

天龍『すまん!! 緊急事態だ。やけに強い深海棲艦が1隻、こちらの艦隊を抜けて鎮守府に向かっちまった!!』

伊勢「なんですって!? 艦種は分かる?」

天龍『恐らく、レ級だと思うんだが・・・すまねぇ、突破された!糞!!』

伊勢「恐らく? 新種ってこと?」

天龍『分からん。ただ、空気がピリピリしてやがった。あれは普通じゃねーぞ・・・ぐっ!?』

伊勢「天龍!?」

天龍『こっちは奴が連れてた艦隊5隻と交戦中だ! すぐブッ潰して合流する! すぐ迎撃準備に・・・』

そこで通信が途絶えた。

伊勢(これは・・・電波を妨害されている・・・?)

能代「提督!! 緊急事態です!!」

金剛「どうした?」

能代「たった今、第二艦隊の天龍から緊急通信が・・・」

金剛「天龍? 今日は遠征を終えた後に哨戒任務に出てたな・・・なんと?」

能代「現在、敵と交戦中。その内の一隻が突破してこちらに向かってるようです」

金剛「何!? 鎮守府に防衛戦の準備をするように言ってくれ。申し訳ないが、艦娘の通信装備の使い方がまだ良く分からん」

伊勢「それが通信が通じないのよ。恐らく・・・」

金剛「電波を妨害されている? 深海棲艦の仕業か?」

672: 2015/10/09(金) 01:54:29.25 ID:ZsqNZigv0
翔鶴「すぐに連絡用に艦載機を飛ばしますね」

金剛「助かる」

弥生「司令官は下がって」

卯月「そうぴょん。戦闘になると危険ぴょん」

伊勢「2人の言うとおり。ここは私達に任せて鎮守府に戻ってください」

確かにそうだ。情けないが戦闘に参加しても足を引っ張るだけだ。

自分がここに居れば彼女達が不利になる。

それに金剛の体に傷をつけるわけにも行かない。

金剛「すまん。ここは任せる!!」

弥生「まって・・・海中に・・・金属反応が・・・」

その時、爆音と共に水しぶきが上がり、海中からそれは飛び出した。

翔鶴「海中から!?」

レ級「いけぇぇ!!!」

飛び出ると同時に艦載機を発進、攻撃を仕掛けてきた。

皆、戦い慣れていることもあり被弾することなく、なんとか交わすことが出来た。 

伊勢「危なっ!!?」

レ級「見つけた!! ここがあの鎮守府でしょ!! やった!! やっとたどり着いた!!」

卯月「・・・レ級」

伊勢「まーためんどくさいのに突破されたね」

翔鶴「提督!! 早く鎮守府へ!!」

レ級「テートク? あれ? 女? 提督って女? 男じゃなく?」

尾「どうみても艦娘ですね。金剛型の金剛のようですが・・・」

弥生「艤装が喋ってる・・・?」

レ級「どっちでもいいや。テートクなんでしょ? 貴方?貴女?どっちでもいいか。ボクはキミを頃しに来たんだ」

その発言で艦娘達は臨戦態勢を取る。

金剛「すごい殺気だ。これを抜けるのは・・・キツそうだ・・・」

レ級「さぁ戦おうよ。その為に来たんだから」

金剛「一応聞くが、話し合いではなんとかならないか? 言葉は通じるだろう?」

レ級「なるわけないじゃん。どちらかが氏んだらゲームはお終い。シンプルでしょ? さぁ殺ろうよ! 早くさぁ!!!」

提督と、本来は提督の妹として生まれてくるハズだった存在の成れの果てのレ級。

互いに兄妹と知らないまま、両者は激突することになった。

673: 2015/10/09(金) 01:57:34.55 ID:ZsqNZigv0
投下完了です。
何時も感想ありがとうございます。
感想いただけると本当にヤル気になるから困る・・・いや困らない

トイレネタはボツ案であったんですけど
見たい人居るなら入れてみようかな・・・

次回は日曜日夜くらいに更新予定です。
おやすみなさい。

675: 2015/10/09(金) 03:14:12.23 ID:FGsFUdFno

次に加入する新メンバーはレ級ですか
闇堕ちした雷に見えてきた


引用: 提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」 その2