350: 2012/05/02(水) 15:43:28.91 ID:4Av1vDTc0
木山「(詠矢君?…見ない顔だな…)」

351: 2012/05/02(水) 15:44:14.03 ID:4Av1vDTc0
・禁書のSSです
・オリキャラメインです。勝手に設定した能力者が出ます。
・今回は勝手に設定した敵キャラが出ます。
・原作は読んでません。細かい設定はよくわかりません。
・アニメは全話見ました。
・キャラが崩壊してるかも知れませんがご容赦を

前回:【禁書目録】絶対反論(マジレス)こと詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)は落ちていた。

352: 2012/05/02(水) 15:48:54.66 ID:4Av1vDTc0
(とある大学 研究室)

木山「…ふう」

木山春生は、ノートパソコンのキーボードを叩いていた指を止める。

木山「今日はこんなところか…」

木山「最近は根をつめすぎているからな…。たまには早く上がるとしよう…」

彼女が荷物をまとめ始めようとしたとき、扉を軽くノックする音が響いた。

木山「はい…どうぞ…」

??「失礼します…(ガチャ)」

木山「ん?…君は…?」

詠矢「高等部1年…詠矢空希、ってもんです。はじめまして木山先生」

木山「(詠矢君?…見ない顔だな…)」

木山「もともと人の顔を覚えるのは得意でないのだが…」

木山「君の顔には全く見覚えがない。正真正銘の初対面のようだな」

詠矢「そうですね…。お会いするのは今日が初めてです」

詠矢「実は先ほどの模擬講義、受講させて頂きまして…」

木山「模擬…ああ、確か今日はオープンキャンパスだったな…」

詠矢「はい…、以前、図書館で学園に関する資料を閲覧しているときに…」

詠矢「先生の論文を読ませて頂きまして…」

木山「ほう…私の論文をね…。まだ高校生だというのに大したものだな…」

詠矢「いえいえ、『読んだ』っていうだけで、内容は殆ど理解できなかったんですけど…」

詠矢「ただ、先生の専攻している分野に、とても興味がありまして…」
創約 とある魔術の禁書目録(10) (電撃文庫)

349: 2012/05/02(水) 15:41:55.73 ID:4Av1vDTc0
こんにちわ。
続きが書きあがりましたので投下します。
以下より
・タイトル
・注釈
・本編
の順で投下します。

それでは、始めさせて頂きます。

353: 2012/05/02(水) 15:49:45.24 ID:4Av1vDTc0
詠矢「今回の講義に参加させて頂きました」

木山「私の専攻?大脳生理学にかね…?」

詠矢「あ、それもなんですけど…やっぱり…」

木山「…なるほど…何のことかはおおよそわかった…」

詠矢「えー、まあ…AIM拡散力場についてなんですが…」

木山「やはりそうか…アレに興味を持つ者は多いからな…」

木山「どんな風に理解してるかは知らないが」

木山「能力者が無自覚に放出している微弱な力場…」

木山「AIM拡散力場とは、それ以上でもそれ以下でもないぞ?」

詠矢「ええ、わかってますよ…『基本』はそうですよね?」

詠矢「能力者が多数存在ずるこの学園都市では…」

詠矢「その微弱な力場が積層し、強大な力を生む可能性もあると…」

詠矢「先生の論文にはそうも書かれていました」

木山「…まったく…、君のような手合いは多くてね…」

木山「あれの事を、膨大で無尽蔵なエネルギー源と誤解しているようだが…」

木山「…力の積層には、能力者間で精巧なネットワークを築く必要がある」

木山「強大な力を持つ可能性があると言うだけで…」

木山「そう簡単なものではないぞ?」

詠矢「…いえ」

詠矢「実際に…それが実行されたことが有る以上…」

詠矢「『可能性』だけでは済まされないのではないでしょうか?」

木山「…なに?」

354: 2012/05/02(水) 15:50:37.95 ID:4Av1vDTc0
木山「……何を知っている…」

詠矢「幻想御手(レベルアッパー)事件…。都市伝説としては結構有名な話ですよね?」

木山「質問しているのは私の方だ…。君のブラフを含んだ台詞は気に入らないな」

木山「知っていることを話したまえ」

詠矢「…」

詠矢「これは失礼しました…」

詠矢「ちょいと、友人に恵まれていまして」

詠矢「都市伝説を裏付けるぐらいの情報は、結構入ってくるんですよね…」

詠矢「当の事件の顛末に関しては、一通り聞いています」

詠矢「誰が何のために起こしたのか…ってことも含めてです」

木山「ほう…そこまで知っているのか」

木山「で…その首謀者である私に、何の用だね?」

木山「そろそろ本題に入ってもらえると助かるが…」

詠矢「…わかりました…では早速」

詠矢「木山先生に、ご意見を伺いたいことがあります」

詠矢「通常では制御することが難しいAIM拡散力場ですが…」

詠矢「能力とは別の手段で干渉し、制御することは可能でしょうか?」

木山「別の方法?」

木山「能力によって生み出された力に…他のどんな方法で干渉しようというのかね?」

詠矢「…魔術ですよ」

木山「…魔術…?」

355: 2012/05/02(水) 15:51:24.61 ID:4Av1vDTc0
詠矢「…先日、偶然にもその力に遭遇しました」

詠矢「科学とは全く原理の違う力です」

詠矢「あらゆる物理法則を無視して、現象だけを引き起こすことが出来るようです」

詠矢「そんな力が、AIM拡散力場に干渉するこが出来たとしたら」

詠矢「脅威ではないでしょうか?」

木山「…また、唐突な話の展開だな」

木山「あいにく魔術には専門外なのでわからないがね…」

木山「まず、魔術の存在を認めろというのが、私には無理な話だ」

木山「ただ…話によれは、能力と魔術は相容れない力だと言われている」

木山「普通に考えれば、それが『可能だ』という結論には至らないはずだ」

詠矢「やはりそうですか…」

詠矢「ですが…一つだけ…希薄ですが根拠があります」

木山「…聞かせてくれるかね?」

詠矢「…能力と魔術…、双方に対抗出来る『能力』があるとすれば…どうでしょう?」

詠矢「それも、二つも…です」

木山「…」

詠矢「双方が全く異質な力であれば…そのような能力は存在しないのでは?…と思いまして」

木山「…」

356: 2012/05/02(水) 15:52:26.11 ID:4Av1vDTc0
木山「あくまで噂のレベルだが…」

木山「魔術と能力、その双方を打ち消す能力があるという話は…聞いたことがあるな」

木山「それが実在するということかね?」

詠矢「ええ…その存在をこの目で確認しました…」

詠矢「その能力が、二つうちの一つで…」

詠矢「もう一つは…『論証によって相手の能力を変質する力』…」

詠矢「俺…、じゃなくて…」

詠矢「私が持っている能力です」

木山「君が…か」

詠矢「はい…。残念ながら、今ここでご披露することはできないですけどね」

詠矢「この二つの能力は、能力にも魔術にも効果を発揮します」

木山「…それは興味深いな」

詠矢「いかがでしょう…私の知っている情報と、考えたことはこれで全てです」

詠矢「いきなり全てを信じてくださいというのは無理でしょうけど」

詠矢「今言ったことが全て真実であると仮定した場合の」

詠矢「先生のご意見をお伺いしたいです…」

木山「…ふむ」

木山「前提が仮定だらけでは、科学的な論考は不可能だ」

木山「ただ、論考ではなく、あくまで私の私的な感想であれば…答えられるが」

木山「それでもいいかね?」

詠矢「ええ、もちろんです」

357: 2012/05/02(水) 15:53:26.74 ID:4Av1vDTc0
木山「…いいだろう」

木山「科学と魔術、双方に対抗する能力が存在するというだけでは」

木山「お互いの相違性を否定することは難しいだろう」

木山「だが、定義に穴を開ける一つの可能性であることは…事実だ」

木山「AIM拡散力場に対する、魔術による干渉…」

木山「通常ならありえないその行為だが…、君が得た情報を加味すれば…」

木山「わずかではあるが…可能性は生まれるかも知れないな…」

詠矢「…ありがとうございます」

詠矢「これは、私がたた妄想したことでして…ぜひ専門家の意見をお聞きしたかったのですよ」

木山「変わった男だな…君は」

木山「妄想の裏づけを取ってどうしようというのだ?」

詠矢「…もし、この干渉が実際に起こせるなら。結構問題だと思うんですよね」

詠矢「魔術側と学園都市は対立関係にあるようですし…」

詠矢「AIM拡散力場は、格好の攻撃対象になるでしょう」

詠矢「出来る可能性があるなら、事前に対策を考えておく必要があると…思いましてね」

木山「対策?…何か手があるというのかね?」

詠矢「いえいえ、それはこれから考えるんですけど…」

詠矢「とにかく、貴重なご意見、ありがとうございました」

木山「では…、私からも質問していいかな?」

詠矢「あ…はい。いいですよ?」

358: 2012/05/02(水) 15:54:12.31 ID:4Av1vDTc0
木山「私は、色々なことに関わり、巻き込まれるうち、一種の人間不信になっているのかもしれんが…」

木山「君のような人間を見ると、どうしても他意を感じてしまうのだ」

木山「詠矢君…君の意図は何だね?」

詠矢「…」

詠矢「私は…ですね。ここに来てまだ日が浅いんですけど…」

詠矢「気に入っちゃいましてね、この学園都市が」

詠矢「友達も沢山出来ましたし、結構…守りたいんですよ。ここを」

詠矢「そのために…微力ながら何か出来ないかなって思いまして」

詠矢「それだけですよ…ええ、マジでそんだけ…です」

木山「…うむ」

木山「…真実だと仮定して聞いておくよ」

詠矢「ありがとうございます」

詠矢「それでは…そろそろ失礼します」

木山「ああ…」

詠矢「…」

木山「…」

詠矢「…あっ…」

木山「どうしたね?」

詠矢「先生…あと一つだけ…質問いいですか?」

359: 2012/05/02(水) 15:55:08.39 ID:4Av1vDTc0
(とあるコンビニ)

詠矢「(ウィーン)よっと…上条サンお待たせー」

詠矢「交代時間だぜっと…お?」

御坂「ちょっと、アンタおつり間違えてるじゃないの!」

上条「え?っと…あれ?」

上条「あ、これは申し訳ありませんお客様…」

御坂「なにやってんのよ!その程度のこと出来ないわけ!?」

上条「…まことに申し訳ありませんでした…こちらになります…」

御坂「…何よ…その不満そうな顔は…」

上条「いえいえ…何も…」

御坂「…(ジロッ)」

上条「…(ムスッ)」

御坂「…」

上条「…」

御坂「…アンタが間違えたのが悪いんでしょうか!!」

上条「ちょっと間違えただけだろ!大騒ぎすんなよ!!」

詠矢「(あー、相変わらずやってるなあ…)」

詠矢「(っていうか、御坂サンも別の店行けばいいのに)」

詠矢「(わざわざケンカするために来るかなあ)」

詠矢「(まあ、そりゃまあアレなんだろうけどさ…)」

詠矢「(…そろそろ何とかしなきゃいかんかな?)」

詠矢「おーい!!上条サン!!」

360: 2012/05/02(水) 15:57:02.35 ID:4Av1vDTc0
上条「お、詠矢か!。そろそろ時間だよな?」

御坂「あ…アンタ…詠矢…」

詠矢「やあ御坂サン。最近良く会うねえ…」

詠矢「御贔屓にして頂いてどうもー」

上条「ん?…御坂、お前そんなしょっちゅう来てるのか?」

御坂「えっ!?って…その…帰り道だし…」

詠矢「そうなんかな?でもさあ…」

詠矢「俺が店番してるとすぐ帰っちまうよねえ…」

御坂「…っ!!」

上条「御坂…お前…」

詠矢「上条サンのシフト表でもお渡ししときましょうかね?」

御坂「いっ…いらないわよそんなもの!!」

詠矢「さいですかー」

御坂「…帰る!!」

御坂「…(ウィーン)」

詠矢「…なんだかねえ…」

上条「…あいつ…」

詠矢「どした、上条サン」

上条「俺が居るからこの店に来てるんだ…」

詠矢「お?…おう、そうみたいだな」

上条「わざわざ、俺に嫌がらせするために…」

上条「意外と根に持つタイプなんだな…」

詠矢「…」

詠矢「……」

詠矢「期待を裏切らないスペックだな…上条サン」

上条「…え?何の話だそりゃ…」

361: 2012/05/02(水) 15:58:01.39 ID:4Av1vDTc0
土御門「(ウィーン)どした…御坂が耳まで真っ赤にして出てきたけど…」

土御門「なんかあったのかにゃあ?」

詠矢「お、土御門サンおひさしーって…」

詠矢「って、まあ、いろいろと…ねえ?」

上条「いや、土御門、俺にもよくわからんのだか…」

土御門「…(チラッ)」

詠矢「…(コクコク)」

土御門「…やっぱりカミやんが原因かにゃあ…」

上条「な、なんだよ!何で俺が悪いんだよ!」

土御門「まあまあ、そんな話するために来たんじゃないんだぜい」

土御門「カミやん、ちょっと話があるんだが…時間いいかい?」

上条「ああ…もうバイトは終わりだから…いいぜ?」

詠矢「ん、そっか…じゃあとっとと支度するから行ってきなー」

土御門「…そうだ…な、ヨメやんにも聞いといてもらったほうがいいかな…」

詠矢「ん?俺もか?…土御門サンの話ってことは…いろいろヤバそうだねえ」

土御門「まあ、無理にとは言わんがねえ…」

詠矢「なに言ってんだよ、そんな面白そうな話、聞かねえ手はねえっての」

詠矢「是非にって言いたいとこだが…俺はこれからバイトでねえ…」

土御門「いいぜ、じゃあ夜に俺の部屋に集合だ…」

土御門「妹のお茶でもご馳走するぜい」

362: 2012/05/02(水) 15:58:34.74 ID:4Av1vDTc0
詠矢「おお、噂の属性数え役満の妹さんか…そりゃぜひお会いしたいな」

上条「って、いいのか詠矢。また自分から巻き込まれるようなこと…」

詠矢「巻き込まれる時は、知ってようがいまいが同じさ」

詠矢「どうせなら、知識得ておいたほうがいいさね」

上条「相変わらずだな…お前は…」

客「あのー…」

詠矢「あ、失礼しました!!」

上条「んじゃ、一旦解散だ…また夜にな」

363: 2012/05/02(水) 15:59:21.64 ID:4Av1vDTc0
(土御門の部屋 夜半)

舞夏「はーい、お茶だぞー」

土御門「すまんな。舞夏」

上条「お、ありがとな」

詠矢「ありがとさんっす。妹サン」

舞夏「なになに、お気になさらずー」

舞夏「でわ、ごゆっくりとですよー」

詠矢「ありゃーまあ、かわいい妹サンだねえ…」

土御門「褒めてくれるのはうれしいがねえ」

土御門「命が惜しかったら、それ以上の感情は持つなよ」

詠矢「…目が笑ってないんですけど…」

上条「言うことを聞いといたほうがいいぞ詠矢…」

上条「土御門は本気だ…」

詠矢「…えっと、あ、そうそう、話ってなんだ?土御門サン?」

土御門「…まあいい、本題に移ろうか…」

364: 2012/05/02(水) 16:00:17.69 ID:4Av1vDTc0
土御門「実はな…魔術側に不穏な動きがあってな」

土御門「ある術者が、一月ほど前から行方不明になっている…」

上条「行方不明…?」

土御門「ああ、そいつがどうやら、学園都市に向かったらしい…」

詠矢「魔術側っても、範囲が広いな…」

詠矢「また十字教絡みかい?」

土御門「いや…今回は別勢力だ…。俺の古巣からの情報でな…」

土御門「相手の名は『真々田 創(ママダ ツクル)』フリーの陰陽師だ…」

土御門「腕はかなり立つらしいんだが…どこの組織にも所属していないらしくてな」

土御門「詳細の情報はわかっていないんだ…」

上条「こっちに向かった理由とか目的とか、わかってないのか?」

土御門「ああ。そいつもわかってない…。そもそも、学園都市に来てるってのが、確定情報じゃないしな」

土御門「何も無ければそれでいいんだが…」

土御門「とりあえず、警戒はしといた方と思ってね」

詠矢「なるほどねえ…。ってまあ、警戒とか言っても」

詠矢「なんともしようがねえわけだが…」

上条「知らないよりはマシだって言ってたのはお前だろ?」

詠矢「あ、そうだったよな…失礼しました」

365: 2012/05/02(水) 16:00:58.72 ID:4Av1vDTc0
上条「話はわかった、土御門。俺のほうでも気をつけとく」

上条「何かあったら、お前に報告すればいいんだな?」

土御門「術者がカミやんに接触する可能性も高い」

土御門「よろしく頼むぜい」

土御門「ヨメやんもよろしくだぜい」

詠矢「ん、わかった…」

詠矢「俺みたいな新参者をアテにしてくれて嬉しいねえ」

詠矢「出来る限りのことはさせてもらうぜ」

土御門「よし、話は以上だ…時間とらせて悪いにゃあ…」

詠矢「いやいや、こんな美味いお茶を頂けるなら(ズズッ)」

詠矢「いつでも呼んでくだせえ」

上条「うん…ほんとに美味いよなこれ…(ズズッ)」

土御門「おお、そうか…さすが舞夏だな」

土御門「お代わり持ってこさせるぜい」

土御門「おーい、舞夏ー!」

舞夏「はい、なんでしょうかー」

詠矢「(しかし、このタイミングで魔術側の話か…)」

詠矢「(まさかとは思うが…まさか…ねえ)」

375: 2012/05/13(日) 23:02:38.54 ID:f65V1kYZ0
(ジャッジメント177支部)

詠矢「…」

白井「…なんですの」

白井「なんであなたがここにいるんですの!!」

詠矢「ん?いや、ちょっと遊びに来たんだけどさ…」

白井「ここは遊びに来るようなところではございません!!」

詠矢「えー、だって御坂サンだって遊びに来てるんじゃねえの」

御坂「えっ…?」

白井「いやそれは…その…」

白井「お姉さまは特別です!!」

詠矢「じゃあいいじゃん、俺も特別で」

白井「あなたとお姉さまが同じ扱いになるとでも?」

詠矢「そういう差別は良くないなあ…」

詠矢「それにさ、最初にここに来たときに、佐天サンが」

詠矢「思いっきり『遊びに来た』って言ってなかったけ?」

詠矢「ってことは、別に関係者以外立入り禁止でもないわけっしょ?」

白井「…」

白井「余計なこと覚えてますわね…」

376: 2012/05/13(日) 23:03:29.68 ID:f65V1kYZ0
詠矢「俺はつまんないことは覚えてるんだよ」

詠矢「まあいいじゃん。ここに来ると色々情報が手に入ってねえ」

詠矢「俺としてはかなりありがたいわけですよ」

詠矢「ま、ちょっと大目に見てくれない?」

詠矢「なんかあったときには、バッチリ協力させてもらうしさ」

白井「…」

白井「仕方ありません…確かに、前例が無いことではありませんし…」

初春「(…すごい…白井さんが折れた…)」

詠矢「やーどうもありがとさん」

詠矢「今度来るときはお菓子でも持ってくるよ」

白井「…ご自由に…」

詠矢「んじゃ、自由にするぜー」

詠矢「あ、そうそう、初春…サンだっけ?」

初春「あ、はい…なんですか?」

詠矢「パソコン、得意なんだってねえ…」

初春「ええ…まあ…そこそこ、使えますけど…何か?」

詠矢「いやねえ…ネットでいろいろと検索してるんだけどさあ…」

詠矢「イマイチ必要な情報が集まらなくてねえ…」

詠矢「なんか検索のコツとかあるのかなって」

377: 2012/05/13(日) 23:04:34.98 ID:f65V1kYZ0
初春「コツ…ですか?えっと、普通の検索サイト使っても、得られる情報はたいしたことないので…」

初春「巡回系のツールを使ってですね…(カタカタ)」

初春「あ、集めたい情報って、何かあります?」

詠矢「そうだなあ…例えば…」

詠矢「『魔術』とかかな…?」

初春「え?魔術…ですか?…まあ…調べられなくは…ないですけど…?」

白井「ちょっと詠矢さん…」

白井「来てもいいとは申し上げましたが…」

白井「職務を妨害していいとは言いませんでしたわよ?」

詠矢「…コイツは失礼…」

詠矢「そうだよなあ…ジャッジメントさんは忙しいよなあ」

詠矢「(やっぱ簡単に情報は手に入らんか…)」

詠矢「(ま、ここで手に入るような話なら、土御門サンのほうでも掴んでるだろ)」

詠矢「(俺はもう少し気長に構えるかね…)」

白井「初春、あなたも簡単に乗せられるんじゃありませんことよ?」

初春「え…はい、です…」

378: 2012/05/13(日) 23:06:03.24 ID:f65V1kYZ0
白井「まったく…(ピピピピピ)あら…携帯が…(ピッ)はい」

白井「あら…そちらはいかがですの?…ええ…はい…」

白井「わかりました…すぐに向かいますわ!」

白井「(ピッ)固法先輩からですわ。先ほど現場に向かった事件…」

白井「面倒なことになったみたいですわ。応援に行って参ります」

白井「初春…、バックアップよろしくですわ!」

初春「はい!!」

白井「お姉さま!しばしお待ちを。すぐ戻って参りますので」

御坂「あ、うん…気をつけて…ね?」

白井「それでは失礼…(シュン)」

詠矢「はー、ほんと忙しいんだねえ…」

御坂「アンタはヒマそうね?」

詠矢「まあ、そりゃな…」

詠矢「バイトが無ければ、特になんかあるって訳でもないんでね」

詠矢「んで、御坂サンもなんで残ってるのかな?」

379: 2012/05/13(日) 23:06:56.15 ID:f65V1kYZ0
御坂「黒子待ちよ…」

御坂「なんでも、新しいジェラートの店が出来たんで…」

御坂「一緒に行こうって誘われたの」

詠矢「へえ…今更だけど…普通だねえ…」

御坂「普通じゃいけない?」

詠矢「いやいや、普通が一番っしょ。やっぱ」

御坂「…」

詠矢「(…現在部屋には3人…。ただし一人は職務中)」

詠矢「(事実上二人っきりか…これは…チャンスじゃね?)」

詠矢「…」

詠矢「そういやあさあ…今更だけど」

詠矢「御坂サンってかわいいよなあ…」

御坂「…何よいきなり…」

詠矢「まあ、かわいいっていうよりキレイ系なのかな?」

御坂「なんか…アンタに言われると褒められてるような気がしないわね…」

詠矢「褒めてんじゃないよ。これは客観的事実だ」

御坂「(なんか引っかかるわね…何考えてるんだか…)」

380: 2012/05/13(日) 23:08:54.19 ID:f65V1kYZ0
詠矢「外見もいいし、頭もいいって聞くし、常盤台のお嬢様だろ?」

詠矢「オマケにレベル5の第三位だ」

詠矢「御坂サンて相当スペック高いよな?」

御坂「どうだかわからないけど…。もしそうだとして」

御坂「それがどうかしたの?」

詠矢「いやいや、だったらさあ…」

詠矢「彼氏とかいるのかなあって…」

御坂「…いないわよ。そんなの…」

詠矢「おお、そうなんか」

詠矢「やっぱりアレかね、スペック高すぎて男どもが寄り付かないのかねえ…?」

詠矢「でもさあ…こう、普通の女の子としてはさ…」

詠矢「気になる人、とかいるんじゃない?」

御坂「えっ?…いっ、いないわよ…そんなの…」

詠矢「(ここだけ律儀にどもるんだな…)」

381: 2012/05/13(日) 23:13:17.34 ID:f65V1kYZ0
詠矢「そんなもんかねえ…」

詠矢「やっぱ御坂サンレベルになると、望みも高いのかな?」

御坂「別にそういうわけじゃないけど…」

御坂「だいたい、なんでアンタにそんな話しなきゃいけないのよ!!」

詠矢「そりゃまあそうだねえ…」

詠矢「じゃあさあ、ちょっとテストしてみねえ?」

御坂「テスト?」

詠矢「そうそう、御坂サンがどれぐらい恋愛志向が強いかっていう」

詠矢「心理テストみたいないもんかな?」

御坂「また胡散臭い話ね…」

詠矢「相変わらず信用ねえなあ…」

御坂「アンタが言うと特に信憑性が無いわ」

詠矢「御坂サーン…俺の能力を忘れたわけじゃねえよな?」

御坂「え?でもアンタの能力って、能力にしか効果がないんでしょ?」

詠矢「うん、それはそうなんだけどね…」

382: 2012/05/13(日) 23:14:11.87 ID:f65V1kYZ0
詠矢「要するに相手の思考を揺さぶるのが基本だからさ」

詠矢「一種の心理学なんですよ」

詠矢「これでも、結構勉強してるんだぜ?」

御坂「へえ…」

御坂「(…まあ、あながちウソでもなさそうね…)」

詠矢「御坂サンにはさあ…最初に能力を試させてもらった恩もあるし」

詠矢「もしなんかお悩みがあるなら、役に立てればと思ってねえ…」

詠矢「どうかな?」

御坂「…」

御坂「ま、いいわよ…」

御坂「黒子が帰ってくるまではヒマだし…」

詠矢「おうおう、乗ってくれるか」

詠矢「んじゃ早速、目を閉じてくれるかい?」

詠矢「その方が集中出来るからな」

御坂「ん…」

詠矢「んじゃ行くぜ…」

383: 2012/05/13(日) 23:15:11.92 ID:f65V1kYZ0
詠矢「じゃあまず、御坂サンの…気になる人がいるなら」

詠矢「その人をイメージしてくれ」

詠矢「最初が肝心なんでね、ここは素直に浮かんだ人を設定してくれよ?」

御坂「…」

詠矢「出来たかな?」

御坂「…(コク)」

詠矢「よし、じゃあ後は」

詠矢「俺の言うとおり状況を想像してくれればいいから」

御坂「…」

詠矢「いま、御坂サンとその人の関係は」

詠矢「普通に話せるレベルの友人だが…、それ以上踏み出せてない」

詠矢「お互いに、特別な認識は持っていない関係だ」

御坂「…」

詠矢「そんな感じで、ある意味安定してたんだが…」

詠矢「突然、相手に恋人が出来てしまった」

御坂「…!」

384: 2012/05/13(日) 23:15:59.79 ID:f65V1kYZ0
詠矢「…(お、反応アリか?)」

詠矢「それはもう非の打ち所が無いカップルで」

詠矢「周囲からも祝福され、二人は幸せそうだ」

詠矢「自分には入り込む余地も無い…」

御坂「…」

詠矢「自分はただ、二人の関係が進展していくのを」

詠矢「指をくわえて見ているしかない…」

詠矢「そんなあるとき、街中でその二人にばったり出くわす」

御坂「…(ビクッ)」

詠矢「だが、二人はこちらに気づいていない」

詠矢「無視しているわけではなく」

詠矢「単純にお互いの会話が楽しくて、御坂サンのことが意識に入ってこない」

御坂「……」

詠矢「正面から、二人は近づいてくる」

詠矢「自分との距離が縮まっていく」

385: 2012/05/13(日) 23:19:02.66 ID:f65V1kYZ0
詠矢「二人は目の前を通り過ぎ、やがてすれ違う」

詠矢「それでも二人は自分に気づかない」

御坂「…」

詠矢「二人は、そのままゆっくりと、しかし確実に遠ざかっていく」

詠矢「距離が、開く。遠くへ…」

御坂「…っ!!」

御坂「……」

御坂「……(ジワッ)」

詠矢「(うおっ!泣いた!?)」

詠矢「あー!はい、はい!終わり!!しゅーりょー!!」

御坂「……(グスッ)」

詠矢「(あーびっくりした。まさか泣くとは思わんかった)」

詠矢「御坂サン…アレだね。かなり恋愛志向が強いねえ…」

詠矢「普段はそう興味も無いけど、一旦思うと一途なタイプかな?」

御坂「…そうなの?」

詠矢「そうでなきゃあ、あの程度の想像でそこまでの反応は出ないわなあ」

御坂「…う…」

386: 2012/05/13(日) 23:19:54.44 ID:f65V1kYZ0
詠矢「なのでまあ、もし気になるお相手がいるんならさ」

詠矢「もっと素直に自分の思いを告げたほうがいいと思うんだよねえ」

御坂「…でも」

御坂「…素直って…言われても…」

詠矢「そうなんだよな。素直になれって、実際には結構難しいんだよなあ」

詠矢「じゃあ具体的なアドバイスでもしてみようかな?」

御坂「…」

詠矢「コミニケーションの基本は会話だからね」

詠矢「とりあえず話し方が重要だねえ」

詠矢「まず相手と会話するときに」

詠矢「自分の口から出る言葉を、一度飲み込むんだよ」

詠矢「それがどんな言葉でもだ」

御坂「…(コク)」

詠矢「で、その飲んだ言葉をもう一度反芻して」

詠矢「本当に自分が相手に対して何を要求しているのか、どうして欲しいのか」

詠矢「それをゆっくり考えてから言葉にするんだ」

詠矢「そうすれば、比較的誤解なく自分の意思が相手に伝わると思うんだよね」

387: 2012/05/13(日) 23:20:46.16 ID:f65V1kYZ0
御坂「…うん…」

御坂「…よく…わかんないけど」

詠矢「まあ、大丈夫だよ…、御坂サンなら出来るって」

詠矢「さあて、あんまり長居すると白井サンに怒られるし」

詠矢「そろそろおいとましますかねえ…」

詠矢「えーっと、あそうだ、今日はバイトだっけかな?(ポチポチ)」

詠矢「あ、明日か…今日は上条サンのシフトだったな…」

詠矢「今日は…夜まで一人だなあ…」

御坂「…」

詠矢「まあいいや、俺はその辺ぶらついて帰るかな…」

詠矢「んじゃ御坂サンも初春サンもまたなー」

御坂「…」

初春「…あ、はい、さよなら…です」

御坂「…」

初春「…」

白井「(シュン)…お待たせしました、お姉さま!」

白井「事件の方は、片付けてまいりましたわよ!…?」

御坂「…」

388: 2012/05/13(日) 23:21:26.83 ID:f65V1kYZ0
白井「どうなさいました、お姉さま?」

御坂「…ゴメン黒子…今日は帰る…わ」

御坂「また今度埋め合わせするから…ね?」

御坂「じゃ…」

白井「あ、お姉さま!!」

白井「なんですの…、急いで片付けてきたというのに…」

白井「つれないですわねえ…」

初春「…」

白井「どうしました初春?何かありましたの?」

初春「いえ…ただ…」

白井「…なんですの?」

初春「見事なリーディングを見ました…」

白井「…は?リーディング?」

389: 2012/05/13(日) 23:22:46.09 ID:f65V1kYZ0
(とある公園)

詠矢「じゅうーいち、じゅうーに…」

街をぶらついていた詠矢は、とある公園にある高鉄棒を見つけ、懸垂をしていた。

詠矢「じゅうーきゅう、にーじゅう…」

詠矢「…ん…く…、にーじゅいち…にじゅに…」

詠矢「よっと…ふう…」

限界を感じた詠矢は、手を離して鉄棒から飛び降りる。

詠矢「まあ、こんなもんか…あんまりやりすぎるのもアレだしな」

詠矢「お、腹筋ベンチもあるな…ついでにやってくか…」

ベンチに体を横たえ、膝を立てると黙々と腹筋を始める。

詠矢「…」

詠矢「…んっと…」

詠矢「よっ…」

佐天「…詠矢…さん?」

詠矢「ん…お?…おろ…佐天サン?」

頭を上下したまま見上げた詠矢の視線に、見知った顔が写っていた。

390: 2012/05/13(日) 23:23:40.58 ID:f65V1kYZ0
詠矢「こいつは…奇遇…だねえ…っと…」

佐天「わあ…もしかしてトレーニングですか?」

詠矢「ん…まあ…ね…それなりに…やっとか…ないと…よっ…ねえ…」

詠矢「あ、ゴメンゴメン…もうちょっとで…ワンセット…終わるから…」

詠矢「よいしょっと!…ふう…お待たせ…」

佐天「あ、いえいえ、お邪魔じゃなかったですか?」

詠矢「ん、いや、適当にやってただけだから大丈夫」

詠矢「改めまして、こんちわ…。おひさしだねえ…」

佐天「あ、はい…確かにしばらくお会いしてなかったですねえ」

詠矢「ん…、で、佐天サンなんでここに?散歩かな?」

佐天「えーっと…、ふふっ、実は私もトレーニングなんですよ?」

詠矢「へえ…佐天サンがかい?」

佐天「詠矢さんみたいな体のじゃないんですけどね…」

佐天「能力のイメージトレーニングですよ」

詠矢「…能力の…ねえ…なんでまたこんな所で?」

391: 2012/05/13(日) 23:24:40.27 ID:f65V1kYZ0
佐天「…ここは、私が能力の形を見た場所なんです…」

佐天「ここに来れば、そのころのイメージを思い出せるかねって…」

佐天「効果があるかどうか、わからないんですけどね」

詠矢「(レベルアッパー事件か…、思い出したくないこともあるだろうに…)」

詠矢「(何とか能力へのきっかけを作ろうと、一生懸命なんだな…)」

詠矢「へえ…頑張ってるんだねえ…」

佐天「はい、それはももう、頑張ってますよ!」

佐天「…詠矢さんがきっかけを作ってくれたおかげです…よ?」

詠矢「…そいつは…どうも」

詠矢「んじゃ、俺のほうこそ佐天サンの邪魔しちゃいけないんで…」

詠矢「とっとと帰りますかねえ」

佐天「えー、そんなこと言わないで下さいよ!」

佐天「せっかくお会いしたんですから、ちょっとお話していきません?」

詠矢「…」

詠矢「…ああ、そっか…そりゃ、喜んで」

佐天「じゃあ…どこかベンチでも…あれ?」

佐天「誰…だろう…あの人…」

392: 2012/05/13(日) 23:25:49.04 ID:f65V1kYZ0
詠矢「ん?」

佐天の声につられ、詠矢が移した目線に人影が写った。

それは、長い金髪を髪留めでまとめ、透き通るような白い肌を持った少女だった。

佐天「あ、あれ…もしかして…『ソフィア』ですかね?」

詠矢「…『ソフィア』…って…ああ、あの…『神拳』の?」

佐天「あ、詠矢さんもご存知でしたか?」

詠矢「そりゃああの有名な格ゲーのキャラだからね…」

詠矢「まあ確かに、服装から風貌までそっくりだな…」

佐天「そうですよねえ…コスプレ?…にしてはちょっと…」」

詠矢「…似すぎてるな…ていうか殆どそのまんまじゃねえか…」

佐天「ほんと…ですね…」

詠矢「(何だこの猛烈な違和感は…。周囲の風景から完全に浮いてる)」

詠矢「(現実感がまるで無い…これは、まるで…)」

佐天「…ゲームの世界から抜け出してきたみたいな…」

詠矢「…だな」

詠矢「ちょっと確かめてくるか…」

佐天「確かめるって…何を…あ、詠矢さん!?」

393: 2012/05/13(日) 23:26:57.91 ID:f65V1kYZ0
おもむろに立ち上がると、詠矢はそのまま少女の傍まで移動する。

詠矢「やあ、こんちわ。ソフィアサンって呼べばいいのかな」

少女「…(コク)」

詠矢「なるほど、お話は出来るみたいだねえ…」

詠矢「(なら、ちょいと試してみるか…)」

詠矢「…ソフィアサン…、お美しいねえ…」

詠矢「しかし…俺には綺麗過ぎるように見えるな」

詠矢「メイクや服装、髪形をいくら変えても」

詠矢「人間が本来持っている顔の配置、ボディバランスを変えるには限界がある」

詠矢「あんたが持っている美しさは、完全にそれを逸脱してるんだよねえ…」

詠矢「恐らく、整形したってその姿をかなえるのは不可能だろう」

詠矢「じゃあ、その『美』はどこから生み出されてるんだろうねえ…」

少女「…」

詠矢「現実的には無理なら…異能の力ならどうかな?」

詠矢「あんたのその姿は、何か特別な力によって生み出されてるんじゃないのかい?」

少女「…」

詠矢「(さあ…どうだ?)」

少女「…」

394: 2012/05/13(日) 23:28:10.90 ID:f65V1kYZ0
少女「…ふふっ(ニコリ)」

少女は穏やかな笑みを浮かべると、滑るような足取りで何処かヘと走り去る。

詠矢「ちょ…っと待ってくれよ!!」

慌てて後を追う詠矢。だが、その距離を詰めることは出来ない。

詠矢「くそっ!!速いっての!」

何とか離されまいと走る詠矢。だが、直後。

詠矢「なっ!」

詠矢は驚愕の光景に思わず声を上げた。

少女の姿が、空間に溶けるように消えていく。

詠矢「…!!」

思考が止まり、躊躇している間に少女の姿は完全に消失した。

詠矢「(幻覚?…いや、幻術ってヤツか?)」

詠矢「(どうなってるんだ…判断のしようがねえ)」

佐天「はあっ…はあ…詠矢さん!」

同じく、追いかけてきた佐天が、息を切らせながら近づいてきた。

佐天「ねえ詠矢さん!!見ました今の!」

佐天「消えちゃいましたよね!!」

詠矢「ああ、消えたな…見事に」

395: 2012/05/13(日) 23:28:59.79 ID:f65V1kYZ0
佐天「これはすごいですよお!ついに見ちゃいました!!」

詠矢「…何の話だい?」

佐天「最近、特に話題になってる都市伝説があるんですよ!」

佐天「『神拳』のソフィアが、何かの能力の影響で実体化してるって!」

佐天「複数の能力者が干渉しあって偶然姿が作り上げられてるとか」

佐天「いろんな噂があるんですよ!!」

詠矢「…ああ、ネットで確かそんな話を見たな…」

佐天「でしょでしょ?何人も目撃者の証言が上がってるんですよ!!」

佐天「きゃー!!私も目撃者になっちゃいました!!」

詠矢「…目撃者…ねえ…」

詠矢「(なんか…派手にヤバそうな雰囲気だな…)」

詠矢「(何が起こってるんだかサッパリだ)」

詠矢「(…後で土御門サンに報告しとくか…)」

詠矢「…」

佐天「…?詠矢…さん?」

詠矢「佐天サン…帰ろう…送ってくぜ…」

佐天「へ?…え…ええ…」

411: 2012/06/07(木) 22:57:50.62 ID:nzXR2AOp0
(とあるネットカフェ)

??「ふうむ}

??「だいぶ広がってきてるねえ…(カタカタ)」

??「お、またスレが立ってる」

??「ここは煽っとかないとね!(カタカタ)」

??「さあて、だいぶ時間もかけたし」

??「そろそろ環境も整ってきたと言えるね」

??「式に任せるのも限界かもねぇ…」

??「僕自身が動く時期かな?」

??「…うーん」

??「まあここは慎重に」

??「用意してきた最後の一枚を放ってからにしましょうか…(チャキ)」

店員「(コンコン)お待たせしましたー、オムライスです」

??「あーどうも。ありがとう…」

店員「はい、こちらになります…では…」

??「ふむ…最近は(ムグ)…ネカフェの料理も質が上がったねえ…(ムグ)」

??「さあ、偉大な芸術の完成までもう少しだ…」

??「頑張らないとねえ…(カタカタ)(ムグ)」

412: 2012/06/07(木) 22:59:02.87 ID:nzXR2AOp0
(とあるコンビニ)

上条「…」

御坂「…」

上条「(なんかさっきからすげえ見られてるんですけど…)」

御坂「(ううぅ…勢いで来ちゃったけどどうしよう…)」

上条「…」

御坂「…」

上条「(俺、またなんかやらかしたか?気に入らないことでもしたっけか…)」

御坂「(な、なんか話す事ないかな…えーっと…えっと…)」

上条「…」

御坂「…」

上条「…なあ、御坂」

御坂「えっ…何?」

上条「俺、またなんかやったか?」

御坂「…へ?」

上条「なんか、言いにくそうにしてるからさ…」

上条「俺がまたなんかやらかして…珍しく文句言うのを遠慮してるのかなって…」

御坂「…ち、違うわよ!なんでアンタはいつもそうやって…」

御坂「(あっ…飲み込むんだっけ…ん…)」

上条「…どした?御坂…」

御坂「(で…考える…えと…)」

御坂「(…そうだ…アイツの話聞いてる時に、急に会いたくなって…それで…)」

上条「…?」

413: 2012/06/07(木) 23:00:14.23 ID:nzXR2AOp0
御坂「違うの…文句とかそんなんじゃなくて…」

御坂「なんか…急にアンタに会いたくなって…さ…」

上条「…」

上条「…俺に?」

上条「(あれ?なんかいつもと反応が違うな…)」

上条「(こういう場合はどう返せばいいんだろうか…)」

上条「…えーっと…会いたいって…そりゃまたなんでだよ…」

御坂「なんでって…理由なんかない…わよ…」

上条「…ねえって…よくわかんねえな…」

御坂「会いに来ちゃ…いけない?」

上条「…」

上条「まあ…別に、嫌ってわけじゃねえけど…」

御坂「…ならいいじゃない」

上条「まあな…」

御坂「…」

上条「…」

御坂「(か、会話が続かない!どうしよう…)」

上条「(なんだろう…こう、色々と裏を感じてしまうのは被害妄想だろうか…)」

御坂「…」

上条「…」

414: 2012/06/07(木) 23:01:29.58 ID:nzXR2AOp0
御坂「あ、あのさあ!!」

上条「(ビクッ)お、おう。なんだ?」

御坂「なんか…この近くで、ジェラートのお店が出来たらしいんだけど…」

御坂「食べに行かない?」

上条「…」

上条「あー、あの、御坂センセイ?」

上条「もう終わったと思ってたのですが…」

上条「罰ゲームってまだ続行中でしたっけ?」

御坂「…へ?」

御坂「……あんたねえ…、罰ゲームって私と…あっ…」

御坂「…」

御坂「…んっ(ゴクン)」

上条「(何やってんだこいつは…)」

御坂「…」

御坂「わ、私は…ただ…」

御坂「アンタと行きたい…のよ…」

御坂「ダメ?(ジト)」

上条「…」

上条「(あれ?…)」

上条「(なんか可愛くないか?…コイツ…)」

上条「…まあ…いいぜ…。別に…断る理由もねえし…」

御坂「…ありがと…」

415: 2012/06/07(木) 23:02:47.11 ID:nzXR2AOp0
上条「ただ…俺まだバイトだからさ…」

御坂「それは…わかってる…。今日は…夕方までなんでしょ?あとどれくらい?」

上条「えーっと…、あと一時間ちょい…ってとこかな?」

御坂「じゃあ…、待たせてもらって…いい?」

上条「ああ…まあ…いいぜ。そっちに喫茶コーナーに…座ってればいいかと…」

御坂「うん…。あ、っと…この『からあげサン』ってやつもらえる?」

上条「…ん?これか?…えっと…210円になります…」

御坂「じゃあはい…(チャラ)…さすがに何か買わないとマズイでしょ?」

上条「…まいどありー」

店の隅にあるカウンター席に腰掛けると、御坂は唐翌揚げを口に運びながら携帯を開く。

御坂「(えーっと…どこだっけかな…うろ覚えだから店の位置を確認しとかないと…)」

御坂「…(ポチポチ)」

御坂「…(パク)」

御坂「あ…結構おいしい…(モグ)」

上条「…」

上条「…(おかしい…何かがおかしい)」

上条「…(なぜこんなに平穏な展開なのでしょうか…。後で反動が怖い…)」

上条「(あれ?そういやあ…御坂は何で俺のシフトを知ってたんだ?)」

上条「…?」

上条「…」

上条「…(まあ、いいか…。深く考えるのはやめよう)」

上条「(そんなに悪い気もしねーし…な…)」

416: 2012/06/07(木) 23:04:47.95 ID:nzXR2AOp0
(とある街角)

詠矢「…うん…そうなんだ…消えちまってさ…」

詠矢「俺じゃ調べようがないんでさ…土御門サンに報告しとかないとってね…」

佐天「…」

詠矢「うん…うん…」

詠矢「そっか…じゃあよろしく…」

詠矢「なんかわかったら教えてくれ…んじゃ…(ピッ)」

詠矢「…」

佐天「…お電話終わりました?」

詠矢「(俺の問いかけに反応したってことは…対象には有る程度の意思があったってことだ)」

佐天「でも驚きましたねえ…」

詠矢「(だが、相手が絶対反論に反応したようには見えなかった)」

佐天「ウソみたいに消えちゃいましたよねえ!」

詠矢「(ふうむ…)」

佐天「都市伝説って本物見るの初めてなんですよ!!」

詠矢「(そもそも能力が通用する相手じゃなかったのか…)」

佐天「あ、そうそう、都市伝説って言えば…」

詠矢「(相手の自我が弱くて『聞く耳』を持っていなかったのか)」

佐天「…で…そこで初春がですね…」

詠矢「(俺にもうちょっと魔術関係の知識があればなあ…)」

佐天「…で、…なっちゃったんですよ!!」

詠矢「(相手は陰陽師だっけか…じゃあアレは式神ってヤツなのかね…)」

佐天「…はは…」

詠矢「(絶対反論が通じないなら…対策を考えとかないとなあ)」

佐天「…」

佐天「…詠矢さん!!」

詠矢「えっ!!…あ、はい?なんだい?」

417: 2012/06/07(木) 23:05:54.35 ID:nzXR2AOp0
佐天「私の話、聞いてました!?」

詠矢「あっ、いやゴメン、聞いてなかった…」

佐天「…」

佐天「…そういう時は普通」

詠矢「あわてて取り繕うものじゃなないでしょうか?」

詠矢「いや…、すぐにバレる嘘はつかないことにしてるんで…」

佐天「…」

佐天「…詠矢さん」

詠矢「はい?」

佐天「私と話しても面白くないですか?」

詠矢「いや…そんなことは決してない…ですけど…?」

詠矢「ちょっと考え事…でね」

佐天「また難しいことですか?」

詠矢「そうだ…なあ…。確かに…難しいこと…だねえ」

佐天「…そうですか…」

佐天「それはそれは、私のどーでもいい話なんかより」

佐天「よっぽ大切そうですもんね!」

詠矢「(あ、こりゃマズイな…)」

418: 2012/06/07(木) 23:07:13.69 ID:nzXR2AOp0
詠矢「ゴメンゴメン、怒らせたなら謝るからさ…」

佐天「むー」

佐天「じゃあですねえ…一つお願い聞いてもらえます?」

詠矢「そりゃあもう…許容できる範囲なら…」

佐天「…えーっとですね、こないだから白井さんたちと話してたんですけど」

佐天「おいしいジェラートのお店が出来たらしくてですね…」

佐天「この近くのはずなんですよ」

佐天「一緒に行ってもらえませんか?」

詠矢「…」

詠矢「いやいや、そんな何のペナルティにもならない内容なら」

詠矢「喜んでお供しますぜ」

佐天「ありがとうございます!ふふっ…」

佐天「えと、確かこっちです!(タタッ)」

詠矢「(しかしいーのかね、結構ヤバイ雰囲気なんだが…)」

詠矢「(まあいいか、ちょっとぐらい大丈夫だろ)」

詠矢「(女の子からのお誘いなんて、俺の一生で何度も無いだろうしねえ…)」

佐天「詠矢さーん!!」

詠矢「ほいほい、ついてきますよ」

419: 2012/06/07(木) 23:08:15.30 ID:nzXR2AOp0
(とある店)

佐天「あ、ありました、こっちです…あっ!!」

店を見つけた直後、佐天の目にはオープンテラスに腰掛ける男女の姿が飛び込んできた。

佐天「あれは…御坂さん!!」

佐天「男の人と一緒だ!!」

詠矢「お…(早速行動に移したか…意外と早かったねえ)」

佐天「もしかして、デ、デートですか!?」

詠矢「はいはい、とりあえず隠れよう…」

佐天「え?って詠矢さ…(ムギュ)」

詠矢は腰を落とすと同時に、佐天の頭を掴んで植え込みの下に押し込んだ。

詠矢「ほほう…結構いい感じじゃねえの…」

佐天「わー…楽しそうに話してますねえ」

佐天「あれって、彼氏さん!!…ですかね?」

詠矢「いや…『まだ』違うな…」

佐天「えっ!まだ…ってことは!十分脈ありってことですか!!きゃー!!」

詠矢「まあ、そう興奮しなさんな…」

詠矢「アイツは上条サンって言ってな、俺のバイト仲間で友達さ」

佐天「え、じゃあ、お知り合いなんですか…」

詠矢「まあね…。今後の展開がどうなるかは…上条サンにかかってるんだけどねえ…」

佐天「でも、もう十分いい雰囲気ですけど…」

420: 2012/06/07(木) 23:09:43.55 ID:nzXR2AOp0
上条「へえ…、そんなことあったんだ。そりゃ面白れえなあ…」

御坂「でしょー?ねー、ふふっ…」

上条「…」

御坂「…」

上条「なあ…」

御坂「…ん?」

上条「御坂とこうやってゆっくり話すのって、初めてじゃねえか?」

御坂「え?そうだっけ?」

上条「もしもし?御坂さん?」

上条「いつも『勝負だー』とか言ってドタバタを仕掛けてくるのはどちらさんでしたっけ?」

御坂「…あー…あはは…、忘れてよ昔の話は…」

上条「昔ってそんな前の話じゃねえだろ?」

御坂「だってさあ…あの時は…」

御坂「私の力がアンタの右手に全く通じないのが…どうしても納得行かなくて…」

上条「俺の右手…か…なんなんだろうな…これは」

御坂「あ…」

上条「ん?」

御坂「溶けてるわよ…」

上条「お、わっ…と!」

上条が左手に持ったコーンから、溶けたジェラートがあふれ出していた。

上条「うわっ、もったいねえ!!」

御坂「そんな、手に付いた分まで舐めないでも…」

上条「いやいや、これを地面に落とすなんて」

上条「上条さんそんなもったいないこと出来ませんよ!!」

421: 2012/06/07(木) 23:11:04.45 ID:nzXR2AOp0
御坂「んー、まあ確かに美味しいけどさあ…(パク)」

上条「でもまあ…こうしてるとさあ…御坂も結構『普通』なんだな…」

御坂「何よ…普通じゃいけない?」

上条「いえいえ、上条さん的には全然オッケーですよ?」

御坂「じゃあいいじゃない。普通が一番でしょ?」

上条「…」

御坂「…」

上条「でもまあ!さすが常盤台のお嬢様だよなあ!!」

上条「美味しい店をご存知でらっしゃる!!(パク)」

御坂「え?…ああ、ここは人から聞いたお店なんだけど…ね…」

御坂「(そういえば、黒子には悪いことしちゃったわね…)」

御坂「(あとでちゃんと謝っとかないと…)…(パク)」

白井「おねえさま!!」

御坂「……あ」

白井「こんなところで何を!!」

422: 2012/06/07(木) 23:12:01.65 ID:nzXR2AOp0
佐天「あ…白井さんだ…」

詠矢「うわ…さすが転移能力者…伏線も無しに現れるなあ…」

佐天「どうしましょう…なんかもめてますけど…」

詠矢「まあ、状況的にそうなるわな…」

詠矢「(御坂サン…、白井サンと約束してたって言ってたもんなあ)」

詠矢「(今上条サンといるってことは、それをすっぽかしたって事だもんなあ)」

詠矢「(そりゃ揉めるわなあ…)」

詠矢「さて…どうしたもんかね…」

佐天「…なんか白井さん暴れだしましたけど…」

詠矢「あー、やっちゃってるねえ…」

詠矢「御坂サンもなだめるのに苦労してるなあ…」

佐天「と、止めに行ったほうがいいでしょうか!?」

詠矢「佐天サンはともかく、俺が行くとややこしくなるだけだからやめとこう…」

詠矢「お、でた!転移ドロップキック!!」

詠矢「アレ避けられないんだよなあ…」

佐天「…なんか、体験したことあるような口ぶりですね」

詠矢「まあ…いろいろあってね…」

佐天「いろいろ…ですか…」

詠矢「まあとりあえず…状況を見守ろう」

423: 2012/06/07(木) 23:13:25.24 ID:nzXR2AOp0
佐天「どんどん被害が広がってますね…大丈夫でしょうか…」

詠矢「…だなあ…、あっ!!」

佐天「あっ!!」

詠矢「これはまずいパターンだ」

佐天「女の人かばおうとして…倒れこんじゃいました!!」

詠矢「そして起き上がろうとするときに胸を触る!!」

佐天「あ…すごい、その通りになった…」

詠矢「…さすがハイスペックのフラグ体質…」

詠矢「しかもラッキースOベ付きだ…。うらやましいねえ…」

佐天「え…うらやましいんですか…?」

詠矢「そりゃ、まあ…オトコノコ的には、そうでしょ…」

佐天「やっぱり詠矢さんでもそうなんですか…」

詠矢「まあ…ね。お、そろそろオチが付きそうだな」

佐天「オチ?ですか?…あ…」

佐天「御坂さんが…」

詠矢「こっから見てもわかるぐらい帯電してるねえ…」

詠矢「ってことは…」

424: 2012/06/07(木) 23:14:09.35 ID:nzXR2AOp0

御坂「…!!」

御坂「ナニやってんのよ…あんたわぁぁぁあああ!!!(ビリバチッ)」

上条「結局こうなんのかよ不幸だあぁぁぁあああ!!」

425: 2012/06/07(木) 23:14:55.69 ID:nzXR2AOp0
詠矢「…」

佐天「…」

詠矢「とりあえず、退散したほうがよさそうだな…」

佐天「…そ…そうですね…帰りましょっか…」

詠矢「じゃあ、ジェラートはまた今度だな…」

詠矢「約束どおり送ってくぜ」

佐天「はい、ありがとうございます…」」

詠矢「(ありゃまたフォローがいるな…)」

詠矢「(ったく…しょーがねえなもう…)」

佐天「あ、詠矢さんそこ右です…」

詠矢「うい、こっちだな…」

426: 2012/06/07(木) 23:16:29.33 ID:nzXR2AOp0
(学生寮、詠矢の自室)

詠矢「でー…」

詠矢「なんか今日は妙に疲れたなー…」

詠矢は疲れのままに、をベットに体を投げる。

詠矢「んー、飯作るのもメンドクサイなー…(ピピピピ)お…」

詠矢「土御門サンからか…よっと(ピ)もしもし?」

土御門『おう、ヨメやんかい?俺だ、土御門だ』

土御門『連絡もらった場所を早速調べてみたんだが』

土御門『わずかだが、魔術を使用した痕跡があったぜい』

詠矢「そうか…、やっぱり魔術側の仕業だったか…」

土御門『これは俺のカンだが…恐らく使われたのは式神だな…』

詠矢「へえ…、あの陰陽師が作るってヤツかな?」

土御門『ああ…、実に精巧に仕組まれた術だ』

土御門『普通、式神を撃った後には呪術的な痕跡…特に式札が残るもんだが』

土御門『この場所にはその痕跡が無い』

詠矢「ああ、確かに、消えた後には何も残ってなかったな…」

土御門『ここまで完全に痕跡を消すとは…相手はかなり使い手だな…』

詠矢「なるほどねえ…、やっかいな相手だってことか…」

詠矢「ただ、ゲームのキャラを実体化して、何をしようとしてるんだろうな?」

土御門『それは俺にもわからないにゃあ…』

詠矢「そっか…相手の目的がわからんと、動きようもないな…」

427: 2012/06/07(木) 23:17:43.73 ID:nzXR2AOp0
土御門『それでな、ヨメやん、俺はしばらく学園を離れて』

土御門『真々田のことを調べようと思う』

土御門『顔も素姓もわからない今のままじゃ、対策の立てようも無いからにゃあ…』

詠矢「そっか…正直いなくなられるのは心細いけどなあ…」

詠矢「逆に、調べられるのは土御門サンしかいねえもんな」

詠矢「こっちは、俺と上条サンでなんとかしのぐよ…」

土御門『よろしくたのむぜい…』

詠矢「あっと、そうだ土御門サン」

詠矢「この話、ジャッジメントに協力を仰いでもいいかね?」

土御門『そうだなあ…あまり公にしたくないことではあるが…』

土御門『大事になった場合、協力してもらう必要があるだろうな』

土御門『判断はそっちに任せるぜい』

詠矢「わかった…、この話は上条サンに伝えとくわ」

詠矢「そっちも気をつけてなー」

土御門『了解だぜい』

詠矢「(ピ)…ふう…また考えること増えたなー」

詠矢「…脳にカ口リーを吸い取られてる気分だねえ…」

詠矢「まあいいや…今日は適当に食って寝よう…」

詠矢「なんか、潤いが欲しいねえ…」

詠矢「まあ、望むべくもないか…」

詠矢「ふう…」

詠矢「おやすみー…」

437: 2012/07/01(日) 13:07:45.92 ID:Wk1HpVcQ0
(とあるコンビニ)

詠矢「つーわけで、今話したのがこれまでに起こったことだ」

上条「…なるほど…状況はわかったけど…」

上条「よくわかんねえ話だな?」

詠矢「そうなんだよなあ…せめて魔術系の知識があれば」

詠矢「もう少し相手の意図を読めるかもしれねえんだがねえ…」

上条「そっか、その辺は俺も似たようなもんだしなあ」

上条「せめてインデックスがいてくれりゃあなあ…」

詠矢「ほう、知らないキーワードが出ましたね」

詠矢「しかも、いてくれればってことは、そのインデックスってのは人の名前かな?」

上条「ん?ああ、こないだまでうちに居候してたシスターなんだけど…」

上条「魔術に関しては、知らないことがないぐらい詳しくてさ」

詠矢「シスターって…、ここに来てまた女の影かい…」

詠矢「しかも同居してたってのは聞き捨てならないなあ」

上条「女っても、子供だぜ?保護者みたいなもんだろ?」

詠矢「…上条サン守備範囲広いなー」

438: 2012/07/01(日) 13:08:49.53 ID:Wk1HpVcQ0
上条「なんでそっち方向の話になるんだよ!!」

詠矢「そりゃ自然とそうなるだろ…まあいいや…」

詠矢「どっちにしろ、その魔術に詳しい人ってのは今いないわけか」

上条「ああ、今は故郷のイギリスに帰っちまってるんだ」

詠矢「協力は望めないってことだな…まあしょうがねえか…」

上条「いまんとこは、何も起こらないことを祈るだけだな」

詠矢「まあ、そうなっちまうな…」

上条「ふぅ…」

詠矢「どした?上条サン。元気ねえな?」

上条「まー、いつものこととはいえ…いろいろ疲れる事があるんですよ…」

詠矢「疲れる…ねえ…」

詠矢「なんか悩みでもあるのか?俺でよかったら相談に乗るぜ?」

上条「…はは、こればっかりはなあ」

上条「人に相談してどうなるもんでもないしなあ…」

上条「ただ上条さんは静かに暮らしたい…それだけなんですよ」

詠矢「…(うむ、気にはなってるようだねえ…。さて、どこを切り口にするか…)」

439: 2012/07/01(日) 13:09:53.80 ID:Wk1HpVcQ0
詠矢「…そういやあさあ上条サン」

上条「なんでせうか?」

詠矢「昨日、ジェラートを召し上がってるトコを拝見したんですが…」

上条「でっ!!…(ドガッシャーン)」

詠矢「おお、盛大にコケたねえ…大丈夫か?」

上条「あ、あのー、詠矢さん?…どの段階からご覧になってたんでしょうか…?」

詠矢「白井サンが現れるチョイ前ぐらいかな…」

上条「なんだよ…見てたんなら助けてくれてもいいだろ…」

詠矢「スマンがねえ…俺には伏線があったんで、多分出ると余計ややこしくなった」

上条「なんだよそれ…薄情なヤツだな」

詠矢「まあその話じゃなくてえだな、問題なのは…」

詠矢「同伴してた御坂サンと、結構楽しくお話したって事ですよ」

詠矢「そこんとこどうなんですか?」

上条「どうとか聞かれてもなあ…。」

上条「なんか急に誘われたからさ…まあ…その…流れで…」

詠矢「楽しかったことは否定しないわけだねえ…」

上条「まあ…確かに…いつもとは雰囲気違ったかもな…普通に話せたし」

440: 2012/07/01(日) 13:11:04.98 ID:Wk1HpVcQ0
詠矢「へー、交際を派手に否定してた割には…いい感じじゃねえの?」

上条「だからあ!交際って、アイツをそんな風に見たことねえし!」

詠矢「じゃあ、見るようにすればいいっしょ。御坂サンに特別不満でもあるわけかい?」

上条「いや、そういうわけじゃねえけど…んー。流石の上条さんも中学生を相手に…」

詠矢「中学生っても2。つしか違わねえんだろ?なんか問題あるか?」

上条「…んー…」

詠矢「(やっぱ、地味に否定する要素を取り除いてやるのが一番か…)」

詠矢「(しかし…メンドクサイなあ…こっちの心が折れそうになるわ)」

詠矢「ま、決めるのは上条サンだけどね…。少しは相手の気持ちも考えてみたらどうだい?」

上条「…」

詠矢「(ウィーン)お、いらしゃいま…せ?」

御坂「…」

上条「…!!」

詠矢「…ち、ちわす…」

御坂「…ちょっと…あんた」

詠矢「え?俺?」

御坂「ちょっと来て!!…(グイ)」

詠矢「わっ!!っと…なになに!?」

441: 2012/07/01(日) 13:12:19.93 ID:Wk1HpVcQ0
(とあるコンビニ、駐車場)

御坂「…」

詠矢「…」

御坂「…」

詠矢「御坂サン、いきなり引っ張り出してダンマリはねえわなあ…」

詠矢「俺に何の用だい?」

御坂「えっ?…えっとね…あの」

御坂「…私…あの…また…」

詠矢「またやらかしちまったのかな?」

御坂「…(コク)」

詠矢「んで、けしかけた俺に相談に来たと?そんなとこかな?」

御坂「……(コク)」

詠矢「アテにしてくれるのは光栄だけどねえ…」

詠矢「一つだけ確認しておきたいことがある」

御坂「…なに?」

詠矢「相手は上条サンでいいんだよな?」

御坂「……!!!」

詠矢「そこを確認しとかないと話が始められない」

442: 2012/07/01(日) 13:13:00.41 ID:Wk1HpVcQ0
御坂「…あ…あんた…知って…(カア)」

詠矢「知るも何もバレバレだってーの」

詠矢「それに、偶然とは恐ろしいモンでね」

詠矢「昨日の件は目撃させてもらいました」

御坂「…えっ!!」

詠矢「いままでは毎度ああゆう顛末だったんだろう」

詠矢「恐らく、あのまま流れて二人に進展は無かった…そんな感じかな」

御坂「…うん…いつも…うやむやになって…」

詠矢「うむ…今度こそそんな展開にはさせたくないなあ…」

詠矢「ちと考える…後で策を送るので…メアド教えてくれんかね?」

御坂「わかった…じゃあ赤外線で…」

詠矢「うい、じゃあまた後でな」

443: 2012/07/01(日) 13:13:54.29 ID:Wk1HpVcQ0
(とあるコンビニ)

詠矢「(ウィーン)よっと、いやゴメンゴメン」

上条「…(ジロ)」

詠矢「…なんだよ、怖いな上条サン」

上条「御坂と何してたんだ?」

詠矢「ん?いや、相談ごととかね。いろいろ…」

上条「相談?御坂がお前にか?」

詠矢「おう、そうだよ?意外かな?」

上条「そりゃ…まあ…な」

詠矢「…気になるかい?(ニヤリ)」

上条「いや、別にそういうわけじゃ…」

詠矢「(よしよし、こっちはこっちで進行してるねえ…)」

詠矢「…よし…」

上条「どした?」

詠矢「上条サンさあ、ちとお願いなんだけどね…」

444: 2012/07/01(日) 13:15:10.09 ID:Wk1HpVcQ0
(常盤台中学学生寮。御坂の自室)

御坂「…ただいま…」

白井「おかえりなさいましお姉さま…」

白井「…また遅いですわね…。どちらへ行かれてたましたの?」

白井「はっ!!、まさか…また…」

白井「あの殿方と逢引を!!!」

御坂「えっ!、違うわよ…ちょっと…寄り道してた…だけよ」

御坂「(昨日の今日で、まともに会えるわけ無いじゃない…)」

白井「ほんとですの?…ならいいんですが…」

白井「昨日の件は驚きましたわ。どうそそのかされたのか存じませんが…」

白井「わたくしとの約束を袖にした上に、まさかあの類人猿と…」

御坂「だからあ!それは何度も謝ってるじゃない…」

白井「やはり、より注意すべきは詠矢さんですわね…」

白井「なにやら吹き込んでいたと初春が証言していますし…(ブツブツ)」

御坂「ちょっと黒子!聞いてるの!?」

御坂「…もう…。(ブブブブ)あ…メールだ…(ポチ)」

445: 2012/07/01(日) 13:16:22.79 ID:Wk1HpVcQ0
御坂「…あ(アイツからだ…なになに…作戦?…)」

御坂「…!!(え!?なに言ってんのよ!そんなことしたらまた大騒ぎに…)…(ポチポチ)」

御坂「…(返信っと)」

白井「…?」

御坂「…(ブブブブ)…(あっ…早いわね)…(ポチ)」

御坂「…」

御坂「……」

白井「お姉さま?どうかなさいまして?」

御坂「…(ふう)」

御坂「…(アイツの作戦に乗るのは気に食わないけど)」

御坂「(今は仕方ない…か…)」

白井「お姉さま?」

御坂「…ねえ黒子」

御坂「今度の週末、確か駅前のショッピングモールでセールがあるでしょ?」

御坂「一緒に行かない?」

白井「あら、お姉さまからのお誘いはうれしいですけど…」

白井「セールと言っても服のでしょう?わたくしたち常盤台の学生は」

白井「お洋服を買いに行ったところで、着る機会がございませんわ…」

御坂「…(う、そう来たか…)」

446: 2012/07/01(日) 13:17:13.92 ID:Wk1HpVcQ0
御坂「…あ、でもインナーとか小物とか、結構欲しいものがあってさあ…」

白井「…!!」

白井「インナー!!インナーとおっしゃいましたですかお姉さま!!」

白井「そう、つまり下着、ラン…ジュぇリーのことですわね!」

御坂「え?あ?…まあ、そうかな?…」

白井「むふふ…そのお買い物にご同行させて頂けると!!」

白井「この白井黒子!たとえ槍が降ろうが酸性雨が降ろうが、かならず同行させて頂きますわ!!」

白井「(これは千載一遇のチャンスですわ!!)」

白井「(ここはさりげないアドバイスで、お姉さまを内側からわたくし色に染め上げて!!)」

白井「…(ムフフフ)」

御坂「黒子…よだれよだれ…」

御坂「じゃあ、また細かい時間は連絡するから…よろしくね?」

御坂「…(こんなので本当に大丈夫かな…)」

御坂「(いろんな意味で…週末が怖い…)」

447: 2012/07/01(日) 13:18:19.51 ID:Wk1HpVcQ0
(とあるショッピングモール 週末)

白井「…」

御坂「…」

上条「…」

詠矢「…」

詠矢「やあやあ」

詠矢「偶然だねえ、お二人さん…」

白井「…どどどどど…どー言うことですの!!!」

白井「なんでこの方々がいるんですの!!」

白井「しかも類人猿と詐欺師!最悪の組み合わせですわ!!」

上条「(類人猿って…)」

詠矢「詐欺師はひでえな…白井サン」

詠矢「まあ、いいんじゃねえの?せっかくのセールなんだし」

詠矢「四人で回った方が楽しいぜ?」

白井「誰があなたたちなんかと!!」

白井「今日はお姉さまと水入らずでスウィートな時間を過ごすんですの!!」

白井「邪魔されたくありませんわ!!」

448: 2012/07/01(日) 13:20:11.93 ID:Wk1HpVcQ0
詠矢「でもほらさあ、服とか、異性からの見た目とか重要だったりしねえ?」

白井「そんなもの必要ありませんわ!!」

上条「…(なんか張り合ってるなあ)」

御坂「…(ジッ)」

上条「…ん?ああ、御坂…なんかゴメンな?」

上条「今日は白井と二人の予定だったんだろ?」

御坂「…いいの」

御坂「私が頼んだの」

上条「…はい?」

御坂「それより…こないだ…ね?」

上条「お、おう…」

御坂「…ごめんなさい」

上条「えーっと…何の話でせうか…」

御坂「こないだ…またキレちゃって…あんたは悪くないのに…」

上条「ん?ああ、あの時のことか…」

上条「なになに、気にすんなよ。いつものことじゃねえか…」

御坂「でも…いつもこういうことがウヤムヤになるから…」

御坂「今日はちゃんと謝っとかないとって…」

449: 2012/07/01(日) 13:21:24.00 ID:Wk1HpVcQ0
上条「…」

上条「…ん、そ、そうだな…。なかなかいい心がけじゃ…ないか?」

御坂「…ありがと」

上条「…ん」

御坂「…」

白井「コゥラァアア!!!そこお!!お姉さまとなにをお話に!!」

詠矢「はいジャッジメントの白井黒子さん!!」

白井「…!!?」

詠矢「週末のショッピングモールはセールの最終日」

詠矢「人でごった返しております」

詠矢「ここで能力者が暴れたらどうなるか?お分かりですよね?」

白井「…」

詠矢「取り締まるほうが自ら容疑者になるおつもりで?」

白井「…」

白井「…相変わらず」

白井「…口の減らない…」

詠矢「まあまあ…ここは穏便に…ご一緒しません?」

450: 2012/07/01(日) 13:22:09.15 ID:Wk1HpVcQ0
白井「…フン」

白井「…ま、付いてくると言うならご自由に!!」

白井「お姉さま、参りましょう!!」

御坂「ちょっと…黒子!!」

詠矢「んじゃ、俺たちも行くか、上条サン」

上条「なあ、詠矢…。俺はお前の買い物に付いて来たんだよな?」

詠矢「いや、それはこの状況を作り出すための口実だ」

上条「…また随分とあっさりお認めになる…」

詠矢「ま、いろいろあってね…」

詠矢「悪いようにはしねえぜ、上条サン…」

451: 2012/07/01(日) 13:24:28.10 ID:Wk1HpVcQ0
(とあるショッピングモール内)

詠矢「…」

上条「…」

御坂「…」

白井「…」

白井「…どこまでついてくるんですの!!」

詠矢「そりゃまあ、ご自由にと許可も頂いたんで…」

詠矢「ついていけるだけ…」

白井「まったく…」

白井「(まあいいですわ、下着売り場には近づけませんでしょう)」

白井「(そこでまいてやりますわ!!)」

詠矢「…(さて…と)」

詠矢「…(チラッ)」

御坂「…!!」

御坂「…(コク)」

詠矢「ところで白井サン」

白井「なんですの?」

詠矢「神拳のソフィアの都市伝説って知ってるかい?」

白井「また藪から某に…」

白井「それがなんの関係がありますの?」

452: 2012/07/01(日) 13:26:12.55 ID:Wk1HpVcQ0
詠矢「俺が聞いてるのは知ってるのか知らないのかってことだ」

詠矢「質問に質問で答えないでもらえるかい?」

白井「…」

白井「初春から、聞いたことありますが…それが?」

詠矢「こないだ目撃してね…実体化したゲームキャラを…」

白井「…まさか…そのようなことが?」

詠矢「見たのは俺一人じゃねえから間違いないさ」

詠矢「それもどうやら…魔術側の人間が絡んでるみたいなんだよねえ…」

白井「…魔術側…?といいますと…この学園に敵対する勢力…」

詠矢「そうなんだよねえ…」

詠矢「今のところまだ実害は起こってないが…」

詠矢「ちとヤバイと思うんだよねえ…」

白井「詠矢さん…どこからそんな情報を?」

詠矢「ん、いや、情報源は詳しくは話せないが…」

詠矢「こないだの事件でいろいろコネが出来てねえ」

詠矢「きっちり信頼できる筋からの話だよ」

453: 2012/07/01(日) 13:27:12.61 ID:Wk1HpVcQ0
白井「…そうですの…。もしそれが本当なら…問題ですわね」

詠矢「ああ…なんでさ、ジャッジメントの方でも警戒しといて欲しいんだよね」

白井「ええ、そういう話ならこちらでも…」

白井「あっ!(キョロキョロ)」

白井「お姉さまは!?」

詠矢「お、どか行っちゃいましたねえ…」

白井「…謀りましたわね…詠矢さん…」

詠矢「ん?俺はただ白井サンと立ち話してただけでさ…」

白井「あなたの言い訳などどうでもいです!」

白井「お姉さま!!(ダッ)」

詠矢「追ってどうするんだい?」

白井「…知れたことを」

白井「あの類人猿の魔の手から、お姉さまをお守りするのです!!」

詠矢「魔の手ってのはずいぶんだな…」

詠矢「…御坂サンの決意を、白井サンは無にするつもりなのかい?」

白井「なんですって?」

454: 2012/07/01(日) 13:28:20.81 ID:Wk1HpVcQ0
詠矢「御坂サンは上条サンに会うためにここにきた」

詠矢「俺はその状況を作っただけに過ぎない」

詠矢「まあ、白井サンに来てもらったのは俺の考えだけどね…」

白井「やはりあなたが黒幕でしたのね…」

白井「お姉さまをそそのかして…一体なにが目的ですの!!」

詠矢「俺は御坂サンの意思に沿ってるだけでさ」

詠矢「ちょいと背中を押してやってるだけでね…」

白井「そんなはずはありませんわ!!」

白井「お姉さまが、どうしてあんな…」

詠矢「白井サン…実はうすうす気づいてるんじゃないか?」

詠矢「御坂サンの気持ちにさ…だからそんなに必氏なんだろ?」

白井「…そっ…そんなことは!!」

詠矢「だいたい、白井サンの敬愛する御坂サンって人は」

詠矢「簡単に誰かにそそのかされる人なのかい?」

詠矢「それも俺みたいな『詐欺師』にさ…」

白井「…そっ…それは…」

455: 2012/07/01(日) 13:29:12.98 ID:Wk1HpVcQ0
詠矢「一応確認のために言っとくが」

詠矢「俺の絶対反論(マジレス)は、能力にしか効果が無い」

詠矢「わかってるよな?」

白井「…」

詠矢「俺が能力を使って御坂サンの意思を捻じ曲げてるわけじゃない」

詠矢「すべては彼女の意思…。なら、尊重すべきだと思うけどね…」

白井「…」

詠矢「俺の言いたいこと、伝えたいことは以上かな…」

詠矢「白井サンに聞いて欲しくて、今日は来てもらった」

詠矢「騙すような真似して悪かったね…」

白井「…」

詠矢「…んじゃ、俺はお先に失礼するわ…」

白井「…え?…」

白井「帰るのですか…」

詠矢「ん?ま、俺はここにいない方がいいからね」

詠矢「俺は今不可抗力ではぐれたことになっている」

詠矢「下手に上条サンたちに見つかると、せっかくの二人の時間に水を差しちまうからなあ…」

456: 2012/07/01(日) 13:30:04.33 ID:Wk1HpVcQ0
白井「…よろしいのですか?」

白井「わたくしがまた…お二人の邪魔をしにいくかも知れませんわよ?」

詠矢「そんときゃそんとき。またフォローの方法を考える」

詠矢「それに、俺がここで白井サンを監視したところで同じことさ」

詠矢「転移能力者を物理的に止めることなんて不可能だしな」

詠矢「それとも…」

白井「…?」

詠矢「これから、俺と遊んでくれるっていうなら、喜んで残るぜ?」

白井「…」

白井「…誰があなたなんかと…」

詠矢「まあ、そうだろうね…」

詠矢「んじゃ、帰ると言ったらとっとと帰るぜー」

詠矢「またなー」

白井「…」

白井「……」

白井「…お姉さま…」

白井「わたくしは…」

457: 2012/07/01(日) 13:31:21.00 ID:Wk1HpVcQ0
とあるショッピングモール 別階)

上条「あ、あれ?白井と詠矢、どこいったんだ?」

御坂「多分別の階…だと思う」

上条「なんだよ…はぐれちまったのか…じゃあ連絡とって…」

御坂「いいの!そうしてもらったの!」

上条「…って…?」

御坂「…あんたと…その、もう一度二人に、なりたくて…」

御坂「でも、こないだのことがあって…さ、誘いにくくてさ…」

御坂「アイツにたのんで…その…作戦…考えてもらったの……」

上条「…アイツって、詠矢か」

御坂「…(コク)」

上条「御坂…お前…」

御坂「…(カア)」

上条「…は、ははっ…なんだよ、そんなに気にしなくても!」

上条「さっきも言ったけどさ、あの程度の騒動、上条さんにとっては日常茶飯事ですよ」

上条「だから…普通に誘ってくれればいいぜ?」

御坂「…うん、ありがと…」

458: 2012/07/01(日) 13:33:23.03 ID:Wk1HpVcQ0
御坂「…ふう」

上条「どした?」

御坂「素直って楽ね…」

上条「???」

御坂「変な理由考えなくていいし、自分に言い訳しなくていいし…」

上条「…なにをおっしゃっているのでしょうか…御坂様…」

御坂「へ?え…な、なんでもないわよ!!」

御坂「さ、買い物行くわよ!!」

御坂「ゲコ太パジャマの新作が出ているのよ」

御坂「これだけは絶対おさえとかないと!!」

上条「…はー、さいですか…」

上条が御坂の後を追おうとした刹那

始まろうとしていた二人の時間を引き裂く怒号が、突然響いた。

御坂「…えっ!」

上条「…なっ!」

御坂「なに…今の…悲鳴?」

459: 2012/07/01(日) 13:34:12.03 ID:Wk1HpVcQ0
上条「…まさか!!」

悲鳴は、ショッピングモールの中央を貫く吹き抜けの階下から発せられた。

上条は身を乗り出し覗き込む。

上条「…あれは…!!」

上条「スマン御坂!ちょっと待っててくれ!」

御坂「ちょっと、待ってよ!!」

上条はそのまま手すりを飛び越え、吹き抜けに身を投じる。

上条「…っと…」

一つ下のフロアに着地した上条は、ちょうど問題の対象に対峙する形となった。

上条「…てめえは…」

上条「詠矢から聞いてた通りだ…ほんとにそっくりなんだな…」

そこに立っているのは、長い金髪を髪留めでまとめ、透き通るような白い肌を持った少女。

上条「神拳のソフィア…か!」

479: 2012/07/21(土) 09:11:28.85 ID:Y25XOc0b0
(とある街角)

件のショッピングモールから少し離れた街角。

淡々と歩く詠矢の姿があった、

詠矢「(…ふう)」

詠矢「(最大の障害である白井サンは一応押さえといたし)」

詠矢「(とりあえず一仕事済んだ感じかな)」

詠矢「(まあ、うまくいってくれりゃそれでいいが…)」

詠矢「(しかし…上条サン、ここまでやってもどうにもならなかったら)」

詠矢「(本気の上段正拳だぜ…覚悟しとけよ)」

詠矢「…んー」

詠矢「…なんか寂しいねえ…」

詠矢「俺にもなんか浮いた話落ちてねえかなあ…」

詠矢「ま、あるわけねえか…ははっ」

詠矢「適当にぶらついて帰るか…お?」

詠矢「ゲーセン…か」

詠矢「神拳対戦台、絶賛稼働中…」

詠矢「まあ、なんかのヒントにでもなるかな?」

詠矢「安直かもしれんけど、ちょっとよってみるか…」

480: 2012/07/21(土) 09:12:30.43 ID:Y25XOc0b0
詠矢「…お?ナンだ…?」

ゲームセンターに向かった詠矢の視界に、一人の人物が写った。

その人物は、大型のUFOキャッチャーを食い入るように覗き込んでいた。

??「…むむ…」

詠矢「(なにしてんだ…この人は…)」

??「甘い…造形が甘い…」

??「特に顔!フィギュアの命だというのに!!」

??「ラインの悪さを瞳の塗装でごまかそうとしている!!」

??「しかもその塗装の出来も悪いときた!!」

??「こんな出来で監修の名を付けられてはたまらないなあ」

??「製作側に苦情を出しておかないと!!」

詠矢「(監修?…??)」

その言葉に反応した詠矢は、近くにはられているポスターに目線を移してみた。

詠矢「(完全新作、ソフィギュア)」

詠矢「(原型師、『御形屋 創一』監修バージョン…?ってなんて読むんだこれ…)」

??「なあ、君もそう思わないか!!」

詠矢「へっ!?(うわびっくりしたっ!)」

481: 2012/07/21(土) 09:13:08.69 ID:Y25XOc0b0
詠矢「…あ、はあ…よくわかんないですけど」

詠矢「エレメカの景品なんてそんなモンじゃないっすか?」

??「そうだ、もっともな指摘だ。あらゆる商品にはコストがかかる、それはわかる…」

??「だが、それを差し引いても!!このフィギュアには愛が感じられない!!」

??「わかるかね!!愛だよ愛!!」

詠矢「は…はあ…(わかんねーよ)」

詠矢「えっと…もしかして…この人…ですか?」

詠矢は先ほど見たポスターを指差す。

??「ああ、そうなんだよ!僕は原型師の御形屋 創一(ミカタヤ ソウイチ)って言うんだ!よくわかったねえ!!」

御形屋「黙っていても、滲み出る才能は隠せないのかもねえ(ウンウン)」

詠矢「え?…はは…そうみたいですねえ…(独り言聞いてただけなんだけど…)」

詠矢「(これは、あまり関わらない方がよさそうで…)」

詠矢「んじゃ…失礼しまっす…」

会話を断ち切って店の奥へと進む詠矢。

御形屋「髪のまとまり方が…(ブツブツ)」

当の人物は、再びケースの中のフィギュアを覗き込んでいた。

482: 2012/07/21(土) 09:14:00.34 ID:Y25XOc0b0
(とあるショッピングモール 吹き抜け)

対象と数メートルの距離を置いて対峙する上条当麻。

上条「…」

相手を睨み付けつつ、周囲に注意を払う。

男「ん…ぐぐ…」

傍らには買い物客らしい男が鼻血を出して倒れていた。

男「な、なんだこの女!いきなり殴りやがった!」

この人物が、先ほどの悲鳴の主であることは用意に想像出来た。

上条「あんた、いいから逃げろ!ヤベえぞ!」

叫ぶ上条を、ソフィアは目を細めて眺め、静かに向き合う。

ソフィア「あなたが…私と…戦うのですか?」

上条「…戦いたくはねえが…」

上条「アンタかこれ以上暴れるなら…止めなきゃな」

ソフィア「…私の意志は私だけのもの」

ソフィア「立ちはだかるというのなら…私は戦う!」

上条「(あれ?…どっかで聞いたような台詞だな…)」

対峙した女性は、体をほぼ水平に、左手を突き出し、右手を鳩尾の近くに構える。

上条「…やるって言うんなら…相手になるぜ(スッ)」

呼応するように右手を突き出す上条。

483: 2012/07/21(土) 09:15:12.51 ID:Y25XOc0b0
ソフィア「はっ!」

突如バックステップ。直後、左手を水平に振り下ろす。

ソフィア「シルバーエッジ!!」

掛け声と共に、左手の軌道がそのまま三日月状の飛来物となり、上条に襲い掛かった。

上条「なっ…!!…んだっ!?…んっ!!(キュイーン)」

咄嗟に右腕でかばう上条。狙い通りなのか、その飛来物は空中で掻き消える。

上条「(右手が…通じた…?ってことは…異能の…力か…)」

客「うわぁぁぁああ!!何だ今のは!?能力者か!!」

遠巻きに状況を見ていた観衆が、ソフィアが出した『飛び道具』に恐怖したのか、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

周囲は、軽いパニックに陥っていた。

上条「…くっ!!(マズイな…逃げてくれるのはいいが…長引けば騒ぎが大きく…)」

ソフィア「はっ!」

焦る上条を尻目に、今度は一気に距離を詰めてくる。

と同時に、中段の回し蹴りを一閃。

上条「…っ!!(ガシッ)」

腰を落とし、たたんだ腕で相手の足を受け止めると、ガードの下がった顔面へ右の正拳を放つ。

上条「(コイツで…!!なんとかっ…!!)」

ソフィア「…!!(キュイーン)」

484: 2012/07/21(土) 09:16:08.68 ID:Y25XOc0b0
上条の拳か相手の顔へ到達すると、その姿は一瞬で掻き消える。

そして直後、何かが落下したような軽い金属音が床から響いた。

上条「…なんだ…これ…?」

床に落ちていたのは、千円札を一回り小さくしたような金属の板。

拾い上げて見ると、なにやら得体の知れない文字が表面に刻みつけられていた。

上条「これは…魔術の道具か…なんかか…?」

上条「…ダメだ、まるでわかんねえ…土御門に見てもらわねえと…」

御坂「…ちょっと…アンタ…」

突然賭けられた声に反応して上条が目線を向けると、そこには顔を上気させた御坂美琴が立っていた。

上条「御坂…」

御坂「アンタは…アンタはどうして一人で行っちゃうのよ!!」

上条「んなこと言っても…俺が行かないとヤバくて…」

御坂「違うわよ!!聞いてるのはそんなことじゃない!」

御坂「どうせまたなんか事件に巻き込まれれてるんでしょ?そんなのはすぐわかるわよ!」

御坂「どうして、どうしてアンタは誰も頼らずに一人で行っちゃうのよ!!」

御坂「そうやって突っ走って、後ろで心配してる人の気持ち考えたことあるの!?」

上条「…」

485: 2012/07/21(土) 09:17:16.11 ID:Y25XOc0b0
上条「…いや、こんなことにお前を関わらせるわけにはいかねえだろ!!」

御坂「…笑わせないでよ…アンタ、私が誰だか知ってるの?」

御坂「学園第三位の能力者…超電磁砲(レールガン)の御坂美琴よ?」

御坂「私より頼りになる人間が、ほかに居ると思う?」

上条「…」

御坂「アンタにとって、わたしは何?ただの知り合いの中学生?」

御坂「わたしはそれじゃ嫌。ただ守られてる女の子じゃなくて」

御坂「アンタと全てを分ち合えるような…」

御坂「そんな…特別な…存在に…なりたい…の…」

御坂「だから…私も…巻き込んで…よ…」

御坂は顔を伏せた。今の自分の顔は、とても見せられるものではなかった。

上条「御坂…」

上条の脳裏に、詠矢から受けた忠告が、順に思い出される。

上条「…」

何かを決意したように拳を握ると、上条は御坂の傍に歩み寄る。

486: 2012/07/21(土) 09:18:35.98 ID:Y25XOc0b0
上条「…御坂…お前がそんな風に思ってたなんて…考えてもなかった…」

上条「これからは…ちゃんとお前を頼る…それと…さ」

上条「特別の…ってのは、まだよくわかんねえけど…」

上条「お前のこと…もっとちゃんと…見る…からさ…」

上条「だから…顔を上げてくれよ…」

上条は静かに手を御坂の肩に置く。触れた瞬間、御坂の体がびくりと反応する。

御坂「…」

御坂「…わ…わかればいいのよ!!わかれば!」

上がった御坂の顔には、照れと怒りと安堵が混ぜ合わさった形容しがたい表情が浮かんでいた。

上条「…何だよその顔は…」

御坂「う、うるさっ!!アンタが見せろって言ったんでしょうがあ!!」

御坂は照れ隠しに拳で上条の腹筋を突く。

上条「あいて、…いや、つい…な?ゴメン、悪かったって…」

御坂「で…まずは今の状況を説明してもらいましょうか?」

上条「ああ、わかった。でもちょっと待ってくれ、詠矢に連絡しねえと…」

御坂「なに、アイツも絡んでるの?」

上条「ああ、なんかあったらお互いに連絡することになってるんだ」

上条「よ…(ピ)」


白井「(お姉さま…)」

騒ぎを聞きつけ、白井もまたこの場所に駆けつけていた。

二人の姿を見つけると、反射的に柱の影に隠れてしまったが、そのやり取りは一部始終見てしまった。

白井「(やはり…お姉さまの決意は本物…)」

白井「(お姉さま、黒子は…どうすれば…)」

487: 2012/07/21(土) 09:19:23.79 ID:Y25XOc0b0
(とあるゲームセンター)

詠矢「(えーっと…どの台だっけかな)」

詠矢「(お、あったあった…向かい合わせの対戦台か…)」

詠矢「(誰かやってるねえ…、ちょうど使ってるのはソフィアか…)」

詠矢「(乱入してみるか…、えっと…コマンド覚えてるのは…コイツだっけかな…)」

詠矢は百円玉を台に投じると、使ったことの有るキャラクターを選択する。

詠矢「さあて…」

詠矢「…(カタカタ)」

詠矢「…っと!(カタッ)」

詠矢「……」

あっという間に詠矢のキャラは追い込まれていく。

詠矢「…!!」

詠矢「(…負けた…。ダメだ全く勝負にならねえなあ)」

詠矢「(いくら久しぶりとはいえ、完敗しちまったなあ…)」

詠矢「(どんなヤツだろ…)」

席を離れると、詠矢は台の反対側を覗き込む。

詠矢「…あ!」

詠矢「初春サンじゃねえの!」

初春「あれ?詠矢さんじゃないですか」

488: 2012/07/21(土) 09:20:36.72 ID:Y25XOc0b0
詠矢「へー、ゲームとかするんだ…」

初春「ええ、まあそんなにやり込んではいないですけど」

詠矢「やり込んでないのかい?結構強いと思ったけどなあ…」

初春「いえいえ、私なんかぜんぜん、ですよ」

詠矢「そんなもんかねえ…。上には上が…あ、乱入だね…」

初春「あれ、そうみたいですね…」

詠矢「向こうもソフィアか…どれ、お手並み拝見といくかね…」

対戦が始まる。相手のソフィアは詠矢よりはるかに善戦し、初春とほぼ互角の戦いを演じるが、やがて追い込まれる。

詠矢「お、頑張るねえ…」

初春「でも、これで、終わりです!(カタカタッ)」

着地に合わせたコマンド技を避けきれず、相手のソフィアは最後の体力を削り取られ地に伏した。

初春「…ふう…」

詠矢「お、勝った勝った…すげえな初春サン」

初春「ありがとうございます!。でも相手の人も結構強かったですよ?」

詠矢「へえ…俺にはもうなにがどうなってるのかサッパリだったわ」

??「いや素晴らしい!!」

筐体の反対側から回り込んできた人物が、二人の会話に割って入った。

489: 2012/07/21(土) 09:21:39.39 ID:Y25XOc0b0
御形屋「やあやあ、そっちの君はさっきも合ったねえ」

御形屋「それよりも君、先ほどのソフィアの使い手かね?」

初春「ええ…まあ…そうですけど…」

御形屋「素晴らしい!ただ勝ちを意識しただけの戦いではなく」

御形屋「キャラの特徴や性能を生かして、その能力を最大限に生かそうとしている!」

初春「え?えぇ…まあ、丁寧に動かすようにしてますけど…そんな大げさな…」

御形屋「いや、謙遜するのはやめたまえ!!」

御形屋「あの動き、扱いにはキャラクターへの大きな愛を感じるねえ!!」

御形屋「僕もそうありたいものだ!」

初春「…は、はぁ…(それほど好きなキャラじゃないんだけどな…)」

御形屋「いや、実はねえ…僕は……んっ!?…」

会話の途中で、何故か男は眉をひそめる…。

御形屋「…(停止…し…た?…)」

御形屋「…(ふむ…問題だねえ…)」

初春「あの…どうか…しましたか?」

490: 2012/07/21(土) 09:23:00.71 ID:Y25XOc0b0
御形屋「うん、いやいや、なんでもないんだ!」

御形屋「このままソフィアへの愛を語り合いたいところなんだが」

御形屋「あいにく用事が出来てね…またどこかで合おう」

御形屋「それじゃね!」

初春「…」

詠矢「…」

初春「行っちゃいましたね…」

詠矢「…なんか突っ込む気も失せるな…」

初春「誰なんでしょうか…?もしかしてお知り合いですか?」

詠矢「いや、俺もさっき合ったばっかりだ…。なんか原型師さんらしいぜ?」

初春「原型師さんっていうと…フィギュアとかのですよね?…へえ…」

詠矢「…フィギュア…?…ふむ…」

詠矢「(そういやあ、ソフィアにご執心だったな…ただの偶然か?…それとも…)」

詠矢「…お…(ブブブブ)お、電話だ…っと」

電波状態を気にしてか、詠矢は慌てて店を出ると、自分のスマートフォンを取り出す。

詠矢「あれ?…上条サン?…おいおい、まさかな…」

491: 2012/07/21(土) 09:23:59.10 ID:Y25XOc0b0
詠矢「…(ピ)、はいもしもし?」

詠矢「おう、俺だよ。って、上条サン俺に電話してる場合かって…」

詠矢「え?…なに…うん…うん…」

詠矢「そっちに出たのか!?…うん…」

詠矢「そうか…ついに実害が出たか…」

詠矢「マズイな…よし…どっかに集まって作戦会議だ」

詠矢「…わかった…また連絡する(ピ)」

初春「…どうしました?詠矢さん…」

詠矢「…ん?あれ?神拳はもういいのかい?」

初春「慌てて出て行かれたので、気になって…あ、もうラスボス倒しちゃいましたから、終わりです」

詠矢「あ、そうなんか…ならいいが…」

詠矢「んー…ちとマズイ事になっててな…」

初春「…?」

詠矢「ジャッジメントに協力してもらったほうがいいな…」

詠矢「初春サン、白井サンと連絡取れるかい?」

初春「白井さんですか?…ええ、もちろん取れますけど…」

詠矢「もう大筋は話してるんだ。支部を使わせてもらうと有難い」

詠矢「作戦会議なら、あの場所は最適だからね…」

492: 2012/07/21(土) 09:25:38.23 ID:Y25XOc0b0
(ジャッジメント177支部)

詠矢「まあ…以上が事件の概要…かな」

詠矢「わかってないことが多すぎるが…事実だけをつなぎ合わせるとこんな感じだ」

白井「お話は良くわかりました…ですが…」

御坂「よくわかんない話よね…」

詠矢「ああ、その通りだ」

詠矢「今のところ、全体像を掴むための肝心な情報が埋まってない状態だ」

上条「ただ、実際にケガ人が出ちまった」

詠矢「だな…正直、実害が出てないんで俺も甘く見ていた…」

詠矢「上手い事上条サンと遭遇してくれたからよかったものの…」

御坂「もっと被害が広がっていた可能性もあるわね…」

白井「捨て置けない状況であることは確かなようですわね」

詠矢「問題は、こっから動きようがないってことだ…」

詠矢「なんかきっかけになる情報でもあればいいんだが…」

上条「あ、そうだ…現場でこんなもん拾ったんだが…」

詠矢「なんだこりゃ…?金属の板か…?」

493: 2012/07/21(土) 09:26:45.37 ID:Y25XOc0b0
上条「例のソフィアが消えたあとに、コイツが残ってたんだ」

詠矢「…今回は痕跡を残したか…。ちょいと失礼(ヒョイ)」

詠矢「うーん…見たってわかるわけねえよな…どうするか…」

詠矢「よし、わからねえならわかる人に聞くまでだ…(ピ)」

上条「どうするんだ?」

詠矢「土御門サンに連絡する。写真をメールして見てもらうわ…(ポチポチ)」

白井「土御門さん…?どちらの方ですの?」

上条「あーいや、俺のクラスの奴でさ。こういうことにすげえ詳しんだよ…」

御坂「詳しいって…ちょっと引っかかるけど…」

御坂「いいわ、今のところ、その人を頼るしか方法はないわけよね?」

上条「そうなっちまうな…。この手の話は俺たちじゃまるでわかんねえし…」

詠矢「よし…メール送ったぜ…後は返事待ちだな」

初春「詠矢さん、検索終わりましたよ(カタカタ)」

詠矢「お、初春さんありがと。んーっと…どれどれ…?」

白井「なんですの…初春。情報収集ですの?」

初春「ええ、人の情報なんですけど…」

詠矢と白井は、ほぼ同時にパソコンの画面を覗き込む。

494: 2012/07/21(土) 09:27:49.33 ID:Y25XOc0b0
白井「…御形屋 創一、フィギュアの原型師…?どちら様ですの?」

詠矢「俺と初春サンがさっき偶然会った人なんだけどさ…」

詠矢「今回の事件に符合するキーワードが多い人でさ」

詠矢「ちょいと気になったんで、調べてもらってたんだよ…」

初春「えっと、その世界ではかなり有名な人みたいですね…」

初春「高度で神がかり的な造形は評価が高いみたいで…」

詠矢「ふうむ…まあ、タイアップに名前が使われるぐらいだから」

詠矢「かなりな高名なんだねえ…」

初春「今のところ、ありきたりの情報しかヒットしないですね……(カタカタ)」

詠矢「んー、やっぱり単なる偶然かなあ…」

白井「フィギュア…つまりは人形と式神…確かに関連性を感じなくもないですが…」

詠矢「流石に考えすぎかねえ…(ブブ)お、電話?…土御門サンだ」

詠矢「(ピ)はい、もしもし」

土御門『おうヨメやん、こっちの仕事は終わったぜ』

土御門『今はそっちに戻っている途中だ。夜までには着けると思うぜい』

詠矢「そうか、そいつはご苦労さん…。で、メール見てもらったかい?」

土御門『ああ、見させてもらったぜい』

土御門『コイツは、かなり特殊な式札だな…』

詠矢「式札…?」

495: 2012/07/21(土) 09:29:02.49 ID:Y25XOc0b0
土御門『表面の文字でわかる。恐らく、式神の活動が終わったあと』

土御門『式札ごと消滅するように組まれている…。証拠隠滅の為だにゃあ』

詠矢「じゃあ、上条サンが触ってこの札が残ったってことは…」

土御門『式神の活動が強制的に停止させられたせいで、消滅は免れたんだろうな』

詠矢「なるほど…、陰陽師の技術が使われたってことは、これで確定したわけだな」

土御門『そうなるな…。じゃあ、今度はこっちから報告だぜい』

土御門『真々田の素性が割れた。奴は陰陽師だが本職は傀儡師だ』

詠矢「傀儡…って、要するに人形のことか…」

土御門『ああ、もともと古い陰陽師の家系だったんだが…』

土御門『途中で傀儡の世界にのめり込んで、家を出たらしい』

詠矢「違う世界に行ったってことか…?」

土御門『いや、傀儡と陰陽は根っこは同じものでな…』

土御門『呪力を組み込んで作り上げた人形に、式を書き込んで人と変わらぬ姿を作る…』

土御門『それが傀儡師の技術なんだぜい』

詠矢「そうか…うーん…傀儡…人形…フィギュア…?」

496: 2012/07/21(土) 09:30:06.32 ID:Y25XOc0b0
土御門『それともう一つ、重要な情報が手に入った』

土御門『真々田の面も割れたんだ。そっちに写真を送るぜい』

詠矢「おお!それはありがてえな。早速頼む…じゃあ、一旦切るぜ」

土御門『わかった…(ピ)』

上条「どうだ?」

詠矢「相手の顔がわかったってさ…。写真が来るぜ」

御坂「顔がわかれば…相手の動きは掴みやすくなるわね…」

詠矢「え?ってどういうことだい?」

白井「ここで、監視カメラのログと顔写真とを照合出来ます」

白井「最初に詠矢さんを見つけたときに使った方法ですわ」

詠矢「あー、そうか、確かそうだったねえ…」

詠矢「(ブブ)お、メール来た!…どれどれ…(ピ)…あっ!!」

詠矢「初春サン、ほら、この顔!!」

初春「あっ!!間違いないですね…さっきの…」

詠矢「ああ…間違いねえ、そっくりだ」

詠矢「原型師、御形屋創一が…真々田だ!」

497: 2012/07/21(土) 09:30:51.57 ID:Y25XOc0b0
(とある駅)

一人の男が、とある駅にある大型コインロッカーの前に立っていた。

上着のポケットに裸で入っていた百円玉を取り出すと、順に投じていく。

丸みを帯びた輪郭の中に、やさしめの表情がはまっている。体躯からあまり力強さは感じられないが、その目は異様な光

を放っていた、

その姿は写真の男、御形屋創一こと、真々田創である。

真々田「さあ…機は熟した」

真々田「きっと君は、僕の最高傑作になるだろう」

開いたコインロッカーの中から、大型のリュックに入れられた荷物を取り出す。

真々田「では行こうか…」

真々田「これから僕は、新たなる創造主となる…」

527: 2012/08/17(金) 07:13:57.00 ID:GCqozkLq0
(ジャッジメント177支部)

初春「ダメです…見つかりません…」

初春「駅の監視カメラで確認されたのが最後です」

白井「この都市で監視カメラに写らずに移動することなど不可能でしょうに…」

白井「いったいどこに隠れてるのやら…」

御坂「もし、相手が姿を隠しながら移動する手段を持っているとしたら…お手上げね」

白井「確かに…そうなればこちらに打つ手はありません」

白井「ですが、事を起こす前には流石に姿を現すでしょう…」

白井「初春、引き続き監視をお願いしますわ」

初春「わかりました!(カタカタ)」

上条「あれ?そういえば詠矢はどこ行ったんだ?」

御坂「さっきコンビニ行くとかいって出て行ったけど…?」

白井「こんなときに?コンビニ…ですの?」

詠矢「うい、ただいまー」

御坂「何よその荷物…?」

528: 2012/08/17(金) 07:14:34.30 ID:GCqozkLq0
詠矢「飯だよ飯、ほれ、適当に取りなー(ドサドサ)」

詠矢は買って来たおにぎりやサンドイッチを机の上に広げる。

詠矢「今のうちに腹になんかいれとかないと後で動けなくなるぜ(モグ)」

白井「相変わらず、変なところで気が回りますわね…」

詠矢「ん?いや、単に俺が腹減っただけなんだけどね(モグ)」

詠矢「遠慮しねえで食えって。女の子は甘いモンの方がいいかな?」

詠矢は手元にあったバームクーヘンを白井に差し出す。

白井「せっかくですので、頂きますわ…」

詠矢「ほい、初春サンも、サンドイッチでいいかい?」

初春「あ、はい、ありがとうございます…」

詠矢「で、んーっと…まだ相手は見つかってない雰囲気だねえ…」

初春「そうなんですよ。画像ログをリアルタイムで調べてるんですけど…(カタカタ)」

詠矢「まー、それは見つかるまで探し続けるしかねえわな…」

御坂「せめて相手の目的がわかれば、先回りできるかもしれないんだけど…」

詠矢「目的、だよなあ…」

詠矢「うーん…」

詠矢「…」

529: 2012/08/17(金) 07:15:15.98 ID:GCqozkLq0
上条「どうした詠矢、なんかわかったのか?」

詠矢「ん?あ、いやあ、わかったんじゃねえんだけどね」

詠矢「一つだけ確かなことがある…」

白井「なんですの?」

詠矢「みんなさあ、ソフィアの都市伝説って知ってたかい?」

初春「はい、今一番の話題ですから…」

白井「初春からそのように聞きましたわ」

御坂「佐天さんから何回か聞いたわね…」

上条「クラスの奴が話してるのは聞いたな…」

詠矢「俺もネットで見た…。要するにだ」

詠矢「この都市伝説がかなりの勢いで広がってるってのは、確かだよな?」

白井「…まさか…?」

詠矢「なんで真々田があんな式神を学園都市に撒いたのか…」

御坂「都市伝説を…広めるため?」

詠矢「だとしたら、その企みは見事に成功したことになるな」

530: 2012/08/17(金) 07:15:59.28 ID:GCqozkLq0
上条「…でも…そんな噂広げたところで、いったいどうなるっていうんだ?」

詠矢「ちょっと前に、俺なりに考えていたことがあってな…」

詠矢「その考えがこの流れに符合するんだよ…」

詠矢「御坂サン…都市伝説って言葉から…連想する事件てあるんじゃないかな?」

御坂「連想って…?…あっ…!」

詠矢「気づいたかな?」

詠矢「幻想御手(レベルアッパー)事件…あれも発端は都市伝説だった…」

白井「詠矢さん…わかっていることがあるなら、もう少し具体的にお願いします」

詠矢「あ、スマン。回りくどいのは悪い癖だな…」

詠矢「端的に言うと、相手の目的にはAIM拡散力場が絡んでると思う」

御坂「AIM…」

初春「拡散…力場…?」

詠矢「でなければ、時間をかけて都市伝説を広める理由がねえ」

御坂「確かに…あの事件もAIM拡散力場が関係していたけど…」

御坂「今度の相手は魔術師でしょ?」

531: 2012/08/17(金) 07:16:35.08 ID:GCqozkLq0
詠矢「そう、問題はそこさ。魔術があの力に干渉できるのか…」

詠矢「それが、出来ないとも言い切れないんだよねえ」

上条「どういうことなんだ…詠矢」

詠矢「残念だけど、決定的な部分は俺にもわからない」

詠矢「ただ、今広がった都市伝説のお陰で、この学園の恐らくは何千・何万っていう能力者が」

詠矢「ソフィアの実体化を見聞きしたり、考えたりしてる可能性がある」

詠矢「もしその意識を一点に集めることが出来たとしたなら…」

詠矢「結構マズイと思うんだよね」

御坂「…」

上条「…」

白井「…」

初春「…」

上条「魔術師だけに…こっちの常識は通用しない」

上条「何をしてくるか読めねえ…ってことか」

詠矢「そういうことだな」

532: 2012/08/17(金) 07:17:29.89 ID:GCqozkLq0
初春「…!!」

初春「見つかりました!!」

白井「どこですの!?」

初春「郊外の公園近くです!。ここからだと、少し距離がありますね…」

詠矢「まあ、とり合えず行ってみるしかねえわな」

白井「早速向かいましょう!わたくしなら比較的早く現場までたどり着けます!!」

詠矢「んじゃ、俺も行こう。連れて行ってくれるかい?」

白井「ええ、詠矢さん一人ならなんとか…」

詠矢「よろしくたのむぜ…」

詠矢「御坂サンと上条サンも後から頼む。急ぎでな」

上条「わかった。すぐに追っかける」

御坂「タクシーでも捕まえればそんなに時間はかからないと思うわ」

御坂「…黒子のことお願いね?」

詠矢「…俺に?かい?」

御坂「アンタなら、少なくとも護衛にはなるでしょ?」

詠矢「…へえ…そいつはどうも…。ナイトってガラでもねえがな…」

白井「(お姉さま…)」

白井「初春はここでバックアップをおねがいしますわ」

初春「わかりました!気をつけて…」

白井「では、参りますわよ!」

詠矢「おう、行くか!」

白井は詠矢の腕を掴むと、二人の姿はその場から掻き消えた。

533: 2012/08/17(金) 07:18:14.27 ID:GCqozkLq0
(とある街角)

数十回の転移の後、二人は目的地近くに到着した。

白井「…(シュン)」

詠矢「…っと…連続転移ご苦労さん…」

白井「いえ…。位置からするとこの辺りのようですわね」

詠矢「そっか…んじゃ、ここからは歩いて探すか…」

白井「…」

白井「…詠矢さん」

詠矢「ん?なにかな?」

白井「お姉さまについて、おっしゃられていたこと…」

白井「私なりに考えてみました」

詠矢「へえ…。じゃあ、何か答えは出たかい?」

白井「…あなたのおっしゃっていたように、お姉さまの気持ちは本物でした…」

白井「口惜しいですが…でも、お姉さまには幸せになっていただきたいです」

白井「ですので、わたくしは…あの方、上条当麻がお姉さまにふさわしい殿方かどうか」

白井「見極めさせて頂きます!」

詠矢「なるほど…、まあ…いいんじゃねえか?」

詠矢「その方が白井サンらしくてさ…」

534: 2012/08/17(金) 07:19:56.53 ID:GCqozkLq0
白井「あら…わたくしが口を挟むことには反対されないのですね?」

詠矢「そりゃまあ、納得してもらうことに越したことはないからね」

詠矢「御坂サンだって可愛い後輩には祝福してもらった方がいいっしょ?」

白井「詠矢さん…」

詠矢「ま、上条サンならお眼鏡にかなうと思うけどねえ…」

詠矢「んじゃ、行きますか。相手の正確な場所は探す必要があるしね」

白井「そうですわね…急がないといけませんわ」

2人が目的の公園に向かうと、探すまでも無く相手の姿はそこにあった。

詠矢「こいつは…」

白井「魔方陣…というのでしょうか…」

公園の広場には星型の陣が組まれており、はその中央には真々田本人と、人の形をした何かが立っていた。

真々田「ギャラリーがようやく到着かな?」

白井「残念ですが、だた見物に来ただけではありませんわ」

詠矢「基本的に、あんたを止めに来たと思ってもらって間違いない」

535: 2012/08/17(金) 07:20:38.04 ID:GCqozkLq0
白井「傀儡師、真々田創(ママダ ツクル)ご本人で、間違いございませんですか?」

真々田「ああ、間違いない。僕が真々田だよ…」

詠矢「とりあえず、今何されてるかから…お聞きしたいんですがね…」

真々田「そうか…聞きたいかね?。では教えてあげよう!」

真々田は大げさに両腕を広げてみせる。

真々田「今行われているのは大いなる創造だよ!!」

白井「創造…?」

詠矢「…もう少しわかりやすくお願い出来ませんかねえ…」

真々田「ははっ…そうだね、凡人には理解できないだろうね…」

真々田「僕のことを調べたなら知っていると思うが…」

真々田「僕の今の本職は原型師だ。だが、それと同時にコレクターでもある」

真々田「特にソフィア関係のアイテムに関しては、世界一と自負してもいいだろう」

真々田「フィギュアはもとより、あらゆるグッズ…果ては筐体のインストカードに至るまで!!」

白井「…あの…」

白井「できれば手短に…」

詠矢「…白井サン(グイ)…(聞いとこう、上条さんたちが来るまでの時間稼ぎになる)」

白井「…(そ、そうですわね…)」

536: 2012/08/17(金) 07:21:13.94 ID:GCqozkLq0
真々田「だが、それにもすぐ限界が来た。彼女の全ては僕の手元に集まってしまった」

真々田「それに、僕の技術と能力を使えば…」

真々田「極限まで精巧なフィギュアも、自立行動し、会話すら交わすことのでる存在も…」

真々田「どんなソフィアだって作り出す事が出来る…」

真々田「それはまさに…手に入るが故の空しさ…」

真々田「だから、だからね…僕は…」

真々田「誰にも造れないソフィアが欲しくなったのさ…」

詠矢「…造れない?」

白井「どういうことですの!?」

真々田「…今この学園都市には、ソフィアの実体化を意識している人間が数多く居る」

真々田「そしてのその多くは能力者だ。その強い能力者の意識を」

真々田は突然魔方陣の中央を力強く指差す。そこには、既に姿を成そうとしている人形の姿があった。

真々田「集約し、整合してこの傀儡の内部に具現化させれば…」

真々田「それは誰にも、僕にさえ作れないソフィアとなる!!」

537: 2012/08/17(金) 07:21:57.86 ID:GCqozkLq0
白井「……」

詠矢「……え?」

白井「…あの?…もしや…」

詠矢「…おいおい…あんた…」

詠矢「等身大フィギュアを作るために、わざわざこの学園都市を利用したっていうのか!?」

真々田「ここには、複数の意識を集約しやすい環境がある」

真々田「AIM…拡散力場…だったね」

白井「そのために学園中に噂を流して…」

詠矢「じゃああんた、ただの愉快犯なのか?そんなモン目的なんか読めるわけねえだろ!!」

真々田「失礼な!僕は正しい意味での確信犯だ!!」

真々田「僕のソフィアに対する思いは、もはや信仰と言っても過言ではない!!」

白井「…」

詠矢「…」

思わず顔を見合わせる白井と詠矢

上条「ここか!…詠矢!」

御坂「黒子!大丈夫!?」

詠矢「お、上条サン」

白井「お姉さま!」

538: 2012/08/17(金) 07:22:44.61 ID:GCqozkLq0
上条「真々田って奴は…アイツか?」

御坂「なるほど…アレが敵ってワケね?(バチッ)」

詠矢「それが…なあ…」

白井「なんとも申し上げにくい状況でして…」

白井と詠矢は、今見聞きした情報を説明する。

御坂「何よそれ…人形を作るためだけにこんな騒ぎを起こしたっていうの!?」

上条「でもなんか…疑いづらい状況だな…」

真々田「ふふ…もうすぐ会えるね、新しいソフィア…」

ただ人形を見つめて悦に入る真々田は、愉悦に浸った笑みを浮かべている。

上条「なんか…アレだな…」

詠矢「邪念は満載なんだが、逆に悪意は感じないんだよなあ…」

御坂「でも…あんなものほっといていいわけないでしょ!?」

詠矢「まあそうなんだが…うーん…」

詠矢「…」

白井「詠矢さん、何か考えが?」

539: 2012/08/17(金) 07:23:43.71 ID:GCqozkLq0
詠矢「ん…いや、ちょいと確かめたいことがあってね…」

詠矢「ちょっと聞いてみるわ…」

白井「では(ガシッ)」

白井はおもむろに詠矢の腕を掴む。

詠矢「え?なに?どしたの?」

白井「いえ、もし何か相手に動きがあった場合」

白井「すぐに転移で退避できるように準備しておきます」

詠矢「…」

詠矢「…ああ、そりゃどうも…助かるぜ…」

詠矢「んじゃ早速…」

詠矢「なあ、真々田サン!!忙しいとこ悪いんだけど!!」

詠矢「ちょいと聞きたいことがあるんですがー!」

真々田「ん?何かね?」

詠矢「そちらさんの目的はわかった。ただ、ちょいとわかんないことがありまして」

真々田「ああ、今の僕はとても気分がいい。なんでも答えてあげるよ!」

詠矢「そりゃどうもです…んで」

540: 2012/08/17(金) 07:24:29.22 ID:GCqozkLq0
詠矢「学園内のAIM拡散力場を利用してオリジナルのソフィアを作り上げるってのはわかったんですけど」

詠矢「それだと、出来上がったソフィアを外に連れ出せなくなる」

詠矢「真々田サンはここに移住して、ずっと一緒に暮らすつもりなんですかね?」

真々田「なるほど、なかなかいい質問だね」

真々田「君の言うとおり、今の状態のままだと、彼女を連れ出すことは不可能だ」

真々田「だが、今彼女に注ぎ込まれている情報を一旦固定化して、AIM拡散力場と切り離せば」

真々田「ソフィアの究極体は完成するのさ」

詠矢「へー、そんなことが可能なんですか?」

真々田「残存思念…いわゆる怨念の具現化は、昔から陰陽のお家芸さ」

真々田「情報を定着される方法も確立されている。そう難しい話じゃないさ」

詠矢「…なるほど…。じゃあ、そうしてもらいましょうか」

白井「ちょっと詠矢さん、見逃すっていうんですの?」

詠矢「いや、見逃すわけじゃないよ。真々田サンをどう扱うかは」

詠矢「ジャッジメントやアンチスキルで決めてもらえばいい」

詠矢「ただ、あのソフィアを早いことAIM拡散力場から切り離しとかないと」

詠矢「マズイと思うんだよね…」

541: 2012/08/17(金) 07:25:04.14 ID:GCqozkLq0
白井「…何か問題でも?」

御坂「…多分、あるわね…」

詠矢「…御坂サン…なんか心当たりでも?」

御坂「あの事件の時も…能力の集合体が暴走して」

御坂「巨大な怪物に変化したわ」

御坂「もし、あの人形に意識だけじゃなくて、能力者の力まで流れ込んでいるとしたら…」

上条「同じような暴走が起こる可能性がある…ってことか」

上条「それって…めちゃめちゃヤベエじゃねえかよ!」

詠矢「まあ、そういうこった」

詠矢「今のところは静観しといたほうがいいと思う」

白井「確かに理屈はわかりますが…本当に大丈夫なんでしょうか…」

詠矢「俺も、何が本当に正しいのかはわからん」

詠矢「下手に刺激するよりは安全かなって思ってるぐらいでね…」

白井「…」

白井「…仕方ありませんわね…ではしばらく監視を…」

真々田「ようし!!来たぞ!!」

542: 2012/08/17(金) 07:26:12.09 ID:GCqozkLq0
突然の叫び声に全員が振り向く。そこには人形を見つめる真々田がいる。

その人形の表面に、徐々に像が浮かんでいく。

まるで、ポリゴンにテクスチャが貼られていくように。

真々田「これで十分な情報は集まった!完成…いや、誕生だ!!」

表面の像が全身を覆いつくすと、人形は静かに目を開く。

瞳は静かに、そして鋭く虚空を捕らえる。

その姿はまさに、戦いに赴くソフィアそのものだった。

真々田「ほほう、集積されたイメージというのはこうなるのか…。少しやさしめな造形だねえ…」

上条「おい、あんた!」

真々田「んー、なんだい?」

上条「出来上がったんなら、『切り離し』ってヤツを早いこと頼むぜ!」

真々田「ああ、そうだね、急ぐとしようか…」

上条に促された真々田は、人差し指を一本立て、空中に術を組み始める。

真々田「さあ、これれで君は、僕だけのソフィアとなる…」

額から胸の辺りまで、既に術は空中に組み上げられていく。

それを待つかのように視線を下げ、うつむくソフィア。

その唇が、突然、そして静かに開いた。

543: 2012/08/17(金) 07:26:56.56 ID:GCqozkLq0
ソフィア「僕…だけ…の?」

真々田「ん?何か言ったかい?」

ソフィア「私の意志は、私…だけ…の…もの…」

真々田「…?」

ソフィア「立ちはだかるというなら…」

真々田「え…?」

ソフィア「すべての敵は、排除する!」

真々田「な…なんだって!?ソフィアはそんなこと言わない!!」

その言葉が終わるや否や、ソフィアの掌が真々田の体を突き飛ばした。

真々田「うわっ!!」

詠矢「…お、おい、何だ?」

吹き飛ばされる真々田の傍に、詠矢が駆け寄る。

詠矢「大丈夫っすか?いったい何が…って…」

真々田「違う!あんなのはソフィアじゃない!!」

詠矢が見上げた先には、強大な、怒気にも似た気を放つソフィアの姿だった。

ソフィア「戦いなさい!!…シルバーエッジ!!」

544: 2012/08/17(金) 07:27:52.33 ID:GCqozkLq0
詠矢「うお!!いきなりっ!!」

上条「あぶねえっ!!(キュイーン)」

真々田を逃がそうと身動きが取れない詠矢の前に、上条が立ちふさがった。

詠矢「すまねえ!上条サン!」

上条「…大丈夫か!詠矢!!」

上条「しかし…かなりヤバイ雰囲気だな…」

詠矢「ああ…そのようだな…どうなってんだがわからんが…」

真々田「ああ…何故だ…」

上条「暴走って、ヤツなのかもな…。だが、相手が異能の力なら…。こいつで!!」

相手の体勢が整う前に上条は突進する。躊躇無く振るわれた右拳が、ソフィアの腹部に命中する。

ソフィア「ぐっ…!!」

上条「…あ…れ?」

詠矢「…なっ!!何の反応も無い!!なんでだ!!」

詠矢「上条サンの右手なら、何らかの反応があるはずだ!!」

真々田「…彼の…右手がどうかしたのかい?」

詠矢「え?…って…ああ」

詠矢「上条サンの右手には、あらゆる異能を打ち消す力が秘められてるんだ」

詠矢「術式で造られた存在に触れて、何も起こらないっていうのが…」

545: 2012/08/17(金) 07:28:48.24 ID:GCqozkLq0
真々田「へえ…都市伝説であった『神の右手』か…実在したとはねえ…」

真々田「でも無駄だよ…」

上条「…どういうことだよ!」

真々田「彼女には術返し…ディスペルの対策が施してある」

真々田「素体は造形用の紙粘土で造ったんだけど…」

真々田「活動に要する術式は全て内部に書き込まれている」

真々田「直接触れることは不可能さ…」

真々田は自嘲気味に笑う。

詠矢「おいおい…また余計なことを…」

白井「皆さん!離れてください!!」

上条「…!」

詠矢「…!」

御坂「暴走…ねえ…。式神だかなんだか知らないけど…(バチッ)」

御坂「所詮は人形なんでしょ?…だったら…(ビリバチッ)」

御坂「だったら…これで…塵にしてあげるわ!!!(ビシュゥゥゥン)」

右手によって弾かれたコインがローレンツ力で加速する。一条の閃光が一瞬で対象に到達する。

ソフィア「んっ…!!(ガッガッガッ)」

両腕をクロスして顔の前に構え、防御体制をとる。

どこからか硬いものがぶつかる様な音が数回発せられると、閃光はソフィアの体をすり抜けていった。

546: 2012/08/17(金) 07:29:24.35 ID:GCqozkLq0
御坂「えっ!?なに今の!?」

白井「…まるで…効いていない…?」

真々田「…ははっ…なるほどね…」

真々田「今のは『ガード』だね…」

詠矢「…勝手に納得しないでもらえますか?」

真々田「そうだね…君たちには説明しておこうか?」

真々田「どうやら僕は、この学園の能力者の力を甘く見ていたようだ」

真々田「この強大な力は、ソフィアの性格や容姿だけではなく、その『意味』も具現化してしまったようだ」

白井「…意味?」

真々田「今や彼女は、実在する格闘ゲームのキャラクターなのさ!」

真々田「だからあらゆる攻撃は『ガード』すればダメージを受けない!」

詠矢「…え?じゃあ御坂サンのレールガンも!?」

真々田「恐らく、あの攻撃はコマンド技扱いだろうから、多少削られはしただろうけどね…」

真々田「致命傷になることはないさ!!」

詠矢「…なんだ…そりゃ…」

547: 2012/08/17(金) 07:30:18.48 ID:GCqozkLq0
真々田「でもねソフィア…僕が君に求めたのはそんな力じゃないんだ…」

真々田はよろよろと立ち上がる。

真々田「それに…なぜだ?君は誰彼構わず攻撃する子じゃなかったはず…」

上条「おい…アンタ、あぶねえって…!!」

真々田「術の調整が足りなかったかな?…さあ…もう一度僕の…」

ソフィアの正面に対峙し、憂いを帯びた目線を向ける真々田。

ソフィア「…」

真々田「?」

静かに真々田を見据えるソフィア。そして、直後。

ソフィア「サークルステップ!!」

技名と共に回転しながら接近すると、その手刀を真々田の脇腹に命中させる。

真々田「ぐがっ!!…が…(ドサッ)」

詠矢「ちょっ…おい!!」

あっけなく崩れ落ちる真々田

ソフィアはその姿を一瞥すると、残った人間に順番に視線を移す。

ソフィア「…私と…戦うのですか?」

御坂「…」

白井「…」

上条「…」

詠矢「…」

詠矢「…一旦…引こう。対策を考え…」

ソフィア「私は、戦う!!」

548: 2012/08/17(金) 07:30:55.84 ID:GCqozkLq0
直前に攻撃を受けた御坂に対し、ソフィアは襲い掛かった。

地面を蹴り、一気に距離を詰める。

御坂「えっ!?」

上条「御坂!!」

突然の相手の行動に反応できず、上条はその姿を追うことしか出来ない。

白井「お姉さま!」

御坂とソフィアの間に割って入ったのは、すぐ傍にいた白井だった。

ソフィア「…く…!」

白井「…!!」

体当たりで突進を止める白井。

白井「…(わたくしの、能力なら…あるいは…!!)」

ソフィア「…!!」

ソフィアの姿が何処かえと掻き消えた。

詠矢「…白井サン、ナイス判断だ!」

白井「出来る限り遠くの上空へ飛ばしました…ですが…」

上条「落っこちたぐらいで壊れてくれればいいがな…」

御坂「恐らく…無理でしょうね…」

詠矢「それでも、考える時間は出来たぜ…」

詠矢「ちと作戦を考える、仕切りなおしだ」

549: 2012/08/17(金) 07:31:45.98 ID:GCqozkLq0
(とある公園 ベンチ)

上条「さて…どうしたもんかな…」

御坂「相手は、AIM拡散力場から直接力を得てる…一筋縄じゃいかないわね」

白井「ですが…何か手を打たないと…」

上条「無差別に人を襲う可能性もあるしな…ほっとけねえ」

上条「ただ、あの真々田ってヤツも言ってたけど、何であのソフィアは好戦的なんだ?」

上条「俺もあんまり詳しい訳じゃないけど、確かそんなキャラじゃなかったはず…」

御坂「…あれじゃない?噂って、尾ひれが付くものでしょう?」

御坂「あのソフィアが、複数の人間の意識の集合体だとしたら」

御坂「必ずしも正しい姿にはならないんじゃないかな…」

詠矢「鋭いね…そのセンで間違いないかな…(ポチポチ)」

白井「何を見てますの?」

詠矢「ソフィアに対するネットの書き込みを再チェックしてるんだ」

詠矢「ここじゃ、突然人に襲い掛かったり、既に誰か頃したって話も出てる」

詠矢「こういう歪曲した噂が、あのソフィアを作り上げたんだろう…」

上条「じゃあやっぱり早くなんとかしねえと…」

詠矢「だな…」

詠矢「…」

550: 2012/08/17(金) 07:32:18.11 ID:GCqozkLq0
白井「詠矢さん…なにかお考えがありますの?」

詠矢「え?わかる?」

白井「あなたが黙って考え込んでいるときは、既に何か考えがあるときです…」

詠矢「…読まれてるねえ…まあいいや」

詠矢「んじゃ、相談だ。皆さん…」

詠矢「面倒だけどマイルドな方法と、段取りはいらないけどヤバイ方法とあるが」

詠矢「どっちにする?」

御坂「…あんたがヤバイって言うんだから…相当ヤバイ方法なんじゃないの?」

詠矢「まあ…ヤバイ方は…かなりヤバイね…」

上条「だったら…まだマシな方がいいだろ…」

白井「わたくしもそちらの方法でよろしいですわ」

御坂「いいわ、私もそれで」

詠矢「うし、わかった…とり合えず連絡からだ(ポチポチ)」

詠矢「…あ、もしもし、土御門サンかい?」

詠矢「二つほどお願いがあるんだが…ちと面倒だぜ?」

567: 2012/09/06(木) 20:40:49.72 ID:rFTJxyXc0
(とある公園)

詠矢「さあて、段取りは理解出来たかい?」

御坂「ええ」

上条「了解だ」

白井「わかりましたわ」

詠矢「うい、皆さんいい返事だ」

詠矢「あとは…土御門サンの方の進行具合だが…」

詠矢「上手く時間は稼げて、あれから小一時間ってとこか」

詠矢「まだ準備には少々かかるようだな」

白井「それはこちらで確認します」

詠矢「ああ、そだな…初春サンとの連携頼むぜ」

白井「わたくしと初春の付き合いの長さをご存知無いようで…」

白井「コンビネーションは磐石ですの」

詠矢「そいつは頼もしいねえ…」

御坂「あとは…相手がいつ動き出すか…だけど…」

白井「そうですわね…(ピピピ)あら、噂をすれば…ですわ」

568: 2012/09/06(木) 20:42:11.78 ID:rFTJxyXc0
白井「(ピ)もしもし?初春ですの?」

初春『はい!目標が動き出しました!最初に確認された場所から、あまり離れてはいません…』

白井「様子はどうですの?」

初春『監視カメラからの映像でははっきりしたことは解りませんけど…』

初春『多少の損傷は見て取れますが…。ゆっくりと移動しています』

初春『正確な位置をそちらに送ります!』

白井「よろしくですわ(ピ)」

白井「…(ピ)…早速データが来ましたわ…」

詠矢「ちょいと失礼するぜ…お、近くだねえ…」

詠矢「んじゃ、先鋒の俺が会いに行ってきますか!」

詠矢は腕を回し、屈伸し、体をほぐす。

上条「詠矢、ほんとに一人で大丈夫なのか?」

上条「やっぱり俺も一緒に行った方がいいんじゃねえのか?」

詠矢「いや、今回の俺の役回りは、時間稼ぎにしかならないだろう」

詠矢「なら、本命のほうに人を回したほうがいい」

上条「でもよ…」

570: 2012/09/06(木) 20:43:27.03 ID:rFTJxyXc0
御坂「いいんじゃないの?そもそも本人が考えた作戦なんだし…」

御坂「それぞれが、決められた役割をしっかり果たせばいいだけよ」

詠矢「いいねえ、流石御坂サンだ。よくわかってらっしゃる」

御坂「あんたも無茶しないようにね?」

詠矢「…」

詠矢「…あれま…御坂サンが俺の心配してくれるなんてねえ…」

御坂「…もう…いいじゃないの別に!こんなときに茶化さないでよ!」

詠矢「いやゴメンゴメン。あんまり意外だったもんでさ…」

詠矢「んじゃあ、せいぜい時間を稼いでくるとしますか!」

上条「詠矢、しつこいようだけど…気をつけてな…」

詠矢「おうさ、わかってるって!」

572: 2012/09/06(木) 20:44:53.83 ID:rFTJxyXc0
詠矢「…それと…白井サン」

白井「なんですの?」

詠矢「今回のキーパーソンはあんただ。よろしく頼むぜ?」

白井「…また面倒な役を押し付けられましたわね…」

白井「ですが…引き受けた以上、きっちりやり遂げさせて頂きます」

詠矢「うい、んじゃあ…準備が済んだら連絡よろしく!」

詠矢「…よしっと!」

とんとんと2~3回跳躍すると、詠矢は駆け出していった。

573: 2012/09/06(木) 20:45:34.79 ID:rFTJxyXc0
(とある街角)

ソフィアは、静かに歩みを進めていた。

周囲に視線を配りながら進むその姿は、警戒しているようにも、ただ目的を持たずさ迷っているようにも見えた。

その視線の中に、一人の人物が写った。

詠矢「よう、ソフィアサン。また会ったな…」

ソフィア「あなたは…」

詠矢「自己紹介でもしとくかな?俺は詠矢…詠矢空希ってもんだ。よろしくなー!」

ソフィア「よめや…そら…き?…」

ソフィア「私と…戦うの…ですか?」

詠矢「…(有る程度受け答えが出来るようになってるな)」

詠矢「(なら、ダメモトで試してみるか…)」

574: 2012/09/06(木) 20:46:28.76 ID:rFTJxyXc0
詠矢「いや、できる限り戦いたくはないんだけどね」

詠矢「そもそも…ソフィアサン、あんた自分の存在をどう考えてる?」

詠矢「あんたはよく言うよな?『自分の意思は自分だけのもの』って」

詠矢「でも、その自分の意思なんてどこに存在するんだい?」

詠矢「その体は真々田サンが造った紙粘土の人形、その姿は能力者の意思の集合体…」

詠矢「そんな存在が『自分』なんて名乗れるのかい?」

ソフィア「…」

ソフィアは額に手を当て、軽くうなだれる…。

詠矢「そもそも、あんたが戦う意思を持ってるのも、単なるゲーム上の設定に過ぎない」

詠矢「なら、大人しくモニターの向こう側でやってくれないかねえ…」

詠矢「こっちは現実の世界だ。日々格闘技に明け暮れてる人なんて殆どいねえ」

詠矢「誰彼構わず戦いを吹っかけられると迷惑なんでね」

詠矢「ソフィアサンが自分の意思を主張するなら…」

詠矢「こっちの世界の意思も尊重してもらいたいもんだねえ…」

575: 2012/09/06(木) 20:47:08.33 ID:rFTJxyXc0
ソフィア「…」

ソフィア「…私は……」

ソフィア「私は…!!戦う!!」

ソフィア「シルバーエッジ!!」

詠矢「うおっ!!」

突然遅いかかる飛来物を詠矢は横っ飛びで回避する。

詠矢「(くそっ!ダメだ、居直られた…)」

詠矢「(存在の矛盾を指摘すれば、少しは揺さぶれるかと思ったんだが…)」

詠矢「(相手には格闘ゲームのキャラっていう薄っぺらい自我しかねえ)」

詠矢「(自己矛盾を引き出すまでには至らなかったか…)」

詠矢「(んじゃ、当初の予定通り行きますか)」

576: 2012/09/06(木) 20:47:43.05 ID:rFTJxyXc0
詠矢「ソフィアサン、余計なこと言って悪かったな!」

詠矢「ただ、あんたの戦う意思はバッチリ感じたぜ!」

詠矢「一つお手合わせ願えないかい?」

ソフィア「…わたし…と?」

詠矢「ああ。俺も結構たしなんでるんでねえ…」

詠矢「言ってみりゃあ…制服着て戦う高校生格闘家だ」

詠矢「キャラのスペックとしては十分じゃないかい?」

拳を突き出し、詠矢は空手に近い適当な構えを取る。

ソフィア「…私は…逃げない…」

ソフィア「お相手します…」

静かに構えを取ってソフィアも呼応する。

詠矢「よっしゃあ…行くぜ!!」

577: 2012/09/06(木) 20:48:38.07 ID:rFTJxyXc0
一気に地を蹴り距離を詰める詠矢。

詠矢「どっせい!上段正拳!!」

走る勢いに乗せ、大きく振りかぶった拳を相手の顔面に振るう。

詠矢「(俺の声で技名を叫べば、相手は必殺技と認識するはず!)」

ソフィア「…!!」

ソフィアは手を交差させてガードする。

詠矢「(削れたかな?お次はっ!!)」

無理やり腰を落とし、詠矢は蹴りで相手の足元を狙う。

ソフィア「あっ…!!」

足を刈られたソフィアは見事に転倒する。

詠矢「ガードを揺さぶるのは基本っしょ?」

自慢げに語りながら詠矢は更に接近する。

詠矢「起き攻めも基本だよなあ!」

578: 2012/09/06(木) 20:49:24.17 ID:rFTJxyXc0
倒れてるソフィアの胴体に足を飛ばそうとした刹那。

ソフィア「ライジングソード!!」

詠矢「あっ!!」

詠矢の放った蹴りは相手の体をすり抜ける。

ありえない体勢から立ち上がったソフィアは、地面から沸き上がる光の柱に包まれながら詠矢の顎に向かって蹴りを放つ。

詠矢「ぐっ!!(ガッ)」

相手の駆け上がるようなつま先が、顎をガードした詠矢の腕に突き刺さる。

詠矢「…(くそっ…いってえ…。折れるかと思ったぜ…)」

詠矢「(こちとらガードすればダメージゼロってわけにゃいかねえんだよ!)」

詠矢「(しかし、さっきのはなんだ?蹴りが効かなかった…あ)」

詠矢「(もしかして、対空技の一瞬無敵か?…そんなとこまで律儀に再現すんなよ…)」

579: 2012/09/06(木) 20:50:18.01 ID:rFTJxyXc0
ソフィア「はっ!」

怯んだ隙を見逃さず、ソフィアはまた距離を詰める。

詠矢「よっ…と!」

しなるように繰り出された上段蹴りを詠矢は腕でガードする。

詠矢「ど…ぉっせい!!(ドカッ)」

詠矢は体をひねり、無理やり体勢をつくってソフィアの顔面に右の拳を打ち込む。

ソフィア「ひっ!!」

正拳が命中したソフィアは流石に怯む。

詠矢「ここで一気に詰め…ん…」

追撃を決めようとした詠矢だったが、ガードを続けていた左手が痛みで動かない。

詠矢「ぐ…が…このっ!」

体勢が整わないまま苦し紛れに中段蹴りを放つ。

ソフィア「…はっ!!」

詠矢「んぐっ…!!」

見切られた蹴りはガードされ、反撃として肩口に相手の拳が命中する。

580: 2012/09/06(木) 20:51:35.68 ID:rFTJxyXc0
詠矢「って!!っと…と(一旦距離を離して…)」

詠矢「(相打ち狙いならなんとかなるが…)」

詠矢「(それだとこっちの体が持ちそうに無いな…)」

詠矢「(なんか突破口はねえかな…このままだとジリ貧で…)」

ソフィア「やっ!!」

疲れというものを知らない相手は動きをやめない。今度は側頭部に裏拳が飛んでくる。

詠矢「いや、ちょっと…まっ…!」

上体を倒して詠矢はこれを避ける。そして…。

詠矢「(あ…そうだ。あれなら…)」

ダッキング状態で相手に接近。そのまま相手の襟首を掴む。

詠矢「よいしょっと!!」

ソフィア「…!!」

581: 2012/09/06(木) 20:52:16.72 ID:rFTJxyXc0
詠矢は相手を掴み上げて投げる。引き手もつり手も決まらない極めて適当な投げ技だが、なぜか相手は綺麗に倒れた。

詠矢「(投げ技なら…どんなに適当な組みでも決まるはず!)」

ソフィア「…」

無言で立ち上がるソフィアに接近し、今度は腕に手をかける。

詠矢「(よし、このまま投げまくって…)」

ソフィア「はっ!!」

腕を掴んだ詠矢の手が思い切り弾かれる。

詠矢「なにっ!!」

詠矢「(あ…投げ抜け!!)」

ソフィア「サークルステップ!!」

ソフィアの手刀ががら空きになった詠矢の脇腹に襲い掛かる。

詠矢「…くそっ!!」

脇腹への攻撃は致命傷となる。そう判断した詠矢は体をひねり、相手の手刀を腹筋で受ける。

詠矢「がっ!!…はあっ!!」

582: 2012/09/06(木) 20:53:26.74 ID:rFTJxyXc0
なんとか腹筋を絞めて攻撃を受けたが、内臓に衝撃が走る。思わず詠矢は膝を着く。

詠矢「ん…ぐっ…(くっそ…厳しいな…いろいろと)」

詠矢「(だが、活路は見えたぜ…)」

詠矢「さて、続き行きますかあ!!」

ソフィア「はっ!!」

距離を詰める詠矢を、ソフィアは上段の抜き手で迎え撃つ。

詠矢「よっと!!」

相手の指先をくぐりぬけ、相手の腕を取ると、すばやく体を反転させる。」

詠矢「どっせい!!一本背負い!!」

ソフィア「…!!」

詠矢「(コマンド技なら、投げ抜けは出来ない!!)」

詠矢の狙い通り、相手の体は大きく宙を舞い、地面に叩きつけられた。

詠矢「(よしっ!コマンドの投げ技は比較的ダメージがでかいはず)」

詠矢「(これで何回か押せば…)」

583: 2012/09/06(木) 20:54:41.06 ID:rFTJxyXc0
ソフィア「きゃあぁぁああ!!」

地面に倒れたソフィアの体は、悲鳴と共に軽くバウンドし、そのまま動かなくなった。

詠矢「…あれ?倒した?…」

詠矢「そんなダメージ与えてないはずだぞ?」

詠矢「…もしかして…転移で落下したときのダメージが残ってたのか?」

詠矢「いや、こいつは白井サンに感謝だな。ちと休憩すっか…」

詠矢はぺたんと地面に腰を下ろす。

ソフィア「…」

ソフィア「…私は…戦う」

何事も無かったかのようにソフィアは立ち上がる。

その姿にダメージが残っているようには見えない。

詠矢「あー…やっぱそうなるよな…2ラウンド目か…」

詠矢「(エネルギー源はAIM拡散力場…、要するにクレジットなしのフリープレイ状態か…)」

584: 2012/09/06(木) 20:55:32.36 ID:rFTJxyXc0
詠矢「よいしょっと!(ガバッ)」

勢いよく立ち上がると、詠矢は痛む腕をおして構えを取る。

詠矢「(しょうがねえ、倒すことは考えず、できる限り粘る方向で行くか…)」

詠矢「さあ!まだまだ!!」

ソフィア「はっ!」

またもソフィアは距離を詰めつつ、勢いのまま中段の前蹴りを放つ。

詠矢「いい加減慣れたぜ!」

詠矢はこれをガードせず腕で捌く。

ソフィア「はあぁぁぁあっ!」

一瞬その動きが停止したかと思うと、ソフィアに向かって光が集中する。

詠矢「…あ…(このエフェクトは、ゲージ技か!)」

585: 2012/09/06(木) 20:56:23.44 ID:rFTJxyXc0
ソフィア「エターナルステップ!!」

技名が終わるや否や、人体としてはありえない動きで次々と攻撃が繰り出される。

詠矢「…うおっ!(こんなもん捌ききれるか!!)」

両腕で上体のガードを固める詠矢だが、すぐに限界が訪れる。

詠矢「…ぐ…がっ…!(腕が…持たねえ!)」

相手の攻撃におされる形で後ずさる詠矢。

詠矢「…や…べっ…ぐ…、なっ!?」

後方を確認する余裕も無かった詠矢は、足元の段差に気づかず後ろ向き転倒する。

ソフィア「はっ!!」

ほぼ同時に、ソフィアの乱舞技のトドメの攻撃が、先ほどまで詠矢が立っている場所で炸裂した。

詠矢「…(うおっ…助かった…転倒してなかったら今頃)」

詠矢「…ん?(ブブブ)」

ズボンの後ろ側のポケットに入れておいたスマホが振動する。

詠矢「…(よし!準備が済んだか…)」

586: 2012/09/06(木) 20:57:01.25 ID:rFTJxyXc0
詠矢「…(丁度いい、このまま終わらせてもらうか…)」

詠矢「うわぁぁああ…!」

いささか棒読みな断末魔を詠矢は叫ぶ。

ソフィア「…」

ソフィア「私の…勝ち…ですね…」

詠矢「…」

詠矢「俺は…ここまでだが…」

詠矢「その道を進んだところに…」

詠矢「俺よりずっと強いやつがあんたを待ってるぜ…」

詠矢「…」

力なく倒れる詠矢。ソフィアはその姿を静かに見つめると。

ソフィア「…」

きびすを返し、無言のまま示した道に沿って歩き出した。

詠矢「…」

587: 2012/09/06(木) 20:57:36.92 ID:rFTJxyXc0
詠矢「…行った…かな?」

こそこそと周囲を確認し、ソフィアの姿が見えないことを確認すると、詠矢は上体を起こす。

詠矢「さて…連絡…(ポチ)」

詠矢「ああ、上条サンかい?そっちに行ったぜ」

詠矢「ん?いや、俺は大丈夫だ。これから休ませてもらうさ」

詠矢「戦ってみて相手の特徴はわかった、先に説明しとくぜ…」

詠矢は一通りの説明を終えると、通話を切り、ふうと小さく息を吐く。

詠矢「…俺の仕事はここまでか…」

詠矢「さあて…皆さん頑張ってくれよ…」

596: 2012/09/18(火) 21:34:34.87 ID:HRjgTOxv0
(とある空き地)

上条「詠矢は大丈夫みたいだ…相手はこっちに向かってるってさ」

御坂「そう…じゃあいよいよね…」

御坂「黒子!そっちはどう!」

二人と少し離れた位置にいる白井は、携帯とハンズフリーのイヤホンを接続し、耳にセットする。

白井「こちらはよろしいですわ!」

白井「初春もよろしいですの?」

初春『はい、いつでも!』

電話の向こうの初春が答える。

上条「よし…じゃあ、詠矢が稼いでくれた時間を無駄にしないよう」

上条「頑張んねえとな!!」

御坂「そうね…、ここでしくじったら、後でアイツに何言われるかわかんないもの…」

上条「…」

上条「…なあ、御坂」

御坂「なに?」

597: 2012/09/18(火) 21:36:00.33 ID:HRjgTOxv0
上条「なんか…またウヤムヤになっちまたな…」

御坂「へ?…あ…ああ…」

御坂「…い…いいわよ。今は事件を解決するほうが先だし…」

御坂「それに…」

上条「…?」

御坂「あんたが、『ちゃんと見る』って言ってくれたんだから」

御坂「…ちゃんと待ってる…」

御坂は顔を伏せたままつぶやく。

上条「…なんか…悪い…な…」

御坂「いいわよ別に…」

御坂「でも、絶対諦めないからね…」

上条の胸に何かが疼く。

上条「ま…まあ…」

上条「そんなに、待たせねえと…思うけど…な…」

御坂「へ?…そ、それって…どういう…」

上条「来たぞ!」

御坂「…!!」

598: 2012/09/18(火) 21:37:04.09 ID:HRjgTOxv0
二人の視界に、まっすぐに向かってくるソフィアの姿が映った。

上条「よし、もっかい確認するぞ。俺たちは白井の護衛だ」

御坂「集中する時間を稼いで、タイミングを合わせて黒子の近くに敵を誘導する…」

上条「だったな…」

御坂「黒子は今回かなり難しい転移をすることになるわ…」

御坂「しっかり集中できるようにしてあげないと…」

御坂の言葉を遮るように、既に臨戦態勢に入っているソフィアは、先に攻撃を仕掛けてきた。

ソフィア「シルバーエッジ!!」

上条「きたっ!御坂、後ろに!」

御坂「…わかった!」

上条「…!!(キュイーン)」

上条「よし…消せるな…」

上条「御坂、とり合えず俺が前に出る。お前は白井の傍についててやってくれ!!」

御坂「…とりあえずそれしかないようね…。援護するわ!」

599: 2012/09/18(火) 21:37:48.07 ID:HRjgTOxv0
御坂「ん…っ!!(ビリバチッ)…はあっ!!」

お返しとばかりに、御坂はソフィアに向かって雷槍を放つ。

ソフィア「んっ…!!」

ソフィアはこれをガードする。一瞬足が止まる。

上条「よしっ…いくぜぇええ!!」

動きの止まった瞬間を見逃さず、走りこんだままの勢を右拳に乗せる。

ソフィア「…!!(ガッツ)」

ガードの上から拳をたたきつけた為、ダメージは無い。が、更に相手を足止めすることが出来た。

御坂「(無茶しないでよね…)」

ソフィアと攻防を繰り広げる上条を、御坂は少し不安そうに見つめる。

白井「…」

目を閉じて集中を続ける白井。御坂はその姿をちらりと見る。

御坂「…黒子、どう?準備できたら言ってね?」

白井「あと少し…の筈ですわ…」

目を閉じたままの白井は静かに答える。

600: 2012/09/18(火) 21:38:26.57 ID:HRjgTOxv0
初春『到達まであと一分です!』

タイミングよく初春の声が白井の耳に届く。

白井「お姉さま…あと一分ですわ…ご準備を…」

御坂「わかった…もう時間がないわね…」

御坂「あと一分よ!!がんばって!!」

少し離れて、前面で戦う上条に御坂は叫ぶ。

上条「わかった!…っても…」

ソフィア「はあっ!」

上条「ぐっ…!!」

上条は相手を制しながら、一定の距離を保ちつつ戦っていた。

最も厄介な『飛び道具』は右手で消せる。逆に接近しすぎると対処しづらい攻撃が来る。

彼なりに考えた作戦である。

上条「(もう時間がねえ!なんとかしてコイツの動きを止めないと…)」

ソフィア「はっ!」

一瞬の隙に、ソフィアは地を蹴り宙を舞う。

上条「し…まった!!」

601: 2012/09/18(火) 21:39:27.75 ID:HRjgTOxv0
その身は上条の頭上を軽く通り越していった。

ほぼ助走も無く、普通の人間ではありえない跳躍力だが、格闘ゲームのキャラとしては一般的な性能だ。

上条「御坂!!」

御坂「えっ!」

ソフィア「シルバーエッジ!!」

まだ距離がある御坂に向けて、地面に着地する前にソフィアは技を放つ。

不意を突かれた上条は、振り返るのが精一杯で反応が出来ない。

御坂「なっ…こ…んのおぉお!(バチッ)」

御坂は咄嗟に雷槍を放ち、飛来物を相[ピーーー]る。

御坂「攻撃は、打ち消せるみたいね…えっ!?」

ソフィアが一気に距離を詰めていた。無防備な御坂の胴体に、相手の前蹴りが見舞われる。

回避できないタイミングではなかった。だが、自分がよければ後ろにいる白井に害が及ぶ。

御坂「くっ…!!」

覚悟を決めた御坂の腹部に、ソフィアの踵が突き刺さる。

ソフィア「はっ!!(ゴッ)」

602: 2012/09/18(火) 21:40:13.39 ID:HRjgTOxv0
御坂「がっ…んぐっ!」

嗚咽を上げながら御坂の体はくの字に折れ曲がる。

白井「お姉さま!」

御坂「黒子…あんたは集中して…これぐらい…なんてこと…(ゴホッ)」

上条「…!!!」

上条「てんめぇぇええ!!ナニやってんだぁぁあああ!!」

上条の感情が一気に吹き上がる。怒りのまま、力任せに振るわれた拳が、背後からソフィアに襲い掛かる。

上条「うおぉぉぉぉおおっ!!!」

ソフィア「ひっ!!(ゴキャッ)」

ソフィアの即頭部に命中した上条の拳が、その体を横方向に吹っ飛ばした。

上条「大丈夫か御坂!」

御坂「どうってこと…ないわ、それより…もう時間が!なんとか動きを…」

ソフィア「…!!」

飛ばされても転倒しなかったソフィアは、向き直り、両腕をまっすぐに突き出す。

その腕を交差させた直後、どこからとも無く現れた光が彼女の中心に集中していく。

御坂「なに?」

上条「やべえ!!」

603: 2012/09/18(火) 21:41:21.85 ID:HRjgTOxv0
ソフィア「サウザンドエッジ!!」

その名からどんな攻撃が来るかは予想できた。遠距離系のゲージ技だ。

ソフィアの位置と方向から、白井と御坂が二人とも巻き込まれるのは確実だった。

技が発動する直前、上条はその間に割って入った。

ソフィア「はあぁぁぁあっ!」

その名の通り、無数の三日月状の刃がその指先から放たれる。上条の右手がそれを迎え撃つ。

上条「ぐ…くそっ!!」

広範囲に広がる刃は、右手一本では消しきれてない。上条の全身に細かい切創が次々と浮かんでいく。

御坂「ちょ…あんた!!」

上条「下がってろ!!」

上条「ここは俺が…食い止める!!」

上条の足が、わずかに進む。左足が右足を追い越し、また右足が追い越す。

じりじりと、技を放つ相手との距離を詰める。

上条「ぐお…おぉぉぉっ!!」

傷を増やしながら上条は進む。御坂はその背中をただ息を飲んで見守る。

604: 2012/09/18(火) 21:42:27.23 ID:HRjgTOxv0
初春『あと十秒です!五秒からカウントダウン行きます!』

白井「お姉さま!あと十秒ですわ!」

御坂「十秒って!この状況で…!!」

上条「聞こえた…ぜえぇえ!!」

上条「そんだけあれば十分だ!!」

奥歯を食いしばり、痛みに耐えて上条は進む。やがてソフィアとの距離はゼロとなる。

上条「確か投げ技は…決まりやすい…ん…だよな!?」

今だ技を放ち続けるソフィアの腕を右手で掴み、そのまま強引に投げ飛ばす。

上条「うおぉぉおっ!!」

上条「御坂!!頼む!!」

御坂「…任せて!!」

ソフィア「…!!」

初春『カウントダウン入ります!5!』

技の硬直の為か、抵抗出来なかったソフィアは豪快に宙を舞う。

605: 2012/09/18(火) 21:43:06.50 ID:HRjgTOxv0
ソフィア「はっ!」

だが、冷静に対処した彼女は、転倒を避け、地面に手を付いて脚から着地する。

初春『4!』

起き上がるタイムラグを回避したソフィアは、すぐさま反撃に転じようとする。が…。

御坂「逃がすかあぁ!!」

着地した瞬間、御坂はソフィアに掴みかかって羽交い絞めにする。

初春『3!』

御坂「はああああぁぁぁああっ!!」

御坂は、ありったけの電流を相手に向かって流し込んだ。

初春『2!』

ソフィア「…!!」

普通の人間なら一瞬で消し炭になる電力を受け、流石のゲームキャラも動きが止まる

606: 2012/09/18(火) 21:43:56.21 ID:HRjgTOxv0
初春『1!』

初春『今です!!』

閉じていた白井の目がカッと開く。

白井「お姉さま!」

御坂「…黒子!!」

白井の声を受けて御坂はソフィアから体を離す。

白井「…はっ!!」

白井が身を乗り出し、伸ばした手がソフィアに触れる…と…。

ソフィア「…!!!(シュン)」

その姿は静かに掻き消えた。

607: 2012/09/18(火) 21:44:43.38 ID:HRjgTOxv0
(とある研究室 回想)

木山「質問…?」

詠矢「ええ、さっきの対策の話で、ちょっと思いついたことがありまして…」

木山「…ここまで話をした上で、もはや拒否する理由もないだろう」

木山「答えられるかどうかは別として…、話してみたまえ」

詠矢「ありがとうございます。では…」

詠矢「AIM拡散力場って…有効範囲ってあるんでしょうか?」

木山「有効範囲か…。それは、密度が高く存在する範囲、という意味でいいかね?」

詠矢「ええ、そういう意味です」

木山「…そもそも、能力者から発せられる力場である以上」

木山「能力者が多く存在するこの学園都市がその範囲と言えるな」

詠矢「なるほど…じゃあ、ここから離れれば離れるほど…」

木山「その影響は小さくなり、やがてはゼロとなるだろう…」

詠矢「…やっぱりそうですか」

608: 2012/09/18(火) 21:45:54.80 ID:HRjgTOxv0
詠矢「なら、対処のしようはありますね…」

木山「なるほどな…。もし、君の言うように、AIM拡散力場に干渉できるとしても」

木山「その対象を効果圏外に出してしまえば…」

詠矢「大事になるのは防げそうですね…」

木山「使える状況は限られるだろうが…」

木山「何も対策がないよりは、ずっといいだろうな」

詠矢「そういうことです」

詠矢「あとは私なりに、現実的な手段を考えてみるとします」

木山「うむ…」

詠矢「追加の質問は以上です。ありがとうございました!」

詠矢「では、これで…」

木山「詠矢君」

詠矢「はい、なんでしょう?」

609: 2012/09/18(火) 21:47:25.72 ID:HRjgTOxv0
木山「君は実に変わった人物だが、面白い人物でもあるな…」

木山「またわからない事があれば、いつでも聞きにくるといい」

詠矢「…え…それはー」

詠矢「重ね重ねありがとうございます。では、また何かあれば遠慮なく…」

木山「歓迎するよ。君の論旨はいい刺激になった」

詠矢「先生のお役に立てたなら嬉しいですね…」

詠矢「では、失礼します…(ガチャ)」

木山「ふむ…」

木山「今のところ、彼の考えが妄想で終わることを…」

木山「祈るべき…だろうな…」

610: 2012/09/18(火) 21:47:54.71 ID:HRjgTOxv0
(とある地下鉄 車内)

転移されたソフィアは、突然の慣性を受けて転倒した。

彼女が伏した床は移動している。

すぐさま立ち上がった場所そのは、電車の中だった。

ソフィア「…!?」

あたりを見回す。扉と窓、つり革と座席。何の変哲も無い電車の車両である。

窓の向こうに延々と流れていく黒い壁が、この電車が地下鉄であることを現していた。

ソフィア「…?」

彼女には、自分が置かれている状況が理解できていなかった。

そもそも、格闘ゲームのキャラクターが持つ希薄な知識では、無理もないだろう。

ソフィア「…」

黙って周囲を見回し続けるソフィア。ただ電車は敷かれたレールの上をかなりの速度で進んでいた。

なにもわからないまま、次の行動を起こせずにいる彼女に、突然異変が襲った。

ソフィア「…!!」

自分の指先が、徐々に白い紙粘土に変わっていく。

いや、変わっていくのではなく、戻ってくのだ。

ソフィア「…っ!!」

611: 2012/09/18(火) 21:48:46.07 ID:HRjgTOxv0
突然、足が力を失い膝が落ちる。その姿の変質は足にも及んでいた。

体の末端から力が抜けていく。もはや立ち上がることもままならない。

それは、電車が進むほどに顕著になっていく。

ソフィア「…!!!」

生まれて初めて焦りという感情を覚えた彼女。だが、それをあざ笑うように力は失われていく。

電車は進み、体の殆どの像が失われた後、ようやく停止した。

ソフィア「…」

既に言葉を発することも出来ない。限りなく紙粘土の人形に近づいたまま横たわるソフィア。

突然、外部から非常開閉装置をつかって扉が開かれた。

土御門「よっと!」

高低差をよじ登り、乗車してきたのは土御門だった。肩に新品の金属バットを担いでいる。

土御門「なるほど…これが真々田の傀儡か…」

土御門「壊すのが惜しい造形だぜい」

殺虫剤を食らった虫のように、ただ手足をばたつかせるだけの人形を眺めながら、土御門はつぶやいた

612: 2012/09/18(火) 21:54:25.71 ID:HRjgTOxv0
土御門「…学園内から、外部にある引込み線に向かって回送電車を走らせろとか…」

土御門「ヨメやんもまた無茶な依頼をするもんだ…」

土御門「ま、アレイスターに直接頼んだから何とかなったがな…」

土御門「転移能力者なら、地下鉄に直接対象を送り込める」

土御門「そのまま学園外に運び出してしまえば…このザマだ…」

土御門「既に学園の外壁から数キロは離れている」

土御門「AIM拡散力場の影響は、ほとんど無くなってるにゃあ…」

再び人形を見下す土御門。その片方の口角がつり上がる。

土御門「所詮は人形…、力の流入さえ無くなれば…物理的に破壊することは…たやすい!!」

土御門は力の限りバットを振り下ろす。人形の胴体に当たる部品に大きな亀裂が入った。

ソフィア「…!!(ゴキャッ)」

悲鳴に似たうめきが人形から響くが、もはや抵抗するすべもない。

土御門は容赦なく、バットを振るう。

何度も何度も、その先端を叩き付ける。

ソフィア「…」

身動き一つしなくなった彼女。土御門はその首筋を掴み上げる。

土御門「さあて、仕上げだぜい」

613: 2012/09/18(火) 21:55:08.87 ID:HRjgTOxv0
自分が開けた扉から、既にただの人形となった物を車外にほうり出す。

土御門「よっと…」

自らも車外に降り、土御門は近くに置いてあったホームセンターのレジ袋をまさぐる。

土御門「さあて…最後はその姿に敬意を表して…」

取り出したのはキャンプ用の着火剤。土御門はその内容物を人形に振り掛ける。

土御門「焼却…じゃなくて…火葬だぜい!」

ジッポーラーイターを着火させると、そのまま対象に向かって投げる。

何の抵抗も無く火の手が上がる。着火剤のしみ込んだ紙粘土は、あっという間に炎に包まれた。

もはや、それが人の形をしていたかどうかも定かではない。

一人の天才が生み出した最高の芸術は、ただ朽ちて崩れていった。

627: 2012/10/10(水) 00:49:49.38 ID:Qjp4uHqB0
(とある街角)

詠矢「よ…っと…」

十分な休息をとった詠矢はゆっくりと立ち上がり、腕を回し、首を回し、屈伸し体調を確かめる。

詠矢「骨折なし、大出血なし…意識は明確…いっ…て!!」

腕を伸ばそうとしたとき、激痛が走った。

両腕が赤く、鈍い痛みを放っている。

詠矢「つー…、ガードし続けた代償か…こりゃ腫れるぞ…」

詠矢「ま、しょうがねえか。こないだ氏にかけたときよりはずっとマシかね」

詠矢「さて、どうすっかな…お…(ブブブ)土御門サンか…」

詠矢「あい、詠矢だぜ…どんな感じだい?」

土御門『ヨメやんかい?こっちは上手くいったぜい』

土御門『傀儡は完全に破壊した。いま地上に上がってきたとこだ』

詠矢「そっか、ご苦労さん。さすが土御門サンだ。抜かりないねえ」

土御門『何言ってんの、俺は最後のシメに回って楽なもんだ』

土御門『ヨメやんの作戦あってこそだぜい』

628: 2012/10/10(水) 00:50:36.86 ID:Qjp4uHqB0
詠矢「ってもなあ…土御門サンと理事長サンのコネがあってのことだし」

詠矢「白井サンの正確な転移とか、初春さんの情報処理能力とか」

詠矢「誰ひとり欠けても出来なかった作戦だ」

詠矢「俺一人褒められる話じゃねえよ…」

土御門『ま、そういうなよヨメやん。俺は普通にすごいと思うぜ?』

詠矢「そっか…な?。そう言ってくれるなら素直に受けとくわ」

土御門『そういうことだ。んじゃ、俺は事後処理があるんで、また後でな』

土御門『舞夏のお茶でもご馳走するぜい』

詠矢「うい、ご苦労さん。楽しみにしてるぜー(ピ)」

詠矢「ふう…なんとか上手くいったみたいだな…」

詠矢「初春サンと白井サンにもメール打っとくか…(ポチポチ)」

真々田「…」

詠矢「…?」

629: 2012/10/10(水) 00:51:28.59 ID:Qjp4uHqB0
突然の気配に詠矢は振り返る。

そこには、憔悴しきった表情の真々田が脇腹を押さえながら立っていた。

詠矢「真々田…サン…無事だったんですか?」

真々田「…ソフィアは…僕のソフィアは…?」

詠矢「…そうですね…たぶん、塵か灰になってますよ…」

真々田「破壊したというのか?どうやって力の流入を防いだんだ?」

詠矢「まあ、いろいろと盛大な小細工をしまして、学園の外に連れ出しました」

真々田「なるほど…確かに学園外に出せば…。極めて現実的な対処法だね…」

真々田「…でも…どうしてこんなことに…。僕はただ…新しいソフィアに会いたかっただけなのに…」

詠矢「…んーと…」

詠矢「さっきまでちょっとヒマだったんで、俺なりに考えてたんですけど」

詠矢「問題は2つあったと思います」

真々田「問題…?」

630: 2012/10/10(水) 00:52:20.32 ID:Qjp4uHqB0
詠矢「ええ、まず一つは…」

詠矢「多くの人がソフィアってキャラを正確に理解してなかったってことです」

詠矢「いろんな誤ったイメージが、あの好戦的な性格を生み出してしまったんで」

詠矢「アレがなければ、一人で勝手に暴走するようなことは無かったと思います」

詠矢「まあ、みんながみんな、ソファアを真々田サンみたいに愛してたわけじゃなかった…ってとこですかね?」

真々田「…」

詠矢「それともう一つ…」

詠矢「ソフィアサンが反目したタイミングが」

詠矢「真々田サンが彼女を『自分のもの』にしようとした時、だったっしょ?」

詠矢「あんまり俺も詳しい訳じゃないんですけど」

詠矢「ソフィアって、誰かの言うことをただ聞くようなキャラじゃなかったと思います」

真々田「…」

詠矢「彼女を自分だけのものにしようとした時点で」

詠矢「真々田サンの『愛』ってヤツは、ちょっと歪んじまったじゃないかなあ…って」

631: 2012/10/10(水) 00:53:27.25 ID:Qjp4uHqB0
真々田「…」

真々田「…そうか」

真々田「僕が望んだ、僕だけのソフィアとは…、最初から手に入らない存在だったんだね…」

詠矢「そういうこと…なんですかね?細かいことはよくわかりませんけど…」

真々田「…」

真々田「…どうやら、僕の中に大きな驕りがあったようだ…」

真々田「自分の呪術と技術には絶対の自信があった。だが、いつしかその自意識に呑まれていたのか…」

真々田「…僕はいったい…どうすれば…」

詠矢「そうですねえ…まあ、僭越ですけど」

詠矢「ちょっと落ち着いて、頭でも冷やしてみたらどうですか?」

真々田「…?」

詠矢「もうすぐ、アンチスキルが来ると思います」

詠矢「真々田サンがどう扱われるかはわかりませんけど…」

詠矢「ここは素直に出頭して、公的に裁きを受けてみるってのはどうですか?」

真々田「僕が?…」

詠矢「まあ、その方がいろいろスッキリすると思いますよ?」

真々田「は…ははっ…そうだな…」

真々田「自分を見つめなおすにはいい機会かもしれないね…」

632: 2012/10/10(水) 00:54:06.91 ID:Qjp4uHqB0
詠矢「ですか…」

詠矢「んじゃまあ、俺はやることも終わったんで…」

詠矢「引き上げさせてもらいますよ」

真々田「…そうか…迷惑をかけたね…」

詠矢「ま、なんとかなりましたからいいですけどね…」

詠矢「んじゃ…」

真々田「ああ…」

背中を向ける詠矢に対し、真々田は力なく右手を上げて見送った。

お互いに、再会を望む言葉は無かった。

詠矢「さて…かえって腕冷やさないとな…いてて…」

詠矢「あ、そうだ、上条サンにも連絡しとくかな?」

詠矢「…いや…今のタイミングは…無粋かな…」

詠矢「上手いこと収まってりゃいいけど…ねえ…」

633: 2012/10/10(水) 00:55:08.65 ID:Qjp4uHqB0
(とある空き地)

上条「いてててて…」

御坂「ちょっと、大丈夫なの?」

上条「流石の上条さんでも、今回は結構ハードでしたよ」

御坂「もう…、無茶するから…」

御坂は上条に肩を貸し、二人はほぼ密着する状態で立っていた。

上条「あ、御坂、服に血が付いちまうぞ?」

御坂「いいわよ…制服なんてまた買えばいいんだから…」

上条「はー、さすが常盤台のお嬢様は言うことが違うねえ…」

御坂「なに言ってんのよこの状況で!!」

御坂「まったく…人の気も知らないで…」

上条「…いや…俺にも…ちょっと…わかったかな?」

御坂「へ?…何よ…」

上条「誰かのことを強く思う気持ちって…いうのが…」

御坂「…」

634: 2012/10/10(水) 00:56:02.79 ID:Qjp4uHqB0
上条「あんとき…御坂がソフィアから攻撃を受けたとき…」

上条「俺の中に、今まで感じたことのねえ熱い感情がこみ上げてきて…」

上条「ぜったいコイツを守らねえと…って…すっげえ力がでたんだ」

上条「他の誰かを守る時には、絶対出ない力だった」

御坂「…」

上条「力出るだけならまだいいんだけど…」

上条「これって…辛い…な?」

御坂「え?…辛い?」

上条「ああ、今回は大丈夫だったけど」

上条「もしお前に何か会ったらって思うと…」

上条「…胸の辺りがこう…な…」

御坂「…」

御坂「へ…へえ…」

御坂「少しは理解できたかしら?」

635: 2012/10/10(水) 00:57:19.82 ID:Qjp4uHqB0
上条「なんか、身にしみたっつーか…今までこんな思いさせてたなんてさ」

上条「上条さんは心の底から反省してるわけですよ」

御坂「…ま…まあ」

御坂「わかってくれれば…いい…けど…」

上条「で…さ」

御坂「…なに?」

上条「今更これ言うのは卑怯だってわかってるんだけど…」

上条「でも言わせてくれ…」

御坂「だから何よ…回りくどいわね…」

上条「…」

上条「…御坂…」

上条「俺の『特別』になってくんねえか?」

御坂「…!!!」

上条「…」

上条「…どう…かな?」

636: 2012/10/10(水) 00:58:28.44 ID:Qjp4uHqB0
御坂「…」

御坂「……」

御坂「こっ…断るわけないでしょ!!」

上条「そっか…ありがとな」

御坂「…」

上条「…御坂?」

上条「こっち向いてくれよ…」

御坂「…いや…」

御坂「今の顔は見せられない」

御坂「どうせ変だとか言うに決まってる!」

上条「意外と拘るんだなあ…」

御坂「…」

御坂「…美琴よ…」

上条「へ?」

御坂「…特別だって言うんなら…、呼び方も特別がいい…かな」

上条「…そだな…じゃあ…えっと…」

上条「…美琴」

御坂「…!」

637: 2012/10/10(水) 00:59:21.42 ID:Qjp4uHqB0
上条「…名前で呼んだだけだってのに、なんかものすごい照れるんですけど…」

御坂「…慣れてよね」

上条「お…おう…」

振り向きざま、御坂は上条の背中に手を回して、胸に顔をうずめる。

御坂「…ありがと…すっごい…うれしい…」

御坂「当麻…」

上条「…!!」

思わず頬を染めた上条。彼女の頭をそっと抱きしめる。

御坂「…」

上条「…」

御坂「…」

上条「あ…のー、美琴さん?」

上条「いつまでもこうしていたいのは山々なんですが…」

上条「上条さんはケガ人でして…そろそろ手当てしないと…」

御坂「…あっ…そ、そうね…」

638: 2012/10/10(水) 01:00:05.40 ID:Qjp4uHqB0
御坂「…あれ?」

御坂「そういえば黒子は…?」

御坂「…あ(ブブブ)…メール…黒子からだわ」

上条「…大丈夫なのか?」

御坂「えっと…『詠矢さんから連絡がありました。傀儡の破壊には成功したようです』」

御坂「『わたくしは支部に戻らなくてはいけませんのでお先に失礼します』」

御坂「『お二人は一刻も早く病院へ。手当てを受けてくださいまし』…」

上条「…そっか…まあ、無事なら…よかった」

御坂「…黒子…ありがと…ね」

上条「ん?白井がどうかしたのか?」

御坂「いーの、どうせ当麻には説明してもわからないだろうし!」

上条「なんだよそれ…ひでえな」

御坂「そんなことより、早く手当てしないと…あのお医者さんのところでいいのよね?」

上条「ああ、じゃあ行こうか…」

639: 2012/10/10(水) 01:00:49.16 ID:Qjp4uHqB0
そんな二人の姿を、柱の影から見ている人物がいた。

もはや説明の必要もないだろう。白井黒子である。

白井「(これはもう…わたくしが入り込む隙間はございませんわね…)」

白井「(ですが…お姉さまの幸せが第一です)」

白井「(あの殿方なら…きっとお姉さまを守ってくださるでしょう)」

白井「(少し…寂しいですが…仕方ありませんわね)」

柱に背を預け、目を閉じ、白井は一人小さく息を吐く。

白井「さて…わたくしも戻りませんと…」

白井「…」

その姿は空間に溶けるように掻き消えた。

誰も居なくなったその場所に、雨粒のような雫が宙を舞って落ちていった。

640: 2012/10/10(水) 01:01:44.99 ID:Qjp4uHqB0
(とあるジェラート屋)

店員「では、ご注文の商品はこちらで…」

店員「お持ち帰りはのお時間はどれくらいでしょうか?」

詠矢「えっと…ちょいと読めないんで…1時間ぐらいで見てもらえます?」

店員「はい、では…」

店員は袋に多めのドライアイスを入れてくれた。

詠矢「んじゃ、これで…」

店員「ありがとうございました!」

詠矢「ふう…さてと…」

右手に袋を下げた詠矢。何処かへと歩き出す。

詠矢「…まだ時間あるかな?」

詠矢「まあ…適当にぶらつきながら歩けばいい時間になるだろ…」

詠矢「おりょ?」

街角を進む詠矢の視界に、見知った人物が写った。

641: 2012/10/10(水) 01:02:31.76 ID:Qjp4uHqB0
御坂「…あ」

詠矢「お、御坂サン。こないだはご苦労さん!」

御坂「…あんたも大変だったわね」

御坂「また、派手に包帯してるわね…大丈夫なの?」

詠矢「いやいや、両腕がシップまみれなんでねえ…」

詠矢「見た目悪いから上から巻いてるだけさ。たいしたことねえよ…」

御坂「そう…ならいいけど…」

詠矢「ま、そういうわけでそのうちまたなー」

すれ違い、歩き去ろうとする詠矢だが。

御坂「…あ…そうだ…」

詠矢「ん、どしたね?」

御坂「まだ…話してなかった…かな?」

詠矢「なんだい?」

御坂「えっと…その…なんていうか…」

詠矢「…?」

御坂「上手くいった…ていうか…その…」

642: 2012/10/10(水) 01:03:18.71 ID:Qjp4uHqB0
詠矢「…ああー、上条サンのことか…」

詠矢「ナルホド、ちゃんと告白とかしてくれたかい?」

御坂「うん…一応…かな…」

詠矢「おうおう、そいつはおめでとさん!」

御坂「ありがと…」

御坂「…あんたには…世話になったし…」

御坂「…一応…お礼ぐらい言わないとって…」

詠矢「ああ、そいつはいい心がけだねえ…」

御坂「…え、えっと…とにかく…ありがとう」

詠矢「まあまあ、どういたしまして…」

詠矢「…」

詠矢「あ、そうだ」

御坂「…なに?」

詠矢「お礼ついでにさ、一つお願い聞いてくれねえ?」

御坂「…え?…いい、わよ?…変なのじゃなきゃ…」

643: 2012/10/10(水) 01:04:12.67 ID:Qjp4uHqB0
詠矢「別に変じゃねえよ…簡単なことさ」

詠矢「俺の呼ばれ方…なんだけどさ?」

御坂「へ?」

詠矢「いつまでも『あんた』じゃ問題なくね?一般常識的に」

御坂「あ…」

詠矢「今までは『得体の知れないやつ』だったかもしれないけど」

詠矢「これからは、『彼氏の友達』だぜ?」

詠矢「いろいろと問題なくねえかなあって…ね?」

御坂「たしかに…そうよね…」

御坂「でも…なんて呼べば…?」

詠矢「白井サンも佐天サンも初春サンも、普通にさん付けだけどね」

詠矢「同じでいいんじゃねえの?」

御坂「…じゃあ、詠矢さん…で?」

詠矢「あー、うんうん。御坂サンの口から聞くといい響きだねえ」

御坂「どういう意味よそれ…」

644: 2012/10/10(水) 01:05:09.52 ID:Qjp4uHqB0
詠矢「いやいや、新鮮だって言うこったよ」

詠矢「でもまあ…しばらく上条サンとの会話のネタには困ることねえだろうなあ…」

御坂「え…って…なに聞くつもりよ(カァ)」

詠矢「別に変なことは聞かねえよ…。ノロケ話でも十分に堪能するさね…」

御坂「…(カァァ)」

御坂「う、うるさいわね!それってプライバシーの侵害よ!!」

御坂「とにかく、お礼は言ったからね!」

詠矢「ははっ…確かに承りましたよー」

詠矢「んじゃ、また。ちょいと行くことがあるんでね」

御坂「…じゃ」

詠矢「うい…まったなー」

手の甲を振りながら、詠矢は立ち去っていった。

645: 2012/10/10(水) 01:06:04.02 ID:Qjp4uHqB0
(とある研究室)

詠矢「(コンコン)どうも、詠矢です」

木山「来たか…入りたまえ…」

詠矢「失礼します…(ガチャ)」

木山「しばらくぶりだね。また何か質問でもあるのかな?」

詠矢「いえ、今日はお礼です」

詠矢「ちょいと面倒な事件があったんですけど…」

詠矢「先生のおかげで解決できました」

木山「事件…か…」

木山「しかし、私には特に何か貢献した覚えはないが…?」

詠矢「いえいえ、先生が私の妄想レベルの考えを裏づけてくれましたので…」

詠矢「実際に行動に移す自信が出来ました」

詠矢「ありがとうござます。これ、どぞ…」

詠矢は持ってきた紙袋を差し出す。

646: 2012/10/10(水) 01:06:52.11 ID:Qjp4uHqB0
木山「ほう…これは?」

詠矢「ジェラートです。美味しいらしいですよ?」

詠矢「なんせ、常盤台のお嬢様御用達なんで、間違いないかと…」

木山「先ほども言ったが、土産をもらうほどのことはしていないのだが…」

木山「せっかくだから頂こうか…君も一つどうだね?」

詠矢「えー、じゃあ、頂きます…。実はまだ食べたことないもんで…」

木山「味の感想が伝聞であった時点でわかっていたよ…好きなのをとりたまえ」

詠矢「では遠慮なく…」

木山「適当に腰を下ろしてくれ…立って食べるわけにもいかないだろう」

詠矢「はい、失礼します」

詠矢は紙袋の中からバニラと書かれたカップとスプーンをとると、近くのソファに腰を下ろした

木山「さて…また興味深い言葉が出たな…。事件とは、少々穏やかではないようだね」

詠矢「ええ…やっぱり、ちゃんと報告しておいたほうがいいですよね…」

詠矢「事件としての詳細は話せないんですけど…」

647: 2012/10/10(水) 01:07:55.02 ID:Qjp4uHqB0
詠矢「想定された、魔術によるAIM拡散力場への干渉が…実現してしまいました」

木山「…なるほど…君の想像通りになったわけか」

詠矢「実現して欲しくはなかったんですけどね…」

詠矢「まあ、今回はいろいろ事情がありまして…、大事にはならなかったんですけど」

詠矢「この学園に対して敵意を持つ者に対して」

詠矢「格好の攻撃手段を明示してしまったことになるでしょうね」

木山「…ふむ…。そうなるな…」

木山「学園自体が攻撃対象となるとなると…もっと大規模な対策が必要となる…」

木山「私も、もう少し本格的に検証してみるしよう」

木山「もっとも、魔術に関しては何もわからないのでな…限界はあるだろうが…」

詠矢「よろしくお願いします」

詠矢「私の妄想ではたかが知れてますので」

648: 2012/10/10(水) 01:09:12.64 ID:Qjp4uHqB0
木山「まあ、そう卑下するものではない…」

木山「君のような常識にとらわれない着眼点も時には必要なものだぞ?」

詠矢「ならいいんですけどね…」

木山「論理や法則といったものは、妄想に近い想定から一つ一つ議論を積み上げて完成させるものだ」

木山「考えることをやめない限り…答えは必ず出るものだよ…」

詠矢「…なるほど…。そりゃいいですね…」

詠矢「考えることが、必ず答えにたどり着けるなら」

詠矢「…俺の『論証』にも限界は無いってことですからね…」

649: 2012/10/10(水) 01:10:17.65 ID:Qjp4uHqB0
以上となります。
この話はこれで完結となります。長い間ありがとうございました。

650: 2012/10/10(水) 01:11:23.09 ID:k3rtBk9/o
乙乙

655: 2012/10/10(水) 06:55:55.30 ID:iy/HIY8Oo
正直詠矢が戦ってるよりも日常パートの方がよかったりするからちょっと期待しちゃう

656: 2012/10/10(水) 07:02:08.09 ID:Qjp4uHqB0
>>655
恐らく短編は日常がメインとなると思います。

あと、リクエストというか、見たい展開とか頂ければ参考にさせて頂きます。

引用: 絶対反論(マジレス)こと詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)は落ちていた。