902: 2013/03/08(金) 17:39:01.80 ID:+zLpZ5mJ0
こんばんわ、1です。
遅くなってしまいましたが、短編が書きあがりました。
今回も前後編となります。まずは後編を投下します。
それでは始めます。

前回:【禁書目録】詠矢「俺が…ジャッジメント?」

903: 2013/03/08(金) 17:39:47.34 ID:+zLpZ5mJ0
(学園都市 とある場所)

??「…ふむ」

??「『鳴子』が切れてるねえ」

夕闇迫る学園都市の路地裏。人通りのほぼ無いこの場所に一人の人物が立っていた。

傍らには、女性を一人伴っている。

??「…」

その人物は虚空に指を泳がせ、何かを確認する。

??「そう時間は経ってない…か…」

??「今から追えば間に合うかもしれないな」

??「恐らく、今この事態に気づいてるのは僕だけだろう」

??「対処する必要があるね」

??「じゃあ、行こうか」

促されると、傍に立つ女性は小さくうなづく。

二人は、何処かへと立ち去った。
創約 とある魔術の禁書目録(10) (電撃文庫)

904: 2013/03/08(金) 17:40:27.93 ID:+zLpZ5mJ0
(ジャッジメント177支部)

詠矢「じゃあ、やっぱり魔術に対して防御策をとるってのは無理か」

白井「その点は、我々の力ではどうしようもありませんわ」

詠矢「やっぱりそうなるか…」

初春「どう対処すべきか、見当もつきませんし…」

詠矢「んー…、わかってたこととはいえ、無力感あるなあ」

佐天「…」

支部の中には4人。そのうち3人はテーブルを囲み、過去の資料を見ながら議論を続けていた。

一人離れて座る佐天は、黙ってその様子を横目で眺めている。

白井「確かにおっしゃるとおりですが…」

詠矢「なんともならんのも事実だわな」

詠矢「このことに関しては、これ以上考えても無駄か…」

初春「ちょっと悔しい…ですけどね」

佐天「…」

佐天は、持ち込んだペットボトルの紅茶を少し喉に通した。

905: 2013/03/08(金) 17:41:34.90 ID:+zLpZ5mJ0
詠矢「…ん」

詠矢「あ、そうだ、今日はワッフルにしてみたんだけどさ…」

詠矢はどっからともなく紙袋を取り出す。

初春「わあ!ありがとうございます!」

白井「いつも申し訳ありません…。頂きますわ」

詠矢「佐天サンもどうだい?」

佐天「あ、頂きまーす!」

腰を上げ、テーブルに並べられたワッフルを手に取る佐天。

早速口に運ぶ。

佐天「わ、おいしいですね!」

詠矢「おう、そうかい。そいつはよかった」

初春「いただきまーす!(モグ)」

初春「詠矢さんのお菓子っていつも美味しいですけど…」

初春「どこで買ってるんですか?」

詠矢「ん?いや、ネットで調べて買いに行ってるよ」

詠矢「俺、食べ物の味とかあんまりわからんし…」

佐天「へー、そうなんですか」

906: 2013/03/08(金) 17:42:29.89 ID:+zLpZ5mJ0
支部の雰囲気が和み始めたころ、突如扉が開いた。

固法「ただいま…」

初春「あ、おかえりなさい!」

白井「パトロールご苦労様です。固法先輩」

固法「ふう、今日は特に何も無かったわね…」

詠矢「ご苦労さんっす、固法サン」

固法「あら、詠矢君、こんにちわ」

詠矢「地味に久しぶり…かな?」

固法「そうね…偶然だけど、行き違いが多いわね…」

固法「あ、そういえば…詠矢君、やっぱりジャッジメントはやらないの?」

詠矢「あー、いや、それは正式にお断りしました」

佐天「…(ジャッジメント…?詠矢さんが?)」

詠矢「お誘い頂いたのはありがたいんだけどねえ」

固法「そう…それは残念だわ」

固法「仲間が増えると思って期待してたのよ?」

詠矢「へ?仲間って…この支部に配属になるんかい?」

詠矢は回答を促すように白井の方を見る。

907: 2013/03/08(金) 17:43:32.14 ID:+zLpZ5mJ0
白井「ご覧の通りこの支部には殿方の力が足りませんので…」

白井「詠矢さんを推薦するときに、この部署への配属を嘆願するつもりでしたわ」

詠矢「へー…そうなんだ…」

詠矢「だったら…考え直してみても…いいかねえ」

白井「…ちょっと詠矢さん!どういうことですのそれは!」

詠矢「あ、いやいや、冗談だよ冗談。うん、男に二言は無いって」

固法「あらあら、気が変わったらいつでもどうぞ。歓迎するわよ?」

佐天「…」

詠矢「あーそうだそうだ、思い出した」

詠矢「ちょっと相談したことがあったんだよ。固法さんも戻ってきたし丁度いいや」

白井「ごまかしてませんこと?」

詠矢「違う違う、マジの話だって」

白井「…なんですの?」

908: 2013/03/08(金) 17:44:10.51 ID:+zLpZ5mJ0
詠矢「こないだ捕まえた奴もそうだけどさ」

詠矢「スキルアウトっても、無能力者ばっかりじゃないんだよな?」

固法「そうね。能力者の中にも、この学園のあり方に反感を持つ人はいるわ」

白井「中には、ただ暴れたいだけの不心得ものもおりますが…」

詠矢「んー、やっぱそうか…」

詠矢「ちょっと考えたんだけどさ、そういう奴らのリストアップって出来ないのかな?」

白井「確かに…過去の犯罪履歴を見れば、有る程度は絞り込めるかもしれませんね」

初春「それを、バンクの情報と照合すれば…」

初春「時間はかかるかもしれませんけど、出来るかもしれませんね」

詠矢「事前に相手の能力がわかってればさ」

詠矢「あんな低レベルの能力者に、白井サンが遅れを取ることもないわけっしょ?」

詠矢「だったらさ、リスト作って、有る程度頭に入れとけばいいんじゃねえかって…ね」

白井「なるほど…」

白井「本来は、バンクのデータは膨大すぎてとても整理しきれるものではありませんが…」

初春「私が、なんとかしてみせます!」

佐天「…」

909: 2013/03/08(金) 17:44:56.20 ID:+zLpZ5mJ0
佐天は再びテーブルを離れ、一人離れた椅子に腰を下ろす。

詠矢「お、いい返事だねえ…」

詠矢「まあ、通常業務の合間に、コツコツやればいいんじゃないのかな?」

その後しばらく、テーブルを中心に議論は続く。

流れてくる会話が、佐天の右耳から左耳に流れていく。

佐天「…」

佐天は、ペットボトルを勢い良くあおると、残った紅茶を流し込んだ。

佐天「よしっ」

空になったボトルを鞄にしまうと、佐天はおもむろに立ち上がった。

佐天「えっと、お先に失礼しますね?」

初春「あ、帰っちゃうんですか?」

佐天「うん、また来るよ」

白井「ええ、ではまた…」

910: 2013/03/08(金) 17:45:37.22 ID:+zLpZ5mJ0
固法「またね?」

詠矢「うーいっす」

佐天「それじゃまたー!」

最後にいつもの調子で声を上げると、佐天は部屋を後にした。

初春「どうしたんだろ、なにか予定でもあったのかな…」

詠矢「…」

詠矢「…んー」

詠矢は、一人じっと、彼女が出て行った扉を見つめる。

白井「どうかなさいましたか?」

詠矢「ん?いや…ねえ…」

911: 2013/03/08(金) 17:46:31.97 ID:+zLpZ5mJ0
(とある公園)

佐天「(やだなあ、なんか逃げてきたみたいじゃない)」

いつもの公園、いつものブランコ。佐天は一人揺られていた。

佐天「(でも、なんか居づらかったのは事実かな)」

佐天「(ああゆう話になると、入り込めないもんね)」

佐天「(まあ、しょうがないか。ジャッジメントじゃないんだし)」

佐天「…」

佐天「(それだったら、詠矢さんもそうだよね)」

佐天「…んー」

特に力を入れたわけでもなく、ブランコが軽く前後に揺れる。

佐天「(なーんか、らしくないなあ)」

佐天「(なに考え込んじゃってるんだろ)」

佐天「…」

視線は、自然と地面に向かう。

詠矢「よう」

佐天「えっ!」

912: 2013/03/08(金) 17:47:10.57 ID:+zLpZ5mJ0
突然、聞き覚えの有る声をかけられ、佐天は勢いよく顔を上げた。

詠矢「どしたね?」

佐天「詠矢さん…」

詠矢「なにか考え事かい?」

佐天「えっ!?…まあ、そうですね…」

佐天「詠矢さん程じゃ、ないですけど…はは」

佐天「でも、どうしてここに?」

詠矢「ん?前に会ったのもここだったから」

詠矢「また立ち寄るんじゃないかと思ってさ」

佐天「それは、バッチリ読まれちゃってますね」

詠矢「大当たりだねえ。まあ、探し回らずに済んでよかったぜ」

佐天「え?じゃあ、私を探して…」

詠矢「実はさ、重大なことを思い出して」

佐天「重大…ですか?」

913: 2013/03/08(金) 17:47:49.15 ID:+zLpZ5mJ0
詠矢「うん、ほら、ジェラート、約束してたっしょ?」

詠矢「時間あるなら、いまからどうだい?」

詠矢「忘れてたお詫びに、ご馳走させてもらうぜ」

佐天「…あっ」

佐天「…そうでした…そうですよ!」

佐天「詠矢さん、あれから全然連絡くれないじゃないですか!」

詠矢「いやいやー、これがまた元ぼっちとしてだね」

詠矢「女の子をお誘いするってのには、勇気がいるわけなんですよ」

佐天「なんですかそれは…むー」

詠矢「まあまあ、過去の件は水に流してもらってだな、どうだい?」

佐天「行きます!とーぜんですよ!」

914: 2013/03/08(金) 17:48:17.06 ID:+zLpZ5mJ0
佐天はブランコから飛び降りる。

佐天「今日は力の限り食べたい気分ですから、覚悟しといてください!」

詠矢「さっきワッフル食ったばっかりなのにいいのかい?」

佐天「いいんです。ジェラートは別腹です!」

詠矢「なんだよそれ、お菓子のジャンルごとに腹が分かれてんのかい」

詠矢「(ま、元気出たみたいで良かった)」

苦笑しつつも、詠矢は先行する佐天の後を付いていった。

915: 2013/03/08(金) 17:49:01.79 ID:+zLpZ5mJ0
(とある店)

詠矢「それほんとに食うのかい?」

佐天「もちろんですよ!これぐらい軽いです!」

佐天の目の前には、積み上げられたジェラートの山が鎮座していた。

詠矢「まあ、食えるんならいいけどさ…太るぜー」

佐天「う…。え、でも、いつもこんなに食べてるわけじゃないですし」

佐天「ほら、育ち盛りですし…大丈夫ですよ!!」

詠矢「そっか?」

詠矢「(そういやあ、まだ中一なんだよなー)」

なんとなく、詠矢の目線が佐天の顔に注がれる。

佐天「…?どうかしましたか?」

詠矢「いや…別に…」

詠矢「さて、溶けないうちに食おうぜ」

佐天「はーい!」

916: 2013/03/08(金) 17:49:56.09 ID:+zLpZ5mJ0
元気な声とともに、佐天はジェラートを景気良く口に運んでいく。

詠矢も、カップの中身にスプーンをつきたて、口に含んだ。

佐天「…(ムグムグ)」

詠矢「…(ムグ)」

佐天「んー、やっぱり美味しいですねえ…」

詠矢「相変わらず美味いな」

佐天「…(ムグムグ)」

詠矢「…(ムグ)」

佐天「そうだ、詠矢さん」

詠矢「ん?なんだい?」

佐天「さっき聞いたんですけど、ジャッジメントやるつもりだったんですか?」

詠矢「いや、やってみないかって誘われてたんだよ。白井サンに」

佐天「へっ、詠矢さんの方が誘われてたんですか?」

詠矢「まあ、そうだね」

917: 2013/03/08(金) 17:50:42.31 ID:+zLpZ5mJ0
佐天「えー、じゃあ…どうして断っちゃったんですか?」

佐天「詠矢さんがジャッジメットって…バッチリじゃないですか!?」

詠矢「なんか上条サンにもおんなじこと言われたなあ」

詠矢「まあ、なんちゅうかさ」

詠矢「…」

佐天「…?」

詠矢「今のバイト時間削ると、生活できねえからなあ」

佐天「あ、そうですね。ジャッジメントに入ると、使える時間が減っちゃっいますもんね…」

詠矢「生活費がバイト頼みだしね。まあしょうがないよ」

佐天「なるほどなるほど…。あれ?でも生活費って…仕送りとかはもらってないんですか…?」

詠矢「ん、ないよ。さすがに学費は払ってもらってるけどね」

詠矢「実家もそんなに楽じゃなくてさ。あんまり甘えられなくてねえ」

佐天「…それは…大変…ですね」

詠矢「まあ、その分気楽だけどね…」

佐天「そうなんですか…」

佐天「んー…(ムグ)」

佐天「(ムグムグ)」

918: 2013/03/08(金) 17:51:26.08 ID:+zLpZ5mJ0
なにやら考え始めると、佐天は食事を再開する。

佐天「(やっぱり、私って詠矢さんのこと何も知らないんだよなあ…)」

詠矢「(ムグ)」

佐天「…(ムグムグ」

佐天「…(よしっ!)」

佐天「詠矢さん!」

詠矢「ん?なんでい」

佐天「これから、時間ありますか?」

詠矢「まあ、今日はバイトもねえし…ヒマだぜ?」

佐天「じゃあ…ですね」

佐天「これからどっか、遊びに行きませんか?」

詠矢「…」

919: 2013/03/08(金) 17:52:08.58 ID:+zLpZ5mJ0
詠矢「…はい?」

詠矢「遊びにって、俺と?」

佐天「他に誰がいるんですか…」

詠矢「…」

詠矢「あー、うん、ゴメン、そうだよな」

詠矢「いやもうそりゃ、行こう。断る理由なんぞ微塵も無いし」

佐天「ふふっ、ありがとうございます!」

詠矢「いやいや、お礼言われる話じゃ…」

佐天「じゃあ、早くこれ食べちゃいましょうか」

佐天はあらためて、ジェラートにスプーンをつき立てた。

920: 2013/03/08(金) 17:52:54.11 ID:+zLpZ5mJ0
(ジャッジメント177支部)

初春「…(カタカタ)」

白井「…」

固法「…」

監視カメラの画像チェック、報告書の作成、資料のチェック。

3人はそれぞれの業務についていた。

初春「…(カタカタ)」

初春「…(カタカタ)…?」

初春「…あれ?」

白井「どうかしましたの、初春?」

初春「この通り…人が居ませんね…」

白井「通りに人が居ないことなど普通ではありませんの?」

初春「この道はそんなに広くはないんですけど」

初春「いつもは結構人通りがあるんです…」

固法「…今の時間だと、まだ下校する人がいるはずだから…」

固法「誰も居ないっていうのは少しおかしいわね」

921: 2013/03/08(金) 17:53:24.31 ID:+zLpZ5mJ0
白井「なるほど…そういことですの。よく気づきましたわね?」

初春「へへ…、最近カメラの監視することが多くて、ちょっと覚えちゃいました…」

白井「ですが…確かめるほどのことでしょうか…」

固法「気にはなるわね…」

固法「調べるだけなら、行っておいた方がいいんじゃないかしら?」

白井「確かに、嫌な予感はしますわね」

白井の脳裏にはなぜか、先ほどまで話していた『魔術』の二文字が浮かんでいた。

白井「では、わたくしが参ります」

初春「じゃあ、地図出しますね(カタカタ)」

白井「…把握できましたわ…では早速(シュン)」

その姿は即座に掻き消える。

922: 2013/03/08(金) 17:54:06.70 ID:+zLpZ5mJ0
(とあるゲームセンター)

佐天「やっぱりここが定番ですね」

詠矢「うん。異論はねえな」

突然遊びに行くとになったわけだが、あてのない二人は、無難な場所の前に立っていた。

詠矢「佐天サンは良く来るのかい?」

佐天「ええ。御坂さんとかと一緒に。コインを補給するとかなんとかで」

詠矢「あー、それ窃盗だぜ?」

詠矢「だいたいさあ、レールガンの弾にするんだったらコインみたいな薄っぺらいものより」

詠矢「パチンコ玉みたいな球形のもののほうが弾道が安定するはずなんだんだけどなあ」

佐天「…詠矢さん、どーしても考えるほうに行っちゃうんですね」

詠矢「…あ」

詠矢「ゴメンゴメン。じゃあ入るかね」

特に憤慨した様子もなく、くすくす笑いながら佐天は詠矢の後を付いていく。

923: 2013/03/08(金) 17:55:48.62 ID:+zLpZ5mJ0
詠矢「ああ、そういえばここ、前にも来たなあ」

佐天「あれ?そうなんですか?」

詠矢「通りすがりに入ったっけかな…そんとき偶然初春サンと会ってねえ…」

佐天「そういえば、そんな話を初春がしてたような」

詠矢「まあ、他にもいろいろとあったんだけどね…」

佐天「いろいろですか」

詠矢「うん、いろいろね」

言葉を濁す詠矢を横目で見つつ、佐天は周囲に並ぶクレーンゲームの景品のチェックを始めた。

佐天「えーっと…」

詠矢「へえ…そういうのチェックしてるんだ」

佐天「ええ。入れ替わりが激しいですし、意外とかわいいものがあったり、侮れないんですよ」

詠矢「そうなんか。…なるほど」

詠矢「昔はぬいぐるみばっかりだったけど、最近はいろいろ釣れるんだねえ」

周囲の筐体を見回しつつ、詠矢は一人つぶやいた。

佐天「あ、これいい、かわいい!!」

詠矢「おう?」

924: 2013/03/08(金) 17:56:40.16 ID:+zLpZ5mJ0
佐天の声に反射的に振り返る詠矢。

詠矢「んーっと、これ、髪留め…バレッタってやつか」

筐体の中、アクリルの壁の向こうに、彼女の視線が注がれている景品はすぐにわかった。

リボンの形を模した樹脂製の髪留め。鮮やかな青色だ。

佐天「ねえねえ詠矢さん、いいと思いません!?」

詠矢「そうさなあ、デザインはセンスがねえもんでよくわかんねえけど」

詠矢「色はいいな。綺麗な青だね。ターコイズブルーってやつか…」

佐天「では、早速チャレンジ…」

サイフから百円玉を取り出そうとする佐天。

詠矢は、じっと筐体を見つめ少し考えると、佐天を制した。

詠矢「…ダメだな」

佐天「えっ…」

詠矢「取れないぜ、多分」

佐天「そ…そうなんですか?」

詠矢「アームの先端が合ってない。スプリングが抜いてあるんじゃないかな」

925: 2013/03/08(金) 17:57:28.90 ID:+zLpZ5mJ0
詠矢「先端の爪も水平になってない。恐らく引っ掛けても滑り落ちる」

詠矢「それに、小物を掴むにしてはそもそもアームがでかすぎる」

佐天「…」

佐天「詠矢さん…何でそんなことまで知ってるんですか」

詠矢「ん?いや、しばらく凝ってた時期があってね」

佐天「あったんですか…」

詠矢「あったんだよ」

詠矢「そうさなあ…。アレなんかどうだ?」

詠矢は壁際においてある別の台を指差した。

佐天「あれって…引っ掛けて取るやつですね」

詠矢「そうそう。ぶら下がってる紐を爪で引き摺り下ろすタイプだ」

詠矢「アレなら目押しが利くから頑張れば取れるぜ」

佐天「あ、丁度同じのがありますね」

詠矢「よし、んじゃ久しぶりに頑張ってみるか!」

詠矢はおもむろにコインを投じる。

926: 2013/03/08(金) 17:58:17.43 ID:+zLpZ5mJ0
佐天「頑張ってください!」

詠矢「よ…、と…」

久しぶりのせいもあってか、操作には少々精彩を欠き何度が的を外すものの、800円ほど使ったところで

見事目的の髪留めを落とすことに成功した。

佐天「わ!やりました!」

詠矢「こりゃ買ったほうが安いレベルだねえ」

詠矢は台から戦利品を取り出すと、そのまま佐天に手渡した。

詠矢「ほい」

佐天「ありがとうございます!…って…あ、お金…」

詠矢「ん?あ、いいんだよ。俺は取るのが好きで景品は要らない人なんだ」

佐天「そうなんですか?…じゃあ…頂いちゃいます」

詠矢「うい」

佐天「えっと…じゃあ、付けてみていいですか?」

詠矢「まあ、俺に了解取るまでも無く…いんじゃね?」

佐天「…ではでは」

佐天は両手でで髪を束ね、まとめて髪留めをはさもうとする。

が、上手くいかない。

927: 2013/03/08(金) 17:58:54.12 ID:+zLpZ5mJ0
佐天「んしょ…やっぱり鏡が無いと…あっ」

詠矢「っと!?」

髪留めを落としかける佐天。詠矢は思わず手が伸びるが、それをすぐに引っ込める。

詠矢「おっと…っと」

佐天「あれ?…どうしました?」

詠矢「いや、思わず手が出そうになってね…」

佐天「…?それが何か、いけない…ですか?」

詠矢「女の子の髪に、不用意に触るもんじゃないっしょ」

佐天「…」

佐天「大丈夫ですよお。それぐらい気にしなくても…」

詠矢「そうなんかな?」

佐天「じゃあ逆に、手伝ってもらえますか?」

佐天「髪をまとめたところを、留めてもらえます?」

詠矢「お、おう…」

佐天は背中を向け、自らの髪を束ねる。

詠矢はおずおずと手を伸ばし、髪留めをはさんだ。

928: 2013/03/08(金) 17:59:34.96 ID:+zLpZ5mJ0
詠矢「これでいいかな?」

佐天「はい!」

佐天は髪をなびかせながら振り返る。

佐天「どうですか?」

詠矢「…」

詠矢「…うん、似合うよ…すごく」

佐天「ほんとですか?うれしいです!」

詠矢「うん…いいよ…うん」

しばし、佐天の姿をぼおっと眺める詠矢。

佐天「…詠矢さん…どうかしました?」

詠矢「ん?あ、いや、なんでも…」

佐天「じゃあ、次は…アレやりましょうか!」

詠矢「え、ちょっと…アレは…」

歩き出した佐天の後を、苦笑しながら詠矢はついていく。

彼女が向かったのは、『神拳』の対戦台だった。

929: 2013/03/08(金) 18:00:27.22 ID:+zLpZ5mJ0
(とある学生寮)

佐天「今日はありがとうございました。楽しかったです!」

佐天「また送ってもらっちゃって…」

詠矢「いやいや、そんな礼言われることじゃねえしさ」

詠矢「さすがにここへの道も覚えたしねえ」

佐天「ふふっ、確かに、今日は間違わないで来れましたねえ」

詠矢「ん、まあ、道も覚えたことだし。またな」

佐天「はあい。じゃあ、またどこか行きましょうね?」

詠矢「うい。んじゃな」

微笑みつつ見送ってくれる佐天に別れを告げると詠矢は歩き出す。

詠矢「…」

背中を丸め、いつものごとくなにやら考えながら詠矢は歩く。

詠矢「んー…」

930: 2013/03/08(金) 18:01:28.99 ID:+zLpZ5mJ0
詠矢「(女の子の首筋ってのは、キレイなもんだねえ)」

詠矢「(なんか、目に焼き付いちまってるな)」

詠矢「(俺って、フェチの気でもあったのかね?)」

詠矢「…」

詠矢「(参ったねどーも…どうしたもんかね)」

詠矢「…」

詠矢「…あれ?」

詠矢「…どこだここ?」

詠矢「考えごとしながら歩いてたから迷ったか?」

詠矢「…いや…違う…そんなレベルじゃねえ」

詠矢「いくらなんでもこんな見たことも無い場所に…」

詠矢「くそっ、誰も居ねえ。この通りには俺一人だ」

詠矢「明らかにおかしい。何が起こってるんだ?」

詠矢「ぐっ、頭が…考えがまとまらねえ」

頭が重い、思考が乱れる。詠矢は額に手を当てて奥歯をかみ締める。

931: 2013/03/08(金) 18:02:12.81 ID:+zLpZ5mJ0
??「…」

どこから現れたのか、詠矢の視界に全身をコートとフードで覆った人物が現れた。

詠矢「どちらさんで?」

??「名乗る必用は無い」

詠矢「すごい聞きたいんですけどね」

詠矢「この状況を作り出してるのはそちらさんですかい?」

??「知る必要はない」

??「同行して頂こう」

詠矢「そういうのは一般的に誘拐って言いませんか?」

??「これ以上の会話は必要ない」

??「…」

その人物は、コートの隙間から両手を出すと、なにやらつぶやき始める。

詠矢「(なんだありゃ、詠唱ってヤツか…)」

詠矢「(ってことは、魔術師!!)」

重い頭を振りきり、詠矢は走り出す。

932: 2013/03/08(金) 18:03:05.54 ID:+zLpZ5mJ0
詠矢「(魔術師相手なら、絶対反論の効果は期待できねえ)」

詠矢「(ここは、先手必勝だ!)」

詠唱を続ける魔術師に向けて、詠矢は一気に距離を詰めて拳を振るおうとする。

詠矢「…!!!」

突進していた詠矢の体が、突然後ろに引っ張られる。

詠矢「ぐがっ!!(なんんだこれは!)」

詠矢の首には、ロープのようなものが巻きついていた。

突如として詠矢の背後に現れた人物が、それを操っていた。

魔術師A「油断したな」

正面に対峙していた人物がフードの奥で笑う。

魔術師B「一人で行動してると思ったか?」

詠矢「…!!(くっそ、伏兵かよ!)」

詠矢「あんたら…いったい、何の…んっ!!」

巻きついたロープはじわじわと詠矢の首を締め上げてくる。

魔術師A「[ピーーー]なよ」

魔術師B「ああ、わかっている」

詠矢「(コイツら、何の目的で…っ)」

詠矢「(やべえ!意識が…)」

首を締め上げられ、詠矢は意識を手放そうとしていた、刹那。

933: 2013/03/08(金) 18:09:21.51 ID:+zLpZ5mJ0
??「鳳雷鷹!!」

どこかで誰かが叫んだ。

突然、巨大な手裏剣のような飛来物が、詠矢の首にかかっていたロープを切断し、地面に突き立った。

魔術師B「なにっ!」

詠矢「が…ゲホッ!!」

呼吸が戻ってくる。詠矢は激しく咳き込んだ。

女性「…」

赤いスーツを着た女性が詠矢の傍に降り立った。

その人物は無言のまま、地面に突き立っていた飛来物を引き抜いて、静かに構える。

魔術師A「なんだ貴様は!」

??「その子は『鳳雷鷹』って言うんだ、よろしくね」

名前の解説は別方向から来た。それは、詠矢にとって聞き覚えの有る声だった。

思わず詠矢は振り返る。

詠矢「あ、あんたは…真々田サン!!」

934: 2013/03/08(金) 18:10:14.81 ID:+zLpZ5mJ0
真々田「やあやあ、久しぶりだね」

真々田「魔術の痕跡を追ってきんだが、まさか君に合えるとはねえ」

魔術師A「貴様…何故ここに来れた!」

真々田「はっ、あんな雑な結界を解除することなんて造作も無い」

真々田「まさに朝飯前といったところだ!」

魔術師A「な、なんだと!!」

詠矢「真々田サン…(ゲホッ)」

真々田「詳しい説明は後にしよう」

真々田「なにやら危機的な状況にあるようだね」

真々田「君には恩が有る、全力で助力させてもらうよ」

真々田「『味方になったら弱体化』の法則は僕には通用しない」

真々田「安心して任せてくれたまえ」

長いコートを翻すと、真々田は敵となる魔術師に対峙した。

946: 2013/03/20(水) 22:04:03.18 ID:70ysqJwO0
(とある路地)

真々田「さあて、どうするかい?」

魔術師A「知れたことを!」

魔術師はなにやらつぶやき始める。

向かい合わせに置いた手の間に、光が集中し始める。

真々田「詠唱と魔方陣によって術式を形成する西洋魔術か…」

真々田「まずは、お手並み拝見かな」

静観する真々田と対照的に魔術師は動く。詠唱の終了と共に、その周囲に大量の火球が現れた。

詠矢「(ん?…あの魔術は…確か!)」

詠矢「真々田サン、炎が!」

真々田「わかっているさ。まあ、見ていたまえ」

余裕を見せる真々田に、軽く舌打ちをする魔術師。

魔術師A「舐められたものだ…だが、これで氏ねっ!!」

声と共に火球は一斉に真々田に襲い掛かった。

真々田「…ふっ!!」

真々田がコートを翻すと、その裾が大量の呪符に変化する。

宙に待った呪符は、周囲に展開し球状の空間を形成した。

次々と襲い掛かる火球。だがそれは全て展開された結界に阻まれる。

魔術師A「なにっ!!」

真々田「なるほど、機能特化しているだけあって、なかなかの炎だ」

真々田「だが、この程度では汎用の防御結界すら破ることは出来ないよ」

魔術師A「…貴様…何者だ!」

真々田「何者?…僕はフィギュアの原型師さ」

魔術師A「…なんだと?」

真々田「まあ、僕を表す言葉はいろいろあるけどね」

真々田「もっと端的に言えば『天才』といったところかな」

詠矢「(すげえな真々田サン…余裕じゃねえか)」

947: 2013/03/20(水) 22:05:32.31 ID:70ysqJwO0
魔術師B「…!!」

再びロープが伸び、詠矢と傍にいた女性の胴体に巻き付いた。

詠矢「しまっ!…た」

鳳雷鷹「…!!」

魔術師B「また油断したな?…この紐は簡単に解けんぞ」

詠矢「なっ…この…」

その言葉通り、巻き付いたロープは力を強め、いくらあがいても解ける気配を見せない。

魔術師B「このまま同行してもらおうか」

詠矢「…」

詠矢は目を伏せ、息を整え、思考を始めた。

詠矢「…なあ魔術師サンよう」

魔術師B「…何だ」

詠矢「このロープも魔術で動かしてるんだよな?」

詠矢「普通の投擲じゃあ、さっきみたいな軌道で飛んでくるわけねえし」

詠矢「勝手に締まるわけねえもんな?」

魔術師B「…?」

詠矢「でもさあ…それって単なる念動だよな?」

詠矢「この学園なら使える奴がゴロゴロいそうだねえ」

詠矢「魔術と能力って相容れない力らしいけどさあ」

詠矢「やること同じなら普通に能力開発した方が」

詠矢「詠唱とかなんとか面倒も無くていいんじゃねえの?」

詠矢「魔術ってご大層に言うんなら、もうちょとオリジナリティが欲しいよねえ…」

魔術師B「な…なんだと!魔術を愚弄するか!!」

魔術師A「そいつの言葉に耳を貸すな!!」

詠矢「…(しめた!少し緩んだ!)」

対象の動揺を誘い、絶対反論(マジレス)が発動した。

そして、その変化に気づく者がもう一人。

鳳雷鷹「…!!」

948: 2013/03/20(水) 22:06:30.85 ID:70ysqJwO0
緩んだロープの隙間を縫うように、女性の背中から翼が展開する。

それは細かい変形を繰り返し、大きく広がりながら自らを縛るロープを切断した。

魔術師B「なにっ!」

地を蹴り、翼を振るうとその姿は空に舞い上がる。

鳳雷鷹「ふうっ!!」

女性は手裏剣を抱え上げると、全身を使って空中から地面へと投擲する。

魔術師B「ぐあっ!」

手裏剣の切っ先が魔術師の上腕を捕らえる。

魔術師B「くっ…この…」

うっすらと血がにじむ腕を押さえ魔術師は後ずさる。

魔術師A「…!(くそっ!こいつら…手ごわい!)」

魔術師A「(こうなれば…一気に焼き払って)」

再び詠唱に入ろうとする相手を、真々田見逃さない。。

真々田「おっと、何かしようとしてるね?」

真々田「残念だが、僕のほうが早い」

真々田は懐から呪符を取り出すと、それを地面に貼り付けた。

真々田「出でよ、クライング・ウルフ…」

言葉の後、わずかに念を込めると、呪符を中心に地面が隆起する。

引き剥がされたアスファルトが、四足の獣のような姿を造形していく。

現れた獣形の式神は、天に向かって咆哮すると、魔術師に向かって一気に襲い掛かった。

魔術師A「ぐおっ!!このっ!!」

獣は相手の腕にその牙を突き立てる。慌てて振り払おうとする魔術師は激しく抵抗する。

魔術師A「はっ…離れろ!!」

近接距離で火球を発生させると、それを式神へと見舞う。

どうにか弾き飛ばすことが出来たが、同時にその頭にかかっていたフードが外れる。

詠矢「…あんたは、あんときの!」

完全に緩んだロープを振りほどきながら、詠矢は振り返った。

フードの下にあった顔は、詠矢が知る人物だった。

真々田「おや、お知り合いかい?」

949: 2013/03/20(水) 22:07:38.69 ID:70ysqJwO0
詠矢「以前襲ってきたヤツです。あの時は上条サンと一緒に撃退したんですけど」

詠矢「まさか逃げおおせてたとは…」

魔術師A「くっ…!」

真々田「なるほどねえ…じゃあこれは、そのときの復讐ってことなのかな?」

真々田「まあ、いずれにせよ、この騒ぎが一般に露見すると問題だろう」

真々田「人払いを解いてからずいぶん経つ。そろそろ人が集まってくるころじゃないかな?」

魔術師A「…!!」

魔術師B「…!!」

二人は同時に周囲を見回す。

まだかろうじて人の影は無いが、声と気配は既に集まりつつある。

真々田「もちろんここで君たちを仕留めても構わないんだが」

真々田「僕もあまり派手なことは出来ない立場でね」

真々田「さて、どうする?」

魔術師A「…」

魔術師B「…」

二人は申し合わせたように詠唱を始めると、突如背後に現れた闇の中に消えていった。

詠矢「逃げたか…」

真々田「まあ順当な展開だね」

詠矢「いや、助かりました真々田サン」

真々田「なになに、お安いご用さ」

真々田「『天才』陰陽師としては造作も無い」

二人の会話を遮るように、空間から人影が現れた。

白井「ここですわね。ようやくたどり着けましたわ…」

詠矢「白井サン!どうしてここに?」

白井「あら詠矢さん、あなたこそどうして…あっ!」

白井は、詠矢の隣に居る人物に気づき、思わず声を上げた。

白井「あなたは、真々田創!なぜここに!」

白井「まさか…またよからぬことを!(チャキ)」

白井は反射的に鉄矢を構える。

950: 2013/03/20(水) 22:08:19.60 ID:70ysqJwO0
詠矢「ちょっと待ってくれ白井サン!」

詠矢「真々田サンは俺を助けてくれた。少なくとも敵じゃない!」

白井「え…?どういうことですの?」

真々田「説明が必要なようだね」

真々田「ここでは何だ。お二人とも僕の店に招待しよう」

真々田「詳しい話はそこでね」

詠矢「わかりました」

詠矢「ほら、白井サンも行こう。聞いといたほうがいいと思うぜ?」

白井「…まあ、そうおっしゃるなら…」

真々田「じゃあ行こうか…」

真々田「鳳雷鷹!帰るよ!」

小さくうなづいた女性は、地上に降りたち、展開したのとは逆の手順で羽を背中に収納する。

白井「…!!」

白井「あ、あの詠矢さん?この方飛んでいませんでしたこと?」

詠矢「うん、目の前で起こったことだから事実だね」

詠矢「とりあえず丸呑みしとこう。まとめて説明してくれるさ」

白井「は…はあ…」

全く釈然としない白井を連れ、一同はその場を後にした。

951: 2013/03/20(水) 22:09:07.18 ID:70ysqJwO0
(とある店)

真々田「さあ、ここだ。入ってくれたまえ」

降りていたシャッターを上げると、真々田は二人を店内に招きいれた。

詠矢「模型店…形屋?」

詠矢は看板を見上げつつその書かれた文面を読む。

真々田「ああ、僕の店さ」

客人二人と鳳雷鷹をつれ、商品のぎっしり詰まった店内を抜け、真々田は奥の応接室に向かった。

??「おかえりなさいませ」

真々田「ああ、ただいま」

部屋の扉を開ける真々田に、エプロンドレスに身を包んだ女性が微笑んだ。

真々田「お茶を入れてくれるかな、エンジェラン」

エンジェラン「かしこまりました」

丁寧に頭を下げたその女性は、台所と思しき場所に消えていく。

真々田「鳳雷鷹、君はもういい。休んでくれ」

鳳雷鷹「…(コク)」

小さくうなづくと、赤いスーツの女性もいずこかえへと移動した。

詠矢「…」

白井「…」

状況がまるで理解できない二人を尻目に、真々田はソファに腰を下ろした。

真々田「まあ、ゆっくりしてくれたまえ」

促されるまま、真々田の対面に腰を下ろす二人。

真々田「そういえば、お互いちゃんと自己紹介していなかったね」

真々田「僕は真々田創(ママダ ツクル)。職業はフリーの原型師だ」

詠矢「詠矢空希ってもんです。よろしくです」

白井「ジャッジメントの白井黒子、ですわ」

真々田「詠矢君に白井さんね…ふむふむ」

952: 2013/03/20(水) 22:10:03.87 ID:70ysqJwO0
真々田「さて、どこから話したものかな」

詠矢「じゃあ、ですね。まずあれからどうなったか…を」

真々田「そうだね。じゃあ、最初からいこうか」

真々田「君の提案通り、僕はあれからアンチスキルに投降した」

真々田「それからいろいろ取り調べがあって、まあ、一定の罪状も確定したんだけどね」

真々田「そこで、学園側から一つの提案があった」

白井「提案…ですの?」

真々田「ああ、司法取引みたいなものかな?」

真々田「今回の刑を猶予する変わりに、学園側に協力すること…」

詠矢「協力って…魔術師であるあなたにですか?」

真々田「そうみたいだね。具体的には…」

真々田「住居をここに移し、あの時に開発した式の技術を漏洩しないこと」

白井「なるほど…」

白井「確かに、AIM拡散力場への魔術による干渉は」

白井「学園としては極めて危険な技術ですわ」

真々田「今回は僕が確信犯だったからよかったものの」

詠矢「あー、それって正しい意味での確信犯ですよね?」

真々田「…マジレスしないでくれるかね」

詠矢「あ、スンマセン…」

白井「あの、脱線しないで頂けます?」

詠矢「…えっと、まあ…だね」

詠矢「確かに、学園都市に敵対する勢力がその技術を得たら…」

白井「考えたくも無いですわね」

真々田「恐らく、僕自身を取り込むことで、その危険を未然に防げると思ったんだろう」

真々田「まあ、僕としては断る理由は無いしね」

真々田「ここに店を構えて、落ち着くことにしたのさ」

953: 2013/03/20(水) 22:11:41.02 ID:70ysqJwO0
詠矢「…かなり納得できました」

白井「ですがまだお聞きしたいことが…」

真々田「どうぞどうぞ」

白井「なぜ、先ほどはあの場所に?」

真々田「魔術の痕跡を追っていたら、偶然あの場所にね」

詠矢「痕跡…ですか?」

真々田「…しばらくこの都市に住んでみてわかったんだが」

真々田「魔術と敵対している場所にしては、その対抗策が脆弱すぎる」

真々田「僕から言わせれば無防備といっていい。全くお話にならないレベルだ!」

詠矢「あー、まあ、確かに。俺ですら2回も魔術師に会ってますし」

真々田「だから、個人的に『鳴子』を張らせもらったんだ」

白井「それは、『警報装置』という意味ですの?」

真々田「うん、そうだね」

真々田「魔術の発動を感知すると、その存在を僕に知らせる一種の結界を敷いておいた」

真々田「流石の僕でも、この学園都市全体を見張ることは出来ないが」

真々田「無いよりはマシだろうと思ってね。要所に設置しておいたんだ」

詠矢「じゃあ、そこに引っかかった痕跡を追ってあそこに」

真々田「そういうことだね」

エンジェラン「お待たせしました」

再び女性が現れ、三人分のコーヒーを机の上に並べる。

真々田「ああ、ありがとう」

白井「ありがとうございます」

詠矢「どもっす」

静かに頭を下げると、女性は退出した。
詠矢「えーっと…あの人って…もしかして」

真々田「ああ、彼女たちは僕の作品だよ」

真々田「『鳳雷鷹』は近接戦闘用、『エンジェラン』は家事その他用だね」

詠矢「じゃああの、狼みたいなのもですか?」

954: 2013/03/20(水) 22:12:38.76 ID:70ysqJwO0
真々田「ああ、『クライング・ウルフ』は式神さ」

真々田「周囲の物質を合成して、狼の姿と戦闘能力を得るように調整してある」

白井「我々の知識では全く理解の及ばない技術ですわね」

真々田「そうでもないさ。ちゃんと調整された式神なら、念を込めるだけで誰でも使える」

真々田「ちなみに、『女性にまつわるメカの名前』で統一してみたんだが、いかがかね?」

詠矢「…スンマセン、ちょっと難易度高いです」

真々田「そうか。それは残念」

真々田「ま、お話は以上かな」

白井「経緯に関しては理解できましたわ」

白井「現在のあなたの扱いについては、こちらからアンチスキルに問い合わせてみます」

真々田「ご自由に。僕ももう逃げ隠れする必用は無いからね」

詠矢「えっと…もし今回みたいな、魔術側の攻撃が起こった場合」

詠矢「協力はお願いしていいんでしょうか?」

真々田「もちろん。ただ、僕も執行猶予中の身なのでね」

真々田「あまり派手なことは出来ないが、出来る限りの協力をさせてもらうよ」

詠矢「ありがとうございます。心強いです」

白井「何かありましたら、よろしくお願いしますわね?」

白井「では、わたくしは一旦支部へ戻ります」

955: 2013/03/20(水) 22:13:27.08 ID:70ysqJwO0
詠矢「んじゃあ、俺も帰るかね」

真々田「…詠矢君」

詠矢「なんですか?」

真々田「僕からも忠告が一つ」

詠矢「…なんでしょう」

真々田「あの路地に仕掛けられていた結界は」

真々田「人払いであると同時に、特定の人物を招き入れるものだった」

真々田「つまり、君を目標として仕掛けられた魔術だ」

詠矢「…やっぱ…そうですか」

真々田「状況から理解は出来るだろうけど、君が直接狙われているという自覚を持ったほうがいいね」

白井「なんですって?詠矢さんが魔術師に?」

詠矢「まあ、心当たりはあるんだけどね」

真々田「こちらでも、何か情報を掴んだら連絡するよ」

詠矢「よろしくお願いします」

詠矢「んじゃ、失礼します」

白井「詠矢さん…」

白井「では、わたくしも…」

二人はそろって店を後にした。

956: 2013/03/20(水) 22:14:33.62 ID:70ysqJwO0
とある街角)

帰り道、二人はただ黙って歩く。

白井「…」

詠矢「…」

白井「…」

詠矢「…」

白井「…詠矢さん」

詠矢「うん?」

先に口を開いたのは白井だった。

白井「また説明不足ですわよ」

白井「心当たりというのを、教えて頂けませんこと?」

詠矢「あ、ゴメン。隠すつもりはなかったんだけどさ…また言い忘れたな」

詠矢「学園都市に来てすぐのことなんだけど」

詠矢「上条サンを狙ってきた魔術師と戦ったことがあってさ」

詠矢「二人で何とか撃退したんだけど」

詠矢「そんときに、絶対反論(マジレス)が魔術に通用するのを知ったんだ」

白井「つまり、そのことが同時に魔術側に知れたと…」

詠矢「そういうこったな」

詠矢「俺を狙ってくるのも、自然に理解出来る」

白井「…詠矢さん」

詠矢「まあ、こうなっちまったもんはしょうがねえ」

詠矢「用心するしかねえっしょ?」

詠矢「魔術に対して明確に対処する方法もねえわけだし」

詠矢「真々田サンっていう協力者もいるわけだし、なんとかなるんじゃね?」

白井「…」

957: 2013/03/20(水) 22:15:27.05 ID:70ysqJwO0
白井「残念ですが、魔術師が相手であれば、ジャッジメントの対応にも限界があります」

白井「ただ、この状況を放置するわけにも参りません」

白井「最大限のご協力はさせて頂きます」

詠矢「ん…ありがとさん」

詠矢「少なくとも、自分一人で抱え込むようなことはしねえさ」

白井「遠慮は不要ですわよ?」

詠矢「うい、了解…だよ」

白井「では…わたくしは支部に戻ります」

詠矢「ん、お疲れさん」

白井の姿は掻き消えた。

詠矢「…」

詠矢「さあってと…」

詠矢はスマートフォンを取り出す。

詠矢「(確かに、遠慮してる状況じゃねえ)」

詠矢「(上条サンや御坂サンには協力を頼むとして)」

詠矢「(真っ先に連絡しとかないといけないのは…)」

アドレス帳を検索する詠矢。

詠矢「(やっぱ、ここだよな)

その指が止まったのは、佐天涙子の番号だった。

965: 2013/04/07(日) 23:01:14.93 ID:3MmRNvCQ0
(とある学生寮 佐天涙子の自室)

佐天「…ふふっ」

既に部屋着に着替え、リラックスしてた佐天は、手の中に置いた青い髪留めを見ていた。

自然と笑みがこぼれた。

佐天「(そういえば、男の人から何かもらうって始めてかもなあ)」

佐天「(そりゃプレゼントって訳じゃないけどさ…なんか、ちょっとうれしいな)」

佐天「…あれ」

自分の世界に入っていた佐天を、呼び出し音が現実に引き戻す。

佐天「はいはい…え?詠矢さん?…なんだろ(ピ)」

佐天「はい、佐天です…」

詠矢『あ、こんばんわ。詠矢だ。さっきはどうもね』

佐天「いえ、はい。こちらこそありがとうございます」

詠矢『いやいや、いきなり電話して悪いね』

詠矢『…ちょっと、佐天さんに伝えたいことが…あってさ』

佐天「えっ!…な、なんでしょう」

佐天は自分の鼓動がわずかに上がったことに気づかなかった。

詠矢『これから俺が言うことは、厨二病の妄想みたいに聞こえるかもしれないけど』

詠矢『全て事実なんだ。最後まで聞いて欲しい』

佐天「…」

佐天「…わかりました。詠矢さんがそう言うなら、ちゃんと聞きます」

詠矢『ありがとう』

詠矢『どうも俺は、誰かに狙われてるらしい』

詠矢『さっきひと悶着あってね…誘拐されそうになった』

佐天「…!」

966: 2013/04/07(日) 23:03:46.18 ID:3MmRNvCQ0
佐天「誘拐って…それって普通に犯罪じゃないですか!」

詠矢『そうだな。でも、相手はその辺躊躇する奴らじゃないみたいだ』

佐天「…」

佐天「…どうして…なんですか」

佐天「どうして…詠矢さんが…」

詠矢『ま、それなりに心当たりもあってね』

詠矢『多分、相手は俺の能力に興味があるんだと思う』

詠矢『単に気に入らないだけなら抹頃しようとするはずだしな』

佐天「…えっ!!」

佐天「抹殺…って…それって」

詠矢『あ、そこまでは言いすぎかな』

詠矢『まあどっちにしろ、俺が危険な状態に置かれてるのは事実だ』

詠矢『で、さ。こっからはお願いなんだ』

佐天「…はい」

詠矢『さっき約束したばっかりなんだけどさ』

詠矢『しばらく…この事態が片付くまでは、二人で合うのはやめたほうがいいと思うんだ』

佐天「…」

詠矢『まあ、そんなに時間はかからないと思うからさ』

詠矢『事が済んだら、また行こうぜ』

佐天「…はい…」

佐天「…」

詠矢『まあ、大丈夫さ』

詠矢『ジャッジメントには知らせてるし、上条サンや御坂サンにも協力してもらう』

詠矢『すぐに片付くと思うぜ』

佐天「…そう…ですか」

佐天「…」

佐天「…あの」

967: 2013/04/07(日) 23:04:22.55 ID:3MmRNvCQ0
詠矢『ん?』

佐天「ごめんなさい…私…何も出来なくて…」

詠矢『えっ!いや…』

詠矢『コイツは、俺自身が何とかしなきゃいけないことだからさ』

詠矢『その…なんだ、佐天サンが気にすることじゃないよ』

佐天「…はい」

佐天「わかりました…」

詠矢『うん…じゃあ話は以上かな』

詠矢『んじゃ、またな?』

佐天「…詠矢さん…気をつけて…」

詠矢『うい、りょーかい。んじゃ(ピ)』

佐天「…」

佐天「しょうがないよね」

佐天「私じゃ、詠矢さんの足手まといにしかならないし…」

佐天「…」

佐天は、抱えた膝の上に自分の頭を乗せた。

佐天「(システムスキャンの数値も、頭打ちになっちゃったし)」

佐天「(結局レベル0のままだもんね)」

佐天「(詠矢さんとは違うもんなあ…)」

佐天「…ふう」

佐天「(私も、何か役に立てればなあ…)」

佐天「(次いつ会えるんだろ…)」

携帯の着信履歴を眺めたまま、佐天はしばしたたずんでいた。

968: 2013/04/07(日) 23:05:46.55 ID:3MmRNvCQ0
(ジャッジメント177支部)

詠矢「よっと…」

詠矢「んじゃあ、これはロッカーの上でいいのかな?」

初春「はい、そこでいいです」

初春「すいません、書類整理なんか手伝ってもらって」

詠矢「いやなに、どうせヒマだしね」

詠矢「日中はここにいたほうが安全だし…よっと」

詠矢は抱えたダンボール箱を指定されたロッカーの上に乗せた。

初春「詠矢さん…」

詠矢「ん?」

初春「えと…なんて言っていいかわかりませんけど…」

詠矢「ん?まあ、いつかこんなことになるんじゃねかなって思ってたしね」

詠矢「上条サンも何度か同じようなことあったみたいだしねえ」

詠矢「おかげさんで頼りになる仲間もいるしさ」

初春「…強いですね。詠矢さん」

詠矢「ま、悩んだって仕方ないしね。考えることは必要だけどさ」

白井「(ガチャ)ただいま戻りました」

普通に扉を開け、白井が入ってきた。

初春「あ、おかえりなさい」

詠矢「うい、おかえり。お疲れさん」

白井「ダメですわ…敵の足取りは掴めませんでした」

詠矢「そっか…やっぱり難しいよなあ」

白井「申し訳ありません…」

詠矢「おいおい、白井サンまでか?」

詠矢「みんなそろいもそろって謝るなあ…」

969: 2013/04/07(日) 23:06:39.82 ID:3MmRNvCQ0
詠矢「俺はお願いしてる方なんだからさ、事実の報告だけでいいってさ」

白井「ですが…」

詠矢「こうやって、日中の安全な場所も確保されてるわけだし」

詠矢「十二分に助かってるよ」

白井「詠矢さん…」

詠矢「それにさ、魔術に対抗する論証の方向性も見えてきた」

初春「え?そうなんですか?」

詠矢「対峙する機会が増えたんでねえ。こないだもちゃんと効いたぜ?」

白井「魔術を論証する切り口…ですか」

詠矢「そう、魔術ってのは、俺たちが知ってる物理法則とは違う原理で動いてる」

詠矢「物理や化学を根拠にした論証では効果が出ない」

詠矢「だから逆に、論理的じゃない話の方が効くみたいだな」

白井「それは、まさか…」

白井「言いがかりや屁理の方が効果があると?」

詠矢「流石白井サン、鋭いねえ」

詠矢「実際効果があったのは、奴らの思想信条や魔術の効果に対して行った論証だ」

詠矢「多分、そっち方向の話の方が効果あるんだろうな」

詠矢「ただ、心が揺るがなければ効果が無いのは同じ」

詠矢「自分の考えに何の疑問を持たない狂信者には通じないだろうな」

白井「今更ながらですが…変わった能力ですわね」

詠矢「否定はしねえよ」

初春「(ピピ)あ、電話だ…」

970: 2013/04/07(日) 23:08:03.64 ID:3MmRNvCQ0
初春は携帯を手に取る。

初春「あ、佐天さんから…っと(ピ)はい、もしもし初春です」

初春「ええ、支部ですけど。え?詠矢さんですか?」

初春「いらっしゃいますけど、代わりましょうか?」

初春「あ、そうなんですか?じゃあ、また…(ピ)」

初春「佐天さん、今日は来ないそうです」

詠矢「今俺が居るかどうか確認してなかった?」

初春「はい、詠矢さんが支部にいるかどうか聞かれました」

詠矢「そりゃー、誤解してるかな?」

白井「何の話ですの?」

詠矢「いや、俺がこんな状態だからさ」

詠矢「しばらく二人で会うのはやめようって話したんだよ」

初春「…えっ!!」

白井「…!!」

詠矢「二人っきりになるのはマズイけど、ここで会う分には問題ねえのになあ」

詠矢「言い方まずかったかな…」

白井「…あ、あら」

白井「お二人はそういうご関係でしたの?」

詠矢「いやいや、違うって」

初春「え、でもいま二人でって…」

詠矢「そりゃまあ遊びにくらい行くっしょ。普通に」

初春「そうなん…ですか?」

詠矢「そうだよ?なんか変かな?」

白井「…」

971: 2013/04/07(日) 23:08:53.59 ID:3MmRNvCQ0
詠矢「どしたね、白井サン」

白井「いえ…何も」

詠矢「そっか」

初春「…」

初春「…(あれ?なんか空気が変に…)」

詠矢「あ、そうだ」

何かを思い出したのか、スマートフォンを覗き込む詠矢。

詠矢「そろそろ時間だな。お先に失礼するわ」

初春「え、出歩いちゃって大丈夫ですか?」

詠矢「ちょっと真々田サンのとこに行く約束しててね」

白井「あら、何かありましたの?」

詠矢「いや、特にどうってわけでもないんだけど」

詠矢「現状を改めて報告して、何かアドバイスもらえたらなって」

初春「そうなんですか、じゃあ、お気をつけて…」

詠矢「まあ、大した距離もないし、人通りの多い場所を選んで歩くよ」

白井「何かあればすぐに連絡してくださいまし」

詠矢「うい、よろしくな」

詠矢はあっさりと部屋を出て行った。

初春「…」

初春「あの…白井さん」

白井「初春!」

初春「は、はいっ!」

白井「引き続き監視をお願いしますわ」

白井「詠矢さんに危害が及ぶことなど、絶対に許されません」

初春「わかりました!」

972: 2013/04/07(日) 23:10:32.03 ID:3MmRNvCQ0
(とある街角)

佐天「…」

うつむき加減で、佐天はあてどなく町を歩いていた。

佐天「(今日はどこ行こうかなあ)」

佐天「(…どうせ一人だし、どこでもいっか)」

佐天「(こういう日に限ってアケミたちもつかまらないんだよなあ)」

佐天「…」

佐天「またジェラートかな」

佐天「でも一人で食べてもつまんないし…」

いつの間にか独り言が口から言葉として出ている。

佐天「…」

佐天「ああもう、何うじうじ考えちゃってるのよ!」

佐天「心配なら連絡しちゃえばいいなじゃい!」

佐天「電話ぐらいどうってことないよね?」

佐天は携帯を取り出し、アドレスを検索する。

が、同時に、強い違和感を感じた。

佐天「あれ?」

佐天「ここ、どこだっけ…」

佐天「私、どこをどう歩いてここに」

佐天「んっ…」

頭が重い、考えがまとまらない。

佐天は手のひらで額を押さえる。

佐天「…あ…れ?」

佐天「誰…ですか?」

混乱する佐天の視界の隅に、人影が映った。

973: 2013/04/07(日) 23:12:14.28 ID:3MmRNvCQ0
(模型店 形屋)

詠矢「こんちわー」

真々田「やあ、こんにちわ」

真々田「どうだね、状況は」

詠矢「特に変わりないですねえ」

真々田「そうか。こちらも特に変化はない」

真々田「もしかすると、諦めたのかもしれないね」

詠矢「まあ、それだったらありがたいんですけど」

詠矢「なんとなく、まだ引き下がってくれる雰囲気じゃないんですよねえ…」

真々田「そうなのかい?ま、用心するに越したことは無いがね」

真々田「残念ながら僕の鳴子も完全ではない」

真々田「奴らが潜り抜けている可能性もあるしね」

詠矢「なるほど…ただ、魔術に対抗する方法が無くて」

詠矢「特に俺みたいな個人は、どうしようも…」

真々田「ふうむ…そうだな、その点は考えてみようか」

詠矢「よろしくおねがい…(ピピ)あれ?メール?」

詠矢は端末を取り出す。メールの送り主は佐天だった。

詠矢「ん?…なんだろ…(ポチ)」

詠矢「…なっ!!」

真々田「どうしたね?」

詠矢「…!」

詠矢は、そこにつづられていた文面に言葉を失った。


『この女は預かった。無事に帰して欲しくば昨日の場所に一人で来い』


詠矢「…くっ…そ!!」

詠矢は思わず感情が声になる。

真々田「何かあったのかい?」

詠矢「…」

真々田の質問には答えず、詠矢は目を閉じ、思考を始めた。

974: 2013/04/07(日) 23:13:39.12 ID:3MmRNvCQ0
(とある路地)

詠矢「…」

詠矢は既に、その場所に立っていた。

昨日来た時と同じように、特に考えず、ただ歩くだけでこの場所にたどり着いていた。

魔術師A「一人で来たな?」

詠矢「あんたらの指示だろう。言いつけは守ったぜ?」

立ち位置も昨日とほぼ同だ。前方に炎を操る魔術師、後方にロープを使う魔術師、詠矢は既にはさまれていた。

そして、正面の魔術師に抱えられてる女性が一人。後ろ手に縛られ、気を失った佐天涙子がそこにいた。

詠矢「人質とはねえ…。あんたらの神様はそんなこと推奨してるのかい?」

魔術師A「なんとでも言え。我々は目的の為なら手段を選ばん」

詠矢「ってもなあ…」

魔術師A「おっと、それ以上しゃべると…この女の安全は保障しない」

短刀が佐天の首筋に突きつけられる。

詠矢「…」

詠矢「わかってますよ。余計なことは言わねえって」

詠矢「ただ、事務的な話は必要だろ?」

詠矢「俺はどうすればいいんだい?」

魔術師A「我々と同行してもらおう」

詠矢「…理由は聞いていいのかな?」
魔術師A「貴様の能力は危険だ。その真偽を確かめる必要がある」

魔術師A「理由はそれで十分だ」

詠矢「なるほどね。結構、そんまんまですな」

詠矢はしばし考え、大きく息を吐く。

詠矢「自分の立場は理解出来てるつもりなんでね」

詠矢「一人でここに来た時点で、覚悟は出来てるさ…。好きにして下さい」

詠矢「但し!…その人の安全を確保するのが先だ」

詠矢「開放してやってくれ」

魔術師A「お前を確保するのが先だな」

詠矢「…まあ、そうなりますか」

詠矢「よしなに」

975: 2013/04/07(日) 23:14:54.39 ID:3MmRNvCQ0
ポケットに手を突っ込んだまま、詠矢は無防備に立つ。

魔術師A「…やれ」

目配せをすると、背後からロープが飛び、詠矢の上半身を縛り上げる。

魔術師A「大人しくしてもらおう」

顔を伏せたまま、詠矢は微動だにしない。

魔術師B「…ん?」

魔術師A「どうした?」

魔術師B「おかしい…締め上げ…られない?」

魔術師A「なに?」

詠矢「…ケッ」

魔術師A「貴様…まさか何か!」

詠矢「力に頼るヤツってのは、どうしてこう雑なんかね」

詠矢「お前らのやってることは穴だらけだ」

魔術師A「なんだと!!」

詠矢「一人で来いとはあったが、誰にも話すなとは書いて無かったよな?」

向き直った詠矢の顔には、不適な笑みが浮かんでいた。

その顔に呼応したように、彼の着ていた上着が、細かくはがれ始めた。

魔術師B「なっ!!」

その上着は一瞬にして大量の呪符に変化する。

詠矢「やっぱ、真々田サンは天才だな。ほんとに俺でも使えるぜ…」

魔術師A「まさか…あの陰陽師か!」

呪符は、詠矢を縛るロープを押し広げながら展開し、後方の魔術師に襲い掛かる。

魔術師B「!!」

呪符は対象の体に張り付き、口と四肢を締め上げていく。

詠矢「どうだ、理不尽に拘束される気分は!」

詠矢「あんたもちょっとは味わってみな!」

言うや否や、詠矢は走っていた。

976: 2013/04/07(日) 23:15:50.05 ID:3MmRNvCQ0
動揺し、反応が遅れたこの一瞬。正面の魔術師を倒し、人質を救出するチャンスは今しかない。

詠矢「どおっせい!!」

走りこんだ勢いのまま、躊躇無く振るわれた詠矢の上段正拳が、目標の頭部に命中した。

魔術師A「がっ!」

その一撃に魔術師は崩れ落ちる。取り落とした佐天の体を抱えると、詠矢は少し離れた場所に移動する。

詠矢「佐天サン!!佐天サン!!大丈夫か!」

詠矢「くそっ…かってえ…な、これ!!」

詠矢は佐天を縛っていたロープを解き、猿ぐつわを外す。

そして、覚醒を促す為頬を軽く叩く。

詠矢「佐天サン!佐天サン!!」

佐天「ん…っ…」

詠矢「わかるかい?俺だ、詠矢だ。もう大丈夫だぜ?」

佐天「えっ…詠矢…さ…」

静かに目を開ける佐天。その瞳に移った詠矢の姿に安堵したのか、目じりには大粒の涙がたまっていく。

佐天「あっ…あ…あたし!…あの…うえっ…ご、ごめんなさ…い!」

佐天「えっ…あうっ…あたし…よめやさんに…めいわ…く…」

徐々に聞き取れなくなる佐天の言葉。そんな彼女の頭を詠矢は軽く叩く。

詠矢「どうにも、今日は謝られる日みたいだな」

詠矢「佐天サンは何も悪くねえだろ?悪いのは全部あいつらさ」

佐天「ひぐっ…え…う…」

詠矢「ま、とにかくここを離れよう。歩けるかい?」

佐天の腕を抱え、立ち上がろうとする詠矢。

だがその瞬間、火球が彼の肩口に命中した。

詠矢「ぐあっ!!…っつ!」

炎はシャツを燃やし、皮膚を焼く。詠矢の右肩は即座に赤くただれる。

詠矢「いっ…つ…つ…!」

佐天「…え…あ…!!」

佐天「詠矢さん!!詠矢さん!!」

977: 2013/04/07(日) 23:17:12.75 ID:3MmRNvCQ0
魔術師A「…ようやく当たったな」

二人の視界に、いつの間にか魔術師が現れていた。

詠矢「(くそっ!動けるのかよ!浅かったか!)」

詠矢「(どうする…考えろ詠矢!)」

魔術師A「もう面倒だ…全て焼き払ってくれる!」

詠唱が始まる。魔術師の手に力が集まっているのが誰の目から見てもわかる。

詠矢「(あの分だと多分でかい炎だ。今から突っ込んで間に合うか?)」

詠矢「(だがそれだと佐天サンを守りきれない!この肩じゃ腕もまともに振れるかどうか…)」

詠矢「(今から逃げて逃げ切れるか?…どうする…どうする詠矢!)」

佐天「あ…あぁ…」

佐天「…いゃ…あぁ…あぁぁあああ!!」

佐天は絶叫と共に、魔術師に向かって飛び掛った。

詠矢「さ、佐天サン!」

佐天「な…なんで、なんでこんなこと!詠矢さんが何したって言うんですか!」

佐天は魔術師の襟元に掴みかかる。

佐天「やめて…こんなこと…やめてください!!」

半狂乱で叫ぶ佐天。だが、魔術師の表情には余裕があった。

魔術師A「(今更この程度…詠唱の妨害にはならん)」

魔術師A「(二人まとめて焼き払ってくれる!)」

詠矢「佐天サン!離れろ!」

佐天を引き剥がそうとする詠矢。

詠矢「…?」

何かを感じた詠矢は、立ち止まる。

詠矢「…(風音?)」

978: 2013/04/07(日) 23:19:19.70 ID:3MmRNvCQ0
詠矢の姿を見て、魔術師は悪辣な笑みを浮かべた。

魔術師A「(ついに観念したか。もう詠唱は完了する!)」

魔術師A「(すべて塵にしてくれ…)」

魔術師A「(…!?)」

魔術師A「(…はっ?声…が?)」

いくら喉を動かしても、口から声が出ない。詠唱が完成しない。

魔術師A「(なにっ!術式が維持出来ない!)」

魔術師の手に集まっていた力が急激に散逸していく。

詠矢「(何だ…何が起こっている?…何だ?)」

詠矢「(さっきの音…確か…どこかで…)」

詠矢は必氏で記録を掘り起こす。この状況、人物、音。思考を総動員して当てはまる状況を検索する。

詠矢「…」

詠矢「あっ!!」

詠矢の中で、一つの映像が再生された。


詠矢『声が届かなきゃどうしようもない、俺としちゃお手上げになるね』
佐天『あー、確かにそうなりますねえ』

979: 2013/04/07(日) 23:21:08.19 ID:3MmRNvCQ0
詠矢「(これは…佐天サンの力だ!)」

詠矢「(空気を制御し、音の伝達を防いで詠唱を妨害したんだ!)」

詠矢「よっしゃぁぁああ!!」

詠矢の全身に力が戻ってくる。一気に敵との距離を詰める。

詠矢「佐天サン!伏せろ!」

佐天「え…?…はいっ!!」

詠矢の叫びどおり佐天は頭を下げる。

詠矢「どおっせぇぇえい!!」

踏み込んだ勢いに腰の回転を乗せ、詠矢渾身の上段蹴りが魔術師の側頭部に命中した。

魔術師A「ガフッ!!…が…あぁ…あ!」

首をもぎ取らんばかりに突き刺さった詠矢の蹴りは、敵の意識を一瞬にして刈り取った。

魔術師は力なく崩れ落ちる。

詠矢「はあっ…はあっ…ぐっ!」

詠矢に火傷の痛みが戻ってくる。思わず膝を着く。

佐天「詠矢さん!大丈夫ですか!」

詠矢「なになに、まあ、大丈夫さ」

詠矢「…やったな、佐天サン」

佐天「…え?」

詠矢「俺たちの勝利だ」

佐天「…へ?…俺…たち?」

佐天「は…はは…やりました…やっちゃいましたよ!」

佐天「二人で…勝ちました!勝っちゃいましたよーーー!」

喜ぶ佐天の傍で、倒れた魔術師の体が移動する。

詠矢「…ん?」

どこからとも無く伸びたロープが、その体を掴んで引きずっていた。

詠矢「ようやく呪符から逃れたか…」

佐天「…」

二人の視界の隅に、もう一人の魔術師がいた。

しばしにらみ合うが、相手は倒れた仲間を回収し終えると、すぐに闇に消えた。

詠矢「逃げたか…」

佐天「どこ行ったんでしょうか…」

詠矢「さあて…ね…」

詠矢「俺たちも、引き上げねえとな…」

佐天「はい…あ!詠矢さんすぐ病院に!」

詠矢「ん…そだな…頼めるかな?」

980: 2013/04/07(日) 23:22:13.70 ID:3MmRNvCQ0
(模型店 形屋)

詠矢「ちわーっす」

真々田「やあ、こんにちわ」

詠矢「スンマセン、報告が遅れまして」

真々田「いやいや、別に構わんさ」

詠矢「ちょいと時間かかりまして。あ、こちらお礼です」

詠矢はいつもの紙袋を取り出した。

詠矢「ジェラートです。美味いっすよ」

真々田「おお、ありがとう。しかし、高校生とは思えない気の使い方だね。君は」

詠矢「あ、いや、性分なもんで…」

真々田「そうなのかね?まあ、これは後で頂くとしよう」

真々田「エンジェラン、冷凍庫にお願いできるかな?」

エンジェラン「かしこまりました」

真々田から紙袋を手渡されると、女性は台所へ消えていった。

詠矢「あらためて、ありがとうございます。あの上着、すっげえ役に立ちました」

真々田「そうか、それはよかった」

真々田「厳重な隠蔽を施しておいたからね。機能が発動するまでは、呪符だとは気づかれなかったろう?」

詠矢「いやそれはもう。完全に相手の意表を突くことが出来ました」

真々田「ま、相手があの雑魚魔術師なら、少々調べたところで発見は出来なかったろうね」

真々田「まさしく、格の違いとうやつだよ」

詠矢「いやもう感服してますよ。ほんとに」

詠矢「今回は思いっきりブチのめしておきましたんで」

詠矢「多分逃げ帰ってると思います。確証はないですけどね」

真々田「危機が去ったのならいいがね…」

佐天「…あれ?…もしかして…?」

ぎっしりと商品の並んだ棚。その向こう側から先客の顔がのぞいた。

981: 2013/04/07(日) 23:23:03.54 ID:3MmRNvCQ0
詠矢「ありゃま、佐天サン。偶然だねえ…」

佐天「やっぱり詠矢さんだ!怪我の方はいいんですか?」

詠矢「うん。優秀なお医者さんとお知り合いでねえ」

詠矢「二晩ほど泊まって、さっきジャッジメントで事情聴取を受けてきたとこさ」

詠矢「佐天サンこそ大丈夫かい?」

佐天「おかげさまで、怪我はしてませんから大丈夫です」

詠矢「そうか、そいつはよかった。無事で何より」

詠矢「あれ?でも佐天サンがどうしてここに?」

佐天「えっと…有名なフィギュア作家の人が学園都市に来ている噂がありまして」

佐天「その真偽を確かめに来ました!」

真々田「どうやら彼女は僕のファンのようでね」

詠矢「へー、佐天サンてそういうの集めてるんだ?」

佐天「いえ、そんな本格的にじゃないですけど…」

佐天「ほら、ゲーセンとかでよく見かけるじゃないですか?えっと…『形屋 創一(カタヤ ソウイチ)』さんでしたっけ?」

真々田「ああ、それは僕のハンドルネームだね」

佐天「というわけで、今噂の真相を確認できたところです!」

詠矢「なるほどねえ…そいつはまた…あれ?」

詠矢「真々田サンのハンドルって『御形屋』じゃなかったでしたっけ?」

真々田「改名したのさ。『御』の字に驕りを感じてね。自戒のためさ」

詠矢「はー、そいつはまた殊勝な心がけで…」

真々田「反省を形に残しておかないとね」

佐天「そういえば…お二人はお知り合いなんですか?」

詠矢「まあ…いろいろあってね」

真々田「いろいろだね」

佐天「…いろいろですか」

982: 2013/04/07(日) 23:23:45.24 ID:3MmRNvCQ0
佐天「…」

納得しかねる佐天。だが、これ以上追求することも出来ない。

佐天「あ…そうだ。詠矢さん」

佐天「ちょっと、お話したいことがあるんですけど…」

詠矢「ん?今から、かい?」

佐天「はい。お忙しいですか?」

詠矢「えと、忙しいってわけじゃないけど…」

真々田「僕のほうはいいさ。細かい話はまた後で聞こう」

佐天「あ、すいません」

詠矢「ありがとうございます。んじゃ、また来ますんで」

真々田「うむ。またね」

詠矢「じゃいこうか、佐天サン」

佐天「はい!」

二人は店を後にした。

真々田「…ふむ」

真々田「ここは、リア充爆発しろ、とでも言うところかな?」

そう呟いた直後、エンジェランが台所から戻ってくる。

真々田「…」

真々田はその姿をじっと見る。

エンジェラン「…なんでしょう?」

真々田「いいさ、僕には君たちこそがリアルだ」

エンジェラン「ありがとうございます」

人形は優しく微笑んだ。

983: 2013/04/07(日) 23:25:48.42 ID:3MmRNvCQ0
(とある公園)

詠矢「んで、またこの公園ですか」

佐天「あはっ、なんか定番になっちゃってますねえ」

詠矢「んで、話ってのはなんだい?」

佐天「えと、ですね」

佐天「あれから、またシステムスキャンに行ってきたんですよ」

詠矢「ほうほう。そんで、結果はどうだい?」

佐天「…能力が正式に認定されました」

佐天「レベル1の空力使い(エアロハンド)だそうです」

詠矢「おお!そいつはよかったなあ!」

佐天「手の周りの空気を制御するだけの能力ですけど…」

詠矢「いやいや、立派なもんだぜ」

詠矢「今回はそのおかげで助かったんだしなあ!」

佐天「なんかそうみたいですね。あんまり実感ないんですけど…」

佐天「私はただ、必氏だっただけで…」

詠矢「それがよかったんじゃねえの?」

詠矢「俺はあのとき、迷ってた」

詠矢「何も考えずに突っ込めば、十分対処出来たろうにねえ」

佐天「あ、それって、私が何も考えてないってことですか?」

詠矢「え?…いやゴメン、そういうわけじゃ…」

佐天「ふふっ、わかってますよ」

にっこりと微笑むと、佐天は向き直り詠矢の顔をじっと見る。

詠矢「…なにかな?」

佐天「私も能力者になれました…詠矢さんのおかげです」

佐天「なんてお礼を言っていいか…」

984: 2013/04/07(日) 23:26:57.47 ID:3MmRNvCQ0
詠矢「別に俺は何もしちゃいないさ」

詠矢「佐天サン自身が、何とか力に近づこうと、いろいろ頑張ってたのは知ってるぜ?」

詠矢「正真正銘、それは佐天サンの力だ」

佐天「いえ…それでもやっぱり、きっかけは詠矢さんの言葉ですし」

佐天「あらためてお礼を言わせてください」

佐天「ありがとうございます」

佐天は、丁寧に頭を下げた。彼女の長い黒髪が舞う。

詠矢「うん、そっか。お礼は、ちゃんと受けといたほうがいいね」

詠矢「どういたしまして」

詠矢の表情は自然とほころぶ。それは、今まで見せたことの無いような優しい笑顔だった。

佐天「で、ですね。私も能力者になりましたんで」

佐天「詠矢さんのお役に立てると思うんですよ」

詠矢「…」

詠矢「そりゃまた、勇ましいねえ」

佐天「…ですから、私のことも頼ってくださいね?」

詠矢「…」

詠矢「あーうん。そうだな、そうさせてもらうわ」

詠矢「でもさあ…、まだレベル1であんまり調子に乗らないほうがいいんじゃねえの?」

佐天「えー。でも、レベルで言えば私のほうが上なんですよ?」

詠矢「…お、そうきたか。コイツは一本取られたね」

佐天「ふふっ。そういうわけなんで、よろしくお願いしますね」

詠矢「うい。了解。頭に入れとくよ」

985: 2013/04/07(日) 23:27:40.11 ID:3MmRNvCQ0
詠矢「しかしまあ、気い使ってくれるねえ、いろいろと」

佐天「だって、そりゃあもう」

佐天「オトモダチじゃないですか!」

詠矢「…」

詠矢「……」

詠矢「うん。そだな。そうだった」

詠矢「…」

佐天「…どうかしましたか?」

詠矢「いんや…何も」

詠矢「んじゃ、俺はこれからバイトだからさ。また今度な」

佐天「あ、はーい。今度って…ちゃんと連絡してくださいよ!」

詠矢「わかった。んじゃ、またなー」

佐天「はい!じゃあまた!」

手を振り、その場を後にする詠矢。

いつもの通り背中を丸め、考えながら歩く。

詠矢「…」

詠矢「…(オトモダチ、ねえ…)」

詠矢「(まあいいや、考えるのやめよう。はい、思考停止!)」

詠矢「さて、頑張って仕事しますかね」

足取りは軽くも重くも無く、詠矢はしばし、何も考えずに歩いた。

986: 2013/04/07(日) 23:28:34.70 ID:3MmRNvCQ0
以上とです。
この話はこれで完結となります。
ありがとうございました。

987: 2013/04/07(日) 23:29:39.60 ID:OsFtqPg5o

988: 2013/04/08(月) 02:03:26.79 ID:NyWZnDG8o
おつおつ!
相変わらず格闘なら上条さんにも引けを取らなそうだなww

今回はイマイチパッとしないモブ魔術師が相手だったけど
いずれより面倒な敵に絡まれる羽目になるものと考えれば
(佐天さん込みで)これからの狙われる日々は大変そうだなあ

引用: 絶対反論(マジレス)こと詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)は落ちていた。