5: 2011/01/28(金) 18:39:03.37 ID:PTswOFkE0
6: 2011/01/28(金) 18:41:05.23 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)シリーズ
鬱蒼とした背の高い草をかき分け、時には斧で刈り捌いてゆく。
草で肌を切らぬよう、気をつけながら。
いきなり草の根の氏角から、魔物や動物が飛び出してくるかもしれない。
それにも注意を払う。
( ^ω^)
ブーンは今、マイラの村から西へ離れた、とある場所を目指している。
通称、「 雨の祠(ほこら) 」へ。
鬱蒼とした背の高い草をかき分け、時には斧で刈り捌いてゆく。
草で肌を切らぬよう、気をつけながら。
いきなり草の根の氏角から、魔物や動物が飛び出してくるかもしれない。
それにも注意を払う。
( ^ω^)
ブーンは今、マイラの村から西へ離れた、とある場所を目指している。
通称、「 雨の祠(ほこら) 」へ。
8: 2011/01/28(金) 18:44:27.44 ID:PTswOFkE0
マイラの村人に聞けば、ロトの勇者はそこに立ち寄ったらしい。
村人『なんでも、そこには変わり種の老人が住んでてね』
村人『ロトの勇者の一族の者を待ってる・・・いや、待ってたっていうやつなんだ』
村人『勇者さん、そこにも向かったみたいだよ』
( ^ω^)
ブーンは森の中を、雑然とした草の根をかき分け歩く。
草木の青々とした空気が匂い立つ。
この長い長い森を抜けると、その祠に着くはずだ。
10: 2011/01/28(金) 18:48:04.02 ID:PTswOFkE0
歩きながら、野草をとっては食み、しゃぶる。
草自体に味や栄養は求めない。
葉にたっぷりと取り付いた朝露が、ブーンの喉を潤すのだ。
道中で、水をきらしてしまった。喉が渇く。
この森のどこかに、川でもある事を希望する。
もしくは、蛇でもいれば、捕まえてその血を飲めるのだが。
11: 2011/01/28(金) 18:50:48.47 ID:PTswOFkE0
願い叶わず、森には水場は無かった。
だが、その森を抜けると――――――
( ^ω^)「・・・あれかお」
遠くに、見えた。
意匠の施された、社のような洞窟のようなもの。
あれがおそらく、雨の祠であろう。
ブーンの歩調が、足早になる。
早く、辿り着きたい。
そして、着いたら、開口一番にこう言おう。
12: 2011/01/28(金) 18:52:25.98 ID:PTswOFkE0
( ;^ω^)「 お水をいっぱい頂けますかお!! 」
13: 2011/01/28(金) 18:54:55.42 ID:PTswOFkE0
爪゚ー゚)「・・・・・・」
( ;^ω^)「・・・・・・」
爪゚ー゚)「・・・どうぞ」チャプ・・コト
( ;^ω^)「はっ!いただきますお!」
ブーンは、杯の水を、ごきゅごきゅと喉を鳴らして飲み干した。
15: 2011/01/28(金) 18:57:53.98 ID:PTswOFkE0
( ; ω )「・・・ぶはぁっっ!」
( ;^ω^)「・・・・・・お水をいっぱい頂けますかお!!」
爪゚ー゚)(ああ・・・いっぱいって一杯じゃなくて“いっぱい”なんだ・・・)
爪゚ー゚)「ほれ」チャプン
老人は再び、壁際の瓶から柄杓で水をすくいとり、
ブーンの前の杯に注ぐ。
それを汲み終わるや否や、すぐさま杯を掴み、齧りつくようにありつく。
冷たい水が、喉の渇きを癒す。
その水の冷たさに、少し喉がキリリとするが、それも心地よい。
老人に再三、水を要求し、それを飲み干す事で、
ようやくブーンは一息ついた。
19: 2011/01/28(金) 19:00:20.40 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)「助かりましたお。旅の途中で水を切らしてしまって・・・」
( ^ω^)「水が欲しくて仕方なかったんですお」
爪゚ー゚)「そうかい。それはよかった」
爪゚ー゚)「・・・で、ここに何の用だ?」
爪゚ー゚)「わざわざこんな人里離れた僻地に、危険を冒してまでも
来るからには、何か用事があるのだろう?」
爪゚ー゚)「大体の理由は察しがつくがな」
( ^ω^)「そうですお。それは・・・」
( ^ω^)「ロトの勇者について・・・聞きたい事がありますお」
爪゚ー゚)「ふむ」
23: 2011/01/28(金) 19:03:35.70 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)「実は、彼・・・ロトの勇者の後を追っていますお」
( ^ω^)「ここに立ち寄られたという話を耳にしまして・・・」
( ^ω^)「ぜひ、その時のお話を伺いたく、やってきましたお」
( ^ω^)「どうか、お話を聞かせてもらえませんでしょうか?」
爪゚ー゚)「・・・ロトの勇者の情報か」
爪゚ー゚)「すると君も、竜王討伐の遠征に出ているという訳か?」
( ^ω^)「そうですお」
爪゚ー゚)「そうか・・・」
見た目、年の割に端正で中世的な顔立ちの、
男か女かわからない老人は、話し始める。
25: 2011/01/28(金) 19:06:47.29 ID:PTswOFkE0
爪゚ー゚)「それには、まずわしが何者か、明かさねばなるまい」
爪゚ー゚)「わしの名前は、じぃ。まぁ名前など、どうでもよい」
爪゚ー゚)「時はさかのぼり、かの伝説のロトが、この世界に降り世界を救ったとき」
爪゚ー゚)「彼は、三人の賢者に、あるもの・・・あるいは知識を託した」
( ^ω^)(!)
爪゚ー゚)「その賢者達は、子孫代々に、それを受け継がせていった」
爪゚ー゚)「ロトの血脈の者がそれを取りにくるまで、な」
爪゚ー゚)「そして、わしはその賢者達の末裔の一人・・・という訳じゃ」
( ^ω^)「・・・なるほど」
27: 2011/01/28(金) 19:10:17.76 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)(以前、勇者ロトが祀られているという洞窟にいったとき)
( ^ω^)(賢者達の事が、石盤に書かれていたお)
( ^ω^)(その賢者の内のひとりが、この人かお)
ブーンは納得し、頷いて話を聞く。
杯の水を、チビチビと少しずつ飲みながら。
水が少なくなると、老人が足してくれた。
礼を言う。
28: 2011/01/28(金) 19:12:27.89 ID:PTswOFkE0
爪゚ー゚)「・・・数年前、ロトの勇者を名乗る男が現れた」
爪゚ー゚)「その男の出生を聞くなり、彼はロトの一族しか知リ得ぬ情報を持っていた」
爪゚ー゚)「だが彼は、ロトの血脈の証である、“ロトのしるし”を持ってはいなかった」
爪゚ー゚)「そして、わしは試した。彼が本当に勇者かどうか」
爪゚ー゚)「この世界に、“銀の竪琴”と呼ばれるものがある」
爪゚ー゚)「真の勇者なら、見事それを見つけて、わしのもとに持って来れるはずだとな」
( ^ω^)「おお」
( ^ω^)「・・・それで勇者は・・・」
爪゚ー゚)「もちろん持って来た。彼は、わしの難題を見事完遂した」
爪゚ー゚)「・・・これが、その証じゃ」
30: 2011/01/28(金) 19:15:28.44 ID:PTswOFkE0
じぃは、ものものしく後ろに置いてある、それから、布をはぎ取った。
それは、見事な竪琴であった。
( ^ω^)「これが・・・銀の竪琴ですかお」
ブーンは、竪琴に触れようとする。
爪゚ー゚)「まちなさい!それにさわってはいかん」
じぃが、ブーンの動きを制止する。
33: 2011/01/28(金) 19:18:32.88 ID:PTswOFkE0
( ;^ω^)「お?」
爪゚ー゚)「その竪琴は一見きらびやかで、実に素晴らしい音色を奏でるが・・・
その実、深い魔力を帯びた魔具なのだ」
爪゚ー゚)「その音色は、魔力を放ち、魔物を呼び寄せる」
爪゚ー゚)「これは伝説の、さすらいの吟遊詩人ガライが所有していたものだ」
爪゚ー゚)「彼もまた、魔力を操るものの一人であったために、
その魔香が竪琴に染み付いたのだ」
爪゚ー゚)「うかつに触れると、魔物を引き寄せるぞ」
( ;^ω^)「そ、そうですかお・・・」
34: 2011/01/28(金) 19:21:12.87 ID:PTswOFkE0
ブーンはまじまじと竪琴を見つめる。
( ^ω^)
( ^ω^)「・・・それはつまり、呪いのようなものですかお?」
爪゚ー゚)「呪いとは、また少し質の違うものだ。まぁ似たようなものだがな」
( ^ω^)(・・・・・・)
36: 2011/01/28(金) 19:22:42.29 ID:PTswOFkE0
爪゚ー゚)「・・・話を続けるぞ。そして、わしはその者をロトの勇者と認めた」
爪゚ー゚)「そして、先祖代々受け継いで来たもの――――――」
爪゚ー゚)「 “雨雲の杖”を、ロトの勇者に託したのだ」
( ^ω^)「雨雲の杖・・・」
爪゚ー゚)「・・・肩の荷が降りたようだったよ」
爪゚ー゚)「“三人の賢者達の重責”から、解放されたようだった」
爪゚ー゚)「これでもう、なにも思い残さず逝けるとな」
爪゚ー゚)「――――――しかし・・・」
38: 2011/01/28(金) 19:25:58.63 ID:PTswOFkE0
爪゚ー゚)「よく考えれば、それは終わりではなかったのだな」
爪゚ー゚)「ロトの勇者が竜王を倒してはじめて、その意味を成すものだ」
爪゚ー゚)「わしがそれに気づいたとき、ロトの勇者は既に――――――」
爪゚ー゚)「あの忌まわしき魔王に捕われてしまっておった」
爪゚ー゚)「・・・もはや、この世に救いは無いものか」
じぃは、自分の杯にも水を汲み、飲む。
悲しげに、杯を見つめる。
水面に映るその眼には、いくばくの光も無い。
これまで何度も見て来た、絶望に囚われた者の眼だ。
40: 2011/01/28(金) 19:28:16.51 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)「・・・・・・」
爪゚ー゚)「じゃが、ときどきこうして、お主のような酔狂者が、
この老人を訪ねてくる。それと話をするのが・・・」
爪゚ー゚)「今のわしの唯一の楽しみかもしれん」
( ^ω^)「・・・酔狂・・・もしかして」
( ^ω^)「ブーン以外にも、同じ目的でここで訪ねる人が・・・?」
爪゚ー゚)「ああ。お主で、7人目になるかの」
やはり、自分と同じ事を考える人間がいた。
竜王のもとへ辿りつくために、ロトの勇者の、その後塵を掴もうとするのだ。
41: 2011/01/28(金) 19:30:27.69 ID:PTswOFkE0
爪゚ー゚)「だが・・・無駄だ」
爪゚ー゚)「ロトの勇者は・・・それはまさに、勇者といっていい剛の者であった」
爪゚ー゚)「あれで竜王の力に届かぬというなら・・・もはや」
爪゚ー゚)「人類に残された道は・・・服従し、蹂躙されるのみよ」
爪゚ー゚)「そしてお主も――――――」
じぃの口調が、どこか諭すようで、そして憐憫をも含んだ様なものになる。
43: 2011/01/28(金) 19:34:04.63 ID:PTswOFkE0
爪゚ー゚)「・・・」
( ^ω^)「・・・ご老人」
( ^ω^)「厳しい旅ですお。辛く長い道のりですお」
( ^ω^)「確かに、ブーンは氏ぬかもしれませんお」
( ^ω^)「しかし自分は・・・」
( ^ω^)「氏ぬ為に旅をするのではないのです」
( ^ω^)「この世界に平和を取り戻すために」
( ^ω^)「ブーン以外の人間も・・・そう」
――――――――――――――――――
( ゚∀゚) ('A`)
――――――――――――――――――
44: 2011/01/28(金) 19:37:23.59 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)「例え今の自分の力が、ロトの勇者に及ばないとしても・・・
竜王に及ばないとしても・・・」
( ^ω^)「いつかきっと、それを超えてみせますお」
爪゚ー゚)「・・・・・・」
爪゚ー゚)「君は、いい眼をしておるな」
爪゚ー゚)「モナーと同じ、確固たる決意を秘めておる」
( ^ω^)
46: 2011/01/28(金) 19:39:08.83 ID:PTswOFkE0
爪゚ー゚)「・・・わしが、彼に渡したあれは」
爪゚ー゚)「あの竜王の島へ渡る方法を紡ぐ為のものだ」
爪゚ー゚)「彼は、その全てを集め、あの島へ辿り着いたのだろう」
爪゚ー゚)「それが具体的にどのような方法なのかは、わしも知らん」
爪゚ー゚)「ただ言える事は、その三人の賢者のうちの一人ならば、
その方法を知る者がいるであろう」
爪゚ー゚)「訪ねなさい。他の賢者のもとを」
( ^ω^)「わかりましたお」
47: 2011/01/28(金) 19:42:23.62 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)「・・・そういえば、ロトの勇者は、どこでその竪琴を見つけたのですかお?」
爪゚ー゚)「うむ。あれは、ガライの村にあったものだ」
爪゚ー゚)「その創立者、ガライの墓――――――その地下は、一つの迷宮になっておる」
爪゚ー゚)「おそろしい魔物・・・悪鬼ひしめく迷宮の最奥に置いてあり・・・」
爪゚ー゚)「それを見事、獲得してきたのだ」
( ^ω^)「・・・なるほど!そういう事かお!」
50: 2011/01/28(金) 19:44:42.34 ID:PTswOFkE0
以前、ガライの村へいたとき――――――村のはずれにある、その墓を見に行った。
大きな墓の下に通ずる道・・・
そこを降りると、扉がある。
それは、なにか微細な青白い光を放っていた。
( ^ω^)『お。これが・・・封印かお』
从 ゚∀从『そうさ。勇者さんが、封印していったんだ』
( ^ω^)『そうですかお・・・』
从 ゚∀从『なんでも、魔力によって封じてあるんだってさ。
・・・魔力が何なのかってのは、あたしゃあ、よく知らないけど』
从 ゚∀从『ここは危険だから、人が立ち寄れないようにした方がいいって』
( ^ω^)『へぇ・・・』
51: 2011/01/28(金) 19:46:52.66 ID:PTswOFkE0
ロトの勇者は、あそこで竪琴を見つけた。
そして、もう用はなくなり危険だけが残るその場所を、封印したのだ。
だとすれば、もうガライに行く必要はないと言える。
勇者が宝具を回収した後なのだから。
53: 2011/01/28(金) 19:50:10.70 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)「なるほど。いろいろ繋がりましたお」
( ^ω^)「ありがとうございますお!」
爪゚ー゚)「なに、礼はいらん」
爪゚ー゚)「わしこそ、世界の為に命をかけるお主に、礼を言わねばならんようだ」
爪゚ー゚)「頼むぞ、ブーン」
( ^ω^)「はいですお!」
爪゚ー゚)「・・・それと、これを持ってゆきなさい」
じぃは、十字の形をした、ロザリオの様なものをブーンに渡す。
十字の中心に、蒼く輝く小さな水晶がはめ込まれている。
54: 2011/01/28(金) 19:52:43.80 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)「・・・これは?」
爪゚ー゚)「魔法の鍵だ」
爪゚ー゚)「その水晶に、魔力が込められている」
爪゚ー゚)「これがあれば、ロトの勇者がガライの墓を封じたときのような、
魔力の結界を解く事ができる」
爪゚ー゚)「また、どこぞで彼が封印をした地もあるかもしれんしな」
爪゚ー゚)「これがあれば、困らんだろう。使い捨てのものだがね」
( ^ω^)「ありがとうございますお!」
爪゚ー゚)「うむ。そして・・・」
56: 2011/01/28(金) 19:55:13.34 ID:PTswOFkE0
爪゚ー゚)「次にモナーが向かったのは・・・東南の町」
爪゚ー゚)「 リムルダールじゃ 」
( ^ω^)「リムルダール・・・」
58: 2011/01/28(金) 19:58:12.79 ID:PTswOFkE0
ブーンは、支度を整え、発つ準備をする。
( ^ω^)「ありがとうございました。次の指針が見えましたお」
爪゚ー゚)「気をつけてな、くれぐれも」
爪゚ー゚)「・・・頑張りたまえ。じゃが・・・」
爪゚ー゚)「危険な旅になる。それを止めるという事も・・・
一つの選択肢としてある事を覚えておきなさい。いいね?」
( ^ω^)
59: 2011/01/28(金) 20:00:55.46 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)「ご老人」
( ^ω^)「お水、美味しかったですお」
爪゚ー゚)
爪゚ー゚)「・・・はは」
爪゚ー゚)「そうだろう。井戸で冷たい、魔に汚染されない綺麗な水を引いているんだ」
爪゚ー゚)「・・・また、飲みに来なさい」
( ^ω^)「はい。必ず」
水筒に、水をたっぷりと貰う。
帰りは、節約して飲む事にしよう。
礼をいい、ブーンは祠を後にした。
60: 2011/01/28(金) 20:03:24.42 ID:PTswOFkE0
草の根をかき分けながら、ブーンは思う。
あの老人の心の渇きを癒す事ができるだろうか。
自分に激励を言葉をかけつつも、絶望に打ちひしがれたあの眼に。
希望の涙で潤いを与える事はできるだろうか。
( ^ω^)「・・・リムルダールかお」
61: 2011/01/28(金) 20:06:05.58 ID:PTswOFkE0
次の目的地は、リムルダール。
そこに辿り着くまでに、ブーンは長い道のりを経る事になる。
そしてその中で、おそろしい困難が待ち受けている事を、未だブーンは知らない。
( ^ω^)
64: 2011/01/28(金) 20:09:45.68 ID:PTswOFkE0
いや・・・仮に知っていたとしても。
彼は、その歩みを止める訳にはいかないのだ。
そうとも。 止めてはならない。 止まってはいけない。
ただ前を見据え、その茨の道を一歩ずつ歩き続ける。
人々の願いと悲しみの欠片を拾い集めながら。
( ^ω^)
ブーンはただ・・・歩みゆく。 誓い果たす為に。
to be continue...!!
65: 2011/01/28(金) 20:11:31.11 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)ブーンの今のステータス
LV14
てつのおの
はがねのよろい
てつのたて
今回登場した敵:なし
68: 2011/01/28(金) 20:19:04.98 ID:PTswOFkE0
以上で本日分の投下終了。今回は一話で。
次の(確定)投下日は来週の金曜になります。2話投下します。
定期更新は、金曜日になりますので、よろしくお願いします。
第12話
雨の祠から、南南東に進路をとる。
霜の降りた大地を、ざくさくと踏みしめる。
凍るような冷気の中で、吐く息が白い。
( ^ω^)
次に目指すは、美しき湖の町――――リムルダール。
竜王の支配が訪れる前は、世界の観光名大地としても名を馳せた美しい湖があり、
また今は、その湖を水堀として軍事的に利用する事で、魔物の侵攻対策としてもいる町だ。
その観光の名所としても名高い町に、期待を膨らませる。
しかし、期待ばかりではない。
( ^ω^)
リムルダールに不安がある訳ではない。
不安の種は、その行く過程の道中にある。
そこへ辿り着くには、2つの難関を越えねばならない。
まず一つ目は、“毒の沼地”。
この先を進めば、そこに突き当たる。
竜王の魔力によって、この世界のいくつかの水場、湖沼は毒を帯びた。
その沼地の泥は、生きる者の体力を奪う呪いを持つという。
沼ばかりではない。
この世界の、あらゆる自然が、悪しき力によって陵辱されている。
今は、以前の美しきアレフガルドの面影も無い。
その毒の沼が大きく広がるのが、毒の沼地。
幾人もの旅人が、ここに沈んだという。
そして、その毒の沼地を超えたとしても、次の難所。
“沼地の洞窟”である。
こちらの地方からリムルダール地方は、海によって隔絶されている。
その地つなぎ、海中をくぐるようにして存在するのが、その洞窟である。
悪鬼ひしめく海底の洞窟。幾人もの旅武芸者が、ここで命を絶っている。
かといって、洞窟を通らず船をつかって渡ろうとすれば、
海上の空を飛び交う魔物の軍勢に襲われる。
逃げ場のない船上なら、絶命は必至。
それならば、洞窟を通り抜けた方がまだましだ。
今のアレフガルドには、こうした危険な場所がいくつも点在するため、
地方から地方への移動が非常に困難で、各国の交流や連携が上手く取れないでいる。
情報の伝達や国交の無き故に、文化の発展等が遅れていた。
これも、竜王の支配によるものだ。
( ^ω^)「・・・・・・お」
( ^ω^)「森が見えたお」
凍り付く平原を踏みしめゆくと、森を見つける。
聞いた話では、この森の奥が、毒の沼地となっているはずだ。
しばらく行くと、川があった。
清流である。
どうやら、ここはまだ毒に汚染されていない綺麗な水が流れている様だ。
( ^ω^)<グゥウウゥウゥ...
( ^ω^)「・・・お。疲れたし、お腹も空いたお」
( ^ω^)「そろそろ飯にするかお」
もう辺りは暗くなってきた。
ここらで、夕飯を取る事に決める。
荷物の中を、ガサガサとあさった。
食料袋から、豆と糒(ほしい)を取り出す。
それに、ハインにもらったホタテの貝柱も。
( ^ω^)「ハインさんに貰った貝柱も、ずいぶん少なくなったお」
( ^ω^)「大事に大事に、少しずつ食べてきたんだけど・・・」
( ^ω^)「もうこれで最後だお・・・名残惜しいお」
川から水を汲み、鍋にとる。
焚き火を起こし、鍋に火をかけ、材料を入れた。
( ^ω^)「うーん・・・これだけじゃ足りん気がするお」
( ^ω^)「・・・そうだお!」
ブーンは、バシャバシャと川に入る。
そして、流れる川底に、目を凝らした。
(*^ω^)「・・・いたお!川エビだお!」
いた。川海老だ。
あまりその身は大きくないが、何匹もいるようだった。
( ^ω^)つ「よっ・・・とと」チャプチャプ
ブーンは、水筒を利用して、ひょいひょいと上手く川エビを捕まえる。
捕まえる時のコツは、後ろからすくい上げる事。
エビは、身の危険を感じたとき、後方にジャンプして逃げる性質を持つ。
なので、こうして後ろからすくい取るようにすると、勝手に入れ物に飛び込んでくるのだ。
ラダトームにいた頃は、野山自然を相手に遊び、生活してきたブーンである。
日頃からそういった知恵を蓄えていたのだ。
ブーンがこうした自然に対する知識を豊富に持ち合わせていた事が、
これまでの彼の過酷な旅を無事に続けてこれた、大きな理由の一つなのかもしれない。
( ^ω^)「ふぅ、いっぱい取れたお」
ピチピチと跳ねる川エビを、鍋に入れた。
熱によって、すぐにエビの皮が真っ赤に染まる。
貴重な調味料だが、塩、香草も加える。
少し贅沢な気もするが、明日の事を考えれば、良いだろう。
おそらく、毒の沼地に入る事になるはずだ。
ならばここで、しっかりと英気を養っておいた方がいい。
( ^ω^)「はやく煮えろおぉ・・・」
ここで怖いのは、魔物の襲撃である。
以前、食事中にスライムに襲われたときの事を思い出し、苦笑した。
おかげで、その食事が台無しになってしまったのだ。
鬱憤を晴らす為に、そのスライムを煮て食ってやったが、
酷い味のうえ、腹痛を起こし、嘔吐した。
今でこそ笑える話だが、当時は洒落にならなかった。
旅の中での食事というものは、まさに命に関わる事なのだ。
自戒し、軽率な行動を避ける事も学んでいく。
( ^ω^)「もう、そろそろいいかお?」
鍋が煮え、良い香りがふうわりと立ちのぼる。
湯気がほうほうと上がり、それが焚き火の炎の明かりで、美しくすら見える。
椀にとり、すすり込んだ。
( ^ω^)「はふぅ・・・ズズ・・・」
(*^ω^)「・・・美味いお!」テーレッテレー!
十分に煮え、柔らかくなった米と豆をを食べれば、
今日一日の疲れが癒された。
鍋の熱気と、美味によってブーンの顔が少し紅潮する。
数欠けしか入れていない貝柱からも、良いダシが出ている。
川エビの風味と相まって、なんともいえない。
( ^ω^)「・・・この、川エビの頭のミソが美味しいんだお!」ジュルジュル
(*^ω^)「はぁ・・・」
このアレフガルドの中でも殊さら寒冷な地方で、
暖かい料理は本当に身にしみる。
胃が温まり、吐く息が更に大きく白くなった。
その息で、かじかんだ手を温める。
明日は、いよいよ毒の沼地に挑む事になるだろう。
幾人もの旅人が命を落とした、危険な場所。
( ^ω^)(・・・・・・)
かすかな緊張が、胸の中に生じる。
( ^ω^)「・・・・・・」ズズ
( ^ω^)「・・・ふぅ、はふ。モグモグ・・・」ズズー・・・
考えてもしょうがない。行くよりほかは無い。
冷たく大きな風が吹く。森の木々がざわざわと悲鳴のように揺れた。
どこか遠くから、獣の遠吠えが聞こえる。
焚き火がパチパチと音を鳴らし、煌々とブーンの顔を照らす。
そして夜は更けていく。 ブーンは、一人。
( ^ω^)
翌朝、ブーンは森を歩く。
段々と周りの草の背の丈が短くなってきた。
葉も、どこか黒ずんで見える。
毒の沼地が近い事を示す。
( ^ω^)「・・・何か嫌な臭いがするお」
( ^ω^)「毒の沼地の臭いかお」
据えた様な、苦々しいような臭気が鼻についてきた。
そろそろか。
( ^ω^)「!」
( ;^ω^)「・・・これが・・・毒の沼地かお」
そこには、大きな沼地が広がっていた。
毒々しい色合い。
それは意思があるかのように、ド口リとうねる。
これほどの寒さでも固まらないのは、竜王の魔力によるものか。
まるで、生き物を飲み込もうと大きな口を開けているかのように。
( ;^ω^)「・・・」
( ;^ω^)「・・・ここを通るのかお」
( ;^ω^)「・・・」
( ;^ω^)「いや、ここで止まってても仕方ないお」
( ;^ω^)「やるんだお、いくしかないお、ブーン!」
自分自身に喝を入れる。
荷を下ろし、整頓を始める。
少しでも余分な重さになる様な物は捨てる。
沼地の中、自重で沈みかねない。
( ^ω^)「・・・よし」
( ^ω^)「いくかお」
沼地に、足を踏み入れる。
ズブズブと足が沼に埋まった。
( ;^ω^)「・・・」
もう一歩。もう一歩。ズブリ、ズブリ。
( ;^ω^)「・・・」
( ;^ω^)「何か、肌が焼け付くようだお・・・」
( ;^ω^)「これが竜王の呪い・・・生命を奪う魔性の沼かお・・・」
生気を吸い取られるかのようだ。
そのまま、どんどん進んでいく。進むしか無い。
(( ;^ω^)ズブズブ
(( ;^ω^)ズブズブ
しばらく経つと、水面が腰辺りまでくる。
上手く足を動かせない。
( ;^ω^)(足がキツいお・・・)
水面はどんどん上がる。胸の辺りまでくる。
( ;^ω^)(・・・・・・)
じわじわと恐怖が、泥のように頭の中を浸食する。
( ;^ω^)
泥沼が首もとまで。
恐怖が加速し、ド口リと身を包む。
自分は、正規のルートを辿っているのか。
方角は間違ってはいないか。
(( ; ω )
いや、大丈夫。何人もここを通り抜けた者はいるのだ。
自分の身長は低くない。大丈夫だ。
(( ; ω )
しかし、少しでも地盤が沈下していたら?
流動性のある沼地だ。十分にあり得る。
(( ; ω )
通り抜けた者は何人もいる。
通り抜けられなかった者も何人もいる。
(( ; ω )
とうとう、水面が顎までついた。
このままでは。
( ;^ω^)(!)
見えた。
前方に、陸と大きな穴。あれが、沼地の洞窟だ。
( ^ω^)みつけたお!
思わずそう声が出そうになったが、水面はもう口元まで達している。
後少し、後少し。だが。
( ;^ω^)(・・・これは)
( ;^ω^)(・・・・・・)
( ;^ω^)(沈むお)
もう、すぐそこまで見えている。
しかし、このままのペースでは、この身は確実に泥沼に埋まるだろう。
しかし、大きく身を唸らせて泳げば、この粘性のある泥にとらわれ沈む気がする。
いや、沈むだろう。
かといって引き返す事もできない。止まる事もできない。
止まっても、その身の重さで沈んでいくだろう。
そして、水面は鼻先をくすぐる。
鼻が埋まれば、息ができなくなる。
( ;^ω^)(・・・)
( ;^ω^)(・・・覚悟を、決めるお)
ブーンは、呼吸を止めた。
そのまま進む。ズブズブと、頭ごと泥中に飲み込まれる。
大丈夫、洞窟は近かった。
少しだけ、呼吸を止めろ。
方向が解らない。しかし、この濁水では見えないだろうし、
仮に目を開ければ、その毒で失明するだろう。
このまま、まっすぐ。
まっすぐ、進めているか?解らない。
苦しくなって来た。
大丈夫。いける。
まだか。
苦しい。
足に何か触れた。
まだなのか。
呼吸がしたい。
いや、考えるな。思考を捨てろ。雑念を消せ。
苦しいという事も考えるな。
考えるな。何も考えるな。ただ、進むのみ。歩くのみだ。
ギコ。
苦しい。違う。考えるな
くるしくない もうすぐだ
カーチャン
だめだ
考えるなということすらかんがえるな
そうおもうことさえも
なにも なにも
なにも
足に、固い感触が走る。
少しずつ、体が浮上していく感覚。
頭に、冷たい空気が触れる。
目、鼻、そして口。
( ; ω )「 ・・・・・・ッッぶっはぁっっ!! 」
大きく、息を吸い込み、吐き出す。
そして、すぐに目の周りの毒を拭う。
目を見開いた。
がいこつ 「 ガガガギャカカカカァァァァッッッッ!!!! 」
(♯^ω^) 「 ッッはあアアアアアアああああおッッ!!!! 」
ブーンの離さず握りしめていた斧が泥の弧を描き一閃する。
突如目の前に現れた、魔物の頭を瞬時に砕き飛ばした。
魔物の体は、ガシャリと崩れ、倒れる。
吹き飛ばした魔物の破片が、沼地にボチャボチャと音をたてて落ちていく。
( ;^ω^)「・・・っはあっ!・・・ぶはぁっ!・・・はぁっ・・・」
( ;^ω^)「はっ!はぁっ・・・!ぐっ、ハァ・・・ はぁ」
( ^ω^)「はぁ・・・ はぁ・・・ ここが」
( ^ω^)「ここが・・・沼地の洞窟かお」
目の前には、巨大な穴が広がっている。
その暗闇からは、湿り気と共に、生き物の蠢く邪悪な気配を感じ取れる。
( ^ω^)「・・・・・・」
先ず、火を起こした。
それから装備を外し、来ている服も脱ぐ。
しかし、武器の斧だけは、すぐに手の届く範囲に置く。
水筒の水を頭に振りかけ、顔の泥を洗い落とす。
口の中も濯ぎ、吐き出した。
飲み水を失うのは痛いが、少しでも毒を落とす為にはしょうがない。
服を火にあて、乾かし始める。
服が乾けば、それを着て装備しなおす。
ブーンは軽く屈伸運動をし、体をほぐす。
あの毒の沼で、大分体力を消耗したようだ。
薬草があればよいのだが、毒水によってダメになっていた。
( ^ω^)「・・・よし」
焚き火の炎を、たいまつに宿らせる。
そして、目の前の暗闇をねめつけるように。
( ^ω^)「・・・・・・いくかお」
これから先は、さらに泥にまみれた戦いになるだろう。
どう足掻く。
しかしその苦境、乗り越えてみせよう。
そしてその困難の中で、竜王を倒す牙を磨くのだ。
身を投じるは、恐ろしき化け物の待ち構える、氏の洞窟。
この先、未踏の地を踏めるか。はたまた、氏人となりうるか。
焚き火の炎を蹴り飛ばし、消した。
後ろから、ぎゃあぎゃあと鳥の声が聞こえる。
( ^ω^)
ブーンは洞窟の暗い暗い、闇の中へ・・・飲み込まれていく。
――――――過酷な運命に、誘(いざな)われるように。
to be continue...!!
次の(確定)投下日は来週の金曜になります。2話投下します。
定期更新は、金曜日になりますので、よろしくお願いします。
8: 2011/02/04(金) 21:48:39.15 ID:kdb28XDD0
第12話
9: 2011/02/04(金) 21:49:50.05 ID:kdb28XDD0
雨の祠から、南南東に進路をとる。
霜の降りた大地を、ざくさくと踏みしめる。
凍るような冷気の中で、吐く息が白い。
( ^ω^)
次に目指すは、美しき湖の町――――リムルダール。
11: 2011/02/04(金) 21:51:33.95 ID:kdb28XDD0
竜王の支配が訪れる前は、世界の観光名大地としても名を馳せた美しい湖があり、
また今は、その湖を水堀として軍事的に利用する事で、魔物の侵攻対策としてもいる町だ。
その観光の名所としても名高い町に、期待を膨らませる。
しかし、期待ばかりではない。
( ^ω^)
リムルダールに不安がある訳ではない。
不安の種は、その行く過程の道中にある。
そこへ辿り着くには、2つの難関を越えねばならない。
13: 2011/02/04(金) 21:54:26.85 ID:kdb28XDD0
まず一つ目は、“毒の沼地”。
この先を進めば、そこに突き当たる。
竜王の魔力によって、この世界のいくつかの水場、湖沼は毒を帯びた。
その沼地の泥は、生きる者の体力を奪う呪いを持つという。
沼ばかりではない。
この世界の、あらゆる自然が、悪しき力によって陵辱されている。
今は、以前の美しきアレフガルドの面影も無い。
その毒の沼が大きく広がるのが、毒の沼地。
幾人もの旅人が、ここに沈んだという。
16: 2011/02/04(金) 21:56:52.60 ID:kdb28XDD0
そして、その毒の沼地を超えたとしても、次の難所。
“沼地の洞窟”である。
こちらの地方からリムルダール地方は、海によって隔絶されている。
その地つなぎ、海中をくぐるようにして存在するのが、その洞窟である。
悪鬼ひしめく海底の洞窟。幾人もの旅武芸者が、ここで命を絶っている。
かといって、洞窟を通らず船をつかって渡ろうとすれば、
海上の空を飛び交う魔物の軍勢に襲われる。
逃げ場のない船上なら、絶命は必至。
それならば、洞窟を通り抜けた方がまだましだ。
18: 2011/02/04(金) 21:59:48.50 ID:kdb28XDD0
今のアレフガルドには、こうした危険な場所がいくつも点在するため、
地方から地方への移動が非常に困難で、各国の交流や連携が上手く取れないでいる。
情報の伝達や国交の無き故に、文化の発展等が遅れていた。
これも、竜王の支配によるものだ。
( ^ω^)「・・・・・・お」
( ^ω^)「森が見えたお」
凍り付く平原を踏みしめゆくと、森を見つける。
聞いた話では、この森の奥が、毒の沼地となっているはずだ。
19: 2011/02/04(金) 22:02:34.10 ID:kdb28XDD0
しばらく行くと、川があった。
清流である。
どうやら、ここはまだ毒に汚染されていない綺麗な水が流れている様だ。
( ^ω^)<グゥウウゥウゥ...
( ^ω^)「・・・お。疲れたし、お腹も空いたお」
( ^ω^)「そろそろ飯にするかお」
もう辺りは暗くなってきた。
ここらで、夕飯を取る事に決める。
21: 2011/02/04(金) 22:04:49.62 ID:kdb28XDD0
荷物の中を、ガサガサとあさった。
食料袋から、豆と糒(ほしい)を取り出す。
それに、ハインにもらったホタテの貝柱も。
( ^ω^)「ハインさんに貰った貝柱も、ずいぶん少なくなったお」
( ^ω^)「大事に大事に、少しずつ食べてきたんだけど・・・」
( ^ω^)「もうこれで最後だお・・・名残惜しいお」
川から水を汲み、鍋にとる。
焚き火を起こし、鍋に火をかけ、材料を入れた。
( ^ω^)「うーん・・・これだけじゃ足りん気がするお」
( ^ω^)「・・・そうだお!」
24: 2011/02/04(金) 22:07:38.56 ID:kdb28XDD0
ブーンは、バシャバシャと川に入る。
そして、流れる川底に、目を凝らした。
(*^ω^)「・・・いたお!川エビだお!」
いた。川海老だ。
あまりその身は大きくないが、何匹もいるようだった。
( ^ω^)つ「よっ・・・とと」チャプチャプ
ブーンは、水筒を利用して、ひょいひょいと上手く川エビを捕まえる。
捕まえる時のコツは、後ろからすくい上げる事。
エビは、身の危険を感じたとき、後方にジャンプして逃げる性質を持つ。
なので、こうして後ろからすくい取るようにすると、勝手に入れ物に飛び込んでくるのだ。
26: 2011/02/04(金) 22:09:30.81 ID:kdb28XDD0
ラダトームにいた頃は、野山自然を相手に遊び、生活してきたブーンである。
日頃からそういった知恵を蓄えていたのだ。
ブーンがこうした自然に対する知識を豊富に持ち合わせていた事が、
これまでの彼の過酷な旅を無事に続けてこれた、大きな理由の一つなのかもしれない。
( ^ω^)「ふぅ、いっぱい取れたお」
ピチピチと跳ねる川エビを、鍋に入れた。
熱によって、すぐにエビの皮が真っ赤に染まる。
貴重な調味料だが、塩、香草も加える。
少し贅沢な気もするが、明日の事を考えれば、良いだろう。
おそらく、毒の沼地に入る事になるはずだ。
ならばここで、しっかりと英気を養っておいた方がいい。
30: 2011/02/04(金) 22:12:25.05 ID:kdb28XDD0
( ^ω^)「はやく煮えろおぉ・・・」
ここで怖いのは、魔物の襲撃である。
以前、食事中にスライムに襲われたときの事を思い出し、苦笑した。
おかげで、その食事が台無しになってしまったのだ。
鬱憤を晴らす為に、そのスライムを煮て食ってやったが、
酷い味のうえ、腹痛を起こし、嘔吐した。
今でこそ笑える話だが、当時は洒落にならなかった。
旅の中での食事というものは、まさに命に関わる事なのだ。
自戒し、軽率な行動を避ける事も学んでいく。
35: 2011/02/04(金) 22:15:41.55 ID:kdb28XDD0
( ^ω^)「もう、そろそろいいかお?」
鍋が煮え、良い香りがふうわりと立ちのぼる。
湯気がほうほうと上がり、それが焚き火の炎の明かりで、美しくすら見える。
椀にとり、すすり込んだ。
( ^ω^)「はふぅ・・・ズズ・・・」
(*^ω^)「・・・美味いお!」テーレッテレー!
十分に煮え、柔らかくなった米と豆をを食べれば、
今日一日の疲れが癒された。
鍋の熱気と、美味によってブーンの顔が少し紅潮する。
数欠けしか入れていない貝柱からも、良いダシが出ている。
川エビの風味と相まって、なんともいえない。
37: 2011/02/04(金) 22:19:32.56 ID:kdb28XDD0
( ^ω^)「・・・この、川エビの頭のミソが美味しいんだお!」ジュルジュル
(*^ω^)「はぁ・・・」
このアレフガルドの中でも殊さら寒冷な地方で、
暖かい料理は本当に身にしみる。
胃が温まり、吐く息が更に大きく白くなった。
その息で、かじかんだ手を温める。
明日は、いよいよ毒の沼地に挑む事になるだろう。
幾人もの旅人が命を落とした、危険な場所。
( ^ω^)(・・・・・・)
かすかな緊張が、胸の中に生じる。
42: 2011/02/04(金) 22:23:15.66 ID:kdb28XDD0
( ^ω^)「・・・・・・」ズズ
( ^ω^)「・・・ふぅ、はふ。モグモグ・・・」ズズー・・・
考えてもしょうがない。行くよりほかは無い。
冷たく大きな風が吹く。森の木々がざわざわと悲鳴のように揺れた。
どこか遠くから、獣の遠吠えが聞こえる。
焚き火がパチパチと音を鳴らし、煌々とブーンの顔を照らす。
そして夜は更けていく。 ブーンは、一人。
44: 2011/02/04(金) 22:26:29.64 ID:kdb28XDD0
( ^ω^)
翌朝、ブーンは森を歩く。
段々と周りの草の背の丈が短くなってきた。
葉も、どこか黒ずんで見える。
毒の沼地が近い事を示す。
( ^ω^)「・・・何か嫌な臭いがするお」
( ^ω^)「毒の沼地の臭いかお」
据えた様な、苦々しいような臭気が鼻についてきた。
そろそろか。
45: 2011/02/04(金) 22:28:11.19 ID:kdb28XDD0
( ^ω^)「!」
( ;^ω^)「・・・これが・・・毒の沼地かお」
そこには、大きな沼地が広がっていた。
毒々しい色合い。
それは意思があるかのように、ド口リとうねる。
これほどの寒さでも固まらないのは、竜王の魔力によるものか。
まるで、生き物を飲み込もうと大きな口を開けているかのように。
( ;^ω^)「・・・」
( ;^ω^)「・・・ここを通るのかお」
( ;^ω^)「・・・」
( ;^ω^)「いや、ここで止まってても仕方ないお」
( ;^ω^)「やるんだお、いくしかないお、ブーン!」
48: 2011/02/04(金) 22:31:42.05 ID:kdb28XDD0
自分自身に喝を入れる。
荷を下ろし、整頓を始める。
少しでも余分な重さになる様な物は捨てる。
沼地の中、自重で沈みかねない。
( ^ω^)「・・・よし」
( ^ω^)「いくかお」
沼地に、足を踏み入れる。
ズブズブと足が沼に埋まった。
50: 2011/02/04(金) 22:33:56.99 ID:kdb28XDD0
( ;^ω^)「・・・」
もう一歩。もう一歩。ズブリ、ズブリ。
( ;^ω^)「・・・」
( ;^ω^)「何か、肌が焼け付くようだお・・・」
( ;^ω^)「これが竜王の呪い・・・生命を奪う魔性の沼かお・・・」
生気を吸い取られるかのようだ。
そのまま、どんどん進んでいく。進むしか無い。
(( ;^ω^)ズブズブ
(( ;^ω^)ズブズブ
51: 2011/02/04(金) 22:36:43.90 ID:kdb28XDD0
しばらく経つと、水面が腰辺りまでくる。
上手く足を動かせない。
( ;^ω^)(足がキツいお・・・)
水面はどんどん上がる。胸の辺りまでくる。
( ;^ω^)(・・・・・・)
じわじわと恐怖が、泥のように頭の中を浸食する。
( ;^ω^)
泥沼が首もとまで。
恐怖が加速し、ド口リと身を包む。
56: 2011/02/04(金) 22:40:44.76 ID:kdb28XDD0
自分は、正規のルートを辿っているのか。
方角は間違ってはいないか。
(( ; ω )
いや、大丈夫。何人もここを通り抜けた者はいるのだ。
自分の身長は低くない。大丈夫だ。
(( ; ω )
しかし、少しでも地盤が沈下していたら?
流動性のある沼地だ。十分にあり得る。
(( ; ω )
通り抜けた者は何人もいる。
通り抜けられなかった者も何人もいる。
(( ; ω )
59: 2011/02/04(金) 22:42:07.68 ID:kdb28XDD0
とうとう、水面が顎までついた。
このままでは。
( ;^ω^)(!)
見えた。
前方に、陸と大きな穴。あれが、沼地の洞窟だ。
( ^ω^)みつけたお!
思わずそう声が出そうになったが、水面はもう口元まで達している。
後少し、後少し。だが。
62: 2011/02/04(金) 22:45:17.79 ID:kdb28XDD0
( ;^ω^)(・・・これは)
( ;^ω^)(・・・・・・)
( ;^ω^)(沈むお)
もう、すぐそこまで見えている。
しかし、このままのペースでは、この身は確実に泥沼に埋まるだろう。
しかし、大きく身を唸らせて泳げば、この粘性のある泥にとらわれ沈む気がする。
いや、沈むだろう。
かといって引き返す事もできない。止まる事もできない。
止まっても、その身の重さで沈んでいくだろう。
そして、水面は鼻先をくすぐる。
鼻が埋まれば、息ができなくなる。
63: 2011/02/04(金) 22:48:19.01 ID:kdb28XDD0
( ;^ω^)(・・・)
( ;^ω^)(・・・覚悟を、決めるお)
ブーンは、呼吸を止めた。
そのまま進む。ズブズブと、頭ごと泥中に飲み込まれる。
大丈夫、洞窟は近かった。
少しだけ、呼吸を止めろ。
方向が解らない。しかし、この濁水では見えないだろうし、
仮に目を開ければ、その毒で失明するだろう。
このまま、まっすぐ。
まっすぐ、進めているか?解らない。
67: 2011/02/04(金) 22:51:39.29 ID:kdb28XDD0
苦しくなって来た。
大丈夫。いける。
まだか。
苦しい。
足に何か触れた。
まだなのか。
呼吸がしたい。
68: 2011/02/04(金) 22:53:12.97 ID:kdb28XDD0
いや、考えるな。思考を捨てろ。雑念を消せ。
苦しいという事も考えるな。
考えるな。何も考えるな。ただ、進むのみ。歩くのみだ。
ギコ。
苦しい。違う。考えるな
くるしくない もうすぐだ
カーチャン
だめだ
考えるなということすらかんがえるな
そうおもうことさえも
なにも なにも
なにも
71: 2011/02/04(金) 22:54:26.17 ID:kdb28XDD0
73: 2011/02/04(金) 22:57:26.42 ID:kdb28XDD0
足に、固い感触が走る。
少しずつ、体が浮上していく感覚。
頭に、冷たい空気が触れる。
目、鼻、そして口。
( ; ω )「 ・・・・・・ッッぶっはぁっっ!! 」
大きく、息を吸い込み、吐き出す。
そして、すぐに目の周りの毒を拭う。
目を見開いた。
77: 2011/02/04(金) 23:00:36.25 ID:kdb28XDD0
がいこつ 「 ガガガギャカカカカァァァァッッッッ!!!! 」
(♯^ω^) 「 ッッはあアアアアアアああああおッッ!!!! 」
78: 2011/02/04(金) 23:02:08.08 ID:kdb28XDD0
ブーンの離さず握りしめていた斧が泥の弧を描き一閃する。
突如目の前に現れた、魔物の頭を瞬時に砕き飛ばした。
魔物の体は、ガシャリと崩れ、倒れる。
吹き飛ばした魔物の破片が、沼地にボチャボチャと音をたてて落ちていく。
84: 2011/02/04(金) 23:05:38.67 ID:kdb28XDD0
( ;^ω^)「・・・っはあっ!・・・ぶはぁっ!・・・はぁっ・・・」
( ;^ω^)「はっ!はぁっ・・・!ぐっ、ハァ・・・ はぁ」
( ^ω^)「はぁ・・・ はぁ・・・ ここが」
( ^ω^)「ここが・・・沼地の洞窟かお」
目の前には、巨大な穴が広がっている。
その暗闇からは、湿り気と共に、生き物の蠢く邪悪な気配を感じ取れる。
( ^ω^)「・・・・・・」
87: 2011/02/04(金) 23:08:20.76 ID:kdb28XDD0
先ず、火を起こした。
それから装備を外し、来ている服も脱ぐ。
しかし、武器の斧だけは、すぐに手の届く範囲に置く。
水筒の水を頭に振りかけ、顔の泥を洗い落とす。
口の中も濯ぎ、吐き出した。
飲み水を失うのは痛いが、少しでも毒を落とす為にはしょうがない。
服を火にあて、乾かし始める。
服が乾けば、それを着て装備しなおす。
89: 2011/02/04(金) 23:11:05.58 ID:kdb28XDD0
ブーンは軽く屈伸運動をし、体をほぐす。
あの毒の沼で、大分体力を消耗したようだ。
薬草があればよいのだが、毒水によってダメになっていた。
( ^ω^)「・・・よし」
焚き火の炎を、たいまつに宿らせる。
そして、目の前の暗闇をねめつけるように。
( ^ω^)「・・・・・・いくかお」
91: 2011/02/04(金) 23:13:21.41 ID:kdb28XDD0
これから先は、さらに泥にまみれた戦いになるだろう。
どう足掻く。
しかしその苦境、乗り越えてみせよう。
そしてその困難の中で、竜王を倒す牙を磨くのだ。
身を投じるは、恐ろしき化け物の待ち構える、氏の洞窟。
この先、未踏の地を踏めるか。はたまた、氏人となりうるか。
93: 2011/02/04(金) 23:17:06.99 ID:kdb28XDD0
焚き火の炎を蹴り飛ばし、消した。
後ろから、ぎゃあぎゃあと鳥の声が聞こえる。
( ^ω^)
ブーンは洞窟の暗い暗い、闇の中へ・・・飲み込まれていく。
――――――過酷な運命に、誘(いざな)われるように。
to be continue...!!
95: 2011/02/04(金) 23:18:09.51 ID:kdb28XDD0
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