165: 2011/07/25(月) 21:53:19 ID:T9c12Rdo0

166: 2011/07/25(月) 21:55:27 ID:T9c12Rdo0


( ^ω^)「ツン、準備はできたかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、もう済んだわ」




小さな宿屋の一室で、ブーンとツンは荷物をまとめていた。

これから、ラダトームへ発つ予定である



( ^ω^)「じゃあ、そろそろ・・・いくかお?」


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ドラゴンクエスト25thアニバーサリー 冒険の歴史書 (デジタル版SE-MOOK)
168: 2011/07/25(月) 21:56:54 ID:T9c12Rdo0


あの“リムルダール空の襲撃”から、数週間が経過しようとしていた。


ブーンは戦闘において大きなダメージを受けたが
かかった腕の良い医師の適切な処置により、
ツンの回復呪文の効果も相まってある程度には回復している。

あの襲撃は、リムルダールにとっては大きな痛手を被る事件になったが、
少なくともブーンとツンにとっては、一つの収穫があったのも確かだった。


それは、荒らされた市街地方面で、
復興の為の手伝いをしていた時の事だった。



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169: 2011/07/25(月) 21:58:54 ID:T9c12Rdo0


ξ゚⊿゚)ξ『ブーン!ちょっときて』


(メ ^ω^)『お、なんだお?』


ξ゚⊿゚)ξ『これを見て頂戴』

(メ ^ω^)『鳥の魔物(キメラ)の屍骸だおね。片付けなきゃいけないお。
      これが、どうかしたのかお?』

ξ゚⊿゚)ξ『ええ・・・この羽下の部分を』

(メ ^ω^)『ん・・・』


ツンは、その魔物の屍骸の羽をまくり上げた。

たった一枚、微かに光り輝く羽がある。


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170: 2011/07/25(月) 22:00:20 ID:T9c12Rdo0


(メ;^ω^)『・・・おっ!? これは・・・?』


ξ゚⊿゚)ξ『通称 “キメラの翼”――――――』


ξ゚⊿゚)ξ『これはね、キメラがその身に魔力を伴った攻撃を受けると、
      氏ぬ間際に、その風切羽だけに、光り輝く羽を残す事があるの』

ξ゚⊿゚)ξ『これがそうだわ・・・そうそう採れるものじゃない、貴重な物よ』

ξ゚⊿゚)ξ『昔は市場にも割と流通していた物だけど・・・今は滅多にみない』

ξ゚⊿゚)ξ『きっと魔力を用いて魔物と戦う、なんて人間が減ったからだわ』

(メ ^ω^)『へぇ・・・そうなのかお。ツンはやっぱり、学識豊かだお!』

ξ//⊿/)ξ『そ、それほどでもないわよ!』


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171: 2011/07/25(月) 22:01:49 ID:T9c12Rdo0


(メ ^ω^)『で、これは高値で取引されたりするのかお』

ξ゚⊿゚)ξ『今の市場価値は解らないけど・・・売ったりなんてとんでもないわ!』

(メ ^ω^)『おっ。どうしてだお?』

ξ゚⊿゚)ξ『この翼にはね・・・不思議な力が宿っているの』

ξ゚⊿゚)ξ『そう、高等な呪文にも似た効果――――――それは』




.

172: 2011/07/25(月) 22:03:05 ID:T9c12Rdo0



( ^ω^)「ふん、ふん!」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、何だかそわそわしてるわね」

( ^ω^)「すこし、緊張するお」

( ^ω^)「この翼を使って、空を飛べるなんて、すごいお」


輝く翼をまじまじと見つめながら、ブーンは少しだけ目を輝かせた。


( ^ω^)「小さい頃から、空を飛ぶ夢をよくみたもんだお」

( ^ω^)「まさか、そんな空想が成就する機会に恵まれるなんて・・・!」


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173: 2011/07/25(月) 22:04:49 ID:T9c12Rdo0


“キメラの翼”は、魔力を有している。
その内在する魔力を利用する事により、なんと空を飛ぶ事ができる。

そして、大地から大地へと移動が可能だという。


ブーンは未だ信じられぬ、という表情で、翼をパタパタさせた。


ブーン達は偶然見つけたこのアイテムを用いて、
ラダトームまで移動する方法をとる事に決める。


これならば、陸路をゆくより断然速く、かつ安全にラダトームまで帰還できるのだ。
わざわざ危険というリスクを犯さなくて済む。


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174: 2011/07/25(月) 22:06:23 ID:T9c12Rdo0


だが、手放しに喜ぶ事はできない。

これは先日の戦争の戦果によるもので、
あれ無くしては手に入れられない僥倖だったのだから。


ともあれ、ブーン達はラダトームまでの“切符”を手に入れた。
これで無事に帰り付ける。 二人の故郷へと。


荷物も、今しがたまとめ終わった所だ。

後は、“飛ぶ”だけである。



二人は、宿屋の料金を精算し、あとにする。
リムルダールの風景や雑踏を想い、ひとしきり名残り惜しんだ。


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175: 2011/07/25(月) 22:08:48 ID:T9c12Rdo0


( ・∀・)「ん」

( ^ω^)「お」


宿の外に、一人の剣士がいた。



( ・∀・)「キメラの翼でラダトームにひとっ飛びか。珍しいもの持ってるな」

( ^ω^)「おお」

( ・∀・)「お姫様を早いとこ城まで送り届けたいんだろ」

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ」

( ;^ω^)「気付いてたのかお」

( ・∀・)「やっぱりそうか。いや当てずっぽうだったけどね。
      ツンさんが某国のお姫様の手配書に似てたものだから」


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176: 2011/07/25(月) 22:10:17 ID:T9c12Rdo0


( ;^ω^)「おー・・・」

( ・∀・)「やべえ俺なんという洞察力、天才。しかもイケメンだし。これはやべえ」

( ^ω^)「本当ですね。いやぁ、モララー先生の御美顔を拝めるのも、これが最後ですお」

( ・∀・)「黙らっしゃい。命に関わるギラをしますよ」



( ^ω^)「モララーは、これから先どうするんだお?」

( ・∀・)「・・・さあね。それは風だけが知る事さ」

( ^ω^)「なに気取ってんだコイツ」

( ・∀・)「いいからとっとといけよ。ツンさんの美しさで軽減されてるが、
      悪趣味な顔をみてると、俺の美意識が崩壊しそうで」

( ^ω^)「てめえ斬るぞ」


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177: 2011/07/25(月) 22:12:50 ID:T9c12Rdo0


( ^ω^)「でも、これどうやって使うんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「想像するのよ。自分が行きたい場所を」

ξ゚⊿゚)ξ「そうすれば、翼に宿る魔力を使って精霊が、その行きたい場所の魔力を探し、
      魔力が磁力のように繋いで導いてくれるわ」

ξ゚⊿゚)ξ「その土地に残して来た自分の魔力と、翼の魔力を繋ぐの」

ξ゚⊿゚)ξ「だから、まあ行った事がある場所にしか行けないけれどね」

( ^ω^)「おお・・・」

( ^ω^)「感覚が解らないお。どんな感じで飛んでいくんだお?」

ξ//⊿/)ξ「と、とりあえず、離れないように私はブーンに抱きかかえてもらうわね!」

( ^ω^)「おおっ!」


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179: 2011/07/25(月) 22:15:27 ID:T9c12Rdo0


ξ//⊿/)ξ「ふ、二人で空の旅なんて・・・なんだかロマンチックね」

( ^ω^)「おっおっ!なんだか、ドキドキするお」


( ^ω^)「じゃあ・・・」

( ^ω^)「いくお」



ブーンは、翼を見つめ、想像する。
あの懐かしき故郷の風景を、匂いを、肌触りを。


( -ω-)


翼が、その輝きを増していく。
光は二人を包み込み・・・


ブーンとツンは、浮いた。


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182: 2011/07/25(月) 22:17:57 ID:T9c12Rdo0


( ;゜ω゜)「おお・・・ッ!」

ξ*゚⊿゚)ξ「わっ・・・」


周りの衆人が、二人をもの珍しげに見つめる。


そして、ブーンとツンは、飛んだ。





( ・∀・)「いったか」

( ・∀・)

( ・∀・)「さて、俺は――――――」



.

183: 2011/07/25(月) 22:19:54 ID:T9c12Rdo0


( ;゜ω゜)「ふ、ふぉぉおお!!」

ξ*゚⊿゚)ξ「きゃーーーー」


空高く飛翔し、小さくなってゆくリムルダールの街を見下ろす。

風圧で表情が歪むが、徐々に光の幕が風をよけるように広がってゆく。


(*^ω^)「す、すごいお!ブーーーーンだお!」

ξ*゚⊿゚)ξ「・・・・・・ブーン」


ξ゚⊿゚)ξ


.

184: 2011/07/25(月) 22:22:41 ID:T9c12Rdo0


これで、終わる。


あの暗闇の生活から解き放たれ、絶望から救い出してくれた戦士との・・・

長いようで短かったツンとブーンの旅は、
この空の旅を経て完結する。


あの洞窟に捕われていた時はもちろん、城で生活していた頃と比べても、
このブーンと一緒の生活には張りがあった。希望に満ちていた。


それも、もうすぐ幕を閉じる。


ξ゚⊿゚)ξ「・・・・・・ブーン」

ξ ⊿ )ξ(神様。願わくばこの時が永遠に続く事を・・・)



戦士と姫君は、空をゆく。



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185: 2011/07/25(月) 22:24:02 ID:T9c12Rdo0












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186: 2011/07/25(月) 22:24:49 ID:T9c12Rdo0




川 ゚ -゚)「失礼致します、竜王様」



暗がりの中、大きな物々しい扉の前に、立つ者が一人。

髪は真っ白で、身に召すものも純白。肌も透き通るように色が抜けている。
およそ全てが白かった。



.









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187: 2011/07/25(月) 22:26:00 ID:T9c12Rdo0


「クー・・・ 入るがいい」


扉の中なら、低く厳かな声が聞こえる。


川 ゚ -゚)「は」


川 ゚ -゚)「竜王様・・・例の三国同時侵攻の成果の件でございますが・・・」


「うむ」


.

188: 2011/07/25(月) 22:27:20 ID:T9c12Rdo0


川; ゚ -゚)「結論から言うと・・・失敗です」


川 ゚ -゚)「メルキドは、何故かこちらの急襲の情報が敵に漏れていた為、
     事前に強固に準備され、迎撃された上で撤退を余儀なく・・・」


「・・・・・・・・・」


川 ゚ -゚)「リムルダールは、指揮官である我ら四天王の一角、
     指揮官である“氏神”の情緒不安定により、錯乱し撤退の命を出してしまいました」


「・・・・・・ラダトームは?」


川 ゚ -゚)「ラダトームはやはり大国。堅牢な守りに加え・・・
     これも指揮官である“黒竜”が・・・」

川 ゚ -゚)「途中で指揮を放棄。戦線を離脱した事から、軍の統率がとれず、あえなく撤退・・・」


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189: 2011/07/25(月) 22:28:42 ID:T9c12Rdo0


「クックック・・・・・・。 あ奴らしいといえば、そうだろうな」


川; ゚ -゚)「竜王様」


「全ての戦において敗退か。如何ともし難い」


川; ゚ -゚)


「クー・・・これは采配を揮った貴様の責任でもある」


川 ゚ -゚)「は・・・何なりと御処分を」


「今回は良い。四天王、特に貴様は優秀だ。
 処刑して代わりを用意しようにも、貴様らの様な逸材は簡単には代替がきかん」


川 ゚ -゚)「・・・・・・」


.

191: 2011/07/25(月) 22:29:55 ID:T9c12Rdo0



「 だが 次 は無いぞ。」 ゾ・・・



川; ゚ -゚)「ッ・・・・・・!」



「それともよもや、人間を滅ぼす事に疑問を抱いているのではあるまいな?」


川 ゚ -゚)


クーと呼ばれた者の白髪の色が、うっすら黒みを帯びる。


川 ゚ -゚)「そのような事は・・・あり得ませぬ」

川 ゚ -゚)「いつも我が心は、竜王様の赴くままに・・・」


.

192: 2011/07/25(月) 22:31:46 ID:T9c12Rdo0


「フフ・・・ ならよいがな・・・」



「あまりこの竜王を失望させてくれるな・・・

 人間を・・・根絶やしにするのだぞ・・・クーよ。 解ったな・・・」



川 ゚ -゚)「・・・・・・は」


川 ゚ -゚)「命に・・・代えましても」



.

193: 2011/07/25(月) 22:33:52 ID:T9c12Rdo0




(ゝ○_○)「ふぅ・・・この忙しい時期に、ただ門番てのも何となくなぁ」

| `゚ -゚| 「まぁそう言うな。これも必要な仕事さ」

(ゝ○_○)「む。誰かやってくる。随分と身なりがボロボロだが・・・」


   ( ^ω^)
 (ξ:::⊿::)ξ


.

195: 2011/07/25(月) 22:34:58 ID:T9c12Rdo0


(ゝ○_○)「止まれ。何用だ」

( ^ω^)「王様にお会いしたく、伺いを立てましたお。 
      ラダトーム王に朗報をお持ちしました」

(ゝ○_○)「朗報・・・?一体何だ」

| `゚ -゚| 「他国の使節であるか?」

( ^ω^)「いいえ、違いますお」

(ゝ○_○)「一般人か。 それにしても、随分ボロボロの出で立ちだな。
      王に謁見したいというのであれば、もうすこし身なりを整えてから・・・」

(ξ:::⊿::)ξ「あら、貴方達。私の顔を、忘れてしまったのかしら?」

| `゚ -゚| 「・・・む?」


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197: 2011/07/25(月) 22:35:54 ID:T9c12Rdo0


ノミ ξ゚⊿゚)ξ ファサッ


(ゝ○_○)

| `゚ -゚|

ξ゚⊿゚)ξ



(ゝ;○_○)「ロロロロロロロロロロロ」

| ;`゚ -゚| 「ひひひひひひひひひひひ」


| ;`゚ -゚| 「「  ローラ姫様ッッ!!?  」」 (○_○;く)


.

198: 2011/07/25(月) 22:37:20 ID:T9c12Rdo0


ブーンとツンは、すぐさま通される。
何やら城内は、慌ただしい様子だった。

そして皆、驚いた様子でこちらを見、集まって来る。
あまりの驚愕に陶器を落として割る者すらいた。

二人より先に、王に吉報を持ち込まんと兵士達がバタバタと駆けていく。


広い王室に通される。
顔面に厳かな皺を刻んだ、ラダトーム王・・・ラルス16世が迎えた。

その顔を見るのは、あの旅立ちの日の謁見から、二度目だ。



( ;´W`)「・・・おぉ、おおお・・・・・・! ローラや!!!」

ξ;⊿;)ξ「お父様!!」


.

199: 2011/07/25(月) 22:38:53 ID:T9c12Rdo0


姫は王のもとへ駆け寄った。

ローラ姫の身なりは薄汚れていたが、
服の不浄など気にも留めず、王は姫を抱きしめる。


( ;W;)「おおお・・・ローラ・・・!会いたかった・・・会いたかったぞ」

( ;W;)「最愛の妃を失ってから、唯一の家族となったお前がさらわれて数年・・・」

( ;W;)「もう、会えぬかもしれぬと思っていた・・・・・・。
     この日を・・・この日を、どんなに待ちわびた事か・・・!」

ξ;⊿;)ξ「お父様、苦しいですわ・・・」



わなわなと震える二人。
王も姫も、目を真っ赤に濡らして抱擁し合った。

周囲の王族や兵隊、召使い達も涙ぐみ、
その様子をただ感慨深く見つめるばかり。


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200: 2011/07/25(月) 22:40:13 ID:T9c12Rdo0


ξ゚⊿゚)ξ「お父様・・・彼が、私をここまで庇護して送り届けてくれました、
       世界で一番勇敢な戦士です」

( ;^ω^)「おっ」


そういって、姫はブーンの腕を掴み、王の前に引き出す。
周囲の人間達が喝采をあげる。

照れくさそうに、頭を掻くブーン。

しかしハッとして、すぐに王の前に跪いたが、
王はそれをよい良いと、頭(こうべ)を上げさせる。


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201: 2011/07/25(月) 22:41:58 ID:T9c12Rdo0


( ^ω^)「姫をご無事にお届け出来て、何よりですお!」

( ´W`)「おお、そなたが!よくぞ姫を助け出してくれた。心から礼を言うぞ!」

( ´W`)「そなたの名は、何という?」

( ^ω^)「ブーン・ホライゾンと申しますお」

( ´W`)「そうか・・・ブーンよ!よくぞやってくれた」

( ´W`)「まっこと、誠に感謝する!」


ラダトーム王は、未だ目を潤ませながら、
ブーンを軽く抱き寄せて肩を叩いた。


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202: 2011/07/25(月) 22:43:48 ID:T9c12Rdo0


( ´W`)「辛い道程だったろう。実に大義じゃった」

( ^ω^)「ねぎらいの辞など・・・もったい無きお言葉ですお!」


( ´W`)「聞いておろうかもしれんが・・・
     つい先だって、この国は魔物の襲撃を受けたのだ」

( ´W`)「三日三晩にわたる抗戦じゃった」

ξ゚⊿゚)ξ「道中で聞きましたわ。でも、何とか退けたとか」

( ´W`)「うむ。我が国の兵士だけでなく、幾人かの腕のたつ流れの武芸者も
     手伝ってくれたと聞く。ありがたい事じゃ」

( ´W`)「今は国の破壊されたところの復興をしておる。
     尊い民草の犠牲はあったものの・・・かろうじて戦は我々の勝利に終わった」

( ´W`)「その祝勝の際に、姫がこうして帰って来るとは・・・」

( つW;)「・・・・・・」


( ´W`)「今夜は宴じゃ!城外の近くでも祝えるよう、会を催して民にも振る舞えい!」

( ´W`)「我が愛しの娘ローラと、この勇気ある若者の凱旋を讃えるのだ!」



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203: 2011/07/25(月) 22:45:24 ID:T9c12Rdo0


それから城内は、活気に満ちた。

数刻後に、催されるパーティーの準備で、
あらゆる人間が慌ただしく動く。


まず、ブーンと姫はすぐさま衣服を剥がされ、
湯浴みをし、清潔な服に着替えさせられる。



( ;^ω^)「こここ、こんな肌触りの良い服、初めて着たお!
      すべっすべだお!すべっすべやぞ!」

召使い「一番上等な絹を使った召し物です。
     気に入って頂けたなら、光栄ですわ!」


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204: 2011/07/25(月) 22:47:05 ID:T9c12Rdo0


ξ*゚⊿゚)ξ「ブーン、似合ってるじゃない」


姫も湯浴みを終えたのか。

しっとりと濡れた髪が、部屋のランプの明かりに映える。

今までのボロボロの服とは打って変わり、
綺麗びやかな出で立ちでブーンの横に立つ。


素で美しい姫が、こうして端正に身なりを整える事で、
まるで絵に描いたような秀麗さだった。


(*^ω^)「うわぉ・・・ツン・・・いやローラ姫様も、お綺麗ですお」

ξ*゚⊿゚)ξ「フフフ、さぁいきましょ」


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205: 2011/07/25(月) 22:48:55 ID:T9c12Rdo0


そしてほどなくして、盛大な宴は始まった。


城内の広堂に、紳士淑女が会する。

楽団が鮮やかに笛を吹き、揚々と太鼓を鳴らす。

テーブルに整然と置かれた豪華な料理と酒が、良い香りを放つ。



( ´W`)「なんと!ブーンはラダトーム出身の戦士であったか!」

( ^ω^)「ええ、そうですお」

( ´W`)「なんともまぁ・・・そなたは我が国の誇りじゃ!はっはっは!」

ξ*゚⊿゚)ξ「フフ・・・」


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206: 2011/07/25(月) 22:50:24 ID:T9c12Rdo0


料理番「いかがでしょう、ブーン様・・・」

( ^ω^)「もぐもぐ・・・」

( ^ω^)「とっても美味しいお!」

( ^ω^)「こんな上品な味付けのものは、初めてですお」

( ´W`)「はっは、そうじゃろう。旅中ではこのような贅を尽くした料理なぞ、
     とても味わえんじゃろうて。気の済むまで味わうが良い!」


楽団が奏でる高貴な音色。 
絢爛な衣裳。 
上品な食膳美酒。

身の周りのおよそすべてのものが、気品に満ちあふれていた。


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208: 2011/07/25(月) 22:52:15 ID:T9c12Rdo0


生まれて経験した事のない雅(みやび)やかな空間、
そのひと時に、ブーンは思わず嘆息をあげる。


だがそれでも、料理の味だけは。


( ^ω^)(確かに美味しい料理だお。でも――――――)


――――――――――――

   从 ゚∀从

――――――――――――


( ^ω^)(ハインさんの料理の方が、ブーンには合ってるお!)


.

209: 2011/07/25(月) 22:53:46 ID:T9c12Rdo0


ξ*゚⊿゚)ξ「お父様・・・お酒をお注ぎしますわ」

( ´W`)「ほほ、ありがとうよ。
     ローラや、お前のこれまでの旅の話を聞かせておくれ・・・」

ξ*゚⊿゚)ξ「ええ・・・」



今までとは、趣の違う音楽が奏でられ始めた。


ξ゚⊿゚)ξ「あっ・・・これは」

( ^ω^)「モグモグ・・・んお?」

ξ*゚⊿゚)ξ「ブーン、踊りましょう。舞踏の曲よ」

( ^ω^)「おっ・・・これがそうかお!」


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210: 2011/07/25(月) 22:55:40 ID:T9c12Rdo0


ξ*゚⊿゚)ξ「この日の為に、今まで練習してきたんですもの・・・ね」

(*^ω^)「は・・・はいですお」


姫と戦士は手を取り踊る。

練習の成果か、ブーンもぎこちなさはあるものの、
下手を打たずに舞い踊った。

皆がそれを褒めそやし、そして自分たちも舞いに参加する。


祝賀は耽り、笑みを浮かべながら宴は続く。

皆、ただ今は俗世の事を忘れて飲んだ。歌った。踊った。



.

213: 2011/07/25(月) 22:58:27 ID:T9c12Rdo0




(*^ω^)(ふぅ)

(*^ω^)(ちょっと酔ったお・・・夜風にでも当たるかお)


ブーンは、やや飲みくれて顔を赤めらせながら、
行き方を訪ね、屋上に向かった。

途中、出会う者出会う者すべてに、感謝の意を告げられ
酒顔をさらに赤面させ、困惑した。


.

214: 2011/07/25(月) 23:00:58 ID:T9c12Rdo0


そして、屋上に出る。


( ^ω^)「はー・・・」



ふわりと撫でる夜風が、ほんのり酒がまわった体に心地よい。

城の上から、庭でパーティーを楽しむ民衆の喧噪を眺めた。

大きな焚き火の周りで、村人達が笑顔で祝杯をあげている。


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215: 2011/07/25(月) 23:02:17 ID:T9c12Rdo0



( ^ω^)(・・・・・・)


ブーンの胸に安堵の想いが染み渡る。
やっと姫を送り届ける事ができた。

同時に、一人の人間を守りきった事を誇りに思う。


思えば、色々な事があった。

姫の身だけでは無い。
あの危険な冒険で、自分でもよく命を落とさなかったと思う。

生命の危機に瀕した事など、指折り数えても足りないくらいだ。


.

216: 2011/07/25(月) 23:04:02 ID:T9c12Rdo0


( ^ω^)


だが、こうして生きている。


自分は、伝説に残る様な勇者の末裔でも何でもない。
ただのちっぽけな存在の自分が・・・
ここまで命を落とさずにやってこれた事が奇跡にしか思えてならない。


不思議な感覚だ。


.

218: 2011/07/25(月) 23:05:31 ID:T9c12Rdo0


ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」

( ^ω^)「・・・お。ローラ姫様」


ξ゚⊿゚)ξ「こんな所にいたのね。探してしまったわ」

( ^ω^)「申し訳ありませんお、ちょっと夜風に」

ξ゚⊿゚)ξ「フフ。・・・ブーン、敬語はやめて」

ξ゚⊿゚)ξ「ここには二人しか居ないし、くだけた感じでも良いのよ。
      私たちの間柄でしょう、仮に見られても誰にも文句は言わせないわ」

ξ゚⊿゚)ξ「それに、今まで通り、ツン って呼んでほしい」

( ^ω^)「お・・・」


.

219: 2011/07/25(月) 23:07:13 ID:T9c12Rdo0


( ^ω^)「ツンをここまで送り届けられて・・・本当に安心したお」

ξ*゚⊿゚)ξ「ええ・・・本当に、ありがとう」

ξ*゚⊿゚)ξ「ブーンには感謝しても、し切れない恩があるわ」

( ^ω^)「おっおっ」


ブーンはローラ姫・・・ツンと共に、空を見上げた。


( ^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ


珍しく、月照らし星煌めく夜だった。

だが、夜が明ける頃になれば、また陽の光を遮らんと
竜王の魔力積もる暗雲がこの空に広がるのだろう。


人々の希望を覆い隠すかのように。


.

220: 2011/07/25(月) 23:08:15 ID:T9c12Rdo0


ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ・・・ブーン・・・」

( ^ω^)「おっ・・・何だお?」


ξ゚⊿゚)ξ「もし私が――――――旅を止めて、王家の近衛として
       この城に残ってくれと言えば・・・どうする?」

( ;^ω^)「えっ・・・」

ξ//⊿/)ξ「も、もしくは・・・私の婚約者として・・・でも・・・」

( ;゜ω゜)そ 「ええええっ」

ξ゚⊿゚)ξ「・・・それとも、他に意中の女性でもいるかしら?」

( ;^ω^)「い、意中の女性・・・!?そんなひと・・・」


.

221: 2011/07/25(月) 23:09:30 ID:T9c12Rdo0


――――――――――――

     从 ゚∀从

――――――――――――


( ;^ω^)「  ・・・・・・えっ?」

( ;^ω^)「いやいやいやいやいや」

ξ#゚⊿゚)ξ「あら・・・まさか本当にいるの?」

( ;^ω^)「い、いやいや!そんな事ないおうおうお・・・」

ξ#゚⊿゚)ξ「ふうん・・・・・」


.

222: 2011/07/25(月) 23:11:13 ID:T9c12Rdo0


( ^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ


( ^ω^)「ツン・・・」

ξ゚⊿゚)ξ「いえ・・・解っているわ。聞かなくても解る」

ξ゚⊿゚)ξ「短い間だったけれども・・・一緒にいて理解しました」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン・ホライゾンという戦士の・・・誇り高き魂を」


( ^ω^)


.

223: 2011/07/25(月) 23:13:26 ID:T9c12Rdo0



ξ゚⊿゚)ξ「あなたは・・・止めても行くのでしょうね」


ξ゚⊿゚)ξ「竜王を倒すため――――――この世界の運命を切り拓くために・・・」


ξ゚⊿゚)ξ「冷雨に打たれ心身から凍える事も・・・吹き荒ぶ突風で肌を切る事も厭わずに」


ξ゚⊿゚)ξ「ボロボロになりながら・・・血を滲ませながら、それでも」


ξ゚⊿゚)ξ「きっとあの試練の荒野を・・・その痛みに耐え、踏みしめていくのだわ」



( ^ω^)



.

224: 2011/07/25(月) 23:15:26 ID:T9c12Rdo0


ξ ⊿ )ξ「ありがとう・・・貴方に、この命救われた事」

ξ ⊿ )ξ「貴方とともに居れた、うたかたの時を」

ξ ⊿ )ξ「わたしは・・・わたしは・・・」
      

ξ;⊿;)ξ「生涯――――――忘れません」


( ^ω^)


.

225: 2011/07/25(月) 23:17:26 ID:T9c12Rdo0


ツンの目から、大粒の涙が溢れる。
幾度となく、この女性(ひと)の涙の美しさに目を奪われてきた。


それがこの世界の至上の美しさであると理解する。

そして・・・恐らく、これが最後の眼福になるであろう事も。


ツンはいつしか、自然と敬語になっていた。
決して表面的な形式や、格好のものではない。

目の前の高潔な戦士に対する、心からの敬意がそうさせる。


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226: 2011/07/25(月) 23:20:37 ID:T9c12Rdo0


ξつ⊿;)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「これを・・・お受け取り下さい、ブーン」

( ^ω^)「お・・・・・・」


ツンは、服飾のブローチを一つ、外した。

それをブーンとツンの手を合わせ、その中で握りしめる。
すると、繊細な緑色の光が宝石に染みこむように。


( ^ω^)「これは・・・?」


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227: 2011/07/25(月) 23:21:43 ID:T9c12Rdo0


ξ゚⊿゚)ξ「ラダトーム王家の女系は、代々聖なる力を受け継ぎます」

ξ゚⊿゚)ξ「生涯に一度しか使えないけれども・・・」

ξ゚⊿゚)ξ「これは、私と貴方の魂の絆です」


ξ゚⊿゚)ξ「貴方が何かに戸惑い、向かうべき道を探す事があれば」

ξ゚⊿゚)ξ「きっとこれが、助けになる事でしょう」

ξ゚⊿゚)ξ「私の愛・・・“王女の愛”を――――――」

ξ゚⊿゚)ξ「今、貴方に捧げますわ」


.

229: 2011/07/25(月) 23:23:19 ID:T9c12Rdo0


ブーンの手の中で、キラキラとブローチが暖かみを帯びて光る。


( ^ω^)「ツン・・・ありがとうだお」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン・・・」




二人は空を今一度眺める。


月星の輝きが増して見えた。 何かを祝福するかのように。


.

230: 2011/07/25(月) 23:24:26 ID:T9c12Rdo0


翌日。

ブーンは、旅の出発の身支度をする。


もう少しこの城で養生していかないかと
ラダトーム王に慰留されたが、これでいいのだ。

甘美な温(ぬる)ま湯に浸り続けていては、
きっと名残り惜しくなってしまう。

ツンとの決別も心揺らぎはしないものの、
辛さが増してしまうかもしれない。


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231: 2011/07/25(月) 23:25:38 ID:T9c12Rdo0


( ´W`)「誉れ高き戦士、ブーンよ。そなたの今後の活躍を心より望んでおるぞ」

( ^ω^)「はいですお」

( ^ω^)「きっと・・・きっとこの世界に」

( ^ω^)「平和を取り戻してみせますお!」


ξ゚⊿゚)ξ「ブーン・・・」

ξ゚⊿゚)ξ「お気をつけて。いつも貴方の御武運を、心より祈っております」

( ^ω^)「ローラ姫様・・・」


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232: 2011/07/25(月) 23:27:01 ID:T9c12Rdo0


ブーンは、姫に近づき跪いた。
そして柔らかな手の甲に、そっと口づけをする。


( ^ω^)「――――――いって、参りますお」


ブーンは謁見の間・・・王座から踵を返す。

周囲の兵士達に盛大な拍手と笛で見送られながら、
真紅の絨毯の上、姫から遠ざかっていく。



ξ゚⊿゚)ξ(ブーン)

ξ゚⊿゚)ξ(貴方がまたここに戻ってくる事を――――――・・・・・・)


.

234: 2011/07/25(月) 23:28:20 ID:T9c12Rdo0



( ^ω^)



瓜 `ハ´)「もし」


( ^ω^)「お」


城門近くにいる、ローブを羽織る一人の老爺に呼び止められた。
翁は、水晶から透かしてブーンに視線を投げる。


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236: 2011/07/25(月) 23:29:30 ID:T9c12Rdo0


瓜 `ハ´)「ふむ」

瓜 `ハ´)「逃れられぬ凶相も見える。 だがその奥に、輝かしき天運も垣間見える」

瓜 `ハ´)「二つの相が内在する、不思議な運命を持つ者であるな」


( ^ω^)


瓜 `ハ´)「主(ぬし)の命運は、渦中に未だ揺蕩っておる・・・勇猛な戦士よ」

瓜 `ハ´)「辛苦を舐め、苦難に彩られる人生の果てに、氏を望むか」

瓜 `ハ´)「主は、なに故その身を賭して戦い続けるのだ?」


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237: 2011/07/25(月) 23:32:00 ID:T9c12Rdo0



( ^ω^)


( ^ω^)「希望と――――――すべての、誓いの為に」


瓜 `ハ´)




老人は、城門から歩き出してゆく戦士を見送る。
兵士達が彼の雄飛を讃え、笛を吹き鳴らし続ける。


.

238: 2011/07/25(月) 23:33:24 ID:T9c12Rdo0


瓜 `ハ´)「己が宿業を知りつつも・・・それでも尚、運命に邁進(まいしん)するか」


瓜 `ハ´)「驚嘆すべき義勇の男よ」


瓜 `ハ´)「“闇の竜つばさ広げる時、ロトの血をひく者来たりて、闇を照らす光とならん”」


瓜 `ハ´)「・・・おお神よ。決して光の勇者ならざる者にも、揺るぎなき栄光を与えん」


瓜 `ハ´)「願わくば、あの高潔なる正義の勇士に――――――」 



          ( ^ω^)



    「――――――――――“光あれ”」




to be continued...!!


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243: 2011/07/25(月) 23:36:54 ID:T9c12Rdo0

( ^ω^)ブーンの今のステータス

LV21

はがねのつるぎ
はがねのよろい
てつのたて

今回登場した敵:無し

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288: 2011/08/08(月) 20:54:56 ID:ZFVLZoXo0


第24話


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290: 2011/08/08(月) 20:58:57 ID:ZFVLZoXo0




( ^ω^)



ブーンは、ほの暗い地下室を下りてゆく。

埃っぽい、渇いた石壁の匂いがする。


そして、時代ありげな鉄の扉に突き当たった。
扉を叩くと、ぱらぱらと砂が落ちる。

中から入室を促す声がした。開けて入る。


.

291: 2011/08/08(月) 21:01:12 ID:ZFVLZoXo0



爪゚A゚)「誰じゃ?」


暗い部屋に、ランプの明かりがふわりと灯る。
一人の老人がいた。


( ^ω^)「すいませんお。旅の者ですが」

爪゚A゚)「こんな所に何用じゃな?」

( ^ω^)「突然の訪問、相済みませんお」

( ^ω^)「あなたは・・・“三人の賢者”の末裔の方ではありませんでしょうか?」

爪゚A゚)「ぬぬ、いかにも」

爪゚A゚)「ということは、主もロトの勇者の足跡をおっている冒険者じゃな」

( ^ω^)「そうですお」


.

292: 2011/08/08(月) 21:03:37 ID:ZFVLZoXo0


爪゚A゚)「よくここが解ったの。なかなか人目につかないこの場所を」

( ^ω^)「かなり探しましたお。人づての情報を集めて・・・」

( ^ω^)「まさか、ラダトーム城の裏の地下のこんな場所にお住まいとは」

爪゚A゚)「それは御苦労じゃったな。何も無いが、ニラ茶でも入れよう」

( ^ω^)「ありがとうございますお!」


ブーンは荷物を下ろし、椅子に腰をかけた。



.

293: 2011/08/08(月) 21:06:25 ID:ZFVLZoXo0


爪゚A゚)「わしは、ぬー という。お主は?」

( ^ω^)「僕はブーンという者ですお」

爪゚A゚)「ブーン・・・?もしや」

爪゚A゚)「あいや、お主がラダトームの姫君を救い出したという戦士か!」

( ^ω^)「いろいろなものに助けられて・・・なんとか、ですお」

爪゚A゚)「そうかそうか、あの噂の戦士であったか」

爪゚A゚)「風聞(ふうぶん)に疎いこのわしでも、お主の活躍は耳にしておったわぃ」


茶をすすり、ぬーが高い声を上げる。


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294: 2011/08/08(月) 21:08:09 ID:ZFVLZoXo0


( ^ω^)「いえいえ・・・それより」

( ^ω^)「ぬーさんがお守りになられて来たのは、“太陽の石”で間違いないですかお?」

爪゚A゚)「うむ、そうじゃ」

爪゚A゚)「その調子じゃと、他の賢者達のもとにも訪れたようじゃな」

( ^ω^)「ええ・・・」

( ^ω^)「太陽の石は、ロトの勇者に託されたと聞きますが・・・
      それはまだ、今もここに残りがあったりしますかお?」

爪゚A゚)「・・・・・・」


ぬーは、部屋の奥にかえし、物品をガサガサと漁る。
そして大きな棚をどかそうとした。


.

295: 2011/08/08(月) 21:10:14 ID:ZFVLZoXo0


爪;゚A゚)A 「ふひーー!!ちょっと、手伝ってくれんかの」

( ;^ω^)「は、はい。大丈夫ですかお?」


ブーンが力を添えると、棚は簡単に動く。

棚のもとあった位置の下には、土。
それを少しばかり掘り返すと、中から古びた壷がでてきた。


爪゚A゚)「この中に・・・太陽の石がある」

( ^ω^)「・・・・・・」


ぬーが、蓋を開け、中に手を伸ばす。


.

296: 2011/08/08(月) 21:11:27 ID:ZFVLZoXo0


爪゚A゚)「・・・・・・」

( ^ω^)「・・・・・・」


爪゚A゚)「これじゃ!」

( ^ω^)「おおっ、これが!」


キラキラと黄金色の光を放ち、煌めく石。 だが。



( ^ω^)「・・・・・・小さいですおね」

爪゚A゚)「・・・・・・うむ、ちいさい」


それは、小指の爪程の大きさしかなかった。

ぬーはそれを、大事そうに机の上に置く。


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297: 2011/08/08(月) 21:12:26 ID:ZFVLZoXo0


爪゚A゚)「ロトの勇者に渡した石は、これの十倍ほどは大きかったが・・・」

爪゚A゚)「なにせ、残りはこれっぽっちの欠片しか残っておらん」



( ^ω^)「・・・このサイズで、果たして大丈夫なんでしょうか・・・?」

爪゚A゚)「それはわしにも解らん。
    “橋渡し”の方法を知る賢者であれば解ろうが・・・ううむ」

( ^ω^)「づーさんかお・・・」


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298: 2011/08/08(月) 21:14:53 ID:ZFVLZoXo0


( ^ω^)「ですが、これだけしか残ってない以上仕方ないですお・・・ぬーさん」

( ^ω^)「この残りの太陽の石・・・頂いても良いですかお?」

( ^ω^)「きっと自分が、ロトの勇者の後継を追ってみせますお!」

( ^ω^)「どうか、ブーンにこの石を預けてくださいお!」


爪゚A゚)「うむ。お主が、あの姫を救い出した剛胆の者であれば、
     もはや希望はお主しかおらん」

爪゚A゚)「遠慮なく、持っていくがいい。
    ロトの勇者に石を渡した事で、わしの使命は終えた訳じゃしな」

爪゚A゚)「ロトの勇者にかわり、再び人類の剣となってみせよ、ブーン!」


( ^ω^)「ありがとうございますお!」


.

299: 2011/08/08(月) 21:17:58 ID:ZFVLZoXo0



ブーンは、ぬーに礼を言い、地下から出る。

埃っぽい地下にいたので、外の清新な空気で呼吸が洗われる。



( ^ω^)「これで・・・魔の島に渡る方法を手に入れたお・・・」

( ^ω^)「あとは、これをもってづーさんに会いにいけば」

( ^ω^)「竜王のもとへ到達できる・・・」

( ^ω^)「だけど・・・」


本当に、いいのか?



.

300: 2011/08/08(月) 21:19:23 ID:ZFVLZoXo0


( ^ω^)



“今”の自分で竜王に挑んだとして・・・果たして勝算はあるだろうか。


少なくとも現時点の実力で、ロトの勇者を超えていなければ、
竜王に勝つなど夢のまた夢。

宿敵は、勇者モナーが闘ったときよりもさらに力を蓄えているのだ。


今の自分で・・・本当に大丈夫だろうか?


.

301: 2011/08/08(月) 21:20:10 ID:ZFVLZoXo0


( ^ω^)(・・・・・・)


冷たい風が、ざあと吹いた。
並木の葉が散りゆき、哀愁を誘う。



ラダトームの城下町へ、ふらりと足が向いた。


.

302: 2011/08/08(月) 21:21:51 ID:ZFVLZoXo0


( ^ω^)


先日、魔物の襲撃を受けたラダトーム。

民家や建造物のあちこちが破壊されていた。
それを立て直す為に住人達が協力して働いている。

皆、苦しみの中、懸命に生き抜こうとしている。


.

303: 2011/08/08(月) 21:22:57 ID:ZFVLZoXo0


気がつけば、自分のもとの家の前まで来ていた。


今は、違う人間が住んでいるのだろう。

窓から、中に人がいるのが見えた。
笑いながら談笑している。

悲惨な目に合いながらも、食いしばり必氏で生きようとする人々がいる。


それを守る力が、今の自分にあるか。 解らない。


正義感に突き動かされ、ここまでやってきた。

最終的な目標をいざ目の前にして、ブーンの心に迷いが生まれた。


.

304: 2011/08/08(月) 21:24:32 ID:ZFVLZoXo0


墓地にやって来ていた。


母と、ギコと、しぃが眠る。

この3つの墓は隣り合わせにあった。



( ^ω^)「ギコ・・・」

( ^ω^)「お前の意思を継いで、ここまできたお」


( ^ω^)「ブーンは、やれるかお?」


.

305: 2011/08/08(月) 21:25:40 ID:ZFVLZoXo0


(,,゚Д゚)  お前ならやれるさ ブーン

( ^ω^)「そうかお」


(,,゚Д゚)  なんだい 弱気になっちまったのか 臆病風が吹いてるのか

( ^ω^)「そうじゃないお・・・ただ・・・今の自分の力で竜王を倒せるのか」


(,,゚Д゚)  なら、倒せると思えるようになるまで、力をつけりゃいいじゃないか


( ^ω^)「・・・・・・」


.

306: 2011/08/08(月) 21:27:12 ID:ZFVLZoXo0


(*゚ー゚)  そうよ ブーン 


( ^ω^)「しぃさん」


(*゚ー゚)  あなたがこれまでしてきた努力が、決して伝説の勇者にも劣るとは思わないわ


( ^ω^)「そう、かお」


(*゚ー゚)  もう少し もう少しだけ、積み重ねればいいのよ


( ^ω^)


.

307: 2011/08/08(月) 21:28:27 ID:ZFVLZoXo0


J( 'ー`)し あなたならできるわ ブーン


( ^ω^)「カーチャン」 


J( 'ー`)し 自分を信じて 真っすぐその道を歩みなさい


( ^ω^)


J( 'ー`)し あなたは私の いえ私たちの 人類の すべての人々の



J( 'ー`)し 希望です



( ^ω^)



.

308: 2011/08/08(月) 21:30:00 ID:ZFVLZoXo0



( ^ω^)


墓石の前に立ち、幻をみた。


だが、この心に残るものは決して夢幻などではない。

ふつふつと湧き起こる、以前よりも確かで揺るぎない闘志は。


.

309: 2011/08/08(月) 21:30:47 ID:ZFVLZoXo0


( ^ω^)「ギコ。しぃさん。カーチャン」

( ^ω^)「ありがとう」

( ^ω^)「ブーンはやるお」

( ^ω^)「どんな困難や壁が立ちはだかっても」


( ^ω^)「絶対に、竜王を」


( ^ω^)「倒してみせるお」



冷たい木枯らしが吹いた。

渇いた葉塵が風に乗り、宙に消えてゆく。


.

311: 2011/08/08(月) 21:32:07 ID:ZFVLZoXo0





 ガライの町 『 磯料理、タカオカ亭 』



从 ゚∀从「ふぅ・・・客がはけた」

从 ゚∀从「やっと昼時を終えて一段落ついたな」


ギイィッ・・・


从 ゚∀从「お、いらっしゃい・・・」


.

312: 2011/08/08(月) 21:33:24 ID:ZFVLZoXo0


( ^ω^)「こんにちは、ですお」


从 ゚∀从「おっ・・・ブーン!!」



从 ゚∀从「しばらくだねえ!どうやら、まだ元気に冒険は続けられてるみたいだね」

( ^ω^)「おかげさまですお」

从 ゚∀从「何の用事で、この町に?」

( ^ω^)「いや・・・特に、意味は無いんですけども」

( ^ω^)「ハインさんの料理が食べたくなっちゃって」

从 ゚∀从「嬉しい事いってくれるじゃない」


.

313: 2011/08/08(月) 21:34:38 ID:ZFVLZoXo0


( ^ω^)「それとコレ・・・道中の山でとってきた鴨ですお。お土産で」

从 ゚∀从「マガモかぁ。さすが血抜きも上手い具合にしてあるね。
      こいつぁいい、料理したげるよ」


从 ゚∀从「それにしてもアンタ・・・」

从 ゚∀从「見るたんびに、こう何と言うか・・・雰囲気が変わってくね」

( ^ω^)「お・・・そうですかお?」

从 ゚∀从「うん、なんか、ゴツゴツって感じ」

( ;^ω^)「ゴツゴツ」

从 ゚∀从「なんていうのかな。渋い強い男みたいな」

( ;^ω^)「渋い強い男()」

从; ゚∀从「ごめん。あんまり口が上手い方じゃないんだ」


.

315: 2011/08/08(月) 21:36:21 ID:ZFVLZoXo0


牙獣との競り合いで、生傷が増える。

冷たい吹きさらしで、皮膚は硬くなり。

筋骨は、以前にも増して隆々とす。

そして、数多の戦闘の中で研ぎ澄まされた、
ブーンの警戒心、精神力が醸し出す雰囲気。

心体ともに研鑽が積まれたブーンには、もはや一分の隙も無い。


初めてこの町に寄った頃のブーンとは、比肩するべくも無い。
見る人には、まるで別人かのように思える程だろう。


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316: 2011/08/08(月) 21:37:36 ID:ZFVLZoXo0


从 ゚∀从「じゃあ、早速料理していいかい?」

( ^ω^)「もちろんですお!ハインさんの料理を楽しみにして来ましたお!」

从 ゚∀从「おお、おお」

从 ゚∀从「待ってな。すぐ作っちゃるよ」ガチャガチャ



从 ゚∀从「そういや、旅の調子はどうなんだい?」ジャー

( ^ω^)

( ^ω^)「・・・竜王のもとへ、辿り着く方法を見つけましたお」


从 ゚∀从「!!」


.

318: 2011/08/08(月) 21:40:12 ID:ZFVLZoXo0


从 ゚∀从  パリパリ

( ^ω^)

从 ゚∀从「氏んじゃうぜ」サクサクサク

( ^ω^)「氏にませんお」

从 ゚∀从  シャクシャク

( ^ω^)

从 ゚∀从  トントントン


( ^ω^)「生きて、帰ってきますお。ここに」

从 ゚∀从  


.

319: 2011/08/08(月) 21:41:29 ID:ZFVLZoXo0


从 ゚∀从「ブーン」

( ^ω^)「ハインさん・・・約束通りブーンが生きて帰ってきたら」

从 ゚∀从

( ^ω^)「この店で、働かせて下さいお。いいですかお?」

从 ゚∀从

从 ゚∀从「もちろんさ!」

( ^ω^)「おっおっ」

从 ゚∀从「そんときゃ、徹底的にウチの店の味を叩き込んでやるからね」

从 ゚∀从「にひひっ」サクサクトントン

( ^ω^)


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321: 2011/08/08(月) 21:43:44 ID:ZFVLZoXo0


包丁が、まな板を叩く音。

店全体に漂う芳香。

窓から見える海。

ハインの、料理している姿。


それらのすべてが、ブーンの心を落ち着けてゆく。

ここに居るときは、存在そのものが穏やかになるような、そんな感覚に。


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322: 2011/08/08(月) 21:44:56 ID:ZFVLZoXo0


从 ゚∀从「はいよ・・・完成っと」

( ^ω^)「待ってましたお!」


从 ゚∀从「海老と貝類の揚げ物トマト風煮」

从 ゚∀从「鮪のステーキ、玉ねぎとチーズのソース」

从 ゚∀从「それとシンプルに、鴨肉のソテー白ワサビ添え」


(*^ω^)「うひょーーーー美味そーだお!」

从 ゚∀从「フフ、ブーンの好みっぽい料理をつくったつもりだよ!」

(*^ω^)「ありがとうございますお! いっただきますだお!」


.

323: 2011/08/08(月) 21:47:09 ID:ZFVLZoXo0


久しく離れていたタカオカ亭の味。
噛み締めるごとに、感慨深い。

懐かしき美味で涙が溢れそうになる。


( ;゜ω゜)「うめえええええええええ」


新鮮な魚介の風味豊かな味わい。
ソースの酸味が、唾液の胃液の分泌を余儀なくする。

鴨の肉の咀嚼するごとに溢れ出すジューシィさに、
鮮烈なワサビの香気が抜群に相性が良い。


とまらない。
矢継ぎ早に料理を口に放り込んでいくブーン。

なに、もっとちゃんと味わえなどど言うべからず。
料理は心で味わうものだ。


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324: 2011/08/08(月) 21:48:42 ID:ZFVLZoXo0


( ^ω^)「がつがつがつがつがつ!」

从; ゚∀从「いつみても半端ねえ食いっぷりだ」

从 ゚∀从「そんな大食漢じゃ、旅の食料も困るんじゃないのか」

( ^ω^)「もぐもご。うーんわかひかによぐ(ゴクン)食べますお。
      でも、意外となんとかなるもんですお」

( ^ω^)「味はともかく、山や川、森にも食べられるものは沢山ありますから」

从 ゚∀从「そうだねえ」

( ^ω^)「まあ、3日間食料に出くわさなかったときは氏ぬかと思ったけど」

从 ゚∀从「おー大変だな」

( ^ω^)「渇きに耐えきれず、自分の尿を飲んだ事もありますお」

从; ゚∀从「お前スゲーな。食事中に」


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325: 2011/08/08(月) 21:49:38 ID:ZFVLZoXo0


从 ゚∀从「まー、でも最近はこっちの暮らしもきつくなってきてるみたいだね」

从 ゚∀从「ここは港町で漁業が盛んだからそれほど影響も少ないけど」

从 ゚∀从「なんせずっと空が曇ってるからね。食物の不作が続いてるらしい」

( ^ω^)「・・・・・・」モシャモシャ、ゴクン


从 ゚∀从「せめて空がスカッと晴れてくれればな・・・」

从 ゚∀从「こんな気分にもならなくて済むのに」

( ^ω^)「青空・・・かお」



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326: 2011/08/08(月) 21:50:23 ID:ZFVLZoXo0


从 ゚∀从「これから、すぐにあの島にいくのかい?」

( ^ω^)「ばくばくばく・・・」

( ^ω^)「・・・その前に、メルキドに行こうと思ってますお」

从 ゚∀从「メルキド?」

( ^ω^)「だお」ムシャムシャ


( ^ω^)「あの周辺の魔物は、他の地域よりも比較的強いと言われるお。修行がてらに」

( ^ω^)「それにメルキドは、良い武器防具を作ってる事で有名ですお」

( ^ω^)「今のブーンの装備じゃ不安だお。それを、充実させようかと思って」

从 ゚∀从「ふーん、あすこも確か魔物の襲撃を受けたんだよね」

( ^ω^)「らしいですおね。でも戦勝に終えたとか」


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327: 2011/08/08(月) 21:52:15 ID:ZFVLZoXo0


从 ゚∀从「ブーン、これも食いなよ」

( ^ω^)「これは、何ですお?」

从 ゚∀从「ルコの実と生ウニのサラダ、スペシャルタカオカ亭ソース!」

( ;゜ω゜)「ルコの実・・・?それってめちゃくちゃ貴重な・・・」

从 ゚∀从「ああ。おっかさんから預かったもんさ」

( ;゜ω゜)「そ、そんな大切なもの」

从 ゚∀从「いいんだよ」


.

328: 2011/08/08(月) 21:53:08 ID:ZFVLZoXo0


从 ゚∀从「ルコの実は、別名“生命の木の実”」

从 ゚∀从「これを食べれば、寿命が延びるって言い伝えがある」

( ^ω^)「・・・・・・」

从 ゚∀从「ブーン」

从 ゚∀从「絶対に、生きて帰ってきてよ」


( ^ω^)「・・・頂きますお」

( ^ω^) シャクシャク

(  ω )「・・・・・・おいしいですお」

(  ω )「今まで味わったどの料理より・・・一番美味しいですお」

从 ゚∀从「そいつぁよかった!」


.

329: 2011/08/08(月) 21:54:41 ID:ZFVLZoXo0



( ^ω^)「・・・そろそろ行くお。ご馳走さまですお」

从 ゚∀从「ああ」

( ^ω^)「じゃあ勘定を」

从 ゚∀从「いいよいいよ。今のアンタからとろうなんて」

( ^ω^)「そういう訳にもいきませんお。奢ってもらってばかりじゃあ・・・」

( ^ω^)「それに、ラダトームの王様から、十分な路銀を頂いたんですお!
      ・・・ん、アレ?」ガサゴソ

从 ゚∀从「むしろこっちが感謝したいくらいさ。
      アタシらの為に命張ってくれてるんだからね」


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330: 2011/08/08(月) 21:56:32 ID:ZFVLZoXo0


( ;゜ω゜)「・・・・・・無いお」

从 ゚∀从「え?」

( ;゜ω゜)「さ、財布が・・・路銀を入れた財布が」

( ;゜ω゜)「盗まれるタイミングなんて無かったお。
      という事は・・・お、落としたのかお!?」

从; ゚∀从「あーあ」

( ;゜ω゜)「あ!鴨を捕まえるときに色々罠とかの準備をしたときに・・・もしかして」

从 ゚∀从「やっちまったね」

( ;´ω`)「おぉーん・・・」


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331: 2011/08/08(月) 21:57:49 ID:ZFVLZoXo0


从 ゚∀从「無一文て訳かい。それじゃあ、宿賃も払えないね」

( ;´ω`)「ショックだお・・・これからどうするお」

从 ゚∀从「とりあえず、今日のところはここに泊まっていきなよ」

( ;´ω`)「ハインさん・・・何から何まですいませんお」

从 ゚∀从「荷物とか、二階のアタシの部屋に置いちゃって」

( ^ω^)「いや、この食堂で雑魚寝でいいですお。荷物も自分で見張りますお」

从 ゚∀从「いいよ。旅で疲れてるんだろう。柔らかい寝床の方がいいだろ・・・」

( ^ω^)「大丈夫ですお。寝床の不安定さなんて、慣れっこですお。
      寒空の下で夜を過ごす事を考えれば、全然ありがたいですお!」

从 ゚∀从「ブーン・・・アンタもなかなか鈍いねぇ」

( ^ω^)「おっ?」


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332: 2011/08/08(月) 21:59:57 ID:ZFVLZoXo0


( ^ω^)

从 ゚∀从

( ;゜ω゜)

从 ゚∀从

( ;゜ω゜)「あの・・・・・・ベッドは」

从 ゚∀从「ひとつだよ」

( ;゜ω゜)

从*゚∀从


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333: 2011/08/08(月) 22:02:28 ID:ZFVLZoXo0


( ;^ω^)「い、いやいや!おおおおおおそんなわけには!」

从 ゚∀从「ブーン・・・アンタ、女を知ってるかい?」

从*゚∀从+「アタシの勘じゃ、まだじゃないのぅ?」キュピーン

( ;^ω^)「どどどどどど」


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334: 2011/08/08(月) 22:03:21 ID:ZFVLZoXo0


( ;^ω^)「いや、そうじゃなくて・・・ハインさん」

从 ゚∀从「いいじゃない。アタシ、アンタに惚れちまったよ」

从 ゚∀从「男が生きるか氏ぬかの戦地に赴くんだ。
      慰みな訳じゃない。それくらいしてやりたいんだよ」

( ;^ω^)「本気ですかお」

从 ゚∀从「ああ。それとも嫌だったら」

( ;^ω^)「いいいいややじゃありませんお!全然いやじゃありませんお!」

( ;^ω^)「自分も・・・自分はっ、嬉しいくらいですお・・・!だけど・・・」

从*゚∀从「だったら」


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335: 2011/08/08(月) 22:05:40 ID:ZFVLZoXo0


( ^ω^)「・・・・・・だけど・・・」


( ^ω^)「・・・自分は・・・もしかしたら・・・」


从 ゚∀从「ブーン」



从 ゚∀从「本当に生きて帰ってくるつもりなら、できるだろう」

( ^ω^)「!!」


从 ゚∀从「世界の為に。 自分の為に。 そして、アタシの為に」

从 ゚∀从「その為の、 “約束”さ。 な、ブーン?」


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336: 2011/08/08(月) 22:07:22 ID:ZFVLZoXo0


(  ω )

从 ゚∀从

(  ω )「ハイン・・・さん」

从 ゚∀从



たまらなく嬉しかった。
胸の奥に、熱い想いがこみ上げる。

自分の事を心から案じ、慈しんでくれる女性が居る事に。

そして、自分たちが生きる未来の事をも。


せり上がってくる感情を、高ぶる恋情を。 

抑えきれない。


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337: 2011/08/08(月) 22:08:32 ID:ZFVLZoXo0



( ^ω^)「ハインさん・・・愛して、いますお」

从 ゚∀从「ブーン」



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338: 2011/08/08(月) 22:09:48 ID:ZFVLZoXo0


その夜。 ブーンとハインは一つになった。


引き締まった筋肉と、柔らかな肌。
対照的なそれらが、温もりをともなって擦(す)り合わせられる。



手を取り合い、抱きしめ合う。 

手だけは同じだった。

冒険のさなか、薄傷で堅くなった手。
包丁を握り冷水でひび割れた手。

どちらも、これまで生きてきた証が刻まれている。
人生を物語る手だった。


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339: 2011/08/08(月) 22:10:58 ID:ZFVLZoXo0


互いの呼吸が交じり合う。
心臓の鼓動が重なり合う。


ベッドの白地に、破瓜の血が流れる。

驚きはしなかった。ただ、心から嬉しかった。

母のとは違う、幸せな暖かみが、全身を駆け巡る。


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340: 2011/08/08(月) 22:12:03 ID:ZFVLZoXo0


二人は、涙を流す。
決して惜別の涙ではない。

例え束の間の温情だとしても。
これほどの幸せを感じる事は今までに無かった。


全てを守り通す為に、命をかけて剣を振う戦士。
その帰りをきっと待つと言ってくれた、女性。

体だけでない、心が結ばれてゆくのを感じる。

狂おしい程の多幸感に身を包まれたとき、人は涙を流すのだろう。


そこにある愛情を確かめるように、何度も口づけを重ねる。


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342: 2011/08/08(月) 22:13:02 ID:ZFVLZoXo0


(*-ω-)
从*-∀从


愛おしい。 守りたい。 

この女性を。この女性のとりまく全てを。

それこそが、やはり自分の生きる意味だと思えた。


寂寥(せきりょう)など要らぬ。

ただ少しだけ、離れるだけだ。

いつの日か、またこの温もりと触れ合えるのだから。


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344: 2011/08/08(月) 22:14:43 ID:ZFVLZoXo0



輝かしい人々の未来の為に。

いずれ訪れる平和を分かち合う為に。


二人は、再会の契りを交わす。




もう迷いなど微塵も無い。欠片も抱く事は無い。


今、この胸に生まれるものは、確かな愛と、純粋な情熱だけだった。




to be continued...!!


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345: 2011/08/08(月) 22:19:39 ID:ZFVLZoXo0

( ^ω^)ブーンの今のステータス (脱童O)

LV21

はがねのつるぎ
はがねのよろい
てつのたて


今回登場した敵

無し

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348: 2011/08/08(月) 22:23:14 ID:ZFVLZoXo0
24話投下終了ー。ご支援ありがとうございます!从 ゚∀从
創作版に投下するつもりでしたが、向こうでスレ立て出来なかったのでこちらに。
次回は創作版に投下すると思います。
多分、明日か明後日の夜あたり。

それでは、また次回。乙かれさまでした。

351: 2011/08/08(月) 23:40:20 ID:6S4f9dM2o
乙!

次回:( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)【Lv.13】


引用: ( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)