1: 2011/08/10(水) 21:05:06 ID:rb0n12DI0


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6: 2011/08/10(水) 21:14:18 ID:rb0n12DI0


25話


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7: 2011/08/10(水) 21:15:49 ID:rb0n12DI0




ガライの町から遠く離れ、潮風の匂いも恋しい。


渇いた砂混じり黄土色の風が、びゅうと音を立てて吹き付ける。

砂が目に入らないように気をつけて歩く。



( ^ω^)



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ドラゴンクエスト25thアニバーサリー 冒険の歴史書 (デジタル版SE-MOOK)
9: 2011/08/10(水) 21:18:17 ID:rb0n12DI0


今、ブーンはメルキドという国に向かう。


堅牢な軍事防衛力を持つ事から、“城塞都市”の名を冠する国だ。

やはり武器や戦用品を多く取り扱い、その質も高いという。
わざわざ危険を冒しても、この国に武器を仕入れにくるという国や商人は多い。



( ^ω^)「おっ・・・」


道中、遠くに岩山の洞窟が見えた。

懐かしい。
あのあたりで、ジョルジュと修行していた日々を思い出す。


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10: 2011/08/10(水) 21:19:34 ID:rb0n12DI0


今彼は、何処で何をしているのだろうか。

彼も修行の身だと言っていた。
きっとどこかで魔物を相手に、雄拳を奮(ふる)っているに違いない。

あの豪傑が、そこらで野たれ氏んでいるなんて想像できない。


当時は、まるで歯が立たなかったが、今の自分ならどうだろう。
少しは近づけただろうか。

確かめてみたい気もする。
何のしがらみもなく、純粋に自分の力量を試してみたい。

そんな事を思うのは、自分が戦士として、
武人(もののふ)として生きてきたからなのだろうか。


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11: 2011/08/10(水) 21:20:43 ID:rb0n12DI0


旅立つ前の自分なら考えられない事だ。
とても、闘いの技量の研を競おうなどと。


だが。







( ゚∀゚)『ブーン、今日の練習はこいつだ』

( ^ω^)『木?これをどうするんだお』


森の中。ジョルジュは、一本の木をペシペシと叩く。



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12: 2011/08/10(水) 21:22:30 ID:rb0n12DI0


( ゚∀゚)『こいつを、どういう方法でもいい。ぶっ倒せ。
     ただし、武器は使うな。素手で、だ』

( ;^ω^)『素手なんて無理に決まってるお』

( ゚∀゚)『出来る。俺が出来るんだから出来る』

( ^ω^)『人外規格のジョルジュと一緒にするなお』

( ゚∀゚)『いいか、ブーン。確かにお前は武器をもって闘うが』

( ゚∀゚)『自分の肉体さえ鋼の境地に達しさえすれば』

( ゚∀゚)『何ものをも打ち砕く最強の力が宿る・・・』 ス・・・

(♯゚∀゚)『せいああああッッ!!』 ドウッ!


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13: 2011/08/10(水) 21:23:38 ID:rb0n12DI0


ジョルジュは、ブーンに与えた木の4倍はある大樹に向かって拳を放つ。
凄まじい振動と共に、葉が散り行き、メキメキと倒れていった。


( ;゜ω゜)

( ゚∀゚)『武器よりも先に、まずは身体の錬磨だ。修行はそこから始まる』

( ゚∀゚)『・・・おっ!木にとまってた鳥が気絶して落ちてきたぞ!
     やったぁ。後で、コイツうまいこと料理してくれ』

( ;゜ω゜)『はい』




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14: 2011/08/10(水) 21:25:33 ID:rb0n12DI0




( ;^ω^)「・・・・・・」


とてもじゃないが、あの鉄人にはまだ敵う気がしない。
稽古をつけて貰った時代も、彼は一度も本気を出さなかった。

いったい彼は、どこであんな武力を身につけたのだろう。


だが、いつか追いついてみせると剣に誓う。

ジョルジュにも、モナーにも。 竜王にも。


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15: 2011/08/10(水) 21:26:21 ID:rb0n12DI0


( ^ω^)「お・・・・・・」


砂塵が多くなってきた。


ここから先は、砂漠地帯に突入する。

出て来る敵も、屈強な魔物ばかり。
用心しなければならない。


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16: 2011/08/10(水) 21:27:09 ID:rb0n12DI0


( ^ω^)「ふぅ」

( ^ω^)「それにしても、メルキドはまでの道のりは遠いお」

(::::( ^ω^)「そろそろここらで休


跳んだ。


背後に殺気を感じて、考えるより先に、足が瞬間的に地を蹴った。
砂埃が派手に舞う。


(♯^ω^)))「ふっ・・・!」ザリザリ


かげのきし「ヴォォォォ・・・・・・」


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17: 2011/08/10(水) 21:28:36 ID:rb0n12DI0


魔物だ。全身が真っ黒・・・というよりは、影にぼやける様な姿。

こちらにじりじりと、躙(にじ)りよって来る。


(♯^ω^)「おおッッ!!」ザヒュッ

かげのきし「フォォォァ・・・・・・」シュッ

(♯^ω^)「シッ!!」シャウッ

かげのきし「ォォォォ・・・・・・」ヒュン


ブーンの鋭い連撃を、奇妙な動きでスラリと躱す。
相当素早い敵だ。警戒の念を強める。


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18: 2011/08/10(水) 21:29:43 ID:rb0n12DI0


( ^ω^)「・・・・・・」

かげのきし「シュァォォォォ」

       「ォォォォォォ」

( ;゜ω゜)「!!」


魔物が、煙のように消えた。

そして、背中に熱のような痛みが走る。
背後から攻撃されたようだ。


(( ; ω )「グおッ・・・!」


かげのきし「・・・ーラ・・・ォォ」


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19: 2011/08/10(水) 21:30:35 ID:rb0n12DI0


どうやら、この魔物は煙のように消え、相手の氏角から攻撃してくるようだ。


(♯^ω^)「だったら・・・」


少しずつ、間合いを詰める。
そして剣を振りかざした。


       「ゥぅぅォォ・・・」


目の前から消えた。今だ。


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20: 2011/08/10(水) 21:31:43 ID:rb0n12DI0


(♯^ω^)「ふおおおおッッ!!」

そのまま、切り掛かった慣性のまま、
回転して背後に斬撃を繰り出す。


かげのきし「ギシュォォォォオオ・・・・・・!」


手応えあり。
魔物は胴から寸断され、地に落ちる。

二つになったそれは、ブスブスと燻り消えてゆく。


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21: 2011/08/10(水) 21:32:58 ID:rb0n12DI0


( ;^ω^)「ぐ・・・・・・」


背中を切られた。
戦闘には勝ったが、思ったより傷が深い。

剣を振るえなくは無いが、万全の状態とは言い難い。


背中は包帯がしにくいので、難儀する。
薬草を貼り、その上から巻いてゆく。



そろそろ辺りも暗くなってきた。

砂丘では、外敵から身を隠せる様な場所がない。

それなりに負傷している今、
血の匂いに引きつられた魔物の相手はしたくはなかった。

どうするか。


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22: 2011/08/10(水) 21:34:01 ID:rb0n12DI0


( ^ω^)「・・・・・・そうだお」

( ^ω^)「確かこの近くに、魔物の襲撃によって滅ぼされた町があったはずだお」

( ^ω^)「そこに行ってみるかお・・・」


少なくとも、この砂漠のど真ん中よりは、身を隠す場所はあるだろう。

もしかしたら廃屋などで風を凌いで一晩を過ごせるかもしれない。
そうなれば儲けたものだ。


( ^ω^)「もうちょっと頑張って、そこまで歩くかお」

( ^ω^)「確か、町の名は・・・」


ブーンは、ガサガサとひしゃげた古い地図を取り出す。



( ^ω^)「  ドムドーラ  」



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23: 2011/08/10(水) 21:35:52 ID:rb0n12DI0


日は、完全に沈んだ。

辺りは暗く、風の荒ぶる音だけが耳につく。


即席のたいまつに火打石で火を灯し、進む。


( ^ω^)「見えたお」


廃墟が見えた。

意味を為さなくなった門をくぐり、町の中へ入る。


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24: 2011/08/10(水) 21:37:03 ID:rb0n12DI0


( ^ω^)「・・・・・・」


荒廃し、人々の記憶の残骸が散らばる。

そこら中に、人とも獣とも知れぬ骨が転がっていた。

地は濁り、毒のたまりができ、異臭を放つ。
竜王の悪しき魔力だ。


これまでに、いくつもの国や町村が竜王軍によって滅ぼされてきた。

最近、魔物の襲撃が顕著になっている。
ラダトーム、リムルダール、メルキドの三国戦争は記憶に新しい。

現存する国々も、常に恐怖に脅かされている。


ここには、悲しみが風にのって流れているのだと、ブーンは思った。


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26: 2011/08/10(水) 21:39:16 ID:rb0n12DI0


( ^ω^)「どうやら、ここで一夜を明かせそうだお」


ブーンは、他の家と比べ大きな、一軒の廃屋を選び、中に入る。

部屋に張り巡らされる大量のクモの巣に、目を丸くする。
棒で払い、通りをよくしよう。

埃っぽいので、少しでもと換気の為に窓を開けた。


部屋に埃をかぶった肖像画が飾られている。

埃を払うと、壮年の男と、近い年齢の女性。
それと小さな少女が描かれていた。
恐らくこの家の元の持ち主の家族だろう。

その近くに、三人分ほどの人骨がそこかしこに散乱しているのに気付く。


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27: 2011/08/10(水) 21:40:40 ID:rb0n12DI0


クローゼットがあったので、その中に荷物を隠して、一息つく。


( ^ω^)「ちょっと歩いて何か使えそうなものや、
      食べられそうな物でも探してみるかお」


体の埃や泥を払い、家屋を出た。
ブーンはフラリと町を探索する。

無論、武器の携帯は忘れない。


探すと言っても、金目の物などは恐らく、もう無いだろう。

滅ぼされてから数年の間にも、
ここを訪れた旅団や商人がいたはずだ。

自分が探すのは、もっと実用的で旅道具として使える様な些細なものでいい。


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28: 2011/08/10(水) 21:41:45 ID:rb0n12DI0


それにしても、路銀を入れた財布を無くしてしまったのは痛い。

これから行くメルキドで、十分な装備を整えようと思っていた矢先だ。

メルキドの武器は質が高い事で名を馳せるが、
その分値段も高くつくと聞く。


自分の持ち合わせでは足りないかもしれない。
いや、どう考えても足りない。

だが、まあそれは行ってから考える事にする。

今はまず、生きてメルキドに辿り着く事が先決だ。
それに気を配ろう。


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29: 2011/08/10(水) 21:43:32 ID:rb0n12DI0


( ^ω^)(!)


何かの気配を感じる。

それも、これは恐らく魔物の。


ブーンは、たいまつの火を消した。


普通の動物と竜王の魔力を帯びた魔物とでは、気配が違う。
魔物特有の臭いがあるのだ。

熟練してくると、どんなタイプの魔物かも嗅ぎ分ける事ができるという。


目に見える範囲では、脅威の存在は見当たらない。

つまり、かなり離れた場所から瘴気を放っているという事だ。


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30: 2011/08/10(水) 21:44:32 ID:rb0n12DI0


( ^ω^)(この魔物の尖った様な気配・・・)

( ^ω^)(これは並の魔物じゃないお)


肌で感じる気配から、敵の危険度を伺い知る。


( ;^ω^)(これは・・・まずったかお)

( ;^ω^)(敵がこっちの存在に気付いていないならば・・・このまま引き返すお)

( ;^ω^)(だけどもし気付かれていたら)

( ;^ω^)(そしてある程度知能の高い魔物だったら・・・)

( ;^ω^)(尾けられて・・・拠点、寝静まった頃に襲われるなんて事もある)

( ;^ω^)(出歩いたのは失敗・・・かお?)


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31: 2011/08/10(水) 21:45:56 ID:rb0n12DI0


自分が魔物の気配を感ずるように、
相手も自分の存在を認識している可能性はある。

ましてや、レベルの高い魔物であるならその確率も高い。



    ズチャ・・・

             ズチャ・・・



( ;゜ω゜)


いる。


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32: 2011/08/10(水) 21:46:50 ID:rb0n12DI0


自分と、損壊した家屋を一つ隔てた先に、氏角で見えない位置に。

肌で感じる魔の気配に、ブーンの心はぶるりと揺れる。

強い。

近づくにつれ、脳内で相手の強大さを修正し、理解してゆく。



           ズチャ・・・


    ズチャ・・・
                 

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33: 2011/08/10(水) 21:47:54 ID:rb0n12DI0


敵の力量を見定める感性は、冒険において非常に重要である。

過去、魔物を目前にして鳥肌が立つ程の戦慄を、二度経験している。

洞窟のドラゴン。

それに、リムルダームの魔鳥。


今、それに近しいレベルの“魔”が全身を撫でる。



                     ズチャ・・・


               ズチャ・・・


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34: 2011/08/10(水) 21:49:00 ID:rb0n12DI0


果たして、こちらの存在を察知しているか。

どうする。

走って逃げるか。

ならぬ。

位置を、存在を完璧に気取られる。

自分の足は速いが、傷の痛みを抱えては迅速に走れない。

人外野生の走力を前に、それはいかにも厳しい。


        

                      ズチャ・・・・・・



( ;゜ω゜)(・・・・・・)


握り込む剣の柄に、汗が滲む。

鼓動が、高まる。


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35: 2011/08/10(水) 21:50:25 ID:rb0n12DI0


いつしか、風は止んでいた。


凍り付く静寂。



目は、闇に慣れた。



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36: 2011/08/10(水) 21:52:04 ID:rb0n12DI0



あくまのきし「  ゴアがぉオオォオおおおおぉおxオオぉぉッッ!!  」


(( ;゜ω゜))「うおおおおおおおッッ!!!!」




石壁をぶち抜いて、錆び付いた鎧の巨体が飛び出してくる。


瞬間躱し、巻き上がる砂埃の中、横転する。


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37: 2011/08/10(水) 21:53:04 ID:rb0n12DI0


あくまのきし「・・・エセエエエエエエエッッ」


魔物は、巨大な斧を振り回す。


((( ; ω )「くっ!!」ドガァッ


盾で斧を受け、軌道をずらす。

途轍も無い衝撃で、肘が外れそうになった。
受け流し、方向の逸れた斧は、たやすく家屋の煉瓦を粉砕する。


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39: 2011/08/10(水) 21:54:21 ID:rb0n12DI0


( ;^ω^)「おッ・・・おお・・・」


あんな一撃をまともに食らえば、ただでは済まない。

だがこうして相対してしまった今、避けるばかりでは勝つ事は出来ない。


(♯^ω^)「ハアアああおッッ!!」ドヒュッ シュバッ


負けじと、剣撃を繰り出す。


あくまのきし「クアアアアアアアアアッッ」ガギッ ガキッ


大きな斧を薙いで払ってくる。
敵も武器の扱いは慣れているようだ。

力では敵。 だが技量と疾さでは、こちらが勝るか。


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40: 2011/08/10(水) 21:55:55 ID:rb0n12DI0


凄絶な打ち合いで、互いの交錯の度に火花が散る。


   一合、二合。三合。

      四合。五合、六合。


(♯^ω^)「うおおおおッッ・・・・・・!!」



互角に斬り結んでゆくが・・・

腕に痺れと疲労が蓄積する。
背の傷も開いたようだ。流血と痛みを感じる。

長引けば、不利。


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41: 2011/08/10(水) 21:57:05 ID:rb0n12DI0


あくまのきし「ヨロイヲ・・・・・・カエセ・・・」

(♯^ω^)(・・・・・・?)

(♯^ω^)(なんだおコイツ・・・ヨロイ・・・鎧を返せ・・・?)


あくまのきし「ロトノゆうしゃアアアアアアアアアア」

(♯^ω^)「・・・・・・っッ!?」


と、その時。



      バキャッ!!


(( ;゜ω゜)「お・・・・・・ッッ!!?」


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42: 2011/08/10(水) 21:58:05 ID:rb0n12DI0


剣が、砕けた。

豪撃を受け続け、振るい方を過ったか。

刃が根元から折れ、柄にも皹(ひび)が入る。
もう剣としての役割は成さない。


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44: 2011/08/10(水) 22:03:31 ID:rb0n12DI0


( ;゜ω゜)(ば・・・馬鹿な・・・っ)


武器を失った。 血の気が引き、汗が一気に湧く。


あくまのきし「・・・・・・・・・」 ズチャッ・・・


敵は距離を詰めてくる。


あくまのきし「ヨロイをカエセ・・・・・・」



( ;゜ω゜)



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45: 2011/08/10(水) 22:04:35 ID:rb0n12DI0




( ;^ω^)『ジョルジュ、やっぱり厳しいお!』

( ^ω^)『こんな木を素手で倒すなんて』

( ^ω^)『何年叩いても倒れる気がしないお』

( ゚∀゚)『いいんだよ。そうやって木を打ち続ける事自体が修行なんだから』

( ^ω^)『もう拳が擦り切れ、まめも潰れて血だらけ。
      腫れ上がってボロボロだお』

( ゚∀゚)『泣き言ばっかいうんじゃねー、このタコ!』 ドゴン

( ;゜ω゜)『あだぉ!!』

( ゚∀゚)『いいか、いったろ。まずは己の肉体を武器にするんだ』

( ゚∀゚)『柔らかい拳も、酷使し鍛え上げればいつか鋼の強度を得る』


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46: 2011/08/10(水) 22:05:59 ID:rb0n12DI0


( ゚∀゚)『もしお前が戦いで武器を奪われちまったとき』

( ゚∀゚)『そうなると頼れるのはお前の身一つなんだぜ』

( ゚∀゚)『長い事、戦場に身を置くなら、そんな事はザラにあるだろうさ』

( ^ω^)『おお・・・』

( ゚∀゚)『もし俺との修行が終わっても』

( ゚∀゚)『身体の鍛錬は怠っちゃいけねーぜ』

( ゚∀゚)『毎日毎日、石や木を叩くんだ。いいな?』

( ^ω^)『わかったお!』




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47: 2011/08/10(水) 22:07:16 ID:rb0n12DI0


( ; ω )


やる。やるしかない。

素手で、この化け物と闘うしかない。


あれから、ジョルジュの教えの通り、
たゆまず拳足の錬磨を続けてきた。

やれる。やれる。


ブーンは身構える。


あくまのきし「ヴォオオオオオオォッ!!」

(♯゜ω゜)「フオオオオおッッ!!」


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48: 2011/08/10(水) 22:08:20 ID:rb0n12DI0


魔物の熾烈な斧撃が繰り出される。

が、あえて前に突進していった。


あくまのきし「ゴグッ!!?」

(♯ ω )「おおおおっっ・・・!」


斧を躱し、そのまま体当たり、一緒に地面に倒れ込んだ。
敵の体に馬乗りになる。


(♯゜ω゜)「くらえおッッ!!」


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50: 2011/08/10(水) 22:10:03 ID:rb0n12DI0


左手で敵の斧を持つ腕を押さえつけ、
右手を思い切り顔面を殴りつける。

腕力は魔物の方があれど、馬乗りで押さえつけた状態ではブーンが勝る。


あくまのきし「グゴッ・・・、グアアアア」

(((♯^ω^))つ「ああああああああっ!!」 ドゴッ バゴン バキャッ ズドッ


乱打の重い音が響く。
ブーンの拳から血がほとばしり、骨が見える。

だが、殴るのは止めない。
痛み等考えている暇は無い。


敵の鎧が、兜が、少しずつ変形し、皹入り、砕けていく。


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51: 2011/08/10(水) 22:11:12 ID:rb0n12DI0


あくまのきし「ウがアアアアっっ!!」 バキッ

((♯;゜ω゜)「うおっ・・・・・・!」 グラ


敵の拳を頬に喰らう。
歯のいくつかが欠ける感触。

魔物の渾身の力で、身をよじる。
体勢が崩れ、馬乗りの姿勢から離れた。


双方瞬時に起き上がり、身構える。

口元に血が滲んだ。


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52: 2011/08/10(水) 22:12:31 ID:rb0n12DI0


(メ; ω )(ち・・・)

(メ; ω )(あのまま、決めてしまいたかったお・・・!)


あくまのきし「・・・・・・よろいヲ・・・カエセ・・・・・・」


(メ;^ω^)「・・・・・・」


この魔物は何を言っているのか。
先ほど、ロトの勇者と言っただろうか。


(メ;^ω^)(は・・・そういえば)



以前、勇者の情報の聞き込みをしている時の事を思い出す。


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53: 2011/08/10(水) 22:13:52 ID:rb0n12DI0


('_L')『ロトの勇者ですが・・・彼は、それはそれは立派な鎧をお持ちでしたよ。
    私も間近にみせてもらいました』

('_L')『あの伝説のロトが身につけていたという、そりゃあもう伝説の鎧だとか』

( ^ω^)『へえ』

('_L')『なんでも、とある没落した廃街で見つけたらしいんですが・・・』

('_L')『そこで強力な魔物と氏闘を繰り広げたそうです』

('_L')『倒してみると、魔物がいた場所に、その鎧があった』

('_L')『魔物が鎧を守護していたんですね』

( ^ω^)『伝説の鎧かお・・・かっこいい響きだお!』

(´・ω・`)『へえー、すごいね。 マスター、もう一杯』

('_L')『ショボンさん。アンタもう、飲み過ぎでしょ』



.

54: 2011/08/10(水) 22:14:43 ID:rb0n12DI0




(メ;^ω^)(そういう事かお・・・)

(メ;^ω^)(ロトの勇者は、ここで伝説の防具を見つけたんだお)

(メ;^ω^)(おそらくこの魔物は、竜王の命で鎧を見張っていた)

(メ;^ω^)(だけど、モナーはそれを打ち破り、見事鎧を手にしたんだお)

(メ;^ω^)(しかしそれから数年の内・・・)

(メ;^ω^)(世界に蔓延する竜王の魔力により、“守護者”は蘇った)

(メ;^ω^)(鎧だけは失われたまま・・・)

(メ;^ω^)(だからこの魔物は、鎧に執着するんだお)


.

55: 2011/08/10(水) 22:15:45 ID:rb0n12DI0


あくまのきし「ヨ・ロ・イ・ヲカエエエエセエエ・・・・・・!」


(メ ^ω^)「・・・生憎だお。ブーンはそんな大層な鎧は持ってないお」

あくまのきし「シャガアアアアアア」


斬撃を躱す。

いや、躱しきれない。

敵が斧を振るうたび、鮮血が散る。

だが、肉は斬られるが、骨は断たれず。

魂は、折られず。


.

56: 2011/08/10(水) 22:17:10 ID:rb0n12DI0


魔物は、斧を振り上げる。


(メ ω )「武器がなくとも・・・ 伝説の装備なんか無くとも・・・
      ロトの血なんか流れていなくとも・・・!」


あくまのきし「ガアアアアアアアアアアアアアアアアア」



(♯゜ω゜)づ「ブーンは・・・・・・すべてを超えてやるんだおおおおおおッッ!!!!」




放たれた斧に、完璧にタイミングを合わせる。

刃の真横から拳をあてる。

巨大な斧が、砕けた。



.

57: 2011/08/10(水) 22:19:49 ID:rb0n12DI0


あくまのきし「・・・・・・ッッ!!?」


((♯゜ω゜)づ 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」 ドドドドドドドドドド!!!!



ジョルジュ直伝、拳足の連撃。

魔物の体は次第に破壊され・・・そして――――――


あくまのきし「ゴ・・・・・・ハ・・・・・・・」


遂に沈黙。

顔面にとどめの一撃を浴びせた瞬間、
全体の鎧がガラリと崩れた。

鎧の中身がさらさらと砂になり、風にのって飛んでいく。


.

59: 2011/08/10(水) 22:21:12 ID:rb0n12DI0


(メ; ω )「か・・・・・・ ハァッ・・・! はぁっ・・・!」


(メ; ω )「う・・・」

(メ; ω )「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」


深淵の闇の中で、勝利の咆哮を放つ。


立ち尽くすブーンの体から、熱と蒸気がほとばしる様に。
呼吸も荒ぶり、白い吐息が宙に消える。


.

60: 2011/08/10(水) 22:22:03 ID:rb0n12DI0


(メ ω )(ジョルジュ・・・君との日々で・・・ブーンは確実に強くなれたお)

(メ^ω^)「君のおかげで・・・」


(メ^ω^)「ブーンは今、ここに生(い)るお」



この幽暗の空を、何処かでジョルジュも見上げているだろうか。


.

61: 2011/08/10(水) 22:23:01 ID:rb0n12DI0




翌朝。ブーンは廃墟で火を起こす。


(メ ^ω^) パチパチ・・ 焚火


捕まえたトカゲを串に刺し、炙る。
トカゲの肉は、意外と旨い。

精もつくので、英気回復にちょうどいい。


相変わらず、曇天に今日も風が強く吹き曝(さら)す。


.

62: 2011/08/10(水) 22:24:19 ID:rb0n12DI0


(メ ^ω^)「トカゲうめーお」

(メ ^ω^)「尻尾を焦がしてカリカリにするのが旨いんだお」

(メ ^ω^)「あち・・・ふぅ」



これからブーンは、武具を求めて異国の地へ向かう。


だが、冒険に本当に必要な物とは、上等の武器だけではない。


己自身の、肉体と意志の、確固たる強さだ。


ブーンは今、本当の戦士としての真の力を、手に入れつつあるのか。


.

63: 2011/08/10(水) 22:25:50 ID:rb0n12DI0


(メ ^ω^)「さて・・・・・・」


(メ ^ω^)「いくかお」


火を消し、荷をかつぐ。

一晩世話になった家に、一礼する。


(メ ^ω^)「必ず、貴方達の仇を・・・とってみせるお」


家にあった骨を三人分寄り添うようにまとめて、その上から布をかぶせた。

部屋の肖像画の家族達が、微笑んだ様な気がした。


.

64: 2011/08/10(水) 22:30:23 ID:rb0n12DI0


いつか、この街に新たな命と、活気が戻る様に祈る。



(メ ^ω^)



そしてまた、荒涼なる大地へと踏み出していく。
無限の絶望がひしめく、このアレフガルドに。


傷つきながらも、震える事の無い足取りで。


自信に満ちた、精悍な顔つきで。




to be continued...!!


.

66: 2011/08/10(水) 22:35:48 ID:rb0n12DI0

( ^ω^)ブーンの今のステータス

LV22

はがねのつるぎ
はがねのよろい
てつのたて


今回登場した敵

かげのきし:氏人の魂にのみ、竜王の魔力が吸着した。
        実体がなく、煙のように移動するので、それを捉えるのは困難である。
        核となる魂の部分のみを正確に斬らなければ倒せない。   

あくまのきし:伝説のロトの勇者の防具、“ロトの鎧”を守っていた魔物。
        だが数年前にモナーに破れ、その後また魔力により復活した。
        自身も鎧を装備しており、大きな斧を振るい攻撃してくる。
        今回ブーンに完膚なきまでに壊されたので、また蘇る事は無いだろう。

.

70: 2011/08/10(水) 22:40:09 ID:rb0n12DI0
25話投下終了。支援ありがとうございます( ´∀`)

展開が牛歩的ペースですいません。もっとサクサクいけよぉとお思いでしょうが・・・
次回は、ブーンがメルキドに到着しての展開です。
書きため切れたので頑張ります。

それでは、乙かれさまでした(´・ω・`)('_L')

72: 2011/08/10(水) 22:42:17 ID:rb0n12DI0

( ^ω^)ブーンの今のステータス

LV22


はがねのよろい
てつのたて


今回登場した敵

かげのきし:氏人の魂にのみ、竜王の魔力が吸着した。
        実体がなく、煙のように移動するので、それを捉えるのは困難である。
        核となる魂の部分のみを正確に斬らなければ倒せない。   

あくまのきし:伝説のロトの勇者の防具、“ロトの鎧”を守っていた魔物。
        だが数年前にモナーに破れ、その後また魔力により復活した。
        自身も鎧を装備しており、大きな斧を振るい攻撃してくる。
        今回ブーンに完膚なきまでに壊されたので、また蘇る事は無いだろう。

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134: 2011/09/06(火) 00:18:08 ID:n0TK6K7Q0


第26話


.

138: 2011/09/06(火) 00:19:14 ID:n0TK6K7Q0




メルキド、市街地――――――




(  ゚∀゚ )「ふぅーーーー・・・・・・」

('e')「アニキ、機嫌悪いみたいっすね」

(  ゚∀゚ )「ああ、あのボロ宿屋のせいでな」

('e')「へえ」


.

139: 2011/09/06(火) 00:20:23 ID:n0TK6K7Q0


(  ゚∀゚ )「あの家のせいで地上げが滞ってんだ」

(  ゚∀゚ )「あの辺一帯に、俺らの組の武器倉庫を建設する予定が立ってる」

(  ゚∀゚ )「あいつらを立ち退かせなきゃ、俺らにも銭が入んねえんだぞ」

(  ゚∀゚ )「おかげで上の連中に、どやされっぱなしだ」

('e')「でも、あの宿屋の娘と、呪いの旅人達が、魔物の襲撃を知らせてくれたんすよね」

('e')「おかげで街が占領されずに済んだとかで。噂になってますよ」

('e')「地上げなんて、何かちょっと気が咎めますねえ」

(  ゚∀゚ )「てめぇっ ジョーンズ!!俺より、あのボロ屋の肩持つ気かっ!」

(;'e')「ひぃや・・・そういう訳じゃ!」


.

140: 2011/09/06(火) 00:21:21 ID:n0TK6K7Q0


(  ゚∀゚ )「・・・・・・まぁ、確かにその事に関しちゃ、感謝しなクチャナ・・・ゴニョゴニョ」

('e')「えっ?なんすか?」

(♯ ゚∀゚ )「うっせえなッ!!」

(  ゚∀゚ )「もういい、とりあえずその話は今は無しだ」

(  ゚∀゚ )「それよりなあ、飯食いに行くぞ、飯。
      朝から何にも食ってねえし、腹一杯食べて気分転換だ」

('e')(素直じゃないな、この人・・・)




      「あの~、すいませんお」



(  ゚∀゚ )「あ?」


.

141: 2011/09/06(火) 00:24:01 ID:n0TK6K7Q0



( ^ω^)「寝泊まりできる場所を探してるんですお。
      ここらで、安い“宿屋”のある方面を教えて頂きたいですお」


(♯ ゚∀゚ )「あぁン?」 イラッ


(  ゚∀゚ )「宿屋だとぉ・・・ 今それを忘れようとしてんのに・・・」

(  ゚∀゚ )「テメェ、喧嘩売ってんのかコラァっ!」

( ;^ω^)「へ?」

('e')「あ、アニキ・・・」


(  ゚∀゚ )「そんなら教えてやるよ。あっちの方だ」

('e')(あ。そっちは宿屋なんて無い・・・嘘やんけ)

( ^ω^)「おっおっ。ありがとうございますお!」


.

142: 2011/09/06(火) 00:24:59 ID:n0TK6K7Q0


(  ゚∀゚ )「おいちょっと待てよ」

( ^ω^)「はい?」

(  ゚∀゚ )「道を教えてやったんだから、それなりの礼をしろよ。
      誰もタダなんて言ってねえぜ」

( ^ω^)「おー・・・ でも、ブーンは今、無一文ですお」

(  ゚∀゚ )「ああ?金もねえのに宿屋に行こうってのかよ」

( ^ω^)「その前に、道具屋でいろいろと売ったりしようかと・・・」

(  ゚∀゚ )「ふうん、金目のものがあるってのかい。
       なら、それを寄こしな」

('e')「アニキ・・・何もこんな薄汚い旅人風情からとらんでも・・・」


.

143: 2011/09/06(火) 00:26:01 ID:n0TK6K7Q0


( ^ω^)「道を教えてくれたのは感謝するけど
      ブーンも今は素寒貧だお。そういう訳にはいかないお」

(  ゚∀゚ )「ふぅん・・・じゃあ、力ずくでとってやろうじゃねえか」 バキボキ

('e')「アニキ・・・」

( ^ω^)「おっ?」


((♯ ゚∀゚ )つ「オラァっ!!」 ブンッ

( ^ω^)) 「おっ」 ヒョィ


.

144: 2011/09/06(火) 00:27:48 ID:n0TK6K7Q0


チンピラ風情の拳は躱され、その勢いのまま地面に転んだ。


((♯; ゚∀゚ ))「あげでぇっ!?」 ドスン

( ^ω^)「大丈夫かお?」

(♯ ゚∀゚ )「てめえ・・・調子にのりやがって!」

(♯ ゚∀゚ )「足腰たたねえようにしてやろうか!」


         パーン
    ( ^ω^)
     ⊂彡☆))∀゚ )

                  ('e' )


(♯)∀゚ )「つええ・・・こいつ、つええぜ・・・」

('e')(もうこの人についていくのやめようかな・・・)


.

145: 2011/09/06(火) 00:30:01 ID:n0TK6K7Q0


( ^ω^)「無差別に人に金をたかるのは良くないお」

( ^ω^)「とにかく、ちゃんとまっとうに働いて、お金を稼ぐんだお!」

(♯)∀゚ )「はい・・・はい・・・サーセン・・・」

( ^ω^)「お母さんはいるのかお?」

(♯)∀゚ )「はい・・・います・・・はい・・・」

( ^ω^)「だったら、お母さんを悲しませる様な事はしちゃ駄目だお!」

('e')(説教されてる・・・だ、ダセェ・・・!)


.

146: 2011/09/06(火) 00:31:07 ID:n0TK6K7Q0


そしてチンピラ共を諌めたあと、ブーンはまた歩き出す。
無法者など、今はどうでも良い。

教えて貰った道とは、ふと違う方向へ。


先の説明を疑った訳ではなかった。
うら寂しい路地裏の方へ入っていく。



( ^ω^)


先ほどから感じていた。


尾けられている。

先刻のいざこざの最中から、気配をつかんだ。

それも、ふわりと毛立つようなこの感覚は。


.

147: 2011/09/06(火) 00:32:22 ID:n0TK6K7Q0


( ^ω^)「・・・・・・」


ブーンは暗い路地角を曲がる。
そして、すぐに曲がった先の壁を背にした。

気配は躊躇なく近づいてくる。


“それ”が、暗がりから姿を現そうと・・・


(;;;;;;;)



( ^ω^)「何者だお!!」


ブーンは、咄嗟に出てきたものに飛びかかろうとしたが――――――


.

148: 2011/09/06(火) 00:34:13 ID:n0TK6K7Q0



('A`)「――――――はは。 ブーン、俺だよ。俺」



( ;^ω^)「ど・・・」

( ;゜ω゜)「ドクオーーーー!!」


そこには、懐かしき戦友の顔があった。
ブーンは緊張した身構えを解き、驚きと嬉しさを露(あら)わにした。



(*^ω^)「久しぶりだお、ドクオ!!」

('A`)「ああ、しばらくぶりだな。数ヶ月ほどだが、何か数年ぶりの様に感じるよ」

(*^ω^)「メルキドに行くとは聞いてたけど、まだここに滞在してたのかお」

('A`)「いろいろと研究があってな。
    居心地の良い場所を見つけたんで、そこに長期的にやっかいになっている」


二人は再会を心から喜び合った。


.

149: 2011/09/06(火) 00:35:47 ID:n0TK6K7Q0


( ^ω^)「まさかメルキドに来て、こんなに早くドクオに会うなんて」

('A`)「俺も、お前を見かけたときは驚いたよ。この広大な街で出くわすとはな」

( ^ω^)「天の思し召しって奴だおね」

('A`)「はは、やっぱり、何か縁があるんだろう」

( ^ω^)「それにしても、すぐに声をかけてくれれば良かったのに。
      なんで尾行なんかしたんだお?」

('A`)「ああ・・・・・・お前と絡んでた連中が、ちょっと面倒な奴らでな。
    なるべく顔をあわせたくなかったんだ」

( ^ω^)「確かにめんどくさい人達だったおね」


.

151: 2011/09/06(火) 00:37:01 ID:n0TK6K7Q0


('A`)「宿はまだ、決めてないだろう?だったら、オススメの家がある」

('A`)「俺が住んでる宿屋なんだが・・・」

( ^ω^)「ぜひそこに行くお。案内してくれお」

('A`)「ああ、じゃあ行こうか。積もる話も、そこでしよう」



ブーンは、ドクオに連れられ宿屋へと向かう。
広々とした幅の大きな石畳の道を、様々な人々とすれ違い過ぎてゆく。



( ^ω^)(・・・・・・)

( ^ω^)(さっきドクオに微かに感じたあの気配・・・)

( ^ω^)(あれは――――――・・・・・・)



.

152: 2011/09/06(火) 00:38:11 ID:n0TK6K7Q0





( ^ω^)「ここかお?」

('A`)「ああ、ここだ」



宿についた。

一見、とても貧しそうで、小さな宿屋だった。
中に入っても、その印象は変わらない。

他の宿屋に比べ、随分と貧相に見えたが、
ドクオが推すからには、何も間違いは無いだろう。

ところどころ壁に穴や隙間が空いている。
だが、少なくとも不潔だと思わなかった。

掃除は行き届いているようだ。


.

153: 2011/09/06(火) 00:38:59 ID:n0TK6K7Q0


(*゚∀゚)「あっ、お師匠。 おかえりなさい」

('A`)「帰ったぞ」

( ^ω^)(師匠?)


('A`)「連れの客がいるんだ。今日から泊めてやってくれ。
    部屋の空きはあるだろう?」

(*゚∀゚)「わわ!ご新規さまですか?」

(*゚∀゚)「もちろん、部屋の空きはありますよ。
     やった!これでウチも今日から満室だ!」

( ^ω^)「全部で何部屋あるんだお?」

(*゚∀゚)「3部屋です。ひとつは僕たちが住んでるので、お客さん用はふたつです」

( ^ω^)「そうなのかお」


.

154: 2011/09/06(火) 00:40:42 ID:n0TK6K7Q0


(*゚∀゚)「でも今、いろいろあって国から報奨金が貰えそうなんです!」

(*゚∀゚)「そうしたら、改装して室数も増やして大きくするんだ~」

('A`)「ゆくゆくの話だな。まあ、とりあえず夕食を出してくれないか。
    連れは、長旅で疲れているだろうし、腹も空いてるだろう」

(*^ω^)「おっ・・・そう言われた途端、お腹が空いてきたお!」 グゥゥ...

('A`)「こいつは大食漢みたいだからな。量もはずんでやってくれ」

(*゚∀゚)「はぁい。今日は豪華に、芋のシチューにしますよ」


( ^ω^)「あ。宿賃なんだけど・・・実は今、文無しなんだお」

( ^ω^)「持ち物を売ってお金をつくるから、支払いを明日まで待ってもらっていいですかお?」

(*゚∀゚)「うーん、いいですよ。他ならぬお師匠さまのご友人ですから」

( ^ω^)「ドクオ!この子といったいどういう関係なんだお!」

('A`)「まあ、それも後でゆっくりと・・・・・・」




.

155: 2011/09/06(火) 00:42:04 ID:n0TK6K7Q0





その巨大な城の屋上からは、全てを一望できるようだ。
うっすらと遠くに、ラダトームの城を望める。

そこに、一人立つ者がいる。


髪は真っ白で、身に召すものも純白。肌も透き通るように色が抜けている。
およそ全てが白かった。



川 ゚ -゚)



風に長髪がなびく。感情が抜け落ちた様な瞳で全景を見据えていた。


.

156: 2011/09/06(火) 00:42:55 ID:n0TK6K7Q0


(・∀ ・)「よお、こんなとこで何してんだ」

川 ゚ -゚)「・・・貴様か。何の用だ」

(・∀ ・)「別に用はねえよ。暇だからフラフラしてんだ」

(・∀ ・)「それより、次の戦はいつだ?俺ァ早く暴れたくてウズウズしてんだぜ」


.

158: 2011/09/06(火) 00:43:44 ID:n0TK6K7Q0


川 ゚ -゚)「・・・先の三国戦争で敗戦を喫した手前、そう簡単に動く訳にはいかん」

川 ゚ -゚)「次の失敗は許されない。慎重に事を進めるべきだ」

川 ゚ -゚)「いかに寛大な竜王様とて、その逆鱗に触れうる事もあるのだぞ」

(・∀ ・)「はん。竜王軍の参謀が、弱気になっちまってるなあ」

(・∀ ・)「お得意の戦術を早く練ってくれよお」

川 ゚ -゚)「お前を造ってやった者に対して、随分な口の聞き方だな」

(・∀ ・)「へっ。そら造ってもらった事はありがてえけどよ」

(・∀ ・)「俺もお前も四天王、立場はおんなじなんだぜ、ギヒヒ」

川 ゚ -゚)「・・・・・・」


.

159: 2011/09/06(火) 00:44:40 ID:n0TK6K7Q0


川 ゚ -゚)「メルキドの進行の際は、“何故か”こちらの情報が敵に漏れていたな」

川 ゚ -゚)「あのような事が起こっては、いかに綿密に策を練ろうとも台無しになる」

(;・∀ ・)「ぎくっ・・・ まア、そ、そうだな」

川 ゚ -゚)「・・・・・・」


川 ゚ -゚)「ともかく、お前らのような扱いにくい連中をまとめあげるのも一苦労なんだ」

川 ゚ -゚)「自分の都合ばかり、ほざくなよ」

(・∀ ・)「ちっ・・・なんでぇ、気取りやがって」

(・∀ ・)「俺なんて頑張ってるほうだぜ」

(・∀ ・)「命令無視の身勝手野郎に、情緒不安定のアホよりかはなあ」

川 ゚ -゚)「ふん。結果を残せねば違いなど無い」


.

160: 2011/09/06(火) 00:45:59 ID:n0TK6K7Q0


川 ゚ -゚)「消えろ。今は一人で居たいんだ」

(・∀ ・)「あーそう。わかったよ、クソ」

(・∀ ・)「じゃあな」 ブンッ ドゴォッ!!


わざわざ床を殴り砕いて、巨人は降りていく。




川 ゚ -゚)(・・・・・・)

川 ゚ -゚)(早く・・・・・・)


川 ゚ -゚)「早く・・・・・・来るんだ・・・」




.

161: 2011/09/06(火) 00:47:01 ID:n0TK6K7Q0





( ^ω^)「・・・・・・ほーー!!じゃあ、メルキドの危機を救ったのはドクオ達なのかお!」

('A`)「俺はそんな大層な事はしてないが、少なくともつーは頑張ったな」

(*゚∀゚)「えへへ」

( ^ω^)「つーちゃん、すごいじゃないかお!こんなに小さいのに。
      ちゃんと働いてるし。偉いお!」

(*゚∀゚)「あひゃー!」

(#゚;;-゚)「フフ・・・」



ブーン達は宿屋のロビーにて、再会を祝して杯を交わしていた。


.

162: 2011/09/06(火) 00:47:58 ID:n0TK6K7Q0


( ^ω^)「そういえばドクオの、研究とやらの方はどうなんだお?」

('A`)「ああ・・・」

('A`)「決して順境とは言わないが、少しずつ、着実に進んでいる」

('A`)「あと一息で、研究の全てが完成すると思っているが・・・なかなか難しいな」

( ^ω^)「ふうむ」 ムシャムシャゴクゴク


('A`)「ブーンは、何の目的でメルキドに来たんだ?」

( ^ω^)「お。ブーンは・・・」

( ^ω^)「装備を整えるためだお。といっても、今は文無しで・・・」

( ^ω^)「どうしようかと思ってるところだけど」 モグモグ


.

163: 2011/09/06(火) 00:49:46 ID:n0TK6K7Q0


('A`)「ふむ、装備か」

('A`)「なら、良い武器屋を紹介しよう」

( ^ω^)「おっ」

('A`)「腕のいい鍛冶屋のいる店があるんだ」

('A`)「俺の義手も、そこで直してもらった。
    恐らく、メルキド・・・いや、アレフガルド全土でみても、屈指の鍛冶屋だろう」

( ^ω^)「おおっ。それはすごいお」

( ^ω^)「ぜひ案内してくれお」

('A`)「じゃあ明日、いってみるとしようか」


そう言って、ブーンとドクオは、ガチンと杯を当て乾杯した。


.

164: 2011/09/06(火) 00:51:38 ID:n0TK6K7Q0


次の日、二人は宿を出て、件の武器屋へと向かう。



( ^ω^)「ここかお」

('A`)「ああ、ここだ」


メルキドの人通りの多い場所から、少し離れた場所にあった。



      『 武器防具、流石屋 』



中に入ると、独特の臭いがした。
武具を売るだけでなく、ここで鍛冶も行っているという。


.

165: 2011/09/06(火) 00:52:21 ID:n0TK6K7Q0


( ;^ω^)「おおっ・・・これは・・・!」


そこに陳列されている武具は、素人目にみても
今まで見てきた物とは一線を画すほどの出来映えだった。

鎧は高い防御力を予感させながらも、
それでいて装飾や形の美しさは損なわれない。

武器の刃先の鋭さと美しさに、思わず目を奪われてしまう。


.

167: 2011/09/06(火) 00:54:22 ID:n0TK6K7Q0


( ^ω^)「ここは凄い武器が買えそうだけど・・・」

( ^ω^)「金がないお。どうしたらいいか・・・」

('A`)「ブーン、金の事は心配するな」

('A`)「俺が貸そう。だから、眼鏡に適うものを選べ」

( ;^ω^)「ドクオ!そんな悪いお。きっとここのは高価で・・・」

('A`)「いいさ。実は路銀の方は余るほど持ってる。
    お前に少しくらい貸したところで、影響はないよ」

( ;^ω^)「ええ・・・?どんだけ持ってんだお、ドクオ・・・」


('A`)「竜王を倒すなんて旅は、きっと持ちうるもののすべてを、
    最大限にまで高めていかなければ、到底、覇する事など出来ない」

('A`)「装備の不備で、志半ばで折れてしまうのは心惜しいだろう?」

( ^ω^)「ドクオ・・・」

( ^ω^)「恩に・・・きるお。すまないお」


.

168: 2011/09/06(火) 00:56:03 ID:n0TK6K7Q0


( ´_ゝ`)「お、客人がきてたのか。いらっしぇー」


今まで無人だったカウンターに、店の奥から人が出て来た。


( ^ω^)「ここの武器は、質が高いですおね」

( ´_ゝ`)「だろう?世界一の武器屋という自負はあるぜ」

('A`)「腕のいい職人がいるからな」

( ´_ゝ`)「おんや、ドクオさん。きてたんか。
      また義手の点検でもしようかい?」

('A`)「いや、今日は付き添いで来てるんだ。大丈夫」


( ´_ゝ`)「仕込み刃の方はどうだい?気に入ってくれたかい?」

('A`)r- + 「ああ、なかなか良い。これは便利だ」
   シャコン!!

ドクオの義手の手首付け根から、刃が飛び出した。


.

169: 2011/09/06(火) 00:57:12 ID:n0TK6K7Q0


('A`)「それより、こいつに飛び切り良い装備を与えてやってくれないか」

( ^ω^)「おっおっ」

( ´_ゝ`)「ふむ。兄さんガタイいいね、いいねいいね。
      俺には解る。アンタは良い戦士だ」

( ´_ゝ`)「良い肉体には良い武器が備わる。良い武器には良い魂が宿る」

( ´_ゝ`)「例え上等な武器でも、それを扱う者が貧弱じゃ、不相応ってもんだ」

( ´_ゝ`)「出来るなら優れた戦士につけてもらいたいからな」

('A`)「ブーンの戦士としての資質は、俺が折り紙をつけるさ」

(*^ω^)「そんな、照れるお」

( ´_ゝ`)「そんなら、適当に見繕ってみようかね」


.

170: 2011/09/06(火) 00:58:49 ID:n0TK6K7Q0


( ´_ゝ`)「じゃあ、こいつなんてどうだい。“魔法の鎧”。
      魔力を封じた紐を編み込んであるから、
      来ているだけで魔力の攻撃から身を守る。傷も僅かずつ癒してくれる」

(*^ω^)「カッコいいお!!装飾のデザインもセンスを感じるお」

('A`)「いくらだ?」

( ´_ゝ`)「7700ゴールド」

(( ;゜ω゜);`;:゙ ブフォ!!


( ´_ゝ`)「こういうのもあるぜ。“水鏡の盾”。
      鉄壁の堅さと、表面の滑らかさで受けの良さは抜群だ。
      それでいて重量は他と比べても低く、使いやすい」

(*^ω^)「カッコいいお!!キラキラしてて凄く強そうだし」

('A`)「いくらだ?」

( ´_ゝ`)「14800ゴールド」

(( ;゜ω゜),;;:゙; ブフォ!!


.

171: 2011/09/06(火) 01:00:20 ID:n0TK6K7Q0


('A`)「お値打ちだな」

( ´_ゝ`)「だろ?」

(( ;゜ω゜);.`;:゙ ブフォフォウ!!!!



( ;^ω^)「確かに、凄い武器防具だけど・・・そんなにするのかお・・・
      一般市民が一生働いて得る金額だお!」

( ;^ω^)「しかもそれをポンと出せるドクオ・・・
      一体、ドクオは何者なんだお?!」

('A`)「はは・・・」


.

174: 2011/09/06(火) 01:01:40 ID:n0TK6K7Q0


(´<_ ` )「しかしなぁ。貴品業物ってのは、得てしてそういうものだぞ」


奥から、汗を拭いながら、もう一人でてきた。
先ほどから話していた店員と、瓜二つに似ている。


( ´_ゝ`)「おお、オトジャ。仕事は一段落ついたのか?」

(´<_ ` )「何とかね。しかし軍の将校の武器打ちの仕事が溜まってる」


( ^ω^)「そっくりだお。兄弟さんですかお?」

( ´_ゝ`)「ああ。双子なんだ。見た目も性格も似てるってな」


.

175: 2011/09/06(火) 01:02:37 ID:n0TK6K7Q0


(´<_ ` )「といっても、悔しいが鍛冶の才能だけはアニジャの方が一枚上だったけどな」

( ´_ゝ`)「オトジャ、そんな事ないだろう」


( ^ω^)「だった?」

( ´_ゝ`)「ああ、今俺は鍛冶の仕事から退いているんだ。
      何せ、腕がこうなっちまったからな」


アニジャと呼ばれた男は、右腕をひらひらと見せる。義手だった。


( ´_ゝ`)「ドクオさんと同じだな」

(´<_ ` )「アニジャ程の男がな・・・残念だよ」


.

177: 2011/09/06(火) 01:04:04 ID:n0TK6K7Q0


( ^ω^)「ここには、剣はどんな物を置いてるんですかお?」

(´<_ ` )「剣か・・・これなんてどうだ?」

( ^ω^)「うーん・・・もっと良いものがありませんかお?」

( ^ω^)「実は以前、武器を折っちゃいまして――――――・・・・・・」





(´<_ `; )「アンタ、武器無しでここまでやってきたのか?スゴいな」

('A`)「あれから、またさらに成長してるみたいだな」

( ^ω^)「がむしゃらに、出来る事をやってきただけだお」

( ´_ゝ`)「こいつぁ俺が見込んだ通りだ。
      この人になら、どんな武器も預けられるな!」


.

178: 2011/09/06(火) 01:05:01 ID:n0TK6K7Q0


( ´_ゝ`)「オトジャ・・・挑戦してみてもいいんじゃないか?」

(´<_ ` )「えっ?」

( ´_ゝ`)「伝統の、あの“剣”さ」

(´<_ `; )「あ・・・あ・・・」

( ´_ゝ`)「せっかくこんないい戦士が来てくれたんだ。この機に、やってみろよ」

(´<_ ` )「無理だ・・・まだ早い。俺には出来ないよ」

( ´_ゝ`)「オトジャ。お前なら、出来るって」

( ^ω^)「? 何の話ですかお?」

( ´_ゝ`)「ああ・・・」


.

179: 2011/09/06(火) 01:06:26 ID:n0TK6K7Q0


( ´_ゝ`)「この『流石屋』は、代々続いて来た鍛冶の老舗だ」

( ´_ゝ`)「今、9代目の当主を務めるのはオトジャだ」

( ´_ゝ`)「質の高い武器を作る事で名を馳せてきた流石屋だが・・・」

( ´_ゝ`)「真の当主と認められるには、厳しい条件がある」

('A`)「条件?」

( ´_ゝ`)「ああ・・・それは・・・」


( ´_ゝ`)「伝統の名剣と言われる、 “炎の剣” を打つ事だ」

( ^ω^)「炎の剣・・・」


.

180: 2011/09/06(火) 01:07:45 ID:n0TK6K7Q0


( ´_ゝ`)「その剣を打てて、初めて当主を継ぐ事ができるんだが・・・」

( ´_ゝ`)「名を継ぐ前に、親父・・・8代目が亡くなっちまったんだ」

(´<_ ` )「・・・・・・」

( ´_ゝ`)「その頃には俺も腕を失っちまってな。
      オトジャなら、剣を打ってなくとも、9代目鍛治を継ぐに相応しい実力がある」

( ´_ゝ`)「だから、“剣打ち”を少し保留にして、オトジャが務めているんだ」

( ´_ゝ`)「昔は剣打ちが出来る当主がいなければ、
      店を潰すべしなんて言われたらしいが」

( ´_ゝ`)「ここで伝統の『流石屋』を終わらせてしまうには、あまりに惜しいからな。
      軍の武器の発注も、数多く請け負う。
      周囲の支持もあって、今こういう形になっているんだ」

( ´_ゝ`)「しかしオトジャなら、その資格は十分にある」

(´<_ ` )「買いかぶりすぎだ・・・アニジャが健常だったなら、
      俺なんて足下にも及ばないよ」

( ´_ゝ`)「そう卑下するな。お前だって十分な才能を持っているさ」


.

181: 2011/09/06(火) 01:08:54 ID:n0TK6K7Q0


( ´_ゝ`)「とにかく、お前が心から自信を持ち、真の9代目を継ぐには、
      “炎打ち”が必要だ」

( ´_ゝ`)「そしてその剣を、ブーンさんに預けようじゃないか。
      竜王を倒そうなんて立派な剣士は、そういるもんじゃない」

(´<_ ` )「お・・・俺は・・・」


.

182: 2011/09/06(火) 01:09:59 ID:n0TK6K7Q0


( ^ω^)「そういう事ですかお・・・」

( ^ω^)「ならオトジャさん。 ぜひ、ブーンからもお願いしますお」

( ^ω^)「必ず、その剣で竜王を討ってみせますお!ですから・・・」

(´<_ ` )「・・・・・・簡単にいってくれるなよ。もし失敗したら・・・」

( ^ω^)「?」

( ´_ゝ`)「“炎打ち”をするという事は、単に剣を打てばいいって話じゃない」

( ´_ゝ`)「その錬成は極めて難しい。加えて、もしその“炎打ち”に失敗すれば」

( ´_ゝ`)「当主になる事は許されず、自分の利き腕を断たねばならない」

( ´_ゝ`)「そしてオトジャが“炎打ち”に挫折するということは、
      長い流石屋の歴史に終止符を打つという事だ」

( ;^ω^)「お・・・」

('A`)「・・・・・・」


.

183: 2011/09/06(火) 01:10:58 ID:n0TK6K7Q0


('A`)「まさか、アニジャ殿のその腕は・・・」

( ´_ゝ`)「そうだ。“炎打ち”に失敗した」

( ;^ω^)「おお・・・」

(´<_ `; )「無理だ・・・アニジャですら失敗したのに、俺なんかが打てる訳がない・・・」

( ´_ゝ`)「・・・・・・」

(´<_ ` )「それに、“炎打ち”には、優れた魔術師が必要だ」

(´<_ ` )「最近は軍の方にも、目覚ましい力をもった魔術師がいないらしいじゃないか」

( ^ω^)「まじゅつ・・・?」


.

184: 2011/09/06(火) 01:12:00 ID:n0TK6K7Q0


('A`)「つまり、“魔導錬成”という事だな」

( ´_ゝ`)「そうだ。炎の剣は、刀身に魔力を宿す」

( ´_ゝ`)「剣を打ちつつも、隣で魔力を剣に練りこむ人間が必要なんだが・・・
      って、ドクオさん、アンタよく知ってるな?」

(´<_ ` )「そう。俺の他にも、魔術師が必要なんだ。だから・・・」

('A`)「なら、俺がやろう」

( ´_ゝ`)「ぬに?」


( ^ω^)「ドクオ」

('A`)「こう見えて魔力の扱いはどうやら人並みに出来るらしい」

('A`)「そういう話なら、強力しよう」

(*´_ゝ`)「おおっ!?マジでか!?アンタ、魔法使いだったのか」

(´<_ `; )「・・・・・・!!」


.

185: 2011/09/06(火) 01:13:16 ID:n0TK6K7Q0


(´<_ ` ;)「だ、駄目だ・・・アニジャ・・・俺なんかが・・・」


(´<_ ` ;)「・・・・・・できる訳がないッッ!!」


( ;´_ゝ`)「あ、おいっ!?」



オトジャは、店の外へ飛び出していった。



.

186: 2011/09/06(火) 01:14:18 ID:n0TK6K7Q0


( ^ω^)「・・・・・・」

('A`)「・・・アニジャ殿。実際のところ、見込みはどうなんだ?」

('A`)「彼には、ひどく自信が無い様に見えたが・・・」

( ´_ゝ`)「・・・確かに、“炎打ち”は難しい」

( ´_ゝ`)「だが、オトジャの技術をもってすれば、そこまで至難な訳ではないはずだ」

( ´_ゝ`)「事実、“炎打ち”に失敗した例なんて、長い流石屋の歴史の中でも、
      そうそうある事じゃない。俺が言うのもなんだがな」

( ´_ゝ`)「まぁ・・・失敗といっても・・・いや」

('A`)「ふむ・・・」


.

187: 2011/09/06(火) 01:15:17 ID:n0TK6K7Q0


( ´_ゝ`)「確かに幼少の頃から、俺は才能があると言われ続けて来た」

( ´_ゝ`)「時期当主も、俺になるだろうと周囲は予測していた」

( ´_ゝ`)「しかし、俺の炎打ちの不達成・・・ 急な親父の逝去・・・」

( ´_ゝ`)「訳の解らないうちに、心の準備ができないままに
      あいつは9代目当主という地位におさまってしまったんだ」

( ´_ゝ`)「きっとあいつは、“俺の才能”という亡霊に取り憑かれているんだよ」

( ´_ゝ`)「だが俺は、それを乗り越えて堂々とアイツに9代目を名乗って欲しいんだ」

( ´_ゝ`)「オトジャが自分の人生に誇りをもって生きていくには・・・」


.

188: 2011/09/06(火) 01:16:22 ID:n0TK6K7Q0


( ^ω^)「・・・・・・」

( ^ω^)「ちょっと、オトジャさんを追いかけてきますお」

('A`)「ブーン?」

( ^ω^)「話を聞いて来たら、どうしてもオトジャさんに剣を作って欲しくなったお」

( ^ω^)「ブーンのこれからの旅には、きっとオトジャさんの“炎の剣”が必要だお」

三( ^ω^)「全身全霊をかけて、頼み込んでくるお!」 タッ!



ブーンは、オトジャの後を追って、ものすごい勢いで外に出ていった。


( ;´_ゝ`)「おわ、はええ!」

('A`)「はは・・・あいつらしいな」


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189: 2011/09/06(火) 01:17:28 ID:n0TK6K7Q0



もう暮れて、薄暗い夜道を走る。

街外れのこの周辺は、ほぼ森林に近い。

かなり遠くに、しかしはっきりとオトジャが走ってるのを確認できた。

これなら、見失わなければすぐに追いつく。



( ^ω^)



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190: 2011/09/06(火) 01:18:33 ID:n0TK6K7Q0


武具の生成なら、随一と言われるメルキド。

そのメルキドの中でも、さらに名店と呼ばれる店の武器。

戦友のドクオの魔力を練りこみ、それを命を賭けて職人が打つ。

自分が命を預ける物として・・・恐らくこれ以上の物はないだろう。



( ^ω^)(オトジャさん・・・)

( ^ω^)(絶対に、云(うん)と言わせてみせるお!!)



ブーンは走る。胸の内に情熱を携えながら。

新たな牙を手に入れんとする為に。



( ^ω^)(!?)


.

191: 2011/09/06(火) 01:20:18 ID:n0TK6K7Q0


   (  ゚∀゚ )

               (´<_ ` ;)
                           ('e' )       
     
     ( <●><●>)




坂の上から、オトジャが、何者かに囲まれているのが見えた。

幾人かは、刃物をも持っている。

ただ事の雰囲気ではなさそうだ。


柄の悪そうな男共が、オトジャに詰め寄る。

もっと急げ。もっと走れ。

ブーンは、土を蹴り上げて速力を上げる。


.

192: 2011/09/06(火) 01:21:42 ID:n0TK6K7Q0


何があっても、せっかく見つけた希望の星を、失う訳にはいかないのだ。


ブーンは、息を切らして、全速力で駆け抜けてゆく。


あの連中が何者かは知らないが――――――




( ^ω^)「・・・・・・ブーンの希望に――――――手を出すなお!!」




to be continued...!!


.

194: 2011/09/06(火) 01:22:22 ID:n0TK6K7Q0

( ^ω^)ブーンの今のステータス

LV22


はがねのよろい
てつのたて


今回登場した敵

なし

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198: 2011/09/06(火) 01:28:37 ID:n0TK6K7Q0
26話投下終了でーす。

話の流れ上、次の話はあまり感覚を開けずに投下したいです。
少なくとも、一週間以内・・・(を目指したい)

それではどうも、(  ゚∀゚ )支援ありがとうございました!!('e')






現実って、辛いものなんですね。うふふ(´;ω;`)

199: 2011/09/06(火) 01:32:26 ID:20A3IEswO
乙!
次は早いのか。楽しみだ

200: 2011/09/06(火) 01:36:42 ID:QgWQlJ0AO
投下の前にどうにかしてリアルを立て直すんだ

次回:( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)【Lv.14】


引用: ( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)