632: 2011/11/17(木) 21:00:36 ID:RNfIQ3OE0

633: 2011/11/17(木) 21:02:07 ID:RNfIQ3OE0

634: 2011/11/17(木) 21:03:49 ID:RNfIQ3OE0



廃屋にも等しい佇まいの、古びれたあばら屋に、
ボロ布を纏う、老齢の男が独り。

寝床に伏して、具合の悪そうに咳きを込んでいる。



(゚、゚トソン「ゴホッ、ゴホン・・・ゲホッ」

(゚、゚トソン「ぐ・・・ふぅ」



.
ドラゴンクエスト25thアニバーサリー 冒険の歴史書 (デジタル版SE-MOOK)
635: 2011/11/17(木) 21:05:21 ID:RNfIQ3OE0


寝台から起き、瓶から水を取り、飲む。
杯を持つ手を、ぶるぶると震わせながら。


(゚、゚トソン「ふぅ」

(゚、゚トソン「!」


屋外に、気配を感じる。扉の前に、何かがいる。この気配は・・・


(゚、゚トソン「・・・・・・」


老爺は、近くの杖を取り、身構える。


(゚、゚トソン「何者だ」


.

637: 2011/11/17(木) 21:07:37 ID:RNfIQ3OE0


扉の方に声を投げると、反応が返った。


「すいません。失礼致します」


扉がゆっくり、ギィと音を立てて、開く。



('A`)



('A`)「お久しぶりです、トソン先生」

(゚、゚トソン「む・・・」


.

638: 2011/11/17(木) 21:08:26 ID:RNfIQ3OE0


(゚、゚トソン「お、おお。おお」

(゚、゚トソン「これは・・・ドクオ様!」

(゚、゚トソン「生きて、おられたのですか」


老爺は驚き、嗄(しわが)れかけた声を荒げ、そして微笑した。
そして、辺りを見回すが、何も無い事に気付き、落胆する。


(゚、゚トソン「いや、お恥ずかしい格好で失礼致す。この家も、何もありませんで・・・」

(゚、゚トソン「大したもてなしの出来ぬ事・・・ご無礼をお許し下さい」


('A`)「とんでもない。こちらこそ急遽の来訪、申し訳ございません」

('A`)「こちら、心ばかりの物ですが・・・」


.

639: 2011/11/17(木) 21:09:31 ID:RNfIQ3OE0


ドクオは荷物から、手土産を取り出した。
茶葉と、林檎の砂糖煮の瓶詰めだ。


(゚、゚トソン「ああ、これはこれは・・・高価なものを」

(゚、゚トソン「日頃、貧しい生活を送っている物ですから。
     甘味なぞ、大変嬉しゅうございます」

(゚、゚トソン「有り難く頂戴致します・・・茶でも、入れましょうぞ」


トソンと呼ばれた翁は、フルフルと緩慢な動きで茶支度をしようとする。


.

640: 2011/11/17(木) 21:10:26 ID:RNfIQ3OE0


('A`)「・・・先生、お体の具合が悪いのでは」

('A`)「私がやりましょう。先生は、寝台に掛けていて下さい」

(゚、゚トソン「ドクオ様・・・何から何まで、すいませぬ」


ドクオは、暖炉の火を取り、古び欠けた食器で、茶を入れた。

寝台の他に腰をかける物が無かったので、
外から座用の切り株を持ってくる。
小さな机に茶菓子を置いて、囲んだ。


茶を飲みながら、二人は話す。


.

641: 2011/11/17(木) 21:12:00 ID:RNfIQ3OE0


(゚、゚トソン「もう、何年になりましょうな・・・」

(゚、゚トソン「私が宮廷魔術師から身を引いたのが、10年よりも前ですか・・・」

('A`)「あの頃は、本当に色々な事を先生から学びました」

('A`)「魔法学だけでなく、礼儀作法から何まで、多くの事を」

('A`)「私の人生で、数少ない尊敬と信頼のおける方です。
    先生のおかげで、魔法学の上達も」

(゚、゚トソン「いやいや・・・ドクオ様の非凡な才能あったればこそ」

(゚、゚トソン「貴方はまるで真綿の様に、何もかもを吸収してゆきなすった」

(゚、゚トソン「貴方にお仕え出来た事が、私の生涯の誇りでございます」


トソンは茶を啜り、しみじみと感慨深く、頷いた。


.

642: 2011/11/17(木) 21:13:08 ID:RNfIQ3OE0


(゚、゚トソン「しかし、まさかドクオ様が、ご存命とは・・・」

(゚、゚トソン「あの忌まわしい出来事の中、よくぞご無事で」

('A`)「ええ・・・」

(゚、゚トソン「他にも生還された方は・・・」

('A`)「いえ・・・少なくとも親族は、私だけでしょう」

(゚、゚トソン「・・・・・・そうですか・・・」

(゚、゚トソン「ゴホッ、コホ・・・」


.

643: 2011/11/17(木) 21:14:54 ID:RNfIQ3OE0


(゚、゚トソン「もし、その場に私がいれば・・・」

(゚、゚トソン「いや・・・この老いぼれ一人いたところで、
     どうにか出来たものでも在りませぬな」

('A`)「・・・・・・」


(゚、゚トソン「しかし、どうやって私がここにいる事を知ったのです?」

(゚、゚トソン「ここは、どの集落ともかけ離れた、孤絶の地・・・」

(゚、゚トソン「隠居生活も長い。他に私の居場所を知る者は、多くはないはずですが・・・」


.

644: 2011/11/17(木) 21:15:47 ID:RNfIQ3OE0


('A`)「いえ・・・居所を知っていた訳ではありません」

(゚、゚トソン「はて」

('A`)「しかし、こうして先生に会いに来れた事で、確信が持てました」

('A`)「自分の研究の全ては、完成したと」


ドクオは茶の湯面に映る自分の顔を見つめる。


(゚、゚トソン「ドクオ様・・・もしや貴方は」

(゚、゚トソン「あの竜王に、挑む気なのでは・・・?」

('A`)

('A`)「恐らく、そうなります」

(゚、゚トソン「おお・・・なんと!」


.

645: 2011/11/17(木) 21:16:41 ID:RNfIQ3OE0


トソンは開眼し、驚愕を露わに。
そして、涙ぐむ。


(゚、゚トソン「一族の仇の為に・・・」

(゚、゚トソン「まさか、ご自分の命を張らんとは・・・!」

(゚、゚トソン「それでこそ王族の一男児! ご立派になられましたな、ドクオ様!」

('A`)(・・・・・・)


.

646: 2011/11/17(木) 21:17:30 ID:RNfIQ3OE0


(゚、゚トソン「通りで、感じる魔力の力強さが違うと思いました。
     さぞ鍛錬なされた事でございましょう」

(゚、゚トソン「しかし・・・先ほどから気になっていたのですが」

(゚、゚トソン「言って良いものか。ドクオ様」

(゚、゚トソン「貴方から、魔の気配を感じます。よもや」

(゚、゚トソン「“魔の呪縛”に掛かっているのでは・・・」


('A`)「・・・・・・」

(゚、゚トソン「何と」


ドクオは、無言で自分の首もとを見せる。


.

648: 2011/11/17(木) 21:18:40 ID:RNfIQ3OE0


(゚、゚トソン「私は呪いの専攻は門外漢でありますが・・・」

(゚、゚トソン「これは一目に見ても、恐ろしい呪力の封でございます」


('A`)「実は、この呪いを受けたのが、“あの日”なのです」

(゚、゚トソン「!」

(゚、゚トソン「・・・なるほど。つまり、運良く生還出来た訳でなく」

(゚、゚トソン「“呪いによって生かされた”――――――と・・・・・・?」

('A`)「ええ」



ドクオの首元が、ドクンと脈を打つ。



.

649: 2011/11/17(木) 21:20:10 ID:RNfIQ3OE0


('A`)「あの日から数年、私は世界を周りました」

('A`)「この呪いを打ち破る事の出来る、“解呪師”を求めて」

('A`)「しかし・・・駄目でした」

('A`)「この圧倒的な呪力の前には、いかなる解呪師の力も及ばず」

('A`)「最後の頼みの綱で見つけた、最高峰と云われるラダトームの解呪師でも」

('A`)「この兇悪(きょうあく)を解くには、至らなかった・・・」

(゚、゚トソン「・・・・・・」


.

650: 2011/11/17(木) 21:21:26 ID:RNfIQ3OE0


(゚、゚トソン「・・・なるほど。見えて参りました」

(゚、゚トソン「つまり、呪いを解くには、“その根源を絶つしかない”」

(゚、゚トソン「 “術者を倒し” 解呪を成そうという訳ですな」

('A`)(・・・・・・)

('A`)「・・・ええ」


(゚、゚トソン「そしてそれに影が付きまとうのが竜王・・・」

(゚、゚トソン「憎き仇敵を打ち破り義を成し、同時に己の呪いも解放する」

(゚、゚トソン「これが、貴方の行動の由縁という事でしょう」

('A`)「そうなります」


.

651: 2011/11/17(木) 21:24:17 ID:RNfIQ3OE0


(゚、゚トソン「今は亡き王様も、草葉の陰でドクオ様の勇気を讃えている事でしょうぞ」

(゚、゚トソン「そういう事ならば、私にも何か出来る事があればと思いますが」

(゚、゚トソン「私は、老い過ぎた・・・・・・今のドクオ様に付いていっても、
     この老骨では、足手まといにしかならないでしょうな」

(゚、゚トソン「何も出来ぬ自分が、悔やまれる・・・」

('A`)「先生、お気になさらず」

('A`)「先生のおかげで、今の私があるのです。
    何も出来ぬ、という事はありません」


ドクオは、咳き込む老爺の肩を支える。


.

652: 2011/11/17(木) 21:26:17 ID:RNfIQ3OE0


('A`)「それより、先生。ここでなく、別の場所に移住されては?」

('A`)「見たところ、先生は病も患っている様子。医者にかかる等して・・・」

(゚、゚トソン「いや・・・私はここで結構」

('A`)「しかし・・・」


(゚、゚トソン「自分の体の事は、自分が一番良く知っておる。どうせ老い先も短い。
     どこかで氏んで他人に迷惑をかけるよりは・・・」

(゚、゚トソン「ここでひっそりと、余生をまっとう致しまする」

(゚、゚トソン「それよりも、ドクオ様が悲願を成就なされますれば・・・」

(゚、゚トソン「再びまた、ここに会いにきて頂きとうございます」

('A`)「・・・解りました。生きて帰れた暁には」

('A`)「先生のもとへ。必ずご報告に参ります」


.

653: 2011/11/17(木) 21:27:38 ID:RNfIQ3OE0


青年と老爺は、しばらく昔を語り合った。
そうして後に。


('A`)「そろそろ帰ります。宿のものが、心配するかもしれません」

(゚、゚トソン「おお・・・左様ですか」

('A`)「久方ぶりに先生のお顔を懐かしめて、有意義でした」

(゚、゚トソン「私も、ドクオ様にお会いできて、昔の血が戻ったようでございます」


(゚、゚トソン「帰路へは、どうして? メルキドでございますな。随分遠方のようですが」

('A`)「ええ、移動魔法呪文ルーラを使います」

(゚、゚トソン「そうですか。お気をつけて」


.

654: 2011/11/17(木) 21:29:02 ID:RNfIQ3OE0


ドクオは、屋外へ。トソンも、それについてくる。


(゚、゚トソン「ドクオ様」

('A`)「はい」

(゚、゚トソン「ご武運を。そして・・・」

(゚、゚トソン「貴方の様な、立派な方を育てる事が出来た私は――――――」

(゚、゚トソン「誠に・・・・・・幸せでございます」


('A`)「先生・・・」

('A`)「有り難う御座います。では、先生もご達者で」


.

655: 2011/11/17(木) 21:30:33 ID:RNfIQ3OE0



('A`)《――――――ルーラ》


ドクオは光につつまれ、メルキドの街へ向け
空へ飛翔して行った。



(゚、゚トソン「神よ・・・あの勇敢な若者に、どうか光ある加護を――――――」




.

656: 2011/11/17(木) 21:31:59 ID:RNfIQ3OE0
















.

657: 2011/11/17(木) 21:32:51 ID:RNfIQ3OE0




ドクオは、メルキドの街中に居た。

遠いまなざしで、ふと見上げる。

当たり前のように、空虚な灰色の空が、そこにはあった。

悲しげに吹き付ける冷たい風が、枯れ葉砂塵を舞い散らしてゆく。


('A`)


ドクオは深い深い、溜め息をついた。
そうして、宿屋へと帰っていく。


.

658: 2011/11/17(木) 21:33:48 ID:RNfIQ3OE0


('A`)「ただいま」

(*゚∀゚)「お師匠、おかえりなさい。今日は遅かったですね」

(*゚∀゚)「寒かったでしょ。暖炉の薪は多めにしてます」

('A`)「ああ」

(*゚∀゚)「洗濯物は、お部屋においてあります。ごはんは、もうすぐにたべますか?」

('A`)「うむ、頼む」

(*゚∀゚)「じゃあ、支度します。今日は、ななんとウサギの肉の鍋ですよ!」

('A`)「美味そうだな」

(*゚∀゚)「もちっと待っててくださいね」

('A`)「ああ」


.

659: 2011/11/17(木) 21:34:40 ID:RNfIQ3OE0


ドクオは、ギシギシとなる階段を上がり、自分の部屋に入る。

ドッと寝床に倒れた、
虚ろな表情で、天井を見つめる。

体が、重い気がする。


そっと、目を閉じた。


.

660: 2011/11/17(木) 21:35:49 ID:RNfIQ3OE0






お前の・・・名は・・・?


・・・・・・クオ・・・


      ドクン


.

661: 2011/11/17(木) 21:36:42 ID:RNfIQ3OE0


そう・・・・・・  ドクオ・・・・・・   いつか・・・   私を・・・・・・  ・・・に来い・・・


・・・・・・また・・・ いつか・・・・・・


   ドクン      ドクン


・・・まえに・・・  私との・・・ ・・・を与える・・・・・・・




         (((((川 - )))))))  「   ドクオ・・・  わたしを・・・   」



                       ドクン



.

663: 2011/11/17(木) 21:37:57 ID:RNfIQ3OE0


('A )


('A`)


ドクオは、首もとに手を伸ばす。

首に絡み付いたそれが、脈を打っている。

いつもよりも、脈動を早めて。


('A`)


('A`)


('A`)


.

664: 2011/11/17(木) 21:38:38 ID:RNfIQ3OE0


しばらくすると、部屋にいい香りが漂ってきた。
つーの支度している、夕餉(ゆうげ)の香りだろう。

先ほどまではそれほどでも無かったが、
こうして香ばしさをあおると、腹も空いてくる気がする。


芳香につられ、下階に降りてゆく。



('A`)「いい匂いだな」

(*゚∀゚)「お師匠。今できるから、すわってまっててください」

(*゚∀゚)「おかあさんも呼んできます」


.

665: 2011/11/17(木) 21:39:44 ID:RNfIQ3OE0


そうして支度が整うと、三人で卓を囲んだ。

兎と玉葱のスープに、小さな黒パンが付く。
熱々の皿からは、湯気と瑞々しい香りが。

牧畜でない野生の動物のスープは
旨味で口内がギュウッとなるような、野趣に富んだ力強い味わいである。

それに、感じるか感じないか程度に含まされた辛みは、
タマネギの甘みと相性も良く、食欲を増進させる。

肉にスプーンを通すと、抵抗無く、ほっくりと崩れた。
それでいてスープには、臭みも感じない。
丁寧に長時間煮込まれた賜物だろう。


.

666: 2011/11/17(木) 21:40:45 ID:RNfIQ3OE0


(#゚;;-゚)「美味しいわ・・・いいお味ね。このウサギは?」

(*゚∀゚)「裏山のウサギ罠に久々にかかってたの。煮込んだから柔らかいよ!」

(*゚∀゚)「お師匠、どう、どう」

('A`)「うまい。それに、温まる」 ズズ・・

(*゚∀゚)「でしょでしょ!少しだけ、唐辛子も入れてあるからね」


('A`)「ふぅ・・・ズズ・・・」


.

667: 2011/11/17(木) 21:41:28 ID:RNfIQ3OE0


ドクオは、初めてブーンに出会った時の事を思い出した。

あの時も、共に獣をとってウサギの鍋をつついた筈だ。
唯一友と呼べる男のとの邂逅を振り返る。

今ブーンは、何処を彷徨う。
竜王へのもとへ到達する方法を見つけたと言っていたが、
まだ辿り着いてはいないだろう。


('A`)(未だ張りつめる空の陰りが、その証拠)

('A`)(奴が竜王を倒せば、暗雲も晴れるはずだ)


.

669: 2011/11/17(木) 21:42:46 ID:RNfIQ3OE0


もしくは、ブーンは意志半ばで果ててしまった可能性もあり得た。
しかし、ドクオはそれを考えないようにする。
考えても、仕方ないからだ。

あいつはまだ、生きている。絶対に。そう信じていた。


('A`)「ごちそうさま」

(*゚∀゚)「もういいの。まだありますよ」

('A`)「後でもう一度食べたいから、少し残しておいてくれないか」

(*゚∀゚)「はい」


('A`)「ちょっと、表に出て来る」


.

670: 2011/11/17(木) 21:44:02 ID:RNfIQ3OE0


ドクオは宿の外に出る。

さっき食べた鍋のおかげで、体の内側から温かい。
冷たい気温の中、白く熱い息を手に吐きかける。


('A`)


('A`)「・・・・・・」



(*゚∀゚)「お師匠」


つーも、外に出てきた。


.

671: 2011/11/17(木) 21:45:02 ID:RNfIQ3OE0


('A`)「どうした?寒いから中に入ったらどうだ」

(*゚∀゚)「だいじょうぶです」

(*゚∀゚)




(*゚∀゚)「お師匠のけんきゅう・・・完成したんですね」

('A`)

(*゚∀゚)


.

672: 2011/11/17(木) 21:46:16 ID:RNfIQ3OE0


('A`)「顔には出さないようにしてみたのにな」

('A`)「どうしてわかった?」

(*゚∀゚)「なんと、なく・・・」

(*゚∀゚)「お師匠の魔力が、いつもとちがって感じた・・・」

('A`)

('A`)「いい勘だ」


二人は目を合わさず並んで、虚空の夜空を眺める。


.

674: 2011/11/17(木) 21:47:08 ID:RNfIQ3OE0


(*゚∀゚)「いっちゃうんですね・・・お師匠」

(*゚∀゚)「ブーンさんと、同じように・・・」

('A`)

('A`)「ああ」

(*゚∀゚)「・・・・・・」

('A`)「といっても、すぐに発つ訳じゃない。いろいろと支度もあるし」

('A`)「確かに魔法に関する事柄の目処はついたが、
    俺自身の体力づくりなんかもしなければならないからな」

('A`)「長い宿屋生活で、なまってしまったかもしれない。
    冒険というのは、過酷なものだ。生半可で挑む事は出来ない」

(*゚∀゚)「・・・・・・」


.

675: 2011/11/17(木) 21:48:34 ID:RNfIQ3OE0


(*゚∀゚)「ぼ・・・ぼくは・・・」

(*゚∀゚)「宿屋の子です」

('A`)

(*゚∀゚)「ぼくみたいなのが、魔法を習うなんて変かもしれない・・・」

(*゚∀゚)「そ、それでも。何か変われるかもって、おもって。魔法おしえてもらって」


('A`)「つー。何言ってるかよくわからんぞ」

(*゚∀゚)「うっ、うっ」


.

676: 2011/11/17(木) 21:49:43 ID:RNfIQ3OE0


(*゚∀゚)「・・・今までずっとひとりぼっちでした」


(*゚∀゚)「でも・・・お師匠に魔法をおしえてもらって・・・いろいろ少しずつ変わった・・・」

(*゚∀゚)「今では、お友達もいるんです。魔法を見せたら、すごいって」

(*゚∀゚)「買い物にいくときも・・・今までみたいに馬鹿にされない。
     みんな、声、かけて、くれるようになって」

('A`)


.

677: 2011/11/17(木) 21:51:57 ID:RNfIQ3OE0


(*゚∀゚)「こんな僕にいろいろ、いろいろおしえてくれて・・・」

(*゚∀゚)「・・・うれしかった」

(* ∀ )「でも・・・まだまだ、習ってない事、いっぱい、あ、あり、ます」


(* ∀ )「まだ・・・おししょう、と――――――」




(*;∀;)「 お、おし、しょうと・・・ はっ、はなれ、たくないんだぁ・・・! 」


('A`)



.

679: 2011/11/17(木) 21:53:47 ID:RNfIQ3OE0


つーの瞳から、涙が溢れる。

ぐしぐしと、小さな袖でそれを拭う。


(*;∀;)「ふ、ふえぇ。あぐっ、んぐ」

('A`)

(*;∀;)「ふっ、ふっ。 ふぃぐっ。えぐぅっ」

('A`)


ドクオは、つーの頭を撫でる。

つーの短髪が、サクサクと手に触れる。


.

680: 2011/11/17(木) 21:55:25 ID:RNfIQ3OE0


('A`)「つー」

('A`)「俺も、ずっと孤独だった」

(*;∀;)



('A`)「ずっと独りで生きてきた。これからも、そうなるだろうと思っていた」

('A`)「呪いのせいで旅の中で疎まれ、冷たくあしらわれ・・・」

('A`)「他人の冷たさというものを、身にしみてきた」

('A`)「人と折り合いながら生きていくのも、面倒だとな」

(*っ∀;)

('A`)「だが俺も、お前やブーンに会って、少し変わったかもしれないな」

(*゚∀゚)


.

681: 2011/11/17(木) 21:57:03 ID:RNfIQ3OE0


('A`)(・・・・・・)


(゚、゚トソン『貴方の様な、立派な方を育て上げる事が出来た私は――――――』

(゚、゚トソン『誠に・・・・・・幸せでございます』



('A`)「もし俺が全てを成し終えたとき」

('A`)「生きていれば・・・ここに帰って来よう」

('A`)「お前という才能の原石を磨いて、一生を終えるのも・・・そう悪くはない」

(*;∀;)「お師匠・・・」


.

682: 2011/11/17(木) 21:58:35 ID:RNfIQ3OE0


(*っ∀;)

(*゚∀゚)「お、お師匠」


(*゚∀゚)「ぼ・・・あ、わ、たしは・・・」

('A`)「ん?」

(*゚∀゚)「・・・・・・」

(*゚∀゚)「なんでもないです」

('A`)「?」


(*゚∀゚)「お師匠様・・・ぜったい」


.

684: 2011/11/17(木) 22:00:55 ID:RNfIQ3OE0


(*゚∀゚)「またここに・・・帰ってきてくださいね」


('A`)「――――――ああ」




二人は隣り合い、ただ闇を見つめている。


それ以上、言葉は交わさなかった。


きっと今、悲しみだけを置き去りにする事は出来ないのだろう。


冷たい風が、少女の涙を乾かしてゆく。



.

685: 2011/11/17(木) 22:02:47 ID:RNfIQ3OE0



この――――――今は何も無い空に、願う。




          (*゚∀゚)     ('A`)




再会を祈りながら。 二人の胸に生まれる、微かで、確かな温もりを。


――――――人は、絆と呼ぶのだろう。




to be continued...!!


.

686: 2011/11/17(木) 22:05:14 ID:RNfIQ3OE0


('A`)ドクオの今のステータス

LV24

こんぼう
くろのろーぶ
しのくびかざり


今回登場した敵:なし


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690: 2011/11/17(木) 22:11:26 ID:RNfIQ3OE0
第31話投下おわりです。支援ありがとうですお!( ;ω;)
次の投下も、一週間以内。前日には告知します

皆さんの支援のおかげで、投下をすごく楽しませてもらってます
このモチベーションを維持して完結までいきたい

725: 2011/11/23(水) 21:05:57 ID:AZA.8U2U0


第32話


.

726: 2011/11/23(水) 21:09:08 ID:AZA.8U2U0



( ^ω^)


逢魔が時に差し掛かろうとする夕刻の暗がりの中では、
焚き火の色が、いっそう良く映え、心を奪われる。

木々茂る深森の中で、ブーンは燻り今にも消えそうな炎を、
火を足すでもなく、ただじっと見つめていた。



.

727: 2011/11/23(水) 21:12:06 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)

( ^ω^) ピクッ


猪「ブルルルゥ・・・」フゴフゴ


目の前に、大きな猪が現れた。
鼻息が荒く、凶暴な目つきをギラリと光らせる。

明らかにこちらに敵意を見せている。


( ^ω^)「豚かお」

( ^ω^)「これはしめたお」


.

728: 2011/11/23(水) 21:13:31 ID:AZA.8U2U0


ブーンは、ゆっくりと立ち上がり、剣を取る。


猪「ブロッフォオオ!!」


猪が突進してくる。


( ^ω^))「ふぅ」ヒュッ


ブーンはそれを容易に躱し、


(( ^ω^)「ふッ」ザン!


猛る猪を、横から一線の斬撃で断頭する。
首の無い猪は勢いままにしばらく歩き、のろりとよろけ、どさりと崩れ落ちた。


.

729: 2011/11/23(水) 21:16:33 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)「昨日から、碌なものを食べて無かったお」

( ^ω^)「久々の大御馳走だお!」


ブーンは、まず猪を大きな樹の枝に括りつけ、吊るす。
肉の首もとから、血がはたはた流れていく。血抜きだ。


その間に、加減の弱まった焚き火の薪の中に
炎の剣――――――ブーン剣を、突き立てた。
すると、たちまち火勢がぼうと強くなる。


( ^ω^)「ブーン剣・・・お前はやっぱり最高だぜ」 ホレボレ


細かい草や枝木を添えて、燃焼を安定させる。


.

730: 2011/11/23(水) 21:17:45 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)「さて・・・こいつを」

( ^ω^)「どう頂くかお」


ブーンは、肉の調理法を考える。


基本的な冒険者の心得として、野山中で獣肉を手に入れた場合は、
茹でるか蒸すかにした方が良いとされる。

何故なら、焼けば強い匂いが放たれ、
それは獰猛な動物や、魔物を引き寄せるから。

新鮮な肉ならば生で食うのも良いが、
万が一当たる可能性もあるし、何より熱を加えた方が旨い。


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731: 2011/11/23(水) 21:21:26 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)


しかし、今ブーンがここに居る事の意味。

それは、修行の為である。


数日前から、このリムルダール付近で、山篭りをしている。
一つでも多く魔物と戦い、実戦での力を付ける為に。

ならば寄る魔物を怖がっても仕方ない。
むしろ、歓迎しなければ。


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732: 2011/11/23(水) 21:22:11 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)「うーん」

( ^ω^)「よし、決めた」

( ^ω^)「焼くのと、蒸すので頂くかお」


結局、二つの調理法で食べる事にした。
近くの川のほとりから、水を汲んで来る。


使い古した鍋に、少しの水と腿(もも)の肉を入れ、
落とし蓋をし、火にかける。腹肉は、串をうって炙り始める。

焚き火が焼き豚の脂を飲み、バチバチと歌い火の粉を吐く。


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734: 2011/11/23(水) 21:24:03 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)


モララーとの別れの際の言葉。


あの“満月”の約束を、ブーンは守ろうとしていた。



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735: 2011/11/23(水) 21:24:59 ID:AZA.8U2U0


満月といっても、空にはいつも暗雲が覆う。
月が満ちるのを確認する事が出来ないかもしれぬ。
つまり、暦の上で、満月の日まで、という事である。


しかし、何故かアレフガルドの月の満る夜の時期は、空が晴れやすい傾向にあった。


理由は解明されていない。
“満月の日”の時期は、竜王の魔力が弱まるからではないか、という説がある。

真偽は解らない。ただ、もし竜王討ちをかけるならば、
そうした信憑性のない話でも、鵜飲みすがっていくに越した事は無い。

実際に竜王と対峙するのは、満月の夜の次の日という事になる。
完全なる夜は、魔物の力を高めるからだ。


モララーは、そうした背景を見越して、この約束を交わさせたのだろう。


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736: 2011/11/23(水) 21:26:52 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)


この期間は、己自身のレベル上げの他に
精神統一という点にも重きを置く。

居合いの要諦は鞘の内にあり。
心落ち着かざれば、太刀直ぐからずや。

揺るぎない覚悟を決めて、宿敵との決戦に望まねばならない。


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737: 2011/11/23(水) 21:27:51 ID:AZA.8U2U0


しばらくすると肉に火が入り、食べごろの匂いがふうわりと漂ってきた。


( -ω-)人 「頂きますお」


手を合わせ、食材に敬意と感謝の念を忘れない。
さて、肉はたっぷりある。遠慮する事など無い。

塩があったので、それで肉に味を付けて食う。

それと、山中で運良く見つけた、山わさびを添える。
皮を剥き、肉の付け合わせに、豪快にバキリと齧る。


( ^ω^)「ふぅお」


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738: 2011/11/23(水) 21:30:26 ID:AZA.8U2U0


鮮烈な香気と辛みが、肉の獣臭さを払拭し、
脂の甘みと、えも言われぬ滋味だけを噛み締められる。

次々に肉を口に放り込み、腹に収めてゆく。
空腹の自腹は、食べ続けながらもギュウギュウと音を鳴らす。


( ^ω^)「ふぅ、あち。はぐ・・・」


勢いつけて食べると、喉が火傷しそうになる。
水筒の冷たく清らかな水をグッと飲み、
山葵の刺激と肉の脂をも、すうっと洗い流す。

爽快感が、食道から胃に突き抜ける。
口内をさっぱりさせると、また肉を詰めんで行く。
その繰り返しだ。


( ^ω^)「ふうう・・・」 ギュビッ

(*^ω^)「うまい・・・」


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739: 2011/11/23(水) 21:34:16 ID:AZA.8U2U0


腹を満たし食べ終わると、ブーンは猪の生肉を幾つかの塊に分けた。

それを葉でくるんで、それぞれ別の離れた場所に埋める。
後日、また食べるときに取り出して食べるのだ。

こうしておく事で長期間、肉の保存が出来る。
また肉の熟成も進み、味が良くなる。

無論、野生の熊や狼などの獣に掘り返され、食われてしまうという事も多い。
それはそれで良い。それも、自然の理なのだ。


( ^ω^)(・・・・・・)


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740: 2011/11/23(水) 21:35:09 ID:AZA.8U2U0





(,,゚Д゚) 『・・・おおっ!これ、ブーンが作ったのか? すげーウマいぞ!!』

(*゚ー゚) 『ほんと、美味しい。さすがブーンは、喰いしんぼうなだけあるわ』

(*^ω^)『そうかお。いっぱいあるお、皆食べろお』

(=゚ω゚)ノ 『美味しいんだょぅ!いくらでも食べれるょぅ!』

( ^ω^)『でも、この豚一匹捕まえたのは良いけど・・・これじゃ余っちゃうお』

(,,゚Д゚) 『ブーン、そういう時はな。葉に包んで、地面に埋めとくと良いぜ』

( ^ω^)『おっ』

(,,゚Д゚) 『そうすっと日持ちするし、肉の味が良くなるんだぜ。父ちゃんが言ってた』

( ^ω^)『そうなのかお。覚えておくお』


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741: 2011/11/23(水) 21:36:38 ID:AZA.8U2U0


(*゚ー゚) 『こうして、みんなで集まっている時が一番楽しいわね』

(=゚ω゚) 『そうだょぅ。いつまでも、こんな時が続くといいょぅ!』

( ^ω^)『そうだお。皆と居れて、幸せだお!』

(,,゚Д゚) 『何お前ら恥ずかしい事いってんだよ』

(=゚ω゚) 『うるせーょぅ。ギコ、あの事、しぃさんに言っちゃうょぅ?』

(;,,゚Д゚) 『あ・・・あの事。どの事だ』

(*゚ー゚) 『・・・何?その話。詳しく聞かせて?』

(=゚ω゚) 『実はょぅ・・・』

(;,,゚Д゚)『ちょまーーーー!!』


( ^ω^)『・・・おっおっ!』

( ^ω^)『皆と居れて、幸せだお!』




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742: 2011/11/23(水) 21:37:33 ID:AZA.8U2U0

















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743: 2011/11/23(水) 21:39:44 ID:AZA.8U2U0




ブーンは、山中を歩く。

食料と良景と、危険を求めて。


( ^ω^)


しばらく進むと、川を見つけた。
この森は、清流が多いのが良い。

渇きを潤せるのは無論、水辺には食料が多いからだ。
怪我を負えば、傷口を洗い、血も流し落とせる。

そういう意味でも、ここは修行の場として最適だった。

川の流れに沿って、下っていく。
背の高い木の多い所に出る。


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744: 2011/11/23(水) 21:41:17 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)「これは・・・」


その中でも、とりわけ大きな樹があった。

この付近の山の中で、最も樹齢が高い樹だろう。
それに、大きな傷がついている。


( ^ω^)


ブーンはそっと、その傷に触れてみる。


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745: 2011/11/23(水) 21:42:35 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)「・・・これは」

( ^ω^)「マーキングかお」


その傷跡は、獣によって付けられたものの様だった。
獣は、自分の縄張りを誇示するために、木々等に自分の爪痕を残すのだ。

しかしその傷は、今までブーンは見てきたそれらとは、全く大きさを異にする。

通常の爪痕の数倍はある。
という事は、その獣自体の大きさも、普通の獣の数倍はあるという事だ。

加えて、獣臭に混じる・・・魔の臭い。


魔獣か。


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747: 2011/11/23(水) 21:46:25 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)「・・・・・・」


ブーンは、この辺りの山中を散策して見て、
他に獣のマーキングの跡が無かった事に、ふいに気付く。

つまり、この傷をつけた魔獣が、この辺りのボスなのだろう。
周辺を力で支配しているのだ。

余りにも力強く付けられた爪痕が、
獣の大きさと剛力を物語る。


( ^ω^)「なるほど。こいつは・・・」

( ^ω^)「山の主ってところかお」



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749: 2011/11/23(水) 21:51:49 ID:AZA.8U2U0




( ^ω^)「・・・おっ」


ブーンは、先日埋めた肉を、地面から掘り返そうと、
肉を埋蔵した場所に来ていた。
が。


( ^ω^)「やっぱり、肉が掘り返されちゃってるお」

( ^ω^)「でも・・・」


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750: 2011/11/23(水) 21:54:07 ID:AZA.8U2U0


穴が大きい。
地面の抉られ方が、凄まじいのだ。

よほど大きな獣に掘り返されたのだろう。

そして近くに、動物の糞があった。
かなりの大きさだ。


( ^ω^))「・・・・・・」スン

( ^ω^)(まだ、糞が渇ききってない)

( ^ω^)(・・・・・・近くにいる、か)


平和的な鳥の声が、チヨチヨと聞こえた。


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752: 2011/11/23(水) 21:56:05 ID:AZA.8U2U0




リカント「グゥルアア・・・」


( ^ω^)「・・・・・・」


リカント「クルゥアッ!!」バッ!

(♯^ω^)「・・・ふッ!!」ジャクッ!


リカント「ウグルァ・・・」ドサッ



( ^ω^)「ふぅ」


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753: 2011/11/23(水) 21:57:59 ID:AZA.8U2U0


ブーンは熟練した。

この付近の魔物を相手取っても、危険無く撃退できる程に。
精神と剣が、最高に研ぎ澄まされている。

もう、雑魚ではブーンの相手にはならぬ。

約束の満月の日まで、あと数日。

そして、アレとも。

奴との間合いは、近づいてきているはずだ。
目の前の、巨大な足跡を見て思う。


( ^ω^)

( ^ω^)「さあ、果たして」

( ^ω^)「ご対面はできるだろうかお」



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755: 2011/11/23(水) 22:00:40 ID:AZA.8U2U0



        そうして、日は経ち過ぎてゆく。



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756: 2011/11/23(水) 22:01:42 ID:AZA.8U2U0






ブーンは、自生している薬草の葉を
鍋でゴリゴリと擦り潰しながら、空の様子を思案している。


( ^ω^)(この風の感じ)

( ^ω^)(そろそろ、雨がきそうだお)


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757: 2011/11/23(水) 22:04:10 ID:AZA.8U2U0


薬草の擦りが終わるまで待って欲しい。
そう思いながら、手早く作業をする。

薬草の青々しい匂いが漂う。
飲み薬として消化が良い様に、水を加えて練る。
これは傷の塗り薬としても、薬効が高い。

だが、所詮は素人の調合。
腕のいい医師の作った薬には及ばないかもしれない、
等と考えつつ、葉を潰す。


擦り終わると、それを瓶に詰めた。


それらの作業が終わると同時に、ぽつり。


しとしとと雨が降り出した。


.

758: 2011/11/23(水) 22:05:42 ID:AZA.8U2U0


ブーンは、あの“傷の大樹”の根元に腰をかけ、座す。


雨を除けるものは纏わない。


ただじっと、雨に打たれながら。


冷たさを、しんと感じながら。



(;;-ω-)



.

760: 2011/11/23(水) 22:06:44 ID:AZA.8U2U0


風の臭いを。

空気の冷たさを。

川のせせらぎを。

木々のざわめきを。

地面の固さを。

土の匂いを。

頬を伝う水の感触を。

虫、鳥獣の鳴き声を。

雨の音を。

夜の帳を。

自分の形を。

自分の鼓動を。


.

762: 2011/11/23(水) 22:08:30 ID:AZA.8U2U0


生命の息吹を全身で感じ、自然と一体化する。

無我の境地に在りながら、心奥では斬撃の炎を滾(たぎ)らせる。



(;;-ω-)

(;;-ω-)

(;;-ω-)


(;;^ω^)


(;;^ω^)「きたかお」



ズシャッ



.

763: 2011/11/23(水) 22:10:09 ID:AZA.8U2U0



    「  ゴルルルゥ・・・・・・  」



(;;^ω^)「お前と会いたかったお。やはりこの修行を完遂するには」

(;;^ω^)「どうしても、お前と会う必要があった」



キラーリカント「  ゴオゥルガガァアアアァッァァァアアァアアア!!!!  」



咆哮と共に、強い風が吹いた。

同時に、鳥が一斉に羽ばたく音も。


.

766: 2011/11/23(水) 22:13:42 ID:AZA.8U2U0


通常の魔獣の、三頭分ほどはあるか。

巨体の魔獣は、ブーンを凄まじい咆哮で威嚇しようとする。


(;;^ω^)


しかし、ブーンの心は揺れない。

戦士は、不動の心を手に入れたのだ。



雨足は、激しさを増して。

それでも、互いを睨み合う眼は、水を伝えども閉じず。

雨は、強くブーンと獣の体を打ち付ける。

ブーンの剣が、雨に打たれてジリジリと蒸気を醸す。


.

767: 2011/11/23(水) 22:20:38 ID:AZA.8U2U0


(♯^ω^)「・・・ハァッ!!」バシャッ!

キラーリカント「ゴアアアアッッ!!」


ブーンは剣から水を切らしながら、俊速の剣撃を放つ。

しかし、野生の速さはそれを凌駕する。剣は空を斬る。


二足で歩む虎の魔獣が、牙と爪を剥く。


(♯゜ω゜)) 「ふっ!!」


間一髪でそれを躱す。

頬から血が流れ、それが雨に流れた。


.

769: 2011/11/23(水) 22:24:11 ID:AZA.8U2U0



キラーリカント「がアアアアアオラアアアアッッ!!」


(♯゜ω゜)「オオオオオオオオオオオおッッ!!」




獣は吠える。人も吠える。


互いの武器が、交錯した。





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770: 2011/11/23(水) 22:25:20 ID:AZA.8U2U0

















.

771: 2011/11/23(水) 22:27:42 ID:AZA.8U2U0






リムルダール――――――とある病院。



(´・ω・`)「はい、じゃあ次の方。どうぞ」


(´・ω・`)「やぁ。いらっしゃい・・・おや」



.

772: 2011/11/23(水) 22:29:55 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)「こんにちはですお、ショボン先生」


(´・ω・`)「ブーンさん。いやぁ。まあ、掛けなよ」


(´・ω・`)「しかし、男子三日会わざれば刮目して見よ、というが」

(´・ω・`)「君は会う度に、雄々しく成長しているように感じるね」

(*^ω^)「そ、そうですかお」


(´・ω・`)「して、今日は?どういう用件だい?
      見たところ、重傷や病気もしていないようだけど」

( ^ω^)


.

773: 2011/11/23(水) 22:31:13 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)「明日から、出発します」

( ^ω^)「竜王のもとへ。挑みますお」

(´・ω・`)「!」


(´・ω・`)「・・・なるほど」

( ^ω^)「そこで、清潔な包帯と、先生のつくる
      薬効の高い薬草を頂きに参りましたお」

(´・ω・`)「ふむ。わかった」


ショボンは、棚の方を物色して、幾つか取る。


.

775: 2011/11/23(水) 22:32:50 ID:AZA.8U2U0


(´・ω・`)「はい。これが包帯と、薬草」

(´・ω・`)「この薬草は、特別に質のいい物を使ってる。
      濃縮されているから、治癒効果も、即効性も充分だ」

(´・ω・`)「それと、これが“聖水”。貰い物だがね。
      魔除けの効果があるから、これも持っていくといい」

( ^ω^)「おっ!ありがとうございますお、先生」


(´・ω・`)「それと、はい」


ショボンは、杯をブーンに渡す。


.

777: 2011/11/23(水) 22:34:57 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)「おっ?」

(´・ω・`)「竜王に勝てる様になる、“お薬”さ」


トクトクと、色のついた水を注ぎ込む。
良い香りだ。


( ^ω^)「おっおっ先生、いいんですかお?まだ、仕事中ですお」

(*^ω^)「というか、院内にこんな・・・」


(´・ω・`)「いいさ。今日はそれなりに暇だし」

(´・ω・`)「それに僕も、一杯飲みたい気分だ」

(´・ω・`)「君の、勇気にあてられてね」

( ^ω^)「ショボン先生」


.

779: 2011/11/23(水) 22:37:51 ID:AZA.8U2U0



(´・ω・`)「では、前途ある若者の、勇気を讃えて」


( ^ω^)「ありがとう、ございますお」


(´・ω・`)「・・・乾杯」



二つの杯が、ガチンとぶつかる。


ブーンは、万感の想いを込めて、杯の“薬”を一気に飲み干した。



.

780: 2011/11/23(水) 22:40:42 ID:AZA.8U2U0



( ^ω^)



誓いの戦士、ブーン・ホライゾン。


その眼に、希望と勇気を携えて。


その胸に、覚悟と闘志を秘めて。


その刃に、炎と情熱を灯して。



――――――――――――いざ、出陣のとき。




to be continued...!!


.

782: 2011/11/23(水) 22:45:02 ID:AZA.8U2U0


( ^ω^)ブーンの今のステータス

LV24

ほのおのつるぎ
まほうのよろい
みかがみのたて


今回登場した敵

キラーリカント(山の主):リムルダーム周辺の山に住む、山の主。
               リカントは二足歩行の虎に似た獣人だが、
               通常のそれの何倍の巨躯を誇る。
               強靭な爪と牙で、獲物を一息で八つ裂きにする。
               竜王の魔香を強く浴びて進化した、変種だろう。

.

785: 2011/11/23(水) 22:49:40 ID:AZA.8U2U0
以上で第32話、投下終了です。
次回も、一週間以内で投下しようかと思います。

いよいよ最終決戦に入ります。
ここからが今作で一番自分の中で書きたかったところなので、
テンションあがりますう

それでは、( ^ω^)ご支援ありがとうございますお!

786: 2011/11/23(水) 22:49:41 ID:hjjc/E/60

787: 2011/11/23(水) 22:50:26 ID:wbnUqTrM0
乙!

788: 2011/11/23(水) 22:50:35 ID:/iNPlolwO
しかし現状では幹部と竜王の連戦だと倒せる気がしない
大丈夫かな

次回:( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)【Lv.17】


引用: ( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)