1: 2010/07/31(土) 22:31:34.80 ID:ZJbhOhmh0
梓「……」

梓「……」

梓「……」

2: 2010/07/31(土) 22:32:10.03 ID:ZJbhOhmh0
ガチャ
唯「タリラリランのコニャニャチワ~」

梓「……」

唯「あれ、あずにゃん一人?」

梓「はい」

唯「ふーん」

梓「……」

3: 2010/07/31(土) 22:33:45.53 ID:ZJbhOhmh0
唯「あ、トンちゃんにご飯あげよ~」

梓「さっきあげました」

唯「えっ、そうなの?
  今日は私がご飯当番だったのに!」

梓「……」

唯「もー、しどいよあずにゃん」

梓「……」

4: 2010/07/31(土) 22:36:22.10 ID:ZJbhOhmh0
唯「ちょっと、あずにゃーん」

梓「……」

唯「あずにゃん?」

梓「……」

唯「なにシカトぶっこいてんのさー、あずにゃん」

梓「……」

唯「もー、いい加減怒るよっ」ずいっ

梓「……」ぷいっ

ガチャ
澪「おっす」

唯「あ、澪ちゃん」

梓「こんにちは、澪先輩」

5: 2010/07/31(土) 22:38:07.98 ID:ZJbhOhmh0
唯「澪ちゃん聞いてよ~、あずにゃんが私を無視するのっ」

澪「えー、無視って……」

唯「澪ちゃんからガツンと言ってやって、先輩として!」

澪「あー……そうなのか? 梓」

梓「イエベツニソンナコトナイデス」

澪「ソンナコトナイって言ってるぞ」

唯「超棒読みじゃん! おちょくってるにも程があるよ!
  もー許さない、こうなったら……」

ガチャ
律「ちょりーっす」
紬「遅れてごめんなさい、今日のお菓子はポッキーよ」

唯「わーい!! ポッキーポッキー!!」

澪「おい」

梓「……」

6: 2010/07/31(土) 22:40:39.14 ID:ZJbhOhmh0
律「唯ー、ポッキーゲームしようぜー」

唯「おっ、いいねぇ」

澪「ばっ……ポッキーゲームって、おまえら……!」

唯「互いのポッキーを交差させ両端を引っ張り合い、
  折れたほうが敗者……それがポッキーゲーム!」

律「私の無敗記録を破れるかな!?」

澪「そういうゲームかよ……」

紬「どういうゲームだと思ったの?
  ねえどういうゲームだと思ったの? ねえねえ」

澪「うるさい黙れ」

律「よーしかかってこい唯!」

唯「負けないよりっちゃん!」

梓「……」

8: 2010/07/31(土) 22:43:23.30 ID:ZJbhOhmh0
20分後。

梓「……練習しないんですか?」

澪「え、ああ、そうだな、そろそろやるか」

唯「えーっ、まだポッキーゲーム76回しかしてないよ!!」

澪「それだけやりゃ充分だろ。
  つーか食べ物で遊んじゃいけません」

律「フッ、また私の連勝記録が伸びた」

唯「むぅー……次はプリッツで勝負だよ、りっちゃん!」

紬「大して変わらないと思うわ」

澪「ほらほら、いつまでも馬鹿なこと喋ってないで、
  さっさと準備しろ」

律「はーい」

9: 2010/07/31(土) 22:44:24.80 ID:ZJbhOhmh0
練習中。
no title

唯「あずにゃんさんや……
  なんでそんな離れたとこにいくんだね」

                           梓「気にしないでください」

澪「いや、気になるよ」

                           梓「演奏はちゃんとやりますから」

澪「そういう問題じゃなく……」

唯「あずにゃん……」

10: 2010/07/31(土) 22:44:56.29 ID:ZJbhOhmh0
……

唯「胸の楔に手向けの賛歌~深淵の地へ~♪」
ジャーン

律「おー、今の演奏なかなか良かったな」

紬「そうねー」

                           梓「はい」


澪「こっちこいよ梓……」

律「よーし、じゃあ今日はもうおしまい! 疲れたし!」

澪「そうだな、今日はいっぱい練習できたし」

紬「久々にね」

唯「うん……」

紬「唯ちゃん?」

律「よーし、じゃあ帰るかー」

11: 2010/07/31(土) 22:46:30.10 ID:ZJbhOhmh0
梓「あ、私、用事あるんで先に帰っててください」

律「用事? 今から?」

梓「はい」

律「学校で?」

梓「はい」

律「もうすぐ下校時刻だけど」

梓「とにかく用事があるんです。
  みなさんは早く帰ってくださいよ」

律「ああ、まあいいけど」

紬「あんまり遅くならないようにね」

梓「はい」

澪「じゃあな、梓」

梓「お疲れ様です」

唯「……」

13: 2010/07/31(土) 22:47:49.23 ID:ZJbhOhmh0
学校の外。

律「はー、夜だってのに暑いなー」

澪「そーだな」

唯「……」

紬「……唯ちゃん、どうしたの?
  さっきからなんか元気ないみたいだけど」

唯「え、うーん……
  私、あずにゃんに嫌われてるのかなー」

紬「どうして?」

唯「なんか今日シカトされたし、
  演奏の時も距離置かれたし……」

律「考えすぎじゃないか?」

唯「そんなことないよ、
  今日だけじゃなくてここ最近、
  あずにゃん私に冷たいんだよ」

律「どう冷たいんだよ」

14: 2010/07/31(土) 22:48:19.91 ID:ZJbhOhmh0
唯「ギターの弾き方を質問したら
  『それくらい自分でやってください』とか言われたり、
  抱きついたらヒジ打ち入れてきたり……」

律「ヒジ打ちて」

唯「あと和ちゃんと一緒にいたときに廊下で会ったんだけど、
  『こんにちは和先輩』って言うだけで
  私には挨拶しないんだよ? 絶対嫌われてるよ」

紬「うーん、確証を得ないうちから決め付けるのは……」

唯「えー、だってー……」

澪「ああっ!!」

律「な、なんだよ澪」

紬「いきなり大声出さないでよ、
  ビックリするじゃない」

唯「どうしたの、澪ちゃん」

15: 2010/07/31(土) 22:48:51.49 ID:ZJbhOhmh0
澪「学校に携帯忘れた!」

律「なんだ、そんなことかよ……」

澪「そ、そんなこととはなんだよ」

律「早く取りに戻れよ、
  もうすぐ学校閉まっちゃうぞ」

澪「わ、分かった。じゃあ行ってくる」たたっ

唯「澪ちゃんって結構うっかり屋さんだよね」

律「お前に言われたらおしまいだな」

唯「で、さっきの話の続きなんだけど」

律「ああ、梓がお前を嫌ってるって話?」

唯「うん、それなんだけど、
  先輩としてどうやってあずにゃんをシメるべきかな」

律「いきなり物騒な話になったな……」

紬(シメる……?)

16: 2010/07/31(土) 22:50:42.38 ID:ZJbhOhmh0
――――

――――――

――――――――


学校、音楽室前。

澪「はー、下校時刻に間に合ってよかった。
  ……あれ、音楽室の電気ついてる…………」

「……」「……」

澪「誰かいるのか……? 梓か?」

「……」「……」

澪「……」

音楽室の中から聞こえる話し声。
それは確かに梓のものだった。
梓の言っていた用事とはこれだったのか……澪は考えた。
澪はなぜか音楽室に入ってはいけないような気がして
ドアの影からこっそり中をうかがうことにした。

澪「……」コッソリ

17: 2010/07/31(土) 22:51:12.76 ID:ZJbhOhmh0
音楽室の中には梓がいた。
水槽の前で何かをしているようだった。

梓「……、……」

澪(よく見えないな……
  誰かと話してる? でも他には誰も……)

梓「…………、……」

澪(ええい、聞こえん!
  澪イヤー発動!)キーン

説明しよう、澪イヤーとは任意に発動できる地獄耳だ。
これにより澪に梓の声が聞こえるようになった。

18: 2010/07/31(土) 22:54:29.82 ID:ZJbhOhmh0
梓「……ふふ、トンちゃん」

トンちゃん「…………」

梓「ト~ンちゃん☆」

トンちゃん「…………」

梓「ねえ、今日の私の演奏……どうだった?」

トンちゃん「…………」

梓「昨日より上手く弾けてたでしょ?」

トンちゃん「…………」

梓「私、昨日帰ってから一杯練習したんだ」

トンちゃん「…………」

梓「あなたに聴いてもらうんだから」

トンちゃん「…………」

梓「もっと頑張って上手くならなきゃいけないよね」

トンちゃん「…………」

19: 2010/07/31(土) 22:55:00.06 ID:ZJbhOhmh0
梓「あのさ、私がもっとギター上手くなって……」

トンちゃん「…………」

梓「今度のライブ成功したら、その……」

トンちゃん「…………」

梓「あ、やっぱり何でもない! えへへ」

トンちゃん「…………」

梓「そうだ、明日のご飯、何がいい?」

トンちゃん「…………」

梓「も~、『なんでもいい』が一番困るんだってば~」

トンちゃん「…………」

梓「じゃあ私が勝手に選んじゃうからね?」

トンちゃん「…………」

梓「うふふ、大丈夫、変なのは選ばないから安心して」



澪「アワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワ」がくがくがくがく

20: 2010/07/31(土) 22:56:01.83 ID:ZJbhOhmh0
澪(ああああ、梓の用事ってこれだったのか!?)

澪(誰もいなくなった音楽室でっ……)

澪(トンちゃんとのラブ★トーク……!!)

澪(どういうことなんだ、何でトンちゃんと……)

澪(ていうか私は決して見てはいけないものを見てしまったのでは……)





梓「あっ、そうだトンちゃん、今日また先輩たちのこと見つめてたでしょ」

トンちゃん「…………」

梓「もう、確かに先輩たちはみんな可愛いけど……
  私が居るんだからさ、ね?」

トンちゃん「…………」





澪(うわあああああああもうこれ以上は聞いていられないいいいいいい)
だだだだだだっ

21: 2010/07/31(土) 22:57:02.37 ID:ZJbhOhmh0
再び学校の外。

澪「はあ、はあ、はあ……」

律「なんで全力疾走してきたんだ」

紬「携帯はあった?」

澪「け、け、け、け、携帯……? あ、わ、忘れた……」

律「なんでわざわざ取りに戻ってまた忘れてくるんだよ」

澪「しししししししし、仕方ないだろ……」      ぉ?」
                            たよ
紬「どうしたの、何かあったの?」    なかっ
                       も
澪「なっ、なななななななななななな何

律「声が裏返ってるぞ、絶対なんかあったろ」

澪「な、なんでもない! ほんとに何でもないから!!」

22: 2010/07/31(土) 22:57:33.61 ID:ZJbhOhmh0
律「怪しいなあ」

澪「も、もういいじゃないか、帰ろう、な」

紬「そうね、もう遅いしね」

澪「そうだよ、うん、あははは……」

律「腹へったなー」

紬「♪~」

唯「あずにゃんをシメるには……」ブツブツ

23: 2010/07/31(土) 22:58:04.49 ID:ZJbhOhmh0
翌日、放課後の音楽室。

ガチャ
澪「おう、梓だけか」

梓「あ、こんにちは」

澪「どうしたんだ、トンちゃんの水槽見つめて……」

梓「いえ、別になんとなく」

澪「ああ、そう……」

梓「……」

澪「……」

梓「……」

澪(なんとなく気まずい……)

24: 2010/07/31(土) 22:58:36.82 ID:ZJbhOhmh0
澪(うーん、昨日のことに付いて問い詰めてみるべきか……
  いやしかし、覗き見てたのがバレるのは……)

梓「なんですか、人の顔ジロジロ見て」

澪「え、あ、いや、なんでも……」

梓「じゃあ見ないでください。不快です氏にます」

澪「すまんすまん……あ、そうだ。
  梓、最近唯と仲悪いのか……?」

梓「え、なんでですか」

澪「いや、なんかそう見えるから」

梓「そうですかね……」

澪「うん」

25: 2010/07/31(土) 22:59:07.67 ID:ZJbhOhmh0
梓「まあ、そうですね……
  唯先輩のことはあまり好きではないです。
  というかどっちかというと嫌いです」

澪「えっ、なんでだよ」

梓「それは内緒です……
  あ、誰にも言わないでくださいね、このこと」

澪「まあ、それは言わないけど」

梓「はい、お願いします」

澪(梓の秘密を2つも知ることになってしまった……)

ガチャ
唯「ちーっす」
律「うーっす」
紬「今日のお菓子は蕎麦ぼうろよ~」

唯「わーい蕎麦ぼうろ~」

梓「……」

澪「……」

26: 2010/07/31(土) 22:59:37.92 ID:ZJbhOhmh0
唯「あ、そーだ。トンちゃんにご飯あげよー」

梓「さっきあげました」

唯「えー、なんでまた先にあげちゃうの?
  私も今からご飯あげるもん!!」

梓「だめですよ、今日は私がもうあげましたから!」

唯「でもトンちゃんだって欲しそうな顔してるよ。
  ねー、トンちゃん」

トンちゃん「……」

唯「ほらほら、こっちに泳いできたよー」

律「はは、トン公は唯に一番なついてるからなー」

梓「っ……だから、今日はもうあげたからダメって言ってるじゃないですか!
  明日以降にしてください!」

唯「ぶー、あずにゃんのケチー」

澪(……梓が唯を嫌ってる理由って、ただのヤキモチじゃなかろうな)

梓「ほら、練習しますよ練習!」

律「へーい」

27: 2010/07/31(土) 23:00:13.05 ID:ZJbhOhmh0
練習中。
no title
澪「またその立ち位置かよ」

                           梓「いいじゃないですか、別に」

律「なんでそんな離れたがるんだ?」

                           梓「ここが私のベスポジなんです」

律「あ、そう……」

                           梓「いいからとっとと練習始めますよ」

律「わかったよ、ワンツースリフォー」

28: 2010/07/31(土) 23:01:45.39 ID:ZJbhOhmh0
……

唯「果てる道連れ行き止まり~お熱いカタストロフ~♪」
ジャーン

律「おー、今の演奏なかなか良かったな」

紬「そうねー」

                           梓「はい」


澪「いい加減こっちこいよ梓……」

律「よーし、じゃあ今日はもうおしまい! 疲れたし!」

澪「そうだな、今日はいっぱい練習できたし」

紬「昨日もやったけどね」

澪「ああ……」

紬「澪ちゃん?」

律「よーし、じゃあ帰るかー」

29: 2010/07/31(土) 23:02:17.21 ID:ZJbhOhmh0
梓「あ、私、用事あるんで先に帰っててください」

律「用事? 今日も?」

梓「はい」

律「学校で?」

梓「はい」

律「もうすぐ下校時刻だけど」

梓「とにかく用事があるんです。
  みなさんは早く帰ってくださいよ」

律「ああ、まあいいけど」

紬「あんまり遅くならないようにね」

梓「はい」

唯「じゃあね、あずにゃん」

梓「お疲れ様です」

澪「……」

30: 2010/07/31(土) 23:03:36.27 ID:ZJbhOhmh0
学校の外。

律「はー、夜だってのに暑いなー」

唯「そーだね」

澪「……」

紬「……澪ちゃん、どうしたの?
  さっきからなんか元気ないみたいだけど」

澪「え、そ、そうかな……なんでもないよ」

紬「ふうん……?」

31: 2010/07/31(土) 23:04:39.63 ID:ZJbhOhmh0
律「そういや唯、梓をシメるとか言ってたのはどうすんだ?」

唯「え、ああ、もういいや」

律「いいのかよ」

唯「私が手を下さなくても、
  いずれああいう奴には天罰が下るものだよ」

律「ほう?」

紬「よく分からないけど説得力あるわね」

澪「ああっ!!」

律「な、なんだよ澪」

紬「いきなり大声出さないでよ、
  ビックリするじゃない」

唯「どうしたの、澪ちゃん」

32: 2010/07/31(土) 23:05:46.89 ID:ZJbhOhmh0
澪「ガッコーニケータイワスレター」

律「なんだ、またかよ……」

澪「ま、またとはなんだよ」

律「早く取りに戻れよ、
  もうすぐ学校閉まっちゃうぞ」

澪「わ、分かった。じゃあ行ってくる」たたっ

唯「澪ちゃんってめちゃくちゃうっかり屋さんだよね」

律「ああ、唯以上かもな」

33: 2010/07/31(土) 23:08:19.99 ID:ZJbhOhmh0
――――

――――――

――――――――


ふたたび学校、音楽室前。

澪(音楽室の明かりはまだ付いてる……
  やっぱり梓が……)

携帯を忘れた、なんてのは
梓の奇行を覗くために学校に戻るための方便だということを
賢明なる読者諸君ならば既にお気づきであろう。

澪が音楽室の外からこっそり中を伺うと、
予想通り、梓が水槽に向かって
なにやら話しかけていた。

澪(闇マナを対価に澪イヤー発動!!!)キーン

35: 2010/07/31(土) 23:11:06.28 ID:ZJbhOhmh0
梓「……」

トンちゃん「……」

梓「ふふ……こうやって見つめ合ってるだけで……」

トンちゃん「……」

梓「なんか、いつもよりドキドキしちゃう……」

トンちゃん「……」

梓「……ねえ、もう、ちゃん付けで呼び合うの、やめよっか」

トンちゃん「……」

梓「私、あなたのこと、トンって呼ぶから」

トンちゃん「……」

梓「あなたも私のこと……梓って呼んで……」




澪(うわああああああ昨日より悪化してるうううううう)

37: 2010/07/31(土) 23:11:36.77 ID:ZJbhOhmh0
梓「トン……」

トン「……」

梓「……」

トン「……」

梓「えへ……ちょっと恥ずかしい」

トン「……」

梓「でも、嬉しい」

トン「……」

梓「トン」

トン「……」

梓「……好きだよ」

トン「……」

梓「大好き」

トン「……」

梓「愛してる」

41: 2010/07/31(土) 23:12:06.82 ID:ZJbhOhmh0
トン「……」

梓「あなたは私のこと、どう思う?」

トン「……」

梓「ふふ、ありがと」

トン「……」

梓「ねえ、キスしよっか……」

トン「……」




澪(いかん、これ以上は見ちゃいけない気がする……
  どうやってキスするのか興味は尽きないが……)

澪がそーっと立ち去ろうとした、その時。

ピリリリリリリッ

澪「どわぁ!!」



梓「!!!!」

42: 2010/07/31(土) 23:13:07.34 ID:ZJbhOhmh0
澪(律から電話だと!?
  くそっこの最悪のタイミングでっ!!)

梓「誰かいるんですか!?」

澪(しまった、バレる!! ひとまずここは……!!)
 「……ニャーオ…………」

梓「何だネコか……
  ってんなわけないでしょうよ、
  何やってんですか澪先輩!!」

澪「くっ、私の完璧な演技を見破るとは……」

梓「声色が完全に澪先輩ボイスだったんで分かりますよ。
  ていうか何してんですか、
  帰ったんじゃなかったんですか?」

澪「ああいや、ちょっとな……HAHAHA」

梓「…………見てました?」

澪「な、何を?」

梓「音楽室の……中を」

44: 2010/07/31(土) 23:13:47.35 ID:ZJbhOhmh0
澪「……」

梓「見ましたか?」    てない
             も見   け
澪「いやっ、な、なんに      ど
                     ?」
梓「なんでそんなしどろもどろなんですか」

澪「じゃ、私はこれで帰るから……」

梓「待ってください。
  この時間帯、この校舎は幽霊が出るんですよ」

澪「えっ……」

梓「知りませんでしたか?
  ジュースと間違えて絵筆洗い用の水を飲んで氏んだ
  美術部員の亡霊が……」

澪「ひいいいいいい!!!」

梓「音楽室の中を見たかどうか。
  正直に言ったら一緒に帰ってあげます」

澪「見ました」

梓「よし! ……って全然よくない!!」

45: 2010/07/31(土) 23:14:21.39 ID:ZJbhOhmh0
澪「ごめん、見ない方がいいかなー
  とは思ったんだけど」

梓「当たり前ですよ!
  恋人同士の、二人きりの空間をのぞき見するなんて、
  さすがに悪趣味すぎます!! 万氏に値します!!」

澪「……あの、梓サン」

梓「なんですか?」

澪「一応、確認のために聞くけど……
  その梓の恋人というのは……」

梓「ああ、改めて紹介しますね。
  私の彼氏……スッポンモドキの、トンです」

トン「……」

澪「ああどうも、秋山です……じゃなくて!
  正気なのか梓……亀と恋人同士だなんて」

梓「はい、私たち真剣に付き合ってます」

澪「いやそういうことじゃなくて……」

46: 2010/07/31(土) 23:15:00.58 ID:ZJbhOhmh0
梓「亀と付き合うのは、おかしいことですか?」

澪「まあ、おかしいことだな」

梓「何故ですか。愛に種族の違いは関係ありません」

澪「種族が違うどころか哺乳類と爬虫類じゃないか。
  何をどう惹かれあって恋人同士になったんだ」

梓「そんなの、説明できません。愛に理由が要りますか?」

澪「いやまあそれはそうなんだけど」

梓「数多くのラブソングを書いてきた澪先輩なら、
  私の気持ちを分かってくれるはずです!」

澪「ごめん、永遠に理解できそうにない」

梓「じゃあいいです、澪先輩に理解してもらわなくとも、
  私たちは私たちの愛を貫きます!」

澪「まあ、その志はご立派だけども……
  やめといたほうがいいぞ」

47: 2010/07/31(土) 23:16:31.16 ID:ZJbhOhmh0
梓「何故ですか。人と亀の恋がいけないなんて、偏見ですよ」

澪「いや偏見とか、そういうのじゃない。
  この恋は……お前にとってつらい結果しか待ってないと思うぞ」

梓「それでも、構いません。
  私たちは今この時に愛し合っているんです」

澪「そ、そうか……でもな、梓……トンちゃんは」

梓「とにかく、私は彼を愛しているんです! 彼も私を愛してくれてます!
  そこに他人の意思が介入する余地はないんです!」

澪「うん……分かったよ、そこまで想いが強いなら、
  もう私からは何も言わない……でもこれだけは覚えておいてくれ。
  この恋の結末は……ハッピーエンドにはならない、と」

梓「覚悟の上です」

澪「そうか、ならいいんだが……」

梓「じゃあ、そろそろ帰りましょうか。
  早く帰らないと板チョコと間違えて墨を食べて氏んだ書道部員の亡霊が」

澪「美術部員じゃなかったか」

梓「じゃあね、トン。また明日ね」

トン「……」

48: 2010/07/31(土) 23:17:12.98 ID:ZJbhOhmh0
学校の外。

澪「律たちはもう帰っちゃったみたいだな」

梓「そうみたいですね」

澪「……」

梓「……」

澪(あとで律に電話かけ直さなきゃな)

梓「澪先輩は」

澪「ん?」

梓「澪先輩は、恋愛経験あるんですか?」

澪「いやあ、私はまだそういうのはないよ。
  今の私は音楽が恋人みたいなもんだからな(キリッ」

梓「へえ、てっきり経験豊富なんだと思ってました。
  恋愛の歌詞いっぱい書いてるし」

澪「はは……」

梓「じゃああの歌詞は全部妄想なんですね」

49: 2010/07/31(土) 23:17:44.93 ID:ZJbhOhmh0
澪「も、妄想とは失礼な……
  ファンタジーと呼んでくれ」

梓「同義でしょうよ」

澪「お、お前はどうなんだ」

梓「私には彼がいますから」

澪「カレっつうかカメだろ」

梓「うまいこと言ったつもりですか?」

澪「う、うるさいな」

梓「先輩も彼氏くらい作んなきゃだめですよ。
  せっかく美人なのにもったいないですよ」

澪「えー、でもなー私じゃなー」

梓「もっと積極的に行かなきゃだめですよ!」

澪「そういうもんかな」

梓「そういうもんです」

亀と付き合う少女と、恋に恋する少女……
2人のコイバナは夏の夜の闇に溶けていった。

50: 2010/07/31(土) 23:18:48.84 ID:ZJbhOhmh0
その後も梓とトンちゃんの恋愛は順調に続いていった。
梓は部活後に無人の音楽室での密会を毎日のようにしていた。
澪を除く軽音部員たちは梓が何の目的で
音楽室に居残るのか分かっていなかったが、
何度尋ねても梓は頑なに答えようとしないので
もう聞き出すのを諦めていた。

真実をただ一人知っている澪は
ときどき梓からの恋愛相談を受けた。
亀との恋にアドバイスすることなんて……と思っていたが
梓があまりにも真剣に話すので
澪としても無下にするわけにはいかなかった。
アドバイスを受けた梓は早速それを実践し、
以前よりも彼と親密になれたと喜んだ。

梓はひときわ練習に身を入れるようになった。
愛する人が見ていると思うと、自然とそうなるのだろう。
元々そこそこ上手かった梓はさらに上達し、
他の軽音部員たちを驚かせた。
そしてそれは軽音部全体のモチベーションの上昇を促し、
軽音部は以前よりも3分ほど練習時間が増えた。

色々と良い方向に進んでいた。
梓は毎日が幸せそうだった。
澪も恋に夢中な梓を見て幸せな気分になった。
しかし人と亀の恋愛という歪んだ事象が生み出す幸せなど、
長くは続くはずがないのである。

悲劇の幕開けはすぐそこにまで迫っていた。

51: 2010/07/31(土) 23:22:43.16 ID:ZJbhOhmh0
ある日の放課後、音楽室。

ガチャ
澪「よう……って何やってんだ梓……」

梓「み、澪先輩!? あーもういきなり入ってこないでくださいよ」

澪「もしかして今……
  キスしようとしてたのか……?」

梓「い、いいじゃないですか恋人同士なんだから……」

どうやってキスするかは聡明なる読者諸君の想像にお任せしたい。

澪「まったく……そういうのはみんなが帰ってからにしろよ。
  マズイだろ、みんなにバレたら」

梓「そうですね……特に律先輩あたりにばれると
  絶対からかわれますからね」

澪「いやそういうことじゃなく……」

ガチャ
律「私がどうしたって?」

梓「うわぁ」

52: 2010/07/31(土) 23:23:16.14 ID:ZJbhOhmh0
紬「今日のお菓子はカルメ焼きよ~」

唯「わーい」

律「どんどん貧相になってない?」

梓「これ食べたら練習しますからね!」

律「へいへい」

紬「そういえばトンちゃん、
  もうずいぶん大きくなったわねー」

律「そうだなー」

梓「ふふん」

律「何ニヤニヤしてんだ梓」

梓「いえなんでもありませんよー」

澪「…………」

53: 2010/07/31(土) 23:23:48.97 ID:ZJbhOhmh0
練習中。
no title

唯「よーし今日も張り切って練習しよう」

                           梓「はい」

律「梓は相変わらずそこか」

                           梓「いい加減慣れてください」

澪(最近私は気づいた……あの位置からだと水槽がよく見えるということに……)

律「じゃあ始めるぞー、ワンツースリフォー」

54: 2010/07/31(土) 23:24:19.06 ID:ZJbhOhmh0
……

唯「此処がそう楽園さ~さよなら~蒼き日々よ~♪」
ジャーン

律「おー、今の演奏なかなか良かったな」

紬「そうねー」

                           梓「はい」


澪(演奏中も梓の視線は水槽の方に固定されていたッ)

律「よーし、じゃあ今日はもうおしまい! 疲れたし!」

澪「そうだな、今日はいっぱい練習できたし」

紬「昨日もやったけどね」

ガチャ
さわ子「ヘイ! ちょっと待ちなさい!」

唯「さわちゃん?」

律「なんだよいきなり」

55: 2010/07/31(土) 23:25:38.93 ID:ZJbhOhmh0
さわ子「いや、トンちゃんが結構大きくなったって聞いたから」

律「ああ、ご覧のとおりだ」

さわ子「ほほう、なかなかのサイズね」

梓「そろそろ水槽を変えてあげたいです」

さわ子「いやあ、もういいでしょう」

梓「え?」

唯「そーだね、もういいよね」

梓「え、なんでですか?
  このままじゃ窮屈じゃないですか……」

律「そんなに大きくなるまで育てなくてもいいだろ。
  あんまりビッグになっても食い切れないしな」

紬「そうね」

梓「えっ…………
  今…………なんて…………」

澪「……」

56: 2010/07/31(土) 23:27:18.47 ID:ZJbhOhmh0
律「え? あんまりビッグだと食い切れない、って……」

梓「食う!? 食うって……
  トンちゃんを食べちゃうってことですか!?」

紬「何を驚いてるの?
  最初からそうする予定だったじゃない」

梓「知りませんよ、そんなの!
  どういうことですか!!」

律「そういうことと言われても……」

唯「あずにゃんがホームセンターで
  美味しそうな顔して見つめてたから買ったんだよ、トンちゃん」
(2話参照)

梓「そんな顔をした覚えはありません!」

唯「あれー、そうなの?」

律「なんだよ梓、まさかこんな亀っコロに情が湧いた、
  なんて言わないよな~」

梓「っ……」

澪「梓……」

57: 2010/07/31(土) 23:29:06.96 ID:ZJbhOhmh0
梓「酷いです……酷すぎます、皆さん……
  トンちゃんは……音楽室の仲間じゃないですか……」

さわ子「ダメよ、梓ちゃん。
    食べることは最初から決まっていたのだから。
    今さら飼い続けたいなんて、通用しないわよ」

梓「ひ、ひどい……」

唯「わーい、私スッポンなんて食べるの初めてだよ、
  楽しみだなー」

紬「いつ食べるんです?」

さわ子「よし、じゃあ明日スッポン鍋にして食べましょう!
    土曜日で休みだし、ちょうどいいでしょ」

律「オッケー、じゃあ明日の昼に音楽室集合な!
  スッポン以外の材料は各自持ち寄り!」

唯「お~♪」

律「よーしじゃあ今日はこれで解散!」

紬「明日楽しみだわ~」

さわ子「お腹すかせときなさいね」

梓「……」

58: 2010/07/31(土) 23:30:08.75 ID:ZJbhOhmh0
律たちが帰ってしまい、
音楽室に残されたのは澪と梓、そしてトンちゃん。

梓「ひっぐ……ぐすっ、うぅ……」

澪「梓……」

梓「澪先輩は……知ってたんですか、このこと……」

澪「ああ、知ってた……
  すまない、梓の幸せそうな顔を見てたら……
  どうしても言い出せなくて」

梓「いいんです……
  澪先輩が……悪いわけじゃ……」

澪「……どうするんだ、トンちゃんのこと」

梓「そうですね……
  せめて……今日はもう……
  2人きりにしてください……」

澪「ああ、分かった。
  じゃあ私はもう、帰るから……」

梓「はい……」

澪「じゃあな、梓……」
ガチャバタン

59: 2010/07/31(土) 23:30:39.72 ID:ZJbhOhmh0
梓「……」

梓「……」

梓「……」

61: 2010/07/31(土) 23:32:48.55 ID:ZJbhOhmh0
その夜、秋山家。

澪(梓……今頃どうしてるかな)

澪(恋人との最後の別れ……)

澪(明日の昼、愛する人が鍋の具材になって食べられてしまう)

澪(よく考えたらすごく残酷だな)

澪(梓……)

ピリリリリリリッ

澪「ん? 律から電話……
  はいもしもしー」

63: 2010/07/31(土) 23:34:14.20 ID:ZJbhOhmh0
律『澪、梓のこと知らないか?』

澪「梓がどうしたんだ?」

律『まだ家に帰ってないらしいんだよ!
  携帯にもつながらないらしくて……』

澪「なんだって?」

澪は時計をみる。
午後11時半。

律『梓のお母さんが心配して先生に電話して、
  それでさわちゃんが私に電話かけてきて……
  なあ、梓がどこにいるか知らないか?』

澪「し、知らない……
  みんなが帰った後、音楽室で梓と一緒にいたけど、
  私もそのあとすぐ帰ったし……」

律『そうか……
  よし、じゃあみんなで手分けして捜そう!
  唯やムギにも連絡しとくから、5分後に私の家に集合な!』

澪「ああ、分かった!」ピッ


澪(梓……まさか……)

65: 2010/07/31(土) 23:36:48.81 ID:ZJbhOhmh0
田井中家。

唯「あずにゃんが」

紬「行方不明って」

憂「本当なんです」

純「か?」

律「ああ、本当なんだ。
  学校の先生とかも捜してくれてるらしい。
  私たちも手分けして捜索しよう」

澪「……」

律「私は大通りのほうを捜してくる!
  みんなも梓が行きそうなとこを捜してみてくれ!」だだっ

紬「あっもしもし斉藤? 今使える人員は? 500人?
  足りないわ、その4倍はよこしなさい!」

憂「純ちゃん、私たちは向こうの方捜そう」

純「うん、分かった!」たたっ

66: 2010/07/31(土) 23:37:47.20 ID:ZJbhOhmh0
唯「澪ちゃん、私たちはどこ捜す?」

澪「……大体予想は付く。川のほうだ」

唯「川? なんで?」

澪「これはただの行方不明じゃない、逃避行だ……
  あのバカでかい水槽を担いで逃げるわけにも行かない……
  だとすれば導きだされる答えは一つ」だだだっ

唯「あ、待って、澪ちゃん!
  逃避行ってどういうこと?」

澪「そのままの意味だよ!
  あいつは……梓は、己の愛を貫くため……
  ただそのために!」

唯「さっぱり分からないよ!」

澪「来れば分かる!
  もっと早く走れ!」

唯「そんなに早く走れないよー!」

69: 2010/07/31(土) 23:42:03.11 ID:ZJbhOhmh0
某川の河川敷。

唯「はあ、はあ、はあ……」

澪「どこかに梓が居るはずだ……」

唯「でも真っ暗で何も見えないよ~、
  捜せっこないよ」

澪「闇マナを対価に澪アイ発動!」ギュイーン

説明しよう、澪アイとは任意に発動できる以下省略。

澪「どこだ、梓……」ギュイーン

唯「頑張って、澪ちゃん!」

梓「うわっ、先輩たち何故ここに!?」

澪「そこにいたのかよ!」

70: 2010/07/31(土) 23:45:24.38 ID:ZJbhOhmh0
唯「あずにゃん、無事でよかった~。
  心配かけちゃだめだよ」

梓「……連れ戻そうとしたって、無駄ですから」

唯「えっ」

梓「私は彼との愛を守るために、
  みなさんのもとへは戻りません」

唯「彼?」

その時、トンちゃんが水面から顔を出した。

ざぷん
トンちゃん「……」

澪「やっぱりな……
  トンちゃんを連れての駆け落ちか」

梓「はい」

唯「駆け落ち……? どゆこと?」

梓「唯先輩には黙ってましたけど……
  私、トンちゃんと付き合ってるんです」

唯「…………」

71: 2010/07/31(土) 23:46:01.69 ID:ZJbhOhmh0
澪「梓……もう諦めろ。
  いくらお前たちが愛し合っていても、所詮は人と亀……
  うまくいくことなんてないんだよ」

梓「そんなことありません!」

澪「いや、お前だって分かってたはずだ。
  だからこそ、無人の音楽室で密会、なんて
  隠れるような恋愛をやってたんだろ」

梓「っ……」

澪「目を覚ませ、梓。
  人はな、亀を好きになっちゃいけないんだ」

梓「そんなことっ……
  私はトンが好きで……
  トンだって私のことが好きなんです!!
  それでいいじゃないですか!」

澪「良くない!」

梓「なんでですか!」

澪「このままじゃお前は幸せになれないぞ!」

梓「幸せですよ、トンと一緒に居られて!」

澪「それは本当の幸せじゃない! 錯覚だ!」

72: 2010/07/31(土) 23:46:34.83 ID:ZJbhOhmh0
梓「錯覚でも何でもいいじゃないですか!!
  私はトンが好きなんです!
  愛してるんです!
  このまま黙って食べられるのを見ているなんて、できません!」

澪「梓っ……!!」

梓「トンはっ……
  トンは私の大事な大事な、恋人なんですっ!!!」

唯「いい加減にして!!」

梓「っ……!」

澪「……唯…………」

唯「あずにゃん……」

梓「はい」

唯「トンちゃんは……メスだよ」

澪「えっ」

梓「えっ」

トン「えっ」

73: 2010/07/31(土) 23:47:05.34 ID:ZJbhOhmh0
梓「……」

澪「……」

唯「……」

梓「……」

澪「……」

唯「……」

梓「……」

澪「……」

唯「……」

梓「……」

澪「……」

梓「帰りましょうか」

澪「そうだな」

3人はトンちゃんを学校に返しに行き、帰宅。
この後、梓はこっぴどく叱られたという。

76: 2010/07/31(土) 23:48:00.49 ID:ZJbhOhmh0
翌日、音楽室。
軽音部主催のカメ鍋パーティが
盛大に行われようとしていた。

憂「いいんですか、私たちまで」

純「軽音部の部外者なのに」

律「いいんだいいんだ、気にしないでくれ。
  軽音部は誰でもウェルカム」

憂「寛大ですね」

律「あっでも部外者はカメ肉は2切れまでな!」

純「うつわ小さっ!」

和「唯、材料何持ってきたの?」

唯「私はエノキとエリンギとシメジだよ。和ちゃんは?」

和「私は味付けのりよ」

唯「時々頭おかしいよね和ちゃんって」

和「ははは、こやつめ」



梓「……」

77: 2010/07/31(土) 23:48:34.25 ID:ZJbhOhmh0
さわ子「鍋の用意はいい?」

紬「OKです!」

さわ子「オーイエイ! じゃあ早速トンちゃんを掻っ捌くわよ!
    若い頃『カメいじりマイスター』と呼ばれた私の実力を
    とくとごらんなさい!」

律「なんかいやらしいぞ!」

唯「えっ、いやらしいって何が?
  何がどういやらしいの?」

紬「唯ちゃん、この場合のカメというのは」

憂「お姉ちゃんに変なこと吹きこまないでください!」バチコーン

紬「ぶはっ!」




梓「……」

澪「梓……」

78: 2010/07/31(土) 23:49:10.57 ID:ZJbhOhmh0
盛り上がる軽音部員たちから
少し離れたところで静かに佇む梓。
梓はこの喧騒を、
どのような気持ちで見つめているのか。

殺され、食べられる。
トンちゃんはそのためだけに存在した。
そんなトンちゃんを愛してしまった梓は、
本当に間違っていたのだろうか。

いや、愛に間違いなんて無い。
ただ普通とはちょっと違う恋をしたために
普通とはちょっと違う結末を迎えただけなんだ……
澪はそう考えた。

さわ子「イエス! トンちゃんが煮えてきたわよ!」

唯「すごーい、いい匂い!」

律「おー、すっげーうまそうだな」

紬「じゃあ早速食べましょうか」

唯「いっただっきまーす!」もぐもぐ

律「おお、こりゃうめぇ!」もぐもぐ



梓「……」

79: 2010/07/31(土) 23:50:09.95 ID:ZJbhOhmh0
そう、梓の愛は真実だった。
梓は驚くほど純粋にトンちゃんを愛していた。
疑いも、不安も、慢心も抱かず、ただ愛を信じ、恋に身を委ねていた。
そんな梓を誰が否定できよう。
種族も性別も超えて、2人は確かに愛し合っていた。
このラブストーリーは悲劇に終わってしまったが、
トンちゃんへの愛は、今でも梓の胸に息づいていることだろう。
それだけでも、この恋には意味があったと言える。

トンちゃんも梓のことを心から愛していただろう。
もちろん飼い主としてではなく、一人の人間として。
トンちゃんは梓の愛情を一心に受けた。
しかし水槽の中に住まうトンちゃんは
梓にその愛を返すことができなかった。
だが、今。トンちゃんは鍋の具材になることで
梓への初めての愛情表現を達成したのだ。
自らの身を梓に食べてもらう。
それは梓の血となり肉となり、トンちゃんは梓と一つになって
永遠に梓とともに生きていくことが出来るのだ。
これを理想の愛と呼ばずして何とする。

人と亀が見せてくれた、素晴らしき愛のかたち。
読者諸君には是非この話を記憶の隅に留めておいていただきたい。
いつか諸君に、誰かを愛する日が来た時のために。

梓「おっ、亀肉って結構いけますね」ばくばく

澪「オイ」

      お     わ       り

81: 2010/07/31(土) 23:54:41.99 ID:YDEx5XTR0
ワロタ

82: 2010/07/31(土) 23:55:57.57 ID:xD52uTwrO
トンと梓に幸あれ


引用: 梓「好きだよ。大好き。愛してる。あなたは私のこと、どう思う?」