1: 2009/04/18(土) 22:08:52.35 ID:EQprln/p0

2: 2009/04/18(土) 22:12:05.20 ID:EQprln/p0


( ^ω^)ブーンの世界には魔法があるようです



 知識の在処

 真昼に月は見えない




第一章 青色の砂  第五話「正位置の『女教皇』」


( ・∀・)「例の仮面の魔法使いだが、ゼアフォーって言うらしいね」



(;^ω^)「……は?」

 ゼアフォーだと。
 何故、名前なんか知っているのだろう。

( ・∀・)「ハハハ…そんな噂があったよ。各地に現れる仮面の魔法使い」

 モララーはフードを被り直した。
葬送のフリーレン(13) (少年サンデーコミックス)
3: 2009/04/18(土) 22:15:10.58 ID:EQprln/p0

( ・∀ )「僕は旅人だからね。もっとも、それ以上は知らない」

 僕の顔が不思議と言っていたのかそう付け足した。

(;^ω^)「いえ、ありがとうございますお」

( ・∀ )「旅で情報は生命線さ。気をつけるといい」

( ・∀ )「それじゃあ、また。旅をしていれば会うこともあるだろう」

 フードを直した後の表情は分からなかった。

(´・_ゝ・`)「終わった? 着いて来てくれ」

( ・∀ )「はいはい」

 二人が歩き去っていった。

 ゼアフォー。

 噂。

 旅。
 
 旅をしていれば色々な情報が入ってくる物なのだろうか。
 仮面の魔法使い、ゼアフォー。
 もう少し旅をすれば詳しい情報を聞けるかも知れない。

4: 2009/04/18(土) 22:18:10.28 ID:EQprln/p0

 お代を払い、店を出る。
 相変わらずの太陽が地面を焼いていた。
 砂漠へと向かって人をかき分け進む。
 検問もそこそこに。
 この後、僕はゼアフォーの事を考えながら砂漠へと入った。



5: 2009/04/18(土) 22:21:17.02 ID:EQprln/p0

―青の国 首都入口―

 砂漠の真ん中に流れていく川。
 そこをまたぐようにその国は成り立った。
 青い水が街全体に満ちている。
 魔法の青い光と太陽の光で輝く、水が巻き上げられ柱を形作り、水車を回す。

 全ては青の魔法がなければ成り立たない。

 土の道を歩く人々は皆ローブを着こんでいる。
 入口から前方に見える巨大な宮殿の屋根からは持ち上げられた水が滴り落ちる。

 砂漠の中、青の国の象徴だ。

(;^ω^)「あぶなかったお。危うく焼け氏ぬ所だったお」

 熱い砂漠だった。当たり前だが。
 僅かな距離でも油断ならない場所だ。

 確かジョルジュは守護者に会いに行けと言っていた。
 こういう時はガイドマップでも見るとしよう。

( ^ω^)「えーと、真っ直ぐ行って…噴水が…あれかお?」

 地図に書いてある通りに噴水に近寄った。
 噴水の上には女神を象ったオブジェが作られている。
 これも魔法の力で巻き上げられ、また戻っているらしい。

8: 2009/04/18(土) 22:24:44.51 ID:EQprln/p0

 見回すと色々な場所で魔法が使われている。
 水路、橋の下、建物。
 街全体の水が魔法で制御されている。

( ^ω^)「綺麗なもんだお」

 これが夜なら街全体が青色になるんじゃないかという使われ方だ。
 そんな事を考えながら振り返る。
 奥の宮殿が目的地らしい。

( ^ω^)「…行ってみるかお」


 『ウォーターショット!』


 目の前を水が通り過ぎて行く。
 被っていたマントに切れ目が入った。

( ゚ω゚)「!?」

 瞬時に飛び退く。
 視界の左右には水の柱が出来上がっていた。

 柱から次々と何かが打ち出される。
 今度は左側に飛ぶ。
 先程までいた場所を見ると、水たまりになっている。

9: 2009/04/18(土) 22:28:04.10 ID:EQprln/p0

( ゚ω゚)(水の弾丸?)

 再び真後ろに下がる。

( ^ω^)『ファイアグローブ!』

 魔法を発動すると同時に水弾を弾く。

(;゚ω゚)「これは…!」

 右手を覆っていた赤い光が半分消えている。
 たった一発の水弾に魔法を砕かれた。

 衝撃で動きが止まってしまった。

 水弾が正面から幾つも向かってくる。

(;^ω^)「おおおおおおぉ!!」

 残った魔力では片手の魔法を再生できない。
 魔法がある左手で水弾を受ける。
 分かってはいたが、止めきれない。

 赤い破片と共に弾き飛ばされた。

 飛ばされた先で尻もちを付いていると足元に水が突き刺さる。

10: 2009/04/18(土) 22:31:09.85 ID:EQprln/p0

(;゚ω゚)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「そこまでね」

 どこからか声がする。
 聞こえた方向に顔を向けると、少女らしき人物が仁王立ちしている。
 それも例の噴水のオブジェの更に上で。
 背は低い様だが、逆光のおかげで細かくは分からない。

ξ゚⊿゚)ξ「残念ながら、犯罪者を通す訳にはいかない」

 犯罪者。
 国境でもそんな騒ぎに巻き込まれた。

ξ゚⊿゚)ξ「さあ、フードをはずしなさい」

 言われた通りにフードをはずす。
 太陽の光が眩しかった。

(;^ω^)「………」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

 少し目が慣れてきた。
 少女の服装は適当に切ったローブらしい。

12: 2009/04/18(土) 22:34:22.54 ID:EQprln/p0

(;^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

 顔と髪型は……

( ^ω^)「…」

ξ゚⊿゚)ξ「…」

( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ「ん?」

( ^ω^)「…ツン…?」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン…?」

 その顔には見覚えがあった。
 相手も僕の名前を言った事からも間違いない様だ。

( ^ω^)「ツン…生きて…」

 緑の国が襲撃された時。
 てっきり氏んだと思っていた。 
 七年ぶりになる。

13: 2009/04/18(土) 22:37:35.02 ID:EQprln/p0
 
 暑さと太陽の光の中、夢を見ている様な気分だった。
  
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーンこそ、よく生きて…それに赤の魔法なんて…」

 ツンがオブジェから飛びおりる。
 すぐに現実が戻ってきた。

(;^ω^)「は?」

 反射的に僕は駆けだす。
 そのままツンの下に滑り込む。
 太陽に焼かれた砂が熱かった。

(; ω )「ぐは!」

 ツンを背中で受け止めた。

ξ;゚⊿゚)ξ「何やってんのよ!」

(;^ω^)「それは…こっちのセリフだお。 あの…病弱だったツンが…」

 ツンは緑の国にいた頃、体が弱かった。
 学校にも行けない位だったはず。
 家が隣だった僕はツンのお守りからパシリまで何でもやった。

14: 2009/04/18(土) 22:40:35.27 ID:EQprln/p0

 ツンがどいたので何とか立ち上がる。

ξ゚⊿゚)ξ「ああ。それはしぃさんのお陰よ」

(;^ω^)「誰だお」

ξ゚⊿゚)ξ「…守護者よ。この国の」

 守護者しぃ。
 その人に会いに行けばいいのか。

 まあ、それより今は。

( ^ω^)「ツン…無事でよかったお」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、ブーンも」

 昔馴染みとの再会を喜びたかった。

( ^ω^)「でもツン」

ξ゚⊿゚)ξ「何?」

( ^ω^)「七年前と体型が変わってないのは何でだおwww」

ξ#゚⊿゚)ξ「……」

15: 2009/04/18(土) 22:44:17.96 ID:EQprln/p0



(#)^ω^)「飲み物を買ってきましたお」

ξ゚⊿゚)ξ「うむ」

 その後すぐに、僕は昔と同じパシリに戻っていた。
 未だにその実感も湧かなかったが。



―青の国 守護の宮殿―

 遠くから見えた宮殿は青一色だった。
 内部には水路と共に水が流れ、各部には女神像が作られている。
 がらんとした大広間だが人はあまりいない。
 ツンに連れられて喋りながら中まで着いた。

( ^ω^)「また女神像だお」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、あれは…」

「昔話の天使だよ」

 少し離れた場所から声が響いた。
 流れ落ちる水の音と共に足跡が近づいてくる。

16: 2009/04/18(土) 22:47:28.67 ID:EQprln/p0

(*゚ー゚) 「はじめまして、ブーン君かな?」

 青い法衣を着た女性だった。
 背はツンよりは高いが、どちらかと言えば低い部類だろう。

(;^ω^)「何で僕の名前を…」

(*゚ー゚) 「ジョルジュ君から手紙が来たんだよ。伝書鳩で」

 その笑顔からは年齢が読み取れなかった。

 ジョルジュ。
 連絡してあると言っていた。

 【水の巫女】

 確か何かで読んだ気がする。
 この国の守護者の二つ名。

( ^ω^)「あなたが…【水の巫女】しぃ…さん?」

(*゚ー゚) 「うん。そんな大袈裟なものでも無いけど」

18: 2009/04/18(土) 22:50:34.65 ID:EQprln/p0

 今度はツンに向き直った。

(*゚ー゚) 「ツンちゃんもおかえり。もうブーン君と仲良くなったの?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ。幼馴染なんです」

(*゚ー゚) 「へえ。あとで詳しく聞かせてね」

 少年のような口調とは裏腹に気品に溢れる動作。
 意外と凶暴なツンとは、正反対の性格。

( ^ω^)「さっきはひどい目n」

 ツンの肘が僕の腹に突き刺さる。

ξ゚⊿゚)ξ(喋ったらもう一発)

(;^ω^)(……はい)

 あっさりと脅しに屈するあたり、僕は七年前と変わって無い様だ。
 ツンに肘打ちされるとは思わなったが。

(*゚ー゚) 「?」

ξ゚⊿゚)ξ「何でもありません」

(*゚ー゚) 「そう? 凶悪な殺人犯が入国したらしいから気を付けてね」

19: 2009/04/18(土) 22:53:46.08 ID:EQprln/p0

 恐らくはマタンキの事だろう。
 今朝の話だし、まだ捕まっていないらしい。
 検問も厳しいのですぐに解決するとは思う。

(*゚ー゚) 「ツンちゃんだったら簡単には負けないと思うけどね」

( ^ω^)(そういや僕、ツンに普通に負けたお)

 そんな事を考えていると、しぃが僕に向き直る。

(*゚ー゚) 「じゃあ、これからよろしく!」

 しぃはそう言って右手を差し出してくる。

( ^ω^)「いえいえ、僕の方こそよろし……これから?」

 僕はこの宮殿に長期滞在予定なのだろうか。
 一人とはいえ長く滞在すれば迷惑がかかってしまう。

(*゚ー゚) 「うん! ジョルジュ君が『適当に稽古と知識つけてくれwww』って」

 ジョルジュからの手紙をひらひらとさせながら笑顔で答えた。
 手紙に書いてある字は雑過ぎて読めない。

( ^ω^)「………」

20: 2009/04/18(土) 22:57:42.05 ID:EQprln/p0



( ゚∀゚)『ああ、お前も俺が戻るまで氏ぬなよ!』



ξ゚⊿゚)ξ「しぃさんの生徒って久しぶりですね~」

(*゚ー゚) 「みんな逃げ出しちゃうんだよね。何でだろ?」

ξ゚⊿゚)ξ「わたしだって何回か脱走しましたけど…」

 何て物騒な会話だ。
 もしかしたら今までの学校生活の比ではない勢いで危険かもしれない。

 居残り、補講、追試、赤点、落第。
 キーワードが頭を走って行く。

( ゚ω゚)「……」

 どうする。いや、落ち着け。
 極限状況下において危険なのは混乱状態になる事だ。
 答えは簡単。
 ここは論理的にお断りする理由を言えばいい。

 弾きだされた答えを実行すべく、僕の口が滑らかに言葉を紡ぐ。

21: 2009/04/18(土) 23:01:13.58 ID:EQprln/p0

( ゚ω゚)「…僕、チョット、用を、オモイダシタ、ので…」

ξ゚⊿゚)ξ「青い顔して何言ってんの?」

(*゚ー゚) 「あ、ツンちゃん。ブーン君の部屋は西側の個室だからね」

ξ゚⊿゚)ξ「はーい」

 失敗した。
 為す術も無く僕はツンに引きずられていく。
 降ろしていた荷物は別の人に運ばれて行った。

ξ゚⊿゚)ξ「荷物は西側ねー」

( ゚ω゚)「アッー」

 しぃの笑顔に見送られながら、これからの生活を呪った。


23: 2009/04/18(土) 23:04:20.41 ID:EQprln/p0

 さて、それからの生活は酷いものだった。

 まともに勉強などしなかった学園生活。
 だから成績下位だったのだ。
 その為、しぃの最初のテストで十八点を叩きだした(百点満点で)。

(*゚ー゚) 「…想像以上だね」

 その一言から僕の戦いが始まったのである。


第一章 青色の砂  第五話「正位置の『女教皇』」 完



24: 2009/04/18(土) 23:07:29.97 ID:EQprln/p0


( ^ω^)ブーンの世界には魔法があるようです


 英雄は繁栄を手に入れていた

 豊穣の天使の加護、国を動かすのは小さな力



第一章 青色の砂  第六話「正位置の『女帝』」


 北西。永久表土の大地に構える【赤の国】。
 その南に位置する砂漠、【青の国】。
 
 青の国から運河を挟み、南東にある森の陸地【黄の国】。
 そこから陸続きで北東に存在する海と街の境界【緑の国】。
 
 そして世界の中心地、蒸気立ち込める技術国、【紫の国】。

 紫の国を囲むように位置する各国。
 それぞれの国は国境と国境の間に隙間を作り、領土の問題を避けようとしていた。

 それでも戦いは幾度となく起こっているが、現在は大戦の英雄達の働きで安定が続いていた。

25: 2009/04/18(土) 23:10:53.92 ID:EQprln/p0


 僕が教えてもらった各国の概要だ。もう忘れかかっているが。
 ここは青の国の宮殿の、更に地下である。
 薄暗く、広い空間。
 周囲の溝には水がつたっている。

 何かの循環装置らしいが今はそんな事を気にしている余裕は無い。
 微かに浮かぶ赤い光が消えかかる。

(;^ω^)「…ぉぉぉ…おぉぉ…!」

 そこで両手に赤い光を灯しながら十分程突っ立っている。
 しぃと共に。

(*゚ー゚) 「あと少しだよ! 頑張って!」

 体内の魔力を外に出す。これが魔法の大前提だ。
 その後、各魔法の特性に従い様々な現象が発生する訳だが、
 僕が使える魔法は二つ。
 

26: 2009/04/18(土) 23:14:41.02 ID:EQprln/p0
 
 赤の【ファイアグローブ】
 緑の【ウインドダッシュ】

 二属性の魔法が使える人間は、実は少ない。
 理由は解明されていないが他国で教育を受け続けると、
 いつの間にか自国の魔法が使えなくなってしまう。
 
 僕はその例に当てはまらず緑の魔法が使えた。
 赤の国を発ってからの、密かな自慢だ。

 もっとも、僕の魔力自体は平均より遥かに下だし、魔法もこれだけ。
 加えて一回ファイアグローブを使えば、全体の半分以上の魔力を使ってしまう。
 ウインドダッシュは残りの魔力で二回程使える。
 魔法使いとしては心もとない力だ。

(;^ω^)(まずいまずいまずい)

 本題に戻ろう。
 青の国に来てからの僕は魔力の向上や常識を付ける為の授業に終始していた。
 朝から授業のお陰で赤の国にいた頃より忙しい。

(*゚ー゚) 「後三分!」

 体に残る魔力は無いと言っていい。
 三分は持たないだろう。

27: 2009/04/18(土) 23:17:05.32 ID:EQprln/p0

(*゚ー゚) 「持たなかったら補習ね」

(;゚ω゚)「もてえええええぇッ!!」

 しぃがぼそりと言った一言に反応して魔力の消費が変わった。
 魔法という物は気の持ちようで姿を変える、いい加減な物でもあった。

 その後、実に長い三分間が過ぎた。



ξ゚⊿゚)ξ「あーあれね。わたしでも三十分が限度よ」

 朝の授業が終わり、ツンと喋るのは日課になっていた。

( ^ω^)「いや、後一秒で十五分だったお。これは惜しいwww」

ξ゚⊿゚)ξ「…普通でも二十分はいくんだけど」

 外から見ると宮殿に見えるこの建物だが、中身は大きく違った。
 居住出来る場所は僅かで大部分が神殿とも呼べる作りになっている。
 地下はしぃが独自に作らせた物らしい。

 入口から広がる神殿。礼拝をしている広間の裏側で僕達は休憩していた。

( ^ω^)「僕と一般人を同じく扱っちゃいかんお」

29: 2009/04/18(土) 23:20:12.71 ID:EQprln/p0

ξ゚⊿゚)ξ「昔は頼りにしてたんだけどねー」

 ツンはそう言いながら苦笑いする。
 この国に来て、二週間が経っていた。
 ツンと話をするのは毎日の事だが、昔話をする事は無かった。
 
 両親を失ったのは僕も同じだ。それでも…
 僕はまだ、何と切り出せばいいか見付けられていなかった。

(;^ω^)「それを言うなお」

 もちろんそんな事はおくびにも出さない。
 持っている水を飲みながら、礼拝の様子を見る。
 祭壇の頂上にいるのはしぃだが、僕らが背後にいる為、表情は読み取れない。

( ^ω^)「そう言えば、しぃさんはどんな仕事してるんだお?」

 先程まで僕の訓練に付き合って、今度は礼拝では大変だろう。

ξ゚⊿゚)ξ「この国では守護者が最高権力者なの」

 どこの国でも基本的に王がいるはず。
 女性が統治する国はこの国だけなのではないだろうか。

( ^ω^)「でも、しぃさんは司教じゃないのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「司教もやってるわ。他に内政や外交も一手に引き受けてるみたい」
      

33: 2009/04/18(土) 23:23:52.86 ID:EQprln/p0
      
 司教や国の代表を同時にこなしている。
 この後も予定が詰まっているはずだ。

( ^ω^)「それは…超忙しいお」

ξ゚⊿゚)ξ「昔はただの僧侶だったらしいわよ」

 僧侶から王とは。

(;^ω^)「…大出世だお」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、今は紫の国がどう動くかわからないらしいわ」

 ツンの話を聞きながら祭壇を見ると、しぃの姿は消えていた。


 紫の国に不穏な動きあり。
 旅の仲間が治める国。

ξ゚⊿゚)ξ「そんな手紙が赤の国から手紙が来たんだって」

 目の前のセピア色の写真を見ながら大戦が始まる前の事を話してくれたらしい。

( ^ω^)「写真って…」

ξ゚⊿゚)ξ「少し前に作られた機械よ。しぃさんと背の高い男の人が映ってたわ」

34: 2009/04/18(土) 23:27:07.68 ID:EQprln/p0

 大戦前、しぃは使者の雑用として赤の国を訪れただけだった。 
 魔王の手先に襲撃される中、ジョルジュに助けられた。
 あの日ジョルジュと出会った事で旅が始まったのだ。

ξ゚⊿゚)ξ「その人が紫の国のギコ王なんだって」

( ^ω^)「旅が終わった後に王様になったのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね。少し前までは連絡も付いたらしいんだけど」

 皆で守った世界。再び平穏が壊れてしまうかもしれない。
 それも、かつての旅の仲間の手で。
 しぃは彼が魔王を復活させようとしているとはどうしても思えないと言ったらしい。
 
 そうだとすれば、裏で何らかの糸を引く物がいるのか。 

( ^ω^)「…守護者も色々大変だお」

ξ゚⊿゚)ξ「まあ、アンタも負けてないわ」

 しぃの簡単な身の上話を聞き水を一口飲んだ。
 礼拝に来た人たちが帰り、閑散とした広間。
 相変わらず水が流れており青く辺りを照らす。

( ^ω^)「…ツンは何やってるんだお?」

36: 2009/04/18(土) 23:30:17.19 ID:EQprln/p0

ξ゚⊿゚)ξ「わたしは…何でもやるわ。 料理から戦いまで」

( ^ω^)「要するに雑用かお。体は大丈夫なのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「しぃさんって薬学にも精通してるの。そのお陰で今は健康そのものよ」

( ^ω^)「……」

 体質が薬で治るものなのか。
 僕はツンが病弱だった事は知っているが、病気だったかは記憶していない。
 いや、病弱と言う事は病気だったのか。

( ^ω^)「…治ったならそれでいいお」

ξ゚⊿゚)ξ「? うん」

 まとまらない考えを無理に断ち、話題を変えた。

( ^ω^)「どうでもいいけど、しぃさん完璧超人過ぎるおwww」

ξ゚⊿゚)ξ「…とりあえず同意するわ」


37: 2009/04/18(土) 23:33:36.36 ID:EQprln/p0

 雑談もそこそこに、ツンに一言ことわって宮殿の外に出た。
 今日はやる事はやったので久しぶりに散歩でもしようと思ったのだ。
 暑いだろうと身構えていたが砂漠の夜は寒かった。

( ^ω^)「冷えてきたお」

 夕日が都を照らしていた。
 何を考えるでも無く、歩く。ただ変わっていく景色を見ると不思議と落ち着く。
 すれ違う人は少ない。
 朝と夜、この国ではそれが、明確に人々の生活を区切っていた。
 国と国の違いと言う奴だろうか。

 泥で塗り固められた住宅や石で作られた水路。それらを辿るとすぐに都の外に出た。
 はずれにある小高い丘に座り込むと足もとを砂が流れて行った。
 座ったまま、背伸びをしてみる。

( ^ω^)「ん…何だお。あれ」

 視界の端に映った影を追うと遠くにある事が分かる。

( ^ω^)「…建物?」

 縦に長い左右対称の建物がぽつりと砂漠の上に立っている。
 住宅区域からも離れているそれは明らかに不自然な存在だ。
 立ち上がりよく見る。

 好奇心にかられ一歩踏み出したところで、太陽が沈みきった。
 砂漠の先を照らす夕日が無くなり建物は暗闇に消えてしまった。

38: 2009/04/18(土) 23:37:13.90 ID:EQprln/p0

( ^ω^)「……!」

(;^ω^)「早く帰らないと…しぃさんにぶん殴られるお」



(*゚ー゚) ξ゚⊿゚)ξ「いただきまーす!」

(#)^ω^)「…いただきますだお」

 他の神官や僧侶たちに交じって夕食を食べている。
 最近の傾向だが、僕は女性が苦手なのだと思う。
 長いテーブルの上には白いクロスが敷かれている。
 更にその上に鶏肉や野菜等が香辛料で味付けされた物がずらりと並ぶ。

(*゚ー゚)「で、ブーン君の予定だけど…」

ξ゚⊿゚)ξ「それでしたら私が見ます。 でも…」

 真横では着々と僕の強化計画が立てられ、向かいでは神に祈りを捧げながら夕食を食べる者達。
 実際しぃも祈っておくべき人なのではないかと思うが、誰も気にしていない。
 これ程大勢で食事をする毎日は久しぶりだ。緑の国にいた頃を思い出す。

39: 2009/04/18(土) 23:40:35.22 ID:EQprln/p0

( ^ω^)(これでマナーにうるさくなければ最高だお)

 両親と暮らしていた頃は毎日賑やかだった。
 マナーどうこう言われる事も無かったが、他人から見ると変なのか。

 周囲を見回すと音をたて物を食べる人はいない。
 談笑はしているが、騒ぐような人もいない。
 さすがは神に仕える者達だ。

( ^ω^)「ハム…ハフハフ、ハム!」

ξ゚⊿゚)ξ「そろそろ慣れてもいいと思うんだけど?」

(;^ω^)「これでも最高に上品だお」

(*゚ー゚)「テーブルマナーに詳しい人は…」

 こればかりは未だに出来なかった。



( ^ω^)「……」

 数日後、朝からの訓練を終え、広間の裏手で休んでいた。
 手加減はして貰っているが朝っぱらからの百人組手も楽じゃ無い。
 それだけの基礎体力は学校で付けて貰っていたのは幸いだった。

41: 2009/04/18(土) 23:44:10.93 ID:EQprln/p0

 変わらず、礼拝が行われている。
 毎日のように人が集まっているが、僕はこれがどんな信仰なのか未だ知らなかった。
 暮らしぶりを見ても戒律がある様子はない。

 この生活に慣れて来たのか、礼拝を眺めながらそんな事を考えていた。


 いつの間にか人々が疎らになっている。

(*゚ー゚)「ここでの生活にも慣れたかな?」

 しぃが真横から声を掛けてきた。
 いつもの法衣ではなく司教用の法衣を着ている。

( ^ω^)「ええ、赤の国にいた頃より充実してますお」

(*゚ー゚)「それはよかった。 ブーン君は魔力も順調に伸びてるし、
     才能はあると思うよ」

( ^ω^)「褒めて伸ばす作戦ですかお」

(*゚ー゚)「ふふふ…半分はね」

 僕自身、魔力の増加は驚く所だ。
 だから『充実している』と思ったのかもしれない。
 これならしっかり勉強しておくべきだった、とも考えたが今さら悔いても仕方がない。

42: 2009/04/18(土) 23:47:23.04 ID:EQprln/p0

(*゚ー゚)「ツンちゃんは?」

( ^ω^)「そう言えば、今日は見てませんお」

 しぃは少し考え込むと、手を叩き僕に笑顔を向けた。

(*゚ー゚)「お気に入りの場所に行ってるかも」

( ^ω^)「ツンも散歩とかするんですかお?」

(*゚ー゚)「うん、前は歩かせてあげられなかったから」

 しぃはツンの事をよく分かっていた。
 緑の国での生活もあらかた知っているようだった。
 出歩けなかったツンが立派に歩けるようになったのは嬉しい事だ。

(*゚ー゚)「ブーン君、ちょっと見に行ってきてくれないかな?」

 聞けば外れにある大聖堂がツンの好きな場所らしい。
 少し前に見た、砂漠に立っていたアレだろう。

( ^ω^)「わかりましたお」

 僕はそう言って陽光照りつける外へと歩を進める。
 すれ違い際、珍しく神官が走って通り過ぎて行った。

45: 2009/04/18(土) 23:50:43.04 ID:EQprln/p0

(;・-・ )「しぃ様!」

(*゚ー゚)「何かな?」

(;・-・ )「…これを」

(;゚ー゚)「…!」


第一章 青色の砂  第六話「正位置の『女帝』」 完

46: 2009/04/18(土) 23:54:37.58 ID:EQprln/p0
今回の投下はここまでです。
ありがとうございました。
規制も解けたので今後はコンスタントに投下出来る事と思います。

話の流れも次回で導入部が終了します。
本筋である旅が始まるのでこれまでとは若干流れが変わります。
あしからず。

47: 2009/04/18(土) 23:58:33.27 ID:SA5A6aRpO
乙! これからも頑張れー

引用: ( ^ω^)ブーンの世界には魔法があるようです