1: 2009/06/06(土) 20:40:32.33 ID:xwtZDzAg0

3: 2009/06/06(土) 20:42:21.55 ID:xwtZDzAg0
―これまでの説明―

 北西。永久表土の大地に構える【赤の国】。
 南に位置する砂漠、【青の国】。
 
 南東にある森の陸地【黄の国】。
 北東に存在する海と街の境界【緑の国】。
 そして世界の中心地、蒸気立ち込める技術国、【紫の国】。

 世界のバランスは危うくも保たれていた。

4: 2009/06/06(土) 20:45:49.32 ID:xwtZDzAg0


( ^ω^)ブーンの世界には魔法があるようです


 支配の無い国

 王は不在



第二章 黄色のコイン  第八話「正位置の『皇帝 』」

 夕日も落ちそうな頃、僕達はようやく宮殿に戻ってきた。
 なぜか入口前に集まる兵士達。
 その前にいたのは二人の守護者。

( ゚∀゚)「よう! ……何でそんなケガしてんだ」

(;^ω^)「ジョルジュさん……来るの遅いお」

ξ;゚⊿゚)ξ「アンタ、守護者と知り合いなの?」

 何の集会だか知らないが、治安の一つも守って欲しい。
 こちらは妙な姿の犯罪者に殺されかけたのだから。
葬送のフリーレン(13) (少年サンデーコミックス)
6: 2009/06/06(土) 20:48:51.19 ID:xwtZDzAg0

(;゚ー゚)「皆、そういう事だから国境を中心に固まっていて」

 一斉に挨拶があがり、兵士たちが散っていく。

( ゚∀゚)「見ての通りだ。厄介な事になっててな」

( ^ω^)「今度は魔物の軍勢でも来たんですかお?」

(*゚ー゚) 「まだそっちの方が楽だったよ」

 兵士の指揮が終わったしぃが僕達に向き直る。

ξ;゚⊿゚)ξ「軍を動かすんですか?」

( ゚∀゚)「しぃ、お前と同じこのまないt…ちっこい嬢ちゃんは誰だ?」

 長身のジョルジュと比べれば背の低いツンを指さしながら、しぃに聞いた。

( ^ω^)「ああ、本人気にしてるんで控えていただけると…」

(*゚ー゚)ξ゚⊿゚)ξ 「………」


7: 2009/06/06(土) 20:52:00.33 ID:xwtZDzAg0

 一日経ち国内が動いている理由が分かった。
 痛む顔をさすりながらジョルジュと向き合っている。

(#)゚∀゚)「お前らがあったマタンキとやらは後回しにして…今は紫の国だ」

(#)゚∀゚)「赤の国は戦力的にも多少は問題無いだろうが、こっちは厳しい。
      赤と青の国が同盟して全面戦争したら…やっぱ厳しい」

(#)^ω^)「他の国とかはどうなってるんですかお?」

(#)゚∀゚)「それが本題」

 紫の国、国境封鎖と同時に一部の軍を展開。
 僕達が宮殿に戻った時にはこの対策で騒ぎになっていたのだ。
 戦略的な話は分からないが問題はそこだけではない。

 戦火が呼ぶ【魔王】。
 魔王の復活が現実となれば、七年前の大戦が再び始まる。
 
 攻め込まれる訳にもいかず、赤の国はこれに対抗すべく兵を配して牽制を行っている。
 青の国も同様に兵を展開したい。

(;゚ー゚)「そのつもりなんだけど…」

 間の悪い事に、青の国では疫病の蔓延が予想されていた。
 発病までは暫くかかるのが特徴の病だ。数年前にも騒ぎになった。

(;゚ー゚)「伏せてはいるけど、騒ぎになるまでは時間の問題かな」

8: 2009/06/06(土) 20:55:18.37 ID:xwtZDzAg0

( ゚∀゚)「このまま開戦なんて事になったら洒落になんねー。そこでだ」

 病の方は打つ手があるらしい。
 黄の国で手に入る薬草から薬が精製できるのだ。
 しかし、面倒な点がある。

(;゚ー゚)「青の国の人はこの病気に免疫が無いんだよ。
     いつ発病するか分からない私達は動けない。でも、元が他国の人間なら…」

 紫の国が妙な動きをしている以上、妨害が入るかもしれない。
 これだけは確実に成功させなければ国が危ない。
 手紙を送っても届かなければ意味が無いのだ。
 黄の国まで伝わりさえすれば、向こうの兵士達と連携して薬草を受け取る事も出来る。

ξ;゚⊿゚)ξ「分かりました。わたしが使者として行きます」

(;゚ー゚)「うん、お願いできるかな。 
    ツンちゃんにこんな事頼むのは良くないんだろうけど…」

ξ;゚⊿゚)ξ「いえ…準備してきます!」

( ゚∀゚)「ま、それがいいだろうな。ブーン、お前は?」

 使者として黄の国へと出向くのはツン。
 妥当だろう。守護者しぃの右腕であり、加えて緑の国出身。

9: 2009/06/06(土) 20:58:02.46 ID:xwtZDzAg0
(;^ω^)「僕も行きますお!」

 僕も条件には当てはまる。
 国の危機とあっては何もしない訳にはいかないだろう。
 これまで世話になった恩返しもしたい。

( ゚∀゚)「よくいったー感動したー」

( ^ω^)「棒読みすんなお」

(;゚ー゚)「ブーン君…ありがとう」
    
( ^ω^)「全力を尽くしますお」

 僕も準備しなければならない。
 対して守護者の二人は急に向き直り、後詰めに入る。

 忙しい一日が一瞬で過ぎて、早くも出発となった。 
 準備を終えて宮殿の入り口に戻ると全員が集まっている。

( ゚∀゚)「言っとくが俺は行けねーぞ。これから同盟国境警備最前線だ」

(*゚ー゚) 「二人とも、気を付けてね。国境ギリギリに兵士達を待機させとくから、
     無理そうだと思ったら……」

ξ゚⊿゚)ξ「絶対に取って来ます!」

 しぃの言葉を遮り、ツンが声をあげる。
 意地でもやり遂げるという意思が、その目から伝わってくる。

10: 2009/06/06(土) 21:01:01.89 ID:xwtZDzAg0
;゚ー゚)「……ツンちゃんを頼んだよ」

 少し不安だったのか、しぃが僕に小さく言った。

( ^ω^)「…ツンは僕がいなくても大丈夫だと思いますお」

 もしもの時は、今度こそツンを守る。
 僅かでも力があれば足手まといにはならないだろう。

 黄の守護者へと会うために。


 と、格好良く旅立ったまでは良かった。

( ^ω^)「…………」

ξ゚⊿゚)ξ「…と言う訳で魔法には属性の他に特性があって」

 目の前で本を片手にツンが喋る。
 甲板の日陰で僕は座って眺めていた。

 僕達は現在、船で運河を下っている。
 乗組員は多い。中型の船だが、下腹部は全てオール漕ぎにあてられている。

 歪む砂漠と透き通った水がいつものコントラストで視界を埋める。
 それら背景に何故かツンの講義が三日間程続いていた。
 日陰でも視界を埋める陽光はじりじりと体を焼き、思考を鈍らせる。

11: 2009/06/06(土) 21:04:10.08 ID:xwtZDzAg0
ξ゚⊿゚)ξ「例えば、赤の魔法だと特性は【身体強化】ね。
      文字通り使用者の運動能力が向上するわ」

 ああ、魔法を使うと体が軽くなるのはそのせいだったのか。
 などと言って聞き流しながら、僕は遠くを見つめ続けていた。
 これはだいぶ前に聞いた様に思ったが、そんな事より暑い。

ξ゚⊿゚)ξ「青の魔法だったら【増幅】。
      水の量をある程度変化させられるわ。
       しぃさんは魔力自体を増幅させてたけどね」

( ^ω^)「……ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「何よ?」

( ^ω^)「何で僕はこんな場所で超難しい講義受けてんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「しぃさんが…いや、これ十歳になる前に知ってるはずの常識なんだけど」

( ^ω^)「何言ってんだお…僕はもう十九歳だお…義務は無いんだお……」

ξ;゚⊿゚)ξ「本格的にダメね…」

( ^ω^)「おっおっお…それ程でもないお」

 僕はまた視線を遠くに戻したと同時に、ツンは本のページをめくっていく。
 砂漠には僅かばかりの草やサボテンが生え始めた。

12: 2009/06/06(土) 21:07:12.00 ID:xwtZDzAg0
( ^ω^)「それはそうと、後どの位かかるんだお。
      急がないとまずいんじゃないかお?」

 すぐに講義が再開しそうだったので、とっさに話題を切り換える。

ξ゚⊿゚)ξ「もうすぐ船は降りるわ。それからは歩きね」

( ^ω^)「だるいお」

ξ゚⊿゚)ξ「天気とかにもよるけど、少し歩けば村から馬車に乗れるわ」

 遥か彼方、地平線に砂以外の色が混じり出した。

ξ゚⊿゚)ξ「見えてきたわね。あとは天気次第かな」

( ^ω^)「…天気、かお」

 見上げると、揺らめく太陽に満ちる陽光。
 相変わらず雲一つ無い空が映った。

* 

 船から降りる。
 前に見える運河は更に巨大な運河の真横に合流していた。
 同様に降りた先に見えている石造りの大橋。
 
 運河から幾つもの柱が突き出し、この橋を支える。
 この長い長い橋が国境の隙間だ。

13: 2009/06/06(土) 21:10:14.01 ID:xwtZDzAg0
( ^ω^)「…よくこんな橋作れたもんだお」

 石の建造物なら赤の国も高い技術を持っていたが、
 この橋は規模そのものが違う。
 まったく知識の無い僕でも凄い技術だと分かった。

ξ゚⊿゚)ξ「記録にはいつ建造されたのか無いらしいわね」

 大昔の技術に関心し、半ば呆れながら長い石橋を渡った。。


 【黄の国】。
 巨大な森の入り口だった。右を見ても左を見ても木の壁。
 緑、赤、黄。
 色と色、木と木の間。
 様々な色の葉が舞い落ちる道が真っ直ぐに続く。
 
 一歩踏み出すと、紅葉した落ち葉が軽い音を立てて割れる。

 王が無い自由な国。
 森の大地へと僕達はやって来た。

( ^ω^)「いや、遭難必至だろ」

ξ゚⊿゚)ξ「アンタじゃないんだから、遭難なんかするか」

 砂漠を越えて、石の橋を渡り、ようやく辿り着いた異国。
 妙に人気のない国境だった。

14: 2009/06/06(土) 21:13:16.26 ID:xwtZDzAg0
( ^ω^)「まあ、この『プラス地方トラベラー』があれば迷わないお!」

 懐から小さな冊子を取り出す。
 黄の国から地域はプラスに入る。
 旅に出る直前にしぃから渡された物だった。結構年季が入っている。
 
ξ゚⊿゚)ξ「それ、第何版?」

( ^ω^)「……さあ?」

 不安を抱えながら、森の中へと歩いて行った。

 青の国とは風土が違う。
 当然僕達の着用している物も違う。
 僕のマントは相変わらずだが、薄めの布の服から厚手の服に着替えている。
 一方ツンはローブの上からポンチョを羽織っていた。
 どちらも膝下まであるブーツに履き変え、長旅を覚悟している。

( ^ω^)「北があっちで…こっちかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「道なりに進めばいいはずなんだけど…」

 落ちた葉が道を埋めており、どこがどこやら分からない。
 一応、木の無い部分が道なのだが。
 紅葉した葉の間から青が覗いていた。
 
( ^ω^)「まだ昼だお。焦らず行くお」

15: 2009/06/06(土) 21:17:15.01 ID:xwtZDzAg0
 今まで問題にも出くわさなかった僕は悲観する事も無かった。
 舞い散る落ち葉をかき分け、枯葉を潰し、数時間程歩くと視界が開けた。
 広場の様だ。
 真下には変わらずの葉の絨毯だが。

ξ゚⊿゚)ξ「…大きい木ね」

 その広間の中心にそびえる大樹。外周は僕二人分よりもあるだろう。
 周囲の木々より圧倒的な高さを持つそれは、広げた枝で空を遮っていた。
 
 巨木の下、舞う落ち葉に合わせて木漏れ日が踊っていた。
 雪と雨の中にいる様な、変な気分だ。
 
( ^ω^)「でもこんな木載ってないお。結構目印になりそうなもんだお」

 手元のガイドをツンに渡す。

ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり古いから? 参ったわね」

 受け取りながらツンは両手の平を僕に見せる。
 やれやれと言いたいのか。
 しっかり遭難しそうだが、言ったら面倒そうなので心にしまっておいた。

( ^ω^)「この辺は道が分かれてるお。僕は奥を見て来るお」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ。私は向こうを見て来る」

 と言って僕は木の裏側へと走る。

16: 2009/06/06(土) 21:20:17.13 ID:xwtZDzAg0

( ´∀`)「………」

( ^ω^)「………」

 変な男と鉢合わせした。

( ゚ω゚)「ふおおおおおぉッ!」

 思わず声を上げた。
 それはそうだ。誰もいないはずの場所に座り込んでいるのだから。
 しかも呑気に焚き火をしている。

( ´∀`)「……」

 無害そうな顔の男は暫く僕を眺め…

( ´∀`)「モナアアアアアー!」

 叫んだ。

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン!? 魔物!?」

(;^ω^)「それっぽいのが…!」

 背後からツンが走って来た。
 無害そうだが不審なので指をさしながら後じさる。
 笑顔だが。

17: 2009/06/06(土) 21:23:18.27 ID:xwtZDzAg0
( ´∀`)「魔物じゃなくて旅人だモナ。モナーだモナ」

 やはり妙な自己紹介をし、近くの枝を手に取った。

(;^ω^)「何でこんな場所で焚き火なんか…」

( ´∀`)「腹が減っては戦は出来ない…モナ!」

 手にした枝を焚き火に強く突き刺した。

(;^ω^)ξ;゚⊿゚)ξ「!?」

 モナーが枝を引き抜く。

( ´∀`)「焼き芋だモナ。食べるモナ?」

 僕達の目の前に湯気の立つイモが突き出された。

( ^ω^)「……」

 食べ物だ。

 ならば、悩むまでも無い。
 答えは決まっている。

18: 2009/06/06(土) 21:26:20.14 ID:xwtZDzAg0
( ^ω^)「いただきますお」

ξ;゚⊿゚)ξ「えぇー」

 僕はツンの残念そうな声を聞きながらイモを掴んだ。



第二章 黄色のコイン  第八話「正位置の『皇帝 』」 完


19: 2009/06/06(土) 21:29:24.55 ID:xwtZDzAg0


( ^ω^)ブーンの世界には魔法があるようです


第二章 黄色のコイン  第九話「夜空」


 出発前の不安。

( ゚∀゚)「で、黄の守護者の人相は…」

(*゚ー゚) 「違うよ。少し前に弟子に任せたって手紙が来たよ」

( ゚∀゚)「ああ、来てたな~。『隠居しますた』とか書いて」

(*゚ー゚) 「ちょっと変だよね。まだ三十歳過ぎたばかりなのに」

( ゚∀゚)「まあ、どんな奴でも、あいつよりはマシな守護者だろ」

(;^ω^)ξ;゚⊿゚)ξ(どんな国だ、黄の国って……)

(*゚ー゚) 「それで新任の守護者の名前だけど…」

 この不安は現在、妙な男として目の前に現れていた。
 ほぼ完全に遭難している僕達はこの人物に話を聞かなければならない訳で。
 しかし、それ自体困難な訳で。

20: 2009/06/06(土) 21:32:26.00 ID:xwtZDzAg0
( ´∀`)「お国のためかモナ。御苦労さまだモナ…ハムッ」

ξ;゚⊿゚)ξ「それで…あの」

( ^ω^)「ハムッモフモフ」

 忙しい僕のかわりにツンがモナーと向き合っている。
 全体的に脈絡の無いモナーとの意思疎通に苦労していた。
 僕はその斜め後ろで焼き芋をほおばっていた。
 このイモが何処産かは知らないが、極めて強い甘味があった。

( ´∀`)「あー。で、何だったモナ?」

ξ;゚⊿゚)ξ「いえ…ですから首都の位置を…」

( ´∀`)「首都? それはまた大変だモナ…モフモフ」

( ^ω^)「ハムッモフモフ」

 これで十三週目だろう。
 さすがにワザとやっているに違い無いと思うが。

ξ゚⊿゚)ξ「……ふう」

 ツンが深呼吸した。そろそろ面倒臭そうな目だ。
 モナーは完全にツンの間合いにいる。
 
 油断したな、モナー。

21: 2009/06/06(土) 21:35:30.43 ID:xwtZDzAg0
ξ#゚⊿゚)ξ「はあッ!」

 ツンの左足が真横に踏み込まれた。
 上体を回転させ…

( ゚ω゚)「オウフッ!?」

 僕の腹に左腕を叩きこんだ。
 酷い衝撃だ。
 膝から崩れ落ちるが、焼き芋は氏守した。
 舞い上がった落ち葉が僕の上に落ちる。

( ´∀`)「………」

 モナーは僕を見つめ、近くの枝を掴んだ。
 先ほどと同じように焚火の中に突っ込み…

( ´∀`)「ツンさんも食べるモナ?」

 ツンに向かって焼き芋を差し出した。

ξ#゚⊿゚)ξ「頂くわ」

 ツンは火の中に入っていた芋を素手で鷲掴みにした。

( ゚ω゚)「…ツン……何故…?」

 葉のベットから半身だけはい出した僕は何とか声を捻り出す。

ξ#゚⊿゚)ξ「知るかよ」

22: 2009/06/06(土) 21:38:38.06 ID:xwtZDzAg0
 割りもせず、焼き芋にかぶりつくツンを尻目に何とか立ち上がる。

(;^ω^)「分かったお。僕が聞き出すお」

 そう言うとツンは気に背中を預け、焼き芋を食らいだした。
 食う時は食う。そんな感じだった。

(;^ω^)「モナーさん。僕達は薬草を採りに守護者に行かなきゃいけないんだお」

( ´∀`)「薬草? 何モナ? それは」

(#^ω^)(野郎…)

ξ゚⊿゚)ξ「ハフハフ」

 ジョルジュもそうだったが、世の中には話を聞かない人が多いのだろうか。
 とはいえ僕は気が長いと自負している。

(#^ω^)「薬草の詳しい事情は知りませんお。僕達には時間が無いんですお。
      戦争が起きたら大変ですお!」

( ´∀`)「若いのによく考えてるモナ。モナに出来る事なら何でも言うモナ」

( ゚ω゚)(ちくしょうがッ!!)

 無駄か。振り出しに戻ってしまった。

( ´∀`)「ま、もう少し待つモナ」

23: 2009/06/06(土) 21:41:40.05 ID:xwtZDzAg0

 モナーはそう言うと枝で目の前を指示した。僕達の背後だ。
 僕とツンが目を向ける。
 枝と枝の隙間から一筋、光が覗いている。
 それだけではなかった。

 木が、動いた。

( ´∀`)「ここは黄の国。どこを見ても木しかないんだモナ。
      でも、樹木の位置関係や特徴が分かれば……
      何にせよ自然と上手く付き合えないと、やっていけない」

 満ちて行く光。
 ゆっくりと震えながら、落ち葉が白い光に雨と降る。
 枝が擦れる音。僕達の影が背後へと一気に伸びていく。

( ´∀`)「暇は潰せたモナ?」

 ずれた木々に隙間に、夕陽の道が現れた。

(;^ω^)ξ;゚⊿゚)ξ「………」

 初めからモナーはこれを待っていたのか。森に新しい道が出来る時間を。

ξ;゚⊿゚)ξ「あなたは…」

24: 2009/06/06(土) 21:44:45.88 ID:xwtZDzAg0
 何者なんだ。ツンはそう言いたかったのだろうが、モナーが言葉を遮る。

( ´∀`)「ここを真っ直ぐ行けば小さな村があるモナ。のんびりした村だモナ」

 モナーは枝で道を指し、座っていた場所からマントを掘り起こした。
 何故そんな場所に埋めていたのかは、もうどうでもいい。
 
 目が慣れた。道の先には微かに村らしき影が見て取れる。
 背後ではモナーがマントをはおるのに悪戦苦闘していた。

(;^ω^)「………」

( ´∀`)「モナは青の国に行くから、ここでお別れモナ」

 屈託のない笑みで、そう言った。
 僕達に道を教える為にここにいたのだろうか。

 いつ間にかモナーの背中にあったマントが風に揺れる。
 
 長々引き留めるなら、口で言ってくれればすぐ分かったと思った。

( ^ω^)(いや、もういいお)

 目の前で笑う男を見ていると考えるのが馬鹿らしくなってきた。
 どうせ、のらりくらりと質問をかわすだろう。

25: 2009/06/06(土) 21:47:46.16 ID:xwtZDzAg0
( ^ω^)「…ありがとうございますお」

( ´∀`)「気を付けて行くといいモナ」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

 怪訝そうなツンの視線が視界の端に映ったため、
 ツンの肩を掴んで反回転。これ以上騒ぐのは体力の無駄だ。
 モナーに背を向けさせておいた。

ξ゚⊿゚)ξ「何すんのよ…」

 ツンは顔だけモナーに振り返り、睨む様な顔と共に挨拶した。
 そのまま踏み出して村へと向かっていく。

( ^ω^)「お世話になりましたお」

( ´∀`)「バイバーイ」

 僕もツンを追って走り出す。
 こうして変な旅人との一時が終わった。


26: 2009/06/06(土) 21:50:56.98 ID:xwtZDzAg0
―森の中の村 入り口―

 先にあったのは森の中にぽっかりと開いた平原。
 足元に敷き詰められた緑の絨毯。周囲は当然木々に囲まれている。
 見るからに小さな村だが実際小さな物だ。
 平原の中心にぽつりと、取り残された様にも見えた。

( ´_ゝ`)「む。このパーツ錆びてるな」

(´<_ ` )「時にアニジャよ、これの理論は完成してないんだが?」

 しかし見えていても意外と遠い事がある。
 森は方向感覚を見失いやすいと言うが、距離間まで失うとは聞いていない。
 僕達が村に辿り着いたのは日も沈み始めた頃だった。

( ´_ゝ`)「うわ…オイル漏れてるぞ。しっかり管理しろよ」

(´<_ ` )「アニジャ、それはお前がこぼしたコーヒーだ」

 村の住人だろうか。
 そっくりな顔をした二人の男だ。来ている物は厚手の布の服。
 見慣れない鉄の塊をいじっている。
 静かそうな村には不釣り合いな光景に思えた。

( ´_ゝ`)「あーあ、もうプロペラがダメだな」

(´<_ ` )「ん? あんた達は?」

 一人が僕達に気付いた。

27: 2009/06/06(土) 21:54:20.28 ID:xwtZDzAg0

( ^ω^)「こんにちはですお。僕達は旅の者ですお」

ξ゚⊿゚)ξ「こんにちは」

 疲れているのだろう。
 ツンも控えめに声を出した。
 元は病弱なツンだ。そろそろ休ませたい所だった。

( ´_ゝ`)「旅の人か、珍しいなオトジャ」

(´<_ ` )「ああ。半年ぶり位だな」

( ^ω^)「え? モナーさんは来てないんですかお?」

(´<_ ` )「? 知らないな。村は小さいから噂はすぐに広まるんだが…」

 てっきりモナーも村を通って来たと思っていた。

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、それはいいんだけど…宿はありませんか?」

( ´_ゝ`)「ないぞ」

 即答だった。

ξ゚⊿゚)ξ「……は?」

(´<_ ` )「こんな村じゃ、宿で生計は立てられないだろ」

28: 2009/06/06(土) 21:57:31.70 ID:xwtZDzAg0

(;^ω^)「…確かに」

 他人事のように言っている場合でもなかった。
 この辺りで野宿なんて事は避けたい。
 僕はまだいいがツンは特に。
 森の中では魔物に襲われる可能性も低くはないはずだ。

( ´_ゝ`)「まあ、俺らの家に来るか?」

(;^ω^)「…お?」

(´<_ ` )「汚い家だが、夕飯くらいは出すぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「いいんですか?」

( ´_ゝ`)「構わない、どうせ暇だし。それに、この村では誰かが泊めてくれるさ。
      旅の話でも聞かせてくれれば、俺達は満足だ」

 宿も無く、野宿も避けたい。
 僕達は彼らの厚意に甘えて一晩止めてもらう事にした。
 僕個人としてはこの二人が弄っている鉄の塊にも興味があった。
 夕食の時にでも聞いてみるとしよう。

 そんな事を考えながら二人の後を付いて行った。


29: 2009/06/06(土) 22:00:34.76 ID:xwtZDzAg0
 二人の名前はアニジャとオトジャ。
 この村では有名な『サスガ兄弟』らしい。
 もっとも、この村人は全員が全員顔見知りだ、と言っていた。

(´<_ ` )「出来たぞー」

( ^ω^)( ´_ゝ`)「おおー!」

 言っていた通りの汚れた部屋だった。床や壁は黒くすすけている所もある。
 外観と同じ木製の部屋に、机に、椅子。
 年季の入った暖かさが感じられた。
 
 オトジャが作った料理が運ばれてきた。
 ツンも手伝ったらしく、スープを盆に乗せている。

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、こっちも並べといて」

 言われたとおり並べていくと、机の上は湯気の立つ料理でいっぱいになっていく。

(´<_ ` )「ツンがいたから楽だったな、ほとんどツンが作ってくれた。
      アニジャも少しは見習え」

 そう言いながらオトジャが席に着く。

30: 2009/06/06(土) 22:03:36.14 ID:xwtZDzAg0
ξ゚⊿゚)ξ「私は何も…」

( ^ω^)「ツンすげーお!」

ξ゚⊿゚)ξ「別にあんたの為に作った訳じゃないわ」

 僕が率直な感想を言うと、そっぽを向いてしまった。
 何か気に入らない事でも言っただろうか。

( ´_ゝ`)「料理をしたら負けだと思っている。いたただきます」

(´<_ ` )「変な前置きはいらんぞ」

 アニジャがスープを飲み始めている。
 そんな姿を見て、僕もフォークを手にする。目の前の料理は多種多様だった。
 赤の国にもあった米は山菜と共に炊かれ、主菜にはキノコ、木の実のサラダ等。
 まったくといって肉は使われていない辺りに、ここが異国だと再度思った。

( ^ω^)「うめぇwww」

ξ゚⊿゚)ξ「…よかった」

( ^ω^)「何か言ったかお?」

ξ*゚⊿゚)ξ「何も」

 賑やかな旅の話が進み、机から皿が少なくなっていく。
 船を降り、久しぶりの落ち着いた夕食を終えて食休みをしていた。
 ツンとオトジャが流し台に立っている。
 席に座っているのは僕とアニジャだ。

31: 2009/06/06(土) 22:06:38.27 ID:xwtZDzAg0

( ´_ゝ`)「ブーンも重めの人生送ってるんだな」

( ^ω^)「そんなでも無いですお。大体、大戦で生き残れただけでも運がいいですお」

( ´_ゝ`)「……そうかもな。俺達も紫の国から逃げ出してきてるし」

 僅かな時間で僕達は身の上話もしていた。
 彼らは大戦時に避難してきて、この村にいついたと言っていた。
 村の人には世話になっている、とアニジャが笑う。
 あらかた話題が尽きた頃に僕は二人が弄っていた物について聞いてみる。

( ^ω^)「二人が乗っかってた鉄の塊はなんだったんですかお?」

 そう聞くとアニジャは目の色を変えて身を前に乗り出した。

( ´_ゝ`)「お、アレに興味があるのか。聞いて驚け! 飛行機関だ!」

 最近発明された蒸気機関は聞いた事があるが、そんな物は聞いた事がない。
 アニジャは椅子の背もたれに身を任せて腕を組む。

(;^ω^)「飛行…? 飛ぶんですかお?」

( ´_ゝ`)「飛ぶに決まってるだろうが。
      理論上は…そうだな、お前らここに来るまでどん位かかった?」

(;^ω^)「三日と少しですお」

32: 2009/06/06(土) 22:09:39.90 ID:xwtZDzAg0
( ´_ゝ`)「じゃあ一日で横断出来るな。召喚魔法だと術者の魔力の限界はすぐだ。
      この機関なら誰でも遠くに行けるんだ」

 あの鉄の塊が飛ぶ。そんな物を目の前の二人が作っている。
 とても科学者には見えない男に、気づいたら呟いていた。

(;^ω^)「凄いお…」

(´<_ ` )「と言っても飛んだ事は無いんだがな」

 すぐ真後ろから声がかかる。
 洗い物が終わったらしい二人が席に戻ってきた。

ξ゚⊿゚)ξ「理論だけって事ですか?」

(´<_ ` )「そうだな。どう頑張っても原動力が足りないんだ。
      俺たちの紫の魔法…魔力じゃ出力が安定しないし」

 二人はかつて魔法学校に通う魔法使いだったらしい。
 オトジャも椅子に身を預け、腕を組んだ。
 兄弟が鏡の様なバランスで目の前に座っている。

( ´_ゝ`)「何を言う。今作っているのは三号機だぞ?
      前の二機は魔力さえあれば飛ぶ!」

(´<_ ` )「妙な自信はそのへんにして、二人ともそろそろ休むか?
      歩き詰めで疲れてるだろ」

 アニジャの力説が続く中、オトジャが僕達に向き直った。

33: 2009/06/06(土) 22:12:41.02 ID:xwtZDzAg0

( ^ω^)「そうさせてもらいますお」

ξ゚⊿゚)ξ「お世話になります」

 ツンはやはり小さめな声で応答している。
 慣れない旅で疲れているのだろう。もちろん僕も旅慣れてはいないが。

(´<_ ` )「二階は四部屋全部空いてるから好きに使ってくれ。
      ……まあ、一番奥の部屋だけはお勧めしないが」

(;´_ゝ`)「みなまで言うな。だが、みなまで聞くな」

(;^ω^)ξ;゚⊿゚)ξ「……」

 微妙な間があいた。『でる』のかと一瞬考えたが、部屋に行かなければいいだけの話。

(;^ω^)「では…お世話になりますお」

(;´_ゝ`)「おう。何かあったら下までk」

 アニジャの言葉が終わる前に、外から音が響く。
 四人が硬直する。時間が止まったような一瞬だった。
 更に音は続く。何度も。
 何度か聞いている内に分かった。
 

34: 2009/06/06(土) 22:15:42.97 ID:xwtZDzAg0
 金属音、鐘を鳴らす音だ。

ξ ⊿ )ξ「!?」

(;^ω^)「出たのかお!?」

 先の話題を引きずりながら、僕は階段の先へと走る。
 暗がりの先には何を見る事も出来なかった。

(´<_ `;)「アニジャ! これは…凄い数なんじゃ…!」

(;´_ゝ`)「ああ! ブーン、ツン! これは幽霊じゃ無い…」

 外が騒がしくなる。
 アニジャが窓を開けると、闇の中に松明を持つ村人が何人もいた。

(´<_ `;)「避難しろ! 魔物の大軍だ!!」

 一気に物理的に物騒な事態が起きた。

(;^ω^)「魔物!? 大変だお…軍隊は…」

(;´_ゝ`)「そんな物無い! ほら、さっさと行くぞ!」

 青、緑の両国と同盟の上、紫の国には諸事情で攻め込まれない黄の国に、
 自警団位は多少いるが国直属の軍隊は存在しない。
 混乱する僕は黄の国の常識も忘れてサスガ兄弟についていく。
 ふと思い出し、背後に首向ける。

35: 2009/06/06(土) 22:18:44.11 ID:xwtZDzAg0
(;^ω^)「ツン、寝てる場合じゃねーお!」

ξ ⊿ )ξ「…幽霊なんか…!」

(;゚ω゚)「起きろおおおぉッ!!」

 結局僕はツンを引きずりながら避難するはめになった。
 扉を開け、暗がりに四人で駆けだす。
 遠くに見える森が不気味だった。
 少し走ったところでサスガ兄弟が立ち止まる。

( ´_ゝ`)「お前達はあっちに行け。俺達は飛行機関を見に行ってくる」

(;^ω^)「危ないですお! 助かればまた作れますお!」

(´<_ ` )「かもな。でも、アレは俺達の夢なんだ。
      旅の話、楽しかったよ。じゃあな!」

 話を聞く事も無く、二人は反対側へと駆けだした。
 道の先、森の上で夜空を斬る【塔】と巨大な月が僕達を見ていた。

36: 2009/06/06(土) 22:21:49.57 ID:xwtZDzAg0
(  ω )「………」

 向こうは魔物達が来る最前線だ。
 助かる見込みは低い。たとえ魔法が使えても、だ。

( ^ω^)「…ツンは避難してくれお!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン!?」

 僕は二人を見捨てる気にはなれなかった。
 出会って間もないし、今後会う事も無いかもしれない。
 それでも彼らに自分と同じ何かを感じた気がした。
 氏んで欲しくないと素直に思えたのだ。

( ^ω^)「ちょっと見て来るだけだお! すぐ戻るお!」

 僕にしては意外な決断に、自分でも驚いた。
 当然、無駄氏するつもりは無い。二人を力づくでも連れ帰るつもりだ。
 そう考えながら、ツンに背を向けると肩を掴まれた。

( ^ω^)「?」

ξ゚⊿゚)ξ「…私も行く、一食分の借りはここで返すわ!」

 僕が行くと言った以上、ツンに逃げろと言う訳にはいかない。
 だったら二人で行こう。
 感覚が軽くなった気がした。

( ^ω^)「分かったお…行くお!」

37: 2009/06/06(土) 22:25:04.96 ID:xwtZDzAg0

 ツンの力強い頷きを見て、僕はまた背後へと視線を戻す。
 今度は僕が誰かを助ける。
 ここに自分がいない様な、浮いているような。
 不思議な感覚と共に月へと向かって走り出した。


第二章 黄色のコイン  第九話「夜空」 完



38: 2009/06/06(土) 22:27:48.23 ID:xwtZDzAg0
以上で今回の投下を終了します。

39: 2009/06/06(土) 22:58:00.14 ID:lWfsR2JI0

引用: ( ^ω^)ブーンの世界には魔法があるようです