1: 2010/06/17(木) 21:30:39 ID:fOsqguIE0

2: 2010/06/17(木) 21:31:36 ID:fOsqguIE0


 独り動く守護者

 
 龍は再び眼前へ


( ^ω^)ブーンの世界には魔法があるようです

第四章 紫色の疑惑  第十七話「生位置の『隠者』」



―海中洞窟 付近―


 僕達が緑の国、国境まで来たのは二月ほど前だ。
 兵を集めながらの移動は予想以上に時間がかかった。
 その後僕達は別動隊として馬車で洞窟を目指し移動している。

 クー、ツンの両名が海中洞窟へと参ずるのを良しとしない二人がいた。
 緑の国の王フォックスと僕、ブーンである。
 
 しかし現在は有事である。
 そこそこの魔力を持つツンとクーを止める理由が誰にも発見できず、
 まさかの、王の意思が尊重されない、と言う事態を招いた。

(;^ω^)「……」
葬送のフリーレン(13) (少年サンデーコミックス)
3: 2010/06/17(木) 21:32:34 ID:fOsqguIE0
 事がすんだら何故か僕が怒られそうな勢いで王が慌てていた。
 僕にしてもツンが来るのは賛成できないのだ。
 それで相頃していただけないだろうか。

ξ゚⊿゚)ξ「まだ何か言いたそうね」

川 ゚ -゚)「女だと思うと憂き目にあうぞ」

(;^ω^)「滅相もありませんお」

 それにしても何故僕が馬車内で正座しているのか。
 反対をしていた僕は二人に遺恨を残したのだろうか。

(´・ω・`)「……まだやってたの?」

 隣で居眠りから起きたショボンがぼやく。
 こうして馬車での移動が数日続いている。

(;^ω^)「そもそもショボンが僕達を指名するからこんな事に…」

(´・ω・`)「うるさいよ刺すぞ。
       この騒ぎの中で無駄な人員を割く訳にはいかないでしょ」

川 ゚ -゚)「騒ぎと言えば前の会議で妙な話が上がっていたな。
     捕まえた紫の兵士も王の命令には疑問を持っていると話したとか」

ξ゚⊿゚)ξ「あれだけの兵士がみんなそう言っているんだから、
       国内でも命令は理由を明かしてないんでしょうね」

4: 2010/06/17(木) 21:33:33 ID:fOsqguIE0
 僕達を襲撃して来た紫の国の兵士達。
 彼らは一応緑の国に捕まっているのだが、
 ギコ王の考えが分からない事から友好的に情報を教えてくれた。
 兵士としても魔王復活の引き金となる戦争は防がねばと思っているのだろう。

(´・ω・`)「もうギコ王の安否自体が危うくなってきたね。
       魔王がどう動いているか見えないけど」

川 ゚ -゚)「魔王が戦場以外に復活したという話は聞かない。
     今は戦を起こさない事が重要だが……
     よもや東に戦力まで集中してこようとはな」

( ^ω^)「お陰で本当に僕達だけで潜入するはめになったのかお」

 会議で寝ていた為か、頭の中に情報がない。
 しかし何となくは想像がつく。
 四国の同盟は戦争の勃発を防ごうとしている。
 そうである以上は自分から攻め込む事はしないのである。

 牽制として進軍、後退などは織り交ぜているが、
 脅しになっているのかどうかは怪しい所だろう。
 完全包囲が完成しても片方の同盟だけを攻める事が、
 紫の国には可能なのだ。

 その敵陣に僕達四人を放り込もうというのだ。
 僕の顔色が優れないのも無理からぬ事であろうと思いたい。

川 ゚ -゚)「本来ならば八部衆から数名が付いてくる手筈だったが、
     情報収集に忙殺された挙句、戦かもしれんとあっては」

5: 2010/06/17(木) 21:34:33 ID:fOsqguIE0
ξ゚⊿゚)ξ「そう言えばその八部衆って何なの?」

川 ゚ -゚)「緑の国の隠密頭八名だ。
     前に姉上を連れ帰った鳥みたいな顔をした男がいただろう?
     ああいった集団の事だ」

( ^ω^)「一人くらい付き添ってもらっても罰は当たらなかったんじゃないかお?」

(´・ω・`)「どうかな、王の直属としては八人じゃ少ないと思うけど」

川 ゚ -゚)「確かに普段から多忙だったな」

( ^ω^)「うーん、でも相手はドラゴンだお。四人って……」

 これから向かう場所についての情報は多少ある。
 一本道が海の遺跡を介して紫の国へと繋がっているらしい。
 大戦時にジョルジュ達が見つけたらしいが、
 ドラゴンを撃破する事はかなわなかった。

 英雄でも手に余る化け物を相手にするのは正直遠慮したい。
 それに少数先鋭と言われても僕では締まらない。 

( ^ω^)「でもこの道はギコ王も知ってるんじゃないかお?
       何とかドラゴンを抜けたとしても待ち伏せとか…」

(´・ω・`)「会議寝てたんだね。
      あの道はギコ王が旅に加わる前に発見されたんだよ。
      位置的には首都に出るけど、知っている人間は少ないんだ」

6: 2010/06/17(木) 21:35:29 ID:fOsqguIE0
 僕達が紫の国へと潜入もすぐにジョルジュと落ちあえるかは定かではない。
 今回の目的はジョルジュの補佐なのだが問題が山積みである。

ξ゚⊿゚)ξ「とにかく国に入ればいいのね?」

(´・ω・`)「そういう事さ。多分避けていても騒ぎの一つや二つ起きる。
       すぐに守護者ジョルジュにも会えるよ」

 これが最終確認となり、僕達は洞窟の入口へと到達した。
 馬車から下りると慣れた潮の香り。
 日光から目をかばいつつ足元を見る。
 砂利と石が散らばる岩場だ。

 季節はあっという間に巡り、六月の半ば。
 日増しに強くなる陽光と温度には辟易する。

 背後で皆が馬車を降りる気配を感じつつ、徐々に視線を上げる。
 青空と同じ色の海が静かに目の前にあった。
 見れば雲が、光る海の上を流れて行く。
 これから龍と一戦交えるのが嘘のように感じた。

川 ゚ -゚)「あれだな。確かに洞窟……か?」

 クーの視線を追うと確かに暗がりに穴が見える。
 遺跡に繋がるとは思えない、小さな横穴だった。
 一応この中で一番大柄な僕でも通るには問題なさそうだ。

( ^ω^)「こんなのが海底まで続いてるのかお?」

7: 2010/06/17(木) 21:36:16 ID:fOsqguIE0
(´・ω・`)「僕だって入った事は無いからね。
       大体上手くいけば戦闘が避けれるから通るけど、
       ここを通る人なんか皆無だと思うよ」

( ^ω^)「……?」

(´・ω・`)「分からないって事さ」

 そう言いながらショボンが洞窟へと滑りこむ。
 入口から下は階段状になっているらしく、
 黄色に光る杖を追いかけながら僕も魔法を手に灯した。

8: 2010/06/17(木) 21:36:57 ID:fOsqguIE0
―海中洞窟 内部―

 円形のトンネル、その中を階段が下がっている。
 黒い様な青い様な、変わった石が規則的に敷き詰められていた。
 高くなった天井を少しだけ見て目線を前へと戻す。

 階段が続く。
 降れば降るほど何故か階段は形をはっきりとさせて、
 今や城にあってもおかしくない規模の大階段と化した。

 長い階段を降り、やはり大きな踊り場に足音を響かせる。
 ぼんやりと浮かぶ魔法の光を手に、
 僕達は長い間階段を進んでいた。

 僕がこれが遺跡だと思い出したのは随分な距離を稼いでからである。

 やがて周囲から岩が突き出し、道が安定しなくなる。
 同時に、小さく光るもの現れ始めた。
 動かない所を見ると岩に付着しているらしい。

( ^ω^)「光ってるお」

 近づいてみると光源が分からない、透明な光だった。
 どこかで見た事があるような気がする。

(´・ω・`)「魔法鉱石かな。
       これ程大量にあるというのは聞いた事がないね」

ξ゚⊿゚)ξ「何それ」

9: 2010/06/17(木) 21:37:56 ID:fOsqguIE0
(´・ω・`)「君も腕に付けてるよ。魔法器の材料って言うか……
       核みたいな物かな」

 ツンのリングを指さしながら、僕も手を前に出す

( ^ω^)「でも僕が貰った魔法器には石はついてないお?」

(´・ω・`)「編み込んであるんじゃないの?
       大戦の英雄達は色々な物質を精製したって話だから」

 歩きながら僕達が話していると少し後ろから小さく声があがった。
 何事かと振り返るとクーが刀を岩に向けている。

( ^ω^)「どうしたお?」

川 ゚ -゚)「うむ、どうやら魔法に反応するらしいぞ。この光は」

 クーが握った刀からは淡く緑色の光が漏れている。
 刀を岩に近づけると、透明な光は緑の光を吸収しより強く放出した。
 蛍のように幾つもの緑の光が刀から天井に上って行った。

(´・ω・`)「当然だよ、僕達の魔法器も同じ原理で動いてるからね」

 ショボンの言葉を聞いているのかいないのか、ツンも同じ事をして遊んでいる。

ξ゚⊿゚)ξ「あ、本当だ……面白いわね」

10: 2010/06/17(木) 21:38:52 ID:fOsqguIE0
 腹が空いて来たので時間を確かめるとしよう。
 皆を尻目にマントの下から、前に買った懐中時計を取り出す。
 右手の赤い光に照らされて針がすぐに見えるようになる。
 既に昼過ぎである。

( ^ω^)「まずい、飯の時間だお!」

(´・ω・`)「もうそんな時間か、急ぐよ。
       ご飯は歩きながらね」

 無情にも歩きだすショボンを追って僕も歩く。
 腹の虫が階段に響いた。

 少しずつ階段は緩やかになり、道は直線となる。
 大きく開いた洞窟といった様相を見飽きる頃に、
 僕達は遺跡へと到達する。

 濃紺の空間だった。
 微かな光はあるが、同時にできている影も全て青色。
 
 ここから一望できる青の景色。
 外から見れば球体を半分に切った形の遺跡は硝子の如く透明で、
 周囲を満たす海低の水を見せていた。
 その内側を歩く僕達は招かれざる客かもしれない。

 四角い窓が幾つもあいた長方形の建物が乱立し、
 向かいにあるであろう出口だけは暗がりとなって見る事が出来ない。
 足元から聞こえる足音も景色と共に変わる。
 石造りの道は砂へと変わり、ここが海底である事を気付かせた。

11: 2010/06/17(木) 21:39:50 ID:fOsqguIE0
 静寂の中、水が響く音と確かな気配が潜んでいる。
 恐らくこの先に龍がいる。

( ^ω^)「これ昔の人が作ったのかお。凄いお」

ξ゚⊿゚)ξ「建物って事は誰かが住んでいたのかしら」

 僕とツンの声が必要以上に反響する。

(´・ω・`)「そろそろ魔法で完全に武装しておいて。
       いつ来るか見当もつかないよ」

川 ゚ -゚)「近づいているのだけは分かるがな。妙な気分だ」

 崩れた建物を迂回して更に先へ。
 残骸を見ると、やはり建築様式は見た事も無いない種類だ。
 石を塗り固めた壁からは鉄の棒が何本も飛び出している。

 やがて広い道へと出た。
 左右に建物が悠然と並ぶ古代の中央道と言った様相である。

 水晶を割る音が響いた。

12: 2010/06/17(木) 21:40:39 ID:fOsqguIE0
『目標……足……攻、メイ……』 

 聞き取れない声が聞こえた。
 戦慄が走る体を無理に従え、顔を高い天井へと向ける。
 疾風渦巻く遺跡。
 まず見えたのは光輝く鱗。

 僕達はここに龍と出会った。

 長い首、巨大な翼、筋肉がうねる四肢。
 水晶の様に透明な鱗、鋼の様に強固な姿。

 いつか見た模倣品とは違う。
 暗い上空で一筋の線として輝く両眼が確実に僕達を捉える。

(;^ω^)「…確か賢い存在って言ってたお……どうにか話し合いで……」

 もしかしたら勝てるかもしれないが、
 やはり平和的解決を願いたい。

(´・ω・`)「無理だね。この殺気で話し合いなんて」

ξ;゚⊿゚)ξ「でしょうね」

川 ゚ -゚)「当初の予定通りだ。気にする必要は無い」

 各員既に起動している魔法。
 呼吸を整える余裕があるだけだが、
 二か月の訓練は無駄ではなかったのだろう。

13: 2010/06/17(木) 21:41:29 ID:fOsqguIE0
 僕達が己の得物を構える。
 龍が高度を一度上げて翼を広げる。

(´・ω・`)「この直線を抜けるよ! あんな化け物を真面目に相手しなくていい!」

 ショボンの号令。
 龍が空間を蹴り、僕達へと突入してくる。

(´・ω・`)「ドラゴンの出鼻をくじいて逃げる、手筈通り頼むよ!」

 龍を待つことなく僕達は駆ける。

 究極の生物と人間の戦いが幕を開けた。

 ただ飛んで来るだけだと言うのに、
 空間は爆音しか聞こえない。
 透き通った翼が建物を倒壊させ、
 竜は僕達の直線上へと位置を合わせる。

 ショボンとクーが魔法を使った。
 石の壁が盾となり、嵐の様な風が龍に向かう。

 今一度、水晶の音が聞こえた。

 龍は二つの魔法を物ともせず、
 腕を振り上げ僕達の目の前へと出現した。

14: 2010/06/17(木) 21:42:27 ID:fOsqguIE0
 閃光。
 自分の体がどうなったか知る前に空間がずれる。
 倒壊していく建物を避けつつ僕とツンは道の右側へと、
 ショボンとクーは左側へと飛び出した。

 龍が振り抜いた腕で地面を掴む。
 翼をたたみ、莫大な推進力を頃し、入口方面へと滑る。
 滑りながら首が天井へと向いた。

川 ゚ -゚)「! 直線から離れろ!」

 クーの声を聞く前に路地を走る。
 すぐ後ろにはツンがいる。

 見晴らしが良くなった遺跡では龍の姿がはっきりと見える。
 天を向いた顎には風と光を巻き込み魔法陣が展開している。
 たわめた首が前方を狙う。

 体の水晶が更なる光を放ち、龍の息吹が遺跡に爆発した。
 白い光の海が道を通って路地へも流れる。

 まさしくそれは神の一撃。
 本当の龍が放つ息吹は遺跡の一部を文字通り消し去ったのだ。
 未だ空間が歪む遺跡の中央道。
 無我夢中で路地を走り抜け、奥へと進む。

(;^ω^)「ツン! 無事かお!?」

15: 2010/06/17(木) 21:43:49 ID:fOsqguIE0
ξ;゚⊿゚)ξ「余裕よ……!」

(;^ω^)「そりゃ良かったお!」

 逃げ惑う僕達の後方から龍の咆哮がこだまする。
 当然だが勝とうと思ってはいけない存在だった。
 勝てる等と思っていた事を反省した。
 左に曲がるとショボン達が走って来る。
 
川 ゚ -゚)「無事か!」

(;^ω^)「多分大丈夫だお!」

(´・ω・`)「すぐに先の階段を昇って!」

 ショボンが指さす先には崩れかけた階段が見えた。
 まだ距離がある。

ξ;゚⊿゚)ξ「ドラゴンはどこに行ったの!」

 黒い影が高速で僕達を飛び越える。
 嫌な予感は眼前で翼を広げた。
 水晶の鱗が共鳴し、息吹の到来を告げる。

(;^ω^)「逃げられないお!!」

16: 2010/06/17(木) 21:45:03 ID:fOsqguIE0
 刹那、一瞬の静寂の合間に木片が壁に当たる。
 乾いた音がよく響いた。

( ^ω^)「!」

ξ゚⊿゚)ξ「!」

川 ゚ -゚)「!」

 ショボンが杖の鞘を投げたのだ。
 事前に決めていた手筈である。
 いかなる状況でもこの音を『合図』として敵を正面から突破する。

 やはり恐怖は凄まじいが立っていても氏ぬ。
 全力で走りだした僕達の背後から金色の光が上った。
 ショボンが召喚したゴーレムは腕を突き出し、竜を押し倒す。
 激震と砂埃の中を階段まで辿り着く。

 どうやら、ゴーレムに乗っていたらしいショボンが飛び降りた。
 僕達から遅れる事一瞬、龍の背後へと回ったのだ。
 同時にゴーレムが両手を組み、振り上げる。
 黄金の輝きを宿したショボンの目が鋭く龍を捉えた。
 
 ゴーレムと同様に杖を振り下ろす。
 龍の息吹にも負けない金色の光が龍を叩いた。
 
(;^ω^)「……」

(´・ω・`)「止まるな、急いで!」

17: 2010/06/17(木) 21:46:03 ID:fOsqguIE0
 粉砕したかの様に見えた龍はどうなったのか。
 安心出来ないまま階段を急ぐ。

 水晶の音、龍の放つ一撃。
 背後で白い光が昇る。
 巨体を誇るゴーレムの方が微塵に粉砕された。
 同時に天井を穿つ閃光は、ガラスの様な遺跡にひびを入れる。

 海水の線を肩に受けながら、ゆらりと龍が立ち上がる。
 次の一撃へと水晶の鱗が発光を始めた。

(´・ω・`)「やれやれ…!」

 残り少ない魔力を振るい、ショボンが石の槍を伸ばす。
 だが龍には抑止力にもならない。
 全員が階段にいる現状、避ける方法は存在しない。
 僕達もショボンに続いて魔法であがく。

ξ゚⊿゚)ξ『ッ!』

 落ちる水を操作してツンの魔法が起動する。

川 ゚ -゚)『はあッ!』

 ツンの隣で澄んだ音が聞こえた。
 刀の風圧を利用してクーの魔法が龍を狙う。
 二人は詠唱をせずとも、この程度の操作はできるようになっていた。

18: 2010/06/17(木) 21:46:57 ID:fOsqguIE0

(;^ω^)『…ファイアショット!』

 地道に詠唱し小規模な炎の球を龍へと放つ。
 何とか習得した魔法の片割れである。
 威力は期待すらしないが無いよりましだろう。

 龍が口を開き、魔法陣が展開する。
 後続のツンの魔法も効かない。
 遅れる僕とクーの魔法がどこかでぶつかったらしい。

 風に押し出された炎が強く輝いた。
 龍の口の前で小規模な爆発を起こしたのである。
 全く効かないと思っていた僕達の魔法が龍の首を少しだけずらした。

(;^ω^)「ん?」

(´・ω・`)「!? ……よし!」

 ショボンがクーとツンを両手で階段の端へと押し出し、
 僕は後頭部を蹴られて同じく押し出される。

 視界が白く包まれた後、真横を光の波が階段を砕きながら駆け抜けて行った。
 かろうじて龍の一撃をかわしたのだ。

ξ゚⊿゚)ξ「よく分からないけど…運が良かったわね!」

川 ゚ -゚)「うむ! 二人とも走れ!」

19: 2010/06/17(木) 21:47:54 ID:fOsqguIE0
 だが未だ龍の攻撃は止みそうにない。
 四度、鱗が発光をたたえる。

(;^ω^)「まだ撃つ気だお……」

(´・ω・`)「そう何度も避けられないんだけどね……」

 全力で駆け上がる。
 その間にも龍の発光は高まる。
 魔法陣が展開し、龍が首を前へと突き出す。

 息吹を目前として僕は龍の肩に一筋水が流れている事に気が付いた。
 天井は崩れ始めているのだ。

(;^ω^)「ショボン! 天井ぶっ壊すお!」

(´・ω・`)「! なるほど」

 詠唱が間に合わない僕は頭を抱えたが、
 残りの三名は瞬時に上空へと魔法を放つ。
 盛大に硝子が砕けた。
 
 龍の一撃で壊れた所を少し押しただけで、
 大きめの破片が海水と共になだれ込む。
 硝子は龍の頭を直撃し、再び息吹の軌道を変えた。

 向きの変わった息吹が空間を満たす。
 遺跡の真横を貫いた一撃は海水の流入を大きくした。

20: 2010/06/17(木) 21:49:20 ID:fOsqguIE0
『まあ、及第点だ』

 赤い光が龍を一閃する。
 不意に聞こえた声は僕達の前から発せられたものだった。

( ФωФ)「だが足りない。後は俺がお前達の言う『魔法』を見せる。
        いつか来る大戦、そこで役に立つかもしれない」

 僕達四人と竜の間。
 黒いローブをなびかせた男がいつの間にか佇んでいた。
 年齢は三十代前半、背の高い大柄の男性だ。
 堂々とした出で立ちにその鋭い眼光からか、威圧感がある。

 向かい合う龍の頭には黒く焦げて砕けた水晶が見えた。
 ローブの下から覗く両手の篭手が赤い光を散らしている。

(´・ω・`)「……転移魔法……っていうかドラゴン殴っちゃったの!?」

 聞きなれない魔法の名称を呟きながらショボンが驚いた。 

川 ゚ -゚)「ドラゴンを打撃でのけぞらせるとは……何者だ」

( ФωФ)「そんな事は今どうでもいい。お前達は魔法を知れ」

 黒いローブを翻して龍との距離を縮める。

ξ゚⊿゚)ξ「知るって……」

(;^ω^)「と言うか、黒いローブだお…」

21: 2010/06/17(木) 21:50:07 ID:fOsqguIE0
 いい思い出が無い為か、身構える僕。
 目の前の男は助けようとしてくれているらしいが。 
 
( ФωФ)「黄色の魔法は…そうだな」

 天に向かって突き上げた拳に金色の光が追い付く。
 魔力はやがて巨大な剣の形へと変貌した。
 
(´・ω・`)「高位魔法! それを使えるのは……」

 ショボンの言葉を遮り、男が言う。

( ФωФ)「刀の娘よ、次の機会があれば当てる。受け止める事だ」

川 ゚ -゚)「…! では貴様が!」

 実体となり石として再度姿を現した魔力。
 クーを奇襲したという巨大な岩の剣は龍へと向かって進む。
 巨大な姿とは裏腹に素早く突入し、龍はその半身を貫かれた。
 空中に舞った黄金の魔力が雪の様に落ちる。

( ФωФ)「緑色の魔法は見えたか?」

 石の剣の柄には既に男が立っている。
 背中から役割を果たした緑の光が砕けて落ちる。

( ФωФ)「そして赤色の魔法。
        お前が多くの人間と同じ安寧を選ばなかったのは評価してやる」

22: 2010/06/17(木) 21:51:09 ID:fOsqguIE0
 両腕から守護者ジョルジュもかくやと言うほどの魔力が発光する。
 龍が口を開けた瞬間に手を突き出し魔法が起動した。
 遺跡を吹き飛ばさんとする勢いで爆音が耳へと届いた。

 激震の中、砕けた天井から海水が流れ続ける。
 遺跡が露と消えるのも時間の問題となった。

( ФωФ)「青の魔法。小娘、前の守護者とやらはもっと上手く使ったぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「小娘ってわたし!?」

 頭部の水晶が砕け、焦点の収まらない龍の前で、男は腕を振り抜く。
 落ちる海水の中に龍を超える大きさの魔法陣が描かれた。

 次の瞬間、龍が両断された。

 気付いた時、水の刃は魔力へと還っていった。
 どす黒い鮮血と海水の滝。
 断末魔の叫びをあげる龍と僕達の狭間で男が振り返る。

( ФωФ)「それではな。汝らが勇者とならん事を」

 当然と言わんばかりに僕達が入って来た入口の方向へと飛び降りた。
 水没してると思うのだが。
 
(;^ω^)「ちょっ、危ないですお!」

 何が何だか分からない程の奇怪な事態だったが、
 ローブの男は一しきり暴れ、崩れゆく遺跡の影に消えた。

23: 2010/06/17(木) 21:52:22 ID:fOsqguIE0
(´・ω・`)「うわっ、水が来た。今は取り敢えず急いで出ないと」

川 ゚ -゚)「あの男、次は……」

ξ;゚⊿゚)ξ「クー、急いで。わたしの操作で抑えるには量が多すぎる。
       ブーンも!」

(;^ω^)「……把握したお!」

 最後まで男の姿を探していた僕も階段を駆け上がる。
 どこかで会ったような気がするが思い出せない。
 そんな引っかかりがあるのだ。

 道は出口ではなく入り組んだ地下水路に続いていた。
 入る時よりも短時間で済んだのは不幸中の幸いだろう。
 水路を出ればいいのだ。
 もうすぐ、外に出られる。

 
 ところが技術国の名は伊達では無い。
 水路は平原の如く広く、迷路の如く複雑であった。
 しかも得体のしれない遺跡へと続く場所から入って来たのだ。
 迷うに決まっている。

 黒ローブの男や魔法鉱石。
 話題には事欠かないため時間の進みが早く感じる。
 ショボンによると黄色の高位魔法を使える人間は先代の守護者だけ。
 もっぱらの論点はここであった。

24: 2010/06/17(木) 21:53:49 ID:fOsqguIE0
 暫く話しながら進んだ。
 そうしている間に整備もされていないらしい地区にたどり着く。 
 汚れ具合も凄まじい。
 様々な障害を阻まれての脱出は予想に反して困難であった。

ξ;゚⊿゚)ξ「ネズミやだー!」

川;゚ -゚)「くっ害虫どもが…!」

(´・ω・`)「汚水で濡れたよ、最悪」

( ^ω^)「気にすんなお。さっきの相手より大分ましだお」

 後ろを歩く僕よりも強い軟弱者達にぼやきながら出口を探す。
 坂道なども上がり、そうして暫く進むと手に梯子がぶつかった。

( ^ω^)「出口じゃないかお?」

(´・ω・`)「ようやくだね。
       こんなとこに長くいたら病気になるから外に出ようか。
       魔力切れで外の様子は感知できないけど」

川 ゚ -゚)「私もだ。もっともあんな鉄板で仕切られていては風が読めんか」

( ^ω^)「じゃあ僕が行くお。まだ魔力も少し残ってるお」

 梯子を上り、円盤型の鉄板に手をかけた。
 中々重いが力だけで動かせる。
 漏れた浅い光に目を細めて一気に鉄板を押し上げた。

25: 2010/06/17(木) 21:54:33 ID:fOsqguIE0
―紫の国 位置不明―


 空は暗く濁り、月の光も街には届かない。

 霧だろうか。前がよく見えない。
 建物が雑然と並ぶ市街地の小道。
 そこに僕は顔を出した。
 結果は最悪であった。

( ^Д^)「……」

 簡単な鉄製の軽鎧を装備した男が目の前に立っていたのである。
 直観だが少し間抜けそうだ。

(;^Д^)「ん? えーと……あれか? いや、何も思いついてないな」

 男は数歩後ずさって警戒している。

(;^ω^)「いや、あの……そうだ、旅人ですお」

(;^Д^)「旅って…だったら何で地下水道から」

(´・ω・`)「ちょっと通りますね。みんな出てきてー」

(;^Д^)「いっぱい出てきた!? どうなってんの!」

ξ゚⊿゚)ξ川 ゚ -゚)「……」

26: 2010/06/17(木) 21:55:38 ID:fOsqguIE0
(;^Д^)「しかもうら若き乙女!?」

(´・ω・`)「今時その表現は無いと思いますが。
       それでは私達はこれで……」

 僕はショボンのさりげない行動に隠れる。
 そそくさとその場を立ち去ろうとする僕達の背後に、
 未だ慌てている男の声が届く。

(;^Д^)「……いや待て! おかしいだろ、常識で考えても。
       ちょっと奥まで……」

 そこまで聞いた時目の前から革製の鎧を装備した男が顔をのぞかせた。 
 暗がりなので顔はよく見えない。
 しかし軍の紋章が腕に巻かれている事からも兵士であろう。

( ・-・ )「どうされましたプギャー様……ん?」

 背後には間抜けそうな男、プギャー。
 目の前には兵士。

( ・-・ )「お前たちどこかで…」

 少し思案して手を叩いた。

( ・-・ )「あ! 注意人物項目の…」

( ^Д^)「……は?」

27: 2010/06/17(木) 21:56:50 ID:fOsqguIE0
 言うが早いか兵士が腰から何かを引き抜く。
 鉄の塊の様な物体が僕達に向けられ、小さく鉄を打つ音が聞こえた。
 その瞬間、雷鳴の音が僕の真横を通りぬけて行く。
 そしていつの間にか僕の頬に痛みが走った。

(メ ^ω^)「……」

(;^Д^)「危ないだろ! 何でいきなり銃なんか撃つんだよ!」

 僕が頬から血が出ている事を確認する中。
 聞きなれない単語が背後から飛び出している。
 どうやら僕の背後にいたプギャーも当たりそうだったらしい。

(´・ω・`)「銃! 配備されてたんだ……!」

( ・-・ )「すみません。守護者なら大丈夫かと思って」

(;^Д^)「駄目だってそういう偏見! それよりお前たち注意人物って…」

 いつの間に忍び寄っていた影がプギャーの背後に立つ。
 紫色の光が見えた。

28: 2010/06/17(木) 21:57:42 ID:fOsqguIE0

( ・∀・)『スタンブレイド』

(;^Д^)「え!? うぐッ!」

 弾けた光と崩れ落ちたプギャーは地面で痙攣している。
 現れたのは見覚えのある顔。

(;・-・ )「プギャー様!?」

 兵士の後ろで何かが倒れる音が聞こえた。
 何事かと確認する前に、前方でも何者かの影が躍り出る。

( ゚∀゚)「ですとろーい」

(; - )「ふはっ!?」

 もはや魔法ですらない一撃。
 金属の篭手で頭を殴るという荒業のお陰で鈍い音が狭い路地に鳴った。

( ゚∀゚)「一同戦略的撤収」

( ・∀・)「こっちこっち」

 ジョルジュが僕達をすり抜けてモララーの横まで移動する。
 後には兵士の他に通行人らしき人が一人倒れている。
 姿でも見られたのだろうか、とは言えあれでは騒ぎが大きくなりそうだ。

29: 2010/06/17(木) 21:58:31 ID:fOsqguIE0
( ゚∀゚)「あ、プギャーは回収しとけ」

( ・∀・)「そっちの人だよ」

 したり顔で二人の男が路地の奥へと走る。
 奇妙な縁で僕はこの二人と知り合いだ。
 迷わずプギャーを持ち上げながら追いかけようとする。

(´・ω・`)「大丈夫なの?」

ξ゚⊿゚)ξ「残念ながら片方は本当の守護者よ」

川 ゚ -゚)「あの人も相変わらずだな」

 ショボンもプギャー搬送を手伝って、僕達は二人の後を追う。
 少し離れた路地の見難い扉をくぐり階段を急ぐ。
 凹凸のない石で出来た殺風景な階段を三階層分上がり、個室へと入った。
 自分たちの事ながら見事な早業である。

 内装を見る間もなくプギャーを椅子に縛り付け、
 ネックレス型の魔法器を取り上げる。
 気絶しているので取り敢えず問題ないだろう。

30: 2010/06/17(木) 21:59:24 ID:fOsqguIE0
( ゚∀゚)「よし。御苦労」

( ・∀・)「修行が足りないね。紫の国の守護者は」

( ^ω^)「この人守護者なのかお……」

( ・∀・)「君も相変わらずだね」

 僕がプギャーをしげしげと眺めている中、
 全員が適当に座るのを待ってジョルジュが口を開いた。

( ゚∀゚)「まぁ、頭数は揃ったか? まさかお前らが来るとは思わなかったが」

( ・∀・)「ジョルジュ君、彼らは状況を把握できていないと思うが」

( ゚∀゚)「そうなの?」

 ジョルジュからすれば見慣れない顔である黄の守護者。
 そちらを向いて聞いた。

(´・ω・`)「ええ、僕はショボン。黄の国の守護者をやっています」

( ゚∀゚)「おう、お前が噂の新任守護者か。俺はジョルジュだ。
      それでお前らは俺達の支援をしに来たって事でいいのか?」

(´・ω・`)「名目はそうですが、私達など大した力は持ちません。
       策のほとんどはあなたに任せてしまう事になるとは思います」

31: 2010/06/17(木) 22:00:13 ID:fOsqguIE0
( ゚∀゚)「……策?」

( ・∀・)「はっはっは、このジョルジュ君が作戦なんか考えるはずないだろう?」

(´・ω・`)「……」

 目を伏せたショボンと笑うモララーの声。
 部屋には何とも言い難い空気が流れている。

( ^ω^)「ところでお二人は知り合いだったんですかお?」

( ゚∀゚)「ん? モララーは前の戦い……魔王大戦の時に世話になった」

( ・∀・)「世話をした覚えは無いけどね」

( ゚∀゚)「旅先で妙な情報をくれるんだよ。
      お陰で厄介な出来事に巻き込まれるわ魔物の大群と出会うわ」

( ・∀・)「人聞きの悪い。僕は情報屋として……」

( ゚∀゚)「てめぇの情報は無料だが正確性に欠けるんだよ。
      情報屋名乗るなら正確に頼むぜ」

( ・∀・)「じゃあ情報屋やめるよ」

(# ゚∀゚)「……」

 睨みあっているジョルジュとモララーの態度から見るに、
 どうやら仲が悪い訳ではないらしい。

32: 2010/06/17(木) 22:01:05 ID:fOsqguIE0
( ・∀・)「と言う訳で僕は昔馴染みとして彼をかくまっているのさ。
      戦力としては期待しないでくれ。
      情報収集は得意だがね」

 ここはモララーの部屋らしい。
 彼は紫の国の出身というのは前に見た魔法器の色で何となく分かった。

(´・ω・`)「……それはそうと作戦も無いというのに何故ここに?」

( ゚∀゚)「いやだってギコの野郎を一発殴りてぇじゃん」

(´・ω・`)「殴ってどうするんです」

( ゚∀゚)「正気に戻す」

(´・ω・`)「別に正気かもしれませんよ?」

( ゚∀゚)「だったら拉致る」

(´・ω・`)「どうやって?」

( ゚∀゚)「当然、正面から城に殴りこんで」

(´・ω・`)「常駐している兵士が山ほどいるんじゃないですか?」

( ゚∀゚)「そこでお前らだ」

(´・ω・`)「……無茶だよ」

 問答を続けていた二人がようやく離れた。

33: 2010/06/17(木) 22:03:04 ID:fOsqguIE0
ξ゚⊿゚)ξ「でも……時間がないならそれしかないと思うけど」

( ゚∀゚)「分かってるな譲ちゃん」

川 ゚ -゚)「この人数で城に正面突破をかけるのは現実的では無いと思うが」

( ゚∀゚)「なせば成る」

 一人、自信をのぞかせる者。
 答えの出ない議題に頭を抱える者。
 色々であるが僕としては後ろで縛られた人物をどうするのか、
 これが気になっていた。

( ^Д^)「んん~……ここは……?」
  _
( ゚∀゚)「よう」
 
 ジョルジュがプギャーの目の前まで歩いて行き、腕を組んで立っている。

( ^Д^)「あ、ジョルジュさん。お久しぶりです」
  _
( ゚∀゚)「五年ぶりくらいか?」

( ^Д^)「そうですね。いや~あの時は……」

 楽しそうに話していたプギャーだが、そこで何かに気が付いた。

(;^Д^)「そうだ、今戦時だ! これを解け! 赤の守護者ジョル……」

 言いかけたプギャーの腹にジョルジュの拳が突き刺さる。

34: 2010/06/17(木) 22:03:51 ID:fOsqguIE0
(;^Д^)「おうふ!?」
  _
( ゚∀゚)「偉くなったもんだな、今戦時って思い出せたし。じゃあ内情を喋ってもらおうか」

(;^Д^)「え!? いや、今すぐコレを解かないと……」

 やはりいい終わる前に今度はプギャーの頬に一撃を叩きこむ。

(#)^Д^)「あべし!」

 椅子がひっくり返り、プギャーは後頭部を床に打ちつけた。
 軽い音が聞こえた。

(;^Д^)「ごめんなさい、もう殴らないで」

 そして案外すぐに折れた。
 一国の守護者がこれでいいのだろうか。
 
( ^Д^)「……て言うか、話しますよ。
      俺から見ても今のギコ王は正気じゃないと思うし。
      何より、あなた達が動いているのは紫の国がおかしいって事です」

 そう思ったが、その顔には表情が無い。
 やはり何か思う所があるのかもしれない。

35: 2010/06/17(木) 22:04:41 ID:fOsqguIE0
( ゚∀゚)「ふーん、フサギコの爺さんを軟禁ねぇ」

(;^Д^)「ええ、大臣も兵士もさすがにおかしいって言ってますね。
      というかフサギコ先王を呼び捨てとかやめた方がいいですよ」

( ゚∀゚)「気にすんな、俺この国の王族と知り合いだから」

(;^Д^)「そりゃ知ってますけど……」

 守護者プギャーからは興味深い事実を聞く事が出来た。
 ギコ王が先王であり自分の父であるフサギコを軟禁しているとの事だ。
 この事実が知られるやギコ王のへの不信感は高まり、
 現在は意を唱える大臣や兵士も多いらしい。

 ギコ王自身は周りの声を聞く事も無く、何を言うでもない。
 王と言う権力のお陰でギコ王と止める事が出来る人間はいなくなっている。

 プギャー自身も現在のギコ王を不審に思っているらしい。
 だからすぐに重要情報を教えてくれたのだ。
 彼もまた守護者として魔王の復活を危惧している。

( ゚∀゚)「兵を抱きこ……そうだ! クーデターだ!」

(;^Д^)「何であなたはそんな物騒な言い回しをするんですか?」

( ・∀・)「煽りにいこうか?」

36: 2010/06/17(木) 22:05:42 ID:fOsqguIE0
(;^Д^)「あなたもです。タイミング的にまだ早いですよ。
      いくら王が操られていても重要拠点を掌握していない訳ないでしょう
      動くなら信用できる傭兵と兵を集めて搦め手から動かないと……」

( ゚∀゚)「暫く見ない間にまともな事言うようになりやがって」

(;^Д^)「やめて、殴らないで! 黙るから!」

(´・ω・`)「プギャーさんの言うとおりですがね。
       彼の情報網を使えれば案外すぐに行動できると思います」

(;^Д^)「ん? あんたは?」

(´・ω・`)「黄の国の守護者」

(;^Д^)「他国の戦略級人物が目の前に二人も……」

 また呆けて始めたプギャーは捨て置き、
 僕達の行動を決める為テーブルにつく。
 いつの間にかぬるい水がガラスのコップに入り、並んでいた。

( ・∀・)「水はこんなものしかないんだ。隠れている身だからね」

 一口飲みながらモララーも席に着く。

( ^ω^)「……何か難しい話だお」

37: 2010/06/17(木) 22:06:38 ID:fOsqguIE0
ξ゚⊿゚)ξ「私達は大した事できないしねぇ」

川 ゚ -゚)「そう言うな。どうせ暫くはここにいるんだ」

 ぬるい水に口を付けていた僕達の向かいで、
 ジョルジュが思い出したように声をだした。

( ゚∀゚)「おいクー、フォックスの旦那はどんな顔してた?」

川 ゚ -゚)「……顔だと? そうだな、難しそうな顔をしていた」

 大戦のおり、共に旅をしたヒートの妹であるクー。
 ジョルジュは当然のように面識があるのだった。

( ゚∀゚)「……やっぱ急いだ方がいいと思うがねぇ。
      あの人、一戦交える覚悟はあると思うぜ」

川 ゚ -゚)「そうなのか? よく会ってもいない人間の事を」

( ゚∀゚)「一番怖いのは普段キレないタイプの人間だ」

( ・∀・)「僕みたいなね」

( ゚∀゚)「無理やり入ってくんな」

 やり取りが続くなか僕達の情報も出し合う。
 緑の国が防衛を始めている事。
 海底洞窟の龍。
 そして、黒いローブの男。

38: 2010/06/17(木) 22:07:30 ID:fOsqguIE0
 だがどれも紫の国の中で役に立つ物ではない。
 結局名案が出る事も無く、暫くの間情報を集める事となった。
 守護者が目の前に三名もいるからか緊張感が湧かない。
 何とかなるだろう、そう楽観していた。


―紫の国 首都―


 緩やかに行動を開始して半月が立っていた。
 七月の暑い昼間、僕は買出しで街を歩いている。
 しかし、雲の無い青空も高い建物に阻まれて狭くなっていた。
 
 やがて夕暮れに近づけば街は霧で覆われる。
 何故かと思案して、近くを走る『列車』の為ではないかと考えていた。
 その黒い車体からは暗い白を現す煙が立ち上っている。
 蒸気機関と呼ばれる力は凄いが、あまり健康的では無いとも思う。

 実際に使っているのは軍の関係者だけなのだが、
 僕も乗る事が出来れば考えが変わるのだろうか。

ξ゚⊿゚)ξ「噂には聞いていたけど凄い技術よね」

 隣には帽子を深くかぶり、変装したツンが歩いている。
 一応、僕もマントをはずして街の人間の様な格好をしていた。

( ^ω^)「全くだお。前に見た『写真』も同じ様な技術なのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「あれは違うと思うけど……」

39: 2010/06/17(木) 22:08:16 ID:fOsqguIE0
 僕達は出来る事も少ないので食糧の買出しが主な仕事であった。
 迷路とも思える路地や、人が溢れる本道等、物を手に入れるのは楽だ。
 慣れ始めた隠れ家への道を遠回りを交えて進み、
 適当に中へと入る。

( ^ω^)「ただいまーだお」

川 ゚ -゚)「うむ。おかえり」

ξ゚⊿゚)ξ「今日はいいのが手に入ったわ」

 部屋にいたのはクーだけだ。
 あれからプギャーは情報と仲間を集めに城へと戻っている。
 ジョルジュとモララーは夜まで歩きまわっている。
 目立ちそうな二人だが今だに危険の気配すらないのは手慣れていると言う事か。

( ・∀・)「やあ、戻ったよ。ジョルジュ君は?」

 そう言ったモララーの背後にはジョルジュが立っていた。

( ゚∀゚)「ここだ。何かあったのか?」

( ・∀・)「分かるだろう? 一刻程前からの……」

( ゚∀゚)「それは分かっている。だから現地に行ったんだろが」

( ・∀・)「どうだった?」

( ゚∀゚)「上にも下にも何も無かった」

40: 2010/06/17(木) 22:09:18 ID:fOsqguIE0
( ^ω^)「何かあったんですかお?」

 尋ねた所、今日になって街中に妙な魔力の力場が現れたらしい。
 それも二つである。
 そこには徐々に魔力が集まっているが何も見つからない。
 かと言って、どうしても無視はできないそうだ。

川 ゚ -゚)「何か悪影響があるのか?」

( ゚∀゚)「ああ、実は……」

( ・∀・)「!」

 目を見開いたモララーが窓へと駆け、すぐに開いた。

( ゚∀゚)「やれやれ、やっぱりか」

 首だけ動かしたジョルジュが苛立ちながらそう呟く。
 それを聞いて全員が窓辺に集まった。
 
 異変が一点に重なっていく。
 紫の国で、それは歯車を廻し始めたのだ。


第四章 紫色の疑惑  第十七話「生位置の『隠者』」 完

41: 2010/06/17(木) 22:10:15 ID:fOsqguIE0
以上で投下を終了します。
おつかれさまでした。

42: 2010/06/18(金) 01:32:52 ID:MO7SVIwIO
乙です~

引用: ( ^ω^)ブーンの世界には魔法があるようです