90:◆7b3JfpIY/2 2010/02/25(木) 13:17:09.54 ID:dvynSKs0

勇者募集してたから王様に会いに行った【第一部】




--宿屋--

拝啓、故郷のお母ちゃん
風薫る季節となりましたが、いかがおすごしでしょうか?私は今、勇者さんと一緒に魔王討伐の旅をしています。
勇者さんは本当にすごいお人です。この間も一人で魔族の方々を倒しておいででした。仲間の賢者さんや、闘士さんや、踊子さんもすごい方ばっかりです。

え、私?
私は今、盗賊を名乗っています。

かしこ
Lv1魔王とワンルーム勇者 9巻 (FUZコミックス)
88: 2010/02/25(木) 01:29:26.87 ID:dvynSKs0
今部は急ぎ足でなく、ゆっくりやりたいと思います。

95: 2010/02/25(木) 20:19:45.21 ID:dvynSKs0


--宿屋--

盗賊「これでよし、と」

闘士「こんな夜中まで……家族への手紙かい?」

盗賊「え!?あ、うん」

突然の声に驚いてベッドの方へ振り向くと、裸の闘士が上半身をシーツから出してこちらを見ていた。

闘士「そうか。おれも恋しいよ故郷が……。去年の今頃は何をしていたっけなぁww」

盗賊「……」

西の王国から旅立って一カ月くらいたったのだが、わかったことがある。闘士は男同士二人きりの状態になると、普段とは結びつかないほど饒舌になるのだ。

闘士「ほら、暖かくなってきたとはいえ夜はまだ冷える。ベッドに入りなよww」

盗賊「う、うん……」

闘士は西の王国で


盗賊「い、」


職業訓練以外にも、何かの経験を積んでいたことは明白だった。

96: 2010/02/25(木) 20:27:05.60 ID:dvynSKs0


--宿屋--

盗賊「いやじゃあああああああああああああああ」

バタン!!

部屋を飛び出し隣の隣の部屋、勇者さんと踊子さんが泊まっている部屋に駆け込む。

ガチャガチャ、カチリ(ピッキングをする音)。バンッ!

盗賊「ゆ、勇者さん!!助けてください!!俺と一緒に寝てください!!」

勇者「……」

踊子「むにゃ。ふぇぇ?なんですか~?」


その日、勇者の火属性最大魔法によって、小さな村が消滅した。



勇者募集してたから王様に会いに行った 
      第二部

      魔 王

97: 2010/02/25(木) 20:38:01.22 ID:dvynSKs0


--村跡--

勇者「……君は本っ当に、盗賊に向いてるね」

盗賊「あの、その……ごめんなさい」

賢者「その度に村が消えていってるってすごいことですよね」

案外魔王に滅ぼされるより早く、人類は滅亡するかもしれないのであった。

99: 2010/02/25(木) 20:44:26.64 ID:dvynSKs0


--魔王城--

モンスター「ご報告いたします!!先日、我が魔王軍の第十二のダンジョンが制圧されたとのことです!!」

サキュバス「……ッ!」

??「ヌゥゥ……?」

?「……そこの、下がっていいぞ」

モンスター「はっ!」

??「どういう……ことだ?サキュバスよ」

サキュバス「も、申し訳ございません!!わ、わた」

??「あのダンジョンを制圧できる者と言えば……以前お前が倒したと言うた『勇者』くらいではないか?」

サキュバス「さ、さようでございます。……魔王様」

??改め魔王「ふむ……」

100: 2010/02/25(木) 20:52:47.58 ID:dvynSKs0


--魔王城--

魔王「お前は我に偽りの報告をしたのか?」

サキュバス「だ、断じて違います!!」

?「……倒した、と勘違いしてしまうほど、サキュバスの能力は低かった、ということなのでしょう」

サキュバス「!?ワーウルフ!貴様!!」

?改めワーウルフ「……何か違うのか?違うと言うのであれば、今度こそ勇者を倒してくればいい」

サキュバス「ワーウルフ……」

ワーウルフ「どうでしょう魔王様。サキュバスにもう一度チャンスを与えてみては?」

魔王「ふむ……」

サキュバス「……っ」

魔王「よかろう……我が右手サキュバスよ、もう一度お前にチャンスを与える。して我が左手ワーウルフよ、お前は何をする?」

ワーウルフ「……ダンジョンを潰されて困っている下級モンスター達に、仕事場を斡旋したいと思います」

魔王「ほぉ、就活はいつの時代も大変なのだなぁ……」

ワーウルフ「……はい。かつては13あったダンジョンも残るはたったの一つ。競争率は言うまでもなく激化しています。そしてこのダンジョンは最も優秀な高学歴のモンスター達で溢れかえっており、もとより下級モンスターの入るスペースはありません」

魔王「それは可愛そうに……ではどうするのだ?」

ワーウルフ「……一部は魔王城の掃除係として、一部は魔王城の家具として、そして残る者たちは……魔王様、ソイレントグリーンという映画をご存知ですか?」

魔王「うわっ!あれまじトラウマ!!あれやんの?やだぁ~……」

102: 2010/02/25(木) 21:02:28.10 ID:dvynSKs0


--東の森--

モンスターをたおした!

盗賊「ふぅ、段々強くなってきてるな」

賢者「本当にね。より一層頑張らないと」

勇者(ふふww何を言う……ちゃんとついてこれているじゃないか)

盗賊が賢者に近づきそっと耳打ちする。

盗賊「しかし……賢者さん。前から思ってたんですが……巨Oはいいですね」

賢者「!!……あぁ!!僕もいつ言おうか迷っていたんだよ。踊り子さんのぶるんぶるんはたまらないな……勇者さんもかなりあるようだが、鎧のせいで揺れないからな」

盗賊「こんな話聞かれたらまた燃やされちゃいますねww」

賢者「まったくww」

踊子「ふぅん……」

103: 2010/02/25(木) 21:13:23.33 ID:dvynSKs0


--東の村、風呂場--

踊子「勇者様~お話が♪」

勇者「ひぃ!?踊子!?なんで!?」

踊子「親睦を深めようと思いまして~ww」

勇者「い、いい!!いいから出てって!!」

踊子「え~?冷たいですわぁ。上司たるもの部下とのスキンシップは必要不可欠でしょ~?」

勇者「過度なスキンシップは不必要よ!!きゃっ!!」

むに

踊子「あれれ~?この手にすっぽりと納まる感じ……普段見ていたのとは違って、随分可愛らしいサイズですね~ww……www」

勇者「ひぃう!!」

104: 2010/02/25(木) 21:18:59.54 ID:dvynSKs0


--東の村、宿屋--

勇者は踊子の前で正座している。顔を真っ赤にしてうなだれながら。

踊子「これはどういうことなんですか~」

踊子は勇者の鎧を指差す。

勇者「せ、戦闘は危ないからっ!!その……防御力は高いほうがいいし」

踊子「なるほど~。だから鎧を『胸の部分だけ』重ね着してたんですか~」

勇者「あわわわわ!お、お願い!みんなには言わないで!!」

踊子「なんでです?このご時世だからきっと皆も理解してくれますよ~ww」

勇者「いいからお願い!後生ですからーっ!!」

105: 2010/02/25(木) 21:24:51.04 ID:dvynSKs0

10

--東の森--

モンスターをたおした!

盗賊「お?」

賢者「どうしたんですか?盗賊君」

盗賊「もう少しで新しいスキルが身につきそうな気が!!」

賢者「!!……それはまさか例のアレで?」

盗賊「……イエス!」

賢者「是非会得した暁には僕もご相伴にあずかりたいものです!!」

盗賊「……喜んで!!」

勇者「?」

106: 2010/02/25(木) 21:26:16.68 ID:dvynSKs0
11

--東の村、風呂場--

勇者「ふいぃ~。お風呂は人類最高の発明ね」

踊子「勇者様~♪」

勇者「ぶっ!!なんでまた入ってきてんの!!」

踊子「えぇ?もう隠すもんなんてないからいいじゃないですか~」

勇者「そういう問題じゃ、ぎゃっ!!」

踊子「えっへっへっへ~」


--東の村、風呂場の外--

盗賊「ふむ……キャッキャッと声が聞こえる……勇者さん達がいるのは確かなようだ」

勇者「こらっ!やめろ!!このパーティは同性愛者ばっかりか!!」

踊子「えっへっへっへ~」

盗賊「精神を研ぎ澄ませ……絶対にできると信じろ……スキル!透視眼!!」

盗賊の左目に魔力が集まっていく。

盗賊「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」←小声

カっ!!

勇者「ち、ちょっとっ~」

盗賊「見えたっ!!!!…………………あれ?」

107: 2010/02/25(木) 21:46:29.03 ID:dvynSKs0
12

--翌日--

勇者「よし!今日も元気にいくぞ!」

踊子「お~」

賢者「と、盗賊さん……どうでした?成功しましたか?」

盗賊「あ、賢者さん……それが、スイカは無くて板だったんだよ。この世の中は偽りだらけだったんです……」

賢者「?言ってることがよくわかりませんね……」

盗賊「それより賢者さん、やつれきってるけどどうしたの?」

賢者「盗賊さん……よく……今まで無事でしたね……」

盗賊「?……あ、ああああああ!そうか、昨日、賢者さんは闘士さんと一緒の部屋……」

賢者「僕は……盗賊君ほど……足が速くないので……逃げられませんでした」

盗賊「賢者さん……」

闘士「お、おで」つやつや

108: 2010/02/25(木) 21:52:25.70 ID:dvynSKs0
13

--東の森--

盗賊「あー強かった」

賢者「終盤絶叫しながら襲いかかってきてましたね」

踊子「食べられちゃうかと思って怖かった~」

勇者「一番多くモンスター倒してたくせに……。そういや盗賊、盗む使ってみたんだろ?何を手に入れたんだ?」

盗賊「あぁ、そういやなんだろ。紙っぽかったけど」

ペラ

盗賊「なんか書いてある。なになに、『とうちゃん、ゆうしゃとたたかうことになった。むすめ、たっしゃでくらせ』……」

賢者「……」

闘士「……」

踊子「あ、あはは」

勇者「……もう盗むは使うな」

109: 2010/02/25(木) 22:00:41.16 ID:dvynSKs0
14

--第十三のダンジョン--

勇者「さぁ最後のダンジョンだ!気を引き締めていくぞ!!」

盗賊「おおー!!え、えええ!?最後!?」

賢者「僕達この前のが初めてのダンジョンだったのに……」

闘士「お、おで」

踊子「そうなんですかぁ?1~11はどうやってクリアしたんですか?」

勇者「……」

盗賊「……多分勇者さんが一人で」

踊子「え?wwwじゃあ勇者さんだけで全クリ出来そうですね♪」

盗賊「ずーん」

賢者「ずーん」

闘士「ずーん」

勇者「そ、そんなことを言ってはだめだ!みんながんばってるんだし!!」

110: 2010/02/25(木) 22:09:35.87 ID:dvynSKs0
15

--第十三のダンジョン地下二階--

盗賊「そういえば、踊子ちゃん、踊子なのに踊ってるとこみたことないね。いつも蹴り技で敵を倒しちゃって」

賢者「そういえばそうですね」

踊子「あ、見たいですか~?じゃあ次モンスターと戦闘になったらやります~」


モンスターがあらわれた!

賢者「さぁ!どんなダンスが飛び出すのか!!」

踊子「れっちゅごー!!うぉっちゅてまいはーん、あーうぃびぃやーめーん、そーとぅなびかむ、だんさむなどうぇーん♪」

盗賊「あ、ああああああ!!たけふ○のCMみたいな踊りしてる!!しかもうちらの攻撃力すっげぇ上昇してるよ!!」

111: 2010/02/25(木) 22:20:27.55 ID:dvynSKs0
16

--第十三のダンジョン地下八階--

盗賊「パーティ全体強化って強力だったんだね、あのモンスター達をいともあっさりと倒せるとは」

賢者「肉体系でない僕の拳でさえ結構な威力がでてましたからすごいですね」

闘士「お、おでの強化魔法に、近かった」

ロドリゴ「デショー、スゴイヨー、イキイイヨー」

勇者「闘士と賢者の強化魔法を重ねがけした後に、私自身を強化する技を繰り出させばかなり強そうだな」

盗賊「勇者さん、そんな能力もあるんだ。さっき回復もしてたし万能じゃないすか」

賢者「まったくですよ」

ロドリゴ「シャチョサーン、ピチピチアルヨー」

闘士「お、おで」

盗賊「ねぇ、踊子さんは……ああああ!なんか違う人になってる!!」

勇者「!?これはモンスター、ロドリゴ!!名前が似てたから気付かなかった!!」

ロドリゴ「ムリガアルダロー」

112: 2010/02/25(木) 22:28:39.40 ID:dvynSKs0
17

--第十三のダンジョン地下七階--

踊子は、数百のモンスターの氏骸を積み重ねた、ピラミッドの頂きで佇んでいた。

踊子「……なんで置いていったんですか」

盗賊「いや、あの、ごめんなさい……」

踊子「待って、って言ったじゃないですか。モンスターいっぱいいたんですよ?」

賢者「あの、ほんと、ごめんなさい……」

踊子「本当にちょっと……危なかったんですよ?」

勇者「ほんと、えっと、ごめんなさい……」

踊子「……さすがのわたしもいまのは氏ぬかとおもった……このわたしが氏にかけたんだぞ……」

闘士「ごめんなさああああああああああああああい!!!!」

113: 2010/02/25(木) 22:36:17.51 ID:dvynSKs0
18

--第十三のダンジョン地下十二階--

踊子が拗ねている。

114: 2010/02/25(木) 22:36:59.62 ID:dvynSKs0
19

--第十三のダンジョン地下十八階--

踊子の舞。賢者の魔力が減った。

115: 2010/02/25(木) 22:38:19.09 ID:dvynSKs0
20

--第十三のダンジョン地下二十六階--

踊子の会心の一撃。闘士は息絶えた。

117: 2010/02/25(木) 22:39:30.91 ID:dvynSKs0
21

--第十三のダンジョン地下三十四階--

踊子の舞。盗賊は魅了された。闘士にメロメロだ。
盗賊の尻に絶大なダメージ。盗賊は生きる気力を失った。

118: 2010/02/25(木) 22:40:57.47 ID:dvynSKs0
22

--第十三のダンジョン地下四十九階--

踊子は勇者の乳の秘密を暴露した。勇者の精神に極大のダメージ。
パーティ全員が壊滅状態になった。←今ここ

120: 2010/02/25(木) 22:51:39.46 ID:dvynSKs0
23

--第十三のダンジョン地下四十九階--

勇者「えぐっ、ひぐっ、う、うぅぅぅ!!」

盗賊「尻も痛ければ心も痛い……」

賢者「勇者さんが……虚乳……?」

闘士「おで!」

闘士はやる気があがっていた。

踊子「ふぅ、まぁこのくらいでチャラにしてあげます」

盗賊、勇者、賢者(ひ、ひでぇぇえ……)

闘士「おで!」

121: 2010/02/25(木) 22:56:12.45 ID:dvynSKs0
24

--第十三のダンジョン地下四十九階--

盗賊「ボス部屋の前だというのに予想だにしない疲労困憊……」

勇者「無理、もうやだっ!私帰るっ!!」

賢者「でももう一度ここまで降りるのは……きつすぎですよ」

闘士「今なら、魔王でも、倒せる!」

踊子「もうちゃっちゃと倒して帰りましょ~」

122: 2010/02/25(木) 22:59:57.40 ID:dvynSKs0
25

--第十三のダンジョン地下五十階--

?「遅いなやつら……このダンジョンに入ってから相当時間が経っている。もうついてもいい頃なのだけれど。ちょっと見に行ってみよう
かな。いやでもその間にここにこられても……あああああもおうううううう」

123: 2010/02/25(木) 23:02:36.32 ID:dvynSKs0
26

--第十三のダンジョン地下二階--

盗賊「まさか本気で帰るとはね……」

賢者「まぁ……勇者さんがこんなありさまでは勝てないでしょうし」

勇者「うぅ……うぅうううう!!」

踊子「もう勇者様~かわいい~ww」

闘士(この精神の高揚、どこで、発散するべきか)

闘士は盗賊の尻を眺めている。

闘士「oh……」

盗賊「ぞくっ!!」

125: 2010/02/25(木) 23:08:23.22 ID:dvynSKs0
27

--第十三のダンジョン--

賢者「はぁ、やっと地上ですね」

盗賊「じゃぁもう解散の方向で。各自で宿とってまた後日」

踊子「わかりました~♪いこっ、勇者様~」

勇者「もう、やっ!!」

闘士「……」

盗賊「やめてっ!音も無く近づいてきてお尻をなでまわさないで!!」

?「おいこら馬鹿ども!!直前まで来て帰んじゃないわよ!!」

盗賊「あ、あいつ!!」

賢者「サキュバス……!!」

?改めサキュバス「せっかく私が止めを刺しに来てやったんだ、大人しく氏んどきな!!」

126: 2010/02/25(木) 23:14:29.95 ID:dvynSKs0
28

--第十三のダンジョン--

??「ぐぅぅろおおあおおおおおおお!!」

賢者「あのサキュバスがまたがっているモンスターは……」

勇者「マンティコア。多分このダンジョンのボスなんでしょうね」

盗賊「最後のダンジョンのボスと魔王の側近が同時に相手なんて……やばい感じしかしない」

??改めマンティコア「うごおおおあああああああああ!!!!」

踊子「……」

勇者「駄目よ踊子。おさえて」

次の瞬間、踊子は跳躍しサキュバスに蹴りを放つ。

ズガっ!!


マンティコアの上から弾き飛ばされるサキュバス。


サキュバス「っ!!小娘!!いきがいいじゃないか!!」

踊子「魔族……お前は私がころス」

127: 2010/02/25(木) 23:20:41.47 ID:dvynSKs0
29

--第十三のダンジョン--

盗賊「な、なんかいきなり踊子ちゃんが怖くなりました」

勇者「だめだ!流石にそいつは一人では相手にできない!」

賢者「なら勇者さんは踊子さんと一緒にサキュバスを相手してください」

勇者「!?何を馬鹿言って、あいつは私達五人で戦う必要があるレベルだぞ!!」

盗賊「じゃあ、あっちが片付いたら助けに来て下さいよ。早くしないと逆に俺達が助けにいっちゃうかもですけどww」

闘士「おで、がんばる!」

勇者「君達……」

128: 2010/02/25(木) 23:24:55.32 ID:dvynSKs0
30

--第十三のダンジョン--

勇者「……わかった。君達がそこまで言うのなら任せる。だが大口叩いたからにはあっさりと負けるなよ!?」

勇者は大剣を構えてサキュバスへと駆けていく。しかしそれをマンティコアが見逃さなかった。

マンティコア「ごああああああああああるうううう!!!」

盗賊「闘士!!」

闘士「うおおおおおおお!!」

闘士の渾身の左ストレートがマンティコアの横っ腹にヒットする。そして闘士の背中を蹴り、宙へとジャンプした盗賊が、

盗賊「皮膚は硬いんだろうけど、ここはどうせそうでもないんで、しょっ!」

ザシュっ

マンティコア「あごるああかぎゃあああああ!!」

盗賊の振り下ろしたナイフはマンティコアの右目を切り裂く。

盗賊「まずは右目を盗みましたよっと」

129: 2010/02/25(木) 23:37:22.47 ID:dvynSKs0
31

--第十三のダンジョン--

マンティコア「ぎうううううううあああ!!」

賢者「なんで不必要に手負いにしてんですか!!モンスターなんだから例え両目を奪ったとしても、嗅覚だけで十二分に戦えますよ!!」

盗賊「え、ええええええええええええ!?ごごごごめんなさい!かっこつけてごめんなさい!!」

マンティコア「ぎゃりるうぅううううう」

賢者「激昂状態……防御力は下がるが、攻撃力と速力が上昇してしまった……盗賊君気をつけて!あの腕で殴られたら君や僕の防御力では
即氏です!!」

闘士「お、おでが守る!!」

マンティコア「ぎいいいいいぃやああああああ!!」

マンティコアは地を蹴り、盗賊達に向かって突進してきた。

賢者「闘士君、無理だ!避けた方がいい!!」

ドスン

闘士「あ、あで?」

あと一歩踏み出せば、マンティコアの爪が闘士に届くというところで、マンティコアは体勢を崩した。

130: 2010/02/25(木) 23:41:12.65 ID:dvynSKs0
32

--第十三のダンジョン--

マンティコア「ぐぅぐ!!ぐるうううう」

賢者「これは……罠?」

盗賊「さっき……仕掛けといたんだけども」

賢者「でかした!!罠はスピードがあればあるほどダメージもでかい!!今です、畳み込みましょう!!」

闘士「おおおおおおおおお!!」

盗賊「りょうかああああああああああい」

ギラリ

その時マンティコアの尾が動く。

バシュバシュバシュッ!

闘士「!?」

闘士に向けて無数に発射される黒い物体。それはマンティコアの尾に生えている毒針だった。
勢いよく走り出した闘士がそれをかわす術は無い。

131: 2010/02/25(木) 23:45:11.32 ID:dvynSKs0
33

--第十三のダンジョン--

盗賊「あぶね!!」

間一髪闘士においついた盗賊は、闘士を横に蹴り飛ばし、闘士を毒針の射線上からどけることに成功する。

賢者「これは……!!下がってくださいお二人供!!これは強力な毒針です!!当たれば5分も経たないうちに氏んでしまいます!!」

闘士「う、うご」

盗賊「5分?」

賢者「はい!だから盗賊君も下がって!!」

盗賊「あぁ~……だからかぁ。5分かぁ……」

賢者「!?」

盗賊の左足にはマンティコアの毒針が二本刺さっている。

134: 2010/02/25(木) 23:49:14.90 ID:dvynSKs0
34

--第十三のダンジョン--

賢者「盗賊君!」

盗賊「ごめん、しくじった」

闘士「盗賊、すまない、大丈夫か」

盗賊「闘士のせいじゃないってww」

マンティコア「うごおおおおおおおお!!」

賢者「罠の効力が切れたか!」

盗賊「……賢者さんさぁ」

賢者「はい!なんですか?」

盗賊「毒を治療するのって、どれくらいかかるの?」

賢者「……マンティコアの毒針となると1分以上はかかりますね」

盗賊(そんな時間はもちろんないよな……仕方ない)

盗賊「俺を盾にする戦法でいこう」

135: 2010/02/25(木) 23:57:05.31 ID:dvynSKs0
35

--第十三のダンジョン--

踊子「はああああああ!!」

サキュバス「ふんっ!ただの人間が、そう何発も入れられると思わないことだなっ!」

勇者「シッ!」

サキュバス「!?」

ブォン!

横からなぎ払う勇者の一撃を、サキュバスは空へ逃げることでかわした。

サキュバス「……」(相変わらず隙をつくのが上手いというかなんというか……)

踊子「逃げるなぁ!!移動力上昇の舞!」

サキュバス「はっ遅いわ」

踊子が舞おうとした瞬間、サキュバスは急降下してくる。

勇者「ッ」

サキュバス(!!こいつ)

サキュバスの急降下を先読みした勇者は、すでに大剣を振っていた。
それを見て回避不可能と察したサキュバスは自分の右腕に氷の魔法を発射する。

136: 2010/02/26(金) 00:01:01.49 ID:5G8rX..0
36

--第十三のダンジョン--

バッキャアン!!

勇者「!?」

サキュバス「っく!!」

自分の右腕を氷漬けにし、緩衝材にすることでサキュバスの右腕は切断されずに済んだ。
そして今度は氷の浸食が始まる。

バキバキ

勇者(剣が凍っていく!!いやこれは!)

サキュバス「痛いじゃないのさ、おかげで右腕をまともに動かせぬわ。もっとも」

ドゴッ

踊子「うあっ!!」

サキュバスの右足が踊子の腹部を蹴りあげる。

サキュバス「あと5分間逃げ回っていたら私の勝ちだけど」

137: 2010/02/26(金) 00:06:26.78 ID:5G8rX..0
37

--第十三のダンジョン--

勇者「5分間……?」

サキュバス「教えといてあげるわ。その氷は徐々に浸食していって、5分もしたらあんたの全身を覆うのさ」

勇者(くっ……両手を凍らされたせいで魔法を使えない!!)

サキュバス「でも、逃げ回って勝ちなんて情けないまねはしないよ。私はあんたのせいで屈辱を受けたのさ。それを晴らさせてもらう!!」

勇者「ふっ、やってみなさい」

サキュバス「おやまぁ……つよがっちゃってさ!!」

踊子「……うっ」

138: 2010/02/26(金) 00:12:21.10 ID:5G8rX..0
38

--第十三のダンジョン--

ガキンッキンッ!!

勇者「うっく!!」

サキュバス「ほらほらどうしたのさ!!」

サキュバスは氷の剣を作りだし、勇者を攻め立てている。

踊子「ゆ、勇者様……!」

サキュバス「おや?人間が意識を取り戻したらしい」

勇者「っ!!よそ見なんかして!!」

ガキィン!!

勇者の渾身の一撃がいとも簡単に止められてしまう。

サキュバス「氷ってのもなかなか重いだろう?元々あんたは華奢な体だ、今は剣を振り回すのが精いっぱいみたいだね」

バキっ

サキュバス「遅いんだよ!!」

139: 2010/02/26(金) 00:18:05.00 ID:5G8rX..0
39

--第十三のダンジョン--

勇者(くぅ!!確かに攻撃スピードは激減した。なら攻撃力をあげてこのまま叩くか?いやだめだ。多分力に耐えきれず体が砕けてしまう!!)

サキュバス「余計なことは考えなくていいのさ、あんたは私にいたぶられるために今ここに存在する!!」

ドシュ!

勇者「うあっ!!」

サキュバスの氷の剣は勇者の左足の腿を切り裂く。

踊子(待ってて下さい勇者様!!)

踊子は何かの舞を踊っていた。

140: 2010/02/26(金) 00:21:54.93 ID:5G8rX..0
40

--第十三のダンジョン--

マンティコア「ぐおおおおぎゃあああおおお!!」

賢者「ぐっ!!」(近づけば前足と牙、離れれば毒針!!どうしたらいいんだ!!)

闘士「盗賊っ!」

盗賊「あ、あぁ大丈夫」

賢者(大丈夫じゃない。動けば毒が回る速度もあがるんだ……もう2分間も逃げてるだけで何にも変わりゃしない!)

盗賊「賢者さん、闘士、今あいつを透視眼で見てみたんだけどね、どうも首のすぐ後ろ、脊椎あたりが弱点らしいのよ」

賢者「!!」(ただ逃げてただけじゃないのか)

盗賊「それと前方の大きな石がある辺りに魔法罠しかけてあるから、そこに誘導して……と」

グラッ

盗賊(やばっ視界がゆら)

マンティコア「ぐぅる」

マンティコアは尾から毒針を発射した。体勢を崩した盗賊に向けて。

闘士「!!!!とっ」

ドスドスドスドス!!

盗賊「……あ?」

賢者「駄目じゃないですか……大体の位置はわかっても、正確な位置までわかってるのはあなただけなんですよ。止めは盗賊君……あなたが刺すんです」

賢者の腹部や両腕には無数の毒針が刺さっている。

141: 2010/02/26(金) 00:27:20.05 ID:5G8rX..0
41

--第十三のダンジョン--

盗賊「えぇえ?もう視界もくらくらっすよぉ」

賢者「僕だっていきなりそんな感じですよぉ」

闘士「お、おで」

賢者「闘士君、僕が魔法罠の所までマンティコアを引きつけます。だからあなたは攻撃力上昇魔法を盗賊君にかけつつ盾になってください!!」

闘士「わ、わかった!!」

143: 2010/02/26(金) 00:33:06.30 ID:5G8rX..0
42

--第十三のダンジョン--

マンティコア「ぐぉおるうるうる!!」

賢者「こっちですよ!!間抜け面!!」

マンティコア「ぐぅ?ぐやああああああああ!!」

ドスドスドスドス

飛んできた毒針を賢者は回避も防御もしない。本当は回避や防御はしてもしなくても変わらないという理由だったのだが、その姿を見たマンティコアは自分の毒針の威力に疑問を思ったのか、自分自らの力で粉砕しようと思ったのか、賢者に駆け寄ってきた。

マンティコア「ぎゃああああああおおおおおおおおおおお!!!!」

賢者「はっはっ。あー、しんど……ちゃんと教会に連れてって下さいね。頼みましたよ?盗賊君」

グシャっ

盗賊「突撃ぃいいい!!!!」

闘士「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

144: 2010/02/26(金) 00:39:17.68 ID:5G8rX..0
43

--第十三のダンジョン--

マンティコア「ぐううあ?」

マンティコアが怒声に反応して振り返ろうとした瞬間、

バヂィィ

マンティコア「ぎゃあああおおおおおおおお!!」

魔法罠が発動した。

盗賊「やば。二重にしたのにもがいてる。くそ、どんだけ強いんだよ」

闘士「大丈夫っ!!」

闘士は盗賊をおぶさりながらマンティコアに向けて突進していく。

闘士「攻撃力二段階上昇魔法!!」

盗賊は攻撃力が上昇した右手でナイフを構える。

マンティコア「ぐおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

マンティコアは力を振り絞り、尾の毒針を発射し続ける。

ドスドスドスドス!!

闘士「う、んっ!!」

闘士のスピードでは避けることは出来ない、否、避けるつもりもない。

闘士「とうぞ、くっ!!」

闘士は渾身の力で盗賊を投げた。

盗賊「いやぁ、元ニート、ヒッキー、いじめられっこの三人組に負けちゃうなんて、本当残念っすね!」

ドシュっ




盗賊のナイフはマンティコアの弱点を深く抉った。

マンティコア「びゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

146: 2010/02/26(金) 00:45:20.06 ID:5G8rX..0
44

--第十三のダンジョン--

サキュバス「?今の断末魔……まさかマンティコアがあんな雑魚共に……?」

勇者「……っふ」(倒したんだ……やれやれあの子達がちゃんと自分の役目を果たしてるというのに)

勇者は全身を切り裂かれ、氷の浸食は、ほぼ全身に至っていた。

サキュバス「……何がおかしい?」

勇者「勇者である私がこんな様じゃかっこつかないな、って」

サキュバス「……」

サキュバスは左手の人差し指を勇者に向ける。

バキィン

勇者「んくっ!!」

サキュバス「拘束魔法……どこまで追いつめれば泣いてくれるのかい?」

勇者の体を錠のついた鎖がしめあげる。

147: 2010/02/26(金) 00:54:02.34 ID:5G8rX..0
45

--第十三のダンジョン--

勇者「う、くっ……諦めないから……勇者なのよっ」

サキュバス「っっ!!虫けらがあぁあ!!遊びは終わりよ!!串刺しにしてやる!!」

勇者(駄目だったか……あと一手、足りなかったかなぁ?)

サキュバス「しねえええええええ!!!!」

サキュバスは氷の剣を振り下ろす。


ドシュっ!!!!


盗賊「あぶね!!第二段っ」

勇者「……え」

氷の剣は勇者とサキュバスの間に割って入った盗賊の胸部を突き刺していた。

盗賊「あ、気にしないでくだごぼっ。どのみちすでに毒くらっててピコンピコン状態だったんでげぼっ」

勇者「……や、ちょ」

サキュバス「くっ!!どこまでも目障りなムシケラねっ!!」

盗賊「ありゃ?勇者さん緊縛プレイしてたんですかwwあ、錠がある。解除っと……へへへこんくらいしか役に立てないもんでがはっ!!」

盗賊の体は真っ二つに切り裂かれる。

ピチャ

勇者の顔は赤に染まる。

勇者「……あ」

148: 2010/02/26(金) 01:04:56.60 ID:5G8rX..0
46A

--第十三のダンジョン--

サキュバス「たく、弱いくせにしゃしゃり出て来やがって!!」

サキュバスは盗賊の上半身に歩み寄り、頭を踏み砕く。

グシャっ

勇者「」

バキ……バキっ

サキュバス「?ははっ、どうしたい。そんなに激しく動いたら体が割れちまうよ?あんたの体は今凍っているんだよ?」

バキバキバキっ

サキュバス「wwwこいつはお笑いだね。天下の勇者様が自暴自棄になって自壊かい?」

勇者「踊子おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

踊子「はい!!攻撃力、攻撃速度最大強化!!」

待ってましたとばかりに踊子は舞をやめ、勇者に掌を向ける。

ドンっ!!

サキュバス「!?」

勇者の体が眩しいほどの赤い光で包み込まれる。

サキュバス「はっ、その一発にかけてたっていうのかい?だが」

勇者「もういい……もう体が壊れたっていい!!お前だけは絶対に斬る!!!!」

サキュバス「、っは」

サキュバスは勇者から発せられるプレッシャーに、無意識のうちに退いてしまう。絶対有利な状況なのにもかかわらず、本能がそうさせたのだ。

サキュバス「はん、だが残念だったね。どんな強化魔法も一定時間を過ぎたら効果を失うもんさ。そしてあと少しで氷はアンタの全身を覆う。私の勝ちは依然変わらない!!」

バサッ


149: 2010/02/26(金) 01:05:22.22 ID:5G8rX..0
46B

サキュバス「……?」(飛べない?)

踊子「これだけ時間があったのに私が一種類の舞しかしてないと思ったんですか?」

サキュバス(ひ……飛行能力奪い!?)

ザリ

サキュバス「はっ!」

勇者「……じゃあな。喜べ、奥儀を使うのはお前が初めてだ」

サキュバス「っふ!」(逃げ)

勇者「勇うううううう者スラッっっっシュううううううううう!!!!」

ザブシュッ!!!!

サキュバス「ぐっ!!ふううううううう!!!!」

152: 2010/02/26(金) 12:56:54.16 ID:5G8rX..0
名前とか決めるの苦手でしてww

153: 2010/02/26(金) 13:02:25.83 ID:5G8rX..0
47

--教会--

盗賊「う……?」

勇者「あ、気付いた?盗賊」

盗賊は勇者の膝枕で目を覚ました。

盗賊「あ、貧Oさん」

ゴッ!

貧Oの拳が盗賊の顔面を陥没させる。

貧O「貧Oって言うな!!」

踊子「そうですよぉ、本当のこと言ったらまたかわいらしく泣いちゃいますよ?」

貧O「本当って言うな!!」

賢者「大丈夫です勇者さん。僕は口リも行ける口ですから」

貧O「憐れむな!!……あ、憐れんでない、マジな顔だ……やだ怖い……」

闘士「あ、おれは女には興味ないんでww」

154: 2010/02/26(金) 17:02:33.22 ID:5G8rX..0
48

--教会--

盗賊「いててて、怪我人になんてことを……勇者さん、勝ったみたいですね」

貧O「……うん」

盗賊「?あれ?なんでみんなちょっと暗いの?」

踊子「実はサキュバスは逃げちゃいました」

盗賊「あぁ……まじで?」

貧O「まじで」

155: 2010/02/26(金) 17:06:26.64 ID:5G8rX..0
49

--第十三のダンジョン--

サキュバス「かはぁっ!はっはっはっはっ!」

勇者「っつ!」(剣に纏わりついた氷がダメージを鈍らせたか……)

サキュバスは瞬時の回避により、右肩から先を失ったがなんとか存命していた。

サキュバス「っっ!!……今回はこれで……引くわ。でもね、また私はあんたの前に現れる!!」

踊子「逃がすか!!」

サキュバス「氷属性魔法レベル3!!」

バキバキバキ!!

踊子(う、氷の壁が!!)

勇者「……いいさ、何度だって退ける……うっ」

ミシ、ベキベキベキッ!

勇者の体は氷とともに崩れ落ちた。

踊子「勇者様!!!!」

156: 2010/02/26(金) 17:10:26.06 ID:5G8rX..0
50

--教会--

盗賊「……なるほど。痛み分けってとこですか」

貧O「うん」

盗賊「こっちは俺と賢者さんと闘士と貧Oさんが氏んで、あっちはマンティコアしか氏んでないのかぁ……ってばか。完全に負けてんじゃん」

貧O「いいじゃないか。こっちは例え氏んでも、教会にもってけばいくらでも生き返るんだし」

盗賊「すげぇ理不尽だな。これじゃあ魔王軍に明日は無い!!」

157: 2010/02/26(金) 17:17:23.89 ID:5G8rX..0
51

--教会--

貧O「それより……なんか違和感とかない?」

盗賊「へ?別になにも変わらないけど……あ、左目が見えない!!……ってなんだぁ、包帯が巻いてあるだけじゃないの」

賢者「あはははは」

踊子「あはははは、はは、は」

盗賊「ぺろんとね!……ん?見えない……あれ?」

賢者「落ち着いて聞いてくれ盗賊君」

盗賊「うん……なに?」

賢者「まずだな、戦闘の結果、生き残ったのは踊子君だけだった」

盗賊「うん。らしいね」

賢者「それでだ。踊子君は優先順位的にも貧Oさんをまず教会に連れて行ったんです」

踊子「結構バラバラになってたから大変だったんですよぉ」

盗賊「まぁ当たり前だよね。貧Oさんあってのパーティだもん」

賢者「で、次に復活した貧Oさんと踊子君とで氏体を回収しにいった」

盗賊「ふむふむ」

賢者「次に誰を選んだのかということなんだが、本来は僕と盗賊君を運ぼうとしたらしい」

盗賊「ほうほう」

賢者「だけれど君の体はぐっちゃぐちゃになって飛散していたんだ。悲惨なまでに」

盗賊「ダジャレすか」

160: 2010/02/26(金) 19:42:20.70 ID:5G8rX..0
52

--教会--

賢者「そして肉片をかき集めるのがだるいということで彼女達は」

盗賊「おい」

賢者「まずは僕を蘇生して、僕に修復魔法を使わせようと考えたんだ」

盗賊「さっきのはスルーでいいんですか?」

賢者「しかしどちらかが僕を運んだとして、空いてるもう一人が闘士君を運ぶのは不可能ですよね?」

盗賊「闘士デカイからなぁ」

闘士「……うほっ」

賢者「それで両者の負担が公平になるようにと二人で闘士を運んだらしい」

盗賊「なんで、私だけ疲れるのやだ~、みたいな展開になってんだよ」

賢者「さぁ段々と日も暮れてまいりました。次こそ氏体運びも終わると思った刹那!」

盗賊「……ごくりっ」

賢者「踊子君はお風呂に行ったそうです」

盗賊「ふざけんなよ!!」

162: 2010/02/26(金) 19:52:09.47 ID:5G8rX..0
53

--教会--

踊子「もう限界だったんですよ~wwだってこの村からダンジョンまで何キロあると思ってるんですかぁ」

賢者「そして貧Oさんも踊子君に拉致られた」

貧O「……てへっ!」

盗賊「確信犯だ!!絶対同意の元だ!!」

賢者「しかし、闘士君は男だった」

盗賊「お、おお?」

闘士「お、おで」

賢者「闘士君は一人暗い中ダンジョンまで戻った。闘士君ほどの体格なら僕ら二人分の氏体など軽々と運べる」

盗賊「おお!!」

賢者「しかし盗賊君の氏体は悲惨(笑)だったのでかき集め切れず僕の氏体だけ持って帰って来たらしい」

盗賊「本当に悲惨だよ!!」

賢者「……蘇生され、意識を取り戻した僕は闘士君のベッドの中だった……」

盗賊「……ごめん」

164: 2010/02/26(金) 20:12:10.82 ID:5G8rX..0
54

--教会--

賢者「……いいんだ。そして悪夢の一夜を過ごした後、つまり今日」

盗賊「一日ほったらかされてたんか俺の氏体は!!」

賢者「みんなで回収しにいったら……そこには……何かをついばむオオカミの群れが!!」

盗賊「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

賢者「とりあえず掻き集めたさ!ばっちぃの覚悟で!!」

盗賊「バッチぃ言うな!!」

賢者「何匹かのオオカミの腹開けて回収したさ!!手探りで!!」

盗賊「グロイよさっきから!!」

賢者「だけれど、探せど探せど左目(あ、右目かも(笑))が見つから無い!!」

盗賊「そんな理由だったのかよおおおおおおおおお!!」

165: 2010/02/26(金) 20:24:50.64 ID:5G8rX..0
55

--教会--

盗賊「ひどいっ!!ひどすぎるよっ!!」

貧O「あ、いやでもっ、眼帯の盗賊って漫画みたいでかっこいいとおもうゾ☆」

盗賊「理由によるよっ!!」

賢者「……ちなみに他にいつもと違うとこないですか?」

盗賊「あぁん?!……うーん、いや別になんともないとおもうけど」

踊子「それはよかった~」

盗賊「ん?俺確か12個スキル持ってたはずだけど10個しか思い出せない。おっかしぃな。度忘れしちゃったww」

貧O、賢者、闘士、踊子(脳の一部かぁ……)

盗賊はスキルを二つ忘れた。

166: 2010/02/26(金) 20:38:57.71 ID:5G8rX..0
56

--宿屋--

貧O「そういやはい、コレ」

盗賊「へ?なにこれ」

貧O「戦利品。マンティコアの腹から出てきたの」

盗賊「なんか立派な本みたいだけど」

貧O「まぁ……有効に使いなさい」

盗賊「ふぅん……」

ペラ

盗賊「過去読みの書?」

貧O「って、いつまで名前が貧Oのままなんだよ私は!!」

167: 2010/02/26(金) 20:53:12.82 ID:5G8rX..0
57

--宿屋--

盗賊「なになに、この本の最初のページに、過去を知りたい人の毛髪を挟むとその人の過去が読めます?うっさんくさ~……なんていいませんよ剣と魔法の世界ですから」

盗賊はベッドに腰掛ける。

盗賊「丁度いいや、誰かの縮れた毛がベッドに落ちてる。まぁ俺のだと思うが試してみるにはちょうどいいか」

盗賊は毛を挟んでページをめくった。
適当に開いたページの日付は盗賊達が西の王国に来た日を示していた。

盗賊「お、あの日か。懐かしいなぁ、どれどれ」

『いいのか、ホイホイついてきちまっ(ry』

それは紛れもない、闘士の過去だった。
闘士が異常な性癖に目覚めた日の出来事が、赤裸々に、克明に、細部に渡って、かつ大胆に描写されていた。



盗賊がその日に食べた物を全て吐き出したとしても、誰が文句を言えよう。

168: 2010/02/26(金) 21:03:57.98 ID:5G8rX..0
58

--宿屋--

盗賊「ひどいBL小説を見た……次から気をつけよう」

盗賊は髪の毛を採取するべく、宿屋を歩きまわることにした。

盗賊(いやでも……これはプライバシーの侵害だな?……誰にだって知られたくない過去があるだろうし)

本を色んな角度から眺める。

盗賊(なんでこんなアイテムがあるんだろう)

勇者「あぁいたか盗賊」

盗賊「あ、勇者さんおはようございます。うわ私服verだ」

勇者「……もうあんだけ知れ渡ってしまったからな。戦闘や移動時以外まで鎧を着る必要は無いと思って」

盗賊「……可愛いです」

勇者「は、はぁ!?何言って」

盗賊「女子高生みたいです」

勇者「……もうそんな歳ではないんだがな」

盗賊「え?いくつなんですか?」

勇者「女に歳を聞くな!!」

169: 2010/02/26(金) 21:08:28.17 ID:5G8rX..0
59

--宿屋--

勇者「三日後だ」

盗賊「へ?何がです?」

勇者「最終決戦だ。三日後に魔王城に乗り込むぞ」

盗賊「あぁ了解しました。ついに魔王城かぁ……ついにというか、もうというか」

勇者「それまで体を十分に休めておけよ」

盗賊「あーい」

その日、みんなで川原へ行ってBBQをした後、カラオケ大会をした。

171: 2010/02/26(金) 21:40:26.21 ID:5G8rX..0
60

--宿屋--

盗賊「髪の毛落ちてる……」

盗賊(どうしようかな、誰のだかわからないしな。でも暇だしな。家にいたころはパソコンがあったから一日中ボーっとすごせてたけど、なにも無いと一日が長いんだよなぁ……えーい!みてしまえええ!!!!)

盗賊は誰のものともわからない毛髪を本に挟み、最初のページを捲った。

172: 2010/02/26(金) 21:54:55.79 ID:5G8rX..0
61

--誰かの過去--

私の最初の記憶。
それは下水道で生活していた時のもの。
暗くてジメジメしていて汚い水が流れている。でもそれが世界の全てだと思っていた。

??「おお、ここにいたのかい。あんまり動いちゃだめだと言ったろう」

?「うん、でもねずみさんがいたのー!」

今考えるとおかしな話だが、私は喋る白い色のワニと暮らしていた。

??改め白ワニ「ほら食べ物を持って来たよ。いつものきれいな場所で食べようね」

?「うんー!!」

どういう経緯で白ワニと出会ったのかわからないが、私にとって白ワニは親のようなものだった。

白ワニ「最近上の人間達があたし達に気づいたようなんだ。そろそろ引っ越しをしようと思うのよ」

?「わかったー」

173: 2010/02/26(金) 22:15:49.81 ID:5G8rX..0
62

--誰かの過去--

私達は定期的に住む場所を変えていた。
白ワニが言うには、人間達に見つかると悪いことが起きるらしい。
何も知らなかった私は、それをまるで遊びのように感じて喜んでいた。

白ワニ「はっはっ」

?「どうしたのー!?」

白ワニ「大丈夫、なんでもないのよ。さぁ、ソーセージよ。たんとおあがり」

白ワニは頭から血を流して帰って来た。

174: 2010/02/26(金) 22:27:01.17 ID:5G8rX..0
63

--誰かの過去--

今だからこそわかるが、私が当時口にしていた食糧は全て白ワニが人間から奪ってきたものだった。
その時の姿を人間に見られてしまったのだろう。
私達の引っ越しはその日のうちに行われることになった。

バシャン

?「ん?なんか音がしたー」

白ワニ「!?人間が追って来たんだわ!!逃げるわよ!!」

?「あう」

私の手からこぼれ落ちたソーセージが下水にダイブした。

ドポン

人間A「おい、今あっちから音がしたぞ!!」

175: 2010/02/26(金) 22:32:37.14 ID:5G8rX..0
64

--誰かの過去--

白ワニ「気付かれた!!……先にお逃げ……!!」

白ワニは私に先に行けと道を譲る。

?「白ワニはどうするの??」

白ワニ「いいからお逃げ!!早く!!」

?「う、うん」

白ワニ「この子には指一本触れさせはしないよ!!」

白ワニは元来た道を逆走していった。
私は言われた通りに逃げようとしたのだが、どこに逃げたらいいのかわからなかったので、結局白ワニが戻ってくるのを待つことにした。

?(んしょ、ここに座って隠れてればいいよね)

人間B「うわ!!ワニだっ!!ワニが出たぞ!!みんなこっちに来てくれ!!」

人間A「なんと恐ろしい……!噂に聞いた通り、真っ白だ……悪魔の手先に違いない!!」

白ワニ「グアア!!」

今までに一度も聞いたことがない威嚇のような声を、白ワニは人間に向けてはなっていた。

白ワニ「ゴオオオオオアア!!」

白ワニ「こっちにくるな!!人間どもが!!」

人間C「こいつ吠えて威嚇してやがる!!」

176: 2010/02/26(金) 22:37:50.68 ID:5G8rX..0
65

--誰かの過去--

バキっ
グシャっ

何かを叩き潰す音が下水道に響いている。

白ワニの声はもう聞こえない。

?(どうしたのかな?)

あの角の向こうで何が起こっているのか、私は行ってみたい衝動に駆られた。

??「なぁんですかぁ!?白いワニ氏んじゃってるんじゃないですかぁ?せぇぇっかく貰いにきたというのに」

?(……え?)

人間B「団長さん。そうは言ってもこいつを生け捕りは無理ですよぉ。いきなり襲いかかってきたんですよ?」

団長「そうは言ってもねぇ。せっかくうちのサーカスの目玉になると思ったのに……」

?「白ワニ?……」

私は我慢できず出て行ってしまった。

人間C「!?お嬢ちゃん?なんでこんなとこに!!危ないよ!!」

そこには鉄の棒や農具で滅多打ちにされた白ワニの氏体があった。

?「ひっ!!」

団長「おやぁ」

177: 2010/02/26(金) 22:43:00.34 ID:5G8rX..0
66

--誰かの過去--

団長「この子はこんなみすぼらしい格好をして……どういうことなんでしょうね」

?「あう」

人間B「お嬢ちゃん、どこのお子さんだい?」

?「あうあうあう」

人間A「ありゃ。ちょっとショッキングなものを見せちゃったかなぁ……」

?「あうー!あうー!!」

団長「ふむ……」(白いワニに寄り添っている?……ほぉ)

団長「ワニに育てられた少女といったところですか。面白い。この子は私が頂いていきます」

今の時代でこんな発言をしようものなら速攻で捕まるだろう。

178: 2010/02/26(金) 22:47:23.62 ID:5G8rX..0
67

--誰かの過去--

団長「お次は本日のメインイベント!!皆さまお待ちかね、世にも珍しい、全六属性全ての魔法を使える少女の登場でーす!!」

湧き立つ観客を前に、私はお立ち台の上でスポットライトを当てられる。
そして私はお姉さんが持っている板の色を見て、その属性の魔法を使うのだ。

ワーワー

お姉さんは青の板を掲げる。
私は水属性魔法を噴水のようにして発動させた。
観客は沸き起こる。

ワーワー

最初は青と水色の判断を間違えて、よく団長に怒られていた。

お姉さんは黄色の板を上げる。
私は雷属性魔法を使った。

団長(最初はワニに育てられた少女として拾ってきたのに……とんだひろいものでしたよ)

179: 2010/02/26(金) 22:51:41.85 ID:5G8rX..0
68

--誰かの過去--

お姉さん「お疲れ様。精神的に疲れちゃうんでしょ?魔法って。はい、水」

?「あり、がとー」

お姉さんはやさしくしてくれた。多分彼女の過去も私に似ていたんだろう。

休憩室に一人の男の人が入って来た。

??「やっぱりだめだ。あの子は感情を無くしちまったのかもしれない」

お姉さん「あ、お兄さん。……あの子って」

??改めお兄さん「あの子だよ。二週間前に団長が拾ってきた……」

私と同世代の男の子。

180: 2010/02/26(金) 22:55:28.07 ID:5G8rX..0
69

--誰かの過去--

新しく入って来た男の子は何も喋らなかった。何も食べなかった。
たまにコップで水を置いておくと空になっていたが、それだけで栄養が足りるわけもなく、男の子は段々やせ細っていった。

?「なんで、なにも、たべないの?」

返答は返ってこない。

?「なんで、なにも、しゃべらないの?」

返答は返ってこない。

なんでそんな子を団長を拾ってきたのか。
足が五本ある熊や飼いならされて羽をもがれたペガサスと比べて何も特別なことはない。

?「これ、おみず」

私が水の入ったコップを渡そうと檻に入った時、足をひっかけて転んでしまった。

?「あくっ」

水は男の子にかかってしまった。

?「ごめ、なさい!いま、ふくから」

男の子の頭を拭いていて初めてこの子が連れてこられた理由がわかった。
男の子の頭からは、小さな角が生えていたのだ。

181: 2010/02/26(金) 23:03:22.33 ID:5G8rX..0
70

--誰かの過去--

?「あ、おはよう」

男の子「おはよう……」

それから大分経って、私達は少しだけ話すようになった。男の子はちゃんと食事をとるようになり、健康的になった。

お姉さん「お~少年~。どうだい?ここには慣れた?」

男の子「まぁまぁ……」

男の子は依然として暗かったが、誰かと喋っている姿を見て、なぜか私は喜びを感じていた。

182: 2010/02/26(金) 23:14:23.19 ID:5G8rX..0
71

--誰かの過去--

王国からえらい人がやってきた。なんでも私の噂を聞いて来たらしい。


団長「いやいやそうはおっしゃられましてもぉ。あの子は我がサーカス団の顔なんですよぉ」

??「好きなだけ金を払ってやる。いくらがいい?」

団長「……そうですかぁ。では100億用意して頂きましょうか」

??「……」

団長「貴方様が本当に王国の使者で、それほど重要だと言うのであればそれくらい払えるでしょう?」

??「……わかった。明日までに持ってこさせよう」

団長「なぬ!?」

184: 2010/02/26(金) 23:19:15.35 ID:5G8rX..0

72

--誰かの過去--

私はまた売られるらしい。

団長「ふぅーむ……」

団長はずっと唸っていた。
私を売ったほうが儲かるのか、売らないほうが儲かるのか計算していたのだろう。
そして相手が王国の使者だった場合、売らなくてはいけないということも頭にいれて……。

団長「ふむぅ。決めました……お姉さんや、あの子を私の部屋に」

お姉さん「!?……っ、わかりました、団長」

185: 2010/02/26(金) 23:28:02.75 ID:5G8rX..0
73

--誰かの過去--

?「それでねー、わたしねー」

男の子「ねぇ……一つ聞いていい?」

?「ん?なぁに?」

男の子「君は人間のこと、どう思う」

?「え」

男の子「人間」

?「ん……」

私は白ワニが殺された時のことを思い出していた。
私の親は人間に殺されたということを。

?「団長もあの人たちも嫌い」

男の子「……」

?「でもお兄さんやお姉さんや、男の子は好きだよ」

男の子「……僕は人間じゃないよ」

186: 2010/02/26(金) 23:35:25.58 ID:5G8rX..0
74

--誰かの過去--

?「え?人間だよぉ」

男の子「違う」

彼は亜人種。当時の私は知らない言葉。

男の子「人間なんて」

カンカンカンカン

私達の檻部屋に誰かが降りてきた。

?「あ、お姉さんだ。どうしたの?もう夜だよ?」

お姉さん「うん……ちょっとね……あの」

?「?なぁに?」

男の子「行かない方がいい」

お姉さん「!?」


187: 2010/02/26(金) 23:43:45.95 ID:5G8rX..0
75

--誰かの過去--

男の子「行かない方がいいよ」

?「?なんのお話?」

私は振り返って男の子に聞いてみた。

お姉さん「……ちょっと来て、お話があるらしいの……団長が」

?「私に?」

お姉さん「うん……」

私は男の子が言ったことが気になったが、団長に逆らうことはできなかったので行くことにした。

ぐいっ

?「あう」

私の服を男の子が掴んでいる。

男の子「……」

?「お話してくるね。終わったらまたお話ししよう」

男の子「……」

男の子は諦めたように手を離した。

188: 2010/02/26(金) 23:50:38.10 ID:5G8rX..0
76

--誰かの過去--

お姉さんは団長の部屋の前までついてきてくれた。

お姉さん「……」

でもお姉さんの顔はいつもと違っておかしかった。

?「どうしたの?」

お姉さん「え!?あ、いや……大丈夫よ」

お姉さんは仕方が無かったのだ。

団長の部屋につくとお姉さんは言った。

お姉さん「じゃあ……私はここまでだから」

?「うん、ありがとー」

お姉さん「……ごめんね」

?「?なんで謝るの?」

189: 2010/02/27(土) 00:02:56.59 ID:vNwru420
77

--誰かの過去--

?「お邪魔しまぁす」

ギィ

団長の部屋に入るのは初めてだった。

団長「やぁよくきたね」

私が団長に向かって歩きだした時に、何気なく上を見上げたのがいけなかった。

?「ひっ」

天井には白ワニの皮が装飾品として貼り付けられていた。

190: 2010/02/27(土) 00:05:39.97 ID:vNwru420
78

--誰かの過去--

団長「あぁこれですか。見覚えがあるでしょう。下水道の主ですよ」

?「ひぃっ」

白ワニを殺されたシーンが、脳内で再生される。

団長「白くてきれいですよねぇ……まったく農民の馬鹿が。この白い皮の価値を知らずに滅多打ちにしやがって。まぁそれでも仕方なくか

ざっているんですがねぇ」

団長は立ち上がり、震える私に歩み寄る。

団長「おやどうしたんですか震えて」

?「ひっ、うくっ」

ひどい。
ひどい。

私の家族をこんな……

団長「嫌なんですよぉ泣かれてしまうのは」

団長はハンカチを取り出し、私の涙を拭う。

団長「だって、泣かすのが好きなんですから」

191: 2010/02/27(土) 00:07:24.17 ID:vNwru420
79

--誰かの過去--

ひどい。
ひどい。
ひどいひどい。

ひどいひどいひどいひd
人間なn

192: 2010/02/27(土) 00:12:41.35 ID:vNwru420
80

--誰かの過去--

目を覚ました時は全てが燃えていた。
サーカス会場は潰れ、団員は千切れて、団長は貼り付けられていて。

ゴオォオウ

人の氏体の山の上に誰かが立っている。

男の子「……君の心の声が聞こえた」

?「あ、あう……う」

男の子はまっすぐにこちらを見ていた。
男の子の頭の角は心なしか大きくなっているように見える。

男の子「……」

?「ひうっ、いっく」

もう何が何だかわからなかった。この世はあまりにひどいことが多すぎる。



男の子「……」

そして私が泣いている間に男の子の姿は見えなくなっていた。

??「これは!!……ん?君!大丈夫か!?」

193: 2010/02/27(土) 00:15:22.39 ID:vNwru420
81

--誰かの過去--

それから私は王国に連れられていき、王様に会った。

王様「君か……こんな幼いのに大変なことだ」

?「……」

王様「……大賢者」

??改め大賢者「はっ」

王様「この子の世話をお前に任せる」

大賢者「お任せください」

194: 2010/02/27(土) 00:21:13.95 ID:vNwru420
82

--誰かの過去--

大賢者「君は今までも辛い人生を送って来たらしいな。だがこれからだ。君の過酷な運命をここから始まる」

?「……?」

もう嫌だった。

大賢者「数年後、この世界に魔王が誕生する。強大な力を持った人類の敵だ」

もう嫌だったのに。

大賢者「魔王を倒せるのは古今東西、どんな書物を見ても、勇者しかいない」

もう

大賢者「君が世界を救うんだ!!勇者よ!!」

195: 2010/02/27(土) 00:26:05.18 ID:vNwru420
83

--勇者の過去--

そこから本当の過酷な日々が始まる。

?改め勇者「はっはっはっはっ!!」

大賢者「まだだあ!!まだ甘いっ!!」

ごすっ

勇者「ごぶっ!!」

大賢者は、先代勇者パーティの一員だったらしく、年齢を感じさせない戦闘能力を持っていた。

大賢者「世界の平和のために!!人類の笑顔のために!!勇者が屈してはならぬ!!」

勇者「がっは!!」

この過酷な訓練のせいで貧Oになった。

198: 2010/02/27(土) 00:37:20.35 ID:vNwru420
84

--勇者の過去--

?「ふぅぅむ。非常に興味深いでーす。勇者が勇者足りうる、この勇者因子なるもの……」

勇者「……」

午前は戦闘訓練、午後は何かの実験に付き合わされた。
これも世界平和のためだという。
誤解しないで欲しいのだが、研究員は私を本当に大切にしてくれた。
あくまで実験材料としてだが。

?改め研究員「ではちょっと電撃を流しますね?その際の勇者因子の反応を見たいので」

この過酷な実験のせいで貧Oになった。

200: 2010/02/27(土) 00:40:40.51 ID:vNwru420
85

--勇者の過去--

何年経ったかわからない。私は気付けば大賢者をゆうに上回る戦闘能力を身に着けていた。

大賢者「ふぅむ!あっぱれだ!!」

大賢者は私を憎んでしごいていたのではない。
単純に、世界のために私を鍛え続けていたから、私がノルマを達成する度に嬉しそうに喜んだ。

また戦闘訓練んだけでなく、学業や一般常識、魔法学に至るまで全てを大賢者から学んだ。
大賢者はあらゆる意味での師だったのだ。
そして数がわかるようになって私の年齢が26歳だということがわかった。
そろそろ結婚適齢期的にアレなんだということも。

カップ数については途中で学ぶことをやめた。

202: 2010/02/27(土) 00:43:19.98 ID:vNwru420
86

--勇者の過去--

大賢者「魔王が現れた」

勇者「……わかりました。今までありがとうございました」

大賢者「うむ……しっかりな」

勇者「は」

大賢者との挨拶を済ました後、王様に会いに行く。


勇者「というわけで魔王を倒しに行こうと思います」

王様「おお。頼んだぞ、勇者よ」

勇者「では」

王様「あ、そうだ、ちょっとまって」

勇者「?」

王様「お供を今別室で待機させているんだ」

203: 2010/02/27(土) 00:46:17.99 ID:vNwru420
87

--勇者の過去--

勇者「しかし……私一人でも大丈夫かと思いますが」

王様「いやいや、お供はいるよ。仲間というのはいいもんなんだ……本当にな。旅をしてみればわかる」

勇者「そうなん……ですか」

サーカスにいたあの頃を思い出した。
私の周りにはお姉さんとお兄さんと……男の子がいた。

仲間……か

淡い期待を抱いてしまったのを覚えている。
そして王様に言われた通りに会議室まで足を運ぶ。
中に入ろうとした瞬間、

男B「せんせーwwwwww勇者ってのは一人じゃないんすかwwwwwwww」

受付「え?もちろんそうですけど?」

男B「え?」

受付「え?」

ドア越しに声が聞こえてきた。

205: 2010/02/27(土) 00:49:42.68 ID:vNwru420
88

--勇者の過去--

受付「皆様は勇者のお供に選出されたというわけですが」

俺「お供!?勇者じゃなくて?」

受付「はい、そもそも今回の募集は勇者様のお供をぼしゅ、!!」

男A「そうだったのか……」

男B「え?wwどゆことどゆことwwww」


どうも中では説明の行き違いがあったようだ。


受付「そ、それでは勇者様と一緒に魔王討伐に行っていただくわけですが、」

男A「納得いかない!!」

俺「!?」

男C「お、おで」

男A「一大決心をして来たというのにあんまりだ!!」

……一大決心……だと?

ふざけるな……私が一体どんな思いで人間を……人間を!!

男B「そ、そうだそうだwwww一w大w決w心wwwwwwwwwww」

君たちが一体どんな経験をしてきた、君たちが一体何を積み上げてきた!!それを!!!

受付「あ、あっとぉ、えっとおぉ」

勇者「そこまでだ!!」

私は生まれて初めて怒りがこみ上げた。

勇者「結果に不満があるのなら、それを覆すだけの力を私に見せてみろ!!」

212: 2010/02/27(土) 19:52:34.80 ID:vNwru420
89

--宿屋--

パタン

盗賊「……」

盗賊はそこまで読んでから、ことの重大さに気付き本を閉じた。

盗賊「あー……」

勇者さんの過去だ。

盗賊「あー……」

勇者「ちゃんと読んだか?」

盗賊「ひっ!?ゆっゆゆゆ、貧Oさん!?」

勇者「そこまで言ったなら勇者って呼べよ!!」

213: 2010/02/27(土) 20:09:15.84 ID:vNwru420
90

--宿屋--

勇者「……どうだった?」

盗賊「まさか……わざとだったんですか。髪の毛がこれ見よがしにテーブルに置いてあったのも、俺に本を渡したのも」

勇者「うん……」

盗賊「なんでですか。どうして」

勇者「……私を知っておいて欲しかった。私がどんなオモイで勇者をやっているのかを。あの時みたいに君が……身を犠牲にしてまで守る必要のある存在なのかを」

盗賊「……」

214: 2010/02/27(土) 20:16:15.82 ID:vNwru420
91

--宿屋--

盗賊「なんでいきなり……」

勇者「答えろ」

勇者さんは真面目な顔で俺の反応をうかがっている。



盗賊「……以外と無敵じゃないんですね」

心は

勇者「!!」

盗賊「やっぱり勇者さんには俺達仲間が必要ですよww」

勇者「答えになっていない!!」

盗賊「墓までついていきますよ」

勇者「!?」

勇者「こ、答えに」

盗賊「俺は勇者っていう職業の人じゃなくて、勇者さんについていくと決めたんですから」

215: 2010/02/27(土) 20:23:47.96 ID:vNwru420
92

--宿屋--

勇者「よ、よくまぁそんなことを……」

盗賊「あ、てか勇者さんて今27歳くらいなんですか?」

勇者「な!?」

盗賊「びっくりしました。17歳くらいにしかみえないっすよ。背も低めだし童顔だし乳は控えめだし」

勇者「うがっ!!??」

盗賊「あとですね、やたら貧Oを何かのせいにしたがってましたが関係ないんじゃないかと思います^^」

勇者「おまえええええええええええええええええええ!!胸について言いすぎだろおおおおおおお!!」

216: 2010/02/27(土) 20:30:25.37 ID:vNwru420
93

--西の王国、上空--

バサッバサッ

サキュバス「くそっ……二度もしくじったら魔王城に帰れるわけもないわ……おのれ勇者め!!」

サキュバスが包帯だらけの姿で空を飛んでいる。

サキュバス「ん?あれは……」

217: 2010/02/27(土) 20:44:53.00 ID:vNwru420
94

--宿屋--

勇者「よし……準備はいいな?いくぞ!!」

一同「おお!!!!」

勇者「っとそうだ、その前に確認しておきたいことがある」

盗賊(まさか……あれを言う気なのか……?)

勇者「すごいいまさらなんだが、みんなの属性を教えて欲しい」

盗賊「うわいまさらぁー……」

218: 2010/02/27(土) 20:52:07.66 ID:vNwru420
95

--宿屋--

賢者「僕は基本的になんでもいけますが、巨O、貧O、つるぺた、妹、ツインテール、獣耳、ニーソ、口リって感じでしょうか」

踊子「わたしは両刀ですねぇ~」

闘士「BL、つなぎ、シOタ」

勇者「そっちの属性じゃないよ!!しかもみんなやばいよ!!」

盗賊「俺は勇者ですね」

勇者「なっ!!……あう/////」

賢者(……何かあったか?)

219: 2010/02/27(土) 20:57:25.02 ID:vNwru420
96

--宿屋--

賢者「ではまじめにいきまして、僕は水属性です」

踊子「わたしは氷属性ですよ~」

闘士「つ、土」

盗賊「俺は勇者ですね」

勇者「流れ読めよ」

盗賊「風」

賢者「踊子さん氷属性だったんですか。上位属性いいなぁ」

盗賊「あのさ、魔法使いと別れる時にもいってたけど、上位属性ってなに?」

賢者「勉強してこなかったんですか?」

盗賊「実技ばっかだったのうちのギルド……」

220: 2010/02/27(土) 21:26:21.73 ID:vNwru420
97

--宿屋--

賢者「まさかいまさら属性について講釈するはめになるとは思いませんでした」

勇者「多分書きどころがわからなかったのだろう」

踊子「そういう話はしちゃだめですよ~」

賢者「ではまず、属性は全部で6つあります」

盗賊「あぁ、それは知ってる」(過去編で知った)

賢者「火、水、土、風、氷、雷となるわけなんですが、氷と雷は使える者が少なく、また強力であるため上位属性と呼ばれています」

踊子「わたしはすごいんですよぉ~」

盗賊「まじか!!……あれ?リストラした魔法使いの属性ってたしか」

賢者「上位属性の雷です」

盗賊「……俺がリストラされるべきだったんじゃね?」

222: 2010/02/27(土) 21:33:12.44 ID:vNwru420
98

--宿屋--

賢者「ちなみに属性によって得意分野もかわってきます。火は攻撃メインで、水は治癒系が多く、土は肉体強化が得意で、風は補助って感じですかね」

盗賊「ほうほう。上位属性のは?」

賢者「氷と雷ですか。氷は回復、補助、攻撃をこなし、雷は攻撃、補助ですね」

盗賊「得意分野多いな」

賢者「上位属性ですから。ちなみに氷のほうが一個多いからすぐれているのか、というと一概にそうとは言えません。なぜなら雷は超強力なMAP兵器があるんで」

盗賊「スパロボっすか」

踊子「経験値稼ぎにもってこいですぅ~」

盗賊「ねぇ、やっぱし俺いらなくない?ねぇ」

223: 2010/02/27(土) 21:40:16.37 ID:vNwru420
99

--宿屋--

勇者「しかしその属性も、有効な職業を選ばなくては宝の持ち腐れになる」

盗賊「ほうほう、といいますと?」

勇者「簡単に言えば攻撃を得意としない属性なのに、職業が攻撃魔法しかなかったりとかな」

盗賊「なるほどねぇ」

勇者「他にも性格や思考等、色々な要素が複雑にからんでいて、適性の職業を選ぶのは難しいんだ。中には生まれながらにまともに機能しない組み合わせを持つ者もいるしな」

盗賊「へぇ~」

勇者「その点君たちはあらゆる面から見て、中々にいいと思うよ。やはり王国が作った適性検査なだけはある」

賢者「あの検査はそこまですぐれていたものだったんですね」

勇者「うん。例えるなら裏ボスを倒すのはかなりきついが、ストーリー上のラスボスを倒すくらいなら十分なんじゃないかって感じ」

盗賊「なんすか裏ボスって。なんすかラスボスって。ストーリーってなんすか」

224: 2010/02/27(土) 21:48:42.61 ID:vNwru420
100

--宿屋--

賢者「しかし上位属性だからといって、必ずしも他の属性に勝てるわけではありません」

盗賊「まだ続くの?」

賢者「つるぺた口リとむっちり巨Oお姉さんのどちらが優れているか、ということと同じように」

盗賊「なんでそんな例えをだしたのさ」

賢者「例に出すなら、氷は炎に弱いんです」

盗賊「溶けますしねぇ」

賢者「ゆえに敵はどの属性が弱点なのか、自分が相性悪かったらどう立ち向かえばよいのか、など、非常に戦略的なことをやってたんですよいままで」

盗賊「今までなんにも考えずに速度上昇うって、ナイフに風属性付加して殴ってたわww」

賢者「言っときますけど、たまに盗賊君の攻撃で回復してたモンスターいますからね」

盗賊「まじで!?ごめんなさい!!」

225: 2010/02/27(土) 22:03:08.71 ID:vNwru420
101

--宿屋--

盗賊「そんな知略にとんだことを、あの戦場でやっていたとは……」

賢者「何を言ってるんです。相手の属性を看破できていたのは、盗賊君の鑑定眼のスキルのおかげじゃないですか」

盗賊「鑑定眼?何それ?弱点を見つける透視眼じゃなくて?」

一同(そのスキルが無くなってたのかよ……)

パーティにおける盗賊の価値がさらに低下した。

盗賊「そういや勇者さんの属性って……」

勇者「ん!?えっとねぇ……全部wwえへへww」

盗賊「ふざけんなよ!!」

226: 2010/02/27(土) 22:13:39.43 ID:vNwru420
102

--宿屋--

盗賊「絶対それ言いたくて話始めたろ!!」

勇者「ち、違うもん!!」

盗賊「何がもん、だ!27歳!!」

勇者「言うなそれまじでえええええええ!!」

賢者「合法……口リ!!ゴクッ」

盗賊「!?闘士!!やっちまえ!!」

闘士「お、おで!!」

闘士に捕まる賢者。

賢者「な、なぜだ!?なぜこんなことを盗賊くううううううううぅぅぅん」←ドップラー

賢者と闘士がパーティから離脱した。

踊子「もう今日行くのやめません?」

227: 2010/02/27(土) 22:19:53.77 ID:vNwru420
103

--宿屋--

賢者「そ、それでは次に……ステータスについて発表したいと思います」

闘士「お、おで!!」

勇者「するするー!!」

盗賊(こいつ……自分の有能さをひけらかして楽しんでやがる!!)

賢者「非常に便利なことに今はステータスチェッカーってものがありましてね。細かい数値まではわかりませんが、10段階ではかってくれるんです」

盗賊「へぇめっちゃ便利だね。ステータスはこうげき、ぼうぎょ、まこうげき、まぼうぎょ、たいりょく、まりょく、びんしょうせい、ぎじゅつの8項目だったよね」

賢者「その通りです。ゲームと違って、どんなに鍛えても技術以外はほとんど上がらないんですけどね。ではA~J表記と、10~1表記のどっちがいいですか?」

盗賊「じゃあ……」

①パワポケ大好きだからアルファベット!
②わかりにくいんだから数字に決まってんだろ!!ぼけぇ

安価できるほど観覧している人はいないと思うので、早かった方の意見を参考にします。

229: 2010/02/27(土) 22:34:49.61 ID:vNwru420
104

--宿屋--

賢者「一通りチェックし終わりましたね、じゃあ僕から発表しますね」

勇者「いぇいいぇーい!!」

盗賊「うざっ」

賢者「見ずらいでしょうから縦にしますね。
こうげきI
ぼうぎょH
まこうげきC
まぼうぎょA
たいりょくJ
まりょくB
びんしょうせいH
ぎじゅつE
総合点42
平均=5.25
って感じですね」

盗賊「縦って何」

勇者「おお、なかなかやるじゃないか。平均Fを超えてくるってのはすごいことだ」

賢者「ありがとうございます」

盗賊「ねぇ、縦って何」

踊子「うるせぇよお前。ちょっとだまっとけ」

盗賊「えぇえ!?怖い!!表情も声もいつも通りなのにセリフだけ超怖い!!ごめんなさいっ!!」

230: 2010/02/27(土) 22:42:01.56 ID:vNwru420
105

--宿屋--

賢者「じゃあ踊子さんいきますか」

踊子「お願いします~」

賢者「お、たかっ
こうげきJ
ぼうぎょH
まこうげきG
まぼうぎょD
たいりょくF
まりょくA
びんしょうせいD
ぎじゅつB
総合点46
平均=5.75」

闘士「す、ごい」

勇者「……」

盗賊「0.5しか違わないじゃん」

賢者「……0.5がどれだけ違うかわからないんですか?とんでもない差ですよ」

盗賊「……そうなの?」

賢者「属性とか職業とか、色々な分野で勝負の勝敗は決まってきますが、これだけステータスで差をつけられてしまっては正直負けは必至ですね」

盗賊「……0.5だよ?」

賢者「総合点の差で言えば4点です。この4点ですが、僕の総合点が42なので、僕の力の約10%に値します」

盗賊「う……%で直されると」

賢者「わかってもらえたでしょうか」

盗賊「あい……」

231: 2010/02/27(土) 22:53:06.56 ID:vNwru420
106

--宿屋--

賢者「では次、闘士君ですね」

闘士「お、おで」

賢者「闘士君は、と
こうげきD
ぼうぎょB
まこうげきJ
まぼうぎょD
たいりょくB
まりょくJ
びんしょうせいH
ぎじゅつH←ポイント
総合点40
平均=5」

踊子「闘士という職業らしい、肉体系特化ですねぇ~」

賢者「えぇ、最強特化のAが無いですが、苦手な部分を切り捨てたいいステータスです」

盗賊「最強特化?」

賢者「その職業が最も特化している部分です。鍛錬を積むだけではAには到達せず、少なからず才能を必要とします。そして次点で特化しているものがBになるんですよ」

盗賊「ふぅん……闘士君は才能ないのかwww」

闘士「……」







盗賊「アッー!」

232: 2010/02/27(土) 22:58:30.92 ID:vNwru420
107

--宿屋--

賢者「あと誰が残ってましたっけ?」

盗賊「ひ、ひどいっ!!」

賢者「冗談ですよwwえっと盗賊君は、
こうげきI
ぼうぎょI
まこうげきJ
まぼうぎょJ
たいりょくJ
まりょくJ
びんしょうせいG
ぎじゅつD
総合点19
平均=2.375」

盗賊「異常なまでに低くない!?」

勇者「まぁ、妥当か」

踊子「ですねぇ~」

盗賊「異常なまでに俺低く見られてない!?」

賢者「あ、これは昔こっそり測ったやつでしたww本当は、
こうげきG
ぼうぎょH
まこうげきH
まぼうぎょE
たいりょくG
まりょくG
びんしょうせいA
ぎじゅつB
総合点43
平均=5.375」

盗賊「おっしゃあ!!結構高い!!」

勇者「ほう……」

賢者「募集メンバー3人の中では一番高いですね」

踊子「ならその分仕事して欲しいとは口が裂けても言えませんね~」

盗賊「どっちにしろ叩かれるのか!!」

234: 2010/02/27(土) 23:17:33.82 ID:vNwru420
108

--宿屋--

賢者「では最後に我らが勇者様ですね」

勇者「勇者っ、楽しみっ!!」

盗賊「オチが見えるぜ……」

賢者「……
こうげきB
ぼうぎょB
まこうげきB
まぼうぎょB
たいりょくB
まりょくB
びんしょうせいB
ぎじゅつB
総合点72
平均9……」

盗賊「つええなんてもんじゃなかった!!」

賢者「まさか……これほどとは」

踊子「すっごおおい~」

盗賊「てかお前もう一人で魔王倒してこいや!!なにが0.5の差ははげしいだよ!!」

勇者「ひ、ひどい!!ついてきてくれるってゆったのにっ!!」

盗賊「知るか!!強すぎンだよお前!!むしろお前が魔王だ!!」

勇者「うわーん!!墓までついてくるっていったのにー!!」

賢者(……おやぁ?)

236: 2010/02/27(土) 23:26:46.88 ID:vNwru420
109

--宿屋--

賢者「まぁ、属性とステータスで全てが決まるわけじゃないですからね。……氏ぬほど重要ですけど」

盗賊「しかしあれだ。まじでなんでいまさらこんなこと説明しはじめたんだ」

勇者「作っちゃった設定をどっかで出したくて仕方がなかったんだろ」

盗賊「さっきからなんかみんな変ですよ。現実ですよここ」

237: 2010/02/27(土) 23:36:45.04 ID:vNwru420
110

--宿屋--

翌日。

勇者「よしっ!!今日こそいくぞ!!今日こそ本気出す!!」

盗賊「キリっ」

勇者パーティは魔王城へと向かった。


--魔王城--

ワーウルフ「……報告が遅れましたが、どうやらサキュバスはやられたようです」

魔王「ぬぅ……サキュバスがか……そうか、惜しい」

ワーウルフ「……魔王様?」

魔王「うぐっ!!…だ…ま……つか……」

ワーウルフ「魔王様!?」

238: 2010/02/27(土) 23:42:47.54 ID:vNwru420
111

--荒野--

賢者「思ったより早くつきましたね。……いや、不自然だ」

勇者「あぁ、一度もモンスターと遭遇していないというのはおかしい」

盗賊「罠なんすかね。でも見たところ魔王城周辺に変な所はないですよ」

盗賊は左目の眼帯を外して遠くを見ている。
左目の眼球を失った盗賊だったが、その眼窩に異変が生じたのだ。
なぜかその部分に魔力がたまるようになり、眼帯を外せばスキルを使わずとも透視眼が同じような効果を持つようになったのだ。

踊子「罠だったら罠ごと吹き飛ばせばいいんですよ~」

盗賊「なんでこの人こんなに好戦的なんだろう」

239: 2010/02/27(土) 23:52:26.48 ID:vNwru420
112

--魔王城--

賢者「……何事も無く着いちゃいましたね」

盗賊「この扉を開けた瞬間ドバッ、ということはありうる?」

賢者「無いとは言い切れませんが、さすがにそんなには入れないと思うんですよ」

盗賊「……あ!!いいこと思いついた!!」

勇者「聞こう」

盗賊「勇者さん、この小枝にちょっと火をつけてください。魔法で」

勇者「あぁ、たいまつか」

ボッ

盗賊「おkおk。じゃあ」

ポイっ

盗賊は放火した!

賢者「なっ!?」

勇者「!!」

盗賊「わざわざ罠かもしれないところに飛び込まないで、最初から燃やしゃぁよかったんだよww」

ゴオオオオオ!!

魔王城は勢いよく燃えている。

241: 2010/02/27(土) 23:59:17.20 ID:vNwru420
113

--魔王城--

魔王「……ぬ?焦げ臭いぞ……ガスの元栓は閉めたのか?」

ワーウルフ「……おかしいですね……ちゃんと閉めたはずなのですが」

モンスター「ご報告申し上げます!!魔王城が何者かによって放火されました!!」

魔王「何…だと…?」

ワーウルフ「……なんて恐ろしいことを……悪魔か!!」


バキっ

盗賊は勇者に殴り飛ばされる。

勇者「お前!!やっていいことと悪いことがあるだろ!!」

賢者「そうですよ!!放火がどれだけの罪だかわかってやってるんですか!?」

勇者「賢者!!水魔法で鎮火!!闘士!!回復薬も水だ!!ありったけかけろ!!」

賢者「わかりました!!」

闘士「お、おけ!!」

バッシャアーバッシャアアア

踊子「……本当使えねぇな」

盗賊「お、……俺が悪いの?」

※例え魔王が相手でも放火はしてはいけません。

243: 2010/02/28(日) 00:07:17.34 ID:dvbRT1g0
114

--魔王城--

モンスター「ご報告申し上げます。勇者ご一行によっ消火された模様です」

魔王「なんだと……?勇者たちがか……」

ワーウルフ「……魔王城全焼を防ぐとは、敵ながらあっぱれ」

魔王「うむ……宝の一つでもくれてやろうぞ」


--魔王城--

賢者「はぁ……回復薬ゼロになっちゃいましたね。私の魔力も半分使っちゃいましたし」

勇者「御苦労」(勇者スラッシュ用にとっておいた魔力が……)

踊子「ほら!早くみんなにいいなよ!!」

盗賊「ご、ごべんなざい……」

盗賊ははぶられていた学生時代を思い出して号泣した。

244: 2010/02/28(日) 00:13:18.97 ID:dvbRT1g0
115

--魔王城--

賢者「撤退した方がいいと思います。今の状態で魔王の左手と魔王の相手はできません」

勇者「あぁ、私もそう思う。今の私では魔王の左手すら勝てない」

踊子「アイテムも空ですしねぇ~」

盗賊「ひっぐ。う、うぅ……」

闘士「……」

泣いている盗賊を見て闘士の何かがこみ上げている。

ギィイィ

勇者「!?」

突然魔王城の門が開門する。

モンスター「勇者ご一行様方とお見受けいたします」

勇者「何の用だ」

モンスター「魔王様が消火のお礼をしたいと申されております」

勇者「いらん。元よりこちらの不手際でそちらに迷惑をかけたのだ」

モンスター「え!?何、まじで!?お前ら悪魔じゃねーの!?」

勇者「……すまぬ」

モンスター「うわー……ひくわー……放火とか、放火とか」

勇者「ぐっ!!」

盗賊「ごべんなざああああいい!!」

245: 2010/02/28(日) 00:25:11.49 ID:dvbRT1g0
116

--魔王城--

モンスター「……まぁいいからじゃあ入れや」

勇者「断る。私達は一次帰還する。出直してくるから首を洗って待っていろと魔王に伝えろ」

モンスター「……えーと、断られた時はなんて言えばよかったか……あぁそうそう、貧O!!」

勇者「な!?」

モンスター「あ、つるぺただったか」

勇者「ななな!?!?」

モンスター「で、えーと、そっちから順に、ポークビッツ、師匠、アバズレ、役立たず」

賢者「なぜそれををおおおおお!!」

闘士「……」

アバズレ「だ、誰がアバズレですか~」

盗賊「もう聞きなれたわ。ていうか闘士の師匠ってなんだ……あ、過去のあれか……」

モンスター「悔しかったらかかっておいでー」

盗賊「んなもん誰がいくねん。って言ってみるけど」

勇者「頃す!!いくぞみんなああああああ」

一同「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

盗賊「ってなりますよね」

246: 2010/02/28(日) 00:31:46.32 ID:dvbRT1g0
117

--魔王城--

モンスター「おーにさんこーちら」

フロアの中央まで走ったモンスターが振り向いた瞬間であった。

勇者「にぃ」

そこにはジャンプしながら大剣を振り被っている勇者がいた。

ザブグシュッ!!

ガコン

勇者「あえ?」

勇者の足元がパックリと開いた。まるで食わず嫌いのオチのように、音も無く落下する勇者。

賢者「な!!!!」

ガコン

そして役目を果たすと閉じてしまう。

247: 2010/02/28(日) 00:38:13.91 ID:dvbRT1g0
118

--魔王城--

賢者「まずい!!パーティを分断されてしまった!!闘士君、この床をぶち破ってください!!」

闘士「おおおお!!」

闘士が力を込めた拳を振り下ろす。

が、

ワーウルフ「……無粋ですね」

盗賊「!?」

唯一反応できたのは盗賊。
闘士が振り下ろした拳が、床に接触するまでの僅かな時間の中で

ザシュザシュザシュザシュ

盗賊「!!」

ワーウルフはどこからともなく盗賊達の前に姿を現して、

賢者「なっ!!」

賢者の右腕を切断し、

踊子「ごふっ……」

踊子の体を縦に裂き、

闘士「がはっ!!」

闘士の体を四つに分割した

サキュバス「……同胞サキュバスの仇です。御覚悟を」

248: 2010/02/28(日) 00:43:49.07 ID:dvbRT1g0
119

--魔王城--

勇者「やばいぞ!!これはやばい!!」

ヒュウウー

何もない空間を延々と落ちていく勇者。

勇者「まずい!!このままでは!!」

勇者は大剣を壁に突き刺そうとする。が、

勇者(壁に届かない!!)

このままでは最下層まで落とされてしまう。

勇者(飛行能力を付加する魔法は使えない……くそ!!せめて勢いを殺さなくては!!)

勇者の大剣が氷を纏っていく。

勇者「氷属性付加!!」

大剣の長さは倍以上となり、

勇者「おおおおおおおおおおお!!」

ザシッ、ギギギギギギギギギギギイイイイイイ!!!!

突き刺ささってブレーキとなる。

バキバキバキッ!!

勇者「くっ!!」(私じゃサキュバスほど使いこなせないか!!)

勇者「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

ドォン!!

249: 2010/02/28(日) 00:47:12.72 ID:dvbRT1g0
120

--魔王城--

勇者「げほっごほっ!!」(なんとか助かったか……しかし随分落とされてしまったな……ここは?)

魔王「よくきたな……勇者よ」

勇者「!!」(そ、んな)

ドオオン!!

魔王「どうした?お前が倒すべき敵は目の前にいるのだぞ?」

勇者「っく!!」

勇者は大剣を魔王に向けて構える。

魔王「……ん?その剣は……懐かしい」

勇者「??」

250: 2010/02/28(日) 00:55:23.29 ID:dvbRT1g0
121

--魔王城--

魔王「どうだ勇者よ。世界を半分や」

勇者「断る」

魔王「……つれんのぉ、恒例のイベントの一つじゃないか。それともこんな遊びに付き合うことも出来ないほど疲労しているのか?」

勇者「黙れ!!」

魔王「ふむ……ふふ、そういえば礼がまだだったな、ほれ、受け取るがいい」

魔王は何かを投げて渡す。
勇者は反射的によけようとしたが、それが回復薬であることを確認し受け取る。

勇者「なんの真似だ……」

魔王「我が城の消火活動を行ってくれたのだろう?その礼よ」

勇者「お前の施しなど!」

魔王「ほれ、これもだ。これもやる。誰が置いて行ったのかしらんが、我らには効き目の無い回復薬がなぜか魔王城のいたるところにある。おかしいとおもわない?」

勇者「……まぁね」

251: 2010/02/28(日) 01:01:34.56 ID:dvbRT1g0
122

--魔王城--

勇者「……」(毒などと姑息な手は使わないか)

グビッ

勇者の魔力が全快した。

魔王「ほう、もう少しためらうかと思うたが」

勇者「敵に塩を送って、倒されてから文句を言うなよ?」

魔王「ははは、敵ではないのだよ」

勇者「……」

勇者は剣を構える。

勇者「上で仲間が待っているんだ。さっさとケリをつけさせてもらう」

魔王「急ぐなよ若いな。もう少し話をしよう」

勇者「攻撃力最大上昇!!」

ゴウッ!!

魔王「……わかったわかった。試してみるがいいさ、お前の全力全開とやらを」

勇者は何も言わず、一足で魔王の首元へと移動する。

勇者「ゆううううううううううしゃ、スラッアアアアアアアアアアアアアアシュ!!!!」

魔王「……」

ドゴオオオオン!!

252: 2010/02/28(日) 01:07:57.10 ID:dvbRT1g0
123

--魔王城--

パラパラパラっ

勇者スラッシュ。
その凶悪な破壊力は、直接触れていなくとも魔王の部屋にある四方の壁に亀裂を入れるほどである。

勇者「……ばかな」

しかし

魔王「お前の奥儀など、頸動脈で止められるわ」

ミチミチっ

勇者の大剣は魔王の首を一ミリたりとも斬れなかった。

勇者「……うそだ」

魔王「ん?絶望したか?少女よ」

253: 2010/02/28(日) 01:15:44.56 ID:dvbRT1g0
124

--西の王国--

サキュバス「人間ども……何をやっているのかしら……」

兵士A「爆薬はセットしたか?」

兵士B「こっちは完了したぞ。みんな!安全ポイントまで下がれ」

サキュバス(爆薬?……氷漬けになった人間達を氷を割るという気?ばかねぇ、そんなんじゃ)

ドゴオオオン

サキュバス「……」

氷漬けになった人間達は、氷ごとバラバラに爆破されてしまう。

兵士A「よおし、次いくぞ。今日中にあと7個やらなくちゃならないんだ。いそげ」

サキュバス(同じ人間なのにわざと頃しているの?これだから人間は意味がわからないのよ)

スッ

サキュバスは建物の陰に隠れてその行動を見ていた。念のため、氷の粒子による迷彩も施している。少なくとも並の人間にはわからないようになっているのだが、何者かが自分を狙っていることを感知した。

サキュバス(後ろか!?)

?「……」

誰かが塔の上に立っている。太陽を背にしているため何をしているかまではわからない。

254: 2010/02/28(日) 01:26:23.70 ID:dvbRT1g0
125

--西の王国--

?「ボソボソッ」

サキュバス「!!魔法詠唱か!!」

サキュバスは迷彩を解いて塔の人間の元へと飛んだ。

サキュバス(長い詠唱を必要とする魔法は……広範囲攻撃魔法、逃げても捕らえられる!!)

?「!」

サキュバスの接近に気付いた塔の人間は詠唱を中止、

?「雷属性、槍、精製」

サキュバス「氷属性剣精製!!」


ザブシュッ!!

すれ違いの一閃。



?「……」

サキュバス「ごふっ!!」(なっ!!)

サキュバスは勇者との戦闘で片腕を失い、体力も満足に回復できていない。最初からハンデがあったわけだ。
とはいえ、サキュバスは勇者と渡り合える実力の持ち主である。決して剣技も低いレベルではない。
だが、

サキュバス(いとも……あっさりと!!)

サキュバスは斬られた傷を見てそう思った。

?「雷属性、単体攻撃、レベル3」

サキュバス「はっ」

塔の男は振り向きざまに魔法を唱えた。

ビッシャーーーーン!!!!

サキュバス「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

255: 2010/02/28(日) 01:57:58.34 ID:dvbRT1g0
126

--魔王城--

キンキンっ!!

ワーウルフ「……中々やりますね」

盗賊「はっはっはっはっ!!」(早い、強い!!やべぇ!!)

ワーウルフがステップを踏むたび現れる残像。次の攻撃は盗賊の横からだった。

ギィン!!

盗賊「っっぐ!!」(間一髪!!)

ワーウルフ「……ほぉ」

爪での攻撃を防げたのは奇跡に等しい。二撃目の回し蹴りを防ぐことはありえなかった。

ドゴッ

盗賊「げぼっ!!」

内臓を守るはずのアバラは、バラバラに折れて内臓に攻撃をしかける。

盗賊「ゲホッ!!ゴホッ!!」

賢者「盗賊君!!」

盗賊「いいから蘇生してろ!!」

襲撃から2分。

バラバラに殺された闘士よりも、比較的損傷の低い踊子から修復をしていたが、まだ半分も治せていなかった。

賢者(くそっ!!勇者さん!!)

ドクッドクッ

腕を失った賢者の体力も尽きようとしていた。

256: 2010/02/28(日) 02:01:58.53 ID:dvbRT1g0
127

--魔王城--

勇者「えあああああああああああああああああああ!!!!」

ドゴオオン!!

あれから勇者は、勇者スラッシュを打っては回復、という行動を延々と繰り返していた。

魔王「ふむぅ。どうした?」

勇者「はっ!はっ!はっ……はっ」

ゴクッゴクッ

勇者「ぷあっ!!」

体力も魔力もアイテムを使って全快している。

はずなのに

勇者「ああああああああああああああああああああああ!!!!」

ドゴオオン!!!!

魔王「うーん。今までのダメージ総じて、1。と言ったところか」

ガランガラン

勇者はここで初めて剣を手放した。

勇者「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……うっ……うぐっ!」

勇者の精神力が尽きようとしていた。

257: 2010/02/28(日) 02:10:09.62 ID:dvbRT1g0
128

--魔王城--

魔王「なぜお前の攻撃が我に通じぬかわかるか?わからんだろうなぁ」

魔王は勇者に人差し指を向ける。

魔王「お前は勇者ではない」

勇者「!!」

魔王「勇者とは世界を救う絶対にして唯一の存在。人々の希望の化身。心から人々のために尽くすことを余儀なくされた奴隷」

勇者「……っ」

魔王「お前はそのどれにも属さぬ。お前はただ単に人々に勇者という首輪で飼いならされている奴隷に過ぎぬ。心の底では嫌いな人々の氏を願っている」

勇者「お、おま」

魔王「我か?我は人間には健やかにつつましく生きてもらいと思っている。人々がいなくなってしまっては意味がないのでな」

258: 2010/02/28(日) 02:17:42.13 ID:dvbRT1g0
129

--魔王城--

賢者「盗賊君!!」

盗賊「はっ」

ヒュン

ワーウルフ「……ほう、反射だけでかわしますか」

ワーウルフの上段蹴りを、盗賊はしゃがんでかわす。

盗賊「あぶねぇあぶねぇ、ごふっ、意識が」

賢者「っっく!!」(限界だ!!もう盗賊君の体力はもう……あと少し)

踊子「行きます!!わたし!っつあ!!」

立とうとした踊子腹部から大量の血液が流れ落ちる。

賢者「まだだ!!まだ君の傷は塞がってないんだ!!こんな中途半端な状態で戦いにいったらすぐにやられるぞ!!今まで時間を稼いでくれた盗賊君の健闘を無駄にする気か!?」

踊子「今盗賊さんがやられても同じです!!わたしが全快しても一人ではあいつに勝てません!!」

賢者「っっぐっ!!」

踊子「一人が回復し終わっても同じことの繰り返し、いつか賢者さんの体力と魔力が尽きて負けるじゃないですか!!」

バキバキバキ

踊子の腹部を氷が覆う。

踊子「っつ!!……これで何とか持ちます。早く闘士さんを蘇生してあげてください」

賢者「くっそ!!わかった!!頼んだよ、魔力を使いきってでも、僕がなんとか間に合わせて見せるから!!」

踊子「……ふふっwwまかせましたよ」

259: 2010/02/28(日) 02:26:54.94 ID:dvbRT1g0
130

--魔王城--

盗賊(なるほど……)

ヒュンヒュン!

ワーウルフ「……む?」

盗賊「へへっ、これが最高にハイってやつかぁ……」

ワーウルフ(攻撃を最短で避けている?)

踊子「盗賊さん!!」

盗賊「!?これは……」

踊子「攻撃速度、攻撃力、移動速度を強化しました!!もう瀕氏なんでしょうから、回復なんか焼け石に水ですよね!!してあげませんww」

盗賊「相変わらず……きっついww」

盗賊はにこりと笑った。踊子もそれに呼応するように。

踊子「一緒に氏ぬまで戦いましょうっ!!」

盗賊「おk」

260: 2010/02/28(日) 02:43:16.47 ID:dvbRT1g0
131

--魔王城--

魔王「長い歴史の中で人類を滅亡させた魔王がいただろうか?」

勇者「……」

魔王「歴史の話をしてやろう。そうだな……たとえば50年前のことだ」

勇者「……」

魔王「50年前、勇者は仲間たちと共に世界平和のために戦った。その勇者は本当に人が大好きでな、平和のためならば氏をもいとわないという、たいそうマゾイ男だった」

勇者「……」

魔王「勇者の努力かいあって、魔王を倒すことに成功した。しかしいざ魔王を倒してみても世界は平和にならなかった。今まで協力していた人々の集団は、互いに新しい敵を見つけ戦争を起こした」

勇者「……」

魔王「滅びこそしなかったものの、この世界は完全に5つに分断した。王国、西の王国、東の王国、南の王国、北の王国」

勇者「……」

魔王「そして我が生まれた、世界の秩序を守るために。人々がなんといおうが魔王は必要悪なのだ、人が人として生きるために」

勇者「……」

261: 2010/02/28(日) 02:54:32.01 ID:dvbRT1g0
132

--魔王城--

勇者「違う……」

魔王「……何が違う」

勇者「魔王なんかいらない!!」

魔王「……」

勇者「魔王なんかがいるから……魔王なんかがいるから勇者が生まれるんじゃない!!」

魔王「……表裏一体だからな。魔王と勇者は。いやそれも違うか。……同じものだ。裏も表も無く勇者と魔王は」

勇者「私は勇者になんて……」

262: 2010/02/28(日) 02:57:31.26 ID:dvbRT1g0
133

--魔王城--

ワーウルフ「……ふっ」

踊子「ああああああああああああ!!魔族ううううううう!!!」

魔法によって強化した踊子の蹴りは、速度、威力ともに跳ね上がっていた。

ボボボボボ!!!

踊子「ごほっ」(もうもたないの!?)

時間にして一分も戦闘を行っていない。
なのに踊子の腹部の氷は赤い色をしていた。

ワーウルフ「……もう一度眠りますか?」

踊子「はっ!?」

傷のことが一瞬頭にちらついた。
再び意識を戻した時にはワーウルフは目と鼻の先に。

シュン

音を立てずにワーウルフの後ろから接近していた盗賊のナイフが

ザシュっ

踊子「げぼっ」

盗賊「ぐっ!!」

何かに刺さることはなく、ワーウルフの爪によって二人は切り裂かれた。

263: 2010/02/28(日) 03:02:36.31 ID:dvbRT1g0
134

--魔王城--

魔王「少女よ、お前は何を望む」

勇者「私は……何も望まない」

魔王「したいことはないのか?」

勇者「私が本気でしたいことなんて……ない」

魔王「嘘をついたな」

勇者「っ……私は……ずっと家族が欲しかった」

魔王「……」

勇者「私はずっと、仲間が欲しかった」

魔王「ならなぜ……お前は剣を手に取りここにいる」

勇者「!?」

魔王「別に世界を救う気もなく、人々のために戦う気も無く、ただ勇者の資格を持っているから、流れにそって生きている。何もかもが中途半端だな」

勇者「わた」

魔王「仲間が欲しいだけなら、ずっと旅をしていればよかったではないか」

勇者「私は……私が勇者であり続けなければ……勇者でなければ関係を維持できないと思ったから……」

264: 2010/02/28(日) 03:05:21.79 ID:dvbRT1g0
135

--魔王城--

盗賊「た」

踊子「お」

盗賊「れ」

踊子「て」

盗賊「た」

踊子「ま」

盗賊「る」

盗賊、踊子「かあああああああああああああああああああああお!!!!」

ワーウルフ「!?」(耐えただと!?)

ドシュ!!
ボゴっ!!

ワーウルフ「っっうっぐううう!!」

一瞬の油断、本来なら確実に当ることはない両者の攻撃を受けてしまう。

ワーウルフ(あの男性のナイフ……いやスキルか。魔力をごっそり盗まれました……もう体力は限界のはずなのにどこにこんな!!)

踊子(わたしの方を見向きやしない……わたしの蹴りじゃダメージなんて皆無、ってことですか……)

ワーウルフ(まずはあの男性を確実に、落とす!!)

ワーウルフが足先に力を込めた矢先、

踊子「ふざけるなよ……」

265: 2010/02/28(日) 03:06:59.55 ID:dvbRT1g0
136

--魔王城--

魔王「……勇者よ。お前に我の崇高なる使命の邪魔をする資格はない」

勇者「……」

魔王「さて、そろそろ上のやつらの始末も終わったろうて」

勇者「!!……どういうこと」

魔王「お前の仲間は我が左手が相手をしている」

勇者「!!!!」

魔王「ふむ……どうやらあとちょっとで……全員殺せるようじゃの」

ズキッ

勇者「うぐっ!!」

勇者の頭部に激痛が走る。

やだ、やだやだ

魔王「安心しろ。お前は元のおうちへと送り返してやる。下水道で一生過ごすといい」

ズキッズキッ

勇者「いや……だ」

266: 2010/02/28(日) 03:08:42.86 ID:dvbRT1g0
137

--魔王城--

もう嫌だもうたくさんだなんでいつも私だけこんな!!

ズキズキズキ

勇者「やめさせろおおおおお!!」

魔王「すでに……遅いのだ」

勇者「!!……うわあああああああああああ!!」

勇者は剣を取り魔王に斬りかかる。

魔王「……ふんっ」

バチン

魔王が指を鳴らした衝撃波で、勇者は後ろの壁に叩きつけられる。

ドゴオオン

勇者「あっぐぁ!!」

魔王「それは余の指パッチンじゃ」

267: 2010/02/28(日) 03:10:44.24 ID:dvbRT1g0
138

--魔王城--

勇者「がはっ、げほっ!!」

魔王「もうやめろ少女。こんなことをしてもちっとも楽しくない。我はSではなくMなのだ。MAOUの頭文字はマゾのMなのだ」

勇者「……何を言って」

魔王「考えてもみよ、世界征服世界征服と言うだけで本気で世界を征服するわけでもなく、勇者に倒されるためだけに、勇者が育ってくる

のを魔王城の玉座で延々と待つのだ。Mとしか言いようがあるまい?」

勇者「そんな話はどうでもいい!!」

魔王「……たく人の話を聞かぬ少女よ。あ、人じゃねぇや」

勇者「守りたいもの。一つだけあった」

魔王「……」

勇者「仲間だ」

魔王「……」

勇者「賢者と魔法使いと闘士と踊子と……盗賊だ」

魔王「……」

勇者「後の人間はどうなってもいい。好きにしてくれていい」

魔王「……」



勇者「……だから見逃してくれ」

魔王「……お前はいつも決断が遅いのだ」

277: 2010/02/28(日) 23:32:01.22 ID:dvbRT1g0
139

--魔王城--

踊子「あも4りy8gた948qhj3えいふぁlkjrが;!!!!!」

一言で言えば暴走した。

賢者「なんだあれ……ありえない」

闘士「う……ぐ?」

待望の闘士の復活。しかし賢者をそれに気付かないほどに目の前の光景に意識を握られていた。

踊子「84ゆくぁ3お984あえjがえをkふぁえをgjq34ち!!??」

ワーウルフ「!!!っぐう」

踊子の体の至る所から出血し始めた。そしてそれは魔力を帯びていて。

バリバリバリィ!!

彼女が使えない筈の、

ゴオオオオオ!!

色んな属性の魔法が発現していた。


盗賊「なんだかやばそうではあるが、チャンス……だな」

盗賊はもはや身体機能のほとんど全てが停止していた。
盗賊が今頼ることができるのは、相手の弱点、本質を見抜く透視眼のみである。

たった一回、おそらく一回。
最初で最後のチャンスを迎えるために盗賊は走っている。

279: 2010/02/28(日) 23:43:44.63 ID:dvbRT1g0
140

--魔王城--

ワーウルフ(……残存体力は残り八割程度。十分余力がありますね。削り頃すもよし、一気に決めるもよし)

踊子「あお84gはいじょっらおれwgじゃれがれg!!!」

フォン!

ワーウルフ(……っと。しかし気味の悪い連中だ。氏にぞこないの男性は何かを狙っているようだし、この女性は何かキマッてしまってる)

闘士「ぬぅぅん!!」

ドゴオオン!!

闘士「かわ、された!」

ワーウルフ(……また追加ですか。床に穴を開けるだなんて、いいパンチ力だ)

ヒュカ

ワーウルフは爪で闘士の腹を裂こうとしたが、

ビキッ

ワーウルフ(……いい筋肉だ。はじかれるとは)

280: 2010/02/28(日) 23:53:06.15 ID:dvbRT1g0
141

--魔王城--

朦朧とする意識の中で、賢者は意識が飛ばないように必氏に耐えていた。

賢者「う……っぐ」

自分を回復する魔力くらいならまだ残っていた。だけれどもその魔力の使い道は決めていたのだ。

ワーウルフ「っぬ!!」

初手で完全に決まったと思っていた。いや決まっていた。
4人のうち3人を戦闘不能に追いやったのだから。
それがなんだ今では。
決め手に欠けて、一気に勝負をつけることができず、地味な削り合いしか出来ていない。

ワーウルフ「……ぬぅ」

それも今まではいいと思っていた。確実な勝利を得たほうがよい。だが何かがチクチクと訴えてくる。
早く勝負を決めるべきだと。

ワーウルフ(……やるか)

盗賊に魔力を奪われていたのが響いていた。今からやる魔法は魔力の消耗が激しく、使ってもし失敗してしまったら勝率が下がってしまう。

だがワーウルフはやることにした。
ある意味彼もまた追い詰められていたのだ。

ワーウルフ「……物質生成、小月!!」

281: 2010/03/01(月) 00:01:57.90 ID:mXB1cPc0
142

--魔王城--

ワーウルフの頭上に小さな月が現れる。そしてその光を浴びたワーウルフは、一回り大きな銀毛の狼へと変貌する。
何も変わったのは外見だけではない。二足から四足に変わった移動スタイルは、速度の大幅な上昇を実現する。

盗賊はここだと感じた。

盗賊「空間設置魔法罠、カウンタータイプ」

盗賊の宣言とともに、今まで盗賊が走っていた道が赤く光りだす。それはこの部屋全体に書かれた魔法陣のように見える。

ワーウルフ(……空間設置?)

盗賊「今この部屋の中全体を罠にした。動くな」

ワーウルフ(なんだと?……)

闘士「わ、わかった」

踊子「えg489うq94うjごえrhgq-9んgrk……」

ワーウルフ(なぜ私の行動を制限する必要がある……私がこの姿に変貌して、戦闘能力が未知数になったからか?いやそれにしてもおかしすぎる。こっちは待ってるだけで勝てるのだ。相手は瀕氏状態が三人もいる。その三人が倒れるまで待てばいいだけなのだ、私が絶対に有利なはずなのに……)

ワーウルフは盗賊の顔を睨む。

盗賊「……」

ワーウルフ(何を考えている……!!……時間稼ぎか。私のこの姿が魔力消費を激しいことを知ってのことか??)

282: 2010/03/01(月) 00:11:23.37 ID:mXB1cPc0
143

--魔王城--

盗賊「闘士、肉体強化は使ってもいい。動かなければな」

闘士「わ、わかった。攻撃力上昇三段階!!」

ゴオオオオオ

ワーウルフ(変身が解けたところを狙う気か!!確かに変身が解けた瞬間は無防備に……いやまて、あの攻撃をくらったところで私は負けない。いやあの女性も何かを狙っているのかもしれない……)

踊子「034gjh9849あだrじゃれg……」

ワーウルフ「ッッぐう……」(何を、何を信じたらいい!!)

盗賊「よし、みんなご苦労さん、今罠解除するよ」

ワーウルフ(罠を解除する?……自分から解く!?やはり時間稼ぎだったのか!!)

グッ

ワーウルフ(ならば何も相手の土俵で戦う必要はない。男性が罠を解除する前に息の根を止めればいい、私にはそれだけのスピードがある。元からこうすればよかったのだ)

盗賊「罠か」

ギュン!!

ワーウルフ(私の最高速は!!)

ドシュドシュドシュドシュドシュドシュドシュドシュドシュ!!!!!!

ワーウルフ「がほふっ!!!?」

部屋中から飛んできた魔法の槍が数十本の単位となってワーウルフの肉体に刺さっていく。

ワーウルフ「ごぼおおっふ!!」

盗賊「……罠はスピードが速いほど威力があがる……か。なるほど。あんたは俺が見てきた中で最も速い敵だった」

284: 2010/03/01(月) 00:17:00.72 ID:mXB1cPc0
144

--魔王城--

ワーウルフ「な、ヒュー、ヒュー、なぜ」

盗賊「……いや危なかった。この罠はさ、あんたから魔力を奪ったおかげで発動できたもんなんだ。一応スキルとして習得していたんだが俺の魔力じゃ発動できなくてさ」

ワーウルフ「ヒュー、ヒュー」

盗賊「……維持だけでもすごい魔力使うから、あんたがあの時間内に動いてくれなかったらどうしようかと思った」

ワーウルフ「ヒュー、ヒュー……」

盗賊「じゃあ勇者さんが待ってるんでな。二人とも、頼んだ」

グシャっ

285: 2010/03/01(月) 00:22:14.12 ID:mXB1cPc0
145

--魔王城--

勇者は子供のように泣いている。
剣を捨て、ガントレットのまま涙をぬぐう。

ドォン……

城の上のほうで破砕音がした。

魔王「……決着がついたようだな」

勇者はもう立つことすらできなかった。
もう立つ意味もなかった。

魔王「いっそひとおもいに頃してやるべきか……」

魔王の掌にかつてないほどの魔力が圧縮される。
勇者は今までの経験上、無意識のうちに体が身構えるが、抵抗することを意識が拒絶した。

魔王「……さらば。下水道の少女」


ドゴオオオオオオオオオオン!!!!

287: 2010/03/01(月) 00:30:20.02 ID:mXB1cPc0
146

--魔王城--

魔王「……!」

勇者「……」





上から声が聞こえた。



賢者「見たか魔王!!魔法暴発レベル4!!いくら強いと言えど、自分の魔力は痛かろうです!!」

踊子「……あ~それはいいんですけどわたしたち~……どうやって着地するんです?」

盗賊「あれ?なんでこんなとこにいるのおばあちゃん……え?そうなんだ。へぇ。おばぁちゃん氏んでた気がするんだけどさ。ははっ」

踊子「盗賊さんはイキかけちゃってますね~」

闘士「あばばばばばばばば!!」

ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウドオオオオオオオン!!

闘士は咄嗟にみんなの下に入り、落下の衝撃を緩和する。実に筋肉とはすばらしいものである。

勇者「……あ」

踊子「いたた。なんとかなりましたね~。闘士さん両足複雑骨折くらいですんで」

闘士はいきたえた。

踊子「すまないですよね~ww」



勇者「……みんなぁ」

勇者の仲間が落ちてきた。

288: 2010/03/01(月) 00:32:35.57 ID:mXB1cPc0
146訂正版

--魔王城--

魔王「……!」

勇者「……」

突然魔王の魔力が爆発した。

勇者「……なに……が」

その時




上から声が聞こえた。



賢者「見たか魔王!!魔法暴発レベル4!!いくら強いと言えど、自分の魔力は痛かろうです!!」

踊子「……あ~それはいいんですけどわたしたち~……どうやって着地するんです?」

盗賊「あれ?なんでこんなとこにいるのおばあちゃん……え?そうなんだ。へぇ。おばぁちゃん氏んでた気がするんだけどさ。ははっ」

踊子「盗賊さんはイキかけちゃってますね~」

闘士「あばばばばばばばば!!」

ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウドオオオオオオオン!!

闘士は咄嗟にみんなの下に入り、落下の衝撃を緩和する。実に筋肉とはすばらしいものである。

勇者「……あ」

踊子「いたた。なんとかなりましたね~。闘士さん両足複雑骨折くらいですんで」

闘士はいきたえた。

踊子「すまないですよね~ww」



勇者「……みんなぁ」

勇者の仲間が落ちてきた。

289: 2010/03/01(月) 00:44:07.65 ID:mXB1cPc0
147

--魔王城--

賢者「勇者さん!!ご無事ですか!?魔王は僕が倒しましたよww」

踊子「あ~!!アイテムいっぱいある~。もしかして勇者さんが独り占めしてたんですか~?どこに隠して、あ、パッドかwwwww」

盗賊「おじいちゃん、今年は墓参り行けなくてごめんよ。いろいろ大変だったんさ。ん?あ、ああ、彼女できたんだけどさwww」

踊子「早く回復しやがれ」

グビ

盗賊「おふぅ!!」

盗賊は全快した。



魔王「誰が……倒されたって?」

賢者「んな!?まさか!!あの魔力でレベル4の暴発を……しかも0距離で……」

魔王「お前は……自分の涎でダメージを受けるのか?」

291: 2010/03/01(月) 00:55:49.54 ID:mXB1cPc0
148

--魔王城--

盗賊「あ、勇者さん、おひさしゃーす」

勇者「あ、あう……そ、それどころじゃ」

盗賊は勇者の顔を観察する。

踊子は闘士の口とけつに回復薬を突っ込んだ。
賢者は自分で飲むようの回復薬を探している。

魔王「……あの」

魔王は何をしていいのかわからない。

盗賊「てめぇ……」

魔王「む?」

盗賊「俺の勇者を泣かしやがったな!?」

292: 2010/03/01(月) 01:03:28.61 ID:mXB1cPc0
149

--魔王城--

踊子「いやこの貧O抱き枕はわたしのですから~」

盗賊「なにッ!?」

賢者が飲んだ薬は期限が切れていた。

賢者はいきたえた。
闘士が生き返った。

勇者「……」

踊子「あぁ!!もうめんどくさいですねぇうちの男どもは!!」

踊子は蘇生薬だの回復薬だのすべて賢者の口に流し込んだ。

賢者「ごべはぁ!!」

賢者はいきかえった。

賢者「ぬ?!しかも……ありえないほど力が湧いてくる!!」

ドーピングだった。

勇者「……ふふっ」

293: 2010/03/01(月) 01:09:55.32 ID:mXB1cPc0
150

--魔王城--

魔王「……」(随分とペースを狂わせてくれる……ハチャメチャだな)

魔王の心にハチャメチャが押し寄せてくる。

魔王(こやつらがここにいるということはワーウルフは……)

そうか

魔王はつぶやく。

魔王「俺を残してみんないっちまったか……」

盗賊「さぁーて」

今、魔王の眼前には5人の人間が立っている。

賢者「こちらは万全の状態に戻りましたよ。待っててくれてありがとうございました」

踊子「でもこっちは容赦無用に数の暴力しかけるのでよろしく~」

闘士「ウホッ! いい魔王……」

勇者が……立ちあがった。
そして剣を手に取り、魔王へ向ける。

勇者「……魔王、これが私の仲間たちだ……守りたいものだ」

魔王「……ふむ」


勇者パーティがあらわれた!!!!

294: 2010/03/01(月) 01:15:02.65 ID:mXB1cPc0
151

--魔王城--

魔王「戦うのか……」

勇者「……あぁ」

魔王「我の言い分を少しは理解したのだろう?」

勇者「ああ」

魔王「力の差も理解できたはずだ。そこまでして戦う理由があるのか?」

勇者「……お前の言うことが仮に全て正しかったとしても、それはあくまで過去の人間達の所業から考えた仮定に過ぎない。次もまた人類が同じことを繰り返すとは限らないんだ」

魔王「……)

勇者「魔王という存在がいるだけで人々は不安を抱く……お前を倒す理由としては十分だ」

魔王「……本音は?」

勇者「仲間が戦うからだ」

魔王「……ふ」

295: 2010/03/01(月) 01:21:43.09 ID:mXB1cPc0
152

--魔王城--

盗賊、闘士「おおおおああああああああああああああああ!!!!」

闘士の拳と盗賊のナイフが魔王に接触する。

ドドド!!

魔王(仲間か)

賢者「水属性魔法、回復持続!!」

踊子「二人とも、そのままでお願いしますね」

空中をクルクルと回転している踊子は、

踊子「スウウウウウパアアアイナズマアアアアアア!!蹴り」

ドオオン!!

勇者「はああああああああああ!!」

三人は魔王から瞬時に離れる。

ザァアン!!

勇者の縦一閃が魔王の頭部に命中する。

魔王「……」

勇者「っく!」(やはりきかないの!?)

魔王「魔王技、指パッチン百連撃」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッゴゴ!!

296: 2010/03/01(月) 01:24:45.66 ID:mXB1cPc0
153

--魔王城--

勇者「きゃああああ!!」

賢者「うわっ!!」

闘士「っぬぅん!!」

踊子「ああああああ!!」

盗賊「ごふっ!!」

目も眩む閃光、その一発一発が、確実に致命打になりうる威力をもって勇者パーティを一掃した。

盗賊「っぐっ!!指弾とかてめぇ……戸愚呂か!」

魔王「ご存知の通り魔王だが」

297: 2010/03/01(月) 01:27:24.49 ID:mXB1cPc0
154

--魔王城--

勇者「っく」(どうしよう……やっぱし勝てないよ。こんなやつ相手に……今ならまだ逃がしてくれるかな)

盗賊「……なんかおかしくない?」

踊子「あ、盗賊さんもそう思いました?」

賢者「そもそもあの暴発をくらって無傷という時点でおかしいのですよ」

闘士「なにか、ある」

勇者「え?みんな何言ってるの?」

盗賊「勇者さんは気付かないんすか?あいつ多分今無敵状態なんだよ。何やってもダメージ受けないみたいな。だから特殊なやり方じゃな

いと倒せないと思うのよ」

勇者「……特殊?なにそれ」

賢者「はぁ、これだからなんでも力技でどうにか押し切って来た人は違いますね。中には特定の状況じゃないとダメージを受けないやつも

いるんですよ」

勇者「……え?それ本当?」

盗賊「ね?」

魔王「うん」

298: 2010/03/01(月) 01:30:43.37 ID:mXB1cPc0
155

--魔王城--

勇者「ええええええええええええええええええええええええ!?!?なにそれ!!ずるじゃん!!」

盗賊「いや、まぁ……え?もしかして無敵状態のやつ殴り続けて心折れてたの?ばかじゃんwww」

勇者「えええええええええええええ!?あっ、でも1は与えられたもん!!」

盗賊「……まじで?」

魔王「うん。無敵のはずなのに削られた。びびったわ……」

賢者「無敵設定突破するとかどんだけ……」

勇者(でも……すごい。私は絶望しか感じなかったのに、みんなはあっさりと看破してしまった……)

299: 2010/03/01(月) 01:33:33.49 ID:mXB1cPc0
156

--魔王城--

勇者「じゃ、じゃあ!なんでお前は勇者じゃないからとか説教みたいに語ってたんだよ!!」

魔王「早く帰って欲しかったんだもん」

賢者「なんだこの魔王……」

魔王「……だが嘘は言ってないぞ?勇者についても魔王についても……お前についてもだ」

勇者「……」

盗賊「何を喋ってたのか知らないが、お前はここで氏んでくれ。希望に満ち溢れた人類の未来のために」

盗賊は高速で移動し、魔王にナイフを突き立てる。

盗賊「……ありゃ」

否、接触するだけ。その皮膚を傷つけることは出来ない。

魔王「希望に満ち溢れた人類の未来のためか……ならなおのこと我は負けられんな」

魔王の右ストレートが盗賊を襲う。

バゴッ

盗賊「ッッっ!!!」

300: 2010/03/01(月) 01:38:18.20 ID:mXB1cPc0
157

--魔王城--

勇者「盗賊!!」

盗賊(指パッチンでもあんななのに……)

ドサっ

盗賊「あ、あれ?確実に氏んだとおもったけど、ぎり生きてる」

賢者「裏技みたいなもんですね。回復持続をかけてると即氏のダメージを受けても耐えられるらしいです。掲示板に書いてありました」

勇者「え?無敵!?」

賢者「いえ、連続でこられるとあっさり氏にます。しかもこれ一定時間で切れちゃいますし」

盗賊「そうか……賢者さん、回復お願いです。俺もう指一本動かせないです」

賢者「でしょうね」

盗賊が戦闘不能になった。

301: 2010/03/01(月) 01:41:19.31 ID:mXB1cPc0
158

--魔王城--

踊子「どうしたらいいんですか?勇者様」

勇者「そう……ね」

闘士「とう、ぞく」

勇者「!!そうか、こういう時の盗賊だ。盗賊!!」

盗賊「あぁ、もうやってますよ」

盗賊の眼帯は取られていた。眼窩の奥には青白く光る火が燃えているように見える。

勇者「決まったな。盗賊が何かを見つけるまで守る。護って戦う!!」

踊子「了解です~」

闘士「お、おで!!」

302: 2010/03/01(月) 01:43:33.14 ID:mXB1cPc0
159

--魔王城--

魔王「ふんっ……小賢しい」

魔王が右手を勇者達に向ける。

勇者「攻撃は決して無駄ではない!!」

ドンっ!!

魔王「……ぬ?」

勇者の大剣は魔王の右腕を切り上げる。
最も斬ることはできない。が、魔王の攻撃の軌道を僅かではあるがずらした。

魔王「ゆうし」

踊子「おじさーん、Mなんですって~?」

踊子は勇者の反対側から回り込み、飛び蹴りを魔王の脇腹にくらわす。

魔王「っ!無駄だというに」

闘士「獣欲、剛を制す」

闘士は魔王に掴みかかり、

魔王「ぬ?」

体落としを決める。

ドシンっ!!

303: 2010/03/01(月) 01:45:39.39 ID:mXB1cPc0
160

--魔王城--

盗賊「ははっ、みんな」(俺が色んな角度から見れるようにとがんばってくれてるのか……)

賢者「この期待には答えねば男じゃないですよ。ニートさん」

盗賊「ですねww行ってきますヒッキーさん」

賢者「あれ?もう見つけたんですか?」

盗賊「はい。多分だけどww」(それが俺に可能かどうかさえわからないのだが)

賢者「そうですか。みんな、盗賊さんが行きますよ。お願いします!!」

魔王と戦っていた三人は、一度魔王から距離を置く。
そして、

闘士「攻撃力、四段階上昇!」

踊子「攻撃力、速力上昇!」

勇者「攻撃速度、速力上昇」

三人の魔法が盗賊にかけられる。

盗賊「!!やっべ、今なら勇者さんに勝てる!」

勇者「私に勝ってどうする!」

盗賊「……さらに速力四段階上昇!!」

魔王「蚊がいくら強くなろうと……」

盗賊の姿は既に無い。

304: 2010/03/01(月) 01:47:29.15 ID:mXB1cPc0
161

--魔王城--

魔王が気付いた時には空中に浮かんでいた。

魔王(はて……?)

魔王はその原因を探ろうと辺りを

ドガドガドガドガドガドガドガドガ!!!!

魔王「!!む?」

何か光の帯のようなものが魔王の傍をぐるぐると回っている。
魔王はそれから攻撃を受けてるせいで、宙に浮かんだままなのだ。

魔王(これ……は)

光速に近い速さで動く盗賊の攻撃を、魔王は対応などできるはずもない。

306: 2010/03/01(月) 01:49:22.55 ID:mXB1cPc0
162

--魔王城--

魔王「ふ、しかし無駄なことよ。我にとって水に浮かんでいるのとさして変わらぬ」

盗賊「……」

光の攻撃は止んだ。

ドサりと魔王の体は地に落ちる。

盗賊「みたいだな。せっかくこんだけ強くなったからごり押しでも行けるかと思ったけどやっぱだめか」

魔王「当たり前だ。今度は勇者の時とは違う。1足りともダメージは受けておらん」

盗賊「勇者さん」

勇者「ん?なんだ?」

盗賊「準備しといてね」

勇者「あぁ!」

魔王「……」

盗賊はまたもや消える。

307: 2010/03/01(月) 01:51:54.36 ID:mXB1cPc0
163

--魔王城--

魔王が辺りを見回している間に盗賊は元の位置に現れた。

その手に持っているのは

赤の手紙。

魔王「……それ……は」

魔王はハッと気づいて胸に手をやる。
無い。……命より重いモノが無い。

盗賊「どうもこれが魔王の核のようなものっぽい」

勇者「……これか。よくやった」

勇者は大剣を構える。

盗賊「あー!俺の手柄なんですから一緒にやりましょうよ!」

勇者「ば、ばか!!そういうレベルの話じゃ」

盗賊は大剣を持っている勇者の手に手を重ねる。


魔王(……ふぅ。こうもあっさりとはな。俺は役目を……果たせたのだろうか)

魔王は勇者達に視線を向ける。

魔王「……ふふっ」

魔王は笑いが抑えきれない。それもそのはず、

魔王「お前ら……ケーキ入刀のつもりか?」

勇者「ばっ!!/////」

盗賊「いいなそれwww」

魔王「……汝らは健やかなる時も病める時も、世界を救うことを誓いますか?」

盗賊、勇者「誓いませんww!」




ザン

308: 2010/03/01(月) 01:55:34.78 ID:mXB1cPc0
164

--草原--

あれから四日後。
魔王が勇者の手により倒された、というニュースは世界中を駆け巡った。


勇者達はというと、近場の村で二日かけて傷をいやし、王国へと帰ろうとしていた。

盗賊「魔王倒した!!っていうのに何かいいことが起きるわけではないんだねー」

勇者「まぁ……簡単ではないんだろ。人間というのも」

賢者「謝礼とかでるんですかね……」

踊子「出なかったら国潰します~ww」

盗賊「お母ちゃんがいるんでまじで勘弁して下さい……」

勇者「……ふふっww」

309: 2010/03/01(月) 01:58:31.57 ID:mXB1cPc0
165

--王国--

盗賊「やっと……帰って来たな!」

賢者「えぇ。1年ぶりくらいですかね。故郷かぁ……」

闘士「お、おで」

勇者「まずは王様に……ん?みんな……出迎えだ!!」

王国への入り口に、兵士達が道を開けて整列していた。

賢者「壮観ですね……!それも半端な数ではありませんよ!!国中の兵士が我々を出迎えています!!」

勇者「あれは!!」

兵士達の先頭に黒服の男が立っていた。

盗賊「魔法使い!!」

310: 2010/03/01(月) 02:00:16.85 ID:mXB1cPc0
166

--王国--

魔法使い「皆さん魔王討伐お疲れさまでした。城で王様がお待ちです」

賢者「えwww魔法使いさんキャラ変わってるww」

闘士「う、うほっ!いい男!」

盗賊「へへww」(そういや王様に会いに家を出たって言うのに、魔王討伐してから会うはめになるとはなww)

まぁそんなことはいいか。もう何も問題にすらならない。
だって俺には、

盗賊「行こう!!貧Oさん!!」

勇者「ばっ!!こんなとこで!!」



勇者募集してたから王様に会いに行った


    THE END                             ?













魔法使い「勇者を捕えろ」

兵士A、B「はっ!!」

ガチャガチャガチャ!!!!



盗賊「……え?」


  第二部 完

312: 2010/03/01(月) 02:06:43.79 ID:mXB1cPc0
二部が終わりましたので本日は終わりにしたいと思います。

何かわかりにくかった点、疑問、質問などありましたら書きこんでください。

三部はまた近日中に書き始めたいとは思います。

勇者募集してたから王様に会いに行った【完結】

引用: 勇者募集してたから王様に会いに行った