1: 2012/12/15(土) 13:06:12 ID:iiiRClx.
P4とまどマギのクロスです。
※注意事項
(1) 基本的にまどマギのストーリーに沿って展開します。
(2) P4(PS2版)に関しては、多少ネタバレがあります。
(3) 登場するのは、ゲームクリア時のハイスペック能力を持ったアニメ版番長、と思ってください。
(4) >>1は、まどマギをアニメでしか知らない。(しかも前半うろ覚え)
以上です。
2: 2012/12/15(土) 13:06:51 ID:iiiRClx.
―――――――――――
――それでも――
――私は――
――わたしは!――
……カシャン!!
―――――――――――
3: 2012/12/15(土) 13:08:15 ID:iiiRClx.
俺の名は、鳴上 悠。
家の事情で1年ほど八十稲羽、という所にいた。
そこで俺は、奇妙な殺人事件に巻き込まれ、『ペルソナ』という力を使い
その難事件と世界の崩壊を防いだ。 出会った、心強い仲間達と共に……。
今は両親の元に戻り、普通の高校3年生として平穏に暮らしている。
――そして、ある日――
ここは見滝原町。 俺の住む街の 隣の町だ。
普段は立ち寄ったりしないのだが、学校の帰り、うっかり電車で寝過ごしてしまい
見滝原駅に降り立った。
特に用があった訳ではない。
ほんの気まぐれで、何の気になしに好奇心から、その町を探索してみようと思った。
……夕日がとても綺麗だった事を覚えている。
4: 2012/12/15(土) 13:09:30 ID:iiiRClx.
こんな所に本屋がある。 こっちには こ洒落たレストラン。
片側二車線の大通りに、大きな看板がある。
『この先、10キロにジュネス見滝原店 ジュネスは、毎日が お客様デー!』
『エブリディ ヤングライフ ジュ・ネ・ス♪』
ジュネスは、この町にもある様だ。 そして、気が付いたら日が暮れていた……。
――俺は、再び――
鳴上「そろそろ帰るか」
鳴上「……この路地裏を通れば、近道になるかな?」
――奇妙な戦いに 巻き込まれるのだった――
5: 2012/12/15(土) 13:13:53 ID:iiiRClx.
―――――――――――
鳴上「…………」
鳴上(おかしい)
鳴上(さっきから同じ様な所を グルグル回っている……)
鳴上(…………)
鳴上(………それにこの感覚)
鳴上(似ている……)
鳴上(テレビの中の世界に……)
鳴上(…………)
鳴上(まさか、な……)
6: 2012/12/15(土) 13:14:31 ID:iiiRClx.
ォォオオオオオォォンッ……
鳴上「!!……なんだ?」
鳴上「…………」
鳴上「!?」
鳴上(な!? か、体が、引っ張られる!!) グググッ!
鳴上(!!?)
鳴上(足元に、何か居る!!)
鳴上「くっ!!」
鳴上(気付くのが遅れた……!)
鳴上(顔以外を黒い何かに 羽交い絞めに……!)
鳴上「は、はなせ!」
ズル…ズル…ズル…
7: 2012/12/15(土) 13:15:16 ID:iiiRClx.
鳴上「どこに……連れて行くつもりだ!?」
鳴上「…………」
鳴上「だんまりか……」
キヒヒヒヒ……
鳴上「…!」
鳴上(本体……か!?)
鳴上(見た目は、かわいい猫のマスコットキャラの様だが……)
鳴上(グリズリーくらいでかいし)
鳴上(何よりも黒くて、腕が4本もある…!)
キヒッ… キヒッ… キヒヒヒヒ……
8: 2012/12/15(土) 13:15:47 ID:iiiRClx.
鳴上(…………)
鳴上(やるしかない)
鳴上(出来る事は、限られているが……)
鳴上(…………頼む!) グッ……!
ペ ル ソ ナ !!
鳴上「!! イザナギだ!!」
鳴上(信じられんが……ペルソナが出た!)
鳴上「イザナギ! 俺の拘束をといてくれ!」
ズババッ!
9: 2012/12/15(土) 13:16:38 ID:iiiRClx.
ギィィィィッ!!
鳴上「よし!」 ダダッ!
鳴上「イザナギ!!」 ジオ!!
バリ バリッ!!
ギィイアアアァァァ!!
鳴上「止めだ!」
ズバァッ!!
ギアアアアアアッ……!!
シュウウウウウン……
鳴上「ハアッ、ハアッ、ハアッ…」
鳴上(この消滅の仕方……やはり、シャドウか?)
鳴上(……!)
10: 2012/12/15(土) 13:17:13 ID:iiiRClx.
鳴上「あの妙な空間が、消えていく……」
鳴上「…………」
鳴上「…………」
鳴上「完全に消えた……」
鳴上「…………」
鳴上「…………そうだ」
鳴上「ペルソナ!」
シーン……
鳴上「…………」
鳴上「いったい……なんだと言うんだ?」
11: 2012/12/15(土) 13:17:57 ID:iiiRClx.
コン コロンコロン コロン……
鳴上「……ん?」
鳴上「これは……?」 スッ…
鳴上「…………」
鳴上(黒い……宝石?)
鳴上(…………)
鳴上(何かの手掛かりに なるかもしれない)
鳴上(もって行こう……)
タッ タッ タッ……
12: 2012/12/15(土) 13:18:56 ID:iiiRClx.
――見滝原市・某所――
??「……あら!?」
???「……ん!?」
??「理由はわからないけど……魔女の反応が、消えたわね」
???「この町に、君の他に魔法少女って居たっけ?」
??「私の知る限りでは、居ないわ」
???「ふむ……気になるね。 調べてみる?」
??「…………」
??「いえ、止めておきましょう」
??「事情を知らない娘が、たまたま、という可能性もあるし」
???「それもそうだね、巴マミ」
マミ「帰りましょ、Qべえ」
Qべえ「ああ」
13: 2012/12/15(土) 13:19:30 ID:iiiRClx.
――夜――
――鳴上の部屋――
鳴上「…………」
鳴上(どうすればいいかな……?)
鳴上(…………)
鳴上(そうだ!! ベルベット・ルーム!!) ガバッ!
鳴上(イゴール達なら、何かわかるかもしれない!)
スチャ (携帯オープン)
鳴上(…………)
鳴上(…………あ)
鳴上(そういえば……マーガレットから連絡はあったけど……)
鳴上(俺は、電話番号を知らない……) ガックシ……
15: 2012/12/15(土) 13:20:15 ID:iiiRClx.
ピピピ……ピピピ……
鳴上「!」 …ガチャ
鳴上「……もしもし」
??????「お久しぶり、マーガレットです」
鳴上「マーガレット!?」
鳴上「良かった、聞きたい事がある」
マーガレット「それは、こちらもです……が」
マーガレット「まず、あなたに何があったのか、教えてくれないかしら?」
鳴上「わかった」
―――――――――――
16: 2012/12/15(土) 13:21:03 ID:iiiRClx.
―――――――――――
鳴上「……というわけだ」
マーガレット「…………」
鳴上「……マーガレット?」
マーガレット「すみません、私の手に余る事柄の様です」
マーガレット「我が主、イゴールにお電話、代わります」
鳴上「ああ……」
イゴール「……お久しぶりですな。 息災でしたか?」
鳴上「……イゴール、挨拶はいい。 何が起きているのか、教えてくれ」
17: 2012/12/15(土) 13:21:51 ID:iiiRClx.
イゴール「ふむ……と、申されましても今回の事象は」
イゴール「我々にとっても初めてのケース……」
イゴール「お客様のお話をお聞きした限りでは……正直、皆目見当も付きません」
鳴上「……!!」
イゴール「ただ……」
鳴上「……ただ?」
イゴール「あなた様は、もしかしたら、何かの大きな因果の渦に」
イゴール「巻き込まれたのかもしれません……」
鳴上「因果の渦?」
イゴール「正確には、お客様の持つ『ワイルド』の力が、引き寄せられた可能性が……」
鳴上「…………」
18: 2012/12/15(土) 13:22:27 ID:iiiRClx.
イゴール「いずれにしても、解らぬ事が多すぎる……」
イゴール「こちらでもお調べいたしますので、しばしお時間を頂けますかな?」
鳴上「……わかった」
イゴール「何か掴めましたら、すぐに連絡しましょう」
イゴール「それでは……失礼いたします」
鳴上「ああ、待っている……」
プッ… ツー…… ツー……
鳴上「…………」
鳴上「…………あ」
鳴上(電話番号、聞くのを忘れた……)
19: 2012/12/15(土) 13:23:15 ID:iiiRClx.
――翌日の朝――
――見滝原中学校――
ガヤ ガヤ
まどか「おはよう! さやかちゃん!」 ニコ
さやか「うーっす、おはよ、まどか!」 ニコ
仁美「おはようございます、まどかさん、さやかさん」 ニコ
さやか「おはよ、仁美」 ニコ
まどか「おはよう」 ニコ
さやか「ところでさ、仁美……英語の宿題、やってる?」 テへへ…
まどか「さやかちゃん……」
仁美「はいはい、教室でノートを見せますから」
さやか「ありがと~! 仁美、様様だよう……」 ウルウル…
20: 2012/12/15(土) 13:24:02 ID:iiiRClx.
――教室――
さやか「さーて! 宿題、さっさっと終わらせるよー!」
まどか(まる写しじゃ宿題の意味がないよう……さやかちゃん)
仁美「ところでまどかさん。 最近、流行っている噂の事……ご存知ですか?」
まどか「えっ……?」
さやか「あー、あたしそれ知ってる。 行方不明になったと思ったら」
さやか「自頃してたって事件、増えてるんだってさ」
まどか「ええっ!?」
仁美「おおむね間違いじゃありませんけど……」
仁美「噂では、自頃した人達は直前に路地裏とか、暗い所で目撃されているんです」
仁美「それも……わざわざ見せ付ける様に」
さやか「後、氏んじゃった人はみんな、全く氏ぬ要素がないんだって……」
さやか「怖いよね~、まどか」
まどか「もう……朝から気分がブルーだよ、さやかちゃん……」
21: 2012/12/15(土) 13:24:44 ID:iiiRClx.
――夕方――
――見滝原駅・駅前――
鳴上「…………」
鳴上(とりあえず、また来てしまった)
鳴上(目撃されてもいい様に、八十神高校の制服とクマのメガネを装備したが)
鳴上(何故か落ち着くな……)
鳴上(…………)
鳴上(とにかく、もう一度あの現場へ行ってみよう)
22: 2012/12/15(土) 13:25:37 ID:iiiRClx.
鳴上(……ここだ)
鳴上(ふむ……)
鳴上(…………)
鳴上(やはり、痕跡はどこにも無いな……)
鳴上(…………)
鳴上(シャドウは、人間の負の感情が、具現化した存在だった)
鳴上(もしかしたら、何らかの事象が絡んでいて)
鳴上(この街全体が、テレビの中の様に……)
鳴上(…………)
鳴上(まさか、な……)
23: 2012/12/15(土) 13:26:15 ID:iiiRClx.
―――――――――――
鳴上(…………)
鳴上(……結局、収穫は無し、か)
鳴上(駅を中心にこの辺りを調べてみたが)
鳴上(何の変てつもない、普通の街だ……)
鳴上(…………)
鳴上(疲れた……) ふうっ…
鳴上(そろそろ帰ろう……)
キュゥゥンッ……!
鳴上(!!)
鳴上「この感覚は!?」
24: 2012/12/15(土) 13:26:58 ID:iiiRClx.
鳴上(……間違いない)
鳴上(理由は、わからないが)
鳴上(この間のシャドウと似た、異質な空間をはっきり感じる……!)
鳴上(どうする?)
鳴上(…………)
鳴上(……まずは、様子を見るか?)
鳴上(…………)
鳴上(だが、俺のよく知るシャドウも)
鳴上(この前のシャドウも)
鳴上(問答無用で襲いかかってきた……)
鳴上(…………)
25: 2012/12/15(土) 13:27:35 ID:iiiRClx.
鳴上(…………)
鳴上(一般人にとっては、危険な存在)
鳴上(……やはり、倒しておくべきか)
ギュウウウウウンッ!!
鳴上(!?)
鳴上(くっ!! 無理やり異空間に取り込まれた!!)
鳴上「……だったら、やる事は一つだ!」
鳴上「イザナギ!」
グバッ!! ギィエエエエエエッ!!
―――――――――――
26: 2012/12/15(土) 13:28:23 ID:iiiRClx.
―――――――――――
鳴上「…………」
鳴上(結局、倒してしまった……)
鳴上(そして手掛かりも掴めないまま……)
鳴上(後は、この謎の黒い宝石)
鳴上(…………)
鳴上(今日のところは、引き上げるか……)
ピピピ…… ピピピ……
鳴上「! 携帯が……」 ガチャ…
鳴上「もしもし?」
27: 2012/12/15(土) 13:29:15 ID:iiiRClx.
イゴール「ごきげん、いかがですかな? お客様……」
鳴上「イゴール! ……何か掴めたのか?」
イゴール「左様でございます」
鳴上「話してくれ」
イゴール「もちろん、お話しします……が」
鳴上「……?」
イゴール「悪いニュースと、もっと悪いニュースしか、ございません」
鳴上「……!」
イゴール「よろしいですかな?」
鳴上「……ああ」
28: 2012/12/15(土) 13:30:06 ID:iiiRClx.
イゴール「まず……お客様が遭遇なされた、シャドウに似た生物らしきもの」
イゴール「ほぼ、シャドウと断定なされてもよろしいでしょう」
鳴上「……? ほぼ?」
イゴール「シャドウとは、人の心から生み出された感情の一部……」
イゴール「そういう意味では、同質の存在と言えるモノですな」
鳴上「なるほど……」
イゴール「さて……ここからが『悪い』ニュースになります」
鳴上「…………」 ゴクッ…
イゴール「今、お客様が居らっしゃる町……」
イゴール「説明が難しいのですが……信じられない様な規模の因果が、集まっております」
鳴上「因果が……集まる?」
29: 2012/12/15(土) 13:30:53 ID:iiiRClx.
イゴール「例えて言うならば……」
イゴール「何もない平野に、山の様に水が集まっておるのです」
鳴上「…………」
鳴上「……つまり、通常では有り得ない『何か』が、起こっている、と?」
イゴール「左様でございます……」
鳴上「…………」
鳴上「ここでのシャドウは、それが原因で?」
イゴール「……調べてみた所、お客様の遭遇された『シャドウ』と同じ様な現象は」
イゴール「その場所だけでなく、日本……いえ、世界中で確認されております」
鳴上「!!?」
30: 2012/12/15(土) 13:31:46 ID:iiiRClx.
鳴上「…………」
鳴上「少し話を戻すが……」
鳴上「さっき言っていた『因果』が集まると、どんな不都合があるんだ?」
イゴール「先ほどの例えを使いますが……」
イゴール「原因不明でエベレストくらいの山の形をした水が、突然、一気に流れ出したら」
イゴール「その周辺は、どうなりますかな?」
鳴上「…………なるほど」
鳴上「で? 実際の危険性は、どのくらいある?」
イゴール「わかりません……しかし」
イゴール「八十稲羽での事柄を考慮しますと……」
イゴール「全世界が危険にさらされている……かもしれません」
鳴上「…………」
31: 2012/12/15(土) 13:32:46 ID:iiiRClx.
鳴上「それで? もっと悪いニュースは?」
イゴール「……それは、お客様も感じていらっしゃるのではないでしょうか?」
イゴール「もう、逃れられぬ運命に捕らわれている、という事に……」
鳴上「…………」
鳴上「つまり、この町に立ち寄らない様にしても」
鳴上「関わってしまう、という事か……」
イゴール「左様でございます」
鳴上「そうか……」
32: 2012/12/15(土) 13:33:20 ID:iiiRClx.
イゴール「ですが、お客様」
イゴール「こちらも、出来うる限りのサポートを」
イゴール「お約束いたします」
鳴上「それは助かる……」
イゴール「それでは、ごきげんよう……」 プッ…
ツー… ツー…
鳴上「…………」
鳴上「…………あ」
鳴上「また、電話番号聞くの忘れた……」
33: 2012/12/15(土) 13:34:11 ID:iiiRClx.
――数日後の夜――
――見滝原町・廃ビル付近――
ヒタ…ヒタ…ヒタ…
鳴上「…………」
鳴上(どうも様子がおかしいから、あの女の後をつけてみたが……)
鳴上(当たり……か?)
鳴上(…………)
鳴上(だが、あの異空間を感じない……)
鳴上(……もどかしいな)
鳴上(…………!?)
鳴上(あの女、何をしている!?)
鳴上(あんな高い場所で靴を揃えて……)
鳴上(!! しまった!!) ダッ!!
34: 2012/12/15(土) 13:35:01 ID:iiiRClx.
??「ふんっ!」 シュルルルルルルッ!!
パシッ!
鳴上(!!?)
鳴上「……な!?」
???「ほっ、良かった。 さすがマミさん!」
???「…って、え? だ、誰!?」
マミ「安心して。 この女性は、錯乱状態だっただけだから」
マミ「でも、出来れば、今見た事を忘れてくださらないかしら?」
マミ「色男さん?」
鳴上「…………」
35: 2012/12/15(土) 13:35:54 ID:iiiRClx.
鳴上(…………) ゴソゴソ…
鳴上「すまないが、忘れる事は出来無い」
鳴上「俺も……無関係では無いから」
鳴上の手の平には、謎の黒い宝石があった。
マミ「!!?」
マミ「グリーフシード!?」
マミ「…………」
マミ「……あなたは、どこでこれを?」
鳴上「……そうか。 これはグリーフシード、と言うのか……」
マミ「…………」
鳴上「ともかく、話がしたい。 どこか……いい場所を知らないか?」
36: 2012/12/15(土) 13:36:47 ID:iiiRClx.
――巴マミの部屋――
鳴上(…………)
鳴上(いきなり女の子の部屋に 連れてこられるとは、思わなかった……)
鳴上(そこはかとなく緊張するな……)
マミ「お待たせしました。 紅茶をどうぞ」
鳴上「すまない。 気を使わせたな」
マミ「いえ……」
マミ「二人共、自己紹介は済ませた?」
さやか「はい、マミさん」
まどか「ええと、こ、こちらは鳴上 悠さんです。 マミさん」
マミ「鳴上 悠さん、ですね。 私は巴マミ、と申します。 ”マミ”と呼んでください」
鳴上「わかった」
37: 2012/12/15(土) 13:37:43 ID:iiiRClx.
マミ「では、さっそくですが……鳴上さんの事情をお話しいただけますか?」
鳴上「ああ……」
鳴上「まず、俺は訳あって、一年ほど前に八十稲羽、という所に居た……」
―――――――――――
鳴上、事情を話中
―――――――――――
鳴上「……というわけで、今に至る」
マミ・さや・まど「」
さやか「マヨナカテレビ? ペルソナ? どんなSFだよ!?」
まどか「さやかちゃん……。 私達の事も、そんなに違わないと思うけど……」
マミ「……聞きたい事はありますけど、先に私達の事情もお話します」
38: 2012/12/15(土) 13:38:33 ID:iiiRClx.
―――――――――――
マミ、事情を話中
―――――――――――
マミ「というわけです。 おいで、Qべえ」
Qべえ「やれやれ、やっと僕の出番かい?」 チョコン
鳴上「…………」
鳴上(こいつがQべえ……)
鳴上(どんな願いも叶える代わりに 魔女と戦う事を契約させる生命体……)
鳴上(…………)
鳴上「……俺の言うシャドウは、魔女と呼ばれているのか」
Qべえ「僕も驚いたよ。 まさかそんな事象があるなんて」
Qべえ「しかも人間の精神が具現化して襲いかかるなんて、実に興味深い」
39: 2012/12/15(土) 13:39:27 ID:iiiRClx.
鳴上「Qべえ、魔女はシャドウと良く似た特性を持っている」
鳴上「つまり、八十稲羽と同じように、どこかに親玉が居るんじゃないだろうか?」
Qべえ「どうだろうね……否定は出来ないけど、可能性は薄いと思うよ」
Qべえ「僕達は、随分長い間、魔女を見てきたけど……」
Qべえ「共闘しているのを見た事がないからね」
鳴上「そうか……」
鳴上「なら、魔女の目的は何だ? 何の為に人を襲う?」
Qべえ「それは成長する為さ」
Qべえ「魔女や魔女から生まれた使い魔は、人を食らう事でどんどん成長する」
Qべえ「使い魔はやがて魔女に。 魔女は、より強力な魔女へと、ね」
鳴上「…………」
40: 2012/12/15(土) 13:40:12 ID:iiiRClx.
さやか「あたし、鳴上さんのペルソナってのを見たいな」
まどか「私も!」
鳴上「……見せてやりたいのは、やまやまだが……今は無理だ」
マミ「? どうして、ですか?」
鳴上「簡単に言うと、テレビの中、限定の技だと思ってくれ」
マミ「あら? じゃあどうやって魔女を?」
鳴上「それなんだが……魔女の作り出す異空間……結界と言っていたな?」
鳴上「そこでなら、何故かペルソナを発動出来るんだ……」
さやか「へ~」
まどか「じゃあ、テレビの中には入れるんですか?」
鳴上「ああ、今、やって見せよう」 スクッ
41: 2012/12/15(土) 13:40:56 ID:iiiRClx.
鳴上「…………」 スッ…
ズ……ブウウウウウウンッ……
マミ・さや・まど「!!!」
さやか「み、右手が!?」
まどか「ど、どうなってるの!? な、なんか、波紋みたいなのが出てるし……」
Qべえ「なるほど……これは、疑いようが無いね」
Qべえ(……面白い。 実に興味深い)
マミ「じゃあ……鳴上さんは、『けがれ』をどうやって浄化しているんですか?」
鳴上「? 『けがれ』?」
マミ「私達、魔法少女は、その証にソウルジェム、という物を持っています」 スッ…
鳴上「……ソウルジェム。 この卵の様な形の宝石が……」
42: 2012/12/15(土) 13:41:50 ID:iiiRClx.
マミ「そして、魔法を使うたびに少しづつ黒く、濁っていく……それが『けがれ』」
鳴上「…………」
マミ「それをキレイにする……厳密には、取り除くのが、このグリーフシード」
鳴上「魔女を倒した時に出る、黒い宝石にそんな力があったのか……」
マミ「今は、それほど必要じゃないので、実演は許してください」
マミ「ちなみにやり方は、ソウルジェムにグリーフシードを当てるだけです」
鳴上「なるほど……」
さやか「で? 鳴上さんもグリーフシードを使うの?」
鳴上「いや……」
まどか「じゃあ、どうやって『けがれ』を?」
43: 2012/12/15(土) 13:42:37 ID:iiiRClx.
鳴上「何もしていない。 と言うか、『けがれ』自体が無い」
さやか「えっ!?」
まどか「ほ、本当ですか!?」
鳴上「ああ。 まあ、ペルソナを使った日は、ものすごく疲れるが」
鳴上「それくらいだな」
マミ「私達からすると、凄くうらやましいですね」
鳴上「その代わり、現実世界でペルソナは使えない」
さやか「でもさ、マミさん! 心強い味方が出来たね!」
マミ「まだよ、鹿目さん。 ……鳴上さん、私達に協力してもらえますか?」
鳴上「もちろんだ。 こちらこそ、よろしく頼む」 ニコ
キャー! ヤッター! ヨカッタネー マミサン!
モウ/// カノメサン!/// ヨロシクネー、ナルカミサン…
…………
44: 2012/12/15(土) 13:43:28 ID:iiiRClx.
――巴マミの自宅前――
???(…………)
???(あれは……誰なの?)
???(…………)
???(今回、初めて見る人物ね……)
???(何を話しているのか、知りたい所だけど……)
???(私のやる事は変わらない)
???(邪魔をする様なら……消えてもらう) スッ
タッ タッ タッ…
45: 2012/12/15(土) 13:44:18 ID:iiiRClx.
――数日後の昼――
――見滝原中学校・教室――
まどか「さやかちゃん、お昼どこで食べよっか?」
さやか「う~ん…。 そうねえ」
???「ちょっと、いいかしら?」
さやか「ん? ……何か用? 転校生」
まどか「さ、さやかちゃん……! ごめんね、ほむらちゃん……」
ほむら「いいのよ、まどか。 それより聞きたい事があるの」
ほむら「この前見かけた、高校生くらいの男は何なの? Qべえの知り合い?」
さやか「うるさいな! それより何で、そんな事知ってんのよ! ストーカーでもしてんの!?」
ほむら「うるさいのはあなたよ。 それに私はまどかと話してるの」
ほむら「少し黙っててくれる?」
46: 2012/12/15(土) 13:44:54 ID:iiiRClx.
まどか「ほ、ほむらちゃん……あの、また今度話すね?」
まどか「さやかちゃん、行こっか?」
さやか「うん、行こっ! まどか」
タッ タッ タッ…
ほむら「…………」
ほむら(美樹 さやか……)
ほむら(あなたは、また、私の邪魔をする……)
ほむら(…………)
ほむら「……いつもの事だけどね」 ボソッ…
47: 2012/12/15(土) 13:45:35 ID:iiiRClx.
――放課後――
――市街地――
鳴上「二人は、魔法少女じゃ無いのか?」
さやか「うん、そーだよ」
まどか「Qべえは、なって欲しいって、言ってくれるんだけどね」
まどか「マミさんが、よく考えてからにしなさいって……」
さやか「たった一つの願いだからね~」
まどか「そうだ、鳴上さんは願いが叶うなら、どんな願いを叶えたい?」
鳴上「………難しいな」
鳴上「すぐには、答えられそうもない」
48: 2012/12/15(土) 13:46:09 ID:iiiRClx.
さやか「だよね。 あたしらも色々悩んでるんだ」
さやか「もういっその事、美味しいケーキを食べたい! とかでもいーんじゃない?」
さやか「なんて思った事もあったっけ」 クスクス
まどか「私は……願い事よりも、誰かの為に、何かの為に頑張ってるマミさんに」
まどか「憧れているんだけどね」 テへへ……
鳴上「…………」
鳴上「真面目な話、二人は魔法少女にならない方が、いいかもしれない」
さや・まど「えっ!?」
さやか「……どういう意味?」
鳴上「そのままの意味だ」
49: 2012/12/15(土) 13:46:51 ID:iiiRClx.
鳴上「ああ、別段二人を蔑んでいるわけじゃない」
鳴上「……何かが、引っかかるんだ」
鳴上「あの、Qべえという存在に」
さやか「何が? 魔法少女に勧誘しているだけでしょ?」
まどか「ふわふわしてて、可愛いし」 ///
鳴上「…………」
鳴上「!!」
鳴上「あれは……!?」
さやか「グリーフシード!? 羽化しかかってる!!」
鳴上「二人共、マミに知らせに行ってくれ!」
鳴上「ここは、俺が引き受ける!」
まどか「は、はい! 鳴上さんも気をつけて!」 ダッ!
さやか「すぐ連れてくるから!」 ダッ!
50: 2012/12/15(土) 13:47:26 ID:iiiRClx.
ブアアアアアッ!
鳴上(さっそく結界に引き込まれた……!)
鳴上「イザナギ!!」 ジオ!!
バリバリバリッ!!
鳴上「……くっ! 数が多い!」
鳴上「イザナギ!!」 ズバッ! ズバッ!
鳴上(倒してもグリーフシードを落とさない……)
鳴上(わかっていたが……こいつらは、ただの使い魔!)
ケケケケケケッ……
鳴上「本体は……魔女は、どこに居る!?」
51: 2012/12/15(土) 13:48:52 ID:iiiRClx.
52: 2012/12/15(土) 13:49:36 ID:iiiRClx.
――見滝原中学校――
マミ「あなたに話す事は、何もないわ」
ほむら「…………」
ほむら「…………そう」
マミ「それよりも言わなかったかしら?」
マミ「あなたには、もう二度と会いたくないって」
ほむら「…………」
タタタタタッ!
さやか「マミさん!」 はあっ はあっ
まどか「鳴上さんが……!」 はあっ はあっ
マミ「!?」
ほむら「………!?」
53: 2012/12/15(土) 13:50:26 ID:iiiRClx.
――お菓子の魔女の結界内――
タッ タッ タッ…
マミ「……あなた、どこまでついてくるつもり?」
ほむら「もちろん魔女の所までよ」
マミ「邪魔するつもり?」
ほむら「場合によってはね」
キュッ……
マミ「悪いけど、あなたを拘束させてもらうわ」
ギュルルルルッ!
ほむら「…………」
まどか「!? マミさん!」
54: 2012/12/15(土) 13:50:59 ID:iiiRClx.
さやか「いいんだよ、まどか。 むしろ、これくらいしなきゃダメだよ」
さやか「こいつには、ね」
まどか「で、でも……!」
マミ「行きましょ、美樹さん、鹿目さん」
さやか「ほら、行くよ! まどか!」
タッ タッ タッ…
まどか「あ! まってよ! マミさん! さやかちゃん!」
まどか「…………」 オロオロ…
まどか「……ほむらちゃん」
まどか「ごめん!」 ダッ!
タッ タッ タッ…
ほむら「…………」
55: 2012/12/15(土) 13:51:46 ID:iiiRClx.
――お菓子の魔女の結界内・最深部――
ダンッ! ドゴッ! バキッ!
鳴上「グハッ!!」 ドサッ…
鳴上「…はあっ…はあっ」
鳴上「イザナギッ!!」 ジオ!
バリ バリッ!
鳴上「くそっ……!」
鳴上(この魔女……生まれたてのハズなのに…)
鳴上(強いっ!!)
56: 2012/12/15(土) 13:52:28 ID:iiiRClx.
鳴上(魔女は、生まれてからの経験よりも、才能の方が優先される)
鳴上(そんな所か……?)
鳴上(正直、油断したな……)
鳴上(魔女を何体か倒してた事で……おごりがあったに違いない)
鳴上(……!!)
バゴォッ!!
鳴上「あがぁっ!!」 ドサッ!
鳴上「くっ……イ、イザナ…」
マミ「鳴上さんっ!!」 シュルルルルルッ!!
鳴上「!」
57: 2012/12/15(土) 13:53:07 ID:iiiRClx.
鳴上「すまない、マミ……助かった……」 はあ… はあ…
マミ「いえ。 こちらこそ二人を助けてもらって、ありがとう」 クスッ
さやか「鳴上さん……」
まどか「こ、こんなにボロボロに……」
鳴上「……大丈夫だ、見た目ほど酷いケガじゃない」
さやか「いーから! ほら、つかまって!」
まどか「じゃ、私はこっちを……鳴上さん、つかまって」
鳴上「いや本当にだいじょ……」
ズルズルズル……
マミ「…さて、ここからは、私が相手よ!」 バッ!
58: 2012/12/15(土) 13:53:47 ID:iiiRClx.
鳴上「……!」
鳴上「これが……魔法少女の戦いか……!」
さやか「いっけー! マミさん!」
まどか「すごい…! 今日のマミさん、いつもよりすっごく強いよ!」
さやか「うん、本当にすごい!」
鳴上「…………」
鳴上「…………!?」
鳴上(なんだ…? このざらついた感覚は?)
鳴上(…………何かが)
鳴上(やばい…!)
59: 2012/12/15(土) 13:54:33 ID:iiiRClx.
ドウッ! ドウドウッ!
マミ(鳴上さんを……よくも!)
マミ(魔女と戦う、大切な仲間……)
マミ(そして、美樹さんと鹿目さんも、魔法少女になってくれるかもしれない人……)
マミ(私の後ろには、大切な人達がいる!)
マミ(もう……何も怖くない!)
マミ「一気に決めるわよ!」
ジャキン!
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
ドォンッ!! ドガァッ!!
さやか「やったあ!」
まどか「さすがマミさん!」
60: 2012/12/15(土) 13:55:13 ID:iiiRClx.
鳴上(!!?)
鳴上(違う!? 本体を捉えていない!?)
ダッ!!
さや・まど「!! 鳴上さん!?」
マミ「これでおわ――」
グワッ!!
さやか「えっ!?」
まどか「倒した魔女から何かが!?」
マミ「……!!」
鳴上(くっ!! 間に合え!!)
鳴上「イザナギッ!!」
61: 2012/12/15(土) 13:56:00 ID:iiiRClx.
ガブウッ…!!
鳴上「がああああああああああああああああああああっ!!!!!」
モギュ モギュ
マミ「ひいっ…!!」
さやか「鳴上さんのペルソナが!!」
まどか「いやああああああああああああああ!!」
鳴上「マ、マミ……!」
マミ「!?」
鳴上「い、今から、電撃の魔法を…奴の内部に放つ!」
鳴上「それで、ひ、怯んだ所を……さっきので、もう一度決めろ!」
マミ「あ…は、はい!」
62: 2012/12/15(土) 13:56:44 ID:iiiRClx.
鳴上「……イザナギッ!!」 ジオッ!
バリ バリッ!!
ギュエエエエエエエエッ!! ペッ!
鳴上「グハッ!!」 ドサッ…
マミ「ティロ・フィナーレ!」
ドォンッ!! ボグンッ!!
…ズルンッ!!
さやか「うえっ!? 脱皮!?」
まどか「マミさんっ!!」
マミ「くっ! こうなったら根比べよ!」
マミ「ティロ・フィナーレ!」
―――――――――――
63: 2012/12/15(土) 13:57:20 ID:iiiRClx.
マミ「はあっはあっはあっはあっ…」
さやか「こ、今度こそ、やった…?」
まどか「……も、もう、動かない、よね?」
マミ「…………」
シュウウウウウン……
さやか「!!」
まどか「結界が、晴れていく……!!」
マミ「……何とか……倒せたわね……」
マミ「くっ……」 クラッ…
さやか「マ、マミさん!」
まどか「そうだ、鳴上さんも!」
64: 2012/12/15(土) 13:57:57 ID:iiiRClx.
さやか「鳴上さん! 大丈夫!?」
鳴上「う……く……」
さやか「よかった…! 生きてる!」
まどか「マミさん、つかまって…」
マミ「いえ……私はいいわ。 私よりも鳴上さんを……」
???「……お困りの様ね」
さや・マミ・まど「!!?」
さやか「あ、あんたは!?」
マミ「……ど、どうやって……私の拘束を……?」
まどか「なんだっていい! ほむらちゃん、お願い!」
まどか「力を貸して!」
65: 2012/12/15(土) 13:59:16 ID:iiiRClx.
――????――
????「ふふふ……ようこそ、ベルベット・ルームへ……」
イゴール「これも、お久しぶりですな……お客様」
イゴール「…………」
イゴール「……ええ、その通り。 現実のあなた様は、眠っておられます」
イゴール「さて……今回お呼び立てしたのは、重要な事が判明しまして」
イゴール「それをお伝えする為でございます……」
イゴール「まさか、節目の年を超えられたお客様に、この様な事象が起きるとは……」
イゴール「さすがは……”ワイルド”の持ち主、という所でしょうか……」
イゴール「おお、これは失礼……」
イゴール「話が、それてしまいましたな」
66: 2012/12/15(土) 14:00:00 ID:iiiRClx.
イゴール「それでは、本題に入ります……」
イゴール「まず……以前にお話した、因果の渦……」
イゴール「お客様は、もはや逃れられぬ運命となりましたが」
イゴール「それは、あなたの身近に存在しております……」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……ご心配めされるな、お客様」
イゴール「別段シャドウの様に、御身に襲いかかる訳ではございません」
イゴール「むしろ……複雑に絡み合う因果を解き」
イゴール「正しき道を指し示すだけの力を、あなた様は秘めておられるのです……」
67: 2012/12/15(土) 14:00:37 ID:iiiRClx.
イゴール「ふむ? …………そうですな」
イゴール「ひとつだけ、ヒントを差し上げましょう……」
イゴール「お客様は、この困難に立ち向かう為に」
イゴール「この地においても新たなコミュを形成しなくては、ならないでしょう……」
イゴール「いかな”ワイルド”の力を持ってしても」
イゴール「人との繋がりをないがしろにしては……あなた様の望む未来は」
イゴール「おそらく……手に入りますまい……」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……、もっと解りやすく言うのならば……」
イゴール「お客様は、八十稲羽でおやりになられた事を」
イゴール「ここでも行えば、よろしいのです……」
68: 2012/12/15(土) 14:01:28 ID:iiiRClx.
イゴール「おお……そろそろ、お目覚めの時刻の様ですな」
イゴール「最後に」
イゴール「ペルソナカードですが……」
イゴール「今回に限り、無償で提供いたしましょう」
イゴール「今から、お客様のお集めになられたカードは」
イゴール「どんな物でもご自由にお使いください……」
イゴール「ふふふ……」
イゴール「サポートが遅れてしまった、せめてものお詫びでございます」
イゴール「それでは……またお会いいたしましょう……」
―――――――――――
69: 2012/12/15(土) 14:02:16 ID:iiiRClx.
―――――――――――
鳴上「…………」
鳴上「…………うっ」
鳴上「……ここは?」
――深夜――
――巴マミの部屋――
鳴上「…………」
鳴上(以前来た、マミの部屋か……)
鳴上(…………)
鳴上(……なんで俺は、ベッドで寝て)
鳴上(他のみんなは、床の上で寝てるんだ……)
70: 2012/12/15(土) 14:03:03 ID:iiiRClx.
71: 2012/12/15(土) 14:03:39 ID:iiiRClx.
鳴上(? あれは……マミか?)
鳴上(ベランダに出て、何をしている?)
鳴上「…………」
カラカラカラ……
マミ「!?」 ビクッ!
鳴上「……すまない、驚かせてしまったか」
マミ「あ……鳴上さん。 良かった……気がついて……」
鳴上「ベッド……俺が使って良かったのか?」
マミ「気にしないでください。 あなたは、私の命の恩人なのですから……」 クスッ
72: 2012/12/15(土) 14:04:20 ID:iiiRClx.
鳴上「…………」
鳴上「言いたくなければ、もう聞かないが……何か、考え事でも?」
マミ「…………」
マミ「鳴上さん」
鳴上「うん?」
マミ「鳴上さんは……戦う事が、怖くないんですか?」
鳴上「もちろん怖い」
マミ「……え?」
鳴上「いつだってビビってる。 今やってる攻撃が通じなかったらどうしよう、とか」
鳴上「この敵の攻撃を食らったら、氏ぬかなぁ……恐ろしいなぁ……とか」
鳴上「仲間が居なくなったら……とてつもなく寂しくて嫌だな、とか……」
73: 2012/12/15(土) 14:05:18 ID:iiiRClx.
マミ「…………」
マミ「なんだか、意外ですね」 クスッ…
鳴上「……俺は、『ペルソナ』という力が使えるだけの」
鳴上「ただの高校生だからな」 クスッ
マミ「…………」
マミ「鳴上さんは……どうして自分が、こんな目に合わなければならないの?」
マミ「と、考えた事はありますか?」
鳴上「ある」
鳴上「八十稲羽で氏にかけた時は、いつも考えていた……」
マミ「……逃げよう、と考えた事は?」
鳴上「……!」
74: 2012/12/15(土) 14:05:52 ID:iiiRClx.
マミ「きっと……鳴上さんは、美樹さんや鹿目さんから」
マミ「私の過大評価を聞いたのでしょうけど……」
マミ「私は……そんなに強くない」
マミ「魔法少女になったのだって……氏ぬ事が怖かったから」
マミ「魔女と戦う事を望んで……ここに居る訳じゃない……!」
マミ「もう……怖いのは……いや……」 グスッ…
鳴上「…………」
鳴上「いいんじゃないかな」
マミ「!?」
75: 2012/12/15(土) 14:06:37 ID:iiiRClx.
鳴上「マミは、十分頑張った……」
鳴上「魔法少女を辞められなくても、魔法を使わずに平穏に暮らす事は出来る」
鳴上「ずっと一人で戦って来たマミを、誰も責めたりはしない」
鳴上「後は……俺に任せばいい」 ニコ
マミ「…………」 ドキッ ///
マミ「…………」
マミ「……どうして鳴上さんは、戦おうとするんですか?」
マミ「さっき、怖いって言っていたのに……」
鳴上「……それは、恐怖心だけじゃ無いから」
マミ「………え?」
76: 2012/12/15(土) 14:07:36 ID:iiiRClx.
鳴上「ペルソナがあっても 氏ぬ事はあるだろう」
鳴上「でも、どうして魔女は存在するのか知りたいし」
鳴上「魔女による被害も防ぎたい」
鳴上「それに……」
マミ「それに?」
鳴上「単純に『逃げたくない』という気持ちもある」
マミ「!!」
鳴上「誰にだって何かを選択する自由がある」
鳴上「よく、あの時こうしておけば、こんな事にならずにすんだ、と言って」
鳴上「他人を責める奴がいるが……」
鳴上「それは結果を知ったから、言えるに過ぎない」
鳴上「選択をした時点で、結果を知っている奴はどこにも居ない」
鳴上「予測や予想は出来ても……な」
マミ「…………」
77: 2012/12/15(土) 14:08:13 ID:iiiRClx.
マミ「私は……」
鳴上「…………」
マミ「……私にもあります」
マミ「逃げたくないって気持ち」
マミ「でも私は……戦いが怖い……氏ぬ事が怖い……」
鳴上「…………」
鳴上「それでいいんだ、マミ。 弱音を吐くこともまた、人間には必要だ」
鳴上「俺で良ければいつでも聞くし、俺の弱音も出来れば聞いてくれ」 クス
マミ「鳴上さん……ありがとう」 ///
78: 2012/12/15(土) 14:08:57 ID:iiiRClx.
マミ(……どうしてだろう?)
マミ(ついさっきまで、私は魔女と戦う恐怖に怯え)
マミ(そんな自分が、たまらなく情けなくて……嫌だったのに)
マミ(そんな自分も私を形作る一つなんだって)
マミ(そんな風に思える様になってる……)
マミ(…………)
マミ(きっと、これから先も怖い思いをするでしょうね……)
マミ(でも)
マミ(それを隠さなくてもいい……)
マミ(怖いなら、怖いって……言えばいい)
マミ(恥ずかしがる事も、引け目を感じる必要も無い)
マミ(私は私……巴マミなんだから)
79: 2012/12/15(土) 14:09:56 ID:iiiRClx.
マミ「……あ、そうだ」
鳴上「?」
マミ「グリーフシード、使う所をお見せしますね」 ニコ
鳴上「確か……ソウルジェムに当てるんだったな」
マミ「はい、その通りで……あら?」
ヒィイイン……
マミ「こ、これは……!?」
鳴上「? どうした?」
マミ「そ、それが……」
マミ「あんなに魔法を使ったのに……ソウルジェムが全然『けがれ』ていないんです」
マミ「それに、こんな風に綺麗に光輝く事も初めてで……
80: 2012/12/15(土) 14:10:59 ID:iiiRClx.
鳴上「体は大丈夫か?」
マミ「ええ……特には……」
マミ(むしろ調子がいいかしら……?)
鳴上「……Qべえに聞くしかないか」
マミ「そうですね……」
マミ「…………」
マミ「あ、あの……」 ///
鳴上「ん?」
マミ「よ、良かったら……」 ///
マミ「名前で呼んでも……いいでしょうか?」 ///
81: 2012/12/15(土) 14:11:56 ID:iiiRClx.
キリがいいのでこの辺で……。
84: 2012/12/15(土) 19:19:33 ID:iiiRClx.
――翌朝――
――巴マミの部屋――
マミ「おはよう、鹿目さん、美樹さん」
さやか「ん~……おはよ~……マミさん」
まどか「おはようございます、マミさん」
ほむら「……おはよう、まどか」
さやか「って、あんたも居たの」
ほむら「ご挨拶ね。 昨日は、この男の傷を直したり、運ぶの手伝ったりしてあげたのに」
鳴上「……それはすまなかった」
マミ「まあまあ……みんな、喧嘩しないで」
マミ「それに、暁美さん……昨日はごめんなさい。 そして、ありがとう。 本当に助かったわ」
85: 2012/12/15(土) 19:20:19 ID:iiiRClx.
ほむら「………?」
ほむら(巴マミの様子……ずいぶん、変わった様な……?)
ほむら「……もういいわ。 それよりも、そろそろ教えてくれないかしら?」
ほむら「この男の事を」
マミ「わかってるわ。 ちょうど朝食の準備も終わったし」
マミ「食べながら話すわね?」
―――――――――――
マミ、事情説明中
―――――――――――
マミ「と、いうわけなの……」
ほむら「」
ほむら(……ペルソナ!? シャドウ!? いったい、何が起こってるの!?)
ほむら(今まで全く居なかったのに……どうして今回出てきたの……!?)
86: 2012/12/15(土) 19:21:15 ID:iiiRClx.
マミ「……信じられないのは、無理もないわね……」
マミ「じゃあ、悠さん。 あれを見せてあげてもらえないかしら?」
鳴上「わかった」 スッ…(テレビに近づく)
さやか(……あれ?)
まどか(今、マミさん、悠さんって……)
ズッ……ブウウウウウウンッ……
ほむら「!!?」 ギョッ!
マミ「どう? これで信じてくれるかしら?」
ほむら「…………」
ほむら「……確かに、疑い様は無さそうね」
87: 2012/12/15(土) 19:21:59 ID:iiiRClx.
ほむら「事情はわかったわ」
ほむら「とりあえず、敵ではなさそうって事も……」 スッ…
まどか「あれ? ほむらちゃん? どこに行くの?」
ほむら「……あなた達こそ、そんなにゆっくりしてていいの?」
ほむら「今日も学校があるのだけど?」
まど・さや「」
さやか「ああああああ!! 忘れてたぁ!!」
まどか「どどどどどど、どうしよう!! 思いっきり、無断外泊しちゃった!!」
マミ「悠さんは、大丈夫?」
鳴上「基本、放任主義。 それにこの町に来る時は」
鳴上「『友達の家に泊まるかも』と、事前に言ってある」
マミ「ぬかりは無い様ですね」 クス
鳴上(……とはいえ、今日は確実に遅刻だな)
88: 2012/12/15(土) 19:22:58 ID:iiiRClx.
――昼休み――
――見滝原中学校・教室――
※注 二人はお弁当を広げております
まどか「…………」 ハア…
さやか「…………」 ハア…
まどか「……怒られた? さやかちゃん」
さやか「……もう言わないで……まどか」
さやか「マミさんが、電話しといてくれなかったら……」
さやか「あたしの頭の形は、変わってたよ……」
まどか「私もママのあんな怖い顔、初めて見たよう……」
438: 2012/12/25(火) 17:24:44 ID:8PNg91Hw
まどか「今日はどうしよっか?」
さやか「しばらくは大人しくしとこうよ、まどか」
さやか「それに……あたし今日、用事あるし」
まどか(あ……そっか。 今日は病院の日だったね)
まどか(交通事故で左半身に大怪我を負った上条 恭介くん……)
まどか(さやかちゃん、幼馴染だったし……すっごく心配してたな)
まどか(でも、今は順調に回復してきたって聞いてる)
まどか(良かったよね、さやかちゃん……)
89: 2012/12/15(土) 19:27:47 ID:iiiRClx.
まどか「うん、そうだね……鳴上さんも居る事だし」
さやか「……!!」
さやか「そうそう、まどか。 マミさんが鳴上さんの事」
さやか「悠さんって呼んでたの、気づいた?」
まどか「!! そうそう! 私も気になった!」
まどか「何か、いきなりだったよね? あれ!」
アハハ……
―――――――――――
90: 2012/12/15(土) 19:29:24 ID:iiiRClx.
――夕方――
――見滝原総合病院・病室――
さやか「……っていうわけでさ、何の曲か当てると驚かれるんだよね~」
恭介「…………」
恭介「………さやかは、さ」
さやか「ん?」
恭介「僕をいじめて……楽しいの?」
さやか「!? ……な、何言ってるのさ?」
恭介「僕に音楽を聴かせて……」
恭介「もう二度と……弾く事が出来無い音楽を聴かせて……!」
さやか「!!?」
91: 2012/12/15(土) 19:30:07 ID:iiiRClx.
恭介「こんな……動かない腕なんて!!」
(携帯CDプレイヤーを) グシャッ!!
さやか「やっ……!? ダメッ!! 止めてよ恭介!!」
さやか「大丈夫だよ……。 リハビリ頑張れば、きっと……!」
恭介「もう……無理なんだ」
恭介「先生直々に言われたんだ……現代医学をもってしても……」
恭介「僕の左手は動かないって……!」 グスッ…
さやか「…………っ!」
恭介「それこそ……奇跡か魔法でもない限り」
恭介「二度とバイオリンを弾く事は、出来ないだろうって……」
さやか「……!!」
92: 2012/12/15(土) 19:30:59 ID:iiiRClx.
さやか(奇跡か魔法……)
ヒュウウウウウッ……
さやか「…………」
さやか「……あるよ」
恭介「…………」
さやか「奇跡も、魔法も……」
さやか「あるんだよ……!」
恭介「…………」
93: 2012/12/15(土) 19:31:55 ID:iiiRClx.
ほむら「あなた達は、魔法少女になっては、ダメよ」
鳴上「真面目な話、二人は、魔法少女にならない方がいいかもしれない」
鳴上「……何かが、引っかかるんだ」
鳴上「あの、Qべえという存在に」
さやか(…………)
さやか(あの転校生は、ともかく……)
さやか(鳴上さんは……どうしてあんな事を……?)
さやか(でも……あたしは……あたしは!) グッ…!
94: 2012/12/15(土) 19:32:36 ID:iiiRClx.
――巴マミの部屋――
ストン
Qべえ「やあ、巴マミ。 遅くなってゴメン」
マミ「珍しいわね。 いつもは呼べばすぐ来るのに……」
Qべえ「僕にだって、外せない用事くらいあるよ」
Qべえ「それで? 聞きたい事って何かな?」
マミ「これについて聞きたいの」 コト…
ヒィイインッ……
Qべえ「……!?」
Qべえ「…………」
Qべえ「……いったい何があったんだい?」
マミ「それを聞きたいのは、こっちなんだけど……」
95: 2012/12/15(土) 19:33:40 ID:iiiRClx.
Qべえ「体調に変化は?」
マミ「全くないわ」
Qべえ「そう……」
Qべえ(こんな状態のソウルジェムは、初めて見る)
Qべえ(強いて言うのなら……比較的、安定した心理の時に見られる現象に似ているけど)
Qべえ(ここまで澄み切った状態のソウルジェムは、見た事が無い……)
Qべえ(ましてや、『けがれ』が全く無い事など、有り得ない……!)
Qべえ(何が巴マミに起こったんだ?)
マミ「……Qべえ?」
96: 2012/12/15(土) 19:34:24 ID:iiiRClx.
Qべえ「ん? ああ、ごめん。 ……初めてのケースだけど」
Qべえ「君のソウルジェムは、とても安定した状態になっている」
Qべえ「つまり、心理的にとても落ち着いている、という事で……」
ピピピ…… ピピピ……
マミ「あ……、Qべえ、ちょっと待ってね」 ガチャ
マミ「もしもし?」
まどか『あ!? マミさん!?』
まどか『良かった…! つながって……』
マミ「鹿目さん? どうしたの?」
97: 2012/12/15(土) 19:35:04 ID:iiiRClx.
まどか『今、駅前のツリー広場なんですけど……仁美ちゃんが……』
まどか『友達の様子がおかしくて……きゃあ!』 ブッ!!
ツー… ツー…
マミ「!? 鹿目さん!? 鹿目さん!?」
Qべえ「……魔女かい?」
マミ「ええ、どうやらそうみたい」
マミ「しかも、鹿目さんの友人が魔女に操られているみたいね……」
マミ「急いで行かないと!」
98: 2012/12/15(土) 19:35:52 ID:iiiRClx.
――夜――
――古びた工場――
まどか「仁美ちゃん! しっかりして!」
仁美「うふふふふふあはははははは」
まどか(ダメッ…! 魔女の口づけのせいで、どうにもならない……!)
まどか(マミさん! 鳴上さん! 早くきて!)
仁美「まどかさぁん……」 ユラァ……
まどか「ひいっ…!」 ダダッ!
バタンッ! カチン(鍵閉め)
まどか「はあっはあっ……これで、なんとか……」
イヒヒヒヒヒッ…!
まどか「!? やっ……!」
99: 2012/12/15(土) 19:36:41 ID:iiiRClx.
まどか(……! 結界に引き込まれたっ……!)
ギリギリギリギリッ!!
まどか「ひぎっ!? あああああああああっ……!!!」
シャキン! シャキン! シャキン!
???「……はあっ!」
ズババッ!
まどか「……!?」
まどか「さやかちゃん!?」
―――――――――――
100: 2012/12/15(土) 19:37:36 ID:iiiRClx.
―――――――――――
まどか「はあっはあっはあっ……」
さやか「大丈夫? まどか?」
まどか「だ、大丈夫……だけど……、さやかちゃん」
まどか「魔法少女に……なったの?」
さやか「てへへ……まあ、ね」
まどか「どうして……? マミさんも 鳴上さんも 居るのに……」
さやか「……できたから」
まどか「え?」
さやか「どうしても叶えたい願いが、できちゃったから……」
まどか「さやかちゃん……」
101: 2012/12/15(土) 19:38:28 ID:iiiRClx.
さやか「それにさ、まどかも仁美も、助けられたんだし」
さやか「結果オーライだよ!」 ニャハハ…
まどか「…………」
タッ タッ タッ
マミ「確か……この辺で魔女の反応が……え?」
さやか「あ、マミさん!」
マミ「美樹さん! その姿は……!」
さやか「そうです! はれて魔法少女になりました!」
マミ「そうなの……」
さやか「や、やだなあ。 もっと喜んでくださいよ!」
102: 2012/12/15(土) 19:39:24 ID:iiiRClx.
マミ「そ…そうよね。 ごめんなさい、私ったら……」
まどか「……あ、そうだ! 鳴上さんに電話入れておかないと……」
まどか「きっと、心配してる」
マミ「そうね……私が連絡しておくわ」
まどか「え? いいんですか?」
マミ「ええ、ちょっと伝えなきゃならない事もあるし」
まどか「わかりました。 お願いします」
さやか「じゃ、帰ろう! まどか!」
まどか「うん、さやかちゃん!」
さやか「あ、仁美も忘れずに連れて行かないと……よっと」 おんぶ
まどか「気がつくまで、まだ かかりそうだね……」
テク テク テク…
103: 2012/12/15(土) 19:40:09 ID:iiiRClx.
ほむら「…………」
ほむら「美樹さやか……」
ほむら「あなたは……また、まどかを苦しめるのね……」 ギリッ…!
ほむら「…………」
ほむら(でも……巴マミは、生きている)
ほむら(もしかしたら、美樹さやかも……あの男、鳴上 悠が……)
ほむら(…………)
ほむら(何を馬鹿な……) 頭フルフル
ほむら(たった一人の男が、加わっただけで)
ほむら(すべて、上手くいくわけがない……)
タッ タッ タッ…
104: 2012/12/15(土) 19:41:31 ID:iiiRClx.
――鉄塔の上――
??「――で? どうしてあたしを呼んだんだい?」
Qべえ「ちょっとね。 魔法少女の一人にイレギュラーが生じたんだ」
??「イレギュラー?」
Qべえ「今は、凄く安定しているんだけど……」
Qべえ「今後どうなるか、予測がつかない」
??「なるほど……それであたしの出番ってわけだ」
??「……けど、後二人も魔法少女が居るのは、どういう事だい?」
Qべえ「一人は急だったけど、今日なったばかりの魔法少女だよ」
Qべえ「そして、彼女もまた、なりたてで不安定だ」
105: 2012/12/15(土) 19:43:07 ID:iiiRClx.
Qべえ「もう一人は、謎が多い娘でね……」
Qべえ「そうだね、こっちもイレギュラーと言える存在だ」
??「ふ~ん。 なかなか面白そうだけど……三人も相手になるのは勘弁して欲しいね」
Qべえ「大丈夫だよ」
Qべえ「謎の多いイレギュラーは、我関せず、といった感じだ」
Qべえ「共闘は、おそらくしないだろう」
??「ふん……あたしと同じで一匹狼かい」
??「まあいい。 ここの狩場は良さげだ。 あたしのモノになるのは悪くないね」
Qべえ「一応言っておくけど、あまり派手に暴れないでくれよ?」 ニコ
??「ああ……わかってるよ。 ただし、あたし流のやり方でやるけど、な……」 クックックッ…
106: 2012/12/15(土) 19:44:31 ID:iiiRClx.
――放課後――
――見滝原町・河川敷公園――
まどか「えっと、さやかちゃん。 調子はどうかな?」
さやか「ん? すこぶるいいよ!」 ニコ
まどか「そう。 なら、いいんだけど」 ニコ
さやか「……なんか、ね。 あたし嬉しいんだ」
さやか「魔法少女になって、マミさんや鳴上さんの手伝いが出来るって事が」
さやか「すごく嬉しい」
まどか「さやかちゃん……」
さやか「……あたしって、バカだからさー」
さやか「誰かを助けられたり、誰かの役に立つ事なんて、無いと思ってた」
まどか(! ……さやかちゃん、私と同じ事を……)
107: 2012/12/15(土) 19:45:28 ID:iiiRClx.
さやか「だから、今、やる気マンマンなんだ~」 ニコ
さやか「……マミさんと鳴上さんには、『慎重』になれって言われてるんだけどね」 テへへ…
まどか「フフッ、わかる気がするかも」
さやか「お? 言ったなー、まどか!」 ウリャウリャ
まどか「きゃーん! ごめん、さやかちゃん!」 クスグルノヤメテー
アハハハ……
ほむら(…………)
ほむら(…………)
ほむら(くっ……美樹さやか) ギリッ
108: 2012/12/15(土) 19:46:19 ID:iiiRClx.
――夕方――
――見滝原総合病院・屋上――
※注 恭介は車椅子
恭介「……さやか、どうしたの? こんな所に連れてきて」
さやか「いいから いいから。 まあ、全快前祝いって事で……」
恭介「?」
パチパチパチ……
恭介「!? お父さん!? それに、お母さんに病院の先生方……」
恭介・父「先生にお前の病状を聞いて……散々迷ったが……」
恭介・父「本当に捨てなくて良かった……」 スッ…
恭介「!!!」
恭介「僕の……バイオリン……」
109: 2012/12/15(土) 19:47:09 ID:iiiRClx.
さやか「……恭介、弾いてみてよ?」
恭介「……さやか」
恭介「…………」
♪~ ♪~ ♪~
恭介・母「……ああ」 グスッ…
恭介・父「……良かった、本当に」 グスッ…
♪~ ♪~ ♪~
さやか(…………)
さやか(……そうだよ、これでいいんだよ)
さやか(あたしのやった事は、間違いじゃない)
さやか(あたし……今、最高に幸せだよ……) グスッ…
110: 2012/12/15(土) 19:49:14 ID:iiiRClx.
――数日後の夜――
――ビル群の裏路地――
キヒャヒャヒャ!
さやか「このぉ! 逃げるな!」 ブンブン!
まどか「さやかちゃん!」
鳴上「俺がペルソナで足を止める!」
鳴上「ティターニア!」 マハガル!
ヒュゴオオオッ!
マミ「上手い! 止めよ! ティロ・フィナーレ!」 ドオンッ!
ガキィンッ!!
マミ「!?」
111: 2012/12/15(土) 19:50:25 ID:iiiRClx.
さやか「な、何!?」
キィン! カァンッ!!
まどか「ああ……」
鳴上「逃げられた……」
マミ「……結界が晴れていく」
さやか「もう! 何なのよ、今の!? もう少しだったのに!!」
??「そりゃ、こっちのセリフだっつーの」
まどか「!? だ、誰!?」
112: 2012/12/15(土) 19:51:52 ID:iiiRClx.
ヒュ――ン……ストン
??「あたしは、佐倉 杏子。 見ての通り、魔法少女だ」
杏子「それよりも何だい? 何で使い魔を狩ってんのさ?」
杏子「何人か食わせて魔女化させないと、グリーフシードを落とさないだろ」
杏子「もったいない事するんじゃねーよ」
一同「!?」
さやか「……あんた、何言ってんのよ」
さやか「そんな事出来るわけ無いじゃない!!」
杏子「はあ? 何、正義感ぶってんのさ」
杏子「あたし達は、体張って魔女を退治してるんだ……」
杏子「魔法は、タダで出来る事じゃないんだよ!!」
113: 2012/12/15(土) 19:52:41 ID:iiiRClx.
鳴上(!?)
鳴上(…………)
鳴上(……そうか、今、わかった)
鳴上(あの時)
鳴上(Qべえの何に引っかかっていたのか……!)
鳴上(…………)
鳴上(もし、俺の推測が当たっているとしたら……)
鳴上(…………)
鳴上(くっ……どうすればいい……?)
114: 2012/12/15(土) 19:53:27 ID:iiiRClx.
さやか「このおっ!!」 ゴウッ!
ガキィ!
杏子「はっ! いきなり何すんのさ!?」
杏子「この程度の力で、あたしにケンカを売ろうってのかい!?」
杏子「上等だよ!」
ブンッ! ガゴォッ!!
さやか「…ああっ!!」 ダンッ!
杏子「そらそら! どうした!?」
シュルルルルルッ!!
115: 2012/12/15(土) 19:54:21 ID:iiiRClx.
杏子「!?」
さやか「!?」
マミ「二人共、止めなさい!」
マミ「魔法少女同士が戦っても、無意味よ!」
杏子「…………」
さやか「…………」
杏子「……ちっ、わかった。 悪かった。 これで終わっとくよ」
さやか「……あたしも悪かったわ」
マミ「……拘束を解くけど、もう飛びかかっちゃダメよ」
シュルルルルルッ……
まどか「……ほっ。 良かった」
鳴上「…………」
116: 2012/12/15(土) 19:55:04 ID:iiiRClx.
鳴上「……まどか」
まどか「え!? は、はい…?」
鳴上「魔法少女には、絶対になるな……」
まどか「!?」 ビクン!
鳴上「……今、理由は言えないが……頼む」
まどか「……は、はあ」
鳴上「さあ、俺達も行こう」
まどか「…………」
まどか(いったい……どういう事?)
まどか(あんな怖い表情の鳴上さん……初めて見た)
117: 2012/12/15(土) 19:55:56 ID:iiiRClx.
――巴マミの部屋――
さやか「ったく! 何なのよ! あいつ!」
マミ「美樹さん、落ち着いて」
さやか「でも、マミさん!」
鳴上「落ち着け、さやか」
さやか「ぐ……むう」
まどか(鳴上さんの一言は、効果大だなぁ……)
マミ「……残念だけど、彼女の意見も一理あるわ」
さやか「マミさん!?」
マミ「ソウルジェムの『けがれ』は、グリーフシードでしか取り除けない……」
マミ「そして、それは、魔女のみが持っている」
マミ「その事実は……変え様がないわ……」
さやか「……………………」
118: 2012/12/15(土) 19:56:53 ID:iiiRClx.
さやか(……どうしてだよ、マミさん)
さやか(何で、あんな奴の肩を持つの……)
鳴上「それから……マミ?」
マミ「はい、悠さん」
マミ「後……今日わかった事を、みんなに伝えておきますね」
さやか「え?」
まどか「わかった事?」
マミ「まず、これを見てくれる?」 コト…
ヒィイインッ……
さやか「わあ……これって、マミさんのソウルジェム?」
まどか「なんて言うか……凄く綺麗」
119: 2012/12/15(土) 19:57:32 ID:iiiRClx.
さやか「……あれ!?」
まどか「どうしたの? さやかちゃん?」
さやか「うん……」 ゴソゴソ… コト…
さやか「これ、あたしのソウルジェム」
まどか「……少し、くすんでるね?」
さやか「まどか、今日あたし達は、魔法をたくさん使った……」
まどか「うん」
さやか「なのに……どうして、マミさんのソウルジェムは、少しも『けがれ』ていないの?」
まどか「……あ!!」
120: 2012/12/15(土) 19:58:48 ID:iiiRClx.
マミ「そう……Qべえにも聞いてみたんだけど」
マミ「理由は、全くわからないの」
マミ「Qべえは私の心が、とても安定している状態だと言っていたわ」
鳴上「そして、今日、本来は『けがれ』るはずのソウルジェムが」
鳴上「全然『けがれ』ない、という事が確認された……」
鳴上「もちろん、何故かはわからない」
さやか「…………」
まどか「…………」
鳴上「……だが、俺は一つ、思い当たる事がある」
さや・まど「えっ!?」
121: 2012/12/15(土) 19:59:33 ID:iiiRClx.
鳴上「……みんなも見ているだろう」
鳴上「俺は、ペルソナを使いながら、全くグリーフシードを必要としない」
マミ・まど・さや「!!!」
まどか「じゃ、じゃあ、マミさんもペルソナ使いに!?」
鳴上「いや、たぶんそうじゃない」
鳴上「魔法少女も、ペルソナも、根源の力は、心だ」
鳴上「だが、発動の仕方や仕組みが違う……」
鳴上「例えるなら、同じ火薬を使いながら 花火とダイナマイトは全く別物」
鳴上「そんな所だろう」
122: 2012/12/15(土) 20:00:40 ID:iiiRClx.
鳴上「でも、火薬自体が、ダイナマイト用のモノから 花火用の物へと変化したのなら」
鳴上「ありえない事では、無いかもしれない……」
鳴上「もちろん推測でしかないがな」
さやか「…………」
さやか(……なにそれ)
さやか(どうして、マミさんだけ……)
マミ「それから捕捉するけど……魔法を無限に使える様になったわけでも無いの」
マミ「これも悠さんのペルソナ能力に近いんだけど……」
マミ「魔法をある程度使うと、凄く疲れる様になったわ」
まどか「そうなんですか……。 痛し痒しって、感じですね」
123: 2012/12/15(土) 20:01:54 ID:iiiRClx.
鳴上「……それから、この事はQべえに内緒に……」
ストン…
Qべえ「僕が、どうかしたのかい?」
鳴上「…………」
マミ「……Qべえ」
Qべえ「ひどいな、鳴上 悠。 僕に隠し事かな?」
鳴上「……その様子だと、聞いていたみたいだな」
Qべえ「やれやれ……何だか、君には嫌われた様だね」
Qべえ「その目は、まるで暁美ほむらの目に似ているよ」
鳴上「……!」
鳴上(……そうか、彼女も俺と同様に、あの事に気づいたのかもしれないな……)
まどか(鳴上さん……)
124: 2012/12/15(土) 20:02:50 ID:iiiRClx.
鳴上「……さて」 スクッ…
鳴上「そろそろ遅い時間だ」
鳴上「さやかと まどかを 送っていこう」
さやか「えっ?」 ///
まどか「は、はい?」 ///
鳴上「Qべえは、ここに残るのか?」
Qべえ「まあね。 巴マミの話も聞きたいし」
鳴上「そうか。 それじゃ、二人共、行こうか?」
まどか「わ、わざわざ、すみません……」 ///
さやか「エへへ……。 な、なんか照れるね」 ///
鳴上「じゃ……マミ、お休み」
マミ「はい、お休みなさい、悠さん」
125: 2012/12/15(土) 20:03:43 ID:iiiRClx.
――路上――
テク テク テク…
鳴上「すまないな、二人共。 ダシに使って」
まどか「いえ……」
さやか「まあ、そんな事だろうって思ったけどね~」
鳴上「だが、実を言うと、少し頼みたい事がある」
まどか「頼み、ですか?」
さやか「どんな事?」
鳴上「暁美ほむらと、会って話がしたい」
鳴上「場所と時間はそちらに任せるから、と伝えてくれないだろうか?」
まど・さや「!?」
126: 2012/12/15(土) 20:04:35 ID:iiiRClx.
さやか「…………」
さやか「鳴上さん、いったいあの転校生に何の用が?」
鳴上「……今は話せない。 結論を出す為に、少しでも情報が欲しい」
鳴上「それだけだ」
まどか(…………)
まどか(私に魔法少女になるな、と言った事と関係があるのかな……)
さやか(……なんか、嫌だな)
さやか(あたし達に隠し事なんて、止めてよ……鳴上さん)
まどか「わかりました、鳴上さん。 ほむらちゃんに伝えておきますね」
鳴上「頼む」
127: 2012/12/15(土) 20:05:36 ID:iiiRClx.
――さやかの部屋――
さやか「…………」
さやか「…………はあ」
さやか(何か、気分悪いな……)
さやか(せっかく魔法少女になったのに)
さやか(あたしだけ、舞い上がってたみたい……)
さやか(…………)
さやか(せっかく、やる気になってたのになぁ……)
さやか(…………)
さやか「…………はあ」
128: 2012/12/15(土) 20:07:03 ID:iiiRClx.
――翌日・休日の午前中――
――ゲームセンター――
タン タン タタン!
杏子「よっ ほっ ふっ」
タタン タタン タン!
杏子「よう。 何かあたしに用かい?」
ほむら「…………」
タン! タタン タン
ほむら「私に、協力して欲しいの」
杏子「へえ? けど、あたしのやり方 知ってんだろ?」
タン! (ゲーム終了)
杏子「見返りは何だい?」
129: 2012/12/15(土) 20:08:08 ID:iiiRClx.
ほむら「この町のテリトリーを 全部あげるわ」
杏子「ほー。 そいつは太っ腹だね」
杏子「で? あたしは、何をすればいいんだい?」
ほむら「それは後で、私の家で説明するけど……約束して欲しい事があるの」
ほむら「今からしばらく、『何もしない事』を、ね」
杏子「はあ? 魔女退治もかい?」
ほむら「それは構わない。 私が言っているのは」
ほむら「美樹さやか達の事よ」
杏子「……ちょっかい出すなって事かい」
ほむら「そうよ」
130: 2012/12/15(土) 20:08:47 ID:iiiRClx.
杏子「…………」
杏子「まあ、言いたい事はわかった」
杏子「その詳しい話ってのは、いつするんだい?」
ほむら「三日後、ここで待ってて。 迎えに行くから」
杏子「オッケー、オッケー。 わかったよ」
チャリン☆ ゲーム・スタート!
ほむら「…………」
ほむら(これで……何とかなればいいけど)
杏子(はっ……あのムカつく青いのが、大事なのかぁ?)
杏子(ちょっかい出すなって言われると……出したくなるんだよねぇ……) クックックッ…
131: 2012/12/15(土) 20:09:47 ID:iiiRClx.
――夕方――
――見滝原総合病院――
テク テク テク…
さやか(えへへ……恭介、この新しいCDプレイヤー、気に入ってくれるかな?)
さやか(きっと、喜んでくれるよね) ///
ガラッ
さやか「恭介……!」
さやか「…………あれ?」
さやか「…………」
さやか「どうして……居ないの?」
132: 2012/12/15(土) 20:10:33 ID:iiiRClx.
看護師「あら? あなたは……?」
さやか「あっ……その……この病室の上条 恭介くんは……?」
看護師「ああ、上条さんならお昼頃、親御さんと退院されましたよ?」
さやか「えっ……? そう……なんですか?」
看護師「ええ。 少しでも早く、帰りたかったみたいで……」
さやか「…………」
さやか(恭介……。 退院するって、一言あってもいいじゃない……)
さやか(なんか、ちょっとショックだな……)
133: 2012/12/15(土) 20:11:17 ID:iiiRClx.
――夜――
――上条宅前――
さやか(…………)
さやか(……迷惑だったのかな?)
さやか(…………)
さやか(ううん、そんな事ない!)
さやか(余計な事は考えるな、さやか!)
さやか(と、とにかく、今日はCDプレイヤーを渡して、帰ろう! うん!)
♪~ ♪~ ♪~
さやか(………あ)
さやか(…………)
さやか(バイオリンの音……)
134: 2012/12/15(土) 20:11:57 ID:iiiRClx.
さやか(…………)
さやか(…………そっか)
さやか(恭介……思い切りバイオリンを弾きたかったんだ)
♪~ ♪~ ♪~
さやか(…………)
さやか(……そうだよね)
さやか(病室じゃ出来ないもんね……)
さやか(ふふっ……そのせいで、あたし、忘れられちゃったのか)
さやか(相変わらず、音楽バカなんだから……)
さやか(邪魔しない様に今日は帰ろっと) クスッ
135: 2012/12/15(土) 20:13:01 ID:iiiRClx.
??「こんな所で何してんのさ? お前」
さやか「!?」
さやか「……あんたは」
杏子「あんたじゃねーよ。 佐倉 杏子だ。 忘れんな」
さやか「……何の用?」
杏子「べっつにー。 今だったら二人っきりだし」
杏子「この前の続き、サシで出来るけど?」
杏子「文句あんだろ? あたしに。 遠慮なくかかってきなよ?」 ニヤニヤ
さやか「…………」
136: 2012/12/15(土) 20:13:55 ID:iiiRClx.
杏子「そういやあんたさー、願い事……この家の男の体、治すのに使ったんだって?」
杏子「バッカじゃないの?」 ケラケラ……
さやか「なっ……!」
杏子「だってそうだろ?」
杏子「他人の為に、たった一つしかない願いを使っちまったなんて」
杏子「バカ以外の何者でもないじゃないか」
さやか「あんた……!!」 ギリッ!
杏子「どうやら、やる気になったみたいだね……」
杏子「来なよ。 ここじゃ、てめーもまずいだろ?」
杏子「人の居ない所で、派手にやろうじゃない……」 クックックッ……
137: 2012/12/15(土) 20:14:52 ID:iiiRClx.
――交差陸橋上――
杏子「さぁーて……おっぱじめようじゃないか……」
キィイイイイインッ!(魔法少女へ変化)
さやか「後悔させてやる……!!」 スッ…
???「待ちなさい、二人共」
杏子・さやか「!!?」
杏子「あ、あんたは……」
ほむら「約束したはずだけど? 美樹さやか達には、手を出すな、と」
杏子「うるせーよ。 あたしは、あたしのやりたいよーにしたいんだよ!」
ほむら「…そう。 なら」
杏子「!?」
138: 2012/12/15(土) 20:15:38 ID:iiiRClx.
ほむら「佐倉 杏子。 私が、あなたの代わりに 美樹さやかと戦うわ」
杏子「はあ!? なんでそうなるんだよ!?」
さやか「……あーもう! めんどくさい!」
さやか「いいよ……二人共、相手してやる!!」 スッ…
???「ダメ!! さやかちゃん!!」 バッ!
さやか「!? まどか!?」
さやか「返して! あたしのソウルジェム!!」
まどか「ごめん……さやかちゃん……!」
139: 2012/12/15(土) 20:16:26 ID:iiiRClx.
まどか「えいっ!!」 ブンッ
ポイッ…… (走ってるトラックの荷台に) ポトッ
さやか「ああっ……!?」
杏子「おいおい……」
ほむら「!!!!」 ダッ!!
さやか「まどか! なんて事するのよ!?」
まどか「ごめん、さやかちゃん。 こうでもしないと……止められないって……思って」
さやか「だからって、いきなりソウルジェムを 捨て…る……事、は……」
さやか「な…………」 ドサッ……
まどか「えっ? さやか……ちゃん?」
杏子「!!? おいっ!?」 グッ!
140: 2012/12/15(土) 20:17:18 ID:iiiRClx.
杏子「…………!」
杏子「どういう……事だよ?」
杏子「こいつ、氏んでんじゃねーか!」
まどか「…………ええっ!?」
さやか「」
まどか「……うそ、だよね? さやかちゃん?」
まどか「何とか言ってよ!?」
さやか「」
まどか「起きてよ! さやかちゃん!!」
???「やれやれ……なんて事をするんだい。 鹿目まどか」
まどか「Qべえ!?」
141: 2012/12/15(土) 20:18:22 ID:iiiRClx.
Qべえ「どうして美樹さやかを捨てたんだい?」
Qべえ「ダメだよ、そんな事しちゃ」
まどか「……何、言ってるの……Qべえ?」
杏子「…………」
ガシッ!!
杏子「……どういう事か、説明してもらおうか?」
杏子「なんでこいつは、氏んでんだよ!?」
Qべえ「だから、それは美樹さやかじゃない」
Qべえ「単なる抜け殻だ」
Qべえ「本人の意識はソウルジェムにあり、その効果範囲は約100m前後……」
Qべえ「それ以上離れると、こうなるんだよ」
まどか「わけわかんないよ! Qべえ」
142: 2012/12/15(土) 20:19:06 ID:iiiRClx.
Qべえ「僕達はね、君達の言う、『魂』を肉体から分離できるんだ」
Qべえ「それが、ソウルジェム」
Qべえ「第一、魂が肉体と一緒だと、急所を突かれただけで魂ごと意識は消えてしまう」
Qべえ「君達で言う『氏』だ」
Qべえ「でも、意識をソウルジェムに移す事で、心臓を刺されようが頭を割られようが」
Qべえ「魔法で治す事が可能だ」
Qべえ「魔女との過酷な戦いの為に、これは大いに役に立つだろう?」
Qべえ「感謝こそされ、非難される事では無いと思うけど?」
杏子「ふざけんな、てめえ……!」
杏子「じゃあ、なんで黙ってたんだよ!!」
Qべえ「聞かれなかったからさ」
まどか・杏子「……!!」
143: 2012/12/15(土) 20:20:13 ID:iiiRClx.
コト……(さやかの前に ソウルジェムを置いた)
ほむら「ふう……」
まどか「!!」
まどか「ほむらちゃん……?」
ピクンッ……
まどか「!! さやかちゃん!?」
杏子「……!」
さやか「………?」
さやか「あれ?」
さやか「あたし……どうしたの?」
144: 2012/12/15(土) 20:21:12 ID:iiiRClx.
―――――――――――
さやか「…………」
ほむら「……という事よ。 わかったかしら?」
まどか「ごめん……さやかちゃん、本当にごめんなさいっ……!」 グスッ…
さやか「…………っ」 ダッ!
タッ タッ タッ…
まどか「!! さやかちゃん!!」
ほむら「待ちなさい、まどか」
まどか「で、でもっ!!」
ほむら「あなたが行っても どうにもならないわ。 それよりも……」
145: 2012/12/15(土) 20:21:55 ID:iiiRClx.
ほむら「これでわかったでしょう? 私が魔法少女になるな、と言った意味が」
まどか「…………うん」
ほむら「だったら、もうQべえには関わらない事ね」
まどか「…………そう、だね」
まどか「鳴上さんにも言われてるし……」
ほむら「!?」
ほむら「…………」
ほむら「……まどか、あの男に何を言われたの?」
まどか「ほむらちゃんと同じだよ」
まどか「魔法少女になるなって……」
ほむら「…………」
146: 2012/12/15(土) 20:22:21 ID:iiiRClx.
ほむら「まどか、今、彼と連絡が取れるかしら?」
まどか「え? う、うん……」
まどか「でも……どうしたの? 急に……」
まどか「学校じゃ、全然そっけなかったのに……」
ほむら「気が変わっただけよ」
ほむら「それに……」
まどか「それに?」
ほむら「……ううん、何でも無い」
ほむら(もしかしたら……彼は、知っているのかもしれない)
ほむら(それを確かめないと……)
147: 2012/12/15(土) 20:27:38 ID:iiiRClx.
――深夜――
――暁美ほむらの家――
鳴上「………お邪魔します」
ほむら「堅苦しい挨拶はいいわ」
ほむら「早く入って」
鳴上「…………」
鳴上(……殺風景、と言うか、殺伐としている、と言うか)
鳴上(おおよそ女の子の部屋とは 思えないな……)
ほむら「早速だけど……」
ほむら「あなたは、どこまで知っているのかしら?」
鳴上「……その前に、Qべえは居るのか?」
148: 2012/12/15(土) 20:28:18 ID:iiiRClx.
ほむら「ふう……用心深いみたいね」
ほむら「それなら安心して。 まどかに頼んで、巴マミに見てもらってるわ」
ほむら「信用できないなら、彼女達に電話してみるといい」
鳴上「そうか……そうさせてもらう」 カチャ…(携帯オープン)
ほむら「…………」
―――――――――――
鳴上、確認中……
―――――――――――
鳴上「……よし、確認した」
鳴上「それじゃあ……さっきの質問に答えよう」
ほむら「…………」
149: 2012/12/15(土) 20:29:21 ID:iiiRClx.
鳴上「まず、俺は『知っている』わけではない」
鳴上「いくつかのキーワードから、一つの仮説を考えただけだ」
ほむら「仮説……」
鳴上「俺の知る『シャドウ』と『魔女』は、非常によく似た存在だと、ある筋から聞いた」
鳴上「シャドウとは、人の『負の意識』が具現化したもの……」
鳴上「それによく似ているのならば、魔女もまた」
鳴上「『人の負の意識』から生まれたのでは、ないだろうか?」
鳴上「と……」
ほむら「…………」
150: 2012/12/15(土) 20:30:53 ID:iiiRClx.
鳴上「そして、Qべえの言葉が、ずっと引っかかっていた……」
ほむら「…………」
Qべえ「使い魔はやがて魔女に。 魔女は、より強力な魔女へと、ね」
鳴上「きっかけは、佐倉 杏子の この一言だ」
ほむら「…………」
杏子「魔法は、タダで出来る事じゃないんだよ!!」
鳴上「Qべえの言葉で引っかかっていたのは、『最初の魔女』の説明が無かった事」
鳴上「そして、ソウルジェムに溜まって行く『けがれ』の存在」
鳴上「さらに俺の知る、『シャドウ』の具現の仕方……」
151: 2012/12/15(土) 20:31:43 ID:iiiRClx.
鳴上「そこから導き出した俺の推測は……『けがれ』を溜め込みすぎた魔法少女は」
鳴上「やがて、『魔女』になるんじゃないのか? という事だ……」
ほむら「…………」
鳴上「…………」
ほむら「…………」
鳴上「…………」
ほむら「…………あなたは」
鳴上「……?」
152: 2012/12/15(土) 20:32:31 ID:iiiRClx.
ほむら「まどかに魔法少女になるな、と、言ってくれたそうね?」
鳴上「……ああ」
ほむら「それに感謝して、答えるわ」
鳴上「…………」
ほむら「ええ、その通りよ」
鳴上「………!」
ほむら「驚いたわ。 推測とは言え、よく気がついたわね」
鳴上「確証は無かった。 だが……」
ほむら「だが?」
鳴上「これを……魔法少女に伝えるべきかどうか……迷っている」
ほむら「……!」
153: 2012/12/15(土) 20:33:09 ID:iiiRClx.
ほむら「…………」
ほむら「どうして迷うの? 理由を聞いてもいいかしら?」
鳴上「魔法少女が、化物になるかもしれない」
鳴上「その恐怖感から、魔法少女同士で頃し合いが始まる可能性を考えた……」
ほむら「じゃあ、何故、私には包み隠さず話したの?」
鳴上「君は、まどか達に前々から、『魔法少女になるな』と言い続けてたからだ」
鳴上「……事情を知っていたから、そういう結論に達したのだろう?」
ほむら「…………」
ほむら(……どうしよう)
ほむら(この人なら、あるいは……!)
154: 2012/12/15(土) 20:34:01 ID:iiiRClx.
鳴上「…………」
鳴上「……さて」 スクッ…
鳴上「そろそろ帰る」
ほむら「えっ?」
鳴上「終電の時間だ」
ほむら「ああ……そ、そうね」
鳴上「…………でも」
ほむら「?」
鳴上「俺が信頼に足る人物だと、判断出来たら」
鳴上「また呼んでくれ」 ニコ
ほむら「……!!」 ドキッ
鳴上「じゃ……」
155: 2012/12/15(土) 20:34:45 ID:iiiRClx.
ほむら「…………」
ほむら(な、何よ、あいつ……)
ほむら(人の心を、見透かして……!)
ほむら(…………)
ほむら(…………)
ほむら(……でも、不思議と嫌じゃなかった……)
ほむら(鳴上 悠……)
ほむら(…………) ///
159: 2012/12/16(日) 18:39:01 ID:litESjz.
――翌日の朝――
――美樹さやかの部屋――
さやか(…………)
さやか(はは……笑っちゃうよね……)
さやか(魔法少女になって喜んでいたのに)
さやか(こんな体にされていた、なんて……)
さやか(…………)
さやか(今日、学校休んじゃって……心配してるだろうな)
さやか(まどか……)
160: 2012/12/16(日) 18:39:52 ID:litESjz.
??《いつまでも しょぼくれてんじゃねーぞ、ボンクラ》
さやか(……!?)
さやか(魔法のテレパシー……) スクッ…
テト テト テト…… シャッ…(カーテンオープン)
さやか(!!?)
さやか(あいつは……)
杏子《話がある……。 ちょいとツラ貸しな》 クイッ…
さやか(…………)
162: 2012/12/16(日) 18:42:18 ID:litESjz.
――午後――
――郊外の路地――
テク テク テク…
さやか「…………」
さやか「……こんな所まで連れてきて、一体何の用?」
杏子「あんたさぁ……やっぱりショックなわけ?」
杏子「昨日の事」
さやか「そりゃあね……。 あんたもそうなんでしょ?」
杏子「……まあね」
163: 2012/12/16(日) 18:43:07 ID:litESjz.
――廃墟の家屋――
さやか(…………)
さやか(……なに? ここ……)
さやか(教会……かな?)
さやか(火事にでもあったみたい……)
杏子「りんご、食うかい?」 ヒュッ
さやか「…………」 パシッ
さやか「…………」
ポイッ…… コロ コロ コロ
杏子「!!」
さやか「いらな…」
グイッ!!
164: 2012/12/16(日) 18:43:54 ID:litESjz.
杏子「てめぇ! くいものを粗末にすんじゃねーよ! 頃すぞ…!」
さやか「ぐっ!?」
杏子「…………」
杏子「…………ちっ」 パッ…
さやか「………っは」
杏子「……まあいい」 リンゴ拾い ゴシゴシ…
杏子「本題に入ろうか」
さやか「…………」
165: 2012/12/16(日) 18:45:12 ID:litESjz.
杏子「あんたさぁ……なんで自分は、こんな目に会ってるの?って思ってるのかい?」
さやか「……別に。 でもあんたは、自業自得でしょ?」
杏子「そうさ……その通り」
杏子「そしてお前も、自業自得にしちまえばいいのさ」
さやか「……!?」
杏子「だから、あたしは自分の為に魔法を使ってる」
杏子「そうすれば、何が起こっても自分のせいに出来る」
杏子「他人の為に魔法を使って酷い目に合えば……」
杏子「誰かを恨まずにいられなくなる……」
さやか「…………」
166: 2012/12/16(日) 18:46:18 ID:litESjz.
杏子「……あたしの父親はね」
杏子「ここの神父だったんだ」
さやか「…………」
杏子「純粋な人でね……」
杏子「毎日、新聞を見ては、ため息をついて胸を痛めている様な人だった」
さやか「…………」
杏子「ある日、オヤジは、世の中を良い方向に変えようと思って」
杏子「毎日、説法を説いた」
杏子「実現されたら、そりゃ素晴らしいって感じの話でね」
杏子「あたしは、そんなオヤジが誇らしかった」
さやか「…………」
167: 2012/12/16(日) 18:47:03 ID:litESjz.
杏子「……でも」
杏子「世間て奴は、そんなオヤジに冷たかった」
杏子「まあ、説法に独自の解釈を加えて、教義に無い事まで唱え始めたんだ」
杏子「今なら、バカな事をしてたってわかるよ……」
さやか「…………」
杏子「それからは辛かったね……」
杏子「教会に足を運ぶ人はどんどん減り」
杏子「あたし達家族は、毎日の食事にも事欠く有様になった」
さやか「…………」
168: 2012/12/16(日) 18:47:52 ID:litESjz.
杏子「あたしは……ただ、悔しかった」
杏子「オヤジは間違ってない」
杏子「話さえ聞いてくれれば、それがわかってもらえる」
杏子「あたしは、そう思って」
杏子「オヤジの説法に人が集まりますように、と、Qべえに祈りを捧げた」
さやか「……!」
杏子「それからは、教会にわんさか人が押し寄せてきた」
杏子「オヤジは嬉しそうだった」
杏子「魔女と戦いつつも それを見て、あたしは幸せだった」
さやか「…………」
169: 2012/12/16(日) 18:48:58 ID:litESjz.
杏子「けど、ある日」
杏子「オヤジに、願い事を叶えて魔法少女になった事がバレた」
さやか「……!」
杏子「その日から、オヤジは変わった」
杏子「毎日酒を飲んで、家族に当たり散らし」
杏子「あたしを魔女の手先と罵った……」
さやか「…………」
杏子「……最後は惨めなもんさ」
杏子「家族をその手にかけて、教会に放火し……本人も自殺」
杏子「あたし一人、生き残っちまった……」
さやか「…………」
170: 2012/12/16(日) 18:49:51 ID:litESjz.
杏子「覚えときな」
杏子「誰かの為に祈った幸せの分だけ」
杏子「誰かに不幸が訪れる」
杏子「そうやって、差し引きゼロにして」
杏子「世の中ってのは、バランスを保っているんだ」
杏子「それを身をもって体験したんだよ、あたしは、ね……」
さやか「…………」
杏子「いちいち誰かの不幸を見て傷ついてたら」
杏子「あんた、その内、潰れちまうよ?」
杏子「悪い事は、言わないからさー」
杏子「もっと気楽に生きてみなよ、あたしみたいに……」
さやか「…………」
171: 2012/12/16(日) 18:50:52 ID:litESjz.
さやか「…………」
さやか「なんであたしに、そんな話をすんのさ?」
さやか「あんた、自分勝手に生きてるんでしょ?」
さやか「なのに……あたしの事、気にかけるなんて……おかしいじゃない」
杏子「……なんでだろうね?」
杏子「…………」
杏子「あんたを見てたら」
杏子「なんとなく……放っておけなくなった」
杏子「ってとこかな?」
さやか「…………」
172: 2012/12/16(日) 18:51:35 ID:litESjz.
さやか「…………」
さやか「心配……してくれるんだ」
杏子「…………」
さやか「……あんたの事、誤解してた」
さやか「言いたい事もわかるし、なるほどって思える所も多かった」
さやか「ありがとう」 ニコ
杏子「!……じゃ、じゃあ!」
さやか「でも」
杏子「……!」
さやか「あたしは……自分の願いが、間違いだとは思ってない」
杏子「…………」
173: 2012/12/16(日) 18:52:24 ID:litESjz.
さやか「あたしは……あたしの思い描く魔法少女を目指して」
さやか「これからも頑張っていく。 もちろん、見返りなんていらない」
さやか「この力は、使い方次第でいくらでも世の中の役に立てるって事を」
さやか「証明してみせる……!」
杏子「!! あ、あんたね……!」
さやか「そういやさ、そのリンゴ」
さやか「どうやって手に入れたの?」
杏子「!!」
杏子「…………っ」
さやか「…………」
さやか「やっぱり、言えないんだ……」 フウッ…
174: 2012/12/16(日) 18:53:16 ID:litESjz.
さやか「それじゃあ帰るね、あたし……」 スッ…
テク テク テク…
杏子「……ちょ! 待ちなよ!」
さやか「もう話は済んだでしょ?」
さやか「あたしは、あたしのやり方でやる」
さやか「それが嫌だって言うのなら、遠慮なく力ずくで止めたらいい」
さやか「たとえそれで、あたしが氏ぬ事になっても」
さやか「あんたを恨んだりしないからさ……」
杏子「!!!」
……………………
杏子「…………」
杏子「バカヤローが……!」
175: 2012/12/16(日) 18:54:05 ID:litESjz.
テク テク テク
???「いいのかい? あんな事言って?」
さやか「!!?」
さやか「……今更、よく、あたしの前に来れたね」
さやか「Qべえ!!」
Qべえ「? 何を怒ってるのさ?」
さやか「ふざけないで! 人をこんな体にしておいて……!」
Qべえ「君は、魔法少女になってでも、叶えたい望みがあったじゃないか」
Qべえ「それは間違いなく、成就されただろう?」
さやか「…………っ!」
176: 2012/12/16(日) 18:54:50 ID:litESjz.
Qべえ「断言するよ。 たとえ君が一生をかけて、あの少年に付いていたとしても」
Qべえ「彼の手は、二度と動く事は無かっただろう」
Qべえ「十分な奇跡と言える対価じゃないかな?」
さやか「…………」
Qべえ「まあ、確かに、魔法少女の説明について、省略した部分はあったけどね」
さやか「この……!」
Qべえ「もう少し、捕捉説明をしようかい?」
さやか「!? ……まだ、何かあるの!?」
Qべえ「そうとも」
177: 2012/12/16(日) 18:55:46 ID:litESjz.
Qべえ「君のソウルジェムを貸してくれるかな?」
さやか「……あたしを頃す気?」
Qべえ「君を頃して、僕に何の得があるのさ?」
Qべえ「そんな事しないよ。 約束する」
さやか「…………」
コトッ…
さやか「……これでいいの?」
Qべえ「うん。 じゃあ……始める前に言っておくけど」
Qべえ「君は、戦い、というモノを甘く見ている」
Qべえ「魔法少女として、魔女と戦うという事は、それはとても過酷な事なんだ……」 スッ…
キィイイイイインッ!
178: 2012/12/16(日) 18:56:29 ID:litESjz.
さやか「……ぐっ!?!??!?!」
さやか「ああああああっ!!!!」 ドサッ…!
さやか(痛いっ……! 痛い痛い痛い痛いっ!!!)
さやか(痛いっ!!!)
Qべえ「仮に、だけど、君のお腹に槍が刺さったら、どんな痛みを感じるか」
Qべえ「痛覚神経を刺激してみたんだ」
さやか「ぐっ……ああっ! ……ひっ……」
Qべえ「どうだい?」
Qべえ「ただの一発でも動けなくなるだろう?」 スッ…
シュウウウウウン……
さやか「くうっ!……はあっはあっはあっ……」
179: 2012/12/16(日) 18:57:21 ID:litESjz.
Qべえ「これで分かったかい?」
Qべえ「君が戦いで感じてた痛みは、随分と緩和されてたんだ」
Qべえ「そして、その気になれば、痛みを完全に消す事だって出来る」
Qべえ「まあ、そうしちゃうと動きが鈍くなってしまうから」
Qべえ「あまりおススメしないけどね……」
さやか「…………」
さやか(……こんな事で……負けない)
さやか(あたしは……)
さやか(立派な、魔法少女になるんだから……!)
180: 2012/12/16(日) 19:22:55 ID:litESjz.
――翌日の朝――
――通学路――
テク テク テク
さやか「…………」
まどか「さやかちゃん!」
仁美「おはよう、さやかさん」 ニコ
さやか「ああ、おはよう。 まどか、仁美」 ニコ
仁美「昨日は、どうされたんですか?」
さやか「へへへ……ちょっと、風邪っぽいな~って。 それだけだよ、仁美」
仁美「まあ……そうだったんですか」
まどか「…………」
181: 2012/12/16(日) 19:23:35 ID:litESjz.
《テレパシー中》
さやか《安心して、まどか》
さやか《そりゃ、ショックだったけどさ……》
さやか《あたしは、元気だから!》 ニコ
まどか(さやかちゃん……)
182: 2012/12/16(日) 19:24:16 ID:litESjz.
仁美「! あれは…!」
まどか「えっ? どうしたの? 仁美ちゃん?」
仁美「ほら、あそこ……」
さやか「……!!」
さやか「恭…介……?」
仁美「上条くん……もう退院されたんですね……」
仁美「良かった……」
さやか(…………)
さやか(恭介……どうして?)
さやか(あたし、何も聞いてないよ……?)
さやか(どうして、今日登校するって)
さやか(言ってくれなかったの……?)
さやか(どうして……!)
183: 2012/12/16(日) 19:25:15 ID:litESjz.
――見滝原中学校・教室――
さやか「…………」
まどか「……どうしたの? さやかちゃん?」
さやか「え!? ううん、何でも無い……けど」
仁美「せっかく上条君、登校して来たんですから……声をかけられては?」
さやか「い、いやぁ……今は、遠慮しとこう……かな? ははは……」
まどか(…………)
仁美(変な さやかさん……)
184: 2012/12/16(日) 19:25:50 ID:litESjz.
仁美(…………)
仁美(……そうですわ)
仁美(もしかしたら、今がチャンスなのかも……)
仁美(…………)
仁美「あの……さやかさん」
さやか「ん? 何? 仁美?」
仁美「よろしければ……放課後、お時間、頂けませんか?」
さやか「うん。 いいけど……」
仁美「ありがとうございます」 ニコ
さやか(いったい、なんだろう?)
185: 2012/12/16(日) 19:26:55 ID:litESjz.
――放課後――
――ジュネス見滝原店・ファストフード店内――
さやか「…で、何の用? 仁美」
仁美「……はい、相談事がありまして」
さやか「相談? 何の?」
仁美「恋の相談ですわ」
さやか「!!」
仁美「…………」
仁美「私……ずっと以前から、上条君の事をお慕いしておりました」
さやか「へ…へえ~。 そ、そうなんだ……」
さやか「仁美が、恭介の事を……ねぇ……」
186: 2012/12/16(日) 19:28:09 ID:litESjz.
仁美「……さやかさんは、上条君と幼馴染だそうですが」
仁美「特別な感情を抱いておりませんか?」
さやか「!? あ、あたし!? い、いや、そのっ……」
さやか「あ、あたしは……確かに恭介と幼馴染だけど……まあ、腐れ縁って言うか……」 ///
仁美「…………」
仁美「さやかさん」
さやか「う!? うん……」
仁美「私、真剣です……でも」
仁美「さやかさんには、上条君をずっと見てきた……長い時間がお有りです」
仁美「ですので……」
仁美「あなたには、先に告白する権利があると思うのです」
さやか「…………」
仁美「…………」
187: 2012/12/16(日) 19:28:57 ID:litESjz.
仁美「私、明日の放課後に、上条君に告白します」
さやか「……!」
仁美「それまでに、どうか、決断してください……」
仁美「それでは……私はこれで……」 スクッ…
さやか「あ…………」
さやか「……………………」
さやか「…………仁美」
さやか「……………………」
188: 2012/12/16(日) 19:29:46 ID:litESjz.
――夕方――
――さやかのマンション・ロビー付近――
さやか「あ……」
さやか「……まどか」
まどか「えへへ……来ちゃった」
さやか「…………」
まどか「今日も行くのかな? 魔女を倒しに……」
さやか「……うん」
まどか「私……何の役にも立てないけど……さやかちゃんの傍に居たい」
まどか「ついて行っても、構わないかな?」
さやか「………まどか」
189: 2012/12/16(日) 19:30:32 ID:litESjz.
さやか「…………」
さやか「まどか……あたし、ね」
まどか「うん」
さやか「マミさんや 鳴上さんみたいな……」
さやか「ううん……それ以上にカッコイイ魔法少女になろうって」
さやか「決めたんだ……」
まどか「うん」
さやか「……でも、さ」
さやか「今日……仁美が恭介に告白するって聞いて」
さやか「仁美の事……助けなきゃ良かったって……」
さやか「少し……考えちゃった……」
まどか「…!」
190: 2012/12/16(日) 19:31:32 ID:litESjz.
さやか「はは……正義の味方、失格、だね……」
まどか「……さやかちゃん」
さやか「…………ひぐっ……」 ポロッ…
さやか「どうしよう……まどかぁ………」 ポロッ…
さやか「このままじゃ……仁美に……恭介を………」 ポロポロ…
さやか「盗られちゃうよぉ……ううっ……ひっく……」 ポロポロ…
まどか「さやかちゃん……」
さやか「でも……あたし………何も出来無いっ……何もっ……」 ポロポロ…
さやか「だって………あたし、氏んでるんだもん……ゾンビなんだもん………!」 ポロポロ…
さやか「抱きしめて、なんて……言えないっ……」 ポロポロ…
さやか「キスして、なんて……言えないよっ………!」 ポロポロ…
さやか「まどかぁ……わああああああああああああああああっ………」 ボロボロッ…
まどか「…………」
191: 2012/12/16(日) 19:32:06 ID:litESjz.
――10分後――
鳴上「済まない……遅くなっ」
鳴上「………何かあったのか?」
まどか「あ……鳴上さん」
まどか「ううん……何でも無いです」
さやか「…………」 グスッ…
鳴上「…………」
192: 2012/12/16(日) 19:33:12 ID:litESjz.
まどか「それよりも、今日、マミさんは?」
鳴上「今日は、魔女の数が多い」
鳴上「単独行動は危険だが……今日は、さやかに付いてやってくれと頼まれた」
鳴上「Qべえも付いているし、危険と判断したら自分も無理しないで逃げるそうだ」
まどか「そうですか……」
まどか「さやかちゃん、鳴上さんも居てくれるって。 今日も頑張ろうね」
さやか「うん……あたし、頑張るね。 まどか」
鳴上「…………」
193: 2012/12/16(日) 19:34:19 ID:litESjz.
――夜――
――建設途中のビル・上階付近――
シャグッ… ムシャ ムシャ…
杏子「……………………」
ヒュウン…… ストン
杏子「……! ああ、あんたかい……」
ほむら「珍しいわね。 あなたがこんな所で手も出さずに」
ほむら「結界の外から、魔女退治をアイス食べながら見ているだけなんて……」
杏子「……たまには、そんな気分の時もあるさ……」
ほむら「私との約束をすっぽかしたのもそれが理由?」
杏子「あ……そういやそうだったな。 悪かったよ……」
バチッ…! バチッ…!
ほむら・杏子「……!!」
194: 2012/12/16(日) 19:34:52 ID:litESjz.
杏子「ちっ……! あいつ、何やってんだ! 手こずりやがって……!」
杏子「あのペルソナ、とか言う妙な技を使うヤローがついていながら」
杏子「このザマかよ……!」
ほむら「…………」
ほむら(鳴上 悠……)
196: 2012/12/16(日) 19:37:22 ID:litESjz.
――魔女の結界内――
まどか「さやかちゃん!!」
さやか「……はあああああああああっ!!」 ダッ!!
鳴上「さやか! むやみに突っ込むな!」
鳴上(くっ…! どうしたんだ、さやかの奴……!)
鳴上(さっきから無謀に向かって行くばかりだ!)
ドスッ! ヒュバババッ! ドスッ! ドスッ!
さやか「……!……!」
まどか「きゃああああっ!?」
鳴上「!! さやか! 一旦下がれ!」
鳴上「……くそっ!!」 ダッ!
197: 2012/12/16(日) 19:38:07 ID:litESjz.
さやか「……こないでよ、鳴上さん……」
さやか「あたしは、大丈夫だからさ……」
鳴上「!?」
鳴上(あんな状態で……触手に胸と腹を串刺しにされて……)
鳴上(平気なのか……!?)
鳴上(…………)
鳴上(…………いや)
鳴上(そんなわけがない!!)
鳴上「パールバティ!」 ディアラハン!!(回復魔法)
198: 2012/12/16(日) 19:38:58 ID:litESjz.
さやか「…………余計な事しないでよ」
さやか「平気だって、言ってるでしょ……!」 ダダッ!
まどか・鳴上「……!?」
さやか「はああああああああああああっ!!」
ズバッ! ズバッ! ズババッ!!
(魔女の反撃) ヒュン ドスッ! ドスッ!
まどか「ひいっ……!」
鳴上「…………!」
199: 2012/12/16(日) 19:40:38 ID:litESjz.
さやか「…………」
さやか「…………ふ」
さやか「ふふっ……あはっ………」
さやか「アハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
ズバッ! ズバッ! ズババッ!!
200: 2012/12/16(日) 19:41:36 ID:litESjz.
鳴上「…………!?」
さやか「……ホントだ……」
ズバッ! ズバッ! ズババッ!!
さやか「その気になれば、痛みなんて……」
ズバッ! ズバッ! ズババッ!!
201: 2012/12/16(日) 19:42:27 ID:litESjz.
さやか「簡単に消せるじゃない!!」 グワッ!
ザシュッ!!
まどか「……もう……止めて。 さやかちゃん……!」
202: 2012/12/16(日) 19:43:31 ID:litESjz.
―――――――――――
杏子「……終わったのかい? ボンクラ……」
さやか「…………」
さやか「何だ……あんた、わざわざ見に来たの?」
さやか「暇人だね……」 (魔法少女解除)
さやか「……っと?」 フラッ…
まどか「!! さやかちゃん!」 ガシッ
鳴上「…………」
203: 2012/12/16(日) 19:44:08 ID:litESjz.
さやか「……ごめん、まどか」
まどか「ううん、いいよ。 ほら、私につかまって?」
さやか「……鳴上さん。 悪いけど、グリーフシード……回収しといてくれないかな?」
鳴上「…………わかった」
さやか「じゃ……また今度ね」
鳴上「…………」
204: 2012/12/16(日) 19:44:57 ID:litESjz.
杏子「……あんた…ええと、鳴上?とか言ってたな? ちょっといいかい?」
鳴上「ああ……」
杏子「今日のあいつ……さやかは、どんな戦いをしてたんだい?」
鳴上「…………」
鳴上「アレは、戦いと呼べるものではない」
杏子「……!」
鳴上「ただ闇雲に 突っ込んで行っているだけだ……」
杏子「……そうかい」
鳴上「…………」
205: 2012/12/16(日) 19:45:45 ID:litESjz.
杏子「……なあ」
鳴上「?」
杏子「あんたからさ……あいつに、さやかに、何か言ってやってくれないか?」
鳴上「…………」
杏子「このままじゃあいつ……間違いなく潰れちまう」
杏子「でも、あたしの言葉じゃ……さやかは聞き入れてくれなかった……」
杏子「……無駄かもしれないけど……頼む」
鳴上「…………」
鳴上「もちろん、そのつもりだ」
206: 2012/12/16(日) 19:46:34 ID:litESjz.
――深夜の雨天――
――人けの無いバス停のベンチ――
サアアアアアアア……
まどか「…………」
さやか「…………」
まどか「……さやかちゃん」
さやか「……ん?」
まどか「今日みたいな戦い方は……もうしないで」
さやか「…………」
さやか「しょうがないんだよ……あたしって魔法少女になり立てだし」
さやか「マミさんや 鳴上さん みたいに才能もないし……」
まどか「だからって、あんな戦い方 無いよう……!」
207: 2012/12/16(日) 19:47:18 ID:litESjz.
さやか「……大丈夫だよ。 痛みは、魔法で無くしてるから……」
まどか「そんな事ないよ!!」
まどか「見るからにさやかちゃん、痛そうだったよ……!!」
さやか「…………」 イラッ…
さやか「……何よ、それ?」
さやか「あんたに、あたしの何がわかるって言うの……?」
まどか「!? ……さやか…ちゃん?」
さやか「痛そう? ハッ……魔法少女でもない まどかに言われたって」
さやか「何の説得力もないっての……」
まどか「……!」
208: 2012/12/16(日) 19:48:10 ID:litESjz.
さやか「…………」
さやか「そういやさぁ……」
さやか「まどかも魔法少女に なれるんだよね?」
さやか「だったら、今すぐQべえ呼んでなって見せてよ……」
さやか「あたしの代わりに……魔法少女になって見せてよ!!」
まどか「……ひいっ…!」 グスッ…
さやか「…………」
さやか「……ふん」
さやか「あたし……もう行くわ……」 スクッ…
さやか「バイバイ、まどか……」
バシャッ バシャッ バシャッ…
まどか(…グスッ……さやかちゃん……)
209: 2012/12/16(日) 19:49:08 ID:litESjz.
バシャッ バシャッ バシャッ…
さやか(……あたし、何を言ったの?)
さやか(いつも傍に居てくれて、優しい一番の親友に……)
さやか(まどかに……何を言ったの!?)
さやか(あたし……最低だ……!)
さやか(あたし……あたし……!)
バシャッ バシャッ バシャッ…
212: 2012/12/17(月) 20:10:18 ID:5YpXy.a6
――????――
????「ふふふ……ようこそ、ベルベット・ルームへ……」
イゴール「度々、済みませぬな……」
イゴール「はい……今回も、現実のあなたは眠っておられます……」
イゴール「それでは、本題に入りましょう……よろしいですかな?」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……結構」
イゴール「今回の旅路も、かなりの佳境に入られましたが……」
イゴール「正直な所、いかがでございましょうか?」
イゴール「…………」
イゴール「ほう……随分と、お悩みの様でございますな……」
213: 2012/12/17(月) 20:11:20 ID:5YpXy.a6
イゴール「様々な道が見えている分、かえってどれを進めば良いのか……」
イゴール「確かに……迷い所でございますな……」
イゴール「…………」
イゴール「ヒント?」
イゴール「ふふふ……それはもう、すでにお伝えしているはずです……」
イゴール「…………」
イゴール「左様でございます……」
イゴール「お客様は、八十稲羽でなされた事を ここでも行えば良いのです……」
イゴール「ふふふ……いささか、おしゃべりが過ぎましたかな?」
214: 2012/12/17(月) 20:11:59 ID:5YpXy.a6
イゴール「それから、ささやかながら……」
イゴール「お客様の旅路に役立てられれば、と」
イゴール「武器を用意しておきました……」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……残念ながら請求させて頂きます……」
イゴール「申し訳ありません……少々手間が掛かりましてな……」
イゴール「しかし、必ず、お役に立つ事でしょう」
イゴール「…………」
イゴール「おお……そろそろ、お目覚めの時刻でございますな」
215: 2012/12/17(月) 20:12:41 ID:5YpXy.a6
イゴール「最後に」
イゴール「現在、お客様は、重要な分岐点におられます」
イゴール「その事だけは、お忘れなきよう……」
イゴール「それでは、いずれまた……」
―――――――――――
――朝――
――鳴上の部屋――
鳴上「…………」
鳴上「……ふあっ」
鳴上「……ん?」
鳴上「何だ? この長細い箱?」
216: 2012/12/17(月) 20:13:28 ID:5YpXy.a6
ゴソ ゴソ…
鳴上「!!」
鳴上「こ、これは!?」
スラァ…
鳴上「…………」
鳴上(神々しい剣だな……)
鳴上「お? 取説がある……何々?」
名前 神剣グラム 代金 78200円(税込)
鳴上「…………」
鳴上(地味に結構、痛いな……)
鳴上(おまけにどうやって持ち運ぼう……?)
217: 2012/12/17(月) 20:14:10 ID:5YpXy.a6
――翌日の午前中――
――見滝原中学校・教室――
まどか(さやかちゃん……今日は、お休み)
まどか(学校で会えると思ったのに……)
まどか(……………………)
まどか(……どうして私……昨日、さやかちゃんの事)
まどか(追い掛けなかったんだろう……)
まどか(追いかけなきゃいけなかったハズなのに……)
まどか(…………)
まどか(とにかく、放課後、さやかちゃん家に会いに行こう……)
218: 2012/12/17(月) 20:14:49 ID:5YpXy.a6
――放課後――
――さやかのマンション・ロビー付近――
インターホン オン状態
まどか「えっ!?」
まどか「さやかちゃん、昨夜から戻ってないんですか!?」
まどか「…………」
まどか「はい……はい……」
まどか「わかりました、見かけたら、必ず連絡します」
ピッ…
まどか「…………」
まどか「さやかちゃん……探さなきゃ!」
タッ タッ タッ…
219: 2012/12/17(月) 20:15:40 ID:5YpXy.a6
――河川敷公園――
テク テク テク…
恭介「…………」
恭介「志筑(しづき)さん」
仁美「はい?」
恭介「志筑(しづき)さんって、帰り道、こっちだっけ?」
恭介「今まで、一度も姿を見た事が無いんだけど……」
仁美「…………」
仁美「そうですわね……」
仁美「確かに、帰り道は上条君と逆方向ですわ」 ニコ
恭介「……?」
221: 2012/12/17(月) 20:17:33 ID:5YpXy.a6
――河川敷公園・ものかげ――
さやか「…………」
さやか(…………どうして)
さやか(恭介、そんな笑顔なの……?)
さやか(そんな顔……あたし、見た事無いよ?)
さやか(…………)
さやか(なんで……仁美なの……?)
さやか(どうして……あたしじゃ無いの……?)
さやか(どうして……なんで……どうして……)
222: 2012/12/17(月) 20:18:34 ID:5YpXy.a6
――深夜――
――廃屋付近――
フラ フラ フラ…
??「さやか…」
さやか「……?」
さやか「ああ……鳴上さん」
さやか「よくここが、わかったね……?」
鳴上「…………」
鳴上「さやか、少し話がしたい」
鳴上「来てくれないか?」
223: 2012/12/17(月) 20:19:32 ID:5YpXy.a6
さやか「……嫌よ」
鳴上「……どうしてだ?」
さやか「鳴上さんも感じるでしょ?」
さやか「あそこに……使い魔が居るの……」
さやか「倒さなきゃ……」
鳴上「マミに頼めばいい」
さやか「ダメよ……あたしが倒す」
さやか「絶対、あたしが倒すんだから……!」
鳴上(…………)
鳴上(…………だめだ。 何があったのか、わからないが)
鳴上(聞く耳を持ってない……)
224: 2012/12/17(月) 20:20:26 ID:5YpXy.a6
鳴上(…………)
鳴上(かなり……危険だが、これしか方法を思いつかないな……)
鳴上(覚悟を決めよう……!)
鳴上「おい、化物」
ピクンッ
さやか「…………」
さやか「……そんな安い挑発には乗らないよ、鳴上さん」
225: 2012/12/17(月) 20:21:23 ID:5YpXy.a6
鳴上「そうか……さすがは、化物だな」
鳴上「人間の言葉も解らなくなったか、化物」
さやか「…………」
鳴上「どうした、化物?」
鳴上「さっさと上に行って化物同士、頃し合って来い」
さやか「…………」 ギリッ
鳴上「ほら、さっさと行って来い、化物」
さやか「……あんた、わかってんの?」
さやか「あんたのペルソナ能力は、魔女の結界内でしか使えないんでしょ?」
さやか「あたしを怒らせない方が、良いと思うけど?」
鳴上「あいにくと、お前程度の化物に遅れを取る程」
鳴上「俺は落ちぶれてはいない、化物」
226: 2012/12/17(月) 20:22:37 ID:5YpXy.a6
さやか「……そう」
さやか「本当かどうか」
さやか「確かめてあげるわ……」 スッ…
キィイイイイインッ!(魔法少女へ変化)
さやか「……さすがに丸腰だと気が引けるわね」
さやか「あたしの剣、貸してあげようか?」
鳴上「必要ない」
鳴上「お前程度の化物、これで十分だ」 ガララッ…
さやか「……何それ? そんな錆びた鉄の棒でいいっての?」
さやか「それとも、負けた時の言い訳にでもするつもり?」
鳴上「御託はいい……」 スッ
鳴上「かかってこい、化物」
227: 2012/12/17(月) 20:23:17 ID:5YpXy.a6
さやか「…………」 ギリッ…!
さやか「はあっ!」 ダッ!
ガキィッ!!
さやか「!!」
ボコンッ!
さやか「あぐっ!?」 ズザッ…
鳴上「…………」
さやか(……何? 今の!?)
さやか(剣が受け流されたと思ったら、背中に一撃、入れられた……!)
鳴上「…………」
228: 2012/12/17(月) 20:24:09 ID:5YpXy.a6
鳴上「どうした? もう お終いか?」
鳴上「化物…」
さやか「……!!」
さやか「だあああああっ!!」 ダダッ!!
ヒュウッ! バキッ!! ドガッ!!
ブンッ! バゴオッ!! ゴガッ!!
さやか「くうっ……!」
鳴上「…………」
さやか「はああああああっ!!」 ゴウッ!
ギィインッ! ボグッ!! ゲシッ!!
カァンッ! ドガァッ!! バグンッ!!
229: 2012/12/17(月) 20:24:57 ID:5YpXy.a6
杏子「……!?」
杏子「おいっ!! 何やってんだ!! てめぇ!!」
鳴上「……手を出すな」 ゴゴゴ…
杏子「!!?」 ビクンッ!
杏子(な……なんだってんだ!?)
杏子(あ、あいつは、人間なんだろ!?)
杏子(しかも……ペルソナ、とか言う妙な技は、使えないはず……)
杏子(なのに……)
杏子(なんで足が、すくむんだよ!)
230: 2012/12/17(月) 20:25:50 ID:5YpXy.a6
鳴上(よし、思った通り……)
鳴上(さやかは痛みを無くしているから)
鳴上(それに対する恐怖は全く無い……)
鳴上(だが、それゆえに動きは単純で短調だ)
鳴上(攻撃を読んで、受け流しつつカウンターを入れる……)
鳴上(これを繰り返せばいい……)
鳴上(後は)
鳴上(さやかの根気と、俺の体力……どちらが最後まで持つか……)
鳴上(勝負だ! さやか!) キッ!
231: 2012/12/17(月) 20:26:44 ID:5YpXy.a6
さやか「はあっはあっ……」 ダッ!
さやか(なんであたし……鳴上さんに向かって)
さやか(攻撃してるんだろう?)
鳴上「どうした……? それで終わりか?」
鳴上「化物」
さやか(そうだ……それが……嫌なんだ)
さやか(ただ……嫌なんだ)
さやか「……ああああああああああっ!!」 ゴウッ!
232: 2012/12/17(月) 20:27:42 ID:5YpXy.a6
さやか(あたしは……決めたよね?)
さやか(正義の味方になるって……)
さやか(この力を正しく使うって……)
さやか「やあああああああああああっ」 ゴウッ!!
さやか(あたし……何……してるの?)
さやか(これは、正しい事なの……?)
さやか「はあっはあっはあっ……」
さやか(違う……)
233: 2012/12/17(月) 20:28:24 ID:5YpXy.a6
さやか(違う……違う……)
さやか(違うっ……!)
鳴上「化物」
鳴上「化物!」
鳴上「化物!!」
さやか(違うっ!!!)
234: 2012/12/17(月) 20:29:25 ID:5YpXy.a6
カラ…ラ…ランッ……
鳴上「……!」
杏子(さやか……剣を放した……)
さやか「……………ひっく………」
さやか「もう……止めて……!」 (魔法少女解除)
さやか「話でも お説教でも 何でも聞くから……」
さやか「あたしを……化物って……呼ばないで……」
さやか「お願いっ……グスッ……ひっく……」
鳴上「…………」
235: 2012/12/17(月) 20:31:03 ID:5YpXy.a6
さやか「違うっ……あたし……化物じゃないっ……!」 ポロポロ…
さやか「化物なんかじゃ……ないよ……!」 ポロポロ…
鳴上「…………」
鳴上「……落ち着け、さやか」
鳴上「考えても見ろ……」
鳴上「鉄の棒一本で息一つ乱さず、魔法少女と渡り合える俺の方こそ」
鳴上「化物だ……」 カランッ…
杏子「…………」
―――――――――――
236: 2012/12/17(月) 20:32:15 ID:5YpXy.a6
杏子「……任せても大丈夫かい?」
鳴上「まだ、スタートラインに立っただけだが……」
鳴上「勝算がないわけじゃない」
杏子「ふうん……」
杏子「…………」
杏子「じゃ……あたしは帰るわ」
杏子「……またな、さやか」
さやか「…………」
238: 2012/12/17(月) 20:34:21 ID:5YpXy.a6
――夜明け前――
――さやかのマンション・屋上――
さやか「…………」
鳴上「…………」
さやか「……ねえ?」
鳴上「……ん?」
さやか「こんな所に連れてきて、何のつもり?」
さやか「ひょっとして……工口い事とかするの?」
鳴上「中学生に興味はないな」
さやか「うわ……地味にムカつく……」
239: 2012/12/17(月) 20:35:18 ID:5YpXy.a6
さやか「…………」
鳴上「…………」
さやか「……ねえ」
鳴上「……ん?」
さやか「話があるんじゃなかったの?」
鳴上「聞く耳は、あるのか?」
さやか「…………」
さやか「……内容によるかな」
鳴上「そうか……」
240: 2012/12/17(月) 20:36:02 ID:5YpXy.a6
鳴上「…………」
鳴上「さやかは、ここから見える景色って」
鳴上「どのくらいの広さがあると思う?」
さやか「は? なんなの? 突然?」
鳴上「いいから。 大体で構わない、答えてくれ」
さやか「……10キロ四方くらい?」
鳴上「……人間の目で見える範囲は」
鳴上「障害物が無ければ、大体80キロ前後と言われている」
さやか「へ~……」
鳴上「ここは少し高い位置にあるから……実際は、もう少し広いだろうな」
さやか「ふうん……で?」
241: 2012/12/17(月) 20:36:49 ID:5YpXy.a6
鳴上「この見える範囲の景色の中に」
鳴上「さやかの救える人間は、どれだけ居るだろう?」
さやか「!!」
鳴上「まさかと思うが……」
鳴上「全部、救ってやるつもりだったのか?」
さやか「…………」
鳴上「…………そうか」
さやか「あたし、何も言ってない」
鳴上「そうだな……」 クスッ…
242: 2012/12/17(月) 20:37:27 ID:5YpXy.a6
鳴上「さやかは、転校した事はあるか?」
さやか「……ない」
鳴上「そうか……」
鳴上「俺は2回程」
さやか「ふうん……それで?」
鳴上「俺は、2回ともいい友人に恵まれたが……」
鳴上「どこか打算的に付き合っている奴もいる……」
さやか「…………」
鳴上「教科書を貸してくれた奴に、たまに昼飯をおごったりした」
鳴上「もちろん逆も然り」
さやか「それってフツーじゃない」
243: 2012/12/17(月) 20:38:18 ID:5YpXy.a6
鳴上「でも教科書を貸して『ありがとう』の一言もない奴に」
鳴上「『また貸してやろう』という気持ちに、俺はなれないな……」
さやか「……!」
鳴上「これは小さいけど、打算的だろ?」
さやか「…………」
鳴上「よく、人知れず川の清掃とかやっている奴が居るけど……」
鳴上「やっぱり誰かに褒めてもらいたい、と思っているんじゃないかな?」
鳴上「もちろん、否定も肯定もしない」
鳴上「でも……俺は人って、そういうものだ、と思っている」
さやか「…………」
244: 2012/12/17(月) 20:39:01 ID:5YpXy.a6
鳴上「…………」
鳴上「……そろそろだな」
さやか「……何が?」
鳴上「日の出さ」 クスッ
さやか「うっわっ……クサイ演出……」
鳴上「そうか……じゃあ見なくてもいい」
鳴上「俺だけで見る」
さやか「……誰も見ないなんて、言ってない」
鳴上「…………」
さやか「…………」
鳴上「…………お」
さやか「…………わあ」
245: 2012/12/17(月) 20:39:59 ID:5YpXy.a6
さやか「綺麗……」
鳴上「…………」
鳴上「さやか」
さやか「ん?」
鳴上「今、つぶやいた言葉は、さやかの何が言わせた?」
さやか「……え? あたしの……?」
鳴上「さやかの魔法少女の部分か? それとも他の何かか?」
さやか「…………?」
さやか「魔法少女な訳ないじゃん……」
さやか「そんなのあたしが……あたしの心が、そう思ったから……」
さやか「!!」
鳴上「…………」
246: 2012/12/17(月) 20:40:44 ID:5YpXy.a6
さやか(…………)
さやか(そっか……あたしは、ちゃんとあたしだったんだ……)
さやか(魔法少女の力も……このゾンビの体も……)
さやか(勝手に何かするわけじゃない)
さやか(どんなに嫌っていようとも、あたしを形作る一部でしかない……)
さやか(あたしはあたし……美樹さやか)
さやか(この景色を綺麗だって言える)
さやか(人間の心を持っている、美樹さやか……!)
さやか「……くっ…フフフッ…」
さやか「アハハハハッ……!」
鳴上「…………」
247: 2012/12/17(月) 20:41:34 ID:5YpXy.a6
さやか「…………」
さやか「……ホントに綺麗」 クスッ
鳴上「……そうだな」 クスッ
さやか「…………」
さやか「太陽ってすごいね……」
鳴上「ん?」
さやか「ここから見える景色だけじゃなく……」
さやか「もっと広い地域全体に居る人達に、分け隔てなく同じ光を与えてる……」
さやか「ううん……人間達だけじゃない」
さやか「生きとし生ける物すべてを、照らしてる……!」
さやか「それも……何の見返りもないのに」
鳴上「そうだな……」
248: 2012/12/17(月) 20:43:27 ID:5YpXy.a6
さやか「……自分は、こんなにちっぽけな存在なのに」
さやか「絶対になれない、太陽になろうとしてたんだ……」
さやか「……あたしって、ホント、バカ……」
鳴上「…………」
さやか「…………」
さやか「えっと……ありがとう」
鳴上「いや……礼はいい」
鳴上「大した事はしていないし……いろいろ酷い事も言った」
鳴上「おまけに鉄の棒で殴っているし……すまなかった」
さやか「アハハ……そういやそうだね」
249: 2012/12/17(月) 20:44:53 ID:5YpXy.a6
さやか「…………」
さやか「じゃあ、さ……」 ///
鳴上「ん?」
さやか「すっごい、わがままなんだけど……」 ///
さやか「あたしもマミさんみたいに……あなたの事」 ///
さやか「悠って……呼んじゃダメ……かな?」 ///
250: 2012/12/17(月) 20:46:16 ID:5YpXy.a6
――次の日(と言うか、今日)の朝――
――見滝原中学校・教室――
さやか「おはよ! まどか!」
まどか「!!」
まどか「さやかちゃん!!」
まどか「昨日、さやかちゃん家 訪ねたら、一昨日から帰っていないって……!」
まどか「私、心配で心配で……!」 ウルウル
さやか「……うん、ゴメン。 本当にゴメン、まどか」
まどか「ううん、謝るのは私の方だよ……」
さやか「もういいから、まどか。 お互い様って事にしとこう? ね!」 ニコ
まどか「!……うん!」 ニコ
さやか「それよりも……なってないよね? 魔法少女に……」
まどか「えっ? う、うん。 なってない」
251: 2012/12/17(月) 20:47:08 ID:5YpXy.a6
さやか「んー? なんか怪しい……」
さやか「吐け! 正直に吐くんだ! ネタは上がっている!」 ウリャウリャ!
まどか「きゃーん! ごめん! ホントは、なりかけましたぁ!」 クスグルノヤメテー!
さやか「えっ!?」
まどか「はあ、はあ……そ、その、危ない所を ほむらちゃんに……」
さやか「……そっか」
さやか(そういや……あたしが、魔法少女になる前から、ずっと)
さやか(魔法少女になるなって、言ってたっけ……)
252: 2012/12/17(月) 20:48:20 ID:5YpXy.a6
――休憩時間――
さやか「おーい、転校生……じゃなかった」
さやか「……ほむら」
ほむら「!?」
ほむら「……な、何かしら?」
さやか「まどかの事、ありがとう」 ニコ
ほむら「!!?」 ///
さやか「ほむらが、今までどんな気持ちで」
さやか「あたし達が魔法少女になるのを止めてたのか」
さやか「ようやく、わかったよ……」
ほむら「…………!」 ///
253: 2012/12/17(月) 20:48:56 ID:5YpXy.a6
さやか「今までゴメン。 本当にゴメン」
さやか「今更……こんな事言われても、きっと困るだろうけど……」
さやか「良かったらお昼、一緒に食べない?」
ほむら「!!?!?」 ///
ほむら「…………」 ///
さやか「やっぱ……ダメ?」
ほむら「……ええ……悪いけど……」
さやか「……そっか」
さやか「それじゃ、またね!」 タッ
ほむら「……あ……うん」
ほむら「また……」
254: 2012/12/17(月) 20:49:57 ID:5YpXy.a6
さやか「あ、仁美」
仁美「あ……さやかさん」
さやか「…………」
さやか「あのね、仁美。 頼みがあるの……」
仁美「はい……?」
さやか「一日だけ……ううん、今日の放課後だけでもいい」
さやか「恭介と、話をさせて欲しいの……」
仁美「!!」
仁美「そ、それは……!」
さやか「お願い、仁美。 あたし自身のけじめを付ける為に……」
さやか「お願い……!」
仁美「…………」
255: 2012/12/17(月) 20:51:00 ID:5YpXy.a6
――夕方――
――上条宅・恭介の部屋――
さやか「うわぁ……久しぶりだね、恭介の部屋……」
恭介「そう? そういえば病院で、けっこう一緒だったから」
恭介「久しぶりって思わなかった……」
さやか「……そっか」
さやか「…………」
恭介「それで? 話って?」
さやか「!……あ、うん」
さやか「えっと、ね……」
256: 2012/12/17(月) 20:51:50 ID:5YpXy.a6
さやか「…………」
さやか「あのね、今からちょっと信じがたい行動をするけど……」
さやか「最後まで見て欲しいんだ……いいかな?」
恭介「うん」
さやか「じゃあ……このハサミ、ちょっと貸してね?」
恭介「いいよ」
さやか「…………」 スッ…
ザクッ!!
恭介「!?」
恭介「さやか! 手! 左手が!!」
さやか「……大丈夫。 見てて」 ズッ…
恭介「だ、大丈夫って……!?」
257: 2012/12/17(月) 20:52:30 ID:5YpXy.a6
シュウウウッ…
恭介「」
恭介「……き、傷が……!?」
さやか「…………」
さやか「驚いた? ……ううん、普通は驚くよね」
恭介「……手品、かい?」
さやか「信じてくれないかもしれないけど」
さやか「魔法なんだ。 これ…」
キィイイイイインッ!(魔法少女へ変化)
恭介「!!?」
258: 2012/12/17(月) 20:53:35 ID:5YpXy.a6
さやか「どう? かっこいいでしょ?」 フフン♪
恭介「…………」
恭介「……いったい、何が何だか……」
さやか「あたしがどうやって魔法少女になったか……」
さやか「今から説明するね……」
―――――――――――
さやか、説明中
―――――――――――
恭介「……へえ、そのQべえという奴に……」
さやか「うん……どんな願いも、ひとつだけ叶える代わりに、ね」
恭介「ふうん……すごいね」
恭介「じゃあ、さやかはどんな」
259: 2012/12/17(月) 20:54:24 ID:5YpXy.a6
―――――――――――
さやか「……あるよ」
さやか「奇跡も、魔法も……」
さやか「あるんだよ……!」
―――――――――――
恭介「!!!!!!!!!!!!」
さやか「…………」
恭介「…………ま」
恭介「まさか……」
260: 2012/12/17(月) 20:55:07 ID:5YpXy.a6
さやか「……うん。 そうだよ」
恭介「どうして……!?」
さやか「…………」
さやか「それを……聞いちゃう、か……」
恭介「……?」
さやか「いい? 一回しか、言わないからね?」
恭介「あ、ああ……」
さやか「恭介の事が……好きだから」 ///
恭介「!!!」
さやか「…………」
恭介「…………」
261: 2012/12/17(月) 20:56:05 ID:5YpXy.a6
恭介「じゃあ……」
恭介「さやかは……僕のために人間をやめて、魔法少女になって」
恭介「魔女と戦っているの……!?」
さやか「…………」
さやか「ねえ、恭介」
恭介「……うん」
さやか「あたしは……たぶん卑怯な事をしている」
さやか「恭介の怪我を、命懸けで直してやったんだから責任取れ!って感じで……」
恭介「…………」
さやか「……でも、ね」
さやか「知って欲しかったんだ」
さやか「あたしのすべてを……」
262: 2012/12/17(月) 20:57:10 ID:5YpXy.a6
さやか「……嫌な所も含めて、ぜーんぶ」
恭介「…………」
さやか「でね、あたし今日、ここに来たのは……聞きたい事があるからなんだ」
さやか「だけど……答えがどうであれ、恭介の今日のあたしとの記憶は」
さやか「魔法で消すつもりなの……」
恭介「……!」
恭介「……どうして?」
さやか「きっと……恭介にとって重荷になると思うから……」
恭介「…………」
263: 2012/12/17(月) 20:58:34 ID:5YpXy.a6
さやか「じゃあ、聞くね?」
恭介「……うん」
さやか「恭介は……あたしの事をどう思ってる?」
さやか「一人の女の子として……どう、見てるかな?」
恭介「えっ!?」
さやか「……あたしは出来る限り、自分をさらけ出した」
さやか「どんな事でもいい。 どんな悪口でも構わない」
さやか「……大好きな、恭介の口から……正直な気持ちを聞いておきたいの」
恭介「…………」
恭介「……さやか」
さやか「うん」
恭介「僕は……君の事を――」
264: 2012/12/17(月) 20:59:40 ID:5YpXy.a6
―――――――――――
――夜――
――さやかの部屋――
さやか「……………………」
さやか(恭介……正直な気持ちをありがとう……)
さやか(これで……あたしは、やっと)
さやか(前を向ける。 前に進める)
さやか(恭介…………)
さやか(仁美と……仲良くね……) ホ口リ
265: 2012/12/17(月) 21:01:20 ID:5YpXy.a6
――翌日の朝――
――見滝原中学校・教室――
さやか「おはよう、仁美」
仁美「!……さやかさん。 お、おはようございます」
さやか「…………」
さやか「ありがと、仁美」
仁美「……!」
さやか「恭介と仲良くしてあげてね」 ニコ
仁美「は、はい」 ///
さやか「じゃ……」
仁美「…………」
仁美「さやかさん……」
266: 2012/12/17(月) 21:02:19 ID:5YpXy.a6
まどか「…………」
まどか「おはよう、さやかちゃん」
さやか「おはよう、まどか」
まどか「…………」
さやか「? どうかした? あたしの顔に何かついてる?」
まどか「ううん……そうじゃないの。 ただ……」
さやか「ただ?」
まどか「すっごく良い顔してるなぁ……と思って」 クスッ
さやか「へ!? そ、そう!? な、なんか照れるな」 ///
まどか(フフッ……とっても素敵だよ、さやかちゃん)
267: 2012/12/17(月) 21:03:06 ID:5YpXy.a6
――放課後――
――ゲームセンター――
ほむら「こんにちは」
杏子「んー? ああ……お前か……」
杏子「って……!?」
さやか「や!」
杏子「さやか……どうしてここに?」
さやか「ほむらが、杏子に会いに行くって聞いたから」
さやか「ちょっと無理言って、付いて来たんだ」
ほむら「…………」
杏子「……で、何の用さ?」
268: 2012/12/17(月) 21:03:55 ID:5YpXy.a6
さやか「ううん……大した用事じゃないよ」
さやか「ただ、もう一度会って、お礼が言いたかったんだ」
さやか「いろいろ、ありがとう杏子」 ニコ
杏子「…………」
杏子(な、なんだ? この前とは、別人じゃないか……)
杏子(あいつ……何をしたんだ?)
杏子「……別にいいさ。 元気になったみたいで良かったな」
さやか「うん。 今度さ、魔法の事とか色々と教えてね! じゃ、これで帰るね? ほむら」
ほむら「ええ……」
杏子「…………」
269: 2012/12/17(月) 21:05:00 ID:5YpXy.a6
杏子「なあ」
ほむら「何かしら」
杏子「あいつ……本当にさやかか?」
ほむら「間違いなく彼女よ」
杏子「いくらなんでも変わりすぎだろ……」
ほむら「私も戸惑ってるわ……」
杏子「……で? おめーの話ってのは?」
ほむら「それなんだけど……もう少し時間をくれないかしら?」
杏子「何かあったのかい?」
ほむら「ええ……。 とりあえず、また三日後にここで会えないかしら?」
杏子「ああ、いつでもいいよ。 あたしは大抵ここにいるから」
ほむら「じゃ……また三日後に」
杏子「おー……」
271: 2012/12/17(月) 21:05:57 ID:5YpXy.a6
――夜――
――巴マミの部屋――
マミ「いらっしゃい、悠さん」
鳴上「お邪魔します」
マミ「遠慮は、無用ですよ」 クスッ
まどか「あ、いらっしゃい、鳴上さん」
さやか「はい、このケーキ、悠の分ね」
マミ・まどか「!?」
さやか「ん? どうしたの? 二人共?」
272: 2012/12/17(月) 21:07:01 ID:5YpXy.a6
マミ「み、美樹さん? いくらなんでも、なれなれしすぎるんじゃ……」
まどか「そ、そうだよ、さやかちゃん……」
さやか「ちゃんと悠にオッケーもらったよ?」
さやか「ねえ? 悠!」 ニコ!
鳴上「…ああ」
マミ・まどか(……若干、嫌がってる?)
鳴上「それはともかく、急にみんなで集まろうって……一体何があったんだ?」
さやか「あー、それなんだけど……」
鳴上「提案したのは、さやかか」
さやか「簡単に言うと……あたしもマミったんだ」 コト…
273: 2012/12/17(月) 21:08:21 ID:5YpXy.a6
ヒィイインッ…
鳴上・マミ・まど「!!!!」
まどか「ほ、ホントだ! さやかちゃんのソウルジェム、凄く綺麗……!」
マミ「……所で、美樹さん。 その、『マミった』……って?」
さやか「ああ、マミさん状態になった、を略したの。 わかりやすいでしょ?」
マミ「……ええと。 出来れば止めてくれないかしら?」
マミ「何故か背筋が寒くなるの……」 ブルブル…
さやか「えー? そうなんですか? じゃあ……P状態?」
鳴上「……今度は、ペルソナ状態を略したのか?」
さやか「さっすが悠! 冴えてるね~!」 ニャハハ
まどか(なんか……お腹壊してるみたい)
マミ(私は、アレ以外なら何でもいいわ……)
274: 2012/12/17(月) 21:10:13 ID:5YpXy.a6
マミ「で? 今日、私達を集めたのは、これの報告をしたかったからなの?」
さやか「うん。 それともう一つ」
さやか「あたしやマミさんがP状態になったのは」
さやか「やっぱり、悠のおかげだと思うんだ……」
鳴上「……そんな事はな」
さやか「あるよ! 絶対!」
鳴上「!?」 ビクッ
さやか「……上手く、言えないんだけど」
さやか「あたしは、悠と話をして、すっごく心が軽くなった」
さやか「それが……P状態になるきっかけだと思ってる」
まどか「…………」
マミ「……私もそれ、わかる気がする」
まどか「! マミさん……」
275: 2012/12/17(月) 21:11:17 ID:5YpXy.a6
鳴上「ちょっと待ってくれ」
鳴上「持ち上げてもらって恐縮だが……P状態が『いい事』と決まったわけじゃないんだぞ?」
さやか「ぐっ……で、でも……!」
マミ「『悪い状態』、と、決まったわけでもないんじゃないかしら?」
鳴上「……!」
マミ「現に、あれから私は、すこぶる調子がいいですしね」 クスッ
マミ「何よりも、グリーフシードの確保を考えなくて済むだけでも」
マミ「大きなメリットだと思います」
さやか「そーそー! さっすがマミさん!」
鳴上「…………」
276: 2012/12/17(月) 21:14:19 ID:5YpXy.a6
さやか「でね、あたし、悠に頼みたいんだ」
鳴上「……聞こう」
さやか「良かったら……杏子と ほむらにも」
さやか「話をしてあげてくれないかな?」
鳴上「…………」
さやか「この際、P状態がどうとか言うよりも」
さやか「単純にあの二人の悩みを聞いて欲しいんだ……」
鳴上「…………」
さやか「……そして、あたしじゃたぶん無理だと思う」
さやか「あたしが、杏子の差し出した手を振り払ってしまった様に……」
さやか「でも……悠なら、きっと……!」
鳴上「…………」
277: 2012/12/17(月) 21:18:14 ID:5YpXy.a6
鳴上「……必ずいい結果になるとは、限らないぞ?」
さやか「! 悠!」
鳴上「それに、みんなにも協力してもらいたい」
鳴上「頼めるか?」
さやか「もちろんだよ!」
まどか「うん! 私に出来る事なら!」
マミ「大丈夫、上手く行きますよ」 クス
鳴上「そうか……心強いな」
鳴上「頼りにさせてもらおう」 クスッ
284: 2012/12/20(木) 18:34:41 ID:T2DjYA2k
――翌日・休日の朝――
――廃墟の教会――
コン コン……
杏子「!? 誰だ!?」
??「……突然すまん。 俺だ。 鳴上 悠」
杏子「!? どうしてここが……?」
鳴上「さやかに聞いて来た」
杏子「! さやかが……」
鳴上「ああ」
285: 2012/12/20(木) 18:35:32 ID:T2DjYA2k
杏子「それで? 何の用だい?」
鳴上「俺とデートしないか?」
杏子「はあっ!?」 ///
杏子「い、いきなり、何を言ってんだ!!」 ///
杏子「か、体か!? 体が目当てか!?」 ///
鳴上「……何故そうなる」
鳴上「さやかが、杏子を心配していた」
鳴上「彼女の話を聞いて、塞ぎ込んでいる様だから」
鳴上「気分転換に外にでも連れ出そうと思ったんだ」
杏子「…………」
286: 2012/12/20(木) 18:36:34 ID:T2DjYA2k
杏子「余計なお世話だよ」
杏子「あたしは、これまで一人でやってこれた」
杏子「だから大丈夫だ。 なりたての魔法少女に心配される様なヘマはしない」
杏子「悪いけど……帰ってくれ」
鳴上「そうか……」
鳴上「じゃあ、ここからはビジネスの話だ」
杏子「……びじねす???」
鳴上「お前には貸しがある」
杏子「何の話だよ」
鳴上「杏子は、俺に言ったな? さやかを頼むって」
杏子「ぐっ……!! け、けどあれは……!」
287: 2012/12/20(木) 18:37:20 ID:T2DjYA2k
鳴上「俺は『無償で』とは、言ってない」
杏子「……っ!」
鳴上「…………」
杏子「…………」
杏子「……あんたって、見かけによらず黒いね」
鳴上「多少は、人生経験積んだからな」
杏子「わかった、負けたよ。 付き合ってやろうじゃない」
鳴上「そうか」
杏子「その代わりあんたの事、悠って呼ぶからね……」
鳴上「ああ、構わない。 さやかにも そう呼ばれているしな」
杏子「……イヤミも通じねぇのかよ」
288: 2012/12/20(木) 18:38:10 ID:T2DjYA2k
――午前中――
――遊園地――
杏子「……遊園地か」
鳴上「定番のデート・スポットだ」
杏子「何のひねりもねーな」
鳴上「ほっとけ」
鳴上「ここまで来たら、楽しまないと損だぞ?」
杏子「……それもそうだね」
杏子「何から乗る?」
289: 2012/12/20(木) 18:38:49 ID:T2DjYA2k
鳴上「……いきなりジェットコースターか」
杏子「おやぁ? 悠くんは苦手なのかなぁ?」 ニヤニヤ
鳴上「杏子こそ、ちびるなよ?」
杏子「だ、誰がちびるか!!」 ///
鳴上「それだけ元気なら問題ないな」
杏子(……調子狂うなぁ)
―――――――――――
杏子「……おえっぷ」
鳴上「大丈夫か?」
杏子「だ、大丈夫だ……」
杏子(……こ、こんなハズじゃ……)
290: 2012/12/20(木) 18:39:33 ID:T2DjYA2k
鳴上「ほら、水を持って来た」
杏子「……ああ、もらうよ……おえっぷ……」
ゴクッ ゴクッ…
杏子「……ふう」
ママー! アレ二ノロー? ハイハイ
コラッ ハシルンジャナイ! パパ…ゴメンナサイ…
杏子「…………」
鳴上「…………」
杏子(……そっか、今日は休日だったな)
杏子(通りで家族連れが多いわけだ……)
291: 2012/12/20(木) 18:40:14 ID:T2DjYA2k
鳴上「…………」
鳴上「次は何に乗る?」
杏子「……そーだな」
杏子「カートがいい。 カートに乗ろう!」
鳴上「わかった」
―――――――――――
鳴上(くっ……思った以上に乗りづらい) モゾモゾ…
杏子「…………」
杏子「…………プッ」
杏子「アハハハッ!」
鳴上「……何が可笑しい?」
292: 2012/12/20(木) 18:41:11 ID:T2DjYA2k
杏子「ワリィ ワリィ……」
杏子「だってさぁ、今の悠……」
杏子「真面目な顔して、小さいおマルに無理やり座ってるみたいで……」
杏子「プッ、アハハハハッ!」
鳴上(くっ……陽介には、絶対見られたくないな……) ///
杏子「あー……笑った笑った!」
杏子「んじゃ、乗るとするか」
杏子「せっかくだし、競争しない? アイスかけて」
鳴上「……俺、体重的にメチャクチャ不利じゃないか?」
杏子「あー聞こえなーい」 ブロロロ……
鳴上「! ま、待て!」 ブロロロ……
293: 2012/12/20(木) 18:41:47 ID:T2DjYA2k
杏子「あたしの勝ちィ!」 ウヒヒヒ…
鳴上「ひ、卑怯な……!」
杏子「うっせーな。 こまけーこたぁいいだろ?」
杏子「じゃあ、約束のアイスな! あたしバニラと チョコと ストロベリーのトリプルで」
鳴上「……遠慮がないな」
杏子「勝負に負けたのは、事実だろ? どうしても嫌って言うのなら……」
杏子「メリーゴーランドに単独で乗れば、勘弁してやるけど?」
鳴上「誰がやるか……バニラと チョコと ラズベリーのトリプルだったな」
杏子「ストロベリー! 間違えんな!」
294: 2012/12/20(木) 18:42:35 ID:T2DjYA2k
杏子「ニッシッシッ。 いいね、楽しくなってきたよ!」 ペロペロ
鳴上「それは何より」 ペロペロ
杏子「うし! これ食ったら昼飯にしようぜ!」
鳴上「どんな腹をしてるんだ……」
杏子「甘い物は、別腹なんだよ」
鳴上「普通は食った後に言うセリフだ、それは……」
杏子「魔法少女は、とにかく腹が減るものなんだっつーの!」
鳴上「わかったわかった……」
295: 2012/12/20(木) 18:43:29 ID:T2DjYA2k
鳴上「杏子は、お子様ランチか?」
杏子「……氏にてーのか?」
鳴上「冗談だ」
杏子「おめーの冗談は、解りづれーよ」
鳴上「じゃあ、真面目な話、何にする?」
杏子「そうだね……」
杏子「ハンバーグ・サラダセットに、コンポタスープ」
杏子「フィッシュフライバーガー×2に、ポテトLサイズ」
杏子「後、チキンフライ×6に、サラダバーガーと、イチゴシェイク」
鳴上「…………」
鳴上「……冗談、だよな?」
杏子「何がさ?」
296: 2012/12/20(木) 18:44:21 ID:T2DjYA2k
☆チーン☆ アリガトウ ゴザイマシター
杏子「あー、食った食った! ご馳走さん!」 ケプッ
杏子「タダだと思うと、余計に旨く思えるわー(棒)」 ニヤニヤ
鳴上「…………」
鳴上(クマに勝るとも劣らない、食いっぷりだった……) クスン…
杏子「で? 次、何する?」
鳴上「……乗り物は、食事の後だから避けたいな」
杏子「そうだね」
鳴上「ミラーハウスは どうだ?」
杏子「ああ、いいよ」
297: 2012/12/20(木) 18:45:06 ID:T2DjYA2k
杏子「ほえ~、思った以上に不思議な感じがするね~」
鳴上「おい、杏子。 先に進みs」 ゴインッ☆
鳴上「……っ!!」
杏子「アハハハハッ!」
杏子「何やってんのさ! 悠!」
杏子「あたしは、先に行くよー」 スタ スタ スタ…
鳴上「ま、待て! 杏子…」 ガンッ☆
鳴上「おうっ!!」
―――――――――――
298: 2012/12/20(木) 18:45:45 ID:T2DjYA2k
杏子(は~あ。 何やってんだか……)
コンッ フエ~ン!! ママー!
アラアラ… イタイノ イタイノ… トンデケー!
杏子(…………)
ホウラ… パパノテヲ ハナスンジャ ナイゾ?
ハーイ! パパ!
杏子(…………)
キャハハ… ウフフ…
―――――――――――
299: 2012/12/20(木) 18:46:32 ID:T2DjYA2k
鳴上「……やっと追いついた」 フウ…
鳴上「? どうした? 杏子」
杏子「…………」
杏子「……帰る」
鳴上「え? どうしたんだ? 急に?」
杏子「うるせえっ!! 帰るっつったら、帰るんだよ!!」 ダッ!!
タッ タッ タッ…
鳴上「…………」
鳴上「……ふう」
301: 2012/12/20(木) 18:48:53 ID:T2DjYA2k
――数時間後の深夜――
――郊外の路地――
テク テク テク…
杏子(…………)
杏子(……何で)
杏子(あたしは、あそこに向かっているんだろう……?)
杏子(あいつ……鳴上 悠が、居るかもしれないのに……)
杏子(…………)
杏子(フフ……そんなわけない)
杏子(これだけ、ほとぼりを冷ましたんだ……)
杏子(とっくに愛想を尽かして、帰っているさ……) クスッ…
302: 2012/12/20(木) 18:49:35 ID:T2DjYA2k
――廃墟の教会――
ギィィィィッ……
??「…お帰り」
杏子「!!?!?」 ビクッ!
杏子「…………」
杏子「……悠」
――どうして――
鳴上「腹、減ってるだろう?」
鳴上「コンビニ弁当……冷めてしまったけど、一緒に食べないか?」
303: 2012/12/20(木) 18:50:32 ID:T2DjYA2k
杏子「…………っ」
――ここに居るの?――
鳴上「杏子?」
杏子「……聞こえてるよ」
杏子「物好きだね……あんた」
杏子「こんな時間まで あたしを待ってたなんて……」
鳴上「他に杏子が居そうな場所を知らないし」
鳴上「正直……来なかったらどうしよう、と思っていた所だ」 クスッ…
杏子「……フ」
杏子「アハハハ……!」
304: 2012/12/20(木) 18:51:29 ID:T2DjYA2k
※注 照明に燭台(教会にあったもの)&ローソク(コンビニで買ってきた)を使用してます。
モグ モグ モグ…
杏子「……ごちそうさま」
鳴上「ごちそうさま」
杏子「…………」
杏子「……ねえ」
鳴上「ん?」
杏子「あんた……さやかから、話を聞いたって言ってたけど」
杏子「あたしの家族の事も聞いたのかい?」
鳴上「……ああ」
305: 2012/12/20(木) 18:52:24 ID:T2DjYA2k
杏子「そうかい……。 お節介だね」
鳴上「さやかは悪くない……」
鳴上「さやかの身を案じて心配していた、杏子と同じだ」
杏子「そう……だよ、な」
杏子「…………」
杏子「さやか……見違える程、元気になってたね」
鳴上「ああ……」
鳴上「?」
杏子「…………」
306: 2012/12/20(木) 18:54:03 ID:T2DjYA2k
鳴上「……気のせい、かもしれないが」
鳴上「さやかが元気になったのを喜んでいないのか?」
杏子「…………」
杏子「半々……ってとこかな」
鳴上「半々?」
杏子「もちろん嬉しいさ……元気になったのは」
杏子「……でも」
杏子「なんて言うか……『同じ仲間』じゃ無くなった」
杏子「立ち直った、さやかを見て……そう感じてね」
鳴上「…………」
307: 2012/12/20(木) 18:54:50 ID:T2DjYA2k
杏子「ほら、あたしと境遇が似てる所、あるだろ?」
杏子「誰かの為に祈った願いで、不幸になる所とかさ……」
鳴上「…………」
杏子「それだけに見ていられなかった」
杏子「あたしと同じ様にやれば……少なくとも 損はしなくなる」
杏子「あたしは……」
308: 2012/12/20(木) 18:55:31 ID:T2DjYA2k
杏子「さやかにも、そんな風にして欲しかった」
鳴上「…………」
杏子「…………」
杏子「……だけど」
杏子「悠と話をしたさやかは、別人か?と思うほど、明るく元気になっていた」
杏子「……認めたくなかった」
鳴上「…………」
309: 2012/12/20(木) 18:56:10 ID:T2DjYA2k
鳴上「何をだ?」
杏子「えっ?」
鳴上「『何』を認めたくなかったんだ?」
杏子「!!」
鳴上「…………」
杏子「……あ……そ、それは……」
杏子「…………」
鳴上「杏子」
杏子「……!」 ビクッ
鳴上「手を つながないか?」
310: 2012/12/20(木) 18:57:01 ID:T2DjYA2k
杏子「…………は?」
杏子「ど、どさくさにまぎれて何を……!」
鳴上「嫌ならいい。 でも……」
鳴上「今の杏子を見て、そう思った」 スッ…
杏子「…………」
どうして……かな?
たぶん、この手を握ったら……あたしは
泣いてしまうって、わかってた
でも……それに逆らう事が
出来なかった……
311: 2012/12/20(木) 18:58:22 ID:T2DjYA2k
杏子「…………」
ギュッ……!
杏子「…………」
鳴上「…………」
杏子「……大きいな、悠の手」
鳴上「…………」
杏子「それに……」
杏子「暖かくて……」
杏子「……………………っ」 グスッ…
鳴上「…………」
312: 2012/12/20(木) 18:59:24 ID:T2DjYA2k
杏子「……うっ………ぐっ………ヒック……」 ポロポロ
杏子「……ひぐっ………ううっ………ああ……」 ポロポロ
杏子「………お、父さん……のっ………手、みたい……だよっ」 ポロポロ
杏子「うあああっ……お、父さんっ……! お父さんっ……!」 ポロポロ
杏子「……あ、あだしっ……! あたしはっ………ああああっ………!」 ポロポロ
鳴上「…………」
313: 2012/12/20(木) 19:00:53 ID:T2DjYA2k
……悠は、泣きじゃくるあたしを
そっと 抱きしめてくれた
「今まで、よく頑張ったな」
そんな優しい言葉と共に…
314: 2012/12/20(木) 19:01:55 ID:T2DjYA2k
あたしは……悠の体温を感じながら
泣いて、泣いて、ただ……泣いて
いつの間にか眠っていた……
こんなに安心して 眠りについたのは
いつ以来だろう?
……ううん
もしかしたら、生まれて初めてかもしれない……
315: 2012/12/20(木) 19:02:47 ID:T2DjYA2k
あたしは、夢を見た
今はもう、現実で見る事の出来無い
家族の夢だった
どれくらい前だったのか……
お父さんと お母さんと 妹で
近くの公園に行った時の
思い出……
316: 2012/12/20(木) 19:03:41 ID:T2DjYA2k
……どうして、忘れていたんだろう?
そうだよ
あの頃、食うのにも困ってた
あたしら家族にも
楽しい思い出はあった
でも……
たった一人になってからは ずっと
悪夢ばかり見ていた……
317: 2012/12/20(木) 19:05:26 ID:T2DjYA2k
父さんは、いつもあたしを罵倒して
時には、棒か何かで殴って
そんなあたしを あたしが見ていた
奇妙で……恐ろしい夢……
でもあたしは、それが当然だって思っていた
それが償いだ、とも思っていた
だけど……それは違う
そうやって罰を受ければ
家族に対して、何かしている気になっていた……
それだけだ
318: 2012/12/20(木) 19:06:47 ID:T2DjYA2k
あたしは気がついた
今でもこうやって、この廃墟に 時々泊まるのは
償いとか 過去を忘れない為 とかじゃない
あたしは……家族を探していたんだ
もう会えないはずの
暖かい家族のぬくもりを
見つけようと 彷徨っていたんだ……
319: 2012/12/20(木) 19:07:49 ID:T2DjYA2k
お母さん……
お父さん……
そして、まだ幼かった あたしの妹……
ごめんね
こんなに傍に居てくれたのに
気づくのが遅くなって
ごめんなさい……
320: 2012/12/20(木) 19:08:38 ID:T2DjYA2k
――朝――
杏子「う、うーん……」 セノビー…
杏子「ふう…………」
鳴上「…………」
鳴上「……う?」
杏子「お? ……起きたかい? 悠」
鳴上「ん? ……杏子?」
杏子「おはよう、悠!」 ニコ
鳴上「……おはよう、杏子」
杏子「なんつーかさぁ」
321: 2012/12/20(木) 19:09:46 ID:T2DjYA2k
杏子「今更、って感じだけど……」
杏子「礼を言っとくよ」
杏子「ありがとう、悠」 ニコ
鳴上「…………」
鳴上「どういたしまして」 クスッ
杏子「……あの言葉」
鳴上「?」
杏子「ここで、『お帰り』って言ってくれたの」
杏子「嬉しかった……」 ///
鳴上「それは何より……」
322: 2012/12/20(木) 19:10:34 ID:T2DjYA2k
杏子「あれのおかげで……あたしが『何』を求めていたのか」
杏子「何をしていたのか、よーく、わかったよ」
鳴上「ほう……それは何だ?」
杏子「そいつァ 言えねぇなぁ」 ハッハッハッ
鳴上「…………」
杏子「でも……」 スッ…(胸に手を当てる)
杏子「それは……ここにあったよ」 ニコ
鳴上「……そうか」 クスッ
323: 2012/12/20(木) 19:11:33 ID:T2DjYA2k
――昼――
――巴マミの部屋――
杏子「お邪魔しまーす」
さやか「!! 杏子!」
杏子「ニシシ…さやか、心配かけちまったな」
さやか「ううん……本当は、あたしが何かしてあげたかったんだけど……」
杏子「わかってるって……さやか」
杏子「そして、さやかの判断は、正しい」
杏子「たぶん……さやかの話だったら、あたしは聞く耳を持たなかったと思う」
さやか「……杏子」
杏子「さぁ、湿っぽい話は、これくらいにしよーぜ!」
杏子「あたしは、佐倉 杏子! みんな、よろしくな!」
324: 2012/12/20(木) 19:12:34 ID:T2DjYA2k
マミ「はい、佐倉さん」
まどか「うん! よろしくね! 杏子ちゃん!」
さやか「よろしく! 杏子!」
鳴上「よろしくな、杏子」
杏子「ウヒヒ…! な、なんか照れくさいね、こういうの」 ///
さやか「あ! ところで杏子」
杏子「ん?」
さやか「あんたのソウルジェム、どうなった?」
杏子「え? ソウルジェム?」
杏子「んなもん、何も変わってるわけな」 ゴソ ゴソ…
ヒィイインッ……!
325: 2012/12/20(木) 19:13:31 ID:T2DjYA2k
杏子「」
さやか「やった! P状態!」
杏子「お、おいおい!? 何だよ、これ!? 解る様に説明しろ!」
―――――――――――
P状態 説明中
―――――――――――
杏子「へえ! つー事は、グリーフシードは、もう要らねえのか…」
さやか「そう! このP状態ならね!」 (自分のソウルジェムを掲げながら) ドヤッ!
杏子「…………」
まどか「? どうかしたの? 杏子ちゃん?」
326: 2012/12/20(木) 19:14:11 ID:T2DjYA2k
杏子「い、いや……な、何つーか……」 ///
鳴上「?」
杏子「も、もしかして、マミも さやかも」 ///
杏子「……悠と寝たのか?」 ///
鳴上「」
さやか「!?」
マミ「!?」
まどか「?」
327: 2012/12/20(木) 19:16:03 ID:T2DjYA2k
マミ「………………悠さん?」 ゴゴゴ……
さやか「………………悠?」 ゴゴゴ……
鳴上「ご、誤解だ!」
さやか「あんた……中学生には興味ないって言ってたよね?」
さやか「あたしと日の出を見ながら……」 ゴゴゴ……
鳴上「ひ、火に油を注ぐなっ」
マミ「あらぁ……美樹さんとは、そんなロマンチックな事を……」
マミ「私とは、ベランダでお話しただけなのに……」 ゴゴゴ……
鳴上「だ、だから」
杏子「ふうん……何だか叩けば、ホコリがたくさん出てきそうだね……」
杏子「ちょいと説明してもらおうかい?」 ニヤニヤ
鳴上「お前は、楽しんでるだろ!?」
まどか(みんな……怖い) ビクビク
331: 2012/12/21(金) 22:05:42 ID:tLVXQcZg
――翌日の放課後――
――ゲームセンター――
テク テク テク…
ほむら「!?」
ほむら「……何をしているの?」
ほむら「鳴上 悠……」
鳴上「戦場のきずn」
ほむら「ゲームじゃなくて」
鳴上「冗談だ」
ほむら「…………」
332: 2012/12/21(金) 22:06:50 ID:tLVXQcZg
ほむら「……私は、佐倉 杏子に 会いに来たのだけれど?」
鳴上「代理だ」
鳴上「……いや、もっとはっきり言うと、みんなの代表としてここに来た」
ほむら「……!」
鳴上「みんなからの言伝(ことづて)がある」
さやか「頼りないかもしれないけど……あたしは、ほむらの味方だよ!」
マミ「暁美さん……私、あなたの信頼を得たい。 チャンスをもらえないかしら?」
杏子「何、抱えてんのか知らねーけど、あたしに話せる程度なら、心配ねーよ。 何とかなる!」
まどか「ほむらちゃん。 私、話を聞くだけなら出来るよ? だから……」
まどか「話したくなったら、いつでも来てね。 私……待ってるから」
ほむら「!!!!!!!!」
333: 2012/12/21(金) 22:07:38 ID:tLVXQcZg
鳴上「…………」
鳴上「……話して、くれるか?」
ほむら「……ええ」
ほむら「わかったわ」
ほむら(……どうして、なの)
ほむら(たった一人、この男 鳴上 悠が、加わっただけで)
ほむら(私が……どんなに望んでも出来なかった……)
ほむら(みんなの協力が得られるなんて……)
ほむら(…………)
334: 2012/12/21(金) 22:08:21 ID:tLVXQcZg
――夕方――
――暁美ほむらの部屋――
鳴上「お邪魔します」
ほむら「どうぞ」
鳴上「…………」
ほむら「? どうしたの?」
鳴上「いや……何でも無い」
鳴上(前回は、『堅苦しい挨拶』とか言われたのに……)
335: 2012/12/21(金) 22:09:22 ID:tLVXQcZg
ほむら「…………」
鳴上「…………」
鳴上(そうか……どう話すか、その事で頭が一杯なのか)
ほむら「…………」
ほむら「そうね……まず、最初に」
ほむら「目的を言っておくわ」
鳴上「目的?」
ほむら「ええ……私の目的。 それは……」
ほむら「鹿目まどかを魔法少女にしないで、『ワルプルギスの夜』に勝つ事」
鳴上「『ワルプルギスの夜』?」
ほむら「そう……後、約一週間後に現れる災厄」
ほむら「史上最強・最悪の魔女……」
鳴上「……!」
336: 2012/12/21(金) 22:10:10 ID:tLVXQcZg
鳴上「…………」
鳴上「質問しても?」
ほむら「ええ、どうぞ」
鳴上「何故、それが……『ワルプルギスの夜』の出現が、予測できる?」
ほむら「…………」
ほむら「私は……私の使う魔法は」
ほむら「『時間』よ」
鳴上「……? 未来を見てきたのか?」
ほむら「違う」
ほむら「私は……『ワルプルギスの夜』が、出現するまでの一ヶ月間を」
ほむら「数え切れないくらい繰り返してるの……」
鳴上「……!!」
337: 2012/12/21(金) 22:10:50 ID:tLVXQcZg
鳴上「…………」
鳴上「さっき言った、目的の為か?」
ほむら「ええ……」
鳴上「まどか一人の為に……」
ほむら「…………」
ほむら「最初の……まどかと初めて出会った頃の私は」
ほむら「病気が治ったばかりで、ふさぎ込みがちだった……」
ほむら「そんな私の手を引いて、友達になってくれたのが……まどかだった」
鳴上「…………」
338: 2012/12/21(金) 22:11:57 ID:tLVXQcZg
……それからの話は、ほむらの壮絶な戦いの日々だった。
自身も魔法少女になり、まどかを助けられると思っていたが、ワルプルギスの夜に敗北する。
そこから、終りの見えない ほむらの旅が始まった。
339: 2012/12/21(金) 22:12:58 ID:tLVXQcZg
最初は、マミ達にQべえの危険性を伝えようとしたり、出来うる限り協力を得ようとした。
だが、結果は芳しくなく……魔法少女がやがて魔女になるのを知っただけで
頃し合いを始めたり、自頃したり、気が狂ったりしたりして、魔女化する者が続出した。
ほむらは、その度にまどかに救われたり、魔法少女を倒して生きながらえて
同じ時間を繰り返していた……。
何度も何度も……。
340: 2012/12/21(金) 22:14:29 ID:tLVXQcZg
鳴上「…………」
ほむら「一番……手を焼いたのは、美樹さやか」
ほむら「私は、美樹さやかが願い事をしない様に努力したわ」
ほむら「でも、どうやっても彼女は魔法少女になり」
ほむら「魔女化する確率が高かった……!」
鳴上「…………」
ほむら「私は……彼女達に頼る事を諦めた」
――もう誰にも頼らない――
ほむら「……ある時間軸で、魔女化する寸前のまどかを……私は、この手にかけた」
――たとえ、どんな犠牲を払おうとも――
ほむら「その時、私は誓った」
――私、ひとりで、まどかを――
ほむら「絶対に救う、こんな結末を変えてみせる……と」
341: 2012/12/21(金) 22:15:31 ID:tLVXQcZg
鳴上「…………」
鳴上「……俺もそうなのか?」
ほむら「え?」
鳴上「俺も、『ワルプルギスの夜』に、負けているのか?」
ほむら「いいえ」
ほむら「あなたとは、この時間軸で初めて出会った……」
鳴上「! ……そうなのか?」
ほむら「ええ」
鳴上「…………」
342: 2012/12/21(金) 22:16:23 ID:tLVXQcZg
???「そういう事だったのか」
ほむ・鳴上「!!?」
ほむら「……Qべえ」
ほむら「いえ……」
ほむら「インキュベーター!!」
Qべえ「……その名前で呼ばれるのも久しぶりだ」
鳴上「インキュベーター……孵卵器(ふらんき)、か」
鳴上「まさに、名は体を表す、だな」
ほむら(! そんな意味だったの!?)
Qべえ「君は博学だね、鳴上 悠」 ニコ
Qべえ「地球に最初に降り立った地域に、ピッタリの言葉があったんでね」
Qべえ「使わせてもらってるんだ」
343: 2012/12/21(金) 22:17:13 ID:tLVXQcZg
鳴上「ちょうどいい、Qべえ。 お前の口から聞きたい事がある」
Qべえ「何かな?」
鳴上「お前の……お前達の目的は何だ?」
Qべえ「宇宙の為だよ」
鳴上「宇宙?」
Qべえ「君は、エントロピー、という言葉を知っているかい?」
鳴上「……熱力学の不可逆性の事か?」
Qべえ「さすがだね」
Qべえ「まあ、暁美ほむらも居る事だし、簡単に説明を加えると」
Qべえ「木を燃やして得られる熱エネルギーは、木を育てるエネルギーよりも少なくて」
Qべえ「釣り合いが、取れてないという事さ」
ほむら「…………」
344: 2012/12/21(金) 22:18:09 ID:tLVXQcZg
Qべえ「宇宙中の生命体が、宇宙のエネルギーを使い続けて」
Qべえ「この宇宙のエネルギーは、目減りする一方だ」
Qべえ「だから僕達は、エントロピーを凌駕するエネルギーを探し求めた」
Qべえ「それが……僕達には無くて」
Qべえ「君達の持つ、『感情エネルギー』だ」
鳴上「…………」
Qべえ「特に、第二次成長期に当たる、暁美ほむらの様な」
Qべえ「『少女』の『感情エネルギー』は」
Qべえ「量・質、共に、魔女化する瞬間、最高・最大に高められる」
鳴上・ほむ「……!」
Qべえ「そして、そのエネルギーを回収するのが、ボク達」
Qべえ「インキュベーターの役目なのさ」
345: 2012/12/21(金) 22:19:01 ID:tLVXQcZg
ほむら「……この!」 ジャキン!(拳銃を取り出す)
鳴上「止めろ、ほむら」
Qべえ「やれやれ……助かるよ、鳴上 悠」
鳴上「頃すなら、質問が終わってからにしてくれ」
ほむら「…………」
Qべえ「前言撤回だね」
鳴上「何の為にそんな事をする?」
Qべえ「やがては、君達人類も文明が発達し、進化して僕達の仲間入りを果たす」
Qべえ「その時になって、空っぽの宇宙を手渡されても困るだろう?」
Qべえ「だから、これは君達にとっても有意義な事なんだ」
鳴上「…………」
346: 2012/12/21(金) 22:19:48 ID:tLVXQcZg
ほむら「……もう、殺ってもいいかしら?」
鳴上「最後の質問だ」
Qべえ「何だい?」
鳴上「お前が、まどかに固執する理由は、何だ?」
ほむら「……!!」
Qべえ「それはね、まどかが、ものすごい資質を持っているからだよ」
Qべえ「通常では、有り得ない程巨大で、最初は僕も信じられなかった」
Qべえ「けど……」 (ほむらを) チラッ
ほむら「…………」
Qべえ「その謎は、ついさっき解けた」 ニコ
鳴上「どういう事だ?」
347: 2012/12/21(金) 22:20:48 ID:tLVXQcZg
Qべえ「暁美ほむらは、何度も何度も時間を逆行する事で」
Qべえ「知らない内に、まどか自身へ因果を集めてしまったんだ」
鳴上「……!!」
鳴上(因果……だと!?)
ほむら「…………っ」
Qべえ「感謝するよ、暁美ほむら」
Qべえ「まどかは、歴代最強の魔法少女となるだろう」
Qべえ「そして、それは同時に」
Qべえ「『ワルプルギスの夜』をも遥かに凌駕する」
Qべえ「史上最悪の魔女の誕生も意味する」
鳴上「…………」
ほむら「…………」
348: 2012/12/21(金) 22:21:24 ID:tLVXQcZg
Qべえ「僕達は、まどかが魔女化したら かつて、経験した事のない」
Qべえ「とてつもない量と質の『感情エネルギー』を得る事ができる」
Qべえ「でも、まどかや、この星の犠牲は無駄にはならない」
Qべえ「何故なら――」
ドオゥウン! ドオゥウン! ドオゥウン!
ほむら「はあっはあっはあっ……」
Qべえ「」
鳴上「…………」
トトン…
???「……やれやれ」
鳴上「!?」
349: 2012/12/21(金) 22:22:15 ID:tLVXQcZg
ほむら「…………」
Qべえ「無駄な事は、止めてくれないかな? 暁美ほむら」
ムシャ ムシャ ムシャ…
Qべえ「キュップイ……スペアは、たくさんあるけど」
Qべえ「面倒くさいんだ」
鳴上「…………」
ほむら「…………」
Qべえ「さて、鳴上 悠。 まだ聞きたい事は、あるかい?」
鳴上「…………」
鳴上「……今は、無いな」
Qべえ「そうかい? じゃあ僕は、これでおいとまさせてもらうよ?」 トトッ…
350: 2012/12/21(金) 22:22:53 ID:tLVXQcZg
鳴上「…………」
鳴上「ほむら」
ほむら「…………」
鳴上「今、Qべえの言った事は、本当か?」
ほむら「……ええ」
ほむら「ひとつ前の時間軸でも同じ事を言っていたわ」
鳴上「そうか……」
351: 2012/12/21(金) 22:23:36 ID:tLVXQcZg
鳴上(…………)
鳴上(もし、俺の推測が正しければ……)
鳴上(だが、これを今、ほむらに伝えるのはマズイ……)
鳴上(…………何でもいい)
鳴上(彼女に、希望となる『何か』を示してからでないと)
鳴上(…………)
352: 2012/12/21(金) 22:24:54 ID:tLVXQcZg
――????――
????「ふふふ……ようこそ、ベルベット・ルームへ」
イゴール「はい……例によって、現実のお客様は 眠っておられます」
イゴール「本日、わざわざお呼び立てしたのは……」
イゴール「お客様に、お礼を言う為でございます」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……左様でございますな」
イゴール「確かに、わたくしめもあなた様を利用している、と言えるでしょう……」
イゴール「しかし……」
イゴール「この予測を遥かに超えた事象に対処なさっているお客様を」
イゴール「利用している『だけ』ではない事も、また事実でございます……」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……結構」
353: 2012/12/21(金) 22:25:35 ID:tLVXQcZg
イゴール「さて、お客様の傍に存在する『因果の渦』……」
イゴール「その所在と、理由が判明いたしましたな」
イゴール「おかげ様で……」
イゴール「わたくし共にもやるべき事と、方向性が見えてまいりました……」
イゴール「本日は、そのお礼を言いたかったのでございます」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……そうでございますな」
イゴール「わたくし共は……『あるべきものの道』を『見て』いるのでございます」
イゴール「おっと……これ以上は、どうかご容赦を……」
354: 2012/12/21(金) 22:26:10 ID:tLVXQcZg
イゴール「ふふふ……それにしても、素晴らしい」
イゴール「お客様の類まれなる、その”ワイルド”の力……」
イゴール「もしかしたら……」
イゴール「引き寄せたのは、『因果』の方では無く」
イゴール「あなた様が、『因果』を引きつけたのやもしれませぬな……」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……これは失礼」
イゴール「……おや? そろそろ、お目覚めの時刻でございますかな?」
355: 2012/12/21(金) 22:27:03 ID:tLVXQcZg
イゴール「最後にひとつ、お客様に ご忠告を申し上げましょう……」
イゴール「お客様は……」
イゴール「何かをお忘れでは、ございませぬかな?」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……」
イゴール「それはもう、教えておりましょう?」
イゴール「そう……」
イゴール「八十稲羽でおやりになられた事を、ここでも行えばよろしいのです」
イゴール「ふふふ……それでは、いずれまた……」
356: 2012/12/21(金) 22:28:45 ID:tLVXQcZg
今日は短いですが、この辺で……。
ほむほむ編はちと長いです。
ほむほむ編はちと長いです。
357: 2012/12/21(金) 23:34:07 ID:Oj5jEpmI
乙かなって
358: 2012/12/22(土) 11:38:05 ID:GMk7yWxs
乙カレー空間
続き:鳴上「ここは……見滝原駅、というのか」【後編】
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります