1: 2012/12/15(土) 13:06:12 ID:iiiRClx.



P4とまどマギのクロスです。

※注意事項

 (1) 基本的にまどマギのストーリーに沿って展開します。 
 (2) P4(PS2版)に関しては、多少ネタバレがあります。
 (3) 登場するのは、ゲームクリア時のハイスペック能力を持ったアニメ版番長、と思ってください。
 (4) >>1は、まどマギをアニメでしか知らない。(しかも前半うろ覚え)

以上です。



2: 2012/12/15(土) 13:06:51 ID:iiiRClx.

―――――――――――




     ――それでも――

     ――私は――






     ――わたしは!――





     ……カシャン!!




―――――――――――

3: 2012/12/15(土) 13:08:15 ID:iiiRClx.



 俺の名は、鳴上 悠。
家の事情で1年ほど八十稲羽、という所にいた。

 そこで俺は、奇妙な殺人事件に巻き込まれ、『ペルソナ』という力を使い
その難事件と世界の崩壊を防いだ。 出会った、心強い仲間達と共に……。

 今は両親の元に戻り、普通の高校3年生として平穏に暮らしている。


 ――そして、ある日――


 ここは見滝原町。 俺の住む街の 隣の町だ。
普段は立ち寄ったりしないのだが、学校の帰り、うっかり電車で寝過ごしてしまい
見滝原駅に降り立った。

 特に用があった訳ではない。
ほんの気まぐれで、何の気になしに好奇心から、その町を探索してみようと思った。

 ……夕日がとても綺麗だった事を覚えている。



4: 2012/12/15(土) 13:09:30 ID:iiiRClx.



 こんな所に本屋がある。 こっちには こ洒落たレストラン。
片側二車線の大通りに、大きな看板がある。

     『この先、10キロにジュネス見滝原店 ジュネスは、毎日が お客様デー!』
     『エブリディ ヤングライフ ジュ・ネ・ス♪』

 ジュネスは、この町にもある様だ。 そして、気が付いたら日が暮れていた……。



 ――俺は、再び――


鳴上「そろそろ帰るか」

鳴上「……この路地裏を通れば、近道になるかな?」


 ――奇妙な戦いに 巻き込まれるのだった――


5: 2012/12/15(土) 13:13:53 ID:iiiRClx.


―――――――――――


鳴上「…………」

鳴上(おかしい)

鳴上(さっきから同じ様な所を グルグル回っている……)

鳴上(…………)

鳴上(………それにこの感覚)

鳴上(似ている……)

鳴上(テレビの中の世界に……)

鳴上(…………)

鳴上(まさか、な……)

6: 2012/12/15(土) 13:14:31 ID:iiiRClx.

     ォォオオオオオォォンッ……

鳴上「!!……なんだ?」

鳴上「…………」

鳴上「!?」

鳴上(な!? か、体が、引っ張られる!!) グググッ!

鳴上(!!?)

鳴上(足元に、何か居る!!)

鳴上「くっ!!」

鳴上(気付くのが遅れた……!)

鳴上(顔以外を黒い何かに 羽交い絞めに……!)

鳴上「は、はなせ!」

     ズル…ズル…ズル…

7: 2012/12/15(土) 13:15:16 ID:iiiRClx.

鳴上「どこに……連れて行くつもりだ!?」

鳴上「…………」

鳴上「だんまりか……」

     キヒヒヒヒ……

鳴上「…!」

鳴上(本体……か!?)

鳴上(見た目は、かわいい猫のマスコットキャラの様だが……)

鳴上(グリズリーくらいでかいし)

鳴上(何よりも黒くて、腕が4本もある…!)

     キヒッ… キヒッ… キヒヒヒヒ……

8: 2012/12/15(土) 13:15:47 ID:iiiRClx.

鳴上(…………)

鳴上(やるしかない)

鳴上(出来る事は、限られているが……)

鳴上(…………頼む!) グッ……!



     ペ     ル     ソ     ナ     !!



鳴上「!! イザナギだ!!」

鳴上(信じられんが……ペルソナが出た!)

鳴上「イザナギ! 俺の拘束をといてくれ!」

     ズババッ!

9: 2012/12/15(土) 13:16:38 ID:iiiRClx.

     ギィィィィッ!!

鳴上「よし!」 ダダッ!

鳴上「イザナギ!!」 ジオ!!

     バリ バリッ!!

     ギィイアアアァァァ!!

鳴上「止めだ!」

     ズバァッ!!

     ギアアアアアアッ……!!

     シュウウウウウン……

鳴上「ハアッ、ハアッ、ハアッ…」

鳴上(この消滅の仕方……やはり、シャドウか?)

鳴上(……!)

10: 2012/12/15(土) 13:17:13 ID:iiiRClx.

鳴上「あの妙な空間が、消えていく……」

鳴上「…………」

鳴上「…………」

鳴上「完全に消えた……」

鳴上「…………」

鳴上「…………そうだ」

鳴上「ペルソナ!」

     シーン……

鳴上「…………」

鳴上「いったい……なんだと言うんだ?」

11: 2012/12/15(土) 13:17:57 ID:iiiRClx.

     コン  コロンコロン コロン……

鳴上「……ん?」

鳴上「これは……?」 スッ…

鳴上「…………」

鳴上(黒い……宝石?)

鳴上(…………)

鳴上(何かの手掛かりに なるかもしれない)

鳴上(もって行こう……)

     タッ タッ タッ……

12: 2012/12/15(土) 13:18:56 ID:iiiRClx.

 ――見滝原市・某所――



??「……あら!?」

???「……ん!?」

??「理由はわからないけど……魔女の反応が、消えたわね」

???「この町に、君の他に魔法少女って居たっけ?」

??「私の知る限りでは、居ないわ」

???「ふむ……気になるね。 調べてみる?」

??「…………」

??「いえ、止めておきましょう」

??「事情を知らない娘が、たまたま、という可能性もあるし」

???「それもそうだね、巴マミ」

マミ「帰りましょ、Qべえ」

Qべえ「ああ」

13: 2012/12/15(土) 13:19:30 ID:iiiRClx.

 ――夜――

 ――鳴上の部屋――



鳴上「…………」

鳴上(どうすればいいかな……?)

鳴上(…………)

鳴上(そうだ!! ベルベット・ルーム!!) ガバッ!

鳴上(イゴール達なら、何かわかるかもしれない!)

     スチャ (携帯オープン)

鳴上(…………)

鳴上(…………あ)

鳴上(そういえば……マーガレットから連絡はあったけど……)

鳴上(俺は、電話番号を知らない……) ガックシ……

15: 2012/12/15(土) 13:20:15 ID:iiiRClx.

     ピピピ……ピピピ……

鳴上「!」 …ガチャ

鳴上「……もしもし」

??????「お久しぶり、マーガレットです」

鳴上「マーガレット!?」

鳴上「良かった、聞きたい事がある」

マーガレット「それは、こちらもです……が」

マーガレット「まず、あなたに何があったのか、教えてくれないかしら?」

鳴上「わかった」

―――――――――――

16: 2012/12/15(土) 13:21:03 ID:iiiRClx.

―――――――――――

鳴上「……というわけだ」

マーガレット「…………」

鳴上「……マーガレット?」

マーガレット「すみません、私の手に余る事柄の様です」

マーガレット「我が主、イゴールにお電話、代わります」

鳴上「ああ……」

イゴール「……お久しぶりですな。 息災でしたか?」

鳴上「……イゴール、挨拶はいい。 何が起きているのか、教えてくれ」

17: 2012/12/15(土) 13:21:51 ID:iiiRClx.

イゴール「ふむ……と、申されましても今回の事象は」

イゴール「我々にとっても初めてのケース……」

イゴール「お客様のお話をお聞きした限りでは……正直、皆目見当も付きません」

鳴上「……!!」

イゴール「ただ……」

鳴上「……ただ?」

イゴール「あなた様は、もしかしたら、何かの大きな因果の渦に」

イゴール「巻き込まれたのかもしれません……」

鳴上「因果の渦?」

イゴール「正確には、お客様の持つ『ワイルド』の力が、引き寄せられた可能性が……」

鳴上「…………」

18: 2012/12/15(土) 13:22:27 ID:iiiRClx.

イゴール「いずれにしても、解らぬ事が多すぎる……」

イゴール「こちらでもお調べいたしますので、しばしお時間を頂けますかな?」

鳴上「……わかった」

イゴール「何か掴めましたら、すぐに連絡しましょう」

イゴール「それでは……失礼いたします」

鳴上「ああ、待っている……」

     プッ… ツー…… ツー……

鳴上「…………」

鳴上「…………あ」

鳴上(電話番号、聞くのを忘れた……)

19: 2012/12/15(土) 13:23:15 ID:iiiRClx.

 ――翌日の朝――

 ――見滝原中学校――



     ガヤ ガヤ

まどか「おはよう! さやかちゃん!」 ニコ

さやか「うーっす、おはよ、まどか!」 ニコ

仁美「おはようございます、まどかさん、さやかさん」 ニコ

さやか「おはよ、仁美」 ニコ

まどか「おはよう」 ニコ

さやか「ところでさ、仁美……英語の宿題、やってる?」 テへへ…

まどか「さやかちゃん……」

仁美「はいはい、教室でノートを見せますから」

さやか「ありがと~! 仁美、様様だよう……」 ウルウル…

20: 2012/12/15(土) 13:24:02 ID:iiiRClx.

 ――教室――



さやか「さーて! 宿題、さっさっと終わらせるよー!」

まどか(まる写しじゃ宿題の意味がないよう……さやかちゃん)

仁美「ところでまどかさん。 最近、流行っている噂の事……ご存知ですか?」

まどか「えっ……?」

さやか「あー、あたしそれ知ってる。 行方不明になったと思ったら」

さやか「自頃してたって事件、増えてるんだってさ」

まどか「ええっ!?」

仁美「おおむね間違いじゃありませんけど……」

仁美「噂では、自頃した人達は直前に路地裏とか、暗い所で目撃されているんです」

仁美「それも……わざわざ見せ付ける様に」

さやか「後、氏んじゃった人はみんな、全く氏ぬ要素がないんだって……」

さやか「怖いよね~、まどか」

まどか「もう……朝から気分がブルーだよ、さやかちゃん……」

21: 2012/12/15(土) 13:24:44 ID:iiiRClx.

 ――夕方――

 ――見滝原駅・駅前――



鳴上「…………」

鳴上(とりあえず、また来てしまった)

鳴上(目撃されてもいい様に、八十神高校の制服とクマのメガネを装備したが)

鳴上(何故か落ち着くな……)

鳴上(…………)

鳴上(とにかく、もう一度あの現場へ行ってみよう)

22: 2012/12/15(土) 13:25:37 ID:iiiRClx.

鳴上(……ここだ)

鳴上(ふむ……)

鳴上(…………)

鳴上(やはり、痕跡はどこにも無いな……)

鳴上(…………)

鳴上(シャドウは、人間の負の感情が、具現化した存在だった)

鳴上(もしかしたら、何らかの事象が絡んでいて)

鳴上(この街全体が、テレビの中の様に……)

鳴上(…………)

鳴上(まさか、な……)

23: 2012/12/15(土) 13:26:15 ID:iiiRClx.


―――――――――――


鳴上(…………)

鳴上(……結局、収穫は無し、か)

鳴上(駅を中心にこの辺りを調べてみたが)

鳴上(何の変てつもない、普通の街だ……)

鳴上(…………)

鳴上(疲れた……) ふうっ…

鳴上(そろそろ帰ろう……)

   キュゥゥンッ……!

鳴上(!!)

鳴上「この感覚は!?」

24: 2012/12/15(土) 13:26:58 ID:iiiRClx.

鳴上(……間違いない)

鳴上(理由は、わからないが)

鳴上(この間のシャドウと似た、異質な空間をはっきり感じる……!)

鳴上(どうする?)

鳴上(…………)

鳴上(……まずは、様子を見るか?)

鳴上(…………)

鳴上(だが、俺のよく知るシャドウも)

鳴上(この前のシャドウも)

鳴上(問答無用で襲いかかってきた……)

鳴上(…………)

25: 2012/12/15(土) 13:27:35 ID:iiiRClx.

鳴上(…………)

鳴上(一般人にとっては、危険な存在)

鳴上(……やはり、倒しておくべきか)

     ギュウウウウウンッ!!

鳴上(!?)

鳴上(くっ!! 無理やり異空間に取り込まれた!!)

鳴上「……だったら、やる事は一つだ!」

鳴上「イザナギ!」

     グバッ!!  ギィエエエエエエッ!!

―――――――――――

26: 2012/12/15(土) 13:28:23 ID:iiiRClx.

―――――――――――

鳴上「…………」

鳴上(結局、倒してしまった……)

鳴上(そして手掛かりも掴めないまま……)

鳴上(後は、この謎の黒い宝石)

鳴上(…………)

鳴上(今日のところは、引き上げるか……)

     ピピピ…… ピピピ……

鳴上「! 携帯が……」 ガチャ…

鳴上「もしもし?」

27: 2012/12/15(土) 13:29:15 ID:iiiRClx.

イゴール「ごきげん、いかがですかな? お客様……」

鳴上「イゴール! ……何か掴めたのか?」

イゴール「左様でございます」

鳴上「話してくれ」

イゴール「もちろん、お話しします……が」

鳴上「……?」

イゴール「悪いニュースと、もっと悪いニュースしか、ございません」

鳴上「……!」

イゴール「よろしいですかな?」

鳴上「……ああ」

28: 2012/12/15(土) 13:30:06 ID:iiiRClx.

イゴール「まず……お客様が遭遇なされた、シャドウに似た生物らしきもの」

イゴール「ほぼ、シャドウと断定なされてもよろしいでしょう」

鳴上「……? ほぼ?」

イゴール「シャドウとは、人の心から生み出された感情の一部……」

イゴール「そういう意味では、同質の存在と言えるモノですな」

鳴上「なるほど……」

イゴール「さて……ここからが『悪い』ニュースになります」

鳴上「…………」 ゴクッ…

イゴール「今、お客様が居らっしゃる町……」

イゴール「説明が難しいのですが……信じられない様な規模の因果が、集まっております」

鳴上「因果が……集まる?」

29: 2012/12/15(土) 13:30:53 ID:iiiRClx.

イゴール「例えて言うならば……」

イゴール「何もない平野に、山の様に水が集まっておるのです」

鳴上「…………」

鳴上「……つまり、通常では有り得ない『何か』が、起こっている、と?」

イゴール「左様でございます……」

鳴上「…………」

鳴上「ここでのシャドウは、それが原因で?」

イゴール「……調べてみた所、お客様の遭遇された『シャドウ』と同じ様な現象は」

イゴール「その場所だけでなく、日本……いえ、世界中で確認されております」

鳴上「!!?」

30: 2012/12/15(土) 13:31:46 ID:iiiRClx.

鳴上「…………」

鳴上「少し話を戻すが……」

鳴上「さっき言っていた『因果』が集まると、どんな不都合があるんだ?」

イゴール「先ほどの例えを使いますが……」

イゴール「原因不明でエベレストくらいの山の形をした水が、突然、一気に流れ出したら」

イゴール「その周辺は、どうなりますかな?」

鳴上「…………なるほど」

鳴上「で? 実際の危険性は、どのくらいある?」

イゴール「わかりません……しかし」

イゴール「八十稲羽での事柄を考慮しますと……」

イゴール「全世界が危険にさらされている……かもしれません」

鳴上「…………」

31: 2012/12/15(土) 13:32:46 ID:iiiRClx.

鳴上「それで? もっと悪いニュースは?」

イゴール「……それは、お客様も感じていらっしゃるのではないでしょうか?」

イゴール「もう、逃れられぬ運命に捕らわれている、という事に……」

鳴上「…………」

鳴上「つまり、この町に立ち寄らない様にしても」

鳴上「関わってしまう、という事か……」

イゴール「左様でございます」

鳴上「そうか……」

32: 2012/12/15(土) 13:33:20 ID:iiiRClx.

イゴール「ですが、お客様」

イゴール「こちらも、出来うる限りのサポートを」

イゴール「お約束いたします」

鳴上「それは助かる……」

イゴール「それでは、ごきげんよう……」 プッ…

     ツー… ツー…

鳴上「…………」

鳴上「…………あ」

鳴上「また、電話番号聞くの忘れた……」

33: 2012/12/15(土) 13:34:11 ID:iiiRClx.

 ――数日後の夜――

 ――見滝原町・廃ビル付近――



     ヒタ…ヒタ…ヒタ…

鳴上「…………」

鳴上(どうも様子がおかしいから、あの女の後をつけてみたが……)

鳴上(当たり……か?)

鳴上(…………)

鳴上(だが、あの異空間を感じない……)

鳴上(……もどかしいな)

鳴上(…………!?)

鳴上(あの女、何をしている!?)

鳴上(あんな高い場所で靴を揃えて……)

鳴上(!! しまった!!) ダッ!!

34: 2012/12/15(土) 13:35:01 ID:iiiRClx.

??「ふんっ!」 シュルルルルルルッ!!

     パシッ!

鳴上(!!?)

鳴上「……な!?」

???「ほっ、良かった。 さすがマミさん!」

???「…って、え? だ、誰!?」

マミ「安心して。 この女性は、錯乱状態だっただけだから」

マミ「でも、出来れば、今見た事を忘れてくださらないかしら?」

マミ「色男さん?」

鳴上「…………」

35: 2012/12/15(土) 13:35:54 ID:iiiRClx.

鳴上(…………) ゴソゴソ…

鳴上「すまないが、忘れる事は出来無い」

鳴上「俺も……無関係では無いから」



     鳴上の手の平には、謎の黒い宝石があった。



マミ「!!?」

マミ「グリーフシード!?」

マミ「…………」

マミ「……あなたは、どこでこれを?」

鳴上「……そうか。 これはグリーフシード、と言うのか……」

マミ「…………」

鳴上「ともかく、話がしたい。 どこか……いい場所を知らないか?」

36: 2012/12/15(土) 13:36:47 ID:iiiRClx.

 ――巴マミの部屋――



鳴上(…………)

鳴上(いきなり女の子の部屋に 連れてこられるとは、思わなかった……)

鳴上(そこはかとなく緊張するな……)

マミ「お待たせしました。 紅茶をどうぞ」

鳴上「すまない。 気を使わせたな」

マミ「いえ……」

マミ「二人共、自己紹介は済ませた?」

さやか「はい、マミさん」

まどか「ええと、こ、こちらは鳴上 悠さんです。 マミさん」

マミ「鳴上 悠さん、ですね。 私は巴マミ、と申します。 ”マミ”と呼んでください」

鳴上「わかった」

37: 2012/12/15(土) 13:37:43 ID:iiiRClx.

マミ「では、さっそくですが……鳴上さんの事情をお話しいただけますか?」

鳴上「ああ……」

鳴上「まず、俺は訳あって、一年ほど前に八十稲羽、という所に居た……」

―――――――――――
鳴上、事情を話中
―――――――――――

鳴上「……というわけで、今に至る」

マミ・さや・まど「」

さやか「マヨナカテレビ? ペルソナ? どんなSFだよ!?」

まどか「さやかちゃん……。 私達の事も、そんなに違わないと思うけど……」

マミ「……聞きたい事はありますけど、先に私達の事情もお話します」

38: 2012/12/15(土) 13:38:33 ID:iiiRClx.

―――――――――――
マミ、事情を話中
―――――――――――

マミ「というわけです。 おいで、Qべえ」

Qべえ「やれやれ、やっと僕の出番かい?」 チョコン

鳴上「…………」

鳴上(こいつがQべえ……)

鳴上(どんな願いも叶える代わりに 魔女と戦う事を契約させる生命体……)

鳴上(…………)

鳴上「……俺の言うシャドウは、魔女と呼ばれているのか」

Qべえ「僕も驚いたよ。 まさかそんな事象があるなんて」

Qべえ「しかも人間の精神が具現化して襲いかかるなんて、実に興味深い」

39: 2012/12/15(土) 13:39:27 ID:iiiRClx.

鳴上「Qべえ、魔女はシャドウと良く似た特性を持っている」

鳴上「つまり、八十稲羽と同じように、どこかに親玉が居るんじゃないだろうか?」

Qべえ「どうだろうね……否定は出来ないけど、可能性は薄いと思うよ」

Qべえ「僕達は、随分長い間、魔女を見てきたけど……」

Qべえ「共闘しているのを見た事がないからね」

鳴上「そうか……」

鳴上「なら、魔女の目的は何だ? 何の為に人を襲う?」

Qべえ「それは成長する為さ」

Qべえ「魔女や魔女から生まれた使い魔は、人を食らう事でどんどん成長する」

Qべえ「使い魔はやがて魔女に。 魔女は、より強力な魔女へと、ね」

鳴上「…………」

40: 2012/12/15(土) 13:40:12 ID:iiiRClx.

さやか「あたし、鳴上さんのペルソナってのを見たいな」

まどか「私も!」

鳴上「……見せてやりたいのは、やまやまだが……今は無理だ」

マミ「? どうして、ですか?」

鳴上「簡単に言うと、テレビの中、限定の技だと思ってくれ」

マミ「あら? じゃあどうやって魔女を?」

鳴上「それなんだが……魔女の作り出す異空間……結界と言っていたな?」

鳴上「そこでなら、何故かペルソナを発動出来るんだ……」

さやか「へ~」

まどか「じゃあ、テレビの中には入れるんですか?」

鳴上「ああ、今、やって見せよう」 スクッ

41: 2012/12/15(土) 13:40:56 ID:iiiRClx.

鳴上「…………」 スッ…

     ズ……ブウウウウウウンッ……

マミ・さや・まど「!!!」

さやか「み、右手が!?」

まどか「ど、どうなってるの!? な、なんか、波紋みたいなのが出てるし……」

Qべえ「なるほど……これは、疑いようが無いね」

Qべえ(……面白い。 実に興味深い)

マミ「じゃあ……鳴上さんは、『けがれ』をどうやって浄化しているんですか?」

鳴上「? 『けがれ』?」

マミ「私達、魔法少女は、その証にソウルジェム、という物を持っています」 スッ…

鳴上「……ソウルジェム。 この卵の様な形の宝石が……」

42: 2012/12/15(土) 13:41:50 ID:iiiRClx.

マミ「そして、魔法を使うたびに少しづつ黒く、濁っていく……それが『けがれ』」

鳴上「…………」

マミ「それをキレイにする……厳密には、取り除くのが、このグリーフシード」

鳴上「魔女を倒した時に出る、黒い宝石にそんな力があったのか……」

マミ「今は、それほど必要じゃないので、実演は許してください」

マミ「ちなみにやり方は、ソウルジェムにグリーフシードを当てるだけです」

鳴上「なるほど……」

さやか「で? 鳴上さんもグリーフシードを使うの?」

鳴上「いや……」

まどか「じゃあ、どうやって『けがれ』を?」

43: 2012/12/15(土) 13:42:37 ID:iiiRClx.

鳴上「何もしていない。 と言うか、『けがれ』自体が無い」

さやか「えっ!?」

まどか「ほ、本当ですか!?」

鳴上「ああ。 まあ、ペルソナを使った日は、ものすごく疲れるが」

鳴上「それくらいだな」

マミ「私達からすると、凄くうらやましいですね」

鳴上「その代わり、現実世界でペルソナは使えない」

さやか「でもさ、マミさん! 心強い味方が出来たね!」

マミ「まだよ、鹿目さん。 ……鳴上さん、私達に協力してもらえますか?」

鳴上「もちろんだ。 こちらこそ、よろしく頼む」 ニコ

     キャー! ヤッター! ヨカッタネー マミサン!
     モウ/// カノメサン!///   ヨロシクネー、ナルカミサン…
     …………

44: 2012/12/15(土) 13:43:28 ID:iiiRClx.

 ――巴マミの自宅前――



???(…………)

???(あれは……誰なの?)

???(…………)

???(今回、初めて見る人物ね……)

???(何を話しているのか、知りたい所だけど……)

???(私のやる事は変わらない)

???(邪魔をする様なら……消えてもらう) スッ

     タッ タッ タッ…

45: 2012/12/15(土) 13:44:18 ID:iiiRClx.

 ――数日後の昼――

 ――見滝原中学校・教室――



まどか「さやかちゃん、お昼どこで食べよっか?」

さやか「う~ん…。 そうねえ」

???「ちょっと、いいかしら?」

さやか「ん? ……何か用? 転校生」

まどか「さ、さやかちゃん……! ごめんね、ほむらちゃん……」

ほむら「いいのよ、まどか。 それより聞きたい事があるの」

ほむら「この前見かけた、高校生くらいの男は何なの? Qべえの知り合い?」

さやか「うるさいな! それより何で、そんな事知ってんのよ! ストーカーでもしてんの!?」

ほむら「うるさいのはあなたよ。 それに私はまどかと話してるの」

ほむら「少し黙っててくれる?」

46: 2012/12/15(土) 13:44:54 ID:iiiRClx.

まどか「ほ、ほむらちゃん……あの、また今度話すね?」

まどか「さやかちゃん、行こっか?」

さやか「うん、行こっ! まどか」

     タッ タッ タッ…

ほむら「…………」

ほむら(美樹 さやか……)

ほむら(あなたは、また、私の邪魔をする……)

ほむら(…………)

ほむら「……いつもの事だけどね」 ボソッ…

47: 2012/12/15(土) 13:45:35 ID:iiiRClx.

 ――放課後――

 ――市街地――



鳴上「二人は、魔法少女じゃ無いのか?」

さやか「うん、そーだよ」

まどか「Qべえは、なって欲しいって、言ってくれるんだけどね」

まどか「マミさんが、よく考えてからにしなさいって……」

さやか「たった一つの願いだからね~」

まどか「そうだ、鳴上さんは願いが叶うなら、どんな願いを叶えたい?」

鳴上「………難しいな」

鳴上「すぐには、答えられそうもない」

48: 2012/12/15(土) 13:46:09 ID:iiiRClx.

さやか「だよね。 あたしらも色々悩んでるんだ」

さやか「もういっその事、美味しいケーキを食べたい! とかでもいーんじゃない?」

さやか「なんて思った事もあったっけ」 クスクス

まどか「私は……願い事よりも、誰かの為に、何かの為に頑張ってるマミさんに」

まどか「憧れているんだけどね」 テへへ……

鳴上「…………」

鳴上「真面目な話、二人は魔法少女にならない方が、いいかもしれない」

さや・まど「えっ!?」

さやか「……どういう意味?」

鳴上「そのままの意味だ」

49: 2012/12/15(土) 13:46:51 ID:iiiRClx.

鳴上「ああ、別段二人を蔑んでいるわけじゃない」

鳴上「……何かが、引っかかるんだ」

鳴上「あの、Qべえという存在に」

さやか「何が? 魔法少女に勧誘しているだけでしょ?」

まどか「ふわふわしてて、可愛いし」 ///

鳴上「…………」

鳴上「!!」

鳴上「あれは……!?」

さやか「グリーフシード!? 羽化しかかってる!!」

鳴上「二人共、マミに知らせに行ってくれ!」

鳴上「ここは、俺が引き受ける!」

まどか「は、はい! 鳴上さんも気をつけて!」 ダッ!

さやか「すぐ連れてくるから!」 ダッ!

50: 2012/12/15(土) 13:47:26 ID:iiiRClx.

     ブアアアアアッ!

鳴上(さっそく結界に引き込まれた……!)

鳴上「イザナギ!!」 ジオ!!

     バリバリバリッ!!

鳴上「……くっ! 数が多い!」

鳴上「イザナギ!!」 ズバッ! ズバッ!

鳴上(倒してもグリーフシードを落とさない……)

鳴上(わかっていたが……こいつらは、ただの使い魔!)

     ケケケケケケッ……

鳴上「本体は……魔女は、どこに居る!?」

51: 2012/12/15(土) 13:48:52 ID:iiiRClx.

52: 2012/12/15(土) 13:49:36 ID:iiiRClx.

 ――見滝原中学校――



マミ「あなたに話す事は、何もないわ」

ほむら「…………」

ほむら「…………そう」

マミ「それよりも言わなかったかしら?」

マミ「あなたには、もう二度と会いたくないって」

ほむら「…………」

     タタタタタッ!

さやか「マミさん!」 はあっ はあっ

まどか「鳴上さんが……!」 はあっ はあっ

マミ「!?」

ほむら「………!?」

53: 2012/12/15(土) 13:50:26 ID:iiiRClx.

 ――お菓子の魔女の結界内――



     タッ タッ タッ…

マミ「……あなた、どこまでついてくるつもり?」

ほむら「もちろん魔女の所までよ」

マミ「邪魔するつもり?」

ほむら「場合によってはね」

     キュッ……

マミ「悪いけど、あなたを拘束させてもらうわ」

     ギュルルルルッ!

ほむら「…………」

まどか「!? マミさん!」

54: 2012/12/15(土) 13:50:59 ID:iiiRClx.

さやか「いいんだよ、まどか。 むしろ、これくらいしなきゃダメだよ」

さやか「こいつには、ね」

まどか「で、でも……!」

マミ「行きましょ、美樹さん、鹿目さん」

さやか「ほら、行くよ! まどか!」

     タッ タッ タッ…

まどか「あ! まってよ! マミさん! さやかちゃん!」

まどか「…………」 オロオロ…

まどか「……ほむらちゃん」

まどか「ごめん!」 ダッ!

     タッ タッ タッ…

ほむら「…………」

55: 2012/12/15(土) 13:51:46 ID:iiiRClx.

 ――お菓子の魔女の結界内・最深部――



     ダンッ! ドゴッ! バキッ!

鳴上「グハッ!!」 ドサッ…

鳴上「…はあっ…はあっ」

鳴上「イザナギッ!!」 ジオ!

     バリ バリッ!

鳴上「くそっ……!」

鳴上(この魔女……生まれたてのハズなのに…)

鳴上(強いっ!!)

56: 2012/12/15(土) 13:52:28 ID:iiiRClx.

鳴上(魔女は、生まれてからの経験よりも、才能の方が優先される)

鳴上(そんな所か……?)

鳴上(正直、油断したな……)

鳴上(魔女を何体か倒してた事で……おごりがあったに違いない)

鳴上(……!!)

     バゴォッ!!

鳴上「あがぁっ!!」 ドサッ!

鳴上「くっ……イ、イザナ…」

マミ「鳴上さんっ!!」 シュルルルルルッ!!

鳴上「!」

57: 2012/12/15(土) 13:53:07 ID:iiiRClx.

鳴上「すまない、マミ……助かった……」 はあ… はあ…

マミ「いえ。 こちらこそ二人を助けてもらって、ありがとう」 クスッ

さやか「鳴上さん……」

まどか「こ、こんなにボロボロに……」

鳴上「……大丈夫だ、見た目ほど酷いケガじゃない」

さやか「いーから! ほら、つかまって!」

まどか「じゃ、私はこっちを……鳴上さん、つかまって」

鳴上「いや本当にだいじょ……」

     ズルズルズル……

マミ「…さて、ここからは、私が相手よ!」 バッ!

58: 2012/12/15(土) 13:53:47 ID:iiiRClx.

鳴上「……!」

鳴上「これが……魔法少女の戦いか……!」

さやか「いっけー! マミさん!」

まどか「すごい…! 今日のマミさん、いつもよりすっごく強いよ!」

さやか「うん、本当にすごい!」

鳴上「…………」

鳴上「…………!?」

鳴上(なんだ…? このざらついた感覚は?)

鳴上(…………何かが)

鳴上(やばい…!)

59: 2012/12/15(土) 13:54:33 ID:iiiRClx.

     ドウッ! ドウドウッ!

マミ(鳴上さんを……よくも!)

マミ(魔女と戦う、大切な仲間……)

マミ(そして、美樹さんと鹿目さんも、魔法少女になってくれるかもしれない人……)

マミ(私の後ろには、大切な人達がいる!)

マミ(もう……何も怖くない!)

マミ「一気に決めるわよ!」

     ジャキン!

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

     ドォンッ!! ドガァッ!!

さやか「やったあ!」

まどか「さすがマミさん!」

60: 2012/12/15(土) 13:55:13 ID:iiiRClx.

鳴上(!!?)

鳴上(違う!? 本体を捉えていない!?)

     ダッ!!

さや・まど「!! 鳴上さん!?」

マミ「これでおわ――」

     グワッ!!

さやか「えっ!?」

まどか「倒した魔女から何かが!?」

マミ「……!!」

鳴上(くっ!! 間に合え!!)

鳴上「イザナギッ!!」

61: 2012/12/15(土) 13:56:00 ID:iiiRClx.

     ガブウッ…!!

鳴上「がああああああああああああああああああああっ!!!!!」

     モギュ モギュ

マミ「ひいっ…!!」

さやか「鳴上さんのペルソナが!!」

まどか「いやああああああああああああああ!!」

鳴上「マ、マミ……!」

マミ「!?」

鳴上「い、今から、電撃の魔法を…奴の内部に放つ!」

鳴上「それで、ひ、怯んだ所を……さっきので、もう一度決めろ!」

マミ「あ…は、はい!」

62: 2012/12/15(土) 13:56:44 ID:iiiRClx.

鳴上「……イザナギッ!!」 ジオッ!

     バリ バリッ!!

     ギュエエエエエエエエッ!! ペッ!

鳴上「グハッ!!」 ドサッ…

マミ「ティロ・フィナーレ!」

     ドォンッ!! ボグンッ!!

     …ズルンッ!!

さやか「うえっ!? 脱皮!?」

まどか「マミさんっ!!」

マミ「くっ! こうなったら根比べよ!」

マミ「ティロ・フィナーレ!」


―――――――――――

63: 2012/12/15(土) 13:57:20 ID:iiiRClx.

マミ「はあっはあっはあっはあっ…」

さやか「こ、今度こそ、やった…?」

まどか「……も、もう、動かない、よね?」

マミ「…………」

     シュウウウウウン……

さやか「!!」

まどか「結界が、晴れていく……!!」

マミ「……何とか……倒せたわね……」

マミ「くっ……」 クラッ…

さやか「マ、マミさん!」

まどか「そうだ、鳴上さんも!」

64: 2012/12/15(土) 13:57:57 ID:iiiRClx.

さやか「鳴上さん! 大丈夫!?」

鳴上「う……く……」

さやか「よかった…! 生きてる!」

まどか「マミさん、つかまって…」

マミ「いえ……私はいいわ。 私よりも鳴上さんを……」

???「……お困りの様ね」

さや・マミ・まど「!!?」

さやか「あ、あんたは!?」

マミ「……ど、どうやって……私の拘束を……?」

まどか「なんだっていい! ほむらちゃん、お願い!」

まどか「力を貸して!」

65: 2012/12/15(土) 13:59:16 ID:iiiRClx.

 ――????――



????「ふふふ……ようこそ、ベルベット・ルームへ……」

イゴール「これも、お久しぶりですな……お客様」

イゴール「…………」

イゴール「……ええ、その通り。 現実のあなた様は、眠っておられます」

イゴール「さて……今回お呼び立てしたのは、重要な事が判明しまして」

イゴール「それをお伝えする為でございます……」

イゴール「まさか、節目の年を超えられたお客様に、この様な事象が起きるとは……」

イゴール「さすがは……”ワイルド”の持ち主、という所でしょうか……」

イゴール「おお、これは失礼……」

イゴール「話が、それてしまいましたな」

66: 2012/12/15(土) 14:00:00 ID:iiiRClx.

イゴール「それでは、本題に入ります……」

イゴール「まず……以前にお話した、因果の渦……」

イゴール「お客様は、もはや逃れられぬ運命となりましたが」

イゴール「それは、あなたの身近に存在しております……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……ご心配めされるな、お客様」

イゴール「別段シャドウの様に、御身に襲いかかる訳ではございません」

イゴール「むしろ……複雑に絡み合う因果を解き」

イゴール「正しき道を指し示すだけの力を、あなた様は秘めておられるのです……」

67: 2012/12/15(土) 14:00:37 ID:iiiRClx.

イゴール「ふむ? …………そうですな」

イゴール「ひとつだけ、ヒントを差し上げましょう……」

イゴール「お客様は、この困難に立ち向かう為に」

イゴール「この地においても新たなコミュを形成しなくては、ならないでしょう……」

イゴール「いかな”ワイルド”の力を持ってしても」

イゴール「人との繋がりをないがしろにしては……あなた様の望む未来は」

イゴール「おそらく……手に入りますまい……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……、もっと解りやすく言うのならば……」

イゴール「お客様は、八十稲羽でおやりになられた事を」

イゴール「ここでも行えば、よろしいのです……」

68: 2012/12/15(土) 14:01:28 ID:iiiRClx.

イゴール「おお……そろそろ、お目覚めの時刻の様ですな」

イゴール「最後に」

イゴール「ペルソナカードですが……」

イゴール「今回に限り、無償で提供いたしましょう」

イゴール「今から、お客様のお集めになられたカードは」

イゴール「どんな物でもご自由にお使いください……」

イゴール「ふふふ……」

イゴール「サポートが遅れてしまった、せめてものお詫びでございます」

イゴール「それでは……またお会いいたしましょう……」



―――――――――――

69: 2012/12/15(土) 14:02:16 ID:iiiRClx.

―――――――――――


鳴上「…………」

鳴上「…………うっ」

鳴上「……ここは?」



 ――深夜――

 ――巴マミの部屋――

鳴上「…………」

鳴上(以前来た、マミの部屋か……)

鳴上(…………)

鳴上(……なんで俺は、ベッドで寝て)

鳴上(他のみんなは、床の上で寝てるんだ……)

70: 2012/12/15(土) 14:03:03 ID:iiiRClx.

71: 2012/12/15(土) 14:03:39 ID:iiiRClx.

鳴上(? あれは……マミか?)

鳴上(ベランダに出て、何をしている?)

鳴上「…………」

     カラカラカラ……

マミ「!?」 ビクッ!

鳴上「……すまない、驚かせてしまったか」

マミ「あ……鳴上さん。 良かった……気がついて……」

鳴上「ベッド……俺が使って良かったのか?」

マミ「気にしないでください。 あなたは、私の命の恩人なのですから……」 クスッ

72: 2012/12/15(土) 14:04:20 ID:iiiRClx.

鳴上「…………」

鳴上「言いたくなければ、もう聞かないが……何か、考え事でも?」

マミ「…………」

マミ「鳴上さん」

鳴上「うん?」

マミ「鳴上さんは……戦う事が、怖くないんですか?」

鳴上「もちろん怖い」

マミ「……え?」

鳴上「いつだってビビってる。 今やってる攻撃が通じなかったらどうしよう、とか」

鳴上「この敵の攻撃を食らったら、氏ぬかなぁ……恐ろしいなぁ……とか」

鳴上「仲間が居なくなったら……とてつもなく寂しくて嫌だな、とか……」

73: 2012/12/15(土) 14:05:18 ID:iiiRClx.

マミ「…………」

マミ「なんだか、意外ですね」 クスッ…

鳴上「……俺は、『ペルソナ』という力が使えるだけの」

鳴上「ただの高校生だからな」 クスッ

マミ「…………」

マミ「鳴上さんは……どうして自分が、こんな目に合わなければならないの?」

マミ「と、考えた事はありますか?」

鳴上「ある」

鳴上「八十稲羽で氏にかけた時は、いつも考えていた……」

マミ「……逃げよう、と考えた事は?」

鳴上「……!」

74: 2012/12/15(土) 14:05:52 ID:iiiRClx.

マミ「きっと……鳴上さんは、美樹さんや鹿目さんから」

マミ「私の過大評価を聞いたのでしょうけど……」

マミ「私は……そんなに強くない」

マミ「魔法少女になったのだって……氏ぬ事が怖かったから」

マミ「魔女と戦う事を望んで……ここに居る訳じゃない……!」

マミ「もう……怖いのは……いや……」 グスッ…

鳴上「…………」

鳴上「いいんじゃないかな」

マミ「!?」

75: 2012/12/15(土) 14:06:37 ID:iiiRClx.

鳴上「マミは、十分頑張った……」

鳴上「魔法少女を辞められなくても、魔法を使わずに平穏に暮らす事は出来る」

鳴上「ずっと一人で戦って来たマミを、誰も責めたりはしない」

鳴上「後は……俺に任せばいい」 ニコ

マミ「…………」 ドキッ ///

マミ「…………」

マミ「……どうして鳴上さんは、戦おうとするんですか?」

マミ「さっき、怖いって言っていたのに……」

鳴上「……それは、恐怖心だけじゃ無いから」

マミ「………え?」

76: 2012/12/15(土) 14:07:36 ID:iiiRClx.

鳴上「ペルソナがあっても 氏ぬ事はあるだろう」

鳴上「でも、どうして魔女は存在するのか知りたいし」

鳴上「魔女による被害も防ぎたい」

鳴上「それに……」

マミ「それに?」

鳴上「単純に『逃げたくない』という気持ちもある」

マミ「!!」

鳴上「誰にだって何かを選択する自由がある」

鳴上「よく、あの時こうしておけば、こんな事にならずにすんだ、と言って」

鳴上「他人を責める奴がいるが……」

鳴上「それは結果を知ったから、言えるに過ぎない」

鳴上「選択をした時点で、結果を知っている奴はどこにも居ない」

鳴上「予測や予想は出来ても……な」

マミ「…………」

77: 2012/12/15(土) 14:08:13 ID:iiiRClx.

マミ「私は……」

鳴上「…………」

マミ「……私にもあります」

マミ「逃げたくないって気持ち」

マミ「でも私は……戦いが怖い……氏ぬ事が怖い……」

鳴上「…………」

鳴上「それでいいんだ、マミ。 弱音を吐くこともまた、人間には必要だ」

鳴上「俺で良ければいつでも聞くし、俺の弱音も出来れば聞いてくれ」 クス

マミ「鳴上さん……ありがとう」 ///

78: 2012/12/15(土) 14:08:57 ID:iiiRClx.

マミ(……どうしてだろう?)

マミ(ついさっきまで、私は魔女と戦う恐怖に怯え)

マミ(そんな自分が、たまらなく情けなくて……嫌だったのに)

マミ(そんな自分も私を形作る一つなんだって)

マミ(そんな風に思える様になってる……)

マミ(…………)

マミ(きっと、これから先も怖い思いをするでしょうね……)

マミ(でも)

マミ(それを隠さなくてもいい……)

マミ(怖いなら、怖いって……言えばいい)

マミ(恥ずかしがる事も、引け目を感じる必要も無い)

マミ(私は私……巴マミなんだから)

79: 2012/12/15(土) 14:09:56 ID:iiiRClx.

マミ「……あ、そうだ」

鳴上「?」

マミ「グリーフシード、使う所をお見せしますね」 ニコ

鳴上「確か……ソウルジェムに当てるんだったな」

マミ「はい、その通りで……あら?」

     ヒィイイン……

マミ「こ、これは……!?」

鳴上「? どうした?」

マミ「そ、それが……」

マミ「あんなに魔法を使ったのに……ソウルジェムが全然『けがれ』ていないんです」

マミ「それに、こんな風に綺麗に光輝く事も初めてで……

80: 2012/12/15(土) 14:10:59 ID:iiiRClx.

鳴上「体は大丈夫か?」

マミ「ええ……特には……」

マミ(むしろ調子がいいかしら……?)

鳴上「……Qべえに聞くしかないか」

マミ「そうですね……」

マミ「…………」

マミ「あ、あの……」 ///

鳴上「ん?」

マミ「よ、良かったら……」 ///



マミ「名前で呼んでも……いいでしょうか?」 ///



81: 2012/12/15(土) 14:11:56 ID:iiiRClx.
キリがいいのでこの辺で……。

84: 2012/12/15(土) 19:19:33 ID:iiiRClx.

 ――翌朝――

 ――巴マミの部屋――



マミ「おはよう、鹿目さん、美樹さん」

さやか「ん~……おはよ~……マミさん」

まどか「おはようございます、マミさん」

ほむら「……おはよう、まどか」

さやか「って、あんたも居たの」

ほむら「ご挨拶ね。 昨日は、この男の傷を直したり、運ぶの手伝ったりしてあげたのに」

鳴上「……それはすまなかった」

マミ「まあまあ……みんな、喧嘩しないで」

マミ「それに、暁美さん……昨日はごめんなさい。 そして、ありがとう。 本当に助かったわ」

85: 2012/12/15(土) 19:20:19 ID:iiiRClx.

ほむら「………?」

ほむら(巴マミの様子……ずいぶん、変わった様な……?)

ほむら「……もういいわ。 それよりも、そろそろ教えてくれないかしら?」

ほむら「この男の事を」

マミ「わかってるわ。 ちょうど朝食の準備も終わったし」

マミ「食べながら話すわね?」

―――――――――――
マミ、事情説明中
―――――――――――

マミ「と、いうわけなの……」

ほむら「」

ほむら(……ペルソナ!? シャドウ!? いったい、何が起こってるの!?)

ほむら(今まで全く居なかったのに……どうして今回出てきたの……!?)

86: 2012/12/15(土) 19:21:15 ID:iiiRClx.

マミ「……信じられないのは、無理もないわね……」

マミ「じゃあ、悠さん。 あれを見せてあげてもらえないかしら?」

鳴上「わかった」 スッ…(テレビに近づく)

さやか(……あれ?)

まどか(今、マミさん、悠さんって……)

     ズッ……ブウウウウウウンッ……

ほむら「!!?」 ギョッ!

マミ「どう? これで信じてくれるかしら?」

ほむら「…………」

ほむら「……確かに、疑い様は無さそうね」

87: 2012/12/15(土) 19:21:59 ID:iiiRClx.

ほむら「事情はわかったわ」

ほむら「とりあえず、敵ではなさそうって事も……」 スッ…

まどか「あれ? ほむらちゃん? どこに行くの?」

ほむら「……あなた達こそ、そんなにゆっくりしてていいの?」

ほむら「今日も学校があるのだけど?」

まど・さや「」

さやか「ああああああ!! 忘れてたぁ!!」

まどか「どどどどどど、どうしよう!! 思いっきり、無断外泊しちゃった!!」

マミ「悠さんは、大丈夫?」

鳴上「基本、放任主義。 それにこの町に来る時は」

鳴上「『友達の家に泊まるかも』と、事前に言ってある」

マミ「ぬかりは無い様ですね」 クス

鳴上(……とはいえ、今日は確実に遅刻だな)

88: 2012/12/15(土) 19:22:58 ID:iiiRClx.

 ――昼休み――

 ――見滝原中学校・教室――



     ※注 二人はお弁当を広げております

まどか「…………」 ハア…

さやか「…………」 ハア…

まどか「……怒られた? さやかちゃん」

さやか「……もう言わないで……まどか」

さやか「マミさんが、電話しといてくれなかったら……」

さやか「あたしの頭の形は、変わってたよ……」

まどか「私もママのあんな怖い顔、初めて見たよう……」

438: 2012/12/25(火) 17:24:44 ID:8PNg91Hw

まどか「今日はどうしよっか?」

さやか「しばらくは大人しくしとこうよ、まどか」

さやか「それに……あたし今日、用事あるし」



まどか(あ……そっか。 今日は病院の日だったね)

まどか(交通事故で左半身に大怪我を負った上条 恭介くん……)

まどか(さやかちゃん、幼馴染だったし……すっごく心配してたな)

まどか(でも、今は順調に回復してきたって聞いてる)

まどか(良かったよね、さやかちゃん……)

89: 2012/12/15(土) 19:27:47 ID:iiiRClx.

まどか「うん、そうだね……鳴上さんも居る事だし」

さやか「……!!」

さやか「そうそう、まどか。 マミさんが鳴上さんの事」

さやか「悠さんって呼んでたの、気づいた?」

まどか「!! そうそう! 私も気になった!」

まどか「何か、いきなりだったよね? あれ!」

     アハハ……


―――――――――――

90: 2012/12/15(土) 19:29:24 ID:iiiRClx.

 ――夕方――

 ――見滝原総合病院・病室――



さやか「……っていうわけでさ、何の曲か当てると驚かれるんだよね~」

恭介「…………」

恭介「………さやかは、さ」

さやか「ん?」

恭介「僕をいじめて……楽しいの?」

さやか「!? ……な、何言ってるのさ?」

恭介「僕に音楽を聴かせて……」

恭介「もう二度と……弾く事が出来無い音楽を聴かせて……!」

さやか「!!?」

91: 2012/12/15(土) 19:30:07 ID:iiiRClx.

恭介「こんな……動かない腕なんて!!」

     (携帯CDプレイヤーを) グシャッ!!

さやか「やっ……!? ダメッ!! 止めてよ恭介!!」

さやか「大丈夫だよ……。 リハビリ頑張れば、きっと……!」

恭介「もう……無理なんだ」

恭介「先生直々に言われたんだ……現代医学をもってしても……」

恭介「僕の左手は動かないって……!」 グスッ…

さやか「…………っ!」

恭介「それこそ……奇跡か魔法でもない限り」

恭介「二度とバイオリンを弾く事は、出来ないだろうって……」

さやか「……!!」

92: 2012/12/15(土) 19:30:59 ID:iiiRClx.

さやか(奇跡か魔法……)

     ヒュウウウウウッ……

さやか「…………」

さやか「……あるよ」

恭介「…………」

さやか「奇跡も、魔法も……」



さやか「あるんだよ……!」



恭介「…………」

93: 2012/12/15(土) 19:31:55 ID:iiiRClx.



ほむら「あなた達は、魔法少女になっては、ダメよ」



鳴上「真面目な話、二人は、魔法少女にならない方がいいかもしれない」

鳴上「……何かが、引っかかるんだ」

鳴上「あの、Qべえという存在に」



さやか(…………)

さやか(あの転校生は、ともかく……)

さやか(鳴上さんは……どうしてあんな事を……?)

さやか(でも……あたしは……あたしは!) グッ…!

94: 2012/12/15(土) 19:32:36 ID:iiiRClx.

 ――巴マミの部屋――



     ストン

Qべえ「やあ、巴マミ。 遅くなってゴメン」

マミ「珍しいわね。 いつもは呼べばすぐ来るのに……」

Qべえ「僕にだって、外せない用事くらいあるよ」

Qべえ「それで? 聞きたい事って何かな?」

マミ「これについて聞きたいの」 コト…

     ヒィイインッ……

Qべえ「……!?」

Qべえ「…………」

Qべえ「……いったい何があったんだい?」

マミ「それを聞きたいのは、こっちなんだけど……」

95: 2012/12/15(土) 19:33:40 ID:iiiRClx.

Qべえ「体調に変化は?」

マミ「全くないわ」

Qべえ「そう……」

Qべえ(こんな状態のソウルジェムは、初めて見る)

Qべえ(強いて言うのなら……比較的、安定した心理の時に見られる現象に似ているけど)

Qべえ(ここまで澄み切った状態のソウルジェムは、見た事が無い……)

Qべえ(ましてや、『けがれ』が全く無い事など、有り得ない……!)

Qべえ(何が巴マミに起こったんだ?)

マミ「……Qべえ?」

96: 2012/12/15(土) 19:34:24 ID:iiiRClx.

Qべえ「ん? ああ、ごめん。 ……初めてのケースだけど」

Qべえ「君のソウルジェムは、とても安定した状態になっている」

Qべえ「つまり、心理的にとても落ち着いている、という事で……」

     ピピピ…… ピピピ……

マミ「あ……、Qべえ、ちょっと待ってね」 ガチャ

マミ「もしもし?」

まどか『あ!? マミさん!?』

まどか『良かった…! つながって……』

マミ「鹿目さん? どうしたの?」

97: 2012/12/15(土) 19:35:04 ID:iiiRClx.

まどか『今、駅前のツリー広場なんですけど……仁美ちゃんが……』

まどか『友達の様子がおかしくて……きゃあ!』 ブッ!!

     ツー… ツー…

マミ「!? 鹿目さん!? 鹿目さん!?」

Qべえ「……魔女かい?」

マミ「ええ、どうやらそうみたい」

マミ「しかも、鹿目さんの友人が魔女に操られているみたいね……」

マミ「急いで行かないと!」

98: 2012/12/15(土) 19:35:52 ID:iiiRClx.

 ――夜――

 ――古びた工場――



まどか「仁美ちゃん! しっかりして!」

仁美「うふふふふふあはははははは」

まどか(ダメッ…! 魔女の口づけのせいで、どうにもならない……!)

まどか(マミさん! 鳴上さん! 早くきて!)

仁美「まどかさぁん……」 ユラァ……

まどか「ひいっ…!」 ダダッ!

     バタンッ! カチン(鍵閉め)

まどか「はあっはあっ……これで、なんとか……」

     イヒヒヒヒヒッ…!

まどか「!? やっ……!」

99: 2012/12/15(土) 19:36:41 ID:iiiRClx.

まどか(……! 結界に引き込まれたっ……!)

     ギリギリギリギリッ!!

まどか「ひぎっ!? あああああああああっ……!!!」

     シャキン! シャキン! シャキン!

???「……はあっ!」

     ズババッ!

まどか「……!?」

まどか「さやかちゃん!?」


―――――――――――

100: 2012/12/15(土) 19:37:36 ID:iiiRClx.

―――――――――――


まどか「はあっはあっはあっ……」

さやか「大丈夫? まどか?」

まどか「だ、大丈夫……だけど……、さやかちゃん」

まどか「魔法少女に……なったの?」

さやか「てへへ……まあ、ね」

まどか「どうして……? マミさんも 鳴上さんも 居るのに……」

さやか「……できたから」

まどか「え?」

さやか「どうしても叶えたい願いが、できちゃったから……」

まどか「さやかちゃん……」

101: 2012/12/15(土) 19:38:28 ID:iiiRClx.

さやか「それにさ、まどかも仁美も、助けられたんだし」

さやか「結果オーライだよ!」 ニャハハ…

まどか「…………」

     タッ タッ タッ

マミ「確か……この辺で魔女の反応が……え?」

さやか「あ、マミさん!」

マミ「美樹さん! その姿は……!」

さやか「そうです! はれて魔法少女になりました!」

マミ「そうなの……」

さやか「や、やだなあ。 もっと喜んでくださいよ!」

102: 2012/12/15(土) 19:39:24 ID:iiiRClx.

マミ「そ…そうよね。 ごめんなさい、私ったら……」

まどか「……あ、そうだ! 鳴上さんに電話入れておかないと……」

まどか「きっと、心配してる」

マミ「そうね……私が連絡しておくわ」

まどか「え? いいんですか?」

マミ「ええ、ちょっと伝えなきゃならない事もあるし」

まどか「わかりました。 お願いします」

さやか「じゃ、帰ろう! まどか!」

まどか「うん、さやかちゃん!」

さやか「あ、仁美も忘れずに連れて行かないと……よっと」 おんぶ

まどか「気がつくまで、まだ かかりそうだね……」

     テク テク テク…

103: 2012/12/15(土) 19:40:09 ID:iiiRClx.

ほむら「…………」

ほむら「美樹さやか……」

ほむら「あなたは……また、まどかを苦しめるのね……」 ギリッ…!

ほむら「…………」

ほむら(でも……巴マミは、生きている)

ほむら(もしかしたら、美樹さやかも……あの男、鳴上 悠が……)

ほむら(…………)

ほむら(何を馬鹿な……) 頭フルフル

ほむら(たった一人の男が、加わっただけで)

ほむら(すべて、上手くいくわけがない……)

     タッ タッ タッ…

104: 2012/12/15(土) 19:41:31 ID:iiiRClx.

 ――鉄塔の上――



??「――で? どうしてあたしを呼んだんだい?」

Qべえ「ちょっとね。 魔法少女の一人にイレギュラーが生じたんだ」

??「イレギュラー?」

Qべえ「今は、凄く安定しているんだけど……」

Qべえ「今後どうなるか、予測がつかない」

??「なるほど……それであたしの出番ってわけだ」

??「……けど、後二人も魔法少女が居るのは、どういう事だい?」

Qべえ「一人は急だったけど、今日なったばかりの魔法少女だよ」

Qべえ「そして、彼女もまた、なりたてで不安定だ」

105: 2012/12/15(土) 19:43:07 ID:iiiRClx.

Qべえ「もう一人は、謎が多い娘でね……」

Qべえ「そうだね、こっちもイレギュラーと言える存在だ」

??「ふ~ん。 なかなか面白そうだけど……三人も相手になるのは勘弁して欲しいね」

Qべえ「大丈夫だよ」

Qべえ「謎の多いイレギュラーは、我関せず、といった感じだ」

Qべえ「共闘は、おそらくしないだろう」

??「ふん……あたしと同じで一匹狼かい」

??「まあいい。 ここの狩場は良さげだ。 あたしのモノになるのは悪くないね」

Qべえ「一応言っておくけど、あまり派手に暴れないでくれよ?」 ニコ

??「ああ……わかってるよ。 ただし、あたし流のやり方でやるけど、な……」 クックックッ…

106: 2012/12/15(土) 19:44:31 ID:iiiRClx.

 ――放課後――

 ――見滝原町・河川敷公園――



まどか「えっと、さやかちゃん。 調子はどうかな?」

さやか「ん? すこぶるいいよ!」 ニコ

まどか「そう。 なら、いいんだけど」 ニコ

さやか「……なんか、ね。 あたし嬉しいんだ」

さやか「魔法少女になって、マミさんや鳴上さんの手伝いが出来るって事が」

さやか「すごく嬉しい」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「……あたしって、バカだからさー」

さやか「誰かを助けられたり、誰かの役に立つ事なんて、無いと思ってた」

まどか(! ……さやかちゃん、私と同じ事を……)

107: 2012/12/15(土) 19:45:28 ID:iiiRClx.

さやか「だから、今、やる気マンマンなんだ~」 ニコ

さやか「……マミさんと鳴上さんには、『慎重』になれって言われてるんだけどね」 テへへ…

まどか「フフッ、わかる気がするかも」

さやか「お? 言ったなー、まどか!」 ウリャウリャ

まどか「きゃーん! ごめん、さやかちゃん!」 クスグルノヤメテー

     アハハハ……

ほむら(…………)

ほむら(…………)

ほむら(くっ……美樹さやか) ギリッ

108: 2012/12/15(土) 19:46:19 ID:iiiRClx.

 ――夕方――

 ――見滝原総合病院・屋上――



     ※注 恭介は車椅子

恭介「……さやか、どうしたの? こんな所に連れてきて」

さやか「いいから いいから。 まあ、全快前祝いって事で……」

恭介「?」

     パチパチパチ……

恭介「!? お父さん!? それに、お母さんに病院の先生方……」

恭介・父「先生にお前の病状を聞いて……散々迷ったが……」

恭介・父「本当に捨てなくて良かった……」 スッ…

恭介「!!!」

恭介「僕の……バイオリン……」

109: 2012/12/15(土) 19:47:09 ID:iiiRClx.

さやか「……恭介、弾いてみてよ?」

恭介「……さやか」

恭介「…………」

     ♪~ ♪~ ♪~

恭介・母「……ああ」 グスッ…

恭介・父「……良かった、本当に」 グスッ…

     ♪~ ♪~ ♪~

さやか(…………)

さやか(……そうだよ、これでいいんだよ)

さやか(あたしのやった事は、間違いじゃない)

さやか(あたし……今、最高に幸せだよ……) グスッ…

110: 2012/12/15(土) 19:49:14 ID:iiiRClx.

 ――数日後の夜――

 ――ビル群の裏路地――



     キヒャヒャヒャ!

さやか「このぉ! 逃げるな!」 ブンブン!

まどか「さやかちゃん!」

鳴上「俺がペルソナで足を止める!」

鳴上「ティターニア!」 マハガル!

     ヒュゴオオオッ!

マミ「上手い! 止めよ! ティロ・フィナーレ!」 ドオンッ!

     ガキィンッ!!

マミ「!?」

111: 2012/12/15(土) 19:50:25 ID:iiiRClx.

さやか「な、何!?」

     キィン! カァンッ!!

まどか「ああ……」

鳴上「逃げられた……」

マミ「……結界が晴れていく」

さやか「もう! 何なのよ、今の!? もう少しだったのに!!」



??「そりゃ、こっちのセリフだっつーの」



まどか「!? だ、誰!?」

112: 2012/12/15(土) 19:51:52 ID:iiiRClx.

     ヒュ――ン……ストン

??「あたしは、佐倉 杏子。 見ての通り、魔法少女だ」

杏子「それよりも何だい? 何で使い魔を狩ってんのさ?」

杏子「何人か食わせて魔女化させないと、グリーフシードを落とさないだろ」

杏子「もったいない事するんじゃねーよ」

一同「!?」

さやか「……あんた、何言ってんのよ」

さやか「そんな事出来るわけ無いじゃない!!」

杏子「はあ? 何、正義感ぶってんのさ」

杏子「あたし達は、体張って魔女を退治してるんだ……」

杏子「魔法は、タダで出来る事じゃないんだよ!!」

113: 2012/12/15(土) 19:52:41 ID:iiiRClx.

鳴上(!?)

鳴上(…………)

鳴上(……そうか、今、わかった)

鳴上(あの時)

鳴上(Qべえの何に引っかかっていたのか……!)

鳴上(…………)

鳴上(もし、俺の推測が当たっているとしたら……)

鳴上(…………)

鳴上(くっ……どうすればいい……?)

114: 2012/12/15(土) 19:53:27 ID:iiiRClx.

さやか「このおっ!!」 ゴウッ!

     ガキィ!

杏子「はっ! いきなり何すんのさ!?」

杏子「この程度の力で、あたしにケンカを売ろうってのかい!?」

杏子「上等だよ!」

     ブンッ! ガゴォッ!!

さやか「…ああっ!!」 ダンッ!

杏子「そらそら! どうした!?」

     シュルルルルルッ!!

115: 2012/12/15(土) 19:54:21 ID:iiiRClx.

杏子「!?」

さやか「!?」

マミ「二人共、止めなさい!」

マミ「魔法少女同士が戦っても、無意味よ!」

杏子「…………」

さやか「…………」

杏子「……ちっ、わかった。 悪かった。 これで終わっとくよ」

さやか「……あたしも悪かったわ」

マミ「……拘束を解くけど、もう飛びかかっちゃダメよ」

      シュルルルルルッ……

まどか「……ほっ。 良かった」

鳴上「…………」

116: 2012/12/15(土) 19:55:04 ID:iiiRClx.

鳴上「……まどか」

まどか「え!? は、はい…?」

鳴上「魔法少女には、絶対になるな……」

まどか「!?」 ビクン!

鳴上「……今、理由は言えないが……頼む」

まどか「……は、はあ」

鳴上「さあ、俺達も行こう」

まどか「…………」

まどか(いったい……どういう事?)

まどか(あんな怖い表情の鳴上さん……初めて見た)

117: 2012/12/15(土) 19:55:56 ID:iiiRClx.

 ――巴マミの部屋――



さやか「ったく! 何なのよ! あいつ!」

マミ「美樹さん、落ち着いて」

さやか「でも、マミさん!」

鳴上「落ち着け、さやか」

さやか「ぐ……むう」

まどか(鳴上さんの一言は、効果大だなぁ……)

マミ「……残念だけど、彼女の意見も一理あるわ」

さやか「マミさん!?」

マミ「ソウルジェムの『けがれ』は、グリーフシードでしか取り除けない……」

マミ「そして、それは、魔女のみが持っている」

マミ「その事実は……変え様がないわ……」

さやか「……………………」

118: 2012/12/15(土) 19:56:53 ID:iiiRClx.

さやか(……どうしてだよ、マミさん)

さやか(何で、あんな奴の肩を持つの……)



鳴上「それから……マミ?」

マミ「はい、悠さん」

マミ「後……今日わかった事を、みんなに伝えておきますね」

さやか「え?」

まどか「わかった事?」

マミ「まず、これを見てくれる?」 コト…

     ヒィイインッ……

さやか「わあ……これって、マミさんのソウルジェム?」

まどか「なんて言うか……凄く綺麗」

119: 2012/12/15(土) 19:57:32 ID:iiiRClx.

さやか「……あれ!?」

まどか「どうしたの? さやかちゃん?」

さやか「うん……」 ゴソゴソ… コト…

さやか「これ、あたしのソウルジェム」

まどか「……少し、くすんでるね?」

さやか「まどか、今日あたし達は、魔法をたくさん使った……」

まどか「うん」

さやか「なのに……どうして、マミさんのソウルジェムは、少しも『けがれ』ていないの?」

まどか「……あ!!」

120: 2012/12/15(土) 19:58:48 ID:iiiRClx.

マミ「そう……Qべえにも聞いてみたんだけど」

マミ「理由は、全くわからないの」

マミ「Qべえは私の心が、とても安定している状態だと言っていたわ」

鳴上「そして、今日、本来は『けがれ』るはずのソウルジェムが」

鳴上「全然『けがれ』ない、という事が確認された……」

鳴上「もちろん、何故かはわからない」

さやか「…………」

まどか「…………」

鳴上「……だが、俺は一つ、思い当たる事がある」

さや・まど「えっ!?」

121: 2012/12/15(土) 19:59:33 ID:iiiRClx.

鳴上「……みんなも見ているだろう」

鳴上「俺は、ペルソナを使いながら、全くグリーフシードを必要としない」

マミ・まど・さや「!!!」

まどか「じゃ、じゃあ、マミさんもペルソナ使いに!?」

鳴上「いや、たぶんそうじゃない」

鳴上「魔法少女も、ペルソナも、根源の力は、心だ」

鳴上「だが、発動の仕方や仕組みが違う……」

鳴上「例えるなら、同じ火薬を使いながら 花火とダイナマイトは全く別物」

鳴上「そんな所だろう」

122: 2012/12/15(土) 20:00:40 ID:iiiRClx.

鳴上「でも、火薬自体が、ダイナマイト用のモノから 花火用の物へと変化したのなら」

鳴上「ありえない事では、無いかもしれない……」

鳴上「もちろん推測でしかないがな」

さやか「…………」

さやか(……なにそれ)

さやか(どうして、マミさんだけ……)

マミ「それから捕捉するけど……魔法を無限に使える様になったわけでも無いの」

マミ「これも悠さんのペルソナ能力に近いんだけど……」

マミ「魔法をある程度使うと、凄く疲れる様になったわ」

まどか「そうなんですか……。 痛し痒しって、感じですね」

123: 2012/12/15(土) 20:01:54 ID:iiiRClx.

鳴上「……それから、この事はQべえに内緒に……」

     ストン…

Qべえ「僕が、どうかしたのかい?」

鳴上「…………」

マミ「……Qべえ」

Qべえ「ひどいな、鳴上 悠。 僕に隠し事かな?」

鳴上「……その様子だと、聞いていたみたいだな」

Qべえ「やれやれ……何だか、君には嫌われた様だね」

Qべえ「その目は、まるで暁美ほむらの目に似ているよ」

鳴上「……!」

鳴上(……そうか、彼女も俺と同様に、あの事に気づいたのかもしれないな……)

まどか(鳴上さん……)

124: 2012/12/15(土) 20:02:50 ID:iiiRClx.

鳴上「……さて」 スクッ…

鳴上「そろそろ遅い時間だ」

鳴上「さやかと まどかを 送っていこう」

さやか「えっ?」 ///

まどか「は、はい?」 ///

鳴上「Qべえは、ここに残るのか?」

Qべえ「まあね。 巴マミの話も聞きたいし」

鳴上「そうか。 それじゃ、二人共、行こうか?」

まどか「わ、わざわざ、すみません……」 ///

さやか「エへへ……。 な、なんか照れるね」 ///

鳴上「じゃ……マミ、お休み」

マミ「はい、お休みなさい、悠さん」

125: 2012/12/15(土) 20:03:43 ID:iiiRClx.

 ――路上――



     テク テク テク…

鳴上「すまないな、二人共。 ダシに使って」

まどか「いえ……」

さやか「まあ、そんな事だろうって思ったけどね~」

鳴上「だが、実を言うと、少し頼みたい事がある」

まどか「頼み、ですか?」

さやか「どんな事?」

鳴上「暁美ほむらと、会って話がしたい」

鳴上「場所と時間はそちらに任せるから、と伝えてくれないだろうか?」

まど・さや「!?」

126: 2012/12/15(土) 20:04:35 ID:iiiRClx.

さやか「…………」

さやか「鳴上さん、いったいあの転校生に何の用が?」

鳴上「……今は話せない。 結論を出す為に、少しでも情報が欲しい」

鳴上「それだけだ」

まどか(…………)

まどか(私に魔法少女になるな、と言った事と関係があるのかな……)



さやか(……なんか、嫌だな)

さやか(あたし達に隠し事なんて、止めてよ……鳴上さん)



まどか「わかりました、鳴上さん。 ほむらちゃんに伝えておきますね」

鳴上「頼む」

127: 2012/12/15(土) 20:05:36 ID:iiiRClx.

 ――さやかの部屋――



さやか「…………」

さやか「…………はあ」

さやか(何か、気分悪いな……)

さやか(せっかく魔法少女になったのに)

さやか(あたしだけ、舞い上がってたみたい……)

さやか(…………)

さやか(せっかく、やる気になってたのになぁ……)

さやか(…………)

さやか「…………はあ」

128: 2012/12/15(土) 20:07:03 ID:iiiRClx.

 ――翌日・休日の午前中――

 ――ゲームセンター――



     タン タン タタン!

杏子「よっ ほっ ふっ」

     タタン タタン タン!

杏子「よう。 何かあたしに用かい?」

ほむら「…………」

     タン! タタン タン

ほむら「私に、協力して欲しいの」

杏子「へえ? けど、あたしのやり方 知ってんだろ?」

     タン! (ゲーム終了)

杏子「見返りは何だい?」

129: 2012/12/15(土) 20:08:08 ID:iiiRClx.

ほむら「この町のテリトリーを 全部あげるわ」

杏子「ほー。 そいつは太っ腹だね」

杏子「で? あたしは、何をすればいいんだい?」

ほむら「それは後で、私の家で説明するけど……約束して欲しい事があるの」

ほむら「今からしばらく、『何もしない事』を、ね」

杏子「はあ? 魔女退治もかい?」

ほむら「それは構わない。 私が言っているのは」

ほむら「美樹さやか達の事よ」

杏子「……ちょっかい出すなって事かい」

ほむら「そうよ」

130: 2012/12/15(土) 20:08:47 ID:iiiRClx.

杏子「…………」

杏子「まあ、言いたい事はわかった」

杏子「その詳しい話ってのは、いつするんだい?」

ほむら「三日後、ここで待ってて。 迎えに行くから」

杏子「オッケー、オッケー。 わかったよ」

     チャリン☆ ゲーム・スタート!

ほむら「…………」

ほむら(これで……何とかなればいいけど)



杏子(はっ……あのムカつく青いのが、大事なのかぁ?)

杏子(ちょっかい出すなって言われると……出したくなるんだよねぇ……) クックックッ…

131: 2012/12/15(土) 20:09:47 ID:iiiRClx.

 ――夕方――

 ――見滝原総合病院――



     テク テク テク…

さやか(えへへ……恭介、この新しいCDプレイヤー、気に入ってくれるかな?)

さやか(きっと、喜んでくれるよね) ///

     ガラッ

さやか「恭介……!」

さやか「…………あれ?」

さやか「…………」

さやか「どうして……居ないの?」

132: 2012/12/15(土) 20:10:33 ID:iiiRClx.

看護師「あら? あなたは……?」

さやか「あっ……その……この病室の上条 恭介くんは……?」

看護師「ああ、上条さんならお昼頃、親御さんと退院されましたよ?」

さやか「えっ……? そう……なんですか?」

看護師「ええ。 少しでも早く、帰りたかったみたいで……」



さやか「…………」

さやか(恭介……。 退院するって、一言あってもいいじゃない……)

さやか(なんか、ちょっとショックだな……)

133: 2012/12/15(土) 20:11:17 ID:iiiRClx.

 ――夜――

 ――上条宅前――



さやか(…………)

さやか(……迷惑だったのかな?)

さやか(…………)

さやか(ううん、そんな事ない!)

さやか(余計な事は考えるな、さやか!)

さやか(と、とにかく、今日はCDプレイヤーを渡して、帰ろう! うん!)

     ♪~ ♪~ ♪~

さやか(………あ)

さやか(…………)

さやか(バイオリンの音……)

134: 2012/12/15(土) 20:11:57 ID:iiiRClx.

さやか(…………)

さやか(…………そっか)

さやか(恭介……思い切りバイオリンを弾きたかったんだ)

     ♪~ ♪~ ♪~

さやか(…………)

さやか(……そうだよね)

さやか(病室じゃ出来ないもんね……)

さやか(ふふっ……そのせいで、あたし、忘れられちゃったのか)

さやか(相変わらず、音楽バカなんだから……)

さやか(邪魔しない様に今日は帰ろっと) クスッ

135: 2012/12/15(土) 20:13:01 ID:iiiRClx.



??「こんな所で何してんのさ? お前」



さやか「!?」

さやか「……あんたは」

杏子「あんたじゃねーよ。 佐倉 杏子だ。 忘れんな」

さやか「……何の用?」

杏子「べっつにー。 今だったら二人っきりだし」

杏子「この前の続き、サシで出来るけど?」

杏子「文句あんだろ? あたしに。 遠慮なくかかってきなよ?」 ニヤニヤ

さやか「…………」

136: 2012/12/15(土) 20:13:55 ID:iiiRClx.

杏子「そういやあんたさー、願い事……この家の男の体、治すのに使ったんだって?」

杏子「バッカじゃないの?」 ケラケラ……

さやか「なっ……!」

杏子「だってそうだろ?」

杏子「他人の為に、たった一つしかない願いを使っちまったなんて」

杏子「バカ以外の何者でもないじゃないか」

さやか「あんた……!!」 ギリッ!

杏子「どうやら、やる気になったみたいだね……」

杏子「来なよ。 ここじゃ、てめーもまずいだろ?」

杏子「人の居ない所で、派手にやろうじゃない……」 クックックッ……

137: 2012/12/15(土) 20:14:52 ID:iiiRClx.

 ――交差陸橋上――



杏子「さぁーて……おっぱじめようじゃないか……」

     キィイイイイインッ!(魔法少女へ変化)

さやか「後悔させてやる……!!」 スッ…

???「待ちなさい、二人共」

杏子・さやか「!!?」

杏子「あ、あんたは……」

ほむら「約束したはずだけど? 美樹さやか達には、手を出すな、と」

杏子「うるせーよ。 あたしは、あたしのやりたいよーにしたいんだよ!」

ほむら「…そう。 なら」

杏子「!?」

138: 2012/12/15(土) 20:15:38 ID:iiiRClx.

ほむら「佐倉 杏子。 私が、あなたの代わりに 美樹さやかと戦うわ」

杏子「はあ!? なんでそうなるんだよ!?」

さやか「……あーもう! めんどくさい!」

さやか「いいよ……二人共、相手してやる!!」 スッ…



???「ダメ!! さやかちゃん!!」 バッ!



さやか「!? まどか!?」

さやか「返して! あたしのソウルジェム!!」

まどか「ごめん……さやかちゃん……!」

139: 2012/12/15(土) 20:16:26 ID:iiiRClx.

まどか「えいっ!!」 ブンッ

     ポイッ…… (走ってるトラックの荷台に) ポトッ

さやか「ああっ……!?」

杏子「おいおい……」

ほむら「!!!!」 ダッ!!



さやか「まどか! なんて事するのよ!?」

まどか「ごめん、さやかちゃん。 こうでもしないと……止められないって……思って」

さやか「だからって、いきなりソウルジェムを 捨て…る……事、は……」

さやか「な…………」 ドサッ……

まどか「えっ? さやか……ちゃん?」

杏子「!!? おいっ!?」 グッ!

140: 2012/12/15(土) 20:17:18 ID:iiiRClx.

杏子「…………!」

杏子「どういう……事だよ?」

杏子「こいつ、氏んでんじゃねーか!」

まどか「…………ええっ!?」

さやか「」

まどか「……うそ、だよね? さやかちゃん?」

まどか「何とか言ってよ!?」

さやか「」

まどか「起きてよ! さやかちゃん!!」

???「やれやれ……なんて事をするんだい。 鹿目まどか」

まどか「Qべえ!?」

141: 2012/12/15(土) 20:18:22 ID:iiiRClx.

Qべえ「どうして美樹さやかを捨てたんだい?」

Qべえ「ダメだよ、そんな事しちゃ」

まどか「……何、言ってるの……Qべえ?」

杏子「…………」

     ガシッ!!

杏子「……どういう事か、説明してもらおうか?」

杏子「なんでこいつは、氏んでんだよ!?」

Qべえ「だから、それは美樹さやかじゃない」

Qべえ「単なる抜け殻だ」

Qべえ「本人の意識はソウルジェムにあり、その効果範囲は約100m前後……」

Qべえ「それ以上離れると、こうなるんだよ」

まどか「わけわかんないよ! Qべえ」

142: 2012/12/15(土) 20:19:06 ID:iiiRClx.

Qべえ「僕達はね、君達の言う、『魂』を肉体から分離できるんだ」

Qべえ「それが、ソウルジェム」

Qべえ「第一、魂が肉体と一緒だと、急所を突かれただけで魂ごと意識は消えてしまう」

Qべえ「君達で言う『氏』だ」

Qべえ「でも、意識をソウルジェムに移す事で、心臓を刺されようが頭を割られようが」

Qべえ「魔法で治す事が可能だ」

Qべえ「魔女との過酷な戦いの為に、これは大いに役に立つだろう?」

Qべえ「感謝こそされ、非難される事では無いと思うけど?」

杏子「ふざけんな、てめえ……!」

杏子「じゃあ、なんで黙ってたんだよ!!」

Qべえ「聞かれなかったからさ」

まどか・杏子「……!!」

143: 2012/12/15(土) 20:20:13 ID:iiiRClx.

     コト……(さやかの前に ソウルジェムを置いた)

ほむら「ふう……」

まどか「!!」

まどか「ほむらちゃん……?」

     ピクンッ……

まどか「!! さやかちゃん!?」

杏子「……!」



さやか「………?」

さやか「あれ?」

さやか「あたし……どうしたの?」

144: 2012/12/15(土) 20:21:12 ID:iiiRClx.


―――――――――――


さやか「…………」

ほむら「……という事よ。 わかったかしら?」

まどか「ごめん……さやかちゃん、本当にごめんなさいっ……!」 グスッ…

さやか「…………っ」 ダッ!

     タッ タッ タッ…

まどか「!! さやかちゃん!!」

ほむら「待ちなさい、まどか」

まどか「で、でもっ!!」

ほむら「あなたが行っても どうにもならないわ。 それよりも……」

145: 2012/12/15(土) 20:21:55 ID:iiiRClx.

ほむら「これでわかったでしょう? 私が魔法少女になるな、と言った意味が」

まどか「…………うん」

ほむら「だったら、もうQべえには関わらない事ね」

まどか「…………そう、だね」

まどか「鳴上さんにも言われてるし……」

ほむら「!?」

ほむら「…………」

ほむら「……まどか、あの男に何を言われたの?」

まどか「ほむらちゃんと同じだよ」

まどか「魔法少女になるなって……」

ほむら「…………」

146: 2012/12/15(土) 20:22:21 ID:iiiRClx.

ほむら「まどか、今、彼と連絡が取れるかしら?」

まどか「え? う、うん……」

まどか「でも……どうしたの? 急に……」

まどか「学校じゃ、全然そっけなかったのに……」

ほむら「気が変わっただけよ」

ほむら「それに……」

まどか「それに?」

ほむら「……ううん、何でも無い」

ほむら(もしかしたら……彼は、知っているのかもしれない)

ほむら(それを確かめないと……)

147: 2012/12/15(土) 20:27:38 ID:iiiRClx.

 ――深夜――

 ――暁美ほむらの家――



鳴上「………お邪魔します」

ほむら「堅苦しい挨拶はいいわ」

ほむら「早く入って」

鳴上「…………」

鳴上(……殺風景、と言うか、殺伐としている、と言うか)

鳴上(おおよそ女の子の部屋とは 思えないな……)



ほむら「早速だけど……」

ほむら「あなたは、どこまで知っているのかしら?」

鳴上「……その前に、Qべえは居るのか?」

148: 2012/12/15(土) 20:28:18 ID:iiiRClx.

ほむら「ふう……用心深いみたいね」

ほむら「それなら安心して。 まどかに頼んで、巴マミに見てもらってるわ」

ほむら「信用できないなら、彼女達に電話してみるといい」

鳴上「そうか……そうさせてもらう」 カチャ…(携帯オープン)

ほむら「…………」

―――――――――――
鳴上、確認中……
―――――――――――

鳴上「……よし、確認した」

鳴上「それじゃあ……さっきの質問に答えよう」

ほむら「…………」

149: 2012/12/15(土) 20:29:21 ID:iiiRClx.

鳴上「まず、俺は『知っている』わけではない」

鳴上「いくつかのキーワードから、一つの仮説を考えただけだ」

ほむら「仮説……」

鳴上「俺の知る『シャドウ』と『魔女』は、非常によく似た存在だと、ある筋から聞いた」

鳴上「シャドウとは、人の『負の意識』が具現化したもの……」

鳴上「それによく似ているのならば、魔女もまた」

鳴上「『人の負の意識』から生まれたのでは、ないだろうか?」

鳴上「と……」

ほむら「…………」

150: 2012/12/15(土) 20:30:53 ID:iiiRClx.

鳴上「そして、Qべえの言葉が、ずっと引っかかっていた……」

ほむら「…………」



Qべえ「使い魔はやがて魔女に。 魔女は、より強力な魔女へと、ね」



鳴上「きっかけは、佐倉 杏子の この一言だ」

ほむら「…………」



杏子「魔法は、タダで出来る事じゃないんだよ!!」



鳴上「Qべえの言葉で引っかかっていたのは、『最初の魔女』の説明が無かった事」

鳴上「そして、ソウルジェムに溜まって行く『けがれ』の存在」

鳴上「さらに俺の知る、『シャドウ』の具現の仕方……」

151: 2012/12/15(土) 20:31:43 ID:iiiRClx.

鳴上「そこから導き出した俺の推測は……『けがれ』を溜め込みすぎた魔法少女は」



鳴上「やがて、『魔女』になるんじゃないのか? という事だ……」



ほむら「…………」

鳴上「…………」

ほむら「…………」

鳴上「…………」

ほむら「…………あなたは」

鳴上「……?」

152: 2012/12/15(土) 20:32:31 ID:iiiRClx.

ほむら「まどかに魔法少女になるな、と、言ってくれたそうね?」

鳴上「……ああ」

ほむら「それに感謝して、答えるわ」

鳴上「…………」

ほむら「ええ、その通りよ」

鳴上「………!」

ほむら「驚いたわ。 推測とは言え、よく気がついたわね」

鳴上「確証は無かった。 だが……」

ほむら「だが?」

鳴上「これを……魔法少女に伝えるべきかどうか……迷っている」

ほむら「……!」

153: 2012/12/15(土) 20:33:09 ID:iiiRClx.

ほむら「…………」

ほむら「どうして迷うの? 理由を聞いてもいいかしら?」

鳴上「魔法少女が、化物になるかもしれない」

鳴上「その恐怖感から、魔法少女同士で頃し合いが始まる可能性を考えた……」

ほむら「じゃあ、何故、私には包み隠さず話したの?」

鳴上「君は、まどか達に前々から、『魔法少女になるな』と言い続けてたからだ」

鳴上「……事情を知っていたから、そういう結論に達したのだろう?」

ほむら「…………」

ほむら(……どうしよう)

ほむら(この人なら、あるいは……!)

154: 2012/12/15(土) 20:34:01 ID:iiiRClx.

鳴上「…………」

鳴上「……さて」 スクッ…

鳴上「そろそろ帰る」

ほむら「えっ?」

鳴上「終電の時間だ」

ほむら「ああ……そ、そうね」

鳴上「…………でも」

ほむら「?」

鳴上「俺が信頼に足る人物だと、判断出来たら」

鳴上「また呼んでくれ」 ニコ

ほむら「……!!」 ドキッ

鳴上「じゃ……」

155: 2012/12/15(土) 20:34:45 ID:iiiRClx.

ほむら「…………」

ほむら(な、何よ、あいつ……)

ほむら(人の心を、見透かして……!)

ほむら(…………)

ほむら(…………)

ほむら(……でも、不思議と嫌じゃなかった……)

ほむら(鳴上 悠……)

ほむら(…………) ///

159: 2012/12/16(日) 18:39:01 ID:litESjz.

 ――翌日の朝――

 ――美樹さやかの部屋――



さやか(…………)

さやか(はは……笑っちゃうよね……)

さやか(魔法少女になって喜んでいたのに)

さやか(こんな体にされていた、なんて……)

さやか(…………)

さやか(今日、学校休んじゃって……心配してるだろうな)

さやか(まどか……)

160: 2012/12/16(日) 18:39:52 ID:litESjz.

??《いつまでも しょぼくれてんじゃねーぞ、ボンクラ》

さやか(……!?)

さやか(魔法のテレパシー……) スクッ…

     テト テト テト…… シャッ…(カーテンオープン)

さやか(!!?)

さやか(あいつは……)

杏子《話がある……。 ちょいとツラ貸しな》 クイッ…

さやか(…………)

162: 2012/12/16(日) 18:42:18 ID:litESjz.

 ――午後――

 ――郊外の路地――



     テク テク テク…

さやか「…………」

さやか「……こんな所まで連れてきて、一体何の用?」

杏子「あんたさぁ……やっぱりショックなわけ?」

杏子「昨日の事」

さやか「そりゃあね……。 あんたもそうなんでしょ?」

杏子「……まあね」

163: 2012/12/16(日) 18:43:07 ID:litESjz.

 ――廃墟の家屋――



さやか(…………)

さやか(……なに? ここ……)

さやか(教会……かな?)

さやか(火事にでもあったみたい……)



杏子「りんご、食うかい?」 ヒュッ

さやか「…………」 パシッ

さやか「…………」

     ポイッ…… コロ コロ コロ

杏子「!!」

さやか「いらな…」

     グイッ!!

164: 2012/12/16(日) 18:43:54 ID:litESjz.

杏子「てめぇ! くいものを粗末にすんじゃねーよ! 頃すぞ…!」

さやか「ぐっ!?」

杏子「…………」

杏子「…………ちっ」 パッ…

さやか「………っは」

杏子「……まあいい」 リンゴ拾い ゴシゴシ…

杏子「本題に入ろうか」

さやか「…………」

165: 2012/12/16(日) 18:45:12 ID:litESjz.

杏子「あんたさぁ……なんで自分は、こんな目に会ってるの?って思ってるのかい?」

さやか「……別に。 でもあんたは、自業自得でしょ?」

杏子「そうさ……その通り」

杏子「そしてお前も、自業自得にしちまえばいいのさ」

さやか「……!?」

杏子「だから、あたしは自分の為に魔法を使ってる」

杏子「そうすれば、何が起こっても自分のせいに出来る」

杏子「他人の為に魔法を使って酷い目に合えば……」

杏子「誰かを恨まずにいられなくなる……」

さやか「…………」

166: 2012/12/16(日) 18:46:18 ID:litESjz.

杏子「……あたしの父親はね」

杏子「ここの神父だったんだ」

さやか「…………」

杏子「純粋な人でね……」

杏子「毎日、新聞を見ては、ため息をついて胸を痛めている様な人だった」

さやか「…………」

杏子「ある日、オヤジは、世の中を良い方向に変えようと思って」

杏子「毎日、説法を説いた」

杏子「実現されたら、そりゃ素晴らしいって感じの話でね」

杏子「あたしは、そんなオヤジが誇らしかった」

さやか「…………」

167: 2012/12/16(日) 18:47:03 ID:litESjz.

杏子「……でも」

杏子「世間て奴は、そんなオヤジに冷たかった」

杏子「まあ、説法に独自の解釈を加えて、教義に無い事まで唱え始めたんだ」

杏子「今なら、バカな事をしてたってわかるよ……」

さやか「…………」

杏子「それからは辛かったね……」

杏子「教会に足を運ぶ人はどんどん減り」

杏子「あたし達家族は、毎日の食事にも事欠く有様になった」

さやか「…………」

168: 2012/12/16(日) 18:47:52 ID:litESjz.

杏子「あたしは……ただ、悔しかった」

杏子「オヤジは間違ってない」

杏子「話さえ聞いてくれれば、それがわかってもらえる」

杏子「あたしは、そう思って」

杏子「オヤジの説法に人が集まりますように、と、Qべえに祈りを捧げた」

さやか「……!」

杏子「それからは、教会にわんさか人が押し寄せてきた」

杏子「オヤジは嬉しそうだった」

杏子「魔女と戦いつつも それを見て、あたしは幸せだった」

さやか「…………」

169: 2012/12/16(日) 18:48:58 ID:litESjz.

杏子「けど、ある日」

杏子「オヤジに、願い事を叶えて魔法少女になった事がバレた」

さやか「……!」

杏子「その日から、オヤジは変わった」

杏子「毎日酒を飲んで、家族に当たり散らし」

杏子「あたしを魔女の手先と罵った……」

さやか「…………」

杏子「……最後は惨めなもんさ」

杏子「家族をその手にかけて、教会に放火し……本人も自殺」

杏子「あたし一人、生き残っちまった……」

さやか「…………」

170: 2012/12/16(日) 18:49:51 ID:litESjz.

杏子「覚えときな」

杏子「誰かの為に祈った幸せの分だけ」

杏子「誰かに不幸が訪れる」

杏子「そうやって、差し引きゼロにして」

杏子「世の中ってのは、バランスを保っているんだ」

杏子「それを身をもって体験したんだよ、あたしは、ね……」

さやか「…………」

杏子「いちいち誰かの不幸を見て傷ついてたら」

杏子「あんた、その内、潰れちまうよ?」

杏子「悪い事は、言わないからさー」

杏子「もっと気楽に生きてみなよ、あたしみたいに……」

さやか「…………」

171: 2012/12/16(日) 18:50:52 ID:litESjz.

さやか「…………」

さやか「なんであたしに、そんな話をすんのさ?」

さやか「あんた、自分勝手に生きてるんでしょ?」

さやか「なのに……あたしの事、気にかけるなんて……おかしいじゃない」

杏子「……なんでだろうね?」

杏子「…………」

杏子「あんたを見てたら」

杏子「なんとなく……放っておけなくなった」

杏子「ってとこかな?」

さやか「…………」

172: 2012/12/16(日) 18:51:35 ID:litESjz.

さやか「…………」

さやか「心配……してくれるんだ」

杏子「…………」

さやか「……あんたの事、誤解してた」

さやか「言いたい事もわかるし、なるほどって思える所も多かった」

さやか「ありがとう」 ニコ

杏子「!……じゃ、じゃあ!」

さやか「でも」

杏子「……!」

さやか「あたしは……自分の願いが、間違いだとは思ってない」

杏子「…………」

173: 2012/12/16(日) 18:52:24 ID:litESjz.

さやか「あたしは……あたしの思い描く魔法少女を目指して」

さやか「これからも頑張っていく。 もちろん、見返りなんていらない」

さやか「この力は、使い方次第でいくらでも世の中の役に立てるって事を」

さやか「証明してみせる……!」

杏子「!! あ、あんたね……!」

さやか「そういやさ、そのリンゴ」

さやか「どうやって手に入れたの?」

杏子「!!」

杏子「…………っ」

さやか「…………」

さやか「やっぱり、言えないんだ……」 フウッ…

174: 2012/12/16(日) 18:53:16 ID:litESjz.

さやか「それじゃあ帰るね、あたし……」 スッ…

     テク テク テク…

杏子「……ちょ! 待ちなよ!」

さやか「もう話は済んだでしょ?」

さやか「あたしは、あたしのやり方でやる」

さやか「それが嫌だって言うのなら、遠慮なく力ずくで止めたらいい」

さやか「たとえそれで、あたしが氏ぬ事になっても」

さやか「あんたを恨んだりしないからさ……」

杏子「!!!」

     ……………………

杏子「…………」

杏子「バカヤローが……!」

175: 2012/12/16(日) 18:54:05 ID:litESjz.

     テク テク テク

???「いいのかい? あんな事言って?」

さやか「!!?」

さやか「……今更、よく、あたしの前に来れたね」

さやか「Qべえ!!」

Qべえ「? 何を怒ってるのさ?」

さやか「ふざけないで! 人をこんな体にしておいて……!」

Qべえ「君は、魔法少女になってでも、叶えたい望みがあったじゃないか」

Qべえ「それは間違いなく、成就されただろう?」

さやか「…………っ!」

176: 2012/12/16(日) 18:54:50 ID:litESjz.

Qべえ「断言するよ。 たとえ君が一生をかけて、あの少年に付いていたとしても」

Qべえ「彼の手は、二度と動く事は無かっただろう」

Qべえ「十分な奇跡と言える対価じゃないかな?」

さやか「…………」

Qべえ「まあ、確かに、魔法少女の説明について、省略した部分はあったけどね」

さやか「この……!」

Qべえ「もう少し、捕捉説明をしようかい?」

さやか「!? ……まだ、何かあるの!?」

Qべえ「そうとも」

177: 2012/12/16(日) 18:55:46 ID:litESjz.

Qべえ「君のソウルジェムを貸してくれるかな?」

さやか「……あたしを頃す気?」

Qべえ「君を頃して、僕に何の得があるのさ?」

Qべえ「そんな事しないよ。 約束する」

さやか「…………」

     コトッ…

さやか「……これでいいの?」

Qべえ「うん。 じゃあ……始める前に言っておくけど」

Qべえ「君は、戦い、というモノを甘く見ている」

Qべえ「魔法少女として、魔女と戦うという事は、それはとても過酷な事なんだ……」 スッ…

     キィイイイイインッ!

178: 2012/12/16(日) 18:56:29 ID:litESjz.

さやか「……ぐっ!?!??!?!」

さやか「ああああああっ!!!!」 ドサッ…!

さやか(痛いっ……! 痛い痛い痛い痛いっ!!!)

さやか(痛いっ!!!)

Qべえ「仮に、だけど、君のお腹に槍が刺さったら、どんな痛みを感じるか」

Qべえ「痛覚神経を刺激してみたんだ」

さやか「ぐっ……ああっ! ……ひっ……」

Qべえ「どうだい?」

Qべえ「ただの一発でも動けなくなるだろう?」 スッ…

     シュウウウウウン……

さやか「くうっ!……はあっはあっはあっ……」

179: 2012/12/16(日) 18:57:21 ID:litESjz.

Qべえ「これで分かったかい?」

Qべえ「君が戦いで感じてた痛みは、随分と緩和されてたんだ」

Qべえ「そして、その気になれば、痛みを完全に消す事だって出来る」

Qべえ「まあ、そうしちゃうと動きが鈍くなってしまうから」

Qべえ「あまりおススメしないけどね……」

さやか「…………」

さやか(……こんな事で……負けない)

さやか(あたしは……)

さやか(立派な、魔法少女になるんだから……!)

180: 2012/12/16(日) 19:22:55 ID:litESjz.

 ――翌日の朝――

 ――通学路――



     テク テク テク

さやか「…………」

まどか「さやかちゃん!」

仁美「おはよう、さやかさん」 ニコ

さやか「ああ、おはよう。 まどか、仁美」 ニコ

仁美「昨日は、どうされたんですか?」

さやか「へへへ……ちょっと、風邪っぽいな~って。 それだけだよ、仁美」

仁美「まあ……そうだったんですか」

まどか「…………」

181: 2012/12/16(日) 19:23:35 ID:litESjz.

 《テレパシー中》

さやか《安心して、まどか》

さやか《そりゃ、ショックだったけどさ……》

さやか《あたしは、元気だから!》 ニコ

まどか(さやかちゃん……)

182: 2012/12/16(日) 19:24:16 ID:litESjz.

仁美「! あれは…!」

まどか「えっ? どうしたの? 仁美ちゃん?」

仁美「ほら、あそこ……」

さやか「……!!」

さやか「恭…介……?」

仁美「上条くん……もう退院されたんですね……」

仁美「良かった……」


さやか(…………)

さやか(恭介……どうして?)

さやか(あたし、何も聞いてないよ……?)

さやか(どうして、今日登校するって)

さやか(言ってくれなかったの……?)

さやか(どうして……!)

183: 2012/12/16(日) 19:25:15 ID:litESjz.

 ――見滝原中学校・教室――



さやか「…………」

まどか「……どうしたの? さやかちゃん?」

さやか「え!? ううん、何でも無い……けど」

仁美「せっかく上条君、登校して来たんですから……声をかけられては?」

さやか「い、いやぁ……今は、遠慮しとこう……かな? ははは……」

まどか(…………)

仁美(変な さやかさん……)

184: 2012/12/16(日) 19:25:50 ID:litESjz.

仁美(…………)

仁美(……そうですわ)

仁美(もしかしたら、今がチャンスなのかも……)

仁美(…………)

仁美「あの……さやかさん」

さやか「ん? 何? 仁美?」

仁美「よろしければ……放課後、お時間、頂けませんか?」

さやか「うん。 いいけど……」

仁美「ありがとうございます」 ニコ

さやか(いったい、なんだろう?)

185: 2012/12/16(日) 19:26:55 ID:litESjz.

 ――放課後――

 ――ジュネス見滝原店・ファストフード店内――



さやか「…で、何の用? 仁美」

仁美「……はい、相談事がありまして」

さやか「相談? 何の?」

仁美「恋の相談ですわ」

さやか「!!」

仁美「…………」

仁美「私……ずっと以前から、上条君の事をお慕いしておりました」

さやか「へ…へえ~。 そ、そうなんだ……」

さやか「仁美が、恭介の事を……ねぇ……」

186: 2012/12/16(日) 19:28:09 ID:litESjz.

仁美「……さやかさんは、上条君と幼馴染だそうですが」

仁美「特別な感情を抱いておりませんか?」

さやか「!? あ、あたし!? い、いや、そのっ……」

さやか「あ、あたしは……確かに恭介と幼馴染だけど……まあ、腐れ縁って言うか……」 ///

仁美「…………」

仁美「さやかさん」

さやか「う!? うん……」

仁美「私、真剣です……でも」

仁美「さやかさんには、上条君をずっと見てきた……長い時間がお有りです」

仁美「ですので……」

仁美「あなたには、先に告白する権利があると思うのです」

さやか「…………」

仁美「…………」

187: 2012/12/16(日) 19:28:57 ID:litESjz.

仁美「私、明日の放課後に、上条君に告白します」

さやか「……!」

仁美「それまでに、どうか、決断してください……」

仁美「それでは……私はこれで……」 スクッ…

さやか「あ…………」

さやか「……………………」

さやか「…………仁美」

さやか「……………………」

188: 2012/12/16(日) 19:29:46 ID:litESjz.

 ――夕方――

 ――さやかのマンション・ロビー付近――



さやか「あ……」

さやか「……まどか」

まどか「えへへ……来ちゃった」

さやか「…………」

まどか「今日も行くのかな? 魔女を倒しに……」

さやか「……うん」

まどか「私……何の役にも立てないけど……さやかちゃんの傍に居たい」

まどか「ついて行っても、構わないかな?」

さやか「………まどか」

189: 2012/12/16(日) 19:30:32 ID:litESjz.

さやか「…………」

さやか「まどか……あたし、ね」

まどか「うん」

さやか「マミさんや 鳴上さんみたいな……」

さやか「ううん……それ以上にカッコイイ魔法少女になろうって」

さやか「決めたんだ……」

まどか「うん」

さやか「……でも、さ」

さやか「今日……仁美が恭介に告白するって聞いて」

さやか「仁美の事……助けなきゃ良かったって……」

さやか「少し……考えちゃった……」

まどか「…!」

190: 2012/12/16(日) 19:31:32 ID:litESjz.

さやか「はは……正義の味方、失格、だね……」

まどか「……さやかちゃん」

さやか「…………ひぐっ……」 ポロッ…

さやか「どうしよう……まどかぁ………」 ポロッ…

さやか「このままじゃ……仁美に……恭介を………」 ポロポロ…

さやか「盗られちゃうよぉ……ううっ……ひっく……」 ポロポロ…

まどか「さやかちゃん……」

さやか「でも……あたし………何も出来無いっ……何もっ……」 ポロポロ…

さやか「だって………あたし、氏んでるんだもん……ゾンビなんだもん………!」 ポロポロ…

さやか「抱きしめて、なんて……言えないっ……」 ポロポロ…

さやか「キスして、なんて……言えないよっ………!」 ポロポロ…

さやか「まどかぁ……わああああああああああああああああっ………」 ボロボロッ…

まどか「…………」

191: 2012/12/16(日) 19:32:06 ID:litESjz.

 ――10分後――



鳴上「済まない……遅くなっ」

鳴上「………何かあったのか?」

まどか「あ……鳴上さん」

まどか「ううん……何でも無いです」

さやか「…………」 グスッ…

鳴上「…………」

192: 2012/12/16(日) 19:33:12 ID:litESjz.

まどか「それよりも、今日、マミさんは?」

鳴上「今日は、魔女の数が多い」

鳴上「単独行動は危険だが……今日は、さやかに付いてやってくれと頼まれた」

鳴上「Qべえも付いているし、危険と判断したら自分も無理しないで逃げるそうだ」

まどか「そうですか……」

まどか「さやかちゃん、鳴上さんも居てくれるって。 今日も頑張ろうね」

さやか「うん……あたし、頑張るね。 まどか」

鳴上「…………」

193: 2012/12/16(日) 19:34:19 ID:litESjz.

 ――夜――

 ――建設途中のビル・上階付近――



     シャグッ… ムシャ ムシャ…

杏子「……………………」

     ヒュウン…… ストン

杏子「……! ああ、あんたかい……」

ほむら「珍しいわね。 あなたがこんな所で手も出さずに」

ほむら「結界の外から、魔女退治をアイス食べながら見ているだけなんて……」

杏子「……たまには、そんな気分の時もあるさ……」

ほむら「私との約束をすっぽかしたのもそれが理由?」

杏子「あ……そういやそうだったな。 悪かったよ……」

     バチッ…! バチッ…!

ほむら・杏子「……!!」

194: 2012/12/16(日) 19:34:52 ID:litESjz.

杏子「ちっ……! あいつ、何やってんだ! 手こずりやがって……!」

杏子「あのペルソナ、とか言う妙な技を使うヤローがついていながら」

杏子「このザマかよ……!」

ほむら「…………」

ほむら(鳴上 悠……)

196: 2012/12/16(日) 19:37:22 ID:litESjz.

 ――魔女の結界内――



まどか「さやかちゃん!!」

さやか「……はあああああああああっ!!」 ダッ!!

鳴上「さやか! むやみに突っ込むな!」

鳴上(くっ…! どうしたんだ、さやかの奴……!)

鳴上(さっきから無謀に向かって行くばかりだ!)

     ドスッ! ヒュバババッ! ドスッ! ドスッ!

さやか「……!……!」

まどか「きゃああああっ!?」

鳴上「!! さやか! 一旦下がれ!」

鳴上「……くそっ!!」 ダッ!

197: 2012/12/16(日) 19:38:07 ID:litESjz.

さやか「……こないでよ、鳴上さん……」

さやか「あたしは、大丈夫だからさ……」

鳴上「!?」

鳴上(あんな状態で……触手に胸と腹を串刺しにされて……)

鳴上(平気なのか……!?)

鳴上(…………)

鳴上(…………いや)

鳴上(そんなわけがない!!)

鳴上「パールバティ!」 ディアラハン!!(回復魔法)

198: 2012/12/16(日) 19:38:58 ID:litESjz.

さやか「…………余計な事しないでよ」

さやか「平気だって、言ってるでしょ……!」 ダダッ!

まどか・鳴上「……!?」

さやか「はああああああああああああっ!!」

     ズバッ! ズバッ! ズババッ!!

     (魔女の反撃) ヒュン ドスッ! ドスッ!

まどか「ひいっ……!」

鳴上「…………!」

199: 2012/12/16(日) 19:40:38 ID:litESjz.

さやか「…………」

さやか「…………ふ」

さやか「ふふっ……あはっ………」








さやか「アハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

     ズバッ! ズバッ! ズババッ!!










200: 2012/12/16(日) 19:41:36 ID:litESjz.

鳴上「…………!?」






さやか「……ホントだ……」

     ズバッ! ズバッ! ズババッ!!







さやか「その気になれば、痛みなんて……」

     ズバッ! ズバッ! ズババッ!!

201: 2012/12/16(日) 19:42:27 ID:litESjz.







さやか「簡単に消せるじゃない!!」 グワッ!







     ザシュッ!!







まどか「……もう……止めて。 さやかちゃん……!」

202: 2012/12/16(日) 19:43:31 ID:litESjz.



―――――――――――



杏子「……終わったのかい? ボンクラ……」

さやか「…………」

さやか「何だ……あんた、わざわざ見に来たの?」

さやか「暇人だね……」 (魔法少女解除)

さやか「……っと?」 フラッ…

まどか「!! さやかちゃん!」 ガシッ

鳴上「…………」

203: 2012/12/16(日) 19:44:08 ID:litESjz.

さやか「……ごめん、まどか」

まどか「ううん、いいよ。 ほら、私につかまって?」

さやか「……鳴上さん。 悪いけど、グリーフシード……回収しといてくれないかな?」

鳴上「…………わかった」

さやか「じゃ……また今度ね」

鳴上「…………」

204: 2012/12/16(日) 19:44:57 ID:litESjz.

杏子「……あんた…ええと、鳴上?とか言ってたな? ちょっといいかい?」

鳴上「ああ……」

杏子「今日のあいつ……さやかは、どんな戦いをしてたんだい?」

鳴上「…………」

鳴上「アレは、戦いと呼べるものではない」

杏子「……!」

鳴上「ただ闇雲に 突っ込んで行っているだけだ……」

杏子「……そうかい」

鳴上「…………」

205: 2012/12/16(日) 19:45:45 ID:litESjz.

杏子「……なあ」

鳴上「?」

杏子「あんたからさ……あいつに、さやかに、何か言ってやってくれないか?」

鳴上「…………」

杏子「このままじゃあいつ……間違いなく潰れちまう」

杏子「でも、あたしの言葉じゃ……さやかは聞き入れてくれなかった……」

杏子「……無駄かもしれないけど……頼む」

鳴上「…………」

鳴上「もちろん、そのつもりだ」

206: 2012/12/16(日) 19:46:34 ID:litESjz.

 ――深夜の雨天――

 ――人けの無いバス停のベンチ――



     サアアアアアアア……

まどか「…………」

さやか「…………」

まどか「……さやかちゃん」

さやか「……ん?」

まどか「今日みたいな戦い方は……もうしないで」

さやか「…………」

さやか「しょうがないんだよ……あたしって魔法少女になり立てだし」

さやか「マミさんや 鳴上さん みたいに才能もないし……」

まどか「だからって、あんな戦い方 無いよう……!」

207: 2012/12/16(日) 19:47:18 ID:litESjz.

さやか「……大丈夫だよ。 痛みは、魔法で無くしてるから……」

まどか「そんな事ないよ!!」

まどか「見るからにさやかちゃん、痛そうだったよ……!!」

さやか「…………」 イラッ…

さやか「……何よ、それ?」

さやか「あんたに、あたしの何がわかるって言うの……?」

まどか「!? ……さやか…ちゃん?」

さやか「痛そう? ハッ……魔法少女でもない まどかに言われたって」

さやか「何の説得力もないっての……」

まどか「……!」

208: 2012/12/16(日) 19:48:10 ID:litESjz.

さやか「…………」

さやか「そういやさぁ……」

さやか「まどかも魔法少女に なれるんだよね?」

さやか「だったら、今すぐQべえ呼んでなって見せてよ……」

さやか「あたしの代わりに……魔法少女になって見せてよ!!」

まどか「……ひいっ…!」 グスッ…

さやか「…………」

さやか「……ふん」

さやか「あたし……もう行くわ……」 スクッ…

さやか「バイバイ、まどか……」

     バシャッ バシャッ バシャッ…

まどか(…グスッ……さやかちゃん……)

209: 2012/12/16(日) 19:49:08 ID:litESjz.

     バシャッ バシャッ バシャッ…

さやか(……あたし、何を言ったの?)

さやか(いつも傍に居てくれて、優しい一番の親友に……)

さやか(まどかに……何を言ったの!?)

さやか(あたし……最低だ……!)

さやか(あたし……あたし……!)

     バシャッ バシャッ バシャッ…

212: 2012/12/17(月) 20:10:18 ID:5YpXy.a6

 ――????――



????「ふふふ……ようこそ、ベルベット・ルームへ……」

イゴール「度々、済みませぬな……」

イゴール「はい……今回も、現実のあなたは眠っておられます……」

イゴール「それでは、本題に入りましょう……よろしいですかな?」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……結構」

イゴール「今回の旅路も、かなりの佳境に入られましたが……」

イゴール「正直な所、いかがでございましょうか?」

イゴール「…………」

イゴール「ほう……随分と、お悩みの様でございますな……」

213: 2012/12/17(月) 20:11:20 ID:5YpXy.a6

イゴール「様々な道が見えている分、かえってどれを進めば良いのか……」

イゴール「確かに……迷い所でございますな……」

イゴール「…………」

イゴール「ヒント?」

イゴール「ふふふ……それはもう、すでにお伝えしているはずです……」

イゴール「…………」

イゴール「左様でございます……」

イゴール「お客様は、八十稲羽でなされた事を ここでも行えば良いのです……」

イゴール「ふふふ……いささか、おしゃべりが過ぎましたかな?」

214: 2012/12/17(月) 20:11:59 ID:5YpXy.a6

イゴール「それから、ささやかながら……」

イゴール「お客様の旅路に役立てられれば、と」

イゴール「武器を用意しておきました……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……残念ながら請求させて頂きます……」

イゴール「申し訳ありません……少々手間が掛かりましてな……」

イゴール「しかし、必ず、お役に立つ事でしょう」

イゴール「…………」

イゴール「おお……そろそろ、お目覚めの時刻でございますな」

215: 2012/12/17(月) 20:12:41 ID:5YpXy.a6

イゴール「最後に」

イゴール「現在、お客様は、重要な分岐点におられます」

イゴール「その事だけは、お忘れなきよう……」

イゴール「それでは、いずれまた……」


―――――――――――

 ――朝――

 ――鳴上の部屋――



鳴上「…………」

鳴上「……ふあっ」

鳴上「……ん?」

鳴上「何だ? この長細い箱?」

216: 2012/12/17(月) 20:13:28 ID:5YpXy.a6

     ゴソ ゴソ…

鳴上「!!」

鳴上「こ、これは!?」

     スラァ…

鳴上「…………」

鳴上(神々しい剣だな……)

鳴上「お? 取説がある……何々?」

     名前 神剣グラム   代金 78200円(税込)

鳴上「…………」

鳴上(地味に結構、痛いな……)

鳴上(おまけにどうやって持ち運ぼう……?)

217: 2012/12/17(月) 20:14:10 ID:5YpXy.a6

 ――翌日の午前中――

 ――見滝原中学校・教室――



まどか(さやかちゃん……今日は、お休み)

まどか(学校で会えると思ったのに……)

まどか(……………………)

まどか(……どうして私……昨日、さやかちゃんの事)

まどか(追い掛けなかったんだろう……)

まどか(追いかけなきゃいけなかったハズなのに……)

まどか(…………)

まどか(とにかく、放課後、さやかちゃん家に会いに行こう……)

218: 2012/12/17(月) 20:14:49 ID:5YpXy.a6

 ――放課後――

 ――さやかのマンション・ロビー付近――



     インターホン オン状態

まどか「えっ!?」

まどか「さやかちゃん、昨夜から戻ってないんですか!?」

まどか「…………」

まどか「はい……はい……」

まどか「わかりました、見かけたら、必ず連絡します」

     ピッ…

まどか「…………」

まどか「さやかちゃん……探さなきゃ!」

     タッ タッ タッ…

219: 2012/12/17(月) 20:15:40 ID:5YpXy.a6

 ――河川敷公園――



     テク テク テク…

恭介「…………」

恭介「志筑(しづき)さん」

仁美「はい?」

恭介「志筑(しづき)さんって、帰り道、こっちだっけ?」

恭介「今まで、一度も姿を見た事が無いんだけど……」

仁美「…………」

仁美「そうですわね……」

仁美「確かに、帰り道は上条君と逆方向ですわ」 ニコ

恭介「……?」

221: 2012/12/17(月) 20:17:33 ID:5YpXy.a6

 ――河川敷公園・ものかげ――



さやか「…………」

さやか(…………どうして)

さやか(恭介、そんな笑顔なの……?)

さやか(そんな顔……あたし、見た事無いよ?)

さやか(…………)

さやか(なんで……仁美なの……?)

さやか(どうして……あたしじゃ無いの……?)

さやか(どうして……なんで……どうして……)

222: 2012/12/17(月) 20:18:34 ID:5YpXy.a6

 ――深夜――

 ――廃屋付近――



     フラ フラ フラ…

??「さやか…」

さやか「……?」

さやか「ああ……鳴上さん」

さやか「よくここが、わかったね……?」

鳴上「…………」

鳴上「さやか、少し話がしたい」

鳴上「来てくれないか?」

223: 2012/12/17(月) 20:19:32 ID:5YpXy.a6

さやか「……嫌よ」

鳴上「……どうしてだ?」

さやか「鳴上さんも感じるでしょ?」

さやか「あそこに……使い魔が居るの……」

さやか「倒さなきゃ……」

鳴上「マミに頼めばいい」

さやか「ダメよ……あたしが倒す」

さやか「絶対、あたしが倒すんだから……!」



鳴上(…………)

鳴上(…………だめだ。 何があったのか、わからないが)

鳴上(聞く耳を持ってない……)

224: 2012/12/17(月) 20:20:26 ID:5YpXy.a6

鳴上(…………)

鳴上(かなり……危険だが、これしか方法を思いつかないな……)

鳴上(覚悟を決めよう……!)



鳴上「おい、化物」



     ピクンッ



さやか「…………」

さやか「……そんな安い挑発には乗らないよ、鳴上さん」

225: 2012/12/17(月) 20:21:23 ID:5YpXy.a6

鳴上「そうか……さすがは、化物だな」

鳴上「人間の言葉も解らなくなったか、化物」

さやか「…………」

鳴上「どうした、化物?」

鳴上「さっさと上に行って化物同士、頃し合って来い」

さやか「…………」 ギリッ

鳴上「ほら、さっさと行って来い、化物」

さやか「……あんた、わかってんの?」

さやか「あんたのペルソナ能力は、魔女の結界内でしか使えないんでしょ?」

さやか「あたしを怒らせない方が、良いと思うけど?」

鳴上「あいにくと、お前程度の化物に遅れを取る程」

鳴上「俺は落ちぶれてはいない、化物」

226: 2012/12/17(月) 20:22:37 ID:5YpXy.a6

さやか「……そう」

さやか「本当かどうか」

さやか「確かめてあげるわ……」 スッ…

     キィイイイイインッ!(魔法少女へ変化)

さやか「……さすがに丸腰だと気が引けるわね」

さやか「あたしの剣、貸してあげようか?」

鳴上「必要ない」

鳴上「お前程度の化物、これで十分だ」 ガララッ…

さやか「……何それ? そんな錆びた鉄の棒でいいっての?」

さやか「それとも、負けた時の言い訳にでもするつもり?」

鳴上「御託はいい……」 スッ

鳴上「かかってこい、化物」

227: 2012/12/17(月) 20:23:17 ID:5YpXy.a6

さやか「…………」 ギリッ…!

さやか「はあっ!」 ダッ!

     ガキィッ!!

さやか「!!」

     ボコンッ!

さやか「あぐっ!?」 ズザッ…

鳴上「…………」

さやか(……何? 今の!?)

さやか(剣が受け流されたと思ったら、背中に一撃、入れられた……!)

鳴上「…………」

228: 2012/12/17(月) 20:24:09 ID:5YpXy.a6

鳴上「どうした? もう お終いか?」

鳴上「化物…」

さやか「……!!」

さやか「だあああああっ!!」 ダダッ!!

     ヒュウッ! バキッ!! ドガッ!!

     ブンッ! バゴオッ!! ゴガッ!!

さやか「くうっ……!」

鳴上「…………」

さやか「はああああああっ!!」 ゴウッ!

     ギィインッ! ボグッ!! ゲシッ!!

     カァンッ! ドガァッ!! バグンッ!!

229: 2012/12/17(月) 20:24:57 ID:5YpXy.a6

杏子「……!?」

杏子「おいっ!! 何やってんだ!! てめぇ!!」

鳴上「……手を出すな」 ゴゴゴ…

杏子「!!?」 ビクンッ!

杏子(な……なんだってんだ!?)

杏子(あ、あいつは、人間なんだろ!?)

杏子(しかも……ペルソナ、とか言う妙な技は、使えないはず……)

杏子(なのに……)

杏子(なんで足が、すくむんだよ!)

230: 2012/12/17(月) 20:25:50 ID:5YpXy.a6

鳴上(よし、思った通り……)

鳴上(さやかは痛みを無くしているから)

鳴上(それに対する恐怖は全く無い……)

鳴上(だが、それゆえに動きは単純で短調だ)

鳴上(攻撃を読んで、受け流しつつカウンターを入れる……)

鳴上(これを繰り返せばいい……)

鳴上(後は)

鳴上(さやかの根気と、俺の体力……どちらが最後まで持つか……)

鳴上(勝負だ! さやか!) キッ!

231: 2012/12/17(月) 20:26:44 ID:5YpXy.a6

さやか「はあっはあっ……」 ダッ!



さやか(なんであたし……鳴上さんに向かって)

さやか(攻撃してるんだろう?)



鳴上「どうした……? それで終わりか?」

鳴上「化物」



さやか(そうだ……それが……嫌なんだ)

さやか(ただ……嫌なんだ)



さやか「……ああああああああああっ!!」 ゴウッ!

232: 2012/12/17(月) 20:27:42 ID:5YpXy.a6

さやか(あたしは……決めたよね?)

さやか(正義の味方になるって……)

さやか(この力を正しく使うって……)



さやか「やあああああああああああっ」 ゴウッ!!



さやか(あたし……何……してるの?)

さやか(これは、正しい事なの……?)



さやか「はあっはあっはあっ……」 



さやか(違う……)

233: 2012/12/17(月) 20:28:24 ID:5YpXy.a6

さやか(違う……違う……)

さやか(違うっ……!)



鳴上「化物」

鳴上「化物!」

鳴上「化物!!」



さやか(違うっ!!!)

234: 2012/12/17(月) 20:29:25 ID:5YpXy.a6

     カラ…ラ…ランッ……

鳴上「……!」

杏子(さやか……剣を放した……)



さやか「……………ひっく………」

さやか「もう……止めて……!」 (魔法少女解除)

さやか「話でも お説教でも 何でも聞くから……」

さやか「あたしを……化物って……呼ばないで……」

さやか「お願いっ……グスッ……ひっく……」



鳴上「…………」

235: 2012/12/17(月) 20:31:03 ID:5YpXy.a6

さやか「違うっ……あたし……化物じゃないっ……!」 ポロポロ…

さやか「化物なんかじゃ……ないよ……!」 ポロポロ…



鳴上「…………」

鳴上「……落ち着け、さやか」

鳴上「考えても見ろ……」

鳴上「鉄の棒一本で息一つ乱さず、魔法少女と渡り合える俺の方こそ」

鳴上「化物だ……」 カランッ…



杏子「…………」


―――――――――――


236: 2012/12/17(月) 20:32:15 ID:5YpXy.a6

杏子「……任せても大丈夫かい?」

鳴上「まだ、スタートラインに立っただけだが……」

鳴上「勝算がないわけじゃない」

杏子「ふうん……」

杏子「…………」

杏子「じゃ……あたしは帰るわ」

杏子「……またな、さやか」



さやか「…………」

238: 2012/12/17(月) 20:34:21 ID:5YpXy.a6

 ――夜明け前――

 ――さやかのマンション・屋上――



さやか「…………」

鳴上「…………」

さやか「……ねえ?」

鳴上「……ん?」

さやか「こんな所に連れてきて、何のつもり?」

さやか「ひょっとして……工口い事とかするの?」

鳴上「中学生に興味はないな」

さやか「うわ……地味にムカつく……」

239: 2012/12/17(月) 20:35:18 ID:5YpXy.a6

さやか「…………」

鳴上「…………」

さやか「……ねえ」

鳴上「……ん?」

さやか「話があるんじゃなかったの?」

鳴上「聞く耳は、あるのか?」

さやか「…………」

さやか「……内容によるかな」

鳴上「そうか……」

240: 2012/12/17(月) 20:36:02 ID:5YpXy.a6

鳴上「…………」

鳴上「さやかは、ここから見える景色って」

鳴上「どのくらいの広さがあると思う?」

さやか「は? なんなの? 突然?」

鳴上「いいから。 大体で構わない、答えてくれ」

さやか「……10キロ四方くらい?」

鳴上「……人間の目で見える範囲は」

鳴上「障害物が無ければ、大体80キロ前後と言われている」

さやか「へ~……」

鳴上「ここは少し高い位置にあるから……実際は、もう少し広いだろうな」

さやか「ふうん……で?」

241: 2012/12/17(月) 20:36:49 ID:5YpXy.a6

鳴上「この見える範囲の景色の中に」

鳴上「さやかの救える人間は、どれだけ居るだろう?」

さやか「!!」

鳴上「まさかと思うが……」

鳴上「全部、救ってやるつもりだったのか?」

さやか「…………」

鳴上「…………そうか」

さやか「あたし、何も言ってない」

鳴上「そうだな……」 クスッ…

242: 2012/12/17(月) 20:37:27 ID:5YpXy.a6

鳴上「さやかは、転校した事はあるか?」

さやか「……ない」

鳴上「そうか……」

鳴上「俺は2回程」

さやか「ふうん……それで?」

鳴上「俺は、2回ともいい友人に恵まれたが……」

鳴上「どこか打算的に付き合っている奴もいる……」

さやか「…………」

鳴上「教科書を貸してくれた奴に、たまに昼飯をおごったりした」

鳴上「もちろん逆も然り」

さやか「それってフツーじゃない」

243: 2012/12/17(月) 20:38:18 ID:5YpXy.a6

鳴上「でも教科書を貸して『ありがとう』の一言もない奴に」

鳴上「『また貸してやろう』という気持ちに、俺はなれないな……」

さやか「……!」

鳴上「これは小さいけど、打算的だろ?」

さやか「…………」

鳴上「よく、人知れず川の清掃とかやっている奴が居るけど……」

鳴上「やっぱり誰かに褒めてもらいたい、と思っているんじゃないかな?」

鳴上「もちろん、否定も肯定もしない」

鳴上「でも……俺は人って、そういうものだ、と思っている」

さやか「…………」

244: 2012/12/17(月) 20:39:01 ID:5YpXy.a6

鳴上「…………」

鳴上「……そろそろだな」

さやか「……何が?」

鳴上「日の出さ」 クスッ

さやか「うっわっ……クサイ演出……」

鳴上「そうか……じゃあ見なくてもいい」

鳴上「俺だけで見る」

さやか「……誰も見ないなんて、言ってない」

鳴上「…………」

さやか「…………」

鳴上「…………お」

さやか「…………わあ」

245: 2012/12/17(月) 20:39:59 ID:5YpXy.a6

さやか「綺麗……」

鳴上「…………」

鳴上「さやか」

さやか「ん?」

鳴上「今、つぶやいた言葉は、さやかの何が言わせた?」

さやか「……え? あたしの……?」

鳴上「さやかの魔法少女の部分か? それとも他の何かか?」

さやか「…………?」

さやか「魔法少女な訳ないじゃん……」

さやか「そんなのあたしが……あたしの心が、そう思ったから……」

さやか「!!」

鳴上「…………」

246: 2012/12/17(月) 20:40:44 ID:5YpXy.a6

さやか(…………)

さやか(そっか……あたしは、ちゃんとあたしだったんだ……)

さやか(魔法少女の力も……このゾンビの体も……)

さやか(勝手に何かするわけじゃない)

さやか(どんなに嫌っていようとも、あたしを形作る一部でしかない……)

さやか(あたしはあたし……美樹さやか)

さやか(この景色を綺麗だって言える)

さやか(人間の心を持っている、美樹さやか……!)

さやか「……くっ…フフフッ…」

さやか「アハハハハッ……!」

鳴上「…………」

247: 2012/12/17(月) 20:41:34 ID:5YpXy.a6

さやか「…………」

さやか「……ホントに綺麗」 クスッ

鳴上「……そうだな」 クスッ

さやか「…………」

さやか「太陽ってすごいね……」

鳴上「ん?」

さやか「ここから見える景色だけじゃなく……」

さやか「もっと広い地域全体に居る人達に、分け隔てなく同じ光を与えてる……」

さやか「ううん……人間達だけじゃない」

さやか「生きとし生ける物すべてを、照らしてる……!」

さやか「それも……何の見返りもないのに」

鳴上「そうだな……」

248: 2012/12/17(月) 20:43:27 ID:5YpXy.a6

さやか「……自分は、こんなにちっぽけな存在なのに」

さやか「絶対になれない、太陽になろうとしてたんだ……」

さやか「……あたしって、ホント、バカ……」

鳴上「…………」

さやか「…………」

さやか「えっと……ありがとう」

鳴上「いや……礼はいい」

鳴上「大した事はしていないし……いろいろ酷い事も言った」

鳴上「おまけに鉄の棒で殴っているし……すまなかった」

さやか「アハハ……そういやそうだね」

249: 2012/12/17(月) 20:44:53 ID:5YpXy.a6

さやか「…………」

さやか「じゃあ、さ……」 ///

鳴上「ん?」

さやか「すっごい、わがままなんだけど……」 ///

さやか「あたしもマミさんみたいに……あなたの事」 ///



さやか「悠って……呼んじゃダメ……かな?」 ///



250: 2012/12/17(月) 20:46:16 ID:5YpXy.a6

 ――次の日(と言うか、今日)の朝――

 ――見滝原中学校・教室――



さやか「おはよ! まどか!」

まどか「!!」

まどか「さやかちゃん!!」

まどか「昨日、さやかちゃん家 訪ねたら、一昨日から帰っていないって……!」

まどか「私、心配で心配で……!」 ウルウル

さやか「……うん、ゴメン。 本当にゴメン、まどか」

まどか「ううん、謝るのは私の方だよ……」

さやか「もういいから、まどか。 お互い様って事にしとこう? ね!」 ニコ

まどか「!……うん!」 ニコ

さやか「それよりも……なってないよね? 魔法少女に……」

まどか「えっ? う、うん。 なってない」

251: 2012/12/17(月) 20:47:08 ID:5YpXy.a6

さやか「んー? なんか怪しい……」

さやか「吐け! 正直に吐くんだ! ネタは上がっている!」 ウリャウリャ!

まどか「きゃーん! ごめん! ホントは、なりかけましたぁ!」 クスグルノヤメテー!

さやか「えっ!?」

まどか「はあ、はあ……そ、その、危ない所を ほむらちゃんに……」

さやか「……そっか」

さやか(そういや……あたしが、魔法少女になる前から、ずっと)

さやか(魔法少女になるなって、言ってたっけ……)

252: 2012/12/17(月) 20:48:20 ID:5YpXy.a6

 ――休憩時間――



さやか「おーい、転校生……じゃなかった」

さやか「……ほむら」

ほむら「!?」

ほむら「……な、何かしら?」

さやか「まどかの事、ありがとう」 ニコ

ほむら「!!?」 ///

さやか「ほむらが、今までどんな気持ちで」

さやか「あたし達が魔法少女になるのを止めてたのか」

さやか「ようやく、わかったよ……」

ほむら「…………!」 ///

253: 2012/12/17(月) 20:48:56 ID:5YpXy.a6

さやか「今までゴメン。 本当にゴメン」

さやか「今更……こんな事言われても、きっと困るだろうけど……」

さやか「良かったらお昼、一緒に食べない?」

ほむら「!!?!?」 ///

ほむら「…………」 ///

さやか「やっぱ……ダメ?」

ほむら「……ええ……悪いけど……」

さやか「……そっか」

さやか「それじゃ、またね!」 タッ

ほむら「……あ……うん」

ほむら「また……」

254: 2012/12/17(月) 20:49:57 ID:5YpXy.a6

さやか「あ、仁美」

仁美「あ……さやかさん」

さやか「…………」

さやか「あのね、仁美。 頼みがあるの……」

仁美「はい……?」

さやか「一日だけ……ううん、今日の放課後だけでもいい」

さやか「恭介と、話をさせて欲しいの……」

仁美「!!」

仁美「そ、それは……!」

さやか「お願い、仁美。 あたし自身のけじめを付ける為に……」

さやか「お願い……!」

仁美「…………」

255: 2012/12/17(月) 20:51:00 ID:5YpXy.a6

 ――夕方――

 ――上条宅・恭介の部屋――



さやか「うわぁ……久しぶりだね、恭介の部屋……」

恭介「そう? そういえば病院で、けっこう一緒だったから」

恭介「久しぶりって思わなかった……」

さやか「……そっか」

さやか「…………」

恭介「それで? 話って?」

さやか「!……あ、うん」

さやか「えっと、ね……」

256: 2012/12/17(月) 20:51:50 ID:5YpXy.a6

さやか「…………」

さやか「あのね、今からちょっと信じがたい行動をするけど……」

さやか「最後まで見て欲しいんだ……いいかな?」

恭介「うん」

さやか「じゃあ……このハサミ、ちょっと貸してね?」

恭介「いいよ」

さやか「…………」 スッ…

     ザクッ!!

恭介「!?」

恭介「さやか! 手! 左手が!!」

さやか「……大丈夫。 見てて」 ズッ…

恭介「だ、大丈夫って……!?」

257: 2012/12/17(月) 20:52:30 ID:5YpXy.a6

     シュウウウッ…

恭介「」

恭介「……き、傷が……!?」

さやか「…………」

さやか「驚いた? ……ううん、普通は驚くよね」

恭介「……手品、かい?」

さやか「信じてくれないかもしれないけど」

さやか「魔法なんだ。 これ…」

     キィイイイイインッ!(魔法少女へ変化)

恭介「!!?」

258: 2012/12/17(月) 20:53:35 ID:5YpXy.a6

さやか「どう? かっこいいでしょ?」 フフン♪

恭介「…………」

恭介「……いったい、何が何だか……」

さやか「あたしがどうやって魔法少女になったか……」

さやか「今から説明するね……」

―――――――――――
さやか、説明中
―――――――――――

恭介「……へえ、そのQべえという奴に……」

さやか「うん……どんな願いも、ひとつだけ叶える代わりに、ね」

恭介「ふうん……すごいね」

恭介「じゃあ、さやかはどんな」

259: 2012/12/17(月) 20:54:24 ID:5YpXy.a6

―――――――――――
さやか「……あるよ」

さやか「奇跡も、魔法も……」

さやか「あるんだよ……!」
―――――――――――



恭介「!!!!!!!!!!!!」



さやか「…………」

恭介「…………ま」

恭介「まさか……」

260: 2012/12/17(月) 20:55:07 ID:5YpXy.a6

さやか「……うん。 そうだよ」

恭介「どうして……!?」

さやか「…………」

さやか「それを……聞いちゃう、か……」

恭介「……?」

さやか「いい? 一回しか、言わないからね?」

恭介「あ、ああ……」

さやか「恭介の事が……好きだから」 ///

恭介「!!!」

さやか「…………」

恭介「…………」

261: 2012/12/17(月) 20:56:05 ID:5YpXy.a6

恭介「じゃあ……」

恭介「さやかは……僕のために人間をやめて、魔法少女になって」

恭介「魔女と戦っているの……!?」

さやか「…………」

さやか「ねえ、恭介」

恭介「……うん」

さやか「あたしは……たぶん卑怯な事をしている」

さやか「恭介の怪我を、命懸けで直してやったんだから責任取れ!って感じで……」

恭介「…………」

さやか「……でも、ね」

さやか「知って欲しかったんだ」

さやか「あたしのすべてを……」

262: 2012/12/17(月) 20:57:10 ID:5YpXy.a6



さやか「……嫌な所も含めて、ぜーんぶ」



恭介「…………」

さやか「でね、あたし今日、ここに来たのは……聞きたい事があるからなんだ」

さやか「だけど……答えがどうであれ、恭介の今日のあたしとの記憶は」

さやか「魔法で消すつもりなの……」

恭介「……!」

恭介「……どうして?」

さやか「きっと……恭介にとって重荷になると思うから……」

恭介「…………」

263: 2012/12/17(月) 20:58:34 ID:5YpXy.a6

さやか「じゃあ、聞くね?」

恭介「……うん」

さやか「恭介は……あたしの事をどう思ってる?」

さやか「一人の女の子として……どう、見てるかな?」

恭介「えっ!?」

さやか「……あたしは出来る限り、自分をさらけ出した」

さやか「どんな事でもいい。 どんな悪口でも構わない」

さやか「……大好きな、恭介の口から……正直な気持ちを聞いておきたいの」

恭介「…………」

恭介「……さやか」

さやか「うん」

恭介「僕は……君の事を――」

264: 2012/12/17(月) 20:59:40 ID:5YpXy.a6


―――――――――――


 ――夜――

 ――さやかの部屋――



さやか「……………………」

さやか(恭介……正直な気持ちをありがとう……)

さやか(これで……あたしは、やっと)

さやか(前を向ける。 前に進める)

さやか(恭介…………)

さやか(仁美と……仲良くね……) ホ口リ

265: 2012/12/17(月) 21:01:20 ID:5YpXy.a6

 ――翌日の朝――

 ――見滝原中学校・教室――



さやか「おはよう、仁美」

仁美「!……さやかさん。 お、おはようございます」

さやか「…………」

さやか「ありがと、仁美」

仁美「……!」

さやか「恭介と仲良くしてあげてね」 ニコ

仁美「は、はい」 ///

さやか「じゃ……」

仁美「…………」

仁美「さやかさん……」

266: 2012/12/17(月) 21:02:19 ID:5YpXy.a6

まどか「…………」

まどか「おはよう、さやかちゃん」

さやか「おはよう、まどか」

まどか「…………」

さやか「? どうかした? あたしの顔に何かついてる?」

まどか「ううん……そうじゃないの。 ただ……」

さやか「ただ?」

まどか「すっごく良い顔してるなぁ……と思って」 クスッ

さやか「へ!? そ、そう!? な、なんか照れるな」 ///

まどか(フフッ……とっても素敵だよ、さやかちゃん)

267: 2012/12/17(月) 21:03:06 ID:5YpXy.a6

 ――放課後――

 ――ゲームセンター――



ほむら「こんにちは」

杏子「んー? ああ……お前か……」

杏子「って……!?」

さやか「や!」

杏子「さやか……どうしてここに?」

さやか「ほむらが、杏子に会いに行くって聞いたから」

さやか「ちょっと無理言って、付いて来たんだ」

ほむら「…………」

杏子「……で、何の用さ?」

268: 2012/12/17(月) 21:03:55 ID:5YpXy.a6

さやか「ううん……大した用事じゃないよ」

さやか「ただ、もう一度会って、お礼が言いたかったんだ」

さやか「いろいろ、ありがとう杏子」 ニコ

杏子「…………」

杏子(な、なんだ? この前とは、別人じゃないか……)

杏子(あいつ……何をしたんだ?)

杏子「……別にいいさ。 元気になったみたいで良かったな」

さやか「うん。 今度さ、魔法の事とか色々と教えてね! じゃ、これで帰るね? ほむら」

ほむら「ええ……」

杏子「…………」

269: 2012/12/17(月) 21:05:00 ID:5YpXy.a6

杏子「なあ」

ほむら「何かしら」

杏子「あいつ……本当にさやかか?」

ほむら「間違いなく彼女よ」

杏子「いくらなんでも変わりすぎだろ……」

ほむら「私も戸惑ってるわ……」


杏子「……で? おめーの話ってのは?」

ほむら「それなんだけど……もう少し時間をくれないかしら?」

杏子「何かあったのかい?」

ほむら「ええ……。 とりあえず、また三日後にここで会えないかしら?」

杏子「ああ、いつでもいいよ。 あたしは大抵ここにいるから」

ほむら「じゃ……また三日後に」

杏子「おー……」

271: 2012/12/17(月) 21:05:57 ID:5YpXy.a6

 ――夜――

 ――巴マミの部屋――



マミ「いらっしゃい、悠さん」

鳴上「お邪魔します」

マミ「遠慮は、無用ですよ」 クスッ

まどか「あ、いらっしゃい、鳴上さん」

さやか「はい、このケーキ、悠の分ね」

マミ・まどか「!?」

さやか「ん? どうしたの? 二人共?」

272: 2012/12/17(月) 21:07:01 ID:5YpXy.a6

マミ「み、美樹さん? いくらなんでも、なれなれしすぎるんじゃ……」

まどか「そ、そうだよ、さやかちゃん……」

さやか「ちゃんと悠にオッケーもらったよ?」

さやか「ねえ? 悠!」 ニコ!

鳴上「…ああ」

マミ・まどか(……若干、嫌がってる?)

鳴上「それはともかく、急にみんなで集まろうって……一体何があったんだ?」

さやか「あー、それなんだけど……」

鳴上「提案したのは、さやかか」

さやか「簡単に言うと……あたしもマミったんだ」 コト…

273: 2012/12/17(月) 21:08:21 ID:5YpXy.a6

     ヒィイインッ…

鳴上・マミ・まど「!!!!」

まどか「ほ、ホントだ! さやかちゃんのソウルジェム、凄く綺麗……!」

マミ「……所で、美樹さん。 その、『マミった』……って?」

さやか「ああ、マミさん状態になった、を略したの。 わかりやすいでしょ?」

マミ「……ええと。 出来れば止めてくれないかしら?」

マミ「何故か背筋が寒くなるの……」 ブルブル…

さやか「えー? そうなんですか? じゃあ……P状態?」

鳴上「……今度は、ペルソナ状態を略したのか?」

さやか「さっすが悠! 冴えてるね~!」 ニャハハ

まどか(なんか……お腹壊してるみたい)

マミ(私は、アレ以外なら何でもいいわ……)

274: 2012/12/17(月) 21:10:13 ID:5YpXy.a6

マミ「で? 今日、私達を集めたのは、これの報告をしたかったからなの?」

さやか「うん。 それともう一つ」

さやか「あたしやマミさんがP状態になったのは」

さやか「やっぱり、悠のおかげだと思うんだ……」

鳴上「……そんな事はな」

さやか「あるよ! 絶対!」

鳴上「!?」 ビクッ

さやか「……上手く、言えないんだけど」

さやか「あたしは、悠と話をして、すっごく心が軽くなった」

さやか「それが……P状態になるきっかけだと思ってる」

まどか「…………」

マミ「……私もそれ、わかる気がする」

まどか「! マミさん……」

275: 2012/12/17(月) 21:11:17 ID:5YpXy.a6

鳴上「ちょっと待ってくれ」

鳴上「持ち上げてもらって恐縮だが……P状態が『いい事』と決まったわけじゃないんだぞ?」

さやか「ぐっ……で、でも……!」

マミ「『悪い状態』、と、決まったわけでもないんじゃないかしら?」

鳴上「……!」

マミ「現に、あれから私は、すこぶる調子がいいですしね」 クスッ

マミ「何よりも、グリーフシードの確保を考えなくて済むだけでも」

マミ「大きなメリットだと思います」

さやか「そーそー! さっすがマミさん!」

鳴上「…………」

276: 2012/12/17(月) 21:14:19 ID:5YpXy.a6

さやか「でね、あたし、悠に頼みたいんだ」

鳴上「……聞こう」

さやか「良かったら……杏子と ほむらにも」

さやか「話をしてあげてくれないかな?」

鳴上「…………」

さやか「この際、P状態がどうとか言うよりも」

さやか「単純にあの二人の悩みを聞いて欲しいんだ……」

鳴上「…………」

さやか「……そして、あたしじゃたぶん無理だと思う」

さやか「あたしが、杏子の差し出した手を振り払ってしまった様に……」

さやか「でも……悠なら、きっと……!」

鳴上「…………」

277: 2012/12/17(月) 21:18:14 ID:5YpXy.a6

鳴上「……必ずいい結果になるとは、限らないぞ?」

さやか「! 悠!」

鳴上「それに、みんなにも協力してもらいたい」

鳴上「頼めるか?」

さやか「もちろんだよ!」

まどか「うん! 私に出来る事なら!」

マミ「大丈夫、上手く行きますよ」 クス

鳴上「そうか……心強いな」

鳴上「頼りにさせてもらおう」 クスッ

284: 2012/12/20(木) 18:34:41 ID:T2DjYA2k

 ――翌日・休日の朝――

 ――廃墟の教会――



     コン コン……

杏子「!? 誰だ!?」

??「……突然すまん。 俺だ。 鳴上 悠」

杏子「!? どうしてここが……?」

鳴上「さやかに聞いて来た」

杏子「! さやかが……」

鳴上「ああ」

285: 2012/12/20(木) 18:35:32 ID:T2DjYA2k

杏子「それで? 何の用だい?」

鳴上「俺とデートしないか?」

杏子「はあっ!?」 ///

杏子「い、いきなり、何を言ってんだ!!」 ///

杏子「か、体か!? 体が目当てか!?」 ///

鳴上「……何故そうなる」

鳴上「さやかが、杏子を心配していた」

鳴上「彼女の話を聞いて、塞ぎ込んでいる様だから」

鳴上「気分転換に外にでも連れ出そうと思ったんだ」

杏子「…………」

286: 2012/12/20(木) 18:36:34 ID:T2DjYA2k

杏子「余計なお世話だよ」

杏子「あたしは、これまで一人でやってこれた」

杏子「だから大丈夫だ。 なりたての魔法少女に心配される様なヘマはしない」

杏子「悪いけど……帰ってくれ」

鳴上「そうか……」

鳴上「じゃあ、ここからはビジネスの話だ」

杏子「……びじねす???」

鳴上「お前には貸しがある」

杏子「何の話だよ」

鳴上「杏子は、俺に言ったな? さやかを頼むって」

杏子「ぐっ……!! け、けどあれは……!」

287: 2012/12/20(木) 18:37:20 ID:T2DjYA2k

鳴上「俺は『無償で』とは、言ってない」

杏子「……っ!」

鳴上「…………」

杏子「…………」

杏子「……あんたって、見かけによらず黒いね」

鳴上「多少は、人生経験積んだからな」

杏子「わかった、負けたよ。 付き合ってやろうじゃない」

鳴上「そうか」

杏子「その代わりあんたの事、悠って呼ぶからね……」

鳴上「ああ、構わない。 さやかにも そう呼ばれているしな」

杏子「……イヤミも通じねぇのかよ」

288: 2012/12/20(木) 18:38:10 ID:T2DjYA2k

 ――午前中――

 ――遊園地――



杏子「……遊園地か」

鳴上「定番のデート・スポットだ」

杏子「何のひねりもねーな」

鳴上「ほっとけ」

鳴上「ここまで来たら、楽しまないと損だぞ?」

杏子「……それもそうだね」

杏子「何から乗る?」

289: 2012/12/20(木) 18:38:49 ID:T2DjYA2k

鳴上「……いきなりジェットコースターか」

杏子「おやぁ? 悠くんは苦手なのかなぁ?」 ニヤニヤ

鳴上「杏子こそ、ちびるなよ?」

杏子「だ、誰がちびるか!!」 ///

鳴上「それだけ元気なら問題ないな」

杏子(……調子狂うなぁ)


―――――――――――


杏子「……おえっぷ」

鳴上「大丈夫か?」

杏子「だ、大丈夫だ……」

杏子(……こ、こんなハズじゃ……)

290: 2012/12/20(木) 18:39:33 ID:T2DjYA2k

鳴上「ほら、水を持って来た」

杏子「……ああ、もらうよ……おえっぷ……」

     ゴクッ ゴクッ…

杏子「……ふう」

     ママー! アレ二ノロー? ハイハイ

     コラッ ハシルンジャナイ! パパ…ゴメンナサイ…

杏子「…………」

鳴上「…………」

杏子(……そっか、今日は休日だったな)

杏子(通りで家族連れが多いわけだ……)

291: 2012/12/20(木) 18:40:14 ID:T2DjYA2k

鳴上「…………」

鳴上「次は何に乗る?」

杏子「……そーだな」

杏子「カートがいい。 カートに乗ろう!」

鳴上「わかった」


―――――――――――


鳴上(くっ……思った以上に乗りづらい) モゾモゾ…

杏子「…………」

杏子「…………プッ」

杏子「アハハハッ!」

鳴上「……何が可笑しい?」

292: 2012/12/20(木) 18:41:11 ID:T2DjYA2k

杏子「ワリィ ワリィ……」

杏子「だってさぁ、今の悠……」

杏子「真面目な顔して、小さいおマルに無理やり座ってるみたいで……」

杏子「プッ、アハハハハッ!」

鳴上(くっ……陽介には、絶対見られたくないな……) ///

杏子「あー……笑った笑った!」

杏子「んじゃ、乗るとするか」

杏子「せっかくだし、競争しない? アイスかけて」

鳴上「……俺、体重的にメチャクチャ不利じゃないか?」

杏子「あー聞こえなーい」 ブロロロ……

鳴上「! ま、待て!」 ブロロロ……

293: 2012/12/20(木) 18:41:47 ID:T2DjYA2k

杏子「あたしの勝ちィ!」 ウヒヒヒ…

鳴上「ひ、卑怯な……!」

杏子「うっせーな。 こまけーこたぁいいだろ?」

杏子「じゃあ、約束のアイスな! あたしバニラと チョコと ストロベリーのトリプルで」

鳴上「……遠慮がないな」

杏子「勝負に負けたのは、事実だろ? どうしても嫌って言うのなら……」

杏子「メリーゴーランドに単独で乗れば、勘弁してやるけど?」

鳴上「誰がやるか……バニラと チョコと ラズベリーのトリプルだったな」

杏子「ストロベリー! 間違えんな!」

294: 2012/12/20(木) 18:42:35 ID:T2DjYA2k

杏子「ニッシッシッ。 いいね、楽しくなってきたよ!」 ペロペロ

鳴上「それは何より」 ペロペロ

杏子「うし! これ食ったら昼飯にしようぜ!」

鳴上「どんな腹をしてるんだ……」

杏子「甘い物は、別腹なんだよ」

鳴上「普通は食った後に言うセリフだ、それは……」

杏子「魔法少女は、とにかく腹が減るものなんだっつーの!」

鳴上「わかったわかった……」

295: 2012/12/20(木) 18:43:29 ID:T2DjYA2k

鳴上「杏子は、お子様ランチか?」

杏子「……氏にてーのか?」

鳴上「冗談だ」

杏子「おめーの冗談は、解りづれーよ」

鳴上「じゃあ、真面目な話、何にする?」

杏子「そうだね……」

杏子「ハンバーグ・サラダセットに、コンポタスープ」

杏子「フィッシュフライバーガー×2に、ポテトLサイズ」

杏子「後、チキンフライ×6に、サラダバーガーと、イチゴシェイク」

鳴上「…………」

鳴上「……冗談、だよな?」

杏子「何がさ?」

296: 2012/12/20(木) 18:44:21 ID:T2DjYA2k

     ☆チーン☆  アリガトウ ゴザイマシター

杏子「あー、食った食った! ご馳走さん!」 ケプッ

杏子「タダだと思うと、余計に旨く思えるわー(棒)」 ニヤニヤ

鳴上「…………」

鳴上(クマに勝るとも劣らない、食いっぷりだった……) クスン…

杏子「で? 次、何する?」

鳴上「……乗り物は、食事の後だから避けたいな」

杏子「そうだね」

鳴上「ミラーハウスは どうだ?」

杏子「ああ、いいよ」

297: 2012/12/20(木) 18:45:06 ID:T2DjYA2k

杏子「ほえ~、思った以上に不思議な感じがするね~」

鳴上「おい、杏子。 先に進みs」 ゴインッ☆

鳴上「……っ!!」

杏子「アハハハハッ!」

杏子「何やってんのさ! 悠!」

杏子「あたしは、先に行くよー」 スタ スタ スタ…

鳴上「ま、待て! 杏子…」 ガンッ☆

鳴上「おうっ!!」


―――――――――――

298: 2012/12/20(木) 18:45:45 ID:T2DjYA2k

杏子(は~あ。 何やってんだか……)

     コンッ フエ~ン!! ママー!

     アラアラ… イタイノ イタイノ… トンデケー!

杏子(…………)

     ホウラ… パパノテヲ ハナスンジャ ナイゾ?

     ハーイ! パパ!

杏子(…………)

     キャハハ… ウフフ…


―――――――――――

299: 2012/12/20(木) 18:46:32 ID:T2DjYA2k

鳴上「……やっと追いついた」 フウ…

鳴上「? どうした? 杏子」

杏子「…………」

杏子「……帰る」

鳴上「え? どうしたんだ? 急に?」

杏子「うるせえっ!! 帰るっつったら、帰るんだよ!!」 ダッ!!

     タッ タッ タッ…

鳴上「…………」

鳴上「……ふう」

301: 2012/12/20(木) 18:48:53 ID:T2DjYA2k

 ――数時間後の深夜――

 ――郊外の路地――



     テク テク テク…

杏子(…………)

杏子(……何で)

杏子(あたしは、あそこに向かっているんだろう……?)

杏子(あいつ……鳴上 悠が、居るかもしれないのに……)

杏子(…………)

杏子(フフ……そんなわけない)

杏子(これだけ、ほとぼりを冷ましたんだ……)

杏子(とっくに愛想を尽かして、帰っているさ……) クスッ…

302: 2012/12/20(木) 18:49:35 ID:T2DjYA2k

 ――廃墟の教会――



     ギィィィィッ……

??「…お帰り」

杏子「!!?!?」 ビクッ!

杏子「…………」

杏子「……悠」

 ――どうして――

鳴上「腹、減ってるだろう?」

鳴上「コンビニ弁当……冷めてしまったけど、一緒に食べないか?」

303: 2012/12/20(木) 18:50:32 ID:T2DjYA2k

杏子「…………っ」

 ――ここに居るの?――

鳴上「杏子?」

杏子「……聞こえてるよ」

杏子「物好きだね……あんた」

杏子「こんな時間まで あたしを待ってたなんて……」

鳴上「他に杏子が居そうな場所を知らないし」

鳴上「正直……来なかったらどうしよう、と思っていた所だ」 クスッ…

杏子「……フ」

杏子「アハハハ……!」

304: 2012/12/20(木) 18:51:29 ID:T2DjYA2k

※注 照明に燭台(教会にあったもの)&ローソク(コンビニで買ってきた)を使用してます。

     モグ モグ モグ…

杏子「……ごちそうさま」

鳴上「ごちそうさま」

杏子「…………」

杏子「……ねえ」

鳴上「ん?」

杏子「あんた……さやかから、話を聞いたって言ってたけど」

杏子「あたしの家族の事も聞いたのかい?」

鳴上「……ああ」

305: 2012/12/20(木) 18:52:24 ID:T2DjYA2k

杏子「そうかい……。 お節介だね」

鳴上「さやかは悪くない……」

鳴上「さやかの身を案じて心配していた、杏子と同じだ」

杏子「そう……だよ、な」

杏子「…………」

杏子「さやか……見違える程、元気になってたね」

鳴上「ああ……」

鳴上「?」

杏子「…………」

306: 2012/12/20(木) 18:54:03 ID:T2DjYA2k

鳴上「……気のせい、かもしれないが」

鳴上「さやかが元気になったのを喜んでいないのか?」

杏子「…………」

杏子「半々……ってとこかな」

鳴上「半々?」

杏子「もちろん嬉しいさ……元気になったのは」

杏子「……でも」

杏子「なんて言うか……『同じ仲間』じゃ無くなった」

杏子「立ち直った、さやかを見て……そう感じてね」

鳴上「…………」

307: 2012/12/20(木) 18:54:50 ID:T2DjYA2k

杏子「ほら、あたしと境遇が似てる所、あるだろ?」

杏子「誰かの為に祈った願いで、不幸になる所とかさ……」

鳴上「…………」

杏子「それだけに見ていられなかった」

杏子「あたしと同じ様にやれば……少なくとも 損はしなくなる」

杏子「あたしは……」

308: 2012/12/20(木) 18:55:31 ID:T2DjYA2k



杏子「さやかにも、そんな風にして欲しかった」



鳴上「…………」

杏子「…………」

杏子「……だけど」

杏子「悠と話をしたさやかは、別人か?と思うほど、明るく元気になっていた」

杏子「……認めたくなかった」

鳴上「…………」

309: 2012/12/20(木) 18:56:10 ID:T2DjYA2k

鳴上「何をだ?」

杏子「えっ?」

鳴上「『何』を認めたくなかったんだ?」

杏子「!!」

鳴上「…………」

杏子「……あ……そ、それは……」

杏子「…………」

鳴上「杏子」

杏子「……!」 ビクッ

鳴上「手を つながないか?」

310: 2012/12/20(木) 18:57:01 ID:T2DjYA2k

杏子「…………は?」

杏子「ど、どさくさにまぎれて何を……!」

鳴上「嫌ならいい。 でも……」

鳴上「今の杏子を見て、そう思った」 スッ…

杏子「…………」

     どうして……かな?

     たぶん、この手を握ったら……あたしは

     泣いてしまうって、わかってた



     でも……それに逆らう事が

     出来なかった……

311: 2012/12/20(木) 18:58:22 ID:T2DjYA2k

杏子「…………」

     ギュッ……!

杏子「…………」

鳴上「…………」

杏子「……大きいな、悠の手」

鳴上「…………」

杏子「それに……」

杏子「暖かくて……」

杏子「……………………っ」 グスッ…

鳴上「…………」

312: 2012/12/20(木) 18:59:24 ID:T2DjYA2k

杏子「……うっ………ぐっ………ヒック……」 ポロポロ

杏子「……ひぐっ………ううっ………ああ……」 ポロポロ

杏子「………お、父さん……のっ………手、みたい……だよっ」 ポロポロ

杏子「うあああっ……お、父さんっ……! お父さんっ……!」 ポロポロ

杏子「……あ、あだしっ……! あたしはっ………ああああっ………!」 ポロポロ

鳴上「…………」

313: 2012/12/20(木) 19:00:53 ID:T2DjYA2k



     ……悠は、泣きじゃくるあたしを

     そっと 抱きしめてくれた



     「今まで、よく頑張ったな」



     そんな優しい言葉と共に…



314: 2012/12/20(木) 19:01:55 ID:T2DjYA2k



     あたしは……悠の体温を感じながら

     泣いて、泣いて、ただ……泣いて

     いつの間にか眠っていた……



     こんなに安心して 眠りについたのは

     いつ以来だろう?

     ……ううん

     もしかしたら、生まれて初めてかもしれない……



315: 2012/12/20(木) 19:02:47 ID:T2DjYA2k



     あたしは、夢を見た

     今はもう、現実で見る事の出来無い

     家族の夢だった



     どれくらい前だったのか……

     お父さんと お母さんと 妹で

     近くの公園に行った時の

     思い出……



316: 2012/12/20(木) 19:03:41 ID:T2DjYA2k



     ……どうして、忘れていたんだろう?

     そうだよ

     あの頃、食うのにも困ってた

     あたしら家族にも

     楽しい思い出はあった



     でも……

     たった一人になってからは ずっと

     悪夢ばかり見ていた……



317: 2012/12/20(木) 19:05:26 ID:T2DjYA2k



     父さんは、いつもあたしを罵倒して

     時には、棒か何かで殴って

     そんなあたしを あたしが見ていた

     奇妙で……恐ろしい夢……



     でもあたしは、それが当然だって思っていた

     それが償いだ、とも思っていた



     だけど……それは違う

     そうやって罰を受ければ

     家族に対して、何かしている気になっていた……

     それだけだ



318: 2012/12/20(木) 19:06:47 ID:T2DjYA2k



     あたしは気がついた

     今でもこうやって、この廃墟に 時々泊まるのは

     償いとか 過去を忘れない為 とかじゃない



     あたしは……家族を探していたんだ



     もう会えないはずの

     暖かい家族のぬくもりを

     見つけようと 彷徨っていたんだ……



319: 2012/12/20(木) 19:07:49 ID:T2DjYA2k



     お母さん……

     お父さん……

     そして、まだ幼かった あたしの妹……



     ごめんね



     こんなに傍に居てくれたのに

     気づくのが遅くなって



     ごめんなさい……



320: 2012/12/20(木) 19:08:38 ID:T2DjYA2k

 ――朝――



杏子「う、うーん……」 セノビー…

杏子「ふう…………」



鳴上「…………」

鳴上「……う?」

杏子「お? ……起きたかい? 悠」

鳴上「ん? ……杏子?」

杏子「おはよう、悠!」 ニコ

鳴上「……おはよう、杏子」

杏子「なんつーかさぁ」

321: 2012/12/20(木) 19:09:46 ID:T2DjYA2k

杏子「今更、って感じだけど……」

杏子「礼を言っとくよ」

杏子「ありがとう、悠」 ニコ

鳴上「…………」

鳴上「どういたしまして」 クスッ


杏子「……あの言葉」

鳴上「?」

杏子「ここで、『お帰り』って言ってくれたの」

杏子「嬉しかった……」 ///

鳴上「それは何より……」

322: 2012/12/20(木) 19:10:34 ID:T2DjYA2k

杏子「あれのおかげで……あたしが『何』を求めていたのか」

杏子「何をしていたのか、よーく、わかったよ」

鳴上「ほう……それは何だ?」

杏子「そいつァ 言えねぇなぁ」 ハッハッハッ

鳴上「…………」

杏子「でも……」 スッ…(胸に手を当てる)



杏子「それは……ここにあったよ」 ニコ



鳴上「……そうか」 クスッ

323: 2012/12/20(木) 19:11:33 ID:T2DjYA2k

 ――昼――

 ――巴マミの部屋――



杏子「お邪魔しまーす」

さやか「!! 杏子!」

杏子「ニシシ…さやか、心配かけちまったな」

さやか「ううん……本当は、あたしが何かしてあげたかったんだけど……」

杏子「わかってるって……さやか」

杏子「そして、さやかの判断は、正しい」

杏子「たぶん……さやかの話だったら、あたしは聞く耳を持たなかったと思う」

さやか「……杏子」

杏子「さぁ、湿っぽい話は、これくらいにしよーぜ!」

杏子「あたしは、佐倉 杏子! みんな、よろしくな!」

324: 2012/12/20(木) 19:12:34 ID:T2DjYA2k

マミ「はい、佐倉さん」

まどか「うん! よろしくね! 杏子ちゃん!」

さやか「よろしく! 杏子!」

鳴上「よろしくな、杏子」

杏子「ウヒヒ…! な、なんか照れくさいね、こういうの」 ///

さやか「あ! ところで杏子」

杏子「ん?」

さやか「あんたのソウルジェム、どうなった?」

杏子「え? ソウルジェム?」

杏子「んなもん、何も変わってるわけな」 ゴソ ゴソ…

     ヒィイインッ……!

325: 2012/12/20(木) 19:13:31 ID:T2DjYA2k

杏子「」

さやか「やった! P状態!」

杏子「お、おいおい!? 何だよ、これ!? 解る様に説明しろ!」

―――――――――――
P状態 説明中
―――――――――――

杏子「へえ! つー事は、グリーフシードは、もう要らねえのか…」

さやか「そう! このP状態ならね!」 (自分のソウルジェムを掲げながら) ドヤッ!

杏子「…………」

まどか「? どうかしたの? 杏子ちゃん?」

326: 2012/12/20(木) 19:14:11 ID:T2DjYA2k

杏子「い、いや……な、何つーか……」 ///

鳴上「?」

杏子「も、もしかして、マミも さやかも」 ///



杏子「……悠と寝たのか?」 ///



鳴上「」

さやか「!?」

マミ「!?」

まどか「?」

327: 2012/12/20(木) 19:16:03 ID:T2DjYA2k

マミ「………………悠さん?」 ゴゴゴ……

さやか「………………悠?」 ゴゴゴ……

鳴上「ご、誤解だ!」

さやか「あんた……中学生には興味ないって言ってたよね?」

さやか「あたしと日の出を見ながら……」 ゴゴゴ……

鳴上「ひ、火に油を注ぐなっ」

マミ「あらぁ……美樹さんとは、そんなロマンチックな事を……」

マミ「私とは、ベランダでお話しただけなのに……」 ゴゴゴ……

鳴上「だ、だから」

杏子「ふうん……何だか叩けば、ホコリがたくさん出てきそうだね……」

杏子「ちょいと説明してもらおうかい?」 ニヤニヤ

鳴上「お前は、楽しんでるだろ!?」

まどか(みんな……怖い) ビクビク

331: 2012/12/21(金) 22:05:42 ID:tLVXQcZg

 ――翌日の放課後――

 ――ゲームセンター――



     テク テク テク…

ほむら「!?」

ほむら「……何をしているの?」

ほむら「鳴上 悠……」

鳴上「戦場のきずn」

ほむら「ゲームじゃなくて」

鳴上「冗談だ」

ほむら「…………」

332: 2012/12/21(金) 22:06:50 ID:tLVXQcZg

ほむら「……私は、佐倉 杏子に 会いに来たのだけれど?」

鳴上「代理だ」

鳴上「……いや、もっとはっきり言うと、みんなの代表としてここに来た」

ほむら「……!」

鳴上「みんなからの言伝(ことづて)がある」



さやか「頼りないかもしれないけど……あたしは、ほむらの味方だよ!」

マミ「暁美さん……私、あなたの信頼を得たい。 チャンスをもらえないかしら?」

杏子「何、抱えてんのか知らねーけど、あたしに話せる程度なら、心配ねーよ。 何とかなる!」

まどか「ほむらちゃん。 私、話を聞くだけなら出来るよ? だから……」

まどか「話したくなったら、いつでも来てね。 私……待ってるから」



ほむら「!!!!!!!!」

333: 2012/12/21(金) 22:07:38 ID:tLVXQcZg

鳴上「…………」

鳴上「……話して、くれるか?」

ほむら「……ええ」

ほむら「わかったわ」



ほむら(……どうして、なの)

ほむら(たった一人、この男 鳴上 悠が、加わっただけで)

ほむら(私が……どんなに望んでも出来なかった……)

ほむら(みんなの協力が得られるなんて……)

ほむら(…………)

334: 2012/12/21(金) 22:08:21 ID:tLVXQcZg

 ――夕方――

 ――暁美ほむらの部屋――



鳴上「お邪魔します」

ほむら「どうぞ」

鳴上「…………」

ほむら「? どうしたの?」

鳴上「いや……何でも無い」

鳴上(前回は、『堅苦しい挨拶』とか言われたのに……)

335: 2012/12/21(金) 22:09:22 ID:tLVXQcZg

ほむら「…………」

鳴上「…………」

鳴上(そうか……どう話すか、その事で頭が一杯なのか)

ほむら「…………」

ほむら「そうね……まず、最初に」

ほむら「目的を言っておくわ」

鳴上「目的?」

ほむら「ええ……私の目的。 それは……」

ほむら「鹿目まどかを魔法少女にしないで、『ワルプルギスの夜』に勝つ事」

鳴上「『ワルプルギスの夜』?」

ほむら「そう……後、約一週間後に現れる災厄」

ほむら「史上最強・最悪の魔女……」

鳴上「……!」

336: 2012/12/21(金) 22:10:10 ID:tLVXQcZg

鳴上「…………」

鳴上「質問しても?」

ほむら「ええ、どうぞ」

鳴上「何故、それが……『ワルプルギスの夜』の出現が、予測できる?」

ほむら「…………」

ほむら「私は……私の使う魔法は」

ほむら「『時間』よ」

鳴上「……? 未来を見てきたのか?」

ほむら「違う」

ほむら「私は……『ワルプルギスの夜』が、出現するまでの一ヶ月間を」

ほむら「数え切れないくらい繰り返してるの……」

鳴上「……!!」

337: 2012/12/21(金) 22:10:50 ID:tLVXQcZg

鳴上「…………」

鳴上「さっき言った、目的の為か?」

ほむら「ええ……」

鳴上「まどか一人の為に……」

ほむら「…………」

ほむら「最初の……まどかと初めて出会った頃の私は」

ほむら「病気が治ったばかりで、ふさぎ込みがちだった……」

ほむら「そんな私の手を引いて、友達になってくれたのが……まどかだった」

鳴上「…………」

338: 2012/12/21(金) 22:11:57 ID:tLVXQcZg



 ……それからの話は、ほむらの壮絶な戦いの日々だった。

自身も魔法少女になり、まどかを助けられると思っていたが、ワルプルギスの夜に敗北する。

そこから、終りの見えない ほむらの旅が始まった。



339: 2012/12/21(金) 22:12:58 ID:tLVXQcZg



 最初は、マミ達にQべえの危険性を伝えようとしたり、出来うる限り協力を得ようとした。

だが、結果は芳しくなく……魔法少女がやがて魔女になるのを知っただけで

頃し合いを始めたり、自頃したり、気が狂ったりしたりして、魔女化する者が続出した。

 ほむらは、その度にまどかに救われたり、魔法少女を倒して生きながらえて

同じ時間を繰り返していた……。

 何度も何度も……。



340: 2012/12/21(金) 22:14:29 ID:tLVXQcZg

鳴上「…………」

ほむら「一番……手を焼いたのは、美樹さやか」

ほむら「私は、美樹さやかが願い事をしない様に努力したわ」

ほむら「でも、どうやっても彼女は魔法少女になり」

ほむら「魔女化する確率が高かった……!」

鳴上「…………」

ほむら「私は……彼女達に頼る事を諦めた」

 ――もう誰にも頼らない――

ほむら「……ある時間軸で、魔女化する寸前のまどかを……私は、この手にかけた」

 ――たとえ、どんな犠牲を払おうとも――

ほむら「その時、私は誓った」

 ――私、ひとりで、まどかを――

ほむら「絶対に救う、こんな結末を変えてみせる……と」

341: 2012/12/21(金) 22:15:31 ID:tLVXQcZg

鳴上「…………」

鳴上「……俺もそうなのか?」

ほむら「え?」

鳴上「俺も、『ワルプルギスの夜』に、負けているのか?」

ほむら「いいえ」

ほむら「あなたとは、この時間軸で初めて出会った……」

鳴上「! ……そうなのか?」

ほむら「ええ」

鳴上「…………」

342: 2012/12/21(金) 22:16:23 ID:tLVXQcZg



???「そういう事だったのか」



ほむ・鳴上「!!?」

ほむら「……Qべえ」

ほむら「いえ……」

ほむら「インキュベーター!!」

Qべえ「……その名前で呼ばれるのも久しぶりだ」

鳴上「インキュベーター……孵卵器(ふらんき)、か」

鳴上「まさに、名は体を表す、だな」

ほむら(! そんな意味だったの!?)

Qべえ「君は博学だね、鳴上 悠」 ニコ

Qべえ「地球に最初に降り立った地域に、ピッタリの言葉があったんでね」

Qべえ「使わせてもらってるんだ」

343: 2012/12/21(金) 22:17:13 ID:tLVXQcZg

鳴上「ちょうどいい、Qべえ。 お前の口から聞きたい事がある」

Qべえ「何かな?」

鳴上「お前の……お前達の目的は何だ?」

Qべえ「宇宙の為だよ」

鳴上「宇宙?」

Qべえ「君は、エントロピー、という言葉を知っているかい?」

鳴上「……熱力学の不可逆性の事か?」

Qべえ「さすがだね」

Qべえ「まあ、暁美ほむらも居る事だし、簡単に説明を加えると」

Qべえ「木を燃やして得られる熱エネルギーは、木を育てるエネルギーよりも少なくて」

Qべえ「釣り合いが、取れてないという事さ」

ほむら「…………」

344: 2012/12/21(金) 22:18:09 ID:tLVXQcZg

Qべえ「宇宙中の生命体が、宇宙のエネルギーを使い続けて」

Qべえ「この宇宙のエネルギーは、目減りする一方だ」

Qべえ「だから僕達は、エントロピーを凌駕するエネルギーを探し求めた」

Qべえ「それが……僕達には無くて」

Qべえ「君達の持つ、『感情エネルギー』だ」

鳴上「…………」

Qべえ「特に、第二次成長期に当たる、暁美ほむらの様な」

Qべえ「『少女』の『感情エネルギー』は」

Qべえ「量・質、共に、魔女化する瞬間、最高・最大に高められる」

鳴上・ほむ「……!」

Qべえ「そして、そのエネルギーを回収するのが、ボク達」

Qべえ「インキュベーターの役目なのさ」

345: 2012/12/21(金) 22:19:01 ID:tLVXQcZg

ほむら「……この!」 ジャキン!(拳銃を取り出す)

鳴上「止めろ、ほむら」

Qべえ「やれやれ……助かるよ、鳴上 悠」

鳴上「頃すなら、質問が終わってからにしてくれ」

ほむら「…………」

Qべえ「前言撤回だね」

鳴上「何の為にそんな事をする?」

Qべえ「やがては、君達人類も文明が発達し、進化して僕達の仲間入りを果たす」

Qべえ「その時になって、空っぽの宇宙を手渡されても困るだろう?」

Qべえ「だから、これは君達にとっても有意義な事なんだ」

鳴上「…………」

346: 2012/12/21(金) 22:19:48 ID:tLVXQcZg

ほむら「……もう、殺ってもいいかしら?」

鳴上「最後の質問だ」

Qべえ「何だい?」

鳴上「お前が、まどかに固執する理由は、何だ?」

ほむら「……!!」

Qべえ「それはね、まどかが、ものすごい資質を持っているからだよ」

Qべえ「通常では、有り得ない程巨大で、最初は僕も信じられなかった」

Qべえ「けど……」 (ほむらを) チラッ

ほむら「…………」

Qべえ「その謎は、ついさっき解けた」 ニコ

鳴上「どういう事だ?」

347: 2012/12/21(金) 22:20:48 ID:tLVXQcZg

Qべえ「暁美ほむらは、何度も何度も時間を逆行する事で」

Qべえ「知らない内に、まどか自身へ因果を集めてしまったんだ」

鳴上「……!!」

鳴上(因果……だと!?)

ほむら「…………っ」

Qべえ「感謝するよ、暁美ほむら」

Qべえ「まどかは、歴代最強の魔法少女となるだろう」

Qべえ「そして、それは同時に」

Qべえ「『ワルプルギスの夜』をも遥かに凌駕する」

Qべえ「史上最悪の魔女の誕生も意味する」

鳴上「…………」

ほむら「…………」

348: 2012/12/21(金) 22:21:24 ID:tLVXQcZg

Qべえ「僕達は、まどかが魔女化したら かつて、経験した事のない」

Qべえ「とてつもない量と質の『感情エネルギー』を得る事ができる」

Qべえ「でも、まどかや、この星の犠牲は無駄にはならない」

Qべえ「何故なら――」

     ドオゥウン! ドオゥウン! ドオゥウン!

ほむら「はあっはあっはあっ……」

Qべえ「」

鳴上「…………」

     トトン…

???「……やれやれ」

鳴上「!?」

349: 2012/12/21(金) 22:22:15 ID:tLVXQcZg

ほむら「…………」

Qべえ「無駄な事は、止めてくれないかな? 暁美ほむら」

     ムシャ ムシャ ムシャ…

Qべえ「キュップイ……スペアは、たくさんあるけど」

Qべえ「面倒くさいんだ」

鳴上「…………」

ほむら「…………」

Qべえ「さて、鳴上 悠。 まだ聞きたい事は、あるかい?」

鳴上「…………」

鳴上「……今は、無いな」

Qべえ「そうかい? じゃあ僕は、これでおいとまさせてもらうよ?」 トトッ…

350: 2012/12/21(金) 22:22:53 ID:tLVXQcZg

鳴上「…………」

鳴上「ほむら」

ほむら「…………」

鳴上「今、Qべえの言った事は、本当か?」

ほむら「……ええ」

ほむら「ひとつ前の時間軸でも同じ事を言っていたわ」

鳴上「そうか……」

351: 2012/12/21(金) 22:23:36 ID:tLVXQcZg

鳴上(…………)

鳴上(もし、俺の推測が正しければ……)

鳴上(だが、これを今、ほむらに伝えるのはマズイ……)

鳴上(…………何でもいい)

鳴上(彼女に、希望となる『何か』を示してからでないと)

鳴上(…………)

352: 2012/12/21(金) 22:24:54 ID:tLVXQcZg

 ――????――



????「ふふふ……ようこそ、ベルベット・ルームへ」

イゴール「はい……例によって、現実のお客様は 眠っておられます」

イゴール「本日、わざわざお呼び立てしたのは……」

イゴール「お客様に、お礼を言う為でございます」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……左様でございますな」

イゴール「確かに、わたくしめもあなた様を利用している、と言えるでしょう……」

イゴール「しかし……」

イゴール「この予測を遥かに超えた事象に対処なさっているお客様を」

イゴール「利用している『だけ』ではない事も、また事実でございます……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……結構」

353: 2012/12/21(金) 22:25:35 ID:tLVXQcZg

イゴール「さて、お客様の傍に存在する『因果の渦』……」

イゴール「その所在と、理由が判明いたしましたな」

イゴール「おかげ様で……」

イゴール「わたくし共にもやるべき事と、方向性が見えてまいりました……」

イゴール「本日は、そのお礼を言いたかったのでございます」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……そうでございますな」

イゴール「わたくし共は……『あるべきものの道』を『見て』いるのでございます」

イゴール「おっと……これ以上は、どうかご容赦を……」

354: 2012/12/21(金) 22:26:10 ID:tLVXQcZg

イゴール「ふふふ……それにしても、素晴らしい」

イゴール「お客様の類まれなる、その”ワイルド”の力……」

イゴール「もしかしたら……」

イゴール「引き寄せたのは、『因果』の方では無く」

イゴール「あなた様が、『因果』を引きつけたのやもしれませぬな……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……これは失礼」

イゴール「……おや? そろそろ、お目覚めの時刻でございますかな?」

355: 2012/12/21(金) 22:27:03 ID:tLVXQcZg

イゴール「最後にひとつ、お客様に ご忠告を申し上げましょう……」

イゴール「お客様は……」

イゴール「何かをお忘れでは、ございませぬかな?」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……」

イゴール「それはもう、教えておりましょう?」

イゴール「そう……」

イゴール「八十稲羽でおやりになられた事を、ここでも行えばよろしいのです」

イゴール「ふふふ……それでは、いずれまた……」

356: 2012/12/21(金) 22:28:45 ID:tLVXQcZg
今日は短いですが、この辺で……。
ほむほむ編はちと長いです。

357: 2012/12/21(金) 23:34:07 ID:Oj5jEpmI
乙かなって

358: 2012/12/22(土) 11:38:05 ID:GMk7yWxs
乙カレー空間


続き:鳴上「ここは……見滝原駅、というのか」【後編】

引用: 鳴上「ここは……見滝原駅、というのか」