523: 2015/12/06(日) 00:57:18.96 ID:B1hbzoR9o
最初:岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」【その1】
前回:岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」【その2】
第6章 形而上のネクローシス♀
ブラウン管工房
天王寺「これは……驚いたな。まさかあんただったとは」
紅莉栖「指令書通り、今後は私が指揮を執りますので」
天王寺「肩の荷が下りるよ。ありがてえ」
紅莉栖「……勘違いしているようですが、あなたを生かしておくわけにはいきません」
天王寺「わかってるよ。それでも構わねえって言ってるんだ」
天王寺「だが、絶対に約束しろ」
天王寺「綯を関わらせるな。綯だけは何も知らずに育って欲しいんだ」
紅莉栖「大丈夫ですよ。私の居た未来では天王寺綯は秋葉原の大地主、秋葉幸高氏の養女となり、何も知らぬまま健やかに成長していきます」
天王寺「未来から来たあんたが言うんだ。間違いねえんだろうよ」
紅莉栖「あなたの処分方法ですが……この後、阿万音鈴羽が42型ブラウン管テレビの電源を入れにここにやってきます」
天王寺「あぁ? 42型ぁ?」
紅莉栖「それを阻止しようとすると同時に、自分がSERNの犬であることや、今日の襲撃を指示したことなどを暴露してください」
紅莉栖「そうすれば阿万音鈴羽は逆上し、必ず戦闘になる。そこで上手いこと氏んでください」
天王寺「……おい、ちょっと待て。バイトの正体って、まさか……」
紅莉栖「あなたもよく知っている人物ですよ」ニコ
紅莉栖「2036年から来た反SERN組織のメンバーであり、橋田至の娘」
紅莉栖「そして……あなたの母親代わりだった、橋田鈴本人です」
天王寺「は、はぁっ!?」
524: 2015/12/06(日) 00:59:32.76 ID:B1hbzoR9o
紅莉栖「ブラボーチームが阿万音鈴羽を確保。記憶を消去してから1975年へと跳ばします」
天王寺「……理解はできたが、タイムトラベルってのはとんでもねえな」
天王寺「つまり俺は、過去の鈴さんに殺されるってわけだ」
天王寺「クソ。SERNのくせに粋な演出をしてくれるじゃねえか」
紅莉栖「これはSERNの仕込みではないですけどね」
天王寺「……巡り巡って、か。因果応報だな」
天王寺「鈴さんを裏切ったツケが回ってきたってわけだ」
天王寺「あの人に殺されるなら……本望だよ」
prrrr prrrr
天王寺「……M4からメールだ。それじゃ、俺から最後のメールを送っておくよ」
紅莉栖「私に依存させるような文面でお願いします」クルッ
天王寺「任せとけってんだ」
『―――うあああああああっ!!!!!!!』
紅莉栖「……っ!!!」
天王寺「な、なんだ? 岡部か?」
紅莉栖「……あなたには関係ない。聞かなかったことにしなさい」ギロッ
天王寺「お、おう。わかった」
カランコロンカラーン
紅莉栖「はい、店長さん。それでよろしくお願いします。それじゃ」
萌郁「い、今の、岡部姉さん……?」
紅莉栖「桐生さん……? 早くラボに戻りましょう」タッ
525: 2015/12/06(日) 01:02:04.58 ID:B1hbzoR9o
未来ガジェット研究所
鈴羽「……大丈夫。生命に問題は無い」
るか「岡部さぁん!!」グスッ
まゆり「オカリン……っ」
紅莉栖「岡部、大丈夫!?」
萌郁「岡部……さん……っ!」
ダル「牧瀬氏、桐生氏! な、なんかオカリンが急に悲鳴を上げて……」
倫子「はぁ……はぁ……。じょ、しゅ……?」
倫子「お、お前は、助手なのか……? オレの知っている助手なのか……?」ワナワナ
鈴羽「まるで記憶操作の洗脳を受けたみたい……」
倫子「紅莉栖……」ウルッ
紅莉栖「……初めて、まともに名前を呼んだくれたね」
倫子「……助けてくれぇ」ダキッ
紅莉栖「……また変な夢でも見たの?」ナデナデ
倫子「夢……? あ、ああ。そうか。あれは夢だったんだ……」
倫子「そうだよな、あんなのちっともリアルじゃなかった。どこのハリウッド映画だよ、はは……」
倫子「まゆりだって、こうして元気に……」
まゆり「オカリン? まゆしぃは元気だよ?」
紅莉栖「……ねえフェイリス。これ、どう思う?」
フェイリス「いつもの厨二……には思えないニャ」
紅莉栖「夕食時まではまだ時間があるし、ちょっと岡部連れて散歩しない? そう言えばドクペを買い忘れてたから、買いに行かなくちゃ」チラッ
フェイリス「……? ……大賛成ニャー! それじゃ、フェイリスとクーニャンと凶真は時間まで3人で約束の地を放浪してくるのニャ♪」
まゆり「えぇー、ずるいよフェリスちゃん、クリスちゃん。まゆしぃもお散歩したいよー」
フェイリス「このクエストは選ばれし者だけに許されているのニャーン。マユシィたちは準備の続きを頼むニャ」
紅莉栖「ほら、岡部。行くわよ?」
倫子「へ……? あ、ああ」
鈴羽「……大丈夫。生命に問題は無い」
るか「岡部さぁん!!」グスッ
まゆり「オカリン……っ」
紅莉栖「岡部、大丈夫!?」
萌郁「岡部……さん……っ!」
ダル「牧瀬氏、桐生氏! な、なんかオカリンが急に悲鳴を上げて……」
倫子「はぁ……はぁ……。じょ、しゅ……?」
倫子「お、お前は、助手なのか……? オレの知っている助手なのか……?」ワナワナ
鈴羽「まるで記憶操作の洗脳を受けたみたい……」
倫子「紅莉栖……」ウルッ
紅莉栖「……初めて、まともに名前を呼んだくれたね」
倫子「……助けてくれぇ」ダキッ
紅莉栖「……また変な夢でも見たの?」ナデナデ
倫子「夢……? あ、ああ。そうか。あれは夢だったんだ……」
倫子「そうだよな、あんなのちっともリアルじゃなかった。どこのハリウッド映画だよ、はは……」
倫子「まゆりだって、こうして元気に……」
まゆり「オカリン? まゆしぃは元気だよ?」
紅莉栖「……ねえフェイリス。これ、どう思う?」
フェイリス「いつもの厨二……には思えないニャ」
紅莉栖「夕食時まではまだ時間があるし、ちょっと岡部連れて散歩しない? そう言えばドクペを買い忘れてたから、買いに行かなくちゃ」チラッ
フェイリス「……? ……大賛成ニャー! それじゃ、フェイリスとクーニャンと凶真は時間まで3人で約束の地を放浪してくるのニャ♪」
まゆり「えぇー、ずるいよフェリスちゃん、クリスちゃん。まゆしぃもお散歩したいよー」
フェイリス「このクエストは選ばれし者だけに許されているのニャーン。マユシィたちは準備の続きを頼むニャ」
紅莉栖「ほら、岡部。行くわよ?」
倫子「へ……? あ、ああ」
526: 2015/12/06(日) 01:03:17.80 ID:B1hbzoR9o
秋葉原タイムスタワー
秋葉邸
紅莉栖「アイコンタクトに応えてくれてありがとう、フェイリス。さすが私の幼馴染」
フェイリス「それで……凶真はどうしちゃったのニャン?」
倫子「お、おい。買い出しに来たんじゃなかったのか? どうしてフェイリスの家に――」
紅莉栖「……ここなら街中に蔓延ってるラウンダーの目も、盗聴器も無いわ」
倫子「なんの話だ……?」
紅莉栖「黒木さんも幸高さんも私たちの味方だってのは未来でわかってる」
フェイリス「未来で……?」
倫子「お、おい助手! いったいなんの話だ、3行で説明しろ!」
紅莉栖「逆に聞くけど、岡部。あんた今、"何週目"?」
倫子「な……に……?」
紅莉栖「その様子だと、もしかして1週目、かしら。わかる? あんたは今日の19時56分からタイムリープしたはずよ」
倫子「タイム……リープ……? ま、まさか……お前……っ!!」
紅莉栖「ラボの襲撃、SERNの陰謀、まゆりの氏」
倫子「……っ!?!? あ、あれは、夢じゃなかったのか……っ!?!?」ゾワワァ
倫子「く、来るなぁ! フェイリス、今すぐ逃げろ! こいつは、この女は裏切者だっ!!」バタバタ
フェイリス「ニャニャ?」
紅莉栖「そこも説明されてないってことはやっぱり1週目か。いいわ、ちょっと長くなるけど全部説明する」
紅莉栖「…………」
紅莉栖「…………」
フェイリス「……?」
倫子「な、なんだ……!?」
紅莉栖「こ゛め゛ん゛ね゛お゛か゛へ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ!!!!!!!」
倫子「えっ」
秋葉邸
紅莉栖「アイコンタクトに応えてくれてありがとう、フェイリス。さすが私の幼馴染」
フェイリス「それで……凶真はどうしちゃったのニャン?」
倫子「お、おい。買い出しに来たんじゃなかったのか? どうしてフェイリスの家に――」
紅莉栖「……ここなら街中に蔓延ってるラウンダーの目も、盗聴器も無いわ」
倫子「なんの話だ……?」
紅莉栖「黒木さんも幸高さんも私たちの味方だってのは未来でわかってる」
フェイリス「未来で……?」
倫子「お、おい助手! いったいなんの話だ、3行で説明しろ!」
紅莉栖「逆に聞くけど、岡部。あんた今、"何週目"?」
倫子「な……に……?」
紅莉栖「その様子だと、もしかして1週目、かしら。わかる? あんたは今日の19時56分からタイムリープしたはずよ」
倫子「タイム……リープ……? ま、まさか……お前……っ!!」
紅莉栖「ラボの襲撃、SERNの陰謀、まゆりの氏」
倫子「……っ!?!? あ、あれは、夢じゃなかったのか……っ!?!?」ゾワワァ
倫子「く、来るなぁ! フェイリス、今すぐ逃げろ! こいつは、この女は裏切者だっ!!」バタバタ
フェイリス「ニャニャ?」
紅莉栖「そこも説明されてないってことはやっぱり1週目か。いいわ、ちょっと長くなるけど全部説明する」
紅莉栖「…………」
紅莉栖「…………」
フェイリス「……?」
倫子「な、なんだ……!?」
紅莉栖「こ゛め゛ん゛ね゛お゛か゛へ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ!!!!!!!」
倫子「えっ」
527: 2015/12/06(日) 01:04:12.06 ID:B1hbzoR9o
紅莉栖の話は、即座に受け入れられるようなものではなかった。
まるで異世界の話をするような――
だが、オレの目の前に居るのは確かに"紅莉栖"だった。
ラボメンナンバー004にして、鳳凰院凶真の忠実なる助手。
オレの知っている、牧瀬紅莉栖。
オレは、裏切られたわけではないのか……
その考えが脳裏をよぎった瞬間、それを心から信じる自分しか存在しなくなっていた。
528: 2015/12/06(日) 01:07:45.82 ID:B1hbzoR9o
フェイリス「――取りあえず、クーニャンは凶真の味方、ってことでオッケーニャン?」
紅莉栖「私は岡部のためだけに生きてきたっ!! 岡部のことばかり考えて生きてきたっ!! 私が岡部の力になるっ!!」ヴィェェ
倫子「お、おう……」
倫子「(中身が42歳とは思えんな……まるでいつもの助手ではないか……)」
倫子「だが、つい数分前のお前はまるでSERNの犬だったぞ」
紅莉栖「もちろん演技よ……そういう計画を立ててたの。"この私"はまだ実行してないけど」
倫子「ということは、またやるのか……?」プルプル
紅莉栖「あれをやらないと2036年の未来に繋がらないから、私が逃げ出してもそういう風に収束する」
紅莉栖「桐生さんあたりが私の代わりをやるはず。……ごめん、ちょっと嫌な事思い出しちゃった」ウップ
フェイリス「だ、大丈夫ニャン!?」
紅莉栖「……桐生さんはラウンダーを裏切ったことで射殺、同時にまゆりも撃たれる」
倫子「(やっぱり萌郁はラウンダー、スパイだったんだな……だが、ラボメンとしての最期を選んだ、ということか)」
倫子「……さすが未来人、未来予知能力を持っているとは」
529: 2015/12/06(日) 01:09:23.01 ID:B1hbzoR9o
紅莉栖「今は"岡部の1週目"だから、襲撃の前に一度岡部を2週目に跳ばすわ」
倫子「またあの気持ち悪さを体感しろ、と言うのか……」ウェ
フェイリス「どうしてそんなことをするニャン?」
紅莉栖「言った通り、私は2034年からタイムリープしてきた。目的はまゆりの氏を回避するため、よ」
フェイリス「マユシィの……氏?」
倫子「お、お前がまゆりを頃したんだろぉ!?」ガタッ
紅莉栖「……簡単に言えば、まゆりが今から2時間41分後に氏亡するのは"運命"なのよ」
倫子「はぁ!? そんなバカな話があるかっ!」
紅莉栖「物理学的に言えば収束によるもの。因果律の崩壊を世界が阻止しているの」
倫子「しゅうそく……、アトラクタフィールド理論っ!?」
紅莉栖「まゆりの氏によって、世界はディストピアに収束する」
紅莉栖「まゆりの氏を回避するには、アクティブ世界線を変更するしかない」
紅莉栖「それができるのは、岡部。あなただけなの」
紅莉栖「あなたこそ……救世主なのよ」
倫子「は……?」
531: 2015/12/06(日) 01:13:41.70 ID:B1hbzoR9o
倫子「つ、つまり、お前もジョン・タイターと同じ目的――ディストピアを破壊する――で過去へ跳んできた、というのか?」
紅莉栖「そう。そのためにSERNの幹部に上り詰めることで情報をつかんできた」
紅莉栖「おかげで2010年のSERNに私の計画通り動いてもらえるような指令書を送れた」
倫子「……電話レンジ(仮)を作ったのだな。それでDメールを……」
フェイリス「クーニャンは24年間敵地に潜入していた、ってことニャ?」
紅莉栖「そうよ……グスッ……大好きな岡部と会えないまま20数年間……エグッ……一緒に青森にも行けなかったのぉ……」
フェイリス「おー、よしよし」ナデナデ
紅莉栖「勿論、裏でワルキューレにSERNの情報を流してみたりしたけれど……。あまり効果がなかった」
紅莉栖「それ以上に収束は強力だった。人間1人の意志で、未来を変えようなんてほとんど不可能だった」
紅莉栖「私の力では、未来へも過去へもいけるタイムマシンを作ったり、何十年タイムリープしても問題ないリープマシンは作れても――」
紅莉栖「……世界線を変えることはできない」シュン
倫子「なぜだ? 過去へDメールを送れば現在も変わるはず」
紅莉栖「それを認識できるのは完全なリーディングシュタイナー発症者だけ」
紅莉栖「私は……不適合者だった」
倫子「発症? 不適合者?」
532: 2015/12/06(日) 01:20:01.03 ID:B1hbzoR9o
紅莉栖「リーディングシュタイナー。あんたが名付けたテキトーなネーミングが未来では通用してるわ」
倫子「……恥ずかしすぎるだろっ!!」ガバッ
フェイリス「未来の黒歴史を創出するとは……さすが鳳凰院凶真だニャ……」
紅莉栖「研究でわかったのは、リーディングシュタイナーは新型脳炎のようなものだった、ということ」
フェイリス「脳炎……? 凶真は病気なのかニャ?」
紅莉栖「脳に異常があることで発生する記憶喪失症状……それがリーディングシュタイナー」
倫子「……いいや違うぞ。オレはむしろ"覚えている"のだ、世界中の全員が忘れてしまったことを」
紅莉栖「通常の脳なら歴史の再構成に合わせて記憶も再構成される。だけど、リーディングシュタイナー患者の脳はね……」
紅莉栖「再構成されたはずの記憶を一瞬にして喪失してしまう。というより、記憶を"思い出せなくなる"の」
倫子「それでは脳がスカスカになってしまうではないか。だがオレはこうして前の世界線の記憶があるぞ」
紅莉栖「記憶だけじゃなく、今のあんたの脳には意識も人格も引き継がれている」
倫子「なに? 記憶はデータ化できるが、意識や人格はわからんと言ったではないか」
紅莉栖「結論を言えば、意識も人格もバイナリデータ化していた。あるいは添付ファイルみたいな形で」
533: 2015/12/06(日) 01:22:57.08 ID:B1hbzoR9o
倫子「まるで人間の魂が未知の物質により構成されているというトンデモ話だな……」
紅莉栖「量子脳理論ね。まあ、それはおいといて」
紅莉栖「つまり、再構成された記憶と意識と人格を喪失して空っぽになった脳に、それまで脳が持っていた記憶と意識と人格がダウンロードされてるってこと」
倫子「い、いやいや、タイターの説によれば、世界は多世界解釈のはずだ。オレの脳ミソは無限個あるのだから、改変前の脳と改変後の脳は別物ではないのか?」
紅莉栖「それは嘘。阿万音さんがSERNを欺くために仕組んだ罠」
倫子「嘘……。また、嘘なのか……」
紅莉栖「本当は、世界線は常に1つだけがアクティブの状態にある。それ以外の世界線は可能性の雲になっているに過ぎない」
紅莉栖「岡部の肉体が別世界線に移動してるんじゃない。世界自体が、スイッチのオンオフのように切り替わってるだけ」
倫子「……なるほど、世界線が変わろうとオレの脳ミソは1つしかない。だから意識も記憶も人格も引き継がれる、と言いたいのだな」
紅莉栖「通常の脳でも非アクティブ世界線における”あったはずの記憶”を思い出すエラーが起こることがある。今の時代ではこれはデジャヴとか白昼夢として処理されてる」
紅莉栖「正直に言うと、未来でもよくわかってないのが本当なんだけど、現状では岡部の認識で問題ないと思う」
フェイリス「うニャ~、難しくてわかんニャい~!」
534: 2015/12/06(日) 01:30:30.52 ID:B1hbzoR9o
紅莉栖「リーディングシュタイナー患者の脳を研究することで、人工的にリーディングシュタイナー脳を作る技術をSERNは開発した」
紅莉栖「これが無きゃ、タイムマシンでディストピアなんて夢のまた夢だものね」
倫子「……それは、脳を開頭して電気ショックを、とかそういうのじゃないだろうな?」ガクガク
紅莉栖「……今から代々木のAH東京総合病院の地下室に行けばわかるけど、この時代でも既に300人委員会は似たようなことをやってる」
フェイリス「マジかニャ……」
紅莉栖「だけど、私は不適合者だった。どれだけ脳をいじってもリーディングシュタイナーを手に入れることはできなかった」
倫子「……いじったのか?」ワナワナ
紅莉栖「今は18歳の脳だから、健康そのものよ」ウフ
紅莉栖「でもこれじゃ、私がタイムマシンで過去へ跳んでも意味がない。リーディングシュタイナーが無ければ、まゆりの氏は回避できない」
紅莉栖「世界は間違いなくディストピアへと突き進む。そこでは私たちは全員不幸になる」
紅莉栖「他でもない、私がタイムマシンを完成させたせいでね……」
紅莉栖「だから、私はこの時間の岡部を頼るしかなかった……」グスッ
倫子「ま、待て待て。そこがわからん。どうしてオレじゃなきゃならんのだ?」
紅莉栖「本当は岡部にそんな思いをさせたくなかったんだけどね……」ウルウル
紅莉栖「あんたは2010年8月時点で"過去改変が可能な環境下"にありながら"リーディングシュタイナーを発症"している唯一の人類なのよ」
フェイリス「それで救世主……ニャるほど」
紅莉栖「そもそも、あんたが電話レンジ(仮)の機能に気付いたキッカケは、偶然Dメールを送信し、そして世界線の変化を観測したからでしょ?」
倫子「そ、そうだ。それが無ければおそらく天才少女たるお前にさえ興味を持たなかっただろう」
倫子「……もしかして、オレが、タイムマシンを作ろうと言ったから、お前も鈴羽も過去へ跳ぶことになって――」
倫子「まゆりが、氏ぬのか?」ゾワワァ
紅莉栖「……岡部は間違ってないわ。悪いのは300人委員会以外の何者でもない」
紅莉栖「だから、岡部が責任を感じる必要は、ない」
倫子「あ、ああ……」
紅莉栖「つまりね……。岡部に改変前の世界線の記憶がある、ということがタイムマシン完成の因果へと直結している」
紅莉栖「裏を返せば、リーディングシュタイナーが無ければ過去を改変できない、ということになる」
フェイリス「えっと……それって文章的? 論理学的? にはそうかも知れニャいけど、なんだか納得できないニャ」
535: 2015/12/06(日) 01:32:42.88 ID:B1hbzoR9o
倫子「納得できない?」
フェイリス「納得できないところはいくつかあるけど……、クーニャン。"現在"ってどこにあるのニャン?」
倫子「は……?」
フェイリス「時間は大きな川のようなもので、"現在"はそこに落ちた1枚の葉っぱのようなものだと思ってるんニャけど」
紅莉栖「なかなか鋭い質問ね」
フェイリス「クーニャンは2034年からタイムリープしてきたって言ったニャ。そうなると、その24年間はどこへ行っちゃったニャ?」
紅莉栖「私の脳の中……でいいかしら」
フェイリス「でも、そうなるとフェイリスたちの主観はどうなるニャ? フェイリスたちの脳には24年間の記憶なんて無いニャ」
倫子「そりゃそうだろ。だって、今はまだ2010年なのだから……ハッ」
紅莉栖「そう。私の記憶の中には、2034年まで生きてるフェイリスさんの記憶がある」
フェイリス「そのアダルトなフェイリスは、肉体を消滅させて、クーニャンの脳内に棲みついちゃった、ってこと?」
紅莉栖「そうよ。タイムリープでも微小な世界線変動が存在する。タイムリーパーが過去に跳んだ瞬間、到着時点から世界は分岐する」
紅莉栖「……"なかったこと"になる」
倫子「なかったことに……」
536: 2015/12/06(日) 01:34:23.38 ID:B1hbzoR9o
倫子「それでオレがタイムリープしたことによって、あの惨劇はなかったことなった、ということか」
フェイリス「だから、そこがおかしいニャ」
倫子「む? オレには納得できたが」
フェイリス「タイムリープしてないフェイリスからすると、"現在"があっちに行ったりこっちに行ったりしてるのニャ」
フェイリス「まず、クーニャンが今日タイムリープして来ないで、クーニャンも襲撃された世界があるニャ?」
紅莉栖「そうね。私の24年前の記憶にはそれがある」
フェイリス「その時は凶真はタイムリープしなかったのニャン?」
紅莉栖「……岡部も女の子なのよ。あんなヤバイのが襲撃してきたら、どうなると思う?」
倫子「……悔しいが、チビって腰くだけになる未来が容易に想像できるな」ガックリ
倫子「だが、助手が過去へ跳んできたことにより、世界は分岐した。この分岐に乗ってオレは助手の大芝居を見たわけだ」
フェイリス「なんでそこで、今居る"1週目"の世界に分岐してないのニャン? 世界は1本の川の流れのようなものじゃないのかニャ?」
倫子「……フェイリスの言いたいことがわからん」
紅莉栖「つまり、フェイリスは"神の視点"を考慮してる、ってことよね」
フェイリス「そういうことニャ。クーニャンの話は、人類が時間を観測していることを前提に話をしてるのニャ」
537: 2015/12/06(日) 01:36:49.08 ID:B1hbzoR9o
紅莉栖「結論を言うと、"現在"は観測者の主観に委ねられる」
紅莉栖「これは結果論ね。正直私も、実際にタイムリープするまではこの理論に確信が持てなかった」
紅莉栖「『現象に対して素直になれ』……。岡部の言葉のおかげで、私の実験は挑戦的になったみたい」フフッ
倫子「助手が過去へ来た因果に、オレの存在が影響しているのか……」
フェイリス「つまり、神の視点は存在しニャい? 時計は関係ないのかニャン?」
紅莉栖「強いていうなら、それに一番近いのは別の世界線を観測できるリーディングシュタイナー罹患者ね」
紅莉栖「世界線を分岐させてしまえば時間を客観化できる。観測した瞬間が現在になる」
倫子「量子力学の観測問題、か。箱を開いた瞬間、その中の猫の生氏が決まると言う」
フェイリス「じゃあ、今からフェイリスが1時間前にタイムリープしたら、世界は切り替わるニャ?」
紅莉栖「そうなるわ。当然フェイリスの主観は1時間前を"現在"として認識する」
紅莉栖「私の主観では、そもそもフェイリスが1時間前にタイムリープしていたことを事実と認識した上で、今を"現在"として認識する」
紅莉栖「岡部からすれば目眩を感じないレベルのリーディングシュタイナーを発症することになる」
紅莉栖「橋田を雷ネットで勝たせようとした時のDメールレベルの世界の変化が起きる。つまり、ほとんど全く同じ世界へと切り替わる」
倫子「そして、謎の1時間の記憶を持ったフェイリスが突然オレの目の前に現れる、ということだな」
紅莉栖「だからこそタイムリープをするのは岡部じゃないといけないの」
紅莉栖「擬似的に世界の"現在"を岡部の主観に近似させるのよ」
フェイリス「それってニャんだか……凶真が独りぼっちになっちゃう気がするニャ」
紅莉栖「それをさせないために私が跳んできた……。岡部が改変した後の世界線でも、収束がある限り私は絶対に未来から跳んできている」
紅莉栖「その時私は必ず確認する。今、"何週目?"って」
倫子「……わかった。覚えておこう」
538: 2015/12/06(日) 01:38:42.73 ID:B1hbzoR9o
紅莉栖「これで私がタイムリープしてきた理由はいいかしら」
フェイリス「つまり、凶真に世界線を変えてもらって、マユシィの氏の運命を塗り替えるため、ってことでいいかニャ?」
紅莉栖「そう。世界線の変動はやってみなければわからない。そして私たちは絶対に諦めない」
紅莉栖「この2つの条件が揃ってるから、岡部は無限の時間をかけて世界を変えられるの」
倫子「当たり前だ。まゆりが氏ぬ運命など、このオレ、鳳凰院凶真が塗りつぶしてくれるっ!!」
紅莉栖「そしたら、私を青森に連れて行ってね」フフッ
紅莉栖「……(今にそれがどれだけ無謀で、困難なことか。きっと身に染みてわかることになるんでしょう)」
紅莉栖「ごめんね、岡部……」グスッ
倫子「貴様はラボメンとして正しい行動をしたのだ。謝るのではなく誇るべきだっ」エヘンッ
紅莉栖「(かわいい)」
539: 2015/12/06(日) 01:41:31.73 ID:B1hbzoR9o
倫子「ということは、またDメールを送ればいいのだな。まゆりを生存させるような18文字……」
紅莉栖「いいえ、そうじゃないわ。収束っていうのはそういうことじゃない」
紅莉栖「たとえどんな手段を使ったとしても、まゆりは必ず氏ぬ」
紅莉栖「何故なら、まゆりが氏んだことで岡部はワルキューレを立ち上げ、橋田がタイムマシンを作ってスズちゃんが過去へ跳ぶから」
紅莉栖「過去へ跳んだスズちゃんを私たちは既に観測している。因果は円環状に閉じている」
倫子「……そうか、それでお前はあの時、鈴羽を撃っても橋田を撃っても氏なないなどと言っていたのか」
紅莉栖「私、これからそんなこと言うのか……鬱だ……」
倫子「だが、ならばどうしろというのだ? それになぜもう一度タイムリープせねばならん」
紅莉栖「それはね……私より詳しい人が居る。スズちゃんから聞いて」
倫子「鈴羽から……?」
紅莉栖「鈴羽は私と違って世界がディストピアになってしまってからの2年間を知っている」
紅莉栖「"1週目"ではもう時間が無いから、スズちゃんから話を聞くためにも1回タイムリープして"2週目"で時間を作らないといけない」
紅莉栖「午後2時頃へ跳んでもらうわ。私がタイムリープマシンを完成させた時刻よ」
紅莉栖「完成したらすぐに"実験はしない"って宣言して橋田とまゆりを解散させて」
紅莉栖「それから、未来から来る私に声を掛けてくれればいい。私が未来から来るまでは特に何もしないこと」
倫子「なるほど……」
紅莉栖「それよりも、今のうちに幸高さんも交えて300人委員会に対する対策を打っておきたい」
フェイリス「パパを?」
紅莉栖「もちろん、この世界線の未来でもディストピアは築かれる。だけど、そこから過去に跳ぶ鈴羽は別よ」
紅莉栖「もしかしたら無意味かも知れない。収束に押しつぶされるかもしれない」
紅莉栖「未来は変えられないかもしれない。それでも――」
紅莉栖「あの娘は、私たちラボメンの希望なの」
662: 2015/12/16(水) 03:16:57.69 ID:gd8Eaw7Mo
幸高「――それで、紅莉栖ちゃん。僕を頼ってくれるみたいだね」
紅莉栖「私はもうちゃん付けされるような歳ではないですよ、おじさま」
幸高「あはは、それもそうか。いや、失敬」
幸高「……テキ屋さんの元締めにちょっと話をしたんだけど」
幸高「びっくりしたよ。紅莉栖くんから連絡があった通り、警察や鉄道会社に干渉があったらしい」
フェイリス「ニャッ!?」
倫子「なにっ!? ということは、あの爆破テロも……」
紅莉栖「報道まであと1時間ってところね」
倫子「(今までどこかリアリティに欠けるところがあったが、一度見た光景をこうして説明されると……現実なんだな、アレは)」ゾワワァ
幸高「この秋葉原一帯を封鎖して、出入りにも制限をかけているみたいだ。君たちを捕捉するためだろうね」
倫子「そこまでできるのか、SERNは……」ワナワナ
幸高「君たちは、一体何をして……」
紅莉栖「ごめんなさい。この計画自体は私が未来で練ったものです」
幸高「未来……?」
663: 2015/12/16(水) 03:18:35.44 ID:gd8Eaw7Mo
・・・
幸高「……そうか、話はわかった。まさかタイムマシンが完成するとはね」
フェイリス「ニャ? パパ、信じるニャ?」
幸高「留未穂も信じているんだろう?」
フェイリス「それは、凶真やクーニャンが嘘を吐いてないってわかるからだけど……」
幸高「話してなかったかな。僕は大学時代、タイムマシンの研究をしていたんだよ」
倫子「えっ」
フェイリス「えっ」
倫子&フェイリス「ええーっ!?!?」
幸高「東京電機大学の理論物理学専攻さ。僕は岡部くんの先輩にあたるんだよ」
倫子「し、知らなかった……」
紅莉栖「父とSERNで共同研究するようになってからお話を聞きました。橋田ゼミというところで"相対性理論超越委員会"というものをやっていたのだとか」
紅莉栖「(この世界線では……どう……?)」
幸高「そうそう。いやあ、懐かしいなぁ。当時を記録した8mmかカセットテープが残っていると思うけど、出そうか?」
紅莉栖「(良かった、スズちゃんはちゃんと記憶を持ったまま1975年に跳んでる)」
紅莉栖「(側頭葉の解剖に見せかけたただの人間ドッグはバレずに成功するみたいね)」
紅莉栖「(もしラジ館に刺さったタイムマシンが壊れてでもいたら"タイムマシンの母"が修理するつもりだけど、これも問題なさそう)」
紅莉栖「いえ、それはまた。それよりも、幸高おじさま……」
紅莉栖「あなたの愛する秋葉原を、こんな風にしてしまって……本当に申し訳ありませんでした」
幸高「君たちにとって大事なこと、なんだろう? それに、実際に荒らしているのは君たちじゃない」
幸高「SERNと300人委員会。僕は彼らのことを知っている。それも2つの方面からだ」
664: 2015/12/16(水) 03:20:27.14 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「知っているんですか!?」
幸高「1つ目は、その橋田教授が知っていたんだ」
幸高「教授はタイムマシン研究が外部に漏れるのを極端に恐れていた。出資元が僕しか居なかったのもそのせいだよ」
幸高「今にして思うと、SERNに感づかれるのを避けていたんだろう。聡明な人だったよ」
倫子「……そんな頃からSERNを警戒している人物が居たのか」
幸高「2つ目は300人委員会のことだ。正確には、そのものを知っているというわけじゃないけどね」
幸高「君たちは、"秘密結社"というのは現実離れしてフィクションじみた大層なものだと考えているんじゃないかい?」
紅莉栖「……今の岡部の頭の中ではまさしくそうかも」
倫子「それは違うぞっ! オレが言うことは常に真実っ! ゆえにっ! "機関"は妄想の産物なんかではないっ!」プンプン
紅莉栖「岡部、その"鳳凰院凶真"をずっとわすれないでね」
倫子「お、おう?」
幸高「有名なところだとシチリアンマフィア、テンプル騎士団、ソビエト連邦の出自なんかがそうなんだ」
幸高「君たちのラボだって、ある意味では秘密結社だ。この認識は重要だよ」
倫子「我がラボが"秘密結社"だと? わかっているではないかぁ、パパさん……ククク」ニヤリ
フェイリス「いつもの凶真だニャ」
665: 2015/12/16(水) 03:21:22.82 ID:gd8Eaw7Mo
幸高「つまりね、300人委員会は"そこにいる"ことを前提としなければならない」
幸高「だが、こういう組織は考え方が分からない。本来なら喧嘩を売るべきではない相手だ」
幸高「けれどね、僕はこの秋葉原を自分勝手にしている連中を許せない。ああ、もちろん紅莉栖くんの事情はわかっているとも」
紅莉栖「……はい」
黒木「旦那様、お電話です」
幸高「おや、少し失礼するよ……。…………。どうやら手掛かりがつかめたようだ」
倫子「えっ?」
幸高「ラウンダーの1人を捕まえた」
フェイリス「ニャ!?」
幸高「話を聞く限り、おさげの女にやられていたところを確保してくれたらしい」
紅莉栖「……スズちゃんね。私の挙動をいぶかしんで動き出した、ってわけか……」
666: 2015/12/16(水) 03:22:50.24 ID:gd8Eaw7Mo
幸高「昨日8月12日、フランスから特殊部隊が日本に入国したらしい」
倫子「あいつらか……」
幸高「目的はタイムリープマシンの奪取、並びに開発者3名の拉致。加えてIBN5100の確保」
倫子「IBN5100? なぜあいつらが……って、そうか。あの変なサーバを見られたくないのか」
紅莉栖「襲撃が起こる前に岡部が過去へ跳んで時間を巻き戻します。ですが、一応大檜山ビルの警備をお願いしてもいいですか」
幸高「わかった。知り合いに頼んでおこう」
倫子「このパパさん、もしかしてダル以上にナンデモアリなんじゃ……」
幸高「ちょうどいい、留未穂にも教えておこう。自分ではどうしようもない時は、誰か信頼できる人間に力を借りるのがビジネスの鉄則だ」
紅莉栖「……岡部。ごめんね、私1人の力ではどうしようもできなかった」
倫子「だから謝るなと。オレだってお前の力を借りなければどうしようもなかったと思う」
フェイリス「信頼は時として武器、ってことニャ!」
幸高「逆にそれは弱点でもある。300人委員会の構成員だって、血縁、地縁、なんらかのしがらみが必ずある」
倫子「つまり、分断工作ですね。スパイや洗脳、あるいは人質……」
幸高「それと、ヨーロッパ系の300人委員会、あるいはフランスに拠点を置くSERNがいずれ世界を牛耳るとしても、今は違う」
幸高「たとえば、中東のイスラム系武装秘密結社だって今は活動している。ロシア系でも、トルコ系でも構わない」
幸高「それらの組織がなにかのきっかけで300人委員会に対する敵対行動を取れば……と、これが僕の考えた仕返しさ」
倫子「す、すごい……。まるでアニメの世界の話だが、それを有言実行できてしまうとは……」
紅莉栖「……やっぱり、幸高おじさまに助けを求めてよかったです」
幸高「他でもない、親友の愛娘からの救援要請だからね。僕もいい意味でしがらみの中に居るってわけだ」
667: 2015/12/16(水) 03:23:36.49 ID:gd8Eaw7Mo
幸高「おっと、そう言えば紅莉栖くんに渡すものがあるんだった。黒木」
黒木「こちらに」スッ
紅莉栖「私に?……って、え、これ……っ!?」
倫子「ひしゃげた箱? でも、かわいいラッピングがされているな」
フェイリス「中身は、フォークかニャ?」
幸高「章一の忘れ物だ。受け取ってほしい」
紅莉栖「そう……だったんだ……パパは、これをここに……」ウルッ
倫子「(そんなに大切なものなのか?)」
668: 2015/12/16(水) 03:24:53.94 ID:gd8Eaw7Mo
紅莉栖「もう1つ、頼みたいことがあります」
幸高「なんだい?」
紅莉栖「ブラウン管工房の天王寺裕吾……さん、の、娘さん、綯ちゃんを秋葉家の養女として迎えてください」
フェイリス「ニャ!?」
幸高「……つまり、未来でそうなっているんだね?」
紅莉栖「そういうことです」
倫子「む? しかし、なぜだ」
紅莉栖「これから店長さんは殺される。彼を救うことはできない。綯ちゃんは親を失ってしまうのよ」
倫子「……これもSERNのせいか。クソッ」グッ
幸高「天王寺さんか、懐かしい名前だ。10年前、42型ブラウン管テレビを教授に頼まれて譲ったんだ」
幸高「そうじゃなくても、あれは価値があるから会社が傾きかけた頃に手放そうと考えたりしたんだけどね」
フェイリス「前にも話したと思うけど、パパは古い家電の収集家でもあるのニャ」
倫子「なんと、あの巨大なブラウン管にそんな由緒が……」
幸高「天王寺さんの人柄は半導体屋のトメさんから良い人だって聞いてるよ。わかった、そうしよう」
フェイリス「フェイリスに、妹ができるニャ?」
幸高「新しい家族を歓迎する準備をしなければね。ちかねにも相談しておこう」
フェイリス「……フェイリスが妹を守らなきゃ」
幸高「僕はこれから方々に電話をかけ続ける。君たちは少し休んでいたらどうだい?」
紅莉栖「ありがとうございます。でも、私たちはそろそろ過去へ戻る準備をしないと」
幸高「そうだったね。それじゃ、健闘を祈るよ」
倫子「……これが運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択だよ。エル・プサイ・コングルゥ」
669: 2015/12/16(水) 03:26:00.90 ID:gd8Eaw7Mo
未来ガジェット研究所
倫子「……なぁ、助手。本当にラウンダーは襲撃してくるのか?」
紅莉栖「自分の目で見たでしょ?」
倫子「そうなんだが……。あまりにもいつも通りのラボだから、周りがオレを担いでいるような気がしてならないのだ……」
紅莉栖「……まゆりの氏は現実よ。つらいことだけど、絶対に忘れないで」
倫子「……う、うむ」
倫子「(まゆりの氏を看取ったのはたしかにオレだった)」
倫子「(あいつはオレの腕の中で『氏にたくない』と呟いたんだ……あれは、実際にあったことなんだよな……)」
紅莉栖「1周目の時は私が確実に未来に到着した後の時間へと跳んでもらったけど、今回は……」
紅莉栖「今から6時間前、午後1時30分に跳んでもらうわ。私の言ったこと、覚えてるわね?」
倫子「あ、ああ。鈴羽を捕まえて話を聞けばいいんだな?」
紅莉栖「そういうこと。それじゃ、私が42型の電源をつけてくるわ」
ガチャ
鈴羽「その必要はないよ、牧瀬紅莉栖。あたしが電源をつけてきたからね」
紅莉栖「っ……」
倫子「鈴羽……?」
倫子「……なぁ、助手。本当にラウンダーは襲撃してくるのか?」
紅莉栖「自分の目で見たでしょ?」
倫子「そうなんだが……。あまりにもいつも通りのラボだから、周りがオレを担いでいるような気がしてならないのだ……」
紅莉栖「……まゆりの氏は現実よ。つらいことだけど、絶対に忘れないで」
倫子「……う、うむ」
倫子「(まゆりの氏を看取ったのはたしかにオレだった)」
倫子「(あいつはオレの腕の中で『氏にたくない』と呟いたんだ……あれは、実際にあったことなんだよな……)」
紅莉栖「1周目の時は私が確実に未来に到着した後の時間へと跳んでもらったけど、今回は……」
紅莉栖「今から6時間前、午後1時30分に跳んでもらうわ。私の言ったこと、覚えてるわね?」
倫子「あ、ああ。鈴羽を捕まえて話を聞けばいいんだな?」
紅莉栖「そういうこと。それじゃ、私が42型の電源をつけてくるわ」
ガチャ
鈴羽「その必要はないよ、牧瀬紅莉栖。あたしが電源をつけてきたからね」
紅莉栖「っ……」
倫子「鈴羽……?」
670: 2015/12/16(水) 03:26:52.62 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「店長、天王寺裕吾がSERNの手下だったなんて思わなかったよ。まんまとしてやられた」
倫子「な、なに!? そうなのかっ!?」アタフタ
紅莉栖「……頃したのね」
鈴羽「もちろん。それから、妙な書類を手に入れたよ。これから起こることを指示している書類……差出人は」ピラッ
紅莉栖「っ!!」ビクッ
鈴羽「牧瀬紅莉栖、お前がすべての元凶だったんだね。あたしは早々にお前排除しておくべきだった……っ!」ギリッ
倫子「ち、違うんだ鈴羽っ! これは紅莉栖が打った芝居であってだなぁ!?」
鈴羽「鳳凰院凶真は騙されてるっ!……そうか、お前が洗脳したんだなァッ!?」ギロッ
紅莉栖「岡部、早くタイムリープマシンへ!」
倫子「お、おう!」
鈴羽「洗脳を解く前にタイムリープさせるわけにはいかないッ!!」ダッ
??「ダメだよ、バイトのおねえちゃん」
鈴羽「っ!?」
671: 2015/12/16(水) 03:30:08.37 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「な……綯……? どうして、ソファーの裏なんかに隠れて……」プルプル
綯「自分の胸に聞きなよ」ドスッ
鈴羽「しまっ!?……ぐあぁぁぁぁっ!!」バタンッ!!
倫子「なんで……そんな、どでかいナイフで……突進……すず、は……」ガタガタ
綯「あは……」
綯「あはは……」
綯「あははは……」
紅莉栖「ウソ……でしょ……」ガクガク
綯「嘘じゃない」ギロッ
紅莉栖「ヒッ」ビクッ
綯「父さんを氏に追いやったお前たちを、絶対に許さないから」
倫子「おい紅莉栖どういうことだ説明しろぉっ!!」
紅莉栖「し、知らない……わからない……」ガクガク
綯「私がこの手で頃してやるまで、許さないから」グサッ
紅莉栖「ぐっ……ぎぃぃぃゃぁぁぁああああああ!!!!!!」
倫子「紅莉栖ぅぅぅぅっ!!!!!!」
綯「牧瀬は[ピーーー]わけにはいかないからな。足だけ潰してやるよ」
672: 2015/12/16(水) 03:32:19.75 ID:gd8Eaw7Mo
綯「岡部倫子、お前は15年後に頃す」
『――いいか、綯――』
綯「跪かせる。命乞いをさせる。そんなことでは許さない」
『――俺に何かあったときには、あいつを頼れ――』
綯「自らの腸と肝臓と子宮と卵巣と糞尿を飲み下させてやる。もちろんそれでも許さない」
『――男勝りの変なヤツだが、誰よりも優しくて温かい女性だからよ――』
綯「許さない許さない許さない……っ!」
673: 2015/12/16(水) 03:33:21.44 ID:gd8Eaw7Mo
『――このオレが、義理や同情で貴様を仲間にしたとでも思っているのか?』
綯「爪を剥がして目を潰して肉をニッパーでちぎり取って……」
『――愚かな。お前はいつまでも発想が子どもだな』
綯「神経に焼けた鉄串を突っ込んで……」
『――まゆりを頃した奴は、何人たりとも許しはしない』
綯「ケバブのように炙り吊るして……」
『――思い出せ、お前もまゆりの氏に荷担したことがあるはずだ』
綯「最後に残ったカスみたいな理性を強制的に目覚めさせてやる……!」
674: 2015/12/16(水) 03:37:30.87 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「がはっ! ごぼっ!!」ビチャビチャ
紅莉栖「内臓をやられてる……スズちゃんが氏なないのはわかってるけど、すぐに病院に運ばないとぉ!」ポロポロ
綯「橋田鈴はいずれ頃す。それまで何十年間も怯えて待っていろ」
鈴羽「な……え……ゴフッ」グタッ
綯「それよりもお前だ、岡部倫子」
倫子「ヒィッ!」ビクッ
綯「誰よりも独善的で、自分の目的のためならすべてを切り捨てるクズ……」
『凶真様ッ!! 信じてたのにッ!! 尊敬していたのにッ!!』
『……大好きだったのにィッ!!!』
『――天王寺裕吾は氏ななければならない。計画は変更できない』
『――まゆりのためなんだ』
綯「お前を、岡部倫子をタイムリープさせるわけにはいかない」
紅莉栖「っ!? どうして私の計画を……ってそうか、そこに隠れて見てたんだものね……」ポロポロ
倫子「何が……どうなって……」ワナワナ
綯「うるさい」ドスッ
倫子「ぐっ……はぁ゛ぁ゛っ!?!?!?」バタンッ!!
紅莉栖「おかべぇっ!!!!」ポロポロ
綯「両手を使えなくしてやるよ。ケータイがいじれないようにな」グサッ グサッ
倫子「……ぃぃぃぃぃぃぃぃあああああああああああああああ!!!!!!!!」
まゆり「やめてぇ!!!」
675: 2015/12/16(水) 03:38:42.38 ID:gd8Eaw7Mo
紅莉栖「まゆりっ!? どうして戻ってきたのっ!?」
まゆり「る、るかちゃんのコスを置き忘れちゃって……」オロオロ
綯「なんだ、椎名まゆりか」グサッ グサッ
倫子「うわぁぁぁぁあああああっ!!! いやぁぁぁああああっ!!!」
まゆり「綯ちゃんっ! やめてぇっ!」ポロポロ
紅莉栖「(……待って、まゆりは間もなく氏ぬ。でも今は生きている)」
紅莉栖「(この資源を使って時間を稼げれば、私が開発室まで這っていける……私なら手が使える……っ)」
紅莉栖「(考えてることサイテーだ……でも、今はそんなこと言ってられない……!)」
紅莉栖「まゆりっ!! 全力で綯を止めてぇ!! 岡部が氏んじゃうっ!!」ポロポロ
まゆり「う、うん! わかったよ、クリスちゃん!」タッ
綯「雑魚が1匹増えたところで……っ!?」
鈴羽「させ……ない……」ガシッ
綯「っ! 鬱陶しいっ!」ブンッ ブンッ
紅莉栖「今のうちに……岡部っ! 痛いの我慢して歩いてっ!!」ズルズル
倫子「まゆりぃぃぃぃぃっ!!!! 逃げてぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
紅莉栖「……っ!! ダメ、岡部、こっちに、こっちに来てよぉっ!!!」ポロポロ
まゆり「綯ちゃんっ! 落ち着いてっ! そんなことしたらダメだよぅ!!」ガシッ
綯「クソ、11歳の肉体じゃ思うように動けない……」ギリリ
676: 2015/12/16(水) 03:39:47.29 ID:gd8Eaw7Mo
綯「……そうか。ここで私が椎名まゆりを頃すのか」
綯「そういうことか。ふふっ。なるほど、それで……」
綯「氏ねよ椎名まゆり」グサッ
まゆり「ぅ、ぁっ……」バタッ
倫子「ま゛ゆ゛り゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ゛!!!!!!!!!」
まゆり「オカ……リンの、役に……た……て……」グタッ
綯「邪魔だ、阿万音鈴羽」ゲシッ
鈴羽「ぐぅっ!」
紅莉栖「X68000へ入力……電話レンジ起動……っ!! 岡部っ、ケータイ貸りるわよっ!!」
綯「行かせないっ!」タッ
紅莉栖「間に合ったぁっ!! 岡部、跳んでぇっ!!!」ピッ
倫子「うわああああああああああああああああああああ――――――――――
677: 2015/12/16(水) 03:40:49.84 ID:gd8Eaw7Mo
「逃げられると思うな、岡部倫子」
「お前は15年後に頃してやる」
678: 2015/12/16(水) 03:41:37.15 ID:gd8Eaw7Mo
――――――――――――――――――――――
2010年8月13日19時53分 → 2010年8月13日13時53分
――――――――――――――――――――――
679: 2015/12/16(水) 03:42:18.71 ID:gd8Eaw7Mo
頭の中に芋虫がいる。
脳がかゆい。氏ぬほど痒い。
でも掻けない。
微細で、無数の針で、延々と脳を刺し貫かれているかのようだ。
脳に感覚なんてないはずなのに。
「……ぅあ、あ、あ、あ」
まゆり……まゆり……まゆり……
あいつは、綯に刺されて、血まみれで……血の……臭い……
無惨な氏に方……断末魔……
『オカ……リンの、役に……た……て……』
「ああ、あああ、ああああ」
――気が、狂う。
「うわぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああああああああああっ!!!!!!!!!」
680: 2015/12/16(水) 03:45:32.82 ID:gd8Eaw7Mo
2010年8月13日(金)13時53分
未来ガジェット研究所
紅莉栖「岡部っ!? どうしたの!?」
ダル「ど、どしたん!? 何か買ってこようか? それとも救急車?」
倫子「……っ! かはっ……はあっ!」ヨロヨロ
まゆり「オカリンっ!」ウルウル
倫子「まゆ……り……?」
倫子「まゆりっ!! 大丈夫かっ!? 綯は、綯はどうした!?」ガシッ
倫子「(がしっ? 手でまゆりの肩を掴んだのか。手の痛みは……無い。記憶の中にしか……)」
まゆり「ええっ? 綯ちゃんならまだ下にいるんじゃないかな……」
倫子「……そ、そうか。なら、よかった……」
倫子「(次第に意識はハッキリとしてきて、オレは"思い出した")」
『完成したらすぐに"実験はしない"って宣言して橋田とまゆりを解散させて』
『それから、未来から来る私に声を掛けてくれればいい。私が未来から来るまでは特に何もしないこと』
倫子「(結局あの綯はなんだったのだろう……まるで小学生とは思えん)」
倫子「(まさか、あいつも未来から……?)」
倫子「時計は……2時前、か」
倫子「(こっちの紅莉栖は、まだ24年間を経験していない紅莉栖なんだよな……)」
倫子「マシンは完成したか?」
紅莉栖「ふぇっ? えっと、もうすぐ完成するところだけど」
倫子「そうか……。オレのことは気にせず開発を続けてくれ」
まゆり「ホントにだいじょーぶ?」ウルウル
倫子「……まゆり。私は大丈夫よ」ニコ
ダル「うおう、どう見ても大丈夫じゃない件。完成したらみんな休憩した方がいいと思われ」
未来ガジェット研究所
紅莉栖「岡部っ!? どうしたの!?」
ダル「ど、どしたん!? 何か買ってこようか? それとも救急車?」
倫子「……っ! かはっ……はあっ!」ヨロヨロ
まゆり「オカリンっ!」ウルウル
倫子「まゆ……り……?」
倫子「まゆりっ!! 大丈夫かっ!? 綯は、綯はどうした!?」ガシッ
倫子「(がしっ? 手でまゆりの肩を掴んだのか。手の痛みは……無い。記憶の中にしか……)」
まゆり「ええっ? 綯ちゃんならまだ下にいるんじゃないかな……」
倫子「……そ、そうか。なら、よかった……」
倫子「(次第に意識はハッキリとしてきて、オレは"思い出した")」
『完成したらすぐに"実験はしない"って宣言して橋田とまゆりを解散させて』
『それから、未来から来る私に声を掛けてくれればいい。私が未来から来るまでは特に何もしないこと』
倫子「(結局あの綯はなんだったのだろう……まるで小学生とは思えん)」
倫子「(まさか、あいつも未来から……?)」
倫子「時計は……2時前、か」
倫子「(こっちの紅莉栖は、まだ24年間を経験していない紅莉栖なんだよな……)」
倫子「マシンは完成したか?」
紅莉栖「ふぇっ? えっと、もうすぐ完成するところだけど」
倫子「そうか……。オレのことは気にせず開発を続けてくれ」
まゆり「ホントにだいじょーぶ?」ウルウル
倫子「……まゆり。私は大丈夫よ」ニコ
ダル「うおう、どう見ても大丈夫じゃない件。完成したらみんな休憩した方がいいと思われ」
681: 2015/12/16(水) 03:46:54.36 ID:gd8Eaw7Mo
まゆり「できたー♪」
倫子「…………」
倫子「(あれ、この時オレは何か台詞を言ったような……)」
まゆり「るかちゃんのコス、クリスちゃんより先にできたよー」
紅莉栖「負けたわ。でも、こっちももう終わりよ」
ダル「はい、完成」b
倫子「っ! 実験は中止だっ!」
紅莉栖「えっ!?」
倫子「(しまった、いきなりすぎたか……?)」
紅莉栖「……2日間徹夜で作業してようやく完成した仕打ちがコレとか、ヤバい何かに目覚めそう」ハァハァ
ダル「牧瀬氏もこっち側へ来ちゃうといいお。楽になるのだぜ~」
倫子「(大丈夫かこいつら……さっきまでのことが嘘に思えるほど平和だな)」
倫子「……タイムリープには問題が山積みだ。その点についてじっくり検証したい」
紅莉栖「つまり私の心配をしてくれて……」ジュン
ダル「でもさ、完成祝いにちょっとでもパーッとやったりしないん?」
倫子「後日だ。それから、紅莉栖とちょっと相談したいことがあるから、悪いがまゆりとダルは帰ってくれ」
ダル「ちょ!? ラボはラブホじゃないんだからね!」
まゆり「そういうの、よくないと思うな……」
紅莉栖「お、お、お、岡部ぇ!? わ、私、2日も同じ下着穿いてるから、一旦ホテルに着替えを……」ポワワァ
倫子「ちっがーう!!!」
682: 2015/12/16(水) 03:48:16.92 ID:gd8Eaw7Mo
・・・
紅莉栖「さっき名前で呼んでくれたよね……。それで、えっと、その、岡部……?」ソワソワ
倫子「貴様が今考えている脳内お花畑なことは一切ないから安心しろ」
紅莉栖「ですよね……」シュン
倫子「まもなくお前のケータイに電話がかかってくる。それは、2034年からタイムリープしてくる熟女紅莉栖だ」
紅莉栖「……なんの冗談?」
倫子「お前の理論は完璧だった、ということだ。さすがはオレの助手」
紅莉栖「ほ、褒めてくれるのは嬉しいけど、さすがに論理が飛躍しているというかだな……」
prrrr prrrr
紅莉栖「嘘!? ホントに……?」
倫子「タイムリープマシンは完成している。ちょっと気持ちが悪くなるが、いや、かなり気持ち悪いが……」
紅莉栖「で、でも、意識の所在の問題とか、現在時点の問題とか、人格障害の問題とか……」ワナワナ
倫子「大丈夫だっ! 信じろっ!」
紅莉栖「うん信じるっ!」ピッ
紅莉栖「……ぅぐぅっ!」ヨロッ
倫子「だ、大丈夫か?」ダキッ
倫子「(というか、オレの時より気持ち悪くなさそうにしている。もしかしてその辺も未来のタイムリープマシンでは改良されているのか?)」
683: 2015/12/16(水) 03:50:29.17 ID:gd8Eaw7Mo
紅莉栖「……おか……べ……?」
倫子「無事、2010年へ到着したようだな」ニコ
紅莉栖「ほかべえええええええええうわああああああああああああああん!!!!!!!」ヒシッ
倫子「(やかましい!)」ビクッ
紅莉栖「会いたかったよぉぉぉぉぉおおおお!!!! さみしかったよぉぉぉぉおおおお!!!! こわかったよぉぉぉぉおおおお!!!」ギュゥッ
倫子「42歳のくせに子どもかっ!! わかったから離れろぉ!!」ゲシゲシ
紅莉栖「グスッ……エグッ……」ウルウル
倫子「……落ち着いたか?」
紅莉栖「う、うん……ごめんね岡部……」
倫子「1周目でも言ったがいちいち謝るな。お前は自分の行動を誇るべきだ」
紅莉栖「うん……えへへ……」
倫子「それで、だな。えっと……オレは"2周目"だ」
紅莉栖「2周目……了解。それじゃ、これからフェイリスの家に行ってくる。そっちはスズちゃんをお願い」
倫子「ま、待ってくれ。1つ聞きたいことがある」
紅莉栖「なに?」
倫子「あの綯の豹変ぶりはどういうことだ?」
紅莉栖「なえ、って、綯ちゃん? ……1周目でなにかあったの?」
倫子「それがだな……」
684: 2015/12/16(水) 03:55:44.28 ID:gd8Eaw7Mo
・・・
紅莉栖「……なるほどね。綯ちゃんがタイムリーパーになっている可能性。そしてそれは父の仇を取るため……」
倫子「ミスターブラウンはSERNの犬だと言ったな。ということは、綯もSERNの幹部となり、お前の作った完璧なタイムリープマシンで……?」
紅莉栖「いえ、この私の記憶に無いんだから、それはないと思う」
倫子「なら、一体どうやって……」
紅莉栖「……このラボのタイムリープマシンを使ったのかも」
倫子「だがこれはSERNが回収するんじゃないのか?」
紅莉栖「そう。だけど、このマシンの起動に必要なのは階下のブラウン管テレビたちの絶妙な配置、ビルの外壁の素粒子透過性、そしてSERNとの直通回線……」
倫子「つまり、ビルごとパクる必要があった、ということか」
紅莉栖「"かなり昔"の話……いえ、"ちょっと未来"の話をするわね」
紅莉栖「岡部と橋田は、この後SERNの、スイス国境付近にある施設に2011年12月21日まで軟禁される」
倫子「我が天才的頭脳とダルの超人的能力を利用するためだな……ッ!!」
紅莉栖「ううん。このビルと電話レンジ(仮)の大局的なデータを取るために1年半年近く時間をかけたってだけ」
倫子「……SERNめっ」ムッ
紅莉栖「SERNはデータを取り終わってから電話レンジ(仮)とペケロッパを回収」
紅莉栖「2人がヨーロッパを脱出して日本に帰国するのはその後」
倫子「お前を残して……か」
紅莉栖「SERNによる収束現象の実証実験だった、ってわけ。2人は泳がされてたの」
紅莉栖「何がナイトハルトだ、あの偽者……ヒイラギアキコも……ブツブツ……」
紅莉栖「たぶん帰国後、橋田はラボで電話レンジ(仮)、というかタイムリープマシンを組み立て直したはず」
紅莉栖「橋田はSERNからデータを盗んでいたはずで、2010年の夏に作ったものより高性能になっていたと思われる」
紅莉栖「そしてそのマシンはその後のワルキューレへと引き継がれていく……」
倫子「お前が何を言いたいのかようやく見えてきたぞ。つまり――」
倫子「……綯はワルキューレの裏切者」プルプル
685: 2015/12/16(水) 03:57:43.00 ID:gd8Eaw7Mo
紅莉栖「このタイムリープマシンは一度に最長で48時間しか跳躍できない」
倫子「なにっ!? そうなのか!?」
紅莉栖「それ以上の跳躍になると、指数関数的に危険度が増加する」
紅莉栖「意識、人格、そして記憶に障害が出てしまう……それじゃ、過去へ行ったって無意味」
紅莉栖「だから10年の跳躍をしようとすると、単純計算で1825回タイムリープする必要がある」
紅莉栖「まあ、2012年製のマシンが何十時間跳躍できるかによるんだけど」
倫子「……綯は気の遠くなるほどの回数、タイムリープをしてきた、ということだな」
倫子「なんという執念だ……」
紅莉栖「岡部にも執念を持ってもらいたいの。まゆりを救うという、絶対的な執念」
倫子「……わかっている。まゆりは、まゆりはオレの人質だ」
倫子「今までもまゆりとオレは支え合ってきたんだっ! 誰にも奪われたりはしないっ!」
倫子「SERNなんかに、300人委員会なんかに、収束なんかに殺されてたまるかぁっ!!」
ガチャンッ!!
紅莉栖「っ!?」
倫子「な、なんの音だ?」
686: 2015/12/16(水) 03:59:07.04 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「……なんだ、鈴羽が自転車を倒したのか。おい、そこのジョン・タイター! 話があるっ!」
鈴羽「ヒッ……」タッ
倫子「あっ、おい! 待てっ!」
紅莉栖「すぐに追いかけて、岡部っ!」
倫子「自転車を追いかけろと言うのかぁ!? 行くけどぉっ!! うわぁん!!」
中央通り
倫子「はぁっ……はぁっ……、体力は、無い、んだよぉ……はぁっ」ウルウル
倫子「そ、そうだ、電話してみるか……」ピッ
prrrr prrrr
鈴羽『…………』
倫子「鈴羽か! 聞きたいことがある!」
鈴羽『……ゴメン、きっとあたしのせいだ』
倫子「綯のことか!? それは、違う! 悪いのは全て300人委員会やSERNだっ!」
鈴羽『な、綯?……そっか、それもあたしのせい。あたしが甘えてたせいで……』
鈴羽『だから今度こそ、あたし行くよ。それじゃ』ピッ
倫子「おい! 鈴羽! おい!」
倫子「どこへ行こうと……って、そうか、そうだった」
倫子「……やつはラジ館にいるっ!」ダッ
687: 2015/12/16(水) 04:00:28.03 ID:gd8Eaw7Mo
ラジ館前
倫子「なっ……タイムマシンが、起動しているのか? 光っている……」
倫子「ラジ館のシャッターは半開き……中にはMTB……エレベータもエスカレータも動いていない……!」ダッ
・・・
倫子「ぜぇっ……はぁっ……ふぅっ……は、8階まで来たぞ……」
倫子「会議室は7月28日から時間が止まっているかのようだな。そしてこれが、タイムマシン……」
倫子「……鈴羽ぁぁぁっ!!!」ダッ
鈴羽「っ!? な、なんでレジェンドが、追いかけてくるのさ……」
倫子「お前はっ! ディストピアを破壊するために来たんだろっ! どこへ行くんだよっ!」
鈴羽「……行きたくても、行けない」ウルッ
倫子「は……? それは、どういう……」
鈴羽「……タイムマシン、動かない」グスッ
倫子「……っ!! お前、手が!? やけどをしているのか!? すぐ手当をっ!」
鈴羽「あたしは、なんのためにここまで……」ヒグッ
倫子「い、いいから来いっ! 話はそれからだっ!」
倫子「なっ……タイムマシンが、起動しているのか? 光っている……」
倫子「ラジ館のシャッターは半開き……中にはMTB……エレベータもエスカレータも動いていない……!」ダッ
・・・
倫子「ぜぇっ……はぁっ……ふぅっ……は、8階まで来たぞ……」
倫子「会議室は7月28日から時間が止まっているかのようだな。そしてこれが、タイムマシン……」
倫子「……鈴羽ぁぁぁっ!!!」ダッ
鈴羽「っ!? な、なんでレジェンドが、追いかけてくるのさ……」
倫子「お前はっ! ディストピアを破壊するために来たんだろっ! どこへ行くんだよっ!」
鈴羽「……行きたくても、行けない」ウルッ
倫子「は……? それは、どういう……」
鈴羽「……タイムマシン、動かない」グスッ
倫子「……っ!! お前、手が!? やけどをしているのか!? すぐ手当をっ!」
鈴羽「あたしは、なんのためにここまで……」ヒグッ
倫子「い、いいから来いっ! 話はそれからだっ!」
688: 2015/12/16(水) 04:01:23.10 ID:gd8Eaw7Mo
秋葉原タイムスタワー
秋葉邸
倫子「(あれからすぐ助手に電話をして、状況を説明したらココへ来いと命令された)」
倫子「(確かにここなら外部へ情報が漏れることはないが……)」
フェイリス「――取りあえず応急処置はしておいたニャ。まだ手、痛むかニャ?」
鈴羽「ううん、大丈夫。ありがとう、フェイリス」
紅莉栖「それで、タイムマシンは故障していたのね」
鈴羽「……うん」
紅莉栖「……フェイリス、岡部。ちょっとスズちゃ、じゃなかった、阿万音さんの手足を押さえてもらっていい?」
鈴羽「へ……?」
フェイリス「ラジャーニャー!」ガシッ
倫子「オレに命令をするなと……」ヒシッ
鈴羽「う、うわあっ!? レ、レジェンドに抱き着かれると、あたし……」ドキドキ
倫子「変なことを考えるなぁ! オレの周りこんなんばっかかよぉ!」
紅莉栖「阿万音さん、私はあなたの味方よ。同じラボメンだから。だから、冷静になって聞いてほしい」
鈴羽「……?」
紅莉栖「私は"タイムマシンの母"、牧瀬紅莉栖。2034年からタイムリープしてきた」
秋葉邸
倫子「(あれからすぐ助手に電話をして、状況を説明したらココへ来いと命令された)」
倫子「(確かにここなら外部へ情報が漏れることはないが……)」
フェイリス「――取りあえず応急処置はしておいたニャ。まだ手、痛むかニャ?」
鈴羽「ううん、大丈夫。ありがとう、フェイリス」
紅莉栖「それで、タイムマシンは故障していたのね」
鈴羽「……うん」
紅莉栖「……フェイリス、岡部。ちょっとスズちゃ、じゃなかった、阿万音さんの手足を押さえてもらっていい?」
鈴羽「へ……?」
フェイリス「ラジャーニャー!」ガシッ
倫子「オレに命令をするなと……」ヒシッ
鈴羽「う、うわあっ!? レ、レジェンドに抱き着かれると、あたし……」ドキドキ
倫子「変なことを考えるなぁ! オレの周りこんなんばっかかよぉ!」
紅莉栖「阿万音さん、私はあなたの味方よ。同じラボメンだから。だから、冷静になって聞いてほしい」
鈴羽「……?」
紅莉栖「私は"タイムマシンの母"、牧瀬紅莉栖。2034年からタイムリープしてきた」
689: 2015/12/16(水) 04:05:41.91 ID:gd8Eaw7Mo
・・・
紅莉栖「……とんでもなく無駄な時間を過ごしたわ」ハァ
倫子「さすがにあの立ち回りができた鈴羽を女子2人では押さえ切れなかった……イテテ……」ジンジン
フェイリス「ウニャァ……スズニャン、ひどいニャァ……」ヒリヒリ
鈴羽「んん~~~!! んんん~~~~~!!!!!」ジタバタ
黒木「一時はどうなるかと思いましたが、私もまだまだ現役ですな」ギュッ
倫子「(この最強執事、一体何者なんだ……)」ガクガク
自警団A「秋葉さん、これで問題ないかい?」
フェイリス「スズニャンを組み伏せるのを手伝ってくれてありがとうニャン」
幸高「君たちは引き続き警備と情報収集を頼むよ」
自警団B「了解だ」
倫子「今の人たちは……?」
幸高「ああ、秋葉原自警団の皆さんさ。と言っても、ほとんどが商店会の人だけどね」
幸高「紅莉栖くんから連絡を受けて、各自の判断で動いてもらっていたんだが、ちょうどうちで会議をしていたんだ」
紅莉栖「スズちゃん、よく聞いて。何度も言うけど、岡部もフェイリスも洗脳はされてない」
紅莉栖「私も、SERNの幹部になったのはすべてラボのため」
鈴羽「んん~~~!!!」ジタバタ
紅莉栖「まず、あなたのタイムマシンに関しては大丈夫。この私が直すから」
幸高「そして僕に教授との思い出があるから問題ない……ってことだけど、それはどうしてだい?」
紅莉栖「えっと……この阿万音さんがこれから1975年に行って、教授になるんです」
倫子「なにっ!? え、そうなのか!? もう、さっきから驚かされてばかりだ……」
倫子「(そういや、その教授とやらはSERNを警戒していたとか言っていたな……なるほど合点が行った……)」
幸高「ということは、目の前に居るのは、若かりし頃の教授……?」
紅莉栖「そういうことになります」
鈴羽「んんんんん~~~~~~!!!!」ジタバタ
幸高「若い頃はお転婆娘だった、というのは本当だったみたいですね、教授」フフッ
690: 2015/12/16(水) 04:07:04.18 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「……待て待てっ! それではなにか!? 鈴羽は1975年に行ったまま、帰ってこないということではないかっ!」
鈴羽「ん……」
紅莉栖「……推測なんだけど、橋田の作ったマシン、過去にしか行けないのね?」
鈴羽「…………」
フェイリス「そんニャァ!? 行ったら帰って来れないニャ!?」
倫子「な……っ! そ、そんなもん、タイムマシンとは呼べんっ!」
紅莉栖「岡部……」
倫子「ぐっ……」
『――あたしは別に父さんのことを恨んだりしてないよ、それどころか尊敬してる』
『――世界の支配構造を塗り替えるための、唯一の希望を残してくれたんだから』
倫子「……お前は、納得して跳んだんだな」
鈴羽「……ん」
幸高「こんな言い方は不謹慎かも知れないが、過去へ行っても教授には仲間ができる」
幸高「教授は学生から慕われる良き教師であり、敬愛すべき研究者だった」
幸高「それに、今の別れが最後じゃないよ」
倫子「え……あっ」
691: 2015/12/16(水) 04:10:08.14 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「そ、そうですよ! すでに妙齢を迎えているであろう教授の方の阿万音鈴羽は一体どこに居るんです!」
幸高「実は彼女は12年ほど前に大病を患ってしまってね。僕の知り合いに紹介してもらって、海外の病院で治療を受けているんだ」
鈴羽「ん……!?」
フェイリス「つまり、スズニャンが2人……! いよいよタイムトラベルって感じがしてきたニャー!」
幸高「だいぶ快方に向かってるみたいで、そろそろ退院できるって話も聞いたけど……」
幸高「えっと、これってタイムパラドックスになってしまうのかな?」
紅莉栖「いえ、その心配は無いです。2人は別世界線出身なので……。こっちのスズちゃんも頑張って2010年まで生きてね」
鈴羽「んんんんんん~~~~~!!!!!」ジタバタ
倫子「だが、そもそもだ。なぜ鈴羽は1975年へと行かなければならないのだ?」
倫子「その、フェイリスのパパさんと紅莉栖のパパさんにタイムマシン研究を指導するためか?」
紅莉栖「いいえ、それは副次的な結果に過ぎない。それに、うちのパパなら教授が居なくてもタイムマシン研究をしていたと思うわ」
紅莉栖「@ちゃんに書いてあったジョン・タイターの言葉を思い出して。何を必要としていたかしら」
倫子「なにって……たしか、オレたちと同じ、IBN5100……っ!」
倫子「な、なるほど! 1975年と言えば、IBN5100が発売された年ではないかっ!」
鈴羽「んん~~……」
倫子「というか紅莉栖。あの書き込みを知っているということは貴様、『栗悟飯とカメハメ波』だな?」
紅莉栖「ギクッ」
倫子「気持ち悪いクソコテ……」ジーッ
紅莉栖「24年前の黒歴史を掘り返さないでぇ!!」ピィィッ
692: 2015/12/16(水) 04:12:14.53 ID:gd8Eaw7Mo
紅莉栖「そろそろ猿ぐつわを外していいかしらね。手足は拘束したままにさせてもらうけど」スッ
鈴羽「ぷはっ。はぁ……、もう、好きにしなよ」
倫子「それで、鈴羽。お前の口から改めて聞きたい」
倫子「なぜ、過去へ跳んだ」
鈴羽「……あたしは、300人委員会の独裁的支配構造を破壊するための解放組織ワルキューレのメンバーなんだ」
鈴羽「SERN……牧瀬紅莉栖がタイムマシン開発に成功したことで、世界の秩序はたった2年で塗り替えられていった」
紅莉栖「やっぱりそうなのね……」
鈴羽「この時代に来たのは……、えっと……」
鈴羽「前に言ってくれたよね。その、あたしを軽蔑しないって……」
―――――
鈴羽『……私欲のために、過去に必要以上に干渉する行為を、見逃してくれる?』
倫子『私欲、か。だが、お前は気付いていないだろうが、その欲望こそが運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択なのだよ』
―――――
倫子「ああ、言った」
鈴羽「その……本当はあたし、この時代に寄るべきじゃなかった。まっすぐ任務を全うすべきだったんだ」
倫子「私欲、と言っていたな。それは……そうか。親父に会いたかったんだな」
鈴羽「だってワルキューレで神聖視されてるバレル・タイターやレジェンドを一目拝みたかったんだもんっ!」
倫子「ミーハーかっ!」
693: 2015/12/16(水) 04:13:42.33 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「ホントはね、父さんがこの世界に本当に居たんだ、ってことを確認できれば、自分の生きている意味に確信が持てると思ったんだ」
鈴羽「あたしはほら、時間軸や世界線から外れる使命を持ってたから。それでいて収束で生氏が決まってるから」
鈴羽「だから、自分の生きている意味が、わからなくなってたんだ……」
倫子「見つかったか?」
鈴羽「……うん」
倫子「ならばよし。未来のオレに変わって、今のオレがお前を赦すよ」
鈴羽「レジェンド……っ!!」ウルッ
倫子「それで、本当の使命とはなんなのだ?」
鈴羽「……世界線を変える。これが最終的な目標」
紅莉栖「それに関しては私も同じ。まゆりが氏なない世界線、巡り巡って、ディストピアが築かれない世界線へとアクティブを切り替える」
倫子「アトラクタフィールド理論、か」
鈴羽「今あたしたちがいるアトラクタフィールドαの範囲外に出る」
鈴羽「つまり、アトラクタフィールドβ上にあるβ世界線に跳び移るってこと」
紅莉栖「基本的にアトラクタフィールド同士は干渉できない。だから未来のSERNは2年でディストピアを作れたし、西暦2010年や2000年、1991年をより重要視していた」
フェイリス「世界規模の大事件がある年、ってことニャ?」
鈴羽「そう。まさにその年代がアトラクタフィールドの分岐点なんだ。多くの人間の生氏、つまり人類の歴史に関わってくるからね」
鈴羽「大分岐の年なら、アトラクタフィールドを切り替えるスイッチがまだ有効な状態で保存されている」
倫子「それが、タイムマシンが開発された今、というわけか」
694: 2015/12/16(水) 04:15:09.01 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「ここ秋葉原でタイムマシン開発が行われたことがSERNのディストピアに直結している」
鈴羽「だから、それを阻止するように過去を改変すればいい」
フェイリス「阻止って、どうするニャ?」
鈴羽「……父さんの遺書には、一番最初のメールデータが原因だって書いてあった」
倫子「遺書……。ということは、ダルは……っ」
フェイリス「ダルニャン……」
紅莉栖「それは私が生前の橋田にリークした情報。SERNの擬似スタンドアロンサーバに、例のDメールが保存されている、って」
紅莉栖「内容は、私が男に刺された、というもの。受信日時は2010年7月23日」
倫子「28日ではない、か。そう、たしかダルは1週間前に届いたと言っていた」
紅莉栖「だけどSERNがこのメールを発見した当時、私はSERNで研究していて、当然過去に男に刺されてなんかいないから解析班に回されることになった」
紅莉栖「これが世界で唯一のアトラクタフィールドβから跳んできたモノであり、アトラクタフィールド理論を裏付ける証拠だった」
紅莉栖「そして当然送り主は誰か、という話になる。それは――」
紅莉栖「岡部倫子」
695: 2015/12/16(水) 04:16:08.62 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「……あの時オレは電話レンジ(仮)の機能すらわかっていなかったというのに」グッ
紅莉栖「岡部、何度も言うけどあんたが責任を感じる必要は無いからね。悪いのは300人委員会だから」
鈴羽「自分こそが主犯のくせに、どの口が言うんだか……」
紅莉栖「…………」シュン
倫子「これ以上無い胸をえぐってやるな」
紅莉栖「ぐはぁ!?」
鈴羽「とにかく、まさにコレがディストピアの根源的な原因なんだ。コレさえ発見されなければSERNが過去のレジェンドを監視することは無くなる」
紅莉栖「ラボが監視されなければ私はSERNに招聘されることもないからね」
鈴羽「そしてタイムマシンは完成しなくなる。ディストピアは消滅する」
鈴羽「同時に、関連する収束である椎名まゆりの氏も解除されることになる」
倫子「……まゆりは、助かるんだな」
紅莉栖「たぶん、因果の関係で私たちはタイムマシン実験をしないか失敗してるはずなんだけど……」
倫子「(オレがDメールを使って世界線移動した時はいつも実験をしていない状況になっていた)」
倫子「(つまり、それがすべての実験に関して起きる、ということだろう)」
倫子「構わん。タイムマシンの開発の喜びなど、まゆりの命に比べればなんでもない」
フェイリス「でも、一体どうやってSERNはその1通のメールを捕捉したニャン?」
鈴羽「SERNはエシュロンのネットワークを利用して、世界規模で情報を傍受してるんだ」
幸高「エシュロン……まさか本当に実在していたとはね。実業家としてはちょっと許せないな」
696: 2015/12/16(水) 04:18:45.81 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「だから、捉えられた"最初のメールデータ"を、SERNのコンピュータから消去しないといけない」
倫子「……IBN5100、だな。だからこそやつらはIBN5100を血眼になって回収している、ということか」
倫子「(萌郁も、最初からそのつもりで……いや、悪いのはSERNだ。萌郁を傀儡のように操っていたのだから……)」
鈴羽「さすがレジェンド、そういうこと。そして、あたしの父さんなら間違いなくクラッキングを実行できる」
倫子「だがあれは失われてしまった……まだ助手がオレに対してヘーコラしていた頃は確実に手元にあったのだがな……」
紅莉栖「私の記憶には無いけど、もう昔の話よ……」フッ
鈴羽「あたしの役割は、君たちにIBN5100を託すことなんだよ。1975年に行って手に入れる」
倫子「待て待て。何もそこまでしなくても、パソコン1台くらい世界のどこかに転がっているはずだろう」
鈴羽「さすがにそれはSERNを侮りすぎてるよ」
紅莉栖「たとえ有ったとしても岡部は入手することができない。絶対に」
倫子「……収束というやつか。ゆえに過去改変でのみ入手できる、と言いたいのだな」
フェイリス「なら、病院に居る方のスズニャンがIBN5100を持っているんじゃないかニャ?」
697: 2015/12/16(水) 04:19:51.83 ID:gd8Eaw7Mo
紅莉栖「幸高おじさま、何か聞いていませんか?」
幸高「残念ながら、教授とレトロPCの話題をしたことはなかったと思うよ」
倫子「ということは、妙齢鈴羽はIBN5100を入手できなかったのか?」
紅莉栖「そうとは限らないし、そもそも50代の阿万音さんは別世界線出身の別個体よ」
紅莉栖「こっちのスズちゃんが過去に跳んだ時点で世界線が変動する可能性がある。つまり、IBN5100が現在に届けられるという過去改変」
鈴羽「あたし自身には観測できないけど、レジェンドになら、ってわけ」
紅莉栖「リーディングシュタイナーね」
鈴羽「2036年時点だと、記憶は世界線間の自分との"情報伝達手段"かもしれないって説もSERNの研究者から出てるんだ」
紅莉栖「へぇ、そうなの。もしかして私の後輩が研究を続けたのかしら」
倫子「よし……! ならば善は急げだ。鈴羽には今すぐにでも1975年に跳んでもらおう」
紅莉栖「マシンのメンテが先ね。壊れていたんでしょう?」
鈴羽「うん……。8月9日の深夜、雷に打たれたみたい。中は水浸しだった」
倫子「というか、助手は直せるのか?」
紅莉栖「そもそも橋田にマシンの情報をリークしたのは私。"タイムマシンの母"に感謝しなさい」ドヤァ
鈴羽「こいつ……頭をライフルで撃ち抜きたい……っ!」
698: 2015/12/16(水) 04:21:43.41 ID:gd8Eaw7Mo
紅莉栖「……ねえ岡部。まゆりの、その、氏んじゃうとこ。もう見たくないよね?」
倫子「……当たり前だ。たとえなかったことになるとしても、まゆりを救えなかったという事実だけはオレの脳内に忘れ得ぬ記憶として残り続けるからな」
紅莉栖「私ね、3周目として、こういうシナリオを考えてる」
フェイリス「クーニャン、完全にクラスの委員長さんニャ」
紅莉栖「まずタイムリープマシンが完成する直前にリープする。完成したと同時に最大跳躍である48時間をリープして、8月11日まで跳ぶ」
倫子「む……? だが、そこには"お前"は居ないんじゃないか?」
紅莉栖「私は居ないけど、将来の天才メカニックは居る」
鈴羽「……父さん」
紅莉栖「橋田の技術でできるだけ直しておいてもらう。そして"この私"が13日の14時から橋田と同時にマシンを修理する」
紅莉栖「3時間。早くて午後5時までには修理できるはずよ」
倫子「(綯がタイムリープしてくる前にはなんとかなりそうか……)」
鈴羽「すごい……」
紅莉栖「スズちゃんっ!! もっと私を褒めてぇっ!!」ダキッ
鈴羽「ぎぃやあああああああああああっ!!!!!! 離れろおおおおおおおおおっ!!!!!」ジタバタ
倫子「……長年の監禁生活でHENTAI度が天井を突き破っているな」ゾワワァ
フェイリス「身の危険を感じるニャ」
699: 2015/12/16(水) 04:22:37.95 ID:gd8Eaw7Mo
紅莉栖「それともう1つ気を付けて欲しいことがある」
倫子「盗聴器、だな。そんなものがラボにあるとは信じたくないが……」
鈴羽「盗聴器なんか無くても、ほとんど話は下に筒抜けだったけどね」
倫子「綯までがタイムマシンの仕組みを理解していたくらいだからな……」
紅莉栖「岡部、店長さんからもらったものでラボにあるものって何がある?」
倫子「そうだな……IBN5100を運んでもらったが、今は無いし。あ、テレビがそうだった」
鈴羽「テレビ? それって、あたしと一緒に運んだやつ?」
紅莉栖「なるほどね。さすがブラウン管工房」
倫子「だ、だが、テレビに盗聴器など愚の骨頂だろう。テレビをつけている間は、テレビの音声がうるさくて盗聴などできまい」
紅莉栖「あんたもさすがに重要な会議をする時はテレビ消してたでしょ?」
倫子「ぐ、たしかに……」
鈴羽「ってことは、これから機密事項を話す時はテレビをつけてれば大丈夫ってことだね」
倫子「わかった。覚えておこう」
700: 2015/12/16(水) 04:23:40.20 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「それと、秋葉幸高、さん。1つ確認したいことがある」
幸高「なんですか、教授」
鈴羽「うっ……。えっと、"あたし"は12年間海外に居るんだよね?」
幸高「そうなりますね」
鈴羽「それじゃ……について、教授のあたしは何か言ってなかった?」ヒソヒソ
倫子「む?」
幸高「それは……2005年……青果店……」ヒソヒソ
鈴羽「あたしがどれだけ調べても……そういうことだね?」ヒソヒソ
幸高「ええ。この10年間……」ヒソヒソ
鈴羽「そっか、よかった……」
倫子「2人はなにをひそひそ話をしているんだ?」
フェイリス「こっちの話ニャーン♪」
鈴羽「あの、鳳凰院凶真。最後にさ、その、勇気をくれないかな……」モジモジ
倫子「あ、ああ。頼んだぞ。ラボメンナンバー008、阿万音鈴羽」ナデナデ
鈴羽「ふゎぁっ……///」
フェイリス「スズニャンずるーい! フェイリスもっ!」ピョン
倫子「なんでお前まですり寄ってくるんだ……仕方ないな」ナデナデ
フェイリス「ニャフフ~♪」ゴロゴロ
紅莉栖「さあ早くタイムリープしないとぉっ!! ラボに急ぐわよ岡部ぇっ!!」ガシッ
倫子「わ、ちょ、引っ張るなっ!! こける、こけるぅぅっ!! うわぁん!!」
701: 2015/12/16(水) 04:24:54.38 ID:gd8Eaw7Mo
――――――――――――――――――――――
2010年8月13日17時38分 → 2010年8月11日14時21分
――――――――――――――――――――――
702: 2015/12/16(水) 04:25:39.77 ID:gd8Eaw7Mo
2010年8月11日(水)13時41分
中央通り
鈴羽「(今日も父さんとデー……、秋葉原の街を探索できるかと思ったのに、父さんもバイトしてたんだね)」ハァ
鈴羽「(でも、あたしもラボメンかぁ……えへへ)」
天王寺「なにかいいことでもあったのか?」
鈴羽「まあね」ニヘラ
天王寺「そうかよ。俺はちょっと出てくる。暫く留守番してろ」
天王寺「サボんじゃねーぞ」
鈴羽「うぃーっす(サボろう)」
鈴羽「さて、自転車磨きでも……お、椎名まゆり!」
まゆり「スズさーん! トゥットゥルー♪」
鈴羽「トゥットゥルー。あれ、鳳凰院凶真と買い物に出てたんじゃなかったっけ?」
まゆり「えっとね、オカリンは眠っちゃったので、まゆしぃはフブキちゃん用のコスをラボに取りに来たのです」
鈴羽「寝ちゃったの? 外で?」
鈴羽「(さすがレジェンド……女傑は豪快じゃないとね!)」
中央通り
鈴羽「(今日も父さんとデー……、秋葉原の街を探索できるかと思ったのに、父さんもバイトしてたんだね)」ハァ
鈴羽「(でも、あたしもラボメンかぁ……えへへ)」
天王寺「なにかいいことでもあったのか?」
鈴羽「まあね」ニヘラ
天王寺「そうかよ。俺はちょっと出てくる。暫く留守番してろ」
天王寺「サボんじゃねーぞ」
鈴羽「うぃーっす(サボろう)」
鈴羽「さて、自転車磨きでも……お、椎名まゆり!」
まゆり「スズさーん! トゥットゥルー♪」
鈴羽「トゥットゥルー。あれ、鳳凰院凶真と買い物に出てたんじゃなかったっけ?」
まゆり「えっとね、オカリンは眠っちゃったので、まゆしぃはフブキちゃん用のコスをラボに取りに来たのです」
鈴羽「寝ちゃったの? 外で?」
鈴羽「(さすがレジェンド……女傑は豪快じゃないとね!)」
703: 2015/12/16(水) 04:26:41.75 ID:gd8Eaw7Mo
2010年8月11日(水)14時21分
中央通り
鈴羽「(レジェンドはどの辺で寝てるのかな?)」キョロキョロ
鈴羽「(ラボメン……みんないいやつだなぁ)」
鈴羽「(ますますワルキューレの母体組織だってのが信じられなくなっちゃう)」
prrrr prrrr
鈴羽「(噂をすれば、レジェンドからっ!) うぃーっす!」ピッ
倫子『……バイト戦士か』
鈴羽「どったの? なんかちょっとテンション低くない?」
倫子『今お前と話すべきことはたくさんあるが、まず伝えないといけないことがある』
倫子『――お前のタイムマシンが壊れている』
鈴羽「……っ!?」
中央通り
鈴羽「(レジェンドはどの辺で寝てるのかな?)」キョロキョロ
鈴羽「(ラボメン……みんないいやつだなぁ)」
鈴羽「(ますますワルキューレの母体組織だってのが信じられなくなっちゃう)」
prrrr prrrr
鈴羽「(噂をすれば、レジェンドからっ!) うぃーっす!」ピッ
倫子『……バイト戦士か』
鈴羽「どったの? なんかちょっとテンション低くない?」
倫子『今お前と話すべきことはたくさんあるが、まず伝えないといけないことがある』
倫子『――お前のタイムマシンが壊れている』
鈴羽「……っ!?」
704: 2015/12/16(水) 04:27:26.26 ID:gd8Eaw7Mo
ラジ館8階
鈴羽「そんなっ!? まさか、昨日の雷雨で!?」
倫子「……触らない方がいい。火傷するぞ」
鈴羽「ど、どうして……そんな、一体、なにが……」ワナワナ
鈴羽「それより……君は、誰なんだ……"岡部倫子"……」
倫子「……質問が間違っているぞ、阿万音鈴羽」
倫子「"誰か"、じゃない。"いつか"、と聞け」
鈴羽「なにを……っ!?」
倫子「察しが良くて助かる」
倫子「そう。オレは……」
倫子「――タイムリーパーだ」
倫子「(ヤバイ、オレかっこよすぎるだろ……鈴羽、こいつ、完全にビビってるぞ、ククク……)」
鈴羽「そんなっ!? まさか、昨日の雷雨で!?」
倫子「……触らない方がいい。火傷するぞ」
鈴羽「ど、どうして……そんな、一体、なにが……」ワナワナ
鈴羽「それより……君は、誰なんだ……"岡部倫子"……」
倫子「……質問が間違っているぞ、阿万音鈴羽」
倫子「"誰か"、じゃない。"いつか"、と聞け」
鈴羽「なにを……っ!?」
倫子「察しが良くて助かる」
倫子「そう。オレは……」
倫子「――タイムリーパーだ」
倫子「(ヤバイ、オレかっこよすぎるだろ……鈴羽、こいつ、完全にビビってるぞ、ククク……)」
705: 2015/12/16(水) 04:28:29.38 ID:gd8Eaw7Mo
未来ガジェット研究所
倫子「――ということなんだ」
鈴羽「…………」
ダル「まさかそんなことになってるなんて……ごめんな、鈴羽。未来ではもっとちゃんとしたマシンを作るお」
鈴羽「父さんが悪いんじゃないよ……」
倫子「(TVの音量を上げ、まゆり、ダル、紅莉栖、鈴羽の居る前で、タイムマシン修理計画について説明した)」
倫子「(無論、まゆりの氏亡話と"タイムマシンの母"の話、そして未来の綯の話は避けたけどな)」
ダル「じゃ、さっそく見に行ってみるべき」
倫子「さすが父親。娘のピンチは放っておけないよな」
倫子「(やっぱりダルは良いやつだ)」
鈴羽「父さん……。その、ありがと」
ダル「オーキードーキー、鈴羽」ニッ
紅莉栖「橋田、あんた今最高に輝いてるわ……」
倫子「――ということなんだ」
鈴羽「…………」
ダル「まさかそんなことになってるなんて……ごめんな、鈴羽。未来ではもっとちゃんとしたマシンを作るお」
鈴羽「父さんが悪いんじゃないよ……」
倫子「(TVの音量を上げ、まゆり、ダル、紅莉栖、鈴羽の居る前で、タイムマシン修理計画について説明した)」
倫子「(無論、まゆりの氏亡話と"タイムマシンの母"の話、そして未来の綯の話は避けたけどな)」
ダル「じゃ、さっそく見に行ってみるべき」
倫子「さすが父親。娘のピンチは放っておけないよな」
倫子「(やっぱりダルは良いやつだ)」
鈴羽「父さん……。その、ありがと」
ダル「オーキードーキー、鈴羽」ニッ
紅莉栖「橋田、あんた今最高に輝いてるわ……」
706: 2015/12/16(水) 04:29:24.47 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「あっ。そう言えば、コレ、見覚えあったりする?」スッ
まゆり「ピンバッジ?」
倫子「『O、S、H、M、K、U、F、A 7010』……?」
鈴羽「これ、父さんの形見なんだよね」
ダル「ちょ、さりげなく爆弾発言」
倫子「ダルは2033年に氏ぬらしい。それまでに積みゲーはやりつくしておけよ」
ダル「これはメディアミックスに手を出してる場合じゃなかったお!」
紅莉栖「軽っ!」
まゆり「でも、このバッジ、どういう意味だろうねー?」
倫子「たしかに……何かの暗号か? ダル、覚えは?」
ダル「わかんね。つかそれよりも今はタイムマシンだろ常考」
倫子「そうだな。オレたちはラジ館へ向かおう。紅莉栖、ダルの工口ゲは後で貸してやるからラボでやるなよ?」
紅莉栖「え……な、なななな、なあああああああっ!?!?!?」
707: 2015/12/16(水) 04:30:27.30 ID:gd8Eaw7Mo
ラジ館8階
倫子「(まゆりはコス作り、紅莉栖はタイムリープマシン作りに専念させることにして、橋田家とオレはタイムマシンへと足を運んだ)」
倫子「どうだ?」
ダル「……この中、むちゃくちゃ暑い件について」
鈴羽「直りそう?」
ダル「いや、まだ確証はないけど。でもさ、ちょっと触ってみて思ったんだよね」
ダル「これって、なんか電話レンジと似てるかもって」
倫子「それは偶然ではない。なにせ"お前"が作ったのだからな」
ダル「いや作ってねーし」
倫子「2日で直せ」
ダル「うはー。過去最大級のオカリンのムチャ振り。つかなんで2日なん?」
倫子「そ、それは……。…………」ウルッ
鈴羽「っていうか、父さん。今日バイトあるんじゃなかったの?」アセッ
ダル「え? あ、ああ。ソッコーで片付けてきたから大丈夫なんだな、これが」
倫子「(鈴羽、うまく話を逸らしたな。まゆりの話は、できることならダルにはしたくない)」
鈴羽「ふぅん……ホントにバイトだったの?」ジトッ
ダル「まだ彼女も居ないのに浮気を疑われるとか、僕かわいそす……」
prrrr prrrr
ダル「あれ、牧瀬氏かな。はーい、もしも……」
ダル「ぐふぉっ!?!?」ヨロッ バタンッ
倫子「ダルっ!?」
鈴羽「父さんっ!?」
倫子「(まゆりはコス作り、紅莉栖はタイムリープマシン作りに専念させることにして、橋田家とオレはタイムマシンへと足を運んだ)」
倫子「どうだ?」
ダル「……この中、むちゃくちゃ暑い件について」
鈴羽「直りそう?」
ダル「いや、まだ確証はないけど。でもさ、ちょっと触ってみて思ったんだよね」
ダル「これって、なんか電話レンジと似てるかもって」
倫子「それは偶然ではない。なにせ"お前"が作ったのだからな」
ダル「いや作ってねーし」
倫子「2日で直せ」
ダル「うはー。過去最大級のオカリンのムチャ振り。つかなんで2日なん?」
倫子「そ、それは……。…………」ウルッ
鈴羽「っていうか、父さん。今日バイトあるんじゃなかったの?」アセッ
ダル「え? あ、ああ。ソッコーで片付けてきたから大丈夫なんだな、これが」
倫子「(鈴羽、うまく話を逸らしたな。まゆりの話は、できることならダルにはしたくない)」
鈴羽「ふぅん……ホントにバイトだったの?」ジトッ
ダル「まだ彼女も居ないのに浮気を疑われるとか、僕かわいそす……」
prrrr prrrr
ダル「あれ、牧瀬氏かな。はーい、もしも……」
ダル「ぐふぉっ!?!?」ヨロッ バタンッ
倫子「ダルっ!?」
鈴羽「父さんっ!?」
708: 2015/12/16(水) 04:31:51.87 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「大丈夫!? もしかして、熱中症!?」
ダル「ぐっ……はぁ、はぁ。これは確かに、ヘビーだな……」
倫子「おいっ! 突然どうした……っ、まさか」
ダル「……おお、オカリン。8年ぶり」
倫子「もしや貴様も未来から……?」
ダル「うん。牧瀬氏には頭が上がらないね」ヨイショ
ダル「――そう、僕は2033年から来た」
倫子「やはり……っ!」
鈴羽「えっ? ど、どういうこと?」
709: 2015/12/16(水) 04:33:42.78 ID:gd8Eaw7Mo
ダル「タイムマシンを完成させる前に僕が殺されることはオカリンたちの情報からわかってたから、ギリギリまで粘って過去へリープしたんだ」
ダル「どのみちタイムマシンを完成させることは収束のせいで不可能だったみたいだしね」
倫子「だが、1周目と2周目では貴様はタイムリープしてこなかったぞ」
ダル「3周目のオカリンには、タイムマシンが壊れてるって知識があったでしょ? それが僕を過去へ来させる動機になった、でいいかな」
ダル「もちろん、タイムリープでは世界線は大幅に変動しないことはわかってる。でも、僕はじっとしていられなかった」
倫子「お前が今リープしてこなかったはずの、お前の中の記憶ではどうなっているのだ?」
ダル「たしか、未来の牧瀬氏が13日にやってきてマシンを直したんだ。それがちょっと悔しかったってのもある」
ダル「で、42歳の僕が存在するのは当然オカリンがタイムリープできなかった可能性の未来ってことだから、13日の夜にラボは襲撃された」
ダル「それでちょっとオカリン1人に任せるのは色々心配になってさ」
倫子「……なるほど、だいたいわかった」ガクッ
ダル「まさか雷程度でやられるなんてね」
ダル「娘を危険な目に遭わせたのが他でもない、僕だ、なんてのは、さすがに許せなかったんだよ」
鈴羽「父……さん……」ウルッ
ダル「もう何年振りかな。随分大きくなったね、鈴羽」
鈴羽「……泣かないよ。あたしは、戦士だから……」グスッ
ダル「ああ、ここで泣いてる場合じゃない。なんとかしないとな」ニコ
710: 2015/12/16(水) 04:34:21.24 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「というか、ダルよ。なんか話し方おかしくないか?」
鈴羽「あたしの子どもの頃の記憶だと、これが普通の父さんのしゃべり方だけど」
ダル「いやぁ、若気の至りっつーか? 倫子たんがこっちの方がいいってんなら戻しちゃってもいいんだからねっ!」
倫子「倫子たん言うなぁ! ダンディな方で頼むっ!」
ダル「オーキードーキー」ニッ
711: 2015/12/16(水) 04:35:19.84 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「それで、どうだ? "お前"から見たマシンの調子は」
ダル「……これなら半日で直せる。幸い、VGL<ヴァリアブルグラビティロック>が壊れたわけじゃないから、過去へ跳んだらちゃんとラジ館の屋上に出るようになってる」
鈴羽「ホントっ!」パァァ
ダル「落雷のせいで三カ所回路が焼き切れてるだけだな。えっと、僕これから買い物行ってくる」
倫子「パーツの買い出しならオレが行く」
ダル「いや、ちょっとこれオカリンだとわからないと思うから、僕が行くよ」
倫子「むぅ……そうか」
ダル「今日の深夜0時までにはフライト可能になると思う。それまで2人とも遊んできなよ」
鈴羽「全部父さんに押し付けるなんでできないよ」
ダル「そんなに人数いても作業できないし」
倫子「……わかった。オレが責任持って鈴羽の面倒を見よう。ほら、行くぞ」
鈴羽「え……う、うん。わかったよ……」
ダル「(ごめんな、鈴羽。僕は鈴羽にどんな顔して父親づらすればいいのかわからないんだ……)」
??「……フフフ」
712: 2015/12/16(水) 04:36:02.99 ID:gd8Eaw7Mo
ラジ館屋上
??「あれれぇ? おかしいですねぇ。どうして私の頃すべき人間がこの時代に居るんです?」
??「ご丁寧にリープマシンに時限爆弾をつけて足跡をたどれないようにしておくなんて。滑稽」
??「いやはや、それにしても日本の警察は優秀ですねぇ。2010年8月11日、ラジ館に侵入者ありと。報告ご苦労様です」
??「もちろんラウンダーが握りつぶさせてもらいますけどねぇ? 警察が出る幕じゃないんで」
??「親子そろって、とんだおバカさんですねぇ。しかも娘はFBの元でバイトをしてるなんて!」
??「あのハゲ親父、私より下のくせにいちいち文句言いやがって……メルアド寄越すくらい別にいいじゃないですか……」ブツブツ
??「後で仕返ししておきます。まあ、それはそれとして」
??「――私のユートピアは、誰にも壊させませんから」
??「あれれぇ? おかしいですねぇ。どうして私の頃すべき人間がこの時代に居るんです?」
??「ご丁寧にリープマシンに時限爆弾をつけて足跡をたどれないようにしておくなんて。滑稽」
??「いやはや、それにしても日本の警察は優秀ですねぇ。2010年8月11日、ラジ館に侵入者ありと。報告ご苦労様です」
??「もちろんラウンダーが握りつぶさせてもらいますけどねぇ? 警察が出る幕じゃないんで」
??「親子そろって、とんだおバカさんですねぇ。しかも娘はFBの元でバイトをしてるなんて!」
??「あのハゲ親父、私より下のくせにいちいち文句言いやがって……メルアド寄越すくらい別にいいじゃないですか……」ブツブツ
??「後で仕返ししておきます。まあ、それはそれとして」
??「――私のユートピアは、誰にも壊させませんから」
713: 2015/12/16(水) 04:37:00.76 ID:gd8Eaw7Mo
未来ガジェット研究所
倫子「(まゆりには悪かったが、家でコス作りをするように命じておいた。従順に応じてくれたのは、鈴羽がそろそろタイムトラベルしなければならないことを悟ったからだろうか)」
倫子「とにかく、紅莉栖にはタイムリープマシンに専念してもらいたいというわけだ」
紅莉栖「襲撃……IBN5100……綯ちゃんのタイムリープ……なるほどね。それで、まゆりを救うためのキーアイテムがコレ、ってわけか」
倫子「13日の14時までに完成させてほしい」
紅莉栖「それじゃ、コレとコレとコレ、追加で買い出しお願い」
倫子「む? あのパーツは要らないのか?」
紅莉栖「えっ? 今のところ使う予定はないけど、もしかして後々必要になるの?」
倫子「なると思うぞ。12日の夕方、お前がオレに使いパシリさせたものだからな」
紅莉栖「じゃぁ、それもお願い」
倫子「うむ。では、行ってくる」ガチャ
紅莉栖「阿万音さんは……」
鈴羽「あ、コーヒーでも淹れようか?」
紅莉栖「ふふっ。サンクス。それじゃ、サポートよろしく」
倫子「(まゆりには悪かったが、家でコス作りをするように命じておいた。従順に応じてくれたのは、鈴羽がそろそろタイムトラベルしなければならないことを悟ったからだろうか)」
倫子「とにかく、紅莉栖にはタイムリープマシンに専念してもらいたいというわけだ」
紅莉栖「襲撃……IBN5100……綯ちゃんのタイムリープ……なるほどね。それで、まゆりを救うためのキーアイテムがコレ、ってわけか」
倫子「13日の14時までに完成させてほしい」
紅莉栖「それじゃ、コレとコレとコレ、追加で買い出しお願い」
倫子「む? あのパーツは要らないのか?」
紅莉栖「えっ? 今のところ使う予定はないけど、もしかして後々必要になるの?」
倫子「なると思うぞ。12日の夕方、お前がオレに使いパシリさせたものだからな」
紅莉栖「じゃぁ、それもお願い」
倫子「うむ。では、行ってくる」ガチャ
紅莉栖「阿万音さんは……」
鈴羽「あ、コーヒーでも淹れようか?」
紅莉栖「ふふっ。サンクス。それじゃ、サポートよろしく」
714: 2015/12/16(水) 04:37:57.32 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「……ねえ、牧瀬紅莉栖。君はさ、SERNに興味ある?」
紅莉栖「……今のところ、SERNは許せない。このラボを滅茶苦茶にする主犯でしょ?」
鈴羽「この時代に来てから君を見ていて……君がSERNの研究員になっているとは思えなくなった」
紅莉栖「でも未来ではそうなっていた。ねえ、もしかしてなんだけど――」
紅莉栖「私がSERNに潜入するのって、スパイ行為のためなんじゃない?」
鈴羽「それって、どういう……?」
紅莉栖「未来ではSERNがタイムマシン技術を独占するのよね? だったら、橋田はどうやってタイムマシンを作ったの?」
鈴羽「――っ!!」
紅莉栖「まだわからないけど、でも、私なら岡部のために、このラボのために人生をかけてスパイになれると思う」
鈴羽「どうして君はそこまでして……」
紅莉栖「確かに私はあいつと出会ってからまだ2週間も経ってない。でも、どうしてかな。私の人生のほとんどはあいつで満たされてるような気がするの」
紅莉栖「父が家を出て、途方に暮れていた私を導いてくれたような……」
鈴羽「……もしかして、君もリーディングシュタイナーを?」
紅莉栖「さあ。ともかく、岡部がかわいいから、でファイナルアンサー」
鈴羽「それは同意」
715: 2015/12/16(水) 04:38:40.69 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「あたしね、牧瀬紅莉栖を24年後の未来で殺そうとしたんだ」
紅莉栖「…………」
鈴羽「その時の君は怪しく笑っていたよ。まるで自分を頃して見ろと言わんばかりに」
紅莉栖「それ、もしかして岡部の指示?」
鈴羽「ううん。レジェンドはあたしがワルキューレに入る前に氏んでる」
鈴羽「今から15年後、SERNによって殺されるんだ」
紅莉栖「……聞かなきゃよかったかも」ウルウル
鈴羽「スキなの? 岡部倫子のことが」
紅莉栖「だって可愛いじゃないっ!! ホントはとっても美人なのに自分から残念系女子を演じてて厨二病全開でっ!!」
紅莉栖「倫子たんハァハァ!! 倫子たんハァハァ!!」
鈴羽「いや、それは同意するけど、一応同性だよね」
紅莉栖「悪いっ!? なにか文句あるのっ!?!?」キシャー
鈴羽「いえ、ないです」
716: 2015/12/16(水) 04:39:55.59 ID:gd8Eaw7Mo
柳林神社境内
鈴羽「――それでラボから逃げてきたってわけ。あたしが牧瀬紅莉栖のそばに居ると作業が進まないみたい」
るか「ふふっ。牧瀬さんもかわいい方ですね」
鈴羽「それに、一応お世話になったし、挨拶しとかないと、って思ってさ」
るか「いえ、そんな。こちらこそ父が御迷惑をおかけしまして……」
鈴羽「一宿一飯の恩、ってやつだからいいんだよ。コスプレ? もできて楽しかったし」
るか「それでしたら、ボクも阿万音さんと同じラボメンですから」
鈴羽「そうだった。ホント、鳳凰院凶真の求心力はすごいや」
るか「きゅ、きゅうしん……?」
るか「でも、本当に行ってしまわれるんですね。向こうで落ち着いたら、お手紙でもいただければと思います」
鈴羽「……うん。そうだね。何年かかっても、あたしは必ず帰ってくるよ」
鈴羽「――それでラボから逃げてきたってわけ。あたしが牧瀬紅莉栖のそばに居ると作業が進まないみたい」
るか「ふふっ。牧瀬さんもかわいい方ですね」
鈴羽「それに、一応お世話になったし、挨拶しとかないと、って思ってさ」
るか「いえ、そんな。こちらこそ父が御迷惑をおかけしまして……」
鈴羽「一宿一飯の恩、ってやつだからいいんだよ。コスプレ? もできて楽しかったし」
るか「それでしたら、ボクも阿万音さんと同じラボメンですから」
鈴羽「そうだった。ホント、鳳凰院凶真の求心力はすごいや」
るか「きゅ、きゅうしん……?」
るか「でも、本当に行ってしまわれるんですね。向こうで落ち着いたら、お手紙でもいただければと思います」
鈴羽「……うん。そうだね。何年かかっても、あたしは必ず帰ってくるよ」
717: 2015/12/16(水) 04:40:38.94 ID:gd8Eaw7Mo
??「あのー、すいません。少しお尋ねしたいことが」
鈴羽「おっと、女子高校生の参拝客さんかな」
るか「どうされました?」
??「この辺にニコライ堂があると伺ったのですが」
るか「あ、はい。それでしたら神田川を渡らずに御茶ノ水方面へ行けば、駿河台の坂の上にありますよ」
鈴羽「稲荷神社でキリスト教会の場所を尋ねるなんて、君って結構アレだね」
??「ふふっ。そうですね。でも、キリストの教えは素晴らしいですよ」
??「もし弱き者が危機にさらされてる場面に遭ったら、あなたならどうしますか?」
鈴羽「……え?」
718: 2015/12/16(水) 04:47:00.99 ID:gd8Eaw7Mo
??「世の中には大した理由も無く弱者を踏みにじる人がいます」
るか「あ、あの、境内での宗教勧誘はちょっと……」
鈴羽「そんなやつが居たら、あたしならタコ殴りにしてあげるよ」
??「でも、外国で起こった事件だったら? 既に起こった事件だったら? あるいは――」
??「未来で起こる事件だったら?」
鈴羽「……?」
??「そう。たとえどんなヒーローがいても弱き人すべては守れません」
??「必要なのは、管理なんです。全人類を平等に扱う、管理」
伽夜乃「私は伽夜乃と申します。以後お見知りおきを」ペコリ
伽夜乃「――"橋田鈴羽"さん」クルッ スタ スタ ……
るか「えっと……?」
鈴羽「なんだったんだ……?」
719: 2015/12/16(水) 04:48:30.46 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「『最終チェックにもう少し時間が欲しい。 パパより』……ってことで、ごめん。漆原るか。もう一泊させて」
るか「はい、もちろんです。せっかくですから、お母さんに頼んでおいしいものを用意してもらいましょう」
鈴羽「あ、だったらあたし、カレーがいいな! 漆原家のカレーは極上だもんね!」
るか「お褒めに預かり光栄です。そう言えば、橋田さんは……」
鈴羽「……本当は父さんもゆっくり休ませてあげたいけど、あの調子だと梃子でも動かなそうだから」
るか「……そうですか」
栄輔「今日が最後だなんて、寂しいね。それで、阿万音さん用に草薙少佐コスを用意してみたんだが、お風呂上がりにでも着てみるといい」
るか「って、お父さんまでコスプレを!?」
鈴羽「っ!? そ、その恰好は、元FOXHOUND隊員……! 母さんが良く話してた、伝説の傭兵……」
栄輔「いや、僕もたまには自分で着てみようかなと思ってね」
栄輔「阿万音さんはこういうのが好きだと娘から聞いてたんだが、どうだい? 僕もまだまだいけるだろう?」
るか「もう、お父さん……」
720: 2015/12/16(水) 04:50:05.76 ID:gd8Eaw7Mo
2010年8月12日(木)7時10分
未来ガジェット研究所
ピピピ ピピピ
倫子「――SERNの襲撃かっ!?」
紅莉栖「グッモーニン。ホント、ぐっすり寝てたわね。どう? 疲れ取れた?」
倫子「あ、ああ。そうだった……何度もタイムリープして忘れていたが、精神的疲労だけは蓄積してるな……」
鈴羽「それで、レジェンドに見て欲しいものがあるんだ」トンッ
【 0.33871 】
倫子「……ニキシー管か?」
鈴羽「これは世界線変動率<ダイバージェンス>メーター。今、あたしたちがいるこの世界線がどこなのかを数値で表すことができるんだよ」
鈴羽「あたしが元々いた2036年の世界線を0%とした数値だから、あくまで相対的なものなんだけどさ」
紅莉栖「つまり、"2010年の大分岐が2036年にすべて収束する"と置いた系において、ニュートン極限のミンコフスキー時空における時間軸方向に垂直な世界線の振幅を――」
倫子「や、やめろォ……」
紅莉栖「アインシュタイン好きが聞いて呆れるわね」プププ
倫子「というかこれ、なぜ小数点第6位がないんだ?」
鈴羽「へ? 元々小数点は5桁だったんだけど」
倫子「……いや、済まない。記憶違いだ」
倫子「(初めて見るコレに、ニキシー管が1本足りないような気がした。これはリーディングシュタイナーとは関係ないただの記憶違いだろう)」
未来ガジェット研究所
ピピピ ピピピ
倫子「――SERNの襲撃かっ!?」
紅莉栖「グッモーニン。ホント、ぐっすり寝てたわね。どう? 疲れ取れた?」
倫子「あ、ああ。そうだった……何度もタイムリープして忘れていたが、精神的疲労だけは蓄積してるな……」
鈴羽「それで、レジェンドに見て欲しいものがあるんだ」トンッ
【 0.33871 】
倫子「……ニキシー管か?」
鈴羽「これは世界線変動率<ダイバージェンス>メーター。今、あたしたちがいるこの世界線がどこなのかを数値で表すことができるんだよ」
鈴羽「あたしが元々いた2036年の世界線を0%とした数値だから、あくまで相対的なものなんだけどさ」
紅莉栖「つまり、"2010年の大分岐が2036年にすべて収束する"と置いた系において、ニュートン極限のミンコフスキー時空における時間軸方向に垂直な世界線の振幅を――」
倫子「や、やめろォ……」
紅莉栖「アインシュタイン好きが聞いて呆れるわね」プププ
倫子「というかこれ、なぜ小数点第6位がないんだ?」
鈴羽「へ? 元々小数点は5桁だったんだけど」
倫子「……いや、済まない。記憶違いだ」
倫子「(初めて見るコレに、ニキシー管が1本足りないような気がした。これはリーディングシュタイナーとは関係ないただの記憶違いだろう)」
721: 2015/12/16(水) 04:50:58.74 ID:gd8Eaw7Mo
紅莉栖「どういう仕組みなの?」
鈴羽「あたしにもわかんない。作ったのは11年後の鳳凰院凶真だよ」
倫子「オ、オレが? ……そうか、相対値ということは、リーディングシュタイナー所持者にしか意味が無い」
紅莉栖「これが意味しているのって、世界線ごとに異なる物理的情報がどこかにあって、それを検知してる、ってことよね? 温度計や気圧計みたいに」
倫子「だが、検知器には見えんな。ふーむ……」
鈴羽「ともかく、このメーターの数値が1%を超えた時、君はβ世界線にたどりついたことになる。そういう風に作られてる」
紅莉栖「1%……それはつまり、2036年の大収束から解き放たれる、ということね」
鈴羽「そう。1%を突破さえできたら……椎名まゆりは、助けられる」
鈴羽「これはレジェンドに返すよ。あたしが持ってても意味ないしね」
倫子「しかし、かっこいいなこれ……7万円くらいで売ったら売り切れ続出なんじゃないか……」
722: 2015/12/16(水) 04:52:55.18 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「それじゃ、オレたちはダルの様子を見てくる。この調子だと、タイムマシンの中でチャーシューになってるかもしれないからな」
紅莉栖「オーケー。リープマシンは任せて」
倫子「オレはスーパーに寄って行くから、鈴羽は先にラジ館に行って父親を労わってやるといい」
鈴羽「オーキードーキー」
スーパー
倫子「やっぱり知的飲料ドクペこそ至高だからな。ダルにはドクペを買って行ってやろう」スッ
ピトッ
伽夜乃「あっ、すいません」スッ
倫子「いえ、こちらこそ済まなかった。先に手に触れたのはそちらだ、ラスイチのドクペは持っていくがいい」
伽夜乃「あっ……///」
伽夜乃「(な、な、な、なんという美女……っ!! 偶然とはいえ、手と手が触れてしまった……!!)」ドキドキ
伽夜乃「(葉月ごめん、お姉ちゃんは……っ!! お姉ちゃんはぁぁっ!!!)」ポーッ
倫子「む? どうした? 要らないのか?」
伽夜乃「は、はいぃっ! 差し上げますぅっ!」ビクッ!!
倫子「いや、いいんだ。よく考えたらダルにはダイエットコーラの方が良い気がしてきた」
倫子「それに、貴様も貴重なドクトルペッパリアンの同志に違いない。友好の証に受け取ってくれ」スッ
伽夜乃「ゆう……こう……」ポワワァ
倫子「さらばだ。達者でな」
伽夜乃「はぅぅっ……」クラクラ
723: 2015/12/16(水) 04:54:08.25 ID:gd8Eaw7Mo
裏通り
倫子「ここらでラボメンたちの進捗を確認してみるか」スッ
prrrr prrrr
倫子「オレだ。状況は」
ダル『……オカリンのその唐突な電話も懐かしいな』
倫子「っ、いちいちしんみりさせるようなことを言うなっ!」ウルッ
ダル『無人のラジ館で父と娘が汗まみれでくんずほぐれつ……はぁはぁ』
倫子「干からびて氏ね」
ダル『ぐほぁっ!?』
鈴羽『父さんには一発お見舞いしておいたよ』
倫子「ご苦労」
鈴羽『この2人がレジスタンスの設立者なんだよね……なんだか実感沸かないなぁ』ハァ
倫子「……そう言えば、鈴羽は、オレがまゆりを救えない未来から来たんだよな」
鈴羽『そうだね。君は牧瀬紅莉栖を無理やり研究させるSERNを心底憎むことになるんだと思う』
倫子「まゆりを助けることもできず、のうのうと生き続けた挙げ句にテ口リストとして活動するなど……下らんな」
鈴羽『世界に自由を取り戻そうとする、勇敢で立派な志だと思うけど』
倫子「オレはどんな女だった」
鈴羽『言わなかったっけ。君とは会ったことないよ。今から15年後にSERNに殺される』
倫子「なっ……」
鈴羽『未来ではみんなが不幸になる。だからあたしがIBN5100を届けるんだ』
ダル『鈴羽……』
倫子「……オレたちは、永遠に仲間だ。たとえ世界を違えてもな」
鈴羽『あはは。サンキュ』
倫子「ここらでラボメンたちの進捗を確認してみるか」スッ
prrrr prrrr
倫子「オレだ。状況は」
ダル『……オカリンのその唐突な電話も懐かしいな』
倫子「っ、いちいちしんみりさせるようなことを言うなっ!」ウルッ
ダル『無人のラジ館で父と娘が汗まみれでくんずほぐれつ……はぁはぁ』
倫子「干からびて氏ね」
ダル『ぐほぁっ!?』
鈴羽『父さんには一発お見舞いしておいたよ』
倫子「ご苦労」
鈴羽『この2人がレジスタンスの設立者なんだよね……なんだか実感沸かないなぁ』ハァ
倫子「……そう言えば、鈴羽は、オレがまゆりを救えない未来から来たんだよな」
鈴羽『そうだね。君は牧瀬紅莉栖を無理やり研究させるSERNを心底憎むことになるんだと思う』
倫子「まゆりを助けることもできず、のうのうと生き続けた挙げ句にテ口リストとして活動するなど……下らんな」
鈴羽『世界に自由を取り戻そうとする、勇敢で立派な志だと思うけど』
倫子「オレはどんな女だった」
鈴羽『言わなかったっけ。君とは会ったことないよ。今から15年後にSERNに殺される』
倫子「なっ……」
鈴羽『未来ではみんなが不幸になる。だからあたしがIBN5100を届けるんだ』
ダル『鈴羽……』
倫子「……オレたちは、永遠に仲間だ。たとえ世界を違えてもな」
鈴羽『あはは。サンキュ』
724: 2015/12/16(水) 04:55:47.62 ID:gd8Eaw7Mo
prrrr prrrr
紅莉栖『はろー』
倫子「オレだ」
紅莉栖『鳳凰院ちゃんからの電話だけで今日も1日生きていける……はぁはぁ』
倫子「だからちゃん付けするなぁ! というか、徹夜明けで変なテンションになっているのではないか、栗悟飯とカメハメ波よ」
紅莉栖『どぅええぃっ!? ど、ど、ど、どうしてその名前をををっ!?!?』ガタガタッ
倫子「ふふふ……。オレがタイムリープする前、お前は涙ながらに告白したのだ。"私はねらーでニコ厨で、すぐ『幼女(*´Д`)ハァハァ』とレスしてスレを荒らす糞コテですが、それでも助手でいさせてくれますか?"となぁ!」
紅莉栖『っ……』
倫子「無論オレはこう答えた。"お前がねらーでニコ厨で、ラボに置いてある工口ゲで全力オXXーに興じる女だろうと、ラボメンであることには変わりはない」
倫子「これからもオレの助手でいてくれて構わない。だから涙拭けよ"と――」
紅莉栖『……ウソかホントか判別できない自分が情けないわ』
紅莉栖『そう言えば、丁度よかった。1つ確認したいことがあったんだけど』
倫子「なんだ?」
紅莉栖『タイムリープしてきたってことは、リフターの代替となるものは判明してるの?』
倫子「ああ、それだったら1階にある42型ブラウン管テレビだ」
紅莉栖『なるほど……わかった。岡部はこっちは手伝わなくていいから。何度も同じことやるのは苦痛でしょ?』
倫子「む……」
紅莉栖『今は阿万音さんと橋田の力になってあげて。それじゃ』
725: 2015/12/16(水) 04:57:17.91 ID:gd8Eaw7Mo
prrrr prrrr
まゆり『トゥットゥルー♪ まゆしぃです』
倫子「……元気か?」
倫子「(ついそんなことを聞いてしまった。いや、まだまゆりは大丈夫なはずなんだ)」
まゆり『んー? まゆしぃはいつでも元気だよー♪ へんなオカリン』
倫子「そうか、それはよかった。ルカ子のコス作りは順調か?」
まゆり『フブキちゃんとカエデちゃんの分はできたよー。るかちゃんのは、説得できなかったから今回は諦めたの』
倫子「(そうか。そう言えばオレが解散させてしまったから、ルカ子の説得……あれを説得と呼ぶかどうかは別だが……はできなかったんだな)」
まゆり『あ、でもね、ダルくんのお仕事がひと段落したらまゆしぃにも連絡してね』
倫子「……オレが池袋まで迎えに行くよ」
まゆり『えぇー? どうしたのオカリン? なんだかまゆしぃ、お姫様みたいだねぇ。えへへ』
倫子「いいだろ別に。お前はオレの人質なのだから、しのごの言うなっ」ピッ
倫子「先にダルに飲み物を届けよう。その後まゆりを迎えに行くか」
726: 2015/12/16(水) 04:58:13.49 ID:gd8Eaw7Mo
ラジ館屋上
倫子「あっつ……。ほら、ダル。ダイエットコーラだ」
ダル「さすがオカリン。僕の飲みたいモノ、解ってくれてるね」
倫子「それで、どうなのだ?」
ダル「やれることはやった。起動実験だけは目立つからできなかったけどね」
鈴羽「作戦会議も十分し尽した。MTBも積み込んだよ」
鈴羽「あとはオペレーションを開始するだけ」
倫子「……そうか」
鈴羽「もしかして、寂しい?」
倫子「ふんっ。オレは狂気のマッドサイエンティスト、仲間の犠牲など厭わないのだっ!」
倫子「……紅莉栖とまゆりを呼ぼう。本当は宴会を開きたいところだが、オレの完璧なオペレーション開始宣言だけでも聞かせてやらねばな」フンッ
鈴羽「ふふっ。レジェンドがどういう人かわかって良かったよ」
鈴羽「この時代に来ることができて、君たちと同じ時間を過ごせて、あたし、ホントに楽しかった」
鈴羽「2036年はさ、とっても平和で、喧嘩すら起きないんだ」
鈴羽「おおよそ争いって名のつくものは、ミクロなものからマクロなものまで、ぜーんぶ消えちゃった」
鈴羽「その代わり、みんな氏んだ魚の目をしてた……でも、未来ガジェット研究所は、みんな生き生きしてて、すごく眩しかった」
倫子「……もし、向こうで寂しくなったらうちを訪ねるといい」
鈴羽「えっ?」
倫子「あっつ……。ほら、ダル。ダイエットコーラだ」
ダル「さすがオカリン。僕の飲みたいモノ、解ってくれてるね」
倫子「それで、どうなのだ?」
ダル「やれることはやった。起動実験だけは目立つからできなかったけどね」
鈴羽「作戦会議も十分し尽した。MTBも積み込んだよ」
鈴羽「あとはオペレーションを開始するだけ」
倫子「……そうか」
鈴羽「もしかして、寂しい?」
倫子「ふんっ。オレは狂気のマッドサイエンティスト、仲間の犠牲など厭わないのだっ!」
倫子「……紅莉栖とまゆりを呼ぼう。本当は宴会を開きたいところだが、オレの完璧なオペレーション開始宣言だけでも聞かせてやらねばな」フンッ
鈴羽「ふふっ。レジェンドがどういう人かわかって良かったよ」
鈴羽「この時代に来ることができて、君たちと同じ時間を過ごせて、あたし、ホントに楽しかった」
鈴羽「2036年はさ、とっても平和で、喧嘩すら起きないんだ」
鈴羽「おおよそ争いって名のつくものは、ミクロなものからマクロなものまで、ぜーんぶ消えちゃった」
鈴羽「その代わり、みんな氏んだ魚の目をしてた……でも、未来ガジェット研究所は、みんな生き生きしてて、すごく眩しかった」
倫子「……もし、向こうで寂しくなったらうちを訪ねるといい」
鈴羽「えっ?」
727: 2015/12/16(水) 04:59:20.87 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「お前はこれから1975年へ行き、孤独と闘うことになるだろう。そこにラボメンは誰もいない――」
倫子「が、池袋の岡部青果店は、たしか築40年は超えているから、オレの親父がそこに居るはずだ」
倫子「そして1991年12月14日になればオレが生まれる。16年と半年、とても長い時間だが、だがっ!」
倫子「……オレはそこに居る。それは確定しているんだ」
鈴羽「……うん。わかってる。あたしが行くのは知らない街なんかじゃない」
鈴羽「今居るこの地平に繋がっているんだってこと、確信してる」
ダル「そうだ、鈴羽。オカリン。たしか、ピンバッジがあるよね?」
鈴羽「え? ああ、持ってるよ。ほら」
ダル「これ、ラボメンバッジって言って、ラボメンの証として作ったんだよね。僕が発案してさ」
倫子「なんと、そうだったのか」
ダル「鈴羽はそれを僕の形見だと思ってるみたいだけど、それは鈴羽のラボメンバッジなんだ」
鈴羽「あたしの……」
ダル「それを持ってれば、僕たちは時間を超えて、世界線を超えて繋がってるってことを覚えていられるはずだ」
鈴羽「……うん」
倫子「ダルにしては素敵なことをするじゃないか。さすが、俺の頼れる右腕<マイフェイバリットライトアーム>……」
728: 2015/12/16(水) 05:00:16.64 ID:gd8Eaw7Mo
prrrr prrrr
鈴羽「ん? あたしにメールだ。誰だろう?」
倫子「知らないアドレスか? それなら萌郁の可能性があるが……」
鈴羽「……っ!?!?!? ど、どういうことっ!?」
ダル「鈴羽、どうした!?」
鈴羽「こ、これ……これぇっ!?」
To skyclad2010@egweb.ne.jp
From hazukiLove@hardbank.ne.jp
天王寺綯は預かった
返して欲しくば以下の場
所まで来られたし
▼添付ファイル有
倫子「この写真は……綯っ!! 拘束されてっ!?」
ダル「この場所、廃工場だ……いつか鈴羽が綯ちゃん氏を拉致、じゃなかった、"かくれんぼ"してた時の……」
鈴羽「まさか……ラウンダーっ!!」
730: 2015/12/16(水) 05:01:19.61 ID:gd8Eaw7Mo
廃工場
鈴羽「レジェンド、本当に大丈夫……?」
倫子「ななな、なにを言っているぅ! 綯の一大事だぞぉ!」ガタガタ
倫子「それに、仮になにかあってもオレが記憶しておけばタイムリープでなんとかなる!」ブルブル
倫子「こ、このオレ、鳳凰院凶真に全て任せれば安心だなっ! ふ、ふぅは、はは、は……」ワナワナ
鈴羽「父さんはマシンを見張る必要があるから一緒に来れなかったけど……不安だなぁ。後ろに隠れててね?」
倫子「オレに隠れていろ、だとぉ? 寝言は寝て言うのだなぁ」ガクガク
鈴羽「お願いだから無理して見栄を張ろうとしないでよおっ!」
コツ コツ コツ ……
伽夜乃「いらっしゃい、鈴羽さん。さぁ後悔と懺悔の時間です」
倫子「ヒィッ!」サッ
鈴羽「き、君は、いつかのキリスト教の!」
伽夜乃「それだけじゃないんですよぉ? このお面に見覚えは?」スッ
鈴羽「それは……母さんを頃した女の……っ!!」
伽夜乃「それ、私です」ニタァ
鈴羽「……貴様ァァァァァアアアアアッ!!!!!」ダッ
鈴羽「レジェンド、本当に大丈夫……?」
倫子「ななな、なにを言っているぅ! 綯の一大事だぞぉ!」ガタガタ
倫子「それに、仮になにかあってもオレが記憶しておけばタイムリープでなんとかなる!」ブルブル
倫子「こ、このオレ、鳳凰院凶真に全て任せれば安心だなっ! ふ、ふぅは、はは、は……」ワナワナ
鈴羽「父さんはマシンを見張る必要があるから一緒に来れなかったけど……不安だなぁ。後ろに隠れててね?」
倫子「オレに隠れていろ、だとぉ? 寝言は寝て言うのだなぁ」ガクガク
鈴羽「お願いだから無理して見栄を張ろうとしないでよおっ!」
コツ コツ コツ ……
伽夜乃「いらっしゃい、鈴羽さん。さぁ後悔と懺悔の時間です」
倫子「ヒィッ!」サッ
鈴羽「き、君は、いつかのキリスト教の!」
伽夜乃「それだけじゃないんですよぉ? このお面に見覚えは?」スッ
鈴羽「それは……母さんを頃した女の……っ!!」
伽夜乃「それ、私です」ニタァ
鈴羽「……貴様ァァァァァアアアアアッ!!!!!」ダッ
731: 2015/12/16(水) 05:02:38.05 ID:gd8Eaw7Mo
伽夜乃「おっと、この子がどうなっても?」
綯「――――っ!」
鈴羽「ぐっ!!!!」
伽夜乃「私のミッションは2つです」
伽夜乃「1つは、2010年へと逃亡したと思われる橋田至の暗殺」
鈴羽「っ!?」
伽夜乃「おかしいんですよねぇ。リーディングシュタイナー保持者の情報によれば、2033年に橋田至は前任者によって殺されていたはずなんですよ」
鈴羽「なん……だって……」
伽夜乃「なのに私にその記憶は無い。そして、2010年8月11日の警察記録から橋田至の逃亡先が判明」
伽夜乃「その後始末をしに来た、というわけですよ。牧瀬博士のタイムマシンに乗って」
鈴羽「おま―――」
伽夜乃「2つ目。"ワルキューレ"最後の1人を抹頃すること」
鈴羽「最後の1人……? ま、まさか、そんな……」ワナワナ
伽夜乃「そう。ワルキューレは壊滅したんです。世界に平和が戻ったんですよぉ!」
732: 2015/12/16(水) 05:03:58.77 ID:gd8Eaw7Mo
鈴羽「何を言っているっ! 平和を壊しているのはSERNじゃないか!」
伽夜乃「ワルキューレはテ口リストです。私の大事な家族を危険に陥れる忌むべき存在です」
伽夜乃「事実、SERNが世界を平定してから2年で争いは消滅しました。私も、私の妹も、もう暴力に虐げられる必要は無くなったんですよ」
鈴羽「そ、それは作られた平和だ! 偽りの世界だ!」
伽夜乃「争いも貧困も無く、本来失われていたはずの無数の命が救われた。虐待を受けていた子どもは1人残らず家族の元で平和に暮らしている」
伽夜乃「ワルキューレは、彼らへの大量虐殺を行おうとしているに等しい、氏に値する大罪人なのです!」
鈴羽「ち……違う……そ、そんなことは……」ワナワナ
倫子「しっかりしろっ!! ジョン・タイターッ!!」
733: 2015/12/16(水) 05:05:17.86 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「ワルキューレの戦士ともあろうものが、何を舌戦で押し負けているのだっ!」
鈴羽「鳳凰院凶真っ! ご、ごめんなさい、あたし……」
伽夜乃「ほ、鳳凰院凶真っ!? 前任者がとどめを刺したと聞いているのに……そうか、この時代の方の、か」
伽夜乃「こんなところでワルキューレ創設者様にお会いできるなんて光栄です。暗がりでお顔が良く見えないので、どうぞこちらへ」
倫子「言われんでも行ってやるっ。貴様には、地獄へ堕ちても償い切れぬ罪があるようだなっ」
倫子「このオレ、狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真が直々に断罪してやる……覚悟しろっ!!」ギロッ
伽夜乃「ほう、さすが鳳凰院凶真。良い目をして……って、あれ……あなた、もしかして……」
伽夜乃「ドクペの女神様ぁーーーーーっ!?!?!?!?」
倫子「……は?」
734: 2015/12/16(水) 05:07:10.48 ID:gd8Eaw7Mo
伽夜乃「なんでっ!? どうしてドクペの女神様が鳳凰院凶真なのぉっ!?」
倫子「こっちがなんでだ! ドクトルペッパリアンに悪人は居ないと信じていたのに……」グッ
伽夜乃「わ、私は悪人ではありませんっ! SERNの平和を守るためにっ!」
倫子「ん……、お前、その目……、過去に何かあったのか……」
伽夜乃「べ、別に両親からネグレクトされて学校でもいじめられて児童養護施設に預けられた生活で唯一の希望だった妹の葉月が叔父さんに強姦されて廃人になったとかそういうことはありませんからっ!」
鈴羽「一文で説明される取ってつけたような設定……」
倫子「1つ訊きたい、伽夜乃」
伽夜乃「は、はいぃっ! 鳳凰院様ぁっ!」
鈴羽「一応SERNにもレジェンドの伝説は伝わってるみたいだね」
倫子「(ダルめ、余計なことをっ!)」
倫子「お前の妹の葉月とやら、今はどうしているのだ」
伽夜乃「えっ……」
倫子「お前が側に寄り添ってやらずして、誰が守っているのだ」
伽夜乃「……あ、あああ……」
倫子「伽夜乃、お前の戦いはここに無い」ダキッ
伽夜乃「(なんて温かい手……)」ポロポロ
鈴羽「……むぅ」
倫子「戻れるなら今すぐ戻れ。お前の居るべき時代へ」
伽夜乃「すっ、すっ、すっ……」
735: 2015/12/16(水) 05:07:52.32 ID:gd8Eaw7Mo
伽夜乃「すいませんでしたぁぁぁぁあああああっ!!!!!」ズサーッ
倫子「垂直降下土下座……なんなんだこいつ……」
鈴羽「……取りあえずこいつ縛っておくよ。綯、もう大丈夫だからね」
綯「お姉ちゃん、ありがとう。なんかね、この人変だよ」
鈴羽「うん。知ってる」
鈴羽「レジェンド、後はあたしにこいつを殺させて」
倫子「ダメだ。お前を人頃しにするわけにはいかん」
鈴羽「はぁっ!? 母さんの仇なんだよ!? それに、あたしはもうたくさん人を頃してるっ!」
倫子「それでもダメだ」
伽夜乃「……ラウンダーでタイムトラベラーとなる者は使い捨ての殉教者。任務に失敗した私はすぐにでも消滅しなければならない」
伽夜乃「だから……頃したいなら、殺せばいい」
倫子「では、貴様には氏よりも重い罰を与えてやろう」
伽夜乃「ひ、ひぃ……」
736: 2015/12/16(水) 05:08:56.26 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「この世界線で生を受ける"貴様"をワルキューレの傘下に置く。姉妹ともどもな」
伽夜乃「っ!?」
鈴羽「ちょ、ちょっとレジェンド!?」
倫子「"貴様"の生まれは2018年頃だろう。このオレが直々に親元から引きはがし、ワルキューレの戦士として調教してやる。覚悟していろ」
伽夜乃「こんな"私"に、そんな素敵な人生を与えてくださるなんて……ああ、神よ……」
倫子「そして貴様はラウンダーをやめろ。未来へ帰れないというのならラボに来い。オレの下僕として氏ぬまでこき使ってやる」
鈴羽「なっ!?」
伽夜乃「ほ、鳳凰院さまぁ……」ポーッ
綯「……よくわからないけど、私もこの人のこと、許せない」ギッ
綯「鈴羽お姉ちゃんのお母さんがかわいそうだよ……」
鈴羽「綯……」
737: 2015/12/16(水) 05:09:28.33 ID:gd8Eaw7Mo
綯「いいか! お前は地を這う虫ケラだ! 地球上で最下等の生命体だ!」
鈴羽「綯っ!?」
綯「葉っぱの上で縮んだり伸びたりするくらいの価値しかない!」
倫子「……ん!?」
伽夜乃「あ、あの、この子どうしちゃったの……?」
綯「勝手にしゃべるな! 尺取り虫さんは、"はい"か"いいえ"で答えるんだ!」
綯「それと、答える時には頭とおしりに"鳳凰院様"とつけろ! わかったか!」
伽夜乃「鳳凰院様っ! はい! 鳳凰院様っ!」
倫子「やめろォ!」
綯「それで、貴様はラウンダーをやめるんだな!?」
伽夜乃「鳳凰院様っ! はい! 鳳凰院様っ!」
鈴羽「なにこれ……」
738: 2015/12/16(水) 05:12:41.95 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「綯、1人で帰れるな?」
綯「うん。今日のことはお父さんには言いません」
鈴羽「できた子だなぁ、綯は」
倫子「それで、お前のタイムマシン貸せよ」
伽夜乃「あ、いえ、あれは生体認証式なので、鈴羽さんを1975年に送るとなると、私も乗り込まないといけないのです」
鈴羽「氏んでもやだよ」
伽夜乃「ですよね、あはは……」
伽夜乃「それに私のマシンは常にSERNにトレースされてますので、変な動きをすればすぐに第二第三の刺客がやってきます」
倫子「1975年から直接IBN5100を2010年へと物理的タイムトラベルさせることは無理か……」
鈴羽「……ちょっと待って。ってことは、あたしが1975年に行ってIBN5100を確保しようとすることは、SERNに筒抜けなの?」
伽夜乃「もちろんそうですよ。昨日ラジ館に侵入したことが運の尽きでしたね」
739: 2015/12/16(水) 05:13:45.44 ID:gd8Eaw7Mo
伽夜乃「警察記録から阿万音鈴羽が2010年8月11日に秋葉原に居ることが判明。そこからは現地のラウンダーと未来のSERNの連携で未来ガジェット研究所から情報を引き出すことに成功」
伽夜乃「鈴羽さんの作戦、オペレーション・ブリュンヒルデの概要と同時に橋田至のタイムリープ先も判明しちゃうわけです」
倫子「(盗聴か、あるいは直接聞き出したのか……)」
伽夜乃「仮に鈴羽さんが1975年から暮らし始めても、各時代のエージェントが鈴羽さんを狙いにくるでしょう」
倫子「(そうか、それで今海外に居る妙齢鈴羽はIBN5100をオレの元へ届けることができなかった、と……)」
倫子「なんとかしろ、伽夜乃」
伽夜乃「そう言われましても……」
鈴羽「思ったんだけど、Dメールであたしを8月9日深夜の雷雨より前に跳ぶようにしてもらうのはどうかな」
鈴羽「そしたらマシンも壊れてないし、SERNに作戦がバレることもない」
倫子「だが、ダルがお前の父親だと判明するのは10日だったはずだ。その記憶がなくなってしまうぞ?」
鈴羽「……そんなの、構わないよ」
倫子「ふむ……」
伽夜乃「鈴羽さんの作戦、オペレーション・ブリュンヒルデの概要と同時に橋田至のタイムリープ先も判明しちゃうわけです」
倫子「(盗聴か、あるいは直接聞き出したのか……)」
伽夜乃「仮に鈴羽さんが1975年から暮らし始めても、各時代のエージェントが鈴羽さんを狙いにくるでしょう」
倫子「(そうか、それで今海外に居る妙齢鈴羽はIBN5100をオレの元へ届けることができなかった、と……)」
倫子「なんとかしろ、伽夜乃」
伽夜乃「そう言われましても……」
鈴羽「思ったんだけど、Dメールであたしを8月9日深夜の雷雨より前に跳ぶようにしてもらうのはどうかな」
鈴羽「そしたらマシンも壊れてないし、SERNに作戦がバレることもない」
倫子「だが、ダルがお前の父親だと判明するのは10日だったはずだ。その記憶がなくなってしまうぞ?」
鈴羽「……そんなの、構わないよ」
倫子「ふむ……」
740: 2015/12/16(水) 05:15:28.17 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「伽夜乃は鈴羽を暗頃するようSERNに言われてるんだろ? なら一緒に1975年へ行って鈴羽を守ってやれ」
倫子「そうすればSERNも未来から追加のエージェントを寄越さないだろう」
伽夜乃「つまり、二重スパイ、ということですね」
鈴羽「なんで母さんの仇なんかに……ブツブツ……」
伽夜乃「ただ、それでも私の力でなんとかできるのは、Dメールが物理的に送信可能になってしまう1980年代後半まででしょう」
倫子「日本に電波局が建ち始める頃、か」
伽夜乃「現地のラウンダーを直接未来から操作できる時代に突入してしまうと、さすがに私1人ではどうしようもないかと」
鈴羽「その頃になれば秋葉幸高の力も借りれるかもしれない。だからあたしに伽夜乃の力は要らないよ」
倫子「そうは言ってもだな……」
741: 2015/12/16(水) 05:16:35.75 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「わからんっ! わからんが、時間を支配できる限り、ベストを模索することは可能なはずだ……」
倫子「取りあえず鈴羽、すぐに1975年へ跳べ。またSERNがおかしなことをしないうちにな」
鈴羽「オーキードーキー」
倫子「伽夜乃は言った通り二重スパイをしろ。鈴羽は嫌がるだろうが、陰から支えてやってほしい」
伽夜乃「この世界線の葉月が幸せになるなら……仰せのままに」
鈴羽「……っ」ムスッ
倫子「2人のタイムトラベラーを過去に送って世界線が変わらなかった場合、鈴羽の提案通りオレはDメールを送る」
鈴羽「その場合、あたしは緋袴……えっと、柳林神社の巫女服でタイムトラベルすることになると思うけど、それで問題ないと思う」
倫子「よしっ! では、作戦開始だっ!」
742: 2015/12/16(水) 05:17:34.20 ID:gd8Eaw7Mo
ラジ館屋上
ダル「ラウンダーまで手籠めにするとか、オカリンどんだけ人望あるんだよ……」
倫子「貴様の伝説の捏造のせいだがなっ!」
伽夜乃「持ってきました、これが私のタイムマシンです」
ダル「ほぅ、局所場指定が自在とか、さすが世界の研究者を独占しただけはあるな」
倫子「やっぱりシボルエか! このデザインにしたのは助手だろうな……ニクいことを……」
伽夜乃「カー・ブラックホールのトレースも可能なので、鈴羽さんのタイムマシンが到着する世界線と同一のダイバージェンスに到着できます」
倫子「まゆりと助手には悪いが、もう時間が無い。既にフランスから特殊部隊が日本へと入国している頃合いだ」
倫子「鈴羽っ! 準備はいいかっ!」
鈴羽『オーキードーキー! それじゃ、行くよ!』
鈴羽『35年後……じゃなかった、数時間後に、また会おうね!』
倫子「……ああ! がんばれよぉっ!」
ダル「がんばれぇっ! 鈴羽、がんばれよぉぉぉっ!!」ポロポロ
From ジョン・タイター
Sub ありがと
さよなら
キィィィィィィィィン……
倫子「くっ、まぶしいっ……!! 目が、眩む……っ!!」
ダル「ラウンダーまで手籠めにするとか、オカリンどんだけ人望あるんだよ……」
倫子「貴様の伝説の捏造のせいだがなっ!」
伽夜乃「持ってきました、これが私のタイムマシンです」
ダル「ほぅ、局所場指定が自在とか、さすが世界の研究者を独占しただけはあるな」
倫子「やっぱりシボルエか! このデザインにしたのは助手だろうな……ニクいことを……」
伽夜乃「カー・ブラックホールのトレースも可能なので、鈴羽さんのタイムマシンが到着する世界線と同一のダイバージェンスに到着できます」
倫子「まゆりと助手には悪いが、もう時間が無い。既にフランスから特殊部隊が日本へと入国している頃合いだ」
倫子「鈴羽っ! 準備はいいかっ!」
鈴羽『オーキードーキー! それじゃ、行くよ!』
鈴羽『35年後……じゃなかった、数時間後に、また会おうね!』
倫子「……ああ! がんばれよぉっ!」
ダル「がんばれぇっ! 鈴羽、がんばれよぉぉぉっ!!」ポロポロ
From ジョン・タイター
Sub ありがと
さよなら
キィィィィィィィィン……
倫子「くっ、まぶしいっ……!! 目が、眩む……っ!!」
743: 2015/12/16(水) 05:18:32.22 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「……行ったか。伽夜乃のマシンも消えている」
ダル「それで、オカリン。リーディングシュタイナーは発動した?」
倫子「空間がゆがんだのを感じたが、自信が無いな……ラボへ戻ってメーターを確認してみよう」
ダル「オーキードーキー!」
未来ガジェット研究所
紅莉栖「えっ? もう阿万音さん行っちゃったの?」
倫子「済まない、時間が無かったんだ。それで、メーターは……」
【 0.33871 】
倫子「変わっていない、か……」
ダル「だけど、過去に事象が増えたのは間違いない。メーターで検知できないレベルで世界線は変動したはず」
ダル「だから、仮に初老の女性がこのラボを訪れるとしたら、それは間違いなくオカリンの記憶と全くの同一人物のはずだ」
コンコン
倫子「す、鈴羽かっ!?」
ガチャ……
744: 2015/12/16(水) 05:19:11.26 ID:gd8Eaw7Mo
「おっはー」
745: 2015/12/16(水) 05:20:02.97 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「す、鈴羽っ!!」
ダル「おぉ……」
紅莉栖「あ、あなた、阿万音さんなの!?」
鈴羽「もうおばさんになっちゃったけどね」
幸高「教授、日本に帰ってきているなら連絡をしておいてくださいよ」
鈴羽「いやあ、若かりしあたしを乗せたタイムマシンが消えてからじゃないと絵にならないだろうと思ってさ、秋葉原で待機してたんだよ」
倫子「余計な演出を……。ということは、1周目や2周目の時も待機していたのか……?」
フェイリス「えっと……お姉さんが言う、『あたしは阿万音鈴羽だった』ってのは、ホントだったニャン?」
鈴羽「だからそう言ってただろう? キミの瞳でも見抜けなかったのは、レジスタンス時代に取った杵柄だなぁ」
鈴羽「……みんなに言わないといけないことがある」
倫子「……ゴクリ」
ダル「……」
紅莉栖「……」
鈴羽「あたしは……」
鈴羽「――失敗した」
746: 2015/12/16(水) 05:21:12.05 ID:gd8Eaw7Mo
1975年に無事到着したあたしと伽夜乃は色々あったけど、数か月後には共同生活をするようになった。
母さんの仇とは言っても、同じ2036年の話ができる同士ってのと、レジェンドの話で1日盛り上がれる同志ってのは大きかったよ。
マシンを分解して手に入れた現金でIBN5100を複数台手に入れた。信頼できる人を伝って、2010年の秋葉原に届くようにしていたつもりだった。
だけど、やっぱりSERNの力は強大だったんだ。
あたしが日本中に隠していたIBN5100は、あの手この手で回収されていくことになった。
最後のIBN5100は伽夜乃が持っていたんだけどね。
伽夜乃が居てくれたからあたしは、病状が悪くなり始めた1998年頃に秋葉幸高のススメで日本を出て、海外の病院に行くことができたんだけど……
2001年にはもうあたしの手の届くところにIBN5100は無くなってしまった。
伽夜乃が殺されたんだ。ラウンダーの手によって。
それからのあたしは、君たちにこの失敗の報告をするためだけに命を長らえさせてきたんだ。
本当に、ごめん。
ごめんね。
あたしの人生は、無意味だった―――
747: 2015/12/16(水) 05:22:30.00 ID:gd8Eaw7Mo
ダル「そんなことない。そんなことはないんだ、鈴羽」ダキッ
鈴羽「父さん……グスッ……」ギュッ
ダル「鈴羽がその情報を、長い時間をかけて手に入れてくれたことで、オカリンが次につなげることができるんだ」
倫子「ああ。お前の記憶を、お前の歴史を、お前の人生を……っ、1秒たりとも無駄にしてやるものかっ」
鈴羽「うん……うん……」
紅莉栖「残された選択はあと1つね」
倫子「過去のオレにDメールを送り、8月9日の夜に1975年へと向かう鈴羽を呼び止めないようにする」
倫子「――Dメールを、打ち消す」
鈴羽「ありがとう……鳳凰院凶真……」
鈴羽「お願い、あたしを消して……」
ダル「僕からも頼むよ、オカリン。たとえそうなったとしても、僕たちが親子であることには変わりないから」
紅莉栖「……そうね。たとえそうなったとしても、私たちがラボメンであることには変わりないはずよ」
倫子「鈴羽の生きた証は……、オレたちの絆はっ!」
倫子「決してっ! 決してオレは忘れないっ!」
倫子「たとえ世界中の誰もが忘却してしまったとしても、オレだけはっ!」
倫子「絶対に、覚えているからなっ!!」
To 電話レンジ(仮)
Sub
尾行は中止だ前のメー
ルはSERNの罠
748: 2015/12/16(水) 05:22:59.30 ID:gd8Eaw7Mo
―――――――――――――――――――
0.33871 → 0.40931
―――――――――――――――――――
749: 2015/12/16(水) 05:25:14.03 ID:gd8Eaw7Mo
第6.5章 幽明異境のオブリガーダ♀
2010年8月12日(木)16時27分
未来ガジェット研究所
倫子「ぐっ……!!」
倫子「(この立ちくらみは、リーディングシュタイナーっ!)」
倫子「(ということは、鈴羽はIBN5100の確保に成功した……っ!?)」
倫子「(仮にそうだとしたらラボにIBN5100があるはず……)」キョロキョロ
ダル「それじゃ、綯様。準備はいい?」
綯「は、はい」
倫子「……綯? どうして綯がここにいるのだ? そして何故助手がいない?」
ダル「は? オカリンどうしたん急に」
ダル「Dメール実験をやるって綯様と約束したんしょ? それで牧瀬氏は反対するだろうからってこっそりやろうって」
倫子「へ……? な、なんのことだ?」
―――――
綯『――だから、お父さんのためにも、お母さんを生き返らせてほしいんですっ!』
『任務を遂行し ろ。でなけれ ば綴が氏ぬ!』
綯『――メールは2000年の5月18日に送ってください。うちのお仏壇にいる、もう1人の人の命日なんですけど』
―――――
2010年8月12日(木)16時27分
未来ガジェット研究所
倫子「ぐっ……!!」
倫子「(この立ちくらみは、リーディングシュタイナーっ!)」
倫子「(ということは、鈴羽はIBN5100の確保に成功した……っ!?)」
倫子「(仮にそうだとしたらラボにIBN5100があるはず……)」キョロキョロ
ダル「それじゃ、綯様。準備はいい?」
綯「は、はい」
倫子「……綯? どうして綯がここにいるのだ? そして何故助手がいない?」
ダル「は? オカリンどうしたん急に」
ダル「Dメール実験をやるって綯様と約束したんしょ? それで牧瀬氏は反対するだろうからってこっそりやろうって」
倫子「へ……? な、なんのことだ?」
―――――
綯『――だから、お父さんのためにも、お母さんを生き返らせてほしいんですっ!』
『任務を遂行し ろ。でなけれ ば綴が氏ぬ!』
綯『――メールは2000年の5月18日に送ってください。うちのお仏壇にいる、もう1人の人の命日なんですけど』
―――――
750: 2015/12/16(水) 05:27:27.04 ID:gd8Eaw7Mo
倫子「……すまん、思い出した。確かにそんな約束をしていたな」
倫子「(何をそんな悠長なことをしているのだ、と思ったが、世界線が切り替わったという事はまだ未来から紅莉栖が来ていない0周目に戻った、ということだ)」
倫子「(ダルも未来からタイムリープしてこない。タイムマシンを修理する必要が無いからな)」
倫子「(部屋を見渡したがダイバージェンスメーターは無い。まあ、当然か)」
倫子「(それよりもさっき別れたばかりの54歳の鈴羽は今どこで何をしているのか……)」
ダル「でも綯様。どうして2000年5月18日に送るん?」
綯「お父さんが、その日の事をたまに独りでつぶやいているんです」
倫子「って、たしか誰かの命日だったんじゃないのか?」
綯「あ、はい。そうです。橋田さん、という人なんですけど」
倫子「橋田……って、ダルと同じ苗字?」
倫子「(何かが頭に引っかかる……くそ、記憶が混乱しているのか……)」ズキズキ
ダル「ほいじゃ、放電現象が起きたら送信ボタンを押してね」ピッ
倫子「あっ! バカ、ダル! 実験は中止だっ!」
ダル「へ? さっきまでめっちゃノリノリだったじゃん」
倫子「この一瞬で状況が180度変わったのだっ! とにかく、マシンを止め――」
バチバチバチバチッ……
綯「え、えっと、これ、押すんですよね」
倫子「ま、待てっ! 早まるな、やめろ、綯――――」
ピッ
751: 2015/12/16(水) 05:28:20.12 ID:gd8Eaw7Mo
―――――――――――――――――――
0.40931 → 0.00312
―――――――――――――――――――
752: 2015/12/16(水) 05:29:47.28 ID:gd8Eaw7Mo
柳林神社
倫子「ぐぅっ……っ!! かはっ、はぁ……はぁ……」ヨロッ
るか「だ、大丈夫ですか!? 凶真さんっ!!」オロオロ
倫子「あ、ああ……大丈夫だ、オレの右腕に宿りし魑魅魍魎は鎮まったようだ……」
るか「よかったです……」ウルウル
倫子「……ここは柳林神社か。まさか、立て続けに世界線が変わってしまうとはな」
倫子「今は8月12日。明日になれば未来から紅莉栖がやってくるが、夜にはラボが襲撃される」
倫子「とにかくIBN5100だ。ラボにあるか、鈴羽が持っているか……あるいは、柳林神社に?」
倫子「なあ、ルカ子。この神社にレトロPCが奉納されている事実はあるか?」
るか「えっ? あ、はい、お父さんに確認してきますっ」タッ
・・・
るか「……どうやら、そのようなものはお預かりしていないみたいです。お力になれずすいません……」
倫子「いや、いいんだ。想定の範囲内だ」
倫子「それじゃ、世話になったな。そうそう、まゆりのコスプレ押しが迷惑ならちゃんと言えよ?」
るか「え? は、はい。それでは、また」
倫子「さて、取りあえずはラボだ。そこにIBN5100があれば、ダルに頼んでクラッキングだっ」タッ
倫子「ぐぅっ……っ!! かはっ、はぁ……はぁ……」ヨロッ
るか「だ、大丈夫ですか!? 凶真さんっ!!」オロオロ
倫子「あ、ああ……大丈夫だ、オレの右腕に宿りし魑魅魍魎は鎮まったようだ……」
るか「よかったです……」ウルウル
倫子「……ここは柳林神社か。まさか、立て続けに世界線が変わってしまうとはな」
倫子「今は8月12日。明日になれば未来から紅莉栖がやってくるが、夜にはラボが襲撃される」
倫子「とにかくIBN5100だ。ラボにあるか、鈴羽が持っているか……あるいは、柳林神社に?」
倫子「なあ、ルカ子。この神社にレトロPCが奉納されている事実はあるか?」
るか「えっ? あ、はい、お父さんに確認してきますっ」タッ
・・・
るか「……どうやら、そのようなものはお預かりしていないみたいです。お力になれずすいません……」
倫子「いや、いいんだ。想定の範囲内だ」
倫子「それじゃ、世話になったな。そうそう、まゆりのコスプレ押しが迷惑ならちゃんと言えよ?」
るか「え? は、はい。それでは、また」
倫子「さて、取りあえずはラボだ。そこにIBN5100があれば、ダルに頼んでクラッキングだっ」タッ
753: 2015/12/16(水) 05:30:50.88 ID:gd8Eaw7Mo
裏路地
倫子「(オレたちのラボは妻恋坂交差点の手前の路地を1つ左に折れたところにある)」
倫子「(大檜山ビル2階。ブラウン管工房とかいうアナクロな店の真上を借りている)」
倫子「(オレは今年の3月から通い慣れた足でそこへ向かったはずなのだが……)」
倫子「おかしいな、道を間違えたか?」
倫子「(――いくら探しても大檜山ビルが見当たらない)」
倫子「……いや、そろそろ現実逃避はよそう。間違いなく、ここに大檜山ビルは"あった"」
倫子「(しかし、オレの記憶とは異なり、目の前には現代的な賃貸マンションが建っている)」
倫子「ラボが……消えた……」
倫子「(オレたちのラボは妻恋坂交差点の手前の路地を1つ左に折れたところにある)」
倫子「(大檜山ビル2階。ブラウン管工房とかいうアナクロな店の真上を借りている)」
倫子「(オレは今年の3月から通い慣れた足でそこへ向かったはずなのだが……)」
倫子「おかしいな、道を間違えたか?」
倫子「(――いくら探しても大檜山ビルが見当たらない)」
倫子「……いや、そろそろ現実逃避はよそう。間違いなく、ここに大檜山ビルは"あった"」
倫子「(しかし、オレの記憶とは異なり、目の前には現代的な賃貸マンションが建っている)」
倫子「ラボが……消えた……」
825: 2015/12/24(木) 01:23:09.05 ID:BfuGClXVo
柳林神社
るか「あれ、おか、凶真さん。戻ってらっしゃったんですか……凶真さんっ!? 大丈夫ですかっ!?」
倫子「あぅ……あぁ……」ヨロヨロ
るか「しっかりしてくださいっ! どうしちゃったんですかぁ!」ウルウル
倫子「ルカ子……お前、ラボを知らないか……」
るか「ラ、ラボ、ですか? たしか、まゆりちゃんが今日明日はバイトをお休みしてラボに居るって言ってましたけど……」
倫子「……なに? ラボは、あるのか?」
るか「は、はい。えっと……?」
倫子「どこにだぁっ!? 大檜山ビルは無かったのだぞぉ!? あのマンションの一室かぁ!?」ワナワナ
るか「え、ええっと、どういうことでしょう……」
倫子「今すぐラボまで案内してくれっ! 頼む、ルカ子っ!」ヒシッ
るか「は、はいっ! わかりましたっ!」ドキッ
るか「あれ、おか、凶真さん。戻ってらっしゃったんですか……凶真さんっ!? 大丈夫ですかっ!?」
倫子「あぅ……あぁ……」ヨロヨロ
るか「しっかりしてくださいっ! どうしちゃったんですかぁ!」ウルウル
倫子「ルカ子……お前、ラボを知らないか……」
るか「ラ、ラボ、ですか? たしか、まゆりちゃんが今日明日はバイトをお休みしてラボに居るって言ってましたけど……」
倫子「……なに? ラボは、あるのか?」
るか「は、はい。えっと……?」
倫子「どこにだぁっ!? 大檜山ビルは無かったのだぞぉ!? あのマンションの一室かぁ!?」ワナワナ
るか「え、ええっと、どういうことでしょう……」
倫子「今すぐラボまで案内してくれっ! 頼む、ルカ子っ!」ヒシッ
るか「は、はいっ! わかりましたっ!」ドキッ
826: 2015/12/24(木) 01:24:00.65 ID:BfuGClXVo
都道452号線沿い
倫子「ここは……」
るか「ここ、ですよね? おか……、凶真さんのラボ」
倫子「メイクイーン+ニャン2の入っているビルの隣……」
倫子「その1階には自転車屋が入っていて、バイト戦士がBianchiのMTBを買ったであろう場所……」
倫子「立地としては、かつてのラボの真裏のビルだ。裏通りではなく、表通りに面してはいるが……」
るか「はい。自転車屋さんの2階のテナントがラボですよね。たしか、フェイリスさんが大家さんだとか」
倫子「ラボはミスターブラウンではなくフェイリスのテナントビルへと移動したのか……」
るか「それじゃ、中に入りましょう。まゆりちゃんが居るはずですよ」
倫子「お、おう……」プルプル
倫子「ここは……」
るか「ここ、ですよね? おか……、凶真さんのラボ」
倫子「メイクイーン+ニャン2の入っているビルの隣……」
倫子「その1階には自転車屋が入っていて、バイト戦士がBianchiのMTBを買ったであろう場所……」
倫子「立地としては、かつてのラボの真裏のビルだ。裏通りではなく、表通りに面してはいるが……」
るか「はい。自転車屋さんの2階のテナントがラボですよね。たしか、フェイリスさんが大家さんだとか」
倫子「ラボはミスターブラウンではなくフェイリスのテナントビルへと移動したのか……」
るか「それじゃ、中に入りましょう。まゆりちゃんが居るはずですよ」
倫子「お、おう……」プルプル
827: 2015/12/24(木) 01:25:26.23 ID:BfuGClXVo
未来ガジェット研究所?
まゆり「あ、オカリンにるかくん! トゥットゥルー♪」
るか「まゆりちゃん、お邪魔します」
倫子「不思議だ……。初めて来た場所なのに、内装は実に馴染んだ佇まい……」
倫子「ガジェットも、ソファーも、ダルの積みゲーもそのままだ。まるで未視感<ジャメビュ>……」
まゆり「オカリン、どうしたの?」
るか「なんだか凶真さん、今日は1日ぼーっとしているみたいで……」
倫子「まゆりが居る……グスッ……」
まゆり「オ、オカリン? だいじょうぶ? どこか痛いの?」
倫子「まゆりぃ……ふぇぇ……」ヒシッ
まゆり「もう、オカリンどうしちゃったのかな? よしよし♪」ナデナデ
まゆり「あ、オカリンにるかくん! トゥットゥルー♪」
るか「まゆりちゃん、お邪魔します」
倫子「不思議だ……。初めて来た場所なのに、内装は実に馴染んだ佇まい……」
倫子「ガジェットも、ソファーも、ダルの積みゲーもそのままだ。まるで未視感<ジャメビュ>……」
まゆり「オカリン、どうしたの?」
るか「なんだか凶真さん、今日は1日ぼーっとしているみたいで……」
倫子「まゆりが居る……グスッ……」
まゆり「オ、オカリン? だいじょうぶ? どこか痛いの?」
倫子「まゆりぃ……ふぇぇ……」ヒシッ
まゆり「もう、オカリンどうしちゃったのかな? よしよし♪」ナデナデ
828: 2015/12/24(木) 01:26:37.74 ID:BfuGClXVo
倫子「ご、ごほん。今のは忘れろ」
まゆり「はーい」ニコニコ
るか「はい」ウフフ
倫子「ところで、さっきまゆりはルカ子のことを『るかくん』と呼んでいたが、『るかちゃん』とは呼ばないのか?」
まゆり「んー? るかくんが女の子だったらそう呼んでたかも♪」
るか「ま、まゆりちゃん! ボクは男だよぅ」アセッ
倫子「……ダルはどうした? マシンの開発をサボって何をやっているのだ」
まゆり「ダルくん? 今はフェリスちゃんのところに行ってるんじゃないかなー」
倫子「(さっきはスルーしたが、メイクイーンが復活していたということは、そういうことなんだろうな……)」
倫子「メールでここに呼びよせるか。それで、助手は?」
まゆり「クリスちゃん? クリスちゃんならもう帰っちゃったでしょ?」
倫子「む? 帰ったって、ホテルにか?」
まゆり「違うよー。そうじゃなくて、おうちに、だよ」
倫子「おうち?」
るか「あの、凶真さん? 3日前、一緒に成田までお見送りに行きましたよね?」
倫子「成田? いや、あいつの実家は青森で……って、まさか……」
まゆり「クリスちゃんはね、アメリカに帰っちゃったんだよー」
まゆり「はーい」ニコニコ
るか「はい」ウフフ
倫子「ところで、さっきまゆりはルカ子のことを『るかくん』と呼んでいたが、『るかちゃん』とは呼ばないのか?」
まゆり「んー? るかくんが女の子だったらそう呼んでたかも♪」
るか「ま、まゆりちゃん! ボクは男だよぅ」アセッ
倫子「……ダルはどうした? マシンの開発をサボって何をやっているのだ」
まゆり「ダルくん? 今はフェリスちゃんのところに行ってるんじゃないかなー」
倫子「(さっきはスルーしたが、メイクイーンが復活していたということは、そういうことなんだろうな……)」
倫子「メールでここに呼びよせるか。それで、助手は?」
まゆり「クリスちゃん? クリスちゃんならもう帰っちゃったでしょ?」
倫子「む? 帰ったって、ホテルにか?」
まゆり「違うよー。そうじゃなくて、おうちに、だよ」
倫子「おうち?」
るか「あの、凶真さん? 3日前、一緒に成田までお見送りに行きましたよね?」
倫子「成田? いや、あいつの実家は青森で……って、まさか……」
まゆり「クリスちゃんはね、アメリカに帰っちゃったんだよー」
829: 2015/12/24(木) 01:28:27.21 ID:BfuGClXVo
prrrr prrrr
紅莉栖『今何時だと……』
倫子「紅莉栖っ!? 紅莉栖なのかっ!?」
紅莉栖『なんだ、夢か。私の倫子ちゃんが夜中にラブコールしてくるわけがない』
倫子「夢じゃないっ! 寝ぼけてるのかぁっ!?」ウルウル
紅莉栖『え、だって、私の名前をまともに呼んでくれるなんて……』
倫子「なあ!? どうしてアメリカへ帰ったぁ!? お前はラボメンナンバー004だろぉ!?」
紅莉栖『……岡部にそう言ってもらえて心から嬉しい。でも、私が岡部のラボに居るべき意味を見つけられなかったから、ね』
倫子「……どういう意味だ。タイムマシンの研究こそお前のアイデンティティだと言っていたではないか」
紅莉栖『確かに最初の……Dメール? 橋田のケータイへ5日前に送られてるメールには興味があった』
紅莉栖『だけどそれっきりで、研究と呼べるようなことはできなかったでしょ』
紅莉栖『倫子ちゃんと離れなきゃいけないのは寂しかったけど、元々アメリカに帰る予定だったし……』
倫子「り、倫子ちゃん言うなぁっ!」
倫子「(そう言えばこいつ、元々アメリカへ帰る予定だったのを、電話レンジ(仮)やタイムリープマシンの研究のために日本に残ってくれていたのだったな……)」
倫子「だ、だが、青森へ一緒に行くという約束はどうしたんだ!?」
紅莉栖『へ? そんな約束したっけ……』
倫子「…………」ピッ
倫子「(これは……とんでもない規模で世界線が変わっている……)」ワナワナ
830: 2015/12/24(木) 01:29:10.85 ID:BfuGClXVo
倫子「電話レンジ(仮)っ! 電話レンジ(仮)はどこだぁっ!」ダッ
まゆり「開発室にあるよ? から揚げ食べる?」
倫子「から揚げ……だと? 電子レンジとしても機能しているのかっ!?」
るか「たしか、未来ガジェット8号機はケータイで電子レンジを遠くから使える、っていう未来ガジェットでしたよね」
倫子「……っ。そ、そうだ、IBN5100はラボにあるか……?」
まゆり「あいびー?」
るか「聞いたことないですね……」
倫子「……どうやらオレは、氏ぬほど疲れているようだ。……少し休ませてくれ」ハァ
るか「えっ!? だ、大丈夫ですか? 今お水を……」
なるほどな……
そろそろわかってきたぞ、この世界線の仕組みが。
信じたくはない。
信じたくはないが……
831: 2015/12/24(木) 01:30:04.12 ID:BfuGClXVo
キッカケは綯が送信したDメールだろう。
その内容は、2000年5月18日の天王寺裕吾に対し、妻である今宮綴を救え、と指令するもの。
これによっておそらく、天王寺裕吾が大檜山ビルのオーナーとなる因果が消滅した。
誰かのものとなったビルは集合住宅へと建て替えられてしまった。
一方、2010年3月のオレはそれでも秋葉原にラボを求めた。
なんの因果か知らんが、フェイリスがオーナーとなっているというこのビルにラボを構えたらしい。
だが、重要なのは階下の店だ。
そこにブラウン管がないということは―――
832: 2015/12/24(木) 01:31:05.06 ID:BfuGClXVo
Dメールもタイムリープマシンも、偶然の産物だった。
42型ブラウン管テレビが点灯していることで未来ガジェット8号機はタイムマシンへと変貌するのだ。
それが無いということは、おそらくこの世界線では実験らしい実験は成功していない。
まゆりがから揚げを解凍ではなく逆に冷凍させてしまうこともない。
ゲルバナが生成されることも、テレポートすることもない。
過去を司る女神作戦<オペレーション・ウルド>も、タイムリープマシン実験も。
ロト6は当たっていないし、写真集は回収できていないし、ルカ子は男だし、フェイリスのパパは亡くなっているし、秋葉原は萌えの街だし……
鈴羽はどうなった? 8月9日の夜には1975年へとフライトしたのだろうか。
54歳になる鈴羽はどうしている? 海外か? 秋葉原に潜伏中か?
紅莉栖は明日の2時ごろにタイムリープしてくるのか?
ダルはどうやらタイムリープしてきていないらしい。
萌郁はラウンダーなのか? この世界線でもラボの為に氏ぬのか?
フェイリスのパパはどうなった? アキバが萌え化しているということは……生氏も"元に戻った"のか。
ルカ子は……だが男だ。
まゆりは……氏ぬのか……?
833: 2015/12/24(木) 01:31:57.05 ID:BfuGClXVo
鈴羽はIBN5100こそが世界線をαからβへと変更できるキーアイテムだと言っていた。
だが、今オレがいるこの世界線がβ世界線である、という可能性もあるんじゃないのか?
つまり、ディストピアは築かれず、紅莉栖はタイムマシンの母とならず、ワルキューレなどというレジスタンスは創設されず……
まゆりは……氏なない。
それを確かめるにはあと30時間ほど待てばいい。話は簡単だ。
そこでまゆりが氏ねばαのまま――
……オレは何を考えているんだ。
人は普通、氏んだら生き返らない。
永遠に失われてしまう。
それが自然の摂理のはずだろ……
834: 2015/12/24(木) 01:32:52.36 ID:BfuGClXVo
倫子「ごめん……まゆり……」グスッ
まゆり「突然どうしたのー? 怖い夢でも見た?」
倫子「夢……か。この世界線にとっては夢なんだよな……」
―――――
『……また変な夢でも見たの?』
『夢……? あ、ああ。そうか。あれは夢だったんだ……』
―――――
倫子「……なあ、まゆり? お前、『鈴羽』という名前に心当たりはあるか?」
まゆり「スズさん? うん、今日もバイトしてたよ」
倫子「バイト? ……ブラウン管工房でか?」
まゆり「ぶらうん? それじゃなくてねー、自転車屋さんで、だよー」
倫子「なんと。あいつ、ラボの真下でバイトする、というのは変わっていないのか。というか――」
『鈴羽が1975年へと跳んでいない』
倫子「これってどういうことなんだ……? なぜあいつはIBN5100を取りに行っていない……?」
倫子「まさか本当に、"ここ"が1%の壁の向こう側なのか……?」
835: 2015/12/24(木) 01:33:36.26 ID:BfuGClXVo
自転車屋
倫子「オレはここに来るのは初めてのはずだが、"この世界線のオレ"はおそらく何度か来ているのだろうな……」ウィーン
鈴羽「おっ、鳳凰院凶真じゃーん。ちーっす」
倫子「なあ、ジョン・タイター。話がある。バイトはいつ終わる?」
鈴羽「話? えっと、店長さんに言えばいつでも上がれるよ」
倫子「それはよかった。なら今すぐ――」
鈴羽「そうだっ! まだ日も高いし、あの約束、今日お願いしてもいいかな?」
倫子「っ、約束?」
鈴羽「もう準備もできてるよ! ほら、早く早くっ!」
倫子「うわっ!? お、おい!? 引っ張るなぁっ!」
倫子「オレはここに来るのは初めてのはずだが、"この世界線のオレ"はおそらく何度か来ているのだろうな……」ウィーン
鈴羽「おっ、鳳凰院凶真じゃーん。ちーっす」
倫子「なあ、ジョン・タイター。話がある。バイトはいつ終わる?」
鈴羽「話? えっと、店長さんに言えばいつでも上がれるよ」
倫子「それはよかった。なら今すぐ――」
鈴羽「そうだっ! まだ日も高いし、あの約束、今日お願いしてもいいかな?」
倫子「っ、約束?」
鈴羽「もう準備もできてるよ! ほら、早く早くっ!」
倫子「うわっ!? お、おい!? 引っ張るなぁっ!」
836: 2015/12/24(木) 01:34:52.44 ID:BfuGClXVo
晴海大橋
まゆり「きもちいいねー」チリンチリン
ダル「ふぅっ、ひいっ、なんで僕がこんなことに付き合わなきゃ、いけないんだ……」ギーコギーコ
るか「修行よりも、全然大変です……」キーコキーコ
倫子「ど、同感だ……はあ、ふう……っていうか、風強すぎ……」キーコキーコ
まゆり「ダルくんはね、メタボだからもっと運動しておくべきだと思うよー」
ダル「デブオタ上等……」
鈴羽「いい景色だなー。レジェンドたちと来れて、あたし幸せかも」
倫子「というか、だな……ふぅ……どうしてサイクリングなんかに……はぁ……」
鈴羽「えー? 鳳凰院凶真が提案してくれたんじゃん。あたしの父さんを探すついでにサイクリングをしよう、って」
倫子「は、はぁ? お前の父親はダ――」
倫子「(ま、待て待て。"この世界線のオレ"はワルキューレの話をされていないのか?)」
倫子「(それと、バレル・タイターが橋田至である、という情報は未来のSERNにバレるとマズイ。あまり口にしない方がいいか……)」
倫子「ゴホン。というか、こんなところに父親の痕跡があるのか?」
鈴羽「言ったでしょ? あたしの父さんと母さんって、"コミマ"ってところで出会ったんだって」
倫子「コ、コミマだとぉ!?」
鈴羽「告白の言葉は、『キミに一生、萌え萌え☆キュン』だったって聞いてる。この時代に来るまでは意味がわからなかったけど、情熱的な愛の言葉だったんだね」
まゆり「きもちいいねー」チリンチリン
ダル「ふぅっ、ひいっ、なんで僕がこんなことに付き合わなきゃ、いけないんだ……」ギーコギーコ
るか「修行よりも、全然大変です……」キーコキーコ
倫子「ど、同感だ……はあ、ふう……っていうか、風強すぎ……」キーコキーコ
まゆり「ダルくんはね、メタボだからもっと運動しておくべきだと思うよー」
ダル「デブオタ上等……」
鈴羽「いい景色だなー。レジェンドたちと来れて、あたし幸せかも」
倫子「というか、だな……ふぅ……どうしてサイクリングなんかに……はぁ……」
鈴羽「えー? 鳳凰院凶真が提案してくれたんじゃん。あたしの父さんを探すついでにサイクリングをしよう、って」
倫子「は、はぁ? お前の父親はダ――」
倫子「(ま、待て待て。"この世界線のオレ"はワルキューレの話をされていないのか?)」
倫子「(それと、バレル・タイターが橋田至である、という情報は未来のSERNにバレるとマズイ。あまり口にしない方がいいか……)」
倫子「ゴホン。というか、こんなところに父親の痕跡があるのか?」
鈴羽「言ったでしょ? あたしの父さんと母さんって、"コミマ"ってところで出会ったんだって」
倫子「コ、コミマだとぉ!?」
鈴羽「告白の言葉は、『キミに一生、萌え萌え☆キュン』だったって聞いてる。この時代に来るまでは意味がわからなかったけど、情熱的な愛の言葉だったんだね」
837: 2015/12/24(木) 01:36:02.33 ID:BfuGClXVo
ビッグサイト
鈴羽「ビッグサイト、生で見られて感動! 2036年にはさ、ビッグサイトってなくなっちゃってるんだよね」
倫子「鈴羽の母親は腐女子の可能性があるな。ということはコイツ、実はオタクのサラブレッド……?」
まゆり「まゆしぃはおなかが空いちゃったから、ダルくんとるかくんとファミレスに行ってるね」
ダル「もうダメでごわす……ふひぃ」
るか「気づいたらもう晩御飯の時間ですね……ふぅ」
鈴羽「わかった。あたしはもうちょっと日暮れの有明を散策してくる。鳳凰院凶真も来る?」
倫子「ああ。お前に話があると言っただろう」
鈴羽「……そうだった。それじゃ、椎名まゆり、橋田至、漆原るか、また後で!」
鈴羽「ビッグサイト、生で見られて感動! 2036年にはさ、ビッグサイトってなくなっちゃってるんだよね」
倫子「鈴羽の母親は腐女子の可能性があるな。ということはコイツ、実はオタクのサラブレッド……?」
まゆり「まゆしぃはおなかが空いちゃったから、ダルくんとるかくんとファミレスに行ってるね」
ダル「もうダメでごわす……ふひぃ」
るか「気づいたらもう晩御飯の時間ですね……ふぅ」
鈴羽「わかった。あたしはもうちょっと日暮れの有明を散策してくる。鳳凰院凶真も来る?」
倫子「ああ。お前に話があると言っただろう」
鈴羽「……そうだった。それじゃ、椎名まゆり、橋田至、漆原るか、また後で!」
838: 2015/12/24(木) 01:37:02.85 ID:BfuGClXVo
鈴羽「あのさ、あるテレビ記者が雪の街に取材に来て、そこで時間の連鎖に絡めとられちゃう、って映画、なかったっけ?」
倫子「『恋はデジャ・ブ』だったか。コメディ部分は好きだな」
鈴羽「あたしは微妙。だって主人公が特になにかしたわけでもないのにさ、時間の無限ループはきれいさっぱりなくなっちゃうじゃん」
倫子「本当は裏に陰謀が渦巻いている……そう言いたいのか?」
鈴羽「ううん。今のキミ、映画と同じ状況に置かれてるんじゃない?」
倫子「(なんだ、こいつ……本当にオレの知っている鈴羽なのか……?)」
倫子「……"タイムリープマシン"も無いのに、そんなわけないだろ」
鈴羽「やっぱり。キミは"別の世界線"から来た。そうでしょ?」
倫子「……だったらどうした」
鈴羽「よかった。これでようやくあたしの使命が果たされるんだね……」
倫子「なに……? お前の使命は、1975年へ行ってIBN5100を手に入れることでは無かったのか?」
鈴羽「キミの元居た世界線のあたしはそう言うと思う。でも、このあたしは違うよ」
鈴羽「あたしの使命、それは、"鳳凰院凶真が元居た世界線"へと世界線を変動させること」
倫子「元居た……?」
鈴羽「――2000年へ跳んで、Dメールを取り消すこと、だよ」
839: 2015/12/24(木) 01:38:10.95 ID:BfuGClXVo
世界は大きく変わっていた。
いや、ある意味で大事な部分は何も変わっていない。
この世界線でもまゆりは氏ぬ。
つまり、ここはまだα世界線だ。
鈴羽が持っていたダイバージェンスメーターによると、その値は0.00312らしい。
オレが未来で作り出したというダイバージェンスメーター。
以前確認した0.33871からはだいぶ離れてしまった。
1%の壁からは、遠のいてしまっている。
オレたち未来ガジェット研究所がタイムマシン開発にこぎつけられなかったせいだろう。
0.00312。
世界を変えようと意気込んだオレにとって数値の減少が意味するところは。
0.00312。
この無機質な数字の羅列は、オレにとって絶望だった。
840: 2015/12/24(木) 01:40:06.65 ID:BfuGClXVo
倫子「……結局、ダメだったんだな。紅莉栖も、ダルも、鈴羽も、綯も伽夜乃も、揃いも揃って未来から過去を変えに来たというのに……」
倫子「24年だの、23年だの、35年、15年……タイムトラベラーどもは皆、人生を賭けたというのに……」
倫子「世界は変わらない……」
倫子「まゆりは、氏ぬ……」ウルウル
鈴羽「そのためにあたしが居る。大丈夫だよ、父さんが遺した作戦を完遂できれば――」
倫子「できるのかぁっ!? それは本当に、確実な情報なのかぁっ!?」
倫子「もし作戦に穴があったらっ!! もし予測できない事故が起こったらっ!!」ブルブル
鈴羽「鳳凰院凶真! あたしを見て! 心を殺さないで!」
鈴羽「それでもキミは、諦めることなんかできないんだ! 椎名まゆりを救おうと動くしかないんだ!」
倫子「わかっているっ! そんなことは、わかっているんだ……っ」ウルウル
―――――
『岡部にも執念を持ってもらいたいの。まゆりを救うという、絶対的な執念』
『……わかっている。まゆりは、まゆりはオレの人質だ』
―――――
倫子「……ぐぅっ!」ポロポロ
鈴羽「落ち着いてあたしの話を聞いてほしい。それは、キミにとっても希望のはずなんだ」
841: 2015/12/24(木) 01:44:49.94 ID:BfuGClXVo
鈴羽「今はあたしが2000年へ立ち寄ればいいっていう答えが出ているけど、あたしの知ってる2010年から先はその答えが出せなかった世界なんだ」
倫子「……そもそも、どうやってタイムマシンが作られたのだ」
鈴羽「7月23日に受信された、キミが送信者となっているメールがエシュロンに捕えられることで未来のSERNはキミを監視することになった」
鈴羽「実は、牧瀬紅莉栖は元からSERNに目をつけられていた。タイムマシンに関する論文を書いたらしいんだけど、どこからかそれが漏えいしたんだ」
倫子「あいつが、タイムマシンの論文を……?」
鈴羽「牧瀬紅莉栖を研究員へと迎えた未来のSERNは過去改変を行い、エシュロンメールの関係者と思われる2010年の牧瀬紅莉栖と鳳凰院凶真、橋田至の3名を当時のSERNへ連行した」
鈴羽「そこで君たちはSERNのZプログラムに従事することになった。当時からリーディングシュタイナーを持っていたキミは伝説級の活躍をしたって聞いてる」
鈴羽「"別の世界線での記憶"ってのがタイムマシン開発を後押ししたんだろうね」
倫子「……まんまと利用されたわけだ。くそぅ……」
鈴羽「そしてキミは、盗んだんだ。SERNのすべてを」
倫子「……そうか。収束の力を利用して、逆にSERNをやりこめたのかっ!」
鈴羽「鳳凰院凶真とバレル・タイターは日本でレジスタンスを創設する」
鈴羽「タイムマシン技術はSERNの独占を逃れた。これが世界の希望になったんだ」
鈴羽「タイムリープが可能となったことで時間は実質無限になった。レジェンドはこれを利用して科学技術レベルを1世紀は進めたって聞いてる」
倫子「そんなにタイムリープしたのか、未来のオレは……」
鈴羽「あたしの使命はもちろん、エシュロンに捕えられたメールデータの削除が可能なIBN5100を、1975年で確保して2010年のラボに届けること」
鈴羽「その前哨戦として、2000年の天王寺裕吾の元へ送られたDメールによる因果の取り消しが必要なんだ」
鈴羽「これを取り消さない限り、IBN5100がラボに届くことはない。だからあたしは1975年へ行く途中で一度2000年に立ち寄る必要がある」
鈴羽「これは未来のキミが導き出した答えだよ。父さんの遺書……ムービーメールでそう教わった」
倫子「未来のオレの、答え……」
842: 2015/12/24(木) 01:46:21.68 ID:BfuGClXVo
倫子「だが、あの綯のDメールで、一体なにがどうなったのかがわからない……。これでは何をどうしたらいいかがわからんではないかっ!」
倫子「この世界線ではミスターブラウンが消滅しているのに、どうやって調べれば……」
鈴羽「天王寺裕吾は居なくなったわけじゃない。探せばきっと見つかる」
鈴羽「もしSERNがキミたちを拉致するまでに天王寺裕吾から話を聞けなかったら、あたしがタイムマシンで少し過去へ行って天王寺裕吾を捜索するよ」
倫子「だ、だが、お前のタイムマシンは壊れているはずだっ! 8月9日の深夜、雷雨に遭ったせいで……」
鈴羽「えっ……嘘……」
倫子「Dメールも、タイムリープも、タイムマシンも使えない状況で、どうやって2000年の因果を操作しろと言うのだっ!!」グッ
倫子「そ、そうか! 未来のオレがDメール技術を使えるようになった時点からDメールを送れば……」
鈴羽「……あたしは未来のキミがDメールを"送らなかった"世界の未来から来ているから、たぶんそれはできない」
倫子「……収束、か。いや、だが収束に逆らう方法もあるはず……」
鈴羽「あたしの知る限りでは、2036年にはメールで過去を改変する技術は存在しない。完全なリーディングシュタイナーを持った人間が居なかったからかも知れないけど」
倫子「収束に逆らうためには、たしか2010年という年に意味があると言っていたな!?」
鈴羽「そう。大分岐の年っていうイレギュラーを利用するんだ」
倫子「紅莉栖は言っていた、世界の現在をオレの主観に近似させる、とも……」
倫子「……そうだ、あいつは明日の14時には未来から跳んでくるかもしれない」
倫子「だが、それで間に合うのかっ!? 6時間でタイムマシンを修理できるのか!?」
鈴羽「……あいつって?」
倫子「牧瀬紅莉栖だっ! タイムマシンの母、牧瀬紅莉栖がお前のタイムマシンを直しに……っ!」
鈴羽「牧瀬紅莉栖……っ、そんな作戦、知らされてない……」ギリッ
倫子「頼む、もう説明するのも面倒くさい……頼むから紅莉栖を敵視しないでくれ……」ウルウル
843: 2015/12/24(木) 01:51:40.31 ID:BfuGClXVo
鈴羽「でも、あたしにはわからないな。仮に牧瀬紅莉栖が父さんのタイムマシンを直せるとして、6時間の制限ってのはなんのこと?」
倫子「それは……まゆりが氏ぬタイムリミットのことだ」
鈴羽「……それって、本当にタイムリミット?」
倫子「なに……?」
鈴羽「この作戦が成功すれば、キミは元居た世界線とほぼ同じ世界線に戻れる。そこならタイムリープマシンもある」
鈴羽「だったら、この世界線での椎名まゆりは諦めて、次の世界線で生き返らせれば――」
倫子「…………お前ェェェエエエエッ!!!!」ガシッ
鈴羽「うわぁっ!?」
倫子「まゆりをっ!! まゆりをなんだと思ってるっ!?」
倫子「これはゲームじゃないっ!! やり直せば生き返るとか、そういう問題じゃないんだよぉっ!!」
鈴羽「ご、ごめん。でも他に方法が――」
倫子「たとえ世界が再構成されようと、まゆりは世界にただ1人しかいないっ!!」
倫子「私の……オレの、かけがえのない幼馴染なんだよぅ……グスッ……」ウルウル
鈴羽「…………」
倫子「……もうまゆりの氏ぬ場面は見たくない」
倫子「いつも脳天気に微笑んでいるまゆりの、あんな無惨な氏の姿を見せられるのは、つらすぎるよ……」ポロポロ
鈴羽「レジェンド……」
844: 2015/12/24(木) 01:56:02.18 ID:BfuGClXVo
まゆり「あー、いたいた~! オカリーン!」タッ タッ
倫子「まゆり……」
まゆり「もう真っ暗になっちゃったね~。そろそろ帰ろう?」
倫子「あ、ああ。そうだな。なんだかんだでもう8時前か……」
倫子「(8時、前……。い、いや、今日じゃない。今日はまだ13日じゃ……)」
まゆり「あれー? まゆしぃのカイちゅ~、止まっちゃってるー」
倫子「な、に……」
まゆり「あれ、か、あ……っ……」バタッ
鈴羽「椎名まゆりっ!?」
るか「まゆりちゃん、足早いよぉ……あ、あれ、まゆりちゃん?」
ダル「ま、まゆ氏ちょっと待って……って、あれ? まゆ氏、どしたん……?」
まゆり「…………」
倫子「あ……あ……あぁ……」
ダル「息……してない……」
るか「うそ……そんな……」
倫子「……ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!」
845: 2015/12/24(木) 01:57:10.78 ID:BfuGClXVo
鈴羽「……椎名まゆりは氏んだ」
倫子「違うっ!!! オレが、見頃しにしたんだっ!!! オレがっ!!!」
ダル「おい、まゆ氏! 起きろよ! ドッキリか!? ドッキリだろ!?」
るか「まゆりちゃんっ!! まゆりちゃぁぁぁぁぁん!!」
鈴羽「……救急車を呼ぼう。SERNがキミたちを拉致する前に対処しないと」
倫子「お前なんでそんな平然とした顔してんだよぉっ!!」
鈴羽「あたしは、戦士だから。仲間が氏んでも冷静に行動するための訓練は受けている」
倫子「こいつ……っ!!」ギロッ
鈴羽「まだ椎名まゆりは助けられるっ! お願いだから冷静になって!」
ダル「た、助けられるって、どういう……」
鈴羽「とにかく、一旦ラボに戻ろう」
倫子「まゆり……っ、まゆりぃ……」ポロポロ
まゆり「…………」
846: 2015/12/24(木) 02:02:39.55 ID:BfuGClXVo
未来ガジェット研究所?
倫子「(気付けばオレたちはラボに戻ってきていた。どうやって戻ってきたかはまるで覚えていない)」
ダル「ちょ、オカリン。阿万音氏……鈴羽? その話、全部マジなん?」
るか「俄かには信じられないです……あ、いえ、凶真さんを信じてない、ということではないんですけど……」
倫子「(既にダルと鈴羽の親子関係については説明した。オレが世界線を渡ってきたということも)」
倫子「(まゆりが氏んだんだ。もうなりふり構ってなどいられない)」
倫子「(フェイリスがオーナーのこのビルなら、たぶん盗聴などはされていないだろう)」
鈴羽「とにかく、レジェンドは救世主なんだ。あたしたちワルキューレの希望だよ」
倫子「(さっきから鈴羽はアトラクタフィールド理論だのオペレーション・ブリュンヒルデだのを講釈しているが、オレの耳にはまったく入らなかった)」
鈴羽「だから、まずは橋田至……父さん? にタイムマシンを直してもらおうと思うんだけど……」
倫子「……待て。明日の14時、24年後から紅莉栖がタイムリープしてくる。それを待たなければなるまい」
鈴羽「まだそんなこと言ってるの? それはキミが元居た世界線での話でしょ?」
鈴羽「この世界線では椎名まゆりは8月12日に氏んだのに、どうしてそれよりも前に牧瀬紅莉栖はタイムリープしてこなかったのさ」
倫子「それは、きっとなにかトラブルがあったんだ……」
鈴羽「素直に認めて。きっと牧瀬紅莉栖はタイムリープしてこない。だったら、それ以外の手段を講じるべきだって」
倫子「(……この世界線では紅莉栖が8月9日にアメリカへ帰っていた。このことが、あいつがタイムリープしてこない、という結果を生み出したのか……?)」グスッ
倫子「(気付けばオレたちはラボに戻ってきていた。どうやって戻ってきたかはまるで覚えていない)」
ダル「ちょ、オカリン。阿万音氏……鈴羽? その話、全部マジなん?」
るか「俄かには信じられないです……あ、いえ、凶真さんを信じてない、ということではないんですけど……」
倫子「(既にダルと鈴羽の親子関係については説明した。オレが世界線を渡ってきたということも)」
倫子「(まゆりが氏んだんだ。もうなりふり構ってなどいられない)」
倫子「(フェイリスがオーナーのこのビルなら、たぶん盗聴などはされていないだろう)」
鈴羽「とにかく、レジェンドは救世主なんだ。あたしたちワルキューレの希望だよ」
倫子「(さっきから鈴羽はアトラクタフィールド理論だのオペレーション・ブリュンヒルデだのを講釈しているが、オレの耳にはまったく入らなかった)」
鈴羽「だから、まずは橋田至……父さん? にタイムマシンを直してもらおうと思うんだけど……」
倫子「……待て。明日の14時、24年後から紅莉栖がタイムリープしてくる。それを待たなければなるまい」
鈴羽「まだそんなこと言ってるの? それはキミが元居た世界線での話でしょ?」
鈴羽「この世界線では椎名まゆりは8月12日に氏んだのに、どうしてそれよりも前に牧瀬紅莉栖はタイムリープしてこなかったのさ」
倫子「それは、きっとなにかトラブルがあったんだ……」
鈴羽「素直に認めて。きっと牧瀬紅莉栖はタイムリープしてこない。だったら、それ以外の手段を講じるべきだって」
倫子「(……この世界線では紅莉栖が8月9日にアメリカへ帰っていた。このことが、あいつがタイムリープしてこない、という結果を生み出したのか……?)」グスッ
847: 2015/12/24(木) 02:04:08.33 ID:BfuGClXVo
ダル「わかったお。その、牧瀬氏がどうのってのは置いておいても、僕がタイムマシンの修理を手伝う」
鈴羽「ありがとう……父さん。あたしだけじゃ修理に不安があったんだ」
るか「ボクも、まゆりちゃんのためなら手伝います。と言っても、ご飯の用意くらいしかできませんけど……」
鈴羽「漆原るかも、ありがとう。できればカレーがいいな」
ダル「とにかくオカリンは明日、その天王寺裕吾氏のところに行って、Dメールで何が起こったのかを確認すべきじゃね?」
倫子「天王寺裕吾、ミスターブラウンがこの世界線ではどこにいるのか、皆目見当もつかない……」
倫子「それに明日は……まゆりの通夜があるそうだ……」
るか「あっ……」
鈴羽「…………」
ダル「おぅふ……」
ガチャ
フェイリス「凶真っ!! マユシィが、マユシィがぁ~っ!!」
848: 2015/12/24(木) 02:05:27.56 ID:BfuGClXVo
フェイリス「クーニャンには連絡したニャ。明日のお昼にはこっちにつけるって」
倫子「……ご苦労」
るか「でも、まゆりちゃん……今日のお昼までは元気にしていたのに……グスッ……」
倫子「……すまない」ウルッ
るか「いえ……つらいのは凶真さんですものね……ヒグッ……」
鈴羽「……もうわかった」
倫子「え……?」
鈴羽「鳳凰院凶真は何もしなくていい。全部あたしと父さんがやる」
ダル「す、鈴羽ぁ……」
鈴羽「天王寺裕吾の居場所の調査も、作戦の立案も、タイムマシンの修理も。だからキミは何もしなくていい」
鈴羽「この世界線における椎名まゆりの氏を悼んでくるといいよ」
倫子「…………」
フェイリス「天王寺裕吾? それって、家電修理のおじさんのことかニャ?」
倫子「……なに?」
849: 2015/12/24(木) 02:06:49.87 ID:BfuGClXVo
倫子「知っているのかフェイリスッ!?」ガシッ
フェイリス「ハニャ!? さ、触っちゃダメニャ! ///」ドキッ
フェイリス「えっと、秋葉原商店会のメンバーだニャ。頭のつるつるした筋肉むきむきのおじさん、であってるニャ?」
るか「そ、その方でしたらボクも地鎮祭の時にお会いしたことがありますっ」
倫子「そいつは今どこにっ!?」ユサユサ
フェイリス「うニャ~!? い、今黒木に調べさせるニャァ~!」
倫子「Dメールで何が変わったのかがわかれば、未来のオレたちから救いの手が差し伸べられるかもしれない……!」ワナワナ
倫子「まだ、可能性はある……っ!」ガタッ
ダル「オカリンに生気が戻ったっぽいね」
鈴羽「……それじゃ、そっちは鳳凰院凶真たちに任せるよ。父さん、今すぐラジ館に行こう」
ダル「オーキードーキー」b
850: 2015/12/24(木) 02:08:16.13 ID:BfuGClXVo
2010年8月13日金曜日
新御徒町 天王寺家
倫子「ここが、ミスターブラウンの家……」
フェイリス「別に気負うことはないニャ。顔は怖いけど、フェイリスとは顔見知りだから大丈夫ニャン」
フェイリス「万が一何かあったら、凶真守護天使団団長のフェイリスが、命に代えても凶真を守るニャ!」フンス
倫子「……もしかして、この世界線にも裏マーケットはあるのか?」
フェイリス「おっじゃましまーすニャーン♪」
ピンポーン
??「はーい。あ、ねこのおねえちゃん!」
倫子「(……ん? 誰だこの小動物。綯に妹なんて居たか?)」
フェイリス「結ニャン、久しぶりだニャ。ちょっと結ニャンのパパさんとお話させてもらってもいいかニャ?」
結「どうぞー。おとうさーん、おきゃくさんだよー!」
天王寺「なんだこんな朝早くから……って、ああなんだ秋葉の嬢ちゃんか。今度はなんの企画だ?」
フェイリス「今日お話があるのはフェイリスじゃなくて凶真だニャ」
天王寺「きょうま……? 誰だ、嬢ちゃん」
倫子「は、初めまして……」
新御徒町 天王寺家
倫子「ここが、ミスターブラウンの家……」
フェイリス「別に気負うことはないニャ。顔は怖いけど、フェイリスとは顔見知りだから大丈夫ニャン」
フェイリス「万が一何かあったら、凶真守護天使団団長のフェイリスが、命に代えても凶真を守るニャ!」フンス
倫子「……もしかして、この世界線にも裏マーケットはあるのか?」
フェイリス「おっじゃましまーすニャーン♪」
ピンポーン
??「はーい。あ、ねこのおねえちゃん!」
倫子「(……ん? 誰だこの小動物。綯に妹なんて居たか?)」
フェイリス「結ニャン、久しぶりだニャ。ちょっと結ニャンのパパさんとお話させてもらってもいいかニャ?」
結「どうぞー。おとうさーん、おきゃくさんだよー!」
天王寺「なんだこんな朝早くから……って、ああなんだ秋葉の嬢ちゃんか。今度はなんの企画だ?」
フェイリス「今日お話があるのはフェイリスじゃなくて凶真だニャ」
天王寺「きょうま……? 誰だ、嬢ちゃん」
倫子「は、初めまして……」
851: 2015/12/24(木) 02:10:01.14 ID:BfuGClXVo
天王寺「俺はここいらで家電の修理やリサイクルをしてる天王寺だ。よろしくな」
倫子「店舗を持っていたりは……」
天王寺「しねえな。自宅や貸倉庫をうまく使ってやりくりしてるぜ」
天王寺「まあ、確かに廃品回収をやってた12年くらい前は店舗を持ったりしてたけどよ」
倫子「そ、それって、もしかして『ブラウン管工房』ですか!?」
天王寺「……なんだ、知ってたのか。もうずいぶん懐かしい響きだ」
倫子「どうしてビルを手放したんです?」
天王寺「手放した? いや、オレはテナントを借りてただけさ。格安でな」
天王寺「ただ、オーナーが氏んじまってな。それでビルも建て替わっちまったってわけだ」
倫子「オーナーが、氏んだ……?」
852: 2015/12/24(木) 02:10:59.81 ID:BfuGClXVo
綴「あら、かわいいお客様ですね。お茶です、どうぞ」
倫子「あ、ありがとうございます」
フェイリス「ありがとうございますニャ」
倫子「(この人が綯が蘇らせたという、綯の母上か。なるほど、綯は母親似だ)」
倫子「(綴さん。ミスターブラウンの運命の人であり、電大生としてはオレの先輩にあたる人……)」
綯「…………」ジーッ
結「…………」ジーッ
倫子「(う……小動物たちに監視されていて飲みづらい……)」
綴「こっちが綯、こっちが結です。ごめんなさいね、ほら、2人ともお客様の邪魔をしちゃダメよ」
フェイリス「お話が終わったら一緒にコスプレして遊ぼうニャーン♪」
綯「ホント! 猫のお姉ちゃん!」
結「ねこのおねえちゃん!」
天王寺「あ、こら! うちの可愛い娘たちに変な遊びを教えるんじゃねえ!」
853: 2015/12/24(木) 02:11:46.66 ID:BfuGClXVo
結「おねえちゃん、しゅくだいおしえて」
綯「いいよ。えっとね、ここがこうなって……」
倫子「……姉妹の仲が良いんですね」
綴「ええ。いつも2人で一緒にいるんですよ」
天王寺「俺の自慢の娘たちだ」
綴「産んだのは私ですよ」ウフフ
綯「お母さん、ここ教えてー」
結「おしえてー」
倫子「ふむ。小学生の夏休みの宿題くらいならオレが見てやろう。どれどれ」
綴「あら、いいんですか。すいません」
天王寺「ほう、伊達に白衣を着てるわけじゃねえんだな」
綯「美人のお姉ちゃん、ありがとう」
結「ありがとー」
倫子「(これが綯の望んだ理想の家族、なんだろうか……)」
854: 2015/12/24(木) 02:14:04.26 ID:BfuGClXVo
綴「そのビルのオーナーさんですけどね、10年ほど前に亡くなられるまでは一緒にここで暮らしていたんですよ」
倫子「一緒に……? もしかして、橋田さん、ですか?」
天王寺「嬢ちゃん、あの人が生きている頃に秋葉原に来たことがあるのか?」
倫子「まあ……そんなところです」
天王寺「元々この家はその人のものだったんだよ。最初はお隣さんだったんだが、まあ色々あって、俺が居候することになってな?」
綴「私まで同居させてもらって……橋田教授には頭が上がらないですねえ」
天王寺「俺が古物営業許可を持てたのもあの人のおかげだった」
天王寺「"巡り巡って人は誰かに親身にしてもらうことになってる、だから君もいずれ誰かに親身にしてあげなさい"ってな」
綴「そうそう。鳳凰院さんみたいに白衣の似合う綺麗な方だったんですよ」
天王寺「元気の塊みたいな人だったが、まさか病魔に侵されていたとはなぁ……」
倫子「……そう言えば、いつかミスターブラウンがそんなようなことを言っていた」
―――――
『俺が若い頃こっちに来てから母親のように面倒見てくれた、大切な人との思い出があってな……って、興味ねぇか』
『どうもお前の目付きや出で立ちはあの人に似ている気がしてならねぇ……そのせいでつい口が滑っちまった』
『ほう? ということは、その人もマッドサイエンティストだったのでしょうね』
『マッドは余計だ。確かに白衣を着こなした大学教授だったが……』
――――――
倫子「(そうか、綯の言っていた仏壇のもう1人は、元大檜山ビルのオーナーであり、大学教授であった橋田、という人物なのか)」
倫子「(……フェイリスのパパさんの話の中でも出てきたな。橋田教授)」
倫子「(そしてその橋田教授は……たしか……)」ゾワワァ
綴「今日みたいに天気のいい日は、いつもサイクリングしてましたねえ」
855: 2015/12/24(木) 02:15:00.13 ID:BfuGClXVo
『橋田鈴 享年44歳』
倫子「鈴羽……」
天王寺「墓の方は雑司ヶ谷にあるが、なんなら今から拝みに行ってもいいぞ」
倫子「……そこにあるのは、ダイバージェンスメーター、ですね」
天王寺「なに? それが何か知ってるのか?」
【 0.00312 】
倫子「(今この時代にダイバージェンスメーターは2台あるのか……)」
天王寺「それ、なんの数字を現してるかわかるか?」
倫子「いえ……」
倫子「……フェイリス。お前、橋田鈴さんを知っている、よな?」
フェイリス「知ってるニャ。パパの大学時代の先生で、卒業してからも仲良くしていたみたいニャ」
天王寺「鈴さんの遺品は、秋葉家の執事さんからもらったんだよ」
倫子「……そうですか」
倫子「(どういう因果かはわからない。だが、綯のDメールのせいで――)」
倫子「バタフライ、エフェクト……」
856: 2015/12/24(木) 02:16:18.08 ID:BfuGClXVo
倫子「そんな……そんなことって……」ワナワナ
天王寺「お、おい。嬢ちゃん、大丈夫か?」
倫子「……天王寺さん。率直に聞きます」
倫子「あなたは……2000年5月18日におかしなメールを受け取ったはず。間違いないですね」
天王寺「…………」
天王寺「それが?」
倫子「あなたは、奥さんを守った。それは――」
倫子「"ラウンダー"と関係しているんじゃないですか」
天王寺「…………」
天王寺「……わかった。場所を変えよう。おい、綴。ちょっと車で出てくる」
綴「あ、はい。いってらっしゃい」
天王寺「行くぞ、ガキども。ここから先はもう戻れる保障はねえぞ」
フェイリス「……わかりました。ただ、私を怒らせたら秋葉原で生活できないということ、忘れないでくださいね」
倫子「…………」
858: 2015/12/24(木) 02:17:52.75 ID:BfuGClXVo
雑司ヶ谷霊園
倫子「まさか鈴羽の墓が、まゆりのおばあちゃんの墓の近くにあっただなんてな……」
倫子「半年間毎日通い続けてたってのに、全く気付かなかったよ……」
天王寺「それで、嬢ちゃん。どこまで知っている」
倫子「……あなたはSERNの犬、ラウンダー」
倫子「その目的は、IBN5100の回収とオレたちのラボの監視……」
天王寺「……そうだ。ラウンダーはIBN5100の回収と、タイムマシン研究の独占のための部隊だ」
フェイリス「嘘は言ってないみたいニャ」
天王寺「ってことは、白衣のお前さん、岡部倫子か。話には聞いていたが、ほう、あんたが……」
倫子「……そうだ。そのうちお前たちに拉致されるんだろうな。あの時の襲撃のように……」
―――――
『なんだと? ってことは、あんた、FBなのか?』
『この時代の人格としてはFBでいいわ。2010年のラウンダーのみなさん、改めましてよろしくね』
『FBっ!! 牧瀬さんが、FBっ!! 私を、見ててくれたぁ……』
『(―――本当は私はあなたの知っているFBじゃない。でも、私はあなたの味方よ、桐生さん―――)』
―――――
倫子「(……もしかして、階下で鈴羽に殺されたという天王寺裕吾こそ、紅莉栖がなり替わったFBとかいうラウンダーたちの上司だったんじゃないか?)」
倫子「なあ、天王寺さん。あなた、"FB"か?」
天王寺「FB? なんだそりゃ。フェルディナント・ブラウンのイニシャルか何かか?」
倫子「そ、そうではなくて、ラウンダーとしてのコードネームか何かだっ!」
天王寺「俺はそんな名前を名乗ったことはねえなあ。何故なら俺は――」
天王寺「M2、だからな」
倫子「M2……」
倫子「まさか鈴羽の墓が、まゆりのおばあちゃんの墓の近くにあっただなんてな……」
倫子「半年間毎日通い続けてたってのに、全く気付かなかったよ……」
天王寺「それで、嬢ちゃん。どこまで知っている」
倫子「……あなたはSERNの犬、ラウンダー」
倫子「その目的は、IBN5100の回収とオレたちのラボの監視……」
天王寺「……そうだ。ラウンダーはIBN5100の回収と、タイムマシン研究の独占のための部隊だ」
フェイリス「嘘は言ってないみたいニャ」
天王寺「ってことは、白衣のお前さん、岡部倫子か。話には聞いていたが、ほう、あんたが……」
倫子「……そうだ。そのうちお前たちに拉致されるんだろうな。あの時の襲撃のように……」
―――――
『なんだと? ってことは、あんた、FBなのか?』
『この時代の人格としてはFBでいいわ。2010年のラウンダーのみなさん、改めましてよろしくね』
『FBっ!! 牧瀬さんが、FBっ!! 私を、見ててくれたぁ……』
『(―――本当は私はあなたの知っているFBじゃない。でも、私はあなたの味方よ、桐生さん―――)』
―――――
倫子「(……もしかして、階下で鈴羽に殺されたという天王寺裕吾こそ、紅莉栖がなり替わったFBとかいうラウンダーたちの上司だったんじゃないか?)」
倫子「なあ、天王寺さん。あなた、"FB"か?」
天王寺「FB? なんだそりゃ。フェルディナント・ブラウンのイニシャルか何かか?」
倫子「そ、そうではなくて、ラウンダーとしてのコードネームか何かだっ!」
天王寺「俺はそんな名前を名乗ったことはねえなあ。何故なら俺は――」
天王寺「M2、だからな」
倫子「M2……」
859: 2015/12/24(木) 02:19:19.54 ID:BfuGClXVo
倫子「(確か萌郁は、『私は……M4。SERNの、ラウンダー』と言っていた……)」
天王寺「正確には、だった、だけどよ」
倫子「どういうことだ?」
天王寺「勘違いしているようだが、俺はもうラウンダーじゃねえってことさ」
倫子「……なに?」
天王寺「足を洗った、とは言い難いが、少なくとも今の俺はラウンダーじゃねえ」
倫子「ほ、本当か?」
フェイリス「本当みたいだニャ」
天王寺「本来ラウンダーってのは、任務を達成したら消されるんだ」
天王寺「だけどな、オレはその功績から異例の温情をもらったのさ。普通の人間として生活させてもらう、な」
天王寺「つっても、どこかで監視されてるだろうけどな。今こうやってお前さんが俺と話をしていることもSERNには筒抜けだろうよ」
『お前を見ているぞ』
倫子「そ、そうなのか……」
天王寺「まあ、SERNからしてみれば岡部倫子の拉致は織り込み済みってことだから、別になんの問題もねえんだけどな」
天王寺「その代わり、秋葉の嬢ちゃんは気をつけとけよ」
フェイリス「…………」
天王寺「俺は岡部倫子とも、ラウンダーとも他人なんだ。これ以上、厄介ごとを増やすんじゃねえ」
860: 2015/12/24(木) 02:20:17.28 ID:BfuGClXVo
倫子「いや、待ってくれ。質問に答えてほしい」
倫子「2000年5月18日、未来から来たメールを受け取ったあなたは、どんな行動を取ったんだ」
天王寺「……別に、俺は何もしてねえ。いや、"何もしない"をした、ってのが正解だな」
フェイリス「嘘じゃないみたいニャ」
倫子「それはどういう――」
天王寺「もうお前らに話せることはねえよ。こっちは仕事があるんだ。それじゃあな」
倫子「ま、待てっ! おいっ!」
フェイリス「凶真、深追いは良くないニャ……」
倫子「……くそぅ」
鈴羽「…………」
861: 2015/12/24(木) 02:21:53.97 ID:BfuGClXVo
未来ガジェット研究所?
倫子「(あれから萌郁にも連絡を取ろうとしたが、オレのケータイに『閃光の指圧師』のアドレスは登録されていなかった)」
倫子「(M2にM4……。わからないが、もしかしたらあいつは2006年に自頃してしまっているのかも知れない……)」
紅莉栖「遅くなってごめん。まさかまゆりが、あんなことになるなんて……」
倫子「聞いてくれ、紅莉栖。今から話す話は厨二病でも、まゆりの氏を受け入れられずおかしくなったわけでも無い」
紅莉栖「えっと、いきなり何の話? 私の名前を普通に呼ぶなんて、普通じゃないわよね……」
倫子「……助けてくれ」ウルッ
紅莉栖「……こ、これはフラグが立った。いやいや、まゆりの前でなんて不謹慎なことを……うぅ……」ガクッ
倫子「まゆりを蘇らせるにはどうすればいいか、天才の知恵を貸してほしい……っ」
紅莉栖「……えっと……?」
倫子「(あれから萌郁にも連絡を取ろうとしたが、オレのケータイに『閃光の指圧師』のアドレスは登録されていなかった)」
倫子「(M2にM4……。わからないが、もしかしたらあいつは2006年に自頃してしまっているのかも知れない……)」
紅莉栖「遅くなってごめん。まさかまゆりが、あんなことになるなんて……」
倫子「聞いてくれ、紅莉栖。今から話す話は厨二病でも、まゆりの氏を受け入れられずおかしくなったわけでも無い」
紅莉栖「えっと、いきなり何の話? 私の名前を普通に呼ぶなんて、普通じゃないわよね……」
倫子「……助けてくれ」ウルッ
紅莉栖「……こ、これはフラグが立った。いやいや、まゆりの前でなんて不謹慎なことを……うぅ……」ガクッ
倫子「まゆりを蘇らせるにはどうすればいいか、天才の知恵を貸してほしい……っ」
紅莉栖「……えっと……?」
862: 2015/12/24(木) 02:22:33.56 ID:BfuGClXVo
・・・
紅莉栖「ふぅん……話をまとめると、IBN5100が手許に戻ってくれば勝ち、っていうことになる」
紅莉栖「IBN5100を岡部が手に入れて、SERNにあるデータを消すその瞬間が、分岐の臨界点なんだと思う」
紅莉栖「おそらくその瞬間、ダイバージェンスは1%オーバーに達するはず」
紅莉栖「そして、岡部は一度IBN5100を手に入れている」
紅莉栖「その世界線へもう一度行けることができれば、必然的に手許に戻ってくる」
紅莉栖「まゆりは、助かる」
倫子「つまり、オレたちが生じさせた世界の歪みを正していけば……、Dメールをすべて打ち消していけば……」
紅莉栖「保険はいくつかある。24年後の未来からタイムリープしてくるっていう私もその1つ」
紅莉栖「だけど、迂闊な行動を取ってもしも"詰み"になってしまったら」
紅莉栖「例えば、岡部が"氏ぬ"なんてことになったら――」
紅莉栖「まゆりは、二度と助からない」
863: 2015/12/24(木) 02:24:41.26 ID:BfuGClXVo
倫子「わからないのは、まゆりの氏ぬタイミングがちょうど24時間、ずれたことだ」
紅莉栖「確かに気になるな。でも、それについては今は結論は出ない」
紅莉栖「とにかく慎重な行動を心がけて。私は、たとえどの世界線に居ても岡部の味方よ」
倫子「……ありがとうクリスティーナ。やはり話してよかった」ギュッ
紅莉栖「あっ……倫子ちゃんの手……///」
倫子「倫子ちゃん言うなぁっ!」
紅莉栖「い、一応言っておくけど、下心だけで動いてるわけじゃないからなっ! 本当に、私はあんたのことが心配で……」
倫子「ツンデレなのかなんなのかわからんセリフだな」ククッ
紅莉栖「うぅ……」
倫子「だが、結局ミスターブラウンから当時何があったか聞き出せなかった……」
紅莉栖「それこそ、別に何があったか、なんて端からどうでもいい可能性がある」
倫子「というと……?」
紅莉栖「阿万音さんは戦闘のプロなんでしょ? Dメールが受信されるタイミングで奇襲をかけ、メールを見られる前に削除してしまえばいい」
倫子「その発想はなかった……相変わらずとんでもないことを考えるな」
紅莉栖「考えられる選択肢を言ったまでよ。別に、冷酷無比な女だ、って罵ってもらっても構わないけど……」
倫子「ああ。クリスティーナはすぐいじける面倒臭い女だ」ダキッ
紅莉栖「ちょっ!? ふわぁっ……///」
倫子「本当にありがとう、紅莉栖……お前が居てくれて、どれだけ心強いか……」ギュッ
紅莉栖「―――――」
倫子「……助手? 大丈夫か? 聞こえてるか? 意識はあるか? おーい?」
864: 2015/12/24(木) 02:26:04.21 ID:BfuGClXVo
紅莉栖「それよりも、タイムマシンを使ったDメール取り消し、っていう世界線変動についての方が問題ね」アセッ
倫子「再起動に10分もかけさせるとは……なんというポンコツハイスペックPC……」
紅莉栖「物理的タイムトラベルは微妙に世界線を変動させるのよね?」
紅莉栖「ということは、阿万音さんが過去に飛び立った瞬間、まず岡部はこの世界線からほんの少しだけずれた世界線へと移動することになる」
倫子「ふむ……そうだな。2000年において、新しく過去に事象を打ち込むのだから、多少なりとも世界は再構成される」
紅莉栖「おそらくそこはほとんどなにも変わっていない世界線。唯一違うのは、2000年にタイムマシンがラジ館の屋上に出現しているということ」
紅莉栖「そして、岡部はほぼ一瞬のうちに次の世界線移動を迎えることになる。もちろん、阿万音さんが成功した場合に限るけど」
紅莉栖「これによって岡部は元いた世界線とほぼ同じ世界線に戻ることができる……はず……」
倫子「(紅莉栖がそこまで言って、言葉を詰まらせた理由にオレも思い当たった)」
倫子「この世界線では橋田鈴は2000年に病氏していた……」
倫子「元々橋田鈴は1998年に大病を患っていた。それでも一命を取り留めたのは、日本でIBN5100を守り続けた伽夜乃と、海外へ連れ出してくれたフェイリスパパのおかげだった」
倫子「もし、鈴羽の氏が綯のDメール送信により発生した因果ではなかったとしたら……」
倫子「オレが元の世界線に戻っても、鈴羽は2000年5月18日に44歳で氏んでいることになる……」
倫子「それだけじゃない、綯の母親、綴さんをもう一度頃すことにさえ……」プルプル
865: 2015/12/24(木) 02:26:59.41 ID:BfuGClXVo
紅莉栖「問題を複雑にしない方がいい。これはIBN5100を取り戻すゲームなんだって考えた方が動きやすいわ」
倫子「……くそったれなゲームだな」
紅莉栖「そもそもまゆりの氏なない世界線になれば、未来はディストピアじゃなくなる」
紅莉栖「阿万音さんはタイムトラベルのタの字も知らずに、橋田とその奥さんのもとで幸せに暮らすことになるはず」
倫子「……そうだな」
紅莉栖「綴さんは、元からそうだったと諦めるしかない。氏者を蘇らせるってのは、そういうことなのよ、きっと」
倫子「……この世界線の綯は幸せそうだった」
倫子「なあ、なんとかならないか? 綯の家族を奪うことなどオレには――」
prrrr prrrr
紅莉栖「……どうやら本当に来たみたいね。ディストピアの元凶が」
倫子「……ゴクリ」
ピッ
紅莉栖「くっ……ふぅ……はぁ……」ヨロッ
倫子「……クリスティーナ?」
紅莉栖「わかってる……これからラジ館へ向かう。5時間あれば直せる」
紅莉栖「この世界線はラボにタイムリープマシンが無い。一発勝負よ……」
866: 2015/12/24(木) 02:29:09.87 ID:BfuGClXVo
ラジ館8階
ダル「いや、マジで牧瀬氏が来てくれて助かったお。確かに構造は電話レンジに似てるから僕でもいじれたけど、気付かなかったところが多すぎワロタな件」
紅莉栖「仕方ないわよ。橋田が作ったって言っても、23年後の橋田が、なんだから。あ、それ取って」カチャカチャ
ダル「ほい」スッ
紅莉栖「それより、タイムリープ到着の時間を変えられなくてごめんね」
倫子「なにかトラブルでもあったのか?」
紅莉栖「ううん、むしろトラブルを回避しようとしたせい、とも言えるわ」
紅莉栖「私の記憶の中にあるこの世界線の2010年の歴史では、ラウンダーは8月12日にラボを襲撃することになってたから、私が未来で襲撃命令を8月13日に改ざんした」
倫子「なにっ!? そんなことができるなら大檜山ビルの売却を阻止できなかったのか!?」
紅莉栖「私にもできることとできないことがあるっ! というか、天王寺裕吾は元々ブラウン管工房を閉める意志があったから、どうあがいても42型は手に入らなかったわ」
紅莉栖「もし大檜山ビルが健在だったら、私の指示で2001年にSERNとの直通回線を開通させていたところだけど」
倫子「(あれは紅莉栖のおかげだったのか……いや、そうなると最初は誰が? という典型的なタイムパラドックスが発生するが……)」
紅莉栖「ともかく、襲撃の改ざんと同時に8月13日の14時過ぎを私のタイムリープ先に指定したわけだけど、これは岡部から聞いていたタイムリープマシンの完成のタイミングがココだったから」
紅莉栖「もちろんこの世界線ではラボでタイムリープマシンは作られていないけど、万が一タイムリープマシンで世界線を大幅に移動してしまった時のために保険をかけたの」
紅莉栖「つまり、タイムリープマシンが完成する前へと私がタイムリープしてしまうことで何らかの致命的な事象が発生する可能性の回避……」
紅莉栖「これが裏目に出たわ……。"次の牧瀬紅莉栖"にはちゃんとこの辺説明しておいてくれると助かる」
倫子「……っ、わかった」
ダル「いや、マジで牧瀬氏が来てくれて助かったお。確かに構造は電話レンジに似てるから僕でもいじれたけど、気付かなかったところが多すぎワロタな件」
紅莉栖「仕方ないわよ。橋田が作ったって言っても、23年後の橋田が、なんだから。あ、それ取って」カチャカチャ
ダル「ほい」スッ
紅莉栖「それより、タイムリープ到着の時間を変えられなくてごめんね」
倫子「なにかトラブルでもあったのか?」
紅莉栖「ううん、むしろトラブルを回避しようとしたせい、とも言えるわ」
紅莉栖「私の記憶の中にあるこの世界線の2010年の歴史では、ラウンダーは8月12日にラボを襲撃することになってたから、私が未来で襲撃命令を8月13日に改ざんした」
倫子「なにっ!? そんなことができるなら大檜山ビルの売却を阻止できなかったのか!?」
紅莉栖「私にもできることとできないことがあるっ! というか、天王寺裕吾は元々ブラウン管工房を閉める意志があったから、どうあがいても42型は手に入らなかったわ」
紅莉栖「もし大檜山ビルが健在だったら、私の指示で2001年にSERNとの直通回線を開通させていたところだけど」
倫子「(あれは紅莉栖のおかげだったのか……いや、そうなると最初は誰が? という典型的なタイムパラドックスが発生するが……)」
紅莉栖「ともかく、襲撃の改ざんと同時に8月13日の14時過ぎを私のタイムリープ先に指定したわけだけど、これは岡部から聞いていたタイムリープマシンの完成のタイミングがココだったから」
紅莉栖「もちろんこの世界線ではラボでタイムリープマシンは作られていないけど、万が一タイムリープマシンで世界線を大幅に移動してしまった時のために保険をかけたの」
紅莉栖「つまり、タイムリープマシンが完成する前へと私がタイムリープしてしまうことで何らかの致命的な事象が発生する可能性の回避……」
紅莉栖「これが裏目に出たわ……。"次の牧瀬紅莉栖"にはちゃんとこの辺説明しておいてくれると助かる」
倫子「……っ、わかった」
867: 2015/12/24(木) 02:32:27.71 ID:BfuGClXVo
倫子「そう言えば、鈴羽はどこに行っている?」
ダル「時間まで作戦を整理するって言ってたお。オカリンの別世界線の記憶を加味した上で、とかなんとか」
倫子「そうか……」
紅莉栖「なんとしても修理を8時までに間に合わせるわ……もう1回SERNで24年間研究なんて氏んでも嫌……」カチャカチャ
ダル「まあ、鈴羽曰く、僕たちがさらわれた後もしばらくはこのタイムマシンは回収されたりしないらしいから、タイムトラベル自体にはタイムリミットは無いらしい」
倫子「この世界線では8月11日にラジ館に侵入してないから、未来のSERNに気付かれていないのか……」
倫子「このまま上手く行けばいいが……まだイレギュラーの心配だってある」
倫子「また綯が15年を遡ってきたら? あるいは、伽夜乃のようなタイムトラベラーによる妨害の可能性も……」
紅莉栖「綯ちゃんの可能性は取りあえず無いわ。橋田がタイムリープしてきていないのがその証拠」
倫子「ワルキューレのタイムリープマシンではここまで戻ってこれない、ということか」
紅莉栖「私が作ったSERNの完成品タイムマシンも一応簡単には使えないよう利害関係を調整してみたけど……これはどこまで通用するかわからない」
鈴羽「――ごめん、遅くなった」
868: 2015/12/24(木) 02:34:17.69 ID:BfuGClXVo
紅莉栖「オーケー。なんとか直った。後はスズちゃんに任せる」
鈴羽「気安く呼ぶなよ、牧瀬紅莉栖」
紅莉栖「……ぶわっ」ピィィ
倫子「よしよし」ナデナデ
ダル「今ワンセグでニュースを確認したけど、秋葉原駅にテロ予告があったって」
倫子「鈴羽。準備は、いいか……?」
鈴羽「大丈夫だよ、鳳凰院凶真」
鈴羽「ちゃんと、準備はしてきたから……」
鈴羽「(そう。あたしはちゃんと準備をした……)」
倫子「もし、もしできることなら、綯の家族を守ったまま、綯の望みを叶えたまま、世界線を元にもどして欲しい」
鈴羽「それは……天王寺裕吾次第、だよ」
鈴羽「…………」グッ
・・・数時間前
869: 2015/12/24(木) 02:35:56.07 ID:BfuGClXVo
・・・
数時間前
2010年8月13日(金)14時23分
新御徒町 天王寺家
綴「あら、裕吾さん。お帰りなさい」
天王寺「ああ……。ただいま~、綯~、結~」
綯「お父さん、お帰りなさい」
結「おかえりなさーい」
綴「お話は終わったんですか?」
天王寺「ん? あ、ああ。まあな」
??「悪いけど、終わらせてもらっては困る」スッ
綴「えっ――」
天王寺「なっ!? なんだお前!? (ライダースーツの女!?)」
??「動くな。動くと娘の喉をこのナイフでかっ切る」
天王寺「っ……」
綯「お、お父さん? この人、誰……?」プルプル
結「だれ……」プルプル
870: 2015/12/24(木) 02:36:44.09 ID:BfuGClXVo
??「これは取引じゃない。命令だ」
??「2000年5月18日、お前は未来から来たメールを受け取ったはず。その後どう行動したか言え」
天王寺「……またその話かよ。だから言っただろうが。何もしてねえって」
??「そうか」グシャァァァァッ
結「――――っ」バタッ
天王寺「ゆ……結……、嘘だろ……」
綴「結っ!?!? 結ぃぃぃっ!!!!」
??「次はこっちの娘の喉を切り裂く」スッ
綯「ひっ……」プルプル
天王寺「やめろぉ……っ。やめてくれぇ……なんで、なんでこんなこと……」
??「質問を変える。お前は、"橋田鈴"に何をした」
天王寺「……なんでてめえが、んなこと訊くんだ……っ」
??「それは……」スッ
鈴羽「――あたしが橋田鈴だからだよ。見覚えあるだろ、この顔に」
天王寺「なっ!? そんな……そんなことが……っ!!」
871: 2015/12/24(木) 02:38:24.40 ID:BfuGClXVo
鈴羽「早く言え。綯の次は綴だ」スッ
綯「うぅっ……」
綴「やめて……お願いよ……」
天王寺「俺ぁ……俺ぁ、鈴さんを、あんたを売ったんだ……SERNに……」
天王寺「未来から指令が来てな……任務を遂行しなければ綴を頃す、そんな内容だった……」
天王寺「俺の任務はIBN5100の回収……鈴さんは、IBN5100をずっと隠し持っていたんだ……」
天王寺「だけど……だけどな、俺は最期まで鈴さんを裏切れなかった。あんなに良くしてもらったせいだ……」
天王寺「だが、あの日、鈴さんから願っても無い申し出があった……」
―――――
橋田鈴『IBN5100?』
天王寺『……っ!!』
橋田鈴『君がずっとアレを探してるのは知ってた』
橋田鈴『そして……アレを探すのがどういう連中かもあたしは知ってる』
天王寺『…………』
橋田鈴『もし君が君の家族を守るために必要なら―――』
橋田鈴『IBN5100を、あげるよ』
―――――
872: 2015/12/24(木) 02:39:53.58 ID:BfuGClXVo
鈴羽「そんなバカなっ……!」グッ
綯「ひぃっ!!」プルプル
天王寺「俺ぁ拒否できなかった……"なにもしなかった"んだ……」
天王寺「アレがなけりゃ確実にSERNは綴を頃していた……」
天王寺「その日のうちに鈴さんは病気で氏んじまったが、その後秋葉幸高っていう大地主のところから鈴さんのIBN5100だの、ハッキング用PCだの、諸々が届けられた……」
天王寺「橋田鈴の痕跡は、この家以外すべてSERNに渡した。あのボロいビルも含めてな……」
天王寺「おかげでこちとら異例の大出世だ。時期が良かったのか、はは、委員会のやつら、俺なんかに序列を与えてやってもいいとまでぬかしやがった……」
天王寺「下水道育ちのネズミなんかによぉ……」
鈴羽「(2036年では、SERN治安部隊ラウンダーのトップは委員会の1人だと聞いたことがある……)」
天王寺「だが、そんなもんはいらねえ。俺は、夢にまで見た"日常"を望んだ」
天王寺「せっかく手に入れたってのに……まさか、こんな結末になるなんてな……」
鈴羽「……全部、あたしのせいだったって言いたいのか」グッ
天王寺「やめろ……っ! せめて、綯だけでも、助けてくれ……っ!」
鈴羽「違うッ!! お前は、嘘をついているッ!!」
綴「綯っ!! 今のうちにこっちに!!」ダキッ
綯「お母さんっ!!」ダキッ
鈴羽「このあたしが、SERNの犬なんかにIBN5100を渡すわけがないッ!!!」ダッ
天王寺「どうして……こんなことになっちまったんだろうなぁ……」
鈴羽「頃すッ!! お前はッ!! 父さんの作戦を台無しにしたお前はッ!! 頃すッ!!」グサァァァァァァ!!
天王寺「あぁ……すまなかった、鈴さん……すまな、かっ……た……」バタッ
綯「お父さんっ!!!!」
綴「いやぁぁぁぁぁあああああああっ!!!!!!!」
・・・
873: 2015/12/24(木) 02:42:32.04 ID:BfuGClXVo
・・・
鈴羽「(……あいつは抵抗することなくあたしの凶刃に倒れた)」
鈴羽「(まるで母親に抱かれる子どものようにその巨体をナイフへと寄せて……)」ギリッ
ダル「鈴羽? 緊張、してるのか?」
鈴羽「ううん、なんでもない。そうだ、鳳凰院凶真の事件も解決してくるからね」
倫子「オ、オレの事件?」
紅莉栖「ああ、あれね。"私"と岡部の会話をスズちゃんが盗み聞きしたやつ」
鈴羽「この世界線だとフェイリス本人に頼むしかないのかな」
倫子「一体なんのことだ」
鈴羽「気にしなくていいよ」
倫子「(……オレは、この鈴羽と再会することはできるのだろうか)」
鈴羽「鳳凰院凶真、そんな悲しい顔しないで」
鈴羽「あたしは必ず君を1%の壁の向こう側へと送り届けるから」
鈴羽「だから、世界を救って」
倫子「鈴羽……」
鈴羽「それじゃ、ハッチ閉めるよ」ウィーン
ダル「鈴羽……。頑張ってな。頑張ってだなんて、そんな安っぽい言葉しか言えないけどさ……」
ダル「父さんも頑張るから。だから、鈴羽も頑張ってな……」
倫子「(……ああ、人類の夢であるはずのタイムマシンが、これじゃまるで巨大な鉄の棺桶じゃないか)」
倫子「鈴羽……すまない……」ポロポロ
From ジョン・タイター
Sub ありがと
さよなら
1%の向こう側のあた
しによろしく
キィィィィィィィィン……
倫子「……ぐっ!? こ、この目眩はリーディング―――――――――
874: 2015/12/24(木) 02:45:17.51 ID:BfuGClXVo
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
2000年5月18日
六井記念病院 1階ロビー
『2年ほど前からハッキングは止まったがIBN5100に関しては全く進展がないようだな』
天王寺「ああ……」
『この件に関しては君は自身や家族のために故意にIBN5100を入手せずにいると言う者もいてね』
『任務を忘れているのではないかと……心配しているわけだよ』
天王寺「…………」
『あまり我々を落胆させないでくれ、M2』
2000年5月18日
六井記念病院 1階ロビー
『2年ほど前からハッキングは止まったがIBN5100に関しては全く進展がないようだな』
天王寺「ああ……」
『この件に関しては君は自身や家族のために故意にIBN5100を入手せずにいると言う者もいてね』
『任務を忘れているのではないかと……心配しているわけだよ』
天王寺「…………」
『あまり我々を落胆させないでくれ、M2』
875: 2015/12/24(木) 02:46:04.25 ID:BfuGClXVo
天王寺「――ああ、それじゃ」ピッ
天王寺「……さて、鈴さんに顔を見せるか」スッ
コツ コツ コツ ……
鈴羽「……天王寺裕吾、だね」
天王寺「ん? なんだお前。どうして俺の名前を?」
鈴羽「橋田鈴……母さんから聞いた」
天王寺「なに、母さんだと? ……なるほど、確かに鈴さんそっくりだな。面影がある」
天王寺「あの人はてっきり天涯孤独だと思っていたが、まさか娘が居たとは……」
鈴羽「家庭の事情で母さんには正体を明かせないんだ、あたしのことは秘密にしてもらえると助かる」
天王寺「はぁ。それで、俺になんの用だ」
鈴羽「――母さんを、信じて欲しい」
天王寺「……?」
876: 2015/12/24(木) 02:47:08.53 ID:BfuGClXVo
鈴羽「君が今、難しい立場に居ることは知ってる。もちろん、あたしはSERNの人間じゃない」
天王寺「っ!? あ、あんた一体……」
鈴羽「だけど……母さんは絶対、正しいことをしてきた。間違ってないんだ。だから、信じて欲しい」
鈴羽「君の信じる橋田鈴を、信じて」
天王寺「……深くは話せねえみたいだな」
天王寺「わかってる。俺はあの人に返しても返しきれねえ恩を受けちまった」
天王寺「恩を讐(あだ)で返すような真似はしねえよ」
prrrr prrrr
天王寺「おっと。すまない、メールを受信したみたいだ」
天王寺「病院なんだから、電源切っとかないとな、ハハ」
鈴羽「……見て。今すぐ」
天王寺「は? あ、ああ。わかった」ピッ
『任務を遂行し ろ。でなけれ ば綴が氏ぬ!』
天王寺「……なんの冗談だ、こりゃあ」
877: 2015/12/24(木) 02:47:41.89 ID:BfuGClXVo
鈴羽「その内容が冗談になるかどうかは君次第だよ、天王寺裕吾」
天王寺「なんだと? おい、あんた、このメールはなんなんだ? 何か知ってるのか?」
鈴羽「知らない方がいい……。それより、お願い」
鈴羽「橋田鈴を、信じて」
天王寺「……わかった。わかったよ、信じるって」
鈴羽「……それじゃ、あたしはこれで」クルッ
鈴羽「―――ごめんね、天王寺裕吾」コツ コツ …
天王寺「なんだったんだ……?」
878: 2015/12/24(木) 02:48:23.34 ID:BfuGClXVo
病室 911号室 橋田鈴様
橋田鈴「でもさ、よかったよね。綯は母親似でさ。きっと美人になるよ」
天王寺「あ、あぁ。そうだな……」ソワソワ
橋田鈴「…………」
橋田鈴「IBN5100?」
天王寺「……っ!!」
橋田鈴「君がずっとアレを探してるのは知ってた」
橋田鈴「そして……アレを探すのがどういう連中かもあたしは知ってる」
橋田鈴「アレは、IBN5100は、あたしの目的のためにどうしても必要なんだよ」
橋田鈴「あたしはこれまでそのためだけに生きてきたと言ってもいい」
天王寺「…………」
橋田鈴「それほど大事なものなんだ」
橋田鈴「でももし君が君の家族を守るために必要なら―――」
天王寺「やめてくれ」
橋田鈴「でもさ、よかったよね。綯は母親似でさ。きっと美人になるよ」
天王寺「あ、あぁ。そうだな……」ソワソワ
橋田鈴「…………」
橋田鈴「IBN5100?」
天王寺「……っ!!」
橋田鈴「君がずっとアレを探してるのは知ってた」
橋田鈴「そして……アレを探すのがどういう連中かもあたしは知ってる」
橋田鈴「アレは、IBN5100は、あたしの目的のためにどうしても必要なんだよ」
橋田鈴「あたしはこれまでそのためだけに生きてきたと言ってもいい」
天王寺「…………」
橋田鈴「それほど大事なものなんだ」
橋田鈴「でももし君が君の家族を守るために必要なら―――」
天王寺「やめてくれ」
879: 2015/12/24(木) 02:49:40.74 ID:BfuGClXVo
橋田鈴「え?」
天王寺「俺も……あんたがその、なにかの目的のために長い間生きてきたことは知ってるんだ」
天王寺「これ以上あんたの世話にはなれない」
天王寺「恩を讐(あだ)で返すような真似はしたくない」
橋田鈴「…………」
橋田鈴「……そう」チラッ
【 0.00312 】
【 -.----- 】
【 0.40942 】
橋田鈴「今のでこの数字は変わったのかな……」
天王寺「……?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
880: 2015/12/24(木) 02:50:48.27 ID:BfuGClXVo
―――――――――――――――――――
0.00312 → 0.40942
―――――――――――――――――――
897: 2015/12/29(火) 11:21:26.98 ID:XQu17636o
第7章 虚偽歪曲のコンプレックス♀
2010年8月13日(金)19時43分
未来ガジェット研究所
倫子「―――――――シュタイナーッ!!!!!」
ダル「おうっ!? いきなりどしたん?」
紅莉栖「あ、あんまり大きな声出すと、せっかくの美声が傷付いちゃうわよ……」ビクビク
倫子「……いや、なんでもない。ここは、ラボか」
倫子「(ラボがある……。明らかにオレの記憶の中の、元のラボだ……)」
倫子「よかった……オレは戻ってきたんだ……」ウルッ
紅莉栖「どうしたの? 突然目を潤ませちゃって……(かわいい)」
倫子「(この様子だと、どうやら紅莉栖はタイムリープしてきていないようだな)」
倫子「(宴会はやっていないのか……この世界線のオレ、グッジョブだ)」
倫子「まゆりは……っ、生きているっ」ダキッ
まゆり「ふわぁ!? オ、オカリン、だいじょうぶ?」アワアワ
ダル「ハァハァ」
紅莉栖「ハァハァ」
倫子「(生きている。確かに生きているが、今はもう時間がない……っ)」
倫子「ダル、山手線は止まっているか?」
ダル「は? えーっと、Taboo!のトップ見る限りだと止まってないっぽい」
倫子「ありがとう……」
ダル「うお、素直に感謝されるとか、マジで大丈夫かおオカリン……」
倫子「(ラウンダーの工作が止まった? 未来の紅莉栖の指示か?)」
倫子「(ならば、次はIBN5100の在り処についてだが……)」ゴソゴソ
倫子「ラボには無い……か。何故だ、鈴羽は失敗したのか……?」
倫子「いや、今はとにかくラウンダーの襲撃があるかないかだ……」
2010年8月13日(金)19時43分
未来ガジェット研究所
倫子「―――――――シュタイナーッ!!!!!」
ダル「おうっ!? いきなりどしたん?」
紅莉栖「あ、あんまり大きな声出すと、せっかくの美声が傷付いちゃうわよ……」ビクビク
倫子「……いや、なんでもない。ここは、ラボか」
倫子「(ラボがある……。明らかにオレの記憶の中の、元のラボだ……)」
倫子「よかった……オレは戻ってきたんだ……」ウルッ
紅莉栖「どうしたの? 突然目を潤ませちゃって……(かわいい)」
倫子「(この様子だと、どうやら紅莉栖はタイムリープしてきていないようだな)」
倫子「(宴会はやっていないのか……この世界線のオレ、グッジョブだ)」
倫子「まゆりは……っ、生きているっ」ダキッ
まゆり「ふわぁ!? オ、オカリン、だいじょうぶ?」アワアワ
ダル「ハァハァ」
紅莉栖「ハァハァ」
倫子「(生きている。確かに生きているが、今はもう時間がない……っ)」
倫子「ダル、山手線は止まっているか?」
ダル「は? えーっと、Taboo!のトップ見る限りだと止まってないっぽい」
倫子「ありがとう……」
ダル「うお、素直に感謝されるとか、マジで大丈夫かおオカリン……」
倫子「(ラウンダーの工作が止まった? 未来の紅莉栖の指示か?)」
倫子「(ならば、次はIBN5100の在り処についてだが……)」ゴソゴソ
倫子「ラボには無い……か。何故だ、鈴羽は失敗したのか……?」
倫子「いや、今はとにかくラウンダーの襲撃があるかないかだ……」
898: 2015/12/29(火) 11:22:46.64 ID:XQu17636o
倫子「(……午後9時を過ぎて。窓の下に人影はない)」チラッ
ダル「オカリン、さっきから外を気にして、誰か待ってんの? もしかして彼氏?」
紅莉栖「ぬぁっ!? マ、ママ、マママ、マジで言ってんの橋田ァ!?」ギュゥッ!!
ダル「ちょ!? 首絞めは我々の業界でも拷問……ぐぇっ」チーン
まゆり「ダ、ダルくん! 氏んじゃダメだよぅ!」
倫子「(襲撃は無かった……無かったんだ。これは、鈴羽のおかげだ)」フゥ
倫子「まゆり。それに紅莉栖」
紅莉栖「……え、今岡部、私の名前、普通に呼んでくれた……フラグktkr……?」
倫子「2人とも、もう帰るんだ。まゆりは家まで一緒に帰ろう」
まゆり「うん、一緒に帰ろー♪」
倫子「紅莉栖は、夜も遅いからダルに送らせる」
ダル「へ? ボク?」
紅莉栖「橋田に送ってもらう方が身の危険を感じる件について……」
ダル「それはこっちのセリフだお……」
899: 2015/12/29(火) 11:24:08.73 ID:XQu17636o
NR山手線内回り車内
倫子「(8月13日の夜8時を越えて、まゆりは生きている……)」
まゆり「んー? どうしたのかな、そんなに見つめられると、まゆしぃはそわそわしちゃうのです……」
倫子「(だが、これはオレが1%の壁を越えたことを意味していない)」
まゆり「今日のオカリン、なんだかいつもと違うような気がするよー?」
倫子「(すべてのDメールを取り消し、IBN5100を手に入れ、SERNをハッキング……。これが、まゆりの氏亡収束を消滅させる唯一の方法だ)」
まゆり「どうかしたのー?」
倫子「……ククク、オレはなにも変わっていない。変わったのは、まゆりの方ではないか?」
倫子「(だが、なぜか今まゆりは生きている……)」
まゆり「そうなの、かなー」
倫子「(理由なんてどうでもいい。今までオレが放浪した世界線の、色んな時空の仲間たちによって、この結果を得られた)」
まゆり「ねえ、オカリン。無理してない?」
倫子「この狂気のマッドサイエンティストに、無理なことなど1つもないっ」
倫子「(54歳になった鈴羽はどこかに居るかもしれない。明日、天王寺に聞いてみよう)」
倫子「(そして綯のことも……。天王寺は、綴さんを守ることができたのだろうか)」
まゆり「……そっかー」
倫子「(8月13日の夜8時を越えて、まゆりは生きている……)」
まゆり「んー? どうしたのかな、そんなに見つめられると、まゆしぃはそわそわしちゃうのです……」
倫子「(だが、これはオレが1%の壁を越えたことを意味していない)」
まゆり「今日のオカリン、なんだかいつもと違うような気がするよー?」
倫子「(すべてのDメールを取り消し、IBN5100を手に入れ、SERNをハッキング……。これが、まゆりの氏亡収束を消滅させる唯一の方法だ)」
まゆり「どうかしたのー?」
倫子「……ククク、オレはなにも変わっていない。変わったのは、まゆりの方ではないか?」
倫子「(だが、なぜか今まゆりは生きている……)」
まゆり「そうなの、かなー」
倫子「(理由なんてどうでもいい。今までオレが放浪した世界線の、色んな時空の仲間たちによって、この結果を得られた)」
まゆり「ねえ、オカリン。無理してない?」
倫子「この狂気のマッドサイエンティストに、無理なことなど1つもないっ」
倫子「(54歳になった鈴羽はどこかに居るかもしれない。明日、天王寺に聞いてみよう)」
倫子「(そして綯のことも……。天王寺は、綴さんを守ることができたのだろうか)」
まゆり「……そっかー」
900: 2015/12/29(火) 11:24:45.03 ID:XQu17636o
まゆり「ねえ、オカリン?」
倫子「ん?」
まゆり「あのね……えっ、えへ、えっとね……」
まゆり「まゆしぃ、これからもずっと、まゆしぃたちがおばあちゃんになっても、オカリンの人質でいられたらいいなぁ」
倫子「もちろんではないか。これまでもそうだったし、これからもずっとそうに決まっている」
まゆり「うん……」
倫子「……?」
901: 2015/12/29(火) 11:25:16.56 ID:XQu17636o
・・・
2010年8月14日土曜日
未来ガジェット研究所
倫子「ふわぁ……ん、良く寝た」
倫子「あれ? オレ、なんでラボに居るんだ? 池袋の実家に帰ったはずじゃ……」
まゆり「オカリン、どうしたの?」
倫子「ああ、いや。ちょっと寝ぼけているみたいだ」
まゆり「んー? 変なオカリ――」バタッ
倫子「……まゆり? お、おい。どうし――」
ラウンダーA「動くな。動くと次はお前を撃つ」カチャ
倫子「は……?」
紅莉栖「ダメ、よ、岡部……このままじゃ、あんたも、殺される……」
天王寺「まさかM4が裏切るとはなぁ……」バァン!!
萌郁「っ――――」バタッ
倫子「やめろ……やめろぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!」
902: 2015/12/29(火) 11:25:57.28 ID:XQu17636o
UPX歩道橋
まゆり「ど、どうしたのオカリン? 急に大きな声出して……」
倫子「なっ……、なんだこの人ごみは」
まゆり「なんかね、電車が止まっちゃって、駅前が人でいっぱいなんだって」
倫子「電車が……?」ゾワワァ
ラウンダーD「岡部倫子だな?」
倫子「っ!?」ビクッ
ラウンダーD「一緒に来てもらおう。抵抗するなら頃す」
倫子「ま、まゆり、逃げるぞっ!!」ギュッ
まゆり「あ、オカリンっ!!」
キキーーーッ!!
倫子「な――」
ドンッ!!
倫子「が……は……。オレたちは、轢かれた、のか……? 白い、バンに……」
倫子「ま……ゆり……?」
まゆり「…………」
ガチャ バタン
萌郁「そん……な……、椎名、さん……っ! そんなつもりじゃ……っ!」
倫子「……なんでだよ、なんでまゆりが……っ!!」
まゆり「ど、どうしたのオカリン? 急に大きな声出して……」
倫子「なっ……、なんだこの人ごみは」
まゆり「なんかね、電車が止まっちゃって、駅前が人でいっぱいなんだって」
倫子「電車が……?」ゾワワァ
ラウンダーD「岡部倫子だな?」
倫子「っ!?」ビクッ
ラウンダーD「一緒に来てもらおう。抵抗するなら頃す」
倫子「ま、まゆり、逃げるぞっ!!」ギュッ
まゆり「あ、オカリンっ!!」
キキーーーッ!!
倫子「な――」
ドンッ!!
倫子「が……は……。オレたちは、轢かれた、のか……? 白い、バンに……」
倫子「ま……ゆり……?」
まゆり「…………」
ガチャ バタン
萌郁「そん……な……、椎名、さん……っ! そんなつもりじゃ……っ!」
倫子「……なんでだよ、なんでまゆりが……っ!!」
903: 2015/12/29(火) 11:26:56.54 ID:XQu17636o
柳林神社
倫子「なんでだよぉぉぉっ!!!!!」
るか「おか、凶真さんっ! 大丈夫ですか?」
倫子「へ……?」ヨロッ
まゆり「ね、オカリン。るかちゃんを説得するいい方法、なにかないかなー?」
るか「ボク、ホントに無理なんです……。なのに、まゆりちゃん、ちっとも諦めてくれなくて……」
倫子「それより、まゆりっ! 荷物を置け! これから遠出するっ!」ダッ
まゆり「オカリンっ、遠出って、どこ行くのー?」タッ タッ
倫子「はぁっ……はぁっ……。とにかく靖国通りに出れば……っ!?」タッ タッ
ラウンダーたち「……………」
倫子「あいつら……っ!!」ギリリッ
倫子「あ、あれ? まゆり? どこに行った? まゆり……」ゾワワァ
prrrr prrrr
from 閃光の指圧師
sub 岡部さんに話がある
これから、行くね。私はど
うしたらいいかわからなく
て。 萌郁
▼添付ファイル有
倫子「これ……は……」
倫子「外国の新聞記事……。1961年、2月28日……。ゼリーマン……」ガクガク
倫子「まゆ……り……」プルプル
あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――っ!
倫子「なんでだよぉぉぉっ!!!!!」
るか「おか、凶真さんっ! 大丈夫ですか?」
倫子「へ……?」ヨロッ
まゆり「ね、オカリン。るかちゃんを説得するいい方法、なにかないかなー?」
るか「ボク、ホントに無理なんです……。なのに、まゆりちゃん、ちっとも諦めてくれなくて……」
倫子「それより、まゆりっ! 荷物を置け! これから遠出するっ!」ダッ
まゆり「オカリンっ、遠出って、どこ行くのー?」タッ タッ
倫子「はぁっ……はぁっ……。とにかく靖国通りに出れば……っ!?」タッ タッ
ラウンダーたち「……………」
倫子「あいつら……っ!!」ギリリッ
倫子「あ、あれ? まゆり? どこに行った? まゆり……」ゾワワァ
prrrr prrrr
from 閃光の指圧師
sub 岡部さんに話がある
これから、行くね。私はど
うしたらいいかわからなく
て。 萌郁
▼添付ファイル有
倫子「これ……は……」
倫子「外国の新聞記事……。1961年、2月28日……。ゼリーマン……」ガクガク
倫子「まゆ……り……」プルプル
あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――っ!
904: 2015/12/29(火) 11:29:29.13 ID:XQu17636o
新御茶ノ水駅
倫子「――――あああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
まゆり「オ、オカリン、周りの人に迷惑だよぅ」アセッ
倫子「っ!? ここは、どこだっ!?」
まゆり「えっと、千代田線のホームだよ? どうしたの、オカリン……?」
まゆり「あのね、オカリン。今は聞きたいこといっぱいあるけど、我慢しておくね」
… ガタンゴトン ガタンゴトン
倫子「……次の電車で小田原まで行こう」
まゆり「今日のパーティー。中止になったけど、絶対にいつか――」
綯「まゆりおねえちゃーん♪」
ドンッ
まゆり「――――」フワッ
ファーーーーーーーーーーーーン
グチャァ ビチュ ベキッ メキメキッ キキーーーッ
倫子「え……?」
綯「……ぁ……っ……」
倫子「お……お前……何して……」
綯「わざとじゃ……わざと……」
倫子「――――あああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
まゆり「オ、オカリン、周りの人に迷惑だよぅ」アセッ
倫子「っ!? ここは、どこだっ!?」
まゆり「えっと、千代田線のホームだよ? どうしたの、オカリン……?」
まゆり「あのね、オカリン。今は聞きたいこといっぱいあるけど、我慢しておくね」
… ガタンゴトン ガタンゴトン
倫子「……次の電車で小田原まで行こう」
まゆり「今日のパーティー。中止になったけど、絶対にいつか――」
綯「まゆりおねえちゃーん♪」
ドンッ
まゆり「――――」フワッ
ファーーーーーーーーーーーーン
グチャァ ビチュ ベキッ メキメキッ キキーーーッ
倫子「え……?」
綯「……ぁ……っ……」
倫子「お……お前……何して……」
綯「わざとじゃ……わざと……」
905: 2015/12/29(火) 11:29:58.74 ID:XQu17636o
中央通り
倫子「何してんだよぉぉぉぉっ!!!!!」
運転手「ちょ、ちょっとお客さん。あんまりイライラしないでくださいよ!」
まゆり「そ、そうだよオカリン。だいじょうぶ? 目が怖いよ……」
倫子「……今度は、タクシーか」
ゴンゴン ガチャ
ラウンダーE「岡部倫子だな」
倫子「っ!? 逃げろ、まゆり――」
グサッ
まゆり「……うっ」
倫子「あ、あ……」
倫子「なんでよ……」
倫子「なんでなの……」
倫子「どうして否定するの――」
倫子「何してんだよぉぉぉぉっ!!!!!」
運転手「ちょ、ちょっとお客さん。あんまりイライラしないでくださいよ!」
まゆり「そ、そうだよオカリン。だいじょうぶ? 目が怖いよ……」
倫子「……今度は、タクシーか」
ゴンゴン ガチャ
ラウンダーE「岡部倫子だな」
倫子「っ!? 逃げろ、まゆり――」
グサッ
まゆり「……うっ」
倫子「あ、あ……」
倫子「なんでよ……」
倫子「なんでなの……」
倫子「どうして否定するの――」
906: 2015/12/29(火) 11:31:16.28 ID:XQu17636o
万世橋警察署
倫子「だからっ! まゆりはもうすぐ氏ぬんだっ! どうして守ってやれないっ!!」
警察官「あのね、君。言ってることが支離滅裂だよ?」
倫子「この無能どもめ……っ!」ギリッ
まゆり「オカリン……」
ヨドダシカメラ
倫子「はぁっ……はぁっ……。こ、ここなら……」
警察官「駅前で爆発が起きました! 急いでここから避難してくださいっ!」
倫子「避難なんて……できるわけがない……」
警察官「ひ、避難しろと言ってるのが聞こえないのかっ!!」パァン!!
まゆり「っ――――」バタン
倫子「……もう嫌だ」
倫子「だからっ! まゆりはもうすぐ氏ぬんだっ! どうして守ってやれないっ!!」
警察官「あのね、君。言ってることが支離滅裂だよ?」
倫子「この無能どもめ……っ!」ギリッ
まゆり「オカリン……」
ヨドダシカメラ
倫子「はぁっ……はぁっ……。こ、ここなら……」
警察官「駅前で爆発が起きました! 急いでここから避難してくださいっ!」
倫子「避難なんて……できるわけがない……」
警察官「ひ、避難しろと言ってるのが聞こえないのかっ!!」パァン!!
まゆり「っ――――」バタン
倫子「……もう嫌だ」
907: 2015/12/29(火) 11:32:51.41 ID:XQu17636o
もう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だ
もう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だ
もう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だ
もう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だ
もう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だ
もう……イヤだぁぁぁぁぁぁああああああああああっ!!!!!!
908: 2015/12/29(火) 11:33:28.94 ID:XQu17636o
・・・
??「オ、オカリン? ねぇ、オカリン?」
??「オカリンってば、起きてー」ユサユサ
倫子「……ん? ……お?」
倫子「(ここは……オレの部屋か?)」
まゆり「だいじょうぶオカリン?」
倫子「まゆりっ!!」ダキッ
まゆり「うわほぉっ!? ///」
倫子「い、いますぐ逃げるぞ! ここに居たら危ないっ!」
まゆり「えっ? 逃げるって、どこへ?」
倫子「どこへって、秋葉原じゃなければどこでも――」
倫子「あ、あれ? ここって、池袋の実家だよな……?」
まゆり「まだ寝ぼけてるのー?」
倫子「あれは……夢……?」
倫子「それとも……こっちが、夢……?」プルプル
909: 2015/12/29(火) 11:34:52.27 ID:XQu17636o
まゆり「はぁ~。びっくりしちゃった。オカリンが布団から飛び出て、床の上でウンウンうなってるんだもん」
倫子「……恐るべき精神攻撃を受けてな。おそらく、機関がついに悪夢を操る"氏の第13番兵器<デス・サーティーン>"を完成させたのだろう」
倫子「でも、もう大丈夫だよ。まゆり」ニコ
まゆり「う、うん」ドキドキ
倫子「それよりまゆり。どうしてオレの部屋に居る?」
まゆり「バナナを買いに来たらね、オカリンがまだ起きてこないってオカリンのおとーさんが言うから」
倫子「あのクソ親父の使いッパだったか……」
まゆり「オカリンのお部屋に入るのは久しぶりだけど、前とあんまり変わってないね」
倫子「(オレが中学くらいまでは、まゆりとこの部屋で遊んだ記憶がある)」
倫子「(でも高校に入った頃からは駅前のファーストフードやカラオケ店で過ごすことが多くなった)」
倫子「(実を言うとまゆりをオレの部屋にはあまり入れたくない。なぜなら……)」
まゆり「んふ~。オカリンのお布団、イイ匂い~♪」ゴロゴロ
倫子「……また昔みたいに、オレの私物を外に持ち出すのはやめてくれな?」
まゆり「え~、なんのことかな~♪」
910: 2015/12/29(火) 11:35:52.87 ID:XQu17636o
大檜山ビル前
倫子「(MTBは無い……か。この世界線の鈴羽は、どうなった……?)」
天王寺「おう岡部。ずいぶんヒマそうだな。うちでバイトでもするか?」
倫子「ヒィッ」
天王寺「お、おいおい。今更そんなビビるこたぁねえだろ」
倫子「(こいつはラウンダーだ……い、いや、この世界線でもラウンダーだと決まったわけではないが……)」
倫子「……鈴羽は、いつ頃辞めたんでしたっけ?」
天王寺「鈴羽ぁ? 誰だそいつは」
倫子「なっ……そ、そんな!? まさか、鈴羽が2010年へ立ち寄る因果が消滅してしまったとでもいうのか……!?」
天王寺「わけのわからん妄想垂れ流してんじゃねーよ。たった10日で辞めたバイトの名前なんか忘れちまったってこった」
倫子「おのれ、紛らわしい言い方を……まあいい」
倫子「橋田鈴、という人物を、知っていますか」
天王寺「前に話した、このビルの元オーナーの名前だが、どうしてそれを?」
倫子「その人は、今は……?」
天王寺「もうかれこれ10年になるか」
倫子「えっ……」
倫子「(MTBは無い……か。この世界線の鈴羽は、どうなった……?)」
天王寺「おう岡部。ずいぶんヒマそうだな。うちでバイトでもするか?」
倫子「ヒィッ」
天王寺「お、おいおい。今更そんなビビるこたぁねえだろ」
倫子「(こいつはラウンダーだ……い、いや、この世界線でもラウンダーだと決まったわけではないが……)」
倫子「……鈴羽は、いつ頃辞めたんでしたっけ?」
天王寺「鈴羽ぁ? 誰だそいつは」
倫子「なっ……そ、そんな!? まさか、鈴羽が2010年へ立ち寄る因果が消滅してしまったとでもいうのか……!?」
天王寺「わけのわからん妄想垂れ流してんじゃねーよ。たった10日で辞めたバイトの名前なんか忘れちまったってこった」
倫子「おのれ、紛らわしい言い方を……まあいい」
倫子「橋田鈴、という人物を、知っていますか」
天王寺「前に話した、このビルの元オーナーの名前だが、どうしてそれを?」
倫子「その人は、今は……?」
天王寺「もうかれこれ10年になるか」
倫子「えっ……」
911: 2015/12/29(火) 11:37:21.67 ID:XQu17636o
天王寺「俺が見舞いに行ったその日に氏んだらしくてな。それが良かったんだか悪かったんだか」
倫子「2000年、5月、18日……」プルプル
天王寺「命日まで知ってるとはな……」
倫子「あ、アイビーエヌはっ!?」
天王寺「……お前さん、もしかして、鈴さんの"娘"の知り合いか?」
倫子「IBN5100はどうしたと聞いているっ!」
天王寺「……受け取れなかったよ。恩を讐で返すことはできなかった」
倫子「そ、そうか……」
倫子「(IBN5100を回収しなかったということは、天王寺はラウンダーじゃない?)」
天王寺「あの人が住んでた家は、今俺が使ってんだ。位牌もある。手を合わせに来るか?」
倫子「あ、ああ」
912: 2015/12/29(火) 11:38:08.57 ID:XQu17636o
ラジ館前
天王寺「うちの最寄りまではTXで1駅だ」
倫子「……人工衛星は、消えたのですね」
天王寺「5日前ぐらいじゃなかったか? 世の中奇妙なことが起こるもんだな」
倫子「(この世界線の鈴羽は8月9日に1975年へと跳び立ったのか)」
倫子「(そして、オレが昨日まで居たダイバージェンス0.00312%の世界線から跳んだ鈴羽が、2000年で過去改変を行い、さらに1975年へ跳び……)」
倫子「(今、天王寺家の仏壇に祀られている……)」
From 助手
Sub 鍵が(ノД`)
うわ、ラボに誰もいない
じゃない。鍵がないから
中に入れないんですけど
。これなんて放置プレイ
?いや、別に私は一向に
構わんとか思ってないか
らな!(*´Д`)ハァハァ
To 助手
Sub Re:鍵が(ノД`)
配電盤に隠してある鍵を
使え
栗悟飯自重しろ
天王寺「うちの最寄りまではTXで1駅だ」
倫子「……人工衛星は、消えたのですね」
天王寺「5日前ぐらいじゃなかったか? 世の中奇妙なことが起こるもんだな」
倫子「(この世界線の鈴羽は8月9日に1975年へと跳び立ったのか)」
倫子「(そして、オレが昨日まで居たダイバージェンス0.00312%の世界線から跳んだ鈴羽が、2000年で過去改変を行い、さらに1975年へ跳び……)」
倫子「(今、天王寺家の仏壇に祀られている……)」
From 助手
Sub 鍵が(ノД`)
うわ、ラボに誰もいない
じゃない。鍵がないから
中に入れないんですけど
。これなんて放置プレイ
?いや、別に私は一向に
構わんとか思ってないか
らな!(*´Д`)ハァハァ
To 助手
Sub Re:鍵が(ノД`)
配電盤に隠してある鍵を
使え
栗悟飯自重しろ
913: 2015/12/29(火) 11:39:31.82 ID:XQu17636o
天王寺家
倫子「(昨日来た時は無かったはずだが、玄関の外に鈴羽のMTBが置いてあった)」
倫子「(いや、そうは言ってもこれはかなり年季が入っているな……)」
天王寺「その自転車は、鈴さんがすっげえ大事にしてたんだよ」
倫子「(これがここにあるということは……、鈴羽の痕跡は、SERNによって抹消されることはなかった、ということだろう)」
天王寺「まあ、上がれや」
倫子「そう言えば、綯はいないのですね」
天王寺「ああ、今頃友達の家に遊びに行っているだろうよ」
倫子「結も一緒に、ですかね。2人はいつも一緒だと綴さんは言っていましたから」
天王寺「お前さん、綴とも知り合ってたのか。まあ、鈴さんのことを知ってるなら知っててもおかしくないか」
天王寺「……だけどよ、岡部」
天王寺「ユウって、誰だ?」
倫子「(昨日来た時は無かったはずだが、玄関の外に鈴羽のMTBが置いてあった)」
倫子「(いや、そうは言ってもこれはかなり年季が入っているな……)」
天王寺「その自転車は、鈴さんがすっげえ大事にしてたんだよ」
倫子「(これがここにあるということは……、鈴羽の痕跡は、SERNによって抹消されることはなかった、ということだろう)」
天王寺「まあ、上がれや」
倫子「そう言えば、綯はいないのですね」
天王寺「ああ、今頃友達の家に遊びに行っているだろうよ」
倫子「結も一緒に、ですかね。2人はいつも一緒だと綴さんは言っていましたから」
天王寺「お前さん、綴とも知り合ってたのか。まあ、鈴さんのことを知ってるなら知っててもおかしくないか」
天王寺「……だけどよ、岡部」
天王寺「ユウって、誰だ?」
914: 2015/12/29(火) 11:40:36.56 ID:XQu17636o
倫子「え……。だ、誰って、アンタ、自分の娘の名前を忘れたんですか!?」
天王寺「忘れるわけねえだろ! 綯は俺の命より大切な宝物だぞ!?」
倫子「なら、どうしてそんなことを言う! 結だってアンタの大切な娘だろっ!?」
天王寺「はぁ? 綯は一人っ子だぞ? どこかの家の子どもと勘違いしてないか?」
倫子「綯が、一人っ子……だと……?」
倫子「そ、それってつまり……!! 綴さんは、今どこにっ!?」
天王寺「なんだ、知らなかったのか……。あいつは綯を産んだ時に氏んだよ」
倫子「なっ……。そ、そうでしたね……」
天王寺「今じゃこうして、鈴さんの隣に並んでる」
倫子「(冷静になってみれば、世界線を戻ってきたのだから当然だ)」
倫子「(なぜなら、この世界線では、綯は綴さんを蘇らせることを祈るのだから……)」
倫子「(氏んでいて当然……妹もこの世に生まれることはない……)」
倫子「(済まない、綯……)」ポロポロ
天王寺「……あいつが岡部とどんな関係だったかは知らねえが、あいつのために泣いてくれて俺は嬉しいよ」
天王寺「……済まねえなあ」
・・・
915: 2015/12/29(火) 11:42:27.48 ID:XQu17636o
・・・
2001年10月22日月曜日
新御徒町 天王寺家
黒木「これで遺品はすべてです。それでは失礼致します」
天王寺「42型ブラウン管と、鈴さんのNPC……」
天王寺「(IBN5100は、ナシ、か……)」
天王寺「(だが、おそらくこのNPCの中には、鈴さんが3年前までハッキングしていたというSERNの重要機密が……)」カチッ
カタンッ
ラウンダーF「"On ne bouge plus!"(動くな!)」
綴「えっ」
天王寺「なっ……なんだお前ら!?」
ラウンダーF「懐かしい顔だな。お前をあのドブで拾ってやってから何年経った?」
天王寺「なに……?」
ラウンダーF「たった今SERNに対してこの部屋からハッキングが行われたと連絡が入った。使用されたPCは去年氏んだ要観察者のものと同一であるという」
ラウンダーF「貴様だな?」
天王寺「…………」
ラウンダーG「娘を確保しました」
綯「……スヤスヤ」
天王寺「っ! 子どもには手を出すな!!」
綴「綯っ!!」
916: 2015/12/29(火) 11:43:13.99 ID:XQu17636o
ラウンダーF「いいか? お前のしたこと、これは重大な服務規程違反……裏切りだ」
ラウンダーF「だがこの任務に関して君以上の適任者が見つからないのも事実でね」
ラウンダーF「そこで考えたんだが、君にはペナルティを課した上で任務を続行してもらうことにする」
ラウンダーF「妻か娘……どちらかに我々と一緒に来てもらう」
綴「……私が行きます」
天王寺「な……!? おい……!」
綴「綯を……娘を、返してください」
ラウンダーF「いいだろう」スッ
綴「よく分からないけれど、すぐに戻れるようにお願いしてみるから」
綴「私が戻るまでに、綯の弟か妹の名前を考えておいて」
ラウンダーG「行くぞ」
綴「…………」
バタン
天王寺「…………」
ラウンダーF「心配することはない。またすぐに会える」
天王寺「……?」
917: 2015/12/29(火) 11:43:49.57 ID:XQu17636o
ラウンダーH「データが来ました」
ラウンダーF「よし、見せてやれ」
天王寺「これは……イタリア語の新聞? 日付は、数十年前……」
天王寺「"DONNA GELATINA"、ゲル状の貴婦人……」
天王寺「あ……なっ……?」
天王寺「そんな……っ、綴……っ!!」
ラウンダーF「どうだ? ハッキングなどよりも我々がなにができるかよく理解できただろう」
ラウンダーF「君がこれからすべきことを言うぞ?」
ラウンダーF「まず妻の痕跡をすべて消せ。持ち物を1つ残らず廃棄するんだ」
ラウンダーF「存在を知る者には氏んだと伝えろ」
ラウンダーF「そしてなんとしてもIBN5100を確保しろ。それで終わりだ」
ラウンダーF「くれぐれも行動に気を付けるように」
ラウンダーF「我々は常に、君を……『君たち』を見ているからな」
バタン
綯「……んんぅ」
天王寺「……うっ……くっ……うぅっ……」ポロポロ
綯「……おとうさん? 泣いてるの?」
天王寺「綯……! ごめんな……! ごめん……」
天王寺「お前だけは、絶対に……!!」
・・・
918: 2015/12/29(火) 11:46:03.59 ID:XQu17636o
・・・
天王寺「あれからもう9年か……。時が経つのはあっという間だ」
天王寺「時間は一定に流れてるっていうけどよ、ありゃ嘘だよなぁ」
倫子「(……そう言えば)」
―――――
ラウンダーB「これがSERNの力か……間近で見るのは初めてだ」
ラウンダーC「えげつねえことしやがる……」
ラウンダーA「俺は2回目だ。あれはたしか9年前……現場には居られなかったが、身籠った女がゼリーマンとして処分されたと聞く」
―――――
倫子「(かつての世界線でクールカットの男がそんなことを言っていたが、もしかして綴さんは……っ)」
倫子「(待てよ? 1%の壁を越えれば、SERNのディストピアは崩壊するのだから……)」
倫子「(いや、違う。これはディストピアとは関係ない)」
倫子「(SERNは1954年には既に設立されていて、Zプログラム自体は1973年から始まり、第四段階の人体実験は2001年に始まった物だったのだから……)」
倫子「(ならば、鈴羽に頼んで、2001年、綴さんの氏を阻止してもらうのはどうだ……?)」
倫子「(いや、この世界線の2010年8月9日に1975年へと跳んだ鈴羽にたった18文字で情報を送るのは無理だ。タイムリープも48時間制限のせいでできない)」
倫子「(それに、鈴羽に頼めたとしても、鈴羽はおそらく2000年5月18日を超えて生きられない……)」
倫子「(無理、なのか……)」
倫子「(どうあがいたとしても……)」
倫子「(綯の祈りが叶うことは、世界が許さないとでも言うのか……っ)」グッ
919: 2015/12/29(火) 11:46:59.38 ID:XQu17636o
天王寺「そうだ、ちょっと待ってろ……よっと」スッ
倫子「あ……! それはっ!」
【 0.40942 】
倫子「(前の世界線では鈴羽はダイバージェンスメーターをオレにくれることはなかったのだった)」
倫子「(それでこれが今ここに……)」
倫子「(そして……。ダイバージェンスは変動している……)」
倫子「(確実に1%へと近づいている……っ!)」
天王寺「鈴さんは、病床からいつも、このメーターを眺めてた」
倫子「え……」
天王寺「うわごとのようにつぶやいてたよ。この数字は、変わる前なのかな、変わった後なのかな、あたしは変えられたのかな――ってな」
倫子「(……ああ、間違いなく変わったよ。リーディングシュタイナーが無いお前の代わりに、オレがちゃんと観測したからな……)」ウルウル
倫子「(だからオレが、お前の意志を継ぐよ。きっとオレが――)」ポロポロ
天王寺「……泣き虫だなぁ。綺麗なツラが台無しだぞ、バカ野郎」ナデナデ
920: 2015/12/29(火) 11:47:56.92 ID:XQu17636o
UPXスタベ
倫子「済まない、待たせたな」
まゆり「ううん。あ、るかちゃんから連絡があったけど、古いパソコンは神社で預かってないって」
倫子「やはりというべきか……。うむ、報告ご苦労」
倫子「さあ、ラボまで行こう。今頃助手が1人でふてくされている頃だろう」
まゆり「えへへー、今日はまゆしぃ、愛されちゃってるねぇ」
まゆり「オカリンの家からずっと一緒で、ちょっとここで待ったけど、その後も一緒だなんて……」
倫子「べ、別にお前のことが心配だ、とかじゃないからな! 勘違いするなよ!」
まゆり「ツンデレウマーだよー、オカリーン♪」
まゆり「……なんだか懐かしいなぁ」
倫子「なにがだ?」
まゆり「昔は、よく一緒にお祭りを見に行ったよね。えっとあれは、鬼子母神さまのお祭りだったかなぁ」
まゆり「オカリンが射的で取ってくれたお人形、実はね、まだ持ってるんだぁ」
倫子「そうなの、か?」
まゆり「えへ……まゆしぃの宝物なのです☆」
まゆり「だけど、お祭りには人がいっぱいいて、まゆしぃはいっつも迷子になっちゃって……」
まゆり「それで、ひとりで泣いてると……必ずオカリンが見つけてくれたよね……」
まゆり「泣いてるまゆしぃの手を引いて、もう泣くなよって、いっつも言ってくれたの……」
まゆり「そのとき、思ったんだぁ。オカリンがいればもう大丈夫だって……」
まゆり「もうなんにも怖くないんだって……」
まゆり「オカリンがいれば、なんにも……」ウルッ
倫子「……なにをノスタルジーに浸っているのだ。ほら、行くぞ」ギュッ
まゆり「……うんっ♪」
倫子「済まない、待たせたな」
まゆり「ううん。あ、るかちゃんから連絡があったけど、古いパソコンは神社で預かってないって」
倫子「やはりというべきか……。うむ、報告ご苦労」
倫子「さあ、ラボまで行こう。今頃助手が1人でふてくされている頃だろう」
まゆり「えへへー、今日はまゆしぃ、愛されちゃってるねぇ」
まゆり「オカリンの家からずっと一緒で、ちょっとここで待ったけど、その後も一緒だなんて……」
倫子「べ、別にお前のことが心配だ、とかじゃないからな! 勘違いするなよ!」
まゆり「ツンデレウマーだよー、オカリーン♪」
まゆり「……なんだか懐かしいなぁ」
倫子「なにがだ?」
まゆり「昔は、よく一緒にお祭りを見に行ったよね。えっとあれは、鬼子母神さまのお祭りだったかなぁ」
まゆり「オカリンが射的で取ってくれたお人形、実はね、まだ持ってるんだぁ」
倫子「そうなの、か?」
まゆり「えへ……まゆしぃの宝物なのです☆」
まゆり「だけど、お祭りには人がいっぱいいて、まゆしぃはいっつも迷子になっちゃって……」
まゆり「それで、ひとりで泣いてると……必ずオカリンが見つけてくれたよね……」
まゆり「泣いてるまゆしぃの手を引いて、もう泣くなよって、いっつも言ってくれたの……」
まゆり「そのとき、思ったんだぁ。オカリンがいればもう大丈夫だって……」
まゆり「もうなんにも怖くないんだって……」
まゆり「オカリンがいれば、なんにも……」ウルッ
倫子「……なにをノスタルジーに浸っているのだ。ほら、行くぞ」ギュッ
まゆり「……うんっ♪」
921: 2015/12/29(火) 11:48:39.84 ID:XQu17636o
未来ガジェット研究所
紅莉栖「岡部って、尽くすタイプなのね」ダラダラ
倫子「血涙を止めろ……」
紅莉栖「私も倫子ちゃんにお姫さま扱いされたいぃ……」ギリリッ
まゆり「まゆしぃ大勝利なのです☆」
紅莉栖「ってか、お昼ご飯の毒味はさすがにやり過ぎでしょう?」
倫子「まゆり、しゃべったのか……」
紅莉栖「前から謎だったんだけど、あんたたちって付き合ってるの?」
倫子「黙れこのクソレO(笑)め。まゆりもオレもノーマルだと何度言えば」
まゆり「あおふぇ、いふぁはふぁゆひぃはひふぉひひ」
倫子「たこ焼きを食べてからしゃべりなさい。はしたないぞ、まゆり」
紅莉栖「どちらかというと保護者か」ハァ
紅莉栖「そしてまゆりがかわいいので許す」ニヘラ
倫子「お前の思考回路が一番謎めいているぞ……」
紅莉栖「岡部って、尽くすタイプなのね」ダラダラ
倫子「血涙を止めろ……」
紅莉栖「私も倫子ちゃんにお姫さま扱いされたいぃ……」ギリリッ
まゆり「まゆしぃ大勝利なのです☆」
紅莉栖「ってか、お昼ご飯の毒味はさすがにやり過ぎでしょう?」
倫子「まゆり、しゃべったのか……」
紅莉栖「前から謎だったんだけど、あんたたちって付き合ってるの?」
倫子「黙れこのクソレO(笑)め。まゆりもオレもノーマルだと何度言えば」
まゆり「あおふぇ、いふぁはふぁゆひぃはひふぉひひ」
倫子「たこ焼きを食べてからしゃべりなさい。はしたないぞ、まゆり」
紅莉栖「どちらかというと保護者か」ハァ
紅莉栖「そしてまゆりがかわいいので許す」ニヘラ
倫子「お前の思考回路が一番謎めいているぞ……」
922: 2015/12/29(火) 11:50:16.14 ID:XQu17636o
倫子「(さて……ここはα世界線。まゆりは、氏へと収束する……)」
倫子「(同時に、オレと紅莉栖とダルの3人はSERNに拉致される)」
倫子「(いずれにせよ、今はラボもあるし、ブラウン管工房もあり、タイムリープマシンも正常に動く)」
倫子「(ダルには42型ブラウン管テレビのリモコンをジャンクショップで買ってきてもらった)」
倫子「(そしてタイムリープマシンの真下にある穴をしっかりとくりぬいた。これでいつでも階下の42型を点灯できる)」
倫子「(準備は万全、保険はある……が、まゆりが氏ぬのはもうこりごりだ……)」
紅莉栖「タイムリープマシンの実験はしないんじゃなかったの?」
倫子「もしもの時のためだ」
紅莉栖「もしもって……あれ、電話だ。ママからかな……ちょっとゴメン」タッ
倫子「……やはり、そうか。結局、そうなるんだよな……」
紅莉栖「……ただいま。それじゃ、タイムリープする?」
倫子「まだオレはお前に、まゆりが氏ぬようなことがあったらその時刻より前にタイムリープしてくるよう頼んでいなかったのだが」
紅莉栖「私の記憶では頼まれたことになってる」
紅莉栖「世界はまゆりの氏へと収束した。襲撃も、氏も、24時間ずれただけだった」
紅莉栖「えっと、あんたの主観からすると48時間ずれたことになるわね」
倫子「襲撃に関してはもっとずらせなかったのか?」
紅莉栖「ごめん……。これもたぶん、まゆりの氏に付随して移動する収束だと思う」
紅莉栖「私も努力はしたのだけど……」
倫子「……いや、変なことを言って済まなかった。紅莉栖が謝る必要はないよ」
紅莉栖「本当はね、2010年レベルの技術力で作ったタイムリープマシンには不安な要素があるから、あんまり使ってほしくないんだけど……」
倫子「記憶がフラクタル化する懸念、だったか。それはオレのリーディングシュタイナーでカバーできるのだろう?」
紅莉栖「……お願い。岡部はこれから、過去へ戻ってDメールを取り消して」
紅莉栖「この世界線における1周目へと……時間はやっぱり、タイムリープマシンが完成する直前」
倫子「ああ、わかった。それじゃ、さっそく――」
紅莉栖「待って!」
923: 2015/12/29(火) 11:51:19.61 ID:XQu17636o
倫子「……まさか、また何かイレギュラーが!?」ゾワワァ
紅莉栖「ううん、そうじゃない。……ただ、私の話を聞いてほしい」
倫子「……ゴクリ」
紅莉栖「すぅ……はぁ……」
紅莉栖「……っ!」
紅莉栖「ほかべえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!」ダキッ
倫子「ぅぐほぁ!!」
紅莉栖「つらかったよぉぉぉぉぉぉこわかったよぉぉぉぉぉぉぉさみしかったよぉぉぉぉぉっ!!!」スリスリスリスリ
倫子「なにこれ、毎回やるの!? いや、紅莉栖には感謝してもしきれないけどさぁ! うわぁん!」
ガララッ
まゆり「お、大きな声がしたけど、だいじょうぶ?」
紅莉栖「おかべ! おかべ! おかべ! おかべぇぇえええうわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ……ああ……あっあっー! あぁああああああ!!! おかべおかべおかべぇぇええうわぁああああ!!! あぁクンカクンカ! クンカクンカ! スーハースーハー! スーハースーハー! いい匂いだなぁ……ま、まゆりっ!?」
倫子「あっ、いや、あの、これはだな……」ダラダラ
まゆり「クリスちゃんとハァハァ? いいなー。うらやましいなー(´・ω・`)」
倫子「待てっ! まゆりっ! オレとクリスティーナは『博士と助手』であって、それ以上でも以下でもない……っ!」
まゆり「そっかー。なんだかほっとしちゃった。今まではこんな気持ちにならなかったのにね……」
倫子「紅莉栖のHENTAIと……まゆりのフラグが……カオスになって……」プルプル
倫子「とべよおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!!」
924: 2015/12/29(火) 11:51:51.68 ID:XQu17636o
――――――――――――――――――――――
2010年8月14日15時47分 → 2010年8月13日13時47分
――――――――――――――――――――――
925: 2015/12/29(火) 11:52:48.60 ID:XQu17636o
2010年8月13日(金) 13時47分
未来ガジェット研究所
倫子「……っ。(この生理的嫌悪感にももう慣れたものだな……)」ヨロッ
まゆり「ふんふんふ~ん♪」
紅莉栖「…………」カチャカチャ
倫子「(まゆりはコス作り、紅莉栖はタイムリープマシン作り。よし、戻ってきている)」
倫子「そう言えば萌郁はどうなった……?」ピッピッ
倫子「よかった、アドレス帳に『閃光の指圧師』が登録されている」ホッ
倫子「(……もし萌郁がラウンダーを裏切れず、まゆりを頃すようなことがあったら?)」ゾワワァ
倫子「(どういうわけか、そのビジョンは簡単に妄想することができた)」ウップ
まゆり「だ、だいじょうぶオカリン? 気分悪いの?」
倫子「……くっ、機関め。オレの脳内に直接ビジョンを送り届ける沈黙の兵器の開発に成功したらしい」
倫子「しかぁし!! 狂気のマッドサイエンティストである鳳凰院凶真は、この程度の妄想攻撃でくたばるほどやわではないのだぁっ!」バッ
紅莉栖「岡部うるさい」
倫子「ぐっ!? 助手の分際で生意気だぞぉっ!」グヌヌ
倫子「……(こんなやりとりも、もうずいぶん昔のことのように思えてしまう)」
倫子「……ちょっと出てくる」
ダル「んお? 行ってら~」
まゆり「……無理しないでね」
未来ガジェット研究所
倫子「……っ。(この生理的嫌悪感にももう慣れたものだな……)」ヨロッ
まゆり「ふんふんふ~ん♪」
紅莉栖「…………」カチャカチャ
倫子「(まゆりはコス作り、紅莉栖はタイムリープマシン作り。よし、戻ってきている)」
倫子「そう言えば萌郁はどうなった……?」ピッピッ
倫子「よかった、アドレス帳に『閃光の指圧師』が登録されている」ホッ
倫子「(……もし萌郁がラウンダーを裏切れず、まゆりを頃すようなことがあったら?)」ゾワワァ
倫子「(どういうわけか、そのビジョンは簡単に妄想することができた)」ウップ
まゆり「だ、だいじょうぶオカリン? 気分悪いの?」
倫子「……くっ、機関め。オレの脳内に直接ビジョンを送り届ける沈黙の兵器の開発に成功したらしい」
倫子「しかぁし!! 狂気のマッドサイエンティストである鳳凰院凶真は、この程度の妄想攻撃でくたばるほどやわではないのだぁっ!」バッ
紅莉栖「岡部うるさい」
倫子「ぐっ!? 助手の分際で生意気だぞぉっ!」グヌヌ
倫子「……(こんなやりとりも、もうずいぶん昔のことのように思えてしまう)」
倫子「……ちょっと出てくる」
ダル「んお? 行ってら~」
まゆり「……無理しないでね」
926: 2015/12/29(火) 11:53:48.81 ID:XQu17636o
大檜山ビル前ベンチ
倫子「(次にやることはフェイリスのDメールを取り消すこと、だが……)」
倫子「(それが意味しているのは、フェイリスパパ、秋葉幸高さんをもう一度頃すということ……)」
―――――
『綴さんは、元からそうだったと諦めるしかない』
『氏者を蘇らせるってのは、そういうことなのよ、きっと』
―――――
倫子「(またオレは、ボタン1つで他人の命を奪うのか……家族の絆を壊すのか……)」
倫子「…………」グッ
倫子「とりあえず、あいつと会って話そう。話はそれからだ」
ドスン ドスン ドスン
ダル「フェイリス! ニャンニャン! フェイリ、おうオカリン。こんなとこにいたん?」
倫子「……そういや、大会があるとか言ってたか」
ダル「そうそう。雷ネットABグラチャン。タイムリープマシンが完成したから、フェイリスたんの応援に行こうと思うわけだが」
倫子「なあ、オレも連れてってくれ」
ダル「おう! オカリンなら大歓迎だお! フェイリスたんもきっと喜――あ」
ダル「オカリン、チケット持ってないよね? うーん、どうすっかなーこれ」
倫子「だったら終わるまで外で待っている。オレは別にフェイリスの雄姿が見たいわけではなく、緊急の話があるだけだ」
ダル「そうなん? んー、まあオカリンがそれでいいなら別にいいけどさ」
倫子「(次にやることはフェイリスのDメールを取り消すこと、だが……)」
倫子「(それが意味しているのは、フェイリスパパ、秋葉幸高さんをもう一度頃すということ……)」
―――――
『綴さんは、元からそうだったと諦めるしかない』
『氏者を蘇らせるってのは、そういうことなのよ、きっと』
―――――
倫子「(またオレは、ボタン1つで他人の命を奪うのか……家族の絆を壊すのか……)」
倫子「…………」グッ
倫子「とりあえず、あいつと会って話そう。話はそれからだ」
ドスン ドスン ドスン
ダル「フェイリス! ニャンニャン! フェイリ、おうオカリン。こんなとこにいたん?」
倫子「……そういや、大会があるとか言ってたか」
ダル「そうそう。雷ネットABグラチャン。タイムリープマシンが完成したから、フェイリスたんの応援に行こうと思うわけだが」
倫子「なあ、オレも連れてってくれ」
ダル「おう! オカリンなら大歓迎だお! フェイリスたんもきっと喜――あ」
ダル「オカリン、チケット持ってないよね? うーん、どうすっかなーこれ」
倫子「だったら終わるまで外で待っている。オレは別にフェイリスの雄姿が見たいわけではなく、緊急の話があるだけだ」
ダル「そうなん? んー、まあオカリンがそれでいいなら別にいいけどさ」
927: 2015/12/29(火) 11:54:50.04 ID:XQu17636o
UPX1階外
倫子「お、ぞろぞろと客が出てきたな……試合が終わったか」
倫子「しかし、フェイリスに電話しても、ダルに電話しても出ない……」イライラ
ドンッ!!
倫子「きゃっ!」ズテンッ
??「あぁ?」
倫子「(しまった! オレとしたことが、人波に押され尻もちをついてしまうなどと……///)」カァァ
??「……大丈夫か、俺の白衣の天使様」スッ
倫子「あ、ああ。どうも、ありがとう……(なんだこいつ)」
倫子「そうだっ! チャンピオンのフェイリスについて、何か知らないか?」
??「……そうか。ブラックピーコックである俺は貴女に導かれ、天上を目指していた、ということか。クックックッ」
倫子「は?」
??「奴は既に俺の邪悪なる能力<ちから>によって堕天してしまった……翼をもがれたメス猫は、地獄の釜をみっともなくかけまわってるぜ」
??「そんなことよりも、勝利を貴女に捧げよう。俺の全宇宙<コスモ>の愛だ……受け取ってくれ」
Chu☆(※投げキッス)
倫子「…………」
倫子「…………」
倫子「おえええええっぇっぇっ!!!!」ビチャビチャ
倫子「お、ぞろぞろと客が出てきたな……試合が終わったか」
倫子「しかし、フェイリスに電話しても、ダルに電話しても出ない……」イライラ
ドンッ!!
倫子「きゃっ!」ズテンッ
??「あぁ?」
倫子「(しまった! オレとしたことが、人波に押され尻もちをついてしまうなどと……///)」カァァ
??「……大丈夫か、俺の白衣の天使様」スッ
倫子「あ、ああ。どうも、ありがとう……(なんだこいつ)」
倫子「そうだっ! チャンピオンのフェイリスについて、何か知らないか?」
??「……そうか。ブラックピーコックである俺は貴女に導かれ、天上を目指していた、ということか。クックックッ」
倫子「は?」
??「奴は既に俺の邪悪なる能力<ちから>によって堕天してしまった……翼をもがれたメス猫は、地獄の釜をみっともなくかけまわってるぜ」
??「そんなことよりも、勝利を貴女に捧げよう。俺の全宇宙<コスモ>の愛だ……受け取ってくれ」
Chu☆(※投げキッス)
倫子「…………」
倫子「…………」
倫子「おえええええっぇっぇっ!!!!」ビチャビチャ
928: 2015/12/29(火) 11:55:38.67 ID:XQu17636o
ガイアにもっと輝けとささやかれているっぽい男「だ、大丈夫か!? 我らヴァイラルアタッカーズの勝利の女神、そして俺の白衣の天使<ミーハイール>」ダキッ
倫子「(ぐっ、久しぶりの男性恐怖症と他人の厨二病を受け付けられない病が同時発症してしまった……)」ウェッ
ファサッ
倫子「(……オレを抱き留めた時に帽子を落としたらしい男の頭には10円ハゲがあった)」
ガイアにもっと輝けとささやかれているっぽい10円ハゲの男「すべては貴女のために……ストリートシーンにおりた"黒の絶対零度"、4℃の勝利を捧げる……」
倫子「つ、つまり、お前、決勝戦でフェイリスに勝ったのだな? というか、そろそろ離せ」ウェッ
4℃「おっと、俺の能力<ちから>が暴走するところだった。乾いた氷は、肌をも火傷させる……」
倫子「あ、ああ。話はわかった。今頃フェイリスは自宅で泣き寝入りしているのだろう。それじゃ、さようなら」
4℃「女神が天に還る刻が来たか……。だが、その愛<‐eye‐>は俺だけのゾーン……いずれ2人は巡り合う……」
倫子「おろろろろろろろろっ!!!!!!」ビチャビチャ
929: 2015/12/29(火) 11:56:28.02 ID:XQu17636o
秋葉原タイムスタワー
秋葉邸
フェイリス「…………」シュン
倫子「案の定、か。そんなに悔しかったのか?」
フェイリス「フェイリスは負けたニャ。あいつらが汚い妨害を仕掛けてきたせいニャけど、それを含めて勝てなかった自分が恥ずかしくて、悔しいニャ……」
倫子「あー、あの10円ハゲならやりそうだな」
フェイリス「パパ、きっとガッカリしてるニャン……合わせる顔がないニャ……」
倫子「(パパ……か。オレは今からそのパパさんを……)」グッ
フェイリス「ニャ? どうして凶真がつらそうな顔をするのニャ?」
倫子「そ、それは……」
倫子「(このフェイリスには父親を生き返らせたという記憶は無いんだよな……なんと切り出すべきか……)」
フェイリス「……ニャニャーッ!! フェイリスはひらめいちゃったのニャ!!」ガタッ
倫子「ひっ」ビクッ
フェイリス「凶真のラボでタイムマシンを作ったニャ!? フェイリスもラボメンになって実験に参加したけど不発だったアレニャ!」
倫子「(この世界線ではそんなことがあったのか)」
倫子「あ、ああ。今オレもそれについて話そうと……」
フェイリス「凶真にお願いがあるニャ! 今こそタイムマシンを使って、過去を変えて結果を変える時なのニャ!」
倫子「お、おう……?」
秋葉邸
フェイリス「…………」シュン
倫子「案の定、か。そんなに悔しかったのか?」
フェイリス「フェイリスは負けたニャ。あいつらが汚い妨害を仕掛けてきたせいニャけど、それを含めて勝てなかった自分が恥ずかしくて、悔しいニャ……」
倫子「あー、あの10円ハゲならやりそうだな」
フェイリス「パパ、きっとガッカリしてるニャン……合わせる顔がないニャ……」
倫子「(パパ……か。オレは今からそのパパさんを……)」グッ
フェイリス「ニャ? どうして凶真がつらそうな顔をするのニャ?」
倫子「そ、それは……」
倫子「(このフェイリスには父親を生き返らせたという記憶は無いんだよな……なんと切り出すべきか……)」
フェイリス「……ニャニャーッ!! フェイリスはひらめいちゃったのニャ!!」ガタッ
倫子「ひっ」ビクッ
フェイリス「凶真のラボでタイムマシンを作ったニャ!? フェイリスもラボメンになって実験に参加したけど不発だったアレニャ!」
倫子「(この世界線ではそんなことがあったのか)」
倫子「あ、ああ。今オレもそれについて話そうと……」
フェイリス「凶真にお願いがあるニャ! 今こそタイムマシンを使って、過去を変えて結果を変える時なのニャ!」
倫子「お、おう……?」
930: 2015/12/29(火) 11:58:47.15 ID:XQu17636o
フェイリス「お願いニャ、凶真ァ……」ヒシッ
倫子「ひぇっ!? (そうだった、この世界線のフェイリスはなぜかオレに躊躇なく抱き着いて来るのだった!)」ドキドキ
倫子「(……パパさんが居る世界線では、フェイリスはオレにわりと距離を置いて接するんだよな。物理的な意味で)」
倫子「……なあ、フェイリス。裏マーケットという言葉に心当たりはあるか? あるいは、血の盟約でも守護天使団でもいいんだが」
フェイリス「凶真ッ!? ついにその存在を知ってしまったのニャ!?」ビクッ
倫子「なんだ、この世界線にもあるのか……」ゲンナリ
フェイリス「アキバの女神であるフェイリスには守護天使団が常に側仕えしていて、生命の天地、事象の地平へと導いてくれているんだニャ!」
倫子「……は?」
フェイリス「それこそがフェイリスと天使たちの間に結ばれた血の盟約……っ! 刻を司る十二の監視は、たとえ悪の秘密結社であっても騙すことができニャい!!」
倫子「…………」
フェイリス「それを打ち破るために結成されたギルドこそ通称"裏マーケット"! フェイリスという止められぬ収束に抗う、力無き者たちの唯一の手段なのニャ!!」
倫子「(やはり、この世界線ではフェイリスは10年前からオレをストーカーしていないのか。それはパパさん生存のおかげだろう)」
フェイリス「ニャフフ……なんだかフェイリス、調子が戻ってきたニャ♪」
倫子「それはよかったな。それで、お願いってなんだ」
フェイリス「それニャんだけどぉ~……。フェイリスを、今日の決勝、ヴァイラルアタッカーズ戦で勝たせてほしいのニャ~ン……」ヒソヒソ
倫子「って、耳元で囁くなぁ、っ!」ガクガク
フェイリス「かぷっ」
倫子「ひぃぃぃっ!!!」ビクビク
931: 2015/12/29(火) 12:03:14.03 ID:XQu17636o
倫子「(危なかった、今、本気でイってしまいそうになったぞ……)」
フェイリス「凶真って、意外に押しに弱いのニャン」
倫子「ふーっ、ふーっ……。そう言えば、女の子にここまで積極的に攻め寄られたことは今までなかったかもしれない……」
フェイリス「それで、使わせてくれるかニャ? タイムマシン」
倫子「……ああ。お前にはいつも世話になってるし、なによりラボメンだからな」
フェイリス「わーい♪ 凶真、大好きニャーン♪」ダキッ
倫子「くっ!」スッ
フェイリス「フニャ。どうして避けるニャァ……ひどいニャァ……」ウルウル
倫子「これからオレは、今日の朝へ跳んでお前に助言を与える。そうすればお前は勝てるはずだ」
フェイリス「フェイリスがメールを送るんじゃないのかニャ?」
倫子「これはタイムリープと言って……ごにょごにょ……なのだ」
フェイリス「だったらフェイリスを今朝に跳ばしてくれればバッチリニャ」
倫子「ダメだっ」
フェイリス「ニャッ?」
倫子「タイムリープマシンは、できれば使うべきではないのだ」
倫子「助手も言ってたが、2010年レベルの技術力ではどんなエラーが出るかもわからない」
倫子「完璧なる能力、魔眼リーディングシュタイナーを持つオレ以外が使用すると、記憶が浸食される危険がある……」
フェイリス「ブーッ。そうやって誤魔化すの、凶真のよくないところだニャン」
倫子「なっ! 鳳凰院凶真の言葉は常に真実をだなっ!」プンプン
フェイリス「でも、フェイリスを心配してくれてるのは本当みたいで嬉しいニャン♪ 凶真に任せるニャ!」
932: 2015/12/29(火) 12:03:43.89 ID:XQu17636o
――――――――――――――――――――――
2010年8月13日18時38分 → 2010年8月13日10時38分
――――――――――――――――――――――
933: 2015/12/29(火) 12:06:08.59 ID:XQu17636o
UPX前
フェイリス「ふんふふ~ん♪」
倫子「(そう言えばこの世界線にはメイクイーンは存在しないはずなのに、制服だけはあるんだな……)」
フェイリス「凶真? ここでなにしてるニャ?」
倫子「お前に会いたくて待っていたのだ」
フェイリス「ニ゛ャ゛ッ゛!? ///」
フェイリス「ちょ、ちょっと不意打ちはやめるニャ……今のはマジでヤバかったニャ……」ハァハァ
倫子「か、勘違いするな! オレはお前を決勝で勝たせるために未来からやってきたんだ」
フェイリス「ふぅ、元の凶真に戻ってくれて助かったニャ」
倫子「それも違うっ! 本当なんだ、信じろっ!」
フェイリス「信じるニャ♪ ちなみにフェイリスはチンチラ星から来たのニャ!」
倫子「うっ……こいつ、またダビング10を使ったな……」
倫子「とにかく、これを受け取ってくれ。どうしてこれが必要なのかオレにはわからないが、お前に頼まれたブツだ」スッ
フェイリス「サングラスに耳栓……? あの、もしかして凶真、フェイリスのことバカにしてるニャ?」
倫子「は、はぁ!?」
フェイリス「冬のディフェンディングチャンピオンであるフェイリスが、負けると思ってるニャ?」
倫子「だからっ! オレは実際にお前が決勝で負けた未来からタイムリープしてきたのだと言っているっ!」
フェイリス「……ウニャアアアアアア!!!!」
倫子「ひぃっ!」ビクッ
フェイリス「ふんふふ~ん♪」
倫子「(そう言えばこの世界線にはメイクイーンは存在しないはずなのに、制服だけはあるんだな……)」
フェイリス「凶真? ここでなにしてるニャ?」
倫子「お前に会いたくて待っていたのだ」
フェイリス「ニ゛ャ゛ッ゛!? ///」
フェイリス「ちょ、ちょっと不意打ちはやめるニャ……今のはマジでヤバかったニャ……」ハァハァ
倫子「か、勘違いするな! オレはお前を決勝で勝たせるために未来からやってきたんだ」
フェイリス「ふぅ、元の凶真に戻ってくれて助かったニャ」
倫子「それも違うっ! 本当なんだ、信じろっ!」
フェイリス「信じるニャ♪ ちなみにフェイリスはチンチラ星から来たのニャ!」
倫子「うっ……こいつ、またダビング10を使ったな……」
倫子「とにかく、これを受け取ってくれ。どうしてこれが必要なのかオレにはわからないが、お前に頼まれたブツだ」スッ
フェイリス「サングラスに耳栓……? あの、もしかして凶真、フェイリスのことバカにしてるニャ?」
倫子「は、はぁ!?」
フェイリス「冬のディフェンディングチャンピオンであるフェイリスが、負けると思ってるニャ?」
倫子「だからっ! オレは実際にお前が決勝で負けた未来からタイムリープしてきたのだと言っているっ!」
フェイリス「……ウニャアアアアアア!!!!」
倫子「ひぃっ!」ビクッ
934: 2015/12/29(火) 12:07:09.81 ID:XQu17636o
フェイリス「凶真がそんな人だと思わなかったニャ!」プンスコ
倫子「(……このパターン、なんだかデジャヴだ。紅莉栖にルカ子のことでビンタされた時のような……)」
フェイリス「今日は大事な試合ニャのに、よくも負けるとか言ったニャ! 凶真なんて大っ嫌いだニャ!」
倫子「(やっぱり、この世界線のフェイリスはオレに対する態度が厳しい……)」
倫子「どうしてもお前に勝ってもらわねばならんのだっ! これにはまゆりの命がかかっていて――」
フェイリス「――――っ!!」
バチンッ!!
倫子「ぅぐほぁっ!? な、なにを……」ヒリヒリ
フェイリス「凶真なんてサイテーだニャ! マユシィの命を軽々しく扱うような人間は、氏んじゃえばいいのニャッ!」
倫子「――――ッ!!!!」ズキンッ
倫子「(ああ、そうか……今、ようやくわかった……)」
倫子「(これが、観測者の孤独、ってやつなんだな……)」ウルウル
倫子「(時間移動した人間は、もう元の人間の理へは戻れないのか……)」ポロポロ
フェイリス「あっ……えっと、ゴメン、ニャさい……今のは、嘘ニャ……」シュン
倫子「謝るなら最初からビンタをするな……」シクシク
フェイリス「……でも、もう行くニャ。絶対優勝してくるニャ」クルッ
倫子「ま、待て……行くな……っ! このまま行ってしまったら、オレが戻ってきた意味が……っ!」
??「ずいぶん余裕かましてるじゃねーか、チャンピオン」
935: 2015/12/29(火) 12:07:46.02 ID:XQu17636o
4℃「ストリートに舞い降りた雷ネッター界の黒い孔雀、見参」
倫子「お、お前は4℃……っ!」
フェイリス「ヴァイラルアタッカーズ……」
4℃「マジでガッカリだぜチャンピオン。テメェが体制に媚びた格好してるだけでも俺の心はざわめくのによ」
4℃「そのくせ俺の白衣の天使<ミーハイール>と歪んだ愛を確かめ合ってるなんてな……」
倫子「(こいつの目にはさっきの状況がどういう風に映っていたのだっ!?)」
フェイリス「もう邪魔しないでほしいニャ」クルッ
倫子「おい待てっ!」
4℃「おっと、待ちな」ガシッ
倫子「ヒィィィッ!」ゾワワァ
4℃「奴が憎いなら俺が仇をとってやる……奴が愛おしいなら俺がすべてを奪ってやる……」
4℃「だから今は、ヴァイラルの勝利の美酒にふさわしい杯を顕現させてくれ。マイスウィートエンジェル」
倫子「……お前に1つ真言を送ろう」
4℃「その託宣、罪と罰を含めて全身で受け取るぜ」
936: 2015/12/29(火) 12:08:54.41 ID:XQu17636o
「ポエムなら
チラシの裏に
書いていろ 倫子」
4℃「――――ッ!」
倫子「オレは貴様の勝利の女神などではないわ、この10円ハゲ! オレこそは、世に混沌をもたらす狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だッ!」
4℃「そ、そんな、この俺が騙されていたというのか……っ! くそ、ここは一旦退却だ……っ!」
倫子「……ふぅーははは、はぁ」グテーッ
フェイリス「……凶真、今、どうやって4℃の弱点を見抜いたニャン?」
倫子「言っただろう、オレは未来から来たのだと」
フェイリス「あ……」
倫子「それより、頼むフェイリス。これを受け取ってほしい。持っているだけでいいんだ」
フェイリス「……ホントに持つだけニャン。それでいいかニャ?」
倫子「ああ。決勝戦で絶対に必要になるからな、手放すなよ!」
937: 2015/12/29(火) 12:09:48.80 ID:XQu17636o
UPX雷ネットABGC会場
倫子「(今回は当日チケットを難なく入手し、会場に入ることができた)」
ダル「オカリンもフェイリスたんを応援してくれよ!」
倫子「あ、ああ……」
倫子「(ここでフェイリスに優勝してもらうことが、Dメールを取り消す贖罪になるとは思わないが……)」グッ
倫子「(そもそも、あいつがどんなDメールを送ったか、詳しくは知らないんだよな。取り消すための文面は冷静に考えるしかない)」
倫子「(父親を殺せと、オレがフェイリスに命令するようなものか……何か他に方法は無いのか……)」ウルッ
ダル「ちょっ、どしたん? 突然涙目になるとか」
倫子「い、いや、これはだな……ヴァイラルアタッカーズを見ていると目が腐る」
ダル「激同」
倫子「(そして、実況の掛け声と共に決勝戦が始まった)」
倫子「(今回は当日チケットを難なく入手し、会場に入ることができた)」
ダル「オカリンもフェイリスたんを応援してくれよ!」
倫子「あ、ああ……」
倫子「(ここでフェイリスに優勝してもらうことが、Dメールを取り消す贖罪になるとは思わないが……)」グッ
倫子「(そもそも、あいつがどんなDメールを送ったか、詳しくは知らないんだよな。取り消すための文面は冷静に考えるしかない)」
倫子「(父親を殺せと、オレがフェイリスに命令するようなものか……何か他に方法は無いのか……)」ウルッ
ダル「ちょっ、どしたん? 突然涙目になるとか」
倫子「い、いや、これはだな……ヴァイラルアタッカーズを見ていると目が腐る」
ダル「激同」
倫子「(そして、実況の掛け声と共に決勝戦が始まった)」
938: 2015/12/29(火) 12:10:40.23 ID:XQu17636o
倫子「(試合展開はフェイリスが劣勢のようだが……む? なんだ、あれ……っ!!)」
倫子「……レーザー攻撃だっ! フェイリスの眼のあたりに、レーザー光線が当たっている!」
ダル「は? ……って、マジかよ! 客席にヴァイラルの仲間が居て、フェイリスたんを妨害するとか、マジ許すまじ!」
倫子「くそっ、オレが直接締め上げてやるっ!」ガタッ
ダル「うおう、オカリン!?」
倫子「やいっ! ダテ悪だか伊達巻だか知らないがなっ! 卑怯な真似をするなこの卑劣漢めっ!」
「なになに?」
「あの子どうしたの?」
「白衣?」
「伊達巻?」
「よく見ると美人じゃない?」
「くっ……」
倫子「見つけた……っ!」ダッ
手下A「しまっ……、あんたは4℃さんの白衣の天使<ミーハイール>!?」
倫子「その名で呼ぶなぁ!! うわぁん!!」ボコォ
手下A「ぐほぁ!!」
939: 2015/12/29(火) 12:32:38.63 ID:XQu17636o
実況「おーっと、あまりのヒートアップに客席での場外乱闘が勃発だぁーっ!!」
倫子「ち、違うのっ! この男の人が私に痴漢をしてきて……」ウルッ
手下A「は、はぁっ!?」
倫子「(フハハハ……貴様は社会的に氏ぬがよいッ!)」ニヤリ
警備員「キミ、ちょっと来てくれるかな?」
手下A「お、覚えてろぉ……っ!!」ズルズル
倫子「フッ、どこまでも三下だな」
倫子「フェイリスの方は……、さっきから4℃に口撃をされているが、すべて無視か。耳栓をしてくれているようだな」フゥ
倫子「頑張れフェイリス、あとはお前の実力次第だ……!」
940: 2015/12/29(火) 12:33:39.06 ID:XQu17636o
・・・
実況「大! 逆! 転! だぁーーーーーっ!!!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
「フェイリス!! ニャンニャン!!」
倫子「か……勝ったのか……?」
ダル「フェイリス!! ニャンニャン!! オカリンのおかげで勝ったお!! 大会二連覇だおっ!!」
倫子「あ、ああ……よかった……戻って来て、よかった……」グスッ
ダル「フェイリスたんの勝利にオカリンが涙……こんな日が来ることを僕は夢見てたんだなぁ……」グスッ
倫子「オレはこれからフェイリスに会ってくる。ダルは先に帰ってろ」
ダル「おお、なんと麗しき百合展開……ラボで感動と妄想に浸っておくお……」ハァハァ
941: 2015/12/29(火) 12:34:17.66 ID:XQu17636o
UPX1階外
フェイリス「凶真ァーーー!」ダキッ
倫子「ふごっ!? く、苦しい……」
フェイリス「凶真を信じてあげられなくて本当にゴメンニャ……。凶真は、やっぱりフェイリスの味方だったんだニャ!」
倫子「あ、当たり前だっ! ラボメンとして、そして友として、オレはフェイリスの味方だっ!」
フェイリス「フェイリスにそっちの気は無いはずなのに、今日は凶真に抱かれてもいいニャン……」チラッ
倫子「あ、いや、遠慮しておきます」
フェイリス「でも、そうまでしてタイムリープしてきたのはどうしてニャ?」
倫子「もちろん2時間後のフェイリスに頼まれたから、ということもあるが……実は、オレもフェイリスに頼みがあってな」
フェイリス「なんでも聞いちゃうニャーン♪ エOチなことでもOKニャン」
倫子「助手が憤氏するからやめろ?」
フェイリス「凶真ァーーー!」ダキッ
倫子「ふごっ!? く、苦しい……」
フェイリス「凶真を信じてあげられなくて本当にゴメンニャ……。凶真は、やっぱりフェイリスの味方だったんだニャ!」
倫子「あ、当たり前だっ! ラボメンとして、そして友として、オレはフェイリスの味方だっ!」
フェイリス「フェイリスにそっちの気は無いはずなのに、今日は凶真に抱かれてもいいニャン……」チラッ
倫子「あ、いや、遠慮しておきます」
フェイリス「でも、そうまでしてタイムリープしてきたのはどうしてニャ?」
倫子「もちろん2時間後のフェイリスに頼まれたから、ということもあるが……実は、オレもフェイリスに頼みがあってな」
フェイリス「なんでも聞いちゃうニャーン♪ エOチなことでもOKニャン」
倫子「助手が憤氏するからやめろ?」
942: 2015/12/29(火) 12:35:18.88 ID:XQu17636o
倫子「……首のうらがちりちりする。何者かに見られている?」
フェイリス「……ヴァイラルアタッカーズニャ。フェイリスたち、今囲まれてる」
倫子「な、なんだと!?」ガバッ
4℃「よお」
倫子「お前はっ! 10円ハゲ!」
フェイリス「なんの用ニャ」
4℃「ガイアに愛されし黒の貴公子こと4℃様は悪魔と契約したのさ……。穢れた白きシャム猫から堕天使を取り戻す、ってなぁ!!」グイッ
倫子「きゃっ! ちょ、やめ、やめてぇ! いやぁぁっ!」ゾワワァ
4℃「クレイジーな舞でエレガントに惚れさせてやるぜ……だが、その前に漆黒に堕ちるのは、テメェだ」
フェイリス「凶真からその汚い手を放すニャ」ギロッ
倫子「た、助けて……」ガクガク
倫子「(クソ、こんなやつに、オレは心の底からビビッてしまっている……)」プルプル
4℃「聞いたぜメス猫。テメェの父親は秋葉原界隈じゃ知らねえ者はいないほどの男なんだってな」
4℃「その権力で会場を抱き込んだ……最初から出来レースだったんだろう?」
4℃「この資本家のピッグがぁ!」
「なんだって?」
「出来レース?」
「フェイリスが?」
ざわざわ……
フェイリス「…………」
「なんだあの巨漢……」
「ひぇっ」
「ムキムキマッチョだ……」
ざわざわ……
943: 2015/12/29(火) 12:36:13.98 ID:XQu17636o
天王寺「てめぇら、うちの店子に手ぇ出してんじゃねぇぞ」
4℃「あん? 誰――」クルッ
天王寺「寄ってたかって女をいじめて楽しいか? ジャリガキ」ゴキッ バキッ(※腕慣らしする音)
4℃「ひっ!?」
天王寺「空き缶みてぇにペッタンコに踏みつぶしてやろうか……」ゴゴゴ
4℃「ひ、ひぃぃぃっ!!」ダッ
手下B「あ、4℃さん待ってくださいっ!」
手下C「置いていかないでぇっ!」
倫子「(こ、こええええええっ!!! ミスターブラウンの今までに見たことの無い鬼の形相だ……っ!!!)」
天王寺「大丈夫か?」ニコ
倫子「は、はい……助けていただき、あ、ありがとうございます……」ガクガク
倫子「(店長はラウンダーじゃない……?)」
944: 2015/12/29(火) 12:36:42.79 ID:XQu17636o
フェイリス「ブラウンニャンがどうしてここに?」
天王寺「俺が秋葉原をぶらぶらしてちゃおかしいか?」
倫子「(……待てよ、おかしいぞ。明日ラウンダーがラボを襲撃すると紅莉栖は言っていたのだから、今日はフランスから特殊部隊がやってくる日)」
倫子「(もしかして、オレを尾行していたのか……?)」ブルブル
幸高「はぁっ……はぁっ……。留未穂っ! 大丈夫か!」タッ タッ
フェイリス「パパ!」
幸高「留未穂が優勝したと聞いて会社から駆け付けたんだが、チャンピオンが柄の悪い連中に囲まれていると聞いてね……」
フェイリス「それならブラウンニャンが追い払ってくれたのニャン♪」
幸高「ブラウンニャン?」
天王寺「へ、へんな呼び方するんじゃねえ!」
945: 2015/12/29(火) 12:41:52.19 ID:XQu17636o
秋葉原タイムスタワー
秋葉邸
幸高「いやー、娘と岡部くんの危ないところを助けていただき、本当にありがとうございました」
天王寺「そんな、俺ぁ別に何も」
倫子「(何故フェイリスのパパさんがオレが助かったことまでも感謝しているのだろう……)」
倫子「2人は知り合いなのですか?」
幸高「ああ。昔、橋田さんという人に頼まれてね、彼女の遺品を渡したことがある」
倫子「(鈴羽か……)」
天王寺「あとはトメさんから話を聞くくらいだったな。秋葉原の名士だとは知らなかったが」
幸高「今回の活躍を鑑みて、自警団に入っていただければと思っているのですが」
天王寺「よしてくれ。俺ぁ自警団なんてタマじゃねえよ」
幸高「それは失礼しました。それから、お礼として、天王寺さんのビル運営に出資をさせていただけませんか?」
天王寺「えっ、出資?」
幸高「あの辺りは今後人通りが増すエリアです。増改築の話があるなら、準備はできていますよ」
天王寺「なん……だと……!!」
秋葉邸
幸高「いやー、娘と岡部くんの危ないところを助けていただき、本当にありがとうございました」
天王寺「そんな、俺ぁ別に何も」
倫子「(何故フェイリスのパパさんがオレが助かったことまでも感謝しているのだろう……)」
倫子「2人は知り合いなのですか?」
幸高「ああ。昔、橋田さんという人に頼まれてね、彼女の遺品を渡したことがある」
倫子「(鈴羽か……)」
天王寺「あとはトメさんから話を聞くくらいだったな。秋葉原の名士だとは知らなかったが」
幸高「今回の活躍を鑑みて、自警団に入っていただければと思っているのですが」
天王寺「よしてくれ。俺ぁ自警団なんてタマじゃねえよ」
幸高「それは失礼しました。それから、お礼として、天王寺さんのビル運営に出資をさせていただけませんか?」
天王寺「えっ、出資?」
幸高「あの辺りは今後人通りが増すエリアです。増改築の話があるなら、準備はできていますよ」
天王寺「なん……だと……!!」
946: 2015/12/29(火) 12:42:34.11 ID:XQu17636o
フェイリス「パパたちは都市計画の話で盛り上がってるみたいニャ」
倫子「仕事が好きなんだろう。娘のためを思えば、なおのことな」
フェイリス「それで、凶真のお願いってなんだったのニャ?」
倫子「そ、それがだな……」
フェイリス「言いにくいこと?」
倫子「……順を追って話そう。どうか信じてほしい」
倫子「このままだと、間違いなく――」
倫子「…………」ゴクン
倫子「まゆりが、氏ぬ……」ウルッ
フェイリス「…………」
947: 2015/12/29(火) 12:43:36.24 ID:XQu17636o
・・・
フェイリス「話はわかったニャ。つまり、Dメールをすべて打ち消せばIBN5100が手に入ってマユシィは助かる」
フェイリス「でもその中には、フェイリスのパパを10年前の飛行機事故から救うメールがあった……フェイリスの記憶にはニャいけど」
倫子「(その事故で幸高さんが氏亡してしまったことは言い出せなかった。まあ、1人だけ氏亡する、という説明の方が信じられない話ではあるが)」
フェイリス「それで凶真はパパを取るかマユシィを取るかで悩んでた、ってことかニャ?」
倫子「うっ……。お前はなんでもまっすぐに言うんだな」
フェイリス「でもでも~、もしかしたらパパがIBN5100について何か知ってるかも知れないニャ」
倫子「そ、そうだった! たしか、フェイリスのパパはレトロPCの収集家だったな!?」
フェイリス「ねえパパ。IBN5100について、何か知らないかニャ?」
天王寺「」ピクッ
幸高「ああ、確かに持っていたよ。今はもう手放してしまったけどね」
948: 2015/12/29(火) 12:44:19.77 ID:XQu17636o
倫子「手放した……? 柳林神社に奉納したのですか?」
幸高「奉納……? いや、違うよ」
幸高「私にIBN5100を託してくれた橋田教授には、申し訳ないことをしてしまったと思っている……」
天王寺「ごふっ! げほっ、がほっ」
黒木「今ハンドタオルと替えのお紅茶をご用意致します」
倫子「(……鈴羽はそこまでは成功していたのだな。店長がむせたのも何か関係があるのだろう)」
幸高「昔の話になってしまうけどね、まだ私の会社が今ほど大きくない頃の話だ」
幸高「留未穂が誘拐されたんだ。犯人はとんでもない額の身代金を要求してきてね」
幸高「あるいは、会社を抵当に入れればなんとかなったかもしれない」
幸高「そんなとき、渡りに船とばかりに、IBN5100を高額で買い取りたいというフランスの実業家が現れてね」
天王寺「フランス、ねぇ……」
倫子「(……今頃SERNの手の中、ということか)」グッ
949: 2015/12/29(火) 12:46:57.60 ID:XQu17636o
秋葉邸
寝室
倫子「(なんだかんだで日が暮れてしまったところでフェイリスが突然、)」
フェイリス『今日は凶真もヤバイ男たちに囲まれて怖い思いをしたから、外に出ない方がいいと思うニャ』
倫子「(と言い出したので泊めてもらうことにした。Dメールの話もしなければならないからこちらとしては助かるが……)」
フェイリス「お風呂一緒に入るニャン♪」
倫子「1人で入らせてくれよ……」
フェイリス「ここはフェイリスの家ニャ! フェイリスの言う事は、ぜった~いなのニャ!」
フェイリス「凶真と一緒に体洗いっこしたいのニャン♪」
倫子「……別に構わんが」
・・・(省略)・・・
倫子「ああ、最高だ……。やっぱり広い風呂ってのはいいなぁ」ポカポカ
フェイリス「喜んでもらえて何よりニャ。お風呂上がりの凶真って、と~ってもキュートだニャン♪」
倫子「シャンプーもボディソープも高級で……い、いやいや、オレはマッドサイエンティストであってだな……」ブツブツ
フェイリス「はい、パジャマ」スッ
寝室
倫子「(なんだかんだで日が暮れてしまったところでフェイリスが突然、)」
フェイリス『今日は凶真もヤバイ男たちに囲まれて怖い思いをしたから、外に出ない方がいいと思うニャ』
倫子「(と言い出したので泊めてもらうことにした。Dメールの話もしなければならないからこちらとしては助かるが……)」
フェイリス「お風呂一緒に入るニャン♪」
倫子「1人で入らせてくれよ……」
フェイリス「ここはフェイリスの家ニャ! フェイリスの言う事は、ぜった~いなのニャ!」
フェイリス「凶真と一緒に体洗いっこしたいのニャン♪」
倫子「……別に構わんが」
・・・(省略)・・・
倫子「ああ、最高だ……。やっぱり広い風呂ってのはいいなぁ」ポカポカ
フェイリス「喜んでもらえて何よりニャ。お風呂上がりの凶真って、と~ってもキュートだニャン♪」
倫子「シャンプーもボディソープも高級で……い、いやいや、オレはマッドサイエンティストであってだな……」ブツブツ
フェイリス「はい、パジャマ」スッ
950: 2015/12/29(火) 12:47:46.71 ID:XQu17636o
倫子「……これは?」
フェイリス「だから、パジャマニャ」
倫子「い、いやいや! どうみてもパンダの着ぐるみではないかぁ! これをオレに着ろと!?」
フェイリス「だってぇ~、そのほうが可愛いニャ♪」
フェイリス「フェイリスの言う事は~?」
倫子「……ぜったい」グスッ
イソイソ
倫子「これは、想像以上に恥ずかしい……///」
フェイリス「ニャウウ~♪ パンダリンコちゃん可愛すぎなのニャ~♪」ダキッ
倫子「倫子ちゃん言うなぁ! うわぁん!」
倫子「それに、あ、あんまりオレの体に触わるな……まゆり以外から抱き着かれるのは慣れていない……」
フェイリス「前はそんなに嫌がって無かったニャ? 急にどうしちゃったのニャ?」
倫子「メイクイーンに居た時はそんなにボディタッチしてこなかっただろうに」
フェイリス「ニャニャ? なんで凶真は、開く予定だったメイド喫茶の名前を知ってるニャ?」
倫子「予定だった……?」
951: 2015/12/29(火) 12:48:20.47 ID:XQu17636o
フェイリス「あ、そっか。凶真が元居た世界線ではフェイリスはメイド喫茶のメイドさんだった、って話ニャ?」
倫子「そうなんだが、この世界線でもメイクイーンを開こうとしたんだな?」
フェイリス「そうニャ。ホームページに少しの間だけオープン告知とメイドさん募集要項を載せたことあったニャン」
フェイリス「フェイリスが企画して、会議にも通して、ほとんど決まりかけてた話なのニャン」
フェイリス「でも最終的に、パパにダメって言われて、企画がなくなっちゃったニャ」
倫子「(そうか、パパさんが生きていることでフェイリスは秋葉原の都市開発計画会議での発言力が無くなっていた、ということか……)」
フェイリス「という事は、フェイリスが送ったっていうDメールを取り消せば、フェイリスはアキバNo.1メイドになってしまうのニャ!? ハニャニャ……」
952: 2015/12/29(火) 12:49:21.46 ID:XQu17636o
フェイリス「……今わかったんだけど、凶真。フェイリスに嘘吐いてるニャ」
倫子「な、なんのことだ」
フェイリス「多分なんだけど、飛行機事故に遭ったパパは、とんでもない大ケガ……ううん、もしかして、氏んじゃったんじゃないのかニャ?」
倫子「っ……」
フェイリス「やっぱり」
倫子「やっぱりって、どういうことだ」
フェイリス「なんとなくだけど、そんな気がしたのニャ」
フェイリス「フェイリスがパパの反対を押し切ってまで秋葉原に萌え文化を導入するとは思えなくて……」
フェイリス「それに、メイド喫茶で一生懸命働いてるフェイリスを想像したら、実業家のパパの面影を追いかけている気がしたのニャン」
倫子「……嘘を吐いて済まなかった」
フェイリス「ううん、でも、そっかぁ……」
フェイリス「…………」ウルッ
フェイリス「ご、ごめんね。ちょっと私……グスッ……部屋に、戻るね……ヒグッ……」
バタン
倫子「あっ……」
953: 2015/12/29(火) 12:50:42.22 ID:XQu17636o
倫子「……ここでぐずぐずしているわけにもいかない。明日の20時にはまゆりは氏んでしまう」タッ
リビング
倫子「パパさん。少し聞きたいことがあります」
幸高「おや、どうしたのかな岡部くん。可愛いパジャマだね」
倫子「あっ、いや、これはあなたの娘さんがですね!!」アセッ
幸高「今紅茶を淹れよう……。それで、聞きたいことってなにかな」コトッ
倫子「……2000年4月2日、未来から変なメールが来ませんでしたか」ズズーッ
幸高「未来から? 未来からかどうかはわからないが、その日付は留未穂が誘拐された日だね」
倫子「フェイリスの8歳の誕生日……」
幸高「多分、一生忘れることの無い日付さ」
幸高「娘との約束を二度と破らないと誓った日でもあるんだ」
幸高「私の元に届けられた差出人不明のメールの内容は……」
『娘預かった。身代金1億。新幹線に乗れ』
倫子「っ!! な、なるほど、そういうことだったのか……」
幸高「結局、犯人は現金を受け取りに来なかったんだ。あの時の留未穂は自分が誘拐されたなんて気づかずに元気に帰ってきたよ」
幸高「まさに神様からのプレゼントだと思った……。同時に、自分の父親としての有り方を見つめ直すこととなったけどね」
倫子「(多分、その日フェイリスは自分の意志で家出でもしていたのだろう。それを知った上であのDメールを送った、と……)」
幸高「この時、私は君の父親でもあろうと決心したんだ。岡部倫子さんのね」
倫子「――――え?」
954: 2015/12/29(火) 12:51:33.95 ID:XQu17636o
幸高「長い間話さなかったけど、今日がきっとその日なんだろう」
倫子「な、何を言って……?」
幸高「橋田教授からね、頼まれていたんだよ。『岡部倫子という少女を、2010年まで守ってほしい』ってね」
倫子「鈴羽が……!?」
幸高「さすがに私も訝しんだんだけどね、教授があんまり必氏に頼むもんだからOKしては居たんだが……」
幸高「もしその、岡部倫子さんが娘と同じ目に遭ったらと思ったら、気が気じゃなくなってしまってね」
倫子「……10年、前、から、私を……?」
黒木「左様にございます。貴女を狙う不届き者は、秋葉家に仕えること数十年になる私を初めとした黒服部隊が追っ払ってきた次第であります」
黒木「本日のことも、天王寺様が居なければ、私ども黒服部隊が彼らを物陰へと連れ込んで処分するつもりでした」
倫子「ナ、ナンダッテー!」
倫子「……だ、だが、忘れもしないあれは2005年の秋! オレは警官に襲われたはずなんだが……」
黒木「飼い犬に悪さをしようとしていた、××××氏のことでしょうか」
倫子「ま、ま、ま、まさか、この世界線ではあの事件は起きていないのか……!?!?」
955: 2015/12/29(火) 12:52:20.15 ID:XQu17636o
倫子「もしもし、親父か!? なあ、うちで飼ってた柴犬のこと覚えてるか? なに? 今日も散歩に行った?」
電話『ワンワンッ!』
倫子「そう……わかった……」ピッ
倫子「(そう言えば、まゆりと一緒に池袋に帰った時、犬小屋が昔のままあったような気がする……)」
倫子「(気になってケータイでネット検索してみたが、どれだけ調べても例の警官による女子中学生暴行事件は出てこなかった)」
倫子「は、はは……この世界線のオレは、鈴羽に、そして幸高さんに守られていたんだな……」
幸高「黙っていて済まなかった」
倫子「い、いえ! とんでもない! むしろどれだけ感謝してもしきれないです御父上っ!」
幸高「君が健やかに育ってくれて、そして留未穂の友達になってくれて、本当に嬉しいよ」
倫子「(ある意味、鈴羽の陰謀だな……ふふっ)」
956: 2015/12/29(火) 12:52:53.45 ID:XQu17636o
倫子「(……幸高さんが氏亡した世界線ではどうなっていたんだ?)」
倫子「(凶真守護天使団、裏マーケット、血の盟約……もしかして、当時8歳のフェイリスがオレを見守っていたのか?)」
ガチャ
フェイリス「パパ……」
倫子「フェイリス……」
倫子「(猫耳カチューシャは外したのか……)」
幸高「どうした留未穂? 泣いているのかい?」
フェイリス「私ね……どうしたらいいか、わからないの……」
フェイリス「友達が、私の大切な友達が、氏んじゃうかもしれないの……」
フェイリス「私のせいで……グスッ……」
倫子「そんなっ!? フェイリスのせいなんかじゃないっ!!」
幸高「……さっき、未来から来たメール、って言ってたね。少し詳しく聞かせてくれないかな」
957: 2015/12/29(火) 12:53:28.91 ID:XQu17636o
・・・
幸高「本当にタイムマシンを開発したなんて……さすが章一の娘だ」
フェイリス「パパ、私どうしたらいい……?」
幸高「……岡部くんに聞きたいことがある」
倫子「は、はい」
幸高「タイムリープではアトラクタフィールドの収束事項を回避することは絶対に不可能、これは間違いないんだね?」
倫子「た、たぶんそうです。今までもそうだったので……」
幸高「私は100%か、と聞いているんだ」
倫子「あ、いえ、その……わかりません」シュン
幸高「……いや、済まない。つい学生の頃の気分で話してしまった」
幸高「もし可能性がコンマ数%でもあるのなら試してみることはできないかな?」
倫子「そ、それって、つまり……」
幸高「この世界線でも本当に椎名まゆりちゃんは、命を落としてしまうのかどうか」
倫子「…………」
958: 2015/12/29(火) 12:54:06.97 ID:XQu17636o
幸高「無論、仮に失敗した場合、岡部くんがそれを見届けた後タイムリープしなければならないだろう」
幸高「机上ではいくらでも語れるが、実際に体験するとなれば、それはつらいこと、つらすぎることだ」
幸高「もし難しいなら――」
倫子「いえ、やります。やらせてください」
倫子「今まで守ってもらって、その恩を捨て置くわけにはいかない」
フェイリス「凶真……」
幸高「……思った以上に君に過酷なことを強いてしまったかもしれないな」
幸高「私は歳を取りすぎて、人が氏ぬことに慣れてしまった……」
フェイリス「私が……絶対にマユシィを守る!」
幸高「もちろん、私も全力で警護しよう。ラウンダーに秋葉原を滅茶苦茶にされるわけにはいかない」
959: 2015/12/29(火) 12:55:03.19 ID:XQu17636o
幸高「今の時間は……午前0時ちょうど、か。仮に失敗した場合、この時点に戻って来てもらっていいかな?」
倫子「はい。それなら同じ話を繰り返さなくて良くなりますね」
幸高「それから、仮に失敗してしまった後の話だが、『誘拐Dメールを打ち消す』以外の方法は無いだろうか」
倫子「それについてはオレも考えてました。例えば2000年4月2日に追加のDメールを送る……『IBN5100を岡部倫子に渡すまで絶対に手放すな』、とか」
幸高「なるほど。誘拐事件の後、教授からの遺言にあった人物の名前があれば、私は絶対に約束を守るだろう」
幸高「その場合、当時の私の会社はつぶれているだろうね。もしかしたら家族が路頭に迷っているかもしれない」
フェイリス「……でも、パパの命には代えられないよ」
倫子「IBN5100さえあればα世界線から脱出できるんです。まゆりは……氏ぬことはなくなる」
幸高「……確かにそうかもしれない。だが、君が元居た世界線では私は氏んでいた。そうだね?」
倫子「そうなります……」
幸高「ふむ……やはりギャンブルか……」
倫子「というと……?」
960: 2015/12/29(火) 12:56:22.10 ID:XQu17636o
幸高「保険の話だよ。Dメールを打ち消すのと、Dメールを新たに送るのではわけが違う」
幸高「打ち消すということは君が元居た世界線へ戻れるということ。そこならば、仮に問題があったとしても、また"イマの世界線"へ戻ってくることも理論上は可能だ」
幸高「だが、新たに送る場合は違う。世界線が回帰不可能なまでに分岐してしまう危険性がある」
幸高「私の生存を優先したために、君はもっと大切な何かを失う羽目になるかもしれない」
倫子「(またラボが無くなってしまったり……あるいは、秋葉原が消滅したり……)」
倫子「バタフライ、エフェクト……」
幸高「そうなったら最後、君は二度と"イマの世界線"へ戻ってこれなくなる」
倫子「……さすが、橋田教授のゼミ生だっただけありますね」
幸高「その橋田教授は誰に理論を教えてもらったんだろうね」ニコ
幸高「ゆえに、リスクを考えるとDメール打消しの方が勝る」
フェイリス「パパ……!」
幸高「だが、まずは私に運命と戦わせてくれないか。α世界線の収束とやらに、どこまで太刀打ちできるか試さずにはいられないのでね」
幸高「君たち2人の親友の命を、私に預けて欲しい」
倫子「……わかりました」
961: 2015/12/29(火) 12:57:32.50 ID:XQu17636o
2010年8月14日(土)19:45
カラ館
倫子「(ラジ館から駅入り口側へ、ゲーセンのある角をまわって警察署方面に行ったところにあるカラオケ店の一室にオレたちは居た)」
まゆり「えっへへー、フェリスちゃんとオカリンとカラオケに来れて嬉しいなー」
フェイリス「コミマの前夜祭だニャ! さぁ、次はマユシィの番だニャーン♪」
倫子「そろそろアニソン縛りはキツイぞ……オレはそこまでアニメには詳しくないのだ……」
倫子「(タイムリーパーである紅莉栖には会っていない。会ったところで、どんな顔をしてこの話をすればいいかわからなかった)」
倫子「(一応メールで"心配するな"とだけ送っておいたが……)」チラッ
まゆり「オカリン、誰かから連絡待ってるの? ずっとケータイを気にしてるけど……」
倫子「あ、いや、これは時間が気になっているだけでな」アセッ
まゆり「なんの時間~?」
倫子「えっと、その、だな……」
まゆり「あれれ~? まゆしぃのカイちゅ~、止まっちゃってる~」
倫子「なっ……」ゾワッ
まゆり「…………」クタッ
フェイリス「マ、マユシィ? どうしたんだニャ? ほら、もう前奏終わっちゃうニャ!」ユサユサ
まゆり「…………」
フェイリス「……マユシィ?」
倫子「……氏んだ」
「まゆりが、氏んだ」
カラ館
倫子「(ラジ館から駅入り口側へ、ゲーセンのある角をまわって警察署方面に行ったところにあるカラオケ店の一室にオレたちは居た)」
まゆり「えっへへー、フェリスちゃんとオカリンとカラオケに来れて嬉しいなー」
フェイリス「コミマの前夜祭だニャ! さぁ、次はマユシィの番だニャーン♪」
倫子「そろそろアニソン縛りはキツイぞ……オレはそこまでアニメには詳しくないのだ……」
倫子「(タイムリーパーである紅莉栖には会っていない。会ったところで、どんな顔をしてこの話をすればいいかわからなかった)」
倫子「(一応メールで"心配するな"とだけ送っておいたが……)」チラッ
まゆり「オカリン、誰かから連絡待ってるの? ずっとケータイを気にしてるけど……」
倫子「あ、いや、これは時間が気になっているだけでな」アセッ
まゆり「なんの時間~?」
倫子「えっと、その、だな……」
まゆり「あれれ~? まゆしぃのカイちゅ~、止まっちゃってる~」
倫子「なっ……」ゾワッ
まゆり「…………」クタッ
フェイリス「マ、マユシィ? どうしたんだニャ? ほら、もう前奏終わっちゃうニャ!」ユサユサ
まゆり「…………」
フェイリス「……マユシィ?」
倫子「……氏んだ」
「まゆりが、氏んだ」
962: 2015/12/29(火) 12:58:20.12 ID:XQu17636o
音がした。
オレの心の中で、何かが消える音。
壊れる音。
今まで感じたことも想像したことも無い、得も言われぬ恐怖がオレを襲った。
まゆりが氏ぬことに対する恐怖ではない。
まゆりの氏を無感情に受け入れている自分に対する恐怖、だ。
まるでモルモットを頃すサイエンティストのように。
そこにあったのは、愛苦しい幼馴染との不条理な氏別なんかではなく、
無味乾燥な情報。
試験管の中の反応。
原因に対する結果。
オレは、まゆりの氏を観測した。
世界は、再構成される――――――
963: 2015/12/29(火) 12:59:10.73 ID:XQu17636o
――――――――――――――――――――――
2010年8月14日22時00分 → 2010年8月14日0時00分
――――――――――――――――――――――
964: 2015/12/29(火) 13:00:54.71 ID:XQu17636o
2010年8月14日(土)0時00分
秋葉邸
倫子「……っ」ポロポロ
フェイリス「凶真ッ!? 電話に出たと思ったら、突然どうしたのかな……」オロオロ
幸高「……なるほど、それがタイムリープというわけだね。おそらく結果は芳しいものではなかったんだろう」
倫子「……ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……」プルプル
フェイリス「……私こそごめんなさい。留未穂のせいで、凶真につらい思いをさせてるんだよね……」ダキッ
幸高「となると、Dメールを送るしかなさそうだね」
倫子「……ゴメンナサイ……」
幸高「……『誘拐Dメールを打ち消す』以外の方法は無いだろうか」
倫子「……例えば、追加のDメールを送る……『IBN5100を岡部倫子に渡すまで絶対に手放すな』……」
幸高「なるほど。誘拐事件の後、教授からの遺言にあった人物の名前があれば、私は絶対に約束を守るだろう」
幸高「その場合、当時の私の会社はつぶれているだろうね。もしかしたら家族が路頭に迷っているかもしれない」
フェイリス「……でも、パパの命には代えられないよ」
倫子「……IBN5100さえあればα世界線から脱出できる……まゆりは氏なない……」
幸高「……確かにそうかもしれない。だが、君が元居た世界線、改変前の世界線では私は氏んでいた。そうだね?」
倫子「はい……」
幸高「ふむ……やはりギャンブルか……」
倫子「…………」
フェイリス「ギャンブル?」
秋葉邸
倫子「……っ」ポロポロ
フェイリス「凶真ッ!? 電話に出たと思ったら、突然どうしたのかな……」オロオロ
幸高「……なるほど、それがタイムリープというわけだね。おそらく結果は芳しいものではなかったんだろう」
倫子「……ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……」プルプル
フェイリス「……私こそごめんなさい。留未穂のせいで、凶真につらい思いをさせてるんだよね……」ダキッ
幸高「となると、Dメールを送るしかなさそうだね」
倫子「……ゴメンナサイ……」
幸高「……『誘拐Dメールを打ち消す』以外の方法は無いだろうか」
倫子「……例えば、追加のDメールを送る……『IBN5100を岡部倫子に渡すまで絶対に手放すな』……」
幸高「なるほど。誘拐事件の後、教授からの遺言にあった人物の名前があれば、私は絶対に約束を守るだろう」
幸高「その場合、当時の私の会社はつぶれているだろうね。もしかしたら家族が路頭に迷っているかもしれない」
フェイリス「……でも、パパの命には代えられないよ」
倫子「……IBN5100さえあればα世界線から脱出できる……まゆりは氏なない……」
幸高「……確かにそうかもしれない。だが、君が元居た世界線、改変前の世界線では私は氏んでいた。そうだね?」
倫子「はい……」
幸高「ふむ……やはりギャンブルか……」
倫子「…………」
フェイリス「ギャンブル?」
965: 2015/12/29(火) 13:02:03.07 ID:XQu17636o
幸高「保険の話だよ。Dメールを打ち消すのと、Dメールを新たに送るのではわけが違う」
幸高「打ち消すということは君が元居た世界線へ戻れるということ。そこならば、仮に問題があったとしても、また"イマの世界線"へ戻ってくることも可能だ」
幸高「だが、新たに送る場合は違う。世界線は回帰不可能なまでに分岐してしまう可能性がある」
幸高「私の生存を優先したために、君はもっと大切な何かを失う羽目になるかもしれない」
倫子「(……繰り返す時空改変でオレは、人としての感情を失ってしまったのかも知れない……)」
幸高「そうなったら最後、君は二度と"イマの世界線"へ戻ってこれなくなる」
幸高「ゆえに、リスクを考えるとDメール打消しの方が勝る」
フェイリス「パパ……!」
幸高「……実を言うとね、岡部くんに話を聞いてからというもの、不思議な景色が目に浮かぶんだよ」
倫子「……え?」
幸高「私が空を漂って留未穂の成長していく様を見守っているんだ……。そして、秋葉原も随分変わってしまったと、雲の上からつぶやいている自分が居る」
倫子「それって……リーディングシュタイナー、なのか……?」
倫子「い、いや、脳が存在していないのにそんなわけないか……」
フェイリス「パパの幽霊……?」
幸高「もし私が生きていることで世界がディストピアになってしまうと言うなら、私は迷うことなくこの命を投げ出そう」
幸高「留未穂は、信頼できる友人たちが居ればきっと大丈夫だ」
幸高「私の自慢の娘なんだから」
フェイリス「パパ……」
966: 2015/12/29(火) 13:03:02.49 ID:XQu17636o
寝室
倫子「…………」
フェイリス「……ねえ、凶真」
倫子「……なんだ、フェイリス」
フェイリス「……今は留未穂、って呼んでほしいな」
倫子「……留未穂」
フェイリス「聞かせてほしいの。パパの居ない世界がどんな世界だったか」
倫子「……お前はメイクイーン+ニャン2の人気No.1メイドであり、みんなの人気者だった」
倫子「まゆりもそこでバイトしていたんだ。マユシィ・ニャンニャンとして」
倫子「ダルがお前に心酔していてな。って、それはこっちの世界線でも同じか」
倫子「何を隠そう、秋葉原を萌えの街にした張本人だ」
倫子「仕事が忙しいせいで公式大会には出れてないが、雷ネットの腕は変わらずだぞ」
倫子「それから、留未穂はオレのストーカーだったんだ。それも10年間」
フェイリス「わ、私が凶真のストーカー?」
倫子「今思えば、オレを守ってくれ、っていう鈴羽の……橋田さんの遺言を守ってくれてたんだろう」
倫子「凶真守護天使団だの、裏マーケットだのを作って管理していた。お前には頭が上がらないよ」
フェイリス「……10年間、私は、凶真を、見守ってた……うぅっ!」
倫子「ど、どうした?」
フェイリス「頭が……痛い……っ。なにか、思い出しそう……」
倫子「まさか、リーディングシュタイナーがっ!?」
倫子「…………」
フェイリス「……ねえ、凶真」
倫子「……なんだ、フェイリス」
フェイリス「……今は留未穂、って呼んでほしいな」
倫子「……留未穂」
フェイリス「聞かせてほしいの。パパの居ない世界がどんな世界だったか」
倫子「……お前はメイクイーン+ニャン2の人気No.1メイドであり、みんなの人気者だった」
倫子「まゆりもそこでバイトしていたんだ。マユシィ・ニャンニャンとして」
倫子「ダルがお前に心酔していてな。って、それはこっちの世界線でも同じか」
倫子「何を隠そう、秋葉原を萌えの街にした張本人だ」
倫子「仕事が忙しいせいで公式大会には出れてないが、雷ネットの腕は変わらずだぞ」
倫子「それから、留未穂はオレのストーカーだったんだ。それも10年間」
フェイリス「わ、私が凶真のストーカー?」
倫子「今思えば、オレを守ってくれ、っていう鈴羽の……橋田さんの遺言を守ってくれてたんだろう」
倫子「凶真守護天使団だの、裏マーケットだのを作って管理していた。お前には頭が上がらないよ」
フェイリス「……10年間、私は、凶真を、見守ってた……うぅっ!」
倫子「ど、どうした?」
フェイリス「頭が……痛い……っ。なにか、思い出しそう……」
倫子「まさか、リーディングシュタイナーがっ!?」
967: 2015/12/29(火) 13:04:49.60 ID:XQu17636o
フェイリス「……思い出した。留未穂はね、小さい頃、黒木と一緒にとっても綺麗な女の子を見つめてた」
フェイリス「髪が長くて、お人形さんみたい、って思って、憧れてたの」
倫子「……一言声をかけてくれればよかったのに」
フェイリス「ううん、私にはできなかった。あなたに触れることで私の現実が、私の理想が壊れてしまうことを恐れてた」
フェイリス「あなたを見つめているだけで、私は幸せだったんだよ?」
フェイリス「どうしてこんな大切なことを忘れていたんだろう……。10年間、あなたを忘れた日は一日も無かった」
フェイリス「だから、初めてあなたがメイクイーンに来た時……あれは今年の5月だったね。もう、とっても驚いたよ」
倫子「ダルのやつには感謝しておかないとな」ククッ
フェイリス「最初はあなたと接することが怖かったけど、いつの間にか友達になってて……顔を思い浮かべるだけで心が温かくなるの」
フェイリス「凶真はね、私のお姫様だったんだよ……?」
倫子「…………」
968: 2015/12/29(火) 13:05:20.35 ID:XQu17636o
フェイリス「全部思い出した……。凶真との絆のおかげだね」
倫子「そうか……」
フェイリス「私の8歳の誕生日の時、パパにね、一緒に遊びにいこうってお願いしてたんだ」
フェイリス「パパは約束してくれたよ。その日はなにがあっても一緒に過ごそうって」
フェイリス「でも、急な仕事の予定が入っちゃって、前日になって約束は破られちゃったの」
フェイリス「『ひょっとしてパパは私のこと愛してくれてないんじゃないか?』って思って、誕生日に家出した」
フェイリス「その頃、パパは飛行機で――」
フェイリス「私が最後にパパに言った言葉、なんだと思う?」
倫子「…………」
フェイリス「『パパなんかもう知らない! 氏んじゃえばいいんだ!』って」グスッ
フェイリス「大好きだったのに……それが、ずっと、罪悪感として残っていて……」ウルッ
倫子「…………」ダキッ
フェイリス「凶真ァ……」ヒシッ
969: 2015/12/29(火) 13:05:54.64 ID:XQu17636o
フェイリス「私はもう満足したから。パパが私のこと、とっても大切に思ってくれてるってわかったから」
フェイリス「……本当は最初からわかってたんだけどね」
フェイリス「これは私にとっての夢のご褒美だったんだよ。ありがとう、凶真」
倫子「夢……」
フェイリス「変えた過去は戻さなくちゃね。マユシィのためにも、凶真のためにも」
倫子「……それで、いいんだな」
フェイリス「……ホントは、ちっともよくないよ……」グスッ
フェイリス「でも、これ以上凶真のつらそうな顔は見たくない。それだけで十分でしょう?」
フェイリス「だって留未穂は、凶真を守る天使なんだもん」
倫子「……すまない」
フェイリス「……今日は一緒に寝ていいかな。涙が止まるまで、抱きしめていて欲しい……」
倫子「……ああ」
970: 2015/12/29(火) 13:06:45.33 ID:XQu17636o
2010年8月14日(土)11時58分
秋葉邸
倫子「(紅莉栖がタイムリープしてくる前に、ダルにDメール送信準備をしてもらった)」
future-gadget8@hardbank.ne.jp
Sub
誘拐は冗談パパ愛してる
また会おうね
フェイリス「パパに最後の挨拶してきたニャン」
倫子「猫耳を装備するとニャンニャン語が戻るのか」
フェイリス「ニャフフ。凶真も猫耳つけてみるかニャ?」
倫子「だっ、だが断るっ!」
フェイリス「つれないニャ~」
倫子「(軽口を言ってくれて、オレを気遣っているのか。さすがNo.1メイドだ)」
秋葉邸
倫子「(紅莉栖がタイムリープしてくる前に、ダルにDメール送信準備をしてもらった)」
future-gadget8@hardbank.ne.jp
Sub
誘拐は冗談パパ愛してる
また会おうね
フェイリス「パパに最後の挨拶してきたニャン」
倫子「猫耳を装備するとニャンニャン語が戻るのか」
フェイリス「ニャフフ。凶真も猫耳つけてみるかニャ?」
倫子「だっ、だが断るっ!」
フェイリス「つれないニャ~」
倫子「(軽口を言ってくれて、オレを気遣っているのか。さすがNo.1メイドだ)」
971: 2015/12/29(火) 13:07:56.15 ID:XQu17636o
フェイリス「世界が元に戻ったら、フェイリスの今の記憶も全部なくなっちゃうのかニャ?」
倫子「……きっと覚えているさ」
フェイリス「嘘ニャー!!」キシャー
倫子「ヒッ!? い、いや、嘘ではないぞっ! 現に今、お前は"思い出している"ではないかっ!」
フェイリス「でもすぐには全部思い出せなかったニャ」
倫子「それでも、きっと夢やデジャヴ、白昼夢としてだな……」
倫子「(ええっと、紅莉栖はなんと言っていたんだったか……)」
フェイリス「ま、別にどっちだって大丈夫ニャン。向こうのフェイリスにもヨロシクニャ♪」
倫子「……たとえ世界を違えようとも、オレたちは仲間だ。友達だ」
フェイリス「うニュ~、もうこっちのフェイリスは凶真のチャームに溺れてしまったのニャァ~。今ならクーニャンの気持ちがよくわかるニャ」スリスリ
倫子「百合スティーナ2号になられてはたまったものじゃないがなっ! って、言ってるそばからすり寄るな猫娘っ!」グイグイ
フェイリス「ほーら、準備ができたならさっさとボタンを押すのニャ」
倫子「……絶対に1%の壁を超えてみせる」
倫子「まゆりを救ってみせる。世界の支配構造を変えてみせる」
倫子「オレはッ! いかなる体制にも屈しないッ! 狂気のマッドサイエンティストッ!」
倫子「鳳凰院、凶真だッ!!!」ガバッ
フェイリス「……頑張ってニャ、凶真」チュッ
ピッ
972: 2015/12/29(火) 13:09:42.65 ID:XQu17636o
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0.40942 → 0.46914
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993: 2015/12/30(水) 00:42:01.71 ID:709Eah1xO
乙
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