1: 2011/03/21(月) 02:22:31 ID:3xB683.A0





いつか、機会があればそこでカツカレーを食べようと心に決めていた。








第一話「カツカレーと空気」

2: 2011/03/21(月) 02:27:39 ID:3xB683.A0

その日、僕は手帳を買いに、町の商店街の文房具屋を訪ねていた。

そこで目的の2011年度手帳を手に入れて、駅まで戻る途中のこと、
僕は自身の空腹に気づいた。

( ^ω^)グウ

( ^ω^)「お腹へったお…」

( ^ω^)「せっかく町まで来たし、いいものでも食べたいお…」

都会に来たら、いいものを食べる。自分はそういう強迫観念に囚われている。
これも庶民の性なのか。
ゲーセンに寄ったら絶対太鼓の達人をプレイしちゃうのと一緒なのか、違うか。

とにかくガッツリ食べたいな、と人で賑わうアーケードを見回しているうちに、
一軒のカレー専門店に目が留った。

( ^ω^)「ん…」

5: 2011/03/21(月) 02:31:35 ID:3xB683.A0

昔ながらの喫茶店といった佇まいをしたその店は、いつも来るたびにカレーの匂いを
漂わしていて、アーケードを行き交う人々をひどく誘惑する。

この店、今まで気になっていはいたが、生まれて以来入店したことは一度もなかった。
商店街のモダンな雰囲気にマッチした店舗に、きっと洒落たいい店なんだなとは思っていた。
モダンがどういう意味なのかはよく知らないけれど。

( ^ω^)「カレーも良いおねー、ラーメンとかはどうも今食わなくてもいい感じがするし…」

カレーはごちそうで、ラーメンはあくまで普段食、そういうイメージがある。
例えるなら、カレーがマウスだとしたら、ラーメンはペンタブ。そんな感じだ。

とにかく、今はラーメンよりカレーの気分だった。


( ^ω^)「うん、よし、昼飯はここで食うお、決めたお」

7: 2011/03/21(月) 02:35:24 ID:3xB683.A0

入口の隣のガラスケースに並ぶサンプルを眺め、どれを注文するか品定め。
プレーンなカレーもいいが、物足りないだろう。

やはりここは一つ、カツカレーだ。
サンプルからでさえ伝わってくるカツのジューシーっぽさ、見ているだけで涎が出そう。


( ^ω^)「カツカレー、値段も600円といい感じね」

外食する上で、値段は何よりも大事だ。

美味しんぼじゃあるまいし、なるべく1000円、いや、800円までに抑えるのは当たり前。
そう考えると、ボリュームたっぷりのカツカレーは600円とは、なかなかいい感じじゃないか。
いや、そうに違いない。

( ^ω^)「ていうかもうカツカレー以外に考えられないお、そうと決まったら早速入店!」

注文までの流れを頭の中で軽く確認し、僕は自動ドアの前に立った。

9: 2011/03/21(月) 02:38:40 ID:3xB683.A0

入店してびっくり。

今までお洒落な雰囲気だと思っていたのは全くの幻想だった。

 _、_
( ,_ノ` )ドン

怖い顔の店主。


(`・ω・´;)('_L':)(;^^ω)ガツガツムシャ

カウンター席で必氏な顔してカレーをかっこむ客。


食べ終わった客は、連れと雜談することなくさっと金を置き、立ち去る。
全体的に流れている殺伐とした空気、これは食事というより、戦いか。

(;^ω^)(うわああああああああ!)

(;^ω^)(二郎じゃねーかお、これじゃ)

勘弁してくれ。

11: 2011/03/21(月) 02:41:46 ID:3xB683.A0

失敗しちゃったかな、そう思いつつ、入店した以上は引き返せないだろうと覚悟を決め、
カウンターに座った。両隣には、おっさんと大学生っぽい若者が一心不乱にカレーを
かきこんでいた。

座ってすぐに、怖い顔の店主が注文を尋ねる。
 _、_
( ,_ノ` )「いらっしゃいませ、ご注文は?」

(;^ω^)「カツカレーを…はい」
 _、_
( ,_ノ` )「カツ1つ!」

店主は厨房に叫んだ。

僕は財布から600円抜き出し、あとですぐに出せるようジャンパーのポケットにねじ入れた。
勘定に手間取ってギルティ!なんて言われたら泣いちゃうからね。


( ^ω^)「…ふぅ」

やるべき事はやった、あとはカツカレーを待つのみだ。

12: 2011/03/21(月) 02:46:17 ID:3xB683.A0

数分後、それはついにやってきた。

 _、_
( ,_ノ` )「あいよ、カツね!」

(;^ω^)「あ、どうも」

店主から手渡された皿をテーブルに置く。喉がゴクリと鳴った。


目の前にホカホカのカツカレーが、たっぷりと盛られている!
若干震える手でスプーンを手に取り、カレーを口に運ぶ。

(;^ω^)パク

程よい辛さのルーと温かいライスが口でとけ合う。


( ^ω^)「…!」

続いてカツを食べる。

(*^ω^)「…~!!」

一口また一口と、僕はどんどんと食べ進める。

14: 2011/03/21(月) 02:50:04 ID:3xB683.A0

(;^ω^)(あぁ~たまらん!これぞカレー!)バクバク

味こそ業務用のいかにもな食堂レトルトカレーだが、それが逆にいい。
どっちがメインか分からないほどに盛られたトンカツをルーに浸し、ライスと一緒に掻きこむだけで幸せ。

スプーンを滑らせ、皿の淵のルーまで掬い、かきこむ。

(;^ω^)(うんみゃあ~!)ハフハフサクサク

カツの分厚さを口全体でサックリと噛み締めるとたまらない安心感を覚える。

だいたい、家庭的な味は家庭で食うからいいんだ、こういう場所で食べるカレーは味にこだわりすぎても仕方がない。

正直うまい。汗がうっすら浮かぶ、熱気がこもる。


(;^ω^)ゴクゴク

たまらなく僕がコップの水をぐいと飲み干したとき、大変なことに気がついた。

15: 2011/03/21(月) 02:53:04 ID:3xB683.A0

( ^ω^)(あ…待てよ…?)

なんと、水が欲しいが、ピッチャーが見当たらない。
しまった!のどの渇きを潤せないのは氏活問題だ、僕はご飯を食べるときは絶対に飲み物がないとダメだ。
がぶがぶ浴びるように飲まないと、満足に食事もできないタイプなのだ。

さて、店員にコールするか?しかし……。

(;^ω^)(でも……、でも!)

お冷一杯の要求、これがなかなか辛いのだ。
店側の利益にならないようなものを頼むのはどうしても気が引ける、
だから僕はいつもはなるべくピッチャーやドリンクバーが置いてある店へ行くのだが…。

(;^ω^)(おちつけ、おちつくんだおブーン、お前はできる子!)
 _、_
( ,_ノ` )「…コップ失礼します」

どうしようか迷っていると、店主がピッチャーを持って僕のコップに水を入れてくれた。

助かった!そうか、そういうシステムだったのか!
安心してカレーを食べ進めた。

17: 2011/03/21(月) 03:02:07 ID:3xB683.A0

(;^ω^)フゥ!

米の一粒、ルーの一滴、すべてを喉に通したとき、残ったのは、
大きな満足感と店への感謝だった。

他の客が必氏に食べていた気持ちがよくわかった、
旨いものに向かう時は、だれもが皆真剣になるんだ。きっとそうだ。

ポケットから用意していた代金を手に取り、店主を呼ぶ。

( ^ω^)「会計お願いしますお」
 _、_
( ,_ノ` )「はい、600円です」

硬貨2枚を渡し、僕は立ち上がって出口へと向かった。
なるべくニヒルにかっこよく見えるように、歩き方に気をつけながら。

19: 2011/03/21(月) 03:07:46 ID:3xB683.A0

店の外は冷たい風が吹いていた、息をするとカレーの匂いが吐き出される。

軽く背筋を伸ばした後、僕は歩き出した。
腹にたまったカレーで少し重い気がする、歩幅まで狭まった気分だ。

( ^ω^)「でもいいお、カレーは美味しかったし」

( ^ω^)「♪たーらったらたーたーたー」

適当な鼻歌口ずさみ、幸せを脳に感じつつ、駅への道を歩き続けた。






第一話「カツカレーと空気」                 おわり

20: 2011/03/21(月) 03:11:38 ID:SNclD8ZU0
終わったの…か?

21: 2011/03/21(月) 03:14:54 ID:G.HQ3sWs0
終わったwwww

22: 2011/03/21(月) 03:15:05 ID:3xB683.A0

終わりです、支援をくださった方、ありがとうございました。
今後も以上のような食事短編を投下していきたいと思いますので
どうか生温かい目で見てやってください、それでは。

23: 2011/03/21(月) 04:19:43 ID:jwjJGKmkO
旨そうなカツカレーだ、都内では600円じゃ無理っぽい 
地方でも最低でも850円かな 
( ^ω^)はいい店見つけたな 
次はブーンに定食のご飯お代わりしほうだいを食べてほしい

27: 2011/03/24(木) 01:18:43 ID:A62hZqso0

お茶漬けは日本のソウルフードだという。概ね同意だ。


だが冷静に考えると、お茶漬けは決して優れた食べ物ではない。
汁ご飯というものは基本的に胃がもたれるし、大量だと飽きる、
朝食に出されたりしたらたまったもんじゃない。


しかし、それでもお茶漬けに言わんし難い魅力があるのも確かだ。






第二話「ただいまお茶漬け中」

28: 2011/03/24(木) 01:21:46 ID:A62hZqso0

工口サイト閲覧に勤しんでいた午前1時、空腹感に耐えかねた僕は
何か食べようと自部屋から転がりでた。

( ^ω^)「夕食からもう4時間たってるのか、そりゃ腹も減るお」

( ^ω^)「えーと、サッポロ一番は昼に食べてしまったし、ご飯なら炊けてるから…」


その時、お茶漬けのもとのストックがまだあったことを思い出した。

しょっちゅう小腹が空く僕は、ごはんに合うものを常に用意している。
大体はお茶漬け・ふりかけ(旅行の友)・鮭フレーク・味付きメンマなどなど。
こう言うのはあって困らないどころか本当に助かる、ぼっちの僕にとっては唯一の友だ。

今回は、そのお茶漬けのもとを使ってみることにした。

( ^ω^)「そうと決まればさっそくだお」

29: 2011/03/24(木) 01:25:00 ID:A62hZqso0

台所の棚からお茶漬けのもとを取り出す、もちろん永谷園。
松茸のお吸い物付きのお徳用パックだ。

小袋が連なった帯から一枚をぴりぴりを指で破り、封を開ける。

( ^ω^)スンスン

(*^ω^)「うーん…」

鼻を近づけると、お茶と梅干の香り。これだけでも白飯が行けそうだ。

子供の頃は梅茶漬けは酸っぱくて苦手だったのだが、近頃はもっぱらこれだ。
もはや普通の海苔茶漬は物足りなくてぜんぜん食べない。

最近はすっぱいのが急に好きになり、コンビニ弁当の梅干なんかもいつまでの口の中で転がしたりする。
もしかして、つわりが来たのかもしれない、童Oだけど。

30: 2011/03/24(木) 01:30:19 ID:A62hZqso0

( ^ω^)カパッ

炊飯ジャーを開け、どんぶり茶碗にご飯をよそう。

ご飯は、割合を少なめによそうのが茶漬けにおいてのポイントである。
茶碗の3・4割程度が埋まるほどでいいのだ、多くするとさらさら感が失われ、米も汁も台無しになる。
それじゃ少ない?茶碗を大きくすれば済むことだ。

( ^ω^)「ごはんはこれぐらいにして、と……」

よそったご飯をしゃもじで軽く叩き、山の形に整える。
この後どうせお茶で崩してしまうから意味ないだろ?、とも言い切れない。
気持ちよくお茶を注ぐには、こういうことが大事だ。

31: 2011/03/24(木) 01:35:31 ID:A62hZqso0

茶碗にお茶漬けのもとをふりかけ、最後にお茶を注ぐ。

ここが楽しい、お茶漬けという一大イベントでの大アトラクションだ。

あらかじめ淹れておいた急須をつかみ、
茶碗に向かって、お茶を豪快に注ぎこむ!

( ^ω^)サーッ

( ^ω^)コポコポコポ…

溢れんばかりに、なみなみと!お茶でご飯を陵辱してしまうのだ。
遠慮は要らない。これもおいしいお茶漬けのため。

( ^ω^)サッサッ

注ぎ終わると、箸をつかみ、茶碗を軽くかき混ぜてご飯を崩す。

32: 2011/03/24(木) 01:38:48 ID:A62hZqso0

こうしてついに出来上がったお茶漬け。
湯気の香りが食欲をかきたてる。

( ^ω^)「いただきます」

( ^ω^)ズズ…

箸を持ち、茶碗に口を付けると、音を立てて茶漬けを口に流し込む。

( ^ω^)「…うまい!」

熱々のお茶と梅の風味と米の食感、すべてが上手く合わさっている。
喉を通るたびに、温かな安心が体をめぐる、
となると、もうとまらない。

(;^ω^)ハフハフ、ズズッ!

茶碗をさらに傾け、箸をせわしなく動かし、どんどん食べ進める。

33: 2011/03/24(木) 01:42:11 ID:A62hZqso0

(;^ω^)ザザ、ハフ、ザブ

米の一粒を残さず平らげ、最後わずかに残るお茶の雫まで飲み干し完食。

(;^ω^)フーッ!

熱い息を吐き、鼻のてっぺんに描いた汗を拭う。

( ^ω^)「あーうまかった!」

一杯でこの満足感。まるで暖房に当たっているかのごとく体が熱をもっている。
手で風を仰ぎつつ、僕はもう一度息を吐いた。

35: 2011/03/24(木) 01:46:00 ID:A62hZqso0

( ^ω^)ズズ…

その後はもちろん、空の茶碗に緑茶を入れて、ゆっくりと飲む。
ここまでやってお茶漬けだ。


( ^ω^)「ああ、幸せだお…」

と、その時。僕はあることに気づいてしまった。





( ^ω^)「やべ、工口サイトつけっぱなしだったお」

幸福もそこそこにし、PCをシャットダウンするため部屋に戻る僕であった。

みんなも節電に協力しようNE!




第二話「ただいまお茶漬け中」                おわり

34: 2011/03/24(木) 01:45:45 ID:8eoHXcxEO
お茶漬けには熱湯じゃないのか……

36: 2011/03/24(木) 01:47:37 ID:A62hZqso0
おわりです

>>34
自分は緑茶入れるのが好きですね、
ちょっと苦味があるのがまたいいんです、まあそこは人それぞれってことで。

引用: ( ^ω^)お腹が空くブーン系のようです