159: 2014/05/27(火) 20:42:50.11 ID:eX+motNl0
前回:ζ*'ヮ')ζ『それでも俺はやってない』
最初:やよい「はいたーっち!」 P「えいっ」ふにっ
~一週間後・社長室~
社長「では今から、例の……高槻君の件についての経過報告をしようと思う。皆、いいかな?」
律子「はい」
小鳥「はい」
P「……はい」
P(……俺、一体どうなるんだろう……まさか、いきなり解雇とかはないよな……)
社長「……えーまず、先日の弁護士からの書面についてだが……」
律子「…………」
小鳥「…………」
P「…………」
社長「……私が何人かの知り合いの弁護士に話を聞いた結果、概ね同じような見解だった」
社長「今から、それを順を追って説明していくわけだが……まず一般論としては、大体次のように考えていいそうだ」
P「…………」ゴクリ
社長「……率直に言うと、『突っぱねて良し』と」
P「……えっ?」
律子「突っぱねる……ですか?」
社長「ああ。要するに、『貴殿の主張されるような事実は一切ありません。よって当方としては、1円たりともお支払いすることはできません』とな」
律子「えっ」
小鳥「そ……そんなこと、言ってしまって良いんですか?」
P「そ……そうですよ社長。だって支払わなかったら、訴訟起こされちゃうんじゃ……。(さらに俺の場合、刑事告訴までされるかもしれないんじゃ……)」
社長「うむ。つまりこれは『訴訟するならどうぞお好きに』ということになるな」
P「なっ……」
律子「え、で、でもそれじゃ本当に……」
社長「ああ。訴訟を起こされてしまうだろうね」
P「そ、そんな……」
社長「まあまあ、続きを聞きたまえ。ではなぜ、そこまで強気に言えるのかというと……端的に言って、証拠が無いからだ」
小鳥「……証拠……ですか」
P「…………」
161: 2014/05/27(火) 20:51:23.09 ID:eX+motNl0
社長「うむ。証拠といっても、ここでいう証拠とは客観的証拠……つまり、監視カメラの映像や録音テープといった類のものだ」
律子「あー……まあ確かに、そういうのはまず無いでしょうね。うちのビル、外や共有スペースにしかカメラ付いてませんし……」
小鳥「まさかやよいちゃんが事前にレコーダーを回していたとかも……まず考えられないですもんね」
P「…………」
社長「うむ、そういうことだ。要するに、訴訟となったら原告側……つまりこの場合の高槻君側が、その主張する事実……すなわち、彼からセクハラ被害を受けた、という事実を立証しなければならないことになるわけだが……」
律子「……やよいの方には、それを根拠づけるような証拠が無い。だから立証できない……ということですか」
社長「うむ。そういうことになるな」
小鳥「えっ、でも……少なくともやよいちゃん自身は、『胸を触られた』って証言できますよね? それって、一番有力な証拠になるんじゃないんですか?」
社長「……確かに、一般的にはそのように考えられがちだ。事実、お恥ずかしながら、私も今回、知り合いの弁護士に話を聞くまでは、そのように考えていたよ」
律子「ということは……実際は、そうじゃないってことですか?」
社長「ああ。実際の裁判で、何よりも重視されるのは客観的証拠……つまり、さっき言った監視カメラの映像や録音テープなど、らしい。逆に、こういった客観的証拠が何も無く、原告本人の証言くらいしかめぼしい証拠が無いようなケースでは……原告側の訴えが認められる可能性は、極めて低いらしいんだよ」
小鳥「へぇ、そういうものなんですか……」
社長「まあ、少し考えればわかることだが……人の発言、供述というのは、得てして信用性が低いものなのだよ。嘘をついているという可能性があることはもちろん、そうでなくても、勘違いや思い違いがあったり、また時間の経過に伴う記憶の変容、などということもありうる」
律子「確かに……」
社長「ゆえに、今回のようなケースだと……高槻君側が、その主張する事実を根拠づけるような客観的証拠を有している可能性は極めて低いといえるだろう。だから、『訴訟するならどうぞどうぞ』となるわけだ」
小鳥「なるほど……」
P「…………」
律子「あー……まあ確かに、そういうのはまず無いでしょうね。うちのビル、外や共有スペースにしかカメラ付いてませんし……」
小鳥「まさかやよいちゃんが事前にレコーダーを回していたとかも……まず考えられないですもんね」
P「…………」
社長「うむ、そういうことだ。要するに、訴訟となったら原告側……つまりこの場合の高槻君側が、その主張する事実……すなわち、彼からセクハラ被害を受けた、という事実を立証しなければならないことになるわけだが……」
律子「……やよいの方には、それを根拠づけるような証拠が無い。だから立証できない……ということですか」
社長「うむ。そういうことになるな」
小鳥「えっ、でも……少なくともやよいちゃん自身は、『胸を触られた』って証言できますよね? それって、一番有力な証拠になるんじゃないんですか?」
社長「……確かに、一般的にはそのように考えられがちだ。事実、お恥ずかしながら、私も今回、知り合いの弁護士に話を聞くまでは、そのように考えていたよ」
律子「ということは……実際は、そうじゃないってことですか?」
社長「ああ。実際の裁判で、何よりも重視されるのは客観的証拠……つまり、さっき言った監視カメラの映像や録音テープなど、らしい。逆に、こういった客観的証拠が何も無く、原告本人の証言くらいしかめぼしい証拠が無いようなケースでは……原告側の訴えが認められる可能性は、極めて低いらしいんだよ」
小鳥「へぇ、そういうものなんですか……」
社長「まあ、少し考えればわかることだが……人の発言、供述というのは、得てして信用性が低いものなのだよ。嘘をついているという可能性があることはもちろん、そうでなくても、勘違いや思い違いがあったり、また時間の経過に伴う記憶の変容、などということもありうる」
律子「確かに……」
社長「ゆえに、今回のようなケースだと……高槻君側が、その主張する事実を根拠づけるような客観的証拠を有している可能性は極めて低いといえるだろう。だから、『訴訟するならどうぞどうぞ』となるわけだ」
小鳥「なるほど……」
P「…………」
166: 2014/05/27(火) 21:34:23.41 ID:eX+motNl0
律子「あ、でも待って下さいよ社長」
社長「ん?」
律子「事務所に対する訴訟提起とは別に、プロデューサー個人は刑事告訴されてしまう可能性もありますよ」
P「!」
小鳥「あ、そういえば、弁護士さんからの書面に書いてありましたね……」
P「…………。(そ、そうだよ……もしそれされたら、お、俺は……)」
社長「ああ、もちろんその点についても聞いてみたよ。しかしまあ、これについても、概ね民事訴訟の場合と同様に考えていいそうだ」
律子「……ってことは、『告訴するならどうぞどうぞ』……ですか?」
社長「うむ。結局はこの場合も、告訴した本人……つまり高槻君自身の証言くらいしか証拠が無い、ということになるからね。それでも、こちらがセクハラの事実を認めていたりすればまた別だが……仮に、全面否認という姿勢を貫くのであれば、告訴した側の証言だけで、逮捕されたり起訴されたりすることはまずないのではないか、とのことだよ」
P「そ、そうなんですか……」
小鳥「あ、でも、電車の痴漢事件とかだと……よく、被害に遭った女性の証言だけで有罪になったりしてません?」
社長「うむ、そういう刑事裁判の実態は確かにある。だからこそ、冤罪も多く起こっているわけだが……」
P「えっ……」
社長「ただまあ、電車内の痴漢の場合は、事件発生直後に取り押さえられたりしているケースがほとんどだろう。要するに現行犯だな。こういう場合だと、そもそもその場で取り押さえられている、という事実自体が有力な証拠になるといえるわけだ。また、被疑者自身が最初から自白していることも多い」
律子「社長……なんかまるで弁護士みたいですね」
社長「いやなに、全部受け売りだよ」
小鳥「……えっと、じゃあ今回のやよいちゃんのケースは、そういう電車内での痴漢事件とかとは違うっていう風に考えていいんですか?」
社長「うむ。今回の場合、例えば、高槻君が、彼に身体を触られた直後にその場を逃げ出していたとか、あるいはその日のうちに誰かに被害を訴えていたとか……そういう事実があればともかく、現実には、高槻君としては、そのような行為は一切していないからね。むしろ、翌日以降も普通に出勤して、彼ともほぼ普段通りに接していた」
律子「……となると、ここでもやはり、やよいの主張を裏付けるような証拠は、やよい本人の証言以外に無い、ということになるわけですか」
社長「うむ、そういうことだ。だから仮に告訴されても……まあそもそも、警察が告訴届を受理しないという場合もあるようだが……仮に受理されたとしても、せいぜい1~2回取り調べに呼ばれる程度で、そこで明確に容疑を否認しておけば、おそらく嫌疑不十分か証拠不十分で不起訴になるだろう……ということだよ」
P「……えっと、じゃあ仮に俺が告訴されても、逮捕されたりとかもしないんですかね……?」
社長「うむ。この類の事案で、身元や住所さえはっきりしていれば、逃亡したりするおそれもまず無いと考えられるから、基本的には、在宅のまま、任意で取り調べを受ける形になるだろう、とのことだ。ただ、正当な理由もなく取り調べに応じなかったりしたら、そのことを理由に逮捕されてしまったりすることはあるらしい」
P「えっ!」
社長「いやなに、そういうこともある、という程度の話だ。基本的には、そこまでの心配はしなくてもいい」
P「そ、そうですか……」
社長「ん?」
律子「事務所に対する訴訟提起とは別に、プロデューサー個人は刑事告訴されてしまう可能性もありますよ」
P「!」
小鳥「あ、そういえば、弁護士さんからの書面に書いてありましたね……」
P「…………。(そ、そうだよ……もしそれされたら、お、俺は……)」
社長「ああ、もちろんその点についても聞いてみたよ。しかしまあ、これについても、概ね民事訴訟の場合と同様に考えていいそうだ」
律子「……ってことは、『告訴するならどうぞどうぞ』……ですか?」
社長「うむ。結局はこの場合も、告訴した本人……つまり高槻君自身の証言くらいしか証拠が無い、ということになるからね。それでも、こちらがセクハラの事実を認めていたりすればまた別だが……仮に、全面否認という姿勢を貫くのであれば、告訴した側の証言だけで、逮捕されたり起訴されたりすることはまずないのではないか、とのことだよ」
P「そ、そうなんですか……」
小鳥「あ、でも、電車の痴漢事件とかだと……よく、被害に遭った女性の証言だけで有罪になったりしてません?」
社長「うむ、そういう刑事裁判の実態は確かにある。だからこそ、冤罪も多く起こっているわけだが……」
P「えっ……」
社長「ただまあ、電車内の痴漢の場合は、事件発生直後に取り押さえられたりしているケースがほとんどだろう。要するに現行犯だな。こういう場合だと、そもそもその場で取り押さえられている、という事実自体が有力な証拠になるといえるわけだ。また、被疑者自身が最初から自白していることも多い」
律子「社長……なんかまるで弁護士みたいですね」
社長「いやなに、全部受け売りだよ」
小鳥「……えっと、じゃあ今回のやよいちゃんのケースは、そういう電車内での痴漢事件とかとは違うっていう風に考えていいんですか?」
社長「うむ。今回の場合、例えば、高槻君が、彼に身体を触られた直後にその場を逃げ出していたとか、あるいはその日のうちに誰かに被害を訴えていたとか……そういう事実があればともかく、現実には、高槻君としては、そのような行為は一切していないからね。むしろ、翌日以降も普通に出勤して、彼ともほぼ普段通りに接していた」
律子「……となると、ここでもやはり、やよいの主張を裏付けるような証拠は、やよい本人の証言以外に無い、ということになるわけですか」
社長「うむ、そういうことだ。だから仮に告訴されても……まあそもそも、警察が告訴届を受理しないという場合もあるようだが……仮に受理されたとしても、せいぜい1~2回取り調べに呼ばれる程度で、そこで明確に容疑を否認しておけば、おそらく嫌疑不十分か証拠不十分で不起訴になるだろう……ということだよ」
P「……えっと、じゃあ仮に俺が告訴されても、逮捕されたりとかもしないんですかね……?」
社長「うむ。この類の事案で、身元や住所さえはっきりしていれば、逃亡したりするおそれもまず無いと考えられるから、基本的には、在宅のまま、任意で取り調べを受ける形になるだろう、とのことだ。ただ、正当な理由もなく取り調べに応じなかったりしたら、そのことを理由に逮捕されてしまったりすることはあるらしい」
P「えっ!」
社長「いやなに、そういうこともある、という程度の話だ。基本的には、そこまでの心配はしなくてもいい」
P「そ、そうですか……」
167: 2014/05/27(火) 22:33:22.59 ID:eX+motNl0
律子「ええと……じゃあこちら側としては、『訴訟も告訴もどうぞぞうぞ』というスタンスで、向こうの要求には一切応じない……という回答を行うわけですか? 社長」
社長「いやいや、最初に言ったように、今言ったのはあくまでも一般論だ。通常、この類の請求を受けた場合には、そのような対応をするのが一般的である、ということを述べたに過ぎんよ」
小鳥「? と、いうと……?」
P「…………?」
社長「つまり、果たして我が社の場合も……『本当にそれでいいのか』を、十分に吟味しなければならない、ということだよ」
律子「『本当にそれでいいのか』……ですか?」
社長「うむ。例えば律子君。我々が今言ったような対応をした場合、実際に、高槻君側から訴訟が起こされたらどうなると思う?」
律子「……えっと、今の話を前提にすると……やよいの方は、やよい自身の証言以外にめぼしい証拠が無いから、請求としては認められない可能性が高い……ってことですよね」
社長「うむ。つまり、うちが勝訴する可能性が高い、ということだな」
小鳥「? 別に、勝訴するなら問題無いんじゃ……?」
社長「……よく考えてみてくれたまえ。この訴訟が現実に起こった場合のことを。訴訟の原告は高槻やよい君、我が事務所に所属していた、世間でも高い人気を誇るアイドルだった少女だ。そしてその訴えの内容は……担当プロデューサーからのセクハラ被害だ」
小鳥「あっ……」
P「…………!」
律子「そうか……もしこれが、マスコミにでも嗅ぎ付けられたら……」
社長「そういうことだ。それに嗅ぎ付かれる以前に、訴訟提起の段階で、原告代理人の弁護士自らが、マスコミに対し訴訟提起の事実を発表する……十分、ありえることではないかね?」
小鳥「そ、そんなことされたら、うちは……うちのイメージは……」
社長「うむ。一気に失墜するだろうね。そして当然、他のアイドル諸君の活動にも多大なる影響が出るだろう」
P「…………!」
律子「で、でも最終的に裁判で勝てば……」
社長「うむ。確かにそれで、ある程度の信用回復は図れるだろう。しかし、訴訟の判決が出るのはずっと先だ。控訴、あるいは上告までされたら、判決が確定するのは何年後になるか分からん。そのときまでに、一体我が社にどれほどまでの損害が生じているか……」
小鳥「…………」
P「…………」
社長「またそもそも、裁判にしたって100%勝てる保証などない。あくまでも、『勝てる可能性が高い』というに過ぎん。裁判で徹底して争った上に敗訴までしたら……もう、我が社が世間からの信頼を回復することなど不可能だ」
律子「……要するに、訴訟を起こされた場合、想定されるリスクがあまりにも高過ぎるってことですね……」
社長「うむ。そういうことだな」
P「…………」
小鳥「……それに、やよいちゃんから裁判を起こされてるなんて知ったら、うちの子たちは……」
社長「ああ。彼女たちの精神状態にも大きな影響が出るだろう。そしてそのような状態で、今まさにセクハラの嫌疑を掛けられているプロデューサーの彼と――……果たして、それまでと同じような信頼関係を維持できるかどうか……という問題もある」
P「…………!」
律子「確かに……皆にとっては……もちろん、私たちにとってもですけど……やよいもプロデューサーも、どっちも大切な仲間ですからね……」
小鳥「……その二人が、法廷の場で相争うなんて事態になったら……皆、とても……平静な状態でお仕事なんて続けられないと思うわ」
P「……………」
社長「……とまあ、そういうことだ。結論から言うと、訴訟になった場合、訴訟自体はうちが勝つ可能性の方が高い。しかし――……その代償として、あまりにも多くのものを失ってしまう可能性がある」
律子「……単純な経済的損失だけでも、現在、やよい側から請求されている金額を軽く超えるでしょうしね……」
社長「……そのうえ、世間からの信頼の失墜、アイドル活動継続への影響、アイドル諸君らの精神状態の乱れなど……無形の損害も甚大になることが予想される」
小鳥「……ということは、うちとしては……」
社長「うむ。訴訟提起の回避を最優先とし、ある程度の線で……金銭的解決を図るのがベストだと考える」
律子「確かに……その方がいいでしょうね。それに、この紛争自体の早期解決にもなりますし……」
小鳥「訴訟にさえならなければ……このこと自体、他の子たちには知られずに済みますしね」
P「…………」
社長「いやいや、最初に言ったように、今言ったのはあくまでも一般論だ。通常、この類の請求を受けた場合には、そのような対応をするのが一般的である、ということを述べたに過ぎんよ」
小鳥「? と、いうと……?」
P「…………?」
社長「つまり、果たして我が社の場合も……『本当にそれでいいのか』を、十分に吟味しなければならない、ということだよ」
律子「『本当にそれでいいのか』……ですか?」
社長「うむ。例えば律子君。我々が今言ったような対応をした場合、実際に、高槻君側から訴訟が起こされたらどうなると思う?」
律子「……えっと、今の話を前提にすると……やよいの方は、やよい自身の証言以外にめぼしい証拠が無いから、請求としては認められない可能性が高い……ってことですよね」
社長「うむ。つまり、うちが勝訴する可能性が高い、ということだな」
小鳥「? 別に、勝訴するなら問題無いんじゃ……?」
社長「……よく考えてみてくれたまえ。この訴訟が現実に起こった場合のことを。訴訟の原告は高槻やよい君、我が事務所に所属していた、世間でも高い人気を誇るアイドルだった少女だ。そしてその訴えの内容は……担当プロデューサーからのセクハラ被害だ」
小鳥「あっ……」
P「…………!」
律子「そうか……もしこれが、マスコミにでも嗅ぎ付けられたら……」
社長「そういうことだ。それに嗅ぎ付かれる以前に、訴訟提起の段階で、原告代理人の弁護士自らが、マスコミに対し訴訟提起の事実を発表する……十分、ありえることではないかね?」
小鳥「そ、そんなことされたら、うちは……うちのイメージは……」
社長「うむ。一気に失墜するだろうね。そして当然、他のアイドル諸君の活動にも多大なる影響が出るだろう」
P「…………!」
律子「で、でも最終的に裁判で勝てば……」
社長「うむ。確かにそれで、ある程度の信用回復は図れるだろう。しかし、訴訟の判決が出るのはずっと先だ。控訴、あるいは上告までされたら、判決が確定するのは何年後になるか分からん。そのときまでに、一体我が社にどれほどまでの損害が生じているか……」
小鳥「…………」
P「…………」
社長「またそもそも、裁判にしたって100%勝てる保証などない。あくまでも、『勝てる可能性が高い』というに過ぎん。裁判で徹底して争った上に敗訴までしたら……もう、我が社が世間からの信頼を回復することなど不可能だ」
律子「……要するに、訴訟を起こされた場合、想定されるリスクがあまりにも高過ぎるってことですね……」
社長「うむ。そういうことだな」
P「…………」
小鳥「……それに、やよいちゃんから裁判を起こされてるなんて知ったら、うちの子たちは……」
社長「ああ。彼女たちの精神状態にも大きな影響が出るだろう。そしてそのような状態で、今まさにセクハラの嫌疑を掛けられているプロデューサーの彼と――……果たして、それまでと同じような信頼関係を維持できるかどうか……という問題もある」
P「…………!」
律子「確かに……皆にとっては……もちろん、私たちにとってもですけど……やよいもプロデューサーも、どっちも大切な仲間ですからね……」
小鳥「……その二人が、法廷の場で相争うなんて事態になったら……皆、とても……平静な状態でお仕事なんて続けられないと思うわ」
P「……………」
社長「……とまあ、そういうことだ。結論から言うと、訴訟になった場合、訴訟自体はうちが勝つ可能性の方が高い。しかし――……その代償として、あまりにも多くのものを失ってしまう可能性がある」
律子「……単純な経済的損失だけでも、現在、やよい側から請求されている金額を軽く超えるでしょうしね……」
社長「……そのうえ、世間からの信頼の失墜、アイドル活動継続への影響、アイドル諸君らの精神状態の乱れなど……無形の損害も甚大になることが予想される」
小鳥「……ということは、うちとしては……」
社長「うむ。訴訟提起の回避を最優先とし、ある程度の線で……金銭的解決を図るのがベストだと考える」
律子「確かに……その方がいいでしょうね。それに、この紛争自体の早期解決にもなりますし……」
小鳥「訴訟にさえならなければ……このこと自体、他の子たちには知られずに済みますしね」
P「…………」
170: 2014/05/27(火) 23:40:03.83 ID:eX+motNl0
小鳥「それで……実際、どれくらいの線で折り合いをつけるつもりなんです? 社長」
社長「うむ。それについても聞いたみたがね。まあ先に言ったように、請求してきた側にこれといって有力な証拠が無さそうな場合は、そもそも一切支払わない、と応対するのが普通だそうだ」
P「…………」
社長「しかしそうはいっても、実際に訴訟となると色々と大変ではある。時間も労力も費用もかかるからね」
律子「それはまあ……そうでしょうね」
社長「そこで……あくまで紛争の早期解決、という目的で、こういったセクハラ事案で訴訟前に和解する場合……大体10~30万円程度が相場だそうだ」
小鳥「えっ! そんなに低いんですか」
社長「まあもちろんこれは、証拠が弱く、訴訟提起しても勝つ見込みが薄い事案の話だがね。要するに、訴える側としても、訴訟提起までしたのに結局1円ももらえない、なんてことになるくらいなら、和解して少しでももらった方が得だからだ」
律子「それはまあ……そうでしょうね。コストも低く抑えられるわけですし」
社長「うむ。だが今回のうちの場合は、あくまでも訴訟回避が最優先だ。そのためには、あまりに低い金額を提示してしまうのはリスクが高い。向こうに『そんな金額では到底応じられません。速やかに訴訟提起いたします』などと言われてしまっては、元も子もないからね」
小鳥「ふむ……なるほど」
社長「ただ、だからといって、流石に向こうの請求金額である600万円全額を支払うというわけにもいかん。そもそも彼の認識では、『お腹を触った』に過ぎないわけだからね」
P「…………」
律子「確かに……まあ無いと思いますが、もし後にこの件が外部に漏れて、『765プロが、元所属アイドルのセクハラ被害の賠償で600万円全額支払った……』なんてスクープでもされたら厄介ですしね」
小鳥「その時点で、会社として全部認めてるように思われそうですもんね……」
社長「うむ。なので私としては……まあ向こうの請求金額の半分、300万円程度で和解できたらいいのではないか、と考えている」
律子「300万……それでも、さっきの一般的な場合の10倍ですね」
社長「リスク回避のためだ。和解というのは、双方が合意しないと成立しないからね。いくら一般的な相場がどうだといったところで、600万円請求している相手に30万そこらで納得しろというのも無理な話だろう」
小鳥「そうですね……まあ幸いにも、今は事務所にもある程度資金的な余裕もありますから、そのくらいなら……」
社長「うむ。ただそれはあくまで最終的に想定すべきラインだ。最初からその額を提示してしまうと、合意ラインは必然的にそれより上がってしまう」
律子「というと、最初はそれより下げて……?」
社長「ああ。とりあえず最初は200万円で提示してみようと思う。このあたりなら、『話にならない。即訴訟』とはならないラインであろうし、かつこちらの最終想定ラインまでは十分余裕がある」
小鳥「なるほど……」
社長「よし、では一応、そういう方向で話を進めてみようと思うが……君は、どう思うかね?」
P「……え?」
社長「いや、元々は君が当事者なわけだからね。今の案でいいかどうか……君にも、意見を述べてもらいたいんだが」
P「あ、そ、そうですね……良いと、思います」
社長「うむ。では、これで提示をしてみるとしよう」
律子「あ。それと社長」
社長「ん? 何かね?」
律子「えっと、金額の方は分かったんですが、肝心の、プロデューサーがやよいにしたとされる行為の点については、どのように回答するんですか? ……今の社長の話を前提にすると、当然、そのまま認めるというわけではないんだと思いますが……」
社長「ああ、それについては、まあ、彼の認識、記憶を前提にしても、高槻君に誤解を与えかねないような行為をしてしまった、ということ自体は事実だからね。だから、その点については率直に非を認めたうえで、速やかな紛争解決のために一定額をお支払いしたい……という風に、伝えるつもりだ」
律子「なるほど……」
小鳥「まあ確かに、プロデューサーさんの認識としても、お腹には触ってるわけですしね……」
社長「……君も、それでいいかね?」
P「えっ、あっ、はい。大丈夫です」
社長「うむ。それについても聞いたみたがね。まあ先に言ったように、請求してきた側にこれといって有力な証拠が無さそうな場合は、そもそも一切支払わない、と応対するのが普通だそうだ」
P「…………」
社長「しかしそうはいっても、実際に訴訟となると色々と大変ではある。時間も労力も費用もかかるからね」
律子「それはまあ……そうでしょうね」
社長「そこで……あくまで紛争の早期解決、という目的で、こういったセクハラ事案で訴訟前に和解する場合……大体10~30万円程度が相場だそうだ」
小鳥「えっ! そんなに低いんですか」
社長「まあもちろんこれは、証拠が弱く、訴訟提起しても勝つ見込みが薄い事案の話だがね。要するに、訴える側としても、訴訟提起までしたのに結局1円ももらえない、なんてことになるくらいなら、和解して少しでももらった方が得だからだ」
律子「それはまあ……そうでしょうね。コストも低く抑えられるわけですし」
社長「うむ。だが今回のうちの場合は、あくまでも訴訟回避が最優先だ。そのためには、あまりに低い金額を提示してしまうのはリスクが高い。向こうに『そんな金額では到底応じられません。速やかに訴訟提起いたします』などと言われてしまっては、元も子もないからね」
小鳥「ふむ……なるほど」
社長「ただ、だからといって、流石に向こうの請求金額である600万円全額を支払うというわけにもいかん。そもそも彼の認識では、『お腹を触った』に過ぎないわけだからね」
P「…………」
律子「確かに……まあ無いと思いますが、もし後にこの件が外部に漏れて、『765プロが、元所属アイドルのセクハラ被害の賠償で600万円全額支払った……』なんてスクープでもされたら厄介ですしね」
小鳥「その時点で、会社として全部認めてるように思われそうですもんね……」
社長「うむ。なので私としては……まあ向こうの請求金額の半分、300万円程度で和解できたらいいのではないか、と考えている」
律子「300万……それでも、さっきの一般的な場合の10倍ですね」
社長「リスク回避のためだ。和解というのは、双方が合意しないと成立しないからね。いくら一般的な相場がどうだといったところで、600万円請求している相手に30万そこらで納得しろというのも無理な話だろう」
小鳥「そうですね……まあ幸いにも、今は事務所にもある程度資金的な余裕もありますから、そのくらいなら……」
社長「うむ。ただそれはあくまで最終的に想定すべきラインだ。最初からその額を提示してしまうと、合意ラインは必然的にそれより上がってしまう」
律子「というと、最初はそれより下げて……?」
社長「ああ。とりあえず最初は200万円で提示してみようと思う。このあたりなら、『話にならない。即訴訟』とはならないラインであろうし、かつこちらの最終想定ラインまでは十分余裕がある」
小鳥「なるほど……」
社長「よし、では一応、そういう方向で話を進めてみようと思うが……君は、どう思うかね?」
P「……え?」
社長「いや、元々は君が当事者なわけだからね。今の案でいいかどうか……君にも、意見を述べてもらいたいんだが」
P「あ、そ、そうですね……良いと、思います」
社長「うむ。では、これで提示をしてみるとしよう」
律子「あ。それと社長」
社長「ん? 何かね?」
律子「えっと、金額の方は分かったんですが、肝心の、プロデューサーがやよいにしたとされる行為の点については、どのように回答するんですか? ……今の社長の話を前提にすると、当然、そのまま認めるというわけではないんだと思いますが……」
社長「ああ、それについては、まあ、彼の認識、記憶を前提にしても、高槻君に誤解を与えかねないような行為をしてしまった、ということ自体は事実だからね。だから、その点については率直に非を認めたうえで、速やかな紛争解決のために一定額をお支払いしたい……という風に、伝えるつもりだ」
律子「なるほど……」
小鳥「まあ確かに、プロデューサーさんの認識としても、お腹には触ってるわけですしね……」
社長「……君も、それでいいかね?」
P「えっ、あっ、はい。大丈夫です」
173: 2014/05/28(水) 00:12:45.50 ID:cbNkMG800
社長「うむ。後は今の内容を書面にまとめて、向こうの弁護士へ送るとしよう。ではこの件については、今日のところはこのへんで。皆、通常業務に戻ってくれたまえ」
律子「はい」
小鳥「はい」
バタン
P「あっ……あ、あの、社長」
社長「ん? 何かね? 君も早く業務に……」
P「あ、えっと、いや、その……」
社長「?」
P「お、俺は……このままでいいんでしょうか?」
社長「え?」
P「あ、いや、その、なんというか……この問題って、真実はどうあれ、俺がやよいにしたことに原因があるのは間違いないですよね? なのにその、俺には何もお咎めとか、その、責任とか……」
社長「……何を言っとるんだ」
P「え?」
社長「君は、ふとした悪ふざけで、高槻君のお腹を突っついただけなんだろう?」
P「え? ええ……まあ」
社長「そりゃあまあ確かに、高槻君はお年頃の女の子だ。君のその行為が、軽率なものだったことは否めない」
P「…………」
社長「しかし君は、少なくともそれまでに、その程度の悪ふざけなら許されると思えるほどには――……高槻君との信頼関係を、築けていたのではないのかね?」
P「……それは……」
社長「まあ、結果的にこういうことになってしまったことは非常に残念だが……それでも私は、君の事を信じているし、高槻君にしたって、君を陥れるようなことをするはずがないと思っている」
P「…………」
社長「だからこれはきっと、誰のせいでもない、ただ何かのタイミングが悪かっただけの……事故のようなものだと思うんだよ」
P「……社長……」
社長「だから私は、この件で君に何らかの処分を下すことなどは一切考えていない。高槻君への賠償金も、たとえ、600万円全額を支払うことになったとしても、全て会社の方で負担する。君が不安になることは何も無い」
P「…………」
社長「まあ、私に報告すべき事項を失念していたこと、そして私に嘘をついていたことについては……この場を借りて、厳重注意とさせてもらうがね」
P「! すっ、すみません! 社長!」
社長「はっはっは。まあ私から君に言えるのはそのくらいだ。後はこれまで通り、残ったアイドル諸君のプロデュース業に専念してくれればいい。また君にとっても、そうすることが、最も会社に報いることとなるだろう」
P「はっ……はい!」
社長「うむ。分かったらもう戻りたまえ。何、心配は要らん。社員の尻拭いは、社長の仕事だからな。はっはっは」
P「あ……ありがとうございます!」
律子「はい」
小鳥「はい」
バタン
P「あっ……あ、あの、社長」
社長「ん? 何かね? 君も早く業務に……」
P「あ、えっと、いや、その……」
社長「?」
P「お、俺は……このままでいいんでしょうか?」
社長「え?」
P「あ、いや、その、なんというか……この問題って、真実はどうあれ、俺がやよいにしたことに原因があるのは間違いないですよね? なのにその、俺には何もお咎めとか、その、責任とか……」
社長「……何を言っとるんだ」
P「え?」
社長「君は、ふとした悪ふざけで、高槻君のお腹を突っついただけなんだろう?」
P「え? ええ……まあ」
社長「そりゃあまあ確かに、高槻君はお年頃の女の子だ。君のその行為が、軽率なものだったことは否めない」
P「…………」
社長「しかし君は、少なくともそれまでに、その程度の悪ふざけなら許されると思えるほどには――……高槻君との信頼関係を、築けていたのではないのかね?」
P「……それは……」
社長「まあ、結果的にこういうことになってしまったことは非常に残念だが……それでも私は、君の事を信じているし、高槻君にしたって、君を陥れるようなことをするはずがないと思っている」
P「…………」
社長「だからこれはきっと、誰のせいでもない、ただ何かのタイミングが悪かっただけの……事故のようなものだと思うんだよ」
P「……社長……」
社長「だから私は、この件で君に何らかの処分を下すことなどは一切考えていない。高槻君への賠償金も、たとえ、600万円全額を支払うことになったとしても、全て会社の方で負担する。君が不安になることは何も無い」
P「…………」
社長「まあ、私に報告すべき事項を失念していたこと、そして私に嘘をついていたことについては……この場を借りて、厳重注意とさせてもらうがね」
P「! すっ、すみません! 社長!」
社長「はっはっは。まあ私から君に言えるのはそのくらいだ。後はこれまで通り、残ったアイドル諸君のプロデュース業に専念してくれればいい。また君にとっても、そうすることが、最も会社に報いることとなるだろう」
P「はっ……はい!」
社長「うむ。分かったらもう戻りたまえ。何、心配は要らん。社員の尻拭いは、社長の仕事だからな。はっはっは」
P「あ……ありがとうございます!」
179: 2014/05/28(水) 00:40:48.14 ID:cbNkMG800
~同日・TV局スタジオ内~
P(社長の計らいで、とりあえず首の皮一枚つながったな……)
P(実際、マジで一発解雇もありえるんじゃないかと思ってたからな……)
P(まあでもこれで、少なくとも当面は大丈夫か……)
P(いやでも結局、最終的に和解交渉が決裂して、訴訟提起でもされたりしたら……)
P(いや……訴訟ならまだましか。それより何より一番まずいのは、刑事告訴……)
P(社長の話だと、仮に告訴されても逮捕とかまではされないだろうってことだけど……実際どうなんだろう……)
P(…………)
P(……い、いやでも俺は、そもそも逮捕されるようなこと自体やってない……はず……だし……)
P(そ、そうだよ……。それにさっき、社長も言ってたじゃないか。俺はやよいのお腹を触っただけだって。ただの悪ふざけだったんだって)
P(……うん。それに、確かに今思えば、やよいの身体に触った時の感触も、なんとなくお腹っぽかったような気がするしな)
P(まあ、それ自体がセクハラだって言われたらしょうがないけど……)
美希「……プロデューサー?」
P「うおぉう! み、美希!? な、なんだいきなり?」
美希「なんだって……ミキ、今お仕事終わったんだけど」
P「え……?」
美希「……見てなかったの……?」
P「あ、あー! 見てた見てた! うん、ものすごく見てたよ! 流石美希! もう最高! アハハ……」
美希「…………」ジトー
P(……やばい。めっちゃ怒ってる……)
美希「……まあ、いいの」
P「え?」
美希「……あとでイチゴババロア奢ってくれたら、許してあげるの」
P「わ、わかった……。(相手が美希で、まだ助かったかな……)」
美希「なんか言った?」
P「い、いや何も」
美希「じゃあ早く戻ろ! ミキもうお腹ぺこぺこ!」
P「おう、じゃあ早いとこ駐車場に……」
美希「? 何?」
P「……なんでもない。ほら、早く行くぞ」
美希「あー! 待ってなのー! 歩くの早いよー! プロデューサー!」
P(社長の計らいで、とりあえず首の皮一枚つながったな……)
P(実際、マジで一発解雇もありえるんじゃないかと思ってたからな……)
P(まあでもこれで、少なくとも当面は大丈夫か……)
P(いやでも結局、最終的に和解交渉が決裂して、訴訟提起でもされたりしたら……)
P(いや……訴訟ならまだましか。それより何より一番まずいのは、刑事告訴……)
P(社長の話だと、仮に告訴されても逮捕とかまではされないだろうってことだけど……実際どうなんだろう……)
P(…………)
P(……い、いやでも俺は、そもそも逮捕されるようなこと自体やってない……はず……だし……)
P(そ、そうだよ……。それにさっき、社長も言ってたじゃないか。俺はやよいのお腹を触っただけだって。ただの悪ふざけだったんだって)
P(……うん。それに、確かに今思えば、やよいの身体に触った時の感触も、なんとなくお腹っぽかったような気がするしな)
P(まあ、それ自体がセクハラだって言われたらしょうがないけど……)
美希「……プロデューサー?」
P「うおぉう! み、美希!? な、なんだいきなり?」
美希「なんだって……ミキ、今お仕事終わったんだけど」
P「え……?」
美希「……見てなかったの……?」
P「あ、あー! 見てた見てた! うん、ものすごく見てたよ! 流石美希! もう最高! アハハ……」
美希「…………」ジトー
P(……やばい。めっちゃ怒ってる……)
美希「……まあ、いいの」
P「え?」
美希「……あとでイチゴババロア奢ってくれたら、許してあげるの」
P「わ、わかった……。(相手が美希で、まだ助かったかな……)」
美希「なんか言った?」
P「い、いや何も」
美希「じゃあ早く戻ろ! ミキもうお腹ぺこぺこ!」
P「おう、じゃあ早いとこ駐車場に……」
美希「? 何?」
P「……なんでもない。ほら、早く行くぞ」
美希「あー! 待ってなのー! 歩くの早いよー! プロデューサー!」
181: 2014/05/28(水) 01:02:45.26 ID:cbNkMG800
~車内(信号待ち中)~
P「…………」
美希「? 何? ミキのこと、じーっと見て」
P「いや……美希は助手席に乗るんだな、って思って」
美希「? 何で? ダメだったの? でも、いつも乗ってるよね?」
P「……ああ、全然ダメじゃないよ。むしろ、そこに乗ってくれて嬉しい」
美希「? ふーん? あっ、もしかして、ミキみたいなかわいい子が助手席に乗ってたら、彼女みたいに見られるから?」
P「ああ、そうだな」
美希「…………」
P「…………」
美希「…………」
P「……あ、青」
ブロロ……
P「…………」
美希「……プロデューサー、なんかあったの?」
P「えっ」
美希「…………」
P「別に……何も」
美希「……やよいのこと?」
P「…………」
美希「…………」
P「……あのな、美希。その、やよいのことは……」
美希「わかってる。ミキ、聞かないよ」
P「…………」
美希「小鳥と、律子……さんから、すごく言われたし。それにミキだって、人に話したくないことの一つや二つ、あるしね」
P「……そうか」
美希「……それに、『約束』もしたし」
P「……約束?」
美希「あ、ううん。なんでもないの。……こっちのハナシ」
P「……そうか」
美希「…………」
P「……なあ、美希」
美希「? 何?」
P「……美希は、さ。自分に嘘をついたことって……あるか?」
美希「? ……自分に、嘘……?」
P「……ああ。なんていうか、本当はそうじゃないって、心の奥ではわかってるのに、それを認めたくなくて……無理やりそうだって、自分に言い聞かせるような感じ……というか」
美希「……うーん……」
P「……なんて、ちょっと分かりにくかったかな」
美希「……あるよ?」
P「…………」
美希「? 何? ミキのこと、じーっと見て」
P「いや……美希は助手席に乗るんだな、って思って」
美希「? 何で? ダメだったの? でも、いつも乗ってるよね?」
P「……ああ、全然ダメじゃないよ。むしろ、そこに乗ってくれて嬉しい」
美希「? ふーん? あっ、もしかして、ミキみたいなかわいい子が助手席に乗ってたら、彼女みたいに見られるから?」
P「ああ、そうだな」
美希「…………」
P「…………」
美希「…………」
P「……あ、青」
ブロロ……
P「…………」
美希「……プロデューサー、なんかあったの?」
P「えっ」
美希「…………」
P「別に……何も」
美希「……やよいのこと?」
P「…………」
美希「…………」
P「……あのな、美希。その、やよいのことは……」
美希「わかってる。ミキ、聞かないよ」
P「…………」
美希「小鳥と、律子……さんから、すごく言われたし。それにミキだって、人に話したくないことの一つや二つ、あるしね」
P「……そうか」
美希「……それに、『約束』もしたし」
P「……約束?」
美希「あ、ううん。なんでもないの。……こっちのハナシ」
P「……そうか」
美希「…………」
P「……なあ、美希」
美希「? 何?」
P「……美希は、さ。自分に嘘をついたことって……あるか?」
美希「? ……自分に、嘘……?」
P「……ああ。なんていうか、本当はそうじゃないって、心の奥ではわかってるのに、それを認めたくなくて……無理やりそうだって、自分に言い聞かせるような感じ……というか」
美希「……うーん……」
P「……なんて、ちょっと分かりにくかったかな」
美希「……あるよ?」
187: 2014/05/28(水) 01:30:26.54 ID:cbNkMG800
P「えっ」
美希「自分に嘘……でしょ? ……うん。あるよ」
P「……もしよかったら、だけど……聞かせてくれないか? ……その話」
美希「……ん。いいよ。ミキ的には結構嫌な思い出だけど……もう、昔の事だしね」
P「…………」
美希「あれはね、まだミキがアイドルになってすぐの頃だった」
P「…………」
美希「ミキ、あの頃は、今みたいにアイドルのお仕事楽しくなかったし、レッスンとかもすっごく嫌だったの」
P「…………」
美希「それでね、ミキ、ある日、どーしてもレッスンに行きたくなくなっちゃって、もう家を出ないと間に合わない時間になってたのに、どうしても行く気が起きなかったの」
P「…………」
美希「それでね、ミキ、こう思うことにしたの。……『あ、そういえば今日はレッスンの日じゃなかった。レッスンは明日だった』って」
P「…………」
美希「それで、『今日はレッスンの日じゃないから、遊びに行こう!』って決めて、ケータイ、ベッドに放り出して、そのまま外に遊びに行っちゃったの」
P「……それ、どうなったんだ?」
美希「ものすっごく、怒られた。レッスンの先生からも、律子……さんからも」
P「ま、そりゃそうなるよな……」
美希「それでね、ミキ、思ったの。自分に嘘をつくだけならともかく、それで他の人に迷惑掛けちゃうのは、すっごく駄目なことなんだって」
P「…………」
美希「……なんて、当たり前のことなんだけどね」
P「……なんで、そんな回りくどいことしたんだ? 美希」
美希「えっ?」
P「あ、いや……そんなにレッスンが嫌だったんなら、仮病でも使えばよかったんじゃ……」
美希「うーん……。確かにそれも考えたけど、でもそれだと、レッスンの先生とか、他の皆に嘘つくことになっちゃうから。ミキ、それは嫌だったの」
P「…………」
美希「だから、自分に嘘をつくことにしたの。そうすれば、誰にも嘘をつかずに済む、って思ったから」
P「……誰にも、嘘を……」
美希「まあでも、それで結局、いろんな人に迷惑掛けちゃったから……意味なかったんだけどね」
P「…………」
美希「自分に嘘……でしょ? ……うん。あるよ」
P「……もしよかったら、だけど……聞かせてくれないか? ……その話」
美希「……ん。いいよ。ミキ的には結構嫌な思い出だけど……もう、昔の事だしね」
P「…………」
美希「あれはね、まだミキがアイドルになってすぐの頃だった」
P「…………」
美希「ミキ、あの頃は、今みたいにアイドルのお仕事楽しくなかったし、レッスンとかもすっごく嫌だったの」
P「…………」
美希「それでね、ミキ、ある日、どーしてもレッスンに行きたくなくなっちゃって、もう家を出ないと間に合わない時間になってたのに、どうしても行く気が起きなかったの」
P「…………」
美希「それでね、ミキ、こう思うことにしたの。……『あ、そういえば今日はレッスンの日じゃなかった。レッスンは明日だった』って」
P「…………」
美希「それで、『今日はレッスンの日じゃないから、遊びに行こう!』って決めて、ケータイ、ベッドに放り出して、そのまま外に遊びに行っちゃったの」
P「……それ、どうなったんだ?」
美希「ものすっごく、怒られた。レッスンの先生からも、律子……さんからも」
P「ま、そりゃそうなるよな……」
美希「それでね、ミキ、思ったの。自分に嘘をつくだけならともかく、それで他の人に迷惑掛けちゃうのは、すっごく駄目なことなんだって」
P「…………」
美希「……なんて、当たり前のことなんだけどね」
P「……なんで、そんな回りくどいことしたんだ? 美希」
美希「えっ?」
P「あ、いや……そんなにレッスンが嫌だったんなら、仮病でも使えばよかったんじゃ……」
美希「うーん……。確かにそれも考えたけど、でもそれだと、レッスンの先生とか、他の皆に嘘つくことになっちゃうから。ミキ、それは嫌だったの」
P「…………」
美希「だから、自分に嘘をつくことにしたの。そうすれば、誰にも嘘をつかずに済む、って思ったから」
P「……誰にも、嘘を……」
美希「まあでも、それで結局、いろんな人に迷惑掛けちゃったから……意味なかったんだけどね」
P「…………」
188: 2014/05/28(水) 01:56:24.42 ID:cbNkMG800
美希「……まあ、そういう話だったわけだけど……」
P「…………」
美希「でも、なんでミキにこんなこと聞いたの? プロデューサー?」
P「……さあ……」
美希「え?」
P「何で、だろうな……ごめん、自分でもよく分からないんだ」
美希「?? ヘンなプロデューサー……」
P「悪い。気にしないでくれ」
美希「……まあ、別にいいけど……」
P「…………」
美希「…………」
P「……なあ、美希」
美希「? 何?」
P「……嫌な思い出だったのに、話してくれてありがとうな」
美希「べ、別に……お礼を言われるほどの事じゃないの」
P「何だ美希。照れてるのか?」
美希「照れてないの」
P「ははは」
美希「笑わないの」
P「ごめんなさい」
P(……美希と談笑しながらも、俺の心はどこか穴が開いたようだった)
P(……俺は美希に……いや、美希でなくてもいい)
P(……自分以外の誰かに……今の自分を、正当化してもらいたかったのかもしれない)
P(……途中で寄ったコンビニで、美希にせがまれたイチゴババロアを手に取りながら、俺はふと、そんなことを思った)
P「…………」
美希「でも、なんでミキにこんなこと聞いたの? プロデューサー?」
P「……さあ……」
美希「え?」
P「何で、だろうな……ごめん、自分でもよく分からないんだ」
美希「?? ヘンなプロデューサー……」
P「悪い。気にしないでくれ」
美希「……まあ、別にいいけど……」
P「…………」
美希「…………」
P「……なあ、美希」
美希「? 何?」
P「……嫌な思い出だったのに、話してくれてありがとうな」
美希「べ、別に……お礼を言われるほどの事じゃないの」
P「何だ美希。照れてるのか?」
美希「照れてないの」
P「ははは」
美希「笑わないの」
P「ごめんなさい」
P(……美希と談笑しながらも、俺の心はどこか穴が開いたようだった)
P(……俺は美希に……いや、美希でなくてもいい)
P(……自分以外の誰かに……今の自分を、正当化してもらいたかったのかもしれない)
P(……途中で寄ったコンビニで、美希にせがまれたイチゴババロアを手に取りながら、俺はふと、そんなことを思った)
189: 2014/05/28(水) 01:57:28.09 ID:cbNkMG800
190: 2014/05/28(水) 01:58:52.47 ID:Qyc55vGP0
乙!楽しみにしてる
191: 2014/05/28(水) 02:13:20.69 ID:97HAzikOo
ハニーハニー言って寄って来て体擦り付けてきた美希のおっOいを揉んで訴訟されても勝てるな
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります