279: 2014/06/07(土) 10:32:22.61 ID:0pTaCs+O0
前回:ζ*'ヮ')ζ『それぞれの想い』
最初:やよい「はいたーっち!」 P「えいっ」ふにっ
~数日後・765プロ事務所・社長室~
社長「……さて、例の高槻君の件だが……」
P「…………」
律子「…………」
小鳥「…………」
社長「昨日、私のもとへ、向こう側の弁護士から電話で連絡があった」
P「! 電話でですか」
社長「うむ」
小鳥「そ、それで……向こうの弁護士さんは、何て?」
社長「ああ。金額としては、450万あたりでどうか、と言ってきたよ」
律子「450万ですか」
小鳥「こちらの提示金額の倍以上ですね……」
社長「うむ。だが向こうの初回提示額からは150万下がってきたともいえる」
律子「確かに」
P「…………」
社長「……それとあと、訴訟前の和解ということであれば、こちら側が一定の非を認めるような文言を和解条項内に挿入してほしい、とも言われたよ」
小鳥「それは……どういうことです?」
社長「たとえば『不適切な行為をしたことを認める』とかいう文言だね。こういうのを入れてほしいと」
律子「あー……まあ、謝罪に代わるようなものですか」
社長「そういうことだな。もっとも、もし可能であれば、直接的な謝罪文言も入れてほしい、とも言われたが」
小鳥「その場合だと、もう少し違う内容になるってことですか?」
社長「うむ。その場合だと、『不適切な行為をしたことを認め、深く謝罪する』とかになるかな」
律子「それは……どうなんでしょう?」
社長「まあ書面に残ってしまう以上、あまり好ましくない形ではあるが……金額面でもう少し譲ってもらえるなら、その程度の記載はやむを得ないかもしれんな」
小鳥「まあこちら側も、お腹に触ったことは認めているわけですしね」
P「…………」
律子「それならむしろ、書面上は何も記載せずに、和解の際に直接謝罪する……とかの方がまだいいんじゃないでしょうか?」
社長「ああ。それは私も電話の際に聞いてみたんだがね。向こうの弁護士が言うには、対面の謝罪などをすると、最後の最後に、一番紛争がこじれてしまうことが多いらしいんだよ」
小鳥「? それは……何でですか?」
社長「要するに、相手が下手に出ているのをいいことに、いざ謝罪を受けても、『誠意が感じられない。そんな謝罪じゃ納得できない』とか、『今この場で土下座しなければ、絶対に和解には応じない』などと言い出すケースが多くあって、その結果、成立間近だった和解が全部パーになってしまったりすることもあるそうなんだよ」
P「! …………」
律子「あー……つまり、向こう側にとってもリスクが高いってことなんですね」
社長「そういうことだ。弁護士としても、依頼者に最後の最後で翻意されるなどということは絶対に避けたいはずだからね。その点、書面上の謝罪だけで終わらせる、ということで事前に依頼者の了解を得ておけば、そのようなトラブルは極力回避できる。またこちらにとっても、ギリギリで和解を撤回されてしまうような危険が残る手段よりは、少しでもそのような危険を回避できる手段の方が良いというわけだ」
律子「なるほど。双方にとってメリットのあるやり方ってことですね」
社長「うむ。ただまあその場合、先ほども言ったように、こちらには書面上の記載が残ってしまうというデメリットはあるがね」
小鳥「あー……まあでも、その程度は呑み込まないといけないってことですかね」
社長「うむ。まあそういうことだな。だが現時点ではまだ向こう側に対する回答はしていないからね。金額面とあわせて、今後どのように回答していくか……それを考えるのが、今の我々の課題ということになる」
P「…………」
282: 2014/06/07(土) 11:51:25.65 ID:0pTaCs+O0
社長「……君は、どう思うかね?」
P「えっ」
社長「いや、今の点についてだがね。金額とか、謝罪の文言をどうするのかとか……」
P「あ、ああ……そうですね。えっと……」
P(……一番気になってるのは、俺がこの先どうなるのかってことなんだけど……流石にそれを俺の方から言うのははばかられるしな……)
P「……まあ、俺としては……穏便にこの件が解決できるのなら、それで……」
社長「ふむ。まあ確かにそれが一番だな。これ以上この紛争をこじれさせることは、我が社にとってはもちろん、高槻君自身にとっても、決して良いことではないだろうからね」
小鳥「……実際のところ、この件について……どう思ってるんでしょうね。やよいちゃん……」
律子「それは私も気になりますけど……弁護士がやよい側の代理人となっている以上、こちら側からは、弁護士とやりとりするしかないですもんね……」
社長「まあねぇ。高槻君の方から、この事務所に来て直接話をしてもらう分には一向に問題無いんだが……現状からすると、それもまず難しいだろう」
小鳥「できれば、直接聞いてみたいですけどね……本当のところというか、やよいちゃん自身の本心を」
P「…………」
社長「……まあ気持ちは分かるが、望みの薄いことを考えていても仕方あるまい。我々は我々で、今すべきことをしなければならんからな」
律子「そうですね」
小鳥「……はい」
P「…………」
社長「では、先の提案に対する回答の件だが……こういうのはどうだろう? ①金銭支払いのみ応じることとし、その金額は250万円とする②金銭の支払い額は200万円とするが、それに加えて、『不適切な行為をしたことを認める』という条項を挿入する……という二つの案を提示する、というのは」
律子「あー、つまり二つの案を示して、向こう側にいずれかを選択してもらうってことですか」
社長「うむ。要は、金銭賠償なのか、それ以外の部分なのか……つまるところ、高槻君側がどちらをより求めているかによって、より納得できる方を選んでもらうということだ」
小鳥「確かにそれだと、相手側にも配慮している提案に感じられますね」
律子「うん、いいんじゃないでしょうか? いずれの案になっても、金額的には、こちらの想定ラインの300万にはまだ余裕がありますし」
P「…………」
社長「うむ。君はどうかね?」
P「えっ。あ、ああ……そうですね……」
P(……別に、謝罪とかするのはいいんだけど……その、肝心の……)
社長「ああ。心配しなくても、和解成立時には、当然、今後、我が社または君に対する一切の金銭的請求をしないこと、そして君個人に対しても、刑事告訴や被害届の提出といった刑事手続も一切取らないこと、という条項は必ず入れてもらうようにするからね。そこのところは安心したまえ」
P「! そ、そうですか! ありがとうございます! それなら、社長の案でお願いしたいです」
社長「うむ、分かった。ただし、これですぐに向こうが応じてくる可能性は低いだろう。すなわち、①の案であれば更なる金額面での増額を、②の案であれば謝罪文言の挿入までを、それぞれ要求してくる可能性が高いだろうな」
律子「つまりこちらとしても、そこまで見据えた上での条件提示ということですね」
社長「そういうことだ。最初から、こちらの呑める条件を全て限界まで提示してしまったら、それ以上の条件を求められた時に、返答に窮してしまうからね」
小鳥「…………」
社長「? どうかしたかね? 音無君?」
小鳥「あ、いえ……本当は、こんな交渉なんかしなくて済んでたら、それが一番だったのにな、って……。今更言っても仕方ないんですけど、ちょっと、思ってしまって……」
律子「小鳥さん……」
P「…………」
社長「まあ、その気持ちももっともだ。私としても、代理人の弁護士を介してとはいえ……本当ならば、高槻君やそのご両親と、こんな交渉事などはしたくはない、というのが本音だよ」
律子「まあでも、こうなってしまった以上、仕方ないですもんね……」
小鳥「そうですね……。それは私も、分かってるんですけど……」
P「…………」
P「えっ」
社長「いや、今の点についてだがね。金額とか、謝罪の文言をどうするのかとか……」
P「あ、ああ……そうですね。えっと……」
P(……一番気になってるのは、俺がこの先どうなるのかってことなんだけど……流石にそれを俺の方から言うのははばかられるしな……)
P「……まあ、俺としては……穏便にこの件が解決できるのなら、それで……」
社長「ふむ。まあ確かにそれが一番だな。これ以上この紛争をこじれさせることは、我が社にとってはもちろん、高槻君自身にとっても、決して良いことではないだろうからね」
小鳥「……実際のところ、この件について……どう思ってるんでしょうね。やよいちゃん……」
律子「それは私も気になりますけど……弁護士がやよい側の代理人となっている以上、こちら側からは、弁護士とやりとりするしかないですもんね……」
社長「まあねぇ。高槻君の方から、この事務所に来て直接話をしてもらう分には一向に問題無いんだが……現状からすると、それもまず難しいだろう」
小鳥「できれば、直接聞いてみたいですけどね……本当のところというか、やよいちゃん自身の本心を」
P「…………」
社長「……まあ気持ちは分かるが、望みの薄いことを考えていても仕方あるまい。我々は我々で、今すべきことをしなければならんからな」
律子「そうですね」
小鳥「……はい」
P「…………」
社長「では、先の提案に対する回答の件だが……こういうのはどうだろう? ①金銭支払いのみ応じることとし、その金額は250万円とする②金銭の支払い額は200万円とするが、それに加えて、『不適切な行為をしたことを認める』という条項を挿入する……という二つの案を提示する、というのは」
律子「あー、つまり二つの案を示して、向こう側にいずれかを選択してもらうってことですか」
社長「うむ。要は、金銭賠償なのか、それ以外の部分なのか……つまるところ、高槻君側がどちらをより求めているかによって、より納得できる方を選んでもらうということだ」
小鳥「確かにそれだと、相手側にも配慮している提案に感じられますね」
律子「うん、いいんじゃないでしょうか? いずれの案になっても、金額的には、こちらの想定ラインの300万にはまだ余裕がありますし」
P「…………」
社長「うむ。君はどうかね?」
P「えっ。あ、ああ……そうですね……」
P(……別に、謝罪とかするのはいいんだけど……その、肝心の……)
社長「ああ。心配しなくても、和解成立時には、当然、今後、我が社または君に対する一切の金銭的請求をしないこと、そして君個人に対しても、刑事告訴や被害届の提出といった刑事手続も一切取らないこと、という条項は必ず入れてもらうようにするからね。そこのところは安心したまえ」
P「! そ、そうですか! ありがとうございます! それなら、社長の案でお願いしたいです」
社長「うむ、分かった。ただし、これですぐに向こうが応じてくる可能性は低いだろう。すなわち、①の案であれば更なる金額面での増額を、②の案であれば謝罪文言の挿入までを、それぞれ要求してくる可能性が高いだろうな」
律子「つまりこちらとしても、そこまで見据えた上での条件提示ということですね」
社長「そういうことだ。最初から、こちらの呑める条件を全て限界まで提示してしまったら、それ以上の条件を求められた時に、返答に窮してしまうからね」
小鳥「…………」
社長「? どうかしたかね? 音無君?」
小鳥「あ、いえ……本当は、こんな交渉なんかしなくて済んでたら、それが一番だったのにな、って……。今更言っても仕方ないんですけど、ちょっと、思ってしまって……」
律子「小鳥さん……」
P「…………」
社長「まあ、その気持ちももっともだ。私としても、代理人の弁護士を介してとはいえ……本当ならば、高槻君やそのご両親と、こんな交渉事などはしたくはない、というのが本音だよ」
律子「まあでも、こうなってしまった以上、仕方ないですもんね……」
小鳥「そうですね……。それは私も、分かってるんですけど……」
P「…………」
285: 2014/06/07(土) 12:35:31.75 ID:0pTaCs+O0
社長「……では、向こうの弁護士にはそういう内容で伝えてみるとしよう。それではこの件については今日はこのへんで。各自、通常業務に戻ってくれたまえ」
律子「はい」
小鳥「はい」
P「はい」
バタン
律子「……まだどうなるか分かりませんけど、うまく、円満に解決できたらいいですね……」
小鳥「そうですよね、本当……」
P「…………」
P(このままいけば、なんとか刑事告訴とかもされずに済みそうだな……)
P(いくらなんでも、交渉継続中に不意打ちでやられるってことはないだろうし……)
P(やよいの両親が、お金を求めてるのか謝罪を求めてるのかまだよく分からんけど……まあいずれにしても、何らかの形で和解できるよな……多分……)
P(何にせよ、早く終わってほしいな……そしたらまた、やよいと……)
P(…………)
P(……って、そうか……)
P(やよいはもう、765プロを辞めてるんだから……いくら円満に和解できたとしても、やよいが、この事務所に戻ってくることは、もうないのか……)
P(…………)
P(……やよいのプロデュース、中途半端なとこで終わっちゃったな……)
P(…………)
律子「……プロデューサー?」
P「……え?」
律子「え? じゃありませんよ、もう。今、私の話、聞いてました?」
P「え、あ……ごめん。聞いてなかった」
律子「もう……そりゃまあ、気が気じゃないのは分かりますけど……。仕事は仕事で、ちゃんと集中してくれないと困りますよ。あなたはこの事務所のプロデューサーなんですから」
P「ああ、そうだな……悪い。で、なんて?」
律子「ええ。実は今日、竜宮小町のレッスンを見てやる予定だったんですが、ちょっと別件で、今日中にしないといけない仕事が入っちゃいまして……。それで悪いんですが、プロデューサー、私の代わりに見に行ってやってくれませんか?」
P「ああ。それくらいお安い御用だよ。何時から?」
律子「ありがとうございます! 13時からです。今、亜美とあずささんにも、プロデューサーに代わりに見てもらう旨、伝えますから」
P「? 亜美とあずささんだけ? 伊織は?」
律子「ああ、なんか急に、家の用事が入ったから今日は来れなくなったって……さっき、連絡があったんです。大したことじゃないから、明日からは普段通りに来れる、って言ってましたけどね」
P「? ふーん……」
律子「はい」
小鳥「はい」
P「はい」
バタン
律子「……まだどうなるか分かりませんけど、うまく、円満に解決できたらいいですね……」
小鳥「そうですよね、本当……」
P「…………」
P(このままいけば、なんとか刑事告訴とかもされずに済みそうだな……)
P(いくらなんでも、交渉継続中に不意打ちでやられるってことはないだろうし……)
P(やよいの両親が、お金を求めてるのか謝罪を求めてるのかまだよく分からんけど……まあいずれにしても、何らかの形で和解できるよな……多分……)
P(何にせよ、早く終わってほしいな……そしたらまた、やよいと……)
P(…………)
P(……って、そうか……)
P(やよいはもう、765プロを辞めてるんだから……いくら円満に和解できたとしても、やよいが、この事務所に戻ってくることは、もうないのか……)
P(…………)
P(……やよいのプロデュース、中途半端なとこで終わっちゃったな……)
P(…………)
律子「……プロデューサー?」
P「……え?」
律子「え? じゃありませんよ、もう。今、私の話、聞いてました?」
P「え、あ……ごめん。聞いてなかった」
律子「もう……そりゃまあ、気が気じゃないのは分かりますけど……。仕事は仕事で、ちゃんと集中してくれないと困りますよ。あなたはこの事務所のプロデューサーなんですから」
P「ああ、そうだな……悪い。で、なんて?」
律子「ええ。実は今日、竜宮小町のレッスンを見てやる予定だったんですが、ちょっと別件で、今日中にしないといけない仕事が入っちゃいまして……。それで悪いんですが、プロデューサー、私の代わりに見に行ってやってくれませんか?」
P「ああ。それくらいお安い御用だよ。何時から?」
律子「ありがとうございます! 13時からです。今、亜美とあずささんにも、プロデューサーに代わりに見てもらう旨、伝えますから」
P「? 亜美とあずささんだけ? 伊織は?」
律子「ああ、なんか急に、家の用事が入ったから今日は来れなくなったって……さっき、連絡があったんです。大したことじゃないから、明日からは普段通りに来れる、って言ってましたけどね」
P「? ふーん……」
288: 2014/06/07(土) 13:18:30.89 ID:0pTaCs+O0
~同日夕刻・やよいの家近辺~
伊織「…………」【電信柱の陰から、こっそりとやよいの家を見つめる伊織】
伊織(……一目見るだけ……一目見るだけ……)
伊織(……一目見たら、すぐに帰るから……だから……)
伊織(…………)
長介「……伊織さん?」
伊織「でちょっ!?」ビクッ
長介「……何やってんの? こんなとこで……」
伊織「あ……」
長介「……姉ちゃんに用事? 姉ちゃんなら……」
伊織「……あ、ああああ! あ、あんたこそ何やってんのよこんなとこで! ていうか、急に後ろから声掛けないでよびっくりするじゃない!」
長介「え、いや、そんなこと言われても……俺は普通に、学校帰りに姉ちゃんと買い物行って帰ってきたとこなんだけど……」
伊織「……え?」
やよい「……もう、長介歩くの速いよ~……って……えっ?」
伊織「あっ……」
やよい「…………」
伊織「…………」
やよい「……いお」
伊織「ッ!!」ダッ
やよい「あっ!」
長介「逃げた!?」
やよい「……長介、これお願い!」ドサッ
長介「うわっ! ちょ……ね、姉ちゃん!?」
やよい「すぐ戻るから! 長介は先に帰ってて!」ダッ
長介「……な、何だ……?」
長介「伊織さんも、なんか様子がおかしかったし……」
長介「姉ちゃんが最近ずっとアイドルの事務所休んでることと、何か関係あんのかな……」
長介「…………」
長介「……まあ、姉ちゃんもああ言ってたし、とりあえず先帰っとくか……荷物重いし。……よいしょ、っと」
伊織「…………」【電信柱の陰から、こっそりとやよいの家を見つめる伊織】
伊織(……一目見るだけ……一目見るだけ……)
伊織(……一目見たら、すぐに帰るから……だから……)
伊織(…………)
長介「……伊織さん?」
伊織「でちょっ!?」ビクッ
長介「……何やってんの? こんなとこで……」
伊織「あ……」
長介「……姉ちゃんに用事? 姉ちゃんなら……」
伊織「……あ、ああああ! あ、あんたこそ何やってんのよこんなとこで! ていうか、急に後ろから声掛けないでよびっくりするじゃない!」
長介「え、いや、そんなこと言われても……俺は普通に、学校帰りに姉ちゃんと買い物行って帰ってきたとこなんだけど……」
伊織「……え?」
やよい「……もう、長介歩くの速いよ~……って……えっ?」
伊織「あっ……」
やよい「…………」
伊織「…………」
やよい「……いお」
伊織「ッ!!」ダッ
やよい「あっ!」
長介「逃げた!?」
やよい「……長介、これお願い!」ドサッ
長介「うわっ! ちょ……ね、姉ちゃん!?」
やよい「すぐ戻るから! 長介は先に帰ってて!」ダッ
長介「……な、何だ……?」
長介「伊織さんも、なんか様子がおかしかったし……」
長介「姉ちゃんが最近ずっとアイドルの事務所休んでることと、何か関係あんのかな……」
長介「…………」
長介「……まあ、姉ちゃんもああ言ってたし、とりあえず先帰っとくか……荷物重いし。……よいしょ、っと」
290: 2014/06/07(土) 13:47:39.01 ID:0pTaCs+O0
やよい「伊織ちゃん! 待って!」
伊織「…………ッ!」
やよい「―――伊織ちゃん!」ガシッ
伊織「あっ!」
やよい「…………」ハァハァ
伊織「…………」ハァハァ
やよい「……伊織、ちゃん……」
伊織「…………」
やよい「……私に、会いに来てくれたの……?」
伊織「…………」
やよい「…………」
伊織「……一目、だけ」
やよい「……え?」
伊織「……一目だけ、見たら……帰るつもりだったのよ。……やよいの、元気な姿を……」
やよい「……伊織ちゃん……」
伊織「…………」
やよい「……ねえ、伊織ちゃん」
伊織「……え?」
やよい「……ちょっとだけ、お話……していかない?」
伊織「えっ……」
やよい「ここのすぐ近くに、公園、あるから……」
伊織「…………」
やよい「……だめ、かな……?」
伊織「…………」
やよい「…………」
伊織「…………わかった、いいわよ」
やよい「! じゃあ、いこっ!」グイッ
伊織「あ、ちょ、ちょっとやよい! ひ、 引っ張らないで……」
やよい「えへへ……ごめんね、伊織ちゃん! でも、こうしないと伊織ちゃん、また逃げちゃうかなーって!」
伊織「……に、逃げないわよ、もうっ……」
やよい「えへへ……」
伊織「…………ッ!」
やよい「―――伊織ちゃん!」ガシッ
伊織「あっ!」
やよい「…………」ハァハァ
伊織「…………」ハァハァ
やよい「……伊織、ちゃん……」
伊織「…………」
やよい「……私に、会いに来てくれたの……?」
伊織「…………」
やよい「…………」
伊織「……一目、だけ」
やよい「……え?」
伊織「……一目だけ、見たら……帰るつもりだったのよ。……やよいの、元気な姿を……」
やよい「……伊織ちゃん……」
伊織「…………」
やよい「……ねえ、伊織ちゃん」
伊織「……え?」
やよい「……ちょっとだけ、お話……していかない?」
伊織「えっ……」
やよい「ここのすぐ近くに、公園、あるから……」
伊織「…………」
やよい「……だめ、かな……?」
伊織「…………」
やよい「…………」
伊織「…………わかった、いいわよ」
やよい「! じゃあ、いこっ!」グイッ
伊織「あ、ちょ、ちょっとやよい! ひ、 引っ張らないで……」
やよい「えへへ……ごめんね、伊織ちゃん! でも、こうしないと伊織ちゃん、また逃げちゃうかなーって!」
伊織「……に、逃げないわよ、もうっ……」
やよい「えへへ……」
293: 2014/06/07(土) 14:23:47.89 ID:0pTaCs+O0
~近所の公園~
【園内のブランコに、二人並んで腰掛けているやよいと伊織】
やよい「…………」
伊織「…………」
やよい「……えっ、と……」
伊織「…………」
やよい(……何から話せばいいんだろう)
伊織(……何から聞けばいいのかしら)
伊織(……って、バカ私。違うでしょ。聞きたいことは山ほどあるけど――……)
伊織「……あのね、やよい」
やよい「! うん、何? 伊織ちゃん」
伊織「えっと……まず、最初に言っておくけどね」
やよい「うん」
伊織「私は……えっと、他の皆もだけど……今、やよいが事務所をずっとお休みしてる理由とか、そういうの、聞くつもりは一切ないからね」
やよい「えっ」
伊織「その、あんたのプライバシーに深く関わることだからって……律子とかから言われてて。だからその、そこについては本当、一切聞く気はないし、やよいも言わなくていいからね」
やよい「…………」
伊織「だから、その、なんていうか……やよいが話したいように話してくれたらいいっていうか。別に無理して、言いたくないことまで言わなくていいっていうか……そういうこと。だから先にそれだけ、分かっておいてちょうだい。ね?」
やよい「……伊織ちゃん……」
やよい「…………」
やよい(事務所をずっとお休み……そっか、伊織ちゃん達はそういう風に聞いてるんだ)
やよい(それに、今の感じからすると……私の事も、プロデューサーの事も……多分何も、聞かされてないんだ)
やよい(そりゃそっか……そうだよね。プロデューサーは、今も事務所でお仕事続けてるんだろうし……)
やよい(今の私との事、皆が知っちゃったら、プロデューサーも皆も、お仕事やりづらくなっちゃうよね……)
やよい(じゃあ、ええと……私は……)
やよい「…………」
伊織「あ……や、やよい?」
やよい「え? な、何? 伊織ちゃん」
伊織「えっとだから、その……本当、無理しなくていいのよ。別に何も話さなくたって。私はこうして、久しぶりにやよいに会えて、話ができただけでも十分……嬉しいんだから」
やよい「……伊織ちゃん……」
伊織「それに、思ってたよりも大分、元気そうだったし……」
やよい「……え?」
伊織「あ、いやほら、もしかして病気とかなのかな、とも思ってたから……」
やよい「…………」
やよい(……元気? 今の、私が……?)
やよい(…………)
やよい(……でも確かに、なんか久しぶりかも。こういう、今みたいな感じ……)
やよい(…………)
【園内のブランコに、二人並んで腰掛けているやよいと伊織】
やよい「…………」
伊織「…………」
やよい「……えっ、と……」
伊織「…………」
やよい(……何から話せばいいんだろう)
伊織(……何から聞けばいいのかしら)
伊織(……って、バカ私。違うでしょ。聞きたいことは山ほどあるけど――……)
伊織「……あのね、やよい」
やよい「! うん、何? 伊織ちゃん」
伊織「えっと……まず、最初に言っておくけどね」
やよい「うん」
伊織「私は……えっと、他の皆もだけど……今、やよいが事務所をずっとお休みしてる理由とか、そういうの、聞くつもりは一切ないからね」
やよい「えっ」
伊織「その、あんたのプライバシーに深く関わることだからって……律子とかから言われてて。だからその、そこについては本当、一切聞く気はないし、やよいも言わなくていいからね」
やよい「…………」
伊織「だから、その、なんていうか……やよいが話したいように話してくれたらいいっていうか。別に無理して、言いたくないことまで言わなくていいっていうか……そういうこと。だから先にそれだけ、分かっておいてちょうだい。ね?」
やよい「……伊織ちゃん……」
やよい「…………」
やよい(事務所をずっとお休み……そっか、伊織ちゃん達はそういう風に聞いてるんだ)
やよい(それに、今の感じからすると……私の事も、プロデューサーの事も……多分何も、聞かされてないんだ)
やよい(そりゃそっか……そうだよね。プロデューサーは、今も事務所でお仕事続けてるんだろうし……)
やよい(今の私との事、皆が知っちゃったら、プロデューサーも皆も、お仕事やりづらくなっちゃうよね……)
やよい(じゃあ、ええと……私は……)
やよい「…………」
伊織「あ……や、やよい?」
やよい「え? な、何? 伊織ちゃん」
伊織「えっとだから、その……本当、無理しなくていいのよ。別に何も話さなくたって。私はこうして、久しぶりにやよいに会えて、話ができただけでも十分……嬉しいんだから」
やよい「……伊織ちゃん……」
伊織「それに、思ってたよりも大分、元気そうだったし……」
やよい「……え?」
伊織「あ、いやほら、もしかして病気とかなのかな、とも思ってたから……」
やよい「…………」
やよい(……元気? 今の、私が……?)
やよい(…………)
やよい(……でも確かに、なんか久しぶりかも。こういう、今みたいな感じ……)
やよい(…………)
297: 2014/06/07(土) 14:54:51.44 ID:0pTaCs+O0
やよい「……えっとね、伊織ちゃん」
伊織「! ……うん」
やよい「えっと、確かにその……今、私が事務所をお休みしてる理由は……色々あって、まだ言えないんだ」
伊織「……うん」
やよい「……でも、私自身は、最初の頃に比べたら、大分ましになってきたっていうか……その、今は学校にもちゃんと行ってるし」
伊織「……それは、見れば分かるわよ」
やよい「あ、そっか。制服……」
伊織「……ふふっ」
やよい「えへへ……えっと、でもやっぱりまだ、完全に元に戻ったわけじゃなくて」
伊織「……うん」
やよい「多分、全部元通りになるには、もっと時間が必要かなって……。それに、本当に元通りになれるのかどうかも、今はまだ、ちょっとわかんなくて」
伊織「…………」
やよい「……でも今日、伊織ちゃんが来てくれて……よかった」
伊織「やよい」
やよい「だって私、分かったもん。今日まで色々あったけど……でも、伊織ちゃんと一緒にいるときの私は、いつも通りの私なんだって。嫌なことも辛いことも、全部忘れられるんだって」
伊織「……やよい……」
やよい「……だからその、これからもこうやって……時々でいいから、会いに来てくれると嬉しいかなーって……」
伊織「……ばかね」
やよい「え?」
伊織「時々なんて言わないでよ。毎日でも毎晩でも、やよいがそれを望んでくれるのなら、私はいつだって会いに来るわよ」
やよい「! 伊織ちゃん……」
伊織「だって親友でしょ? 私たち……」
やよい「……うん!」
伊織「ならそれくらい、当然のことよ。もちろんやよいも、いつでも私の家に来てくれていいんだからね」
やよい「……伊織ちゃん……」
伊織「! ……うん」
やよい「えっと、確かにその……今、私が事務所をお休みしてる理由は……色々あって、まだ言えないんだ」
伊織「……うん」
やよい「……でも、私自身は、最初の頃に比べたら、大分ましになってきたっていうか……その、今は学校にもちゃんと行ってるし」
伊織「……それは、見れば分かるわよ」
やよい「あ、そっか。制服……」
伊織「……ふふっ」
やよい「えへへ……えっと、でもやっぱりまだ、完全に元に戻ったわけじゃなくて」
伊織「……うん」
やよい「多分、全部元通りになるには、もっと時間が必要かなって……。それに、本当に元通りになれるのかどうかも、今はまだ、ちょっとわかんなくて」
伊織「…………」
やよい「……でも今日、伊織ちゃんが来てくれて……よかった」
伊織「やよい」
やよい「だって私、分かったもん。今日まで色々あったけど……でも、伊織ちゃんと一緒にいるときの私は、いつも通りの私なんだって。嫌なことも辛いことも、全部忘れられるんだって」
伊織「……やよい……」
やよい「……だからその、これからもこうやって……時々でいいから、会いに来てくれると嬉しいかなーって……」
伊織「……ばかね」
やよい「え?」
伊織「時々なんて言わないでよ。毎日でも毎晩でも、やよいがそれを望んでくれるのなら、私はいつだって会いに来るわよ」
やよい「! 伊織ちゃん……」
伊織「だって親友でしょ? 私たち……」
やよい「……うん!」
伊織「ならそれくらい、当然のことよ。もちろんやよいも、いつでも私の家に来てくれていいんだからね」
やよい「……伊織ちゃん……」
299: 2014/06/07(土) 15:22:21.91 ID:0pTaCs+O0
伊織「……いい? やよい」
やよい「? 何? 伊織ちゃん」
伊織「どこにいようが何をしていようが、やよいはやよいなの」
やよい「……私は、私……?」
伊織「そう。だから、事務所に来ていようが来ていまいが、そんなことは関係ないのよ。その理由が何なのか私には分からないけど、それすらも関係ないわ」
やよい「…………」
伊織「あんたがあんたでいる限り、あんたは私の親友なんだから」
やよい「! 伊織ちゃん……」
伊織「……違うかしら? やよい」
やよい「…………」
伊織「…………」
やよい「……じゃあ、もしも……」
伊織「? 何? やよい」
やよい「……もしも私が、765プロを辞めちゃっても……?」
伊織「! …………」
やよい「…………」
伊織「……ええ、もちろん」
やよい「!」
伊織「……そりゃあまあ、やよいと一緒にステージに立って、歌ったり踊ったりできなくなっちゃうのは寂しいけどね」
やよい「…………」
伊織「……でもそんなことは、私とやよいとの関係には何一つ影響を与えないわ。だってそうでしょ? 私たちは今もこうして、765プロとは全く関係の無い世界で、ちゃーんとつながってるじゃない」
やよい「…………」
伊織「ね?」
やよい「…………」
伊織「……って……やよい……?」
やよい「……い」
伊織「え?」
やよい「いおりちゃああああん!!」ダキッ
伊織「きゃっ」
やよい「いお、いおりちゃ……いおりちゃああああん!」
伊織「……やよい……」
やよい「わ、わたしっ……あ、ありがっ……えぐっ……りがとっ……ぐすっ……えうっ」
伊織「……よしよし」
やよい「う、ぐすっ……ふぇ、うぇええええええ」
伊織「……今までよく頑張ったわね、やよい」
やよい「う、ううぅ、うぐっ……ひっく……」
伊織「……今日は好きなだけ、泣いたらいいわ。これからのことは、またこれから考えればいいんだから」
やよい「う、うんっ……えっく……うぁああああああん」
やよい「? 何? 伊織ちゃん」
伊織「どこにいようが何をしていようが、やよいはやよいなの」
やよい「……私は、私……?」
伊織「そう。だから、事務所に来ていようが来ていまいが、そんなことは関係ないのよ。その理由が何なのか私には分からないけど、それすらも関係ないわ」
やよい「…………」
伊織「あんたがあんたでいる限り、あんたは私の親友なんだから」
やよい「! 伊織ちゃん……」
伊織「……違うかしら? やよい」
やよい「…………」
伊織「…………」
やよい「……じゃあ、もしも……」
伊織「? 何? やよい」
やよい「……もしも私が、765プロを辞めちゃっても……?」
伊織「! …………」
やよい「…………」
伊織「……ええ、もちろん」
やよい「!」
伊織「……そりゃあまあ、やよいと一緒にステージに立って、歌ったり踊ったりできなくなっちゃうのは寂しいけどね」
やよい「…………」
伊織「……でもそんなことは、私とやよいとの関係には何一つ影響を与えないわ。だってそうでしょ? 私たちは今もこうして、765プロとは全く関係の無い世界で、ちゃーんとつながってるじゃない」
やよい「…………」
伊織「ね?」
やよい「…………」
伊織「……って……やよい……?」
やよい「……い」
伊織「え?」
やよい「いおりちゃああああん!!」ダキッ
伊織「きゃっ」
やよい「いお、いおりちゃ……いおりちゃああああん!」
伊織「……やよい……」
やよい「わ、わたしっ……あ、ありがっ……えぐっ……りがとっ……ぐすっ……えうっ」
伊織「……よしよし」
やよい「う、ぐすっ……ふぇ、うぇええええええ」
伊織「……今までよく頑張ったわね、やよい」
やよい「う、ううぅ、うぐっ……ひっく……」
伊織「……今日は好きなだけ、泣いたらいいわ。これからのことは、またこれから考えればいいんだから」
やよい「う、うんっ……えっく……うぁああああああん」
308: 2014/06/07(土) 16:02:18.28 ID:0pTaCs+O0
~十数分後~
伊織「……落ち着いた? やよい……」
やよい「……うん。ありがとう。伊織ちゃん……」
伊織「……じゃあ、そろそろ行くわね。結構遅くなっちゃった」
やよい「あ、ご、ごめんね伊織ちゃん。私のせいで……」
伊織「何言ってるのよ。元はといえば、私が勝手に押しかけたようなもんじゃない」
やよい「で、でも……」
伊織「いいから。もうそんなことでいちいち責任感じなくていいの、あんたは」
やよい「……伊織ちゃん……」
伊織「……ふふっ。じゃあまたね、やよい。長介にもよろしく」
やよい「……うん! またね、伊織ちゃん!」
伊織「ええ。またメールするわ。それじゃ」
やよい「…………」
やよい(……ありがとう、伊織ちゃん……)
伊織「……落ち着いた? やよい……」
やよい「……うん。ありがとう。伊織ちゃん……」
伊織「……じゃあ、そろそろ行くわね。結構遅くなっちゃった」
やよい「あ、ご、ごめんね伊織ちゃん。私のせいで……」
伊織「何言ってるのよ。元はといえば、私が勝手に押しかけたようなもんじゃない」
やよい「で、でも……」
伊織「いいから。もうそんなことでいちいち責任感じなくていいの、あんたは」
やよい「……伊織ちゃん……」
伊織「……ふふっ。じゃあまたね、やよい。長介にもよろしく」
やよい「……うん! またね、伊織ちゃん!」
伊織「ええ。またメールするわ。それじゃ」
やよい「…………」
やよい(……ありがとう、伊織ちゃん……)
309: 2014/06/07(土) 16:07:53.48 ID:0pTaCs+O0
~同日夜・高槻家・居間~
高槻母「…………」
高槻父「…………」
高槻母「……ねぇ、あなた」
高槻父「……ん……」
高槻母「……その、今日、先生から連絡のあった件だけど……」
高槻父「ああ……」
高槻母「やっぱりもう……早めに終わりにしてもらった方がいいんじゃないかしら」
高槻父「…………」
高槻母「今なら向こうも、250万は払うって言ってきてるんだし……」
高槻父「…………」
高槻母「どのみち、全てを認めさせて謝罪させるなんてことはできないみたいだし、それなら……」
高槻父「……それで、やよいの気持ちはどうなる」
高槻母「やよいの……?」
高槻父「……そうだ。信頼していたプロデューサーに裏切られた、やよいの気持ちだ。あの子はまだ14なんだぞ」
高槻母「そりゃあ……私だって、謝ってもらえるのなら謝ってほしいけど……でも……」
高槻父「…………」
高槻母「それが難しいっていうんなら……もう、お金で解決してもらうしか、ないんじゃないかしら……」
高槻父「……金さえ払えば、それでいいってもんじゃないだろう。それにその金にしたって、こっちが請求してる額の半分にも満たないんだぞ。それで誠意を示しているつもりか?」
高槻母「……じゃあ、どうするのよ。先生に、もっと増額してもらうように交渉を頼んでみるの?」
高槻父「……金の問題じゃないと言ってるだろ」
高槻母「じゃあ、あくまでも謝罪を求めるの? 先生からも、あれだけ無理だって言われてるのに?」
高槻父「……だからそれはだな、もっとこう、先生にも頑張ってもらって……」
ガララッ
やよい「…………」
高槻父「! やよい……。どうしたんだ? こんな夜更けに」
高槻母「眠れないの? やよい」
やよい「……お父さん、お母さん」
高槻父「?」
高槻母「どうしたの、やよい」
やよい「……えっと……」
高槻母「…………」
高槻父「…………」
高槻母「……ねぇ、あなた」
高槻父「……ん……」
高槻母「……その、今日、先生から連絡のあった件だけど……」
高槻父「ああ……」
高槻母「やっぱりもう……早めに終わりにしてもらった方がいいんじゃないかしら」
高槻父「…………」
高槻母「今なら向こうも、250万は払うって言ってきてるんだし……」
高槻父「…………」
高槻母「どのみち、全てを認めさせて謝罪させるなんてことはできないみたいだし、それなら……」
高槻父「……それで、やよいの気持ちはどうなる」
高槻母「やよいの……?」
高槻父「……そうだ。信頼していたプロデューサーに裏切られた、やよいの気持ちだ。あの子はまだ14なんだぞ」
高槻母「そりゃあ……私だって、謝ってもらえるのなら謝ってほしいけど……でも……」
高槻父「…………」
高槻母「それが難しいっていうんなら……もう、お金で解決してもらうしか、ないんじゃないかしら……」
高槻父「……金さえ払えば、それでいいってもんじゃないだろう。それにその金にしたって、こっちが請求してる額の半分にも満たないんだぞ。それで誠意を示しているつもりか?」
高槻母「……じゃあ、どうするのよ。先生に、もっと増額してもらうように交渉を頼んでみるの?」
高槻父「……金の問題じゃないと言ってるだろ」
高槻母「じゃあ、あくまでも謝罪を求めるの? 先生からも、あれだけ無理だって言われてるのに?」
高槻父「……だからそれはだな、もっとこう、先生にも頑張ってもらって……」
ガララッ
やよい「…………」
高槻父「! やよい……。どうしたんだ? こんな夜更けに」
高槻母「眠れないの? やよい」
やよい「……お父さん、お母さん」
高槻父「?」
高槻母「どうしたの、やよい」
やよい「……えっと……」
312: 2014/06/07(土) 17:15:20.81 ID:0pTaCs+O0
やよい「今の、その……765プロとのこと、なんだけど」
高槻父「! ああ……」
高槻母「…………」
やよい「私としては、もう……終わりにしてほしいかな、って……」
高槻父「! えっ……」
高槻母「……やよい……」
やよい「えっと、私もずっと考えてたんだけど、やっぱりもう、その方がいいかなって……」
高槻父「……でもやよい、お前……いいのか? それで……」
やよい「……うん。やっぱり私は今でも……あのとき、『プロデューサーに胸を触られた』っていう感触は覚えてるし……多分きっと、あれは偶然や事故なんかでもない、と思う」
高槻母「…………」
やよい「でも今、プロデューサーが、『触ったのはお腹で、胸じゃない』って言ってるって聞いて……。私も何で、プロデューサーがそんなこと言ってるのか、分からないけど……」
やよい「……でも多分、プロデューサーがそう言ってるってことは、プロデューサーにとってはそうなんだと思う。嘘ついてるとか、そういうんじゃなくて……それにそもそも、プロデューサーはそういう嘘つく人じゃないし……」
高槻父「……やよい。お前まだ、あんな事した奴のことを……」
高槻母「あなた。最後まで……」
高槻父「……ああ、すまん。……続けてくれ、やよい」
やよい「うん。えっと、だから多分……この問題って、もうこの先、どれだけ時間が経ったとしても……白黒がはっきりつくような、そういうものじゃないんじゃないかなって……。それならもう、ここで終わりにしてしまって、私も、次に進んでいきたいかなって……」
高槻母「……次に……?」
高槻父「……まさかやよい。お前また765プロに戻って、アイドルを再開したいとか言うんじゃ……」
やよい「……ううん。流石にもう、765プロには戻れないよ。今のままでプロデューサーと会っても、私、もうどんな顔していいのか分からないし……向こうも、私にどう接していいのか分からなくて、困っちゃうと思うし」
高槻父「…………」
やよい「それに、私とプロデューサーがそんな感じでぎくしゃくしてたら、他の皆も、おかしいって思い始めて、色々心配掛けちゃうと思うから……」
高槻母「……そう……」
高槻父「……じゃあ……765プロ以外の、他のアイドル事務所に入りたい……とかか?」
やよい「……ううん。それも今は考えてないよ。やっぱり今でも、私にとってのアイドル事務所は765プロだし……もう、そこ以外の事務所は考えられないよ」
高槻母「じゃあ……やよいはどうしたいの? この先……」
やよい「うん。とりあえず今は……学校の勉強、頑張ろうかなって」
高槻父「……学校の、勉強……?」
やよい「うん。今までは、私、アイドルのお仕事が忙しかったから、正直、あんまり勉強できてなくて……お父さんもお母さんも知ってると思うけど……学校の成績も、良くなくて。……それで、学校の先生からは、『高槻、お前このままだと行ける高校無いぞ』とかまで言われちゃってて」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
やよい「だからまずは、今までの分を取り返すくらい、勉強いっぱい頑張って、少しでも良い高校に行きたいなって」
やよい「そしてちゃんと高校に入れたら、そこでもいっぱい勉強して、できたら、ちゃんとした大学にも行きたいなって」
やよい「……今まで私は、自分のこと、『アイドルとしての自分』としてしか考えてこなかったけど……これからは、もっと、色んな可能性っていうか……そういうのを、探していきたいかなって」
やよい「だからいっぱい勉強して、いろんなこと知って、高校に行って、大学にも行って、いろんな人と出会って……そんな中で、自分が本当にやりたいこととか、目指したい夢とか……そういうの、見つけていけたらいいなって」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
高槻父「! ああ……」
高槻母「…………」
やよい「私としては、もう……終わりにしてほしいかな、って……」
高槻父「! えっ……」
高槻母「……やよい……」
やよい「えっと、私もずっと考えてたんだけど、やっぱりもう、その方がいいかなって……」
高槻父「……でもやよい、お前……いいのか? それで……」
やよい「……うん。やっぱり私は今でも……あのとき、『プロデューサーに胸を触られた』っていう感触は覚えてるし……多分きっと、あれは偶然や事故なんかでもない、と思う」
高槻母「…………」
やよい「でも今、プロデューサーが、『触ったのはお腹で、胸じゃない』って言ってるって聞いて……。私も何で、プロデューサーがそんなこと言ってるのか、分からないけど……」
やよい「……でも多分、プロデューサーがそう言ってるってことは、プロデューサーにとってはそうなんだと思う。嘘ついてるとか、そういうんじゃなくて……それにそもそも、プロデューサーはそういう嘘つく人じゃないし……」
高槻父「……やよい。お前まだ、あんな事した奴のことを……」
高槻母「あなた。最後まで……」
高槻父「……ああ、すまん。……続けてくれ、やよい」
やよい「うん。えっと、だから多分……この問題って、もうこの先、どれだけ時間が経ったとしても……白黒がはっきりつくような、そういうものじゃないんじゃないかなって……。それならもう、ここで終わりにしてしまって、私も、次に進んでいきたいかなって……」
高槻母「……次に……?」
高槻父「……まさかやよい。お前また765プロに戻って、アイドルを再開したいとか言うんじゃ……」
やよい「……ううん。流石にもう、765プロには戻れないよ。今のままでプロデューサーと会っても、私、もうどんな顔していいのか分からないし……向こうも、私にどう接していいのか分からなくて、困っちゃうと思うし」
高槻父「…………」
やよい「それに、私とプロデューサーがそんな感じでぎくしゃくしてたら、他の皆も、おかしいって思い始めて、色々心配掛けちゃうと思うから……」
高槻母「……そう……」
高槻父「……じゃあ……765プロ以外の、他のアイドル事務所に入りたい……とかか?」
やよい「……ううん。それも今は考えてないよ。やっぱり今でも、私にとってのアイドル事務所は765プロだし……もう、そこ以外の事務所は考えられないよ」
高槻母「じゃあ……やよいはどうしたいの? この先……」
やよい「うん。とりあえず今は……学校の勉強、頑張ろうかなって」
高槻父「……学校の、勉強……?」
やよい「うん。今までは、私、アイドルのお仕事が忙しかったから、正直、あんまり勉強できてなくて……お父さんもお母さんも知ってると思うけど……学校の成績も、良くなくて。……それで、学校の先生からは、『高槻、お前このままだと行ける高校無いぞ』とかまで言われちゃってて」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
やよい「だからまずは、今までの分を取り返すくらい、勉強いっぱい頑張って、少しでも良い高校に行きたいなって」
やよい「そしてちゃんと高校に入れたら、そこでもいっぱい勉強して、できたら、ちゃんとした大学にも行きたいなって」
やよい「……今まで私は、自分のこと、『アイドルとしての自分』としてしか考えてこなかったけど……これからは、もっと、色んな可能性っていうか……そういうのを、探していきたいかなって」
やよい「だからいっぱい勉強して、いろんなこと知って、高校に行って、大学にも行って、いろんな人と出会って……そんな中で、自分が本当にやりたいこととか、目指したい夢とか……そういうの、見つけていけたらいいなって」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
317: 2014/06/07(土) 22:55:27.86 ID:OYsR3NfE0
やよい「だから、その、もう……今回の件については、その……」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
やよい「……えっ、と……」
高槻父「……そうか……」
やよい「お父さん……?」
高槻母「……他でもない、やよいがそう言うのなら……ねぇ、あなた……」
高槻父「……そうだな……うん、そうだな……」
やよい「あ、ええと……ご、ごめんね……お父さんもお母さんも、私のために色々してくれてたのに、その……」
高槻父「……何を言ってるんだ、やよい」
やよい「えっ?」
高槻父「前に言っただろう? 『何があっても、お父さんとお母さんは、絶対にやよいの味方だから』って」
やよい「……お父さん……」
高槻父「だから、やよいがそう決めたのなら……お父さんとお母さんは、もう何も言うことはないよ」
やよい「! ……うん、ありがとう」
高槻母「でも、やよい……何かあったの?」
やよい「えっ?」
高槻母「いや、その……心境の変化というか、きっかけみたいなのが……」
やよい「ああ……うん。えっとね……」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
やよい「……結局は……何があっても、『私は私なんだ』ってこと……かな」
高槻父「……それは……?」
やよい「うん。なんていうか、アイドルであっても、そうじゃなくても……『私は私なんだ』って」
高槻母「…………」
やよい「765プロを辞めても、アイドルじゃなくなっても……私は、やっぱり私のままで。でも、今までのことが、無かったことになるわけでもなくて」
やよい「これまでのこと全部含めて、それが今の私で……だからそのままの私で、また前を向いて歩いていきたいなって」
やよい「これから先、私がどういう風になるのかはまだ分からないけど……。でも、たとえ歩き方が変わっても、歩く道が変わっても……私の道を歩いていけるのは、私しかいないから……」
やよい「だから、全部が全部、すっきりしたわけでもないし、正直、胸の奥にまだつっかえたままみたいになってるところもあるけど……それでも、そういうのも全部込みで、私は前に進んでいきたい」
やよい「……そんな風に……思えたんだ」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
やよい「……えっ、と……」
高槻父「……そうか……」
やよい「お父さん……?」
高槻母「……他でもない、やよいがそう言うのなら……ねぇ、あなた……」
高槻父「……そうだな……うん、そうだな……」
やよい「あ、ええと……ご、ごめんね……お父さんもお母さんも、私のために色々してくれてたのに、その……」
高槻父「……何を言ってるんだ、やよい」
やよい「えっ?」
高槻父「前に言っただろう? 『何があっても、お父さんとお母さんは、絶対にやよいの味方だから』って」
やよい「……お父さん……」
高槻父「だから、やよいがそう決めたのなら……お父さんとお母さんは、もう何も言うことはないよ」
やよい「! ……うん、ありがとう」
高槻母「でも、やよい……何かあったの?」
やよい「えっ?」
高槻母「いや、その……心境の変化というか、きっかけみたいなのが……」
やよい「ああ……うん。えっとね……」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
やよい「……結局は……何があっても、『私は私なんだ』ってこと……かな」
高槻父「……それは……?」
やよい「うん。なんていうか、アイドルであっても、そうじゃなくても……『私は私なんだ』って」
高槻母「…………」
やよい「765プロを辞めても、アイドルじゃなくなっても……私は、やっぱり私のままで。でも、今までのことが、無かったことになるわけでもなくて」
やよい「これまでのこと全部含めて、それが今の私で……だからそのままの私で、また前を向いて歩いていきたいなって」
やよい「これから先、私がどういう風になるのかはまだ分からないけど……。でも、たとえ歩き方が変わっても、歩く道が変わっても……私の道を歩いていけるのは、私しかいないから……」
やよい「だから、全部が全部、すっきりしたわけでもないし、正直、胸の奥にまだつっかえたままみたいになってるところもあるけど……それでも、そういうのも全部込みで、私は前に進んでいきたい」
やよい「……そんな風に……思えたんだ」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
319: 2014/06/07(土) 23:16:12.13 ID:OYsR3NfE0
高槻父「……分かった」
やよい「お父さん……」
高槻父「やよいは、やよいの思うように生きなさい。それがきっと、正しい道につながるはずだから」
やよい「……うん! あ、それから……」
高槻父「ん?」
やよい「……えっと、今すぐにってわけにはいかないけど……私、高校に行けたら、ちゃんとアルバイトとかもするから。そしたらまた、家にもお金、入れるようにするから……」
高槻父「……やよい」
やよい「? はい」
高槻父「……お前はもう、そんな心配はしなくていい」
やよい「えっ。で、でも……」
高槻父「……大丈夫だ。それくらい、お父さんがなんとかしてみせる。それにやよいは、勉強を頑張るんだろ?」
やよい「……うん」
高槻父「なら、まずは自分の決めたことをしっかりやりなさい。今はそれで十分だから。……な?」
やよい「……うん。わかった!」
高槻父「……よし。じゃあ、今日はもう寝なさい。……765プロとのことは、明日、弁護士の先生に連絡して、すぐに終わらせてもらうようにするから」
やよい「うん! ありがとう! じゃあおやすみなさい! お父さん! お母さん!」
高槻父「ああ、お休み」
高槻母「お休みなさい、やよい」
ガララ…
高槻父「…………」
高槻母「…………」
高槻父「……子どもっていうのは、知らないうちに……成長しているもんなのかもな」
高槻母「……そうね……」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
高槻父「……結局……『765プロの奴らに謝罪させてやりたい』っていうのは……『やよいの為だ』と自分に言い聞かせていただけで……俺のエゴでしか、なかったのかもな」
高槻母「……そうかも、しれないわね」
高槻父「…………」
高槻母「でも……親っていうのは、そういうものよ」
高槻父「……そうか」
高槻母「……そうよ」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
やよい「お父さん……」
高槻父「やよいは、やよいの思うように生きなさい。それがきっと、正しい道につながるはずだから」
やよい「……うん! あ、それから……」
高槻父「ん?」
やよい「……えっと、今すぐにってわけにはいかないけど……私、高校に行けたら、ちゃんとアルバイトとかもするから。そしたらまた、家にもお金、入れるようにするから……」
高槻父「……やよい」
やよい「? はい」
高槻父「……お前はもう、そんな心配はしなくていい」
やよい「えっ。で、でも……」
高槻父「……大丈夫だ。それくらい、お父さんがなんとかしてみせる。それにやよいは、勉強を頑張るんだろ?」
やよい「……うん」
高槻父「なら、まずは自分の決めたことをしっかりやりなさい。今はそれで十分だから。……な?」
やよい「……うん。わかった!」
高槻父「……よし。じゃあ、今日はもう寝なさい。……765プロとのことは、明日、弁護士の先生に連絡して、すぐに終わらせてもらうようにするから」
やよい「うん! ありがとう! じゃあおやすみなさい! お父さん! お母さん!」
高槻父「ああ、お休み」
高槻母「お休みなさい、やよい」
ガララ…
高槻父「…………」
高槻母「…………」
高槻父「……子どもっていうのは、知らないうちに……成長しているもんなのかもな」
高槻母「……そうね……」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
高槻父「……結局……『765プロの奴らに謝罪させてやりたい』っていうのは……『やよいの為だ』と自分に言い聞かせていただけで……俺のエゴでしか、なかったのかもな」
高槻母「……そうかも、しれないわね」
高槻父「…………」
高槻母「でも……親っていうのは、そういうものよ」
高槻父「……そうか」
高槻母「……そうよ」
高槻父「…………」
高槻母「…………」
323: 2014/06/07(土) 23:58:00.51 ID:OYsR3NfE0
~翌日・○×法律事務所~
プルルルル……ガチャッ
事務員「はい、○×法律事務所です。……あ、はい。いつもお世話になっております。はい、少々お待ち下さい」ピッ
事務員「……先生」
弁護士「ん?」
事務員「1番に、高槻さんからです。お父さんの方」
弁護士「高槻さん? ……えらく早いな」ピッ
弁護士「はい、もしもし。弁護士の○○です」
弁護士「ええ、昨日の件ですかね。ええ、はい……えっ、そうですか」
弁護士「はい……はい……。えっとじゃあ、謝罪文言とかも……」
弁護士「あ、そうですか。……ええ、分かりました。はい、それではその内容で……はい」
弁護士「ええ、では私の方で和解条項の文案を作りますので、またすぐにお送り致しますね」
弁護士「はい、はい。……いえいえ、とんでもないです。……ええ、それではまた……はい。失礼します」ガチャッ
弁護士「…………」
事務員「……先生? 高槻さん、何て……」
弁護士「……合意、するってさ。250で」
事務員「えっ! 昨日の今日で、もうですか?」
弁護士「ああ。まさに急転直下だよ。流石に驚いたな……」
事務員「じゃあ、あの、謝罪の件とかは……?」
弁護士「ああ、もういいってさ。とにかくもう、早くこの紛争を終わらせたいそうだ」
事務員「へぇ~……あんなに、謝罪にこだわってたのに……じゃあ結局、最後はやっぱりお金だった、ってことなんですかね?」
弁護士「うん、まあ……そういうことなんだろうな」
事務員「なんていうか……いっつも最後はこうなるんですよね。『お金じゃないんです!』って言う人に限って、最後は結局お金、っていう……」
弁護士「まあねえ。なんだかんだ言ったって、『一回の土下座と100万円のお金、さあどっちか選べ』って目の前でちらつかされたら、やっぱり後者を選んじゃうもんだよ。人間って」
事務員「……なんか、ちょっと寂しい気もしますね」
弁護士「ま、それを言っても仕方ないさ。……ただ、どうせなら、もうちょっと上げさせたかったけどな。あの社長の電話の時の態度からすると、多分300はいけたと思うし」
事務員「あー……それは惜しかったですね」
弁護士「まあ、依頼者が『それでいい』って言ってる以上、こっちはそれで進めるだけさ。……さて、じゃあちゃっちゃと和解条項作っちまうかな」
プルルルル……ガチャッ
事務員「はい、○×法律事務所です。……あ、はい。いつもお世話になっております。はい、少々お待ち下さい」ピッ
事務員「……先生」
弁護士「ん?」
事務員「1番に、高槻さんからです。お父さんの方」
弁護士「高槻さん? ……えらく早いな」ピッ
弁護士「はい、もしもし。弁護士の○○です」
弁護士「ええ、昨日の件ですかね。ええ、はい……えっ、そうですか」
弁護士「はい……はい……。えっとじゃあ、謝罪文言とかも……」
弁護士「あ、そうですか。……ええ、分かりました。はい、それではその内容で……はい」
弁護士「ええ、では私の方で和解条項の文案を作りますので、またすぐにお送り致しますね」
弁護士「はい、はい。……いえいえ、とんでもないです。……ええ、それではまた……はい。失礼します」ガチャッ
弁護士「…………」
事務員「……先生? 高槻さん、何て……」
弁護士「……合意、するってさ。250で」
事務員「えっ! 昨日の今日で、もうですか?」
弁護士「ああ。まさに急転直下だよ。流石に驚いたな……」
事務員「じゃあ、あの、謝罪の件とかは……?」
弁護士「ああ、もういいってさ。とにかくもう、早くこの紛争を終わらせたいそうだ」
事務員「へぇ~……あんなに、謝罪にこだわってたのに……じゃあ結局、最後はやっぱりお金だった、ってことなんですかね?」
弁護士「うん、まあ……そういうことなんだろうな」
事務員「なんていうか……いっつも最後はこうなるんですよね。『お金じゃないんです!』って言う人に限って、最後は結局お金、っていう……」
弁護士「まあねえ。なんだかんだ言ったって、『一回の土下座と100万円のお金、さあどっちか選べ』って目の前でちらつかされたら、やっぱり後者を選んじゃうもんだよ。人間って」
事務員「……なんか、ちょっと寂しい気もしますね」
弁護士「ま、それを言っても仕方ないさ。……ただ、どうせなら、もうちょっと上げさせたかったけどな。あの社長の電話の時の態度からすると、多分300はいけたと思うし」
事務員「あー……それは惜しかったですね」
弁護士「まあ、依頼者が『それでいい』って言ってる以上、こっちはそれで進めるだけさ。……さて、じゃあちゃっちゃと和解条項作っちまうかな」
324: 2014/06/08(日) 00:48:47.05 ID:c5OVUfhp0
~数日後・765プロ事務所・社長室~
社長「……というわけで、先方から、和解条項の文案が送られてきた。……それが、これだ」スッ
律子「……解決金として250万円の支払い……そして今後、名目の如何を問わず、うちとプロデューサーに対する一切の金銭的請求を行わない……」
小鳥「……プロデューサーさんに対する、刑事告訴や被害届の提出等も一切行わない、っていうのも……ちゃんと、入ってますね」
P「……ってことは、これで……」
社長「うむ。この内容で問題無ければ、すぐにでも和解してしまおうと思うが……どうかね?」
律子「問題なんて、あるはずないです。そもそもこれ、こっちが出した案そのままですし」
小鳥「私も、律子さんと同じ意見です」
P「……お、俺も、この内容で和解してもらえれば、と思います。社長」
社長「うむ。では、その方向で進めるとしよう。そしてこれで、この件は完全に解決となるな。いやあ、良かった……本当に」
律子「しかも和解金額も、こちらの想定金額より低くて済んだわけですから……本当、言うこと無しですね」
小鳥「それにこれで、この件自体、他の子たちに知られずに済みますし……」
社長「ああ……本当に良かった。肩の荷が下りた気分だよ」
P(……よ、良かった……本当に……良かった……)フラッ
律子「っと! ぷ、プロデューサー! 大丈夫ですか!?」ガシッ
P「あ、ああ……すまん律子、ちょっと気が抜けてしまって……」
律子「もう……しっかりして下さいよ」
社長「はっはっは。まあ無理も無い。彼にとっては、なかなか気の休まる時が無かっただろうからね」
P「はは、本当ですよ、もう……いつ警察が家に来たりするんじゃないかって思ったら、なかなか夜も寝付けなくって……」
律子「……プロデューサーって、案外小心者なんですね」
P「……あのなあ、律子。そうやって他人事みたいに言うけど、いざ自分が逮捕されたりするかもしれないって思ったら……」
小鳥「……でも……」
P「……え?」
律子「? 小鳥さん?」
社長「どうかしたのかね? 音無君」
小鳥「……これでもう、やよいちゃんは……完全に、うちとは関係が無くなっちゃうんですよね……」
P「!」
律子「あっ……」
社長「それは……まあ、そうだな……」
P「…………」
小鳥「……寂しいですけど……仕方、無いですよね……」
律子「……小鳥さん……」
P「…………」
社長「……というわけで、先方から、和解条項の文案が送られてきた。……それが、これだ」スッ
律子「……解決金として250万円の支払い……そして今後、名目の如何を問わず、うちとプロデューサーに対する一切の金銭的請求を行わない……」
小鳥「……プロデューサーさんに対する、刑事告訴や被害届の提出等も一切行わない、っていうのも……ちゃんと、入ってますね」
P「……ってことは、これで……」
社長「うむ。この内容で問題無ければ、すぐにでも和解してしまおうと思うが……どうかね?」
律子「問題なんて、あるはずないです。そもそもこれ、こっちが出した案そのままですし」
小鳥「私も、律子さんと同じ意見です」
P「……お、俺も、この内容で和解してもらえれば、と思います。社長」
社長「うむ。では、その方向で進めるとしよう。そしてこれで、この件は完全に解決となるな。いやあ、良かった……本当に」
律子「しかも和解金額も、こちらの想定金額より低くて済んだわけですから……本当、言うこと無しですね」
小鳥「それにこれで、この件自体、他の子たちに知られずに済みますし……」
社長「ああ……本当に良かった。肩の荷が下りた気分だよ」
P(……よ、良かった……本当に……良かった……)フラッ
律子「っと! ぷ、プロデューサー! 大丈夫ですか!?」ガシッ
P「あ、ああ……すまん律子、ちょっと気が抜けてしまって……」
律子「もう……しっかりして下さいよ」
社長「はっはっは。まあ無理も無い。彼にとっては、なかなか気の休まる時が無かっただろうからね」
P「はは、本当ですよ、もう……いつ警察が家に来たりするんじゃないかって思ったら、なかなか夜も寝付けなくって……」
律子「……プロデューサーって、案外小心者なんですね」
P「……あのなあ、律子。そうやって他人事みたいに言うけど、いざ自分が逮捕されたりするかもしれないって思ったら……」
小鳥「……でも……」
P「……え?」
律子「? 小鳥さん?」
社長「どうかしたのかね? 音無君」
小鳥「……これでもう、やよいちゃんは……完全に、うちとは関係が無くなっちゃうんですよね……」
P「!」
律子「あっ……」
社長「それは……まあ、そうだな……」
P「…………」
小鳥「……寂しいですけど……仕方、無いですよね……」
律子「……小鳥さん……」
P「…………」
325: 2014/06/08(日) 01:15:15.13 ID:c5OVUfhp0
社長「まあ……高槻君のことは確かに残念だが……こればっかりはもう、致し方あるまい」
律子「そう……ですね……」
小鳥「…………」
P「…………」
社長「いくら和解ができるとはいっても、それはあくまで、『今生じている紛争状態を解消することができる』というに過ぎん。……決して、『紛争が起きる前の状態』にまで、事態を戻すことができる、ということではないからね」
律子「……となると、流石にもう……言わないといけないですよね。他の子たちにも……」
小鳥「そうですよね……いつまでも『長期休暇』ってわけにもいかないでしょうし……」
P「…………」
社長「……うむ。だがまあ今は、和解の成立が優先だ。無事に和解が成立し、この件が完全に解決となった後で……他のアイドル諸君に、高槻君のことを伝えるとしよう」
律子「……分かりました」
小鳥「……気、重いですね……」
P「…………」
P(そうか……そうだよな……)
P(俺自身はこれで良かったと思ったけど……やよいは……)
P(やよいはもう、この事務所には……)
P(…………)
P(……でも、今更もう、俺にできることなんて……)
P「…………」
律子「……プロデューサー?」
P「……え?」
律子「あ、いや……戻らないんですか? 事務室」
P「え? あ、ああ……事務室ね。戻るよ、うん……」
律子「…………?」
律子「そう……ですね……」
小鳥「…………」
P「…………」
社長「いくら和解ができるとはいっても、それはあくまで、『今生じている紛争状態を解消することができる』というに過ぎん。……決して、『紛争が起きる前の状態』にまで、事態を戻すことができる、ということではないからね」
律子「……となると、流石にもう……言わないといけないですよね。他の子たちにも……」
小鳥「そうですよね……いつまでも『長期休暇』ってわけにもいかないでしょうし……」
P「…………」
社長「……うむ。だがまあ今は、和解の成立が優先だ。無事に和解が成立し、この件が完全に解決となった後で……他のアイドル諸君に、高槻君のことを伝えるとしよう」
律子「……分かりました」
小鳥「……気、重いですね……」
P「…………」
P(そうか……そうだよな……)
P(俺自身はこれで良かったと思ったけど……やよいは……)
P(やよいはもう、この事務所には……)
P(…………)
P(……でも、今更もう、俺にできることなんて……)
P「…………」
律子「……プロデューサー?」
P「……え?」
律子「あ、いや……戻らないんですか? 事務室」
P「え? あ、ああ……事務室ね。戻るよ、うん……」
律子「…………?」
328: 2014/06/08(日) 02:24:06.85 ID:c5OVUfhp0
P(……その後すぐに、社長は弁護士と連絡を取り……三日後には、自ら弁護士の事務所に赴いて、和解を成立させてきた)
P(解決金の250万円については、社長が和解成立時にその全額を現金で支払ったため、後に何らかの債務が残ったりすることもなく……これで、この件は完全に解決となった)
P(そして今日は、その翌日……いよいよ、やよいが765プロを辞めたという事実を、皆に伝えなければならない日だ)
P(勿論、本当の理由は伏せたままにして、あくまでも、『やよいが個人的な理由で事務所を辞めた』という体で伝えることとなっているが……)
P(それで果たして、皆の納得が得られるのだろうか……? 特に、伊織とか……)
P(不安が胸中を渦巻く中、遂に『その時』がやってきた――……)
~765プロ事務所・事務室~
社長「えー……今日、皆に集まってもらったのは、他でもない。……高槻君のことについてだ」
アイドル一同「…………」
社長「……まあ、率直に言うと……長期休暇中だった高槻君だが……実はこのまま、事務所を辞めることとなった」
アイドル一同「! …………」
社長「……諸君らが驚くのは、百も承知だ。また、すぐに納得できないのも、当然の事だと思う。……しかし、前から伝えているように、このことは高槻君の内面……いわゆるプライバシーに、深く関わる問題なのだ。ゆえに、私の口からでも、その理由を君たちに伝えることはできない」
社長「そしてまた、その理由について、高槻君に直接尋ねるようなことも……控えてもらいたい。これは、私からのお願いだ」
社長「……高槻君は高槻君で、また新しい、自分の人生を歩み始めていることだと思う。だからどうか……そう、君たちが、高槻君の幸せを願ってくれるのなら……どうかこの件について、彼女を追及したりせずに、そっとしておいてやってほしい。……この通りだ」スッ
律子「! しゃ、社長……」
小鳥「…………!」
P(……社長が、頭を……って、お、俺も下げた方がいいんだろうか……?)
春香「……頭を上げてください、社長」
社長「! ……天海君」
春香「……心配して頂かなくても、私達……そんなことはしません」
P「……春香……」
美希「……まあ、ショックはショックだったけど……全く予想してなかった、ってわけじゃないしね」
P「美希。それは……?」
響「……実は自分たち、なんとなく思ってたんだ。……やよいは多分、もうこの事務所には戻ってこないんだろうな、って……」
P「響……」
千早「……単に、高槻さんが長く休んでいるだけの頃は、そこまで考えてはいなかったんですけど……」
雪歩「伊織ちゃんから、その……今のやよいちゃんの様子、聞いて……」
P「……えっ。伊織から? どういうことだ? それ……?」
伊織「……その通りの意味よ。私、少し前に……やよいと会って、話をしたの」
P「えっ!」
社長「! そ……それは本当かね? 水瀬君」
伊織「……ええ、本当よ。……律子、ごめん。あのとき、家の用事でレッスン行けなくなったって言ったけど……あれ、嘘だったの」
律子「え!? ど……どういうことよ? 伊織?」
伊織「私、あの日……やよいの様子を見に行ってたのよ」
小鳥「やよいちゃんの……?」
伊織「……ええ。と言っても、本当に文字通り、様子を見るだけのつもりだった。やよいの姿を一目見たら、それで帰ろうと思ってたの。……本当よ」
P「……それで?」
P(解決金の250万円については、社長が和解成立時にその全額を現金で支払ったため、後に何らかの債務が残ったりすることもなく……これで、この件は完全に解決となった)
P(そして今日は、その翌日……いよいよ、やよいが765プロを辞めたという事実を、皆に伝えなければならない日だ)
P(勿論、本当の理由は伏せたままにして、あくまでも、『やよいが個人的な理由で事務所を辞めた』という体で伝えることとなっているが……)
P(それで果たして、皆の納得が得られるのだろうか……? 特に、伊織とか……)
P(不安が胸中を渦巻く中、遂に『その時』がやってきた――……)
~765プロ事務所・事務室~
社長「えー……今日、皆に集まってもらったのは、他でもない。……高槻君のことについてだ」
アイドル一同「…………」
社長「……まあ、率直に言うと……長期休暇中だった高槻君だが……実はこのまま、事務所を辞めることとなった」
アイドル一同「! …………」
社長「……諸君らが驚くのは、百も承知だ。また、すぐに納得できないのも、当然の事だと思う。……しかし、前から伝えているように、このことは高槻君の内面……いわゆるプライバシーに、深く関わる問題なのだ。ゆえに、私の口からでも、その理由を君たちに伝えることはできない」
社長「そしてまた、その理由について、高槻君に直接尋ねるようなことも……控えてもらいたい。これは、私からのお願いだ」
社長「……高槻君は高槻君で、また新しい、自分の人生を歩み始めていることだと思う。だからどうか……そう、君たちが、高槻君の幸せを願ってくれるのなら……どうかこの件について、彼女を追及したりせずに、そっとしておいてやってほしい。……この通りだ」スッ
律子「! しゃ、社長……」
小鳥「…………!」
P(……社長が、頭を……って、お、俺も下げた方がいいんだろうか……?)
春香「……頭を上げてください、社長」
社長「! ……天海君」
春香「……心配して頂かなくても、私達……そんなことはしません」
P「……春香……」
美希「……まあ、ショックはショックだったけど……全く予想してなかった、ってわけじゃないしね」
P「美希。それは……?」
響「……実は自分たち、なんとなく思ってたんだ。……やよいは多分、もうこの事務所には戻ってこないんだろうな、って……」
P「響……」
千早「……単に、高槻さんが長く休んでいるだけの頃は、そこまで考えてはいなかったんですけど……」
雪歩「伊織ちゃんから、その……今のやよいちゃんの様子、聞いて……」
P「……えっ。伊織から? どういうことだ? それ……?」
伊織「……その通りの意味よ。私、少し前に……やよいと会って、話をしたの」
P「えっ!」
社長「! そ……それは本当かね? 水瀬君」
伊織「……ええ、本当よ。……律子、ごめん。あのとき、家の用事でレッスン行けなくなったって言ったけど……あれ、嘘だったの」
律子「え!? ど……どういうことよ? 伊織?」
伊織「私、あの日……やよいの様子を見に行ってたのよ」
小鳥「やよいちゃんの……?」
伊織「……ええ。と言っても、本当に文字通り、様子を見るだけのつもりだった。やよいの姿を一目見たら、それで帰ろうと思ってたの。……本当よ」
P「……それで?」
333: 2014/06/08(日) 09:50:51.33 ID:027Aual80
伊織「そしたら、思わぬ形でやよいと鉢合わせちゃって……。私、逃げようとしたんだけど、追いつかれちゃって」
P「…………」
伊織「そしてやよいの方から、『ちょっとだけお話しよう』って言ってきたから、それで……」
社長「で、では……高槻君自身から、聞いたのかね? その……」
伊織「いいえ。私の方から、最初に言ったの。『やよいが休んでいる理由を聞く気はない。だからやよいも言いたくないことは言わなくていい』って。……だから結局、その部分については何も聞いてないわ。今でもそうよ」
社長「そ、そうか……」
伊織「でもね。私……久しぶりにやよいと話して、実はすっごく安心したの。そりゃまあ確かに、前と比べたらちょっと元気無かったようにも思ったけど……。でもほとんど、今まで通りのやよいだったから。しばらく会えてなかったけど、それでも、あの子があの子のままでいてくれたことが、何より私は嬉しかった」
律子「伊織……」
P「…………」
伊織「だから私、そのときに言ったの。どこにいようが何をしていようが、やよいはやよいなんだって。だから事務所に来ていようが来ていまいが、やよいはずっと、私の親友なんだって」
伊織「……そしたらその後、やよいが、『私が765プロを辞めても?』って、聞いてきて……」
P「! …………」
伊織「私は当然、『もちろんよ』って答えたわ。でもそのときに、なんとなく、やよいはもうここを辞めるんだろうな、もう戻ってはこないんだろうな、って……そう感じたの」
小鳥「そういうこと……だったのね……」
伊織「正直言って、やよいがここを辞めちゃうのは寂しいけど……。でも、それでもやっぱり……やよいはやよいだし、私の親友であることに変わりはないわ。ただ会う場所が、事務所じゃなくて、やよいの家になったり、私の家になったりするだけのことよ」
P「……伊織……」
春香「私たちも、その……伊織にそう聞いたとき、やっぱりショックが大きかったんです。それまでずっと、『いつかやよいが事務所に戻ってくる日まで、皆で一緒に頑張ろう!』って……『約束』してましたから。……でも、やよいと一番仲の良い伊織が、自信満々に、『やよいは大丈夫。たとえやよいが事務所を辞めても、やよいと私たちとの関係は何も変わらない』って言うから……それなら……うん、大丈夫なのかなって」
真「確かに、やよいとボクたちは765プロでつながった仲間ですけど……でもだからといって、765プロにいなければつながれない、仲間じゃいられない、ってことには……なりませんから」
貴音「左様。たとえこの先何があろうとも、この絆は、決して揺らぐことはありません」
P「……お前ら……」
律子「……皆……」
美希「……ただまあ、本当にどうなるかは分からなかったから、とりあえず、社長さんからお話があるまではそのままにしとこうってことで、今のところ、やよいと直接連絡取ってるのは、でこちゃんだけなの」
伊織「でこちゃん言うな。といっても、私もメールを日に何度かやりとりしてる程度よ。またそろそろ、会いに行こうかなって思ってたところではあったけど」
亜美「まあ亜美たち的には、やよいっちがアイドル辞めちゃったとしても、実はそんなに関係無いんだよね」
真美「うんうん。やよいっちがカタギの世界に戻っちゃっても、真美たちとはずーっと、永遠に友達だかんね!」
P「カタギってお前……まあでも、そうか、うん……」
社長「……いやはや、まさか君たちの間でそんなことになっていたとはね……」
律子「予想外ではあったけど、まあ良かった……ですね」
小鳥「そうですね……やよいちゃんにとっても、皆との絆が、この事務所で得た、何よりの宝物でしょうし……」
千早「……私たちはもう……家族みたいなものですから。たとえ一時会えなくても、もはやそれくらいで、失われてしまうような関係ではありません」
あずさ「家族か……本当、そうよね。じゃあさしずめやよいちゃんは、皆の妹ってところかしら」
亜美「まあ亜美たちに対しては、結構お姉ちゃんっぽく振舞ってきたりもするけどねー」
真美「そーそー。やよいっちって、たまにすごくお姉ちゃんぶるよね!」
真「それは亜美と真美が変な事ばっかりするからでしょ……イタズラとかさ」
亜美「むー。まこちんだって、『真さん、お食事はもっとゆっくり食べた方が良いですよ』とか、よく注意されてたじゃんか!」
真美「そーだそーだ! この早食い大王!」
真「う、うるさいな……。しょうがないじゃないか、くせなんだから……」
雪歩「さ、三人とも……今はそういう話はちょっと……」
真・亜美・真美「雪歩(ゆきぴょん)は黙ってて!」
雪歩「あうぅ……ひどいぃ……」
P「…………」
伊織「そしてやよいの方から、『ちょっとだけお話しよう』って言ってきたから、それで……」
社長「で、では……高槻君自身から、聞いたのかね? その……」
伊織「いいえ。私の方から、最初に言ったの。『やよいが休んでいる理由を聞く気はない。だからやよいも言いたくないことは言わなくていい』って。……だから結局、その部分については何も聞いてないわ。今でもそうよ」
社長「そ、そうか……」
伊織「でもね。私……久しぶりにやよいと話して、実はすっごく安心したの。そりゃまあ確かに、前と比べたらちょっと元気無かったようにも思ったけど……。でもほとんど、今まで通りのやよいだったから。しばらく会えてなかったけど、それでも、あの子があの子のままでいてくれたことが、何より私は嬉しかった」
律子「伊織……」
P「…………」
伊織「だから私、そのときに言ったの。どこにいようが何をしていようが、やよいはやよいなんだって。だから事務所に来ていようが来ていまいが、やよいはずっと、私の親友なんだって」
伊織「……そしたらその後、やよいが、『私が765プロを辞めても?』って、聞いてきて……」
P「! …………」
伊織「私は当然、『もちろんよ』って答えたわ。でもそのときに、なんとなく、やよいはもうここを辞めるんだろうな、もう戻ってはこないんだろうな、って……そう感じたの」
小鳥「そういうこと……だったのね……」
伊織「正直言って、やよいがここを辞めちゃうのは寂しいけど……。でも、それでもやっぱり……やよいはやよいだし、私の親友であることに変わりはないわ。ただ会う場所が、事務所じゃなくて、やよいの家になったり、私の家になったりするだけのことよ」
P「……伊織……」
春香「私たちも、その……伊織にそう聞いたとき、やっぱりショックが大きかったんです。それまでずっと、『いつかやよいが事務所に戻ってくる日まで、皆で一緒に頑張ろう!』って……『約束』してましたから。……でも、やよいと一番仲の良い伊織が、自信満々に、『やよいは大丈夫。たとえやよいが事務所を辞めても、やよいと私たちとの関係は何も変わらない』って言うから……それなら……うん、大丈夫なのかなって」
真「確かに、やよいとボクたちは765プロでつながった仲間ですけど……でもだからといって、765プロにいなければつながれない、仲間じゃいられない、ってことには……なりませんから」
貴音「左様。たとえこの先何があろうとも、この絆は、決して揺らぐことはありません」
P「……お前ら……」
律子「……皆……」
美希「……ただまあ、本当にどうなるかは分からなかったから、とりあえず、社長さんからお話があるまではそのままにしとこうってことで、今のところ、やよいと直接連絡取ってるのは、でこちゃんだけなの」
伊織「でこちゃん言うな。といっても、私もメールを日に何度かやりとりしてる程度よ。またそろそろ、会いに行こうかなって思ってたところではあったけど」
亜美「まあ亜美たち的には、やよいっちがアイドル辞めちゃったとしても、実はそんなに関係無いんだよね」
真美「うんうん。やよいっちがカタギの世界に戻っちゃっても、真美たちとはずーっと、永遠に友達だかんね!」
P「カタギってお前……まあでも、そうか、うん……」
社長「……いやはや、まさか君たちの間でそんなことになっていたとはね……」
律子「予想外ではあったけど、まあ良かった……ですね」
小鳥「そうですね……やよいちゃんにとっても、皆との絆が、この事務所で得た、何よりの宝物でしょうし……」
千早「……私たちはもう……家族みたいなものですから。たとえ一時会えなくても、もはやそれくらいで、失われてしまうような関係ではありません」
あずさ「家族か……本当、そうよね。じゃあさしずめやよいちゃんは、皆の妹ってところかしら」
亜美「まあ亜美たちに対しては、結構お姉ちゃんっぽく振舞ってきたりもするけどねー」
真美「そーそー。やよいっちって、たまにすごくお姉ちゃんぶるよね!」
真「それは亜美と真美が変な事ばっかりするからでしょ……イタズラとかさ」
亜美「むー。まこちんだって、『真さん、お食事はもっとゆっくり食べた方が良いですよ』とか、よく注意されてたじゃんか!」
真美「そーだそーだ! この早食い大王!」
真「う、うるさいな……。しょうがないじゃないか、くせなんだから……」
雪歩「さ、三人とも……今はそういう話はちょっと……」
真・亜美・真美「雪歩(ゆきぴょん)は黙ってて!」
雪歩「あうぅ……ひどいぃ……」
335: 2014/06/08(日) 10:48:59.83 ID:027Aual80
響「……まったく、もー。皆揃うと、一気にうるさくなるんだから……」
貴音「真、賑やかで楽しき事ですね」
あずさ「……ふふっ。本当ね。また近いうちに、やよいちゃんも呼んで……皆で、集まったりしたいわね」
春香「あ! いいですねそれ! あずささん、名案ですよ、名案!」
美希「あはっ。やよいの送別会……じゃなくて、新たな門出を祝う的な集まりだね!」
春香「そうそう、そんな感じそんな感じ! それでさ、皆で料理とか持ち寄ってさ!」
響「あ、じゃあ自分、サーターアンダギー作ってくるぞ!」
貴音「響! その際には、是非私の分は多めに……!」
あずさ「もう、貴音ちゃんったら……。……でも、せっかくだから、私もちょっとだけたくさん、貰っちゃおうかしら? ねぇ、響ちゃん?」
響「うん、わかったぞ! 自分お手製のサーターアンダギーはカ口リー控えめだから、いくつ食べても太らないさ!」
あずさ「ふ、太……って、もう、響ちゃんったら……」
美希「ミキ的には、やっぱりおにぎりは欠かせないって思うな!」
春香「よーし! じゃあ早速日程決めて、準備の方を――……」
ワイワイ…… ガヤガヤ……
P「……な、なんか収集つかなくなってきたな……」
小鳥「……まあでも、これが本来のうちのあるべき姿、っていう気もしますけどね。……ふふっ」
P「はは……まあ、確かに……」
律子「…………」
社長「……あ、あー……ウォッホン。すまん諸君、ちょっといいかね」
春香「! あ、す、すみません!」
社長「……うむ。まあ、なんだ。君達が、高槻君のことで……私の想定以上に理解を示してくれたことは、本当に助かるよ。心から、感謝している」
伊織「……別に、お礼を言われるようなことじゃないわ。やよいの親友として、仲間として……当然の事よ」
社長「ああ……そうだね。まったくもって、その通りだ。……そして先ほど、水瀬君らが言っていたように、高槻君にとってもまた……この事務所を辞めたからといって、当然、君達との繋がりがなくなるわけではない。……だからこれからも、君達には、高槻君の良き友人として……彼女を支えていってもらいたい。……頼めるかね?」
アイドル一同「はい!」
社長「……うむ。良い返事だ。そしてこれから先は、各々、高槻君の分まで……アイドル活動に精進してくれたまえ。また私達としても、これまで以上に……君達を、万全の体制で支援していくつもりだ」
社長「……では、この話についてはこのへんで。それでは各自、本日のスケジュールに従って動いてくれたまえ」
アイドル一同「はい! ありがとうございました!」
P「…………」
貴音「真、賑やかで楽しき事ですね」
あずさ「……ふふっ。本当ね。また近いうちに、やよいちゃんも呼んで……皆で、集まったりしたいわね」
春香「あ! いいですねそれ! あずささん、名案ですよ、名案!」
美希「あはっ。やよいの送別会……じゃなくて、新たな門出を祝う的な集まりだね!」
春香「そうそう、そんな感じそんな感じ! それでさ、皆で料理とか持ち寄ってさ!」
響「あ、じゃあ自分、サーターアンダギー作ってくるぞ!」
貴音「響! その際には、是非私の分は多めに……!」
あずさ「もう、貴音ちゃんったら……。……でも、せっかくだから、私もちょっとだけたくさん、貰っちゃおうかしら? ねぇ、響ちゃん?」
響「うん、わかったぞ! 自分お手製のサーターアンダギーはカ口リー控えめだから、いくつ食べても太らないさ!」
あずさ「ふ、太……って、もう、響ちゃんったら……」
美希「ミキ的には、やっぱりおにぎりは欠かせないって思うな!」
春香「よーし! じゃあ早速日程決めて、準備の方を――……」
ワイワイ…… ガヤガヤ……
P「……な、なんか収集つかなくなってきたな……」
小鳥「……まあでも、これが本来のうちのあるべき姿、っていう気もしますけどね。……ふふっ」
P「はは……まあ、確かに……」
律子「…………」
社長「……あ、あー……ウォッホン。すまん諸君、ちょっといいかね」
春香「! あ、す、すみません!」
社長「……うむ。まあ、なんだ。君達が、高槻君のことで……私の想定以上に理解を示してくれたことは、本当に助かるよ。心から、感謝している」
伊織「……別に、お礼を言われるようなことじゃないわ。やよいの親友として、仲間として……当然の事よ」
社長「ああ……そうだね。まったくもって、その通りだ。……そして先ほど、水瀬君らが言っていたように、高槻君にとってもまた……この事務所を辞めたからといって、当然、君達との繋がりがなくなるわけではない。……だからこれからも、君達には、高槻君の良き友人として……彼女を支えていってもらいたい。……頼めるかね?」
アイドル一同「はい!」
社長「……うむ。良い返事だ。そしてこれから先は、各々、高槻君の分まで……アイドル活動に精進してくれたまえ。また私達としても、これまで以上に……君達を、万全の体制で支援していくつもりだ」
社長「……では、この話についてはこのへんで。それでは各自、本日のスケジュールに従って動いてくれたまえ」
アイドル一同「はい! ありがとうございました!」
P「…………」
336: 2014/06/08(日) 11:49:26.68 ID:027Aual80
~同日夜・765プロ事務所・事務室~
P「…………」
P(……なんか、奇跡的に全部上手くいったな……)
P(……刑事告訴もされずに済んだし、和解金も想定ラインより低く済んだし……まあ、といってもこれは、どのみち俺が払うわけじゃないんだけど……)
P(……それから、謝罪とかも結局しなくて済んだし……)
P(社長が言うには、謝罪をするとしても書面上の記載だけになるってことだったけど……もし相手側が、本気で対面の謝罪とかを要求してきていたら、どうなってたか分かんないもんな……)
P(まあ俺自身がする分には、土下座でも何でも全然良かったんだけど……流石に、社長に頭を下げてもらうのは申し訳無かったからな……)
P(……それとあと、他のアイドルの皆も……やよいのことを聞いても、パニックになることもなく、やよいが辞める理由を問い詰めてきたりすることもなく……本当に、ごく自然に受け容れてくれたしな)
P(……本当、良かった。本当……)
P(…………)
P(……まあ、でも……正直に言うと……うん)
P(……やっぱり、残ってるな……心の奥に)
P(まあ、当たり前か……。結局、やよいと直接話し合うこともないまま、真実がどうだったのかも不明なままで……すべてをうやむやにして、終わらせちゃったんだからな……)
P(765プロとしては、間違いなく、これがベストな解決方法だったと思うけど……)
P(……俺としては、どうだったんだ……?)
P(……あるいは、やよいにとっては……?)
P(…………)
P(……そもそも何で、やよい……というか多分、やよいの両親は……一転して、謝罪の話を取り下げてきたんだ?)
P(……伊織がやよいと会ったって話と、何か関係があったのか……?)
P(…………)
P「……………」ピッ
P(……やよいの番号、メールアドレス……もしまだ、使えるのなら……)
P(……って、何考えてんだ俺。せっかく和解したのに、今ここで俺がいきなり、やよいに直接連絡なんかしたら……絶対、やばいことになるだろ)
P(…………)
P(……もし仮に、今後俺がやよいと話をするとしたら……まずはやよいの両親を通すのが筋、だよな……)
P(事件としてはもう和解で終わってるから、向こうの弁護士を通す必要までは無いと思うし……うん)
P(……まあ、今すぐどうこうってわけじゃないにしても、一応、両親の連絡先くらいは控えとこうかな……。やよいが辞めた以上、そのうちデータも廃棄されるだろうし……)
P「……えっと、確かこのあたりに……」ガサガサ
P「? あれ? おかしいな……。音無さん、配置いじったのかな……」
律子「―――探し物はこれですか?」
P「!?」バッ
律子「……どーも」
P「律子……? お前、さっき帰ったんじゃ……っていうか、そのファイル……」
律子「……ええ。お察しの通り、うちのアイドル達と、そのご家族の連絡先が書いてあるファイルです」
P「! …………」
律子「当然、まだやよいとそのご家族のデータも入ったままです。……近々、廃棄する予定ではありますが」
P「……何で……」
律子「……すみません。一瞬帰ったふりをして……あなたの挙動を観てたんです」
P「! …………」
P「…………」
P(……なんか、奇跡的に全部上手くいったな……)
P(……刑事告訴もされずに済んだし、和解金も想定ラインより低く済んだし……まあ、といってもこれは、どのみち俺が払うわけじゃないんだけど……)
P(……それから、謝罪とかも結局しなくて済んだし……)
P(社長が言うには、謝罪をするとしても書面上の記載だけになるってことだったけど……もし相手側が、本気で対面の謝罪とかを要求してきていたら、どうなってたか分かんないもんな……)
P(まあ俺自身がする分には、土下座でも何でも全然良かったんだけど……流石に、社長に頭を下げてもらうのは申し訳無かったからな……)
P(……それとあと、他のアイドルの皆も……やよいのことを聞いても、パニックになることもなく、やよいが辞める理由を問い詰めてきたりすることもなく……本当に、ごく自然に受け容れてくれたしな)
P(……本当、良かった。本当……)
P(…………)
P(……まあ、でも……正直に言うと……うん)
P(……やっぱり、残ってるな……心の奥に)
P(まあ、当たり前か……。結局、やよいと直接話し合うこともないまま、真実がどうだったのかも不明なままで……すべてをうやむやにして、終わらせちゃったんだからな……)
P(765プロとしては、間違いなく、これがベストな解決方法だったと思うけど……)
P(……俺としては、どうだったんだ……?)
P(……あるいは、やよいにとっては……?)
P(…………)
P(……そもそも何で、やよい……というか多分、やよいの両親は……一転して、謝罪の話を取り下げてきたんだ?)
P(……伊織がやよいと会ったって話と、何か関係があったのか……?)
P(…………)
P「……………」ピッ
P(……やよいの番号、メールアドレス……もしまだ、使えるのなら……)
P(……って、何考えてんだ俺。せっかく和解したのに、今ここで俺がいきなり、やよいに直接連絡なんかしたら……絶対、やばいことになるだろ)
P(…………)
P(……もし仮に、今後俺がやよいと話をするとしたら……まずはやよいの両親を通すのが筋、だよな……)
P(事件としてはもう和解で終わってるから、向こうの弁護士を通す必要までは無いと思うし……うん)
P(……まあ、今すぐどうこうってわけじゃないにしても、一応、両親の連絡先くらいは控えとこうかな……。やよいが辞めた以上、そのうちデータも廃棄されるだろうし……)
P「……えっと、確かこのあたりに……」ガサガサ
P「? あれ? おかしいな……。音無さん、配置いじったのかな……」
律子「―――探し物はこれですか?」
P「!?」バッ
律子「……どーも」
P「律子……? お前、さっき帰ったんじゃ……っていうか、そのファイル……」
律子「……ええ。お察しの通り、うちのアイドル達と、そのご家族の連絡先が書いてあるファイルです」
P「! …………」
律子「当然、まだやよいとそのご家族のデータも入ったままです。……近々、廃棄する予定ではありますが」
P「……何で……」
律子「……すみません。一瞬帰ったふりをして……あなたの挙動を観てたんです」
P「! …………」
338: 2014/06/08(日) 12:51:18.59 ID:027Aual80
律子「……プロデューサー。あなた今……何をしようとしてたんです?」
P「……そ、それは……」
律子「……なんて、聞くまでもないですよね。大方、やよいの連絡先……はまあ、既に持ってるとして……そのご両親の連絡先を控えようとしていた……ってとこでしょう?」
P「! …………」
律子「……プロデューサー」
P「…………」
律子「今更、やよいのご両親に連絡を取って……何をするつもりだったんですか」
P「…………」
律子「謝罪でも、するつもりだったんですか?」
P「……別に、必ず連絡を取るって決めてたわけでもないさ。……ただ一応、念の為に……」
律子「……いいですか? プロデューサー」
P「? ……な、何だよ……?」
律子「この一件は……もう、終わってるんですよ」
P「…………」
律子「うちが金銭的負担をして、それで双方合意の上で……和解が成立したんですよ」
P「わ、分かってるよ……そんなことくらい」
律子「なのにあなたは、またこの紛争を蒸し返すつもりなんですか?」
P「む、蒸し返すなんて、そんな……俺はただ、その……やよい本人と、直接話もしないままに終わってしまったから、その……」
律子「……直接、当人同士で話をしてすっきりしたい、ってことですか?」
P「すっきりっていうか……まあその、なんていうか……今みたいに、心の中にわだかまりが残ったままっていうのも、良くないかなって……」
律子「……じゃあ、そこで認めるんですか? 『俺はあのとき、確かにやよいの胸を触った』って」
P「! そ、それは……」
律子「…………」
P「それは……できない、けど……」
律子「……じゃあ、あなたはやよいに、一体何を話すっていうんですか」
P「……それは……」
律子「……プロデューサー。確かにあなたは、やよいと会って、直接話をすることで……今、あなたが心に抱えているわだかまりとか、そういった類のものを……あるいは、すっきりさせることができるかもしれません」
P「…………」
律子「でも、やよいにとってもそうであるとは……限らないんですよ」
P「…………」
律子「真実がどうであれ、やよいは今でも、『プロデューサーに胸を触られた』という認識を持っている可能性が高いんです。そんなやよいが、あなたと会って、『俺は今でも、触ったのは胸ではなく、お腹だったと思っている』と……直接、あなたの口からそう告げられて、それで……やよいがまた傷ついたりしないって、言い切れますか?」
P「……それは……」
律子「あるいはそもそも、あなたがやよいのご両親に連絡を取ったこと自体によって、せっかく収束した紛争状態が再燃しないと、断言できますか?」
P「…………」
律子「……プロデューサー。もうこの件は、あなた一人の問題じゃないんですよ。ましてやそれが解決した今になって、あなたが独断で、やよいのご両親に連絡を取ったり、あるいはやよいと直接会って話をしたりする、なんていう行為は……もはや、あなたの自己満足でしかありません」
P「…………」
P「……そ、それは……」
律子「……なんて、聞くまでもないですよね。大方、やよいの連絡先……はまあ、既に持ってるとして……そのご両親の連絡先を控えようとしていた……ってとこでしょう?」
P「! …………」
律子「……プロデューサー」
P「…………」
律子「今更、やよいのご両親に連絡を取って……何をするつもりだったんですか」
P「…………」
律子「謝罪でも、するつもりだったんですか?」
P「……別に、必ず連絡を取るって決めてたわけでもないさ。……ただ一応、念の為に……」
律子「……いいですか? プロデューサー」
P「? ……な、何だよ……?」
律子「この一件は……もう、終わってるんですよ」
P「…………」
律子「うちが金銭的負担をして、それで双方合意の上で……和解が成立したんですよ」
P「わ、分かってるよ……そんなことくらい」
律子「なのにあなたは、またこの紛争を蒸し返すつもりなんですか?」
P「む、蒸し返すなんて、そんな……俺はただ、その……やよい本人と、直接話もしないままに終わってしまったから、その……」
律子「……直接、当人同士で話をしてすっきりしたい、ってことですか?」
P「すっきりっていうか……まあその、なんていうか……今みたいに、心の中にわだかまりが残ったままっていうのも、良くないかなって……」
律子「……じゃあ、そこで認めるんですか? 『俺はあのとき、確かにやよいの胸を触った』って」
P「! そ、それは……」
律子「…………」
P「それは……できない、けど……」
律子「……じゃあ、あなたはやよいに、一体何を話すっていうんですか」
P「……それは……」
律子「……プロデューサー。確かにあなたは、やよいと会って、直接話をすることで……今、あなたが心に抱えているわだかまりとか、そういった類のものを……あるいは、すっきりさせることができるかもしれません」
P「…………」
律子「でも、やよいにとってもそうであるとは……限らないんですよ」
P「…………」
律子「真実がどうであれ、やよいは今でも、『プロデューサーに胸を触られた』という認識を持っている可能性が高いんです。そんなやよいが、あなたと会って、『俺は今でも、触ったのは胸ではなく、お腹だったと思っている』と……直接、あなたの口からそう告げられて、それで……やよいがまた傷ついたりしないって、言い切れますか?」
P「……それは……」
律子「あるいはそもそも、あなたがやよいのご両親に連絡を取ったこと自体によって、せっかく収束した紛争状態が再燃しないと、断言できますか?」
P「…………」
律子「……プロデューサー。もうこの件は、あなた一人の問題じゃないんですよ。ましてやそれが解決した今になって、あなたが独断で、やよいのご両親に連絡を取ったり、あるいはやよいと直接会って話をしたりする、なんていう行為は……もはや、あなたの自己満足でしかありません」
P「…………」
341: 2014/06/08(日) 13:27:42.73 ID:027Aual80
律子「……すみません。少し、きつい言い方をしてしまって……」
P「……ああ、いや……いいんだ、うん。……確かに、律子の言う通りだよ」
律子「…………」
P「……うん、そうだよな。今更……だよな」
律子「……プロデューサー……」
P「……分かった。もう、この件は……胸の内にしまうことにするよ。それがきっと……一番良いんだと思う」
律子「……ええ。私も、それが良いと思います」スッ
P「! そのファイル……もう、元の場所に……戻すのか?」
律子「……ええ。色々言いましたけど、最後はやっぱり、私も、あなたのこと……信じてますから」
P「……律子……」
律子「それに大体、そんなところまで疑いだしたら……この先、一緒に仕事なんてやっていけないじゃないですか」
P「……はは。まあ、それもそうか」
律子「では、今度こそ本当に、失礼しますね。また明日!」
P「……ああ、お疲れ様。……っと、律子!」
律子「? はい?」クルッ
P「……あ、えっとその……ありがとう、な」
律子「……えっ」
P「ああいや、その、律子が今、ちゃんと止めてくれてなかったら、俺……また、皆に迷惑掛けるようなこと、しちゃってたかも、って……」
律子「……とんでもないです。私だって、逆の立場だったら、それくらいの気の迷いは、起こしていてもおかしくないと思いますし」
P「……律子……」
律子「だからそんな、全然、気にしないで下さい! あ、それと私の方も、色々ときつい言い方しちゃって、どうもすみませんでした!」ペコリ
P「あ、謝らないでくれよ……律子。そこまでされたら、俺の立つ瀬がない」
律子「えへへ……まあ一応、ケジメってやつですよ。……それじゃあプロデューサー! また明日、よろしくお願いしますね!」
P「……おう、また明日」
バタン
P「…………」
P(……自己満足、か……)
P(……確かに、そうだったのかもしれないな……)
P(……俺は多分、きっと、やよいに会って……)
P(…………)
P「……ああ、いや……いいんだ、うん。……確かに、律子の言う通りだよ」
律子「…………」
P「……うん、そうだよな。今更……だよな」
律子「……プロデューサー……」
P「……分かった。もう、この件は……胸の内にしまうことにするよ。それがきっと……一番良いんだと思う」
律子「……ええ。私も、それが良いと思います」スッ
P「! そのファイル……もう、元の場所に……戻すのか?」
律子「……ええ。色々言いましたけど、最後はやっぱり、私も、あなたのこと……信じてますから」
P「……律子……」
律子「それに大体、そんなところまで疑いだしたら……この先、一緒に仕事なんてやっていけないじゃないですか」
P「……はは。まあ、それもそうか」
律子「では、今度こそ本当に、失礼しますね。また明日!」
P「……ああ、お疲れ様。……っと、律子!」
律子「? はい?」クルッ
P「……あ、えっとその……ありがとう、な」
律子「……えっ」
P「ああいや、その、律子が今、ちゃんと止めてくれてなかったら、俺……また、皆に迷惑掛けるようなこと、しちゃってたかも、って……」
律子「……とんでもないです。私だって、逆の立場だったら、それくらいの気の迷いは、起こしていてもおかしくないと思いますし」
P「……律子……」
律子「だからそんな、全然、気にしないで下さい! あ、それと私の方も、色々ときつい言い方しちゃって、どうもすみませんでした!」ペコリ
P「あ、謝らないでくれよ……律子。そこまでされたら、俺の立つ瀬がない」
律子「えへへ……まあ一応、ケジメってやつですよ。……それじゃあプロデューサー! また明日、よろしくお願いしますね!」
P「……おう、また明日」
バタン
P「…………」
P(……自己満足、か……)
P(……確かに、そうだったのかもしれないな……)
P(……俺は多分、きっと、やよいに会って……)
P(…………)
344: 2014/06/08(日) 14:40:42.16 ID:027Aual80
P(……こうして、やよい及びその両親と、765プロとの間に起きたこの紛争は、一応の解決を迎えた)
P(この件は、最後まで公になることはなく、また、うちの他のアイドルたちにも知られることのないまま……関係者の記憶にのみ残る事件となった)
P(また、やよいが事務所を辞めてからも、ちょくちょく、他のアイドルの皆はやよいと会ったりしていたようだが……やよいが事務所を辞めた理由が分からない以上、皆も気を遣ってか、あまり事務所でやよいの話はしなくなっていた)
P(そして俺もまた、あの件を自分の胸のうちにしまっておこうと決めてからは……極力、やよいのことを考えないようにしていた)
P(……時折疼く、胸の奥に棘が刺さったような感触に、気が付かないふりをしながら……)
P(―――そうこうしている間にも時は流れ……気が付けば、やよいが事務所を辞めてから、もう7年もの歳月が経過していた)
P(幸いにも、あれ以来、対外的にも対内的にも、目立った問題などは起こらず、765プロとしても、年を追うごとに所属アイドルの数が増え……今では、50人以上のアイドルを抱える大所帯となっていた)
P(そして俺も、今では後輩のプロデューサー数名を統括する、総合プロデューサーという役職に就いている)
P(そのため、今はもう、俺自身が直接アイドルのプロデュースを担当することはほとんどなくなっていた)
P(そして今日……俺が直接プロデュースを担当していたアイドルのうち、最後の二人が引退を迎えた)
~765プロ事務所~
亜美「兄ちゃん兄ちゃん! 今日の亜美達の引退ライブ、どうだった~?」
真美「んっふっふ~。ばっちりちりちりせくちーだったしょ~?」
P「……ああ。二人とも本当に最高だったよ……ってこれ、ライブ直後にも言ったし、ここに戻ってくる途中の車内でも飽きるほど言ったと思うんだが……」
亜美「もー! 兄ちゃんのいけずー! こういうのは何回でも聞きたいのが、オトメゴコロってやつっしょー!?」
真美「そーだよもー! 兄ちゃんのニブチン!」
P「ああ、はいはい、悪かったって……」
亜美・真美「はいは一回!」
P「……はい」
小鳥「はい皆、どうもお疲れ様」コトッ
P「あ、音無さん。どうもありがとうございます」
亜美「ありがとピヨちゃん! あーでも、ピヨちゃんのお茶もこれで飲み納めかあ……」
真美「実に寂しくなりますなあ……」
小鳥「もう、そんなこと言わずに……またいつだって、事務所に遊びに来てくれていいんだからね?」
亜美「ホント? んじゃー、早速明日来よっか真美! ピヨちゃんのお仕事邪魔しにー!」
真美「お、いいじゃん亜美! 大さんせーっしょー!」
小鳥「ちょ、ちょっと、もう、二人とも……お手柔らかにね?」
P「……はぁ。まったく、お前らももう20歳になったんだから、もう少し落ち着きをだな……」
亜美「えー! 何言ってんのさ兄ちゃん! ハタチなんてまだまだコドモだよー!」
真美「そだよー! コドモコドモー! オトナ扱いはんたーい!」
P「ったく……昔はあんなに、子ども扱いされるの嫌がってたくせに……」
小鳥「ふふっ。……でも、やっぱり寂しくなりますね」
P「そうですね……。なんだかんだで、これで、俺が入社した時に在籍していたアイドルは、全員……引退しちゃいましたからね」
小鳥「……ですね……」
P(……正確に言うと、一人を除いて、だけど……)
P(この件は、最後まで公になることはなく、また、うちの他のアイドルたちにも知られることのないまま……関係者の記憶にのみ残る事件となった)
P(また、やよいが事務所を辞めてからも、ちょくちょく、他のアイドルの皆はやよいと会ったりしていたようだが……やよいが事務所を辞めた理由が分からない以上、皆も気を遣ってか、あまり事務所でやよいの話はしなくなっていた)
P(そして俺もまた、あの件を自分の胸のうちにしまっておこうと決めてからは……極力、やよいのことを考えないようにしていた)
P(……時折疼く、胸の奥に棘が刺さったような感触に、気が付かないふりをしながら……)
P(―――そうこうしている間にも時は流れ……気が付けば、やよいが事務所を辞めてから、もう7年もの歳月が経過していた)
P(幸いにも、あれ以来、対外的にも対内的にも、目立った問題などは起こらず、765プロとしても、年を追うごとに所属アイドルの数が増え……今では、50人以上のアイドルを抱える大所帯となっていた)
P(そして俺も、今では後輩のプロデューサー数名を統括する、総合プロデューサーという役職に就いている)
P(そのため、今はもう、俺自身が直接アイドルのプロデュースを担当することはほとんどなくなっていた)
P(そして今日……俺が直接プロデュースを担当していたアイドルのうち、最後の二人が引退を迎えた)
~765プロ事務所~
亜美「兄ちゃん兄ちゃん! 今日の亜美達の引退ライブ、どうだった~?」
真美「んっふっふ~。ばっちりちりちりせくちーだったしょ~?」
P「……ああ。二人とも本当に最高だったよ……ってこれ、ライブ直後にも言ったし、ここに戻ってくる途中の車内でも飽きるほど言ったと思うんだが……」
亜美「もー! 兄ちゃんのいけずー! こういうのは何回でも聞きたいのが、オトメゴコロってやつっしょー!?」
真美「そーだよもー! 兄ちゃんのニブチン!」
P「ああ、はいはい、悪かったって……」
亜美・真美「はいは一回!」
P「……はい」
小鳥「はい皆、どうもお疲れ様」コトッ
P「あ、音無さん。どうもありがとうございます」
亜美「ありがとピヨちゃん! あーでも、ピヨちゃんのお茶もこれで飲み納めかあ……」
真美「実に寂しくなりますなあ……」
小鳥「もう、そんなこと言わずに……またいつだって、事務所に遊びに来てくれていいんだからね?」
亜美「ホント? んじゃー、早速明日来よっか真美! ピヨちゃんのお仕事邪魔しにー!」
真美「お、いいじゃん亜美! 大さんせーっしょー!」
小鳥「ちょ、ちょっと、もう、二人とも……お手柔らかにね?」
P「……はぁ。まったく、お前らももう20歳になったんだから、もう少し落ち着きをだな……」
亜美「えー! 何言ってんのさ兄ちゃん! ハタチなんてまだまだコドモだよー!」
真美「そだよー! コドモコドモー! オトナ扱いはんたーい!」
P「ったく……昔はあんなに、子ども扱いされるの嫌がってたくせに……」
小鳥「ふふっ。……でも、やっぱり寂しくなりますね」
P「そうですね……。なんだかんだで、これで、俺が入社した時に在籍していたアイドルは、全員……引退しちゃいましたからね」
小鳥「……ですね……」
P(……正確に言うと、一人を除いて、だけど……)
346: 2014/06/08(日) 14:58:04.05 ID:027Aual80
ブブブ……
P「ん? メールか?」ピッ
P「……えっ……?」
小鳥「? どうかしました? プロデューサーさん?」
P「ああ、いえ……すみません。……ちょっと、外します」ガタッ
小鳥「? え、ええ……」
亜美「あれあれー? 兄ちゃんもしかしてー?」
真美「んっふっふ~。秘密のアレやコレですかな~?」
P「――――」
バタン
P「…………」
P(……亜美や真美の軽口に、応対している余裕は無かった)
P(……なぜならそのメールの差出人欄には……ありえないはずの名前が、表示されていたからだ)
P「……嘘、だろ……」
P(……しかし、何度目を凝らしても、何度受信画面を開き直しても――……それが目の錯覚や、液晶表示の不具合などでないことは明らかだった)
P(……俺は最後にもう一度、メールの差出人名を確認し……いつ以来になるのかすらも分からない、その名をようやく――……口にした)
P「…………やよい…………」
P「ん? メールか?」ピッ
P「……えっ……?」
小鳥「? どうかしました? プロデューサーさん?」
P「ああ、いえ……すみません。……ちょっと、外します」ガタッ
小鳥「? え、ええ……」
亜美「あれあれー? 兄ちゃんもしかしてー?」
真美「んっふっふ~。秘密のアレやコレですかな~?」
P「――――」
バタン
P「…………」
P(……亜美や真美の軽口に、応対している余裕は無かった)
P(……なぜならそのメールの差出人欄には……ありえないはずの名前が、表示されていたからだ)
P「……嘘、だろ……」
P(……しかし、何度目を凝らしても、何度受信画面を開き直しても――……それが目の錯覚や、液晶表示の不具合などでないことは明らかだった)
P(……俺は最後にもう一度、メールの差出人名を確認し……いつ以来になるのかすらも分からない、その名をようやく――……口にした)
P「…………やよい…………」
347: 2014/06/08(日) 14:58:59.83 ID:027Aual80
348: 2014/06/08(日) 15:05:46.08 ID:nuubsHBHo
ピヨは2X+7歳…
349: 2014/06/08(日) 15:07:23.92 ID:3aB7t4OH0
乙でした。
次回ラスト楽しみです。
次回ラスト楽しみです。
351: 2014/06/08(日) 15:33:24.42 ID:ob0gFRzXo
7年もアドレスを変えなかったのか…
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります