403: 2014/06/13(金) 01:18:15.63 ID:SGWkiagE0
前回:ζ*'ヮ')ζ『白と黒』
最初:やよい「はいたーっち!」 P「えいっ」ふにっ
~一週間後・765プロ事務所近くの公園~
P「……さて、と……」
P(……噴水を過ぎてすぐの、白いベンチ……)
P(……約束の時間までは、まだ15分ほどあるが……)
P(…………)
P(…………いた)
P「……やよい」
やよい「! ……プロデューサー」
P「…………」
やよい「…………」
P(そこに立っていたのは――……間違いなく、高槻やよいその人だった)
P(7年振りに見るその姿は、一瞬で、俺の脳内にある中学二年生のやよいのイメージと、実に見事に重なった)
P(しかしながらその顔立ちは、昔の面影を残しつつもしっかりと大人びていて、俺に確かな年月を感じさせた)
やよい「……久しぶり、ですね」
P「……ああ」
P(やよいの髪は、肩に少し掛かるくらいのセミロングで……その毛先には、ゆるくウェーブが掛かっていた)
P「……ツインテールじゃ、ないんだな」
やよい「はい。高校卒業と同時に、卒業しました」
P「……そっか」
やよい「はい」
P(服装は全体的に落ち着いた印象で……上は暖色系のカーディガン、下はややゆったりした感じのロングスカートを身に着けている)
P「……なんていうか……大人っぽくなったな」
やよい「そうですか?」
P「……うん。大人っぽくなった」
P(身長は……150センチ台前半、といったところだろうか。相変わらず小柄ではあるが、それでも、かつての姿から比べると、十分な成長が見てとれた)
やよい「プロデューサーも、ちょっとダンディになりましたね」
P「……それ、暗に老けたって言ってる?」
やよい「あはは。言ってないですよ」
P(いつ振りだろうか。……屈託のないやよいの笑顔は、ひどく懐かしさを感じさせた)
やよい「じゃあ、まあ、立ち話も何ですし……」
P「……ああ、そうだな」
P(玄関先で世間話をしていたかのようなノリで、俺とやよいは、並んでベンチに腰掛けた)
P(そうして座った俺達の間隔は……およそ1.5人分ほど)
P(……俺達の空白の7年間を、象徴しているかのようだった)
404: 2014/06/13(金) 01:47:08.36 ID:SGWkiagE0
P「…………」
やよい「…………」
P「……えっ、と……」
やよい「…………」
P「(……な、何か話さないと……)や、やよいは今……大学生か?」
やよい「はい。今、三年生です」
P「そ、そうか。じゃあ、就職活動とかしてるのか?」
やよい「いえ。私、今、教員試験目指して勉強中なんです」
P「! 教員試験、ってことはつまり……」
やよい「はい。……私、学校の先生になりたいんです」
P「先生か! いいなそれ、やよいにすっごく合ってるんじゃないか?」
やよい「そうですか?」
P「ああ。だってやよい、昔からよく弟さんや妹さんの面倒とか見てたし……」
やよい「あー……それは確かにあるかもです」
P「だろ? それにほら、覚えてるか? 昔、『生っすか』でも、幼稚園に出張して、子ども達と『スマイル体操』した……り……」
やよい「…………」
P「……あっ……」
やよい「…………」
P「……ご、ごめん……」
やよい「いえ……いいんです」
P「…………」
やよい「今日はそもそも……そういう話をしようと、思ってたんですから」
P「……やよい……」
やよい「…………」
やよい「…………」
P「……えっ、と……」
やよい「…………」
P「(……な、何か話さないと……)や、やよいは今……大学生か?」
やよい「はい。今、三年生です」
P「そ、そうか。じゃあ、就職活動とかしてるのか?」
やよい「いえ。私、今、教員試験目指して勉強中なんです」
P「! 教員試験、ってことはつまり……」
やよい「はい。……私、学校の先生になりたいんです」
P「先生か! いいなそれ、やよいにすっごく合ってるんじゃないか?」
やよい「そうですか?」
P「ああ。だってやよい、昔からよく弟さんや妹さんの面倒とか見てたし……」
やよい「あー……それは確かにあるかもです」
P「だろ? それにほら、覚えてるか? 昔、『生っすか』でも、幼稚園に出張して、子ども達と『スマイル体操』した……り……」
やよい「…………」
P「……あっ……」
やよい「…………」
P「……ご、ごめん……」
やよい「いえ……いいんです」
P「…………」
やよい「今日はそもそも……そういう話をしようと、思ってたんですから」
P「……やよい……」
やよい「…………」
405: 2014/06/13(金) 03:15:48.50 ID:SGWkiagE0
やよい「……プロデューサー」
P「……ん?」
やよい「……あれからもう、7年も経ったんですね」
P「! ……ああ、そうだな……」
やよい「私、最近まで……あの時のことは、ずっと……考えないようにしてたんです」
P「…………」
やよい「考えたところで、もうどうにもならないことだし……それよりは、前を向いて、自分の今の人生を、しっかり生きていった方が良いって……そう、思ってました」
P「…………」
やよい「でも、それでもやっぱり、心のどこかで、『それでいいの?』って声が……聞こえてたんです。『ちゃんと向き合わなくていいの?』って。……でも私はずっと、その声が、聞こえていないふりをしていました」
やよい「『もう終わったことなんだ』『もうどうしようもないことなんだ』って、自分に言い聞かせるようにして……胸の奥の方へ奥の方へと、ずっと、しまいこもうとしていました」
やよい「……そうやって誤魔化しているうちに、少しずつ、でも確実に時間は流れていって……。あの時のことも、段々、自分の中で過去の事になっていって。……次第に、思い出すことも少なくなって」
やよい「それでも時々、胸の奥のところが、ちくっと痛むような、そういう感触はあったんですけど……。でも、それにもなるべく気付かないふりをしながら……ずっと、やり過ごしていました」
P「…………」
やよい「……そして、私がそうやって日々を過ごしている間も、765プロの皆は、ずっと、アイドルとして頑張っていて……」
やよい「その一方で、皆、私が事務所を辞めた理由も知らないまま、そのことには一切触れずに、昔と同じように、私とちょくちょく会ってくれていて」
やよい「私、本当に嬉しかったんです。事務所を辞めても、皆と変わらずにつながっていられたことが」
やよい「しかも皆、私に気を遣って、あんまり仕事の話とか、事務所の話とかはしないようにしてくれていて。だから、ある程度月日が経って、一人、また一人と引退していくようになっても、皆、そういう話も、あまりしないようにしてくれていて……」
やよい「もちろん私は、テレビでも皆の事、観てましたから、誰がいつ引退するのかとか、事前に全部分かってたんですけど……それでも皆、決まって、私に引退した事を話してくれたのは……全部、事後報告の形ででした」
P「……そうだったのか」
やよい「はい。多分……私一人だけ、『引退』という形でアイドルを終えられなかったことを……気遣ってくれてたんだと思います」
P「…………」
やよい「でも、今年に入って、亜美と真美の引退ライブが告知されてから……『ああ、もうこれで亜美と真美が引退したら、私が事務所にいた頃のメンバーは全員引退なんだ』って思ったら、なんか、こう……『本当にこのままでいいのかな』って気が、すごくしてきて」
やよい「それで私、具体的なことは何も考えてなかったんですけど、とりあえず、亜美と真美に連絡して、『引退ライブのチケットちょうだい』って、頼んだんです」
P「えっ! じゃあやよい、お前……」
やよい「はい。私……一週間前の、亜美と真美の引退ライブ、会場で観てました。もちろん関係者席じゃなくて、一般席ですけど」
P「そうだったのか……」
やよい「それで、ステージの上の亜美と真美の姿を観て……。テレビでは、自分が事務所を辞めてからも、他の皆のステージ、よく観てましたけど、やっぱり、久しぶりに観た生のステージは全然違くて。亜美も真美も、すっごくキラキラしてて」
P「…………」
やよい「そんな二人を観て、私、思ったんです。『ああ、これで二人は何の悔いも無く、765プロを“卒業”できるんだろうな』って。そして『きっとこれまでに引退していった皆も、そうだったんだろうな』って」
やよい「それで私……ふと、思ったんです。……『やっぱり私も、765プロを“卒業”したい』って」
P「…………」
やよい「……7年前、中途半端な形で辞めちゃった765プロを……自分の中で、しっかり決着つけて、きちんと“卒業”したいって……そう、思ったんです」
P「……やよい……」
やよい「でもそのためには、7年前にやり残した、『宿題』に向き合わないといけなくて」
P「…………」
やよい「今更向き合ったところで、100点満点の解答なんかできない。でも、それでも、この『宿題』に真正面から向き合わない限り、多分私はずっと、765プロを“卒業”できないって……そう、思ったんです」
P「……じゃあそれで、あの日、俺にメールを……」
やよい「……はい。そうしないといけないって……思ったんです」
P「……なるほど、な……」
P「……ん?」
やよい「……あれからもう、7年も経ったんですね」
P「! ……ああ、そうだな……」
やよい「私、最近まで……あの時のことは、ずっと……考えないようにしてたんです」
P「…………」
やよい「考えたところで、もうどうにもならないことだし……それよりは、前を向いて、自分の今の人生を、しっかり生きていった方が良いって……そう、思ってました」
P「…………」
やよい「でも、それでもやっぱり、心のどこかで、『それでいいの?』って声が……聞こえてたんです。『ちゃんと向き合わなくていいの?』って。……でも私はずっと、その声が、聞こえていないふりをしていました」
やよい「『もう終わったことなんだ』『もうどうしようもないことなんだ』って、自分に言い聞かせるようにして……胸の奥の方へ奥の方へと、ずっと、しまいこもうとしていました」
やよい「……そうやって誤魔化しているうちに、少しずつ、でも確実に時間は流れていって……。あの時のことも、段々、自分の中で過去の事になっていって。……次第に、思い出すことも少なくなって」
やよい「それでも時々、胸の奥のところが、ちくっと痛むような、そういう感触はあったんですけど……。でも、それにもなるべく気付かないふりをしながら……ずっと、やり過ごしていました」
P「…………」
やよい「……そして、私がそうやって日々を過ごしている間も、765プロの皆は、ずっと、アイドルとして頑張っていて……」
やよい「その一方で、皆、私が事務所を辞めた理由も知らないまま、そのことには一切触れずに、昔と同じように、私とちょくちょく会ってくれていて」
やよい「私、本当に嬉しかったんです。事務所を辞めても、皆と変わらずにつながっていられたことが」
やよい「しかも皆、私に気を遣って、あんまり仕事の話とか、事務所の話とかはしないようにしてくれていて。だから、ある程度月日が経って、一人、また一人と引退していくようになっても、皆、そういう話も、あまりしないようにしてくれていて……」
やよい「もちろん私は、テレビでも皆の事、観てましたから、誰がいつ引退するのかとか、事前に全部分かってたんですけど……それでも皆、決まって、私に引退した事を話してくれたのは……全部、事後報告の形ででした」
P「……そうだったのか」
やよい「はい。多分……私一人だけ、『引退』という形でアイドルを終えられなかったことを……気遣ってくれてたんだと思います」
P「…………」
やよい「でも、今年に入って、亜美と真美の引退ライブが告知されてから……『ああ、もうこれで亜美と真美が引退したら、私が事務所にいた頃のメンバーは全員引退なんだ』って思ったら、なんか、こう……『本当にこのままでいいのかな』って気が、すごくしてきて」
やよい「それで私、具体的なことは何も考えてなかったんですけど、とりあえず、亜美と真美に連絡して、『引退ライブのチケットちょうだい』って、頼んだんです」
P「えっ! じゃあやよい、お前……」
やよい「はい。私……一週間前の、亜美と真美の引退ライブ、会場で観てました。もちろん関係者席じゃなくて、一般席ですけど」
P「そうだったのか……」
やよい「それで、ステージの上の亜美と真美の姿を観て……。テレビでは、自分が事務所を辞めてからも、他の皆のステージ、よく観てましたけど、やっぱり、久しぶりに観た生のステージは全然違くて。亜美も真美も、すっごくキラキラしてて」
P「…………」
やよい「そんな二人を観て、私、思ったんです。『ああ、これで二人は何の悔いも無く、765プロを“卒業”できるんだろうな』って。そして『きっとこれまでに引退していった皆も、そうだったんだろうな』って」
やよい「それで私……ふと、思ったんです。……『やっぱり私も、765プロを“卒業”したい』って」
P「…………」
やよい「……7年前、中途半端な形で辞めちゃった765プロを……自分の中で、しっかり決着つけて、きちんと“卒業”したいって……そう、思ったんです」
P「……やよい……」
やよい「でもそのためには、7年前にやり残した、『宿題』に向き合わないといけなくて」
P「…………」
やよい「今更向き合ったところで、100点満点の解答なんかできない。でも、それでも、この『宿題』に真正面から向き合わない限り、多分私はずっと、765プロを“卒業”できないって……そう、思ったんです」
P「……じゃあそれで、あの日、俺にメールを……」
やよい「……はい。そうしないといけないって……思ったんです」
P「……なるほど、な……」
414: 2014/06/13(金) 10:47:33.19 ID:DieLDiFg0
P「じゃあ、やよいがその……7年前にやり残していた『宿題』っていうのは……」
やよい「はい。プロデューサーと……あなたと、きちんと向き合って……話をすること、です」
P「…………」
やよい「…………」
P「……そう、だよな……」
やよい「……はい」
P「……実はさ」
やよい「? はい」
P「俺も、7年前……765プロと、やよいの方とで和解が成立した直後に……今のやよいと、同じことをしようとしていたんだ」
やよい「えっ」
P「……といっても、俺の場合はまだ揺れていて、そこまで確定的にそうしようって思ってたわけじゃなかったんだけどな」
やよい「…………」
P「……でも、律子に止められた」
やよい「……律子さんに、ですか?」
P「ああ。『もう事件は終わっているのに、今更、俺の独断でやよいと会ったりするのはただの自己満足だ』みたいな風に言われてさ。……ショックだったけど、でも実際、その通りだなって思って」
やよい「……じゃあ、それで……」
P「ああ。もう俺の方から何かをするのはやめよう。この一件は胸のうちにしまっておこうって……そう決めた」
やよい「…………」
P「だからその後は、やよいがそうしていたのと同じように、ずっと自分に言い聞かせていたよ。『もう終わったことだから』って。そうしてなるべく、もうあの時のことは考えないようにして……それでも時折、胸の奥が疼いたけど、それにも気付かないふりをしていた」
やよい「…………」
P「まあそれでも何度かは、衝動的に、やよいに連絡を取りたくなったこともあったんだけどな。やよい自身の連絡先は、ずっと俺の携帯に入ってたし」
やよい「! ……そうだったんですか」
P「ああ。でもその度に、律子に言われたことを思い出して、自分を抑えていたよ。……もう何もするな、これ以上何もしないのが一番なんだ、って」
やよい「…………」
P「……でも、一週間前、突然―――やよいから、メールが来て」
P「最初は本当に驚いたし、自分の目を疑った。正直、何が書かれているのか想像もつかなくて……なかなか、本文を開けなかったよ」
P「でも、いざ勇気を振り絞って、開いてみたら……7年前のやよいをそのまま大人にしたような感じの、温かみのある文章が目に飛び込んできて……すごく、ほっとした」
P「……ただ反面、迷いはあった。やよいは、『久しぶりに一度会ってお話がしたいです』って書いてくれてたけど……本当にそれに応じていいのか? って。それに応じることで、また結果的にやよいを傷つけることになったりしないか? って」
やよい「……プロデューサー……」
P「でも、そう思ってからすぐ、こうも思った。……『違う。俺が本当に心配しているのは、やよいを傷つけてしまうことじゃない』って」
P「……『自分が傷ついてしまうかもしれないのが、怖いだけだ』って……」
やよい「…………」
P「……そう思ってから、俺は、やよいに会おうと決めたんだ。たとえ傷ついてもいい。7年かけてやよいが出した答えがこれなら、俺にはそれに応じる義務がある、って……そう思ったから」
やよい「……プロデューサー……」
P「……なんて、かっこつけたこと言ってるけど……本当は、今でも怖いんだ。……心臓、ずっとバクバクしてるし」
やよい「! ふふっ……やだな、もう……そんなこと言わないで下さいよ。お話、しにくくなるじゃないですか」
P「はは……そうだな、ごめん」
やよい「はい。プロデューサーと……あなたと、きちんと向き合って……話をすること、です」
P「…………」
やよい「…………」
P「……そう、だよな……」
やよい「……はい」
P「……実はさ」
やよい「? はい」
P「俺も、7年前……765プロと、やよいの方とで和解が成立した直後に……今のやよいと、同じことをしようとしていたんだ」
やよい「えっ」
P「……といっても、俺の場合はまだ揺れていて、そこまで確定的にそうしようって思ってたわけじゃなかったんだけどな」
やよい「…………」
P「……でも、律子に止められた」
やよい「……律子さんに、ですか?」
P「ああ。『もう事件は終わっているのに、今更、俺の独断でやよいと会ったりするのはただの自己満足だ』みたいな風に言われてさ。……ショックだったけど、でも実際、その通りだなって思って」
やよい「……じゃあ、それで……」
P「ああ。もう俺の方から何かをするのはやめよう。この一件は胸のうちにしまっておこうって……そう決めた」
やよい「…………」
P「だからその後は、やよいがそうしていたのと同じように、ずっと自分に言い聞かせていたよ。『もう終わったことだから』って。そうしてなるべく、もうあの時のことは考えないようにして……それでも時折、胸の奥が疼いたけど、それにも気付かないふりをしていた」
やよい「…………」
P「まあそれでも何度かは、衝動的に、やよいに連絡を取りたくなったこともあったんだけどな。やよい自身の連絡先は、ずっと俺の携帯に入ってたし」
やよい「! ……そうだったんですか」
P「ああ。でもその度に、律子に言われたことを思い出して、自分を抑えていたよ。……もう何もするな、これ以上何もしないのが一番なんだ、って」
やよい「…………」
P「……でも、一週間前、突然―――やよいから、メールが来て」
P「最初は本当に驚いたし、自分の目を疑った。正直、何が書かれているのか想像もつかなくて……なかなか、本文を開けなかったよ」
P「でも、いざ勇気を振り絞って、開いてみたら……7年前のやよいをそのまま大人にしたような感じの、温かみのある文章が目に飛び込んできて……すごく、ほっとした」
P「……ただ反面、迷いはあった。やよいは、『久しぶりに一度会ってお話がしたいです』って書いてくれてたけど……本当にそれに応じていいのか? って。それに応じることで、また結果的にやよいを傷つけることになったりしないか? って」
やよい「……プロデューサー……」
P「でも、そう思ってからすぐ、こうも思った。……『違う。俺が本当に心配しているのは、やよいを傷つけてしまうことじゃない』って」
P「……『自分が傷ついてしまうかもしれないのが、怖いだけだ』って……」
やよい「…………」
P「……そう思ってから、俺は、やよいに会おうと決めたんだ。たとえ傷ついてもいい。7年かけてやよいが出した答えがこれなら、俺にはそれに応じる義務がある、って……そう思ったから」
やよい「……プロデューサー……」
P「……なんて、かっこつけたこと言ってるけど……本当は、今でも怖いんだ。……心臓、ずっとバクバクしてるし」
やよい「! ふふっ……やだな、もう……そんなこと言わないで下さいよ。お話、しにくくなるじゃないですか」
P「はは……そうだな、ごめん」
416: 2014/06/13(金) 11:42:55.32 ID:DieLDiFg0
P「でも……ありがとうな、やよい」
やよい「えっ」
P「勇気……出してくれて」
やよい「…………」
P「……俺も、心のどこかでは、『このままではいけない』って、分かってたんだ。でも結局、その一歩を踏み出すことができなかった」
やよい「…………」
P「それはもちろん、律子に言われたから、っていうのもあったけど……でも本当は多分……怖かったんだ。あの時のことに向き合うのが。……やよいに、向き合うのが」
やよい「……プロデューサー……」
P「だから……勇気を出して、俺にメール送ってくれて……ありがとう。やよい」
やよい「そんな……」
やよい「怖かったのは、私だって同じです。……本当はもっと早く、こういう機会を持てたはずなのに」
やよい「でも、私は怖くて……ただその勇気が持てなかった。この7年間、その気になれば、いつでもできたことなのに」
P「……やよい……」
やよい「あるいは、プロデューサーがそうしようとしていたのと同じように……和解が成立した直後、あるいは、その前でも」
やよい「……たとえば、私が事務所に行かなくなった頃でも、話し合おうと思えば、話し合えたはずなんです」
やよい「さらにもっと遡るなら、私が最後に事務所に行った日……プロデューサーに、『何で自分を避けているのか』って、聞かれたとき」
P「! …………」
やよい「あるいはその日、プロデューサーに……手首を掴まれたとき」
P「…………」
やよい「……本当、いくらでも機会はあったはずなんです。なのに私、私……」
P「やよい」
やよい「その前だって、話そうと思えば話せた。仕事の合間、終わり際……プロデューサーが、車で送ろうか? って言ってくれたとき」
P「…………」
やよい「私が後部座席に乗って、プロデューサーが不思議そうな顔をしていたときだって」
P「…………」
やよい「……でも多分、本当に一番、ちゃんと向き合わないといけなかったのは……」
P「…………」
やよい「……一番初めの……プロデューサーに、『ハイタッチ』をしようとして……身体を、触られたとき」
P「! …………」
やよい「…………」
やよい「えっ」
P「勇気……出してくれて」
やよい「…………」
P「……俺も、心のどこかでは、『このままではいけない』って、分かってたんだ。でも結局、その一歩を踏み出すことができなかった」
やよい「…………」
P「それはもちろん、律子に言われたから、っていうのもあったけど……でも本当は多分……怖かったんだ。あの時のことに向き合うのが。……やよいに、向き合うのが」
やよい「……プロデューサー……」
P「だから……勇気を出して、俺にメール送ってくれて……ありがとう。やよい」
やよい「そんな……」
やよい「怖かったのは、私だって同じです。……本当はもっと早く、こういう機会を持てたはずなのに」
やよい「でも、私は怖くて……ただその勇気が持てなかった。この7年間、その気になれば、いつでもできたことなのに」
P「……やよい……」
やよい「あるいは、プロデューサーがそうしようとしていたのと同じように……和解が成立した直後、あるいは、その前でも」
やよい「……たとえば、私が事務所に行かなくなった頃でも、話し合おうと思えば、話し合えたはずなんです」
やよい「さらにもっと遡るなら、私が最後に事務所に行った日……プロデューサーに、『何で自分を避けているのか』って、聞かれたとき」
P「! …………」
やよい「あるいはその日、プロデューサーに……手首を掴まれたとき」
P「…………」
やよい「……本当、いくらでも機会はあったはずなんです。なのに私、私……」
P「やよい」
やよい「その前だって、話そうと思えば話せた。仕事の合間、終わり際……プロデューサーが、車で送ろうか? って言ってくれたとき」
P「…………」
やよい「私が後部座席に乗って、プロデューサーが不思議そうな顔をしていたときだって」
P「…………」
やよい「……でも多分、本当に一番、ちゃんと向き合わないといけなかったのは……」
P「…………」
やよい「……一番初めの……プロデューサーに、『ハイタッチ』をしようとして……身体を、触られたとき」
P「! …………」
やよい「…………」
417: 2014/06/13(金) 12:49:23.76 ID:DieLDiFg0
やよい「あのとき、私……一瞬、何が起こったのか分からなかったんです」
やよい「でも、胸に何かが当たった、っていう確かな感触は残っていて……それを自覚したら、すごく嫌な気持ちになって……」
P「…………」
やよい「それがプロデューサーの手だったんだって、頭ではすぐに理解できたんですけど、感情が追いついてなくて」
やよい「何で? どうして? って……」
やよい「何が何だか分からないまま、とりあえず、『そこじゃないです』とかなんとか、自分でもよく分からないこと、言っちゃって……」
やよい「プロデューサーの方も、『すまん、やよい』って感じで、なんていうか、すごく軽い感じだったから……あれ? 今のは何かの間違いだったのかな? って、よく分かんないままに、その場は終わっちゃって……」
やよい「……でもその後も、やっぱりずっと、そのことが心に残ってて」
やよい「あれは何だったんだろう? 私は夢でも見ていたのかな? って……」
やよい「次の日も、その次の日も……ずっとずっと、そのことが頭の中を回ってて」
やよい「……それで私、気が付いたら……プロデューサーのこと、無意識に避けるようになってて」
P「…………」
やよい「そしたらあの日……私が最後に事務所に行った日に、プロデューサーから、『俺、やよいに、何かしたか?』って、聞かれて」
やよい「それでますます私、分かんなくなっちゃって。プロデューサーに自覚が無いってことは、じゃあやっぱり私の勘違いだったのかな? とか、思っちゃって。でも一方で、あのときの感触は、確かにちゃんと覚えてて……」
やよい「その後もプロデューサーは、私に色々と聞いてきて。私ももう、訳分かんなくなっちゃってたから、上手く答えられなくて……」
やよい「それでもう、適当な嘘ついて、その場から逃げようとしたら……プロデューサーに、手首掴まれちゃって。……その瞬間、『ハイタッチ』の時のことが頭をよぎって、私、考えるより早く、反射的に……プロデューサーの手、振り払っちゃったんです」
P「…………」
やよい「その後はもう、どうしたらいいか分かんなくなっちゃって……結局、私、そのまま、事務所から逃げ出しちゃって……」
P「…………」
やよい「…………」
P「……そのときが、最後だったな。俺とやよいが、事務所で会ったのは……」
やよい「……はい」
P「…………」
やよい「…………」
やよい「でも、胸に何かが当たった、っていう確かな感触は残っていて……それを自覚したら、すごく嫌な気持ちになって……」
P「…………」
やよい「それがプロデューサーの手だったんだって、頭ではすぐに理解できたんですけど、感情が追いついてなくて」
やよい「何で? どうして? って……」
やよい「何が何だか分からないまま、とりあえず、『そこじゃないです』とかなんとか、自分でもよく分からないこと、言っちゃって……」
やよい「プロデューサーの方も、『すまん、やよい』って感じで、なんていうか、すごく軽い感じだったから……あれ? 今のは何かの間違いだったのかな? って、よく分かんないままに、その場は終わっちゃって……」
やよい「……でもその後も、やっぱりずっと、そのことが心に残ってて」
やよい「あれは何だったんだろう? 私は夢でも見ていたのかな? って……」
やよい「次の日も、その次の日も……ずっとずっと、そのことが頭の中を回ってて」
やよい「……それで私、気が付いたら……プロデューサーのこと、無意識に避けるようになってて」
P「…………」
やよい「そしたらあの日……私が最後に事務所に行った日に、プロデューサーから、『俺、やよいに、何かしたか?』って、聞かれて」
やよい「それでますます私、分かんなくなっちゃって。プロデューサーに自覚が無いってことは、じゃあやっぱり私の勘違いだったのかな? とか、思っちゃって。でも一方で、あのときの感触は、確かにちゃんと覚えてて……」
やよい「その後もプロデューサーは、私に色々と聞いてきて。私ももう、訳分かんなくなっちゃってたから、上手く答えられなくて……」
やよい「それでもう、適当な嘘ついて、その場から逃げようとしたら……プロデューサーに、手首掴まれちゃって。……その瞬間、『ハイタッチ』の時のことが頭をよぎって、私、考えるより早く、反射的に……プロデューサーの手、振り払っちゃったんです」
P「…………」
やよい「その後はもう、どうしたらいいか分かんなくなっちゃって……結局、私、そのまま、事務所から逃げ出しちゃって……」
P「…………」
やよい「…………」
P「……そのときが、最後だったな。俺とやよいが、事務所で会ったのは……」
やよい「……はい」
P「…………」
やよい「…………」
421: 2014/06/13(金) 13:39:25.62 ID:DieLDiFg0
P「…………」
やよい「…………」
P「……やよい」
やよい「! はい」
P「……すまなかった」
やよい「……プロデューサー……」
P「…………」
やよい「…………」
P「……本当は、俺も……ずっと考えてたんだ」
やよい「…………」
P「……『本当のところは、どうだったんだろう?』って……」
やよい「……本当の、ところ……?」
P「……ああ」
やよい「…………」
P「……俺が、今から言うことは……やよいにとっては、聞きたくないことかもしれない。……それでも今、やよいが俺にちゃんと向き合って、あの時のことを、自分の抱えていた気持ちを、全部ちゃんと話してくれたから……俺も、やよいにそれを伝えたいと思う。……いいか?」
やよい「……はい、もちろん」
P「……やよい」
やよい「……今日は、そのために来たんですから」
P「……ああ、そうだな」
やよい「はい」
P「……じゃあ、話すな」
やよい「…………」
P「……俺さ、今も言ったけど……いまだに、『本当のところ』が……分からないんだ」
やよい「…………」
P「あの時……俺がやよいの身体に触れたのは、間違いなく覚えてる。そのとき交わした会話も、なんとなくだけど覚えてる。そしてそれはさっき、やよいが言ってくれた内容で、ほぼ間違い無いと思う」
P「でも、肝心の……『俺がやよいの身体のどこに触ったのか』ってことについては……やっぱり今でも、分からないんだ」
P「ただ俺が覚えてるのは、手の平ではない、やよいの身体のどこかに触ったこと、そしてその瞬間、やよいの表情が強張ったこと、その後慌てて、何かを取り繕うような会話を交わしたこと……」
P「……これだけなんだ」
やよい「……プロデューサーの記憶では、『お腹に触った』ってことじゃ……なかったんですか?」
P「ああ。それは……今思えば、完全に後付けの記憶だった」
やよい「後付け……ですか?」
P「ああ。あの時……そう、弁護士から書面が来た時……俺は、こう思ったんだ。『俺がやよいの胸になんか触るはずがない』『でも、やよいの手の平以外の部位に触ったことは間違いない』『じゃあ、それはお腹に違いない』……って」
やよい「…………」
P「要するに、俺は……自分の記憶を捏造したんだ。いや、より正確に言うと……捏造しようとした」
やよい「……プロデューサー……」
P「『お腹に触った』っていう記憶なんか無いのに、そうだと思い込ませようとしたんだ。……自分自身を。それ以外の可能性なんか、あるはずがないって……切り捨てて」
やよい「…………」
P「……怖かったんだ。『自分が故意にやよいの胸に触った』なんて、認めてしまったら……今の自分が、自分じゃなくなるような気がして……ただただ、怖かった」
やよい「…………」
やよい「…………」
P「……やよい」
やよい「! はい」
P「……すまなかった」
やよい「……プロデューサー……」
P「…………」
やよい「…………」
P「……本当は、俺も……ずっと考えてたんだ」
やよい「…………」
P「……『本当のところは、どうだったんだろう?』って……」
やよい「……本当の、ところ……?」
P「……ああ」
やよい「…………」
P「……俺が、今から言うことは……やよいにとっては、聞きたくないことかもしれない。……それでも今、やよいが俺にちゃんと向き合って、あの時のことを、自分の抱えていた気持ちを、全部ちゃんと話してくれたから……俺も、やよいにそれを伝えたいと思う。……いいか?」
やよい「……はい、もちろん」
P「……やよい」
やよい「……今日は、そのために来たんですから」
P「……ああ、そうだな」
やよい「はい」
P「……じゃあ、話すな」
やよい「…………」
P「……俺さ、今も言ったけど……いまだに、『本当のところ』が……分からないんだ」
やよい「…………」
P「あの時……俺がやよいの身体に触れたのは、間違いなく覚えてる。そのとき交わした会話も、なんとなくだけど覚えてる。そしてそれはさっき、やよいが言ってくれた内容で、ほぼ間違い無いと思う」
P「でも、肝心の……『俺がやよいの身体のどこに触ったのか』ってことについては……やっぱり今でも、分からないんだ」
P「ただ俺が覚えてるのは、手の平ではない、やよいの身体のどこかに触ったこと、そしてその瞬間、やよいの表情が強張ったこと、その後慌てて、何かを取り繕うような会話を交わしたこと……」
P「……これだけなんだ」
やよい「……プロデューサーの記憶では、『お腹に触った』ってことじゃ……なかったんですか?」
P「ああ。それは……今思えば、完全に後付けの記憶だった」
やよい「後付け……ですか?」
P「ああ。あの時……そう、弁護士から書面が来た時……俺は、こう思ったんだ。『俺がやよいの胸になんか触るはずがない』『でも、やよいの手の平以外の部位に触ったことは間違いない』『じゃあ、それはお腹に違いない』……って」
やよい「…………」
P「要するに、俺は……自分の記憶を捏造したんだ。いや、より正確に言うと……捏造しようとした」
やよい「……プロデューサー……」
P「『お腹に触った』っていう記憶なんか無いのに、そうだと思い込ませようとしたんだ。……自分自身を。それ以外の可能性なんか、あるはずがないって……切り捨てて」
やよい「…………」
P「……怖かったんだ。『自分が故意にやよいの胸に触った』なんて、認めてしまったら……今の自分が、自分じゃなくなるような気がして……ただただ、怖かった」
やよい「…………」
424: 2014/06/13(金) 15:06:03.53 ID:DieLDiFg0
やよい「……そうだったんですか」
P「ああ……」
やよい「……でも、えっと……『本当にどこを触ったのか』ってことについては……今でも、覚えてないんですよね?」
P「……ああ」
やよい「……それは……?」
P「……多分、無意識のうちに……記憶を封じ込めてしまったんだと思う」
やよい「無意識のうちに……ですか?」
P「……ああ。実は当時、律子にも言われたんだ。『やよいとのハイタッチの件、無意識のうちに、考えないようにしていたんじゃないですか?』って」
やよい「…………」
P「……そのときの俺は、『自分が故意にやよいの胸に触った』という事実を認めたくない一心で、律子のその指摘を、必氏になって否定したけど……今思えば、その通りだったんじゃないかと思う」
やよい「……じゃあ……」
P「……そう。つまりあの時、俺はおそらく、故意に……やよいの胸に触った。それはやよいの認識からしても、多分もう、間違いの無い事実なんだと思う」
やよい「…………」
P「そしてその動機についても、憶測になるが……多分、本当に軽い気持ちで、悪戯心で……また、やよいとの信頼関係も、十分に築けていたという自負もあったから……『これくらいなら許されるだろう』という甘えが、俺の中にあったんだろうと思う」
P「それで、本当に深く考えずに、軽い気持ちで……『はいたーっち』って、手を伸ばしてきたやよいの胸に……触ってしまったんだと思う」
やよい「…………」
P「でもそしたら、やよいが、予想以上に驚いた反応をしたから……多分その瞬間、俺は、『あ、やばい』って、直感的に感じたんだと思う」
P「そしてそのときすぐに、俺は、自分の中で、事実を歪めたんだと思う。……『今、俺は何もしなかった』……って」
やよい「…………」
P「『俺は何もしていない』『何も知らない』『だから、何の問題も無い』……と、おそらく無意識のうちに、俺は、自分の記憶を、思考を、認識を……書き換えたんだと思う。……自分にとって、都合の良いように」
P「……だから俺は、その後、やよいが自分を避けるようになっても、本当に心当たりが無かったし、弁護士から書面が来ても、その内容を認めることができなかった。……そのときの俺には、もう……『真実の記憶』が、無かったから」
やよい「…………」
P「……そして、その延長線上に……今の俺がいる。だから俺は、今でも……あの時のことは、さっき言った程度でしか、覚えてなくて……『故意にやよいの胸に触った』ということも……本当に、覚えていないんだ」
やよい「…………」
P「……信じてくれなくていい。また、許してほしいとも思わない」
P「ただ、今の俺の本当の気持ちを……やよいに、伝えておきたかった」
やよい「…………」
P「……もっとも、俺の気持ちがどうであれ……俺が故意に、やよいの胸に触ったであろうこと……そしてその結果、やよいを、本当に深く傷つけてしまったであろうことは……間違いの無いことだと思う」
P「……だから、やよい。さっきも言ったが……」
P「……本当に、すまなかった」
やよい「…………」
P「ああ……」
やよい「……でも、えっと……『本当にどこを触ったのか』ってことについては……今でも、覚えてないんですよね?」
P「……ああ」
やよい「……それは……?」
P「……多分、無意識のうちに……記憶を封じ込めてしまったんだと思う」
やよい「無意識のうちに……ですか?」
P「……ああ。実は当時、律子にも言われたんだ。『やよいとのハイタッチの件、無意識のうちに、考えないようにしていたんじゃないですか?』って」
やよい「…………」
P「……そのときの俺は、『自分が故意にやよいの胸に触った』という事実を認めたくない一心で、律子のその指摘を、必氏になって否定したけど……今思えば、その通りだったんじゃないかと思う」
やよい「……じゃあ……」
P「……そう。つまりあの時、俺はおそらく、故意に……やよいの胸に触った。それはやよいの認識からしても、多分もう、間違いの無い事実なんだと思う」
やよい「…………」
P「そしてその動機についても、憶測になるが……多分、本当に軽い気持ちで、悪戯心で……また、やよいとの信頼関係も、十分に築けていたという自負もあったから……『これくらいなら許されるだろう』という甘えが、俺の中にあったんだろうと思う」
P「それで、本当に深く考えずに、軽い気持ちで……『はいたーっち』って、手を伸ばしてきたやよいの胸に……触ってしまったんだと思う」
やよい「…………」
P「でもそしたら、やよいが、予想以上に驚いた反応をしたから……多分その瞬間、俺は、『あ、やばい』って、直感的に感じたんだと思う」
P「そしてそのときすぐに、俺は、自分の中で、事実を歪めたんだと思う。……『今、俺は何もしなかった』……って」
やよい「…………」
P「『俺は何もしていない』『何も知らない』『だから、何の問題も無い』……と、おそらく無意識のうちに、俺は、自分の記憶を、思考を、認識を……書き換えたんだと思う。……自分にとって、都合の良いように」
P「……だから俺は、その後、やよいが自分を避けるようになっても、本当に心当たりが無かったし、弁護士から書面が来ても、その内容を認めることができなかった。……そのときの俺には、もう……『真実の記憶』が、無かったから」
やよい「…………」
P「……そして、その延長線上に……今の俺がいる。だから俺は、今でも……あの時のことは、さっき言った程度でしか、覚えてなくて……『故意にやよいの胸に触った』ということも……本当に、覚えていないんだ」
やよい「…………」
P「……信じてくれなくていい。また、許してほしいとも思わない」
P「ただ、今の俺の本当の気持ちを……やよいに、伝えておきたかった」
やよい「…………」
P「……もっとも、俺の気持ちがどうであれ……俺が故意に、やよいの胸に触ったであろうこと……そしてその結果、やよいを、本当に深く傷つけてしまったであろうことは……間違いの無いことだと思う」
P「……だから、やよい。さっきも言ったが……」
P「……本当に、すまなかった」
やよい「…………」
442: 2014/06/13(金) 23:39:12.91 ID:fJ5LH+d60
P「…………」
やよい「……分かりました」
P「やよい」
やよい「私は、プロデューサーの言うことを信じます」
P「! やよい……」
やよい「私も多分、そういうことなんじゃないかなって……思ってましたから」
P「え? そう……なのか?」
やよい「はい。なんていうか、上手く説明できないんですけど……きっとプロデューサーにとっては、そうだったんだろうな、って。嘘をついているとかではなくて……多分、そういうことだったんだろうな、って」
P「……やよい……」
やよい「……でもやっぱり、いくら悪ふざけでも……女の子の胸を触ったりするのは、めっですよ」
P「! あ、ああ……そうだな。本当、その通りだ……」
やよい「…………」
P「……本当に……悪かった」
やよい「…………」
P「…………」
やよい「……ねぇ、プロデューサー」
P「? ……何だ? やよい」
やよい「これって、本当は……すごくシンプルな問題だったのかもしれませんね」
P「……と、いうと?」
やよい「だって、私たちの今のやりとりって……多分、7年前にも同じこと、できたはずじゃないですか」
P「! ああ……確かに」
やよい「……私が胸を触られた、まさにその瞬間にでも。あるいはその次の日に、私が後部座席に乗った時にでも」
P「……俺がやよいを問い詰めた時にでも。そしてその後、俺がやよいの手首を掴んだ時にでも」
やよい「そう。それにその後だって、ずっと……やろうと思えば、できたはずなんです」
P「……ああ、そうだな……」
やよい「でも、結局……私はそれができなかった。特に最初は、自分の殻に閉じこもって、誰にも、何にも言えないままで」
P「…………」
やよい「それでようやく、お父さんとお母さんに事情を話したら、二人ともすごく驚いて……特に、お父さんが怒り心頭で」
やよい「今すぐにでも、事務所に殴り込みに行きそうな勢いだったから、必氏で止めて……」
やよい「そしたら、『じゃあそれなら』って感じで、弁護士の先生にお願いすることになって」
やよい「後は、私がほとんど関与しないままに、事態がどんどん進んでいって……」
やよい「……でも、そのときだって、私がこうして、今やったように……プロデューサーと、ちゃんと向き合って話をしていたら……そんな風には、ならなかったのかもしれない」
P「…………」
やよい「……分かりました」
P「やよい」
やよい「私は、プロデューサーの言うことを信じます」
P「! やよい……」
やよい「私も多分、そういうことなんじゃないかなって……思ってましたから」
P「え? そう……なのか?」
やよい「はい。なんていうか、上手く説明できないんですけど……きっとプロデューサーにとっては、そうだったんだろうな、って。嘘をついているとかではなくて……多分、そういうことだったんだろうな、って」
P「……やよい……」
やよい「……でもやっぱり、いくら悪ふざけでも……女の子の胸を触ったりするのは、めっですよ」
P「! あ、ああ……そうだな。本当、その通りだ……」
やよい「…………」
P「……本当に……悪かった」
やよい「…………」
P「…………」
やよい「……ねぇ、プロデューサー」
P「? ……何だ? やよい」
やよい「これって、本当は……すごくシンプルな問題だったのかもしれませんね」
P「……と、いうと?」
やよい「だって、私たちの今のやりとりって……多分、7年前にも同じこと、できたはずじゃないですか」
P「! ああ……確かに」
やよい「……私が胸を触られた、まさにその瞬間にでも。あるいはその次の日に、私が後部座席に乗った時にでも」
P「……俺がやよいを問い詰めた時にでも。そしてその後、俺がやよいの手首を掴んだ時にでも」
やよい「そう。それにその後だって、ずっと……やろうと思えば、できたはずなんです」
P「……ああ、そうだな……」
やよい「でも、結局……私はそれができなかった。特に最初は、自分の殻に閉じこもって、誰にも、何にも言えないままで」
P「…………」
やよい「それでようやく、お父さんとお母さんに事情を話したら、二人ともすごく驚いて……特に、お父さんが怒り心頭で」
やよい「今すぐにでも、事務所に殴り込みに行きそうな勢いだったから、必氏で止めて……」
やよい「そしたら、『じゃあそれなら』って感じで、弁護士の先生にお願いすることになって」
やよい「後は、私がほとんど関与しないままに、事態がどんどん進んでいって……」
やよい「……でも、そのときだって、私がこうして、今やったように……プロデューサーと、ちゃんと向き合って話をしていたら……そんな風には、ならなかったのかもしれない」
P「…………」
443: 2014/06/14(土) 00:24:34.68 ID:ZwMhVBkq0
やよい「なんて……今更たらればを言っても、仕方ないんですけどね」
P「……それを言うなら……俺だって同じさ」
やよい「プロデューサー……」
P「あの頃の俺は……とにかく、自分の保身が第一で……『もしかしたら解雇されるんじゃないか』『もしかしたら逮捕されるんじゃないか』とか……そんなことばっかり、考えてた」
やよい「…………」
P「だから全然、気持ちにも余裕が無くて……確かにやよいの言うように、やよいと直接話せていたら……また、状況も違っていたのかもしれないけど」
P「……ただまあそもそも、やよい側には代理人の弁護士がついていたから、どのみちやよいと直接話すことはできなかった、っていうのはあったけど……」
P「でも、それを抜きにしても……あの頃の俺に、やよいと直接向き合おう、なんていう考えは無かった。ようやくそうしようかな、と思ったのは、もう和解が成立した後だったから……遅きに失する、とはこのことだよな」
やよい「……プロデューサーは、仕方なかったと思います。今言ったように、765プロの方からは、弁護士の先生を通さないと、私の方とは話ができない状態でしたから……」
P「……でも、絶対に無理だったってわけじゃない。社長から、やよいの方の弁護士に頼んでもらえば、あるいは、なんとかなったことだったのかもしれない」
P「だが、俺はそうしようとはしなかった。ただただ、早く和解してほしい、早くこの不安感から解放してほしい……ただそれだけを考えていて……結局最後まで、自分で事態を好転させようとはしなかった」
P「自分の蒔いた種なのに、自分では何もしようとせずに……ただひたすら、事態が早く収束することだけを願っていたんだ」
P「……やよいの本当の気持ちなんか、知ろうともせずに……」
やよい「…………」
P「……それを言うなら……俺だって同じさ」
やよい「プロデューサー……」
P「あの頃の俺は……とにかく、自分の保身が第一で……『もしかしたら解雇されるんじゃないか』『もしかしたら逮捕されるんじゃないか』とか……そんなことばっかり、考えてた」
やよい「…………」
P「だから全然、気持ちにも余裕が無くて……確かにやよいの言うように、やよいと直接話せていたら……また、状況も違っていたのかもしれないけど」
P「……ただまあそもそも、やよい側には代理人の弁護士がついていたから、どのみちやよいと直接話すことはできなかった、っていうのはあったけど……」
P「でも、それを抜きにしても……あの頃の俺に、やよいと直接向き合おう、なんていう考えは無かった。ようやくそうしようかな、と思ったのは、もう和解が成立した後だったから……遅きに失する、とはこのことだよな」
やよい「……プロデューサーは、仕方なかったと思います。今言ったように、765プロの方からは、弁護士の先生を通さないと、私の方とは話ができない状態でしたから……」
P「……でも、絶対に無理だったってわけじゃない。社長から、やよいの方の弁護士に頼んでもらえば、あるいは、なんとかなったことだったのかもしれない」
P「だが、俺はそうしようとはしなかった。ただただ、早く和解してほしい、早くこの不安感から解放してほしい……ただそれだけを考えていて……結局最後まで、自分で事態を好転させようとはしなかった」
P「自分の蒔いた種なのに、自分では何もしようとせずに……ただひたすら、事態が早く収束することだけを願っていたんだ」
P「……やよいの本当の気持ちなんか、知ろうともせずに……」
やよい「…………」
445: 2014/06/14(土) 01:50:38.30 ID:ZwMhVBkq0
やよい「……何か、私達……今日まで、全然違う道を歩いていたようで……実は二人とも、同じ道をぐるぐる回っていただけだったのかもしれませんね。……お互い、すれ違う相手の存在には、気付かないままで」
P「……ああ。確かに、そんな感じだったのかもしれないな」
やよい「……もっと早くに気付けていたら、私達の『今』も、また違ったものになっていたのかもしれませんね」
P「……ああ、そうだな……」
やよい「…………」
P「…………」
やよい「……でもね、プロデューサー」
P「ん?」
やよい「そうであるからといって、私は……決して、私の『今』が嫌なわけじゃないんです」
P「……やよい……」
やよい「確かに私は、7年前、中途半端な形で、アイドルを辞めちゃって……そのことに、全く心残りが無いかといったら……やっぱり、嘘になります」
P「…………」
やよい「でも、あのときアイドルを辞めたからこそ……私は、学校の勉強を頑張るようになれたし、そのおかげで、それなりに良い高校にも入ることができました」
やよい「その後、今通ってる大学にも、無事に合格できて……そこで私、同じクラスになった子の紹介で、ボランティアサークルに入ったんです。定期的に、児童養護施設とかを訪れて、子ども達と遊んだりするサークルなんですけど」
P「へぇ。そうだったのか」
やよい「はい。それで、そういう活動をしているうちに、私、子ども達の笑顔を見てると、すっごく元気になれる自分に気付いて。そしてこれからもこういうこと、ずっとしていきたいなって思って。それで……」
P「……学校の先生、ってわけか」
やよい「はい」
P「なるほどな……。うん。やよいなら、きっと良い先生になれると思うよ」
やよい「えへへ……ありがとうございます! ……だから、こうやって振り返ってみたら、あの時、アイドルを辞めたことも、そして、それから後のことも……実は全部、今の私につながってるんだなって」
P「…………」
やよい「あとそれから、アイドルをやっていたこと自体も、すごく、今の自分に活きてるんです。どうすれば子ども達を笑顔にできるのかな、とか。どうしたら皆の注意を惹きつけられるのかな、とか……。そういうのって、アイドル時代の経験が、ものすごく参考になってるんですよ」
P「……そうか」
やよい「はい。だから、私……アイドルだったことも……あの時、それを辞めちゃったことも……そして、今の自分も……全部ひっくるめて、『私』なんだって……そう思うんです」
やよい「だから……もし仮に、もっと違う可能性があったとしても、そしてそれが、どんなに素敵な未来だったとしても……私は、『今』の私の人生を、しっかり生きていきたいんです」
P「……やよい……」
やよい「……だって……どこにいようが何をしていようが――……私は私、ですから」
P「! やよい。それって、もしかして……」
やよい「あっ。ひょっとして……プロデューサーも、知ってます?」
P「うん。……多分」
やよい「えへへ……お察しの通り、私の一番の親友が……教えてくれた言葉なんです」
P「……そっか」
やよい「はい!」
P「……ああ。確かに、そんな感じだったのかもしれないな」
やよい「……もっと早くに気付けていたら、私達の『今』も、また違ったものになっていたのかもしれませんね」
P「……ああ、そうだな……」
やよい「…………」
P「…………」
やよい「……でもね、プロデューサー」
P「ん?」
やよい「そうであるからといって、私は……決して、私の『今』が嫌なわけじゃないんです」
P「……やよい……」
やよい「確かに私は、7年前、中途半端な形で、アイドルを辞めちゃって……そのことに、全く心残りが無いかといったら……やっぱり、嘘になります」
P「…………」
やよい「でも、あのときアイドルを辞めたからこそ……私は、学校の勉強を頑張るようになれたし、そのおかげで、それなりに良い高校にも入ることができました」
やよい「その後、今通ってる大学にも、無事に合格できて……そこで私、同じクラスになった子の紹介で、ボランティアサークルに入ったんです。定期的に、児童養護施設とかを訪れて、子ども達と遊んだりするサークルなんですけど」
P「へぇ。そうだったのか」
やよい「はい。それで、そういう活動をしているうちに、私、子ども達の笑顔を見てると、すっごく元気になれる自分に気付いて。そしてこれからもこういうこと、ずっとしていきたいなって思って。それで……」
P「……学校の先生、ってわけか」
やよい「はい」
P「なるほどな……。うん。やよいなら、きっと良い先生になれると思うよ」
やよい「えへへ……ありがとうございます! ……だから、こうやって振り返ってみたら、あの時、アイドルを辞めたことも、そして、それから後のことも……実は全部、今の私につながってるんだなって」
P「…………」
やよい「あとそれから、アイドルをやっていたこと自体も、すごく、今の自分に活きてるんです。どうすれば子ども達を笑顔にできるのかな、とか。どうしたら皆の注意を惹きつけられるのかな、とか……。そういうのって、アイドル時代の経験が、ものすごく参考になってるんですよ」
P「……そうか」
やよい「はい。だから、私……アイドルだったことも……あの時、それを辞めちゃったことも……そして、今の自分も……全部ひっくるめて、『私』なんだって……そう思うんです」
やよい「だから……もし仮に、もっと違う可能性があったとしても、そしてそれが、どんなに素敵な未来だったとしても……私は、『今』の私の人生を、しっかり生きていきたいんです」
P「……やよい……」
やよい「……だって……どこにいようが何をしていようが――……私は私、ですから」
P「! やよい。それって、もしかして……」
やよい「あっ。ひょっとして……プロデューサーも、知ってます?」
P「うん。……多分」
やよい「えへへ……お察しの通り、私の一番の親友が……教えてくれた言葉なんです」
P「……そっか」
やよい「はい!」
446: 2014/06/14(土) 02:37:15.02 ID:ZwMhVBkq0
P「やよいはもう……自分の人生を生きてるんだな。……ちゃんと、自分の足で歩いて」
やよい「……まっすぐ歩けているのかは、まだ分からないですけどね」
P「……大丈夫だよ。やよいが自分の信じたように歩けば、それはきっと、正しい道につながっていくさ」
やよい「……なんか昔、お父さんにも似たようなことを言われました」
P「そうなのか?」
やよい「はい」
P「……そっか」
やよい「……はい」
P「…………」
やよい「…………」
P「……なあ、やよい」
やよい「はい」
P「やよいは今日、7年前にやり残した『宿題』に向き合って……それで、765プロを“卒業”したい、って……言ってたよな」
やよい「はい」
P「そしてその『宿題』っていうのが……俺ときちんと向き合って、話をすること……だったんだよな」
やよい「はい」
P「じゃあ、実際……どうだったんだ? 俺と今日、こうして話して……“卒業”……できそうなのか?」
やよい「……うーん……そうですねぇ……」
P「…………」
やよい「……私の思っていたことは、もうほとんど話したし……プロデューサーの気持ちも聞いたし……あとは……」
P「…………」
やよい「あ!」
P「? な、なんだ? やよい」
やよい「……プロデューサー。一番大事な『宿題』を忘れていました」
P「……?」
やよい「……今度は、間違えないで下さいね?」スッ
P「! ……やよい……」
やよい「……いいですか? プロデューサー」
P「……ああ」
やよい「はいたーっち!」
P「いぇい!」
パシンッ
やよい「……まっすぐ歩けているのかは、まだ分からないですけどね」
P「……大丈夫だよ。やよいが自分の信じたように歩けば、それはきっと、正しい道につながっていくさ」
やよい「……なんか昔、お父さんにも似たようなことを言われました」
P「そうなのか?」
やよい「はい」
P「……そっか」
やよい「……はい」
P「…………」
やよい「…………」
P「……なあ、やよい」
やよい「はい」
P「やよいは今日、7年前にやり残した『宿題』に向き合って……それで、765プロを“卒業”したい、って……言ってたよな」
やよい「はい」
P「そしてその『宿題』っていうのが……俺ときちんと向き合って、話をすること……だったんだよな」
やよい「はい」
P「じゃあ、実際……どうだったんだ? 俺と今日、こうして話して……“卒業”……できそうなのか?」
やよい「……うーん……そうですねぇ……」
P「…………」
やよい「……私の思っていたことは、もうほとんど話したし……プロデューサーの気持ちも聞いたし……あとは……」
P「…………」
やよい「あ!」
P「? な、なんだ? やよい」
やよい「……プロデューサー。一番大事な『宿題』を忘れていました」
P「……?」
やよい「……今度は、間違えないで下さいね?」スッ
P「! ……やよい……」
やよい「……いいですか? プロデューサー」
P「……ああ」
やよい「はいたーっち!」
P「いぇい!」
パシンッ
450: 2014/06/14(土) 03:16:44.10 ID:ZwMhVBkq0
やよい「…………」
P「…………」
やよい「……ありがとうございます。プロデューサー」
P「…………」
やよい「これで、私も……765プロを“卒業”できます」
P「……そうか」
やよい「はい」
P「…………」
やよい「あ、でも……」
P「……ん?」
やよい「プロデューサーは……どうなんですか?」
P「……俺?」
やよい「はい。まだ、私に言っておきたいこととか、聞いておきたいこととか、あれば……」
P「…………」
やよい「…………」
P「……いや、大丈夫だ」
やよい「…………」
P「俺はもう……大丈夫」
やよい「そう……ですか?」
P「……ああ」
やよい「でも、プロデューサー……」
P「ん?」
やよい「今日まで、何度か……私に連絡を取ろうと思ったことがあった、って言ってましたよね」
P「……ああ」
やよい「それはつまり、プロデューサーも……私と向き合って、話がしたかった、ってことですよね」
P「……ああ」
やよい「じゃあ、そこのところはもう……大丈夫なんですか? 今日、これまで話した分で……」
P「……うん。……大丈夫だ」
やよい「……そうですか? なら、いいんですけど……」
P「…………」
やよい「…………」
P「……やよい」
やよい「! はい」
P「……俺は多分、きっと……やよいに会って、楽になりたかったんだ」
やよい「……楽に……?」
P「ああ」
やよい「…………」
P「やよいに会って、これまで抱えてきたこと、全部話して、謝って……楽になりたかったんだ」
P「そしてやよいに、『もういいんです』って。『もう気にしないで下さい』って、そう言ってもらって……楽になりたかったんだ」
やよい「…………」
P「…………」
やよい「……ありがとうございます。プロデューサー」
P「…………」
やよい「これで、私も……765プロを“卒業”できます」
P「……そうか」
やよい「はい」
P「…………」
やよい「あ、でも……」
P「……ん?」
やよい「プロデューサーは……どうなんですか?」
P「……俺?」
やよい「はい。まだ、私に言っておきたいこととか、聞いておきたいこととか、あれば……」
P「…………」
やよい「…………」
P「……いや、大丈夫だ」
やよい「…………」
P「俺はもう……大丈夫」
やよい「そう……ですか?」
P「……ああ」
やよい「でも、プロデューサー……」
P「ん?」
やよい「今日まで、何度か……私に連絡を取ろうと思ったことがあった、って言ってましたよね」
P「……ああ」
やよい「それはつまり、プロデューサーも……私と向き合って、話がしたかった、ってことですよね」
P「……ああ」
やよい「じゃあ、そこのところはもう……大丈夫なんですか? 今日、これまで話した分で……」
P「……うん。……大丈夫だ」
やよい「……そうですか? なら、いいんですけど……」
P「…………」
やよい「…………」
P「……やよい」
やよい「! はい」
P「……俺は多分、きっと……やよいに会って、楽になりたかったんだ」
やよい「……楽に……?」
P「ああ」
やよい「…………」
P「やよいに会って、これまで抱えてきたこと、全部話して、謝って……楽になりたかったんだ」
P「そしてやよいに、『もういいんです』って。『もう気にしないで下さい』って、そう言ってもらって……楽になりたかったんだ」
やよい「…………」
451: 2014/06/14(土) 03:59:33.35 ID:ZwMhVBkq0
P「でも、今日、やよいと話して……やっぱりそれは、求めちゃいけないことなんだと思った」
やよい「……プロデューサー……」
P「やよいはもう、今の自分の人生をしっかり歩んでいて……そこにはきっと、過去の後悔なんて無いんだと思う」
やよい「…………」
P「でも、だからといって……やよいの過去が、無かったことになるわけじゃない」
P「やよいの今は、過去と確かに地続きになっていて……そうである以上、やっぱり過去は過去として、やよいの中に、これからもずっと……存在し続けるんだと思う」
やよい「…………」
P「だから、それなら俺も、俺の中にも……やよいの過去を、存在させ続けるべきだと思う」
P「なぜなら……やよいの人生の方向性を大きく変えることになった、一つの過去……それを作り出したのは、他でもない……この俺なんだから」
やよい「…………」
P「だから俺は、そのやよいの過去を、『もういいんです』なんてことには……しちゃいけないんだと思った。それを求めて、与えられてしまえば……俺の中から、やよいの過去は消えてしまうから」
やよい「……プロデューサー。私は別に、そんな……」
P「……いいんだ。7年前、裁かれることも罰されることもなかった俺に、それが唯一、与えられた咎ならば……俺はそれを受け容れて、生きていきたいと思うから」
やよい「…………」
P「だからやよい。お前は俺を許さなくていい。お前の過去は、お前が一人で負うべきものじゃないからだ。だから俺にも一緒に……負わせてくれないか」
やよい「…………」
P「…………」
やよい「……分かりました」
P「やよい」
やよい「プロデューサーがそこまで言うなら……私は、プロデューサーを許しません」
P「ああ……それでいい」
やよい「……でももし、私の方が先に忘れちゃったりしたら……その時は、プロデューサーも忘れて下さいね?」
P「……ああ。そうするよ」
やよい「えへへ……約束、ですからね?」
P「……ああ、約束……だ」
やよい「……プロデューサー……」
P「やよいはもう、今の自分の人生をしっかり歩んでいて……そこにはきっと、過去の後悔なんて無いんだと思う」
やよい「…………」
P「でも、だからといって……やよいの過去が、無かったことになるわけじゃない」
P「やよいの今は、過去と確かに地続きになっていて……そうである以上、やっぱり過去は過去として、やよいの中に、これからもずっと……存在し続けるんだと思う」
やよい「…………」
P「だから、それなら俺も、俺の中にも……やよいの過去を、存在させ続けるべきだと思う」
P「なぜなら……やよいの人生の方向性を大きく変えることになった、一つの過去……それを作り出したのは、他でもない……この俺なんだから」
やよい「…………」
P「だから俺は、そのやよいの過去を、『もういいんです』なんてことには……しちゃいけないんだと思った。それを求めて、与えられてしまえば……俺の中から、やよいの過去は消えてしまうから」
やよい「……プロデューサー。私は別に、そんな……」
P「……いいんだ。7年前、裁かれることも罰されることもなかった俺に、それが唯一、与えられた咎ならば……俺はそれを受け容れて、生きていきたいと思うから」
やよい「…………」
P「だからやよい。お前は俺を許さなくていい。お前の過去は、お前が一人で負うべきものじゃないからだ。だから俺にも一緒に……負わせてくれないか」
やよい「…………」
P「…………」
やよい「……分かりました」
P「やよい」
やよい「プロデューサーがそこまで言うなら……私は、プロデューサーを許しません」
P「ああ……それでいい」
やよい「……でももし、私の方が先に忘れちゃったりしたら……その時は、プロデューサーも忘れて下さいね?」
P「……ああ。そうするよ」
やよい「えへへ……約束、ですからね?」
P「……ああ、約束……だ」
453: 2014/06/14(土) 04:51:02.72 ID:ZwMhVBkq0
やよい「……じゃあ、プロデューサー。そろそろ……」
P「……ああ。試験勉強、頑張れよ。……応援してるから」
やよい「えへへ……ありがとうございます! プロデューサーも、お仕事頑張って下さいね!」
P「ああ、ありがとう。それじゃあ、体に気を付けてな」
やよい「はい! プロデューサーもお元気で! ……あっ、そうだ!」
P「ん? 何だ?」
やよい「えへへ……プロデューサー。……最後にもう一回だけ、いいですか?」スッ
P「! ……ああ」
やよい「よーし。じゃあ、いきますよ?」
P「……おう」
やよい「はいたーっち!」
P「いぇい!」
パシンッ
やよい「えへへ……プロデューサー、どうもありがとうございました! それじゃ!」
P「……おう。じゃあな、やよい」
P(……こうして俺達は、お互いに、『また今度』などと言うことはなく、そのまま別れた)
P(別に、金輪際会う気がないとか、そういうつもりだったわけではない)
P(ただ、なんとなく……そうした方がいいように思ったからだ)
P(そしてそれは、おそらくやよいにとっても……そうだったのだろう)
P(また今日こうして、やよいと7年ぶりに会い、話をしたことで……俺の胸の奥で疼いていた、棘が刺さったような感触は……大分、ましになったように思う)
P(しかしそれでも、疼きが完全に消えたわけではない)
P(勿論これは、俺自身が望んだ結果でもあるのだが……ただ、だからといって、それがかえって心地良い、などということも決してない)
P(疼きは疼きとして、これからも……付き合っていくことになるのだろう)
P(そしてまた、やよいにとっても……『胸の奥のところが、ちくっと痛むような』……そんな感触が、完全に消えることはないのだろう)
P(……しかしそんな、疼きも痛みも、全部飲み込んで――……俺もやよいも、自分の今日を生きていく)
P「さて……仕事に戻りますか」
了
P「……ああ。試験勉強、頑張れよ。……応援してるから」
やよい「えへへ……ありがとうございます! プロデューサーも、お仕事頑張って下さいね!」
P「ああ、ありがとう。それじゃあ、体に気を付けてな」
やよい「はい! プロデューサーもお元気で! ……あっ、そうだ!」
P「ん? 何だ?」
やよい「えへへ……プロデューサー。……最後にもう一回だけ、いいですか?」スッ
P「! ……ああ」
やよい「よーし。じゃあ、いきますよ?」
P「……おう」
やよい「はいたーっち!」
P「いぇい!」
パシンッ
やよい「えへへ……プロデューサー、どうもありがとうございました! それじゃ!」
P「……おう。じゃあな、やよい」
P(……こうして俺達は、お互いに、『また今度』などと言うことはなく、そのまま別れた)
P(別に、金輪際会う気がないとか、そういうつもりだったわけではない)
P(ただ、なんとなく……そうした方がいいように思ったからだ)
P(そしてそれは、おそらくやよいにとっても……そうだったのだろう)
P(また今日こうして、やよいと7年ぶりに会い、話をしたことで……俺の胸の奥で疼いていた、棘が刺さったような感触は……大分、ましになったように思う)
P(しかしそれでも、疼きが完全に消えたわけではない)
P(勿論これは、俺自身が望んだ結果でもあるのだが……ただ、だからといって、それがかえって心地良い、などということも決してない)
P(疼きは疼きとして、これからも……付き合っていくことになるのだろう)
P(そしてまた、やよいにとっても……『胸の奥のところが、ちくっと痛むような』……そんな感触が、完全に消えることはないのだろう)
P(……しかしそんな、疼きも痛みも、全部飲み込んで――……俺もやよいも、自分の今日を生きていく)
P「さて……仕事に戻りますか」
了
454: 2014/06/14(土) 04:52:14.88 ID:ZwMhVBkq0
ζ*'ヮ')ζ<本作品はこれにて終了となります。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございました。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございました。
456: 2014/06/14(土) 06:06:31.67 ID:SF/4HB4Jo
おつおつ
最高でした!
最高でした!
464: 2014/06/14(土) 10:45:58.38 ID:Voi7jfe+o
乙。これからは気軽にπタッチ出来ないな…
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります