1: 2007/12/22(土) 05:52:06.96 ID:W8AIFi1QO
「知らなかったの? それはね、ここがカチカチ山だからだよ。」
でも怖い。こんな音、聞いた事無いよ。
「怖がりだね。ほら、手を握ってあげるから。」
ありがとう。……でも、ボウボウって音も聞こえる。
「それは今、カチカチ山を過ぎてボウボウ山に入ったからなの。安心して。」
うん。
「いい天気だね。狸くんと来て良かったな。」
兎さん、ぼく背中が熱い。
「気のせいだよ。」
熱いよ。兎さん、手を放して。
「それは、この山が、ええと……なんだっけ。」
熱い、熱い。
「本当に、いい天気。」
でも怖い。こんな音、聞いた事無いよ。
「怖がりだね。ほら、手を握ってあげるから。」
ありがとう。……でも、ボウボウって音も聞こえる。
「それは今、カチカチ山を過ぎてボウボウ山に入ったからなの。安心して。」
うん。
「いい天気だね。狸くんと来て良かったな。」
兎さん、ぼく背中が熱い。
「気のせいだよ。」
熱いよ。兎さん、手を放して。
「それは、この山が、ええと……なんだっけ。」
熱い、熱い。
「本当に、いい天気。」
3: 2007/12/22(土) 05:55:18.20 ID:W8AIFi1QO
「久しぶり。」
あっ、兎さん。こんにちは。
「こんにちは。傷の具合はどう? 大丈夫?」
まだ布団から出られないんだ。せっかく来てくれたのに、ごめんね。
「いいよ。ほら、火傷に効く軟膏を持って来てあげたよ。」
ありがとう。兎さんって、優しいね。
「……塗ってあげるから、布団をどけるね。」
うん。
「ちょっと染みるけど。」
うん。……痛っ。
「これが効くの。この薬は私の特製だからね。」
すごい。兎さん、何でも出来るんだね。
「ひりひりする?」
ひりひりする。すっごく痛い。けど、我慢する。
「そうだね。我慢しようね。これから毎日塗りに来てあげるから。」
うん。
あっ、兎さん。こんにちは。
「こんにちは。傷の具合はどう? 大丈夫?」
まだ布団から出られないんだ。せっかく来てくれたのに、ごめんね。
「いいよ。ほら、火傷に効く軟膏を持って来てあげたよ。」
ありがとう。兎さんって、優しいね。
「……塗ってあげるから、布団をどけるね。」
うん。
「ちょっと染みるけど。」
うん。……痛っ。
「これが効くの。この薬は私の特製だからね。」
すごい。兎さん、何でも出来るんだね。
「ひりひりする?」
ひりひりする。すっごく痛い。けど、我慢する。
「そうだね。我慢しようね。これから毎日塗りに来てあげるから。」
うん。
4: 2007/12/22(土) 05:57:02.71 ID:W8AIFi1QO
「狸くん、二人で食べようと思ってお昼ご飯を作ったよ。」
こんなに沢山? すごく美味しそうだね。
「さあ、食べて食べて。」
いただきまぁす。
「召し上がれ。……どう?」
美味しい。兎さんってお料理も上手なんだね。
「もっと食べていいんだよ。」
うん。でも、兎さんは食べないの?
「実は、味見し過ぎちゃって。」
こんなに美味しいんだもんね。じゃあ、ぼくが兎さんのぶんまで食べていい?
「嬉しいな。私の料理をこんなに気に入って貰えて。」
……げほっ。
「どうしたの?」
ちょっと、気持ち悪くて。げほっげほっ。
「風邪かな? 大丈夫?」
おええ。
「あっ。」
……ごめんなさい、あの、吐いちゃって。
「いいよ。片付けてあげる。狸くんは座ってて。」
ごめんなさい。ごめんなさい。
「いいのいいの。ご飯なんて、また作ればいいんだから。」
こんなに沢山? すごく美味しそうだね。
「さあ、食べて食べて。」
いただきまぁす。
「召し上がれ。……どう?」
美味しい。兎さんってお料理も上手なんだね。
「もっと食べていいんだよ。」
うん。でも、兎さんは食べないの?
「実は、味見し過ぎちゃって。」
こんなに美味しいんだもんね。じゃあ、ぼくが兎さんのぶんまで食べていい?
「嬉しいな。私の料理をこんなに気に入って貰えて。」
……げほっ。
「どうしたの?」
ちょっと、気持ち悪くて。げほっげほっ。
「風邪かな? 大丈夫?」
おええ。
「あっ。」
……ごめんなさい、あの、吐いちゃって。
「いいよ。片付けてあげる。狸くんは座ってて。」
ごめんなさい。ごめんなさい。
「いいのいいの。ご飯なんて、また作ればいいんだから。」
7: 2007/12/22(土) 05:58:22.65 ID:W8AIFi1QO
「狸くん、こんなところに洞窟があるよ。」
ほんとだ。
「ねえ、肝試ししようか。ここに一人で入って、奥まで行ってから戻るの。」
やだよ。怖いよ。
「大丈夫。実は私、ここに入った事あるけど何も出なかったよ。」
ほんと?
「ほんと。」
じゃあ、……行く。
「ちゃんと奥まで行くんだよ?」
うん。
「いってらっしゃい。」
兎さんはここで待っててね。絶対だよ。
「ちゃんと待ってるよ。」
……あれ? 今、洞窟の奥から吠え声が聞こえたような……?
「空耳だよ。」
ほんとだ。
「ねえ、肝試ししようか。ここに一人で入って、奥まで行ってから戻るの。」
やだよ。怖いよ。
「大丈夫。実は私、ここに入った事あるけど何も出なかったよ。」
ほんと?
「ほんと。」
じゃあ、……行く。
「ちゃんと奥まで行くんだよ?」
うん。
「いってらっしゃい。」
兎さんはここで待っててね。絶対だよ。
「ちゃんと待ってるよ。」
……あれ? 今、洞窟の奥から吠え声が聞こえたような……?
「空耳だよ。」
9: 2007/12/22(土) 06:00:48.48 ID:W8AIFi1QO
「狸くん、火傷には針治療っていうのが効くみたいだよ。」
何、それ?
「体に針を刺すと、怪我や病気が治るんだって。ちょっと試してみよう。」
痛そう……。いつものお薬だけでいいよ。
「でも、この軟膏は君にはあんまり効かないみたいだし、別の治療を試してみないと。」
……うん。分かったよ兎さん。
「じゃあ、刺すね。」
ぎゃっ。
「人間は針を千本くらい刺して治すみたいだけど、
狸くんの体の大きさなら百本くらいでいいかな。」
良かった。ぼく、針を千本も刺されたら氏んじゃうよ。
「そうだね。百本で良かったね。」
うん。……あの。
「ん?」
効かないかもしれないけど、火傷にお薬塗るの、やめないでね。
「うん、分かった。」
何、それ?
「体に針を刺すと、怪我や病気が治るんだって。ちょっと試してみよう。」
痛そう……。いつものお薬だけでいいよ。
「でも、この軟膏は君にはあんまり効かないみたいだし、別の治療を試してみないと。」
……うん。分かったよ兎さん。
「じゃあ、刺すね。」
ぎゃっ。
「人間は針を千本くらい刺して治すみたいだけど、
狸くんの体の大きさなら百本くらいでいいかな。」
良かった。ぼく、針を千本も刺されたら氏んじゃうよ。
「そうだね。百本で良かったね。」
うん。……あの。
「ん?」
効かないかもしれないけど、火傷にお薬塗るの、やめないでね。
「うん、分かった。」
13: 2007/12/22(土) 06:02:46.37 ID:W8AIFi1QO
「ねぇ、釣りをしに行かない? 良い釣り場を見つけたの。」
釣り?
「そう。あの湖に小舟を出して、舟釣り。」
ぼく、舟なんて乗った事無いよ。怖いよ……。
「大丈夫。絶対沈まない舟を作ってあげるから。」
沈まない舟?
「そう。その道の通はみぃんな、その舟を漕いで釣りをするの。」
へええ。
釣り?
「そう。あの湖に小舟を出して、舟釣り。」
ぼく、舟なんて乗った事無いよ。怖いよ……。
「大丈夫。絶対沈まない舟を作ってあげるから。」
沈まない舟?
「そう。その道の通はみぃんな、その舟を漕いで釣りをするの。」
へええ。
14: 2007/12/22(土) 06:03:12.57 ID:kBQhIarMO
狸さんカワイソス…
15: 2007/12/22(土) 06:03:18.56 ID:eXQZ4JEUO
まあおばあさん惨頃してるからな
19: 2007/12/22(土) 06:05:58.42 ID:W8AIFi1QO
「どう? これが絶対沈まない泥の舟だよ。作るのが大変だったんだから。」
かっこいい。でも、二人で乗るには小さいみたい……。
「泥が思ったより少なくて。私は木の舟に乗るから、狸くんはこっちに乗って。」
ありがとう、兎さん。
「どっちがたくさん釣れるか競争しようね。」
うん。あっ、兎さん、体が泥で汚れてるよ。洗ったら?
「このくらい、後で洗うよ。」
兎さんの白い毛皮が汚れっ放しじゃ駄目だよ。勿体無いよ。
「勿体無い? それって、どういう意味?」
え? えっと……せっかく白くて綺麗なのに勿体無い、っていう意味……。
「あはは。」
ごめんなさい。変な事言っちゃって。
「体、洗ってあげる?」
えっ。
「いつもの軟膏でベタベタするでしょう、あなたの体も。一緒に洗ってあげるよ。」
……うん。
かっこいい。でも、二人で乗るには小さいみたい……。
「泥が思ったより少なくて。私は木の舟に乗るから、狸くんはこっちに乗って。」
ありがとう、兎さん。
「どっちがたくさん釣れるか競争しようね。」
うん。あっ、兎さん、体が泥で汚れてるよ。洗ったら?
「このくらい、後で洗うよ。」
兎さんの白い毛皮が汚れっ放しじゃ駄目だよ。勿体無いよ。
「勿体無い? それって、どういう意味?」
え? えっと……せっかく白くて綺麗なのに勿体無い、っていう意味……。
「あはは。」
ごめんなさい。変な事言っちゃって。
「体、洗ってあげる?」
えっ。
「いつもの軟膏でベタベタするでしょう、あなたの体も。一緒に洗ってあげるよ。」
……うん。
22: 2007/12/22(土) 06:08:31.74 ID:W8AIFi1QO
兎さん、泥の舟が沈んじゃった。
「それはそうだよ。泥の舟だもの。」
ぼくも沈んじゃう。泳げないから。
兎さんは泳げるの?
「ちょっとだけね。」
すごい。じゃあ木の舟が沈んでも大丈夫だね。
「木の舟は沈まないよ。」
そっか。安心した。……ねぇ、兎さん。
「ん?」
……やっぱり、言えない。
「気になるなぁ。」
えっと、いつもお薬を塗ってくれたり、さっき体を洗ってくれたりした時、
ドキドキした。
「こっちもドキドキしてた。」
いつも遊んでくれてありがとう。さよなら。
「さよなら。」
「それはそうだよ。泥の舟だもの。」
ぼくも沈んじゃう。泳げないから。
兎さんは泳げるの?
「ちょっとだけね。」
すごい。じゃあ木の舟が沈んでも大丈夫だね。
「木の舟は沈まないよ。」
そっか。安心した。……ねぇ、兎さん。
「ん?」
……やっぱり、言えない。
「気になるなぁ。」
えっと、いつもお薬を塗ってくれたり、さっき体を洗ってくれたりした時、
ドキドキした。
「こっちもドキドキしてた。」
いつも遊んでくれてありがとう。さよなら。
「さよなら。」
28: 2007/12/22(土) 06:10:17.35 ID:W8AIFi1QO
……
「……」
……
「木の舟も沈めばいいのに。」
「……」
……
「木の舟も沈めばいいのに。」
41: 2007/12/22(土) 06:20:21.24 ID:W8AIFi1QO
「お爺さん、お鍋をするから野菜を分けてよ。」
「……あの狸、氏んじゃった。
泥の舟に乗って、湖に出てしまったんだよ。馬鹿だったから。」
「私は、あの子がお婆さんに怪我をさせたなんて事、信じてなかったのに、
頃しちゃった。」
「お腹なんて全然空かないの。でも、食べないときっと無駄になるから。」
「野菜をありがとう。お爺さん、お婆さんによろしくね。」
「……そうよ、狸汁。お爺さんにはあげないわ。ひとりで食べるの。」
「さよなら。」
「……あの狸、氏んじゃった。
泥の舟に乗って、湖に出てしまったんだよ。馬鹿だったから。」
「私は、あの子がお婆さんに怪我をさせたなんて事、信じてなかったのに、
頃しちゃった。」
「お腹なんて全然空かないの。でも、食べないときっと無駄になるから。」
「野菜をありがとう。お爺さん、お婆さんによろしくね。」
「……そうよ、狸汁。お爺さんにはあげないわ。ひとりで食べるの。」
「さよなら。」
17: 2007/12/22(土) 06:05:20.32 ID:JYPBuevU0
なんか太宰治のカチカチ山思い出すな・・・
84: 2007/12/22(土) 09:33:09.90 ID:W8AIFi1QO
・とりあえず「さよなら。」のやりとりを書きたかった。
・サディストも書きたかった。
・元ネタは>>17。
・続きは無理。
・また今度。
・サディストも書きたかった。
・元ネタは>>17。
・続きは無理。
・また今度。
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