1: 2007/12/30(日) 03:32:17.88 ID:pNnIQ/kj0
「磯野ー、野球やろうぜー!」
懐かしい声で、ふと目を覚ます
あのセリフを最後に聞いたのはいつだろうか
時計を確かめると、まだ2時をまわった程の丑三つ時だった
目が冴えてしまった僕は仕方なく起き上がり、そっと自分の机の上を眺める
"中学受験の基礎をを完ペキマスター!"
"難関中にも対応!ハイレベル問題集"
"ノリジオ学院中学校 過去問題集"
一年前の僕には、まだ無縁だったものたち
クラスメイト、先生、家族でさえこうなるとは誰も想像できなかっただろう
学校の宿題すら儘ならなかった僕が、何故こんなことになったのか
あいつのせいなのか、それともあいつのおかげなのか…
劇的に生活が変化したこの年を振り返りつつ、僕は再び布団に入る
懐かしい声で、ふと目を覚ます
あのセリフを最後に聞いたのはいつだろうか
時計を確かめると、まだ2時をまわった程の丑三つ時だった
目が冴えてしまった僕は仕方なく起き上がり、そっと自分の机の上を眺める
"中学受験の基礎をを完ペキマスター!"
"難関中にも対応!ハイレベル問題集"
"ノリジオ学院中学校 過去問題集"
一年前の僕には、まだ無縁だったものたち
クラスメイト、先生、家族でさえこうなるとは誰も想像できなかっただろう
学校の宿題すら儘ならなかった僕が、何故こんなことになったのか
あいつのせいなのか、それともあいつのおかげなのか…
劇的に生活が変化したこの年を振り返りつつ、僕は再び布団に入る
4: 2007/12/30(日) 03:33:49.38 ID:pNnIQ/kj0
「磯野、もう明日からお前とは遊べない」
その言葉を突然受けたのは、今年の3月、終了式の日だった
「僕は中学受験することになったんだ、だからこれまでみたいに遊んでいる暇はない
この春休みからは塾に行き始めて、本格的に勉強を始めるんだ」
放課後の教室で突然告げられたその言葉
初めは何かの冗談だと思っていた
だが、かつて見たことのない中島のその真剣な眼差しに、僕は圧倒された
中島は、本気だった
「じゃあ、僕も、中学受験、するよ!」
咄嗟にでた、その言葉
僕は、中島と同じ中学に通いたいと思っていた
それくらい中島のことを親友だと思っていたし
中島も快く受け入れてくれるはずだ、などと高をくくっていた
「ふざけるな!」
中島は一層険しい顔をして、僕に向かってそう叫んだ
予想外のその反応に、僕は戸惑いを隠せなかった
その言葉を突然受けたのは、今年の3月、終了式の日だった
「僕は中学受験することになったんだ、だからこれまでみたいに遊んでいる暇はない
この春休みからは塾に行き始めて、本格的に勉強を始めるんだ」
放課後の教室で突然告げられたその言葉
初めは何かの冗談だと思っていた
だが、かつて見たことのない中島のその真剣な眼差しに、僕は圧倒された
中島は、本気だった
「じゃあ、僕も、中学受験、するよ!」
咄嗟にでた、その言葉
僕は、中島と同じ中学に通いたいと思っていた
それくらい中島のことを親友だと思っていたし
中島も快く受け入れてくれるはずだ、などと高をくくっていた
「ふざけるな!」
中島は一層険しい顔をして、僕に向かってそう叫んだ
予想外のその反応に、僕は戸惑いを隠せなかった
5: 2007/12/30(日) 03:34:29.84 ID:pNnIQ/kj0
「学校の勉強すらろくにできない磯野に、何ができるって言うんだ?
"最小公倍数"の意味が分かるか?分からないだろう!?
早い奴は小三くらいから準備を始めるんだ、頭カラッポのお前が
今からそんなことできるはずがないだろ!!」
あまりに激しいその言葉に、僕は、ただ呆然と立ち尽くすだけだった
何も言い返せないのは、悔しいからではない
中島の言っていることは、もっともな事だ
だけど、その言葉が中島の口からでたことが、僕は、悲しかったんだ
「ごめん…少し、言いすぎたよ」
「僕の方こそ…考えなしな発言しちゃって、ごめん」
居心地の悪い沈黙が、二人きりの教室を包み込んだ
"最小公倍数"の意味が分かるか?分からないだろう!?
早い奴は小三くらいから準備を始めるんだ、頭カラッポのお前が
今からそんなことできるはずがないだろ!!」
あまりに激しいその言葉に、僕は、ただ呆然と立ち尽くすだけだった
何も言い返せないのは、悔しいからではない
中島の言っていることは、もっともな事だ
だけど、その言葉が中島の口からでたことが、僕は、悲しかったんだ
「ごめん…少し、言いすぎたよ」
「僕の方こそ…考えなしな発言しちゃって、ごめん」
居心地の悪い沈黙が、二人きりの教室を包み込んだ
8: 2007/12/30(日) 03:35:29.75 ID:pNnIQ/kj0
それから、春休みが訪れ、中島が僕を訪ねることはなかったし、
僕も中島に会いにいくことはなかった
それでも、僕はまだ中島を親友だと思っていたし、失いたくはなかった
失わないためにはどうすればいいのか
少ない脳みそで、何度も悩み、考えた
そしてたどり着いた結論は、あの時と同じだったのだ
あの言葉を、"現実"にするしかない
僕が頑張れば、きっといつもの中島が戻ってきてくれるはずだ
そう決意した次の日、本屋へ向かい、中学受験に関する本を、漁った
そして、あまりにも早い、最初の挫折をしたのである
僕も中島に会いにいくことはなかった
それでも、僕はまだ中島を親友だと思っていたし、失いたくはなかった
失わないためにはどうすればいいのか
少ない脳みそで、何度も悩み、考えた
そしてたどり着いた結論は、あの時と同じだったのだ
あの言葉を、"現実"にするしかない
僕が頑張れば、きっといつもの中島が戻ってきてくれるはずだ
そう決意した次の日、本屋へ向かい、中学受験に関する本を、漁った
そして、あまりにも早い、最初の挫折をしたのである
9: 2007/12/30(日) 03:36:14.24 ID:pNnIQ/kj0
植木算、推理算、相当算、つるかめ算…
見たこともないワードが並べられていたのは、算数のテキスト
当時、分数の計算すらまともにできなかった僕には、何一つ理解できなかった
続けて覗いてみた、国語、社会、理化のテキスト
そこには到底小学校では習わないようなハイレベルなものばかりが揃っており、
学校の教科書だけでもチンプンカンプンな僕には、未知の世界であった
でも、もしこの未知の世界へ通じるドアを開けることができれば、きっとそこで中島に会える
そう信じて、僕は、立ち上がった
見たこともないワードが並べられていたのは、算数のテキスト
当時、分数の計算すらまともにできなかった僕には、何一つ理解できなかった
続けて覗いてみた、国語、社会、理化のテキスト
そこには到底小学校では習わないようなハイレベルなものばかりが揃っており、
学校の教科書だけでもチンプンカンプンな僕には、未知の世界であった
でも、もしこの未知の世界へ通じるドアを開けることができれば、きっとそこで中島に会える
そう信じて、僕は、立ち上がった
10: 2007/12/30(日) 03:37:03.17 ID:pNnIQ/kj0
「まず、復習をやろう」
小学校五年生が終わった時点で、殆んどクラス最下位なのである
中学受験のことは一度忘れて、今まで学校で習ったことを復習しよう、そう決めたのだ
授業もろくに聞かなかった僕にとって、それは楽な道のりではなかった
何度も何度も、簡単な計算を間違え、簡単な漢字を書き間違えた
分からない所は父さんやマスオ兄さんを協力を受けた
全く外出せず、一日中部屋に篭りっぱなしの僕を家族は心配した
それもそのはず、春休みは宿題がないので、今までは一日中遊びほうけてたからだ
「お兄ちゃん、どうしちゃったの?」
「怖いです」
ワカメやタラちゃんの発言が、耳に痛い
けれど、それが中島へとつづくためなら、どんなことも、きっと耐えられる
小学校五年生が終わった時点で、殆んどクラス最下位なのである
中学受験のことは一度忘れて、今まで学校で習ったことを復習しよう、そう決めたのだ
授業もろくに聞かなかった僕にとって、それは楽な道のりではなかった
何度も何度も、簡単な計算を間違え、簡単な漢字を書き間違えた
分からない所は父さんやマスオ兄さんを協力を受けた
全く外出せず、一日中部屋に篭りっぱなしの僕を家族は心配した
それもそのはず、春休みは宿題がないので、今までは一日中遊びほうけてたからだ
「お兄ちゃん、どうしちゃったの?」
「怖いです」
ワカメやタラちゃんの発言が、耳に痛い
けれど、それが中島へとつづくためなら、どんなことも、きっと耐えられる
11: 2007/12/30(日) 03:38:13.76 ID:pNnIQ/kj0
朝は六時に起き、昼も、夜も日が変わる頃まで勉強に明け暮れた
初めは「いつもの三日坊主だろう」なんて思っていた家族も気味悪がり、心配しだす程だった
だが、その甲斐あってか、春休みが終わる頃には、小学校五年生までの学校の範囲はほぼ完璧になっていた
新学年が始まり、中島とは別のクラスになった
今まで一緒につるんでいた橋本や西原、女子もカオリちゃんや早川さんと離れ、
同じクラスだった顔見知りは花沢さんだけとなった
その花沢さんはというと、初めこそ僕の変わりように驚いていたが、
僕と中島との中継を、上手く取り持ってくれた
初めは「いつもの三日坊主だろう」なんて思っていた家族も気味悪がり、心配しだす程だった
だが、その甲斐あってか、春休みが終わる頃には、小学校五年生までの学校の範囲はほぼ完璧になっていた
新学年が始まり、中島とは別のクラスになった
今まで一緒につるんでいた橋本や西原、女子もカオリちゃんや早川さんと離れ、
同じクラスだった顔見知りは花沢さんだけとなった
その花沢さんはというと、初めこそ僕の変わりように驚いていたが、
僕と中島との中継を、上手く取り持ってくれた
12: 2007/12/30(日) 03:38:55.89 ID:pNnIQ/kj0
それからすぐに、僕も塾へと通うことになった
家族は僕の頑張りを認めてくれ、中学受験の話をすると、
父さんも「カツオがヤル気なら」と快く承諾してくれた
花沢さんから中島の通う塾は聞いていたので、敢えて別の塾に通うことにする
「タラちゃんが幼稚園に通いはじめて、手がかからなくなったので」と、姉さんはパートを始めてくれた
家族の全面的なサポートを受けて、僕の中学受験はスタートした
家族は僕の頑張りを認めてくれ、中学受験の話をすると、
父さんも「カツオがヤル気なら」と快く承諾してくれた
花沢さんから中島の通う塾は聞いていたので、敢えて別の塾に通うことにする
「タラちゃんが幼稚園に通いはじめて、手がかからなくなったので」と、姉さんはパートを始めてくれた
家族の全面的なサポートを受けて、僕の中学受験はスタートした
16: 2007/12/30(日) 03:40:06.26 ID:pNnIQ/kj0
「点数的には本当は不合格なんですがね…、算数の考え方がなかなか面白い」
これは入塾テストを受けたときに、塾長から言われた言葉だ
いくら春休みに勉強したからとはいえ、基が基だけに、現実は厳しかった
塾長のお情けで入ったその塾は、駅前にある小さな個人経営の塾
中島が通っているらしい、業界最大手の塾"海能研"とは対照的だった
「食塩水を2つ混ぜて、濃度を求める問題、これは…」
学校の授業とは、まるで違う雰囲気だった
おしゃべりする生徒などおらず、皆、真剣に話を聞き、ノートをとっていた
僕は、真新しいノートに何を書けばいいのか、どう書けばいいのか
初めてのことだらけの授業に、僕は戸惑った
これは入塾テストを受けたときに、塾長から言われた言葉だ
いくら春休みに勉強したからとはいえ、基が基だけに、現実は厳しかった
塾長のお情けで入ったその塾は、駅前にある小さな個人経営の塾
中島が通っているらしい、業界最大手の塾"海能研"とは対照的だった
「食塩水を2つ混ぜて、濃度を求める問題、これは…」
学校の授業とは、まるで違う雰囲気だった
おしゃべりする生徒などおらず、皆、真剣に話を聞き、ノートをとっていた
僕は、真新しいノートに何を書けばいいのか、どう書けばいいのか
初めてのことだらけの授業に、僕は戸惑った
18: 2007/12/30(日) 03:41:17.72 ID:pNnIQ/kj0
周りは、それこそ中島が言っていたように、二年程前から中学受験を始めている人ばかり
僕のように、小学校六年生から新たに中学受験を始める人は、"異端"扱いされるのだ
それでも、必氏に皆についていこうと、勉強に喰らいついた
毎週土曜日にある確認テストも、少しずつだけれど、成績も上がった
力がついている実感が湧く瞬間が、一番嬉しかった
僕のように、小学校六年生から新たに中学受験を始める人は、"異端"扱いされるのだ
それでも、必氏に皆についていこうと、勉強に喰らいついた
毎週土曜日にある確認テストも、少しずつだけれど、成績も上がった
力がついている実感が湧く瞬間が、一番嬉しかった
19: 2007/12/30(日) 03:41:59.18 ID:pNnIQ/kj0
それから二ヶ月程経った六月の梅雨真っ最中のある日のことだった
雨の降りしきる校庭を臨む廊下で、中島とばったり会ったのである
いや、正確に言えば、擦れ違っただけなのだろう
僕は思わず足を止めた、が、中島は顔をあげることなく、そのまま去っていった
その瞬間、心の中で何かが消えて、そして新たに生まれたような気がした
僕はただ拳を握りしめ、そのまま立っていることしかできなかった
何か言いたいことがあるなら、振り返って呼び止めればいい
そう、本当は、たくさん言いたくて、聞きたいことがあるはずなのに
「中島、僕が受験すること知っているんだろう?」
「中島、お前は僕を嫌っているのか?」
「中島、僕は、お前と同じ学校に進みたい」
僕は、中島と背中を向かい合わせたまま、歩き出した
立ち止まるのは、これが最後だ
21: 2007/12/30(日) 03:43:12.77 ID:pNnIQ/kj0
「お兄ちゃん、今日はお姉ちゃんと三者面談に行くんでしょ」
ワカメがバサッと掛け布団を剥ぐ
いつの間にか、眠っていたようだ
「やだ…お兄ちゃん泣いてるの?」
「え…?」
そっと頬を左手で触ってみると、ほのかに湿っていた
懐かしい、夢だった
いや、懐かしいというにはまだ…
「ほら、はやく顔洗って、朝ごはん食べたら?」
ワカメに急かされ、洗面所に向かう
今日は十二月十五日、こないだの模試の結果が返ってくる日なのだ
あれから僕は必氏で勉強をつづけ、今や中島と同じ志望校を狙える程になった
(中島の志望校は、花沢さんから聞いた)
中島のせいなのか、中島のおかげなのか…
どちらにせよ、僕の人生はアイツに振り回されてばっかしなのだ
「いい加減、目覚めなきゃな…」
歯磨き粉をいつもより少し多めに歯ブラシにつけ、口につっこんだ
ワカメがバサッと掛け布団を剥ぐ
いつの間にか、眠っていたようだ
「やだ…お兄ちゃん泣いてるの?」
「え…?」
そっと頬を左手で触ってみると、ほのかに湿っていた
懐かしい、夢だった
いや、懐かしいというにはまだ…
「ほら、はやく顔洗って、朝ごはん食べたら?」
ワカメに急かされ、洗面所に向かう
今日は十二月十五日、こないだの模試の結果が返ってくる日なのだ
あれから僕は必氏で勉強をつづけ、今や中島と同じ志望校を狙える程になった
(中島の志望校は、花沢さんから聞いた)
中島のせいなのか、中島のおかげなのか…
どちらにせよ、僕の人生はアイツに振り回されてばっかしなのだ
「いい加減、目覚めなきゃな…」
歯磨き粉をいつもより少し多めに歯ブラシにつけ、口につっこんだ
22: 2007/12/30(日) 03:44:27.23 ID:pNnIQ/kj0
「偏差値65…第六志望まで全て合格率80%、素晴らしい成績ですね」
「本当ですか!?凄いじゃないカツオ…」
めきめきと伸びていく成績とは裏腹に、僕は少しずつ勉強する意義が分からなくなりはじめていた
中島がいなかったら、絶対にこんなことはしていない…
「八ヶ月前、中学受験の知識が0のあなたがうちの塾にやってきた時は驚きましたよ…
それが今では塾のトップを争う程になったんですから…分からないものですね…
ノリジオ学院なんて言わずに、君ならもう少し上のレベルも狙え…」
「それは嫌なんです!僕は…僕は…」
「…どうしてかこの子、ノリジオ学院以外は絶対に受験しないって言うんですよ…」
僕はノリジオ学院以外は眼中になかった
中島の志望校であるノリジオ学院以外は…
「本当ですか!?凄いじゃないカツオ…」
めきめきと伸びていく成績とは裏腹に、僕は少しずつ勉強する意義が分からなくなりはじめていた
中島がいなかったら、絶対にこんなことはしていない…
「八ヶ月前、中学受験の知識が0のあなたがうちの塾にやってきた時は驚きましたよ…
それが今では塾のトップを争う程になったんですから…分からないものですね…
ノリジオ学院なんて言わずに、君ならもう少し上のレベルも狙え…」
「それは嫌なんです!僕は…僕は…」
「…どうしてかこの子、ノリジオ学院以外は絶対に受験しないって言うんですよ…」
僕はノリジオ学院以外は眼中になかった
中島の志望校であるノリジオ学院以外は…
23: 2007/12/30(日) 03:45:30.69 ID:pNnIQ/kj0
帰り道、怪訝そうな顔をしている僕に、姉さんが話しかけた
「ねえカツオ、ノリジオ学院に何かあるの?」
「何でもないよ…」
この質問は何度も受けた、が、理由を家族に話したことはない
自分でもイマイチ理由が分からないからだ
中島と喧嘩したのだったら、中島の家まで行って「ごめん!!」と叫べばいいじゃないか
単純バカであるはずの僕が、こんな回りくどいことをする意味が、よく分からなかった
「ねえカツオ、ノリジオ学院に何かあるの?」
「何でもないよ…」
この質問は何度も受けた、が、理由を家族に話したことはない
自分でもイマイチ理由が分からないからだ
中島と喧嘩したのだったら、中島の家まで行って「ごめん!!」と叫べばいいじゃないか
単純バカであるはずの僕が、こんな回りくどいことをする意味が、よく分からなかった
29: 2007/12/30(日) 03:46:45.25 ID:pNnIQ/kj0
時は流れ、元旦の日、僕は一人で初詣に出かけた
と言ってもそんな大そうなものではなく、近くの神社にお参りにいくだけだった
普通の受験生なら、「絶対合格」とでも書いた絵馬を飾るのだろうか
けれど今の僕が願うことは、一般の受験生とは少しズレたことだった
「………」
お賽銭を入れ、心で願いをかける
帰ろう、としたところで、とある人と出逢った
花沢さんだ
「磯野君、久しぶり!」
花沢さんは振袖を着ており、"馬子にも衣装"と言っては失礼だが、いつもより綺麗なように見えた
「どう、似合う?もう帰るとこ?ちょっと待って!私もお参り済ませちゃわ!!」
一方的に言いたいことだけを言って、境内の方へと駆けて行った
いつもの花沢さんのこの強引さに、少し元気をもらう
と言ってもそんな大そうなものではなく、近くの神社にお参りにいくだけだった
普通の受験生なら、「絶対合格」とでも書いた絵馬を飾るのだろうか
けれど今の僕が願うことは、一般の受験生とは少しズレたことだった
「………」
お賽銭を入れ、心で願いをかける
帰ろう、としたところで、とある人と出逢った
花沢さんだ
「磯野君、久しぶり!」
花沢さんは振袖を着ており、"馬子にも衣装"と言っては失礼だが、いつもより綺麗なように見えた
「どう、似合う?もう帰るとこ?ちょっと待って!私もお参り済ませちゃわ!!」
一方的に言いたいことだけを言って、境内の方へと駆けて行った
いつもの花沢さんのこの強引さに、少し元気をもらう
32: 2007/12/30(日) 03:48:29.45 ID:pNnIQ/kj0
ふと空を見上げると、綺麗な青色が広がっていた
思えば、こうやって落ち着いて空を見上げることもなくなっていたなあ
勉強に追われ、息苦しい生活をおくっていたんだな、なんてことを改めてながら思う
けれどそれも、あと丁度一ヶ月なんだ
受験の日、二月一日はもうすぐ傍まで来ている
思えば、こうやって落ち着いて空を見上げることもなくなっていたなあ
勉強に追われ、息苦しい生活をおくっていたんだな、なんてことを改めてながら思う
けれどそれも、あと丁度一ヶ月なんだ
受験の日、二月一日はもうすぐ傍まで来ている
33: 2007/12/30(日) 03:49:16.41 ID:pNnIQ/kj0
「お待たせー!」
花沢さんが境内のほうから戻ってきた
「磯野君は、何をお願いした?」
「えっと…」
「私はね、磯野君と中島君が受かりますようにってお願いしてきた」
花沢さんは人の答えを待たずにそう言って、ニカッと笑った
「本当は私も磯野君と同じ学校に行きたいけれど…男子校じゃ仕方ないもんね…」
「え…?」
花沢さんは僕の背中を激励するようにバシッと叩いた
「ほら!あと一ヶ月なんだから!頑張んなさいよ!!」
「痛い!痛いってば…」
こうやって他愛なく友達と騒ぐのってどれくらいぶりだろう
僕は今までの日々の中で、どれくらい心を磨り減らしてきたのだろう
受験が終われば、すべて終われるのだろうか
受験に受かれば、すべて元に戻るのだろうか
幾多の疑問を抱きながら、日付は少しずつ、運命の日へと近づいていく
花沢さんが境内のほうから戻ってきた
「磯野君は、何をお願いした?」
「えっと…」
「私はね、磯野君と中島君が受かりますようにってお願いしてきた」
花沢さんは人の答えを待たずにそう言って、ニカッと笑った
「本当は私も磯野君と同じ学校に行きたいけれど…男子校じゃ仕方ないもんね…」
「え…?」
花沢さんは僕の背中を激励するようにバシッと叩いた
「ほら!あと一ヶ月なんだから!頑張んなさいよ!!」
「痛い!痛いってば…」
こうやって他愛なく友達と騒ぐのってどれくらいぶりだろう
僕は今までの日々の中で、どれくらい心を磨り減らしてきたのだろう
受験が終われば、すべて終われるのだろうか
受験に受かれば、すべて元に戻るのだろうか
幾多の疑問を抱きながら、日付は少しずつ、運命の日へと近づいていく
36: 2007/12/30(日) 03:51:04.20 ID:pNnIQ/kj0
「本当に一人で大丈夫?」
とうとう受験の日が訪れる
「大丈夫、最寄の駅までの行き方は分かるし、あとは集団についていけば」
「そう?じゃあ、頑張るんだよ」
「頑張ってね、お兄ちゃん!」
「頑張ってくださーい」
家族総出で見送りをしてくれる
緊張していない、と言えば嘘になるが、不思議な気分だった
今日で、すべてが決まるのだろうか?
もし、落ちてしまったら、どうすることもできないのだろうか?
とうとう受験の日が訪れる
「大丈夫、最寄の駅までの行き方は分かるし、あとは集団についていけば」
「そう?じゃあ、頑張るんだよ」
「頑張ってね、お兄ちゃん!」
「頑張ってくださーい」
家族総出で見送りをしてくれる
緊張していない、と言えば嘘になるが、不思議な気分だった
今日で、すべてが決まるのだろうか?
もし、落ちてしまったら、どうすることもできないのだろうか?
40: 2007/12/30(日) 03:52:36.45 ID:pNnIQ/kj0
「受験番号500~550までの方、前の人についていって下さーい」
700人近く集まった小学生の中に、僕と中島はいた
僕の受験番号は「504」、中島はそれよりも数十番後ろであった
お互いの存在に気づいてはいたが、挨拶を交わすことはなかった
「今日で、すべて決着がつく…」
そう思いながら、席に着く
中島の座席を見て、受験番号を計算する……「529」だ
「では、始め!」
一斉に用紙をめくる音と、鉛筆のカリカリした音が、教室に響く
集中する他の受験生を横目に見つつ、僕は今までの日を少し振り返っていた
この日のために、今日まで頑張って…
この日のために?
違う、僕はこの日のために頑張っていたわけじゃない
その先にあるもののために、頑張ってきたんだ
700人近く集まった小学生の中に、僕と中島はいた
僕の受験番号は「504」、中島はそれよりも数十番後ろであった
お互いの存在に気づいてはいたが、挨拶を交わすことはなかった
「今日で、すべて決着がつく…」
そう思いながら、席に着く
中島の座席を見て、受験番号を計算する……「529」だ
「では、始め!」
一斉に用紙をめくる音と、鉛筆のカリカリした音が、教室に響く
集中する他の受験生を横目に見つつ、僕は今までの日を少し振り返っていた
この日のために、今日まで頑張って…
この日のために?
違う、僕はこの日のために頑張っていたわけじゃない
その先にあるもののために、頑張ってきたんだ
42: 2007/12/30(日) 03:54:44.33 ID:pNnIQ/kj0
うん、分かる、解ける…
きっと、大丈夫だ…
試験が終わると、中島はこちらを見ることなく、そそくさと帰っていった
僕もそれを追ったりはせず、そのまま帰った
二日後、合格発表が行われる
僕は力を出し切った
あとは結果を待つしかない
それと僕はこの日を境に、勉強することを止めた
家族は受験も終わったんだからと優しい声をかけてくれたが、
正直この先、到底勉強する気は起きないだろうと思った
合格発表の前日の夜、少し不思議な夢を見た
さっぱり顔を合わせなくなってしまったカオリちゃんがでてきたのだ
「磯野君ってほんとうに不器用な人ね」
そう一言言い放ち、暗闇の中に去っていく
ただ、それだけの、夢だった
きっと、大丈夫だ…
試験が終わると、中島はこちらを見ることなく、そそくさと帰っていった
僕もそれを追ったりはせず、そのまま帰った
二日後、合格発表が行われる
僕は力を出し切った
あとは結果を待つしかない
それと僕はこの日を境に、勉強することを止めた
家族は受験も終わったんだからと優しい声をかけてくれたが、
正直この先、到底勉強する気は起きないだろうと思った
合格発表の前日の夜、少し不思議な夢を見た
さっぱり顔を合わせなくなってしまったカオリちゃんがでてきたのだ
「磯野君ってほんとうに不器用な人ね」
そう一言言い放ち、暗闇の中に去っていく
ただ、それだけの、夢だった
46: 2007/12/30(日) 03:58:17.50 ID:pNnIQ/kj0
いつもよりも少し早く目が覚める
合格発表の日が訪れ、この日も僕は一人で会場へやって来た
喜ぶ親子、残念な顔をした親子
色々な顔をした受験生たちと擦れ違う
この日は中島の姿は見つからなかった
落ちる人と、受かる人
この二つに分かれてしまうのは、仕方のないことなのだ
分かってはいるけれど、少し怖い
意を決して、合格発表を見上げた
合格発表の日が訪れ、この日も僕は一人で会場へやって来た
喜ぶ親子、残念な顔をした親子
色々な顔をした受験生たちと擦れ違う
この日は中島の姿は見つからなかった
落ちる人と、受かる人
この二つに分かれてしまうのは、仕方のないことなのだ
分かってはいるけれど、少し怖い
意を決して、合格発表を見上げた
48: 2007/12/30(日) 03:58:45.90 ID:pNnIQ/kj0
「504…504…あった!」
合格発表の数字の中に、自分の数字を見つけた
思いのほか、喜びは満ち溢れない
決して"当然"と思っているわけではないが、
予想していたよりもその感動は遥かに薄いものだった
「529…529…」
間髪入れずに中島の番号を探す
「517…521………536…」
頭の中が、真っ白になったような気がした
合格発表の数字の中に、自分の数字を見つけた
思いのほか、喜びは満ち溢れない
決して"当然"と思っているわけではないが、
予想していたよりもその感動は遥かに薄いものだった
「529…529…」
間髪入れずに中島の番号を探す
「517…521………536…」
頭の中が、真っ白になったような気がした
56: 2007/12/30(日) 04:00:53.79 ID:pNnIQ/kj0
もう一度、見直す
「521………536……529が…ない……………」
僕は手に持っていた受験票を、地面に落とした
もう、僕はこの中学受験が何の意味を持つのか分かっていたはずだ
別にこの学校に通いたいわけではない
中島と、ただ、仲直りがしたかっただけなんだ
僕が受かれば、すべてが解決すると思っていた
僕が受かれば、すべてが元に戻ると思っていた
中島が、落ちることなんて、まったく考えもしなかったのだ
深い闇に襲われそうになる
虚しすぎる現実が、何度も僕を斬りつけた
僕の、この一年間は一体何だったのだろう
「521………536……529が…ない……………」
僕は手に持っていた受験票を、地面に落とした
もう、僕はこの中学受験が何の意味を持つのか分かっていたはずだ
別にこの学校に通いたいわけではない
中島と、ただ、仲直りがしたかっただけなんだ
僕が受かれば、すべてが解決すると思っていた
僕が受かれば、すべてが元に戻ると思っていた
中島が、落ちることなんて、まったく考えもしなかったのだ
深い闇に襲われそうになる
虚しすぎる現実が、何度も僕を斬りつけた
僕の、この一年間は一体何だったのだろう
61: 2007/12/30(日) 04:02:43.00 ID:pNnIQ/kj0
「おめでとう!磯野君!」
次の日、クラス、いや、学年じゅうから僕は祝福を受けた
「ありがとう」
上っ面の笑顔で、そう答える
だが、大して仲の良くないクラスメイトはそれで騙せても
騙せないクラスメートがいる…………花沢さんだ
「私、神様っていないと思うわ」
「…………」
「だって、磯野君だけ受かるなんて、どうしてこんな酷い仕打ちするのかしら……」
花沢さんは涙ぐんでいた
僕は思わず、もらい泣きをしそうになる
けれど、泣くにはまだ早い、まだ、できることがあるはずだ…
中島は、次の日も、その次の日も、学校を休んだ
次の日、クラス、いや、学年じゅうから僕は祝福を受けた
「ありがとう」
上っ面の笑顔で、そう答える
だが、大して仲の良くないクラスメイトはそれで騙せても
騙せないクラスメートがいる…………花沢さんだ
「私、神様っていないと思うわ」
「…………」
「だって、磯野君だけ受かるなんて、どうしてこんな酷い仕打ちするのかしら……」
花沢さんは涙ぐんでいた
僕は思わず、もらい泣きをしそうになる
けれど、泣くにはまだ早い、まだ、できることがあるはずだ…
中島は、次の日も、その次の日も、学校を休んだ
63: 2007/12/30(日) 04:04:46.13 ID:pNnIQ/kj0
ある家の前で、僕は立ち尽くしていた
ここに来るのは、何ヶ月ぶりだろうか
表札に書かれた"中島"の文字
「ふう」と一回深呼吸をし、震える人差し指で呼び鈴を押す
中からは中島のおじいちゃんがでてきた
「おお磯野君!!君には本当に申し訳ないことをしたと思ってる…」
「え?」
「実はな、博に磯野君と遊ばないようにと言ったのは、あの子の親なんじゃよ
わしはそこまでさせる必要はないと言ったんじゃが…
受けた学校全部落ちてしまうなんてのう…」
その言葉で、少し救われたような気がした
中島は、僕を嫌ったわけじゃないんだ…
「中島君は…今…」
「博は今、川原のほうへ散歩に行っておるよ」
ここに来るのは、何ヶ月ぶりだろうか
表札に書かれた"中島"の文字
「ふう」と一回深呼吸をし、震える人差し指で呼び鈴を押す
中からは中島のおじいちゃんがでてきた
「おお磯野君!!君には本当に申し訳ないことをしたと思ってる…」
「え?」
「実はな、博に磯野君と遊ばないようにと言ったのは、あの子の親なんじゃよ
わしはそこまでさせる必要はないと言ったんじゃが…
受けた学校全部落ちてしまうなんてのう…」
その言葉で、少し救われたような気がした
中島は、僕を嫌ったわけじゃないんだ…
「中島君は…今…」
「博は今、川原のほうへ散歩に行っておるよ」
65: 2007/12/30(日) 04:05:50.58 ID:pNnIQ/kj0
ごめん
ごめん
ごめん
何度も何度も心の中で叫ぶ
僕は夢中で、走った
目から溢れる水滴で、視界が白くぼやけた
はやく中島に会いたかった
会って、伝えたい言葉があった
ごめん
ごめん
何度も何度も心の中で叫ぶ
僕は夢中で、走った
目から溢れる水滴で、視界が白くぼやけた
はやく中島に会いたかった
会って、伝えたい言葉があった
69: 2007/12/30(日) 04:07:10.09 ID:pNnIQ/kj0
「中島!」
川へ向かって身を投げようとする、中島が見えた
「駄目だ!!中島!!早まるな!!!」
腹の底から叫んだ
中島があまりにデカいその声に驚いたように、こちらを振り返る
その瞳は泣き腫らして真っ赤になっていた
73: 2007/12/30(日) 04:08:24.36 ID:pNnIQ/kj0
ハァ…ハァ…
全力疾走した疲れがどっと体を襲った
「………………」
中島は呆然とした様子で僕を見ていた
暫くの間、沈黙が続く
「プッ…あははっ……あはははは……!」
突然中島が吹き出し、沈黙を破った
「違うよ、僕は川を見て落ち込んでただけなのに……早まるなー!!って…アハハ……」
「…………ハハハ……ハハハハ……」
僕は、なんだか気恥ずかしくなり、つられて、笑った
全力疾走した疲れがどっと体を襲った
「………………」
中島は呆然とした様子で僕を見ていた
暫くの間、沈黙が続く
「プッ…あははっ……あはははは……!」
突然中島が吹き出し、沈黙を破った
「違うよ、僕は川を見て落ち込んでただけなのに……早まるなー!!って…アハハ……」
「…………ハハハ……ハハハハ……」
僕は、なんだか気恥ずかしくなり、つられて、笑った
75: 2007/12/30(日) 04:09:40.27 ID:pNnIQ/kj0
「……でもさ、本当に惨めだよな」
笑うことを止めた中島が、うつむいてしゃべりはじめた
「さんざん馬鹿にした磯野が受かって、僕が落ちたんだぜ?
しかも、滑り止めまで全部落ちてんの
笑っちゃうよな……ほんと…………」
中島がまた笑いはじめる
先の笑いとは違う、悲しい笑いだった
「中島」
妙に改まった声で中島の名前を呼ぶ
今、やっと言える日がきた
全ては、この時のためだったんだ
「ごめん」
僕はただ、この一言が言いたくて、中学受験をしたんだ
笑うことを止めた中島が、うつむいてしゃべりはじめた
「さんざん馬鹿にした磯野が受かって、僕が落ちたんだぜ?
しかも、滑り止めまで全部落ちてんの
笑っちゃうよな……ほんと…………」
中島がまた笑いはじめる
先の笑いとは違う、悲しい笑いだった
「中島」
妙に改まった声で中島の名前を呼ぶ
今、やっと言える日がきた
全ては、この時のためだったんだ
「ごめん」
僕はただ、この一言が言いたくて、中学受験をしたんだ
77: 2007/12/30(日) 04:10:30.94 ID:pNnIQ/kj0
深く頭を下げる僕を、中島はどう見ているんだろう
けれど、伝えたかったこの言葉をやっとだせたことが、嬉しかった
何度も回り道をして、遠回りをしたけれど、今、この瞬間にたどり着けたことは
間違いなんかじゃない、そう思えた
「なんで磯野が謝るんだよ、謝るのは僕のほうじゃないか
顔をあげろよ、磯野」
中島のその言葉を受けて、僕は頭をあげ、中島を見る
眼鏡越しに涙ぐむ瞳が見えた
そして、もうひとつ、伝えたかったことを口にする
「僕、ノリジオ学院には行かない」
けれど、伝えたかったこの言葉をやっとだせたことが、嬉しかった
何度も回り道をして、遠回りをしたけれど、今、この瞬間にたどり着けたことは
間違いなんかじゃない、そう思えた
「なんで磯野が謝るんだよ、謝るのは僕のほうじゃないか
顔をあげろよ、磯野」
中島のその言葉を受けて、僕は頭をあげ、中島を見る
眼鏡越しに涙ぐむ瞳が見えた
そして、もうひとつ、伝えたかったことを口にする
「僕、ノリジオ学院には行かない」
78: 2007/12/30(日) 04:12:00.17 ID:pNnIQ/kj0
「なんでだよ!?せっかく掴んだチャンスを棒に振るのか?」
中島は怒ったような口調で、僕に噛み付く
「だって!!」
僕は中島の右手をガシッと掴んだ
中島の手の温度が、僕の手に伝わる
冷たい中島の手に、自分の体温を分けるように握りしめる
「僕は、もう一度、お前と野球したかっただけなんだ!!」
お互い堪えていた涙が、こぼれ落ちた
中島は怒ったような口調で、僕に噛み付く
「だって!!」
僕は中島の右手をガシッと掴んだ
中島の手の温度が、僕の手に伝わる
冷たい中島の手に、自分の体温を分けるように握りしめる
「僕は、もう一度、お前と野球したかっただけなんだ!!」
お互い堪えていた涙が、こぼれ落ちた
81: 2007/12/30(日) 04:13:10.92 ID:pNnIQ/kj0
「野球………しよう……な!」
「……おう!」
「何回も延長して……夜遅くなって………親に叱られて………」
「……おう!」
「それから……それから……」
「……何だってできるよ……時間はいっぱい……あるから……」
ある日の休日、今日も元気のいい声が窓の外から聞こえる
「磯野ー、野球やろうぜー!」
《終わり》
「……おう!」
「何回も延長して……夜遅くなって………親に叱られて………」
「……おう!」
「それから……それから……」
「……何だってできるよ……時間はいっぱい……あるから……」
ある日の休日、今日も元気のいい声が窓の外から聞こえる
「磯野ー、野球やろうぜー!」
《終わり》
86: 2007/12/30(日) 04:13:44.02 ID:kw4VH2h70
いい話だなー
99: 2007/12/30(日) 04:18:15.90 ID:dYJfJ8XXO
>>1 乙
引用: カツオは中島と喧嘩をしたようです
コメント
コメント一覧 (2)
ホスト名 KD106133136102.au-net.ne.jp
国 Japan 地域 Umeda
esusokuhou
が
しました
IPだけ丸出しにされるとかどんな気持ち?
esusokuhou
が
しました
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります