1: 2017/02/21(火) 02:30:29.589 ID:blnuHjh50.net
主人「私がキミをここに連れ込んで、閉じ込めてから、この部屋の外は一体どれくらいの時間が経ったと思う?」

主人「キミの体感でいいから、教えてごらん。……うん、そうだね、それくらいかな。大体一週間強くらいだよね。」

主人「じゃあ、正解を教えてあげる。……鍵、開けておいたよ。これでキミはもう自由、好きなところに行っていいよ。」

主人「……行く場所があるのなら、ね。」




主人「………やあ、おかえりなさい。思ったよりはやかったね。久しぶりの外の世界はどうだった?」

主人「……ふふ、だから言ったでしょ。キミにはもう行くあてなんてないんだって。居場所はもう、ここしかないんだって。」

主人「空はもはやキミの知っている色ではなく、街は人口の光が反射するだけ。そこに人間の姿はなく、機械たちの無機質な動作音が響くだけ…。」

主人「“ここ”はキミの知っている世界のおよそ500年先の未来。キミの家族も、お友達も、家も、街も、国も、なにもかも、もうとっくに滅んでるんだよ。」

主人「……やだなぁ、見間違いでも幻覚でもないよ。もっと自分に自信を持って。キミの感覚は、どこもおかしくなんてなってないよ。」

主人「キミの見たものはすべて、ちゃんと正しいよ。」
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13: 2017/02/21(火) 02:39:41.317 ID:blnuHjh50.net
主人「ふふ、そんなに取り乱さなくていいよ。無くなったちゃったものはもう仕方ないでしょ?」

主人「だから、もう終わっちゃったことは仕方ないから、これからどうしたらいいか考えてみよう?」

主人「現時点でキミが歩むべき道はふたつ。ひとつは、この新しい世界に適応できるように努力すること。」

主人「もうひとつは、このなにも変わらない部屋で、私と、ずーっと現状を維持し続けるか…。」

主人「さあ、キミはどっちを選ぶのかな?」

主人「…………もう、そんな考えるフリなんてしなくてもいいよ。ふふ、もうとっくに答えは決まってるはず。私にらは分かるんだよ?」

主人「キミはね、なにかの支えがないまま新しい生活をできるほど、強い人間じゃないの。本当は怖くて怖くて仕方ないよね?」

主人「今だって、本当ならもう生活の手立てを考えなくちゃいけないのに、頭のなかでは元の時代に戻りたいって、もうそれしか考えられなくなっちゃってる。」

主人「弱いね、キミって。」

21: 2017/02/21(火) 02:48:02.609 ID:blnuHjh50.net
主人「でもね、弱くていいんだよ。」

主人「そんな弱いキミを、私は助けてあげたいな。この訳の分からない世界の、キミの唯一の支えになってあげたい。」

主人「いや、違うね。この部屋のなかにいれば、もう外の世界の時代なんて関係ない。だって、もう二度と触れることはないんだから。」

主人「もしかしたら、次また部屋の扉を開けたら、元の時代に戻っているかもしれないね。……でも、キミはもうそんなことできない。」

主人「キミはもう、怖くなっちゃってる。次はどんな世界を目の当たりにしなくちゃいけないのか。果たしてその世界は、自分の頭の容量の範疇に収まるのか。」

主人「そんなことを考え出したら、もうドアノブに手を乗せることすらできない。扉に近づいただけで、もう嫌な汗が止まらない。」

主人「……だったら、もう、いいじゃない。外の世界なんて、どうだって。この部屋には私がいる。キミがいる。それだけでいいんじゃないかな。」

主人「私はキミを決して見捨てない。私はキミとずっと一緒だよ。私はキミのことが好きなんだ。私はキミを守ってあげられる。」

主人「ほら、心が軽くなったよね?」

29: 2017/02/21(火) 03:01:07.307 ID:blnuHjh50.net
主人「もう、いいんだよ。難しいことや辛いことなんて、もう考えなければいいの。ここには私がいる。私がなんとかしてあげる。」

主人「だから……おいで?まだ不安で苦しいなら、もっと楽にしてあげる。私がキミを抱きしめて、キミの心を解かしてあげる。」

主人「ふふ、恥ずかしがってるのかな。でもキミはそれで耐えられる?もう不安で不安で仕方なくて、今にも泣き出しそうなのに。」

主人「耐えられないよね?キミはそんなに強くないよ。強くないなら、もう頑張らなくていいよ。……無理しなくていいんだよ。ほら、おいで。」

主人「……うんうん、よくできました。そうだよ。えらいね。自分の弱さを認められたね。撫でてあげる。よしよし。」

主人「…………かわいいなぁ。」

主人「……うん、そうだね。もとはと言えば、私がキミをこの部屋に閉じ込めなければ、こんなことにはならなかったんだよね。」

主人「キミが私に連れ込まれなければ、家族とも友達とも、移ろう時代を往くことができたんだよね。」

主人「でも、現実はこうなんだよ。ifを追い求めても、それは仕方のないことなの。これがキミの現実なの。」

主人「こんな、自分をこんな目に遭わせた張本人に必氏にしがみついて震えてる今のキミが、現実のキミなの。自分で、どう思う?」

主人「私は……そんなキミが、大好きだよ…。」

主人「これからも、永遠に、ふたりでここにいようね。……この部屋で……変わらず、このまま…。」

30: 2017/02/21(火) 03:02:32.866 ID:blnuHjh50.net
みたいなのどうよ

32: 2017/02/21(火) 03:03:41.652 ID:DuVL+/3P0.net
世界観好き
こういうの妄想したことあるわ

引用: 部屋の主人(♀)「信じられないなら信じなくていい。でもね、もうキミに居場所なんてないんだよ。」