1: 2009/09/01(火) 23:53:55.65 ID:hsJzXJ5WO
立つかや

2: 2009/09/01(火) 23:57:34.40 ID:hsJzXJ5WO
ロレンス「ほら、今日の夕飯はシチュー。お前の希望通りだ」

ホロ「くふ、ぬしも優しいの。なんだかんだで、ずっとわっちのわがままを聞いてくれるんじゃ」

ロレンス「良い加減慣れるさ。わがままも愛嬌だ」

ホロ「雌は愛嬌じゃからな。昔の人はよく言ったものじゃ」

ロレンス「お前ほど長生きな奴もいないだろうがな」

ホロ「違いない。羨ましいかや?」

ロレンス「正直なところ羨ましいな。どんな気分だ?」

4: 2009/09/02(水) 00:01:29.20 ID:NtRHppgmO
ホロ「かぷっ……。ん、うまい」

ロレンス「人の話の最中に食べるなよ……」

ホロ「ん?ああ、長生きがどんな気持ちか、だったかや」

ロレンス「ああ」

ホロ「どうじゃろうの。淋しいとか、悲しいと思う事はもちろん多い」

ロレンス「そうだろうな。今は違うのか?」

ホロ「人生が長く、悲しみが多いのならば、同じく楽しみも多いんじゃ。その比率は短命であろうとさして変わらぬ」

ロレンス「旅を始めた頃はよくめそめそ泣いてたのにな。このちょっとの間で変わるもんだ」

5: 2009/09/02(水) 00:07:29.73 ID:NtRHppgmO
ホロ「そうかや?短い間、というのは語弊があるがの」

ロレンス「お前の人生から見れば一瞬みたいなもんだろう」

ホロ「いつだったか、ぬしに言わなかったかや?」

ロレンス「?」

ホロ「ぬしと旅をする時間は、孤独に怯えながら村を見守っていた頃の数年に値する」

ロレンス「言ったかな。すまん、よく覚えてない」

ホロ「……ぬしも相変わらずじゃの。いつまで経ってもぬしはぬしと言う事かや」

ロレンス「悪かったな。そんな俺でもよく愛想を尽かさずついてきてくれたんだ」

ホロ「まったくじゃ。ま、ぬしらしくて良い」ニコ

ロレンス「……そうか。美味いか?今日のは肉がしっかり入ってるだろ」

ホロ「んむ、うまい。いつまで経ってもこの味は変わらぬの」

7: 2009/09/02(水) 00:13:14.24 ID:NtRHppgmO




ロレンス「はぁ、食ったな。満腹だ」

ホロ「毎食満腹になるまで食えるくらいには、ぬしも商人として成功したしの?」

ロレンス「お前を毎食満腹にできるような商人は、世界中探しても両手で数えられるだろうな」

ホロ「その両手の指にぬしも入っておるんじゃから、たいしたものじゃ」

ロレンス「だからといって、腹がはち切れる程食わないでくれよ?いつ破産するか気が気でない」

ホロ「ぬしはわっちにたらふく食わせたいじゃろうが、加減しておこう」

ロレンス「……そうしてくれ」

ホロ「くふ。あまり丸々肥えたら、ぬしに嫌われてしまいんす」

9: 2009/09/02(水) 00:18:35.71 ID:NtRHppgmO
ホロ「……食後にぬしと嗜む酒も、わっちは好きじゃな」

ロレンス「ああ。お前は食前でも食事中でもおかまいなしだがな」

ホロ「ふむ。わっちはいつでも酔っている、と言いたいのかや?」

ロレンス「その後に続く言葉は、俺に……だろ」

ホロ「なんじゃ、つまらん。雄が知恵をつけると面白くない」

ロレンス「なんべんもからかわれたらいくらなんでも慣れるさ」

ホロ「そうかや?わっちは、ぬしに囁かれる愛は何度聞いても飽きやせんがな」

ロレンス「そう何度も囁いてないだろ」

ホロ「……たわけ。じゃから、囁けと言っておるんじゃ」

10: 2009/09/02(水) 00:22:26.16 ID:NtRHppgmO
ロレンス「断る」

ホロ「甲斐性のない雄じゃな。雌にせがまれて逃げるのかや」

ロレンス「あんまり軽々しく言うもんでもないだろう?」

ホロ「……では、別の場所で聞く事にしよう」

ロレンス「別の場所?」

ホロ「例えば、こんな風に酒を飲み気分がよくなったところで、一緒に潜り込むベッドの中…とかの」

ロレンス「!」

ホロ「くくっ、なんならてごめにするくらいの男気を見せて欲しいの」

ロレンス「……ちょっと意地悪が過ぎるな」

ホロ「あはは、すまぬ。意地悪過ぎたな」

12: 2009/09/02(水) 00:31:17.09 ID:NtRHppgmO
ロレンス「では…そろそろ寝るか」

ホロ「あの会話の後にすぐそういう事が言えるぬしは、勇気があるのか…はたまた救いようのない鈍感なのか」

ロレンス「?」

ホロ「後者じゃろうな…」

ロレンス「どうした?寝ないのか」

ホロ「はぁ…。まぁ、いまさら言ったところで変わりんせん。寝るとするかや」

もぞもぞ

ロレンス「…ひとつのベッドでも、狭いと思わなくなったな」

ホロ「そうじゃな。ぬしと共にヨイツを見つけてからは、一緒に寝るようになったが…」

ロレンス「慣れとは恐ろしいもんだな」

ホロ「はじめは緊張して寝返りも打てなんだからのう、ぬしは」

14: 2009/09/02(水) 00:39:47.90 ID:NtRHppgmO
ロレンス「はは、そうだったな。初日の朝は身体中痛かった」

ホロ「それはわっちの台詞じゃ。散々乱暴に扱いおって」

ロレンス「いつまで根に持ってるんだ……」

ホロ「ふん、忘れる訳がありんせん」

ロレンス「……もちろん、俺も忘れないさ」

ホロ「どうじゃかの?もうその頭にはわっちとの旅の思い出は半分も残っとりゃせんくせに」

ロレンス「まさか。旅の事はもちろん、お前の言葉一言一句まで覚えてる」

ホロ「ほら、また嘘。さっきわっちの言った言葉を忘れておった」

ロレンス「はは、そうだったな」

ホロ「まったく……ぬしは本当にたわけた雄じゃ」

ホロ「こんな日でも、そんなふうに軽口を叩けるんじゃからの」

15: 2009/09/02(水) 00:43:25.98 ID:NtRHppgmO
ホロ「のう、ぬしよ」

ロレンス「うん?」

ホロ「わっちゃあ、最近……夜が怖い」

ロレンス「……そうか」

ホロ「どうして、とは聞かないのかや」

ロレンス「……」

ホロ「たわけ。こういう時は優しく理由を聞いたり、さもなくば無言で抱きしめるべきじゃろう」

ロレンス「……抱いて欲しいのか」

ホロ「ふんっ」

ロレンス「機嫌を直してくれ。そんな顔されちゃ夢見が悪い」

17: 2009/09/02(水) 00:46:43.03 ID:NtRHppgmO
ロレンス「でもな、ホロ」

ホロ「うん?」

ロレンス「こういう静かなのも、俺は幸せだと思うんだ」

ホロ「……」

ロレンス「一緒になって、こういうのを考える事は増えたが……こんな穏やかな気持ちになるとは、ちょっと予想外だ」

ホロ「ぬしはいっつも、自分の事ばっかりじゃな」

ロレンス「……すまん。淋しいか?」

ホロ「淋しくない訳がないじゃろ。……わっちの身にもなってみたらどうじゃ」

20: 2009/09/02(水) 00:51:44.56 ID:NtRHppgmO
ロレンス「そうだな。やっぱり俺は自分の事ばっかりみたいだ」

ホロ「……」

ロレンス「どうした?」

ホロ「どうしてぬしは……こんな日に、こんな風に普通の会話が出来るんじゃ」

ロレンス「……どうしてだろうな」

ホロ「……」

ロレンス「明日の朝飯は何がいい?」

ホロ「……小麦パン」

ロレンス「わかった。用意するよ」

ホロ「……それから、バターも塗った奴が良いの。砂糖も塗してあればなお良い」

ロレンス「はは、おまけにりんごもつけてやろう」

ホロ「本当かや?くふ、ぬしも太っ腹になったのう」

23: 2009/09/02(水) 00:56:41.71 ID:NtRHppgmO
ホロ「……そうじゃ、初めてりんご買ってもらった時の事、覚えておるかや」

ロレンス「……ああ」

ホロ「……意地悪じゃった。あれは本当に意地悪じゃった」

ロレンス「……すまん……」

ホロ「今となっては懐かしい笑い話じゃがな。良い思い出じゃ」

ロレンス「そうだな……」

ホロ「はぁ……楽しかった」

ロレンス「……」

ホロ「ぬしはどうじゃ?わっちと旅をして、一緒になって…」

ロレンス「もちろん、楽しかったさ」

ホロ「……んふ。そうか」

ロレンス「眠い……」

ホロ「ん?そうかや。じゃあそろそろ……」

ロレンス「ああ。おやすみ、ホロ」

ホロ「ん。おやすみ、ロレンス」

26: 2009/09/02(水) 01:01:30.78 ID:NtRHppgmO
【翌朝】

ホロ「くぁ…」

ホロ「……んむ。良い朝じゃ。逝くには持ってこいじゃな」

ホロ「のう、ロレンス?」

ホロ「……ひょっこり起きてきたりしないかや」

つんつん

ホロ「……やれやれ。やれやれじゃ、まったく」

ホロ「そんな幸せそうな顔をされたら、泣くに泣けん」

ホロ「ぬしの前では賢狼で居ようと思っておったのに」

ホロ「逝ってからもわっちを縛るのかや?」

ホロ「本当にたわけた雄じゃ……」

ホロ「ロレンス……」

ぎゅっ

27: 2009/09/02(水) 01:02:42.99 ID:YulTBNzPO
(´;ω;`)ブワッ

33: 2009/09/02(水) 01:09:28.57 ID:NtRHppgmO
ホロ「わっちも、もう十分じゃ」

ホロ「わっちも、そんな顔をして眠りたい」

ホロ「……今日が最適じゃと思うんじゃが、ぬしはどう思う?」

ホロ「……」

ホロ「焼いてやらねばな。墓はどこが良いか聞いておけばよかった」

ホロ「わっちららしい。お似合いの最後じゃったな」

ホロ「最後の会話が、朝飯……くふ、ロマンチストと言える雄とは言えんかったが」

ホロ「まさかここまでとはな……。びっくりじゃ」

ホロ「……」

ホロ「ヨイツじゃな。ヨイツで焼こう」

37: 2009/09/02(水) 01:15:55.22 ID:NtRHppgmO
【ヨイツ】

ホロ「形見……何を残してやろうかの」

ホロ「ナイフ、財布……ん?確か金はわっちが使えと言っておったな」

ホロ「金儲けの先に何があるのか、などといつも言っておったが……」

ホロ「最後に金を捨てるため、か。……これも一緒に焼いてやろう。墓まで持って行くが良い」

ホロ「形見は、指輪くらいか。……ま、十分じゃろう」

ホロ「……では、ぬしよ。これで最後じゃ。火をつけるぞ」

ホロ「……」

パチ…

パチ……パチ……

40: 2009/09/02(水) 01:20:40.53 ID:NtRHppgmO
パチ……
パチ…パチ…

ホロ「…」じわ…

ホロ「ん……?」

ホロ「……実感が湧かんと思っておったが…。炎でやっと実感できたようじゃな」

ホロ「……やっと、涙が出てきおった。ぬしがあんまり自然に逝くもんじゃから……」

ホロ「わっちの涙が枯れてしまったのかと思った」


パチ……パチ…パチ…


ホロ「……ぬしは、もうわっちに話しかけてはくれぬのじゃな」

43: 2009/09/02(水) 01:28:14.71 ID:NtRHppgmO




ホロ「よし、火も納まった。……埋めるとしよう」

ガタン…

ホロ「わっち……わっちはこれから、どうすれば良い?」

ホロ「泣いたって、もう誰も慰めてはくれん」

ホロ「夜酒を飲み語らう相手もおらん」

ホロ「……ぬしはもう、おらん」

ホロ「う……うぐ………」

ホロ「淋しい……淋しい……!」

ホロ「うぁぁぁん!!」

48: 2009/09/02(水) 01:42:58.50 ID:O4w3Bab70
おわり

45: 2009/09/02(水) 01:31:03.14 ID:YulTBNzPO
ホロの泣きかたが可愛い…が……

この話はくるな…

46: 2009/09/02(水) 01:35:35.24 ID:kV1zKwWK0
俺「……」
何も言わず抱きしめる俺(すごくかっこいい)

49: 2009/09/02(水) 01:47:11.96 ID:40jALbSa0
すみません、>>46はひっぱたいておきましたんでどうぞ

50: 2009/09/02(水) 01:49:34.76 ID:aSD/TRMzO
わっち見てないからなんでロレンスが急に氏んだかわからん

52: 2009/09/02(水) 01:52:21.86 ID:ijuRk8jA0
>>50
わっち→神→不氏身
ロレンス→人→寿命
 
後はわかるな?

55: 2009/09/02(水) 01:57:51.57 ID:/dTNUsKvO
原作も、ここまではやらないだろうけどいつかはこうなっちゃうんだよな…
泣ける

引用: ホロ「ロレンス……」