1:◆5elc53sAMI 2013/02/20(水) 12:27:51.15 ID:bTFvKtv4o
ガラガラ
ロレンス「さて、まずは宿を探さないとな」
ホロ「うむ!」
ホロ「宿に着いたらまず腹ごしらえじゃな!」
ホロ「さっきまで塩っ気のあるものを口にしておったからの、今は何か甘いものが食べたい気分じゃ」
ロレンス「はは、街に着いた途端、上機嫌だな」
ロレンス「俺は何かさっぱりとした物がいいな。りんご酒でも買うか」
ホロ「それもいいの」
ロレンス「さて、まずは宿を探さないとな」
ホロ「うむ!」
ホロ「宿に着いたらまず腹ごしらえじゃな!」
ホロ「さっきまで塩っ気のあるものを口にしておったからの、今は何か甘いものが食べたい気分じゃ」
ロレンス「はは、街に着いた途端、上機嫌だな」
ロレンス「俺は何かさっぱりとした物がいいな。りんご酒でも買うか」
ホロ「それもいいの」
2: 2013/02/20(水) 12:30:15.54 ID:bTFvKtv4o
ガヤガヤ
ホロ「おお、やはり市は賑やかでよいの」
ロレンス「旅をしばらくしていた身としては」
ロレンス「この喧騒に慣れるまで、少しかかりそうだな…」
ロレンス「俺よりも、ホロの方がその点は辛いんじゃないか?」
ホロ「んむ?」
ピョコピョコ
ホロ「ふむ、まあ街ではこうして被り物をしているわけじゃから」パサ
ホロ「耳につく音はぬし様とそれほど変わらんじゃろ」
ホロ「おお、やはり市は賑やかでよいの」
ロレンス「旅をしばらくしていた身としては」
ロレンス「この喧騒に慣れるまで、少しかかりそうだな…」
ロレンス「俺よりも、ホロの方がその点は辛いんじゃないか?」
ホロ「んむ?」
ピョコピョコ
ホロ「ふむ、まあ街ではこうして被り物をしているわけじゃから」パサ
ホロ「耳につく音はぬし様とそれほど変わらんじゃろ」
3: 2013/02/20(水) 12:32:23.03 ID:bTFvKtv4o
ロレンス「…そう言うものか」
ロレンス「さて。とりあえず飲み物でも買おうか」
ロレンス「冷たいりんご酒が、酔いざましにもちょうどよさそうだ」
ホロ「わっちは、あの蜂蜜酒がいい!」
ホロ「もちろんミルク入りのやつじゃ」ホイ、トリエドウカジャ
ロレンス「…見ているだけで胃がもたれそうだ」
ホロ「いつかぬし様もおいしそうに飲んでいたではないか」コクコク
ホロ「甘くておいしいのー♪」
ロレンス「さて。とりあえず飲み物でも買おうか」
ロレンス「冷たいりんご酒が、酔いざましにもちょうどよさそうだ」
ホロ「わっちは、あの蜂蜜酒がいい!」
ホロ「もちろんミルク入りのやつじゃ」ホイ、トリエドウカジャ
ロレンス「…見ているだけで胃がもたれそうだ」
ホロ「いつかぬし様もおいしそうに飲んでいたではないか」コクコク
ホロ「甘くておいしいのー♪」
4: 2013/02/20(水) 12:34:54.12 ID:bTFvKtv4o
コクコク
ホロ「じゃが、確かに甘いので」
ホロ「一度にたくさんは飲めないのが難点じゃな…」
ロレンス「…難点なのか、それは」グビ
ホロ「ふむ。ちょうど口直しになるパンでもあれば」チラ
ホロ「!」ハッ
ロレンス「…どうかしたか、ホロ」
ホロ「ぬし様よ…わっちは、気づいてしまいんす」
ホロ「さっぱりとしたりんご酒と、とろけるように甘い蜂蜜酒」
ホロ「交互に口にすれば、とても幸せなことになるのではないかや!?」
ロレンス「そんな非生産的なことはやめなさい」
ホロ「じゃが、確かに甘いので」
ホロ「一度にたくさんは飲めないのが難点じゃな…」
ロレンス「…難点なのか、それは」グビ
ホロ「ふむ。ちょうど口直しになるパンでもあれば」チラ
ホロ「!」ハッ
ロレンス「…どうかしたか、ホロ」
ホロ「ぬし様よ…わっちは、気づいてしまいんす」
ホロ「さっぱりとしたりんご酒と、とろけるように甘い蜂蜜酒」
ホロ「交互に口にすれば、とても幸せなことになるのではないかや!?」
ロレンス「そんな非生産的なことはやめなさい」
5: 2013/02/20(水) 12:37:51.85 ID:bTFvKtv4o
ロレンス「何を言い出すかと思えば、まったく」ハア
ホロ「むぐむぐ」ポロポロ
ロレンス「ほら、パン屑がこぼれてる。汚れるぞ」
ホロ「にゅししゃみゃもどうじゃ」
ロレンス「…何を言ってるのかさっぱりだ」
ロレンス「ちゃんと飲み下してから喋るんだ」
ホロ「むぐ」
ホロ「むぐむぐ」ポロポロ
ロレンス「ほら、パン屑がこぼれてる。汚れるぞ」
ホロ「にゅししゃみゃもどうじゃ」
ロレンス「…何を言ってるのかさっぱりだ」
ロレンス「ちゃんと飲み下してから喋るんだ」
ホロ「むぐ」
6: 2013/02/20(水) 12:46:52.26 ID:bTFvKtv4o
ホロ「ほれ、ぬし様の分じゃ」
ロレンス「ああ、俺の分を取っておいてくれたのか」
ロレンス「ありがとう、ホロ」パク
ホロ「ふう。満足じゃ!」
ホロ「さてぬし様よ、このあとはどうするのかや?」ペロ
ロレンス「ああ、とりあえずはいつも通り」
ロレンス「商会に顔を出して、売るつもりだった荷は売りに出す」
ロレンス「まあ、大半は」
ロレンス「道中でどこぞの狼に食べられてしまったわけだが」
ホロ「それは災難じゃったの♪」
ロレンス「全くだ」ハハ
ロレンス「ああ、俺の分を取っておいてくれたのか」
ロレンス「ありがとう、ホロ」パク
ホロ「ふう。満足じゃ!」
ホロ「さてぬし様よ、このあとはどうするのかや?」ペロ
ロレンス「ああ、とりあえずはいつも通り」
ロレンス「商会に顔を出して、売るつもりだった荷は売りに出す」
ロレンス「まあ、大半は」
ロレンス「道中でどこぞの狼に食べられてしまったわけだが」
ホロ「それは災難じゃったの♪」
ロレンス「全くだ」ハハ
7: 2013/02/20(水) 13:19:37.85 ID:G69/fcKMo
ホロ「それで…」
ホロ「わっちは宿におればいいのかや?」
ロレンス「…いや、別にそれでも構わないが…」
ロレンス「まさか、気を使ってくれているのか?」
ホロ「まさかとはなんじゃ、まさかとは」
ロレンス「わ、悪い悪い。そう言うつもりで言ったんじゃないんだ」
ロレンス「…それじゃあ、まだ体調がよくないのか」
ホロ「いや、そうではありんせん」
ホロ「ただの気まぐれじゃ。気にせんでよい」
ロレンス「…そうか」
ホロ「わっちは宿におればいいのかや?」
ロレンス「…いや、別にそれでも構わないが…」
ロレンス「まさか、気を使ってくれているのか?」
ホロ「まさかとはなんじゃ、まさかとは」
ロレンス「わ、悪い悪い。そう言うつもりで言ったんじゃないんだ」
ロレンス「…それじゃあ、まだ体調がよくないのか」
ホロ「いや、そうではありんせん」
ホロ「ただの気まぐれじゃ。気にせんでよい」
ロレンス「…そうか」
8: 2013/02/20(水) 13:23:28.66 ID:G69/fcKMo
ロレンス「…俺としては、ついて来て欲しいところだが」
ホロ「ほう」パタ
ロレンス「…危ないときには、いつも助けられているしな」
ロレンス「だからこそ、本当に助けてもらうかどうかはともかく…」
ロレンス「後ろにいてくれるだけで心強いというのもある」
ホロ「ほうほう」パタパタ
ホロ「ほう」パタ
ロレンス「…危ないときには、いつも助けられているしな」
ロレンス「だからこそ、本当に助けてもらうかどうかはともかく…」
ロレンス「後ろにいてくれるだけで心強いというのもある」
ホロ「ほうほう」パタパタ
11: 2013/02/20(水) 13:26:51.01 ID:G69/fcKMo
ホロ「なるほどのー」
ホロ「ぬし様がそこまで言うなら、わっちも、ついて行くのにやぶさかではない」
パシ
ホロ「仕方ない。ぬし様が言うのだから、仕方ないのう」
ロレンス「…お前まさか、今の台詞を俺に言わせるためだけに」
ロレンス「あんなこと言い出したんじゃないだろうな?」
ホロ「くふ、悪いかや?」
ホロ「ぬし様がそこまで言うなら、わっちも、ついて行くのにやぶさかではない」
パシ
ホロ「仕方ない。ぬし様が言うのだから、仕方ないのう」
ロレンス「…お前まさか、今の台詞を俺に言わせるためだけに」
ロレンス「あんなこと言い出したんじゃないだろうな?」
ホロ「くふ、悪いかや?」
12: 2013/02/20(水) 13:29:47.16 ID:G69/fcKMo
ロレンス「…」
ロレンス「あ、いや、別に悪くはない、が」
ホロ「今さら、ぬし様がわっちの気持ちを分からんとは」
ホロ「わっちも思ってはありんせん。じゃがの」
パタパタ
ホロ「口に出して言われるのは、とくべつ嬉しいものでありんす」ニコ
ロレンス「…う」
ロレンス「参った。…素直な賢狼には敵わないな」
ホロ「くふふ」
ロレンス「あ、いや、別に悪くはない、が」
ホロ「今さら、ぬし様がわっちの気持ちを分からんとは」
ホロ「わっちも思ってはありんせん。じゃがの」
パタパタ
ホロ「口に出して言われるのは、とくべつ嬉しいものでありんす」ニコ
ロレンス「…う」
ロレンス「参った。…素直な賢狼には敵わないな」
ホロ「くふふ」
13: 2013/02/20(水) 13:33:23.34 ID:G69/fcKMo
…
バタン
ロレンス「ふう。ずいぶん宿に帰ってくるのがおそくなってしまったな」
ロレンス「すまないな、ホロ。疲れていたろうに」
ホロ「いや、気にすることはありんせん」
ホロ「わっちが好きでついて行ったのじゃ、それに」
ホロ「付き合いとはいえ、なかなかに美味な食事じゃった」
ホロ「あの商人は気前がいいの」
パタッ
ロレンス「この街は、ずいぶん景気がいいらしい」
ロレンス「滞在するしばらくの間は、それにあやかりたいもんだ」ハハ
バタン
ロレンス「ふう。ずいぶん宿に帰ってくるのがおそくなってしまったな」
ロレンス「すまないな、ホロ。疲れていたろうに」
ホロ「いや、気にすることはありんせん」
ホロ「わっちが好きでついて行ったのじゃ、それに」
ホロ「付き合いとはいえ、なかなかに美味な食事じゃった」
ホロ「あの商人は気前がいいの」
パタッ
ロレンス「この街は、ずいぶん景気がいいらしい」
ロレンス「滞在するしばらくの間は、それにあやかりたいもんだ」ハハ
14: 2013/02/20(水) 13:36:19.89 ID:G69/fcKMo
ゴロ
ホロ「んむぅ…」
ロレンス「おい、服が皺になる」
ロレンス「寝転がるなら、ちゃんと服を脱いでからにしろ」
ホロ「脱がせてくりゃれー」
ロレンス「…そのくらいでは怯まないからな」
ホロ「そんなつもりはないがの♪」
ホロ「んむぅ…」
ロレンス「おい、服が皺になる」
ロレンス「寝転がるなら、ちゃんと服を脱いでからにしろ」
ホロ「脱がせてくりゃれー」
ロレンス「…そのくらいでは怯まないからな」
ホロ「そんなつもりはないがの♪」
15: 2013/02/20(水) 13:39:40.77 ID:G69/fcKMo
グイ
ドサッ
ホロ「くふふ、ぬし様よ」
ロレンス「お、おいおい」
ギュッ
ホロ「…しばらく、こうしていさせてくりゃれ?」
ロレンス「…満足したら、服は脱いでくれるんならな」
ホロ「それでは、朝までかかってしまいんす」
ロレンス「…全く」
ホロ「♪」
ドサッ
ホロ「くふふ、ぬし様よ」
ロレンス「お、おいおい」
ギュッ
ホロ「…しばらく、こうしていさせてくりゃれ?」
ロレンス「…満足したら、服は脱いでくれるんならな」
ホロ「それでは、朝までかかってしまいんす」
ロレンス「…全く」
ホロ「♪」
16: 2013/02/20(水) 13:43:18.08 ID:G69/fcKMo
ロレンス「ホロ」
ホロ「…んむ」パチ
ロレンス「悪いな、起こしてしまって」
ロレンス「だが勝手に出て行くよりは、声をかけておいた方がいいと思って」
ホロ「…殊勝な心がけじゃ。…あふ」
ロレンス「まだ早いが、少し出てくる。昼時には戻って来れると思うんだが…」
ロレンス「どうする? 一緒に行くか?」
ホロ「…むう」ゴロ
ホロ「…んむ」パチ
ロレンス「悪いな、起こしてしまって」
ロレンス「だが勝手に出て行くよりは、声をかけておいた方がいいと思って」
ホロ「…殊勝な心がけじゃ。…あふ」
ロレンス「まだ早いが、少し出てくる。昼時には戻って来れると思うんだが…」
ロレンス「どうする? 一緒に行くか?」
ホロ「…むう」ゴロ
17: 2013/02/20(水) 13:47:25.75 ID:G69/fcKMo
ホロ「…すまんが、まだ起きれそうにない」
ロレンス「いや、構わないさ」
ロレンス「この宿の寝具は一級品だ。長旅の後では、豪華な料理に負けない魅力がある」
ロレンス「どうせまた、馬車の硬い寝床が待ってる。今のうちに存分に堪能しているといい」
ホロ「…すまんの」パサッ
ホロ「行ってらっしゃい。くれぐれも、気をつけてくりゃれ」
ロレンス「ああ、行って来る。飲み水の入った水差しと、パンは机にあるからな」
ホロ「うむ」
ロレンス「いや、構わないさ」
ロレンス「この宿の寝具は一級品だ。長旅の後では、豪華な料理に負けない魅力がある」
ロレンス「どうせまた、馬車の硬い寝床が待ってる。今のうちに存分に堪能しているといい」
ホロ「…すまんの」パサッ
ホロ「行ってらっしゃい。くれぐれも、気をつけてくりゃれ」
ロレンス「ああ、行って来る。飲み水の入った水差しと、パンは机にあるからな」
ホロ「うむ」
18: 2013/02/20(水) 13:49:21.14 ID:G69/fcKMo
…
ムクッ
ホロ「むぅ、ここの寝床は凶器じゃの」
ホロ「わっちとしたことが、ぬし様と行くより、眠っていることを選んでしまうとは…」
ホロ「…パンでも食べるかや」
ムクッ
ホロ「むぅ、ここの寝床は凶器じゃの」
ホロ「わっちとしたことが、ぬし様と行くより、眠っていることを選んでしまうとは…」
ホロ「…パンでも食べるかや」
19: 2013/02/20(水) 13:52:14.33 ID:G69/fcKMo
パクパク
ホロ「暇じゃな」
ホロ「また市にでも行くかや」
ホロ「…いや、下手に動くと入れ違いになるかもじゃな」
ホロ「…大人しく、今日は宿で待っておるかの」
ホロ「昼時には、戻って来ると言っておったしの」パクパク
ホロ「…」ミズミズ
コクコク
ホロ「暇じゃな」
ホロ「また市にでも行くかや」
ホロ「…いや、下手に動くと入れ違いになるかもじゃな」
ホロ「…大人しく、今日は宿で待っておるかの」
ホロ「昼時には、戻って来ると言っておったしの」パクパク
ホロ「…」ミズミズ
コクコク
20: 2013/02/20(水) 13:54:36.31 ID:G69/fcKMo
パクパク
ホロ「暇じゃな」
ホロ「また市にでも行くかや」
ホロ「…いや、下手に動くと入れ違いになるかもじゃな」
ホロ「…大人しく、今日は宿で待っておるかの」
ホロ「昼時には、戻って来ると言っておったしの」パクパク
ホロ「…」ミズミズ
コクコク
ホロ「暇じゃな」
ホロ「また市にでも行くかや」
ホロ「…いや、下手に動くと入れ違いになるかもじゃな」
ホロ「…大人しく、今日は宿で待っておるかの」
ホロ「昼時には、戻って来ると言っておったしの」パクパク
ホロ「…」ミズミズ
コクコク
21: 2013/02/20(水) 13:55:08.51 ID:G69/fcKMo
ホロ「…帰ってこん」
ホロ「迂闊じゃった…ぬし様の、いつまでに帰って来るという台詞ほど信用ならんものはないではないか」
ゴロリ
ホロ「退屈じゃなー」
ホロ「…一人でいると、別段、この寝具も…心地よくないの」
ホロ「…ぬし様、早く帰って来てくりゃれ」
ホロ「迂闊じゃった…ぬし様の、いつまでに帰って来るという台詞ほど信用ならんものはないではないか」
ゴロリ
ホロ「退屈じゃなー」
ホロ「…一人でいると、別段、この寝具も…心地よくないの」
ホロ「…ぬし様、早く帰って来てくりゃれ」
22: 2013/02/20(水) 13:59:03.77 ID:G69/fcKMo
バタン
ホロ「む」
ロレンス「す、すまないホロ…お、遅くなった」ゼェゼェ
ホロ「全くじゃ!」
ホロ「…しかしその反省していない面を見ると」ジトッ
ホロ「何やらいい話でも、あったみたいじゃな」
ロレンス「…う、ま、まあな」
ホロ「じゃが、日のあるうちに帰って来るとは、ぬし様も成長しておるようじゃ」
ホロ「それで? どうせまた、すぐに出るんじゃろ」
ホロ「む」
ロレンス「す、すまないホロ…お、遅くなった」ゼェゼェ
ホロ「全くじゃ!」
ホロ「…しかしその反省していない面を見ると」ジトッ
ホロ「何やらいい話でも、あったみたいじゃな」
ロレンス「…う、ま、まあな」
ホロ「じゃが、日のあるうちに帰って来るとは、ぬし様も成長しておるようじゃ」
ホロ「それで? どうせまた、すぐに出るんじゃろ」
23: 2013/02/20(水) 14:02:06.62 ID:G69/fcKMo
ロレンス「あ、ああ。まだしばらく忙しくなりそうでな」
ロレンス「時間を見つけて、何とか迎えに来たんだ。いてくれてよかった」
ロレンス「…約束を破っておいて、都合のいいことを言っているかもしれないが…」
ホロ「…くふ」
パサッ
ロレンス「ホ、ホロ?」
ホロ「なに、機嫌を損ねたりはしておらん」
ホロ「むしろ逆じゃ」
ロレンス「…どういう意味だ?」
ロレンス「時間を見つけて、何とか迎えに来たんだ。いてくれてよかった」
ロレンス「…約束を破っておいて、都合のいいことを言っているかもしれないが…」
ホロ「…くふ」
パサッ
ロレンス「ホ、ホロ?」
ホロ「なに、機嫌を損ねたりはしておらん」
ホロ「むしろ逆じゃ」
ロレンス「…どういう意味だ?」
24: 2013/02/20(水) 14:04:28.49 ID:G69/fcKMo
ホロ「何でもありんせん」
ホロ「ほれ、時間が惜しいんじゃろ」
ギュッ
ホロ「行こう、ぬし様!」
ロレンス「…ああ、分かったよ」
ロレンス「ありがとう、ホロ」
ホロ「ほれ、時間が惜しいんじゃろ」
ギュッ
ホロ「行こう、ぬし様!」
ロレンス「…ああ、分かったよ」
ロレンス「ありがとう、ホロ」
218: 2013/02/26(火) 18:56:35.48 ID:s/jmLnbMo
キィ
ロレンス「そうだ。ホロは先に上がっていてくれ」
ホロ「ん、まだ何か用があるのかや?」
ロレンス「いや、そこの酒場に…」
ロレンス「冷めてもいいからと料理をお願いしてある。それを取りに行こうと思ってな」
ホロ「…気が利くの」
ホロ「…まあ、食べられるかどうかは定かでないが」
ロレンス「ああ。何なら朝食代わりにしてもいい」
ロレンス「…俺も、まさかこんなに遅くなるとは思わなかったからへとへとだよ」
219: 2013/02/26(火) 18:57:29.46 ID:s/jmLnbMo
ホロ「そのわりにぬしの頬は緩んでおるがの」
ロレンス「…そうかな」
ホロ「まったく、商人という生き物は…何がへとへとじゃ」ハア
ホロ「わっちこそ、もうくたくたでありんす。ひとまず身を投げ出したい気分じゃ」
ロレンス「悪かったな、遅くまで付き合わせて」
ホロ「いや? ぬしについて行くことができて、わっちは楽しかった」
ロレンス「…いやに素直だな」
220: 2013/02/26(火) 18:59:29.32 ID:s/jmLnbMo
ホロ「くふ。ぬしの機嫌がよいなら、わっちが嫌な気分になるはずありんせん」
ホロ「…まあ、それ以上に疲れておるだけかもしれんがの」
ロレンス「…ああ。思う存分、休んでくれ」
ホロ「うむ。そうしよう」
ホロ「じゃが腹も空いておる。早く戻って来てくりゃれ?」
ロレンス「分かったよ」
221: 2013/02/26(火) 19:00:30.92 ID:s/jmLnbMo
バフッ
ホロ「ふぬぅ…疲れたのー…」
ホロ「…服を脱がんと、ぬしがまた怒るか。…しかし面倒じゃ…そんな気力もない…」
ホロ「まあ、よい。どうせぬしが脱がせてくれるじゃろ」
ホロ「…一眠りしたいところじゃが…それでは、ぬしと食事ができなくなってしまうの…」
ホロ「ふむぅ。悩ましい、…」ムニャムニャ
222: 2013/02/26(火) 19:01:23.05 ID:s/jmLnbMo
トントントン
ホロ「…もう戻って来たかや。ぬしにしては、早い」クンクン
ホロ「何やら良い香りもして来た…くふ」
ホロ「…?」
ホロ「…ふむ。何やら話しておるようじゃな…」
223: 2013/02/26(火) 19:04:10.67 ID:s/jmLnbMo
・・・・・
ガヤガヤ
ロレンス「さて、と」
エルサ「おや」
ロレンス「…え?」
エルサ「奇遇ですね。本当に」
エルサ「つい先日、同じ台詞を交わした気がします」
ロレンス「…ええ。お久しぶりです、…と言うにはあまりにも早い再会だ」ハハ
ロレンス「どうもこんばんは、エルサさん」
224: 2013/02/26(火) 19:05:00.54 ID:s/jmLnbMo
エルサ「…では、単なる偶然ということですね」
ロレンス「そのようです。コルの様子は?」
エルサ「…彼は本当に優秀で真摯な者です。私が彼に学ぶことも少なくありません」
エルサ「じきに立派な聖職者になるでしょう。心配いりません」
ロレンス「それは何より」
225: 2013/02/26(火) 19:06:22.91 ID:s/jmLnbMo
トントントン
ロレンス「エルサさんたちは、まだしばらくここに?」
エルサ「ええ。そうですが」
ロレンス「では、また明日にでも挨拶に行かせて下さい」
エルサ「…今もきっと、彼は起きて勉学に精を出しているところだと思いますよ」
エルサ「もうお一方は、すでにいびきをかいているころでしょうが」
ロレンス「いえ。残念ですが今日はもうホロが休んでいます」
ロレンス「…彼女を置いて私だけ、というわけには」
エルサ「…そうですか」
226: 2013/02/26(火) 19:07:14.32 ID:s/jmLnbMo
エルサ「どうやらまだ、私から改めてロレンスさんに」
エルサ「神の教えを説く必要はなさそうですね。安心しました」
ロレンス「残念ですが」
エルサ「…」ニコ
ロレンス「…はは」
ロレンス「では、また」
エルサ「ええ。お休みなさい」
227: 2013/02/26(火) 19:09:00.74 ID:s/jmLnbMo
・・・・・・
ホロ「…」
ホロ「くふ」
ホロ「…まったく、ぬしさまは…」ムニャ
ホロ「…たわけじゃ。しかしそんなたわけじゃから」
ホロ「わっちは安心して眠ることができそうじゃな…くふふ」
ホロ「…すー…」
228: 2013/02/26(火) 19:10:12.48 ID:s/jmLnbMo
キィ
ロレンス「…ただいま」
ホロ「…」スヤスヤ
ロレンス「…もう眠っているのか」パタン
ロレンス「本当に疲れていたんだな…旅の疲れも癒えていなかったろうに、悪いことをしてしまった」
ロレンス「…ん?」
229: 2013/02/26(火) 19:11:01.25 ID:s/jmLnbMo
パタパタ
ホロ「…♪」
ロレンス「…寝ながら尻尾を振るとは、器用な奴だ」ハハ
ロレンス「よほどいい夢でも見ているのか」
ポスッ
ロレンス「…」
ホロ「…くふふー…」ムニャ
ロレンス「…はは。いい顔をしている」
230: 2013/02/26(火) 19:14:37.94 ID:s/jmLnbMo
ナデナデ
ホロ「…♪」
ロレンス「お休み、ホロ」
233: 2013/02/27(水) 00:12:05.68 ID:n1O0ui1DO
ホロ「…んむ」パチ
ロレンス「…くー…」
ホロ「…」チカイノ
ホロ「…くふ」
ギュ
ホロ「(もう少し、こうしておるかの)」
234: 2013/02/27(水) 00:13:16.54 ID:YFNWbLxLo
コンコン
ロレンス「…ん…」
ロレンス「…はい」
キィ
コル「失礼します。ロレンスさん、ホロさん、お久し振りで…す」
ロレンス「…ああ、コルか」ウーン
ロレンス「やあ、久し振りだな。元気にしていたか?」
コル「は、はい」
コル「あの、お邪魔でしたでしょうか…」
ロレンス「え?」
235: 2013/02/27(水) 00:14:43.43 ID:n1O0ui1DO
ギュ
ホロ「…」
ロレンス「…」
ロレンス「…いや。そんなことはない」
ロレンス「おい、ホロ。朝だぞ。それにコルが来てくれた」
ホロ「…んむ?」
ホロ「おお、ぬし様じゃ。おはよう」ムクッ
236: 2013/02/27(水) 00:16:40.68 ID:YFNWbLxLo
コル「あの、ホロさん。お久し振りです」
ホロ「…?」
ホロ「おお、コル坊かや! 久し振りじゃなっ」バッ
タタッ
ワシワシ
コル「わ…」
ホロ「元気にしていたかや?」
コル「は、はい。おかげさまで…」
ロレンス「(…久し振りの光景だな)」

ロレンス「(それに、コルに再会できて、ホロが嬉しそうで何よりだ)」
237: 2013/02/27(水) 00:18:04.98 ID:n1O0ui1DO
コル「それで、その」//
コル「お二人を昼食にお誘いしたらどうかと、エルサさんが」
ロレンス「そうだったか」
ロレンス「しかしすまないんだが、昨日手をつけなかった食事が残っていてな」
コル「あ、そ、そうでしたか」ショボン…
コル「でしたら、また別の機会に…」
ロレンス「いや。なので」ゴソ
238: 2013/02/27(水) 00:18:41.38 ID:YFNWbLxLo
ロレンス「これで三人分の食事を買って来てくれないか」
ロレンス「お二人がよければ、ここで食事にしよう」
コル「え!」
ホロ「おお。気前がいいの」ラシクナイ
ロレンス「らしくないとは何だ。…ほら、コル」
コル「い、いえ申し訳ないです。僕、そんなつもりで来たのでは…」
239: 2013/02/27(水) 00:20:19.98 ID:n1O0ui1DO
ロレンス「はは、気にするな。俺も元気そうなお前を見れて嬉しいんだ」
ロレンス「それに、もし申し訳ないと言うならその分別れてからの話をしてくれればいい」
ロレンス「俺もホロも、お前があれからどれだけ成長したのか楽しみにしていたところだ」チラ
ホロ「…くふ、そうじゃな」
ホロ「酒場じゃと周りが騒がしい。わっちも、コル坊の話は部屋でゆっくりと聞きたいでありんす」
240: 2013/02/27(水) 00:20:53.46 ID:YFNWbLxLo
コル「で、では」
コル「ありがとうございます。お言葉に甘えまして」
ロレンス「ああ」
コル「すぐに戻って来ますので、待っていて下さい」バタン
ロレンス「…」
ロレンス「ついて行かなくてよかったのか?」
ホロ「ん?」
241: 2013/02/27(水) 00:22:19.94 ID:n1O0ui1DO
ロレンス「いずれにしても、今回コルといる時間はそれほど長くないと思うが」
ホロ「…そうじゃな」
パッ
…ハグハグ
ホロ「どうせ長くいられぬのなら、あまり深く思い入れぬ方がよい」
ロレンス「…」
ホロ「とか。そんなたわけたことを考えておるわけではありんせん」
242: 2013/02/27(水) 00:27:34.44 ID:n1O0ui1DO
ホロ「ただ」
ロレンス「…ただ?」
ホロ「…今こうして再会できた」
ホロ「そう思うと、いずれまたすぐ別れるとしても、その次の再会もそれほど先ではなさそうじゃ」
ホロ「…じゃから、…気負うこともないかと思っての」ハグハグ
ロレンス「…そうだな」
ホロ「…」ハグハグ
ロレンス「…」
ナデナデ
ホロ「む」
243: 2013/02/27(水) 00:29:37.21 ID:YFNWbLxLo

ホロ「ぬしよ、今わっちのことをひどく子ども扱いしてはいないかや」
ロレンス「いや? そんなことはないさ」ナデナデ
ホロ「…まあよい」
ホロ「よいから、…撫でる手はとめるでない」
ロレンス「はいはい」
ナデナデ
ホロ「…」ハグハグ
266: 2013/02/27(水) 20:19:19.22 ID:BaMCe4Kfo
ペロ
ホロ「さて、昼食も済んだ」
ホロ「ぬしよ。今日わっちはコル坊に、ついて行こうと思うんじゃが」
ロレンス「ああ、いいんじゃないか。俺も今日は宿でのんびりするつもりだったからな」
ル・ロワ「昨日の続きはよろしいのですかな」
ロレンス「ええ。何かあれば宿に小僧を走らせると商会には言われています」
ロレンス「幸い、今回に関しては…あとは鷹揚に構えていればいいようです」
ル・ロワ「それは重畳なことだ!」
ル・ロワ「とはいえそれも、ロレンスさんの手腕があってこそでしょうな」ウンウン
ロレンス「…あまり、買い被らないで下さい」ハハ…
267: 2013/02/27(水) 20:20:32.36 ID:BaMCe4Kfo
ホロ「そうじゃな。安易におだてておると、ぬしはすぐに足元を見失ってしまいんす」
ホロ「わっちの手が必要になればすぐにでも呼び戻すとよい」
ロレンス「ああ。分かったよ」
ホロ「んむ。よい返事じゃ」
ホロ「ではコル坊、行こう」パッ
コル「は、はい」
コル「…あの、エルサさんは」
エルサ「私も、今日は宿にいようと思います」
ホロ「…」
268: 2013/02/27(水) 20:21:40.72 ID:BaMCe4Kfo
エルサ「気を使っているわけではないので、ご心配なく」
ホロ「…いや、まあ。そう言うわけではないがの」
エルサ「?」
ロレンス「…はは」
ホロ「まあよい。では行って来るでありんす」
コル「い、行って来ます」
ロレンス「ああ、気をつけて」
バタン
269: 2013/02/27(水) 20:24:10.22 ID:BaMCe4Kfo
・ ・ ・ ・ ・
コク
エルサ「それは?」
ロレンス「昨日頂いた葡萄酒です。人に渡すものだけあって、上等なものですよ」
ロレンス「エルサさんもよかったら」
エルサ「…いえ、私は…」
270: 2013/02/27(水) 20:25:47.59 ID:BaMCe4Kfo
ル・ロワ「おっと、よいではないですか」
ル・ロワ「たまにはこうした安らぎの時間も必要です」ゴソ
ル・ロワ「…こうして、酒にはお誂え向きなつまみもあることですし」
ロレンス「いいんですか?」
ル・ロワ「もちろん。私は、ロレンスさんには到底お返しできないほどの借りがあります」
ル・ロワ「今回はごく些細な善行ですが」
ル・ロワ「それを少しでもお返しする機会が、こうしてすぐにでも巡って来たこと、神に感謝しているところです」ハハ
271: 2013/02/27(水) 20:27:26.50 ID:BaMCe4Kfo
ロレンス「つまみの提供が善行とは驚いた」
ロレンス「神に仕える方がいるこの場で、そんなことを口にして大丈夫なのか心配ですが」チラ
エルサ「…もうこの方の軽口には慣れました」ハア
エルサ「でなければ、とてもこれまで旅を続けることなんてできません」
ロレンス「はは、その通りかもしれない」
ル・ロワ「私ほど神に素直な者もいないと自負しているのですがなぁ。ああ残念だ」
エルサ「…」クス
272: 2013/02/27(水) 20:28:04.90 ID:BaMCe4Kfo
コク
エルサ「…ん」
エルサ「確かに。とても美味しいです」
ロレンス「それはよかった」ニコ
ル・ロワ「…よい時間ですな」
ロレンス「ええ」
ロレンス「旅する身としては、やはりこうした時間に焦がれてしまう」
273: 2013/02/27(水) 20:29:17.49 ID:BaMCe4Kfo
エルサ「…それでもロレンスさんは、旅を続けるんですね」
ロレンス「え?」
エルサ「私がこうして旅に出ているのは、当然そのように望んだから」
エルサ「そしてそれは、目的と、意思があってのことです」
ル・ロワ「でなければ、これほど敬虔な私と旅を続けることはできない。ですな?」
エルサ「…ふふ、そうですね」
ル・ロワ「おっと! そこで頷かれてしまうと痛い」
ロレンス「はは…」グビ
274: 2013/02/27(水) 20:31:34.34 ID:BaMCe4Kfo
エルサ「ん…」コク
エルサ「…しかしロレンスさんは、私とは違います」
ロレンス「行商人ですからね。旅をしないわけにはいかない」
エルサ「ええ。ですが今のあなたには、もうお店を構えるくらいの余裕はあるのではないですか」
ロレンス「…どうでしょうね。…はは、参ったな」
ロレンス「今回まだ私は、何か教えを乞わねばならないようなことはなにもしていないつもりですが」
275: 2013/02/27(水) 20:32:09.27 ID:BaMCe4Kfo
エルサ「いえ。ただ、私が気になっただけで…」フラ
エルサ「…そんなつもりでは」
ル・ロワ「おっと」
ガシッ
エルサ「…」スー…
ル・ロワ「おやおや。彼女らしくもない」ニコニコ
ロレンス「…そうですね」
276: 2013/02/27(水) 20:34:04.74 ID:BaMCe4Kfo
エルサ「…」スー
ロレンス「きっと疲れていたんでしょう」
ロレンス「いや…それ以上に、不安だったのかもしれない」
ル・ロワ「不安、ですか」
ロレンス「旅に心の病はつきものです」
ロレンス「それこそ、敬虔なル・ロワさんには縁遠いことかもしれませんが」
ル・ロワ「ふふ。褒め言葉として受け取っておきます」
277: 2013/02/27(水) 20:34:55.12 ID:BaMCe4Kfo
トントントン
ロレンス「…まあ、今は」
ル・ロワ「ええ。こうして静かに休ませてあげることですな」
バンッ
ホロ「ぬしよー、戻った」
ロレンス「…」シーッ
ホロ「で、ありんす…」
ホロ「…ふむ」
エルサ「…」スー
278: 2013/02/27(水) 20:37:15.17 ID:BaMCe4Kfo
ホロ「なんじゃ、らしくなく可愛らしい寝顔じゃな」
ホロ「この娘も、難しい顔をせずいつもこうしておればいいのにの」
ロレンス「…まあ、確かに」
ホロ「む。そんなに簡単に同意するものではありんせん、このたわけ」
ロレンス「…おいおい、理不尽だな」
ル・ロワ「ははは! 今のはホロさんが正しいと私は思いますが」
ロレンス「なっ」
コル「み、みなさん。もう少し静かに…エルサさんが起きてしまいますよ」
ワイワイ
エルサ「…」ムニャ
エルサ「…ふふ」
496: 2013/03/06(水) 13:56:41.70 ID:aq82O49ro
ガラガラ…
ホロ「暇じゃなー」
ロレンス「お、何だかその台詞は久し振りだな」
ホロ「…まあ、つい先日まで街におったのじゃからな」
ホロ「しかし今回の滞在は忙しかった…」グッタリ
ロレンス「暇ってことは、目に見えた苦労はないってことだからな」
ロレンス「楽ではあるが、今度はそれこそが苦痛になるわけだ」
ホロ「…何事ももう少しとんとんに巡ってくればよいものなんじゃが」
ホロ「なかなか、上手く行かないものでありんす」
ロレンス「そうだな」
497: 2013/03/06(水) 13:58:44.73 ID:aq82O49ro
ホロ「ああ、また固い床で眠らなければならない日々が戻って来るでありんす…」
ロレンス「大げさだな」
ロレンス「…そう言えば、麦畑は寝心地がよかったのか?」
ホロ「…どうじゃったか」
ロレンス「俺はとても眠れそうにないな。想像しただけで痒い」
ホロ「ぞわっとするの」
ロレンス「ずっとそこにいた奴が何を言っているんだか」
498: 2013/03/06(水) 14:00:38.02 ID:aq82O49ro
ホロ「村におったころのことはよく覚えておらん」
ホロ「ぬしとの旅の思い出の方が、わっちにとっては大切じゃからの。上書きされてしまいんす」
ロレンス「そうか」
ホロ「…何だか、今日はぬしが冷たいの」
ロレンス「いつだって温かいのも鬱陶しいだろ?」
ロレンス「そんなことより、よく眠れる策を練っておいた方がいいんじゃないのか?」
ホロ「む」
499: 2013/03/06(水) 14:02:33.30 ID:aq82O49ro
ホロ「そうじゃったな」
ホロ「…むぅ、どうするか…」
ロレンス「(そんなに真剣になるようなことでもないと思うが)」
ホロ「…ふむ」
ホロ「くふ」チラ
ロレンス「…何だよ。なにか思いついたのか?」
ホロ「まあの。ま、夜になったら試してみるでありんす」
ロレンス「そうかい」
500: 2013/03/06(水) 14:03:42.19 ID:aq82O49ro
ホロ「さて、そうなると」
ホロ「夜の悩みは解決したとして…」
ロレンス「…」
ホロ「…なんじゃ、その顔は」
ロレンス「いや、なんでも」
ホロ「たわけ」
ロレンス「…俺が悪いのか?」
501: 2013/03/06(水) 14:04:36.06 ID:aq82O49ro
ホロ「当面の退屈凌ぎを考えねばならん」
ロレンス「振り出しに戻ったな」
ガラガラ…
ホロ「ぬしはどうしておったのじゃ?」
ホロ「一人旅は、今よりよほど時間を持て余しておったじゃろ」
ロレンス「…そうは言っても、俺は手綱を握っているわけだし」
ロレンス「それに一人旅だからこそ」
ロレンス「そうそう気を抜くわけにもいかなかったからな。暇って感じではなかったと思うが」
ホロ「ほう」
502: 2013/03/06(水) 14:06:52.65 ID:aq82O49ro
ロレンス「そのころの退屈を思えば、ホロがいる今は俺にとっては退屈でも何でもないな」
ホロ「おっと油断しておった」
ホロ「これじゃからぬしはたわけなんじゃ」//
ロレンス「(何だか安っぽい照れ方だな…)」ハハ…
ロレンス「ん?」
503: 2013/03/06(水) 14:08:35.10 ID:aq82O49ro
ロレンス「と言うか、それこそ話を戻すが」
ロレンス「むしろお前こそどうしていたんだ」
ホロ「?」
ロレンス「パスロエの村にいたころだよ」
ホロ「…どうって」
ホロ「さっきも言った通りじゃ、もう覚えておらん」
ロレンス「…覚えていないって…」
ホロ「そのくらい何もなかったんじゃろ、きっと」
ホロ「おお、確かに。わっちもそう思えば、今はそれほど退屈しておらんのかもしれんな!」
ロレンス「…」
504: 2013/03/06(水) 14:10:01.57 ID:aq82O49ro
ホロ「…はは」
ホロ「これ、ぬしよ。そんな顔せんでくりゃれ?」
ロレンス「…いや、その」
スタッ
ホロ「わっちは、荷台の方で尾の手入れでもしておるでありんす」
ホロ「何かあったら、声をかけてくりゃれ?」
ロレンス「…ああ」
505: 2013/03/06(水) 14:12:00.80 ID:aq82O49ro
・ ・ ・ ・ ・
ガラガラ…
ロレンス「(…この辺りでとめるか)」
ロレンス「ホロ」
ホロ「…」スー…
ロレンス「…眠っているのか」
ロレンス「耳も尻尾も丸見えじゃないか…ったく」
ホロ「ふが」
ロレンス「(そう言えば以前、ホロが眠っている間に馬車を離れて、怒られてしまったことがあったな)」
506: 2013/03/06(水) 14:13:32.74 ID:aq82O49ro
ホロ「…」スー…
ロレンス「(もう少しだけ…こうして眠らせてやるか)」
ロレンス「まったく」
ナデナデ
ホロ「…くふふ」ムニャ
ロレンス「わがままなお姫様には困ったもんだ」
ホロ「♪」
507: 2013/03/06(水) 14:15:15.96 ID:aq82O49ro
・ ・ ・ ・ ・
パチ
ホロ「…んむ」
ホロ「ぅ、寝てしまっていたか…ぬしはどこに…」
ロレンス「…」
ホロ「…傍におったか」
ロレンス「…」スー…
ホロ「にしても、近過ぎるじゃろ」
508: 2013/03/06(水) 14:17:25.40 ID:aq82O49ro
ホロ「…まあ、よい」
ロレンス「…」
ホロ「くふ」
ダキ
ホロ「(こうしてぬしに抱き着けば)」
ホロ「(地や荷台で寝るよりは、マシかと思ったんじゃが…)」
ホロ「…思ったより硬いの、ぬしは」
509: 2013/03/06(水) 14:20:39.98 ID:aq82O49ro
ロレンス「…」スー…
ホロ「(じゃが)」
ホロ「荷台と違って、ぬしは暖かい」
ホロ「…当たり前じゃな、そんなこと」
ロレンス「…」
ホロ「まあ、仕方ない」
ホロ「今日のところは、ぬしでがまんしてやるでありんす」
ギュゥ
ロレンス「…」ウーン
ホロ「くふふ♪」
ホロ「さて。もう一眠りするかの」
512: 2013/03/06(水) 23:33:53.62 ID:6v1MoWGDO
・ ・ ・ ・ ・
ロレンス「…ん…」
ロレンス「っうぅ、寒い…」
ロレンス「…もう朝か…俺としたことが」
ロレンス「(下手をしたら凍氏していたな)」
ゴソ
ロレンス「…ん」
513: 2013/03/06(水) 23:36:33.33 ID:VjR08Yqoo
ホロ「…むぅ」ムニャ
ロレンス「…」
ロレンス「そうか、ホロがいたか」
ロレンス「…」
ナデナデ
ホロ「くふ」
ロレンス「…」
514: 2013/03/06(水) 23:38:01.82 ID:6v1MoWGDO
ギュウ
ロレンス「…動けない」
ホロ「…」
ロレンス「(さすがにそんなことを言っている場合じゃないな)」
ロレンス「ホロ、朝だぞ」ポンポン
ホロ「む…?」
ホロ「…ぅう、寒っ!」
515: 2013/03/06(水) 23:39:06.77 ID:VjR08Yqoo
ホロ「な、なんじゃこれは…」ハァー
ロレンス「朝だな」
ホロ「…冷えるなんてものではありんせん」
ロレンス「まったくだ」
ロレンス「火を起こして、何か温かい物でも食べよう」
ホロ「そ、それがいいの」
ホロ「でなければ、また旅に出る気力などとても湧きそうにもないでありんす」
516: 2013/03/06(水) 23:40:19.87 ID:6v1MoWGDO
ホロ「くしゅっ」
ロレンス「しかし、ホロの故郷はもう少し北だろう」
ロレンス「このくらいの寒さなら、なんてことはないんじゃないのか?」
ホロ「…」ズズ
ホロ「…狼の姿と人の姿を一緒にしてはいかんじゃろ」
ロレンス「あ、そうか」
517: 2013/03/06(水) 23:41:52.49 ID:VjR08Yqoo
パチパチ
ホロ「人の姿は利点も多いが、欠点も多すぎる」
ロレンス「まあな。だが」
トプ…
ロレンス「こんな不便な人の姿をしていなければ、きっとスープなんて誰も考えなかっただろうさ」
ホロ「一理ありんす」
518: 2013/03/06(水) 23:43:12.59 ID:6v1MoWGDO
ズズ…
ロレンス「しかし、こう寒いと」
ロレンス「本当に…お前の故郷に近づいて来たのだと実感するな」
ホロ「…」ズズ
ホロ「そうじゃの」
ロレンス「…」
519: 2013/03/06(水) 23:44:12.20 ID:VjR08Yqoo
パサ
ホロ「ん」
ロレンス「…」
ホロ「毛布には、一緒に包まった方が暖かいじゃろ」
ロレンス「…ああ。そうだな」
パチパチ…
520: 2013/03/06(水) 23:45:59.29 ID:6v1MoWGDO
ホロ「くふ」
ホロ「まあそれでももうしばらくは」
ロレンス「ああ。そんなに急に旅が終わるわけではない」
ロレンス「焦らず、のんびりと旅を続けよう」
ホロ「うむ」
ホロ「…む」
521: 2013/03/06(水) 23:46:57.94 ID:VjR08Yqoo
…パラ…
ロレンス「…雪だな」
ホロ「…ぬしよ、わっちは」
ホロ「雪は嫌いでありんす」
ホロ「この姿で雪にまみれるなど、考えたくない!」ガバッ
バッ
ロレンス「っ、寒い寒い! 急に毛布を剥ぎ取るなよ…」
ホロ「くふふっ」
522: 2013/03/06(水) 23:48:14.74 ID:6v1MoWGDO
タタッ
ホロ「この先に、温泉地があるじゃろ」
ロレンス「ニョッヒラだな」
ホロ「早く行こう。温泉にでも浸からぬと、わっちは氏んでしまいんす」
ロレンス「大げさな」ハハ
ロレンス「…しょっと。じゃあ、そろそろ出発するか」
ホロ「そうしよう」
523: 2013/03/06(水) 23:50:29.96 ID:VjR08Yqoo
ホロ「ん」
ロレンス「…ああ、ありがとう」
ホロ「羽織るものがなければやってられぬからの」
バッ
ロレンス「よし。じゃあ、行くか」
ホロ「んむ!」

「残り短いかもしれぬが―――まだまだわっちは、ぬしとの旅を楽しむつもりじゃからな!」
* 続く
782: 2013/03/13(水) 14:00:27.90 ID:JArPc0Abo
◇舞台1◇ 狼の旅の終わり
(>>496-523からの続き)
783: 2013/03/13(水) 14:01:08.35 ID:JArPc0Abo
ガラガラガラ…
ホロ「暇じゃない」
ロレンス「またか」
ロレンス「…って、え?」
ホロ「忙しい」
コロン
ロレンス「…」
ホロ「…♪」スリスリ
784: 2013/03/13(水) 14:01:57.46 ID:JArPc0Abo
ロレンス「…」
ロレンス「何だかよく分からないが」ハア
ロレンス「(まあ、機嫌は悪くなさそうなのでいいんだが)」
ホロ「くふ」
ガラガラ…
ホロ「それにしても」ハー
ホロ「この辺りは本当によく冷えるのう」
ロレンス「そうだな」
785: 2013/03/13(水) 14:02:23.61 ID:JArPc0Abo
ロレンス「…」
ロレンス「さて、いよいよニョッヒラまであと少しだ」
ロレンス「念願の温泉にようやく浸かれるぞ」
ホロ「んむ。今こうして寒い思いをしている分」ブルブル
ホロ「温泉のやつにはしっかりやってもらわんとの!」
ロレンス「温泉のやつってなんだ」
786: 2013/03/13(水) 14:03:43.80 ID:JArPc0Abo
ロレンス「まあそうだな、道中の苦労があったからこそ」
ロレンス「街についてからのあれこれが楽しいってのが旅の魅力だ」
ホロ「その通りじゃな」
ホロ「…ふむ、それならば」
ロレンス「ん?」
787: 2013/03/13(水) 14:04:19.37 ID:JArPc0Abo
バッ
ロレンス「なっ」
ホロ「ぬしは着くまでのもう少しの間、そうして薄着でおるとよい!」
ホロ「きっと温泉はさらに格別なものになりんす」
ロレンス「…」ガチガチ
ロレンス「ふ、ふざけていないで返してくれ…」
ホロ「くふ、いやじゃー」
788: 2013/03/13(水) 14:05:04.56 ID:JArPc0Abo
ホロ「ほっ」スタッ
タタッ
ロレンス「あ」
ホロ「ほれほれ、追って来てみい!」
ロレンス「おい、馬車から降りるのは反則だぞ!」
ホロ「くふふ♪」
ロレンス「…いくらなんでも荷物と荷台があったら追えないよな」
馬「…」セヤセヤ
ガラガラ…
ロレンス「…ったく」
ホロ「ぬしよー、早くー!」タタッ
ロレンス「無茶を言うんじゃない」
789: 2013/03/13(水) 14:05:32.30 ID:JArPc0Abo
ホロ「…む」
ピタッ
ガラガラ…
ロレンス「ん? どうかしたのか、ホロ」
ホロ「ぬしよ…」
ホロ「見えて来たでありんす」
ロレンス「…?」
790: 2013/03/13(水) 14:07:04.37 ID:JArPc0Abo
ホロにそう言われ顔を上げると、
「……本当だな」
ぼうぼうとして空を覆う、いくつもの白い熱気の束が、
もはや見慣れた一面の銀世界のさらに向こうで立ち上る。
「懐かしい景色じゃ」
賢狼ホロ、その故郷ヨイツからほど近い。
―――ここは世界の果て、ニョッヒラ。
792: 2013/03/13(水) 19:02:09.00 ID:OwIc3ROVo
・ ・ ・ ・ ・
ロレンス「くしゅっ」
ロレンス「…」ズズ
ホロ「くふ。ぬしよ、鼻水が垂れておりんす」クスクス
ロレンス「…誰のせいですかね」
ホロ「さあ?」
ホロ「ほら、わっちが拭いてあげるからの」フキフキ
ホロ「まったく、商人がそんな間抜けな顔をしていては恥ずかしいじゃろ」
ロレンス「(…こいつ…)」
793: 2013/03/13(水) 19:03:20.08 ID:w8pNzLODO
ロレンス「は、早く温泉に浸かろう…」
ロレンス「冗談抜きで、このままだと凍氏してしまう…」ガチガチ
ホロ「んむ。それがよい」
ホロ「おっと、それなら料理と酒を用意してもらわねば」
ロレンス「…好きな物を頼むといい」
ホロ「…言ったの?」
ロレンス「…ああ」
794: 2013/03/13(水) 19:03:55.59 ID:OwIc3ROVo
ロレンス「いいだろ。こんなときくらい贅沢しても」
ホロ「…そうかや」
ホロ「では好きなように頼むとしよう♪」
ロレンス「それがいい」
795: 2013/03/13(水) 19:04:53.92 ID:w8pNzLODO
・ ・ ・ ・ ・
ホロ「…ん…」
ホロ「ぬしよ、温かくて心地よいの…」フゥ
ロレンス「…」
ロレンス「入る前に体を冷やし過ぎて、痛い…」
ホロ「ぷっ」
ホロ「あははは! ぬしよ、ようやく浸かれてそれはないじゃろ!」
ロレンス「…誰のせいだ」
ロレンス「(…痛痒い)」ジンジン
796: 2013/03/13(水) 19:05:27.66 ID:OwIc3ROVo
ホロ「あー笑った」
ロレンス「ったく」クイ
ホロ「それは?」
ロレンス「はちみつ酒だよ」
ホロ「…珍しいの。ぬしが甘いものを口にするとは」
ロレンス「そうか?」
797: 2013/03/13(水) 19:06:40.03 ID:w8pNzLODO
ロレンス「ぶどう酒でもいいんだが、あれは冷たい物の方が好みだからな」
ロレンス「体が温まるまでははちみつ酒にしようと思って」コク
ホロ「なるほど」
ロレンス「ホロのはぶどう酒か」
ホロ「んむ」
ホロ「…じゃが、わっちもぬしと同じものが飲みたい」
798: 2013/03/13(水) 19:07:10.50 ID:OwIc3ROVo
ロレンス「ああ、はちみつ酒な」
ロレンス「ちょっと待ってくれ、今別の器に…」
ホロ「くふ」
パシ
ホロ「ぬしが飲んでおるのをもらえばよい」コク
ロレンス「…そうか」
ホロ「んむ♪」
799: 2013/03/13(水) 19:08:34.38 ID:w8pNzLODO
・ ・ ・ ・ ・
ペロ
ホロ「…ふー」
ロレンス「今日もよく食べたな」
ホロ「む。雄が雌にその言い方はないのではないかや?」
ロレンス「俺がホロに言う分にはいいんじゃないかな」
ホロ「…」
ホロ「そうじゃの」ブクブク
ロレンス「うん」
800: 2013/03/13(水) 19:09:27.81 ID:OwIc3ROVo
ホロ「…それにしても」
ロレンス「ん?」
ホロ「…本当に」
ホロ「帰って来たんじゃな。わっちは、故郷の、すぐ傍まで」
ロレンス「…そうだな」
ロレンス「こうなっては反対にパスロエの村が懐かしいんじゃないのか?」
801: 2013/03/13(水) 19:10:40.37 ID:w8pNzLODO
ホロ「まあ、多少は」
ホロ「戻ろうとはとても思えぬがの」ブクブク
ロレンス「そうだな」ハハ
ホロ「…」
ホロ「のう、ぬしよ」ザバ
ロレンス「うん」
802: 2013/03/13(水) 19:11:18.11 ID:OwIc3ROVo
ホロ「ここまでわっちを導いてくれて、本当にありがとう」
ロレンス「…」
ロレンス「ああ」
ロレンス「こちらこそ、まさか旅を楽しいと思う日が来るとは思わなかった」
ロレンス「俺も、あのときお前に出会えてよかったと思うよ」
ホロ「くふ。そう言ってもらえると嬉しいの」
803: 2013/03/13(水) 19:12:30.97 ID:w8pNzLODO
ホロ「…とまあ」
ホロ「一通り、旅に幕を引く前振りは済んだわけじゃな」
ロレンス「なんだそれ」ハハ
ホロ「…ぬしはこれからどうする気じゃ?」
ロレンス「ホロこそ」
ロレンス「このあとは、ヨイツに向かうのか?」
804: 2013/03/13(水) 19:13:19.32 ID:OwIc3ROVo
ホロ「…」
ホロ「戻っても仕方ないと思っておる」
ホロ「もう、見る影もないようじゃしの」
ロレンス「…それもありだろうな」
ロレンス「(見なければ、何も現実になることはない)」
ロレンス「(そうして心の中に故郷を保つことも、一つの道だろう)」
805: 2013/03/13(水) 19:14:08.14 ID:w8pNzLODO
ホロ「…ぬしはどうするのじゃ?」
ロレンス「…」
ホロ「もう店を構えるくらいの貯えはあるのじゃろう?」
ロレンス「まあな」
ホロ「…その、正直」
ホロ「少し申し訳ないと思っておる」
ロレンス「…何を?」
806: 2013/03/13(水) 19:15:08.61 ID:OwIc3ROVo
ホロ「結局こうして、果ての果てまでぬしを付き合わせてしまった」
ホロ「わっちには分からぬが、きっとこれまでにも何度か…店を構える機会はあったのではないかや?」
ロレンス「…さあ、どうだったかな」
ホロ「…くふ。ぬしは、本当に優しい雄じゃ」ニコ
ロレンス「そんなことないさ」
807: 2013/03/13(水) 19:16:13.43 ID:w8pNzLODO
ホロ「お互い思い残すことはありんせん」
ホロ「…もうずいぶん前の約束だったのに、ぬしは本当にこうしてそれを果たしてくれた」
ホロ「わっちはぬしに、信じられぬくらいの―――返しようもないほどの恩がある。ありがとう」
ロレンス「…いいのか? 賢狼がそう素直に人へ頭を下げて」
ホロ「…こんなときにからかうでない」
ロレンス「(からかわないとやってられないからな)」
ロレンス「(ホロらしくもなく、湿っぽいことだ、まったく)」
808: 2013/03/13(水) 19:17:10.05 ID:OwIc3ROVo
ロレンス「常々言って来ただろう?」
ロレンス「商人にとって契約は絶対だ。優しいも何も、俺はホロとの約束を果たさないとならなかった」
ロレンス「そして、金の借りも返してもらわないとならなかったからな」ニッ
ホロ「…くふ。そうじゃの」
ホロ「ぬしはもう、一人前の商人じゃからな」ニッ
809: 2013/03/13(水) 19:18:50.86 ID:w8pNzLODO
ロレンス「…ふぅ」
ロレンス「そろそろ上がろうか」
ホロ「…そうじゃな」
ホロ「くふ。これ以上浸かっておったら茹ってしまいんす」ザバ
ロレンス「(ホロは少し名残惜しそうに湯から身を出す)」
ロレンス「(…ここから出れば、それが二人の別れになると分かっているからだろう)」
ロレンス「…」
810: 2013/03/13(水) 19:19:56.58 ID:OwIc3ROVo
ザバ
ロレンス「なあ、ホロ」
ホロ「ん?」
ロレンス「…その」
ロレンス「俺から一つ、提案があるんだ」
ホロ「…うん?」
813: 2013/03/13(水) 22:41:25.57 ID:OwIc3ROVo
・ ・ ・ ・ ・
ガラガラ…
ホロ「暇じゃ」
ロレンス「…」
ホロ「のう、ぬしよー」ユサユサ
ロレンス「…」ユラユラ
ロレンス「揺らすんじゃない」ペシ
ホロ「あいたっ」
814: 2013/03/13(水) 22:42:58.03 ID:w8pNzLODO
ホロ「ひーまーじゃー」バタバタ
ロレンス「…子どもか、お前は」
ロレンス「まったく。コルの方がよほど聞き分けができたな」
ホロ「…どうしてここでコル坊を引き合いに出すんじゃ」ムス
ホロ「もうぬしなど知らぬっ」プイ
ロレンス「はいはい」
815: 2013/03/13(水) 22:47:11.70 ID:iW6+8rmxo
ホロ「…」ゴロッ
ホロ「退屈じゃなー」
ホロ「何か面白いことはないかのー」
ロレンス「ないな」
ホロ「…断言することもないじゃろ」
ロレンス「いつだって旅はそう言うものだ」
ロレンス「ホロだって、もう散々分かっていることだろう?」
ホロ「…まあの」
816: 2013/03/13(水) 22:48:49.96 ID:w8pNzLODO
ロレンス「それに、どれだけ暇だと言っても仕方ない」
ロレンス「お前はこうして、俺に付いて旅を続けるしかないんだからな」
ホロ「…ぬぅ」
ホロ「ぬしはずるいでありんす」
ロレンス「商人だからな。多少ずる賢いくらいでないとやって行けないのさ」
ホロ「むぅーっ」
817: 2013/03/13(水) 22:49:57.46 ID:iW6+8rmxo
―――――――
―――――
―――
ロレンス「俺は、もうしばらく旅を続けようと思う」
ホロ「…どうして?」
ロレンス「とくに理由はない」
ロレンス「…理由がないとだめか?」
ホロ「いや…いや」フリフリ
ホロ「そう言う問題ではありんせん」
818: 2013/03/13(水) 22:50:40.42 ID:w8pNzLODO
ホロ「店を持つのがぬしの夢だったのではないかや?」
ロレンス「そうだ」
ロレンス「だが何も金ができたからと言って慌てて店を建てることもない」
ロレンス「のんびりと行商人を続けて、もう少し経験を積んでからでも遅くはないだろう」
ホロ「…呆れた」
ホロ「ぬしの言い分にも一理ある、しかし」
ホロ「機を逃すような者が商人を名乗るとは可笑しな話じゃ」
ロレンス「そうかな」
819: 2013/03/13(水) 22:52:13.02 ID:iW6+8rmxo
ホロ「…ぬしの好きにすればよい」
ホロ「わっちはついて行かぬからの!」
ロレンス「いや、一緒に行こう」
ホロ「…いやじゃ」
ロレンス「どうして?」
ホロ「さっきも言うたじゃろ」
ホロ「…わっちは、これ以上ぬしの邪魔をしたくはありんせん」
820: 2013/03/13(水) 22:53:42.49 ID:w8pNzLODO
ロレンス「そうか」
ロレンス「じゃあ仕方ないな」
ホロ「…んむ。それでよい」
ロレンス「なら、無理やりにでも連れて行こう」
ホロ「…ん?」
821: 2013/03/13(水) 22:54:53.95 ID:w8pNzLODO
ホロ「なんじゃと?」
ロレンス「さっき、ホロは言ったよな?」
ロレンス「俺に返しようもない恩があると」
ロレンス「それじゃあ仕方ない。俺は商人だ」
ロレンス「どれだけかかっても、お前に借りたものは返してもらわなきゃな」
ホロ「…」
ホロ「…何を言い出すのかと思えば…」
822: 2013/03/13(水) 22:56:08.65 ID:iW6+8rmxo
ロレンス「前にも言った通り」
ロレンス「商人はしつこい。お前が嫌だと言って俺から逃げても」
ロレンス「俺は必ず、お前に貸した恩を、耳を揃えて返してもらうまで追い続ける」
ホロ「…はあ」
ホロ「…この、……たわけめ」
ロレンス「よく言われる」
823: 2013/03/13(水) 22:57:15.50 ID:w8pNzLODO
ホロ「…」ハア…
ホロ「もう知らん。ぬしの好きにしんす」プイ
ロレンス「ああ。言われなくとも、そうさせてもらう」
ギュ
ホロ「ん…」
ロレンス「俺はホロと旅を続けたい」
ロレンス「少なくとも、今はまだ、旅に生きる方が俺はいい」
ホロ「…そうかや」
ホロ「わっちは、…今はぬしに飼われておる身じゃ。言うことはありんせん」
ロレンス「そうか」
824: 2013/03/13(水) 22:59:38.64 ID:iW6+8rmxo
ホロ「じゃが覚悟をしておいた方がよい」
ホロ「わっちは金がかかる。ぬしにいくら恩があると言っても、遠慮はせんからの」
ロレンス「そいつは困った」
ロレンス「お前が贅沢をするたびに、俺の夢は遠のく一方だ」
ホロ「む」
ホロ「この…」
ホロ「…もう知らぬ。たわけめ」
ロレンス「まあな」
ホロ「…」
ホロ「…くふ」
825: 2013/03/13(水) 23:02:23.02 ID:w8pNzLODO
・ ・ ・ ・ ・
ガラガラ…
ホロ「じゃが暇なものは暇でありんす」パタパタ
ロレンス「…そう言われてもな」
ロレンス「旅はそう言うもんだ、としか」
ホロ「…同じ台詞をさっきも聞いたでありんす…」
ロレンス「そうだったか?」
ホロ「…まったく」ハア
826: 2013/03/13(水) 23:11:07.66 ID:iW6+8rmxo
ホロ「あーあ」
ホロ「こんな時間が、まだ、ずーっと続くのかや…」
ロレンス「いやか?」
ホロ「…ううん」
ホロ「幸せで胸がいっぱいになりそうじゃ」ベッ
ロレンス「そいつはよかった」

▲おしまい
829: 2013/03/13(水) 23:21:32.05 ID:BnJ8Az9co
完全終了かー
超ほのぼの癒しスレだったから終わるのは残念だ
が、とにかく >>1乙
超ほのぼの癒しスレだったから終わるのは残念だ
が、とにかく >>1乙
引用: ホロ「忙しいの」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります