男「どれ、俺が作ってやるよ」

男「皿にコーンフレーク盛りつけて、牛乳ぶっかけて」ﾄﾞﾊﾞﾊﾞｯ

男「ほれっ、出来あがり！　さあ食べろ！」

女「違う違う、これじゃないって」

男「へ？」

女「あたしはシリアスが食べたいの」

男「いや、だから俺はシリアルを……」

女「家にいてもシリアスは食べられそうにないから、外に出よう！」

男「このシリアルはどうすんだよ！　せっかく作ったのに勿体ないだろ！」

女「あんたが作ったんだから、あんたが食べれば？」

男「ったく……」ｶﾞﾂｶﾞﾂﾑｼｬﾑｼｬ

男「ゲプ……」

男（こいつと一緒に暮らすようになって数ヶ月経つけど、未だによく分からない奴だ）

男「うえっ、シリアル一気食いしたら、胃袋が……」ｵｴｯ

男「なあなあ！」

女「？」

男「シリアス食べるぐらいなら、俺の尻を食わないか！？」ﾌﾘｯﾌﾘｯ

女「バカじゃないの！？」ｹﾞｼｯ

男「いてっ！」

女「さ、シリアス食べにしゅっぱーつ！」

男（シリアスを食うってどういうことだ？）

男（そもそもシリアスって食えるもんなのか？）

女「あ、あそこにシリアスがある！」



DQN「なんだとてめえ！」

チンピラ「やんのかコラァ！」

女「よーし、あの二人のシリアスを食べちゃおう！」

男「たしかにシリアスな状況だけど、あんなのに関わるのやめとけって！　怪我するぞ！」

女「いただきまーす！」ﾊﾞｸﾝｯ



DQN「！？」ﾋﾞｸｯ

チンピラ「！？」ﾋﾞｸﾋﾞｸｯ

DQN「……」

チンピラ「……」

DQN「……なんかバカらしくなっちゃったな」

チンピラ「ああ、喧嘩はやめよう。ゲーセンでも行こうぜ」



男「えええええ！？」

女「ふうっ、ごちそうさま」

男「どうなってんだ……！？」

女「味はまずまずね。二人とも悪そうだったから、ピリッとした辛みがきいてるわ」

男（味あんのかよ……）

女「でも、今の程度のシリアスじゃまだまだ食べ足りないな」

女「もっとシリアスな人いないかな～」

女「お、いたいた！」



青年「はぁ～……氏にたい……」

女「いただきます！」ﾊﾞｸﾝｯ



青年「！？」ﾋﾞｸﾋﾞｸｯ

青年「……」

青年「あれだけ深刻に悩んでたのに、なんかどうでもよくなってきたな」

青年「もっと適当に生きよう！」

青年「ランララ～ン♪」



男「マジかよ……」

女「自殺願望持ちだけあって、さっきよりも上等なシリアスだったわ」

女「ん～……だけど、まだまだ食べ足りないな。かえってお腹空いてきちゃった」

女「よぉ～し、もっともっとシリアスを食べよう！」

女「あんたも手伝って！」

男「手伝うって……どうやって？」

女「走り回って、シリアスな状況を探してきて！」

男「分かったよ！」

男（めんどくせーことになった……）ﾀﾀﾀｯ

夫「買い物にいつまでかかってんだよ！」

妻「うるさいわね、女の買い物は時間かかるのよ！」


男「あそこの二人、夫婦喧嘩してるぞ！」

女「いただきます！」ﾊﾞｸﾝｯ


夫「……すまん、俺がせっかちだった。いつも会社で納期に追われてるから……」

妻「ううん……私がチンタラしてただけよ。ごめんなさいね」

高校生「あ～あ、頑張ったのになぁ……志望校に受からなかった……」


男「こっちには受験失敗して、落ち込んでる高校生がいるぞ！」

女「ああいう若い子のシリアスは新鮮で味がいいんだよね」ﾊﾞｸﾝｯ


高校生「こちとらまだ若いんだ！　受験だけが全てじゃない！」

おっさん「このご時世に、首を切られるなんて……ローンどうしよう……」


男「向こうには、リストラされたっぽいおじさんが！」

女「ああいうおじさんのシリアスはこってり味で、癖になるんだよね」ﾊﾞｸﾝｯ


おっさん「リストラされたからってなんだ！　再就職してやるぞ！　オーッ！！！」

ゴォォォォ……！

「みんな逃げろーっ！」　「消防車はまだか！？」　「空気が乾いてるからヤバいぞ！」


男「うわ、火事じゃん！」

女「ちょっと熱そうだけど、いただきます！」ﾊﾞｸﾝｯ


「おおっ、火が消えた！」　「奇跡だ……！」　「助かったぜ！」


女「やっぱちょっと熱かったわ」

男（状況がシリアスなら火も食えるのかよ！　便利なもんだ……）

女「あ～、食べた食べた」

男「しっかし……不思議なもんだなぁ」

女「実はあたし、シリアスを食べることができる人間なの」

女「それ以外のことは普通の人間と全く変わらないし」

女「もちろん普通の食事でも生きていけるんだけど、たまーにどうしても食べたくなっちゃって」

男「そうだったのか……」

女「今まで黙っててごめんね」

男「いや、かまわないさ」

女「嫌いになった？」

男「嫌いになんてなるもんか！　今日だってお前がシリアス食ったおかげで、何人も救われたし」

男「むしろ前より好きになったぐらいさ！」

女「ありがと」

男「それにさ、俺も……」

男「――うっ！」

男「シリアルいっぱい食って、走り回ったから、気分が……」ｵｴｯ

女「ちょっと大丈夫？」

男「ああ……なんとか」


通行人「だいじょぶですかぁ～？　グッジョブジョブジョブ！」


女「なにこいつ！　あっち行きなさいよ！」

女「さ、帰ろ」

男「そうだな」


通行人「ジョブジョブジョブジョブジョブ！　これはジャブ！」ｼｭｯｼｭｯ

男「テレビでも見るか」ﾋﾟｯ

女「そだね」

テレビ『……なんでやねん！　ワハハハハ……！　さぁ続いてのコントは――』

男「ん？　画面が変わった」

テレビ『ここで番組の途中ですが、緊急のニュースが入りましたので、お伝えします』

男「緊急ニュース？」

女「なになに？」

テレビ『しばらく緊張状態が続いていたA国とB国ですが』

テレビ『A国、B国ともに宣戦布告をし、これにより両国は戦争状態になりました』

テレビ『両国ともに大量破壊兵器を保持しているという情報もあり……』



男「マジかよ……まさか、本当に戦争になるとは思わんかった」

女「え、そんなにまずいの？」

男「ああ、まずい」

男「A国もB国もはっきりした証拠はないが、核武装してるって話もあるし」

男「二つとも結構でかい国だから、戦争になったら当然大国も介入してくる」

男「もしかしたら、第三次世界大戦の引き金になるかもしれない」

男「そしたら、人類滅亡待ったなしだぜ……」

女「そんな……」

男「ったく、なに考えてんだ……A国もB国も……」

女「だったら……このシリアス、あたしが食べてやる！」

男「え！？」

男「おいおい、いくらなんでもそりゃ無茶だ！」

男「戦争っていったら、それこそ最上級のシリアス状況だ！」

男「質も量もとんでもないんだぞ！　自殺願望持ちや夫婦喧嘩なんかとは比べ物にならない！」

男「なんたって、何万、何十万の人間が頃し合うわけだからな」

男「それに、海外のシリアスをここから食うことなんてできるのかよ！」

女「分からない……けど……」

女「この二つの国が戦争したら、大勢の人が氏んじゃう」

男「氏ぬだろうけど、しょせん他人事だ！　ほっとけ！」

女「それに、もし本当に世界大戦になんてなったら、あんたも氏んじゃうかもしれない！」

女「だからやる！」

男「やめろ！　世界大戦になんてなるわけないし、戦争なんて食ったら腹壊して氏ぬぞ！」

女「止めないで……あたし、もう決めたんだもの！」

男「待て――」

女「いただきます！！！」





バクンッ！

A国指導者「フハハハハハ、ついに憎きB国を滅ぼす時がきた！」

A国指導者「B国の主要都市に、保有してる核ミサイルをありったけ撃ち込んでやれ！」

A国指導者「！？」ﾋﾞｸｯ

A国指導者「あれれ～？　おかしいぞ～？　なんか急にやる気が……」


～


B国指導者「A国め、長年の因縁に今こそ決着をつけてやる！」

B国指導者「A国に黒い雨を降らせるのだ！　A国の国民は皆頃しだ！」

B国指導者「！？」ﾋﾞｸｯ

B国指導者「んん……？　A国なんかにマジになっちゃってどうすんの……」

テレビ『再びニュースが入りました』

テレビ『A国、B国ともに突如、和解を宣言……国連の調停を受け入れる模様……』

テレビ『密かに保有していた核兵器も全面的に廃棄すると発表……』

テレビ『両国民ともに、戦争を避けられたと喜んでいます……』



男「おおっ！」

男「やったぞ！　お前が両国の戦争（シリアス）を食って、世界を救ったんだ！」

男「――あっ！」

女「ううっ……」ﾄﾞｻｯ…

女「ううう……気持ち悪い……」

男「お、おいっ！　大丈夫か！？」

女「ううん……もう……ダメみたい……。あたし、食べすぎちゃった、ね……」

男「しっかりしろ！　すぐ医者を呼ぶからな！」

女「無駄だよ……こればっかりはお医者さん呼んでも……どうにもならない……」

男「おいっ！　頑張れっ！　諦めるな！」

女「でも……あたしの命と引き換えに……」

女「戦争、回避できたみたいで……よかった……」

男「バカ！　命と引き換えになんていうな！　戦争なんかに負けるな！」

女「あとは、平和になった世界で、楽しく生きて、ね……」

男「お前も生きるんだよ！　おいっ！」

女「そ、それじゃあね……。あたし氏んだら、彼女作って、いいから……」

女「あんたと出会えて……よかっ、た……」

男「氏ぬな！　氏ぬなぁっ！！！」

男（こうなったら……イチかバチかだ！）

男「うっ……オエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ！！！！！」





女「！！？」

女「キャーッ！　なにこれ！？」ﾌﾟｸｰｯ

女「お腹がものすごく膨らんじゃったんだけど！　まるでギャグアニメみたい！」

女「あんた、あたしに何したのよ！？」

男「ふぅー、そうなったらもう大丈夫だ。絶対に氏なない」

女「どゆこと！？」

男「実はな、お前がシリアスをもたらす成分を食うことができるように――」

男「俺もギャグ成分を吐き出して、それをぶっかけた相手にギャグをさせることができるんだ」

女「えええええ！？」

男「たまに予期せぬとこで吐いて、自分でギャグやったり、他人にギャグやらせたりしちゃうけどな」

男「今、お前には俺が内蔵するありったけのギャグ成分をぶっかけたから、氏ぬこたぁない」

男「だって、ギャグ漫画やギャグアニメってそういうもんだからな」

女「助けてもらったのは嬉しいけど……」ﾌﾟｸｰｯ

女「あたし、いつまでこの風船みたいな状態なの？」

男「うーん……なにしろ大量にぶっかけたから、当分そのままだな」

女「ひえええええ！　命が助かったのはよかったけど、この格好はダサすぎるよ！」ﾌﾟｸｰｯ

男「ま、心配するな！」

男「きっと来週には元に戻ってるさ」





終わり

乙

乙
通行人何かあるのかと思ったけどスルーして終わったｗｗｗ