1: 2008/10/30(木) 01:47:35.52 ID:i+fMAXNl0
男「何を?」

女「分かりません」

男「は?」

女「分からないけど何か大切な物を奪われた気がするんです」

男「はぁ・・・」

女「返して下さい」

男「返したくても何を返せばいいのやら・・・」

女「何を返して欲しいんでしょうね?」

男「俺が聞きたい」
ふらいんぐうぃっち(13) (週刊少年マガジンコミックス)

2: 2008/10/30(木) 01:49:27.73 ID:i+fMAXNl0
男「また来たのか」

女「返してくれるまで来ますとも」

男「せめて何を奪われたか分かってから来てくれ」

女「今日の晩ご飯はシチューですか。美味しそうですね」

男「しかも上がり込んで喰ってくのかよ」

女「いけませんか?」

男「・・・別にいいけどさ可愛いし」

女「貴方はいたって普通ですけどね」

男「やっぱ帰れ」

8: 2008/10/30(木) 01:52:41.35 ID:i+fMAXNl0
女「またまた来ました」

男「毎日来るお前の暇さ加減に絶望した」

女「勝手に絶望してて下さい。うわ工口本がありますよ」

男「ちょっ!! 勝手に部屋漁ってんじゃねぇ!!」

女「失敬な、返して欲しい物探しですよ部屋漁り違います」

男「とか言いつつ本ガン見してるじゃん」

女「知的好奇心はやめられない止まらない」

男「顔すげぇ真っ赤だけどな」

10: 2008/10/30(木) 01:57:33.89 ID:i+fMAXNl0
男「あ」

女「うん」

男「まさかホームセンターで会うとは思ってなかった」

女「こっちも予想外です」

男「何買ってんだ? えーと・・・」

男「ドライバー、ペンチ、ノコギリ・・・」

男「いやちょっと待てそれで何するつもりだ?」

女「工具買ってるんですから工作に決まってるじゃないですか馬鹿ですか貴方」

男(てっきり家漁りに使われるものかと・・・)

女「もしかしたら家漁りに使うかもしれませんけどね」

男「!!」

12: 2008/10/30(木) 02:02:34.08 ID:i+fMAXNl0
女「おーとこくん、あーそーぼ」

男「まじで遊びの誘いだったら嬉しいんだけどな」

女「んなわけないじゃないですか」

男「だよな、まぁいいさっさと入れ」

女「おー・・・いつもより片づいてる」

男「何を漁られてもいいように要らない物は一掃した」

女「その一掃した物の中に私が返して欲しい物が混ざってるということはないんですか?」

男「それだったらゴミ捨て場まで探しに行ってくれ・・・ってノコギリしまえまじ危ないって!!」

女「・・・まぁ多分まだ家にありますよ」ガサゴソ

男「せっかく片づけたのにすぐ散らかしやがった」

女「あとで戻します、それなら文句ないでしょう」

14: 2008/10/30(木) 02:07:31.02 ID:i+fMAXNl0
男「俺の部屋がゴミ屋敷になった」

女「まだ見つかりませんね」

男「やっぱ俺が奪ったっていうの違うんじゃねえの?」

女「いえ、確かに貴方絡みのはずです」

男「なにを根拠に・・・ってちょいトイレ」

女「最低ですね」

男「生理現象だからしょうがない」
ジョロジョロジャー

男「・・・何が起きた」

女「ちゃんとあとで戻すって言ったでしょう」

男「俺がトイレに行ってる間に戻すとかどんだけ超人だよ」

女「一度あった場所に戻すだけだもの、簡単でしょ」

男「それをするのに丸一日かけた俺はどうなる」

女「人によりけりでしょ、そんなもの」

男「だがお前はおかしい、それは自覚しろ」

15: 2008/10/30(木) 02:12:25.02 ID:i+fMAXNl0
女「なんか異常とか言われたんで普通っぽいところをアピールする為料理を作ってました」

男「うちこれから飯なんだけど」

女「どうせ白米と納豆だけでしょうに」

男「うちの食事情をよく把握してらっしゃる」

女「毎日来てるからね、ほら肉じゃがよたんとお食べなさい」

男「・・・普通に美味い」

女「ふふん」

男「隠し味はなんだ? 血か? くすりか?」

女「どうしても私を異常者にしたいみたいですね」

17: 2008/10/30(木) 02:15:53.77 ID:i+fMAXNl0
男「料理できるし片づけできるし可愛いし・・・お前普通にしてりゃいいのに」

女「これでも学校では優秀な美少女として通ってますから」

男「胡散くせぇ」

女「あなたは私に負けず劣らず失礼な人ですね」

男「自覚してんのかよ」

女「まぁ一応は」

男「んで何を返して欲しいか思い出したか」

女「いえ全然」

男「駄目じゃん」

女「・・・ですけど」

男「?」

女「別に思い出せなくても、構わない気がしてきました」

男「は?」

20: 2008/10/30(木) 02:20:08.35 ID:i+fMAXNl0
女「・・・別になんでもありません」

男「なんだよ」

女「今日はもう帰ります」

男「家漁りはしてかないのか」

女「そんな気分ではないので。連日遅くまで貴方の家に居ると親がうるさいのでね」

男「2週間以上深夜まで入り浸ってからじゃないと親なんもいわねーのかよ」

女「狂ってるでしょう?」

男「お前に負けず劣らず、な」

女「はは」

女「また、明日」

男「・・・おう」

21: 2008/10/30(木) 02:23:46.22 ID:i+fMAXNl0
女「はぁ・・・」

女「毎日、男の顔を見ないと落ち着かなくなってきました・・・」

女「恋・・・ってやつなんでしょうかこれが」

女「でも・・・」

女「まだ返してもらってない」

女「ホントは返して欲しいのに、返して欲しくない自分もいる」

女「うー・・・」

女「どっちにしても、早くしないと・・・」

女「変な女って思われてるだろうし」

女「うー・・・」

22: 2008/10/30(木) 02:26:05.94 ID:i+fMAXNl0
男「なんか今日のアイツ変だったな」

男「いつもの勢いが無いっていうか・・・」

男「しおらしい、っていうか・・・」

男「じっとしてりゃ可愛いんだけどな」

男「肉じゃが、美味いし」

男「あー・・・」

男「アイツが来るようになってから暇を持てあますこと無くなったよな」

男「暇だ」

男「・・・2chでも見るか」

23: 2008/10/30(木) 02:30:26.00 ID:i+fMAXNl0
男「うわ」

女「うわ、ってなんですかこのニート」

男「ニートじゃねぇフリーターだ」

女「失敬、働いてるの見たことがないので」

男「てゆーかその制服・・・県内有数の進学校の制服じゃねぇか」

女「そうでしたっけ?」

男「しかも俺の記憶じゃそこそこ裕福な家庭向けだろ?」

女「男じゃ多分入れませんね、学力的にも金銭的にも」

男「うっせ」

25: 2008/10/30(木) 02:37:37.69 ID:i+fMAXNl0
女友「女さーん、そんなところでなにしてるのー?」

女「別になんでもありませんよ、ただ知り合いと会って世間話をしていただけです」

女友「知り合いってこの男の人? なんか女さんが知り合いにならなそうな顔してるけど」

男「お前の友達ひどい奴だな」

女「あんまひどいこと言っちゃいけませんよ、突然押しかけた私に食事をご馳走してくれる時もあるんですから」

男(納豆ご飯とか時々シチューとかカレーとかだけどな)

女友「へぇーすごいねー。人は見かけによらないとはこのことだー」

女「それでは先に行っててください、まだ話すことがあるので」

女友「了解ー、んじゃ教室で待ってるよー」


男「すげぇ猫かぶりだな」

女「うっせ」

28: 2008/10/30(木) 02:45:22.97 ID:i+fMAXNl0
女「・・・何してるんですか」

男「・・・布団敷いてる」

女「布団敷いてどうするんですか確かに私はちょっと可愛いかも
しれませんが突然おそわれてあらゆる場所をいじめぬかれて
それでもなお感じるなんてマニアックな趣味が全くないとは言い
切れませんが正直心の準備という物は必要なわけでそこら辺を配慮して
頂きたく――」

男「お前が変なところで純情なのは分かったが落ち着け」

30: 2008/10/30(木) 02:47:13.16 ID:i+fMAXNl0
女「すぅー、はぁー」

女「落ち着きました」

男「よしいい子だ」

男「ちょっと熱あって風邪気味でな、だから今日はもう寝ようと思って」

男「風邪移すのも忍びないし・・・今日はもう帰ってくれ」

女「なら私が看病します」

男「は?」

女「気にしないで下さい、これでも看病は得意な方です。それに家漁りのついでですから」

男「そういやお前返して欲しい物あったんだっけ・・・しばらく忘れてたけど」

女「病人はそこで黙って寝てて下さい、医者顔負けの看病をしてみせます」

男「嫌な予感しかしないんだが・・・」

32: 2008/10/30(木) 02:54:30.56 ID:i+fMAXNl0

女「触りたいの?」は流れが好み

女「とりあえず何もなかったので卵雑炊作ってみました」

男「今日予定してた夕飯より10倍豪華だ」

女「今日も納豆ご飯にするつもりでしたね?」

男「なぜ分かった」

女「冷蔵庫に卵ともやしと納豆しかないんですもん、ほぼ三択でしょうに」

男「バリエーションというものがあってだな・・・」

女「それでもせいぜい七択くらいまでしか増えませんが」

33: 2008/10/30(木) 02:58:52.18 ID:i+fMAXNl0
女「はいはい分かりましたから口開けて下さい」

男「へ?」

女「だから『はい、あーん』ですよ。はい、あーん」
ムギュ

男「お、おふっ」

男「あれ? 熱くない。しかも美味い」

女「ちゃんと冷ましておきましたから」

男「――なにで? 息で?」

女「いや扇風機で」

36: 2008/10/30(木) 03:03:35.19 ID:i+fMAXNl0
女「――そんな落ち込まないで下さいよ嘘ですから」

男「そもそもうちに扇風機なんて高級品ないしな」

女「言ってて悲しくなってきませんか?」

男「少し」

女「まぁいいです、薬ここに置いておきますね」

男「よく薬見つけたな、俺でさえどこにあるか分からなかったのに」

女「だてに家漁りしてませんよ――それじゃ静かに寝てて下さいね」

男「何? やっぱ帰るか」

女「ちょっと果物買ってきます」

男「は!? いやちょっまっ――」女「行ってきます」
バタン

男「そこまでしなくてもいいのに・・・」

38: 2008/10/30(木) 03:11:22.32 ID:i+fMAXNl0
女「なにが好きか分からないので一式買ってきました」

男「メロンに西瓜・・・苺に巨峰・・・高級な奴ばっかなんだが」

女「失敬な駅前にある八百屋さんで売ってる蜜柑は安い旨い甘いの三拍子そろったいいものなんですよ」

男「お前変なところで家庭的だよな・・・普段はかけ離れてるのに」

男「とりあえず桃か梨をくれ・・・正直いまは動くのもだるいんだ・・・」

女「はいはい分かりました、しょりしょりーっと」

男「手つきが慣れまくっている・・・」

39: 2008/10/30(木) 03:14:47.52 ID:i+fMAXNl0
女「はい剥けましたよ梨」

男「はえぇ・・・つーかせめて等分してくれ」

女「はぐっ、もぐもぐ」

男「は・・・? お前何して・・・」
女「んっ」
男「!!」

女「ぷはぁっ」

男「お、お、お、お前、何して!!」

女「咀嚼して分け与えただけですがそれがなにか?」

女「我が家ではそれは普通で恥ずかしがることではありません」

男「そーいやお前ん家も常識から外れてるってこと忘れてたわ・・・」

41: 2008/10/30(木) 03:18:33.86 ID:i+fMAXNl0
男「・・・なんだかんだで桃も梨も全部食べ尽くしたな」

女「意外と元気じゃないですか」

男「俺でもびっくりだよ・・・看病が良かったのかもしれん」

女「褒めてもなにもでませんよ」

男「・・・あのさ」

女「なんですか」ショリショリ

男「なんで、俺にここまでしてくれるんだ?」

ショリ

男「俺はしがないフリーターで、顔も良くなければ性格が良いわけでもない」

男「なのに――なんでここまで」

女「――それは・・・」

44: 2008/10/30(木) 03:22:53.61 ID:i+fMAXNl0
女「しがないフリーターで、主食が納豆で、顔も至って普通で、性格も普通で」

女「けど、私は奪われた物があるから」

女「それを取り返すには、仲良くしなきゃいけないと思ったから」

女「――それだけ・・・だよ」

男「――そう、か」

女「ごめん」

男「謝る必要ないだろ・・・俺寝るから」

女「うん」

男「家、勝手に漁っていいからさ」

男「寝てる間に――帰ってくれ」

女「・・・ごめん」

男(好き・・・だったんだな。俺、コイツのこと)

46: 2008/10/30(木) 03:26:29.19 ID:i+fMAXNl0
女「借りてたDVD返しに来た」

男「それレンタルだけどな、期日ギリギリに返してきやがって」

女「そっちこそ私の漫画借りてる癖に」

男「ギブアンドテイクだ」

女「DVDは貴方のじゃないですけどね・・・」

男「年下の癖に生意気言いやがって」

女「痛い痛い、一応私お嬢様ですよ」

男「んなの知るか、勝手にうち来て荒らして飯喰って帰る女に容赦する必要はない」

47: 2008/10/30(木) 03:30:19.49 ID:i+fMAXNl0
女「痛た・・・まだ痛いんですが」

男「自業自得だ」

女「うわぁ・・・相変わらず卵と納豆ともやししかありませんね」

男「お前たまには飯作ってくれよ」

女「一度作って炭になったのをお忘れですか?」

男「料理くらい作れるようになれよな・・・昨日作り置きしておいたカレーあるけど食べる?」

女「頂きましょう、今日は両親とも仕事で遅いですし」

男女「「いただきます」」

50: 2008/10/30(木) 03:35:07.95 ID:i+fMAXNl0
なんか人居なさそうだしさっさと終わらせて寝てもいいかな?

男「おまえさ・・・飯喰ったら俺の膝の上に乗るのなんでなの?」

女「別にいいじゃないですか、や、や、やらしいことしてるわけでもないんですから」

男「重い」

女「最低ですね」

男「そーいやそこら辺に梨あるぞ」

女「まじですか私大好物です」

女「しょーりしょり・・・痛っ!!」

男「ほらほら大丈夫か? あーあ不器用なのにそんなことするから・・・」

女「むむー、私不器用違います」

男「不器用だろjk・・・ほれしょーりしょり」

女「女々しい野郎ですねぇ・・・」

男「相変わらず性格悪いやつだなお前」

55: 2008/10/30(木) 03:41:07.65 ID:i+fMAXNl0
>>51 居るならもうちょい頑張る今日七時から用事あるけど

男「むしゃむしゃ」

女「ぱくぱく」

女「美味しかったです、ごちそうさまでした」

男「口にあって何よりだ、駅前にある八百屋の蜜柑も安くて甘くて美味しいぞ」

女「機会があったらいってみますよ」

男「あー、ほら口元に食べかすついてるっつーの」

女「んーんっ、んー、むぅ」

男「紛らわしい声だすな・・・あーもう暴れるなっつーの」

男「ほら取れた」

女「――――」

男「・・・どうした?」

59: 2008/10/30(木) 03:44:07.27 ID:i+fMAXNl0
女「なんだか・・・こそばゆいです」

男「ムラムラするってことか?」

女「ち、ちがいますっもっとふれあいたいっておもっただけでふっ」

男「まぁ落ち着け」

女「すぅー、はぁー」

女「落ち着きました」

男「正直さっきお前が膝の上で暴れた所為で俺のほうも結構やばい」

女「ふえっ!?」

64: 2008/10/30(木) 03:46:40.24 ID:i+fMAXNl0
女「――その、しても、いいですよ?」

男「いつもは気が動転するくらい慌てふためくのにな」

女「心の準備が必要なんです」

男「んじゃ、今は?」

女「困ったことにばっちこーいなんですよね・・・んっ」

男「んじゃするぞ、こっちも貯まってんだから」

女「・・・優しくしてくれないとやですからね」

68: 2008/10/30(木) 03:53:18.53 ID:i+fMAXNl0

男「――んじゃ、気を付けて帰れよ」

女「いつも来てる道ですよ、ちゃんと工具用のノコギリも持ってますし」

男「ちゃんと家に置いてこい」

女「はいはい分かりましたよー、と、ちゅっ」

女「それでは男、また明日会いましょう」

男「・・・色々と不意打ちする奴だなぁ」

男「あれ、家の鍵アイツ忘れてってら」


男「はぁっ、はぁっ、家でてそんな経ってないからそこらへんにいると思うんだけど・・・」

女「あれ、男どうしたんですか?」

男「あぁ、見つけた――お前キーホルダー忘れてった・・・女っ!!」

女「え?」キキィーーーーーーーー!!
ドカン!!!!

75: 2008/10/30(木) 03:56:19.46 ID:i+fMAXNl0

男「――!!なんだ今の夢・・・」

男「夢に出てきた女は、あいつだよな・・・?」

男「!! 女はどこ行った!?」

男「――嫌な予感がする・・・!!」

男「目の前がふらふらするけど・・・女を捜さないと・・・!!」

77: 2008/10/30(木) 04:00:01.09 ID:i+fMAXNl0
>>70 なんかもうそれでもよかった気もするな

男「どこだ・・・どこにいる・・・?」

男「確か夢ではここらへんで・・・」

女「貴方・・・何してるんですか・・・」

男「女! 大丈夫か!! 怪我はないか!?」

女「私より自分の心配したらどうですか、今にも氏にそうな顔してますよ」

男「いや、お前が心配で心配で・・・うっ」

女「正直貴方の身体の方が私は心配ですよ」

女「ほら肩貸してあげますから家まで戻りますよ」

男「よかった・・・怪我がなくてほんとによかった・・・」

女「変な人ですね・・・」

80: 2008/10/30(木) 04:03:58.59 ID:i+fMAXNl0
まだgdgdさせた方がいい?徹夜覚悟なんだが

男「なんかさ、夢見たんだよ」

女「はぁ」

男「そこでさ、お前が車に事故あってさ」

男「起きてとてつもなく不安になっちまったんだよ」

女「そうですか・・・」

男「・・・俺のこと好きじゃなくてもいいからさ、たまには家に来てくれるとさ」

女「えぇ」

男「助かるっていうか・・・楽しいっていうかさ・・・」

女「大丈夫ですよ」

女「私が傍にいますから、悪夢に苦しんでたら起こしてあげますから」

女「だから、安心して眠って下さい」

83: 2008/10/30(木) 04:06:58.93 ID:i+fMAXNl0
男「すぅー・・・すぅー・・・」

女「ようやく寝ましたか・・・」

女「全く病人の癖に無茶して・・・」

女「・・・」

女「――好きですよ、男」

女「けど」

女「貴方に好きって直接言ったら」

女「きっと、返してもらえなくなるから」

女「だから、卑怯かもしれないけど」

女「夢の中だけは、私と付き合ってて欲しいな・・・」

89: 2008/10/30(木) 04:10:39.48 ID:i+fMAXNl0
男「ふわぁ・・・もう朝か」

女「おはようございます」

男「うおわぁっ!! お前なんで朝っぱらから」

女「昨夜看病してたのをお忘れですか?」

男「あー・・・すまん、そうだったな」

女「それでは起きたようなので私は学校いってきます」

女「また後で様子見に来るのでじっとしてるんですよ?」
バタン

男「・・・目の下に隈できてたよな・・・」

男「徹夜で看病してくれてたのか」

男「・・・カレー作るくらいなら許してくれるだろ、うん」

93: 2008/10/30(木) 04:14:24.04 ID:i+fMAXNl0
そわそわ

そわそわ

女友「どーしったの女ちゃん、さっきからそわそわして」

女「あ、いえ、なんでもありませんとも」

女友「・・・この前の男の人?」

女「はてさてなんのことだかわたしにはさっぱり」

女友「相変わらずだねぇ女ちゃん、焦ると棒読みチックになるんだから」

女「・・・別にそれでいいです」

女「ところで女友」

女「・・・駅前の八百屋ってどこだか分かりますか?」

98: 2008/10/30(木) 04:19:18.31 ID:i+fMAXNl0
女友「えーとここからこういってこの道をこう曲がって・・・」

女「意外と変なところにあるんですね・・・もうちょっと分かりやすい場所にあると思ってました」

女友「駅前にある土地はファーストフードとか雑貨屋さんに取られるからねぇ、あ、あったここだ」

女「・・・いかにも八百屋って感じですねここ」

八百屋「らっしゃい!! おやお嬢その子は友達ですかい!?」

女友「こんちゃーすおやっさん、なんでもこの子がこの廃れた八百屋に来たいっていうもんでね」

女「あの・・・蜜柑っておいてありますでしょうか?」

八百屋「おおううちの蜜柑をご指名とはなかなか通だねぇ」

101: 2008/10/30(木) 04:23:11.01 ID:i+fMAXNl0
八百屋「ほら!! ターンと持ってきな」
ドスッ

女「お・・おも・・・こんなにいっぱいいいんですか?」

八百屋「別にいいって事よ!! お代はお嬢に請求すっから」

女友「ちょっ、おやっさんひどーい」

女「ではありがたく・・・」

女友「んじゃ私この先にも用事有るからまた今度学校でねー」

女「この先にもなにかあるんですか・・・」

女友「女ちゃんが知らなくていい世界が広がってるよ、んじゃばっははーい」

女「蜜柑いっぱい・・・重・・・」
ぺりぺり、ぱく

女「甘くて、美味しい」

女「喜んでくれるかな・・・」

106: 2008/10/30(木) 04:27:30.49 ID:i+fMAXNl0
男「あ」

女「・・・何してるんですかあなたは」

男「いやお前こそなにしてるんだそんなダンボール箱持って」

女「わたし、しずかに、ねてろ、いいましたよね?」

男「悪かった、悪かったからダンボール上に掲げるのはやめろっ!!」

女「――ふぅ・・・それでなにしてるんですか?」

男「いや、お前が来るの分かってたからカレーでも作って待ってようかなって・・・」
ぴこんっ

男「ん?」

男「お前カレー好き?」

女「べつにそんなあんな庶民的なたべもの好きじゃないです」

男「・・・なんとなく分かった」

女「ポークカレー以外認めませんからねっ!!」

116: 2008/10/30(木) 04:36:32.33 ID:i+fMAXNl0

女「カレーをつくりーの家漁りーの」

男「つかめぼしいものもうなんも無いだろ」

女「そうでもありませんよ? このあいだ中学の卒業文集見つけましたし」

男「俺でも見つけられそうにない物をよくもまぁ・・・」

女「結構ワームホール化してますからね、特に押入の中」

男「結局飯まで作ってもらって悪いな・・・」

女「悪いと思ってるんならちゃんと布団に入って蜜柑食ってなさい」

男「昨日喰った蜜柑も美味かったけど、この蜜柑は増して美味いな」

女「昨日言ってた八百屋で買ってきたんですよ、美味しいでしょう?」

男「でも一箱丸々はおかしいだろ・・・カレー喰う前に腹いっぱいになるわ」

女「おやっさんに言ってくださいよ・・・私も持つの疲れたんですから」

119: 2008/10/30(木) 04:39:21.13 ID:i+fMAXNl0
女「腹いっぱいなら私の力作カレーは要りませんね」

男「喰うに決まってるだろっ」

女「はいはい分かりましたってば、冗談ですよ冗談」

男「お前が冗談言うとマジに聞こえるんだよ・・・」

女「そこら辺は見極めてもらわないと」

男「無茶言うな」

123: 2008/10/30(木) 04:46:50.72 ID:i+fMAXNl0
ぱくぱく

もぐもぐ

男「あのさ・・・」

女「なんですか?」

男「お前、突然来なくなったりしないよな?」

女「何を突然」

男「知らない間に何か見つけてさ、突然来なくなったりしないよな?」

女「・・・」

男「今日一日ずっと考えてたんだよ。もしお前が来なくなったら・・・って」

男「そうなったら、毎日アルバイトして、暇な時間はPCやって、納豆ご飯食べて・・・」

男「淋しい生活に逆戻りだな、って思ってた」

126: 2008/10/30(木) 04:50:24.77 ID:i+fMAXNl0
女「その話は・・・昨日終わらせたじゃないですか」

男「お前の中では、だろ? 俺の中ではまだ終わってない」

男「お前にとって返して欲しい物が大切なのは分かってるけど」

男「お前の口から、俺のことが嫌いか好きかは、聞いてない」

男「答えてくれ、ちゃんと」

男「そうすりゃ、なんとか諦めること出来るとおもうから」

127: 2008/10/30(木) 04:59:43.70 ID:i+fMAXNl0
女「言いたくないの分かってて・・・」

男「・・・」

女「言いたくないのが分かってて・・・聞いてるんですか・・・」

男「あぁ」

女「最低ですね・・・」

男「・・・あぁ」

女「ほんとに最低です・・・」

女「風邪の時に咀嚼して飲ませるとか、普通なわけないじゃないですか・・・」

129: 2008/10/30(木) 05:01:48.38 ID:i+fMAXNl0
女「私はほんとはどこにでもいる普通の女の子で」

女「好きな人にはキスしたくなっちゃうような、そんな娘で・・・」

女「嫌いなわけ・・・ないじゃないですか・・・っ!!」

女「嫌えるわけ・・・ないじゃないですかっ!!」

男「女・・・口にカレーの食べかすついてるぞ・・・」

男「あんま暴れるなよ、すぐ取れるから」

女「触らないでっ!!!!」
バシッ!!
男「痛っ!!」

女「ごめんなさい・・・今日はもう帰ります」

男「女・・・」

女「今日は、追ってこないで下さい・・・お願いですから・・・」

男「女!!」
バタンッ!!

130: 2008/10/30(木) 05:04:27.40 ID:i+fMAXNl0
ザッ、ザザーッ、ザーー
男「くそっ!! なんでこんな時にまたあの夢がちらつくんだ・・・!!」

男「頭が痛い・・・身体が重い・・・」

男「けど・・・女を止めないと・・・じゃないと・・・」
キィッ パタン

男「女・・・?」

男「道路の真ん中に突っ立って何やって・・・!!」

女「――――私ね・・・」

133: 2008/10/30(木) 05:07:40.88 ID:i+fMAXNl0
女「ほんとは分かってたの」

なにを

女「何を返して欲しいのか」

からだがうごかない

女「――私が何を望んだのか」

うごけよぼけ、はやくいかないとおんなが

女「けど」

あのゆめみたいにあかいはなをさかせるぞ

女「それは願っちゃいけない夢で」

たのむにげろにげてくれ

女「―――だから、私は」

やめろ

女「それを夢に―――求めたの」

134: 2008/10/30(木) 05:12:03.97 ID:i+fMAXNl0
おんながくるまにはねられる
あかい、まっかなはなをさかせて
きれいだとはおもったけどかなしくて
それとどうじにせかいがゆがんで
あたまのずつうもいたくなって
ノイズがノイズがノイズがはしる
わかった
すべてわかったよ
せかいからおんながきえたんじゃなくて
おんながせかいからきえたんだ
おんながいないせかいは、せかいじゃなくて
それは起きた時に忘れる夢と同じで

「――ありがとう、一時の夢でも」

「俺を忘れないでいてくれて」

夢は情報の整理の際起きる不確定な映像
そこに俺がたくさん出てきたということは、アイツの頭の中は俺でいっぱいってことだ

「ほんのすこし嬉しいかな」

ちょっと違うところもあったかもしれないけど、俺は『男』でいられたか?
さようなら――女

好きだったよ―――

136: 2008/10/30(木) 05:14:45.99 ID:i+fMAXNl0
目覚めれば病院の一室
頭に巻いてある包帯が、ほんの少し痛かった

女「長い――夢だったな・・・」

女「夢の中でも、貴方のことばかり」

女「馬鹿なんだから、ほんとに」

女「私を庇って、代わりに氏ぬなんて・・・」

女「ね・・・神様」

女「願いを叶えてくれるなら」

女「あの人を―――――」

137: 2008/10/30(木) 05:16:32.37 ID:i+fMAXNl0
とまぁ女が事故に遭う前に男が庇って氏ぬお話
長い長い夢オチ、認めたくない現実を認める為に必要な夢の世界でした。

142: 2008/10/30(木) 05:18:38.49 ID:pb2Dvp0v0
まてまてまてまてまてまて
ハッピーエンド激しく希望なんだが!!!!!


が、面白かった

151: 2008/10/30(木) 05:22:44.84 ID:i+fMAXNl0
「おかーさんこれってだれのお墓なの?」

「これはね、あなたのおとうさんのおはかなんですよ」

「まったく・・・氏んでからも迷惑かけるんですから・・・」

「あれから大変だったんですよ・・・短大入って子供生んで・・・」

「ようやくあれから八年経って自立できたんですから・・・」

「おかーさーん、おばちゃんがよんでるよー?」

「さきにいってなさい、私もあとからいきますから」

「はーい」

「色んな人にお世話になって、そのお返しが終わったら」

「またくるからね」

「ちゃんと、蜜柑を持って」

155: 2008/10/30(木) 05:25:48.03 ID:i+fMAXNl0
>>151 でちゃんとした完結
最後の方は固まってたんだけど、出かけたら落ちそうな雰囲気だった
ので突っ走らせてもらいました

強引にまとめてしまいましたけど、面白いっていってくれたかたありがとう
キツイ評価くれた人は頑張って直しますんでまた見かけたら「またコイツかよ」って
言って罵ってやって下さいな

さて、まだ時間あるがどうするか

163: 2008/10/30(木) 05:33:04.02 ID:qiM5oafZ0
理解できてないけど泣いた

168: 2008/10/30(木) 05:39:04.29 ID:i+fMAXNl0
>>166 あんま腕に自信が無い人って遠回しに逃げたりしません?

179: 2008/10/30(木) 09:05:11.14 ID:GDz734QjO

引用: 女「返して下さい」