1: ◆VmgLZocIfs 2015/06/16(火) 22:33:33.15 ID:nh3uhJbUo
萌えラノベっぽい何かを書きたくて。ツンデレ艦娘界のエリート曙で行きます。

↓直近作、>>2過去作紹介、本編>>3からで今回はハイブリット形式です。



【艦これ】梅雨祥鳳【短編集】祥鳳、川内、時雨、叢雲の四篇

【艦これ】叢雲アフター【短編SS】叢雲後日談

【艦これ】梅雨矢矧【短編SS】初めての秘書艦矢矧


艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 水雷戦隊クロニクル(1) (角川コミックス・エース)

2: 2015/06/16(火) 22:34:05.66 ID:nh3uhJbUo
叢雲「私のバレンタイン・デイ」(処O作・地の文)

天龍「オレと、提督の恋」(長編地の文・恋シリーズ)

神通「私と提督の、恋」(長編地の文・恋シリーズ)

球磨「お姉ちゃんの損な役回り」(球磨師匠、磯風の弟子視点・ハイブリット)

磯風「磯風水雷戦隊」陽炎「陽炎水雷戦隊」 磯風・陽炎「突撃する!」(二人の演習戦・ハイブリット)

青葉「司令官をグデングデンに酔わせてインタビュー!」(台本形式挑戦作)

青葉「司令官を酔わせて取材しちゃいました!!」(台本・鶴姉妹主役のある神作品リスペクト)


3: 2015/06/16(火) 22:34:54.60 ID:nh3uhJbUo
曙「なんでこうなったのよ」

提督「…」


曙「全く、冗談じゃないわ!」

提督「そんな事言ったって、しょうがないじゃない」

提督「それにあれは事故なんだし…」


曙「だからって、だからって…」

曙「なんで私がクソ提督と、一日中手を繋がなくちゃいけないのよ~!」



左の手のひらだけがさっきからずっと、汗ばんでいるのを感じて。

早鐘をつく様な胸のドキドキを悟られないようにしながら、私は喚いた。

4: 2015/06/16(火) 22:36:07.63 ID:nh3uhJbUo
全く、なんで僕が嫌われなくちゃいけないんだ…。

女の子の手を握っていることを意識して、緊張して強ばった右手の力を緩める。

曙さんの悲鳴を横で聞きながら、僕はこの騒動の発端を思い出すのだった。



夕張「提督、いつもの開発のご報告なのですが」


提督「うん、ありがとう…って、これは何?」


夕張「新兵装を作ろうとしたら失敗しちゃって」

5: 2015/06/16(火) 22:38:00.15 ID:nh3uhJbUo
えへへ、と可愛く笑うのは鎮守府の開発担当をしている夕張さんだ。

艦載機や砲の他にも役に立ちそうなアイデアがあればこうして実験してくれる。

画期的な兵装を開発してくれたこともあるんだけど…これは。



提督「なに、これ。おもちゃのステッキ?」

夕張「提督、持ってみて下さい」

提督「え、これでいいの?」



促されるまま、夕張さんが開発したというステッキ(?)を手に取る僕。

これにどんな効果があるっていうのだろうか。

6: 2015/06/16(火) 22:39:06.98 ID:nh3uhJbUo
夕張「いま、提督の手に磁力が溜まっています」

提督「磁力!?」

提督「凄いじゃないかこれ」


提督「じゃあよっぽど役に立つ効果が…」

夕張「この状態で誰かと手を繋ぐと、手と手がくっついて放れなくなります!」

提督「なんてもの開発してんのさ!」


慌ててステッキから手を放して机に置く。

何でこんな意味もない迷惑なものを作るんだろう?

ロマンがどうとか言われても、サッパリ意味が分からないよ。

7: 2015/06/16(火) 22:40:16.45 ID:nh3uhJbUo
夕張「元々は深海棲艦鹵獲用に作っていたんですが…」

夕張「よく考えたら深海棲艦と手を繋ぐってありえませんよね!」

提督「あのねえ…」


夕張「でもですね、失敗作とはいえ開発は開発」

夕張「出来れば効果を試したいんですけれど、どうでしょう?」

提督「駄目に決まってるでしょ!」


こんなものが誤作動でもしたら、鎮守府の任務に支障が出てしまう。

とにかく一度僕が没収して様子を見るとしよう。


思えば、これが油断だった。

彼女たちの帰投時間を把握していたくせに、何故机の上に出しっぱなしにしたんだろう?

8: 2015/06/16(火) 22:42:24.58 ID:nh3uhJbUo
漣「艦隊帰投ですよ、ご主人サマ!」

朧「第七躯、帰ってきました!」

提督「漣さんに朧さん、おかえり」


潮「あ、あのう…」

提督「潮さんも、おかえり」


提督「みんな無事かな?」


出撃から時間通り帰投してきた第七駆逐隊のみんなが戦果を報告しに来る。

漣さんと朧さんは元気良く、潮さんはみんなの姿に隠れながら。

そして、最後の一人は…。

9: 2015/06/16(火) 22:43:08.30 ID:nh3uhJbUo
曙「みんな無事かなんて、見れば分かるでしょ?」

潮「あ、曙ちゃん!」


提督「曙さんもおかえり」

曙「…フン」


提督である僕にかしこまった態度を取る艦娘の方が少ないこの鎮守府だけど。

ここまで辛辣な態度をとられることは、そうそうない。



潮さんが慌てて執り成そうとするのも相手にせず、彼女はそっぽを向いた。

人間でいえば同い年くらいの目の前の女の子を見て、僕はいつも思うんだ。

…何か嫌われるような事をしたっけ、って。

10: 2015/06/16(火) 22:43:46.94 ID:nh3uhJbUo
漣「そういえばご主人サマ、何してたんですか?」

朧「夕張も。もしかして大事な任務の話だった?」


まさかヘンな秘密道具の話でしたなんて言うのも格好がつかなくて。

僕は曖昧に笑って答えを濁した。それがいけなかった。



曙「?」

曙「何よこの、机の上の」


そう言って曙さんが例の、夕張さんの”失敗作”を手にとった。

11: 2015/06/16(火) 22:44:38.90 ID:nh3uhJbUo
提督「あっ、ダメだよ!」

曙「はぁ?アンタこんなもので遊んでたの?」


曙「ほんっとに、これだからクソ提督は…」

提督「いいから、それから手を放して!」


夕張「ちょ、提督!?」



慌てて曙さんの方へ駆け寄る。

だって、彼女の隣にいる潮さんと手が触れでもしたら大変だ。

12: 2015/06/16(火) 22:46:21.91 ID:nh3uhJbUo
曙「な、なんでアンタが寄ってくるのよ!?」

提督「いいからそのステッキを――」


曙「ち、近い、クソ提督近い!」

曙「あっちいけっ…って、えぇ!?」


提督「曙さん、危ないっ」


曙さんが体勢を崩しそうになったのを見て、思わず手を伸ばした。

伸ばして、彼女の腕を掴んでしまった。

13: 2015/06/16(火) 22:50:29.20 ID:nh3uhJbUo
提督「あっ」

夕張「あっ」


女の子と手と手が触れ合ったのに、今この瞬間だけは何の感慨もない。

曙さんと僕が手を繋いでしまった…その意味が分かる二人だけが声をあげる。



曙「ちょ、放しなさいよこのクソ提督!」

潮「曙ちゃん、提督にそんな事言っちゃ駄目…です」

提督「うん、放せてたら放してるんだけど…」


もう僕の手は曙さんの左手をガッチリと掴んでしまっていた。

14: 2015/06/16(火) 22:51:29.90 ID:nh3uhJbUo
潮「手を放したくないってことですかぁ!?」

漣「ラブコメキタコレ!」

曙「なっ…ななな、なな!?」


朧「面倒くさいことになった?」

提督「曙さん、落ち着いて話を聞いて欲しい」


曙「いいから手、放しなさいよぉ~~~~!」


まだ状況を分かっていない曙さんの悲鳴が、執務室にこだました。

15: 2015/06/16(火) 22:53:10.15 ID:nh3uhJbUo
今日は導入だけ、曙好きの方よろしくお願いします。

25: 2015/06/17(水) 22:11:17.44 ID:OJOXsenLo
曙「…で、その機械のせいで私たちの手が放れないって?」

提督「そうなんだよ」


曙「何てことしてくれるのよ、このクソ提督!」

提督「僕のせいじゃないんだけどっ」


提督「夕張さん、解除する方法はないの?」

夕張「無いですっ」


今日一番元気よく、夕張さんが返事する。

26: 2015/06/17(水) 22:11:53.36 ID:OJOXsenLo
朧「そこまでキッパリ言わなくても…」

曙「張本人とは思えない開き直りっぷりね」


漣「まあでも、ご主人サマは女の子と無料で手をつなげる訳ですし」

提督「言い方酷くない!?どういう意味!?」


漣さんの斜め上な考え方はいつもの事だけれど。

それにしても僕って普段どういう目で見られているんだろうか?

今度真面目な潮さんあたりに聞いてみようかなあ…。

27: 2015/06/17(水) 22:13:08.62 ID:OJOXsenLo
曙「やっぱりやらしい目的じゃないの、放しなさいよっ」

提督「だから違うって…」

曙「な、なによ。私なんかが目的じゃ無かったってこと!?」



どうしてそういう考えになるのかなあ。

手をつなぎながら罵倒されるという得がたい体験をしながら、僕はため息をついた。

でもこれ、いつまで続くんだろう。まさか一生このままって訳でもないだろうし。

28: 2015/06/17(水) 22:14:06.49 ID:OJOXsenLo
夕張「まあ一日たったら効果も切れると思うので、それまでガマンして下さい」

提督「ふーん。なんだ、一日か」

曙「なんだ、一日でとけるのね。まあそれなら…」



うんうん、たった一日なら思ったより…



提督・曙「って、ええええええええ!?」


今度は曙さんだけじゃなくって僕まで一緒になって。

夕張さんに向かって驚きの声をあげるのだった。

29: 2015/06/17(水) 22:21:05.25 ID:OJOXsenLo
一日、手の自由が効かない。

それ自体はまあ、何とかなる。今は緊急の案件がないし、代筆が出来ればいいから。

”提督として”の僕なら何とかなるのだけれど…。


問題は、そう。”男子として”の僕にあるんだ。

一日中女の子と、手を繋いだままずっと一緒に過ごす…。



曙「変態、変態っ。変態クソ提督~!」



しかも、混乱して顔を真っ赤にして…考えうる限りの罵倒を繰り返す彼女と一緒に。

あんまりな非常事態に僕は、曙さんって意外とボキャブラリーが少ないんだなって。

そんな間の抜けたことを思ってしまった。

30: 2015/06/17(水) 22:22:25.70 ID:OJOXsenLo
曙「ちょっとクソ提督、手!」

提督「え、何?」


曙「に、握る力が強いんだけどっ…」

提督「あ、ご、ごめん!」


曙「う、うん…」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ七躯のみんな(主に漣さん)と夕張さんが執務室を去ったあと。

僕は曙さんと二人で椅子を並べて、これまた二人で執務机に向かっていた。

31: 2015/06/17(水) 22:25:49.97 ID:OJOXsenLo
曙「ね、ねえ」

提督「ん、何かな、曙さん」


曙さんが手のひらに込める力を入れなおすたびに、微妙な力の変化が伝わってきて。

それがなんだか、とても恥ずかしいけれど…そんな事は顔に出さずに答えた。


曙「い、一日、アンタと手を繋がなくちゃいけないのは分かったわ」

提督「うん」

曙「だけど…」


言いづらそうに曙さんが口ごもる。

普段勝気なはずの彼女が、僕の目を見て話さないのはなんでだろう…?

32: 2015/06/17(水) 22:27:59.51 ID:OJOXsenLo
曙「だけど、どうして私が秘書艦までやらなくちゃいけないの!?」

提督「だって、放れられないんだから…君にやってもらうのが一番効率的だよ」


今日は夕張さんが秘書艦の予定だったんだけれど、急遽交代。

そりゃあ一日一緒にいるんだから、こうした方がいいと思うんだけれど。



曙「何で私がアンタを助けないといけないのよ」

提督「あ、そこ違ってる。艦娘の被害状況の報告だから…」



思わず見つけた間違いを指摘する僕。

他の艦娘と執務を執る時みたいしてしまった…怒るかな?

33: 2015/06/17(水) 22:29:04.02 ID:OJOXsenLo
曙「えっ、あ、そうね。こうした方が良さそう」

提督「うん、そうだね。そっちの方が伝わりやすい」


曙「ふん、私に任せとけば間違いないのよ」

曙「~♪」


あれれ?

さっきまでは文句を言ってたのにもう乗り気になってる。

というか、曙さんは秘書艦の仕事、今日が初めてのハズだけれど?

34: 2015/06/17(水) 22:29:57.73 ID:OJOXsenLo
提督「曙さん、初めてなのに中々筋がいいじゃないか!」


曙「ハン…これくらいで筋が良いとか。何言ってんの?」

曙「むしろ他の秘書艦の手際が悪いんじゃない?」


憎まれ口も彼女が言うと不思議と悪意を感じない。

苦笑とともに僕は賞賛をもう一つ言い添える。



提督「まるで練習してきたみたいだよ!凄い!」



曙さんの手際の良さを褒めるこの一言。

これの、いったいなにが悪かっただろうか?

ぶ、っと変な息を吹き出したあと、曙さんが僕に喰ってかかる。

35: 2015/06/17(水) 22:32:20.87 ID:OJOXsenLo
曙「ななな、何言ってるのよクソ提督!」

曙「私がアンタのために秘書艦の練習してたですって!?」


提督「僕のためにとかは言ってないけど…」


秘書艦に任命したことのない彼女がその練習をしてくるだなんて、本当に思っている訳がない。それに僕のためにだなんて、尚更だ。


曙「そ、そう。分かればいいのよ…」


怒っていたはずがそう言ったっきり急に黙っちゃうし、訳が分からない。

曙さんの発言の意図を探ろうとして彼女の方を覗き込むけれど…。

もう曙さんは再び書類と睨めっこしていて、僕の視線には気がつかなかった。

36: 2015/06/17(水) 22:35:17.06 ID:OJOXsenLo
ふと、先ほどの疑問が蘇ってくる。

元々素直じゃなさそうな曙さんだけど、なんで僕はこうも敵視されるのだろうか、と。


出会い頭にキスしてしまっただとか、着替えを覗いてしまっただとか。

曙さんとの間にはそういう事件もなかったハズだから、本当に思い至らない。



椅子に姿勢良く座った曙さんの視線は真っ直ぐに机の上の書類に固定されていて。

そんな彼女の姿を、僕は真剣な目で凝視してしまっていた。

37: 2015/06/17(水) 22:40:16.89 ID:OJOXsenLo
僕と比べて頭一つ背の低い彼女の顔が、すぐ近くにある。

切れ長の瞳は絶えず誰かを威嚇するように愛想のないかたちをしていて、逆にそれが可愛らしい。

色素が薄い髪の毛は執務室の大窓から入る陽光を受けて、綺麗な紫色に見えた。



その紫色がゴムひもでサイド・テールにまとめられていて、毛先が彼女の左肩―つまり僕が座っている側―へ垂れている。

思わず引っ張りたくなってしまう衝動をこらえるのに、僕は想像以上の労力を要した。

38: 2015/06/17(水) 22:43:58.90 ID:OJOXsenLo
提督「(うわ、わわっ)」


だけども僕が一番動揺したのは、もっと違うところにあった。

瞳でも髪でもない。アイデアが浮かんだのか、短く笑って唇に当てていた鉛筆を動かしだした女の子らしい仕草にでもない。



提督「(曙さん、襟元!襟元!)」



彼女の背が低い分、僕が彼女を見るときは必然、上から覗き込むようなかたちになる。

曙さんの艤装は、丁度女学生のセーラーの様な装いだ。

だから…紺色のカラーからのぞく曙さんの白くて細い首筋が余計に目立ってしまって、僕の目が釘付けになる。

39: 2015/06/17(水) 22:46:52.41 ID:OJOXsenLo
白い首筋にかかる彼女のおさげのせいで、隙間から中身は見えなかったけれど。

曙さんが頭を動かすたび、髪の毛の揺れて首筋の白がチラチラと見えてしまう。

ああ、これは良くない、良くないぞ、僕。さっさと目をそらさなきゃ…。



曙「何だか今日は暑いわね…」


提督「(ちょっと、何パタパタしてるの!?み、見え―)」



こちらが必氏になって煩悩と戦っているのに何を考えているんだろうか。

曙さんはというと、僕の邪な視線にはまだ気がつかず、襟元を仰ぎだしたのだ!

一仰ぎ、二仰ぎとやるたびに…いけないと思いつつも僕の視線は彼女の胸元へ。

40: 2015/06/17(水) 22:51:30.32 ID:OJOXsenLo
提督「(落ち着け僕。落ち着け。相手は人間なら歳下だぞ多分!)」



彼女に気がつかれる前に目を逸らさなきゃ…とは思っても中々理性が戻ってこなくて、僕は混乱した。

だって、襟元をパタパタとやるたびに、これまた白い鎖骨がチラチラと顔を出すのだ。正直カンベンして欲しい。



提督「(相手は歳下、相手は歳下…胸だってほら、そんなに…)」


提督「(あれ、よく見たら瑞鶴さんくらいはある…かも?)」


いやいや、お姉さんだし流石に瑞鶴さんの方が…。

そんな不埒極まる事を考えたからか、曙さんの手を握る僕の手がきゅっと強まった。

41: 2015/06/17(水) 22:53:48.66 ID:OJOXsenLo
曙「きゃっ、ちょっと痛いじゃないクソてい…クソ提督?」


提督「あっ」




目と目が合う瞬間―感づかれる。



女の子は男の邪な気持ちを見破るアンテナがあるって聞いたことがある。

どうやらそれは今回も一発で発揮された、ということらしい。

42: 2015/06/17(水) 22:58:57.60 ID:OJOXsenLo
曙「ななな、何見てんのよクソ提督っ」

曙「いいい、今私のこといやらしい目で見てたでしょ!?」

曙「それで、いったいどこ見てたのか言いなさいよ、クソ提督っ!」


提督「見てない!見てないよ、決して!」



ああ違う、しらばっくれる時は”何を?”って聞き返すんだった!



曙「嘘、だって目がやらしいじゃない!」


ほら、疑いが晴れなかった。

でも曙さんは追求が甘いなと僕は思う。

だって、どうやらどこを見ていたかは気づいてないらしいことが今の台詞で分かったから。

43: 2015/06/17(水) 23:00:34.28 ID:OJOXsenLo
これならまだ誤魔化しようがあるぞ!

せめて首筋や胸元を見ていたことは隠さなきゃいけないと焦って…。

だから僕は、言わなくても良い事まで言ってしまった。


提督「あの、確かに見てたけどいやらしい意味でじゃないよ?」


嘘ですごめんなさい、いやらしい意味でした!




曙「じゃあなんで見てたのよ」

提督「その…髪、綺麗だなって思って」

曙「ば、バッカじゃないの、クソ提督、クソ提督、クソ提督っー!」


顔を真っ赤にさせた曙さんは、それっきりそっぽを向いて喋らなくなった。

44: 2015/06/17(水) 23:01:39.28 ID:OJOXsenLo
提督「ご、ごめん」


曙「フン」



曙さんに敵視される理由が分からない、だって?

僕は数分前の自分に向かって心の中で話しかける。



多分それ、僕が原因だぞって。


45: 2015/06/17(水) 23:02:20.31 ID:OJOXsenLo
提督「あ、曙さん?」


曙「うるさい、クソ提督!」



僕と決して視線を合わそうとしない曙さんと、再び会話が出来るようになったのは…。


それからゆうに15分は経った後でした…。

52: 2015/06/18(木) 21:50:35.57 ID:DIoS9XbXo
提督さんは「瑞鶴さえ来れば他はいらない!」って言って空母レシピ回してたずい
でも瑞鶴が来てからも空母レシピ回して翔鶴ねえが来た時は小躍りしてた投下するずい

53: 2015/06/18(木) 21:51:38.67 ID:DIoS9XbXo
利き手が塞がったクソ提督のために、机に向かった私はペンを走らせる。

秘書艦なんて別にやりたくないけど、私がやらなきゃクソ提督が困るんだから仕方ないわ。

せいぜい私に感謝することねって言ったら、純粋な笑顔で「ありがとう」って返された。



提督「あ、そこ違ってる。艦娘の被害状況の報告だから…」



あ、そっか。私の書き方だとイマイチ状況が分かりにくいわね。

やっぱりこいつ、教え方だけはホントに上手いんだから、腹が立つ。

54: 2015/06/18(木) 21:52:49.04 ID:DIoS9XbXo
曙「えっ、あ、そうね。こうした方が良さそう」

提督「うん、そうだね。そっちの方が伝わりやすい」


曙「これはいつも出してるの?」

提督「書くのは毎日かな。1週間分まとめて報告だね」

曙「ふうん、大変なのね」


提督「ちゃんと鎮守府を見てれば、そんな事ないさ」

曙「…」


でもそのおかげで私は何時ぶりか分からないくらい、コイツと自然に話すことが出来た。

別にそんなの全然嬉しくないけどっ。まあでも、嫌なわけじゃないけどね。


これは…そう、いままでやったことのない秘書艦の仕事が出来て気分がいいだけ。

…ほんと、それだけよ。

55: 2015/06/18(木) 21:53:36.06 ID:DIoS9XbXo
曙「ふん、私に任せとけば間違いないのよ」

曙「~♪」


私の意外な手際の良さクソ提督が驚くのを見ているのが心地いい。


提督「曙さん、初めてなのに中々筋がいいじゃないか!」


でも、ちょっと褒められすぎて憎まれ口を叩いてしまった。

クソ提督が顔をしかめなかったことにちょっとだけホっとしたけど…。



次の瞬間、私の平静は破られることになる。

56: 2015/06/18(木) 21:54:39.16 ID:DIoS9XbXo
提督「まるで練習してきたみたいだよ!凄い!」

曙「…!?ゲホっ、ケホッ!」

提督「うわ、どうしたの、曙さん!?」



秘書艦組の赤城や加賀たちの話に聞き耳を立てたり。

図書室で自由開放されている鎮守府の資料を読んでみたり。



そうして密かな”予習”をしていた私の行動が見透かされたようで、びっくりした。

ま、まさか、ホントに見てた訳じゃないわよね!?

57: 2015/06/18(木) 21:55:42.90 ID:DIoS9XbXo
…べ、別にクソ提督の秘書艦になりたくて勉強していた訳じゃないからっ。

この鎮守府の艦娘として知ってて当然の事を知ろうとした、それだけよ、ほんとに。


だから、そう。的外れなクソ提督の意見は否定しておかないといけない。

だって…か、勘違いされたら困るんだからっ!



曙「ななな、何言ってるのよクソ提督!」

曙「私がアンタのために秘書艦の練習してたですって!?」

提督「僕のためにとかは言ってないけど…」

58: 2015/06/18(木) 21:56:17.19 ID:DIoS9XbXo
慌てて否定しようと思ったら、いつもみたいなそっけない返事をしてしまった。

そのせいでクソ提督も口ごもってしまって、さっきみたいな普通の会話がなくなる。



ああ、またやっちゃった。



そう思ったけれど、既に叩いてしまった憎まれ口は取り消せなくて。

だけど、どうやって謝ったらいいかも、どうやったらコイツが笑顔になるかも分からなくって。

59: 2015/06/18(木) 21:59:17.38 ID:DIoS9XbXo
だから私は、私の肩ごしから書類を眺めるクソ提督の方を振り返りもせずに。

秘書艦の仕事に集中するフリをして、ただただ気まずい時間が過ぎ去るのを待つ。



一言、謝っちゃえばそれで終わることなのに。

他の艦娘なら簡単に出来ちゃうことが私には出来なくって。



私ったらほんと、ばっかみたい。

胸の内で、自分に向けてそっと呟いた。

66: 2015/06/20(土) 08:23:56.53 ID:ugY1kGWUo
黙々と書類にペンを走らせていると、ふとある事を思い出してしまった。

そういえば私、クソ提督とずっと手をつないでいるんだわ!!


一瞬だけドキっと胸が高鳴って、手をつなぐ左手に力がこもる。

だめ、これはとっても、だめ。



曙「何だか今日は暑いわね…」


身体が暑いのは、部屋が暑いせい。

そうに決まってるって誰かに言い訳して、パタパタと襟を仰ぐ。

67: 2015/06/20(土) 08:24:36.64 ID:ugY1kGWUo
あれ、でも、そういえば。

私が喋らないのは良いとしても、後ろで見ているハズのクソ提督まで黙ったままというのはどういうことなんだろう?



曙「きゃっ、ちょっと痛いじゃないクソてい…クソ提督?」



急に、今度は私の手がクソ提督の手にきゅっと掴まれて。

思わず声をあげて、にらめつけてやろうと振り返ったら。



目と目が合う瞬間―。

今までとは比べ物にならないほどのドキドキが、私を襲った。

68: 2015/06/20(土) 08:25:12.16 ID:ugY1kGWUo
私よりも少し、年上の雰囲気を持っているのに。

どこか幼くて、女の子と見間違える様な中性的な顔立ちに華奢な身体。

碧い海を映した様な綺麗な瞳に吸い込まれそうになって、私はしばし言葉を失う。



それ以上見つめていられるのが怖くなる。

よく分からないけれど、だってそれは。


…それはとっても、キケンなことだって思ったから。

69: 2015/06/20(土) 08:25:46.35 ID:ugY1kGWUo
曙「ななな、なんで私の事見てるのよ」

提督「いや、あの…」


いつもは屈託のない優しげな微笑みを浮かべている彼の頬は、何故か薄く紅潮していて。

それでもずっと視線は私に釘付けだったようで、今は気まずげに視線をそらしている。



曙「いいい、今私のこといやらしい目で見てたでしょ!?」

曙「変態クソ提督、変態変態―っ!」


だから、自分がコイツに何を言ったのか、正直覚えていないけれど。

70: 2015/06/20(土) 08:26:17.67 ID:ugY1kGWUo
提督「その…髪、綺麗だなって思って」

曙「ば、バッカじゃないの、クソ提督、クソ提督、クソ提督っー!」



その一言が私の胸を撃ち抜いて。



結局、胸のドキドキはさっきよりも一層激しくなった。

全てが収まるまで、たぶん15分くらいはずっと、何も話せなくなるくらいに。

76: 2015/06/21(日) 09:15:01.66 ID:RiA2lduNo
提督「あ、ここはちょっと資料が欲しいな」

曙「はあ、何のよ?」


報告書の記入にかこつけて、何とか曙さんと話せる様になった頃。

時刻は午後2時となっていた。3時の演習が始まるまでには今の仕事を終えなければならない。



提督「あそこに以前からの出撃データがあるんだ」


そう言って僕は執務室の端にある本棚を指差す。

床から天井までズラリと棚が並んで、これまた中身がキッチリ揃っている本棚を。

77: 2015/06/21(日) 09:15:45.69 ID:RiA2lduNo
曙「あんなに…まさか置いてあるだけじゃないでしょうね?」

曙「本当に頭に入ってるの?」

提督「うん、まあ一通りは」

曙「…」



覚えているのは大事なところだけだけどね。

あんなの全部頭に入っているのは天才だけだよ。

なんて言ったら怪訝な顔で見られた。何か変なこと言ったかな?


まあいいや、それで、その…。何と言ったらいいのか。

78: 2015/06/21(日) 09:16:35.24 ID:RiA2lduNo
曙「?」

曙「何よ、取ってきたらいいじゃない…って、ああそっか」


手が繋がっている状態だから一緒に行動しなきゃいけない。

それもあるんだけど、僕の気が進まない理由は他にあって…ああでも、報告書を半端に書く訳にもいかないし。



本棚の前には椅子が一つ置いてある。

それは腰掛けて座るためなんかじゃなくって、その…。

79: 2015/06/21(日) 09:17:26.19 ID:RiA2lduNo
曙「で、欲しい資料ってのはどれ?」

提督「う、うん。あれ」


本棚の上から二つ目の段を指差す。

そこは15歳という僕の年齢じゃあ届かないほど高いところにあって…。



曙「はぁ?あんな高いトコ、クソ提督届く…」



曙さんの視線がそこで、本棚の前の椅子に固定されて。

80: 2015/06/21(日) 09:18:01.40 ID:RiA2lduNo
曙「…っぷ」

提督「な、何さ」

曙「べ、別に…ぷぷっ、さっさと取ったらいいじゃない?」


大人の男なら手を伸ばせば十分届くところにあるけれど。

あれが届かないのは、僕の年齢を考えれば普通な訳で。

その為に踏み台を用意して置いておくのも、これまた普通な訳で。



僕も全然、自分の背が低いことは気にしてないから。

いやほんと、身長なんてどーでもいい。提督業に関係ないもんね、うん。


…やめよう。

81: 2015/06/21(日) 09:18:44.26 ID:RiA2lduNo
提督「自分だって届かないくせに」

曙「私は女だから良いの」


提督「へえ、女の子だったんだ、初めて知ったよ」

曙「あ、あんですって~!?」


少しだけ仕返ししてやることにした。

…いや、全然悔しくなんてないけどね!

82: 2015/06/21(日) 09:21:48.65 ID:RiA2lduNo
革靴を脱いでいつもの通り椅子に立とうとすると、これが今日ばかりは上手くいかない。

利き手は曙さんと繋いだままな訳で、欲しい資料は椅子にのった状態の僕が背伸びしなければ届かない場所にある訳で。



曙「ねえ、まだなのクソ提督。手、痛いんだけどっ」

提督「だって、中々届かなくって」

提督「ちょっと曙さんも椅子に乗ってくれない?」



だから僕はそんな恐ろしいことを口にしてしまった。

83: 2015/06/21(日) 09:22:37.42 ID:RiA2lduNo
僕の提案に、曙さんもさっさと用を済ませるべく賛同して靴を脱ぐ。

そうして勢いをつけて椅子の上へ。よし、これで資料も取りやすく…って、


提督「えっ?」

曙「あ」



一つの椅子に二人が立つ。

よくよく考えてみれば…そんな事をすれば、二人の距離はとてつもなく縮まるんだ。

84: 2015/06/21(日) 09:29:52.09 ID:RiA2lduNo
眼下に二つの星がキラキラと輝いている。

それはよく見れば曙さんの潤んだ瞳だった。

曙さんは頬を桃色に染めて、僕を見つめながら呟いた。


曙「…は、はやく本、取ってよ」

提督「う、うん」


きっと僕も彼女と同じ顔をしているんだろうなと思いながら、恥ずかしさをごまかすためにもさっさと用を済ませることにする。


提督「あ、あれ…?」


いつもなら背伸びすれば簡単に届くそれも、手を繋いだ状態じゃあ中々届かない。

はやくこの恥ずかしい状況から脱出したい…焦った僕は動きやすい様にさらに半歩、曙さんとの距離を詰めた。

それがいけなかった。

85: 2015/06/21(日) 09:30:32.19 ID:RiA2lduNo
曙「ちょ、近いクソ提督近いっ」

提督「しょうがないだろ、ちょっとガマンしてよ」


そうして背伸びするときに…上半身と上半身が触れ合うんだないかっていうくらい曙さんに近づいた。

まるで抱き合う直前の恋人みたいに。

ビクリと曙さんの身体が仰け反るのが分かる。


曙「は、放れなさいよ、バカっ」

提督「あ、いきなり後ろに動いたら…」


グラリと、椅子が傾く。

僕との接近を嫌がった曙さんが急に椅子から降りようとしたから、二人の体勢が崩れたんだ!

86: 2015/06/21(日) 09:31:23.34 ID:RiA2lduNo
曙「きゃっ、うそ!?」

提督「曙さん危ない!」


当然、先に降りようとした曙さんが下敷きになってしまう…それを防ぐために。

空いていた左手を彼女の腰にまわして、僕の方へぐっと引き寄せる。

華奢な身体だから僕の力でも何とかそれが出来た。

そして、抱き寄せた曙さんと入れ替わるべく身をよじる―。



ドン、と、予想していた衝撃が僕の背中に走った。

87: 2015/06/21(日) 09:31:59.78 ID:RiA2lduNo
提督「いってててて、曙さん大丈夫?」

曙「え、ええ。クソ提督も―」



目と目が合う―今度は、これ以上ないくらいの至近距離で。

抱き寄せた彼女の顔は、当然僕の真上にあるわけで。



潤んだままの瞳も、さっきよりもうっすらと上気した頬も。

呆然と開けられたままの桜色の唇も、全てが僕の目の前にあった。

88: 2015/06/21(日) 09:32:34.38 ID:RiA2lduNo
提督「…」

曙「…」


固まったまま、執務室は沈黙に包まれる。

お互いの身体を密着させて見つめ合う僕たちは、まるで世界が止まってしまったかのように硬直した。



繋いだ手と、スカートから伸びる曙さんの脚が僅かに動いたのが分かる。



一言、どいてよと言えばそれで済むはずなのに。

何故だか僕は、その一言が言い出せずにいたんだ。

89: 2015/06/21(日) 09:33:46.63 ID:RiA2lduNo
曙「あ、あのっ」



曙さんの吐息が僕の頬にかかる。それだけで心臓が一際大きく跳ねるのが分かった。

一度意識してしまうともう駄目だ。彼女の吐息、僕の軍服と艤装が擦れあう音と柔らかい身体の感触…。



このままではいけないのは分かってはいても、自分の意思ではどうにもならない。



90: 2015/06/21(日) 09:34:33.06 ID:RiA2lduNo
曙「このまま、誰かが来たらこまるから…」


僕と抱き合ったままなのが嫌、という言い方ではない。

いっぱいいっぱいだった僕は曙さんの微妙な発言のニュアンスに気がつかなくて。



提督「うん、そうだね。誰かに見られたら困る…」


オウム返しに同じ事を呟いて、二人して立ち上がろうとしたその時。

91: 2015/06/21(日) 09:35:14.46 ID:RiA2lduNo
ガチャリと執務室のドアが開いた。



夕張「提督、おはようございま―――」

夕張「―――した」


提督「ちょと待って、ちょっと待って夕張さーーーーーん!!!」



いつもの入室の挨拶をしながら最速で出て行く夕張さんを見て。

僕は悲鳴を上げながら、彼女を引き止めるべく立ち上がるのだった。

99: 2015/06/23(火) 21:40:57.28 ID:1ndLdKWoo
夕張「待てってなんですか、私に何を見せつけるつもりですか!?」

提督「何も見せつけないよ!?」

提督「違うんだ夕張さん、あれはそういう事じゃなくって」



顔を真っ赤にして立ち去ろうとする夕張さんを慌てて引き止めた後。

誤解して再び突っ走る夕張さんを、僕は何とか説得しようと試みる。



…というか前から思ってたけれどこの人、間が悪すぎじゃないだろーか?

100: 2015/06/23(火) 21:41:34.83 ID:1ndLdKWoo
提督「曙さんもほら、誤解を解くために一緒に」

曙「見られた見られた見られた」

曙「抱き合ってるとこ、見られた…」

提督「ピンポイントで誤解されそうなコト言うのやめてもらえるかな!?」



でもまあ、きちんと正直に話せば誤解は解けそうだ。

あの場面を見られたのが常識的な夕張さんで良かったよ、ホントに。

101: 2015/06/23(火) 21:44:32.29 ID:1ndLdKWoo
提督「ほんっと、見られたのが夕張さんだけで良かった」

夕張「あのう、あはは…」

夕張「そのですね、提督」


曙「そうね、夕張なら言いふらしたりしないだろうし」

曙「ま、まあ言いふらされたとしても、私はどうってことないけどっ!」



そこまでハッキリ存在を否定されると若干傷つくんですけど…。

ほんと、なんで僕は曙さんにこうも距離を空けられるのだろうか?

103: 2015/06/23(火) 21:45:20.50 ID:1ndLdKWoo
提督「僕としては言いふらされたりすると困るなあ」

曙「な、何よ。私とじゃ嫌だっていうつもりなの!?」


提督「ち、違うよ。主にセクハラ的な意味で…」

曙「フンっ」


夕張「あのう、それがですね提督」



ん?

そういえばさっきから夕張さんが何か言いたそうにしているけど…?

104: 2015/06/23(火) 21:47:51.84 ID:1ndLdKWoo
提督「どうしたの、夕張さん」

夕張「さっきの現場を見たのがですね…」


提督「うん、見られたのが夕張さんだけでホントに…」

青葉「ども」


提督「…」

曙「」

105: 2015/06/23(火) 21:48:34.99 ID:1ndLdKWoo
夕張「じ、実は一緒に来てたりして~。あは、あはは…」


提督「ちなみに、どこから?」

青葉「もち、最初からです!」



ああ…。

夕張さんって、ホントに…。

106: 2015/06/23(火) 21:56:41.07 ID:1ndLdKWoo
続き書けたら来ますがたぶん今日はここまでですかね
何も考えずに書くの楽しい

>>102
夕張⇒早とちりのドジがたまに傷(可愛い)
明石⇒常識人に見えて趣味面で暴走有り(可愛い)
青葉⇒お前ちょっと黙ってろ(可愛い)

112: 2015/06/24(水) 23:24:05.20 ID:sUGHYolpo
一括りにされたスミレ色の髪の毛。

空を映したような透き通った水色の瞳は目の前の出来事を少しも見逃さないようにとめいっぱい見開かれている。

セーラーの可愛らしさと短パンの活動的なイメージのそれらを両立させる彼女の有り様を一言で言い表すとしたら…。



好奇心。



青葉「司令官司令官、どうしちゃったんですかぁ!?」

青葉「まさか曙さんとくっつくとはこの青葉、予想していませんでした!」

曙「く、くっつ!?」


ああもう。青葉さんが来ると絶対にこうなるんだ。

これだけは曙さんのためにも、絶対に否定してあげないといけない。

113: 2015/06/24(水) 23:24:58.77 ID:sUGHYolpo
提督「ち、違うよ。そうじゃないから!」

提督「第一、僕が曙さんとどうこうなるなんて」

提督「そんな訳ないじゃないか」


曙「…」


そんな事言ったら曙さんに迷惑をかけてしまう。

ただでさえ僕と手を繋ぐことになって不機嫌になってるんだから…。

って、ちらりと視線を横にやると曙さんがますます不機嫌な顔をしているんですけど!?

114: 2015/06/24(水) 23:25:34.86 ID:sUGHYolpo
曙「フン」

曙「やっぱり私なんかと手、繋ぎたくなかったんじゃない」


なんでそういう風にとらえるかなあ?

誤解されないためにも、ちゃんと否定してあげただけなのに…。



提督「とりあえず青葉さん、何があったか説明するとね」


このままではどんな事実(?)を報道されるか分からないので、僕は事の顛末を最初からっ説明することにした。

115: 2015/06/24(水) 23:26:38.11 ID:sUGHYolpo
青葉「ほうほう、つまり手を繋がなくちゃいけなくなったのも」

青葉「曙ちゃんが司令官を押し倒していたのも、まったくの事故という訳ですね!」

曙「お、おおおおし、おし…」


曙さんここで壊れないで欲しい、話がややこしくなるから。


提督「そうなんだよ、信じてくれてたすかっ…」

曙「そそそ、そうよ。だからあれはまったくの事故…」


青葉「それでそれで、本当のところはどうなんですか!」


提督「」

曙「」

夕張「あはは~」

116: 2015/06/24(水) 23:27:19.14 ID:sUGHYolpo
ほら、やっぱりこうなった!

青葉さんが絡んでややこしくならなかった事がないんだから!


青葉「司令官司令官、ホントのトコロと教えて下さいよ~」

青葉「青葉、ゼッタイに秘密にしますから!」


じゃあその手に持った鉛筆とメモ用紙は何なんですかね!?




青葉「ちなみにちなみに、青葉の予想はですね!」


聞いても無いのに自論を語りだす青葉さん。

あ、これはアレだね。100%当たらないやつだね。

117: 2015/06/24(水) 23:28:27.03 ID:sUGHYolpo
青葉「ある日をさかいに司令官を意識しだした曙ちゃん。でも司令官は秘書艦の空母艦娘とイチャイチャしてばかり」


青葉「ホントはもっと仲良くしたい、でも気が付けばいつも自分は憎まれ口を叩いてばかり…」


青葉「でもでも、今日は違いまいます。司令官と手を繋いで放れられない、しかも瑞鶴たち秘書艦組がこぞって演習で出かけている!」


青葉「これはチャンス、と思った曙ちゃんは溢れ出る恋心を抑えきれず、とうとう司令官を押し倒してしまうのでした…」

118: 2015/06/24(水) 23:28:54.46 ID:sUGHYolpo
提督「な、長い…」

青葉「どうです!?」


いや、どうと言われましても…。



提督「だから全く当たってないってばっ」


思ったとおり100%当たらないやつだったよ。

…なんて思っていたら夕張さんがまさかの一言。

119: 2015/06/24(水) 23:30:43.59 ID:sUGHYolpo
夕張「う~ん、ちょっとは当たってるかも?」

提督「へ?」

曙「な、ちょ…ゆ、夕張あんたぶっ飛ばすわよ!?」


当たってるって言っても…どういうことだろう?


提督「ああ、瑞鶴さんたちが演習でいないっていうのは、そうだね」


ついでに言うと明日まで帰ってこない。

…助かったなんて思ってないぞ、僕は。

120: 2015/06/24(水) 23:31:30.45 ID:sUGHYolpo
夕張「いや~、それもそうなんですけれど…そうじゃなく」

夕張「その発言の前の」


曙「わーーー!何言ってんのよ、そんな訳ないでしょ!」


提督「前?」

曙「クソ提督も考えんな!エOチ、変態!」


だからなんで僕が罵られるのさ!?

121: 2015/06/24(水) 23:32:48.49 ID:sUGHYolpo
青葉「うー、違いますか。青葉、イイ線行ってたと思うんですけれども」

提督「いやもう全く違うから。曙さんが僕を…なんてありえないから」


だってただでさえこんなに嫌われてるっていうのに。


提督「曙さんも嫌な思いをさせてごめん。繋ぎたくもない手を繋がせてしまって」

曙「は、はぁ?そ、それを言うなら…お互い様でしょ」

曙「クソ提督も私なんかと手、繋ぎたくないんだから」

122: 2015/06/24(水) 23:34:58.23 ID:sUGHYolpo
うーん?


なんでだろう、僕が曙さんを避けてると思い込まれているのは。

むしろ曙さんの方が僕を避けていると思うんだけどなあ?



まあいいや、これもいい機会だと思って少し攻めてみようかな。

せっかく同じ鎮守府にいるんだから、もっと仲良くしたいしね。


129: 2015/06/25(木) 21:58:20.04 ID:LGdqNF3ho
提督「僕は曙さんと手を繋いで嫌、なんてことはないよ」


思ったことを正直に、そのまま言葉にしてみせる。

僕が曙さんを避ける要素が無いんだと示すために。


曙「にゃ、にゃにゃ!?」


青葉「ほほう?」

夕張「青葉今イイトコロだから黙って、シッ」

青葉「夕張の方が青葉よりミーハーじゃないですかぁ」


曙さんの変な鳴き声と見物人のヒソヒソ声を無視して、とりあえず話を続ける。

130: 2015/06/25(木) 21:59:07.46 ID:LGdqNF3ho
提督「その、狙った訳じゃあないけどさ」

提督「女の子と手を繋いでいるんだから、けっこうドキドキしてるんだ」

提督「それにその相手が曙さんなら、緊張しこそすれ嫌がる訳ないじゃないか」



だからその、もうちょっと仲良くしてくれると嬉しいな。

そんな事を言うと、曙さんは何も言わず黙って頷いてくれた。



…頷いたまんま顔を上げないで何も喋らないのは不安だったけれど。

少しは僕の気持ちが伝わったら嬉しいと思った。

131: 2015/06/25(木) 22:02:09.01 ID:LGdqNF3ho
青葉「おお~。やっぱり司令官、言う時は言いますねえ!」

夕張「そうかな、無意識に言う分タチが悪いんじゃない?」

青葉「ほほーう?」


夕張「な、何よ青葉ってば」

青葉「何で夕張が不機嫌になるのか、また今度キッチリ取材させてもらいます!」

夕張「もう、青葉のばかぁ!」



何故だろう、鎮守府屈指の人当たりの良さを誇るあの夕張さん。

その彼女の雲雀の様な可愛らしい声に、少しだけ棘が含まれているような?

132: 2015/06/25(木) 22:02:47.54 ID:LGdqNF3ho
提督「夕張さん、何で怒ってるの?」

提督「僕、何かした?」


夕張「別に知りません、っだ!」

提督「えぇ…」


いやほんと、なんでさ?

不機嫌が曙さんから夕張さんへ移ったら意味ないじゃないか…。

相変わらず下を向いて黙ったまんまの曙さんを横目に、僕はため息をついた。

140: 2015/06/30(火) 22:06:36.21 ID:4b5KgZCzo
青葉「でもでも、本当は何かあったんじゃないですかぁ?」


しかしながら、これで諦めないのが青葉さんの青葉さんたるゆえんだろう。

今まで発掘して来た数々のスクープはこのたゆまぬ(しつこい)取材の賜物なのだから。


曙「何もなかったっていってるでしょ、このバカ青葉!」

青葉「えぇ~、そうですかぁ?」


青葉「何かあったほうが面白…青葉の新聞のネタにな…」

青葉「とにかく何かあったに違いありません。これは青葉の冷静な分析の結果です!」


分析じゃなくってただの願望がダダ漏れなだけじゃないか…。

でもこっちだって本当に無実なんだからどうしようもない。

141: 2015/06/30(火) 22:07:23.25 ID:4b5KgZCzo
それに青葉さんがスクープだってはしゃぐ話題は大抵、一時間と経たずに号外が出る。

これから先駆逐艦の訓練や演習を見に行く予定があるのに、騒がれちゃ面倒だ。


提督「ん…?」


騒がれちゃ面倒?

本当に騒がれちゃ面倒なんだったら、後々のことを考えると。

もしかして…僕は青葉さんに協力しちゃった方が良いのかな?


提督「夕張さん夕張さん」

夕張「はい、なんですか?」

提督「何で青葉さんと一緒にここへ来たの?」

142: 2015/06/30(火) 22:09:27.95 ID:4b5KgZCzo
元々秘書艦の予定があった夕張さんが様子を見に来ることはおかしくないけど…。

青葉さんまでもが一緒に来るのはどういうことだろう、今日は出撃もないはずだし。


夕張「あの~、それが」

夕張「鎮守府のあちこちで七駆の艦娘たちが…」


提督「曙さんと僕の事を触れ回ったと?」」

曙「あああ、あいつら…た、ただじゃおかないわっ!」


それで事件の匂いを青葉さんが嗅ぎつけたのか。

143: 2015/06/30(火) 22:10:19.82 ID:4b5KgZCzo
もう本日何度目かってくらい顔を赤くする曙さん。

…気持ちは分かるけど、ちょっと怒り過ぎじゃないだろうか?


怒り心頭な曙さんの隣で…でも、と僕は考える。

今日の提督業務を円滑に進めるためにはどうしたら良いかを、だ。



どうせ曙さんと手を繋いでいるっていうこの話題は鎮守府に知れ渡った様子だし、そうでないとしても隠しきれるモノじゃない。

執務室を出た途端、寄ってたかって囲まれるのも困ったものだ。


うーん、それなら。

下手に隠すよりも、大げさなくらい騒いでもらった方が良いのかな?

144: 2015/06/30(火) 22:11:12.97 ID:4b5KgZCzo
提督「ねえ、青葉さん」

青葉「はいはい、青葉はここです!」


提督「僕と曙さん、そんなに仲良さそうに見える?」

曙「ぴゃ!?」


曙さんが変な悲鳴を上げるのを無視して、僕は青葉さんに聞いてみた。

145: 2015/06/30(火) 22:11:57.84 ID:4b5KgZCzo
青葉「それはもう!お似合いのカップルです!」

夕張「それはちょっと言い過ぎじゃないですかー、っだ」


提督「でもさ」

曙「え、ちょ、ちょっと」


曙さんの手を引いて少しだけ距離を近づける。

曙さんは完全に照れてしまったようで、絶対に僕と目を合わせようとしない。

146: 2015/06/30(火) 22:12:52.13 ID:4b5KgZCzo
提督「僕も曙さんもまだ子供だし…カップルとは違うんじゃない?」

夕張「そうです、そうですよ提督!」


青葉「うーん、そうでしょうか。そう言われると…?」

提督「うん、良くて仲のいい兄妹、かな?」


曙「な、なな…?」


ちょっと違った表現だと思うけど、それは今関係ない。

要は青葉さんが面白いと思って食いつくかどうかなんだから。

147: 2015/06/30(火) 22:13:32.24 ID:4b5KgZCzo
僕がそう言った瞬間、青葉さんの目がキラリと輝いて。

ダダダダダ、っとすごい勢いで詰め寄ってきた。


青葉「それ、アリです!」


いやいや、アリってなんなのさ!?

もう取材でも何でもないじゃないか、これ。

自分で蒔いた種だけれども、こうも都合よく実ると何だか力が抜ける。

148: 2015/06/30(火) 22:16:14.41 ID:4b5KgZCzo
青葉「仲の良い兄妹…」


青葉「来ました、来ましたよー!」


青葉「ホントはもっとお兄ちゃんと仲良くしたい曙ちゃんだけれども」


青葉「いつも素直になれなくて憎まれ口ばかり」


青葉「曙ちゃんはお兄ちゃんの事、大好きなのに…」


物凄い勢いで、青葉さんが手に持ったメモ帳を書き足していく。

149: 2015/06/30(火) 22:17:26.20 ID:4b5KgZCzo
青葉「優しいお兄ちゃん提督はいつもナマイキな曙を守ってくれます」


青葉「今日だって、転びそうになった自分を庇ってくれて」



あれ、これさっきの事件の真相だよね、それが事実だって認識してるよね青葉さん。



青葉「そう、そんな優しいお兄ちゃんが大好きな曙ちゃんはこう言うのです」


青葉「『お兄ちゃん、助けてくれてありがとう』って」



来ました、エンターテインメントですなんて叫びながら。

一人だけ上機嫌になった青葉さんはもう誰にも止められない。

150: 2015/06/30(火) 22:18:36.00 ID:4b5KgZCzo
…というかもう、事実無根のお話を作っているのは認めているからねこれ。

この人は記者よりも作家の方が向いているんじゃないだろうか?


曙「な、なんでこんなことになってんのよ…」


そんな一言を漏らしたが最後。

青葉さんの標的は僕ではなくもう一人の主演へと移る。


青葉「さあ、曙ちゃん!」

曙「な、何よ」


もうだめだ、曙さんってば怯えて声が震えてる。

151: 2015/06/30(火) 22:19:22.92 ID:4b5KgZCzo
青葉「だから、司令官に『助けてくれてありがとう、お兄ちゃん』って」

曙「言えるわけないでしょ!?」

夕張「妹艦娘、妹艦娘ですよ、提督!」


おまけに何で夕張さんまでノリノリなの!?

妹ってそんなにスゴイものなの、お兄ちゃん分からないよ!

152: 2015/06/30(火) 22:20:11.26 ID:4b5KgZCzo
そんな僕と曙さんの動揺なんてなんのその。

珍しく意地悪そうに目を細めて、青葉さんの押しはまだまだ続く。



青葉「ほほーう、じゃあ曙ちゃんは」

夕張「身を呈して自分を守ってくれた提督に何も感じてないと?」



何でそこで夕張さんが加わっているんだろうか。

この二人が妙に仲が良い理由がわかった気がする僕だった。

153: 2015/06/30(火) 22:21:15.44 ID:4b5KgZCzo
曙「それは…その。艦娘を守るのはクソ提督の仕事だし…」

提督「まあ、そうだね。曙さんに怪我がなくて良かったよ」

曙「えっ、あっ…」


夕張「(うわあ…)」

青葉「(イイです。凄くイイです!)」


何故だか他の二人からヘンな視線を感じるのはどうしてだろう…。

154: 2015/06/30(火) 22:24:16.12 ID:4b5KgZCzo
お兄ちゃんと言われることそれ自体は大したことありません。
本当の目的は抵抗がありつつもそう呼ぶ時に浮かべる羞恥の表情なのです。

続きは明日か明後日くらい、もしくは明々後日です。

157: 2015/07/01(水) 19:04:50.86 ID:WGJTjBFmo
青葉「さあ、曙ちゃん!」

青葉「これだけしてもらって、何も感謝してないと!?」

曙「そ、そんな事は…ない…けど」


夕張「じゃあ言葉にしちゃおう。じゃないと伝わらないよ?」

夕張「提督も曙に嫌われてるって勘違いしちゃうかも」

曙「!」


いや実際、嫌われるまで行かなくても避けられてはいたんだけど…。

夕張さんの言葉に何か思うところがあったのか、曙さんが顔を上げる。

158: 2015/07/01(水) 19:05:19.86 ID:WGJTjBFmo
さっきまで僕と決して合わせようとしなかった目を必氏に見開いて。

いつも反抗的に見えるつり目は今、恥ずかしいのか涙で潤んでいる。


曙「あ、あのね…クソ提督」

曙「助けてくれて、ありがとう…」

提督「う、うん」


素直なその言葉を、弄れた彼女が言ってくれることに。

僕は何とも言えない幸福感を味わっていた。

159: 2015/07/01(水) 19:06:03.03 ID:WGJTjBFmo
青葉「おぉ、良いネタになりそうです」

夕張「まだよ、まだお兄ちゃんって言ってない」


…何で青葉さんより夕張さんの方が張り切ってるんだろうね。


夕張「ほら、曙。提督のこと嫌いなの?ほら!」

曙「嫌いじゃない…けど」


そんな嬉しいことを言ってくれる曙さん。

あれ、嫌われてないのに僕、何で避けられて―?

160: 2015/07/01(水) 19:07:08.07 ID:WGJTjBFmo
曙「別に嫌いじゃないってだけで、特に意味はないけど」

曙「で、でも、助けてもらったんだからちゃんと言うわ」

曙「お、おに…」


そんなわけがないのに。

そうやって僕を必氏に見上げてくる彼女を見ると。

何だか曙さんが、本当に僕の妹のような…そんな錯覚が生まれてくる。



曙「お、お兄ちゃ――って、なんで私がそんな事言わなくちゃいけないのよ!?」


…気のせいだったかもしれないけど。

ああ、うん。やっぱりこれただの錯覚だ、錯覚。

161: 2015/07/01(水) 19:09:44.67 ID:WGJTjBFmo
青葉「ああ、残念です」

曙「考えたら、感謝するのにクソ提督をお、おに…」

曙「あんな呼び方する必要ないじゃない!」

夕張「バレたか」

提督「今頃気づいたんだ…」


曙「うっさい、クソ提督!」

曙「やっぱりアンタなんか嫌い、嫌いよ大っきらい!」

提督「えぇ、そんなあ」

162: 2015/07/01(水) 19:10:14.68 ID:WGJTjBFmo
結局、嫌われてるんだか嫌われてないんだか分からないまま。

もう完全に拗ねてしまった曙さんのご機嫌をどう取ろうかに終始した。

そうしてお昼の執務の時間は過ぎていって、演習の視察の時間となってしまうのだった。



曙さんが妹っていうのは、やっぱりちょっと違うかな。

でもお兄ちゃんって言われるのは案外、いいかもしれない。

そんな馬鹿なことを思ったのは、勿論口に出す訳が無かった。

171: 2015/07/06(月) 22:02:47.88 ID:2EpQLNO3o
提督「じゃあ、今日の事は適当に記事にしておいて良いよ」

曙「は?ちょっ、クソ提督何言って―」


青葉「了解です!きっと面白い記事にしてみせます!」

曙「ま、待ちなさいよ青葉っ」



記事にするな、なら分かるけれど、記事にしていいってのはどういうこと!?

勝手にそう言うと、青葉は夕張と一緒に部屋を出て行ってしまった。

これじゃあどんなメチャクチャな記事を書かれるか分かったモンじゃない!


た、例えばその…。

私がクソ提督の事をす、好きとか…手を繋げて喜んでるとか、そういうことよっ。

172: 2015/07/06(月) 22:03:31.14 ID:2EpQLNO3o
クソ提督が馬鹿なことを言ったせいで、私まで大迷惑。

ほんっと、信じられない。ありえないから。



曙「クソ提督!」

提督「曙さん、声が大きいよ」

曙「うるっさいわね、クソ提督クソ提督っ」



穏やかな表情で私を嗜めようとするのがまた、腹が立つ。

あんな馬鹿なことを青葉に言ったくせに!

173: 2015/07/06(月) 22:04:26.08 ID:2EpQLNO3o
曙「何で青葉に好きに書いて良いって言ったのよ!?」

提督「好きにとは言ってないよ。適当にって」

曙「同じことじゃない、このアンポンタン!」


クソ提督と手を繋いでいるだけでも恥ずかしいのに。

青葉の馬鹿にどんな浮ついた話を記事にされるか考えるだけでも氏にたくなる。



まさか、まさか…抱き合ってたことまで記事にしないわよね?

私の心の中はもう、不安で不安で何も考えられないのに…。

クソ提督はと言うと、もう平気な顔で書類をいじっている。

174: 2015/07/06(月) 22:05:34.48 ID:2EpQLNO3o
曙「クソ提督が何考えているのか分からないわ…」

提督「まあ、もうじき分かるよ」


答えをすぐに言わないのはコイツの悪い癖よね。

それ以上何も言えずに私が突っ立っていると。



提督「さ、そろそろ行こうか」


突然書類の整理をやめて、そんな事を言い出した。

175: 2015/07/06(月) 22:06:21.61 ID:2EpQLNO3o
曙「へ?ど、どこに?」

提督「どこって、決まってるじゃないか」

提督「演習の視察だよ」



ああ、来なくてもいいのにクソ提督がいつもやるやつね。

クソ提督が見ている時だけ無駄に張り切る艦娘がいるから、迷惑なんだけどっ。



鎮守府の中の演習場なら今頃、水雷戦隊の演習がって。


…あれ?

176: 2015/07/06(月) 22:06:59.42 ID:2EpQLNO3o
曙「ちょ、ちょっと、それって私も!?」

提督「手が繋がってるんだから当然じゃないか」



何を当たり前のことを、という顔をしたクソ提督。

ちょっと待って、ちょっと待って…それこそありえない。



だって、だってそれは。

177: 2015/07/06(月) 22:07:38.46 ID:2EpQLNO3o
提督「さ、もう時間だ。早く行こう」

曙「な、ちょ…へ?」

曙「ええええええええええ!?」



この状態の私たちを。

鎮守府のみんなに見られるってことなんだから!

182: 2015/07/07(火) 21:39:45.95 ID:xvryXRDao
提督「どうしたの、曙さん?」

曙「どうしたの、じゃないわよ!」


たぶん今頃は青葉の”号外”が鎮守府に行き渡ってるはずだから。

こと報道にかける青葉の情熱は馬鹿にできないのだ。青葉自身は馬鹿だけど。


曙「ああもう、みんなにどんな事言われるか…」

提督「それはもう、あんまり心配しなくていいと思うけど」

曙「はあ?また訳分からないこと言って…」

提督「あ、最初の演習の勝負がもうつくね」


頭の良いこいつだから、何も考えてないってことはないと思うけど。

自分のレベルを簡単に相手に要求するんだから、カンベンして欲しいわ、まったく。

183: 2015/07/07(火) 21:40:34.18 ID:xvryXRDao
そうやってブツクサ文句を言いながらも、私は演習場に視線をやる。


雷「雷に任せなさい!」

暁「ちょっと、私が最初に突撃するんだからー!」

電「け、けんかは駄目なのですー!」

響「…電、もう遅い」


第六駆逐隊のチビたちが、ガヤガヤとうるさく争っていた。

元気があるのは良いけれど…問題はチビたちが全員同じ班だということ。

つまり味方だということよね、まったく。これじゃあ…。

184: 2015/07/07(火) 21:41:25.65 ID:xvryXRDao
漣「おろろ~?六駆のお姉ちゃんは雷だったかな~?」

暁「なっ…レディに対する侮辱、許さないんだから!」


漣「ほいさ、隙アリ。頼んだよ!」

朧「みんな、よそ見しちゃ駄目だよ」

潮「ご、ごめんね?」


漣の軽口に反応してしまった暁を筆頭に、チビたちが次々と対戦相手である七駆の攻撃にやられていった。

ああもう、なによ、この無茶苦茶な演習は。

185: 2015/07/07(火) 21:42:05.07 ID:xvryXRDao
私の隣でクソ提督が苦笑しながら息をつくのが分かる。

そのため息はチビたちのやんちゃぶりになのか、漣のセコい勝ち方へになのか。


雷「あっ、司令官が来てるー!」

朧「曙もだね」

暁「ホントに手を繋いでるわ!」


しまった!

演習に気を取られていて、心の準備が出来てなかった。

どうしよう、どうしよう、どうしよう。私は焦ったままで。

結局、チビたちが駆け寄って来るまでに必要な言い訳を考えられずにいた。

186: 2015/07/07(火) 21:42:45.62 ID:xvryXRDao
雷「ねえねえ、どうしたの、しれーかん!」

響「本当に放れられないんだね」


あれ、でも。

チビたちは”手を繋いで放れない”って事態が珍しいらしくって。

私が恐れていたような冷やかしは全然されなかった。



…なんて思って油断していたわ。

ここに七駆の奴らがいることを忘れてた。

187: 2015/07/07(火) 21:43:21.27 ID:xvryXRDao
漣「ふふーん、それで二人はラブラブかにゃ~?」

朧「曙、おめでとう。お似合いだよ」

曙「なっ…ち、違うから。ありえないからそんなこと!」


提督「そこまで言われると傷つくなあ」

曙「クソ提督は黙ってて、喋るな!」


またさっきみたいに”恥ずかしいこと”を言われたら。

…もう私はこの鎮守府で生きていける自信がないから。

188: 2015/07/07(火) 21:44:20.68 ID:xvryXRDao
潮「さ、漣ちゃんも朧ちゃんも。あんまりからかっちゃ駄目です」


優等生の潮は二人を注意してみせるけど。

ちらちらと私とクソ提督が繋いだ手を意識してるのがまるわかりなのよ。



漣「潮は気になるもんねー?」

潮「あぅぅ、そんなんじゃありません…」


ほら、からかわれるに決まってるんだから黙ってればいいのに、クソ潮はまったく。

下手に私を助けようと思って余計なことするからそうなるのよ。

あれ、でも…気になるって何がかしら。

189: 2015/07/07(火) 21:45:52.40 ID:xvryXRDao
からかわれるのは面白くないけれど、こんな位ならいつも漣にやられてるし。

私が思ったほどには酷い噂はなかったみたいで、ちょっと安心した。


”号外”が出たことは間違いなさそうだけれども、そんなに無茶な内容じゃなかったのかもしれない。

なんだ、青葉も意外とまともなトコロあるじゃないなんて思いかけてところに。


暁「ね、ねえ曙。ホントなの?」

曙「は?何がよ」

電「あ、曙が司令官さんを押し倒しちゃったっていうお話が、なのです~!」


曙「」

提督「まあ、そうなるよね」

190: 2015/07/07(火) 21:46:40.27 ID:xvryXRDao
私はこの時ほど青葉の事を憎く思ったことはないかもしれない。

今度会ったらキッチリ締める事を、心の中で固く誓う。


…それにしても、本当に油断してたわ。

まさか暁や雷じゃなくて、電に追い詰められることになるなんて。



この娘、言う時は一番言う娘なのかもしれないわねだなんて。

動揺しているくせに私は、妙な事を気にかけてしまうのだった。

198: 2015/07/18(土) 21:47:00.77 ID:GYMUFc58o
そう言う嬉しい事を言ってくださると頑張らざるを得ません!
というわけで少し書いてきます

200: 2015/07/18(土) 22:16:35.90 ID:GYMUFc58o
曙「にゃ、にゃにを言って…」


どうしよう、どうしよう、どうしよう!!

青葉に配慮なんて求めた私がバカだったのよ。

あの馬鹿がせっかく拾ったネタを公表せずに腐らせておくだなんて、そんな訳がなかったんだわ!



響「司令官を押し倒して、それで、それで…」

曙「そ、それで何よ」


よせば良いのに聞いてしまう。

でも、あれは事故で…。

201: 2015/07/18(土) 22:17:56.47 ID:GYMUFc58o
雷「そのままちゅーしちゃったって!」

曙「ぶっ!?」


あの報道馬鹿、何物凄いウソまでぶち込んでくれたのよ!?


暁「そそそ、そんなのイケナイコトなんだから!レディのすることじゃないわ!」

電「曙はもう、オトナの女の人なのです!?」


だから何で電がトドメを差しに来るの!?

そ、そそそ、それに、オトナの女って。オトナの女っていったい何!?


第六駆逐たちと私の慌てようを見て楽しんでいる七駆のみんなが視界に入って、それが余計に私を慌てさせた。

早く、この誤解を早く解かなくっちゃと、そう思って。

ブンブンと勢いよく首を左右に振りながら、私はこう答えた。

202: 2015/07/18(土) 22:19:36.81 ID:GYMUFc58o
曙「こここ、こんなの相手に私がそ、そんな事する訳ないじゃない!?」


こんな奴、大っきらいなんだから。

そう言いかけて手を繋いだ先のクソ提督を振り返ると、少し困ったような顔をした彼とバッチリと目線が合う。

それだけでもう、私は何も言えなくなってしまった。



提督「そこまで否定されると、ちょっとガッカリだなあ」


はにかむ様な笑顔を浮かべたクソ提督のその反応に、場がおお、っとさらに盛り上がる。

な、何言ってるのよ。それじゃあまるで私とキ、キスしたがってるみたいじゃ…。

203: 2015/07/18(土) 22:20:48.27 ID:GYMUFc58o
潮「うぅ、曙ちゃん…」


見世物を楽しもうとしている他のみんなと違って、何故だか潮だけが泣きそうだ。

…何してんのよ、まったく。泣きたいのはこっちだっていうのに!


それにしても、この場をこれだけかき回した後で、クソ提督ったらどうやってみんなを落ち着かせるつもりだろう?

クソ提督はすぐには口を開かずに、みんなの期待が自分の身に集まった瞬間を見届けてから、ゆっくりと話しだした。

204: 2015/07/18(土) 22:23:20.32 ID:GYMUFc58o
提督「この様子だと、みんなに号外を配ってくれたみたいだね、僕がお願いした通りに」

漣「へ!?あの新聞はご主人様が配るように言ったんですか?」


その通りだよ、とクソ提督が頷く。意外そうにしているみんなの前で。

それもそうだ、艦娘との”そんな事”を記事にしていいなんて、この真面目な彼が言うはずがないって、みんな思っただろうから。

…でも、事実はそれと逆なんだけど。



提督「曙さんと今日一日手が離れないのは事実なんだし、みんなに説明しておこうかと思ってね」


夕張が作った兵装が原因なんだとか、執務に差し障りはないから安心だったとか。

そういった当たり障りのない説明が続いて、みんながキョトンとする。

205: 2015/07/18(土) 22:24:37.95 ID:GYMUFc58o
朧「あ、あの。提督。それで?」

提督「それで、って。これが全部だけど?」

曙「は!?」


びっくりして叫び声を上げそうになった途端に、クソ提督に脇腹を小突かれた。

黙っていろという事なのだろう。

まいったなあ、青葉さんはだなんて、ごく自然にため息をつきながら、提督。



提督「経緯をちゃんと説明してくれるなら、多少脚色しても良いよって言ったけど」


これじゃあ脚色ばっかりで、真実なんて”ひとつもない”じゃないか――。

本当に困ったように、スルリと…そんな言葉をみんなの耳に滑り込ませてしまった。

206: 2015/07/18(土) 22:27:27.51 ID:GYMUFc58o
そうやって語られた青葉事件の”真相”に、観客たちは…。


雷「なあんだ、つまんない!」

雷「手を繋いでるだけで、何も無かったんじゃない」

響「曙がそんな事するはずないと思ってたけど」

漣「つ、釣られた~!?」

朧「もう、青葉はいっつも大げさなんだから」


全然疑うことのない様子で、さっきまでの熱気も収まっていた。

期待と違ってあまりにもショボイ結末が用意されていて、毒が抜けたのかもしれない。


潮だけがまだ涙目だったけれど、良かったと小さく謎のつぶやきをして、その話は終わった。

いや、クソ提督が終わらせてしまったんだ。

214: 2015/07/19(日) 15:51:04.49 ID:4AhVfUj+o
提督「それにしても、何さ、あの演習は?」


みんなの興奮が収まったと見ると、クソ提督は別の話題をするりと滑り込ませていく。

これで青葉の件が再び槍玉に挙げられることはないだろう。



雷「だって暁が―」

暁「それはこっちの台詞なんだから!」

提督「雷も暁も、もっと連携を大切にしないと駄目だよ」


そうすれば七駆にだって勝てるのになあ、とチビたちの興味を巧みに煽っていくさまは、何だか学校の先生みたいだ。

…艦娘なんだから学校なんて行ったことないけれど。


そうやってチビたちの演習講座をして、再び私とクソ提督は執務室へと切り上げていく。

帰る頃にはもう、冷やかしや探りは全くなかった。


215: 2015/07/19(日) 15:51:51.75 ID:4AhVfUj+o
提督「ほらね、大丈夫だったでしょう?」

曙「クソ提督、だからアンタは青葉に好きに書かせたのね」


クソ提督は得意げに頷いて、今度は私に”授業”をはじめる。

慌てて否定しても、勘繰られるだけなんだから、と前置いて。



提督「譲っていいところだけ全部認めて、後は知らばっくれちゃえばいいのさ」



あとは信じさせたい情報を伝えるタイミングだねと、そんなとんでもないことを事も無げに言うクソ提督を見て、私は今更ながらに思った。

ああ、このひとが私たちの鎮守府を支えている提督なんだなって、そんな当たり前の事を。

216: 2015/07/19(日) 15:54:25.74 ID:4AhVfUj+o
きっと私の知らないところで、今みたいな色々な駆け引きをしているんだろう。

それは艦娘相手のささやかなものだったり、本部の人間を相手にしたものだったりあうるのかもしれない。

15歳で鎮守府の艦娘たちを指揮する少年が、ただのお人好しな訳がないのだ。



提督「勿論、みんなにはナイショだよ?」

提督「暁や雷にバレちゃったら、また大変になるから」


そんな凄いことを平気でやってのけるくせに、悪戯が成功した子供みたいな笑みを浮かべて、秘密を共有する楽しさを味わっている。

そうだ…これは、私と、クソ提督だけの秘密なんだ。

そう意識するとまた、トクンと心臓が跳ねてしまう。だって、仕方ないじゃない。


不意打ちみたいにカッコ良いとこ見せて微笑むなんて、そんなの卑怯だ。

217: 2015/07/19(日) 15:56:29.22 ID:4AhVfUj+o
提督「行こっか、曙さん」

曙「…うん」


クソ提督が私の手を引いて、執務室を目指して歩き出す。

彼の悪戯っぽい笑みを間近で見るっていう役得を味わったくせに、私は何故だかとても小さな事を気にして後に付いていった。


…なんで暁や雷たちは呼び捨てで、私のことは“曙さん”なのよ、なんて。

そんな小さくて、けれどどうでも良くない事を気にしながら。


私たちは鎮守府の廊下に、ふたり分の足音を響いていく。

224: 2015/07/23(木) 20:23:12.12 ID:8I7G7Squo
演習の後の執務も滞りなく終わって。

僕と曙さんは晩ご飯をすませるべく、食堂【間宮】を訪れていた。

いつもならこれで楽しい食事の時間、となるハズなんだけれど…今日だけはそうもいかないかも。



曙「…で、これどうすんのよ」

提督「あはは」


僕と曙さんの席にそれぞれ置かれたのは、【間宮】今日のイチオシメニュー、カレーライスだ。

みんな大好きカレー、当然僕も大好きだけれど…今日ばかりは困ってしまう。


だって…。

225: 2015/07/23(木) 20:24:20.32 ID:8I7G7Squo
曙「これ、どうやって食べるのよ!」


お互いに片手が―曙さんは左手、僕は右手―が塞がれている以上、まさに曙さんが言うとおりで。

いったいどうやって食べたらいいのやら、だ。

でもまあ、これが箸を使わずに食べられる唯一のメニューなんだから、他に選びようがないんだけれど…。



提督「こう、片手だけで食べる…とか?」

曙「それじゃ犬食いじゃない、ありえないから」

提督「そんなに食べ方気にする?」


即座に当たり前じゃない、という返事が来て僕の意見は却下。

行儀は悪いけど、この緊急事態だし仕方ないか、と思ったんだけれども。

226: 2015/07/23(木) 20:25:14.76 ID:8I7G7Squo
曙「アンタも私も白い服着てるんだから、そんな汚い真似できないじゃない」


ああ、確かに…軍服もセーラーも、カレーの汁で汚してしまったらとてもみっともないことになる。

どうやって食べよう、くらいしか気にしてなかった僕と違って、ちゃんと身だしなみにまで気が付く曙さんは…。




提督「やっぱり女の子だなあ」

曙「は、はぁ!?なな、何言ってるのよこのクソ提督!?」


思いっきりなじられた。

男の僕とは気にしているトコロが違うって言いたかっただけなんだけれども…。

227: 2015/07/23(木) 20:26:00.24 ID:8I7G7Squo
提督「ひょっとして、何か気に触った?」

曙「ううう、うるさい。さっさと食べるわよ!」


だからその食べ方に迷っているんだけれど…曙さんは一体、何をそんなに怒っているんだろうか?

目の前のご馳走と不機嫌な曙さんの顔を眺めながら、僕が女の子の機嫌の取り方について悩んでいると…。



漣「おお、ご主人様たち発見!」


演習組がスケジュールを終えたのか、食堂の端から元気な声が聞こえてきた。

237: 2015/07/26(日) 18:10:32.46 ID:kVW2HzOdo
朧「ご飯の食べ方が分からない、ですって?」


興味深そうにこちらを見てくる艦娘の姿がいくらかあるけれど、それは思いっきり無視。

食堂【間宮】の一角、隅の方のテーブルに腰掛けた僕たちは、こそこそと相談を続けた。


潮「あのう、仕方ないから片手だけで食べたら良いんじゃ…」

曙「潮、アンタまでそんな事言うの?みっともない」


う~ん、でも背に腹は変えられないというか。

ぶっちゃけもうお腹が減ったので早く食べてしまいたい、という気持ちもある。

238: 2015/07/26(日) 18:11:13.76 ID:kVW2HzOdo
提督「やっぱり仕方ないよ。曙さんより女子力高そうな潮さんでもそう言―」

曙「アン!?」

提督「―綺麗に食べる方法をみんなで見つけよか、早急に!」


うん、曙さんと潮さんの女子力は互角くらいかな?公平に見て!!

いやむしろ曙さんが勝っているまであるねこれは、うん。

僕が心の中でゴマを擦ることに専念していると…このメンバーの中で一番騒がしいハズなのに黙っていた人が口を開いた。

239: 2015/07/26(日) 18:11:59.75 ID:kVW2HzOdo
漣「ピコーン!」

漣「漣、思いつきました、ご主人さま!」

提督「何かな、漣さん」


何故最初の効果音まで口で言ったんだろう?

それにしても、この娘からは青葉さんや夕張さんと同じ匂いを感じる気がするんだけど…。

って、あんまり疑うのも良くないか、大丈夫だよね?

240: 2015/07/26(日) 18:12:43.39 ID:kVW2HzOdo
漣「ご主人さまと曙が食べさせあいっこすれば問題解決です!」

曙「はぁ!?」

提督「あー、大丈夫じゃない方だったかあ」

朧「うちの姉がすみません」


でも、大丈夫じゃないのは漣さんだけだったようで。

他のみんなはまともな反応を返してくれるあたりまだ希望が見えそうだ。

241: 2015/07/26(日) 18:17:16.52 ID:kVW2HzOdo
潮「あああ、曙ちゃんと提督が、食べさせあいっこ…二人の共同作業!?」

潮「ままま、まさかもう、二人は恋人!?も、もしかしてケッコンも!?」


勝手に目をぐるぐるさせてヒートアップしてるもう一人を見て、そんな安堵は吹き飛んだけれど…うん、まあまだどうってことないや。



提督「潮さんも大丈夫じゃないパターンか。なるほどね」

曙「アンタも異常事態に慣れすぎでしょクソ提督っ」


着任初日から爆撃された事がある身からすればまだ大したことないと言えるから、こんなものまだ平和なうちだ。

それにまあ、こんな恥ずかしいイベント…曙さんが首を縦に振る訳もないって思ったのだ。

246: 2015/07/27(月) 20:40:45.24 ID:u+t0EciLo
曙「…」


あ、あれ。曙さん?なんで否定しないの?

漣さんへの、ありえないから、といういつもの彼女の返しが行くかと思ったのだけれど。

何故か、曙さんは黙ったまま…一瞬だけ、僕の手を握る力をぎゅっと強めた。



提督「でもそれは…ちょっと恥ずかしいかな?」

漣「じゃあご主人さまは曙に汚い食べ方をさせて平気なんですね?」

提督「うっ・・・いや、それは」

247: 2015/07/27(月) 20:41:39.54 ID:u+t0EciLo
いやいや待て待て、漣さんの謎の勢いに押されちゃダメだ。

二人が手を繋いでいるせいで、僕は右手を、曙さんは左手を塞がれている。

そんな二人が食べさせあいっこだなんて、どう考えてもやりづらいハズ。



提督「なら両手が使える君たちに手伝ってもらった方が」

漣「いや私たちは正直関係ないですし。犬食いされても構いませんから」



何でそこだけ考え方ドライなの?加賀さんなの!?

248: 2015/07/27(月) 20:42:50.44 ID:u+t0EciLo
潮「あぅぅ…ホントは良くないけど、すっごく良いと思います」

朧「それしか方法がないなら…仕方ない…かも?」


残りの二人も曙さんをチラリとみて、そんな事を言い始めた。

何で急に漣さんに味方仕出したのか、僕からしたらもう訳がわからない。



曙「でもあの、それは…」


強く否定するかと思った曙さんはというと、曖昧な答えばかりだし。

僕と食べさせあいっこなんて、絶対に嫌がると思ったんだけれど。

249: 2015/07/27(月) 20:44:22.61 ID:u+t0EciLo
漣「あれれ~、曙たん、どうしたのかにゃあ?」


業を煮やした鎮守府のピンクの悪魔…じゃなくて、漣さんが曙さんへと擦り寄っていく。

こそっと、僕に聞こえないように曙さんへと耳打ちする漣さん。



漣「ご注文通りの展開にしてあげたのに、何かご不満?」

曙「ななな、な!?」


曙さんの戸惑う声だけが聞こえてきて、サマーガールかな、だなんてくだらないことを考える僕。

だって聞こえないんだもの、他にやることがない。僕や朧さん、潮さんをほったらかして二人のヒソヒソ話はしばらく続くようだ。

250: 2015/07/27(月) 20:45:16.13 ID:u+t0EciLo
曙「わ、私はこんな事頼んだりなんてっ」

漣「ほほーう、じゃあさっきから曙はホントにお行儀を気にしてたワケか、ん?」

曙「そ、それは…」



漣「あのね、相手はあの鈍いニブーーイご主人さまだよ?究極の甲斐性なしだよ?」

漣「曙が犬食いは嫌だなんて言っても、僕が食べさせてあげるとか言うハズないじゃん」

漣「ホラホラ、ここは私が無理やり押し切ったって事にして、覚悟決めちゃいなさい?」

251: 2015/07/27(月) 20:46:04.40 ID:u+t0EciLo
曙「で、でも…やっぱり恥ずかしいし」

漣「そじゃないと、私たち先に食べ終わったらアンタたち二人っきりにするよ?」

曙「わ、わかったわよ、もう!」

漣「ふふん、論破キタコレ!」


曙「漣、アンタ後で覚えてなさいよ」

漣「お礼は間宮さん特性パフェがいいであります!」

曙「誰がするか、このバカ、アホ!」

252: 2015/07/27(月) 20:47:59.19 ID:u+t0EciLo
ちょい中断、おっふろ、おっふろ、お~ふ~ろ~(イン何とかさん全盛期の名言)

253: 2015/07/27(月) 21:19:32.37 ID:u+t0EciLo
話が終わったのか、漣さんが自分の席へと戻る。スタコラサッサとか余計なことを言いながら。

その後は僕たちの不思議そうな視線を無視して、さっさと自分のご飯を食べ始めてしまった。



漣「はむはむ、カレーうまー!」

提督「漣さん、これはどういう…?」


曙「くくく、クソ提督っ!」

提督「へ?」

254: 2015/07/27(月) 21:20:14.66 ID:u+t0EciLo
突然隣の曙さんから意を決したように声をかけられて振り向く僕。

すると目の前には、曙さんの右手に握られたスプーンがあって。

どういう訳だか、そのスプーンの上にはカレーライスがひとすくい、曙さんの、ではなく…僕の口へと向けられていて…。



曙「ほ、ほらっ。早く食べなさいよ」

提督「えええ!?」


顔を真っ赤にした曙さんがカレーを引っ提げて、正面から僕を見つめている。

手を繋いだ体制から無理に向き合っているためか、妙に距離が近い。

この恰好は、もしかして伝説の…いや、恥ずかしいから言葉にはしないけど。

255: 2015/07/27(月) 21:21:06.13 ID:u+t0EciLo
朧「あれ、あーんって言わないの、曙?」


言っちゃった!まさかの朧さんからだよ、もう!


曙「い、言う訳ないでしょ、これは仕方なくなんだから…」

曙「く、クソ提督も勘違いしないでよね!」

提督「か、勘違いって…」


僕の煮え切らない態度に痺れを切らしたのか、曙さんがさらに迫る。


256: 2015/07/27(月) 21:22:47.98 ID:u+t0EciLo
曙「だから、ホントはこんな事したくないんだけど、仕方なくっていうか…ああもう、さっさと食べなさいよ!」

提督「いやでも恥ずかしいし…って、曙さんこぼれる!」

曙「へ?」



それでもやっぱり恥ずかしくって腰が引けていた僕だけれども。

曙さんの差し出す手が震えすぎていて、すくったカレーがこぼれそうだという事に気がついたら踏ん切りがついた。

こんな事までして、白いセーラーにカレーの染みが出来てしまっては意味がない。ええい、男は度胸だ。

257: 2015/07/27(月) 21:23:50.48 ID:u+t0EciLo
パクリ。


分かってはいたけれど、想像以上の恥ずかしさが僕を襲ってきた。

それは曙さんも同じようで、さっきよりも更に顔を真っ赤にして、もはや泣きそうな顔をしているのが分かる。



ああ、いつもこうだ。いつも僕には最後にこういう役が回ってくる。

でも、言わなくっちゃいけない。もうやってしまった事なんだから、潔く最後まで。

曙さん、氏ぬときは一緒だよ、ともに堕ちて行こう…。


258: 2015/07/27(月) 21:25:05.41 ID:u+t0EciLo
提督「曙さん」

曙「な、何よ」


今度は僕が、左手で器用にお皿からカレーを掬い取って掲げる。


提督「次、僕の番なんだけど」

曙「~~~!」


どうやら曙さんは、自分が“あ~ん”をするのに精いっぱいだった様子で。

自分がされる方の順番が回って来ることを今更ながら思い出して…特段辛くもないカレーを前に、声にならない悲鳴を上げていた。

259: 2015/07/27(月) 21:25:44.77 ID:u+t0EciLo
それから…。

交互に“あ~ん”をしてカレーを完食した僕と曙さんは。

お互いに憔悴しきって、しばらく机に突っ伏して動けなかった。

269: 2015/07/28(火) 21:24:15.79 ID:7QxgQkYco
曙「つ、疲れたわ…」

提督「僕もだよ」



二人で執務室へ戻ると、僕たちは残った仕事を片付けにかかった。

今日は最低限だけ仕上げて、早めに切り上げて休むとしたい。これを終わらせたら後は寝よう。

夕張さん曰く、朝には二人の手をくっつけている磁力も弱まる、ということだし…。

それならもう今日は早めに寝てしまって、仕事は明日から取り掛かればいいと思う。

270: 2015/07/28(火) 21:25:35.61 ID:7QxgQkYco
さて、今日どうしてもしなきゃいけない事としたら…それは一日がかりの遠征に出ていた艦娘の帰還報告。

もうそろそろ帰ってくる時間だろう、確か旗艦は…


鈴谷「艦隊が帰投しましたぁ、お疲れぃ!」

熊野「もう、鈴谷…煩いですわ」


うん、この人だ。後ろに熊野さんを従えて、今回の遠征の旗艦である鈴谷さんが帰還報告のために執務室へとやってきた。

271: 2015/07/28(火) 21:26:51.78 ID:7QxgQkYco
曙「お、おかえりなさい」

鈴谷「あれれ、曙じゃん。どしたの?」

熊野「秘書艦になられた、というお話は聞いておりませんが…」


ああ、そっか。二人共ずっと外に出ていたから、まだ僕と曙さんの騒動を知らないんだ。


鈴谷「ねえ、何で手繋いでんの?」



目ざとく僕たちの繋いだ手を見つける鈴谷さん。

第六駆逐の暁たちは誤魔化せたけれど…相手が鈴谷さんとなると、そうだなあ。いつもみたいにからかわれるんだろうなあ。

そうやっておもちゃにされる覚悟をしつつ、僕は今日一日の経緯を説明し始めた。


提督「実はこれ、夕張さんの開発品が暴走してね」

272: 2015/07/28(火) 21:27:55.31 ID:7QxgQkYco
熊野「まあ、そんな事が」

提督「もう大変なんだよ、これが。ねえ、曙さん?」

曙「う、うん」



お互い異性と手を繋いでいるんだ。気を使うし、ハプニングもたくさん起こった。

決して青葉さんが喜ぶようなゴシップばかりな訳じゃない…んだけれど。


いつも僕をいじめてくる鈴谷さんならきっと、こんなネタ大好物なんだろう。

ほら、そんな事を思っているうちに、鈴谷さんが意地悪そうな笑いを浮かべて―

273: 2015/07/28(火) 21:29:06.97 ID:7QxgQkYco
鈴谷「ふぅん、ウケるんだけど」


いなかった。

全然面白くなさそうに言う”ウケる”を、僕は初めて聞いた。

もっとからかわれるかと思っていたけれど、鈴谷さんはもう一度僕と曙さんの繋いだ手をチラリと見て、あまり興味がなさそうにそっぽを向いてしまった。



提督「鈴谷さん?」

鈴谷「ん~、なに?」


いつもはひっきりなしに話しかけてくるのに、鈴谷さんは今日ばかりは自分の指で髪の毛をくるくるといじって、どこか気の入らない様子でいて。

おかしいな、執務室に入ってきた時は鈴谷さん、いつも通りだったハズなんだけれど…?

274: 2015/07/28(火) 21:30:12.99 ID:7QxgQkYco
提督「あ、あの。報告は?」

鈴谷「…熊野が持ってる」

熊野「もう、鈴谷ったら」


旗艦は誰だと思ってますの、なんてブツブツ言いながら、鈴谷さんの代わりに熊野さんが報告書を渡してくれる。

今日の遠征先は会敵するはずのない海域だし、特段変わった変化もないだろう。

報告書を流し見する限りそんな印象を受ける。何かあったら、流石に鈴谷さんの口から言うだろうしね。

275: 2015/07/28(火) 21:31:35.39 ID:7QxgQkYco
提督「ありがとう、今日はご苦労さま」

鈴谷「じゃ、鈴谷たちもう行くね」

提督「えっ…ああ、うん」


鈴谷さんにしては珍しく―というか初めて―そっけなく言葉を交わして、重巡洋艦の二人は出て行ってしまった。

別れ際に手を振ってくれたのも熊野さんだけ。

うーん、これは。


提督「鈴谷さん、よっぽど疲れていたのかな?」


一日がかりの遠征の、それも旗艦。安全と言っていい海域だったとしても、精神的にはかなり疲れるだろう。

たまにはこういう日もあるのかもしれないな、と僕が勝手に自分を納得させていると。

276: 2015/07/28(火) 21:33:00.84 ID:7QxgQkYco
曙「違うでしょ」

提督「え、分かるの?」


どうやら曙さんは、僕とは違う答えを導き出していた様で、それでもその答えを決して教えてはくれなかった。

あまり趣味が良いとは言えないので、鈴谷さんたちが出て行った後の扉を見つめて独り言つ彼女に聞き耳は立てなかったけれど。

もし、僕がそうしていたら…曙さんのこの一言をどういう風に受け止めたのだろうか?


曙「素直に慣れない奴は、バカよ」

隣にいる僕でも聞き取れない程の小声で何事かを呟いて、曙さんはフン、と鼻を鳴らした。

287: 2015/08/02(日) 16:47:12.88 ID:NWHhZRFzo
提督「ふう、これで今日の執務は終わりかな」

曙「やっと休めるのね…」


クソ提督が最後の書類に承認印をポンと押して。

今日の執務はこれで終了となった。

時間は午後9時30分、いつもより大分早めらしい仕事納めに、私はほう、と安堵のため息をついた。

まあクソ提督もこの緊急事態に、しかも秘書艦は慣れない私とあれば早めに切り上げたほうが良いと考えるのも当然かもしれない。


別に私はもう少し仕事をしても良いんだけれどね。

288: 2015/08/02(日) 16:48:09.72 ID:NWHhZRFzo
曙「ね、ねえ。もう少し仕事しても良いんじゃない?」


だっていつもはもっと遅くまで仕事しているって、私は知っているから。

私が一日秘書艦をするからって、それに合わせて鎮守府の仕事が待ってくれるわけじゃないし。

だってやっぱり、いつも秘書艦やってる他の艦娘と比べれば当然、私の仕事スピードは遅いわけで。私としては、そのしわ寄せが後日にまわるのが気になるわけで。


提督「ん~、今日は急ぎももう無いし、いいよ」

曙「わ、私のせいで仕事溜まっちゃった、なんて言われたらたまらないでしょ!」


違う、後で鎮守府のみんなやクソ提督に迷惑かけたくないから、そう言ったんだ。

例え仕事が溜まっいても、みんながそんな意地悪なこと言う訳ないって、ちゃんとわかってるのに。

…なのに私、また思ったことと違うことを言ってしまっている。

289: 2015/08/02(日) 16:49:01.81 ID:NWHhZRFzo
提督「みんなが?そんな事ないさ。急ぎが無いのも本当」


仕事が溜まっていない、とは言わなかった。こいつは嘘はつかないんだ、こんな時でも。

だから余計、やっぱりもうちょっと頑張ったほうが良いんじゃないかって気になってしまったという、丁度そんなタイミングで。


提督「ふわぁ、なんだか疲れちゃった」


クソ提督が、気の抜けた大あくびを一つ。


曙「アンタねえ…」


それに呆れて、私。

290: 2015/08/02(日) 16:49:43.89 ID:NWHhZRFzo
提督「実は、もうそろそろ眠くなってきてたんだ」


穏やかな笑みを浮かべたまま、いたずらっぽく続ける。


提督「だから、今日はこのドサクサに紛れて休んじゃおっかな、って」


他のみんなには秘密にしてね、って…まるで子供が秘密を共有するかのように、クソ提督は言った。

それが何だか…さり気なく、悪いのは曙さんじゃないんだよ、って言って貰えたみたいで。



291: 2015/08/02(日) 16:50:12.11 ID:NWHhZRFzo
曙「ほ、ほんっとクソ提督はクソ提督なんだから!」

曙「し、仕方ないから付き合ってあげるわ、サボりに!」

提督「うん、ありがとう」


その気遣いが嬉しかったから、上ずった声で、私なりのお礼を口にした。

…後から思い返したら、全然お礼になんてなってなかったけれども。

300: 2015/08/08(土) 23:09:54.56 ID:4sdMoI36o
まさか二人で一緒のベッドに、ってワケにもいかない。

だから今日だけ執務室の床に二人分の布団をひいて、そこで寝る事にした。


曙「これでよしっと」

提督「さて、後は寝るだけだね」

曙「そ、そうね」


執務に、演習の監督に、食事。

一日でやるべきことは全て、ちゃんとこなした。

この流れで行けば、一緒の部屋で寝るという恥ずかしさも誤魔化せる気がした。

301: 2015/08/08(土) 23:10:47.09 ID:4sdMoI36o
提督「今日やることはもう残ってないしね?」

曙「後は寝るだけだから大丈夫よ」


…それは後一つ、誤魔化していることがあるからだけど。

でも、まあいいわよね。だって、実際問題…それはどうしようもない訳で。

妙な沈黙が生まれて、お互いの気マズイ視線が重なる、そんな時…。



漣「さあ、行きますよ、ご主人様!」

朧「ちょっと、漣」

潮「ひゃぁぁ、いきなり入っちゃ駄目ですぅ」


バタン、と執務室の扉が空いて、三馬鹿が乱入してきた。

もう、何で呼んでもないのに来るのよ!?

302: 2015/08/08(土) 23:11:30.16 ID:4sdMoI36o
提督「これは何事?」


水を向けられた漣は、一瞬だけこちらを見て。

髪の毛と同じいちご色の瞳をチロっと輝かせる。



漣「ですから、ご主人様と曙をお迎えに」

提督「迎えって、どこに?」


あ、なんか嫌な予感がする。だって、にししと笑っているのは漣だけで。

朧はこれでいいのかなんて首を傾げているし、潮に至っては赤を真っ赤にして俯いているんだもの。

これで安心出来るという方が嘘というものだ。

303: 2015/08/08(土) 23:13:27.39 ID:4sdMoI36o
漣「もち、一緒にお風呂です!れっつらご~!」


漣の、いつにも増してクソダサイ言い回し。でもそんなものは気にもならなかった。

だってそれ以上の衝撃が、漣の発言には込められていたのだから。

私は潮に、クソ提督は朧にそれぞれ手を引かれながら、強制的に連れられていった。


横須賀鎮守府唯一のお風呂場である、大浴場へと。


漣は分かっているのかしら。いや、分かってて誘ったんだ。

私とクソ提督が、さっきからずっと気にしていたこと。

気にしていて、どちらもあえて気がつかないフリをしていたこと。

クソ提督の入浴時間が私たちと被るなんて、普段はありえないけれど。
私とクソ提督の手が繋がって放れない今夜だけは、そうもいかないってことに。

314: 2015/08/19(水) 19:32:33.67 ID:r9P1sH5ko
むかし
由乃「令ちゃんのバカ!」
令「よ、由乃・・・(オロオロ)」←大体令ちゃんが悪い

いま
瑞鶴「加賀さんのバカ!」
加賀「ず、瑞鶴・・・(オロオロ)」←大体加賀さんが悪い

やってる事は昔も今も一緒
というわけで少しだけ投下


315: 2015/08/19(水) 19:33:27.57 ID:r9P1sH5ko
やって来てしまった、心の中で僕はそう呟いた。

大浴場へと繋がる脱衣場で、ただ呆然と立ち尽くすのは僕だけではなく。


曙「…」


さっきから一言も喋らず、顔を真っ赤にして下を向いている曙さんも同じなようで。

だってこの場所は当然、着替えをする場所で。

その先にはお風呂がある訳で、お風呂に入る為にはここで服を脱ぐ必要がある訳で。

316: 2015/08/19(水) 19:33:54.43 ID:r9P1sH5ko
提督「やっぱ駄目、良くないよこれは!」

漣「ほえ?何でですか、ご主人さま?」


提督「だってここは脱衣場だよ、お風呂だよ?」

提督「僕がお風呂に入るって事は、曙さんも一緒に入るんだし」


僕の言葉に曙さんが反応して、繋いだ手がきゅっと握られる。

お互いに空気を読んで言葉にしなかった分、一度意識するととんでもない事なのが嫌でも理解出来た。

317: 2015/08/19(水) 19:34:28.17 ID:r9P1sH5ko
漣「ああ、それはご心配なく」

提督「へ?」


曙「あ、あんた…何企んでいるのよ?」

朧「あの、私たちも一緒に入りますから」


潮「みんな一緒、です」

曙「!?」


あー、なるほど。
二人きりでお風呂に入るんじゃなくって、みんなで一緒に入るわけか。


うんうん、それじゃあ問題ない…って

318: 2015/08/19(水) 19:34:59.31 ID:r9P1sH5ko
提督「問題ありまくりじゃないか!?」

漣「ツッコミ遅いですねー、ご主人さま」


人として大事な部分が欠落しているんじゃないかってくらい破天荒な漣さんはともかく。

かなり常識的なはずの朧さんや潮さんが賛成するって、どういう事なんだろう?


漣「まあまあ。これなら曙もいくらか気分が楽っしょ?」

曙「ま、まあそうだけれど…」


ここでまさかの曙さん賛成票。

4人の女の子とお風呂に入る、というまさかの事態に混乱しながら、僕は言う。


提督「そんな…みんな、僕にハダカ見られて恥ずかしくないの!?」

319: 2015/08/19(水) 19:35:58.24 ID:r9P1sH5ko
「えっ」

言った瞬間、四人がこちらを向く。何を言ってるんだコイツは、という目で。

それで僕は、自分がとんでもない勘違いをしていたことに気づいた。


漣「あのー、ご主人さま?」

提督「な、何?」



弱者をいたぶるような意地悪な表情を浮かべて、漣さんが笑い出す。


朧「提督、私たちは水着で入ろうとしたんですが…」

曙「フツー、そう思うわよね…」


困り顔の朧さんと、軽蔑の眼差しの曙さん。

320: 2015/08/19(水) 19:36:39.74 ID:r9P1sH5ko
提督「だ、だよね。おかしいと思ったよ、ハハハ!」

漣「…で、誰のハダカが見たかったんですか?」


やっぱり、と漣さんが大げさな動きで注目するのは。


潮「ふぇぇ…な、なんですか。こっち、見ないでくださぃ…」

提督「い、いや。違うから!そんなつもりは断じてないから!」


いつも制服の下に隠れている”あれ”がどんなだろうだとか気になった訳ではないから。

ただちょっと…その、ホントに大きいのかな、なんて思ってみたりして。

321: 2015/08/19(水) 19:37:10.61 ID:r9P1sH5ko
曙「いつまで見てンのよ、このクソ提督っ」

提督「いた、いたた。曙さん耳引っ張らないで!?」

曙「アンタがいやらしいからよ、このバカ!」


曙さんに思いっきり耳たぶを引っ張られて。

ようやく僕は、水着でお風呂に入るという現実を受け入れたのだった。



漣「…で、誰のハダカが」

提督「もうカンベンしてよ、漣さん」


漣さんが僕にだけ聞こえるように、耳元でそっと囁いたのは。

本当に余計な追い打ちというものだった。

327: 2015/08/30(日) 00:09:27.64 ID:YbqnwBiJo

329: 2015/08/30(日) 00:54:25.13 ID:bIEwWQCso
報告乙おめ!!

引用: 【艦これ】曙「クソ提督と手を繋いだら放れなくなった」【ラノベSS】