599: 2015/04/29(水) 20:18:29 ID:dH6WDCLQ

600: 2015/04/29(水) 20:19:29 ID:dH6WDCLQ

僧侶「!」

魔法使い「さっきから黙って聞いてれば……もう苦しまなくて良い、ですって? 勝手な事ほざいてんじゃないわよ」ユラッ

戦士「魔法使い……」

魔法使い「あんたたち魔物のせいであたしは……あたしは……!」ゴォ……ッ

僧侶「い、いけません、魔法使いさん……!」

魔法使い「氏ね……ッ!?」

勇者「止めろ。魔法使い」グッ

僧侶「勇者さん……」ホッ
Lv1魔王とワンルーム勇者 4巻 (FUZコミックス)
601: 2015/04/29(水) 20:21:08 ID:dH6WDCLQ

魔法使い「勇者……どうして止めるの? あんたの仇討ちは終わったんだから次はあたしでしょ?」

勇者「……」

魔法使い「もう良いでしょ? あたしはあんたと違って……魔物がこの世に存在する事が許せないのよ!!!!」

勇者「……あいつらはお前を直接傷つけてはいないだろう」

魔法使い「あたしから見れば魔物は皆あたしの敵であたしの仇よ」

戦士「だからって……」

少女「……」スッ

魔王「!」

側近「少女……!」

魔法使い「……何のつもり? あんたの通せんぼなんざ塵程も意味ないんだけど」

602: 2015/04/29(水) 20:23:23 ID:dH6WDCLQ

少女「あ、貴女に……何があったのか、私は知らないけど……それで家族が傷つけられるのは嫌だよ」

僧侶「少女さん……」

少女「魔王様も、側近さんも……今までたくさん苦しんできたし、今だって苦しんでるんだよ」

勇者「……」

少女「そ、それでも2人に手を出すなら……まずは私を……!」ガタガタ

魔王「しょ、少女!」

妖精「~~~~!」オロオロ

603: 2015/04/29(水) 20:24:52 ID:dH6WDCLQ

魔法使い「……どいつもこいつも邪魔ばっかり」メラッ

戦士「!」

勇者「魔法使い……!」

魔法使い「ならお望み通り先に火炙りの刑にしてあげるわ……異端者ァ!」ボゥッ

少女「……ッ!」ギュウッ

側近「くっ……」ジャキンッ

魔王(間に合えッ……!)ジャラ……ッ

『お止めなさい』

魔・側「!」ピタッ

魔法使い「……!」ジュウッ

僧侶「神獣様方……姫様……」

604: 2015/04/29(水) 20:25:51 ID:dH6WDCLQ

姫「少女さん! 大丈夫ですか!?」タタタッ

少女「お姫様……うん、なんとかね。ありがとう」ヘタッ

白獣「戦いが終わったというのに、随分と殺気立っていらっしゃいますね」

魔法使い「……」ギリギリ

黒獣「この小娘……消してやろうか」グルル……

白獣「黒様? そんな事をしたら……」

黒獣「冗談だ白娘」

605: 2015/04/29(水) 20:29:30 ID:dH6WDCLQ

姫「……魔法使いさん。並びに勇者様方には私の友人達を救って頂き、心から感謝しております」クルッ

魔王「姫……」

姫「ですが、彼らを自ら害しようとお考えならば……如何なる理由があれど私はそれを絶対に許しませんわ」キッ

魔法使い「……」

姫「……私を敵に回すという事は、『聖都』そのものを敵に回す事と同義であるという事をどうかお忘れなく」

少女「お姫様……」

戦士(姫様かっけえ……)ポーッ

勇者「……魔法使い」

魔法使い「わかってるわ」スッ……カラン

姫「ご理解頂けて何よりですわ」ホッ

魔法使い「魔物の敵にはなっても、人間の敵にはなりたくありませんから」

606: 2015/04/29(水) 20:33:44 ID:dH6WDCLQ

僧侶「良かった……ではお仕置きは必要ありませんね」ニコニコ

魔法使い「だから止めてくんないそれ!? できればあれとは2度と会いたくないんだけど!」ブルブル

僧侶「そうはいきません! 私にとっては創作意欲をかき立てる絶好のネタですし……」ハァハァ

少女(ネタ……?)

魔王「姫。ありがとう」

姫「お礼を言われるような事はしておりませんわ。私はほとんど役に立てませんでしたし……何より」チラッ

魔王「そんな事はない。これで余計な血を流さずに済んだのだからな」

姫「で、ですが、此度の騒ぎの一部始終を父……陛下に報告するという重要な仕事がまだ残っております」

側近「確かにそうだな……でなければ完全に収束する事は難しいだろう」

607: 2015/04/29(水) 20:37:30 ID:dH6WDCLQ

魔王「我らも出向こう弟。この身はもう……自由なのだからな」

側近「その方が手っ取り早いだろうな。だが、俺達のような者が謁見を許されるかどうか……」

僧侶「……あ、それなら1つ提案があるのですが」

少女「提案?」

僧侶「はい。お城へ行く前にうちの教会へ寄っていかれてはいかがでしょう?」

勇者「……何をする気だ?」

僧侶「『魔の浄化』です」

魔王「魔の浄化?」

608: 2015/04/29(水) 20:48:46 ID:dH6WDCLQ

僧侶「人間に少しでも近付きたい、もしくは共に生きたいと願う魔物や魔族の方々向けに、我が教会が独自に行っている施術です」

魔王「それは興味深い……どのような内容なのだ?」

僧侶「大まかに説明すると、術式と神父様の祈りによって施術対象の方の持つ魔力総量を大幅に減らします」

魔王「ほう……」

僧侶「施術する相手によっては人間と見分けがつかなくなるとも……とにかく効果は保証するそうです」

魔王「……断言はしないのだな」

僧侶「私は神父様から術の事を聞いただけで、実際に施術する光景を見た事がないんですよね……」シュン

側近「そ、そうなのか……」

609: 2015/04/29(水) 20:54:03 ID:dH6WDCLQ

僧侶「私が教会で暮らしていた頃は1度も行われなかったので……側近さんはこの術の存在は?」

側近「……知っていた。ずっと前に神父殿から直々に聞いた事がある」

僧侶「まあ! そうでしたか」

魔王「なっ……では何故その時に施術を受けなかったのだ!? そうすれば……」

側近「馬鹿を言うな。貴方を差し置いて先に楽になろうなどと考える訳がないだろう」

魔王「弟……」

側近「……それに、その浄化は俺達のような魔王の血筋の者にも効くのか不安だった」

魔王「……あ」

僧侶「あ」


シィ……ン


614: 2015/05/13(水) 00:13:36 ID:.MIbkESY

少女「だ、大丈夫だよ! 魔王様も側近さんも優しい魔物だもの!! きっと上手くいくよ」グッ

魔王「少女……」

魔法使い「けっ」

少女「だから今は、まずご飯を食べてゆっくり休んで……」グラ……

妖精「!」ビクッ

姫「あ……!」

側近「少女!!」ガシッ

少女(あれ……何で、かな? 急に体の力が抜けちゃった……)グッタリ

白獣「……ここまで、良く持ち堪えたものです」ボソッ

僧侶「え?」

615: 2015/05/13(水) 00:15:09 ID:.MIbkESY

白獣「さて、とりあえず回復ですね……でも今日はもう無理をしてはいけませんよ?」パァァッ……

少女「ありがとう……そ、そういえばあの玉! ごめんなさい白獣さん!!」ハッ

白獣「嗚呼、良いのですよ。壊れる事前提で渡した物ですし、何度でも生み出せますから」ニコッ

魔王「本当に凄い力だな……」

白獣「そんな事はありませんよ。これなんて」スッ

姫「その首飾り……何時の間に修復を?」

白獣「ついさっき、貴女達がお話をしている間に。ですがほぼ同じ場所で壊れたせいか……2つの首飾りが1つに合わさってしまったのです」

姫「まあ……とてもそうは見えませんが」

616: 2015/05/13(水) 00:17:10 ID:.MIbkESY

魔王「……確かに以前よりも魔除けの力が強まっているようだな」

側近「ああ。流石にこれは触れないな……」

姫「そ、そうなんですの?」

白獣「では、これは貴女に渡しておきましょうか」シャラッ

姫「え? あ、でも……」

魔王「うむ、私はそれで構わぬよ」

側近「俺も異存はない。少女も良いだろう?」

少女「うん。私が持っててもきつそうだしねー」

617: 2015/05/13(水) 00:19:21 ID:.MIbkESY

姫「な、何だか私ばかり申し訳ないですね……先程は宝物も修復して頂きましたし」

魔王(あのペンダントの事か……それは良かった)ホッ

僧侶(う、羨ましい……! 白神獣様直々に復元して頂いた装飾品……しかも2つも)ゴクリ

白獣「あ、ついでに傍に落ちていたこれも修復したのですが」スッ

勇者「これは……」

魔王「おお、その腕輪は勇者の」

僧侶「勇者さあああああん是非私の腕輪と交換してくださいいいいいい!!!!」ズザザザザ

魔王「じゃ、ジャンプからのスライディング土下座ッッッ……!?」ビクゥッ

勇者「……」スッ

僧侶「ありがとうございますううううううぃやったああああああああああああ!!!!」ピョーン

618: 2015/05/13(水) 00:22:24 ID:.MIbkESY

魔法使い「信者って怖いわね」

戦士「ああ」

少女「僧侶さんって結構面白い人だよね」

側近「それで済ませて良いのか……?」

姫「す、少しだけ羨ましいかもしれませんわね……あの自由さが」

妖精「!?」

黒獣「……気持ちの悪い奴だ」

白獣「そんな事を言ってはいけませんよ。率直で良い子ではありませんか」

魔王「いや、少しは隠した方が良いと思うが……」

619: 2015/05/13(水) 00:24:10 ID:.MIbkESY

黒獣「それはそうと白娘。もうその辺で良いだろう」

白獣「ええ、そうですね黒様……皆さん、私達はそろそろ主の元へ戻ります」

魔王「そうか、名残惜しい事だ……貴方達には本当に世話になった」

白獣「いえいえ。私達はお役目を果たしただけです……それに貴方の腕の事が残念でなりません」

魔王「気にしないでくれ。こうして命があるだけ儲けものだ」

姫「……」

少女「は、白獣さ……!」

白獣「少女さん、そのままで大丈夫ですよ……ただ、貴女の顔をよく見せて下さい」スッ

少女「? ……うん」

620: 2015/05/13(水) 00:26:20 ID:.MIbkESY

白獣「……。…………」ボソボソ

少女「……え?」

白獣「ふふ、神獣から貴女への忠告ですよ……警告とも言いますかね」ニコニコ

少女「あ……」

白獣「では行きましょうか……また困った時は何時でも喚んでくださいね? 来られる時はすぐに飛んできますから」ポンッ

妖精「」パタパタ

白獣「嗚呼、貴方はもっと眠らなければいけませんよ? 大切な人と離れ離れになりたくないのなら」

妖精「……」コクン

621: 2015/05/13(水) 00:27:54 ID:.MIbkESY

黒獣「おい」ノソノソ……ズイッ

側近「な、何だ?」ビクッ

黒獣「……我らの二の舞にだけはなるな」

側近「ッ! ……ご忠告痛み入る」

黒獣「ふん」プイッ……ザッザッ

僧侶「白神獣様……黒神獣様……!」

白獣「……これからも貴女達の事を見守っていますからね」ニコッ

僧侶「! は、はいっ!!」ジワッ

622: 2015/05/13(水) 00:30:08 ID:.MIbkESY

勇者「……」

戦士「なあ、考えてみれば俺達とんでもねえ体験をしたんだよな……?」

魔法使い「そうね……ってあんた、体力馬鹿の癖に何その情けない面」

戦士「……実はさっきまであの黒いのに遊ばれてた」ゲッソリ

魔法使い「あ、そう」

黒獣「白娘」クイッ

白獣「ふふ、乗せて下さるんですか? ありがとうございます」スッ

623: 2015/05/13(水) 00:31:57 ID:.MIbkESY

姫「あ……白神獣様」

白獣「……弟さんを想う気持ちを、これからも大切にしてくださいね」ニコッ

姫「! ……はい」ジワ……

少女「あ……白獣さん! それに黒獣さんも……」

白・黒「!」

少女「本当に本当に……ありがとう」

側近「……」ペコリ


白獣「……願わくば、貴方達の未来に主の御加護があらん事を」

フワリ……シュンッ

624: 2015/05/13(水) 00:34:07 ID:.MIbkESY

『……』

白獣(声)『あ、言い忘れる所でしたが』

『!?』

白獣『ここの土も清めておきましたからねー。では失礼』フッ

少女「び、びっくりしたー……」ドキドキ

魔王「……おい聞いたか弟よ」ヒソッ

側近「ああ」ヒソヒソ

魔王「これでまた農業を試みる事ができるぞ……!」

側近「言っておくが、もうあんな騒ぎは御免だからな」

魔王「わ、わかっておる!」

625: 2015/05/13(水) 00:36:17 ID:.MIbkESY

――――
――

黒獣「……」ビュオオオオオオオ……

白獣「黒様、私姫さんの弟さんの絵を見て……『妹』の事を思い出したんです」

黒獣「そうか」

白獣「あの子には……本当に辛い思いをさせてしまいました」

黒獣「……白娘のせいではない」

白獣「いいえ、いいえ……! 私達のエゴのせいで、あの子は……」ジワッ

黒獣「白娘」ギュッ

白獣「! 黒様、元の御姿に……」

626: 2015/05/13(水) 00:38:47 ID:.MIbkESY

黒獣「ここには私達しかいないからな。そんな事より」ジッ

白獣「あ……」

黒獣「あまり自分を責めるな。お前が苦しむ姿を見ていると……私も苦しい」

白獣「……ですが」

黒獣「お前よりも私の方が罪深いのだ……だからそんな顔をしないでくれ」

白獣「うう……黒、様ぁ……」ギュウッ

黒獣「主の元へ還ろう、白娘……そしてゆっくり休むんだ。私達には掃いて捨てる程の時間があるのだから」ポンポン

白獣「……はい……っ」


ヒュゥゥゥゥ……

627: 2015/05/13(水) 00:42:37 ID:.MIbkESY

今回は以上です。
一応終わりには近付いている筈なんですが……あれ?←

おやすみなさい。

631: 2015/05/31(日) 23:21:17 ID:ss/Kb2KM

――――
――

戦士「……んで、これからどうする?」

僧侶「!」

少女「あ……」

魔法使い「そんなの決まってるでしょ? こいつら引っ張って都に戻るのよ」ギロリ

魔王「う……」タジッ

勇者「……」

側近「……善は急げというしな」

姫「で、ですが皆さんお疲れでしょう? 城では長時間拘束されるでしょうし、少し休んでからの方が」キュルルルル……

『!?』

姫「!? い、いえ、私ではありませんわ!」アワアワ

632: 2015/05/31(日) 23:22:13 ID:ss/Kb2KM

少女「お姫様、お腹空いてたの? 気付かなくてごめんね……」

姫「ですから……!!」

勇者「……俺は何も聞いていません、姫」

僧侶「勇者さん! それでは聞いているのとおんなじですよ!!」ビシッ

妖精「」グゥ……ギュルルルルル

少女「なんだ、妖精さんだったんだね」

妖精「……!」カアッ

少女「妖精さんも頑張ってくれてたんだもんね……」ナデナデ

妖精「……」ウルウル

633: 2015/05/31(日) 23:24:33 ID:ss/Kb2KM

魔王「嗚呼、そういえば私も……」サスサス

側近「……俺もだ」

少女「じゃあとりあえず先にご飯を作ろっか!」ポンッ

魔法使い「おい待てや勝手に決めんじゃないわよ」

戦士「しょ、少女ちゃんの手料理……楽しみだぜ!」ゴクリ

僧侶「あ、私も是非ご相伴に与らせて……」

魔法使い「あんた達いいいいいいいいいいいい!!!!」

勇者「……魔法使い、確かに多少の休息は必要だ。お前も疲れているだろう?」

魔法使い「ぐ……」

634: 2015/05/31(日) 23:25:35 ID:ss/Kb2KM

姫「あ、あの、少女さん……」オズオズ

少女「お姫様?」

姫「その……献立は決まっていますか?」

少女「そうだね……候補がないわけじゃないけど、これと言ったのはまだ」ウーン

姫「! で、でしたら私から提案をさせて頂いてもよろしくて?」

少女「材料があるかはわからないけど、とりあえず言ってみて」

姫「わ、私がというよりは……」チラッ

魔王「?」キョトン

姫「ま、魔王様に……食べて頂きたいのです」カアッ

僧侶「! ……ほほう」ピクッ

635: 2015/05/31(日) 23:29:28 ID:ss/Kb2KM

少女「なるほど、それなら多分大丈夫だよ。側近さん、手伝ってくれる?」

側近「無論だ、寧ろ俺が作る。お前は無理をするなと白獣にも言われただろう?」

少女「うう……」

姫「で、ではその分私が……!」ドキドキ

妖精「!」パタタッ

側近「貴女はもう少し自分の身分を考えてくれ」

魔王「ま、まあまあ弟よ、姫の心遣いを無碍にしては……」

側近「一体誰のせいだと……」ジロリ

魔王「!?」ビクッ

636: 2015/05/31(日) 23:31:59 ID:ss/Kb2KM

魔法使い「……付き合ってらんないわ、こんな茶番」クルッ スタスタ

僧侶「魔法使いさん何処へ?」

魔法使い「外で適当に食べて来る。ついでにあいつらがいる村に行って一応終わった事を伝えに行くわ」

僧侶「そ、そうですか」

魔法使い「それに、間違ってもこいつらと同じ食卓なんて囲みたくないしね」

戦士「お前はまたそうやって余計な事を……」ハアッ

勇者「……俺も行こう。その方が少しは説得力も高まるだろう」スッ

魔法使い「ッ! ……ま、まあ好きにすれば?」

僧侶(もう、素直じゃないんですから~)クスッ

637: 2015/05/31(日) 23:35:34 ID:ss/Kb2KM

戦士「んじゃあまた後でな! 何かあったら連絡しろよ」ビシッ

勇者「ああ、お前達もな」スタスタ

僧侶「お気をつけて」

魔法使い「言われなくても気をつけるわよ……寧ろこっちの台詞だわ」

魔王「……おお、そうだ! 城を覆っていた結界を解除しておこう」ポンッ

側近「それが良いな」

魔法使い「……いっそ外に出た時にぶっ壊しt」チャキッ

勇者「止めろ」

魔王「いや、その必要はない……今終わらせたからな」

638: 2015/05/31(日) 23:38:23 ID:ss/Kb2KM

少女「もう?」

側近「まあ、今の兄上ならこれ位は可能だろうな」

魔王「自分で仕掛けた魔法だしな。本来の魔力が戻っていなければもっと掛かっただろうが……」ハハハ

魔法使い「ちっ……そのままずっと戻らなければ良かったのに」ボソッ

少女「!」

戦士「おいおい、もういい加減に……」

姫「魔法使いさん……!」

僧侶「ちょ、魔法使いさん!」

魔法使い「ふん……行くわよ勇者!」ズンズン

勇者「……すまない魔王。では失礼する」ペコリ ザッザッ

魔王「気にするな……」シュン

642: 2015/06/15(月) 23:28:43 ID:ayd.J25Q

こんばんは。

更新再開です。

643: 2015/06/15(月) 23:29:45 ID:ayd.J25Q

少女「魔王様……」

魔王「大丈夫だ、少女」ナデナデ

姫(羨ましいですわ)ジーッ

僧侶(姫様……なんと熱っぽい視線を)ニヨニヨ

側近「では、支度を始めるとするか……少女、先に兄上と共に食堂の準備をしていてくれないか」

少女「わかった」

魔王「うむ、任せておけ」

姫「わ、私は……」

側近「姫君は戦士達と待っていてほしい」

姫「ですが……」オロオロ

644: 2015/06/15(月) 23:31:13 ID:ayd.J25Q

少女「側近さん、側近さん」ツンツン

側近「ん?」

少女「あのね、実は……」ヒソヒソ

側近「む……そうだったのか。しかしな……」

少女「お願い側近さん……お姫様の気持ちを大事にしたいの」ギュッ

側近「……仕方がないな。ただし、やって貰うのは本当に簡単な事だけだぞ?」

少女「ありがとう、側近さん! お姫様それで良い?」

姫「ええ……! ありがとうございます」パアッ

側近「礼には及ばん。考えてみれば姫君には魔法使いを止めて貰った借りがあるしな……」

側近(それに何より……弱っている少女にあんな風に頼まれては断れん)

僧侶(嗚呼、こっちもイイですね!)グッ

戦士(僧侶……顔がイキイキしていやがる)

妖精「」ジトーッ

645: 2015/06/15(月) 23:32:57 ID:ayd.J25Q

側近「そうと決まれば急ぐぞ」

戦士「な、なあ……良ければ何か手伝わしてくれねえか?」

少女「え? でも」

僧侶「私達は図々しくもご馳走になる身です……何よりお互い色々ありましたし」

戦士「このまま只の客人に甘んじる訳にはいかねえよ!」グッ

側近「お前達……」

魔王「……」ジワッ

姫「! ま、魔王様!?」

魔王「あ、ありがとうな……2人とも……」エグエグ

僧侶「ええっ? あ、いえ、そんな……」タジッ

646: 2015/06/15(月) 23:33:47 ID:ayd.J25Q

戦士「おいおい泣く事はねえだろ! 仮にも魔王だろ!?」

魔王「私は……ううっ、好きで魔王に……なった訳、では……」ゴシゴシ

側近「……行こう、姫君」クルッ

姫「良いのですか? 落ち着かせなくても」オロオロ

側近「暫く放っておく方が良い……大丈夫だ」スタスタ

少女「あ……そっか」

魔王「……ッ」ポロポロ

戦・僧「」オロオロ

少女(魔王様は、私達以外の人達と普通に触れあえるのが新鮮だから……あんな風に)

妖精「?」キョトン

少女「ふふ、大丈夫だよ妖精さん。私達も行こう!」

647: 2015/06/15(月) 23:35:13 ID:ayd.J25Q

――――
――

食堂


魔王「いやーすまないな。あんな見苦しい所を見せてしまって」フキフキ

戦士「全くだ。お陰でこっちは軽くパニックになったぜ……」カチャカチャ

少女「ごめんね戦士さん……魔王様も泣きたくて泣いた訳じゃないから、どうか気を悪くしないでね?」バサッ……

戦士「大丈夫だぜ少女ちゃん! 全ッ然気にしてねえよ」デレッ

少女「本当? 良かったー……」

魔王「……おい」ジトッ

戦士「んああ!?」

魔王「少女に色目を使ってみろ……ちょっとした地獄を見て貰うからな」ジャラリ

戦士「」ゾクッ

648: 2015/06/15(月) 23:39:21 ID:ayd.J25Q

少女「魔王様もあんまり無理しちゃ駄目だよ?」

魔王「うむ、わかっておるぞ少女」ナデナデ

戦士(……やっぱこいつ魔王だわ。てか以前にも似たような状況になったな、確か)ズーン

少女「よし、こんな感じかな。側近さん達の方はどうなってるかな」ソワソワ

戦士「そういや僧侶は何処行ったんだ?」キョロキョロ

魔王「彼女ならば少し前に厨房の方へ向かったが」

戦士「なああああああッ!?」

魔王「ど、どうしたのだ」ビクッ

戦士「不味い……こいつぁ不味いぞ……!」ガタガタ

649: 2015/06/15(月) 23:42:07 ID:ayd.J25Q

少女「落ち着いて戦士さん、ちょっとお手伝いに行って貰っただけじゃない」

戦士「駄目なんだ、あいつに料理を任せちゃ……今すぐ止めn」


ゴボァアアアアッ……!!


少女「何!?」

戦士「お……遅かっ……た……」ガクリ

魔王「厨房の方か……一体何事だ!!」ダダッ

少女「と、とにかく行かなきゃ!」ダッ

戦士「あああ……あの大馬鹿め……」

650: 2015/06/15(月) 23:45:00 ID:ayd.J25Q

――――
――

厨房

側近「……何だこの得体の知れない物体は」プスプス

姫「うっ……酷い臭いですわ……」クラッ

妖精「!? !?」オロオロ

僧侶「あれ? おっかしいですねー……」

側近「俺の記憶が正しければ、この鍋の中には切った野菜しか入れていなかった筈だが」

戦士「僧侶おおおおおおおおお!!!!」

僧侶「あ、聞いて下さい戦士さん! ちょっと手を加えたらいきなり……」

少女「お姫様、大丈夫!?」

姫「え、ええ……」

651: 2015/06/15(月) 23:46:45 ID:ayd.J25Q

魔王「弟よ、何があったか説明するのだ!!」

側近「見ての通りだ」

戦士「お前は今すぐここから出るんだ料理音痴!」グイッ

僧侶「ちょ、放して下さいよ! 暴力反対!!」ギャアギャア

戦士「魔王、今すぐこいつを鎖でふん縛ってくれ! 厨房の平和のために!!」

魔王「い、いやそんな乱暴な……」

側近「……少女、すまんが」

少女「うん、大丈夫だよ側近さん。すぐにとりかかろう」グッ

652: 2015/06/15(月) 23:50:57 ID:ayd.J25Q

――――
――

僧侶「いやあ、一時はどうなる事かと思いました」

戦士「お前が言うなよ……大体何で厨房なんかに行ったんだ」

僧侶「私だってお役に立ちたかったんですもん!」プンスカ

戦士「だからって手前の料理の腕を忘れる理由にゃならねえぞ!!」

側近「騒がしい奴らだな……全く」

魔王「嗚呼、これ程の人数で食べるのは久しぶりだな……こちらの方が温かいが」ジーン

姫「魔王様……」

少女「あの……とりあえず食べよう? 妖精さんも待ちくたびれちゃってるし」

妖精「」グゥ……

653: 2015/06/15(月) 23:59:22 ID:ayd.J25Q

僧侶「あ……」

戦士「わ、わりい」

魔王「おお、それは悪かったな小妖精……では」

姫(魔王様、喜んで下さるかしら……)ドキドキ

側近「小妖精の事はどうでも良いが、作った身としては冷めない内に食べて貰いたいしな」

妖精「!」ムキーッ

少女「もう、側近さんったらー。じゃあ皆一緒に……」


『――いただきます』

658: 2015/07/14(火) 23:59:46 ID:sohCrmV2

僧侶(シチューに南瓜を入れてあるのは初めて見ますね……)パクッ

僧侶「! お……美味しi」

戦士「んんめええええええええええ!!!!」バクバクバクッ

魔王「せ、戦士は羊だったのか……!?」ビクッ

側近「いや、違うと思うぞ兄上」

姫「あの、魔王様……お味の方は如何ですか?」ドキドキ

魔王「ん? ああ、とても美味しいな……ありがとう姫」

姫「そ、それは良うございました……!」ホッ

魔王「?」

659: 2015/07/15(水) 00:01:26 ID:g5ItxrP2

少女「良かったね、お姫様」ニコニコ

姫「ええ……」

妖精「♪~」モグモグ

戦士「うめえ……滅茶苦茶うめえよお……」ポロポロ

少女「!? 戦士さん、何処か痛いの!?」

僧侶「あ、気にしないでください少女さん。何時もの事ですから」モグモグ

側近「物を食う度に泣いているのか?」

660: 2015/07/15(水) 00:03:03 ID:g5ItxrP2

僧侶「いえいえ、あまりに美味しくて温かい手料理を食べるとついこうなってしまうんですよ」

戦士「わ、わりいな……すぐに収まっから……」ズビッ

僧侶「戦士さんは、色々あって幼少期に家族と食卓を囲んだ経験がほとんどありませんから……」

戦士「僧侶、せっかくのメシの席で辛気臭え事言うなよ。それにもう終わった話だぜ?」ゴシゴシ

僧侶「ですが……」

少女「そうだったんだ……遠慮なく食べて良いからね戦士さん!」

戦士「はは、ありがとな少女ちゃん。そうさせてもらうよ」

魔王「……毎日おぞましい食卓を囲むのと、一体どちらが辛いんだろうな」ボソッ

側近「……」

661: 2015/07/15(水) 00:04:41 ID:g5ItxrP2

僧侶「そういえば、魔法使いさんのお料理を初めて食べた時もこうなったらしいですね」

戦士「あー……そうだったな、うん」ポリポリ

姫「魔法使いさんもお料理上手なんですの?」

戦士「そりゃあもう! 性格はあれでも料理の腕前はやばいんすよ!!」

側近「……正直意外だな」

魔王「あ、ああ」

僧侶「ふふっ、世界は常に意外性に溢れているものですよ。かく言う私も……!」

戦士「いい! 誰も求めてないから!!」

僧侶「むう……」

少女「まあまあ2人とも……!」

妖精「」モグモグ……ペチンッ

662: 2015/07/15(水) 00:06:11 ID:g5ItxrP2

――――
――

魔法使い「あんた達無事ー!?」バタンッ

勇者「……」ザッザッ

僧侶「もう、大袈裟ですよ魔法使いさん」

姫「お、お2人とも……もう少しゆっくりしてきても宜しかったんですよ?」

魔法使い「これでも遅過ぎる位ですよ……って何? この状況」

少女「……! ……!!」

側近「……」ズーン

戦士「……」ショボン

妖精「~~~!」ケタケタ

663: 2015/07/15(水) 00:07:25 ID:g5ItxrP2

僧侶「これはですね……腹ごなしと称して戦士さんと側近さんが腕相撲をおっぱじめた結果ですよ」

魔法使い「はあ!? 長テーブルこんなにしてまで何やってんのよ……!」ボロッ

姫「初めは普通に談笑をしていたんですけれど……そのうち戦士さんの外見や身体能力の話になって」

僧侶「実際に戦士さんの力がどれ程のものか、側近さんが興味を持ったんですよね」

姫「初めはちょっとした力比べのつもりが、いつの間にかお2人とも本気になってしまって……」

僧侶「それでこの有様です」

魔法使い「……呆れた」

664: 2015/07/15(水) 00:09:27 ID:g5ItxrP2

魔王「しょ、少女よ、もうその辺で……な? 2人もこんなに反省しておる事だし、テーブルなら私がすぐに……」オロオロ

少女「そういう問題じゃないでしょ! 下手したら破片で誰かが怪我をしてたかもしれないのに!!」キッ

魔王「う、む……それもそうだな」タジッ

僧侶「大方、側近さんを打ち負かして少女さんに良い所を見せようと思ったんでしょうね、戦士さんは」

姫「側近さんも、少女さんの前で無様な姿を晒したくないと……」

魔法使い「全く、その女のために敵同士アホみたいに力比べなんてどうかしてるわよ……ねえ勇者」

勇者「……」ジッ

魔法使い「……勇者?」

勇者「……魔王、すぐにテーブルを修復して俺と勝負しろ」ガタッ

魔王「!?」

魔法使い「勇者!?」

665: 2015/07/15(水) 00:11:30 ID:g5ItxrP2

――――
――

僧侶「さてさて、色々とありましたが」

魔法使い「幾らなんでもあり過ぎよ……」ゲッソリ

戦士「はは……わ、わりい魔法使い」

側近「少女、俺が悪かった……もう絶対にあんな事はしないからどうか許してほしい」

少女「……」ムスッ

妖精「」パタパタ ニヤニヤ

魔王(せっかく外に出られるというのに、出発前から心身共にこんなに疲れてしまうとは……)

勇者「……」

姫「そ、それでは参りましょうか……都の、我が城へ」

671: 2015/08/30(日) 23:24:08 ID:cK6BqU7Y

魔王「姫、姫」ツンツン

姫「はひっ!?」

魔王「? いや……その前にまず行く場所があるだろう?」

姫「……! あ、そ、そうでしたわね! 嫌だわ私ったら……!!」アセアセ

側近(兄上……もう少し言い方というものが)ハアッ

僧侶「と、とりあえず都へ移動しましょう! ね?」

少女「そうだね、行こっか」

戦士「ああ」

勇者「魔法使い、頼む」

魔法使い「おらああああ転移魔法ッッッ!!!!」ブンッ

魔王「え、ちょ、まっ……」


――シュインッ

672: 2015/08/30(日) 23:27:01 ID:cK6BqU7Y

――――
――



側近「全く、転移魔法程度なら俺や兄上も使えるというのに」

魔法使い「うるさい。さっさとあそこから離れたかったのよ」

僧侶「皆さん揃っていらっしゃるようですね」

姫「では、さっそく教会へ……」

側近「……その前に、少し時間をくれないか? 俺と兄上は念のために人間に化けておく」

少女「え? できるの?」

側近「あの時は魔力が思うように使えなかったからな。今なら……この通りだ」スゥッ

姫「あ、初めてお会いした時のお顔ですね」

僧侶「ほうほう、成程……」ジーッ

673: 2015/08/30(日) 23:28:22 ID:cK6BqU7Y

側近「あ、あまりジロジロ見るな。見世物ではないのだぞ」

僧侶「あはは、すみません。ちょっと今後の参考にしようと思いまして」

少女(参考……?)

勇者「……」ジッ

魔法使い「勇者まで……!?」

側近「一体何なんだお前達は!」

勇者「……気を悪くしたならすまない」フイッ

少女「?」

674: 2015/08/30(日) 23:29:23 ID:cK6BqU7Y

側近「全く……ほら、兄上も早く……兄上?」

魔王「……おお……」キラキラキラ

妖精「」キラキラキラ

戦士「おーい、聞こえてるかー?」ヒラヒラ

少女「あ……そっか。魔王様は初めて都に入るから……それに妖精さんもあまり来た事なかったもんね」

姫(魔王様……子供のように目を輝かせているお姿も素敵ですわ)

側近「……兄上。気持ちはわかるが今は用事があるだろう?」ポンッ

魔王「……はっ! す、すまない、つい……」

魔法使い「さっさと化けるなら化けなさいよ」イライラ

魔王「う、うむ」スゥッ

姫(魔王様が人に化けると……このようなお顔になるんですね)ドキドキ

魔王「待たせてすまなかったな。今度こそ行くとしようか」

691: 2015/09/24(木) 00:38:50 ID:ufw6xI7w

――――
――

教会

僧侶「着きました」ザッ

魔王「ここが……」

少女「わあ……大きいね」

側近「……変わらんな。あの頃と」

魔法使い「かなり立派な建物ね。お城の次位には」

姫「教会は私達王族とかなり密接な関わりがありますからね。寄付もそれなりですし」

戦士「へー……」

僧侶「……」コソコソ……ゴソゴソ……

勇者「……僧侶。何故樽の中に隠れるんだ」

僧侶「!」ビクッ

676: 2015/08/30(日) 23:33:17 ID:cK6BqU7Y

少女「そ、僧侶さん……?」

魔王「ここは貴女の生まれ育った場所だろう? もっと堂々としても……」

側近「……ここに対して何か疚しい事でもあるのか?」

僧侶「い、嫌ですねえ、そんな訳ないじゃありませんかー」

魔法使い「目が泳いでるわよ」

戦士「そういやお前、都に来てから全ッ然ここには寄らなかったよな」

僧侶「ギクッ」

勇者「……王への謁見の時も、何処か怯えていたような気がするな」

僧侶「だ、大丈夫ですよ! 神父様が出てきたら出ますから」

?『あら、それは残念でしたね。神父様なら外出中ですよ』ガシッ

僧侶「」

677: 2015/08/30(日) 23:36:54 ID:cK6BqU7Y

魔王「! 何時の間に……」

?「全く、帰って来ていたのならばすぐにこちらにも顔を出してくれれば良かったのに」ニコッ

側近(なんという威圧感だ。服装からして聖職者のようだが……)ゴクリ

僧侶「あ、あの、そそそれは……」ガタガタ

戦士(あの僧侶が……怯えてやがる)

?「言いたい事は山程ありますが、今はこちらですね」クルリ

少女「あ……」ペコリ

?「姫様とこの子以外はお初にお目にかかりますね……僧侶の親代わりをしているシスターと申します。以後お見知り置きを」ペコリ

682: 2015/09/24(木) 00:17:17 ID:ufw6xI7w

――――
――

妖精「」パタパタ キョロキョロ

少女「わあ……」キョロキョロ

側近「小妖精、ここでは大人しくしていろ……少女は教会に来るのは初めてだったな」

少女「うん! 側近さんはここであの聖書を貰ったんだよね?」キョロキョロ

側近「……ああ」

少女「私も貰えるかなあ?」

側近「勿論だ」

シスター「神父様ならばもうすぐお戻りになられる筈です。それまでどうかごゆっくりお待ちください」

姫「シスターさん、突然大人数で押し掛けてしまってごめんなさいね。これにはやむにやまれぬ事情がありまして」

シスター「とんでもない! 教会は、何時でも誰でも何人でも大歓迎ですよ」ニッコリ

魔王「……そう言って貰えると有難い」ソワソワ

683: 2015/09/24(木) 00:18:59 ID:ufw6xI7w

魔法使い(あのステンドグラス……一対の神獣を模しているのね。それと……)ジーッ

シスター「それにしても、まさかあの日黙ってここを飛び出して行った貴女が勇者一行の一員として戻ってくるなんてね」チラッ

僧侶「!」ビクッ

シスター「当時は育て方を間違えたかと嘆いたものですが……随分立派になって」

僧侶「あ、あはははは……」

シスター「……まさか、皆さんにご迷惑をお掛けするような事はしていないでしょうね?」ジッ

僧侶「そ、そそそんなまさか……」

勇者「……俺達は旅の中で何度も僧侶に助けられました。彼女は掛け替えのない仲間です」

僧侶「勇者さん……!」ジーン

684: 2015/09/24(木) 00:20:45 ID:ufw6xI7w

シスター「……そうですか。それを聞いて安心しました」

戦士「まあ、トラブルメーカーな所もあるけどな~」

魔法使い「あたしなんて何度僧侶に酷い目に遭わされたか……」

シスター「あら、それは是非詳しく聴かせて頂きたいものですね」ピクリ

僧侶「せ、戦士さんと魔法使いさんの馬鹿ああああああ!!!!」

魔法使い「事実じゃない(まあ日頃の仕返しもあるけど)」

?『ほっほっほ、ちょっと出かけておる間に随分と賑やかになったのう』ガチャッ

685: 2015/09/24(木) 00:22:15 ID:ufw6xI7w

シスター「! おかえりなさい、神父様」

神父「うむ、ただいま……おや姫様、よくお出でになられましたな」

姫「神父様、お久しぶりですわ」

神父「……! 姫様、まさかそこにおるのは」

僧侶「あ……お久しぶりです、神父様」ペコリ

神父「おお僧侶……よくぞ戻って来てくれた。突然いなくなったあの日から随分心配しておったのじゃぞ?」ギュッ

僧侶「ご、ごめんなさい……お2人がお元気そうで良かったです」

686: 2015/09/24(木) 00:23:36 ID:ufw6xI7w

神父「陛下から勇者一行の中にお前がいるとはお聞きしていたが……やはり直に会わねば実感がないものだ」

シスター「本当にそうですね、神父様」

僧侶「あの、それで……」

神父「お前達、都中で何やら有名になっておるようじゃのう? 復活した魔王を倒したとかで」

僧侶「あ……」

魔・側「……」

神父「まあ、それはすぐに落ち着くとは思うが……問題は若者か……」

687: 2015/09/24(木) 00:24:28 ID:ufw6xI7w

僧侶「それは、どういう……」

神父「じきにわかる。それよりこんな大所帯で戻って来てくれた事情を話してくれるかの? 知っている顔もいるようじゃし」チラリ

側近「……!」

神父「以前、激しい雨の降った日にここに来られた事はないかのう? あの時は……ローブで顔は良く見えなかったが」

側近「……覚えていて下さったのですか」

神父「あの時の貴殿の纏っておる雰囲気が都の者と……否、人間と違っているような気がしたのでの。気を悪くされたなら申し訳ない」

側近「いえ……事実ですので」

神父「そう言って貰えると有難い。では、改めて僧侶が貴殿らをここに連れてきた理由をお聞きしよう」

688: 2015/09/24(木) 00:30:58 ID:ufw6xI7w

――――
――

神父「……成程のう。まさか彼らが魔王とその側近とは……俄かには信じられない話じゃ」

僧侶「でも、本当なんです神父様!」

シスター「……落ち着きなさい僧侶。私達は貴女が嘘をついているとは思っていませんよ」

神父「うむ……人間と同じように生きたいという貴殿らの願い、確かに聞き届けた」

魔王「! では……」

神父「早々に取りかかるとしよう……浄化の儀の準備を。シスター、僧侶、手伝っておくれ」バサッ

シ・僧「はい!」

689: 2015/09/24(木) 00:32:11 ID:ufw6xI7w

魔・側「……ありがとうございます」ガバッ

神父「頭を上げなされ、魔王殿、側近殿。今や貴殿らは大切な客人じゃ」

魔法使い「……化け物なのに?」

神父「ここへ来る事ができたという事実があれば、そんなものは些細な問題にすぎんよ」

戦士「?」

勇者「……」

シスター「では皆さん、準備が整うまで少々お待ちください」ペコリ カツカツカツ……パタン

698: 2015/11/18(水) 23:06:47 ID:DY9V5V6o

少女「良かった……これでほんの少しは楽になれるよね!」ホッ

側近「だと良いがな……」

魔王「き、緊張するな……この体はどうなってしまうのか」

姫「きっと大丈夫ですわ、魔王様。どうか神父様を信じてくださいませ」

魔王「う、うむ。姫がそう言うなら」

魔法使い「……お姫様。こっちに来てください」グイッ

姫「え?」

魔王「あ……」

魔法使い「」ギロッ

姫「!?」

魔王「ひッ」ビクッ

戦士(やっぱ姫様が魔王達と仲良くしてんのが嫌なのか……)

699: 2015/11/18(水) 23:07:49 ID:DY9V5V6o

少女「……」

妖精「」パタパタ

勇者「……隣、良いか?」

少女「! ……どうぞ」コクン

勇者「ありがとう」

妖精「」ジーッ

勇者「……君は」

少女「え?」

勇者「何時から……彼らと住んでいるんだ?」

少女「何時から? ……えっと……」

700: 2015/11/18(水) 23:08:47 ID:DY9V5V6o

勇者「……済まない。不躾な質問だったか」

少女「あ、ううん、そんな事ないよ! ……かれこれ、10年位になるかな」

勇者「そうか」

少女「うん」

勇者「……」

少女「……」

妖精「」パタパタ

側近(! 少女……)ピクッ

魔法使い(勇者? なんであの女と一緒に……)

701: 2015/11/18(水) 23:10:25 ID:DY9V5V6o

勇者「君は、彼らの事は……好きか?」

少女「勿論だよ! 私にとってかけがえのない家族だもの。勇者様の家族はどんな人?」

勇者「! 俺は……」

少女「?」

勇者「俺の……家族は……」グッ

魔法使い「……あんた、ちょっと黙りなさい」ジロッ

少女「ッ!」ビクッ

勇者「魔法使い」

魔法使い「勇者。無理に答える必要なんてないわよ」

勇者「だが……」

702: 2015/11/18(水) 23:12:03 ID:DY9V5V6o

少女「ご、ごめんなさい……訊いちゃいけない事だった?」

勇者「いや、こちらこそ……済まない」

魔法使い「ふん」

側近「……」

僧侶「お待たせしました、術式の準備が……あ、あの、どうかしましたか?」

魔王「あ、いや、大丈夫だ。気にしないでくれ」

僧侶「そうですか? では……魔王さんと側近さん、どうぞこちらへ」

側近「……少女達は一緒ではいけないか?」

僧侶「施術中、万が一の事があってはいけませんので……それでも宜しければ」

703: 2015/11/18(水) 23:17:05 ID:DY9V5V6o

少女「だ、大丈夫! 行くよ!」

少女(それにここで待ってても、気まずくなっちゃいそうだしね……)チラッ

魔法使い「……」ジロリ

僧侶「わかりました、それではご一緒にどうぞ」スッ

戦士「なあ僧侶、その術ってのはどれ位かかるんだ?」

僧侶「さあ……私も詳しくは知らないので。すみませんが戦士さん達はもう少しここで待っていてください」

勇者「」コクリ

戦士「おう、わかった」

魔法使い「はあ……しょうがないわね」

魔王(いよいよか……)ゴクリ

側近(……)

704: 2015/11/18(水) 23:18:41 ID:DY9V5V6o

――――
――

僧侶「神父様。魔王さん達をお連れしました」ギィィ……

神父「ありがとう僧侶……おや? 少女さんも一緒に来たのかね」

僧侶「は、はい。宜しかったでしょうか」

神父「施術の邪魔をしなければ構わんよ。ではお二方、あの魔法陣の中央に行って貰えるかのう」スッ

魔・側「」コクリ ザッザッ……

神父「うむ。後は変化を解いて、最後にこちらを向いて横へ並んでおくれ……それで貴殿らの準備は万端じゃ」

シスター「……少女さんと妖精さんはこちらへ。施術中は何が起こっても絶対に陣へは近付かないでくださいね」

少女「は、はいっ。妖精さん、一緒に大人しく待っていようね?」ギュッ

妖精「」ソワソワ

705: 2015/11/18(水) 23:21:12 ID:DY9V5V6o

僧侶「シスター……私はどうしましょう?」オズオズ

シスター「貴女は少女さんのお傍へついていておあげなさい」カツカツ……ピタリ

僧侶「わ、わかりました」

魔王「いよいよだぞ……緊張しておるか弟」

側近「ああ……だが兄上もだろう?」

魔王「う、うむ……とりあえず深呼吸をして落ち着こう」スー……ハー……

神父「さてお二方、心の準備は良いかのう? ……では早速始めるとしよう。補佐を頼むぞシスター」

シスター「はい」

僧侶(嗚呼……いよいよなのですね……!)ドキドキ

少女(2人とも、頑張れ……!)グッ

神父「……主よ、我らとの共存を願う魔の者達に希望を……」ブツブツ

シスター「……―――。~~……!」

706: 2015/11/18(水) 23:23:34 ID:DY9V5V6o

――――
――

『――兄上』

『何だ?』

『もしも……もしもだよ? ここから解放されて、自由になれたら何がしたい?』

『急に言われても困るな……』

『ご、ごめん』

『別に責めてなんかいないさ。そうだな、そんな日が来るかどうかはわからないが……』

『うん』

『俺は……城を飛び出して外の世界を見て回りたい』

『外?』

『ああ。今はまともに外出する事もままならないが、それが叶うならこれ程幸運な事はないと思う』

『……そっか。確かにそうだね』

707: 2015/11/18(水) 23:25:25 ID:DY9V5V6o

『その時は勿論お前も一緒だからな、弟』

『! うん……!』

『じゃあ今度はそっちの番だな。お前は自由になれたら何がしたいんだ?』

『あ、その……僕は……』

『何だよ、お前から訊いといて……そんなに言いにくい内容なのか?』

『……ちょっとね』

『思い切って言ってみろよ。絶対に誰にも言わないからさ』

『本当!? じゃ、じゃあ言うよ』

『ああ』

『兄上、僕は……僕はね――』

708: 2015/11/18(水) 23:37:26 ID:DY9V5V6o

――――
――

『……さん……そっき……ん…………側近さん!』

側近「!?」パチッ

少女「良かった……気が付いたみたいだね」ホッ

側近「……少女」

魔王「全く、施術の最中に気を失ってしまうとは……神父殿とシスター殿の声が子守唄にでも聞こえたか?」

妖精「」ニヤニヤ

側近「そ……そんな訳ないだろう! 心配をかけたな、少女」ムクッ

少女「ううん。ちょっとびっくりしちゃったけどね」

709: 2015/11/18(水) 23:39:31 ID:DY9V5V6o

側近「……ところで兄上。俺が気絶して術に何か影響は出なかったか?」

魔王「ああ、それなら心配いらない。神父殿によれば、体の変化に対する防衛本能がやや過剰に働いただけとの事だ」

魔王「正直私も少し眩暈がしたが、何とか耐える事ができた」

側近「そうか……」

僧侶「ふっふっふ、では側近さん。鏡を見てみてくださいな」スッ

側近「……これは……!」

シスター「神父様」

神父「ふむ、彼らの反応を見る限り……儀式は概ね成功したと言って良いかのう」

716: 2015/12/27(日) 23:57:55 ID:2CPeUfSA

側近(顔が少しだけ……人間に近付いている)マジマジ

魔王「弟、弟。ほら見てくれ、肌の鱗が少し減っておるぞ!」

側近(額の角もかなり小さくなっているな……)サスサス

魔王「角と牙もな、前よりも目立たなくなったぞ。ほら、ほらっ」

側近「……」

魔王「おーとーうーとー!」グイグイ

側近「ええい少し黙っとれい兄上!!」

魔王「」ガーン

717: 2015/12/27(日) 23:59:35 ID:2CPeUfSA

少女「ま、魔王様……気持ちはわかるけどあまり落ち込まないで! 凄く素敵だよ?」

魔王「ほ、本当かっ!?」パァッ

妖精「……」ジロジロ

側近「! しょ、少女……こっちはどうだ?」

少女「うん、側近さんも良い感じだよ!」

側近「む、そうか……」

側近(よっしゃあああああああああああああッッッッ!!!!)グッ

僧侶「お2人とも、かなりはしゃいでおられますね」ニコニコ

シスター「ええ、本当に」

718: 2015/12/28(月) 00:03:20 ID:x1rVbgAg

神父「ほっほっほ。新たな外見がお気に召して頂けたようでなによりじゃよ……して、魔力の方は如何かのう?」

魔王「……そう言えば、以前よりはやや弱まっておるような」スッ

側近「! ……そうか。兄上はそうなのか」

魔王「弟……まさか」

側近「……どうやら俺の方はあまり変わらんようだ。多少御し易くはなったかもしれんが」

少女「!」

僧侶「そんな……!」

魔王(……末子、だからなのか)ギリッ

神父「やはり個人差があるようだのう。力不足で誠に申し訳ない」ペコッ

側近「神父殿のせいではありません。寧ろ魔王の血筋である我らを……ここまで変えて頂けただけでも御の字です」

719: 2015/12/28(月) 00:07:20 ID:x1rVbgAg

神父「むう……種族の差は本当に大きな課題じゃな……あの時はあまりにも上手く行き過ぎた」

僧侶「!」

神父「ほんの少しの差異を残し、ほとんど人間に近い容姿に生まれ変わったからのう……」

魔王「? ……!」ピクリ

側近「兄上、もしや……!」

少女「え? 知り合いなの?」

側近「……我らの憶測が正しければな」

魔王「神父殿、私達の前に施術を行ったのはまさか……!」

側近「今から約40年程前ではないか!?」

神父「……申し訳ないが、その詳細を貴殿らに教える事はできんよ」

720: 2015/12/28(月) 00:12:30 ID:x1rVbgAg

魔王「な、何故だ!?」

神父「その者は、今はもう別の生を歩んでいるのでのう。それを阻むような真似はしたくないのじゃ」

側近「……重要な個人情報という訳か」

神父「うむ……どうか理解して貰えないかのう?」

魔王「ッ……わかりました」

側近「寧ろ、心当たりがある者が無事に生きている可能性を知られただけで有難いです」

神父「なら良かった……ではそろそろ礼拝堂へ戻るとしよう」

シスター「そうですね……御二方もよろしいですか?」

魔・側「」コクリ

少女「お姫様達、待ちくたびれてなきゃ良いんだけど……」

妖精「」パタパタ

721: 2015/12/28(月) 00:14:50 ID:x1rVbgAg

――――
――

姫「! お帰りなさい、その……結果は如何でしたか?」ドキドキ

少女「ただいまお姫様……うん、何とか成功したよ」

側近「待たせて済まなかったな」

魔王「これで少しはマシになったと思うが」

姫「あ……魔王様、角が短くなられましたね……鱗も」スッ

少女「そうなの! 側近さんも顔つきとか色々変わってねー」

姫「まあ、本当ですわね」

魔王「おかしくはないだろうか?」

姫「い、いいえ! 全然」ブンブン

側近「……それは良かった」ホッ

722: 2015/12/28(月) 00:16:17 ID:x1rVbgAg

勇者「……では、これで城へいけるな」

戦士「だな」

魔法使い「ふん。用が済んだならさっさと行くわよ」スタスタ

僧侶「魔法使いさんったら……で、では行きますね、神父様、シスター」

神父「うむ。後でまたゆっくり今までの事を聞かせておくれ」

シスター「ええ、私も是非聞きたいですよ……1つ残らず、包み隠さず、ね」ニッコリ

僧侶「ひ、ひぃっ……!」ビクッ

少女(僧侶さん……大丈夫かな)

姫(そんなにシスターは恐ろしいんでしょうか?)

妖精「……?」コテン

723: 2015/12/28(月) 00:20:13 ID:x1rVbgAg

魔王「……施術を本当にありがとうございました」ペコリ

側近「このご恩は決して忘れません」ペコリ

少女「!」ペコッ

シスター「また何時でもいらしてくださいね。神父様と共にお待ちしておりますので」

魔王「うむ。是非そうさせて貰おう」

神父「……願わくば、貴殿らの行く先に幸多からん事を」

魔・側「ッ……」ジワッ

少女「ふ、2人とも……!」

魔王「す、すまん少女。少々感極まってしまってな……もう大丈夫だ」ゴシッ

側近「ああ」ササッ

724: 2015/12/28(月) 00:25:37 ID:x1rVbgAg

姫「本当によくやってくださいましたね。どうか私からもお礼を言わせてください」

神父「勿体なきお言葉……我らは己のやるべき事を果たしただけですぞ」

姫「それでも、です……私の友人達のために……本当に……」ジワッ

少女「お、お姫様」オロオロ

魔王「姫……!」アワアワ

妖精「!」オロオロ

シスター「姫様……!」

側近「……」

僧侶「全く、本当に罪な方々ですね」ズイッ

側近「ぬおっ!?」ビクッ

725: 2015/12/28(月) 00:27:44 ID:x1rVbgAg

僧侶「特に魔王さん。姫様の心を掻っ攫っていかれるなんて……うふふふふ」ハァハァ

側近「き、貴様は……一体……!」

僧侶「嗚呼、すっかりカミングアウトが遅れてしまいましたが、私実は異種間恋愛信奉者でして……」

側近「ふぁアッ!?」

僧侶「特に魔物と人間の処j……ゴホン、女の子の絡みが3度の飯より好きなんですよね~」フヒヒヒ

側近「な、何を言って……」

僧侶「あ、因みに私自身も願わくば素敵な魔族の殿方と結ばれたいなーとか思っていてですね」ワキワキ

側近「……」ゾワゾワ

726: 2015/12/28(月) 00:29:33 ID:x1rVbgAg

僧侶「正直、側近さんは私の好みドストライクという……!」ドキドキ

側近「」

僧侶「まあ、少女さんのためにも潔く身は引きますけどね~」ウンウン

側近「」

僧侶「応援してますよ! 心の底から!! ……あ、挙式の際は是非こちらで」グッ

側近「」

僧侶「とにかく滾るんですよ、妄想でも現実でも……例えば」ペラペラ

727: 2015/12/28(月) 00:31:34 ID:x1rVbgAg

――――
――

魔王「や、やっと姫が落ち着いてくれた……待たせたなおとう……」

側近「」チーン

魔王「おとうとおおおおおおおおお!!!?」

僧侶「あ、遅いですよ魔王さん達」

魔王「僧侶、何があったのだ一体……!?」

僧侶「いえ、私が少々自分の趣味嗜好の事を語っただけですが……どうやら側近さんには刺激が強すぎたようですね」テヘッ

側近「兄上……人間ッテ怖イ……」ガタガタガタ

魔王「何を話したんだ貴様ああああああ!!!!」

僧侶「そんな大した事は……あ、せっかくなので魔王さんにm」

シスター「にも、何です?」ニコニコ

僧侶「」

733: 2016/01/31(日) 23:47:43 ID:oFtd48ak

――――
――

少女「魔王様。側近さん具合悪いの?」

魔王「うむ、少しな……」

姫「このまま城へ直行して大丈夫でしょうか?」

側近「だ、大丈夫だ……落ち着いてきたから」

僧侶「さァ、早い所勇者さん達に追いつきまショウソウシマショウ」ピシッ ザッザッザッザッ……

妖精「……」パタパタ

魔王「……あ」

少女「どうしたの?」

734: 2016/01/31(日) 23:51:02 ID:oFtd48ak

魔王「そういえば、お前の事を浄化して貰うのをすっかり忘れていた……!」

少女「え? 私?」

側近「! そうだ……すまない少女、俺達の事ばかり気にするあまりお前の事を後回しにしていた」

少女「別に良いよ~。特に何ともないし、重要な事でも……」

魔王「何を言っておるのだ! 我らにとってはこれ以上ない位重要な事だ」

側近「同感だ」

妖精「」コクコク

僧侶(本当に愛されてますねー、少女さん)

735: 2016/01/31(日) 23:53:18 ID:oFtd48ak

少女「で、でも今更戻るのも……」

側近「そうだな……もどかしいが、帰る前にもう1度教会へ寄るとしよう」

魔王「うむ。今度は忘れぬようにしないとな」

少女「もう、大袈裟だなー」

姫「少女さん……そんな他人事みたいに」

僧侶「……」ジーッ

少女「? 僧侶さん?」

僧侶「……あ、ごめんなさい。何でもありませんよ」フルフル

僧侶(そう言えば、少女さんは長い間魔王城で暮らしていた割に……特に大きな異変は見られませんね)

僧侶(浄化の必要あるんでしょうかね……?)コテン

736: 2016/01/31(日) 23:58:28 ID:oFtd48ak

――――
――

シスター「……」

神父「ようやく落ち着いたようじゃのう」

シスター「神父様……あの子は相変わらずでした。良くも悪くも」ハアッ

神父「ほっほっほ。まあ、そう悪い事ではあるまい……信仰心も変わっておらぬようだしの」

シスター「それはそうですが……」

神父「……ところでシスターや。勇者殿に言わなくて良かったのかね?」

シスター「……何をです?」

神父「そなたが……かつて先代勇者殿と共に旅をした仲間の1人である『僧侶』であったという事を」

シスター「……」

737: 2016/02/01(月) 00:02:45 ID:VwNVsUyY

神父「あの日、いなくなった彼女の身を案じて此処でシスターとして過ごしてきたと」

シスター「……それを明かした所で、過去は何も変わりませんよ」

神父「じゃが、せめて勇者殿に先代勇者殿の事を話しても良かったのではないかな?」

シスター「私のような臆病者には、そんな資格はありません」

神父「……」

シスター「あの日……自分を磨き、人を助けながら勇者様を捜すと言って別れた『剣士さん』と『魔導士さん』」

シスター「彼らはきっと、今も何処かでそれを続けている筈です……私なんかとは違って」

シスター「勇者様が此処に戻って来た時のために都へ留まると決めた私を……あまり良く思ってはいないでしょう」

738: 2016/02/01(月) 00:06:04 ID:VwNVsUyY

神父「そう後向きな事ばかり言うでない。主が見ておられるぞ」

シスター「ですが……!」

神父「シスターや、こう考える事もできよう……そなたが此処に留まっておったからこそ、先代勇者殿がどうなったかを真っ先に知る事ができたと」

シスター「!」

神父「そしてそれを2人に伝えられるのはそなただけじゃぞ? ……持っておろう? そなたらがかつて旅を共にした腕輪を」

シスター「……」コクリ

神父「ならば、伝えられるじゃろう……彼らも同じように持っておればのぅ」

739: 2016/02/01(月) 00:08:00 ID:VwNVsUyY

シスター「……」ジワッ

神父「そなたは、今日のためにこの40年余りの間、此処に留まり続けたと考えれば良いではないか。のぅ?」

シスター「……は、い」ポロポロ

神父「彼女のために祈りなさい。そして思いっきり泣くと良い……今なら主もお許し下さるじゃろう」ポンポン

シスター「うぅ……うぁ、あ……」ポタッ……パタタッ……

シスター(勇者様、こんなに……遅くなって、しまいましたが……今からでも、願う事が許されるならば)

シスター(どうか……どうか安らかに……お眠りください……!)ボロボロ

748: 2016/03/06(日) 23:50:51 ID:9nZrrxCg

――――
――

都の城

兵士1「姫様……よくぞご無事で!」

兵士2「知らせを聞いて、皆お戻りになられるのを今か今かと待ち侘びておりました!」

姫「本当に心配をかけましたね。ところで陛下は……お父様はお戻りですか?」

兵士3「勿論です。陛下は姫様の事を誰よりも……」

?「姫様ー! お帰りなさーい!!」パタパタ

姫「影姫! 今まで私の身代わりご苦労様でした」

影姫「はあ、はあ……大変でしたよ色々と~。給仕さんのサポートがなければどうなっていたか」

749: 2016/03/06(日) 23:53:18 ID:9nZrrxCg

姫「とても疲れたでしょう、今日の夜から暫くゆっくりお休みなさい」

影姫「はい~……」グッタリ

魔王(姫と……瓜二つの娘……!)

側近(姫君の影武者か……話には聞いていたが、他人でここまで似ているとは)マジマジ

影姫「あの、姫様、ところでこの人達が……」

姫「ええ。勇者様一行と……私の大切な友人達ですわ」

影姫「ほえー、何時の間にこんなに……あ、僧侶ちゃん!」

僧侶「影ちゃん、お久しぶりですね」ヒラヒラ

750: 2016/03/06(日) 23:55:37 ID:9nZrrxCg

影姫「噂は聞いてたよー! 私も心配してたんだから!!」

僧侶「ごめんなさい。でもこれも私の夢の実現のためなのです……!」グッ

影姫「そ、そっかー……」

戦士「僧侶、知り合いだったのか?」

僧侶「知り合いも何も、影ちゃんとは少し前まで教会で一緒に育った仲なんですよ」

魔法使い「ふうん……それから影武者として召し抱えられたって所?」

僧侶「ええ。因みに私が都を出たのはそれからもうしばらく後の事になります」

魔法使い「そこまで訊いてないわよ」

751: 2016/03/06(日) 23:57:36 ID:9nZrrxCg

影姫「あ、申し遅れました、姫様の影武者をしている影姫と申します~。勿論身代わりの時はこんな言葉遣いじゃないですよ?」

姫「ふふ、貴女は本当に良くやってくれています」

影姫「ありがとうございます」

魔王(本物と影武者が、こんなに長く近い場所にいられるのが許されているとは)

側近(この都の中は……それ程平和と言う事か)

僧侶「影ちゃん、そういえばお兄さんは?」

影姫「ああ、兄様ならすぐに……」

?「……姫様」

752: 2016/03/06(日) 23:59:21 ID:9nZrrxCg

姫「! 王側……」

僧侶「あら、噂をすれば」

王の側近「よくぞ戻られました。謁見の間で陛下がお待ちですので、すぐにそちらへ……」

姫「元からそのつもりですわ。さあ皆さんもこちらへ」ザッザッ

王側「……」ジロリ

魔王「!」ビクッ

少女(舞踏会の時も少しだけ見たけど……やっぱりちょっと恐そうな人だな)

側近(勇者達はともかく、こちらは姫君の友人を名乗る素性の知れぬ者達……警戒されても無理はない)

753: 2016/03/07(月) 00:02:56 ID:6xxoDwLA

僧侶「もう、少し見ない間にすっかり仕事人間ですね~」

戦士「なあ僧侶、あいつとも教会で一緒だったのか?」ヒソヒソ

僧侶「ええ。王側さんは影ちゃんの実のお兄さんで、その優秀さを買われて影ちゃんと一緒にお城へ召し抱えられたんですよ」ヒソヒソ

少女「す、凄いんだね」

妖精「」パタパタ ソワソワ

姫「……皆さん、そろそろ着きますのでどうか静粛に」

魔王「あ……う、うむ」ドキドキ

側近「……承知した」

少女(緊張するな……)

勇者「……」

754: 2016/03/07(月) 00:16:44 ID:6xxoDwLA

王側「陛下、姫様をお連れ致しました。勇者殿御一行と……ご友人達も一緒のようですが如何致しましょう」

『……良い、入れ』

王側「は」ギィィ……



謁見の間

王「……」

姫「……」

王「……御苦労であった。お前と影姫は下がるが良い」

王側「……は」ペコ……ススッ

影姫「はい」ペコリ ススッ

755: 2016/03/07(月) 00:19:08 ID:6xxoDwLA

王「姫よ……良くぞ無事に帰って来てくれた」

姫「……ご心配をお掛けして申し訳ありません。お父様」

魔・側「……」ドキドキ

少女「……」ドクッ……ドクッ……

王「……勇者よ、良くぞ魔王を倒し、姫を救い出してくれた。都の代表として礼を言わせてもらおう」

勇者「……勿体無きお言葉です」スッ

王「勿論、姫の友人達にもだ……何時知り合ったのかは知らぬが、本当に感謝している」

魔・側「……は」ペコッ

少女「!」ペコリ

756: 2016/03/07(月) 00:23:55 ID:6xxoDwLA

姫「……それを含めて、私達に事の顛末を説明させて頂きたく存じます」

王「うむ、良かろう。では話しておくれ……ここに魔王とその仲間がいるという理由も含めてな」

『!?』

戦士(ば、ばれてやがる……!?)

僧侶(! まさか……)

魔王「な、何故、我らの正体を……?」

王「さる者からの知らせでな……案ずるな、ここまで来られた貴殿らを責めるつもりは一切ない」

757: 2016/03/07(月) 00:26:34 ID:6xxoDwLA

魔法使い「! ……彼らに、罪はないと……?」ピクッ

王「うむ。でなければとてもここまでは来られまい」

少女(あ……まただ)

側近(神父殿達といい、この王といい……)

魔王(何故我らの正体を知った上で、敵意を向けずにいてくれるのか……)

王「……どうした、顛末を説明してくれるのだろう? 早速始めて貰おうか」

姫「ッ! は、はい、ではまず……私が彼らに初めて出会った日の事からお話致します」

767: 2016/04/15(金) 00:11:15 ID:/3duFgzk

――――
――

姫「――そうして今に至ります」

王「ふむ、成程……長きに渡る報告御苦労であった。そして……」スッ……ザッザッ

魔王「ッ……!」ビクッ

王「良くぞ無事に戻って来てくれた……我が娘よ」ギュウッ

姫「!? お、お父様……!」カアアッ……アワアワ

勇者「……」

戦士「お、おおう……王サマもやっぱり人の親って事か」

魔法使い「馬鹿、当たり前でしょ」

僧侶「子供を心配しない親はいませんよ~……多分」ボソッ

768: 2016/04/15(金) 00:13:05 ID:/3duFgzk

魔王(余程……姫の事を心配しておったのだろうな)

少女「わ、わあ……ねえ側近さん、お父さんってあんな感じなのかな?」

側近「ああ、きっとそうだ」

王「……そなた達に見苦しい所を見せてしまったな」スッ

僧侶「め、滅相もございません!」

魔法使い「……お気に、なさらず」

魔王「王殿。この度は貴殿の御息女を利用してしまって……本当に申し訳ない」ガバッ

側近「どれ程詫びようとも、許される事ではなかろうが……」ガバッ

少女「! ご、ごめんなさい……!」ガバッ

769: 2016/04/15(金) 00:15:40 ID:/3duFgzk

王「頭を上げて頂きたい。先程も申した筈だ……貴殿らを責める気はない」

魔王「だが……!」

王「魔王殿。貴殿はその腕を失ってまで姫を守られたではないか」

姫「……」ギュッ

王「それに私も常に此処に居られる訳ではない。魔王城から最も近い聖都に君臨する身として……他所との交流による情報交換が欠かせないのだ」

勇者「……」

王「それこそ……身内の氏を悲しむ間もない程にな。お前には何時も気苦労をかけさせてしまっているな……」

姫「い、いいえ、そのような事は……!」ブンブン

王「分かってくれていると一方的に思ってはいたが、やはり傲慢な考えのようだったな……」

770: 2016/04/15(金) 00:17:16 ID:/3duFgzk

僧侶「僭越ながら陛下、陛下の御力なくして、私達の平和も生活も有り得ません……それは姫様も良く理解しておられるかと」

王「そうか……そうだと良いがな」スッ

戦士(上……?)

王「私は常に見られておる……道を踏み外さぬように、天より見張られておるのだ」

姫「見張られている、とは……」

王「魔物達から民を完全に守る事ができる唯一の結界……それを施すに足る人格者が、此処の王であるか」

魔王(……名君であるかどうか、か)

王「代々、聖都の王の中に稀に道を踏み外す者が出た時……人の手のみならず天からをも重い罰を受けてきたという」コツ……コツ……

王「当然の事だ。聖都と呼ばれる場所の君主が悪しき者であって良い筈がない」

側近(……確かにな)

771: 2016/04/15(金) 00:19:43 ID:/3duFgzk

王「結界は悪しき魔物から民を守れはしても……悪しき人間からは守れない。その時民を守るのは我が兵士達だ」

王「そしてそれを動かせるのは王だ……この責務は誰よりも重い」

姫「お父様……」

王「……いや、違うな。私と同じかそれ以上に重い役目を背負っておる者がいる」ピタッ

僧侶「それって……」

王「……のう? 神父よ」クルリ

神父「いやはや……陛下にそのように仰られると恐縮してしまいますな」

772: 2016/04/15(金) 00:21:57 ID:/3duFgzk

姫「まあ、何時の間に……!」 

王「少し前に、王側に此処へ呼ぶよう命じておいたのだ……この方が、説明しやすかろうて」

魔王「説明、とは……?」

王「そなた達は疑問に思ってはいないか? 今の都が予想より……それ程様子が変わらぬという事を」

『……ッ!』

王「仮にも魔王という存在が倒されたというのにだ……これはな、我らが民を鎮めたからだ」

側近「何故、わざわざそのような事を……」

王「今の民は少々勘違いをしておるようであったからな……結界の事をな」

773: 2016/04/15(金) 00:24:36 ID:/3duFgzk

僧侶「どういう事ですか?」

神父「僧侶や、お前には言っておらんかったかのう? ……結界の加護はの、非常時のみならず我らの管理下で今も続いておるのじゃよ」

僧侶「……へっ?」ポカン

戦士「それって……つまりどういう事なんだ?」

勇者「……何時いかなる時であろうと、『真に邪悪な魔物や魔族』は聖都の中へは入れない」

魔法使い「!」

神父「うむ……運良く陛下が城へ戻られている時で良かったわい」

王「都中の民を1ヶ所に集めて今1度結界の事について私直々に説明し……あれは無害な魔物の悪戯とした」

774: 2016/04/15(金) 00:26:48 ID:/3duFgzk

神父「流石に全員を集める事は叶わなかったがのう……特に血気盛んな者達はすぐに都を出おった後じゃったわい」

王「先程まで、戻って来た彼らの事も説得しておってな……魔王城まで行った者達まで説得するのは流石に骨が折れた」

僧侶「……私達も、知らせを受けてすぐに行きましたもんね」

戦士「そういやそうだったな」

魔王「そ、それで……人々の不安や混乱が治まったというのか?」

王「勿論皆すぐには納得しなかったが、神父やシスターの協力で根気強く説得をした」

僧侶「あ、あの神父様、では先程仰っていた私達の事が有名になっているというのは……?」

神父「嗚呼、あれはのう……本当にお前達が関わっておるのか確認するために、ちとカマをかけてみたのじゃよ」

戦士「マジかよ……」

775: 2016/04/15(金) 00:32:58 ID:/3duFgzk

姫「私の事は……どう説明を?」

王「そこは影姫と王側が上手くやってくれた。臣下や兵達には民に御忍びで都の外へ出ておると伝えたよ」

側近「で、では俺と少女が都でやった事は……」

神父「悪戯に民の不安を煽っただけという事じゃのう……ほっほっほ」

僧侶「少女さん、それ後で詳しく教えて頂けませんか?」ワクワク

魔法使い「あんたはもっと自重しなさい」ギロッ

少女「その、つまり……魔王様と側近さんが悪者じゃないって知ってたから、神父様達は私達の事を受け入れてくれたんだね」

神父「そういう事じゃ」

776: 2016/04/15(金) 00:35:56 ID:/3duFgzk

王「しかし……以前の魔王出現の時は凄まじかった」

魔・側「!」ピクッ

王「無数の魔物や魔族が結界に特攻しては消し炭と化し、この世から消えていったという……私は城に匿われておった故、直接見てはおらぬがな」

少女「……」ギュッ

妖精「」ナデナデ

王「当時の私はまだ幼かった……ほんの5つか6つの頃の出来事であったからな」

姫「それ程前にあった事だったのですね……」

王「ああ……だが、それでもあの時の城内の、この上なく張り詰めていた空気は覚えておる。そして……」ジッ

勇者「?」

王「……先代の勇者殿の事もな」

勇者「……!」

777: 2016/04/15(金) 00:56:16 ID:/3duFgzk

王「思えばあれが、私の初恋でもあったか……ちと気恥ずかしいがな」

神父「私は今以上に未熟者の若造でしたな……」

僧侶「神父様にもそのような時代があったのですね」

神父「当たり前じゃろう。私を何だと思っておる」

僧侶「ご、ごめんなさい! ただちょっと想像できなくて……」

王「……まあ、そうであろうな。今とは色々なものが違っていた」

神父「一行の中で1番の年長者であった先代勇者殿。若く荒々しい印象のあった剣士殿。彼と同じ位若いが対照的に落ち着いていた魔導士殿。そして……最年少であった僧侶殿」

神父「それが当時の魔王を倒した者達だった」

『……』

778: 2016/04/15(金) 01:10:43 ID:/3duFgzk

王「勿論、年長者であった先代勇者殿もとても御若かった……確か勇者の親を産んで1年も経たずに旅に出られたのだったか?」

神父「ええ……陛下の仰る通りでございます」

勇者「……」

神父「愛する家族ともっと共にいたかっただろうに……彼女は世界のために旅に出た」

神父「それが彼女にとってどれ程重い決断であったのか、想像に難くはなかろう」

魔王「……」

王「勇者よ……私達から見たそなたの祖母殿は……誰よりも強く、慈悲深く……」



『まさに聖母と呼ぶに相応しい女性(ひと)だった』



784: 2016/05/29(日) 23:04:44 ID:ZM4bU01.

――――
――

城の外

戦士「はああ……緊張したぜ」ゲッソリ

僧侶「そ、そうですね……」ガクガク

魔法使い「まさか最後の最後でそいつがあんな事をするなんてね」ジロッ

少女「うう……」ショボン

妖精「」ショボン

魔王「あそこで少女の手を離れて王の髭を引っ張りに行くとは……」ズーン

785: 2016/05/29(日) 23:06:25 ID:ZM4bU01.

側近「恐らく今まで我慢してきた分が来てしまったんだろう……やはり悪戯好きの性には抗えなかったか」

姫「だ、大丈夫ですわ! 父も許して下さいましたし……」

勇者「……そういう問題ではないと思いますが」

魔王「ところで勇者達は……これからどうするのだ?」

勇者「! これから……」

魔法使い「そういえば決めてなかったわね。旅の目的は一応……終わったし」

僧侶「では今度は私の布教活動の御手伝いを……!」キラキラ

魔法使い「却下」

戦士「だな」

786: 2016/05/29(日) 23:10:30 ID:ZM4bU01.

僧侶「何故ですか!? これはとても崇高な……!」

魔法使い「自分の趣味が混じってる布教の何処が崇高なのよ!」

戦士「そうだそうだー!」

僧侶「じゃあどうするんですか! 私は一刻も早くここからまた離れたいんですよ!!」

魔法使い「こいつッ……! 今すぐふん縛って教会へ連行してあげましょうか……」チャキッ

戦士「手伝うぜ魔法使い……」ザザッ

側近「……どうやらまだ決め兼ねているようだな」

姫「あの、まだそんなに結論を急ぐ必要はないのでは……?」

僧侶「いいえ姫様、私は行かねばなりませんっ!! この素晴らしき教えを世に伝える為に……」グッ

魔法使い「戦士、準備はいい?」ジリッ……

戦士「ああ……」

787: 2016/05/29(日) 23:13:31 ID:ZM4bU01.

勇者「……とりあえずは」

魔・戦・僧「!」ピタッ

勇者「また今まで通り世界を回るか……どうせ帰る場所もないしな」

少女「!」

勇者「お前達はどうする」

戦士「……決まってるだろ」ニッ

僧侶「勇者さんがそう決めたなら」

魔法使い「それに従うだけよ……『今まで通り』ね」

勇者「……そうか」

魔王(何だかんだ言って、結局は彼を中心に動くのだな)

788: 2016/05/29(日) 23:16:55 ID:ZM4bU01.

魔法使い「まあ、どの道あたしがあんたといられる時間はあと僅かだしね……」

少女「え……それってまさか」

僧侶「あ、ああ違いますよ少女さん! 魔法使いさんの寿命がどうこうという意味ではなく……」

魔王「……書物で読んだ事がある。確か魔物の一部を体内に取り入れた者は徐々にそれが体に馴染んでいき……やがては」

魔法使い「黙りなさい。あんた達には関係ない事よ」フイッ

少女「魔法使いさん……」

魔法使い「言っておくけれど、あたしはこれからも全ての魔物を憎み続ける」ギロリ

魔法使い「よく覚えておきなさい……今度あんた達に会った時は、こんな風に話せるとは思わない事ね」ザッザッ

僧侶「あ、魔法使いさん! ……ごめんなさい、最後までずっとこんな調子で」

少女「う、ううん気にしないで!」

戦士「こんなんだが、まあ良いきっかけだな。名残惜しいけどな~」ポリポリ

789: 2016/05/29(日) 23:18:36 ID:ZM4bU01.

側近「……お前達には迷惑をかけたな」

魔王「本当にそうだな。私達の立場から言うのは何だが……気をつけてな」

僧侶「あの……また今度、私1人だけでも魔王城に御邪魔させて頂いてもよろしいですか?」

少女「あ……うん! いいよ」

側近「少女、勝手に決めるんじゃ……」

魔王「弟? 何か不都合な事でも有るのか?」

僧侶「うふふふふ……」ニコニコ

側近「……」ゾワワッ

戦士「僧侶、お前なー……」

勇者「……お前達も、元気でな」スッ

魔王「! ……ああ」ギュッ

796: 2016/06/30(木) 22:56:59 ID:NeeWSFIo

僧侶「……ああ! そうでした! 少女さん、最後に御近づきの印のこれを……きっとお役に立つ事があるはずです」ゴソゴソ

少女「これは……?」

僧侶「私に認められた方だけが持つ事を許される証明書のようなものですよ」

少女「??」

僧侶「何と説明すれば良いか……とりあえず、何処かの森でオークと女騎士の夫婦が住んでいる小さな建物を見つけたら、彼らにこれと私の名前を出して下さい」

少女「わ、分かった。ありがとう」

僧侶「きっと力になってくれますよ……今は彼らだけですが、いずれは……ふふふ」

少女「?」

妖精「……」

側近(何処までも得体の知れん奴だな……)

797: 2016/06/30(木) 22:59:29 ID:NeeWSFIo

魔王「少女、何を貰ったのだ? ……ほう、紋章か。中々凝っているな」マジマジ

少女「ねー」

勇者「……」ジッ

少女「勇者様?」

勇者「……様は、いらない」

少女「!」

勇者「少女、君も……元気で」

少女「……うん。勇者さんも」ニコッ

勇者「ああ」

798: 2016/06/30(木) 23:01:59 ID:NeeWSFIo

側近(勇者……まさか)ギリッ

僧侶「……年の差な~んて~糞喰らえですよ~……」ボソッ

側近「!!!!」ビクッ

僧侶「うふふふではではこの辺でー! 姫様どうか御達者で!!」ペコッ タタタッ

勇者「……」ペコリ ザッザッザッ……

戦士「おわッ! ま、待てよお前らー!」ダダダッ

魔王「……行ってしまったな」

側近「ああ」

少女「ちょっと寂しいね」

姫「ええ……」

799: 2016/06/30(木) 23:06:04 ID:NeeWSFIo

妖精「」ツンツン ビシッ

少女「! ……そうだね。妖精さんがいるから寂しくないね」ナデナデ

妖精「♪」エッヘン

姫「ふふ、そうでしたね」クスッ

魔王「では私達もそろそろ帰るとするか」

側近「そうだな……っと、その前に教会だ」

魔王「おお、そうであったな! 戻るのはそれからだ」

少女「帰ったらゆっくり休んで、これからの事を考えなきゃね!」

魔王「ああ」

800: 2016/06/30(木) 23:09:40 ID:NeeWSFIo

側近「……兄上」

魔王「うん? どうした弟よ」

側近「少し耳を貸してくれ」スッ

魔王「? 構わぬが、少女達には言えない事か?」

側近「いや……少女には城に戻ってから話す」

魔王「そうか……?」

少・姫「?」

妖精「……」ジトーッ

側近「……」ボソボソ

魔王「……!」フムフム……

801: 2016/06/30(木) 23:13:01 ID:NeeWSFIo

側近「どうだろうか」

魔王「名案だな……! 詳しい事は後でじっくり決めるとしよう」

側近「気に入って貰えて何よりだ」

魔王「出発は何時にする?」

側近「少女の髪が戻ってから」

魔王「む……それなりに先だな。だがかえって好都合なのかもな」

側近「だろう? 準備も必要だしな」

魔王「うむ」

少女「……何だか楽しそうだね」

姫「そうですわね」

802: 2016/06/30(木) 23:14:51 ID:NeeWSFIo

少女「あ、はーい! じゃあお姫様、またねー」タタッ

姫「ええ、また遊びに行きますわ。少女さん達も、是非何時でもいらしてくださいね」ニコッ

少女「うん!」

魔王「またこちらから手紙を送ろう」

姫「お待ちしております」

側近「では、失礼する」ペコッ

妖精「」フリフリ

姫「お気をつけて……」ペコリ

812: 2016/08/15(月) 22:35:43 ID:JbGmdCmk

――――
――

数日後 魔王城のとある一室

少女「魔王様ー! 側近さーん! 入るよー」ガチャッ

魔王「うおおおおおお!!!!」ジャランジャランジャラン……

側近「はああああああ……!!!!」ブンッブンッ

少女「2人共、そろそろ休憩にしたら? もうお昼だよー」

魔王「む? もうそんな時間か……」シュッ

側近「鍛錬に夢中で気付かなかったな……」シュンッ

少女「はい、すぐに食べられるようにサンドウィッチを作ったんだけど……」

魔王「おお、ありがとう少女! 助かるぞ」モグモグ

側近「ありがとう、少女」スッ

少女「えへへ、どういたしまして」

813: 2016/08/15(月) 22:37:24 ID:JbGmdCmk

側近「……少女、良ければこの後俺の部屋に来てくれないか」

少女「え? 良いけど……」

魔王「ごほん! ……弟よ、ちょっと良いか?」クイッ

少女「?」

側近「……何だ兄上」

魔王「お前まさか少女を口説くつもりか?」ヒソッ

側近「だったらどうした」

魔王「許さんぞ」

側近「」

魔王「私の目が黒いうちは少女に手を出す事は断ッじて許さん」ビシッ

814: 2016/08/15(月) 22:40:37 ID:JbGmdCmk

側近「……だがあの時兄上は確かに少女を頼むと」

魔王「え? あんだってェ?」

側近「なっ……」

魔王「ふ……あの時は自分が氏ぬと思ってああ言ったのだ。だが生きているからには話は別だぶぁぁぁかめ!!!!」ニタァッ

側近「……」ワナワナ

魔王「残念だったな」

少女「2人とも、食べないのー?」

魔王「おお、すまぬ少女。すぐに頂こう……では弟、そういう事だから!」ポンッ

側近「……」ギリィィ……ッ

815: 2016/08/15(月) 22:43:04 ID:JbGmdCmk

魔王(……まあ、こうは言っても本気でそう思っている訳ではないのだがな)

魔王(私はこれから先誰かと結ばれる気はないが……お前にまで強制はしないさ)

魔王(しかし少女は、長い間我らと共に暮らしてきた大切な家族だ)

魔王(そんなお前達が夫婦となるのを見るには……情けない話だが少々心の準備がいる)

魔王(せめてこれ位は……許してくれるだろう?)ニッ

816: 2016/08/15(月) 22:44:58 ID:JbGmdCmk

側近「兄上め……」ギュッ

少女「側近さん?」ヒョイッ

側近「ッ!?」

少女「どうしたの? まさか、何処か具合悪いの?」オロオロ

側近「あ、いや……そうではない」

少女「なら良かった」ニコッ

側近「……俺も頂こう。せっかく少女が作ってくれたのだからな」スッ

少女「! ……うんっ」

側近(貴方の思っている事などお見通しだ……馬鹿兄貴め)パクッ

側近「……ッッッ!?」ブハッ

817: 2016/08/15(月) 22:48:47 ID:JbGmdCmk

少女「そ、側近さん!?」

魔王「どうした弟!!」

側近「ま、マスター、ドが……中に大量に……!」ゲホゲホ

少女「え? ……まさか……」クルッ

妖精「~~~ッッッ!!!!」ケーラケラケラ

魔王「やはりお前か……」

少女「妖精さん……!」

側近「小妖精よ……今日という今日は……」ヒリヒリ……チャキッ

妖精「!」パタパタパタッ

側近「逃がッ……さん……ッ!!!!」バッ

魔王「こらこら、あまり暴れるでない!」

少女「もう、2人共! いい加減にしなさーい!!」

818: 2016/08/15(月) 22:50:30 ID:JbGmdCmk

――――
――

『姫へ

手紙を出すのが遅くなってしまってすまない。

あれから私達はこれからどうするかを話し合った。

奇しくも生き延びたこのちっぽけな命で、一体何ができるのか。何をするべきなのか。

そしてその結果――しばらく家族皆で旅に出る事になった。

我が先祖が残したであろう禍根や爪痕は、恐らく世界各地にある。

全てを探し出す事は困難だろうが、できるだけ多くの場所を巡り、我らなりに償いをするつもりだ。

我らが何処までできるかはわからぬが、何もしないよりはマシだと信じたい。

そなたにも、時折こうして手紙で旅先の事を伝える。ささやかな土産もあれば付けよう。

勿論嫌でなければの話だがな。

では、そろそろこの辺で。

元・魔王より』

819: 2016/08/15(月) 22:52:51 ID:JbGmdCmk

姫「い……い……」プルプル

姫「嫌な訳ありませんわ! 嗚呼っ……出来る事なら私も共に……!」

給仕「あの、姫様……そろそろ午後の御勉強の御時間でございます」

姫「でも、それは所詮叶わぬ願い……口惜しい事ですわ」

給仕「姫様……」

姫「分かっているわ! すぐに行きます」

姫(そう、分かっている……魔王様達が、ただ遊びに行く訳ではない事は)

姫(例え体が自由になれても、お2人の心は未だ……『魔王』に囚われている)

姫(ならば私は……私に出来る事を……)グッ

給仕「……」

820: 2016/08/15(月) 22:58:19 ID:JbGmdCmk

――――
――

数ヵ月後

魔王「ぬううう……!」ジーッ

少女「魔王様、大丈夫? 少し休んだら?」

魔王「あ、ああ……平気だ。以前に比べれば大分邪眼の制御が出来てきた」ハァハァ

側近「それは良かった」

魔王「片腕でもやれる事がかなり増えた……うむ、やれば出来るものだな」ワキワキ

少女「私の髪も伸びてきたしねー」サラッ

821: 2016/08/15(月) 23:00:08 ID:JbGmdCmk

側近「いや、以前に比べればまだまだだ。後○○センチ○○ミリ足りん」ジッ

魔王「はっはっは、そうかそうか……気持ち悪いなお前」

側近「気持ち悪くて結構」

少女「そっか……じゃあ出発はまだまだ先だね」

魔王(何故普通に対応出来るのだ少女よ……! 少し位嫌がっても良いのだぞ!?)

側近(少女……本当にお前は愛おしいよ。この想いを抑えるのが苦痛になる程な)

少女「?」

妖精「……」ジトーッ

822: 2016/08/15(月) 23:02:21 ID:JbGmdCmk

――――
――

更に数ヵ月後――出発当日

魔王城前

少女「あの……本当に頼んで良いの? お留守番」

白獣「ええ! 主からの許可も頂きましたし」ニコニコ

側近「まさかあの神獣が快く再び召喚されるとは……」

魔王「う、うむ……これも少女の人徳のなせる技か」

黒獣「ふん、私はまだ引き受けると決めた訳では……」

白獣「黒様、何だか憧れていた新婚生活みたいですね~」ニコニコ

黒獣「今すぐ寝室へ行くぞ白娘えええええ!!!!」バターン

魔王「え、ちょ……!」

823: 2016/08/15(月) 23:05:58 ID:JbGmdCmk

少女「あ、あはは……あんまり暴れないでくれたら嬉しいな」

白獣「御安心を。少女さん達が不在の間は、しっかりと管理させて頂きます」グッ

少女「ありがとう、白獣さん」

白獣「私達には寝食は必要ありませんし、1日1回あちらへ戻る以外はほぼ此処で過ごせますからね」

少女「本とか、お風呂とかは何時でも好きに使って良いからね。部屋も私達の所以外は……」

白獣「ふふ、お気遣いありがとうございます」

魔王「神の代行者でもある神獣達にこのような事を頼むのは本当に心苦しいが……」

白獣「構いませんよ~。寧ろ、再びこの世界で人間のように暮らせる機会が得られて嬉しく思います」ニコニコ

側近「そう言って頂けると有難い」

妖精「……」パタパタ

824: 2016/08/15(月) 23:11:39 ID:JbGmdCmk

白獣「皆さん、どうかお気をつけて。例え転移魔法ですぐに戻れるとしても、何があるか分かりませんからね」

魔・側「ああ」

少女「うん!」

妖精「!」コクン

白獣「あ、それから少女さん。私が以前別れる前に貴女に言った言葉を覚えていますか?」

少女「あ……うん」

『これから先は、なるべく人間の友人を多くお作りなさい。勿論、人でない者達を否定する訳ではありませんが』

『自分と似たような姿形の友と接するのもまた、貴女のこれからの生を実り豊かにしますからね』

白獣「どうかあの言葉を……どんな時でも胸に留めておいて下さい」ギュッ

少女「……分かった」

825: 2016/08/15(月) 23:15:37 ID:JbGmdCmk

側近「……」

側近(まさか、俺と兄上の夢見ていた事がこうして叶う日が来るとはな……)

――――
――

『僕は……恋がしたい。こんな、化物な僕を、ありのままの僕を受け入れてくれて、お互いを尊重できるような女の子と』

『出来れば、何時か夢の中で逢った……あの子のような人と』

『恋をして……その、愛し合って……結ばれたい、な』

『……そうか。良いじゃないか』

『あ、ありがとう……!』

『んじゃあ、もしも俺達が自由になれたら、2人で世界を回りながらお前の嫁探しをしよう!』

『ええっ!?』

『何だ? 混ぜたのが気に入らなかったか?』

『ううん、そんなんじゃないけど……何だか言葉にすると凄いなあって』

『確かにそうだな……よし! じゃあそれまで互いに生き延びるぞ!! どんなに無様で、情けない事になってもな』スッ

『……うん!』スッ……コツンッ

826: 2016/08/15(月) 23:20:52 ID:JbGmdCmk

――――
――

側近(……まあ、既に相手は定めているが)チラッ

少女「~~~っ!」ワイワイ

白獣「……」ニコニコ

妖精「♪」パタパタ

側近(この旅の中で……果たして何処まで進展出来るか……)ペロリ

魔王(――などと考えておるのだろうな弟の奴は)チッ

魔王(まあ、流石にその頃には私も落ち着いて受け入れられるだろう……だがな)

魔王(婚前交渉だけは……それだけは本ッ当に許さんからな……!)ギラッ

827: 2016/08/15(月) 23:24:11 ID:JbGmdCmk

妖精「……」クイクイ

少女「! じゃあ、そろそろ行こうか」

魔王「そうだな」

側近「では、改めてこの城の事をお頼みする」

白獣「はい。黒様と共にお土産話を楽しみにしていますね」

少女「任せて! 2人だけじゃなくて、お姫様にも沢山伝えなきゃいけないんだから! ね、魔王様?」

魔王「む? ……うむ、そうだな」

白獣「ふふ、そうですか……では行ってらっしゃい。願わくば、皆さんの旅路に主と我らの御加護があらん事を」

魔・側・少「ありがとう」

妖精「」ペコッ

828: 2016/08/15(月) 23:29:10 ID:JbGmdCmk

『じゃあ……改めて』クルリ

少女「……」ニコッ

魔王「……」ニッ

側近「……」……フッ

妖精「♪」パタタッ



『行ってきます』



「最弱魔王様」少女篇
「最弱魔王の決戦」

――終わり

829: 2016/08/15(月) 23:38:56 ID:JbGmdCmk

以上です。
軽い気持ちで始めた拙作に、3年間お付き合い頂きありがとうございました。
彼らの物語は一旦ここで終わります。
しかしまだまだ書きたいネタはあるし、伏線も放置している物が多々あるので、また何時か続きを書きたいです。
それまでに短編や、勇者サイドの話は書くかもしれません。
もし良ければ、その時に再びお付き合い頂ければ幸いです。

最後になりますが、此処まで読んで頂き本当にありがとうございました!

830: 2016/08/16(火) 00:50:00 ID:lAmtjas6
3年間乙、良い作品だった

831: 2016/08/16(火) 12:45:19 ID:uSWBU/XU
素敵な物語をありがとうございました!
ご自身の作品をまとめてあるサイトがあれば教えて下さい

引用: 「最弱魔王の決戦」