84: 2014/08/07(木) 22:33:22.18 ID:nuqzGyh60
最初:提督「頼む、婚約者になってくれ!」ひとりめ 曙編
■ふたりめ
提督「おう。憲兵に見つからないようにな。ああ、ああ……おう、またな!」
妖精さん「どうした提督、電話なんぞして」
提督「うん? いや、ダチがケッコンカッコカリしたらしくてな。なんか帰省が縁、だとか」
妖精さん「ははあ」
提督「相手が駆逐艦ってのが……まあ付き合いは長くなりがちだしな、わからんじゃないが」
妖精さん「これのせいだろうな」
提督「うん? 命令書か?」
妖精さん「読むかよ」
提督「命令書なら読まないわけにいかんだろ。……げ、マジかよ……」
妖精さん「曹操の話をすると曹操が来る」
提督「俺んトコにも帰省命令書来てるし……俺も今度の休みには婚約者連れてくって手紙に書いてたわ……」
妖精さん「で、いるのか」
提督「……いねえ」
85: 2014/08/07(木) 22:35:10.64 ID:nuqzGyh60
妖精さん「どうする」
提督「まあ、先達に倣うかよ。そうなあ、今日最初に俺んとこ来たヤツに頼むか。秘書艦だし、赤城あたりが来るだろ」
妖精さん「慢心、環境の違い」
バーン!
白露「ていとくぅー! 今日も白露がいっちばーんに来たよぉー!」
提督「……」
妖精さん「……」
白露「……あれ? どーしたの?」
提督「おい、大丈夫だと思うか?」
妖精さん「男に二言はない」
提督「……仕っ方ねぇなあ! おい、白露」
白露「なになにー? 白露とお話したいの?」
提督「お前、今から俺の婚約者な」
白露「ふえっ!? え、え? 」
妖精さん「説明しろと言うのに」
提督「仕っ方ねぇなあ……」
86: 2014/08/07(木) 22:36:46.34 ID:nuqzGyh60
...
......
.........
提督「てなワケでな、一度田舎に帰らなきゃならんのだが、婚約者を連れてくことになってんだ」
白露「なるほどぉー。でも、あたしでいいの?」
提督「白露が一番に来たからな。ま、一番バカが貧乏くじ引いたと思え」
白露「えへっ、そうは思えないかなー♪」
提督「うん? ……ま、いいけどな。出発は明日の朝だ。準備だけしとけよ」
妖精さん「幼女趣味と言われるぞ」
提督「こいつもこないだ改になったし、まあ女学生くらいには見えんだろ。俺も仲間内じゃ若い方だしな」
妖精さん「おまえがそう言うならそうなんだろう。おまえの中ではな」
提督「随分引っかかるな言い方だなオイ」
白露「えっへへー、いっちばーん♪」
提督「……ま、大丈夫だろ」
97: 2014/08/08(金) 21:14:05.26 ID:k+EXhl6W0
...
......
.........
ガタンゴトン ガタンゴトン
白露「なんにもなくなってきたね?」
提督「ま、な。だが今日日、基地がないトコなんてそんなモンだ」
白露「鎮守府の周りはいつも人がいっぱいいるから、なんか変な感じ」
提督「今はな、どこも一番って訳には行かねえよ」
白露「ねー、ていとくぅ」
提督「ん?」
白露「それなら、深海棲艦との戦いが終わったら、どの街も一番に出来るかなぁ」
提督「……一番は一番なんだから、ひとつしかねぇだろ」
白露「そんなことないよ。例えば、白露は白露型の中で一番だけど、睦月ちゃんは睦月型で一番でしょ? 島風ちゃんは一番速いでしょ?」
提督「……まあ、そうか」
白露「そうそう。あたし、平和になったら、一番をたっくさん見たいんだー」
提督「……平和になったら、か。ま、頑張ろうぜ」
白露「うんっ!」
98: 2014/08/08(金) 21:14:49.09 ID:k+EXhl6W0
...
......
.........
提督「くぁ~、着いた着いた。久しぶりだな、ここも」
白露「ここが提督の故郷なの?」
提督「ああ、まあ……俺が一番好きな土地、だな」
白露「鎮守府より?」
提督「鎮守府はま、職場だからな。嫌いじゃないが、好きな土地、ってぇと違うな」
白露「そっか……じゃないよ、ダメだよ!」
提督「なにがよ」
白露「提督はみんなの一番なんだから、みんながいる場所も提督の一番じゃないとダメだよ!」
提督「……あん?」
白露「ダメだよぉ!」
提督「あー、なんだかわからんがわかったわかった。鎮守府も一番好きでいい」
白露「うん、よくできました!」
提督「おまえの一番はよくわからんわ……」
99: 2014/08/08(金) 21:16:19.06 ID:k+EXhl6W0
白露「そういえば、提督のおうちの人はお迎えに来ないの?」
提督「ちょっとな。ま、歩いても一時間もかかるわけじゃない。悪いが付き合ってくれ」
白露「はぁーい! それなら、提督のおうちまで駆けっこする?」
提督「島風じゃねぇんだから。それに、艦娘と俺じゃ勝負になんねぇよ」
白露「それもそっか」
提督「ッたく、見た目は変わっても中身は変わんねぇな、お前は」
白露「なにしろ一番だからね! 一番です!」
提督「いや、意味わかんねぇし……一番と言えばよ」
白露「え?」
提督「お前、よく俺んトコ一番狙いで来るだろ。あれ、なんなんだ」
白露「それはねー、ふっふー、ひみつ!」
提督「……なんなん?」
100: 2014/08/08(金) 21:17:02.39 ID:k+EXhl6W0
...
......
.........
提督「ここだ」
白露「わあ、大きい……」
提督「古いだけだ。ちょっと待て、鍵出すからよ……」
ガラガラッ
祖父「お? おう。帰ったか」
提督「……ああ、いたのか爺ちゃん。ただいま」
祖父「おう、おかえり。そらな。去年仕事もやめたし、やる事もなくてなあ」
提督「なら暇つぶしくらいにはなるだろうよ。参謀部から来てたと思うが、暫く泊まってくぜ。で、こっちが」
祖父「その前に、両親に挨拶して来い。……紹介もな。ワシはちょいとタバコ買ってくる」
提督「……ああ、っつかまだ吸ってたのかよ。老い先短ぇんだからそろそろタバコやめろよジジイ」
祖父「ケッ、バカ孫に心配される程老いとらんわ。ほれ、はよ行ってこい」
提督「ったく。ほれ、行くぞ白露」
白露「はぁーい? お、お邪魔しまーす!」
101: 2014/08/08(金) 21:18:13.04 ID:k+EXhl6W0
提督「……」
白露「ねーねー、提督のご両親はどこにいるの?」
提督「ああ、ちょっと待ってろ。もうすぐ……ほれ、ここだ」
白露「……? 誰もいないよ?」
提督「あんだろうが、仏壇。線香……あるな、マッチも……ある」
白露「えっ」
提督「ほら、白露。お前も婚約者なんだから、線香あげてくれ」
白露「あ、えっと」
提督「ああ、言ってなかったか。俺がガキの頃、深海棲艦にな。ほれ、線香」
白露「……うん」
リーーーン......
提督「……ただいま、ふたりとも」
白露「……」
提督「俺は無事でやってる。それと、コイツが婚約者の白露」
白露「……お邪魔して、ます」
提督「ッし、終わり! なんか飲もうぜ」
白露「……ね、提督」
提督「おう?」
白露「提督が海軍に入ったのって、ご両親が、その……」
提督「……ふん」
白露「あう。て、提督?」
提督「昔のことだ。ほれ、行くぞ」
白露「あ、頭、撫でないでよぉー!」
102: 2014/08/08(金) 21:19:33.69 ID:k+EXhl6W0
...
......
.........
祖父「それじゃ、暫くいるのか」
提督「一週間は休まされることになっててな。車券が指定だから戻るに戻れん」
祖父「バカ孫はいいが、白露さんが暇そうだなあ」
白露「あ、大丈夫です! あたし、なんでも一番楽しめちゃいますから!」
提督「……お前の一番はホントわかんねぇな……?」
祖父「クックック、ちと若いが、バカ孫にはもったいない娘さんじゃないかよ」
提督「うっせ」
白露「えへへ」
祖父「白露さん、ジュースでいいかね」
白露「ジュース! 大好きです!」
提督「爺ちゃん、俺のチューハイは?」
祖父「買ってきとるわ。今飲むか?」
提督「や、もう少ししてからでいいわ」
白露「いっただっきまーす♪」
103: 2014/08/08(金) 21:20:32.31 ID:k+EXhl6W0
...
......
.........
白露「それでですね、あたしが一番なのに、時雨がどーんって!」
祖父「クックック、愉快な鎮守府みたいだな、おい」
提督「ま、退屈はしねぇよ」
プシュッ
提督「……うん?」
祖父「どうした?」
白露「ていとくぅー、聞いてるのー?」
提督「聞いてるよ! いや、なんか……味が……って、爺ちゃん」
祖父「あん?」
白露「ひくっ」
提督「これ、ジュースだぞ」
祖父「……あ? ワシは確かにジュースとチューハイを……あ」
白露「ていとくってばぁー!」
提督「なんだよさっきから。で、どうした爺ちゃん」
祖父「……てへっ。ワシ、白露さんにチューハイ渡しちゃった☆」
提督「……ジジイ……!」
104: 2014/08/08(金) 21:21:30.62 ID:k+EXhl6W0
白露「あ! ていとくきいてない! ていとくぅー、しらつゆとおはなししようよぉ!」
提督「あーあー、もう出来上がってんじゃねえかおい」
祖父「すまんすまん。ちと布団しいてくる」
白露「きいてよぉ! あのね、あたしがていとくのおへやにいちばんにいくのはね、ちゃんとりゆうがあるの!」
提督「くっつくな暑い! はいはい、なんだよ理由って」
白露「えへへぇ……なーんでしょー?」
提督「クッ、酔っ払いうぜぇ……なんだよ、なんか賭けでもしてんのか?」
白露「ぶっぶー、ちがいまーす」
提督「赤城と競争してるとか?」
白露「ちがいまぁーす! せいかいはぁー、しらつゆがぁー、ていとくのこと、いっちばんすきだから!」
提督「……おう?」
白露「だから、まいあさあたしがさいしょにていとくのかおをみるの! きまってるの! すきだから!」
提督「……まあ、おう」
白露「きいてますかぁー? ほらー、ちゅぅー」
提督「聞いてる聞いてる。聞いてるからホラ! やめ! やめ!」
105: 2014/08/08(金) 21:22:17.32 ID:k+EXhl6W0
祖父「おい、布団しけたぞ……って、どしたお前」
提督「いや、ちょっとな、告白された」
祖父「はあ?」
提督「いや、まあ……寝かせてくるわ」
祖父「おう」
106: 2014/08/08(金) 21:23:23.77 ID:k+EXhl6W0
...
......
.........
白露「いちばー……ん?」
リー リー リー
白露「あれ? 夜? 提督? おじいさん?」
白露「……寝てるのかな」
白露「……喉、渇いちゃった」
白露「台所、こっちだよね……うん?」
グビッ グビッ プハァッ
白露「だーれ? お酒飲んでるの?」
妖精さん「お? お嬢さんこそ誰だ?」
白露「あたし? 白露だよ! 白露型の一番艦!」
妖精さん「てことは……ほお、艦娘か。ワタシは横山。見てのとおりの妖精さんだ」
白露「妖精さんがこんなところに? 妖精さんは鎮守府にいるんじゃないの?」
107: 2014/08/08(金) 21:24:23.75 ID:k+EXhl6W0
妖精さん→横山さん「昔、この家のお父さんと一緒に働いててな。連れて来てもらって、後はずっとここさ」
白露「提督は横山さんのこと知ってるの?」
横山さん「うん? 提督?」
白露「そうそう、この家で一番若い人!」
横山さん「ああ、坊やか。昔はよく遊んだもんだ」
白露「へぇー!」
横山さん「提督ってことは、坊やは海軍に入ったのか」
白露「えへへ、あたしたちの一番の提督だよ」
横山さん「そう、か。なあ、白露ちゃん」
白露「なになに?」
横山さん「戦うのは、怖くないかい?」
108: 2014/08/08(金) 21:25:33.88 ID:k+EXhl6W0
白露「うーん、怖いこともあるけど」
横山さん「けど?」
白露「大丈夫! だって、提督があたしたちを一番にしてくれるから!」
横山さん「……うん、そうか」
白露「うん!」
横山さん「なら、いいんだ。そこまで信じられるなら、一番近くにいておあげ」
白露「もっちろん! あたしが一番! だよ!」
横山さん「ふふふ。ところで、艦娘なら知ってるかな。球磨は元気かい?」
白露「球磨さん? あたしの鎮守府にもいて、いつもクマーって言ってるよ?」
横山さん「ああ、元気そうだね。ワタシはね、球磨の艦長だったこともあるんだ」
白露「へえー! 今度球磨さんに会ったら、横山さんのこと聞いてみるね!」
横山さん「覚えてるかなあ。“あの戦争”のことだからなあ……」
白露「きっと覚えてるよ。球磨さん、みんなのこと一番見てるから」
横山さん「そうだね、そうだといいな。……なあ、白露ちゃん」
白露「はいはーい?」
109: 2014/08/08(金) 21:26:11.97 ID:k+EXhl6W0
横山さん「ワタシたちが戦った相手は、話が出来る人たちだった。悲しい戦いだったけれど、その前にも後にも、話が出来る人たちはいた」
白露「……うん」
横山さん「戦うことは、流れの中で仕方ないときもある。でも、話ができそうな相手がいたら、話をしてみるんだ」
白露「うん。あたしもそう思うよ」
横山さん「それならいいんだ。……深海棲艦相手だとどこまで話が出来るかもわからないけれどね」
白露「うん……あ、忘れてた。横山さん、台所、どっち?」
横山さん「あっちだ。もう遅いし、何か飲んだら寝るといい。グッナイ、白露ちゃん」
白露「はぁーい。おやすみ、横山さん!」
110: 2014/08/08(金) 21:29:21.35 ID:k+EXhl6W0
...
......
.........
提督「じゃあな、爺ちゃん」
祖父「おう、元気でな。白露さんもな、バカ孫をよろしく頼むぞ」
白露「はいはぁーい!」
提督「ふん、俺には若さがあるからな。ジジイこそ勝手に氏ぬなよ」
祖父「ハッ、今回の帰省でな、ワシはひ孫の顔を見るまで氏なんと決めたわ」
提督「バッ、ジジイ……!」
白露「ほえー、提督、子供作るの? お嫁さんは?」
祖父「クックック、バカ孫、白露さんは面白いなぁオイ」
白露「?」
提督「~っ。あのなあ白露。このジジイが言ってる嫁はな、お前だ」
111: 2014/08/08(金) 21:30:14.95 ID:k+EXhl6W0
白露「……へ? あ、ええと、ひゃわっ」
祖父「ハッハッハ!」
白露「えーと、あたしにはまだ早いっていうか、でもその……」
提督「……あのな、爺ちゃん、実はコイツは」
祖父「さーて、汽車に遅れるといかんな!」
提督「あ? いや、おい、ちょっと」
祖父「いいからいいから。ほれ、そろそろ行かんか」
提督「……ああ。また来る。長生きしろよ」
祖父「約束は出来んな」
提督「ったく、素直じゃねえジジイだ。ほれ、行くぞ白露」
白露「んもぉー! 提督のばか! ばかていとくぅー!」
祖父「……さて、長生きせんとなあ」
112: 2014/08/08(金) 21:30:49.34 ID:k+EXhl6W0
白露「あ、そういえばね、提督」
提督「あん?」
白露「提督のおうちで、横山さんって妖精さんに会ったよ」
提督「あー、おまえイチローに会ったのか。俺は結局話せなかったな……」
白露「イチロー?」
提督「横山さんだろ。イチローって名前なんだってよ」
白露「へぇー、妖精さんって、結構普通の名前なんだね」
提督「ああ、“あの戦争”のことを話す妖精さんは大体そうだが……ま、そういうもんなんだろ」
白露「そういうもんかなー」
113: 2014/08/08(金) 21:31:45.13 ID:k+EXhl6W0
白露「あのね、それで、横山さんに言われたんだけど」
提督「おう」
白露「あたしもそう思うから、大丈夫だよ!」
提督「……おう」
白露「……えへ」
提督「……いや、何がだよ」
白露「……えへへ、秘密!」
提督「なんだそりゃ……」
――提督のいっちばん近くで、一番目指して、とことん付き合っちゃうからね?
白露「さぁー、はりきっていきましょー!」
提督「……ま、いいか」
(ふたりめ 白露編 おしまい)
114: 2014/08/08(金) 21:33:59.97 ID:k+EXhl6W0
白露難しい!
以上、白露編、おしまいです。
安価はまた今日中にでも。それでは。
以上、白露編、おしまいです。
安価はまた今日中にでも。それでは。
115: 2014/08/08(金) 21:34:41.03 ID:tFcM4NR2o
おっつんこ
次回:提督「頼む、婚約者になってくれ!」さんにんめ 足柄編
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります