568: 2014/12/03(水) 14:50:43.04 ID:U451AZpE0
最初:提督「頼む、婚約者になってくれ!」ひとりめ 曙編
前回:提督「頼む、婚約者になってくれ!」はちにんめ 名取編
■くにんめ
提督「……参ったな」
妖精さん「どしたー?」
提督「ああ、ちと厄介な任務が入ってな」
妖精さん「んー……おうち帰るー?」
提督「他のところは単純にそうだが、今回はそう見せかけた軍務なんだよ。全く、俺だけ貧乏籤じゃないか」
妖精さん「ふむー」
提督「しかし、誰を連れていくかな。そろそろ来るだろうし、秘書艦に頼むのがよかろうな」
妖精さん「よかろうな」
提督「今日の秘書艦は……天龍か。……龍田じゃなければ、まあ……」
コンコン
提督「来たか。ああ、空いてるぞ天龍」
龍田「天龍ちゃんじゃなくて残念でした。龍田だよ~」
妖精さん「ちょっとようじおもいだした! じゃあな!」
提督「……うっ、龍田か……って妖精さん!?」
龍田「あら~? 提督も妖精さんも、そんなに厭そうな顔されると、幾ら私でも傷つきますよ~? やっぱり、妹じゃダメなのかしら~」
提督「……ああ、すまん」
龍田「提督が天龍ちゃん……というか、お姉ちゃん好きなのは知ってますけど~、私だって仮にもケッコン艦なんですから」
提督「俺がケッコン申し込んだとき天龍ちゃんがいるから、って断ったのどこの誰だよ」
龍田「ケッコンと結婚を間違えたんだから仕方ないじゃないですか~。ふふふっ。お互い姉好き、ってことでは仲間なんですけどね~」
提督「姉好き、ねぇ……俺、姉はいないんだけどな」
龍田「でも提督、理想のお姉ちゃんはいるんですよね~?」
提督「……まあ、な。それはそれとして、天龍呼んできてくれないか」
569: 2014/12/03(水) 14:51:49.84 ID:U451AZpE0
龍田「それがね~。残念なんだけど、天龍ちゃん風邪ひいちゃって~」
提督「風邪ぇ? ……まあ、この間の遠征、帰り凄い雨だったからな、仕方ないか……見舞いに行きたいとこだが」
龍田「熱が下がってからにしてくださいね~。女の子はそういうところ気にしますから~」
提督「そういうもんか。わかった。ちょうど……」
龍田「だから~、私がついていきますよ~?」
提督「何日か外すしな……うん?」
龍田「ふふふっ♪」
提督「……どこから聞いてた?」
龍田「『……参ったな』のあたりかしら~」
提督「全部じゃねーか! 仕方ないな……あんまりおまえ連れて行きたくはなかったんだけどな」
龍田「な~んで天龍ちゃんならよくて、私じゃダメなのかしら?」
提督「……」
龍田「ふふっ♪」
提督「わかった、わかった。じゃあすまんが、ちょっと準備してきてくれ。多分数日泊りになるからな」
龍田「あらあら、お泊り? 大胆~」
提督「おまえなあ……」
570: 2014/12/03(水) 14:52:50.19 ID:U451AZpE0
...
......
.........
ガタンゴトン ガタンゴトン プァー
龍田「そういえば~、最近お休みにかこつけて婚約者を連れてくのが流行りとか~?」
提督「らしいな。今回も名目上はそうなってる」
龍田「とすると、私が婚約者ってことかしら~?」
提督「……そうなるな」
龍田「ふふっ、ほ~んと、天龍ちゃんじゃなくて残念でした。球磨ちゃんや千歳さんでもよかったのかな~」
提督「……おまえなあ」
龍田「それで、本当のお仕事の方は~?」
提督「……ああ。この状況じゃ仕方ないところだが、ちょっと面倒な集団がいてな」
龍田「面倒?」
提督「深海棲艦を神仏の類だって崇る連中が出始めてな。力及ばないものを畏敬する。判らんじゃないが」
龍田「いい気なものよね~。私たちが苦労してるのに~」
提督「本拠地が偶々俺の故郷でな。帰省、って名目で内偵しろとさ。現地の連中を動かすわけにもいかんしな」
龍田「ふふっ、将官にさせるお仕事じゃないかも」
提督「と言ってもな。艦娘と仕事ができる将官なんて、上から見りゃ結局異端で便利屋なんだろ」
571: 2014/12/03(水) 14:53:41.78 ID:U451AZpE0
龍田「でも、意外だったな~」
提督「意外?」
龍田「提督が佐世保の出身だったなんて~」
提督「ああ……まあ、な」
龍田「私も佐世保の出身なんですよ~」
提督「……そうだな」
龍田「ふふっ、意外と子供のころに会ってたりして~」
提督「…………かも、な」
龍田「?」
提督「そろそろ着くな。準備はいいか?」
龍田「……? いいですよ~」
572: 2014/12/03(水) 14:54:22.60 ID:U451AZpE0
...
......
.........
提督「……」
龍田「……あら~」
提督「こりゃ酷いな。まさか駅前から……なんだこれ。深海大明神って……多分深海棲艦だろうが」
龍田「みたいですね~。仏像……なのかしら。大明神だから神像?」
提督「なんにせよ、予想以上に広まってるな。佐世保鎮守府は何してんだ」
龍田「敵襲の多いところですから~」
提督「内地まで手が回らない、か。どっちにしてもやることは同じだけどな」
龍田「とりあえず~、提督のおうちに行きましょうか~」
提督「ちょっと?」
龍田「ほらほら~」
提督「おまえなあ……」
573: 2014/12/03(水) 14:55:01.26 ID:U451AZpE0
...
......
.........
父「ほう。珍しい奴が顔を出したな」
提督「……ただいま」
父「仕事が忙しい、と寄り付きもせんかったやつが、またどういう風の吹き回しだ」
提督「あー……ちょっとね。しかし、久しぶりに来たけど、駅前のあれ、なんだよ」
父「見たか。少し前から流行り出してな。西の島に出来た宗教みたいなやつだ。元々街に居たもんは見向きもせんが、外からどんどん集まってきよる」
提督「……なるほどな」
父「それで、そっちの御嬢さんは」
龍田「うふふっ。はじめまして、お義父様~。婚約者の龍田です~」
提督「お、おいっ」
父「ほう。そういうことかよ」
龍田「そういうことなんです~」
提督「おい、おいい!」
父「まあ、確かにコイツはうっかりしているからな。年上くらいでちょうどいいだろう」
提督「はあ?」
父「では龍田さん、なんのもてなしも出来んが、ゆっくりしていきなさい」
龍田「はい~」
提督「……いや、まあ、元々そういう予定だったし。宿は……確保できたか」
龍田「ふふふっ。お義父さん、よく私が年上って気づきましたね~?」
父「見ればわかると思うがな」
龍田「ふふふっ」
提督「楽しそうだなあおまえ……」
574: 2014/12/03(水) 14:55:59.01 ID:U451AZpE0
...
......
.........
龍田「それで、どうするんです~?」
提督「上が危惧してるのは、例の大明神に本物の深海棲艦が関わってないかどうか、だからな。それを調べるさ」
龍田「本物~?」
提督「姫やら鬼やらって呼ばれてる連中にもなると、喋ったりもするからな。そういうのが奥にいないとも限らん」
龍田「なるほど~。でも、それだと私の火力じゃ不安なんじゃ~?」
提督「いや、火力というかな。一応、他の鎮守府の管轄だからな。砲を持ち込むわけにはいかんし」
龍田「な~るほど。斬り落としちゃうんだ」
提督「まあ……そうなる」
龍田「うふふっ。確かに天龍ちゃんか私が適任ね~。提督もちゃんと考えてるのね~?」
提督「いつでも考えてるつもりなんだが……」
龍田「うふふっ。ごめんね~? なんだか、最初のころのイメージがずっと残っているの」
提督「龍田はだいぶ最初期に来たしな。……ま、わかるけど」
龍田「思い出すわ~。天龍ちゃんが来た時、本当に嬉しそうだった提督の姿……」
提督「……いや、そのな?」
龍田「提督ってば、あのころからずっと姉属性だから~」
提督「……確かに、それはそうだがな?」
龍田「そうとわかれば、さっさと済ませて帰っちゃいましょうか~。ほらほら、提督~。置いていきますよ~」
提督「お、おい!?」
575: 2014/12/03(水) 14:57:03.89 ID:U451AZpE0
...
......
.........
龍田「あはっ、終わりましたね~」
提督「ああ。こんな島に、本当に姫級が潜伏しているとはな。中破してて助かった」
龍田「駆逐棲姫ね~。万全の状況だったら、私じゃ敵わなかったよ~」
提督「言っとくけどな。どうしてもって言うからやらせたが、相手が万全だったら、そもそも交戦を許可しなかったぞ俺は」
龍田「ふふふっ。だって、私の魚雷がうずうずしてたんだもの~」
提督「……結果としてはよかった、けどな」
龍田「うふふっ、提督は心配性なんだから~。私だってケッコン艦なんだから、信じてくれたっていいのに~」
提督「なんにせよ、本体はいなくなったんだ。あとは地元に任せていいだろ」
龍田「そうですね~……あら?」
提督「どうした?」
龍田「なんだか……ここ、知ってるような」
提督「……佐世保出身なんだろ。来たことくらいあるんじゃないか」
龍田「う~ん……? なんでだろ~?」
提督「……」
576: 2014/12/03(水) 14:58:04.65 ID:U451AZpE0
提督「……昔、な」
龍田「昔?」
提督「まだ子供のころ。俺もこの辺に来たことがある。道に迷って、な」
龍田「……え?」
提督「……その時に、優しいお姉さんに助けられてなー。俺が姉属性になったのって、それが原因なんだよ」
龍田「え? ……え?」
提督「ま、俺にとってはその時のその子はお姉ちゃんだった、ってだけで。実際には妹だったらしいけどな」
龍田「え、あの、それって……」
提督「もっとも、本人は忘れてたみたいだし? こっちは一目見てすぐ分かったんだけどな?」
龍田「え? えええ?」
提督「……だからお前を連れて来たくなかったんだよなあ……」
龍田「え。じゃあ、提督の理想のお姉ちゃんって……」
提督「……帰るか」
龍田「え? え? 天龍ちゃんじゃなくて……?」
提督「……ということを念頭に置いて、あとでもう一回考えてくれると嬉しいんだが」
龍田「考えるって、提督、あの~」
提督「結婚、の方な」
龍田「……うふっ。うふふふふふ」
577: 2014/12/03(水) 14:58:40.87 ID:U451AZpE0
提督「お、おい?」
龍田「提督~? 私がどれだけ気を使ったかわかってます~?」
提督「いや、それってお互いさまじゃないか……」
龍田「考えておきますね~? うふっ。うふふふふふっ。やたっ♪」
提督「……ま、いいか」
龍田「あ、そうそう。提督?」
提督「なんだ?」
龍田「浮気は禁止ですよ? もししちゃったら――」
578: 2014/12/03(水) 14:59:09.72 ID:U451AZpE0
――その手、落ちても知らないですよ?
(くにんめ 龍田編 おしまい)
579: 2014/12/03(水) 15:01:13.85 ID:U451AZpE0
お昼のお付き合い、ありがとうございました。
お待たせいたしました。龍田は大好きな艦娘のひとりなので楽しかったです。
宗教は……危機的状況になると、そういうこともあるかなあ、という。
お待たせいたしました。龍田は大好きな艦娘のひとりなので楽しかったです。
宗教は……危機的状況になると、そういうこともあるかなあ、という。
580: 2014/12/03(水) 15:04:02.66 ID:gA04p/Dgo
たつたそ~
おつおつ
おつおつ
次回:提督「頼む、婚約者になってくれ!」じゅうにんめ 大淀編
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