623: 2015/02/22(日) 03:45:45.24 ID:INfkWvs00

最初:提督「頼む、婚約者になってくれ!」ひとりめ 曙編
前回:提督「頼む、婚約者になってくれ!」くにんめ 龍田編

■じゅうにんめ

提督「……マジですかこれ」

妖精さん「マジかー?」

提督「いやー、マジだなー。有難いやら有難くないやら……」

コン、コン

提督「……ん、誰だ? はーい、入っていいですよぉ!」

大淀「失礼します」

提督「おー、大淀か」

妖精さん「おおよどかー」

大淀「大淀です。妖精さんは水偵に戻りましょうね」

妖精さん「おー。じゃーなー」

提督「じゃーなー。それで? 今週の任務更新?」

大淀「いえ、あの……それはまだなんですが。……何かお手伝いすることはないか、と」

提督「あー……手というか、腕が足りないのは見ての通りですけどねえ。なあ大淀」

大淀「ですから、何か」

提督「気にすんなって。言ったろ? 片腕失くしたって、困るのは飯食う時と仕事中におまえの尻を触れなくなったことくらいだって」

大淀「ですが……」

提督「あ、あとひとりで致す時に本のページ抑えるのが大変でなぁ。お陰で最近すっかりDVD派ですよ」

大淀「いや、あの、流石にその」

提督「アノもアンアンもないだろ。おまえのせいじゃないんだから」

大淀「私の艤装を確保する作戦の時ですから……」

提督「そりゃそうですけどねぇ。ほっぽちゃんに食い千切られたのは俺が指揮官の役目も弁えずノコノコ海に出てったせいですし?」

大淀「私のせいで、当艦隊も半年以上まともに作戦参加出来ませんでしたし……」

提督「まあ引退しててもおかしくないもんなコレ。上もよくまだ俺を使おうって思ったもんだ」

大淀「と、当然です! 提督は私……たちにとって、なくてはならない方ですから」

提督「どうかな。猫の手ならぬ傷病兵の手も借りたい、って奴じゃないの? 一本しかないけど。ハハハ」
艦隊これくしょん -艦これ- おねがい!鎮守府目安箱 1 (電撃コミックスNEXT)
624: 2015/02/22(日) 03:46:20.57 ID:INfkWvs00

大淀「笑い事では……!」

提督「もう一年近く前だ。笑うよ。おまえも笑ってりゃいいじゃないの」

大淀「ですが……」

提督「あーもう! あんまりしつこいと仕事やめておっOい揉みますよぉ!?」

大淀「……ひゃっ!?」

提督「大体、おまえは働きすぎなんですよ。艤装ない時からずっと働きっぱなしで、俺がいない時だって……あ、そうだ」

大淀「提督?」

提督「大淀、おまえ明日から休暇な。いや任務ではあるけど、まあ仕事はしなくていいだろ」

大淀「あの、仰る意味が……」

提督「ちょっと家に呼び出されてな。まあ復帰前も入院してたし、帰ってないんで当然っちゃ当然なんですけど」

大淀「あ、はい」

提督「傷病休暇もまだ残ってるし、もう今度の中規模作戦も終わるし、上からも休めって言われてね」

大淀「はい」

提督「で、まあ帰るのはいいんですけど。俺がいなくなると、その間鎮守府は動けないよね?」

大淀「全く活動できないわけではないですが……戦闘行動はできませんね」

提督「できないわけじゃない、っておまえがこまごま動くことでしょうが」

大淀「……ええと、その」

提督「あー。まあいいや。それで、ご存知の通り俺はソロプレイにもこと欠く有様なわけです」

大淀「ソ、ソロプレイって提督!」

提督「え、おまえしたことないのソロプレイ? ゲームのマルチプレイじゃない方ですよ?」

大淀「えっ」

提督「はっはぁ~ん。いやらしいこと考えましたね? こ~のムッツリ! ムッツリ眼鏡!」

大淀「~~~ッ!!?? て、提督! もうっ!!」

625: 2015/02/22(日) 03:47:06.42 ID:INfkWvs00

提督「はっはっは。えーと、どこまで話したっけ」

大淀「提督が家に呼び出されて、御一人では諸々大変だ、というところまでです」

提督「おお。それで、ですよ」

大淀「それで、なんでしょう」

提督「そんな諸々の手伝いがてら、大淀、おまえちょっと一緒についてきてくれませんかね」

大淀「……はい?」

提督「あ、とは言え、厠とか風呂はひとりで大丈夫から別に心配しなくても……」

大淀「いえ、その。そこは問題ありませんが」

提督「……え? まさか、混浴したいの? ムッツリ眼鏡なの? そりゃ、俺は歓迎ですけどねえ」

大淀「い、いえ! そうではなくてですね!?」

提督「ではなくてー?」

大淀「私、ですか?」

提督「あ? あー、なんで大淀なのか、ってことですか。そりゃおまえが気にしすぎで、働きすぎだからよ」

大淀「気にしすぎ、はまあ……そうは思いませんが、提督がいつも仰っていることなので認めますけど」

提督「働きすぎとは思わない?」

大淀「はい」

提督「まったく、この娘さんは! ワーカホリックですかよ!」

大淀「私は私にできることをしているまでですし」

提督「俺が働きすぎだと思ってる、ってんですよ」

大淀「しかし……」

提督「はい決定ー大淀は働きすぎー。上司権限ー」

大淀「あっ……もうっ!」

627: 2015/02/22(日) 03:47:49.25 ID:INfkWvs00

提督「……はっ! これでは話が進まない!」

大淀「進める気がお有りだったんですか」

提督「そりゃありますよ。この夏は長門にビキニ着せようぜ、ってのと同じくらい本気ですよ?」

大淀「それはやめておいた方が……ではなくて」

提督「あ、はい。あー、俺が家に帰る時に、この身体だと何かと面倒だから誰かについてきて欲しいわけだ」

大淀「はい。それで、私に?」

提督「そうそう。流石の大淀も鎮守府にいなければ仕事はできないだろうし、提督の粋な心遣いです」

大淀「御自分で仰らなければ余計にいいんですけど」

提督「ハッハッハ、これがホントの片手落ちってなぁ?」

大淀「……あの、提督?」

提督「あー?」

大淀「私もあまり言わないようにしますから、あまり悲しいことを仰らないで下さい」

提督「……大淀サンのそう言う察しのいいトコ、提督苦手ですよ」

大淀「ところで、出立は」

提督「明日の朝、ですかねー。……あ、そうそう」

大淀「はい?」

提督「大淀は俺の婚約者、ってことにしてもらうから」

大淀「……。は、はひっ!?」

提督「よーし! その顔が見たかった! 下がってよし!」

大淀「ちょ、提督!? お、押し出さないで下さい! 提督!?」

提督「ほらほら、準備準備。まった明日ー」

大淀「提督!? 提督――」

628: 2015/02/22(日) 03:48:47.18 ID:INfkWvs00



提督「……さーて、勢いで言っちゃったけどどうしますかねコレ」



640: 2015/04/16(木) 00:05:19.02 ID:/cDhucZZ0

ガタンゴトン ガタンゴトン プァーッ

大淀「提督、みかん食べます?」

提督「ん、ああ、貰いましょうかね」

大淀「はい、どうぞ。あーん」

提督「……はい?」

大淀「あーん、ですよ、提督?」

提督「大淀サン?」

大淀「ほら、私も恥ずかしいんですから早くしてください」

提督「いや、渡してくれれば普通に食べますから」

大淀「もう! 駄目です!」

提督「あ、はい……あーん」

大淀「はーい」

提督「……」

大淀「……」

提督「……おおよほふぁん?」

大淀「どうしました?」

提督「ゆひをふいへふれまひぇんは」

大淀「……何を仰ってるかわかりません」

提督「いや、ゆひほへ?」

大淀「そんなことより、早くみかん食べないとですよ?」

提督「ゆひ……」

641: 2015/04/16(木) 00:05:59.54 ID:/cDhucZZ0

大淀「……ほら、提督?」

提督「……んむっ……ちゅばっ」

大淀「……指を舐められてしまいましたね。うふふっ」

提督「いや、大淀サンが舐めさせたんでしょ今の。どうしたのおまえ。急に淫魔にでもなったの」

大淀「あ、いえ、そういうわけではないのですが。婚約者、と言うことでしたので」

提督「でしたので?」

大淀「今のうちに慣れておいた方がいいかと思いまして」

提督「いやぁ、慣れもなにも、提督むしろ持ってかれましたよ」

大淀「いえ、提督が本気を出したらこの程度ではないと思います」

提督「厭な方向の過大評価キタコレ」

大淀「ご安心ください。軽巡大淀、立派に婚約者を務めます」

提督「ちょっと予想外の展開です」

大淀「私は計算通りです」

提督「女の子怖ぁっ!」

642: 2015/04/16(木) 00:06:40.40 ID:/cDhucZZ0
...

......

.........


母「おーい!」

提督「はーい、母さん。俺ですよ!」

母「ああ、ああ。お帰り。手紙では知ってたけど……すっきり、しちゃったわねえ」

提督「まあ、その、ですね。……ごめん」

母「……生きてるだけで、十分だよ」

提督「……ありがとう。ああ、父さんは?」

母「漁に出てるよ。おまえが帰ってくるからって、張りきっちゃってね」

提督「漁、出られるようになったのか」

母「おまえたちのおかげさ。……ところで、そちらの方は?」

提督「ああ、大淀って言って、俺の部下で」

大淀「婚約者です」

提督「……まあ、そういうことですよ」

母「あらまあ。それならゆっくりして行ってもらわないとねえ」

提督「大仕事も近いんで、そんなにゆっくりはできませんけどね」

母「何日かくらいは泊まってけるんだろ? 大淀さんも」

大淀「ご迷惑ではありませんか?」

母「全然だよ。……ところで、大淀サン?」

大淀「はい?」

母「あの子の相手、大変じゃないかい? スOベの癖にヘタレだからねぇ」

大淀「いえ。ですが……」

母「うんうん」

大淀「提督もこう言うところ、お母様に似たんでしょうか……」

提督「……へっくしゅん!」

643: 2015/04/16(木) 00:07:22.29 ID:/cDhucZZ0

「うふふっ、ありがとうございます」


「いえ、それほどでも」


「提督には、大変よくして頂いていますし」


「私の……いえ、私たちの戦いは、提督がいなければはじまりません」


「頼りに、させていただいております」


「こちらこそ、よろしくお願いいたしますね」


「いけません。私はもう売約済みですから。うふふっ」

644: 2015/04/16(木) 00:07:57.10 ID:/cDhucZZ0

提督「……ふうっ」

大淀「提督、こんなところにいらっしゃったんですか」

提督「ああ、ちょっとね。居づらかったんですよ」

大淀「提督が主役じゃないですか」

提督「いやー、そうじゃなかったよね」

大淀「ですが……」

提督「大淀サンが主役でしたよ。モテモテだったでしょ」

大淀「艦娘が珍しいものだと……」

提督「それもあるかとは思いますけどね」

大淀「そうではないんですか?」

提督「艦娘ってのは、自分の魅力に無自覚だから困るよね」

大淀「……はい?」

645: 2015/04/16(木) 00:08:37.15 ID:/cDhucZZ0

提督「軍で生まれて女の子ばっかりのところで暮らしてるからですかね」

大淀「あの」

提督「俺がスOベなのは認めるけど、それを抜いても工口いんですよ大淀サン」

大淀「えっ……?」

提督「真面目で工口いんだからそりゃモテるよ。男受けもするよ!」

大淀「そんなつもりは……ありましたけど」

提督「あったの!? それで昼も提督サンに指しゃぶらせたりしたの?」

大淀「あれは、その……チャンスだと思ったので」

提督「……はい?」

大淀「提督はその、触る以上のことはしてくださらないので」

提督「……はい?」

大淀「私、ずっと待ってたんですよ。気づいてました?」

提督「いや、普通、セクハラとか言われるもんじゃない?」

大淀「好意がない相手ならセクハラですね」

提督「流石大淀サン、バッサリ行きますね」

大淀「提督でしたら歓迎ですよ?」

提督「ははあ、頭脳派らしく固めに来ましたね」

646: 2015/04/16(木) 00:09:13.95 ID:/cDhucZZ0

提督「……俺、どうしたらいいかね」

大淀「もう婚約者として紹介していただいてますし、覚悟を決めてくださると」

提督「休ませたかったのと、困った顔が見たかっただけだったんですけど」

大淀「これから数日は十分休ませていただきますし、昨日は吃驚しましたから、おあいこです」

提督「いやあ、これ負けだわ、俺の負け」

大淀「うふふっ。これから忙しくなりますね」

提督「いや、休みに来たんだけど」

大淀「提督のご家族を攻略しないといけませんし。それに」

提督「攻略って」

大淀「戦いにも勝たないと、提督がこちらに戻ってこられませんものね」

提督「……ああ、まあ、それはそうかもしれませんねえ」

大淀「だから、忙しくなりますよ」

提督「そう、かな。……うん、それならね。大淀サン」

大淀「はい」

647: 2015/04/16(木) 00:10:05.57 ID:/cDhucZZ0



提督「見ての通り、俺にはどうも手が足りなくてね。戦争も、暮らしも。手を貸してくれないかな」

大淀「はい。お任せください。……いつまでも、お任せください」


648: 2015/04/16(木) 00:11:16.78 ID:/cDhucZZ0

父「なあ母さん、アイツ魚も食わずにどこ行ったんだ」

母「……しっ! 今からいいとこですから! 明日はお赤飯ですよ!」

父「……どっから持ってきたんだ、その聴音器……」


(じゅうにんめ 大淀編 おしまい)

650: 2015/04/16(木) 00:12:55.97 ID:qWQfYi/20
乙乙

651: 2015/04/16(木) 00:14:11.65 ID:/cDhucZZ0
永のお待たせをいたしまして、とりあえず十人完了となりました。

お付き合い有難うございました。

当初は十人も書いたらもういいかなー、と思っておりましたので、〆でいいかなあ、と思いつつ。

もし見てくださってる方がいらっしゃいましたら、春イベ期間中くらいでもうひとりくらい書ければ、とも考えます。

引用: 【艦これ】提督「頼む、婚約者になってくれ!」