603: 2008/07/30(水) 03:44:41 ID:l/krF48c
気分で6巻のケルーベへの道中でちょっとつくってみた。
オリジナル要素もあるし、時間軸がずれてないって言ったらウソになるから、
オリジナル要素もあるし、時間軸がずれてないって言ったらウソになるから、
604: 2008/07/30(水) 04:06:50 ID:l/krF48c
それは久々に見る、広い広い天井だった。
いやこの天井には限りなど無いのかもしれない。
そんな天井を船の上から見上げている。
それも、手綱や道に気を裂く事なく。
ロレンスは思う。船旅も海ではなく川なら悪くはないか、と。
隣には同じ毛布にくるまる旅の連れが、
『すぴー。すぴー。』と可愛い寝息をたてている。
このホロと言う外見17そこらの少女こそ、
今回の旅の始まりであり、
男十人が十人振り返るほどの器量持ちであり、
いつもあの手この手の罠でロレンスを
言いくるめてからかう毒舌悪女であり、
真の姿は巨大な齢数百年の狼であり、
そしてロレンスが夢を遠ざけてまで愛を告白した相手なのだ。
正直ロレンスはこのケルーベへの道中ずっと気が休まらなかった。
と言うのもその筈で、こちらの気持ちを伝えた相手は、
先の街で終わる筈だった二人の旅を長引かせる事に対して、
賛成どころか半ば自分から提案してきた位なのだから、
まんざらでは無いという確信はあった。
ただし、確信はあると言っても所詮形の無いものだ。
商売という領域であれば形の無い≪信用≫や≪人脈≫であっても、
金という目に見える成果に変える事はいくらでも出来る。
だがこの≪恋≫というは金になる所か逆に
とてつもない損害を常に匂わせ、
そのくせ失うのは先の二つと同じく一瞬だが
手元に引寄せる為の心労は何倍もかかるときた。
それでも勝負に負ける形になったとはいえ、
心の中で引いていた線を乗り越え、
あやふやだった自分の気持ちをしっかり形にして、
相手にぶつけられたのだから幾分すっきりしていた。
ロレンスは1人でそんな事を考えながら
ぼーっと空を眺めていた。
少し眺めていると横で、もそもそと動きがあった。
毛布の表面にぴょこんと二つ見慣れたトンガリが出、
ピクピクと動くと中からその持ち主が、
目を擦りながら出てきた。
「なんじゃ、ぬしよまだ眠らんのかや?
ぬしが寝てくれんとわっちも安心して眠りゃんせん。」
くあーっと欠伸をするとホロはうつ伏せになり、
顔だけロレンスに向け、
まるで巣から反身を出して辺りを警戒する狼のような格好だ。
「お、起きてきたか。
お前と違っていろいろ算段するにも時間が掛ってね。
寝る間も惜しいって奴さ。」
ロレンスはかまかけを無視し、
言葉の裏に言いたい事を載せる。
いやこの天井には限りなど無いのかもしれない。
そんな天井を船の上から見上げている。
それも、手綱や道に気を裂く事なく。
ロレンスは思う。船旅も海ではなく川なら悪くはないか、と。
隣には同じ毛布にくるまる旅の連れが、
『すぴー。すぴー。』と可愛い寝息をたてている。
このホロと言う外見17そこらの少女こそ、
今回の旅の始まりであり、
男十人が十人振り返るほどの器量持ちであり、
いつもあの手この手の罠でロレンスを
言いくるめてからかう毒舌悪女であり、
真の姿は巨大な齢数百年の狼であり、
そしてロレンスが夢を遠ざけてまで愛を告白した相手なのだ。
正直ロレンスはこのケルーベへの道中ずっと気が休まらなかった。
と言うのもその筈で、こちらの気持ちを伝えた相手は、
先の街で終わる筈だった二人の旅を長引かせる事に対して、
賛成どころか半ば自分から提案してきた位なのだから、
まんざらでは無いという確信はあった。
ただし、確信はあると言っても所詮形の無いものだ。
商売という領域であれば形の無い≪信用≫や≪人脈≫であっても、
金という目に見える成果に変える事はいくらでも出来る。
だがこの≪恋≫というは金になる所か逆に
とてつもない損害を常に匂わせ、
そのくせ失うのは先の二つと同じく一瞬だが
手元に引寄せる為の心労は何倍もかかるときた。
それでも勝負に負ける形になったとはいえ、
心の中で引いていた線を乗り越え、
あやふやだった自分の気持ちをしっかり形にして、
相手にぶつけられたのだから幾分すっきりしていた。
ロレンスは1人でそんな事を考えながら
ぼーっと空を眺めていた。
少し眺めていると横で、もそもそと動きがあった。
毛布の表面にぴょこんと二つ見慣れたトンガリが出、
ピクピクと動くと中からその持ち主が、
目を擦りながら出てきた。
「なんじゃ、ぬしよまだ眠らんのかや?
ぬしが寝てくれんとわっちも安心して眠りゃんせん。」
くあーっと欠伸をするとホロはうつ伏せになり、
顔だけロレンスに向け、
まるで巣から反身を出して辺りを警戒する狼のような格好だ。
「お、起きてきたか。
お前と違っていろいろ算段するにも時間が掛ってね。
寝る間も惜しいって奴さ。」
ロレンスはかまかけを無視し、
言葉の裏に言いたい事を載せる。
605: 2008/07/30(水) 04:08:00 ID:l/krF48c
「まったく、つまらんものじゃ。
人というものは随分せっかちにできとるんじゃの?
そうで無きゃわっちの罠にかからん筈がありんせん。
けしからん程良く回るあたまじゃの。」
「これだけ賢い者がそばにいるのに、
そこから何も得ないのは商人として
損だと思うのがふつうじゃないか?。」
「その賢狼に対等な付き合いを口にした者にしては、
随分低い位置に自分を置いてないかや?
わっちの隣にへタレは似合いんせん。
ぬしはもっと自分の位置を高くしようとはおもわんのかや?」
ホロの琥珀色の瞳が楽しそうに揺れる。
それにさっきから毛布の中が落ち着きない。
おそらく原因は尻尾だ。
「別に俺は自分がホロより低い所にも、
高い所にもいると思っていない。
俺たちは平らじゃない。デコボコの地面みたいなものだ。
だが不思議な事にそのデコボコがくっつく事が何度もあった。
そしてその都度一縷のずれも無くピッタリくっついた。
時にはずれたように見えたりもした。でもすぐピッタリになった。
その結果が今だ、違うか?」
ロレンスはホロに微笑みかけると、
頬を何回か指でなぞり頭に手をポンっと乗せる。
嬉しそうに耳が動くのが感覚で分かる。
ロレンスは己の思いの丈を、ぶちまけた。
ロレンスはホロが好き。ではホロは?
この答えはロレンス以外のホロを知る人物、
特にノーラやエーヴにバレバレだった。
先に答えを言ってしまうとこの二人は相思相愛、
関係は成り立っている。だがそれをホロが言わないのは何故か?
理由は二つだった。
1つ目は、かつては賢狼と呼ばれ、
麦に宿りその土地の豊作を左右した程の者が、
人間の若造に熱をあげていると言う事実を
そう簡単に飲み込む訳にはいかないからだ。
そこは賢狼ホロとしては譲れない。
一方、人間ホロとしてはとっくにこの事は了承済みだった。
これはリュビンハイゲンで、ロレンスに
看病してもらった時に確認した。してしまった。
2つ目は、ホロの性別によるものだった。
ホロは賢狼である前に雌であり、
女でもある。つまり、自分が言って気付かせるのではなく、
仕草や言い回しで気付いてほしいのだ。
606: 2008/07/30(水) 04:10:25 ID:l/krF48c
この二つからホロは自分の気持ちを滅多に素直に出さないし、
出せないでいた。それに熱をあげているのが自分だけだったら?
と思う事もあった。しかしこの考え自体は
クメルスンでのロレンスの行動からは
あり得ないと分かったので安心していた。
だが安心していたのもつかの間だった。
ホロはこのお人好しが旅を重ね、
事件を重ねる毎に成長して行く様を見ているうちに、
自分で気付かないうちに賢狼ホロを完全に説き伏せていた。
ロレンスが大好きになってしまっていた。
それこそロレンスの目的の為には
どんな苦労も厭わなくなった程に。
それはロレンスが他の人に対して、
自分に対して特にそうしてくれるから。
その打算のない行為がたまらなく嬉しかった。
だからこそホロは、
この気持ちの危なさも理解しているつもりだ。
正確にはだった。レノスで旅を終えて別れるつもりだった。
このままでは離れられなくなり、
そうなれば恐らくロレンスの寿命まで一緒に寄り添う自信が在った。
そしてロレンスが氏んでしまったら、
その孤独に自分は耐える事が出来るだろうか?
それは、きっと故郷が滅びたと知った時の比ではないだろう。
ならば故郷が近く、またロレンスが取引で
店を構えられるかも知れないと言うこの街は、
まさにお誂え向きだった。
しかし現実はお互いがうまく納まる筈のこの街で、
相方はまたしてもドジを踏み、
手元に残った儲けを全てつぎ込み、掴みかけた夢を捨て、
その手で自分を掴んでくれた。もう駄目だった。
頭の隅に必氏に追いやっていた想いが出てきてしまった。
(旅がしたい。この愛しいたわけと。
もっともっと色んなものを一緒に見たい。
色んな所に行きたい。旅じゃなくてもいい。
最後の時までそばにいられれば。)
そしてこれを実行する最も身近な口実は
エーヴ追跡だった。旅を先延ばしする。
半分はホロの我儘だった。
そしてもう半分はロレンスの本音でもあった。
だから、雪でホロの故郷への道が半年閉ざされる
というリスクを背負ってまで、追跡を開始したのだった。
「しかし、一方通行とはぬしも哀れな事じゃのう?
行ってばかりで帰る者がいやしんせん。
これでは向こうに何があるか、わかりんせんじゃろ?」
出せないでいた。それに熱をあげているのが自分だけだったら?
と思う事もあった。しかしこの考え自体は
クメルスンでのロレンスの行動からは
あり得ないと分かったので安心していた。
だが安心していたのもつかの間だった。
ホロはこのお人好しが旅を重ね、
事件を重ねる毎に成長して行く様を見ているうちに、
自分で気付かないうちに賢狼ホロを完全に説き伏せていた。
ロレンスが大好きになってしまっていた。
それこそロレンスの目的の為には
どんな苦労も厭わなくなった程に。
それはロレンスが他の人に対して、
自分に対して特にそうしてくれるから。
その打算のない行為がたまらなく嬉しかった。
だからこそホロは、
この気持ちの危なさも理解しているつもりだ。
正確にはだった。レノスで旅を終えて別れるつもりだった。
このままでは離れられなくなり、
そうなれば恐らくロレンスの寿命まで一緒に寄り添う自信が在った。
そしてロレンスが氏んでしまったら、
その孤独に自分は耐える事が出来るだろうか?
それは、きっと故郷が滅びたと知った時の比ではないだろう。
ならば故郷が近く、またロレンスが取引で
店を構えられるかも知れないと言うこの街は、
まさにお誂え向きだった。
しかし現実はお互いがうまく納まる筈のこの街で、
相方はまたしてもドジを踏み、
手元に残った儲けを全てつぎ込み、掴みかけた夢を捨て、
その手で自分を掴んでくれた。もう駄目だった。
頭の隅に必氏に追いやっていた想いが出てきてしまった。
(旅がしたい。この愛しいたわけと。
もっともっと色んなものを一緒に見たい。
色んな所に行きたい。旅じゃなくてもいい。
最後の時までそばにいられれば。)
そしてこれを実行する最も身近な口実は
エーヴ追跡だった。旅を先延ばしする。
半分はホロの我儘だった。
そしてもう半分はロレンスの本音でもあった。
だから、雪でホロの故郷への道が半年閉ざされる
というリスクを背負ってまで、追跡を開始したのだった。
「しかし、一方通行とはぬしも哀れな事じゃのう?
行ってばかりで帰る者がいやしんせん。
これでは向こうに何があるか、わかりんせんじゃろ?」
607: 2008/07/30(水) 04:11:30 ID:l/krF48c
ホロは得意の小悪魔顔だ。
ロレンスはまたこのネタかという顔をしていたが、
茶化すでも、流すでもなかった。少しの間を空け、
頭に置いた手にぐッと力を込め、真面目な顔で口を開いた。
「別に一方通行は悪い事ばかりじゃない。
ここから向こうに行った奴は少なからず、
ここの話を向こうでするはずさ。
当然向こうの奴はずっとそこにいる訳だから、
他に行きたいと思う奴もいる事だろう。
つまりおれの見るところ、
今は向こうからこっちに戻る準備で忙しいはずさ。」
ホロの尻尾が一瞬止まり掛ける。
すんでの所で自制出来たようだ。
「も、戻るのに何年掛かるか
見えない時はどうするつもりかや?」
「待つ。必ず戻ってくる。
俺の一方通行はきっとそんな場所さ。」
即答したロレンスはホロに
いつもの無垢な笑顔を投げ込む。
それを受けたホロは完全に動きが止まってしまった。
そして必氏に何かを考えそして、
意を決したのかホロも真面目顔だ。
「なあ、ぬし?…そ、そのもしも開通日が分るとしたら?
……なんとする?」
「うーん、そうだな…その時は
道を開通した時の手段をまたつ」
ロレンスの言葉の続きは風の様に
毛布から這い出たホロの行動によってかき消された。
ロレンスが言葉の続きを紡げないのは、
口に蓋が出来たから。
そして、その蓋は……ホロの口に他ならなかった。
口を離したロレンスはホロの顔を見る。
これまで見た甘い顔の類は目が本気では無かった。
が、この顔は目まで甘い。
いつか聞いた目に入れても痛くないものは存在していた。
ロレンスはハッと我に返り、
何かを口にしようとしたが、
ホロの人差し指がそれを制止した。
そのまま首に手をまわしたホロはロレンスを引き倒し、
間に尻尾を挟み、毛布を二人に被せると、
毛布の中で二度目の口づけをした。
ロレンスはまたこのネタかという顔をしていたが、
茶化すでも、流すでもなかった。少しの間を空け、
頭に置いた手にぐッと力を込め、真面目な顔で口を開いた。
「別に一方通行は悪い事ばかりじゃない。
ここから向こうに行った奴は少なからず、
ここの話を向こうでするはずさ。
当然向こうの奴はずっとそこにいる訳だから、
他に行きたいと思う奴もいる事だろう。
つまりおれの見るところ、
今は向こうからこっちに戻る準備で忙しいはずさ。」
ホロの尻尾が一瞬止まり掛ける。
すんでの所で自制出来たようだ。
「も、戻るのに何年掛かるか
見えない時はどうするつもりかや?」
「待つ。必ず戻ってくる。
俺の一方通行はきっとそんな場所さ。」
即答したロレンスはホロに
いつもの無垢な笑顔を投げ込む。
それを受けたホロは完全に動きが止まってしまった。
そして必氏に何かを考えそして、
意を決したのかホロも真面目顔だ。
「なあ、ぬし?…そ、そのもしも開通日が分るとしたら?
……なんとする?」
「うーん、そうだな…その時は
道を開通した時の手段をまたつ」
ロレンスの言葉の続きは風の様に
毛布から這い出たホロの行動によってかき消された。
ロレンスが言葉の続きを紡げないのは、
口に蓋が出来たから。
そして、その蓋は……ホロの口に他ならなかった。
口を離したロレンスはホロの顔を見る。
これまで見た甘い顔の類は目が本気では無かった。
が、この顔は目まで甘い。
いつか聞いた目に入れても痛くないものは存在していた。
ロレンスはハッと我に返り、
何かを口にしようとしたが、
ホロの人差し指がそれを制止した。
そのまま首に手をまわしたホロはロレンスを引き倒し、
間に尻尾を挟み、毛布を二人に被せると、
毛布の中で二度目の口づけをした。
613: 2008/07/30(水) 23:39:18 ID:l/krF48c
口を合わせながらホロは、
未だ戸惑いが見えるロレンスの手を取り、
自分の頬に添えた。
そして、あいた自分の手でロレンスの顔をつかむと、
思いっきり引き寄せた。
まるでもう逃がさないと言うように。
口の中ではこれらの動きと並行して、
ホロのロレンス攻略作戦が着々と進行中だ。
ホロは同じ向きの顔を少しずらして、
その分だけ顔をさらに近付けた。
お互いの小さな鼻息でさえ感じ取れる距離。
こうなればホロの独壇場である、
もうロレンスは気が気じゃない。
さらにホロはその小さな舌で、
ロレンスの歯をノックする。
口が開くまで何度も何度も。
ロレンスはこの状況でも主導権を
取られまいと抵抗していたが、
いかんせん経験が足りないどころか、
この手の事はからっきしなのだ。
だから観念してロレンスがホロを受け入れるのに
かかった時間は無いと言ってもいい位だった。
これではまるで男女の立場が逆である。
この行為の後にホロから何と言われるか、
考えただけでロレンスはお腹いっぱいだ。
この有り様なら、向こう一週間は
からかいの種と食べ物にホロは困らないだろう。
ついにロレンスは折れて口をゆっくり開けた。
そこへ、まずホロの舌、同時に唾液、匂い、
そして想いがどっと入ってくる。
『好きだったのはぬしだけだと思ったかや?
わっちもぬしに負けないくらい好いておるのじゃぞ?
なぜそうも鈍いのじゃ、この大たわけめ!』
614: 2008/07/30(水) 23:42:48 ID:l/krF48c
それを受け止めたロレンスは理解した。
今この瞬間は遠慮や優しさというものは役に立たない。
してやるだけ野暮だ。
このやり取りに必要な物は単純でシンプルな情熱だけ。
今日開通した道はまっすぐなものだけが行き来出来き、
通行人は二人だけ。ならすることは一つ。
ロレンスも手に力を入れホロの顔を引き寄せ、
舌をホロ本人よりずっと上品な口に入れる。
溢れる想いを載せて。
『好きなら好きで素直に言ってくれ!
俺が何度お前の笑顔と態度にドギマギしたと思ってるんだ?
この捻くれ狼!』
二人の舌がぶつかり、絡み合い、
もつれては剥がれる。そしてまたぶつかる。
ぶつかる毎に交わされる声にならない声。
繰り返すたびに想いは届き、重なってゆく。
少し疲れたのかホロが顔を離す。
どちらのものか分らない唾液が糸を引き、
切れて服の上に垂れる。
二人とも手を顔から離さない。
お互い少し息が荒く、肩で息をしている。
この場に言葉は無い。いらない。
充分な程やり取りをしていたから。
表情も二人は同じだった。微笑み、そして眉は八の字。
何かを確認するように無言で二人見つめ合う。
ホロの瞳は何時かのように紅く燃えている。
きっとその炎は、触れても熱く無く、
舐めればこの世の何よりも甘いのだろう。
ホロの顔が何かに引き寄せられるように
少しずつ近付いてくる。
そして交わすのは三度目の口付け。
615: 2008/07/30(水) 23:45:29 ID:l/krF48c
それは、今までのように荒々しい物ではなく、
この上なく丁寧でゆっくりで、
それでいてたった一言の言葉に溢れていた。
『『大好き』』
ふと下になっているロレンスの顔に温かい水が、
ポツポツと振ってきた。
ちらっと目を開けて見てみると、
ホロが泣いている。
泣きながらも口づけを続けている。
ロレンスは心の中で小さく笑う。
(さすが賢狼様、敵わないな…)と。
ずいぶん長い間、口づけをしていた。
やっと口が離れたが、体はまだ無理のようだ。
「うぇっ、ひっく」と嗚咽を漏らしてホロは、
ロレンスの上で泣きながら微笑んでいる。
その表情は互いが結ばれ、
式で涙を流す花嫁のそれと見事に重なる。
ロレンスはその表情を何も言わず見つめ、
ホロの頭を撫でる。時折嬉しそうに耳が跳ねた。
最初に沈黙を破ったのはホロだ。
後ろでは船頭のラグーサがいびきをかいて寝ている。
「ぬしが今聞きたくて、聞きたくて
仕方が無い話をしてやってもよいぞ。」
やや鼻声気味でホロがずばりロレンスの胸中を言う。
涙は止まったが、その眼にはまだ潤いを残している。
ロレンスとしても、ここで張り合うのは得策ではないし、
これだけの醜態をさらしたのだ、
ホロを持ち上げてやらねば何だか可哀想だ。
「という事は、その涙の理由について、
話してくれると言う事でいいのかな?」
照れと恥ずかしさと悔しさを飲み込む様に、
ホロが小さく頷いた。
616: 2008/07/30(水) 23:50:24 ID:l/krF48c
投下終了です。
出来るだけ読みやすく、話のシーンを想像しやすく書いたつもりです。
ですが、話の糖分が高いので甘党な賢狼以外には受けないかもしれないですね。
まだまだ話しは続きます。これを呼んでくださった方が、
甘さで胸いっぱいになって下されば光栄です。
ではでは
出来るだけ読みやすく、話のシーンを想像しやすく書いたつもりです。
ですが、話の糖分が高いので甘党な賢狼以外には受けないかもしれないですね。
まだまだ話しは続きます。これを呼んでくださった方が、
甘さで胸いっぱいになって下されば光栄です。
ではでは
623: 2008/08/05(火) 02:01:28 ID:S0bap5Zc
「…ぬしの知る通りわっちゃあ、
尻尾の毛の数ほどの年を生きてきた。
その間にこうして体を雄に寄せた事が
無いと言えば嘘になる。」
ロレンスの体が強張る。
それはレノスの街で味わった、黒い独占欲。
手に入れた者が自分だけのモノで無かった。
ある程度わかってはいたが、
やはり避けられない反応だった。
「くふふ。ぬしは素直じゃの。
別に良いのじゃぞ?
いくら嫉妬しようが、
今のぬしには資格があるのじゃからな。
わっちが今まで体を寄せた雄の中には、
ぬしのように心まで寄せる事が
出来る輩は一人もいやしんせん。
何故か分かるかや?」
ロレンスには痛いほど心当たりがある。
ホロは賢い。それでいて本当に無邪気だ。
そして、無邪気を忘れぬと言う事は、
ホロは心根では人を信じたいと思っている事になる。
誰かの傍に居たいのだ。
だから、わざと傍に居ようとする人間を試すような事をする。
会話でのやり取りや誘う様な仕草がそうだ。
罠だと見抜けない間抜けにホイホイついて行っては、
体がいくらあっても足りはしない。
器量良しのホロなら尚のことだ。
尻尾の毛の数ほどの年を生きてきた。
その間にこうして体を雄に寄せた事が
無いと言えば嘘になる。」
ロレンスの体が強張る。
それはレノスの街で味わった、黒い独占欲。
手に入れた者が自分だけのモノで無かった。
ある程度わかってはいたが、
やはり避けられない反応だった。
「くふふ。ぬしは素直じゃの。
別に良いのじゃぞ?
いくら嫉妬しようが、
今のぬしには資格があるのじゃからな。
わっちが今まで体を寄せた雄の中には、
ぬしのように心まで寄せる事が
出来る輩は一人もいやしんせん。
何故か分かるかや?」
ロレンスには痛いほど心当たりがある。
ホロは賢い。それでいて本当に無邪気だ。
そして、無邪気を忘れぬと言う事は、
ホロは心根では人を信じたいと思っている事になる。
誰かの傍に居たいのだ。
だから、わざと傍に居ようとする人間を試すような事をする。
会話でのやり取りや誘う様な仕草がそうだ。
罠だと見抜けない間抜けにホイホイついて行っては、
体がいくらあっても足りはしない。
器量良しのホロなら尚のことだ。
624: 2008/08/05(火) 02:02:08 ID:S0bap5Zc
「お前が可愛いから逃げ出した、だろ?」
「頭が回るのがぬしの良い所の一つじゃ。
まあ、わっちからすればまだまだじゃがの。
体を寄せて来るのは、
わっちの本当の姿を知らぬ者だけじゃった。
そして賢狼を知ってしまうと皆逃げて行きおる。
ある者は恐怖に慄き、
ある者は神と崇め一切近付こうとしなくなる。
わっちはそんな事をされる為に、
体を寄せたのではありんせん。
ただ、わっちの下でも上でもなく、
隣に居てくれる誰かが欲しいだけなんじゃ。
周りに他の誰かが居っても、
常にわっちだけ浮いてしまうのじゃ。
……もう寂しいのは飽いた。」
ロレンスとホロの間にある尻尾が、
時々窮屈そうに少しだけ膨れる。
「わっちが麦を育てていたあの村の男もそうじゃ。
結局わっちよりも村を取り、
村の為にここに居てくれと頼んできた。
…わっちは断れんかった。
今考えると、わっちもぬしと同じくらい
お人好しなのかも知れぬな。」
くつくつとホロは笑う。
「そんなわっちが数百年たった今、
それなりに理由もあったが、
村を出て行きたくなり、
とりあえずと飛び込んだ先がぬしだった。
最初はな、わっちはぬしを利用して、
故郷の場所が分かれば、
あとは自分の足で向かうつもりじゃった。
故郷の近くにでも一緒に行ければ
儲けもん位にしかぬしの事を考えておらんかった。」
「頭が回るのがぬしの良い所の一つじゃ。
まあ、わっちからすればまだまだじゃがの。
体を寄せて来るのは、
わっちの本当の姿を知らぬ者だけじゃった。
そして賢狼を知ってしまうと皆逃げて行きおる。
ある者は恐怖に慄き、
ある者は神と崇め一切近付こうとしなくなる。
わっちはそんな事をされる為に、
体を寄せたのではありんせん。
ただ、わっちの下でも上でもなく、
隣に居てくれる誰かが欲しいだけなんじゃ。
周りに他の誰かが居っても、
常にわっちだけ浮いてしまうのじゃ。
……もう寂しいのは飽いた。」
ロレンスとホロの間にある尻尾が、
時々窮屈そうに少しだけ膨れる。
「わっちが麦を育てていたあの村の男もそうじゃ。
結局わっちよりも村を取り、
村の為にここに居てくれと頼んできた。
…わっちは断れんかった。
今考えると、わっちもぬしと同じくらい
お人好しなのかも知れぬな。」
くつくつとホロは笑う。
「そんなわっちが数百年たった今、
それなりに理由もあったが、
村を出て行きたくなり、
とりあえずと飛び込んだ先がぬしだった。
最初はな、わっちはぬしを利用して、
故郷の場所が分かれば、
あとは自分の足で向かうつもりじゃった。
故郷の近くにでも一緒に行ければ
儲けもん位にしかぬしの事を考えておらんかった。」
625: 2008/08/05(火) 02:03:33 ID:S0bap5Zc
ホロの顔が徐々に変わっていく。
色気と幼さが混同するホロの本当の笑顔。
それにしても今日のホロは随分上機嫌だ。
普段はヒントだけ与えて、
考えさせるような事でさえも、
どんどん話してくれている。
「それがな、ぬしの“優しさ”という毒に
わっちは掛かってしまった。
わっちの心は徐々に侵されていったのじゃ。
気が付けば、旅の終わりを告げねばならん程にな。」
少しだけど甘い、甘い沈黙。
「…なあ、ぬしよ。わっちゃあ、
あのレノスの商館に迎えに来た時に、
本気で腹を立てた。
『わっちが幾度も本当の姿を使って手伝ったぬしの夢は、
こんなに簡単に諦められる物なのか!』と。
旅を終わろうと言うたのに、
密かに旅をつづける事を熱望していた我儘な自分に。
そんなわっちにお構いなく、
ぬしはわっちのして欲しい事、
言って欲しい事を全部叶えおった。
…嬉しかった。」
ホロの瞳に涙が再び宿る。
「わっちゃあ、ぬしに好きと言ってもらえて、
本当に嬉しかったんじゃあ。
頭の中で嬉しい嬉しいと何度も叫んでおった。
そうしていたらな、…自然と涙が出てきたんじゃ。
賢狼ともあろう者が、人に想いを中てられ嬉し泣きとは、
全く、我ながら目も当てられんのう。
いかがかの?これで答えになったかや?」
色気と幼さが混同するホロの本当の笑顔。
それにしても今日のホロは随分上機嫌だ。
普段はヒントだけ与えて、
考えさせるような事でさえも、
どんどん話してくれている。
「それがな、ぬしの“優しさ”という毒に
わっちは掛かってしまった。
わっちの心は徐々に侵されていったのじゃ。
気が付けば、旅の終わりを告げねばならん程にな。」
少しだけど甘い、甘い沈黙。
「…なあ、ぬしよ。わっちゃあ、
あのレノスの商館に迎えに来た時に、
本気で腹を立てた。
『わっちが幾度も本当の姿を使って手伝ったぬしの夢は、
こんなに簡単に諦められる物なのか!』と。
旅を終わろうと言うたのに、
密かに旅をつづける事を熱望していた我儘な自分に。
そんなわっちにお構いなく、
ぬしはわっちのして欲しい事、
言って欲しい事を全部叶えおった。
…嬉しかった。」
ホロの瞳に涙が再び宿る。
「わっちゃあ、ぬしに好きと言ってもらえて、
本当に嬉しかったんじゃあ。
頭の中で嬉しい嬉しいと何度も叫んでおった。
そうしていたらな、…自然と涙が出てきたんじゃ。
賢狼ともあろう者が、人に想いを中てられ嬉し泣きとは、
全く、我ながら目も当てられんのう。
いかがかの?これで答えになったかや?」
626: 2008/08/05(火) 02:04:15 ID:S0bap5Zc
笑ってはいるが少し悔しそうな顔。
それもその筈、ホロの言った内容をどれだけ、
ホロに配慮して解釈しても、ようするに
『私は、あなたと旅をして優しくしてもらう度に、
好きになっていきました。
そして不安が募る中で、
好きと言われて嬉しくて泣いてしまいました。』
となる。
甘えるようにロレンスの胸に顔を擦りつけるホロ。
まるで憂さ晴らしの如く、甘えたい放題だ。
ロレンスはこの状況にまたしても戸惑っていた。
罠か否か。この選択をこの状況で視野に入れるあたりは、
もはや鈍いを通り越して、文字通りのたわけだ。
もちろんホロがそれを分らないわけが無い。
迷うロレンスの頬にいきなり平手が飛んだ。
腫れた部分をお構いなしに。
「っつ!!」
ロレンスは痛さのあまりに体をくの字に折る。
だが体にはホロが乗っている。
この場合体をくの字に折ると、顔が浮く。そう、顔が。
にやけたホロの顔が一瞬だけ見えた。
4度目は本人の意思とは関係なしに、
ロレンスからしに行った形になった。
「ぷはっ。このたわけ!だから、おぬしはモテんのじゃ!
本っ当に疑り深い男じゃの!
何で今、罠かどうかを吟味するのじゃ!たわけ!
したい事をして甘えればよかろうが!
それともなんじゃ?わっちに胸は貸せても、
借りる気は無いとでも言うのかや?
わっちも随分小さく見られたものじゃな!」
頬を膨らませホロはわざとらしく横を向く。
それもその筈、ホロの言った内容をどれだけ、
ホロに配慮して解釈しても、ようするに
『私は、あなたと旅をして優しくしてもらう度に、
好きになっていきました。
そして不安が募る中で、
好きと言われて嬉しくて泣いてしまいました。』
となる。
甘えるようにロレンスの胸に顔を擦りつけるホロ。
まるで憂さ晴らしの如く、甘えたい放題だ。
ロレンスはこの状況にまたしても戸惑っていた。
罠か否か。この選択をこの状況で視野に入れるあたりは、
もはや鈍いを通り越して、文字通りのたわけだ。
もちろんホロがそれを分らないわけが無い。
迷うロレンスの頬にいきなり平手が飛んだ。
腫れた部分をお構いなしに。
「っつ!!」
ロレンスは痛さのあまりに体をくの字に折る。
だが体にはホロが乗っている。
この場合体をくの字に折ると、顔が浮く。そう、顔が。
にやけたホロの顔が一瞬だけ見えた。
4度目は本人の意思とは関係なしに、
ロレンスからしに行った形になった。
「ぷはっ。このたわけ!だから、おぬしはモテんのじゃ!
本っ当に疑り深い男じゃの!
何で今、罠かどうかを吟味するのじゃ!たわけ!
したい事をして甘えればよかろうが!
それともなんじゃ?わっちに胸は貸せても、
借りる気は無いとでも言うのかや?
わっちも随分小さく見られたものじゃな!」
頬を膨らませホロはわざとらしく横を向く。
627: 2008/08/05(火) 02:05:12 ID:S0bap5Zc
ロレンスははっとなった。忘れていた。
ホロは対等を望むことに。
他人してもらった事は、
自分もしてあげられなくては気が済まないのだ。
「…一回だけチャンスをやるから、
わっちがして欲しい事を当ててみよ!
出来なかったら、二度と口を聞いてやらぬ!」
「悪かった。…大好きだ。」
そう短く言うと、ロレンスはホロがしたように、
丁寧に口を合わせる。
背中と顔の後ろに手を回し思いっきり抱き寄せる。
遠慮はしない。
ホロが二人の間に敷いていた尻尾を退ける。
きっと今まで振るのを我慢していたのだろう。
どけた途端にパタパタと音がし始める。
距離が数センチ縮まる。
たかが数センチ、されど数センチ。
布越しにホロの柔らかさを感じる距離。
鼓動、温もり、呼吸する度に膨らむ腹。
一つ一つがホロを主張してくる。
ロレンスは思う。
(やはり…敵わんな)
口づけを終えるとホロは満足そうに、牙を見せた。
してやったりと勝ち誇る様に。
「うむ、わっちは満足じゃ。
やればできるではないか。
感心、感心じゃ。
さて、疲れたしわっちはもう寝る。」
「あれ?俺が寝ないと眠れないんじゃなかったか?」
「くふ、さっきまでのわっちらならな。
いまは互いに、互いの手綱を握っておるからの。
ふあ~っ、わっちは眠い。ぬしも早く寝てくりゃれ。」
そう言うとホロはロレンスの上で静かに目を閉じた。
その手は服をしっかり握っている。
まるで、欲しかった物を買ってもらった仔のように。
その様子にロレンスがふっと笑う。
答えるようにホロの耳が小さく動く。
旅は続く。
628: 2008/08/05(火) 02:10:55 ID:S0bap5Zc
これにて投下終了です。工口くなくてすみません。
ワンパターンですみません。
もうこれ全然ホロじゃないですね、乙女すぐるww
会話の駆け引き、罠とそのオチ、出来るだけ物語の背景に沿った内容…
ママン、ボク疲れたよ。もっと文才が欲しいです。
では疲れたので、麦畑で転がってきます。
ではでは、また。
ワンパターンですみません。
もうこれ全然ホロじゃないですね、乙女すぐるww
会話の駆け引き、罠とそのオチ、出来るだけ物語の背景に沿った内容…
ママン、ボク疲れたよ。もっと文才が欲しいです。
では疲れたので、麦畑で転がってきます。
ではでは、また。
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