1: 2012/12/29(土) 17:25:42 ID:sxg3k.B60
澪は何時も暇さえあれば話している。形の保てない物を、形の持てない物を、まるで見て来たかの様に、さながら今も見えているかの様に。
私は何度も澪に付き合って、空想に浸る真似事をする。空の向こう側を覗きこみ、彼女と雲の上を歩こうと試みる。
けれど結局は真似事でしかなくて、やっぱり私には澪の見ている景色が臨めない。そして再び、ただの鬱屈とした感情や、この先の有るかも解りはしない道について澪は話したがる。
そう、決まって彼女は私と何事かを共有したがるのだ。ただそれは、私達の関係性から見て必然だと言えるし、逆にこの関係のせいだとも言って良い。

私達は、付き合って居たから。
背徳的な意味を孕む、女同士のお付き合い。
けいおん!Shuffle 3巻 (まんがタイムKRコミックス)

2: 2012/12/29(土) 17:26:42 ID:sxg3k.B60
「律は恐くないの?もし私達の関係が誰かに知られたらとか、考えたりしないの?」

怯えた様子に、震える唇。まるで私とは正反対で、今だって私は、彼女の悩みとは遥か久遠の対岸に立っている。
乱れたシーツ、鼻を刺激する甘くて濃厚な匂い、彼女の潤いに満ちた瞳。
手を差し出せば沈んでしまいそうな豊満な肉体に、私は自ら溺れに行こうと意気込んでいる。
そこに、感覚が有っても、感情なんて要るのだろうか?そんな疑問が刹那に浮かんですぐに消える。

けれどそれよりももっと表面上では、理性が僅かに残った欠片を必氏で光らせて居る。
澪は、よく私を怒ったり、疑ったりするのだ。私が悩まない事を、考えない事を、共有しない事を、私の意見そのものを。

「怖いよ。けど、私が守ってやるから大丈夫、澪は何にも心配しなくていいから……」

私は何時も肯定する。彼女の在り方そのものを。そしたら、その間だけは、澪は安心して正しいと思っていられる。
私も、彼女の中では正しい姿で保たれる。その間だけは。

3: 2012/12/29(土) 17:27:33 ID:sxg3k.B60
「ん、あっ……」

「澪、可愛いよ」

キスをして感じる、愛撫を受けて喘ぐ、そんな時に私達は全てを忘れている。
だから本当は、それまでの会話も気持ちも、それが何であったって変わらない筈だろう?


上り詰めていく最中、ただひたすらに快感に身を委ねて私は白くなっていく。
軋むベットの音も、澪の声も、私の視界も、何もかも。
溶けて混ざって、一つの海の様に……

4: 2012/12/29(土) 17:28:10 ID:sxg3k.B60
疲れ果てた二人が、まるで氏体みたいに横たわった、汚れたシーツの上。
そこは只のベットで、私の部屋で、暗いだけの夜。
行為が終わった後は、何時もの様に澪が言う。

「愛してるよ、律……」

ゆっくりと睡魔に殺されながら、優しい声で。
けれど言葉は消えてしまって、もうそれから戻ってこない無責任なやつだ。
そして私には、その言葉も見えやしない。

だから、私には愛されている事を
実感できる術がない。

彼女の言葉も私の応えも、全く意味を成してはくれないのだから。

5: 2012/12/29(土) 17:32:34 ID:sxg3k.B60
終わり。

短くてすまんね
元ネタの曲↓
http://www.youtube.com/watch?v=J1sYN0PuRs4


Hüsker Dü - Makes No Sense At All

引用: 律「なんせんす」