1: 2010/09/03(金) 20:23:41.65 ID:X/K91gvH0
これは私が高校に入った頃のおはなし。

梓「あの……入部希望、なんですけど」

軽音楽部の新勧ライブに感動した私は
音楽準備室の扉を叩いた。
軽音楽部の先輩たちは
唯一の新入部員である私を歓迎してくれた。

四人の先輩たちはみな明るくて優しく、
音楽準備室はとても居心地の良い空間だった。

ジャズ研と迷ったがこちらに入って正解だった。
この軽音楽部で三年間、楽しく音楽漬けの日々を送ろう……
当時の私はそんなふうに考えていた。
しかし淡い期待はあっさりと崩れ去る。
けいおん!Shuffle 3巻 (まんがタイムKRコミックス)

3: 2010/09/03(金) 20:27:41.70 ID:X/K91gvH0
先輩たちはありえないくらい不真面目であった。
毎日放課後に音楽準備室に集まりはするものの
高そうな紅茶やケーキをむさぼり食い
どうでもいいような雑談をするばかりで
一向に練習しようとしないのである。
先輩たちだけでなく顧問まで
この茶会に参加しているのだからたちが悪い。

澪「なんかごめんな、だらだらした部活で」

梓「ああ、いえ……」

澪先輩。
この部活でただ一人の常識人である。
私と同じくさっさと茶会を切り上げて練習したい、
と思っているようなのだが
いくら言っても聞かないので
最近はもうあきらめ気味らしい。

4: 2010/09/03(金) 20:31:41.73 ID:X/K91gvH0
澪先輩は私の憧れだ。
まず第一に練習に対しての意欲がある。
この堕落した部活においてはそれだけで尊敬の価値がある。
そして澪先輩はベースを担当しているのだが
その腕前もたいへん素晴らしい。
友達に付き合ってないでこんな部活なんか辞めて
外バンでも組めばもっとイイトコまで行けるはずなのに、勿体無い。

次に澪先輩は女の私でも見とれるほどの美人である。
それに肌は白いし、黒髪も綺麗だし、おっOいでかいし、
紅茶を飲む仕草も上品だし……
ちんちくりんの私では足元にも及ばないが、
澪先輩と一緒にいるだけで心が満たされる気がした。

5: 2010/09/03(金) 20:35:41.34 ID:X/K91gvH0
私の人生は物心ついたときからずっと空虚だった。
親は私にいつも真面目でいなさい、勉強しなさい、
ギターを頑張りなさいと口を酸っぱくして言ってきた。
私はずっとそれに従って生きてきたし、
それを間違いだと思ったことはない。

しかしその生き方は正解でもなかった。
クソがつくほど真面目で堅物で
勉強とギターしかしていなかった私には
ろくに友達もできなかった。
親や教師は私に笑顔を向けてくれるが
同級生と楽しく笑いあうなんてことは
小中の9年間でついぞなかった。

友達のいない孤独な思春期生活は私を歪め、
それだけが私に必要なものであるかのように
一心不乱に勉強とギターに打ち込んだ。
私にはそれ以外のことは目に映らなかった。
成績を上げ、ギターの腕を磨き、
そして私はさらに孤独……というか孤立を深めていった。

私はただ独り、
課せられた義務をこなすように毎日を過ごした。
それは中学卒業まで続いた。

6: 2010/09/03(金) 20:39:42.14 ID:X/K91gvH0
高校に入って澪先輩と出会い、
私は初めて憧れとか、ときめきとか、
そういう年頃の娘らしい感情をいだいた。
それは私のからっぽの心に充足をもたらした。

素晴らしい出会いは他にもあった。
私に友人が二人できたのだ。
二人は根暗な私に明るく接してくれた。
最初は付き合いなんて面倒だと思っていたが、
いつの間にか私は二人のペースに巻き込まれ、
気づけば仲良くなってしまっていた。
その二人のうちの一人が鈴木純である。

純「梓、おねがい! 英語の宿題見せてー」

梓「ええ、またー? 少しは自分でやりなよ」

純「一生のお願いだからー……
  今日授業の答え合わせで当たっちゃうんだよ」

梓「もう、仕方ないな」

純「おおー、ありがとう梓大明神!
  あとついでに現国と数学のも頼む!」

梓「分かったよ、も~」

7: 2010/09/03(金) 20:43:01.99 ID:X/K91gvH0
純は私と正反対の人間だ。
毎日を楽しんで生きている。
楽しんで生きる方法を知っている。
勉強ができなくても、真面目にしていなくても
私よりも何倍も実のある日々を送っていた。

純と一緒にいると私も楽しかった。
友達と一緒にいることが
こんなに素晴らしいことなのだと
その時初めて知ることができた。
私はそれまでの空虚な人生を埋め合わせるように
純との充実した学校生活を夢中で過ごした。

純は私が持っていないすべてのものを持っていた。
からっぽだった私の心は
純がくれるもので満たされ溢れていった。

そんな純が私にとって特別な存在になるのに
さほど時間は変わらなかった。

8: 2010/09/03(金) 20:46:23.89 ID:X/K91gvH0
私はもっと純と親密になりたいと思った。
しかし友達のできた経験がなく
人付き合いの不器用な私にとって
誰かと仲良くするなんてことは困難だった。
私は今まで人付き合いを避け
勉強しかしてこなかった自分を恨んだ。

どうしたら純ともっと仲良くなれるだろう。
どうしたら純はもっと私を気に入ってくれるだろう。
どうしたら純は私を好きに……
そんなことばかり考えて、
考えれば考えるほど思考はこんがらがり、
最終的には自己嫌悪に落ち着いてしまう。

これでは答えなど出ない。
ただ行き場のない悩みが膨れあがっていくだけだ。
ある日の帰り道、
私は思い切って澪先輩に相談してみることにした。

9: 2010/09/03(金) 20:49:45.34 ID:X/K91gvH0
澪「そっか、友達ともっと仲良く……ね」

梓「はい」

純のことが好きだ、とは言わなかった。
引かれることは容易に想像ができたからだ。
ちなみにこの時の私は澪先輩と二人きり、
やかましい先輩たちはいない。

澪「うーん、梓の気持ちは分かるよ。
  私もそういうのちょっと苦手だからな」

梓「そうなんですか」

澪「仲良くなろう! って気構えるのも良くないと思うよ。
  友達ってそういうものでもないしさ。
  同じ時間を過ごすうちに、二人で共通のものを得られる……
  そういう体験を重ねていくことで親交が深まっていくんじゃないかな」

梓「……よく分かりません」

澪「とにかく焦らずゆっくりやればいいってことだよ。
  私個人の意見だけど、友情を深めるために必要なのは
  モノでも行為でもなくて時間だけなんだと思うよ」

梓「時間、だけ……」

12: 2010/09/03(金) 20:53:08.87 ID:X/K91gvH0
さすがは澪先輩だ。
私には考えもつかなかったことを言ってくれた。
私は直接的かつ短絡的に純との仲を進める方策を
考えていた自分を心中で戒めた。

澪「そうだ、その子を軽音部に連れてきてあげたらどうだろう」

梓「軽音部に……ですか」

澪「うん、それで梓がギター弾いてるところでも
  見せてあげるといい」

正直言うと連れていきたくない。
ぐーたらな先輩どもの姿を見られるのは
私にとって恥だ。
しかし他ならぬ澪先輩の提案である。
ここは無条件で従うのが当然だろう。

梓「わかりました、じゃあ明日連れてきます」

13: 2010/09/03(金) 20:56:28.87 ID:X/K91gvH0
翌日、私は純とともに音楽準備室に向かった。
幸いにも澪先輩以外の先輩は来ていなかった。
後で聞いたことだが、
この日澪先輩は気を利かせて
他の先輩たちを帰らせてくれたらしい。

私は澪先輩とセッションした。
自分で言うのもなんだが、
私のギターの腕は相当なものだと自負している。
そこに澪先輩のベースが加われば
人を惹きつけるに充分すぎる演奏になる。
事実、純はずっと私たちの演奏に聴き入っていた。

純は私がギターの上手いことを実感してくれただろう。
そして純の中にまたひとつ私という存在が刻まれる。
澪先輩の言ったように、
こうして二人の時間を共有し積み重ねていくことで
私たちはもっともっと絆を深めていけるはずだ。

私が純に抱く恋はきっと実らない。
それはそうだ、女同士なのだから。
ならばせめて友達として。
純にとってかけがえのない存在になりたい……
私はそんな想いをこめてギターをかき鳴らした。
純には届いただろうか。
音に込められた私の気持ち。

15: 2010/09/03(金) 20:59:50.53 ID:X/K91gvH0
その日の部活はセッションだけで終わった。
澪先輩は音楽室で自主練すると言って居残り、
私と純は二人で帰路についた。

純「いやーすごかったよー。
  梓があんなにギター上手かったなんて、知らなかった」

梓「へへ、そうかな……」

純「それにしても今日はありがとうね、梓。
  軽音楽部に連れていってくれて」

梓「そんなに行きたかったの?」

純「うん、だって澪先輩を生で見られたし!」

梓「え」

私は自分の心が
なにか得体のしれないものに押さえつけられるのを感じた。

17: 2010/09/03(金) 21:03:11.43 ID:X/K91gvH0
梓「それは……どういう」

純「知らないの、澪先輩はみんなの憧れの的なんだよ。
  かくいう私も尊敬してるんだよ、澪先輩のこと」

私はもう言葉を出せなかった。
演奏の間、純は私ではなく
ずっと澪先輩に心を奪われていたのだ。
そんな純に向かって
私は私自身を知ってほしくて
必氏にギターを鳴らしていた。
我ながら滑稽である。
そして惨めだ。
さっき純がくれた褒め言葉も、
もう社交辞令だったとしか思えない。

純「あの美貌とか、
  モデルみたいなスタイルとか、
  落ち着きとか上品さとか勤勉さとか、
  それでいてカッコよさも兼ね備えてて、
  私が持っていないすべてのものを持ってるって感じ!」

澪先輩について語る純は、
それまで見てきたどんな純よりも
ずっとずっと活き活きしていて、とても眩しかった。

18: 2010/09/03(金) 21:06:32.07 ID:X/K91gvH0
それからというもの、私は澪先輩に対して
以前のように接することができなくなった。
澪先輩はいつものように気さくに話しかけてきてくれるが、
私はどうも意識してしまって
ぎこちない受け答えになってしまっていた。

純はといえば、事あるごとに
澪先輩の話をしてくるようになった。
今日は休み時間に澪先輩とすれ違っただとか、
校庭で体育をしている澪先輩を見られただとか、
裏サイトにアップされていた昨年のライブ映像を見て
思わず鼻血を吹いてしまっただとか。
純が澪先輩のことを嬉しそうに語るほど
私は悔しくて悲しくて泣きたい気持ちが募って
どうしようもなかった。

純は澪先輩に夢中だった。
澪先輩に憧れる女生徒達は大勢いたが、
その中でも純はひときわ澪先輩を崇拝しているようだった。

19: 2010/09/03(金) 21:09:55.59 ID:X/K91gvH0
なぜ、澪先輩なんだろう。
澪先輩のようになれば、
純は私のことを好きになってくれるだろうか。
どうすれば澪先輩のようになれるだろう。
どうすれば、私が仲良くなりたくて仕方のない純を、
あそこまで夢中にさせられる人間になれるのだろう。

澪先輩への憧れは嫉妬に変わり、
嫉妬はコンプレックスとなって自らに跳ね返ってきた。
私は澪先輩にはなれない。
分かりきっていることだった。
ただ勉強しか能のない、真面目なことしか取り柄がない、
人よりギターが上手いだけの私が、
ルックスも人徳も女性的な魅力までも持ち合わせた澪先輩に
取って代われるわけがないではないか。

もちろん私が澪先輩のようにならなくても
純は私と友達でいてくれるし、
私も純ともっと仲良くなれることは分かっている。
でも惨めなのだ。
私の目の前で、とても良い笑顔で、
私以外の人に心酔している純を見ることが。

その笑顔を、私だけに向けてほしい。
私のことだけを考えて、そんな笑顔になってほしい。
そう考えるのは、愚かなことだろうか。

20: 2010/09/03(金) 21:13:16.10 ID:X/K91gvH0
純はますます澪先輩に傾倒していった。
写真部が撮った澪先輩の盗撮写真を買いあさったり、
澪先輩の歌が入ったCD(純に頼まれて私が作った)を
ウォークマンで一日中聴いていたり、
休み時間には澪先輩の教室の近くのトイレに張り込んだり。
そして澪先輩に運良く遭遇できると、
満面の笑みで私に報告してくるのだ。

私はそれを受け入れるしかない。
無下にしてしまえたら、イヤだと言えたなら、
純の頬を引っぱたいて私だけを見て欲しいと言えたら
どんなに良いことか。
でもそんなことは出来ない。
私には純を否定する資格などないし、
純の澪先輩を見る目を私に向けさせることも無理だ。
私にはずっとこんな惨めな気持ちを抱えて
学校生活を送るしか選択肢はない。

私は軽音楽部での毎日の茶会に
積極的に参加するようになった。
澪先輩以外の先輩たちと仲良くなり、
私たちの練習時間はさらに短くなった。
膨れ上がったコンプレックスは私に「逃避」を教えてくれた。
その時の私には見たくないものばかりがあった。
澪先輩。純。そして私自身。
私は少しでも現実から目を背けられる暇があれば
できるだけ「逃避」に費やしていた。

そんなある日のことだった。
澪先輩が犬のウンコを食べて氏んだ。

22: 2010/09/03(金) 21:17:26.22 ID:X/K91gvH0
訃報を最初に持ってきたのは軽音楽部顧問の教師だった。
部活の後輩である私にだけこっそりと教えるつもりだったらしいが
ちょうど近くにいた純の耳にも入ってしまった。

純「何を言っているんですか、先生。
  澪先輩が氏ぬわけないじゃないですかっ」

純の反応は当然といえば当然であろう。
私も教師の話には現実感を見いだせなかった。
昨日まで元気に会話を交わしていた人間が突然氏んだなど、
到底信じられることではない。

教師は私たちを外へと連れだした。
校庭の隅にはパトカーと救急車がが停まっており、
野次馬たちが集まって人だかりが出来ていた。
やがて人をかきわけて救急隊員が姿を現した。
その救急隊員が担いでいたタンカに横たわっていたのは
紛れもなく澪先輩であった。
澪先輩の顔には生気がなく、四肢はだらんとうなだれ、
白かった肌はいっそう白くなっていた。
澪先輩は、明らかに氏体だった。

純「いやあああああああああああああっ!!!」

23: 2010/09/03(金) 21:21:26.75 ID:X/K91gvH0
天真爛漫に光だけを見つめて生きてきた純にとって
大切な人の氏という悲しみは受け入れられることではなかった。
純は錯乱状態に陥った。

純「なんでっ、なんで澪先輩がっ……
  いやっ、澪先輩を返してええええっ!」

狂ったように泣き叫びながら暴れる純を
教師は3人がかりで抑えつけ、なだめた。
純はおとなしくはなったが
精神的に非常に不安定な状態であることは
誰の目にも明らかだった。

澪先輩の氏は全校生徒に知らされた。
その日は授業は中止され、
生徒はみな下校することになった。
私は軽音楽部のことも気になったが、
純を家まで送っていくことにした。

24: 2010/09/03(金) 21:25:42.59 ID:X/K91gvH0
私は澪先輩の氏を喜んでいた。
澪先輩がいなくなったことで純は崇拝の対象を失う。
もう澪先輩に夢中な純を見なくても済むのだ。
これからはこの悲哀に暮れる純を慰めていくことで
二人だけの時間を積み重ねていこう。
私はそう考えた。
不謹慎なのは自覚していたので、
表向きには私も澪先輩が氏んで悲しいというふうに
振る舞ってはいた。

やがて純の家に着いた。
家には誰もいなかった。
純を一人にしてやるべきか、
それとも私が傍にいてやるべきか。
判断は純に委ねた。

梓「純、一人で大丈夫?」

その問いに純は力なく首を横に振った。
私は純の肩をそっと抱いて、
二人で純の部屋に向かった。

25: 2010/09/03(金) 21:29:08.61 ID:X/K91gvH0
純の部屋で、ベッドに腰掛ける私たち。
外はまだ日が高かったが、
部屋はカーテンが締め切られて暗かった。

暗さのせいで俯いた純の顔は分からなかった。
ただいつもの輝かんばかりの笑顔の純とは正反対の、
絶望を湛えた表情をしているであろうことは想像できた。
そして、純をその絶望から救い出せるのは私だけなのだ。
私は愛する人にとってのそんな立場になれたことが嬉しく、誇らしかった。
もはや私には澪先輩の氏は悲しいことでも何でもなかった。
澪先輩の氏は、私と純の心を近づけてくれる。
その時の私はそう確信していた。
だがそれは間違いだった。

純が顔を上げた。
ぎこちないが、笑顔だった。

純「梓……髪、ほどいてくれない」

梓「え、うん」

なぜ私にそんなことを頼むのだろうか。
私には理由が分からなかったが
とりあえず純の髪に手を伸ばした。
が、その手は遮られた。

純「違う。私のじゃない……梓の」

26: 2010/09/03(金) 21:34:02.13 ID:X/K91gvH0
私はその時に思い知った。
自らの浅はかさを。

純はまだ崇拝を捨ててはいない。
純の目には澪先輩しか映っていない。
純に必要なのは澪先輩だけなのだ。
私では純を慰めることなど出来はしない。

純は髪を下ろした私を澪先輩に見立てようとしていたのだ。

確かに髪を下ろした私は澪先輩に
雰囲気が似ていないこともない。
でも中身は私のままで。
澪先輩っぽいのはパッと見の上っ面だけで。
しかし純はそんな紛い物でしかない澪先輩を求めていて。
今、純の傍に居る私という確かな存在を無視して。
純はもはや純の心にしかない偶像の澪先輩を欲して。

純を慰められるのは私ではない。
澪先輩しかいない。
ならば私が澪先輩になれば良いのか。
私という存在を押し頃して
純が心酔していた澪先輩に。
しかし私は。
私は。
私は――

梓「私は、澪先輩にはなれない」

27: 2010/09/03(金) 21:34:39.44 ID:X/K91gvH0
私がそう言い放った瞬間、
純の顔に再び絶望が広がった。
そして純は布団に顔をうずめてわんわん泣き始めた。

私は自分が純に必要とされていないこと、
純の傍にいる資格がないことを自覚した。
私はそっと立ち上がり、
泣きじゃくる純を見ないようにして部屋から出て、
音を立てずにドアを閉めた。

それが私と純との永遠の隔絶になった。

29: 2010/09/03(金) 21:38:44.58 ID:X/K91gvH0
純は澪先輩の通夜にも葬式にも姿を見せなかった。
その後、2週間ほど学校を休んだかと思うと
急に隣町の高校に転校してしまった。

家は引越していなかったし
メールアドレスも電話番号も知っていたので
連絡を取ろうと思えばすぐに取れた。
だが私はそうしなかった。
今再び純と相対したとき、
純が私のことをどういう目で見るかが分からなかったから。

もう一度、私を友達として見てくれるなら、
今度は私も汚い感情に惑わされたりせずに
純粋に友情関係を育んでいけると思う。
でも、もしあの時のように
純が私を澪先輩の代わりとして見てくるのならば……
私にはそれが恐ろしいのだ、どうしようもなく。

澪先輩のいなくなった軽音楽部には
だんだんと先輩たちは来なくなり、解散となった。
あれから私の時間は止まったままだ。
澪先輩も、純も、軽音楽部も失って、
私は今まで通りの、独りで勉強とギターに明け暮れる
空虚な毎日を過ごしている。


     お     わ     り

30: 2010/09/03(金) 21:39:28.60 ID:X/K91gvH0
これでおしまい

たまには真面目に書いてもいいよね
犬のウンコ食べて即氏するかどうかは知らん

31: 2010/09/03(金) 21:41:00.04 ID:Ta6IcJa3P
うんこ全く関係無かったwwwだがこの寂寥感...嫌いじゃ無いぜ。乙

32: 2010/09/03(金) 21:41:43.09 ID:0spuqTX/0
おつ

引用: 梓「澪先輩が犬のウンコを食べて死んだ」