70: 2018/08/16(木) 03:40:18.23 ID:1RkWeFQA0

湊友希那「もしも私が↓1だったら」

71: 2018/08/16(木) 03:48:32.63 ID:MGWi6OvN0
幽体離脱した霊体

74: 2018/08/16(木) 16:00:34.51 ID:1RkWeFQA0

もしも湊友希那が幽体離脱した霊体だったら


友希那『……あら?』

友希那(夜。ふと目を覚ますと、なんだか身体がとても軽かった)

友希那(重力を全く感じないというか、地に足がついた感覚がしないというか)

友希那(不思議に思って辺りを見回してみる)

友希那(時計は午後11時を指していて、いつもより高い視線を下に向けると、ベッドに横になっている自分の姿が目に映った)

友希那『これは一体……』

友希那(首を傾げつつ、体を動かしてみると、フワフワとあちらこちらに飛べるようだった)

友希那『状況はよく分からないけど……なんだか楽しいわね』

友希那(身体と共に思考も上ずっていたのか、私はそんなことを呟くと、ふと外を飛んでみたくなった)

友希那『物に……触れるのかしら』

友希那(カーテンに手を伸ばしてみると、布の感触も何もなく、手だけがカーテンの向こうに吸い込まれていった)

友希那『触れないけど、すり抜けられるみたいね』

友希那『なら……』

友希那(思い切って、窓に向かってフワリと飛び込んでみた)

友希那(すると、特に何かにぶつかるという感触もなく、家の外に漂うことが出来た)

友希那『……面白いわね、これ』

友希那(リサが読んでいた漫画にこんな体験のことが書いてあったな、とふと思い出す)

友希那(あれは月曜日の友達と空を飛ぶ話……あ、違うわ、これじゃない。左手に鬼を宿す地獄先生の話ね)

友希那『確か幽体離脱、と言ったかしら』

75: 2018/08/16(木) 16:01:01.28 ID:1RkWeFQA0

友希那(どうしてこうなったのかは全く分からないけど、せっかくなので私は街の空を飛んでみることにした)

友希那(水中を泳ぐように、夜空へ向かって空気を手でかいてみる)

友希那『……いけるわ』

友希那(どんどん自分の身体が空へと昇っていく)

友希那(しばらくそうしていると、私の住む街が真上から一望できるくらいの高さにまで昇りつめた)

友希那(夏の夜の街はシンと静まり返っていた。大きな国道にはトラックがちらほらと走っているけど、それ以外に動いているものは何もない)

友希那(家々の明かりももうほとんどが消えてしまっていた)

友希那『ふふ、頂点に狂い咲いたら、こういう景色が見えるのかもしれないわね』

友希那『……この身体であまり高いところにまで行くと、このまま天に召されてしまうのかしら』

友希那(そう思うと少し怖い思いがした。だけど、こんな珍しい体験をすぐに止めてしまうのはもったいない)

友希那(どうしようかしら、と少し考えてから、ハタと思いつく)

友希那『そうだ。せっかくだし、ロゼリアのみんなの様子でも見に行きましょう』

友希那(そうと決まれば、まずは私は宇田川さんの家を目指して空を飛ぶことにした)


76: 2018/08/16(木) 16:02:11.29 ID:1RkWeFQA0

――宇田川家 あこの部屋――

宇田川あこ「よし、やった――うわー! まだ倒しきれてなかったぁ!」

友希那『電気が点いてる、と思ったらまだゲームをしていたのね……』

あこ「りんりーん! 助けて~!」

友希那(インカムの付いたヘッドフォンをしていて……燐子と電話でもしながらやっているのかしら?)

友希那(はぁ……燐子も燐子ね。電話代だって嵩むでしょうに)

友希那『まったく……いくら夏休みだからって、夜更かししてまでゲームをするのは感心しないわよ』

友希那(さて、どうしようか)

友希那(あこのゲームを中断させたい、けど、今の私は物に触れないのよね)

友希那(……声は届くかしら)

友希那『あこ』

あこ「ありがと、りんりん! 助かったよ~!」

友希那『……これは、私の声そのものが聞こえないのか、ただ燐子と電話してるから聞こえていないのか』

友希那『もう少し近づいてみましょう』

あこ「うん、うん……それじゃあ次は――って、あれ?」

友希那『?』

あこ「あ、ううん。なんか、急に冷たい風が吹いてきたっていうか、なんていうか……」

友希那(冷たい風……冷房じゃないのかしら)

あこ「ううん、冷房じゃない……と思う。なんだろう、冷蔵庫開けたみたいな?」

友希那(もしかして、私の周りの空気が冷たいのかしら。ちょっとあこの首に触れてみましょうか)

あこ「ひゃあっ!?」

友希那『わっ』

あこ「え、え!? いや、なんか急に首元が冷たくなって……!? え!? 幽霊!?」

友希那(そんなに冷たいのかしら。でも今の季節にはちょうど良さそうね)

あこ「や、やめてよりんりん……お化けなんていないよ……」

友希那(……これ、燐子がちょっと面白がって怖い話をしてそうね)

友希那(ふふ……いつもあこには振り回されているし、たまには私の方からあこにイタズラするのもいいかもしれないわ)

77: 2018/08/16(木) 16:03:10.45 ID:1RkWeFQA0

あこ「あ、あこが今までゲームで使った氏霊が……?」

友希那(なるほど、そういう方面で攻めてるのね。なら私も……)

あこ「耳を澄ませば……恨みを呟く声……」

友希那『たすけて』

あこ「ひっ!?」

友希那『ねぇ、どうして? どうして見捨てたの? ねぇ、ねぇ』

あこ「や、やだ……やめてよぉ……」

友希那(私の声、聞こえてるみたいね)

友希那『ねぇ、また一緒にあそびましょう? あこ、ほら、ねぇ? ふぅー』

あこ「ひゃぁ……!? また冷たい風が……」

友希那『ふふふ……ふふふふふ……』

あこ「い、やぁ……お、おねーちゃん助けて……」

友希那『今日は見逃してあげるけど、夜は早く寝なさい?』

あこ「は、はいぃ……夜更かしはしません……早く寝るようにします……」

友希那『ふふ、いい子ね。でも、もし約束を破ったら……ふふ、ふふふふふふ……!』

あこ「ひゃあ!? ごめんなさい、ごめんなさいぃ!!」

友希那(……少しやり過ぎたかしら)

友希那(椅子の上で縮こまってブルブル震えてるあこを見てたら……こう、ちょっと申し訳ない気持ちになってしまったわ)

友希那(最後にフォローだけしておきましょうか)

友希那『あなたが良い子だってことは知っているわ。だから安心して頂戴。私はいつでも、あなたを見守ってるからね?』

あこ「~~っ!! た、助けてぇ、おねーちゃーんっ!!」ガタッ

友希那『わっ』

78: 2018/08/16(木) 16:03:50.16 ID:1RkWeFQA0

友希那(フォローのつもりだったんだけど、どうしてかあこは部屋を飛び出していってしまったわ)

友希那(どうしようかしら。……とりあえず燐子にもフォローしておきましょうか)

友希那(そう思って、机の上に無造作に投げ捨てられたヘッドフォンのインカムに口を近づける)

友希那『……聞こえる?』

『えっ!? ど、どなた……ですか……!?』

友希那『通りすがりの……歌姫よ』

『え……え……!?』

友希那『あの子はそのうち戻ってくるわ。気にしないで』

『戻ってって……!?』

友希那『それだけよ。それじゃあね、燐子』

『!? な、なんで……わたしの……!?』

友希那(なんだか電話の向こうの燐子も驚いたような声ばかりだしていたけど……どうしたのかしらね)

友希那(まぁ、きっと飲み物でも零したんでしょう)

友希那『次は……紗夜のところに行こうかしらね』


79: 2018/08/16(木) 16:04:43.14 ID:1RkWeFQA0

――氷川家 紗夜の部屋――

友希那『お邪魔します』

友希那『もう部屋は真っ暗だし、流石紗夜ね。夏休みでも規則正しい生活を送っているみたいね』

友希那(でも、紗夜がもう眠っているのなら特にやることもないんだけど)

友希那(……せっかくだし、寝顔の1つでも拝んでから帰りましょうか)

友希那(そう思って、ベッド上までフワリと移動する)

友希那(変な慣性が乗るこの空中浮遊もすっかり慣れてしまったわね)

氷川紗夜「すー……うぅん……」

友希那『あら……少しうなされているわね。悪い夢でも見ているのかしら』

紗夜「マスク……ウサギ……星……うぅ……」

友希那『それにすごく汗をかいているし……エアコンは動いてるわよね』

友希那(チラリと部屋に備えられたエアコンに視線をやる。今の私は気温を感じられないけど、電源のランプと空気を吐き出す音はしっかり確認できた)

友希那『紗夜のことだから冷房の温度を高く設定しているのかしら』

友希那(呟きつつ、机の上に置かれていたエアコンのリモコンを見てみる)

友希那(……やっぱり30℃に……って、これ、暖房になってないかしら)

友希那『何故この真夏に30℃の暖房を……? 何か深い意味があるのかしら?』

80: 2018/08/16(木) 16:05:17.95 ID:1RkWeFQA0

――ガチャ

友希那(紗夜の真意を推測していると、部屋の扉が開く小さな音が聞こえた)

友希那(少し驚きながら扉の方へ視線を巡らせると、そこには忍び足で部屋に入り込んできた日菜の姿があった)

氷川日菜「…………」

友希那(日菜は黙ったまま、まるで猫みたいに音もなく、紗夜の枕元まで足を運ぶ)

――カシャ

友希那『え?』

友希那(そして、スマートフォンを紗夜に向けたと思ったら、僅かなフラッシュとシャッター音)

友希那(一体何を……?)

日菜「……えへ、おねーちゃんの寝顔……」

日菜「こっそり暖房をかけた甲斐があったなぁ……寝汗を顔に浮かべて、困ったように、あるいは苦しいって風に、眉根を寄せるおねーちゃんの苦悶の表情……」

日菜「少しはだけたパジャマの胸元、それでもしっかり掛け布団をかけたままの几帳面なおねーちゃん……」

日菜「……火照った肌、そそるなぁ、へへへ……」

紗夜「うーん……胃薬……」

友希那『…………』

友希那(色々不可解なことがあったけど、全部日菜のせいだったのね)

友希那(紗夜も大変ね。身近に破天荒な人がいると……)

日菜「それじゃあ、いい夢を見てね、おねーちゃん」

友希那(日菜は満足そうに頷いて、足音を頃して部屋を出て行く)

友希那(残された私は……どうしようかしら)

81: 2018/08/16(木) 16:05:49.31 ID:1RkWeFQA0

紗夜「うーん……うぅ……」

友希那『やっぱりうなされてるわね……流石に可哀想だし、今の私に出来ることは……』

友希那(物に触れないからエアコンは冷房に出来ない……けど、そういえば今の私の近くは涼しいのよね)

友希那(これも仲間の為だし、少し添い寝をしてあげましょうか)

友希那『ちょっと失礼するわよ、紗夜』

友希那(一言断りを入れてから、眠っている紗夜に抱き着くように寝そべってみる)

紗夜「う、ん……」

友希那(……少し寝顔が穏やかになったわね。良かった、効果があって)

友希那(そのまましばらく、紗夜の寝顔を間近で観察する)

友希那(いつもはキリっと前を見据えている瞳も穏やかに閉じられている)

友希那(綺麗な長い睫毛、しっかり手入れがされているだろう艶のある長い髪)

友希那(付き合いはもうそれなりに長いけど、こんなに近くで紗夜の顔を見るのは初めてね)

友希那『綺麗ね……紗夜』

紗夜「すー……すー……」

友希那(先ほどまでうなされていたのが嘘のように、紗夜の寝息はゆっくりとした穏やかなものに変わっていた)

友希那(……特になんの考えもなく添い寝したけど、これ、いつまでやっていればいいのかしら)

友希那(まだ暖房はついたままだし……流石に日菜だってタイマーを設定するくらいの常識はあると信じたいけど……)

友希那『紗夜、離れても大丈夫?』

紗夜「んん……」

友希那(寝顔に尋ねてみるけど、少しグズるように紗夜は身をよじらせるだけだった)

友希那『まぁ……暖房が消えるくらいまではこのままでいましょうか』

友希那『いい夢を見なさい、紗夜』

紗夜「すー……すー……」

82: 2018/08/16(木) 16:06:56.20 ID:1RkWeFQA0


友希那(結局、それから1時間も暖房は消えなかった)

友希那(その間ずっと紗夜の寝顔を至近距離から眺めていた)

友希那(もうこの先しばらくは目を瞑るだけで紗夜の寝顔を思い出せそうね……)


83: 2018/08/16(木) 16:08:08.09 ID:1RkWeFQA0

――白金家 燐子の部屋――

友希那(紗夜の部屋を後にした私は、今度は燐子の部屋に訪れた)

友希那(もう夜中の1時過ぎだ。流石に燐子の部屋の明かりは消えていた……けど、ベッドの枕元に小さな光が灯っていた)

白金燐子「お化けなんていない……お化けなんて……」

友希那(どうやら燐子がベッドに横になってスマートフォンをいじっているみたいね)

友希那(それにしても、お化けなんていない? って呟いているみたいだけど……どうしたのかしら)

燐子「あの声は……きっと宇田川さんが……イタズラしただけ……」

友希那(……何か心霊特集のテレビ番組でも見たのかしらね。冷房もかけていないのに、布団をかぶって震えているわ)

友希那(怖がっているのならどうにかしてあげたいけど……今の私に出来ることって何かあるかしら)

友希那『……紗夜みたいに添い寝してあげましょうか』

友希那(呟いて、燐子の傍に寄り添う)

燐子「ひゃっ……急に……寒気が……」

燐子「まさか、あ、あこちゃんが……言ってたみたいに……!?」

友希那(声もかけてみましょうか)

友希那『燐子、大丈夫?』

燐子「きゃぁっ」

燐子「い、今の声……!?」

友希那『……どうしたのかしら、そんなに震えて?』

燐子「ひっ、やっぱり聞こえる……!」

燐子「き、きっと……あこちゃんに意地悪して怖い話をしたから……」

燐子「ごめんなさい、ごめんなさい……!」

84: 2018/08/16(木) 16:08:35.48 ID:1RkWeFQA0

友希那『ちょっと、燐子?』

燐子「ごめんなさい、あこちゃんの泣きそうな声が聞きたいって……思って、ごめんなさい……!」

燐子「笑ってるところも好きだけど……泣いてるところはもっとそそるって思ってて……ごめんなさい……!」

友希那(なんだか聞いちゃいけない言葉を聞いてるような気がするわ……)

燐子「悪気はなかったんです……あこちゃんが可愛いのが……いけないんです……」

燐子「無邪気に笑うあこちゃんが……怖い思いをしたらどんな顔をするのかって……気になっちゃっただけなんです……!」

友希那『…………』

友希那(どうしましょう、これ)

友希那(もう頭まで布団を被ってしまっているし……なんだか涙声だし……)

友希那(あれかしら、もしかして私の姿って見えていないのかしらね?)

友希那(そういえばあこも日菜も私のことにまったく気付いていなかった)

友希那(……確かに姿が見えないのに私の声がするって、ちょっと怖いわね)

友希那(燐子に少し悪いことをしてしまったわ)

燐子「南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……ぐすっ」

友希那(念仏唱えながら鼻をすすってる……どうにかしてあげたいけど、今の私が何かすると全部が裏目に出そうね)

友希那(……そうね、注意だけして帰りましょうか)

85: 2018/08/16(木) 16:09:03.23 ID:1RkWeFQA0

友希那『燐子』

燐子「ひっ」

友希那『夏休みだもの、夜更かしをすることは構わないわ。けど、中学生のあこまで巻き込むのは感心しないわよ』

燐子「はいぃ……ごめんなさい、ごめんなさい……!」

友希那『分かったならよろしい。また夜更かしをするようなら……注意しにくるわよ』

燐子「しません……ぐすっ、ちゃんと規則正しく生活します……!」

友希那『ならいいのよ。それじゃあね、私は帰るわ』

燐子「は、はい……!」

友希那『おやすみ、燐子』

燐子「お、おやすみなさい……!」

友希那(その返事を聞いて、私は燐子の部屋を後にするのだった)


86: 2018/08/16(木) 16:09:32.54 ID:1RkWeFQA0

――今井家 リサの部屋――

友希那『さて、最後はリサね』

友希那(燐子の部屋を出て、最後は隣のリサの部屋に訪れる)

友希那(窓から入るのは初めてだけど、もう見慣れたリサの部屋)

友希那(ベッドに目をやると、そこにリサの姿はなかった)

友希那『トイレかしら?』

――ガチャ

友希那(そう呟くのと同時に、部屋の扉が開く)

今井リサ「ふわぁ~……」

友希那(そしてあくびをしながら寝ぼけた目をこするリサが部屋に入ってきた)

友希那(やっぱりトイレだったのね)

リサ「んー……? ゆきなぁ?」

友希那『え?』

リサ「なんで友希那がアタシの部屋にぃ……?」

友希那『え、見えるの、リサ?』

リサ「見えるのって……変なゆきなぁ」

友希那(……どういうことかしら、まだ私、幽体離脱中よね?)

友希那(空中は漂えるし……霊体状態ね。どうしてリサには姿が見えてるのかしら?)

リサ「あーそっか、これ夢かぁ……友希那がこんな時間にアタシの部屋にいる訳ないし……」

友希那(リサはフワフワした口調でそう言うと、ゆったりとした足取りで私に近付いてきて……)

リサ「んー」ギュッ

友希那(そのまま私に抱き着いてきた)

87: 2018/08/16(木) 16:10:19.94 ID:1RkWeFQA0

友希那『え、見える上に触れるの?』

リサ「やっぱ夢の中だと……友希那も変なことばっか言うねぇ……」スリスリ

友希那(変わらず寝ぼけた様子で、私に頬ずりをしてくる)

友希那(本当にどうなっているのかしら、これ)

リサ「ねーねーゆきなぁ、久しぶりに一緒に寝よーよぉ……」

友希那『それは……この歳になってまで一緒に寝るだなんて』

リサ「いーじゃんいーじゃん……最後に一緒に寝たのって……小学生の頃だし」

リサ「どーせ夢の中だし、たまにはいーじゃーん……」

友希那『…………』

リサ「あー、なんか友希那、ひんやりしててキモチイイな……えへへぇ~」

友希那(ふやけた笑顔で私の胸に顔を埋めるリサ)

友希那(こんなに甘えん坊なリサ、久しぶりに見たわね)

友希那(まぁ……たまにはいい……のかしら?)

リサ「ねぇねぇゆきなぁ~」

友希那『分かった、分かったから、ベッドに行きましょう』

友希那『立ったまま寝ないの、リサ』

リサ「ん~」

友希那『はぁ……そういえばリサ、寝起きの時はいつもこうだったわね……』

友希那(半分眠っているリサを抱きかかえて、ベッドに横にさせる)

友希那(このまま離してくれるかしら、と思ったけど、リサは私の腕をギュッと握ったまま離さなかった)

友希那『……仕方がない。今日だけよ、リサ』

友希那(呆れたように呟きつつ、紗夜にしたように、目を瞑ったリサの隣に寝そべる)

友希那(紗夜は触れられなかったけど、どうしてかリサには触れることが出来る)

友希那(私は隣に来たのが分かったのか、ごそごそと身体を動かして、また私の胸に顔を埋める)

リサ「ん~、むふー……」

友希那(そして満足そうな声を出したあと、すぐに穏やかな寝息が聞こえてきた)

88: 2018/08/16(木) 16:10:46.67 ID:1RkWeFQA0

友希那『……これ、一晩自分の身体から離れてても大丈夫なのかしら?』

友希那(冷静に考えるとかなりダメな気がするけど、既に私の身体はリサにがっちりとホールドされてしまっている。抜け出せそうにない)

友希那『まぁ……どうしてかリサにだけは見えるし触れられるし……平気なのかしらね』

友希那(私はため息を吐いて、フッと身体の力を抜く)

友希那(すると途端に眠気がやってきた)

友希那(久しぶりに間近に感じる幼馴染の温もりと穏やかな寝息)

友希那(それにどんどん瞼が重くなってくる)

友希那(それもそうか、今はもう午前2時を回ったところだ)

友希那(もう難しいことは考えずに、この眠気に身を任せてしまおう)

友希那『おやすみなさい、リサ……』

リサ「むにゃ……」

友希那(寝言なのか相づちなのか判断に迷う返事に少し笑みが零れる)

友希那(どこか和やかな気持ちになりながら、私の意識も夢の世界に旅立っていった)


89: 2018/08/16(木) 16:11:20.34 ID:1RkWeFQA0

――翌朝――

友希那「……ん、んん? リサ……?」

リサ「すー、すー……」

友希那(眠りから目を覚ますと、目の前に幼馴染の寝顔があった)

友希那(はて、どうしてかしら? とぼんやりした頭で昨日のことを思い出す)

友希那「確か……そうだ、幽体離脱して……あら?」

友希那(徐々に昨日の記憶が頭の中に浮かんでくる。空を飛んでロゼリアのメンバーの様子を見に行ったこと、そして最後にリサに捕まってそのまま眠ったこと……)

友希那(それはいいとして、自分の身体を改めて見回してみる)

友希那「……私の身体ね。パジャマもいつもの猫柄のだし……」

友希那「…………」

友希那(どうなっているのかしら。私の部屋からリサの部屋に、霊体だけじゃなく実際の身体もやってきた……ということ?)

友希那(どういう原理でこうなってるのかは分からない……けど、1つだけ確かなことがある)

友希那(リサと同衾しているというこの状況)

友希那「……どう考えてもマズイわね」

リサ「ん……ん~? なんかあったかい……」

友希那(そう呟いた直後、リサがうっすらと目を開ける)

友希那(そして私とリサの寝ぼけた眼がバッチリ合うと、徐々に彼女の目が見開かれていく)

友希那「そ、その、おはよう、リサ……?」

リサ「あ、うん、おはよー……って、ええ!?」

友希那「リサ、気持ちは分かるけどちょっと落ち着いて」

リサ「いや、落ち着いてって、なんで友希那がここにいるの!?」

リサ「え、昨日なんかしたっけアタシ!?」

友希那「ええと、信じてもらえるか分からないけど……かくかくしかじかで……」

リサ「……幽体離脱って……昨日のアレ……夢じゃなかったんだ……」

友希那「……ええ」

リサ「…………」

友希那「…………」

リサ「待って、待って待って、色々と後悔で氏にそうなんだけど……!」

友希那「……私も似たような気持ちよ……」

リサ「そんな、友希那と同じベッドで一晩過ごしたなんて……しかも霊体? 状態の友希那に唯一触れたって……」

リサ「やりたい放題できたのに……こんなチャンス人生に1回あるかどうか……!」

友希那「……え?」

90: 2018/08/16(木) 16:11:50.82 ID:1RkWeFQA0

一方その頃……

――宇田川家――

あこ「おねーちゃーん……むにゃむにゃ」

宇田川巴「はいはい、ちゃんとここにいるぞ」

あこ「ん~……」スリスリ

巴「ったく、幽霊が怖いから一緒に寝て、だなんて……やっぱりあこはまだまだ子供だな」

巴「でも、昔に比べたらずっと身体も大きくなったよなぁ。一緒にベッドで寝るとこんなに狭くなって……感慨深いぜ」

あこ「おねーちゃん、だいすきぃ……えへへ」


91: 2018/08/16(木) 16:12:19.22 ID:1RkWeFQA0

――氷川家――

紗夜「…………」ムク

紗夜「何かしら、とてつもなく変な夢を見たような気が……」

紗夜(星のマスクとウサギのマスクを被った2人組に追われて……そこを湊さんが助けてくれるような……)

紗夜「その後、湊さんの胸に抱かれて眠って……」

紗夜「……すごく心地よかったわね」

紗夜「……って、私は何を言っているのかしら……」

日菜「おねーちゃーん! おっはよ~!」バァン

紗夜「……日菜、ノックはキチンとしなさい」

日菜「あーごめんね~」カシャ

紗夜「待ちなさい、どうしていま私の写真を撮ったの?」


92: 2018/08/16(木) 16:12:46.76 ID:1RkWeFQA0

――白金家――

燐子「あ……空が明るい……」

燐子「…………」

燐子「結局……一睡も出来なかった……」

燐子「ど、どうしよう……これって夜更かしに……カウントされるのかな……?」

燐子「そうしたら……またあの声が……?」

燐子「――っ!!」

燐子「ろ、ロゼリアの誰かのお家に……今日は泊めさせてもらおう……!!」


93: 2018/08/16(木) 16:13:13.67 ID:1RkWeFQA0

――湊家――

友希那パパ「おーい、友希那?」

パパ「あれ、いない……もう起きてどこかに出かけたのか?」

パパ「一緒にメラドに行こうって誘おうとしたのに……残念だ」


94: 2018/08/16(木) 16:13:51.85 ID:1RkWeFQA0

――今井家――

リサ「ねぇねぇ友希那、今日もアタシの家にお泊りしない?」

友希那「……昨日までならそれに素直に頷けるけど、今はちょっと……」

リサ「分かった! じゃあこうしよう! ロゼリアのみんなでお泊り会!」

リサ「それならいいでしょ?」

友希那「……まぁ、それなら平気……かしら」

リサ「よーし決定! それじゃあみんなに声かけてみるね♪」

友希那「ええ」

リサ「あは、夜が楽しみだなぁ~」



そしてその夜、あこちゃんに抱き着かれたりんりんに抱き着かれた紗夜さんに抱き着かれた友希那さんがリサ姉にも抱き着かれて非常に寝苦しい思いをすることになるのでしたとさ


もしも湊友希那が幽体離脱した霊体になったら おわり

95: 2018/08/16(木) 16:14:55.53 ID:1RkWeFQA0
今日はメットライフドームで『ガルパタイアップ試合』があります
という訳でメラドに行ってきます

引用: 【バンドリ安価】戸山香澄「たられば」