1: 2011/03/22(火) 09:51:28.02 ID:z/n5JcIDO
初SSです。
初心者なので、いたらない所もあるかもしれませんが、よろしくお願いします。
何か「こうしたらもっと良いんじゃないかな」とかあったら、ご指摘よろしくお願いします。

※携帯ですので、遅いです。

ではいきます

2: 2011/03/22(火) 09:53:09.87 ID:z/n5JcIDO




━━俺は、姉ちゃんが好きだ━━

3: 2011/03/22(火) 09:56:57.73 ID:z/n5JcIDO
この気持ちに気づいたのは、姉ちゃんが高校二年生の時の秋。
この日、姉ちゃんは風邪をひいて、俺に甘えてきた。
あの時の女らしかった姉ちゃんは、かなり可愛かった。
その時、初めて気づいた。
俺は、姉ちゃんが好きなんだと。
けいおん!Shuffle 3巻 (まんがタイムKRコミックス)

4: 2011/03/22(火) 10:00:44.62 ID:z/n5JcIDO
姉弟でなんて、おかしいのかもしれない。
でも俺は、好きになってしまった。
気持ち悪い、と思われたら……
心地よい今の仲良し姉弟の関係が、崩れてしまったら……
そんな不安がいっぱいで、告白できないまま、時間だけが過ぎていった……

5: 2011/03/22(火) 10:02:54.36 ID:z/n5JcIDO
明日、3月31日は、姉ちゃんの卒業式。
最後のチャンス……4月2日に、俺は姉ちゃんに告白する。
そう、決意していた。

でも……

7: 2011/03/22(火) 10:09:22.31 ID:z/n5JcIDO
3月31日、俺は友達と、ゲーセンで遊んでいた。
姉ちゃんも今頃、友達と楽しくやってんだろうな……
そう思っていた時だった。

プルルルルル……

電話が来た。画面を見ると、「母さん」と表示されていた。
俺は電話にでる。

聡「え……?」

俊「田井中君、どうかしたんですか?」

聡「ごめん鈴木! 急用ができた!」

俺は走る。行き先は……

俊「ちょ、ちょっと田井中君!?」

━━病院、だ━━

8: 2011/03/22(火) 10:18:09.53 ID:z/n5JcIDO
聡「ハァ……ハァ……」

さっき、母さんが電話の向こうで話していた内容は、信じられないものだった。
姉ちゃんが、通り魔に刺された。
卒業式が終わり、澪姉と別れた直後だった。
俺は、自分自身を憎んだ。
何故、姉ちゃんのそばにいてあげられなかったのか。
息が苦しい。でも、俺は足を止めなかった。

病院に着くと、母さんと父さんと、前家に来た、軽音部の人達と、姉ちゃんのクラスメイトらしき人がいた。
手術中のランプが消える。手術室の扉が開き、医師が出てくる。

聡「姉ちゃんは!?」

俺が最初に発言したことに、皆驚いていた。

医師「最善を尽くしましたが……」

聡「そ、んな……」

俺はショックで、その場に倒れた。

9: 2011/03/22(火) 10:22:36.32 ID:z/n5JcIDO
俺が目覚めたのは、次の日のことだった。
母さんと父さんが、泣きながら俺を抱きしめる。
母さんは、姉ちゃんの葬儀が、明日、4月2日だと教えてくれた。
4月2日……俺が、姉ちゃんに告白しようと思っていた日。
その事実はあまりにも、俺の心に傷を付けた。
その時から俺は、心を閉ざした。

10: 2011/03/22(火) 10:25:28.37 ID:z/n5JcIDO
10年後。
俺は心を閉ざしたままだったが、なんとか高校を卒業、東大に合格し、これまた無事に卒業。
正確には、心を閉ざしたフリをしながら。

11: 2011/03/22(火) 10:32:42.99 ID:z/n5JcIDO
そのまた10年後。
2030年、年齢変更や、性別変更など、容易にできる時代。
俺は密かに、とある機械の開発を進めていた。

━━タイムマシン━━

やっと完成した。
俺は、15歳の女になった。
外見は、姉ちゃんがカチューシャを外し、ポニーテールにした感じ。
俺はタイムマシンに乗る。
行き先を、2007年1月1日に設定する。
六次元アルファバイプ、起動。
ルート同調点、発見。
四次元モード、突入。
時間移動、開始。

俺は、刻を越えた━━━━

12: 2011/03/22(火) 10:38:16.51 ID:z/n5JcIDO
とりあえずここまで。
これからも、無茶振り設定が沢山出てきますが、よろしくお願いします。
これから聡は、聡美となり、律達と高校生活を送ることになります。
聡美は、東大に行ってるので、学習面はほぼ完璧です。
聡美は、ギターができます。

13: 2011/03/22(火) 11:16:47.43 ID:z/n5JcIDO
聡美「ふぅ……」

2007年1月1日に着いた。
周りには、懐かしい風景が広がっていた。

聡美「懐かしいなぁ……」

数十年前の風景の懐かしさに浸る。
桜高受験日は、1月下旬。
お金は、心を閉ざしたフリをしていた数十年間、貯めていたのが十分あった。
戸籍偽造など、色々大変だったが、なんとか受験手続きを終えることができた。

14: 2011/03/22(火) 11:24:53.30 ID:z/n5JcIDO
そして1月下旬、桜高受験日。
簡単過ぎて逆に怖かったが、無事に終えた。

そして合格発表日。
「田井中聡美」、「田井中律」の名前を見つけて、俺はほっと一息をつく。

その日の夕方、田井中家の近くの公園で座っていると、俺にとって、一番大切な人が話しかけてきた。

律「ねぇ君! こんな所で何してるの?」

聡美「……!」

数十年振りに見た、最愛の人の顔。
俺は、ある事を思い付いた。

15: 2011/03/22(火) 11:39:14.98 ID:z/n5JcIDO
聡美「実は私、家が無くて……」

律「え? またまた~」

聡美「本当、なんですっ……」
律「マジ、で?」

聡美「はい……」

律「……ん?」

聡美「はい?」

律「なんか君、私に似てるような……」

まぁ、実の弟ですから。

聡美「そう、ですか?」

律「うん! とりあえず、前髪あげてみて!」

俺は、前髪をぐいっとあげる。

律「おぉ……私にそっくりだ……」

聡美「……」

律「よし! ねぇ君、私の家に来ない?」

聡美「えっ……い、良いんですか?」

律「もちろん! 何か、他人とは思えないし!」

聡美「あ、ありがとうございます!」

うまくいきすぎて怖かったが、自分がこの世界に来たことで、姉ちゃんの運命が変わり、最悪氏ぬかもしれない。
となると、居候し、姉ちゃんのそばにいることが、最善の選択だと、俺は思った。

17: 2011/03/22(火) 11:51:17.00 ID:z/n5JcIDO
律「じゃあ早速行こうよ! えっと、名前は?」

聡美「あっ、はい。田井中、聡美です」

律「た、田井中……何かすごいな……」

聡美「?」

律「私、田井中律! 名字まで一緒なんて、凄いな!」

聡美「そうなんですか! よ、よろしくお願いします!」

律「うん! よろしくなっ、聡美ちゃん!」

そして俺達は、田井中家へと、足を進めていった━━━━

19: 2011/03/22(火) 12:25:14.26 ID:z/n5JcIDO
律「たーだいまー」

聡美「お、お邪魔しまーす……」

実家にお邪魔しますだなんて、何か変だな……
懐かしいな……この家も。

聡「姉ちゃんおかえりー……って、誰その人?」

律「あぁ。今日から居候する、田井中聡美ちゃんだ」

聡美「えっと、よろしくお願いします」

聡「あっはい。こんな家でよければ、どうぞ」

律「何かしこまってんだよ聡~、聡美ちゃんが可愛いからか?」

姉ちゃんはニヤニヤしながら言う。
でもそれは無い、と思う。
何故なら……俺は、口リコンだったからだ。
今の俺の身体は、澪姉レベルだし。

20: 2011/03/22(火) 12:31:10.14 ID:z/n5JcIDO
聡「はぁ? そんなんじゃねーし!」

聡美「律さん……弟さんをからかっちゃ駄目ですよ?」

律「へーい」

やっぱり、姉ちゃんはいいな……

聡美「あっ、そうだ! ご飯、私に作らせてください!」

律「へ? ……あぁ、聡美ちゃん料理得意そうだもんな。じゃあ、頼むよ」

聡美「はい! 任せてください!」

そして俺は、台所に向かった━━━━

21: 2011/03/22(火) 12:45:39.14 ID:z/n5JcIDO
聡美「はい、できました」

律・聡「」

あれ? 何かまずかったか……?
聡美「ごめんなさい! 何かまずかったですか?」

律「い、いや……違うんだ。まさか、これ程とは……なぁ、聡?」

聡「う、うん! 姉ちゃんの10倍は凄いよ!」

律「くっ……悔しいけど、認めるしか無いか……聡美ちゃん!」

聡美「はひっ!?」

ビックリした~……姉ちゃんのこの勢いのある行動……懐かしいなぁ……

律「今度、料理教えて!」

姉ちゃんが土下座しながら頼んでくる。

聡美「はい、良いですよ。でも、まず冷めないうちに食べましょう」

律「おうっ!」

箸を持って待機している姉ちゃん……可愛い。

聡「……」

やっぱり似てるなぁ……

聡美「まず、箸を置いてくださいね」

律・聡「はい……」

聡美「いただきます」

律・聡「いただきまーす!」

聡美「召し上がれ~♪」

俺達は、凄い勢いで、料理をたいらげていった━━━━

22: 2011/03/22(火) 13:08:25.23 ID:z/n5JcIDO
夕食を終えては風呂に入る。
いよいよ……

律「聡美ちゃん、部屋どうする?」

聡美「う~ん……どこか使われてない部屋とか、ありませんか?」

確か……あの部屋があったはず。

律「あることはあるんだけどなぁ……」

ですよねー。だってその部屋……

律「あの部屋で昔、聡が幽霊見たからなぁ……」

今でも覚えてますよ……アレは。

23: 2011/03/22(火) 13:17:30.91 ID:z/n5JcIDO
昔、俺が小学校に入ったばかりの頃。
元々あの部屋は俺の部屋だったのだが、今の俺の部屋が違うのは原因がある。
それが、幽霊だ。
夜に目が覚めて、真っ暗な所に俺がいた。
目が暗闇に慣れたので、周りを見ると……

?「……」

俺のすぐそばに、前髪で目が見えない女の人……

幼聡「うわああああぁぁぁぁ!?」

?「……? あれ、ここどこ~? 部屋に戻ろう……」

俺の記憶は、そこまで。
よくよく思い返してみると、アレ、寝ぼけた姉ちゃんだったんだなぁ……
だから、いまだに姉ちゃんはあの部屋に幽霊がいると信じている。
純粋な姉ちゃん可愛い。

36: 2011/03/22(火) 19:40:40.83 ID:z/n5JcIDO
聡美「大丈夫です。私、幽霊好きなので」

もちろん大嘘である。あのトラウマで、本当はかなり苦手なのだ。

律「そ、そうか……聡美ちゃん変わってるねぇ」

まぁ、姉ちゃんの弟ですから。

聡美「そうですか? じゃあ、お部屋使わせていただきますね」

律「おうっ! 怖くなったら、私の部屋に来いよ!」

聡美「フフっ……ありがとうございます」

俺はそう言って、あの部屋に向かった━━━━

38: 2011/03/22(火) 19:49:41.07 ID:z/n5JcIDO
聡美「さて、と……」

布団は姉ちゃんが運んできてくれた。
服は……少しきついなぁ。

聡美「……」

布団に入り、今までの事を振り返る。
数十年振りに姉ちゃんに会えた。
この嬉しさは、言葉では表せない。
タイムマシンは、元の時代に返した。
戻る必要が無いからだ。
これからどうするか。
桜高に入学し、軽音部に入る。
ただし、入るのは唯さんが入部したあと。
こうすれば、唯さんが入らない、という事にはまずならない。
後は……
姉ちゃんを守る。それだけだ。
俺は眠りについた。

39: 2011/03/22(火) 19:56:22.07 ID:z/n5JcIDO
それから月日が経ち、桜高入学式。
入学式の後、姉ちゃんに軽音部に入らないか、と誘われたが、考えておく、と言っておいた。
それからは毎日のように、夕食の時に軽音部に誘われた。
だから、こう言った。

聡美「じゃあ、部員が4人集まったら入るよ」

律「よっしゃー! その言葉、忘れんなよ? 絶対に、4人集めてやるからな!」

大丈夫だよ、姉ちゃんなら。

40: 2011/03/22(火) 20:00:43.39 ID:z/n5JcIDO
それから3日程経ち、姉ちゃんから部員が4人集まったと言われた。

一応名前を聞くが、姉ちゃん、澪姉、紬さん、唯さんと、そのまんまだった。
俺は約束通り、軽音部へ入部した━━━━

44: 2011/03/23(水) 09:01:32.69 ID:W5LdHHVDO
入部後、俺はギターができることをカミングアウトした。
皆の様子を見る辺り、ここ一年は俺と唯さんとツインギターだろう。
しかし、俺と唯さんはギターを持っていなかったので、今度の休みにギターを見に行くことになった。

45: 2011/03/23(水) 09:09:11.51 ID:W5LdHHVDO
そして休日。
俺は前気に入っていたアイバニーズのギター(5万円位)を買った。
金貯めといて良かった……
唯さんは、あのギブソンレスポールに目を付けた。
しかし、それはあまりにも高すぎるので、皆でバイトをすることになった。
まぁ、バイトの後、どうなるのかは姉ちゃんから聞いてもう知っているのだが。
バイトの後、バイト代を返してもらったので、生活費にした。
ちなみに唯さんは、無事にあのギターを買えたみたいだ。

46: 2011/03/23(水) 09:19:02.40 ID:W5LdHHVDO
家に帰って、ギターを弾いてみる。
……うん、あまり鈍ってないな。速弾きも出来るし。
その時の音を姉ちゃんに聞かれていたらしく、

律「聡美ちゃんは何でも出来て良いな~」

聡美「そうですか? あ、良かったら一緒に練習します?」

律「おうっ!」

姉ちゃんて初めて一緒に練習した。
やっぱり姉ちゃんは少し走り気味だったけど、姉ちゃんが楽しそうにドラムスティックで雑誌を叩いてる姿を見てると、そんなことは気にならなくなった。
ちなみに、唯さんは部室でチャルメラを弾いてたなぁ……

47: 2011/03/23(水) 09:30:14.52 ID:W5LdHHVDO
それから1ヶ月程経ち、中間テストの時期になった。
やっぱり簡単過ぎて怖かった。
結果は……学年トップ。
姉ちゃんはそれを見て、

律「ちくしょう……聡美ちゃん、今度からは勉強も教えて!」

聡美「はいはい」

唯「う~ん……顔とかはそっくりだけど、それ以外は全然違うねぇ~」

一同「追試のお前が言うな!」

ってか、追試になるってどうなんだろ……
とりあえず、唯さんの家で勉強会を開くことになった━━━━

48: 2011/03/23(水) 09:39:23.40 ID:W5LdHHVDO
さて……今唯さんの家で勉強会をしているのだが……

か な り ヒ マ だ

なんせ一度習った内容である。
実を言うと、授業もかなり退屈だ。
授業中ほとんどノートをとってないのに、何で学年トップなのか、皆から不思議がられた。
ふと姉ちゃんの姿が無いことに気付き、1階におりる。
姉ちゃんは憂さんとぷよぷよをしていた。

律「おっ、聡美。聡美もやるか? 憂ちゃん無茶苦茶強いぞ?」

憂「聡美さん、こんにちは」

聡美「こんにちは。じゃあ、やってみようかな。勝負だ、憂ちゃん」

憂「はいっ!」

49: 2011/03/23(水) 09:45:55.10 ID:W5LdHHVDO
……何とか憂さんに勝ったが、姉ちゃんは俺達のレベルの高さに驚いていた。

律「何で、2人共普通に10連鎖とかできんだよ!?」

聡美「さぁ?」

憂「分かりません」

律「くっ……やっぱ天才っているんだなぁ……」

聡美・憂「?」

……と、まぁそんな感じで勉強会が終わり、唯さんは追試で100点をとり、今回の中間テストは終わった━━━━

50: 2011/03/23(水) 09:54:37.40 ID:W5LdHHVDO
夏。
そろそろプールとか海に行きたいなぁと思っていた時、それは起きた。

部室で姉ちゃん達と話していると、澪姉が入ってきた。

澪「……」

澪姉は無言で歩いてくる。超怖え。どうしたんだろ?

澪「合宿をします!」

あぁ……そういえばそんな話もしていましたね。
姉ちゃんの話を聞くと、合宿というよりは、遠足って感じだった気がするが。

52: 2011/03/23(水) 10:05:01.36 ID:W5LdHHVDO
自分で書いてて思ったんだが、無茶苦茶誤字誤変換多いな……

53: 2011/03/23(水) 10:56:04.66 ID:W5LdHHVDO
律「もしかして海!? それとも、山とか!?」

澪「遊びにいくんじゃありません!」

相変わらずだなぁ……姉ちゃんは。

唯「新しい服買わないと!」

律「水着とかも買わないとなぁ~!」

言っても無駄だよ澪姉。姉ちゃんはちっとやそっとでは曲がらないから。

澪「夏休みが終わったら、もうすぐ学園祭だろう?」

学園祭か……
そういえば今年の学園祭では、確か澪姉のアレが……

律「学園祭といえば、やっぱりメイド喫茶とか!?」

唯「違うよ~! お化け屋敷だよ~!」

姉ちゃんがメイド喫茶とか……
……全然似合わねえな……

澪「あのなぁ……桜高祭での軽音部のライブってのは、昔は結構有名だったんだぞ?」

まぁ、澪姉のお陰で、別の意味で有名になったんですけどね。

54: 2011/03/23(水) 11:16:33.59 ID:W5LdHHVDO
聡美「そうですよね! 私、ライブするの楽しみです! 成功させるためにも、真面目に合宿しましょう!」

澪「そうだその通りだ! お前らも少しは聡美を見習えよな!」

唯・律「うぅ……は~い……」

律「にしても、どこでやるんだ? 合宿できるほど広い場所、この辺にあったっけ?」

心配ないよ姉ちゃん。
もうすぐ来ると思うから。

紬「こんにちは~。あれ? 皆何の話してるの?」

澪「あっムギ。 別荘とか……ある?」

紬「ありますよ?」

紬と聡美以外「あるんかい!」

紬「?」

まぁ、こうなるよな。

55: 2011/03/23(水) 11:28:40.05 ID:W5LdHHVDO
そして合宿当日。
唯さん以外は皆いるんだが……
まさか、な。

律「唯の奴、遅いな……寝坊したか?」

ヤバい。あの人なら十分ありえる。

澪「電話してみるか」

澪姉はそう言って唯さんに電話をかける。

澪「…………おはよう」

あぁ~……絶対寝坊したよあの人。

57: 2011/03/23(水) 18:29:46.19 ID:W5LdHHVDO
さて……今俺はムギさんの別荘に向かう電車に乗ってるのだが……

紬「……」

何で貴女が寝てるんですかムギさん。
貴女が寝ていたら後どのくらいなのか分からないじゃありませんか。

律「楽しみで眠れなかったんだろうな」

そっか……ムギさんお嬢様だから、こういうことあまり無かったんだな……

58: 2011/03/23(水) 18:48:55.79 ID:W5LdHHVDO
聡美「あの~……? ムギさん?」

ムギさんの肩を揺すってやる。
やべえ柔けえ……

紬「う、う~ん……? あれ……? 私、寝てた……?」

聡美「はい。それはもうぐっすりと。楽しみで眠れなかったんですか?」

紬「うん……私ね、皆でこんな風にするの、初めてで……」

聡美「そうだったんですか。ところで、別荘まで後どれくらいなんですか?」

紬「えっと……このトンネルを抜ければ……」

電車がトンネルを抜けると、窓の外には、青い海が広がっていた。

一同「わぁ~!」

まさか……ここまで綺麗だとは思わなかった。

律「窓開けようぜ唯!」

唯「そだね! いち、にの……」
唯・律「さん!」

姉ちゃん達が窓を開けると、心地よい風が電車の中に吹き込んできた。

59: 2011/03/23(水) 18:55:34.63 ID:W5LdHHVDO
ムギさんの別荘に着く。
俺達は、その規模に圧倒された。

唯「大きいね~!」

聡美「ムギさん、こんなところ使わせてもらって本当に良いんですか?」

紬「良いのよ。これでも1番小さいし」

一同「これで1番小さいの!?」

凄いなムギさんの家は。
唯さんのギターも値引きさせてもらったし……
ムギさんの親は一体何をしているんだろう……?

60: 2011/03/23(水) 20:06:53.50 ID:W5LdHHVDO
ムギさんの別荘のスタジオは、かなり本格的だった。
その辺のスタジオにも劣らないだろう。
スタジオで荷物の整理をしていると、姉ちゃんと唯さんが水着姿で現れた。
うん。2人とも良い体型だ。

律「早速海で遊ぼうぜー!」

唯「早くしないと置いてくよ~!」

全く姉ちゃん達は……
でも、さすがに3人だけで練習してもしょうがないので、俺達も水着に着替えて海に向かった━━━━

61: 2011/03/23(水) 20:22:39.87 ID:W5LdHHVDO
外に出ると、姉ちゃんと唯さんがビーチバレーをしていた。
澪姉と一緒に2人に近づくと、何故か澪姉がボールを投げられた。
どうしたんだろ?
しばらく遊んでいると、俺はとある事に気づいた。

澪姉が1番楽しそうに遊んでいるではないか。

まぁ、澪姉は昔からそうだったからなぁ……
空が赤くなってきた頃、ようやく澪姉は気づいた。
さて、次は練習といきますか。

62: 2011/03/23(水) 20:41:07.71 ID:W5LdHHVDO
スタジオで練習の準備をしていると、姉ちゃんと唯さんが床に寝転がっていた。
姉ちゃんの肩の紐が片方ずれてる。
何か興奮するなぁ……
唯さんは、シュールな文字が書かれたTシャツを着ていた。
唯さんのセンスは何年付き合ってても分からないなぁ……
とりあえず、澪姉が無理矢理2人を起こしてくれたので、俺達は練習を開始した━━━━

63: 2011/03/24(木) 00:06:37.74 ID:f2IeGS6DO
練習中に何か違和感を感じた。
原因はすぐ分かった。
姉ちゃんのドラムが走ってないのだ。
人間の慣れというものは恐ろしい。
一度慣れると、大抵の場合、それがずれたとき、全てが狂ってしまうからだ。

澪「律は走らずにきちんとリズムキープ出来てたな。特訓でもしたのか?」

律「うぅ……腹へった……」

あぁ、なるほど。
まさに、腹が減っては戦は出来ぬ、だな。

律「飯食わせろ、飯ー!」

聡美「あの……じゃあ、ご飯にします?」

澪「うん、そうしよう」

そして俺達は、夕食の材料の買い出しに向かった━━━━

64: 2011/03/24(木) 00:11:29.07 ID:f2IeGS6DO
練習中に何か違和感を感じた。
原因はすぐに分かった。
姉ちゃんのドラムが走ってないからだ。
人間の慣れというものは恐ろしい。
一度慣れると、それがずれたとき、大抵の場合、全てが狂ってしまうからだ。

澪「律は走らずにきちんとリズムキープ出来てたな。特訓でもしたのか?」

律「うぅ……腹へった……」

あぁ、なるほど。
まさに、腹が減っては戦は出来ぬ、だな。

律「飯食わせろ、飯ー!」

聡美「えっと……じゃあ、ご飯にします?」

澪「うん、そうしよう」

そして俺達は、夕食の材料の買い出しに向かった━━━━

67: 2011/03/24(木) 00:24:06.09 ID:f2IeGS6DO
夕食後は、みっちり練習した。
練習後、姉ちゃんと唯さんは力尽きていたが、お風呂の時には復活した。


…………さて。
今俺は風呂に入っているのだが、もともと俺は男なわけで。
さすがにムラムラしてきた。
やべえ直視出来ねえ……
そんな時、

唯「聡美ちゃんありがとね」

いつの間にか唯さんが近くにいた。

聡美「~~っ!?」

ヤバい、意識が……

ざぱーん!

唯「さ、聡美ちゃん!?」

俺の意識は、そこで途切れた━━━━

68: 2011/03/24(木) 00:31:25.28 ID:f2IeGS6DO
聡美「ん……?」

俺は、暑苦しさで目が覚めた。
何だろう。俺の身体が何か暖かいものに包まれている。

律「……キャベツウメー……」

聡美「」

ね、ねねねね姉ちゃん!?
俺、姉ちゃんに抱き枕にされてる!?
やばい。これはやばい。
理性が外れそうだ。
でも、俺は何とか耐えた。
俺は姉ちゃんに抱き枕にされたまま、眠りについた━━━━

69: 2011/03/24(木) 00:35:25.84 ID:f2IeGS6DO
次の日。
朝起きると、姉ちゃんに謝られた。
俺は別に良いよ、と言っておいた。
まぁ、それからは何のハプニングも起こらず、合宿は終わりを告げた━━━━



このペースで終わるか……?
絶対終わらせますので、改善点あればよろしくお願いします。。

70: 2011/03/24(木) 08:21:50.14 ID:f2IeGS6DO
夏休みが終わり、もうすぐ学園祭という時期。
部室で姉ちゃんと話していると、唯さんとムギさんが入ってきた。
唯さんとムギさんは落ち着かない様子だった。

どうやら、このままでは学園祭には出れないらしい。
何か、正式に部として認められてないとか。

律「部員が4人以上集まれば良いんじゃ無かったのか……?」

……ん?
待てよ……?

聡美「何か、そういう書類とか無いんですか?」

律「書類……? …………あっ!」

唯「りっちゃん、何か心当たりが!?」

律「確か…部活申請用紙ってのがあったような……」

聡美「それで、その紙は今どこにあるんですか?」

律「そんなのもらった覚えが……」

澪「あるだろ!!」

あっ……そういえば、まだ春の頃に━━━━

71: 2011/03/24(木) 09:27:01.83 ID:f2IeGS6DO
律「私が部長だから、私が書く!」

澪「大丈夫か~?」

確かに、姉ちゃんの事だから、どこか間違えるかも。

聡美「間違えないでくださいよ?」

律「大丈夫だって」

紬「あの~……ケーキ持ってきたんだけど……」

律「わはぁ! 食べようぜ~!」

澪「おい、律!」

律「あー……分かってるよ。食べ終わったらすぐ書くって~」

姉ちゃん……大丈夫かな……

書くって……書くって━━━━

72: 2011/03/24(木) 10:29:55.48 ID:f2IeGS6DO
姉ちゃん……もしかして、あのまま……
机の中を探る。
…………あれ?
無いぞ……?
おかしい。そんなはずは無い。
確かに姉ちゃんはあの時、この中に用紙をいれたはずだ。
ならば、何故……?


あっ……


そういえば、この前部室の掃除をした時、机を移動したんだった……

73: 2011/03/24(木) 13:17:28.90 ID:f2IeGS6DO
やばい。
このままだと、間違いなく姉ちゃんが責められる。
まぁ、姉ちゃんが悪いのだが……姉ちゃんの弟として、ここは庇ってやりたい。
1番まずいのは、澪姉に見つかること。
唯さんとムギさんは、まぁなんとかなるだろう。
とりあえず、澪姉の机の中を見る。
……よし。無いな。
さて、次はムギさんの……

唯「あれー? 私の机の中に、部活申請用紙が入ってるよ?」

律・聡美「」

澪「りぃ~つぅ~?」

やべえ。
澪姉が無茶苦茶怒ってる。
唯さんめ……いくら貴女とはいえ……恨みますよ。

74: 2011/03/24(木) 13:30:30.74 ID:f2IeGS6DO
澪姉による姉ちゃんへの鉄拳の後、俺達は生徒会室へと向かった。


生徒会室に入ると、眼鏡を掛けた女の子がいた。
入る時に変なコントがあった気がするが、気にしないでおこう。

唯「和ちゃん!?」

和「あら、唯」

なるほど……この人が姉ちゃんの言っていた、和さんか。
何か大人の雰囲気が出てるなぁ……

唯「和ちゃん、部活申請用紙ってまだ間に合う?」

和「う~ん……今日中がギリギリね」

律「じゃあ……はい、軽音部です」

和「ありがと……ん?」

澪「まさか、どこか間違えてたか?」

和「ううん、間違えては無いんだけど……」

何だろう。一体何が……?

和「顧問の欄が空欄になってるんだけど……」

一同「あっ……」

75: 2011/03/24(木) 13:46:50.69 ID:f2IeGS6DO
確か顧問はさわ子先生だったはず。
俺は面倒臭いのが嫌なので、昔姉ちゃんから聞いた話の通り、昔の軽音部のアルバムからさわ子先生の写真を抜き取り、速攻で顧問になってもらった。

こうしてようやく、軽音部は正式に部として認められた━━━━

76: 2011/03/24(木) 17:07:19.19 ID:f2IeGS6DO
部として認められ、ようやくスタートした俺達の軽音部。
しかし、顧問のさわ子先生にオリジナルの曲をバックした時、それは起こった。


実はこの時、ふわふわ時間にはまだ歌詞がついてなかったのを、聡美は知らなかった。
聡美は思わず歌ってしまったのだ。

聡美「君を見てると~いつもハートドキドキ♪」

澪「」

一同「……」

聡美「……あれ?」

何だ? 俺何かミスったか?

澪「聡美……なんでその歌詞知ってるんだ……?」

唯「えっ? この曲歌詞あったの?」

聡美「はい?」

澪「その歌詞、まだ誰にも教えてないのに……何で?」

ヤバい、大変なことになった。
何とか言い訳しないと……

聡美「あっ……この前部室に歌詞ノート忘れていきませんでした?」

澪「私、学校に持ってきてないんだけど……しかも、何で歌詞ノートだって……」

しまった。墓穴を掘ってしまった。
どうすれば…………あっ!

聡美「実は私、作詞してきたんです! でも、少ししか思い付かなくて……澪さん、続き考えてもらえませんか?」

澪「えっ?」

律「凄いなお前ら……思い付いた歌詞が被るとか……」

紬「息ぴったりねぇ……」

唯「凄いね!」

さわ子「あの、聡美ちゃん? それもあるんだけど……貴女、ギター上手すぎない?」

うっ……ヤバい、かも。

さわ子「スタイルも良いし……うん! 貴女には、うちの部のマスコットになってもらおうかしら!」

…………はい?

77: 2011/03/24(木) 17:23:03.41 ID:f2IeGS6DO
聡美「何ですか? それ」

さわ子「だから、分かりやすく言えば、軽音部の看板娘になれってこと」

えっと……それって……澪姉の立場じゃん!
このままじゃ、色々とまずい!

聡美「お、お断りします! そういうのは、澪さんみたいな人が適任じゃありませんか?」

澪「えっ!? わ、私!?」

さわ子「そうねぇ……迷うわねぇ……」

よし! もう一息だ!

律「確かに、澪の方がいじりがいがあるしなぁ~……」

ね、姉ちゃん……あんたええ人や!

唯「そうだね! 私も、澪ちゃんが良いと思うよ!」

唯さん……さすがは俺の……ゲフンゲフン。

紬「私も、澪ちゃんが良いと思います!」

ムギさん……ありがとうございます!

さわ子「よし! じゃあ、澪ちゃんに決定!」

澪「えっ!? ちょ、ちょっと先生!?」

さわ子「文句言わないの~!」

澪「ギャーー!」

澪姉、ごめんなさい。
でも、こうするしか……


こうして、俺達の学園祭に出る準備が大体終わった━━━━

78: 2011/03/24(木) 17:29:58.16 ID:f2IeGS6DO
学園祭当日。
俺は、クラスの出し物であるメイド喫茶のウエイトレスをしていた。
壁に掛かれた時計を見る。
うん、まだライブまでかなり余裕がある。
とはいえ、後30分で交代なんだがな……
俺は交代まで、自分の仕事に徹底した━━━━

79: 2011/03/24(木) 17:35:40.14 ID:f2IeGS6DO
交代後、俺は部室に向かった。
何故誰も誘わないかと言うと、1人の方が集中出来るからだ。
部室で練習をしていると、唯さんが入ってきた。

唯「あっ、聡美ちゃんやっほ~!」

聡美「唯さん……」

少しヤバいかも。
何故なら━━━━

80: 2011/03/24(木) 17:44:25.62 ID:f2IeGS6DO

━━━━刻を越える前。
姉ちゃんが氏んだ後も進学出来たのは、唯さんの支えがあったからだ。
唯さんは、俺が心を閉ざしているフリをしているにも関わらず、いつも俺を支えてくれた。
東大を卒業した後、俺は唯さんからプロポーズされた。
俺は、これまで受けた恩を返そうと、快く唯さんのプロポーズを受け入れた。
結婚し、子供にも恵まれ、幸せな日々を送っていた。


しかし、それは表面上だけだった。

81: 2011/03/24(木) 18:01:16.06 ID:f2IeGS6DO
俺と唯さんは、まだ姉ちゃんの氏から立ち直れてなかったのだ。
ふと見つけた姉ちゃんの写真。
それを見た日から、俺達の歯車はだんだん狂っていった。
それからだ。
俺がタイムマシンの開発を始めたのは。
それから少し経ったある日、唯さんに見つかってしまった。
唯さんに目的を話すと、なんと唯さんは協力してくれると言った。
唯さんに理由を聞くと、

唯「私は、聡くんの為なら何でもする。これまでもそうだったでしょ?」

聡「唯さん……」

唯「これも全部、聡くんが大好きだからだよ?」

唯「確かに、聡くんの中にはりっちゃんしかいないのかもしれないよ」

唯「でも、これは私の一方的な気持ち。聡くんが他の人のことが好きでも、私は聡くんが大好きなの」

唯「だから、一緒に頑張ろう?」

聡「唯さん……!」

俺は唯さんを抱きしめる。

聡「俺……絶対完成させるから……! それまで、よろしく頼みます……!」

唯「うん……私の方こそ、よろしくね」

そして、唯さんの協力もあり、タイムマシンは完成したのだ。

82: 2011/03/24(木) 18:05:38.72 ID:f2IeGS6DO
出発の時。
危ないからと、唯さんを家に置いて、公園で刻を越えた。
俺はその時決意していた。
唯さんを犠牲にしたんだから、必ず姉ちゃんを救うと。

83: 2011/03/24(木) 18:11:59.66 ID:f2IeGS6DO

━━━━そして今。
俺は正直、唯さんに申し訳ないと思っている。
自分をあんなに愛してくれた人を、自分のわがままのために犠牲にするなど、人間として、いや、男として最低だ。
だから、俺はこの時代で、唯さんに恩を返そうと思っている。
しかし、2人っきりともなると……気まずい。

84: 2011/03/24(木) 18:46:13.28 ID:f2IeGS6DO
唯「ねぇ聡美ちゃん」

聡美「は、はい! 何でしょうか?」

唯「聡美ちゃんってギター上手いよね~」

聡美「あ、はい。私は普通にしt

唯「まるで何十年もギターやってるみたいだよ」

えっ……
何だよ今の……


ま、まさか……!


唯「やっぱり凄いね。聡 く ん は」

聡美「なっ……ゆ、唯さん……!?」

馬鹿な……じゃあ、チャルメラとか、追試は何だったって言うんだ……?

唯「あ、私は、今までの私じゃ無いよ? 私は、今この時間に一時的に戻って来てるだけ」

あぁ……なるほど。

聡美「それで、何の用ですか? 唯さん」

唯「言ったでしょ? 私は聡くんの為なら何でもするって」

だから何なんだ……?

唯「りっちゃんね、もうすぐ氏んじゃうかもしれないんだ」

聡美「!?」

くそっ……こうなることはわかってはいたが……早すぎるだろ……!

唯「聡くん、いつも皆が集まる交差点に注意して」

いつも皆が集まる交差点……あそこか……!

聡美「いつ、だ……?」

唯「詳しくは分かんないけど……近いってことしか」

交差点で起こる事故……
飛び出し、信号無視、居眠り・飲酒運転。
くそっ……1番厄介だ……!

唯「しかも、1つだけじゃ無いんだ……大体1年に1回、りっちゃんに氏のタイミングが訪れるんだ。聡くんが刻を越えた元凶が消えるまではね」

元凶……あの、通り魔か……

唯「聡くん、絶対に、りっちゃんを救ってね」

聡美「もちろんです。刻を越える時に、決意しましたから」

唯「うん、頑張ってね、聡くん。私の、大好きな人…………」

そう言うと、唯さんはその場に倒れる。
しばらくして、また起きあがる。

唯「あれ……? 聡美ちゃん……? それに私、何で部室に……?」

ど、どういうことだこれは……
今、何が起こったんだ……?

とりあえずそれは後回しにして、俺達は皆が来るまで、同じギター同士、練習をした━━━━

89: 2011/03/25(金) 15:26:07.82 ID:ZSZd7qoDO
皆が集まり、そろそろ時間だという時、さわ子先生が変な服を持ってきた。
唯さんとムギさんは喜んで着ていたが、俺達3人は気が乗らなかった。
でも……さわ子先生に無理矢理着せられた。
先生……貴女犯罪者ですか?

90: 2011/03/25(金) 15:37:01.53 ID:ZSZd7qoDO
ステージ裏。
カーテンの隙間から顔を出して客席を見ると、かなり大勢の人がいた。
澪姉のトラウマになるわけだ……
俺でもかなり恥ずかしい。

律「よ~し……行くぞっ!」

姉ちゃんの合図で俺達はステージの中央に集まる。

聡美「絶対成功させましょう!」

一同「おーっ!」

それぞれ指定の位置に立つ。
てか、今の感じ、部長が2人いるみたいだったな……
田井中家には部長遺伝子というものがあるのか?

少し経って、横断幕が上がっていく。
歓声が聞こえてくる。
しばらくして辺りが静かになると、姉ちゃんがドラムスティックを振り上げる。

律「ワン、ツースリーフォーワン、ツースリー!」

曲が始まった━━━━

91: 2011/03/25(金) 15:43:28.69 ID:ZSZd7qoDO
曲の中盤。
俺はギターソロを奏でる。
唯さんも俺と息が合っている。
まさか、ね。

最後に俺と唯さんの力強いストロークで、曲が終了した。



さぁ……来るぞ……!

澪姉の足元を見る。
なるほど……あれに引っ掛かって転んだのか……

俺の予想通り、澪姉は転び、縞パンを晒した。
ごめんなさい澪姉。
貴女を救うことはできませんでした。
こうして、俺達の最初の学園祭ライブは終わりを告げた━━━━

92: 2011/03/25(金) 15:59:29.60 ID:ZSZd7qoDO
学園祭から数日が経った。
澪姉は、例のことでファンクラブが出来たみたい。
まぁ、その当事者は現在再起不能だけど。

律「唯は、初めてにしては中々だったぞ! 聡美とも合ってたし」

唯「いやぁ~……」

唯さん……照れてる。

紬「それにしても聡美ちゃん本当に上手いわね。ギターソロ良かったわ」

聡美「ありがとうございます、ムギさん」

まぁ、あの位はな。

こうして、1年目の学園祭は終了した━━━━





━━━━かのように思えたが……

唯「聡美ちゃん、ちょっといいかな?」

聡美「あ、はい。何ですか?」

唯「明日だよ、聡くん」

聡美「なっ……」

マジか……最初の難関、だな。
唯さんは前と同じように、その場に倒れ、起きた時には普段の唯さんだった。

どういうことなんだ……?

93: 2011/03/25(金) 18:18:01.33 ID:ZSZd7qoDO
その日の夜は、全く眠れなかった。

俺が刻を越えたせいで、姉ちゃんが氏ぬ。

しかも明日。
せっかくここまで来たのに、ここで終わってはならない。
交差点で起きるであろう氏のパターンを思いつくだけ思いつき、どうやって阻止するか、俺は一晩中考えていた。
そして、阻止するにはいくつか条件があることを俺は知っている。

94: 2011/03/25(金) 18:32:58.93 ID:ZSZd7qoDO
まず1つめ。
阻止したい氏の数と、同じ数だけ物を破壊させる。
例えば、トラックに轢かれる人1人の氏を阻止するには、そのトラックに標識等を1つ以上破壊してもらわなければならない。
2つめ。
時間のずれは10秒以内。
例えば、事故による即氏の場合、氏亡時刻と破壊時刻のずれは10秒以内でなくてはならない。
この2つの条件を満たせば、氏を阻止出来る。
ただし、満たせなかった場合、阻止しようとした人はその人の代わりに氏ぬことになる。

95: 2011/03/25(金) 18:43:47.92 ID:ZSZd7qoDO
さすがの俺も、氏にたくは無い。
だから、どうやって阻止するか、かなり考えないといけない。
しかも、即氏で無い場合、かなり大変だ。
まず、正確な氏亡時刻が分からない。
ならばどうするか。
簡単なことだ。
俺と唯さんで阻止すれば良い。
別に、阻止しようとする人間の数は条件されてない。
姉ちゃんを助けようとする俺が即氏するような状況で、唯さんが俺の氏を阻止すれば、姉ちゃんも助かることになる。
ただ、問題がある。
唯さんがいつこの時間に来るかは、まだ分からない。
しかも、あの現象……
そんなことを考えてるうちに、放課後になった━━━━

96: 2011/03/25(金) 18:57:05.16 ID:ZSZd7qoDO
部室でお茶を飲んでから、しばらく雑談をしてると、いつの間にか下校時刻になっていた。

帰り支度をしていると、唯さんに呼ばれた。

唯「聡くん……りっちゃんね、あの交差点でトラックに轢かれて即氏らしいよ」

聡美「あの……唯さん」

唯「ん?」

俺は、今日1日考えていたことを唯さんに話した。
唯さんは快くOKしてくれた。
後、合言葉を決めておいた。

『アクター』

刻を越える直前に2人で見に行った映画のタイトルだ。

そして、俺達は校舎を出た━━━━

97: 2011/03/25(金) 19:04:44.13 ID:ZSZd7qoDO
そして交差点。
信号が青になった瞬間、姉ちゃんは走り出した。
俺も急いで追いかける。
トラックのクラクション音と、ブレーキ音。
姉ちゃんはそれに気づき、さらに足を早める。
トラックも、避けようとする。
俺は姉ちゃんをあの映画のように抱き抱え、助けた。
トラックは、標識にぶつかった。
標識は、壊れた。

何とか、姉ちゃんを救うことが出来た。

98: 2011/03/25(金) 19:09:41.42 ID:ZSZd7qoDO
この事故は、ニュースでも取りあげられた。
トラックから助かった少女2人。
事故の原因は、トラックの信号無視。
その日、俺は姉ちゃんを慰めながら寝た。
次の日、皆から心配されたのは言うまでもない。

102: 2011/03/25(金) 20:43:34.25 ID:ZSZd7qoDO
聡美「あれ? 律さん、場所はムギさんの家で決まってるんですか?」

律「え? 私が勝手に決めただけだけど?」

……やっぱり。
姉ちゃんこういうの基本的に許可取らないからなぁ……

紬「ごめんなさい……家、都合悪くて……早めに予約取らないといけないの……本当にごめんなさい!」

律「あー……やっぱりダメだった?」

わかってんならやんなよ……

紬「りっちゃんの家はどう?」

澪「あー……ダメダメ。律の家は汚いからな」

律「な、なんだと~!?」

聡美「あの~……掃除なら私と聡くんがしましたけど……」

律「マジで? てか、いつやったんだ?」

姉ちゃんが昼寝してた時だけど……ここはフォローしないと!

聡美「律さん、部長でドラムだし、疲れてると思うので、私が代わりに……」

律「さ、聡美……ありがとう!」

姉ちゃんが俺に勢いよく抱きついてくる。

澪「お前もやれよな……掃除くらい」

律「あれ? 澪の部屋も、パンツとかがちらが痛っ!?」

うわ~……痛そう……
たんこぶでけぇ……

紬「で、結局誰の家でするの?」

唯「私の家も別に良いけど……」

一同「良いの!?」

そういや、唯さんの家でやったって言ってたな……

それで、色々相談した結果、結局唯さんの家ですることになりました。


今地震来たよ……
マジこええ……

103: 2011/03/25(金) 20:59:15.04 ID:ZSZd7qoDO
休日。
俺達はプレゼント交換用の物を買いに商店街に来ていた。
姉ちゃんは毎度の通り澪姉をいじっていたが、俺は気にせずにとある物を購入した。
姉ちゃん達も買い物が終わったみたいなので俺達は店を出た。
店を出ると、唯さん達も来ていた。
何か運命を感じるな……まぁそういう運命だったけど。


福引きにチャレンジしたが、当たったのは俺の人生ゲームのみ。
ムギさんはハワイ旅行を当てたらしいが、俺が人生ゲームを当てたので辞退したらしい。

104: 2011/03/25(金) 21:10:33.87 ID:ZSZd7qoDO
そしてクリスマス会当日。
俺は姉ちゃん達よりも先に唯さんの家に来ていた。
憂さんの手伝いをするためだ。
2人で作ると、早く出来た。
いや、早く出来すぎた。
まだかなり時間あるのに……
しばらく俺と憂さんは雑談していた。

聡美「憂ちゃん、受験生だよね?」

憂「はい、そうですけど……」

いやいやいや。受験生がこんなことしてていいのか?
まぁ、憂さんは大丈夫だと思うけど。

聡美「どう? 受験勉強進んでる?」

憂「はい。でも、分からないところがあって……」

あれ?憂さんでも分からないところってあるんだ……
まぁ、人間だし当たり前か。

106: 2011/03/25(金) 21:21:26.09 ID:ZSZd7qoDO
聡美「分かんないとこ、教えてあげようか?」

憂「良いんですか?」

聡美「うん。桜高結構難しいからね」

それに、唯さんだけじゃなく、憂さんにも恩があるし。

憂「ありがとうございまs

パーン!!

クラッカーらしき音が鳴る。
多分唯さんが遊んでるだけだと思うけど。
いつでもどこでも変わらないな、唯さんは。


107: 2011/03/25(金) 21:32:42.94 ID:ZSZd7qoDO
リビングに行くと、やっぱり唯さんがクラッカーで遊んでいた。
仕方がないので、リビングで教えることにした。
唯さんは勉強が嫌いなようで、俺達が勉強を始めると、飾り付けの準備を進めた。


しばらくして、姉ちゃん達が来た。
唯さんは和さんが遅れると言うので、先に乾杯しようと言った。
ふと視界の端で何かが動いたような気がして、窓の外を見ると、さわ子先生がいた。
……あれ? ここ2階だよね?
どうやって登ってきたんですか先生……
姉ちゃん達がジュースを注ぐのに夢中になっている間に、俺は窓を開けてさわ子先生を家の中に入れた。

108: 2011/03/25(金) 21:48:48.22 ID:ZSZd7qoDO
一同「かんぱーい!」

律「いや~、今年も終わっちゃうねぇ~」

さわ子「やーねぇ、親父くさ~い」

一同「……」

一同「えーっ!? さ、さわちゃん!? い、いつの間に!?」

さっきです。

律「まさか、ロープをよじ登り、窓から侵入し……」

ロープは有り得なくもないけど……窓は無理だろ……

さわ子「やーねぇ、人を何だと思ってるの? 顧問を忘れるなんて、どうかしてるわ」

いや、いくら顧問でも人の家に勝手に来るのはどうかと思いますが……

律「いや、忘れてた訳じゃないんですけど……」

そうですよ。会費さえ払ってくれれば文句は言いませんよ。

唯「先生は彼氏と予定があると思って、呼びませんでした」

唯さん……その笑顔、悪気が無いのは分かってるんですけど……さすがにそれはどうかと思います。

さわ子「そんなこと言うのはこの口かぁ~!」

先生……結構美人なのに、彼氏すらいないのか……

109: 2011/03/25(金) 22:00:48.53 ID:ZSZd7qoDO
先生はサンタの衣装を取り出し、唯さんに着せた。
うん、可愛いな。
似合ってますよ、唯さん。

さわ子「駄目ね……唯ちゃんは恥じらいが足りないわ」

先生……罰なのにそれはひどくありませんか?

さわ子「ここはやっぱり……」

先生は澪姉の方を見る。
姉ちゃんもそれを聡ったらしく、

律「聡美、澪を取り押さえろ!」

了解しました姉ちゃん。

澪「ひっ! く、来るな!」

聡美「大人しくしてください澪さん」

さわ子「良くやったわ聡美ちゃん。後は私に任せなさい」

澪「いやー!」

あ、逃げた。

さわ子「待ちなさーい♪」

澪「誰か助けて~!」

ピンポーン。

玄関のチャイムが鳴る。
……ちょっと待て。澪姉と先生、玄関の方に……

和「ごめんくださ……」

遅かったか……

110: 2011/03/25(金) 22:24:40.11 ID:ZSZd7qoDO
しばらくして、

律「気を取り直して、プレゼント交換といこうぜ!」

さすがは姉ちゃん。
こんな状況でも忘れないとは。

和「あっ……でも、先生は?」

さわ子「ちゃんとあるわよ」

一同「おぉ~!」

さわ子「本当は今日……彼氏に渡すつもりだったんだけど……」

一同「……」

お、重たい……重すぎる空気だ……
てか先生、彼氏いたんですか。
クリスマス前に別れるなんてどんだけだよ……

さわ子「それじゃあ始めるわよ~!」

先生はテーブルの上の食器を雑に寄せる。
行儀悪いなぁ……
空いたスペースにプレゼントを置く。

さわ子「歌が終わった所でプレゼントよ」

そう言うと先生は、歌を歌いながらプレゼントを回していく。
……さて、俺のは誰に行くかな……?


フフフ……

111: 2011/03/25(金) 22:43:43.93 ID:ZSZd7qoDO
さわ子「ストーップ!」

俺のは……ね、ねねねね姉ちゃん!?

さわ子「……」

あれ?先生……凸が赤い……

さわ子「最高のクリスマスだわ~!!!」

先生が壊れた……
そ、そんなことよりも……

律「さてさて、私は~っと……」

ああああああああぁぁぁぁ……

律「え~と…………!?!?」

律「な、何だよこれ……」

今姉ちゃんの手にあるのは……
紛れもない。
俺が選んだヤツだ……

116: 2011/03/25(金) 23:41:39.15 ID:ZSZd7qoDO
さわ子「あらあら、それはバイブね」

そう。
あの店には、フリーマーケットコーナーがあって、そこに売っていたのがこれだ。
さすがに姉ちゃんはそういう知識があるようで、顔が真っ赤になっていた。
他の人の顔を見ると、真っ赤になっていないのは唯さんだけだった。

律「誰だっ! こんなの買ったのは! ///」

さわ子「りっちゃん、本当は嬉しいんじゃないの?」

先生はニヤニヤしながら言う。

唯「ねぇ憂、バイブって何?」

憂「え、え~っと……///」

唯さん……ピュアすぎです。

律「~~~っ///」

紬「あらあらまあまあ///」

澪「///」

うわぁ……何か凄い空気になってしまった……

117: 2011/03/25(金) 23:50:39.41 ID:ZSZd7qoDO
結局俺が買ったことはバレずにすんだ。
バイブは、姉ちゃんが先生にあげたらしい。
さすがに姉ちゃんは使う気にはなれなかったようだ。
ちなみに俺には和さんのプレゼントが来ました。
和さんって案外センス悪いのかな……
皆がプレゼントを開けて、次はいよいよ一人一芸披露。
姉ちゃんはエアドラムをしていたが、先生に、

さわ子「あれは使わないの?」

とからかわれ、またしても顔を真っ赤にしていた。
ちなみに俺はエア速弾きをしました。

118: 2011/03/26(土) 00:04:27.94 ID:2jDN7igDO
それからしばらくしてクリスマス会が終わり、田井中家へと向かう俺達。

律「はぁ……」

聡美「どうかしたんですか? 律さん」

律「いやー、な。あれのお陰でちょっと、な」

聡美「あ~……結局、誰だったんでしょうか」

律「さぁ…………ん?」

姉ちゃんは俺を見る。

律「まさかとは思うけど……あれ、聡美?」

ギクリ。
姉ちゃんこういうのは鋭いんだよなぁ……
さて、どうするか。

聡美「ち、違いますよ!」

律「だよなぁ……先生かなぁ……」

なん、とか……誤魔化せた?
危ない危ない……家追い出されるかと思ったよ……

聡美「先生だったら……彼氏に……その……ですよね……」

律「うわぁ……さわちゃん……///」

姉ちゃんから見た俺の評価は下がらなかったが、先生のはかなり下がっただろうな……
俺達は気まずい空気のまま、田井中家に帰った━━━━

121: 2011/03/26(土) 07:58:11.19 ID:2jDN7igDO
12月31日。
俺は年越しそばを作ったのだが、既に姉ちゃんは寝てしまっていた。
除夜の鐘が鳴る。
あ~あ……グダグダだ。
確かこの日の俺は、年越しの瞬間ジャンプした記憶がある。

ドン。

上の階から物音が聞こえてくる。
おそらく、ジャンプしたのだろう。
とりあえず、叱っておいた。
自分を叱るなんて、かなり変な気分だな……

122: 2011/03/26(土) 08:06:57.51 ID:2jDN7igDO
1月1日。
今日で刻を越えて丁度1年だ。
雑煮を作った。
姉ちゃんは餅を8個も食ってしまった。
それはさすがに太るぞ姉ちゃん……

俺は6個で止めておいた。
姉ちゃんはもっと食えよと言ってきたが、腹八分目って言うだろ。
ちなみに残りの餅はこの時代の俺が全部食べたらしい。
やっぱり男の子は違うねぇ~。

123: 2011/03/26(土) 08:13:42.03 ID:2jDN7igDO
1月2日。
特に面白い番組が無かったので、俺達はみかん早食い競争をした。
姉ちゃんはかなり早い。
みかんの皮をむくスピードが半端じゃない。しかもみかん1個まるごと口に入れて一気に食べるから尚更だ。
しかし、俺も姉ちゃんの弟だ。
姉ちゃんより早く、とにかく早く食べた。


一応俺が勝ったが、もう手が黄色くなってしまった。
明日までに治るかな……

124: 2011/03/26(土) 08:28:35.24 ID:2jDN7igDO
1月3日。
俺達は初詣に来ていた。
晴れ着なのは俺と澪姉だけだった。
結局治らなかった黄色い手を誤魔化すため、俺は黄色い晴れ着を着たのだ。
澪姉は……毎度の通り姉ちゃんにはめられたらしい。
唯さんに、晴れ着似合ってるねと言われた。
当然である。
姉ちゃんは黄色が似合うし、何せ今の俺は姉ちゃんにそっくりで、違いと言えば前髪をおろして憂さんみたいにポニーテールにしてるくらいだ。


お祈りの時、俺は姉ちゃんが危ない目に遭いませんようにと祈った。
皆には誤魔化したが。
姉ちゃんの提案で、もう1回お祈りすることになった。
俺は、軽音部の安全を祈った━━━━

129: 2011/03/26(土) 14:07:41.55 ID:2jDN7igDO
桜高合格発表日。
憂さんは、見事に合格しました。
受験者576名のうちの、合格者144名の中に、憂さんは入ったのです。
ふと向こうを見ると、ホワイトボードの前に、見覚えのある女の子が立っていました。
背が小さく、黒い髪にツインテール。
間違いない。
梓さんだ……

130: 2011/03/26(土) 14:16:52.86 ID:2jDN7igDO
新学期が始まり、クラス発表が行われた。
俺は2組だった。
姉ちゃん達も2組だったが、澪姉だけは1組だった。
なるほど……このクラス編成が、あの学園祭前の喧嘩を引き起こしたのか……
まぁとにかく、クラス編成があんまり変わんなくて良かった。

131: 2011/03/26(土) 14:30:45.62 ID:2jDN7igDO
新入生勧誘をするために、廊下に出ると、もう他の部の人でいっぱいだった。

律「軽音部だからってなめんなよ~……聡美! 何か作戦あるか?」

急に姉ちゃんから話をふられる。
まぁ一応考えてはいるけど。

聡美「大声で、今から部室で1曲演奏しますとか言って、部室に来てもらえばいいんじゃないですか?」

一同「それだ!!」

132: 2011/03/26(土) 14:45:18.90 ID:2jDN7igDO
姉ちゃん達は俺の作戦を実行したが、結局、入ってくれそうな人はいなかった。


そして次の日。
今日は新歓ライブだ。
ステージの上で準備をしていると、さわ子先生が現れた。
でも……

さわ子「制服も意外と良い!」

はぁ……ダメだ、テンション少し下がった。
まぁ、演奏中はテンション上がるから良いけど。

「次は、軽音楽部による、クラブ紹介とバンド演奏です」

出番が来た。
俺達は、姉ちゃんの合図で勢いよく演奏をスタートした。

135: 2011/03/26(土) 17:15:33.26 ID:2jDN7igDO
新歓ライブが終わり、いよいよ放課後。
姉ちゃんの話では、この時に梓さんが来たらしい。

聡美「さて、準備を……って」

唯・律・紬「……」

何をやってるんだあの人達は。
そんなに気にしたら来る人も来なくなるだろ……

澪「そんなに気にしてたらダメだろ……」

唯「だって~……」

紬「じゃあ、お茶にしましょうか」

ムギさんがそう言うと、皆が席に座った。
さすがはムギさんだ。


皆でお茶をしていると、ドアが開く音がした。
音がした方を見ると、梓さんがいた。


梓「あの~……」

唯「はい」

梓「入部希望……なんですけど」

律「うっしゃー! かーくほー!」

姉ちゃんは梓さんに向かって駆け出す。

梓「きゃあああぁぁぁ!?」

姉ちゃん……やり過ぎだよ……

136: 2011/03/26(土) 17:31:46.44 ID:2jDN7igDO
そして……


一通り梓さんへの質問が終わり、唯さんは梓さんにギターを渡す。

唯「それじゃあずにゃん、何か弾いてみて!」

梓「分かりました唯先輩。では……」

ピ口リロピ口リロ……

何だろう……このリフ、どこかで聞いたことがあるような……
……気のせいか。

梓「ふぅ……」

律「う、上手いな……」

澪「そうだな……聡美と良い勝負だな」

紬「それにしても、2人は知り合いなの?」

梓「……え?」

紬「だってさっき、あずにゃんとか唯先輩とか……」

……え?
ムギさん、今なんて?

唯「うん! あずにゃんとは知り合いだよ~!」

唯さんは梓さんに抱きつく。
梓さんは、何故か俺の方を見ていた。
……何かがおかしい。
姉ちゃんの話では、猫耳着けて、初めて梓さんにアダ名がついたはずだが……
そして、何故梓さんは俺の方を見ている?

まさか……歴史が変わった!?

137: 2011/03/26(土) 17:39:39.33 ID:2jDN7igDO
その後、姉ちゃんの話であった、梓さんが退部しそうになったということも無く、夏休みになってしまった。
一体、どこで間違えてしまったのか。
そんなに歴史は変えてないはずなのに……
ならば、何故?
そんなことを考えながらマクドでポテトを食べてると、向かいの席に、

梓「聡美先輩、ここ、良いですか?」

梓さんが座ってきた。

138: 2011/03/26(土) 17:44:51.73 ID:2jDN7igDO
しばらくは梓さんと雑談していたが、ふと話題が無くなると、梓さんが俺をあの時の目で見つめてきた。
そして、口を開いた。

梓「聡くん、本当にここまで来たんだね」

そうか……梓さんも……
俺や唯さんと同じように……


刻を越えて来たのか━━━━

139: 2011/03/26(土) 17:52:42.52 ID:2jDN7igDO
━━━━刻を越える前。
唯さんの支えだけでは、とてもやっていけなかった。
まず、資金が圧倒的に足りない。
そんな時、梓さんが協力してくれたのだ。
梓さんは、プロのミュージシャンになっていた。
梓さんは、俺と唯さんが姉ちゃんを助けようとしていると知ると、協力してくれた。
梓さんは、本当は『放課後ティータイム』としてデビューしたかったらしい。
でも、姉ちゃんが氏んだあの日、放課後ティータイムは解散してしまった。
姉ちゃんが助かれば、放課後ティータイムは活動を続けられる。
だから、協力してくれたのだろう。

140: 2011/03/26(土) 18:29:35.04 ID:2jDN7igDO
でも、梓さんにはタイムマシンの存在を教えていないはず。
唯さんが梓さんに話したのか……
もしくは、タイムマシンとは別に、また別の機械を開発したのか。
どちらにしよ、あっちで何かあったに違いない。
俺は梓さんに聞いたが、まだ早いと言われた。
一体あっちで何が……?
梓さんと別れた後も、その事が頭の中を巡っていた━━━━

144: 2011/03/26(土) 22:23:40.52 ID:2jDN7igDO
夏休み。
もうすぐ合宿という時に、姉ちゃんから暇ならちょっとその辺ブラブラしようぜと言われた。
姉ちゃんは行動がいっつも唐突だ。
良く言えば、思いつきが凄い。

町中を歩いてると、憂さんと梓さんがマクドの中にいるのが見えた。
姉ちゃんも2人に気づいたらしく、俺の手を引っ張って店の中に向かった。

145: 2011/03/26(土) 22:30:41.80 ID:2jDN7igDO
店の中に入り、2人の近くの席に座る。
どうやら、まだ気づかれてないみたいだ。
2人の会話に耳をすませる。

憂「聡美さんは?」

梓「律先輩に似てるけど……中身は全然違うよ。何か、何でもできる人って感じ。ギターも上手いし」

憂「そうだよね。私、受験勉強の時に分からないところ教えてもらったけど、凄く分かりやすかったよ」

梓「良いな~……私も聡美さんに教えてもらいたいよ」

いやぁ、照れますな。
姉ちゃんを見ると、何か凄い俺を睨んでる。
多分ねたんでるんだろう。

146: 2011/03/26(土) 22:40:24.79 ID:2jDN7igDO
律「律さんは?」

出ました。
姉ちゃん得意の声真似。
憂さんは俺達に気づいたが、俺は黙ってるようにと合図した。
梓さんは全く気づいていない。

梓「うーん……あの人はいい加減で大雑把だから……パス、かな」

あ、梓さん……それ、禁句です。
いや、確かにその通りだけど……本人がいないと思ってもそういうことは言わない方が……
姉ちゃんを見る。
うわぁ……体を震えさせてる……
相当きたな、これは。

律「ほ~う? 誰 が 大 雑 把 だ っ て ?」

梓「うわあああぁぁぁ!?」

あーあ……地雷踏んだな……

147: 2011/03/26(土) 22:57:10.42 ID:2jDN7igDO
憂「こんにちは。律さん、聡美さん」

律「やっほー。外から見えたから、来ちゃった」

姉ちゃんは、梓さんを成敗しながら答える。

聡美「律さん……そのくらいにしてあげたら?」

律「いや、先輩の悪口を言うやつは厳しく指導しないと」

姉ちゃんはそう言いながら梓さんを放す。

梓「そういえば律先輩」

律「ん?」

梓「ムギ先輩って、物凄いお嬢様なんですか?」

そりゃそうだ。
琴吹グループは、この先凄まじい発展を遂げるのだから。

律「あぁ! そうだぞ。家には、執事さんがいて、長期休暇には外国いったりするんだぞ」

知ったかぶりめ……
大体話し方で姉ちゃんの嘘はすぐ分かる。

梓「本当ですか!?」

律「だったら面白いよね!」

梓「知らないんじゃないですか……」

律「じゃあ、今から電話してムギん家遊びに行こうぜ!」

……は?

148: 2011/03/27(日) 00:50:12.35 ID:I9hoe1UDO
さすがに迷惑だろ……
姉ちゃんはムギさんに電話する。
しかし、出ないようなので、家電にかける。


電話が終わる。
姉ちゃんの話を聞くには、ムギさんの家には執事さんがいて、ムギさんは今実際にふたんだろう。」

眠い……
寝ます、おやすみなあい

151: 2011/03/27(日) 09:12:24.68 ID:I9hoe1UDO
店を出ると、憂さんから家に来ないかと誘われた。
スイカがあるということなので、俺と姉ちゃんは即答した。


憂「ただいま~……お姉ちゃん? 律さんと聡美さんと梓ちゃんが来たよ~」

唯「お~かぁ~え~りぃ~……」

唯さんはかなりだらけていた。
やっぱり家ではこうなのか……
あっちでも色々と苦労したからなぁ……

152: 2011/03/27(日) 09:21:37.93 ID:I9hoe1UDO
次の日。
姉ちゃんと唯さんと俺の3人で、さわ子先生を合宿に誘ったが、めんどくさそうだった。
でも、確か夜に来たはず。
まぁ、放っておいても来るんだからまぁ良いか。


久しぶりに部員が全員揃ったので、合宿の買い物に行くことになった。
当然、買いにいくのは水着だが、梓さんはもっと別の物を買いにいくのかと思っていたようで、少々不満げだったが、澪姉に頭を撫でられておさまった。

姉ちゃんは、その差別的なことに少し寂しげを覚えたようだ。

153: 2011/03/27(日) 09:31:48.31 ID:I9hoe1UDO
合宿当日。
ムギさんの別荘に着くと、去年のより大きいその全貌にまたしても圧倒された。
ムギさんによると、まだ上があるらしい。
どんだけでかいんだよ、その別荘……


荷物をまとめると、早速姉ちゃんと唯さんが水着に着替えて、海に向かって行こうとしていた。

澪「練習が先だろ!」

梓「私も練習が先が良いです!」

紬「遊びたいで~す」

ふむ。じゃあ、別荘の主に合わせるか。

聡美「私も、遊びたいかな……」

俺がそう言った瞬間、姉ちゃん達は歓声をあげた。
澪姉達を見ると、何か睨まれた。
つり目2人の睨み付け……マジで怖え……

154: 2011/03/27(日) 09:45:28.25 ID:I9hoe1UDO
海に出ると、船とビーチパラソルがあった。
これまた豪華だなぁと思っていると、俺の方にビーチバレーのボールが飛んできた。
俺はとっさに反応し、姉ちゃん達に返す。

パシャ。

律「おぉ! やるじゃん、聡美」

唯「かっこよかったよ~!」

聡美「ありがとうございます。じゃあ、私もまぜてください」

律「大歓迎だぜ!」

唯「よーし、いくよ~!」


澪「凄いな……聡美は」

梓「かっこいいですね……」

紬「そうね……あ、澪ちゃん、さっきの聡美ちゃんの写真、撮った?」

澪「あぁ。つい、な」

梓「……」


唯「あずにゃ~ん!」

唯さんはちょっと不満げな顔をした梓さんのもとへ駆けてゆく。
姉ちゃんと唯さんの巧みな話術で、梓さんはまんまと乗せられ、遊ぶことになった。

155: 2011/03/27(日) 09:59:00.71 ID:I9hoe1UDO
ビーチバレーの次は、お宝探しだと姉ちゃんが言うので、俺達と澪姉達は別行動になった。
まぁ、遊んでることに変わりはないのだが。

唯「りっちゃん博士、これを見てくだされ!」

律「おぉ! この形は宇宙人だ!」

ただのズワイガニだろ……

唯「これはノーベル賞並みの発見だと!」

律「そうだな! ……ん?」

姉ちゃんは澪姉達の方を見る。
俺も姉ちゃんにつられて見ると、澪姉が無茶苦茶怖がっていた。
そんなに怖がるものがあるか?
……あぁ、フジツボか。
そう思っていると、澪姉がどこかに走っていった。
姉ちゃんは梓さんにGJをする。
てか姉ちゃん、いつの間にそこまで移動したんですか……

156: 2011/03/27(日) 10:06:00.68 ID:I9hoe1UDO
スイカ割り、生き埋め、海水浴、砂遊び、あいす等、一通りは遊んだ。
何故か澪姉だけは遊ばずに走り回っていたけど。
……ダイエットかな?
姉ちゃんは澪姉に近づく。
って!姉ちゃん何で海草被ってんだよ……
それを見た澪姉は、即倒してしまった。
まぁ、確かに少しグロいけどさ。

157: 2011/03/27(日) 10:18:41.32 ID:I9hoe1UDO
砂浜を歩いていると、2人の少女が倒れていた。
俺の同胞だろうか。
俺は3日前に目覚めて、ここが無人島だと把握した。
俺は彼女達に歩み寄る。
1人が起き上がる。

「あれ……? ここは、どこ……? あなたは、誰……?」

「私は、田井中聡美。あなたは?」

「私、平沢唯。えっと……りっちゃん、起きて!」

唯と名乗るその少女は、もう1人の少女を起こす。

「ん……? ここは……あなたは……?」

「りっちゃん、この人、聡美さんって言うんだよ!」

「そうなのか。あ、私、田井中律です」

「田井中……私と同じ名字ね……運命を感じるわ」

まぁ、名字が一緒なことは珍しくは無いけど。

「それで、ここは一体どこなんですか?」

先程、律と名乗った少女が、確信を突いた質問をしてくる。
仕方ない、ここは現実を知ってもらおう。

158: 2011/03/27(日) 10:27:21.45 ID:I9hoe1UDO
「ここは無人島。私は3日前に目覚めて、島を一巡りしたんだけど、人を見つけたのはあなたたちだけだわ」

「そうなんですか……でも、海に沈むよりはよっぽどマシだよな、唯」

「そうだね、りっちゃん!」

「まず、この無人島に流れ着いたことこそ奇跡だ。ってことは、私達にはまだ生きる権利があるということだ」

「つまり……3人で協力しようということですか?」

「うん。こっちに、私の拠点があるんだ。一緒に来るか?」

「……唯!」

「りっちゃん!」

「「よろしくお願いします!」」

「そうか、分かった。では早速……」

その時だった。

159: 2011/03/27(日) 10:35:57.04 ID:I9hoe1UDO
梓「なにやってるんですか?」

あぁ……せっかく盛り上がってきたところなのに……

律「やっぱ聡美は凄いな! 私達は新大陸をやりたかったけど……こっちの方が面白いぜ!」

唯「うん! 私、ホントに無人島に来たかと思っちゃったよ!」

そんなにうまくいってたかな……?


ちょっと用事が出来ました。
終わり次第戻ります。

162: 2011/03/27(日) 13:20:52.70 ID:I9hoe1UDO
ムギさんの別荘の中のスタジオは、去年のとは比べ物にならないほど豪華だった。
特に……

律「早く練習しようぜ! スネアが新品だ!」

澪「現金な奴……」

全くだ。
まぁ、俺もこんなに良いアンプで練習出来るのは良いと思うけど。

律「それじゃ行くよ~! ワンツースリーフォー!」


練習後。
空がオレンジ色で、とても綺麗な時間、夕方。
俺達は、夕食の材料の買い出しに来ていた。
姉ちゃんは留守番だそうだ。
何でも、練習で体力が尽きたとのこと。
姉ちゃんは、キャベツ買ってきてと頼んできた。
ところで、何で姉ちゃんはキャベツ好きなんだろう?

163: 2011/03/27(日) 13:32:32.00 ID:I9hoe1UDO
買い出しが終わり、別荘に戻ると姉ちゃんが寝転がっていたが、食材の匂いを嗅ぎ付けたのか、すぐに立ち上がった。


姉ちゃんは意外と料理がうまい。
まぁ、そんな姉ちゃんに料理を教わったから、今の俺がいるのだが。
ちなみに唯さんは、かなり料理が下手だった。
演技なのか……?
そんなことを考えながらも、俺の手慣れた手は動く。


出来た。
皆でやると、やっぱり早い。
後、澪姉は何故か拗ねていた。

164: 2011/03/27(日) 13:54:03.73 ID:I9hoe1UDO
まぁ、ただのバーベキューなのだが。
姉ちゃんは、凄いものを食べていた。
食うことだけはいっちょまえなんだよなぁ……


唯「はぁ~……お腹いっぱい……」

澪「食べ過ぎたかなぁ……」

紬「じゃあ、花火やろう?」

満面の笑顔で、ムギさんは言った。


唯さんがロケット花火を手に持ったまましたり、姉ちゃんが花火を振り回したり、澪姉がネズミ花火から逃げ回ったりとかして、かなり楽しかった。
梓さんも、楽しめていたようだ。

165: 2011/03/27(日) 14:02:49.14 ID:I9hoe1UDO
律「肝試しをやろう!」

紬「そうね~。せっかく6人いるんだし」

肝試しか。
でも、やらない人がいると思うけど。

澪「わ、私はやらないぞ!」

ほらやっぱり。
でも、姉ちゃんの手にかかればそんな決意、すぐに崩壊するのだが。


結局澪姉はやることになり、俺は姉ちゃんとペアになり、他のペアを驚かす役になった。

166: 2011/03/27(日) 14:17:01.39 ID:I9hoe1UDO
聡美「律さん、何で澪さんってあんなに怖がりなんですか?」

律「え? う~ん……分かんない! っていうかさ、何で敬語なの? 同い年なのに」

聡美「えっ……だって、居候させてもらってる身ですし……」

律「あーもう……そんなの気にしなくて良いから! 聡美の好きなように! 私だけでも良いからさ」

聡美「えっ、じゃあ……姉ちゃん」

律「おうっ! 姉ちゃんだぞ~!」

姉ちゃん嬉しそう。

聡美「ってかさ、まずはどうやって驚かせるか……」

律「う~ん……私が思うに、雰囲気が大事だと思うんだよね」

聡美「となると……薄暗くて、カラスとかがいて、いかにも何か出そうなところだよね」

律「って、ここじゃん!」

聡美「じゃあ、姉ちゃんはここでこんにゃくでも仕掛けて。私は、後ろから驚かします」

律「おう分かった。じゃあ、やるぞ!」

姉ちゃんが携帯で合図を送り、肝試しはスタートした。

167: 2011/03/27(日) 14:33:28.27 ID:I9hoe1UDO
最初に来たのは……澪姉達だな。
さわ子先生も、既に待機済みだ。
まず、梓さんをさわ子先生がさらう。
1人きりになった澪姉に、俺達は総攻撃を仕掛ける。

澪「あずさぁ~……りつぅ~……ひゃっ!?」

姉ちゃんのこんにゃくが澪姉に当たる。

澪「律、いるんだろう? 出てきてよ……」

澪姉の後ろにそっと近寄り、その震えている肩にぬっと手を置く。

澪「ひぃっ!?」

澪姉は振り返る。
髪をおろした俺と目が合う。
ちなみに、さわ子先生による特殊メイク済みだ。

澪「きゃあああぁぁぁ!?」

澪姉は物凄い勢いで走り出す。
でも、その先には……

律「……」

髪をおろし、特殊メイクをし、今の俺とそっくりな姉ちゃんがいる。

澪「ひぃっ……」

俺と姉ちゃんはゆっくりと澪姉に近づく。
澪姉から見れば、まさに挟み撃ち。

澪「ミエナイキコエナイ……」

澪姉がこうなったら、俺達は音も無く去る。
正確には先回り、だけど。

澪「あれ……? いない……」

澪姉がほっと息をつく。
しかしまだ、終わっちゃいない。

168: 2011/03/27(日) 14:45:14.93 ID:I9hoe1UDO
さわ子先生は梓さんにメイクをした後、自分にもそれをし、澪姉の方に向かった。

澪「ぎゃあああぁぁぁ!?」

やっぱり澪姉はこっちに逃げてきた。
姉ちゃんと2人で同時に澪姉の肩に手を乗せた。

澪「ひっ……さ、さっきのだああぁぁ!」

澪姉は、特殊メイクを施した梓さんの方に逃げる。

梓「澪先輩……」

澪「あ、梓!」

喜んだのもつかの間。

梓「タ ス ケ テ ク ダ サ イ」

澪「……」

バタン。

澪姉は恐怖で倒れてしまったようだ。
やり過ぎたかな……?
澪姉が倒れてしまったため、肝試しは中止になった。
ってか、姉ちゃんは初めからこれが目的だったんじゃないの?
姉ちゃんの方を見ると、ウインクしてきた。
くっ……これは結構くるな……

後、やっぱりさわ子先生は勝手に来てたようだ。
まぁ、協力してもらったのはありがたかったけど。

169: 2011/03/27(日) 14:59:18.74 ID:I9hoe1UDO
風呂。
何故か梓さんは、湯船のなかで立ちっぱなしだった。

……良い口リ体型だ。
しかも丸見えだし。
そして、何であんなに日焼けしているんだろう。

唯さんが、梓さんを一気に湯船のなかに入れる。
あ、今少し見えた。

梓「い、痛い!」

そんなに日焼けしてればそりゃあ痛いだろ……

姉ちゃんを見ると、泳いでいる。
いくら他に誰もいないからって……そんなことやるなよ……

何か先生の声がしたので見ると、先生がたんこぶ作って浮かんでいた。
一体何か何があったんだよ……

170: 2011/03/27(日) 15:07:03.16 ID:I9hoe1UDO
深夜。
スタジオで練習をしていると、唯さんが入ってきた。

唯「あれ? 聡美ちゃん?」

聡美「どうも」

……そうだ。
ちょうど良い機会だ。
色々と教えてもらおう。

聡美「あの、唯さん」

唯「ん?」

聡美「……アクター」

唯「……! で、なあに? 聡くん」

聡美「梓さんのことなんですけど……」

唯「あずにゃんかぁ。それは、本人に聞いた方が良いと思うよ?」

……え?

唯「入ってきて良いよ、あずにゃん」

ドアが開く。

梓「聡くん、こんばんは」

あ、梓さん……何で……

171: 2011/03/27(日) 15:20:15.97 ID:I9hoe1UDO
唯「あずにゃんとはね、この日、一緒に練習したんだよ。りっちゃんは知らないから、聡くんも知らなかったと思うけど」

そうか……そういうことか……

聡美「梓さん、前に聞けなかったこと、聞かせてくれませんか?」

梓「うん。唯先輩もいるし、話そうかな」

梓さんは、語り始めた。


まず、例の現象について。
限りなく近い2つの存在が、同じ時間に存在してしまうとき、その存在は精神のみ刻を越えること。
しかしそれには、またしても条件があること。

1つめ。
氏を阻止したことがあること。
2つめ。
身体ごと刻を越えた存在の合図があること。
3つめ。
何らかの強い意志があること。
この条件が揃えば、タイムマシンが無くても刻を越えられるということ。
役目を終えれば意志が弱くなるため、その場に倒れる現象も説明出来る。
梓さんは、偶然刻を越えてしまったらしい。
これも、俺と唯さんの影響だろうか。

172: 2011/03/27(日) 15:39:12.81 ID:I9hoe1UDO
唯さんと梓さんは、あっちでずっと調べていたらしい。

聡美「それで……次は……?」

唯「えっとね……言いにくいんだけど……」

言いにくい……?
何かあるのか……?

唯「聡くんのせいで、氏んじゃうかもしれないんだ……」

…………は?

聡美「ど、どういうことですか!?」

梓「落ち着いてください。原因はあなたじゃなくて、この時代の聡くんです」

この時代の……俺?
何で、俺のせいで?

唯「聡くん、よくりっちゃんと映画観に行ってたよね?」

……あっ。
まさか……

唯「うん。聡くんが映画観た帰りに友達と一緒に走っていった、あの時だよ」

ってことは……姉ちゃんは、俺を庇って氏ぬのか……?

聡美「そんな……」

唯「まだ諦めちゃダメだよ! 私達が待機して、阻止すれば良いんだから!」

しかし……どうだろう。
確かに3人もいるから、阻止自体は難しくないかもしれない。
だが、3人がかりでやったらどうなる?
この時代の唯さんと梓さんに、迷惑がかかるじゃないか。
前は俺と姉ちゃんだけだったからまだいいものの、さすがに他の人に迷惑がかかるなら……

173: 2011/03/27(日) 15:44:38.25 ID:I9hoe1UDO
唯「聡くん、もしかして、この時代の私達に迷惑がかかると思ってる?」

そりゃそうだろう。
俺は協力はしてもらうが、迷惑がかかるなら……

聡美「当たり前でしょう。他の人には、迷惑はかけたくないんです」

俺がそう言うと、2人共黙る。
そして、梓さんが俺の方に歩いてきて……




バシン!!!


ビンタされた。

174: 2011/03/27(日) 16:01:28.15 ID:I9hoe1UDO
梓「バカですかあなたは! それでも東大卒業生ですか!? 1番迷惑なのは、誰かが氏ぬことです!」

あ……

梓「私は、放課後ティータイムを解散させたくないんです! 聡くんが、律先輩を氏なせたくないように!」

梓さん……

梓「だから、この時代の私達にも、協力してもらったんです!」

え……?

唯「そうだよ。必要な時は、身体を貸してってね。もしかしたらそれで、ちょっと変なことになるかもしれないけど、お願い! ってね」

そんなことしたら……歴史が……

梓「大丈夫です。律先輩のことは、話してませんから」

それなら……行けそうだ!

聡美「じゃあ……お願いします。唯さん、梓さん」

唯・梓「こちらこそ」

……これで、何とかなりそうだ。
そう、思っていたのだが……

その後は、ちゃんとあっちに2人を返し、練習をした━━━━

178: 2011/03/27(日) 17:34:08.91 ID:I9hoe1UDO
もうすぐ学園祭。
それと同時に、あの日が、近づいてくる。
俺が姉ちゃんに惚れた、あの日が。


部室で皆とお茶をしていると、梓さんが去年のライブも見たいと言い出した。
その瞬間、澪姉が吹き出した。
まさか、マジでこうなる人がいるとは……
俺も人のことは言えないが。

さわ子先生が、去年の学園祭のDVDを取り出し、俺達に澪姉を抑えるよう指示を出した。

梓さんは、あまりの過激さに鼻を抑えていた。

179: 2011/03/27(日) 17:49:16.64 ID:I9hoe1UDO
皆で去年の学園祭を振り返る。
俺はやっぱり、あの唯さんとの再会が衝撃的だった。
そのせいか、ライブのことはほとんど覚えていない。

ライブのDVDを見て、皆で盛り上がってると、和さんが入ってきた。

和「学祭の分の講堂使用届、出してないでしょ」

梓「えっ?」

梓さんはビックリしている。
そりゃそうだ。
普通なら忘れない。
全く姉ちゃんは……

澪「去年もこんなことがあったな……」

確かに……忘れても次から気をつければ良いのだが、姉ちゃんは学ばないからダメなんだよな……
姉ちゃんは、梓さんに書記を押しつけた。
おいおい……

梓「バンド名、何でしたっけ?」

そういえばそうだった。
俺も姉ちゃんに、何かある?と聞かれて、何か適当に言ったら没にされた記憶がある。

まぁ俺は、既にバンド名を知っているのだが……
めんどくさいし、歴史も変わらないだろうし、言っちゃうか。

聡美「放課後ティータイム、とか……」

そう言うと、周りが静かになる。

180: 2011/03/27(日) 17:58:34.29 ID:I9hoe1UDO
律「それ、良いかもな! さっすが聡美!」

澪「聡美ってやっぱセンス良いんだな……律とは違って」

律「何だとー!?」

紬「私達に、1番ピッタリね」

唯「……」

唯さんは無言で俺を見つめてくる。
大丈夫ですよ唯さん、これくらいで歴史はそんなに変わりませんから。

梓「……じゃあ、放課後ティータイム、と」

和「ありがと。今回はスムーズに決まったわね」

唯「聡美ちゃんのお陰だよ~」

和「そうなんだ、じゃあ私、生徒会室行くね」

唯「和ちゃん、たまには帰りにお茶しようよ!」

和「うん、後でメールする」

和さんはそう言うと、部室から出ていった。

181: 2011/03/27(日) 18:06:00.52 ID:I9hoe1UDO
律「じゃあ、学園祭も近いことだし、練習するか!」

梓「そうですね! 練習しましょう!」

そう言うと、皆は準備を始める。


……あれ?
何か違和感が……
姉ちゃんの話では、今日は唯さんのギターの調整をするはずなんだが……


……まさか……!
唯さん、こまめに調整してるのか!?
ヤバい……歴史が狂う!
どうしよう……
こうなったら……わざと弦を切るしかない。
済まない相棒。
少し、我慢してくれ……

182: 2011/03/27(日) 18:16:58.47 ID:I9hoe1UDO
俺は思いっきりストロークする。
ブチブチブチン!
……しまった。
俺のギターは7弦ギターだから、唯さんや梓さんでも助けられないと思って、その1本だけを切るつもりだったのだが……
3本も切れてしまった。
とりあえず、演技をしておこう。

聡美「うわっ!?」

梓「聡美さん!? 大丈夫ですか!?」

律「あちゃー……とうとう弦切れちゃったか……」

梓「え~っと……あ、7弦ギターですか……聡美さん、替えの弦持ってます?」

聡美「あー……今ちょうど切らしてて……」

澪「楽器店にでも行くか?」

唯「そうだね~。このまままじゃ練習出来ないし」

聡美「ごめんなさい、皆さん……」

紬「良いのよ。じゃあ、行きましょうか」

俺達は準備をする。


……計画通り。

184: 2011/03/27(日) 19:28:29.54 ID:I9hoe1UDO
楽器店に着いた。
皆で店内に入ろうとするが、澪姉は左利きだから入らないとのこと。
でも、姉ちゃんからレフティフェアやってると知らされ、食いついてきた。
澪姉、意外と子供っぽいからなぁ……

弦のコーナーを見る。
あったあった。
少し多目に買っておこう。
一応家にあるけどね。

聡美「じゃあ私、買ってきますから、何か適当に見ててください」

澪「……」

澪姉はジーっとレフティを見つめている。

律「おう! さーて、澪はあんなだし…ムギ、行くか!」

紬「はい!」

唯「あずにゃん、一緒に見ようよ~」

梓「はい」

さて、皆仲良くやってるみたいだし、少しゆっくり買いますか。

185: 2011/03/27(日) 19:41:46.57 ID:I9hoe1UDO
皆用事はすんだようで、帰りますか的な空気になったのだが……

澪「……」

ま、まだ見てる……

律「澪、帰るぞー」

澪「やだ」

そ、即答……小学生ですか……

律「ほらほら、帰りまちょうね~」

澪「やだ!」

姉ちゃんは澪姉を無理矢理引っ張ってきた。
あ、危ない!

ドサッ。

あー……これが原因か……

律「何やってんだよ澪~」

澪「もう良いよ!」

律「えっ……」

澪「……バカ律」

……やっちゃったか……


店を出て、この後どうするかを検討していると、今度は澪姉が姉ちゃんを避けるような言動をした。

相当怒ってるな……

俺は姉ちゃんを見る。
少し不機嫌な顔になっていた。


まぁ、不機嫌な顔も可愛いけどね。

190: 2011/03/27(日) 21:45:21.51 ID:I9hoe1UDO
澪姉達が入った店に入ろうと姉ちゃんが言ってきた。
いくら気に入らないからってそこまでするのかと思ったが、こうなった姉ちゃんはちっとやそっとじゃ止まらないことは俺が1番知っている。
仕方がない。しばらく付き合うか……


店の中に入ると、澪姉達が座っている席の氏角の席がちょうど空いていたので、そこに座った。
澪姉達が楽しそうに話しているのを見て、姉ちゃんはかなり不機嫌だった。
ムギさんは探偵さんみたいとか言っていたが、これは探偵というよりはストーカーだな。

律「良し、突撃!」

ちょ、ちょっと姉ちゃん!?
そんなことしたら普通逆効果だろ……

姉ちゃんは澪姉に突っ込んで行った。
梓さんとムギさんは心配な表情で姉ちゃんの様子を伺う。

あ、澪姉達に気づかれた。
多分、姉ちゃんがばらしたのだろう。

191: 2011/03/27(日) 21:53:19.00 ID:I9hoe1UDO
姉ちゃんと澪姉が何か話している。
多分今、姉ちゃんが生意気なことを言ったんだろう。
澪姉の表情で大体は分かる。

紬「りっちゃん……アイス、溶けちゃうのに……」

俺は思いきって聞いてみた。

聡美「姉ちゃん、アイス溶けるよー?」

律「あー……私いらないから食って良いよ~」

何だよそれ。
じゃあ何で頼んだんだよ……
姉ちゃんはアイスなんてどうでも良いらしい。
姉ちゃんは今、必氏なのだろう。
ただ、方法が少し間違ってるだけで。

192: 2011/03/27(日) 22:10:44.24 ID:I9hoe1UDO
その日の夜、俺は姉ちゃんを説得しようとしたが、聡美には関係無いだろと言われた。その日の夜は、姉ちゃんは部屋から出てこなかった。

姉ちゃん……


次の日の昼休み。
急に姉ちゃんから昼練するぞって言われて少し驚いたが、澪姉関連だということはすぐ分かった。
部室で準備をしていると、姉ちゃんと澪姉が口喧嘩を始めてしまった。

律「悪かったよ。せっかくの和との楽しいランチタイムを 邪 魔 し て さ 」

だから姉ちゃん、それは勘違い……

澪「そんなこと言ってないだろ!!」

ヤバい。
こんなに大きい喧嘩だったのか……
これは最悪の場合、ここまで積み上げてきた2人の関係が崩れてしまうほどの大喧嘩だ。
喧嘩は些細なことから始まる、とは良く言ったものだ。
まさに今がそれだ。

ムギさんと梓さんの必氏のカバーにより、その場はおさまった。

かのように見えたが……

193: 2011/03/27(日) 22:26:09.40 ID:I9hoe1UDO
練習がスタートしたが、何かがおかしい。

姉ちゃん……?

澪姉もそれに気づいたらしく、皆に手で静止の合図をする。

澪姉は姉ちゃんにパワーが足りないと言う。
しかし、反応は無い。
明らかに姉ちゃんの様子がおかしい。

澪「おい、律!」

律「……ごめん。何か調子出ないや。また放課後ね~」

唯「り、りっちゃん!」

澪「いいよ唯」

唯さんは何とかしようとするが、澪姉がそれを止める。
お互いが意地を張り合う。
1番まずい喧嘩だ。

……俺が何とかしなくちゃ。
姉ちゃんを追いかける。

澪「聡美、別にいいよ!」

聡美「よくない!!」

俺は必氏に答えを返し、姉ちゃんのもとに向かった。

194: 2011/03/27(日) 22:33:50.76 ID:I9hoe1UDO
姉ちゃんは、階段の前で倒れていた。
そのあらわとなっている額に触れる。

……熱がある。
あの時の風邪は、こういうことだったのか。

律「聡美……」

聡美「喋らないで。すぐ保健室に運ぶから」

律「この事は……澪には……」

聡美「うん。澪さんには言わないよ」

律「あり、がと……」


保健室で熱を測ったら、39度もあった。
俺は事情を澪姉以外に伝え、澪姉には姉ちゃんに謝る気があると分かった時に伝えてと皆に言っておいた。

195: 2011/03/27(日) 22:42:46.99 ID:I9hoe1UDO
次の日。
姉ちゃんの看病をこの時代の俺に任せ、俺はいつも通り学校に通った。
澪姉はまだ意地を張っているようだった。


家に帰ると、この時代の俺から姉ちゃんが呼んでるよと言われた。
姉ちゃんの部屋に入る。

聡美「姉ちゃん……」

律「聡美か……あのさ、相談があるんだけど……」

あぁ。澪姉に関することか……

聡美「大丈夫だよ。きっと仲直り出来るよ」

律「いや、そうじゃ無くてだな……」

何なんだろう。


律「私、好きな人が出来たかもしれないんだ……」





…………え?

198: 2011/03/27(日) 22:54:29.77 ID:I9hoe1UDO
律「聡美ってさ、姉弟でってどう思う……?」


……まさか。
俺はこの時、姉ちゃんに惚れた。
まさか姉ちゃんも……?

律「今日さ……聡に看病してもらったんだけど……あいつ、かなり頼りがいのある男になってたんだ……」

俺は黙って話を聞く。

律「今まであいつを男としてなんか見てなかったけど……私、聡のこと、意識しだしてんだよなぁ……」

律「聡美はさ、どう思う?」

さて。
ここはおそらく、運命の分かれ道。
間違えたら、歴史が大きく変わってしまう。
思い出せ……そして、考えろ……
どうすれば良い?



…………あっ。

199: 2011/03/27(日) 23:02:45.60 ID:I9hoe1UDO
聡美「私は、恋の形は人それぞれだと思う。でも、高校卒業するまでは……その気持ちは、胸の中にしまっていた方が良いと思うよ」

こうすれば、まずそんなに歴史は変わらないだろう。

律「そっか……ありがと、聡美」

……さて。
俺は他にやることがあるので、看病をこの時代の俺に任せ、さっさと寝た。

200: 2011/03/27(日) 23:11:17.42 ID:I9hoe1UDO
次の日。
澪姉にやっと謝る気ができたようなので、俺達は今の姉ちゃんの状態を伝えた。
その日澪姉は、放課後すぐに姉ちゃんのもとへと向かった。


これで良かったんだよな……


俺達は、わざと遅れて家に着いた。
姉ちゃんの部屋に入ると、姉ちゃんは良い表情でぐっすりと寝ていた。
どうやら、無事に仲直り出来たみたいだ。


しばらくすると、何故か唯さんまで眠ってしまった。
全く……本当に変わらないな……

201: 2011/03/27(日) 23:19:33.55 ID:I9hoe1UDO
次の日。
姉ちゃんが完全復活した。
やっぱり、姉ちゃんは元気が1番だな。
後は学園祭に向けて練習するだけ。

唯「うぃっくし!」

……あ。
今年の学園祭の前の、最後の難関、すっかり忘れてた……
唯さんはめったに体調を崩さないのだが……この時は……

207: 2011/03/28(月) 00:09:13.99 ID:T0p6Q1FDO
唯さんが風邪を引いた。
普段めったに体調を崩さない人が風邪を引くとかなり重症になると聞いたことがあるが、まさかここまでとは。


とりあえず、唯さんの様子を聞くために、憂さんのところに来たのだが。

律「全く……だらしないやつだな」

澪「お前がうつしたんだろ!」

律「えっ? 私?」

梓「そうですよ! 時期的に考えて!」

まぁ、風邪がうつると言うのはただの迷信で、実際は自己暗示とかならしいけど。

208: 2011/03/28(月) 00:19:19.14 ID:T0p6Q1FDO
憂「あっ、でも多分……」


数日前。
学園祭ライブのステージ衣装を決めた日、唯さんは浴衣が物凄く気に入り、その日はずっと浴衣で過ごしたらしい。
それで冷えて風邪を引いたのか……
全く唯さんは……

今考えると、あの時の衣装、無茶苦茶恥ずかしいな。
皆も同じ考えならしい。

澪姉は、梓さんにリードの練習もするようにと言った。
あくまで万が一に備えてだと思うけど。

209: 2011/03/28(月) 00:29:13.60 ID:T0p6Q1FDO
次の日。
部室で練習をしていると、憂さんが唯さんの格好をして入ってきた。
何故分かるかと言うと、姉ちゃんから話は聞いてるし、なによりも内履きの色が赤だし。
何で皆気づかないんだろう?


それから練習をしてみたが、完璧に合いすぎてビックリした。
憂さん……貴女努力の天才ですね……
指の皮はかなり剥けてるし。
あれは料理の時痛いだろうなぁ……
姉ちゃん達には少し触っただけとか言ったらしいけど……バレバレですよ?

213: 2011/03/28(月) 16:56:44.49 ID:T0p6Q1FDO
さわ子先生によって、憂さんの変装がバレた。
まぁ、それ以前に声とか話し方とか仕草とかで分かるけど。
何で姉ちゃん達は分からなかったんだろう?
これがご都合主義ってやつか。
ちなみにさわ子先生は、胸の大きさで見破ったらしい。
そんなに違うかな……?


じっと見比べていると、皆から変態、と言われた。

214: 2011/03/28(月) 17:03:46.43 ID:T0p6Q1FDO
唯さんがティッシュの箱を持って部室に入ってきた。
うわぁ……激しくデジャヴ。

唯「朝起きたらねぇ、何か元気になっててねぇ、少しは練習しへっくち!」

うわぁ……姉ちゃんベタベタだ……

唯「あ、ギー太! こんなところにいたのかぁ~!」

唯さんはギー太に向かって歩き出す。
何かフラフラしてる……顔も赤いし。
絶対、唯さんは治ってない。
唯さんはギー太を持とうとするが、風邪で力が入らなくて、重さに負けて倒れてしまった。

215: 2011/03/28(月) 17:13:50.65 ID:T0p6Q1FDO
唯さんの熱を計ると、全然下がっていなかった。
何やってんだよ唯さん……

唯「えへへ……やっぱダメだね……本番は私抜きでやってよ……」

……は?
一体何を言っているんだ唯さんは。
そんなの……

梓「イヤです」

唯「……え?」

梓「イヤです! 私達は6人揃って放課後ティータイムなんです! 誰かが欠けるのは、絶対イヤです!」

梓さん……
これがあの梓さんなのか、この時代の梓さんなのかは分からない。
でも、どちらにしよ放課後ティータイムを想っているからこそ言えるんだ。

216: 2011/03/28(月) 17:21:36.90 ID:T0p6Q1FDO
澪姉の提案で、唯さんはギリギリまで風邪を治すことに、俺達は練習をすることになった。


家に帰ると姉ちゃんから、唯の奴、大丈夫かなぁと言われた。

大丈夫だと思う。

俺はそう答えた。

唯さんは1つのことに集中すればめざましい成果を挙げる。
きっと唯さんは風邪を治すことに集中して、風邪なんてすぐに治してしまうだろう。
まぁ、どうなるかを知っているから言えることだけど。





しかし、学園祭の前日も、唯さんは来なかった━━━━

221: 2011/03/29(火) 07:10:31.72 ID:s+ikqkrDO
学園祭当日。
俺と梓さんは窓の外を見ているが、唯さんが来る気配は無い。
ムギさんによると、絶対間に合わせるってメールは来てるらしい。

姉ちゃんが、唯さん抜きの演奏もおさらいしておくかと言ってきた。

澪「仕方ないな」

梓「イヤです」

梓さん……

梓「やっぱりイヤです! 皆が揃わないまま演奏しても意味無いです!」

その言葉……どういう意味なのか。
ただそう思ってるだけなのか。
それとも、既に見たことのある、放課後ティータイムの悲しい未来を思い出したからなのか。


ガチャ。

222: 2011/03/29(火) 07:12:53.30 ID:s+ikqkrDO
ドアが開く。

そこには━━━━
















和「どうしたの?」

和さんが立っていた。

和さん、空気読んでくださいよ……

223: 2011/03/29(火) 07:29:16.71 ID:s+ikqkrDO
和さんは、ライブの時間等をおさらいしたあと、全員揃ってるか聞いてきた。
これまたストレートな……

和「軽音部、出演者全員準備完了、と」

……え?

澪「和……」

和さん……意外と優しいところもあるんだなぁ……


和さんは昔話を始めた。

昔、唯さんはザリガニを捕まえるのに夢中になって、バケツがいっぱいになるまでザリガニを捕まえたらしい。
しかし、今度はもっとザリガニを沢山入れられる場所、和さんの家の湯船の中に、唯さんは湯船がいっぱいになるまでザリガニを捕まえた。

湯船の中にうねうねと動く赤いザリガニの集団……

……やべえ。
想像したら吐き気がしてきた。

……しかし、良く友達を続けてこれたなぁ和さんも。
まぁ、唯さんのことを良く理解してるからこそ、か。

……で?
それが何かしたのだろうか?

和「唯は夢中なことがあると、それだけしか見えなくなるってこと。きっと、風邪のことなんか忘れちゃうわ。だから━━━━

ガチャ。

ドアが開く。

そこには、

さわ子「チョリーっす」

律「空気読め!」

姉ちゃんの言う通りだ。
せっかく良い雰囲気だったのに……

225: 2011/03/29(火) 15:07:36.99 ID:s+ikqkrDO
てか先生……今まで何やってたんですか貴女は……
姉ちゃんが問い詰めると、先生は何もしてなかった訳では無いらしい。
何と、この前の衣装の防寒バージョンを作ってたらしい。


……いやいや。
そのやる気を他に回せよ……
そう思った時だった。

さわ子「そしてこれが、その衣装です!」

先生がそう言うと、後ろから唯さんが現れる。
てか治ってたんですか唯さん。

226: 2011/03/29(火) 16:21:51.14 ID:s+ikqkrDO
唯さんが来たことで、全員の準備が整った。
後は……

唯「あれ? ギー太は? ここに置いてったよね?」

……え。

まさか……忘れた、と?
姉ちゃんによると、憂さんが持って帰ったらしい。
結局、こうなるのか……


とりあえず、唯さんは急いで取りに戻った。
仕方ない、ここはさわ子先生に━━━━


その瞬間、





梓さんが倒れた。

227: 2011/03/29(火) 16:31:09.83 ID:s+ikqkrDO
突然のことに皆驚いていたが、梓さんはすぐに起き上がった。
大丈夫かな……?

梓「聡美先輩、話があります」

聡美「あ、うん……」

一体何の話だろうか。





梓さんについていくと、校舎の端の空き教室まで来てしまった。

梓「聡美先輩……いや、聡くん」

……!

そういう話、なのか。

しばらくの間沈黙が続く。


梓さんは、口を開いた。





梓「今日……唯先輩が……!」

まさか……!





梓「氏んじゃうかもしれない……!」

俺はその言葉を聞くと、一目散に唯さんのもとに向かった━━━━

228: 2011/03/29(火) 16:40:46.00 ID:s+ikqkrDO
唯さんのもとへ走る。
ちょうど平沢家の近くで、唯さんに会った。

唯「あれ? どうしたの? 聡美ちゃん」

唯さんが氏んじゃうかもしれないから、なんて絶対言えない。
とりあえず、適当に誤魔化すことにした。

聡美「あまりにも遅いので、迎えに来ました」

唯「失礼な! これでも全力で走ったんだよ!?」

聡美「まぁ良いです。早く行きましょう!」

唯さんの手を掴み、走り出す。
唯さんもなんとか体制を崩さずについてきた。
まるであの頃に戻ったかのように、俺達は走り出した。

229: 2011/03/29(火) 16:55:52.93 ID:s+ikqkrDO
普通、手を繋ぎながら走ると遅くなるが、俺達の場合、何故か速くなった。
何か不思議だな……


ちょうどT字路に差し掛かった時、横からクラクション音が聞こえた。
それと同時に、急ブレーキ音。
俺達は足を止めずに走った。





ドーン!!!!





トラックは、壁に激突した。
ギリギリで、唯さんの氏を阻止出来た。


まぁ多分今、俺の左足の靭帯は断裂してると思うけど。


……無茶苦茶痛い。

唯さんは、腰が抜けてしまったようだ。

どうしよう。
こうなったら諸刃の剣だ。
痛いのは我慢するしかない。

聡美「唯さん、乗ってください」

そう言って俺は背中を指す。

唯「えっ……い、良いの?」

聡美「はい。このまま行けば、何とか間に合います」

唯「で、でも……」

聡美「ほら、乗ってください」

唯「う、うん……」

唯さんが俺の背中に乗る。
唯さんの胸が当たる。
うん、小さいけど形は良いな。
これなら頑張れそうな気がする。

俺は足の痛みを我慢し、桜高へと向かった━━━━

230: 2011/03/29(火) 17:07:23.17 ID:s+ikqkrDO
桜高の校門をくぐる。

唯「聡美ちゃん、多分もう大丈夫」

唯さんがそう言うので、俺は足を止め、唯さんを降ろした。


その瞬間、





ズキイィィン。


聡美「痛ええぇぇ!?」

足に激痛が走る。

唯「聡美ちゃん!?」

火事場の馬鹿力ってやつだったのだろうか。
痛いどころの騒ぎじゃ無い。

唯「……じゃあ今度は、私の番だね!」

唯さんはそう言うと、俺にギー太を背負わせ、俺を背負った。

唯「おっ、聡美ちゃん軽いねぇ~! よーし!」

俺と唯さんは講堂に向かった━━━━

231: 2011/03/29(火) 17:21:56.83 ID:s+ikqkrDO
講堂に入ると、ちょうど『ふでぺン~ボールペン~』が終わったところだった。
ステージを見ると、俺と唯さんの代わりに、憂さんとさわ子先生が立っていた。
講堂の扉の近くにいた純さんは、俺達を見て驚いていたが、構わずに俺達はステージへと向かった。

ステージの前に立つと、梓さんは胸を撫で下ろした。
ステージへとのぼる。
俺と憂さん、唯さんとさわ子先生がそれぞれ交代する。
俺は床に足をつく。
……痛い。
でも、そんなこと言ってられない。


しばらくたって、唯さんのMCが始まる。

唯「今はこの講堂が、私達の武道館です!」

……良いセンスしてるな、唯さん。
会場が盛り上がる。

唯「最後までおもいっきり歌います!」

唯さんは深呼吸をする。

唯「ふわふわ時間!」

曲が始まった。

232: 2011/03/29(火) 17:30:25.13 ID:s+ikqkrDO
曲が終わる。
唯さんは皆とアイコンタクトをとる。


ムギさんがふわふわ時間を弾き始める。
皆一瞬驚いていたが、すぐさま姉ちゃんがドラムを叩き始めた。
次に澪姉が、その次に梓さんが弾き始めた。

俺と唯さんは顔を合わせた後、2人同時に弾き始める。

唯「もう1回!」

俺達は、もう一度曲を演奏した━━━━

233: 2011/03/29(火) 17:35:51.22 ID:s+ikqkrDO
曲が終わる。

唯「けいおん、大好き~!」

会場が盛り上がる。

唯「りっちゃん、もう1曲!」

律「おっしゃ~!」

さすが姉ちゃん。
ノリが良い。

和「もう時間切れよ!」

……えぇ~……
せっかく盛り上がったのに……

まぁ、決まりは決まりなので、大人しく俺達は講堂を去った━━━━

237: 2011/03/29(火) 20:17:50.90 ID:s+ikqkrDO
学園祭が終わり、帰りに通った医院でも、聡美は今日の起こったことについて考えていた。

何故唯さんに急に氏のタイミングが訪れたのか。
普通なら、もっと前に分かるはず。
だけど今回は、直前にあっちの梓さんから知らされた。


……何故だ?


もしかして、刻を越えた人間が増えたから、あちこちで少しずつ歴史が変わり、今回の出来事に発展したのではないか。


……今考えても仕方ないか。
とりあえず今は、すぐそばに迫ってきている姉ちゃんの氏を阻止する事を考えよう。


ちなみに、診断の結果、靭帯に異常はあまりなかったみたいでした。
多分、全治3日位だろう。

238: 2011/03/29(火) 20:45:28.31 ID:s+ikqkrDO
姉ちゃんから相談された。
何か、ラブレターらしきものを貰ったとか。
まぁ、それがラブレターではないと言うことはもう分かっているのだが。
ってか、普通ラブレターはワープロなんか使わない。
大抵の場合手書きだ。
姉ちゃんは、それをこの時代の俺からだと勘違いしてるみたいだけど……
確かに昔、前髪おろしてみてよと言った記憶はあるが……
つーか、もう見たことあるし。
前髪おろした姉ちゃんは、かなり可愛い。

……このまま放置しておいた方が何か面白そうだし、俺はまだ保留した方が良いと答えておいた。

239: 2011/03/29(火) 21:06:44.54 ID:s+ikqkrDO
とりあえず、部室に来たのだが……

一同「……」

……何だよこの空気。

確かに、寒いから喋りづらいですけど。
てか姉ちゃん、そんな寒そうな格好で良く平気だな……


しばらくすると、唯さんが入ってきた。

唯「さ~む~い~ね~……」

にも関わらず貴女は喋るんですね。

唯さんは、姉ちゃんをじっと見つめる。
姉ちゃんの顔に何か付いているのだろうか。
唯さんが手を伸ばす。
そして……


ピトッ。


律「ぎゃあーー!?」

うわぁ……冷たそうだな……

姉ちゃんは唯さんに仕返しする。
……何か俺もやりたくなってきた。

姉ちゃんの首筋に冷えた手をくっつける。

律「ひゃあっ!?」

……え?

ひゃあっ!?……だと?

唯「おおう!? りっちゃん何かせくちーだね!」

せくちー?

……何語?

律「な、何すんだ聡美ー! お返しだコノヤロー!」

そう言うと姉ちゃんは俺の首筋に手をくっつける。

ゾワワッ。

聡美「ひっ!?」

何だよ今の。
ゾワワッてきたぞ……
何か怖えな……

240: 2011/03/29(火) 21:12:32.14 ID:s+ikqkrDO
しばらくそうやってじゃれあった後、練習をしようということになった。

まぁ、いくら俺でも寒さには勝てない。
手がかじかんでギターが弾けない。
仕方ないので、ある程度暖めてから弾くことにした。

唯さんは、手袋はめて弾けば良いとか言ってたが、まずムリだろう。

結果は案の定、見損なった!……らしい。

241: 2011/03/29(火) 21:32:43.50 ID:s+ikqkrDO
澪姉が姉ちゃんを呼ぶが、反応は無い。
おそらく、あのことで悩んでるんだと思うけど。
姉ちゃんは気がつく。
頬が赤い。
やっぱりアレか……

唯「あっ! ブークロちゃん……怒ってごめんねぇ……」

唯さんは急に切り替える。
ある意味凄い。
てか、名前あるのか……もう慣れてるけどさ。

梓「また名前付けてるんですか……」

……あれ?
今梓さんどこから出てきました?
明らかにいませんでしたよね?
まぁ何も喋らないから気づかれてなかっただけか。

唯「みんな、冬がいけないんだよ」

いやいや。
冬のせいにしてもしょうがないだろ……

梓さんも、俺と同じことを言った。
唯さんも納得したみたい。

唯「そうだ! 日曜日、家で鍋しようよ鍋!」

一同「う~ん……」

唯さん……行きたい気持ちはやまやまなんですけど……

その日は……

律「ゴメン。その日は、聡美や聡と映画観に行くんだよな~……」

唯「えぇ~? 良いなぁ聡美ちゃん」

良いなぁと言われても……

姉ちゃんが氏んでしまうかもしれないのに……

他の皆も、それぞれ用事があるみたいだった。

244: 2011/03/30(水) 00:03:56.63 ID:s65t2ocDO
皆で下校していると、ムギさんは用事があるらしいので途中で別れることになった。
まぁ……MAXバーガーの真ん前だし、多分ムギさんの用事というのはアルバイトだろう。
梓さんが、彼氏と待ち合わせかもとか言ったのに、姉ちゃんは過剰反応した。
全く姉ちゃんは分かりやすいんだから……


次の日。
俺は姉ちゃんの代わりに朝新聞をとった。
それにしても寒いな……
玄関の戸を閉めると、ちょうど姉ちゃんが来た。

律「あっ、聡美……ありがと」

聡美「どういたしまして」

律「あ、そうそう。新聞の他に、何か無かった?」

あぁー……まだ気にしてるんだな……
意外と姉ちゃん乙女だからなぁ……

とりあえず、何も無かったので、そう言っておいた。

245: 2011/03/30(水) 00:17:37.21 ID:s65t2ocDO
さて……今日は俺と姉ちゃんとこの時代の俺との3人で映画を観に行く日だ。
同時に、姉ちゃんの氏のタイミングが再び訪れる日。
防寒を少し犠牲にし、できるだけ動きやすい服装で行くことにした。

……姉ちゃん遅いな……生理か?

聡「姉ちゃん、まだ~?」

……俺って、意外と子供だったんだな……

律「すぐ行くってばー!」

ホント、デリカシー無かったんだな……俺って。

俺達3人は、映画館に向かった━━━━

246: 2011/03/30(水) 00:23:01.77 ID:s65t2ocDO
映画館に着いて、この時代の俺が観たいという映画のパンフレットを買い、前売り券で館内へ入場した。

……そういやこれ、1回観たなぁ……


……寝るか。


映画が始まり、暗い時に、俺は耳栓をして、目を閉じた。

それと同時に、睡魔が俺を襲ってきた━━━━

247: 2011/03/30(水) 00:40:31.09 ID:s65t2ocDO
新庄「今から鈴木ん家行かね?」

聡「おっ、行く行く! 良いよね、姉ちゃん、聡美さん」

律「あんまり遅くなるなよー?」

聡美「気をつけてね」

この時代の俺と新庄は顔を合わせてから、鈴木ん家に向かって走っていった。

律「アイツ、あんなに急いで大丈夫かな……?」

聡美「もう中学生なんだし、バカなことはしないと思うよ?」

律「そうだよなー……!?」

姉ちゃんの表情がこわばる。
その視線の先には……バイク!?

律「……っ!」

姉ちゃんは走り出す。
ダメだ、姉ちゃん……
そんなことしたら……!

俺も姉ちゃんを追いかけるが、間に合わない……!

この時代の俺と新庄を向こう側の歩道に押して、姉ちゃんは倒れる。

次の瞬間、


ガン!

姉ちゃんの身体がマネキンの如く飛ばされる。
しかも、このバイクの運転手はひき逃げを狙ったらしく、10メートルほど飛ばされて地面に激突した姉ちゃんをズルズルと引きずる。

そのバイクの運転手は、いつまでも引きずってしまう姉ちゃんにイラついたのか、一度バイクを止め、血まみれになった姉ちゃんに蹴りをかましてバイクからはがした後、再びバイクを発進させ、逃亡した。

俺達の目の前には、血まみれになった姉ちゃんと、引きずられたことを意味する血の跡が、非常に痛々しく見えていた━━━━

248: 2011/03/30(水) 00:50:49.16 ID:s65t2ocDO
ふと気がつくと、そこは映画館の中。
どうやら、俺は夢を見ていたようだ。
……しかも、かなり残酷な。

絶対に、夢の通りにさせてはならない。

そう、心に誓った。

どうやら、映画は既にクライマックスのシーンだったようで、もうすぐで終わりそうな雰囲気だった。


映画が終わり、館内が明るくなる。
この照明が、苦手なんだよなぁ……

この時代の俺が、無邪気に面白かったと言うもんだから、俺は思わず苦笑いしてしまった。
姉ちゃんも俺と同様、苦笑いしていた。

俺達は、映画館を出た━━━━

254: 2011/03/30(水) 17:15:25.17 ID:s65t2ocDO
映画館から出てしばらく歩くと、新庄がやって来た。

新庄「今から鈴木ん家行かね?」

聡「おっ、行く行く! 良いよね、姉ちゃん、聡美さん」

律「あんまり遅くなるなよー?」

聡美「気をつけてね」

この時代の俺と新庄は顔を合わせてから、鈴木ん家に向かって走っていった。

聡美「あっ! あれ言うの忘れてた! 聡く~ん! 姉ちゃんは、この店の中で待ってて!」

俺はそう言うと、鈴木んちに向かった。
念のため後ろを見る。
姉ちゃんはきちんとあの店の中で待っててくれるようだ。

俺はこの時代の俺と新庄を、向こう側の歩道に押す。
そして、バイクの軌道から少しずれて倒れる。
バイクが来る。





バキィ!!!





聡美「がっ……!?」

俺の右足の骨が、砕けた。

バイクは、何事も無かったかのように逃亡する。
俺はバイクの運転手に、殺意さえ覚えた。

255: 2011/03/30(水) 17:27:44.01 ID:s65t2ocDO
顔をこわばらせたこの時代の俺と新庄は、腰が抜けていた。
そりゃそうだ。
なんせ、事故というものを目の前でみてしまったこと、目の前の人の右足からかなり血が出ていること、さらには目の前の人が助けてくれなかったら自分達がこうなっていたのではないかという恐怖感もあるからだ。
しばらくたって、この時代の俺が俺のそばに来て、新庄が救急車を読んでくれた。
まわりがどんどん騒がしくなってくる。
その異変に気づいたのか、姉ちゃんはあの店から出てくる。
姉ちゃんはその状況に気づくと、俺に駆け寄ってきた。

律「何やってんだよ聡美!」

姉ちゃんが涙を流しながら言う。

聡「姉ちゃん……聡美さんは、俺達を助けてくれたんだよ……」

この時代の俺は、俺に申し訳なさそうに言う。

……ダメだ……意識がもうろうとしてきた……


俺の意識は、そこで途切れた。

256: 2011/03/30(水) 17:43:09.05 ID:s65t2ocDO
目を覚ますと、俺は白い部屋にいた。
白いベッド、白い天井、白い壁。
そこがどこであるのか、俺は一瞬で理解した。
俺は今、病室のベッドの上にいる。

ガラッ。

病室の扉が開く。
扉のほうを見ると、姉ちゃんが立っていた。
姉ちゃんは俺が目を覚ましたことに気づくと、滅茶苦茶な勢いで抱きついてきた。

聡美「い、痛い痛い! ちょ、姉ちゃん! 俺一応病人だから!」

……あ。
素が出てしまった。
女の子が急に俺とか言ったら不自然だろ……

でも、姉ちゃんは気づいてないみたい。
まぁ、姉ちゃんは昔から大雑把だから、小さいことは気にしないから気づかなかったのかな……

姉ちゃんの話によると、全治3ヶ月らしい。
骨が砕けた割には短いな……
そう思った。

262: 2011/03/30(水) 19:08:28.14 ID:s65t2ocDO
 俺達は、とうとう三年生になった。
 三年生と言えば、受験や修学旅行など、いろいろと行事が沢山ある。
 高校生活最後の一年間、大切に過ごそう。
 でも……それと同時に、俺がこの時代に来た目的も、ちゃんと果たさないといけない。
 そう……姉ちゃんの氏を阻止するために。

264: 2011/03/30(水) 19:57:35.22 ID:s65t2ocDO
 始業式の日。
 俺と姉ちゃんと澪姉が一緒に登校していると、遠くに梓さんを見つけた。
 姉ちゃんも見つけたらしく、梓さんのもとへ走っていった。
 すぐに俺達も姉ちゃんのあとを追いかける。
 姉ちゃんが梓さんとじゃれあってると、後方からムギさんがやって来た。
 てかムギさんはあんなにでかいキーボードを持ってくるのか……重そうだな……
 まぁ、ムギさんが怪力なのは知ってるから、ムギさんにとってはたやすいことだと思うけど。

265: 2011/03/30(水) 20:05:19.97 ID:s65t2ocDO
 部室への階段の前に着くと、部室の方からギターの音がする。
 唯さんが……朝練している、だと……!?
 まぁ、目覚まし時計の設定を間違えただけだと思うけど。

 階段をのぼり、部室の扉を開ける。
 すると、唯さんがウィンドミル奏法をしていた。
 格好いいなぁ……まぁ、俺でも出来るけど、速弾きの方が個人的には格好いいと思うので、あんまりやらないけど。
 姉ちゃんは、そんな唯さんを見て、少々呆れた様子だった。

266: 2011/03/30(水) 20:12:01.70 ID:s65t2ocDO
唯「あずにゃ~ん♪」

 唯さんは梓さんに抱きつく。
 この人の抱きつき癖はいつになっても変わらないんだなぁ……
 梓さんは口では否定していたが、相当嬉しそうだった。

 これがツンデレってやつか……

 姉ちゃんが梓さんの胸を見ながら、梓さんをからかう。
 確かに、梓さんはあまり成長してないように見えるけど……

 姉ちゃんが、珍しく朝練を提案した。
 皆がそれに賛成し、俺達は朝練を開始した――

267: 2011/03/30(水) 20:18:45.38 ID:s65t2ocDO
 朝練の後、階段をおりていると、唯さんは浮かれていた。
 なんでも、三年生は一番上の学年だから、何か格好いいとのこと。
 三年生は何をしたら良いのかなとか言ってたが、受験とかいろいろとあるだろ……
 姉ちゃんが、目覚まし時計をちゃんとセット出来るようになろうな、と突っ込みを入れた。
 唯さんは、何故か分け目を逆にして、三年生っぽい?と聞いてきた。
 いやいやいや……分け目変えてもただ違和感あるだけだから……と、突っ込みたくなった。 やっぱり、田井中家には突っ込みの遺伝子があるのかな……

268: 2011/03/30(水) 20:27:30.93 ID:s65t2ocDO
 クラス分け発表。
 自慢では無いが、俺は目が良いので、遠くからでも名前が見える。
 なんと、俺達軽音部三年生の五人は、皆全員同じクラスでした。
 とりあえず、去年の二の舞にならなくて良かった。
 唯さんは、一生懸命ジャンプして見ようとしていた。
 前から思ってたんだが、唯さんを見てると何かホッとするなぁ……
 姉ちゃんが、見えたフリをしていたが、俺にはバレバレである。
 唯さんが、隙間を進もうとしていたが、無駄なことは嫌いなので結果を皆に教えた。
 それを聞いた皆は、かなり嬉しそうだった。
 実際、俺もかなり嬉しい。

 ちなみに、和さんも一緒のクラスでした。

269: 2011/03/30(水) 20:40:07.50 ID:s65t2ocDO
 このクラス分け、どうやらさわ子先生が仕組んだみたいだった。
 進路とかも考えないといけないと知ったとき、皆ため息をついた。
 そりゃそうか。

 始業式が始まり、校歌斉唱。
 てか、桜高の校歌って何だか好きになれないな……
 何でだろう?

 始業式が終わり、部室。
 早速だらだらし始めたよ……唯さんは。
 口では良いことを言ってたが、格好がダメだな……
 姉ちゃんが、梓さんに部長になれるとかなんとか言ったら、梓さんは少し考えた後、焦って誤魔化した。

270: 2011/03/30(水) 20:50:39.09 ID:s65t2ocDO
 早速俺達は、外でビラ配りを始めた。

 ていうか……

聡美「何で私だけ普通の格好なんですか? 目立ちますよ……」

律「良いじゃん良いじゃん、全員着ぐるみよりはマシだって」

 だったら、全員普通の格好でした方が絶対良いだろ……
 さわ子先生によって、姉ちゃん達の感覚が少しずつずれてきてる……

 ビラ配りしても、誰も来ない。
 当たり前だ。
 今頃、ただの変人の集まりだと思われてるに違いない。

 そんな中、姉ちゃん提案の部員獲得大作戦を実行した――





 まぁ、姉ちゃんが考える作戦はいつも詰めが甘いからほとんど失敗するんだけどね。





そして案の定、姉ちゃんが考えた作戦は見事に全部失敗した――

271: 2011/03/30(水) 21:08:28.46 ID:s65t2ocDO
 次の日。
 俺達は新歓ライブをやった。
 多分、今までのライブの中で一番成功したんじゃないかと思う。
 ラストの唯さんのウィンドミル奏法+俺の超絶速弾きによって、会場の盛り上がりは半端じゃ無かったからだ。
 新入生歓迎会なのに、アンコールが出るほどだった。

 しかし、誰も入部希望は来ませんでした。
 何故かは、大体想像つくけどね。

 唯さんが、やっぱりこのままのメンバーでも良いかな、と言った。
 この人って、何でこういう時は良いこと言うんだろうね。
 全く不思議だなぁ……

 梓さんも、唯さんの言葉に心を打たれたらしく、同意した。





 でもやっぱり、そのまま良い空気のまま終わるはずはなく、梓さんの厳しい対応によって、唯さんは簡単に意見を変えてしまった。

 全く、この人は凄いのか凄くないのか良く分からない人だな……

 でも、こういうグダグダな空気も、俺達の軽音部って感じがするなぁ……

 俺はつくづくそう思った――

277: 2011/03/31(木) 21:16:55.05 ID:1n3USsuDO
 ある日の放課後。
 やっとHRが終わり、準備も出来て、早く部室に行こう的な空気の教室。
 でも、唯さんが昼休みからずっと寝ていて、部室に行けないという有り様。
 とりあえず、唯さんを起こそうということになった。
 ケーキという言葉で誘っても、唯さんは本物が無いとダメなようで。
 仕方ないので、俺はあの言葉を使うことにした。

聡美「……アクター」

唯「……っ!?」

 唯さんはその言葉を聞くと、ガバッと起き上がる。

唯「……」

 唯さんは俺を睨んでくる。
 すいませんってば。
 もうこんなどうでも良い時には呼びませんから。

 唯さんは、また机に倒れて、寝てしまった。

 はぁ……めんどくさい人だな……

278: 2011/03/31(木) 21:26:18.10 ID:1n3USsuDO
 唯さんの睡魔という名の強敵に苦戦している中、今度はさわ子先生がやって来た。
 なんでも、勧誘の時に使った着ぐるみを返してほしいとのこと。
 姉ちゃんは思い出す。
 あの着ぐるみは、物置に入れたということを。
 唯さんからは起きる気配がしないので、とりあえず唯さんは置いといて、俺達は部室の奥にある物置へと向かった。


 物置に入る。
 うわぁ……どうやったらこんなにものがいっぱいになるんだよ……
 姉ちゃんは着ぐるみを取り出す。
 高く積み上げられた物が崩れてくる。

聡美「姉ちゃん、危ないっ!」

俺は姉ちゃんと入れ替わるように姉ちゃんを助け、沢山の物の下敷きになった――

279: 2011/03/31(木) 21:38:39.03 ID:1n3USsuDO
 ――というわけで、俺達は大掃除をすることになった。
 畜生身体のあちこちが痛い。
 大掃除と聞いた瞬間、姉ちゃん達は練習の準備をし始めた。
 そこまでしてやりたくないのかよ……

唯・律「「三度の飯より掃除が嫌いだー!」」

 いやいやいや。
 それ何か使い方違うと思う。

 てか、だったら貴女達は自分の部屋の掃除も嫌いなのかよ……

 まぁ、それとこれは話が違うか。

 姉ちゃんは、ここの掃除は音楽室の掃除当番がやるんじゃないのかと言っていたが、そもそも部室なんだから掃除くらい普通するだろ……
 しかも、私物ばっか出てくるし。
 本当に俺達は軽音部なのか、疑いたくなったよ……

280: 2011/03/31(木) 21:56:04.69 ID:1n3USsuDO
 なんとか姉ちゃん達もやる気が出たようで、俺達は大掃除をスタートした。


 しかし、本当に物多いな……
 しかも、変なぬいぐるみも出てくるし。
 多分この独特のセンスは唯さんだと思うけど、俺はあえて触れないことにした。
 あの変なぬいぐるみ、九割は唯さんのものだったが、意外なことに澪姉のもあった。

 ……いやぁ、やっぱり独特だなぁいろいろと。

 ムギさんは食器棚を掃除していた。
 うわぁ……なんとも高そうな食器だな……
 いや、99%高いだろう。

 唯さんが、ムギさんに食器の値段を聞く。
 ムギさんによると、値段は分からないが、ベルギー王室で使われていたのと同じだとか。
 その結果を聞いた唯さんは、思わず力を緩めてしまった。

 食器が床に落ちる。

 俺と姉ちゃんがそれをキャッチしようとして、互いに頭をぶつけたことを皆に笑われてしまった。

 ……結構恥ずかしいんだな、これ。

281: 2011/03/31(木) 22:08:43.91 ID:1n3USsuDO
 だいぶ片付いた。
 でもまだあるので、休憩がてらにティータイムをしていると、唯さんがなかなかよさげなものが入ってそうなケースを持ってきた。

 何が入ってるんだろうと思って開けてみると、ギターが入っていた。
 多分、さわ子先生のギターだろう。


 しばらくすると先生が来て、ギターを受け取った。





 ……顔に出てますよ、先生。
 どうせ、カビ臭いとか思ったのでしょうけれど。

 先生は、このギターを売って部費の足しにしなさいと言った。
 まぁ、このギターが五十万円で売れることはもう知ってるけどね。

284: 2011/04/02(土) 00:12:50.07 ID:eKn2/11DO
 とりあえず、ギターを楽器店まで持っていかないとダメなんだが……
 正直このギター、カビ臭い。
 さすがに姉ちゃん達も嫌なようなので、じゃんけんで持つ人を決めることになった。
 まぁ、負けた人がずっと持つというのはあまりにも鬼畜なので、時間を決めて持つことになった。


 ちなみに、俺はもう姉ちゃん達が出すのはもう大体予測出来るので、負けることは無かった。
 まぁ、田井中家は元々駆け引きが強いんだけどね。
 そのお陰か、姉ちゃんも無敗だった。

 あと豆知識。
 姉ちゃん達がじゃんけんする前にやるアレは、逆に負ける可能性が高くなるらしいです。

285: 2011/04/02(土) 00:20:14.39 ID:eKn2/11DO
 姉ちゃん達がアレをしたとき、

梓「子供みたいですね」

律「私は子供だ!」

梓「大人になりましょうよ……」

 俺はこのやり取りを聞いた時、涙が出そうになった。
 姉ちゃんは、大人になれなかった。
 そう、その事を、再び思い出されたのだ。
 俺は涙が出るのを必氏にこらえた。

286: 2011/04/02(土) 00:39:28.39 ID:eKn2/11DO
 澪姉が、部室に棚が欲しいな、と言ってきた。
 まっとうな判断だと俺は思った。
 価格もサンキュッパだし……部費的にもぴったりだ。
 というわけで、ホームセンターに行くことになった。





 ホームセンターに着くと、ムギさんが急に興奮し始めた。
 なんでも、ホームセンターに来るのは初めてらしい。
 ホームセンターとも縁が無いなんて……本当に凄いお嬢様なんだなぁ……


 俺は姉ちゃんや澪姉と行動することにした。
 さて、早速買いますか……と思ったのだが、澪姉はさわ子先生に棚を置いて良いのか許可をとらないとと言った。
 まぁ、確かにそうだなと思い、電話をかけようとするが……

唯「ちょっとちょっと!」

 どうも唯さんが騒いでるみたい。
 子供ですか貴女は……
 まぁ、店の中で騒がれると他の客にも迷惑だと思うので、とりあえず唯さんのもとへ行くことにした。


 唯さんのもとへ行く途中で、姉ちゃんはライト付きのヘルメットを被った。
 何がしたいのかは丸わかりなのだが、とりあえず無視した方が面白いだろうと思い、無視することにした。

287: 2011/04/02(土) 00:45:47.71 ID:eKn2/11DO
 唯さんは電動ネジ回しで遊んでいた。
 ……物凄くうるさい。
 てか唯さん、絶対音感持ってるのにそんな音聞いて大丈夫なのかな……
 その後姉ちゃんは、澪姉に向けてライトを点けた。
 うっわ眩しそう。
 澪姉は無理矢理ヘルメットをとろうとした。
 おいおい……まずは紐をはずせよ……

291: 2011/04/03(日) 20:27:53.13 ID:yNHzCwODO
 しばらくして、澪姉がさわ子先生に部室に置いていいか許可をとった。
 姉ちゃんが、部長らしいことをしているだと……!?
 姉ちゃんは、やるべきことだけはちゃんとやるからなぁ……
 そんなことを考えていると、ムギさんがやって来た。
 なんか凄い量だな……ムギさんって意外と天然なのかな?

292: 2011/04/03(日) 20:40:28.40 ID:yNHzCwODO
 ホームセンターを出て、今度は楽器店に向かう。
 さて……またじゃんけんをしたのだが、今度は姉ちゃんが負けた。
 田井中家はじゃんけんとか強いはずだが……まぁ、たまたまだろう。





 楽器店に着いた。
 まさか、姉ちゃんが四連敗するとは……世の中不思議なこともあるみたいだな……
 この世界には、運というものは存在せず、必ず何かの理屈や法則で物事が決まるはずなのだが……
 まぁ、そんなことはさておき、早速楽器店に査定してもらおう。
 店員に例のギターを渡す。
 査定が始まったので、俺達は店内を見回ることにした。

293: 2011/04/03(日) 22:27:18.96 ID:yNHzCwODO
 澪姉と梓さんが別行動して、俺達は面白そうなものを探すことになった。
 最初はマラカスにはまっていたが、すぐに飽きた。
 次に、唯さんがカスタネットを見つけて、生うんたんを見せてくれた。
 やっぱりネットで聞くのと生は全然違うな……まさに百聞は一見にしかず、だな。
 そんな風に店内で遊んでいると、査定が終わったらしく、カウンターから声がした。
 査定の結果、五十万円にもなった。
 店員の話はさすがの俺でもついていくのがやっとだったが、とにかくこのギターはかなり貴重なギターらしい。
 てかさわ子先生、ある意味凄いですね……なんでこんなもの持ってるんですか……
 まぁ、さすがに受け取らないわけにもいかないので、代金を受け取り、楽器店をあとにした――

294: 2011/04/03(日) 22:46:06.80 ID:yNHzCwODO
唯「は~む」

律「肉厚っ」

唯「? スペシャルバーガーだよ?」

律「バーガーの話じゃねぇ!」

 さすが姉ちゃん、良いツッコミ。
 まぁ、今のはタイミングが悪かっただけだけど。

澪「つーか、ポテト多くないか?」

 いや、普通だと思いますけど……てか、なんで皆がその量で満足出来るのか分からない。

梓「良いんですかね……皆でもらっちゃって」

律「仕方ないだろ? さわちゃんが部費にしろって言ったんだから」

 いやいやいや……部費にしろとは言われたが、お小遣いにしろとは言われてないだろ……

 梓さんが戸惑っていると、姉ちゃんが梓さんに八万円をつきだす。
 てか姉ちゃん……この構図だと、俺達皆が援交してその金を山分けしてるように見えるじゃないか……
 評判落ちたらどうすんだよ……

 澪姉もその辺は分かっていたようで、姉ちゃんに注意するが、結局欲望に負けてしまった。
 はぁ……なんでだろう。
 姉ちゃん達が物凄く不気味に見えてくる。
 あの唯さんでさえ、欲望に負け、不気味な笑みを浮かべていた。
 この時、理性が残っているのは俺とムギさんだけだった。

295: 2011/04/03(日) 23:05:45.99 ID:yNHzCwODO
 次の日。
 放課後、棚が届いた。
 棚があることで、あれだけごちゃごちゃしていた物置が、先日とは比べ物にならないくらい綺麗になった。





でも……





 タンスからケロタン?がはみ出ていた。
 おそらく唯さんのだろう。唯さんの方を見ると……

唯「……」

 ゆっくり忍者のようになんとか必氏に逃れようとしている。

 いやバレバレですから。

 その後、澪姉と梓さんが問い詰めるが、唯さんは今回、言い訳が通じたようなので、姉ちゃんが置いて良いぞと許可を出した。
 でもそんな姉ちゃんは、棚にマンガ本を並べていた。
 何やってんだよ姉ちゃん……凄くさりげないな……普通の人なら見逃してしまいそうだ。
 澪姉がいつも通り姉ちゃんにツッコミをいれる。

律「きゃはっ☆」

 か、可愛すぎる……一瞬、萌え氏ぬかと思ったよ……

さわ子「ヤッホー」

一同「ひゃわああぁぁ!?」

 やべえ……心臓が止まるかと思ったよ……
 何でさわ子先生はいつも空気読めないんだろ……?

296: 2011/04/03(日) 23:42:14.02 ID:yNHzCwODO
 さわ子先生は棚を見て、良い感じじゃないと言った。
 姉ちゃんがこの場を離れようとしている。
 しかし、澪姉によってさわ子先生の前にやられた。
 てか澪姉力凄いな……人間ってそんなに回るもんなのか?
 姉ちゃんはさわ子先生に対し、かなりわざとらしく振る舞った。

さわ子「それで? 昨日、どうだった?」

 華麗にスルー。

 また姉ちゃんはわざとらしく振る舞う。
 だんだん、俺とムギさん以外が毒されてきた。
 さわ子先生にいくらで売れたのと聞かれた時、姉ちゃんはかなり欲張って一万円と言ってしまった。
 昔っからこうだからな姉ちゃんは……

さわ子「じゃ、買い取り証明書ちょうだい」

律「はひっ!?」

 姉ちゃん……抜けすぎだろ……

300: 2011/04/04(月) 21:26:33.98 ID:Aeed+tADO
 姉ちゃんが買い取り証明書を出す。
 どんだけ手震えてんだよ……





律「は~むっ」

 た、食べやがった……まさに勇者!

律「もぐもぐもぐもぐ」

 食~えっ!食~えっ!食~えっ!食~えっ!

さわ子「早く出しなさい!」

律「やらぁ~!」

 姉ちゃんがそう言うと、さわ子先生はメガネを外し……

さわ子「出 し な さ い」

 うわっ、怖っ!
 怖すぎるだろ……

律「おぇっ……」

 ……あ。
 出しちゃった……姉ちゃん……

301: 2011/04/04(月) 21:35:21.94 ID:Aeed+tADO
 姉ちゃんが出した買い取り証明書を、さわ子先生はつまんで見る。
 それじゃあ姉ちゃんが汚いように見えるじゃないか……
 唾って、ただ粘ってるだけで、かなり綺麗な液体なんだが……
 その中でも姉ちゃんのはかなり綺麗なはずだが……

 それはさておき、さわ子先生にバレた。
 今、六人で土下座している。
 日本人の悪い癖だよな……これ。
 そして姉ちゃんは、かなり苦しい言い訳をした。
 しかし結局、姉ちゃんが言った一万円が部費に計上された。
 全く姉ちゃんは……まぁ、姉ちゃん一人の責任では無いけどね。

302: 2011/04/04(月) 21:45:07.56 ID:Aeed+tADO
 唯さんが、さわ子先生に札束で頬を殴ってくれとお願いした。


 ぺしっ。


唯「あぁっ……しあわせぇ……」

 やっぱり唯さんってMなのかな……
 今思えば、ベッドの上でも……ゲフンゲフン。

 まぁそれは置いといて、さわ子先生が特別に一つだけ何か買ってくれると言ってくれた。
 唯さんのお陰……かな?
 この人の包容力は半端じゃないからな……

律「一つと言わず、五つ位ばばーんと!」

澪「図々しい!」

律「あ痛っ」

 相変わらずだなぁ……

303: 2011/04/04(月) 21:56:07.64 ID:Aeed+tADO
 帰り道。
 何を買うか皆で相談しながら歩いているのだが……
 皆で使える物が、なかなか思い浮かばない。
 これでも東大出てんだけどなぁ……関係無いか。

 唯さんが、ケロ(名前?)をもう一つ買うのはどうかと言った。
 まぁ、唯さんのお決まりのボケなのだが……さすがに呆れたようで、姉ちゃん達はスルーした。
 とりあえず、俺は頭を撫でて慰めてやった。

 唯さん……良い匂いするなぁ……

 そんなことをしていると、運動部が後輩に指導していた。
 俺はふと梓さんを見る。

梓「……」

 なんだが寂しげな表情を浮かべていた。





 ……そっか。





 今皆が欲しいのは……

304: 2011/04/04(月) 22:04:31.51 ID:Aeed+tADO
 次の日。
 俺達は梓さんのことで話していた。
 今梓さんが欲しいのは後輩。
 すなわち新入部員だ。
 当然、新入部員は皆欲しいわけで。
 新入部員がいれば、部活動も活気がつく。
 しかし問題は、どうやって新入部員を獲得するかだ。
 あの金で買収は黒すぎるのでさすがに無理。
 ならどうするか……
 そんな時、唯さんが一つ提案した。


 ……なるほど。


 トンちゃんか……

305: 2011/04/04(月) 23:10:38.69 ID:Aeed+tADO
 部室で梓さんにトンちゃんを紹介した。
 最初は反応が薄かったが、最終的には気に入ってくれたようだ。
 その後、澪姉が写真を撮った。
 てか澪姉っていつもカメラ持ってるよなぁ……あれで何回写真撮られたことか。
 まぁ、あれもこれも大切な思い出だし、大切にしていこう。





 この頃からだ。
 何か、違和感を感じたのは――

306: 2011/04/04(月) 23:23:16.00 ID:Aeed+tADO



律「もうやだぁ!」


 俺達がトンちゃんの世話をしていると、姉ちゃんが急に叫んだ。
 よく見ると、泣いてる。
 一体何があったのだろう。

律「ドラムやだぁ!」

 ……は?

307: 2011/04/04(月) 23:51:07.21 ID:Aeed+tADO
 姉ちゃんは、何かのビデオを見ていた。

 え~っと……軽音楽部活動記録?
 姉ちゃんの話では、ドラムだとライトが当たらないからドラムやだ、だそうだ。
 小学生かよ……

 姉ちゃんが、楽器かえっこしようぜと言ってきた。
 何か、面白そうで良いかも。

 唯さんが、姉ちゃんにギー太を渡す。
 おぉ……なかなか似合うじゃん。

 すると急に、唯さんが泣き出した。

唯「ギー太が浮気したぁ~!」

 いやいやいや……渡したのは唯さんだろ……

 そういえば……結婚した後、久しぶりに友達と遊んで、帰りが遅くなった時、唯さんは本気で心配してくれたなぁ……
 唯さんは、そういう人なのだ。

 まぁそれはいいとして、梓さんによる特訓(?)が始まった。
 コードか……懐かしいなぁ……俺もあの時は、こんな風だったのかな……としみじみ思う。

 姉ちゃんは、俺みたいに見て聞いて覚える派ではなく、やってみて覚える派なので、梓さんの言葉による説明にはちんぷんかんぷんだった。
 姉ちゃんが、一生懸命ギターを鳴らす。





 ……か、可愛い!
 無邪気過ぎる。

 ……あ。
 姉ちゃんの表情が……
 まさか、もう、なのか……!?





律「ギター無理かも」

 ……やっぱり。
 てか、始めてから……14分4秒しか経ってないじゃん……
 いくら何でも早すぎるだろ……

308: 2011/04/05(火) 00:09:22.65 ID:qtRcXCpDO
 次の日。
 今度はキーボードをやると言い出した。
 昔から飽きっぽいから、またすぐに飽きるだろうなぁ……

 なんとも、姉ちゃんはキラキラしたいらしい。
 おでこならキラキラしてるんだけどなぁ……

 姉ちゃんは、キーボードで言葉を発しはじめた。
 まぁ、なんとなく解読出来るけど。

 姉ちゃん……楽しそうだなぁ……

澪「ムギ、私もちょっと弾かせてほs」

 その瞬間、姉ちゃんは不気味な笑みを浮かべる。
 澪姉は一瞬固まるが、すぐさみ姉ちゃんをパイナップルにした。

 やっぱり面白いなぁ……この二人。

309: 2011/04/05(火) 00:21:09.81 ID:qtRcXCpDO
 次の日。
 クラス写真を撮る日だ。
 まぁ、こういう時にはお約束のアレをしなければならない。
 俺は一番端に並んだが、姉ちゃんが割り込んできた。
 おそらく、姉ちゃんもやるだろう。
 撮る直前、姉ちゃんは唯さんの肩に手を回した。
 俺は、手のおもちゃ的な物を姉ちゃんの肩に乗せた。
 このおもちゃは軽いので、姉ちゃんは気づかなかった。





 パシャ。





 さて……姉ちゃん、この写真見たらびっくりするだろうなぁ……

310: 2011/04/05(火) 00:30:38.21 ID:qtRcXCpDO
 部室に行くと、ドラムの位置が変わっていた。
 ……ど真ん中じゃん。

 さわ子先生は、やっぱり元の位置が良いと言った。
 やっぱりそうですよね。

 今度は、唯さんがあのヘルメットで姉ちゃんを照らした。


 ……って!
 唯さん、ダメだ!

律「」

 遅かったか……
 姉ちゃんは虫の息になっていた。

315: 2011/04/05(火) 20:32:43.97 ID:qtRcXCpDO
唯「りっちゃんさ、もしかして寂しい?」

 唯さんが、突然言い出した。
 明らかに関係無いと思いますけど……
 唯さんの考えてることは本当に分からないなぁ……

 唯さんは、演奏中にコミュニケーションをとらないかと言ってきた。
 唯さんが、早速やってみる。

唯「じゃかじゃかじゃんじゃんじゃかじゃん、ジャカジャン!」

 姉ちゃんはその瞬間ビクッとなる。
 そりゃそうだ。
 姉ちゃんから見たら軽くホラーだろこれ……

 次に、皆でやってみる。

唯「じゃかじゃかじゃんじゃんじゃかじゃん」

 そして……ジャカジャンの瞬間に振り返る!

唯「じゃかじゃかじゃんじゃんじゃかじゃん」

 そして再び、ジャカジャンの瞬間に振りか……


 これ、集中できなくなるじゃん……
 しかも、何でこんなことしてるのか分からなくなってきた。
 毒されたなぁ……俺も。

唯「これでバッチリなんじゃない!?」

 いやいやいや……何がバッチリなんですか……
 そもそも、話の主旨がずれてるし。

 姉ちゃんも、そんなつもりじゃ無いと言った。

唯「りっちゃんの悩みは、皆の悩みだよ! 一人で悩んじゃやだ!」

 唯さん……今、凄く良いこと言ったけど、使う場面間違えてるよ……
 この人、凄いのか凄くないのか本当に分からないなぁ……

316: 2011/04/05(火) 20:57:53.13 ID:qtRcXCpDO
 帰り道。
 澪姉に、後は頼むよと言われて別れた後、俺は姉ちゃんとおしゃべりしながら歩いた。

律「それでさ~……」

 姉ちゃんは、笑顔で話す。
 でも、俺には分かる。

 これは、作り物の笑顔だ。本当の笑顔じゃない。
 他の人に心配をかけないように、無理して笑顔を作っている。

 俺の、一番嫌いな顔だ……

聡美「姉ちゃん、無理しないで」

律「……えっ」

 あっ……つい口に出しちゃった。

律「なに言ってんだよ聡美~、私は無理なんかしてないぞ~」

 ……嘘だ。
 俺には分かる。

聡美「ダメだよ姉ちゃん……私には分かるよ……」

律「……」

 姉ちゃんは黙ってしまった。

聡美「私……姉ちゃんのドラム、好きだよ。」

律「……!」

聡美「姉ちゃん、正直に言うとさ……私達の中で、一番輝いてるよ」

律「えっ……嘘だ……」

聡美「嘘じゃないよ。確かにあのビデオではちょっと見えにくいけど……観客からしたら、姉ちゃんが一番輝いて見えるんだよ。それに……」

律「それに?」

聡美「ビデオよりも、その時の記憶の方が、はっきりするんだよ? だからさ……」





聡美「悩まないで、いつもの元気な姉ちゃんでいてくれよ……」

 嘘だろ……俺が、泣いてる?
 なんでだろう……涙が止まらない……



律「聡美」

 ギュッと抱きしめられる。
 姉ちゃん……暖かい……

律「ごめんな、聡美……」

聡美「姉ちゃん……」

 俺は家に着くまで、姉ちゃんに抱きしめられたままだった――

317: 2011/04/05(火) 21:14:42.82 ID:qtRcXCpDO
 その日の夜、自室にいると、姉ちゃんの部屋からドラムスティックで雑誌を叩く音が聞こえてきた。

 姉ちゃん……

 その日、俺はぐっすり眠れた。





 次の日、姉ちゃん達は遅刻した。
 後、何かさわ子先生の様子が変だったが、触れないようにしておこう。


 部室に行くと、姉ちゃんが笑顔でドラムスティックを握っていた。

 うん、これが姉ちゃんの本当の笑顔だよ。
 やっぱりまぶしいなぁ……輝いてる。

 後、ムギさんが新しい曲を作った。

 Honey sweet tea timeか……
 何か、俺達にピッタリだなぁ……
 良い曲だ。





 しかし……あの違和感の正体がまだ分からない。
 なんなんだろう……

319: 2011/04/05(火) 21:28:52.17 ID:qtRcXCpDO
 修学旅行前夜、姉ちゃんが眠れないとか言って俺の部屋に来た。
 小学生かよ……
 まぁ、俺もなんだけどね。

 仕方がないので、いろいろとおしゃべりして、準備が完璧か確かめて、姉ちゃんがあくびをかいた瞬間、俺は姉ちゃんを部屋に戻らせた。
 俺も、ぐっすり眠った。

326: 2011/04/06(水) 20:28:02.72 ID:BLIPmpzDO
 修学旅行先の京都へ向かう新幹線の中で、俺は和さん達とトランプをしていた。
 修学旅行の班は、四人と決まっているらしく、俺は仕方なく和さんと一緒の班にした。
 別に和さんが嫌いという訳ではなく、姉ちゃん達が心配なだけである。
 はぁ……俺ってシスコンだよなぁ……それもかなり重度の。
 まぁ、和さんとは気が合いそうだし、悪くはないな。

 後ろから、姉ちゃん達がはしゃいでいる声が聞こえた。
 どうやらあの人達は、今日も平常運転のようです。

 あれっ……何か、後ろから視線が……
 ……気のせいか。

327: 2011/04/06(水) 20:33:43.24 ID:BLIPmpzDO
 京都駅に着いた。
 新幹線から降りると、姉ちゃん達がまた変なゲームをしているようだった。
 最初の行き先は……金閣寺か。

 金閣寺に行くためのバスに乗るが、なかなか出発しない。
 なんだろうと思ってバスの外を見ると、姉ちゃん達が写真を撮っていた。
 姉ちゃん……他の人のことも考えてよ……

328: 2011/04/06(水) 20:38:28.19 ID:BLIPmpzDO
 今、バスで金閣寺に向かっているのだが……
 唯さんが心配だ。
 あの人は、酔い止め飲んでも大抵の場合酔うからな……
 気になって唯さんの方を見ると、元気にお菓子を食べていた。
 何か食ってれば酔わないのか……謎すぎる。
 ちなみに、バスの座席は対面式では無いため、トランプは厳しいので、和さんと軽音部についておしゃべりしまくった。

329: 2011/04/06(水) 20:47:08.12 ID:BLIPmpzDO
 金閣寺に着いた。
 姉ちゃん達は走っていったが、俺達は周りの風景をじっくり見ながら歩いていった。
 金閣寺が一番よく見えるところに着くと、和さんが豆知識を教えてくれた。
 豆知識というよりは、トリビアに出てくる無駄知識っぽかったけど。
 俺達は写真を撮った後、和さんの提案で抹茶を飲んだ。
 もちろん、正しい作法で。
 ていうか和さんって、いろいろと古風だよなぁ……

330: 2011/04/06(水) 20:58:38.11 ID:BLIPmpzDO
 次は……天満宮か。
 ここの神様は、学問の御利益があるからなぁ……
 受験生にはピッタリってことか。
 ここで姉ちゃん達と合流した。
 和さんが、姉ちゃん達にここのことを丁寧に説明する。
 その話の中の頭が良くなるという言葉に反応して、姉ちゃんと唯さんは丑を撫でまくった。
 当然、そんなことすれば先生に怒られる訳で。
 なぜか俺まで怒られた。
 なんというとばっちりだよ……姉ちゃんめ……

331: 2011/04/06(水) 21:06:12.49 ID:BLIPmpzDO
 最後に俺達は、絵馬を書いた。
 姉ちゃん達のがあったので、一応見てみる。


 武道館進出 田井中律
 生涯満腹(変な絵付きで) 平沢唯


 関係無いだろ……まぁ、俺も人のこと言えないけどさ。





 家内安全  田井中聡美

332: 2011/04/06(水) 21:17:31.56 ID:BLIPmpzDO
 宿泊先に着いて、部屋に入る。
 ジャージに着替えて、とりあえず布団を敷いておく。
 後でやるのはめんどくさいしね。

 夕食の時間になり、豪華な料理を食べる。
 姉ちゃんと唯さんの様子がおかしい。
 料理が減るのが遅すぎる。
 きっと、お菓子食べすぎたんだなぁ……
 本当に、後先考えなすぎだろ……

 風呂に入り、就寝時間。
 メールが一通来ていた。

 姉ちゃんからだ。

 『今すぐ私達の部屋に来いよ~』

 なんなんだろう。
 就寝時間なのに。
 幸い、俺の班は和さんも含めて寝つきが良く、部屋を抜け出すのは容易なことだった。

333: 2011/04/06(水) 21:39:21.46 ID:BLIPmpzDO
 姉ちゃん達の部屋に入った瞬間、俺の視界は真っ暗になった。
 これは……枕?

 ほう……この俺に宣戦布告か……面白い。

 やってやろうじゃないか。


 俺は枕を持ったまま、突入する。

 ――左から、枕が飛んでくる。

 俺はそれをよけ、枕を投げた人物――唯さんの顔面めがけて枕を投げる!

唯「ふもっ」

 ……よし、命中。

 次の目標(ターゲット)は、前方、ムギさん。

 ムギさんに向かって、さっき唯さんが投げた枕を投げ……ずにしゃがむ。

 俺の頭上を、姉ちゃんが投げた枕が通り過ぎていく。
 なかなかやるな、姉ちゃん。

律「ちっ……外したか。なかなかやるな、聡美よ」

聡美「二回目は無いよ、姉ちゃん」

 ムギさんが、枕を投げようとしている。

 フフフ……これは利用しなければ。

 ムギさんが、枕を俺に向かって投げる。

 俺はとっさにしゃがむ。

 俺の後ろには、姉ちゃんがいた。

 ムギさんの投げた枕は、姉ちゃんに向かう。

律「おっと」

澪「ふもっ!?」

 姉ちゃんもとっさにしゃがみ、油断していた澪さんの顔面に命中する。

 これが、油断大敵ってやつか。

 枕(武器)を失ったムギさんに向かって、枕を投げる……フリをする。

 当然、ムギさんは避けようとする。
 しかし、俺がしたのはフェイント。
 再び、ムギさんの顔面めがけて枕を投げる。

紬「ふもっ……」

 ……よし。
 残るは、俺と姉ちゃんの二人のみ。

聡美「姉ちゃん……!」

律「聡美……!」

聡美・律「「勝つのは、私だ!!」」

 最終決戦のタンカが、今、切り落とされた。

334: 2011/04/06(水) 21:51:06.26 ID:BLIPmpzDO
 お互い、枕は持っていない。
 枕を取りに行くと、隙ができる。
 どちらが早く枕を手にするか――

 それが、勝敗を決める!

聡美・律「「っ!!」」

 俺と姉ちゃんは、ほぼ同時に枕を取る。

 先に投げたのは――姉ちゃん。

 でも、早い方が先に勝つとは限らない。

 俺は姉ちゃんが投げた枕に枕を投げ、枕の勢いを止め、二つの枕をキャッチする。

律「なっ……!」

 姉ちゃんはあわてて枕を取りに行く。

 ……もう遅い。

 俺は姉ちゃんめがけて、二つの枕を同時に投げる!

律「もふっ」

 ……勝った……!

 あれ?
 一つは姉ちゃんに命中したけど……もう一つは?

さわ子「……」

聡美「」

335: 2011/04/06(水) 21:57:30.31 ID:BLIPmpzDO
さわ子「ガミガミ!」

聡美「ごめんなさい……」

 滅茶苦茶怒られた。
 まぁ、当然の報いだな……

さわ子「大体あなた、ここの部屋じゃないでしょう!」

聡美「姉ちゃんに来いと言われたんです」

さわ子「だからといってあなたねえ……まぁ良いわ。自分の部屋に戻りなさい」

聡美「はーい」

 去り際に姉ちゃんを見ると、こちらを見てニヤニヤ笑っていた。

 くそっ……姉ちゃんめ……覚えてろ。

 そして俺は、戦場と化した姉ちゃんの部屋から去った――

341: 2011/04/06(水) 23:38:09.37 ID:BLIPmpzDO
 部屋に戻ると、和さんが起きていた。
 おそらく、俺達の枕投げで目が覚めてしまったのだろう。
 非常に申し訳ない。

和「何やってるのよ……」

聡美「面目無い」

和「目が冴えちゃったし、何か話す?」

聡美「そうですね」

和「……最近どう?」

 唯さんのことかな?

聡美「いつも元気です」

和「はぁ……そうじゃなくて」

 ため息をついたあと、和さんは口を開いた。

和「あなたのことよ、聡美……いや、聡くん」

聡美「……!?」

 いや待て。
 なんら不思議ではない。
 和さんも、タイムマシン開発の協力者の一人だ。
 刻を越えてても、おかしくはない。

342: 2011/04/06(水) 23:50:40.97 ID:BLIPmpzDO
聡美「次は、いつですか?」

 和さんなら、分かるだろう。
 相対性理論の上をいく、時空理論を発表した、和さんなら。

和「分からないわ。いろいろなところで歴史が変わっていて、氏のタイミングも刻々と変わってる」

 それはつまり……

聡美「誰がいつどこで氏んでも、おかしくはないってことですか……?」

和「そうよ。でも、元々そうだからね……でも、氏の元凶を消せば、全てが正されるわ」

 元凶……あの、通り魔。
 アイツさえ消えれば……

和「でもね……そうは簡単にはいかないのよ」

聡美「えっ……」

和「氏の阻止についての、新しいルールが分かったわ」

聡美「なっ……!?」

 な……に……!?
 まだ、あったのか……!

聡美「何なんですか、それは」

 和さんは戸惑いつつも、ようやくその口を開いた。

和「氏の元凶を消すには、それ相応の存在を犠牲にする必要がある」

聡美「……!?」

 ということは……まさか……!

聡美「人間の命を、犠牲にする必要があるってことですか……?」

和「ええ」

 絶望した。

343: 2011/04/06(水) 23:55:26.17 ID:BLIPmpzDO
 姉ちゃんを救うには、誰かを犠牲にしなければならない。

 ならば……やるべきことは、一つだ。

聡美「俺が犠牲になって、姉ちゃんを救います」

和「……」

 和さんは黙る。
 ダメ、なのか……?

和「構わないわ。でも……」





和「あなたは、それで良いの?」

聡美「えっ……」

和「あら、もうすぐ時間ね。じゃあね、聡くん」

 和さんはそういうと、布団に倒れ、寝息をたてはじめた。

 俺は、さっきのことが頭から離れず、あまり眠れなかった――

345: 2011/04/07(木) 00:08:58.47 ID:4UcJ8KuDO
 眠い……
 昨日のことが頭から離れない。

 俺が犠牲になって、姉ちゃんを救う。

 そもそも、通り魔を相手にするのだから、俺が氏ぬのはもはや確定事項だ。

 ていうか、覚悟は刻を越えた時、決めたはずだ。

 ならなんで……
 あの違和感のせいで、なかなか決心がつかない。
 本当になんなんだよ……この違和感は。

 気がつくと、朝食の時間になっていた。

 俺は急いで部屋を出て、朝食を食べ、着替えをし、ロビーを出た。

346: 2011/04/07(木) 00:20:08.20 ID:4UcJ8KuDO
さわ子「今日は自由行動です」

 自由行動。
 修学旅行では間違いなく、メインだ。
 俺も、友達とちょっとあれなところに行った記憶がある。
 まぁ、あの時の俺は心を閉ざしていたから、印象はヤバかったかもしれないけど。

唯「でさ~、そのお店で、大安売りしてて~」

律「それであんなにお菓子がカバンに詰まってたのか~」

唯「そうそう~!」

 姉ちゃん達、楽しそうだな……って!
 今集合してるんですけど!?

さわ子「戻って来なさい、そこ!」

唯・律「ひえぇっ!?」

 ほら怒られた。
 全く何やってんだよ姉ちゃん……

347: 2011/04/07(木) 00:41:06.56 ID:4UcJ8KuDO
 自由行動は、和さんがいるだけあって一味違うコースだった。
 それと、姉ちゃんのことだ。
 お土産とか買い忘れてそうだし、多目に買っておいた。
 まだ金はいっぱいあるしね。

 そろそろ宿に戻る時間になり、地図を見ながら駅へと向かっているのだが……

和「おかしいわね……」

 迷ってしまいました。

 そういえば、前に唯さんから和さんは方向音痴だと言われていたことをすっかり忘れてた。
 どうしよう……そんな時、

和「あっ、唯達だ」

 なんだって?
 やった……一筋の光が……!





 ……差し込まなかった。

和「ねぇ、駅への道は……」

 ズザー!

 姉ちゃんが、ヘッドスライディングする。
 ここはグラウンドじゃないよ、姉ちゃん。

唯「和ちゃんについていけば、安心だねぇ~」

 ごめんなさい唯さん。
 まったくもって逆です。
 滅茶苦茶不安です。

 あぁ……俺達は、はたして時間までに宿に帰れるのでしょうか……

348: 2011/04/07(木) 00:50:23.39 ID:4UcJ8KuDO
 班の人全員で協力して、なんとかご飯に間に合いました。

 それからは、ほとんど昨日と変わらず、就寝時間になりました。
 姉ちゃんからメールが来ていた。

 『今日も来いよ~』

 正直今すぐでも寝たい気分だが、姉ちゃんの頼みなら仕方ないので、俺は班の人全員の寝息を確認した後、部屋を抜け出した――

349: 2011/04/07(木) 01:02:20.55 ID:4UcJ8KuDO
 姉ちゃん達の部屋は、真っ暗だった。
 なるほど……肝試しか。
 元男をナメんなよ……

 まぁ、いろいろとめんどくさいので、必殺技を使いますか。

聡美「……しゃれこうべ」

「……ぷぷっ」

「あははははははは!」

 チョロすぎる。
 笑点低いな~……
 部屋の電気が点く。

律「聡美、卑怯だぞ~!」

 卑怯?違うな。
 俺はただ、一つの言葉を口に出しただけ。
 何も卑怯なことはしていない。
 むしろ簡単に笑う方が悪い。





 それから、軽音部の三年生五人で楽しい時間を過ごした。


 ずっと、この人達と一緒でいたい。





 ……あ。


 そうか。


 あの違和感……


 これのことだったんだ。

350: 2011/04/07(木) 01:12:57.40 ID:4UcJ8KuDO
 この人達と過ごした日々は、本当に楽しかった。
 姉ちゃんが言ってた通り、軽音部は最高だ。
 この人達と過ごしているうちに、こんな気持ちが芽生えてたとは……





 ならばなおさら、俺は姉ちゃんを救わなければならない。
 姉ちゃんは、この時間を……

 この人達と過ごした思い出と、この人達と歩む未来を、奪われたのだ。


 俺は決心した。

 姉ちゃんが幸せなら、それでいい。

 俺がいなくなっても、姉ちゃんがこの人達と一緒にいられるのなら……それで……

354: 2011/04/07(木) 22:21:39.95 ID:4UcJ8KuDO
 今日も雨が降っている。
 ここ数日雨ばっかりだ。
 さすがの俺も、今は女なので、男の時よりもいろいろと処理しなければならない。
 ギターケース用のレインコート(梓さんから紹介してもらった)を使い、ギターを守る。
 そういえば唯さん、現時点ではレインコート知らなかったんだっけ?
 さて、今日はもしかしたら下着が透けて見えるかもしれない。
 よく観察する必要がありそうだな。

 そんなことを考えていると、母さんから朝ごはんができたと声が聞こえた。
 俺は目を擦り、下におりた。

355: 2011/04/07(木) 22:25:43.65 ID:4UcJ8KuDO
 朝ごはんはおいしかった。
 これがおふくろの味というものなのかとしみじみ思う。
 洗面所に行くと、姉ちゃんがいた。
 うわあ……寝癖凄いな、おい。
 まぁ、俺も他の人のこと言えないけどね。

 姉ちゃんと二人でふざけあいながらさっさと準備を終わらせ、玄関の外へ出た。

356: 2011/04/07(木) 22:33:03.60 ID:4UcJ8KuDO
 外は案の定凄くじめじめしていた。
 ホント日本の気候には困っちゃうよ。
 雨の日は、傘さしててもぬれるからなぁ……
 姉ちゃんの格好って、こういう日には結構危ないんだよなぁ……
 下着見えやすいし。

 途中で澪姉と合流した。
 澪姉は几帳面なだけあって、なかなか抜け目が無く、透けてなかった。ちくしょう。

 学校まで行く間、漫画みたいなハプニングは全く無かった。

357: 2011/04/07(木) 22:49:16.67 ID:4UcJ8KuDO
 教室で姉ちゃん達としゃべってると、唯さんが来た。

 どれどれ……!?

唯「えへへ……濡れちゃった……」

 うわあ……いくらなんでもぬれすぎだろ……
 なんか知らんが唯さんには、漫画みたいなお約束事がたくさん起こるからなぁ……
 しかもかなり透けてるし。
 まだ成長途中だな……これからに期待しよう。

 ムギさんが唯さんの頭をタオルで拭く。

紬「かゆいところはございますか~?」

唯「ありませ~ん♪」

 なんだこのコント。
 てかコントと呼んでいいのかすら怪しいくらいレベルが低い。
 ムギさんいわく、美容師さんごっこ、だそうだ。

 その後、唯さんの武勇伝(?)について話した。
 そろそろ髪が乾いただろうと、ムギさんが唯さんの頭からタオルをはなすと……


 びよ~ん。


 これなんて癖毛?
 いや、唯さんが癖毛なのは知ってるが……なんだかアレの後みたいだったのでちょっと妄想してしまった。

358: 2011/04/07(木) 23:05:24.46 ID:4UcJ8KuDO
 唯さんの服がかなりぬれていたので、部室に干すことになった。
 唯さんがタイツを脱ぐ。
 やべえなんか工口い。
 やっぱり服着たままが良いよね、うん。

 ムギさんがお湯をもらってきた。
 唯さんは、バケツに足を突っ込んで、光琳の表情を浮かべた。

 その後、唯さんは服を脱いだ。
 既にもう何回も見てるから別に変な感情は無いけど……なんていうか、その……ねえ?

 服をどうするかということなのだが……さわ子先生お手製の服があった。
 しかし、唯さんは部員勧誘の時に使ったブタの着ぐるみを選んだ。
 なんでそれを選ぶんだろう……

 しばらくして、和さんが来た。
 和さんは雰囲気で唯さんだと当てた。
 てか、消去法で大体分かるんだけどね。

359: 2011/04/07(木) 23:17:35.05 ID:4UcJ8KuDO
 HRが始まり、さわ子先生が出席をとろうとするが……
 唯さんの格好(メイド服)はさすがにダメだったみたいだった。

 姉ちゃんが作った人先生だろうと言おうとすると、さわ子先生は鬼のような目で姉ちゃんを睨み付けた。
 姉ちゃんは蛇に睨まれたカエルのように硬直した。

 その後、澪姉とムギさんがアイロンでスカートを、俺と姉ちゃんでボタン付けをした。

360: 2011/04/07(木) 23:27:14.21 ID:4UcJ8KuDO
 唯さんは、スカートの下にジャージというかなり変な格好をしていた。
 すげえカッコ悪い……てかダサい。

 さわ子先生がやって来て、唯さんと姉ちゃんに注意した。
 いつもはそんなに厳しくないのに、なんで今日は……と思い、周りを見ると、別の先生がいた。

 なるほどね……でも、ちょっと卑怯臭くね?

 人間って卑怯だよなぁ……

361: 2011/04/07(木) 23:35:12.98 ID:4UcJ8KuDO
 部室でティータイムをしていると、話の流れで梓さんが通販で買ったものをカバンから出しながら語りはじめた。
 梓さんって絶対騙されやすいタイプだよなぁ……

 その後、唯さんがギターの弦を交換したり、梓さんが焼きもち(?)を妬いたり、いろいろと楽しかった。

 その日も結局、練習せずに帰る羽目になった――

365: 2011/04/08(金) 18:08:56.10 ID:AWt+pkbDO
 次の日も雨だった。
 梅雨明けはまだまだ先だなぁ……
 何回も同じ天気は飽きる。
 飽きるというか、雨にはトラウマがあるので、雨は好きではない。
 今日も髪などの処理をしなきゃいけないな。





 学校に着く。
 今日は唯さんがギターケースにビニールを巻いていた、が。
 あれは明らかに巻きすぎだと思う。

 思った通り、唯さんは長時間かけてビニールを剥がした。

 その後、唯さんはオクターブチューニングをした。
 皆は唯さんの音感に驚いていたが、あのくらい俺でも分かる。

368: 2011/04/08(金) 21:57:22.99 ID:AWt+pkbDO
 練習後、窓の外を見たが、雨もやんでなく、風も強くなってきていた。
 仕方ないので、部室に楽器を置いて帰ることにした。
 唯さんも、巻いてきたビニールをビリビリに破いて剥がしてしまったので、置いて帰ることにしたらしい。
 大丈夫かな……?

 後、梓さんはつい自分のギターの名前を口に出してしまったようだ。

 むったん、か……

369: 2011/04/08(金) 22:10:16.55 ID:AWt+pkbDO
 帰り道。
 ものすごい雨の量だった。
 靴、防水改造してて良かった~……

 いつもの交差点で、俺達は別れる。





 その瞬間、車のクラクションが鳴る。
 その車の向かう先は……三人!?
 くそっ……三つのものを犠牲にしないと!
 仕方ない、ぬれるのを覚悟して、靴(両方)と傘を犠牲にして、三人を救ってやる!

 まず、三人を向こうまで押す。
 唯さんムギさん梓さん、ごめんなさい。
 ぬれますが、氏ぬよりはマシです!

 そして、傘を落とし、靴が脱げたように見せかけ、タイヤの下へ!


 バシャーン!


 傘が壊れ、靴も潰れ、挙げ句に服もびしょぬれだ。

 でも……よかった。
 三人とも無事で。
 服はぬれちゃったけど。

370: 2011/04/08(金) 22:19:00.55 ID:AWt+pkbDO
 姉ちゃん達は、俺に駆け寄ってきた。

律「聡美、大丈夫か!?」

聡美「う、うん……なんとか」

 澪姉を見ると、ボーッとしていた。
 唯さん達を見ると、これまたボーッとしていた。
 しばらくして、唯さん達が駆け寄ってきた。

唯「さ、聡美ちゃん……?」

梓「えっと……あ、ありがとうございます」

紬「……」

 三人とも、寒さからなのか恐怖からなのか分からないが、とにかくものすごく震えていた。

 ごめんなさい、皆さん。

371: 2011/04/08(金) 22:34:47.93 ID:AWt+pkbDO
 それから唯さん達と別れた後、姉ちゃんと澪姉から傘に入れてもらいながら帰った。
 靴はもはや防水など果たしておらず、足がかなり冷たい。

 家に着いて、早速予備の靴を玄関に置き、服を乾かした。
 その後、姉ちゃんから部屋に呼び出された。

 姉ちゃんの部屋に入ると、座れと言われた。
 しばらく無言が続き、ようやく姉ちゃんは口を開いた。

律「聡美ってさ、自分を大切に思ってないの?」

聡美「えっ……?」

 いや、大事に思ってるよ?
 姉ちゃんを救うまで、あの通り魔を消すまで、氏ぬわけにはいかないのだから。

律「だってさ、何回も自分を犠牲にしてるじゃん。まるで、氏んでもいいって感じだよ」

聡美「……」

 仕方ないだろ……そのためにここまで来たんだから。

372: 2011/04/08(金) 22:48:08.03 ID:AWt+pkbDO
聡美「助けられるんなら、助けた方がいいじゃん」

律「……え?」

聡美「助けたい、と思っていても、助けられない命だってあるんだよ? だから、手遅れになる前に助けるんだよ、私は」

 俺は、自分自身に言い聞かせるように言う。
 二度とあんな思いはしたくないから。

律「だから、自分を大切に……」

聡美「私は、自分よりも皆が大事。だから……」

パシン!

聡美「っ!?」

律「……」

 姉ちゃん……怒ってる……?
 左の頬が痛い。

376: 2011/04/09(土) 08:55:53.88 ID:yLdY+1xDO
律「私はなぁ、皆を危険な目にあわせたくないんだよ! それが部長としての責任だ。それなのに、なんで自分から氏にいこうとするんだよ……」

 姉ちゃん……泣いてる……?

律「頼むから……心配かけさせないでよぉ……」

 姉ちゃん……





 ちょっと待て。

 皆を危険な目にあわせたくない?
 それ、俺と同じじゃん……

 もしかしてあの時、姉ちゃんは……澪姉を庇って……

377: 2011/04/09(土) 09:10:37.97 ID:yLdY+1xDO
 となると……姉ちゃんは、澪姉の氏を阻止したのか?
 もしそうなら、話はかなりややこしくなるかもしれない。
 やっぱり姉弟って似てるんだなぁ……

 姉ちゃんが、俺の前で泣いている。
 姉ちゃんは俺が泣いていた時、何をしてくれた?
 抱きしめたり、頭を撫でたりと、一生懸命慰めてくれたじゃないか。

 ならば、その恩を返さなければならない。
 俺は姉ちゃんを抱きしめ、頭を撫でた。

律「うぅ……聡美ぃ……」

 姉ちゃんは俺の中で泣きじゃくる。
 姉ちゃんは、誰よりも乙女で、誰よりも傷つきやすい。
 それでも姉ちゃんは、無理に明るく振る舞う。

 ……俺以外には。

 姉ちゃんがまた俺に甘えてくれた。
 ならば、それ相応の対応をしなければならない。

 俺は姉ちゃんが泣き止むまで、優しく優しく慰めていた――

378: 2011/04/09(土) 09:29:04.47 ID:yLdY+1xDO
 ある日。
 澪姉が、視線を感じると言ってきた。
 またかよ……まぁ、原因はすぐ分かったけどね。
 姉ちゃんと唯さんにこっそり教えた後、俺達はあえて黙っておいた。

 その後、ムギさんがその原因を当てた。
 ていうか、どうやったら髪にシールがつくんだよ……

 しばらくして、和さんと澪姉のファンクラブの人が部室に入ってきた。
 まだあったのかよ……

 その時姉ちゃんは曽我部先輩のことを思い出し、八割増しで語った。
 今思えば、あの人ただの変態じゃねぇか。

379: 2011/04/09(土) 09:47:40.50 ID:yLdY+1xDO
 和さんは、ファンクラブの会長も引き継いだらしい。
 だから、ファンクラブでお茶会を開いてほしいと頼みに来たとのこと。
 俺達は迷うことなく了承した。

 その後、準備は怖いくらい順調に進んだ。
 俺は改めて姉ちゃん達の団結力を痛感した。

 ていうかこのグッズ、微妙すぎるだろ……
 ファンクラブの人が差し入れを持ってきてくれた。

 焼きそばパン……絶対狙ってるだろ、これ。
 顔の割にはやるじゃん、あの二人組。

 曽我部先輩は来れないみたいだった。
 後、考え方が結構大人になっていた。
 人は変わっていくんだなぁ……歴史のように。

 ちなみに司会は、俺と姉ちゃんと唯さんでやることになった。
 司会三人って、ちょっと多くね?

380: 2011/04/09(土) 09:59:05.19 ID:yLdY+1xDO
 お茶会当日。
 俺は、ファンクラブの規模の大きさに驚いた。
 さすが澪姉だなぁ……

律「えー、第一回秋山澪ファンクラブお集まりいただき、まことにありがとうございます」

 第一回って……何回やるつもりだよ……

聡美「本日の司会は、私達三人でつとめさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」

 姉ちゃんと唯さんにやらせると間違いなく時間食うので、ここは手短に。

 後、なんでグッズが人気なのか分からない。
 シール配った方が良くね?

聡美「ただいまより、お茶会を開催します。では、本日の主役、秋山澪さんのご入場です!」

 扉が開かれ、澪姉が入ってくる。
 澪姉、下向いててなんか怖いな……

 その後、澪姉がマイクに向かってしゃべったが、カミカミだった。

381: 2011/04/09(土) 10:21:40.48 ID:yLdY+1xDO
 その後、澪姉と梓さんがドヤ顔でケーキ入刀したり、お茶とケーキをサービスしたりした。

 質問コーナーは、ちょっとアレだったな……

 次に、澪姉の生いたちアルバム観賞が行われた。
 ちなみに、俺が写ってる写真もいくつか選んでおいた。
 そのたびに、誰?可愛い~とか言われた。
 すいません。それ俺です。

 ていうか、姉ちゃんの方が目立ってるような……澪姉の恥ずかしがりやがここに来たか……

 その後、澪姉のサプライズ『ときめきシュガー』に、演奏もした。

 皆で写真をとり、曽我部先輩にも送り、お茶会は終わりを告げた――

382: 2011/04/09(土) 10:29:27.90 ID:yLdY+1xDO
 お茶会の後、あの二人がサインをもらいに来た。
 澪姉は吹っ切れたのか、快くサインに応じた。

 サインをもらった二人が自慢し、次の日澪姉に人が押し寄せたのは言うまでもない。

 そして俺はというと……


聡美「……」

 澪姉に消してほしいと言われた生いたちアルバムのデータのバックアップをしていた。
 無論、姉ちゃんに頼まれたからだ。

 できあがったディスクを姉ちゃんに渡し、パソコンを閉じ、俺は眠りについた――

395: 2011/04/13(水) 20:56:44.86 ID:0qz8YsjDO
やべえ最近忙しすぎるぜ……

さっき風呂入って顔洗ってたら鼻の穴に小指が刺さって血が出たぜ……

>>392 期待するほどではないと思いますが、頑張ります。

>>394 そこはノーコメントでお願いします。

ではいきます

396: 2011/04/13(水) 21:04:21.22 ID:0qz8YsjDO
 唯さんは、まだ進路を決めてなかったみたいだ。
 推薦が何か知らないのに推薦と書いたり、ムギさんのところと同じにしたりした。
 まぁ、俺は念のためムギさんのところと同じにしたが。

 ムギさんが唯さんに赤本を出した。
 俺は姉ちゃんと一緒に見てみた。


 ……ふむふむ。
 やっぱり若干簡単かな。


 今度は姉ちゃんが、一年の範囲を習ってないとか言い出した。
 本当に大丈夫かよ……

398: 2011/04/13(水) 21:10:35.25 ID:0qz8YsjDO
 唯さんは助動詞の歌(?)を完璧に覚えていたが、活用法を知らないみたいだった。
 それじゃダメだろ……


 姉ちゃんは、未定にしたみたいだ。
 いやいや……それっていい……わけないか。

「三年二組の田井中さん平沢さん、至急職員室に来なさい」

 あーあ……
 ていうか先生、エスパーかよ……

399: 2011/04/13(水) 21:20:15.82 ID:0qz8YsjDO
 姉ちゃん達が呼び出しをくらっている間、俺達は和さんと昔の話をした。
 唯さんは、昔から色々とやらかしていたのか……
 そういえば、子供達がたこ焼きリクエストしてきた時、たこ無し焼きやってたなぁ……





 しばらくして姉ちゃん達が来て、進路の話になった。
 でも、話は脱線して、澪姉の作文が賞をもらったあの日の話になった。

400: 2011/04/13(水) 21:31:54.62 ID:0qz8YsjDO
 俺が小学校一年生の時……澪姉の作文が賞をもらったんだっけ。
 俺もその時、澪姉に初めて会った。
 当時の俺は澪姉のように人見知りで、姉ちゃんがいないとまともに話せなかった。
 でも、大きくなるにつれて、それも治っていったんだっけ。
 澪姉のはまだ完全に治ってないみたいだけど。


 ……って!
 俺までずれてる!

401: 2011/04/13(水) 21:38:36.42 ID:0qz8YsjDO
 一通りの澪姉弄りも終わったあと、進路の話に戻った。

 唯さんの将来か……なんか、一通りの職業が向いてない気がする。
 唯さんは、好きなことならすごいから、そうなればいいのだが……
 まぁ、主婦になってたけどね。
 俺が唯さんと結婚しなかったら、どうなっていただろう。

402: 2011/04/13(水) 21:53:51.91 ID:0qz8YsjDO
 和さんが、やりたいことを書けばと言った。

 姉ちゃん達はミュージシャンと書いて、即却下された。

 和さんが、紙に 書かれたミュージシャンというのを見て、笑い始めた。
 和さんがこんなに笑うとは……

 その日の夜、姉ちゃんから相談された。

律「聡美はどこにしたの~?」

聡美「私はN女子大にしたけど……」

律「ムギと同じか~……聡美頭良いもんな~」

聡美「そんなことないよ。姉ちゃんだってやればできるんだし」

律「私はやらないからダメなんだよ……」

 丈夫だよ姉ちゃん。
 姉ちゃんは昔から、なんだかんだ言って最終的には結果を出すんだから。

 でも、結構歴史変わってるしなぁ……

405: 2011/04/15(金) 22:35:22.13 ID:hXiBHu6DO
 次の日。
 ふと気になって唯さんの方を見ると、机に突っ伏してゴロゴロしていた。
 その後、頭から煙(?)を出していた。
 何やってるんだあの人は……


 放課後。
 職員室の近くを歩いていると、唯さんが職員室から出てきた。
 あの様子を見ると、またダメだったのかな……

聡美「またダメだったんですか? 唯さん」

唯「あっ、聡美ちゃん。またダメだったよ~……」

 唯さんはそう言うと、紙を見せてきた。

 『とにかく一生懸命がんばります』

 ……ヤバい、笑いが……

聡美「……ぷぷっ」

唯「わ、笑わないでよ~! これでも一生懸命考えたんだからね!」

聡美「すいませんってば……唯さんらしいです」

唯「む~……」

 唯さんはなんか不機嫌そうだ。
 どうしよう……

407: 2011/04/16(土) 09:38:58.92 ID:u3loOcRDO
聡美「あ、そういえば……駅前に新しいアイス屋さんができたらしいですよ」

唯「えっ!? それ本当!?」

 やっぱり食いついてきたか。
 本当に扱いやすいなぁこの人。

聡美「はい。今から行きます?」

唯「もちろんだよっ!」

聡美「じゃあ、行きましょうか。今日は部活無いんで」

唯「うんっ!」

 そんな会話をして、俺達は校舎をあとにした――

408: 2011/04/16(土) 09:52:08.79 ID:u3loOcRDO
 駅前に向かう途中、俺はふと思い出してあの言葉を発した。

聡美「……アクター」

唯「っ! …………さと、しくん?」

聡美「こんにちは、唯さん。あの……少し聞きたいことが……」

 俺達は歩きながら話す。

唯「うんいいよ。何?」

聡美「あのですね、次はいつだか分かりますか?」

唯「うん。最近、あまり歴史変わってないからね」

聡美「いつ、なんですか……?」

唯「えっと……!?」

 唯さんは、驚いたような表情を見せる。
 何があった……?

唯「聡くん、落ち着いて聞いてね?」

聡美「あ、はい」

 一体何なんだろう。





唯「夏フェスの日に……バスが事故に遭って……乗ってる人が全員……!」





 ……は?

 ……それってつまり……

409: 2011/04/16(土) 10:07:56.33 ID:u3loOcRDO
聡美「30人あまりの人が犠牲になるってことですか!?」

唯「うん……」

 なんだよそれ……その人達が何をしたって言うんだよ……
 一体神様は何を考えて……

聡美「えっと……バスの発車時刻をずらしたりすればなんとかなるんですか?」

唯「うん……でも、それじゃあ別の人達が……」

 どうすればいいんだよ……

唯「あっ! あっちのムギちゃんに力を借りれば……!」

 ムギさんに?
 確か……琴吹グループは宇宙開発をはじめさまざまな事業に勢力を伸ばし、俺がタイムマシンを完成させた時には世界を統一していたはず。
 もしムギさんが氏んでしまえば、未来は大きく狂うことになる。
 それだけは阻止しないと……!

聡美「唯さん、お願いします」

唯「分かったよ。じゃあ……またね!」

 唯さんはそう言うと、その場に崩れ落ちる。
 俺は唯さんを抱き抱え、アイス屋さんのベンチに座らせる。
 ていうか、俺達いつの間にか着いていたんだなぁ……


 しばらくすると、唯さんが起きた。
 その後、唯さんにじゃんけんで負け、アイスを奢ることになった。
 千円が……

410: 2011/04/16(土) 10:19:21.03 ID:u3loOcRDO
ふぅ……

最近ダメだな俺……

とりあえず、二期の番外編は飛ばします。

今現在の飛ばす予定の回↓

番外編のみ


では引き続き期末試験いきたいと思います。

411: 2011/04/16(土) 10:24:30.45 ID:u3loOcRDO
 もうすぐ期末試験だ。

 ……それにしても、唯さん来ないな……遅刻かな?

 皆で窓から校門の方を見ると、唯さんが走ってきた。

 まさに青春って感じだなぁ……

和「唯ー、早くー!」

 和さんがそう言うと、唯さんは別の意味で早くした。

 いやいやそうじゃないって!

412: 2011/04/16(土) 10:32:00.99 ID:u3loOcRDO
 唯さんはなんとか間に合った。
 唯さんの話によると、朝早起きしてジョギングしてたらしい。
 こりゃ授業中絶対寝るわな……


 予想通り、唯さんは寝ていた。
 やっぱりか……何で授業中に寝れるんだろう。
 たしか姉ちゃんがそんなこと言ってた気がする。
 そんな姉ちゃんは……


律「……zzz……」


 おい当事者。

413: 2011/04/16(土) 10:42:28.64 ID:u3loOcRDO
 姉ちゃんが唯さんに制裁をくだす。
 まぁ、姉ちゃんも寝ていたけど。
 結局、図書館で勉強することになった。


 現在、図書館で勉強しているのだが……
 姉ちゃん達がうるさすぎる。

唯「聡美ちゃんのノートはっと……えっ? なにこれ……」

聡美「っ!」

 俺はあわててノートをしまう。
 なんせこのノートには、これからの作戦がびっしり書いてあったのだから。

414: 2011/04/16(土) 10:56:00.99 ID:u3loOcRDO
律「何が書いてあったんだ? 唯」

 ヤバい。ヤバすぎる。
 はたして唯さんはどこまで……

唯「えっとね、夏フェスとかバスとか、あっちのとかこっちのとか書いてあったよ」

 危ない危ない……ギリギリセ……

唯「あと、氏のタイミングとか阻止とか、事故とか書いてあったよ」

 うわああああぁぁぁぁ

律「ぶ、物騒だな……」

紬「聡美ちゃん、そういうのは考えちゃダメよ?」

澪「……」

 空気が最悪だ……しかも、澪姉はフリーズしてるし。

聡美「すいません。最近はまってるゲームで……」

唯「なんだ~……ちゃんと勉強しなきゃダメだよ?」

聡美「はい……」

 めんどくさいけど、一応復習しとくか……

415: 2011/04/16(土) 11:15:26.62 ID:u3loOcRDO
 それはそうと帰り道。
 コンビニで電池と水を非常食を買っておく。
 なんか地震来そうな予感がする……

律「聡美、口開けてこっち向いて」

 くるあーん。

律「ハイパーウルトラ(ry」

聡美「……辛っ!?」

律「あはははは。さっき唯とムギにもやったんだよ。……いっぱい買ってるなぁ……」

聡美「非常用です」

律「なんだそれ? あ、そうそう、聡美がはまってるゲーム、教えてよ」

 ……どうしよう。
 あれとっさについたウソなんだが……

聡美「じゃあ、テストで私に勝ったら良いよ」

律「え~!? 私が聡美に勝てるわけないじゃん!」

聡美「やってみなきゃ分かんないよ」

律「じゃあせめてハンデでも!」

 そうだな……

聡美「じゃあ、50点ハンデね」

律「よしきたぁ! 絶対負けないぞ、聡美」

 こっちも、本気でいかせてもらおうかな。


 次の日、唯さんは演芸大会に出ると言った。
 ちゃんと両立できるのかな……心配だ。

416: 2011/04/16(土) 11:30:08.23 ID:u3loOcRDO
 期末試験までの間、俺は完璧になるまで復習した。
 姉ちゃんには絶対に負けない。
 唯さんのことは梓さんに任せれば大丈夫だろう。


 そして期末試験。
 本当に怖いくらいスラスラ解けた。
 なんで時間がこんなに余るんだよ……まぁ、何回も見直しするか。



 そして演芸大会。
 今は13番……次じゃん。
 唯さん達の方を見ると、唯さんが寝ていた。

「次は、14番、ゆいあずです」

 梓さんが、唯さんを起こす。

 そしてゆいあずが発表する。

 ぐだぐだの漫才の後に、ふでペン~ボールペン~ゆいあずバージョンを披露した。
 俺的にはすばらしいのだが……

 キンコーン。

 ……まさかの!?
 ゆいあず……残念です。

417: 2011/04/16(土) 11:42:40.49 ID:u3loOcRDO
 そしてテスト返却の日。
 どれどれ……合計500か。
 まぁ、こんなもんだろう。

律「聡美、どうだった?」

 姉ちゃんはウキウキした様子言ってくる。

聡美「姉ちゃんは……合計418か……はい」

律「どれどれ……うおっ!?」

 姉ちゃんは驚いている。あと33点足りなかったね……
 唯さんは確か……439だったな……やるじゃん。

律「ちくしょう……なんでそんな点数とれるんだよ……」

聡美「今回は勉強したからね……」

律「……勉強教えてくれ、聡美」

聡美「……もちろんだよ」

 でも姉ちゃん……俺についてこれるかな……

418: 2011/04/16(土) 11:52:02.71 ID:u3loOcRDO
 その日の夜、姉ちゃんは五時間でギブアップした。
 やっぱりムリだったか……





 その時だった。





 カタカタカタ……

 ……ん?

 ガタガタガタガタ……

 じ、地震!?

 しかも停電だと!?

 ね、姉ちゃん!

律「やだ……やだよう……」

 遅かったか……

 姉ちゃんは、地震恐怖症だ。こうなったら俺がやるしかない。

 俺は動けない姉ちゃんを抱き抱え、この時代の俺も連れて、避難場所に向かった――

419: 2011/04/16(土) 12:07:20.02 ID:u3loOcRDO
 避難場所には、澪姉がいた。
 避難場所では、懐中電灯とかが配布された。
 震える姉ちゃんを澪姉に任せ、俺はこっそり外に出た。


 揺れでかなり歩きづらい。
 でも、俺にはやるべきことがある。


 平沢家に着く。
 門の前には、唯さんと憂さんと梓さんがいた。

唯「遅いよ、聡くん」

憂「久しぶり、聡くん」

梓「では、早速始めましょうか」

聡美「そうですね」

 俺はタイムマシンに特別起動部品をつける。
 そして、順番にレバーを引いていく。
 この作業は時間がシビアで、四人いないとできない。

 タイムマシンが変形した。
 これで、軽く八人は乗れるはず。

 俺は行き先を2032年に設定し、TT(タイムトンネル)ボタンを押す。
 これは、地震による巨大なエネルギーがないとできない。

 目の前にタイムトンネルが形成された。

 俺は、タイムマシンを発車させ、俺達は、再び刻を越えた――――

【けいおん】聡「刻を越えて」【後編】

引用: 聡「刻を越えて」