1:◆7FnOo4mT6s 2013/01/23(水) 16:51:16 ID:2JqvWRaQ
~とある森~

魔女(また、ハーフエルフだとバレて、村を追い出されて早三日……)

魔女(もう、食料も尽きたわ……)

魔女(幸い、師匠から召喚術を教わっていたから、なんとか殺されずに済んでいるけど……)

魔女(一体、いつまでこんな生活が続くのかしら?……)ハァ……

護衛兵達「……」

魔女(まぁ、次の拠点を決めたら考えましょ……)

魔女(私だって、好きでハーフエルフになった訳じゃないのに……)

魔女(一体、何で私がこんな目に遭っているのかしらね?……)

護衛兵達「……」
Lv1魔王とワンルーム勇者 1巻 (FUZコミックス)
2: 2013/01/23(水) 16:51:36 ID:2JqvWRaQ
ガサガサッ、ガサガサッ……

魔女「……誰?」

ガサガサッ、ガサガサッ……

魔女「だ、誰かいるの?……」スチャ

ガサガサッ、ピタッ……

鹿「……?」

魔女「ふぅ……」

魔女「なんだ、鹿か……」

魔女「全く、驚かせないでよ……」

鹿「……」

護衛兵達「……」

3: 2013/01/23(水) 16:51:52 ID:2JqvWRaQ
魔女(とりあえず、この鹿を捕まえて焼こうかしら?……)

魔女(それとも、逃がした方が得策かしら?……)

鹿「……」

魔女(なんか、私の方をじっと見てるわね……)

魔女(一体、何が目的なのかしら?……)

鹿「……」

ガサガサッ、ガサガサッ……

魔女「……?」

ガサガサッ、ガサガサッ……

「居たぞ!」ピィー-ッ!

魔女「しまった。罠だったのね!?……」

4: 2013/01/23(水) 16:52:12 ID:2JqvWRaQ
ピィ-ーッ、ピィー-ッ!

ピィー-ッ、ピィー-ッ!

魔女「総員、戦闘用意!」

魔女「防御体制!」

護衛兵達「はっ!」スチャ

ザッ、ザザッ……

ガサガサッ、ガサガサッ……

ザッ、ザザザザッ……

魔女「くっ、数が多い……」

魔女「まだこんなにも、兵を残してるとは………」

護衛兵達「……」タァラン

5: 2013/01/23(水) 16:53:08 ID:2JqvWRaQ
騎士「貴様が、件のハーフエルフか?」

騎士「まだ、こんな場所にいたとはな」

魔女「……」

騎士「まぁ、良いだろう」

騎士「ここで、お前はもう氏ぬのだ!」

騎士「そして、穢れた血も全て一掃出来るのだ!」タァラン

敵兵達「……」

騎士「総員、掛かれ!」

騎士「残り一名のハーフエルフを、完全に抹頃するのだ!」ブン

敵兵達「おーーっ!」

ダッ、ダダダダッ!

6: 2013/01/23(水) 16:53:23 ID:2JqvWRaQ
ダダダダッ、ダダダダッ

キーー--ン!……

キンキン、キンキン!……

敵兵「とりゃあ!」ブン

魔女「はっ!」キ--ン!

敵兵2「隙あり!」ブン

護衛兵「させるか!」ドゴッ!

敵兵2「ぐあっ!」ドサッ

魔女「ていっ!」ボゥ!

敵兵「ぎゃああああ――――っ!?」ボワワワッ!

敵兵3「うわっ、こっち来るな!」サッ

敵兵「ぎゃああああ――――っ!?」ドサッ

7: 2013/01/23(水) 16:53:52 ID:2JqvWRaQ
魔女「手の空いている者、騎士を狙え!」

魔女「騎士を狙って、時間を稼げ!」

護衛兵達「はっ!」ダダダダッ

騎士「くっ、やるな……」

騎士「従騎士、突撃せよ!」

騎士「敵の狙いは私だ! 一気に踏み潰せ!」ブン

従騎士「はっ!」ダッ

キンキン、キンキン!

魔女「焼け焦げて、氏になさい!」ボゥ!

敵兵達「ぎゃああああ――――っ!」ボワワワッ!

従騎士「うわっ!?」ササッ、ドサッ

8: 2013/01/23(水) 16:54:45 ID:2JqvWRaQ
魔女「くっ、まだかなり残ってる……」

魔女「敵はまだ、そんなには消耗はしていない……」

従騎士「……」ムクッ

魔女(あの従騎士、まだ子供ね……)

魔女(大体、私と同じくらい……)

魔女(あまり、頃したくはないなぁ……)

従騎士「……」ダッ

魔女(でも、どうやら戦わなければならないみたいね……)

魔女(せっかく、ここまで逃げ切れたんだし……)

魔女(そろそろ、この体とも潮時かもしれないわね……)

ダッ、ダダダダッ

9: 2013/01/23(水) 16:54:57 ID:2JqvWRaQ
従騎士「ハーフエルフ、覚悟せよ!」ダッ

従騎士「この俺が相手だ!」ブン

魔女「……」キーーン!

従騎士「貴様、何故そこまで生きようとする?」

従騎士「穢れた血が、何故そこまで生に執着をするのだ?」ギリギリ

魔女「……」

従騎士「……そうか。何も答えてはくれぬのか」

従騎士「なら、潔くここで氏ね!」

従騎士「この俺が、貴様をこの手で頃してくれる!」

従騎士「貴様らハーフエルフは、全て殲滅をするのだ!」

魔女「……」ポロポロッ

10: 2013/01/23(水) 16:56:39 ID:2JqvWRaQ
魔女「……そう」

魔女「なら、貴方の好きにしたら?」

魔女「私を頃して、それを貴方の武勲にしたらどうかしら?」ポロポロッ

従騎士「……何?」

魔女「言っとくけど、私も好きでハーフエルフなんかになったんじゃない!」

魔女「私も、皆と同じ様に平穏に暮らしていきたい!」

魔女「それが、何がいけないって言うのよ!」

魔女「私にだって、それくらいの権利はあるでしょうが!」ポロポロッ

従騎士「!?」

魔女「……」ブツブツ

魔女「……」ボワワッ!

11: 2013/01/23(水) 16:57:36 ID:2JqvWRaQ
従騎士「なっ、こいつ火を……」バン

従騎士「こいつ、自分の体に火を着けやがった!……」ササッ

魔女「……」

騎士「従騎士、何をしてる!」

騎士「早く、ハーフエルフを斬れ!」

騎士「早く、斬るんだ!……」

従騎士「……」

魔女「どうしたの? 早く斬りなさいよ……」

魔女「どうやら、もう完全に潮時みたいだからね……」

魔女「早く、私を頃して貴方の武勲にしなさいよ……」

従騎士「……」

12: 2013/01/23(水) 16:57:48 ID:2JqvWRaQ
従騎士「……いいだろう」

従騎士「貴様の望み通りにしてやる……」スチャ

従騎士「そして、貴様のもう一つの願いは来世で叶えろ!」

従騎士「良いな?」

魔女「ええ」

従騎士「はっ!」ブン!

魔女「ぐっ!……」ズバッ!

従騎士「とりゃあ!」ブン

魔女「ぎゃああああ――――っ!」ズバババッ!

従騎士「……」

魔女「……」ドサッ

13: 2013/01/23(水) 16:58:11 ID:2JqvWRaQ
キンキン、キンキン!

魔女「……」ボワワッ

キンキン、キンキン!

従騎士「……」

騎士「従騎士、やったか?」

騎士「ハーフエルフは、氏んだのか?」

従騎士「はい!」

魔女「……」ボワワッ!

騎士「そうか。よくやった!」

騎士「さすがは、私が目を掛けていた男!」

騎士「そなたは、誠に良くやってくれた!」

従騎士「はっ! お誉め頂き有り難うございます!」サッ

14: 2013/01/23(水) 16:58:33 ID:2JqvWRaQ
騎士「総員、ハーフエルフは氏んだ!」

騎士「後は、残党のみだ!」

騎士「従騎士が、ハーフエルフを討ち取ったぞ――――っ!」

敵兵達「うぉ――――っ!」

キンキン、キンキン!

魔女「……」ボワワッ

キンキン、キンキン!

従騎士「……」

従騎士「さらば、ハーフエルフ」

従騎士「貴様の願い、必ず来世にて叶えるのだぞ」

魔女「……」ボワワッ

スタスタスタッ……

19: 2013/01/24(木) 18:16:58 ID:rDIAd3IU
~とある酒場~

「言っとくけど、私も好きでハーフエルフなんかになったんじゃない!」

「私も、皆と同じ様に平穏に暮らしていきたい!」

「それが、何がいけないって言うのよ!」

「私にだって、それくらいの権利はあるでしょうが!」

あの時、あいつはそう俺に向かって言った……

あれから20年経った今も、ずっとその言葉が頭から離れない……

今まで何人もの敵を斬ってきたが、あいつだけはそうはっきりとこの俺に向かって、そう訴え掛けてきた……

俺は、間違っていたのか?……

あの時の俺は、あいつを斬って良かったのだろうか?……

今となっては、その答えすらももう出ない……

何故なら、もう時が流れ過ぎた……

あいつは、もうこの世にいないからだ……

出来る事なら、“あいつが今はハーフエルフ以外に転生している事”を切に願う……

今の俺には、本当にそう願うしか何も出来ずにいたのだからだ……

20: 2013/01/24(木) 18:17:11 ID:rDIAd3IU
ガチャ……

カランカラン……

バタン……

「いらっしゃい」ニッコリ

スタスタスタッ……

ストン……

「ママ。いつもの……」

「もう私、生きる気力すら無くなってきてるから……」

「あいよ」

「それと、チーズとジャーキーもお願い……」

「なんか、今日は物凄く最悪な目覚めをしたからね……」

「以前、私を斬り頃した相手が没落した夢を見ちゃった……」

「それで、今の私まで生きる気力すら、朝から大分失われてきたからさ……」

「!?」ムクッ

21: 2013/01/24(木) 18:17:29 ID:rDIAd3IU
店主「そう。あんたも大変ね」

店主「ハーフエルフやって、もう今年で100周年だっけ?」

魔女「ええ。そうだけど……」

店主「あんた以外に、五回転生して五回ともハーフエルフなのって、他にいるの?」

店主「今まで、色んなお客を見てきたけど、あんたみたいなのは完全に初めてなのよ」

剣士「!?」ガーン

魔女「いや、私も好きでなった訳じゃないから……」

魔女「言っとくけど、これについてはエルフの里の族長とかにも、何度も抗議済みだから……」

魔女「私も、皆と同じ様に平穏に暮らしていきたいのに……」

魔女「私、何も悪い事なんてしてないのに……」

魔女「それが、何がいけないって言うのよ?……」

魔女「私にだって、それくらいの権利はあるでしょう?……」

魔女「一体、私が何したと言うのよ!……」

魔女「もうこんな生活、沢山なのよ!……」ポロポロッ

22: 2013/01/24(木) 18:17:42 ID:rDIAd3IU
店主「……そうね」

店主「あんた、一体何をしたんだろうね?」

店主「でもさ、エルフの里の族長とかにも話たんなら、何か解決法は聞かなかったの?」

店主「それくらい、今のあんたなら聞いてきたんでしょ?」

店主「ただでさえ、今のあんたはかなり特殊なのに……」

店主「本当に、神様って奴も今のあんたに対して、物凄く残酷な事をするわね……」

魔女「……」ポロポロッ

剣士「……」ガクッ

カチャカチャ、カチャカチャ……

トポポポポポポポッ……

スッ、ストン……

店主「はい。お待ち」

魔女「ありがとう」ポロポロッ

剣士「……」ゴクゴクゴクッ

23: 2013/01/25(金) 18:03:33 ID:fiPgJrNo
店主「そこの剣士さん、おかわりは?」

店主「次は、あんた何を飲むんだい?」

魔女「……」モグモグモグッ

剣士「そうだな。同じワインをもう一杯」

剣士「それと、そこのハーフエルフと一緒のつまみを頼む」

剣士「そろそろ、勇者はここに来る頃だからな」

剣士「今度こそ、俺を仲間にしてくれると良いんだが……」スッ

店主「あいよ」スッ

魔女「……?」ピタッ

剣士「……」

カチャカチャ、カチャカチャ……

トポポポポポポポッ……

スッ、ストン……

店主「はい。お待ち」

24: 2013/01/25(金) 18:03:47 ID:fiPgJrNo
魔女「そう言えば、その胡散臭い族長が言うには、亡くなった前の族長が原因なんだって……」

魔女「私の母、当時の族長と大喧嘩したから……」

魔女「それが原因にて、今の私はずっとハーフエルフ……」

魔女「その事さえなければ、私はエルフの里にいれた……」

魔女「今みたいな生活、全く送ってなかったらしいの……」ポロポロッ

剣士「……」モグモグモグッ

店主「それで?」

魔女「何でも、当時の族長が好きだった男の人が私の母の婚約者……」

魔女「だから、私の母をエルフの里から何も告げずに強引に追い出した挙げ句、近くの山賊に襲わせた……」

魔女「その時は、幸い子供は出来なかったけど……」

魔女「それが原因で母と大喧嘩になって、私の母に逆ギレの形にてある種の呪いを掛けてしまい……」

魔女「今の私は、そのとばっちりを受けてるんだって……」ポロポロッ

店主「……は?」

剣士「!?」ポトッ

25: 2013/01/25(金) 18:04:03 ID:fiPgJrNo
店主「ちょっと、何なのよ。それ?……」

店主「あんた、それかなりのとばっちりじゃないの!……」

店主「今のあんた、全くもって何もしてないじゃないの!……」

魔女「ええ。そうよ!……」ポロポロッ

店主「それじゃあ、解決法は?……」

店主「何か、今の族長から聞き出せなかったの?……」

魔女「うん。無いに等しい!……」

魔女「いい歳をした、シOタコン性悪女が氏ぬまで口を一切割らなかったから!……」ポロポロッ

店主「そんな!……」

魔女「でも、まだ向こうでも何か解決法はないか、色々と検討に入ってるみたい……」

魔女「あの性悪女、私の母以外にも多数の被害者を増産し続けていてね……」

魔女「ただでさえ、族長の権限はかなり強大……」

魔女「特に、私の母については、かなり残酷な仕打ちを氏ぬまでし続けたんだって……」ポロポロッ

店主「……」

26: 2013/01/25(金) 18:04:16 ID:fiPgJrNo
魔女「だから、私は現族長に抗議したわ……」

魔女「今の族長、私の母の弟だったみたいだから……」

魔女「その際に、私は母の幻影を出して、“私をいつまで不幸にするつもりなの?”……」

魔女「“貴方まで、私の事をレ〇プし続けるの?”……」

魔女「“お願い、もう止めて!……”」

魔女「“お願いだから、もう私を自由にして!”……」

魔女「そう、私は母の幻影を出して現族長に抗議したり、現族長の夢の中で魘したりした……」ポロポロッ

魔女「そしたら、向こうからわざわざ私に使者を送ってきて、“貴方の思いは十分に分かった”……」

魔女「“こちらでもなんとか出来ないかどうか検討をするから、今すぐ毎晩私の夢の中に無惨な姿をした姉さんを出さないでくれ!”……」

魔女「そう、私は現族長からの悲痛な叫びを、何故か聞く羽目になってしまったのよね……」ポロポロッ

店主「……」

剣士「……」

魔女「……」ゴクゴクゴクッ

魔女「……」ストン

27: 2013/01/26(土) 05:23:43 ID:FVoB6DAM
店主「……大体は、分かった」

店主「つまり、どうしようもない性悪女の所為で、今のあんたは物凄く不幸な目に遭ってるのね?……」

店主「それが原因にて、あんたは未だにハーフエルフのままなのよね?……」

魔女「ええ。そうよ……」ポロポロッ

店主「けどさ、あんた五回も転生して辛くないの?……」

店主「今のあんた、このままずっとハーフエルフに転生し続けるの?……」

魔女「……」ポロポロッ

店主「……」

魔女「今の私、少なからずエルフの能力を持ってるから……」

魔女「エルフ特有の“来世でもエルフになれる能力”を、ハーフエルフへと変更されちゃったから……」ポロポロッ

店主「ああ……」

魔女「その結果、私は今後転生したとしても、ずっとハーフエルフ……」

魔女「以前までの記憶や能力等すら、完全にそのまま引き継いだまま……」

魔女「私以外に、そんな特殊な例は存在しない……」ポロポロッ

28: 2013/01/26(土) 05:23:58 ID:FVoB6DAM
魔女「だから、エルフの里もこれに関しては、なんとか出来ないか検討に入ってるみたいなのよね……」

魔女「このまま行くと、エルフの里から女性が消えてしまう……」

魔女「私の母みたいに、無理矢理人間に集団でレ〇プされ続け、ハーフエルフを量産し続けちゃう……」ポロポロッ

店主「……」

魔女「けど、あまり良い案がエルフの里にも、なかなか出ないみたいだからね……」

魔女「私みたいなハーフエルフ、またここ最近は増えてきてるし……」

魔女「今更ながらも、エルフの里自体がこの私に対して、正式にこれまでの事で謝罪をしてくる程だからね……」ポロポロッ

剣士「……」

魔女「……」ゴクゴクゴクッ

魔女「……」ストン

魔女「……」モグモグモグッ

ガチャ……

カランカラン……

バタン……

29: 2013/01/26(土) 05:24:11 ID:FVoB6DAM
スタスタスタッ、ストン……

店主「いらっしゃい」ニッコリ

魔女「……」モグモグモグッ

剣士「おっ……」

勇者「ママ。エールを」

勇者「それと、ある人物に関する情報がほしいんだが」

店主「あいよ」

カチャカチャ、カチャカチャ……

トポポポポポポポッ……

ストン……

店主「はい。お待ち」

勇者「すまない」

店主「それで、誰の事を知りたいの?」

店主「その人、何かしたの?」

30: 2013/01/26(土) 05:24:28 ID:FVoB6DAM
勇者「いや、特には」

勇者「俺は、その人をウチの仲間に引き入れたいだけだ」

剣士「!?」ピカァ!

店主「それで、その人の特徴は?」

店主「男か女、どっちなのかしら?」

剣士「……」ゴクリ

勇者「俺が探してるのは、かなり幸薄な女だ」

勇者「でも、戦闘面に関してはかなりの腕前」

勇者「特徴は、ハーフエルフで金の長髪の爆乳美女」

勇者「確か、口癖は“私は好きでハーフエルフになった訳じゃない!”」

勇者「数々の伝説を作っている、年齢は18歳くらいのハーフエルフの女なんだが」

剣士「……」ガクッ

魔女「……」フキフキ

店主「あらあら……」ニヤニヤ

32: 2013/01/26(土) 18:42:50 ID:FVoB6DAM
彼もまた魔女同様に苦労してます。

33: 2013/01/26(土) 18:43:53 ID:FVoB6DAM
魔女「それって、まさか私の事?……」

魔女「私を探しに、わざわざこんな辺境の地にまで来たの?……」シャキン

勇者「!?」ガタッ

魔女「あんたも、結構物好きね……」

魔女「私みたいな女を、仲間にしようとするなんて……」

勇者「じゃあ、あんたが……」

勇者「あんたが、あの伝説の傭兵部隊を率いるハーフエルフ!?……」キラキラ

剣士「!?」ガーン

魔女「……ええ。そうよ」ニッコリ

魔女「私が、貴方の探している例のハーフエルフよ」

魔女「今は、ここのマスターの元でお世話になっていてね」

魔女「今でも、冒険者として各地を出歩いていたりもしているわ」

勇者「おおっ……!」キラキラ

剣士「……」ズーン

34: 2013/01/26(土) 18:44:09 ID:FVoB6DAM
勇者「お会い出来て光栄だ。カーネル」ニッコリ

勇者「俺の名は、勇者×××」

勇者「これでも、一応は勇者をしている」

魔女「初めまして」ニッコリ

勇者「今回は、あんたに是非とも協力してもらいたい事があって、ここまで来た!」

勇者「実は、俺の仲間がとある元騎士によって重傷を負わされた!」

勇者「そいつは、俺の仲間の武器や所持金やアイテム等を全て奪い、今現在も逃走をしてしまってるんだ!」

剣士「!?」

勇者「それで、是非ともあんたにその元騎士の捕縛に協力をしてもらいたい!」

勇者「そいつはロメオと名乗り、目当ての品や女をジュリエットと名付けて力付くで何もかも強奪!」

勇者「その被害は、民間人も含めたらかなりのもの!」

勇者「中には、無理矢理レ〇プされて妊娠してしまい、自ら命を絶った者さえもいる!」

魔女「酷い!」

剣士「……」ダラダラダラッ

35: 2013/01/26(土) 18:44:21 ID:FVoB6DAM
勇者「だから、是非ともあんたには協力をしてもらいたい!」

勇者「被害に遭った俺の仲間も、あんたと同じハーフエルフ!」

勇者「今回は、そいつからの紹介でここまで来た!」

勇者「確か、あんたも周囲にはジュリエットと名乗ってるよな?」

勇者「あんたの使用する特殊な召喚術等で、その元騎士を捕縛するのに是非とも協力をしてもらいたい!」

剣士「……」ガクガク

魔女「ええ、任せといて!」

魔女「必ず、私がこの手で地獄に突き落としてあげるわ!」ニッコリ

勇者「よっしゃあ――――っ!」ギュッ

魔女「よろしく!」ギュッ

店主「あらあら」ニヤニヤ、チラリ

剣士「マスター、勘定を頼む……」ガタッ

剣士「なんか、急に悪酔いした……」ガクガク

剣士「少し、風に当たってくるわ……」ガクガク

店主「あいよ」ニヤニヤ

36: 2013/01/26(土) 18:44:35 ID:FVoB6DAM
正直、俺はあの二人のやり取りを見て、強烈な寒気を感じた。

全くもって事実無根の噂を流され、俺は足早に酒場を後にした。

多分、ママは気づいていたのだろう。

俺が、勇者の探している人物だと。

だが、俺は確かに今まで数多くの盗みをしてきたが、レ〇プまではしていない。

あれは、“借金や生活苦が原因”で、仕方なくやっていただけなんだ。

一体、誰がそんな事実無根な噂を流したのだろうか?

あの時のハーフエルフは、またしてもハーフエルフに転生してしまっていたのか……

しかし、時の流れとはあまりにも残酷なものだな。

幸薄なハーフエルフに、それを討伐しに来た一人の従騎士。

思えば、俺があのハーフエルフと出会ったのは、あの時が最初。

それ以来、俺は騎士としての経験を着々と積み上げ、一人前の騎士となり……

今ではすっかり騎士の身分を剥奪されてしまったが、あの時が一番俺にとっては輝いていた瞬間でもあったのだった。

37: 2013/01/27(日) 19:03:34 ID:ZnYdOlCk
~とある船着き場~

その頃――

ザザーーン、ザザーーン……

従者A「のどかだなぁ……」

従者B「ああ、そうだな……」

従者A「それにしても、勇者は遅いな……」

従者A「勇者どころか、他のメンツすらいないんだが……」

従者B「ああ。そうだな……」ズズッ

従者A「もしかして、俺達置いてかれたとか?……」

従者A「また、色々と理由を付けられてハブられた様だな……」ポリポリ

従者B「ああ、多分な……」

従者A「相変わらず、人間は差別が好きなんだな……」

従者A「俺達も、好きで生まれた訳でもないのにな……」ズズッ

従者B「ああ。そうだな……」ポリポリ

ザザーーン、ザザーーン……

38: 2013/01/27(日) 19:04:14 ID:ZnYdOlCk
スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ……

漁師「ん? あんたら、旅人か?」

漁師「わざわざ、よくもまぁこんな所に来たもんだなぁ」

従者A「あ、どうも」

従者B「少し、ここまでお使いで来まして」

漁師「そうか。あんたらも大変だな」

漁師「ここは、主に故郷を追われた者達がよく集まる島なんだ」

漁師「つい最近、美人なんだがかなり癖のあるハーフエルフが来てな」

漁師「あんた達も、そいつが目当てなのか?」

従者A「ええ。そうです」

従者A「主に、ウチの主人がなんですけど」

ザザーーン、ザザーーン……

39: 2013/01/27(日) 19:04:41 ID:ZnYdOlCk
漁師「そうか。そりゃあ、災難だな」

漁師「あの女は、色々と幸薄だからな」

漁師「大方、また何か厄介事に絡まれたんだろ」

漁師「以前も、ここにわざわざエルフの里から使者が来た」

漁師「それからすぐ、あの女はかなり大きな土産を持って、ここに帰還してきたからな」ハァ……

釣り人「……」ガタッ

従者B「厄介事?」

従者B「そんなに、その人幸薄なんですか?」

従者B「俺達の聞いた話では、かなり腕のある冒険者だとか」

従者A「俺達は、そう聞いてここまで来てるんですけど」

漁師「……は?」

釣り人「……」シュルシュル

ザザーーン、ザザーーン……

カァ、カァ、カァ……

40: 2013/01/28(月) 11:46:37 ID:K.8eWCOA
漁師「おいおい、何なんだよそれは?……」

漁師「あの女、そんなに強かったのか?……」

従者A「ええ。そう聞いてますけど」

従者B「そうじゃないんですか?」

漁師「いや、それ冗談だろ……」

漁師「それだったら、この島の住民達が皆氏んでるだろ……」アセアセ

従者A「はい?」

釣り人「いや、それは確からしいぞ」

釣り人「あの女、本気出したら、この島なんかいとも簡単に制圧出来るらしいぞ」ヌッ

漁師「ま、まじかよ……!?」ガーン

釣り人「特に、自分と同じハーフエルフが酷い目に遭っていた時なんかは、私兵を率いてその場所に突撃をしてるみたいだ」

釣り人「その所為で、その場所は物資等を全て買い上げられて、被害に遭った全てのハーフエルフをあの女は一人残らず保護」

釣り人「ここに、やたらとハーフエルフが増えたのは、全てそれが原因らしい」ヨイショ

釣り人「あの女、更にはエルフの里とは完全に和解したそうだ」スタッ

ザザーーン、ザザーーン……

41: 2013/01/28(月) 11:46:49 ID:K.8eWCOA
漁師「じゃあ俺達、かなりヤバイんじゃないのか!?……」

漁師「下手したら、確実に殺されるんじゃないか!?……」

漁師「今まで、あいつらには酷い目に遭わせてきた……」

漁師「このまま行くと、この島は完全に乗っ取られるんじゃないか!?……」

釣り人「まぁ、確実にな」ポリポリ

漁師「そ、そんな……」ダラダラッ

釣り人「でも、あの女はこっちが何もしなければ、何もしてこないぞ」

釣り人「あの女がその気なら、とうに今頃俺達は奴隷として売買されてるぞ」

漁師「!?」ビクッ

釣り人「実際、あいつはかなり苦労してるみたいだ」

釣り人「もう百年もの間、ずっと誰かに裏切られたり追われたりする毎日」

釣り人「特に、この島に初めて来た時もそんな感じだった」

釣り人「俺も初めてあいつと出会った時は、自身の目を完全に疑っちまったからな」ハァ……

漁師「……」ダラダラッ

ザザーーン、ザザーーン……

42: 2013/01/28(月) 11:47:05 ID:K.8eWCOA
釣り人「まぁ、あいつに殺されたくなかったら、お前は嫌がらせを止めるんだな」

釣り人「ここ最近のあいつ、お前の事をとことん調べてたぞ」

釣り人「例えば、お前の生まれ故郷や現在の自宅や家族構成」

釣り人「お前は、漁に出てていなかったけど、今のお前かなりヤバイらしいぞ」ズズッ

漁師「!?」ビクッ

釣り人「まぁ、そう言う事だから、お前は夜道には気を付けろ」

釣り人「そこのお二人さん。あんたらも、あの女と同じハーフエルフなんだろ?」

従者達「!?」

釣り人「俺も、あいつとは、一時期生まれ故郷が同じだったからな」

釣り人「相変わらず、誰かにずっと騙され利用され、挙げ句の果てには裏切られるだけの生活」

釣り人「俺自身も、そんなあいつの姿を間近で見てきたからな」

釣り人「特に、あいつは何度でも何度も同じ姿で蘇り続けるんだ」

従者達「……」

ザザーーン、ザザーーン……

43: 2013/01/28(月) 11:48:35 ID:K.8eWCOA
従者A「よく、俺達がハーフエルフだと分かりましたね……」

従者「確かに、俺達はハーフエルフです……」

従者A「でも、そんなにすぐ分かるものなんですか?……」

従者A「あまり、人間達とは身体的にも変わりないと思いますが……」

従者B「ああ。そうだな」

漁師「……」ガクガクガクッ

釣り人「そりゃあ、そうだ」

釣り人「あんたら、さっきエルフ語で話してただろ?」

釣り人「人間の言語とエルフ語を話せるのは、ハーフエルフぐらいだ」

釣り人「エルフの言語は、人間にとってはとても難しい」

釣り人「それを自然に話せるのは、今はまだハーフエルフぐらいなもんなんだよ」

従者A「ああ……」

従者B「つい癖で……」

ザザーーン、ザザーーン……

44: 2013/01/28(月) 11:48:49 ID:K.8eWCOA
釣り人「それに、あんたらの今その手に持ってる物」

釣り人「それは、ドライソーセージとワインだ」

釣り人「普通、そんな外国産のソーセージやワインを、こんな船着き場では食わない」

釣り人「あんたらが今食ってるソーセージは、あの女が考えた特殊な召喚術によるもの」

釣り人「それを使って、本来は外国や貴族向け等の食料を召喚」

釣り人「じゃなきゃ、すぐハーフエルフだなんて見破られたりはしないんだよ」

漁師「……」ガクガクガクッ

釣り人「まぁ、この島では“ハーフエルフを泣かせると、ハーフエルフに泣かされる”と言うことわざがある」

釣り人「実際、俺もあの女に泣かされた者の一人だ」

釣り人「昔は、よく皆してあいつの事を泣かせててな」

釣り人「それが原因で、今ではこの島の住民」

釣り人「妻や子供に罵倒され裏切られ、無一文でこの島に流れ着いてきた」

釣り人「その後、流れ着いた後はこの島で釣りをする毎日」

釣り人「ある意味、この島は俺にとっては天国とも言える」

ザザーーン、ザザーーン……

45: 2013/01/28(月) 11:49:09 ID:K.8eWCOA
釣り人「後、この島ではハーフエルフだと言う理由で差別する奴は、あまりいないぞ」

釣り人「そこの漁師は、つい最近ここに流れ着いてきてな」

釣り人「まだ、あまりこの島の事についてはよく分かってないんだ」

釣り人「実際、あんたらの主人が会いに来たあの女は、この島では数少ない有力者」

釣り人「本来なら、明らかにエルフの里では貴族階級」

釣り人「それが不運にも、今では俺らと全く同じ様な庶民生活を送る毎日」

釣り人「それで、あの女は幸薄の女だと言われてるんだ」ハァ……

漁師「……」ガクガクガクッ

従者A「そ、そうなんですか……」

従者A「想像以上に、あの人は苦労してたんですね……」

従者A「本来なら、明らかな貴族階級……」

従者A「それが、今ではただの庶民だなんて……」

従者B「ああ。そうだな……」

釣り人「……」

ザザーーン、ザザーーン……

47: 2013/01/29(火) 07:10:57 ID:Cw7eRoKA
ええ、そうです。

48: 2013/01/29(火) 07:11:22 ID:Cw7eRoKA
従者A「でも、よくそんな生活で我慢してますね?……」

従者A「普通なら、明らかにそれは耐えられない……」

従者A「それが、もし仮に俺達だったとしても、なかなかその現実については受け入れ難いと思いますが……」

従者B「……」

漁師「……」ガクガクガクッ

釣り人「さぁ、それについてはあいつに聞いてくれ」

釣り人「あいつはよく、この島の酒場で飲んだぐれてる」

釣り人「つい最近は、何故かあいつの魔術の師匠が流れてきてな」

釣り人「その人と一緒に、よく酒場で飲んだりしてるみたいだからな」

漁師「……」

ザザーーン、ザザーーン……

カァ、カァ、カァ……

ストトトトトッ、スストトトトトッ……

ピタッ……

剣士「すまん。ちょっと良いか?」

49: 2013/01/29(火) 07:11:37 ID:Cw7eRoKA
釣り人「ん? 何だ?」

釣り人「そこの剣士さん、俺らに用があんのか?」

剣士「ああ。そうだ」

釣り人「悪いが、もう船は出せねぇぞ」

釣り人「これから、確実に一雨来る」

釣り人「つうか、今からなら、この島には生きて戻ってはこれねぇよ」

剣士「!?」ガーン

釣り人「まぁ、どうしてもって言うのなら、そこの漁師が船を出してくれるぞ」クイクイ

釣り人「つい最近、こいつハーフエルフ泣かせたんだわ」

釣り人「その所為か、そのハーフエルフが今復讐に燃えていてな」

釣り人「あの女に復讐される前に、この島から出たいんだとよ」

釣り人「今のあんたと全く同じ様にな」

漁師「……」ガクガクガクッ

従者達「……」

ザザーーン、ザザーーン……

50: 2013/01/29(火) 07:12:17 ID:Cw7eRoKA
剣士「そうか……」

剣士「それで、船は出してくれるのか?……」

剣士「今すぐ、ここを出たいんだが……」

漁師「む、無理だな……」

漁師「もし仮に、あんたがハーフエルフから守ってくれると言うのなら別なんだが……」ガクガクガクッ

剣士「……訳を説明しろ」

漁師「今の俺、本気でヤベェんだわ……」

漁師「このまま行くと、本気であの女に殺されてしまうんだわ……」ガクガクガクッ

剣士「!?」ガーン

漁師「それで、どうする?……」

漁師「あんた、今から船出してほしいか?……」

漁師「俺的には、まだ隠れてた方が良いと思うぞ……」

漁師「この空じゃあ、どこももう船は出せねぇ……」

漁師「今出したら、確実に俺らまで氏んでしまうからな……」ガクガクガクッ

ザザーーン、ザザーーン……

51: 2013/01/29(火) 07:12:38 ID:Cw7eRoKA
剣士「分かった。今回は諦める……」

剣士「だが、明日は出してくれ……」

剣士「それと、この辺に宿はないか?……」

剣士「出来れば、酒場以外な場所を頼む……」

釣り人「まずないな」

剣士「え?」

釣り人「酒場の所くらいしか、この島には宿はないぞ」

剣士「……」ガクッ

釣り人「あんた、もしかしてあの女に追われてるのか?」

釣り人「それだったら、もう既に諦めろ」

釣り人「この島では、“ハーフエルフを敵に回したら、生きて帰る事は出来ない”」

釣り人「実際、俺は何人も見てきた」

釣り人「あの女を敵に回して、己どころか生まれ故郷に住む家族までもが被害に遭っている現場をな」

ザザーーン、ザザーーン……

52: 2013/01/29(火) 07:12:54 ID:Cw7eRoKA
剣士「なら、どうにかして回避する方法ないか?……」

剣士「あの女から、どうやったら逃げれるんだ?……」

釣り人「う~ん、まずは謝罪してこい」

釣り人「謝罪して、あの女が抱いている恨みを全て消して貰ってこい」

剣士「……」

釣り人「それが終わったら、ここの炭鉱で四年間勤務しろ」

釣り人「今でも、この島の炭鉱は人手不足」

釣り人「それが終われば、晴れて無事に自由の身だ」

剣士「……」

釣り人「まぁ、それが嫌なら諦めて殺されるんだな」

釣り人「でもあいつ、サクッとすぐには殺さないぞ」

釣り人「特にあいつに酷い仕打ちをした奴は、苦しめて苦しめて苦しめぬいて、いざ命乞いをし始めてからが本番」

釣り人「そこからは、一生奴隷としてコキ使われる毎日」

釣り人「勿論、家族まで道連れでな」

ザザーーン、ザザーーン……

56: 2013/01/30(水) 12:40:33 ID:N4lIc9/U
~とある酒場前~

ゴロロッ、ゴロロッ……

魔女「なんか、今日は雨が降ってきそうね」

魔女「早めに、宿を決めといた方が良いんじゃない?」

勇者「ああ。そうだな」

魔女「それで、貴方の仲間のハーフエルフは?」

魔女「どこか、その辺を見て回ってるのかしら?」

勇者「多分、そうだと思う」

魔女「う~ん。やっぱ、今日は朝から不吉な予感がしてるかも」

魔女「さっきの剣士、誰かに似てる様な気がするの」

勇者「……?」

魔女「確か、昔会った事があるはずなのよね……」

魔女「あれから、もう20年経つし……」

魔女「さっきの剣士、今すぐ見つけた方が良いかもしれないわね……」

勇者「……は?」

57: 2013/01/30(水) 12:40:51 ID:N4lIc9/U
勇者「カーネル。どう言う事だ?」

勇者「あの剣士、何かあるのか?」

魔女「ええ、多分」

勇者「いや、それはないだろう」

勇者「あんな悲壮感漂う落ちぶれ剣士が、何かある訳ないだろう」

魔女「そうかしら?」

勇者「それに、俺の仲間を襲った奴はもっと勇ましかった」

勇者「それは、もう鬼神のごとき強さ」

勇者「あんな安物のワインを啜り飲みながら酔いつぶれていた、悲壮感漂う剣士が何かあるはずない」

魔女「……」

勇者「多分、これはあんたの思い違いだと思う」

勇者「あいつの装備、かなり貧弱だった」

勇者「今時珍しいくらい、安物の剣に年代物の革鎧」

勇者「元々、どっかの下級兵士崩れだろ」

勇者「あんな奴が、俺の仲間を襲った奴だとは信じたくない!」

58: 2013/01/30(水) 12:41:15 ID:N4lIc9/U
魔女「う~ん。やっぱ、思い違いかしら?」

魔女「あいつ、生きてたら確実に30越えてるはずだからさぁ」

魔女「師匠が言うには、あの後一人前の騎士になったみたいなのよね」

魔女「私、あの後一度も会ってなかったし」

魔女「あんな悲壮感漂う落ちぶれ剣士に昔斬り殺されたなんて、出来れば私も信じたくないわ」

勇者「同感だな」

魔女「でも、貴方の仲間が話してくれた特徴には、少なからず一致してるのよね」

魔女「特に、髭の濃さや髪の長さ」

魔女「肌の色合いに、唯一違うのはあの氏んだ魚みたいな目」

魔女「後は、身長や体格に剣士だと言う事は一致している」

魔女「まぁ、この天気じゃもう船も出せないだろうし」

魔女「宿は、今さっき私達がいた酒場くらいなもんだからね」

勇者「……」

ストトトトトッ、ストトトトトッ……

「待て~~っ!」

61: 2013/01/31(木) 07:38:25 ID:jtmeHhHw
勇者「?」キョロキョロ

魔女「何かしら?」キョロキョロ

勇者「……」キョロキョロ

魔女「……」キョロキョロ

「頼む。そいつを誰か捕まえてくれ~~!」

魔女「あ……」

ストトトトトッ、ストトトトトッ……

「くっ……」

ストトトトトッ、ストトトトトッ……

「待て~~っ!」

勇者「げっ……」

「ああ。まだ追いかけてくる……」

「あいつら、不氏身か?……」

「ついさっき、膝から下は斬りつけたはずなのに!……」

勇者「……」

62: 2013/01/31(木) 07:38:35 ID:jtmeHhHw
「魔法使い。もう一度火炎攻撃!」

「今後こそ、あのハーフエルフ共を全て焼き付くしてくれ!」

「了解した!」

ストトトトトッ、ストトトトトッ……

ピタッ、ササッ……

「……」スチャ

「てやっ!」ボワッ!

「わわっ!?」ササッ、ドサッ

「魔法使い。ナイスだ!」

「さっさと、勇者と合流するぞ!」

「おう!」

ストトトトトッ、ストトトトトッ……

「ああ、僕達の家が~~っ!?」

「僕達の家が~~っ!?」ポロポロッ

ゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴッ……

63: 2013/01/31(木) 07:38:46 ID:jtmeHhHw
ガヤガヤッ、ガヤガヤッ……

「おい。誰か消火手伝え!」

「ハーフエルフの自宅が放火された!」

「これがバレたら、俺らまで氏ぬぞ!」

「せっかく、明日妻や子供に会えると思ったのに、全てが台無しになるぞ!」アセアセ

魔女「……」

「お姉ちゃん。早く来て!」

「僕達の家が、僕達の家が――――っ!!」ポロポロッ

ストトトトトッ、ストトトトトッ……

勇者「……」

「ほれ、水を持ってきた!」

「早く消火しろ!」

「皆、早く手伝ってくれ!」

「このままだと、俺達の家まで燃え広がるぞ!」アセアセ

ゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴッ……

68: 2013/01/31(木) 18:30:11 ID:jtmeHhHw
ストトトトトッ、ストトトトトッ……

ピタッ、ササッ……

警備兵「申し上げます!」

警備兵「勇者様の仲間が、ハーフエルフの自宅に放火!」

警備兵「今現在、最寄りの住民達が消火活動を開始!」

警備兵「現在も、勇者様の仲間は逃走を続けております!」

勇者「……」

魔女「大至急、勇者様の仲間を捕縛せよ!」

魔女「伯爵様と司教様にもすぐに報告!」

魔女「船着き場をすぐに封鎖!」

魔女「住民の避難及び負傷者の救援並びに消火活動を継続せよ!」

警備兵「はっ!」

勇者「……」

ムクッ、クルッ……

ストトトトトッ、ストトトトトッ……

69: 2013/01/31(木) 18:30:24 ID:jtmeHhHw
魔女「さて、勇者様。何か申し開きは?」

魔女「貴方のお仲間の不祥事、どう弁解をなさるつもりなのですか?」ニッコリ

勇者「そ、それは……」ダラダラッ

魔女「はぁ……」

魔女「せっかく、あそこの住宅は建てたばっかなのに……」

魔女「ついこの間、私が保護したハーフエルフ達の為に、伯爵様の許可を取って建てたばかりの住宅なのに……」ムスッ

勇者「誠に、申し訳ない!」ササッ、ペコッ

魔女「……」

勇者「……」

魔女「まず、あの住宅の建造費用については全額弁償ね」

魔女「それが終われば、国王陛下に勇者一行による民間人への強盗致傷及び放火の罪に関する報告させてもらうわ」

魔女「後は、この島を治める伯爵様に勇者一行を裁いてもらい、有罪ならこの島で四年間奴隷として炭鉱勤務」

魔女「まぁ、良くて住宅の再建費用は取り戻せるわね」

魔女「勿論、全額弁償していただけますよね? 勇者様」ニッコリ

勇者「は、はい……」ガクガク

70: 2013/01/31(木) 18:30:36 ID:jtmeHhHw
魔女「とりあえず、あんた今いくら持ってるの?」

魔女「出来れば、早期に支払って貰いたいんだけど」

勇者「……」ガクガク

魔女「まさか、あの元騎士に全額奪われたとか?」

魔女「勇者ともあろう人物が、強盗被害に遭っていたとでも言うの?」

勇者「誠に、申し訳ない……」ガクガク

魔女「はぁ、呆れた……」

魔女「まさか、勇者がここまで弱かったとは……」

勇者「……」ガクガク

魔女「とりあえず、あんたの仲間を先に捕まえましょ」

魔女「まだ、そう遠くには行ってないと思うし」

魔女「今のあんた、私の取った人質だから」

魔女「だから、あんたは絶対に逃げないでよね」ニッコリ

勇者「はっ、仰せのままに!……」ガクガク

プシューーーーッ……

71: 2013/01/31(木) 18:30:47 ID:jtmeHhHw
勇者(こりゃあ、まずい事になったなぁ……)

勇者(まさか、あいつらがあんなヘマをするなんて……)

勇者(つうか、戦士に魔法使い、お前ら一生恨むぞ……)

勇者(僧侶は、まだ何もしてないみたいだけど、あいつらだけでも十分過ぎる……)ガクガク

ガヤガヤッ、ガヤガヤッ……

勇者(なるべく、被害を軽減しないとな……)

勇者(このままでは、俺の命すら危ない……)

勇者(ただでさえ、カーネルを敵に回したくなかったのに……)

勇者(カーネルの持つ戦力は、今後の展開を大きく左右する程なのだからな……)ガクガク

ガヤガヤッ、ガヤガヤッ……

「誰か、また水を持ってきてくれ!」

「このままじゃ、マジでヤバイ!」

「司教様達が、逃げ遅れた!」

「教会にまで、引火したぞ――――っ!!」アセアセ

勇者「!?」ガーン

72: 2013/01/31(木) 18:31:00 ID:jtmeHhHw
「くそっ、火が強すぎる!……」

「火が強すぎて、司教様の救出が出来ない!」

「誰か、水系魔法の援軍を頼む!」

「このままだと、役場や自警団本部にも被害が出るぞ!」

「早く、市場にも被害が出る前に消火を急ぐんだ!」アセアセ

プシューーーーッ、プシューーーーッ……

ストトトトトッ、ストトトトトッ……

魔女「あらあら、かなり大事になってきたわね……」

魔女「これ、下手したら勇者の身分剥奪もの……」

魔女「場合によっては、勇者一行全員が氏刑になるわよ……」

勇者「……」ガクガク

魔女「あ、ちなみに私は水系魔法は使えないから」

魔女「主に、私は燃やす方……」

魔女「そう、今みたいな火炎が私の持つ属性だからね」

勇者「orz……」ガーン

73: 2013/02/01(金) 07:27:09 ID:iu7OA4DE
ストトトトトッ、ストトトトトッ……

ピタッ、ササッ……

警備兵2「申し上げます!」

警備兵2「逃げた犯人達は、船着き場周辺にて発見!」

警備兵2「ですが、不審な剣士一名が外部から来たハーフエルフ及び民間人4名を、船着き場にて殺害!」

警備兵2「現在も、船着き場にて駆け付けた警備隊員らを相手に交戦しております!」

魔女「何ですって!?」

勇者「!?」ムスッ

魔女「至急、その不審な剣士をすぐに捕縛しなさい!」

魔女「その不審な剣士は、私達が追っている重罪人!」

魔女「あいつは、数々の強盗や強姦致氏を働いてきた!」

魔女「だから、すぐに捕縛しなさい!」

警備兵2「はっ!」

ムクッ、クルッ……

ストトトトトッ、ストトトトトッ……

74: 2013/02/01(金) 07:27:24 ID:iu7OA4DE
魔女「まさか、あいつがあの時の従騎士なの?……」

魔女「本当に、あいつもあそこまで落ちぶれていたの?……」

勇者「……」ガクガク

魔女「いや、違う。そんなはずない……」

魔女「師匠が言うには、まだ騎士として輝かしい働きをしているはずなのに……」

勇者「……」ガクガク

魔女「ねぇ、勇者。あんたはどう思う?……」

魔女「あいつが、そんな事をすると思う?……」

勇者「……」ガクガク

魔女「はぁ……」

魔女「勇者は、何も答えてくれないんだ……」

魔女「今の私、また裏切られたわ……」

勇者「……」ガクガク

ガヤガヤッ、ガヤガヤッ……

プシューーーーッ、プシューーーーッ……

75: 2013/02/01(金) 07:27:36 ID:iu7OA4DE
魔女「まぁ、今はそんな事なんてどうでも良いわ……」

魔女「あんたの仲間のハーフエルフは、一体どこ?……」

魔女「この島のどこにいるの?……」

勇者「ふ、船着き場です……」ガクガク

魔女「……そう」

魔女「まさかとは思ったけど、船着き場だったなんて……」

魔女「これで、あんたの仲間のハーフエルフは全て氏んだ……」

魔女「また、今回も最悪な結末だわ……」

勇者「……」

魔女「ねぇ、勇者……」

魔女「これは、私にとっては因果応報なの?……」

魔女「それとも、自業自得なの?」

勇者「……」ガクガク

ガヤガヤッ、ガヤガヤッ……

プシューーーーッ、プシューーーーッ……

76: 2013/02/01(金) 07:27:48 ID:iu7OA4DE
魔女「……そう」

魔女「また、そうやって何も答えてくれないんだ……」

魔女「勇者もまた、師匠やあの従騎士達と全く同じ気持ちなんだ……」ポロポロッ

勇者「……」ガクガク

魔女「結局、誰も私に味方してくれないのね……」

魔女「また、私は誰かに裏切られてしまうのね……」ポロポロッ

勇者「……」ガクガク

魔女「なら、仕方ない……」

魔女「私が、全て消してあげるわ……」

魔女「あの落ちぶれ騎士と共に、全てを葬ってあげるわ……」ブワッ

勇者「!?」ビクッ

「待て、ジュリエット。早まるな!」

「お主は、まだ氏んではならん!」

魔女「!?」プシューーーーッ

勇者「あ、あんたは……!?」ガクガク

77: 2013/02/01(金) 07:28:01 ID:iu7OA4DE
「ジュリエット。まだ氏ぬな!」

「お主は、まだ氏んではならんのじゃ!」

「幸い、儂は蘇生魔法を使える!」

「それで、あ奴等を蘇らせてやる!」

「じゃから、お主は氏ぬ必要はない!」

「良いか? 絶対に氏ぬのじゃないぞ?」スタッ

魔女「……はっ、仰せのままに」ペコッ

勇者「……?」ムクッ

鹿「……」トコトコ、ピタッ

魔女「……」フキフキ

勇者「……鹿?」キョトン

鹿「……」スリスリ

魔女「師匠……」ニッコリ

勇者「えっ!?」ガーン

プシューーーーッ、プシューーーーッ……

80: 2013/02/02(土) 06:22:53 ID:AWMoRzEo
~とある船着き場~

ザザーーン、ザザーーン……

カァ、カァ、カァ……

剣士(ああ、またやってしまったな……)

剣士(たかがハーフエルフごときに、つい感情的になってしまった……)

従者A「……」

剣士(しかし、何故ハーフエルフがこんな良いワインを?……)スッ

剣士(これ、明らかに貴族向けのワインだろ……)ムカムカ

従者B「……」

剣士(まぁ、今となってはどうでも良いか……)

剣士(ついうっかり、その辺にいた漁師や釣り人も斬り頃してしまったが……)

剣士(元々、ハーフエルフごときがこんな良いワインなんか飲んでんじゃねぇよ……)

剣士(俺ですら、こんな良いワイン飲んだ事ないのに……)

剣士(本当に、色々とムカつくな……)ハァ……

ザザーーン、ザザーーン……

81: 2013/02/02(土) 06:23:07 ID:AWMoRzEo
戦士「おい、そこのおっさん」

戦士「お前、一体何者だ!?」

戦士「何故、お前なんかが勇者のハーフエルフを頃してるんだ!?」

剣士「……」モグモグモグッ

戦士「場合によっては、俺達はお前の事を斬らなきゃならない!」

戦士「そこに転がってる二匹は、一応勇者の持ち物でな!」

戦士「それをお前が叩き斬ってくれたから、俺達はお前の相手までしなくちゃいけなくなっちまったんだよ!」スチャ

剣士「……」ゴクゴクゴクッ

魔法使い「ほう、やけに余裕だな……」

魔法使い「あんた、俺達が怖くないのか?……」

魔法使い「俺達は、泣く子も黙る勇者一行!」

魔法使い「俺達は、神のご意志によって選ばれた存在なのだ!」スチャ

剣士「……あ?」ムカムカ

戦士&魔法使い「!?」ビクッ

ザザーーン、ザザーーン……

82: 2013/02/02(土) 06:23:22 ID:AWMoRzEo
剣士「おい、貴様ら。今なんて言った?」

剣士「自分達は選ばれた存在だ?」

剣士「貴様ら、本気でそう思ってんのか?」ムカムカ

戦士「……」ビクビクッ

剣士「言っとくがな、今の貴様らは単なる糞生意気なガキだ!」

剣士「たかが、警備兵数人斬ったくらいでいい気になるな!」ムカムカ

魔法使い「……」ビクビクッ

剣士「それに、今の貴様ら対人戦闘はまだまだだぞ!」

剣士「俺は、数多くの強者を見てきた!」

剣士「それに比べたら、今のお前らは単なるヒヨコ!」

剣士「俺が今まで戦ってきた奴等の方が、むしろ神に選ばれる様な奴等ばかりだったんだよ!」ドヤッ!

戦士「!?」ガーン

魔法使い「う、嘘だ!?……」ガーン

ポツ、ポツ、ポツ……

ザザーーン、ザザーーン……

83: 2013/02/02(土) 06:23:34 ID:AWMoRzEo
魔法使い「嘘だ、嘘だ、嘘だ!」

魔法使い「そんなのあんたの言うデタラメだ!」

魔法使い「あんた、俺達に対して嘘言ってんじゃねぇ!」

魔法使い「俺達は、神に選ばれた存在だ!」

魔法使い「そんなの絶対に嘘に決まってる!」ムカムカ

剣士「……」モグモグモグッ

ゴロゴロゴロッ、ゴロゴロゴロッ……

ポツ、ポツ、ポツ、ポツ、ポツ、ポツ……

戦士「ああ、そうだ!……」

戦士「俺達は、神にも勇者にも選ばれた存在だ!」

戦士「そんな俺らが、目の前にいる格下の付けたランクに惑わされない!」

戦士「いやむしろ、お前の方が単なるヒヨコだ!」

戦士「そんなみすぼらしい格好をしている奴の言う事が、本気で信用出来るか!」ムカムカ

剣士「……」ゴクゴクゴクッ

ザザーーン、ザザーーン……

84: 2013/02/02(土) 06:23:46 ID:AWMoRzEo
剣士「いや、嘘じゃねぇよ!」

剣士「俺は、今の貴様らに本当の事を言ってんだよ!」

剣士「俺は、こう見えても元騎士でな、数々の戦場を駆け巡ってきた!」

剣士「特に、騎士同士のイベントの一つでもある馬上槍試合!」

剣士「その試合が開かれる時、各地から腕に覚えのある騎士達が多数駆けつけてくる!」

剣士「貴様らが、神にも勇者にも選ばれた存分なんて、数百年早いんだよ!」ブアッ!

ドゴオオオオーーーーン!

戦士「!?」ドサッ

魔法使い「うわっ!?」ドサッ

剣士「……」ストン、ムクッ

戦士「……」ビクビクッ

魔法使い「……」ビクビクッ

剣士「……」スチャ

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

85: 2013/02/02(土) 06:24:01 ID:AWMoRzEo
剣士「お前ら、そんなに信じられないか?」

剣士「そんなに、自分達が弱いと言う事を認めたくないのか?」

戦士「……」ビクビクッ

剣士「なら、今ここでお前らに証明してやるよ」

剣士「所詮、お前らはただの糞ガキ」

剣士「世の中の厳しさ、この俺がとくと教えてやるよ!」タァラン

魔法使い「……」ビクビクッ

剣士「ん? どうした?」

剣士「掛かって来ないのか?」

戦士&魔法使い「……」ビクビク

剣士「まぁ良い」

剣士「お前らも、どうせ生きてここから出れねぇんだ!」

剣士「あの女に殺されねぇ事を、しかと感謝するんだな!」スチャ

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

91: 2013/02/03(日) 07:18:21 ID:cC2Vl9q2
「全員、すぐに武器を捨てろ!」

「さぁ、早く捨てるんだ!」

剣士「!?」

戦士「何だ!?」

魔法使い「……敵の援軍か?」

剣士「ちっ……」

ササササッ、ササササッ、ピタッ……

スチャ、スチャ、スチャ……

ヒヒィーーン!

警備隊長「XXX島警備隊だ!」

警備隊長「さぁ、早く武器を捨てろ!」

警備隊長「全員、大人しく投降をするんだ!」

警備兵達「……」

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

92: 2013/02/03(日) 07:18:37 ID:cC2Vl9q2
剣士「ほぅ、島の警備隊か……」

剣士「今度は、多数の兵を連れてきたんだな……」

剣士「だが、そんな兵はただの雑魚ばかり!」

剣士「今の俺には、そんな子供だましは通用しない!」

警備兵達「……」

警備隊長「いや、それはどうかな?」

警備隊長「大人しく、貴様らは武器を捨てるんだ!」

警備隊長「貴様等の方が、今の俺達にとってはただの雑魚!」

警備隊長「カーネルに鍛えられた俺達の腕、存分に見せてやる!」

剣士「何!?」

警備隊長「弓隊、構え――――っ!」

ササササッ、ササササッ……

警備隊長「放て――――っ!」

パパパパパパパパッ、パパパパパパパパッ!

ザザーーン、ザザーーン……

93: 2013/02/03(日) 07:18:50 ID:cC2Vl9q2
剣士「甘い!」バタッ

魔法使い「シールド!」シャキン

戦士「くっ……」バタッ

スパパパパパパパパッ、スパパパパパパパパッ!

剣士「……」ドキドキ

魔法使い「……」ドキドキ

戦士「……」ドキドキ

剣士「……」ムクッ、キョロキョロ

剣士「……ふっ、回避出来た」

剣士「本当に、良い矢だったぜ……」ホッ

警備隊長「ちっ……」

戦士「……」ドキドキ

魔法使い「……」ドキドキ

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

94: 2013/02/03(日) 07:19:06 ID:cC2Vl9q2
剣士「ふっ、どうした?」

剣士「貴様らの力は、そんなものなのか?」

剣士「今の俺達、まだ生きてるぞ!」

剣士「そんなしょぼい攻撃、全く効いてないぞ!」

警備兵達「……」

魔法使い「いや、あんた、俺が守ってたんだから……」

魔法使い「俺の張ったシールドで、今のあんたは生きてんだから……」

剣士「!?」ガーン

魔法使い「普通、敵に守ってもらうか?……」

魔法使い「ついうっかり、橋全体にシールド張ったから仕方ないけど……」

魔法使い「今のあんた、物凄く格好悪い……」

魔法使い「さっきと比べて、かなり格好悪いぞ……」

戦士「ああ、そうだな……」

剣士「……」プッチン

ザザーーン、ザザーーン……

95: 2013/02/04(月) 07:59:32 ID:/SVo2Zm.
剣士「あ、文句あんのか?」

剣士「これも、生き残る為の常套手段だ!」

剣士「貴様らと違って、俺は数々の戦場に出てきた!」

剣士「今みたいなシュチエーション、かなり沢山ある!」

剣士「時には、敵を盾にしてでも守りに入る時は、戦場の中では多数あるんだよ!」ムカムカ

戦士「……」

警備隊長「弓隊、炸裂矢用意!」

警備隊長「敵のシールドを砕くのだ!」

ササササッ、ササササッ……

警備隊長「放て!」

パパパパパパパパッ、パパパパパパパパッ!

ヒューーッ、チュドドドドドドドーーーーーーーーン!

剣士「!?」グラッ

ヒューーッ、チュドドドドドドドーーーーーーーーン!

魔法使い「な、何だ!?」バリリン

96: 2013/02/04(月) 07:59:43 ID:/SVo2Zm.
剣士「今の攻撃、炸裂矢か!?」

剣士「あいつ、俺達を頃すつもりか?」

戦士「!?」

剣士「魔法使い、早くシールドを張れ!」

剣士「じゃねぇと、また奴等が仕掛けてくるぞ!」

魔法使い「お、おう……」シャキン

戦士「勝手に、指図すんな!」

ドッゴオオオオオオオオーーーーーーーーン!

剣士「!?」バタッ

戦士「なっ!?」バタッ

魔法使い「第三射か!?」ビクッ

警備隊長「弓隊、再度炸裂矢用意!」

ササササッ、ササササッ……

警備隊長「放て!」

パパパパパパパパッ、パパパパパパパパッ!

97: 2013/02/04(月) 07:59:54 ID:/SVo2Zm.
ヒューーッ、チュドドドドドドドーーーーーーーーン!

戦士「くっ……」

ヒューーッ、チュドドドドドドドーーーーーーーーン!

魔法使い「うわっ!?」バリリン!

剣士「ちっ……」

警備兵達「……」

警備隊長(大体、第二射までは耐えきれるのか……)

警備隊長(あの魔法使いの張ったシールド、相当硬いな……)

剣士「おい、ガキ共、無事か?……」

剣士「まだ、戦えるか?……」

戦士「ああ、なんとか……」

魔法使い「まだ、いけるぜ……」

剣士「なら、早く再びシールドを張れ!」

剣士「良いな?」

魔法使い「おう!」シャキン

98: 2013/02/04(月) 08:00:05 ID:/SVo2Zm.
警備隊長「弓隊、大爆裂弾用意!」

警備隊長「船着き場の後ろを狙え!」

ササササッ、ササササッ!

警備隊長「放て!」

パパパパパパパパッ、パパパパパパパパッ!

魔法使い「き、来たぞ!」

戦士「……」サッ

剣士「……」サッ

ヒュー------ーッ!!

魔法使い「……」

戦士「……ん?」

剣士「……何か、様子がおかしい?」

剣士「まさか、フェイントを掛けられたのか?……」

警備隊長「……」ニヤリ

ザザーーン、ザザーーン……

99: 2013/02/04(月) 08:00:16 ID:/SVo2Zm.
ヒューーーーッ、ポチャ……

ドッゴオオオオオオオオーーーーーーーーン!!

剣士「!?」グラッ

ヒューーーーッ、ポチャ……

ドッゴオオオオオオオオーーーーーーーーン!!

戦士「な、何だ!?」ガクガク

魔法使い「う、海が……!?」ガクガク

ザザーーン、ザザーーン……

ドバババッ、ドバババッ……

戦士「う、うわああああ――――っ!?」

魔法使い「な、波が――――っ!?」

剣士「おうふっ!?……」バリリン

魔法使い「け、剣士だけ流された!?」ガーン

ザザーーン、ザザーーン……

ドバババッ、ドバババッ……

100: 2013/02/04(月) 08:00:28 ID:/SVo2Zm.
戦士「……」ゼェゼェ

魔法使い「……」ゼェゼェ

剣士「……」ブクブクブクッ

戦士「……」ゼェゼェ

魔法使い「……」ゼェゼェ

剣士「……」ブクブクブクッ

警備隊長「どうだ? 凄い威力だろ?」

警備隊長「これでも、貴様らは俺達の事を雑魚と言うのか?」

警備隊長「今の俺達からしてみたら、貴様らの方が遥かに雑魚なんだよ!」ニヤニヤ

警備兵達「……」ニヤニヤ

剣士「……」ザバッ

剣士「くっ……」ゲホッ、ゴホッ

剣士「おえっ……」ゴホッ、ゴホッ

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

101: 2013/02/05(火) 04:05:06 ID:UlExWBdk
剣士「くそっ……」

剣士「なんて、威力だ……」

剣士「あの爆発、前より強くなってやがる!……」

剣士「あの女、本気で攻めてきやがった!……」スイスイ

戦士「ま、魔法使い……」

戦士「今のは、一体何だ!?……」

戦士「あれも、魔法の一種なのか?……」ビクビクビクッ

魔法使い「わ、分からない……」ビクビクビクッ

剣士「いや、違うな……」

剣士「あれは、ただ火薬を入れた特殊な何かを爆発させただけだ……」

剣士「おまけに、雨の日でも水中でも使えるように加工……」

剣士「あの女、以前よりも格段に強くなってやがる!……」

剣士「あんな手使うのは、俺が知る限りではあの女しかいない!……」スイスイ

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

102: 2013/02/05(火) 04:05:19 ID:UlExWBdk
警備隊長「ほぅ、貴様この大爆裂弾に見覚えがあるのか?」

警備隊長「この大爆裂弾は、カーネルが俺達に授けられた武器!」

警備隊長「俺達は、これを使用して大勢の敵兵を撃破してきた!」

警備隊長「魔王軍相手にも、これを使用して多数の魔物を撃破してきたのだ!」

剣士「!?」スイスイ

警備隊長「それに、今の俺達は貴様らの事を頃すつもりなどない!」

警備隊長「貴様らは、大人しく投降をすれば良いのだ!」

警備隊長「でなければ、勇者が余計に泣く事になる!」

警備隊長「貴様らが犯した罪により、お前達の仲間の僧侶は火炎に飲み込まれて焼け氏んだ!」

警備隊長「この島の司教様を助ける為に、自らが犠牲となったのだからな!」

戦士「!?」ビクビクッ

魔法使い「なんだと!?」ビクビクッ

剣士「……」スイスイ

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

103: 2013/02/05(火) 04:05:34 ID:UlExWBdk
警備隊長「もう一度言う。全員投降をしろ!」

警備隊長「もう既に、勇者はカーネルの前で投降をした!」

警備隊長「後は、貴様ら達三人のみだ!」

剣士「くっ……」スイスイ

警備隊長「あ、そうそう、今なら特別に情状酌量が付くみたいぞ!」

警備隊長「カーネルは、貴様ら全員を捕縛しろと俺達に命令をした!」

警備隊長「まだ、貴様らの命は絶対に奪うなとカーネルに命令をされてるんでな!」

戦士「……」ビクビクッ

警備隊長「だから、早く貴様らは俺達の前に投降をしろ!」

警備隊長「今回の件、貴様らは色々とやり過ぎた!」

警備隊長「今ならまだ、特別に情状酌量の余地がある」

警備隊長「さぁ、早く投降をするんだ!」

魔法使い「……」ビクビクッ

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

104: 2013/02/05(火) 04:05:48 ID:UlExWBdk
「戦士、魔法使い、もう止めろ!」

「もうこれ以上、カーネルを敵に回すな!」

戦士「!?」ビクッ

魔法使い「ゆ、勇者!?」ビクッ

「頼む。もうこれ以上は止めてくれ!」

「俺の愛する僧侶は、本当に氏んだ!」

「今ならまだ間に合う。カーネルの前に、早く降伏をするんだ!」

警備兵達「……」

戦士「い、嫌だ……」

戦士「俺達は、神によって選ばれた者達なんだぞ!……」

戦士「たとへ、勇者からの命令でもそれは出来ない!……」

魔法使い「そうだ、そうだ!」

剣士「……」ザバッ

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

105: 2013/02/05(火) 04:06:02 ID:UlExWBdk
「あんた達、本当にそんな風に思ってたの?」

「いくら、勇者の仲間になれたからといって、やって良い事と悪い事があるでしょ?」

戦士「うるさい!」

「はぁ、あんた達本当に馬鹿ばっかだわ」

「そんなんだから、勇者はこの私に助けを求めてきた」

「ただでさえ、色々と周囲に対して傲慢で偏見のある仲間」

「だから、そんな自分の仲間を何とかしてほしいから、この私に助けを求めてきたのよ」

戦士「!?」

魔法使い「そ、そんな……!?」

魔法使い「そんな馬鹿な話があるか!?」

「いや、あるから」

「そうじゃなきゃ、勇者がわざわざこんな辺境の地にまで、絶対に来ないから!」

「今のあんた達、ただの躾のなっていない野獣そのもの」

「これだから、勇者は色々と苦労をする」

ザザーーン、ザザーーン……

106: 2013/02/05(火) 04:06:16 ID:UlExWBdk
「でも、今ならまだ間に合うわ」

「あんた達は、本当に神によって選ばれたんだから」

「だから、早くあんた達は投降をして」

「今なら、まだ罰金刑のみで済ませてあげれるから!」

「この島で生き地獄を見たくないのなら、さっさと早く投降をしなさい!」

警備兵達「……」

剣士「……分かった。投降をしよう」

剣士「それで、全ての俺の犯した罪が済むのなら……」ヨイショ

魔女「……は?」ストッ

剣士「まさか、以前と全く逆の立場になるとはな……」

剣士「お互い、人生何があるかは全く分からない……」

剣士「本当に、近頃はそう思えてしまうんだよな……」スタッ、ポトッ

勇者「え?」スタッ

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

107: 2013/02/05(火) 04:07:35 ID:UlExWBdk
魔女「ちょっと、あんた何してんのよ!?」

魔女「今のあんたは、罰金刑のみでは絶対に済まされないわよ!」

剣士「!?」ガーン

魔女「あんたの場合、もう既に指名手配されてるから!」

魔女「最低でも、火炙りが妥当みたいだから!」

剣士「……」ガクッ

魔女「それで、何であんたは騎士を辞めてんのよ?」

魔女「一体、あんたの身に何が起きてたのよ?」

剣士「話せば、長くなる……」

魔女「まぁ、あんたの長い話は後で聞くわ……」

魔女「偶々、今日はここに私の師匠が来てくれている……」

魔女「その人、今でも国王陛下に顔が利くみたいだからね……」

魔女「向こうに移送するまで間、私があんたの話くらいは聞いてあげるわ……」

剣士「……」

ザザーーン、ザザーーン……

108: 2013/02/05(火) 04:07:49 ID:UlExWBdk
警備隊長「カーネル。あの二人は?」

警備隊長「あの二人は、如何致しますか?」

勇者「……」

魔女「あの二人も、一緒に捕縛しといて」

魔女「解放するには、勇者が全ての件の罰金を支払った後」

魔女「だから、あの二人も早く一緒に捕縛しなさい!」

魔女「今ならまだ、大した被害も出る事もないわ!」

警備隊長「はっ!」

勇者「カーネル!」

警備隊長「総員、そこの三人を捕縛せよ!」

警備隊長「今ならまだ、ろくな抵抗をする事は出来ない!」

警備隊長「さぁ、早く捕縛するのだ!」

警備兵達「はっ!」

ダダダダッ、ダダダダッ……

ザザーーン、ザザーーン……

109: 2013/02/05(火) 04:08:02 ID:UlExWBdk
勇者「カーネル、どう言う事だ!?」

勇者「今回の事は、全て罰金刑のみで済ましてくれるんじゃなかったのか!?」ガシッ

魔女「ええ。そうだけど」

勇者「それなら、何故戦士達を捕縛する!?」

勇者「今の戦士達なら、捕縛は必要ないはずではないか!?」ギリギリ

魔女「そうは思わないわ」キッパリ

勇者「どうして!?」イラッ

魔女「何故なら、彼らはこの島で数々の罪を働いてきた」

魔女「ハーフエルフの件は罰金刑のみで済むけど、他の民間人に関してはそうは行かないわ」

勇者「くっ……」

戦士「ううっ、くそっ……」シュルシュル

魔法使い「はっ、離せ……」シュルシュル

剣士「……」シュルシュル

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

110: 2013/02/05(火) 04:08:18 ID:UlExWBdk
魔女「後、あんたは何か勘違いをしてるみたいだけど、ここの最高権力者は伯爵様!」

魔女「私は、その伯爵様の下でこの島の治安維持及び防衛を担当してるだけ!」

魔女「実際に、この島で起きた事を裁くのは全て伯爵様のみ!」

魔女「だから、いくら私に命乞いをしても無駄よ!」

魔女「今回は、ハーフエルフ以外にも被害が出てしまったから、それ以外の事は今の私にはどうしようもないのよ!」

勇者「そ、そんな……!?」ガーン

魔女「だから、今のあんたは他の人を頼りなさい!」

魔女「まぁ、どうしてもって言うのなら、まずは司教様に対して謝罪してくるのをお薦めするわ!」

魔女「そのすぐ後、伯爵様の元にまであんた達は司教様と共に直行」

魔女「そこで、あんた達は伯爵様から全ての件についてで裁いてもらい、情状酌量又は執行猶予を認めてもらう」

魔女「そうすれば、あんた達は晴れて無事にこの島から脱出」

魔女「上手く行けば、最低でも1億Gの罰金刑のみで済むんだし」

魔女「後は、あんた達の運次第なのよね」

勇者「……」ガクッ

ザザーーン、ザザーーン……

111: 2013/02/06(水) 07:21:46 ID:KG3PBhZI
魔女「まぁ、そう言う事だから、あんたは早く司教様達に謝罪してきなさい」

魔女「今のあんた、勇者なんでしょ」

魔女「勇者なら勇者らしく、誠心誠意被害者全員に謝罪して、今後は再発防止に努める」

魔女「それさえ出来れば、あんたやあんたの仲間達の落ちた評判は少なからず挽回」

魔女「私も、昔は色々と苦労したからね」

魔女「人間、見た目と印象と評判はかなり大事なものの一つなのよ」ニッコリ

勇者「……」

魔女「あ、それと、あんたの所のハーフエルフどうするの?」

魔女「僧侶と一緒に、蘇生しとくの?」

勇者「……僧侶だけで良い」

魔女「なら、あの二人は私が引き取るわ」

魔女「それでも、構わないかしら」

勇者「好きにしろ……」スッ……

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

112: 2013/02/06(水) 07:22:01 ID:KG3PBhZI
警備隊長「カーネル。捕縛完了致しました」

警備隊長「これより、駐屯地まで移送致します」

魔女「ご苦労様」

勇者「カーネル。僧侶はいつ目を覚ます?……」

勇者「早くて、明日くらいには目を覚ますのか?……」

魔女「ええ。それぐらいだけど」

魔女「私の師匠、かなり優秀な方でね」

魔女「たとへ、それが焼氏体だろうがすぐに蘇生してしまうわ」

勇者「そうか……」

魔女「とりあえず、あんたは早く司教様達の元に向かいなさい」

魔女「私は、まだこの辺でやる事があるから」

魔女「だから、あんたは早く行きなさい」

勇者「……了解した」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ザザーーン、ザザーーン……

113: 2013/02/06(水) 07:22:16 ID:KG3PBhZI
魔女「さて、警備隊長。被害状況は?」

魔女「今は一体、どれだけの被害が出ているのかしら?」

警備隊長「はっ、ご報告致します」

警備隊長「今現在、火災による全焼8棟。その内訳は、教会1、資材倉庫3、住宅4」

警備隊長「司教様は、近隣住民達による消火活動中に無事救助」

警備隊長「ですが、一緒にいた勇者殿の仲間一名が、司教様を逃がす際に逃げ遅れ焼氏」

警備隊長「他にも、消火や避難等の際に多数の住民達が負傷」

警備隊長「現在も教会は炎上を続けており、付近の住民達による懸命の消火活動が執り行われております」

魔女「……そう」

警備隊長「後、伯爵様より至急伝」

警備隊長「犯人の身柄は、駐屯地にて厳重に拘留せよ!」

警備隊長「島全体に、引き続き非常事態体制を維持!」

警備隊長「“特に、住民の間に渦巻く不穏な空気に注意せよ!”との事です」

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

114: 2013/02/06(水) 07:22:33 ID:KG3PBhZI
魔女「ええ。分かったわ」

魔女「早速、犯人達を駐屯地にまで移送して頂戴」

魔女「それと、ハーフエルフの氏体は全て師匠に回して」

魔女「せっかく、今日はハーフエルフ二人も保護出来たんだし」

魔女「今日は、久し振りに師匠と飲もうかしらね」

警備隊長「はっ!」スッ

クルッ、パカパカパカッ、ピタッ……

警備隊長「総員、これより帰還する!」

警備隊長「行くぞ!」

警備兵達「はっ!」

魔女「……」

犯人達「……」

ストトトトトトトッ、ストトトトトトトッ……

ザーーッ、ザーーッ……

ザザーーン、ザザーーン……

117: 2013/02/07(木) 07:22:43 ID:d..JgF7w
~とある教会前~

「ねぇ、聞いた?」

「今回の火災、勇者様が絡んでるんだって」

「えっ、嘘!?」

「ホントかよ!?」

「何でも、偶々買い物途中のハーフエルフの子供達に因縁を付けて、所持金等を無理矢理全て強奪」

「その際に、そのハーフエルフの子供達に対して暴行を繰り返し、更にはその子供達の自宅にまで放火」

「私、これ聞いた時かなりびっくりしたわよ!」

「いくら何でも、『勇者がこんな事をして良いの?』と本気でそう思ったわよ!」

「うわっ、それ酷い!……」ガーン

「全くだな!……」ガーン

「あ、俺、それ見かけたぞ」

「あれは、勇者様じゃなくてその仲間がやった事らしいぞ」

「えっ、嘘……!?」ガーン

ザーーッ、ザーーッ……

118: 2013/02/07(木) 07:23:11 ID:d..JgF7w
「いや、嘘じゃねぇよ」

「今その子供達は、かなり酷い怪我を負っているみたいだ」

「中には、この火事で逃げ遅れて火傷を負ったり、余計に怪我したり」

「司教様が負傷されたのも、勇者様の仲間が原因らしい」

「うわあぁ、ひでえぇ……」

「でも、何で勇者の仲間はそんな事をしたんだ?」

「勇者の仲間となれば、国王から十分な支援を受けれてるはず」

「主に、魔王の配下を倒しておけば済む話」

「こんな所で油売ってないで、さっさと魔王を倒しに行けよっての」ムカムカ

「多分、勇者様達もお金に困ってたんじゃない?」

「噂によると、勇者様達はここに来る途中に強盗に遭ってた」

「その時、勇者様達は全ての所持金等を強盗に奪われてしまい、それでハーフエルフを狙ったんじゃないかって」

「うわぁ、最悪……」ガーン

「最低だな……」ガーン

ザーーッ、ザーーッ……

119: 2013/02/07(木) 07:23:24 ID:d..JgF7w
「でもよ、勇者たる者そんなに弱いものなのか?」

「勇者と言えば、強くて勇ましいヒーロー的な存在」

「俺の知る勇者は、そんな弱くはなかった」

「そいつ、本当に勇者なのかよ」ムカムカ

「うん。そうだね……」

「う~~ん、それはちょっと分からないわね」

「なんか、勇者様はこの島の有力者達に挨拶をしてなかったから」

「それに、この島の環境と外の環境はちょっと違う」

「その違いが、今の勇者様達には理解出来なかったみたいだからね」

「……えっ?」

「ああ、そりゃそうだな」

「この島の外から来たんなら、すぐには理解出来んわな」

「元々、この島はかなり荒れ果ててた」

「それを、今みたいに立て直したのが、とある一人のハーフエルフだったみたいだからな」

ザーーッ、ザーーッ……

120: 2013/02/07(木) 07:23:42 ID:d..JgF7w
「でも、そのハーフエルフも可哀想にね」

「利用するだけ利用され、この島を追い出されちゃうなんて」

「それ以来、この島は大いに荒れ果ててた」

「時には、かなりの食料難がこの島全体を襲ってきて……」

「うちのお婆ちゃんが、ずっと毎晩泣き続けていたみたいだわ……」

「……」

「ああ、そうだな……」

「俺の親父が、ずっとその事を氏ぬまで後悔し続けていたからな……」

「あの時、何で自分達はあのハーフエルフを迫害をしたんだ?……」

「あの時のハーフエルフは、自分達の恩人ではないかって……」

「それからすぐ、この島にいた住民達は相次いで餓氏した」

「ろくに水や食料もなく、更には疫病が蔓延をし続けた」

「気がついた時には、島の半数が氏亡」

「それが、今から20年前になって、ようやくなんとか落ち着いたみたいだからね」

ザーーッ、ザーーッ……

121: 2013/02/07(木) 07:27:38 ID:d..JgF7w
「ああ、その話は私も聞いた事あるわ」

「何でも、あのカーネルがその時のハーフエルフと完全に瓜二つだったみたいだから」

「その後、カーネルがこの島で生まれて以来、何故かこの島の環境がすぐ改善」

「さすがの司教様達も、こればっかりは本気で泣いてた」

「もう二度と、この島の住民達にはハーフエルフを迫害するなって、伯爵様と共に御触れを出したんだって」

「ふ~~ん……」

「ああ、それでか」

「それで、勇者達はあんな行動に出てしまったのか」

「俺も、この島に来た時には全く意味が分からなかった」

「その所為で、俺もあのカーネルに本気で殺され掛けたからな」

「本気で、あの時は氏ぬかと思ったぜ」

「はい?」

ザーーッ、ザーーッ……

ドッゴオオオオオオオオーーーーーーーーン!

ピッカーーッ……

122: 2013/02/07(木) 07:27:51 ID:d..JgF7w
「あんた、そう言えば外から来たんだったな」

「いつ、生まれ故郷に戻れるんだ?」

「明日だ」

「ほぅ……」

「もう、そんな経つんだ……」

「ああ、まあな……」

「でも、正直あんたここを出たくなだろ?」

「ここは、本当に島の外から来た奴等にとっては天国」

「俺達みたいな庶民にも、豪華なフルコースの食事が食える」

「本当なら、騎士や貴族が食ってそうな物を、週に一度は食う事が出来る」

「その所為で、生まれ故郷に帰ったはずの奴等が、再びこの島に戻ってくる事がよくあるからな」

「その時に、何故か家族まで一緒」

「時には、噂を聞き付けた関係ない奴等まで流れてくるからな」

「ああ、そうだな……」

ザーーッ、ザーーッ……

123: 2013/02/07(木) 07:28:03 ID:d..JgF7w
「正直な所、俺だって帰りたくない……」

「最初は、かなり嫌々だったけど……」

「今の俺自身は、帰りたくねぇよ……」ポロポロッ

「……」

「俺の生まれ育った村は、こんなに豊かじゃなかった……」

「朝は、毎日ライ麦のパンとエール……」

「昼は、毎日ライ麦のパンとエールと肉入りスープとチーズ……」

「夜に至っては、スープが豆入りに変わったくらい……」

「ここに来て初めて、ソーセージやあんな白いパンを食う事が出来た……」

「この島に来て初めて、新鮮な魚や大量の肉を食う事が出来たんだよ……」

「ううっ……」

「ううっ、ううっ……」ポロポロッ

「よしよし」

「……」

ザーーッ、ザーーッ……

124: 2013/02/07(木) 07:28:17 ID:d..JgF7w
「なら、早く役場に行ってこいよ」

「役場に行って、“ここに永住します”って申請してこいよ」

「役場に行けば、親切に手続きしてくれるぞ」

「ここにいる連中、半分は島の外から来た奴等だ」

「だから、早めに申請しといた方が良いぞ」

「!?」ポロポロッ

「だったら、私もついてってあげるわ」

「私も丁度、役場に行かなきゃいけなかったから」

「おおっ、すまん……」ポロポロッ

「それに、今月の家賃まだだったからね」

「ここ最近は、島の人口も増えてきたし」

「確か、またカーネルが新たなメニューを考案してるってさ」

「今度は、一体何を呼び出すつもりなのかしら?」

「さぁな」

ザーーッ、ザーーッ……

125: 2013/02/07(木) 07:28:30 ID:d..JgF7w
スタスタスタッ、スタスタスタッ……

「おっ、島の警備隊だ……」

「ようやく、消火が終わったみたいだな……」

「ああ、そうみたいだな……」

「でも、何かやけにピリピリしてるな……」

「一体、何があったんだ?……」

「さぁ……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ、ピタッ……

騎士「止まれ!」

騎士「ここから先は、立ち入り禁止区域だ!」

騎士「まだ、一般人は立ち入ってはならん!」

勇者「……」

騎士「貴様、聞こえないのか?」

騎士「ここは、まだ立ち入り禁止区域だ!」

ザーーッ、ザーーッ……

126: 2013/02/07(木) 07:28:44 ID:d..JgF7w
勇者「……失礼、大至急、司教様にお目通りを願いたい」

勇者「今の俺は、大至急司教様に会わなければならないのだ」

騎士「何故だ?」

勇者「今回の放火の件で、司教様にお話したい事がある」

勇者「だから、ここを通してもらいたい」

騎士「……」

助祭「失礼、貴方のお名前は?」

助祭「まずは、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

騎士「……」

勇者「俺の名は、勇者XXX」

勇者「今回の件についてで謝罪したく、大至急、司教様にお目通りをお願いしたい!」

騎士達「!?」

ドッゴオオオオオオオオーーーーーーーーン!

ピッカーーッ!

ザーーッ、ザーーッ……

129: 2013/02/08(金) 11:15:10 ID:7IkvN4xs
ザワザワッ、ザワザワッ……

助祭「……これは、失礼致しました。勇者様」

助祭「私、当聖堂に所属しております助祭のXXと申します」ペコッ

助祭「残念ながら、本日は司教様にお目通りする事は叶いません」

助祭「現在の司教様は、まだ病院にて治療中の身」

助祭「今回の火災でお体を痛められ、今はまだ誰とも面会は出来ないのです」

勇者「!?」ガーン

ザワザワッ、ザワザワッ……

助祭「ですから、本日の所はどうかお引き取り下さい」

助祭「貴方様には、改めてこちらから損害賠償の通知をお送り致します」

助祭「ですので、勇者様はどうかお覚悟を」

助祭「司教様は、私にとっては親代わり」

助祭「その司教様に何かあった場合には、勇者様もただでは済まないと思って下さいね!」ゴゴゴゴッ

勇者「……」

ザーーッ、ザーーッ……

130: 2013/02/08(金) 11:15:25 ID:7IkvN4xs
「おい、見たか?」

「あんなガキが、勇者だってよ」

「えーーっ、嘘!?」

「ウチの息子と、変わらない歳じゅない」

「つうか、かなり貧相な装備してんな」

「勇者の癖に、革鎧に安物の剣」

「あれじゃ、強盗に襲われても無理はないわな」

「ええ、そうね」

勇者「……」

騎士「助祭様、落ち着いて下さい!」

騎士「まだ、司教様はお亡くなりになると決まった訳ではありません!」

騎士「ですから、どうか落ち着いて下さい!」アセアセ

助祭「ですが……」ゴゴゴゴッ

勇者「……」

ザーーッ、ザーーッ……

131: 2013/02/08(金) 11:15:45 ID:7IkvN4xs
騎士「助祭様、今の貴方は落ち着かなければなりません!」

騎士「今の貴方まで、勇者殿に斬られたらどうするのです?」

騎士「それこそ、司教様が酷くお嘆きになられます!」

騎士「貴方様は、まだ氏んではなりません!」

騎士「どうか、お気を確かに!」アセアセ

勇者「!?」ガーン

助祭「ああ、そうでしたね……」

助祭「勇者様は、ただのろくでなしでしたね……」

助祭「私、その事をすっかり忘れていました……」

助祭「ただでさえ、聖堂が全焼した所為でかなり落ち着きがありませんでした……」ゴゴゴゴッ

勇者「……」

騎士「なら、ここはどうか穏便に!」

騎士「相手は、無差別に民間人もを斬り頃す程の野蛮人です!」

騎士「ですから、助祭様もどうかお気をつけ下さい!」アセアセ

ザーーッ、ザーーッ……

132: 2013/02/08(金) 11:16:45 ID:7IkvN4xs
ガヤガヤッ、ガヤガヤッ……

助祭「……分かりました」

助祭「今回は、貴方の言う通りに致しましょう」

助祭「勇者様、また後日ここにまでお越し下さい」

助祭「その頃には、司教様もお体の調子を良くされた頃」

助祭「その時に、勇者様の愛するお方をお返し致しますね」ペコッ

勇者「……」ガクッ

騎士「……」

勇者「……」

クルッ、スタスタスタッ……

騎士「……」

助祭「結局、口だけの人でしたか……」

助祭「あれじゃあ、野盗となんら変わりないですね……」

騎士「ええ、そうですね……」

ザーーッ、ザーーッ……

133: 2013/02/08(金) 11:20:58 ID:7IkvN4xs
スタスタスタッ、ピタッ……

司祭「ん? 何かあったのか?」

司祭「やけに、付近が騒がしいが」

助祭「司祭様……」ペコッ

騎士「はっ、つい先程、勇者殿がこちらに参られました」ビシッ

騎士「どうやら、司教様にお目通りをする為、ここを訪れた様です」

助祭「……」

司祭「……そうか」

司祭「また、勇者様がお越しになった時は、失礼のない様にな」

司祭「あの方には、今回の件の責任を取って貰わねばならん!」

司祭「だから、あまり勇者様を刺激せぬよう穏便にな!」

騎士「はっ!」

助祭「了解致しました……」

周囲「……」ザワザワ

ザーーッ、ザーーッ……

134: 2013/02/08(金) 11:21:35 ID:7IkvN4xs
司祭「あ、それと騎士XX……」

司祭「今しがた、カーネルより急報が入った」

司祭「君の元従者ロメオが捕縛された」

司祭「今回の件に大きく絡み、例の勇者の仲間達と共に捕縛されたらしい」

騎士「!?」ガーン!

司祭「どうやら、彼はこの島の民間人を二人も殺害した様だ」

司祭「その原因については、偶々、外部からカーネルを訪ねてきたハーフエルフ」

司祭「彼らもまた、君の元従者によって殺害され、あのカーネルが本気でブチ切れとる!」

司祭「元々、彼らはカーネルを訪ねにこの島に来たらしく、その際に君の元従者に強盗目的で殺害されたらしい」

司祭「つい先程、カーネルによって彼は捕らえられ、駐屯地にまで移送された様だ」

騎士「……」プルプル

助祭「……騎士XX」

ザーーッ、ザーーッ……

ドッゴオオオオオオオオーーーーーーーーン!……

ピッカーーッ……

135: 2013/02/08(金) 11:22:02 ID:7IkvN4xs
司祭「まぁ、今の君の気持ちは分からなくはない……」

司祭「彼は、昔から私利私欲に走りすぎた」

司祭「一人前の騎士になってから、その傾向が強くなっただけの事だ」

騎士「……」プルプル

司祭「だが、今の君は彼に会うな!」

司祭「今の君は、もう彼とは無縁の存在なのだ!」

騎士「……」プルプル

司祭「その方が、今の君にも彼のとっても最善の策!」

司祭「今の彼は、ただの極悪で残忍な盗賊!」

司祭「だから、今の君は絶対に彼とは会ってはならん!」

騎士「……」プルプル

助祭「……」

ドッゴオオオオオオオオーーーーーーーーン!

ピッカーーッ……

ザーーッ、ザーーッ……

136: 2013/02/08(金) 11:23:13 ID:7IkvN4xs
騎士「……はっ、了解致しました!」

騎士「司祭様、お心遣い感謝致します!」

騎士「この騎士XX、今後もXXX教会の為に全身全霊を掛け、お仕えする所存であります!」ビシッ

司祭「うむ」

助祭「司祭様……」

司祭「騎士XX、また勇者様がここを訪ねられた時は、すぐ私に報告せよ!」

司祭「今回の件で、司教様は勇者様を仮想敵と定めた!」

司祭「それについては、伯爵様やカーネルとて同じ事!」

司祭「勇者様が我らに対して敵対行動を取り次第、即座に勇者様を捕縛するのだ!」

騎士「はっ!」ビシッ

助祭「了解致しました!」ビシッ

周囲「……」ザワザワ

ドッゴオオオオオオオオーーーーーーーーン!

ピッカーーッ……

ザーーッ、ザーーッ……

140: 2013/02/08(金) 13:55:16 ID:7IkvN4xs
ザーーッ、ザーーッは波の音です。教会の近くに海と船着き場があるので。

騎士は、過去に従騎士だった頃の剣士に「ハーフエルフを殺せ」と命令した騎士と同一人物です。今は、傭兵として教会の警備を担当しています。

141: 2013/02/09(土) 08:26:50 ID:eABIAWhk
~とある道~

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

勇者(くそっ、なんて事だ……)

勇者(かなり、事態がややこしくなっていく……)

勇者(この島に来てから、やたらと不運が続いてる……)

ザワザワザワッ……

勇者(でも、どうすれば?……)

勇者(俺は、一体どうすれば?……)

勇者(幸い、俺はまだ何もしていない……)

勇者(今なら、まだ俺にも何かしらのチャンスがあるはず……)

勇者(今はただ、どれだけ戦士達が出した損害を回避するかだな……)

ザワザワザワッ……

「おい、そこのお前止まれ」

「お前が、件の勇者か?」

「少し、顔を貸して貰おうか?」

142: 2013/02/09(土) 08:27:01 ID:eABIAWhk
スタスタスタッ、ピタッ……

勇者「……」クルッ

盗賊「そうだ。それで良い」

盗賊「今のあんた、かなり困ってる様だな」

盗賊「なんなら、俺達があんたの助けになるぜ」

武闘家「……」

勇者「……」クルッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

盗賊「おい、ちょっと待てよ」

盗賊「今のあんた、かなり困ってるんだろ?」

盗賊「せっかく、あんたに良い情報を持ってきてやったんだし」

盗賊「少しは、聞く耳を持てよ」

勇者「……」

スタスタスタッ、ピタッ……

ポツポツポツ、ポツポツポツ……

143: 2013/02/09(土) 08:27:13 ID:eABIAWhk
勇者「情報?」

勇者「一体、お前ら何のつもりだ?」

勇者「それを知って、俺が今後どうなるって言うんだ?」

武闘家「……」

盗賊「実は、俺達は今あんたが最も取り返したい仲間の情報を持ってるんだ」

盗賊「そのあんたの仲間って言うのは、ついさっき焼け落ちた教会の中にいた女の僧侶」

盗賊「今は、この島の山の上にある別の教会に遺体が運ばれた」

盗賊「そこで、この島の桟橋で斬り殺されたハーフエルフと共に、今蘇生の準備に取り掛かっている」

勇者「何!?」

盗賊「それに、今のあんた司教様にも伯爵様にも命を狙われてるぜ」

盗賊「つい先程、司教様達はあんたの事を仮想敵に認定した」

盗賊「その上、司教様と伯爵様の使いがもう既にこの島を出立」

盗賊「時期に、今のあんたも立派なお尋ね者だ」

盗賊「早くても、数日の間には祖国全土に伝わる事になるぜ」

勇者「!?」ガーン

144: 2013/02/10(日) 06:24:54 ID:WIvjNIQA
盗賊「まぁ、そう言う訳だから、俺達はあんたの手助けをしてやるぜ」

盗賊「ついこの間から、俺達はあんたの事を探してた」

盗賊「あんたの旅の仲間になる為に、わざわざあんた達の後を追ってきたと言う訳だ」

勇者「……」

盗賊「なぁに、心配をするな」

盗賊「こう見えても、俺達は旅に慣れてる」

盗賊「あんたが望むなら、他の仲間二人も脱獄させてやるぜ」

盗賊「お互い、今はあの女ハーフエルフにも命を狙われてるんだし」

盗賊「ここは仲良く、共同戦線を張ろうといかないか?」

武闘家「……」

勇者「分かった。良いだろう」

勇者「俺も、丁度仲間が必要だった所だ」

勇者「あの糞生意気な女ハーフエルフ、次は必ず血祭りにあげてやる!」

盗賊「……」ニヤリ

ポツポツポツ、ポツポツポツ……

145: 2013/02/10(日) 06:25:06 ID:WIvjNIQA
盗賊「なら、早速、俺達の隠れ家に案内してやるよ」

盗賊「どうやら、今はまだ巡回はしてないし、小雨も降ってきた」

盗賊「そこで、今の話の続きをしよう」

勇者「了解した」

武闘家「よろしく頼む」スッ

勇者「ああ、よろしく」ギュッ

盗賊「こちらこそ」ギュッ

鹿「……」ヌッ、ストン

武闘家「よし、そろそろ行こう」

武闘家「そろそろ、奴等が来る」

武闘家「先を急ぐぞ」

勇者「了解した」

盗賊「おう」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

鹿「……」

146: 2013/02/10(日) 06:25:20 ID:WIvjNIQA
密偵「大魔導師様、追いますか?」

密偵「今なら、まだ追跡が可能ですが」スッ

鹿「ああ、頼む」

密偵「はっ!」サッ

鹿「……」

ザワザワザワッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

鹿(あの若造、まだ勇者としての自覚は無い様だな……)

鹿(じゃから、儂はあれ程言うたのに……)

鹿(最低でも、必要最低限のマナーやモラルは併せ持たなければ……)

鹿(あ奴等が行っているのは、ただの野蛮な殺戮行為……)

鹿(そう、民間人も含めての数多くの犠牲の上でのな……)

ポツポツポツ、ポツポツポツ……

パラパラパラッ、パラパラパラッ……

「あっ、鹿だ」

147: 2013/02/11(月) 10:17:40 ID:jlEWjIrs
スタスタスタッ、スタスタスタッ、ピタッ……

「わーーっ、鹿だ……」

「何で、こんな人通りの多い道に?」

「しかも、なんか首輪付いてるよ」

鹿「……?」

「ああ、こらこら駄目でしょ」

「急に、鹿さんの前に来たら」

「鹿さんも、かなり困ってるじゃない」

鹿「……」

「でも、この鹿さんかなり大人しいよ」

「もしかして、誰かに飼われてるとか?」

「普通、野生の鹿がここまで大人しくないと思うよ」

「これ、絶対誰かが飼ってるよ」

鹿「……」

パラパラパラッ、パラパラパラッ……

148: 2013/02/11(月) 10:17:51 ID:jlEWjIrs
「ああ、坊主」

「それ、カーネルの鹿だぞ」

「その赤い首輪に、切り取られたばかりの角」

「カーネルが、今度食用にするって言っていた鹿みたいだぞ」

鹿「!?」ガーン

「へぇ、そうなんだ」

「今度は、鹿さんを使った料理なんだ」

「でも、何でこんな所に?」

「僕達に食べられると気付いて、逃げてきたのかな?」

鹿「……」ダラダラダラッ

「とりあえず、この鹿は警備兵に引き取って貰いましょ」

「多分、カーネルもこの鹿の事を探してると思うし」

「今回の火事の所為で、どこかからこの鹿は逃げ出してきたのかもね」

鹿「……」ダラダラダラッ

パラパラパラッ、パラパラパラッ……

149: 2013/02/11(月) 10:18:05 ID:jlEWjIrs
鹿(ジュリエット……)

鹿(お主、儂の事を食うつもりじゃったのか……)

鹿(今の儂をただの鹿として、この儂の事を亡き者にしようとしておったのか……)

鹿(じゃが、儂もそう簡単には食われん……)

鹿(今の儂は、大魔導師なのじゃ……)

鹿(儂を殺せば、確実に困るのはお主の方なんじゃぞ……)

ザワザワザワッ……

鹿(もしや、まだあの時の事を根に持っておるのか?……)

鹿(この儂が、お主の若くて育ちの良い肉体に溺れ我を忘れてしまった事を、未だに根に持っておるのか?……)

鹿(いや、あり得る……)

鹿(あ奴なら、確実に有り得る……)

鹿(あれに関しては、ただの事故……)

鹿(ただでさえ、あの時はヒステリックな妻の老いた顔や体に愛想を尽かしていて……)

鹿(あの時の儂は、かなり禁欲が出来ておらんかったからな……)

パラパラパラッ、パラパラパラッ……

150: 2013/02/11(月) 10:18:40 ID:jlEWjIrs
鹿(とりあえず、ここを早く出るとしよう……)

鹿(どうやら、誰かが警備兵を呼んで来たた様じゃし……)

鹿(今の儂は、ただの鹿……)

鹿(ここで、人語を話せば確実にパニックになるのじゃからな……)

ザワザワザワッ……

魔女「あっ、こんな所にいた」

魔女「一体、こんな所で何してるのよ?」

魔女「貴方、本日の私の夕食なのに」シュタッ

鹿「……?」キョロキョロ

魔女「全く、本日の夕食の食材が逃げちゃ駄目でしょ」

魔女「今夜は、鹿肉を使ったメニュー」ナデナデ

魔女「さぁ、早く帰るわよ」

魔女「ママが今日、あんたの事を捌いてくれるからね♪」ニッコリ

鹿「!?」ガーン

パラパラパラッ、パラパラパラッ……

153: 2013/02/12(火) 05:28:15 ID:WguATwh2
魔女「ほらっ、ボケッとしてないで早く立つ」

魔女「今夜は、絶対に貴方の事を料理してあげるから♪」

魔女「ついこの間も、何故か隙を突かれて逃げられたし」

魔女「今度こそ、鹿肉を使ったメニューを皆に出すんだからね♪」

鹿「……」ウルウルウルッ

ザワザワザワッ……

「おい、聞いたか?」

「今度のメニューは、鹿肉らしいぞ」

「あの鹿、やっぱりカーネルの鹿だったみたいだぞ」

鹿「……」ウルウルウルッ

「鹿肉か……」

「今まで、鹿肉なんて食った事ないな」

「一体、どんな味がするんだ?」

「豚や牛に比べて、旨いんだろうか?」

パラパラパラッ、パラパラパラッ……

154: 2013/02/12(火) 05:28:27 ID:WguATwh2
「さぁな」

「俺も、鹿肉を食った事ないから味は分からん」

「確か、貴族や騎士も鹿肉を食うみたいだぞ」

「だから、今度出る鹿肉も俺達の舌にも合うのかもな」

鹿「……」ウルウルウルッ

魔女「師匠、後でお話があります」

魔女「今夜の夕食のメニューになりたくなかったら、大人しく私に着いてきて下さい」ボソボソッ

鹿「!?」ウルウルウルッ

魔女「もし逃げたら、師匠の事を鹿肉として皆に振る舞います」

魔女「それが嫌なら、私に着いてきて下さいね」ボソボソッ

鹿「……」コクン

スタッ、スタスタスタッ……

サッ、ササッサッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

パラパラパラッ、パラパラパラッ……

155: 2013/02/12(火) 05:28:40 ID:WguATwh2
「お待ち下さい。カーネル」

「少し、お願いしたい事が」

スタスタスタッ、ピタッ

魔女「?」クルッ

鹿「……」ウルウルウルッ

侍祭「……」ペコッ

魔女「ああ、貴方は確か司教様の所の」

魔女「また、何か問題でも起きたのかしら?」

鹿「……」ウルウルウルッ

侍祭「はい、そのまさかです」

侍祭「つい先程、勇者様が当聖堂に参られました」

侍祭「その際、勇者様は司教様に対してお目通りを求め、対応をした助祭様に追い返された様です」

魔女「あらら……」

鹿「!?」ウルウルウルッ

パラパラパラッ、パラパラパラッ……

156: 2013/02/12(火) 05:28:53 ID:WguATwh2
侍祭「それに、勇者様は各地で野蛮な行為を行っていると、司教様からお聞き致しました」

侍祭「今回の事件でも、この島のなんの罪の無い住民達数人を殺害」

侍祭「その際に、被害に遭った方達から巻き上げた金品等は、まだ見つかっておりません」

侍祭「それに関しての捜索を、司教様からカーネルに依頼したいと仰せの事です」

ザワザワザワッ……

魔女「ええ。了解したわ」

魔女「今すぐ、私の私兵に捜索をさせておく」

魔女「それと、他に何か被害は?」

魔女「他に、何かあるのかしら?」

鹿「……」ウルウルウルッ

侍祭「いえ、今の所ありません」

侍祭「ただ、ウチの副助祭様が昨夜から行方不明でして」

侍祭「それくらいしか、今の所は何も変わった事はありませんし」

侍祭「被害総額は、この島を含めて10万Gに上るようです」

パラパラパラッ、パラパラパラッ……

157: 2013/02/12(火) 05:29:08 ID:WguATwh2
魔女「そう。了解したわ」

魔女「司教様には、後で改めてお見舞いに行くと伝えといて」

魔女「それと、今回の被害に遭ったハーフエルフ達の住居に関しては、私の方で用意しておく」

魔女「その間、そっちにも数日の間はお世話になるけど、その費用や物資に関しては私の方で用意するから」

鹿「……」ウルウルウルッ

侍祭「はい。かしこまりました」

侍祭「司教様にも、そうお伝えしておきます」

侍祭「カーネルが保護されたハーフエルフ達に関しては、私達の方にお任せ下さい」

侍祭「カーネルには、常日頃からご贔屓にして頂いておりますし」

侍祭「それくらいの事でしたら、いつでも私達はご協力致しますので」

魔女「そう。じゃあお願いね」

侍祭「はい」

鹿「……」ウルウルウルッ

周囲「……」ザワザワザワッ

パラパラパラッ、パラパラパラッ……

158: 2013/02/12(火) 05:29:20 ID:WguATwh2
侍祭「では、私はこれで失礼致します」

侍祭「カーネルも、道中をお気をつけて」ペコッ

魔女「ええ、さようなら」ペコッ

鹿「……」ウルウルウルッ

クルッ、スタスタスタッ……

ザワザワザワッ……

魔女「さぁ、私達も行きましょうか?」

魔女「今日は、貴方の事をしっかり料理してあげる♪」

魔女「だから、絶対に逃げないでね♪」

魔女「お願いだから♪」

鹿「……」コクン

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ドッゴオオオオオオオオーーーーーーーーン!

パラパラパラッ、パラパラパラッ……

161: 2013/02/13(水) 07:23:33 ID:jtsCnA7k
~とある酒場~

ガチャ……

カランカラン……

バタン……

店主「いらっしゃい」ニッコリ

店主「って、あら?……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ストン……

魔女「ママ、今は何も言わないでね」

魔女「ちょっと、師匠と話をするだけだから」

鹿「……」ウルウルウルッ

店主「……そう」

店主「今のあんた、かなり悪い場面ね……」

店主「今の私には、食用にされると分かって逃げていた鹿を、またここにまで連れ戻してきた風にしか全く見えないんだけど……」

鹿「……」ウルウルウルッ

162: 2013/02/13(水) 07:23:45 ID:jtsCnA7k
魔女「う~~ん、やっぱり?」

魔女「なんか、周りの視線がおかしいと思ったら、その所為なんだ」

店主「……」

魔女「でも、今度のメニューは鹿肉で決まりなのよね」

魔女「今の私、もう既に鹿肉は仕入れてるし」

魔女「わざわざ、師匠を焼いて皆に振る舞うなんて、まだ一言も言ってないんだけど」

鹿「……」ウルウルウルッ

店主「とりあえず、あんた達何か飲む?」

店主「今はまだ、例の火事の所為で客足があまり良くなくてね」

店主「ついさっき、あんたの保護した子供達がここに来たわ」

店主「暫くの間は入院したり、教会の方でお世話になるって、そう言っていたわよ」

鹿「……」ウルウルウルッ

魔女「ええ。知ってるわ」

魔女「司教様の使いからも、そう連絡を受けていたから」

スタスタスタッ、ストン

163: 2013/02/13(水) 07:23:57 ID:jtsCnA7k
魔女「ママ、私と師匠に赤ワイン二つ」

魔女「今の師匠、ただの鹿だけどね」

魔女「鹿の癖に、赤ワイン飲んじゃうし」

魔女「そろそろ、いい加減に人の姿に戻ってほしいのよね」

鹿「……」ウルウルウルッ

店主「……え?」

魔女「ん? どうかしたの?」

魔女「今の私、何かおかしな事を言った?」

鹿「……」ウルウルウルッ

店主「その鹿、人になれるの?」

店主「それ、あんたのペットか食肉用に仕入れた奴じゃなかったの?」

鹿「!?」ガーン

魔女「ええ。なれるけど」

魔女「だって、元は人間だもの」

店主「……」

164: 2013/02/13(水) 07:24:09 ID:jtsCnA7k
魔女「まぁ、何で私の師匠が鹿になったかと言うと、話せば色々と長くなるわ」

魔女「今はそんな昔話より、今回起きた事件の方がかなり重要」

魔女「ここ数日、この島全体が騒がしくなるわね」

魔女「何故なら、勇者の仲間が大不祥事を起こした」

魔女「その所為で、今の勇者はかなり窮地に立たされていて」

魔女「もしかしたら、勇者達との間で戦闘状態になる可能性があるかもしれないからね」

鹿「……」ウルウルウルッ

店主「……そう、了解したわ」

店主「注文は、赤ワイン二つで良かったわよね?」

店主「相変わらず、あんたは手の掛かる義娘だわ……」

店主「あんたを引き取ってから、もう今年で約20年……」

店主「今のあんた、またあの時みたいな顔をしてしまっているわ……」

魔女「ん? そうかしら?」

元店主「ああ、そうみたいだね」ヌッ

鹿「……」ウルウルウルッ

165: 2013/02/13(水) 07:25:40 ID:jtsCnA7k
魔女「あっ、マスター……」

魔女「一体、いつ戻ってきてたんですか?」

魔女「今の私、マスターが戻ってきたって全く聞いてませんでしたけど」

魔女「と言うより、なんで樽の中から顔を出してんですか?」

鹿「……」ウルウルウルッ

店主「ああ、ちょっとね……」

店主「兄さん、また奥さんと喧嘩してここに逃げてきたのよ……」

店主「せっかく、兄さんは結婚して新しいお店を任されてるのに……」

店主「何でまた、妹の私に泣きついてきたのかが全く解らないのよね……」ハァ……

魔女「……」

元店主「おい、妹よ」

元店主「あまり、この子の前で俺の家族の話をするな!」

元店主「俺の妻は、色々とヒステリックでバイオレンスなんだ!」

元店主「だから、この子の前で俺の家族の話をするな!」ムカッ

魔女「……マスター」

166: 2013/02/13(水) 07:25:52 ID:jtsCnA7k
店主「だったら、兄さんはここに逃げてこないでよ!」

店主「いつもいつも、兄さんはここによく逃げてくる!」

店主「その度に、あの人はウチの店をめちゃくちゃに破壊!」

店主「何故か、その途中で矛先が私やジュリエットに向かう!」

店主「いい加減、兄さんに振り回されるのはもううんざりなんだけど!」ムカッ

鹿「……」ウルウルウルッ

元店主「ああ? 俺に文句言うな!」

元店主「あいつは、ただ単にヒステリックでバイオレンスなだけだ!」

元店主「元々、あいつとは風呂屋で知り合っただけの事!」

元店主「気がついたら、子供まで出来てた!」

元店主「だから、仕方なく結婚しただけの事だ!」

元店主「雇われ店主の分際で、所有者の俺に口答えするな!」ムカムカ

魔女「……」

鹿「……」ウルウルウルッ

スポッ、シュタッ……

167: 2013/02/13(水) 07:26:05 ID:jtsCnA7k
店主「ああ? 俺の所為にするな?」

店主「またどうせ、兄さんの事だから愛人と一緒に風呂屋にでも行ってたんでしょ?」

店主「あの人、かなり泣いてたわよ!」

店主「さすがに、ジュリエットぐらいの若い子に手を出すなんて、あまりにも酷い仕打ちだわよ!」ムカムカ

元店主「黙れ!」ムカムカ

魔女「……」

店主「とりあえず、兄さん……」

店主「兄さんは、さっさと自分の奥さん所に戻りなさい!」

店主「そして、愛人と綺麗さっぱり手を切ってくる!」

店主「早く、さっさと奥さんに謝ってきなさい!」ムカムカ

魔女「……」

元店主「ああ。そうか……」

元店主「お前まで、俺を見捨てるのか?……」

元店主「元々、俺は被害者なんだぞ!……」

元店主「本当の所、あんな奴とは結婚したくはなかったんだぞ!」ムカムカ

168: 2013/02/13(水) 07:26:21 ID:jtsCnA7k
店主「ちょっと、それどう意味よ!?」

店主「兄さん、それは人として最低よ!」

店主「全く、兄さんはいつもこうなんだから!」

店主「相変わらず、兄さんはただのろくでなしなんだから!」ムカムカ

元店主「何を!?」ムカムカ

魔女「二人とも、落ち着いて下さい!」バン

魔女「今は、兄妹喧嘩をしてる場合じゃありません!」

魔女「この島に、つい先程から非常事態体制が発令されています!」

魔女「ですから、今は兄妹喧嘩は控えて下さい!」

店主「あ……」ハッ

元店主「そうだったね……」ハッ

鹿「……」ウルウルウルッ

魔女「とりあえず、皆席に座って」

魔女「後、師匠は早く人に戻って下さいね」

師匠達「はい」サッ

171: 2013/02/14(木) 07:20:12 ID:ukmYnSAs
しばらくして――

大魔導師「ふぅ、久し振りに人間に戻れた……」

大魔導師「さすがに、何日も鹿として過ごすのは結構辛い事だわい……」フキフキ

店主「……」

大魔導師「それで、ジュリエット」

大魔導師「儂に話と言うのは?」

大魔導師「出来れば、手短にしておくれ」

元店主「……」

魔女「実は、つい先程の火事の件でお話が」

魔女「今回の火事の件、勇者XXXが関わっています」

魔女「今はまだ勇者は何もしていませんが、いずれは勇者もまたこの島で何かをする可能性が極めて高いようなんです」

大魔導師「ふむ」

魔女「ですので、師匠には国王陛下にその事についての報告を」

魔女「もう既に、司教様と伯爵様が個別に使いを送っている様ですが、師匠にも国王陛下に対してご報告をお願いしたいのですが」

大魔導師「あい分かった」

172: 2013/02/14(木) 07:20:24 ID:ukmYnSAs
魔女「後、これは別件の事なのですが、例の元騎士を捕らえました」

魔女「彼もまた、勇者一行の犯す罪に荷担し、この島の民間人数名を殺害」

魔女「勇者一行とも面識があるようですし、各地でも数多くの強盗致氏及び強姦致氏を働いております」

大魔導師「……」

魔女「ですから、師匠はどうか今の私にご協力の程を」

魔女「師匠は、過去にその元騎士とも面識はありますし、師匠が相手ならその元騎士も逃げようとはしません」

魔女「今の私は、そう簡単にはこの島を離れる訳には行きませんし」

魔女「師匠には、その元騎士の移送の際の護送をお願いしたいのです」

魔女「今回のこの私からの依頼を、師匠は受けて頂きたいのですが」

大魔導師「……」

魔女「……」

大魔導師「すまん。それはとても出来ぬ依頼なんじゃ……」

大魔導師「今の儂は、絶対に王都には帰りたくない……」

魔女「……は?」

魔女「その訳を、今すぐお聞かせ下さい!」

173: 2013/02/14(木) 07:20:36 ID:ukmYnSAs
大魔導師「実は、またウチの嫁がヒステリックを起こしてな……」

大魔導師「それが原因で、ウチの息子嫁と大喧嘩……」

大魔導師「その際に、儂の可愛い可愛い孫娘が戦氏……」

大魔導師「丁度、今のお前さんぐらいの歳であのヒステリックでバイオレンスな儂の妻に、何故か八つ当たり気味に斬りかかられ……」

大魔導師「そのまま、無惨にも殺害されてしもうたんじゃ……」ウルウルウルッ

魔女「!?」

大魔導師「おまけに、儂の息子嫁まで殺害された……」

大魔導師「それが原因で、儂の妻は牢獄に入れられた……」

大魔導師「じゃから、今の儂は王都には帰りとうもない……」

大魔導師「更には、あの糞国王達に色々と愚痴や嫌み等を言われてな……」

大魔導師「ここに永住するつもりで、わざわざ海を渡ってここに来たんじゃ……」

大魔導師「すまぬ……」ウルウルウルッ

店主「……」チラッ

元店主「……」サッ

魔女「そんな……」ガクッ

174: 2013/02/14(木) 07:20:48 ID:ukmYnSAs
大魔導師「じゃから、今回の件は別の人物にしておくれ」

大魔導師「それに、今の儂は魔導士ではない」

大魔導師「元々、あの糞国王とは幼馴染みじゃっただけの事」

大魔導師「あの頃は、仕方なく魔導士としてあの糞国王に対して出仕」

大魔導師「晴れて無事に引退した今は、自身の余生を静かにこの島で過ごしたいのじゃ」フキフキ

魔女「……」

店主「……」

元店主「……」

魔女「……了解致しました」

魔女「師匠が、そこまでそうおっしゃるのなら……」ブチッ

大魔導師「……ジュリエット?」ハッ

魔女「ですが、師匠にはやっぱり鹿肉として、皆に対して振る舞わさせて頂きます!」

魔女「今の師匠は、あの時と全く同じ態度!」

魔女「私の事なんか、どうせ単なる体目当てでしかなかったと言う訳なんですね!」ゴゴゴゴッ

大魔導師「ジュ、ジュリエット!?」ビクッ

175: 2013/02/14(木) 07:21:01 ID:ukmYnSAs
大魔導師「まっ、待て、ジュリエット……」

大魔導師「誤解じゃ! あれはお主の誤解なんじゃ!……」アセアセ

魔女「……」ゴゴゴゴッ

大魔導師「実際、あの頃の儂は何も出来んかった!……」

大魔導師「ヒステリックでバイオレンスな妻に重傷を負わされ、入院を余儀なくされていたんじゃ!……」アセアセ

魔女「……」ゴゴゴゴッ

大魔導師「それに、儂は一度もお主の事を性的な目では見ておらん!……」

大魔導師「いくら、儂の妻の顔や体が老いたからと言って、風呂屋でお主ぐらいの歳の愛人としか全く相手はしとらんぞ!……」アセアセ

魔女「……は?」ゴゴゴゴッ

大魔導師「じゃから、お主は何も誤解をしないでおくれ!……」

大魔導師「今の儂は、もう隠居したただの年寄り!……」

大魔導師「じゃから、少しは大目に見てくれんかのぅ?……」アセアセ

魔女「……」ゴゴゴゴッ

店主「……」ゴクリ

元店主「……」アワアワ

176: 2013/02/14(木) 07:21:13 ID:ukmYnSAs
魔女「申し訳ありません。師匠」

魔女「それは、とても無理な注文です!」

魔女「今の私、まだあの夜の事は覚えてるんですよ!」

魔女「師匠に、生まれて初めて裏切られたあの日」

魔女「未だに、私は覚えてるんですよ!」ニッコリ

大魔導師「!?」ビクッ

魔女「確か、あれは師匠が私の初めてを無理矢理奪った日でもありましたよね?」

魔女「あの頃の私は、師匠にとても懐いていました!」

魔女「この私がハーフエルフだと知りながら、家族ぐるみで私の事を長い間匿ってくれていたあの懐かしい日々……」

魔女「それなのに、師匠は私の事を裏切った!」

魔女「何も知らない私にとても邪悪な魔法を掛け、執拗に一ヶ月に渡って自身の夜の相手をさせていましたよね?」スチャン

大魔導師「――――――――っ!?」ビクッ

元店主「なん……だと……!?」

店主「なん……ですって……!?」

大魔導師「……」ガクガクガクッ

177: 2013/02/15(金) 06:04:56 ID:ZiqfZNKs
魔女「まぁ、そう言う事ですから、どうか師匠はお覚悟を!」

魔女「と言っても、まだ師匠の事をすぐには頃したりはしません!」

魔女「今はまだ、勇者XXXと野盗ロメオとか言う問題が立て続けに発生!」

魔女「今の私達のすべき事は、その二つの問題を速やかに解決する事!」

魔女「だから、まだ師匠の事は殺さないでおいてあげます!」

大魔導師「……」ガクガクガクッ

魔女「とりあえず、師匠は速やかに国王陛下に対して使いを出して下さい!」

魔女「明日の朝、今回の事件の裁判が開かれます!」

魔女「その際に、勇者は何かしらのアクションを仕掛けてくるはず!」

魔女「場合によっては、勇者との戦闘もあり得ますし!」

魔女「師匠も、その裁判には出席をして頂きますね!」ニッコリ

大魔導師「……っ!?」ガクッ、ドサッ

魔女「……あっ」

店主「あらら……」

大魔導師「……」

178: 2013/02/15(金) 06:05:19 ID:ZiqfZNKs
魔女「師匠、大丈夫ですか?」

魔女「どこか、お体でも悪かったのですか?」

大魔導師「……」

魔女「あれ? おかしいなぁ?」

魔女「師匠は、こんなにメンタルは弱くなかったはずだったんだけどなぁ?」

元店主「……」サッ

店主「いや、あんた、何してんのよ?……」

店主「あんたの師匠、倒れちゃったわよ……」

魔女「ええ、そうね」

店主「兄さん、この人の具合はどう?……」

店主「まさか、氏んじゃったって事はないわよね?……」

大魔導師「……」

元店主「いや、大丈夫だ」

元店主「少し、気絶しているだけだ」スッ

店主「そう。良かった……」

179: 2013/02/15(金) 06:05:32 ID:ZiqfZNKs
魔女「なんだ、ただ単に気絶しただけなんだ……」

魔女「やっぱり、師匠でも歳を取っちゃうんだ……」

魔女「昔は、私の体を好き放題汚してたのに……」

魔女「私の事を、執拗にレ〇プし続けていたのに……」

魔女「何で、こんな人にレ〇プされてたんだろう?……」

魔女「あの頃の私、何でこんな人を本気で信頼してたんだろうか?……」ハァ……

大魔導師「……」

店主「ジュリエット、もうその辺で止めてあげなさい」

店主「今のあんたの師匠、かなり可哀想でしょ」

店主「いくら、昔酷い仕打ちを受けたからと言って、今のあんたはもう何ともないでしょうが」

元店主「うん。そうだね……」

魔女「いや、そんな事ないから」

魔女「今の私、前世の記憶はしっかり引き継いでるから」

魔女「これについては、ママ達は黙っといて!」

魔女「これは、私と師匠の問題でもあるんだから!」

180: 2013/02/15(金) 06:05:44 ID:ZiqfZNKs
店主「でも、やって良い事と悪い事があるでしょ?」

店主「今のあんたの師匠は、もう既に高齢!」

店主「ただでさえ、家庭にも問題があるのに!」

店主「わざわざ、あんたの事を頼りにここまでやって来たんだから、もう少し優しくしてあげなさいよ!」

大魔導師「……」

魔女「う~~ん、そうかな?」

魔女「これでも、かなり手加減した方なんだけどなぁ……」

魔女「それに、師匠が私の元にやって来る=全て厄介事!」

魔女「ただでさえ、師匠の息子さんが背負った借金の立て替えに、師匠の生まれ故郷に出没した山賊退治!」

魔女「更には、私との生活を綴った官能小説を勝手に出版され、その中の私は師匠と愛人関係にあった!」

魔女「その所為で、今の私は師匠の奥様からマークされている身」

魔女「何度も、師匠の奥様には本気で殺され掛けた事もあった!」

魔女「私が、師匠にされた事に比べたら、遥かにこれは軽い方だけど」

魔女「そうは思わない? ママ」

店主「……」

181: 2013/02/15(金) 06:06:35 ID:ZiqfZNKs
魔女「後、今思い出したんだけど、あの時の私は師匠の所為であそこを追い出されたのよね」

魔女「あの時の私、師匠に対して完全に懐いてたから」

魔女「元々、師匠の生まれ故郷はハーフエルフに関しては、そんなに厳しくなかったけど」

魔女「それにも関わらず、私がすぐさま追い出されたのは、師匠が起こした大不祥事の所為」

魔女「あの頃の私は、まだ幼かったし」

魔女「何故か、全裸のまま私は師匠によって鎖に繋がれていて……」

魔女「師匠の出した白いお汁まみれの私の姿を見て以来、皆が涙ながらに私の事を追い出したんだけどね」

店主「!?」ガーン

元店主「なっ!?」ガーン

大魔導師「……」

魔女「ママ、話変わるけど、ちょっと師匠の事をお願い」

魔女「私、まだする事がかなりあるから」

魔女「多分、夕方頃には戻ってくると思う」

魔女「だから、それまでの間は師匠の事をお願い出来る?」

店主「……ええ、良いけど」

182: 2013/02/15(金) 06:06:47 ID:ZiqfZNKs
魔女「それと、ママは鹿肉は好き?」

魔女「今度のメニュー、鹿肉だけは止めた方が良い?」

店主「あんたの好きにしな……」

魔女「ええ~~っ?」

店主「はぁ……」

店主「全く、あんたは本当に手の掛かる義娘だわ……」

店主「今のあんた、まるで狩りに行く時みたいな顔してんだから……」

店主「後、鹿肉のメニューだけじゃ不安なんなら、牛や豚や鳥とかも出しときなさい」

店主「ここの連中、肉さえ食べれたら文句言わないんだし」

店主「それが、ウチの売り上げに反映されるのなら、私は何も文句は言わないわ」

魔女「そう」

元店主「とりあえず、ジュリエットはもう行っといで」

元店主「ちょっと、この爺さんには色々と聞きたい事がある」

元店主「主に、君の師匠の妻の事で」

元店主「それを聞けたら、今後の何かの参考になるかもしれないから」

183: 2013/02/15(金) 06:06:59 ID:ZiqfZNKs
魔女「マスター。間違っても師匠にだけは、絶対にアドバイスを求めないで下さいね!」

魔女「この人、大魔導師としてはかなり優秀だけど、実生活に関してはかなりの駄目人間!」

魔女「おまけに、女癖も悪いし、何人もの未婚の女性を数多く孕ませたりもしてもいる!」

魔女「見掛けによらず、自分自身が大魔導師と言う事をとことん利用し、恩着せがましく今も私に金銭を要求してくるただのろくでなし!」

魔女「だから、絶対に実生活に関してはアドバイスを求めないで下さいね!」

元店主「え? あ、ああ……」

店主「ええ。了解したわ」

店主「今の兄さん達は、この私が監視しとく」

店主「だから、あんたは早く行っておいで」

魔女「そう。了解したわ」

魔女「それじゃあ!」

店主「行ってらっしゃい」

元店主「気を付けてね……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ガチャ、バタン……

184: 2013/02/15(金) 06:07:18 ID:ZiqfZNKs
正直な所、私は師匠とまた再会出来て嬉しかった。

けれど、それと同時に悲しい思い出が沢山蘇ってきた。

こんな私を、未だに頼りにしてくれる事については、かなり嬉しい。

でも、厄介事だけは勘弁願いたい。

何故なら、私はずっと一人だった。

師匠が、私を唯一認めてくれた人間だったからだ。

それにも関わらず、師匠は男としての欲望には打ち勝つ事が出来ず、私の事を執拗にレ〇プ。

あの時の私は、師匠にずっとされるがまま。

師匠しか、全く頼れる人間は皆無。

今みたいに、誰からも迫害をされていない平穏無事な生活は、師匠と過ごす時間以外には全く無かったのだ。

その後、私はそれが発覚してすぐに村を追い出された。

皆、私がハーフエルフだと言う事を知っていて、それでもあの時の私に逃げる時間や三日分の食料等を与えてくれた。

それ以来、私は師匠とは長年会っていなかったが、まさかこんな形で再会を果たすとはね……

それと同時に、あの時私を頃した従騎士とも何故か再会。

今の私の運命の歯車が、再び大きく動き出したのだった。

189: 2013/02/16(土) 17:41:36 ID:jBmCvw7A
~とある教会前~

翌日――

チュンチュン、チュンチュン……

僧侶「結構、酷い有り様ね……」

僧侶「まさか、昨日の騒ぎがあの二人が原因だったとはね」

従者A「ええ。そうですね……」

僧侶「それで、勇者様は?」

僧侶「勇者様は、一体どこで何をしているのよ?」

従者A「さぁ……」

僧侶「さぁって、貴方達二人は勇者様の従者でしょ?」

僧侶「従者なら従者らしく、今すぐ勇者様を探してくるの!」

僧侶「それくらい、私が言う前にさっさと調べときなさいよ!」

僧侶「本当に、役立たずなんだから!」

従者A「も、申し訳有りません……」

従者A「何分、自分達も今さっき目を覚ましたばかりでして……」

190: 2013/02/16(土) 17:41:58 ID:jBmCvw7A
僧侶「はぁ?」

僧侶「勇者様の従者の分際で、この私に対して口答え?」

僧侶「私、この戦いが終わったら勇者様の妻になるのよ!」

僧侶「今の貴方達、私の従者でもあるのよ!」

従者A「……」

僧侶「大体、何で私は朝っぱらから貴方達と同じ場所で目を覚ましてんのよ?」

僧侶「今の貴方達、本当なら家畜以下なんでしょ?」

僧侶「それにも関わらず、私と家畜二匹を同じ場所に寝かしとくなんて!」

僧侶「一体、この島の教会は何考えてんのよ!?」

従者B「……」

騎士「おい、そこの口汚い女の僧侶」スッ

騎士「貴様、ここが神聖な場所だと言う事を忘れているな」

騎士「いい加減、貴様は静かにしろ!」

騎士「貴様も、あの勇者達と全く同じ犯罪者だ!」

騎士「だから、少しは大人しくしろ!」

191: 2013/02/16(土) 17:42:31 ID:jBmCvw7A
僧侶「あっ、申し訳有りません」

僧侶「何分、ウチの従者達が問題児でして」

僧侶「本当なら、この二人は家畜以下の扱い」

僧侶「ついいつもの癖で、本当に役立たずな家畜二匹に対して、我を忘れておりましたわ」

騎士「……」

僧侶「それと、今の貴方はこの私まであの二人と全くの同列な犯罪者だとおっしゃいましたよね?」

僧侶「私、あの時は何も悪い事はしておりませんよ」

僧侶「しいて言えば、この島に滞在をされていた司教様をご救出して差し上げただけの事」

僧侶「ですから、この私をあの犯罪者二人と同列に致すのは、何かの筋違いだとお思いですが」

従者A「……」

騎士「いや、そうも行かんのだ」

騎士「司教様が、勇者XXXに関するあるお触れを出されたからだ」

僧侶「はい?」

僧侶「何なのでしょうか? そのお触れと言うのは」

従者B「……」

192: 2013/02/16(土) 17:43:36 ID:jBmCvw7A
騎士「ああ、そうか」

騎士「貴様らは、まだ何も知らされていないんだったな」

騎士「昨日付けで、勇者XXXはこの島においては仮想敵に認定された!」

騎士「もう既に、この件に関しては国王陛下にも報告済み!」

騎士「昨日、貴様らの仲間が起こした事件の裁判が終わるまで、今の貴様らはこの島から一切出れなくなったのだ!」

僧侶達「!?」

騎士「後、そこのハーフエルフ二人はカーネルが引き取るそうだ」

騎士「だから、今の貴様はそこの二人の主人でも何でもない」

騎士「それについては、勇者XXXにとっても同じ事」

騎士「この島では、ハーフエルフ迫害禁止令と言う法律に違反した場合には、問答無用でカーネルによる私的制裁が加えられる!」

騎士「命が惜しければ、この島でハーフエルフに対して、迫害やら何やらをするのを今すぐ止めるんだな!」

従者A「……は?」

従者B「ま、まじかよ……?」

騎士「ああ、全て事実だ!」

僧侶「そ、そんな!?」ガーン

196: 2013/02/17(日) 08:34:03 ID:hoXc.0VU
僧侶「ちょっと、それ一体どう言う事ですか!?」

僧侶「そんな無茶苦茶な要求、勇者様が呑む訳ないじゃないですか!?」

従者A「……」

僧侶「大体、ハーフエルフを迫害して何が悪いんですか?」

僧侶「ハーフエルフは、神の意思に反した許されざる存在!」

僧侶「本来なら、この世に生まれてはいけないはずです!」

僧侶「国内法でも、特例を除いて保有は大きく制限されているはずですよ!」

従者B「……」

騎士「ああ。その通りだ!」

騎士「本来なら、ハーフエルフはすぐにでも滅ぼすべき存在だ!」

騎士「だが、この島の中ではそう簡単には行かない!」

騎士「この島は、実質的にとある一人の女ハーフエルフによって、以前から支配されている!」

騎士「しかも、その女はかなりの腕の持ち主!」

騎士「この島にいる警備兵自体が、あの女の率いている私兵なのだ!」

僧侶「!?」

197: 2013/02/17(日) 08:34:21 ID:hoXc.0VU
僧侶「くっ、何でよ?……」

僧侶「何で、この島の警備兵がそんな事になってるのよ?……」

僧侶「なら、この島の自警団は?」

僧侶「この島の自警団も、ハーフエルフの手に落ちてるのですか?」

騎士「ああ。そうだ」

僧侶「そんな!?」

騎士「しかも、去年からそのハーフエルフは傭兵ではなくなり、恐れ多くも今では伯爵様の臣下だ!」

騎士「伯爵様は、そのハーフエルフの事をとても信頼されている!」

騎士「その上、この島の住民達ですらハーフエルフに対しては、かなり友好的!」

騎士「中には、各地に点在するハーフエルフをこの島にまで移送してくる者もまでもいる!」

騎士「更には、つい最近になって“エルフと人間との間でハーフエルフ迫害禁止条約が締結をされ”、この島の中では一切何も出来ない!」

騎士「この島自体が、国内法でもハーフエルフの定住地と言う位置付けとなってしまっているのだ!」

僧侶「!?」ガーン

従者A「わおっ……」

従者B「さすが、カーネルだ……」

198: 2013/02/17(日) 08:34:36 ID:hoXc.0VU
騎士「だから、今の貴様も命が惜しければ、今すぐハーフエルフを迫害する事を止めるんだな!」

騎士「たとへ、この島の中でなくともハーフエルフ迫害禁止条約に基づき、この島の外でもハーフエルフ迫害禁止令は適応をされてしまう!」

騎士「実際、私もそれに違反して所領を没収された一人だ」

騎士「所領を没収されただけでなく、長年仕えていた主君からもその所為で解雇された」

騎士「その上、過去のハーフエルフに関する事件の慰謝料やら賠償金やらで、毎月の給金すらほぼ無しに等しい」

騎士「この島では、ハーフエルフを敵に回せばその者の家族全体にまで、そのハーフエルフによる報復が及ぶのだ!」

僧侶「……」ポカーン

従者A「……」ポカーン

従者B「……」ポカーン

騎士「……」

僧侶「それ、おかしい……」

僧侶「それ、絶対におかしい!……」

騎士「……ん?」

僧侶「何で、この島の住民達はそれに反対しないのよ?……」

僧侶「普通に考えたら、そんなの絶対に間違ってるでしょ?……」

199: 2013/02/17(日) 08:34:50 ID:hoXc.0VU
騎士「なら聞くが、何か手はあるのか?」

騎士「今の貴様には、その手立てはあると言うのか?」

従者A「……」

騎士「もし仮に、それが無いのなら今すぐ止めておけ!」

騎士「あの女は、見た目に反してかなり凶悪!」

騎士「その所為で、司教様も伯爵様も大いに狂われてしまった!」

騎士「いやむしろ、この島の住民全体が大いに狂ってるだけなのかもしれないがな……」

従者B「……」

僧侶「悔しいけど、何も浮かばないわ……」

僧侶「本当に、何でこんな事になったんだか……」

騎士「……」

僧侶「おまけに、周囲の目線もかなりあるみたいね……」

僧侶「ついさっきから、今の私は色々と叫び過ぎた……」

僧侶「じゃなきゃ、これだけの群衆がここにまで集まるはずなんてないわ……」

周囲「……」ザワザワザワッ

200: 2013/02/17(日) 08:35:27 ID:hoXc.0VU
騎士「いや、違うな」

騎士「あれは、ただ単に本日島を出る者達の列なだけだ」

騎士「これから、あの者達は晴れて無事に生まれ故郷に戻れる」

騎士「あの者達も、カーネルによってこの島に連れてこられた元違反者達だ」

騎士「今回は、かなり多いみたいだな」

僧侶「!?」

騎士「とりあえず、貴様らはさっさとここを出ろ」

騎士「これから、ここの復旧作業が始まる」

騎士「本当なら、貴様らも牢に入れられていてもおかしくない」

騎士「それだけ、今の貴様らの仲間はこの島で大きな罪を犯したんだからな」

僧侶「……」

「あら、今回はかなりお早い目覚めね」

「今日は、いつもの司祭様は出払っているのかしら?」シュタッ

騎士「くっ、貴様か……」

騎士「一体、何の様だ?……」ギリッ

202: 2013/02/17(日) 15:25:01 ID:hoXc.0VU
お馴染みの魔女さんです。

203: 2013/02/17(日) 15:25:20 ID:hoXc.0VU
魔女「何って、そこにいる二人を引き取りに来たのよ」

魔女「私、これからあの子達の保護者になるんだし」

魔女「何か、今のあんたは文句でもあるの?」

僧侶「……」

騎士「なら、さっさとそいつらを引き取ってもらおうか」

騎士「ただでさえ、今の私は貴様の顔を見たくない!」

騎士「貴様から受けたあの時の遺恨、今の私は未だに覚えているのだぞ!」ギリギリッ

僧侶「……」ハッ

魔女「ふ~~ん。そうなんだ」

魔女「今のあんた、まだあの土地に執着をしてたんだ」

魔女「あれだけ、あんたも領民を苦しめていたのに」

魔女「それにも関わらず、あんたはまだ被害者面してるんだ」

騎士「黙れ!」

僧侶「……」ビクッ

スチャ、タァラン……

204: 2013/02/17(日) 15:25:38 ID:hoXc.0VU
騎士「貴様、早くこの場から離れろ!」

騎士「さもないと、私は貴様を頃す!」

騎士「貴様のおかげで、私は全てを失った!」

騎士「これは、騎士として正当なフェーデなのだ!」ギリギリッ

魔女「……」

騎士「貴様、聞こえないのか?」

騎士「さっさと、この場から離れろ!」

騎士「さもないと、私は貴様を頃す!」

騎士「これは、決して脅しではない!」ギリギリッ

魔女「……」

従者A「カーネル、よろしいのですか?……」

従者A「相手は、かなり本気みたいですが……」

騎士「……」ギリギリッ

魔女「少なくとも、相手はただの馬鹿」

魔女「それ以上でも、それ以下でもないわ」

205: 2013/02/17(日) 15:26:54 ID:hoXc.0VU
騎士「やけに、余裕だな……」

騎士「貴様、そんなに斬り殺されたいのか?……」

魔女「ええ。そのつもりだけど」

騎士「なら、望み通りにこの私が貴様を斬り頃してくれる!」

騎士「さぁ、貴様も武器を持て!」

騎士「来なければ、私から行くぞ!」

僧侶「……」アワアワッ

魔女「あんた、私がこの島の治安維持及び防衛を担当をしている事を忘れたのかしら?」

魔女「今の私は、有事の際には今のあんたにも指揮命令する事が出来る」

魔女「それについてを、今のあんたはすっかり忘れている様ね」

魔女「正直、ここまで馬鹿だとは全く思わなかったわ」ハァ……

騎士「……何が言いたい?」

魔女「騎士XX。本日付で、貴方を強盗犯ロメオの王都までの護送を任命する」

魔女「これについては、司教様及び伯爵様からの許可が出たわ」

魔女「だから、この私からの命令に従いなさい」

206: 2013/02/18(月) 07:29:40 ID:CXFsgXOc
騎士「貴様、何のつもりだ!?」

騎士「何故、私があの馬鹿の護送をしなければならないのだ!?」

騎士「今の私は、司祭様からここの警備を命令されている!」

騎士「貴様の指揮命令は、一切受けない!」

僧侶「……」アワアワッ

魔女「そう」

魔女「なら、後で司祭様にでも聞いてみなさいよ」

魔女「今のあんた、ここ最近職務怠慢みたいだから失職間近」

魔女「今のあんたは、かなり危ない状態なんだし」

魔女「だから、今回の任務には最適の人材でもあるのだからね」

騎士「くっ……」

魔女「とりあえず、私の用件は済んだ」

魔女「さぁ、そこの二人は私の元に来なさい」

魔女「今なら、まだ何もしてこないから」

従者達「……はっ!」サッ

207: 2013/02/18(月) 07:29:56 ID:CXFsgXOc
スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ビシッ……

従者A「お会い出来て光栄です。カーネル」

従者A「自分達は、元勇者XXXの従者アルファとブラボー」

従者A「不束ものですが、どうぞよろしくお願い致します!」

司祭「……」ヌッ

騎士「!?」ハッ

魔女「ふぅ、こうやって二人に会うのは初めてなのね」

魔女「ようこそ。XXX島へ」ニッコリ

魔女「私の名は、ジュリエット」

魔女「今現在は、この島を治めている伯爵様の臣下」

魔女「主に、この島の治安維持及び防衛を担当しているわ」

司祭「……」ジーッ

騎士「ちっ……」スチャ、カシャン

僧侶「……」アワアワッ

208: 2013/02/18(月) 07:30:11 ID:CXFsgXOc
魔女「まぁ、今はそんな堅苦しい挨拶とかは、この際なしにするわ」

魔女「早速、今ここにいる二人にも私の指揮下に入ってもらう」

魔女「貴方達二人は、私が今から連れていく酒場の中で待機しといて」

魔女「そこは、私の活動拠点の一つ」

魔女「今の貴方達二人は、そこで待機しといてくれるかしら?」

従者達「はっ!」

魔女「後、そこの女の僧侶さん」

魔女「勇者に会いたかったら、今から私に着いてきて」

魔女「なんか、勇者は昨日から行方不明みたいでね」

魔女「確実に勇者に会えるとしたら、裁判の時ぐらいしかないみたいだからさ」

僧侶「え? はっ、はい……」

騎士「……」

魔女「あっ、司祭様」

魔女「ここの二人、今から移送します」

魔女「昨日、お送りした物資は上手く活用出来てますでしょうか?」

209: 2013/02/18(月) 07:30:25 ID:CXFsgXOc
司祭「ああ。大丈夫だが」

司祭「君から送られてきた物資は、全て被害者全員に行き届いてる」

司祭「何か、その事で心配事でもあるのか?」

司祭「君に頼まれていたハーフエルフ達なら、全員無事の様だったが」

騎士「……」

魔女「そうですか」

魔女「なら、何も問題はないですね」

魔女「てっきり、どこかの失職間近の方がハーフエルフに対して、物資を渡さないようにしていたんじゃないかと心配でしたから」

騎士「……」ギリッ

司祭「ああ。そんな事かい?」

司祭「それなら、何も心配はいらないよ」

司祭「実際、彼は何も出来なかった」

司祭「この島でハーフエルフに何かしたら、確実に解雇だと言い渡していたからさ」アハハハッ

騎士「……」ギリギリッ

210: 2013/02/18(月) 07:32:52 ID:CXFsgXOc
魔女「でも、その彼も可哀想にねぇ」

魔女「新しい主君が、まさかハーフエルフを保護してるなんて」

魔女「今の彼、かなり荒れてるでしょ?」

魔女「このまま行くと、自身の胃に大穴が開いてしまうんじゃない?」

騎士「……」ギリギリッ

司祭「ああ。確実に開くな」

司祭「今の君なら、確実に開けそうだな」

騎士「……」ギリギリッ

魔女「とりあえず、騎士XXには例の件を改めて通達をして下さい」

魔女「本日から、しばらくの間はこの島は荒れに荒れます」

魔女「もう既に、この島全体を私の私兵1000名で包囲しました」

魔女「たとへ、勇者が神に選ばれたとしても、さすがにこの数には敵わないでしょう」

魔女「今の私は、確実に勇者を潰す気でいますからね!」ニッコリ

僧侶「!?」

司祭「そ、そうかい……」

211: 2013/02/19(火) 07:49:52 ID:HYy7OxL6
騎士「貴様、戯れ言を申すな!」

騎士「何故、貴様如きが私兵1000名もを保有してるんだ?」

騎士「今の貴様は、かなりの大ホラ吹き!」

騎士「一体、この島のどこに私兵1000名がいると言うのだ!?」

僧侶「そ、そうね……」

司祭「……」

魔女「あれ? あんた見てなかったの?」

魔女「今さっき、ここを通ってったじゃん?」

騎士「!?」

魔女「私、彼らをもう既にこの島中に配備したわ」

魔女「だってそうしなきゃ、勇者がまた無駄に民間人に対して被害を出しちゃうし」

魔女「今のあんたは、本当に自分の都合の良い所しか見てないのね」

魔女「それだから、奥さんにまで逃げられちゃうのよ」

魔女「本当に、あんたは駄目人間なんだから」

騎士「……」ブチッ

212: 2013/02/19(火) 07:50:12 ID:HYy7OxL6
騎士「司祭様、あの者を討伐する許可を!」

騎士「これは、この私に対する侮辱だ!」

騎士「今の貴様は、誇り高き騎士を侮辱しているのだぞ!」プルプル

司祭「……」

騎士「さぁ、司祭様。早く許可を!」

騎士「ただでさえ、この私はあの者に痛め付けられてきました!」

騎士「ですから、早くあの者を討伐させて下さい!」

騎士「司祭様!」ギリギリッ

司祭「……」

魔女「騎士の誇り?」

魔女「そんなの今のあんたに有ったの?」

魔女「だって、本当ならあんたはとっくに牢に入れられてた」

魔女「それを、ここの司教様の下で働かせてあげれる様にしたのは、この私でしょうが」

僧侶「えっ!?」ガーン

騎士「黙れ、黙れ!」ギリギリッ

213: 2013/02/19(火) 07:50:31 ID:HYy7OxL6
魔女「それに、今のあんた40越えてんだからさぁ、もう少し丸くなったら」

魔女「今の世の中、いつまでも騎士が偉いと言う訳じゃないのよ」

魔女「だって、元々のあんたは所領すらろくに持ってなかった、ただの貧乏騎士」

魔女「過去に、この私を仲間達と頃す事によって、今のあんたは所領を頂いてた」

魔女「もうここら辺で、下手な意地や誇りなんて捨てて、素直になればいいじゃないの」

魔女「あんた、ここに来てもう二年も経つんでしょ?」

騎士「黙れ!」ギリギリッ

僧侶「……」アワアワッ

司祭「カーネル。もうそこら辺で止めてあげなさい」

司祭「このままだと、彼は本当に氏ぬ」

司祭「今の彼は、ここ最近ずっと胃の調子が悪いんだ」

司祭「いくら、過去にこの者に何かされたとは言え、君自身もまた下手な挑発をするのは止めてあげなさい」

騎士「……」ギリギリッ

僧侶「……」アワアワッ

従者達「……」アワアワッ

214: 2013/02/19(火) 07:50:46 ID:HYy7OxL6
魔女「はいはい。分かりましたよ」

魔女「今後一切、彼に対して下手な挑発は繰り返しませんわよ」

魔女「けれど、これだけは言わせて下さいね」

魔女「彼の所為で、本当に苦しめられていた領民が数多くいた!」

魔女「ろくに食事を取る事が出来ず、それで餓氏した人達が大勢いたとしても、自分達だけが常に良い思い!」

魔女「自身が盗賊ロメオの様に捕らえられなかったからと言って、あんた自身の犯した罪は全く消えないと思ってよね!」

騎士「何!?」ギリギリッ


司祭「ああ。了解した」

司祭「彼自身もまた、本当ならここにいるべき人間ではなかったのだったな」

騎士「……司祭様?」

司祭「カーネル。君は、早く彼らを連れて行きなさい」

司祭「騎士XXとは、この私がよく話しておく」

司祭「だから、君は早く持ち場に戻りなさい」

司祭「今の君は、伯爵様に仕える臣下なのだからな」

魔女「はい。かしこまりました」ペコッ

215: 2013/02/19(火) 07:51:01 ID:HYy7OxL6
魔女「それでは、司祭様。私達は、これで失礼致します」

魔女「また後日、ここに保護されたハーフエルフ達の事をお引き取りに参ります」

魔女「また、何か必要な物があればこの私にお申し付け下さい」

魔女「この私が、すぐにそれをお持ち致しますので」ペコッ

司祭「ああ。了解した」

司祭「カーネルも、道中お気をつけて」

従者達「失礼致します」ペコッ

司祭「気を付けてな」

従者達「はい」

僧侶「……」ペコッ

魔女「さぁ、行くわよ」

従者達「はっ!」

クルッ、スタスタスタッ、スタスタスタッ……

騎士「!?」ブチッ

騎士「……」バタン

216: 2013/02/19(火) 07:51:15 ID:HYy7OxL6
司祭「ん? 騎士XX?」

司祭「一体、どうした?」

司祭「まさか、本当に胃に大穴でも開いたのか?」スッ

騎士「……」

司祭「はぁ……」

司祭「これは、明らかに重傷だな……」

司祭「相変わらず、あの子は実に器用な事をするな……」サッ

騎士「……」

司祭「助祭XX、そこにいるか?」

司祭「もしくは、侍祭XXでも良い」

司祭「どっちかいるなら、すぐに返事をしてほしい」

助祭「はっ!」シュタッ

侍祭「お呼びでしょうか?」シュタッ

司祭「うむ。来たか」

騎士「……」

217: 2013/02/19(火) 07:51:34 ID:HYy7OxL6
司祭「早速で悪いんだが、この馬鹿を速やかに蘇生させろ」

司祭「今なら、まだ間に合う」

司祭「さぁ、早くこの馬鹿を蘇生するのだ!」

助祭「はっ、仰せのままに!」

侍祭「しかと、承りました!」

騎士「……」

助祭「……」サッ

侍祭「……」サッ

ポワーーーーーーーーン……

ポワーーーーーーーーン……

騎士「……」シュルシュルシュル

ポワーーーーーーーーン……

ポワーーーーーーーーン……

騎士「……」シュルシュルシュル

司祭「……」

220: 2013/02/20(水) 05:37:25 ID:1W.40XCM
~とある道~

「なんか、今日はやけに警備兵が多いな」

「やっぱ、昨日の火事が原因なのか?」

「ああ。そうだろうな」

「でも、何でこんなに沢山」

「元々、今日は帰省する予定の人達は多いけど、ここまで増やす必要はないんじゃないの?」

「ああ、全くだ」

「だが、それも仕方ないだろうな」

「昨日、例の勇者の仲間以外にも大物が何名か捕縛されたそうだ」

「え?」

「それで、カーネルは警備兵を通常よりも倍の数をすぐに動員」

「その数、なんと1000名」

「カーネルが、あちらこちらに増援を要請して、今みたいな厳戒体制が敷かれてるらしい」

「へぇ、そうなんだ」

「そりゃあ、凄い数だ」

221: 2013/02/20(水) 05:37:42 ID:1W.40XCM
「何でも、その昨日捕まった大物って言うのは、各地を荒らしていた元騎士だそうだ」

「そいつの腕は、かなりのもの」

「次々と、迫ってくる警備兵を瞬く間に瞬殺」

「その所為で、警備兵自体も多数戦氏」

「例の勇者の仲間達二人と手を組んで、付近にいた民間人までもを殺害したらしい」

「うわぁ……」

「それ、最悪……」

「ああ、全くだ……」

「けど、何でそれにも関わらず、今日の帰省は許可されたんだ?」

「カーネルは、かなり何か自信でもあるのか?」

「さぁ?」

「しかし、解らん」

「この警備兵の数、かなり多い」

「こりゃあ、他にきっと何かあるな」

「じゃなきゃ、ここまでこんな数の警備兵がいたりしねぇよ」

222: 2013/02/20(水) 05:37:58 ID:1W.40XCM
「なら聞くが、一体何が起こってるんだ?」

「俺達、これからどうすれば良いんだ?」

「……」

「でも、カーネルならきっと何かしてくれるはず」

「ここまでしてくるんだから、何か色んな理由があるはず」

「……」

「とりあえず、俺達は普通に過ごしてたら良いのか?」

「今の俺達、安全なんだろうか?」

「ああ、多分な」

「それに、ここまでしてしまったら、勇者様も何も出来ないわよ」

「この島では、カーネルを敵に回したら生きていけない」

「カーネルは、私達にとっては救いの女神」

「もし仮に、敵に回した時は“ただの殺戮魔”になっちゃうけど」

「この島では、カーネルと敵対する住民達はまずいない」

「それだけ、今の私達はカーネルからの恩恵を受けているんだからね」

223: 2013/02/20(水) 05:38:21 ID:1W.40XCM
店主姪(義姉さん、意外と苦労してるんだ……)

店主姪(町の人から、あんな風に言われてても、この町を守ろうとしてるんだ……)

店主姪(実際、義姉さんはかなり苦労してる)

店主姪(今の私達が想像してる以上に、遥かに苦労してる)

店主姪(それでもなお、義姉さんはこの町の人達の為に尽力)

店主姪(中には、あまり着いていけない事もあるんだけど、義姉さんは常に真面目)

店主姪(出来れば、義姉さんにも春が来たら良いなぁ)

店主姪(意外に、義姉さんにも春が来てるのかな?)

店主姪(いや、あり得ない)

店主姪(やっぱり、あの義姉さんにはあり得ない)

店主姪(けど、義姉さんはハーフエルフだと言う事もあって、整った美人でナイスバディ)

店主姪(確か、過去の義姉さんを知る人が言うには、昔はそんな時期もあったって)

店主姪(実際、あのお爺さんの言う事は、かなり胡散臭いし)

店主姪(義姉さんも、かなり鬱陶しそうにしていたんだったよね)

「あっ、鹿だ」

224: 2013/02/20(水) 05:39:36 ID:1W.40XCM
商人「おや、ママさん」

商人「どうしたんですか? その鹿」

商人「どこか、今から競りに出すんですか?」

鹿「……」

店主「ああ、この子?」

店主「ちょっと、ジュリエットに頼まれてね」

店主「あの子のいない間、私がこうして散歩を頼まれたのよ」

店主姪「……?」クルッ

商人「そうですか」

商人「この鹿、確か食用にするって言っていた鹿でしたよね?」

商人「昨日、てっきりカーネルに食べられたんじゃないかと、皆が噂してたんですよ」

商人「あれだけ、目立つ様にカーネルに引きずられてましたから」

商人「この鹿、かなり運が良いみたいですね」ジーッ

店主「ええ、そうね」

店主姪「……」

225: 2013/02/20(水) 05:40:24 ID:1W.40XCM
店主「でも、この子、昨日はかなり沈んでたわよ」

店主「あの子に引きずられた後、暫くの間はずっと脅えてたもの」

店主姪「!?」

店主「おまけに、予定外に鹿肉を仕入れてしまった」

店主「だから、この子は次の機会に食べるんだって、あの子はそう言っていたわ」

店主「その所為か、今日のこの子は割りと元気そうでね」

店主「昨日と違って、今日は気晴らしに私が散歩に連れ出してる訳」

商人「へぇ……」ジーッ

店主姪「……」

店主「まぁ、そう言う訳だから、今度のメニューにこの子は出ないわ」

店主「この子は、当分の間はあの子のペットになるみたいだから」

鹿「……」

商人「でも、いずれはその子を食べるんですよね?」

商人「意外に、この鹿の肉付きがかなり良い」

商人「これ、もし仮に市場で競りに出した場合には、かなりの高値になりますよ」ウズウズッ

226: 2013/02/20(水) 05:41:20 ID:1W.40XCM
店主「あははっ、それは考えとくわ」

店主「残念だけど、この子の飼い主はウチのジュリエットだから」

店主「でも、商人さんは鹿肉はお好きだったかしら?」

店主「まだ、この島でも一部にしか鹿肉は出回っていないはず」

店主「まさかとは思うけど、この子をジュリエットから買い取るつもりなのかしら?」

店主姪「……」ゴクリ

商人「ええ。そのつもりですよ」

商人「この鹿、かなり気に入りましたもの」キラン

鹿「!?」ビクッ

商人「実際、この子を焼いて食べたら美味しいんでしょうか?」

商人「もしくは、シチューに入れたり、赤ワインと一緒にっても良さそうですしね」

商人「カーネル、今ご在宅ですか?」

商人「もし、カーネルがいるのなら、この子を今すぐ買い取りたいのですが」ウズウズ

鹿「……」ビクビクッ

店主姪「……」アワアワッ

227: 2013/02/20(水) 05:42:12 ID:1W.40XCM
店主「う~~ん、それ無理かも」

店主「あの子、自分自身の手で料理するって言っていたもの」

商人「……」ウズウズッ

店主「まぁ、他にもあの子は沢山の鹿を仕入れているみたいだし、一応聞くだけ聞いてみるわ」

店主「今のあの子、朝から色々と忙しいみたいよ」

店主「何故なら、昨日の事件の所為であの子は常に厳戒体制」

店主「なんか、また勇者がこの町で何かをやらかすみたいでね」

店主「それで、今のあの子は朝早くから出払ってるわ」

商人「はい。かしこまりました」ウズウズ

鹿「……」ビクビクッ

店主姪「……」アワアワッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ、ピタッ

「あら? ジュリエットちゃんじゃない」

「今日は、朝から色々と忙しそうね」

商人「!?」クルッ

229: 2013/02/21(木) 07:48:55 ID:lIJETjio
魔女「ああ、奥さん。お久し振りです」

魔女「今日は、とても良い天気ですね」

元店主嫁「ええ、そうね」

商人「……」ジーッ

店主(ああ、なんて、タイミングが悪い……)

鹿「……」ウルウルッ

元店主嫁「ジュリエットちゃん。昨日、ウチの主人が逃げ込んでこなかった?」

元店主嫁「ウチの主人、また仕事を放り出して愛人と会っていてね」

元店主嫁「その所為で、ウチの店がかなり大忙しになっちゃったのよ」

店主姪「……」アワアワッ

魔女「ああ、逃げてきましたね」

魔女「昨日、ウチに一泊した後すぐに出ていきましたよ」

元店主嫁「ああ、やっぱり……」

魔女「それで、今度は何があったんですか?」

魔女「また、以前みたいな借金絡みのトラブルですか?」

230: 2013/02/21(木) 07:49:09 ID:lIJETjio
元店主嫁「ええ、そうよ……」

元店主嫁「そのまさかなのよ……」

元店主嫁「ウチの主人、愛人にかなりの額を貢ぎまくっててね!」

元店主嫁「“お前と別れて、若い愛人と一緒になる”って、そう通告をされたわ!」

魔女「なっ、酷い!」ガーン

店主「……」ガクッ

元店主嫁「更には、頃し屋に大金を払って、私の事を暗殺をしようとしていた!」

元店主嫁「義姉さんをクビにして、ウチの娘と共に借金の形に娼館にまで売り飛ばす計画まで立てていたのよ!」ウルウルッ

店主「!?」ガーン

店主姪「ほえっ!?」ガーン

元店主嫁「それを知ってから、私は何度も何度も逆に主人の事を頃し掛けたわ……」

元店主嫁「私の父が、その所為で暗殺者に毒を盛られ、今も病院に入院をしているの……」ウルウルッ

魔女「……」ウルウルッ

店主「……」ポカーン

店主姪「……」ポカーン

231: 2013/02/21(木) 07:50:48 ID:lIJETjio
元店主嫁「お願い、ジュリエットちゃん」

元店主嫁「ウチの主人を、すぐにでも捕縛してくれる?」

元店主嫁「今の私、ジュリエットちゃんしか頼る人がいないし……」

元店主嫁「大事な大事な一人娘を、今の私は娼館に売り飛ばしたくはないのよ……」ウルウルッ

僧侶「……」ポカーン

元店主嫁「後、そのついでに、ウチの主人が背負った借金の処理と愛人の捕縛と私と娘と私の父の身辺警護もお願い!……」

元店主嫁「今日はまだ、ウチの主人が雇った暗殺者二人は姿を見せてはいないけど……」

元店主「いつ、またどこで命を狙われるかが分からないし……」

元店主「だから、この私からのお願い、ジュリエットちゃんは聞いてくれるかしら……」ペコッ、ウルウルッ

従者達「……」ポカーン

魔女「……はい。かしこまりました」

魔女「ちょっと、待ってて下さいね……」

魔女「今すぐ、手配してくるんで……」ウルウルッ

元店主嫁「うん。ありがとう」ポロポロッ

周囲「……」ザワザワッ

232: 2013/02/21(木) 07:51:53 ID:lIJETjio
「おい、今の聞いたか?」

「あそこの奥さん、かなりまずいみたいだぞ」

「あのままだと、本気で旦那に身勝手な理由で殺されるみたいだぞ」

店主姪「……」ポロポロッ

「あそこの娘さん、儂の孫と同じ歳じゃ……」

「それにも関わらず、娼館に売り飛ばすとはなんたる事じゃ!」

「これは、絶対に許されざる出来事じゃぞ!」

「こればっかりは、とことん血祭りに上げてしまっても良いぞ!」

「そうだ、そうだ!」

元店主嫁「みんな……」ポロポロッ

「カーネル、これについてはとことんやってくれ!」

「俺の氏んだ娘も、同じ歳でレ〇プされた挙げ句に殺されたんだ!」

「その所為で、俺の嫁は後追い自頃しちまったんだ!」ウルウルッ

僧侶「ぐすん……」ポロポロッ

店主姪「……」ポロポロッ

233: 2013/02/21(木) 07:52:10 ID:lIJETjio
「頼む、カーネル、とことんやってくれ!」

「以前から思ってたが、こればっかりはもう仕方ねぇよ!」

「大体、何であんな奴が結婚して家族を持ってるんだ!」

「妻や娘を、一体何だと思ってるんだ!」

従者達「……」ポカーン

「カーネル。私達も、協力をさせて!」

「私も、同じ歳頃の娘を二人も持つの!」

「ついこの前、質の悪い二人組が流れてきて、ウチの娘を何度も尾行してた!」

「その二人は、若い盗賊と武闘家でね」

「ウチの娘を、やけに執拗に付け狙っていたのよ!」

元店主嫁「!?」クルッ

店主「ああ、あの二人か……」

店主「本当に、もう最悪だわ……」

魔女「……?」

店主姪「……」ポロポロッ

235: 2013/02/21(木) 12:52:46 ID:lIJETjio
元店主嫁「ちょっと、今の誰!?」

元店主嫁「その二人組、私の父に毒を持った連中なのよ!?」

元店主嫁「ウチの主人が寄越した暗殺者なのよ!」ポロポロッ

魔女「なんですって!?」ポロポロッ

「ごめん。それは言えないわ……」

「ウチの娘も、執拗に狙われているから……」

「おまけに、ここ最近はウチの近所にも何度も出没……」

「一応、以前から見回りはして貰ってるんだけど、それでもなおしつこく付け狙っているみたいだからね……」

元店主嫁「……」ポロポロッ

魔女「とりあえず、皆さんはその二人組を見かけたら、すぐに近くにいる警備兵に知らせて下さい!」

魔女「本日付で、酒場XXXの所有者XXは、妻に対する計画的な殺人の罪により指名手配犯になりました!」

魔女「ですから、皆さんはどうか捜査にご協力を!」

魔女「話を聞く限り、マスターが犯した罪は万氏に値します!」ポロポロッ

魔女「もうこれ以上、不幸になる女性を今の私は見たくありません!」

周囲「お――――――――っ!」ザワザワッ

236: 2013/02/21(木) 12:53:27 ID:lIJETjio
魔女「それと、皆さんはあまり無茶はしないで下さいね!」

魔女「何故なら、マスターの犯した罪はかなり重罪!」

魔女「愛する家族を平然と殺そうとし、常に自身の欲を満たそうとしている!」

魔女「今のマスターは、確実に人としての道を大きく外してしまっています!」ポロポロッ

店主姪「……」ポロポロッ

魔女「後、勇者XXXの所在についても、すぐにご一報を!」

魔女「今回の警備体制は、勇者XXXに対して備えるもの!」

魔女「勇者XXXは、いつでもこの町の住民達を殺害し、この町を火の海にします!」

魔女「所詮、勇者一行はただの屑の集まり!」

魔女「皆さんも、そんな屑の集まりには絶対に注意して下さいね!」ポロポロッ

周囲「お――――――――っ!」ザワザワッ

店主姪「……」ポロポロッ

元店主嫁「ぐすん……」ジーン

僧侶「……」ポロポロッ

店主「……」ハッ

237: 2013/02/21(木) 12:53:42 ID:lIJETjio
ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ、ピタッ

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ、ピタッ……

店主「ちょっと、ジュリエット!」

店主「今のあんた、少し煽りすぎよ!」

店主「これ、一体どうするつもりなの!?」

元店主嫁「あっ、義姉さん……」ポロポロッ

店主姪「……」ポロポロッ

魔女「ああ、ママ、いたんだ……」

魔女「物凄く、丁度良かった……」ポロポロッ

魔女「今から、そっちに向かおうとしてたんだけど……」

僧侶「……」ポロポロッ

商人「……」ジリジリッ、ガシッ

鹿「ピィーーッ!?……」ウルウルウルッ

238: 2013/02/21(木) 12:53:57 ID:lIJETjio
店主「それで、あんたどうするつもりなの?」

店主「兄さんの事、本当に処分するつもりなの?」

魔女「ええ、そのつもりだけど……」ポロポロッ

店主「なら、もう少し穏便に事を運びなさいよ!」

店主「おかげで、私まで悪い印象を持たれちゃうわよ!」

店主「私まで、兄さんみたいな犯罪者にされたら、あんた一体どうするつもりなのよ!?」

元店主嫁「あっ……」ハッ

店主姪「……」ポロポロッ

魔女「いや、その辺はちゃんとするから……」

魔女「今の私、ママの事まで潰すつもりなんかないから……」

魔女「とりあえず、この話の続きはウチでするね……」

魔女「今の私、まだ色々とする事があるから……」

魔女「いつ、勇者が来てもいい様に、今の私はまだまだ色々と準備しなきゃいけないからね!……」

店主「……そう。了解したわ」

周囲「……」ザワザワッ

239: 2013/02/21(木) 12:54:19 ID:lIJETjio
警備下士官「カーネル、如何致しますか?」

警備下士官「自分でよければ、部下を率いて身辺警護を致しますが」

店主姪「……」ポロポロッ

魔女「そうね、伯爵様に至急報告……」

魔女「勇者は、この島の民間人をいつでも殺害する事が出来る!……」

魔女「何の罪もない、女性達を数多く不幸にしようとしている!……」

魔女「それを理由に、勇者XXX及びその意思に従う男達数名を、本日付で指名手配!……」

魔女「ママと僧侶に関しては、何も問題はないので今の私が身柄を預かる事にする!……」

魔女「そう、伯爵様に伝えといて!……」

警備下士官「はっ、了解致しました!」

警備下士官「隊長にも、そう報告を致します!」

魔女「そう、お願いね!」フキフキ

商人「うふふっ……」ナデナデ、ニヤリ

鹿「ピィーーッ、ピィーーッ!」ウルウルッ、ビクビクッ

周囲「……」ザワザワッ

243: 2013/02/22(金) 07:21:24 ID:fFcoSmNo
従者B「なぁ、アルファ……」

従者A「何だ? ブラボー……」

従者B「カーネルって、一体何者だ?……」

従者B「何で、俺達と同じなのに、あんなに人望があるんだ?……」

従者A「さぁ?……」

従者B「今の俺、改めてスゲェと思った……」

従者B「だから、あんな数多くの伝説が作れるんだなって……」

従者A「ああ、そうみたいだな……」

従者B「とりあえず、俺達はこれからどうしようか?……」

従者B「本日の宿、ここで取れるんだろうか?……」

従者A「さぁ、まだ何も分からないな……」

従者B「一応、酒場に着いた後に宿を探そう」

従者B「今日から、俺達はカーネルの配下なんだし」

従者B「以前までとは、全く違う生活が待ってるんだからな」

従者A「ああ、そうだな」

244: 2013/02/22(金) 07:21:38 ID:fFcoSmNo
僧侶(くっ、何でよ?……)

僧侶(何で、私、泣いてんのよ……?)

僧侶(あの女は、元々は家畜以下の癖に、何であれだけの人望があるのよ?……)ポロポロッ

鹿「ピィーーッ、ピィーーッ!」ウルウルッ、ビクビクッ

僧侶(今の私、それについてが全く分からない……)

僧侶(本来なら、あの女は家畜以下……)

僧侶(何で、あの女がこの町では有力者になってんのよ!?……)

僧侶(これ、絶対に何かがおかしいでしょうが!?……)ポロポロッ

鹿「ピィーーッ、ピィーーッ!」

僧侶(それに、今の私は勇者様の妻……)

僧侶(あの女は、勇者様を貶めようとする憎むべき相手……)

僧侶(けど、今の私には何も出来ない……)

僧侶(戦士も魔法使いも捕まり、おまけに敵兵が1000名も出た……)

僧侶(ここは、何もせずに大人しくしとくのが得策……)

僧侶(じゃないと、私まで戦士達みたいに捕まっちゃうからね……)フキフキ

245: 2013/02/22(金) 07:21:55 ID:fFcoSmNo
店主「ねぇ、ジュリエット……」

店主「あんたの鹿、なんか鳴いてるわよ……」

店主「と言うか、気がついたら商人さんに捕まってるんだけど……」

鹿「ピィーーッ、ピィーーッ!」ウルウルッ、ビクビクッ

店主「今の私、何かの見間違いかしら?……」

店主「このどさくさに紛れて、商人さんがあの鹿を自宅にまで拉致監禁……」

店主「そのまま、あんたみたいに自身で捌いて食べてそう……」

店主「今の私、本当にあの商人さんがしそうで、かなり怖いんだけど……」

鹿「ピィーーッ、ピィーーッ!」ウルウルッ、ビクビクッ

魔女「ああ、あれね……」

魔女「なんか、うるさいけどほっといていいわ……」

魔女「以前、私が師匠に助けを求めた時もあんな感じだった……」

魔女「結局、師匠はただの私の体目当て……」

魔女「どれだけ、助けを求めても師匠は何もしてくれなかったから、別に良いのよ……」ポロポロッ

鹿「ピィーーッ!?」ガーン

246: 2013/02/22(金) 07:22:12 ID:fFcoSmNo
魔女「それに、あの商人さんも悪い人じゃないわよ……」

魔女「また、師匠が私を置いてどこかに逃げようとしていたから、それを確保してくれただけの事よ……」ポロポロッ

店主「……」

魔女「まぁ、実際、あの時も私はあんな感じだった……」

魔女「三日三晩、私はずっと師匠の助けを待っていたけど、この私の目の前に現れたのは一匹の鹿と敵兵のみ……」

魔女「結局、師匠は一度も助けには来てくれず、別の愛人宅で愛の営みの真っ最中……」

魔女「それに気づいた師匠の奥様+村人達が、本気で師匠に対してブチギレ!……」

魔女「それが原因で、師匠は怒り狂った奥様に重傷を負わされ、そのまますぐに入院……」

魔女「師匠が退院した時には、もう既にあの時の私は氏んでいたと言う訳……」ポロポロッ

店主「……」

魔女「だから、師匠はあのままで良いわ……」

魔女「その方が、今の師匠には物凄くお似合いだから……」

魔女「まぁ、あの商人さんに食べられそうになった時には、全力ですぐに止める……」

魔女「だから、ママは何も心配はしないでね……」フキフキ

店主「……そう。了解したわ」

247: 2013/02/22(金) 07:32:41 ID:fFcoSmNo
商人「うふふっ……」

商人「そんなに、切なそうに鳴かなくても良いわよ……」

商人「今の私、何もしないわよ……」ギラギラッ

鹿「ピィーーッ、ピィーーッ!」ウルウルッ、ビクビクッ

商人「今のあなた、本当に良い肉付きね……」

商人「これだけ、感じの良い鹿肉は初めてだわ……」

商人「今のあなた、本当に今すぐ食べちゃいたい!……」

商人「カーネルから買い取って、今晩の夕食にしたい!……」ギラギラッ

鹿「ピィーーッ、ピィーーッ!」ウルウルッ、ビクビクッ

商人「あははっ、冗談よ……」

商人「ほらっ、ちょっとした気の緩みから起きる冗談よ……」

商人「今の私、専門は家畜の取引だから……」

商人「せっかくの目玉商品、そう簡単には逃したりは絶対にしないから!……」ギラギラッ

鹿「ピィーーッ、ピィーーッ!」ウルウルッ、ビクビクッ

店主「……」

248: 2013/02/22(金) 07:32:56 ID:fFcoSmNo
商人「でも、あなたはかなり運が良いわね……」

商人「本当だったから、もう昨夜の内に食べられちゃってるんだって?……」

商人「もし仮に、この子を買い取ったら何にしようかしら?……」

商人「家畜として買うのも良いし、ステーキやシチューに入れるのも良い……」

商人「この子の種類、最低でも200Kg以上の大型種……」

商人「場合によっては、食肉部位だけなら最低でも5万Gはいけるかも……」

商人「それだけ、この子の価値は高いんだし……」

商人「なんとか、この子を買い取れないかしら?……」ギラギラッ

鹿「ピィーーッ、ピィーーッ!」ウルウルッ、ビクビクッ

商人「まずは、カーネルに交渉をしないとね……」

商人「早くても、数日後くらいにはこの騒ぎが終わる……」

商人「その時が、私がこの子を手に入れるチャンス……」

商人「そう、私自身のものとしてね……」

商人「うふふっ……」ギラギラッ

鹿「ピィーーッ、ピィーーッ!」ウルウルッ、ビクビクッ

249: 2013/02/22(金) 07:34:15 ID:fFcoSmNo
魔女「あの、商人さん。少しお話が……」

魔女「ちょっと、今そこにいる鹿の事でお話があるんですが……」

鹿「!?」ピカァ

商人「!?」ピカァ

魔女「商人さん、確か家畜専門のお取り引きをされていましたよね?」

魔女「ウチのママから、そう伺ってきたんですけど」

魔女「それで、合ってますでしょうか?」

商人「はい、その通りです!」シュタッ

商人「鹿肉、馬肉、豚肉、鶏肉、牛肉、それら五種類の肉を私は取り扱っております!」ニッコリ

鹿「……」ウルウルッ、ビクビクッ

魔女「実は、ちょっとここ最近この子の世話があまり出来てなくって」

魔女「それについてで、商人さんにご相談したい事があるんです」

魔女「元々、この子は食肉用」

魔女「それに気づかれ、よく最近は小屋の中から脱走する事が、やけに多いんです」

商人「……ほう、それで?」ニコニコ

250: 2013/02/22(金) 07:34:32 ID:fFcoSmNo
魔女「ですから、今度この子を捌く時までの間、この子を商人さんに預かってほしいんです」

魔女「勿論、この子を捌く時には商人さんにも、ちゃんとその時の分をお渡し致しますよ」

魔女「今の私、少なからず考えなしに食肉用の鹿を沢山仕入れ過ぎちゃいましてね」

魔女「それが原因で、この子以外の費用も結構掛かってるんです」

商人「ふむふむ……」ニコニコ

魔女「だから、今度の食事会の日が終わったら、この子を捌くのを手伝って頂けませんでしょうか?」

魔女「だいぶ、この子は商人さんにも懐いているみたいですし」

魔女「少し身勝手なお願いですが、この子の事を商人さんにお任せ致したいのですが」

商人「はい、かしこまりました!」ニッコリ

鹿「ピィーーッ!?」ガーン

魔女「ありがとうございます! 商人さん!」ニッコリ

魔女「おかげで、助かりました!」ペコッ

商人「いえいえ!」ニヤニヤ

鹿「ピィーーッ……」クラッ

鹿「……」ドシン!

251: 2013/02/22(金) 07:34:49 ID:fFcoSmNo
商人「あら? 倒れちゃった」

商人「そんなに、この子は食べられたくなかったんでしょうか?」ニヤニヤ

魔女「ええ。多分ね」ニヤニヤ

鹿「……」

商人「でも、この子はいずれ私達に食べられる……」

商人「後もう少しで、この子は捌かれる……」

商人「それに、今更逃げようたって無駄な事……」

商人「私は、家畜の扱いに関しては、それなりに慣れています……」ニヤニヤ

鹿「……」

商人「カーネル。この子の事は、この私にお任せを!」

商人「この私が、責任を持ってこの子をお預かり致します!」

商人「ですから、カーネルはご安心を!」

商人「今の私、こう言うのは昔から慣れてますから!」

商人「だから、カーネルはご安心下さいませ!」ニッコリ

魔女「ええ、お願い致します!」ニッコリ

252: 2013/02/22(金) 07:35:14 ID:fFcoSmNo
魔女「ママ。そう言う事だから、この子を商人さんに預けるね!」

魔女「それと、私が今連れてきてるそこの男女三人の宿泊手続きを、今すぐお願い!」

魔女「今の私、ちょっとまた行かなきゃならないから!」

魔女「後、マスターの奥さん達は、ここ数日の間は店を閉めて!」

魔女「まずは、マスターの寄越した暗殺者達の排除!」

魔女「それをしなきゃ、マスターの奥さん達の身の安全の保障が確約出来ないからね!」

店主「……そう、了解したわ」

店主「あんたも、気を付けてよね……」

魔女「ええ、分かったわ」ニッコリ

従者達「行ってらっしゃいませ!」ビシッ

僧侶「くっ……」

店主姪「ぐすん、義姉さん……」ポロポロッ

元店主嫁「ジュリエットちゃん……」

商人「……」ペコッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

253: 2013/02/23(土) 11:25:00 ID:6VLyEFUo
~とある牢獄~

剣士(ここに入れられて、早一日)

剣士(久し振りに、獄中で寝たな)

剣士(いつもは、適当に野宿とかしていたが、こんなに落ち着いて眠たのは物凄く久し振だ)モグモグッ

剣士(それに加え、獄中の中では食事が出る)

剣士(いつもの様に、食事に困る事はない)

剣士(ここは、朝はライ麦パンとミルクとチーズなんだな)

剣士(前にいた場所は、生水に皿代わりにされたパン)

剣士(明らかに、待遇の差があるな)スッ、モグモグッ

カァ、カァ、カァ……

剣士(しかし、あの女は何故この島に?)

剣士(それに、何故この島の住民達はハーフエルフ達に対して、全く何もしていない?)

剣士(おまけに、ここの酒場のママともかなり親しいようだ)

剣士(これは、色々と探り出す必要があるな)モグモグッ

ザザーーン、ザザーーン……

254: 2013/02/23(土) 11:25:13 ID:6VLyEFUo
戦士「なぁ、魔法使い……」

戦士「俺達、大丈夫なんだよな?……」

戦士「勇者の事、信じて大丈夫なんだよな?……」

魔法使い「ああ、多分な……」

戦士「今の俺、物凄く不安なんだわ……」

戦士「昨夜、勇者に見捨てられた挙げ句に、そのまま俺達が処刑された夢を見てしまったんだわ……」

魔法使い「……」

戦士「その癖、勇者は何のお咎めもなく、僧侶と共に旅を継続した」

戦士「やがて、二人は結婚をし、俺達は一生罪人としてこの世にその名を残してしまうんだわ……」

魔法使い「……」

戦士「俺、そんなの絶対に嫌だぞ……」

戦士「こんなの、絶対に俺は納得が行かないぞ……」

戦士「何故なら、俺達は選ばれた存在なんだ……」

戦士「神にも勇者にも、俺達は選ばれた存在なんだ……」

ザザーーン、ザザーーン……

255: 2013/02/23(土) 11:25:26 ID:6VLyEFUo
剣士「なら、何で貴様らはここにいるんだ?」

剣士「てっきり、もう既に脱獄してると思ってたんだが」

戦士「!?」

剣士「しかも貴様ら、まだそんな事を言っていたのか」

剣士「本当に、神にも勇者にも選ばれたんなら、今の貴様達はここで捕まってはいない」

剣士「今ここにいる時点で、今の貴様らは選ばれた存在ではないと思うぞ」

戦士「うるさい!」

魔法使い「……」

剣士「まぁ、そんなかっかするな」

剣士「チャンスは、まだいくらでもある」

剣士「そこの窓から、試しに外を眺めて見ろよ」

剣士「何やら、勇者がまた動いてる様だ」

剣士「昨夜も、またこの辺で何かしてたし、上手く行けばすぐにもここを出れるかもな」

戦士「何!?」バッ

ザザーーン、ザザーーン……

256: 2013/02/23(土) 11:25:40 ID:6VLyEFUo
戦士「あれは、伝書鳩か?……」

戦士「勇者が、何かメッセージを送ってきてるのか?……」

魔法使い「ああ、そうみたいだ……」

戦士「魔法使い、魔法であの鳩の足に取り付けてある手紙を、こっちに送れないか?」

戦士「今なら、勇者達もすぐに気づくはず」

戦士「今のお前の魔法で、なんとかならないだろうか?」

剣士「……」

魔法使い「いや、それは無理みたいだな……」

魔法使い「昨夜、色々と試してみたが全て無駄に終わった……」

戦士「!?」ガーン

魔法使い「あの女、見た目に反してかなり手強いぞ……」

魔法使い「あいつに勝てるとしたら、せめて俺の師匠レベル……」

魔法使い「今はもう、現役を引退なされた大魔導師様レベルじゃないと、確実に勝ち目ねぇよ……」

戦士「そ、そんな……」ヘナヘナ

ザザーーン、ザザーーン……

257: 2013/02/23(土) 11:25:55 ID:6VLyEFUo
剣士「なぁ、そこの魔法使い」

剣士「その大魔導師様って言うのは、見た目が髭面で白髪の爺さんの事か?」

剣士「確か、その爺さんなら、俺がいた港町の酒場で数日前に見たぞ」

剣士「やけに、鹿がどうこう言っていたが、この島に渡ったのは確かな様だ」

魔法使い「!?」

戦士「おい、あんた。それ誰の事を言っているんだ?」

戦士「その爺さん。右頬にクロスした切り傷みたいのは、ちゃんと有ったんだろうな?」

剣士「ああ、そうだ」

魔法使い「なら、やけにジュリエットとか言う女の名前を口にしてなかったか?」

魔法使い「俺の師匠は、未だに昔見頃しにしてしまった弟子の幻影を追い続けているんだが」

戦士「……」

剣士「ああ。そんな事を言ってた」

剣士「確か、その爺さんの生まれ故郷は、XXX地方のXXX村だったよな?」

魔法使い「……ああ、そうだ」

ザザーーン、ザザーーン……

258: 2013/02/23(土) 11:26:10 ID:6VLyEFUo
剣士「それなら、その俺が見た爺さんで確実に合ってる」

剣士「あの爺さん、以前はその村で家族と共に住んでた」

剣士「だが、ある事が原因で生まれ故郷から追い出された」

剣士「その時、俺はその爺さんの住んでいた村を治める騎士の配下」

剣士「だから、すぐにあの時の爺さんだと気づいてしまったんだよ」

魔法使い「……」

戦士「……そうか」

戦士「じゃあ、ジュリエットと言う女は?」

戦士「何か、それについては深く聞いていなかったのか?」

魔法使い「……」

剣士「ああ。聞いてる」

剣士「俺も、昔その女にあった事があった」

剣士「その爺さんが言うには、今までの中で最高の教え子」

剣士「主に、男女の仲になる程、あの爺さんにはかなり従順で相思相愛だったらしい」

ザザーーン、ザザーーン……

261: 2013/02/24(日) 07:35:24 ID:KjP9adv6
魔法使い「ああ、やっぱりか……」

魔法使い「それ、紛れもなく俺の師匠だ……」

魔法使い「もしかして、その時に女は一緒にいたか?……」

魔法使い「まさかとは思うが、師匠はその時も女連れだったのか?……」

剣士「ああ。そうだ」

魔法使い「……」ガクッ

戦士「……魔法使い」

剣士「……」スッ、ゴクゴクゴクッ

カァ、カァ、カァ……

剣士「後、その爺さんが探してる女はもう既に氏んでいるぞ」

剣士「確か、今の貴様らと同じくらいの糞餓鬼だったぞ」

魔法使い「!?」ガーン

剣士「あの時、爺さんは本気で泣いてたからな」

剣士「あればっかりは、皆がどうしようもなかった」

ザザーーン、ザザーーン……

262: 2013/02/24(日) 07:35:40 ID:KjP9adv6
剣士「でも、何でその爺さんがここに?」

剣士「良い歳して、何で未だに昔見頃しにした弟子の幻影を追っているんだ?」

戦士「さぁ?」

剣士「まぁ、とりあえず貴様らは精々神に祈っとくんだな」

剣士「俺なんかと違い、今の貴様らはすぐに出れる」

剣士「だから、いつでも戦える様に準備しとくんだな」

戦士「……は?」

戦士(何言ってんだ? こいつ……)

魔法使い「ふふふっ、そうだな……」ニヤリ

魔法使い「ご忠告、どうも感謝する」

魔法使い「いずれ、俺達がここを出る時に勇者が現れるぞ」

魔法使い「勇者は、僧侶と共に全力ですぐに俺達を奪還」

魔法使い「その後は、船でこの島を出るんだ」

戦士「なっ!?」

ザザーーン、ザザーーン……

263: 2013/02/24(日) 07:35:56 ID:KjP9adv6
魔法使い「なぁ、あんた」

魔法使い「俺達と一緒に、時が来たらこの島を出ないか?」

魔法使い「今のあんた、かなりの腕があるんだろ?」

魔法使い「昨夜は、酒に酔ってて手加減してたけど、本当の所はかなり強いんだろ?」

剣士「さぁ、どうだろうか?」

魔法使い「それと、今のあんたは何で騎士を辞めたんだ?」

魔法使い「騎士になったら、それなりの特権階級」

魔法使い「俺達の様な庶民は、絶対に騎士にはなれない」

魔法使い「なのに、何であんたは騎士を辞める事になったんだ?」

戦士「……」

剣士「それについては、あまり答えたくねぇよ」

剣士「しいて言えば、あの時この俺が斬り頃したはずだったある一人のハーフエルフが、そもそもの原因だ」

剣士「そいつは、今もこの島に生きている」

剣士「そいつの所為で、今の俺は騎士を辞める事になってしまったんだよ」

ザザーーン、ザザーーン……

264: 2013/02/24(日) 07:36:11 ID:KjP9adv6
魔法使い「もしかして、俺の師匠と何か関係があるのか?」

魔法使い「俺の師匠は、それで未だに幻影を追い続けてるのか?」

剣士「ああ。そのまさかだ……」

剣士「その爺さんの弟子と言うのが、あの女と完全に容姿が瓜二つなんだわ……」

魔法使い「!?」

剣士「それだけでなく、あの女はあの後すぐにまんまと逃げおおせた」

剣士「俺が斬り頃したのは、その女ではなくあの爺さんの弟子の方だった」

剣士「それが原因で、俺は後に騎士の身分を剥奪され、更には盗賊にまで没落」

剣士「おまけに、その場にいた俺の兄騎士まで没落してな」

剣士「あの女に関わって以来、皆が立て続けに不運に見舞われているんだ……」

魔法使い「……」

戦士「そうか、それは災難だったな……」

戦士「あの女は、かなりの疫病神と言う訳か……」

剣士「ああ。そうだ」

ザザーーン、ザザーーン……

265: 2013/02/24(日) 07:36:28 ID:KjP9adv6
戦士「だったら、あんたも俺達に協力をしてくれ!」

戦士「この島を出るには、一人でも多くの仲間が必要だ!」

戦士「幸い、今の俺達には共通の敵がいる!」

戦士「たとへ、過去に色々とあったが、今はそんな事は言ってられない!」

戦士「だから、あんたも今の俺達に協力をしてくれ!」

魔法使い「……」ゴクリ

剣士「ああ。構わないぞ!」

剣士「俺でよければ、いつでも協力をしてやるぞ!」ニヤリ

戦士「よっしゃあ――――――――っ!」ニヤリ

魔法使い「……」ニヤリ

剣士「だが、まずは食事からだ!」

剣士「ここを出された時が、本当の勝負の時だ!」

剣士「まずは、それに備えての腹ごしらえだ!」スッ

戦士「おう!」

ザザーーン、ザザーーン……

266: 2013/02/24(日) 07:36:42 ID:KjP9adv6
魔法使い「とりあえず、食事が終わり次第、作戦会議に移ろう」

魔法使い「今はまだ、俺達の裁判は始まらないみたいだし」

魔法使い「まだまだ、時間はたっぷりとある」

剣士「……」

戦士「なら、今回の事を記念して乾杯をしようぜ」

戦士「と言っても、ここにはミルクしかないが」

戦士「今はまだ、ミルクで我慢だ」

戦士「そして必ず、美味い酒と肉を沢山食うぞ!」

三人「お――――――――っ!」

密偵2「……」

密偵2(あいつら、かなりバカだな……)

密偵2(何で、こんな所で丸聞こえな会話をしてるんだか……)

密偵2(まぁ、精々そこで粋がっておけ)

密偵2(今の貴様らには、とても明るい未来等ないのだからな)

ザザーーン、ザザーーン……

267: 2013/02/25(月) 13:38:29 ID:DiScfY5M
~とある民家~

勇者(僧侶達、大丈夫だろうか?……)

勇者(カーネルに、手荒な事をされてなきゃいいんだが……)

勇者(しかし、今日はやけに警備兵が多い……)

勇者(その数、大体500以上……)

勇者(主に、歩兵が中心となっているみたいだな……)

勇者(昨日見た弓兵達もかなり強敵……)

勇者(さすがは、伝説の傭兵部隊を率いているカーネル……)

勇者(出来れば、カーネルだけは絶対に敵に回したくなかったんだけどなぁ……)ハァ……

武闘家「……」モグモグッ

勇者(だか、今の俺はそんな事を言ってられない……)

勇者(今の俺自身は、逃げたくても出来ない……)

勇者(おまけに、ここを出る手段は船着き場のみ……)

勇者(そこはもう既に、カーネルが抑えているはずだからな……)ハァ……

武闘家「……」モグモグッ

268: 2013/02/25(月) 13:38:52 ID:DiScfY5M
盗賊「どうした? 勇者」

盗賊「そんなに、あいつらの事が気になるのか?」

勇者「ああ、まあな……」

盗賊「あまり、外は見ない方が良いぞ」

盗賊「奴等、いつも以上の兵を動員してきてやがる」

盗賊「普段は、およそ150~200」

盗賊「自警団を合わせても、普段はそれくらいしか兵は出していなからな」

武闘家「……」モグモグッ

勇者「なら、何で今日はこんなに警備兵が多いんだ?……」

勇者「昨日の俺達の騒ぎが原因なのか?……」

盗賊「ああ、まあな」

勇者「くっ……」

盗賊「おっと、そんな顔するなよ」

盗賊「理由は、他にもあるんだよ」

盗賊「だから、そんな顔をするなって」

269: 2013/02/25(月) 13:39:05 ID:DiScfY5M
勇者「なら聞くが、他の理由とは何なんだ?」

勇者「まさか、もう既にカーネルが俺達の関係に感付いてしまったとか?」

盗賊「いや違う」

武闘家「……」モグモグッ

勇者「じゃあ、他に何かイベントがあるとか?」

勇者「戦士達以外にも、誰か大物が捕まったとかか?」

盗賊「ああ、そのまさかだ……」

盗賊「しかも、あんたの仲間以上の極悪人がな……」

勇者「何!?」

武闘家「……」モグモグッ

盗賊「だから、勇者は何も心配するな」

盗賊「今日は、炭鉱で働いていた連中の帰省日でもあるんだ」

盗賊「それに加え、昨日の火災現場の復旧作業に周辺の治安維持」

盗賊「元々、この島はよく各地から前科者達も数多く流れてくる」

盗賊「今更、この島の住民達もあまり気にしてもいない」

270: 2013/02/25(月) 13:39:20 ID:DiScfY5M
勇者「それで、昨日捕まった大物とは?」

勇者「一体、どんな奴なんだ?」

盗賊「……」スッ、ゴクゴクゴクッ

勇者「なぁ、勿体振らないで教えてくれよ」

勇者「俺達は、もう既に仲間じゃないか」

盗賊「ああ、そうだったな」ストン、チラッ

武闘家「……」ニヤニヤ

勇者「……?」

盗賊「……」モグモグッ

勇者「……」

武闘家「実は、昨日捕まった大物って言うのは、勇者も何度か会った事がある」

武闘家「ほらっ、昨日勇者も見ただろ?」

武闘家「あの悲壮感漂うおっさん剣士」

武闘家「あいつが、昨日捕まった大物だったんだよ」ニヤニヤ

勇者「!?」ガーン

271: 2013/02/25(月) 13:39:34 ID:DiScfY5M
盗賊「ああ、そうだな……」

盗賊「あいつ、ああ見えてかなりの大物だったからな……」

盗賊「しかも、あの容姿で実は総額1000万G越えの賞金首……」

盗賊「騎士になってから、馬上槍試合でも悉くライバル達を撃破!」

盗賊「だが、ある事がきっかけで騎士の身分を剥奪され、今ではすっかり悲壮感漂うただのおっさん剣士……」

盗賊「おまけに、全財産もその所為で没収され、その後は馬上槍試合でも連戦連敗……」

盗賊「どうやら、昔カーネルそっくりのハーフエルフを斬り頃したらしくてな……」

盗賊「それが原因で、今のあいつはあんな風になっちまったんだと……」アハハハッ……

武闘家「……」ニヤニヤ

勇者「……」ズーン

盗賊「まぁ、そう言う事だから、勇者は何も心配するな」

盗賊「いざと言う時の脱出経路は、もう既に確保してある」

盗賊「この島の中にも、少なからずは反カーネルも存在」

盗賊「そいつらと共に、この島を脱出」

盗賊「ここを出る為の船ですらも、そいつらが数隻用意してくれているからな」

272: 2013/02/25(月) 13:39:47 ID:DiScfY5M
勇者「ああ、そうか……」

勇者「そりゃあ、色々と有り難いな……」

勇者「それで、僧侶の件はどうなってる?……」

勇者「まだ、教会の中にいるんだろうか?……」

盗賊「ああ、多分な」

武闘家「とりあえず、情報収集は俺達に任せろ」

武闘家「勇者は勇者で、裁判に出る準備を進めてればいい」

武闘家「戦士達が、駐屯地から出てきたらその時が勝負」

武闘家「俺の読みでは、戦士達も何らかの策を練っているはず」

武闘家「だから、勇者は何も心配する事はない」

勇者「……」

盗賊「……とりあえず、勇者も何か食えよ」

盗賊「今ここで食っとかないと、いざと言う時に体が持たないぞ」

盗賊「今回の敵は、かなり強敵」

盗賊「そう、あのカーネルが相手なんだからな」

273: 2013/02/26(火) 06:56:48 ID:1d3Og88A
勇者「なら、カーネルの部隊の編成は?……」

勇者「その辺も、情報は入ってるのか?……」

盗賊「ああ、まあな」

武闘家「大体、500~1000」

武闘家「主力は歩兵と弓兵」

武闘家「この島では、狭くて騎兵はあまり使えない」

武闘家「だから、歩兵や弓兵がこの島では中心となっているんだ」

勇者「……」

盗賊「まぁ、そう言う事だな」

盗賊「奴等が使う、炸裂矢はかなり威力が高いからな」

盗賊「勇者も、昨日見てたんだから分かるだろ?」

盗賊「あいつらの目、完全に氏んでた」

盗賊「あれは、ただの人間ではないってすぐに気がついただろ?」

勇者「ああ、まあな」

武闘家「……」

274: 2013/02/26(火) 06:57:13 ID:1d3Og88A
盗賊「あいつら、噂ではカーネルが呼び出した特殊な兵らしい」

盗賊「しかも、自身の操る特殊な召喚術の効果によって」

盗賊「その所為か、カーネルに対しては常に絶対服従」

盗賊「ここの伯爵も、それを知っててカーネルを雇った」

盗賊「今ではすっかり、カーネルはこの島では無視出来ない存在になっちまったんだわ」

勇者「!?」

盗賊「それで、勇者はどうする?」

盗賊「何か、策とかはあるのか?」

盗賊「今の俺達、どう動けば良い?」

勇者「……え?」

盗賊「今のあんたは、俺達のリーダーなんだ!」

盗賊「リーダーの言う事は、常に絶対!」

盗賊「そうじゃなきゃ、今の勇者はまともに自身の仲間を完全にコントロール出来やしないぞ!」

盗賊「昨日の火事の件、勇者の統率力にも問題があったから、あんな事態にまでなってしまったんだよ!」

勇者「……」

275: 2013/02/26(火) 06:57:38 ID:1d3Og88A
盗賊「だから、勇者はリーダーならリーダーらしく、皆に対して振る舞え!」

盗賊「じゃなきゃ、今の勇者はずっと同じ事を繰り返す!」

盗賊「そうじゃなきゃ、今の戦士達はカーネルなんかには、絶対に捕まってはいない!」

盗賊「今回の原因は、勇者にも大きな責任があると思うぞ!」

盗賊「その事を、今の勇者はちゃんと分かってんのか?」

勇者「……」

武闘家「盗賊、声が大きい」

武闘家「せっかく、賢者が張ってくれた結界が全て無駄になる」

武闘家「まぁ、勇者もそう気を落とすな」

武闘家「俺達も、以前は別の勇者のパーティにいた」

武闘家「それで、今の盗賊は少なからず熱くなってるんだ」

勇者「!?」

盗賊「ちっ、武闘家、余計な事を……」

盗賊「それに、今の勇者に言ってどうする?……」

盗賊「今の勇者に、その事を言ったとしても、何の解決にもならねぇよ……」イライラ

276: 2013/02/26(火) 06:58:02 ID:1d3Og88A
勇者「……武闘家、お前達は別の勇者の仲間だったのか?」

勇者「それって、まさか俺の兄の事か?」

勇者「まさかとは思うが、あの兄さんの仲間だったのか?」

武闘家「ああ、そうだ」

盗賊「ちっ……」イライラ

勇者「……」ガクッ

武闘家「だから、俺達は今の勇者に力を貸してるんだ」

武闘家「今の勇者の兄は、それはとても良い男だった」

盗賊「……」スッ、ゴクゴクゴクッ

武闘家「だが、今の勇者も知っている通りに、前の勇者は仲間を次々と見捨てた」

武闘家「魔王の策略により、前の勇者のパーティは完全に崩壊した」

武闘家「その時の生き残りは、俺達二人のみ」

武闘家「他にいた戦士に魔法使いは、勇者に見捨てられた後に氏亡」

武闘家「僧侶は、前の勇者と二人仲良く愛の営みの真っ最中に、何故か勇者と共に氏んでいった」

勇者「……」

277: 2013/02/26(火) 06:58:48 ID:1d3Og88A
盗賊「武闘家、もうその辺で止めろ……」

盗賊「飯が、完全に不味くなる……」

盗賊「それで、賢者はどうした?……」

盗賊「まだ、戻ってきてはいない様だな……」イライラ

勇者「……」

武闘家「なぁに、心配はするな」

武闘家「あいつなら、絶対に大丈夫だ」

武闘家「伊達に俺達、氏線を潜り抜けてきてはいない」

武闘家「それは、今のお前もよく知っているだろ?」

盗賊「ああ、まあな」イライラ

武闘家「後は、戦士達の裁判がいつ開かれる事についてだな」

武闘家「今回は、あの元騎士まで捕まっちまった」

武闘家「だから、いつ裁判が始まるかが全く分からない」

武闘家「それについても、今賢者が調べに行っていてくれているからな」

勇者「……」

278: 2013/02/26(火) 06:59:13 ID:1d3Og88A
勇者(まさか、この二人が兄さんの仲間だったとはな……)

勇者(兄さんもまた、かなり罪作りな男な事だ……)

勇者(しかし、未だに分からない事がある……)

勇者(どうして、兄さんは自身の仲間を見捨てた?……)

勇者(何故、兄さんはこの二人の事を見捨てたんだ?……)

勇者(一体、魔王戦の時に何があったんだ?……)

盗賊「……」モグモグッ

勇者(まぁ、それについてはもう分からないな……)

勇者(何故なら、もう兄さんはこの世にいないからだ……)

勇者(それに、兄さんは魔王と直に戦い、後寸前の所で撃破された……)

勇者(その後は、人が変わったかの様に僧侶だけを愛し、他の仲間達は完全に切り捨て……)

勇者(おまけに、珍しく外出をしたと思えば、僧侶以外の仲間達を魔物達の巣の中に放置する始末……)

勇者(そりゃあ、あの兄さんも恨まれて仕方ないわな……)

勇者(本当に、兄さんも罪作りな男な事だ……)ハァ……

武闘家「……」モグモグッ

279: 2013/02/27(水) 08:07:59 ID:2iCFqOSM
~とある役場前~

賢者「言いたい事は、それだけですか?」

賢者「今更、過去に捨てた子供に老後の面倒を見ろとは、かなり虫が良すぎませんか?」

警備兵「……」

賢者兄「頼む! 弟よ、この通りだ!」

賢者兄「父も母も、もう年老いた!」

賢者兄「だから、俺の代わりに年老いた両親を引き取ってくれ!」

警備兵2「……」

賢者「いくら、兄上に頼まれてもこればっかりは譲りません!」

賢者「私は、過去に父や母に酷い仕打ちを受けてきました!」

賢者「ろくに水や食事を与えて貰えず、着る物すら兄上のお下がり!」

賢者「おまけに、生まれてからずっと私は暴力を受けてきました!」

賢者「“お前は、我が家には必要のない子だ!”」

賢者「“だから、どこへでも好きな場所に行きな!”と、裸同然で追い出されたのを未だに私は覚えてるのですよ!」ギリッ

賢者兄「!?」ガーン

280: 2013/02/27(水) 08:08:13 ID:2iCFqOSM
賢者「それに、兄上はもう結婚されて子供までいる!」

賢者「どうせ、兄上の事だから奥さんが同居を嫌がって、私に同居させようとわざわざ来たのでしょ?」

賢者「けれど、私は絶対にあんな卑劣な両親は引き取りません!」

賢者「何故なら、私は過去に捨てられた子供だ!」

賢者「今更、私を五歳の時に捨てた両親を引き取るなんて、絶対に出来るものか!」ギリギリッ

賢者兄「……」ポロポロッ

周囲「……」ザワザワ

賢者「すみません。警備兵の皆さん」

賢者「この男を、すぐに島から追い出して下さい!」

賢者「今の私は、この男の顔など二度とみたくない!」

賢者「こんな男に、親不孝者なんて思われる筋合いもない!」ギリギリッ

警備兵「……」

賢者兄「すまん。弟よ、この通りだ!……」

賢者兄「今の俺には、大事な家族がいるんだ!……」

賢者兄「借金も抱えていて、もうどうしようもないんだ!……」ポロポロッ

281: 2013/02/27(水) 08:08:27 ID:2iCFqOSM
賢者「は? それが何だって言うんですか?」

賢者「今度は、同情に漬け込んで金の無心ですか?」

賢者「言っときますが、今の私は兄上の事も恨んでいます!」

賢者「兄上にも、私が家を出るまでよく暴力を振るわれました!」

賢者「あの時の私、本気で何度も何度も氏に掛けてたんですよ!」

賢者「偶々、そこを通りがかった大賢者様に拾われるまで、私はずっと残酷な仕打ちをほぼ毎日の様に受けてきたんですよ!」ギリギリッ

賢者兄「……」ポロポロッ

賢者「だから、兄上はどうかお引き取りを!」

賢者「もう二度と、私の前に顔を出さないで下さい!」

賢者「今の私は、兄上達と違って地位や名誉もある!」

賢者「今更、私に会いに来て金の無心に年老いた親の引き取りの要請!」

賢者「相変わらず、兄上達は身勝手だ!」

賢者「今更、この私の前にのこのこと姿を見せるんじゃねぇ!」ギリギリッ

賢者兄「……」ポロポロッ

周囲「……」ザワザワ

282: 2013/02/27(水) 08:08:41 ID:2iCFqOSM
賢者「警備兵の皆さん。早くこの男を島から出して下さい!」

賢者「私の頼みを、貴方達は聞いて下さらないのですか?」

賢者「やはり、今の貴方達はカーネル以外の命令には、絶対に従わないと言うのですか?」ギリギリッ

賢者兄「……」ポロポロッ

警備兵長「いや、そう言う訳ではない」

警備兵長「今の貴方は、かなり冷静さを欠いている」

警備兵長「周囲をよく見てみろ」

警備兵長「人が多すぎるだろ?」

警備兵長「この状態で、どうやってこの男を船着き場まで連れていく?」

警備兵長「少しは、貴方も冷静になったらどうだ?」

賢者「なっ!?」ハッ

賢者兄「……」ポロポロッ

周囲「……」ザワザワ

賢者「……」ギリッ

魔女「……」

283: 2013/02/27(水) 08:09:48 ID:2iCFqOSM
魔女「コーポラル。この騒ぎは何?」

魔女「一体、何があったのかしら?」

賢者兄「……?」ポロポロッ

警備兵長「はっ! ご報告致します!」

警備兵長「つい先程から、賢者殿とその兄上が口論をしており、周囲の者達がそれを聞く為に集まって、今の様な状態になってしまっていたのであります!」

賢者「くっ……」ギリッ

賢者兄「……」ポロポロッ

魔女「そう。なら、理由は?」

魔女「もしかして、金の無心?」

魔女「だったら、それは確実に断られるわよ」

魔女「なんたって、今そこにいる賢者殿は過去に両親から酷い虐待を受けてた」

魔女「私も過去に似た様な経験があるから、賢者殿の気持ちはよく分かるわ」

魔女「だから、今すぐ追い出してあげなさい!」

警備兵達「はっ!」

賢者兄「そ、そんな!?……」ガーン

284: 2013/02/27(水) 08:10:05 ID:2iCFqOSM
賢者兄「あんた、ちょっと待ってくれ!」ガシッ

賢者兄「もしかして、あんたが今噂のハーフエルフなのか?」シュルシュル

賢者兄「だったら、今の俺は良い情報を持っている!」シュルシュル

賢者兄「だから、俺の頼みを聞いてくれ!」ポロポロッ

魔女「……?」サッ

警備兵達「……」ピタッ

賢者「……」

魔女「情報?」

魔女「貴方、一体何の情報を持っているの?」

魔女「それを聞いて、今の私は得をする事があるの?」

賢者「……」

賢者兄「ああ、ある……」

賢者兄「俺の弟は、勇者一行を匿ってるんだ!……」

賢者兄「そればかりか、この島に住むハーフエルフ達を皆頃しにするつもりだ!……」ポロポロッ

魔女「なんですって!?」

287: 2013/02/28(木) 13:06:47 ID:5DZnmi0Y
賢者「兄上、出鱈目を言うな!」

賢者「そんな証拠、どこにあるんだ?」ギリッ

魔女「……」

賢者「カーネル。貴方はこの男の言う事等聞く必要はない!」

賢者「今の私は、清廉潔白だ!」

賢者「こんなみずほらしい浮浪者の言う事等、絶対に信用するな!」ギリギリッ

警備兵達「……」

魔女「まぁ、待ちなさい」

魔女「まだ、話は最後まで聞かないと」

魔女「なら、その証拠はどこにあるの?」

魔女「今の貴方は、賢者殿が勇者一行を匿っていると言う証拠はあるの?」

賢者「……」ギリギリッ

賢者兄「ああ、ある!……」

賢者兄「俺の弟は、勇者一行とこの近くの山沿いの民家に入って行った!……」

賢者兄「そこには、勇者の他にも盗賊と武闘家がいた!……」ポロポロッ

288: 2013/02/28(木) 13:07:01 ID:5DZnmi0Y
賢者「兄上、もういい加減にしろ!」

賢者「今のあんたは、ただ単にこの私を貶めようと、出鱈目を言ってるんだ!」

賢者「そんな出鱈目、一体誰が信用するって言うんだ?」ギリギリッ

賢者兄「……」ポロポロッ

魔女「そうね」

魔女「そこは、昨日調べたけど何も出なかったわ」

魔女「唯一居たのは、やたらと大きなゴキブリが三匹」

魔女「後は、それを飼ってる賢者殿くらいしか見つからなかったけどね」

賢者「!?」ガーン

賢者兄「……そんな……」ポロポロッ

魔女「まぁ、せっかくわざわざこの島に来たんだし、ここは穏便にね」

魔女「今なら、賢者殿も付いてきますし」

魔女「いっその事、今日の所は賢者殿と兄弟水入らずでお過ごしになられたらどうでしょうか?」

賢者兄「!?」ピカァ

賢者「カーネル!?」ギリギリッ

289: 2013/02/28(木) 13:07:14 ID:5DZnmi0Y
魔女「コーポラル。縄を解いてあげて」

魔女「その代わりに、賢者殿にはしっかりと縄を」

魔女「今の話、少なからず興味あるし」

魔女「だから、本日の所は牢獄の中で二人仲良く過ごして頂くわ」

賢者兄「……え?」ポロポロッ

賢者「!?」ガーン

魔女「まぁ、そう言う事だから、賢者殿を捕縛しといて」

魔女「賢者殿には、昨日のハーフエルフ達が住む民家への放火に関与した罪により、この場で捕縛させて頂くわ」

魔女「その所為で、教会や周辺の倉庫や民家にまで引火」

魔女「負傷者の数はかなりのもの」

魔女「だから、賢者殿にもその罪をしっかりと償ってもらわないとね」

賢者「くっ……」ギリギリッ

賢者兄「……」ポロポロッ

警備兵達「……」ササッ

賢者兄「……」ザバッ

290: 2013/02/28(木) 13:07:27 ID:5DZnmi0Y
賢者「カーネル。よくも余計な事を!……」

賢者「あれは、神の意思に背いた当然の報いだ!……」

賢者「今の私は、決して間違ってなどいない!……」ギリギリッ

魔女「……」

賢者「だから、今の私を捕縛するのを今すぐ止めろ!」

賢者「今の私は、貴方の事が心底憎い!……」

賢者「何故なら、今の貴方がハーフエルフの権利等を確立させた!……」シュルシュル

賢者「元々、ハーフエルフなどすぐにこの世から滅ぼさなければならない存在!……」シュルシュル

賢者「ハーフエルフ迫害禁止令など、絶対に存在してはいけない法律なのだ!……」シュルシュル

警備兵達「……」ササッ

賢者「だから、今すぐ私に巻いた縄を解け!」

賢者「今の私は、大賢者様の弟子だ!」

賢者「今なら、まだ特別に恩赦を掛けてやる!」

賢者「だから、さっさと私に巻いた縄を解くんだ!」ギリギリッ

警備兵達「……」

291: 2013/02/28(木) 13:07:41 ID:5DZnmi0Y
魔女「う~~ん。それ無理かな」

魔女「大賢者様云々とか言う前に、この島に住む民間人に被害出しちゃってるから」

魔女「だから、今の私は自身の職責に則って、賢者殿の事を捕縛させて貰う」

魔女「今の貴方は、勇者一行の犯した罪に関与した」

魔女「その話は、後でじっくりと聞くから、今日の所は兄弟水入らずで過ごして頂戴」

賢者「……」ギリギリッ

賢者兄「……」ポロポロッ

警備兵長「カーネル。如何致しますか?」

警備兵長「この者達は、どこの牢獄に入れておきましょうか?」

賢者「……」ギリギリッ

魔女「そうね」

魔女「今回は、自警団本部の方に収容しといて」

魔女「じゃないと、先に入ってる勇者の仲間達と結託」

魔女「また、昨日みたいな被害が出ても困るだけだからね」

賢者兄「……」フキフキ

292: 2013/02/28(木) 13:07:55 ID:5DZnmi0Y
警備兵長「はっ! 了解しました!」

警備兵長「すぐに、この者達を移送します!」

警備兵長「総員、賢者殿達を自警団本部へ」

警備兵長「その後、問題の民家にまですぐに捜索に行くのだ!」

警備兵達「はっ!」

賢者「……」ギリギリッ

賢者兄「……」ペコッ

魔女「皆さん。ちょっと道を開けて下さい」

魔女「これから、賢者殿を移送致しますので」

魔女「それと、ここ当分の間は今みたいな厳戒体制が続きます」

魔女「それについては、全て勇者一行に対する備え!」

魔女「ですから、どうかご了承下さい」ペコッ

周囲「……」ザワザワ

ササッ、ササッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

293: 2013/03/01(金) 07:18:43 ID:5yIQwXnE
賢者「ええい! 離せ、離せ!」

賢者「私は、決して何も悪い事はしていない!」

賢者「おかしいのは、カーネルの方だ!」

賢者「ハーフエルフ如きが、人権なんて持つべきではない!」ギリギリッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

賢者「誰か、今の私の事をすぐに解放する様に直訴してくれ!」

賢者「伯爵様なら、すぐに私の事を解放してくれる!」

賢者「元々、伯爵様もカーネルのする事にうんざりをしていた!」

賢者「本当なら、私が伯爵様に遣えるべきだったんだ!」ギリギリッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

賢者「頼む! 誰か、カーネルによる横暴を止めてくれ!」

賢者「カーネルは、この島には不要な存在だ!」

賢者「こんな横暴は、絶対に許されない!」

賢者「絶対に、許されないんだ!」ギリギリッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

294: 2013/03/01(金) 07:18:57 ID:5yIQwXnE
賢者「皆、頼むから、誰か止めてくれ!」

賢者「と言うより、どうして誰も止めてくれないんだ!」

賢者「そんなに、カーネルの事が怖いのか?」

賢者「ハーフエルフ如きが、ここまで権力を持って良いのか?」ギリギリッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

賢者「頼む。本当に、どうにかしてくれ!」

賢者「皆、カーネルに騙されてるんだ!」

賢者「本当に、皆どうにかしている!」

賢者「この島は、ハーフエルフに支配されてしまうぞ!」ギリギリッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

賢者「何故だ? 何故だ? 何故だ?」

賢者「どうして、誰も助けてくれないんだ?」

賢者「こんなの絶対に間違ってる!」

賢者「これは、不当な捕縛なんだ!」ギリギリッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

295: 2013/03/01(金) 07:19:27 ID:5yIQwXnE
魔女「ああ、なんかうるさいわね……」

魔女「誰か、あの馬鹿を黙らせといて……」

魔女「サージェント。マスターの方は?」

魔女「マスターの方は、もう既に捕縛出来たのかしら?」

警備兵達「……」

警備下士官2「はっ! 今現在、マスターは未だに逃走中!」

警備下士官2「その際に、愛人とその家族もまた一緒に逃走!」

警備下士官2「そのまま、船着き場の方に向かっております!」

警備兵達「……」

魔女「そう」

魔女「なら、残りは他の賞金首の確保!」

魔女「この島は、元々お尋ね者達がよく流れてくる!」

魔女「今の間に、少しでも多く不穏分子を排除しなさい!」

魔女「この島の平和は、我々の手に掛かっているのよ!」

警備兵達「はっ!」

296: 2013/03/01(金) 07:20:51 ID:5yIQwXnE
「カーネル。ウチに来る迷惑な客もこの際だから取り締まってくれ!」

「ウチの店は、またならず者達が出入りし出してるんだ!」

「だから、すぐにでも取り締まってくれ!」

魔女「……」

「カーネル。ウチの店もお願い!」

「ここ最近、よく盗みが多いの!」

「特に、最近ここに流れてきた盗賊とか」

「それを、早くなんとかして頂戴!」

「そうだ、そうだ!」

魔女「はい。かしこまりました!」

魔女「本日より、夜間警備を強化し、この町の治安をより一層に良くしていきます!」

魔女「つきましては、他に被害がある方は今すぐご一報を!」

魔女「先日より、この島は非常事態体制に入っています!」

魔女「勇者とその仲間を見掛けた方は、すぐに最寄りの警備兵にご一報を下さい!」

警備兵達「……」

297: 2013/03/01(金) 07:21:20 ID:5yIQwXnE
「カーネル。それは、昨日の事件の所為なのか?」

「昨日の事件が原因で、今日はこんなに警備兵が多いのか?」

魔女「はい。その通りです!」

魔女「今も勇者は、逃走を続けてます!」

魔女「特に、勇者は平気で民間人をも虐頃します!」

魔女「ですから、皆様も十分に注意して下さいね!」

周囲「……」ザワザワ

役人「カーネル。それで私達はどうすれば良いのですか?」ヌッ

役人「このまま、通常の業務を続けても宜しいのですか?」

魔女「ええ、それは構いません!」

魔女「昨日の損害につきましては、全て勇者一行に支払わせます!」

魔女「勇者とも、もう既に支払いに関しては合意済み!」

魔女「ですから、役人の皆さんは通常業務に戻って下さい!」

役人「はっ、承知致しました!」

周囲「……」ザワザワ

298: 2013/03/01(金) 07:21:37 ID:5yIQwXnE
スタスタスタッ、スタスタスタッ、ピタッ……

警備兵3「伝令、マスターの身柄を船着き場にて確保!」

警備兵3「一緒にいた愛人とその家族もマスターと共に捕縛!」

警備兵3「今現在、自警団本部に移送中であります!」

役人「……」

魔女「サージェント。少し、マスター達の様子を見てくるわ」

魔女「どうせ、マスターの事だから絶対に言い逃れをする」

魔女「昔から、女とお金絡みで問題を起こしてたし」

魔女「ここの警備、しっかりとお願いね!」

警備下士官2「はっ! 了解致しました!」

警備下士官「カーネルも、道中をお気を付けて!」

魔女「それじゃあ」

警備兵達「……」ビシッ

住民達「……」ビシッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

301: 2013/03/02(土) 07:58:58 ID:KLRk0G62
~とある酒場前~

スタスタスタッ、スタスタスタッ、ピタッ……

店主「さぁ、着いたわよ」

店主「ここが、当分のあんた達の宿」

店主「ウチは、宿泊施設も兼ねていてね」

店主「この島では、唯一の宿ってとこね」

店主「まぁ、今のあんた達が文句を言いたくなるのも無理はないわ」

店主「ウチの酒場、ついこの間建て直したばっかりでね」

店主「これに掛かった費用は、全てあの子持ち」

店主「主に、私の趣味を数多く反映させて貰ったわ」

店主「とりあえず、義妹ちゃん達も当分の間は、ウチにいときなさい」

店主「あんた達の宿代、全てあの子が払ってくれるから」

店主「この島、昔から宿をやってても泊まりに来る人があまりいなくてねぇ」

店主「今日みたいに、大勢で来られるのは始めてなのよ」

商人達「……」ポカーン

302: 2013/03/02(土) 07:59:14 ID:KLRk0G62
店主「ん? どうかしたの?」

店主「何で、皆入らないの?」

店主「やっぱり、この島に似付かない大きさだから?」

店主「もしかして、この店の外観に何か問題でもあるのかしら?」

店主姪「……」チラッ

元店主嫁「……」サッ

店主姪「……」ジーーッ

元店主「……」ガクッ

店主「……?」

元店主嫁「あの、義姉さん。ちょっと、お話が……」ムクッ

元店主嫁「この店、かなり外観が変わりましたね……」

元店主嫁「昔の方が、断然良かった様な……」

元店主嫁「まだ、遥かに昔の方が集客性も有って良かったと思いますが……」

店主「え? そうかしら?」

元店主嫁「……」コクン

303: 2013/03/02(土) 07:59:31 ID:KLRk0G62
店主「ええ~~っ? そんな事ないわよ!」

店主「この外観、ジュリエットも良いって言ってくれたもの!」

元店主嫁「!?」ガーン

店主「それに、ウチを建て替える時にジュリエットはこう言ったわ」

店主「あのマスターなら、確実にまた問題を起こしてここに逃げ帰ってくる」

店主「それを阻止したければ、ママの趣味全開にしたら良い」

店主「そしたら、マスターもすぐに諦めるし、やがてこの店はママの物になる」

店主「だから、後の事は私に任せといて」

店主「伯爵様に頼んで、この店+土地自体をマスターから買い取ってくるからって」

元店主嫁「……」ガクッ

店主姪「義姉さん……」アワアワッ

鹿「……」

店主「とりあえず、ここじゃなんだし中で話しましょ」

店主「中に入れば、ウチの店は完全に別世界」

店主「よく常連さん達の間でも、話題に上がっているわ」

304: 2013/03/02(土) 07:59:46 ID:KLRk0G62
元店主嫁「なら、もう少し外観に気を遣って下さい……」

元店主嫁「と言うか、よくこれを建て直す時に許可が出ましたよね?……」

元店主嫁「今の私、ここは宿と言うより娼館かと思いました……」

元店主嫁「ウチの主人がよく通ってた娼館と、完全に外観がそっくりなんですけど……」

店主姪「……」アワアワッ

店主「へぇ~っ、そうなんだ」

店主「そう言えば、兄さんがウチに女の子入れたいとか、よく昔から言ってたわね」

店主「あの子、昔からその話を兄さんから聞いてたから」

店主「だから、兄さんに私が話を通した時も、あっさりOKしてくれたのね」

元店主嫁「!?」ガーン

店主姪「あの、叔母さん……」

店主姪「これ、明らかにもう一度建て直した方が……」

店主姪「明らかに、色々と場違いです……」

店主姪「今の叔母さん、ウチの父による悪い影響を受けまくりだと思いますけど……」

元店主嫁「……」コクン

305: 2013/03/02(土) 08:03:05 ID:KLRk0G62
店主「あれ? 言ってなかったっけ?」

店主「実は私、昔は女だったの」

店主「あの子が生まれる前まで、休みの日はよく女として活動していたの」

店主姪「!?」ガーン

店主「だから、私は義妹ちゃんの気持ちはよく分かるわ」

店主「あの頃の兄さん、よく私が女やってる時は、涙ながらに私の幼馴染みに慰めて貰ってたから」

店主「その所為か、兄さんが私に足を洗えと言って来たのよね」

店主「その時の私、丁度お客さんと風呂屋でしてる真っ最中」

店主「それ以来、私はここの雇われ店主をしててね」

店主「あの時、ジュリエットが生まれてなかったら、未だに女やってたわね」

店主姪「……」ポロポロッ

元店主嫁「義姉さん、それは今ここで話す事じゃないと思います……」

元店主嫁「今の私、子供連れなんですけど……」

元店主嫁「また、義姉さんがあの頃の感覚に戻り掛けてる……」

元店主嫁「過去の昔の仲間として、かなり辛い事なんですけど……」

306: 2013/03/02(土) 08:04:30 ID:KLRk0G62
店主「ああ、そう言えば、そうだったわね」

店主「義妹ちゃん。昔はよく私と組んだりしてたわね」

元店主嫁「ええ、そうですね……」

店主「でも、あの頃はそうでもしないと生きていけなかった」

店主「私の母も、義妹ちゃんの母も女だったのよ」

店主「今の若い子達は全く知らないと思うけど、副業で女をしないと皆生きていけなかったのよ」

店主姪「!?」ガーン

商人「……」ウルウル

店主「今みたいに、この島の若い子達がそうしなくなったのも、全部あの子が生まれたおかげ」

店主「私達が若い時は、それがこの島では当たり前の光景だった」

店主「それを目当てに、炭鉱の従業員達を定期的に確保」

店主「今みたいに、楽して暮らせる様になったのは、つい最近になってからだったものね」

元店主嫁「ぐすん……」ポロポロッ

商人「……」ポロポロッ

店主姪「そんな……」ポロポロッ

313: 2013/03/03(日) 06:52:18 ID:qPPUjjOo
店主「まぁ、もうその話は止めにしましょ」

店主「今の私達は、もうそんな事をする必要すらないんだもの」

店主「だから、皆も早く中に入って」

店主「もう既に、ジュリエットから手配されてるから」

店主「だから、皆早く入ってよね」

僧侶「……」ポロポロッ

元店主嫁「義姉さん。入る前に、鍵を開けて下さい……」

元店主嫁「今の私達、義姉さんが鍵を開けるのを待ってるんですけど……」

元店主嫁「そうしないと、私達は店に入れないと思いますが……」

店主「あっ……」

店主姪「……」ポロポロッ

店主「商人さん。その鹿、ちょっとこっちに」

店主「この子の首に、鍵を付けてたから」

店主「だから、早くその鹿をこっちに連れてきて」

商人「……はい」ポロポロッ

314: 2013/03/03(日) 06:52:34 ID:qPPUjjOo
スタスタスタッ、ピタッ……

商人「どうぞ……」

店主「有り難う。商人さん」

鹿「……」

スッ、カシャ……

スタスタスタッ、ピタッ

カシャ、カシャ、ガチャ……

店主「開いたわよ」

店主「さぁ、皆入って」

店主姪「……」ポロポロッ

元店主嫁「……行きましょう」ギュッ

店主姪「……うん」ポロポロッ

スタスタスタッ……

僧侶「……」ポロポロッ

スタスタスタッ……

315: 2013/03/03(日) 06:53:14 ID:qPPUjjOo
商人「あの、ママさん……」

商人「この子の小屋、どこにありますでしょうか?……」

商人「今の私、この子を小屋に入れたいんですけど……」

商人「この子の小屋、どこにありますでしょうか?……」ポロポロッ

従者達「……」

店主「ああ、その子の小屋?」

店主「それなら、ここの隣にあるわよ」

店主「でも、またこの子は脱走をしないかしら?」

店主「以前にも、何度か脱走をしてしまってるし」

店主「その度に、あの子が引きずって帰ってくるんだけど」

鹿「……」

商人「ああ、大丈夫です……」

商人「それに関しては、全くもって大丈夫です……」

商人「何故なら、私は家畜を専門に扱ってますから……」

商人「この子逃げ出すなんて、それこそ氏に直結致しますから……」

316: 2013/03/03(日) 06:53:32 ID:qPPUjjOo
店主「そう。なら、この子を小屋に入れとかないとね」

店主「そこの二人、悪いけど先に入って」

店主「ちょっと私、商人さんとこの子を小屋に入れてくるから」

店主「だから、あんた達は先に入ってて」

従者達「え? あ、はい……」

スタスタスタッ、バタン……

店主「……」ハァ……

商人「……」ポロポロッ

店主「商人さん。こっち着いてきて」

店主「今日は、市場に出なくて良いの?」

店主「いつもなら、もう既に市場に入ってる頃だと思うけど」

鹿「……」

商人「はい。問題はありません……」

商人「今日は、主人一人でも大丈夫ですから……」ポロポロッ

店主「そう」

317: 2013/03/03(日) 06:53:45 ID:qPPUjjOo
商人「それと、出来れば私や義妹さんの古傷を抉るのを止めて下さい……」

商人「今の私、もうあの頃には戻りたくはありませんから……」

商人「今は、お互いもう幸せに暮らしてるんでし……」

商人「それも、わざわざ若い子達の前でああ言う事を言うのは、今後控えて下さいよ……」

鹿「……」

店主「ああ、悪かったわね……」

店主「なんか、ウチの兄さんの所為で昔の事を思い出しちゃってね……」

店主「商人さんも、私達と同じだったの?……」

店主「私、商人さんもあの時いたって知らなかったけど……」

鹿「……」

商人「ママさんは知らないと思いますけど、私も昔同じ事をしていました……」

商人「元々、私は王都近くの港町の生まれ」

商人「今の主人と出会う前まで、私も女だった事もありましたもの……」

店主「……」

鹿「……」

318: 2013/03/03(日) 06:53:58 ID:qPPUjjOo
商人「それから、私は今の主人に足を洗えと言われました……」

商人「借金の形に、実の両親に売られた私を妻にと迎えてくれました……」

商人「その後は、私は主人の仕事の都合でこの島に移住……」

商人「元々、私の実家は貿易商でしたし……」

商人「だから、主人の両親も私を妻に迎える事には、反対はしなかったんです……」ポロポロッ

鹿「……」

店主「……そう。悪かったわね」

店主「お互い、若い頃から色々と苦労してたのね……」

商人「ええ、そうみたいですね……」ポロポロッ

店主「とりあえず、この子を早く小屋に入れましょ……」

店主「もう時期、ここも人通りが多くなるし……」

店主「だから、通行の邪魔になる前にこの子を早く小屋に入れないとね……」

商人「ええ、そうですね……」

鹿「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

319: 2013/03/04(月) 05:56:17 ID:zq47f7I.
~とある酒場~

僧侶「以外に、店内はちゃんとしてた……」

僧侶「この広さ、王都にある店と同じぐらいね……」

従者A「ええ、そうですね……」

元店主嫁「貴方達、王都から来たの?」

元店主嫁「その割には、かなり軽装ね」

店主姪「うん。そうだね……」

従者A「ああ、これにはちょっと訳がありまして……」

従者A「実は、ここに来る途中に強盗被害に遭ってたんです……」

従者A「それで、仕方なく今みたいな軽装になってしまってるんですよ……」

僧侶「……」ギリッ

元店主嫁「へぇ、それは大変だったわね」

元店主嫁「そう言えば、昨日ジュリエットちゃんが各地を荒らしていた元騎士を捕まえたわよ」

元店主嫁「その元騎士も、どう言う訳かこの島に流れて来た」

元店主嫁「と言っても、すぐあの子に捕まってしまったけどね」

320: 2013/03/04(月) 05:56:30 ID:zq47f7I.
僧侶「あの、その元騎士って、まかさロメオとか言う人でしょうか?……」

僧侶「あの人、本当にここで捕まったんですか?……」

従者達「……」

元店主嫁「ええ、捕まったわよ」

元店主嫁「だって、昨日から皆が噂してたもの」

僧侶「……」

元店主嫁「もしかして、貴方達も被害者だったとか?」

元店主嫁「もしかしなくても、そんな風な顔をしてるわね」

店主姪「うん。そうだね……」

従者達「……」

元店主嫁「だったら、後であの子にそう申告しときなさい」

元店主嫁「今のあの子、伯爵様の臣下だから」

元店主嫁「昔から、あの子は伯爵様や司教様に目を掛けられていてね」

元店主嫁「あの子に頼めば、私みたいにすぐ私兵が動いてくれるわよ」

元店主嫁「だから、早めにあの子に頼んでおきなさい」

321: 2013/03/04(月) 05:56:44 ID:zq47f7I.
従者A「ええ、かしこまりました」

従者A「今後は、遠慮なくカーネルに頼らさせて頂きます」

従者A「失礼ですが、カーネルと貴方達はお知り合いなのですか?」

従者A「つい先程、カーネルとはやけに親しく会話をされていた様ですが」

僧侶「……」

元店主嫁「ああ、あれね」

元店主嫁「あの子は、私や義姉さんからしてみたら、娘みたいなものなのよ」

元店主嫁「あの子自身は、ここに来るまでずっと苦労してた」

元店主嫁「この島以外では、ずっとハーフエルフだとバレた瞬間に、住む所を追われる様な生活を送っていたのよ」

従者達「!?」

元店主嫁「でも、あの子はここに来てから大きく変わった」

元店主嫁「この島では、過去に一度とある一人のハーフエルフによって助けられていたから」

元店主嫁「そのおかげで、あの子はここで平穏無事な毎日を送ってるわ」

元店主嫁「今のあの子にとってここは、ようやく見つける事が出来た安住の地」

元店主嫁「だから、あの子以外のハーフエルフ達も、数多くここに流れてくるのよ」

322: 2013/03/04(月) 05:57:00 ID:zq47f7I.
従者A「そうですか」

従者A「カーネルにも、そんな過去が」

従者A「でも、余所から来た人達からの評判とかはどうなんですか?」

従者A「その人達からも、カーネルは支持されているのですか?」

僧侶「……」

元店主嫁「ええ、この島の9割の住民達はね」

元店主嫁「だって、あの子が生まれてすぐこの島の現状が大いに改善されてしまったもの」

元店主嫁「元々、この島の半数の住民達は、あの子によって無理矢理ここに連れてこられた人達だった」

元店主嫁「それにも関わらず、帰省日の日には6割の人達がここに永住を希望」

元店主嫁「後の四割の内、二割は家族連れでここにまでUターン」

元店主嫁「あまり、この島ではハーフエルフだからと言って差別はされないし」

元店主嫁「昔から、不自由民としてここに連れてこられた人達からの評判も悪くないわ」

僧侶「……」ムカッ

従者A「おおっ……」

従者B「さすが、カーネルだ……」

323: 2013/03/04(月) 05:58:20 ID:zq47f7I.
元店主嫁「まさか、貴方達二人もハーフエルフなの?」

元店主嫁「貴方達二人も、あの子に保護されてここにまで来たの?」

店主姪「……」

従者A「ええ、そうなんです」

従者A「実は、昨日からこの島に来てたんです」

従者A「でも、昨日は例の元騎士に襲われてしまいましてね」

従者A「目が覚めたら、二人仲良く病院のベットの上で眠ってました」

僧侶「……」ムカムカ

元店主嫁「ふ~~ん、そうなの」

元店主嫁「だから、そんなに整った顔立ちをしているの」

元店主嫁「あの子は、よくハーフエルフの事になると、かなり感情的になるからね」

元店主嫁「昨日もまた、数多くのこの島に住むハーフエルフ達が被害に遭ってた」

元店主嫁「だから、今のあの子は昨日からやけに不機嫌なのよね」

従者達「え?」

僧侶「!?」ガーン

324: 2013/03/04(月) 05:58:37 ID:zq47f7I.
僧侶「あの、今のどう言う事なんですか!?」

僧侶「昨日の事件の犯人達、一体どうなるんですか!?」

従者達「……」

僧侶「聞く所によると、その犯人達は勇者XXXの仲間でした!」

僧侶「今のままでは、確実にすぐには解放されない!」

僧侶「これについては、カーネルはどうおっしゃってられたのですか!?」

従者達「……」

元店主嫁「う~~ん、今の私は詳しくは知らないわ」

元店主嫁「だって、昨日は自分の店が忙しかったから」

元店主嫁「詳しく聞きたいなら、義姉さんに聞けばすぐに分かるわ」

元店主嫁「そろそろ、商人さんと一緒にここに戻って来る頃」

元店主嫁「だから、詳しい事はここのママの義姉さんに聞いてみてちょうだい」

僧侶「……」

従者A「はい。かしこまりました」

店主姪「……」

325: 2013/03/05(火) 06:20:56 ID:yzt0Lnm2
ガチャ……

カランカラン……

バタン……

店主「あら?」

元店主嫁「あっ、義姉さん」

店主「あんた達、何でこんな所に突っ立ってるのよ」

店主「と言うか、宿帳に記入はしたの?」

商人「……」ウルウルッ

元店主嫁「あっ、まだだったわ」

元店主嫁「ついさっきまで、ここの内装に見とれてたから」

僧侶「……」

店主「そう。だったら、早く宿帳に記入しといて」

店主「それが終わったら、あんた達はそこのカウンターに座りなさい」

店主「なんか、商人さんが朝から飲みたいって言ってるからね」

店主「今日は特別に、私があんた達にサービスするわ」

326: 2013/03/05(火) 06:21:30 ID:yzt0Lnm2
元店主嫁「ふ~~ん、義姉さんからのサービスか……」

元店主嫁「今日は、一体どんなのが出てくるのかしら?……」

元店主嫁「まさか、あの子が仕入れてきたレアなお酒?……」

元店主嫁「あれ、かなり値段が高かった気がする……」

元店主嫁「いくら義姉さんでも、自身の秘蔵のお酒まで出してきたりはしないわよね?……」

商人「……」ウルウルッ

店主「ええ、出すつもりなんてないわ」

店主「あれ、昨日兄さんが勝手に全部飲み干してしまってたから」

元店主嫁「!?」ガーン

店主「しかも、この島に来てたあの子の師匠と妙に馬が合ってね」

店主「気がついた時には、自分の周りにいる女の口ばかり言ってた」

店主「だから、今の私は出したくてもそれは出せない」

店主「文句があるなら、ろくでなし二人に言っといてよね」イライラ

元店主嫁「……」ガクッ

店主姪「お母さん……」

327: 2013/03/05(火) 06:22:03 ID:yzt0Lnm2
店主「まぁ、そう言う事だから、今日の所は安酒で勘弁してよね」

店主「また、あのお酒はあの子に仕入れてきて貰うから」

店主「今のあの子、まるで狩人みたいな目をしてしまってるし」

店主「ここ当分の間は、いつ戻って来るかが全く分からないから」

元店主嫁「……」ウルウルッ

店主「だから、あんた達はさっさと宿帳に記入しなさい」

店主「もう時期、私は店を開けなくちゃならないから」

店主「その間、ちょっと貯まってる安酒の処理に付き合ってよね」

店主「見た所、今のあんた達全員成人なんだし」

店主「私一人じゃ飲みきれないから、皆で協力をしてほしいのよ」

元店主嫁「……」ポロポロッ

商人「ええ、かしこまりました……」

商人「お言葉に甘えて、とことん付き合って差し上げます……」

商人「今の私、かなり傷物ですから……」

商人「今さっき、ママさんに古傷を抉られて、かなり傷ついてますから……」ポロポロッ

328: 2013/03/05(火) 06:23:08 ID:yzt0Lnm2
店主「ああ、悪かったわね……」

店主「商人さん、まだ根に持ってるのね……」

店主「だったら、つまみの方もサービスしてあげるわ……」

店主「だから、ついさっきの事はもう許して頂戴よ……」

商人「……」ポロポロッ

元店主嫁「ふふっ、商人さん……」

元店主嫁「今日の所は、とことん二人で飲んでしまいませんか?……」

元店主嫁「お互い、今日は朝から散々な日でした……」

元店主嫁「信じていた人達に裏切られ、自身の古傷まで抉られた……」

元店主嫁「だから、とことん今日は二人で飲みましょうよ」ポロポロッ

店主「……」

商人「ええ、そうですね……」

商人「今の私達、ママさんによる被害者ですもんね……」

商人「私も、今日はとことん飲みたいです……」

商人「嫌な事全部忘れる為に、とことん飲んでしまいます……」ポロポロッ

329: 2013/03/05(火) 06:23:27 ID:yzt0Lnm2
元店主嫁「娘、私達の代わりに宿帳に記入しといて……」

元店主嫁「今の私、ちょっと大事な用があるから……」

元店主嫁「義姉さん、さっさと赤ワイン二つ……」

元店主嫁「今日は、とことん商人さんと飲んでやる!……」

元店主嫁「今更、しかも私の娘の前で黒歴史を晒してんじゃねぇ――――――――っ!」ポロポロッ

商人「そうだ、そうだ!」ポロポロッ

店主姪「……」

店主「はいはい。分かったわよ……」

店主「あんた達、さっさと座りなさいよ……」

店主「全く兄さんにも困ったものだわ……」

店主「元々、全て兄さんが悪いんだし!……」

店主「今日の所は、私もとことん飲むわ!……」

店主姪「!?」ガーン

従者達「……はっ?」

僧侶「……」ポカーン

330: 2013/03/05(火) 06:24:00 ID:yzt0Lnm2
元店主嫁「義姉さん、久し振りに飲み比べしない?……」

元店主嫁「今の私、今回は商人さんとタッグ組むわよ……」

元店主嫁「それで、今余ってるのはいくつあるの?……」

元店主嫁「まさか、樽ごとだったりとか?……」ポロポロッ

店主姪「……」

店主「ええ、そのまさかよ……」

店主「だって、昨日の事件の所為で客が遠退いちゃったもの……」

店主「おまけに、兄さん達が良いお酒を全て飲み干してた……」

店主「だから、今の所は安酒しかないわ……」

商人「そんな……」ポロポロッ

店主姪「ちょっと、叔母さん……」

店主姪「何で、叔母さんまで飲もうとしてるんですか?……」

店主姪「今日の店、一体どうするつもりなんですか!?」

従者達「……」

331: 2013/03/05(火) 13:41:02 ID:yzt0Lnm2
店主「う~~ん、やっぱ臨時休業かしら……」

店主「だって、ここ当分の間は安酒のみ……」

店主「それ以外のお酒がないと、店の売り上げにも大きく関わってくる……」

店主「ウチに来るお客、皆が良いお酒ばかり飲んでいくから……」

店主姪「……」

店主「まぁ、安酒しかなくても、店を開ける事は出来るわ……」

店主「その代わり、大勢の客から文句が出てしまうけど……」

店主「それでもなお、昨日の火事の所為でウチの店員達が被害に遭ってんだし……」

店主「本当に、今日は飲まなきゃやってられないわ……」

店主姪「……」ブチッ

商人「……?」

元店主嫁「……」ハッ

店主「姪っ子ちゃん?……」

店主姪「……」プルプル

元店主嫁「……」フキフキ

332: 2013/03/05(火) 13:41:16 ID:yzt0Lnm2
店主姪「大体は、分かりました……」

店主姪「つまり、良いお酒さえあれば良いんですよね?……」

店主姪「それさえあれば、叔母さんは店を開けてくれるんですね?……」ゴゴゴゴッ

店主「ええ、そうよ……」

店主姪「だったら、ウチで余ってるお酒を使って下さい!」

店主姪「それを使って、叔母さんはさっさと開店準備をして下さい!」ゴゴゴゴッ

店主「……え?」

元店主嫁「!?」

店主姪「お母さん、別に良いよね?」

店主姪「ここ数日、ウチは休業なんだし、別に良いんだよね?」ニッコリ

元店主嫁「ええ、まぁね……」

店主姪「なら、早く店に戻ってウチにあるお酒を運ぶの手伝って」

店主姪「そこのお兄さん達、貴方達も手伝って下さいますか?」

店主姪「つい最近、この店ではハーフエルフを店員として多数雇ってますし」

店主姪「その店員達が、昨日の火事の所為で全員負傷してしまいました!」

333: 2013/03/05(火) 13:41:50 ID:yzt0Lnm2
店主姪「だから、そこのお兄さん達や僧侶さんも今すぐ手伝って下さい!」

店主姪「じゃないと、この店は完全に潰れてしまいますよ!」

店主姪「ただでさえ、売り上げが落ちたのは私の両親の所為!」

店主姪「何故なら、私の両親が問題を起こす度に叔母様がよく巻き込まれる!」

店主姪「私のお爺ちゃんが毒を盛られたのも、全て私の両親の所為なんだから!」ムカムカッ

従者達「!?」

店主姪「叔母さん、どうかご決断を!」

店主姪「今なら、まだ損害分はすぐにでも取り戻せます!」

店主姪「じゃないと、私達の店まで潰れてしまいますよ!」

店主姪「ただでさえ、義姉さんが足り内分を補填してくれていたのに……」

店主姪「今の私が、それを知らないとでも思っていた訳?」ムカムカッ

元店主嫁「ああ……」

店主姪「それで、お母さんはどうするの?」

店主姪「叔母さんの店を潰すの? 潰さないの?」

元店主嫁「……」

334: 2013/03/05(火) 13:42:22 ID:yzt0Lnm2
店主「はぁ……分かったわ……」

店主「今回は、姪っ子ちゃんの言う通りにするわ……」

店主「それで、良いでしょ?……」

店主「姪っ子ちゃんは、それで納得をしてくれるのかしら?……」

店主姪「はい」

店主「なら、今日は特別に安酒は無料で飲み放題にするわ」

店主「義妹ちゃん、店から大至急お酒を持ってきて」

店主「義妹ちゃんの所、良いお酒はどれくらいあるの?」

店主「それ次第では、ウチは店を開ける事が出来るわ」

店主姪「……」

元店主姪「……確か、樽にしたら50個程」

元店主姪「ウチの主人、義姉さんの店にはあまり良いお酒は回してなかったから……」

元店主嫁「だから、余裕で義姉さんの店にそれを回す事が出来てしまうわ……」

元店主姪「ウチの店、私の父が倒れたから売り上げが急減してしまったもの……」

店主「!?」

335: 2013/03/05(火) 13:42:52 ID:yzt0Lnm2
店主姪「じゃあ、ウチにある良いお酒は全て回して良いんだよね?」

店主姪「お爺ちゃん、本当に氏んだりはしないんだよね?」

元店主嫁「……」コクン

店主姪「叔母さん、早く開店準備をして下さい!」

店主姪「私は、今から店に戻って良いお酒を持ってきますので!」

店主「え、ええ……」

店主姪「そこのお兄さん達、荷物置いて私に着いてきて下さい!」

店主姪「じゃないと、開店まであまり時間がありません!」

店主姪「つうか、さっさと荷物置いて動かんかい!」

店主姪「この木偶の棒どもが!」

従者「はっ、はい!……」

商人「……」ポロポロッ

元店主「義姉さん、ちょっと私出掛けてくるわ……」

元店主「だから、飲み比べの勝負、次回までお預けね……」

店主「ええ、了解したわ……」

336: 2013/03/05(火) 13:44:32 ID:yzt0Lnm2
ガチャ……

カランカラン……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

店主姪「お母さん、何してんの?」

店主姪「さっさと、早く出てきてよ!」

元店主嫁「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

カチャ、カチャ……

シュバッ、シュタッ……

従者A「ママさん。ちょっと出掛けてきます」

従者A「すぐに、戻ってきますから」

店主「ええ、分かったわ……」

店主「気を付けて行ってらっしゃい……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

バタン……

魔女「もう最悪だわ……」【中編】

引用: 魔女「もう最悪だわ……」