3: 2017/03/31(金) 16:15:57.722 ID:ImirDeNX0.net
サターニャ(私の名前は胡桃沢・サタニキア・マクドウェル。心に闇を抱えた女子高生。魔界で最強の大悪魔♪)

サターニャ(私がつるんでるのは同じ悪魔のヴィネット、学校にナイショで喫茶店で働いてる天使であり私のライバルのガヴリール)

サターニャ(友達がいてもやっぱり学校はタイクツ。今日もガヴリールとちょっとしたことで口喧嘩になった。ライバル同士だとこんなこともあるからストレスが溜まるわよね☆)

サターニャ(そんな時アタシはメロンパンを買うことにしている。がんばった自分へのご褒美ってやつ?自分らしさの演出とも言うかな)

サターニャ「はーなーせー!」

犬「ハッハッハッ」

サターニャ(大好物のメロンパンを奪おうとする犬を軽くあしらう)

犬「わんっ」

サターニャ(毎回毎回同じようなセリフしか言わない。犬はカワイイけどなに言っても通じないからキライだ。もっと等身大のアタシを理解して欲しい)
天使と悪魔と委員長
5: 2017/03/31(金) 16:18:57.609 ID:ImirDeNX0.net
ラフィエル「あのー…」

サターニャ(誰よ!と、私は悪魔な私は思った。シカトするつもりだったけどチラッと声をかけてきた少女に振り向いた)

サターニャ「なに?あなた…」

サターニャ(チガウ…今まで人間界で見た奴らとは決定的に違う。スピリチュアルな感覚がアタシのカラダを駆け巡った・・・)

ラフィエル「通りすがりの学生です。どのようにいじって欲しいですか?」

サターニャ「急になにっ!?」

サターニャ(変な奴…)

サターニャ(これが私と少女との出会いで、少女は天使だった)

6: 2017/03/31(金) 16:23:06.740 ID:ImirDeNX0.net
サターニャ「なんでお前がとなりで寝てるのよ!」

サターニャ(ある朝目覚めると、ベッドで寝る私の隣にそいつが眠っていた)

サターニャ(か弱い天使のくせにこの大悪魔サタニキア様の隣で無防備に眠るなんてどうかしてるわ)

ラフィエル「サターニャさんと仲良くなりたいと思いまして、毎晩ひっそりと侵入してベッドに入ってたんです。今日はサターニャさんより早く起きれませんでしたね」

サターニャ(怖っ!?さすがに常軌を逸脱してる。やっぱり天使はどこかおかしいわ。しばらく泊まりたいとか言うし)

サターニャ(そんな風にも思ったけど、私に弟子入りしたいとか言うし?ま、心の広い大悪魔のサタニキア様はそばにいる事を許したってわけよ)

サターニャ(さすがに泊まらせるような事はしないけどね!)

13: 2017/03/31(金) 16:27:28.087 ID:ImirDeNX0.net
サターニャ(そしてなんとあいつは私と同じ学校の生徒だった。だからなのか、何となく一緒に過ごす機会が増えていったんだと思う)


ラフィエル『サターニャさーん、シュークリームがひとつ余っているのですがどうですかー!』

サターニャ『えぇっ?ま、まあ、食べるけど』

サターニャ(ラフィエルが喫茶店から飛び出てきて私にシュークリームを勧めてきた事もあったわね)

サターニャ(元弟子だったわけだし、師匠への気遣いっていうの?そういうのを忘れないってのは大事な事よね、うん)


サターニャ『ガヴリールの部屋のどこかに必ずお菓子があるはずよ!手分けして探すわよラフィエル!』

ラフィエル『はいっ!』

サターニャ(ガヴリールの部屋を一緒に探索した事もあったわね)

サターニャ(天使のくせにゴミだらけの部屋にだしゴキブリも出そうな恐ろしい住み家だったわ…)

サターニャ(やっぱり天使はヤバイ。改めて私はそう思った)

14: 2017/03/31(金) 16:33:16.632 ID:ImirDeNX0.net
サターニャ『ヴィネットが風邪をひいたっていうからお見舞いに行くわよ!』

ラフィエル『ぜひ行きましょう!』

サターニャ『寝てて退屈すると悪いから、私は天命ゲームでも持ってこうかしら!』

ラフィエル『風邪は汗をかくと回復が早まると聞いた事があります!なので私はバドミントンの道具を用意しましょう!』

サターニャ『へぇ、なかなか冴えてるじゃない!』

ラフィエル『ありがとうございますサターニャさん♪』


ヴィーネ『風邪なんだから遊べるわけないじゃない!出てけ!』

サターニャ『うわー』

ラフィエル『あはは、追い出されちゃいましたね』

サターニャ『バドミントンなんか持ってきたあんたのせいよ!よく考えてみれば体が弱ってるのに運動なんかできるわけないじゃない!』

ラフィエル『てへっ♪』

サターニャ(何だかんだで、よく一緒に色々とやったわね…)

サターニャ(私の気を引きたいのかラフィエルは迷惑をかけてくる事も結構あるけど、私もカエルを持って追いかけたりしてみたりしたしおあいこよね)

サターニャ(ま、何だかんだでラフィエルにも優しいとこだってあるし、あいつは天使で、破門した元弟子だけど、そんな感じで私たちは割りと上手くやってたと思う)

18: 2017/03/31(金) 16:36:38.172 ID:ImirDeNX0.net
サターニャ「ごほっ、ごほっ…」

ラフィエル「おや?風邪をひいた事の無いサターニャさんが風邪ですか?そういえば最近はよく咳をしていましたけれど…」

サターニャ「……はーっはっは!この大悪魔を風邪にするとは、今年のウィルスは手ごわいみたいね!」

ラフィエル「……そうですか。お大事にしてくださいね」

サターニャ「余裕よ!風邪なんて三日で治してみせるわ!」



サターニャ(私の具合が良くなる事はなかった。咳には血が混じっていて…、そしてこれは風邪なんかじゃなかった…)

20: 2017/03/31(金) 16:41:24.829 ID:ImirDeNX0.net
サターニャ『それで、どのくらいでこの風邪は治りそうなの?』

魔界の医者『……言い難い事ですが、これは風邪ではありませんねえ』

サターニャ『風邪じゃない?』

魔界の医者『身近に天使はいませんか?それもとびきり強力な』

サターニャ『そんな奴はいないわ』

魔界の医者『ふむ…そうですか…』

サターニャ『で、風邪じゃないとしたら何だっていうのよ』

21: 2017/03/31(金) 16:45:33.637 ID:ImirDeNX0.net
魔界の医者『聖気にあてられてますね。かなり長期に渡って聖気を日常的に浴びていたのでしょう。体中にダメージが蓄積されています。これは深刻ですよ』

サターニャ『……はぁ?……じゃあ、私が強力な天使から聖気を浴びてたとして、相手も私みたいに悪魔の瘴気を浴びて同じような状態になってるって事?』

魔界の医者『いえ、これだけ強力な聖気を持つ天使であれば胡桃沢さんの瘴気程度でどうこうなる事は100%ないでしょう』

サターニャ『そう』

魔界の医者『ですが胡桃沢さん。聖気によって悪魔であるあなたの内臓などは既にボロボロで、ここまで来るともう……。いえ、全力は尽くします。ですが……』

サターニャ『あ、うん』

サターニャ『なるほど』

サターニャ『ふーん』

サターニャ『……』

23: 2017/03/31(金) 16:50:05.965 ID:ImirDeNX0.net
サターニャ(私の体はもう手遅れで、完治も約束されない延命行為をするには莫大な治療費がかかるとのことだった)

サターニャ(それは実家が小さな洋菓子店の私には到底払えるものじゃなかった)

サターニャ(ヴィネットが何ともないのはあいつがまったく悪魔らしくもない劣等生だったからだ)

サターニャ(悪魔としての素質が強ければ強いほど強力な聖気に反応して体がダメージを受ける)

サターニャ(幸いにも私の体は丈夫だったから今まで表面化しなかったという、ただそれだけだった)

サターニャ(いつ氏んでもおかしくない状況。それが大悪魔胡桃沢・サタニキア・マクドウェルの現状だった)

サターニャ(魔界の家族の元で過ごすか地上の人間界で過ごすかを天秤にかけ、私は人間界で今まで通り高校生として過ごす事にした)

25: 2017/03/31(金) 16:59:18.577 ID:ImirDeNX0.net
ヴィーネ「ねぇちょっと!風邪なんでしょ?何で学校に来てんのよ!?具合悪いんだったら学校休んで家にいなさいよ!」

サターニャ「ふふふ、この大悪魔サタニキア様が風邪ごときで学校を休むわけないでしょ!」

ガヴリール「他にうつすと悪いから学校に来んなよ」

サターニャ「ふふふ……軟弱者の人間たちに、このサタ……ごほっごほっ」

ヴィネット「言わんこっちゃない。はぁ……。ガヴ、私は早退するから先生によろしく言っといてくれる?」

ガヴリール「うん、わかった。あ、サターニャ、これ持ってけよ、ヴィーネのお弁当。特大タッパに入れたおじやと梅干、バナナに炭酸の抜けたコーラだ。風邪にはエネルギー補給が大事だからな」

ヴィネット「な、何であんたが私のお弁当持ってんのよ!しかもちょっと食べてあるし…。まあ、サターニャにあげるってんならいいけど」

ガヴリール「はいはい、病人の前なんで興奮しないで大人しくしましょうねー」



サターニャ(結局私は学校も休みがちになった)

サターニャ(ラフィエルはクラスが違うのもあり、風邪をうつされたくないのか距離を置きがちになっていた)

28: 2017/03/31(金) 17:05:48.803 ID:ImirDeNX0.net
サターニャ(誰にうつるという病気でもなし。できる限りみんなと居たいから学校に行きたいのに体はそれを許さない)

サターニャ(ままならないものね)

サターニャ(地上の家で一人きり、か…)

サターニャ「ごほっ、ごほっ……。うっ、この血の量……。さすがに学校はもう無理か……」

サターニャ「……」

サターニャ「はぁ……、ラフィエル……」

サターニャ(学校でも距離を置かれ、お見舞いにも来ない)

サターニャ(薄情な奴ね。一時は弟子にしてやった事もあるってのに)

ラフィエル「呼びましたか、サターニャさん」

サターニャ「……ラフィエル」

ラフィエル「はい」

サターニャ「……いまさら何しに来たのよ」

32: 2017/03/31(金) 17:11:19.905 ID:ImirDeNX0.net
ラフィエル「お見舞い……ですかね」

サターニャ「そ。でも、無駄になったわね。この吐いた血の量でわかるでしょ。私、もう長くないの」

ラフィエル「ええ、わかります。ですから来ました」

サターニャ「……千里眼で見てから来たってわけ?趣味悪いわよ」

ラフィエル「いえ、監視カメラです。壁のあれですね」

サターニャ「……ごめん、ツッコミ入れる気力もないの。悪いわね」

33: 2017/03/31(金) 17:16:29.473 ID:ImirDeNX0.net
ラフィエル「私、サターニャさんを避けていたんです」

サターニャ「……知ってる」

ラフィエル「サターニャさんの体の事も……知ってたんです……。しばらく前から咳をしてましたよね……。それで、勝手ながら調べさせてもらいまして……」

サターニャ「……そう」

ラフィエル「吐血してるのを確認して、それで心配で……」

サターニャ「……悪いわね、心配かけて。でももう心配する必要なんてないわ。……わかるでしょ?」

ラフィエル「そんな事……言わないで下さいよ……サターニャさん……」

サターニャ「……大悪魔である私らしくもなかったわね!はーっはっはっ……ごほっ……」

ラフィエル「サターニャさん!?」

35: 2017/03/31(金) 17:20:10.612 ID:ImirDeNX0.net
ラフィエル「サターニャさん!サターニャさん!しっかりして下さい!」

サターニャ「……何だかんだあったけど、ラフィエル、あんたと一緒にいた時間は悪くなかったわ。ライバルのガヴリールがいて、おせっかいなヴィネットがいて、そして……」

ラフィエル「そんな事言わないで下さいよ……。まるで今にも……」

サターニャ「服が汚れるわよ……。離れなさい……」

ラフィエル「離れません!」

サターニャ「何でよ……」

ラフィエル「そんなの決まってるじゃないですか!私がサターニャさんを好きだからですよ!」

サターニャ「好き……か……。私も、ラフィエルの事は天使だけど好きよ……」

ラフィエル「違うんです!そういう好きじゃないんです!この好きは……この私の気持ちは……」

サターニャ「ごめん……わかんないわ……。ごめんね、ラフィエル……」

ラフィエル「それでも……。それでもいいんです……。私はサターニャさんが好きです……。友達とか、からかう相手だとか、そういうのではなく……。私は……私は……」

サターニャ「……」

36: 2017/03/31(金) 17:21:17.861 ID:ImirDeNX0.net
サターニャ「うっ……うぅ……ぐすっ……」

ラフィエル「サターニャさん……?」

サターニャ「やめてよ……そういうの……。お別れを言えなくなるじゃない……。もしもの時の為に、大悪魔らしくクールにお別れを言う練習してたのに……」

ラフィエル「言わなくていいです……。そんなの言わなくていいんです……。私がずっと一緒にいますから……だから……」

サターニャ「ほんとは……ほんとは氏にたくなんかない……。怖い……怖いよラフィエル……」

ラフィエル「ごめんなさい、ごめんなさい、私のせいで……。私が……私が天使だから……」

サターニャ「もし……もしも、私たちが普通の人間として生まれて、悪魔や天使じゃなく生まれてたら……」

ラフィエル「そう……ですね……。天界や魔界とか関係なく、立場や種族も関係なく出会えていたのなら……」

サターニャ「だったら一緒の家に生まれたら最高よね……。本物のサタニキアブラザーズとしてラフィエルを姉の立場からこき使ってやるわ……」

ラフィエル「あはは……ごめんですよ……。姉妹でも兄弟でも、それは二人が絶対に結ばれない関係ですからね……」

37: 2017/03/31(金) 17:21:34.954 ID:ImirDeNX0.net
サターニャ「ねえ、ラフィエル……。私、恋とかはまだわかんないけど、私もラフィエルを好きっていうのはほんとよ……」

ラフィエル「はい……」

サターニャ「これから先、あんたと過ごしてたら……もしかするとそういう感情もわかったりしたのかもしれないわね……」

ラフィエル「もっと一緒に過ごして下さいよ……。サターニャさんが私をもっと好きになるようにしてあげますから……」

サターニャ「そう……ね……。だけど、今だけでいいわ……。今だけ一緒にいてちょうだい……。私はそれだけで十分だから……」

ラフィエル「サターニャさぁん……ぐすっ……」

38: 2017/03/31(金) 17:21:59.183 ID:ImirDeNX0.net
細木数子「あんた、地獄に落ちるよ」

ラフィエル「えぇっ、細木数子先生!?何で……」

細木数子「合鍵を作っておいたのさ」

ラフィエル「そんな、いつの間に!?それに何の為に!?犯罪ですよ!?」

細木数子「ここは悪魔の棲み処だからね。そしてそれはこんな時の為にさ。話は聞かせてもらったよ」

ラフィエル「話は聞かせてもらったって、一体どうやって…」

細木数子「何故か知らないけど、この部屋には盗聴器が仕掛けてあったのさ。そいつのおかげだね。誰が仕掛けたのかは知らないが」

ラフィエル「……」

39: 2017/03/31(金) 17:22:17.190 ID:ImirDeNX0.net
細木数子「あんたたちが人間じゃないのはあたしレベルになればわかるのさ。そして、そんな二人がずっと一緒にいればどうなるのかもね。だからあたしが何とかしてあげるよ」

ラフィエル「えっ?」

細木数子『破ァァァァアアアアーーーツ!!!』

その時不思議な事が起こった
老婆がかざす両手からまばゆい光が溢れだし二人を包み込んだのだ

ラフィエル「くっ……、いったい何が……?これは……天使の輪も羽も出せなくなっている……?まさか……」

細木数子「そう、あんたたち二人の体はもう人間の体さ。だからもう心配しなくていいんだ。ただ、もう人間になったんだから天界にも魔界にも行けないよ。わかっておくれ。それじゃあ元気でやるんだよ」

ラフィエル「ありがとうございます……ありがとうございます……細木数子先生……。私、サターニャさんと一緒に幸せになってみせます……」

細木数子の手により一人の悪魔が救われ、彼女は去っていった
この救いのない世の中には彼女の手を待つ迷い人がまだまだいるのだ
もしかしたら細木数子こそが地上に舞い降りた最後の天使なのかもしれない

サターニャ「あの、命を救ってもらったのはありがたいんだけど、あの婆さんだれだったの?」 -完-

45: 2017/03/31(金) 17:32:31.083 ID:P1yXOS7t0.net
乙えぇ……

引用: ラフィエル「私はついていけるだろうか、サターニャさんのいない世界のスピードに…」