1: 2008/05/07(水) 12:14:20.19 ID:qK/qgILuO
めぐ「イヤッホゥゥゥゥ」ガタン
看護婦「604号室の患者さんの血圧上昇しました!」
医者「早く取り押さえろ!」










水銀燈「めぐ…」

5: 2008/05/07(水) 12:19:42.80 ID:qK/qgILuO
めぐ「こんな所にいられるか!私は帰るぞ!」
看護婦「落ち着いてください!きゃっ!」
めぐ「触るな無礼者!」








水銀燈「一体どうしたの…?」

10: 2008/05/07(水) 12:32:51.63 ID:qK/qgILuO
めぐ「腹筋スレか…上等!」ブチブチブチッ
看護婦「ちょ、おま…何やってるんですか!?」
めぐ「針まみれで腹筋が出来るかぁぁぁぁっ!」






水銀燈「…見守るべきなの…?お父様…」

11: 2008/05/07(水) 12:47:34.81 ID:fgta6Q8t0
「ハッ…ハッ…」
ベッドの上で腹筋をしていためぐは、窓の外に誰かの気配を感じた。
誰か…ここは6階。その窓の外に居そうな相手。すぐに、誰かは想像がついた。
「…そんな所に居ないで、こっちに来てよ。ね?」
腹筋を続けたまま、そう声をかける。

そして…

見るからにゲッソリとした表情で水銀燈が窓から顔を覗かせた。
「めぐぅ…貴方…何してるのよぉ…」
「もちろん、筋トレよ?」

割れた腹筋をパジャマ越しにゴリゴリ撫でながら、めぐは枕元に置いてあるスポーツドリンクを手に取った。
それに、プロテインの顆粒をサラサラと流し込んで、一気に飲み干す。
ゴクゴクと豪快な音をたてながらめぐの喉が動き…
「ぷはぁ!!やっぱり、ゲロみたいな味ね!!貴方もどう?水銀燈」
「…遠慮しとくわぁ……」

16: 2008/05/07(水) 13:02:38.55 ID:fgta6Q8t0
完全にドン引きの水銀燈を他所に、めぐは腕立て伏せを始める。
「しゅッ…しゅッ…」
まるでビデオの早送りのように、常軌を逸した速度で上下するめぐの体。
昔の病弱さの欠片も無く、変わり果てためぐの姿に…水銀燈は思わず、視線を逸らした。

(…確かに…めぐが元気になったのは…いい事だけど……何かが違うわぁ……)
「うん?何か言った?」
腕立ての速度をドンドン増しながら、めぐが呼吸一つ乱さずに聞いてくる。

あれだけ望んだ、ミーディアムの健康。だが、実際にそれを目の前にすると……

水銀燈は脳裏に過ぎった嫌悪感を、頭を振って忘れる事にした。

そんな、いつもとは明らかに違う水銀燈の様子に、めぐは腕立てを中断する。
そして…
「どうしたの?水銀燈…暗い顔して…… そうよ!」
まるで丸太のように強靭な筋肉のついた腕で、水銀燈を抱きかかえる。
「気分転換に散歩にでも行きましょうか!」

18: 2008/05/07(水) 13:12:37.05 ID:fgta6Q8t0
「え!?…いや…それは…」
水銀燈の顔色が見る見る青くなる。
「大丈夫よ!こっそり抜け出せば、看護士さんにも見つからないって!」
脳ミソまで筋肉になりつつあるめぐは、相変わらずご機嫌な表情で上腕二等筋に力を込める。

「もが!むがー!!(ちょっと!放しなさいよぉ!!」
水銀燈の言葉は、めぐの筋肉に阻まれ口から出てこない。

「さて…それじゃあ、鳥みたいに自由に羽ばたきましょうか!」
めぐが窓に視線を向ける。

病弱だった頃、いつも眺めていた空。
そこに飛び立つ日は、今だ。

狭い病室の中、全力で窓に向かって走る。
そして…

「ィィィィヤッホォォォォウウウウ!!!!」

声高らかに窓をぶち破りながら、めぐは病室を飛び出した。

23: 2008/05/07(水) 13:27:21.16 ID:fgta6Q8t0


24: 2008/05/07(水) 13:28:04.60 ID:fgta6Q8t0
6階の病室の窓から飛び出し…近づく地面を見ながら、水銀燈は意識が遠のくのを感じていた。

めぐに抱きかかえられ、翼を広げる事も出来ない。
例え出来たとしても…助かるのは自分一人。
(思えば…出会った時から、電波全開だったわねぇ…)

水銀燈の思考に絶望感が広がる中…めぐの顔には、異様な喜びが広がっている。

ついに手に入れた自由。筋肉という名の翼。
その存在を全身で感じ……

落下しながら病院の壁を蹴り、着地地点を修正する。
蹴られた壁は、浜辺に作られた砂の城のように崩れ…
そして、目の前には巨大な木。

「イヤッホゥゥゥ!!!」
完全に目を回している水銀燈の首根っこを掴み…めぐは両手を大きく広げ、巨木に突っ込んだ。

31: 2008/05/07(水) 13:56:16.26 ID:fgta6Q8t0
夢を見た。

鞄の中で見る夢とは違い…それは記憶のどこにも無い光景だった。
めぐと二人で、空気の綺麗などこかに出かけ…そこで平和に暮らしていた。
もちろん、アリスゲームはあるから、『カーン』平和とは言いきれないが…それでも『カーン』落ち着いた平穏が『カーン』

「…ああ!!五月蝿いわねぇ!!」
耳障りな音で目を覚ますと…そこは、病院の外れの教会近くの森の中。
そして不快な音の正体は、めぐが落ちてた水銀燈の羽根をダーツのように木に投げてる音だった。

(…ダーツと言うより、弾丸と言った方が正しいわねぇ…)

全身の筋肉を滾らせ、「シッ!!」という声と共に羽根を投げるめぐ。
悪夢にしか見えなかった。

もう、ため息をつく気力も無い。
そんな表情の水銀燈と、良い汗を流しながら森林破壊に精を出すめぐ。

うっすらと湯気が立ち込める体で、めぐは唐突に声を上げた。
「さて…体も温まった事だし……私も、いつか言ってたアリスゲームに連れて行ってくれない?」
「…人間なんて、足手まといになるだけ……お断りよぉ」
「そう言わないで、ね?お願い」

そう言いながら、めぐは力強く水銀燈の頭を撫でる。
多分…、軽く握り潰す事すら可能だろう。

どこでおかしくなったんだろう?
水銀燈はそう思うも……答えは見つからない。

41: 2008/05/07(水) 14:14:40.76 ID:fgta6Q8t0
「へえ…ここに水銀燈の妹の…」
「真紅」
「そう。その子がいるのね」
めぐが『桜田』と書かれた家の前に立ち、インターホンに手を伸ばす。
「闘いに来たんだから、そんなお行儀良く家に上がる事もないわぁ」
「…それもそうね」
めぐは伸ばした手をそのまま、拳に変える。そして…
「シュッ!!」
インターホンを殴り壊し、そのまま玄関先に向かう。

と…

「ド…ドロボウかあぁぁ!!?!?」
バットを片手に、眼鏡をかけた住人が飛び出してきた。

(…今、見つかるのは不本意ねぇ)
(だったら……やるしかないわね!)
一瞬のアイコンタクト。
「当身!!」
めぐは叫びながら、正確に、眼鏡の女性の顎を殴った。

カクン。と眼鏡っ子が膝から崩れ落ちる。

「…当身じゃないわねぇ……」
「そうかな?」
何事も無かったかのように、最凶の二人は桜田家へと入っていく。

先程殴った女性の事など、とっくに忘れていた。

52: 2008/05/07(水) 14:32:08.16 ID:fgta6Q8t0
のしのしと廊下を歩くめぐ。
その横を、優雅な足取りで進む水銀燈。

だが、少し進んだだけで、水銀燈は足を止めた。
そして…その背中から翼を広げ、ゆっくり由に浮きながら足を組む。
「ふふふ…出てきなさいよぉ……」
廊下の先に声をかける。

「……水銀燈…」
小さく震えながらも、それでも闘志の篭った目を向けながら…
ピンクの服を着た可愛らしい少女が廊下に歩み出てきた。

「あらぁ?雛苺…貴方だけなのぉ?…つまんなぁい……」
「…真紅は、ジュンを呼びに行ってるの……もうすぐ、来てくれるのよ……そしたら……」
「あら!可愛い子ね!!」
会話をめぐがぶった切る。

そして、筋肉を見せびらかすようにポーズをとりながら、雛苺に近づく。

「!?…こっちに来たら駄目なのー!!」
目の前の人間の行動に戦慄を覚えながらも、それでも雛苺は叫び、両手を前に出す。
すると…雛苺の足元から音も無く、苺轍が延び…それがめぐに絡みつく!

だが…

果たして、鍛え抜かれた彫刻のような美しい筋肉を、苺轍で止められるだろうか。

めぐはまるで苺轍が目に入らないかのように歩き続け…
ブチブチとツタの切れる音と、その光景に泣き出した雛苺のしゃくりあげる声だけが廊下に響いた…

60: 2008/05/07(水) 14:45:33.56 ID:fgta6Q8t0
「大丈夫…怖くないから…ほら…ね?」
そう言いながらめぐは、胸の筋肉をピクピクと動かす。
「めぐ…それ、怖いわぁ……」
「そうかな?可愛いと思わない?」

「嫌…来ないで……いや……お願い……真紅……トモエ…!」
無駄と知りながらも、雛苺は苺轍を延ばし続けた。
その顔には、完全に恐怖の色が浮かんでいる。

「ほら…ね?…怖くないから…こっちに来てよ…?」
めぐが丸太のような腕を雛苺に伸ばし……

雛苺は理解した。
生きたまま蛇に飲まれる蛙の気持ちを。
雛苺の心には、圧倒的な絶望しか無かった。

そして、雛苺は…その絶望から逃れる唯一の方法を、無意識に選択する。

「…きゅぅ…」
小さな声と共に、突然気を失った雛苺。
「え!?た…大変!この子、病気か何かだったのかな!?」
見当違いの事を言いながら、雛苺を抱きかかえるめぐ。
「………」
頭が痛くなってきた水銀燈。



67: 2008/05/07(水) 15:15:16.88 ID:fgta6Q8t0
「ともあれ…これはチャンスねぇ…」
水銀燈はめぐの腕の中で気を失う雛苺を、ニヤリと見下ろす。

何の苦労も無く、ローザミスティカが手に入るチャンス。みすみす逃す手は無い。

水銀燈は翼を大きく広げ、その羽根を集め…そして一本の剣を作り出した。
「…じゃぁね雛苺…あなたのローザミスティカ、貰ってあげるわぁ」
正確に、雛苺の細い首を狙って剣を振り下ろし…

だが、水銀燈の手に伝わってきたのは、首を刎ねる感覚ではなかった。

「そこまでよ!水銀燈!!」
叫びと共に、真っ赤な服の少女が飛び出してくる。
その少女の放った薔薇の花弁により、水銀燈の剣はあと一歩のところで止められていた。

「真紅ゥゥゥゥ!!」
良いところで邪魔が入り、水銀燈の翼は怒りに大きく広がっていく。

だが、そんな水銀燈に、めぐは抱えていた雛苺を廊下に横たわらせ耳打ちをした。
「まずいわ、水銀燈。……そろそろ検温の時間よ…」
「今の貴方に入院する必要なんて無いでしょぉ!?」
「…駄目よ。退院したら、学校に行かされちゃう」
「………(何、真顔で言ってるのよぉ…)」

水銀燈は舌打ちしながら現状を見直す。
一対一。決して不利な訳ではない。
だが、相手はミーディアムを連れているし、こっちはめぐが帰る準備を始めてる。

「……今回は、様子見よぉ……次に会った時は、覚悟する事ね」
虚勢を張り、玄関に向かうめぐの後を追いかける。

76: 2008/05/07(水) 15:38:28.41 ID:fgta6Q8t0
病院の壁の、ちょっとした凹凸を素手で掴みながら、めぐは自分の病室まで帰りついた。

ゲロみたいな味のする、プロテイン入りのドリンクを一気に飲み干し、
鍛え上げられた肉体を隠すように肩まで布団に潜り込む。

本当ならこうしている時間も、惜しいのだが…
検温に来たときに筋トレしてました。なんて親に報告された日には……

「めぐちゃん?検温の時間よ?」
病室の外から聞こえた声で、思考を中断せざるを得なくなった。

「めぐちゃん、最近調子良いみたいで良かったわ」
看護士がそう声をかけてくる。
(マズイ!!)
めぐは咄嗟に、口の中で自分の舌を思いっきり噛み…口の中に血の味が広がる。
「ごふぅ!!」
咳と一緒に、口の中に溜まった血を吐き出した。

「た…大変!!」
看護士が慌てて部屋から飛び出す。

(…そうよ…絶対に退院なんてするもんですか…!!)
筋肉質な指先で、口の周りの血を拭う。

窓の外では…

水銀燈がドンヨリとした視線で虚空を眺めていた。

78: 2008/05/07(水) 15:41:16.00 ID:fgta6Q8t0
>1じゃないです。ごめんなさい。
おわりです

80: 2008/05/07(水) 15:46:44.10 ID:UI3/fprE0
乙wwwwww

81: 2008/05/07(水) 15:49:34.20 ID:3IxJgmMz0
この展開を見た>>1は何を思うのか・・・

95: 2008/05/07(水) 16:56:02.54 ID:NJFcWQAi0
めぐ「病院の廊下でスケボーは最高よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」ガシャアアアアアアン
看護婦「ガラスに突っ込んだ!?」
医者「すぐに担架の用意だ!」「ハイ!」


























水銀燈「もうやだ・・・」

104: 2008/05/07(水) 17:17:22.38 ID:qaO3cA3o0
これはいい筋肉wwwwwww

引用: 水銀燈「め…めぐ?」めぐ「元気になったわ」