609: 2012/01/08(日) 20:59:35.92 ID:sCd4xElDo
610: 2012/01/08(日) 21:02:09.42 ID:sCd4xElDo
2月初旬
兄(・・・・・・後始末もしないで寝ちゃったんだっけ)
兄(妹も俺に抱きついて寝ちゃってる・・・・・・こいつ、寝顔までこんなに可愛いんだな)
兄(こいつはずっと昔から俺のことを意識してたみたいだけど)
兄(だとしたら俺ってすげえ無駄な時間を過ごしてたんだよな。もっと早くこいつの好意に気づいてれば)
兄(兄友に教わったゲームなんかに一日8時間も費やすなんてバカなことはしなかったのに)
兄(それだけじゃない・・・・・・妹とこうなっていれば、妹友と付き合うなんて考えもしなかったのに)
兄(妹友だって被害者だよな。俺なんかを好きにならなければ辛い思いをすることだってなかった)
兄(妹友が辛い思い? 何考えてるんだ、俺は。妹と寝たからって何の罪もない妹友を振る気なのか?)
兄(そんなことできるわけがないよな)
兄(じゃあ、どうする? 妹はもう俺におねだりしたりしないって言ってたけど)
兄(妹友とこのまま付き合って、妹とは今日が最後にする?)
兄(常識的にはそっちが正解だよな。俺と妹は実の兄妹だし。)
兄(どう考えたって妹友と付き合うほうが現実的だ。妹友なら親に紹介もできるけど、妹なら親に隠し通さなきゃいけないし)
兄(かといって、今この瞬間も俺にしっかりと抱きついて寝ているこいつのことを諦めることができるのか)
兄(できっこないよな。つうか、妹友も可愛いけど、こいつの場合は何ていったらいいか)
兄(抱き合っててすごくしっくりと来るんだよな)
兄(近親物とかでよく兄妹は相性がいいとか言うけど、そういうんじゃなくて)
兄(すげえ心が落ち着くって言うか、帰るところに戻ったような感覚というか)
兄(・・・・・・何で俺こんなきもいこと考えてるんだろ)
兄(これからどうしようか・・・・・・)
兄(・・・・・・後始末もしないで寝ちゃったんだっけ)
兄(妹も俺に抱きついて寝ちゃってる・・・・・・こいつ、寝顔までこんなに可愛いんだな)
兄(こいつはずっと昔から俺のことを意識してたみたいだけど)
兄(だとしたら俺ってすげえ無駄な時間を過ごしてたんだよな。もっと早くこいつの好意に気づいてれば)
兄(兄友に教わったゲームなんかに一日8時間も費やすなんてバカなことはしなかったのに)
兄(それだけじゃない・・・・・・妹とこうなっていれば、妹友と付き合うなんて考えもしなかったのに)
兄(妹友だって被害者だよな。俺なんかを好きにならなければ辛い思いをすることだってなかった)
兄(妹友が辛い思い? 何考えてるんだ、俺は。妹と寝たからって何の罪もない妹友を振る気なのか?)
兄(そんなことできるわけがないよな)
兄(じゃあ、どうする? 妹はもう俺におねだりしたりしないって言ってたけど)
兄(妹友とこのまま付き合って、妹とは今日が最後にする?)
兄(常識的にはそっちが正解だよな。俺と妹は実の兄妹だし。)
兄(どう考えたって妹友と付き合うほうが現実的だ。妹友なら親に紹介もできるけど、妹なら親に隠し通さなきゃいけないし)
兄(かといって、今この瞬間も俺にしっかりと抱きついて寝ているこいつのことを諦めることができるのか)
兄(できっこないよな。つうか、妹友も可愛いけど、こいつの場合は何ていったらいいか)
兄(抱き合っててすごくしっくりと来るんだよな)
兄(近親物とかでよく兄妹は相性がいいとか言うけど、そういうんじゃなくて)
兄(すげえ心が落ち着くって言うか、帰るところに戻ったような感覚というか)
兄(・・・・・・何で俺こんなきもいこと考えてるんだろ)
兄(これからどうしようか・・・・・・)
611: 2012/01/08(日) 21:14:05.68 ID:sCd4xElDo
妹「お兄ちゃん?」
兄「おう、おはよ」
妹「・・・・・・ごめん。あたし、また寝ちゃってたの?」
兄「うん。あの後しばらくおまえの背中を撫でてたらいつのまにか寝てたよ」
妹「そうか。何かあたし猫になった夢見てた」
兄「猫って何だよ」
妹「わかんない。でも、お兄ちゃんの膝の上で丸くなって寝てて、お兄ちゃんが猫になったあたしをずっと撫でてるの」
兄「まあ、おまえが寝ちゃってからもずっと撫でてたけどな」
妹「だからあんな夢見たんだ」クス
兄「・・・・・・痛くない?」
妹「うん。もう平気。昨日の夜はすごく痛かったけど、さっきのは痛いというより」
兄「うん?」
妹「何でもない・・・・・・ばか」
兄「顔赤いぞ、おまえ(こいつと話してるとさっきまでの不安とかどっかに吹き飛んじゃうな)」
妹「うん。今何時?」
兄「もう2時だよ」
妹「え? いけない。朝ごはんも昼ごはんも作らなかった」
兄「そりゃ、あんなことしてりゃそんな暇はないだろ」
妹「・・・・・・お兄ちゃんの意地悪」
兄「(また顔赤くした)まあ、でも確かに腹減ったな」
妹「何か作るよ」
兄「それよか、たまにはどっかに飯食いに行かねえ?」
妹「お兄ちゃんがそうしたいならそれでいいよ」
兄「うん(こいつの唯一の欠点は致命的なほどの料理音痴だしな)」
妹「・・・・・・」
兄「どした?」
妹「・・・・・・何かわからないけど、お兄ちゃんに馬鹿にされた気がした」
兄「(超能力者かよ)別になんも言ってねえだろうが」
妹「まあ、そうなんだけど」
兄「じゃあ、決りな。俺着替えてくるから」
兄「おう、おはよ」
妹「・・・・・・ごめん。あたし、また寝ちゃってたの?」
兄「うん。あの後しばらくおまえの背中を撫でてたらいつのまにか寝てたよ」
妹「そうか。何かあたし猫になった夢見てた」
兄「猫って何だよ」
妹「わかんない。でも、お兄ちゃんの膝の上で丸くなって寝てて、お兄ちゃんが猫になったあたしをずっと撫でてるの」
兄「まあ、おまえが寝ちゃってからもずっと撫でてたけどな」
妹「だからあんな夢見たんだ」クス
兄「・・・・・・痛くない?」
妹「うん。もう平気。昨日の夜はすごく痛かったけど、さっきのは痛いというより」
兄「うん?」
妹「何でもない・・・・・・ばか」
兄「顔赤いぞ、おまえ(こいつと話してるとさっきまでの不安とかどっかに吹き飛んじゃうな)」
妹「うん。今何時?」
兄「もう2時だよ」
妹「え? いけない。朝ごはんも昼ごはんも作らなかった」
兄「そりゃ、あんなことしてりゃそんな暇はないだろ」
妹「・・・・・・お兄ちゃんの意地悪」
兄「(また顔赤くした)まあ、でも確かに腹減ったな」
妹「何か作るよ」
兄「それよか、たまにはどっかに飯食いに行かねえ?」
妹「お兄ちゃんがそうしたいならそれでいいよ」
兄「うん(こいつの唯一の欠点は致命的なほどの料理音痴だしな)」
妹「・・・・・・」
兄「どした?」
妹「・・・・・・何かわからないけど、お兄ちゃんに馬鹿にされた気がした」
兄「(超能力者かよ)別になんも言ってねえだろうが」
妹「まあ、そうなんだけど」
兄「じゃあ、決りな。俺着替えてくるから」
612: 2012/01/08(日) 21:15:42.16 ID:sCd4xElDo
妹「あ、お兄ちゃん?」
兄「うん?」
妹「体中が、何か汗とか・・・・・・その、お兄ちゃんのよだれとかだらけだから」
兄「・・・・・・わ、悪い(胸とかにかけちゃったし、しかもこいつの肌にあちこちにキスマークつけまくってるじゃん、俺)」
妹「別に悪くないよ。でも、ちょっとシャワー浴びて来ていい?」
兄「お、おう」
妹「・・・・・・」
兄「どうした?」
妹「一緒に入る?」
兄「え」
妹「・・・・・・冗談だよ。じゃ、すぐにシャワー浴びて支度するね」
兄「別に一緒に入っても良かったのに」ボソ
妹「うん?」
兄「何でもない。じゃ、俺も支度するわ」
妹「うん」
兄「うん?」
妹「体中が、何か汗とか・・・・・・その、お兄ちゃんのよだれとかだらけだから」
兄「・・・・・・わ、悪い(胸とかにかけちゃったし、しかもこいつの肌にあちこちにキスマークつけまくってるじゃん、俺)」
妹「別に悪くないよ。でも、ちょっとシャワー浴びて来ていい?」
兄「お、おう」
妹「・・・・・・」
兄「どうした?」
妹「一緒に入る?」
兄「え」
妹「・・・・・・冗談だよ。じゃ、すぐにシャワー浴びて支度するね」
兄「別に一緒に入っても良かったのに」ボソ
妹「うん?」
兄「何でもない。じゃ、俺も支度するわ」
妹「うん」
613: 2012/01/08(日) 21:25:09.32 ID:sCd4xElDo
ファミレス
兄「おまえ、またそんな甘いものだけ頼んで」
妹「だって好きなんだもん」
兄「おまえを一人暮らしさせとくと心配だわ。俺よりちゃんと食事してないんじゃねえの」
妹「そんなことないよ。お昼は学食で定食とか食べてるよ」
兄「ああ、そういや妹友がお弁当持って学食に付き合ってるんだっけ」
妹「・・・・・・」
兄「あ・・・・・・。悪い」
妹「別にいいよ、気にしなくても」
兄「前にそういう話聞いてたんで思わず口に出しちゃった」
妹「だからいいって。そうね、前はそうだったんだけど」
兄「うん?」
妹「最近はあまり妹友ちゃんと一緒に食事とかしないし」
兄「・・・・・・」
妹「というか新学期になってからは妹友ちゃんとはあまり一緒にいない」
兄「そうか」
妹「うん」
兄「(話題をそらそう)じゃ、おまえは普段どういう友だちと一緒にいるんだ?」
妹「委員長ちゃん」
兄「・・・・・・え?」
妹「え? って・・・・・・何でびっくりしてるの?」
兄「いや、だってさ。」
妹「委員長ちゃんとは入学した頃からの知り合いなんだよ」
兄「でもよ、おまえから彼氏を奪ったのって委員長って子なんだろ」
妹「・・・・・・委員長ちゃんはいい子だよ」
兄「いや、そうかもしれねえけど」
妹「どっちかって言うと、あたしの方が委員長ちゃんに嫌われても当然なのに」
兄「うん?」
妹「それを全然表に出さないで仲良くしてくれてるんだよ」
兄「あ、そうか。もともと委員長って子は先輩のこと好きだったんだな」
妹「うん。だからあたしの方が先に奪っちゃったってことだよね」
兄「・・・・・・おまえさ」
妹「うん」
兄「先輩と付き合う時には、委員長の気持ちを知ってたの」
妹「・・・・・・知ってた。あと妹友ちゃんの気持ちも知ってた」
兄「あ・・・・・・」
妹「だから委員長ちゃんには恨みとかないの。悪いことをしたとは思っても」
兄「・・・・・・妹友には?」
妹「恨みとかはない。でも、妹友ちゃんには悪いとも思わない」
兄「おまえ、またそんな甘いものだけ頼んで」
妹「だって好きなんだもん」
兄「おまえを一人暮らしさせとくと心配だわ。俺よりちゃんと食事してないんじゃねえの」
妹「そんなことないよ。お昼は学食で定食とか食べてるよ」
兄「ああ、そういや妹友がお弁当持って学食に付き合ってるんだっけ」
妹「・・・・・・」
兄「あ・・・・・・。悪い」
妹「別にいいよ、気にしなくても」
兄「前にそういう話聞いてたんで思わず口に出しちゃった」
妹「だからいいって。そうね、前はそうだったんだけど」
兄「うん?」
妹「最近はあまり妹友ちゃんと一緒に食事とかしないし」
兄「・・・・・・」
妹「というか新学期になってからは妹友ちゃんとはあまり一緒にいない」
兄「そうか」
妹「うん」
兄「(話題をそらそう)じゃ、おまえは普段どういう友だちと一緒にいるんだ?」
妹「委員長ちゃん」
兄「・・・・・・え?」
妹「え? って・・・・・・何でびっくりしてるの?」
兄「いや、だってさ。」
妹「委員長ちゃんとは入学した頃からの知り合いなんだよ」
兄「でもよ、おまえから彼氏を奪ったのって委員長って子なんだろ」
妹「・・・・・・委員長ちゃんはいい子だよ」
兄「いや、そうかもしれねえけど」
妹「どっちかって言うと、あたしの方が委員長ちゃんに嫌われても当然なのに」
兄「うん?」
妹「それを全然表に出さないで仲良くしてくれてるんだよ」
兄「あ、そうか。もともと委員長って子は先輩のこと好きだったんだな」
妹「うん。だからあたしの方が先に奪っちゃったってことだよね」
兄「・・・・・・おまえさ」
妹「うん」
兄「先輩と付き合う時には、委員長の気持ちを知ってたの」
妹「・・・・・・知ってた。あと妹友ちゃんの気持ちも知ってた」
兄「あ・・・・・・」
妹「だから委員長ちゃんには恨みとかないの。悪いことをしたとは思っても」
兄「・・・・・・妹友には?」
妹「恨みとかはない。でも、妹友ちゃんには悪いとも思わない」
618: 2012/01/08(日) 22:55:26.17 ID:sCd4xElDo
兄「わかんねえなあ。おまえは委員長ちゃんから先輩を奪った。そんでこの間、委員長ちゃんがおまえから先輩を奪い返した」
妹「うん。それで合ってる」
兄「おまえは委員長ちゃんに悪いことをしたとは思ってるけど、委員長ちゃんに先輩を奪われた恨みはない」
妹「そうだよ」
兄「じゃ次。おまえは妹友から先輩を奪った」
妹「うん」
兄「・・・・・・以上。なのに何故妹友に悪いと思わないって発想になるんだよ」
妹「妹友ちゃんはライバルだから」
兄「うん?」
妹「一つ抜けてるよ、お兄ちゃん」
兄「何が?」
妹「あたしはは妹友ちゃんから先輩を奪った」
兄「うん」
妹「・・・・・・・でも、妹友ちゃんはあたしからお兄ちゃんを奪ったの」
妹「うん。それで合ってる」
兄「おまえは委員長ちゃんに悪いことをしたとは思ってるけど、委員長ちゃんに先輩を奪われた恨みはない」
妹「そうだよ」
兄「じゃ次。おまえは妹友から先輩を奪った」
妹「うん」
兄「・・・・・・以上。なのに何故妹友に悪いと思わないって発想になるんだよ」
妹「妹友ちゃんはライバルだから」
兄「うん?」
妹「一つ抜けてるよ、お兄ちゃん」
兄「何が?」
妹「あたしはは妹友ちゃんから先輩を奪った」
兄「うん」
妹「・・・・・・・でも、妹友ちゃんはあたしからお兄ちゃんを奪ったの」
619: 2012/01/08(日) 22:56:31.00 ID:sCd4xElDo
兄「・・・・・・あ」
妹「妹友ちゃんが先輩のことを今でも好きなら、あたしにも悪いという気持ちがあったかもしれないけど」
兄「うん」
妹「妹友ちゃんは先輩のことなんか今では何とも思ってないんでしょ?」
兄「・・・・・・妹友はそう言ってる」
妹「じゃあ、あたしが妹友ちゃんに罪悪感を感じる理由なんてないよ」
兄「あ、あのさ」
妹「うん」
兄「妹友に恨みはないって言ったよな?」
妹「そうだよ」
兄「・・・・・・おまえ、俺のこと一番好きなんだろ?(話していてとても恥ずかしい)」
妹「うん」
兄「妹友が俺に告白した時とか、本当は嫌だった?」
妹「すごく嫌だった。本当は妹友ちゃんの顔も見たくないくらい」
兄「じゃあさ、罪悪感は感じてないのはわかったけどさ」
妹「うん」
兄「何で妹友のこと恨まねえの? 好きな男を奪われたんなら少しは恨むとかするんじゃね?」
妹「初詣に3人で行ったでしょ?」
兄「ああ」
妹「で、妹友ちゃんがお兄ちゃんに怒鳴ったじゃない?」
兄「うん。あの時は驚いたよ」
妹「あたしも。妹友ちゃんってまだ先輩のこと好きなんだって思った」
兄「ああ、そう言ってたな。おまえ」
妹「うん。あの時は妹友ちゃんに罪悪感を感じたよ。そんなに好きだった人を奪っちゃったのかって」
兄「ああ」
妹「それで、あの時は妹友ちゃんへの恨みもすごく強く感じたの」
兄「え」
妹「だって、そうでしょ。内心では先輩のことを好きなのにお兄ちゃんに告白するなんて」
兄「あ」
妹「あたしのお兄ちゃんを何だと思ってるのよって思った」
兄(そういやあの時。妹友のメールを読ませた時、こいつは)
妹「妹友ちゃんが先輩のことを今でも好きなら、あたしにも悪いという気持ちがあったかもしれないけど」
兄「うん」
妹「妹友ちゃんは先輩のことなんか今では何とも思ってないんでしょ?」
兄「・・・・・・妹友はそう言ってる」
妹「じゃあ、あたしが妹友ちゃんに罪悪感を感じる理由なんてないよ」
兄「あ、あのさ」
妹「うん」
兄「妹友に恨みはないって言ったよな?」
妹「そうだよ」
兄「・・・・・・おまえ、俺のこと一番好きなんだろ?(話していてとても恥ずかしい)」
妹「うん」
兄「妹友が俺に告白した時とか、本当は嫌だった?」
妹「すごく嫌だった。本当は妹友ちゃんの顔も見たくないくらい」
兄「じゃあさ、罪悪感は感じてないのはわかったけどさ」
妹「うん」
兄「何で妹友のこと恨まねえの? 好きな男を奪われたんなら少しは恨むとかするんじゃね?」
妹「初詣に3人で行ったでしょ?」
兄「ああ」
妹「で、妹友ちゃんがお兄ちゃんに怒鳴ったじゃない?」
兄「うん。あの時は驚いたよ」
妹「あたしも。妹友ちゃんってまだ先輩のこと好きなんだって思った」
兄「ああ、そう言ってたな。おまえ」
妹「うん。あの時は妹友ちゃんに罪悪感を感じたよ。そんなに好きだった人を奪っちゃったのかって」
兄「ああ」
妹「それで、あの時は妹友ちゃんへの恨みもすごく強く感じたの」
兄「え」
妹「だって、そうでしょ。内心では先輩のことを好きなのにお兄ちゃんに告白するなんて」
兄「あ」
妹「あたしのお兄ちゃんを何だと思ってるのよって思った」
兄(そういやあの時。妹友のメールを読ませた時、こいつは)
620: 2012/01/08(日) 22:57:02.34 ID:sCd4xElDo
回想
兄「おまえが俺へのメール見たくないのは知ってるけど、これだけは見てくれ。それで相談させてくれよ」
妹「うん・・・・・・わかった」
妹「・・・・・・」
兄「見たか」
妹「・・・・・・」
妹「・・・・・・妹友ちゃん、ひどい」ブルブル
兄「・・・・・・・」
妹「あたしの、あたしの」
兄「おい」
妹「・・・・・・あたしのお兄ちゃんを何だと思ってるの」ブルブル
兄「おい、落ち着け」
妹「あたしに復讐したいなら、あたしにひどいことすればいい。何でお兄ちゃんを巻き込むのよ」
兄「・・・・・・」
妹「こんなメール無視していいよ、お兄ちゃんは」
兄「え?」
妹「お兄ちゃんがこれ以上困ることはないよ」
兄「だ、だってよ」
妹「あたしが妹友に会うから」
兄「(呼び捨てにした)え?」
妹「あたしが憎いんだったらあたしに言えばいい」
兄「ちょっと落ちつけ、妹」
妹「妹友のこと・・・・・・絶対に許さない」
兄「おい・・・・・・」
回想終了
兄「おまえが俺へのメール見たくないのは知ってるけど、これだけは見てくれ。それで相談させてくれよ」
妹「うん・・・・・・わかった」
妹「・・・・・・」
兄「見たか」
妹「・・・・・・」
妹「・・・・・・妹友ちゃん、ひどい」ブルブル
兄「・・・・・・・」
妹「あたしの、あたしの」
兄「おい」
妹「・・・・・・あたしのお兄ちゃんを何だと思ってるの」ブルブル
兄「おい、落ち着け」
妹「あたしに復讐したいなら、あたしにひどいことすればいい。何でお兄ちゃんを巻き込むのよ」
兄「・・・・・・」
妹「こんなメール無視していいよ、お兄ちゃんは」
兄「え?」
妹「お兄ちゃんがこれ以上困ることはないよ」
兄「だ、だってよ」
妹「あたしが妹友に会うから」
兄「(呼び捨てにした)え?」
妹「あたしが憎いんだったらあたしに言えばいい」
兄「ちょっと落ちつけ、妹」
妹「妹友のこと・・・・・・絶対に許さない」
兄「おい・・・・・・」
回想終了
621: 2012/01/08(日) 22:59:16.69 ID:sCd4xElDo
兄「そうだったな」
妹「でも。あの後、お兄ちゃんが妹友ちゃんに会って、妹友ちゃんは嘘を言ってる様子はなさそうだってあたしに話したのを聞いてね」
兄「ああ」
妹「それなら恨むのはやめようって思った。妹友ちゃんがあたしへの嫌がらせじゃなくて、本当にお兄ちゃんに惹かれてお付き合いしたのだったら」
兄「うん」
妹「あたしが妹ちゃんを恨むのは筋違い。でもね」
兄「・・・・・・」
妹「あたしも先輩と別れて、本当にお兄ちゃんを愛してるのはあたしなのか妹友ちゃんなのかどっちかなって考えて」
兄「・・・・・・おまえ」
妹「まあ、家で一人きりで暇だったせいもあるんだけど」
兄(妹・・・・・・)
妹「そしたら心が吹っ切れてね。お兄ちゃんがどっちを選んでもしょうがないけど、あたしも妹ちゃんに悪いと思うのはやめようって思った」
兄「おまえ」
妹「妹友ちゃんもあたしも、お兄ちゃんを好きな気持ちに嘘は無いんだったら、正々堂々と勝負してもいいんじゃないかって」
兄「・・・・・・おまえは俺の妹にしておくのはもったいない女だよ」
妹「・・・・・・やだ。そんなこと言わないの」
兄「何でだよ? 誉めてるんだぜ」
妹「どうせ言うなら、おまえが俺の妹でよかったって言ってよ」
兄「言わねえよ」
妹「・・・・・・意地悪」
兄「おまえが俺の女ならよかったのになあ、とは思う」
妹「・・・・・・え?」
兄「おまえ、また顔真っ赤だよ」
妹「うるさい!」
兄「おまえ、そのパフェ食わねえの?」
妹「口の中が甘ったるくなっちゃったよ。お兄ちゃんのせいだからね」
兄「何でだよ」
妹「お兄ちゃんのステーキ一口ちょうだい」パク
兄「おまえ、最後に残しておいたとこ食べるか? 普通」
妹「筋だらけで固いじゃん。食べなきゃよかった」
兄「ソースついてるから口拭け」
妹「わかってるよ!」
妹「でも。あの後、お兄ちゃんが妹友ちゃんに会って、妹友ちゃんは嘘を言ってる様子はなさそうだってあたしに話したのを聞いてね」
兄「ああ」
妹「それなら恨むのはやめようって思った。妹友ちゃんがあたしへの嫌がらせじゃなくて、本当にお兄ちゃんに惹かれてお付き合いしたのだったら」
兄「うん」
妹「あたしが妹ちゃんを恨むのは筋違い。でもね」
兄「・・・・・・」
妹「あたしも先輩と別れて、本当にお兄ちゃんを愛してるのはあたしなのか妹友ちゃんなのかどっちかなって考えて」
兄「・・・・・・おまえ」
妹「まあ、家で一人きりで暇だったせいもあるんだけど」
兄(妹・・・・・・)
妹「そしたら心が吹っ切れてね。お兄ちゃんがどっちを選んでもしょうがないけど、あたしも妹ちゃんに悪いと思うのはやめようって思った」
兄「おまえ」
妹「妹友ちゃんもあたしも、お兄ちゃんを好きな気持ちに嘘は無いんだったら、正々堂々と勝負してもいいんじゃないかって」
兄「・・・・・・おまえは俺の妹にしておくのはもったいない女だよ」
妹「・・・・・・やだ。そんなこと言わないの」
兄「何でだよ? 誉めてるんだぜ」
妹「どうせ言うなら、おまえが俺の妹でよかったって言ってよ」
兄「言わねえよ」
妹「・・・・・・意地悪」
兄「おまえが俺の女ならよかったのになあ、とは思う」
妹「・・・・・・え?」
兄「おまえ、また顔真っ赤だよ」
妹「うるさい!」
兄「おまえ、そのパフェ食わねえの?」
妹「口の中が甘ったるくなっちゃったよ。お兄ちゃんのせいだからね」
兄「何でだよ」
妹「お兄ちゃんのステーキ一口ちょうだい」パク
兄「おまえ、最後に残しておいたとこ食べるか? 普通」
妹「筋だらけで固いじゃん。食べなきゃよかった」
兄「ソースついてるから口拭け」
妹「わかってるよ!」
622: 2012/01/08(日) 23:02:52.42 ID:sCd4xElDo
当日夜
妹「お風呂入っちゃって」
兄「うん」
妹「・・・・・・またパソコンでゲームしてる」
兄「いいところなんだけどな」
妹「早く入ってくれないとお風呂掃除できないじゃん」
兄「だから俺が掃除しとくって」
妹「お兄ちゃんの掃除は雑だからだめ」
兄「ちゃんとやるって」
妹「前もそう言ってたけど、汚れがあっちこっちに残ってたよ」
兄「・・・・・・おまえはもう風呂入ったのか」
妹「まだ」
兄「じゃあ、先に入れよ。俺はゲームするのに忙しい」
妹「お兄ちゃん、大学入ってから暇があるとこれやってるけど」
兄「うん」
妹「何のゲーム? スマブラみたいなの?」
兄「アホかおまえは。これはストラテジーゲームといって」
妹「うん」
兄「まあ、もう昔のゲームなんだけど」
妹「うん」
兄「・・・・・・まあ、いいや」
妹「何よそれ。ちゃんと教えてよ。そもそも何ていうゲームなの?」
兄「アルファ・ケンタウリ」
妹「・・・・・・早くお風呂入ってね」
兄「ちょっと待てや。おまえがこのゲームのこと知りたがったんだろうが」
妹「名前からして面倒くさそうだからもういい」
妹「お風呂入っちゃって」
兄「うん」
妹「・・・・・・またパソコンでゲームしてる」
兄「いいところなんだけどな」
妹「早く入ってくれないとお風呂掃除できないじゃん」
兄「だから俺が掃除しとくって」
妹「お兄ちゃんの掃除は雑だからだめ」
兄「ちゃんとやるって」
妹「前もそう言ってたけど、汚れがあっちこっちに残ってたよ」
兄「・・・・・・おまえはもう風呂入ったのか」
妹「まだ」
兄「じゃあ、先に入れよ。俺はゲームするのに忙しい」
妹「お兄ちゃん、大学入ってから暇があるとこれやってるけど」
兄「うん」
妹「何のゲーム? スマブラみたいなの?」
兄「アホかおまえは。これはストラテジーゲームといって」
妹「うん」
兄「まあ、もう昔のゲームなんだけど」
妹「うん」
兄「・・・・・・まあ、いいや」
妹「何よそれ。ちゃんと教えてよ。そもそも何ていうゲームなの?」
兄「アルファ・ケンタウリ」
妹「・・・・・・早くお風呂入ってね」
兄「ちょっと待てや。おまえがこのゲームのこと知りたがったんだろうが」
妹「名前からして面倒くさそうだからもういい」
623: 2012/01/08(日) 23:04:37.84 ID:sCd4xElDo
兄「・・・・・・一緒に入るか」
妹「え?」
兄「だ、だから。たまには久しぶりに一緒に風呂に入るかって聞いてるの!」
妹「え、え? 久しぶりって一緒に入ったことなんてないじゃない」
兄「・・・・・・あったよ」
妹「嘘。あたしの方がお兄ちゃんとの思い出は覚えてるし。少なくともあたしが小学生になって以降は、一緒にお風呂に入ったことなんてないよ」
兄「(こいつはそんなに昔の俺との思い出を覚えてるのかよ)まあ、細かいことはともかく、もうただならぬ仲になっちゃったんだし一緒に入ろう」
妹「ただならぬって・・・・・・・そうだけど、はっきり言わないでよばか」
兄「で、どうする?」
妹「お兄ちゃん、妹友ちゃんとはどうするの?」
兄「あ」
妹「・・・・・・あ、ごめん。今のなしね」
兄「いや」
妹「あたしはお兄ちゃんが妹友ちゃんの恋人でもいい、あたしからはおねだりしないけど、お兄ちゃんが求めてくれるのならいつでもお兄ちゃんのこと拒まない」
兄「うん・・・・・・」
妹「って、昨日言ったばかりなのにね。ごめん」
兄「いや。俺の方こそおまえと一つになれて浮かれちゃったみたいだ」
妹「・・・・・・本当?」
兄「うん、本当」
妹「・・・・・・先にお風呂に入ってるから。のぼせちゃうからあまり待たせないでね」
兄「・・・・・・わかった(え? マジで妹と一緒に風呂入るの?)」ドキドキ
妹「え?」
兄「だ、だから。たまには久しぶりに一緒に風呂に入るかって聞いてるの!」
妹「え、え? 久しぶりって一緒に入ったことなんてないじゃない」
兄「・・・・・・あったよ」
妹「嘘。あたしの方がお兄ちゃんとの思い出は覚えてるし。少なくともあたしが小学生になって以降は、一緒にお風呂に入ったことなんてないよ」
兄「(こいつはそんなに昔の俺との思い出を覚えてるのかよ)まあ、細かいことはともかく、もうただならぬ仲になっちゃったんだし一緒に入ろう」
妹「ただならぬって・・・・・・・そうだけど、はっきり言わないでよばか」
兄「で、どうする?」
妹「お兄ちゃん、妹友ちゃんとはどうするの?」
兄「あ」
妹「・・・・・・あ、ごめん。今のなしね」
兄「いや」
妹「あたしはお兄ちゃんが妹友ちゃんの恋人でもいい、あたしからはおねだりしないけど、お兄ちゃんが求めてくれるのならいつでもお兄ちゃんのこと拒まない」
兄「うん・・・・・・」
妹「って、昨日言ったばかりなのにね。ごめん」
兄「いや。俺の方こそおまえと一つになれて浮かれちゃったみたいだ」
妹「・・・・・・本当?」
兄「うん、本当」
妹「・・・・・・先にお風呂に入ってるから。のぼせちゃうからあまり待たせないでね」
兄「・・・・・・わかった(え? マジで妹と一緒に風呂入るの?)」ドキドキ
624: 2012/01/08(日) 23:05:59.68 ID:sCd4xElDo
本日はここまで。明日まで休暇なんで、また明日投下できると思います
駄文に辛抱強くお付き合いいただいて感謝!
ではまたお会いしましょう
駄文に辛抱強くお付き合いいただいて感謝!
ではまたお会いしましょう
638: 2012/01/09(月) 22:00:55.88 ID:8CpsmRrMo
あたしが屋上に通じる階段を上りきり重い鉄製のドアを苦労して開くと、夕日の中に彼女のシルエットがぼうっと浮かんでいるのが見えた。
逆光になっているためその表情は覗えなかったけど、教室で話せばいいものをわざわざあたしを放課後の屋上に呼び出すくらいだから、彼女も大切で秘密の用件を抱えているだろうとあたしは思った。何となく硬直したような彼女の姿勢からその緊張ぶりが伝わってくるみたいだった。
・・・・・・高校に入学して最初にできた友人は妹友ちゃんだった。何かやたら可愛らしいというか女らしい子で、そういうところはあたしと正反対だったけどそこがこの子とうまが合った原因かもしれない。女らしいと言ったけど、彼女は周りの女の子たちのように男の子への関心は全くないようだった。要するにまだ子どもだったのだろう。彼女の外見は幼いとは正反対でちょっと見には大学生のお姉さんのように見えたけど、中身の方は年齢よりもう少し幼い感じだった。
その頃あたしには意中の人がいたんだけど、友だちに相談できるような恋ではなかったので妹友ちゃんのように恋バナをしたがらない友人は好都合だった。そういうこともあたしと妹友ちゃんが仲良しになるのに一役買っていた。あたしたちはすぐに打ち解け校内で一緒に過ごすようになった。同級生の子たちからは夫婦とかって呼ばれてからかわれるくらいいつもべったりと一緒にすごしていた。
そんなある日、妹友ちゃんは珍しく顔を赤くして緊張した様子で放課後屋上に来てくれない? とあたしに言った。
あ~あ。あたしはすぐに直感した。この子にもついに好きな男ができたか。ちょっと人より遅れてるかもしれないけど、妹友ちゃんもちゃんと成長してるのね。あたしはそんな妹友ちゃんの母親の様な感想を抱くとともに、少しだけ彼女のことを羨んだ。あたしの好きな男は既に彼女と付き合っていたし、顔を赤くして親友に相談することすらできないのだから。
あたしが屋上に続くドアを開け妹友ちゃんに声を掛けたあと、妹友ちゃんが話し出した内容はあたしの想像のはるか斜め上を行くものだった。
・・・・・・あたしは親友から好きだと告白されたのだった。
逆光になっているためその表情は覗えなかったけど、教室で話せばいいものをわざわざあたしを放課後の屋上に呼び出すくらいだから、彼女も大切で秘密の用件を抱えているだろうとあたしは思った。何となく硬直したような彼女の姿勢からその緊張ぶりが伝わってくるみたいだった。
・・・・・・高校に入学して最初にできた友人は妹友ちゃんだった。何かやたら可愛らしいというか女らしい子で、そういうところはあたしと正反対だったけどそこがこの子とうまが合った原因かもしれない。女らしいと言ったけど、彼女は周りの女の子たちのように男の子への関心は全くないようだった。要するにまだ子どもだったのだろう。彼女の外見は幼いとは正反対でちょっと見には大学生のお姉さんのように見えたけど、中身の方は年齢よりもう少し幼い感じだった。
その頃あたしには意中の人がいたんだけど、友だちに相談できるような恋ではなかったので妹友ちゃんのように恋バナをしたがらない友人は好都合だった。そういうこともあたしと妹友ちゃんが仲良しになるのに一役買っていた。あたしたちはすぐに打ち解け校内で一緒に過ごすようになった。同級生の子たちからは夫婦とかって呼ばれてからかわれるくらいいつもべったりと一緒にすごしていた。
そんなある日、妹友ちゃんは珍しく顔を赤くして緊張した様子で放課後屋上に来てくれない? とあたしに言った。
あ~あ。あたしはすぐに直感した。この子にもついに好きな男ができたか。ちょっと人より遅れてるかもしれないけど、妹友ちゃんもちゃんと成長してるのね。あたしはそんな妹友ちゃんの母親の様な感想を抱くとともに、少しだけ彼女のことを羨んだ。あたしの好きな男は既に彼女と付き合っていたし、顔を赤くして親友に相談することすらできないのだから。
あたしが屋上に続くドアを開け妹友ちゃんに声を掛けたあと、妹友ちゃんが話し出した内容はあたしの想像のはるか斜め上を行くものだった。
・・・・・・あたしは親友から好きだと告白されたのだった。
639: 2012/01/09(月) 22:06:29.69 ID:8CpsmRrMo
妹友ちゃんは緊張しているせいかずいぶん早口でしゃべりだした。そのため最初は何を言われているのかしばらく理解できなかったくらいだった。
「・・・・・・中学生の頃から」
「女の子のことしか・・・・・・」
「最初は勘違いだと思ってたんだけど」
「あたし、女の子しか好きになれないみたい」
ようやく彼女の言うことが少しづつ理解できてきた。妹友ちゃんは自分がレOビアンであることをあたしにカミングアウトしていたのだ。あたしは彼女にかける言葉を脳裏に探りながら彼女の言葉を聞いていたが、そのうち彼女はとんでもないことを言い出したのだ。
「そ、それでね。今あたしが一番気になっていて・・・・・・その、好きなのは委員長ちゃんなの」
え、あたし?
正直予想だにしなかった告白だった。冗談で済ませるならそうしたかったけど、妹友ちゃんの表情は受け流すにはあまりにも張り詰めていたものだった。あたしは、妹友ちゃんに悟られないように心の中でため息をついてから彼女に返事をした。
「心配しないで。妹友ちゃんのことを変だなんて思わないよ」
あたしは妹友ちゃんの目を間真っ直ぐに見ながら返事した。
「でも、あたしは妹友ちゃんの気持ちに応えられないの。ごめんね」
妹友ちゃんの精一杯の告白を受けたからにはいい加減に返事するのは失礼かもしれない。あたしはとっさに正直に自分の気持ちを披露することに決めた。
「あたしね、片思いだけど好きな人がいるの。昔からずっと好きだった人」
「それって女の子?」
妹友ちゃんは予想外の答えにぶつかったかのように困惑した様子であたしに聞き返した。
「ううん、違うよ。男の子。うちの学校の先輩なんだけど、妹友ちゃんは彼氏先輩って知ってるかな」
妹ちゃんの言葉に思わず苦笑しながらあたしは返事した。
「・・・・・・聞いたことあるよ。空手部の人でしょ? よく女の子たちが噂してるもん」
妹ちゃんは気を取り直した様子で返事した。
「そうだね。あいつ、クズのくせに人気だけはあるからな」
よく女の子たちが噂してるか・・・・・・本当に彼女の言うとおりだな。そう考えながらあたしはつぶやいた。
「あたしね、あのクズとは幼稚園の頃からずっと一緒なの」
「幼馴染ってやつ?」
「そうね。あいつは女に手が早いし女の噂が耐えないし、多分あたしなんか女の子として見てないと思うのね」
あたしは自嘲的に言った。
「でも、やっぱりあのクズのこと好きなの。だからごめん」
「うん・・・・・・」
妹友ちゃんは俯き静かに泣き出した。あたしは妹友ちゃんの肩を抱いた。
「これまでどおり友だちでいてくれる?」
あたしはそっと彼女に声をかけた。
「・・・・・・中学生の頃から」
「女の子のことしか・・・・・・」
「最初は勘違いだと思ってたんだけど」
「あたし、女の子しか好きになれないみたい」
ようやく彼女の言うことが少しづつ理解できてきた。妹友ちゃんは自分がレOビアンであることをあたしにカミングアウトしていたのだ。あたしは彼女にかける言葉を脳裏に探りながら彼女の言葉を聞いていたが、そのうち彼女はとんでもないことを言い出したのだ。
「そ、それでね。今あたしが一番気になっていて・・・・・・その、好きなのは委員長ちゃんなの」
え、あたし?
正直予想だにしなかった告白だった。冗談で済ませるならそうしたかったけど、妹友ちゃんの表情は受け流すにはあまりにも張り詰めていたものだった。あたしは、妹友ちゃんに悟られないように心の中でため息をついてから彼女に返事をした。
「心配しないで。妹友ちゃんのことを変だなんて思わないよ」
あたしは妹友ちゃんの目を間真っ直ぐに見ながら返事した。
「でも、あたしは妹友ちゃんの気持ちに応えられないの。ごめんね」
妹友ちゃんの精一杯の告白を受けたからにはいい加減に返事するのは失礼かもしれない。あたしはとっさに正直に自分の気持ちを披露することに決めた。
「あたしね、片思いだけど好きな人がいるの。昔からずっと好きだった人」
「それって女の子?」
妹友ちゃんは予想外の答えにぶつかったかのように困惑した様子であたしに聞き返した。
「ううん、違うよ。男の子。うちの学校の先輩なんだけど、妹友ちゃんは彼氏先輩って知ってるかな」
妹ちゃんの言葉に思わず苦笑しながらあたしは返事した。
「・・・・・・聞いたことあるよ。空手部の人でしょ? よく女の子たちが噂してるもん」
妹ちゃんは気を取り直した様子で返事した。
「そうだね。あいつ、クズのくせに人気だけはあるからな」
よく女の子たちが噂してるか・・・・・・本当に彼女の言うとおりだな。そう考えながらあたしはつぶやいた。
「あたしね、あのクズとは幼稚園の頃からずっと一緒なの」
「幼馴染ってやつ?」
「そうね。あいつは女に手が早いし女の噂が耐えないし、多分あたしなんか女の子として見てないと思うのね」
あたしは自嘲的に言った。
「でも、やっぱりあのクズのこと好きなの。だからごめん」
「うん・・・・・・」
妹友ちゃんは俯き静かに泣き出した。あたしは妹友ちゃんの肩を抱いた。
「これまでどおり友だちでいてくれる?」
あたしはそっと彼女に声をかけた。
640: 2012/01/09(月) 22:08:21.21 ID:8CpsmRrMo
その後もあたしは以前と変らないように妹友ちゃんと接するように心がけたし、もちろん妹友ちゃんの性的嗜好を誰かに話すなんてことはしなかった。
だけど正直に言うと同性を恋愛対象にするような嗜好はあたしには理解しかねた。ただ、妹友ちゃんも人に話せない秘密を抱えて苦しいんだろうなと考えたあたしはできるだけ今までどおりの友だち付き合いでいようと思ったのだ。
でも、妹友ちゃんは悪いことにあたしになら何でも隠し立てせずに相談できると思い込んだようで、自分の同性愛的な悩みをよくあたしに相談してくるようになった。
気持ち悪いとは言えなかったけど、正直なあたしの気持ちはそんなところだった。幼馴染のろくでもない男が好きなあたしが言っても説得力はないかもしれないけど、世の中に男と女が存在するのに何も同性を恋愛の対象とすることはないじゃんとあたしは考えていたのだ。
それで、少しづつあたしは妹友ちゃんを突き放すようになった。もっともそれは、あながち彼女の性的嗜好が理解できないからという理由からだけではなかった。
何といっていいか、あたしは妹友ちゃんからはナルシスト的な匂いを感じていたのだ。もっとわかりやくすく言えば自分勝手。彼女は常に自分の気持ちを最優先した。それは恋とか友情とかそういう次元でなくても日常の、例えば放課後の過ごし方とか昼食をどこで食べるかとかういう日常的な場面で頻繁に感じたことだった。
つまらないことかもしれない。つまらない日常的なことだからあたしは妹友ちゃんの意向を尊重して折れていたけど、それが重なるにつれあたしも少しいろいろとイライラする感情が重なってきていた。そんな時、妹友ちゃんに新しい恋愛対象の女の子ができた。
それはあたしもよく知っている同学年の女の子だった。
・・・・・・妹ちゃん。
だけど正直に言うと同性を恋愛対象にするような嗜好はあたしには理解しかねた。ただ、妹友ちゃんも人に話せない秘密を抱えて苦しいんだろうなと考えたあたしはできるだけ今までどおりの友だち付き合いでいようと思ったのだ。
でも、妹友ちゃんは悪いことにあたしになら何でも隠し立てせずに相談できると思い込んだようで、自分の同性愛的な悩みをよくあたしに相談してくるようになった。
気持ち悪いとは言えなかったけど、正直なあたしの気持ちはそんなところだった。幼馴染のろくでもない男が好きなあたしが言っても説得力はないかもしれないけど、世の中に男と女が存在するのに何も同性を恋愛の対象とすることはないじゃんとあたしは考えていたのだ。
それで、少しづつあたしは妹友ちゃんを突き放すようになった。もっともそれは、あながち彼女の性的嗜好が理解できないからという理由からだけではなかった。
何といっていいか、あたしは妹友ちゃんからはナルシスト的な匂いを感じていたのだ。もっとわかりやくすく言えば自分勝手。彼女は常に自分の気持ちを最優先した。それは恋とか友情とかそういう次元でなくても日常の、例えば放課後の過ごし方とか昼食をどこで食べるかとかういう日常的な場面で頻繁に感じたことだった。
つまらないことかもしれない。つまらない日常的なことだからあたしは妹友ちゃんの意向を尊重して折れていたけど、それが重なるにつれあたしも少しいろいろとイライラする感情が重なってきていた。そんな時、妹友ちゃんに新しい恋愛対象の女の子ができた。
それはあたしもよく知っている同学年の女の子だった。
・・・・・・妹ちゃん。
647: 2012/01/09(月) 23:33:18.14 ID:8CpsmRrMo
その頃、妹ちゃんは同学年の見た目が華やかな女の子たちのグループから声がかかっていたみたいだった。あまり成績のいい子はいないけど、同級生の男の子たちからはよく声がかかるような子たち。でも、彼女たちはよほどイケメンと評判な同学年の男の子は別として、もっと遊び慣れている上級生の男たちとカラオケに行ったりゲーセンに行ったりしていた。
そんなグループから妹ちゃんは声を掛けられたのだった。
そしてそんなグループの中にいるのにはひどく違和感があったのに、普段からその子たちと一緒に行動していたのが妹ちゃんだった。
あたしは同じクラスだった妹ちゃんとは既に知り合いだったけど、それほど親しいというわけでもなかった。何せその頃のあたしは妹友ちゃんとべったり一緒に過ごしていたのだから。
でも、時たま妹ちゃんと話すこともあってその度にあたしはこの子は何を考えているんだろうと不思議に思っていた。
妹友ちゃんと同じく妹ちゃんも男の子の話は全くといっていいほどしなかった。そんな彼女が何であんな男の子と遊びまわっているグループの子たちと一緒に行動しているのかあたしには不思議だった。妹ちゃんは好きな男の話はしないけど、かといって彼女は妹友ちゃんのように同性を恋愛対象にしている様子もなく、また幼すぎて恋愛を意識していないようにも思えなかった。
なぜかと言えば、妹ちゃんはすごく大人びた雰囲気を醸し出していたのだ。あたしも同世代の女の子よりよほど大人の考えを持っているつもりだったけど、それでも妹ちゃんと話し込むと彼女がいかにしっかりと自分を見つめていて、固い意志を持っているのかを思い知らされた。
それはグループの子たちも感じていたようで、彼女たちの判断基準である男の子と付き合った経験が全くないらしい妹ちゃんにはすごく遠慮して気を遣っているようだった。何か不思議に人を引きつける、大げさに言えばミステリアスな雰囲気の女の子。それがあたしが当時妹ちゃんに抱いていた印象だった。
そんな彼女だけど、唯一楽しそうにリラックスして話してくれる話題は彼女のお兄さんの話だった。妹ちゃんが語るお兄さんは頭はいいけどオタク、もっと言えばキモヲタそのものだった。
大学に入ってからも両親が留守がちな妹ちゃんの実家を省みず、部屋に篭って何やらひどく時間のかかるゲームに熱中しているらしい。
妹ちゃんが繰り返しお兄さんの話ばかりするせいで、次第に周囲の子たちは面白がって妹ちゃんのことをブラコンと呼び始めた。妹ちゃんは顔を赤くすることもなく、静かにそうじゃないよと反論してたけど。
でも。あたしには、なんとなく妹ちゃんはお兄さんのことを本気で男性として好きなんじゃないかという気持ちが沸き起こっていた。世間的にはマイノリティだけど、妹友ちゃんの同性愛じゃないけど、あたしたちの身の回りにそういうことが全くないとは言えないし。
何より、お兄さんの話をする妹ちゃんの幸せそうな表情があたしの脳裏に住み着いてしまった。それは世間的には不幸な恋かもしれないけど、あたしも実ることがない想いを抱えていたせいか妹ちゃんに素直に共感できたのだ。もちろん、このことは妹ちゃん本人にも誰にも話さなかったけど。
あたしは妹ちゃんの話すお兄さんのエピソードを聞くのが楽しみだった。別にお兄さん本人には興味はないけど謎が多い妹ちゃんの本心の一部がお兄さんの話を通して少しだけ理解できるような気がしたから。
そんな時、あたしは再び妹友ちゃんに屋上に呼び出されたのだった。
そんなグループから妹ちゃんは声を掛けられたのだった。
そしてそんなグループの中にいるのにはひどく違和感があったのに、普段からその子たちと一緒に行動していたのが妹ちゃんだった。
あたしは同じクラスだった妹ちゃんとは既に知り合いだったけど、それほど親しいというわけでもなかった。何せその頃のあたしは妹友ちゃんとべったり一緒に過ごしていたのだから。
でも、時たま妹ちゃんと話すこともあってその度にあたしはこの子は何を考えているんだろうと不思議に思っていた。
妹友ちゃんと同じく妹ちゃんも男の子の話は全くといっていいほどしなかった。そんな彼女が何であんな男の子と遊びまわっているグループの子たちと一緒に行動しているのかあたしには不思議だった。妹ちゃんは好きな男の話はしないけど、かといって彼女は妹友ちゃんのように同性を恋愛対象にしている様子もなく、また幼すぎて恋愛を意識していないようにも思えなかった。
なぜかと言えば、妹ちゃんはすごく大人びた雰囲気を醸し出していたのだ。あたしも同世代の女の子よりよほど大人の考えを持っているつもりだったけど、それでも妹ちゃんと話し込むと彼女がいかにしっかりと自分を見つめていて、固い意志を持っているのかを思い知らされた。
それはグループの子たちも感じていたようで、彼女たちの判断基準である男の子と付き合った経験が全くないらしい妹ちゃんにはすごく遠慮して気を遣っているようだった。何か不思議に人を引きつける、大げさに言えばミステリアスな雰囲気の女の子。それがあたしが当時妹ちゃんに抱いていた印象だった。
そんな彼女だけど、唯一楽しそうにリラックスして話してくれる話題は彼女のお兄さんの話だった。妹ちゃんが語るお兄さんは頭はいいけどオタク、もっと言えばキモヲタそのものだった。
大学に入ってからも両親が留守がちな妹ちゃんの実家を省みず、部屋に篭って何やらひどく時間のかかるゲームに熱中しているらしい。
妹ちゃんが繰り返しお兄さんの話ばかりするせいで、次第に周囲の子たちは面白がって妹ちゃんのことをブラコンと呼び始めた。妹ちゃんは顔を赤くすることもなく、静かにそうじゃないよと反論してたけど。
でも。あたしには、なんとなく妹ちゃんはお兄さんのことを本気で男性として好きなんじゃないかという気持ちが沸き起こっていた。世間的にはマイノリティだけど、妹友ちゃんの同性愛じゃないけど、あたしたちの身の回りにそういうことが全くないとは言えないし。
何より、お兄さんの話をする妹ちゃんの幸せそうな表情があたしの脳裏に住み着いてしまった。それは世間的には不幸な恋かもしれないけど、あたしも実ることがない想いを抱えていたせいか妹ちゃんに素直に共感できたのだ。もちろん、このことは妹ちゃん本人にも誰にも話さなかったけど。
あたしは妹ちゃんの話すお兄さんのエピソードを聞くのが楽しみだった。別にお兄さん本人には興味はないけど謎が多い妹ちゃんの本心の一部がお兄さんの話を通して少しだけ理解できるような気がしたから。
そんな時、あたしは再び妹友ちゃんに屋上に呼び出されたのだった。
648: 2012/01/09(月) 23:36:03.92 ID:8CpsmRrMo
再び妹友ちゃん呼び出されたあたしは少し困惑しながら、屋上に赴いた。その頃、あたしはあまり妹友ちゃんと一緒に過ごさないようになっていた。あたしは妹友ちゃんが最近付き合っているグループとは相性がよくなかった。でも妹友ちゃんが最近グループの子たちの中でも妹ちゃんとよく一緒にいるみたいだということは見知っていた。
あたしはその頃一年生ながら生徒会の書記を努めていたし、むしろ難しい性格の妹友ちゃんから距離を置こうとしていたのであまり気にしたことはなかった。
あたしは久しぶりに二人きりで会った妹友ちゃんの再度の告白を聞いて、それまで感じていた困惑が吹き飛ぶほど笑い出してしまった。
「全く健気だね、妹友ちゃんは」
笑いすぎて出てきた涙を拭きながらあたしは言った。
「少し考えすぎじゃない? 妹ちゃんと友だちでいたいだけなら何もわざわざ好きな男なんてでっち上げる必要ないじゃん」
「あたし、妹ちゃんに少しでも変な子だって思われたくないの。周りのみんなが好きな男の子の話してるのに、あたしだけこれじゃ、レ、レOビアンだって思われるかもしれないし」
妹ちゃんはあたしに笑われたのがいかにも心外だという表情を見せた。
・・・・・・思われるかもってあんた実際にレOじゃん。あたしはそう思ったけどそれを口にしないだけの理性は保っていた。
「だいたいさ、妹ちゃん自身が男の子の話なんてしないじゃん」
「それはそうだけど・・・・・・」
「まあ、妹ちゃんもある意味あんたと同じマイノリティなのかもしれないね」
あたしは少し余計なことを話してしまったが、妹友ちゃんはその意味を誤解したようだった。
「もしかして、妹ちゃんも」
「違うよ」
あたしははっきり否定した。変な思い込みは妹友ちゃんを不幸にしかねない。
「妹ちゃんはレOじゃないと思うな」
「そ、そう」
妹友ちゃんは傍目にも明らかなほどがっかりしたようだった。いったいこの子は何を期待したんだろう。
「それで妹友ちゃん、いったい誰を好きなことにしたいの」
あたしは妹ちゃんのことにはそれ以上触れずに妹友ちゃんに質問した。
「彼氏先輩」
妹友ちゃんは思いつめた顔で口にした。
あたしはその頃一年生ながら生徒会の書記を努めていたし、むしろ難しい性格の妹友ちゃんから距離を置こうとしていたのであまり気にしたことはなかった。
あたしは久しぶりに二人きりで会った妹友ちゃんの再度の告白を聞いて、それまで感じていた困惑が吹き飛ぶほど笑い出してしまった。
「全く健気だね、妹友ちゃんは」
笑いすぎて出てきた涙を拭きながらあたしは言った。
「少し考えすぎじゃない? 妹ちゃんと友だちでいたいだけなら何もわざわざ好きな男なんてでっち上げる必要ないじゃん」
「あたし、妹ちゃんに少しでも変な子だって思われたくないの。周りのみんなが好きな男の子の話してるのに、あたしだけこれじゃ、レ、レOビアンだって思われるかもしれないし」
妹ちゃんはあたしに笑われたのがいかにも心外だという表情を見せた。
・・・・・・思われるかもってあんた実際にレOじゃん。あたしはそう思ったけどそれを口にしないだけの理性は保っていた。
「だいたいさ、妹ちゃん自身が男の子の話なんてしないじゃん」
「それはそうだけど・・・・・・」
「まあ、妹ちゃんもある意味あんたと同じマイノリティなのかもしれないね」
あたしは少し余計なことを話してしまったが、妹友ちゃんはその意味を誤解したようだった。
「もしかして、妹ちゃんも」
「違うよ」
あたしははっきり否定した。変な思い込みは妹友ちゃんを不幸にしかねない。
「妹ちゃんはレOじゃないと思うな」
「そ、そう」
妹友ちゃんは傍目にも明らかなほどがっかりしたようだった。いったいこの子は何を期待したんだろう。
「それで妹友ちゃん、いったい誰を好きなことにしたいの」
あたしは妹ちゃんのことにはそれ以上触れずに妹友ちゃんに質問した。
「彼氏先輩」
妹友ちゃんは思いつめた顔で口にした。
649: 2012/01/09(月) 23:38:09.03 ID:8CpsmRrMo
「え?」
あたしは一瞬血の気が引くような感覚に囚われた。まさか、レOのこの子が。まさか、あいつのことを?
「妹友ちゃん、あんたまさかあのクズのことを」
自分でも余裕のない声だったと思う。
「違うよ。校内で一番人気のある人を好きなことにした方がいいでしょ」
妹ちゃんは既に落ち着きを取り戻したみたいだった。
「何でよ?」
あたしは妹友ちゃんを睨みつけた。
「あの、別に自慢じゃないんだよ? でもね、この噂が広がるとあたしが好きだってことになってる男の人があたしのこと気になるかもしれないし」
「・・・・・・それで?」
「それでね、その人に彼女とかいたら、その子に悪いでしょ」
「はぁ。あんたそれって自分が誰よりももてるって言ったのと同じだよ」
一気に怒りのボルテージが下がり、あたしはむしろそこまで自分に自信のある妹友ちゃんに飽きれていた。
「でもまあ、そうかもね。あんた妹ちゃんと一緒で可愛いし」
「可愛いなんてそんな」
どういうわけか妹友ちゃんは顔を赤くした。
「そこで顔を赤くなるとこも可愛いわ。あたしが男なら放っておかないレベル・・・・・・でも、だからって何であのクズになるの?」
そこは確認しておかなければいけないポイントだった。
「それはね。先輩もてるし1年生の女の子が自分を好きらしいって噂だけで行動したりしないでしょ?」
「どうかなあ」
あたしは考え込んだ。
「意外とあいつまめだしなあ。それにあいつだって、妹友ちゃんとか妹ちゃんくらいレベル高い子と付き合ったことないだろうし」
「そ、そうなの」
レベルが高いと言われたせいか妹友ちゃんは再び顔を赤くした。
「あいつが本気にならなきゃいいけどね。でもまあ、話はわかったよ」
この子が妹ちゃんを自分に繋ぎとめるためにこんなことまでするのはやり過ぎだと思ったけど、まあ彼女がここまで思い込んでいるなら止めるのも大変そうだった。
でも、一言だけ釘を刺しておこうか。
「でも」
「え?」
「妹ちゃんとは親友でいるだけにしといた方がいいよ」
「同性愛とか関係なく、妹ちゃんはいろいろ難しいと思うなあ」
あたしは一瞬血の気が引くような感覚に囚われた。まさか、レOのこの子が。まさか、あいつのことを?
「妹友ちゃん、あんたまさかあのクズのことを」
自分でも余裕のない声だったと思う。
「違うよ。校内で一番人気のある人を好きなことにした方がいいでしょ」
妹ちゃんは既に落ち着きを取り戻したみたいだった。
「何でよ?」
あたしは妹友ちゃんを睨みつけた。
「あの、別に自慢じゃないんだよ? でもね、この噂が広がるとあたしが好きだってことになってる男の人があたしのこと気になるかもしれないし」
「・・・・・・それで?」
「それでね、その人に彼女とかいたら、その子に悪いでしょ」
「はぁ。あんたそれって自分が誰よりももてるって言ったのと同じだよ」
一気に怒りのボルテージが下がり、あたしはむしろそこまで自分に自信のある妹友ちゃんに飽きれていた。
「でもまあ、そうかもね。あんた妹ちゃんと一緒で可愛いし」
「可愛いなんてそんな」
どういうわけか妹友ちゃんは顔を赤くした。
「そこで顔を赤くなるとこも可愛いわ。あたしが男なら放っておかないレベル・・・・・・でも、だからって何であのクズになるの?」
そこは確認しておかなければいけないポイントだった。
「それはね。先輩もてるし1年生の女の子が自分を好きらしいって噂だけで行動したりしないでしょ?」
「どうかなあ」
あたしは考え込んだ。
「意外とあいつまめだしなあ。それにあいつだって、妹友ちゃんとか妹ちゃんくらいレベル高い子と付き合ったことないだろうし」
「そ、そうなの」
レベルが高いと言われたせいか妹友ちゃんは再び顔を赤くした。
「あいつが本気にならなきゃいいけどね。でもまあ、話はわかったよ」
この子が妹ちゃんを自分に繋ぎとめるためにこんなことまでするのはやり過ぎだと思ったけど、まあ彼女がここまで思い込んでいるなら止めるのも大変そうだった。
でも、一言だけ釘を刺しておこうか。
「でも」
「え?」
「妹ちゃんとは親友でいるだけにしといた方がいいよ」
「同性愛とか関係なく、妹ちゃんはいろいろ難しいと思うなあ」
650: 2012/01/09(月) 23:41:28.60 ID:8CpsmRrMo
妹友ちゃんが彼氏先輩に片思いしているという噂はすぐに校内に広がった。多分同じグループの子たちがあちこちで言い触らしているのだろう。
妹友ちゃんと妹ちゃんの仲がその後どうなったのかなんてあたしには全く情報が入ってこなかったし、あたし実はそれほど気にはしていなかった。
多分妹ちゃんは自分のお兄さんに恋をしているんだろう。それも周囲の子たちが妹ちゃんをブラコンだってはやし立てている意味以上の意味で。
あたしはそのことを誰にも話さなかったし、それほどの興味も関心もなかった。
ただ、妹友ちゃんの恋は一方通行なんだろうなって少し気の毒な感じは抱いていた。あたしに恋をし次に妹ちゃんに恋した。
・・・・・・そして、あたしの恋も妹友ちゃんの恋も妹ちゃんの恋もおそらく実ることはないだろう。
あたしたちは3人とも実ることのない想いを抱えていたのだった。でも。あたしは単に相手に意識してもらえないだけだ。
ところがあたしとは異なり妹友ちゃんも妹もある意味マイノリティなのだった。
決して他人には話すことができない恋。目くそ鼻くそを笑うとはこのことだ。実らないという意味ではあたしも彼女たちと同じなのに。
そんな時、あたしがすごくショックを受けた出来事が起こった。
あいつは昔から複数の彼女とよろしくやっていたけど、その頃から今まで以上にあいつに振られた女の子たちの噂があちこちから聞こえてくるようになった。
いったいどういう心境の変化だろう? 正直に言うとあたしには少し期待する気持ちがあった。別にあたしのことを思い出したんじゃなくてもいい。
あいつが受験を意識したり複数の女の子と付き合う意味のなさを意識し出したんならそれでいい。あたしはそう思ったのだ。だけど、あいつにはそんな気持ちは全くなかったようだ。
あたしにとって最悪なことに。
噂どおり複数の女の子たちとの仲を清算したあいつは、妹ちゃんに告白したのだ。
妹友ちゃんと妹ちゃんの仲がその後どうなったのかなんてあたしには全く情報が入ってこなかったし、あたし実はそれほど気にはしていなかった。
多分妹ちゃんは自分のお兄さんに恋をしているんだろう。それも周囲の子たちが妹ちゃんをブラコンだってはやし立てている意味以上の意味で。
あたしはそのことを誰にも話さなかったし、それほどの興味も関心もなかった。
ただ、妹友ちゃんの恋は一方通行なんだろうなって少し気の毒な感じは抱いていた。あたしに恋をし次に妹ちゃんに恋した。
・・・・・・そして、あたしの恋も妹友ちゃんの恋も妹ちゃんの恋もおそらく実ることはないだろう。
あたしたちは3人とも実ることのない想いを抱えていたのだった。でも。あたしは単に相手に意識してもらえないだけだ。
ところがあたしとは異なり妹友ちゃんも妹もある意味マイノリティなのだった。
決して他人には話すことができない恋。目くそ鼻くそを笑うとはこのことだ。実らないという意味ではあたしも彼女たちと同じなのに。
そんな時、あたしがすごくショックを受けた出来事が起こった。
あいつは昔から複数の彼女とよろしくやっていたけど、その頃から今まで以上にあいつに振られた女の子たちの噂があちこちから聞こえてくるようになった。
いったいどういう心境の変化だろう? 正直に言うとあたしには少し期待する気持ちがあった。別にあたしのことを思い出したんじゃなくてもいい。
あいつが受験を意識したり複数の女の子と付き合う意味のなさを意識し出したんならそれでいい。あたしはそう思ったのだ。だけど、あいつにはそんな気持ちは全くなかったようだ。
あたしにとって最悪なことに。
噂どおり複数の女の子たちとの仲を清算したあいつは、妹ちゃんに告白したのだ。
657: 2012/01/10(火) 00:11:56.20 ID:TszowrXeo
>>656
だから、>>651ですって
無理なく回収できるようならしますけど、あまり期待しないでね
だから、>>651ですって
無理なく回収できるようならしますけど、あまり期待しないでね
661: 2012/01/10(火) 22:16:16.40 ID:TszowrXeo
あいつが妹ちゃんに告白し、妹ちゃんもそれを受け入れたことを教えてくれたのは妹友ちゃんだった。
正直に言うと、これまであたしはあいつの彼女に今まで本気で嫉妬心を抱いたことがなかった。自分の恋を実らない恋だと考えてはいたけれど、今まであいつが付き合った子たちには負けている気はしなかったから。
あいつはあたしのことを女として見ていない。昔からそうだったしこれからもそうだろう。でもあいつが付き合ってきた女の子は今までは派手だけど頭の悪そうな子ばかりだった。
その相手が妹ちゃんだとすると事態は全くこれまでと変ってしまう。今までのあいつのお相手と違って妹ちゃんは可愛いだけでなく自分をしっかりと持っている女の子だった。成績は学年で真ん中くらいなのでその点だけはあたしも負けていなかったけど、妹ちゃんが本気で勉強に集中したらその優位すら危うい。
そう、全ての点においてあたしは妹ちゃんに勝てるところがなかったのだ。
これまであたしがあいつに片思いをしながらも平静でいられたのは、あいつの相手を見下せたからだった。あいつはあたしのようなこんなにいい女が長年身近にいたというのにそのことに気がつかない大馬鹿だ。あたしは自分の心の中でいつもそう呟いて自分の心のバランスを取っていた。その相手が妹ちゃんになるともう自分に言い訳すらできなくなってしまう。
どうしよう。あたしはみっともないくらいうろたえていたけど、そのことを妹友ちゃんには見せたくなかった。ここに至ってもまだあたしは、活発で積極的でいつも冷静な生徒会役員というイメージを壊したくなかったのだ。
「心配してくれてありがとね」
あたしは、あたしの片思いを知っている唯一の女の子にお礼を言いその後に相当無理をして強がって見せた。
「でも、あたしこういうの慣れてるから。あいつが女を変えるたびに一々気にしてたら体が持たないよ」
あたしは妹友ちゃんににっこりと笑って見せることまでしたのだ。
正直に言うと、これまであたしはあいつの彼女に今まで本気で嫉妬心を抱いたことがなかった。自分の恋を実らない恋だと考えてはいたけれど、今まであいつが付き合った子たちには負けている気はしなかったから。
あいつはあたしのことを女として見ていない。昔からそうだったしこれからもそうだろう。でもあいつが付き合ってきた女の子は今までは派手だけど頭の悪そうな子ばかりだった。
その相手が妹ちゃんだとすると事態は全くこれまでと変ってしまう。今までのあいつのお相手と違って妹ちゃんは可愛いだけでなく自分をしっかりと持っている女の子だった。成績は学年で真ん中くらいなのでその点だけはあたしも負けていなかったけど、妹ちゃんが本気で勉強に集中したらその優位すら危うい。
そう、全ての点においてあたしは妹ちゃんに勝てるところがなかったのだ。
これまであたしがあいつに片思いをしながらも平静でいられたのは、あいつの相手を見下せたからだった。あいつはあたしのようなこんなにいい女が長年身近にいたというのにそのことに気がつかない大馬鹿だ。あたしは自分の心の中でいつもそう呟いて自分の心のバランスを取っていた。その相手が妹ちゃんになるともう自分に言い訳すらできなくなってしまう。
どうしよう。あたしはみっともないくらいうろたえていたけど、そのことを妹友ちゃんには見せたくなかった。ここに至ってもまだあたしは、活発で積極的でいつも冷静な生徒会役員というイメージを壊したくなかったのだ。
「心配してくれてありがとね」
あたしは、あたしの片思いを知っている唯一の女の子にお礼を言いその後に相当無理をして強がって見せた。
「でも、あたしこういうの慣れてるから。あいつが女を変えるたびに一々気にしてたら体が持たないよ」
あたしは妹友ちゃんににっこりと笑って見せることまでしたのだ。
662: 2012/01/10(火) 22:17:14.47 ID:TszowrXeo
その時、あたしはふと妹友ちゃんも好きな子を失ったということに気がついた。自分の心のざわめきで精一杯だったとは言え、妹友ちゃんはあんなにも恋焦がれていた妹ちゃんを失ったのだ。
そのわりには妹ちゃんの表情からはそれほど暗い感じが見受けられなかった。考えてみれば自分の好きな子が男と付き合い出したというのにそれをわざわざあたしに報告してくれることすらおかしい。妹友ちゃんはあたしがあいつに長い片思いをしていることを知っていたけど、彼女は自分が落ち込んでいる時に人の恋まで気にするようなタイプではない。
前にも感じたことだけど妹友ちゃんは基本的には自分中心な性格をしている。その彼女がこんな時にあたしのことを気にしてくれるはずがないのだ。
あたしはそのことに少し驚き、おかげで妹ちゃんとあいつが付き合い出したことへの悩ましさを一瞬忘れることができた。
「あたしなんかより妹友ちゃんの方が辛いでしょ? こんな時にあたしのことなんか気にしてくれてごめんね?」
あたしは妹ちゃんに言った。
「ううん。委員長ちゃんはお友だちだし。それに・・・・・・」
妹友ちゃんは声をひそめた。
「あたしの恋なんて女同士だし初めから妹ちゃんに受け入れてもらえるなんて思ってなかったから」
そう話す妹友ちゃんは表情にはあまり思い悩んでいる様子はなさそうだった。
「妹ちゃんね、あまり先輩と二人で一緒にいないくてこれまでどおりあたしと一緒にいてくれるし。むしろ前より親密になったみたい」
「あ、そうか。妹ちゃんは妹友ちゃんから男を奪ったって思い込んでるのか」
あたしはようやくそのことに気が付いた。
「うん。妹ちゃんに怪しまれないように好きな男の人がいる振りをしてただけなのにね」
妹友ちゃんは複雑な笑みを浮かべて言った。
その時、何か小さな違和感があたしの中で浮かんだ。
そのわりには妹ちゃんの表情からはそれほど暗い感じが見受けられなかった。考えてみれば自分の好きな子が男と付き合い出したというのにそれをわざわざあたしに報告してくれることすらおかしい。妹友ちゃんはあたしがあいつに長い片思いをしていることを知っていたけど、彼女は自分が落ち込んでいる時に人の恋まで気にするようなタイプではない。
前にも感じたことだけど妹友ちゃんは基本的には自分中心な性格をしている。その彼女がこんな時にあたしのことを気にしてくれるはずがないのだ。
あたしはそのことに少し驚き、おかげで妹ちゃんとあいつが付き合い出したことへの悩ましさを一瞬忘れることができた。
「あたしなんかより妹友ちゃんの方が辛いでしょ? こんな時にあたしのことなんか気にしてくれてごめんね?」
あたしは妹ちゃんに言った。
「ううん。委員長ちゃんはお友だちだし。それに・・・・・・」
妹友ちゃんは声をひそめた。
「あたしの恋なんて女同士だし初めから妹ちゃんに受け入れてもらえるなんて思ってなかったから」
そう話す妹友ちゃんは表情にはあまり思い悩んでいる様子はなさそうだった。
「妹ちゃんね、あまり先輩と二人で一緒にいないくてこれまでどおりあたしと一緒にいてくれるし。むしろ前より親密になったみたい」
「あ、そうか。妹ちゃんは妹友ちゃんから男を奪ったって思い込んでるのか」
あたしはようやくそのことに気が付いた。
「うん。妹ちゃんに怪しまれないように好きな男の人がいる振りをしてただけなのにね」
妹友ちゃんは複雑な笑みを浮かべて言った。
その時、何か小さな違和感があたしの中で浮かんだ。
663: 2012/01/10(火) 22:18:24.26 ID:TszowrXeo
あたしが妹ちゃんを見ていて気が付いたこと。これは間違っていないと思うんだけど妹ちゃんは実のお兄さんに恋愛感情を抱いているはずだった。
多分それは間違っていないはずだ。
なのに、なぜ妹ちゃんはあいつの告白を受け入れたのだろう。
自分に関心がないお兄さんへのあてつけ? お兄さんに嫉妬させ自分に振り向かせる手段として?
いや、違うだろう。妹ちゃんの話によればお兄さんとはほとんど会話がないはずだった。しかもお兄さんは妹の私生活に全く関心がないはずだった。
これまでの妹ちゃんの話を信じるとすれば、仮に妹ちゃんが自分が学校で先輩と付き合うことになったとお兄さんに話したとしても、お兄さんが妹ちゃんの付き合いにさほど関心を示すとも思えなかった。
ここまで考えると消去法で一つの考えだけがあたしの脳裏に浮かんできた。しばらくはそんなことはないと否定してみたけど考えれば考えるほどそれが真実ではないかという気がした。
そして妹友ちゃんがあまり動揺していないのは、妹ちゃんと過ごす時間が妹ちゃんとあいつと付き合ってからも減らなかったということだけではなく、妹友ちゃんが本能的にこの事実に気が付いているからではないか。
妹ちゃんは、報われない恋を清算しようとしている。そのためにそれほど好きでもないあいつと付き合うことを選んだのだ。
多分それは間違っていないはずだ。
なのに、なぜ妹ちゃんはあいつの告白を受け入れたのだろう。
自分に関心がないお兄さんへのあてつけ? お兄さんに嫉妬させ自分に振り向かせる手段として?
いや、違うだろう。妹ちゃんの話によればお兄さんとはほとんど会話がないはずだった。しかもお兄さんは妹の私生活に全く関心がないはずだった。
これまでの妹ちゃんの話を信じるとすれば、仮に妹ちゃんが自分が学校で先輩と付き合うことになったとお兄さんに話したとしても、お兄さんが妹ちゃんの付き合いにさほど関心を示すとも思えなかった。
ここまで考えると消去法で一つの考えだけがあたしの脳裏に浮かんできた。しばらくはそんなことはないと否定してみたけど考えれば考えるほどそれが真実ではないかという気がした。
そして妹友ちゃんがあまり動揺していないのは、妹ちゃんと過ごす時間が妹ちゃんとあいつと付き合ってからも減らなかったということだけではなく、妹友ちゃんが本能的にこの事実に気が付いているからではないか。
妹ちゃんは、報われない恋を清算しようとしている。そのためにそれほど好きでもないあいつと付き合うことを選んだのだ。
664: 2012/01/10(火) 22:19:01.21 ID:TszowrXeo
・・・・・・それに気が付いた時、あたしはまず妹ちゃんに対する怒りがこみあげてきた。あたしの大切なあいつのことを好きでもないくせに自分の心を整理するために利用しようとしている妹ちゃん。
でもその怒りは長く続かなかった。恋多き妹友ちゃんと違っておそらく妹ちゃんは長い間お兄さんのことを思い続けてきたのだ。
それはあたしと全く同じだった。その長い片思いを清算しようとしている妹ちゃんを恨む気にはなれなかった。
あたしは思わず呟いていた。
「妹ちゃんもかわいそうだよね。妹友ちゃんと一緒で」
それから校内で妹ちゃんと手を繋いだあいつの姿を見かけることになったけど、その頻度はそれほど高くはなかった。これまでのあいつの彼女とは違って妹ちゃんはあいつのことを最優先することはなく、むしろ妹友ちゃんと一緒にいる時間の方を優先したようだった。
あたしは妹ちゃんを憎みたくても憎めなかった。あたしの大好きな片思いのあいつを利用している妹ちゃん。
でも、妹ちゃんと同じく長い片思いを続けてきたあたしには妹ちゃんの辛い気持ちもよくわかった。
そして月日が流れ学園祭当日。生徒会の書記だったあたしは学園祭の実行委員長も押し付けられていた。
でもその怒りは長く続かなかった。恋多き妹友ちゃんと違っておそらく妹ちゃんは長い間お兄さんのことを思い続けてきたのだ。
それはあたしと全く同じだった。その長い片思いを清算しようとしている妹ちゃんを恨む気にはなれなかった。
あたしは思わず呟いていた。
「妹ちゃんもかわいそうだよね。妹友ちゃんと一緒で」
それから校内で妹ちゃんと手を繋いだあいつの姿を見かけることになったけど、その頻度はそれほど高くはなかった。これまでのあいつの彼女とは違って妹ちゃんはあいつのことを最優先することはなく、むしろ妹友ちゃんと一緒にいる時間の方を優先したようだった。
あたしは妹ちゃんを憎みたくても憎めなかった。あたしの大好きな片思いのあいつを利用している妹ちゃん。
でも、妹ちゃんと同じく長い片思いを続けてきたあたしには妹ちゃんの辛い気持ちもよくわかった。
そして月日が流れ学園祭当日。生徒会の書記だったあたしは学園祭の実行委員長も押し付けられていた。
665: 2012/01/10(火) 22:39:35.06 ID:TszowrXeo
その日あたしは学園祭で生じた細々としたトラブルを処理するのに疲れ、少し休憩しようと調理部のケーキ目当てに調理部が出店している喫茶店に入ったところで、窓際の席で座っているあいつと妹ちゃんに気が付いた。
あたしは迷わずその席に割り込んだ。あいつは邪魔するなと言わんばかりの態度だったけど、妹ちゃんは喜んであたしを受け入れてくれた。
その妹ちゃんの態度を見る限りやはり妹ちゃんがあいつに惚れているようには見えなかった。あたしたちは少し世間話をした。
本当に他意はなかったのだけれど、その時ふと気が付いてあたしは妹ちゃんに尋ねてみた。
「今日は妹ちゃんの大好きなお兄ちゃんは来てくれないの?」
「・・・・・・来てると思うよ」
妹ちゃんは軽い口調で答えた。彼女のお兄さんが学園祭に来てると知って、あいつがすこし慌てたのがわかった。
「せっかく大切なお兄さんが来てるのに、案内とかしないの?」
あたしは少し妹ちゃんを試してみた。すると帰ってきた答えは意外なものだった。
「・・・・・・うん。妹友ちゃんが案内してくれるって言ってたから」
妹ちゃんはポツリと言った。
「・・・・・・あんた、それでいいの? いつもは少しでもお兄ちゃんと一緒にいたいオーラを出してるのに」
あたしはざわめく感情を鎮めえようと努めながら聞いた。
「お兄ちゃんには会いたいけど、妹友ちゃんの邪魔は出来ないし」
妹ちゃんが答える。
「え? 何々。妹友ちゃんって妹ちゃんのお兄さんのこと好きなの?」
「多分、そうじゃないかな。あ、妹友ちゃんにはこの話は内緒だよ」
そんな訳がない。妹友ちゃんが好きなのはあんたなんだから。あたしは危うく妹友ちゃんの秘密を口にしてしまいそうになった。
あたしは迷わずその席に割り込んだ。あいつは邪魔するなと言わんばかりの態度だったけど、妹ちゃんは喜んであたしを受け入れてくれた。
その妹ちゃんの態度を見る限りやはり妹ちゃんがあいつに惚れているようには見えなかった。あたしたちは少し世間話をした。
本当に他意はなかったのだけれど、その時ふと気が付いてあたしは妹ちゃんに尋ねてみた。
「今日は妹ちゃんの大好きなお兄ちゃんは来てくれないの?」
「・・・・・・来てると思うよ」
妹ちゃんは軽い口調で答えた。彼女のお兄さんが学園祭に来てると知って、あいつがすこし慌てたのがわかった。
「せっかく大切なお兄さんが来てるのに、案内とかしないの?」
あたしは少し妹ちゃんを試してみた。すると帰ってきた答えは意外なものだった。
「・・・・・・うん。妹友ちゃんが案内してくれるって言ってたから」
妹ちゃんはポツリと言った。
「・・・・・・あんた、それでいいの? いつもは少しでもお兄ちゃんと一緒にいたいオーラを出してるのに」
あたしはざわめく感情を鎮めえようと努めながら聞いた。
「お兄ちゃんには会いたいけど、妹友ちゃんの邪魔は出来ないし」
妹ちゃんが答える。
「え? 何々。妹友ちゃんって妹ちゃんのお兄さんのこと好きなの?」
「多分、そうじゃないかな。あ、妹友ちゃんにはこの話は内緒だよ」
そんな訳がない。妹友ちゃんが好きなのはあんたなんだから。あたしは危うく妹友ちゃんの秘密を口にしてしまいそうになった。
666: 2012/01/10(火) 22:53:03.65 ID:TszowrXeo
・・・・・・妹友ちゃんは妹ちゃんの本当の気持ちに気が付いていたのだ。だから妹ちゃんとこいつが付き合いだしてもさほど動揺しなかったのだ。
そして妹友ちゃんは再び行動に出た。おそらく妹友ちゃんはお兄さんには全く恋愛感情はないのだろう。妹友ちゃんの目的は自分がお兄さんの彼女になることにより妹ちゃんとお兄さんとの関係の進展を阻止することに違いない。
あたしは本当にいらいらしていた。妹友ちゃんのこれまでの自分勝手な相手の感情を配慮しない行動が次々に心の中に浮かんできた。理性的判断ではなかったかもしれない。気がつかない振りをして見過ごせばいいのかもしれない。
正直に言えばそれよりもあたしが恐れたのは妹友ちゃんとお兄さんが付き合い出したら、妹ちゃんは本当にお兄さんのことを忘れるように努めるだろうということだった。
そしてそれはこいつと妹ちゃんの仲が本当の意味で固まるということを意味する。あたしにはそれが怖かった。
もし妹ちゃんとお兄さんが相思相愛になれば妹ちゃんに振られることになるこいつを、このあたしが慰め、そしてこれまで喧嘩ばかりしていた幼馴染以上の関係になれるかもしれない。そういう意味では妹友ちゃんの行動はある意味あたしにとってチャンスなのだった。そしてそういうことに気が付いていないだろう妹ちゃんにとってもチャンスだった。
ただ、それを仕掛けることができるのは関係者の中で唯一全容を把握できたあたしだけだった。
あたしは妹ちゃんにお兄さんのエピソードを聞かせてくれるようにせがんだ。本当にそんなことを聞きたかったわけでもなければ、あいつに嫌がらせをしたかったのでもない。
妹ちゃんのお兄さんへの感情を再確認したかったのだ。
妹ちゃんのまるで彼氏の惚気のようなお兄さんの話を聞きながら、あたしには一つの考えだけを頭の中で追求していた。
それはあたしと妹ちゃんの恋の両方を同時に救う方法はないものかということだった。その考えの中に妹友ちゃんが救われる道はないことは承知の上だった。
そして妹友ちゃんは再び行動に出た。おそらく妹友ちゃんはお兄さんには全く恋愛感情はないのだろう。妹友ちゃんの目的は自分がお兄さんの彼女になることにより妹ちゃんとお兄さんとの関係の進展を阻止することに違いない。
あたしは本当にいらいらしていた。妹友ちゃんのこれまでの自分勝手な相手の感情を配慮しない行動が次々に心の中に浮かんできた。理性的判断ではなかったかもしれない。気がつかない振りをして見過ごせばいいのかもしれない。
正直に言えばそれよりもあたしが恐れたのは妹友ちゃんとお兄さんが付き合い出したら、妹ちゃんは本当にお兄さんのことを忘れるように努めるだろうということだった。
そしてそれはこいつと妹ちゃんの仲が本当の意味で固まるということを意味する。あたしにはそれが怖かった。
もし妹ちゃんとお兄さんが相思相愛になれば妹ちゃんに振られることになるこいつを、このあたしが慰め、そしてこれまで喧嘩ばかりしていた幼馴染以上の関係になれるかもしれない。そういう意味では妹友ちゃんの行動はある意味あたしにとってチャンスなのだった。そしてそういうことに気が付いていないだろう妹ちゃんにとってもチャンスだった。
ただ、それを仕掛けることができるのは関係者の中で唯一全容を把握できたあたしだけだった。
あたしは妹ちゃんにお兄さんのエピソードを聞かせてくれるようにせがんだ。本当にそんなことを聞きたかったわけでもなければ、あいつに嫌がらせをしたかったのでもない。
妹ちゃんのお兄さんへの感情を再確認したかったのだ。
妹ちゃんのまるで彼氏の惚気のようなお兄さんの話を聞きながら、あたしには一つの考えだけを頭の中で追求していた。
それはあたしと妹ちゃんの恋の両方を同時に救う方法はないものかということだった。その考えの中に妹友ちゃんが救われる道はないことは承知の上だった。
678: 2012/01/11(水) 22:45:45.81 ID:VQBHn/AMo
あたしが妹友ちゃんの意図を悟った学園祭当日、妹友ちゃんはお兄さんに告白しお兄さんも妹友ちゃんの気持ちを受けいれたようだった。
それは妹友ちゃんからではなく妹ちゃんから得た情報だった。
クリスマスの休暇が明けると妹友ちゃんにとって唯一の誤算じゃないかと思うんだけど、先輩と付き合い出してからも妹ちゃんとの時間を削らなかった妹ちゃんは、お兄さんと付き合い出した妹友ちゃんとは距離を置き始めたのだ。
あたしにとって幸いなことに、妹友ちゃんと一緒に過ごさなくなった妹ちゃんはあいつといる時間を増やしたりもせず、一人ぼっちで食事したり帰宅したりするようになった。
あたしは少し不思議だった。妹友ちゃんがお兄さんに付き合い出した目的はお兄さんの気持ちを妹ちゃんに向けないため。それと大好きな妹ちゃんの近くにいたいためだったのは間違いないとあたしは思ったていた。なので、妹友ちゃんは妹ちゃんが自分から距離を置き出したことに狼狽して妹ちゃんとの仲の修復に走るはずだった。
だけど、妹友ちゃんはそういう様子を見せずグループの他の女の子たちと過ごすようになってしまった。
その妹友ちゃんの行動がどういう意味を持つのかはさすがのあたしにも計りかねた。とりあえずあたしは妹友ちゃんからもグループの子たちからも距離を置き一人ぼっちになってしまった妹ちゃんに声をかけた。以前からそこそこ仲が良かったあたしが妹ちゃんに声をかけるのは別に不自然ではなかった。
そういう訳であたしと妹ちゃんは校内で一緒に過ごすようになった。二人きりの時もあればあたしの生徒会関連の知り合いたちと一緒のこともあった。
そんな時、お昼休みにたまたま妹ちゃんと二人きりだったあたしは、冬の曇った薄暗い中庭の噴水脇のベンチで妹ちゃんに聞いてみた。
「そういえば妹ちゃんってさ、最近妹友ちゃんと一緒じゃないけど喧嘩でもしたの?」
「別に喧嘩なんかしてないよ」
いつものとおり平静な声で妹ちゃんは答えた。
「もしかしてさ、妹友ちゃんとお兄さんが付き合い出したから?」
あたしは妹ちゃんに聞いた。ストレートすぎるかもしれないけど、ここから先の相談を妹ちゃんに持ちかけるには避けては通れない質問だった。
妹ちゃんはしばらく黙っていたけど、やがて顔を上げて答えてくれた。
それは妹友ちゃんからではなく妹ちゃんから得た情報だった。
クリスマスの休暇が明けると妹友ちゃんにとって唯一の誤算じゃないかと思うんだけど、先輩と付き合い出してからも妹ちゃんとの時間を削らなかった妹ちゃんは、お兄さんと付き合い出した妹友ちゃんとは距離を置き始めたのだ。
あたしにとって幸いなことに、妹友ちゃんと一緒に過ごさなくなった妹ちゃんはあいつといる時間を増やしたりもせず、一人ぼっちで食事したり帰宅したりするようになった。
あたしは少し不思議だった。妹友ちゃんがお兄さんに付き合い出した目的はお兄さんの気持ちを妹ちゃんに向けないため。それと大好きな妹ちゃんの近くにいたいためだったのは間違いないとあたしは思ったていた。なので、妹友ちゃんは妹ちゃんが自分から距離を置き出したことに狼狽して妹ちゃんとの仲の修復に走るはずだった。
だけど、妹友ちゃんはそういう様子を見せずグループの他の女の子たちと過ごすようになってしまった。
その妹友ちゃんの行動がどういう意味を持つのかはさすがのあたしにも計りかねた。とりあえずあたしは妹友ちゃんからもグループの子たちからも距離を置き一人ぼっちになってしまった妹ちゃんに声をかけた。以前からそこそこ仲が良かったあたしが妹ちゃんに声をかけるのは別に不自然ではなかった。
そういう訳であたしと妹ちゃんは校内で一緒に過ごすようになった。二人きりの時もあればあたしの生徒会関連の知り合いたちと一緒のこともあった。
そんな時、お昼休みにたまたま妹ちゃんと二人きりだったあたしは、冬の曇った薄暗い中庭の噴水脇のベンチで妹ちゃんに聞いてみた。
「そういえば妹ちゃんってさ、最近妹友ちゃんと一緒じゃないけど喧嘩でもしたの?」
「別に喧嘩なんかしてないよ」
いつものとおり平静な声で妹ちゃんは答えた。
「もしかしてさ、妹友ちゃんとお兄さんが付き合い出したから?」
あたしは妹ちゃんに聞いた。ストレートすぎるかもしれないけど、ここから先の相談を妹ちゃんに持ちかけるには避けては通れない質問だった。
妹ちゃんはしばらく黙っていたけど、やがて顔を上げて答えてくれた。
679: 2012/01/11(水) 22:47:52.99 ID:VQBHn/AMo
「・・・・・・うん」
それは、やはり感情の起伏のない平静な声だった。
「やっぱりね。大好きなお兄さんが妹友ちゃんに盗られちゃって寂びしいんでしょ?」
あたしは、そういう感情が特別なことではなくさも一般的な普通の感情であるかのように聞き返した。
「正直寂しい。お兄ちゃんのこと好きだから」
妹ちゃんは相変わらず抑揚のない声で冷静に喋っていたけど、その華奢な小さい手が膝の上でブルブルと震えているのをあたしは見逃さなかった。
あたしは妹ちゃんの肩に手を廻して彼女を抱き寄せた。
「妹ちゃん・・・・・・かわいそうに」
妹ちゃん一瞬ビクッとしてあたしから体を離そうとしたけど、あたしはそれを許さなかった。妹ちゃんの体を自分に引き寄せながらあたしは妹ちゃんに言った。
「もう一人で悩むのはやめなよ」
あたしの腕の中で体を固くしている妹ちゃんにあたしは畳み込むように言葉を続けた。
「前から気が付いていたよ。あんたはブラコンとかそういうんじゃなくて、お兄さんのこと男として好きなんでしょ?」
あたしはついに本人にその言葉を掛けたのだ。
妹ちゃんは静かに泣き始めた。あたしは空いている方の手でそっと妹ちゃんの頭を優しく撫でた。
「全部話してくれる? きっと力になれると思うから」
あたしは精一杯優しく妹ちゃんに囁きかけた。
それは、やはり感情の起伏のない平静な声だった。
「やっぱりね。大好きなお兄さんが妹友ちゃんに盗られちゃって寂びしいんでしょ?」
あたしは、そういう感情が特別なことではなくさも一般的な普通の感情であるかのように聞き返した。
「正直寂しい。お兄ちゃんのこと好きだから」
妹ちゃんは相変わらず抑揚のない声で冷静に喋っていたけど、その華奢な小さい手が膝の上でブルブルと震えているのをあたしは見逃さなかった。
あたしは妹ちゃんの肩に手を廻して彼女を抱き寄せた。
「妹ちゃん・・・・・・かわいそうに」
妹ちゃん一瞬ビクッとしてあたしから体を離そうとしたけど、あたしはそれを許さなかった。妹ちゃんの体を自分に引き寄せながらあたしは妹ちゃんに言った。
「もう一人で悩むのはやめなよ」
あたしの腕の中で体を固くしている妹ちゃんにあたしは畳み込むように言葉を続けた。
「前から気が付いていたよ。あんたはブラコンとかそういうんじゃなくて、お兄さんのこと男として好きなんでしょ?」
あたしはついに本人にその言葉を掛けたのだ。
妹ちゃんは静かに泣き始めた。あたしは空いている方の手でそっと妹ちゃんの頭を優しく撫でた。
「全部話してくれる? きっと力になれると思うから」
あたしは精一杯優しく妹ちゃんに囁きかけた。
680: 2012/01/11(水) 22:49:39.31 ID:VQBHn/AMo
妹ちゃんはためらいながら少しづつ話し始めた。それは約17年間に及ぶせつない片想いの記録だった。
妹ちゃんは幼い頃から三つはなれたお兄さんを慕い続けてきた。ただ、その恋は不器用なものだった。アニメやラノベでよくあるような特別に仲のいい兄妹とかでは全然なかった。
妹ちゃんとお兄さんはお兄さんが中学校に入学する頃からほとんど話をしないような関係だった。同じ家に住んでいるのに下手をすると2~3日くらい平気で顔を合わせることもなかったらしい。
妹ちゃんらしかぬ本当に不器用な恋。そして妹ちゃんには悪いけれどこれだけ可愛い妹ちゃんが思い悩むほどお兄さんに惹かれた理由もよくわからなかった。
それついては今で正直よくわからない。
とにかく妹ちゃんは長い静かな報われない恋心を実のお兄さんに向けてきた。お兄さんはといえば、これまでは妹ちゃんへ全くといっていいほど関心がないようだった。
その日の夜までは。
妹ちゃんは幼い頃から三つはなれたお兄さんを慕い続けてきた。ただ、その恋は不器用なものだった。アニメやラノベでよくあるような特別に仲のいい兄妹とかでは全然なかった。
妹ちゃんとお兄さんはお兄さんが中学校に入学する頃からほとんど話をしないような関係だった。同じ家に住んでいるのに下手をすると2~3日くらい平気で顔を合わせることもなかったらしい。
妹ちゃんらしかぬ本当に不器用な恋。そして妹ちゃんには悪いけれどこれだけ可愛い妹ちゃんが思い悩むほどお兄さんに惹かれた理由もよくわからなかった。
それついては今で正直よくわからない。
とにかく妹ちゃんは長い静かな報われない恋心を実のお兄さんに向けてきた。お兄さんはといえば、これまでは妹ちゃんへ全くといっていいほど関心がないようだった。
その日の夜までは。
681: 2012/01/11(水) 22:50:36.38 ID:VQBHn/AMo
妹ちゃんは長い報われない恋に終止符を打とうと自分に告白してきた先輩と付き合うことに決めた(あたしはその話を聞いたとき胸の痛みを感じたけど、あたしがあいつに長い片想いをしていることを知らなかった妹ちゃんを恨もうとは思わなかった)。
ある雨の放課後、お兄さんはお母さんに言いつかり傘を持っていない妹ちゃんを車で迎えに来た。お母さんがそのことを妹ちゃんに伝え忘れたそうで妹ちゃんにとってそれは全くの不意打ちだった。妹ちゃんはその時パニックになっていたとか。これまで疎遠だったお兄さんがわざわざ自分を車で迎えに来るなんて。
・・・・・・本当は駆け寄って助手席に飛び乗りたかった。一緒にいた女友ちゃんも他の友人も、カラオケで自分を待っている先輩すらどうでもよかった。
でも、パニックになった妹ちゃんはお兄さんに冷たく当たってしまったらしい。
お兄さんを心ならずも無視してしまった妹ちゃんにはさらに心を乱す出来事が次いたそうだ。その日のカラオケの帰り際、妹友ちゃんからお兄さんのメアドを教えてと頼まれたのだ。
ある雨の放課後、お兄さんはお母さんに言いつかり傘を持っていない妹ちゃんを車で迎えに来た。お母さんがそのことを妹ちゃんに伝え忘れたそうで妹ちゃんにとってそれは全くの不意打ちだった。妹ちゃんはその時パニックになっていたとか。これまで疎遠だったお兄さんがわざわざ自分を車で迎えに来るなんて。
・・・・・・本当は駆け寄って助手席に飛び乗りたかった。一緒にいた女友ちゃんも他の友人も、カラオケで自分を待っている先輩すらどうでもよかった。
でも、パニックになった妹ちゃんはお兄さんに冷たく当たってしまったらしい。
お兄さんを心ならずも無視してしまった妹ちゃんにはさらに心を乱す出来事が次いたそうだ。その日のカラオケの帰り際、妹友ちゃんからお兄さんのメアドを教えてと頼まれたのだ。
682: 2012/01/11(水) 22:54:21.03 ID:VQBHn/AMo
妹友ちゃんのお兄さんへの関心に気が付いた妹ちゃんは再び悩み始めた。
お兄さんを忘れるために先輩と付き合い出したけど、逆にこの頃は家でお兄さんとの会話が増えてきていた。
またこの頃から(ここで妹ちゃんは顔を赤くした)、なぜかお兄さんの視線が自分の胸元とか体に向けられるようになってきた。
お兄ちゃんもあたしを女として意識し始めているのだろうか。これまで両親不在の夕食はそれぞれ勝手に済ませていた夕食を兄妹で一緒に食事をするようにまでなった。その際の会話でお兄さんに今まで彼女がいたことがないことを知り、妹ちゃんは本当に嬉しかったそうだ。
そればかりではなくお母さんからお兄さんを朝起こすように頼まれた妹ちゃんは、渋る振りをしたけど心の中は飛び上がりたいほど嬉しかった。これでお兄さんとの接点が増える。
その後の妹ちゃんの思い出は悩ましくも辛いものだった。急速に接近する兄妹。ある夜、妹ちゃんは我慢できずにお兄さんに抱きついた。最初驚いたお兄さんだったけど。自分に抱きつきながら静かに泣く妹ちゃんの肩を抱いてくれた。
そして、両親不在のある夜。その日、妹ちゃんは早く帰ってお兄さんと一緒に過ごそうとしていたけど、あいつに無理にカラオケに引っ張られて行った(そこでまたあたしの胸は痛んだ)。ようやくあいつを振り切って帰宅した妹ちゃんはお兄さんが不在なことにがっかりし、泣きながらお兄さんのベッドに横になったそうだ。そして。
酔ったお兄さんが深夜に帰宅し、自分のベッドにいる妹ちゃんを見つけた。お兄さんは黙ってベッドに入り妹ちゃんの身体を愛撫し始めた。妹ちゃんは怖さと恥ずかしさと喜びが入り混じった複雑な気持ちを抱えながら寝たふりをしてお兄さんの手に身を任せていた。抵抗しようとか怒ろうとかそういう気持ちは夢にもなかったとのこと。
妹ちゃんにとって不幸なことにそんな密かな兄妹の幸せは長くは続かなかった。
学園祭の日、お兄さんを校内を案内していた妹友ちゃんがお兄さんに告白しお兄さんもそれを受け入れたのだ。そしてそれに追い討ちを掛けるようにクリスマスイヴの日が訪れた。
お兄さんを忘れるために先輩と付き合い出したけど、逆にこの頃は家でお兄さんとの会話が増えてきていた。
またこの頃から(ここで妹ちゃんは顔を赤くした)、なぜかお兄さんの視線が自分の胸元とか体に向けられるようになってきた。
お兄ちゃんもあたしを女として意識し始めているのだろうか。これまで両親不在の夕食はそれぞれ勝手に済ませていた夕食を兄妹で一緒に食事をするようにまでなった。その際の会話でお兄さんに今まで彼女がいたことがないことを知り、妹ちゃんは本当に嬉しかったそうだ。
そればかりではなくお母さんからお兄さんを朝起こすように頼まれた妹ちゃんは、渋る振りをしたけど心の中は飛び上がりたいほど嬉しかった。これでお兄さんとの接点が増える。
その後の妹ちゃんの思い出は悩ましくも辛いものだった。急速に接近する兄妹。ある夜、妹ちゃんは我慢できずにお兄さんに抱きついた。最初驚いたお兄さんだったけど。自分に抱きつきながら静かに泣く妹ちゃんの肩を抱いてくれた。
そして、両親不在のある夜。その日、妹ちゃんは早く帰ってお兄さんと一緒に過ごそうとしていたけど、あいつに無理にカラオケに引っ張られて行った(そこでまたあたしの胸は痛んだ)。ようやくあいつを振り切って帰宅した妹ちゃんはお兄さんが不在なことにがっかりし、泣きながらお兄さんのベッドに横になったそうだ。そして。
酔ったお兄さんが深夜に帰宅し、自分のベッドにいる妹ちゃんを見つけた。お兄さんは黙ってベッドに入り妹ちゃんの身体を愛撫し始めた。妹ちゃんは怖さと恥ずかしさと喜びが入り混じった複雑な気持ちを抱えながら寝たふりをしてお兄さんの手に身を任せていた。抵抗しようとか怒ろうとかそういう気持ちは夢にもなかったとのこと。
妹ちゃんにとって不幸なことにそんな密かな兄妹の幸せは長くは続かなかった。
学園祭の日、お兄さんを校内を案内していた妹友ちゃんがお兄さんに告白しお兄さんもそれを受け入れたのだ。そしてそれに追い討ちを掛けるようにクリスマスイヴの日が訪れた。
683: 2012/01/11(水) 22:56:09.81 ID:VQBHn/AMo
その頃、妹ちゃんと付き合い出したお兄さんに対して妹ちゃんは冷たく突き放すような態度を取っていた。もちろんお兄さんと一緒に寝るとか妹ちゃんの身体に触れたがるお兄さんを受け入れるとかはもう全く考えられなかった。
妹ちゃんの中では妹友ちゃんはまだ親友だった。それに妹ちゃんから先輩を奪ったことが心の中に重く圧し掛かっていたのだ。
イヴ当日、先輩と予約したレストランで食事中の妹ちゃんに妹友ちゃんから電話がかかった。それは妹ちゃんにとって厳しい内容だった。
・・・・・・結果としてイヴの日に妹友ちゃんはお兄さんと結ばれたのだ。
妹ちゃんの苦しい告白はようやく終わった。あたしは震えながら涙を浮かべている妹ちゃんが心底かわいそうだった。同時に好きでもないくせに妹ちゃんからお兄さんを奪い体の関係まで結んだ妹友ちゃんには怒りと嫌悪の気持ちしか抱けなかった。
妹ちゃんにここまで言わせた以上、次はあたしの番だった。
あたしにはおぼろげだけどもう取るべき道が見えていたのだから。
妹ちゃんの中では妹友ちゃんはまだ親友だった。それに妹ちゃんから先輩を奪ったことが心の中に重く圧し掛かっていたのだ。
イヴ当日、先輩と予約したレストランで食事中の妹ちゃんに妹友ちゃんから電話がかかった。それは妹ちゃんにとって厳しい内容だった。
・・・・・・結果としてイヴの日に妹友ちゃんはお兄さんと結ばれたのだ。
妹ちゃんの苦しい告白はようやく終わった。あたしは震えながら涙を浮かべている妹ちゃんが心底かわいそうだった。同時に好きでもないくせに妹ちゃんからお兄さんを奪い体の関係まで結んだ妹友ちゃんには怒りと嫌悪の気持ちしか抱けなかった。
妹ちゃんにここまで言わせた以上、次はあたしの番だった。
あたしにはおぼろげだけどもう取るべき道が見えていたのだから。
692: 2012/01/12(木) 21:43:53.31 ID:X+RsRxlyo
あたしの感情は振るえ、そして揺れ混乱した。あたしは必氏になって最善の道を模索しようとした。
奇麗事だけではなかった。あたしがしようと考えていることは、あたしが半ば諦めていた幼馴染のあいつを自分に振り向かせることだった。
それはあたしの腕の中で泣きながら震えている妹ちゃんが真に救われる道でもあったけど、正直に言うとやはりその一番の動機は自分自身のためだった。
あたしは長い片想いをもはや宿命のように受け入れていたけど、妹友ちゃんの無節操な恋心や妹ちゃんのお兄さんへの一途な恋によってあたしにも道が開けたのだ。
でも、これを成就させるには妹ちゃんに全てではなくてもある程度の真実を話す必要があった。
正直、この頃には妹友ちゃんへの友情は薄れていたけれど、それでも今まで秘密にしていた彼女の性癖を妹ちゃんに話すのはためらわれた。なにしろ妹ちゃんは現在もその性癖の対象なのだから。
あたしは意を決した。そしてあたしに自分の全てを告白してくれ、まだ身を震わせ泣いている妹ちゃんに話しかけた。
「あのさ」
妹ちゃんは無言のまま涙が残る瞳であたしを見上げた。
「今まで黙っていたけど。あたしもさ、実は彼氏先輩のことが好き」
あたしは思い切って告白した。長年抱いててきた本心を白状するのは妹友ちゃんに告白されて断る時に続いて人生で二度目だった。
妹友ちゃんは少し不思議そうな表情であたしを見上げた。
「知ってるよ?」
「え? 何で妹ちゃんが」
気が付かれていたのだろうか? あたしは少し動揺した。
「だってずいぶん前に妹友ちゃんが話してくれたし・・・・・・あたし、あの時妹友ちゃんにも悪いことしたなって思ったんだけど、それ以上に委員長ちゃんには罪悪感を感じていて」
「ちょっと待って」
あたしは妹ちゃんの言葉を遮った。
「本当に妹友ちゃんから聞いたの?」
「うん」
何を言っているのだろうという表情で妹ちゃんは言った。
・・・・・・あの女。あたしは怒りに震えた。あたしはあの子の同性愛嗜好とか妹ちゃんを好きになったという秘密は全て自分の胸の内に収めてきた。妹友ちゃんの自己中心的な性格に辟易して距離を置
いてからだって彼女の秘密を誰にも言う気はなかったのだ。
それなのに。妹友ちゃんはあっさりと噂話の種にあたしの知られたくない秘密をペラペラ喋っていたと言うのだろうか。
まだ少し迷いの残っていたあたしの気持ちはこれで瞬時に固まった。
「妹ちゃん、本当に言いにくいんだけどさ」
あたしはまだあたしの腕の中にいる妹ちゃんに話し出した。
「妹友ちゃんはあんたのお兄さんのこと全然好きじゃないと思うよ」
妹ちゃんの身体が一瞬震えた。それから怖いほど深い色をたたえた彼女の瞳があたしに向けられた。
奇麗事だけではなかった。あたしがしようと考えていることは、あたしが半ば諦めていた幼馴染のあいつを自分に振り向かせることだった。
それはあたしの腕の中で泣きながら震えている妹ちゃんが真に救われる道でもあったけど、正直に言うとやはりその一番の動機は自分自身のためだった。
あたしは長い片想いをもはや宿命のように受け入れていたけど、妹友ちゃんの無節操な恋心や妹ちゃんのお兄さんへの一途な恋によってあたしにも道が開けたのだ。
でも、これを成就させるには妹ちゃんに全てではなくてもある程度の真実を話す必要があった。
正直、この頃には妹友ちゃんへの友情は薄れていたけれど、それでも今まで秘密にしていた彼女の性癖を妹ちゃんに話すのはためらわれた。なにしろ妹ちゃんは現在もその性癖の対象なのだから。
あたしは意を決した。そしてあたしに自分の全てを告白してくれ、まだ身を震わせ泣いている妹ちゃんに話しかけた。
「あのさ」
妹ちゃんは無言のまま涙が残る瞳であたしを見上げた。
「今まで黙っていたけど。あたしもさ、実は彼氏先輩のことが好き」
あたしは思い切って告白した。長年抱いててきた本心を白状するのは妹友ちゃんに告白されて断る時に続いて人生で二度目だった。
妹友ちゃんは少し不思議そうな表情であたしを見上げた。
「知ってるよ?」
「え? 何で妹ちゃんが」
気が付かれていたのだろうか? あたしは少し動揺した。
「だってずいぶん前に妹友ちゃんが話してくれたし・・・・・・あたし、あの時妹友ちゃんにも悪いことしたなって思ったんだけど、それ以上に委員長ちゃんには罪悪感を感じていて」
「ちょっと待って」
あたしは妹ちゃんの言葉を遮った。
「本当に妹友ちゃんから聞いたの?」
「うん」
何を言っているのだろうという表情で妹ちゃんは言った。
・・・・・・あの女。あたしは怒りに震えた。あたしはあの子の同性愛嗜好とか妹ちゃんを好きになったという秘密は全て自分の胸の内に収めてきた。妹友ちゃんの自己中心的な性格に辟易して距離を置
いてからだって彼女の秘密を誰にも言う気はなかったのだ。
それなのに。妹友ちゃんはあっさりと噂話の種にあたしの知られたくない秘密をペラペラ喋っていたと言うのだろうか。
まだ少し迷いの残っていたあたしの気持ちはこれで瞬時に固まった。
「妹ちゃん、本当に言いにくいんだけどさ」
あたしはまだあたしの腕の中にいる妹ちゃんに話し出した。
「妹友ちゃんはあんたのお兄さんのこと全然好きじゃないと思うよ」
妹ちゃんの身体が一瞬震えた。それから怖いほど深い色をたたえた彼女の瞳があたしに向けられた。
693: 2012/01/12(木) 21:46:30.27 ID:X+RsRxlyo
「妹友ちゃんは自分からあいつを奪って行ったあんたに仕返しがしたかったんだろうね」
あたしは話を進めた。
「先輩を奪った妹ちゃんの大切な人を奪ってあんたを苦しめたかった。だから」
「お兄さんはあの子に騙されてるの。それだけでもひどいけど、次はあんたの大事なお兄さんを手ひどく振って苦しませることとか考えてるんじゃないかな」
妹ちゃんは身じろぎもせずあたしの話に聞き入っていた。
「そしてそれがお兄さんを大好きな妹ちゃんを一番苦しめることになるってあの子は知ってる」
あたしは続けた。
「・・・・・・これ以上あんたもあたしももう妹友ちゃんに遠慮しなくていいと思う」
もちろんこれは妹友ちゃんにとってアンフェアなやり方だった。あたしは真実を小出しにして妹ちゃんに伝ええようとしていた。
妹友ちゃんの行動の本当の理由は妹ちゃんへの復讐ではない。
妹友ちゃんがお兄さんと付き合い出したのはお兄さんと妹ちゃんの仲が親密になるのを防ぐためで、妹ちゃんを苦しませることが真の目的ではないことはあたしにはわかっていた。
でもだからどうなのだ。妹友ちゃんの行動が自分本位の恋心から始っていることは確かだし、それが妹ちゃんへの恋から始めたことにしても結果的に今これほどまでに妹ちゃんを苦しめているのは
間違いないのだから。
まだあたしは躊躇していた。妹友ちゃんの行動の真の動機、つまり妹友ちゃんが同性の友人である妹ちゃんを愛しており妹ちゃんを独占したいからだとはあたしには言えなかった。
ここに至ってもまだ妹友ちゃんが同性愛的な嗜好を持っていることを暴露してもいいのかという躊躇もあったし、あたしの話によって弱っている妹ちゃんを更に混乱させたくなかった。
妹友ちゃんがお兄さんを愛していないことだけは事実だったので、あたしは便宜的に妹ちゃんへの復讐という安易な動機を妹ちゃんに伝えることにした。
それからあたしは妹ちゃんを説得することに専念した。妹友ちゃんがある意味自己の欲望に忠実であるなら、妹ちゃんもあたしももう遠慮すべきではないことを必氏に説いた。
妹ちゃんはもう自分の心に素直になりお兄さんに対して距離を置くのを止めるべきだ。それが妹友ちゃんに騙されているお兄さんを救う道でもある。
一方あたしもあいつに対して行動を起こそうと思う。これまで臆病だったけど本当にあいつのことを好きな気持ちをもうこれ以上隠せないから。
お兄さんに対する妹友ちゃんの情け容赦ない行動にショックを受けていた妹ちゃんは、ついにあたしの提案に同意した。
それは単純な計画だった。
年内に妹ちゃんが先輩を振って別れる。あいつの妹ちゃんへの執着はあたしもわかっていたしそう簡単にあいつが妹ちゃんを諦めるとは思えなかったけど、これだけはやり遂げなくてはいけない
ことだった。あたしにとっても妹ちゃんにとっても。
あたしは話を進めた。
「先輩を奪った妹ちゃんの大切な人を奪ってあんたを苦しめたかった。だから」
「お兄さんはあの子に騙されてるの。それだけでもひどいけど、次はあんたの大事なお兄さんを手ひどく振って苦しませることとか考えてるんじゃないかな」
妹ちゃんは身じろぎもせずあたしの話に聞き入っていた。
「そしてそれがお兄さんを大好きな妹ちゃんを一番苦しめることになるってあの子は知ってる」
あたしは続けた。
「・・・・・・これ以上あんたもあたしももう妹友ちゃんに遠慮しなくていいと思う」
もちろんこれは妹友ちゃんにとってアンフェアなやり方だった。あたしは真実を小出しにして妹ちゃんに伝ええようとしていた。
妹友ちゃんの行動の本当の理由は妹ちゃんへの復讐ではない。
妹友ちゃんがお兄さんと付き合い出したのはお兄さんと妹ちゃんの仲が親密になるのを防ぐためで、妹ちゃんを苦しませることが真の目的ではないことはあたしにはわかっていた。
でもだからどうなのだ。妹友ちゃんの行動が自分本位の恋心から始っていることは確かだし、それが妹ちゃんへの恋から始めたことにしても結果的に今これほどまでに妹ちゃんを苦しめているのは
間違いないのだから。
まだあたしは躊躇していた。妹友ちゃんの行動の真の動機、つまり妹友ちゃんが同性の友人である妹ちゃんを愛しており妹ちゃんを独占したいからだとはあたしには言えなかった。
ここに至ってもまだ妹友ちゃんが同性愛的な嗜好を持っていることを暴露してもいいのかという躊躇もあったし、あたしの話によって弱っている妹ちゃんを更に混乱させたくなかった。
妹友ちゃんがお兄さんを愛していないことだけは事実だったので、あたしは便宜的に妹ちゃんへの復讐という安易な動機を妹ちゃんに伝えることにした。
それからあたしは妹ちゃんを説得することに専念した。妹友ちゃんがある意味自己の欲望に忠実であるなら、妹ちゃんもあたしももう遠慮すべきではないことを必氏に説いた。
妹ちゃんはもう自分の心に素直になりお兄さんに対して距離を置くのを止めるべきだ。それが妹友ちゃんに騙されているお兄さんを救う道でもある。
一方あたしもあいつに対して行動を起こそうと思う。これまで臆病だったけど本当にあいつのことを好きな気持ちをもうこれ以上隠せないから。
お兄さんに対する妹友ちゃんの情け容赦ない行動にショックを受けていた妹ちゃんは、ついにあたしの提案に同意した。
それは単純な計画だった。
年内に妹ちゃんが先輩を振って別れる。あいつの妹ちゃんへの執着はあたしもわかっていたしそう簡単にあいつが妹ちゃんを諦めるとは思えなかったけど、これだけはやり遂げなくてはいけない
ことだった。あたしにとっても妹ちゃんにとっても。
694: 2012/01/12(木) 21:49:35.70 ID:X+RsRxlyo
結果だけを話すと、妹ちゃんとあいつは別れた。
妹ちゃんに呼び出されたあいつは待ち合わせのスタバにあたしが一緒にいることに驚いたようだった。
「何でおまえがいるの?」
あいつは混乱した様子で言った。これはあたしにとっては賭けだった。これからしようとしていることを考えるだけで心拍数がヤバイ感じ。
混乱するあいつとドキドキしているあたしを尻目に妹ちゃんはいつものように冷静な表情だった。これから起こることを心配している様子は微塵もなかった。
きっといろいろ吹っ切れたのだろう。あたしの計画に同意するまでは長かったけど一度納得してその気になってしまえばもう迷わないのが妹ちゃんだった。
あたしはあいつに抱きつきあいつの唇にキスした。
「ちょっとおい」
驚いた声であいつはうめいた。妹ちゃんに見られている前であたしに抱きつかれキスされたあいつだけど、あたしを無理に振りほどこうとする様子はなくただ何が起こっているのかわからないで
うろたえているだけのあいつ。
「お願い。あんたのこと好きなの。小さな時からあんたのことだけを見てきた・・・・・・もうこれ以上気持ちを抑えられない」
それは演技でも何でもなくようやく口に出すことができたあたしの真実だった。
「あたしのこと嫌い? 何か言ってよ」
あたし震える声を振り絞った。
「だ、だってよ。いきなりそんな・・・・・・だいたいおまえいつだって俺のことクズとかカスとか呼んでて。俺のこと好きだったってマジかよ」
こいつらしからぬ混乱した声。ひょっとしたら。あたしは希望を抱いた。
「それに俺には妹が」
バツが悪そうに妹ちゃんをようやく気遣うことを思い出したあいつが言った。
「いいよ」
妹ちゃんが静かに言った。
「もう許してあげるよ。先輩が前から委員長ちゃんのこと気にしているのは何となくわかってた」
これは演技? それとも真実なのだろうか。ここまでは事前に打ち合わせなんかしてなかったのに。
「二人とも不器用なんだね。これだけ長い間常に側にいたのにね」
妹ちゃんは言った。その時奇跡が起きた。
妹ちゃんに呼び出されたあいつは待ち合わせのスタバにあたしが一緒にいることに驚いたようだった。
「何でおまえがいるの?」
あいつは混乱した様子で言った。これはあたしにとっては賭けだった。これからしようとしていることを考えるだけで心拍数がヤバイ感じ。
混乱するあいつとドキドキしているあたしを尻目に妹ちゃんはいつものように冷静な表情だった。これから起こることを心配している様子は微塵もなかった。
きっといろいろ吹っ切れたのだろう。あたしの計画に同意するまでは長かったけど一度納得してその気になってしまえばもう迷わないのが妹ちゃんだった。
あたしはあいつに抱きつきあいつの唇にキスした。
「ちょっとおい」
驚いた声であいつはうめいた。妹ちゃんに見られている前であたしに抱きつかれキスされたあいつだけど、あたしを無理に振りほどこうとする様子はなくただ何が起こっているのかわからないで
うろたえているだけのあいつ。
「お願い。あんたのこと好きなの。小さな時からあんたのことだけを見てきた・・・・・・もうこれ以上気持ちを抑えられない」
それは演技でも何でもなくようやく口に出すことができたあたしの真実だった。
「あたしのこと嫌い? 何か言ってよ」
あたし震える声を振り絞った。
「だ、だってよ。いきなりそんな・・・・・・だいたいおまえいつだって俺のことクズとかカスとか呼んでて。俺のこと好きだったってマジかよ」
こいつらしからぬ混乱した声。ひょっとしたら。あたしは希望を抱いた。
「それに俺には妹が」
バツが悪そうに妹ちゃんをようやく気遣うことを思い出したあいつが言った。
「いいよ」
妹ちゃんが静かに言った。
「もう許してあげるよ。先輩が前から委員長ちゃんのこと気にしているのは何となくわかってた」
これは演技? それとも真実なのだろうか。ここまでは事前に打ち合わせなんかしてなかったのに。
「二人とも不器用なんだね。これだけ長い間常に側にいたのにね」
妹ちゃんは言った。その時奇跡が起きた。
695: 2012/01/12(木) 21:50:13.49 ID:X+RsRxlyo
あいつは少しだけ妹ちゃんをじっと見つめたけどすぐにあたしに手を廻してあたしを抱きしめた。
「妹ごめん」
あいつはらしくなく震える声で神妙に言った。
「ごめんな、俺やっと自分の気持ちに気づいた。俺、委員長のことが好きだ」
「・・・・・・うれしい」
あたしはかすれた声をようやく口にした。あたしはついに長い片想いを解消し想いを遂げたのだ。だけど、感傷に浸っている時間はなかった。
あたしはすぐに言葉を継いだ。
「ごめんね、妹ちゃん。今日はこんなこと言うつもりで来たんじゃなかったのに」
涙というものは感情が高ぶれば勝手に出てくるものだとあたしは知った。あたしは今本気で泣いていた。
「いいよ、許してあげる。二人とも」
「妹、本当に悪い」
泣きそうな声であいつが言った。
「先輩、これまでありがとう」
妹ちゃんは静かに微笑んだ。
「じゃあ、あたしは帰るね。お幸せに」
妹ちゃんは席を立った。
「妹ごめん」
あいつはらしくなく震える声で神妙に言った。
「ごめんな、俺やっと自分の気持ちに気づいた。俺、委員長のことが好きだ」
「・・・・・・うれしい」
あたしはかすれた声をようやく口にした。あたしはついに長い片想いを解消し想いを遂げたのだ。だけど、感傷に浸っている時間はなかった。
あたしはすぐに言葉を継いだ。
「ごめんね、妹ちゃん。今日はこんなこと言うつもりで来たんじゃなかったのに」
涙というものは感情が高ぶれば勝手に出てくるものだとあたしは知った。あたしは今本気で泣いていた。
「いいよ、許してあげる。二人とも」
「妹、本当に悪い」
泣きそうな声であいつが言った。
「先輩、これまでありがとう」
妹ちゃんは静かに微笑んだ。
「じゃあ、あたしは帰るね。お幸せに」
妹ちゃんは席を立った。
696: 2012/01/12(木) 21:53:29.32 ID:X+RsRxlyo
あたしが妹ちゃんの本当の想いを聞きあいつを呼び出し、結果として長い片想いを解消したのはクリスマスの日だった。
妹ちゃんが帰った後、あたしは何も考えずひたすらあいつに甘えた。こんなのあたしのキャラじゃないのに、あいつにキスされ髪を撫でられてただ好きという言葉だけを口にしていた。
でもあいつは受験生だあたしはあいつを適当な時間に家に追い返した。あたしのせいであいつの受験に失敗させる訳にはいかなかったから。
自室で甘い余韻に浸っていたあたしの感傷は、鋭く鳴り響いた携帯の着信音に邪魔された。あいつからかな。
でもその電話は妹ちゃんからだった。
『よかったね、委員長ちゃん』
妹ちゃんは言った。
「ありがとう妹ちゃん。やっとあいつと結ばれたよ」
あたしはきっと蕩けるような声を出していたに違いない。
『うん』
妹ちゃんは続けた。
『今度はあたしから話があるんだけどいい?』
「あ、うん」
正直あたしはもうここで止めたかった。あいつが妹ちゃんではなくてあたしを選んだ。そして妹ちゃんはあいつには未練がない。もうこれでいいのではないか。
でもあたし自身が始めたゲームはこんな都合のいいところで終わってはくれなかった。
『今日ね、久しぶりにお兄ちゃんと会って仲直りした』
「よかったじゃん妹ちゃん」
『でもね、お兄ちゃんはまだ妹友ちゃんのこと気にしてる。あたしとは普通のいい兄妹になろうって』
「そうか」
あたしは気を取り直した。妹友ちゃんが仕掛けたこのゲームに反撃しようと妹ちゃんを誘ったのはもともとあたしだ。自分が想いを遂げたからといってここで止めるわけにはいかなかった。
妹ちゃんとお兄さんが結ばれるまで続けなくてはならないのだ。
『それでね、妹友ちゃんから鎌倉に初詣に行こうって誘われたの。お兄ちゃんと三人で』
ありえる話だった。もともと妹ちゃん狙いの妹友ちゃんがいつまでもお兄さんと二人きりで満足するはずがない。
「じゃあ、あいつの次はお兄さんの目を覚まさそう。お兄さんはまだあんたがあいつと付き合ってると思ってるんでしょ?」
あたしは自分勝手なことに本心ではもうこのゲームをリタイアしたかったけど、さっきあれほど協力してくれた妹ちゃんを突き放すわけにはいかなかった。
「うん。先輩と別れたことはまだ話してない」
妹ちゃんはあたしの次の指示に期待しているようだった。あたしはため息を押し頃し次の作戦を提案した。
「初詣の時にあいつと一緒に同じ場所に行くからさ、お兄さんとあんたはあたしたちが一緒にいるところを目撃して」
あたしは妹ちゃんに指示した。
『わかったけど、そうするとどうなるの?』
妹ちゃんがたずねた。
「あんたは彼氏に浮気された傷心のヒロインになるのよ。お兄さんが見逃せないくらい傷つき助けを求める女の子にね」
『・・・・・・お兄ちゃんには妹友ちゃんがいるんだよ?』
妹ちゃんは疑問を呈した。
『いい兄貴としてあたしを慰めるだけなんじゃ』
「そんなのやってみなきゃわからないよ。まあ、それで駄目でも次の手を考えるからさ。あんたは逐一現在地と到着予想時間をあたしに密かにメールしなよ。できる?」
『うん、やってみる』
元旦の昼、作戦は予定どおり決行されたが想定外の出来事が起きた。あいつにもあたしにも今では関心のないはずの妹友ちゃんがあいつとあたしが寄り添って手を繋いでいるところを目撃し、お兄
さんに怒鳴り散らすくらいにパニックに陥ったというのだ。
妹ちゃんが帰った後、あたしは何も考えずひたすらあいつに甘えた。こんなのあたしのキャラじゃないのに、あいつにキスされ髪を撫でられてただ好きという言葉だけを口にしていた。
でもあいつは受験生だあたしはあいつを適当な時間に家に追い返した。あたしのせいであいつの受験に失敗させる訳にはいかなかったから。
自室で甘い余韻に浸っていたあたしの感傷は、鋭く鳴り響いた携帯の着信音に邪魔された。あいつからかな。
でもその電話は妹ちゃんからだった。
『よかったね、委員長ちゃん』
妹ちゃんは言った。
「ありがとう妹ちゃん。やっとあいつと結ばれたよ」
あたしはきっと蕩けるような声を出していたに違いない。
『うん』
妹ちゃんは続けた。
『今度はあたしから話があるんだけどいい?』
「あ、うん」
正直あたしはもうここで止めたかった。あいつが妹ちゃんではなくてあたしを選んだ。そして妹ちゃんはあいつには未練がない。もうこれでいいのではないか。
でもあたし自身が始めたゲームはこんな都合のいいところで終わってはくれなかった。
『今日ね、久しぶりにお兄ちゃんと会って仲直りした』
「よかったじゃん妹ちゃん」
『でもね、お兄ちゃんはまだ妹友ちゃんのこと気にしてる。あたしとは普通のいい兄妹になろうって』
「そうか」
あたしは気を取り直した。妹友ちゃんが仕掛けたこのゲームに反撃しようと妹ちゃんを誘ったのはもともとあたしだ。自分が想いを遂げたからといってここで止めるわけにはいかなかった。
妹ちゃんとお兄さんが結ばれるまで続けなくてはならないのだ。
『それでね、妹友ちゃんから鎌倉に初詣に行こうって誘われたの。お兄ちゃんと三人で』
ありえる話だった。もともと妹ちゃん狙いの妹友ちゃんがいつまでもお兄さんと二人きりで満足するはずがない。
「じゃあ、あいつの次はお兄さんの目を覚まさそう。お兄さんはまだあんたがあいつと付き合ってると思ってるんでしょ?」
あたしは自分勝手なことに本心ではもうこのゲームをリタイアしたかったけど、さっきあれほど協力してくれた妹ちゃんを突き放すわけにはいかなかった。
「うん。先輩と別れたことはまだ話してない」
妹ちゃんはあたしの次の指示に期待しているようだった。あたしはため息を押し頃し次の作戦を提案した。
「初詣の時にあいつと一緒に同じ場所に行くからさ、お兄さんとあんたはあたしたちが一緒にいるところを目撃して」
あたしは妹ちゃんに指示した。
『わかったけど、そうするとどうなるの?』
妹ちゃんがたずねた。
「あんたは彼氏に浮気された傷心のヒロインになるのよ。お兄さんが見逃せないくらい傷つき助けを求める女の子にね」
『・・・・・・お兄ちゃんには妹友ちゃんがいるんだよ?』
妹ちゃんは疑問を呈した。
『いい兄貴としてあたしを慰めるだけなんじゃ』
「そんなのやってみなきゃわからないよ。まあ、それで駄目でも次の手を考えるからさ。あんたは逐一現在地と到着予想時間をあたしに密かにメールしなよ。できる?」
『うん、やってみる』
元旦の昼、作戦は予定どおり決行されたが想定外の出来事が起きた。あいつにもあたしにも今では関心のないはずの妹友ちゃんがあいつとあたしが寄り添って手を繋いでいるところを目撃し、お兄
さんに怒鳴り散らすくらいにパニックに陥ったというのだ。
704: 2012/01/13(金) 22:15:14.86 ID:rO4o6nxQo
その日、参拝を終えたあたしと先輩がファミレスで休憩していると、妹ちゃんからメールが来た。これから電話しても大丈夫かという内容だった。あたしは先輩に断ってトイレに立った。大丈夫だよと返信するとすぐに妹ちゃんから電話がかかってきた。
妹ちゃんとお兄さんは二人きりで車で帰宅する途中食事のためファミレスに立ち寄った。妹ちゃんはそこでトイレに行く振りをしてあたし電話してきたのだ。
あたしたちは二人ともトイレの中で電話をしていたのであまり長く会話を続けるわけにはいかなかった。
妹ちゃんはあたしにとって想定外の報告をした。
『やっぱり委員長ちゃんの言うとおりだったみたい。妹友ちゃん、先輩が委員長ちゃんと手を繋いでるのを見かけてショック受けてた』
淡々と報告する妹ちゃんの声が携帯から響いた。
「え? ショックって」
あたしは一瞬絶句した。妹ちゃんを愛している妹友ちゃんがあたしと先輩のツーショットを見かけたくらいでショックを受けるはずがない。
『やっぱり妹友ちゃんが好きなのはお兄さんじゃなくて先輩だったのね。だからあんなにショックを受けてたんだね』
妹友ちゃんの行動は妹ちゃんにはいろいろ納得できるものだったらしかった。
『お兄ちゃん、妹友ちゃんの言葉に傷ついてた』
妹ちゃんはポツンと言った。それだけでも彼女にとっては許しがたい罪だったのだろう。はっきりと言わなかったけど妹ちゃんの口調には覚悟と言うか、決心のような非常に強い意志の片鱗が感じられた。
『妹友ちゃんは先輩を諦めたけど、先輩を奪ったあたしに復讐するつもりでお兄ちゃんに近づいたんだと思ってたけど』
妹ちゃんは続けた。
『まだ先輩のことを諦めていなかったのね。それでいてあたしのお兄ちゃんを』
あたしがこのゲームを持ちかけた時には、親友の妹友ちゃんを思ってためらっていた頃の妹ちゃんはもうどこにも見当たらなかった。
妹ちゃんの静かな口調の裏には、むしろ自分と自分の大切なお兄さんを引き裂いたばかりか、お兄さんを騙し利用した妹友ちゃんへの剥き出しの憎悪が感じられた。
妹ちゃんとお兄さんは二人きりで車で帰宅する途中食事のためファミレスに立ち寄った。妹ちゃんはそこでトイレに行く振りをしてあたし電話してきたのだ。
あたしたちは二人ともトイレの中で電話をしていたのであまり長く会話を続けるわけにはいかなかった。
妹ちゃんはあたしにとって想定外の報告をした。
『やっぱり委員長ちゃんの言うとおりだったみたい。妹友ちゃん、先輩が委員長ちゃんと手を繋いでるのを見かけてショック受けてた』
淡々と報告する妹ちゃんの声が携帯から響いた。
「え? ショックって」
あたしは一瞬絶句した。妹ちゃんを愛している妹友ちゃんがあたしと先輩のツーショットを見かけたくらいでショックを受けるはずがない。
『やっぱり妹友ちゃんが好きなのはお兄さんじゃなくて先輩だったのね。だからあんなにショックを受けてたんだね』
妹友ちゃんの行動は妹ちゃんにはいろいろ納得できるものだったらしかった。
『お兄ちゃん、妹友ちゃんの言葉に傷ついてた』
妹ちゃんはポツンと言った。それだけでも彼女にとっては許しがたい罪だったのだろう。はっきりと言わなかったけど妹ちゃんの口調には覚悟と言うか、決心のような非常に強い意志の片鱗が感じられた。
『妹友ちゃんは先輩を諦めたけど、先輩を奪ったあたしに復讐するつもりでお兄ちゃんに近づいたんだと思ってたけど』
妹ちゃんは続けた。
『まだ先輩のことを諦めていなかったのね。それでいてあたしのお兄ちゃんを』
あたしがこのゲームを持ちかけた時には、親友の妹友ちゃんを思ってためらっていた頃の妹ちゃんはもうどこにも見当たらなかった。
妹ちゃんの静かな口調の裏には、むしろ自分と自分の大切なお兄さんを引き裂いたばかりか、お兄さんを騙し利用した妹友ちゃんへの剥き出しの憎悪が感じられた。
705: 2012/01/13(金) 22:20:25.50 ID:rO4o6nxQo
・・・・・・何かおかしい。あたしは必氏に考えを巡らそうとした。妹友ちゃんのお兄さんへの気持ちについては妹ちゃんの言うとおりで、妹友ちゃんはお兄さんのことは好きではない。
でも、妹友ちゃんがこんなひどいゲームに踏み切ったのは妹ちゃんへの愛情が故だったはずだ。先輩のことを好きな振りをしたのだってそう。つまり妹友ちゃんにとっては先輩もお兄さんも道具に過ぎず、妹友ちゃんの本当の恋愛感情は妹ちゃんに向けられていたはずだった。
あたしと先輩が一緒にいるところを目撃したくらいで妹友ちゃんが取り乱したりするはずはなかった。それも彼女が大好きな(ふりをしている)お兄さんに刺々しい言葉で怒鳴るほどには。
あたしは何か間違えているのだろうか。何か勘違いをしているのだろうか。
『それでね、委員長ちゃんの指示を受けないで勝手にしちゃったんだけど』
妹ちゃんの話は続いていた。
『傷ついたあたしをお兄ちゃんが慰めるって感じじゃなくなっちゃって。むしろお兄ちゃんの方が考え込んでたんで』
「うん」
あたしは返事をした。まだ頭の中は混乱している最中だったけど。
『だから。妹友ちゃんがお兄ちゃんのことを好きじゃなかったことを、先輩を自分から奪ったあたしへの仕返しのためにお兄ちゃんに近づいたことを話しちゃった』
「・・・・・・」
それがいいのか悪いのかあたしには判断できなかった。でも、妹友ちゃんの意図がどうであれ妹ちゃんとお兄さんの仲が接近すればよいのだ。
あたしは気を取り直して妹ちゃんに聞いた。
「それで? お兄さんの反応はどうだった?」
『うん、混乱してはいたけどそんなに傷ついてはいなかったみたい』
妹ちゃんの話によると。お兄さんはこう言ったそうだ。
でも、妹友ちゃんがこんなひどいゲームに踏み切ったのは妹ちゃんへの愛情が故だったはずだ。先輩のことを好きな振りをしたのだってそう。つまり妹友ちゃんにとっては先輩もお兄さんも道具に過ぎず、妹友ちゃんの本当の恋愛感情は妹ちゃんに向けられていたはずだった。
あたしと先輩が一緒にいるところを目撃したくらいで妹友ちゃんが取り乱したりするはずはなかった。それも彼女が大好きな(ふりをしている)お兄さんに刺々しい言葉で怒鳴るほどには。
あたしは何か間違えているのだろうか。何か勘違いをしているのだろうか。
『それでね、委員長ちゃんの指示を受けないで勝手にしちゃったんだけど』
妹ちゃんの話は続いていた。
『傷ついたあたしをお兄ちゃんが慰めるって感じじゃなくなっちゃって。むしろお兄ちゃんの方が考え込んでたんで』
「うん」
あたしは返事をした。まだ頭の中は混乱している最中だったけど。
『だから。妹友ちゃんがお兄ちゃんのことを好きじゃなかったことを、先輩を自分から奪ったあたしへの仕返しのためにお兄ちゃんに近づいたことを話しちゃった』
「・・・・・・」
それがいいのか悪いのかあたしには判断できなかった。でも、妹友ちゃんの意図がどうであれ妹ちゃんとお兄さんの仲が接近すればよいのだ。
あたしは気を取り直して妹ちゃんに聞いた。
「それで? お兄さんの反応はどうだった?」
『うん、混乱してはいたけどそんなに傷ついてはいなかったみたい』
妹ちゃんの話によると。お兄さんはこう言ったそうだ。
706: 2012/01/13(金) 22:21:05.13 ID:rO4o6nxQo
「妹友の本当の気持ちを知ってショックだったけど。俺、少しだけほっとしているかも」
「俺さ、妹友の告白にOKしたその日におまえと、その、そういうことをしたわけだけど」
「それって結構罪悪感感じててさ。妹友と一緒にいてもいつも重く心にのしかかってて」
「でも、妹友が俺を利用しているだけだとしたら、そんなに罪悪感感じなくてもいいからさ」
いい反応だった。お兄さんも妹ちゃんのことが好きなのだろう。
とりあえず化粧直しを口実にするにしてもそろそろ限界だった。あたしはまたお兄さんや妹友ちゃん関係で進展があれば連絡するように妹ちゃんに頼み、あいつの待つ席に戻った。
あいつは席に戻ったあたしの手を握りあたしの目を見て微笑んでくれた。あたしは幸せだったけど、何も考えずにただあいつに甘えていることはできなかった。
あたしだけが漁夫の利を得ているのだろうか。あいつの柔らかい視線に抱かれて幸せを感じながらみ、あたしは妹ちゃんとそしてなぜか妹友ちゃんにまで罪悪感を感じた。
「俺さ、妹友の告白にOKしたその日におまえと、その、そういうことをしたわけだけど」
「それって結構罪悪感感じててさ。妹友と一緒にいてもいつも重く心にのしかかってて」
「でも、妹友が俺を利用しているだけだとしたら、そんなに罪悪感感じなくてもいいからさ」
いい反応だった。お兄さんも妹ちゃんのことが好きなのだろう。
とりあえず化粧直しを口実にするにしてもそろそろ限界だった。あたしはまたお兄さんや妹友ちゃん関係で進展があれば連絡するように妹ちゃんに頼み、あいつの待つ席に戻った。
あいつは席に戻ったあたしの手を握りあたしの目を見て微笑んでくれた。あたしは幸せだったけど、何も考えずにただあいつに甘えていることはできなかった。
あたしだけが漁夫の利を得ているのだろうか。あいつの柔らかい視線に抱かれて幸せを感じながらみ、あたしは妹ちゃんとそしてなぜか妹友ちゃんにまで罪悪感を感じた。
707: 2012/01/13(金) 22:24:29.41 ID:rO4o6nxQo
この後の話を語るのは正直気が重い。
結局、妹友ちゃんはお兄さんに初詣の言い訳をしお兄さんはそれを受け入れ妹友ちゃんと復縁した。
それを知らなかった妹ちゃんは先輩と別れた話をお兄さんに伝え、お兄さんに抱きつき甘えた。妹ちゃんはお兄さんが妹友ちゃんとの関係を整理したものだと思い込んでいたそうだ。
妹ちゃんは結局辛い思いをすることになった。お兄さんは妹友ちゃんと別れなかった話を自分に抱きついている妹ちゃんにせざるを得なかったのだ。
お兄さんが妹友ちゃんについて語った言葉を妹ちゃんも受け入れた。妹友ちゃんには微塵も信頼を抱かないようになっていた妹ちゃんだったけど、大好きなお兄さんの判断は受け入れた。
妹友ちゃんは泣きながら本当に好きなのがお兄さんだけ、昔好きだった先輩とあたしのツーショットを目撃してなぜかうろたえただけだとお兄さんに釈明したらしい。そして、結局お兄さんもそれを信じた。仕返しのためだけに処Oを捧げる女の子なんているはずないよという意味のことをお兄さんは辛そうに妹ちゃんに話した。
妹ちゃんとお兄さんがこの時点で相思相愛なのは間違いなかった。でも、妹ちゃんによればお兄さんは悪意がない妹友ちゃんを一方的に振れるような人ではないそうだ。
結局あたしが仕掛けたこの騒動で一人きりになってしまったのは妹ちゃんだけだった。
ただ不思議なことに妹ちゃんにはそれほど落ち込んだ様子はなかった。この一連の無意味に思われた騒動で妹ちゃんはお兄さんの自分への想いを確認できたのだろう。結果として妹友ちゃんとお兄さんは付き合い続けているけど、お兄さんが本当に好きなのは自分のことだと確信したのではないか。
こうして1月が終わりカレンダーは2月に入った
結局、妹友ちゃんはお兄さんに初詣の言い訳をしお兄さんはそれを受け入れ妹友ちゃんと復縁した。
それを知らなかった妹ちゃんは先輩と別れた話をお兄さんに伝え、お兄さんに抱きつき甘えた。妹ちゃんはお兄さんが妹友ちゃんとの関係を整理したものだと思い込んでいたそうだ。
妹ちゃんは結局辛い思いをすることになった。お兄さんは妹友ちゃんと別れなかった話を自分に抱きついている妹ちゃんにせざるを得なかったのだ。
お兄さんが妹友ちゃんについて語った言葉を妹ちゃんも受け入れた。妹友ちゃんには微塵も信頼を抱かないようになっていた妹ちゃんだったけど、大好きなお兄さんの判断は受け入れた。
妹友ちゃんは泣きながら本当に好きなのがお兄さんだけ、昔好きだった先輩とあたしのツーショットを目撃してなぜかうろたえただけだとお兄さんに釈明したらしい。そして、結局お兄さんもそれを信じた。仕返しのためだけに処Oを捧げる女の子なんているはずないよという意味のことをお兄さんは辛そうに妹ちゃんに話した。
妹ちゃんとお兄さんがこの時点で相思相愛なのは間違いなかった。でも、妹ちゃんによればお兄さんは悪意がない妹友ちゃんを一方的に振れるような人ではないそうだ。
結局あたしが仕掛けたこの騒動で一人きりになってしまったのは妹ちゃんだけだった。
ただ不思議なことに妹ちゃんにはそれほど落ち込んだ様子はなかった。この一連の無意味に思われた騒動で妹ちゃんはお兄さんの自分への想いを確認できたのだろう。結果として妹友ちゃんとお兄さんは付き合い続けているけど、お兄さんが本当に好きなのは自分のことだと確信したのではないか。
こうして1月が終わりカレンダーは2月に入った
712: 2012/01/13(金) 23:19:17.27 ID:rO4o6nxQo
妹ちゃんは相変わらず妹友ちゃんと距離を置き、あたしやあたしの知り合いの生徒会系の女の子たちと過ごしていた。妹ちゃんはすぐにあたしのグループの女の子たちをも魅了し彼女は以前からこのグループで過ごしていたかのように自然に馴染んでいた。あたしのグループの子たちは、妹ちゃんがあんなに派手な女の子たちと一緒にいたのは妹ちゃんが可愛いから誘いを断れずにあの子たちと一緒にいたのに違いない、でも軽薄なあの子たちに嫌気がさした妹ちゃんは本来いるべき場所にようやく来たのだと考えているようだった。
あたしの作戦の暗澹とした失敗の後も、妹ちゃんはあたしを責めようとはしなかった。客観的に見ればあたしは妹ちゃんからあいつをただ奪っただけの女だった。あたしたちのグループ内では彼氏がいる子の方が少数派だったからあまり噂になることはなかったけど、妹ちゃんが元いたグループの子たちの間ではあたしと妹ちゃんと先輩の話は相当センセーショナルな噂になっていたようだ。
妹ちゃんから先輩を奪ったあたし。それなのに妹ちゃんはあたしを許してあたしと一緒に行動している。妹ちゃんが元のグループの子たちと距離を置きだしてもなお妹ちゃんを悪く言う子はいなかったみたいだ。
むしろ悪者になったのはあたしだった。略奪愛とか囁かれていたけど、でもあたしにはそのこと自体はそんなに気にならなかった。その頃あたしはあいつと肉体的にも結ばれた。それはあいつの受験が失敗だったことがわかった日だった。あたしはあいつを励まして来年一緒に同じ大学を受験しようと慰めているうちに・・・・・・。
つまりそういう関係になったのだった。
先輩と心身ともに結ばれたあたしは初詣の日以来漠然感じるようになっていた不安と正面から向き合おうと考えた。あたしは最初から妹友ちゃんのことを思い返してみた。
あたしの作戦の暗澹とした失敗の後も、妹ちゃんはあたしを責めようとはしなかった。客観的に見ればあたしは妹ちゃんからあいつをただ奪っただけの女だった。あたしたちのグループ内では彼氏がいる子の方が少数派だったからあまり噂になることはなかったけど、妹ちゃんが元いたグループの子たちの間ではあたしと妹ちゃんと先輩の話は相当センセーショナルな噂になっていたようだ。
妹ちゃんから先輩を奪ったあたし。それなのに妹ちゃんはあたしを許してあたしと一緒に行動している。妹ちゃんが元のグループの子たちと距離を置きだしてもなお妹ちゃんを悪く言う子はいなかったみたいだ。
むしろ悪者になったのはあたしだった。略奪愛とか囁かれていたけど、でもあたしにはそのこと自体はそんなに気にならなかった。その頃あたしはあいつと肉体的にも結ばれた。それはあいつの受験が失敗だったことがわかった日だった。あたしはあいつを励まして来年一緒に同じ大学を受験しようと慰めているうちに・・・・・・。
つまりそういう関係になったのだった。
先輩と心身ともに結ばれたあたしは初詣の日以来漠然感じるようになっていた不安と正面から向き合おうと考えた。あたしは最初から妹友ちゃんのことを思い返してみた。
713: 2012/01/13(金) 23:22:47.76 ID:rO4o6nxQo
妹友ちゃんは同性愛者。高校に入学して最初に好きになったのはあたし。その次は妹ちゃん。
ここまでは本人の告白なので間違いはないだろう。
そして妹ちゃんに同性愛者だと悟られて嫌われるのを避けるために、妹友ちゃんは先輩が好きな振りをする。
・・・・・・あくまで振りで嘘なのだ。だから妹ちゃんが信じているように妹友ちゃんが先輩に未練がある可能性はない。
ではなぜあたしと先輩は手を繋いで一緒にいるのを目撃して本気で狼狽したのか。
まだあたしに未練がある? 先輩と結ばれたあたしには正直気持ち悪い想像だった。でもそれはないはずだった。あたしを諦めた妹友ちゃんは妹ちゃんに一目惚れをしたのだから。そのことを告白したあの子の表情に嘘は無かったと思う。
妹友ちゃんがあたしの先輩のことを好きでもないのに好きな振りをしたせいであたしには彼女への偏見があるのだろうか。
あたしは妹友ちゃんのそれまでの行動を忘れることにして、とりあえずあの雨の日にお兄さんと出合ってからの妹友ちゃんの行動を思い起こしてみた。大部分が妹ちゃんからの伝聞だったけど。
雨の日にお兄さんと出会いその夜に妹ちゃんにお兄さんのメアドをねだった妹友ちゃん、病気になったお兄さんを見舞った妹友ちゃん、学園祭にお兄さんを案内しその日のうちにお兄さんに告白した妹友ちゃん、お兄さんと付き合いだした最初のイヴの日にお兄さんのアパートにお泊りした妹友ちゃん。
・・・・・・それは、妹友ちゃんがレOビアンであることを考慮しなければ始めて恋した男の人に夢中になった普通の女の子の姿だった。
ここまでは本人の告白なので間違いはないだろう。
そして妹ちゃんに同性愛者だと悟られて嫌われるのを避けるために、妹友ちゃんは先輩が好きな振りをする。
・・・・・・あくまで振りで嘘なのだ。だから妹ちゃんが信じているように妹友ちゃんが先輩に未練がある可能性はない。
ではなぜあたしと先輩は手を繋いで一緒にいるのを目撃して本気で狼狽したのか。
まだあたしに未練がある? 先輩と結ばれたあたしには正直気持ち悪い想像だった。でもそれはないはずだった。あたしを諦めた妹友ちゃんは妹ちゃんに一目惚れをしたのだから。そのことを告白したあの子の表情に嘘は無かったと思う。
妹友ちゃんがあたしの先輩のことを好きでもないのに好きな振りをしたせいであたしには彼女への偏見があるのだろうか。
あたしは妹友ちゃんのそれまでの行動を忘れることにして、とりあえずあの雨の日にお兄さんと出合ってからの妹友ちゃんの行動を思い起こしてみた。大部分が妹ちゃんからの伝聞だったけど。
雨の日にお兄さんと出会いその夜に妹ちゃんにお兄さんのメアドをねだった妹友ちゃん、病気になったお兄さんを見舞った妹友ちゃん、学園祭にお兄さんを案内しその日のうちにお兄さんに告白した妹友ちゃん、お兄さんと付き合いだした最初のイヴの日にお兄さんのアパートにお泊りした妹友ちゃん。
・・・・・・それは、妹友ちゃんがレOビアンであることを考慮しなければ始めて恋した男の人に夢中になった普通の女の子の姿だった。
714: 2012/01/13(金) 23:28:43.59 ID:rO4o6nxQo
あたしには恐ろしい考えが脳裏に浮かんでいた。
・・・・・・あたしは何かものすごく思い違いをしていたのかもしれない。
一方的に悪者にしていた妹友ちゃん。
勝手に女の子しか好きにならない少数派の子と決め付けていた妹友ちゃん。
妹ちゃんの本当の恋を成就させないために好きでもないお兄さんを誘惑した妹友ちゃん。
その全てが間違いだとしたら?
あたしは震える心を宥めつつ冷静になろうと努めた。あくまで仮の話だ。
妹友ちゃんが本当にお兄さんを好きになったとしたら、今までの妹友ちゃんの行動で説明のつかないのは初詣の時の行動だけだった。
ただ、妹友ちゃんは妹ちゃんのお兄さんへの切なく報われない想いに気がついていたことは間違いない。
あたしはこの辺りでもう確信していたのだろう。
妹友ちゃんはあいつのことは好きではない。
それなのに妹友ちゃんが妹ちゃんとあいつが別れるのを恐れる理由。それはあいつと別れた妹ちゃんの剥き出しの好意がお兄さんに向けられるのを恐れたのだろう。
そこまでは今までもあたしには理解できていた。
でもあたしはひどく考え違いをしていたのかもしれない。校内で妹ちゃんと疎遠になってもあまり気にする様子がなくお兄さんと逢瀬を重ねている妹友ちゃんのことを思い浮かべると。
そう。あたし、妹友ちゃんが初詣事件をきっかけにお兄さんに剥き出しの好意をぶつける妹ちゃんを、お兄さんにを取られることを心配しているのだと考えていた。
でも。実は妹友ちゃんは初詣事件をきかっけけにお兄さんに剥き出しの好意をぶつける妹ちゃんに、お兄さんを盗られることを心配していたのだとしたら。
その場合妹ちゃんはバイセクシャルで本当にお兄さんを愛してしまったということ。妹友ちゃんのお兄さんへの好意は全て真実で、あたしと妹ちゃん、いやあたしは妹友ちゃんの純粋な恋愛をただ邪魔しただけになるのだ。
・・・・・・あたしは何かものすごく思い違いをしていたのかもしれない。
一方的に悪者にしていた妹友ちゃん。
勝手に女の子しか好きにならない少数派の子と決め付けていた妹友ちゃん。
妹ちゃんの本当の恋を成就させないために好きでもないお兄さんを誘惑した妹友ちゃん。
その全てが間違いだとしたら?
あたしは震える心を宥めつつ冷静になろうと努めた。あくまで仮の話だ。
妹友ちゃんが本当にお兄さんを好きになったとしたら、今までの妹友ちゃんの行動で説明のつかないのは初詣の時の行動だけだった。
ただ、妹友ちゃんは妹ちゃんのお兄さんへの切なく報われない想いに気がついていたことは間違いない。
あたしはこの辺りでもう確信していたのだろう。
妹友ちゃんはあいつのことは好きではない。
それなのに妹友ちゃんが妹ちゃんとあいつが別れるのを恐れる理由。それはあいつと別れた妹ちゃんの剥き出しの好意がお兄さんに向けられるのを恐れたのだろう。
そこまでは今までもあたしには理解できていた。
でもあたしはひどく考え違いをしていたのかもしれない。校内で妹ちゃんと疎遠になってもあまり気にする様子がなくお兄さんと逢瀬を重ねている妹友ちゃんのことを思い浮かべると。
そう。あたし、妹友ちゃんが初詣事件をきっかけにお兄さんに剥き出しの好意をぶつける妹ちゃんを、お兄さんにを取られることを心配しているのだと考えていた。
でも。実は妹友ちゃんは初詣事件をきかっけけにお兄さんに剥き出しの好意をぶつける妹ちゃんに、お兄さんを盗られることを心配していたのだとしたら。
その場合妹ちゃんはバイセクシャルで本当にお兄さんを愛してしまったということ。妹友ちゃんのお兄さんへの好意は全て真実で、あたしと妹ちゃん、いやあたしは妹友ちゃんの純粋な恋愛をただ邪魔しただけになるのだ。
721: 2012/01/14(土) 21:01:21.58 ID:0mvEX45Yo
あたしの悩みをよそに妹ちゃんはいろいろ吹っ切れたようだった。妹友ちゃんが好きな人が先輩でもお兄さんでもどちらでもいい。
昼休みの中庭で妹ちゃんはそう言った。
「妹友ちゃんが先輩のことの意趣晴らしにお兄ちゃんを利用したのなら妹友ちゃんを許さない」
妹ちゃんの表情は感情に高ぶることもなく冷静だった。
「・・・・・・妹ちゃん」
あたしは彼女の言葉聞くのが辛かった。妹友ちゃんの今度だけはうまく行きそうな恋愛感情を邪魔しているのだから。
「でもね」
妹ちゃんは続けた。
「妹友ちゃんがお兄ちゃんの言うように本当にお兄ちゃんのことを好きだとしても」
「うん」
「あたしはもう遠慮するのをやめたの。無理にお兄ちゃんの気持ちを振り向かせる気はないけど」
あたしは黙った妹ちゃんの言葉の続きを待った。
「お兄ちゃんに妹友ちゃんと別れてとかは言わない。でもお兄ちゃんがあたしを求めるならいつでも」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
あたしは口を挟んだ。
「あんたまさか」
妹ちゃんは俯いて赤くなった。
「・・・・・・うん。あたしお兄ちゃんと結ばれたの。後悔はしてないよ」
昼休みの中庭で妹ちゃんはそう言った。
「妹友ちゃんが先輩のことの意趣晴らしにお兄ちゃんを利用したのなら妹友ちゃんを許さない」
妹ちゃんの表情は感情に高ぶることもなく冷静だった。
「・・・・・・妹ちゃん」
あたしは彼女の言葉聞くのが辛かった。妹友ちゃんの今度だけはうまく行きそうな恋愛感情を邪魔しているのだから。
「でもね」
妹ちゃんは続けた。
「妹友ちゃんがお兄ちゃんの言うように本当にお兄ちゃんのことを好きだとしても」
「うん」
「あたしはもう遠慮するのをやめたの。無理にお兄ちゃんの気持ちを振り向かせる気はないけど」
あたしは黙った妹ちゃんの言葉の続きを待った。
「お兄ちゃんに妹友ちゃんと別れてとかは言わない。でもお兄ちゃんがあたしを求めるならいつでも」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
あたしは口を挟んだ。
「あんたまさか」
妹ちゃんは俯いて赤くなった。
「・・・・・・うん。あたしお兄ちゃんと結ばれたの。後悔はしてないよ」
722: 2012/01/14(土) 21:02:56.94 ID:0mvEX45Yo
まずい。あたしはその時そう思った。ここまでしてしまった以上今更どうしようもないことはわかっていたけど、せめて事態が悪化しないようにと考えていた矢先だった。
妹友ちゃんのお兄さんへの気持ちが真実だとしたら、あたしは相当ひどいことを彼女にしたことになる。確かに彼女は自己中心的で周囲の迷惑も顧みないし口が軽く気軽に人の秘密を洩らしたりす
る。今のあたしは妹友ちゃんが好きか嫌いかと聞かれたら嫌いだった。それも大嫌いだった。
だからといって妹ちゃんが仕掛けたことがゲームではなく純粋な恋心から来ているものならあたしが邪魔をするなんてもってのほかだった。まして妹友ちゃんを邪魔することによりあたしも長年の片想いを成就させたことだし。
ただひとつ救いだったのは妹ちゃんのお兄さんへの恋心もまた純粋なものだということだった。妹ちゃんはあたしに唆されて妹友ちゃんからお兄さんを取り戻すことにした。でも、妹友ちゃんへの嫌悪と自分の恋の達成を動機として妹ちゃんをアシストしたあたしと違って、妹ちゃんは自分の本心に従って行動しただけなのだ。妹友ちゃんの本当の動機を知っても後悔はしないだろう。
現に、妹友ちゃんが本当にお兄さんのことを好きだとしてももう妹友ちゃんには遠慮しないと明言しているのだから。
あたしは妹友ちゃんへの罪悪感に妹ちゃんを巻き込まないですんだことに少しだけほっとした。いずれにせよもう引き返せなかった。これ以上あたしにできること何もなかった。
仕掛けておいて無責任なようだけど、これまで周りに振り回され流されてきたお兄さんにやっとボールが渡ったのだ。混沌とした事態が急にくっきりとした姿を現し始めていた。
一人の男を巡る二人の女の子の争い。決着はお兄さんがどちらを選ぶかで決まるのだ。
妹友ちゃんのお兄さんへの気持ちが真実だとしたら、あたしは相当ひどいことを彼女にしたことになる。確かに彼女は自己中心的で周囲の迷惑も顧みないし口が軽く気軽に人の秘密を洩らしたりす
る。今のあたしは妹友ちゃんが好きか嫌いかと聞かれたら嫌いだった。それも大嫌いだった。
だからといって妹ちゃんが仕掛けたことがゲームではなく純粋な恋心から来ているものならあたしが邪魔をするなんてもってのほかだった。まして妹友ちゃんを邪魔することによりあたしも長年の片想いを成就させたことだし。
ただひとつ救いだったのは妹ちゃんのお兄さんへの恋心もまた純粋なものだということだった。妹ちゃんはあたしに唆されて妹友ちゃんからお兄さんを取り戻すことにした。でも、妹友ちゃんへの嫌悪と自分の恋の達成を動機として妹ちゃんをアシストしたあたしと違って、妹ちゃんは自分の本心に従って行動しただけなのだ。妹友ちゃんの本当の動機を知っても後悔はしないだろう。
現に、妹友ちゃんが本当にお兄さんのことを好きだとしてももう妹友ちゃんには遠慮しないと明言しているのだから。
あたしは妹友ちゃんへの罪悪感に妹ちゃんを巻き込まないですんだことに少しだけほっとした。いずれにせよもう引き返せなかった。これ以上あたしにできること何もなかった。
仕掛けておいて無責任なようだけど、これまで周りに振り回され流されてきたお兄さんにやっとボールが渡ったのだ。混沌とした事態が急にくっきりとした姿を現し始めていた。
一人の男を巡る二人の女の子の争い。決着はお兄さんがどちらを選ぶかで決まるのだ。
726: 2012/01/14(土) 22:35:58.03 ID:0mvEX45Yo
兄「ただいま・・・・・・って。おまえ何で玄関に座ってるんだよ」
妹「あ、お兄ちゃん。おかえり」
兄「・・・・・・何やってんの?」
妹「さっきまで立っていたんだけど疲れちゃったから」
兄「はい?」
妹「同じ場所にじっと立ち続けるって結構体力いるんだね」
兄「・・・・・・それ答えになってねえし」
妹「お兄ちゃんを待ってたんだけど、よく考えたら何も立ってることないじゃんって途中で気がついた」
兄「・・・・・・そもそもわざわざ玄関ホールで待つ必要あるの?」
妹「帰ってきたお兄ちゃんに一番早く会える場所だから」
兄「この狭い家の中じゃ1分も変んないだろ(やべえこいつ今日も可愛すぎる)」
妹「これまでずっとずっと待ってたからね」
兄「・・・・・・」
妹「もうほんの少しでも待ちたくないの」
兄「・・・・・・妹」ダキヨセ
妹「なに?」ギュ
兄「風呂入るわ」
妹「うん。もう沸いてるよ」
兄「一緒に入ろう」
妹「・・・・・・誘ってくれないかなって思ってた」
兄(・・・・・・もうこいつと離れては暮らせないな)
妹「あ、お兄ちゃん。おかえり」
兄「・・・・・・何やってんの?」
妹「さっきまで立っていたんだけど疲れちゃったから」
兄「はい?」
妹「同じ場所にじっと立ち続けるって結構体力いるんだね」
兄「・・・・・・それ答えになってねえし」
妹「お兄ちゃんを待ってたんだけど、よく考えたら何も立ってることないじゃんって途中で気がついた」
兄「・・・・・・そもそもわざわざ玄関ホールで待つ必要あるの?」
妹「帰ってきたお兄ちゃんに一番早く会える場所だから」
兄「この狭い家の中じゃ1分も変んないだろ(やべえこいつ今日も可愛すぎる)」
妹「これまでずっとずっと待ってたからね」
兄「・・・・・・」
妹「もうほんの少しでも待ちたくないの」
兄「・・・・・・妹」ダキヨセ
妹「なに?」ギュ
兄「風呂入るわ」
妹「うん。もう沸いてるよ」
兄「一緒に入ろう」
妹「・・・・・・誘ってくれないかなって思ってた」
兄(・・・・・・もうこいつと離れては暮らせないな)
727: 2012/01/14(土) 22:37:37.41 ID:0mvEX45Yo
風呂の中
妹「お兄ちゃん」
兄「うん?」
妹「最近はいつも大学終わるとうちに帰ってきてくれて嬉しいけど」
兄「うん」
妹「アパートには帰らなくていいの?」
兄「別にいいんじゃない? 家賃滞納してるわけじゃないし」
妹「それはそうだけど」
兄「母さんたちの仕事の山を越えるまではここにいるから。そんでおまえが家に一人きりじゃなくなったら、アパートに戻る」
妹「あたしは嬉しいけど・・・・・・家って住んでいないとすぐ汚れちゃうんだよ」
兄「ああ」
妹「・・・・・・じゃあ、明日は土曜日だから掃除しに行く」
兄「別にいいのに」
妹「いいの・・・・・・それとも妹友ちゃんがいるのにまずいかな」
兄「そんなことねえよ。じゃあ、明日一緒に行くか」
妹「うん。たまにはお兄ちゃんのアパートに泊まってもいいね」
兄「あそこで初hか・・・・・・って、痛てえよつねるな」
妹「お兄ちゃんのh」
兄「・・・・・・つうかさ、おまえわざとやってる?」
妹「何が?」
兄「おまえが風呂の中で抱きついてくるから当たってるんですけど。」
妹「・・・・・・昨日はおまえは当たるほど無いなって言ってたじゃん」
兄「無いなりに感触がある。おまえ誘ってるだろ」
妹「・・・・・・」
兄「どうした」
妹「・・・・・・ちょっとだけ誘惑してみたかったかも」
兄「その気になっちゃったよ。おまえのせいだからな」
妹「お兄ちゃんが勝手に気分出しちゃったんでしょ。あたしいのせいじゃないよ」
兄「・・・・・・誘惑したくせに」
妹「・・・・・・」
兄「・・・・・・風呂上がるか」
妹「うん」
兄「今日はどっちの部屋?」
妹「・・・・・・お兄ちゃんの部屋で」
妹「お兄ちゃん」
兄「うん?」
妹「最近はいつも大学終わるとうちに帰ってきてくれて嬉しいけど」
兄「うん」
妹「アパートには帰らなくていいの?」
兄「別にいいんじゃない? 家賃滞納してるわけじゃないし」
妹「それはそうだけど」
兄「母さんたちの仕事の山を越えるまではここにいるから。そんでおまえが家に一人きりじゃなくなったら、アパートに戻る」
妹「あたしは嬉しいけど・・・・・・家って住んでいないとすぐ汚れちゃうんだよ」
兄「ああ」
妹「・・・・・・じゃあ、明日は土曜日だから掃除しに行く」
兄「別にいいのに」
妹「いいの・・・・・・それとも妹友ちゃんがいるのにまずいかな」
兄「そんなことねえよ。じゃあ、明日一緒に行くか」
妹「うん。たまにはお兄ちゃんのアパートに泊まってもいいね」
兄「あそこで初hか・・・・・・って、痛てえよつねるな」
妹「お兄ちゃんのh」
兄「・・・・・・つうかさ、おまえわざとやってる?」
妹「何が?」
兄「おまえが風呂の中で抱きついてくるから当たってるんですけど。」
妹「・・・・・・昨日はおまえは当たるほど無いなって言ってたじゃん」
兄「無いなりに感触がある。おまえ誘ってるだろ」
妹「・・・・・・」
兄「どうした」
妹「・・・・・・ちょっとだけ誘惑してみたかったかも」
兄「その気になっちゃったよ。おまえのせいだからな」
妹「お兄ちゃんが勝手に気分出しちゃったんでしょ。あたしいのせいじゃないよ」
兄「・・・・・・誘惑したくせに」
妹「・・・・・・」
兄「・・・・・・風呂上がるか」
妹「うん」
兄「今日はどっちの部屋?」
妹「・・・・・・お兄ちゃんの部屋で」
728: 2012/01/14(土) 22:39:26.75 ID:0mvEX45Yo
翌朝兄の部屋
兄(腕が重い。痺れて感覚がないくらいだ。こいつすげえ華奢で軽いんだけど)
兄(それでも一晩中腕枕させられると辛いものがあるな)
兄(・・・・・)
兄(でも。これまでこいつはもっと辛かったんだろうな)
兄(腕の一本や二本くらい痺れたってどうでもいいか)
兄(妹・・・・・・)
兄(別に身体の関係ができたからというわけじゃない)
兄(うちの親はどちらも仕事が忙しくて昔から家で子どもたちだけなんてよくあったことだった)
兄(俺は別に寂しくなんかなかったけど、こいつはずっと寂しかったんだ)
兄(唯一そばにいる俺を頼りたくて、繋がりたくて)
兄(それを俺はずっと無視し続けていた。悪気があったわけじゃないけど)
兄(全然兄らしいことしてやれなかったし)
兄(あ、そういやこんなこともあったな)
兄(親の帰りが遅い時には電話のところにいつもお金が置いてあった。だいたい近所のそば屋とかで出前を取って夕食にするんだけど)
兄(まあ、俺はいつも自分の皿を持って部屋にこもって食ってたけどな)
兄(それはともかく、あの時はコンビニで売っているトレカを買いたいけど小遣いは使い果たしてたし、電話のとこの金でトレカ3セット買っちゃったんだよな)
兄(残った金でおにぎり1個だけ買って妹に渡したっけ。母さんが置いておく金を間違えたみたいだって言って)
兄(次の日妹は母さんに文句言うだろうからてっきり母さんに怒られるかと思ったけど)
兄(腕が重い。痺れて感覚がないくらいだ。こいつすげえ華奢で軽いんだけど)
兄(それでも一晩中腕枕させられると辛いものがあるな)
兄(・・・・・)
兄(でも。これまでこいつはもっと辛かったんだろうな)
兄(腕の一本や二本くらい痺れたってどうでもいいか)
兄(妹・・・・・・)
兄(別に身体の関係ができたからというわけじゃない)
兄(うちの親はどちらも仕事が忙しくて昔から家で子どもたちだけなんてよくあったことだった)
兄(俺は別に寂しくなんかなかったけど、こいつはずっと寂しかったんだ)
兄(唯一そばにいる俺を頼りたくて、繋がりたくて)
兄(それを俺はずっと無視し続けていた。悪気があったわけじゃないけど)
兄(全然兄らしいことしてやれなかったし)
兄(あ、そういやこんなこともあったな)
兄(親の帰りが遅い時には電話のところにいつもお金が置いてあった。だいたい近所のそば屋とかで出前を取って夕食にするんだけど)
兄(まあ、俺はいつも自分の皿を持って部屋にこもって食ってたけどな)
兄(それはともかく、あの時はコンビニで売っているトレカを買いたいけど小遣いは使い果たしてたし、電話のとこの金でトレカ3セット買っちゃったんだよな)
兄(残った金でおにぎり1個だけ買って妹に渡したっけ。母さんが置いておく金を間違えたみたいだって言って)
兄(次の日妹は母さんに文句言うだろうからてっきり母さんに怒られるかと思ったけど)
729: 2012/01/14(土) 22:42:43.35 ID:0mvEX45Yo
回想
母「何で出前のお皿がないの? 昨日夕食はどうしたのよ。お釣りはどこにあるの」
兄(ドキドキ)
妹「あ、お母さん。昨日はあたしがお兄ちゃんにお願いしてファミレスに連れて行ってもらったの」
兄(え?)
母「ファミレスって・・・・・・中学生と小学生で夜外出したら駄目でしょ!」
妹「・・・・・・ごめんなさい」
母「兄もお兄ちゃんなんだから妹を止めなさいよ」
兄「う、うん」
妹「あたしがお願いしたんだからお兄ちゃんを怒らないで」
兄「・・・・・・(何だこいつ)」
回想終了
兄「今にして思えば、この頃からこいつにここまで想われていたのになあ」
兄「・・・・・・俺って鈍感なんだろうか」
妹「うん。すごく鈍感だと思う」クス
兄「あ、俺声に出してたか」
妹「おはよ、お兄ちゃん」
兄「ああ、おはよ。どの辺りから声に出してた?」
妹「お兄ちゃん、最初は何か考え事してて」
兄「うん」
妹「・・・・・・今にして思えば、ってところから声に出てた」
兄「そうか(恥ずかしいなんてもんじゃねえ)」
妹「お兄ちゃん?」
兄「おまえ俺が中学2年の頃さ、電話のとこに置いてあった食事代使い込んじゃったこと覚えてる?」
妹「うん。お兄ちゃんとのエピソードはほとんど覚えている」
兄「(・・・・・・マジかよ)あんときおにぎり1個しかおまえに渡さなかったじゃん?」
妹「うん、覚えてるよ。あの夜お腹すいて困った」
兄「おまえ何で母さんにチクらなかったの?」
妹「お兄ちゃんトレカ欲しかったんでしょ?」
兄「・・・・・・よく知ってるな」
妹「うん。あたしのお小遣いあげたかったけど、お兄ちゃん絶対受け取らないと思ったから」
兄「・・・・・・」
妹「だからお母さんに嘘ついた」
兄「・・・・・・」
母「何で出前のお皿がないの? 昨日夕食はどうしたのよ。お釣りはどこにあるの」
兄(ドキドキ)
妹「あ、お母さん。昨日はあたしがお兄ちゃんにお願いしてファミレスに連れて行ってもらったの」
兄(え?)
母「ファミレスって・・・・・・中学生と小学生で夜外出したら駄目でしょ!」
妹「・・・・・・ごめんなさい」
母「兄もお兄ちゃんなんだから妹を止めなさいよ」
兄「う、うん」
妹「あたしがお願いしたんだからお兄ちゃんを怒らないで」
兄「・・・・・・(何だこいつ)」
回想終了
兄「今にして思えば、この頃からこいつにここまで想われていたのになあ」
兄「・・・・・・俺って鈍感なんだろうか」
妹「うん。すごく鈍感だと思う」クス
兄「あ、俺声に出してたか」
妹「おはよ、お兄ちゃん」
兄「ああ、おはよ。どの辺りから声に出してた?」
妹「お兄ちゃん、最初は何か考え事してて」
兄「うん」
妹「・・・・・・今にして思えば、ってところから声に出てた」
兄「そうか(恥ずかしいなんてもんじゃねえ)」
妹「お兄ちゃん?」
兄「おまえ俺が中学2年の頃さ、電話のとこに置いてあった食事代使い込んじゃったこと覚えてる?」
妹「うん。お兄ちゃんとのエピソードはほとんど覚えている」
兄「(・・・・・・マジかよ)あんときおにぎり1個しかおまえに渡さなかったじゃん?」
妹「うん、覚えてるよ。あの夜お腹すいて困った」
兄「おまえ何で母さんにチクらなかったの?」
妹「お兄ちゃんトレカ欲しかったんでしょ?」
兄「・・・・・・よく知ってるな」
妹「うん。あたしのお小遣いあげたかったけど、お兄ちゃん絶対受け取らないと思ったから」
兄「・・・・・・」
妹「だからお母さんに嘘ついた」
兄「・・・・・・」
730: 2012/01/14(土) 22:46:31.52 ID:0mvEX45Yo
妹「お兄ちゃん? どうしたの」
兄「妹・・・・・・愛してる」ギュ
妹「・・・・・・うん」チュ
兄「俺、妹友と話すわ。あいつを傷つけちゃうかもしれないけど、許してもらえないだろうけど」
妹「・・・・・・」
兄「妹友と別れる。だから妹」
妹「・・・・・・」
兄「俺の彼女になってくれるか? 正式に俺と付き合ってくれるか」
妹「・・・・・・はい」
兄「妹・・・・・・」
妹「うれしい・・・・・・お兄ちゃん」
兄「泣くなよ」
妹「泣いてもいいの。うれしい涙だから」
兄「・・・・・・そうだな」
兄「妹・・・・・・愛してる」ギュ
妹「・・・・・・うん」チュ
兄「俺、妹友と話すわ。あいつを傷つけちゃうかもしれないけど、許してもらえないだろうけど」
妹「・・・・・・」
兄「妹友と別れる。だから妹」
妹「・・・・・・」
兄「俺の彼女になってくれるか? 正式に俺と付き合ってくれるか」
妹「・・・・・・はい」
兄「妹・・・・・・」
妹「うれしい・・・・・・お兄ちゃん」
兄「泣くなよ」
妹「泣いてもいいの。うれしい涙だから」
兄「・・・・・・そうだな」
731: 2012/01/14(土) 22:47:28.90 ID:0mvEX45Yo
妹「お兄ちゃん?」
兄「うん」
妹「ちっちゃな時からお兄ちゃんを好きだった」
兄「・・・・・・」ギュ
妹「ずっとお兄ちゃんだけ見てたの」
兄「・・・・・・鈍くてごめんな」
妹「ううん、もういい。こうやってお兄ちゃんに愛してるって言ってもらえて」
兄「愛してるよ」
妹「・・・・・・17年間の片想いがようやく実った」
兄「・・・・・・そうだな」
妹「お兄ちゃん?」
兄「うん」
妹「あたし、まだいろいろこどもかも知れないけど、お兄ちゃんに喜んでもらえるように頑張っていろいろ覚えるから」
兄「・・・・・・うん?(な、何だ?)」
妹「あたしは、その・・・・・・男の人としたことなかったし」
兄「おいおい・・・・・・別に無理するなよ」
妹「え」
兄「おまえに頑張られたら俺が困るよ。おまえはもう一生俺だけしか知らなくていいよ」
妹「・・・・・・うん」
兄「・・・・・・念のために言っておくけど、俺おまえの体目当てだけじゃねえからな」
妹「・・・・・・わかってるよ。でもそういうのでも喜んでくれた方があたしもうれしい」
兄「妹」ギュ
妹「ねえ」
兄「うん」
妹「お兄ちゃんってその・・・・・・大きい女の子の方がいい?」
兄「おまえが一番好き」
妹「・・・・・・無理してない?」ジト
兄「してねえよ。つうかおまえわざとやってる?」
妹「お兄ちゃんこそあたしの足に何かぶつかってるけど」クス
兄「じゃあ、もっかい」
妹「・・・・・・いいよ。して」
兄「うん」
妹「ちっちゃな時からお兄ちゃんを好きだった」
兄「・・・・・・」ギュ
妹「ずっとお兄ちゃんだけ見てたの」
兄「・・・・・・鈍くてごめんな」
妹「ううん、もういい。こうやってお兄ちゃんに愛してるって言ってもらえて」
兄「愛してるよ」
妹「・・・・・・17年間の片想いがようやく実った」
兄「・・・・・・そうだな」
妹「お兄ちゃん?」
兄「うん」
妹「あたし、まだいろいろこどもかも知れないけど、お兄ちゃんに喜んでもらえるように頑張っていろいろ覚えるから」
兄「・・・・・・うん?(な、何だ?)」
妹「あたしは、その・・・・・・男の人としたことなかったし」
兄「おいおい・・・・・・別に無理するなよ」
妹「え」
兄「おまえに頑張られたら俺が困るよ。おまえはもう一生俺だけしか知らなくていいよ」
妹「・・・・・・うん」
兄「・・・・・・念のために言っておくけど、俺おまえの体目当てだけじゃねえからな」
妹「・・・・・・わかってるよ。でもそういうのでも喜んでくれた方があたしもうれしい」
兄「妹」ギュ
妹「ねえ」
兄「うん」
妹「お兄ちゃんってその・・・・・・大きい女の子の方がいい?」
兄「おまえが一番好き」
妹「・・・・・・無理してない?」ジト
兄「してねえよ。つうかおまえわざとやってる?」
妹「お兄ちゃんこそあたしの足に何かぶつかってるけど」クス
兄「じゃあ、もっかい」
妹「・・・・・・いいよ。して」
743: 2012/01/15(日) 20:48:03.32 ID:3VXZ2tD9o
自宅の玄関ホール
兄「じゃ行こうか」
妹「うん。お兄ちゃん、お昼どうするの」
兄「・・・・・・アパート行く途中で何か食って行こうぜ」
妹「・・・・・・お兄ちゃん?」
兄「う、うん」
妹「まさかと思うけど・・・・・・もしかしてあたしの手料理は食べたくない?」
兄「ば、バカなこと言うなよ。愛する彼女の手料理を食べたくない男なんているわけねえだろうが」ドキドキ
妹「・・・・・・それならいいけど。最近お兄ちゃん外食ばっかりしたがるし」
兄「おまえと外でデートしたいからだよ。言わせんなよ恥ずかしい」
妹「そか。うん、わかった」ニコ
兄「(何とか誤魔化せたか)じゃあ行こうぜ。俺の車でいい?」
妹「うん。お兄ちゃんの軽自動車の方がお兄ちゃんとの距離が近くて好き」
兄「・・・・・・妹(可愛いこと言うな、こいつ)」ダキヨセ
妹「お兄ちゃん・・・・・・」チュ
バタン
兄「じゃ行こうか」
妹「うん。お兄ちゃん、お昼どうするの」
兄「・・・・・・アパート行く途中で何か食って行こうぜ」
妹「・・・・・・お兄ちゃん?」
兄「う、うん」
妹「まさかと思うけど・・・・・・もしかしてあたしの手料理は食べたくない?」
兄「ば、バカなこと言うなよ。愛する彼女の手料理を食べたくない男なんているわけねえだろうが」ドキドキ
妹「・・・・・・それならいいけど。最近お兄ちゃん外食ばっかりしたがるし」
兄「おまえと外でデートしたいからだよ。言わせんなよ恥ずかしい」
妹「そか。うん、わかった」ニコ
兄「(何とか誤魔化せたか)じゃあ行こうぜ。俺の車でいい?」
妹「うん。お兄ちゃんの軽自動車の方がお兄ちゃんとの距離が近くて好き」
兄「・・・・・・妹(可愛いこと言うな、こいつ)」ダキヨセ
妹「お兄ちゃん・・・・・・」チュ
バタン
744: 2012/01/15(日) 20:49:36.47 ID:3VXZ2tD9o
兄「・・・・・・え?」
妹「風でドアが開いたみたいだね。お兄ちゃん昨日ちゃんとドア閉めなかったでしょ」
兄「・・・・・・」
妹「お兄ちゃん?」
兄「・・・・・・」
妹「・・・・・・どうしたの」
兄「妹友」
妹「え」
兄「妹友がドアの前にいた・・・・・・」
妹「うそ」
兄「・・・・・・本当。目が合って・・・・・・おまえと抱き合ってキスしてるとこ見られた」
妹「・・・・・・お兄ちゃん」
兄「ちょ、ちょっと待っててな。走って行っちゃったからとりあえず追いかけるわ」
妹「よしなよ」
兄「・・・・・・え?」
妹「よした方がいいよ、お兄ちゃん」
兄「い、いや。でも」
妹「追いかけて何を話すの?」
兄「・・・・・・それは」
妹「誤解を解く?」
兄「・・・・・・」
妹「もう誤解じゃないじゃん。あたしたち恋人同士になったんでしょ」
兄「そうだよ。でもこのままじゃ妹友が」
妹「こんな時に妹友ちゃんを捕まえて別れ話をするの?」
兄「いや・・・・・・」
妹「それともあれは一時の気の迷いであたしとは何でもない、本当に好きなのは妹友だとかって話すの?」
兄「んなわけねえだろ。とりあえず謝ってだな」
妹「それは妹友ちゃんがそこそこ落ち着いてからの方がよくない?」
兄「・・・・・・・」
妹「・・・・・・行くの?」
兄「・・・・・・いや。おまえの言うとおりかもな」
妹「・・・・・・」
兄「ちょっと車出してくる」
妹「うん・・・・・・」
妹「風でドアが開いたみたいだね。お兄ちゃん昨日ちゃんとドア閉めなかったでしょ」
兄「・・・・・・」
妹「お兄ちゃん?」
兄「・・・・・・」
妹「・・・・・・どうしたの」
兄「妹友」
妹「え」
兄「妹友がドアの前にいた・・・・・・」
妹「うそ」
兄「・・・・・・本当。目が合って・・・・・・おまえと抱き合ってキスしてるとこ見られた」
妹「・・・・・・お兄ちゃん」
兄「ちょ、ちょっと待っててな。走って行っちゃったからとりあえず追いかけるわ」
妹「よしなよ」
兄「・・・・・・え?」
妹「よした方がいいよ、お兄ちゃん」
兄「い、いや。でも」
妹「追いかけて何を話すの?」
兄「・・・・・・それは」
妹「誤解を解く?」
兄「・・・・・・」
妹「もう誤解じゃないじゃん。あたしたち恋人同士になったんでしょ」
兄「そうだよ。でもこのままじゃ妹友が」
妹「こんな時に妹友ちゃんを捕まえて別れ話をするの?」
兄「いや・・・・・・」
妹「それともあれは一時の気の迷いであたしとは何でもない、本当に好きなのは妹友だとかって話すの?」
兄「んなわけねえだろ。とりあえず謝ってだな」
妹「それは妹友ちゃんがそこそこ落ち着いてからの方がよくない?」
兄「・・・・・・・」
妹「・・・・・・行くの?」
兄「・・・・・・いや。おまえの言うとおりかもな」
妹「・・・・・・」
兄「ちょっと車出してくる」
妹「うん・・・・・・」
745: 2012/01/15(日) 20:50:04.71 ID:3VXZ2tD9o
兄の車の中
妹「お兄ちゃん」
兄「・・・・・・うん」
妹「まだ、引き返せるよ」
兄「何言ってんだよ、おまえ」
妹「今ならまだ妹友ちゃんに謝って、あたしとのことはなかったことにできるよ」
兄「・・・・・・どういう意味だよ」
妹「そのままの意味だよ。あたしはお兄ちゃんのこと大好きだから」
兄「・・・・・・」
妹「お兄ちゃんがそうしたいならあたしもそれでいい。我慢するよ」
兄「・・・・・・ふざけんな」ボソ
妹「え?」
兄「ふざけんなよ、おまえ」
妹「お兄ちゃん・・・・・・」
兄「俺はおまえに惚れてんだよ。おまえが嫌がって逃げたってストーカーみたいに追いかけるくらいに」
妹「・・・・・・」
兄「おまえが嫌がっても抱き寄せてキスする」
妹「・・・・・・うん」
兄「おまえが拒否してもおまえを裸にして・・・・・・え?」
妹「ありがと、お兄ちゃん」ギュ
兄「・・・・・・礼を言うなよ」
妹「そうだね」
兄「2,3日したら妹友に電話するわ」
妹「それがいいと思うよ」
兄「もう俺の決心は決まってるし変ることもないから」
妹「お兄ちゃん?」
兄「うん」
妹「あそこにマックがある」
兄「またマック行くの?」
妹「うん」
兄「・・・・・・わかった」
妹「お兄ちゃん」
兄「・・・・・・うん」
妹「まだ、引き返せるよ」
兄「何言ってんだよ、おまえ」
妹「今ならまだ妹友ちゃんに謝って、あたしとのことはなかったことにできるよ」
兄「・・・・・・どういう意味だよ」
妹「そのままの意味だよ。あたしはお兄ちゃんのこと大好きだから」
兄「・・・・・・」
妹「お兄ちゃんがそうしたいならあたしもそれでいい。我慢するよ」
兄「・・・・・・ふざけんな」ボソ
妹「え?」
兄「ふざけんなよ、おまえ」
妹「お兄ちゃん・・・・・・」
兄「俺はおまえに惚れてんだよ。おまえが嫌がって逃げたってストーカーみたいに追いかけるくらいに」
妹「・・・・・・」
兄「おまえが嫌がっても抱き寄せてキスする」
妹「・・・・・・うん」
兄「おまえが拒否してもおまえを裸にして・・・・・・え?」
妹「ありがと、お兄ちゃん」ギュ
兄「・・・・・・礼を言うなよ」
妹「そうだね」
兄「2,3日したら妹友に電話するわ」
妹「それがいいと思うよ」
兄「もう俺の決心は決まってるし変ることもないから」
妹「お兄ちゃん?」
兄「うん」
妹「あそこにマックがある」
兄「またマック行くの?」
妹「うん」
兄「・・・・・・わかった」
751: 2012/01/15(日) 22:32:41.48 ID:3VXZ2tD9o
「で、妹ちゃんに妹友ちゃんからメールが来たと」
あたしは初めて見たかもしれない妹ちゃんの暗い表情を眺めながら言った。正直に言えばあたしはもう妹ちゃんと妹友ちゃんの恋の争いには参加したくなかったのだけれど、そもそもこれを始めたのがあたしである以上、ここで妹ちゃんを突き放すわけにはいかなかった。
「つまりあんたとお兄さんが無事に結ばれて」
あたしは念を押した。
「その翌日、二人でいちゃいちゃしてるところを妹友ちゃんに目撃されたわけね」
「うん。それでお兄ちゃんが妹友ちゃんに電話とかメールしても全然返事してくれないの」
妹ちゃんは相変わらず俯き加減に答えたけど、何か暗い表情の奥に何と言っていいかお兄さんに愛されている自信のような雰囲気が感じられた。
「それで?」
あたしは妹ちゃんの白く整った顔立ちを眺めながら聞いた。
「それで、昨日妹友ちゃんからあたしにメールが来て」
妹ちゃんはポツリと言った。
「そのメール見せて」
あたしは妹ちゃんに頼んだ。妹ちゃんは自分の携帯を開いて少し操作するとあたしに渡した。
from :妹友
sub :無題
『お願いだからもうお兄さんに電話もメールもしないように伝えて。すごく迷惑だから。あと、あたしはまだ妹友ちゃんの友だちだと思っているから、あなたが不幸になるのは見過ごせないの』
『近親相Oとか正気じゃないよ。妹ちゃんはお兄さんに性的に弄ばれているとしか思えない』
『妹ちゃんとお兄さんが正気に戻って別れれば何もしない。でもこの警告を無視してこのまま汚い関係を続けるんだったら、みんなに妹ちゃんとお兄さんの仲を言い触らすから。あなたちのことを
思って仕方なくそうするんだからね』
『じゃあ、よく考えて。2、3日は待ってあげるから』
752: 2012/01/15(日) 22:35:05.27 ID:3VXZ2tD9o
「それで今日がその期限の3日目ってわけか」
あたしは話しながら、妹ちゃんではなく妹友ちゃんのほうに深い憐憫を感じた。初めて成就した恋を邪魔された妹友ちゃん。
このメールからは妹友ちゃんの深い傷心が感じられた。そして、妹友ちゃんをここまで追い詰めたこのゲームを仕掛けたのはあたしなのだ。
「このメールのことお兄さんに話したの?」
あたしは聞いた。
「ううん。お兄ちゃんには言ってない。というかとても話せなかった」
妹ちゃんは答えた。
「お兄さんには黙っていなよ?」
あたしは念を押した。
「あたしが妹友ちゃんと話するから。あんたたちは動いちゃだめだよ?」
「でも・・・・・・委員長ちゃん、いいの?」
細い声で妹ちゃんが尋ねた。あたしはここで本当に腹をくくった。
「いいも何もないよ。そもそもあたしがけしかけたことだから」
その後にそのおかげであたしもあいつと付き合うことになれたんだし、と続けたけどそれはあたしの胸の中だけだった。
今日はこのまま下校すると言う妹ちゃんと別れたあたしは妹友ちゃんにメールした。まだ彼女が校内にいれば反応してくれるだろう。
あたしは妹友ちゃんに放課後に2回も呼び出された1号館の屋上に彼女を呼び出したのだった。
あたしは話しながら、妹ちゃんではなく妹友ちゃんのほうに深い憐憫を感じた。初めて成就した恋を邪魔された妹友ちゃん。
このメールからは妹友ちゃんの深い傷心が感じられた。そして、妹友ちゃんをここまで追い詰めたこのゲームを仕掛けたのはあたしなのだ。
「このメールのことお兄さんに話したの?」
あたしは聞いた。
「ううん。お兄ちゃんには言ってない。というかとても話せなかった」
妹ちゃんは答えた。
「お兄さんには黙っていなよ?」
あたしは念を押した。
「あたしが妹友ちゃんと話するから。あんたたちは動いちゃだめだよ?」
「でも・・・・・・委員長ちゃん、いいの?」
細い声で妹ちゃんが尋ねた。あたしはここで本当に腹をくくった。
「いいも何もないよ。そもそもあたしがけしかけたことだから」
その後にそのおかげであたしもあいつと付き合うことになれたんだし、と続けたけどそれはあたしの胸の中だけだった。
今日はこのまま下校すると言う妹ちゃんと別れたあたしは妹友ちゃんにメールした。まだ彼女が校内にいれば反応してくれるだろう。
あたしは妹友ちゃんに放課後に2回も呼び出された1号館の屋上に彼女を呼び出したのだった。
753: 2012/01/15(日) 22:40:11.35 ID:3VXZ2tD9o
妹友ちゃんからはメールの返信はなかった。でもあたしは夕暮れの屋上でぼんやりと景色を眺めながらたたずんでいた。
この屋上であたしは妹友ちゃんに好きだと告白され、またあたしの片想いの相手を好きななったふりをしたいと妹友ちゃんに頼まれたのだった。先輩と恋人同士になったあたしにはもうずいぶんと昔の話のように感じられた。
もう今日は来ないかな。諦めたあたしが階段に続く鉄の扉に手を伸ばした時、その扉が逆側にゆっくりと開き妹友ちゃんが姿を現した。
・・・・・・やっぱり可愛いな、この子。そんな調子の狂った感想が頭に浮かんだけど、すぐに妹友ちゃんのその可愛らしい外見を裏切る歪んだ表情があたしの目に入った。
「来てくれたんだ」
あたしは妹友ちゃんに話しかけた。
「・・・・・・どうせ妹ちゃんから全部聞いてるんでしょ? 委員長ちゃんは最近妹ちゃんとべったりだもんね」
目を伏せた可愛らしい妹友ちゃんの悪意のある声音。あたしは今までこの可愛い見た目にずっと騙されてきたのだ。
「妹友ちゃんには気の毒だと思うけど」
あたしは切り出した。
「妹ちゃんのお兄さんへの想いは17年越しなんだよ」
この期に及んでもあたしは妹友ちゃんを説得し納得してもらおうと努力したかったのだ。
「あんたの気持ちはすごくわかるよ」
あたしは言った。この時、妹友ちゃんは初めてはっきりとあたしを見た。
「何がわかるの?」
妹友ちゃんは激情を込めた、でも静かな声で応じた。
「どうせ、レOのあたしが妹ちゃんの恋を邪魔してるとか思ってるんでしょ」
「確かにあたしは同性愛者かもしれない」
妹友ちゃんは続けた。
「でもね、あたしにもようやく普通の恋が訪れたんだよ。お兄さんのことを本気で好きになって」
妹友ちゃんの目には涙が浮かんでいた。
「委員長ちゃんはそんなこと考えてもいなかったでしょうね。どうせ妹ちゃんにあたしがお兄さんを騙したと言われたんでしょ」
「違うよ」
あたしは反論した。
「あたしはあんたがお兄さんのこと本気で愛してるってわかってたよ」
「え?」
妹友ちゃんは絶句した。
「あんたが最初にお兄さんに接近した頃からか、お兄さんと付き合っているうちにお兄さんのことを愛してしまったのかはわからないけど」
あたしは呆然としている妹友ちゃんに語りかけた。
「でも、今ではあんたは本気でお兄さんのことを愛してるでしょ? あんたが最初に狙っていた妹ちゃんのことを疎ましく思うようになったくらいに」
妹友ちゃんは少し驚いたようだったけど、すぐにあの嫌な歪んだ微笑を浮かべて話し始めた。その話は長く正直今のあたしには聞きたくないような内容だった。
この屋上であたしは妹友ちゃんに好きだと告白され、またあたしの片想いの相手を好きななったふりをしたいと妹友ちゃんに頼まれたのだった。先輩と恋人同士になったあたしにはもうずいぶんと昔の話のように感じられた。
もう今日は来ないかな。諦めたあたしが階段に続く鉄の扉に手を伸ばした時、その扉が逆側にゆっくりと開き妹友ちゃんが姿を現した。
・・・・・・やっぱり可愛いな、この子。そんな調子の狂った感想が頭に浮かんだけど、すぐに妹友ちゃんのその可愛らしい外見を裏切る歪んだ表情があたしの目に入った。
「来てくれたんだ」
あたしは妹友ちゃんに話しかけた。
「・・・・・・どうせ妹ちゃんから全部聞いてるんでしょ? 委員長ちゃんは最近妹ちゃんとべったりだもんね」
目を伏せた可愛らしい妹友ちゃんの悪意のある声音。あたしは今までこの可愛い見た目にずっと騙されてきたのだ。
「妹友ちゃんには気の毒だと思うけど」
あたしは切り出した。
「妹ちゃんのお兄さんへの想いは17年越しなんだよ」
この期に及んでもあたしは妹友ちゃんを説得し納得してもらおうと努力したかったのだ。
「あんたの気持ちはすごくわかるよ」
あたしは言った。この時、妹友ちゃんは初めてはっきりとあたしを見た。
「何がわかるの?」
妹友ちゃんは激情を込めた、でも静かな声で応じた。
「どうせ、レOのあたしが妹ちゃんの恋を邪魔してるとか思ってるんでしょ」
「確かにあたしは同性愛者かもしれない」
妹友ちゃんは続けた。
「でもね、あたしにもようやく普通の恋が訪れたんだよ。お兄さんのことを本気で好きになって」
妹友ちゃんの目には涙が浮かんでいた。
「委員長ちゃんはそんなこと考えてもいなかったでしょうね。どうせ妹ちゃんにあたしがお兄さんを騙したと言われたんでしょ」
「違うよ」
あたしは反論した。
「あたしはあんたがお兄さんのこと本気で愛してるってわかってたよ」
「え?」
妹友ちゃんは絶句した。
「あんたが最初にお兄さんに接近した頃からか、お兄さんと付き合っているうちにお兄さんのことを愛してしまったのかはわからないけど」
あたしは呆然としている妹友ちゃんに語りかけた。
「でも、今ではあんたは本気でお兄さんのことを愛してるでしょ? あんたが最初に狙っていた妹ちゃんのことを疎ましく思うようになったくらいに」
妹友ちゃんは少し驚いたようだったけど、すぐにあの嫌な歪んだ微笑を浮かべて話し始めた。その話は長く正直今のあたしには聞きたくないような内容だった。
754: 2012/01/15(日) 22:41:42.73 ID:3VXZ2tD9o
妹友ちゃん曰く
あたしはこんなことになってもお兄さんと妹ちゃんを救いたいと思っている
あの二人の近親相Oという禁断の関係から
自然界では近親交配は避けられるような生態学的システムができている
それは生物の生存戦略上不利だからであり、文明を築いた人類にも当てはまる真理である
お兄さんと妹ちゃんはこの自然界の摂理に反した行動を取っているため、彼らのことを真に心配している人間がこれを止めてあげなくてはならない。一見すると彼らに意地悪しているようだが真に彼らのことを思えばあたしの取ったこの行動は理解されるだろう
それでも妹ちゃんは言うかもしれない。『お兄ちゃんだから好きになったわけではない。好きになった相手がたまたまお兄ちゃんだったのだと』
だが遺伝子的な側面を別にしても欧米では近親相Oは軽蔑される。なぜなら兄妹の恋愛は外部でもてない同士が手近な兄妹で恋愛の欲求を解消しているものと見做されるからだ。お兄さんと妹ちゃんは恋愛の相手には不自由しないはずで、何もわざわざタブーを犯してまで近親相Oする意味はない
したがって、生物学的・遺伝子学的にも社会学的にもお兄さんと妹ちゃんを別れさせることは正しい
・・・・・・だから、あたしはあの二人の関係をみんなに言い触らす。同級生や先生やご両親にも
あたしはこんなことになってもお兄さんと妹ちゃんを救いたいと思っている
あの二人の近親相Oという禁断の関係から
自然界では近親交配は避けられるような生態学的システムができている
それは生物の生存戦略上不利だからであり、文明を築いた人類にも当てはまる真理である
お兄さんと妹ちゃんはこの自然界の摂理に反した行動を取っているため、彼らのことを真に心配している人間がこれを止めてあげなくてはならない。一見すると彼らに意地悪しているようだが真に彼らのことを思えばあたしの取ったこの行動は理解されるだろう
それでも妹ちゃんは言うかもしれない。『お兄ちゃんだから好きになったわけではない。好きになった相手がたまたまお兄ちゃんだったのだと』
だが遺伝子的な側面を別にしても欧米では近親相Oは軽蔑される。なぜなら兄妹の恋愛は外部でもてない同士が手近な兄妹で恋愛の欲求を解消しているものと見做されるからだ。お兄さんと妹ちゃんは恋愛の相手には不自由しないはずで、何もわざわざタブーを犯してまで近親相Oする意味はない
したがって、生物学的・遺伝子学的にも社会学的にもお兄さんと妹ちゃんを別れさせることは正しい
・・・・・・だから、あたしはあの二人の関係をみんなに言い触らす。同級生や先生やご両親にも
755: 2012/01/15(日) 22:42:47.40 ID:3VXZ2tD9o
・・・・・・もうこれ以上妹友ちゃんの話は聞きたくなかった。彼女の精神のどこかが狂いだしていいるとしか思えなかったから。でもあたしには妹ちゃんを守る義務があった。あたしがけしかけたせいでこんなことになったのだから。本当は妹友ちゃんをここまで追い詰めた責任もあたしにはあるのだけれど、今は妹ちゃんを守ることが最優先事項だった。
「あんたはお兄さんのこと愛してるって言うけどさ」
あたしは反撃を開始した。
「もともとは妹ちゃんが好きだったんでしょ? 妹ちゃんが好きな人がお兄さんだと知ってあんたはお兄さんに接近した」
妹友ちゃんは黙り込んだ
「そんな不純な動機でお兄さんを弄んだあんたがどの面下げて偉そうにあの二人を救うんだとか言えるのよ」
あたしももう必氏だったから言葉を選ぶ余裕はなかった。あたしの言葉がどんなに妹友ちゃんを傷つけようが妹ちゃんとお兄さんを守らなければならなかった。
でも妹友ちゃんは全くこたえていなかった。
「そんなことどうでもいいじゃん」
妹友ちゃんは微笑んで言った。
「もうそういうことはどうでもいいでしょ? あたしは二人を救いたいから二人の秘密を皆に話すの」
・・・・・・それは強がり出なく復讐でもなく本心なのだろうか。
あたしはここに至ってついに決心を固めた。
「あんたはお兄さんのこと愛してるって言うけどさ」
あたしは反撃を開始した。
「もともとは妹ちゃんが好きだったんでしょ? 妹ちゃんが好きな人がお兄さんだと知ってあんたはお兄さんに接近した」
妹友ちゃんは黙り込んだ
「そんな不純な動機でお兄さんを弄んだあんたがどの面下げて偉そうにあの二人を救うんだとか言えるのよ」
あたしももう必氏だったから言葉を選ぶ余裕はなかった。あたしの言葉がどんなに妹友ちゃんを傷つけようが妹ちゃんとお兄さんを守らなければならなかった。
でも妹友ちゃんは全くこたえていなかった。
「そんなことどうでもいいじゃん」
妹友ちゃんは微笑んで言った。
「もうそういうことはどうでもいいでしょ? あたしは二人を救いたいから二人の秘密を皆に話すの」
・・・・・・それは強がり出なく復讐でもなく本心なのだろうか。
あたしはここに至ってついに決心を固めた。
757: 2012/01/15(日) 22:53:11.24 ID:3VXZ2tD9o
「もしあんたが妹ちゃんとお兄さんのことを一言でも誰かに喋ったら・・・・・・」
あたしは静かに微笑みながら言った。自分で考えても嫌な女だったと思うけど。
「・・・・・・どうする気?」
妹友ちゃんは冷静に反応した。彼女はかつてあたしに惚れていたことをもう忘れているのだろう。初めての告白の時のことを。
「あたしはあんたのご両親に、あなたたちのお嬢さんは同性愛者です。あたしも妹友ちゃんに迫られて迷惑してるんですって電話する」
妹友ちゃんの表情が興奮した赤みを帯びた色から蒼白に変った。
「・・・・・・何で、何でそんなこと」
妹友ちゃんはうめくように呟いた。でも、あたしはそれに追い討ちをかけた。
「あと、同級生とか先生とかにも相談する。だってあたしさ、今でも忘れられないほど気持ち悪かったんだよ? あんたに呼び出されて告白されたこと」
・・・・・・あたしは冷静に、というか冷酷に話せていたと思う。最初からそうするつもりだったから。でも胸中は妹友ちゃんへの憐憫と後悔で胸が張り裂けそうだった。
妹友ちゃんは妹ちゃんとお兄さんの秘密を誰にもばらさないこと、お兄さんのことはもう諦めることをあたしに約束した。
あたしの勝利だった。でも少しもうれしい気持ちや勝利感は胸に沸き起こってくれなかった。
あたしは静かに微笑みながら言った。自分で考えても嫌な女だったと思うけど。
「・・・・・・どうする気?」
妹友ちゃんは冷静に反応した。彼女はかつてあたしに惚れていたことをもう忘れているのだろう。初めての告白の時のことを。
「あたしはあんたのご両親に、あなたたちのお嬢さんは同性愛者です。あたしも妹友ちゃんに迫られて迷惑してるんですって電話する」
妹友ちゃんの表情が興奮した赤みを帯びた色から蒼白に変った。
「・・・・・・何で、何でそんなこと」
妹友ちゃんはうめくように呟いた。でも、あたしはそれに追い討ちをかけた。
「あと、同級生とか先生とかにも相談する。だってあたしさ、今でも忘れられないほど気持ち悪かったんだよ? あんたに呼び出されて告白されたこと」
・・・・・・あたしは冷静に、というか冷酷に話せていたと思う。最初からそうするつもりだったから。でも胸中は妹友ちゃんへの憐憫と後悔で胸が張り裂けそうだった。
妹友ちゃんは妹ちゃんとお兄さんの秘密を誰にもばらさないこと、お兄さんのことはもう諦めることをあたしに約束した。
あたしの勝利だった。でも少しもうれしい気持ちや勝利感は胸に沸き起こってくれなかった。
783: 2012/01/16(月) 22:34:36.71 ID:mj48c4a7o
妹友ちゃんが階段に続く鉄のドアを開けその小さな姿を消したあと、あたしは妹ちゃんに電話して全てが終わったことを告げた。
「・・・・・・ありがとう」
妹ちゃんは小さな声で言った。
「まあ、けしかけたのはあたしだから」
妹ちゃんはどうやって妹友ちゃんを説得したのか聞かなかったし、あたしにもそれを話す気はなかった。
妹ちゃんとお兄さんの中では、お兄さんを愛していた妹友ちゃんにひどいことをしたという記憶が後味悪く残ってしまうだろう。
妹友ちゃんは妹ちゃんに先輩を盗られた復讐のためにお兄さんを誘惑したんだよ。そう言ってあげれば妹ちゃんとお兄さんの心の負担は軽くなるだろうけど、あたしにはそこまで出来なかった。
最初の動機はどうあれ、妹友ちゃんは本気でお兄さんのことを愛したのだ。もうこれ以上妹友ちゃんを貶すことはできなかった。
あたしには妹友ちゃんの身勝手な行動への嫌悪感がまだ残っている。でもそれ以上に自分が妹友ちゃんにしてしまったことへの罪悪感と後悔の方を今では大きく感じていた。
・・・・・・妹友ちゃんとお兄さん、それにあたしも妹友ちゃんにしたこの仕打ちをずっと後悔しながら生きていくしかないのだろう。
「・・・・・・ありがとう」
妹ちゃんは小さな声で言った。
「まあ、けしかけたのはあたしだから」
妹ちゃんはどうやって妹友ちゃんを説得したのか聞かなかったし、あたしにもそれを話す気はなかった。
妹ちゃんとお兄さんの中では、お兄さんを愛していた妹友ちゃんにひどいことをしたという記憶が後味悪く残ってしまうだろう。
妹友ちゃんは妹ちゃんに先輩を盗られた復讐のためにお兄さんを誘惑したんだよ。そう言ってあげれば妹ちゃんとお兄さんの心の負担は軽くなるだろうけど、あたしにはそこまで出来なかった。
最初の動機はどうあれ、妹友ちゃんは本気でお兄さんのことを愛したのだ。もうこれ以上妹友ちゃんを貶すことはできなかった。
あたしには妹友ちゃんの身勝手な行動への嫌悪感がまだ残っている。でもそれ以上に自分が妹友ちゃんにしてしまったことへの罪悪感と後悔の方を今では大きく感じていた。
・・・・・・妹友ちゃんとお兄さん、それにあたしも妹友ちゃんにしたこの仕打ちをずっと後悔しながら生きていくしかないのだろう。
784: 2012/01/16(月) 22:36:34.80 ID:mj48c4a7o
「じゃああとはあんたとお兄さんの問題だから」
あたしは話を切り上げた。
「・・・・・・そうだね」
妹ちゃんがポツンと言った。
「本当にありがとう」
「いいよ、お礼なんか言わなくて。でも」
あたしは少し迷ったけど最後のお節介を口にした。
「実の兄妹で恋人同士でいることって大変だよね。こんなことあたしが言わなくても十分わかってるだろうけどさ」
「・・・・・・うん、わかってる」
妹ちゃんはそう答えた。
「じゃ、あたしはもうあんたとお兄さんの関係には関わらないから。もちろん誰にも言ったりはしないけど」
あたしはふと心配要素を一つ思い出して言葉を続けた。
「あいつにも余計なことは言わせないからね。じゃあ、これであんたとお兄さんのことを忘れて関知しないけど」
「うん」
「でも。本当に・・・・・・本当に辛いことになったら、その時は声かけて」
「・・・・・・え?」
あたしは戸惑っているらしい妹ちゃんに最後に言った。
「その時は、しょうがないからアフターサービスしてあげる。じゃあね」
これであたしが仕掛けたゲームは後味が良くないながらも本当に終わったのだった。
あたしは話を切り上げた。
「・・・・・・そうだね」
妹ちゃんがポツンと言った。
「本当にありがとう」
「いいよ、お礼なんか言わなくて。でも」
あたしは少し迷ったけど最後のお節介を口にした。
「実の兄妹で恋人同士でいることって大変だよね。こんなことあたしが言わなくても十分わかってるだろうけどさ」
「・・・・・・うん、わかってる」
妹ちゃんはそう答えた。
「じゃ、あたしはもうあんたとお兄さんの関係には関わらないから。もちろん誰にも言ったりはしないけど」
あたしはふと心配要素を一つ思い出して言葉を続けた。
「あいつにも余計なことは言わせないからね。じゃあ、これであんたとお兄さんのことを忘れて関知しないけど」
「うん」
「でも。本当に・・・・・・本当に辛いことになったら、その時は声かけて」
「・・・・・・え?」
あたしは戸惑っているらしい妹ちゃんに最後に言った。
「その時は、しょうがないからアフターサービスしてあげる。じゃあね」
これであたしが仕掛けたゲームは後味が良くないながらも本当に終わったのだった。
785: 2012/01/16(月) 22:39:18.63 ID:mj48c4a7o
その後、あたしは妹友ちゃんとは口をきくことはなかった。もちろん妹友ちゃんはあたしだけでなく妹ちゃんとも全く関わらないようにしていた。
妹友ちゃんは約束を守って妹ちゃんとお兄さんの関係を暴露することはなかったし、あの日以降お兄さんとも全く会っていないようだった。
あたしは相変わらず妹ちゃんと一緒にいることが多かったけど、妹ちゃんとお兄さんの関係がどうなっているのか聞かなかった。妹ちゃんもお兄さんのことは何も話さなかった。
以前は四六時中お兄さんの話しかしなかった妹ちゃんは、あたしに対してだけではなく誰に対してもお兄さんの話をしなくなったのだった。
それで、妹ちゃんがブラコンだと言う噂はなくなったけど、あたしはよく考えたものだ。
妹ちゃんがお兄さんのことを他人に話さなくなったのは、逆にお兄さんとの仲が進展しているからだろうな。もう気軽に話せるような関係ではないのだろう。
この二人がこの先どうなるのかはもうあたしが心配することではなかったし、もはやあたしにできることはなかったし。
こうして3学期は平穏に過ぎていった。
妹友ちゃんは約束を守って妹ちゃんとお兄さんの関係を暴露することはなかったし、あの日以降お兄さんとも全く会っていないようだった。
あたしは相変わらず妹ちゃんと一緒にいることが多かったけど、妹ちゃんとお兄さんの関係がどうなっているのか聞かなかった。妹ちゃんもお兄さんのことは何も話さなかった。
以前は四六時中お兄さんの話しかしなかった妹ちゃんは、あたしに対してだけではなく誰に対してもお兄さんの話をしなくなったのだった。
それで、妹ちゃんがブラコンだと言う噂はなくなったけど、あたしはよく考えたものだ。
妹ちゃんがお兄さんのことを他人に話さなくなったのは、逆にお兄さんとの仲が進展しているからだろうな。もう気軽に話せるような関係ではないのだろう。
この二人がこの先どうなるのかはもうあたしが心配することではなかったし、もはやあたしにできることはなかったし。
こうして3学期は平穏に過ぎていった。
786: 2012/01/16(月) 22:43:55.33 ID:mj48c4a7o
あたしが最後に妹友ちゃんを見たのは3学期の最終日だった。
・・・・・・妹友ちゃんは家族と一緒に4月から都内に引越しすることになり、都内の私立高校に編入することになったのだ。
あの日以来初めてあたしは妹友ちゃんからメールを貰った。妹友ちゃんが最後に待ち合わせに指定したのは校門の前だった。
ロッカーを整理したのだろう。大きなバッグを肩にさげて現れた妹友ちゃんは、俯きながらあたしに言った。
「・・・・・・あたしが妹ちゃんを好きだったこと、あの子には黙っててくれる?」
全てを失って敗北した妹友ちゃんが最後の日に頼んだことがこれだった。
意味がわからなかった。もうあたしは自分で始めたこの妹友ちゃんを追い詰めるゲームのことを忘れようとしていたのに、何で最後の日になってまでこの子はこんなことを蒸し返すのだろう。
それにあたしは妹友ちゃんの性的嗜好については秘密にするという約束を守るつもりだったから、一時妹友ちゃんが妹ちゃんに抱いていた恋情を妹ちゃんに話す気は全くなかったのだ。
妹友ちゃんは再び話を続けた。
「それで、あたしは先輩を好きだった。そしてあたしから先輩を奪った妹ちゃんに復讐するためにお兄さんを誘惑したって、妹ちゃんには言っておいて」
・・・・・・妹友ちゃんは家族と一緒に4月から都内に引越しすることになり、都内の私立高校に編入することになったのだ。
あの日以来初めてあたしは妹友ちゃんからメールを貰った。妹友ちゃんが最後に待ち合わせに指定したのは校門の前だった。
ロッカーを整理したのだろう。大きなバッグを肩にさげて現れた妹友ちゃんは、俯きながらあたしに言った。
「・・・・・・あたしが妹ちゃんを好きだったこと、あの子には黙っててくれる?」
全てを失って敗北した妹友ちゃんが最後の日に頼んだことがこれだった。
意味がわからなかった。もうあたしは自分で始めたこの妹友ちゃんを追い詰めるゲームのことを忘れようとしていたのに、何で最後の日になってまでこの子はこんなことを蒸し返すのだろう。
それにあたしは妹友ちゃんの性的嗜好については秘密にするという約束を守るつもりだったから、一時妹友ちゃんが妹ちゃんに抱いていた恋情を妹ちゃんに話す気は全くなかったのだ。
妹友ちゃんは再び話を続けた。
「それで、あたしは先輩を好きだった。そしてあたしから先輩を奪った妹ちゃんに復讐するためにお兄さんを誘惑したって、妹ちゃんには言っておいて」
787: 2012/01/16(月) 22:45:16.82 ID:mj48c4a7o
「え?」
あたしは思わず聞き返した。
「あんたがお兄さんのこと本当に好きだったことは、妹ちゃんたちにもわかってると思うよ」
「・・・・・・だから。あたしはお兄さんのことは本当には好きじゃなかったって言って。もう二度と会えないと思うし。お願い」
妹友ちゃんはあたしの顔を見ないで俯きながら答えた。
「別にいいけど・・・・・・それって何か意味あるの」
あたしは妹友ちゃんに問い質した。
「意味はないかもしれないね」
妹友ちゃんはここで初めてあたしを見た。
「でも、あたしが妹ちゃんを好きだったって妹ちゃんに思われるのは何か悔しい」
「・・・・・・お兄さんを妹ちゃんに盗られたから?」
「それもあるけど・・・・・・」
寂しそうに笑う妹友ちゃんの顔・・・・・・。
あたしは徹底的に妹友ちゃんに嫌われたはずだけど、なぜか妹友ちゃんは最後にあたしに笑いかけた。それはかつてあたしに好きだと告白したあの屋上での妹友ちゃんの恥ずかしそうな微笑みを思い出させた。
「あたしの大好きだったお兄さんにはあたしのことで変な罪悪感を感じて欲しくないから」
だからお願いと妹友ちゃんは再び言って、あとは後ろを振り向くことなくその場から去って行った。
あたしが妹友ちゃんを見たのはこれが最後だった・・・・・・不本意ながらあたしは自分を見失しなうくらいに泣きじゃくった。その後泣いているところを妹ちゃんに発見され慰められつつ、理由を問い質されることになったんだけど。
あたしは思わず聞き返した。
「あんたがお兄さんのこと本当に好きだったことは、妹ちゃんたちにもわかってると思うよ」
「・・・・・・だから。あたしはお兄さんのことは本当には好きじゃなかったって言って。もう二度と会えないと思うし。お願い」
妹友ちゃんはあたしの顔を見ないで俯きながら答えた。
「別にいいけど・・・・・・それって何か意味あるの」
あたしは妹友ちゃんに問い質した。
「意味はないかもしれないね」
妹友ちゃんはここで初めてあたしを見た。
「でも、あたしが妹ちゃんを好きだったって妹ちゃんに思われるのは何か悔しい」
「・・・・・・お兄さんを妹ちゃんに盗られたから?」
「それもあるけど・・・・・・」
寂しそうに笑う妹友ちゃんの顔・・・・・・。
あたしは徹底的に妹友ちゃんに嫌われたはずだけど、なぜか妹友ちゃんは最後にあたしに笑いかけた。それはかつてあたしに好きだと告白したあの屋上での妹友ちゃんの恥ずかしそうな微笑みを思い出させた。
「あたしの大好きだったお兄さんにはあたしのことで変な罪悪感を感じて欲しくないから」
だからお願いと妹友ちゃんは再び言って、あとは後ろを振り向くことなくその場から去って行った。
あたしが妹友ちゃんを見たのはこれが最後だった・・・・・・不本意ながらあたしは自分を見失しなうくらいに泣きじゃくった。その後泣いているところを妹ちゃんに発見され慰められつつ、理由を問い質されることになったんだけど。
799: 2012/01/17(火) 22:19:27.56 ID:IpfYatZ3o
あたしには物心ついた頃からお兄ちゃんと二人きりで過ごした記憶がほとんどない。
お母さんはお兄ちゃんを出産した際1年間の育児休業をした後、お兄ちゃんを保育園に預けて仕事に復帰したそうだ。次にあたしたちが生まれた時も最初は同じように育児休業したんだけど、1年後に復業することなく仕事を辞めた。
お母さんはもともとファッション雑誌の編集者だったから、そもそも仕事の時間が不規則で長時間に及ぶ職種だったことに加え、この頃からお父さんも管理職となりこれまでのように育児や家事に協力できなくなった。
そのため二人の子どもを育てて行くには不本意ながら専業主婦として家庭に入るしかなったみたい。
この話はあたしが中学生になってお母さんが再び仕事を始めるまで、繰り返しお母さんから聞かされていた話だった。お母さんは普通に育児と家事をしながら自分の望んでいた仕事に復帰する日を待ち望んでいた。
ともあれあたしとお兄ちゃんが小学生だった頃はいつもお母さんが家にいた。
朝食を用意してこどもたちを学校に送り出し学校から帰るとおかえりと声をかけてくれる。いつも家にお母さんがいたせいなのか、その頃あたしとお兄ちゃんが二人きりで過ごす時間はほとんどなかった。
あたしが小学生でまだ異性とかを意識し始める前は、それでも普通の兄妹として日常的なやりとりはあったと思う。特に仲が良いわけでもないし二人きりで外出したり一緒にゲームをするとかはしなかったけど、特に仲が悪いというわけでもない。
これがきっと普通の兄妹なんだろうなってあたしはその頃から漠然と考えていた。
お母さんはお兄ちゃんを出産した際1年間の育児休業をした後、お兄ちゃんを保育園に預けて仕事に復帰したそうだ。次にあたしたちが生まれた時も最初は同じように育児休業したんだけど、1年後に復業することなく仕事を辞めた。
お母さんはもともとファッション雑誌の編集者だったから、そもそも仕事の時間が不規則で長時間に及ぶ職種だったことに加え、この頃からお父さんも管理職となりこれまでのように育児や家事に協力できなくなった。
そのため二人の子どもを育てて行くには不本意ながら専業主婦として家庭に入るしかなったみたい。
この話はあたしが中学生になってお母さんが再び仕事を始めるまで、繰り返しお母さんから聞かされていた話だった。お母さんは普通に育児と家事をしながら自分の望んでいた仕事に復帰する日を待ち望んでいた。
ともあれあたしとお兄ちゃんが小学生だった頃はいつもお母さんが家にいた。
朝食を用意してこどもたちを学校に送り出し学校から帰るとおかえりと声をかけてくれる。いつも家にお母さんがいたせいなのか、その頃あたしとお兄ちゃんが二人きりで過ごす時間はほとんどなかった。
あたしが小学生でまだ異性とかを意識し始める前は、それでも普通の兄妹として日常的なやりとりはあったと思う。特に仲が良いわけでもないし二人きりで外出したり一緒にゲームをするとかはしなかったけど、特に仲が悪いというわけでもない。
これがきっと普通の兄妹なんだろうなってあたしはその頃から漠然と考えていた。
800: 2012/01/17(火) 22:25:00.30 ID:IpfYatZ3o
小学校も中学年になるとそろそろ早熟な同級生の女の子は男の子の噂を始めるようになったけど、当時のあたしにはまだ全然実感できない話だった。
その頃お兄ちゃんは中学受験をして私立の中高一貫校(それも男子校)に合格した。
その学校は全国的に知名度が高いわけでもなかったけれど、あたしたちが暮らしている県内では上位に入る学校で偏差値もそれなりに高かった。
その中学の制服は胸に金のエンブレムが刺繍された普通のブレザーだったけど、近所の公立中学のようにジャージ姿で登校している男子たちに比べるとその制服に身を包んだお兄ちゃんはすごく大人びて格好よく思えた。
あたしは制服姿のお兄ちゃんを間近にすると胸がときめいてお兄ちゃんの顔を直視できなかったことを今でもよく覚えている。
お兄ちゃんの学校は電車で1時間以上通学に時間がかかったので、お兄ちゃんとはこれまで以上に話をすることはなくなった。
同時にお母さんがもといた会社より大分小さな出版社に入社することが決まり、我が家は再び両親が共に多忙な共稼ぎ家庭に戻った。
あたしはもともと家事は苦手ではなかったので(ただし料理は除く)、仕事が忙しいお母さんに代わって掃除とか洗濯を引き受けるようになった。
家事自体は負担ではなかったけれど、帰宅後、家で一人きりで過ごすのは気が滅入った。
家事をしている間は気が紛れるのでまだよかったけど、一通り家事が終わるとあとは食事して寝るだけだ。食事は大概近所の大衆食堂とかおそば屋さんの出前かコンビニのお弁当だった。
お兄ちゃんは片道1時間半かけて学校から家に戻ると、自分の分の夕食を持って部屋に篭もってしまうようになっていた。
学校でパソコン部に入部したお兄さんは、お母さんを言いくるめて自室に自分専用のパソコンを買ってもらいインターネット回線まで繋げてしまったのだ。
多分滅多に帰宅しないか帰宅しても深夜になる両親となかなか会えないあたしは、寂びしかったせいか帰宅した制服姿のお兄ちゃんに会うのがその頃の唯一の楽しみだった。
帰宅してもあたしにはろくに口をきいてくれないお兄ちゃんと会えるこの短い時間をあたしは心待ちにするようになった。
お兄ちゃんが自分の鍵で自宅の玄関を開けている音を聞きつけると、掃除していても洗濯していてもとりあえず玄関ホールに行き、その床を掃除する振りをしながらドアを開けるお兄ちゃんにおかえりなさいと声をかけた。
おにいちゃんもただいまともそもそ口にするだけ。それでもそれだけが変化に乏しい自宅で過ごしているあたしにとっては唯一と言っていい楽しみになっていた。
その頃お兄ちゃんは中学受験をして私立の中高一貫校(それも男子校)に合格した。
その学校は全国的に知名度が高いわけでもなかったけれど、あたしたちが暮らしている県内では上位に入る学校で偏差値もそれなりに高かった。
その中学の制服は胸に金のエンブレムが刺繍された普通のブレザーだったけど、近所の公立中学のようにジャージ姿で登校している男子たちに比べるとその制服に身を包んだお兄ちゃんはすごく大人びて格好よく思えた。
あたしは制服姿のお兄ちゃんを間近にすると胸がときめいてお兄ちゃんの顔を直視できなかったことを今でもよく覚えている。
お兄ちゃんの学校は電車で1時間以上通学に時間がかかったので、お兄ちゃんとはこれまで以上に話をすることはなくなった。
同時にお母さんがもといた会社より大分小さな出版社に入社することが決まり、我が家は再び両親が共に多忙な共稼ぎ家庭に戻った。
あたしはもともと家事は苦手ではなかったので(ただし料理は除く)、仕事が忙しいお母さんに代わって掃除とか洗濯を引き受けるようになった。
家事自体は負担ではなかったけれど、帰宅後、家で一人きりで過ごすのは気が滅入った。
家事をしている間は気が紛れるのでまだよかったけど、一通り家事が終わるとあとは食事して寝るだけだ。食事は大概近所の大衆食堂とかおそば屋さんの出前かコンビニのお弁当だった。
お兄ちゃんは片道1時間半かけて学校から家に戻ると、自分の分の夕食を持って部屋に篭もってしまうようになっていた。
学校でパソコン部に入部したお兄さんは、お母さんを言いくるめて自室に自分専用のパソコンを買ってもらいインターネット回線まで繋げてしまったのだ。
多分滅多に帰宅しないか帰宅しても深夜になる両親となかなか会えないあたしは、寂びしかったせいか帰宅した制服姿のお兄ちゃんに会うのがその頃の唯一の楽しみだった。
帰宅してもあたしにはろくに口をきいてくれないお兄ちゃんと会えるこの短い時間をあたしは心待ちにするようになった。
お兄ちゃんが自分の鍵で自宅の玄関を開けている音を聞きつけると、掃除していても洗濯していてもとりあえず玄関ホールに行き、その床を掃除する振りをしながらドアを開けるお兄ちゃんにおかえりなさいと声をかけた。
おにいちゃんもただいまともそもそ口にするだけ。それでもそれだけが変化に乏しい自宅で過ごしているあたしにとっては唯一と言っていい楽しみになっていた。
801: 2012/01/17(火) 22:27:57.04 ID:IpfYatZ3o
お兄ちゃんがお風呂から出て自分の夕食をトレイに乗せて自分の部屋に戻ってしまってからは、あたしは毎晩手持ち無沙汰だった。高校生になった時あたしが友人から無口だねとかって言われたりすることになるのもこの頃一人で過ごしていた夜の影響かもしれない。一人で喋るわけには行かなかったから、あたしは広いリビングでぽつんとソファに座って毎晩テレビを見た。
毎晩それを続けていたせいであたしはテレビ中毒みたいになってしまった。見ていて決して面白いわけではないんだけど、静かな部屋に耐え切れない気持ちもあった。
小学校も高学年になると男の子の噂をする子たちが増えてきて、あたしも、誰か好きな子いるの? と友だちに聞かれることがあった。そのたびに、よくわかんないとかいないよとか返事をしていたのだけど、そのうちにそう聞かれるたびにお兄ちゃんの制服姿が思い浮かぶようになって来た。
最初は自宅では一人きりなので寂しいのだろうと思っていた。寂しいから唯一同じ家の中にいるお兄ちゃんのことを恋しく思うのだろうと。
たまに両親が家で過ごす晩をあたしはすごく楽しみにしていたのだけど、お兄ちゃんは両親がそろっている時でも自室で過ごすのを止めようとはしなかった。
両親が揃ったリビングで久しぶりに声を出して会話をする楽しみも、そのうちに何だかそんなに楽しく思えなくなってきた。
せっかく久しぶりに家族が一緒に過ごしているのに何でお兄ちゃんはリビングにいてくれないんだろう。
その頃になると夜自宅でいる時だけではなく、昼間学校で過ごしている時もお兄ちゃんの姿が胸の中に現れるようになっていた。
優しくもなく特に格好よくもないお兄ちゃん
普段ろくに口をきいてくれないお兄ちゃん
あたしはこの頃ようやくお兄ちゃんへの恋を自覚したのだった。
毎晩それを続けていたせいであたしはテレビ中毒みたいになってしまった。見ていて決して面白いわけではないんだけど、静かな部屋に耐え切れない気持ちもあった。
小学校も高学年になると男の子の噂をする子たちが増えてきて、あたしも、誰か好きな子いるの? と友だちに聞かれることがあった。そのたびに、よくわかんないとかいないよとか返事をしていたのだけど、そのうちにそう聞かれるたびにお兄ちゃんの制服姿が思い浮かぶようになって来た。
最初は自宅では一人きりなので寂しいのだろうと思っていた。寂しいから唯一同じ家の中にいるお兄ちゃんのことを恋しく思うのだろうと。
たまに両親が家で過ごす晩をあたしはすごく楽しみにしていたのだけど、お兄ちゃんは両親がそろっている時でも自室で過ごすのを止めようとはしなかった。
両親が揃ったリビングで久しぶりに声を出して会話をする楽しみも、そのうちに何だかそんなに楽しく思えなくなってきた。
せっかく久しぶりに家族が一緒に過ごしているのに何でお兄ちゃんはリビングにいてくれないんだろう。
その頃になると夜自宅でいる時だけではなく、昼間学校で過ごしている時もお兄ちゃんの姿が胸の中に現れるようになっていた。
優しくもなく特に格好よくもないお兄ちゃん
普段ろくに口をきいてくれないお兄ちゃん
あたしはこの頃ようやくお兄ちゃんへの恋を自覚したのだった。
802: 2012/01/17(火) 22:30:16.76 ID:IpfYatZ3o
お父さんとお母さんがあたしにも中学受験をするよう勧めてくれたけど、あたしはそれを断った。お兄ちゃんが受験していた頃と違って今の我が家は両親不在と言ってもいい状態だった。こんな中で家事をこなしながら受験勉強ができるとは思えなかったし、何よりお兄ちゃんが男子校にいる以上あたしがわざわざ中学受験する意味はなかったし。
近所の公立中学校に進学したあたしにも、好きだとか付き合ってくださいとか告白してくる男子がいた。中には大人びて見えた先輩もいたし同級生の普段は騒がしい男の子もいたけど、あたしには興味がなかった。いつも告白した男の子とお兄ちゃんを瞬時に比べてしまい、その心の中の競争にお兄ちゃんが負けることはなかったのだ。
こうして中学3年間を彼氏ができることなく、またお兄ちゃんとの仲が改善されることもなく過ごしたあたしも人並みに高校受験しそこそこの偏差値の第一志望の高校に入学した。
同時にお兄ちゃんも地元の国立大学に現役合格した。お兄ちゃんの学校では中くらいの成績だったお兄ちゃんは東京の国立大学や有名私立大学を志望することさえせず、お兄ちゃんらしく地元の国大を専願し無事に合格したのだった。
近所の公立中学校に進学したあたしにも、好きだとか付き合ってくださいとか告白してくる男子がいた。中には大人びて見えた先輩もいたし同級生の普段は騒がしい男の子もいたけど、あたしには興味がなかった。いつも告白した男の子とお兄ちゃんを瞬時に比べてしまい、その心の中の競争にお兄ちゃんが負けることはなかったのだ。
こうして中学3年間を彼氏ができることなく、またお兄ちゃんとの仲が改善されることもなく過ごしたあたしも人並みに高校受験しそこそこの偏差値の第一志望の高校に入学した。
同時にお兄ちゃんも地元の国立大学に現役合格した。お兄ちゃんの学校では中くらいの成績だったお兄ちゃんは東京の国立大学や有名私立大学を志望することさえせず、お兄ちゃんらしく地元の国大を専願し無事に合格したのだった。
803: 2012/01/17(火) 22:47:11.25 ID:IpfYatZ3o
高校生になるとあたしはお兄ちゃんへの恋心をはっきりと自覚するようになった。他人から見ればスポーツもせず部屋にこもってゲームに熱中している大学生に過ぎないかもしれないし、あたしだってお兄ちゃんの良さを説明しろと言われてもうまく説明できなかったと思う。
でも理屈じゃなかった。幼い頃から特に親しいわけでもないお兄ちゃんしかあたしの目には入らなくなっていた。ただ、同時にお兄ちゃんがあたしのことを全く女性として意識していないこともわかっていたし、万一この恋が成就しても兄妹間の恋愛という世間一般では不毛とされる関係であることも理解するようになっていた。
高校入学後の生活は、変化の少ない生活を過ごしてきたあたしとっては、めまぐるしい生活となった。
新しい友達。
・・・・・・そして、お兄ちゃんへの不毛な片想いに疲れたあたしが、お兄ちゃんを忘れようとして初めて男の人の告白に応えたあの日。
先輩は見た目は乱暴だったし我がままだったけど、本当はすごく繊細で優しい人だった。それでも、付き合い出してからもあたしは先輩に本心から心を許したことはなかったと思う。
・・・・・・そして身体も。
お兄ちゃんのことを忘れるためには、もっと先輩と深い仲になった方がいい。あたしは何度もそう考えたけど、そうできなかった。
一つには常にいつかは先輩を傷つけるのではないかという不安があたしの中にあったこと。
それから自分でもバカみたいだったけど、万一奇蹟がおきてあたしがお兄ちゃんと結ばれる時に、あたしはお兄ちゃんが初めての男性であって欲しかったのだ。
・・・・・・自分でも予想だにしなかった。途中いろいろあったけど、高校2年の冬。あたしはお兄ちゃんと結ばれたのだ。
でも理屈じゃなかった。幼い頃から特に親しいわけでもないお兄ちゃんしかあたしの目には入らなくなっていた。ただ、同時にお兄ちゃんがあたしのことを全く女性として意識していないこともわかっていたし、万一この恋が成就しても兄妹間の恋愛という世間一般では不毛とされる関係であることも理解するようになっていた。
高校入学後の生活は、変化の少ない生活を過ごしてきたあたしとっては、めまぐるしい生活となった。
新しい友達。
・・・・・・そして、お兄ちゃんへの不毛な片想いに疲れたあたしが、お兄ちゃんを忘れようとして初めて男の人の告白に応えたあの日。
先輩は見た目は乱暴だったし我がままだったけど、本当はすごく繊細で優しい人だった。それでも、付き合い出してからもあたしは先輩に本心から心を許したことはなかったと思う。
・・・・・・そして身体も。
お兄ちゃんのことを忘れるためには、もっと先輩と深い仲になった方がいい。あたしは何度もそう考えたけど、そうできなかった。
一つには常にいつかは先輩を傷つけるのではないかという不安があたしの中にあったこと。
それから自分でもバカみたいだったけど、万一奇蹟がおきてあたしがお兄ちゃんと結ばれる時に、あたしはお兄ちゃんが初めての男性であって欲しかったのだ。
・・・・・・自分でも予想だにしなかった。途中いろいろあったけど、高校2年の冬。あたしはお兄ちゃんと結ばれたのだ。
804: 2012/01/17(火) 22:48:49.03 ID:IpfYatZ3o
今日はおしまいです
予定どおり今週中には終われそうです
それではまた投下します
おやすみなさい
予定どおり今週中には終われそうです
それではまた投下します
おやすみなさい
805: 2012/01/17(火) 22:49:08.22 ID:moFPAgnjo
引用: 妹の手を握るまで
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります