743: 2008/08/10(日) 13:08:48 ID:y94pBCCC
ストライカーユニットを装備して、滑走路に立つ。
見上げた空には隠すもののない、眩いまでの星々と満月が浮かんでいた。
サーニャとの夜間哨戒。この前は宮藤もいて三人だったけど、今は私達二人だけ。
「・・・・・・行くか、サーニャ」
私の後を追うように格納庫から出てきたサーニャに振り返る。
「・・・・・・」
「・・・サーニャ?」
ぼうっと空を見つめたまま、サーニャは何も応えない。
ここ数日、サーニャは今まで以上にぼんやりと、心ここにあらずといった様子が続いている。
理由は訊ねなかったけれど、宮藤と三人で夜間哨戒中にネウロイを撃墜したあの日から、こんなことが続いている。
サーニャの歌を模し、サーニャだけを狙ったネウロイ――。
そこには何らかの意思や目的があった。
恐らく、私達には分からない、サーニャにしか分からない『何か』がサーニャの心を惑わせている。
「おーい」
目の前で手を振って見せて、ようやく気付いてもらえた。
744: 2008/08/10(日) 13:09:16 ID:y94pBCCC
「・・・ご、ごめんなさい。また、私・・・」
「いーよ。気にすんな」
軽く笑ってみせても、サーニャは沈んだ表情のまま立ち竦んでいた。
そんなサーニャを見ていると、何故だろう。あの時の、夜の空に怯えた宮藤の姿が思い返された。
私の的外れな考えかもしれない、あまりにも安直な考えかもしれない。
けれど、私の体はもう動いていて――。
「・・・・・・エイラ?」
部隊の誰よりもサーニャの傍にいて、誰よりも遠かった私。
純粋な心を映したかのような白い肌が穢れてしまうのを恐れるように、触れられなかったサーニャの手。
そこに私の手が重なり合っていた。
「・・・あの時も言ったけどな」
「・・・?」
「サーニャは一人じゃない。皆がいる、私がいる」
「・・・うん」
ようやく、小さくだけど笑ってくれた。だから、今はもう満足。
「それじゃ、行くぞ」
「うん」
展開された魔方陣の淡い光を引きながら、私達は空へと舞い上がった。
「いーよ。気にすんな」
軽く笑ってみせても、サーニャは沈んだ表情のまま立ち竦んでいた。
そんなサーニャを見ていると、何故だろう。あの時の、夜の空に怯えた宮藤の姿が思い返された。
私の的外れな考えかもしれない、あまりにも安直な考えかもしれない。
けれど、私の体はもう動いていて――。
「・・・・・・エイラ?」
部隊の誰よりもサーニャの傍にいて、誰よりも遠かった私。
純粋な心を映したかのような白い肌が穢れてしまうのを恐れるように、触れられなかったサーニャの手。
そこに私の手が重なり合っていた。
「・・・あの時も言ったけどな」
「・・・?」
「サーニャは一人じゃない。皆がいる、私がいる」
「・・・うん」
ようやく、小さくだけど笑ってくれた。だから、今はもう満足。
「それじゃ、行くぞ」
「うん」
展開された魔方陣の淡い光を引きながら、私達は空へと舞い上がった。
745: 2008/08/10(日) 13:09:38 ID:y94pBCCC
哨戒任務を終え、基地へと戻る帰途。
基地が見え始めた頃、
「・・・エイラ」
「んー?」
「その・・・・・・ありがとう」
「どした、突然」
「・・・私はこんなだから、他の皆ともあまり上手に話が出来なくて。・・・でも、エイラがいてくれたから。私一人だと出来なかったことも、エイラがいてくれたから。だから、ありがとう」
その言葉に私は、嬉しさと・・・寂しさを感じていた。
サーニャが私の傍から離れていってしまう、そんな錯覚。それが怖くて、寂しくて。
「・・・うん」
だから、そんな一言だけしか返せなくて。
ゆっくりと目を閉じる。
幾千もの輝く星々と満月の光が遮断され、完全な闇が私を包む。
――ふと、考えてみたことがある。
この戦いが終わったら、私達はどうなってしまうのだろう。
部隊は解散し、みんな祖国へ、家族の許へ戻っていくのだろうか。サーニャも、そして私も、それが当然となってしまうのか。
そんないつかの未来を、私は見たくなかった。
もし、戦いが終わった後でも、今のように皆一緒に過ごせる日々を送れたら、それはどれだけ幸せだろうか。
未来予知能力。未来を見る力を持った私が、未来を見たくないとは、どんな皮肉か。
遥か先まで見えるわけじゃないこの力は、その時を見せてはくれない。
どんな未来が私達を待っているのか。誰にも分からない。
だから、だからこそ。
ゆっくりと目を開ける。
幾千もの輝く星々と満月の光が、私の様子を窺うサーニャの顔を、そして、ずっと繋がれていた私のひだりてとサーニャのみぎてを照らし出す。
「・・・サーニャ」
「・・・?」
せめて、今だけは――
「ずっと一緒だ」
「・・・うん」
基地が見え始めた頃、
「・・・エイラ」
「んー?」
「その・・・・・・ありがとう」
「どした、突然」
「・・・私はこんなだから、他の皆ともあまり上手に話が出来なくて。・・・でも、エイラがいてくれたから。私一人だと出来なかったことも、エイラがいてくれたから。だから、ありがとう」
その言葉に私は、嬉しさと・・・寂しさを感じていた。
サーニャが私の傍から離れていってしまう、そんな錯覚。それが怖くて、寂しくて。
「・・・うん」
だから、そんな一言だけしか返せなくて。
ゆっくりと目を閉じる。
幾千もの輝く星々と満月の光が遮断され、完全な闇が私を包む。
――ふと、考えてみたことがある。
この戦いが終わったら、私達はどうなってしまうのだろう。
部隊は解散し、みんな祖国へ、家族の許へ戻っていくのだろうか。サーニャも、そして私も、それが当然となってしまうのか。
そんないつかの未来を、私は見たくなかった。
もし、戦いが終わった後でも、今のように皆一緒に過ごせる日々を送れたら、それはどれだけ幸せだろうか。
未来予知能力。未来を見る力を持った私が、未来を見たくないとは、どんな皮肉か。
遥か先まで見えるわけじゃないこの力は、その時を見せてはくれない。
どんな未来が私達を待っているのか。誰にも分からない。
だから、だからこそ。
ゆっくりと目を開ける。
幾千もの輝く星々と満月の光が、私の様子を窺うサーニャの顔を、そして、ずっと繋がれていた私のひだりてとサーニャのみぎてを照らし出す。
「・・・サーニャ」
「・・・?」
せめて、今だけは――
「ずっと一緒だ」
「・・・うん」
750: 2008/08/10(日) 19:22:47 ID:J/Zs0Mur
………がとう。心の中でなら簡単に言うことができる。
言葉にしようとするだけで、私の心のつぶやきは喉元で止まってしまう。
夜、月の懸かる空、月の光を反射する幻想的な雲の上を舞う。
定期的な夜間飛行、私は夜の静寂が支配する中、独りラジオの音を聞く。
聞こえてくるのはピアノの音色。クラシックの番組がやっているので耳を傾ける……、雨だれのプレリュード……私の父が作ってくれたのと同じように、雨の日に想いを馳せた曲。
雨だれ、雨の日の憂鬱、独特のリズムで落ち続ける雨粒、それらが音となって私の中に静かに染みこんでいく……
言葉にしようとするだけで、私の心のつぶやきは喉元で止まってしまう。
夜、月の懸かる空、月の光を反射する幻想的な雲の上を舞う。
定期的な夜間飛行、私は夜の静寂が支配する中、独りラジオの音を聞く。
聞こえてくるのはピアノの音色。クラシックの番組がやっているので耳を傾ける……、雨だれのプレリュード……私の父が作ってくれたのと同じように、雨の日に想いを馳せた曲。
雨だれ、雨の日の憂鬱、独特のリズムで落ち続ける雨粒、それらが音となって私の中に静かに染みこんでいく……
751: 2008/08/10(日) 19:23:27 ID:J/Zs0Mur
◇◇◇
まだ太陽が昇りきらない、一日で一番暗い時間帯、私は夜間の飛行訓練を終えて基地に戻る。
訓練が終わり、私はぼうと佇む。
「…―ニャ」私を呼ぶ声がする。
「サーニャ、おかえり」
「あ…、ただい…ま」夜、私が帰ってきたらいつも出迎えてくれるエイラ
「お疲れ様……んっ? 何か、悩みがある?」私の顔を覗き込む
「んっ…… 何でもないの…」
「んーっ……そうだ、サーニャ、サウナいこう!」そう提案してくれるエイラ、彼女はこれから仕事なのに……
「でも、これから仕事……」
「サーニャはそんな事、気にすんナ」
「仕事前にちょっとお風呂入りたいと思ってたんダ、サーニャもお疲れみたいだし」
彼女は幽霊のようだった私に気づいてくれる、いつも気に掛けてくれる……
ムワと熱い蒸気が肌にまとわりつく。
熱気が体温をジリジリと高めていく。
身体が限界まで温められて、思考が鈍る。
「そろそろ、あがって水に浸かりにいこうカ」
「うん」そう言って私達はサウナを出て、水風呂に浸かる。
パシャ……星の天蓋を写す水面がゆらと揺れる。
上気した身体が一気に冷やされ
「はぁ……」思わず溜息が漏れる。
「気持ちいいねー」エイラは身体を水面に浮かせながら言う。
ひやりとした空気に、心地よい静寂が生まれる。
「サーニャに…笑いあえる友達が出来て良かった」
「宮藤は良いやつだし、リーネなんかも気が合ってるようだし」
今までなかなか話す機会、接点を持つことが出来なかった私のためにエイラは一生懸命に取り持ってくれていた。
先月だって、みんなで私と宮藤さんの誕生日を祝うセッティングをしてくれたのはエイラだった。
けれども、私のほうからはエイラにお礼も言えないでいる。
いつも言い出す前に機会を逸してしまう……
ザバッ
浮いていたエイラが姿勢を正す。
「そうだ!」
「サーニャ、今日も星を見よう!」
「うん」
752: 2008/08/10(日) 19:23:49 ID:J/Zs0Mur
私達は、岩場に移動して満天の星空を眺める。
「サーニャ、あれがオリオンで、あれがふたご座」
そういってエイラは次々と星を指に差していく
「あれがペガサスで、あっちが魚座」
「うん」
「魚座は二匹の魚が尾をリボンで結ばれた形、これは美の女神アフロディテと子の工口ス
二人が怪獣に襲われて川に逃げる際にはぐれないように身体を紐で結んで魚に変身した姿なんダ」
エイラはいつも星を見ながら、私に色々教えてくれる。
綺麗に輝く星を見上げる。
「サ…サ、サ、サ、サーニャ」何だろう、少し上ずった声で私を呼ぶ
「なに?」
「てっ、そ、その……手…繋がないカ?」そう言っておずおずと手が差し出される。
「わ、わたしはいつでも……一緒、だから……魚座、みたいに…」
エイラの少し震えるような指先が私の指に微かに触れる。
「悩みがあれば、いつでも相談に乗るから」エイラの顔はほんのり朱が差している。
私はそっとエイラの指に私の指を絡ませる。
やんわりとエイラの手の温もりが伝わる……
「エイラ……いつも、ありがとう」ギュと手を握る。
私がそう言うと、エイラの顔はさらに真っ赤になった。
764: 2008/08/11(月) 12:15:38 ID:2PGK6lh1
さーにゃんはウィーンで音楽勉強してたのに一体どういった経緯で軍人になっちゃったんだろうね。
やっぱり坂本さんみたいなスカウトマンが来て懐柔されたのだろうか
やっぱり坂本さんみたいなスカウトマンが来て懐柔されたのだろうか
引用: ストライクウィッチーズ
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