800: 2008/08/11(月) 23:45:02 ID:zgdRiItO
1/5
夜間戦闘から2日後、久しぶりの休暇を貰ったのだけど、時差ボケが戻らない私と
サーニャは、相変わらず真っ暗なサーニャの部屋で寝ていた。
私は夢を見る。
星降る夜、高度10000フィート、遥か山脈の向こうへ届けとばかりに歌うサーニャ。
声を出せない私、歌声が心の奥底を温かく揺らす。
鼻歌のような声がだんだんと形を持って耳に届く。「…きて。おきて…」
「んぁ?」
世界が滲む。眩しい。目の前にはサーニャ。窓が開いて朝光が差しこんでいた。
「風が強くて…窓が開いちゃったの。もう、起きる…?」
サーニャ、少し寝癖がついてる。曲がった前髪も似合ってるなんて欲目ダナ…。
801: 2008/08/11(月) 23:45:30 ID:zgdRiItO
2/5
「ブルーベリー?」
私が聞き返すと、サーニャはちょっと首をすくめて小さくうなずく。
「その…おいしかった、から…」
サーニャはブルーベリーが食べたいと言った。オローシャにはブルーベリーは
なかったんダナ…なんて思いながら、少し考える。サーニャが自分から何かを
ねだるなんて本当に珍しい。出来る事なら叶えてあげたい…。
「し、し、少佐に相談してみるよ」
「うん…ありがとう…」
上目遣いでサーニャに見つめられると、どうしてもちゃんと話せなくなるんダナ…。
あぁ、こんなんヘナチョコじゃ、サーニャに相応しくないよな…とか自己嫌悪。
「ブルーベリー?」
私が聞き返すと、サーニャはちょっと首をすくめて小さくうなずく。
「その…おいしかった、から…」
サーニャはブルーベリーが食べたいと言った。オローシャにはブルーベリーは
なかったんダナ…なんて思いながら、少し考える。サーニャが自分から何かを
ねだるなんて本当に珍しい。出来る事なら叶えてあげたい…。
「し、し、少佐に相談してみるよ」
「うん…ありがとう…」
上目遣いでサーニャに見つめられると、どうしてもちゃんと話せなくなるんダナ…。
あぁ、こんなんヘナチョコじゃ、サーニャに相応しくないよな…とか自己嫌悪。
802: 2008/08/11(月) 23:46:00 ID:zgdRiItO
3/5
日陰が濃い。午前11時、私とサーニャは田舎道を二人で歩いていた。
サーニャは麦わら帽子をかぶっている。
風に飛ばされないように、軽く手を添えて、生真面目にゴムも顎にかけて
なんだか女の子の遠足みたい。
少佐に相談したら、真面目な顔つきで「どうした?なにかあったのか?」なんて
聞かれた。思わずサーニャの名前が口から出てしまって、少佐は小さく笑うと、
基地の近所でブルーベリーを栽培している農家を教えてくれた。
きっとあの魔眼で、私の気持ちなんて全部お見通しなんダナ…。
「エイラ…。あれ…」
サーニャが私の手を取る。小さくて涼やかな手のひらの感触。
私はびっくりして背筋が伸びてしまう。
「どうしたの…?」
「や、いや…、なんでもない。それよりどうしたんダ?」
サーニャが手を引っ張って差し示す先には、小さな農家とブルーベリーの畑が
みえた。
「あそこ…かな?」
日陰が濃い。午前11時、私とサーニャは田舎道を二人で歩いていた。
サーニャは麦わら帽子をかぶっている。
風に飛ばされないように、軽く手を添えて、生真面目にゴムも顎にかけて
なんだか女の子の遠足みたい。
少佐に相談したら、真面目な顔つきで「どうした?なにかあったのか?」なんて
聞かれた。思わずサーニャの名前が口から出てしまって、少佐は小さく笑うと、
基地の近所でブルーベリーを栽培している農家を教えてくれた。
きっとあの魔眼で、私の気持ちなんて全部お見通しなんダナ…。
「エイラ…。あれ…」
サーニャが私の手を取る。小さくて涼やかな手のひらの感触。
私はびっくりして背筋が伸びてしまう。
「どうしたの…?」
「や、いや…、なんでもない。それよりどうしたんダ?」
サーニャが手を引っ張って差し示す先には、小さな農家とブルーベリーの畑が
みえた。
「あそこ…かな?」
803: 2008/08/11(月) 23:46:23 ID:zgdRiItO
4/5
農家のおじさんは好きなだけ持って行っていいよ、と言ってくれた。
さすがサーニャだな。みんなが優しくしたくなるんダ。
「…いっぱい…」
サーニャが山のようになったブルーベリーを見てつぶやく。
薄藍色の小さな実が沢山寄り添って、木になっている。
夏の日差しの元、風が吹き抜けて、木擦れの音が心地良くって、
二人して畑を目の前に茫然と立ち止まってしまう。
「サーニャ、行こっ!」
私は思い切ってサーニャの小さな手を取り、畑の方へ歩き出す。
「うんっ」
サーニャの返事の調子だけで、気持ちが手に取るようにわかる。
私はサーニャが喜んでくれていることが嬉しくて、少しだけ握った手に
力を込める。サーニャも握り返してくれる。
私は嬉しくて、恥ずかしくて、どうしたら良いのか分からなくて、
思わず手を握ったまま畑の中を走りだしてしまう。
「エイラ…早いよぅ…」
「わっ、ごっごめん」
農家のおじさんは好きなだけ持って行っていいよ、と言ってくれた。
さすがサーニャだな。みんなが優しくしたくなるんダ。
「…いっぱい…」
サーニャが山のようになったブルーベリーを見てつぶやく。
薄藍色の小さな実が沢山寄り添って、木になっている。
夏の日差しの元、風が吹き抜けて、木擦れの音が心地良くって、
二人して畑を目の前に茫然と立ち止まってしまう。
「サーニャ、行こっ!」
私は思い切ってサーニャの小さな手を取り、畑の方へ歩き出す。
「うんっ」
サーニャの返事の調子だけで、気持ちが手に取るようにわかる。
私はサーニャが喜んでくれていることが嬉しくて、少しだけ握った手に
力を込める。サーニャも握り返してくれる。
私は嬉しくて、恥ずかしくて、どうしたら良いのか分からなくて、
思わず手を握ったまま畑の中を走りだしてしまう。
「エイラ…早いよぅ…」
「わっ、ごっごめん」
804: 2008/08/11(月) 23:46:47 ID:zgdRiItO
5/5
「これだけあれば、みんなのお土産も大丈夫かな…」
籠一杯のブルーベリーを抱えてサーニャが優しく微笑む。
まだ畑には一杯なってるし、もっと…とも思ったけど、言うのはやめた。
そんな控えめなサーニャが良いんだから。
農家のおじさんにお礼を言って、帰り道を歩きだす。
空は茜色に染まり始めて、私たちの影は長くなっていた。遠くに鳥の声。
二人とも口を開かない。
私たちは心地良い沈黙がある事を知ってるんだ、と思う。
不意にサーニャが私の袖をひっぱる。
「うん?」
「今日は、ありがとう。楽しかった…」
小鳥のさえずりのような声、花のような笑顔、言葉じゃ言い表せない
サーニャの優しい表情。胸の鼓動が速くなって、身体が自分の身体じゃ
ないみたいな感じで…。
思わずバカな事を言ってしまう。
「帰ったら、ジャム作ろうか、知ってる?私の故郷ではミートボールに
ジャムをつけてたべるんだ。結構おいしいんだな、コレガ」
「…えー」
サーニャが疑わしそうな目で私を見あげる。
「ほ、本当なんだゾ」
私はしどろもどろになってしまう。
「ふふふっ」「エヘヘっ」
サーニャが小さく笑う。私も笑う。夕日が沈まなければいいのに、と思う。
基地が夕日に染め上げられて、まるで教会のように見えた。
「これだけあれば、みんなのお土産も大丈夫かな…」
籠一杯のブルーベリーを抱えてサーニャが優しく微笑む。
まだ畑には一杯なってるし、もっと…とも思ったけど、言うのはやめた。
そんな控えめなサーニャが良いんだから。
農家のおじさんにお礼を言って、帰り道を歩きだす。
空は茜色に染まり始めて、私たちの影は長くなっていた。遠くに鳥の声。
二人とも口を開かない。
私たちは心地良い沈黙がある事を知ってるんだ、と思う。
不意にサーニャが私の袖をひっぱる。
「うん?」
「今日は、ありがとう。楽しかった…」
小鳥のさえずりのような声、花のような笑顔、言葉じゃ言い表せない
サーニャの優しい表情。胸の鼓動が速くなって、身体が自分の身体じゃ
ないみたいな感じで…。
思わずバカな事を言ってしまう。
「帰ったら、ジャム作ろうか、知ってる?私の故郷ではミートボールに
ジャムをつけてたべるんだ。結構おいしいんだな、コレガ」
「…えー」
サーニャが疑わしそうな目で私を見あげる。
「ほ、本当なんだゾ」
私はしどろもどろになってしまう。
「ふふふっ」「エヘヘっ」
サーニャが小さく笑う。私も笑う。夕日が沈まなければいいのに、と思う。
基地が夕日に染め上げられて、まるで教会のように見えた。
引用: ストライクウィッチーズ
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