811: 2008/08/28(木) 20:14:13 ID:qESQ5Apa
その夜、私はいつもよりずいぶん早くベッドに入った。
どうも最近寝つきが悪いらしく、あまりよく眠れないせいだ。
といっても、やはりこんな早くに眠れるはずもない。
私はイヤホンから流れてくるそれに耳を澄まし、ぼーっと天井を眺めていた。
――と、突然部屋の扉が開き、誰かが入ってくる。
部屋の電気を消していたものだから、それが誰なのか私にはわからない。
ああ、こんなことならブルーベリーをもっと食べておくんだった。
もちろん、ここで「誰だ?」と一言言えばよかったのだろうが、私はそうはしなかった。
なぜなら私の女の勘が、それが誰なのかはっきり告げたから。
そう、芳佳だ。芳佳に違いない。
しかしなぜこんな時間にノックもせずに芳佳は私の部屋にきたのか……。
やはりこれはあれか?
いつの間にかフラグが立ってたのか?
ついにルートに突入か?
いやまて。落ち着け、ゲルトルート・バルクホルン。重要なのはここからだ。
選択肢ひとつのミスではいバッドエンドなんてことになりかねん。
こういう時こそ気を引き締めてかからなければならない。
と、芳佳は無言ですたすたと私のベッドに入ると、そのまま私のすぐ隣に寝てしまった。
私は思わず寝返りをうって芳佳に背を向けた。全神経を背中に集中させる。
あまりにいきなりな展開に私の脳の処理速度ではとても追い付かない。
私はひとまず狸寝入りすることにして、これから起こりうることをシミュレートすることに努めた。
「おねえちゃん、芳佳、今日はおねえちゃんといっしょに寝ていい?」
ぎゅっと私の服の袖を握る芳佳。
「ハハハ、まったく芳佳は甘えんぼさんだなぁ。いいよ。でも今日だけだからな」
ううん、嘘。本当は毎日でも一緒に寝ていいよ。
うんそうだ。きっとこうに違いない。
しかし問題は芳佳が一向になにも話しかけてこないことだ。
これは私から話しかけた方がいいのか? しかし一度狸寝入りを決め込んだ以上、なかなか口を開くことができない。
私がじっとタイミングを見計らっていると――芳佳の胸のない胸が私の背にぴたんと引っついた。
今しかない!
私は再び素早く寝返りをうち、両腕で強く芳佳のことを抱き締める。
「ハハハ、まったくよ――」
「トゥルーデ、痛い」
「なぜお前がここにいる?」
そこにいたのは芳佳――ではなく、ハルトマンだった。
812: 2008/08/28(木) 20:15:26 ID:qESQ5Apa
私は部屋の電気をつけ、ベッドの上におんなのこ座りするハルトマンと対峙した。
「今日はトゥルーデの部屋で寝させて」
とハルトマン。
なんだこれは? 知らぬ間に別ルートに入っていたのか?
「自分の部屋はどうしたんだ?」
「片づけてたら逆にちらかっちゃったの」
本当だろうな。おそらくベッドの上にすら眠るだけのスペースがないのだろう。
「なにも私の部屋でなくたっていいだろう」
「トゥルーデの部屋がよかったの」
どういう意味だ?
……いかん、あまり考え込むな。
「いつも言ってるだろう。いらない物は捨てろと」
「だって全部いる物で、なのに部屋が狭すぎるの。
トゥルーデの部屋は物が無さ過ぎるからそんなこと言えるんだよ」
ハルトマンは私の部屋を見回す。
「でも、なんかだんだん物が増えてきてないか」
ハルトマンは私の本棚から本を一冊取り出した。
「『週刊わたしのおねえちゃん』……?」
本のタイトルを読み上げると、そのままぽいと床に投げ捨てた。
「投げるな! 折れたりしたらどうするんだ!」
私は『週刊わたおね』を拾い上げ、本棚に戻した。
まったく……鑑賞用の方だからまだよかったものの。
「仕方ないから今日は私の部屋で寝させてやる」
「ありがとうトゥルーデ」
そう言うとハルトマンは私に抱きついてきた。
「……ほら、いいからさっさと寝ろ」
「えー、まだ眠くない」
「お前は何しにこの部屋に来たんだ!?」
私はハルトマンの腕を掴むと、ベッドに倒れこませるように投げた。
「きゃっ、大胆」
と甘い声でベッドに寝そべるハルトマンは言った。
……ああ、調子が狂う。
「今日はトゥルーデの部屋で寝させて」
とハルトマン。
なんだこれは? 知らぬ間に別ルートに入っていたのか?
「自分の部屋はどうしたんだ?」
「片づけてたら逆にちらかっちゃったの」
本当だろうな。おそらくベッドの上にすら眠るだけのスペースがないのだろう。
「なにも私の部屋でなくたっていいだろう」
「トゥルーデの部屋がよかったの」
どういう意味だ?
……いかん、あまり考え込むな。
「いつも言ってるだろう。いらない物は捨てろと」
「だって全部いる物で、なのに部屋が狭すぎるの。
トゥルーデの部屋は物が無さ過ぎるからそんなこと言えるんだよ」
ハルトマンは私の部屋を見回す。
「でも、なんかだんだん物が増えてきてないか」
ハルトマンは私の本棚から本を一冊取り出した。
「『週刊わたしのおねえちゃん』……?」
本のタイトルを読み上げると、そのままぽいと床に投げ捨てた。
「投げるな! 折れたりしたらどうするんだ!」
私は『週刊わたおね』を拾い上げ、本棚に戻した。
まったく……鑑賞用の方だからまだよかったものの。
「仕方ないから今日は私の部屋で寝させてやる」
「ありがとうトゥルーデ」
そう言うとハルトマンは私に抱きついてきた。
「……ほら、いいからさっさと寝ろ」
「えー、まだ眠くない」
「お前は何しにこの部屋に来たんだ!?」
私はハルトマンの腕を掴むと、ベッドに倒れこませるように投げた。
「きゃっ、大胆」
と甘い声でベッドに寝そべるハルトマンは言った。
……ああ、調子が狂う。
813: 2008/08/28(木) 20:17:14 ID:qESQ5Apa
再び部屋の電気を消し、私たち二人は同じベッドに入った。
一人用のベッドだから、二人で寝るには少々狭い。
私の肩とハルトマンの肩が軽く重なりあう。
電気スタンドのぼんやりとした光だけがその場を照らし出している。
私は外していたイヤホンを再び耳に入れた。
「ねぇトゥルーデ、なに聴いてるの?」
「ああ、これか? これは『秘め声CD』だ」
正しくは『第501統合戦闘航空団 秘め声CD』と言う。
「9月26日に発売される私たちの活躍を収録したDVDの限定版についてくるんだ」
「うん、それ知ってる。なんでトゥルーデがそんなもの持ってるの?」
「是非にというので試験用のを焼いてもらったんだ」
私がどれほど頭を下げてまわったことか。
「こうやって気を静めて、ぐっすりと眠れるように、ここのところ毎日聴いてるんだ」
「その割に息が荒いのは気のせいか?」
なにを言っているんだ? そんなはずないだろう。
「ふぅん」
と、ハルトマンは私の耳からイヤホンを抜き取って、
自分の耳に入れた。
ちなみにその時、私は芳佳のトラックをリピート再生して聴いていた。
「なにこれ、すごく恥ずかしい」
「だろう? あんなことやこんなことを言っちゃうんだ。
……なぁ、そろそろ返してくれないか?」
「枕がない」
?
「いや枕はひとつしか……」
「これと交換」
ハルトマンは自分の耳のイヤホンを指差す。
「お前に枕は必要ないだろう」
ベッドから落っこちても平気で寝てるんだから。
「なぁハルトマン」
「これと交換」
頑として言うことを聞いてくれそうにはない。
たしかに枕がないと寝づらいが、ここのところの寝苦しさを考えればイヤホンを返してもらうしかない。
「仕方ないな」
私は起き上がって枕を掴み上げた。
が、ここであることを思い出す。
私は急いで枕をベッドに叩きつけたが、それより一瞬早くハルトマンの手がそれに伸びた。
「なにこれ」
と、ハルトマンは枕の下に敷いていた芳佳の写真を凝視する。
へぇ、となんともとらえどころのない声をあげるハルトマン。
「トゥルーデは宮藤のこと好きなのか?」
一人用のベッドだから、二人で寝るには少々狭い。
私の肩とハルトマンの肩が軽く重なりあう。
電気スタンドのぼんやりとした光だけがその場を照らし出している。
私は外していたイヤホンを再び耳に入れた。
「ねぇトゥルーデ、なに聴いてるの?」
「ああ、これか? これは『秘め声CD』だ」
正しくは『第501統合戦闘航空団 秘め声CD』と言う。
「9月26日に発売される私たちの活躍を収録したDVDの限定版についてくるんだ」
「うん、それ知ってる。なんでトゥルーデがそんなもの持ってるの?」
「是非にというので試験用のを焼いてもらったんだ」
私がどれほど頭を下げてまわったことか。
「こうやって気を静めて、ぐっすりと眠れるように、ここのところ毎日聴いてるんだ」
「その割に息が荒いのは気のせいか?」
なにを言っているんだ? そんなはずないだろう。
「ふぅん」
と、ハルトマンは私の耳からイヤホンを抜き取って、
自分の耳に入れた。
ちなみにその時、私は芳佳のトラックをリピート再生して聴いていた。
「なにこれ、すごく恥ずかしい」
「だろう? あんなことやこんなことを言っちゃうんだ。
……なぁ、そろそろ返してくれないか?」
「枕がない」
?
「いや枕はひとつしか……」
「これと交換」
ハルトマンは自分の耳のイヤホンを指差す。
「お前に枕は必要ないだろう」
ベッドから落っこちても平気で寝てるんだから。
「なぁハルトマン」
「これと交換」
頑として言うことを聞いてくれそうにはない。
たしかに枕がないと寝づらいが、ここのところの寝苦しさを考えればイヤホンを返してもらうしかない。
「仕方ないな」
私は起き上がって枕を掴み上げた。
が、ここであることを思い出す。
私は急いで枕をベッドに叩きつけたが、それより一瞬早くハルトマンの手がそれに伸びた。
「なにこれ」
と、ハルトマンは枕の下に敷いていた芳佳の写真を凝視する。
へぇ、となんともとらえどころのない声をあげるハルトマン。
「トゥルーデは宮藤のこと好きなのか?」
814: 2008/08/28(木) 20:19:25 ID:qESQ5Apa
「そ、そんなことはない」
私は努めて平静にその言葉を返した。
「じゃあこれは?」
ハルトマンは、ピラッ、と指に挟んだその写真を私に見せる。
ああ、芳佳。なんて愛らしいんだろう。
「……その写真、ずっと無くしてたんだ。まさか枕の下にあるなんてな」
「どうしてトゥルーデが宮藤の写真持ってるの?」
「妹の写真がひとつふたつあるくらい普通だろう」
アルバムのひとつふたつくらいなら。
「宮藤はトゥルーデの妹じゃないでしょ」
な、なんてこと言うんだ。いくら旧知の友でも言って良いことと悪いことがあるだろう。
いや落ち着けゲルトルート・バルクホルン。
これではハルトマンの思うつぼではないか(たぶん)。
努めて平静に対処するんだ。
「たしかに私と宮藤に血のつながりはないが、それはあくまで血縁的なもので……
(中略)
つまり私と宮藤とは霊的な次元において……
(中略)
……というわけだ。わかったか、ハルトマン?」
「トゥルーデは年下が好みなの?」
「違う、けどまあいい」
これ以上話しても埒があかない。
ここはとりあえず芳佳から話がそれたことをよしとするべきだ。
「じゃあリーネは?」
「家庭的で女の子らしくてよし! 潜在的な妹の力は相当なものと見た! 私より胸が大きいのはなんだが」
「サーニャは?」
「その姉性をくすぐるルックスと恥ずかしがり屋さんという内面! ある種一番妹らしい妹ではないだろうか!」
「ルッキーニは?」
「手のかかるわんぱくっ娘だが、だからこそかわいさ100倍と言えるだろう!」
「エイラは?」
「一見つかみどころのない不思議ちゃんだが、充分私の守備範囲だ!」
「シャーリーは?」
「私より背が高いし……胸も……階級も同じだし、妹って感じではないな」
無論、良き友、良き同僚ではあるが。
「……あ、そだ。ペリーヌは?」
「なにを言っているんだ?」
ハルトマンはたまによくわからないことを言う。
ペリーヌが妹? そんなはずないだろう。
たしかに私より年下で背も低ければ胸もぺったんこで階級もひとつ下だが。
「じゃあ――」
ハルトマンは意味深なまなざしで私の顔を覗き込んだ。
「じゃあ、私は?」
不覚にも私は一瞬、ハルトマンをかわいいと思ってしまった。
私は努めて平静にその言葉を返した。
「じゃあこれは?」
ハルトマンは、ピラッ、と指に挟んだその写真を私に見せる。
ああ、芳佳。なんて愛らしいんだろう。
「……その写真、ずっと無くしてたんだ。まさか枕の下にあるなんてな」
「どうしてトゥルーデが宮藤の写真持ってるの?」
「妹の写真がひとつふたつあるくらい普通だろう」
アルバムのひとつふたつくらいなら。
「宮藤はトゥルーデの妹じゃないでしょ」
な、なんてこと言うんだ。いくら旧知の友でも言って良いことと悪いことがあるだろう。
いや落ち着けゲルトルート・バルクホルン。
これではハルトマンの思うつぼではないか(たぶん)。
努めて平静に対処するんだ。
「たしかに私と宮藤に血のつながりはないが、それはあくまで血縁的なもので……
(中略)
つまり私と宮藤とは霊的な次元において……
(中略)
……というわけだ。わかったか、ハルトマン?」
「トゥルーデは年下が好みなの?」
「違う、けどまあいい」
これ以上話しても埒があかない。
ここはとりあえず芳佳から話がそれたことをよしとするべきだ。
「じゃあリーネは?」
「家庭的で女の子らしくてよし! 潜在的な妹の力は相当なものと見た! 私より胸が大きいのはなんだが」
「サーニャは?」
「その姉性をくすぐるルックスと恥ずかしがり屋さんという内面! ある種一番妹らしい妹ではないだろうか!」
「ルッキーニは?」
「手のかかるわんぱくっ娘だが、だからこそかわいさ100倍と言えるだろう!」
「エイラは?」
「一見つかみどころのない不思議ちゃんだが、充分私の守備範囲だ!」
「シャーリーは?」
「私より背が高いし……胸も……階級も同じだし、妹って感じではないな」
無論、良き友、良き同僚ではあるが。
「……あ、そだ。ペリーヌは?」
「なにを言っているんだ?」
ハルトマンはたまによくわからないことを言う。
ペリーヌが妹? そんなはずないだろう。
たしかに私より年下で背も低ければ胸もぺったんこで階級もひとつ下だが。
「じゃあ――」
ハルトマンは意味深なまなざしで私の顔を覗き込んだ。
「じゃあ、私は?」
不覚にも私は一瞬、ハルトマンをかわいいと思ってしまった。
815: 2008/08/28(木) 20:22:07 ID:qESQ5Apa
ハルトマンが妹だと!?
たしかにハルトマンは私より二つ年下だが。
それに、見た目はそれよりずっと幼く見える。
客観的に見て、非常に可愛らしい少女と言えるだろう。
内面にしても私が放っておくと飢えて氏ぬくらいのぐうたら、
しかしそれは庇護欲を際限なく刺激するいう意味ではハルトマンの強烈な個性と言えるだろう。
たしかにかなりいい線をいっている気がする。
しかし……
「なにを言ってるんだ。ハルトマンはハルトマンだろう」
「えー、つまんない」
別に面白い回答をする必要はないだろ。
「ほら、もう寝ろ。明日は早いんだ」
「まだ眠くない」
「いいから早く寝ろ」
私はハルトマンを力付けで寝かせつけ、毛布を被せた。
「トゥルーデってばおかあさんみたい」
「私はまだそんな年ではない」
「じゃあおねえちゃん」
お、お、お、お、お、お、お、お、お、おねえちゃん!?
「どっちでもいいけどね」
そう言うとハルトマンは向こうを向いてしまった。
「ちょっと待て、今なんて言った!?」
「『どっちでもいいけどね』」
「その前だ!」
「『おねえちゃん』」
なんと甘美な響きなことよ。
私の視界に一面の花畑が広がる。
ここは楽園か?
たしかにハルトマンは私より二つ年下だが。
それに、見た目はそれよりずっと幼く見える。
客観的に見て、非常に可愛らしい少女と言えるだろう。
内面にしても私が放っておくと飢えて氏ぬくらいのぐうたら、
しかしそれは庇護欲を際限なく刺激するいう意味ではハルトマンの強烈な個性と言えるだろう。
たしかにかなりいい線をいっている気がする。
しかし……
「なにを言ってるんだ。ハルトマンはハルトマンだろう」
「えー、つまんない」
別に面白い回答をする必要はないだろ。
「ほら、もう寝ろ。明日は早いんだ」
「まだ眠くない」
「いいから早く寝ろ」
私はハルトマンを力付けで寝かせつけ、毛布を被せた。
「トゥルーデってばおかあさんみたい」
「私はまだそんな年ではない」
「じゃあおねえちゃん」
お、お、お、お、お、お、お、お、お、おねえちゃん!?
「どっちでもいいけどね」
そう言うとハルトマンは向こうを向いてしまった。
「ちょっと待て、今なんて言った!?」
「『どっちでもいいけどね』」
「その前だ!」
「『おねえちゃん』」
なんと甘美な響きなことよ。
私の視界に一面の花畑が広がる。
ここは楽園か?
816: 2008/08/28(木) 20:24:15 ID:qESQ5Apa
「ハルトマン、いやエーリカ。今から私のことを姉と思ってもらって構わない」
「どうかしたの? トゥルーデ」
背を向けていたエーリカが私の方に再び顔を向けた。
「『トゥルーデ』じゃない! ちゃんと『おねえちゃん』と呼びなさい!」
「いや、意味わかんない」
なんだその反抗的な態度は。かわいいやつめ。
「そうだ――ほら、これを」
私は寝ているハルトマンを起こして、柏葉剣付騎士鉄十字章をハルトマンの首にかけた。
「いらない」
ハルトマンは柏葉剣付騎士鉄十字章をはずすとぽいっと投げ捨ててしまった。
「なんてことするんだ! 貴様それでもカールスラント軍人か!」
「だって寝るのにじゃま」「そういう問題ではない! これは神聖な儀式で――」
「ねむい……おやすみ」
ついさっき「まだ眠くない」と言ったのは誰だ。
「お・き・ろー!!」
私が大声をあげると、エーリカはむくりと起き上がった。
焦点の定まらぬ目で私を見つめる。いや、睨んでいるのか?
「トゥルーデが」
「『おねえちゃん』だ」
「『おねえちゃん』があんまりうるさいから目が冴えちゃったじゃない」
「そ、それはごめんね」
いくら神聖な儀式とはいえ、それが妹の大事な睡眠を邪魔していいはずがない。
私はなんてことしてしまったんだ。
「そうだね、おねむの時間だもんね。
おねえちゃん、羊を数えようか? それとも昔話をしてあげようか?」
「こういうときはあれをするもんなんじゃないのか?」
あれと言うとまさかあれか……?
「お……お……」
「おやすみのキス」
口に出して言うな。照れちゃうだろ。
「どうかしたの? トゥルーデ」
背を向けていたエーリカが私の方に再び顔を向けた。
「『トゥルーデ』じゃない! ちゃんと『おねえちゃん』と呼びなさい!」
「いや、意味わかんない」
なんだその反抗的な態度は。かわいいやつめ。
「そうだ――ほら、これを」
私は寝ているハルトマンを起こして、柏葉剣付騎士鉄十字章をハルトマンの首にかけた。
「いらない」
ハルトマンは柏葉剣付騎士鉄十字章をはずすとぽいっと投げ捨ててしまった。
「なんてことするんだ! 貴様それでもカールスラント軍人か!」
「だって寝るのにじゃま」「そういう問題ではない! これは神聖な儀式で――」
「ねむい……おやすみ」
ついさっき「まだ眠くない」と言ったのは誰だ。
「お・き・ろー!!」
私が大声をあげると、エーリカはむくりと起き上がった。
焦点の定まらぬ目で私を見つめる。いや、睨んでいるのか?
「トゥルーデが」
「『おねえちゃん』だ」
「『おねえちゃん』があんまりうるさいから目が冴えちゃったじゃない」
「そ、それはごめんね」
いくら神聖な儀式とはいえ、それが妹の大事な睡眠を邪魔していいはずがない。
私はなんてことしてしまったんだ。
「そうだね、おねむの時間だもんね。
おねえちゃん、羊を数えようか? それとも昔話をしてあげようか?」
「こういうときはあれをするもんなんじゃないのか?」
あれと言うとまさかあれか……?
「お……お……」
「おやすみのキス」
口に出して言うな。照れちゃうだろ。
817: 2008/08/28(木) 20:26:13 ID:qESQ5Apa
「うん……そうだな」
私は寝そべるエーリカに顔を近づけた。
おでこだろうかほっぺだろうかとしばしの間熟考していたところ、エーリカはすっと頭をあげて、
私の口とエーリカの口がぶつかり、そのまま一分を越えようかという長い口づけを交わした。
ようやくエーリカの唇が離れると、ゴホッゴホッと私は激しくせき込んだ。
満足げな顔でぺろっと舌で唇を舐めるエーリカ。
「なぜ舌を入れる?」
「えー、私のうちではこうだよ。妹ともずっとこうだったもん」
「そうなのか!?」
まあこういうことは各家庭である程度差異があるのは当然といえば当然だが。
私の家庭がどうだったと言って、エーリカが同じとは限らない。
「もう眠れそうか?」
「え? まだこれからでしょ?」
そう言うとエーリカは私を押し倒し、私の上に乗っかってしまった。
「これからこれから♪」
「ちょっと待て。なぜ胸を揉む?」
「だって姉妹が同じベッドに寝ればこうなるものなんじゃないの?」
そんな話未だかつて聞いたことない。
「妹とはずっとこうだったよ」
「そうなのか!?」
いや、いくらなんでもそんなはずないだろ。
「もしかして怒っちゃった? 『おねえちゃん』」
「そ、そんなことはないよ」
私はほがらかな作り笑顔をうかべた。
「じゃあどんどんいくね。服を脱がせなくちゃ」
「ちょっと待て、それは……」
「はーい、上。次は下ね」
なされるがまま素っ裸にされた私の体に、指先で、舌で、歯で、エーリカは侵略してくる。
それはまるでおもちゃを与えられた子供のような無邪気さで。
「どう? トゥルーデ、気持ちいい?」
「気持ちいいが……いや待て、私のことは『おねえちゃん』と……」
「それ飽きた。だってトゥルーデはトゥルーデでしょ」
「だから『お――」
私の言葉を塞ぐように、エーリカは再び長い口づけをした。
だからなぜ舌を入れるんだ!?
私の視界に一面の花畑が広がる。
ここは氏後の世界か?
エーリカが疲れ果てて眠るまで(いや、エーリカが満足しきって飽きるまでか?)
こうしたやり取りが真夜中まで続いた。
私は寝そべるエーリカに顔を近づけた。
おでこだろうかほっぺだろうかとしばしの間熟考していたところ、エーリカはすっと頭をあげて、
私の口とエーリカの口がぶつかり、そのまま一分を越えようかという長い口づけを交わした。
ようやくエーリカの唇が離れると、ゴホッゴホッと私は激しくせき込んだ。
満足げな顔でぺろっと舌で唇を舐めるエーリカ。
「なぜ舌を入れる?」
「えー、私のうちではこうだよ。妹ともずっとこうだったもん」
「そうなのか!?」
まあこういうことは各家庭である程度差異があるのは当然といえば当然だが。
私の家庭がどうだったと言って、エーリカが同じとは限らない。
「もう眠れそうか?」
「え? まだこれからでしょ?」
そう言うとエーリカは私を押し倒し、私の上に乗っかってしまった。
「これからこれから♪」
「ちょっと待て。なぜ胸を揉む?」
「だって姉妹が同じベッドに寝ればこうなるものなんじゃないの?」
そんな話未だかつて聞いたことない。
「妹とはずっとこうだったよ」
「そうなのか!?」
いや、いくらなんでもそんなはずないだろ。
「もしかして怒っちゃった? 『おねえちゃん』」
「そ、そんなことはないよ」
私はほがらかな作り笑顔をうかべた。
「じゃあどんどんいくね。服を脱がせなくちゃ」
「ちょっと待て、それは……」
「はーい、上。次は下ね」
なされるがまま素っ裸にされた私の体に、指先で、舌で、歯で、エーリカは侵略してくる。
それはまるでおもちゃを与えられた子供のような無邪気さで。
「どう? トゥルーデ、気持ちいい?」
「気持ちいいが……いや待て、私のことは『おねえちゃん』と……」
「それ飽きた。だってトゥルーデはトゥルーデでしょ」
「だから『お――」
私の言葉を塞ぐように、エーリカは再び長い口づけをした。
だからなぜ舌を入れるんだ!?
私の視界に一面の花畑が広がる。
ここは氏後の世界か?
エーリカが疲れ果てて眠るまで(いや、エーリカが満足しきって飽きるまでか?)
こうしたやり取りが真夜中まで続いた。
818: 2008/08/28(木) 20:28:21 ID:qESQ5Apa
翌朝、目を覚ますとベッドからエーリカ、いやハルトマンの姿は消えていた。
「なにをやっていたんだ、私は……」
ぽつんと私一人取り残されたベッドの上で私はひとりごちた。
どれほど過ちを悔いても、もう取り返しがつかない。
ハルトマンが妹? そんなわけないだろう。
やはりハルトマンはハルトマンだ。
その日は一日なにも手につかず、ついに夜になってしまった。
私は気を落ち着かせるために『秘め声CD』を聴くことにした。
「あれ?」
ない、ない、ない、ない。
どこを探してもCDが見つからない。
もしやと思って私はハルトマンの部屋に向かった。
私が部屋に入るとハルトマンは既に寝る体勢に入っていた。
「今日も私の部屋で――」
なぜ私はこんなことを言う?
「ああ、部屋片づいたからもういいや」
私にはベッドの上にあったものを、そのまま下に落としたようにしか見えないが。
「じゃなくて、私の『秘め声CD』を知らないか?」
「ああ、今朝借りて帰った。たぶんその辺にあるから」
ハルトマンの指す方向にはゴミがうず高く山脈をつくっている。
「じゃあトゥルーデおやすみ」
そう言うとハルトマンはそのまま眠ってしまった。
「起きろ! 起きてくれ! ハルトマン!」
私がどれだけ叫んでも、結局ハルトマンは朝まで目覚めることはなかった。
仕方なく私一人、徹夜でCDを探すはめになった。
そしてもちろん、CDが見つかることはなかった……。
もっとも、私はちゃんと限定版を予約しているので、発売日には届くのだが。
備えあれば憂いなしとはまさにこのこと。
ちゃんと5枚(鑑賞用、保存用、芳佳に貸す用、ハルトマンに持っていかれる用、予備の5枚だ)
予約しておいて本当によかった。
あとこれは余談なのだが、なんでも私たちの活躍が収められたDVDは、
売り上げ如何によっては続編が製作される可能性があるらしい。
現在好評予約受付中とのこと。
発売日は9月26日だ。
たくさん売れるといいなぁ。
以上です。
「なにをやっていたんだ、私は……」
ぽつんと私一人取り残されたベッドの上で私はひとりごちた。
どれほど過ちを悔いても、もう取り返しがつかない。
ハルトマンが妹? そんなわけないだろう。
やはりハルトマンはハルトマンだ。
その日は一日なにも手につかず、ついに夜になってしまった。
私は気を落ち着かせるために『秘め声CD』を聴くことにした。
「あれ?」
ない、ない、ない、ない。
どこを探してもCDが見つからない。
もしやと思って私はハルトマンの部屋に向かった。
私が部屋に入るとハルトマンは既に寝る体勢に入っていた。
「今日も私の部屋で――」
なぜ私はこんなことを言う?
「ああ、部屋片づいたからもういいや」
私にはベッドの上にあったものを、そのまま下に落としたようにしか見えないが。
「じゃなくて、私の『秘め声CD』を知らないか?」
「ああ、今朝借りて帰った。たぶんその辺にあるから」
ハルトマンの指す方向にはゴミがうず高く山脈をつくっている。
「じゃあトゥルーデおやすみ」
そう言うとハルトマンはそのまま眠ってしまった。
「起きろ! 起きてくれ! ハルトマン!」
私がどれだけ叫んでも、結局ハルトマンは朝まで目覚めることはなかった。
仕方なく私一人、徹夜でCDを探すはめになった。
そしてもちろん、CDが見つかることはなかった……。
もっとも、私はちゃんと限定版を予約しているので、発売日には届くのだが。
備えあれば憂いなしとはまさにこのこと。
ちゃんと5枚(鑑賞用、保存用、芳佳に貸す用、ハルトマンに持っていかれる用、予備の5枚だ)
予約しておいて本当によかった。
あとこれは余談なのだが、なんでも私たちの活躍が収められたDVDは、
売り上げ如何によっては続編が製作される可能性があるらしい。
現在好評予約受付中とのこと。
発売日は9月26日だ。
たくさん売れるといいなぁ。
以上です。
引用: ストライクウィッチーズpart2
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります