657: 2008/09/04(木) 20:09:58 ID:GYiesNYO



『ヘタレと小悪魔』

最近、マトモにサーニャと話が出来ない。
サーニャの姿を目にするだけで鼓動が爆発寸前まで高鳴り、気がつけば私はサーニャを避けるようになっていた。
まったく、ヘタレにも程があるよナ。

「あー…どうすればいいんだヨー……」

そんな私の呟きも虚しく時間は刻々と過ぎていく。
やはりここは思い切って告白するべきだろうか。
でも、サーニャに拒絶されたらどうしようという気持ちだけが先走ってなかなか勇気が出せない。

「はぁ……ホント、困るナァ」

ふと時計を見ると、もう夜11時を回った所だった。
まあ特にする事もないし、いつまでも悩んでいても仕方がない。……寝よう。
サーニャの件は明日またゆっくり考えよう。


―――――――――――――――

眠り始めてどのくらい経っただろうか。
何か呟く声が私の耳に入ってきた。

「……イラ………エイラ……起きて……」

誰か私を呼んでいる?
まったく、こんな夜中に非常識な。
眠い目を擦りつつ、声の主に文句をつけてやろうとゆっくり起き上がる。

「うーん……誰ダヨこんな時間に……今何時だと…………っ!?」

「思ってるんダ!」と言葉を続けようとしたが、できなかった。
そこにはサーニャの姿があったからだ。
え、これ……何が起こってんダ!?
眠気のせいもあって今の状況が全然理解できない。
夜間哨戒があるわけでもないから寝ぼけて……な訳ないよナ。

「あの、サーニャ、何でここに……」
「あのね……エイラにちょっと話があるの」
「え…?」

658: 2008/09/04(木) 20:10:55 ID:GYiesNYO
サ、サーニャが私に話!?
落ち着け、冷静になれエイラ・イルマタル・ユーティライネン!!

「な、何だサーニャが私に話なんて……珍しいナ」

よしよし、いつもの私ダ……落ち着け落ち着け。
なんとか平静を装ってサーニャに返答する。

「エイラ、最近私の事……避けてるよね?」
「いいっ!?」

その言葉はまるでナイフのように私にグサッと突き刺さった。
否定はできないけど……直接言われるとやっぱショックだ……。
や、やっぱり嫌われたかナ……?

「そ、その……ゴメン」
「ねえ……私、何かエイラに悪いこと……しちゃったかな……?」
「そ、そんなこと……」

よく見るとサーニャの目尻に涙が浮かんでいる。
ヤバい。本当に困った。
私がヘタレすぎたとはいえ、結果的にサーニャを泣かせてしまうだなんてナ……。
あーっ、私はなんて最低なんダ!!
とにかくここはサーニャの誤解を解かなければ。

「っ……本当にゴメン!!私が悪かったよ……だから……」
「私の事……嫌いになったの……?」
「なっ!?」

私がサーニャを嫌いになる!?……そんな訳がない。
ていうか、あってたまるか!!
気がつくと、私は無意識に大声で

「そんな訳ないダロ!私はサーニャが好きダ!!だから泣くな!!」

と叫んでいた。……今が深夜だって事も忘れて。

しかし時すでに遅し。
無意識とはいえとんでもない事を叫んでしまったことに気づき、思わず俯いてしまった。
……顔が熱い。
この後サーニャに何と言われるのだろうか。
なんだか拒絶されそうでとても怖いナ……。

しかし、サーニャから返ってきた言葉は予想と大きく違っていた。

659: 2008/09/04(木) 20:12:06 ID:GYiesNYO
「ふふ……エイラ、顔真っ赤だよ」
「……へっ?」

サーニャは、笑っている。
てっきり拒絶されるか引かれるかと思っていたもんだから思わず拍子抜けしてしまった。

「サーニャ……嫌じゃないのか……?」
「何が?」
「いや、だって私、一応女ダゾ?」
「そんなの知ってるよ?」
「いや、そりゃそうだけどナー……」

サーニャは相変わらず微笑を浮かべながら答えている。
……サーニャ、なんか楽しんでないか?

「あ、あのナ……私の『好き』は仲間としてじゃなくて………その…」
「なぁに?」

サーニャは余裕めいた笑みを浮かべながら私に続きを促す。
…ダメだ。その先を言う勇気が出てこない。
ああああ私のバカ!ヘタレ!!

「その……まぁ……あれダヨ」
「…恋人として?」
「ああそうそう、恋人……って、サーニャ!?」
「ふふっ」

な、なんでサーニャが続き知ってんダー!?
しかも何だその「してやったり」みたいな笑い……。

「ナ、ナ、ナ、ナンデ……!?」
「やっぱり……エイラ、私を意識してるのバレバレだったから……」
「アノ、サーニャ、ソレハマジデスカ……?」
「うん」

思わぬ事態に片言めいたガチガチな喋りになった私を尻目に、サーニャはペロッと舌を出しながら笑っていた。
その姿はまるで悪戯好きな小悪魔といったところか。
私は恥ずかしくなってまた俯いてしまった。

660: 2008/09/04(木) 20:13:37 ID:GYiesNYO
「何だヨ……分かってたのかヨ……」
「うん……ねえ、エイラ」
「うー…ナンダヨー……」
「顔、上げてくれる?」
「いいけど何を…………んっ」

顔を上げた瞬間、唇に柔らかい感触がした。
目の前には一面サーニャの顔。
アレ?もしかして私…キスされてんのか!?

思考がそこまでたどり着いた時にはもう唇は離されていたが……全身がかぁっと熱くなる。

「い、い、い、今っ……!?」
「私もエイラが好き……だから、今のはその証明……」
「えぇっ!?ま、マジカヨ……?」

うろたえる私とは対照的にサーニャは悪戯じみた笑顔で答える。

「うん、マジだよ……エイラ、好き」
「そ、そうか……あ、ありがとナ……」

そして、サーニャは自らの服をゆっくりとたくし上げる。
……ん?ちょっと待て、なぜ脱ぐ!?

「ちょっ、サーニャ、何やってんダヨッ!?」
「だって、私とエイラは恋人同士になったでしょ?」
「そ、そりゃまあ…そうだけど……」
「だからね、エイラ……しよ?」
「なっ…なっ…!?何言って……んむっ!」
後の言葉はサーニャからの情熱的なキスによって封じられる。

ま、マジで私どうなるんダヨ~~~~っ!?



♪~~~♪~~~♪~~~♪~~~

「はっ!?……朝?」

起床ラッパの音が聞こえてくる。もう朝だ。
なんかサーニャとアンナ事やコンナ事をしたような記憶がボヤーッとあるケド……あれは夢だったのか?

「そ、そうだよナ……サーニャとキスしたりアンナ恥ずかしい事したなんて夢に決まってるヨナ。うん」

とりあえずあれは夢という事にして、早く着替えなければ。
それにしても生々しい夢だったナーと思いつつ、着替えを取ろうとベッドから起き上がった時。

「裸!?それにサーニャ……マジカヨ……?」

そこには深夜、私にアンナ事やコンナ事をした可愛い顔した小悪魔が寝息を立てていた。
おまけに2人ともスッポンポンだ。そしてお互いの身体には赤い斑点がポチポチと。
ああ神様、どうやらあれは夢じゃなかったようダ……。
夢じゃない事の嬉しさと、アンナ事をしたのが現実だった恥ずかしさが交差して私はそのまま固まってしまった。

それが原因で朝のミーティングに遅れ、2人揃ってミーナ隊長にキツ~イお叱りを受けたのはもう少し後の話だったり。

661: 2008/09/04(木) 20:15:41 ID:GYiesNYO
以上です。


それでは失礼しました…。

引用: ストライクウィッチーズpart3