1: 2013/03/02(土) 01:04:22 ID:kLAV1Jp6
兄「…歩きにくいんだが」テクテク

妹「嘘だね。完っ璧に歩調が合ってるからお兄ちゃんの邪魔になってないよぅ」テクテク

兄「…お前は人目が気にならんのか」テクテク

妹「人目より人肌の方が重要なの。…あふぅ」テクテク

兄「………」テクテク

妹「…あ。人目が気になるのってお兄ちゃんが?」テクテク

兄「…いや俺じゃなくてお前がだな…」テクテク

妹「ならぜぇ~んぜぇん問題なっしん。温い方が重要だよ!ん~」テクテク

兄「あ、そ。…じゃぁさっさと学校行くぞ」テクテクテクテクッ

妹「むむ!スピードを上げたな!だが見よ!この数フレームのズレさえない妹の動きを!」テクテクテクテクッ

兄「………」テクテクテクテクッ
三ツ星カラーズ3 (電撃コミックスNEXT)
3: 2013/03/02(土) 02:25:28 ID:kLAV1Jp6

妹「あ!妹友ー!おーはーよー!」

妹友「あぁ、妹ちゃんおは…………よう…」

妹「ん?どったの?」

妹友「…兄先輩のコートの中央部分から妹ちゃんの顔が飛び出してる…」

妹「……おおぅ。立ち止まったら…歩いた分の熱が溜まって…更に温い…」ウットリ

妹友「…その形容しがたい状態は何なの?」

妹「ああこれ?これはね!お兄ちゃんコートだよ!」

妹友「…お兄ちゃんコート?」

5: 2013/03/02(土) 23:37:09 ID:kLAV1Jp6
妹「お兄ちゃんが着てるコートをお兄ちゃんごとあたしが着るんだよ!」

妹友「………」

妹「羨ましいの?」

妹友「…羨ましいと言うか…」

妹「…入りたいの?」

妹友「…そうじゃなくて…」

妹「だが絶対に譲らん!例え親友である妹友ちゃんでもだ!…あふぅ」

妹友「………」

6: 2013/03/03(日) 00:09:29 ID:nmI5y2BE
妹友「…兄先輩。邪魔じゃないんですか…」

兄「………邪魔だよ」

妹友「ですよね」

兄「…ああ」

妹友「…なら何故…」

兄「…追い出してもすぐに戻ってくるんだよ」

妹「無駄無駄ァ!こんなに温いスポットに入られずにいられるかぁ!」ワッハッハ

兄「…その内追い出す方がめんどくなってしまってな」

妹友「まさか家からここまで…」

兄「………」コクリ

妹友「ぶ、ぶつかったりとかは?」

兄「…一回もなかった」

妹友「一回も!?」

7: 2013/03/03(日) 00:25:22 ID:nmI5y2BE
兄「…何度かフェイントをかけてみた」

妹友「フェイントですか?」

兄「早歩き、全力でダッシュ、ブレーキ、直角に曲がる、バックステップ、ムーンウォーク…」

妹友「…まさか」

兄「…全部徒労に終わった」

妹友「…すごい。っていうか今も歩くのを再開したのに平然と合わせてる…」

妹「ファファファ……五感で兄を感じれば訳はないんだよ」

兄「………」

妹友「…すごい。兄先輩もごく普通の気怠い感じで登校する学生にしか見えない…」

8: 2013/03/03(日) 00:35:43 ID:nmI5y2BE
――下駄箱――

ピタッ

兄「おわっ…おい急に止まるな」

妹「………」

兄「…おい動け。靴が脱げないだろうが」

妹「…お兄ちゃんが上履きを履いたら」

妹友「…履いたら?」

妹「お兄ちゃんコートが終わってしまう!」

ビスッ

妹「あ痛ーーーー!」

妹友「アホな事を言ってないでほら!教室行くよ妹ちゃん」ガシッ

妹「い、嫌じゃぁぁ…温もりが…ぬくもりがぁ…ヌクモリがぁぁぁ…」ズルズル

10: 2013/03/03(日) 01:28:08 ID:nmI5y2BE
兄「…妹友さん」

妹友「あ、はい?なんでしょう?」
ウラー!テヲハナセー!オニチクー!グウチクー!

兄「さっきは一緒に登校してくれてありがとな」

妹友「え、何でまた…」
オ、オニイチャンガオレイヲイッタダト…

兄「別に並んで登校しなくても良かったのにさ」

妹友「まぁ友達ですし」
シンユウッテイエー!ソシテテヲハナスノダー!

兄「いや、周りからの視線の話」

妹友「…その他大勢からの視線なんかどうでもいいですよ」
シセンヲカンジルカラキモチイイ…ッテイタイ!ツネラナイデ!モゲル!

兄「…うん。だからこれからも妹をよろしく頼む」ニコッ

妹友「!…はい。頼まれました。それじゃぁまた後で!」
!?オ、オニイチャンノサワヤカフェイス…レアダゼ…

ズルズル

兄「………俺も行くか」

11: 2013/03/03(日) 01:58:20 ID:nmI5y2BE
――兄 教室――

兄「…うす」

友「おはよー。…で、見たぜ聞いたぜ妬いたぜ旦那~」

兄「何がよ」

友「とぼけんなよー。愛しの妹様と…密・着・登・校♪してきたろ?」

兄「ああ」

友「密着どころか合体してたじゃねぇかよー」

兄「してない」

友「で?で?で?どーなのよどーなのよ?ん?」

兄「何がだ?」

友「だぁかぁらぁ、妹ちゃんの抱き心地だよ!だ・き・ご・こ・ち」

兄「抱いてない」

16: 2013/03/03(日) 13:29:00 ID:nmI5y2BE
友「抱いてないって言い方工口ッ!」

友「まぁそれはそれとして…どう?どうなの?」

兄「…あいつが勝手に俺のコートの中にいるだけだ」

友「そんな訳あるかー!
 『ほら、俺のコートの中なら暖かいぞ』『お、お兄ちゃん…でも恥ずかしいよォ…』
  ってな感じで誘ったんだろ!そうなんだろ!さぁ吐け!一字一句漏らさずこのノートに吐くんだ!」

兄「………」カキカキ

友「ほうほう今回はやけに素直じゃねぇか…ってお前何してんのォォォ!?」

兄「…何?」カキカキ

友「ノートいっぱいにビスケット・オリバを描くなよ!暑苦しいわ!」

兄「じゃぁ涼しい格好ね…分かった」カキカキ

友「わー!わー!脱がすな!オリバの服を脱がすな!こんなガチムチな黒人の絵見られたら確実に変態扱いされる!」

兄「…よし、と」

友「よし。じゃないよ!短時間でよくここまで描けたなおい!だから尚更ふざけんな!」

兄「…お」

17: 2013/03/03(日) 13:47:14 ID:nmI5y2BE
タッタッタッ

兄「先生」

担任「お!どうしたの兄君。君から来るなんて珍しいじゃない!」

兄「いや、ちょっと」

担任「あ!ひょっとして相談?ホームルームまでまだ時間あるから先生相談のっちゃうぞー♪」

兄「えっとですね」

担任「あ!恋!?恋バナ!?恋の相談なのね!気になってる人が実は私とかそんなオチ?アハハそりゃないかー」

兄「ないですね」

担任「…冗談でもお世辞でもいいからそこはアリがよかったよ先生は…」

兄「いえ、ちょっと先生に渡すものがありまして」

担任「渡すもの?何かしら」

兄「友から課題を預かってまして」

担任「あー、彼だけ盛大に遅れてたわねー」

18: 2013/03/03(日) 14:01:07 ID:nmI5y2BE
兄「ノート、これです」

担任「…何で友くんが直接私に来ないのかしら?」

兄「提出が遅れて会わせる顔がないって…俺に」

担任「…そう。じゃぁ兄くん、友くんに伝言頼めるかしら?」

兄「はい」

担任「…遅れても未完成でも、生徒が一生懸命取り組んだものを先生は拒んだりしないわ」

兄「………」

担任「怒ったりしないから、今度からは遅れても自分で出しに来なさい。…以上!」

兄「…はい。伝えておきます」ニコッ

担任「!……じゃぁ先生これパパっと見てホームルームの時にでも友くんに返すわ。後でね!」

タッタッタッタ

担任(…………)

担任(……年甲斐もなくあの笑顔にキュンと来てしまったわ。…迂闊)

19: 2013/03/03(日) 14:05:44 ID:nmI5y2BE
友「突然どうしたよ?いいか俺の怒りは有頂天で」

兄「…いや先生に用事があってな」

友「ほう。まぁ随分話込んでたもんなー」

兄「………」

友「……お前まさか禁断の女教師ルーt」

兄「課題渡してただけだ」

友「なんだつまらん。…ってお前出してなかったっけか?」

兄「おう」

友「?じゃぁ何の課題出したんだよ」

兄「…お前の」

友「……俺?」

20: 2013/03/03(日) 14:30:08 ID:nmI5y2BE
兄「さっきのノートそうだろ?」

友「いやそうだけど…。…おー!ありがと旦那ぁ!」

兄「…礼はいいよ」

友「いやさー持ってきたはいいけどさー。盛大に遅れてるしさぁ…」

友「どうやって先生に渡したもんか悩みに悩んでたんだよ」

友「いやー助かった助かった。これで今日は何の気兼ねもなく過ごせるわ」

兄「…あと先生から伝言」

担任『――全略――。』

22: 2013/03/03(日) 14:37:06 ID:nmI5y2BE
兄「…って言ってた」

友「……た」

兄「……た?」

友「……担任ちゃんマジカッケー!教師の鏡じゃん!ミラーじゃん!グッと来たわー!」

兄「そうか」

友「…俺、自分で課題渡さなかったこと…謝りに行くわ」

兄「へぇ、いい心掛けだな」

友「それで謝ることによって誠実さを見せていって…その後徐々に距離を埋めていけば…うへへへへ」

兄「…………」

23: 2013/03/03(日) 14:43:39 ID:nmI5y2BE
友「ともかくサンキューな兄!おかげで思いもよらなかった道が拓けたぜ!」

兄「…礼には及ばない」

友「感謝の気持ちくらい素直に受け取れって」

兄「………」ペラ

友「…………………」

兄「………」ペラ

友「………あのさぁ」

兄「ん?」ペラ

24: 2013/03/03(日) 14:48:37 ID:nmI5y2BE
友「……さっきのラクガキ、勿論消して…渡したんだよな?」

兄「…いいや」ペラ

友「あぁ、ならいいんだ。消してあるんだったら問題な ―― 今いいやって言った?」

兄「…ああ」

友「………消してないの?」

兄「…ああ」

友「消してないのォォォォ!?じゃぁお前何で担任ちゃんにあれを…じゃない!」

友「やばいやばい!早く急いで取り戻して消さないと俺はガチムチの変態になっちゃ」


担任「ほーい生徒諸君ー!席につきなさーい!」

25: 2013/03/03(日) 21:09:02 ID:nmI5y2BE
ダダダダッ

友「せ、先生ェェェェ!手違いというかノートがですね、その兄のアレがすごくてですね」

担任「ノート、じっくり見させて貰ったわ」

友「う、あの、その…」

担任「別に先生友くんの趣味嗜好をどうこう言うつもりはないの」

友「で、ですから兄が」

担任「…ただ私に分かる形でノートを出したってことは何か悩みがあるのよね」

友「はい!?全然違」

担任「大丈夫。友くんは友くんのあるがまま…マイノリティでいていいのよ」

友「先生ひどい誤」

担任「そうね…放課後生徒指導室に来てちょうだい。先生じゃ力不足かもしれないけど…話を聞く位はできるわ」

友「話を聞い」

担任「先生は友くんの味方だから…ね?」ニコッ

友「………」

友「…はい」ダバー

26: 2013/03/03(日) 21:11:58 ID:nmI5y2BE
トボトボ

兄「…おかえり」

友「……ごふっ」ドサッ

兄「………」

友「…担任ちゃんの笑顔には勝てなかったよ」

兄「…そうか」

友「それに放課後担任ちゃんと二人きりだったら別にいいかなって…へへ…」

兄「…良かったな」

友「…っ良い訳あるかぁぁぁ!あの世で俺に詫び続けろぉ!」ブンッ

スカッ

兄「シッ」ビスッ

友「あふん」パタリ

兄「………」ペラ

27: 2013/03/03(日) 21:24:37 ID:nmI5y2BE
――妹 教室 LHR――

妹「…はぁ」

妹友「………」

妹「…はぁー」

妹友「…さっきから溜め息つきすぎだよ」

妹「えー…だってさー…」

妹友「だって?」

妹「授業終わるまでお兄ちゃんに会えないし…」

妹友「…妹ちゃんそればっかりだよね…ホント…」

妹「あ”う”ー…もう一度…兄の…ぬくもりを……」

29: 2013/03/03(日) 21:28:20 ID:nmI5y2BE
妹友「……ね、ねぇ」

妹「んあ?何?」グデー

妹友「純粋な好奇心で聞くのだけれども…」

妹「んぁー…別に不純でも聞くよぉ」

妹友「…そ、その…お兄さんのコートの中って…そんなに…温かいの?」

妹「…んひ。知りたい?」ニカッ

妹友「まぁ、うん。ちょっとだけよ。ほんの…ちょっとだけ」

妹「うむ。ならば教えてしんぜよう!」

30: 2013/03/03(日) 21:32:36 ID:nmI5y2BE
妹「お兄ちゃんはねー、人より体温が若干高めなの」

妹友「妹ちゃんより高いって…男の人にしては珍しいね」

妹「お兄ちゃんだからね。とーぜんだよ」

妹友「…う、うん。それで?」

妹「そしてその体温は常にお兄ちゃんの肌から放出されているのだ」

妹友「体の深部より末端の方が暖まりやすい…ってことかしら」

妹「ゆ・え・に!コートで熱の逃げ道を断った空間では…」

妹友「…く、空間では?」

妹「お兄ちゃんのぽかぽかエネルギーが溜まり続ける!」

妹友「ぽかぽか…」

31: 2013/03/03(日) 21:45:06 ID:nmI5y2BE
妹「カイロでもヒートテックでもない」

妹「ストーブでもエアコンでもない」

妹「それは人が、兄が生み出した天然の暖かさ!」

妹「人工のまがい物では得られぬ極上の温もり!」

妹「それが!それこそが!お兄ちゃんコートなのだ!」ガカァッ

妹友「お兄さん…コート…」

妹「ふふふ…感心するのはまだ早いぞ親友」ビッ

妹友「ま、まだ何かあるというの?」

妹「コートの中にいるという事は即ち!」

妹友「………」ゴクリ

32: 2013/03/03(日) 21:51:42 ID:nmI5y2BE
妹「お兄ちゃんの匂い嗅ぎ放題よ!」ビシッ

妹友「!?」ガカァッ

妹「ちょっと首を傾けるだけであら不思議…そこは兄のフレグランス溢れる香りの園…」

妹「兄自身の晴れた日に干した布団のような爽やかな太陽の香りだけではなく」

妹「男らしさを感じるフェロモンの効いた汗の香りに若干の整髪料のアクセントが加わり」

妹「兄に包まれているという実感を芳醇に味わうことができる!」

妹「そう!寒風吹きすさぶ厳冬の登校時間はっ!」グァッ

33: 2013/03/03(日) 22:03:52 ID:nmI5y2BE
妹「兄の温もりと兄の香りに包まれた幸せの」
ズゴムッ!
妹「あ痛ーーーーー!?」

先生「人の話を聞かんか妹ぉ!!」

妹「何をするんですか先生!」

先生「お前がLHR中に謎の演説を始めるからだ!」

妹「今の衝撃で脳細胞が破壊されてお兄ちゃんの記憶を失ったらどうするんですか!?」

先生「どうもしないわ!さっさと班を決めろ!いつまで経ってもLHRが終わらんわ!」

妹「…ガルルルル!」


妹友「お兄さんの温もりと…お兄さんの香り…」ドキドキ

36: 2013/03/04(月) 21:29:58 ID:GnRe1w4Y
――兄 教室 昼休み――

キーンコーンカーンコーン

兄「…っと。後は家帰ってからでもいいか」

兄「飯にしよう」

友「………」

兄「…反応がねぇな。机借りるぞ」

幼馴染「ちょっと!」バンッ

兄「っと。びっくりした。幼馴染じゃないか」

37: 2013/03/04(月) 21:38:27 ID:GnRe1w4Y
幼馴染「一から十まできっちり説明してもらおうじゃない!」ゴゴゴゴ

兄「…何をだ?」

幼馴染「わっ、私聞いたのよっ!朝妹と合体しながら登校してたって!」

兄「…誰に聞いたんだよ」

幼馴染「こいつがっ」グイッ

友「」ブラーン

幼馴染「朝練の途中に知らせに来たのよっ!」

38: 2013/03/04(月) 21:49:22 ID:GnRe1w4Y
幼馴染「ど、どういうことなのっ!?合体ってあんた神聖な学び舎を何だと思って…っ!」

兄「合体と言うには語弊がある。つまり――」

――兄説明中――

兄「――と言う訳だ。要は俺のコートの中に妹が割り込んできただけ」

幼馴染「なんだそうだったの…。私てっきり…」

兄「…てっきり?」

幼馴染「なっ、何でもないわよっ!別にっ!ふん!」プイッ

兄「…そうか。じゃぁ飯にするから机移動するの手伝ってくれ」

幼馴染「っ…面倒だけど手伝ってあげなくもないわ」

兄「ありがとう。そっちの机を頼む」

39: 2013/03/04(月) 21:55:03 ID:GnRe1w4Y
―――

兄「…完了、と」

幼馴染「…ねぇ」

兄「ん?」

幼馴染「あ、あんた今日弁当持ってきてるの?」モジモジ

兄「…じゃなきゃ学食行ってるよ」

幼馴染「…そ、そう。まぁそうよね」

兄「…弁当忘れたのか?」

幼馴染「はぁ!?何でそういう話になるのよ!」

兄「いや忘れたから分けて欲しい、とか?」

幼馴染「そんな卑しい真似を…あれ…?それもありか…って違う違う!ブレるな私!」

40: 2013/03/04(月) 22:08:21 ID:GnRe1w4Y
幼馴染「きょ、今日うっかりして弁当を作りすぎちゃったのよねー」チラッ

兄「?」

幼馴染「あーどこかに育ち盛りでたくさん食べてくれる男子がいないかなー」チラチラッ

友「何っ!?飯だと!?俺に任せろ!」ドンッ

幼馴染「………」

友「任せな!量さえ食えれば質なんてどうでもあだだだだだだだ」メキョメキョ

幼馴染「あんたにっ!食わせる弁当なんてっ!ないわっ!」ミキッ ミキッ

友「なっ、何で!?つ、作りすぎたって今ぎにゃぁぁぁ」メキョメキョ

ガララッ

妹「失礼しまっす!」

妹友「失礼します」

幼馴染「…チッ」

41: 2013/03/05(火) 01:48:36 ID:KXhvG3aY
ピキィィィン

図書委員(!…来たか!)

風紀委員(昼休み。それは兄にべったりな妹がやってくる危険な時間!)

飼育委員(男くんに好意を持ちつつも素直に感情表現できない幼馴染さんに)

美化委員(自分は無関係を装いつつも密かに乙女視線を送る妹友さん…そして…)

放送委員(ブラコォォォォォンッ 説明不要!!兄貴が好きで何が悪いッ!全員周知の妹さんだッ! )

生活委員(浮き沈みはあれども大体互角だった三勢力の凌ぎ合い)

学級委員(しかしいつも通りのドタバタで果たして済むかどうか…)

広報委員(今朝の合体事件で戦局は大きく傾いた。妹さんを除いた各陣が動く公算が大きい)

学級委員(危ういバランスで保ってきた均衡が崩れる可能性大ってところか…)

42: 2013/03/05(火) 02:00:43 ID:KXhvG3aY
美術部(幼馴染さんも不憫だな。男の分の弁当を作ってきた日に限ってイベントがかち合うとは)

水泳部(妹友さんも合体事件の目撃者の一人だ。内心穏やかではいられないだろう)

文芸部(この昼休み、妹さんが何かアクションを起こせば…それがトリガーとなり…)

体操部(空前絶後の4つ巴、男を奪い合う戦争が勃発する事は必至)

剣道部(一触即発。更に外野からも打つ手はなし、と)

陸上部(ただ幼馴染は同じ部活仲間として、応援してあげたい気持ちは勿論あるけれど…やっぱり…)


クラス全員(こんな面白そうなことを見られずにいられるかッッッ!!!)

クラス全員(故に見守るッッ!結果がどうなろうとッッ!見守るだけッッ!!)

43: 2013/03/05(火) 02:16:16 ID:KXhvG3aY
兄「…うぃ。机合わせておいたぞ」

妹「流石お兄ちゃん!気が利きますなぁ」

妹友「いつもいつも…ホントすみません…」

兄「幼馴染も手伝ってくれたから。お礼言っときな」

妹「先輩ありがとうございましたァ!」

妹友「毎度お手数かけてしまって申し訳ないです」

幼馴染「いやいやいーの別に。別にお礼言われるような事してないわよ」

兄「…そいじゃ飯にしましょうか」

妹「おー!」

妹友「はい」

幼馴染「そうね」

44: 2013/03/05(火) 02:22:30 ID:KXhvG3aY
兄「ほんじゃまぁ今日のおかずは…と」カパッ

テクテクテク

妹友「あれ、妹ちゃんどこに…?椅子こっちあるよ」

テクテクテク

マフッ

幼馴染「」
妹友「」

兄「…おい」

妹「今日の~おかずは~何じゃろな~♪」カパッ

兄「…何をしとる」

妹「何ってお弁当の中身を…」

兄「違う。何故、俺の膝の上に乗ったのか、と聞いている」

妹「ああ。それはね…私が妹だからっ!」バァン

47: 2013/03/05(火) 19:36:55 ID:KXhvG3aY
ビシッ

妹「あ痛ぁぁぁぁぁ!」

兄「そんな理由が通るか。ほら、どけ」

妹「ちょっと待ってよ!考えてもみてよお兄ちゃん!」

兄「…何を」

妹「ストーブあってもやっぱり寒いものは寒いでしょ?」

兄「…まぁオンボロストーブだ。限界があるな」

妹「で、お兄ちゃんは体温高いでしょ?」

兄「…知らん」

妹「だからとーぜんの帰結だよね」エッヘン

兄「何がだからなんだよ…ほら降りろ」

48: 2013/03/05(火) 19:50:14 ID:KXhvG3aY
妹「えー…あたしの何が不満なの…」

兄「単純に食べにくい。後TPOをわきまえろ。ここは学園。更にお前はクラスどころか学年が違う」

妹「んー…妹だからいいじゃん!だって家族なんだよー?」

兄「お前なー…」ハァ

友「ひっひっひ。いやぁ今日はいつにも増して妹ちゃんのゲハァッ!」ドムッ

ズシャァァァ

幼馴染「そ、そうよ…さ、流石にちょっとくっつき過ぎじゃありませんのことよ…」ワナワナ

友「い、今…俺は何故殴られ…た」ガクリ

妹友「そ、そうだよ。妹ちゃん…先輩達が見てるし…ね?」

兄「ほら。皆言ってるぞ」

妹「ぶー…」

49: 2013/03/05(火) 19:52:58 ID:KXhvG3aY
兄「大体何で今日に限って乗るんだ。いつもは乗らないだろ」

妹「朝のお兄ちゃんコートで味をしめたと言いますか何と言いますか…」テヒヒ

兄「…とりあえず教室じゃ駄目だ」

妹「はーい…」



ピキィィィン

幼馴染「!」

妹友「!」

クラス全員(!)

友「」

54: 2013/03/05(火) 23:45:11 ID:KXhvG3aY
幼馴染(聞き間違いかしら…。いいえ…確かに私は聞いたわ…)

幼馴染(教室『じゃ』駄目だ、と)

幼馴染(言い換えるなら…それは教室『以外』でならいいってことになる…)

幼馴染(…もしも、もしもよ。この兄妹のスキンシップが常態化し)

幼馴染(あまつさえそれが日常的に行われているとするなら…)

幼馴染(…す、するなら…するならぁぁぁぁぁぁ!)ゴォォォ

幼馴染(………)

幼馴染(…確かめる必要があるわ。…膝の上の真実を)

55: 2013/03/05(火) 23:52:14 ID:KXhvG3aY
妹友(兄先輩、『じゃ』って何なんですか…『じゃ』って…)

妹友(他の場所でなら受け入れちゃうんですか…)

妹友(………)

妹友(…今朝みたいに妹ちゃんがゴリ押して…)

妹友(面倒臭がりな先輩はあきらめて放置…)

妹友(…それが何年も続いてしまったとしたら……っ!)ゾクッ

妹友(……でもでも言葉のあやってこともありえるよね、うん…)

妹友(…た、確かめなきゃ…!)

56: 2013/03/06(水) 00:25:34 ID:fBV5Fo5Q
学級委員(な…なんてこった…)

文芸部(『妹さんが兄の膝上ちょこん座り』だけで充分すぎるトリガーだというのに…!)

風紀委員(よりによって兄本人が自ら火種を追加しただとっ!?)

体操部(信じられない…つまり兄は教室以外で…そういう…ことなのか…)

広報委員(…いえ、決めつけるのは時期尚早というもの。ただ単に言い誤っただけかもしれない)

剣道部(明鏡止水の心。囚われず、行く末を見定めるのだ)

図書委員(でも…もし、もし兄が言い間違いでも何でもなく…)

陸上部(ただ本当に言葉通りの意味合いで言ったならば…!)

放送委員(妹がリードするッ!この戦いッ!深く考えるまでもなくッッ!確実に妹がッッ!)

57: 2013/03/06(水) 01:32:32 ID:fBV5Fo5Q
兄「…そういうのは家だけにしとけ」

妹「それもそうだね」ニシシ

幼馴染「」パリーン

妹友「」グニャァ…

友「」

クラス全員(oh…)

58: 2013/03/06(水) 01:54:18 ID:fBV5Fo5Q
兄「そいじゃまぁいただきまー…って幼馴染どうした?」

妹「?妹友どったの?」フリフリ

幼馴染「ドウモシテナイワ。サア、オ昼ニシマショウ」ギギギ

妹友「やっぱりそうだったんだ……やっぱりそうだったんだ……」ブツブツ

兄「…なぁ」

幼馴染「ナニカシラ」ギギギ

兄「…さっき弁当作りすぎたって言ってなかったか?」

幼馴染「え…」スゥゥ

パァァァァァ!

幼馴染「いっ、言ったわよっ!作りすぎちゃって超困ってるのよっ!」

クラス全員(幼馴染さんが一気に持ち直したッ!)

59: 2013/03/06(水) 02:03:02 ID:fBV5Fo5Q
兄「じゃぁさ、ここでいる皆で食うのはどう?」

幼馴染「私はその…できればあんたに食べて欲しいかなとか…」ブツブツ

兄「ん?」

幼馴染「な、何でもないわよ!…皆で食べましょう。そう大したものでもないけど…」

妹友「やっぱりそうだったんだ…やっぱりやっぱりそうだったんだ…やっぱり」ブツブツ

妹「お兄ちゃーん。何か妹友の様子がおかしいよぅ」

兄「…ホントか」ガタッ

妹「何か顔が青ざめてるし…」

兄「熱か、あるいは病気か…。妹友さんごめん。ちょっとおでこ借りるね」

ピトッ

妹友「やっぱ…り…………え……え…え?」///

幼馴染「そ、そんなのありなの!?」

妹「ずーるーいー!あたしもあれやってもらいたいー!」ブーブー

60: 2013/03/06(水) 02:10:39 ID:fBV5Fo5Q
兄「…熱はないみたいだ」

妹友「あの…兄先輩…今おでこを……」

兄「…ごめんな。不快だったら謝るよ」

妹友「不快だなんてそんなっ、とっ、とんでもないです!」

兄「吐き気だとか、あるいは体でどこか痛いところとかはない?」

妹友「ななないです!具合悪いわけではないですから!大丈夫です!」

兄「…そう。一応大事取って保健室に行った方がいいと思うけど…」

妹友「大丈夫です。兄先輩がおでこ合わせてくれたんで元気になりました」

兄「………?」

妹友「ちちちちちち違いますっ!!先輩が私を気遣ってくれたから…じゃなくてそのですね」ワタワタ

クラス全員(今度は妹友さんが持ち直した…だと…!?)

61: 2013/03/06(水) 02:23:38 ID:fBV5Fo5Q
兄「まず飯にしよう」

兄「幼馴染がお弁当を多めに作ってくれたから、それを皆で頂こう」

幼馴染「そんなに期待しないでよ。大したもの作ってないし…」モジモジ

兄「それと妹友さん」

妹友「は、はい!」

兄「飯食べ終わったら保健室に行こう」

妹友「い、いえ私は大丈夫ですから」

兄「俺も付き添いで行くからさ」

妹友「……はい」///

妹「ぶー…」

クラス全員(あの状況から全員ケアして空気を元に戻すとは……あの兄…やはり天才か……)

62: 2013/03/06(水) 02:50:25 ID:fBV5Fo5Q
――下駄箱――

妹「待ってたぜベイビー!」ビッ

ススッ

兄「………」ヌギヌギ

妹「お、無視か。無視なのかー!」

兄「…お前、まさか帰りもやるんじゃないだろうな」

妹「やるよ!だって外まだ寒いじゃん!」

兄「………」ハァ

63: 2013/03/06(水) 02:51:29 ID:fBV5Fo5Q
兄「…勝手にしろ」

妹「お許し出たから~…即!合☆体!!」ガバチョ

ビシッ

妹「あ痛ーーーー!」

兄「…勘違いされるような発言は控えろ」

妹「へーい…」

ズボッ モフマフッ

妹「あ”ー癒”されるーー……」

兄「………」

65: 2013/03/06(水) 19:18:20 ID:fBV5Fo5Q
妹友「妹ちゃんお待たせー…って…」

妹「温い…温いぞぉぉぉ…」スリスリ

妹友「………」

妹「…おお妹友ちゃん。用事終わったの?」

妹友「…うん。わりと早めにね」

妹「じゃぁ一緒に帰ろー」

妹友「………」ジーッ

妹「どったの?」

妹友「お兄さんコート…帰りもやるの?」

妹「モチのロン!」

妹友「…そう」

兄「………」

66: 2013/03/06(水) 19:24:47 ID:fBV5Fo5Q
――放課後 帰り道――

兄「………」テクテク

妹友「………」チラッ

妹「あいむしんかー♪」テクテク

兄「………」テクテク

妹友「………」チラチラッ

妹「とぅーとぅーとぅーとぅとぅー♪」テクテク

兄「………」ピタッ

妹「…わっとっと!」ピタッ

67: 2013/03/06(水) 19:30:34 ID:fBV5Fo5Q
妹「止まるなら何か言ってよお兄ちゃん!危うくコートからあたしだけ飛び出るところだよ!」

兄「…これやっぱりやめよう」

妹「なっ、なにゆえに!?」

兄「…妹友さんがさっきから落ち着かなさそうだからだ」

妹「え…妹友ちゃん…そうなの?」

妹友「…………あっ、違っ、違いますよ!別にそういうので見てたのじゃ…」ワタワタ

妹「…ははーん」キュピーン

68: 2013/03/06(水) 19:44:15 ID:fBV5Fo5Q
兄「ほれ。出ろ」

妹「…お兄ちゃん。妹友ちゃんはお兄ちゃんコートに迷惑していた訳ではないのだよ」

妹友「へ」

妹「ズバリ!お兄ちゃんコートが羨ましかっただけなのさっ」バァン

妹友「違っ!違いますっ!」

兄「…そんな訳ないだろ」

妹友「そうです!そんなこと微塵も思ってないです!」

妹「えー…違ったかー…」

兄「…ほら。だから出ろ」

69: 2013/03/06(水) 19:46:55 ID:fBV5Fo5Q
妹「もしそうだったらお兄ちゃんコート貸しても良かったのに…」

兄「貸すって俺は物か」
妹友「いいのっ!?」

兄「えっ」
妹友「あっ」

兄「今妹友さん」
妹友「違っ、今のは何でもないです!」

兄「だよね。まさか妹友さんが」
妹友「つい本音が出ちゃっただけで」

兄「えっ」
妹友「あっ」

兄「………」
妹友「………」///

妹「…やっぱりねぃ」ニシシ

73: 2013/03/06(水) 22:51:47 ID:fBV5Fo5Q
妹「とうっ」ズボッ

妹「じゃぁそういう訳だからお兄ちゃん」ポンポン

兄「…何がそういう訳なんだ」

妹「さぁ」

兄「さぁってお前…」

妹「さぁ!」

兄「いやお前が強行する理由が分からないって」

妹「理由…?いい?あたしのお兄ちゃんコートをとやかく言ってくる輩は!」

妹「お兄ちゃんコートの良さが分からないからうだうだ文句を言うんだよ!」

妹「だから妹友ちゃんに分かってもらえれば…なんと理解者が3人になるんだよ!」

兄「…3人もいないだろ」

妹「あたしでしょー。妹友ちゃんでしょー。あとお兄ちゃん」

兄「勝手に俺を加えるなよ…」

74: 2013/03/06(水) 22:59:28 ID:fBV5Fo5Q
妹「お兄ちゃんコートからお兄ちゃん抜いたらただのコートになっちゃうじゃない」

兄「…こんなアホ極まりない妹に惑わされちゃ駄目だ妹友さん」クルッ

妹友「ん…しょ」ヌギヌギ

兄「………」

妹友「え…あ、コート着たままだとごわごわするかなって…」

兄「………」

妹友「………」

兄「………」

妹友「…っくしゅん!」

妹「! お兄ちゃん!ほら温めてあげないと妹友ちゃん風邪引いちゃうよ!」

兄「だっ、そりゃコートを着ればいい話で…」チラッ

妹友「ぅぅ……」ブルブル

兄「……ハァ」

75: 2013/03/06(水) 23:06:46 ID:fBV5Fo5Q
―――

妹「何でわざわざ公園に入ったの?」

兄「…人目引くだろ」

妹「?それが何なの?」

兄「お前が勝手にコートの中に入るのと意味合いが違うだろうが…」

妹「そうかなー。お兄ちゃんコートはお兄ちゃんコートであってそれ以上でもそれ以下でもないよ」

兄「というか…」

妹友「は、はい?」ブルブル

兄「…本当にやるの?」

妹友「……面と向かって言われるとその…言いにくいですけど…」モジモジ

妹「やりますっ!」

ビシッ

妹「あ痛ぁぁぁぁぁ!」

兄「お前には聞いてない」

76: 2013/03/06(水) 23:51:56 ID:fBV5Fo5Q
妹友「…だ、駄目でしょうか?」

兄「いや…なんというか…」ポリポリ

妹友「はい?」

兄「…一応俺男だよ?いいの?」

妹友「い、いいです。お兄さんなら、その…別に…」

兄「そ、そう…。極力触れないように努力するから不快だったらすぐに」

妹「もー!妹友がいいって言ってるんだからいいじゃん!」

兄「う…む……。じゃぁ…はい、どうぞ」プチッ

妹友「し、失礼します…」オズッ

兄「う……」

77: 2013/03/06(水) 23:58:42 ID:fBV5Fo5Q
妹「………」

妹友「………」///

兄「………」

妹「…お兄ちゃん何やってるの?」

兄「…ん?」

妹「前閉めないとお兄ちゃんコートにならないよ?」

兄「…閉めて大丈夫?」ボソッ

妹友「ひゃうっ!」ビクンッ

兄「わっ!ご、ごめんっ!どこか触っちまったか!?」

妹友「いえっ、お兄さんの声が思いの外近かったのでびっくりしちゃって…」

兄「そっ、そうか…。まぁ近いよな。コートの中にいる訳だし…」

78: 2013/03/07(木) 00:05:57 ID:7Xonpd1o
妹友「あの……」オズッ

兄「…ん?」

妹友「ボタン…止めていただいてもいいでしょうか?」

兄「…いいの?」

妹友「は、はい…」

兄「…分かった」

クッ

妹友「んっ……」

兄「………」

クッ

妹友「………ふ」

兄「………」

クッ

妹友「……はぁ…」

兄「………」

80: 2013/03/07(木) 02:47:21 ID:7Xonpd1o
兄「…全部…留め終わったけど…」

妹友「………」

兄「…妹友さん?」

妹友「…あ、ごめんなさい。何かぼーっとしちゃって…」

兄「…暑いかな。一つボタン開ける?」

妹友「のぼせたとかじゃなくて…その…」

兄「………」

妹友「あ、安心するっていうか…それでホッとしちゃって…」

兄「…あ、ああ。それなら、いいんだけど」

妹友「あー…本当に…温かい…」モゾリ

兄「!?……そ、それなら、良かった。…ん」

81: 2013/03/07(木) 02:53:03 ID:7Xonpd1o
妹友(妹友ちゃんの言った通りだ…)

妹友(本当に温かい…それも熱すぎることもなく、寒すぎることもなく…)

妹友(丁度いい…落ち着ける温度だ…)

妹友(そうか…人肌だから…こんなにぴったりの温かさなのか…)

妹友(お兄さんの規則正しい呼吸音…)

妹友(力強く響いてくる心臓の音…)

妹友(ブレザー越しに伝わってくる胸板の頼もしさ…)

妹友(そしてお兄さんの…お日様みたいな匂い…)

妹友(お兄さんのすべてで私を包んでてくれてるみたいで…)

妹友(ああ…私の居場所はここにあったんだ…きっと…)

妹友(……このまま…時が止まってしまえばいいのに……)

82: 2013/03/07(木) 02:59:21 ID:7Xonpd1o
妹友「……うふふ」トロ~ン

兄「!」ビクンッ

妹友「……えへへ」スリスリ

兄「!? !!?」ビクンビクンッ

妹友「……うにゃぁ」ゴロゴロ

兄「!>?!$%#\?」

兄(やべぇっ!緊急事態発生!妹よ!救助求む!)ハンドシグナル

妹(どうしたぁ!愛しのお兄ちゃん!)ハンドシグナル

兄(急に妹友ちゃんの様子がおかしくなった!)

妹(あー、それはお兄ちゃん粒子にアテられたんだねー)

兄(何だソレ!?じゃないっ!早急に連れ出してくれ!)

妹(お兄ちゃんがガシッてソイヤッてやりゃOK)

兄(俺が触れるとマズイから頼んでるんだ!頼む!)

妹(仕方ないなー。一つ貸しだよー)ニヒヒ

83: 2013/03/07(木) 03:13:32 ID:7Xonpd1o
ズルッ

妹「妹友ーおかえりー」ペチペチ

妹友「あふ…ふぇ…あれ?お兄さんコートはどこに…」フラフラ

グラリ

兄「っと危ない!大丈夫妹友さん?」ガバッ

妹友「…えへへ」ニパー

ズボッ ズリズリ…

兄「わっ!ちょっ!駄目だよ妹友さん!また元の木阿弥に…!」

84: 2013/03/07(木) 03:14:07 ID:7Xonpd1o
妹「妹脳天唐竹割りぃっ!」ベシィィィンッ!

妹友「」

兄「………」

妹「…良かったぜ、妹友ちゃんとは」

妹「……さぁ引き続き回収作業をば…」グイグイ

兄「…今お前がトドメめいたもんぶっ放してたが…これ大丈夫なんだよな?」

妹「ファファファ…安心せい峰打ちじゃ」カンラカンラ

兄「妹友さん…すまない。後で埋め合わせを…必ず」ペコリ

妹友「」ズリズリ

88: 2013/03/08(金) 18:35:08 ID:i2.ctknQ
―――

妹友「………」

妹友「……んんっ」ムクリ

妹友「えと…私…」ボーッ

兄「あ。起きた?」

妹友「兄…先輩…?」ボーッ

兄「…良かったよ。あいつの言った通りだったな」スッ

スタスタ ガチャッ

兄「妹ー。妹友ちゃん目ぇ覚めたぞー」

マジデカー! イマイクー!

89: 2013/03/08(金) 18:42:35 ID:i2.ctknQ
バタンッ…

兄「よいせっ…と。何か飲みたいものとかあるかな?もしあれだったら買ってくるけど」

妹友「あの…よく事態が飲み込めてなくて…。ここは…」

兄「ここは妹友さんの家だよ。失礼かなとは思ったけど…公園からここまで運ばせて貰ったよ」

妹友「……そうなんですか。ありがとうございました…」ヘロリ

兄「あぁまだ横になってた方がいいよ。結構消耗してるみたいだし」

妹友「……ええ。じゃぁそうしますね」モソリ

兄「…うん。もうちょいしたら妹来るから」

妹友「………」

兄「………」

90: 2013/03/08(金) 18:51:04 ID:i2.ctknQ
妹友「……えっ!?」

兄「……ん?」

妹友「うわああぁぁぁ!」ガバァッ

兄「どうしたの妹友さん!?やっぱり当たりどころが悪かっ」

妹友「お、思い出したんです!いえそんなことよりもです!」ガシッ

兄「な、何?」

妹友「私を運んだって言いましたよね!?誰がですかっ!?どんな風に!?」

兄「お、俺だけど……あとこんな風に」スッ

妹友「お姫様抱っ……嘘っ、私っ…あうあう…」///

兄「いや、それが触れる面積が一番少なかったからで…」

妹友「それ以前に私兄先輩のコートの中で…っ、なんてハレンチなっ…うぅぅぅ…」///

91: 2013/03/09(土) 00:22:57 ID:Tur7eQY2
妹友「――って、先輩ここ私の家って言いましたっ!?」

兄「…ああ、マズイ…記憶の混濁まで…。これはもう本格的に妹をとっちめてやらないと…」

妹友「ちっ、違うんですよ。そうじゃなくてもしそうならここは私の部屋で…」

兄「そう。妹友さんの部屋で妹友さんのベッドだよ。落ち着いて、ね?こういうのって時間が経てば自然と…」ホロリ

妹友「変な心配しなくて大丈夫ですよっ。コートの中の事だってバッチリ覚えて…ってそうじゃないんですっ!」

妹友「大して片付いてない日常感丸出しの自室をお客さんに…それも先輩に見られるなんて私っ…」

兄「…いやぁすごい整理整頓されてるし、俺の部屋なんかに比べたら…」キョロキョロ

妹友「だ、駄目ですーっ!」バッ

兄「わっ、ちょっ、何を―」

妹友「見ちゃ駄目ですっ!これ以上恥を晒す訳にはいかないんですーっ!」

兄「ごっ、ごめん!もう見ないから離れないと…当たっ、当たってる!当たってるから」フニョフニョ

ガチャッ

妹「両手塞がってるから足で開けちゃった♪行儀悪いのは勘弁な!」テヘペロ

妹友「駄目ーっ!」
兄「柔っ、もがーっ!」

92: 2013/03/09(土) 01:14:24 ID:Tur7eQY2
―――

兄「…落ち着いた?」

妹友「…ええ。温かい緑茶は素晴らしいですね。心を穏やかにしてくます…」ズズー

兄「あとコレお茶うけに羊羹。スーパーで買った奴だから味は期待しないで」

妹友「わざわざありがとうございます。和菓子の類は大好きなので、嬉しいです先輩」

妹「ほ兄ちゃんほの羊羹デカすひない?」グモグモ

兄「切って食えよ…フォークあるだろ。頬がリスみてぇになってるぞ…」

妹「ふぁーい」ギョクン

妹「熱っ。お兄ちゃんこれふーふーして」

兄「自分でやれ。淹れたのはお前だろうに」

妹「ちぇー…」フーフー

兄「…そうだ。妹、お前妹友さんに言うことあるとか言ってなかったか?」

妹「ん?…おお!そうそう。妹友ちゃんに伝えなきゃいけない事があったんだよ」

93: 2013/03/09(土) 01:27:57 ID:Tur7eQY2
妹「今日お兄ちゃんコート、妹友ちゃん体験しちゃったよね?」マグマグ

妹友「…その節は本当に…大変申し訳なく、何とお詫びを申し上げたら良いのか…」フカブカー

兄「そんなのいいって!むしろこっちが得…じゃないや、気にしてないからさ」

妹「違うよ妹友ちゃん。君のせいではないのだよ」ズズー

妹友「…妹ちゃんそれどういう意味?」

妹「妹友ちゃんがコートの中でハッスルしちゃったのはね…」モギュモギュ

ゴクンッ

妹「―っぷは。お兄ちゃんのせいなの」

兄「…俺?」
妹友「お兄さんの?」

94: 2013/03/09(土) 01:46:48 ID:Tur7eQY2
妹「そっ。お兄ちゃんがー、妹友をークラクラさせちゃったからーこーなったのー」モグモグ

妹友「…でも、私が勝手にこうアレな感じになって自制心を失ったのだから…。先輩に罪なんて…」

妹「違うんだなー妹友ちゃん」チッチッチッ

妹「妹友ちゃんさ、今お兄ちゃんのこと先輩って呼んでるよね?」

妹友「?いつもそうだと思うけれど…」

妹「ほいじゃぁさ、お兄ちゃんコートが始まる前にお兄ちゃんのこと、何て呼んでた?」ズズー

妹友「それはいつも通り兄せんぱ……あ」ハッ

妹「気付いたみたいだね妹友ちゃん」ニヤリ モグッ

妹友「私先輩のことお兄さん、って呼んでました…」

兄「…自然すぎて気が付かなかったなぁ。あいつより妹友さんの方がよっぽど妹っぽいし」

妹友「そ、そうでしょうか…て、照れますね。でも…それとどんな関係があるの妹ちゃん?」

95: 2013/03/09(土) 02:01:18 ID:Tur7eQY2
妹「大有りだよオオアリクイだよ!それは妹友ちゃんが…」グモグモ

ギョクンッ

妹「―ぷはっ、軽度の『アニキ汚染』になったってことだからね」ケプッ

兄「アニキ…」

妹友「…汚染?」

妹「そうだよ。お兄ちゃんの温かさにハマってしまう最大の理由が―」

妹「―お兄ちゃん粒子―通称アニキ粒子による汚染なのだよ」

兄「…あのなー。冗談を言うならTPOを…」

妹「冗談じゃないよ。真剣と書いてマジだよ」ズズー

妹友「…そう言えば私覚えてます。先輩の近くに寄った時から、何か逆らいがたい欲求みたいなものが込みあげてきて…」

兄「えー…妹友ちゃんまでそんなことを…」

…ピコーン!

兄「そうだ、妹。仮に10万ha譲ったとしてもだ。お前がいつもの通り何ともないんじゃ信憑性の欠片もないぞ」

96: 2013/03/09(土) 02:12:11 ID:Tur7eQY2
妹「………」

妹「…私はね、それこそもう小さい頃からずっとお兄ちゃんにくっついてたから…末期症状なの」

兄「ま、末期ってお前…」

妹「私が大丈夫なのはね…長年アニキ粒子を浴び続けてきた結果、体の中に対抗がついたってだけ」

妹「だから濃く浴びても正気を保ったまま行動ができるんだよ。…最もただ保てるだけなんだけども」

妹友「…妹ちゃん…。他にはどんな症状があるの…?」

妹「そうだなー。一番大変なのが禁断症状かな。アニキ粒子を長時間浴び続けると…中毒状態になっちゃうんだー」

兄「……じょ、冗談…だよな?」

妹「………」

妹「そうなるともう後はずるずると。定期的にアニキ粒子を浴びないと精神が崩壊しそうになるから…」

妹「補給。中毒。禁断症状。補給の繰り返しだね。その度に汚染が強まるから…後は…まぁ…ね?」

97: 2013/03/09(土) 02:23:10 ID:Tur7eQY2
兄「………」

妹友「………」

妹「………」ムッシャムッシャ

兄「なぁ…何でそんな大切な事を言わなかったんだよ…」

妹「ん?だってそもそも私お兄ちゃんにくっつくの好きだしさ」モキュッモキュッ

兄「もっと前に言っておけば対策が…」

妹「私は『好き』でお兄ちゃんと一緒にぬくぬくしてるんだよ?そんな事でお兄ちゃん遠ざけたくないもの」ムッシムッシ

兄「………」

98: 2013/03/09(土) 02:23:54 ID:Tur7eQY2
兄「…それで…それでどうなるんだ?」

妹「何が?」ゴクンッ

兄「その…アニキ汚染が進むと…お前はどうなっちまうんだ?」

妹「まず禁断症状を起こさないように…お兄ちゃんから離れられなくなる」ムシッ

兄「…それから?」

妹「汚染が進むと前よりアニキ粒子欠乏度合いが激しくなるから、更に更にお兄ちゃんにべったりするようになる」モッキュモッキュ

兄「…そうか。後は?体だとか…あるいは脳とかに影響は?」

妹「ないよ」ケプッ

99: 2013/03/09(土) 02:44:04 ID:Tur7eQY2
兄「…ない?」

妹「うん、ないよ」ズズー

妹友「か、体がボロボロになったりとか…」

妹「ないない。むしろ肌がツヤツヤになるね」ズズー

兄「気が触れてゴー・トゥー・サナトリウムとか、脳が縮小して若年性のマズい病気にかかったりとか…」

妹「体にも精神にもまったくダメージはないですなぁ。むしろ部分部分でメリットが多かったり…んひひ」ズズー

兄「………」

妹友「………」

妹「ぷはーっ!やっぱり茶ぁウマッ!もう一杯ッ!」ッタン

100: 2013/03/09(土) 02:51:35 ID:Tur7eQY2
兄「まとめると…」

妹友「アニキ粒子を浴び、アニキ汚染が進むとアニキ粒子なしの体ではいられなくなる」

兄「アニキ粒子を摂取すればアニキ汚染の結果発生した禁断症状は治まり」

妹友「次のアニキ粒子の欠乏まではいつも通りの生活を送ることができる」

兄「そしてアニキ粒子を摂取すると肌がツヤツヤになったり部分部分での何らかのメリットが得られる…」

兄「………」

妹友「………」

妹「んっ、んっ、んっ」ゴクッ ゴクッ


兄・妹友『アニキ汚染て重病でも何でもないじゃんっ!!』ガカァッ

妹「ぷっ、はーっ!…うん、重病なんてあたし一言も言ってないよー」ニシシ

104: 2013/03/10(日) 03:56:39 ID:Y2pGGF8w
兄「…なんだ…本気でやばい病気かと思って損した…」ヘタリ

妹友「私もびっくりしましたよ…」ヘタリ

妹「…まぁやばくはあるんだけどねぃ」ボソッ

兄「…ともかく…アニキ粒子のくだりはマジなんだな?」

妹「妹何年やってると思ってるのさっ!」フンゾリッ

妹「何だったら湿度やお兄ちゃんの体調によってアニキ粒子の放射量が上下するデータを家から取ってくるよ!」ザッ

兄「…いや、いい。いい。分かった。一番問題なのは…そうか…妹友ちゃんか…」

妹友「…私、ですか?…でも私にとってそんなにデメリットはないような…」

105: 2013/03/10(日) 04:13:28 ID:Y2pGGF8w
兄「いやデメリットだらけだよ。妹が言うように、もしアニキ粒子が妹友さんに適合して汚染された場合…」

兄「定期的に俺から兄粒子を貰わないといけないんだよ?それはかなりのデメリットでしょ…」

妹友「それはデメリットどころかメリットじゃないですか」

兄「へ?」

妹「んひ」ニヨニヨ

妹友「……あ!」

妹友「そうですねっ!デメリットですねっ!でも気にする程のデメリットじゃないですよ!砂粒程度の小さいデメリットですです!」ワタワタ

兄「むーん…妹、何か名案はないか?」

妹「ファファファ…あるよ!」ビッ

妹「アニキ粒子を長時間浴びてるお兄ちゃんの所持品があればいいのさっ」

106: 2013/03/10(日) 04:16:11 ID:Y2pGGF8w
兄「んー…多量にアニキ粒子を浴びてるっつーと…」

兄「…ワイシャツ」

妹友「!」ガタッ

兄「…は俺が寒いしな…」

妹友「………」ズーン…

兄「…インナー」

妹友「!」ガタタッ

兄「…肌に直着だしばっちぃから駄目だな」

妹友「…ッ!…ッ!…ッ!」ガタタッ ガタタタッ

妹「じゃぁもうパンツでいいじゃん」

妹友「!!!」ドカァァァァン

兄「何が『じゃぁ』なんだよ…」ビシィッ

妹「っづ!痛ひ…」サスサス

妹友「…………」シーン…

107: 2013/03/10(日) 04:23:47 ID:Y2pGGF8w
兄「あ、ハンカチとかはどうだ?」

妹「ああ、お兄ちゃんのエキスが染みこんでていいかも」

兄「…そう言われるとこれもばっちぃ気がしてきたから―」

妹友「!」

ババッ

妹友「いえっ!ハンカチがいいですっ!」

兄「…でもトイレ出た後とかに」

ズイッ

妹友「ハンカチがっ!いいんですっ!」ギラギラ

兄「あ、は、ハンカチで…いい…の?」

妹友「ハンカチがっ!いいのですっ!」ランラン

兄「じゃ、じゃぁコレ…」ヒョイ

ガシッ バシュンッ

妹友「ありがとうございます!これ一生大切にしますねっ!」///

兄「お、おう…?」

108: 2013/03/10(日) 04:24:32 ID:Y2pGGF8w
妹「大体だけど教えておくよー」

妹「コートの中にいた時間、お姫様抱っこされていた時間に」

妹「空気中のアニキ粒子と皮膚吸収されたアニキ粒子の量を概算すると…」

妹「んー…約10時間は持つはず」

兄「意外と長いな…」

妹「まだ汚染初期だしね。それでつらくなったら少しだけお兄ちゃんのハンカチを体に近付けるんだよ?」

妹友「…うん、分かった」ギュー

兄「今近づけちゃマズいんじゃ…」

妹友「大丈夫です。ジップロックに入れてありますからっ」///

兄「そ、そう…」

妹「…くれぐれも、つらくなったら、だよ?直接匂いを嗅ぐとかはNGだからねー?」

妹友「…うん、分かった」ギュー

兄「………」

109: 2013/03/10(日) 04:29:38 ID:Y2pGGF8w
―――

テクテク

兄「…いやしかし…」

妹「んーー?」ヌクヌク

兄「…驚いたよ。色々とな」

妹「あたしに?それともアニキ粒子?」

兄「それもあるし…あ。羊羹食い過ぎだぞお前」

妹「結構イケるねスーパーの」

兄「妹友さんに買ってきたものなのに一本丸ごと食いやがって…」

妹「育ち盛りだからたくさん食べないと出るとこ出ないのです」グリグリ

兄「…やめい。前を向いて歩け」

妹「へーい」

110: 2013/03/10(日) 04:30:31 ID:Y2pGGF8w
テクテク

兄「………」

妹「…あいむしんかー♪」

兄「………」

妹「あいくっぶれっきだぁん♪」

兄「…ん?」

妹「あいむしゅーたー♪」

兄「…お前それ、ちゃんと歌えたのか」

妹「どらすてぃかべいべー♪……歌えるよぅ?」

兄「へー…」

111: 2013/03/10(日) 04:31:27 ID:Y2pGGF8w
テクテク

妹「何?…とぅーとぅーとぅーとぅとぅー♪のがお兄ちゃん好き?」

兄「…別に」

妹「ふーん…」

兄「………」

妹「あいむしんかー♪」

兄「………」

妹「とぅーとぅーとぅーとぅとぅー♪」

兄「………」ピクッ

妹「ひひっ。やっぱりねー♪」

兄「……むう」

113: 2013/03/11(月) 02:35:57 ID:YdK19mK.
―――

妹「たっだいまー!」

兄「…はい。おかえり」

妹「牛乳とおっやつー」ヌギッ ダッ

兄「おまっ靴を揃えっ、手を洗ってから!」

妹「一度にニつのことをやれと言われても…」

兄「お前が一度に二つに増やしただけだろ、ほれ揃えろ」

妹「ほーい」

114: 2013/03/11(月) 02:44:14 ID:YdK19mK.
―――

兄「ふぃーコタツコタツっと…」モゾッ

兄「温かい煎茶をいただきつつ読書にふける…」

ズズー

兄「ほぅ…癒されますなー…」

…デッデッデッデ バターン!

妹「おっ兄ちゃーーーん!」

兄「………」

妹「あたしもコタツ入りたいぜ!」

兄「………」

兄「癒される時間終わっちゃったなぁ…」

115: 2013/03/11(月) 02:50:04 ID:YdK19mK.
妹「ほいじゃ、まぁ失礼します、と」モゾモゾッ

兄「…やっぱりそこなのかよ」

妹「お兄ちゃんの膝の上があたしのコタツ指定席だからね」

兄「…断ったら?」

妹「お兄ちゃんがあきらめるまでッ!座るのをッ!やめないッ!」

兄「………」

妹「それに抵抗されるのも、それはそれで悪くないし」///

兄「…はぁ」

妹「お?お?まーさーかーのー?」

兄「…ほれ、座れ」ポンポン

妹「素直なお兄ちゃんだぁぁぁ!」グッ

116: 2013/03/11(月) 02:57:39 ID:YdK19mK.
―――

妹「…んあー」スリスリ

兄「…何だよ」

妹「いやーぬくいなー、と」

兄「…そりゃコタツだからな」

妹「コタツじゃなくてお兄ちゃんがだよ」

兄「……コタツに潜ればもっと温かい思いできるって」

妹「一緒に潜る?」

兄「何で俺まで潜らにゃならんのだ…」

妹「じゃぁいいや」

兄「………」

117: 2013/03/11(月) 03:00:56 ID:YdK19mK.
兄「…なぁ」

妹「んー?」

兄「お前がやたらくっついてくるのってさ…」

妹「うんー」

兄「…やっぱりアニキ粒子が足りないからか?」

妹「…そうだね」

兄「……そう、か」

妹「でもそれはおまけかな」

兄「おまけって…」

妹「あたしはね?」クルッ

妹「時間の許す限りお兄ちゃんにくっついていたいの」

兄「………」

118: 2013/03/11(月) 03:05:50 ID:YdK19mK.
妹「そのついでに吸収できるだけだよ」

兄「…悪いな。俺の体がアニキ粒子なんてのを放出しちまうばっかりに…」

妹「気にしすぎだよー。昼間言った通り体にそんなに悪くないんだし」

兄「ただ長い間気付けなかったのは俺の兄としての怠慢だよ」

妹「お、お兄ちゃん…そこまで…あたしのことを…」ウルウル

兄「……そうだな。何か頼みがあるなら聞くぞ」

妹「どぅおえぇ!?そ、そ、それはマジですか!?」

兄「ああ、せめてもの罪滅ぼしだ」

妹「じゃ、じゃぁ…」モジモジ

119: 2013/03/11(月) 03:22:51 ID:YdK19mK.
妹「お兄ちゃんの残り湯を飲み干し」

兄「却下」

妹「……きいてくれるんじゃ、なかったの?」

兄「何でもとは言ってないぞ」

妹「くぅっ…な、ならもうちょいマイルドに…よしっ」

妹「お兄ちゃんの枕カバーで下着作」

兄「却下」

120: 2013/03/11(月) 03:23:29 ID:YdK19mK.
妹「何で!?さっきはお兄ちゃんの出汁をあたしが摂取するからアウトだったってのは分かるよ!」

妹「でもこれはお兄ちゃんの古くなった枕カバーをリサイクルする、いわゆるエコ精神にのっとった行動だよ!」

兄「…そうか」

妹「そうだよ!それを駄目だなんて考える方が変に嫌らしいっていうか物事をひねた見方でしか」

兄「目的は?」

妹「お兄ちゃんのヨダレとあたしのヨダレの邂逅…」ハッ!

兄「………」

妹「………」

兄「却下」

妹「くそぉ……」

122: 2013/03/11(月) 19:35:03 ID:YdK19mK.
妹「むー…あ!お兄ちゃんと」

兄「却下」

妹「ちょっ!?まだあたし何も言ってないよ!何をするかまで発言してないよ!」

兄「お前の瞳の奥に邪悪に揺らめく緑色の炎を見た。故に却下だ」

妹「な…なんてこった…瞳を見られただけで…だと……」

兄「兄を何年やってると思ってるんだ。なめるんじゃない」

妹「………」

兄「…急に黙るなよ」

妹「…んー、いやさ。あたしの思ってること、目を見てバレちゃったでしょ?」

兄「…まぁな」

123: 2013/03/11(月) 19:42:41 ID:YdK19mK.
妹「あたしとお兄ちゃんとだったら――」

妹「言葉は不要なのかな…ってさ」

兄「…遅かったな」

妹「…え?」

兄「気付くのが…ってことだ」ポフッ

妹「…じゃぁ」

兄「俺はそう思ってるさ。わりと昔からな」

妹「………」

兄「まぁ先に生まれてるから当たり前だけどな」ハハ

妹「…違うよ」

兄「…違うって?」

妹「それはお兄ちゃんだからだよ」ニシシ

兄「?…同じ意味だろ」

妹「全然違うもーん」スリスリ

兄「………」

124: 2013/03/11(月) 19:54:47 ID:YdK19mK.
妹「…頼み事決まったかも」

兄「ほう」

妹「頭撫でて欲しいかな」

兄「………」

妹「どうしたの?」

兄「…いや、普通すぎて面食らった」

妹「普通じゃ駄目なの?じゃあねー」

兄「いや普通でいいよ。…でもそんなのでいいのか?」

妹「それがいいのだ」

125: 2013/03/11(月) 19:55:40 ID:YdK19mK.
兄「…ふーん」スッ

ポフリ

ナデナデ

妹「ぐわー」

兄「っと悪い、髪の毛引っ掛けたか?」

妹「大丈夫。むしろ優しい手つきだよ。髪の毛をすくようにするとスコアが上がるかも」

兄「…へいへい」ナデナデ

妹「ぐわぁぁぁ」

兄「………」ナデナデ

128: 2013/03/12(火) 00:32:01 ID:9etXOKFA
―――

妹「あふ…耳の付け根から後頭部にかけて、触るか触らないかのタッチで…あー…そんな感じで…」ゴロゴロ

兄「こうか?」スーッ

妹「あーイイ…イイッス、イイ…イイーーーーーッ!!…のほぅ」ビクビク

兄「…手が疲れた。終わりな」ポンポン

妹「えー。もっともっと」

兄「もうすぐ飯だしな。それに充分やったろ?」

妹「ちぇー…」

129: 2013/03/12(火) 00:42:07 ID:9etXOKFA
兄「ああそうそう。さっき言った俺への頼み事、変なのじゃなけりゃ聞いてやる」

妹「へ?だって今撫でてもらったから…」

兄「これ位頼むほどのことじゃないだろ。暇だったらまたやってやるよ」ポフリ

妹「………」ギュ

兄「…どうした?」

妹「うなぁぁぁぁ!」スリスリスリスリ

兄「ちょっ、終わりだって言っ……熱い熱い熱い!摩擦摩擦!擦り付けるな!」

妹「やめないのだ!たまらんのだー!」スリスリスリスリ

兄「やめっ、くっ…この…やめろと言うにっ!」ヒュッ

ビシッ

妹「あ痛ーーーー!」

131: 2013/03/12(火) 04:40:30 ID:9etXOKFA
―――

ガチャッ バタン

妹友(ふぅ…いいお湯だった)

チカチカ

妹友(…メール?誰からだろう?)

――――――――――――
from:兄先輩
sb:大丈夫?

あの後体調崩さなかった?
一応うちのバカ妹が詳しい
みたいだから、何かあった
ら聞いてみて。
色々迷惑かけて本当にごめ
ん。
――――――――――――

妹友(先輩ったら気にしすぎなんだから…ふふ)

妹友(…まぁ…すごく嬉しいから…いいん、だけど)トクン トクン

132: 2013/03/12(火) 04:42:07 ID:9etXOKFA
プププ ププププププ

妹友(…変なところないよね)

妹友(………)

妹友(うん、ない。…多分)

妹友(…うーーー……)

妹友(そ、送信…ってそうだ今何時だろ!?)キョロキョロ

妹友(あ…ご飯時にかかってるかも…)

妹友(…送るのちょっと後にしようかな…)

妹友(でもそこまで考えるのは自意識過剰かな…うん送っちゃおう)プ

妹友「ふーーーーっ……」バフッ

133: 2013/03/12(火) 04:43:06 ID:9etXOKFA
ム"ーーーーッ!!ム"ーーー!!

妹友「き、来た!」バッ

妹友(嘘嘘すっごい早さで返信返って来たよ。先輩打つの早いなぁ)

妹友(返ってくるまで寝ない予定だったからびっくりしたなー)

妹友(さて内容は何だろう)パカッ

――――――――――――
from:Postmaster@△...
sb:Mail System Error -...

次のあて先へのメッセージ
はエラーのため送信できま
せんでした。

送信先メールアドレスが見
つからないか、送信先...
――――――――――――

妹友(………)ガクリ

妹友(私のバカー!先輩の前のメアドに送っちゃったよー!)プププププ…

妹友(そりゃ最速で返ってくるはずだよね…もう…ハァ…)プププププ…

134: 2013/03/12(火) 04:50:41 ID:9etXOKFA
妹友(……うん。今度こそ、これで良し。送信っ、と)プ

妹友(……にしても…今日は色々あったなー…)

妹友(朝は妹ちゃんのコートに驚かされて…)

妹友(昼休みは兄先輩の家での過ごし方で衝撃を受けて…)

妹友(でもその後おでこで熱はかってくれたり…)

妹友(保健室まで肩を貸してもらいながら移動したり…)

妹友(そして……帰りに……か、帰りに……)

妹友(お兄さんコートの…な、中に…入っちゃったりして!)キュゥゥ

妹友(その後なんやかんやでお姫様抱っこがあっ)

ム"ーーーーッ!!ム"ーーー!!

妹友(来た!今度こそ!)

137: 2013/03/13(水) 01:46:55 ID:a3wXTDvk
妹友(………)ゴクリ

パカッ

――――――――――――
from:兄先輩
sb:Re:お気になさらずに

力になれる事は何でもする
から、遠慮なく言ってね。
 粒子のこともあるので明
日は一緒に登校した方がい
いかな?
――――――――――――

妹友(………)プルプル

妹友(せ、先輩からの登校のお誘い…!)

妹友(これって何だか…付き合い始めた…カ、カ…)

妹友(カップルのメールのやりとりみたい…!)

138: 2013/03/13(水) 01:58:38 ID:a3wXTDvk
妹友「…~~~ッ」///

ゴロゴロ

妹友「~~~ッ!~~~ッ!」///

ゴロゴロ

妹友「…ってそうじゃない私!返信、返信しないと!」

妹友「分かりました、と…待ち合わせ場所は…どう……」プププププ…

妹友「…送信、と」プ

妹友「………」

妹友「……えへへ」ニヘー

139: 2013/03/13(水) 02:01:34 ID:a3wXTDvk
ム"

妹友「!」パカッ

――――――――――――
from:兄先輩
sb:Re:分かりました

分かった。それじゃ7:30位
に妹友さんの家の前まで迎
えに行くよ。
 おやすみ。また明日ね。
――――――――――――

妹友(…お、おお、お……おやすみメールもいただいてしまった…)

妹友(というか私の家の前までって…それってもう!それってもう~!)クネクネ

妹友(はっ!…そうだ、この一連のメールに保護をかけ、更にバックアップを取っておかないと…)ブツブツ

妹友(…………よしと)プ

バフッ

妹友(………明日が楽しみだなー…えへへ)ニヘー

ム"ーーーーッ!!ム"ーーー!!

妹友「!」

140: 2013/03/13(水) 02:05:33 ID:a3wXTDvk
妹友(…何だろう?『おやすみ』って書いてあったからあれで…)パカッ

――――――――――――
from:妹ちゃん
sb:親友が相手なら覇王…

うぃーす起きてるー?聞い
てよ妹友ちゃん!今日ねー
お兄ちゃんに頭を撫でても
らったんだよー!それもわ
りと長め!しかもしかも!
!何かお願いごともしてい
いとかすっごく優しいこと
言ってくれたんだよー!あ
たし超嬉しくて思わずじゃ
れついちゃった♪お兄ちゃ
んの胸板って結構厚くって
さー。たくましい?頼れる
っていうのかなー?わかん
ないなー。まぁ、お兄ちゃ
んだから当然っちゃー...
――――――――――――

妹友(………)イラッ

パクンッ ポイッ

バフッ

妹友「むー……」ゴロゴロ

141: 2013/03/13(水) 02:20:33 ID:a3wXTDvk
ゴロリ

妹友(…そう言えば…急に私どうしたんだろう…)

妹友(今まで妹ちゃんが一方的に先輩にイチャイチャしても…)

妹友(感情を抑えきれてたのに…)

妹友(………)

妹友(………お昼の時間)

妹友(家でもイチャイチャしてるのが分かった時…)

妹友(私、分かりやすい位に動揺しちゃってた…)

妹友(もう全然余裕なくて…それで先輩に……)トクン

妹友(…今のメールだってそう)

妹友(妹ちゃんが先輩のろけるのなんて毎度のことなのに……)

妹友(何で私イラついちゃってるんだろう……)

142: 2013/03/13(水) 02:31:39 ID:a3wXTDvk
妹友(……!)

妹友(…そうか。そうなんだ)

妹友(…私…焦ってるんだ)

妹友(先輩のコートに無理言って入らせてもらったのも…)

妹友(先輩のハンカチを取るのに必氏だったのも…)

妹友(…全部、焦ってるからなんだ)

妹友(…私が、自分が何も行動を起こさなかったら……)

妹友(妹ちゃんに…妹なのに先輩を取られちゃうって…)

妹友(だから…なんだ……)

143: 2013/03/13(水) 02:51:38 ID:a3wXTDvk
妹友(……なら)

妹友(…なら行動あるのみ、だよね)

妹友(だ、だって、わ、私は…お、お兄さんが、す、ス…)

妹友(…好きなんだから)プシュー

妹友(…そうよ。自分の気持ちに蓋をするのはもうやめよう)

妹友(私は…お兄さんが…好き。そしてお兄さんにも私を好きになってもらいたい!)

妹友(だから引っ込み思案の昨日までの私とさよならしよう!)ググッ

妹友(………)フシュー

妹友(…力が湧いてくる。勇気が湧いてくる…胸の奥がとても温かい…)

妹友(これも…アニキ粒子の影響なのかな…)

144: 2013/03/13(水) 03:01:30 ID:a3wXTDvk
妹友「よし。そうと決まればまず部屋の掃除よ」ムンッ

妹友「今度お兄さんが来た時に、埃一つ落ちてない部屋を見せて好感度アップしなきゃ」

妹友「清潔感は溢れる部屋は何においても……ん?」チラッ

妹友「ここらへん…お兄さんが座ってたところだ……」

妹友「………」

妹友「…片付けは夜やると近所迷惑だから、明日にしよう。うん」

ススッ

妹友「わ……同じ場所に座ってしまった」ニヘ

妹友「…えへへ」トクン

妹友「………」サスッ

妹友「………だ、誰も見てないし…うん、いい、よね?」トクン

145: 2013/03/13(水) 03:08:08 ID:a3wXTDvk
妹友「こ、ここらへんにお兄さんの太ももがあったんだよね…」スリ…

妹友「そしてこの辺りに足の裏が…靴下は履いてた気がするな…残念…」スリ…

妹友「そ、そしてここが…お兄さんのお尻が乗っていた場所……!」ゴクリ

妹友「…………」スリスリ…

妹友「こ、これって間接的に…お兄さんのお尻で…顔を踏まれていることに…なるのかな」トクン

妹友「ん……ふ……」スリ…スリ…

妹友「い…けない事だとは…思うけど…そこにお兄さんがいたっていう事実、だけで…!」トクントクン

妹友「私、もう…止 め 」

ドクンッ!!

妹友「…うっ!?」ドクン

147: 2013/03/13(水) 03:17:37 ID:a3wXTDvk
妹友「な、何…コレ!?か、体がっ…ぐっ…うぅ!!」ドックン

コン コン

友母『妹友ちゃん?さっきから声が聞こえてるけど、お友達来てるの?』

妹友(まずっ、お母さん!?ひょっとして私声出ちゃってた!?)

妹友「な、何でもない、よ。友達と電話して…ぐぅぅぅっ!」ドックン

コンッ コンッ

友母『妹友ちゃん!大丈夫!?声がすごく苦しそうだけど!』

妹友「だ、大丈夫だよ。っぐぅ…!ちょっとお腹、壊しちゃって…ぇ」ドクンドクン

友母『だからお腹冷やさないようにってあれ程…じゃぁお母さん薬取ってくるから!トイレ入っちゃいなさい!』

妹友「わっ、分かった…くぅっ……ああぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」ズルッ… ズルッ…

150: 2013/03/13(水) 03:35:26 ID:a3wXTDvk
―――

バタンッ

妹友(何とか…トイレまで…来れた……)

妹友(急に何だったんだろ……うわぁ…下着がズブ濡れだ…替えないと…)

妹友(………)

妹友(先輩の居た床に頬ずりしてたら…急に…興奮してきて…それから……)

妹友(……まさか…)

妹友(あの場所にアニキ粒子が残留してたってこと?)

妹友(…でも昼間のコートの時はこんな発作みたいなの起こらなかったし…)

ジャー

バタンッ

妹友(…とりあえず危険だからあの区域をマスキングテープで……)

妹友(………?)

151: 2013/03/13(水) 03:45:40 ID:a3wXTDvk
妹友(兄先輩が居た場所に…緑色の小さいオーロラ?みたいなものが見える…)

妹友(あれは…何だ)

友母「はいこれ。ぬるま湯とお腹の薬ね。胃か腸か分からないから両方持ってきちゃったわよ」

妹友「あ、ありがとう。…ねぇお母さん」

友母「何?まだトイレ?だったら早く――」

妹友「ち、違うよ!そうじゃなくて…あの…私のベッドの横の床、何か見える?」スッ

友母「床?別に何も見えないけど……あ!あんたまさか!また怖い映画見てそれで…」

妹友「見てない!それにこの年になってそこまで尊厳は捨てないよ!」

友母「そう?それならいいんだけど。もしそうなら洗濯自分でやりなさいよ。お母さんは知りませんからね」

トッ トッ トッ トッ

妹友「だからっ!…もう、人の話聞かないんだからお母さんは…」

妹友「………」

妹友「お母さんには見えずに…私には見える…つまり…」

妹友「私がアニキ粒子を肉眼で見れるようになった…?」

156: 2013/03/13(水) 21:19:51 ID:a3wXTDvk
―――

妹友「…見える」

妹友(ドアノブ、湯のみの飲みくち、お兄さんの通学鞄の置いてあった場所。…注意深く見ないと見逃しちゃう程の…小さな光が)

妹友(そして兄先輩が座っていた場所には…小さな緑色のオーロラ?が)

妹友「これがアニキ粒子……」スッ

トクンッ

妹友(…ッ!軽くかざしただけなのに…)トクン

妹友(…これが妹ちゃんの見ていた世界…)トクン

妹友「妹ちゃんがお兄さんをどこにいてもすぐに見つける理由が、やっと分かった」

妹友「いつもこの緑の光を追っていたんだね…」

157: 2013/03/13(水) 21:43:36 ID:a3wXTDvk
妹友「…だとすると」

ゴソゴソ

妹友「お兄さんからいただいたハンカチは…」スッ

…コォォォ…ォォ…

妹友「何……これ………」

妹友「ま、眩い緑色の光が…ジップロックを満たしてる…」

妹友「これ…まさか全部が…?」

妹友「………」

妹友「…確か10時間でアニキ粒子の効果が切れるんだよね」

妹友「…ちょっと位早くても…いい…よね?」ゴクリ

160: 2013/03/13(水) 23:34:59 ID:a3wXTDvk
ソーッ

妹友「…わぁ…何て優しい光なんだろう…」トクン

妹友「う…触れた先からもう…」トクン

妹友「だ、抱きしめて…みようかな…」トクン

キュ

妹友「……あう」///

妹友「こ、これは強烈な…も、もっと…もっと欲しいっ」トクンッ

ギュー

妹友「んっ………ふっ………あ…ふ」ドクンッ

妹友「…はぁ…はぁ…」クテッ

妹友「…すごい」

妹友「お兄さんの…汗や皮脂を吸収してる分…アニキ粒子が濃いのかな…」

妹友「………」チラッ

161: 2013/03/13(水) 23:39:14 ID:a3wXTDvk
妹友「そう言えば…」モヤモヤ

~~~

妹『…くれぐれも、つらくなったら、だよ?直接匂いを嗅ぐとかはNGだからねー?』

妹『直接匂いを嗅ぐとかはNGだからねー?』

妹『匂いを嗅ぐとかはNG…』

妹『匂いを嗅ぐとか』

トカ… トカ… トカ………

~~~

妹友「匂いを…」

妹友「………」ゴクリ

妹友「だ、大丈夫。ちょっとだけなら…ちょっとだけなら大丈夫な、はず」トクン

162: 2013/03/14(木) 00:03:42 ID:Cm3DANOE
ズ…

妹友「…ふぅ」

クン…


妹友「ッ…ぅあっ!」ドクンッ

妹友「ぎ……い”っ…あ…ぐぅぅうぅぅぅぅッ!」ビクンッ

ビクッ

ビクンッ

妹友「…はっ!……はっ…!はぁ…はぁ…ぁぅ…」クテッ

妹友「…なに…これ……」

妹友「イイ……すごくイイ……」

妹友「んっ…はぁ……これを……」

妹友「これを思いっきり吸ったら…どうなっちゃうの…かな…?」ドックン

165: 2013/03/14(木) 00:09:56 ID:Cm3DANOE
妹友「マズいかな…流石にマズいよね…はは…」

…コォォォ…ォォ…

妹友「………」

…コォォ…ォォォ…

妹友「………」スッ…

ハァーーーー……

妹友「………」ニヘッ






スゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!








妹友「!」ギクンッ

166: 2013/03/14(木) 00:39:28 ID:Cm3DANOE
妹友「がっ…あ”っぎっ…ぐ…ッ………ッ…!」ビクンッ

妹友「ッかっ…はっ…あ”ぐぅぅ………ッ!」ギクンッ

『カァォッ』

妹友「…ッはぁ…ス、スゴい…スゴク…イイッ…よぉ……!」ピクッ

『シュォーンッ』

妹友「ひか、光…ヒカリが一面っ…にっ…ぃいっ!」

…コォォォ…ォォ…

妹友「あぁ………ぁああ……あああぁ……!」ビクン

妹友「ハ、ハンカチから……光が逆流して…くる……」

妹友「ッぐぅううぅぅうぅうぅッ!!」

――――
――

170: 2013/03/14(木) 02:19:39 ID:Cm3DANOE
―――

ピンポーン♪

インターホン『はーい』

妹「おはようございますー。妹ですけどー」

インターホン『あら妹ちゃん。妹友ちゃーん!妹ちゃん来てるわよー!』
   『分かってるよ!お母さんは大きい声出さないで』プッ

兄「………」

妹「…ほふぅ」モゾモゾ

兄「インターホン押す時ぐらいコートから出ろよ…」

妹「ことわーるのであーる!」フンッ

兄「…はぁ」

ガチャッ

トッ トッ トッ

妹友「ご、ごめんなさい!時間を指定したのは私なのにすいません!」ペコリ

兄「いやいやほぼ時間通りだよ妹友……さ…ん?」

妹「!」

171: 2013/03/14(木) 02:24:25 ID:Cm3DANOE
妹友「はい?お二人ともどうかしましたか?」

兄「いやいやいや、目の下にすごいクマできてるよ!」

妹友「…あ、これですか?昨日読んでた小説が面白くって、つい夜更かしちゃったんです」

兄「…そうなの?昨日のアニキ粒子とかの影響とかじゃ…」

妹友「あぁ、それはもう全然。大丈夫ですよ、少し寝不足なだけですから」

妹「………」

兄「なら…いいんだけれど…」

妹「…とぅ!」

スポッ

172: 2013/03/14(木) 02:25:32 ID:Cm3DANOE
兄「…ありゃ。珍しい…。妹が自分から出るなんて…」

妹「たまには親友と並んで登校したい…そんな気分の日があったりなかったりするのです」

兄「…どっちだよ」

妹「まぁそんな訳で妹友ちゃんと女子☆トークするからお兄ちゃんは距離とってとって」グイグイ

兄「自分で移動するっての!まったくもう勝手にくっついたり離れたりと忙しい…」テクテクテクッ

テクテク

妹「………」

妹友「………」

173: 2013/03/16(土) 01:38:29 ID:FY1f321M
妹「んっふっふ~」ニマニマ

妹友「…………」

妹「 昨 晩 は お 楽 し み で し た ね ?」

妹友「ッ……」///

妹「お兄ちゃんのエキスが染み込んだハンカチ、素敵だったでしょ?」

妹友「……素敵、でした」

妹「ありゃ。素直に認めちゃうんだ?」

妹友「だってそうなるように仕向けたのは妹ちゃんでしょ」

妹「ええー。何の事かなー?あたしは忠告したんだよー。直接匂いは嗅がないようにってさー」ニマニマ

妹友「……う”ーー」

174: 2013/03/16(土) 02:02:55 ID:FY1f321M
妹「いやーそれにしても妹友ちゃん。たった一晩で随分とまた汚染が進んだね」

妹友「……それって外見から分かるものなの?」

妹「……制服の左胸、内ポケット」

妹友「えっ」ギクッ
                   ア セ ン
妹「お兄ちゃん初心者とは思えない見事な構成だね」

妹友「……褒め、てるの、それ?」

妹「勿論褒めてるよ。アニキ粒子は欲しい……でも皮膚に直接だと刺激が強すぎる」

妹「そこでワイシャツ一枚挟んでの吸収っ。しかも有事の際にすぐ取り出す事も可能っ」

妹「実に見事、アッパレだよっ」

妹友「…………」///

175: 2013/03/16(土) 02:08:47 ID:FY1f321M
妹友「……ねぇ妹ちゃん」

妹「ほいほい?」

妹友「妹ちゃんの目的は何?」

妹「目的?」

妹友「独り占めしてても良かったのに……何故私にこの道に進ませたの?」

妹「んー……それはまだ詳しくは教えられないけどさ」

妹「もっともっとお兄ちゃんとベタベタしたい為、だよ」

妹友「でもそれならいっそのこと――」

妹「――教えない方がベタベタできた、そう言いたいのかな?」

妹友「……分かってるなら何故」

妹「……んー、そうだねー」クルクル

176: 2013/03/16(土) 02:16:32 ID:FY1f321M
妹「独り占めでベタベタするより、もっともーーっとベタベタ出来る方法があったら?」

妹友「……そんな方法あるの?」

妹「そんな方法があるもんかね……あるんだなこれが」ニヤァ

妹友「……とりあえず、それについてはいいよ」

妹「えー。これから面白くなるところだったのにー」ブーブー

妹友「あのね、妹ちゃん」

妹「ん?」

妹友「私、先輩のことが、お兄さんのことが――」

妹友「――好き」

妹「おおーっ!」

177: 2013/03/16(土) 02:23:47 ID:FY1f321M
妹友「妹ちゃんにはアニキ粒子を仲介してもらった恩はあるけれど……」

妹友「これに関してはもう、妹ちゃんに遠慮したり、譲ったりすることはないと思う」

妹友「私はお兄さんが好き、そしてお兄さんにも私を好きになって欲しい」

妹友「そう私は決意し、覚悟を決めたの。だから――」

妹友「私の親友の妹ちゃん、今日、いえたった今からライバル宣言をするよっ!」ビシィ





パチパチ

妹「いやー、すごいすごい!かっくいーなー妹友ちゃん!」

妹友「……言っておくけど私は本気だよ?」

妹「分かってるよー。それも込みであたしは嬉しいのだよー」

179: 2013/03/16(土) 02:46:41 ID:FY1f321M
妹「最初に言ったでしょ?『理解者』が欲しいって」

妹友「……言ってたけれど……」

妹「だからライバルだろうと何だろうと嬉しいんだよ。同じ世界を共有できる者として、ね?」

妹友「……世界……確かにそうね。私はアニキ粒子に汚染されて初めて世界を認識した……」

妹「そう、妹友ちゃんは分かったはず」

妹 「あたしの世界はお兄ちゃんそのものだってことに」
妹友「わたしの世界はお兄さんの存在なくして成り立たない」

妹「…………」

妹友「…………」

180: 2013/03/16(土) 02:48:19 ID:FY1f321M
妹「……んっひひ~。まま、何はともあれ」

妹友「……今までよりもっと妹ちゃんとの絆は強まった気がするよ」

妹「理想は違えど共有する者として…」

スッ

妹友「ライバルではあるが親友。互いを高め合う者として…」

スッ

ガシッ

妹友「……ええ」ニコッ

        リ ン ク ス
妹「ようこそ『兄依存者』。歓迎しようっ!盛大にねっ!」ニカッ

183: 2013/03/16(土) 21:17:39 ID:FY1f321M
――――

兄「……うす」

友「おはよー旦那」

兄「…………」

友「…………」

兄「いや、邪魔なんだが」

友「旦那、何か俺に言うことはないのかな?」

兄「……別に何もないが」

友「っほほーう。じゃぁある一人の男の話をしよう」

兄「…………」

184: 2013/03/16(土) 21:23:07 ID:FY1f321M
友「その男はつつましくも満たされた日常を謳歌していた」

友「無論多少不幸は多いが、それでも人生にこれと言って不満はなかった」

友「ある日男はクラス一のゴリラ女に顔を殴られ、意識を失ってしまった」

兄「…………」

友「ああ何たることだろうか!男には何の非もないと言うのに!」ババッ

友「そして男は目を覚ますと、何故か生徒指導室の中にいたのだ」

友「男の膝の上にはフラジールな関係という読んだ事もない本が置かれ……」

友「対面に座していた正面の教師は、意味深な視線を男に投げかけていた……」

兄「……感動的だな」

友「どこがじゃあっっ!!」

187: 2013/03/16(土) 21:33:43 ID:FY1f321M
友「この男ってのは俺だよ俺!」

兄「知ってた」

友「知ってたならなお悪いわ!おまっ……何してくれちゃってんの!?」

兄「ほら、お前放課後先生と待ち合わせてたじゃないか」

友「そこは合ってる」

兄「だが肝心のお前と来たら気絶しっぱなしで動く気配がない」

友「そこも合ってる」

兄「だから親切心でお前を生徒指導室まで担いで行ったんだ」

友「ありがとう。おかげで約束をすっぽかさないで済んだよ」

兄「そしてお前の膝の上に本を置いたんだ」

友「それはいらなかったんだよっ!」

188: 2013/03/16(土) 21:51:20 ID:FY1f321M
兄「……?」

友「その『どうして……?』って感じの不思議系美少女みたいな顔やめろ!イラッとくる!」

友「いいか。そもそも何故生徒指導室に呼ばれたのか原因を言ってみろ」

兄「課題を出し忘れたから」

友「違っ……違わないか……?いや、やっぱ違うわ!お前のせいだ!」

兄「……?」

友「だからやめろ!お前がノートにガチムチな黒人を描くから――」

兄「ビスケット・オリバだ」

友「そうそのオリバを――」

兄「ビスケット・オリバだ」
    ア ン チ ェ イ ン
友「だぁっもう!Mr.不可拘束ことビスケットオリバをやたら精巧に描いたからだろ!?」

190: 2013/03/17(日) 00:19:48 ID:q8BLDhJc
兄「確かにそうかもしれない」

友「かもじゃなくてそうなの!つまり俺はあらぬ誤解を受けた状態で担任ちゃんと会う事になったの!」

兄「良かったじゃないか」

友「良いわけっ……いやまぁ丸っきり全部悪いって訳じゃないか……確かに担任ちゃんと……」ブツブツ

兄「……話は終わったか?」

友「終わってないわタワケ!それに加えてあの本だぞ!何なんだよアレ!?」

兄「フラジールな関係か?BL本の傑作らしい」

友「らしいって何!?伝聞!?てか何でお前がそんなの持ってるんだよ!」

兄「いや俺にその手の趣味はないからな。妹友さん経由で借りたんだよ」

友「俺にはあるみたいな言い方やめろ!」

兄「友が必要だから探している、と説明したらその本を薦められたんだ」

友「息をするように嘘をつくなよ!」

191: 2013/03/17(日) 00:35:55 ID:q8BLDhJc
友「おかげでやけに鼻息が荒い担任ちゃんと読んだ事もない本の話を延々とだな……」

兄「友よ、ポジティブに考えるんだ」

友「この未曾有の大災害をどうポジティブに捉えればいいんだよ!」

兄「いいか、まず俺のラクガキなくして先生と二人っきりになるチャンスは生まれなかった」

友「な……に……?」

兄「次にお前が持っていた本によって…あくまに仮にではあるが、共通の話題が生まれたんだよ」

友「バ、バカな……」

兄「そしてその話題は先生とお前だけの秘密だ。この世でたった二人しか知らない秘密だぞ?」

友「担任ちゃんと……俺だけの……秘密……」ゴクリ



ハッ

友「って違う!その秘密の内容が問題だって事を俺は言ってるんだよ!」

兄「……チッ。駄目だったか」

192: 2013/03/17(日) 00:49:09 ID:q8BLDhJc
友「大体だな!お前が存在するだけでゴリラ女のテンションが上がったり下がったりするせいで!」

兄「……あ」

友「ゴリラパンチが飛んできたり、ゴリラ唐竹割りで割れたり、ゴリラハンドで色々潰れたり……」

兄「……なぁ」チョンチョン

友「信じられるか。あれで陸上部なんだぜ?あんなトランプ引きちぎれそうな握力しておいて陸上とか……」

兄「…………」チョンチョンチョンチョン

友「きっと一緒に走ってる競技者をあの握力でペシャンコに……って何だよ。男が袖ちょんちょんやっても萌えないんだよクソァ!」

兄「……後ろ」

友「後ろ?後ろってなんだよ」クルッ

ゴォォォォォォ

幼馴染「やぁ。おはよう友くん」ビキビキ

193: 2013/03/17(日) 01:11:33 ID:q8BLDhJc
友「」

幼馴染「誰がゴリラだって?」

友「ハッ…!いや幼馴染さんがゴリラみたいだなんて言ってないじゃないですかー。やだなーもー」

幼馴染「へぇ?じゃぁ何て言ってたの?」

友「いや俺は幼馴染の握力がゴリラ並って言いたかっただけで……」

兄「……つまりゴリラだと」

友「そう、やっぱりゴリラだと……って違うわぁ!握力がって言ったじゃん!ね幼馴染さん?」

幼馴染「念仏は唱えたか?」パキポキ

友「違う!ゴリラって言ったのは兄で、俺はゴリラなんて言ってない!あくまでゴリラ並の握力でゴリラではないゴリラだと俺は――」

幼馴染「ゴリラゴリラうっさいわー!!」グオッ


ギャアアァァァァァァァ……

194: 2013/03/17(日) 01:23:42 ID:q8BLDhJc
友「」

幼馴染「ふんっ」

兄「…………」

幼馴染「あ!……え、えっと……おはよう」

兄「おはよう、幼馴染。今日朝練なかったんだ?」

幼馴染「うん、まぁそんなとこ。明け方雨降っちゃったから、柔軟やって即解散」

兄「そりゃ早起き損だったなぁ」ハハ

幼馴染「……損ではない、かも」ツンツン

兄「ん?何か言った?」

幼馴染「い、いやいや別に!?何にも言ってないよ別に!」ブンブン

兄「そう?ならいいけど」

195: 2013/03/17(日) 01:33:20 ID:q8BLDhJc
幼馴染「…そ、それと」ソワソワ

幼馴染「……きょ、今日、またおかず作りすぎちゃったんだけど……」チラッ

兄「ああ。俺で良ければ食うけど?」

幼馴染「ホ、ホント!?……コホン、そうして貰えると助かるわ」キリッ

兄「幼馴染料理上手いもんな。昼休み期待して待ってるわ」

幼馴染「はぁ!?べ、別に上手くなんかないわよ!あんなのレシピ通り作れば誰だって作れるじゃない!」///

兄「そうか?世の中にはレシピが目の前に合ってもちゃんと作れない奴がゴマンといるんだぞ?」

幼馴染「……知り合いに料理下手な子でもいるの?」

兄「まさにうちの妹がそれだ」

幼馴染「あんたの……妹?あの娘普通に料理できるはずだけど……」

兄「いや、普通に料理できない奴だ」

幼馴染「?……全然想像つかないわ。試しにどんな料理風景なのか教えて」

兄「そうだなー……例えば――」

196: 2013/03/17(日) 01:43:37 ID:q8BLDhJc
~~~~

兄「今日料理当番お前だぞ」

妹「えーダルーい…お兄ちゃんの上から動きたくない……」グテー

兄「ワガママ言うな。ほれ、料理せい」

妹「はーい。……そうだな、今日は冷ご飯もあるし、チャーハンにしよう!」

兄「いい判断だ。じゃぁ俺は食器とか配膳やるわ」

妹「まず卵を ―― 取りに行く為にお兄ちゃんにくっつきます」ピトッ

兄「…………」

妹「大体10秒で充電完了です。さて卵を冷蔵庫から取り――冷えた手を温める為にお兄ちゃんにくっつきます」ピトッ

兄「……おい」

妹「10秒チャージ!そして卵を割る ―― 前にケガしないよう祈願を込めてお兄ちゃんにくっつきます」ピトッ

兄「一向に進まないだろこのアホ妹め!」ヒュッ ビシィ!

妹「あ痛ぁぁぁぁぁ!!」

妹「……頭部損傷のダメージをお兄ちゃんにくっつく事によって回復させます」ピトッ

兄「…………」ハァ

199: 2013/03/19(火) 03:56:51 ID:mwbn8TnE
~~~~

兄「――とまぁいつもそんな感じでな。まともに料理が最後まで完成した試しがない」

幼馴染「…………」プルプル

兄「いつまで経っても進まないから……結局俺が作ることになる」

幼馴染「た、確かに羨まし……じゃなくてそれは由々しき事態よね」

兄「だよな。当番制とは一体何だったのか……あ」

幼馴染「? どうしたの?」

兄「んー……そういや今日妹が当番だったなぁ、と」

幼馴染「って事はまたあんたが――」

兄「また俺が料理する事になるかな」
幼馴染「妹とベタベタくっつくってことね」

兄「ん?」

幼馴染「ん”んっ……あんたが料理する事になっちゃうのね」キリッ

兄「あ、ああ。そうだな」

200: 2013/03/19(火) 04:26:26 ID:mwbn8TnE
兄「だったら帰りにスーパーでも寄って献立でも立てとくかなー」

幼馴染「!」ピコーン!

幼馴染「ね、ねぇ……良かったら……わ、私が作ってあげてもいいんだけど」ツンツン

兄「へ?」

幼馴染「そうすればあんたも楽できるじゃない?昨日も物凄い偶然たまたまあなたの舌に合ったおかずがあったみたいだし……」ツンツン

兄「……気持ちはありがたいけど、いいよ。大体幼馴染は部活あるじゃないか」

幼馴染「あんた一人分の料理作る位大した手間じゃないのっ。私の腕を疑うなら、1時間でフルコース用意してあげてもいいわよ?」

兄「い、いや疑うわけじゃなくて……んー……、そうか……」

幼馴染「…………」ドキドキ

201: 2013/03/19(火) 04:26:58 ID:mwbn8TnE
兄「そうだな。それならお言葉に甘えてお願いしようかな?俺も偶には誰かの作ったご飯を食べたいし」

幼馴染「……ホ、ホントッ!?」パァァァァァァ!

兄「あ、ああ?……何で幼馴染が嬉しそうなんだ?」

幼馴染「えへへ……えっ」

兄「………」

幼馴染「………」

幼馴染「……!」ハッ

幼馴染「そうよ!あんた何私を嬉しくさせてんのよ!ふざけんじゃないわっ!」///

兄「え、ええー……?」

202: 2013/03/19(火) 04:33:30 ID:mwbn8TnE
兄「……でも、懐かしいな」

幼馴染「何が?」

兄「ほら、昔はうちに来て母さんと一緒に台所に立ってたからさ。なんだか懐かしいなって」

幼馴染「…うちの母さんよりおばさまの方が料理上手だったから」

兄「そういや昔から向上心高かったよなー、幼馴染はさ」

幼馴染「そんなんじゃないわよ。ただあんたが喜んでくれるからってだけで」

兄「……へ?」

幼馴染「あ、ち、違うからっ!勘違いしないでよ!あんたの笑顔なんて私の努力の単なる副産物で別にどうでもいいんだからっ!」///

兄「お、おう」

幼「私はただ立派なお嫁さんになりたいから伯母さんに習ってただけなんだからっ!」///

兄「お嫁さんって」

幼馴染「だ、誰もあんたのお嫁さんなんて言ってないでしょっ!」///

兄「い、言ってない言ってない!」


クラス全員(……ッフー)

クラス全員(……ゴチです)

203: 2013/03/19(火) 04:47:51 ID:mwbn8TnE
――兄 教室 昼休み――

妹「たのもー!」

妹友「おじゃまします」

ピキィィィン

図書委員(……やはり来たか)

風紀委員(昼休み。それは兄を中心に繰り広げられるストロベリータイム!)

飼育委員(が。後輩コンビは知らない……何も知らないのだ……)

美化委員(今朝方、兄と幼馴染さんの間で交わされた約束を)

生活委員(そう。幼馴染さんが……手料理を兄に振る舞うという約束を!)

学級委員(これで幼馴染さんは兄争奪戦に大きなアドバンテージを得た!)

放送委員(この展開に対して二人がどう対抗するのかッッ!我々は一時たりとも目を離す訳にはいかないのですッッ!)

クラス全員(面白くなって来たぜ……)

204: 2013/03/19(火) 05:09:03 ID:mwbn8TnE
兄「――よいしょっと。こんなもんかな」

妹友「ありがとうございます兄先輩」

妹「お腹ペコペコだよー。早く食べようよー」

テコテコ

妹「お弁当~♪お弁当~♪」

ピトッ

(さも当然の如く兄に密着。……ブレないな。流石妹さんと言わざる得ない)

(この先制パンチに対して幼馴染さんはどう対応するのか……?)チラッ

幼馴染「ふふん」ファサァ

(不敵に微笑んでいるッ!今朝の約束を取り付けた今ッ!私に怖いものなどないッ!それがどうしたと言わんばかりの様相だァッ!)

(……しかし、これは圧倒的に不利だぞ妹友さん)

(妹さんのように本能の赴くまま行動できるタイプでもなく……かと言って幼馴染さんのようなリードもない)

妹友「……」ニコッ



(……わ、笑った……?)ザワ…ザワ…

205: 2013/03/19(火) 05:21:42 ID:mwbn8TnE
…スッ

兄「え」

妹「…おお」

幼「なっ…!?」


(な、何だとォォォォォォォ!?)


妹友「あれ?どうかしました先輩?」

兄「……あ、ああ。いや別に…」ハハ…

妹「んっひひ~♪いただきまーす」

(あっ、あんな兄の至近距離に妹友さんがっ……座った……!?)

(あの奥手の妹友さんが…自ら……それも寄り添うようにして……ッ!)

(その距離目測でおよそ10センチ!?。いや……イスを座り直すと見せかけて更に寄って…5センチ!?)

(パーソナルスペースにおける密接距離。ごく親しい人間のみに許された空間に、赤面する事もなく……だと)

(身長差を利用しての常に上目遣いのテクニック。よくぞあそこまでの靭やかさを……!)

208: 2013/03/20(水) 01:12:50 ID:dV/WiJBE
(……いや、それより兄のあの反応だ。最初こそ驚いた様子だったが、今は何事もなく昼食を食べ始めている)

(妹友さんの突飛な行動を瞬時に飲み込んだと見るか。……あるいは)

(我々の預かり知らぬ内に、あの二人に大きな進展があったと見るべきか)

(幼馴染さんは……)チラッ

幼馴染「」

(だ、駄目だ……。完全に目が氏んでいる……)

(自身が優位だと確信した直後のカウンターだ……無理もない)

幼馴染「…………」コトッ

幼馴染「…………」モクモク

幼馴染「…………」

幼馴染「…………」ブワッ

(な、涙……)

(泣いていい……幼馴染さん……今、あなたは泣いてもいいんだ……)ブワッ

209: 2013/03/20(水) 01:20:12 ID:dV/WiJBE
――――

ガタッ

兄「さてと、帰りますかね」

兄「あ、幼馴染は……と」キョロキョロ

兄「あれ?いない?」

兄「えーと……あ、副部長さん!」

陸上部「兄くん?私に何か用?」

兄「あのさ、幼馴染の奴見なかった?」

陸上部「あ、あー……もう部活行っちゃったと思うけど……」

兄「……そうか。分かった、ありがとね」

タッタッタッタッ


陸上部「……頑張れ、幼馴染」

210: 2013/03/20(水) 01:27:06 ID:dV/WiJBE
――――

妹「おっ兄ちゃ~~ん!にダイレクトへぶぁ」

兄「たんま」

妹「むーむーーむー!」バタバタ

兄「今日はちょっと用事が出来てさ、一緒に帰れないんだ」

妹友「……そうですか。それは残念です」シュン

妹「ぷはっ!お兄ちゃんは何時頃帰ってくるの?」

兄「帰ってくるのは遅くならないかな。幼馴染が料理を作ってくれるみたいだから、それでね」

妹「」ピクッ

妹友「」ピクッ

兄「だから今日妹当番だけど、準備しなくてもいいからな」

妹「……んー、分かったー。妹友ちゃんとイチャイチャしてる事にするー」

妹友「私は妹ちゃんが暴走しないように見張ってますから、留守の間はご心配なく」

兄「おう、そんじゃ後よろしくな」

211: 2013/03/20(水) 01:42:16 ID:dV/WiJBE
妹「…………」

妹友「…………」

妹「いやー、いよいよだねー」

妹友「……ねぇ、妹ちゃんって独占欲とか、ないの?」

妹「お兄ちゃんをあたし専用にしたいなー、とか?」

妹友「……うん。私は正直、幼馴染先輩とお兄さんが一緒に食卓を囲む様子を想像しただけで……」メラメラ

妹「そうだなぁ、あたしは……っへへー、ないしょー♪」

妹友「な、内緒?」

妹「まぁそれより、あたしはちょっと手緩いなぁと思うわけで」

妹友「手緩いって、何が?」

妹「……にっしっし」ニカッ

妹友「???」

212: 2013/03/20(水) 01:47:32 ID:dV/WiJBE
――――

オツカレッシタァッ!

オツカレッシタァッ!

ガヤガヤ

幼馴染「さてと……片付けますか」

陸上部「私がやっとくからいいよ」

幼馴染「……次期部長が雑用なんかやらなくてもいいわよ」

陸上部「いーのいーの細かい事は気にしないの。ほら幼馴染は帰りに」

幼馴染「帰りに?」

陸上部「…ッんじゃなくて早く帰りたいのかなーなんて、あはは……」

幼馴染「……今日は特にないからいいわよ」

陸上部「え?」

213: 2013/03/20(水) 01:55:27 ID:dV/WiJBE
幼馴染「……ほら、手伝うならそっち持って」

陸上部「……っかしいな……。約束取り消す訳ないし……一体……」ブツブツ

幼馴染「聞いてる?」

陸上部「あ、ああごめんごめん!持ちます持ちます!」

陸上部「――お」チラッ

幼馴染「じゃぁせーので持ち上げるから――」

陸上部「わ、私急に用事思い出しちゃったかも!」

幼馴染「はぁ!?今更何言ってるの!?」

陸上部「じゃっ!」バビュンッ

マタアシタネー!…………



幼馴染「きゅ、急に何だったのあの娘は……」


兄「よっ」

幼馴染「」ビクンッ

214: 2013/03/20(水) 02:09:35 ID:dV/WiJBE
幼馴染「……何でここに」

兄「部活終わるまで図書室で暇潰してたんだ。……そうだな、それ片付けたら一緒に買い物行こうぜ」

幼馴染「う……」

幼馴染「お、終わってないの見れば分かるでしょ。……だから今日は、無理よ」

兄「こっち持てばいいのか」

幼馴染「……あんた何を」

兄「二人で協力すれば早く終わるだろ?」

幼馴染「…………」

兄「俺晩飯楽しみだったから弁当控えめに食べてたんだ。な?早く終わらせよう」

幼馴染「………ッ」キュ

兄「……これはこう畳むのかな」

スッ

幼馴染「……それはこうよ。相変わらず不器用なんだから」

兄「不器用でもいないよりマシだろ」

幼馴染「ふふ、どうだか。いない方が効率良く終わったりするかもよ?」

215: 2013/03/20(水) 02:26:46 ID:dV/WiJBE
兄「…………」

幼馴染「シャトルは重ねて――」

兄「やっと笑ったな」

幼馴染「ふぇっ!?」///

兄「昼頃から何か苦しそうな表情してたからさ、心配してたんだ」

幼馴染「わ、私を……見てたの……?」トクン

兄「おう。何か悩みがあったとしても、俺は男だからさ」

幼馴染「兄が私のことを……」トクン

216: 2013/03/20(水) 02:27:22 ID:dV/WiJBE
兄「悩みを共有したくても出来ないかもしれないじゃん?」

幼馴染「心配…う……はぁ……」///

兄「だからせめて笑わせるか、いつも通りでいた方がいいかな、とか色々考えてたんだけどさ」

兄「結局いつも通りが一番だったな」

幼馴染「…………」ポー

兄「……幼馴染?」

幼馴染「ふぁ!?大丈夫だよ!今私超元気いっぱいだから!」ブンブン

兄「……ならいいか」ニカッ

幼馴染「ッ……」///

217: 2013/03/20(水) 02:37:58 ID:dV/WiJBE
――――

兄「――ぃよしっ!」

ドサッ

幼馴染「これで全部ね。ご苦労様」

兄「どういたしましてっと、帰る――前に飲み物が欲しいな。埃っぽくて喉がイガイガする……」ン"ンッ

幼馴染「はちみつレモンで良ければ、そこの鞄のスクイズボトル入ってるわ」

兄「さんくす。うーん……いい香りだぁ。多少運動したし、さぞかし五体に染み渡りそうだ」キュポッ

幼馴染「天然素材ばっかりだから体にもいいし、吸収力はピ……カ……イ……チ…………」

兄「ほいじゃいただき――

幼馴染「ふんッッッ!!!」ギリィ

バビュンッ ガシィッ ズサーーーッ!!

兄「――ってアレ?はちみつレモンは?」キョロ

幼馴染「はちみつレモンは……絶対に渡さんッッ!!」///

兄「どういう急激な心変わりなんだよ!?つか本当に乾きがヤバいんだ、ちょっぴりだけでも――」

幼馴染「駄目だぁッッ!」///

218: 2013/03/20(水) 02:47:50 ID:dV/WiJBE
兄「――よし分かった。そっちその気ならこっちも全身全霊を持って奪い返すまで!」

兄「乾きに植えている俺は見境を無くすぞぉ!覚悟しろ幼馴染っ!」ダッ

幼馴染「このスクイズボトルだけは駄目だ……駄目なんだ……ッ!」

幼馴染「氏守してみせる!あんたの魔の手から、必ず!」

シュッ

ババッ

イヤァァァァァ!

ダッ

グワァァァァ!


「…………」コソコソ

「…………」キョロキョロ

「……よっ」グッ

ゴ……ゴゴ………ズッ……ゴゴ…

ガ…ガコン… カキッ

「……よし、と」チャリッ

219: 2013/03/20(水) 03:00:22 ID:dV/WiJBE
――――

兄「流石に……陸上部だな……体育倉庫内を、縦横無尽に……駆け巡るとは……」ゼェ…ハァ…

幼馴染「あんただって……帰宅部の癖に……何て瞬発力なのよ……うちにくれば、レギュラーだって取れるかもしれないのに……」ゼェ…ハァ…

ッハー…

兄「つ、疲れたな」

幼馴染「そ、そうね」

兄「……余計に喉が乾いてきたよ」

幼馴染「バカね。……はい」スッ

220: 2013/03/20(水) 03:01:14 ID:dV/WiJBE
兄「……何それ?」

幼馴染「予備のボトル」

兄「え、だったら最初からそれを――」

幼馴染「だってあんたが間髪入れずこっちのボトルを狙ってくるから――」

兄・幼馴染「…………」

兄・幼馴染「…………」

兄・幼馴染『プッ』

兄・幼馴染『あっはっはっは!』

221: 2013/03/20(水) 03:10:25 ID:dV/WiJBE
――――

兄「あー可笑しい。俺たち一体何やってたんだか」

幼馴染「私のセリフ取らないでよ。何の収穫にもならない運動だったわ」

兄「笑えたから良かっただろ?」

幼馴染「……ふふ、そうね。笑えたのは確かよ」

兄「ん”ーーっ!……さぁってとぉ、今度こそ帰りますか」ット

幼馴染「時間大分経っちゃったから……タイムセールに間に合えばいいけど」

兄「今から行って丁度じゃない?お店の人結構そこらへんルーズだから」テクテク

幼馴染「開始前に準備してないと、欲しい食材が手に入らないから……」

兄「……おーガチだね。こりゃ益々もって飯が楽しみだな」

幼馴染「ベストは尽くすけど、期待しすぎても――」

ガコンッ

幼馴染「――え?」

222: 2013/03/20(水) 03:19:40 ID:dV/WiJBE
兄「どうした?」

ガコッ ガコガコッ

幼馴染「そ、そんな……嘘……」

ガコンッ

兄「……まさか」

幼馴染「倉庫の入り口が……開かないの……」

兄「……貸して」

幼馴染「……うん」

ガコガコガコガコッ! ガタンッ!

兄「んー……これは完全に外から施錠されてるな」ガコン

幼馴染「え……それじゃあんたと私、閉じ込められちゃった、ってこと……?」

兄「……そうなるな」


幼馴染「…………」

兄「…………」

…ヒュォォォォォォ ガタッ ガトト……

225: 2013/03/20(水) 23:46:48 ID:dV/WiJBE
幼馴染「どうしよう……。運動部系うちが最後だから……」

兄「……声を上げても誰も気付かない、か」

幼馴染「情けないけど、学校に電話して開けて貰うしかないわね」

兄「そうだな。この際仕方ない」

幼馴染「…………」

兄「…………」

幼馴染「……早く電話しなさいよ」

兄「……あ、俺?幼馴染ケータイ持ってないの?」

幼馴染「私はバッグに入れてロッカーの中よ。一応貴重品だし」

兄「なるほど。電話番号は……生徒手帳に載ってるか。えーと……」

226: 2013/03/20(水) 23:50:42 ID:dV/WiJBE
ペタペタ

兄「…………」

幼馴染「…………」

兄「……そうか、片付けする前に鞄に突っ込んで……」

キョロキョロ

兄「…………」

幼馴染「…………」

兄「…………」ポリポリ

幼馴染「……ま、まさか……」

兄「……鞄、外だ」

幼馴染「嘘でしょっ!?」

227: 2013/03/21(木) 01:12:24 ID:bqZWrbM.
――――

兄「そっちの窓どうだった?」

幼馴染「駄目、こっちもはめ頃しだったわ」

兄「となると……最初話合った通りか」

幼馴染「学園の守衛さんか、私の両親か、妹さんが気付くまで待つしかないわね……」

兄「……そうだな」

ズリズリ

幼馴染「……何やってるの?」

兄「どうせ待つんだったらコンクリよか、マットの上の方がいいだろ?」

幼馴染「備品を勝手に動かすのは……この際そんな事も言ってられないわね」

兄「そうそう。後で戻しとけばいいって」

ポンポン

228: 2013/03/21(木) 01:18:42 ID:bqZWrbM.
兄「ほい出来たっと。……ふー」ボフッ

幼馴染「…………」

兄「どうした?幼馴染も座れよ、ホラ」ポンポン

幼馴染「え、ええ……座るわよ、そりゃ……」ポフッ

兄「……何でそんな離れてるんだ?」

幼馴染「……部活終わった後で、私多分汗臭いと思うから」

兄「あー……そうか。うん、分かった」

幼馴染「…………」

兄「…………」

幼馴染「…………」ブルッ

兄「……ん?」

幼馴染「な、何?」

229: 2013/03/21(木) 01:25:26 ID:bqZWrbM.
兄「……幼馴染、実は寒いだろ」

幼馴染「……別に寒くなんか……くしゅっ!」

兄「…………」

幼馴染「…………」ズズ

兄「……そんな短パン履いてりゃ、寒くて当然だ」

幼馴染「仕方ないでしょ。……長いと走ってる間は邪魔で仕方ないんだから」

兄「……よっと」ヌギヌギ

幼馴染「……何してるの?」

兄「上着脱いでるんだよ。ほれ」

幼馴染「さっき言ったでしょ。今着たら臭いが移っちゃうわよ」プイ

兄「…………」テクテク

230: 2013/03/21(木) 01:33:38 ID:bqZWrbM.
幼馴染「い、いいわよ!上着なんかなくたって――」

兄「着ろ」

幼馴染「ッ!」

兄「臭いがどうとかより、女の子の体冷やす方が大問題だろうが」

幼馴染「あ……う……」

兄「着るのが嫌だったら、とりあえず羽織っておけ、な?」

幼馴染「…………」コクリ

兄「……よし」

スッ ファサ

幼馴染「あ……」ホワッ

兄「これで大分違うだろ?」

幼馴染「…………あの」ツンツン

兄「……うん?」

幼馴染「あ、ありがと、ね」///

兄「……どういたしまして」

232: 2013/03/21(木) 01:50:03 ID:bqZWrbM.
幼馴染(……あんなに真剣な兄の顔を見たの、久し振りだな)

幼馴染(……上着を着たら、私多分やけるのが止まらなくなっちゃうから……)

幼馴染(何が何でも兄の上着を拒否したかったんだけど……)

幼馴染(あの顔で説得されたら絶対に断れないわ……)

ニ ニ…

幼馴染(……っくー……く、口が歪む……口角上がっちゃう……)

幼馴染(頑張れ私!そう、ここで深く深呼吸してー……)

スゥゥゥゥゥ ハァァァァァァ

幼馴染(…………)

幼馴染(……ひょっとして今いっぱい兄の匂いを吸い込んじゃった!?)

…ニヘェ

幼馴染(無理無理無理無理!こんなの絶対無理!絶対にやけちゃうよー!)

233: 2013/03/21(木) 01:58:35 ID:bqZWrbM.
幼馴染(あたし今どんな顔してるの!?閉じ込められてるのににやけ顔とか完全に変態に見えちゃうじゃない!)

幼馴染(……でも密室で、体育倉庫で、男女二人きりって、兄も意識してるのかな……)トロ~ン

幼馴染(時間もたっぷりあるし……マットもあるし……私がいて……兄がいる……)ホニャァ…

幼馴染(これって、もしかして……大チャンスなんじゃない?)ニヘェ…

幼馴染(……ちっ、違う違う違う!私何てハレンチな事考えてるの!?)ブンブン

幼馴染(落ち着け……上着の香りを嗅いで落ち着くのよ私……)スゥゥゥ

ハァァァァ

幼馴染(……いい香りね。顔はにやけ面になってしまうのはこの際仕方がないわ)

幼馴染(兄に顔さえ見られなければ大丈夫。顔の向きを合わせないように会話してやり過ごしましょう)

幼馴染(要は最後にマットの上でくんずほぐれつになればいい。これで最後まで上手くイくはず!)グッ

235: 2013/03/21(木) 23:28:20 ID:bqZWrbM.
……ガトッ……ガトガトッ……

兄「……風強いなぁ」

幼馴染「そ、そうね」ジリッ

兄「雨降ったら色々面倒だよなぁ……」

幼馴染「そ、そうね」ジリッ

兄「置き傘も折り畳み傘もないしなぁ……」

幼馴染「そ、そうね」ジリッ

兄「……ん?」クルッ

幼馴染「…………」ピタッ

兄「…………」

幼馴染「…………」

236: 2013/03/21(木) 23:44:32 ID:bqZWrbM.
兄「……あのさ」

幼馴染「……何かしら」

兄「……近くないか」

幼馴染「な、何が?」

兄「……幼馴染が」

幼馴染「気のせいよ。あんた自意識過剰なんじゃない?」

兄「……そうか?」

幼馴染「そうよ。それで傘がどうしたのよ」

兄「……傘持ってないから降ったらどうしようって話」

幼馴染「雨降るなんて予報聞いてないわよ?」

兄「でもほら、窓の外見ると結構雲行き怪しいし――」

幼馴染「!」シュバッ

237: 2013/03/22(金) 00:12:49 ID:UzZucq6M
兄「――この風だと」クルッ

幼馴染「…………」ピタァ

兄「…………」

幼馴染「…………」

兄「……近い」

幼馴染「…な、何が?」

兄「俺と幼馴染の距離が」


幼馴染「え……」

兄「…………」

幼馴染「…………」///

兄「何故顔を赤らめ……あ、違う!撤回する!色々間違えた!」

幼馴染「ちょ、何勝手に撤回してるのよ!」

238: 2013/03/22(金) 00:41:40 ID:UzZucq6M
兄「俺は物理的な距離の話をしていたんだ。心の距離的なアレを言ったんじゃないんだ」

幼馴染「心の距離だって別にいいでしょ!わ、私達の付き合い結構長いんだし……」ツンツン

兄「……いや今のは恥ずかしい。……かなり凹む」

幼馴染「私のグッと来た台詞で凹むとか――あっ」

兄「……え?」

幼馴染「……~~~~~~ッ!」カァァァ

兄「それってどういう――」

幼馴染「破ァッ!」キュドッ

ドゴァ!

兄「ぐはッ!!」

ボスンッ

兄「痛ぅ……ノーモーションからのタックルとかお前何を……」

幼馴染「ふー……ふー……」///

兄「……お、幼馴染?」

241: 2013/03/22(金) 02:27:22 ID:UzZucq6M
幼馴染(兄が下。私が上)

幼馴染(私の手は兄の胸板に。私の足は兄の下腹部に)

幼馴染(兄の視線は私の方へ。私の視線は兄の方へ)

幼馴染(兄の顔。戸惑っている。何に?)

幼馴染(私に戸惑っている)

幼馴染(私を見ているから戸惑っている)

幼馴染(私の行動が理解できないから、私をじっと見ている)

幼馴染(……素晴らしいわ)

幼馴染(何て素晴らしいのかしら)

幼馴染(兄が目を逸らすことなく、私だけをじっと見ているなんて)

幼馴染(素晴らしいわ。タックルして本当に良かった)

242: 2013/03/22(金) 02:39:05 ID:UzZucq6M
幼馴染(この兄の戸惑った顔。……素敵だわ)

幼馴染(勿論戸惑ってなくても……素敵だわ)

幼馴染(目、鼻、口、耳、まつ毛、眉毛、うぶ毛、剃り残し…みぃんな素敵だわ)

幼馴染(こんなにも素敵なのに、何故私はタックルしなかったのだろう)

幼馴染(何故マウントポジションを取らなかったのだろう)

幼馴染(してはいけなかったはずだ)

幼馴染(それは何故?)

幼馴染(思い出せない。何か小さなことだったような気がする)

幼馴染(きっと素敵じゃないから思い出せない)

幼馴染(確かに素敵ではなかった気がする)

幼馴染(じゃぁ素敵な事をしよう。素敵で素敵な事をしよう)

幼馴染(兄は素敵でやることも素敵。だから素敵で素敵な事をしよう)

243: 2013/03/22(金) 02:50:31 ID:UzZucq6M
幼馴染(素敵で素敵な事は素晴らしい)

スッ

兄「わっ……幼馴染っ!お前何を!」

幼馴染(まずは何から……)ピトッ

幼馴染(聞こえる。心臓の音が)

幼馴染(香ってくる。兄の香りが)

幼馴染(視えてくる。兄そのものが)

幼馴染(伝わってくる。兄の肌の感触が)

幼馴染(……あれ?……一つ足りない?何が足りない?)

幼馴染(……そうだ。……味。味だ。兄の味が足りない)

幼馴染(それならすぐに兄の味見をしないと。早く素敵にならないと)

244: 2013/03/22(金) 03:07:41 ID:UzZucq6M
幼馴染(兄を味見。どこから。やっぱり口。口にしよう)

ガシッ

兄「さ、さっきから様子がおかしいぞ幼馴染っ!」

幼馴染(何故口か。口と口でお互いに味見する。素敵になる。だからだ)

幼馴染(一つになる。口と口は一つになれる。更に素敵になる。だからだ)

ググッ

兄「…………あ!待った!幼馴染!心当たりがあるんだっ!」

幼馴染(一つになる。これは始まり。一つになる。それは口だけじゃない)

幼馴染(知っている。私が兄を喰らう。兄が私を喰らう。それも一つになる。素晴らしい)

……ガトトッ!……ガトガトッ!……

兄「聞いてくれ!俺の体にはアニキ粒子って危険な……いやまぁ危険ではないんだが――」

幼馴染(朝も昼も夜も。一つになる。お互いを喰って一つになる。素晴らしい)

幼馴染(ずっとずっとこうなることを私は望んでいた。……素晴らしい)

グイッ

兄「――とにかくそれを過度に摂取すると色々マズいことになるから……幼馴染っ!顔が近っ」

246: 2013/03/22(金) 21:29:26 ID:UzZucq6M
幼馴染(兄の口腔。兄の舌。兄の歯。兄の歯茎。美味しそう。素敵だ)

幼馴染(……いただきます)


スーッ…

兄「ストーーップ!!アニキ粒子に支配されるんじゃない!!目を覚ませ幼馴染!!」

幼馴染「……っはぁ……ぁー……」タラー

兄「よ、ヨダレ拭けよ!違う!支配されるな!支配するんだ幼馴染!」

幼馴染「ぁー……?」

兄「そ、そうだ!その調子だぞ!アニキ粒子を恐れるな!」

幼馴染「…………」ニヘェ

兄「……え」

幼馴染「……んぅー……」タラー

兄「駄目だ!全然分かってない!戻って来てない!どうすりゃいいんだ!何か!何か方法がっ!」

247: 2013/03/22(金) 22:27:30 ID:UzZucq6M
~~~~

妹『妹脳天唐竹割りぃっ!』ベシィィィンッ!

~~~~

兄「……それしか……方法はないか……」

幼馴染「……んー?」タラー

兄「幼馴染、本意じゃないが……しばし眠ってくれ。……すまんっ!」

ヒュッ


―ガッ

兄「なっ!?防がれ――」

グググ……

兄「――ぐっ、その細腕のどこにこんな力が……!」

ギチッ

兄「……腕が動かない」

幼馴染「……ぇへぇ……」ニパァ

兄「……これは、マズい……」

250: 2013/03/22(金) 23:21:53 ID:UzZucq6M
ポツッ……ポツッ……

……ザァァァァァァ――

幼馴染「……んー」スッ

兄「ッ!」

幼馴染「……あのねぇ兄くん」ナデ

兄「……あ、兄くん?というか会話できるのかっ!聞け幼――」

幼馴染「……痛いのもいいよ。むしろすきかも」

兄「……すまん、何の話をしてるかまったく分からな――」

幼馴染「……でも今は兄くんのお口を食べさせてほしいなぁ」

兄「く、口って幼馴染まさ――」

幼馴染「きっと素敵だよ。ううん、絶対に素敵だよ」

兄「待っ――」


幼馴染「んっ」
兄「――んむっ」

252: 2013/03/23(土) 00:23:45 ID:DmiYslqU
……ガタッ!……ガタガタッ!……

幼馴染「ん、ちゅ……ちゅる……れぅ……」クチュ

兄「ん~っ!ん~~っ!」

幼馴染「……んっ、ん……ちゅぷっ……ん」チュルッ

兄「んくっ……!んんんっ……!」

幼馴染「ちゅむっ、ぴちゅっ、んむぅ……」チュー

兄「ん、ふーー……ふーー……」

幼馴染「――んはっ」チパッ
兄「――っぷは」

幼馴染「はーー……はー……ぁはぁ……」
兄「っはぁ……はぁ……」

幼馴染「はぁ……兄くんのお口美味しいよぅ……」

兄「はぁ……待て……待って、くれ……色々、と……」

幼馴染「でも兄くんにも、私のお口、食べて欲しいな……」

ググッ

兄「……おぃ、まじかよ、夢なら覚め――」

253: 2013/03/23(土) 00:49:56 ID:DmiYslqU


――ドクンッ

幼馴染「ッ!」ビクンッ

兄「――うわっ」

――ドクンッ

幼馴染「あ、ぎっ」ビグンッ

兄「……お、おい幼馴染?」

――ドックンッ

幼馴染「がっ、あ”ッ……ぎッいあぁああぁぁぁッ!!」ギクンッ

兄「ど、どうした!?大丈夫か――って絶対大丈夫じゃないよな!」

幼馴染「かふっ……ぅぐ……」

兄「しっかりしろ!これもアニキ粒子の影響なのか!?だとしたら俺のせいで、こんな……」

幼馴染「みっ……みっ…い”っ」フルフル

兄「み……み?水か!?さっきのボトルはどこに――」

255: 2013/03/23(土) 01:10:42 ID:DmiYslqU
――ガタッ!……ガタタッ!……

幼馴染「み……ど、り……」

――ガタンッ!……バンッ!バンッ!……

兄「え、何?」

幼馴染「みっ、みど……りいろ……」

――バァンッ!……バンッ!バシンッ!

兄「くそっ!窓がうるさくて――」

幼馴染「すて、きな……すてき、な……みどり、いろ……」

――ガァン!ガンガンッ!バンッ!
――ドンッ!ドガッ!バゴンッ!
――ガコォンッ!メギッ!ビキッ!

兄「うるせぇな!!こっちは今緊急事態で――」クルッ


バッ……シャァァァァァン!

兄「はぁっ!?ま、窓がッ」

256: 2013/03/23(土) 19:12:30 ID:DmiYslqU
――ビュォォォォォォ

兄「くっ……!」

――シュトッ

兄「!?……誰だッ!」

パキン

兄「……それ以上こっちへ来るな」

パキッ

兄「誰だか知らないが幼馴染には指いっ……ぽ……ん、って――」


――パキンッ


兄「妹友さんッ!?」

257: 2013/03/23(土) 19:24:25 ID:DmiYslqU
妹友「…………」ポタッ ポタッ

兄「どうしてここが……?助けに、来てくれたの?」

妹友「…………」ポタッ ポタッ

兄「だ、だったら窓を壊さなくても……っじゃない!」

妹友「…………」ポタッ

兄「幼馴染の様子が変なんだ!マズい、というよりヤバい状態で――」

妹友「……さん……ス……し…ま……」ブツブツ

兄「――え?」

妹友「……お兄さん、幼馴染先輩と、キス、してましたよ、ね?」

兄「あっ、いや、したというか……されたと言うか……み、見てたの?」

妹友「キス。してましたよ、ね?」

兄「急に幼馴染の様子がおかしくなって……それで、無理矢理に……」

妹友「……ずるい」プルプル

兄「えっ……と?」

258: 2013/03/23(土) 19:51:24 ID:DmiYslqU
妹友「ずるいです」ズイッ

兄「ずるい……ってその……」タジッ

妹友「私も、お兄さんにキス、したいです」

兄「……ちょっと、妹友さん、目が怖――」

妹友「ていうか、します」ガシッ

兄「――え」

妹友「幼馴染先輩より、激しく、長く、します」ググッ

兄「またかっ、妹友さんも様子がっ――く、首が動かないっ!?」

妹友「さっきのキスなんて……全部上書きしちゃう位に……」

兄「何だってこんな馬鹿力がっ、あっ――」


妹「――はいそこまで~」

トスッ

妹友「うっ」グラ…

妹「ほいキャッチと」

兄「妹!?」

259: 2013/03/23(土) 21:40:15 ID:DmiYslqU
妹「てこずっているようだから手を貸したぜ」ビッ

兄「……まず、礼を言う。助かった。色々どうにかなりそうだったからな」

妹「お兄ちゃんの通常の3倍の頭ナデナデで手を打とうではないか」

兄「……いくらでもやってやるよ」

妹「ぃやった!言ってみるもんだねー」

兄「ただし、いくつか質問に答えてからだ」

妹「あばよッ!」ダッ

ガキンッ ガコガコガコ

妹「しまったぁ!開かない!そりゃそうか!」

ポンッ

妹「……う”」

兄「……話を……聞こうか?」

妹「……あい」

261: 2013/03/23(土) 22:16:15 ID:DmiYslqU
――――

兄「…………」

妹「…………」

妹友「…………」

幼馴染「…………」

兄「……まず、体育倉庫に俺と幼馴染を閉じ込めたのがお前なんだな?」

妹「はい」

兄「次に途方に暮れる俺たちを……その窓から見ていた、と」

妹「Yes」

兄「……妹友さんも一緒に」

妹友「は……い……」
妹「Ja」

兄「最後に妹友さんが……窓を突き破って、現在に至る、と」

妹友「…………」
妹「Да」

262: 2013/03/23(土) 22:29:45 ID:DmiYslqU
兄「そして幼馴染の、その……暴走は……」

幼馴染「ぁぅ……」///

兄「やはりアニキ粒子が原因なんだな?」

妹「その通りであります」

兄「……妹友さんも?」

妹友「はぅ……」///

妹「やや違いますが、概ねその通りであります」

兄「妹、お前アニキ粒子について……いやアニキ汚染についてまだ話してない事があるんじゃないか?」

妹「んー……前に話した通りだと思うけど」

兄「その時は幼馴染もいなかったし、もう一度、できるだけ詳しく説明してくれ」

妹「ご用命とあらば」

263: 2013/03/23(土) 22:46:06 ID:DmiYslqU
妹「まず大前提としてお兄ちゃんからはアニキ粒子が常に放出されているの」

妹「アニキ粒子はお兄ちゃんを構成する全てに含まれているけれど、濃度に差があって……」

妹「傾向として血液に近づくほど濃度が濃くなるんだよ」

兄「血液……。つまり汗や唾液は……」

妹「超濃い。カルピスで言うと1:1でくらいの濃さ」

兄「……濃いな」

妹「あとその場に残留し続ける性質があるね」

兄「妹友ちゃんのハンカチがそれを応用したものだな」

妹「だね。そしてアニキ粒子をある一定量摂取すると――」

兄「――アニキ汚染」

妹「そう。定期的にアニキ粒子を摂取せずにはいられなくなる」

兄「……幼馴染の暴走は?」

妹「一度に摂取しすぎ!例えば妹友ちゃんだったら、まだあそこまでひどくはならなかったと思うな」

兄「……どういう意味だ?」
妹友「!」

264: 2013/03/23(土) 22:55:28 ID:DmiYslqU
妹「何故なら妹友ちゃんまもむごっふ」モガモガ

妹友「わ、私の事はいいから話を続けて!」

妹「っぷは!まぁ段階を追って耐性をつけたなら大丈夫だったのに。って話だよお兄ちゃん」

兄「……ふぅん?」

妹「あ、それとメリットの話か」

兄「そういえば具体的にどんなメリットがあるか聞いてなかったな」

妹「その1。女性ホルモンが活性化します。程良く」

兄「……男の俺にはあまりによく分からんがいい事なのか?」

妹「お肌ツヤツヤになるし……あ、そうだ、バストアップ効果もあるぐええええ」ガクガク

妹友「そっ、それ本当なの妹ちゃん!?」ユッサユッサ

妹「ゲホッゲホッ!ほ、ほんとだよ。実際あたしは顕著に効果が出てるでしょ?」フヨン

兄「……確かにな」チラッ

妹友「…………」

妹「…ゃん♪」

兄「……ん”んっ!続けて、どうぞ」

266: 2013/03/24(日) 02:02:30 ID:e0LOKkNM
妹「その2。リミッターが解除される!」

兄「……何のリミッター?」

妹「色々。一番分かりやすい例だと筋肉とか反射神経」

兄「……納得したよ。……幼馴染はまだしも、妹友さんの腕さえ振りほどけなかったから……」

妹「勿論精神にも干渉するよー」

兄「……どんな風に?一つ間違えば大惨事になるんじゃないかそれ」

妹「脳内くすりの生成を促したりしてくれるから、とにかくポジティブに!とにかく素直に!なるって感じだね」

兄「……ってことはさっきの妹友さんの行動は……」

妹友「……はい……」///

兄「……う、うん。とりえず置いておこう」

妹友「!?」ガーン

兄「まだあるのか?」

267: 2013/03/24(日) 02:17:09 ID:e0LOKkNM
妹「あるよあるよー!その3。あるレベルの汚染に到達すると、アニキ粒子が肉眼で確認できるようになる!」

兄「……妹友さん、それはマジですか?」

妹友「……その通りです。今も見えてますし……」

妹「お兄ちゃん本体だけに関わらず、お兄ちゃんが触れたもの、踏んだもの――」

妹「――そういった残留アニキ粒子でもバッチリ見えるようになる」

兄「……俺がいつどこにいても、妹が俺を発見できる理由がようやっと分かったよ」

妹「日によって変わるけど、大体みどり色かな?薄いけど主張強そうな色?」

兄「俺には見えないから何とも……」

妹「メリットはそんくらいだなー。後はちょっとした注意で」

兄「……ふむん?」

妹「急激にアニキ粒子を摂取しないこと!」

妹「ろくに耐性を磨いてないのに摂取したら発作起こして、身体中の穴という穴がゆるっゆるになるので注意!」

妹「その結果衣服やエリアが大惨事になってもあたしは知らないよ!」

268: 2013/03/24(日) 02:35:00 ID:e0LOKkNM
兄「……その一番最後の急激に~のくだり。最初に説明すべきことだよな?」

妹「そりゃ、聞かれなかったから」

兄「そうだな。お前だったらそう言うと思ってた」ビキビキ

ビシィッ

妹「あ痛ぁぁぁぁぁぁ!」

兄「――さて、これで大体ここで起こった事件の全容が分かった」

兄「勿論まだ色々と詰めないと、まるで分からない事が多すぎる――」チラッ

妹「う”」
妹友「ぁぅ」
幼馴染「ひっ」

兄「――が、このままここにいたら確実に風邪を引いてしまうので、ひとまず解散」

妹「集合場所はどうするお兄ちゃん?」

兄「任せる。それより早く家に帰って、濡れた服を脱いで風呂だ」

妹「了解~。いのちだいじに、だね」

兄「窓の後片付けは俺がやっておくから。また後で」

妹・妹友・幼馴染「「はい!」」

269: 2013/03/24(日) 02:54:38 ID:e0LOKkNM
――兄 自宅

ビュォォォォ

バタンッ

兄「……凄ぇ嵐になったな……むぅ、これ下着までいってるか」ポタッ ポタッ

兄「っとっと。……靴の中までグショグショだな」ヌギヌギ

兄「とりあえず新聞紙突っ込んで、立てかけとこう」ガサッ

ポタ ポタ

兄「――よっと。じゃぁさっさと風呂に……行く前に」


兄「――ただいま」


兄「うん。これでよし。さぁ風呂へ――」

妹「お兄ちゃーーん!おっかえりーーん!」
妹友「お、おかえりなさい兄先輩」
幼馴染「お、おかえり、あな……あんた」

兄「」

274: 2013/03/24(日) 19:20:24 ID:e0LOKkNM
兄「……おい妹、こりゃどういうこった」

妹「家に帰って風呂入った」

兄「そうじゃない。どうして3人まとまって、うちで頭ホコホコさせてるのかって聞いてるんだ」

妹友「お先にお風呂いただいてしまって申し訳ないです」

幼馴染「わ、私は反対したのよ!一家の長男を差し置いて一番風呂を浴びるのはどうなの、って……」

妹「でもお兄ちゃん待ってたら風邪引いちゃうから仕方なく……」

兄「違う!一番風呂とかそういう問題じゃない!」

妹「……ほらぁ、お兄ちゃんの残り汁をいただこうとする我らの魂胆、モロバレでしょ?」ヒソヒソ

妹友「……風邪覚悟で待ってても無駄だったんだ。流石妹ちゃん」ヒソヒソ

幼馴染「手強いわね。一番風呂作戦はあえなく轟沈か……」ヒソヒソ

兄「何の話をしてるんだお前らは……」

妹友「なっ、何でもないですよー?」ヘロリ

幼馴染「い、いいお風呂だったわ」ヘロリ

妹「お兄ちゃんの出汁超うめぇって話まみむめもが」モガモガ

妹友・幼馴染「ちょっ、口を閉じろ!」

276: 2013/03/24(日) 21:44:11 ID:e0LOKkNM
兄「俺、一旦解散って言ったよな。それが何でうちに全員集合してるんだよ」

妹「日時指定がなかったから。風呂からの集合を最短にしてみた」

兄「時間遅いから後日ってなんとなく分かれよ……」

妹「言葉にしないと……伝わらない事もあるんだよ☆」パチッ

兄「……じゃぁ言葉以外で伝えてやろう」グリグリ

妹「ひにゃぁぁ!ぐりぐりはやめっ痛い痛い痛い痛い」ジタバタ

妹友「うわぁぁ……前から思ってたけど、やっぱり妹ちゃんて煽り全一だよ……」

幼馴染「……あれ……いいわね……」ゴクリ

妹友「……へっ?」

幼馴染「オホン。身から出た錆ね」

兄「どうだ。伝わったか」

妹「もう二度とあんなウィンクはしないよ」

兄「分かればよろしい」

妹「数ヵ月後、そこには元気にウィンクを飛ばすあたしの姿ぎにゃぁぁぁ」ジタバタ

兄「 氏 ぬ が よ い 」グリグリ

277: 2013/03/24(日) 21:52:41 ID:e0LOKkNM
――――

妹「」

兄「……風呂云々はまぁ良いにしても、妹友さんと幼馴染はどうするんだ?」

妹友「……というと?」

兄「外さっきより酷い事になって……まぁ俺の濡れ方見れば分かるだろ」グッショリ

幼馴染「確かに工口……酷いわね」

兄「だから今風呂入ったとしても、家に帰ってまた風呂に入るハメになるって話に――」

妹友「え」
幼馴染「え」

兄「え」

妹友「どなたか帰るんですか?」チラッ

幼馴染「まぁ帰りたかったら帰ればいいんじゃない?」チラッ

兄「……待て。嫌な予感がする。まさか……」

妹「そのまさかですよお兄ちゃん」

妹友「妹ちゃんいつ起き上がったの……」

幼馴染「いつ見ても驚嘆に値する早さね」

278: 2013/03/25(月) 03:22:52 ID:cdxvovcI
妹「今日はあたし達三人揃ってお泊り、もといパジャマパーティなのだよ」

兄「ま、待て!そりゃマズいだろ!」

妹「何がマズいのかなぁ?2人は『あたし』の家にお泊りに来ただけだよー」

兄「しかしだな……未成年の学生の男女が同じ屋根の下ってのはどうも……」

妹「それにお兄ちゃん、この嵐の中を2人に帰させる気?」

兄「ぬ……」

妹「そっちの方がよっぽど非紳士的でマズい気がするとあたしは思うなー」

兄「むぅぅ……」

妹友「兄先輩……」ウルウル

兄「う”っ!」

幼馴染「お願い……」ウルウル

兄「いやお前は家隣だから帰れよ」

幼馴染「……チッ」

279: 2013/03/25(月) 03:38:11 ID:cdxvovcI
兄「大体、うちはいいにしても妹友さんと幼馴染の両親に外泊の許可は取ったのかよ」

妹友「取りました」

兄「早っ!いや、その前にうちに俺がいるってちゃんと向こうは知ってるのか!?」

妹友「知ってますよ。私が泊まるって言ったら、父と母が『やったぜベイビー』って言ってました」

兄「……そうなの。……で、幼馴染は?」

幼馴染「父母共に『……長かったな』って言いながら私の肩を叩いて涙を浮かべてたわよ」

兄「……許可なのかどうかさっぱり分からないけど、まぁいいや」

妹「まぁこのメンバーの内誰も口外しなければ、誰も分かるはずないからねー」

兄「……分かった、分かったよ。お泊り許可、パジャマ許可出しますよー」

妹友「……よがっだ、よがっだよ”ぉ!」グシッ
幼馴染「イヤッホォォォォォ!!」グッ
妹「お兄ちゃんマジちょろいーん♪」テヘッ

ダッ

兄「……………」ピタァ
妹「ごめんなさい」

兄「……………」ニコォ

――グワァァァァァァァ!!!

280: 2013/03/25(月) 03:58:43 ID:cdxvovcI
妹「」

兄「――さて、泊まるなら服が足りないだろう。妹、出してやれ」

妹友「あ、その気遣いでしたら無用ですよ兄先輩」

兄「?……というと?」

妹友「自前でお泊りセット持ってきましたから、大丈夫です」

兄「……それは一旦家に帰って、お泊りセットを担いでうちまで来た、ということかな?」

妹友「その通りですけど……何か問題が?」

兄「あー……ついでだから聞こう幼馴染よ。服装と――」

幼馴染「案ずることはないぞ。服ならばこの家に来る度に、タンスに自前の服を増やしていたからな」

兄「……今、見た事のないキャリーバッグと、ボストンバッグが玄関に置いてあった理由を……理解したよ」

バンッ!

兄「っていうかお前達全員最初から泊まる気満々じゃないか!」

兄「止むに止まれずなんて状態の人、実は1人もいないじゃん!」

兄「普通に家に帰れた人いるじゃん!何故そのまま風呂入らない!?」

兄「一旦家帰ってバッグ手に入れてビショビショのままここに突入してくるなんて……どういう執念なの!?」

281: 2013/03/25(月) 04:13:58 ID:cdxvovcI
妹友「……へ?兄先輩何か言いました?」
幼馴染「……ん?あんた今何か言った?」

兄「……聞いてないし……タイミンっ…へぇ、へ、ヘェックシュ!!」ブルリ

兄「いかん、このままでは確実に風邪を引く。……さっさと風呂に入ってしまおう」ズズー

兄「……ほんじゃ風呂入ってくるからー」

妹「ハーイ」
妹友「コッチハ泊マル準備ヲ進メテオキマスネー」
幼馴染「晩御飯ノ準備ハ私ニ任セテクダサイ」

―ブルルッ

兄「……寒気が。急ごう」

兄「洗濯機に濡れたもん突っ込んでスイッチオン、と」

ガチャッ

兄「手桶からの湯で慣らして――」ザバザバ

兄「湯舟に……ア”ッア”ア~~~~」ザブーン

カポーン……

283: 2013/03/26(火) 02:02:37 ID:Hgc6P31s
兄「…………」

ピチョン…

兄「……しかしまぁ……」

兄「クラスメイトと後輩が家にいるのに……風呂に入ってるってのは……」ザブ

兄「……妙な気分だな……」

パタパタパタ コンコン

妹「お兄ちゃーん?」

兄「……んー?」ブクブク

妹「タオル使いきっちゃったから、持ってきたよー」

兄「おお。悪いな。置いといてくれー」

妹「ほいさー」

ガララッ

兄「ぷふー……」

ピチョン…

284: 2013/03/26(火) 02:04:24 ID:Hgc6P31s
――――

パタパタパタ コンコン

妹友「あのー、兄先輩?」

兄「……んっ!?。は、はい?」

妹友「洗濯物が畳み終わりましたので、ジャージお持ちしました」

兄「……うちの洗濯物を?わざわざそんな事しなくても……」

妹友「いえ、幼馴染先輩が料理している間、手が空いたものですから」

兄「……ありがとう。そこに置いて貰えるかな。脱衣カゴの上のところに」

妹友「はい。失礼します」

ガララッ

兄「……ふー……」

ピチョン…

285: 2013/03/26(火) 02:13:42 ID:Hgc6P31s
――――

パタパタパタ コンコン

幼馴染「いい?入るわよ」

兄「……駄目に決まってるだろ」

幼馴染「まだお風呂場でしょ?声が反響してるし」

兄「その前に幼馴染、料理はどうしたんだ?」

幼馴染「もう配膳まで終わったわよ。だから呼びに来たの」

兄「お、おおそうか。ありがとな」

幼馴染「あとさっきの洗濯物、あんたのトランクス入れ忘れたから持ってきたの」

兄「……それを最初に言えよ。ていうかトランクスを持つことに抵抗を持て」

幼馴染「洗ってあるなら問題ないでしょ?じゃぁ置いておくから」

ガララッ

兄「……ったく。……ふぃーー……」

ピチョン…

286: 2013/03/26(火) 02:17:25 ID:Hgc6P31s
――――

兄「……そろそろ出るかねぇ」

ザパーッ

兄「……熱、顔だけ汗流そ」

シャーーー……

兄「……ッ」ゾクッ

キュッ

兄「…………」

兄「……何だ今の悪寒は」

兄「…………」

ピチョン…

兄「静か過ぎる……。居間から漏れ聞こえるTVの音さえ聞こえてこない」

兄「……不気味な静寂だ」

287: 2013/03/26(火) 02:24:45 ID:Hgc6P31s
兄「……そもそもあいつらが会話もなしに、テーブルでただ黙して俺を待つか?」

兄「……想像してみても異様な光景だ」

兄「……誰かに襲われて喋れない状況……?」

兄「いや、違う。その前に俺は何か見落としている気がする」

兄「何か、決定的な何かを……。思い出せ……」

…コォォ…ォォォ…

~~~~
妹『ほいさー』
ガララッ
~~~~
妹友『はい。失礼します』
ガララッ
~~~~
幼馴染『洗ってあるなら問題ないでしょ?じゃぁ置いておくから』
ガララッ
~~~~

兄「!」ペポーン

288: 2013/03/26(火) 02:35:37 ID:Hgc6P31s
兄「そうだ!『足音』だ!」

兄「扉を閉めた後に聞こえなくてはならないはずの――」

兄「『遠ざかる足音』を俺はまだ聞いていない!」

ガタタッ

兄「つまりこの脱衣所へやってきたメンバーはまだ中にいるってことだっ!」バァン!

ガタンッ!

兄「という訳でさっさとそこから出て行けぇっ!」

ガタガタ

洗濯機『ファファファ。見破られたのであれば仕方あるまい』ガタガタ

乾燥機『でもここまで来て私たち退くつもりなんてありませんよ』ガコガコ

脱衣籠『見破ったとしても、あんたが依然不利な事には変わりないんだから』ユサユサ

兄「ど……どういうことだ!?」

295: 2013/03/26(火) 22:40:39 ID:Hgc6P31s
スタッ

妹「お風呂場の出入り口はたった一つ」

妹友「この脱衣所に通じる扉以外にはありません」

幼馴染「そしてあんたの持ち物は……体を洗う小タオル一本のみ」

兄「……そういうことか」

妹「気づいたみたいだねお兄ちゃん」ニヤァ

妹「そう!確かに我々のアンブッシュは失敗に終わった!」

妹「何も知らない無防備なお兄ちゃんの裸体を、ひっそりと眺める事は出来ないのは非常に残念ではある!」

妹「――が!お兄ちゃんがここで着替えなければいけないという事実に変更はないのだ!」

妹友「兄先輩の腕が2本である以上、トランクスを履く瞬間は必ずタオルを体から離す必要があります」

幼馴染「加えてトランクスの置かれた位置は脱衣カゴの上。扉よりやや離れた位置にあるわ」

妹「妥協して後ろ向きに履こうとしても、扉から離れた瞬間に3人で取り囲み――」

妹「退路を絶ちつつ、お兄ちゃんの正面を必ず捉える!」

兄「……卑劣な……」

296: 2013/03/26(火) 22:52:44 ID:Hgc6P31s
兄「…………」

幼馴染「……『このまま籠城しよう』とか不毛な事考えてるんじゃないでしょうね?」

兄「不毛な事やってるのはどっちだよ……」

妹友「不毛は不毛でも私たちにとって価値のある不毛さなんです」

妹「不毛なことを大してやりもせず不毛を語ろうなんて片腹痛いよ」

幼馴染「不毛は不毛で不安になるものよ。不毛の苦労を知ってるのは不毛の人だけなんだから」

兄「不毛不毛うるさい!てかハゲでもないのに不毛を語るな!」

幼馴染「?……私頭の毛の話なんてしてな……あっ」

兄「……え?」

妹「……ほう」

妹友「……えっ」

幼馴染「……不毛な話はやめましょう」

兄「お、おう」

302: 2013/03/27(水) 00:39:49 ID:abTH1V8c
幼馴染「ど、どちらにせよ!あんたには籠城する時間すらないの!」///

兄「だっ、それは幼馴染の決める事じゃないだろ!むしろ籠城しかない!」

幼馴染「いいえ、さっさと出て貰うわ。……忘れたの?」

兄「……忘れ……?何の話だ?」

幼馴染「私が『料理』、したのよ」

兄「……あ」

幼馴染「配膳も終わってるって……私、言ったわよね」

兄「……ああ!」

幼馴染「あんたまさか……人様に調理させといて冷めるまで食べない気なの?」

兄「……ぐっ!」

幼馴染「あんたが風呂を出る時間に合わせて作った……出来立ての晩御飯を!」

妹友「兄先輩はそんな非道な事しませんよねー♪」

妹「そうそう、あたしの自慢のお兄ちゃんなんだからさぁ♪」

兄「……くっ、何て奴らだ……」

303: 2013/03/27(水) 00:56:43 ID:abTH1V8c
兄「大体冷める理由は俺じゃないのに……」

妹「違うよお兄ちゃん。放置して冷ましているのは紛れもなくお兄ちゃんなんだよ?」

兄「はぁ!?どんな暴論だよ!」

妹「……あたし達はね、お兄ちゃんの着替えを邪魔するなんて一言も言ってないんだよ」



兄「……な、に……?」

妹「あたし達はただここに『いる』だけ。お兄ちゃんはただ普通に、いつも通り着替えればいいだけなんだよ」

妹友「そうです。出てきてすぐ着替えれば、幼馴染さんの温かい料理がいただけるんですよ?」

幼馴染「あんたに直接何かしようって訳じゃないんだから。何も心配はいらないわ」

兄「……ッ」ゾクッ

妹「さぁ」

妹友「さぁ」

幼馴染「さぁ」

「「「さぁっっ!!」」」

兄「……万事休す、か……」

304: 2013/03/27(水) 03:09:38 ID:abTH1V8c
兄「…………」

兄「……出来ればこの手は使いたくなかったが……」ゴゴゴゴゴ

妹「まさかの破れかぶれお兄ちゃん!?」

妹友「記憶を無くさない程度に鈍器で殴打とかされちゃうんでしょうか!?」

幼馴染「暴力をふるうんだったら私が3人分引き受け……っていうか全部私に叩きこみなさい!」ハァハァ

兄「……俺を何だと思っているんだよ」

兄「……これは提案というより『取引』だ」

妹「……ほっほーん。あたし達と交渉しようって言うのね」

幼馴染「でもあんたの手元には交渉する材料がないように見えるけど?」

兄「……『ここ』にはないさ」

兄「君らの目の前の脱衣カゴには、俺がさっきまで来ていた衣類が入っている」

妹友「!」ギランッ


兄「……その『俺の洗濯物を手洗いする権利』と取引しよう」ゴゴゴゴゴ

妹「!」ドドドドド
妹友「!」ドドドドド
幼馴染「!」ドドドドド

305: 2013/03/27(水) 12:54:07 ID:oUqn9ikg

引用: 妹「おほぅ…。やはり寒い冬はお兄ちゃんに限る…」 兄「………」