1: 2008/06/23(月) 20:30:24.61 ID:GB6ttfGY0
蒼星石「起きないね」

翠星石「ねぼすけにも程があるですぅ」

皺苺「うゆー」



のり「かれこれ十日近く眠ったままで……ジュンくんったらどうしたのかしら?」
アリスゲーム
4: 2008/06/23(月) 20:33:01.57 ID:GB6ttfGY0
真紅「おかしいのだわ……最初は何かのネタなのかと思って放置していたけれど、これは流石に異常なのだわ……」

翠星石「同感ですぅ。最初は三年寝太郎ごっこかと思っていたですが、いくらなんでも変ですぅ」

蒼星石「いや、もしかしたら本当に三年待てば何か起こるのかもしれないけど……何か妙だね」

皺苺「うゆゆー」

8: 2008/06/23(月) 20:35:28.16 ID:GB6ttfGY0
真紅「ジュン……とても静かに眠っているのだわ……」

翠星石「人の寝顔を見てるとティッシュとかかぶせたくなるですね」

蒼星石「あ、分かる分かる。あと、まぶたを無理やりこじ開けて観察したくなるよね」

皺苺「ないわー」

10: 2008/06/23(月) 20:38:31.86 ID:GB6ttfGY0
真紅「何か……何か、きっと理由があるに違いないのだわ」

蒼星石「なんらかのスタンド攻撃を受けている、という可能性も考慮すべきかもしれないね」

翠星石「デス13ですぅ」

皺苺「めめたぁー」

11: 2008/06/23(月) 20:42:42.27 ID:GB6ttfGY0
真紅「しかし分からないのだわ、一体どうして……眠る前まで、ジュンにおかしな様子はなかったはず」

翠星石「なぜ目覚めないのか……原因不明ですぅ」

蒼星石「見当もつかないね」

皺苺「ゆめじゃん?」

15: 2008/06/23(月) 20:47:36.07 ID:GB6ttfGY0
真紅「それだわ! ジュンの夢の中で何かが起こっている……!!」

翠星石「きっとそうですぅ! チビ人間のやつ、何かどエラい目に遭ってるのかもしれないですぅ!!」

蒼星石「!!」

皺苺「うゅー」

翠星石「こうしちゃいられんです、急いでチビ人間の夢の中に飛び込むですよぅ!」

真紅「ええ、行きましょう!」

皺苺「ゑゆー」

蒼星石「行くよみんな……今、僕が夢の扉を開く――!」

16: 2008/06/23(月) 20:50:30.86 ID:GB6ttfGY0
no title 
ジュンが長い眠りから目を覚ますようです

18: 2008/06/23(月) 20:53:41.31 ID:GB6ttfGY0
そして、物語は十日前に遡る――

19: 2008/06/23(月) 20:57:00.01 ID:GB6ttfGY0
ジュン「まったく……真紅に水銀燈、雛苺と来て、翠星石に蒼星石、それから……なんだっけな」

   「あいつらが現われてからこの方、僕の生活はごちゃごちゃだ」

   「……そりゃまあ、明るい家も悪かないけどさ」

   「それにしてもアイツらは人の言うこと聞かないしワガママだしお子様だし……いい迷惑だよホント」

   「紅茶を淹れろだのヌルいだのなってないだの……あー、ぐだぐだ考えんのやめた! 寝よ寝よっと……」

21: 2008/06/23(月) 21:01:00.75 ID:GB6ttfGY0
   『もしもし――もしもし――』

ジュン「う……、なんだ……? これは……夢?」

ラプラス「御明答!」

ジュン「うおッ」

ラプラス「ここは夢の世界……厳密に言うと貴方は今、夢を介してnのフィールドを見ているのですよ」

ジュン「nのフィールド? なんだ、僕に何をしようってんだ?」

ラプラス「いえいえ、決して危害を加える訳では……ただ、貴方に『可能性』というものを御覧に入れようかと」

ジュン「可能性……?」

23: 2008/06/23(月) 21:07:27.62 ID:GB6ttfGY0
ラプラス「常世のあらゆる森羅万象は可能性で満ち溢れています。
     例えば貴方が何気なく蹴飛ばした石に数時間後誰かがつまづいて転ぶかもしれません。
     転んだ者は怪我をするかもしれないしその怪我が元で生活に支障が出るかもしれないし入院するかもしれない。
     しかし大したこともなく済むかもしれないし、それともどうにか転ばずに踏みとどまるかもしれない。
     そもそも貴方が石を蹴飛ばすか否かも分からないし転ぶのはあなた自身かもしれない。
     いかなる場面にも選択肢というものが存在します。その都度選んだルートによって未来は千変万化する。if、if、ifの積み重ねです。
     その結果世界がどのように進んでいくかは無限の可能性が存在する。
     可能性があれば『ここ』ではない『どこか』には別の道を行く世界もある。
     いわば並行世界、パラレルワールドというものが存在してもおかしくない、そうは思いませんかJUMさ――ん!?」

ジュン「ジュンだ!」

ラプラス「あァー、すいませェん」

25: 2008/06/23(月) 21:10:50.24 ID:GB6ttfGY0
ジュン「で……パラレルワールドだったか。それがどうしたって言うんだ」

ラプラス「ええ。貴方はこう思ったことはありませんか? 『あの時あんなことをしなければ、あんなことが起きなければ』――」

ジュン「知った風な口を……そんなの誰にだって多少はあるに決まってるだろ」

ラプラス「そうでしょうね……では、具体的に言いましょうか。貴方はこう思ったことはありませんか?」

27: 2008/06/23(月) 21:14:05.10 ID:GB6ttfGY0

   ローゼン メイデン
 『 薔 薇 乙 女 な ん て い な け れ ば 良 か っ た の に 』

29: 2008/06/23(月) 21:16:26.80 ID:GB6ttfGY0
ジュン「ッ、僕はそんなこと……!」

ラプラス「一度として思ったことはない、と?」

ジュン「ぼく……僕、は……」

ラプラス「いえ、何も悩むことはないのですよ。思いは一時の感情で正にも負にも傾くものです」

ジュン「え?」

30: 2008/06/23(月) 21:18:30.54 ID:GB6ttfGY0
ラプラス「私はただ、貴方に助言を差し上げようと思ったまでなのです」

ジュン「助言?」

ラプラス「ええ。簡潔に述べると――『何気ないところに幸せはある』」

ジュン「……へ?」

ラプラス「『ごく当たり前のことも、見方を変えてみれば、とても素晴らしいものになる』」

ジュン「え、ちょ、何? 宗教?」

32: 2008/06/23(月) 21:20:20.25 ID:GB6ttfGY0
ジュン「何言ってんだお前……?」

ラプラス「これは失礼、簡潔すぎたようですね。では、実際にその眼で確かめていただきましょうか……あちらを」

ジュン「なんだ……鏡の欠片? の中に、何か映ってるのか……」

ラプラス「どうぞ間近で御覧なさい」

ジュン「あれは……僕――?」

38: 2008/06/23(月) 21:47:17.48 ID:O9J2ExJ80
   『桜田だ、桜田が来たぜ!』

   『ぶははっ、桜田ぁ、お前の机ラクガキだらけだぞー? 消すの大変そうだなー?』

   『ひ、ひっでえことするヤツがいたもんだなあ、さっくらーだくーん?』

   『桜田くんってなんか、物静かっていうか、暗いんだよねえ――』

ジュン「学校に通ってる、僕だ……でも、僕の学校はこんな教室じゃなかったし、クラスの中に知ってる顔が無い……制服も違う」

   「なんだよ……どこに行っても、僕は同じってことかよ……」

ラプラス「それは違います。目をそらさずに、もう少し見るのです」

40: 2008/06/23(月) 21:49:24.00 ID:O9J2ExJ80
   『おら、HR始めるぞー。出席とるからさっさと席に着けー』

   『えー……赤木しげる。井川ひろゆき。伊藤開司。宇海零――』

   『――桜田、ジョン』


ジュン「( ゚д゚)」

42: 2008/06/23(月) 21:53:20.94 ID:O9J2ExJ80
ジュン「な、な、な、なな……じょ、ジョン?」

ラプラス「そう――この並行世界のあなたは、西洋かぶれの両親によって『ジョン』と名付けられたのです」

ジュン「ジョ……」

ラプラス「そして、その名前をからかわれたことをきっかけに喧嘩を起こし、結果、陰湿な苛めに発展し――」

ジュン「…………」

43: 2008/06/23(月) 21:55:41.33 ID:O9J2ExJ80
ジュン「昔、『ジュンなんて名前は女の子みたいで嫌だ』って思ったことがあるけど……」

ラプラス「ええ」

ジュン「少なくとも、名前のことで苛められたことは無かった……! 自分の名前を喜ばしく思ったのは初めてだ……」

ラプラス「そうでしょうとも! 貴方が『桜田ジュン』であるということ、『ジュン』と呼んでもらえるということ!」

    「それは至極当然のことでありながら、しかし何物にも代えがたい幸福なのです!!」

ジュン「でもなんか言いくるめられてる気がする」

45: 2008/06/23(月) 21:59:56.01 ID:O9J2ExJ80
ラプラス「ふむ。では次にあちらの鏡を」

ジュン「次から次へと……今度は何だ? どれ……」

   『――――』

ジュン「! あれは……真紅だ」

49: 2008/06/23(月) 22:03:09.65 ID:O9J2ExJ80
真紅『やはり、貴方との対決は避けられないようね……水銀燈』

水銀燈『当然じゃなぁい。絶対唯一の乙女、アリスを目指す薔薇乙女の宿命ですもの』

真紅『貴方……雛苺を倒したのね。ローザミスティカの力が高まっているのを感じるわ』


ジュン「水銀燈も……これは、真紅たちがアリスゲームに従って戦いを進めた世界なのか」


水銀燈『ええ、そうよぉ。それに翠星石は――貴方が手にかけたんでしょう、蒼星石?』

蒼星石『……気付いていたか』

51: 2008/06/23(月) 22:11:03.27 ID:O9J2ExJ80
真紅『不意打ちを狙っていたの? 薔薇乙女の誇りは――』

蒼星石『誇りのためにも負けられないんだよ……僕は、宿命のために翠星石を倒さなければならなかった』

真紅『それは――私も同じなのだわ。あの……なんか黄色いのと戦い、打ち破ったこの私も』


ジュン「みんな、僕の知っている真紅たちよりも、容赦がない……こんな風に争うくらいなら、僕の世界の方が……」

                             クリムゾンストーム
蒼星石『そう――もう僕は立ち止まる訳にはいかないんだ――《紅蓮の疾風》と呼ばれる君を倒してでもね』
         ドッペル=ブラウ
真紅『その覚悟……《蒼き双刃》の二つ名を持つだけのことはあるようね』

水銀燈『《堕天の黒き翼》を前に、二人とも随分と余裕じゃなぁい……』


ジュン「……pardon?」

54: 2008/06/23(月) 22:15:46.80 ID:O9J2ExJ80
真紅『こそこそと陰に隠れて……不意打ちを狙っていたの? 薔薇乙女の誇りは――』

蒼星石『誇りのためにも負けられないんだよ……僕は、宿命のために翠星石を倒さなければならなかった』

真紅『それは――私も同じなのだわ。あの……なんか黄色いのと戦い、打ち破ったこの私も』


ジュン「みんな、僕の知っている真紅たちよりも、容赦がない……こんな風に争うくらいなら、僕の世界の方が……」

                                      クリムゾンストーム
蒼星石『そう――もう僕は立ち止まる訳にはいかないんだ――《紅蓮の疾風》と呼ばれる君を倒してでもね』
            ドッペル=ブラウ
真紅『その覚悟……《蒼き双刃》の二つ名を持つだけのことはあるようね』

水銀燈『あらぁ、《堕天の黒き翼》を前に、二人とも随分と余裕じゃなぁい……』


ジュン「……pardon?」

55: 2008/06/23(月) 22:16:21.86 ID:O9J2ExJ80
蒼星石『かかって来るといいよ、水銀燈。きみの“水銀刀”と僕の大鋏“逆鱗裂き”……どちらが斬られるか、競ってみようじゃないか』

水銀燈『生意気ねぇ……その自信も私の新必殺技“ダーククルセイダー”の前では……はッ!?』

蒼星石『薔薇の花弁……ローズテイル? いや、これは!』

真紅『隙を見せたのが運の尽きなのだわ。喰らいなさい。いえ――喰われるがいいのだわ。“ローズハイパーギガバーストエクストリームファントm


ラプラス「……何故、目を背けるのです?」

ジュン「姉妹同士で憎み合って争うだなんて、痛々しすぎるじゃないか……この場合は、色々な意味で……」

58: 2008/06/23(月) 22:22:47.95 ID:O9J2ExJ80
そして――

59: 2008/06/23(月) 22:23:07.15 ID:O9J2ExJ80
真紅『羽根が散って掃除が大変だから来るなっつったろがァ!!』

水銀燈『ひぅ……っ、ご、ごめんなさぁい』

雛苺『だまってきえうせるがよかろうなのー』

ジュン「うわ、この世界だと水銀燈が他のドールから苛められてる……」

ラプラス「ローザミスティカを賭けた戦いこそないものの、逆に生々しく凄惨ですな」

62: 2008/06/23(月) 22:29:36.67 ID:O9J2ExJ80
その後もジュンは
いくつもの鏡に映る並行世界を眺め――

63: 2008/06/23(月) 22:29:51.29 ID:O9J2ExJ80
ジュン「うわなんだこの世界。翠星石たちがちん○ちん○連呼してやがる」

ラプラス「このように大きく歪みきった世界も、可能性の上では存在しているのです」

ジュン「変態人形に住み着かれるくらいなら、わがままで威張りくさったな人形にこき使われた方がマシだな……」

64: 2008/06/23(月) 22:35:16.65 ID:O9J2ExJ80
次第に何かを悟っていくのでした――

67: 2008/06/23(月) 22:57:56.12 ID:O9J2ExJ80
ジュン「……なんだか、分かって来たような気がする」

ラプラス「ほう……?」

ジュン「僕は……ああ、今だからこそ認めるけど、僕は卑屈で度胸の無いガキだ」

   「現状に不満があるけど、それを打開するだけの勇気が無くて勇気の無い自分が嫌になって……」

   「ただただ部屋の中に閉じこもって、誰にも邪魔されない自分の王国だと思おうとして、それを幸せだと考えるようにした」

   「それでも心の底では、ぜんぜん満たされなくて……満たされるわけが無いってことも本当は分かってて」

68: 2008/06/23(月) 23:02:20.30 ID:O9J2ExJ80
ジュン「真紅たちが現れたときは、すごく驚いて、何が何だか、まったく分からなくて」

   「契約がうんぬんとか、いきなり人のことを下僕だとか言い出すし、窓ガラスは割るし」

   「常識外れにも程があるよ、ホント迷惑もいいとこだった」

   「でも、本当は……本当に少しだけ、わくわくしてたんだ」

   「状況を打開する何かがやってきたのかもしれない、って……そう思ったんだ」

70: 2008/06/23(月) 23:16:30.13 ID:O9J2ExJ80
ジュン「なのに……根性曲がってるからな、僕は」

   「いきなり現れた得体の知れないやつらに、状況を変えてもらうだなんて」

   「自分で何の努力もせず……ただ助けてもらって、幸せにしてもらうだなんて、そんな情けないこと……」

   「結局僕はなんにもできないって突きつけられたみたいで、意地を張って、突っぱねたんだ」

72: 2008/06/23(月) 23:28:55.05 ID:O9J2ExJ80
ジュン「でも、同じように真紅たちと出会っても、あいつらが残酷に傷付け合う世界だってあるんだ」

   「僕があんな風に……ジョンだかなんだか変な名前を理由にからかわれるような、もっとくだらない世界だってありえたんだ」

ラプラス「wwwww」

76: 2008/06/23(月) 23:41:38.88 ID:O9J2ExJ80
ジュン「今なら、素直に思えるよ……真紅たちが僕の元に来てから、騒がしくてややこしい毎日だったけど」

   「それは――すごく幸せなことなんだ。僕は――楽しかったんだ」

ラプラス「お分かりになったようですな」

ジュン「あんたが、何のために来たのか知らないけど……感謝するよ、僕は、あの幾つもの世界を見ることができて、よかった」

ラプラス「いえいえ……わたくしめはただ、あなたのためを思ってこそ」

    「いかなる逆境も不遇も、『もっと辛いこと、苦しいことがある』と知っていれば、耐えることができる」

    「いかなる苦難も辛酸も、より深い暗闇を知っていれば、恐るるに足らないことと、御教えしたまでです」

77: 2008/06/23(月) 23:54:34.12 ID:O9J2ExJ80
ラプラス「……おや、扉が……ようやく気付きましたか」

ジュン「ん?」

ラプラス「いえいえ、こちらの話ですよ。――さて、あなたもそろそろ目を覚ますべきでしょう」

ジュン「ああ、なんだか随分長いこと夢の中にいる気がするな……」

ラプラス「そうでしょうとも……さあ、あちらを御覧なさい」

ジュン「あっちは何も――あッ」

ラプラス「扉が出て来ましたな。そら、あの扉が開く前に、急いで飛び込みなさいな」

ジュン「急いで?」

ラプラス「ええ、何者かがあの扉を開こうとしているのです。それより早く、貴方が自らの手で開け放つのです」

ジュン「何者か……真紅たちか? はは、そりゃいいな。驚かしてやろう」

   「それじゃ……さよなら!」

79: 2008/06/24(火) 00:10:39.67 ID:XBzmbxu40
そしてジュンは、力強く扉へと飛び込んだ――

83: 2008/06/24(火) 00:28:02.24 ID:XBzmbxu40
ジュン「――ぐを!?」

真紅「おヴッ!」

皺苺「うぃゆっ」

翠星石「ゆ、夢の扉を向こうからぶッ貫いて突き抜けて来やがったです!?」

蒼星石「真紅ゥー! 真紅ゥ――!!」

ジュン「ぐぁ、な、なん……頭にクリーンヒットして……うおォン……!」

87: 2008/06/24(火) 00:43:06.34 ID:XBzmbxu40
真紅「い、いたぃのだわ……あた、頭が取れるかと、おもっ……・」

ジュン「いつつ……って、真紅!」

真紅「ずっと眠っているから起こしてあげようかと思ったら、いきなりなんなの……」

ジュン「真紅!」

真紅「な、なに? ちょっと、いきなり肩をつかまないでちょうだい」

ジュン「僕は、お前たちに言わなきゃいけないことgジョボボボボボるんだ!」

翠星石「……ぢょぼぼ?」

88: 2008/06/24(火) 00:46:24.78 ID:XBzmbxu40
ジュン「…………」

真紅「……ジュン、今のは?」

翠星石「忘れてたです……ジュンは十日もの間、一度も起きずにいたから……」

蒼星石「貯水タンクが――決壊したんだね」

皺苺「えぅー」

92: 2008/06/24(火) 00:55:27.43 ID:XBzmbxu40
そして翌日――

95: 2008/06/24(火) 01:08:55.37 ID:XBzmbxu40
ジュン「どうだこの紅茶、姉ちゃんに教わって淹れてみたんだけどさ」

真紅「……全然だめなのだわ。心はこもっているけれど、時間をかけすぎよ。何度も繰り返して手順をしっかり覚えることね」

ジュン「そっか……どれ、じゃあもう一回挑戦してみるよ」

真紅「ちょ、ちょっと! そんなに何度も淹れられても困るのだわ、今日のジュンはなんだか張り切りすぎなのだわ」

翠星石「チビ人間のやつ、昨日あんな大恥をかいたから部屋から出て来ないと思ったですのに……なんだか妙ですぅ」

蒼星石「羞恥心の果てにある快感にでも目覚めたのかな」

皺苺「うぃー」

99: 2008/06/24(火) 01:24:16.39 ID:XBzmbxu40
真紅「翠星石たちもなんとか言ってちょうだい! ジュンがおかしいのだわ!!」

ジュン「いいじゃないかよ、僕が好きでやってるんだから。あ、翠星石たちも紅茶いるか?」

翠星石「じゃ、じゃあせっかくだし貰っておくですかね……」

蒼星石「緑茶ないの?」

ジュン「ははは、悪いな。今度用意しておくよ」

真紅「なんだか薄気味悪いのだわ……」

翠星石「きっと何か裏があるに違いないですぅ、油断したところで翠星石たちを凶悪な罠にハメるつもりですぅ」

皺苺「Wii」

104: 2008/06/24(火) 01:36:17.94 ID:XBzmbxu40
ジュン「なーにコソコソ話してんだよ」

真紅「ひぅっ!?」

翠星石「ななななんでもないですぅ、なんにも言ってないですよぅ!」

皺苺「うにゅぅー」

ジュン「……なんて言うかさ、まあそりゃお前たちには分かんないかもしれないけどさ」

真紅「?」

ジュン「僕はな、お前たちに会えて、こうして一緒にいられて、――すっごい幸せなんだよ」

真紅「し、しあわせ……?」

翠星石「ほ、ほんとにチビ人間ですか? おかしいです、チビ人間らしくないですぅ! 熱でもあるですか!?」

蒼星石「緑茶……」

109: 2008/06/24(火) 02:00:01.70 ID:XBzmbxu40
ジュン「だってな、お前たちがこの家に来なかったら、僕は毎日部屋から一歩も出ずに、姉ちゃんとすら会話もなかった」

   「まず最初に真紅が来て、水銀燈に襲われて、真紅と雛苺が戦って、翠星石が飛び込んで来て、蒼星石に会って……」

   「正直大変なこともあるし、疲れたりもするけど、どんな苦労も『もっと大変なことだってあるんだ』と思えば、辛くないんだよ」

真紅「ジュン……?」

ジュン「比較論で考えれば、どんな小さなことだって幸せに感じられるんだ」

蒼星石「……なんだかよく分からないけど、まあ、そんなものなのかもね」

翠星石「それよりさっさと紅茶を用意するですよ! 自分で言い出したことには責任を持つですぅ!!」

ジュン「はいはい今やるよ。それまで『くんくん探偵』のDVDでも見て待ってな」

翠星石「急いで持ってくるですよーぅ?」

真紅「…………」

皺苺「しん……く……?」

真紅「あ……いえ、なんでも……」

皺苺「ν……」

114: 2008/06/24(火) 02:04:51.30 ID:XBzmbxu40
.       |
no title

 ジュンが長い眠りから目を覚ますようです

117: 2008/06/24(火) 02:05:31.55 ID:XBzmbxu40


真紅「……ジュン。本当にそれは、幸せなのかしら――」


118: 2008/06/24(火) 02:05:48.47 ID:XBzmbxu40
no title

 ジュンは本当に目覚めたのでしょうか?

178: 2008/06/24(火) 18:36:42.53 ID:R7gR2QHW0
水銀燈「遅かったじゃないのぉ、メイメイ。真紅たちの様子を探るように言ったけど、何かあったのぉ?」

   「……奇妙な歪みを感じた、ですって?」

   「ふぅん、歪みの元は二つ? 一つは――」

   「そう、真紅たちのミーディアム……あの人間なのね」

180: 2008/06/24(火) 18:49:33.75 ID:R7gR2QHW0
金糸雀「ピチカート、待ちかねてたのかしらー! 真紅たちの動向を報告するかしら!!」

   「真紅たちには特に異常なし? うぅ……隙のない連中かしらー」

   「え? なになに、まだ報告があるのかしらっ?」

   「……ミーディアムが、やたらとへらへらしてる、って……なんなのかしら……?」

181: 2008/06/24(火) 18:57:58.00 ID:R7gR2QHW0
のり「ねえ真紅ちゃん?」

真紅「あら、のり。何か?」

のり「最近のジュンくんなんだけど……なんだか変じゃない?」

真紅「……ええ。確かに、ジュンは妙に明るくなったのだわ。それも突然に」

のり「私としては、前よりも部屋から出ることが多くなって、にこにこ笑うことも増えて、嬉しいんだけど……」

182: 2008/06/24(火) 19:12:56.82 ID:R7gR2QHW0
真紅「のりの気持も分かるのだわ。ジュンの変化は喜ばしくても、あまりに急だったせいで不安なのでしょう」

のり「お姉ちゃん失格かなあ……でもね、無理をしてるんじゃないかって、ちょっと心配なの」

真紅「そうね。でも、ジュンもこのままの生活ではいけないと、変わらなければならないと思っているのかもしれないのだわ」

  「誰かに強いられているのではなく、ジュンが自分の意志で変わろうとしているのなら……私たちが見守ってあげなければ」

のり「うん、そう……そうね。もしものときには支えてあげるために、そばにいるのが家族の役目よね。ありがと、真紅ちゃん」

184: 2008/06/24(火) 19:30:44.07 ID:R7gR2QHW0
ジュン「うふふふふ、うふふふふ」

翠星石「その気持ち悪い笑顔をやめるです! こっち見るなですぅ!!」

ジュン「うふふふふ、翠星石はかわいいなぁ」

翠星石「脈絡もなく何を言い出すですかお前は!?」

ジュン「照れてるんだなぁ……顔赤くなってるなぁ……うふふ……そういうとこもかわいいなぁ」

蒼星石「うわあ」

185: 2008/06/24(火) 19:35:26.45 ID:R7gR2QHW0
蒼星石「うわあ……うわ、目ぇ合った」

ジュン「蒼星石もかわいいよなぁ……ちょっと中性的っていうか、その中に垣間見える女の子っぽさがいいなぁ……」

蒼星石「うわあ……なんか言ってる」

ジュン「翠星石もだけど、左右で瞳の色が違うってのが神秘的でいいなぁ……双子同士で瞳の色も左右対称ってのも綺麗だよなぁ」

蒼星石「なぜか今更ながらに基本設定を掘り返して仰々しく……うわあ」

202: 2008/06/24(火) 21:40:16.83 ID:Kw6ngsCY0
ジュン「うふふふふ……」

真紅「あらどうしたのジュン、随分と嬉しそうな顔なのだわ」

ジュン「いやあ、僕は幸せ者だなぁと思って」

真紅「……幸せ?」

ジュン「そうだよ。みんなが一緒にいてくれるから、僕はすごく幸せなんだ」

   「姉ちゃんはトロいけど優しいし、真紅は厳しいけどいつも正しい」

   「翠星石はわがままで減らず口ばかりだけど妹想いで、蒼星石はみんなへの気配りのできる子だ」

   「雛苺は……お子様だけど、無邪気で和むしな。そういえばさっきからいないな、どこ行ったんだろ」

真紅「ジュン……貴方はそれで満足なの?」

207: 2008/06/24(火) 22:14:17.71 ID:Kw6ngsCY0
ジュン「満足……って?」

真紅「ジュン、少なくとも貴方がこの現状に喜びを見出しているということは分かったわ」

  「でも、それ以上の何かを求めないの? それ以外に何か、変化や発展を望まないの?」

ジュン「んー、変化や発展って言ってもなあ……いまいちピンと来ないなあ」

真紅「では聞くのだけれど……貴方、このままこの家だけで一生を過ごすつもり?」

ジュン「図書館で勉強はしてるよ。学校にもいつか戻りたいとは思ってるけど、まあその内っていうか」

真紅「……続けて?」

ジュン「なんていうか……前は『このままじゃ駄目だ』っていう切迫感で頭の中がいっぱいだったんだけど」

   「この状況も悪くない、それどころか十分すぎるくらいに素敵なんだってことが分かって、すごく気持ちが楽になったんだ」

209: 2008/06/24(火) 22:34:36.02 ID:Kw6ngsCY0
真紅「ジュン、些細なことも見方を変えればずっと華やいで見えるという考えは、確かに前向きで良いことだわ」

  「だけどそれに胡坐をかいて向上心を失くしてしまうようでは、何の意味もないのではなくて?」

ジュン「……ふふ」

真紅「ジュン?」

ジュン「真紅はいつも僕を叱ってくれるね。ありがたいことだよ、本当に」

   「ああ、こういうときの真紅は、ちゃんと僕のことを考えてくれてるんだもんな。肝に銘じておくよ。善処する」

真紅「ジュン……ジュン、違うわ、そうじゃない」

のり「ジュンくーん、真紅ちゃーん、お昼ごはんできたわよー!」

ジュン「ほら、行かなきゃ。姉ちゃんのうまい飯食べて、暗い気持ちは吹き飛ばそうぜ」

真紅「…………」

211: 2008/06/24(火) 22:51:51.55 ID:Kw6ngsCY0
金糸雀「さてさて、真紅たちのミーディアムの様子がおかしいと聞いて来たけれど、潜入はお庭が限界かしら……」

   「こっそり忍び込ませたピチカートからの報告によれば、真紅とミーディアムの関係が微妙なカンジだとか」

   「これは思い切って正面からカチコミかけるべきということなのかしら? そうなのかしら!?」

水銀燈「あらあら、奇遇じゃないのぉ……ええと、そう……金糸雀」

金糸雀「へぁ!?」

219: 2008/06/24(火) 23:18:56.87 ID:Kw6ngsCY0
水銀燈「ふぅん、あなたの人口精霊もあの人間の変化に気付いたってわけねぇ。そして実際に自ら確認しに来た、と……それで?」

金糸雀「ど、どうしてカナが事情を逐一報告しなきゃ……あ、い、言う言う言うかしらっ。だから剣を向けるのはやめっ、やめっ」

水銀燈「他に情報は無いのぉ? 真紅とあの人間の関係がどうこうとか、ぶつぶつ言ってたじゃなぁい?」

金糸雀「ぴ、ピチカートが確認したのかしら。真紅はミーディアムに不信感を抱き始めてるっぽいのかしらっ」

水銀燈「不信感ねぇ……何か利用できるかもしれないわねぇ。それで……雛苺については?」

金糸雀「へ? なんでヒナが出て来るのかしら?」

水銀燈「あらぁ、気付いてなかったのぉ? 私のメイメイは――」

221: 2008/06/24(火) 23:27:36.86 ID:Kw6ngsCY0
のり「あら? ヒナちゃんはいないの? てっきりジュンくんたちと一緒にいると思ってたのに」

真紅「そういえば、さっきから姿が見当たらないような……」

翠星石「翠星石も蒼星石も見てないですぅ、どっかで寝こけてやがるですかね?」

蒼星石「それなら夢の扉が感じられるかもしれな――あれ?」

ジュン「どうした?」

蒼星石「nのフィールドの入り口が開いている……あの、古い鏡のある部屋だ」

224: 2008/06/24(火) 23:51:01.73 ID:Kw6ngsCY0
のり「ちょっとみんな、どこ行くのーぅ!?」

ジュン「ごめん姉ちゃん、雛苺を連れて来るから、ちょっとだけ待ってて!」

真紅「なぜかは分からないけれど、状況からして雛苺はnのフィールドにいるとしか思えないのだわ」

翠星石「なんだか嫌な予感がするですが、行くしかないですぅ……」

蒼星石「残るドールズの誰か……水銀燈あたりが連れ去ったという可能性もありえるよ。みんな、気をつけて」

真紅「雛苺……どうか無事でいて!」

226: 2008/06/25(水) 00:01:49.95 ID:wFeGWw5D0
ラプラス「――来ましたな」

皺苺「…………」

228: 2008/06/25(水) 00:04:23.21 ID:wFeGWw5D0
蒼星石「暗いね……周りが見えないこともないけど、瓦礫や障害物が多いから気を抜かずに行こう」

翠星石「不意討ち注意ってワケですね……これはちび人間を連れて来ない方が良かったかもしれないですぅ」

ジュン「大丈夫だよ、僕はどうにでもなる」

翠星石「どーにでもぉ? 最近のちび人間はやけにポジティブシンキングですねえ」

ジュン「ちょっとした心構えができたんだよ……そんな心配そうな顔するなって、真紅」

真紅「……ええ、心配なんてしていないのだわ。心配なんて……」

230: 2008/06/25(水) 00:12:09.35 ID:wFeGWw5D0
水銀燈「まずいわね、真紅たちがいない……」

金糸雀「そ、それより勝手に上がっちゃっていいのかしら。ふほーしんにゅーかしらっ」

水銀燈「静かにしなさぁい、人間がまだ一人いるみたい……真紅たちはnのフィールドに行ったようねぇ」

金糸雀「て、ていうかどーやって玄関の扉を開けたのかしら? カナが押しても引いてもギッチリ閉まってたのに」

水銀燈「お黙り……あんな鍵、めぐから教わった“ぴっきんぐ”でチョチョイのチョイよぉ」

金糸雀「よ、よく分かんないけどまあいいかしら……あっ、あの部屋。あそこにnのフィールドの入り口があるみたいかしら!」

水銀燈「やれやれねぇ……面倒なことになりそうだわぁ」

233: 2008/06/25(水) 00:31:16.79 ID:wFeGWw5D0
翠星石「――今、あっちの方で何か物音が聞こえませんでしたか?」

蒼星石「ああ、聞こえたね。僕が先頭で行くよ。いざって時にはこの鋏がある」

真紅「では、その次に私が行きましょう。何かあったらローズテイルで援護するわ」

ジュン「じゃあ僕が最後尾、と……」

238: 2008/06/25(水) 01:21:39.97 ID:wFeGWw5D0
蒼星石「たぶんこの辺だと思うんだけど……」

翠星石「あ、あそこ! チビ苺がいやがるですぅ!!」

皺苺「うゅー……」

真紅「……罠かもしれないわ。気をつけていくのよ蒼星石」

蒼星石「ああ、分かってる。雛苺、今行くからそこで待ってて!」

249: 2008/06/25(水) 01:59:06.86 ID:wFeGWw5D0
蒼星石(あれは実体のある存在だ……うっすらと影が見えるから、偽物だとしても幻覚の類ではないな)

   (罠があるとしたら……足元か? 近づくにしても五歩の距離をとっておこう)

   「雛苺、さあ帰るよ。こっちにおいで」

皺苺「…………」

蒼星石「雛苺?」(――動かないのは、やはり罠があるから? 偽物か……?)

   「どうして来ないんだい? 何か言ってくれ」(怪しい――なら、揺さぶりをかけてみるとしよう)

   「雛苺、口を開いて。ここで何があった? 答えられないようなら――」

   「――悪いけど、斬らせてもらうよ」

251: 2008/06/25(水) 02:04:57.00 ID:wFeGWw5D0
蒼星石「十秒だ。十数える内に答えないようなら、その時は容赦しないよ」

ジュン「…………」

翠星石「うぅ、はらはら落ち着かないです……ジュンも何かあったらすぐ動けるようにしておくですよ?」

ジュン「うん」

翠星石(……なんです? チビ人間のやつ、なんだかえらく落ち着いてるですぅ)

真紅「ジュン……」

253: 2008/06/25(水) 02:29:21.59 ID:wFeGWw5D0
蒼星石「――八、七、六」

翠星石「チビ人間、何かおかしいですよ? 何かあったですか真紅?」

真紅「分からないの……きっとあの十日間の眠りの間に、何かが……」

ジュン「おいおい、別に僕はおかしくなんて」

蒼星石「……四、三、二……」

翠星石「ああもう、ハッキリしないで――きゃあっ!?」

真紅「!」

254: 2008/06/25(水) 02:39:39.89 ID:wFeGWw5D0
真紅「そんな、これは……翠星石が結晶の檻に閉じ込められてしまったのだわ!?」

ジュン「足元からいきなり突き出てきたぞ……」

真紅「離れるのだわ、ジュン! じっとしていると危険よ!!」

ジュン「ああ」

257: 2008/06/25(水) 03:03:25.53 ID:wFeGWw5D0
蒼星石「翠星石!? くそっ、こっちは囮だったのか……今助けに――」

皺苺「……うふふ……ふふ――うふふふふふっ!!」

蒼星石「うああッ!!」

皺苺「つかまえた……」

蒼星石「しまった、この結晶……お前は……!!」

258: 2008/06/25(水) 03:19:17.80 ID:wFeGWw5D0
真紅「蒼星石まで……! ジュン、私から離れないで」

ジュン「ああ。……この結晶、見覚えがあるな」

真紅「ええ、十中八九……彼女ね」

皺苺「『うゆー』……『うぃー』?」

真紅「芝居はもうおやめなさい、もう分かっているのよ――薔薇水晶」

259: 2008/06/25(水) 03:20:27.72 ID:wFeGWw5D0
一方、別の場所では密談が行われていた――

260: 2008/06/25(水) 03:21:56.26 ID:wFeGWw5D0
槐「いい働きだったぞ、白崎……薔薇水晶は見事にやっているようだ」

白崎「なに、僕は貴方の指示に従ったまでですよ――桜田ジュンに、惑乱の夢を見せただけで」

槐「翠星石と蒼星石を捕え、残るは真紅とそのミーディアムのみとなった」

白崎「しっかしまあ、なんとも姑息な根回しですよ。彼らの『絆』の力を封じるため、ですか?」

槐「馬鹿馬鹿しい。そんなものを恐れるくらいなら、とうにあの子供を頃しているよ」

白崎「やれやれ、怖い方だ……ならあの夢を見せたことにはどんな意味が?」

槐「彼の『抵抗心』を消し去り、真紅に失望と絶望を見せ、薔薇水晶に絶対の勝利を与えるためさ」

白崎「詳しく聞かせてもらいますか――薔薇水晶が勝利を手土産に帰還するまで、ね」

262: 2008/06/25(水) 03:31:46.15 ID:wFeGWw5D0
薔薇水晶「遊びましょう……」

真紅「卑怯な手を使ったものね、薔薇水晶。いいわ、この誇り高き薔薇乙女の第五ドール、真紅が相手になるのだわ」

蒼星石「気をつけて真紅、彼女は手強いよ!」

真紅「ええ。だから……指輪の契約の元に、力を使わせてもらうわよ、ジュン」

ジュン「ああ、分かった」

翠星石(チビ人間……やっぱり何か……妙に淡々としているです……?)

真紅「覚悟なさい――ローズテイル」

267: 2008/06/25(水) 03:58:39.04 ID:wFeGWw5D0
白崎「……それで? 『抵抗心』がどうこうってのは、どういう意味なんです」

槐「己の身に危機が降りかかったとき、大抵の人間はどうすると思う?」

白崎「そりゃあ……その危機を破るために向き合うか、避けるために逃げるか、耐えるために我慢するか、ですね」

槐「そう、人はみな方法こそ違えど、大小さまざまな運命に抵抗するものだ」

 「喉が渇けば水を飲み、怪我をすれば治療を施し、欲しいものを買う金が無ければ働いて稼ぐ」

白崎「運命とはまた大袈裟な……まあ、分かりますけどね」

槐「状況に不満があれば愚痴を吐く。苛立ちが過剰に募れば身近な者に当たり散らす――」

 「嫌な奴がしつこく絡んで来たら罵り、時には殴るかもしれない」

 「これらもまた、『抵抗』だ」

白崎「ははあ」

槐「怒りや憎しみ、悲しみといった不満は、抵抗心に形を変え――大きな力になる」

 「――桜田ジュンという少年は、内包する不満が実に強い人間でね」

 「……その不満の感情を消し去ってしまえば、どうなると思う?」

268: 2008/06/25(水) 04:00:09.28 ID:wFeGWw5D0
真紅「く……っ!」

蒼星石「真紅!」

翠星石「どうしたですか! 真紅の力なら、薔薇水晶にも善戦できるはずなのに……!!」

真紅「力が……力が、湧いてこないのだわ……どうして」

ジュン「…………」

272: 2008/06/25(水) 04:07:58.18 ID:wFeGWw5D0
白崎「なるほど、読めて来ましたよ」

  「私が彼に見せた夢は、どれも『彼自身の知っているよりも辛く苦しい世界』を教えるもの」

  「あらゆるものをよりマイナスに傾いた状況と比較することで、かりそめの幸福を覚え込ませるための夢でしたね」

  「つまりは……彼の心から『不満』を消し去るための策だったのですね?」

槐「その通りだ。不満を忘れいかなる苦難も甘受できる心の持ち主は、抵抗を捨てる」

白崎「抗うことを捨てた人間は……力を捨てたも同然ということか」

273: 2008/06/25(水) 04:17:08.10 ID:wFeGWw5D0
真紅「ジュン……どうしたの、ジュン。力が、力が伝わって来ないのだわ……」

ジュン「…………」

蒼星石「おかしいよジュンくん! どうしてそんな平気な顔をしてるんだい!? まるで何も感じてないみたいな……」

真紅「ジュン……あなたはこの戦いが怖くないの?」

ジュン「怖いさ……怖いけど……もっと怖いものが、他にもあるんじゃないかな」

翠星石「何を言ってるですぅ!? このままじゃ真紅がやられてしまうです! もっと踏ん張って力を送るですよ!!」

真紅「ジュン……貴方の力が、必要なの」

翠星石「チビ人間は――チビ人間は、私たちがここで負けてしまっても、消えてしまってもいいって思ってるですか!?」

275: 2008/06/25(水) 04:18:41.26 ID:wFeGWw5D0
ジュン「 そ れ も 、 悪 く な い ん じ ゃ な い か な 」

279: 2008/06/25(水) 04:27:35.61 ID:wFeGWw5D0
真紅「――――!!」

蒼星石「そんな――」

翠星石「ち……チビ人間の……チビ人間の、ばか……!!」

ジュン「だって、アリスゲームだなんて、こんな悲しい戦いは、もう終わってしまった方がいいじゃないか」

真紅「ええ、終わらせるのだわ。終わらせるのよ、ジュン……この私たちが、正しい形で、誰も傷つけずに、終わらせるのよ……」

ジュン「本当にそんな方法が見つかるのか? 最後まで苦しい思いをして願いが叶わないかもしれないんだぞ?」

   「だったら、今ここで終わらせてしまうのが一番じゃないか――真紅たちもこれ以上悲しまないで済むんだ」

281: 2008/06/25(水) 04:33:22.16 ID:wFeGWw5D0
ジュン「もういいんだよ、無理しなくて。真紅も、翠星石も、蒼星石も」

   「お前たちみたいな女の子が、こんなに辛い思いをすることは、ないんだよ」

   「静かに目を閉じて、お父様って人のところで、眠ればいいじゃないか――だから」

薔薇水晶「だから」

ジュン「ここで――」

薔薇水晶「ここで、おしまい」

ジュン「幸せな眠りに就くんだ、みんな」

282: 2008/06/25(水) 04:35:19.96 ID:wFeGWw5D0
「みんな――消してあげる」

284: 2008/06/25(水) 04:43:29.11 ID:wFeGWw5D0
「……ジュン!」

286: 2008/06/25(水) 04:49:09.02 ID:wFeGWw5D0
ガキィン!!

288: 2008/06/25(水) 04:56:42.63 ID:wFeGWw5D0

「ごきげんよう、ドールズ
「随分とお楽しみのようじゃなぁい?」

290: 2008/06/25(水) 05:05:17.46 ID:wFeGWw5D0
真紅「水銀燈!?」

薔薇水晶「……なんのつもり」

水銀燈「あらぁ、貴方が御自慢の水晶を見せびらかしているから、私の羽で飾ってあげただけよぉ?」

   「残念ながら両方とも散ってしまったけれど……それにしても、私をのけものにするだなんて酷いじゃないのぉ」

金糸雀「カナも忘れてもらっちゃ困るかしらー!」

292: 2008/06/25(水) 05:13:25.14 ID:wFeGWw5D0
蒼星石「水銀燈……なぜ君が?」

水銀燈「メイメイに貴方たちを探らせてみたら、雛苺の姿をした紛い物がいるって言うのよぉ……」

   「怪しいと思って来てみれば、案の定といったところねぇ」

翠星石「そうじゃなくて、どうしてお前が私たちを助けるですか! それとそこの黄色いのは私たちを解放するですぅ!!」

金糸雀「か、かしらー!?」

水銀燈「知らなかったぁ? 私はね、不意討ちも闇討ちも好きだけどねぇ――騙し討ちだけは、大っ嫌ぁいなの」

薔薇水晶「――だいきらい……なら、あなたも私が」

水銀燈「まあ待ちなさいよぉ、まだ言わなくちゃいけないことがあるの――小娘は黙ってなさぁい」

293: 2008/06/25(水) 05:18:10.85 ID:wFeGWw5D0
真紅「……水銀燈」

水銀燈「そんな目で見ないでよぉ」

真紅「助けてもらったとは、思わないのだわ……貸しを作りに来たわけではないのでしょう」

水銀燈「ええ、そうよぉ。それに今、私がひとつ言っておかなきゃならない相手は貴方じゃなくて――そこの人間よ」

ジュン「――え?」

296: 2008/06/25(水) 05:30:31.96 ID:wFeGWw5D0
水銀燈「真紅のミーディアム……貴方、さっき言ったわね?」

ジュン「ぼ、僕?」

水銀燈「ええ、――こんな悲しい戦いはやめて、眠るのが一番だって。私たちが辛い思いをする必要は無いって」

ジュン「……そうだよ。こんなに辛くて苦しい争いは、真紅たちには似合わない」

水銀燈「そう……優しいのね、貴方」

ジュン「僕は別に――」

水銀燈「――甘く見ないで頂戴!」

298: 2008/06/25(水) 05:37:48.04 ID:wFeGWw5D0
水銀燈「悲しいから眠れですって? 辛い戦いは捨ててしまえですって? ――的外れもいいところだわぁ!」

ジュン「な……」

水銀燈「私たちは気高く誇り高き薔薇乙女! 究極の少女アリスとなるべくして造られた人形なのよ!!」

   「くだらない憐みやみっともない諦めで私たちを侮辱しないでよねぇ……貴方、それでも真紅との契約を結んだ人間なのぉ?」

ジュン「ぼ、僕は」

水銀燈「もう結構よぉ。――真紅。後は自分でお言いなさい。この人間は貴方の選んだ、貴方のミーディアムなのだから」

299: 2008/06/25(水) 05:45:46.16 ID:wFeGWw5D0
真紅「……水銀燈の言う通りだわ、ジュン」

ジュン「真紅……」

真紅「私たちは闘うことを運命づけられた人形。例え眠りに就くことがあったとしても、それは次の闘いまでの急速に過ぎないのだわ」

ジュン「なんでだよ……真紅は幸せじゃなかったのか? みんなと一緒に、僕の家で暮らして……幸せだったろう?」

真紅「ええ、ジュン。貴方の家での暮らしは、とても安らかで、しかし賑やかで、かけがえのない素敵な毎日よ」

ジュン「なら、闘いだなんて――幸せな日々を想って眠ってしまえば、それで」

真紅「それ以上言ったら、怒るわ」

301: 2008/06/25(水) 05:48:38.30 ID:wFeGWw5D0
真紅「ねえ、ジュン。以前、私が言ったことを覚えている?」

ジュン「真紅が、言ったこと……?」

真紅「ええ。――闘うことは、生きることなのよ」

302: 2008/06/25(水) 05:54:10.11 ID:wFeGWw5D0
ジュン「そんなの……そんなの、僕には分からないよ!」

真紅「いいえ、貴方は知っているはずよジュン。貴方はいつも――いつも闘っていたわ」

ジュン「僕は、闘いなんて!」

真紅「闘っていたのだわ。貴方はいつも苛立っていた……小さな部屋と、家の中から出られない自分が許せずに」

ジュン「そんなこと」

真紅「このままでいいのかと、このままではいけないと、どうすればいいのかと、思っていたのだわ。考えていたのだわ」

ジュン「たかがそんなこと――!」

真紅「『そんなこと』よ、闘いというものは! あの長い眠りから覚めてから……貴方はそれすらしなかったのだわ!!」

304: 2008/06/25(水) 05:59:14.80 ID:wFeGWw5D0
ジュン「だって僕は……僕は、苦しんだりする必要なんてないんだ。辛い思いなんていらないんだ」

真紅「ジュン」

ジュン「だって、だって僕は幸せだもの。真紅がいてくれて嬉しいんだ。みんながいるから楽しいんだ。幸せなんだよ」

真紅「ジュン!」

ジュン「僕は……僕は……」

真紅「――ジュン。貴方は、自分が恵まれていると思う?」

ジュン「め、恵まれて……そうさ、僕は恵まれてるよ。世にも不思議な生きた人形に出会ったんだ」

   「普通じゃ考えられないような冒険をして……そうだよ、僕は、とても素敵なものに巡り合ったんだ。僕は恵まれてるんだ」

306: 2008/06/25(水) 06:04:25.22 ID:wFeGWw5D0
真紅「ジュン。貴方は決して、恵まれていない不幸な子ではないわ! しかし、決して素晴らしく幸せな訳ではないのよ!!」

ジュン「そ、そんなことない。そんなことないよ――」

真紅「貴方は、人よりも少し不幸せな子よ。ほんの少しの躓きで、道を見失ってしまって……」

  「でも、だからこそ、貴方は現状に不満を持っていいの。不安を抱えて、不平を言ってもいいのよ。ただしそれだけでは駄目だわ」

ジュン「だめ……?」

真紅「嫌なことを嫌と思うのは、正しいことよ。それでも……それをただ疎み、悔いて、嘆くだけではいけない」

ジュン「…………」

真紅「そう、貴方には自ら不満を拭い去るために努力することが許されている。そして自ら努力する義務があるのよ」

308: 2008/06/25(水) 06:07:32.92 ID:wFeGWw5D0
真紅「何度でも言うのだわ……闘うことが生きることよ、ジュン。あなたのそれは……闘いではない。ただの言い訳だわ!」

  「貴方の語る幸せは、みんな後ろ向きよ。後ろ向きの、言い訳で取り繕った、嘘の幸せよ」

ジュン「…………」

312: 2008/06/25(水) 06:14:41.13 ID:wFeGWw5D0
ジュン「……なら、僕はどうすればいい?」

   「闘うだなんて、ムリだよ。出来っこないよ……怖い。怖いんだ。怖いんだよ、真紅……」

翠星石「……誰だって、闘うのは怖いですよ」

ジュン「翠……星、石?」

蒼星石「僕も翠星石も、本当は闘うことが怖いんだよ、ジュンくん」

ジュン「そうせい、せき……」

蒼星石「怖くても、精一杯の勇気を振り絞って、進まなければいけないんだ」

翠星石「闘うことを捨てたら、どこにも行けないです。前へ行くことも、後ろに退くこともできなくなるです」

真紅「ジュン……今の貴方は、道にはぐれた迷子のようなもの。前後左右も分からずに、震えながら立ち尽くしているだけだわ」

315: 2008/06/25(水) 06:20:23.15 ID:wFeGWw5D0
ジュン「……何も見えないよ」

   「何も見えないんだ……怖い、怖いよ……僕はどこにも行けないんだよ」

真紅「足を踏み出すのよ、ジュン」

ジュン「できないよ! 踏み出した先に何もなかったら、落ちちゃうよ! 落ちたら二度と帰って来れないよ!!」

真紅「ジュン!!」

ジュン「う……」

真紅「ゆっくりでいいのだわ……勢いよく飛び出す必要なんて無いの。静かに、そこにある地面を確かめながら、こっちに来るのよ」

317: 2008/06/25(水) 06:24:56.03 ID:wFeGWw5D0
ジュン「し……しんく」

真紅「私は、ここにいる」

ジュン「真、紅……」

真紅「私はここにいるのだわ」

ジュン「真紅……」

真紅「おいで。怖がらないでいいのよ」

ジュン「真紅……」

真紅「こっちへ。私が、受け止めてあげるのだわ」

ジュン「真紅」

真紅「ジュン」

ジュン「真紅ぅ――」

318: 2008/06/25(水) 06:25:38.86 ID:wFeGWw5D0

真紅「……いい子ね、ジュン。よくやったのだわ」

321: 2008/06/25(水) 06:31:34.31 ID:wFeGWw5D0
翠星石「チビ人間ったらとんだ泣き虫ですね。ドえらく酷い顔ですよぅ。眼鏡をこっちによこすですぅ」

蒼星石「ほら、涙を拭いて」

金糸雀「あうあうあう……よく頑張ったのかしらー、すっごく立派なのかしらー……」

水銀燈「ふぅん……」

真紅「さ、ジュン。顔を上げて」

ジュン「真紅……みんな……ありがとう」

322: 2008/06/25(水) 06:36:46.38 ID:wFeGWw5D0
水銀燈「さて、もうこれ以上は待てないって顔ねぇ、薔薇水晶……そうでしょぉ?」

薔薇水晶「そう……もう、待てない……待たない」

翠星石「さっきは不覚をとったですが、今度は負けないですぅ」

蒼星石「あんな手、二度は通じないよ」

金糸雀「けーせーぎゃくてんかしらー!」

真紅「……行くわよ、ジュン」

ジュン「うん……」

真紅「貴方の力が、必要よ。――力を、貸してくれる?」

ジュン「――うん!」

325: 2008/06/25(水) 06:46:20.91 ID:wFeGWw5D0
薔薇水晶「お父様の作戦を、無駄にした……ゆるせない……ゆるさない……!」

蒼星石「見て、たくさんの結晶が一つに集まっていくよ――」

翠星石「なんて大きさですか……! それにこの形……」

金糸雀「お、おっきい竜かしらー!!」

水銀燈「私の二番煎じじゃないのぉ……気に喰わないわぁ」

ジュン「すごい……まだ大きくなるぞ? アレがこっちに突っ込んで来たらどうすりゃいいんだ?」

真紅「その答えはとてもシンプルだわ――水銀燈!」

水銀燈「……仕方ないわねぇ、今回だけよぉ?」

翠星石「不本意ですが、それしかないみたいですね」

蒼星石「全員の力を一点集中させた――協力同時攻撃だ」

328: 2008/06/25(水) 06:52:59.45 ID:wFeGWw5D0
ジュン「真紅、僕は……僕はどうすればいい?」

真紅「指輪に意識を集中して……ただ、想うのよ。強く」

ジュン「想う……?」

真紅「負けるものかと。勝ってみせると。そして――闘うと!」

金糸雀「き、来たかしら!! みんな準備はいいかしら!? カナの奏でる旋律に合わせて……さん、にぃ、いち――」

ジュン「うあぁ――――!!」

335: 2008/06/25(水) 07:31:15.34 ID:lli+aXxA0

――気が付いた時には、全て終わっていた。

   辺りを見回せば、そこらじゅうに水晶の欠片が飛び散っていて、巨大な竜も薔薇水晶も消え失せている。

   水晶の山に埋もれるように目を回している金糸雀がいた。

   翠星石と蒼星石は、お互いをかばうように体を重ね合っていた。

   水銀燈は漆黒の羽根をいくつか残しただけで、一人で去っていったらしい。

   そして僕は、肩にもたれかかる小さな女の子の重みを感じて、一度だけ、大きく息をついた。

343: 2008/06/25(水) 07:47:50.18 ID:lli+aXxA0
のり「あー、やっと帰って来たのねえジュンくんたち! 遅かったじゃないのお!!」

   あの古ぼけた鏡を通って家に帰ると、さっそく姉ちゃんに叱られた。

のり「もう……お昼に出かけたのに、もう晩御飯の時間よぉ?」

   とても長い間nのフィールドにいたと思っていたけれど、ものの数時間。短いような、やっぱり長いような。

   それはさておき、言っておかねばならないことがある。

ジュン「遅くなって、すいませんでした」

347: 2008/06/25(水) 09:02:38.03 ID:044TVg470
   ダイニングに行くと、当然のように雛苺がいた。

雛苺「あー、ジュンに真紅に翠星石に蒼星石に……えーっと」

金糸雀「どうしてみんなカナを忘れるのかしらー!?」

雛苺「あははー、みんなおかえりなのー」

   ただいま。いや、ただいまだけど。

翠星石「……なんでここにチビ苺がいるです?」

蒼星石「今度こそ、本物みたいだね……シワイチゴとかそういう粗悪品じゃなさそうだ」

のり「あー、ジュンくんたちがヒナちゃんを捜しに行ってからすぐにね? 和室の押し入れから出て来たのよお」

雛苺「あのね、かくれんぼしてたら眠くなってきて……気付いたらぐっすり寝ちゃってたのー」

真紅「……考えてみれば、ジュンがあの長い眠りに就いた頃から、雛苺の様子はおかしかったわよね?」

翠星石「あの頃から入れ替わったに違いないですけど……どういう睡眠サイクルですか……」

   まあ、なんにせよ。   

ジュン「ただいま、雛苺」

348: 2008/06/25(水) 09:16:00.61 ID:044TVg470
   さて。そんなこんなで汚れた服を変えて、顔を洗って一息ついてから、みんなして食卓に着席。

翠星石「あふぅ……翠星石はもうお腹がぺこぺこですぅ……」

蒼星石「流石に僕も疲れたよ……」

雛苺「ごーはーんー! ごーはーんー!」

金糸雀「今日はみっちゃんの帰りが遅いから、こっちで晩御飯をいただいてくのかしらー」

   思い思いに呟いて。まだかまだかと待ちわびて。

のり「さあさあ、今日はお姉ちゃん特製はなまるハンバーグよお! 焼きたてほかほか、めしあがれー!!」

   両手を合わせて、声を揃えて。

「「「「「「 いっただきまーす! 」」」」」」

349: 2008/06/25(水) 09:16:53.89 ID:044TVg470


   そして、その夜は、とてもいい夢を見たような気がする。


351: 2008/06/25(水) 09:23:15.50 ID:044TVg470
『……ュン、ジュン……なさい……ジュ……』

真紅「ジュン、ジュン? 起きなさい」

ジュン「ん――」

真紅「とてもいい天気よ、ジュン。起きてご飯を食べましょう」

ジュン「ああ……おはよう、真紅」

真紅「おはよう、ジュン。今日もよろしく」

     ‐完‐

352: 2008/06/25(水) 09:26:16.29 ID:kCOl91Tx0
乙!

引用: 真紅「ジュン、ジュン……起きなさい……」