1: 2008/07/01(火) 20:22:14.61 ID:6z+WXrZi0
「あつい・・・・」
梅雨明けの、熱い夏の日差し。その下で
桜田ジュンはまだ慣れない大学の構内をダラダラと歩いていた
「なんだってこんなに広いんだ・・・必要あるのか・・・?
この広さは・・・・・」
ぶつぶつ言いながら大学の前にあるバス停へ向かって行っていく
バスに乗ればクーラーがついてるはずだ・・・
4: 2008/07/01(火) 20:28:27.48 ID:6z+WXrZi0
桜田家にローゼンメイデン第五ドール真紅が来て
5年の月日が流れた
アリスゲームは蒼星石、雛苺がリタイアした時点で停止し
あれほど好戦的だった水銀燈も姿を見せなくなった
謎の第七ドール雪華綺晶も同様だ
金糸雀は相変わらずミーディアムの草笛みつと仲がよく
桜田家にもよく遊びに来る
翠星石は時折、みんなに隠れて泣いていたりするが
普段は憎たらしいほど元気だ
真紅も心配そうに鏡をのぞいていることが多いが
基本的には以前同様、マイペースに暮らしている
5年の月日が流れた
アリスゲームは蒼星石、雛苺がリタイアした時点で停止し
あれほど好戦的だった水銀燈も姿を見せなくなった
謎の第七ドール雪華綺晶も同様だ
金糸雀は相変わらずミーディアムの草笛みつと仲がよく
桜田家にもよく遊びに来る
翠星石は時折、みんなに隠れて泣いていたりするが
普段は憎たらしいほど元気だ
真紅も心配そうに鏡をのぞいていることが多いが
基本的には以前同様、マイペースに暮らしている
5: 2008/07/01(火) 20:32:16.40 ID:6z+WXrZi0
真紅、翠星石のミーディアム
たった今、大学構内でぶちぶち言っているこの男
桜田ジュンは
約5年前。nのフィールドで
真紅、翠星石、水銀燈を雪華綺晶の攻撃から救った後
真紅、翠星石と再契約し
それから少しして学業に復帰した
皆に心配された、急いでの復帰の理由はたくさんあるのだが
今のままでは遠くに行ってしまった雛苺に顔向けできない。
というのが一番大きかった。
たった今、大学構内でぶちぶち言っているこの男
桜田ジュンは
約5年前。nのフィールドで
真紅、翠星石、水銀燈を雪華綺晶の攻撃から救った後
真紅、翠星石と再契約し
それから少しして学業に復帰した
皆に心配された、急いでの復帰の理由はたくさんあるのだが
今のままでは遠くに行ってしまった雛苺に顔向けできない。
というのが一番大きかった。
7: 2008/07/01(火) 20:37:41.44 ID:6z+WXrZi0
中学2年の一学期分。空白は大きかったが
もともとジュンは頭が良かったのと、日々の頑張りで
遅れを取り戻すどころか、3年の終わりにはトップに立っていた
そして
高校、大学と受験に成功し
今、この広い構内を歩いているというわけである。
引きこもり期間のせいか、人と話すのはやはり苦手で友達は少なかったが
割と充実した日々を送っていた
もともとジュンは頭が良かったのと、日々の頑張りで
遅れを取り戻すどころか、3年の終わりにはトップに立っていた
そして
高校、大学と受験に成功し
今、この広い構内を歩いているというわけである。
引きこもり期間のせいか、人と話すのはやはり苦手で友達は少なかったが
割と充実した日々を送っていた
10: 2008/07/01(火) 20:40:24.30 ID:6z+WXrZi0
「ふぅ・・・」
ようやく構内を抜け出し、バス停でバスを待つ
「15時24分・・・すぐ来るな」
「こんにちは桜田君」
「うわぁ!!」
「・・・そんなに驚かなくてもいいじゃない。」
元雛苺のミーディアム、柏葉巴がすぐ後ろに立っている
今は同じ大学に通う学友である
ようやく構内を抜け出し、バス停でバスを待つ
「15時24分・・・すぐ来るな」
「こんにちは桜田君」
「うわぁ!!」
「・・・そんなに驚かなくてもいいじゃない。」
元雛苺のミーディアム、柏葉巴がすぐ後ろに立っている
今は同じ大学に通う学友である
11: 2008/07/01(火) 20:44:53.48 ID:6z+WXrZi0
雛苺が動かなくなった時、一番泣いていたのが巴だ。
罪悪感からジュンは巴と距離を置いていたが
仕方ないことだった、と巴は微笑んでいつものように接してくれた
ジュンが学校に戻れたのは彼女が居てくれたお陰だ
罪悪感からジュンは巴と距離を置いていたが
仕方ないことだった、と巴は微笑んでいつものように接してくれた
ジュンが学校に戻れたのは彼女が居てくれたお陰だ
12: 2008/07/01(火) 20:46:34.27 ID:6z+WXrZi0
15時24分。時間丁度にバスが来た。
乗り込む二人。
「涼しい・・・」
ジュンがほぅ・・・と息をつく
「ふふ・・・」
通路を挟んで、隣の席に座るのが二人の習慣になっていた
「・・・真紅たちは最近どうしてる?」
「ん・・元気だよ。翠星石は元気すぎるくらいさ」
「そう・・・。大学はどう?たのしい?」
「・・・なんか柏葉、姉ちゃんに似てきたぞ・・・どうしたんだ?」
「ふふ・・そう?桜田君見てると心配になるんだもの」
「失敬な。子供じゃないんだぞ」
移る景色の中、二人の会話は毎日こんなものである
乗り込む二人。
「涼しい・・・」
ジュンがほぅ・・・と息をつく
「ふふ・・・」
通路を挟んで、隣の席に座るのが二人の習慣になっていた
「・・・真紅たちは最近どうしてる?」
「ん・・元気だよ。翠星石は元気すぎるくらいさ」
「そう・・・。大学はどう?たのしい?」
「・・・なんか柏葉、姉ちゃんに似てきたぞ・・・どうしたんだ?」
「ふふ・・そう?桜田君見てると心配になるんだもの」
「失敬な。子供じゃないんだぞ」
移る景色の中、二人の会話は毎日こんなものである
15: 2008/07/01(火) 20:53:53.38 ID:6z+WXrZi0
7時ちょっと前
バスが停まる。
「じゃあな。柏葉」
「うん。ばいばい」
ジュンが先に降りる。前までは巴と一緒に降りて
家まで歩いていたのだが
姉がきゃーきゃーうるさいので、巴に一個後のバス停で降りるように頼んだのだった
そのバス停から少し歩いたところに桜田家がある
「ただいまー・・・ぶッ!!」
足元の紐に引っかかりジュンが転ぶ
バスが停まる。
「じゃあな。柏葉」
「うん。ばいばい」
ジュンが先に降りる。前までは巴と一緒に降りて
家まで歩いていたのだが
姉がきゃーきゃーうるさいので、巴に一個後のバス停で降りるように頼んだのだった
そのバス停から少し歩いたところに桜田家がある
「ただいまー・・・ぶッ!!」
足元の紐に引っかかりジュンが転ぶ
17: 2008/07/01(火) 20:58:50.69 ID:6z+WXrZi0
「うっし!!ざまーみろです、チビ人間!!」
おかえりも言わずにガッツポーズをとるのは第三ドールの翠星石だ
「お前か・・・性悪人形・・それに僕はもうチビじゃないって何度も・・うぐッ!!」
翠星石がジュンのあごを蹴っ飛ばす
「黙れです!お前はいつまでたっても心はチビ人間のままです!
おまえ翠星石の朝の楽しみ、カスピ海ヨーグルトを勝手に食べやがったですね!」
「う・・・食い意地人形め・・」
「なんですとー!!」
おかえりも言わずにガッツポーズをとるのは第三ドールの翠星石だ
「お前か・・・性悪人形・・それに僕はもうチビじゃないって何度も・・うぐッ!!」
翠星石がジュンのあごを蹴っ飛ばす
「黙れです!お前はいつまでたっても心はチビ人間のままです!
おまえ翠星石の朝の楽しみ、カスピ海ヨーグルトを勝手に食べやがったですね!」
「う・・・食い意地人形め・・」
「なんですとー!!」
18: 2008/07/01(火) 21:00:59.03 ID:6z+WXrZi0
「お帰り。ジュン」
本を脇に抱え、真紅がようやくお帰りを言った。
「ただいま・・。真紅こいつどうにかしてくれよ」
「貴方が悪いのだわジュン。あのカスピ海ヨーグルトは私のものでもあったのよ」
「く・・・食い意地人形がここにも・・・」
真紅と翠星石に叩かれたり、蹴られたりしながら
ようやくジュンはリビングにたどり着いた
「あれ?姉ちゃんは?」
「まだ帰ってないですよ。それよりカスピ海・・・」
「そうか。僕に早く帰ってこいって言ってたから・・・
自分はまだなのか・・・まったく」
本を脇に抱え、真紅がようやくお帰りを言った。
「ただいま・・。真紅こいつどうにかしてくれよ」
「貴方が悪いのだわジュン。あのカスピ海ヨーグルトは私のものでもあったのよ」
「く・・・食い意地人形がここにも・・・」
真紅と翠星石に叩かれたり、蹴られたりしながら
ようやくジュンはリビングにたどり着いた
「あれ?姉ちゃんは?」
「まだ帰ってないですよ。それよりカスピ海・・・」
「そうか。僕に早く帰ってこいって言ってたから・・・
自分はまだなのか・・・まったく」
19: 2008/07/01(火) 21:02:13.44 ID:6z+WXrZi0
昨日の夜、姉から話があるから明日は早く帰ってきてと
頼まれていたのだ
のりは高校を卒業した後、栄養士になるべく、専門学校で勉強をし
今はとある会社の食堂で働いている
ジュンの大学ものりの職場も家から近くはない、というか遠いのだが
二人とも家を出なかったのは、お互いを思いやってのことだった
「ジュン、カスピ海ヨーグルトを・・・」
「あーもう!どんだけヨーグルト好きなんだお前らは!」
小一時間ヨーグルトの話題が続き、いいかげん真紅たちも疲れてきたころ
頼まれていたのだ
のりは高校を卒業した後、栄養士になるべく、専門学校で勉強をし
今はとある会社の食堂で働いている
ジュンの大学ものりの職場も家から近くはない、というか遠いのだが
二人とも家を出なかったのは、お互いを思いやってのことだった
「ジュン、カスピ海ヨーグルトを・・・」
「あーもう!どんだけヨーグルト好きなんだお前らは!」
小一時間ヨーグルトの話題が続き、いいかげん真紅たちも疲れてきたころ
22: 2008/07/01(火) 21:07:38.89 ID:6z+WXrZi0
「ただいまー。遅くなってごめんねぇ」
「遅いぞー洗濯の・・・・」
三人同時にのりを出迎えたが、もう一人の人影が見えたのにジュンが気づき
すばやく二人を抱え、鏡の部屋に放り込んだ
「お・・・おおお帰り!・・そ・・そのひとは?」
(人がくるなら教えとけ!この洗濯のり!!)
ジュンがにらむ
「た・・・たたたただいま!えっと・・・」
(ごめん~ジュン君~!)
のりが苦笑いで言う
「えっと・・例の弟さん?」
端正な顔立ちの背の高い黒髪の男がのりに訊ねる
メガネを掛けていて、どことなくジュンに似ている
「うん・・・ジュンくん・・」
「?・・・いや、だからそちらはどなた様?」
「遅いぞー洗濯の・・・・」
三人同時にのりを出迎えたが、もう一人の人影が見えたのにジュンが気づき
すばやく二人を抱え、鏡の部屋に放り込んだ
「お・・・おおお帰り!・・そ・・そのひとは?」
(人がくるなら教えとけ!この洗濯のり!!)
ジュンがにらむ
「た・・・たたたただいま!えっと・・・」
(ごめん~ジュン君~!)
のりが苦笑いで言う
「えっと・・例の弟さん?」
端正な顔立ちの背の高い黒髪の男がのりに訊ねる
メガネを掛けていて、どことなくジュンに似ている
「うん・・・ジュンくん・・」
「?・・・いや、だからそちらはどなた様?」
24: 2008/07/01(火) 21:12:45.95 ID:6z+WXrZi0
姉の顔が赤い
「・・・・・・え・・とね」
わたしの・・・・旦那さん・・・・?」
「は?」
「・・・・はぁああああああああああああああああ!?」
ジュンが絶叫した
「お・・・落ち着いてジュン君!・・・予定!旦那さんの予定だから!!」
「落ち着けるか!!しっかり説明しろ!!」
そんな二人の様子をみて背の高いメガネの男はオロオロしていた
「・・・・・・え・・とね」
わたしの・・・・旦那さん・・・・?」
「は?」
「・・・・はぁああああああああああああああああ!?」
ジュンが絶叫した
「お・・・落ち着いてジュン君!・・・予定!旦那さんの予定だから!!」
「落ち着けるか!!しっかり説明しろ!!」
そんな二人の様子をみて背の高いメガネの男はオロオロしていた
25: 2008/07/01(火) 21:15:56.87 ID:6z+WXrZi0
真っ暗な鏡の部屋
「ジュン・・・あの子こんなところに私を閉じ込めて・・・
ただじゃおかないのだわ・・・・スイカ。」
「カスピ海ヨーグルト・・・」
「貴女まだ言ってたの?トマト・・・」
暇をもてあました二人は
食べ物限定しりとりという
とてつもなくどうでもいいゲームをしていた
「ジュン・・・あの子こんなところに私を閉じ込めて・・・
ただじゃおかないのだわ・・・・スイカ。」
「カスピ海ヨーグルト・・・」
「貴女まだ言ってたの?トマト・・・」
暇をもてあました二人は
食べ物限定しりとりという
とてつもなくどうでもいいゲームをしていた
26: 2008/07/01(火) 21:20:44.73 ID:6z+WXrZi0
一方明るいリビング
「あのね・・・こちら梅田宗士さん
私が働いてる会社の社員さんで」
ジュンがじろじろとこの宗士とかいう男を見る
男は困った顔をして視線をのりとジュンで行ったりきたりさせている
「・・・旦那さんってのはどういうことだ?」
「え・・・とね・・・・2ヵ月後・・・結婚しようと思うの・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・!!」
ジュンは驚いたというより呆れたという表情だった
「なんで言わなかったんだよ・・・・」
「だってジュン君にこんな話するの恥ずかしくて・・・」
「・・・・・はぁ・・」
「あのね・・・こちら梅田宗士さん
私が働いてる会社の社員さんで」
ジュンがじろじろとこの宗士とかいう男を見る
男は困った顔をして視線をのりとジュンで行ったりきたりさせている
「・・・旦那さんってのはどういうことだ?」
「え・・・とね・・・・2ヵ月後・・・結婚しようと思うの・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・!!」
ジュンは驚いたというより呆れたという表情だった
「なんで言わなかったんだよ・・・・」
「だってジュン君にこんな話するの恥ずかしくて・・・」
「・・・・・はぁ・・」
27: 2008/07/01(火) 21:23:13.52 ID:6z+WXrZi0
「あの!」
宗士が口を開く
「のりさんと出逢ったのはまだのりさんが学生のころで・・・」
「いや、二人の馴れ初めは聞いてないんだけどな・・」
会話の途切れるリビング
「・・・あのねジュン君!宗士さんは学生のときは生徒会長を務めてたこともあってね・・・」
「だから何なんだ・・・」
またもや静寂
「姉ちゃん。」
「・・・はい。」
宗士が口を開く
「のりさんと出逢ったのはまだのりさんが学生のころで・・・」
「いや、二人の馴れ初めは聞いてないんだけどな・・」
会話の途切れるリビング
「・・・あのねジュン君!宗士さんは学生のときは生徒会長を務めてたこともあってね・・・」
「だから何なんだ・・・」
またもや静寂
「姉ちゃん。」
「・・・はい。」
28: 2008/07/01(火) 21:25:58.67 ID:6z+WXrZi0
「僕は結婚には反対しない。けどこの人は認めないよ。」
「ジュン君・・・・」
「・・・・・・」
二人が落ち込んでいるのが目に見えてわかる
「あの・・・梅田さん?すいませんが今日はお引取り願えますか?
結婚は予定どおりしてもらって構わないんで」
「・・・・はい。急にお邪魔してすみませんでした・・・」
いつの間にかリビングの物陰からこの様子を真紅と翠星石が眺めていた
「こういうの・・・テレビで見たことあるですよ・・・」
「娘はやらん!ってやつね・・・」
29: 2008/07/01(火) 21:30:34.46 ID:6z+WXrZi0
来客の居なくなったリビングでジュンがコーヒーを飲んでいる
ジュンはなぜだかあの男が好きになれなかった
容姿は端麗だし、礼儀は正しかったし
おそらく人に好かれるタイプなんだろうな、とも思ったが
なんだか苦手なのだ
だが男のこと以上に、のりに腹が立っていた
「ねぇ、ジュンくぅん・・・」
「なんだよ、うるさいな。僕はもう寝るぞ」
「・・・・・ごめんねぇ。おやすみなさい。」
32: 2008/07/01(火) 21:34:09.78 ID:6z+WXrZi0
ジュンが部屋に戻ると真紅と翠星石がちょこんと座っていた
「ふふふ・・・のりもお年頃ですねぇ・・・」
「なぜあんな態度をとったの?相手に失礼だわ
のりが幸せになれるのよ。嬉しいことだわ」
そう言っているが、真紅の表情は神妙だった
「・・・別に。僕はあの男に腹を立てているわけじゃない。」
「? じゃあ何でそんなに不機嫌ですか?」
「・・・ふぅーー・・・・。コーヒー飲んで眠くないから
お前らに特別に話してやる。」
「??」
「僕も姉ちゃんもまだ子供の時のことだ」
33: 2008/07/01(火) 21:38:25.87 ID:6z+WXrZi0
桜田家は両親ともに外交関係の仕事をしている。
そのせいで、両親が家を空けることは多く
ジュンとのりの面倒は親戚や、近所の人がみていることもあった
そのせいかお互いのことは両親よりも良く知っているし
とても仲がよく、夫婦のような姉弟だった
34: 2008/07/01(火) 21:40:04.00 ID:6z+WXrZi0
「ねぇねぇ。ジュンくん。のりね
大人になったらジュンくんと結婚するの!」
「えー。お姉ちゃんはお姉ちゃんだから僕とは結婚できないんだよー」
「え~・・・やだぁ・・・」
「もー・・・・そうだ!だったらお姉ちゃんが結婚するときは僕が
ウエディングドレス作ってお祝いしてあげるよ!」
「ほんとぉ!?やったぁ!それならいいよー」
画用紙に二人でドレスの絵を描いて
こう、約束した
35: 2008/07/01(火) 21:43:10.89 ID:6z+WXrZi0
―――――――・・・・
「覚えてるのは僕だけなのかもな
こんな子供のときの約束なんて・・・」
「ぷぷぷーーーっ!そんな子供の時の約束忘れてて当然ですぅ!
そんなことで腹を立てるなんて、チビ人間はやはりチビ人間ですぅ!!」
「ちがうよ・・・・、忘れてたことを怒ってるんじゃ・・」
「何が違うですかぁ!!」
ばんっと翠星石が床を叩く
「・・・・・・・2ヶ月じゃ急がないと間に合わないだろ。ドレス。」
「・・・・・・!」
翠星石が目を丸くする
「おまえ・・・本当は嬉しいんじゃ・・・」
くすりと笑って真紅が口を開く
「・・・いい子ね、ジュン。
祝う気持ちというのは、思いやりがなければ持てないものだわ」
とびっきりのドレスを作ってあげるのよ。」
「素直じゃないやつですぅ」
「覚えてるのは僕だけなのかもな
こんな子供のときの約束なんて・・・」
「ぷぷぷーーーっ!そんな子供の時の約束忘れてて当然ですぅ!
そんなことで腹を立てるなんて、チビ人間はやはりチビ人間ですぅ!!」
「ちがうよ・・・・、忘れてたことを怒ってるんじゃ・・」
「何が違うですかぁ!!」
ばんっと翠星石が床を叩く
「・・・・・・・2ヶ月じゃ急がないと間に合わないだろ。ドレス。」
「・・・・・・!」
翠星石が目を丸くする
「おまえ・・・本当は嬉しいんじゃ・・・」
くすりと笑って真紅が口を開く
「・・・いい子ね、ジュン。
祝う気持ちというのは、思いやりがなければ持てないものだわ」
とびっきりのドレスを作ってあげるのよ。」
「素直じゃないやつですぅ」
36: 2008/07/01(火) 21:47:00.76 ID:6z+WXrZi0
リビング。のりが携帯で話す
左手はコーヒーカップの中をくるくると混ぜている
「今日は本当にごめんなさい・・・人見知りしちゃうの、あの子・・」
「うん。大丈夫だよ。弟さんの気持ちよくわかるし」
電話の相手は旦那さん(仮)の梅田宗士だ。
「ちょっとずつ打ち解けていけばいいさ。
今、彼にとって僕は大事な姉を奪っていく男にしか見えないだろうからね」
少し笑って言う。
「うん・・・そうねぇ・・」
「それじゃあ、おやすみなさい。また明日ね」
「おやすみなさい。」
37: 2008/07/01(火) 21:50:28.05 ID:6z+WXrZi0
携帯電話をテーブルにおき
頬杖をついて顔を膨らませる
「ジュン君のうそつき・・・」
そう言うと、すっかり冷めてしまったコーヒーはそのままに
リビングの電気を消し、のりはベッドに入っていった
38: 2008/07/01(火) 21:55:33.75 ID:6z+WXrZi0
翌日からジュンのウエディングドレス作りが始まった
薄いピンクの生地、のりをイメージして選んだものだ
ちくちくちくちく
細かな作業が続く
「・・・・・・・」
「・・・・・・・なんだよ、真紅」
「やはり、貴方の指は魔法の指ね」
うっとりとした表情で作業を見守る
「・・・大げさなやつ。気が散るからどっかいってろよなー」
そう言った後も真紅は作業を眺めていたが
しばらくすると静かに部屋から出て行った
薄いピンクの生地、のりをイメージして選んだものだ
ちくちくちくちく
細かな作業が続く
「・・・・・・・」
「・・・・・・・なんだよ、真紅」
「やはり、貴方の指は魔法の指ね」
うっとりとした表情で作業を見守る
「・・・大げさなやつ。気が散るからどっかいってろよなー」
そう言った後も真紅は作業を眺めていたが
しばらくすると静かに部屋から出て行った
40: 2008/07/01(火) 22:01:15.44 ID:6z+WXrZi0
「ヨーグルト、ヨーグルト・・」
リビングでは翠星石が冷蔵庫をあさっている
「まだヨーグルトなの?あなたお腹に悩みでもあるの?」
「真紅!!ち・・・違うです!マイブームってやつです!」
やれやれ、という風にソファーに座る
翠星石もヨーグルトのカップとスプーンを持って隣に座る
テレビをつけると「くんくん探偵4thシーズン」があっていた
真紅はやはり第一期が一番だと思った
43: 2008/07/01(火) 22:06:00.93 ID:6z+WXrZi0
「それにしてものりのドレス楽しみですねぇ
馬子にも衣装って言うですから
のりもそれなりに綺麗になるですよ、きっと」
パクパクとヨーグルトを口に運びながら翠星石が言う
「・・・・翠星石・・・結婚すると、お互いはお互いのために
一生を尽くさなければならないのだわ」
「?」
「・・いい?のりは結婚するともうこの家を出なければいけないのよ」
「え・・・・・・?」
ヨーグルトを食べるのをやめ、真紅を見つめる
一旦、静かに目を閉じ、諭すように真紅が言う
47: 2008/07/01(火) 22:09:29.98 ID:6z+WXrZi0
「のりは、あの男性に尽くさなくてはならない。
ジュンはともかく、私達のいるこの家ではあの二人は暮らせないわ」
「・・・・そんな・・・そんなの嫌です・・・」
目を潤ませ、ふるふると首を振る
「・・・大丈夫よ。のりが消えてなくなってしまうわけではないわ
いつでも会えるのだわ・・・」
「・・・・・・・・・・・」
ヨーグルトも食べかけのまま
くんくん探偵が流れるテレビの前
真紅も翠星石も黙ってしまった
「そうだわ!翠星石!」
何か閃いたように真紅が声を上げた
「?」
48: 2008/07/01(火) 22:14:14.70 ID:6z+WXrZi0
それから約二ヵ月たった
のりの結婚式の前日の昼のこと
二階。ジュンの部屋
凝った肩をくるくる回し刺繍の具合をみる
ここのところ大学もかなりサボったし
巴からも何度も心配の電話があった
「桜田君・・・もしかして、また不登校に・・・」
「・・・・・・心配ないってば」
だが実際かなり根つめて作業をしているので、ジュンは心身ともにぼろぼろだった
お陰で9割方できてはいるのだが、細かい刺繍がなかなか大変なのである
人形サイズは何度か作って慣れているが、人間サイズはやはり大変だ
「間に合うかなぁ・・・」
そう言ってからすぐに、首をぶんぶん振り、作業に戻った
51: 2008/07/01(火) 22:19:09.89 ID:6z+WXrZi0
ゴンッ!!と窓がなる
「うわ!なんだ!?」
窓に目をやる
と、そこには窓のへりにぶら下がる金糸雀がいた
「窓が閉まっているとは・・・予想外かしら・・・」
「何をやってるんだおまえは」
ジュンに引っ張られ部屋に入る
「みっちゃんがお仕事だから遊びに来たかしら!!」
元気な声が部屋に響く
「そうか、僕も忙しいから下にいってくれ」
「ん?なにかしら?そのドレス?はっ!もしかしてみっちゃんに!?」
顔を赤らめ、嬉しそうな表情で叫ぶ
「違うよ!うるさいやつだなぁ・・・」
「うわ!なんだ!?」
窓に目をやる
と、そこには窓のへりにぶら下がる金糸雀がいた
「窓が閉まっているとは・・・予想外かしら・・・」
「何をやってるんだおまえは」
ジュンに引っ張られ部屋に入る
「みっちゃんがお仕事だから遊びに来たかしら!!」
元気な声が部屋に響く
「そうか、僕も忙しいから下にいってくれ」
「ん?なにかしら?そのドレス?はっ!もしかしてみっちゃんに!?」
顔を赤らめ、嬉しそうな表情で叫ぶ
「違うよ!うるさいやつだなぁ・・・」
53: 2008/07/01(火) 22:23:23.81 ID:6z+WXrZi0
「!む~~~・・・うるさいなんて、なんてレディに失礼なのかしら!?
このっ!このっ!」
がんがんとジュンの脛を蹴る
「いっ・・・・この・・・金糸雀ぁぁ!!」
「キャー!!ジュンが切れたかしらー!!」
ドタバタと二人が階段を下りる
開いた窓から吹き込む風がドレスのレースを揺らしていた
54: 2008/07/01(火) 22:28:02.22 ID:6z+WXrZi0
金糸雀の逃げ込んだリビングでは真紅が紅茶を飲みながら何かを
いじっているようだった。
真紅はそれをさっと隠した
「あら、金糸雀。」
「真紅~助けてかしら~!ジュンがご乱心かしらー!」
「何がご乱心だ!!」
「ジュン。姉妹をいじめないで頂戴」
「真紅まで・・・・・」
「な~にごぉとでぇすかぁ~」
口をとがらせ、翠星石も入ってきた
「・・・・・・なんだ?その顔?」
「!!べっつにーです!お前に顔をとやかく言われたくないです!!」
「・・・どいつもこいつも・・・。真紅、二人の相手してやってくれよ」
「不本意だけど、のりのためなら仕方ないわ」
「のりがどうかしたのかしらー?」
56: 2008/07/01(火) 22:32:21.28 ID:6z+WXrZi0
ふぅ、とため息をついてジュンは階段を上った
開けっ放しのドアをくぐった時、ジュンは絶叫した
「ああああああああああああああーーーー!!」
「何事!?」真紅が階段を駆け上がってくる
「ど・・・ドレスがない・・・」
作業をしていたマネキンに掛けていたはずの薄いピンクのドレスが
どこにもない。
「そんな・・・・いったい誰が・・・・」
ジュンは崩れ落ち、両膝をついた
口をぽかんとあけ、ほうけている
「・・・・ホーリエに探させるわ。心配しないでジュン」
明日の、のりの結婚式まで24時間を切っていた
57: 2008/07/01(火) 22:35:14.09 ID:6z+WXrZi0
ちっちっちっと
時計が首をふる
時刻は午前0時を回っていた
ジュンはベッドに腰掛け、うつむいている
真紅は心配そうな表情でジュンの手を握っている
「・・・・真紅。ホーリエはまだか?」
「・・・・まだよ。」
時計に目をやる。
明日の式はお互いの学生時代の友人達も招いて、結構大きな会場でやると話を聞いた
明日のりが出かける前にドレスを渡そうと思っていたのに
これでは間に合わないな、とジュンは思った
62: 2008/07/01(火) 22:40:01.57 ID:6z+WXrZi0
「・・・・・・ジュン君?いるぅ?」
ドアの外からのりの声が聞こえる
「・・・・・うん」
「明日・・・来てね。お姉ちゃんからお願い。」
「・・・・・・・・・・・うん」
「・・・・・・・おやすみなさい」
ここのところ、のりとはほとんど会話していなかった
こんな僕がドレスなんかやっても姉ちゃんは喜ぶのかな・・・
そんなことばかりぐるぐる考えていた。
65: 2008/07/01(火) 22:44:39.71 ID:6z+WXrZi0
ふと、顔を上げると真紅がじーっと翠星石をみている
「・・・翠星石。あなた昼から何か様子がおかしいわね
落ち着きがないわ」
「えっ!!べっつにー!です!!」
また口がとんがっている
「怒らないから、何か知っているなら言いなさい」
「お・・・おい、性悪人形・・・お前まさか・・」
「・・・・・・・・・・・・・だって!」
「ドレスができてしまったら、のりはいなくなってしまうのでしょう・・・?」
「・・・・・・・は?」
68: 2008/07/01(火) 22:50:23.73 ID:6z+WXrZi0
「ドレスができてしまったら、のりは結婚してこの家から出て行ってしまうですよ!
チビ人間はそれでいいのですか!?」
「・・・翠星石。僕が作らなくてもきっとドレスはレンタルなり、なんなりしてると思うぞ」
「え!!」
「・・・貴女がドレスを隠したのね。翠星石。
言ったでしょう。今は離れても、のりにはいつでも会えるわ」
「でもぉ・・・」
翠星石の目には涙がたまっていた。
翠星石はのりと一番気が合ったし、これからもいっしょにクッキーや
スコーンを作りたいと思っていた
少し離れるだけだが、すでに二人も姉妹を失っている甘えん坊の翠星石は
もうこれ以上誰もいなくなってほしくないのだ
チビ人間はそれでいいのですか!?」
「・・・翠星石。僕が作らなくてもきっとドレスはレンタルなり、なんなりしてると思うぞ」
「え!!」
「・・・貴女がドレスを隠したのね。翠星石。
言ったでしょう。今は離れても、のりにはいつでも会えるわ」
「でもぉ・・・」
翠星石の目には涙がたまっていた。
翠星石はのりと一番気が合ったし、これからもいっしょにクッキーや
スコーンを作りたいと思っていた
少し離れるだけだが、すでに二人も姉妹を失っている甘えん坊の翠星石は
もうこれ以上誰もいなくなってほしくないのだ
70: 2008/07/01(火) 22:55:41.40 ID:6z+WXrZi0
「ジュンに約束を破らせるつもり・・・?」
「・・・・・・・」
「・・・・頼む、教えてくれ翠星石。どこに隠したんだ?」
「・・・・nのフィールド。スィドリームに遠くまで運べと言ったっきりですぅ・・・」
「・・・行こう!nのフィールドへ!!」
72: 2008/07/01(火) 23:00:41.91 ID:6z+WXrZi0
翌朝、宗士に迎えられたのりは
静かに家をでて、車で式場へ向かった
「ジュン君・・・来てくれるかしら・・・」
「大丈夫さ。君の自慢の弟だろう?」
「うん・・・」
自分の娘が結婚するというのに、パパとママは今も世界中を飛び回っている
簡単には帰ってこれない仕事だというのはわかっているが
正直ネグレクトなんじゃないかと疑ったことさえある
でも、最愛の弟が自分の晴れ姿を見てくれるなら、それでいいと
そう思って家を出たのだが
「はぁぁぁぁぁ・・・・」
夏も終わりに近づき
少しやわらかくなった日差しが町を照らす中
深い深いため息を、桜田のりはついた。
74: 2008/07/01(火) 23:03:45.28 ID:6z+WXrZi0
―――――nのフィールド
もう大分長い時間ドレスを探し回っている
ジュンの手を引き滑空する翠星石は後悔でいっぱいだった
自分勝手な気持ちで皆に迷惑をかけている、と
「おい。翠星石!スィドリームは近いのか?」
「・・・あっ・・はいです・・」
「・・・・・・」
ふんっと鼻をならし、ジュンが口を開く
「気にするな性悪人形。僕だって寂しいんだ
お前の気持ちはわかるよ」
「・・・・すまんかったです・・・」
「だから気にするなって」
落ち着いて見せたが、ジュンはそうとう焦っていた
75: 2008/07/01(火) 23:10:15.79 ID:6z+WXrZi0
「ジュンッ!!」
真紅の大声が響く
戦慄がはしった
「うわ!!白いイバラ!?」
いつの間にか翠星石と自分の足に絡み付いている。
「雪華綺晶・・・」
真紅が警戒と恐怖の表情を浮かべる
真っ白な薔薇と蜘蛛の巣のような茨
あの時、ジュンが助けに来なかったら、おそらく自分はここにいないだろう
5年前以来の緊張
真紅の大声が響く
戦慄がはしった
「うわ!!白いイバラ!?」
いつの間にか翠星石と自分の足に絡み付いている。
「雪華綺晶・・・」
真紅が警戒と恐怖の表情を浮かべる
真っ白な薔薇と蜘蛛の巣のような茨
あの時、ジュンが助けに来なかったら、おそらく自分はここにいないだろう
5年前以来の緊張
79: 2008/07/01(火) 23:15:55.56 ID:6z+WXrZi0
「くそっ!取れないぞ!」
今は雪華綺晶の姿は見えないがいずれここにやってくるはずだ
急がなければ、ドレスどころか、生きて式場に行くこともできなくなる
「真紅!ドレスを探してくれ!!姉ちゃんに届けるんだ!!」
「ジュン!?」
「5年前にも言っただろ・・・雪華綺晶は僕が何とかする。翠星石も僕が絶対守る!
だから・・・真紅は姉ちゃんのところに行ってくれ!!」
「ジュン・・・!貴方がのりに会わなくてどうするの!?
嫌よ!私は行かない!!」
「真紅!!」
真紅が二人に絡みついた茨を取ろうと、必氏に引っ張る
だが、その茨はついに真紅をも捕らえた
「うっ・・・」
81: 2008/07/01(火) 23:21:30.46 ID:6z+WXrZi0
「真紅!」
「そんな・・・翠星石のせいで・・・」
泣き出しそうな声でジュンに絡みついたイバラを引っ張る
とれない。
「ご・・・めん・・なさいで・・す」
ついに翠星石が涙をこぼした
そのとき
「そんな・・・翠星石のせいで・・・」
泣き出しそうな声でジュンに絡みついたイバラを引っ張る
とれない。
「ご・・・めん・・なさいで・・す」
ついに翠星石が涙をこぼした
そのとき
85: 2008/07/01(火) 23:27:01.16 ID:6z+WXrZi0
ちょきんっ
ジュンと翠星石がイバラから解放された
イバラはまるで刃物で切ったかのように切断されていた
「と・・・・とれた」
姿が見えたわけではない。翠星石は感じたのだ
「蒼星石!?近くにいるですか!!?」
「翠星石?どうしたの?」
真紅が不思議そうに翠星石をみる
はっとして後ろを向く。そこには
苺わだちに包まれた。のりのドレスがあった
「雛苺・・・?」
87: 2008/07/01(火) 23:31:00.46 ID:6z+WXrZi0
ゴッと強い風が吹いた。光が見える
「外だ・・・」
三人が光の穴に吸い込まれるとき
真紅と翠星石は確かに聞いた
(翠星石・・・。寂しがらないでいいよ。
僕はいつだって君のそばにいる。のりさんを祝福してあげて)
「そう・・・・・・ッ」
(しんくっ!のりにおめでとうって言っておいてなの!!)
「雛苺・・・」
再び強い風が吹いた。
「外だ・・・」
三人が光の穴に吸い込まれるとき
真紅と翠星石は確かに聞いた
(翠星石・・・。寂しがらないでいいよ。
僕はいつだって君のそばにいる。のりさんを祝福してあげて)
「そう・・・・・・ッ」
(しんくっ!のりにおめでとうって言っておいてなの!!)
「雛苺・・・」
再び強い風が吹いた。
90: 2008/07/01(火) 23:35:26.86 ID:6z+WXrZi0
式場。
もう多くの客人たちが集まり、準備もちゃくちゃくと進んでいた
一部をのぞいては。
「あの・・・桜田様・・。もうそろそろドレスをお召しにならないと
お時間が・・・・」
「・・すみません。もう少し待っていてもらえますか?お願いします」
係員が眉間にしわをよせ部屋から出て行く。
椅子に座り鏡に映る自分はまだシャツにズボンと。結婚式からはかけ離れた姿だ
新郎の宗士はもうきっと着替え終わっているのだろう
「・・・・・ジュン君。やっぱり忘れちゃったのかなぁ・・・約束。」
半ばあきらめ、係員を呼び戻そうと椅子を立った瞬間。
どさっ
「いってぇえぇぇ!!」「ですぅ!!」
93: 2008/07/01(火) 23:40:06.07 ID:6z+WXrZi0
さっきまで自分が映っていた鏡から弟と二体の人形が出てきたのである
「ジュン君!?」
「いててて・・・ねぇちゃん!」
ドレスを握り締めていたことを思い出しはっとする
「あ・・・姉ちゃん!ドレ・・・」そしてもうひとつ思い出した
刺繍がおわってない・・・・・
「ジュン君!?」
「いててて・・・ねぇちゃん!」
ドレスを握り締めていたことを思い出しはっとする
「あ・・・姉ちゃん!ドレ・・・」そしてもうひとつ思い出した
刺繍がおわってない・・・・・
94: 2008/07/01(火) 23:43:20.59 ID:6z+WXrZi0
一番大事な胸の部分の刺繍が中途半端なまま終わっているのである
不恰好なドレスだ
「・・・・・・・ゴメン・・姉ちゃん・・・ドレス、間に合わなかった」
「ジュン君・・・」のりがジュンをぎゅっと抱きしめる
「ありがとう。約束まもってくれたのねぇ・・・お姉ちゃん嬉しいわ」
「! 姉ちゃん、おぼえてたの?」
「当たり前じゃない・・・だってあの約束は。
・・・ジュン君のドレスで花嫁さんになるのは」
「お姉ちゃんの一生の夢だもの」
97: 2008/07/01(火) 23:47:56.61 ID:6z+WXrZi0
姉の優しい笑みに安堵し、涙がこぼれそうになるのを
ジュンは必氏にこらえた。
「でも・・・ゴメン・・まだ完成してないんだ・・・」
「心配ないわジュン」
「真紅?」
ごそごそと何かを探しながら真紅が歩み寄った。
「少しいびつになってしまったけど・・・翠星石もホラ。」
「ですぅ・・・」
98: 2008/07/01(火) 23:53:16.46 ID:6z+WXrZi0
フェルトで作ったフライパンと花丸ハンバーグ。
「私と翠星石の手作りなのだわ」
「これで刺繍の部分は隠れるです?」
「・・・・・・ふたりとも・・・!」
涙目だが嬉しそうにのりが笑う
「お前ら・・・フェルトって・・・ドレスに合わないだろ」
「硬いこと言わないのだわ!時間がないのでしょう
早く縫い付けなさい」
ホーリエから針と糸がでる。
「・・・ま、いいか!」
「私と翠星石の手作りなのだわ」
「これで刺繍の部分は隠れるです?」
「・・・・・・ふたりとも・・・!」
涙目だが嬉しそうにのりが笑う
「お前ら・・・フェルトって・・・ドレスに合わないだろ」
「硬いこと言わないのだわ!時間がないのでしょう
早く縫い付けなさい」
ホーリエから針と糸がでる。
「・・・ま、いいか!」
100: 2008/07/01(火) 23:55:06.59 ID:6z+WXrZi0
会場の入り口前
「のりさん遅いな・・・」
宗士がつぶやく。入場の準備は整っているが新婦が到着しない
「お待たせっ!宗士さん」
のりがドレスの端をつまんで走ってくる
「あっのりさん・・・そのドレスは?」
「うふふ・・・素敵でしょう?」
フライパンと花丸ハンバーグのフェルトがついた
薄いピンクの綺麗なドレス
「・・・・・・・・・うん!とっても綺麗だよ」
「ありがとう!」
顔を赤くして二人が言う
「それじゃあ、いきましょう。のりさん。転ばないようにね」
「はい・・・・」
大勢の拍手が二人を迎えた
「のりさん遅いな・・・」
宗士がつぶやく。入場の準備は整っているが新婦が到着しない
「お待たせっ!宗士さん」
のりがドレスの端をつまんで走ってくる
「あっのりさん・・・そのドレスは?」
「うふふ・・・素敵でしょう?」
フライパンと花丸ハンバーグのフェルトがついた
薄いピンクの綺麗なドレス
「・・・・・・・・・うん!とっても綺麗だよ」
「ありがとう!」
顔を赤くして二人が言う
「それじゃあ、いきましょう。のりさん。転ばないようにね」
「はい・・・・」
大勢の拍手が二人を迎えた
101: 2008/07/01(火) 23:56:44.66 ID:6z+WXrZi0
nのフィールド経由で来たため私服、しかも真紅と翠星石をつれていたため
会場には入れないジュンは
別のドアを少しだけ開け、そこから新郎新婦の入場を見ていた
大きな拍手
ドアが開き、二人が見えた
自分と姉が約束した、ウエディングドレス
姉の一生の夢・・・
それがゆっくり、ゆっくりヴァージンロードを歩いてきた
あふれた涙で幸せそうな姉の表情すべては見れなかったが
メインテーブルにたどり着くまで
姉が3回つまづいたのはジュンにもわかった
会場には入れないジュンは
別のドアを少しだけ開け、そこから新郎新婦の入場を見ていた
大きな拍手
ドアが開き、二人が見えた
自分と姉が約束した、ウエディングドレス
姉の一生の夢・・・
それがゆっくり、ゆっくりヴァージンロードを歩いてきた
あふれた涙で幸せそうな姉の表情すべては見れなかったが
メインテーブルにたどり着くまで
姉が3回つまづいたのはジュンにもわかった
105: 2008/07/01(火) 23:59:34.88 ID:6z+WXrZi0
新婦の控え室
「蒼星石・・・」
翠星石が鏡に手を触れつぶやく・・・
「蒼星石。翠星石は悪い子でした。自分勝手な思いで皆を振り回し
ジュンを危険にさらしてしまったです・・・」
「寂しい、寂しいと。自分のことばかりで・・・
私は蒼星石のことも、忘れていたのかもしれません」
「でも、蒼星石はあなたの傍にいるといったわ」
「!真紅・・」
「いいのよ貴女は寂しがり屋で。
距離は遠くても、確かにみんなすぐ傍にいるのだわ」
私も、ジュンも、のりも、金糸雀も、蒼星石も雛苺も。
いつでも寂しがって甘えればいいのだわ
だって私達は家族なのだもの」
「真紅ぅ・・・」
「よりそって生きていきましょう。翠星石?」
翠星石は真紅に抱きついて、久しぶりに人前で泣いた
「蒼星石・・・」
翠星石が鏡に手を触れつぶやく・・・
「蒼星石。翠星石は悪い子でした。自分勝手な思いで皆を振り回し
ジュンを危険にさらしてしまったです・・・」
「寂しい、寂しいと。自分のことばかりで・・・
私は蒼星石のことも、忘れていたのかもしれません」
「でも、蒼星石はあなたの傍にいるといったわ」
「!真紅・・」
「いいのよ貴女は寂しがり屋で。
距離は遠くても、確かにみんなすぐ傍にいるのだわ」
私も、ジュンも、のりも、金糸雀も、蒼星石も雛苺も。
いつでも寂しがって甘えればいいのだわ
だって私達は家族なのだもの」
「真紅ぅ・・・」
「よりそって生きていきましょう。翠星石?」
翠星石は真紅に抱きついて、久しぶりに人前で泣いた
107: 2008/07/02(水) 00:06:04.10 ID:M173D50F0
「いまお色直ししてるんだ。
のりさんが着替えたくないって会場でごねてるから
しばらく時間かかるかもね」
そういうとジュンの隣に座った
「あぁ。それで会場が盛り上がってるんですね・・・」
「あのドレス、君が作ったんだってね?」
「え・・・」
「お姉さん。自慢してたよ」くすっと笑う
「あの味付け海苔・・・」恥ずかしそうに言う
「・・・君のお姉さんは素敵だね。」
「?」
のりさんが着替えたくないって会場でごねてるから
しばらく時間かかるかもね」
そういうとジュンの隣に座った
「あぁ。それで会場が盛り上がってるんですね・・・」
「あのドレス、君が作ったんだってね?」
「え・・・」
「お姉さん。自慢してたよ」くすっと笑う
「あの味付け海苔・・・」恥ずかしそうに言う
「・・・君のお姉さんは素敵だね。」
「?」
108: 2008/07/02(水) 00:08:51.90 ID:M173D50F0
「彼女は僕のいままでの人生の中で一番やさしい人だ。」
「・・・・・はぁ」
「・・・・・・・僕はね、小学4年から中学2年まで不登校だったんだ」
「・・・えっ!!?・・・・だって生徒会長やってたって・・」
「うん。本当だよ。ひどいいじめにあってね。何とか自力で立ち直れたんだけど
やっぱり世間は冷たいね。生徒会長だって無理やりやらされたんだ
一度そういう目に遭うと、どうしても人はいじけてしまうものさ。だから
また、さらにいじめられる」
「そうだったんですか・・・」
やさしく微笑んで話しているがこの人の目には少し悲しさがある
意味もなしに感じていた嫌悪感は、この人が自分に似ているからだったのか
「でも・・・君のお姉さんだけは違った。いじけて人を避けていた僕を
やさしく包んでくれた。」
「・・・・・・」
「・・・・・はぁ」
「・・・・・・・僕はね、小学4年から中学2年まで不登校だったんだ」
「・・・えっ!!?・・・・だって生徒会長やってたって・・」
「うん。本当だよ。ひどいいじめにあってね。何とか自力で立ち直れたんだけど
やっぱり世間は冷たいね。生徒会長だって無理やりやらされたんだ
一度そういう目に遭うと、どうしても人はいじけてしまうものさ。だから
また、さらにいじめられる」
「そうだったんですか・・・」
やさしく微笑んで話しているがこの人の目には少し悲しさがある
意味もなしに感じていた嫌悪感は、この人が自分に似ているからだったのか
「でも・・・君のお姉さんだけは違った。いじけて人を避けていた僕を
やさしく包んでくれた。」
「・・・・・・」
109: 2008/07/02(水) 00:10:16.88 ID:M173D50F0
「君だって、彼女の優しさに支えられていたんじゃないのかい?」
「・・・・・・・・はい。
・・・・・・・・・・・・・・僕にとっても
最高の・・・自慢の姉です」
「うん。」にっこり笑って宗士は立ち上がった
「僕も君に認められるようにがんばって、彼女を守るよ
だから、これからもよろしくね。ジュン君」
きらきらしたさわやかな笑顔
自分を打ち明けてくれたこの人に、前までの嫌悪感はない
「・・・・・・はい。義兄さん。」
「・・・・・・・・・!」
驚いた表情をしていたが、宗士は再びにっこり笑い
式場へ戻っていった
「・・・・・・・・はい。
・・・・・・・・・・・・・・僕にとっても
最高の・・・自慢の姉です」
「うん。」にっこり笑って宗士は立ち上がった
「僕も君に認められるようにがんばって、彼女を守るよ
だから、これからもよろしくね。ジュン君」
きらきらしたさわやかな笑顔
自分を打ち明けてくれたこの人に、前までの嫌悪感はない
「・・・・・・はい。義兄さん。」
「・・・・・・・・・!」
驚いた表情をしていたが、宗士は再びにっこり笑い
式場へ戻っていった
111: 2008/07/02(水) 00:13:45.00 ID:M173D50F0
「あの、お色直しをー・・」
「いやです!着替えません!!」
ドッと会場に笑いが起きる
のりがお色直しを拒んでいるのだ
「もういいからそのままスピーチしちゃえー」
友人から声がかかる
司会進行もあきらめたように、どうぞ、とジェスチャーしている
マイクに向き直りのりはしゃんと背筋を伸ばした
「・・・・・・・・・えっと・・・」
「いやです!着替えません!!」
ドッと会場に笑いが起きる
のりがお色直しを拒んでいるのだ
「もういいからそのままスピーチしちゃえー」
友人から声がかかる
司会進行もあきらめたように、どうぞ、とジェスチャーしている
マイクに向き直りのりはしゃんと背筋を伸ばした
「・・・・・・・・・えっと・・・」
112: 2008/07/02(水) 00:15:37.81 ID:M173D50F0
「私には大好きな弟がいます!
弱くて、頑固者で、すぐいじけちゃうけど
本当はやさしくて、とってもえらい子なんです」
会場がくすくす笑っている
顔を真っ赤にしてのりが続ける
「宗士さんも、しんくちゃ・・・っとと・・・ジュン君も
私にとって何にもかえがたい、かけがえのない家族です!
これからもずっと
一生、寄り添って、支えあいながら
生きていきたいと思います
ジュン君、宗士さん、みんな、本当にありがとう。」
113: 2008/07/02(水) 00:17:59.44 ID:M173D50F0
会場に大きな拍手が響く
ジュンは会場のほうを眺めにこりと微笑む
真紅と翠星石は忍び込んだテーブルクロスの下
めいいっぱいのお祝いの気持ちをこめて拍手した
薄いピンクで
気の抜けたフェルトのついた花嫁は
大好きな家族に支えられて
この先も幸せになっていくことだろう
ジュンは会場のほうを眺めにこりと微笑む
真紅と翠星石は忍び込んだテーブルクロスの下
めいいっぱいのお祝いの気持ちをこめて拍手した
薄いピンクで
気の抜けたフェルトのついた花嫁は
大好きな家族に支えられて
この先も幸せになっていくことだろう
115: 2008/07/02(水) 00:21:07.30 ID:M173D50F0
「いってきまーす」
ジュンが家を出る。
「いってらっしゃいですぅ」
朝ご飯は翠星石が作るようになった
いつも早起きの真紅も作ろうとがんばっていたが
正直おいしくはなかったので、満場一致で翠星石がご飯係りになったのだ
「いってらっしゃい。」
ご飯係りを拒否された真紅は本を片手に言う。
117: 2008/07/02(水) 00:24:36.75 ID:M173D50F0
家をでて少し歩いたところに、巴がたっていた
その表情は明らかに怒っている
「・・・おはよう柏葉」
びくびくしながらジュンが言う
「・・・・どうして、のりさんの結婚のこと言ってくれなかったの?
・・・・・わたしだってお祝いしたかったのに」
「ごめん・・・でも、あいつしょっちゅう家に帰ってくるから・・・」
「それだけじゃない!無断で大学休んで・・・
・・・・・心配したのよ・・?」
潤んだ瞳でジュンを見つめる。
121: 2008/07/02(水) 00:28:03.48 ID:M173D50F0
「・・・・・やっぱり。柏葉、姉ちゃんに似てきたな。」
くすっとジュンが笑い言う
巴が顔を赤くする
「いこう、柏葉。バス来ちゃうぞ」
「桜田くん!まじめに聞いてるの!?」
122: 2008/07/02(水) 00:28:42.64 ID:M173D50F0
「ねぇ真紅。」
「なぁに?翠星石」
真紅が本を読みながら返事だけ返す
「・・・・えへへ~。なんでもないですっ」
「? おかしな子ね。」
123: 2008/07/02(水) 00:29:24.16 ID:M173D50F0
同じ目的のため、傷つけあう運命の姉妹
のはずなのだが
翠星石には真紅のいった『家族』という言葉が
翠星石にはたまらなく嬉しかった
「真紅。・・・蒼星石も雛苺も・・・絶対に元に戻すですよ」
「えぇ。そうね・・・・・」
そして、みんなでいっしょに、憎しみあったりしない
家族になりたい、と
柔らかくなった日差しの下
寄り添って・・・
おわり
のはずなのだが
翠星石には真紅のいった『家族』という言葉が
翠星石にはたまらなく嬉しかった
「真紅。・・・蒼星石も雛苺も・・・絶対に元に戻すですよ」
「えぇ。そうね・・・・・」
そして、みんなでいっしょに、憎しみあったりしない
家族になりたい、と
柔らかくなった日差しの下
寄り添って・・・
おわり
124: 2008/07/02(水) 00:30:47.95 ID:5PnHZ8Mj0
( ;∀;)イイハナシダナー
125: 2008/07/02(水) 00:31:07.77 ID:CG/PqxBC0
乙
128: 2008/07/02(水) 00:32:02.89 ID:M173D50F0
129: 2008/07/02(水) 00:32:27.46 ID:F1/PFIQw0
乙!!
131: 2008/07/02(水) 00:33:01.16 ID:dStqbjsbO
( ;∀;)イイハナシダナー
乙!
乙!
152: 2008/07/02(水) 01:13:43.35 ID:M173D50F0
読んでくれた人ありがとう。
今日は良スレ多くて、立てたの後悔した
またなんか書くんで
文と絵にピンときたら読んであげてください
じゃあノシ
引用: ローゼンメイデン「桜田のりの夢」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります