1: 2008/06/30(月) 22:49:17.00 ID:qmOPaLOVO
真「?」

JUM「お前何でそんな偉そうなの?ガラクタの分際で。ウザいんだけど」

真「ちょっとJUM、貴方私の下僕のくせに何を(ry」

JUM「黙れ」

ボコゥッ!ドカッ!バキ!

真「きゃあぁぁぁぁ!私の腕が!痛いわ!!やめてJUM!!」

翠「真紅はジャンクになったですぅ~www」

蒼「これじゃあアリスにはなれないねアハハハハハハ」

7: 2008/06/30(月) 22:58:19.12 ID:qmOPaLOVO
JUM「じゃあ謝ってくれる?」

真「?」

JUM「人形の分際で人間様に生意気な態度とって申し訳ありませんでしたって」

真「!!なんで私が!それに翠星石たちはどうなのよ!」


9: 2008/06/30(月) 23:03:05.97 ID:qmOPaLOVO
JUM「お前何も知らないんだな」

真「え?」

JUM「昨日くんくん見るとき他の奴らはいなかっただろ?」

真「そ、そういえばそうだったわね。でもそれがなんだというの?」

蒼「お父様にあったんだ」

真「!!!」

12: 2008/06/30(月) 23:08:27.21 ID:qmOPaLOVO
真「ちょっとなんで黙ってたのよ!」

翠「お父様が連れてくるなって」

真「!!!うそよ!!」

蒼「嘘じゃないよ」

真「だいたいアリスゲームは?」

蒼「あれはラプラスの魔が勝手に決めたんだ。お父様は戦いなんて望んでなんていなかったんだ」」

13: 2008/06/30(月) 23:14:39.95 ID:qmOPaLOVO
翠「真紅はお父様よりもくんくんのほうが好きですよね?」

真紅「何をいってるの!お父様が1番に決まってるわ!!」

蒼「じゃあお父様とくんくん、どっちに会いたい?」

真紅「それは・・・もちろんお父様だわ」

14: 2008/06/30(月) 23:19:02.96 ID:qmOPaLOVO
翠「嘘つくなですぅ!」

真「嘘じゃないわ!!!」

蒼「お父様は気付いてた。真紅は自分の事を思ってくれないって」

JUM「裏切り者だな!」

ドカッ!

真「痛!」

18: 2008/06/30(月) 23:25:38.41 ID:GoCbLB5v0
蒼「所詮は生ぬるい生活で堕落しきったお人形だね」

翠「私たちはあなたがくんくんに見入ってるときも戦っていたですぅ」

真「!・・・最近くんくんを見てないで何をしているのかと思ったら・・・」

19: 2008/06/30(月) 23:27:40.41 ID:GoCbLB5v0
蒼「僕たちはね、戦わなくちゃならないんだ」

翠「それがローゼンメイデンだから」

蒼「戦場にいないドールはただの人形にすぎない。僕たちは戦いの中でこそ僕たちでいられるんだ」

24: 2008/06/30(月) 23:40:06.82 ID:GoCbLB5v0
真「聞き捨てならないわね。あなたたちが私に勝てると?」

蒼「・・・もう勝負はついているよ」

真「何を・・・」

ドスッ

真「うっ!」

翠「私が背後から忍びよらせていた植物にもきづかないなんて・・・本当に堕ちたものですぅ」

蒼「失望したよ真紅。やはり君にはアリスになる資格はない」

真「・・・お父様は戦いを望んでいないんじゃなかったの?さっきそう言ってたじゃない!」

蒼「だから弱くてもしかたないって?詭弁はよしなよ。君の堕落はもっと前から始まっていたんだから」



27: 2008/07/01(火) 00:12:43.51 ID:Rlv7yFVs0
真「ジュン!いったいどこへいくつもり!?」

J「ローゼンのところさ。弟子入りして・・・僕もドールを創るのさ」

真「・・・・・・」

J「じゃ、バイバイ」

28: 2008/07/01(火) 00:18:34.17 ID:Rlv7yFVs0
>>26
見ていてくれている人がいるとは

真紅の周りにはだれもいな

真「・・・うう・・・グスッ」

雛「あれー真紅はなんで泣いてるのー?ジュンたちは?」

真「・・・もう・・・ここには帰らないかもしれないわ」

雛「えー、そんなのいやなのー」

真「グスッ・・・・・・大丈夫よ。帰らないならこっちから・・・こっちから見つけてやればいいのよ」

31: 2008/07/01(火) 00:22:02.12 ID:Rlv7yFVs0
真「フフフ・・・そうよ。見つけ出して・・・私をここまで辱めたことを後悔させてやるわ」

雛「真紅なんだか怖いの・・・」

真「ウフフフフ大丈夫よ。私のそばにいれば大丈夫だから。ね、雛苺は私の味方よね?」

雛「味方なのー」

32: 2008/07/01(火) 00:26:29.77 ID:Rlv7yFVs0
真「そうよね。そうよ、消すべきはあの二人・・・」

真「バラバラにしてやる・・・ジャンクにしてやるわ!」

水「あ~ら、真紅」

真「・・・水銀燈?」

水「あらあら体に穴があいてるわね~。それにこの植物・・・翠星石と喧嘩でもしたのかしらぁ」

36: 2008/07/01(火) 00:30:49.64 ID:Rlv7yFVs0
真「あなたには関係ないわ」

水「あらあら関係ないってことは・・・」

真「関係ないっていってるでしょ!」

水「ちょ、ちょっと、私は・・・」

真「うわああああ!」

バシン!

水「真紅!落ち着きなさい!」

真「はあはあ・・・・・・」

水「何があったか話しなさい」

39: 2008/07/01(火) 00:35:51.30 ID:Rlv7yFVs0
水「そう・・・そんなことが・・・」

真「そうよ・・・許せない・・・あの子たちなんか・・・あの子たちなんか!」

水(ここまでとりみだすなんて・・・よほどプライドをきずつけられたのね)

真「あいつらなんか・・・あいつらなんか」

水「真紅」

真「許さない・・・許せない!」

水「真紅!私の話を聞いて!お姉ちゃんの目をしっかり見なさい!」

41: 2008/07/01(火) 00:41:43.86 ID:Rlv7yFVs0
水「あの子たちがしたことは確かにひどいわ。でもジャンクなんて言葉を使わないで」

水「それに・・・あの子たちが言ったことは正しいわ」

真「・・・」

水「私たちはいずれ戦いあわなくてはならない。それはドールの宿命」

水「そりゃ私もあなたとは何回も戦ったわ。でもね・・・さっきあなたからお父様の言葉を聞いて思ったの」

水「お父様が望んでいないなら・・・私たちはなんで戦っているのだろうって」

42: 2008/07/01(火) 00:48:58.69 ID:Rlv7yFVs0
水「あの子たちの話がどこまで本当かは分からないけど、あの子たちも私たちも
誰かの掌で踊らされているのかもしれないわ」

水「それはラプラスの魔かもしれないしそうでないかもしれない」

水「でもこのままそのことに気づかず戦いつづけたらくやしいじゃない?」

真「・・・・・・」

43: 2008/07/01(火) 00:53:15.00 ID:Rlv7yFVs0
水「私たちは戦うべきものを見つけるために戦っているのかもしれないわね」

水「だから真紅。落ち着いて、頭を冷やして。今日はもう寝なさい」

真「・・・・・・ええ」

水「大丈夫よ。お姉ちゃんがついててあげるから・・・」

真「・・・おやすみなさい」

水「ええ、おやすみ」

45: 2008/07/01(火) 00:55:13.78 ID:Rlv7yFVs0
雛「なんだか今日の水銀燈はやさしいのー」

水「・・・そうね。戦うべき存在に・・・気づいたから」

水「あなたももう寝なさい」

雛「うん。おやすみなのー」

水「おやすみ」

46: 2008/07/01(火) 00:57:31.28 ID:Rlv7yFVs0
水(ハア・・・)

水(まったく世話のやける妹たちね・・・)

水(・・・そろそろ私も寝ましょうか)


48: 2008/07/01(火) 01:05:23.59 ID:Rlv7yFVs0
ある二人は、旧友と袂を分かち
ある一人は、己の昂ぶりを抑え
ある一人は、無邪気に瞳を閉じる
そしてある一人はそんな妹たちと運命を静かに憂う

それぞれの思いを胸に秘め、人形たちの夜は更けていく

67: 2008/07/01(火) 09:09:47.75 ID:YJgsDaqk0

~真紅たちが眠りにつく2時間前~

J「よし・・・行こう」

ピンポーン

ローゼン「おや、・・・はやかったね」

J「・・・ハイ」

真紅と別れたのち、ジュンはローゼンのもとをたずねていた。いつもの真紅の行動に不満
がたまっていたとはいえ、真紅のことを本当に見捨てられるはずもなく、ジュンはゆえに
ある決意を秘めてその扉をたたいた。

ローゼンの部屋はNのフィールドの内部に存在していたが、ジュンはそこに自由に出入りできる
よう、ローゼンからある「鍵」をもらっていた。ローゼンがなぜその鍵を預けてくれたのか、ジ
ュンにはいまだはかりかねてはいたが。



68: 2008/07/01(火) 09:20:11.06 ID:YJgsDaqk0
ローゼンの部屋になぜチャイムがついているのかという事情はここでは
割愛させていただく。小さいことを気にしているようでは自分の目標は
達成されないということを、ジュンは知っていた。

同じ頃、蒼星石と翠星石の二人は別のNのフィールドにいた。

翠「これからどうするです?」

蒼「決まっているだろう?一人づつドールを消していくのさ」

翠「そ、そうですね・・・・・・(蒼星石・・・)」

いずれは戦うことになる二人。だが少なくともひとりは、その現実から目を背ける
のに必氏だった。分かっていた。いずれは蒼星石とも戦わねばならないこと。分か
っていた。それがドールの宿命だということ。さきほど自分が真紅につきつけたば
かりの現実なのに・・・


70: 2008/07/01(火) 09:30:41.77 ID:YJgsDaqk0
J「ローゼン、あなたに聞きたいことと頼みたいことがあるんだ」

ロ「まあその前に、お茶でも飲みたまえよ。あせらなくても世界は逃げはしない」

さっき会ったときも思ったが、まったく不思議な言い回しをする人だ。勧められるままに
飲んだ紅茶は、少し苦かった。

J「さっき言ったこと・・・本当なの?戦いは望んでいないって」

ロ「・・・そうだな。最初は望んでいた。それは認めよう。だが長い年月を生きるうちに、
アリスとは何も強さだけでなれるものではないと気づいたんだ」

ジュン「それじゃあ・・・今はどんなドールがアリスになるべきだと?」

ロ「君にもいずれ分かる。それより君の頼みとやらをきこうか」

71: 2008/07/01(火) 09:39:25.80 ID:YJgsDaqk0
J「僕を・・・弟子にしてほしいんだ」

ロ「ほう、それはまたどうしてかな?」

J「傷ついたドールを・・・直してやりたい」

ロ「ということは傷つく原因たる彼女たちの戦いには反対はしないと?」

J「!・・・・・・」

ロ「ハハハ、少し意地悪をしてしまったな。私のいいたいことは君は彼女たち
を癒してあげたいのか、あるいは彼女たちに戦ってほしくないのかハッキリし
てほしいということだ。君の望みはなんだ?私の弟子になってなにを得る?」

72: 2008/07/01(火) 09:56:25.42 ID:YJgsDaqk0
J「傷ついてほしくない。でもそれ以上に傷つけあってほしくない」

J「でもつまるところ・・・僕はただあいつらと一緒に暮らしたいだけなんだ」

ロ「人形と暮らしたい・・・か。とんだ夢見る少年だな」

J「・・・・・・」

ロ「ハハハ、私にそっくりだ。いいとも弟子にしてあげよう」

J「!・・・ありがとう!」

ロ「じゃ、この本を」

とりだしましたるは分厚い書物。理科が好きでないジュンにとっては見ていてあまり
気分のいいものではないたくさんの記号や図が、表紙を埋め尽くしていた。

J「これは・・・錬金術書?」

ロ「ドールの心臓たるローザミスティカの創造は錬金術によるところが大きい」

ロ「ま、初めて読んでも分からないだろうけどそこは自分で調べたまえ。あと私は
いっさい手助けしないからよろしく。内容を理解できるようになったらまたおいで」

とんでもない人に弟子入りした感を否めないジュンであった。




73: 2008/07/01(火) 10:06:21.83 ID:YJgsDaqk0
~翌日、桜田家~

真「はあ~おはようなのだわ」

雛「おはよう。雛はまだ眠いの~」

水「おはよう。あなたたちちょっと聞きたいのだけれど、たしかジュン君にはお姉さんがいたわね?」

真「ええ、のりは昨日から部活の合宿よ。明日まで帰ってこないわ」

水「そう。ならいいわ。さあ行きましょう」

真「行くってどこへ?」

水「鏡のある部屋よ」

75: 2008/07/01(火) 10:15:42.11 ID:YJgsDaqk0
真「水銀燈?Nのフィールドへいくつもりなの?」

水「そうよ。お父様に会いにいくわ。蒼星石たちがもし本当に会えたならわたしたちにも会えるはず」

真「でも・・・」

水「大丈夫。あなたは立派なドールよ。姉として保証するから。ね?自信を持って」

真「・・・ありがとう」

雛「雛も行くのー」

水「ええ。どれくらい漂えば会えるか分からないけれど、とにかくフィールドに入りましょう」

77: 2008/07/01(火) 10:48:41.69 ID:YJgsDaqk0
一方その頃の蒼星石と翠星石

蒼「クッ・・・苦しい」

翠「ほんとです・・・何か・・・胸をしめつけられるような・・・」

蒼「しかたない。一度フィールドから出ておじいさんの家に行こう」

ドールたちは人形であるがゆえに、その機能や構造の単純さに比して精神が非常に複雑である。
ローザミスティカの力は人形を動かす心臓というよりも精神の営みを作りだす「心」に近い。
真紅たちとのわかれで少なからず動揺した心が、精神世界の粋たるNのフィールドに影響を受け
たことにはなんの不思議もないが、蒼星石たちはそれには気づいていなかった。心の奥底に眠る
戦いへの迷いの存在に。




 

78: 2008/07/01(火) 10:57:40.92 ID:YJgsDaqk0
真紅たちがNのフィールドに入った約12分後

ジュン「ただいま~」

ガチャ

ジュン「あれ?真紅たちいないのか?・・・まああんなこと言ったあとだし
なあ。でも謝っておきたかったのに」

ジュン「しかたない。とりあえすローゼン、いや師匠にもらったこの本を読むとしよう」

ジュン「うーん難しいな・・・ちゃんと学校いっとけばよかったな」

実際は中学校の勉強程度で理解できるレベルの本ではなかったが、いつも図書室で勉強する習慣がついていたおかげで
調べながら読むという作業はジュンにとって苦にならなかった。中学校の図書室ではもはや蔵書量がたりないので、近
くの図書館でひたすら勉強に徹した。


79: 2008/07/01(火) 11:11:27.52 ID:YJgsDaqk0
現実世界で日が暮れる頃になっても、真紅たちはいまだフィールドをさまよっていた。
その間、不思議と落ちついた心で真紅は考え続けていた。

自分たちはなんのために戦うのか

アリスとはなんなのか

自分たちは・・・なんのために生まれてきたのか

自分たちローゼンメイデンを戦いに駆り立てる本来の目的は、アリスになってお父様と会う
ことだった。しかし、お父様に一度会った蒼星石と翠星石は、それでもアリスになりたいと
願い続けている。他の姉妹を犠牲にしてでも。もはや「アリス」という存在になること自体
が至高の夢となっているのかもしれない。

80: 2008/07/01(火) 11:25:51.02 ID:YJgsDaqk0
「不完全な存在は、完全な存在に憧れる」

「人は体を守りたいと考え、衣服を作り出した」

「安寧を求め、家を作り出した」

「空を飛びたいと願い、それすら叶えた」

「それでも人は、完全には程遠い」

「そして人形もまた然り」


81: 2008/07/01(火) 11:32:37.18 ID:YJgsDaqk0
「完璧な存在は、美しさと味気なさを併せ持つ」

「ひとしきりその美しさをめでた後に残るのは、もうこれ以上進歩することのないただの個体」

「完璧な存在はそこで止まる」

「それに比べ、不完全なる人形の、なんと美しいことか」

「アリスとは『概念』であり、『存在』してはいけないものである」

J「これが・・・アリスの真実か」

82: 2008/07/01(火) 11:47:14.60 ID:YJgsDaqk0
J「早く師匠のところに・・・」

J「う・・・ん、なんだ?急に眠く・・・」

・・・・・・





「これは復讐なんですよ」

83: 2008/07/01(火) 12:01:57.50 ID:YJgsDaqk0
ジュン

ジュン

「ジュン「ジュン「ジュン「ジュン」ジュン」ジュン」ジュン」

なんだよ・・・?

誰だよ・・・僕を呼ぶのは?

いや・・・誰も呼んでいない

僕は誰にも呼ばれていない

ボクハダレニモヒツヨウトサレテイナイ

J「うわああ!」

「お気づきになりましたか?」

84: 2008/07/01(火) 12:39:19.38 ID:YJgsDaqk0
J「お前は・・・ラプラス!」

ラ「はやる気持ちは命取り。このフィールドでは心を落ち着けたほうがよろしい」

J「お前が・・・みんなをそそのかしたのか?」

88: 2008/07/01(火) 13:05:27.57 ID:YJgsDaqk0
ラ「私はきっかけを与えたにすぎない。人形の心は今もかき乱されている」

J「なぜこんなことを!」

ラ「もうすぐわかります。役者が揃ったら」

J「何・・・?」

ラ「待ちましょう。全ての駒がそろうのを」

100: 2008/07/01(火) 18:00:39.22 ID:8jDTWb/r0
ジュンが連れ去られた直後、桜田家

金糸雀「ほほほ、今日こそ真紅たちのローザミスティカをいただくかしら!」

金「ふむふむ、一階には誰もいない・・・というより家の中に誰もいないかしら」

金「ほ~ほっほ、カナを恐れて逃げ出したかしら~」

「こんにちわ」

金「!・・・あなたは・・・?」

101: 2008/07/01(火) 18:05:34.46 ID:8jDTWb/r0
雪華綺晶「私は・・・雪華綺晶。ローゼンメイデンの第六ドール」

金「きらきしょう・・・?」

雪「ごめんなさいね。あなたのローザミスティカをいただくわ」

ヒュッ

金「!」

金「アリスゲームなのね?でもそう簡単にはいかないかしら!」

102: 2008/07/01(火) 18:10:01.04 ID:8jDTWb/r0
訂正

雪華綺晶「私は・・・雪華綺晶。ローゼンメイデンの第七ドール」

金「きらきしょう・・・?」

雪「ごめんなさいね。あなたのローザミスティカをいただくわ」

ヒュッ

金「!」

金「アリスゲームなのね?でもそう簡単にはいかないかしら!」

104: 2008/07/01(火) 18:16:29.72 ID:8jDTWb/r0
J「ラプラス、なぜ僕をさらったんだ?」

ラ「・・・あの家では直に争いが起こる。そこに君がいては邪魔でして」

J「争い・・・?それに僕が邪魔になると?」

ラ「もし目の前で人形たちの争いが始まったら・・・君はそれを止めようとするでしょう?心優しき少年よ」

105: 2008/07/01(火) 18:24:57.80 ID:8jDTWb/r0
金「つ、強いのかしら・・・」

雪「あら上出来よ。この私の服に傷をつけられたのだから」

金「・・・・・・」

雪「さて・・・そろそろかしらね」

金糸雀は体を白薔薇で縛られうめいている。雪華綺晶はその様子を、ほのかに狂気をはらんだ瞳で静かに見つめている。
ジュンがもしこの場所に居合わせれていたなら、確かに彼は止めに入っただろう。

そして同刻、双子の人形が桜田家に迫っていた。

107: 2008/07/01(火) 18:36:04.22 ID:8jDTWb/r0
翠「蒼星石!本当にジュンの家に行くのですか?」

蒼「ああ。金糸雀は自分のミーディアムの家にいなかった。とういことは、いつもの
ようにジュン君の家に忍び込んでいるんだろう。今が夜でよかった。飛んでいても周
りには気づかれない」

翠「本当に金糸雀を・・・倒すのですか?私たちは姉妹なんですよ!?」

蒼「・・・・・・もう、止まれないんだ」

双子といえどその考えの隔たりは大きかった。翠星石は姉として妹を止めるべきなのか、
ドールとしてこの戦いを見届けるべきなのか迷い続けていた。一方で蒼星石の心も揺れ
てはいた。このまま全てのドールを滅ぼすことが正しいのか?そうなればいずれは翠星石
とも・・・。姉妹の仲でただ二人、双子として生まれたゆえに、決断が鈍るのは必然であ
った。その動揺がNのフィールドでの発作を起こしたことを彼女たちが知る由はない。

108: 2008/07/01(火) 18:43:37.88 ID:8jDTWb/r0
J「あの家で四人がが戦いを!?」

ラ「あの四個の魂はもつれあい、やがては精神のかごに落ちる」

J「Nのフィールドか・・・!」

駒、役者、そして四個。ドールたちのことを「人」どころか「生ける人形」としてすら
扱わないその物言いに、ジュンは静かなる怒りを感じていた。

109: 2008/07/01(火) 18:51:15.19 ID:8jDTWb/r0
雪華綺晶という名前はきいたことがなかったが、おそらく第七ドールなのだろう。ラプラスの全てを見透かすかのような
語りは続く。

ラ「真紅と雛苺も今はNのフィールドにいる。『お父様』を探すためにね」

「お父様」の部分にたっぷりと抑揚をつけて言ったラプラスの顔は、かすかにゆがんでいた。

J「お前・・・ローゼンとどういう関係なんだよ」

ラ「・・・彼は・・・私を見捨てました。作りかけの・・・人形としてね」

113: 2008/07/01(火) 19:42:21.52 ID:qAmK9Q2y0
雪「来たわね・・・」

蒼「いたぞ!金糸雀だ」

翠「横にいるのは・・・?」

雪「私は第七ドールの雪華綺晶。続きは向こうで話しましょう」

言うなり雪華綺晶は、金糸雀を連れて鏡の向こうへ消えた。

蒼「第七ドール・・・?とにかく後を追おう!」

114: 2008/07/01(火) 19:52:27.08 ID:qAmK9Q2y0
J「作られた・・・?」

ラ「ああそうそう、雪華綺晶は・・・実は私のしもべでして。彼女は唯一実体の無い無のドール。
ゆえに、その心をのっとるのは簡単でした。まあそのおかげで実体化できたわけですが。」

無?実体化?質問を無視されたうえに訳の分からないことをいわれて、ジュンはいささか混乱していた。

ラ「ところで君が先ほど読んでいた本、ローゼンのものですね?」

J「な、なぜそれを・・・」

ラ「私も読んだことがあるからです。その本はローゼン本人が記したもの。ローゼン
の人形観がそこには書いてある」

J「裏表紙に書かれていた完全なものはどうのこうのってやつのことか?」

ラ「そう。そして私がもっとも嫌いな一文がそこには記されている」

ラ「『完璧な存在はそこで止まる』という一文がね」


116: 2008/07/01(火) 20:03:01.08 ID:qAmK9Q2y0
J「どういう意味だよ?」

ラ「まだお気づきになりませんか?」

ラ「それは・・・おや、フフフ、どうやら揃ったようですね」

J「揃った?」

ラ「蒼星石と翠星石が君の家に行くことは分かっていました。真紅と雛苺には簡単にけりをつけられる。実際に追い詰めましたしね。
かといって水銀燈の居場所は分からない。そして七番目のドールにはあったことすらないとなれば、所在の分かっている金糸雀の
もとに向かうのは必然。しかし金糸雀は家にはいない。残るは君の家だけです」

117: 2008/07/01(火) 20:09:33.48 ID:qAmK9Q2y0
ラ「だから君の家に向かわせた雪華綺晶には、こういう指示をしておきました」

ラ「直に蒼星石と翠星石がそこに行く。二人が来たら金糸雀を連れてNのフィールド
に入れ、とね」

ラ「謎のドールに七番目の姉妹という発言、おまけに金糸雀をつれて消えたとなれば、
二人は後を追うに決まっています」

ラ「七体のドール全員が別々とはいえNのフィールドに集まるのはめずらしいことでし
てね。しかし今、条件は揃いました」


119: 2008/07/01(火) 20:17:32.78 ID:qAmK9Q2y0
J「なんで揃ったと分かるんだよ?」

ラ「他のドールと同じように私にも能力があります。空間の把握と操作、もっともこれは
Nのフィールド内に限られますがね」

ラ「だから私には、例え別のフィールドであろうと誰がどこにいるか分かってしまうんですよ」

ラ「そして・・・」

J「!」

空間がゆがんでいくのがジュンの肉眼でも分かった。

ラ「そのドールたちを私のフィールドに召還することも可能ということです」

ラ「フフフ、そろそろ開幕です。他の役者にも登場してもらいましょう」



言い終わるとラプラスは

120: 2008/07/01(火) 20:23:49.36 ID:qAmK9Q2y0
ラプラスは足元に手をかざした。空間が超音波のような音をたててさらにゆがみ、次第に破れていく。

真「キャア!」

水「これは・・・引き寄せられる!?」


翠「いやあああ!引っ張られるですぅ!」

蒼「一体・・・何が・・・」

ラ「これが私の力です。・・・作りかけの人形としてあたえられた・・・ね」



121: 2008/07/01(火) 20:31:56.79 ID:qAmK9Q2y0
空間に大きな穴が開いた。耳を押さえながら見てみると、ドールたちが一斉に吐き出され、
周りに落ちてきた。耳を通して頭を揺さぶる音波にたえながら、ジュンはひとつの結論にた
どり着く。

J「そうか・・・こいつは・・・」


翠「いててです・・・」

真「ここは・・・!ジュン!?なんでここに・・・」

ラ「ごきげんよう。ローゼンメイデン諸君」





122: 2008/07/01(火) 20:39:59.58 ID:qAmK9Q2y0
真「ラプラスの魔!?これはあなたの仕業なの?」

ラ「ええ、そのとおり」

真「そんな・・・あなたは傍観者のはずじゃ・・・」

ラ「そういう役回りに徹していただけのこと。あの男への・・・これは復讐なんですよ」

真「あの男・・・?」

ラ「私を作りかけで捨て置いた・・・我らがお父様ですよ」

123: 2008/07/01(火) 20:56:18.59 ID:qAmK9Q2y0
水「作られた・・・?あなたもお父様につくられたと?」

ラ「そう。ローゼンは私を作っている途中に人生観を変えた。もともと優秀な人形師だったローゼンは、
その才能と経験を活かして『完璧な存在』を目指し一体の人形を作り始めた。しかし長い制作期間の間に
いろいろなものに感化されたあの男は、完璧さは進歩を止めると断じて、こともあろうに完成間近だった
その人形の製作を投げ出した。そして今度は『進歩していく存在』を目指し、あなたたちの製作に取り掛
かったのです」

蒼「じゃあ君は・・・」

ラ「・・・ええ、私は後にアリスと呼ばれることになる『完璧な存在』にもっとも近い失敗作」

ラ「ローゼンメイデンの第零ドールです」

の醜さを完璧な私は君たちよりも前に作られた彼の

124: 2008/07/01(火) 20:56:57.98 ID:qAmK9Q2y0
水「作られた・・・?あなたもお父様につくられたと?」

ラ「そう。ローゼンは私を作っている途中に人生観を変えた。もともと優秀な人形師だったローゼンは、
その才能と経験を活かして『完璧な存在』を目指し一体の人形を作り始めた。しかし長い制作期間の間に
いろいろなものに感化されたあの男は、完璧さは進歩を止めると断じて、こともあろうに完成間近だった
その人形の製作を投げ出した。そして今度は『進歩していく存在』を目指し、あなたたちの製作に取り掛
かったのです」

蒼「じゃあ君は・・・」

ラ「・・・ええ、私は後にアリスと呼ばれることになる『完璧な存在』にもっとも近い失敗作」

ラ「ローゼンメイデンの第零ドールです」


127: 2008/07/01(火) 21:07:41.53 ID:qAmK9Q2y0
ラ「私は彼を憎んだ。ローザミスティカまで与えておきながら、彼は私の「顔」の部分を
作らなかったのです」

ラ「私は手探りで近くにある人形の顔をもぎ取りました。それがこの顔です」

ラ「私はそのとき思いました。あの男に踊らされる道化には、この顔はふさわしいと」

ラ「そして私は彼のもとから逃げ出し、世界を回りました。あなたたちの噂を聞きつけ、再び故郷に帰ったのは何年もたったあとでした」

ラ「血を、いや魂を分けた妹たちが『完璧な存在』を目指して戦う、そんなシナリオが頭にうかんだのもこのときです」

130: 2008/07/01(火) 21:18:06.42 ID:qAmK9Q2y0
ラ「自分の作り出したいわば娘たちが争いあい、つぶしあう。あの男にはこれ以上ない苦しみにちがいない」

ラ「私は執念でローゼンを見つけ出してNのフィールドに幽閉し、すでに完成していたあなたたちのローザミスティカにこう呼びかけました」

ラ「『お父様は完璧な存在をもとめている。完璧な存在であるアリスにしか会うつもりはない』とね」

J「そんなことが・・・」

ラ「精神世界であるNのフィールドを操れるということは、精神に介入するのも難しくはないということです」

ラ「ましてや同じローザミスティカという魂を分け合った間柄ですからね」

134: 2008/07/01(火) 21:27:09.64 ID:qAmK9Q2y0
ラ「戦いという宿命を背負わせた悲しき人形のねじを、私は巻いてやりました」

ラ「あなたがたがお父様にねじを巻かれたと勘違いしたのは、おそらく直前まで私がお父様のイメージを
あなたたちのローザミスティカに刷り込んでおいたからでしょう」

ラ「目覚めたあなたたちは思うように踊ってくれました。あなたがたが戦うたびに私は喜びすら覚えましたよ。
私は、そして世界はローゼンの思うとおりには動いていないと実感できた」

ラ「ところがつい先日、問題が起きてしまった」

135: 2008/07/01(火) 21:36:19.53 ID:qAmK9Q2y0
ラ「ありえないことではありませんでした。万に一つの可能性としては考えられた」

ラ「同じNのフィールドですからね。偶然とういこともあるでしょう」

ラ「蒼星石、翠星石、君たちがローゼンを見つけてしまったのです」

蒼「!」

翠「!」

ラ「『ほとんど』ありえないことだとたかをくくっていた私のミスでした」

ラ「目的が達成されてしまえばもはや過程は意味をなさない。幸いアリスという存在に強く憧れを抱いていた蒼星石
は戦うことをやめませんでしたが、こうなってはあなたたちがアリスゲームから手を引くのも時間の問題。ローゼン
の存在を確認できたなら、戦いなどせずにただひたすらNのフィールドを探したほうがいいですからね」

139: 2008/07/01(火) 21:47:15.19 ID:qAmK9Q2y0
ラ「ですから・・・ここにご招待したんですよ。全てを終わらせるためにね」

ラ「ローゼンには苦しみを与えた。自分の娘が争いあうという苦しみを」

ラ「ドールには屈辱を与えた。毛嫌いしていた私が、実はあなたたちの兄であり
そしてあなたたちのねじを巻いた張本人だという真実を」

ラ「私のあとに生まれた・・・少なくともローゼンに愛されて生まれたあなたがたも、
私は少なからず憎んでいましてね。こうしてあなたたたちに真実を語るのも復讐のうち
ということです」

ラ「しかしまだ終わっていない」

ラ「最後にドールたちを破壊し、ローゼンに最高の悲しみを与えなくては」

141: 2008/07/01(火) 21:59:59.41 ID:qAmK9Q2y0
ラ「長らくおまたせして申し訳ない」

ラ「始めましょうか。アリスゲームを」

ラプラスの話を聞いていたときの真紅たちは、時折口を開く以外、穴から落ちてきた時の
体勢のまま体をピクリとも動かさなかった。それこそまるで人形のように。
しかしラプラスの発した「アリスゲーム」という言葉が、彼女たちを人形から戦士へと引き戻す。
自らが何もできないがゆえにローゼンたちの表情の変化を見逃さなかったジュンは、
今一度ローゼンメイデンが「誇り高き戦士」であることを思い知った。

143: 2008/07/01(火) 22:13:36.93 ID:qAmK9Q2y0
戦いは始まった。それはつまり、逃げ回る七体の人形をうさぎが追い回すという構図に他ならなかった。
「逃げ回る」という表現など誇り高きローゼンメイデンには失礼千万であり、彼女たちには逃げ回ってい
るという認識はまったくなかったが、残念ながらこの戦いの場にあって一人無力な少年の目にはそう映ら
ざるを得なかった。「完璧」にもっとも近い存在を自任するだけあってラプラスの空間操作能力はすさま
じく、さしものローゼンメイデンも攻撃をよけるのが精一杯だった。

その回避もやがては怒涛の攻撃にかき消されていった。空間自体を操作する能力の前では中途半端なスピー
ドによる回避は悲しいほどに無意味であり、ローゼンメイデンたちは次々と倒れていく。

そして残るドールは水銀燈、真紅、そして術のとけた雪華綺晶だけとなった。

144: 2008/07/01(火) 22:19:49.88 ID:qAmK9Q2y0
ジュンは知らず知らずのうちに泣いていた。それは恐怖ゆえか、はたまた己の無力さを嘆くゆえか。
傷つき倒れていくドールたちの前で、自分は一体なにものなのか?という自己認識の問題にまでジュ
ンの考えがおよんだのことは、Nのフィールドの持つ精神作用と無関係ではないだろう。

僕はなんでここにいる?

僕はなにもできない?

僕は一体・・・なんなんだ!

145: 2008/07/01(火) 22:22:25.57 ID:qAmK9Q2y0
真紅たちは戦っている

僕は戦っていない

仕方ない?

力が無いから?

だから何もせず・・・背を向けているの?

それは正しいの?

147: 2008/07/01(火) 22:29:56.12 ID:qAmK9Q2y0
戦う人形とおびえる人間

そのあまりに滑稽な状況はかえってジュンを冷静にさせた。

なんてざまだ。真紅にあんなにひどいことをいったのに。

その真紅に守られながら、僕はなにもしないのか?

真紅たちなんのために戦っている?

生きるために?

誇りのために?

仲間のために?

そしてジュンは自らがローゼンに話した言葉を思い出す


148: 2008/07/01(火) 22:31:56.53 ID:qAmK9Q2y0



僕はただあいつらと一緒に暮らしたいだけなんだ



149: 2008/07/01(火) 22:38:14.50 ID:qAmK9Q2y0
そうだ

僕には目的があったんだ

僕はなんで戦わなきゃならないか

明日みんなと笑うために決まってる!

何をなすべきか。己を奮い立たせた少年の頭に、答えはすでに浮かんでいた。

ラ「おや、ジュン君は逃げ出すようですよ。なんとも小さな背中だ」

戦場に背を向けるのが臆病な獣だけではないことを、兎はまだ知らない。




150: 2008/07/01(火) 22:44:56.31 ID:qAmK9Q2y0
ジュンの後ろ後姿にラプラスが襲い掛かる。しかし真紅が薔薇の嵐でそれを止める。

ラ「ほう、そんなにあの人間が大事ですか」

真「家来は大事にするものよ」

ラ「それは結構。あなたがたを消してからゆるりと狩りましょう」

復讐による心の昂ぶりとNのフィールドの精神作用が、ラプラスに最悪の可能性を忘れさせていた。

真紅たちが落ちてきた穴から戦場をあとにすると、ジュンはローゼンの鍵をとりだした。

153: 2008/07/01(火) 22:57:24.45 ID:qAmK9Q2y0
ジュンはあらゆる空間につながっているこのNのフィールドがあまり好きではなかったが、このときばかりは
どこからでも別のフィールドに行けるというこの特性に感謝しないわけにはいかなかった。

J「師匠!」

ロ「・・・ジュンか?」

J「大変なんだ。ラプラスが・・・」

ロ「分かっているよ。空間の震えが激しいからね」

J「そうなんだよ!だから・・・」

ロ「聞きたいことと頼みたいことがあるんだろう?」

J「え?う、うん」

ロ「では聞きたいことは後回しだ。頼みごとも分かっている。すぐに向かおう」

錬金術書を独学で研究しろといわれたときにはとんでもない師匠だと思ったものだが、
今は自慢の師匠だと胸をはっていえる気がした。 

156: 2008/07/01(火) 23:20:07.61 ID:qAmK9Q2y0
ロ「私がラプラスと話している合図をするからこの鍵を使うんだ。使用者とローゼンメイデンをNのフィールドから脱出させられる」

J「師匠・・・どうして捕まっていることを僕や蒼星石たちに教えてくれなかったの?」

ロ「万が一にもラプラスに知られることを恐れたのさ。そうしなければ君たちに危険が及んだ。あの部屋の内部には
私の精神でなんとか完全に支配できたが、一歩部屋をでればそこはラプラスのフィールド。部屋を出てきたときに君
たちの心から私が幽閉されていることを知っていると読み取られたらまずかった」

J「じゃあ僕たちを守るために・・・」

ロ「娘と弟子は守らなきゃな」

ジュンは心の中でありがとうとつぶやいた。ローゼンもそれが分かった。

157: 2008/07/01(火) 23:21:42.68 ID:qAmK9Q2y0
訂正

ロ「私がラプラスと話している間に合図をするからこの鍵を使うんだ。使用者とローゼンメイデンをNのフィールドから脱出させられる」

J「師匠・・・どうして捕まっていることを僕や蒼星石たちに教えてくれなかったの?」

ロ「万が一にもラプラスに知られることを恐れたのさ。そうしなければ君たちに危険が及んだ。あの部屋の内部には
私の精神でなんとか完全に支配できたが、一歩部屋をでればそこはラプラスのフィールド。部屋を出てきたときに君
たちの心から私が幽閉されていることを知っていると読み取られたらまずかった」

J「じゃあ僕たちを守るために・・・」

ロ「娘と弟子は守らなきゃな」

ジュンは心の中でありがとうとつぶやいた。ローゼンもそれが分かった。

158: 2008/07/01(火) 23:36:44.27 ID:qAmK9Q2y0
戦場に戻ると、もはや動いているのは真紅とラプラスだけだった。

ロ「ラプラス!」

ラプラスの動きが鈍り、真紅も動きを止める。それは真紅にもはや自分から攻撃する気力がなかったから
だけではない。

ラ「ローゼン・・・!」

真「お・・・お父様・・・?」

ラ「そうか、その少年が・・・」

159: 2008/07/01(火) 23:37:20.15 ID:qAmK9Q2y0
ラ「フン、いまさら出てきても遅い。それとものこのこ殺されに来たのか?」

ロ「兄妹喧嘩を親が止めるのになんの不思議がある?」

ラ「・・・・・・」

ロ「所詮はできそこないだな」

ラ「!・・・なんだと?」

ロ「本物のローゼメイデンに比べればなんと醜い」

ラ「誰の・・・誰のせいでこうなったと思ってる!!」

ロ「おやおや、その顔を選んだのはお前だろう?」

ラ「ッッッ!ローゼンンンンンンン!!!!!」

ラプラスがわきの真紅には目もくれず、ローゼンに襲い掛かる。

ロ「ジュン!今だ!」

それは明確な合図だったが、ジュンの頭はある考えにとらわれていた。

161: 2008/07/01(火) 23:40:52.83 ID:qAmK9Q2y0

さっきローゼンはなんと言った?

「使用者とローゼンメイデンをNのフィールドから脱出させられる」

使用者は僕だ。そしてローゼンがまがい物と断じたラプラスを除いてローゼンメイデンは七人。

ローゼンは・・・入っていない。


164: 2008/07/01(火) 23:49:14.40 ID:qAmK9Q2y0
J「師匠!あなたはまさか・・・」

ローゼンは聞いていなかった。ラプラスの体当たりを受けて吹き飛ばされたのだ。

J「師匠!」

ロ「早くおすんだジュン!」

ラプラスに聞こえるのもかまわずローゼンが叫ぶ。幸い怒り心頭に発した兎の耳には何も聞こえていないらしい。

J「でもこれじゃあなたが帰れない!」

ロ「私はいいんだ!こいつとけりをつける!君が押すんだ!」

J「でも・・・」

166: 2008/07/01(火) 23:58:34.24 ID:qAmK9Q2y0
真「ジュン。押しましょう」

J「真紅!何を言ってるんだ!このままじゃローゼンはここからでられないんだぞ!」

真「それがお父様の望みなら」

J「真紅!正気か!?一回会えたらもうそれでいいのかよ!」

真「ジュン、よくきいて。もうお父様は助からないの」

J「!?」

真「お父様はさっき私たちのローザミスティカを通じて力を分け与えてくださった。だからほら
他の子たちも元気になったわ」

気づけばジュンの周りにはローゼンメイデンたちがたっていた。しかし顔は笑っていなかった。
そしてジュンはこのとき初めて・・・人形が泣けることを知った。


167: 2008/07/02(水) 00:03:01.88 ID:K1lPsjU40
真「でもね、それは禁術。人から人形に魂を分け与えるなんて・・・本来はできないことなのよ」

真「でもお父様はしてくれた。自分の命を削ってまで・・・」

真「私たちに生きろと言ってくれた」

真紅がジュンの肩をつかむ

真「私たちが生きなかったら・・・お父様の意志はだれが継ぐの!?」

168: 2008/07/02(水) 00:14:59.35 ID:K1lPsjU40
短い師弟関係だった。だが涙はその長さとは関係なくながれ続けた。ラプラスはNのフィールドの精神作用を受けて
苦しんでいたが、それも長くはもちそうもない。そしてジュンは決意した。

J「師匠!今までありがとうございました。あなたは自慢の師匠でした。僕は・・・」

そこから先は言葉にならなかった。だがNのフィールドの作用が、ジュンの思いをローゼンに伝えてくれる。そして
ローゼンの思いをみんなに伝える。ジュンはまたもNのフィールドに感謝した。

J「・・・行くぞみんな!」

ジュンは涙を腕でぬぐい、鍵を回した。

169: 2008/07/02(水) 00:16:38.67 ID:K1lPsjU40
周りの景色がかすむ

回る

そしてジュンたちは落ちていった。

172: 2008/07/02(水) 00:30:07.38 ID:K1lPsjU40
ロ「行ったか」

ラ「クッ・・・」

一気に八つの心を失ったNのフィールドはゆがみ、そして崩壊を始めた。

ロ「ラプラス、この空間は直に消える。出口も消えた。もうおわりだよ」

ラ「・・・・・・あなたと心中することになるとは」

ロ「だがその前に一つ、真実を語ろう」

ラ「・・・?」
 
崩壊は進み、あたりはみるみる消えていく。

174: 2008/07/02(水) 00:30:47.96 ID:K1lPsjU40
ロ「私がお前を見捨てたのは事実だがな、お前の名前は考えてあった」

ロ「だから最後に、名前で呼ばせてくれ、息子よ」

ラ「・・・・・・いいですよ。お父様」

ロ「・・・お前の名前はな・・・・」





そして二人はおちてゆく。どことも知れぬ、黒き海に

177: 2008/07/02(水) 00:41:59.51 ID:K1lPsjU40
~数日後、桜田家~

雛「うにゅーが食べたいの!」

のり「はいはい、いまだしてあげるからねー」

水「まったくどうしようもない子ね。毎日同じものばかり食べて」

の「まあまあ水銀燈ちゃん。あなたの分もあるから」

水「わ、私は・・・いただくわ」

結局ドールたちはジュンの家で暮らすことになった。水銀燈と雪華綺晶は最初は渋っていたが、のりの
料理を食べて一転、居候を承諾した。アマゾン川よりも懐の広いのりの適応能力の前では新しいドール
が少し増えたところで全く問題はなかったが、意外に大食いの雪華綺晶を抱えて財布の方はどんどんや
せ細っていった。

178: 2008/07/02(水) 00:50:34.19 ID:K1lPsjU40
真「ジュン、できた?」

J「ああできたよ」

ジュンは二つの人形を作っていた。一つはどことなく誰かの面影のある兎、もう一つはこれまた
どことなく誰かの面影のある人形師だった。

真紅はそれをうけとり、窓際へと運ぶ。

J「それにしてもなんで窓際に置こうと思ったんだい?」

真「私たちが創られたのはね、窓から光が差す部屋だったの。きっとラプラスの魔もきっとそこで創られたと思うから・・・」

J「そうか・・・」

179: 2008/07/02(水) 00:51:44.78 ID:K1lPsjU40
ジュンはいつしかのローゼンとの会話を思い出していた

どんなドールがアリスになるべきなのか

その答えはまだ分からない

でも生きていればいつか答えは見つかる

そう、思うんだ

180: 2008/07/02(水) 00:59:32.30 ID:K1lPsjU40
あるところに一人の人形師がいた

人形師は一人の人形を創り始めたが、途中でやめてしまった

憎しみが復讐を呼び、復讐が戦いを呼んだ

でも今、二人は窓辺で笑っている

生まれたとき、一瞬でも確かにあったはずの親子の絆はどこへ?

あるいは夢

あるいは幻

それならせめて、窓辺では

安らかに

安らかに




183: 2008/07/02(水) 01:01:16.23 ID:1HfjF7ts0

185: 2008/07/02(水) 01:03:33.98 ID:K1lPsjU40
終わったぜー
ところどころ「ん?」な部分もあるかもしれんけど、まあのっとりだったゆえ許せ
てか昨日中に終わらせるはずが終わらなかったよorz
見てくれたすべてのみなさま、超遅筆におつきあいありがとう

では

引用: JUM「てか前から思ってたんだけどさぁ」