1: 2008/07/14(月) 23:50:05.13 ID:mjJa060JO
キョン「ハルヒ、いきなりどうしたんだ?」

ハルヒ「団長命令よ!いいから答えなさい!」

キョン「ん…そうだな、どっちかと言うといるかな?」

ハルヒ「それって誰なの?」

キョン「なんで俺がお前にそんな事言わなきゃならんのだ」

ハルヒ(どうせ有希か佐々木さんよね…)

41: 2008/07/15(火) 07:19:19.56 ID:wm99llkA0
キョン「いないぞ」

ハルヒ「嘘よ、あたし達は高校生なのよ?」

キョン「そうだな、仮に居たとしても言わないだけだ」

ハルヒ「何よそれ?」

キョン「あれだ、ムードとか空気とかその他諸々の要素がだな……」

ガチャリ

ハルヒ「むっ?」

長門「……」 テクテクテク

スチャ

キョン「さて、この話は終わりだ」

42: 2008/07/15(火) 07:26:49.71 ID:wm99llkA0
ザー……

ハルヒ「気温が高いのよ……はぁ……」

キョン「湿度もな……」

長門「……」

ハルヒ「……」

キョン「……」

長門「……」

43: 2008/07/15(火) 07:32:57.07 ID:wm99llkA0
ガチャ

古泉「どーもどーもー! 古泉です!」
みくる「みくるですっ!」

古泉「いやー、相変わらず今日もじめったいですねー」
みくる「そうですねぇー」
古泉「不用意に食パンなんかを置きっ放しにしていると、翌日には生えちゃいますねー」
みくる「そうですねぇー」
古泉「おおっとぉ!? 部室の空気も若干じめったいぞォ?」
みくる「わぁーおぉ! これは換気が必要ですかぁ!?」

キョン・ハルヒ・長門「……」

古泉「オーケイ、オーケイ! しめった心に爽やかな風を!」
みくる「未来人の提供でお送りしますっ!」

キョン・ハルヒ・長門「……」

古泉・みくる「……」

古泉・みくる「……それじゃ、僕たち帰りますんで」

46: 2008/07/15(火) 07:41:45.93 ID:wm99llkA0
古泉「くっ……何がいけなかったんだ……っ! 僕は場の空気を暖めようとしただけなのにっ……!」

みくる「この時期で温めるとまずいわよ、色々と」

古泉「内容がいけなかったのでしょうか……」

みくる「いちおう、季語的な物も含んでいたのにね」

古泉「いや……冷静に考えると、カビた食パンが季語ってのは不味いかもしれません」

みくる「確かに少し気持ち悪いかも。せめて洗い物のカビくらいに……」

古泉「オーケイ、今度はそれでいきましょう」

みくる「了解」

古泉「ああそうそう、それからコンビ名はエスパーにしましょう」

みくる「ええ、いいわよ」

古泉「では――」

52: 2008/07/15(火) 07:50:45.45 ID:wm99llkA0
ガチャ

みくる「あっちゃぁ~……」
古泉「忘れもの忘れもの……」

古泉・みくる「わぁーおぉ!? またもや部屋の空気がじめったいぞぉ!?」

古泉「いやぁー、この時期はジメジメのまま放置しておくのは危険ですからねぇー」
みくる「そうですよねぇ、『明日やろう』って放っておくと翌日には――」

古泉・みくる「――来ちゃいますからねぇー」

キョン・ハルヒ・長門「……」

みくる「そんな湿ったあなた達の心!」
古泉「カビひく前にお掃除よっ!」
みくる「未来人の提供で――」

ハルヒ「うるさいっ!」

古泉・みくる「ごめんなさい……」

キョン「いや、俺は結構良かったと思うけど」
長門「……」

古泉・みくる「それじゃまた明日……」

ガチャ……パタン

55: 2008/07/15(火) 07:58:48.25 ID:wm99llkA0
古泉「ちくしょう……ちくしょー……!」
みくる「ほら泣かないのよ古泉くん、下積み時代は誰だってこんなものよ」

古泉「あなた、何気にコンビ名を独占しようとしたじゃないですかっ!」
みくる「まぁまぁ、些細なことだから……ね?」

古泉「確かに些細な事でした。取り乱して申し訳ありません」
みくる「うふふっ、いいのよ。ほら、飴玉あげるから」

ザー……

古泉「ところで」
みくる「ええ、やはり古泉くんも?」

古泉「最近落ち着いていたはずの閉鎖空間が、つい先ほど発生したようです」
みくる「あたしのほうも振動が……ね?」

古泉「原因はやはり」
みくる「間違いないわ」


古泉・みくる「しめった心ですね」

59: 2008/07/15(火) 08:06:06.98 ID:wm99llkA0
翌日。

古泉「やはり、雨ですか」
みくる「そのようね」

古泉「もう面倒なので、あなたの派閥の力で雲を吹き飛ばしてください」
みくる「無理に決まってるでしょ? むしろあなたのほうが超能力者なんだから――」
古泉「出来る訳ないじゃん、外では一般人だもん」
みくる「だよねー」

古泉「長門さんの力でも借りましょうか?」
みくる「あ、そういえば長門さんは……?」

ガチャ……

古泉・みくる「じーっ……」

……パタン

みくる「居たわね」
古泉「はい、居ましたね。昨日と同じように3人揃ってました」

みくる「そして、しめってたわね」
古泉「もうすぐ生えそうですね」

みくる「……」 ビッ
古泉「……」 コクリ

66: 2008/07/15(火) 08:17:59.51 ID:wm99llkA0
ガチャ

みくる「こんにちはー」
古泉「皆さんお揃いのようですね」

ガサゴソ……

みくる「備長炭……この辺りでいいかしら?」 ニヤッ
古泉「では、この除湿剤はロッカーの中へ……」 ニヤリ

みくる「この水が溜まっていくタイプの箱はテーブルの上へ……」
古泉「なるほど、その箱の働きぶりが目に見えて精神的にも晴れ晴れ……という訳ですね?」

ハルヒ「みくるちゃん、お茶」

みくる「それは無理な相談です」
古泉「なぜなら、お茶っ葉代は除湿用具に消えてしまったからさー!」

キョン「なるほど、それは仕方がない!」
長門「……」

みくる「いえいえー」

ハルヒ「チッ……」

古泉・みくる「!?」 ビクッ

古泉・みくる「おっと、ここで私用を思い出しましたので失礼……」

パタン

80: 2008/07/15(火) 08:26:08.22 ID:wm99llkA0
そしてまた翌日。

とぅるるるる……

ガチャ

みくる『はぁい……ごほっ……』

古泉「どうも、僕です。今日はどうかされたのでしょうか?」

みくる『不覚にも風邪をひいてしまいましたぁー』

古泉「おやおや、それはお気の毒です」

みくる『世界の平和の為にも、安定した未来の為にも、あなたには期待しているわ……ごふっ……』

古泉「朝比奈さん? 朝比奈さん……? 朝比奈――」

ツー……ツー……ツー……

古泉「くっ……! 朝比奈さん……そんなになるまで何故……!」

古泉「僕が……やらなくちゃ……!」

92: 2008/07/15(火) 08:35:03.23 ID:wm99llkA0
ガチャリ

古泉「やぁどうも、僕です」

キョン「よぉ」
ハルヒ「遅いわよー」
長門「……」 コクリ

古泉「麦茶を持ってきました」

キョン「流石は古泉!」
ハルヒ「流石は我がSOS団副団長ね」
長門「……」 コクコク

古泉「いえいえ、当然のことです」

トポトポトポ……

古泉「どうぞ」

キョン「サンキュー」
ハルヒ「気が利くわね」
長門「……」 ゴクリ

古泉「さて――」

93: 2008/07/15(火) 08:41:30.64 ID:wm99llkA0
古泉「少し、あなたに手伝って頂きたい事があります」

キョン「俺? 面倒だなぁ……」

古泉「麦茶」

キョン「そういうことか。わかった、行こう」

ハルヒ「あ、ちょっとキョン!」

古泉「すみません、すぐ戻りますので」

長門「いってらっしゃい」

ガチャ……パタン

94: 2008/07/15(火) 08:58:26.72 ID:wm99llkA0
キョン「何の話だ?」

古泉「察しがいいですね」

キョン「お前が俺に声を掛ける時は、大抵がそうだったからな」

古泉「ええ、実は――」



1.「涼宮さんの怒りが臨界点へ達そうとしています。いい加減にハラを決めるべきです」 (真面目ルート)

2.「ここ最近降り続いている雨、何か変だと思いませんか?」 (カビの恐怖ルート)

3.「今日一日、僕とコンビを組んでください」 (そのままルート)

4.「これから一生、僕とコンビを組んでください」 (キョンルート)

5.「特に用事などありません」 (夢落ちエンド)


130: 2008/07/15(火) 16:57:16.63 ID:wm99llkA0
ずみ

133: 2008/07/15(火) 17:11:31.09 ID:wm99llkA0
ザー……

古泉「ええ、実は気候の事なのですが」
キョン「気候?」

古泉「ここ最近降り続いている雨、何か変だと思いませんか?」
キョン「いや、確かにもう1週間近く雨が続いているが……こういう年もあるんじゃないのか?」

古泉「ノンノンノン」 チッチッチ

古泉「カビです」
キョン「カビ……あの緑色や黒色の菌類のことか? それがどうした?」

古泉「それがですね……」

ガサゴソガサゴソ

134: 2008/07/15(火) 17:16:21.26 ID:wm99llkA0
古泉「この大きなパンを見てください」

ころり

キョン「うお、見事に真緑!?」

ガチャッ

喜緑「呼びました?」
古泉「いえ」

パタンッ

古泉「たった一日、風呂場にパンを放置しておいただけでこの有様。普通じゃありません」
キョン「た、確かに……風呂場にパンを置くなど常態ではないな」

古泉「しめった空気がこれに拍車を掛けています」
キョン「そうなのか、しかし季節が変われば雨も……」

古泉「ところがどっこい、そうは問屋が卸さんとです」
キョン「そ、そうでっか」

136: 2008/07/15(火) 17:24:14.78 ID:wm99llkA0
古泉「このしめった空気に、恐らく涼宮さんが絡んでいます」
キョン「何故だ? というか地味だな今回」

古泉「いえ、これはかつてない恐怖ですよ。”地味だからこそ恐怖”なんです」
キョン「わかったわかった。わかったから顔を近づけるな」

古泉「いいですか? 大したことない、まだ大丈夫……そう考えていたある日、排水溝を覗くと……」


古泉「モコモコ、ふぁっさり」


キョン「うわ、今想像してちょっと鳥肌が立ったぞ」
古泉「どうやらカビの恐ろしさが解っていただけたようですね」

キョン「ああ、しかしハルヒがそこにどう絡む?」

古泉「彼女が弱れば世界が弱る、彼女の心は世界の心。つまり彼女が湿れば――」

キョン「世界が湿る」

古泉「いえ、そんな事はありませんよ」
キョン「なんだそうなのか」

141: 2008/07/15(火) 17:40:37.45 ID:wm99llkA0
古泉「ですが限りなくそれに近い状況ではあります」
キョン「毎度のことだが、お前の言い回しは解り難い」
古泉「別に構いません。とにかく貴方は涼宮さんの心に爽やかな一陣の風を送り込んでください」
キョン「爽やかな……?」

古泉「もちろん除湿モード、出来ればイオンも含めてくれれば最高とも言えます」
キョン「人を空調機みたいに言わないでくれ」

古泉「それは言い得て妙ですね、ある意味ベストな関係と言えなくもないですが」
キョン「知らん。あまり席を開けるとハルヒが煩いし、俺はもう戻るぞ」

古泉「そうそう、気を付けてください」
キョン「なんだ? まだ何か?」

古泉「カビをひくのは何も”物質的なモノ”だけではありません。
    人や生き物、果ては”精神的なモノ”などもその範疇に含まれます」
キョン「……」

古泉「では、僕はこれで帰りますので」 シュパッ!
キョン「ああ」

古泉「……」 

コツ……コツ……コツ……

古泉「朝比奈さんは大丈夫なのでしょうか……んっ」

古泉「ごほっ……ごほっ……くっ……これは不味いですね……」

ザァー……

144: 2008/07/15(火) 17:50:48.16 ID:wm99llkA0
キョン「古泉のやつ、俺に面倒を押し付けやがって……
     しかし朝比奈さんが学校を休んだって事は、もしかするとカビが原因なのか……?
     なんてな、古泉の頭にカビが蔓延っていただけに違いない」

ガチャリ

キョン「すまん、遅くなっ……っておい? やけに空気が重いような」

ハルヒ「別に」
長門「気のせい」

キョン「ああそうだ、古泉の奴は用があるって帰ったぞ」
ハルヒ「そう」

キョン「あー……じめったいなぁ……」
ハルヒ「あんたがそう言うと、余計じめったく感じるわ」

――とにかく貴方は涼宮さんの心に爽やかな一陣の風を送り込んでください

キョン「よし!」

146: 2008/07/15(火) 18:02:54.21 ID:wm99llkA0
キョン「あぁ、今日もいい天気だなァ!」

ハルヒ「はぁ?」

キョン「爽やかな日差し、実にいい気持ちだ!」

長門「あ、雷」

キョン「こんなにいいコンディションなら、間違い無くカビも吹き飛んじまうぜ!」

ハルヒ「頭の中でもカビたのかしら……」

キョン「ああもぅ猛烈に腹筋! 猛烈に運動がしたい! さぁ皆、俺と一緒に爽やかな青春の1ページを刻もうぜ!」

長門「……大丈夫?」

キョン「オーライ、俺はいつだってこんなんだぜぇ?」 ビッ

ハルヒ「ねぇキョン、本当に大丈夫?」

キョン「ちょっと用事思い出したわ」

ガチャ!

ハルヒ「あ、キョン!」

パタン!

149: 2008/07/15(火) 18:17:07.55 ID:wm99llkA0
キョン「ちくしょう……ちくしょー……!」

キンッ

シュボッ

キョン「ふー……」

キョン「落ち着け俺。俺の持ち味は比喩力じゃあないか。それを使わずしてどうする?
    ダチョウ倶楽部に江頭が務まるか? ダウンタウンに小島よしおが務まるか?
    さんまに紳介が……これは務まりそうだが、それは今問題ではない」

キョン「ふぅ……」

キョン「つまり俺がやったのはそういう事だ、俺のミスじゃあない。
    ハルヒの内面を推し測るなどというこの世のカオス域にも達している無理難題が、
    単なる一高校生である俺に解ける筈がない」

谷口「なにぶつぶつ言ってんだ?」
キョン「うるさい黙れ」

谷口「いきなり隣に来て呟き始めた人間の言う言葉かそれ?」
キョン「ふー……こっちにも事情ってもんがあるんだよ」

谷口「だが話は聞かせて貰ったぞ、俺も協力してやろう」
キョン「えー」

谷口「あからさまに嫌な顔をするなっての」

153: 2008/07/15(火) 18:32:12.53 ID:wm99llkA0
谷口「まあ二つほど作戦があるんだが、まずは俺様の実力を見せつけねばなるまい」
キョン「別に必要ないぜ、協力も仰いでないしな」

谷口「ちっ……折角の人様の助けを無下に断るとはぁ、血の滾る男じゃあないねぇ……なぁ国木田よ?」
国木田「へぇ、まったくですぜ」

キョン「うお、居たのか!?」
国木田「酷いなぁキョンは」
谷口「だろ?」
国木田「へぇ、まったくですぜ!」

谷口「とにかくだ、人を5人程度集めて貰おうか」
キョン「何をする気だお前?」

谷口「なーに噛ませ犬という奴さ。座ってるだけで構わん。俺は形から入る性質なんでな」
キョン「面倒臭い人間だなお前は」

谷口「国木田、座布団を集めて来てくれ」
国木田「へい、ただいま!」
キョン「国木田も大変だなぁ」
国木田「まぁ腐れ縁だしね。キョンも良く付き合ってやってくれよ? じゃあね!」

谷口「あ、5人のうち一人はハゲたおっさんがいいな。校長辺りでいいぜ?」
キョン「校長先生がそんな訳の分からない提案に乗るかよ」

校長「話は聞かせて貰ったぞい、ワシも協力させてくりゃれ」

キョン「もうどうにでもなってくれ……」

160: 2008/07/15(火) 19:16:23.88 ID:wm99llkA0
校長は赤いマスクをかぶっています

163: 2008/07/15(火) 19:40:31.31 ID:wm99llkA0
国木田「はぁはぁ……集めたよ……5人……! 集まったよ……!」
キョン「はぁ……はぁ……チッ、谷口のやつ手間取らせやがって……」

谷口「お前等……! すまん!」

キョン「へっ、何言ってやがる。夢、なんだろ?」

谷口「俺は小さい頃からお笑いというものに一種の憧れを抱いていた……
   いや、それだけじゃねぇ。あらゆる大物、若手、古典、発展を研究し自分のモノへと変えてきた。
   そう、次は俺が大物になる。それだけを目指し生きてきたんだ……」

校長「谷口君……」

164: 2008/07/15(火) 19:45:23.86 ID:wm99llkA0
谷口「だが、1年ほど前にな。へへっ、オヤジが倒れちまってよぉ。
   俺は高校卒業と同時にその道へ進もうと決めていたのに、御袋が許してくれねぇんだ。
   『あんたの親父も、そうやって無理してきたからこうなっちまったんだ』ってな。
   そりゃそうさ、俺だって正直、自分の力がどの程度なのかもわかっちゃいねぇ」

新川「……」

谷口「そうやってな、御袋や周りのせいにして逃げ続けて、気付いた時にはこんなになっちまってた。
    この、何一つもマトモに出来ないような人間によぉ」

岡部「そんな事はないさ」

谷口「いや、間違いないぜ。自分にはよくわかるんだよ。
    だけど、だけどな……ただひたすらに突っ走っていく涼宮を見て、俺は思ったのさ」

榎本「その気持ち、わかるかも……」

谷口「このままじゃ終われねぇだろ……
   やっぱり俺はやりてぇんだよ。なりてぇんだよ、ビッグに」

大森「……なれるさ」

谷口「ありがとよ……お前ら……」

キョン・国木田「……」 コクリ

谷口「さぁ行こうぜ皆! 体育館一杯のオーディエンスをドッカンドッカン沸かせてやろうぜ!」

一同「おう!!」

165: 2008/07/15(火) 19:46:03.87 ID:wm99llkA0








――谷口たちの活躍は省略されました。続きを読むにはWAFFLE!WAFFLE!と書き込んでも無駄です。









167: 2008/07/15(火) 19:54:27.56 ID:wm99llkA0
今気付いたが、あっちのスレに出張すんなw

168: 2008/07/15(火) 19:55:24.86 ID:wm99llkA0
翌日。

ザザァー……

みくる「古泉くん、どうかしたの?」

古泉『すみません……ごほっ……風邪を……』

みくる「あらあら、しめっぽいからってクーラーの効かせすぎは駄目よ?」

古泉『解っては居たのですが、何となく冬が恋しくなりまして……限界に挑戦しているうちに……おうふっ!』

みくる「ちなみに何℃までいけた? あたしは零度切った辺りから憶えてないけれど」

古泉『えっと……一応は出力限界まで達したのでマイナス10くらいでしょうか? もう少しいけそうでしたが』

みくる「なら今度は業務用冷凍庫にでも入ってなさい。紹介してあげるから」

古泉『是非』

みくる「ではお大事に。モイスチャー・フォーユー」

古泉『モイスチャー・フォーユー』

ピッ

171: 2008/07/15(火) 20:14:13.85 ID:wm99llkA0
みくる「あーいわーだばみーんだば、ど~らぁりぃ~♪」

ガチャリ

みくる「あーいだーんに~じゅぁ~……あれ? キョンくんだけ?」

キョン「ちわっす、具合は大丈夫なんですか?」
みくる「あたしはそんなにヤワじゃあないんですっ」

キョン「そうですか……てっきりカビにでもやられたのかと。まずは何よりです」
みくる「んー? 良く分からないけど、ありがとうございます」

キョン「お茶……淹れますよ」
みくる「あらあら、すみません」

コポコポコポ……

キョン「どうぞ」

コトッ

みくる「ありがとうございます」

172: 2008/07/15(火) 20:17:14.79 ID:wm99llkA0
キョン「……」

ズズズ……

みくる「おいしいですよ」

キョン「ありがとうございます」

みくる「……」 ズズズ……

キョン「……」

みくる「キョンくん」

キョン「……はい?」

みくる「あたしで良ければ、聞きますよ?」

キョン「いえ、別に何も……」

みくる「どうせ、涼宮さんか長門さんの事なんでしょう?」

キョン「え?」

みくる「女の勘は、鋭いんですよ?」

キョン「……」

173: 2008/07/15(火) 20:42:20.01 ID:wm99llkA0
ザァー……

みくる「まだ、気付いていないのかな?
    それとも、古泉くんがはぐらかしちゃったのかな?」

キョン「何の話ですか?」

みくる「視覚的に言うのなら、この気候の話ってこと」

キョン「はぁ……」

みくる「別に、どうだっていいとは思いますよ。この空模様のようにです。
    でもね、それをはぐらかして沈黙していると、貴方が思っている以上に周りの人は気になるものなの。
    場合によっては気に病んでしまうのかもしれないわね」

キョン「……何となくわかるような、分からないような」

みくる「片手には大きな恩義があって、もう片手には義務がある。
    その狭間におかれているのが、あなたね」

キョン「すみません、少々例えが解り難いです」

みくる「これはこれは、誰かさんの癖がうつっちゃったのかなぁ? あははっ」

174: 2008/07/15(火) 20:43:02.46 ID:wm99llkA0
キョン「そういえば昨日、谷口の奴がお笑いライブをやったんですよ」
みくる「へぇー……」

キョン「そんなにウケてはいなかったんですけど、俺は結構面白かったと思うんです」
みくる「あたしも見たかったなぁ」

キョン「いえ……多分そう遠くないうちに見れると思いますよ、きっと。飽きるほどに」
みくる「うふふ、楽しみにしておきます。さて――」

ガタッ

みくる「では、あたしはこれで帰ります。
    今日は涼宮さんも長門さんも来ないので、キョンくんも帰った方がいいですよ?
    それとこれ……」

スッ

みくる「ドタキャンなんて、駄目だからね?」

ガチャ

パタン


ザザァー……

176: 2008/07/15(火) 20:52:28.69 ID:wm99llkA0
夜。

みくる「いい? 明日までに1000個作りなさい、これは命令よ」

古泉『どうしたんですか急に?』

みくる「明日は晴れて貰わなくちゃ困るの」

古泉『だからってテルテル坊主に雨を枯らせる力などありませんよ』

みくる「だったら、古泉くんの超能力で何とかしてよ」

古泉『うん、それ無理』

みくる「ならば出来る事をやるというのが賢い動き方」

古泉『やれやれ……』

みくる「あ、それからクーラーを効かせすぎてまた風邪ひいたりしちゃ駄目よ?」

古泉『わかってますよ』

みくる「それじゃー切るね、MFU」

古泉『了解、MFU』

ピッ

177: 2008/07/15(火) 21:01:38.44 ID:wm99llkA0
翌日。

みくる「おはよー!」

古泉「おはようござ……って、やけに気合いの入った格好ですね」

みくる「そうかなぁ?」

古泉「仮にも尾行を行う人間がそんなに目立つと不味いのでは?」

みくる「それなら、バレてもいいようにすればいいだけじゃないの」

ぎゅっ

古泉「……」

みくる「……駄目、ですか?」

古泉「……いえ、木を隠すならば森の中という訳ですね」

みくる「はい!」

ざわ……っ ざわ……っ

古泉「あ、来ましたよ」

みくる「よーし、総員配置についてくださぁーい」

180: 2008/07/15(火) 21:14:20.97 ID:wm99llkA0
ハルヒ「ぉ……-ぃ……」
キョン「……」
長門「……」

みくる「あ、全然聞こえませんね」
古泉「予想外です。まぁ遊園地だから騒音もありますしね」

みくる「しかし、こういう時の為に未来からやってきた道具があるのです」
古泉「ピコピコピコピコーーーン!」

みくる「盗聴器ー!」
古泉「わぁーお!」

みくる「使い方はかんたーん! 予め何らかの薬で一家全員を眠らせたキョンくんの家宅へと侵入しー……」
古泉「彼の私物に発信器を取り付けて、これで受信するだけっ!」

みくる「送料・分割金利手数料無料! 19800円でのご提供となっていまーす!」
古泉「うわぁー! やすーい!」

通行人A「是非売ってください!」
通行人B「私も私もー!」

みくる「お待ちください、実はぁー今だけぇー……こちらの秘密盗撮機もセットでぇー――」
古泉「朝比奈さん、朝比奈さん!?」

みくる「はい?」
古泉「彼等を見失ってしまいました!」

181: 2008/07/15(火) 21:28:48.84 ID:wm99llkA0
みくる「なにやってるんですか!」
古泉「え、僕の責任なんですか?」

みくる「だって、もう少しで買い手が付きそうだったのに……今月もやししか食べてないのに……」
古泉「そっちですか? って、そんなに辛い生活だったんですか!?
   そういえば……除湿剤数点の買い物で、茶葉すら買えないほどに部費が無くなったのってまさか……」

みくる「些細な事を気にしちゃ駄目よ。ほら、飴をあげるから。
    そして今は全力で彼等を監視するのがあたし達モイスチャー・テクスチャーの役目」
古泉「そうでした、些細な事でしたね」

みくる「大丈夫、隊員が彼等を追跡しているはず」
古泉「了解、通信回線を開きましょう」

182: 2008/07/15(火) 21:30:11.01 ID:wm99llkA0
ピーガガガ……

大森『安いよ安いよー! 今ならこの携帯型家電粒子砲もセットで198000円、198000円!
    送料・分割金利手数料は当社が負担! 大森電器店をよろしくお願い――』

ピチュン

みくる・古泉「……」

みくる「つ、次が居るわ」

ピーガガガ……

校長『ようやくワシのトイレの番……ってにゃんじゃとぉ!? わっちが並んでいたのは電話ボックスじゃとぉ!?』

ピチュン

みくる・古泉「……」

古泉「もっとマシな人員は居なかったのですか?」
みくる「これが未来人勢力の現実よ……」

古泉「では、今度は我々の力をお見せましょう」

184: 2008/07/15(火) 21:46:49.39 ID:wm99llkA0
古泉「頼むぞ、エージェント新川、森……」
ピーガガガ……

森『こうやって二人きりでお話をするのも、暫くぶりですね……』
新川『ハハハ、そうでしたかな?』

森『私が機関の一員として働き始めた時、何をやっても駄目な私によくしてくれたのが新川さんでした』
新川『ふむ……覚えておりませんな。私は上司として当たり前の事をやっていたまでですよ』

森『いえ、仮にそうだとしても凄く励まされたんです。でも……』
新川『……』

森『最近は顔を合わせる機会すら減っていき、久しぶりに会えたかと思えばこうやって任務の一員としてです。
  それが私は不安で……』

新川『森さん……ちょっといいですかな?』
森『……なんでしょうか?』

新川『貴方は大きな勘違いをしておられる。
   私と係る時間が減った……それは私が居なくても一人で立派にやっていけるという事を意味しているのですよ』

森『……そんなっ!?』
新川『もう、貴方には私が必要無いんです。それは私自身、とても嬉しい事だと……誇れることだと思います』

森『そんなっ……ううっ……』
新川『美しい女性に涙は似合いませんね。さぁ……そこのカフェでコーヒーでも飲んで落ち着きましょう』

ピチュン

古泉・みくる「イイハナシダナー」 ブワッ

186: 2008/07/15(火) 22:03:04.26 ID:wm99llkA0
みくる「なんて感動している場合じゃありません!」
古泉「ごもっともですね、しかしどうしましょうか……」

喜緑「あ、こんにちはー」
部長「え? よ、よう」
みくる「あら喜緑さん、こんにちはぁー」
古泉「コンピ研の部長さんも御一緒とは、微笑ましいことですね」

喜緑「うふふ、いつぞやの件ではお世話になりました」
部長「こ、この事は涼宮さんには内密に……」
みくる・古泉「はいはい」 ニヤニヤ

喜緑「お二人さんは、そういう関係だったんですね」 にっこり
部長「ふんっ、悔しいが似合ってはいるな」
喜緑「はいはい妬かないの妬かないの」
部長「この僕が嫉妬などするものか」
喜緑「はいはい」 にっこり
部長「クッ……」

みくる「あ、ところでー……涼宮さん達を見掛けませんでしたか?」

部長「なんだって? あいつ等もここへ来ているのか?」
喜緑「先ほど、ジェットコースター乗り場付近で見かけましたよ」
部長「なにっ? 君は知っていたのか!?」
喜緑「ええ」 にっこり

古泉「ありがとうございます!」
みくる「あ、ちょっと引っ張らないでぇ~」

喜緑「うふふ……」

187: 2008/07/15(火) 22:06:10.83 ID:wm99llkA0
ちょっと疲れたので間を置きます
物語の整理も兼ねて、1時間ほど空けます

192: 2008/07/15(火) 23:07:50.60 ID:wm99llkA0
カタカタカタ……

みくる「涼宮さん居ませんねぇ」
古泉「そ、そうですね」

カタカタカタ……

みくる「うーん、此処じゃなかったんでしょうかぁ?」
古泉「え、ええ、なので今すぐ降りましょうか」

ギッギシッ

古泉「くっ、完全にロックされている!」
みくる「危ないわよ古泉くん、大人しくしてないと」
古泉「諦めてたまるかァー!」

ミシシミシミシ……

みくる「あ、危ないってば! ほら、もうすぐ走り出すか――」

カタン――

ゴォォォォォォオオオオオオ!!!!!

古泉「ふんんんんんんもぉおおおおおおおおお――」
みくる「あっははははははは――」

オオオオオオオオォォォォォォォ……

194: 2008/07/15(火) 23:23:55.63 ID:wm99llkA0
みくる「あっははは! 楽しかったねー!」
古泉「ええ……ぜぇ……凄く、ぜぇ……楽しかた……ぜぇ……」

みくる「あっははよぉーし! じゃあ次はあっちの月面旅行って奴に乗ろう! ははっ!」
古泉「ま、待ってください。当初の目的を忘れてはいませんか?」

みくる「何してるんですか? 早く涼宮さん達を探しましょう」

古泉「何事も無かったかのように……」

みくる「置いていきますよぉー」

古泉「あー了解です……」

198: 2008/07/15(火) 23:59:00.65 ID:wm99llkA0
榎本「あっ、こんにちはー」

古泉「おや、貴女は」
みくる「……どちらさまですかぁー?」
古泉「文化祭で涼宮さんが代役のバンド演奏をされたのですが、そのバンドの元々のボーカルの方ですね」

榎本「記憶力、いいんですね」
古泉「んっふ、どうもどうも。あ、お仲間も御一緒のようですね」
榎本「ええ、ようやくライブハウスでやらせて貰えたので……打ち上げという所です」
みくる「ふぇー……おめでとうございます?」
榎本「ありがとうございます」

古泉「ところで、涼宮さんを見掛けませんでしたか?」
榎本「逸れてしまわれたんですか? それなら迷子の呼び出しにでも……」
みくる「名案です!」
古泉「盛大にバラしてどうするんですか……」

榎本「冗談ですよ、確かあっちのオバケ屋敷で見かけましたね」

みくる「オバケ屋敷……」 ビクッ
古泉「フフフ」 ニヤリ

榎本「では、私はこれで」
みくる・古泉「ありがとうございました」

榎本「あ、涼宮さんに会えたら『また一緒にやろうね』って伝えてください」

みくる・古泉「はーい」

199: 2008/07/15(火) 23:59:25.88 ID:wm99llkA0
ざわざわ……

古泉「妙ですね」
みくる「え? 何か引っ掛かりますか?」

古泉「意図的に人が集められているような、そんな気すらします」
みくる「はぁ、確かにそういえば……」

古泉「それにこの天候、今までの事がまるで嘘のように晴れ渡っていますよね」
みくる「それはテルテル坊主が……」

古泉「それは有り得ません、非科学的です」
みくる「……」

古泉「まぁ一応1000個作りましたけどね」
みくる「それでこそ古泉くんよ!」

古泉「フフッ、出来る男は違うんですよ」
みくる「うわぁー……」

古泉「すみません、私用を思い出し――」
みくる「はいはい逃げないの」

ぎゅっ

古泉「やれやれ……」

201: 2008/07/16(水) 00:04:58.16 ID:zY8bFaCY0
古泉「それと僕はこういったことはあまり信じないのですが……」

みくる「なんでしょうー? 何でも聞きますよぉ?」


古泉「先ほど挙げた点と、今までの事柄からある種の予感を感じるのです」

みくる「それは古泉くんの勘? それとも推理?」


古泉「両方です。過程があるから結果があるとは思いますが、この場合、推理をするには素材が少なすぎます」


みくる「それで……どんな予感なんですか?」

古泉「それは――」


212: 2008/07/16(水) 00:27:29.72 ID:oFN6mBne0
古泉「それは……」

みくる「ごくり……」

古泉「いえ、やはり予感なんて気のせいでしょう」

みくる「引っ張った結果がこれだよ!」

古泉「偶々や偶然などいくらでも起こり得ますしね、気にせず行きましょう」

みくる「そうしましょう!」

古泉「はい、それで――」

みくる「それで、次はコーヒーカップだったわね」

古泉「……あれ、そうでしたっけ? 確か――」

みくる「些細なことよ、ほら、飴玉あげるから」

古泉「はぁ、どうも」

214: 2008/07/16(水) 00:32:08.91 ID:oFN6mBne0
てくてくてく……

みくる「あっ……」
古泉「え?」

タッタッタッタ

古泉「ちょ、ちょっと朝比奈さん、何故急に走り出すんですか?」
みくる「いいから!」

古泉「引っ張らな……ん……アレは涼m――」
みくる「させさせまささー!」

タッタッタッタ……

215: 2008/07/16(水) 00:39:42.20 ID:oFN6mBne0
みくる「着きました!」

古泉「あのー、さっき涼宮さん達が居たような……」

みくる「あれ、そうでしたかぁ? あたし見てませぇん」

古泉「あるぇ……?」

みくる「さぁ、それじゃあ気合いを入れていきましょう!」

古泉「いや、コーヒーカップはそんなに気合を入れるものじゃありませんよ」

グイッグイッ

古泉「なぜ腕の体操を……」

みくる「何事も準備を怠らず」

古泉「どう見ても嫌な予感がするので、僕はここに居てもいいでしょうか?」

みくる「だめっ!」

古泉「そういうと思いました」

216: 2008/07/16(水) 00:46:40.25 ID:oFN6mBne0
ぐりんぐりん

みくる「あっははははは!」

古泉「ちょぉ……もう危ないから、危ないから!」

みくる「ノッてきましたぁー!」

古泉「出ちゃう、色々と出ちゃうー!」

みくる「あっははははは――……




古泉「貴女って乗物に乗ると、ガラリと人が変わりますよね……」

みくる「時空移動で慣れてますからぁ、あんなのじゃ刺激が足りないんですよー」

古泉「そういうものでしょうか……うっ……気持ち悪い……」

217: 2008/07/16(水) 00:51:25.19 ID:oFN6mBne0
みくる「しょうがないなぁ、そこのカフェで少し休んでいきましょう」

古泉「すみません……」

ヨボヨボ

みくる「生まれたての子ヤギみたいですねぇ」

古泉「ほっといてください、乗物系は苦手なんですから……」

ポニョポニョ

みくる「あっ、ちょっと待って!」

古泉「え、今度はなんですか?」

みくる「……」 ブツブツブツ

古泉「……?」

220: 2008/07/16(水) 01:00:32.94 ID:oFN6mBne0
その頃。

森「ぐすっ……そんな事言われたって……私っ……」
新川「ほら、そろそろ泣きやんでください。そんなに泣かれてしまうと……」

キョン「がんばれ……! がんばれ森さん……!」
ハルヒ「もう一押しよ……!」
長門「……」 グッ

森「私……ひっぐ……上司としてではなく……ひっぐ……新川さんが……」
新川「森さん……」

キョン「いけっ、いけっ……!」
ハルヒ「押せっ、押せっ……!」
長門「……」 ギリギリギリ

――ピピッ

森「新川さんの事が……あら?」
新川「……おや?」
森・新川「――了解」

ガタッ
てくてくてく……

キョン「おい、森さんが動くぞ!」
ハルヒ「追うしか無いでしょ!」
長門「同意!」

タッタッタッタ……

221: 2008/07/16(水) 01:08:05.75 ID:oFN6mBne0
みくる「さぁ、カフェへレッツゴー」

古泉「一体なんだったんですか?」

みくる「禁則事項です」

古泉「こんな時ばっかり禁則なんてずるいですよ」

みくる「古泉くんって……洗い浚い女性の秘密を探るのがお好きなのでしょうか?」 ほろり

古泉「いえいえいえ!」 ブンブンブンッ

みくる「うん、それでこそ古泉くんです!」

古泉「その質問には選択肢が無いでしょう、どう考えても……」

222: 2008/07/16(水) 01:18:26.86 ID:oFN6mBne0
みくる「ねぇーえ、どれにしましょうか?」

古泉「僕は取り敢えずコーヒーだけで、あ、それに角砂糖3個ですね」

みくる「ほらぁ、このおっきなジュースとか、おっきなパフェとか……」

古泉「ええ、どうぞ頼んてください。僕はいくらでも待ちますから」

みくる「そうじゃなくてぇー……」

古泉「ん? ああ、お金なら僕が出しておきますから」

みくる「……もういいです」

古泉「え、あれ? ちょっと! ……せめて角砂糖だけでもっ」

ぱくっぱくっぱくっ

古泉「待ってくらはぁ~い!」

223: 2008/07/16(水) 01:44:19.32 ID:oFN6mBne0
古泉「いきなりどうしたんですか?」

みくる「ふーんだ」
古泉「粗相があったのなら謝りますから」

みくる「許して欲しい?」
古泉「可能であるならば」

みくる「それじゃあ古泉くん」
古泉「はい」

みくる「あたしの名前を呼んで」

古泉「朝比奈、さん?」
みくる「み、く、る」

古泉「みくる、さん」
みくる「”さん”は要りません」

古泉「みくる」
みくる「一樹」

古泉「……なんだか照れますね」
みくる「えへへ、許してあげます」

277: 2008/07/16(水) 19:57:08.50 ID:oFN6mBne0
みくる「……」 にこにこ

古泉「あちこち歩き回っているうちに、だいぶ陽が傾いてきましたね」
みくる「そうね」

てくてくてく

古泉「……」
みくる「……」 にこにこ

古泉「あの……」
みくる「ふぇ?」

古泉「何か小話でもしませんか?」
みくる「いいですよー」

古泉「……」
みくる「……」

279: 2008/07/16(水) 20:04:50.05 ID:oFN6mBne0
古泉「そ、それでは……」
みくる「わくわく」

古泉「えっと……」
みくる「てかてか」

古泉「あー……」

古泉「やっぱりいいです」

みくる「そうですか」
古泉「ええ」

てくてくてく……ピタッ

みくる「今度はこれ」 ピッ
古泉「観覧車……だと……?」

280: 2008/07/16(水) 20:24:51.92 ID:oFN6mBne0
係員「足もとにお気をつけて――」

バタン

みくる「これなら、全体が見渡せるね」
古泉「そうですね」

ガコン……ガコン……

みくる「あっ、校長が居ました」
古泉「はぁ、どこでしょうか?」
みくる「ほらあそこ! トイレ前の辺り!」 チョイっ
古泉「未だに並んでおられたのですね……しかも今度は女性用トイレ側に……」
みくる「あっちには大森さんも!」
古泉「凄い人だかりですね、実に商魂逞しい方だと」

ガコン……ガコン……

古泉「おや、あちらには榎本さん達が」
みくる「どこですかー?」
古泉「ほら、あの噴水の近くの」
みくる「んー……?」

ぴとっ

古泉「え?」
みくる「あ、ほんとだぁー」
古泉「……」

282: 2008/07/16(水) 20:33:40.34 ID:oFN6mBne0
古泉「あの……」
みくる「なに?」

古泉「顔が近いですよ」

ぐいっ

みくる「……」

ガコン……ガコン……

古泉「……」
みくる「……」

古泉「……」
みくる「……」 じわっ

283: 2008/07/16(水) 20:45:39.09 ID:oFN6mBne0
古泉「な、なーんてね! 冗談です! あ、ほら! 新川さんと森さんも見つけましたよ!」
みくる「またカフェの所へ戻ってらしたんですね!」

古泉「おー、なんだか二人とも真剣な顔付きですねー」
みくる「あ、ウェイターが飲み物を持ってきましたよぉ」

古泉「それを優雅に口へと運ぶ新川さん」
みくる「そして森さんもカップを手に取り――」

みくる・古泉「新川さんにぶっ掛けたーッ!」 ブワッ

古泉「あれ……新川さんが懐からハンカチを……」
みくる「拭いてます! 自分よりも先にテーブルを、そして森さんに跳ね返った飲み物を!」

古泉「なんという紳士……」
みくる「それを見た森さんが新川さんのカップを手に取り――」

みくる・古泉「ダメ押しだーッ!」 ブワッ

285: 2008/07/16(水) 21:03:01.05 ID:oFN6mBne0
ガコン……ガコン……

みくる「今日はかなり遊んだよね」
古泉「そうですね」

みくる「結局、涼宮さん達とは殆ど係れなかったけど」
古泉「仰る通りです」

ガコン……ガコン……

みくる「……」
古泉「……」

ガコン……ガコン……

みくる「えっと」
古泉「?」

みくる「隣、いいですか?」
古泉「……どうぞ」

290: 2008/07/16(水) 21:21:08.05 ID:oFN6mBne0
みくる「……」
古泉「……」

みくる「あの……」
古泉「……」

みくる「あのっ……」
古泉「……」

みくる「大事なお話があるんです」
古泉「……」

みくる「聞いてくれますか?」
古泉「……」

古泉「正直、聞きたくありません」

みくる「嫌です、認めません」
古泉「やれやれ……困りましたね……」

古泉「それではその前に、僕の方から少しだけいいでしょうか?」

みくる「嫌です」

古泉「でしたら、僕も貴女の話を聞くことは出来かねますね」

みくる「じゃあ……聞きます」

293: 2008/07/16(水) 21:46:20.21 ID:oFN6mBne0
古泉「僕は、超能力者です」

みくる「知ってます」

古泉「そして、貴女は未来人です」

みくる「……知ってます」

古泉「そして互いが、それぞれ異なる立ち位置に立たされています」

みくる「それも知ってます……」

古泉「知っている、ではなく良く考えてください。理解してください。その上で答えてください」

みくる「……」

古泉「お願いします」

みくる「……はい」

294: 2008/07/16(水) 21:55:11.86 ID:oFN6mBne0
古泉「”今”は、いいかもしれません。
    互いの目的が限りなく一致し、相互協力を保てている”今”だけなら。
    ですが……」

みくる「映画撮影の時のような……」

古泉「はい、あの時は本当に切迫していました。
    結果的には持ち直せたものの、一歩間違えていれば恐らく――」


――僕と貴女は、全力で互いを潰しあう関係となっていたはずです。


みくる「……」

古泉「またあのような事態が起こらないとは言い切れません。
    いや、何も起こらないという方が有り得ないと僕は思います」

みくる「……まるで、涼宮さんや長門さんとキョンくん達みたいですね」

古泉「確かにその通りかもしれません、皮肉ですがね」

みくる「でも――」

古泉「待ってください。もう少しだけ……あと少しだけでいいので黙って聞いていてください……」

296: 2008/07/16(水) 22:10:11.74 ID:oFN6mBne0
古泉「僕が歯痒いのは……僕が本当に辛いのは……
    こんな時ですら自分を演じ続けていなければならないという事なのですよ。
    涼宮さんが望み、そして僕自身に当て嵌められた役割というものをです。
    不必要な事には口を閉ざし、逆に仲間に必要な事にさえ口を閉ざし、限りなく僕を演じ続けなければならない。
    それらの葛藤というものはSOS団の活動を通している間もそうでしたが、
    今ではある程度割り切れるようになったと自分では思っています」

みくる「……」

古泉「いいですか、一度だけの質問をします」

みくる「……」

古泉「貴女と僕が、今度は本当に敵対する関係となってしまった時、貴女はどうしますか?」

みくる「それは……」

古泉「……」

みくる「……」

古泉「では少しだけ質問を変えます」


古泉「その時貴女は、自身の置かれている立場を投げ出す事が出来ますか?」

298: 2008/07/16(水) 22:22:21.06 ID:oFN6mBne0
みくる「出来ません」

古泉「……驚くほどに即答されるのですね」

みくる「誰の頼みであろうと、例えそれがあたしの両親のものであろうとも、
     あたしはあたし自身の役目を捨てる事など絶対にできません」

古泉「それが貴女の回答ですか?」

みくる「はい」

古泉「そうですか……」

299: 2008/07/16(水) 22:34:59.31 ID:oFN6mBne0
古泉「正直なところ”裏切ってでもいい”等と答えられてしまったらどうしようかと悩んでいたのですが……」

みくる「……」



古泉「良かった」



古泉「貴女がそういう人であって良かったと……心から思います。
    簡単に自身の役目を放棄する人を、僕は信用できそうにありませんから」

みくる「……」

古泉「まず最初に、貴女を測っていたことを謝ります」

みくる「いいえ……多分、あたしも同じ事を言おうとしていましたから……」


ガコン……ガコン……


みくる「それじゃ、今度はあたしの番ですよね?」

古泉「どうぞ」

302: 2008/07/16(水) 23:13:32.14 ID:oFN6mBne0
みくる「好きです」




古泉「……えらく、直球なんですね」

みくる「他に言葉が思い付かなかったし……その……」

古泉「実に貴女らしいと思います」

みくる「でも本心です」

古泉「それは僕にも解りますよ」

みくる「……あ、それと付き合ってください、あたしと」

古泉「……」

みくる「でも覚悟しておいてください。
     何時かもし終りが来るのなら、きっとあたしはそれまでの一分一秒の時間も無駄にはしないと思うんです。
     だから四六時中、一樹くんと一緒に居ようとするかもしれません。
     いえ、たぶん、絶対そうなると思います。これは確実に起こり得る未来です。
     それでもいいですか?」

303: 2008/07/16(水) 23:14:59.38 ID:oFN6mBne0
ガコン……ガコン……

みくる「あ、あと涼宮さんのほうも現状の維持が出来るように今まで以上に頑張りますから……」

古泉「……」
みくる「駄目、ですか?」

古泉「くっ……くくっ……」
みくる「笑わないでください!」

古泉「すみません」
みくる「酷いです」

古泉「いえ、こんな時ですら一切の筋道を立てずに話そうとする貴女という人が、妙に面白かったもので」

みくる「むー」

古泉「えっとですね……いや、そうだな」



古泉「僕も同じ気持ちだ。これからよろしく、みくる」

みくる「一樹くっ――んっ……」


ガコン……ガコン……ガッ――


――ガタァン!

305: 2008/07/16(水) 23:26:39.88 ID:oFN6mBne0
翌々日。

キョン「一昨日は散々だったな……」
ハルヒ「そう? 結構楽しかったじゃないの」

キョン「俺の身にもなってくれよ、会う人会う人みんなに冷やかされるんだぜ?
    ……しかしよくよく考えてみると、何故ああも顔見知りが居たんだろうな?」
長門「些細な事」

キョン「そして誰かさんが暴れ出して観覧車が止まったのには、流石に引いた」
ハルヒ「まだ分からないの? 席の取り方ってのは重要なのよ!」
長門「うんうん」

古泉「おや? ……なるほど、それは災難でしたね」

キョン「チッ……人の気も知らないで……」

古泉「んっふふ」

キョン「でもまぁ、総評的に言えば楽しかったのかもな」 パチリ

ハルヒ「当然でしょ!」
長門「うんうん」

古泉「王手です」 パッチン

キョン「なっ! ちょっと待った!」

古泉「いいえ、駄目です」

306: 2008/07/16(水) 23:27:30.36 ID:oFN6mBne0
ガチャ

みくる「少し遅くなってしまいましたぁー」
キョン「おぉ朝比奈さん、こんにちはっす」

みくる「こんにちは、涼宮さん」
ハルヒ「遅いわよ!」

みくる「長門さんも御苦労さまです」
長門「……」 こくり

みくる「待たせてごめんね、一樹」

キョン「ん……?」

古泉「遅いよ、みくる」

ハルヒ「え……?」
長門「……」 ピクッ

キョン「ちょ、ちょっとお二人ともよろしいでしょうか?」
みくる・古泉「はい?」

ハルヒ「みくるちゃんと古泉くんって、ど、どういう関係?」
みくる・古泉「それはですねぇ――」




「――禁則事項です」

307: 2008/07/16(水) 23:28:33.49 ID:oFN6mBne0



『二人の禁則事項』  -おわり-




308: 2008/07/16(水) 23:35:37.96 ID:vBnvuD/FO
よくやった乙

古みくSSは貴重

309: 2008/07/16(水) 23:43:42.64 ID:WAP9+MCq0
久々にいい古みくだった

313: 2008/07/16(水) 23:59:19.28 ID:oFN6mBne0
という訳で、書きあげるのに時間が掛かってすまんかった
それから保守したり読んでくれた人に感謝します

ではまたいつか

引用: ハルヒ「キョンって好きな人いるの…?」