1: 2017/05/28(日) 22:40:07.756 ID:6gnOmbgu0.net
【駅前】



ガヤガヤ



テクテク

ヴィーネ「……ふぅ」


ヴィーネ「ガヴは……」キョロキョロ

ヴィーネ「……いないわね」


スッ

ヴィーネ(スマホを見るとまだ九時半だった)

ヴィーネ(約束の時間まで三十分もある)


ヴィーネ「ちょっと早すぎたかな」
天使と悪魔と委員長
3: 2017/05/28(日) 22:41:18.564 ID:6gnOmbgu0.net
ヴィーネ(駅前の観光案内所の前でガヴと待ち合わせをしている)

ヴィーネ(先週から公開されたパンダの赤ちゃんを見ようと、一緒に動物園に行くため)


ヴィーネ(ずっと楽しみにしていたせいか、いつもよりもさらに早く着いてしまった)





ジリジリ


ヴィーネ「ここに来るだけで汗かいちゃったわね……」

パタパタ

ヴィーネ(手であおいで涼もうとしても、気休めにしかならなかった)

ヴィーネ(今日は出かけるにはいい天気だけど、少し日ざしが強い)

ヴィーネ(こんな時間からもう暑くなり始めている)



ヴィーネ(ガヴならどうせ遅れるに決まってるんだから、もっとゆっくりすればよかったかも)

4: 2017/05/28(日) 22:42:40.698 ID:6gnOmbgu0.net
ヴィーネ(ガヴと待ち合わせをするとたいていの場合、遅刻される)

ヴィーネ(特に今日みたいに朝のときは確実に)


ヴィーネ(一番ひどかったのは、ショッピングに行くために待ち合わせをしていたときだった)

ヴィーネ(たしかあのときも駅前の観光案内所の前で、朝の十時に待ち合わせしてたっけ……)

ヴィーネ(今日と全く同じね……)

ヴィーネ(結局二時間も待ったのに来なくて、ガヴの家に行ったら、掃除だなんて嘘吐いて遅くまでゲームをやってて寝坊したという)

ヴィーネ(ガヴはいつも深夜までゲームをやってるから、朝に起きられない)



ヴィーネ「…………」

ヴィーネ(だからもっとゆっくりして、約束の時間を過ぎるくらいに着いてもよかったはずなんだけど……)

5: 2017/05/28(日) 22:44:21.590 ID:6gnOmbgu0.net
ヴィーネ(でも、今日はどこかいつもと違う気がする)


ヴィーネ(いつもよりも早く待ち合わせ場所に着いたからか、やけに日ざしが強いからか)

ヴィーネ(毎朝見てるニュースの星座占いのコーナーで、久しぶりにランキング一位だったからかもしれない)

ヴィーネ(その占いによると、今日のラッキーカラーは赤)

ヴィーネ(赤いものを身につければ恋愛運が上がるらしい)




テクテク

ヴィーネ(近くにある美容院に近寄ってガラス張りの壁を見る)


ヴィーネ(ガラスに反射する自分の姿が見えた)

キラッ

ヴィーネ(強い日ざしを受けて、頭の赤いヘアピンがキラキラ光っている)

7: 2017/05/28(日) 22:46:01.375 ID:6gnOmbgu0.net
 『今日の一位はてんびん座のあなた! 思いもよらない人から告白されちゃうかも!? ラッキーカラーの赤でさらに恋愛運アップ!』



ヴィーネ(赤いヘアピンを見ながら、ニュースキャスターがいう占いの内容を思い出す)

ヴィーネ「告白かぁ……」

ヴィーネ(でも今日はガヴと一緒だから誰かに告白される時間なんてないのよね)



ヴィーネ(ガラス越しに空調のきいた涼しそうな店内を見ると、私と同じくらいの歳の子もいる)

ヴィーネ(こんな朝に美容院に来て、これからデートでもするのかしら)

ヴィーネ(私は仕送りが厳しくて、こんなに高そうな美容院には入ったことはない)

ヴィーネ(今日の動物園だって結構無理してるくらいだし)

ヴィーネ(恋愛運なんかより金運の上がるものを持つべきだったかもしれない……)

12: 2017/05/28(日) 22:48:15.681 ID:6gnOmbgu0.net
――――


ガヤガヤ


ヴィーネ(駅前にはいろんな人がいる)

ヴィーネ(慌ただしくどこかへ電話をかけているスーツ姿のサラリーマン、部活なのか休日に制服を着ている学生)

ヴィーネ(観光に来ている大きな荷物を持った外国人の家族)

ヴィーネ(恋人だろうか、ふてくされた女の子をなだめる男の子)


ヴィーネ「ふふっ、なんかガヴみたい」

ヴィーネ(ガヴも何か嫌なことがあると、むくれたり駄々をこねたりするところがある)

ヴィーネ(たいてい放っておけば落ち着くけど、どうしようもないときは焼肉あたりをちらつかせるしかない)


ヴィーネ(ガヴもいつかあの女の子みたいに恋人とデートするのかな)

ヴィーネ(まだちょっと子供っぽいけど)


ヴィーネ(ガヴにも好きな人がいるんだもんね)

13: 2017/05/28(日) 22:50:17.803 ID:6gnOmbgu0.net
――――
――――――――――――
――――――――――――――――――――

【ヴィーネ宅】


ヴィーネ「う ゛ぅ……い゛い゛ばなじだっだわね……」ズルズル

ガヴリール「うわっ、汚いな! ほら、鼻かんで」

スッ

ヴィーネ(映画を観てぼろぼろ泣いてしまった私を見て、ガヴがティッシュを差し出す)


ヴィーネ「あ゛りがど……ガヴ……」

チーン

ガヴリール「まったく……こんな恋愛映画観て泣くの、世界中探してもヴィーネくらいだぞ」

14: 2017/05/28(日) 22:51:45.364 ID:6gnOmbgu0.net
ヴィーネ「むぅ……そんなことないわよ。ラフィだって感動したって言ってたんだから」

ガヴリール「は? ラフィってあのラフィ? 天使学校次席卒業でサターニャの現役ストーカーのラフィエル?」

ヴィーネ(ガヴが信じられないといった顔をする)


ヴィーネ「そのラフィよ、他に誰がいるのよ」

ヴィーネ「この前一緒にカフェに行ったときにね、オススメされた映画なのよ」

ガヴリール「えぇ……、あいつが恋愛映画観てるところが全く想像できない……」

ガヴリール「ましてや感動なんてな……その様子撮れたら高く売れるぞ」

ヴィーネ「友達に対する言葉じゃないわね……、ラフィもああ見えて意外と乙女なのよ」

ガヴリール「さらっとひどいこと言ってる気がするぞ」

15: 2017/05/28(日) 22:53:26.277 ID:6gnOmbgu0.net
ヴィーネ「ガヴは何も感じなかったの? 女の子なら誰でも泣くわよこんなの」

ヴィーネ(DVDプレーヤーからディスクを取り出しながら、床にごろんと寝転がったガヴに尋ねる)



ガヴリール「何ともないな。まぁ、ヴィーネが好きそうな映画だとは思ったけど」ゴロゴロ

ヴィーネ「あら~? じゃあガヴにはまだ早かったのかもね~」ニヤニヤ

ヴィーネ「もう少し大きくなればわかるときが来るわよ」

ガヴリール「むっ、何それどういう意味だよ」ムスッ

ヴィーネ(ガヴがむくれる)

ヴィーネ「まだ恋を知らないってことよ」クスクス

ガヴリール「なっ……!?」



ガヴリール「し、失礼だな!!! 私にだって好きな人くらいいるわ!!!!」ガバッ

ヴィーネ「ん?」ピクッ

ガヴリール「あっ……」

ガヴリール「…………///」カァァァ

16: 2017/05/28(日) 22:55:53.008 ID:6gnOmbgu0.net
ヴィーネ「ちょっとどういうことか聞かせてもらえる?」

ズイ

ガヴリール「近い、近いから……///」

ヴィーネ(顔を真っ赤にして後ずさるガヴ)




ヴィーネ「今、ガヴに好きな人がいるって聞こえたような……?」ニヤニヤ

ガヴリール「い、いいいいいいい言ってないから!!!! 言ってない言ってない!!!!!!」アセアセ

ヴィーネ「本当にいないならそんなわかりやすい反応はしないと思うわよ?」

ガヴリール「うぅ……」


ヴィーネ「で、誰なの? 私の知ってる人?」

ガヴリール「…………まぁ、一応……」コクン

ヴィーネ「きゃーー!! 誰!? 同じクラス!!??」ワクワク

ガヴリール「うるさいな! 何でそこまで話さないといけないんだよ!!」

ヴィーネ「だって他人の恋バナって気になるじゃない!」

ヴィーネ(しかもあのガヴよ!? 恋愛のれの字も知らないと思ってたのに!)

18: 2017/05/28(日) 22:58:28.045 ID:6gnOmbgu0.net
ガヴリール「他人より自分の話しろよ! この恋愛脳!」

ヴィーネ「なっ……!? 誰が恋愛脳よ!」



ガヴリール「私の話はどうでもいいよ」

ガヴリール「それよりヴィーネはさ……誰かいないの? 好きな人とか」

ヴィーネ(ガヴが伏し目がちになり、ちらちらとこちらを窺いながら訊いてくる)



ヴィーネ「私? 私はまだ好きな人なんていないし、実際に恋してるガヴのほうが恋愛脳なんじゃないの」ニヤニヤ



ガヴリール「えっ……?」

ヴィーネ「どうしたの?」

ヴィーネ(ガヴの動きが止まった)


ガヴリール「そっか……」

ヴィーネ「なんか急にテンション下がったわね」

ガヴリール「…………」ウルッ

ヴィーネ(目に見えて元気がなくなる)

ヴィーネ(まるで期待を裏切られたかのような……)

ヴィーネ(気のせいか、涙ぐんでいるようにも見える)

19: 2017/05/28(日) 23:00:40.768 ID:6gnOmbgu0.net
ガヴリール「あー、いや、ほら、経験豊富そうなヴィーネなら参考になるかと思ったんだけど、好きな人もいないんじゃあね……」

ガヴリール「まだ恋を知らないなんて他人に言っておきながら、すごいブーメランだよな……」

ガヴリール「あはは……」


ヴィーネ「ガヴ……」

ナデナデ

ヴィーネ(そっとガヴの頭を撫でる)

ヴィーネ「たしかに経験はないけど、私でよかったら相談に乗るわよ」

ヴィーネ「私たち、友達でしょ」ニコッ

ガヴリール「友達……」

20: 2017/05/28(日) 23:02:20.443 ID:6gnOmbgu0.net
ガヴリール「じゃあ訊くけど……」

ヴィーネ「うん」

ガヴリール「私は好きでも、その人が私のこと好きじゃなかったらどうすればいいの?」

ガヴリール「その人はただの友達としか思ってないかも」


ヴィーネ「う~~ん……ただの友達か……むむむ……」


ガヴリール「……仮にヴィーネならどうされたい?」

ヴィーネ「はぁ? 私の好みなんて聞いても仕方ないでしょ」

ガヴリール「だから仮にだよ。参考にしたいから」

ヴィーネ「そうねぇ……」

ヴィーネ「私なら、ストレートに告白してほしいかな」




ヴィーネ「デートに誘われちゃって、遊園地とか映画館に行って盛り上がるんだけど、私はそれがデートだと気づいてないの」

ヴィーネ「それで、帰り際にまた一緒に遊ぼうなんて話してるときに不意に告白されるのよ」

ヴィーネ「ね、良くない? 良いでしょ?」キラキラ

ガヴリール「ただの友達なのに?」

ヴィーネ「そんなの実際されてみないとわからないわよ」

ヴィーネ「こ、告白されて初めて好きだったことに気づくこともあると思うし……」

ヴィーネ(ベタだけど映画やドラマではよくあるしね)

22: 2017/05/28(日) 23:04:46.215 ID:6gnOmbgu0.net
ガヴリール「ヴィーネは、そういうのが好きなんだ?」

ヴィーネ(ガヴがじっと見つめてくる)

ヴィーネ「そりゃ、私も女の子ですから? 告白されることに憧れくらいあるわよ」


ヴィーネ「あ、でも、これは参考にしないほうがいいわよ」

ヴィーネ「まずは無難に相手がどんな人で何が好きなのかを詳しく探ったほうがいいと思うわ」


ヴィーネ「大丈夫よ。ガヴはかわいいんだから、きっと受け入れてもらえるわ」

ガヴリール「か、かわいいとか言うなよ……」カァァァ

ヴィーネ「ガヴはかわいいわよ。私が保証します」

ガヴリール「まぁ……考えておくよ……」

ヴィーネ(頭を撫でる手から逃げるようにガヴが離れた)

24: 2017/05/28(日) 23:06:44.058 ID:6gnOmbgu0.net
――――――――――――――――――――
――――――――――――
――――


ヴィーネ(結局ガヴの好きな人が誰なのか聞きそびれちゃったなぁ……)




ヴィーネ(あの後、ガヴはどうしたのかしら)

ヴィーネ(何か行動を起こしたのかな)

ヴィーネ「…………」


ヴィーネ(まぁ、何もやってないんでしょうね……)

ヴィーネ(ガヴってこの手のことには意外と奥手だからなぁ)

ヴィーネ(それならここは私がしっかり導いてあげないと!)グッ

27: 2017/05/28(日) 23:09:19.239 ID:6gnOmbgu0.net
――――


ヴィーネ(あの女の子と男の子は気づくといなくなっていた)

ヴィーネ(なだめるのに成功したんだろうか)


ヴィーネ「ガヴの好きな人ってどんな人なんだろう」


ヴィーネ(さっきの女の子がガヴだったら……)


ヴィーネ(ガヴがいつものようにむくれると、隣にいる男が必氏に機嫌をとろうとする)

ヴィーネ(機嫌を直したガヴが、男に甘える)

ヴィーネ(いつも私に向けてくれる笑顔を、男に向ける)

ヴィーネ(その後一緒にご飯でも食べに行ったりして……)








ヴィーネ「……なんか、面白くない」


ヴィーネ(ガヴの隣に知らない男がいることを想像すると、胸がもやもやした)

28: 2017/05/28(日) 23:11:35.442 ID:6gnOmbgu0.net
ヴィーネ(いや、でもガヴの好きな人って私の知ってる人なんだっけ)




ヴィーネ(……マスター? ないわね、さすがに年の差がありすぎよ)


ヴィーネ(やっぱりクラスの男子?)

ヴィーネ(でもガヴと親しい人なんていたかしら……)


ヴィーネ(まさか先生!? だ、ダメよ、教師と生徒がそんな関係になるなんて!)アセアセ

ヴィーネ(……これもないわね)



ヴィーネ(私とガヴの共通の知り合いなんて、そう多くはないはずだけど……)

ヴィーネ(う~ん、心当たりがない……)

29: 2017/05/28(日) 23:13:50.740 ID:6gnOmbgu0.net
――――


ジリジリ


ヴィーネ「暑い……」


スッ

ヴィーネ(約束の時間まであと十五分……)

ヴィーネ(さーて、ガヴは今日は何分遅れるかな)

ヴィーネ(こんな暑い中、また二時間も待たされたらなんて考えたくないわ……)





サターニャ「――――――――」

ラフィエル「――――――――」





ヴィーネ「……あれ?」

ヴィーネ(サターニャとラフィ?)

ヴィーネ(何かを話しながらこっちに近づいてくる)

30: 2017/05/28(日) 23:15:48.840 ID:6gnOmbgu0.net
サターニャ「あら? ヴィネットじゃない!」

ラフィエル「偶然ですね~。おはようございます」

ヴィーネ(私に気づいて声をかけてくれた)


ヴィーネ「おはよう二人とも。これから出かけるの?」

ラフィエル「ええ、映画館へ行くんです」

サターニャ「今、超悪魔的なホラー映画をやってるのよ!!!!」ワクワク

ヴィーネ「サターニャが映画なんて意外ね」

ヴィーネ(インドア系は趣味じゃないと思ってたけど)

ラフィエル「サターニャさんが観たいというので、私もついてきました~」

サターニャ「え、ち、違うわよ!!! ラフィエルが!!!!!///」アセアセ

ヴィーネ「へぇ……」

ヴィーネ(なるほど、つまりデートというわけね)

31: 2017/05/28(日) 23:17:59.592 ID:6gnOmbgu0.net
ラフィエル「この前、サターニャさんの家で一緒に映画を観たんですがとっても面白いんですよ」

ラフィエル「映画を観ながら笑ったり泣いたり、ころころ表情が変わって」

ラフィエル「うふふ、サターニャさんって見ていて飽きないんです」ニコニコ

ヴィーネ「見るのそっちかよ」

ラフィエル「しかもそのとき観ていたのが恋愛映画でしたから――――」

サターニャ「すとーーーーーーーっぷ!!!! それ以上言わなくていいから!!!!!!///」カァァァ

ヴィーネ「顔真っ赤になってるわよサターニャ」

ヴィーネ(でも、デートまでしてるなんて、私の知らない間に結構進展してたのね)





ラフィエル「それはそうと、ヴィーネさんはこんなところで何をしているんですか?」

サターニャ「こんなとこで立っててもメロンパンは湧いてこないわよ」

ヴィーネ「あ、ガヴを待ってるのよ」

サターニャ「ガヴリールを~?」ジトッ

ヴィーネ「これから一緒に動物園に行く予定でね」

サターニャ「ガヴリールも可哀想にね~、いっつもヴィネットに付き合わされて」

ラフィエル「バイトのシフトも増えてますし、ゲームする時間がどんどん減っていきますね♪」


ヴィーネ「違うわよ、今日はガヴのほうから誘ってくれたの」

33: 2017/05/28(日) 23:20:01.830 ID:6gnOmbgu0.net
サターニャ「え゛っ!?!!??」

ラフィエル「ガヴちゃんから……ですか?」

ラフィエル「珍しいですねぇ、海のときも行きたがらなくて無理に連れていったのに……」

ヴィーネ「そうね、私も意外だったわ」



サターニャ「話しなさいよ。面白そうだし」

ラフィエル「はい! 私も聞きたいです!」スッ

ヴィーネ「えぇ、別に面白い話じゃないわよ……」

ヴィーネ「まぁいいけど」

ヴィーネ「あれは先週、ガヴが私の家に晩ご飯を食べに来たときのことだったわ」



――――
――――――――――――
――――――――――――――――――――


カチャカチャ

ヴィーネ「もう、食べたら食器くらい下げなさいよ」

ガヴリール「ふー、食った食った。ヴィーネちゃんの手料理は絶品ですなー」ポンポン

ガヴリール「テレビ見よ」

ポチッ

35: 2017/05/28(日) 23:22:15.934 ID:6gnOmbgu0.net
ヴィーネ(テレビにパンダの親子が映し出される)

ヴィーネ(ここから行ける距離の動物園で、パンダの赤ちゃんが公開されたことを伝えるニュース番組だった)




ヴィーネ「わぁ~~、かわいい~~~~」キラキラ

ヴィーネ(私のほうがテレビに目が釘付けになる)

ヴィーネ「見てよガヴ! この子パンダの赤ちゃんなのよ!!」

ガヴリール「パンダくらいわかるっての……」

ヴィーネ「かわいいぃ~~~、はぁ~~」キラキラ

ガヴリール「ヴィーネってさ、パンダ好きだよね」

ヴィーネ「すっごい好き! 特に白黒の模様が良い!」

ヴィーネ「動きがのっそりしててあんまり動こうとしないのもかわいい!」


ヴィーネ「でも私、実際にこの目でパンダを見たことないのよね……」シュン

ヴィーネ「動物園ってあんまり行く機会ないじゃない?」


ガヴリール「……見たいの?」

ヴィーネ「まぁね、テレビよりも実際に見れたら最高だろうなぁ」

ヴィーネ「しかも赤ちゃんなんだって! 滅多に見れないじゃない!」

ガヴリール「…………」

ヴィーネ「どうしたのよ、急に黙り込んで」

37: 2017/05/28(日) 23:24:05.300 ID:6gnOmbgu0.net
ガヴリール「あ、あのさ、ヴィーネ」モジモジ

ヴィーネ「ん?」

ガヴリール「じゃあ、今度一緒に見に行かない……かなーって……思ったり……」

ヴィーネ(目をそらして小さな声を出すガヴ)

ヴィーネ「あら、ガヴが誘ってくれるなんて珍しいわね」

ヴィーネ「雨でも降ったりして」クスクス

ガヴリール「なんだよ、私だってたまには誘うこともあるから」ムスッ


ガヴリール「それで、ど、どうかな……一緒に」ソワソワ

ヴィーネ「そんなにそわそわしてどうしたの。私が断るとでも思った?」

ガヴリール「それじゃあ……!」

ヴィーネ「せっかくガヴから誘ってくれたんだしね。行きましょう、一緒に」ニコッ

ヴィーネ「ガヴと一緒に行ったら、きっと楽しいわ」

ガヴリール「ほんとに?」

ヴィーネ(ガヴが私の目を見つめる)

40: 2017/05/28(日) 23:26:49.849 ID:6gnOmbgu0.net
ヴィーネ「でも動物園って動物だけじゃなくて人間も多いからね」

ヴィーネ「ガヴ、あんまり混んでるところ好きじゃないでしょ? 大丈夫かしら?」

ガヴリール「仕方ない、今回だけは気にしないようにするさ」



ヴィーネ「はぁ~~、楽しみね、動物園」ウキウキ

ガヴリール「うん……私も頑張るよ、ヴィーネ」

ヴィーネ「そんなに気負わなくても人混みなんてすぐに慣れるわよ」クスクス






――――――――――――――――――――
――――――――――――
――――


ヴィーネ「っていうことがあったわ」

ラフィエル「あら~」ニコニコ

サターニャ「誰よそれ!!! 私の知ってるガヴリールじゃないんだけど!!!!」

ヴィーネ「いやそんなこと言われても……」

41: 2017/05/28(日) 23:28:43.162 ID:6gnOmbgu0.net
ラフィエル「サターニャさんではありませんが、変な感じですね」

ラフィエル「これは何か大事な話でもあるのかもしれません」

サターニャ「大事な話!? 何よそれ、気になる!!!」ワクワク



ラフィエル「そうですねぇ……、たとえば……愛の告白とか」



サターニャ「あ、愛!!???///」カァァァ

ヴィーネ「はぁ!?///」カァァァ

ヴィーネ「ちょ、な、何言ってるのよラフィ!!!!! 馬鹿なこと言わないで!!!///」アセアセ


ヴィーネ(ガヴが私に愛の告白!?)

ヴィーネ(ないないありえないわ)

ヴィーネ(たしかにガヴには好きな人がいるけど)

ヴィーネ(それは私じゃないはず……)


ヴィーネ(……本当に?)

42: 2017/05/28(日) 23:30:49.042 ID:6gnOmbgu0.net
ラフィエル「冗談ですよ」

ラフィエル「てへっ♪」



ヴィーネ「……は?」

ヴィーネ(ラフィがぺろっと舌を出して誤魔化す)

ヴィーネ「こ、こいつ……」

サターニャ「な、なーんだ冗談だったの」

サターニャ「そうよねぇ、ガヴリールには恋愛なんてまだ百年早いわ」

ヴィーネ「そんなことないわよ。だってガヴには好きな――――」

ヴィーネ(あ、ガヴに好きな人がいることは言わないほうがいいわね)

ヴィーネ(たぶん私にしか言ってないんだろうし)

ラフィエル「…………」

43: 2017/05/28(日) 23:32:46.985 ID:6gnOmbgu0.net
――――


ラフィエル「そういえば、ガヴちゃんとは何時に待ち合わせしているんですか?」

ヴィーネ「十時よ」

ラフィエル「もうすぐですね。サターニャさん、私たちはそろそろ行きましょうか」

サターニャ「んぇ? ガヴリールならどうせ遅刻でしょ。常習犯じゃない」

サターニャ「ヴィネットを一人で残していくなんて可哀想よ」

ラフィエル「うふふ、わかりませんよ」ニコニコ










ヴィーネ(ガヴとの待ち合わせ場所で二人と別れた)

ヴィーネ(駅の構内に入っていく二人を見ると、どちらからともなく手を繋いだ)

ヴィーネ(ラフィもサターニャも顔が赤くなってるように見えたけど)

ヴィーネ(順調に仲が深まっていってるようで安心したわ)

ヴィーネ(ラフィ、サターニャのことずっと好きだったもんね)

44: 2017/05/28(日) 23:34:12.916 ID:6gnOmbgu0.net
――――


ガヤガヤ


スッ

ヴィーネ(スマホを見ると、もう間もなく十時になろうとしている)

ヴィーネ(ガヴのことだから、今日も遅刻するだろうと思っていた)

ヴィーネ(サターニャも言ってたように常習犯だし)



ヴィーネ(でも、今日はどこかいつもと違う気がした)


ヴィーネ(いつもよりも早く待ち合わせ場所に着いたからか、やけに日ざしが強いからか)

ヴィーネ(毎朝見てるニュースの星座占いのコーナーで、久しぶりにランキング一位だったからかもしれない)

サワサワ

ヴィーネ(頭の赤いヘアピンに触れる)

46: 2017/05/28(日) 23:36:05.690 ID:6gnOmbgu0.net
 『今日の一位はてんびん座のあなた! 思いもよらない人から告白されちゃうかも!? ラッキーカラーの赤でさらに恋愛運アップ!』



ヴィーネ(今朝の星座占いの内容を思い出す)

ヴィーネ(思いもよらない人から告白される……かぁ)


ヴィーネ(今日は、ガヴに誘われて一緒にパンダの赤ちゃんを見に行く予定)

ヴィーネ(それだけなのに、何で私、恋愛運の上がるものなんて身につけてきたんだろう)


サワサワ

ヴィーネ(私、いったい何を期待しているのよ……)





 『そうですねぇ……、たとえば……愛の告白とか』


ヴィーネ(いやいや、ガヴとはただの友達だし……、私にそっちの気はないはずなのに……)

47: 2017/05/28(日) 23:37:39.957 ID:6gnOmbgu0.net
ヴィーネ(ラフィは冗談だって言ってたけど、今思えば動物園に誘ってくれたときのガヴの態度はまるで……)

ヴィーネ(それだけじゃない、もっと以前に、一緒に映画を観てガヴに好きな人がいると知ったときも……)


ヴィーネ(もしそうだったら、きっと今日、ガヴは私に……)












ガヴリール「おまたせ、ヴィーネ」


ヴィーネ(いつもの声が聞こえた)

ヴィーネ(はっとして声のほうを向く)


ガヴリール「ごめん、ちょっと遅れちゃったかな?」

ヴィーネ「……ううん、時間通り」


ヴィーネ(いつもと違って、約束の時間にガヴが現れた)

49: 2017/05/28(日) 23:37:57.342 ID:6gnOmbgu0.net
終わり

51: 2017/05/28(日) 23:39:15.675 ID:mGP5Nqjwd.net
乙!
すごい良かったわ

引用: ヴィーネ「ちょっと早すぎたかな」