1: 2009/09/22(火) 12:02:32.24 ID:xC9b/orS0
シルバーウィークだし俺がこの一ヶ月の間に書いたSSを晒してみる
文才は無い

2: 2009/09/22(火) 12:03:25.00 ID:xC9b/orS0
 ある日の放課後。
 ついついクラスの子とのお話が長くなってしまって、気が付いたらもうとっくに練習が始まってる時間だった。
 ……どうして楽しいときは時間が経つのが早いんだろう? もっと遅くしてほしいのに、神様のばか!
 少しおどおどしながら音楽室の扉を開ける。多分真っ先に飛んでくるのはあずにゃんの怒った声かなぁ。
「遅れてごめんね~」
「ゆいせんぱ~いっ」
「わぁっ!?」
 ――と思っていたのに、飛び込んできたのはあずにゃん本体だった。これには私もびっくりして、思わず数歩後退りをしてしまう。
 いや、あずにゃんに触れるのが嫌だからじゃないよ? むしろ大歓迎だし……ほんとだってば!
「むぅ……」
 あずにゃんは、私が後ろに下がったのを見て少し不満そう。嫌がってるように思ったのかな? そんなことないのに……。
 もし本当に誤解されてたらあずにゃんに嫌われちゃうかもしれない。それは絶対やだ!
「あの、違うんだよ? あずにゃ――」
「唯先輩捕獲~っ」
「ひゃぁっ!」
 だから、あずにゃんの誤解を解こうと思って口を開いたんだけど、急にあずにゃんが私に抱きついてきたから驚いちゃった。
 不意を突かれたっていうのもそうだけど、まさかあずにゃんの方から私に抱きついてくるなんて思わなかったからね~。
 もちろん嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいや……。部室の中ならまだしも、ここは廊下の真ん中だから他の人の視線が気になっちゃう。
 なんだか生暖かい目で私たちを祝福してる人や、きゃーきゃー言いながら写真を撮ってる人もいる。見世物じゃないんだよっ?
 そんな私の気持ちを知ってか知らずか――多分知らないだろうけど、あずにゃんは更に頬擦り攻撃まで始めてきた。
「唯先輩のほっぺたすりすり~」
「ふにゃぁ……」
 あまりの気持ちよさに、猫みたいな鳴き声を出しちゃった。もしかしたら、あずにゃんより私のほうが猫っぽいのかなぁ。
 いや、そんなことはないよね。あずにゃんにすりすりされたら誰だってこうなるもん。されてみれば解るよ。
 でも、あずにゃんが他の人にすりすりするのはやだな……、もう私が猫ってことでいいや。あずにゃんは私だけのものだもんっ。
 私が抵抗しないからって調子に乗って、あずにゃんの攻撃がまたまた強くなってきた。今度は私のほっぺをぺろぺろと舐めてくる。
「唯先輩の味だ~」
「味なんてしないと思う、よ?」
けいおん!Shuffle 3巻 (まんがタイムKRコミックス)
4: 2009/09/22(火) 12:04:11.57 ID:xC9b/orS0
 あるとしても汗の味ぐらいだろうし、しょっぱいだけじゃないのかな? というか汗を舐められるのは結構嫌だなぁ。
 最近手入れをあんまりしてないし、臭かったりしてあずにゃんに幻滅されたらどうしよう……。
「あ、あずにゃん……そろそろ止めてくれないかなぁ?」
「ろうしてれすか? ぺろぺろ」
「いや、その……、臭ったりしたら嫌だし……」
 言おうかどうか迷ったけど、思い切って言ってみる。というか、ぺろぺろしながら喋るって凄いね、あずにゃん。
 あずにゃんは私の言葉に一瞬だけきょとんとして舐める口を止めたけど、しばらくしてからまたぺろぺろを再開した――えっ。
「ちょちょちょちょっと、あずにゃん!?」
「何ですか?」
「どうしてまたぺろぺろするの?」
「おいしいからに決まってるじゃないですか」
「そういうことじゃ……、おいしいの?」
「はい、なんだか甘い味がしてとってもおいしいですよ」
「そ、そうなんだ……」
 な、なら大丈夫かな? もしかしたらあずにゃんが私を傷付けないように言ってくれただけかもしれないけど、どうでもいいや。
 だって、本当においしそうに舐めてるんだもん。これならホイップクリームとか毎日塗っておいたほうがよかったかなぁ。
「女体盛りですか!?」
「へ?」
 まさか聞こえてるとは思わなかったから、変な声を上げてしまった。そこ、いつものことでしょなんて言わないで、傷付いちゃうよっ!
「女体盛りって何?」
 とりあえずそこだけは訊いてみる。何のことなのかな?
「唯先輩、知らないんですか?」
「うん」
 名前の響き的になんとなく食べ物っぽい感じがするんだけど……。
「食べ物、正解ですよ」
「正解ですか!」
 ぱんぱかぱーん。賞金一千万円獲得っ。
 ……うん、違うね。

5: 2009/09/22(火) 12:04:55.93 ID:xC9b/orS0
「まぁ食べるのは表面だけなんですけどね」
「表面?」
 どういうことだろ? お魚の皮だけ食べるみたいな感じ?
「ちょっと違いますね」
「そっか~」
 残念賞は貰えるのかな?
「説明するには実際にやってみるのが手っ取り早いんですけど……、どうします?」
「もちろんやるよ! このままだと気になって夜も眠れなくなっちゃうもん」
「それじゃ今夜、私がみっちり教えてあげますよ」
「うん、よろしくね!」
 ――その後、文字通り私があずにゃんに飼い馴らされてしまったのはここだけの秘密、だよ?



Fin



6: 2009/09/22(火) 12:05:37.16 ID:xC9b/orS0
「うぃ~」
「ほぇ?」
 ある日の放課後。いつもどおり一人で通学路を歩いていると、後ろから大好きな声が聞こえてきた。
 振り返ると、ギターを背負いながら両手を振り回して私のほうに走ってくるお姉ちゃん。
 私は歩く足を止めて、お姉ちゃんが追いつくのを待つ。そして数秒後、私の隣には少し疲れた様子のお姉ちゃん。
「どうしたの?」
 お姉ちゃんの息が整うのを待って、尋ねる。この時間はまだ部活中のはずだけど……。
 そう言うと、お姉ちゃんはなぜか得意げにピースサインをして一言。
「今日は練習が早く終わったんだ~」
「そうなんだ」
 珍しい。普段は遅くまで練習をしてるかお茶を飲んでるかしてるはずなのに……、何かあったのかな?
 さすがにそこまで訊くのは気が引けるから、止めていた足を再び動かして帰路を辿る。
 突然歩き出した私に、後ろでわわっという声が聞こえた。
「うぃ~、待ってよ~」
「ごめんごめん」
「いいよ~」
 何だかんだ言っても、お姉ちゃんはやっぱり優しい。この優しさを独り占めしたくなっちゃうほどに。
 でも、それは私の我侭。そんなことをすればお姉ちゃんや周りの人が悲しむと解っているから、独り占めはしない。
 それでも、今日ぐらいは。
 隣を見てみると、にこにことした笑顔で前を見ているお姉ちゃん。
 今だけは、この笑顔は私だけのものだ。
「お姉ちゃん」
「うん?」
 大好き、とは言えなかった。だから、代わりに――
「帰ろっか」
「うんっ」
 いつか、きっと……。


Fin


スレタイのとおり短編集
さるったら知らん

引用: 唯「たんぺん!」